約 845,524 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1384.html
グイード・ミスタ登場 その① グイード・ミスタ登場 その② グイード・ミスタ登場 その③ トリステインで朝食を その① トリステインで朝食を その② トリステインで朝食を その③・四大魔法(魔法のルールは不吉) 貴族らしく死ね その① 貴族らしく死ね その② 姫殿下の000(ダブルオーゼロ) 姫殿下からの第一指令 土くれのフーケを捕縛せよ その① 姫殿下からの第一指令 土くれのフーケを捕縛せよ その②
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/580.html
使い魔はゼロのメイジが好き 第一話
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/136.html
通路をプロシュートが前、ルイズが後ろを歩く。 だがプロシュートの後ろ姿から ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ というような音と何かオーラが見える。 「……何?まだ怒ってるの?」 プロシュートがルイズに向き直る。 「いいかッ!オレが怒ってんのはなテメーの『成長の無さ』なんだルイズ! そりゃあ確かに毎回『爆発』起こしてんだ、『ゼロ』と呼ばれて当然だッ! 自分まで『巻き込まれちまってる』んだからな!オレだってヤバかった!」 己の使い魔に一番痛いところを突かれた。 「毎回失敗する理由はオレなんかには分からねぇ! だが!オメー自身の心が『成長』しなけりゃあまた『ゼロ』と言われるだけだッ!」 プロシュートの言っている事はルイズにも十分分かる、だが今まで散々努力はしてきた。 知識だけならそこら辺のメイジ達よりも上だという自負もある、だが魔法は使えない。故に『ゼロのルイズ』と呼ばれる。 これ以上できる事が他に何があろうか。したがって次に出てきた言葉は 「……使い魔がご主人様にお説教しようなって100年早いのよ!今日のご飯無しだからね!」 ルイズが駆け出し通路の曲がり角を曲がり居なくなる。 「オイ!まだ話は終わっちゃいねーぞ!……チッ、ペッシのよーにはいかねーか」 昼食を抜かれたとしてもプロシュートには朝の男からギッた金があるので特に問題はない。 だが、一つ肝心な事を忘れていた。 「ヤバイな……迷ったか?これは」 流石の兄貴も慣れない場所では迷うらしい。 10分程通路を歩いたが全く道が分からず、さすがにイラついてきた。 (ギアッチョならあたり構わずブチのめしてるとこだな) チームである意味ペッシ以上に手のかかる仲間の事を少し思い出す。 ちなみにこの前はニュースにイラついて溜まり場のテレビをブッ壊しリゾットにカミソリを精製されかけていた。 自慢の氷の防御もリゾットの磁力にだけは効かないらしい。 「あ、あの……どうかなさいましたか?」 と、まぁ明らかにカタギの人間じゃあないプロシュートに若干恐れの入った声がかかる。 自分が居た場所、もとい世界では特定の地域を除いてでしか見ることのできないメイド服を着た少女がそこに居た。 「……ああ、食堂に行きてぇんだが生憎道が分からなくてな」 「それでしたら、私も行く途中なのでご案内します」 「助かる」 食堂に向かい歩くメイドと非カタギ、通常であれば明らかに異常な光景である。 途中気付いたのか 「あなたがミス・ヴァリエールの使い魔になった平民の方ですか?」 「まぁ訳の分からねーうちにそういう事になっちまったようだがな。オメーもメイジとかいうやつか?」 「いえ、私も平民です。ここには奉公のために貴族を世話しに来ているんです」 (あのマンモーニ連中の世話か…リゾット以上に苦労してそうだな) 「私はシエスタと申します。よければお名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」 「プロシュート、意味はオレの国の言葉で『生ハム』だ」 「プロシュートさん…ですね、食堂に着きましたよ」 「グラッツェ」 そう礼を述べプロシュートが中に入ろうとするがシエスタが 「あの、賄い物でよろしければ食べていかれませんか?」 と聞いてくる。 それは使い魔として召喚されたプロシュートを気遣ったものだが、今まで裏街道を歩いてきたプロシュートにとってほぼ初めてとも言ってもいいものだ。 「いや、一応金はあるからな。そこまで世話になるわけにはいかねぇさ」 「そうですか…残念です」 「何かあれば遠慮なく世話にならせてもらうぜ」 プロシュートが微笑を浮かべシエスタにそう返す。 チームの連中(特にメローネ)に見られた日には自殺もんだが、幸いヤツらはここには居ない。 その超レアとも言える兄貴の微笑を見てシエスタも微笑み返す。 「外の方にもお席はありますので」 「そうさせて貰おう」 『魔法学院アルヴィーズ食堂』 本来なら生徒達が食事や談笑する場所であるが、ある一角だけ全く人が座っていなかった。 当然プロシュートが食事をしている周辺である。 注文したのはピッツァとワイン。 細かい味付けは違うがやはりイタリア人としてはこれが一番よく馴染む。 声が小さすぎて聞き取れないが多分『平民』『平民』と言ってるのだろうと思う。 ギャングという事からイタリアに居た時もこのような視線は結構浴びており慣れていたはずだが、どうも不快感を感じるが何故かはまだ分からない。 ピッツァを食べ終わりワインの香りを味わいながら飲んでいるとメイドがデザートを運んでいるのが見えた。シエスタである。 プロシュートに気付いたのか笑みをこちらに向ける ―が、視線が反れたのか金髪の男と正面から衝突し、その勢いでデザートが重力を脱し男の服に直撃を果たす。 その男にプロシュートは見覚えがあった。このピッツァとワインの代金を提供して貰ったヤツだ。 貴族どうしなら大して騒ぎにならない事だがこの場合は違う。貴族とその奉仕に来ているメイド、明らかにシエスタの分が悪い。 当然ながら男がシエスタに対し騒ぎ立てる。 「君…平民が貴族に…『青銅のギーシュ』に何て事をしてくれたんだ!これから大切な用があるというのにどうしてくれる!」 「も、もももも申しわけございません!」 シエスタが男に向かって半泣きになりそうになりながら今にも土下座に発展リーチしかねんばかりに頭を下げている。 とりあえず、おさまったのかギーシュが後ろを向く。 「申し訳ありません…ぶつかってしまった時これを落とされたようですが…」 が、頭を下げている時シエスタがギーシュの足元に落ちている小瓶に気付きそれを拾い上げる。 瞬間、ギーシュが凄まじい勢いでそれを否定する。 「こ、これは僕のじゃない、き、君は一体何を言ってるんだ!」 「ですが、確かにギーシュ様の足元に…」 さらに否定しようとするギーシュ、だが周りがそれを肯定する。何時の時代も最大の敵は強敵(とも)という事か。 「ん…?この小瓶はモンモランシーの香水じゃあないか」 「そうか…ギーシュは今モンモランシーと…そういう事か」 こうなってくるとギーシュにはもう収拾する術はない。 そうこうしてると今朝食堂前でギーシュと一緒に居た少女がその集団に泣きながら向かいそして―― グワシィィーz_ィン 少女のビンタが炸裂した。 それを見たプロシュートが (メローネが見たら『スゴク良い!良いビンタだ!手首の(ry』と言うだろうな) と思った程の勢いだ。 そしてビンタを決めた少女が泣きながら走り去った後、新たな少女がギーシュに詰め寄ってきた。 「これは、どういう事かしらギーシュ…!!」 「モ、モンモランシー!違う、違うんだ!あの子はだだの…」 そうギーシュが言い終わる前にモンモランシーと呼ばれた少女がシエスタが持っている香水を取りそれをギーシュにブチ撒ける。 「もう二度とその顔を見せないで…!」 少女二人に捨てられたギーシュ、二股をかけていた当人が当然悪いのだが理不尽な怒りはシエスタに向かっていった。 「君が軽率に香水のビンなんか拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね!」 シエスタはただ頭を下げ続け謝るばかりだったが他の生徒達の前でビンタと香水を頭からブチ撒けられたという恥からさらに怒りがヒートアップする。 「申し訳ありませんで済めば憲兵なんていらないんだよ!……どうやら君には貴族に無礼を働くとどうなるかを身を以って知った方がいいようだね」 ギーシュが薔薇の造花の杖を出し構える。 メイジが杖を出す時。それは魔法を使う時だとシエスタは十二分に知っていた。つまりこれから自分が何をされるかという事も。 「ひっ……!」 シエスタがうずくまり頭を両手で押さえる。 この騒ぎにギャラリーが出来ていたようだが、誰もギーシュを止めようとしたりシエスタを助けようとはしない。 むしろニヤニヤとした笑みを浮かべ見物している物が多数を占めている。 それを見た時プロシュートが感じた不快感が何か理解した。 あの目だ…あの目と同じだった。 組織の他のチームの幹部連中が自分達暗殺チームを見る目。 利用するだけ利用し、得る物はボスからの不当ともいえる報酬のみ。 他のチームがそれぞれのシマを持ち利益を得ているというのに自分達にはそれがない。 その圧倒的とも言える他のチームとの待遇の差による自分達を見下した目……それと同じだった。 そう思った瞬間プロシュートは行動していた。 頭をかばうようにして縮こまるシエスタは圧倒的な恐怖から泣いていた。 少しだけ視線を上げ上を見る、ギーシュが杖を振り上げていたのを見て少しでも恐怖から遠ざかろうと目を閉じた。 だが、いくら時間が経っても自分が恐れていたものは襲ってこない。あるいはもう襲ってきてしまったのかと思いつつ恐る恐る目を開ける。 「ミス・ヴァリエールが召喚した使い魔君じゃないか…邪魔しないでくれたまえ!」 平民が貴族にあのような無礼を働いたんだ。貴族の使い魔の君がそれが分からないのかい?」 逆行で顔はよく見えなかったが男が振り上げられたギーシュの腕を掴んでいた。 「それとも、平民同士助け合おうってことかい?涙ぐましい友情だね」 「二股かけてたのがバレで無抵抗のヤツに八つ当たりか?マンモーニを通り越してゲス野郎だなオメーは」 ゲス野郎という言葉に完全プッツン来たようである。 「……いいだろう!まずは君から礼儀というものを教えてあげた方がいいようだねッ!」 「何がやりてぇのか言ってみなゲス野郎」 「まだ言うか…!『決闘』だッ!ヴェストリ広場で待っている!準備ができたら何時でも来たまえ!」 そういい残しギーシュが友人とギャラリーを引き連れ広場の方向へ向かっていった。 「あ、ありがとうございます…でも元々関係ない貴方に迷惑はかけられません…私が行って何とか事を沈めてきます…」 「ヤツが決闘したがってるのはオレだ、オメーじゃあねぇ。それに何の問題も無ねぇ」 「で、でも…このままじゃ貴方の命が…」 「ここで万が一オレが死ぬとしてもオレは常にそういう『覚悟』をしてきている」 そう言うと、プロシュートは自分が座っていた席に戻り最後の残ったワインを飲むと広場にと向かっていった。 ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/505.html
「女神の杵」―ラ・ロシェールにおいて貴族専用ともいえる宿である。 そこに手紙取り戻し隊の一行が宿泊する事になり ワルドとルイズが桟橋へ乗船の交渉を行っていたが困ったような顔をして戻ってきた。 「やれやれ…アルビオンにわたる船は明後日にならないと出ないそうだ」 「急ぎの任務なのに…」 「『兵は神速を尊ぶ』…オレの世界の兵法家の言葉だがどうして船が出ねーんだ?」 その疑問にワルドがプロシュートに向き直り答えた。 「明日の夜は月が重なるだろう?『スヴェル』の月夜だ。その朝アルビオンがラ・ロシェールに最も近付く」 「……アルビオンがラ・ロシェールに最も『近付く』だと?どういうこった?」 「アルビオンを知らないのかい?まぁ見れば一目で分かるさ」 そう言いながらワルドが鍵束を机の上に置く。 「キュルケとタバサが相部屋だ。そして、プロシュートは一人」 「あたしはダーリンと一緒でもいいわよ?」 「床以外で寝るのは久しいから邪魔されたくねぇんでな…」 組織を裏切ってから安眠などとはほとんど無縁だったが、プロシュートもやはり人の子、休息というものを体が欲しがっていた。 「僕とルイズは同室だ。婚約者だからな。当然だろう?」 ルイズがはっとして、ワルドを見る。 「そんな、ダメよ!まだ、わたしたち結婚してるわけじゃない!」 ワルドが苦笑しつつ首を振って、ルイズを見つめた。 「きみが思ってるような事はしないさ。大事な話がある、二人だけで話がしたい」 さすがに貴族を相手にするだけの宿のことはあり各人の部屋は立派なものだ。 グラスにワインを注ぎ二つの月を見ながらそれを飲み干す。 「ペッシ、メローネ、ギアッチョ、リゾット…まだ生きてるんだろうな オレが戻った時に全滅してやがったらただじゃあおかねーぜ?」 プロシュートがここに召喚されてからかなりの時間が経過している。 ボスの娘を奪おうとしてから僅か2日足らずでホルマジオとイルーゾォが敗北したのだ。 ましてや自分すら召喚されなければ死んでいた。他の仲間の安否が気になるのも無理は無い事だった。 その思いを振り切るようかのようにもう一杯ワインの飲み干しスーツを脱ぎベッドに潜り込むが、しばらくすると 「……くそ…気持ち悪りぃ…」 ボスを裏切ってブチャラティと戦うまでは追っ手を警戒し、ハルケギニアに召喚されてからは床の上 安眠とは程遠い生活を送っていた上に貴族用のベッドの感触に慣れていないためだ。 だが頭が睡眠を求めておりしばらく耐えているとアルコールが廻ってきたせいもあり強烈な睡魔が襲ってきた。 「難儀な生き物だな…暗殺者…っての…は……」 そう呟くと意識を闇に手放した。 別の部屋ではルイズとワルドが話をしている。 そうして一通り思い出話を終えた後ワルドが意外な事を語りだした。 「きみの使い魔の左手のルーン。あれはただのルーンなんかじゃあなく伝説の使い魔の印さ」 「…伝説の使い魔?」 今一理解できないといった具合にルイズが聞き返す。 「『ガンダールヴ』の印。始祖ブリミルが用いたもので 誰もが持てる使い魔じゃあない。つまりきみはそれだけの力を持っているんだ」 プロシュートは確かにメイジ達とは違う何か別の能力を持っている だけど、そうだったとしても信じられなかった。自分は魔法の使えないゼロのルイズ しかもあの使い魔を制御すらできていない。ギーシュを返り討ちにして殺したり姫様の左手を踏みつけたりその度に寿命が縮む思いをしているのだ。 とてもじゃないけど、ワルドが言うような力が自分にあるとは思えない。 「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」 そう思っていると唐突にワルドにプロポーズをされ思考が乱れうまく返事ができなくなる。 必死になって考えるが心の底に引っかかっていた言葉を思い出す。 『オメー自身の心が『成長』しなけりゃあまた『ゼロ』と言われるだけだッ』 あの時は魔法が失敗した事もあり半ば無視していたが、初めて使い魔…いや人に本気で怒られた。 家族や教師達から怒られた事はいくらでもある。でも、あんな風に怒られた事は一度も無かった。 「…まだ、わたし心が成長できてない」 ルイズが顔をワルドに向け真剣な顔でそう答えた。 フーケの時もそうだ。ゼロのルイズと呼ばれたくないがため無謀にゴーレムに魔法を使い危うく踏み潰されるところを助けられた。 プロシュートがいなければゴーレムを倒すどころか下手すれば全滅していたのだが『その覚悟があればゴーレムを倒せる』と言われた。 それでゴーレムを倒せたのだが一人では何もできないという事を痛感させられたのでもある。 「…分かった、取り消そう。今、返事をくれとは言わないよ。でも、この任務が終わったらきみはこれを受けてくれると思っている」 ベッドに向かい目を閉じたが幼い頃あんなに憧れていたワルドからの求婚に応えれなかったのか自分でも不思議だった。 その理由が分からなくなりその考えを打ち消すが次に浮かんできたのは自分の使い魔の事だった。 自分だけではなく姫様にすら本気で怒りをぶつけたあの使い魔の事を。 ただ叱るだけではなく、自分が成長する事を望んでいるかのように感じたのだ。 「カトレア姉様が健康で男だったらあんな風に叱ってくれたのかな…」 病弱ながら誰であろうと分け隔て無く接する優しい姉と誰であろうと臆す事なく真剣に怒り成長を望むプロシュートが被った気がした。 眠りに身をゆだねるがルイズは知らない。プロシュートが別の世界でも『兄貴』と呼ばれ慕われていた事を。 ―翌朝― ガバァ! 「…………たっく」 ベッドから跳ね起きるようにして目が覚めたプロシュートが辺りを見回すようにしてベッドから降りる。 「……こっちに来て以来だが…しょうこりもねぇ夢だ」 また、初日に見たあの夢を見たのだ。 不安を打ち消すかのように窓を開け、新しい空気を肺に入れると少しだけだが気が楽になった気がした。 着慣れたスーツを着るが昨日の崖滑りで少しだけ汚れが付いている場所を見付けた。 「さすがに一着だけじゃあな…似たようなヤツを作れれば問題ねぇんだが」 汚れは落とせる、だが傷はそうはいかない。ある意味自分の身が傷付くより厄介な問題だった。 実にイタリア人らしい思考を巡らせている時ドアがノックされた。 「…誰だ?」 「相変わらず用心深いね。ワルドだ、少し話があるんだがいいかい?」 「何の話だ?」 ドアを開け向かい合うワルドとプロシュート もし、二人とも貴族と認識されていればこの場を目撃した女性達から黄色い歓声が沸きあがるのはほぼ確実の光景である。 「きみは伝説の使い魔『ガンダールヴ』なんだろう?」 だが、その問いにプロシュートが瞬時に反応するッ 「テメー…その話誰から…いやどうして知った?この事はオスマンのジジイとコルベールとかいう禿しか知らねーはずだぜッ!?」 一瞬で空気が張り詰める。老化能力はともかく印に関しては自分ですら最近知ったのにこの男がそれを知ってるはずはないと思った。 「…フーケを尋問した時に君の印について知った。それで王立図書館で君の事を調べたら『ガンダールヴ』にたどり着いたというわけさ」 「あいつか…まぁ確かに見られてても不思議じゃあないが」 「それにルイズから聞いたが異世界から来たそうじゃあないか。 正直なとこ興味がある。そしてあの土くれを捕まえた腕を知りたいんだ。手合わせ願いたい」 「……いいだろう、互いの戦力を知るいい機会ってもんだからな」 実際、ここに来てメイジとの戦闘経験は乏しいと言ってもいい。 フーケの時はメイジというよりゴーレムを相手にしギーシュでは弱すぎて話にならない。 そういった意味で隊長級のメイジの実力を知っておく丁度いい機会だと思い了承した。 「中庭に練兵場がある。そこでやるとしよう」 練兵場でギャングと貴族が向かい合う。正直言って異質だ。 持ってきたデルフリンガーを抜くとワルドがそれを制止した。 「立ち合いにはそれなりの作法がある。介添え人がいなくてはね。呼んであるからそろそろ来るはずだ」 「来いっていうから来てみれば…一体何を?」 そこにルイズがやってくるがデルフリンガーを抜いたプロシュートを見ると気付いたように顔を硬直させた。 「彼の実力をちょっと試したくなったんだ」 その言葉にこれが決闘だという事を悟り慌ててプロシュートを見る。己の使い魔が決闘であれば容赦しないという事を知っているからだ。 目は鋭くなっていたが殺意は持っていない。だがそれでも止めようとした。 「やめなさい。これは命令よ?」 「手合わせだ、オメーが心配することでもない」 殺意は持っていないが目は本気だ。止められない事を悟り数歩下がった。 「では、介添え人も来た事だし始めるとしようか」 だが、それもまた別方向からの声に止められることになった。 「珍しくルイズが早起きしてるから尾けてきたけど…面白そうな事してるじゃない」 声の主の方向を見る。そこに剣を持ったキュルケと眠そうにして本を開いているタバサが居た。 「…なにしにきたのよ?」 「これを渡しに来たのよ。あの時勝ったのはあたしなんだから文句無いわよねヴァリエール」 そう言ってプロシュートに差し出した剣はデルフリンガーより刀身が二周り程小さいが真新しい剣だった。 その剣をプロシュートが見ているとデルフリンガーが口を開く。 「兄貴ィ…まさか俺の出番これだけ?」 「あっちの方が使い回しが良さそうだからな」 「なんたる差別!ああブルジョワジー!ブルジョワーヌ!!」 わけの分からない事をわめくデルフリンガーを後に改めてワルドに向き直る。 「手加減は無用の隙を生むからな…悪りーが本気で行くぜ」 「構わぬ。全力でこい」 その言葉と同時にプロシュートが飛ぶようにして距離を詰める。 片手で持った剣で切りかかるそれを杖で受け止められた。 だが受けられたと同時に足払いを繰り出す。ワルドがそれを後ろに飛ぶようにしてかわすと構えを整えた。 無論距離を取られる事を黙ってみているプロシュートではない飛ばれると同時にまた距離を詰める。 「遠距離型に距離を取られるのは厄介だからな…」 要は近距離パワー型と遠距離型スタンドとの戦いと思えばいい。 近距離型が攻撃の為に距離を詰めれば遠距離型が間合いを取ろうとする。 だがこの男は近距離戦闘にも精通している。そこが厄介だった。 ワルドが杖を突き出すがそれの手を己の手で弾き軌道を反らし一瞬だが体勢が崩れたところに蹴りをブチ込む。 「っ~~~がッ!…速いな動きも素人のものじゃあないし、今の蹴りにしても剣で斬るよりも短時間で攻撃できるものだ」 だがワルドもただでは済まない、蹴られた反動を利用してかなり距離を開けていた。 「しかし、それだけでは本物のメイジには勝てない」 その言葉を無視し距離を詰める。 ワルドが突きを繰り出す。だがさっきの突きと違い軽いが速度を重視したものだ。 (この突き…ダメージを与えるためのものじゃあねぇな) 常人には見えない程の突きだったが防御に徹すればS・フィンガースのラッシュを捌けるのだ。 まして印の効果で本体の能力が上がっているためこれは致命傷にならないはずだった。 「デル・イル・ソル・・・」 だがそこにワルドの呟きが聞こえこの突きが一定の動きを以って行われている事に気付く。 「魔法かッ!」 聞き慣れない言葉を聞き瞬時にそう判断し今度は逆にプロシュートが距離を取る。 どんな魔法か知れないがあの至近距離で魔法を受けるのはヤバイと感じた。 「ラ・ウインデ…」 距離を取った瞬間空気が爆ぜプロシュートに向かってきた。 『エア・ハンマー』― 殺傷能力は無いが膨大な空気の質量を相手にぶつける強力な魔法だ。 「このまま『エア・ハンマー』に吹き飛ばされる確率90% 残るは右に身をかわす確率5%、左に身をかわす確率5%」 いつの間にか本から目を離したタバサがそう解説していた。 「右か左へかわして直撃は避けても体勢を崩すのは確実。その隙にワルド子爵が追撃を仕掛けるのは当然」 キュルケの目に一瞬タバサがサングラスをかけているような気がしが多分幻覚だ。 しかしプロシュートは…… 地面に向け剣を思いっきりブッ刺したッ!! 「それでいい。それがBEST」 何かもうタバサが今にもコォォォォオオという呼吸を始めそうだが気にしない。 『エア・ハンマー』がプロシュートを襲うが一瞬早く剣を楔のように打ち込み立ち向かうかのように暴風と向き直る。 瞬間、プロシュートの体が暴風に包まれ吹っ飛ばされそうになるが地面に打ち込まれた剣を支えにしているためそれには至らない。 ビキィ ビシ ビシ だがそこにプロシュートの耳にギアッチョが氷をブチ割るかのような音が聞こえ―― バッギィーーz__ン 「何ィ!?」 甲高い金属音が鳴り響く。剣が折れた音だ。 空気の大半は後ろに流れていたため吹き飛ばされはしないが剣が地面に打ち込んだ先を消失させていた。 「……リゾットが作ったナイフの方が丈夫じゃあねーか」 「武器を折ったからには勝負あり…だ」 そう言いながらワルドが杖を向けてくる。 「確かに君は強い。動きも素人のそれじゃあない。 だがそれだけではメイジには勝てない。つまり君ではルイズを守れない」 折れた剣キュルケに返しているプロシュートを尻目にワルドとルイズが問答を繰り返しているがワルドに引っ張られるようにしてそこから去った。 スーツに付いた埃を払っていると今まで黙っていたデルフリンガーが口を開く。 「あっぶねー…俺下手したら折れてたんだよな… しっかしあいつ強いな。スクゥエアクラスかもしれねぇが…兄貴どうしてあの化物を使わなかったんだ?」 「手合わせで自分の能力をバラしたくねーからな。切り札は本番まで取っておくもんだぜ」 グレイトフル・デッドを使えば勝てただろうがあくまで手合わせだ。 能力を見せる必要も無いと思い本体のみの攻撃でカタを付けるつもりだった。 「それに、向こうも手の内を見せてねー感じがしたからな」 「そういうもんかね。まぁ次は俺を使ってくれよ兄k……」 そう言い終える前に鞘に戻し部屋に戻る。 だがその後ろで折れた剣を持ったキュルケがあの武器屋をどうしてくれようかと心の炎を燃やしていたのは知る由もない。 プロシュート兄貴 ― スーツ手に入れ隊結成(現在隊長のみ) ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2586.html
ある日の夜、キュルケはいつもの通りに髪の毛を整え、下着姿のようなラフな格好で隣の部屋へ向かった。 隣の部屋は内側から堅く施錠されているが、部屋の主は魔法による施錠が苦手なので魔法に対する抵抗力がない。 あっけなく、キュルケの『アンロック』で鍵は開かれてしまった。 「ヴァリエール…? 起・き・て・る・?」 「……」 部屋に入り込んだキュルケを無視しているのか、本当に寝ているのか、ルイズはベッドに寝たまま返事をしない。 ルイズに近づいたその時、ガタ、と別の音がして扉が開く。 「キュルケ!今日こそは僕と夜のアバンチュールを」 「フレイム」 キュルケは振り向かずに、使い魔のフレイムを呼んだ。フレイムはキュルケを追ってきた男子生徒の裾を引っ張って転ばせると、火を噴いた。 「あっづあ゛あああああああ~~~!!」 哀れ男子生徒は、丸見えになった尻を押さえながら慌てて逃げ出した。 「ンフフ♪」 フレイムは、舌なめずりをしてベッドに近づく主人を見ながら、器用に尻尾で扉を閉めていた。 ■■■ 「どーしろって言うのよ」 ルイズはベッドの角に座り込んで、満足そうな表情で眠るキュルケを見た。 いつの間にか部屋にキュルケが居て、いつの間にか自分に覆い被さり、妙に艶っぽい唇で『お願い…』とか言われて何が何だか解らなかった。 なんだコイツついに気が狂ったか、と思ったがそもそもの原因は自分の使い魔である『ハーミット・パープル』にあるのはわかりきっている。 とりあえず追い出そうとしたが、ルイズは両手を掴まれてベッドに押さえつけられてしまった。 これはやばい、と感じたルイズは思わず『ハーミット・パープル』を発動。 棘のついた茨と言うには、ちょっと太くて棘も柔らかい気がするそれは、人を傷つけない程度の刺激を与えるのか、とろけるような感覚(マッサージです)を感じるらしい。 優しいイソギンチャクに全身をくまなくマッサージされ、愉悦の声を上げたキュルケに、ルイズは冷や汗をかいた。 それだけならまだしも、ほんのちょっと、ほんの少し優越感を感じてしまった。 ルイズは「もしかしてこれが私の本心?」と考えて、ああ嫌だ嫌だと頭を振るばかり。 ハーミット・パープルは文字通りルイズと一心同体。使い魔が勝手にやったことだと言い逃れはできない。 ルイズは悩み疲れたのか、それとも考えることを止めたのか、寝ることにした。 満足そうに眠るキュルケの隣に倒れ込み、そのまま寝てしまった。 『…そんなんだから誤解されるんじゃねーの?』 デルフの呟きに返事はなかった。 ■■■ 「…………」 「…!」 翌朝、朝食を終えたところで廊下ですれ違ったミス・ロングビルに、熱っぽい視線を送られたルイズ。 冷や汗を流しつつ教室へと逃げ込んだが、さも当然とキュルケが隣に座り、更にその隣にタバサが座る。 タバサはルイズの近くに座ることで周囲の喧噪から離れようとしているのだが、事情を知らない第三者が見れば、キュルケを巡ってタバサとルイズが争っているようにも見えるし、タバサ→キュルケ→ルイズの三角関係にしか見えない。 ちらりと周囲を見ると、興味深そうに三人を見ていた他の生徒は目をそらしてしまう。 「はぁー…」 お手本のようなため息をついて、机に突っ伏した。 しばらくして、教室の扉がガラッと開き、ミスタ・ギトーが現れた。 生徒達が席に着くと、ギトーはわざとらしく咳払いをした。 「では授業を始める。知っての通り、私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ」 教室を見て、ギトーはつまらなそうにしている一人の生徒を見つけた。 「最強の系統は知っているかね? ミス・ツェルプストー」 「『虚無』じゃないんですか?」 「伝説の話をしているのではない。私は現実的な答えを聞いてるんだ」 キュルケはこの教室唯一の『火』のトライアングルであり、いろいろな意味で目立つ生徒だ、ギトーが挑発している野田すぐに解った。キュルケは不敵な笑みを浮かべて答える。 「「火』に決まっていますわ。すべてを燃やし尽くせるのは火と、じょ・う・ね・つ ですもの」 ちらりとルイズに流し目を送る、ルイズは気まずそうに目をそらした。 「ふむ。残念ながらそうではない。試しに、この私にきみの得意な『火』の魔法をぶつけてきたまえ」 杖を引き抜きつつ、ギトーがとんでもないことを言い出した。 キュルケが火のトライアングルだと知る生徒も、キュルケ自身もこの言葉にはぎょっとした、いくら何でも危険すぎるのだ。 「どうしたね? 君は確か、『火』系統が得意なのではなかったかな?」 「…火傷だけでは済みませんわよ」 他人を小馬鹿にするような、キュルケの笑みが消えた。ゆっくりと胸の谷間から杖を抜き、キュルケが。 「かまわんよ。本気でやりたまえ。有名なツェルプストー家の赤毛が飾りではないのならね」 キュルケの髪の毛がふわりと浮いた、怒髪天を突くということわざがハルキゲニアにあるか解らないが、キュルケが起こっているのは誰の目にも明らかだった。 杖を掲げて呪文を詠唱すると、小さな火の玉が現れ、更に詠唱を続けると直系メイルほどの火の玉となった。 生徒達が驚き、慌てて机の下に隠れたその時、火の玉がギトーに向かって放たれる。 ぼおおおっ、とうなりを上げて襲い来る火の玉を、風系統の魔法でいとも簡単に消し飛ばした。 その瞬間烈風が舞い上がり、火の玉の向こうにいたキュルケはたまらず吹き飛ばされた。 「あ」 尻餅をつくかと思われたその瞬間、キュルケの体がふわりと抱き留められた。 キュルケはきょとんとした顔で、タバサを見た。違う、とタバサが首を横に振る。 ルイズを見ると、やってしまった…と言わんばかりの表情でキュルケを見ている。 いくら何でも吹き飛ばされるのはなー、と思ったときにはもう遅い、ハーミット・パープルはクッションのようにキュルケを抱き留めていた。。 「……べ、べつにあんたなんかを助けようとしたわけじゃないんだからね!」 (ぽっ) 逆効果だった。 ■■■ ■■■ さて、その後ギトーに睨まれもしながら授業は進み、ギトーが風系統の真髄を見せようとしたその時、教室の扉がガラッと開かれた。 「あややや、ミスタ・ギトー。授業中ですが失礼しますぞ」 「ミスタ・コルベール?」 教室に入ってきたコルベールは、礼服と言うには飾りすぎた格好をしていた。 ロールした金髪のカツラや、レースや刺繍の飾りがついたローブは、儀式的なものであって礼服にしては飾りすぎている、普段使われる物ではない。 「おっほん。今日の授業はすべて中止であります!」 コルベールは重々しい調子で告げる、すると教室中から歓声があがった、その歓声を押さえるよう両手を振りつつ、コルベールが言葉を続ける。 「えー、皆さんにお知らせですぞ。恐れ多くも、先の陛下の忘れ形見。 我がトリステインがハルケギニアに誇る、可憐な一輪の花、アンリエッタ姫殿下が、本日ゲルマニアご訪問からのお帰りに、この魔法学院に行幸なされると、お使者からの通達がありました」 その言葉に、どよ…と教室に声が上がった。 「おほん! えー、皆さん、本日はトリステイン魔法学院にとって、始祖ブリミルの降臨祭に並ぶ、めでたい日であります。 よろしいですかな、粗相があってはなりません、急なことですが今から全力を挙げて歓迎式典の準備を行うのです。 授業は中止となりますが、今日は皆さんの授業の成果、貴族としての姿をお見せする大事な日となります!生徒諸君は正装し門に整列、姫殿下をお出迎えする栄誉に預かります!」 生徒たちは、緊張した面持ちで一斉に頷く。コルベールは重々しげに頷き、目を見張って怒鳴った。 「諸君らが立派な貴族にしたことを、殿下にお見せするこの機会! 御覚えがよろしくなるように、しっかりと杖を磨いておきなさい。よろしいですかな!」 「「「「はい!」」」」 生徒達は一斉に返事をした。 満足したコルベールは、勢いよく向きを変えて教室を出ようとしたが、カツラのサイズが合ってないのかそのまま滑り落ちてしまう。 「…よく磨いてる」 タバサの呟きが、静まった教室にはよく通った。 ぷっ、と笑いをこらえる音が教室中から聞こえてくる。 「くくく…」 意外にも一番ウケたのはギトーらしく、口元をひくつかせながら目をそらしている。 「ミスタ・ギトー!」 「い、いや失礼、生徒諸君。小さなミスもないよう気をつけること! ぷっ」 ■■■ それから間もなく準備は整い、魔法学院の正門にアンリエッタ姫殿下の一行が現れた。 整列した生徒達が一斉に杖を掲げ、その間を馬車、グリフォンに乗った魔法衛士隊、従騎士達が通り抜けていく。 「…あれがトリステインのお姫様ねえ。私の方がずっといい女だと思わない?ルイズ…って、ルイズは?」 後ろの列にいたキュルケは、近くに並ぶはずのルイズを探したが、どこにもルイズの姿はなかった。 「うぐぐぐ…この馬鹿触手!駄目ったら駄目よ!不敬だから!恐れ多いんだから!」 部屋に戻って着替えていたルイズは、半裸のままハーミット・パープルを踏みつけ、縛り、なんとかお仕置きをしようとしていた。 ルイズはトリステインの王女、アンリエッタの遊び相手を務めたことがある。幼かった王女の姿を思い出し…次に自分より大きな胸に育った数年前の姿を思い出して、今はもっと大きくなっているのかと思い、ハァとため息をついた。 すると、ハーミット・パープルが突然動きだした。 その動きは、ド○ゴン○エストに登場するスライムを2匹、ぐるぐる巻きにして捕まえるような形で、これはヤバイ!と感じたルイズは「大変な腹痛で整列できません!」と言い訳をしてお出迎えをサボり、使い魔にお仕置きをしていた。 しかし踏みつけたり、投げたり、乗馬鞭で叩いたりと思いつく限りのことをしても、全く効果がない。 「このっ!この…こいつ!」 使い魔とは一心同体、ハーミット・パープルはルイズの動きを読みひょいひょいと躱していく。その上物質をすり抜ける能力があるので、ダメージはゼロであった。 それを見たデルフリンガーは、カタカタと鍔を鳴らして言った。 『やめとけって、無駄だからよー』 「あんたは黙ってなさいバカ剣!」 怒り心頭のルイズにはとりつく島もない。 『俺を握ればコントロールできるのになー』 「知らないわよ! って、え?」 本当かしら?と疑問に思ったルイズだが、デルフリンガーの言うとおりにしてみると、左手のルーンが輝き、ハーミット・パープルの動きがルイズのコントロール下に入った。 「なるほど…武器を使えるのがガンダールヴのルーンだけど、私とハーミット・パープルはルーンを共有しているだけじゃなくて、ハーミット・パープル自身が武器扱いになるのね」 『そーいうこった。その代わりそいつの利点も一つ殺してることになるぜ』 「どういう事よ」 『俺は人間みたいに目で物を見ちゃいねー。そいつも同じだ。嬢ちゃんがそいつの力を全部操ろうとすると、二人分の体を一人の頭でこなすって事になんだ。 例えば突然後ろから殴られるとすんだろ、そいつが自動的に反撃したり、襲撃をあらかじめ教えてくれる。だけど嬢ちゃんが操っているうちはその力が鈍くなんだ』 「…それは。確かに便利だけど、勝手な動きをされちゃ困るときがあるの!それに、ずーっとデルフを握ってるのは大変よ、それじゃ教室にも入れないわ」 『そういうのは…まあ、小さな隠し武器でも持ってるしかないなあ』 「それじゃ暗殺者だと思われるわよ! あっ……それじゃ、もしかして私、一生貴族のパーティーにも出られないんじゃ…」 『あー、その、何だ。なんとかなるって。多分』 「…寝るわ」 ルイズは着替え途中のまま。拗ねたようにベッドに潜り込んだ。 「うう…姫様申し訳ありません…ルイズはもう姫様に近づけません。 お友達と呼んでくれた姫様だからこそ近づけません……」 「でも…私のことを覚えていて下さるなら、お話したかったわ…」 ■■■■ その夜。 「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」 ルイズの部屋に現れたアンリエッタ王女は、感極まった表情を浮かべて、この世の終わりのような顔をしたルイズを抱きしめた。 「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」 「姫殿下、いけません。こんな色魔のような触手の餌食にもといこんな下賤な場所へ、お越しになられるなんてホント……」 ルイズの苦労はまだまだ続くらしい。 ■■■■■■■■■■■■■■ 続かない。
https://w.atwiki.jp/zeromoon/pages/59.html
「MELTY BLOOD Act Cadenza」より白レン召喚 ゼロの白猫 01 ゼロの白猫 02 ゼロの白猫 03 ゼロの白猫 04 ゼロの白猫 05 ゼロの白猫 06 ゼロの白猫 07 ゼロの白猫 08
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/306.html
フーケが潜んでいるという場所に向かうべくロングビルが用意した馬車で移動している。 屋根無しの荷車のような馬車で、襲撃を受けた時の脱出を容易にする為だ。 ロングビルが御者を担っているが、手綱を握る彼女にキュルケが話しかける。 「ミス・ロングビル…手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」 「構いません。わたくしは、貴族の名を無くした者ですから」 「え?だって、あなたはオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」 「ええ、でも、オスマン氏は貴族や平民だという事にあまりこだわらないお方です」 「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」 キュルケは興味津々といったようすでロングビルに迫るが、ルイズがそれを止めに入った。 「よしなさいよ、昔の事を根掘り葉ほひ…って何すんのよ!」 言おうとした事を誰かに止められる。手の主はプロシュートだ。 モノ凄い目でルイズを見ているが数秒後気付いたかのように手を離した。 「…一体なんだったのよ」 「…条件反射ってやつだ」 原因はもちろん矛盾点などがあれば辺り構わずキレまくり周りの物に八つ当たりをかますギアッチョだ。 特にこんな場所でキレられでもしたらえらい事になるため思わず体が反応した。 「土くれって言うからには土系統ってわけか…厄介だな」 頭に「?」を浮かべるルイズを尻目に話を進める。 「ええ、あの巨大なゴーレムを操れるからにはトライアングルクラスは確実よ」 それもあったが、一番厄介なのが土系統という事だ。 有機物なら老化させる事も可能だが無機物で構成されたゴーレムを作られるとグレイトフル・デッドではどうにもならない。 ワルキューレの場合は破壊もできたが昨日見た大きさのゴーレムを相手にするとなると正直厳しいものがある。 (メローネのベイビィ・フェイスと同じタイプって事か イルーゾォやメローネなら楽なんだろうがオレじゃあ本体狙いになるな) 「ところで、一つ聞きたいんだけど」 「何だ?」 「…まさかとは思うけど、わたし達を巻き込んで老化させるとか考えてないでしょうね?」 初日の惨状を見ていたルイズがそう問うが 「状況によるな」 その瞬間空間に「!」という文字が見えたような気がした。 「嫌よ!絶対嫌!」 「お願いだからそれはだけは…!」 タバサを除いてほぼ全員必死だ。 ロングビルに至っては半分脅えている感がある。 「…持ってろ」 「なによこれ」 「老化防止薬みてーなもんだ」 何か物が入った袋を4個渡されるが、袋はしっかり封が施されており中身は見れなかった。 「ちょっとそれ私にもよこしなさいよ」 「全員分ちゃんとある…ってどこに入れてるのよ!」 「そりゃあ、貴方には無理な場所よ」 まぁ、つまり胸に仕舞ったわけで『ゼロ』vs『微熱』第四ラウンドが開催されそうになるが 「馬車内」 タバサが冷静に突っ込みそれを終結させ、馬車が森に入り 「馬車でははここまでのようですね…ここから先は徒歩で行きましょう」 馬車を降り徒歩でしばらく進んだところに開けた場所がありそこに小屋らしき廃屋があった。 「わたくしの聞いた情報だと、あの中にいるという話です」 ロングビルがその小屋を指差すが人の気配は全く無い。 あの中に居ないとしても唯一の手掛かりであるからには調べないわけにはいかない。 タバサがちょこんと正座をし杖を使い地面に絵を書き作戦を提案する。 1.偵察圏囮が小屋に近付き小屋の様子を調べる 2.中にフーケが居れば挑発し誘き出す 3.フーケがゴーレムを作ろうとして外に出たところに魔法の一点集中砲火を浴びせこれを撃破する だがそう説明し終えるより先にプロシュートが小屋に近付いていた。 「ちょ…何やってんのよ!」 「フーケが居る居ないにしても…こうした方が早いからなッ!グレイトフル・デッドッ!!」 その瞬間、プロシュートを中心とした1~2メイルの植物がボロボロと音をたてて崩れ始めたッ! その様子を見て一瞬にしてプロシュートから離れる女性陣だったが 自分達が老化していない事を確認するとため息を吐きながら小屋に近付いてきた。 「危ない事するわね…無関係の人とか居たらどうするのよ」 「たいした事ァねーだろォーッ!破壊の杖が使われたら甚大な被害が出る…それよりは軽く済むッ!!」 少し時間が経ってから小屋に入る事にしたがロングビルだけは周辺の偵察に行くと言い残し森に消えていった。 ドアを蹴破るようにして中に入ったが、マタギの炭焼き小屋のようで人の隠れるような場所など無い。 あるのは崩れた暖炉とテーブル、その上に無造作に置かれているボロボロの服、酒瓶、薪、その横にある大きめの箱―チェストだけだ。 フーケの残した痕跡が無いか探っているところにタバサがチェストの中から何か物を取り出し 「破壊の杖」 と杖らしき物を無造作に取り出していた。 「随分とあっけないわね…!」 キュルケがそう叫ぶがプロシュートは違った。 (あのジジイの言った通り…か。確かにこれはオレの世界のもんだな) パンツァーファウスト ―― 第二次世界大戦においてドイツ軍が開発した歩兵が使う携帯用対戦車擲弾で確かに杖にみえない事も無い。 連合軍主力戦車をも撃破する事が可能で携帯用兵器としては大戦中最大級の威力を誇りまさにナチス脅威の科学力である。 破壊の杖を手にそれを見るが、何故か使い方までもが理解できてくる。 妙な感覚があった。 「それにしても破壊の杖だけで肝心のフーケが居ないなんて…」 その刹那、外からルイズの悲鳴が飛び込んできた。 「きゃぁああああああ!」 それを聞くとキュルケとタバサをスタンドと自分で引っつかみ外に飛び出す。 ドグシャァア 飛び出した瞬間小屋の上半分が吹っ飛ばされ、そこに居た者は…… 「ゴーレム…!」 それと同時にタバサとキュルケがそれぞれの魔法で攻撃を仕掛けるがゴーレムは依然として健在でびくともしていない。 「無理よ…こんなの!」 「戦略的撤退」 キュルケとタバサが敵わないとみて一目散に逃げ出す。 が、ルイズはそれに加わっていない。どこか ゴーレムの背後に立っていた。ルーンを呟き杖をゴーレムに向け振りかざす! 爆発は起こったがゴーレムの巨大な質量からすれば微々たるものだ。 表層を僅かに欠けさせただけで損傷には至らない。 爆発を受けたゴーレムがルイズに気付きその巨体をルイズに向けるべく振り向く。 「オメーじゃあ無理だ、逃げなッ!」 「嫌よ!フーケを捕まえれば、もう誰もわたしを『ゼロのルイズ』なんて呼ばなくなるんだから!」 そう答え返すルイズの目はマジだった。 「それにあんた言ったじゃない!『成長しろ!』って『成長しなけりゃあゼロと言われるだけだ!』って…!」 そう言い放ち杖を握り締める。 「あいつを倒さないと『成長』できないのよわたしは!」 ゴーレムが足を持ち上げルイズを踏み潰そうとした。 ルイズは魔法を使うべくルーンを呟き杖を振るが、結果はさっきと同じだ。 爆発が起こるがゴーレムはびくともしない僅かに土が欠けるもゴーレムはその歩みを止めようともしない。 ルイズの視界に巨大な足が広がり目をつぶった。 だが覚悟していたものは訪れない。目を開けるとゴーレムが足先を砕けさせていた。 「…デカイ事はデカイが堅さはねーな」 破壊力B、魔法で動かされているとはいえ土を破壊する事など造作も無い。 足先を弾け飛ばしたゴーレムだったが土が再び集まり何事も無かったかのように再生した。 「なるほど…土だけの事はあるな」 ルイズを引っつかみゴーレムから一旦離れる。 そして、距離を取ったところでプロシュートがルイズの両肩を掴んだ。 ―殴られる プロシュートがキュルケやギーシュにした事を思い出し思わず目を閉じた。 コツン だが、襲ってきたものは額への軽い衝撃 目を開けるとプロシュートが額を合わせており思わず赤くなって離そうとする 「ちょ…なに!?」 「ルイズ ルイズ ルイズ ルイズよォ~~ 成長したいんなら『状況を把握しろ』…おまえの魔法じゃあ、あのゴーレムを破壊するのは無理だ。そうだろ?」 うぐ…とルイズが言葉に詰まる。 「だが、オメーのその『覚悟』がありゃあ、あのゴーレムを倒せる。ここが正念場だぜルイズ!」 「倒せるの…?あのゴーレムを」 「こっちじゃあ破壊の杖って言うんだったな、こいつを使え。使い方は教える。オメーがやるんだ」 一瞬迷ったようにしたが、目をプロシュートに合わせ―― 「…分かったわ」 「ダーリンとルイズは?」 「分からない」 シルフィードに乗ったタバサとキュルケが二人を探していると… 「あのバカ!一人でなにやってるのよ!」 キュルケがゴーレムから破壊の杖を両手で押さえ逃げるようにして走っているルイズを見つけた。 「近寄れない…!」 それを助けるべくルイズに近寄るがゴーレムが拳を振り上げ近づけないでいた。 ゴーレムが止まる。だが同時にルイズも止まりゴーレムに向き直った。 「なにやってるの!今のうちに逃げなさい!」 「これでいいのよ…!ゴーレムが足を止めてる今がいいんじゃあない!」 ルイズが教えられたとおりにそれを構え狙いを付け…引き金を引いた。 「んきゃぁああ」 反動で後ろに2~3回転するが、弾頭が放物線を絵描きながらゴーレムに吸い込まれるかのように飛んでいく。 弾頭はゴーレムの上半身にめり込むように着弾し―――爆発した! 自分がいつも失敗して起こしている爆発とは比べ物にならないぐらいの音と閃光。 目を閉じ光が去るのを確認してからゆっくりと目を開けるとそこにはゴーレムの下半身がそこにあった。 さすがに上半身を完膚なきまでに破壊されたのでは再生もできないようで膝を付きそのまま土に還っていった。 「スゴイ…まさに破壊の杖ね…」 「やるじゃない…破壊の杖を使いこなすなんて」 「奇跡」 ゴーレムが破壊されたのを確認した二人が地上に降りてきた。 「ところでダーリンはどこ?」 「プロシュートならさっきの小屋の所よ。最後の仕上げがあるとか言ってたけど」 「それじゃあ早く迎えにいかないと」 だが小屋があった広場には誰も居なかった。 「…まさかフーケに?」 「そういえばミス・ロングビルもいないわ…」 三人にまさかという考えが浮かぶが茂みの中からロングビルが現れた。 「ミス・ロングビル、無事だったのね! フーケがどこからあのゴーレムを操っていたのかしら」 キュルケがそう尋ねるがロングビルは顔を横に振った。 「破壊の杖はどうされたんですか?」 「ここよ」 そう、言うとルイズが抱き込むようにして抱えている破壊の杖を見せる。 「そう、それじゃあそれを渡してもらおうかしら」 その瞬間時が凍る。 「…どういう事ですか?」 「まだ分からない?さっきのゴーレムを操っていたのは私」 「え…じゃああなたが…土くれのフーケ!?」 「御名答、それにしてもさすが『破壊の杖』ね。私のゴーレムがバラバラじゃあない」 三人が戸惑いながらフーケに杖を向けるがそれよりも早くフーケが茂みの中から何かを引っ張りだしそれを盾にした。 (~~~~ッ!あのバカ!思いっきり無関係の人間巻き込んでるじゃないのよ!!) 弱りきった老人を盾にしたフーケが言い放つ。 「おっと。動かないで欲しいわね?この無力な平民を一緒に巻き込んでもいいっていうのなら話は別だけど」 杖こそ捨てはしないがさすがに人を盾にされてはどうしようもなくなっていた。 「どうして…!?」 「そうね…死ぬ前の手土産に教えてあげるわ この破壊の杖を奪ったのはいいんだけれど使い方が分からなかったのよ」 「使い方…?」 「ええ、振っても魔法をかけてもうんともすんともいわないんだから… そこで魔法学院の人間なら使い方を知ってると思ってここに連れてきたってわけ」 「わたし達の誰も知らなかったらどうするつもりだったの?」 「その時は全員ゴーレムで踏み潰して次の連中を連れてくるだけよ もっとも『ゼロ』って言われてた貴方が使い方を知ってるだなんて思ってもいなかったけど」 フーケが笑いながらそう言い放つ。 「話はここまでね。その杖を渡さないとこの可哀想な平民が死ぬ事になるわよ?」 三人が迷う、破壊の杖を渡せばどんな被害が出るか分からない。 だけど目の前の人間を見捨てるという事ができないのも事実。 迷いに迷い杖をフーケに向け投げようとした瞬間―― 「理由は…分かった」 その場に居る者以外の声がした。 「だ、誰!?」 フーケが辺りを見回すが誰も居ない。 この場で自分達以外の人間は自分が盾にしている今にも死に掛けている老人だけ――老人!? その瞬間老人がフーケの手を掴み ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ 「だが、もう何もできないさ…ただしお前がだ……『フーケ』」 ズキュン! 「うぁああああああああああ!」 その瞬間森の中に土くれと呼ばれた盗賊の叫び声が響き渡った フーケ ― 直触りを受け老化 二つ名 土くれ ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/281.html
第一話『召喚の世界』 第一話『召喚の世界』-2 第二話『甘ったれた世界』 第三話『格差の世界』 第四話『地獄の世界』 第五話『生きててよかったねマリコルヌ、の世界』 第六話「トリステインのばら」 第七話『ギーシュにキッス』 第八話『男の世界』 第九話『幸運の剣』 第十話『タバサVSリンゴォ』 第十一話『ルイズVSキュルケ』 第十二話『夢でもし会えたら』 第十三話『失われた世界』 第十四話『嘘と裏切りの月夜』 第十五話『土くれを撃て』 第十六話『LAST WORLD その①』 第十七話『LAST WORLD その②』
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/206.html
そして三度ルイズの部屋 「………マスター……バーボン」 「誰がマスターよ…」 医務室から2回も猛ダッシュかましたルイズを追って部屋に来たキュルケであったが 椅子に座り真っ白に燃え尽きているルイズを発見した……したのだが現在ヤケ酒を付き合わされる形となっている。 (まったく…ルイズを見にきたのはついでだったのにこれじゃあ本命のダーリンと話もできないじゃない) 彼女にとってギーシュとプロシュートの決闘は互いの命を賭けたものでありギーシュが死んだ事についてはあまり気にしてないらしい。 グビィ 「って瓶から直接飲むのはどうかと思うんだけど…」 どこぞの吸血鬼一歩手前の英国貴族を彷彿とさせる飲みっぷりにドン引く 「うるひゃぁ~~~い…もうほっろいてよぉ~~~」 スデに呂律が回っていない、どう見ても酔っ払いです、本当に(ry 「へっほうっていっへもへーひんがひほくをほろひてたられふむはけがらいらない」 (訳:決闘っていっても平民が貴族を殺してただで済むわけが無いじゃない) 「ふはいまのへきひんはひゅひんのへきひんなんらから ふろしゅーほがひーしゅをやったってほとはえんぶわらひのへひにんにあんのよひゅるへぇ~~」 (訳:使い魔の責任は主人の責任なんだから プロシュートがギーシュを殺ったって事は全部私の責任になんのよキュルケぇ~~) キュルケの目には何かもうルイズの頭の周辺に暗い|||線が見えている。 人これをバッド・トリップと言う 「あんふぁももっほほみなさいよ~ ほへともわらひのはけがほめないっていふのぉ~?」 (訳:あんたももっと飲みなさいよ~ それとも私の酒が飲めないっていうのぉ~?」 (マズイ…このままではルイズが潰れるより私が先に潰される!) 酒瓶片手に迫るルイズ。それを見て撤収しようと決意を決め機嫌を損ねないように優しく話しかける。 「ほ、ほら、明日はせっかくの虚無の日なんだからもう寝た方がいいわよ…ってルイズ?」 「…………zzz」 「やっと潰れたようね…」 自分の部屋に戻ろうと立ち上がるが、パンチドランカーの如く足元がおぼつかない。 「やば……!」 足をもつらせ床に向け倒れる。それだけならまだいい、問題は床にルイズが開けた酒瓶が転がっていることだったッ! キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー 「死亡」(脳挫傷) 二つ名―「微熱」 床に向け倒れながらそんな言葉が頭に浮かんだ。 ガッシィーz_ン だが、何かに腕を掴まれ頭と酒瓶2cmのところで止まり再起不能にはならなかった 「あら…ありがとダーリン♪」 「その呼び方は止めろ」 腕を掴んだ瞬間、勢い余って直触りをしそうになったのは内緒だ。 「助けてくれたお礼に貴方を私の部屋に招待したいんだけど?」 「……遠慮しておく、一服盛られるのは御免だからな」 「あら、失礼ね。…でも毒よりも凄い物があるわよ」 「……わらひのふはいまひかっへにあにあってんのよぉ~~~」 (訳:……私の使い魔に勝手に何やってんのよぉ~~~) ビクゥ! というような音が聞こえんばかりに声の方向に振り向く…がルイズは酒瓶片手に爆睡している。 「……寝言…ね」 これ以上粘ってルイズが起きては洒落にならないと考え部屋を後にする。 去り際にしっかりプロシュートへのアプローチを忘れていないあたり流石だ。 コルベールとオスマンの前にルイズが居る。 そこに、コルベールがプロシュート並みのプレッシャーを放ちながら質問をしてきた。 「質問です…貴方の使い魔が無罪か?有罪か?当ててみてください」 「ひ…一思いに有罪で…」 「NO!NO!NO!NO!NO!」 「む…無罪…?」 「NO!NO!NO!NO!NO!」 「れ、連帯責任ですかぁ~~?」 「YES!YES!YES!YES!『YES!』」 「もしかして『処刑』ですかぁーーッ!?」 そしてオスマンが顔を手で押さえながらダメ押しのように言い放つ 「YES!YES!YES!"OH MY GOD!"」 「嫌ぁぁぁぁぁあああ!」 ベッドから跳ね起き辺りを見回すが、コルベールとオスマンは居ない。 「また、嫌な夢……」 最近色んな事がありすぎて本気で死にそうだ。主に精神的な意味で。 昨日、キュルケが部屋に来た事は覚えてる…でもそこから先の記憶があまり無い 頭を捻って考えていると「くぅ」と音がした (お腹すいたー…) そう思いながらベッドから降り己の使い魔に着替えを手伝わせようとするが 「あれ…服着てる」 これもどういう事か考えているとまた「くぅ~」と音がしたのでとりあえず空腹を満たす事を優先させる事に決めた。 プロシュートを引きつれ食堂に向かうが何かが何時もと違っていた。 自分が通ると他の生徒達が悉く道を明け渡してくれる。そして目をこちらに向けようとしていない。 そりゃあ最初の頃所構わず爆発を起こしてた時はこんな事もあったけど、それはもう昔の事だ。 そして小さな声で聞こえる話声。何時もなら大体「ゼロのルイズ」であったが今日は違っていた。 「悪魔憑き」 そんな言葉がたくさん耳に入る。けれども少なくとも自分はそんな事知らない。 頭の上に「?」を浮かべながら食堂に入っていくとキュルケとタバサが先にいた。 キュルケの顔色が少し悪そうだったけど気にせず近くに座り例の如く始祖ブリミルと女王陛下にお祈りをしてから食事を始めた ――が、横で顔色悪そうにしてたキュルケは正直いって呆れている (私でも二日酔い気味なのに呂律が回らないぐらい飲んでたこいつがどうしてこうも平然としてられるのよ…) そんなキュルケの思いを無視し完食ペースで食べすすんでいく。 (うわー…あんな重そうな物よく食べれるわね…ってワインまで!? 昨日あれだけ飲んどいてまだ足りないっていうの?……恐ろしい娘ッ!…もーダメ、ギブ) 顔色をさらに悪くさせたキュルケが無言で席を立ち去るが、当のルイズは見ちゃいねーようで次々と食べ進んでいく。 しばらくして戻ってくると見事に完食を果たし満足そーにしているルイズを見てなんだか知らないけど『ムカついた』 『ムカついた』から少しシメておく事にする。というかシメる。 「ちゃんと味わっておきなさいよ。…なにしろそれが貴族として最後の食事になるかもしれないんだから」 ガシャン! 音のした方を見るとフォークを床に落としたルイズが小刻みに震えながらキリマンジャロ5万年前の雪解け水を飲んだかのよーに泣いていた。 (やりすぎたかしらね…) 一方こちら『悪魔憑き』ことプロシュート 食堂に入る前しっかりルイズから「メイジ殺したんだからご飯抜きに決まってんじゃないの!!」と言われた為暇そーにしてる。 例によって食堂入り口前に立っているが食堂に入ろうとする生徒は (何であそこに『悪魔憑き』が居るんだ…下手な事すれば年を奪われてギーシュみたいに殺される…ッ!) と思っており誰一人食堂に入れないでいた。 もっとも、『暗殺対象』『向こうから挑んできた』『目標が居るが場所が特定できず無関係の者も居る』等以外無駄な殺しはしないのであるが 彼らには知る由も無いのでこういう状況になっている。 そしてその『悪魔憑き』に遠慮なく向かっていくのはご存知ピラニ……シエスタだ! 「あ…昨日はその…助けて頂いてありがとう御座いました… でも、すいません…私なんかを助けるために大変な事になってしまって…」 心底申し訳なさそうに頭を下げるシエスタだったが 「オメーが気にする事でもねぇよ。何よりあいつらの目が気に入らなかったからな」 「目…ですか?」 「オレ達チームがボスに反逆した理由の一つがそれ…いやこいつはオメーには関係ねぇ事だったな」 「…?そういえばどうしてこんな所に立ってたんですか?」 「まぁ決闘が原因ってわけでもねぇが飯抜き食らっちまってな」 「そういう事でしたら…恩返しというわけではありませんが今度は是非いらしてください」 ギーシュの遺産(財布破棄済み)があるため断りそうになるが『恩には恩を、仇には仇を』というリゾットの流儀を思い出し―― 「世話になる」 その返事を受け真っ白な笑みをシエスタが返したが、その笑みがプロシュートにとってやけに眩しく感じられた。 (ナイスガッツ!) そして周りの生徒達もこの時ばかりは生まれて初めて平民に感謝していた。 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/416.html
「このギアッチョによォォ~ 容赦しねェだと?ええ?おい やってみろクソガキがッ!!」 とは言え、男―ギアッチョには最初からフルパワーで行く気はなかった。よってたかってピンク頭に野次を投げかけていたガキ共は、ギアッチョの凍てつかんばかりの殺気に恐れをなして蜘蛛の子を散らすように我先に逃げ出していたし、年齢から考えて教師であると思われるハゲ野郎は仲間を呼びに行ったのかもうこの場にいない。ちなみに当のピンク頭は彼の下で腰を抜かしている。 ―そのオレに恐れることなく立ち向かってくるガキ・・・どうやらこいつが筆頭格の強さを持っていると理解していいようだ―ギアッチョはそう考えた。こいつをブッ倒し、奴らの戦意を喪失させてからここを出る。なかなかいい作戦じゃあねえかおい。 「今ここでオレのジェントリー・ウィープスを全開にすればこの中庭を丸ごと凍らせるのはたやすい・・・しかし逃げ出したガキ共にそいつを見られると面倒なことになりそうだからなァァ~~」 「何をぶつぶつ言ってるのよ!くらいなさいッ!」 キュルケが言い放ちざま大型の火弾を打ち出すが、ギアッチョはそれを意にも解さずキュルケに向かって歩き出す―氷でシールドを作ることもせずに。その余裕ぶりにキュルケはカチンときたが、「いいわ、ナメているのならそのまま燃え尽きればいい」と思いなおした。2・・・1・・・着弾ッ!! バシュウゥウゥウッ!! 「なッ・・・!!」 しかし火弾はギアッチョに当たる寸前、大量の水をブッかけられたかのような音を立てて「消え去った」!! 「そんな 嘘でしょ・・・!?」 眼前の出来事を信じられないキュルケは2発、3発と火弾を放つ。しかしまぐれであれという彼女の 願いも虚しく、彼に撃ち出された火弾はその全てが直撃寸前に消滅するッ! ギアッチョは歩き続ける。氷のように冷たい眼でキュルケを見据えて。 「炎ってよォォ~~・・・」 ザッ・・・ザッ・・・ 「一般的には火が激しくなったものを言うんだが・・・」 ザッ・・・ザッ・・・ 「実際に火が激しいはずの単語には炎じゃなくて火が使われることが多い」 ザッ・・・ザッ・・・ 「噴火だとか火柱だとかよォー・・・ 」 ザッ・・・ザッ・・・ 「なんで噴炎って言わねぇーんだよォォオオォオーーーッ それって納得いくかァ~~おい?」 ザッ・・・!ザッ・・・! 「オレはぜーんぜん納得いかねえ・・・」 ザッ・・・!! 「な・・・何なの・・・こいつ・・・」 キュルケはもはや完全に敵に呑まれていた。ギアッチョがついに目の前までやってきたというのに―構えることすら出来なかった。そして。 バキャァアアッ!! 「なめてんのかァーーーーッこのオレをッ!!炎を使え炎を!チクショオーーームカつくんだよ! コケにしやがって!ボケがッ!!」 キュルケは宙を舞った。 「うぐっ・・・い・・・痛ッ・・・ フフ・・・だけどおかげで眼が覚めたわ 今よフレイムッ!!」 「ムッ!?」 どこからか現れた化け物が―実際にはギアッチョの眼に入っていなかっただけだが―彼に向かって火炎を吐き出す!しかしそれも彼に当たる直前にことごとく消え去ってゆく。「・・・まだ理解しねーのか?え?おい 隙を突こうが無駄なんだよッ・・・・・・」 そこまで言ったところでギアッチョは気付いた。今火を噴いた化け物の存在に。 「・・・なんだァ~?こいつがてめーのスタンドってわけか・・・?」 とは言ってみたが・・・どう見てもこれは「ビジョン」ではない。実体である。 ―いや・・・そういうスタンドがあってもおかしかねー・・・世の中にゃ無生物に命を与える スタンドもいるくれーだからな・・・―ギアッチョはそう思いなおすとキュルケに眼を戻し、 「こいつでブチ割れなッ!!」 直触りを発動しようとしたその時。 ドゴォッ!! 「うぐぉおぉッ!?」 上空からギアッチョに空気の塊のようなものが撃ちつけられた! 「タバサ!」 キュルケが日の落ちかけた空に向かって叫んでいる。 「ナメやがって・・・上かァーーッ!?」 ギアッチョが見上げた空には。 バサッ これまたどう見ても実体の― 「ドラゴン・・・?」 ―それに乗ってこっちを見下ろしている少女。そして何より彼女の後ろに二つの月が 「・・・なんだ・・・ありゃ・・・」 二つの、月が。 ―ここはトリステイン王国の― 「マジで・・・別世界だってェのか?」 流石のギアッチョも呆然とせざるを得なかった。 ルイズはじりじりとギアッチョに近づいていた。正直自分が何かの役に立つとは思えなかったが、因縁の相手のはずの自分を体を張って助けてくれたキュルケを見殺しになど出来なかったのだ。キュルケは「とっとと逃げなさいよゼロ!」と必死に眼で語っているが、そこは妙な意地を張らせたらトリステイン一のルイズである。聞き入れるわけがなかった。 一方ギアッチョは―静かに沸騰していた。 ここが花京院もビックリのファンタジー世界だとほとんど確定してしまった以上、とりあえずは武器を収めて情報の収集にかかるのが最善手だろう。しかしギアッチョに売られた喧嘩を見過ごす選択などあるはずがない。 「後のことは・・・てめーらをブッ倒してから考えるッ!!そっちが空中にいるってんならよォォ~~ ちょっとだけ本気をださせてもらうぜェェェー!!」 ギアッチョの足元が凄まじい速度で凍っていく。それはギアッチョの靴を覆い足首を覆い・・・ルイズは眼を疑ったが、どうやら氷のスーツを形成しようとしているらしい。 ―マズいッ!! 少女は遅まきながら確信した。何だかよく分からないがこいつの魔法はヤバい!この氷の発生速度、スーツを形成する精密さ、何よりそれが無詠唱で行われているということ!更にこの殺人をも厭わない覚悟!どこまで暴れるつもりか知らないが・・・死人は出る!絶対にッ!そしてそれを阻止するチャンスは今ッ、このスーツが完全に形成されるまでの間しかないことを! ルイズは反射的に動いていた。反射的に―だが決死の覚悟で、ギアッチョに飛び掛ったッ!完全にタバサに気を取られていたギアッチョは一瞬反応が遅れ、そして―ルイズの殆ど頭突きのようなキスをまともに「食らい」、頭からブッ倒れた! 「ガフッ!!てめー何をしやがったァァ~~!?毒か!?スタンド・・・いや魔法かッ!?」 ギアッチョとは逆方向にブッ倒れたルイズは、よろよろと立ち上がりながら告げた。 「・・・契約よ・・・!」 「・・・ああ?どういう事だッ!ナメやがって クソッ!・・・・・・ぐッ!!?」 ギアッチョの左手が光り始め、 「っづぁああぁああぁあああああッ!!!」 その甲にルーンが浮かび上がったッ! こいつを説得するなら今しかない!ルイズはギアッチョの前に仁王立ちになる。 「聞きなさい!あなたがどれだけ強いか知らないけどここには300のドラゴンを一人で倒した 偉大な学院長や太陽拳を使える先生がいるのよ!これ以上騒ぎを起こせば先生方は 黙ってないわ!万一囲いを破って逃げ出せたとしてもあなたみたいな危険人物は四六時中追っ手に追われ続けるわよ!悪魔の軍団を一人で倒せるような追っ手達にね!」 半分以上は今適当にでっちあげた話だったが、 「・・・」 ギアッチョには思いのほか効果があったようだった。ルイズは疑われる前に話を進める ことにする。 「ま、貴族を3人も殺そうとしたんだから今のままでもまず終身刑は免れないわね ちなみにあなたが入るのは水族館と呼ばれる脱獄不能の監獄よ!」 これもデタラメである。 「・・・で、てめーはオレにそれを聞かせてどうしようってんだ?え?おい」 食いついたっ!ルイズは心中でガッツポーズをした。 「話は最後まで聞きなさいよ あなたが罪を問われない方法が一つだけあるわ・・・ 私の使い魔になることよ!」 「・・・・・・一応聞いとくが・・・そのツカイマってのは何なんだ」 「主の剣となり盾となるものよ」 「・・・・・・」 一瞬の逡巡の後、ギアッチョは舌打ちをしながらもルイズに答えた。 「まぁいいだろう・・・この世界のことがわかるまではここにいるのも悪い選択じゃあねぇ」 実際は一度使い魔になってしまえば死ぬまで契約は執行されるのだが―今それを 言うとこいつはまたブチ切れるだろうと思ったのでルイズはとりあえず黙っておくことにした。 ←To Be Continued・・・ 前へ 戻る 次へ