約 2,512,987 件
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/16.html
「駄目ぇええ! ‥‥あ」 朝。彼女は跳ね起きた。 「あれ‥‥なん、で‥‥?」 別に悪夢を見たわけではない。だが、彼女は嫌な――それこそ、自分の半身を根こそぎ奪われた苦痛のような、深い嫌悪感に見まわれた。 「うっ‥‥! うぐっ‥‥」 それに気づくと、彼女の目からは涙が溢れんばかりに流れてくる。 当然、彼女は何故涙が出てくるのか分からない。しかし、それでも涙は溢れてくる。まるで涙を流すことが罪かのように。 横で寝ていた四人は先の声で既に起きていたが、いきなり泣き始めた彼女に声をかけることすら出来ずに、ジッと何もしないで待っていた。だが、しびれを切らしたのか。一人が思い切ってゆっくりと起き上がる。 虚空を見つめたままポロポロと涙を流す一人の少女は一人が起き上がったことに気付くと、急いで涙を拭い、「どうかしましたか?」と聞いた。 自分の涙に気付かれないように、出来るだけの最上の笑顔で。 四人は四人共、それがどことなく、無力たる自分を痛感させるような寂しさを感じられたが、四人は何も言わずに「何でもない」と返答した。 彼らは思う。 そうやって誤魔化すことが彼女に対して優しいことかもしれないが、そうじゃないかもしれない。 本当は何度も誠意を持って尋ねれば、詳しい事情を知ることができたかもしれないし、それによって何か彼女の心の支えになれるかもしれない。 ――そういった【選択】をすれば、何か事態は好転するのかもしれない。 しかし、そう思っても、何も知らない彼らには、何も関係ない彼らには所詮――彼女は赤の他人であり、その過去には何も関わっていない第三者なのだ。 そんな人間が、一体何を理解できるのだろうか。彼女の痛みすら知らないのに。同情し、抱きしめたら、彼女は救われるのだろうか。 否。そんなの自己満足に過ぎない、ただの偽善である。 だから今はこうして、誤魔化しながら進んでいくことしか、彼らには出来なかった。 そういった点では彼らも彼女と同じ愚者であり、卑怯者なのだろう。 それでも――彼らは彼女の味方である。 いつか本当に、この哀れなる少女に救いの手を差し伸べれるように。いつか彼女を闇の底からすくい上げれるように。 彼らはいつまでも彼女の助けの声を待つ。 ◇◇◇ ネパンプレスを発って一週間。彼女たち一行は、ヒューロ氷洞へと辿り着いた。 「ここに……彼が……」 彼女はヒューロ氷洞を見る。 自然な寒さとは違う、体の芯まで届く、嫌な――とても酷く、おぞましい冷気を彼女は感じた。 彼らもそう思ったのだろう。顔の表情も、一段と険しくなっていく。 「だから……! 通せって、言ってんでしょうがあぁあああ――――!!」 そこへ、洞窟の中から響き渡って聞こえる女の怒声。彼らはこの声に聞き覚えがあった。 先行したはずのリタの声だ。五人はすかさず、洞窟内へと入る。 ◇◇◇ 洞窟を入って少しの所にリタはいた。 「ですから、まず許可を……」 「えーい、うるさい、うるさい、うるさ――い! 人の命、いえ! 何よりも深く、それこそ、北海の底より深い! 二人の、愛!」 彼女の言葉は、言えば言うほど芝居がかっていき、混乱状態なんかじゃないのかと思うほどに、ドンドン熱を帯びていく。 「そう、尊き愛! 真実の愛! TRUE LOVEが! 今、あたしの行動にかかっているのっ! それがわからないあんた達なんかに、愛が邪魔だという無粋な奴なんかにはっ! 一切、合切! 用は、無い! さぁ、今すぐそこをどけぇえぇええ――――!!」 ドガッシャーンという音が洞窟内に響く。リタが何か(通常攻撃か、スキルなのか)したのだろう。それでも、見張りは退かない。 「り、リーダー! 一回落ち着いて! 一旦ここは退こう! な!?」 「そ、そうですよぉ~! きっとすぐ彼らが来ますから、それまで待ちましょうよぉ~!」 お供の二人は、今にもショックのグラフ十個まとめて使いそうなリタを、半ば泣きそうな感じで必死に止めていた。そんな二人をリタはキッ、と睨みつけ、叫んだ。何かに取り付かれたかのように、リタは力いっぱい、叫んだ。 「貴様ら、それでいいのか!? 本当にそれでいいのか! 彼らはただ依頼人というだけで! あの女性を救おうとしていたんだ! 「規則だから」のたった一言で、ハイそうですねとおめおめ引き下がるのか!?」 「リーダー……」 「リーダー……!」 リタの熱弁に、二人は段々と何か熱いモノが自分の胸にこみ上げてくるのを感じた。 「友との約束破って! あたしらの友を見捨てて! それでもお前ら! 明日食う飯がうまいかよぉっ!!」 「リーダー!」 「リーダー!!」 リタはあの不幸な二人の行動に感動しているのだろう。泣きそうで、それを堪えながら、叫ぶ。 そんなリタに、もうここが極寒の地だということを忘れているんじゃないか、というほどに熱くなっていく二人。無論、後ろの五人には気づいていない。 その五人は動かなかった。動けなかった。何故だかわからないが。動く気にもなれなかった。動くべき気もしたが、それでも彼らは動かなかった。 そして、そんな彼らを尻目に白熱していく三人は、いつの間にか円陣を組んでいた。 「あたしらのモットーは!?」 「「竜から逃げても友は見捨てず!」」 「なら今やるべきなのは!!」 「「人の恋路を邪魔する馬鹿を! 馬に代わって、地獄へ落とす!!」」 ギンッ! と三人は同時に目標である、“見張り”へと狙いを定めた。 「え?」 もう、彼らは――止まらない。 「玄人のハリス!」 ハリスはバッと帽子に手を当て、ポーズをとる。さながら、昔、絵本で読んだヒーローのように――。 「夢幻のエミリ!」 エミリはフワリとマントをなびかせ、ポーズをとる。さながら、昔、紙芝居で見たあの魔法使いのように――。 「疾風のリタ!」 リタは武器を見張りに向かってビシリと向け、ポーズをとる。さながら、昔、幾度も夢に出て、幾度も夢見た、英雄王のように――。 「我ら!」「三人の心を!」「今こそ、合わせ!!」 あの幼き日々から、冒険者に憧れ、今日まで辛く、険しい旅をしてきた三人は今、紛れもない、奇跡を起こす――! 「「「必・殺ッ! エグゾースト……! ファイナルッ! アタッ――――――クッ!!」」」 「な、何!? そんな、馬鹿なぁああああぁぁぁあああっ!?」 チュドーンという音が聞こえた。気がした。気がしただけだった。ついでに、何らかの閃光も見えた気がしたが、やはり、気がしただけだった。 「や、やりましたぁ~!」 「すげぇ……。人間、やればできるんだな……」 「ま、まぁ。あたし達にかかればこれ位、有って無いに等しい! さぁ、いつまでも呆けてないで、探しに行くわよ! いざ行かん! 二人の愛を守るため!」 「「Yes! リーダー!」」 しかし、見事リタ一行は見張りを倒し、そのハイテンションのまま洞窟の奥へと悠然と、そして雄々しき姿で駆けて行く。英雄王の愛馬『レムス』のように。 そして、何となく、あの場に入りづらかった五人と、必殺技(?)によって倒された見張りが、何ともやりきれない思いで残された。 十分後。気を取り直した彼らは、再び気合いを入れて、洞窟へと足を踏み入れた。 ◇◇◇ 洞窟内は、恐ろしいほどに静かであった。 聞いた話が本当なら、魔物で溢れているはずだ。しかし、そんな様子が一切見受けられず、よもすれば魔の巣窟だという事さえ忘れそうである。 洞窟内に生える禍々しいフロワロさえ、無ければの話だが。 無論、奥に進むと幾体かの小型魔物が行く手に現れた。その様子は、フロワロによる凶暴化の他にも何らかの要因が加わっているのだろうか。今まで見た魔物より、攻撃性いや、明確な“殺意”が増している感じだった。 四人は、戦いの後、ある考えが浮かんだ。別に話し合った訳ではない。だが、自然とそのことを考えてしまう。 ――もし、これが魔物ではなく、人間だとしたら。 彼らは止めることができるのか。ここまで殺意に目覚めた人間を。止めることは果たして可能なのか。 その答えは考えるより早く、経験が教えてくれた。 『不可能』。彼らは、それしか思いつかなかった。 どんな状況をもってしても、どんな要素を取り入れても、無理だと分かってしまう。最悪、逆にこちらが全滅させられることだってありうる。 一度それを考えると、悪い方向にしか考えがいかなくなる。 しかし。 「あの……どうか、しましたか?」 突然の彼女の言葉に、思考が中断され、そして気付いた。 ――そうだ。考えるより、まず行動しなくては。 この人を。過去に囚われ、時間が止まったままの少女を、一刻も早く彼に会わせるのだ。 それが何よりも大切で、何よりも優先させることなのだ。他の事は二の次だ。そう思い、彼らは四人とも、笑顔で大丈夫だと告げた。 彼女はそれを見て、そうですか。と笑顔で返した。それはおそらく、幼少のままの笑顔で。見れば誰もが安心しそうな、柔らかな笑顔だった。 その笑顔を見て、何となく――。何となくだが、やはりこの少女こそ、大切な要素(ファクター)になるのだと。彼らは確信した。 ◇◇◇ 洞窟奥深くに行くと、そこは地獄だった。 通常、竜と人が同じ空間にいれば、待っているのは竜と人との命をかけた戦いだ。 しかし、ここ――ヒューロ氷洞は違った。 なんてことはない。言葉にすれば、一言で済むようなこと。しかしそれ故に、普通の人にとってそこは、“危険”等と言う、生半可なものではなく、絶対的な“不可侵”の領域。 ――ここで行われているのは、ただの殺し合い。それ以外の、何物でもない。本当にただの“殺し合い”なのだ。 憤怒。強欲。傲慢。怒り。嫉妬。色欲。怠惰。暴食。 ありとあらゆる罪もそこに入るのもおこがましい。 ただただ人は人を殺し、獣を食らい、竜を貪り。 ただただ獣は人を食らい、獣を貪り、竜を殺し。 ただただ竜は人を貪り、獣を殺し、竜を食らう。 誰かが誰かを殺せば、すぐさま血に飢えた獣が肉を求めて食らいつく。 竜はその獣を殺して優越感に浸り、その竜を別な竜が食らいつく。 人はまるで本能かのように、竜に剣を刺し、その力を取り込もうとするかの如く貪りつくす。 そして、その人を竜は横から更に貪り、その竜を獣が貪る。 終わりなき殺しの連鎖。そこに悲しみは無い。痛みはない。怒りも、恐怖さえもない。 ただただ、“何か”が“何か”を殺して、“何か”が“何か”を殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、――殺す。 それだけ。それだけなのだ。 その修羅道に、地獄に彼女と彼らは足を踏み入れる。 瞬間、四方から人だか獣だか竜だか分からないモノが一斉に襲い掛かってきた。 四人は即座に反応し、その“何か”を叩き伏せる。 彼女がこれは何なのかと見れば、何てことはない。それはただの生き物である。 しかし、彼女はそう知った瞬間。同時に理解した。 それは人であり、獣であり、竜であることを。 人の体に竜の皮膚、獣の顔と、もはや何と言っていいのか分からない。 生き物と言っていいのかどうか分からないものになっていた。 彼女のその様子に、彼らの内、一人が説明する。 ――【ロスト】化。人としての“理性”を失い、行きつくその先に待つ。一種の、【進化】。元は人であるとされているが、よくは分かっていないらしい。 進化と言うには余りにもおぞましいその姿に、彼女は吐き気がこみ上げてくる。獣が死んだその姿はもう見慣れた。今では解体だってできる。 だが、“アレ”は違うのだ。もはや生き物として見なさない。いや、ダメなのだ。“アレ”を生き物として肯定してはいけないと、彼女の本能が告げている。 先の一人が静かに言葉を続けた。 ――これらはあってはいけない。あってはならない姿。しかし、ヒューロ氷洞では当然の帰結。だと。 彼女はその言葉にもう一度だけ、“アレ”を見た。 未だわずかに息があるのは、堅牢たる竜の皮膚のおかげだろうか。それとも人であるから彼らが手加減したのだろうか。 血のような紅い目で息絶え絶えにこちらを見ていた。 人でもなく、獣でもなく、竜でもない。生き物としての一切を否定するその姿。 彼女は思う。 これが……彼が、望む姿……?) 彼はヒューロ氷洞を知っていた。ならば、この事だって知っていいたはずなのだ。そう考えても正しい。 いやむしろそれは正解なのだろう。彼はこの事を知っていた。知らないでこんな山奥の村に来られるわけがない。彼らだって、一人を抜かして知らなかったのだから。 なればこそ、これが彼の望む最後なのだ。人としての姿を捨て、いつ死んだか分からないような死を、彼は望んでいたのだろう。(こんな……こんな姿に、彼もなる、の……? ダメ! そんなの、絶対ダメ! 助けなきゃ……! 私が――) そこまで考えて、彼女の脳裏にある光景が映った。 それは、昔の思い出の内、思い出とは呼べないもの。それは彼女の記憶であり、忘れてはいけない汚れであり――罪であった。 彼女は震えが止まらなかった。思い出したくない光景がありありと思い出してしまう。 (――嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ! 思い出したくない! 思い出したくない! こんなの……思い出したくない!) それでも、彼女は思い出してしまう。どんなに否定しても、それは現実に起こった過去であると告げるかのように。 ◆◆◆ 『助けて……誰か……助けて……』 それは彼女の声だった。それは記憶の声だった。それは彼と出会ってからの叫びだった。 誰も助けたくれなかった。誰も救ってくれなかった。誰も。誰も、だ。 だけど彼女は助かった。 同時に彼女は失った。 彼との日々を。彼との平穏を。彼との未来を。全部。その日に捨てた。捨てざるを得なかった。 捨てたくなかった。ずっと、ずっと彼といたかった。 でもいられなかった。いてはいけなかった。 だから、彼と再び会った日は死んでもいい位に嬉しかったが、決して自分だと気付かれない様にすると、心に誓った。 全ては、彼のため。 彼がいたから、彼女は生きてこれた。 彼が生きていたから、彼女は生きようと思った。 彼が幸せであるならば、と思ったから、彼女は自らを殺せた。 だから彼女は彼から逃げた。汚れないと誓ったのに、汚れてしまった自分が許せなかったから。 彼女は、誓う。 ――捨てたのに。全部全部捨てたのに。 ――何故彼を突き放さなかったのだろう。何故彼と親しくなってしまったのだろう。何故。何故。何故? ――捨てなければ。こんな自分を捨てなければ。 ――捨てなければ。彼のために全部捨てなければ。邪魔なものを全部、捨てなければ。 ――今まで培った倫理も。道徳も、正義も、仁義も、愛も。全部。全部、全部、全部捨てなければ。 ――何を恐れるのだろうか。私は一度捨てた。あの時に。全部捨てたんだ。 ――あの日。私が【殺人】でこの手を染めた、あの日に。 ――全部、捨てたんだ。 ――捨てるんだ。もう、自分なんか……いらないんだ。 ◆◆◆ 体の震えが止まると彼女は自然と、腰のナイフに手を伸ばす。そして、 「……こんなの」 “アレ”に力を込めて、刺した。そのまま引き抜き、もう一度、ナイフを刺した。 「こんなの……こんなの、こんなの!」 彼女は護身用のナイフで“アレ”を思い切り刺す。何度も。何度も何度も何度も何度も何度も。 その光景に、彼らは一瞬何が起きているのか分からなかった。 「こんなのに、こんなのにっ! 彼を奪われるものかっ! 私が彼を助ける! 私が彼を助けるんだ!」 “アレ”の皮が裂け、肉を潰し、骨が砕けても、彼女はやめない。この“アレ”は別に彼を殺したとかいうのではない。 しかし、何故か彼女はまるで百年来の敵とばかりに何度もナイフを振り下ろす。 まだ息があったために凝固していなかった“アレ”の血が、彼女の服を紅く染めていった。 「そうだ、助けるんだ……。今度こそ……! 今度こそ、彼を! 私が彼を! 絶対……! 助けるんだ――!」 何十度刺したのか分からなくなったところで、とうとう“アレ”は動かなくなった。 彼女の眼は血走り、息は荒く、よもや鬼かと間違えるほどの憤怒の表情。その表情は、ピクリとも動かなくなった“アレ”を見て、徐々に狂喜の笑顔へと変わっていく。 「あは、あはは、あははははははははははは!! 死んだ! 死んだ! 私が! 私が殺したんだ! また殺したんだ! 気持ちがいい! 気持ちがいい! あぁ……今すごく、すごくすごくすごく――気持ちがいい! あはははは! あははははははははははははははははははははははははは!!」 彼女の狂った叫びと笑い声が洞窟内に響く。彼らは突然の彼女の変貌に動きを止めていた。止めざるを得なかった。 彼女はふと、笑いを止め、焦点の合っていない瞳で彼らを見る。 「どうしたんですか? ……あぁ、そうですね。ふふふ、すいません。つい、足を止めてしまって。久しぶりなものですから、つい」 抑制の無い彼女の言葉に、洞窟に入る前の温かい感じは一切感じられない。むしろ、氷のような冷酷さが見て取れた。 彼女はやんわりと笑いながら、彼らへ近づいていく。しかし、その笑顔には今までの癒しの色はない。代わりに、無邪気な意識――悪意が感じられた。 「ふふふ、本当。簡単そうなのに、意外と難しいものなんですよね」 彼女が彼らの目の前まで来て、彼らは後悔した。自らの愚かさを嘆いた。 彼らは忘れていたのだ。ここがどんな場所か。 最初にするべきだったのは、彼を助けることではなく、洞窟に入ることではなく、彼女を洞窟の手前に残すべきだったのだ。 「さぁ、行きましょう? 彼がきっと待っていますから。私の助けを待っているんですから」 全てを捨てた彼女の目は、既に――血のように紅くなっていた。
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/34.html
「しかし……どこへ行ったらいいのでしょう? 逃げてここまで来たのに、ここから離れるといっても行く場所など……」 「わからないわよ!でも、このままここにいて見つかったら困るんでしょう!?」 男性が黙り込む。 「……分かりました」 数瞬の間を置いて、女性がはっきりと言った。 「行きましょう。当てが無くとも、二人一緒なら何とかなります。 ここでぐずついたばかりに万が一捕まったりしたら私は死んでも死に切れません」 真剣な女性の訴えを受け、二人はじっと見つめあう。 「……………。わかった、発とう」 少しして男性は頷いた。 「僕がお二人の荷物を取ってきます。お二人は裏庭の方から」 「私が連れて行くわ」 「ハンコツさん、ちょっと外れるんでお願いしますね」 そうと決まれば早い方がいい。 僕は控え室を飛び出し、二人の部屋へと急いだ。 二人分の荷物を引っさげて、僕は裏庭の方へ急ぐ。 正直従業員泥棒に間違えられやしないかと冷や冷やものだ。 裏の浴場に続く渡り廊下の入り口でバレッタさんたちが待っている。 「こう見ると泥棒みたいね」 「言わないでよ」 荷物を二人に渡す。 「じゃ、付いてきてください」 渡り廊下を歩きながら、僕は二人にこれからの事を説明した。 「宿の裏には、簡単ですけど畑とか鶏小屋とか……そういう自足スペースがあるんです。 そっちの方から森の中の、ドーマ火山方面に抜ける道に入れます」 「ドーマ火山に?」 「はい。色々考えたんですけど、ミロスに渡るならドーマ火山に行くのがいいと思うんです。 あそこは温泉宿であるこの宿にとってはとても大切なところだし、ジェン爺が管理してるんです。 だから人も入れますし、裏家業の人が待ち合わせに利用することもあります」 「そこへいけばあるいは……」 「ただし、ほんと人目に付かないところなんで騙される危険性はもっと高くなります」 「自分達がここに来ているのを知ってる人がいて、 連絡が取れないと実家に連絡することになっている、くらいは言った方が良いわね」 「なんとか……やってみます」 「頑張って。男は度胸!ですよ……あ」 廊下の先から誰かやってくるのを見つけ、思わず足を遅める。 洗濯物を抱えた給仕の女の子だ。 彼女は僕らを見つけると、不思議そうな顔をして立ち止まった。 「あれ?そっちの人はお客さん……よね。この先はスタッフオンリーじゃなかった?」 「あ、ええと……」 一瞬言いよどんで後ろを見る。 別に答えなくては通れないわけではないが、ここで不自然に思われると後々マズイ。 と、なんとかしなさいよ、とこちらを見るバレッタさんを見て僕は、彼女にバレたら殺されそうな口実を思いついた。 「ひそひそ……(彼女が張り切って料理を運ぼうとして、派手につまずいてすっ転んだ挙句 料理を頭からかぶせちゃったんだ。洗ってるのを見られるのは恥ずかしいって、裏の井戸へ洗濯に連れて行くんだよ)」 「ひそひそ……(ああ、なるほど……)」 よく考えればおかしいと気付くだろう。 しかし屋内にもかかわらずフードを被っている女性の容貌と、日ごろ伝わっている彼女の気性とで (それもどうかとは思う)僕の嘘は割と信憑性を持って届いたようだ。 「それならまあ仕方ないね」 「じゃ、そういうことで」 三人に行こう、と合図して歩き出す。 誤魔化せたことにほっと一安心した、そのときだった。 「……ちょっと!」 後ろから声がかかった。 「……何か?」 それには答えず、彼女は僕を通り過ぎてつかつかと三人に歩み寄る。 やばい、もうおかしなところに気付いたか? そう焦る僕の目線の先で、給仕の子はバレッタさんの目の前に立った。 「そのエプロンボロボロじゃない。ほら、これに換えなさい」 「え、え?」 あたふたするのを意にも介さず、傷だらけのエプロンが奪い取られた。 「こっちは補修に出すわ。接客業なんだから身なりにも気をつけないとダメよ」 「あ、はい」 バレッタさんが返事をすると、給仕の子はエプロンと洗濯物を抱えなおし去っていった。 「ふう、驚いた」 「そうね」 渡されたエプロンを着用しながら彼女が返事をする。 「ところで」 「はい?」 「あの子を騙すのに、なんか随分なこと言ってなかったかしら?私の勘違いかしら」 「……さ、また誰か来る前に行こう」 僕は絶対振り向かないよう心に念じながら歩き出した。 後ろから飛んでくる視線に耐えつつ、しばらくして裏の畑の端の、森の中へと続く細い道が見えてくる。 「ここを通って、森を抜けても真っ直ぐ道を行けばドーマ火山です」 「もう暗いし気をつけるのよ」 「はい。……本当に、ありがとうございます」 旅の装束を調え、二人は並んで僕達の前に立った。 「色々お世話になって、本当にありがとうございます」 「恩に着ます。なにかお礼が出来るといいのですが」 「気にしないでいいわよ」 「お客様の役に立つのは仕事ですから。今度は堂々と温泉に入っていってくださいね ……ああ、あとお礼はいいですけど今回の宿代は置いていってください」 「え、あ、はい」 「……あんた…………」 非難がましい目を向けられたがこればかりは仕方ない。この二人に代金の踏み倒しさせるわけには行かないし。 二人分の宿代を確かに受け取って、僕は二人に向き直った。 「じゃ、お気をつけて」 「はい。ありがとうございました」 「また次の機会に」 そう言って、二人は森の中を西へと歩いていった。 ―――――――――――――――――――― 「さて、気付いたら夕ご飯食べ損ねたね」 「げっ」 「仕方ない、たまにはこんなこともあるさ」 「えぇー……?」 休憩時間はすでに終わり、夜の仕事が始まろうとしていた。 夕飯が食べれなかったのを笑って流そうとすると彼女が恨みがましい目を向けてくる。 「食事抜きであんた平気なの?」 「アイゼンの使用人たるもの、一食や二食食べなくたって」 「理解できない……」 彼女がげっそりと呟いた。 たははと言うしかない僕の視界で、向こうからニコレットさんがやってくる。 「いたいた、どこ行ってたの?クタベさんから、二人は宴席の設置に入るようにって」 「よっし、大仕事!」 「しかもよりによってこんなときに大仕事だし……あんたは嬉しそうだし……」 「だって、何か大変な仕事を任されると頼りにされてる気にならない?」 「うーん……前線で初めて斥候に任命された感じかしらね?それなら私にも分かるけど」 そっちが僕には分かりませんが。 「ともかく掃除からだよね。時間も無いし速攻で片付けないと! 桶に水汲んでくるからホウキとってきてくれる?」 「はいはい了解」 仕方ない、というように肩をすくめて彼女は苦笑いした。 よし!両手を打ち合わせて気合いを入れる。 僕達は、完全に気分を入れ替え張り切って大仕事を片付けにかかった。 ニコレットさんが言い忘れたように口を開いたのは、そのときだった。 「……あ、それと」 「?」 出鼻を挫かれてよろめく僕に、首をかしげながらニコレットさんは言う。 「申し訳ないんだけど、それが終わったら122号室の片付けに行ってくれる? そこのお客さんが急用とかでいきなりチェックアウトしちゃって」 「はぁ……。……、ちょっと待って、それってどんな人でした?」 「え……、髭生やした中年のお侍さんだったけど?」 「「……………!!」」 僕達は息を呑んだ。 「何かあったのかって聞いたけど、待ち人が出たとか言うばかりでよく分からなかったのよね。 と……まあそういうわけでよろしくね」 立ち去るニコレットさんの背中を見ながら、僕達はただ立ち尽くす。 どうする?どうする?どうする? どうするもこうするも、ない。 「……あの二人を追いかけよう」 「え……」 彼女が僕の顔を見る。 「……仕事はいいの?あんた」 僕は振り返った。 まったく手のつけられていない広間が、僕の目の前に広がっている。 そして僕は視線を戻した。 はっきりと言う。 「仕事より大切なことなんて、いくらでもあるさ」 「……」 ゆっくりと、彼女の顔に明るい表情が広がった。 「そうよね!」 すぐさま僕達は走った。 前方を歩くニコレットさんを追い抜きざま、後の事を頼む。 「すいません急用です!仕事は誰か他の人に」 「!?ちょ、ちょっと!?」 「ごめんね!!」 いきなり追い抜かれると同時に無茶を言われ慌てるニコレットさんを後ろに、 僕達は宿を飛び出し、裏庭を抜け、細い道の通る森の中へと飛び込んだ。 明かりの差さない真っ暗な森の中、何度も足をとられそうになりながら走る。 「遅い!もっと早く走れないの!?」 「無、理っ、これ以上だと、途中で息がっ」 それにしても彼女は速い。 僕だって連日の激務でそれなりに体力に自身はあったのに、彼女はそれ以上のスピードで息を切らさないんだから。 「ネバンでうけた訓練じゃこのくらい普通だったわ!とにかくもっと早く!!」 急かされ急かされ必死で走るが、なかなか二人の姿は見えてこない。 まだか!?まだそんなに遠くには行ってないはずなのに…… 次第に木立は薄くなり、道は広がって前方の景色が森から草原へと変わっていく。 木々のトンネルが途切れ、ついに僕達は森を抜けて月明かりの下へと飛び出した。 ……いた! 森を抜けてすぐ、向こうにあの二人の姿が見えた。 と、そこに見える姿が二人だけでないことに気付いて、僕は急ブレーキをかける。 「……ストップ!」 「なに!?どうしたのよ?」 「……遅かった!捕まってる!」 「く……」 「旦那様が心配しておられます。おとなしくお家に帰ってください」 「……………」 「今なら何も無かったことにしよう、との事でした。さあ」 「嫌です!!彼と結ばれないのなら、絶対に帰りません!」 「……穏便に事が運ぶなら、今までの働きに免じてその使用人にも害を加えぬようとの仰せです」 「……………!!」 二人を取り囲んでいるのは見知らぬ三人の男達だった。 そのいでたちや雰囲気から、なんとなく用心棒ではないかと思わせる。 「ちっ……」 「待って!」 今にも飛び出していこうとする彼女を押し留める。 「何よ!?」 「まずいんだ!今ここで飛び出していけば、よしんばあの二人を逃がせたとしても ニギリオの従業員が邪魔をしたことが分かって後々僕達がまずい!」 「そんな、悪いのは連れ戻そうとしてる方でしょ!?」 「アイゼンでもそれが通ってたら、駆け落ちなんて最初っから無いよ……!」 「……!!」 彼女が真剣な目で僕を見る。 言いたいことなんて分かっていた。 それじゃあここで何もせずに傍観しているっていうのか。 そんなことするものか! だけど、何か方法は…… 「……バレッタさん」 焦燥に駆られた様子で向こうのいきさつを見守っている彼女を呼ぶ。 「何?」 「……やっちゃって」 「……いいの?」 彼女が僕の顔をを窺うように覗き込む。 僕は大きく頷いて見せた。 「いいの。その代わり、速攻でのしてね」 「オッケー……!」 ゴーサインを受けて彼女が立ち上がった。 闘志に爛々と目を輝かせている彼女は不敵な笑いを浮かべ、僕を見下ろして言う。 「よーく見てなさい、コレル……」 「っ……?」 「私の本気を見せてあげる……この前のチンピラがマグレだったってことを教えてあげるわ……!!」 言うが早いか、彼女は一気に飛び出して僕の視界から消えた。 「―――っ……」 「!?」 二人を取り囲んでいた三人の男のうちの一人。 その目の前に、突然彼女は現われた。 「……やっ!!」 「っぐっ……………!」 ―――――速い!! 男が何か反応しようとしたときには、彼女の左膝が男のみぞおちにめり込んでいた。 さらに追撃の右膝が肩を穿ち、男の左半身を強引にこじ開ける。 そしてそのまま、彼女は空中で一回転しつつがら空きになった左サイドへ渾身の後ろ回し蹴りを叩き込んだ。 人一人を昏倒させるのに十分すぎる威力を待った蹴りを受け男が吹き飛ばされる。 一息に三段の蹴りを放ってようやく着地した彼女が、次の獲物に狙いを定めた。 「っ……!!」 彼女と目が合ったもう一人が反射的に鞘に収められた刀を構えようとする。 それと同時に、彼女が跳んだ。 「……しっ!」 「うぉっ!」 男が体重を乗せて前に出された左足をとっさに鞘で受け止める。 脇に流されて勢いが殺がれ、彼女は男の目の前に着地した。 「……このぉっ!!」 この好機に、男が鞘に納められたままの刀を鋭く振り下ろす。 ……その先端が地面を打ったとき、彼女はそこにいなかった。 空中で、ひらり。 真上に跳んだ彼女が一回転してその頭を強烈に踏み抜いた。 「ぐっ」 顔から崩れ落ちる男を見ながら僕は感嘆する。 強い! 確かにこれなら、この前追い詰められた詐欺師に捕まったことなどまぐれとしか言いようが無いだろう。 この前のはただ刃物をもっただけの無法者だったが、今回は本物の用心棒なのだ。 それを奇襲とはいえろくな反撃もさせないなんて……? 感心してばかりもいられなかった。僕も飛び出し、二人と残った用心棒の間に割って入る。 「下がって!」 「……あなた達!?」 「二人とも下がってください!……最近この辺に出ると噂の夜盗です!!」 「!?」 思いもしないことを言われて二人が驚いた顔をした。いいから合わせて! 驚くのは二人だけじゃない。 残った用心棒の男もまた、思わぬことを言われて虚を突かれる。 男は戸惑い、そして自らの身分を証明しようとうろたえた。バレッタさん――! 「馬鹿なことを言うな!我々は――」 「……ちょやっ!!」 「がっ!?」 間に合った。 言わせる前に、二人目を倒したところから接近するまでをそのまま助走距離にした飛び蹴りが頭を打ち抜く。 自分達の正体を証明しようとした寸前で気絶させられた男が草原に倒れこむ。 三人が三人とも気絶したことを確かめた上で、彼女が戦闘態勢を解いた。 「……というわけで、僕達はお客さんが襲われてるのを見て 夜盗に襲われていると勘違いしてそのままのしてしまった、ということでよろしく」 「オッケー。だけど、それで誤魔化せる?」 「ウチの敷地内でお客さんを襲ったのは事実だし、つっぱねられるよ」 「そ。ならいいわ」 「……あの……」 呆気にとられていた女性がおずおずと声を掛けてくる。 僕達はほっとして二人の下へと駆け寄った。 「ああ、無事でよかったわ」 「追っ手かもしれない人がいきなりチェックアウトしたって聞いて。心配で追いかけてきたんです」 「あ……ありがとうございます……」 「……助かりました。私ではとても太刀打ちできなかったでしょう……お恥ずかしいです」 「気にしない、バレッタさんがおかしいだけですから」 言い終わるや否や上体をのけぞらせてハイキックを避ける。 「ちっ。……そういや追っ手はあのヒゲ侍かと思ったんだけどね。どっちにせよ間に合ったからいいけど」 「この三人にはここに来たとたん囲まれて、他の人は見ていません」 「うん。さてコレル、ここでまたさよなら気をつけてってのもなんかアレだし、 どうせだからドーマ火山まで送っていかない?仕事を残してきたのが気になるのは分かるけど」 「う……どうしよっかな……」 ここで断るとなんだか僕が悪い人になるような気がする。 横目で盗み見た女性の表情にはとても嫌とはいえない期待がこもっていた。 「あの、私……お二人にも来て頂けるととても心強いです。お話もしてみたいですし……」 いや、まあいいんだけどね。 結局のところここまで来て断れるほど薄情でもないし。 僕が同意すると、そこで女性ははっと気付いたように男性を見た。 「あ!?え、えと、違いますよ、あなたが頼りないとかそういうわけじゃ全然なくて、あの」 「はは……分かってます」 「本当に?あの、あなたがそうしたいならやっぱり二人でも」 「本当に。私もお話したいと思ってたんです」 「……良かった!」 ううむ……普通ならそう言われても気に病ませないための口実なんじゃないかと 疑ってしまいそうなところだが、さすがお嬢様、純真さが違う。 それとも信頼かな? 僕がそんな感想を抱いていると青年がこっそりと僕に話しかけてきた。 「しかし、本当にすみません。急に駆けつけて頂いたという事は、お仕事を中断してまで我等を案じてくれたということでしょう」 「え、いや、気にしないでいただいても」 「いえ。私も先日まで使用人でしたから、仕事をほっぽり出すことがどれほど心残りになるか分かっているつもりです」 そういえばそうだった。 となると僕も、よその使用人の話を聞いてみたくなったりもするというものだ。 「やっぱり上級貴族の家でも、使用人の仕事は同じなんですか?掃除とか雑用とか」 「そうですね……基本的にはそうです。 しかし主人が上級貴族となると、従者にもそれなりの品格が要求されますから……」 「そういうのを教わったり?」 「ええ、働かせるための使用人に教育を受けさせるんだから不思議な話ですよね」 「いいなー、エリートなんだ」 「そんな……」 「でも、おかげで彼とは小さい頃から一緒にいられたんです。ううん、小さい頃から一緒だったから 好きになったのかしら……色々ありましたよね」 「お稽古が退屈で上の空だったのをかばって一緒に立たされたり、 私がとめるのも聞かず竹林をどんどん冒険していって帰れなくなったり、 あの頃は振り回されっぱなしだった気もしますが」 「う……ひどいです」 「でも、あのお転婆だったあなたがこうして立派な淑女に変化を遂げたと思うと感慨深いですね」 「そうですね……思えばきっかけは野良犬にいじめられていたときに あなたに助けてもらったことかもしれませんね。ありがちな話ですけど」 「そう……ですか?」 「ええ」 「いいな、幼馴染でもあるから分かる話ですよね。 僕にもいないではないですけど男だし性格があれだしなあ……手紙の返事も返ってこないし」 「腐れ縁、というのも後からすればいいものかもしれませんよ?」 「ですかね」 そういうものかもしれない。 しかし、納得していくらか気分を明るくする僕とは裏腹に、青年の方は暗い面持ちになってうなだれた。 「しかし……そう思うにつけても旦那様達を裏切ったのは申し訳ないです。 身よりもない私に教育を受けさせ、彼女の傍に置いてくださるほど信頼して頂いたのに」 「……いつか、分かってもらえます。 今は父も、冷静ではいられなくてなにがなんでもという気持ちでしょうけど 何年かして、孫の顔でも見せに帰ったらきっと許してもらえますよ」 「……………」 少しして、青年の顔に薄っすらとながらも笑みが浮かぶ。 「……そうだといいですね」 「はい」 僕は知っている。 人間とルシェの間に子供が出来る確立は、ほとんどないと言えるくらいに小さい。 それでも僕は、どうかこの二人に子が授かるようにと願わざるを得なかった。 顔を見合わせて笑う二人にこっちのテンションもにわかに上がってきた。疲れたのかもしれない。 「さて、そのためにもうまくミロスに渡らないと。行きましょう、二人とも」 「そうでした、ここでのんびりと話をしてる場合じゃなかっですね」 「本当に。つい私ったら……」 「問題ないですよ。さ、バレッタさんも……どうしたの?」 そういえば彼女は一切話に加わっていなかったことに気付き、向こうを見ている彼女に目を移す。 最初話に置いてけぼりにされたせいで拗ねているのかと思った僕は、 彼女のぴんと尖って震えている耳と真剣な表情からそれが間違っていることを悟った。 「バレッタさん」 「問題なく……ないわ。もっと早く気付くべきだったんだけど」 「!!」 向こうの方から、お互いに声を掛け合いながら何者かが近付いて来るのが聞こえてくる。 あっちだ。いたぞ。そっち側へ。……何者かなど考えるまでもない。 気付けば僕達は、七人ほどの下級武士風の男達に囲まれていた。 「おい、大丈夫か?」 「うぅっ……」 男達がさっきのした三人を起こしている。 「これは……さすがにわがままが過ぎますぞ!」 「どうする……?」 「やむを得まい」 「お嬢様、最後の警告です!今大人しくここで帰ってください! でなければ力ずくで連れ帰らざるを得ません!」 女性がびくりと震えた。 僕は視線を逸らさないようにしながらバレッタさんにそっと耳打ちする。 「バレッタさん……これ……何とかできる?」 「無理よ。さっきは奇襲でしかも数が少なかったのよ?まああんたが戦ってくれりゃ逃げるくらいは……」 「ごめん僕無理」 「はあ!?この前のチンピラ相手に立ち回ったのはなんだったのよ!?」 「あれは刃物をもってるだけのたいして一般人と変わらない人だったから僕にも何とかなったのであって…… さすがに稽古もしてない護身術で本職の人を相手にするとかとてもとても」 「ちっ……それでも。降伏したりするわけにはいかないのよ。……やってくれるでしょ」 それは彼女の、僕に対する信頼に賭けようとしているように思えた。 「……………分かってる。義理と意地にかけて、逃げ出したりなんかするもんか」 「よし、それでこそルシェよ」 青年もまた腹を括った表情で僕の横に出た。 「私も争います。例え叶わないとしても、彼女を諦めたりはできません」 「オッケー。男を見せてちょうだいね」 彼ははっきりと頷いた。 そんな彼の後ろで、彼が手に入れようとする女性はただ一人思いつめた顔でいる。 「あ……私っ……」 「待って」 女性が何か言おうとするのを彼女が遮った。 「あなたのために大の大人が三人、しかもその内一人はあなたの恋人が身体を張ろうってのよ。 それをあなたが『心配だからやめて』なんてありえないわ。 ……あるとしたら私達を信じるか、もしくは自分も戦うかよ」 「!」 うつむき、きつく目を瞑りながら女性は手を握り締めた。 そして顔を上げ、彼女はきっぱりと言う。 「分かりました。最後まで逃げましょう」 「よし……!」 僕達の抵抗の意を知った男達は目配せしあう。 「いいのか?」 「仕方あるまい……」 男達がじりじりと間合いを詰めてくる。 それに合わせて僕達は強行突破を図るべくぐっと身構え…… 場にそぐわない気楽な声が聞こえてきたのはそのときだった。 「ちょーっと待った!!……おうおう、また剣呑な事になってんな」 「!?」 一斉に視線が向けられたそこにいたのは、あのお侍さんだった。 「あいつ……!?」 彼女が思わず声を漏らす。 彼はぐるりと辺りを見回して僕達の連れている二人をその視界に収めるとにかりと笑った。 「おう、久しぶりだな!」 「「!?」」 知り合い!? 思わず僕とバレッタさんは二人のほうに顔を向ける。 そして二人が返した反応は、 ?? 二人して思いっ切り首を傾げるというものだった。 「おいおいそりゃねーよ」 「え?あの?だって……」 「忘れちまったのか?お前さんが小さい頃はよく遊んでやったろうが。 お前の親父の兄貴だよ」 「え……伯父様!?え、だって、私の知ってる伯父様はその、身なりもちゃんとしてて、清潔で、 それにお家のために昔数々の功績をあげた立派な方だと……」 「今はみすぼらしくて汚くてそのへんのオッサンにしか見えないってか」 「あ、いや……!」 「まあいいよ。坊主も坊主だぜ、俺様のことはすっかり忘れちまったのか?」 「……今思い出しました、本当に申し訳ありません」 「あーあーいいっていいって、落ちぶれたのは本当だからな。 さて……どうでもいい話はこの辺にしてだな」 なんだか話についていけないが、要はお侍さんは二人の知り合いだったらしい。 お侍さんは腕を組み、周りの男達に向けてしゃべりだした。 「俺様もな、昔はそりゃあ実家のためにいろいろ働いたんだよ。 そいつが言った立派だった頃ってのはその頃だ……まあ頭も悪かったし専ら武勲を上げてたんだが。 弟はそっちの方はからっきしだったしその分もと思ってそれなりに貢献はしたつもりだ。 で、その頃の心の癒しがこいつら二人だったわけだなぁ……むさい男の心に爽やかな風をくれたわけだ。 その二人が大人になって結婚するって聞いたときは、そりゃ我がことのように喜んだよ。 けど頭の固い俺様の弟がな……まあ俺様が社交方面はからっきしだったせいでああなったって面もあるんだが…… あとは男親特有のアレだな。で二人の結婚を認めねえときやがる。それでちょっと手助けに来たんだよ。 まあ、お前さんたちも上仕えの身で窮屈なのは分かるんだが。あいつには俺様からよく言っとくからよ、 今日のところは退いてくれねえか」 男達の間にざわざわというどよめきが起こる。 どうする? 旦那様の兄上様といえばあの有名な…… 本来なら家を継ぐ立場の…… しかし…… 男達の中の一人が踏み出した。 「あ、貴方様が旦那様の兄上殿であられるという証拠は?」 「証拠か?証拠といえるものは特にねえんだが……」 「そ、それではやはり、我々としても見逃すわけには」 「あーはいはい分かったよ」 お侍さんは分かった分かったというように手を振り、一歩踏み出した。 「仕方ねえな、要はこういやいいのか」 そして僕達に背を向け、たった一言。 「失せろ」 僕の隣のバレッタさんが一瞬後ろに飛び退りそうになったのを、僕は確かに見た。 背筋を突き抜けた威圧感、これが侍の使う『鬼の形相』の力だろうか。 これだけでその人が本物だと分かる圧倒的な威圧だった。 「……な、俺に免じてよ」 彼が先程の威圧とは正反対な穏やかな口調で言う。 男達はなおも少しの間動かなかったが、誰か一人の口にした「旦那様に確認しよう」という 一言を合図に一人また一人と逃げるように去っていった。 「おお、俺様の貫禄も案外捨てたもんじゃないな」 男達がいなくなり、お侍さんが気楽な口調で口を開いた。 二人が彼の元へ寄っていく。 「伯父様、本当にありがとうございます」 「なーに、かわいい姪っ子のためならな。あと、甥も同然なお前さんも」 「……本当に、ありがとうございます」 「気にすんな。……お前さんらもこいつらに協力してくれたみたいだな?ありがとよ」 「あ、いえ」 「………」 おもむろに声を賭けられた僕は少し戸惑いながらも返事をする。 しかし、彼女はといえば根に持っているのか、返事をしなかった。 「ん?なんだ?ありがとってばよ」 「………」 「なんだ、嫌われてるみたいだな」 「あー、その」 僕は一瞬迷い、正直に言うことにする。 「彼女ネバンプレスの人なんで、亜人と呼ばれてヘソを曲げてるんです」 「ちょっ、コレル!?」 僕がお客さんにこんな事を言うなんて以外だったのか彼女が声を上げるが、 なんとなくこの人には腹を割ってしゃべってしまった方がいいような気がしていた。 「あー、なるほどな。……すまん、この通りだ」 お侍さんがあっさりと手を合わせて頭を下げる。 こうされては彼女も、 「う……いいわよ……」 と言うしかなかった。 「おう。で、だお前ら」 お侍さんが再び二人に向き直る。 「ああは言ったものの、正直弟に諦めさせられる気はしない。 せいぜいが時間稼ぎするくらいだ、それは分かってくれ」 「……はい」 「しかも俺様も、今や大した立場も持ってなくて弟の手の者を何度も追っ払えん。 アイゼンに戻って時間稼ぎをするにしてもお前らについていてやることはできん」 「はい」 「それでも行くんだな」 「もちろんです」 二人でそう言った彼らは、僕達の目の前にやってきて言った。 「ここまでありがとうございました」 「お二人は戻って下さい、ここからは二人で行かなくては」 「でも……」 「いいの?」 「はい。必ずミロスにたどり着いて、お二人に手紙を出しますから」 「では、急ぐので行きます!ちゃんとしたお礼も出来ませんが、お二人のことは忘れませんから!」 そう言い残し、二人は連れ立って走り出した。 お侍さんが二人の背中に声を掛ける。 「弟が手を回したせいで、密航は無理だぞ!どうするんだ!?」 青年が立ち止まって叫び返した。 「……こうなったら隙を突いて一度本土に戻り、歩いてトドワの丘を越えます!! 一度は諦めた案ですが、他にはありません!彼女は必ず守り通しますから!!」 再び駆け出していく二人の影を見ながら、お侍さんは感慨深げに呟いた。 「は……本当に大人になったな……」 「あの」 僕が声を掛けようとすると、彼は僕を見下ろしてにやりと笑った。 「なあに、心配すんなって。俺様もアイゼンまではついていてやるよ。 その後も要は『こっそり』助けてやりゃいいんだ、『こっそり』な」 「……そうですね!」 僕がほっとして笑うと、バレッタさんももじもじしながら口を開いた。 「まあ……頼むわよ。あの二人」 「おう!じゃ、俺様も行くぜ!今度きたときはゆっくり泊まって行くからな!」 「はい、お待ちしております!!」 元気よく返事をすると、お侍さんは壮年の男性とは思えない速さで風のように走り去って行った。 後には、月明かりに下に僕たちだけが残される。 「……………」 「……帰ろっか」 「そうね」 彼女はもう一度、三人が去っていった方向を見る。 「……頑張ってね!幸せになんなさいよ!」 「……」 「……さ、行きましょうか」 「うん」 そして僕達は、帰った後仕事を放り出したことでどんなことを言われるか、 そんなことをあれこれ騒ぎながら帰路に着いた。 ―――――――――――――――――――― 追記: それからしばらくして、ニギリオの宿にミロスから一通の手紙が届いた。 差出人の名前は無かったが、ミロスに着いた、ありがとう、ただそれだけが書いてある手紙だった。 その日僕達はいつもよりにこやかにしながら、何事もなかったかのように仕事に励んだ。 追記2: 今日、廊下のくずかごに日付の古い雑誌が捨てられていた。 恐らくお客さんが置いていったものを誰かが広い、今まで読んでいたのだろう。 ちなみにそれは大衆向けの女性雑誌で、内容は『これで相性もバッチリ判る?血液型占い特集』だった。
https://w.atwiki.jp/miku3939/pages/294.html
フリーズドラゴンストームドラゴンアースドラゴンブルードラゴンレッドドラゴンイエロードラゴンスカルドラゴンホーリードラゴン 進む アースドラゴン 4900000/4900000 竜 BOSS 地200風-100水-100 ドロップ レアドロップ 地の魔石×1 レア盗み 800000 6 AP 1 通常攻撃 物理 単体ダメージ 物防値 5203+物理30%カットで8347ダメージ(分身可) 通常攻撃 物理 全体化地250↓属性ダメージ 物防値 3700で40万ダメージ(分身不可) アースクエイク 魔法 地250↓属性ダメージ(回復) - ランドスライド 魔法 全体地250↓属ダメージ 魔防値4164+シェルで10万ダメージ マグニチュード8 魔法 全体地300属ダメージ 魔防値4164+シェルで30万ダメージ ※発狂1回のみHP1542315/4900000で発動 アースドラゴンは りせいをうしなった! 物防値 5203+物理30%カット 単発約45000×4ダメージ アースドラゴン撃破ボーナス! オートアビリティ「体力限界突破Lv+1」を得た! アースドラゴン撃破時ステ1 アースドラゴン撃破時ステ2←限界まで能力と装備を下げてクリア出来た状態を載せる用で未記入です 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/7thdragon3/pages/28.html
出演声優一覧 ボイスタイプのアルファベットはキャラメイク時、声優名非表示の場合に表示されるものです。 出典 男性 声優名 ボイスタイプ 担当NPC 担当NPC(過去作) 今作のキャラに近い役 公式動画の配役 備考 宮野 真守 A ウルトラマンゼロ(ウルトラマン列伝) ギン(サムライB) 寺島 拓篤 B 百獣レオ(デュエルマスターズビクトリーV) ジェット(エージェントA橙) 杉田 智和 C サイラス キョン(涼宮ハルヒの憂鬱) ロメオ(エージェントB) 浪川 大輔 D ノイシュ(バニッシャーA赤) 逢坂 良太 E ヤマト(サムライA) 中井 和哉 F 伊達政宗(戦国BASARA) レンジュロウ(ゴッドハンドA) 島崎 信長 G ユージン(ルーンナイトA金) 神谷 浩史 H ショウジ(2020ー2) リヴァイ(進撃の巨人) ジェット(エージェントA) 藤原 啓治 I ジュリエッタ アリー・アル・サーシェス(機動戦士ガンダム00) サカキ(ゴッドハンドB) 中村 悠一 J ユウマ アラル(ルーンナイトB) 梶 裕貴 K エーグル シトロン(アニメ ポケットモンスターXY) ミツル(デュエリストA) 櫻井 孝宏 L タケハヤ(2020、2020ー2) メベロイ(フォーチュナーB) 小野 大輔 M ダイゴ(2020、2020ー2) セバスチャン・ミカエリス(黒執事) ナバル(フォーチュナーA) 石田 彰 N ブラスターレイブン キリノ(2020、2020-2) ユージン(ルーンナイトA) 大塚 明夫 O スネーク(METAL GEAR SOLID) ノイシュ(バニッシャーA) 内山 昂輝 P バナージ・リンクス(機動戦士ガンダムUC) ジェロム(メイジA紫) 山下 大輝 Q アキラ(デュエリストB) 竹内 良太 R バスティアン(バニッシャーB) 石川 界人 S レンツ(メイジB) 岡本 信彦 T 輝島ナイト(セイクリッドセブン) ジェロム(メイジA) 女性 声優名 ボイスタイプ 担当NPC 担当NPC(過去作) 今作のキャラに近い役 公式動画の配役 備考 瀬戸 麻沙美 A リッカ ヤイバ(サムライA) 佐藤 利奈 B チェロン(2020、2020ー2) 御坂美琴(とある科学の超電磁砲) チエリ(ゴッドハンドB) 甲斐田 裕子 C マリーダ・クルス(機動戦士ガンダムUC) アッコ(エージェントB) 寿 美菜子 D ケーヨ(サンダーバード Are Go) キリカ(サムライB) 金元 寿子 E ナミ(デュエリストB) 沢城 みゆき F アリー ミロク(2020、2020ー2) キバーラ(仮面ライダーディケイド) メイ(エージェントA) 悠木 碧 G シズカ(2020ー2) タツマキ(One-Punch Man) アリカ(デュエリストA) 水樹 奈々 H ナツメ(2020) ラギ(ルーンナイトB) 井上 麻里奈 I ブリジルト アオギリ(ゴッドハンドA緑) 東山 奈央 J アリカ(デュエリストA紫) 日笠 陽子 K 篠ノ之箒(IS〈インフィニット・ストラトス〉) ヤイバ(サムライA金) 堀江 由衣 L アイテル アオギリ(ゴッドハンドA) 斎賀 みつき M 紫京院ひびき(プリパラ) ウーリェ(ルーンナイトA) 早見 沙織 N ウラニア 白雪(赤髪の白雪姫) ムルムル(フォーチュナーA) 茅野 愛衣 O チカ ニオ(フォーチュナーB) 豊崎 愛生 P ミオ ミイナ(2020、2020ー2) エーデル(バニッシャーB) 田村 ゆかり Q エメル ミーシャ(バニッシャーA) 内田 真礼 R 青葉千歳(Z/X IGNTION) ムルムル(フォーチュナーA桃) 加藤 英美里 S イズミ(2020ー2) フランム(メイジB) 伊藤 かな恵 T 篠原エリカ(オオカミ少女と黒王子) アゼリン(メイジA) ボクっ娘 NPCのみ 声優 担当NPC 備考 石塚 運昇 ヨリトモ 小林 ゆう ナガミミ コメント欄 キャラと言うか、水樹奈々さん ツバサ 悠木碧さん ヒビキ ってシンフォギアPTにしてるが、3人目がフィーネなんだよな・・・ -- 名無しさん (2015-10-18 23 33 46) cv櫻井孝宏のエージェント、トリハン使うと「一旦退く」って言うけど、これエスケープスタンスとボイス間違えてるのか? -- 名無しさん (2015-10-20 13 35 54) ↑2へ、日笠ボイスで「マリア」にしてみるのはどうでしょうか? -- 名無しさん (2015-10-22 19 32 24) 響チームを作るにしてもマリアチームを作るにしても一人声優が足りないっていうね -- 名無しさん (2015-10-23 08 19 04) ならばいっそ瀬戸さんに入れて二課チームにしましょうw -- 名無しさん (2015-10-24 12 59 44) 瀬戸さん入れると案外面白そうか。 -- 名無しさん (2015-10-25 13 52 24) セレナ「死んだけどマリア組です。」 -- 名無しさん (2015-11-12 20 14 38) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/42.html
イクラクンはエロパワーで魔力を充填しているよ、と言うお話しです。 百合が苦手な人は回避をお願いします。 イクラクン×ハルカラ、ジェリコ×イクラクン。何故か三人パーティー。 ストーリーのネタバレ無し。 「ヴォルケイノ!」 イクラクンの魔法が炸裂し、敵の群れは一掃される筈だった。 「……ん?」 しかし、炎のダメージを受けながらも数匹はまだしぶとく倒れずに立っている。 「ごめん、後はお願い」 「了解」 ハルカラが切っ先鋭い剣を振り回し、味方が被害を受ける前に瀕死の敵を仕留めていく。 最後の敵は回復職ながら前衛に出ていたジェリコが重みのある杖を振り回し、叩きのめした。 「どうしました? 調子でも悪いのですか?」 敵の魔法防御力や地形属性を考慮しても、普段のイクラクンの呪文なら確実に敵の 息の根を止めていただろう。それを不思議に思ったジェリコがイクラクンをうかがうと、 本人はけろっとした顔をしていた。 「んー、調子が悪いって言えば悪いのかも」 ぺろっと舌を出し、なぜかハルカラの方に目をやる。 「……」 そんなイクラクンの視線を受け、ハルカラは気まずそうにうつむいてしまった。 「?」 「まあ、今日はくたびれちゃったからもう休もうよ」 二人のやり取りの意味は分からなかったが、イクラクンの提案で一向は宿へと向かった。 温かい食事を済ませ、熱い風呂に入って疲れた身体を癒した各々はそれぞれのベッドへ 潜り込んだ。ふかふかの布団に包まれて幸せな眠りについていたジェリコだったが、 女の子達のひそひそ声に目を覚ます。 「イクラクン、そんなのダメだって!」 「だって仕方ないもん。ハルカラちゃんだって今日のボクの情けない魔法見たでしょ?」 「でも、だからって。ボクがもっと頑張るから、ねえ、お願いやめて、イクラクン」 「ハルカラちゃんじゃダメなの。パワーが全然足りないの」 「それは分かってるけど……、でも、やだよう……」 どうやらハルカラは泣き出してしまったらしい。それから、声を押し殺したハルカラの すすり泣きと、多分イクラクンがベッドから抜け出したのだろう、床を踏んでいるわずかな きしみが聞こえた。二人の様子も気になったが、ジェリコはそれ以上の眠気に負けてしまった。 「う、わ」 腰の当たりにじんわりと甘い痺れを感じ、短い睡眠を中断された不満を抱えつつ 重いまぶたを開ける。目を覚ました瞬間、自分の身体の中心を包みこんでいる 誰かの手の感触に驚いて些細な苛立ちなど吹き飛んでしまった。 「えっ」 わずかに首を上げ、横たわっている自分の身体を見る。やわらかい布団は腰の当たりで 大きく盛り上がり、こみ上げて来る快楽に合わせて軽く動いていた。 「……」 布団をめくると、薄暗がりでも分かる白銀の髪。 「イクラ……、クン」 「えへ。起きたね」 寝間着のズボン越しにジェリコを刺激していた手を休め、物欲しそうにちろりと 舌なめずりをするイクラクンは布きれ一枚まとっていなかった。 普段のマイペースでおっとりぼんやりした彼女からは想像も付かないような淫らな表情を見た ジェリコの背骨にぞくぞくと震えが駆け上ってくる。 「そりゃ起きますよ。何してるんですか」 「何って、魔力補充」 「魔力、補充?」 「慣れない長旅で疲れちゃって、ボクの体内のマナが不安定になってるの。マナの補充には 生体エネルギーの摂取が手っ取り早いって、基本でしょ」 本来なら大地や水、風の力を身体に取り入れ、それを制御して効率よく活かすのが 術者の努めだった。しかし、積極的に賞賛されはしないものの、他人と身体を合わせて 肉体と感情を高め、それを魔法力へと変換する技術も確かに存在する。 「ボクとジェリコさんが、えーとその、えっちすれば、お互いにいいと思うんだ」 倫理的にはどうかとも思うが、身体を起こしてベッドの上にぺたんと座ったイクラクンの 胸元、控え目なふくらみに視線が吸い寄せられてしまう。 「ね、だから、いいでしょ?」 中心を軽くさすってくる。手先はいやらしい動きをしながら可愛らしく首をかしげ、 甘えた声でおねだりをしてくるイクラクンの誘惑に心が揺れるジェリコだったが、 「だめーっ!」 二人の間に突然割り込んできたハルカラの泣き声に我に返る。 「んもうっ、邪魔しないでよ、ハルカラちゃん!」 「イクラクン……、男の人とするなんてダメだよ、イクラクン、ボクの事好きだって 言ったじゃない!」 流れる涙を手で拭いながらハルカラは訴えた。フリルの付いたキャミソール姿で悲しそうに 泣いているハルカラはとてもいじらしく、昼間大振りの剣を軽々扱っていた彼女とは まるで別人のようだった。 「うん、言ったよ。ハルカラちゃんの事は大好きだよ、でも他の人とえっちしないなんて 言ってないもん」 あまりの言い草に、ハルカラはひくりを息を飲む。 「ボクは心も身体もイクラクンひとすじなのに、そんなのって」 「だって、やっぱり男の人じゃないと満足できないんだもん。ハルカラちゃんとするのも 気持ちいいけど、やっぱりあの固くて太いのがずぶずぶって入ってくる感じとか、 熱くて濃いのをお顔にかけられたり、お口やおなかの中にどくどくって出される 感覚とか、女の子同士じゃ味わえないし」 くちびるを噛み、ぽろぽろと涙をこぼしているハルカラがあまりに可愛そうになり、 何を言ったらいいのかは分からないが取りあえず声をかけようとしたジェリコを イクラクンが遮った。 「いいの。この娘、意地悪されるの好きなんだから」 ジェリコの耳元でぼそぼそとささやくと、少しやわらかくなってしまったジェリコ自身を ゆるゆる刺激し始めた。 「ハルカラちゃん、そんなにボクが好きなの?」 「うん」 泣きながら、しっかりと頷く。 「じゃあ、ボクがジェリコさんとえっちするの手伝ってもらおうかなあ。ボクも男の人と えっちするの久しぶりだし、こんなに大きいの入れて痛くなっちゃうと嫌だから」 「そ、そんな」 「ボクの事が好きなんでしょ? だったらできるよね。はい、決まり」 「あ、あう」 「じゃあ、ボクがジェリコさんのを舐めるから、ハルカラちゃんはボクのあそこを舐めてね」 寝起きのぼんやりした頭のせいもあるのかもしれないが、ジェリコもイクラクンに 流されるままに、自らズボンを脱いで足を広げた。 「あっ、そうか。ハルカラちゃんは男の人の、見た事無かったよね。せっかくだから 見せてもらいなよ」 「う、っ」 イクラクンの小さな手に握られた赤黒く太い肉の棒を見て、ハルカラは息を詰まらせた。 頬を真っ赤に染めて顔を背けてしまう。 「ちゃんと後学の為に見ておいた方がいいと思うんだけどなあ。まあいいや、いただきま~す」 ジェリコの足の間に仰向きにころんと寝転がり、中心を片手でやわらかく握る。顔を傾け、 美味しいごちそうを頬張るかのようにくちびるでくわえ込む。 「んぐっ、おおき……、ハルカラちゃん、早く」 「……うん」 空いている方の手で自分の秘部を開き、そこにハルカラの舌と指を誘った。 「うんっ、気持ちいいよぉ、やっぱりハルカラちゃんの舌って素敵」 固い肉棒をよだれまみれにしながら、時折くちびるを離して艶めいたため息を漏らす。 「指も入れてね。あっ、すごい、ジェリコさんのもぴくぴくしてる」 女の子同士の痴態を目の前に見せつけられながらねっとりとした刺激を与えられ、 そこはすぐにでも爆発しそうになっている。 「ね、ジェリコさん、気持ちいい?」 わざとぴちゃぴちゃと音を立てながら、この場に似つかわしくないあどけない微笑みを浮かべる。 「気持ち……、いいですよ、イクラクン、口を離して下さい、もうすぐ……」 「えへへ。いいよ、お口に出して」 「お口って、イクラクンっ」 「ハルカラちゃんは続けて」 驚いた顔を上げたハルカラだったが、短く命令されて素直に従った。 「ジェリコさんの飲みたいなあ……、ね、お口いっぱいにして」 口を大きく開き、熱いそれを飲み込める限りに頬張る。 「んっ、ふっ」 くちびるをすぼめて締め付け、口内で吸い上げながらながらじゅっ、じゅっと濡れた音を立て、 同時に根本を強めにしごいている。 「イクラ、クン、そんなにされたら」 明らかに射精を促す動きにたまらなくなり、イクラクンの頭の動きに合わせてジェリコの 腰がつられてしまう。 「うぐっ」 イクラクンの首の動きに合わせて喉の奥まで突き入れてしまうと、苦しそうにうめいた。 「大丈夫ですか」 ジェリコの快楽を途切れさせないように口を離さず、顔を上げて目の動きで肯定する。 イクラクンも頬を紅潮させ、興奮した短い呼吸をしていた。 「ん……、ふうっ」 汗ばんだ全身を痙攣させ、股間に舌を這わせているハルカラの頭を強く押さえ付け いやらしく腰をくねらせている。 「ハルカラ……、ちゃん、気持ちい、ね、ジェリコさん、お口に、お口にちょうだい、 ボクに飲ませて、男の人の……」 わずかにくちびるを離し、うるんだ瞳でおねだりをするとまたジェリコのものに しゃぶりついた。 「イクラクン、いきますよ、ああ、もう」 一瞬痛みを感じるくらいに吸い上げられ、それが引き金となって快楽が迸る。イクラクンの 小さな口の中で、びくん、びくんと震えながら大量の精液が吐き出された。 「うく、んんっ!」 その液体の青臭さが口の中に広がった瞬間、イクラクンが登り詰める。精を放出した ジェリコの先端からもっともっと搾り取ろうとでもするように吸い付いてきた。 「そんなに……、吸ったら痛いですよ」 「んっ」 ゆっくりと顔を離し、とろけた瞳で頷いた。身体をぐったりさせたままハルカラの 髪の毛を軽く引っ張り、自分の上に来るように促す。ちらっと顔を上げたハルカラに 悔しそうな目で睨まれ、ジェリコは少し落ち着かない気分になった。 イクラクンはだるそうに身体を起こすと涙を浮かべているハルカラの身体をぎゅっと 抱きしめた。そのまま目を閉じ口づけると、ハルカラも素直にキスに応じる。と、 ハルカラの身体がぎくりと緊張した。抱擁から逃れようとしたが当然イクラクンは それを許さず、それどころか体勢を入れ替えて自分がハルカラの上にのしかかってしまった。 「えへへ~、飲ませちゃいました」 口移しされた液体をすぐに吐き出そうとしたハルカラのくちびるを手の平でふさぐ。 「飲まなきゃダメ。美味しいんだから、ハルカラちゃんもこの味覚えてね」 新しい涙を浮かべていやいやをするハルカラに顔を近付けた。 「せっかく飲ませてあげたのに、ハルカラちゃんはボクの厚意を無にするんだ。へ~え」 もう片方の手でハルカラの胸をまさぐりながら、意地悪い微笑みを浮かべる。 「これ、ボクが好きなんだからハルカラちゃんも好きにならなきゃダメ。分かった?」 「くんっ!」 薄いキャミソール越しに固くなっている乳首をきゅっとつまみ上げた。 「飲まなきゃハルカラちゃんの事、嫌いになっちゃうからね」 「く……、んく、ん」 脅されて、きつく目を閉じ、口の中の液体を何とか飲み下す。細い喉が小さく動いたのを 見て、イクラクンはやっとハルカラの口を解放した。 「美味しかったでしょ?」 「にが……、変な、美味しく、ないよ」 けほけほとむせながら、まだ顔をしかめている。 「あ~、せっかく飲ませてもらったのにその態度はいけないなあ。ジェリコさんに失礼でしょ」 ハルカラの耳元に口を寄せ、何かをぼそぼそとつぶやいた。 「えっ、あ」 「早く」 それからハルカラの腕を引っ張り、ジェリコの正面に座らせる。 「ほら。ボクの教えた通りに言って」 「あ、あのでも、そんな」 「早く言ってってば」 ぺたんと座ったハルカラの足の間に手を入れ、ショーツの中心を指でなぞった。 「きゃあっ」 「うわぁ、ハルカラちゃんってば、おもらししたみたいにびしょびしょだよ。そんなに 男の人の飲んだのが気持ちよかったの? だったら早くお礼を言わなきゃ」 「そんな、そんなの言えない」 「早くしないと、こうだからね」 粘った液体でぐっしょり濡れているショーツの横から指を入れ、とろとろになっている 割れ目をそっとなでる。 「あああっ!」 びくん、と強ばりながら逃げようとする腰をもう片方の手で押さえ付け、くちゅくちゅと いやらしい音を立てながら指を動かし続けた。 「イ、クラク、だめぇ……」 「だめ、じゃないでしょ。ジェリコさんにお礼を言うの。ちゃんと目を見てね」 ハルカラはゆっくり顔を上げようとしたが、ジェリコの視線を感じるとまたうつむいてしまう。 「早くしてくれないかなあ、ボクはハルカラちゃんをそんな子に躾けた覚えはないけどなあ」 「あんっ、だ、だって、イクラクンの指が」 「指、やめちゃう?」 「だめっ!」 ハルカラの内股がひくひくと引きつり、緊張している。 「ここ、こんなにこりこりになってるもんね。いきそうでしょ? やめられないよね」 汗の滲んだハルカラの首に顔を寄せ、皮膚を甘く吸った。 「あううんっ!」 やわらかくカールした髪に口づけながら、指の動きを速めていく。 「いきたかったらジェリコさんにお礼を言うの。教えた通りにね。言わないとやめちゃうから」 「やめ、やめちゃだめ、あっ、ああ」 ぽろぽろと涙をこぼしながら、途切れ途切れにかすれた声でつぶやいた。 「せ、精液……、えっちな味でとても美味しかったです。ごちそうさまでした」 ぐっとくちびるを噛み、それからはあっと熱い息を吐く。次の言葉をためらっているのを 見て、イクラクンはもう一度ハルカラの耳にささやきかけた。 「ひぁんっ!」 ついでにやわらかい耳の縁をくちびるで甘く噛み、耳の中のふさふさしたやわらかい毛を 吐息でくすぐる。 「ジェリコさんの、精……液、飲んでボクは、違うのこれはイクラクンの」 「余計な事言わないの。本当にやめるからね」 ぴたりと指を止めると、悲しそうにいやいやをした。 「だったら、ほら。ジェリコさんが退屈してるでしょ」 つい先刻精を吐き出したばかりなのに、再びむくむくと立ち上がりかけているジェリコの 中心は退屈からはほど遠いようだった。 「ごめ、ああっ、ボクはジェリコさんの精液飲んでお○○こを濡らす変態です……」 「そうそう、ハルカラちゃんってば変態だよね。ねえ、ショーツが邪魔。脱いで」 言われるままに腰を浮かせ、もどかしそうにショーツを下ろす。 「ねえ、ジェリコさんも見てあげてね。えっちで変態なハルカラちゃんの可愛いお○○こ」 キャミソールのすそをめくるとハルカラは身をよじった。 「やだ、やだあっ!」 「まだ分からないかなあ、見て下さい、でしょっ」 「きゃあんっ!」 耳の付け根をくちびるで強く噛むと、全身をぴくぴく痙攣させた。 「見……、ひくっ、見て下さい、ボクのえっちなお○○こ」 「そうそう。そうやってもっとえっちな事言って。そうしたらいかせてあげる」 はあはあと息を荒げるハルカラの真っ赤になったク○○○スを小刻みにこする。 「ボク、あああっ、ジェリコさんに……、男の人にお○○こ見られていっちゃうようっ! お口の中に、まだ精液の味が残って……、お、男の人の、飲むの初めてだったのに、 こんなやらしいなんて、ボク、ボクっ」 きつく目を閉じて全身を強ばらせた。 「好きっ、イクラクンっ! ごめんね、ボク気持ちい……、ね、いく、いってもいい?」 「いいよ。お○ん○んのミルクを飲んで発情しちゃう変態さん」 イクラクンの指先がハルカラのク○○○スを強く引っ掻いた。 「くあっ……、あああっ」 その刺激で登り詰め、全身をびくんびくんと震わせる度に新しい愛液を溢れさせる。 「ハルカラちゃん、可愛い。好きよ、大好き」 首筋にくちびるを寄せたイクラクンは汗で濡れた肌を強く吸った。 「好きいっ、ボクも、イクラクン、イクラクンっ」 やがてハルカラはぐったりと身体の力を抜いた。 「ね、ジェリコさん」 イクラクンはジェリコの足の間に顔をうずめると、固くそそり立ち、先走りの汁をこぼしている 肉棒を舐め回してよだれをなすり付けた。 「いいよね。ハルカラちゃんをいじめてたら我慢できなくなっちゃった」 手の甲でくちびるをぬぐい、身体を起こす。ジェリコに背を向けると、よだれまみれの 肉棒にどろどろにとろけている自分の中心を合わせようとおしりを押し付けてきた。 「いいですよ。私も、もう」 イクラクンの腰に手を添え、一秒でも早く男をくわえ込もうとしている動きを助ける。 貪欲にひくついている入口がジェリコの先端をとらえると、ためらわずに腰を落とした。 「……!!」 言葉にならない声を上げながら、ずぶずぶと根本まで飲み込んでいく。 「痛く……、ないですか、イクラクン」 「ちょっと痛い……、でもいいの、無理矢理されてるみたい、ああっ」 そう言いながら自分から腰を振ってくる。 「きついようっ、好き、これ好きなの、おなかの奥まで突かれると苦しくて、苦しいけど 感じちゃうのっ! ね、ジェリコさん、もっと強くしてっ」 細い身体を後ろからきつく抱きしめ、請われるままに乱暴に突き上げてやると、嬉しそうに 喘ぎながら泣き声を上げる。 「すごいっ、ボク犯されてる、男の人に犯されてるのっ! お○○こ壊れちゃうよ、 もっと、もっと壊れるくらいにしてっ」 「イクラ……、クン」 のろのろと顔を上げたハルカラが、男に貫かれて嬌声を上げるイクラクンを見つめた。 「ああっ、お○ん○んがボクの中で暴れてるうっ、ボクのお○○こをめちゃくちゃに 犯してるようっ、こんなのだめえっ、おかしくなっちゃうよ!」 真っ赤になった頬に大粒の涙をこぼし、閉じないくちびるからあごへとよだれが伝っている。 「嘘……、こんなイクラクン、初めて見る」 普段は意地の悪い、いやらしい言葉を投げ付けながらハルカラの身体を快楽に導くイクラクン。 「ジェリコさん、き、気持ちいいよおっ! ボクもう、だめ、だめえっ」 そのイクラクンがジェリコに全身を揺さぶられ、涙を流して悦んでいる。 「……イクラクン、可愛い」 ごくりとつばを飲み込むと、ハルカラはイクラクンの胸に指を伸ばした。 「なんだ、イクラクンも変態なんじゃない」 「やああっ!」 固くなっている乳首を少しきつめにつまむと、嬉しそうな泣き声を上げる。 「イクラクン、そんなに締め付けたら我慢できませんよ」 ジェリコのかすれた声を聞いて、ハルカラは強めに胸をつねった。 「へえ、イクラクンって胸をつねられると感じちゃうんだ」 「ハ、ハルカラちゃん、だめ」 弱々しい声で名前を呼ばれ、ハルカラの背筋がぞくぞくと震える。 「何がだめなの? ジェリコさんが我慢できないくらいお○○こがひくひくするんでしょ。 気持ちいい証拠じゃない」 「やめて、ハルカラちゃん。そ、そんな事言うと後で許さないからね、やあんっ!」 今度は胸に顔を近付け、先ほど自分の耳がされたようにくちびるで強くはさんだ。 「ハルカラちゃん、それ以上されたら私が保ちません」 「あ、ごめんなさい」 いったん顔を引いたが、イクラクンの乳首をいじめた時に胸の奥にこみ上げてきた 甘く切ない気持ちをもっと味わいたかった。 「じゃあ、先にイクラクンをいかせちゃえばいいのかな。うわあ、すごいよイクラクン。 イクラクンこそおもらししちゃったじゃない」 二人がつながっている場所に指を伸ばし、興奮のあまりに薄い包皮から顔を覗かせている ク○○○スの表面を軽くなぞった。 「ちが、ハルカラちゃ」 「ジェリコさんのこんなに太いのをくわえ込んで、やーらしいんだ」 男のそれを間近で見るのは未だ抵抗があったので、まぶたを薄く閉じてあまり視界に 入らないようにする。大量に溢れている液体を指に絡め、固くなっているク○○○スを 小刻みに擦るとイクラクンの身体が跳ねた。 「ひっ、ああ、うぅっ」 「イクラクンがこんなに可愛い声を出すなんて知らなかったなあ。いつもボクに酷くて えっちな事ばっかり言うから、てっきりいじめる方が好きなんだと思ってたけど」 下から上へ、ツメの先でかりかりと引っ掻くようにすると、きつく目を閉じてぶるぶると 全身を震わせた。 「いじめられても気持ちよくなっちゃうんだ。ねえ、もういっちゃいそうでしょ? イクラクンの変態。インラン」 真っ赤になった頬を涙で濡らしながら絶頂寸前の快楽を噛みしめているイクラクンを 言葉で嬲っているうちに、ハルカラの腰ももじもじくねってしまう。イクラクンの秘部を いじりながら、もう片方の手で自分のそこを慰め始めた。 「ハル……、カラ、ちゃん、好き」 息を詰め、全身を強ばらせる。 「ジェリコさん、ボクいっちゃう、いく」 「いいですよ、私も、もう」 ジェリコはイクラクンの肩越しにハルカラに手招きをした。手招きの意味を一瞬理解できない ハルカラだったが、ジェリコがイクラクンの乳首を指さすとするべき事を理解する。 「イクラクン、大好き」 お互いの秘部をまさぐる指は休ませずに、イクラクンの乳首に顔を近付けると、くちびるで 強く吸った。 「いっ、いぃっ! ひうっ、痛……、いっ、い……」 痛いと言いながら、とろけた声で登り詰める。 「いきますよ、中」 「うああんっ」 ひくん、ひくんと波打つ肉の中に精液を迸らせると、甘い鳴き声を上げた。 「イクラクンっ、イクラクン……!」 固く張り詰めた小さな乳首をしゃぶりながら、ハルカラも後を追う。満足しきった三人は ぐずぐずとベッドに崩れ落ちた。 「……せまい。帰る」 さすがに三人で寝るにはベッドが狭すぎる。まだ呼吸は若干荒いままだが、取りあえず 一息付いたイクラクンは自分のベッドに戻る事にした。 「うん」 腰が甘く痺れ、床についた足が少し揺らいだが、ハルカラはイクラクンに肩を貸してやる。 ちらりとジェリコの方を向き、すぐに目を逸らしながら曖昧に頭を下げた。 満足感と心地よい疲労に包まれてジェリコが再び眠りに引き込まれていく。 一つのベッドに入った二人はまたこそこそ話しを始めたようだった。 「ハルカラちゃん、何するの?」 「何って、イクラクンをきれいにしてあげるんだよ」 「だからってそんなとこ舐めちゃ、ああっ!」 ぴちゅぴちゅと濡れた音が聞こえてくる。 「だってこれ、イクラクンも好きだからボクも好きにならなくちゃいけないんでしょ? さっきはあんまり分からなかったから、良く味わってみなくちゃ」 「まだ痺れてるからそんなに吸っちゃダメ、舌、入れないで……、あああっ」 布団の下でハルカラが動く度にイクラクンが震える。 「ねえ、イクラクンって本当はいじめられる方が好き? だったらボク、頑張るよ」 「うーん、ハルカラちゃんをいじめるのは好きだよ。……って言うか、ハルカラちゃんが好き」 「ボクもイクラクンが好き、イクラクン、イクラクンっ」 もっと聞いていたかったが、ジェリコの意識がゆっくり途切れていった。 翌日。 「ヴォルケイノーッ!」 どごん、と壮絶な火柱が上がり、敵は瞬時に消し炭になった。 「す、すごい……」 朝からテンションが高く、ごきげんなイクラクンはフィールドで出会う敵を次々に なぎ倒していった。 「そんなに違うのかな、男の人とするのって」 不満そうにつぶやくハルカラにめざとく気付いたイクラクンは彼女をぎゅっと抱きしめる。 「それもあるけどー、これはハルカラちゃんとの愛情パワーだよ、うん」 「そ、そうかなあ? だったらいいんだけど……」 惚れた弱みで簡単に言いくるめられてしまうハルカラを抱きしめながら、イクラクンは ちらりとジェリコの方に振り向くといたずらっぽく舌を出して見せた。 「あっ、何でよそ見するのよ」 「してないよ~」 「嘘、した」 「してないってば。ハルカラちゃんはボクの愛を疑うの? だったら今すぐここで 身体に証明してあげてもいいけど」 「身体って……、イクラクンのえっち!」 くすくすと笑いながらじゃれ合う二人につられ、ジェリコも自然に微笑んでしまった。
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/2854.html
その頃、帰還していたはずのニャ…ニアラ様の部下の竜たちは柊家の2人の食通によって…… 「へっへっへ…ねればねるほど色が変わって」 「チョコクランチをつけて」 「んうまぁい!!!!!」 テーレッテレー 【二日目 21時11分/新惑星・柊家】 【鈴木れ〇こ@ねるねるねるね】 [状態]んうまぁい!!!!! [装備]ねるねるねるね [道具]支給品一式 [思考]1:あらゆる参加者をねるねるする 【稗田阿求@東方Projectシリーズ?】 [状態]んうまぁい!!!!! [装備]玄翁 [道具]支給品一式 [思考]1:マスターに従って参加者をねるねるする、特に「ゆっくり」を優先して狙う 【赤帝竜キングドラゴン@セブンスドラゴン ねるねる確認】 【黒帝竜デッドブラック@セブンスドラゴン ねるねる確認】 【地帝竜ジ・アース@セブンスドラゴン ねるねる確認】 【炎帝竜フレイムイーター@セブンスドラゴン ねるねる確認】 【艦帝竜ドレッドノート@セブンスドラゴン ねるねる確認】 【空帝竜インビジブル@セブンスドラゴン ねるねる確認】 【虹帝竜トリカラード@セブンスドラゴン ねるねる確認】 【装真竜ヘイズ@セブンスドラゴン ねるねる確認】
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/70.html
――我ながら、たるみすぎだ。 それが、女騎士ケイトが自分を客観的に見た感想だった。 治療士を生業とするルシェの青年ジェリコと結ばれて以来、自分は何をするにもジェリコの事を考えて、本来為すべきことに集中できていなかった。 竜を狩り、命を質に入れるハントマン稼業にあって、上の空状態は死を招きやすい。 生真面目で、そのような精神状態とは無縁と思われたケイトの気の抜け具合は客観的に見ても重症だったようで、ここ数日は「今の貴女を前線に置くわけにはいきません」と言い切ったジェリコが、ヤックと二人だけでハントマン稼業をこなしている。 共に屋敷の留守を任されたモモメノにもやたらと気を遣わせてしまっているようで、本来はお目付け役でもあるケイトがモモメノにあれこれと世話を焼かれる形となってしまっていた。 『ケイト、一緒に香茶でも飲んで落ち着こう……? 私、淹れるね……』 『モ、モモメノ様! そのような気遣いは……! 私が淹れますから、どうかお座りになってお待ち下さい!』 『でも……』 『モモメノ様にそんな事をさせる訳には参りません! え、えっと、葉は確かここに……』 『それ、スパイスの香草……』 『あぁっ!? こ、こちらでしたね。えっと、カップを……!』 『それはスープ皿だよ……』 『えぅあぇっ?? あ、あった、ティーカップ。すぐにお淹れしますね……!』 『カップにそのまま香茶の葉を入れちゃダメ……』 『あぅ……?』 『ケイト、いいから座って休んでて……』 『うぅぅぅぅぅぅ……! 申し訳ありません、申し訳ありません……!』 脳裏にフラッシュバックしたその時の光景に、頬が熱くなってくる。 仮にも一国の王女であるモモメノが危なっかしい手際で淹れてくれた香茶の方が、自分の淹れたものより美味だと感じたのは記憶に新しかった。 (護衛騎士でありお目付け役でもあるというのに何なのだ、この体たらくは。まさしく本末転倒ではないか! 全く以ってどうしたというのだケイト、いつまでもこのような調子ではモモメ――) 「何ボーっとしてんだコラぁっ!!」 「えっ?」 ――ガィン!! 思考に突如割り込んできた怒号と金属同士がかち合う鈍い音が響き、ケイトの意識は現実に迎合された。 気が付けば右手にジンとした痺れがはしっている。 右手から視線を持ち上げると、そこには呆れたように嘆息して、前髪から覗く片目でこちらを見やるヤックの姿。 ヤックは刃を潰した訓練用の短刀二本を両手に、しばらくをケイトを見やっていたが、ケイトがきょとんとしたまま様子が変わらない事にますます呆れ返り、ため息混じりに肩を落とした。 ケイトはケイトで何が起こったのかを理解できておらず、いよいよ本格的に混乱し始めたところで――背後からガラン、という大きな音が響く。 振り返ると、そこに落ちていたのは、これまた刃を潰した訓練用の刀剣。 それが自分のものだと気付いたケイトは、再び振り返ってヤックの姿を認め――ようやく自分が、早朝の日課である、ヤックとの模擬戦闘訓練の途中なのだと思い出した。 バツが悪そうに剣を拾うケイトに対し、ヤックはゴキゴキと首を鳴らしながら口を開く。 「お前よぉ、もう拠点戻っとけ。今のお前と訓練してたら逆に腕がなまっちまいそうだ」 つまらなそうに吐き捨てるヤックに、ケイトは顔を赤くして反論した。 「な、何だと貴様! 侮辱するつもり――」 「じゃーお前は今の自分が本調子だって胸張れんのかよ?」 ケイトに最後まで言わせることなく切り捨てたヤックの言葉に、彼女は黙り込んでしまう。 言い返したいが、今の自分は言い訳のしようもなく絶不調だ。返すべき言葉を探して口をパクパクと動かしていたケイトだったが、やがてシュンと肩を落としてしまう。 「いや、全面的にお前の言う通りだ。失言を詫びよう……」 「いーからよ、戻って朝メシの準備でも手伝ってこい。あ、俺の目玉焼きは半熟で胡椒多めな」 「承った、では先に失礼する」 剣を鞘に納めたケイトはおざなりに一礼し、気恥ずかしかったのか足早に立ち去った。 沈んだ背中が立ち去るのを見るともなしに見送りながら、しばらく短刀の型の反復訓練を繰り返していたヤックだったが、ケイトが角を曲がり、その姿が見えなくなったのを確認するなり―― 「はぁぁあああああ~~~~~~…………」 肺の空気を全て搾り出すかのように大きな溜息を吐き出し、 「ジェリコのバカ、骨抜きにしすぎだろ……」 自分が覗き見てしまった、ジェリコとケイトの濃密な情事を思い出し、僅かに顔を赤らめながら呟いた。 ◆ ◆ 「何をしているのだろうな、私は……」 朝食を終わらせたケイトは自分の寝台に腰かけ、深々と溜息をついた。 一人ごちたその言葉に答える者達は、誰一人として屋敷にいない。 ジェリコは溜まっていたクエスト完了の書類を整理しにオフィスまで出向き、ヤックも「適当にフロワロ散らしてくるわな」と、滋養強壮の薬剤を大量に持ち出してカザン周辺に出ていった。 モモメノはケイトのために何かを買ってくると言って出て行ってしまっている。 自分が仕えている国の城ほどではないが、それでも一団体では持て余しそうな広さの拠点には、ケイト一人だけ。 耳に痛いほどの静寂しか返ってくるものはなく、ケイトの独り言はむなしく霧散してしまったようだった。 ――ゆっくりと腰を上げ、立ち上がる。 歩を進めて、向かう先はジェリコの寝台。 隣に据えられたヤックのものとは比較にならないほど綺麗に扱われているようで、シーツも毛布も全ておろしたてのようだ。 ところどころ、僅かに残された皺をなぞるように指を滑らせ、ケイトは困ったように笑い、ここにはいない治療士に向けて呟いた。 「どうしてくれるんだ、ジェリコ。あの時お前が言った通り、私は兎のようになってしまったぞ」 浅ましい――そう思いながらも、その身体は自然と上掛けをめくり、ジェリコが使う寝台の中へと潜り込んでいた。 「お前の姿を見たり、声を聞いたりするだけで、あの時のことを思い出してしまうんだ」 ジェリコの香りが染み付いた枕に顔を埋めて、ケイトは自分の腹を撫で擦る。 体内に直接熱い湯を吹き付けられるように、ジェリコの精液を何度も受け入れたあの感覚が思い起こされ、ケイトは「はぁ……っ」と、溜息交じりに短く喘いだ。 同時に、身体を包み込むジェリコの香りが鼻腔をくすぐり、体内で何かが蕩け始めた。 ――まずい。 そう感じた時にはすでに遅く、両脚の付け根がジワリと湿り気を帯びる。 「あぁ……あの時も、こんな感覚で……っ! あいつが、容赦なく……抉って、きたんだ……ん、はぁ……っ!」 自然とズボンを下ろし、下着の中に手を差し入れる。 あの時のジェリコの猛りを思い起こしながら、潤い始めた入り口に指を這わせると、僅かに粘質を孕んだ水音が聞こえた。 ――あの時、ジェリコはそれこそ獣のように容赦なく自分を攻め立てた。そして自分もそれを求めた。 今、ジェリコが自分を見たらどう思うのだろうか、こんなに浅ましく身体の熱を持て余す自分を見たら……。 蔑むだろうか、見損なうだろうか、それとも、いつも通りに微笑んで受け入れ、慰めてくれるのだろうか。 次第に、自分の指でジェリコの猛りを模し、秘所に侵入させていた。 角度も強さも早さもバラバラに、自分を快楽に慣れさせることなく狂わせ続けた、苛烈な快感の拷問。 指を折り曲げ、柔らかな膣壁を撫でると、ジェリコが同様に反り返しで自分を抉った感覚がフラッシュバックする。 「ぁ、ジェリコ……! だめ、そんなに、強く……っはぁ、んっ!」 瞼の裏で、ジェリコが優しく微笑みながら、自分を攻め立てている。 その柔らかな笑みに反するかのように、自分の膣内を何度も行き来する肉の塊は火傷をしそうなほどに熱く、そして固く張り詰めて…… 「ただいま戻りました」 どこかでジェリコの声が聞こえた気がした。 末期だな――と、ケイトは自嘲した。ありもしない声を聞くほどに、彼を求めているというのか。 ジェリコが、今の姿を見たらどんな顔をするだろう――多分……、 「ケイトさん、こちらでしたか」 と言って部屋に入ってきて、自分の寝台で喘いでいる私を見て――呆けるように立ち尽くすのだろうな。 「――えーっと………」 そうそう、丁度こんな表情だ。 そして目のやり場に困るようにちょっと慌てて、でも少ししたら冷静になるんだろう。 「ケイトさん……?」 「………えっ?」 蕩けきった意識で淀む視界の中に、見慣れた顔があった。 あぁ、ついに幻視まで――そう思いかけて、ケイトの思考は、冷水をぶっかけられたかのように一瞬で覚醒した。 目の前にいるジェリコからは、確かな気配が――ぶっちゃけ、本物だった。 「私のベッドで何してるんです……?」 そう言ったジェリコは、何かに気付いたかのようにスンスンと鼻を鳴らした。 そして、柔らかな上掛けから僅かに香る「その匂い」に気付き……、 「あぁ、なるほど……」 などと言い、微妙に邪悪に微笑んだ。 ――ここで、ケイトの意識が凍結した。 「いけませんね、こんな無用心な空間で……」 いつも通りの口調で言いながら、ジェリコは玄関へ舞い戻り、その扉に鍵をかけた。 続いて、その足は就寝スペースの窓辺へ――気持ちの良い日差しを受け入れていた窓のカーテンを閉ざし、外から視線が入りうる全てのルートを遮断した。 カーテンを閉じたジェリコが、ケイトに振り返る。 カーテン越しに薄く差し込む日光を背にしたジェリコの微笑みは、よく見えない分、何やら恐ろしいものがあった。 凍り付いていたケイトの意識が、氷が解けだすようにじわじわと現実に戻ってくる。 「あ、あ、あの……っ! ジェリコ、これは、だな…………その……っ!」 「えぇ、私のせいでしょうとも。気付いて差し上げられなくて、申し訳ありませんでした」 ジェリコはにっこりと恐ろしい笑顔のまま、じわじわとケイトに迫る。 寝台の傍らにたどり着いたジェリコは、そのまま上掛けを勢いよく剥ぎ取った。 「あ……っ!」 悲鳴になりきらない声を上げた時にはすでに遅く、そこには上を着たまま、下半身はぐちゃぐちゃに濡れた下着一枚で、乱れて寝そべるケイトという、暴力的なまでに官能的な眺めが広がっていた。 「こんなにして、可哀想に……」 「じぇ、ジェリコ……!!」 上擦った声で非難の声を上げるケイトだったが、今のあられもない姿でいつもの迫力がこもる筈もない。 そんなケイトの様子さえ面白がるように微笑み、ジェリコはゆっくりと彼女に覆い被さっていった。 「ジェリコ、待っ……やっ、まだ昼にもなってないのに……!」 「身体の異常は即座に対応しないといけません。治療士としては勿論、男としてね」 最後の抵抗もむなしく、ケイトは完全に寝台へと押さえ込まれてしまった。 心底楽しそうなジェリコの表情を見て、ケイトは今日で何度か思った言葉を、再び思い出していた。 ――我ながら、たるみすぎだ。 その思考もどこか遠くの方で巡っているかのようで……。 ケイトの羞恥と諦念を煽るかのように、彼女が身に纏っていた残りの衣服が、ばっさばっさと宙に舞った。 「前の時は確か、私も理性がトンでましたからね、今日は丁寧にいきましょうか」 ――思えばこのジェリコという男、笑顔が一番恐いのではないのだろうか? にこにこと笑いながら性的な行動の方針をほざくジェリコに対し、ケイトは軽い戦慄を覚えた。 この治療士の青年は仲間を治癒術で癒すときも、魔物を毒の霧で滅すときも、一切この笑顔から表情を変えることがないのだ。 そしてジェリコは、その笑顔を崩すことなく、ケイトの抵抗を軽くいなしつつ器用にその衣服を全て剥ぎ取ってしまった。 「わ、私の意思は完全に無視か!」 「その姿で叫ばれても、あまり説得力がないのですが」 「そういう問題では――」 「はい、そこまで」 言うが早いが、彼女に最後まで言わせることなく、ジェリコはケイトの肉感的な唇に食らいついた。 先ほどの自慰で中途半端に身体の力が抜けたケイトは、完全に為されるがままだ。抵抗の意思を宿していた瞳も、少し口腔内を舐めまわし、吸い上げられただけで、潤んで色を変える。 頑なに歯を閉じ、何も受け入れない――そう決意していたケイトの口内は、ジェリコの熱烈な口付けによってわずか数秒で陥落し、彼の舌の侵入を許してしまっていた。 しまいには己の口を犯す舌に自ら絡みつき、愛撫を懇願し始めるケイト。 ケイトの舌が反応し始めた事に内心喜ぶジェリコは、それに応えるように彼女の口腔内の粘膜を吸い上げるかのように、じゅるじゅるとわざとらしい音を立ててみせる。 「は、ぁ……っ! じぇりこの、キス…すごく、やらしぃ……ん、ちゅ……っ」 軽犯罪に手を染めた幼子が味をしめ過ちを繰り返すように、ケイトもまたこの抗いがたい快楽の虜となり、ジェリコの舌により強く絡みつこうと、ぐいぐいと唇を押し付けた。 大人のキスも、舌を絡ませる程度しか類を知らぬケイトに、ジェリコは教え導くかのように唇を甘噛みしたり、舌で歯茎を撫でまわし吸い上げたりと奉仕する。 ――そして、 キスばかりに意識を向け、他への注意力が皆無になっていたケイトが気付くはずもなかったのだが…… 「ぁひぃっ!?」 ぐちゅり、という水音――自慰ですっかり濡れそぼり、受け入れる準備がすでに出来上がっていたケイトの膣の入り口に、ジェリコの中指が不意をついて突きこまれた。 思わず口を離し、仰け反るように白い喉をさらすケイトを見たジェリコは、面白そうに笑う。 「はは、不意打ちなんて卑怯ですよね。分かってるんですけど、ケイトさんを見てるとつい――」 ジェリコは聖人君子のような微笑で「つい虐めたくなるんです」と言い放ち、挿入した中指を無造作に折り曲げ、熱く蕩けた膣壁をがりっ、と引っ掻いた。 「あ、くぁぁ……っ!?」 白く明滅する視界にくらみながら、ケイトは目を見開き、口を開けて、体内に渦巻く快感のエネルギーを逃がそうとする。 だが、ジェリコはそんな抵抗をあざ笑うかのように、今度はさらに人差し指まで突き入れ、それを無造作に何度も何度も引き抜き、折り曲げ、また突き込み、傍若無人に暴れ回らせ始めた。 「ひぅっ、あひぃ……っ、ぁ、くぅ…い、くぅ……いくぅっ!!」 ――心の準備もできない内の不意打ち。 膣を容赦なく掻き回す二本の指に翻弄され、彼女は抵抗する意思を定める暇さえ与えられず、敗北の断末魔を上げるように、身体をぴんと張り詰め反らせたまま絶頂に押し上げられてしまった。 ケイトはピクピクと小刻みに肩を震わせ余韻に翻弄されながら、涙と涎を垂らしてジェリコに言葉を紡ぐ。 「じ、じぇりこ……わたし、だけ……」 「あれ? 何か言いました?」 ――ぐりゅっ、 「ひぐっ!?」 否――言葉としての形を成す前に、ジェリコの指が再び暴れ始めた。 指に絡みついた彼女の愛液を再び彼女になすり付けるように、執拗に、執拗に、柔らかな肉を撫で回し、掻き乱す。 猛々しく、しかし巧みに膣内の性感帯をひっかき回される度、二本の指を受け入れる秘裂からはぬちゅぬちゅといやらしい水音が響き、ケイトの肩は小刻みに弾み、震えた。 「あ、今きゅって締めつけてきましたね。ここが弱点ですか」 彼女の敏感な反応に気を良くしたジェリコは、指を鉤のように折り曲げたまま、膣から勢いよくずるりと引き抜いた。 見つけたばかりの敏感な部位を引っ掻かれ、それだけでケイトは軽く絶頂に達してしまう。 「ジェリ、コ…っ! よくも、やりたい…放題に、ぃ…!」 恨めしげに睨み付けたつもりなのだろうが、軽くイキ癖がついてしまい、ピクピクと肩が震えた今の状態では、その視線も蕩けてろくな迫力がこもらない。 だが、自分に向けられた視線の意図を完全に見透かしてなお、ジェリコは微笑みを止めることはなかった。 「終わったみたいに言わないでくださいよ。むしろ、これからが本番なんですから」 ジェリコは彼女の牝鹿のように美しい脚を無造作に掴み、ぐるりと身体を反転させた。 身体に上手く力が入らないケイトは、為されるがままにうつぶせになり、美しい曲線を描く尻をジェリコに向けて高く掲げるような体勢になってしまう。 ぼんやりとした意識の中で、彼女は自分の細腰ががっしりと掴まれる感触を認めた――そして、どろどろにほぐれきった秘裂に、熱く張り詰めたものが添えられた感触も。 「いきます、いいですね」 問いかけにも聞こえる、一方的な宣言。 ケイトの是非を聞く事もなく、ジェリコは力強く腰を突き進め―― 「あひぃ…っ!? き、てるぅ…きてるきてるぅ………!!!」 途中で進行を止めることも躊躇することもなく、ケイトの膣をごりごりと押し分けて愛液を纏いながら、彼女の中を圧倒的に満たし、埋め尽くした。 「~~~~~~~~っ!!」 朦朧としていたはずの視界で、不可視の電流がバチバチと弾ける。 大きすぎる快感のために濁りかけていた意識が、それを上回る異常快楽で強制的に叩き起こされたのだ。 彼女が受け止める快楽に比例するかのように次から次へと溢れる蜜が、ジェリコの巨根をくわえ込んだ秘裂の隙間から、ぷしゅっ、と気の抜けた音と共に噴き出した。 ケイトは以前のような苦痛を伴うことなく、自分の腹に納まった熱い塊から快感だけを受け取り、痙攣するようにビクビクと身を震わせて何度も快楽の高みへ上り詰めた。 ――だが、それだけで終わるはずもなく、 ジェリコはそのまま容赦も何もなく、巨大な男根をギリギリまで引き抜き――先ほど探り当てた弱点に向けて、勢いよく打ち込んだ。 否、打ち込んだ「だけ」ではない。 大きく張り出したものでこそぎ落とすように、何度も何度もそこをゴリゴリと攻め始めたのだ。 しかし単調にそこだけを攻めるのではなく、引き抜く過程、突き入れる途中においても、浮き出た血管などで彼女の性感帯を自ら作り上げるかのごとく、そこかしこを容赦なく抉り、擦っていく。 「だめ、ジェリコ…だめぇえええっ!!」 白目を剥き、首を激しく振り、苦痛じみた快感から逃げ出そうとするケイト。 しかし、ジェリコはその背中に密着するように覆い被さり、彼女の固くなった乳首を摘み、ますます攻めを苛烈にしていく。 「だめ? 何がだめなんです?」 「こわれるぅ……!! イキすぎてぇ、気持ち良すぎて、こわれ……ひぎぃっ!」 ぐい、とジェリコが身体を起こすと同時に、ケイトの二の腕が掴まれ、強引に引き上げられた。 背後から二の腕を引っ張り上げられ、仰け反るような体勢になったケイトは、自重でより深くジェリコの巨根をくわえ込むこととなってしまい、さらに狂おしく甘い悲鳴を上げた。 「あひっ、ひあぁぁ……っ、おくぅ、奥まで、犯されてるぅ…っ! っんぉおおお゛お゛お゛お……いいぃ、イイよぉっ、またイグぅ…!」 小さな絶頂ではほとんど平常時に近いような快楽の嵐の中で、ケイトは舌を突き出しながら喘ぎつづけ、豊かな乳房を弾ませ続ける。 「イッた、イッたのにぃ…っ! イッたのにイクの! まだイクぅ……あ、あぁああ゛あ゛あぁっ、イクの終わらないぃぃいいいいっ!」 「ケイトさん、出しますよ…ケイトさんの中に……!」 「だして、じぇりこの…っ! しろいの、ビュビュって! いっぱい、しゃせー、してぇぇぇ!」 美しい若葉色の髪も乱し、快楽に溺れるケイトに向けて、堰を突き壊したジェリコが思う存分欲望を吐き出し始めた。 熱くたぎった粘液がどくどくと脈打ちながら、彼女の子宮に注がれ、すぐに溢れ返って膣に充満し始める。 だが、それが外に漏れ出すことはない――隙間なくびっしりと膣を埋め尽くすジェリコの巨根が栓となり、逆流を阻んでいるのだ。 「でてるぅ、あかちゃんのへやに、しろいせーえきがドバドバ出てる……じぇりこに、孕まされてるよぉ……」 体内に熱いものが吹き付けられる、途方もない快感――すでに下りられなくなったケイトは、その極上の快楽に溺れ、心底幸せそうなイキ顔を晒して、くずれるようにうな垂れ失神した。 ――もちろん、ジェリコの欲望がたった一度の吐精で治まるはずもなく、 ケイトはそのまま体位を入れ替えられ、正上位で陰核をぐりぐりと潰されながら狂いそうになるまで犯されたり、その豊かすぎる乳房までもを犯され射精でその清麗な顔をジェリコの精で白く汚されたり……。 しまいには、自分の愛液が纏わりついたジェリコの巨根への口淫奉仕まで教えられ、後始末をさせられたりと――、 彼の果て無き欲望に翻弄されつつも、その全てを享受し、むせ返りそうな愛欲にまみれ、どこまでもどこまでも上り詰めていった。 ――ちなみに、互いの欲望を存分にぶつけ合い満足した二人が我に返ったのは、陽が朱くなって西に沈みかけた時刻だった。 ヤックが(ローグの技能を無駄遣いして)玄関のドアを開錠し、モモメノと共に顔を赤くしつつも覗いていた、という事も蛇足である。 (いろいろオワタ)
https://w.atwiki.jp/halyama6318/pages/43.html
B01-012 グラビトンアースドラゴン イラストレーター : 茶壱 コスト 0 防御 800 攻撃力[追加ダメージ] 1100 2300 3400 4600 5600 [+1] 6800 [+1] レアリティ SR 属性木 タイプドラゴン カード種類モンスターカード進化段階3進化 進化元アースドラゴン 究極進化素材- 効果タイプ ダメージ カード効果(このカードがダメージを受けて手札にきたとき、コストを支払って進化できる) ドロップ 木 回復 収録・配布ブースターパック第1弾『旅立ちの刻』収録
https://w.atwiki.jp/nanadorakari/pages/69.html
ジェリコ ルシェヒーラー♂ ケイト 緑ナイト♀ (共に名前は公式ちびキャラトークから) 前半の投下分は長い上にエロありません。 「……納得いかん」 「私に言われても困るのですが」 憮然とした表情で吐き捨てられた言葉に、青年は困ったように笑った。 カザン市街、とあるギルドが拠点として使う大型の屋敷の一室で、二人の男女がボードゲームに興じていた。 男の方はルシェの青年。褐色肌の顔に、温和を絵に描いたような柔らかい表情を浮かべている。対比のように白い長髪を後ろで束ねており、一見でのイメージは「紳士的な若者」といったところか。 女の方は、淡い緑色の美しい髪の持ち主だった。今は不機嫌そうに顔をしかめているものの、長い睫や肉感的な唇、すっきりとした顔の造形は、遠目にも美人と分かる。 そして二人は共通して「落ち着いた雰囲気」の持ち主であり、物静かに盤上の駒を見やるその様は絵画の一種のようですらあった。 だが、実際は緑髪の女性――ケイトが放つピリピリとしたオーラによって、二人しかいない屋敷の空気は非常に物々しい。 盤上どころか実際に戦でもしているかのような剣呑さである。 そしてケイトの不機嫌な理由は実に単純なものであった。 「確かにハントマンと言えど休息は必要だ、今日まる一日をそのまま休日としたお前の提案は非常に嬉しいし感謝もしている」 「はぁ、恐縮です……」 「そしてモモメノ様が街を見て歩きたいと仰った事に不平がある訳でもない」 元々から欲の少ない御方だ、少しわがままを言って下さるくらいが丁度いいんだ」 「はい」 「そして私とは別に行動なさっている事も、認めたくはないがお察しできる。私とて自分が行楽の付き合いに向いてない事は分かっている」 「まぁ、人には向き不向きがありますから」 「だが、だがな……」 「だが、どうしました……?」 言葉を切り、俯いて肩を震わせ始めたケイトに対し、ルシェの青年――ジェリコは恐る恐る問うた。 そして訪れる、爆発の時。 「なぜモモメノ様は、よりによってあの大たわけ者を付き添いに選ばれるのだーーー!!!」 屋敷中に響き渡った大声に、屋根にとまって憩う鳥達は驚き、一斉に飛び去っていった。 ケイトは元々ハントマンではなく、小さな国の王女モモメノに仕える護衛騎士兼お目付け役だった。 竜の脅威に晒される世界の中で、我関せずと保守的で排他的な国王に反発し、城を飛び出したモモメノを追って、このカザンに辿り着いたのである。 国へ帰ろうと促しても、「ハントマンになる」と首を横に振って譲らないモモメノ。 しかし「誰かを救いたい」と願うモモメノは、そのための具体的な方法を全く知らなかった。 そして騎士としての生き方しか知らないケイトも勿論、自国の権威が及ばないカザンではなす術もなく……。 二人が途方に暮れていた時に手を差し伸べたのが、他ならぬジェリコと、その相棒である黒衣のローグ、ヤック(ケイト曰く「大たわけ者」)であった。 ハントマンのギルドを立ち上げたばかりだと言う二人の厚意に甘える形で、ケイトとモモメノはそのギルドに籍を置く事となったのだ。 とりあえずモモメノの衣食住の心配が無くなったケイトは、不本意ながらも自国に定期的に書状を送り、今のハントマン生活を続けていた。 「不本意ながらも」とはいえ、ケイトはむしろ今の生活に「慣れ」以上の好意的な感覚を見出していた。 ジェリコはヒーラーという職に違わぬ物腰柔らかな男で、必要以上の詮索をせずケイトとモモメノを受け入れ、気を使ってくれている。 ヤックは、ジェリコが「親友ですよ」と言うのが信じられないほど粗野な男ではあったが、その言動には一本芯が通っており、決して悪人ではなかった。 自国ではケイト以外家族にすら心を許さなかったモモメノも、下心なく良くしてくれるジェリコとヤックには次第に心を開いていった。 ――ここまではいい。 ケイトにとっての問題は、モモメノがヤックに対して「明らかに仲間意識や友情以上の何か」を抱き始めてしまった事だ。 もちろんケイトは生真面目で実直な性格ではあったが、他人そういう色恋沙汰に関して口出しをするほど無粋でもない――と、ケイト自身は思っていた。 だが、本音と建前には天地ほどの差があった。 騎士としての義務感だけではなくモモメノを妹のように大切にしているケイトには、将来モモメノが寄り添うであろう殿方の理想像というものがあったのだ。 (理知的だが勤勉で、それを気取らない優しさと快活さを備え、武力と財力を併せ持った……) ほとんど娘の幸せを願う親のような心境だが、もちろん、ヤックはケイトが抱く「モモメノの伴侶理想像」には程遠い。 妙な危機感を覚えるケイトをよそに、モモメノは順調にヤックに懐いており、それがケイトを余計に苛立たせていた。 そしてケイトが何より気に入らないのは――当のヤックも「まんざらでもねー」ってオーラを出している事だった。 ケイトとて聖人君子ではない。自分の中の「薄汚い手でモモメノ様に触んな指数」がぶっちぎりに高い事も自覚している。 自分によく懐いてくれていたモモメノが他の誰かと仲良くなる事に少なくからず嫉妬を抱いていたのかもしれない。 そしてジェリコの提案によって休日となった今日を利用し、モモメノはヤックに街の案内を頼む形で散策に出掛けてしまった。 もちろん、出発直前までケイトは渋ったが、モモメノの「大丈夫……」→ヤックの「心配すんなっての」→ジェリコの「主のご希望じゃないですか」の3連コンボによって渋々折れたのだった。 当然、折れたからといって納得したわけではなく、自分と同じく屋敷に取り残されたジェリコを気晴らしのボードゲームに付き合わせ、これ幸いと愚痴を吐き出して今に至るのであった。 「心配でならんのだ……あいつがモモメノ様をいかがわしい賭場などに連れ出したりしていないかと」 何度目かもしれぬ溜息をつくケイトに、ジェリコはやんわりと笑って答えた。 「大丈夫ですよ。ヤックは悪ぶってはいますが、本当に純粋で子供のような男です。『いかがわしい場所』なんて、むしろ私の方が詳しいくらいですよ」 「む、お前がそう言うのであれば……私がこれ以上悪く言うわけにもいかんのだが」 「えぇ、ぜひ大目に見てやって下さい。それと……」 「うん?」 何事か、と顔を上げれば、そこにはいつも通りのジェリコの笑顔があった。そしてジェリコはその表情を崩さず、 「チェックメイトです」 「んな!?」 ケイト頓狂な声を上げつつ盤上に視線を落とす。 愚痴を言いつつもしっかりと戦略立ててゲームを進めていたつもりだったが、ジェリコがいつの間にやら巧みな運びで勝利を決定的にしていた。 今からどの駒を動かしたとて敗北は免れないだろう。 「むぅ、私の負けか……ジェリコ、もう一回だ!」 「はい、そうしましょう」 嫌味を感じさせない笑顔と口調で、ジェリコはてきぱきと駒の配置を変え始めた。 そして、生来の負けず嫌いから何とか勝利をもぎ取ろうとゲームだけに集中し始めたケイトの奮戦むなしく、ジェリコは涼しげに全勝したのであった。 ◆ ◆ 「……むぅ、参ったな」 きょろきょろと辺りを見回しながら、ケイトは今日何度目かの――しかし、今までとは全く意味合いの違う溜息を吐いた。 幾度も幾度もジェリコにゲームを挑み、ありとあらゆる戦術で勝ちを得ようとしたものの、ジェリコは事も無げにその全てを打ち破ってしまった。 ふと我に返り、ボードゲーム程度で熱くなりすぎたと恥じるケイトに、ジェリコはこれまたいつも通りに微笑みで「いえいえ」とだけ返した。 妙に気恥ずかしくなり、「散歩に行ってくる」とジェリコに言い残したケイトは、そのまま街へと逃げるように出掛けていったのだ。 だが、カザンという国はケイトが思っている以上に広く複雑な場所だった。 多少の滞在で慣れたと思っていたケイトだったが、気恥ずかしさで闇雲に歩き回っていたおかげで、全く見知らぬ界隈にまで来てしまっていたようだ。 「人気の多い場所からも外れてしまったようだし、どうすればいいんだ」 辺りは窓の少ない無骨な建物が連なる薄暗い通り。 人の気配もなく、国の中にありながら物騒な空気を漂わせるその場所に、ケイトはぶるる、と身を震わせた。 早くこんな場所からは離れたい――そう思い、ケイトが来た道を戻ろうとしたところで、人の気配すらなかった路地に声が響いた。 「もし……そこのご婦人」 聞き慣れない声だった。 ケイトが振り返ると、今しがたまで誰の気配もなかった通りの真ん中に、フードを目深に被った壮年と思しき男の姿があった。 フードに遮られ、目は隠れているが、それが逆にケイトに薄ら寒いものを感じさせる。 努めて冷静を装い、ケイトは男に答えた。 「何か?」 「道に迷ってしまったようでして、大きな道までで構いませんので案内をお願いできれば、と……」 「む、申し訳ない……恥ずかしながら私も道に迷っているのだ」 「左様でしたか、それは失礼を……」 言いながら、男が顔を持ち上げた。 ケイトは何とはなくそれを見やり……、 ――男のフードの内から覗く、妖しい光を放つ赤い瞳と視線がかち合った。 「……っ!?」 その瞬間、ケイトの目に映る風景がぐにゃりと曲がった。次第に視界が明滅していき、意識が遠くなっていく。 薄れゆく意識の中、ケイトが最後に見たものは――フードの男の口元が、下卑た笑みを浮かべている事だった。 (この男、魔法の心得が………) 不覚を取った悔しさに打ちひしがれながら、ケイトは意識を手放した。 ◆ ◆ 次にケイトが目を覚ましたのは、オンボロな小屋の中だった。 木造で、柱や床のあちこちが朽ちている、今となっては打ち捨てられたらしい古めかしい小さな小屋。 (やはり、縛られているか……) 身動きが取れない――両腕は後ろ手に拘束され、両脚も丈夫なロープで縛られており、寝転がる体制のままで起き上がることも難しい。 苦戦しながらも視線を巡らせると、小さな窓の外は夕日に染まる朱色。 自分はどれだけの間、意識を失っていたのだろうか――そう思っていると、意識を失う直前に聞いた声が、ケイトの耳朶に触れた。 「お目覚めか?」 先ほどとは全く雰囲気の違う声に、肩越しに背後を見やったケイトは思わず息を呑んだ。 くたびれた椅子に腰掛けるフードの男……そしてその周囲には、一目見ただけで「そういう人種」と分かる、だらしない身なりの男達がニヤニヤと笑いながらケイトを見下ろしていた。 「貴様、何者だ!」 ケイトは男達を睨みつけ、怒鳴りつけた。 どういう人種かなど、ほとんど分かりきってはいたが、それでも気丈に振舞っていなければ、戦いとはまた違う恐怖に呑まれてしまいそうだった。 フードの男は、そんなケイトの心中を知ってか知らずか、面白そうに答えてみせる。 「商人さ。上玉の女を飾り立てて金持ちに売り払う、ちょいと特殊な商いだがね」 ――やはりか。 世界中を覆い尽くす滅びの花フロワロ。 その影響で物資の流通が滞り、経済的にも混乱が起こっている昨今、そういった手軽に大金を得られる「商い」に手を染める者が少なからずいる。 (まさかカザンで、しかも自分が被害に遭うなど思ってもみなかったが) そこらの軟弱な男よりは力量があるつもりだったが、自分を戒める拘束は思いの外強靭で、力ずくでの脱出が不可能のようだ。 どうしたものか、とケイトが思案を巡らせていると、それを打ち切るかのようにフードの男が告げた。 「だが、飾って提供すればいいってものでもないんだ。お客様に失礼がないよう、愛玩動物の躾をしないとな」 男にとっては何気なく放たれた一言だったが、ケイトはその言葉に全身の血が引くのを感じた。 騎士として生きてきたケイトも女を捨てたわけではなく、もちろん「そういう事」に関しての知識はあった。 そしてその知識があったが故に――ケイトは今すぐにでも悲鳴をあげてしまいたい衝動に駆られる。 「お前さんがどれくらい勉強熱心かにもよるが……まぁ、男を見ればすぐに股を開くぐらいにはしておこうか」 そこでケイトはようやく気が付いた。 フードの男の周囲にいる有象無象は、ただ何の目的もなく集まっている訳ではないのだと。 モモメノの為ならば命を捧げることも恐くない――そう思ってきたケイトは今、まったく別の恐怖に屈しようとしていた。 誇り高き騎士の仮面が剥がれ、明らかな怯えの色を宿し始めたケイトを見やったフードの男は、満足そうに笑って、片手を掲げた。 「犯っちまいな」 『いやっほぉー!』 それと同時に、周囲にたむろしていた男達が喜色満面でケイトに迫っていく。 「いっ、いや……!」 何とか逃れようと身をよじるケイトだが、完全に動きを拘束されている今の状態では、這うことすらままならない。 いよいよ目に涙を浮かべ始めたケイトに、集団の中の一人が服を剥ぐために手を伸ばす。 逃れるように目を硬く閉じたケイトを見やった男が下品に笑いながらケイトの衣服に手を掛けた瞬間、小屋の中に悲鳴が響き渡った。 「ぎぁああああああああああ!!??」 「えっ……?」 ――ただし、男の。 状況が飲み込めないケイトは閉じていた目を開き、そこで目にした光景でますます状況に混乱する事になる。 ケイトに触れようとした男が弾かれたように床へ倒れこみ、ケイトに触れた手を押さえながら苦痛の表情でのたうち回っていた。 「熱ぃよ、痛ぇよぉ……!!」 のた打ち回る男の掌が、まるで劇薬に触れたかのように焼け爛れている。 異常に気付いたフードの男が、声を荒げて立ち上がった。 「女ぁ! 貴様何をしやがった!」 (こっちが訊きたいくらいだ…!) ケイトは、恐怖とはまた別に意味合いで泣きたくなる。なぜ自分はこうまで災難に巻き込まれるのか。 混乱でざわつく小屋――次の瞬間、またもや状況が一変する。 頑丈なドアが乱暴に蹴り開けられ、それに巻き込まれた男が一人、間抜けな声を上げながら床に倒れた。 小屋の中にいる者達の視線が集中するなか、長身の男がゆっくりと部屋に踏み込んできた。 絶句する男達を前に、実にゆったりと部屋に踏み込んだ男は、そのまま歩を進めてケイトの傍らにしゃがみ込んだ。 「ギリギリでご無事みたいですね、ケイトさん」 その男の正体を認めた瞬間、ケイトは激しい安堵と共にその男の名を呼んだ。 「ジェリコ……!」 「はい、ジェリコですとも」 拠点でくつろぐ時と変わりのない、温和を絵に描いたような柔らかい笑顔。 ケイトはそこで気が付いた――自分に触れようとした男の掌は、ジェリコが自分に毒素の鎧を纏わせることで遠ざけられたのだと。 仮にも犯罪集団である自分達の前で、あまりにも堂々と居座るジェリコに、我に返ったフードの男が唾を散らしながら怒鳴りつけた。 「な、な、何だ貴様は!」 ジェリコは焦ることなく悠然と振り返ると、にっこり笑って頭を垂れた。 「あぁ、ノックも無しに失礼。こちらに知り合いがお邪魔していると小耳に挟んだもので」 そういう事を訊いてるんじゃねぇ――と言いかけたフードの男は、一礼して持ち上がったジェリコの顔を見て硬直する。 この時、ジェリコがケイトに背を向けていたのは幸いだったのだろう。 そのジェリコの表情を見なかったおかげで――ケイトはジェリコの笑顔にも「種類」があることを知らずに済んだのだから。 「――失礼」 短く告げたジェリコが、ケイトの顔にばさりと自分の上着を被せた。 「わっぷ!? なんだこれは、おい、ジェリコ!」 ジェリコの意図が分からないケイトは必死で身をよじってみるが、すっぽりと顔を覆ってしまった上着は、手を使わないと外れそうになかった。 一人悪戦苦闘するケイトを他所に、ジェリコの身体が滑るように動き、手にしていた棍が振るわれる。 ぼきゅ、と生物的に嫌な音がした時には、その棍はフードの男の喉を潰していた。 「げ、ぎゅ……!」 魔法の詠唱すらままならず、フードの男は喉を抑えて床に崩れ伏す。命に別状はないだろうが、しばらくは呼吸も難しいだろう。 少なくとも直接的な戦闘とは縁遠そうな男が見せた動きに、いよいよ人さらい達が狼狽し始める。 「こんなにも沢山の方々で知人のもてなしを……これはもう是非御礼をしないと」 笑顔は変わらずとも、身の回りの空気を徐々に剣呑にさせていくジェリコ。 ――鈍い打撃音が、一対多数の変則マッチにとって代わる。 ◆ ◆ ケイトが拘束を解かれ、視界を元通りにされたのは、小屋の外に運び出されてからだった。 気が抜けたのか、ケイトはそのまま腰を抜かしてしまい、今はジェリコにおぶさりながら帰路についている。 腰を抜かした時もそうだったが、ケイトはジェリコにおぶさってからは一層顔を真っ赤にして俯いていた。 「本当に、すまない。助かった……」 これで何度目かも分からないケイトの言葉に、ジェリコはいつも通り、温和を絵に描いたような柔らかい表情で「いえいえ」とだけ返した。 「なかなか帰ってこないので心配してたんですよ。街の人に聞いたらあなたが曰くありの道に入っていったって言うもんですから」 「うぅ、言い訳のしようもない」 騎士としてこんな情けない姿を見られたくない、というケイトの意思を汲み、ほとんど人が通らない道を選んで歩くジェリコ。 女とはいえ人一人を背負っても全く歩調が乱れないジェリコの背中で、ケイトはその肩幅が広い事に今更のように気が付いた。 「ありがとう……」 「いえいえ、どういたしまして」 ジェリコの表情は見えなかったが、おそらくはいつもと変わらず柔らかく微笑んでいるのだろう。 礼を言っても一方的に肩透かしをくらっているような気分になったケイトは、どうにか自分の感謝の念を分かってもらおうと、静かな決意と共に言葉を紡いだ。 「なぁ、ジェリコ」 「はい、なんです?」 「礼がしたいんだ」 「あはは、お礼なら何度もお聞きしましたよ、それで十分です」 「いや、どうにも気が済まんのだ」 ――そうとも、騎士も働きによって主君が御褒美を下さるものだ。 生真面目で不器用な女騎士は、自分の感謝の気持ちを何かの品物で形として贈ろうと考えたのだった。 「私をあのような不貞の輩から救ってくれた事に、本当に感謝しているんだ。欲しい物あらば何でも言ってほしい。私にできる範囲ならばどのような金品でも構わない」 「はぁ……」 「普段は無欲だが、お前にだって欲しいものはあるだろう。是非私に用意させてほしいんだ」 背負われているにも関わらず、どんと胸を張るケイト。 その意気込みを背中にびしびしと叩きつけられるジェリコは、苦笑しつつ「欲しい物、ですか……」と呟いた。 「では、一つお願いしましょうか」 「おお、お前にも欲しいものがあるんだな! 是非聞かせてほしい!」 ずい、と肩越しに身を乗り出してジェリコの顔を疑うケイト。 ジェリコはいつもと表情を変えることなく、静かに告げた。 「あなた」 ――この間、たっぷり数十秒。 ケイトは、わくわくと期待に満ちていた笑顔のまま硬直していた表情を徐々に崩れさせる。 「え……………………???」 人さらいに囲まれた時など比較にもならないパニックを起こしているケイトに向かって、ジェリコは困ったように笑いながら続けた。 「欲しいもの、と言われましても……あなた以外には特に思いつきませんので」 「わ、わ、わ、わわ私が…って、どういう……」 わたわたとうろたえ始めたケイトに、ジェリコは「あぁ、予想通りの反応だなぁ」などと思いつつ答える。 「どういうって、まぁそのままの意味ですが――あぁ、無理にとはいいません、忘れて下さって結構」 やんわり笑い返して、そのまま前を向いてしまうジェリコ。 ケイトは顔に差す夕日でもごまかしきれないくらいに顔を赤く染め上げ、先ほどの姿勢の良さもどこへやら、再びジェリコの背に顔を埋めてしまった。 そのまま、奇妙な沈黙が続くこと数分。 ジェリコが肩越しに振り返り、ケイトを真っ直ぐに見つめて一言。 「………いけませんか?」 いつの間にか笑顔ではなく、真摯な表情へと変貌していたジェリコ――その視線を真っ直ぐに受けたケイトは、 ジェリコの肩に頭を預け、小さく「不埒者だ、お前は……」とだけ呟いた。 すっかり赤くなってしまった耳と、肩にしがみ付いた手が僅かに強くなった事が、何よりも分かりやすい答えだった。 窓から差し込む夕日で鮮やかな朱色に染まる拠点は、それ以外いつも通りだった。 ジェリコ、ヤック、ケイト、モモメノ――4人がそれぞれ決めたテリトリーに、自分の探索用の道具や私物、嗜好品を、個性がよく分かるレイアウトで配置している。 ――ジェリコのテリトリーは出入り口の最も近く。 彼の本分を示す薬学や医学、魔法書の類がジャンルごとに整頓され、配置されている。 薬物の調合などで少々雑然としているスペースの存在が、ジェリコらしいといえばらしかった。 ――ヤックのテリトリーはキッチン台に隣接した食器棚の手前。 探索に使う道具や武具と、趣味で収集しているボトルシップが一緒くたに散らばっている。 食事で食器を出すのに邪魔だから整頓しろ、と何度も声を荒げた経験がある事を、ケイトは思い出していた。 「あの、ジェリコ……」 寝台が4つ連なる就寝部屋からは、女性のテリトリー。 ――道具保存用の空き宝箱付近がケイトの空間。 ジェリコ以上にすっきりと整頓された空間には、鎧や剣、盾など必要最低限の品しか置いていない。 密かな愛読書である恋愛小説のシリーズが探索用バッグの奥深くに隠されているのは、ケイトにとって最大の秘密だ。 ――窓や入り口からは見えることのない安全な一画こそが、(ケイトが定めた)モモメノのテリトリーだった。 「王家の者にとって最低限の身嗜みを」と、ケイトが自国から持ち出してきた衣服の影響か、保有スペースは4人の中でも一番大きかった。 それにも関わらず整頓されているのは、こまめに折を見てケイトが整えているからだろう。 竜を狩り――ぶちまけられる臓物や気色の悪い血液に塗れ、怨嗟の言葉を浴びせられ、心身共に疲弊してカザンに帰還した時、この屋敷の変わらぬ部屋の景観こそが、平穏への到達を最初に教えてくれた。 戦闘でモモメノに被害が及ばぬよう、ジェリコやヤック以上に神経をすり減らすケイトにとって、この拠点に入る安心感は、誰よりも顕著にあったのかもしれない。 だが、今のケイトには、そんな安心感を覚える余裕すら許されなかった――背中に柔らかな衝撃を感じた瞬間から。 「ジェリコ、その……」 ケイトは戸惑いながら、旅仲間である青年の名を呼んだ。 腕は動かせない――それら全てを包み込むように、ジェリコが自分を抱き竦めている。 苦しさは感じないが、払い除けようとしてもその拘束は思いの外強く、またジェリコが動く気配もなかった。 「もう、か……?」 艶やかな髪に顔を埋めるジェリコに問いかける。 うなじのあたりに生温かい息がかかったような気がした。そして返ってくる短い答え。 「えぇ、我慢できません」 それを聞いたケイトに軽い衝撃がはしった。 ――ケイトが知るジェリコという男は、礼節を弁えたどこまでも紳士的な人物だ。 モモメノはもとより、ケイトはこの拠点でドアノブに触れた経験がない。それは誰あろうジェリコが、出入りを目敏く見つけて先回りし、ドアを開いて待っているからだ。 ケイトが、自分には婦人への気遣いの類は不要だ、と何度言っても、ジェリコは困ったように笑うだけで、次にはまたドアに先回りしているのである。 同じように、食卓に着くときも女性陣の椅子を引いたり――モモメノとケイトがそのタイミングを同じくした時にはモモメノを優先するものの、それと同時に申し訳なさそうな顔をしている事も知っている。 そんな、王宮の執事に召抱えても問題なさそうな男が、「我慢できない」と言い切ったのだ。その衝撃たるや、魔物の攻撃で混乱したモモメノに鞭でシバかれるくらいのものがある。 その言葉の意味を裏付けるように、回された腕の力が強くなったような気がした。 「普段のお前からは、考えられない……」 力なく呟いたケイトの背後で、ジェリコは薄く笑った。 「普段の私、ですか」 可笑しそうに揺れる声が聞こえると、ケイトを抱き締める力が消え去り、代わりに彼女の身体はふわりと浮いていた。 花嫁を抱き上げるようにケイトを易々と抱え上げたジェリコは、そのままつかつかと食卓を横切り、寝室へと入っていく。 その足が向かうのは自分の寝台――自分の匂いが染み付いたその空間に、ジェリコはケイトを横たえた。 「せめて風呂に――」 「普段通りって仰いますけどね」 心の準備のための時間稼ぎを――遠まわしな小賢しいセリフを言おうとしたところで、ジェリコがそれを切って捨てる。 顔は相変わらず笑顔のままだったが、そこに抗い難い圧力が含まれている事に、ケイトは初めて気が付いた。 ジェリコは笑顔ひとつでケイトの自由を封じ込めて、続ける。 「ご存知ですか? 私は普段の態度で自分の本性を隠してるんですよ?」 身を起こそうとするケイトに覆い被さりながらも、ジェリコの独白は続く。 「本当の私は衝動的で、独占欲が強くて、目的の為には手段を選ばない、性根の腐りきった男です」 ケイトの頬に、男らしく大きな掌が添えられる。 熱い――すくなくともケイトにはそう感じられた。その掌に同調するように、ジェリコの言葉にも熱が入り始める。 「この肌に私以外の誰かが触れるなんて、考えたくもない。あなたに牙を向ける竜どもを、何度くびり殺してやろうと思ったことか」 「ジェ……」 何かを言おうとしたが、それはジェリコに唇を塞がれ、言葉になりきらなかった。 問答無用に女を黙らせる、荒々しい口付け。 最初は強くついばむだけだったそれも、ケイトが大人しくなると共に、深く重なりあい、やがて口内にその食指を伸ばし始めた。 じゅるじゅるとわざとらしい音をたてて唾液を啜り、また逆に自分の唾液を相手へ送り込む。舌先で歯列のひとつひとつを丹念に愛撫し、お預けをくらう舌には、時折思い出したかのように絡み付いて、からかうように焦らす。 息継ぎもそこそこに、彼女の口を貪る。一方的で容赦も加減もないその口付けは――ジェリコ自身が言う通りの、彼の本性を如実に表しているかのようだ。 時折、重なる唇の隙間から唾液が溢れ、ケイトの口まわりをずるずるに汚していくが、彼女はそんな事を気にしている余裕などなかった。 満足に息ができず、また苛烈な攻めもあって濁りだすケイトの意識。 普段はひとつの隙もない光を宿すケイトの瞳が徐々に蕩けだすのを見計らい、ジェリコは彼女の平服である白いセーターの裾に手をかけ、肌着のシャツごと一気にたくし上げてしまった。 まるで菓子の包み紙を剥ぐかのようにあっさりとした動き、その包装の下には――男にとっては菓子よりも甘美な代物が眠っていた。 ――ぶるん、と…… 擬音をつけるならそれ以上に適切なものはない。 そもそも何かで表現しようとすること自体が無粋に思えてくるような、極上の柔らかさを持つ肉の果実が、勢いあまってふるふると揺れる。 騎士として厳しく鍛えても決して女性らしさを失うことのない豊かな乳房が、ケイトの清廉さを表すかのような純白のブラに窮屈そうに収まっていた。 ちぅ……、と可愛らしい音で締めくくって互いの唇が離れる。 「あ、ジェリコ……」 唾液の橋がぷつりと切れるのを見るともなしに見ながら、ケイトは数分前からは考えられないほど甘ったるい声をあげた。 とろりと垂れ下がってしまった目と同様に、意識まで蕩けさせられてしまったのか、下着を晒す自分の痴態を気にかける余裕すら見受けられない。 「すご、すごかったぁ……キス、が…あんなに、いやらしいなんて」 そもそもケイトはキス自体が初めての経験だった。 恋に恋する、というほどではないが、誰にも明かしていない趣味の恋愛小説を読みふけって、そこに遠まわしな表現で書かれた「やらしい行為」を夢想するのが関の山だ。 キスは激しいものでも舌を触れ合わせるくらいで、愛しい異性と交わすそれはとても甘いもの――それが今までのケイトの認識だった。 一番甘いのはケイト自身の認識に他ならなかった。 激しさは頭がくらくらするほどの酸欠じみた気分にさせられ、『甘い』という点は事実だったのかもしれないが、そのレベルは段違い。 ケイトが身を以って体験したその甘さは、砂糖や果実のような甘さ、という表現が子供っぽく思えるような――例えるならばドロドロに煮詰めたシロップが近い。 要するに匂いをかいだだけでむせ返ってしまいそうな、ドロッドロでグッチャグチャの甘さだったのである。 丹念に丹念に、それこそ実際に十数分ほど費やして、ケイトの少女めいた幻想を打ち砕いたジェリコは、自分の唇をちろりと舐め回し、そして抜け抜けと普段通りの笑顔をケイトに向けた。 (意識がはっきりしない内に「剥いで」おきますかね……) 微妙に邪悪に笑ったジェリコは寝台の上に座りなおすと、投げ出した両脚の間に、ケイトの身体を捕らえるように抱き起こした。 「ジェリコぉ……」 切なげに睫を震わせるケイトの唇を、笑顔で再び塞ぎにかかる。 余韻を刺激するかのように、小鳥がついばむようなキスを繰り返しながら、ジェリコはケイトの背に回した手で、彼女の裸体を守る最後の砦を実にあっさりと崩落させた。 未練がましく纏わりつく紐を、腕を通して完全に取り剥がす。 「綺麗、ですね……」 素直な感想が口を割った。 普段は無骨な鎧に隠れ、日の光に晒されることのない、白い肌。ミルクを溶かし込んだかのようなそれは陶器にも例えられるほど美しい。 その瑞々しく豊かな丸みに反して、頂にある桃色の吸い口は、ぽつんと控えめに存在していた。 普段、厚手のセーターを押し上げるほど自己主張が強い乳房は、女性らしく魅力的な丸みと重量感を備えていたが、決して過度ないやらしさを感じさせなかった。 それは形云々の問題もあったが、一重にケイト自身の凛とした雰囲気が強くはたらいているからなのだろう。 だが、その魅力が健康的なものであったにせよ色香に溢れるものだったにせよ、ジェリコには全く関係のないことだった。 ジェリコが欲したのはケイト自身――たとえこれが魔乳だろうが貧乳だろうが適乳だろうが、彼自身の欲望には何の影響も与えなかったに違いない。 期待に身を震わせながら顔を下げたジェリコは、その豊かなふくらみを下から一気に、べろりと舐め上げた。 「ひぁ、ん……!」 舌に重たい抵抗感を感じつつ、持ち上げるようにして舐め上げる。 舌が撫ぜる位置が徐々に上がっていき、それが桃色の先端に触れるかどうかといった瞬間、ジェリコは素早く顔を引いた。 支えを失った彼女の乳房が、ゆさりと重たげに揺れる。 「あう、ぅ……」 熱いぬめりが乳房を這い回り――しかし、敏感な頂には触れずに引っ込められる。 経験は無いにせよ、その先の感覚に対する期待があった――ケイトが切なげに鳴いて視線を下ろすと、自身の乳房に顔を埋めてにこやかにこちらを見やるジェリコがいた。 「……!!」 あまりの気恥ずかしさに、できる限りの力を込めてジェリコを睨みつけるが、その顔の手前に自分の乳房が重たげに揺れていては、非難めいた視線も、滑稽にさえなってしまう。 「失礼、あまりにも可愛らしいので悪戯してしまいました」 ジェリコは顔がにやけそうになるのを堪えながら嘯き、みたびケイトの身体を抱え上げた。 ケイトが自分に背をもたれるような体勢にし、ついでのように味気ないズボンを彼女の脚からひっこ抜く。 ジェリコは、下に一枚を纏っただけの状態になったケイトを満足そうに抱き締め直した。 「あ、恥ずかし、い……」 また元の調子に戻って赤くなってしまった顔を両手で覆い、ケイトはいやいやと身をよじる。 「お前だって、嫌、だろう? こんな、ごつごつした、熊…みたいな、身体……」 「熊、ですか……」 腕の中で悲壮さを漂わせたセリフを反芻しながら、ジェリコは改めてケイトの裸体を眺め直した。 ごつごつした、熊のような身体――どう謙遜すればそんな表現が出てくるのか、疑問である。 剣術の鍛錬や度重なる行軍で引き締められたケイトの身体は、その影響での小さな青アザや擦過傷などはあったものの、むしろそれが無ければ存在自体が冗談であるかのように完璧だった。 無駄な肉など一切なく引き締まった、熊というよりは豹に近い、しなやかな体躯。 それを維持しながら、胸や尻はあらゆる女性が羨むほど、豊かながら整った肉付きをしており、黙っていれば彫像と言われても信じてしまいそうな造形美が完成していた。 だがジェリコは、「豹のようだ」と自分が抱いた感想とは少しばかり違った意向を口にした。 「熊はいけませんね、私が……兎に変えてさしあげます」 「うさ、ぎ……?」 自嘲気味に自分を罵ったケイトの頭上で疑問符がチークダンスを踊る。 兎とはまた――愛らしくはあるが、そんなイメージが自分にないのは、他ならぬケイト自身が一番自覚していた。 「わたしを、うさぎに……変える、のか………?」 訝りながらこちらを見つめ返すケイトに、ジェリコはサディスティックな笑顔をちらつかせながら答えた。 「えぇ、兎さん……季節構わず情欲を持て余して発情しっぱなしの可愛いケダモノに、ね……」 爽やかな笑顔から飛び出したエグいセリフに、ケイトはますます赤らめた顔を俯ける。 そのいじらしい仕草を見やったジェリコは満足げに微笑んで、彼女のへの侵略を再開した。 ケイトが祖国で所属していた王国近衛騎士団は、やはり国の規模に比例したささやかなものだ。 ただでさえ男がほとんどのむさ苦しい騎士団にあって、ケイトの存在は際立ったものだと言えた。 その清廉な美貌もさることながら、内気なモモメノが自ら父に願い出て護衛騎士に召抱えるなど、やはり人を強く惹きつける何かを持っていた。 騎士の鑑と言える立ち居振る舞いや、弱きを助け強きを挫く正義感、そしてそれを振りかざすに足る力量を備えたケイトは、事実上、騎士団の要となる存在だった。 ケイトが騎士として頭角を現すにつれて民間人からの騎士団入隊希望者が増え、また在籍する女性騎士達はケイトを目標として、おろそかになりがちだった鍛錬にも真面目に取り組むようになった。 そんな、ケイトに憧れる国の人々は――今の彼女の姿など想像したこともなく、これから先にすることもないに違いない。 カザン共和国のとある屋敷の中、寝室で鎮座したベッドの上で、ケイトは秘所を覆う薄布一枚という刺激的な格好で、ひとりの男の腕の中に納まっていた。 恋する乙女のように顔を赤らめ目を蕩けさせ、しかし乙女というにはいささか悩ましく、ケイトは―― 「ジェリコ、っ……ん、ふ……ぅ……」 色香の過ぎた香りを漂わせながら身体をよじらせていた。 そして、ケイトを弄ぶように愛するのは、彼女の旅仲間であるルシェ族の青年――ジェリコ。 ジェリコはケイトの背に密着し、艶やかな髪に幾度も口付けを降らせながら、彼女の胸元に寄せた掌を――触れることなく、ゆらゆらと宙空に彷徨わせていた。 「ん……んぅ……」 ケイトが先ほどから漏らす吐息が声になりきらないのも、この奇妙な「寸止め」が原因だった。 触れるか触れないか、空気の薄膜一枚を隔てた微妙な位置で、ジェリコの掌が蠢く。 まるでその悩ましいフォルムをなぞるような、触れそうで触れない遠まわしな愛撫。 その拷問まがいの薄い快感に耐えかねたのか、ケイトがじわりと涙目になりながら言葉を震わせた。 「ジェリコ、こんなの…やだぁ……」 「いやだ? どう嫌なんです?」 返ってくるのは、楽しげな問いかけのみ。目の前の治療士は「こういった状況」ではここまで変貌するのか、と軽いショックを受けながら、ケイトは泣く泣く自分の望みを吐露する。 「ちゃんと、ちゃんと……触って」 半泣きになりながら、ジェリコの掌に自分の手を重ねて、自分の乳房へと押さえつける――否、押さえつけようとした。 だが、腕に力を込めて踏ん張るジェリコの大きな掌はぴくりとも動かすことができなかった。 自分ではだめなのだ、ジェリコでないと――この大きくて温かい掌でないと、気持ち良くなんてなれない。 まるで幼子のように必死なケイトを見やるジェリコは、薄く笑いながら彼女の耳に口を寄せた。 「どこを触ってほしいんです?」 吐息交じりに耳元で囁かれ、ケイトは羞恥に打ちひしがれながら口を開く。 「わたしの、わたしのぉ……む――」 「胸っていうのはナシですよ。そんなムードもない言い方じゃ冷めちゃいます」 なけなしの勇気を振り絞った言葉さえ途中で切り捨てられ、ケイトの退路がなくなった。 胸じゃなければ――言葉自体に心当たりはあるが……それを言えというのか、幼稚だが直接的な、あの言葉を。 だが、言わなければジェリコは何時間でも、この拷問のような「寸止め」を続けるだろう。 この拷問から抜け出すため――という建前の下、快感を求める欲望に屈したケイトは、今にも泣き出しそうな震える声で、告げた。 「おっ、ぱい……」 してやったり――ジェリコは満足げに笑いながら、次の工程へと移る。 もう少し、もう少しで――苦労して積み上げた砂の城を自らの足で踏み崩すような、あの例えようもない快感が得られるのだ。 ジェリコは気持ちの昂ぶりを必死で抑えて、再びケイトの耳元で囁いた。 「おっぱい、おっぱいですか……」 わざと羞恥心を煽るように、いたぶるような楽しげな声色で――ケイトの耳朶をくすぐる、トドメの言葉。 「ケイトさんの――えっち」 「……っ!」 ――ぽろり、と ついに、ケイトの目尻から大粒の涙がこぼれ落ちた。それは頬を伝って、ジェリコの手にぽつりと落ち着く。 一度限界を超えてしまえば、涙は続けざまにぽろぽろとこぼれる続けた。 それに伴うかのように、ケイトが今まで羞恥で押さえ込んでいた感情が――ついに爆発した。 「いい……えっちで、いいから……はしたない女って思ってもいい、からぁ……」 しゃくり声で途切れ途切れに、しかし止めどなく、ケイトは自分の望みをぼろぼろと零す。 「もう、イジワルしないで、ちゃんと……気持ち良くして、ジェリコぉ……」 (あぁ、これで心置きなく――) ジェリコは自分の身体が震えるような高揚感を、確かに感じ取っていた。 これでいい――理性だの建前だの、そんなものを全て取り払った丸裸のケイトこそが、ジェリコの欲したもの。 ケイトの震える肩を掴み、自分の方へ向き直させたジェリコは、普段のそれよりもいっそう温かく――春の日差しのように微笑んで、ケイトに情熱的なキスを降らせた。 ◆ ◆ 「あぁ……ジェリコ、すごいの、すごいの……」 宵闇が支配し始めた空の下、灯りも点っていない屋敷の暗闇に、ケイトの甘い泣き声が響き渡る。 その合間にはピチャピチャと淫猥な水音が添えられており、屋敷に充満する性の香りを強めていた。 ジェリコは、その引き締まった左腕をベッドとケイトの背の間に差し入れて細い腰を抱き、その豊かな双丘を思うさま愛していた。 唇と同様にジェリコのキスを待ちわびた桃色の突起に、さんざん待たせた償いをするかのような熱烈な口付けを施していくと、その度にケイトは肩をわななかせて、切なく鳴く。 「あん…やぁ……っ!」 唾液でべっとりと濡らし、それを拭うように舌先でこね回し、痺れるほど強く噛んだかと思えば、ちぅ…と優しく吸い上げて―― ケイトもすっかり身体の固さがなくなり、素直に快感を受け止めていた。花の蕾のような唇を割って響く声も、蜜のように甘く蕩けている。 ――だが、 「ひぁ、あ……あぁ、ん……っ!」 彼女の声に含まれる艶は、いくら期待に染まっていたとはいえ、あまりにも濃さが過ぎた。 何故か――それは、ジェリコが彼女も気付かないほどあっさりと、かつ自然に、空いた右手で未開の花園を開拓し始めていたからからだった。 文字通り「最後の砦」となった白い薄布も既に取り払われ、今やケイトは完全に生まれたままの姿となっていた。 誰にも晒されることのなかったデリケートな場所に手をあてがい、陰核をぐりぐりと押しつぶしながら、残りの指で秘唇をなぞる。 まだ、どの男も受け入れた事のないその場所は、しかしすぐ後に踏み入るであろう男の熱を想い、とろとろと愛液を吐き出しながら薄く開いていた。 (……(たぶん)処女なのにコレですか、随分と想像力が豊かなようだ) 軽くこじ開けるように、指を少しだけ侵入させてみると、うねってその指にしゃぶりつき、熱烈な歓迎を見せるケイトの「オンナ」。 しかし同時に、抗いがたい緊張があるのか、肩も硬直させてしまっている。 不用意に時間をかけるのは逆効果と踏んだジェリコは、ねぶり回していた乳首を一際強く吸い上げ、引っ張り上げるように口を離した。 「ぁあ……!」 ちゅぽん、と気の抜けた音がして、ケイトの豊かな乳肉がタプタプと弾んだ。 ジェリコの愛撫にいちいち可愛らしい反応を見せるケイト――その姿がまたジェリコの加虐心をゆさぶる。 だが、ジェリコはそれを辛うじて抑え込んで彼女の両脚に割って入ると、腰にまわるベルトの留め金に手をかけた――出番を待ち望んだものが、解放される。 臍につかんばかりに反り返った、長大で荒々しい肉の幹が、肌着ごと引きずり下ろされたズボンの内から現れた。 それをもろに直視したケイトは言葉を失いながら息を――そして、僅かに湧き出した唾を飲み込んだ。 窮屈な拘束から放たれた赤黒いそれは、熱く蕩けた女の柔肉を欲し、びくびくと猛り狂っている。 「す、ご……ぃ……」 遠い記憶――無邪気に外を飛び回っていた幼い頃、父と一緒に風呂に入った時に見た父のそれは、幼心にも強烈なインパクトを残していた。 だが……、とケイトは身を震わせる。今、目の前で張り詰めるそれは、そんな幼いころに定着した潜在意識下のインパクトさえ容易に粉砕する、凶悪な代物だ。 その肉の凶器の切っ先をケイトの割れ目に押し付け、ジェリコは彼女の顔を真っ直ぐに見つめた。 その表情は笑みではなく、この屋敷までの道中で彼女を欲した時の、真摯に引き締まったもの。 「いきますよ」 よく通る声で告げられた、確認の言葉――それで我に返ったケイトは焦るように、咄嗟に言葉を返す。 「あ、あの……ジェリコ――!」 「なんです?」 真顔で返事をされ、ケイトは言葉に窮してしまった。 きまりの悪そうに視線を泳がせる顔は羞恥と快楽によってほんのりと赤くそまっており、その口が紡ぐべき言葉はなかなか出てこない。 少しばかりの間、脚をもじもじ手をもじもじ肩をクネクネと一人ダンスを披露していたケイトだったが、意を決し――た、と思ったらまた視線を外す。 律儀に待つジェリコが少々ジト目になってきたところで、ケイトはようやく何かを決心したかのように、ガチガチに緊張していた身体の力を抜いた。 胸の前で手をもじもじと合わせ、顔をこれ以上ないくらい真っ赤に染めて、上目遣いで―― 「初めてだから、その――優しく、な………?」 ――ガッシャーン、っとな。 そんな音が立ったかどうかは分からないが、少なくとも表面上は表情を変えることなく頷いたジェリコの理性は、大きな打撃を受けて木っ端微塵に砕け散っていた。 己のポーカーフェイスの才能を全力で褒め称えながらも、内なるジェリコはボタボタと赤い液体を垂れ流す鼻を押さえながら悶えていた。 普段は一点の隙もない高潔な女騎士が、純愛系エロ小説のテンプレートじみた言動を素でやらかしたのだ。これを見て揺らがない男はゲ●かイ●ポくらいのものだろう。 (ああああぁぁぁ、そんなギャップを見せられたら我慢できるわけがくぁwせdrftgyふじこlp;) 今すぐにも叫びだしたい衝動を抑え、ジェリコは(表面上だけは)優しく微笑み、ケイトに応えた。 「もちろんです。でも――最初だけは加減しません。最初の痛みは、私があなたを女にする大事な証なんですから、忘れさせませんよ」 一息に言い終えたジェリコは、これまで抑えこんできた自分の欲望を全て解き放ち――ケイトの処女を奪った。 「あ、あああああああああーーーーーっ!」 いくつもの感情が混ざり合った、大きな心のうねりを伴う悲痛な声が、屋敷の薄暗闇に満ちていく。 身体的には完成していても、刺激される事がなかったゆえにきつく閉じたままだったケイトの膣は、侵入してきた熱い肉塊を強く締め付ける。 それは拒絶によるものではなく――自分自身を強くジェリコのものに擦りつけて奥へ奥へと煽動するような動き。 長らく待ちわび、ようやく会えた愛する者への抱擁に似た、熱烈な歓迎だった。 だが、文字通り身を裂かれるような痛みに塗れるケイトに、それを感じ取る余裕はない。 一気に奥まで突き入れられたジェリコのペニスはあまりにも大きく、痛くて苦しくて、それでも、その痛みを待ちわびていた自分もいる。 苦しい、愛おしい、狂おしい――色々な感情がぐるぐると混ざり合って、それは大粒の涙になってぽろぽろと零れ落ちた。 「いたいよ、いたいよぉ……っ!」 ケイトは目をきつく閉じて痛みに耐え、助けを求めて腕を宙に彷徨わせる。 その様を見やり、ジェリコはクッションに沈んでいた彼女の上半身を抱き起こし、背から回した手で彼女の後頭部を押さえるようにして強く抱き締めた。 「ケイトさん、あなたの純潔を奪って、その痛みを与えたのは私です、この私ですよ」 ジェリコは一言一言を区切って、ケイトに聞こえるようはっきりと告げる。 その肩に頭を預け、ケイトは泣きじゃくりながら何度も何度も頷いた。 「分かりましたね? 忘れませんね?」 「うん、うん……!」 必死に返事をしながらジェリコにしがみ付くケイトは、腹を圧迫するような苦しさに耐えかねたかのように仰け反り、彼の背中に爪を食い込ませた。 ジェリコは背中にピリピリとした痛みを感じながら、それを呑み込まんばかりの快楽を下腹に感じ取っていた。 ――情けないが、あまり保ちそうにない。自分の理性がなくなる前に…… ケイトの艶やかな髪を慈しむように撫でていた手を下ろし、ジェリコは静かに片手で印を切った。 「それなら――もう、辛くて痛い時間は…終わりです」 あやすように囁いたジェリコは、規律正しい印で大気中のマナを集めたその手で、ケイトの腹――臍の下あたりを、優しく撫でた。 「あ、ぅ……?」 痛みに溺れていたケイトは、自分に触れるジェリコの掌からにじみ出る温かな感覚に気が付いた。それはじわりと体内に染み込んでいき、膣の中の痛みを徐々に取り払っていく。 ジェリコの手に収束した治癒のマナが、ケイトの体内に染み込んで細胞を賦活させ、痛みを取り除いているのだ。勿論、所有の証となるのだから、処女膜の再生などの無粋はない。 じくじくとした痛みが、母の腕の中のような優しい温かさに包まれて消え去ると、頑なに強張っていたケイトの身体の力が抜けていく。 「もう、痛くありませんか?」 頬を伝った涙の跡を拭い去りながら尋ねるジェリコに、ケイトはようやく、笑顔で頷くことができた。 「よかった……。それでは、もう我慢しませんよ」 言いながら、ジェリコはケイトのしなやかな身体を抱き直すと、一度だけ、激しく彼女を突き上げた。 「ぁあんっ!」 ケイトの唇から漏れ出した声は、彼女が見知らぬ誰かのもののように甘く蕩けきっていた。体内に打ち込まれた鈍い感覚に、ケイトは白い喉を晒して仰け反った。 「これでようやく――」 ジェリコの、喉から絞り上げるような声が響き――そこでようやく、ケイトはジェリコにも理性を保つ余裕がないのだと理解した。 「もう、手順も儀式もいらない………あなたを悦ばせて、めちゃくちゃにしたい」 迷いもなく自分の全てを欲するジェリコを目の前にして、ケイトの胸を得体の知れぬ燻りが焼いた。それは、海の潮が満ちるようにじわりじわりと全身に広がっていく。 ケイトは衝動のままに、ジェリコの唇にむしゃぶりついた。 自らの意思で舌を差し込み、ただ求めるがままにジェリコの口内を舐めまわし、粘膜を啜る。 ひとしきり堪能した後に離れたケイトの顔は、ひどく淫靡になっていた。口のまわりは唾液にまみれ、瞳は媚薬でも飲まされたかのように蕩け、呼吸が荒い。 ジェリコの欲望の炎が、じりじりとちっぽけな理性を燃やし尽くそうとする中で、ケイトは一言だけ告げた。 「………きて」 ――それが、トドメ。 一匹の獣となり果てたジェリコは無造作にケイトを押し倒し、がむしゃらに腰を叩きつけはじめた。 屋敷に再び、ケイトの大きな声が響き渡る――ただし、先ほどのものと同じ人物とは思えない、艶と幸福感を孕んだ声で。 それから後の二人は、まさにつがいの獣だった。 手も足も指まで絡め合い、互いの口を貪りながら腰を振りたくる。 「あぁ、は、ぁんっ……じぇりこ……! そこぉ、そこ、すごいよぉ……!」 普段の理知的な姿など見る影もないジェリコの荒々しい攻めを受けながら、ケイトはうっとりと顔をゆるめて鳴き続ける。 すらりとした長い脚は彼の腰に絡みつき、もっと奥へと誘うように抱き締めており――ジェリコもそれに応じるように、攻めを苛烈にしていく。 「ケイト、ケイト……!」 ジェリコもまた、普段から身に纏う理知的な紳士という仮面を脱ぎ捨て、本能が促すままにケイトを求め、ケイトに自分を与える。 幾度も幾度も彼女の膣をえぐり、子宮口を小突いて、マーキングをするように膣内に射精し――それでもまだ足りない、とばかりに腰をふり、舌を絡めあう。 向かい合っての交わりを堪能すれば、今度は獣のように交わり犯し合った。 四つん這いになったケイトの背にのしかかり、思うさま腰を叩きつける。 獣のような体勢で犯されるケイトは、その背徳感や羞恥も手伝い、さらに身体を仰け反らせ、存分に乱れた。 重たげに揺れる乳房をこねるように揉みしだき、ケイトの耳に、首筋に、肩に、跡をつけるように口付けていく。 「じぇりこ、すき、だいすきぃっ! もっと、してぇ……ぁ、はぁっ……いっぱい、いっぱいぃ……っ!」 身体を支える両腕が力を失い、突っ伏したような体勢になっても、ケイトはジェリコを求め、ジェリコもそれに応えた。 完全に理性を失ったジェリコは、射精している途中も休まず腰を振りつづけて、ケイトを限界以上の絶頂に押し上げる。 「ぁ……ふぁっ、いくぅ……いくいく、いっくぅぅぅぅぅう!」 僅かな時間にオンナとしての性の悦びを覚えたケイトは、何度もそれを味わい、はしたなく貪り尽くして、幾度も身を震わせ絶頂に達した。 「しゅごい、おなかぁ……ちゃぷちゃぷって、あ、ぁんっ……またっ、いぐぅぅぅっ!」 ――時計が八つ鳴る頃には、ケイトは汗と精液と愛液に塗れ、身体に力を入れることができなくなっていた。 それでも膣はジェリコを求め、己の膣内を抉り続ける肉棒に絡みつき、優しく愛撫する。 「……しゅき、じぇりこ……しゅき……だいしゅきぃ……」 ――時計が九つ鳴る頃には、ケイトはとりとめの無い求愛の言葉を垂れ流し続けながら、それでもジェリコを求めていた。 ジェリコもまた荒い息をつくのみで、言葉を発することもなく、それでも腰の動きを止めることはなかった。 「んぉううぅっ! あひっ、ん、んお゛っォォ……あぁあ゛あ゛あ゛あぁぁ……!」 ――時計が十鳴る頃には、ケイトは既に言葉を発する理性を失い、白目を剥いて舌を突き出し、獣のように喘いでいた。 無駄な肉など一切存在しない腹は、内側に放たれたジェリコの精液のみでぽっこりと膨らんでいる。 「ケイ、ト……あい、して……いるん、だ……」 朦朧とした意識の中で、ジェリコは呟く。 最後の方はほとんど記憶がない。疲れ果てた身体は、のろのろと前後運動を繰り返すのみ。 「か、は……っ」 びくりと身体を震わせ、ジェリコはケイトの中へ精を放った。 「……っ!」 喘ぐ声も枯れ果てたケイトだったが、それでも身体に注ぎ込まれる熱を感じ取り、ぴくりぴくりと身体を震わせる。 ジェリコが何度目とも知れぬ射精をし、同時にケイトが何度目とも知れぬ絶頂を迎える――それを皮切りに、ついに二人は同時に意識を手放し、柔らかなベッドに沈み込んだ。 汗と涙と唾液と精液と愛液と――あらゆるものに塗れながら、疲れ果てた二人はそれを拭うこともできず、深い眠りに落ちていく。 寝息で僅かに上下する二人の身体――その場には、むせ返りそうなほど濃い性臭が渦巻くのみ。 二人の熱だけで上昇しきった屋敷の室温が冷めるには、かなりの時間がかかりそうだった。 ――そして、 夢の世界へ旅立った二人が当然気付くことはなかったのだが――二人が眠る屋敷のドアは薄く半開きになっており、その隙間から室内の様子を見やる二つの瞳。 「な、なぁ……モモメノ………………(ごくっ)」 「ん、なに………ヤック………(ぽっ)」 大人達のスんゲェ見本を何時間にも渡って見せ付けられた少年少女が、今まさに危険極まりないゴールインをしようとしていた。 → とある女騎士の油断
https://w.atwiki.jp/pazdradraz/pages/625.html
図鑑 No.286 キングセブンドラゴン図鑑説明文 入手方法 コメント欄 図鑑 No.286 キングセブンドラゴン No.286 タイプ 幻龍 レベル 1 最大 主な生息地 スキル レア度 HP 進化前 --- Lスキル 属性 攻撃 進化後1 必要チップ1 編集 経験値 防御 進化後2 必要チップ2 図鑑説明文 入手方法 コメント欄 名前