約 4,199,987 件
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/98.html
其の三 予感 前ページ次ページゼロの影 ある日、教師一同とルイズ達はオスマンの下に集められ、あれこれ騒ぎ合っていた。 巨大なゴーレムが宝物庫を破り、神秘の石と呼ばれる宝を盗み出したためだ。 さらにオスマンの秘書のミス・ロングビルから盗賊フーケの居場所を突き止めたという報告がもたらされた。 力があるため上に立つ貴族は、きっと誇りにかけて賊を捕らえようとするに違いない。 だが、その気概と実力を見ようと考えていたミストバーンの予想に反して誰も名乗り出ようとはしない。危険に怯え、尻ごみしている彼らは誰かが戦ってくれるのを待つだけだ。 苦しい時は力ある者にすがり、平和になれば掌を返す――人間を評した主の言葉が蘇る。 彼が失望の息を吐いた瞬間、杖が掲げられた。 その持ち主はルイズ。 認められるために行くつもりだ。 キュルケとタバサも同じく杖を掲げた。 教師達は反対したが、オスマンはコルベールから儀式の様子を聞き、ミストバーンが計り知れない力を持つと告げられていたため許可した。 彼女らにミス・ロングビルを加え、フーケ討伐隊が結成された。 フーケが潜んでいるのは森の廃屋だと情報を掴み、深い森の中に入っていく。 目当ての小屋を発見し、ルイズは無意識のうちに期待に満ちた目で使い魔を見つめたが反応は無い。 いきなり頼ろうとしていたことに気づいた彼女は赤面し、気配を殺して自分で中の様子を窺った。 誰もいないため五人は一度小屋の中に入って手がかりが無いか探すことにした。 部屋には埃が積り汚れきっていた。テーブルの上にお取り下さいと言わんばかりに無造作に青みを帯びた石が置いてある。石は拳ほどの大きさで握るための柄がつけてあった。 「これが神秘の石? きれいね」 警戒しつつキュルケが手にとって眺め、美しさに溜息を吐いた。ミス・ロングビルは輝きに魅せられたように爛々と燃える目で見つめていたが、我に返って咳払いした。 神秘の石を持って目を細める。 「もしかするとフーケを捕らえるのに役立つかもしれません。使い方をご存じですか?」 キュルケとルイズ、タバサまでもが首を横に振ると彼女は残念そうに肩を落とし、偵察に行くことを告げた。 キュルケとタバサが小屋に残り、ルイズとミス・ロングビルは森の中に踏み込んでいく。気配を感じさせぬままミストバーンもついていく。 いくら辺りを調べてもフーケの痕跡はなく、退屈してきたルイズは疑問をぶつけた。 馬車に乗った際彼女が御者の役目を果たしたのだが、ずいぶん手慣れていた。手綱を握るのは普通付き人に任せておくものである。 理由を尋ねると、彼女は穏やかに微笑みながら貴族の名を失くしたためだと答えた。オスマンが貴族や平民にこだわらないからこそ秘書をしていられる。 「ありがたいことですわ。もう少しセクハラをどうにかしてくれれば言うことはないのですけど」 困ったように笑う彼女から日々のセクハラについて聞かされたルイズは天を仰いだ。 「やめてしまえばいいじゃない」 「……養うべき家族がいますから」 その眼は、大切な者のためなら何でもできると語っていた。 ルイズが見とれると、照れたのか頬がかすかに赤く染まった。 結局成果は無く、小屋まで戻ることに決めたミス・ロングビルが首をかしげた。 「あなたの使い魔の姿が見えないようですが」 「うそっ!?」 ルイズが慌てて周囲を見回すと使い魔の姿はない。 愛想を尽かされたのかと思い、焦りながら散々視線を動かした後でようやく空に――それもかなりの高さに浮かんでいることに気づく。 「飛べるなんて知らなかったわ」 虚無の曜日の買い物はキュルケとタバサの協力を得て風竜に乗ったため知る機会が無かった。訊かれもしないのにわざわざ知らせるような性格をしていないせいでもある。 苛立った彼女の注意が完全にミス・ロングビルから逸れた瞬間、小屋の方から悲鳴が聞こえた。 見ると巨大なゴーレムが屋根を吹き飛ばしたところだった。 瞬時に反撃の態勢を整えたタバサが竜巻を起こし、キュルケが火炎で包みこむ。だが全く効果は無い。 二人が退却するのを空中から冷静に観察していたミストバーンは、続いてルイズに視線を向けた。 ある程度接近した彼女は杖を振りかざし、爆発を起こした。それでも表面が弾けるばかりで倒すのは不可能だとわかる。 「ヴァリエール! 早く逃げなさい!」 キュルケの言葉にルイズは首を振った。 「いやよ! ゼロのままでいたくないもの! ……わたしは貴族よ。魔法が使える者を貴族と呼ぶんじゃないわ」 さらに杖を振り、ゴーレムの胸を狙う。 「敵に後ろを見せない者を、貴族と呼ぶのよ!」 その言葉はミストバーンにも届いた。 彼は、沈黙していた。 彼の主は、にやりと笑った。 ミス・ロングビルは、舌打ちした。 (とっとと逃げろってんだよ) 彼女こそ土くれのフーケ本人であった。 盗んだはいいが効果のわからない神秘の石の使用方法を何とかして聞き出し、トンズラするつもりだった。 神秘の石が使えない以上逆転の可能性は無い。余計な抵抗はせず、大人しく退いてくれれば手間が省ける。 いざとなれば殺人もためらわないが、貴族とはいえさすがに子供を惨殺するのは後味が悪い。 友人を見捨てられない二人がルイズを救おうと奮闘しているが、上手くいかない。 炎や氷、爆発ではゴーレムに与えられるダメージなどたかがしれている。もうすぐ精神力が尽きるはずだ。 「さよなら……」 どこか悲しげに呟いた彼女の体が衝撃に揺れた。 (え?) 彼女の眼が、腹部から生える銀色の輝きを見た。冷たい感触が焼くような痛みに変わるのを、痺れた脳が察知した。 口から血をこぼしながら後ろを振り返る。 戦いに加わっていなかった使い魔が、いつの間にか背後に立っていた。 その眼光の冷たさに背筋が凍る。 「死に……たく、な――」 唇が動いた。まだ死ねない。大切な家族を遺して死ねるはずがない。 だが、視界が次第に暗く染まっていく。体が抱えられるのをぼんやりと感じながら、彼女の意識は闇に沈んだ。 ゴーレムが急に崩れたのを見て首をかしげたルイズ達は、血まみれのミス・ロングビルを抱えて現れたミストバーンの姿に顔をひきつらせた。 彼女は口元と腹部を赤く染め、ぐったりしている。 「あんたが殺したんでしょ!?」 「何故ミス・ロングビルを殺したの?」 ルイズの糾弾にキュルケとタバサも杖を構え、鋭い視線を向ける。 ミス・ロングビルの身体を無造作に地面に放りだしたミストバーンは淡々と呟いた。 「生きている。その女が盗賊だ」 ルイズ達の魔法を一通り確認し、連携や気概も見た。光るものがある彼女らが殺されないように術者本人を攻撃したのだ。 使い魔のルーンには言葉がわかるようになるなどの特殊な効果がある。 術者を探ろうと彼が意識を集中させた瞬間ルーンが輝き、彼女とゴーレムをつなぐ力の流れが視えたのだ。 それを伝えることはできないが、何よりの証拠が崩れ去ったゴーレムだ。 秘書をしていたのも宝物庫を探るため。目撃者の話など適当にでっち上げただけだ。 答えがわかってしまえば頷けるが、どんどん顔が蒼くなるフーケを見てルイズが泣きそうな表情になった。 「お願い、助けて……!」 自分達を殺そうとしたことも、犯罪者であることもわかっている。ここで命を落とさずとも、いずれは処刑されるということも。 だが家族について触れた時の、彼女の優しい目を忘れることはできない。 一方ミストバーンは混乱していた。 殺されそうになったのに助けろと言い出すなど全く理解できない。観戦していた主にどうすべきか問いかける。 『治してやれ。役に立つかもしれん』 儀式の時と違い、今度の声は彼一人にだけ届けられた。 小さく頷き、フーケが持っていた神秘の石を掲げる。すると光がこぼれ、腹部の傷がゆっくりとふさがっていく。 「神秘の石って……傷を癒すものだったの?」 「本当の名は賢者の石という。私の世界にあるものだ」 顔色が戻ったフーケは呻いて目を開けた。ルイズがほっとしたように息を吐くのを不思議そうに見つめる。 「ルイズが、あんたを助けてって言ったのよ」 「……そうかい」 意識を取り戻したフーケは抵抗する気力を失い、大人しく縄についた。 馬車に向かう間彼女はほとんど喋らなかったが、ルイズに礼をポツリと述べた。 盗賊を捕らえ、帰還の途についたルイズ達は全員疲れた表情をしていた。 ゴーレムとの戦闘のせいというより、命を奪われかけたフーケの姿が脳裏に焼き付いて離れないためだ。 「あんなにあっさり殺そうとするなんて……」 思わずこぼれた呟きに返ってきたのは、素朴な疑問の声だった。 「あの程度で人間は死ぬのか?」 「当たり前じゃない!」 認識が根本的に間違っていることを感じたルイズの声は上ずっている。 それを聞いた彼は考え込んだ。 ルイズ達を評価しただけでなく、巨大なゴーレムをあっという間に作り出すフーケも認めたため止めるだけのつもりだった。しかし、実際は危ないところだった――らしい。 敵は殺す場合が大半であったため手加減の仕方が掴めていない。特に、魔物や魔族と違って脆弱な人間を相手に加減するのは難しい。 うっかり芽を摘まないようにしなければ、と決意するミストバーンとは対照的にルイズは何をどう言えばいいのか途方に暮れていた。 もしかしたら次は自分が殺されるかもしれない。それこそ虫を踏み潰すように。 (で、でも、賢者の石を使ってフーケを治したじゃない) ほんの一筋の希望を見出したルイズは、それが主の命令によるものだとは知らない。 馬車の中には冷えた空気が立ち込めていた。 前ページ次ページゼロの影
https://w.atwiki.jp/kansaienglish/pages/19.html
英会話の勉強を始めて、いろいろなカフェやパーティーを回ると、いろいろなところで聞く噂、いろいろなところで会う人物がいます。 関西での要注意人物と要注意のお店を紹介します。 【要注意な人物】 Victor B 梅田のアイリッシュパブ Blarney Stone で演奏しているバンド Soul Kiss のリーダー格である大柄な中国人。パブの入り口にあるエレベーターで、変な薬をやってそうな勢いで「Kill you! Kill you!」と言いながら傘でバンバン男の人を殴っていたヤバい人物。その奥さんとバンドメンバーが必死になって止めていました。ちなみに、このバンドは全員中華圏内の外国人 (韓国、フィリピン等) がメンバーで、ライブハウスではコロナバンドとバッシングされたのは、このリーダーの素行があるからです。 顔ひん曲がりオバちゃん 梅田の某アイリッシュパブで、水曜日に開催される英会話の時に現れる、50代ボブヘアーで背が低い小太りのオバちゃんです。 イケメンに声かけては失敗し、逆切れで腹いせとしてセクハラ被害をねつ造します。一体「あの人からセクハラされた」って、何人からされてることにすれば気が済むのか。 ノリさん 梅田のアイリッシュパブ Blarney Stone で厨房を担当している男です。お店の立場上重要な位置にいることからワガママしたい放題で、 仲間同士で独自のノリワールドを作っています。「高卒め!ちゃんと大学出たのぉ?きんもちわるい!」「友達いないだろ?、お前?あなたにこの店はふさわしくない、おかえりくださーぃ」と 平気で気に入らない客に暴言を吐いたり、店員とは思えないほどの傍若無人振りを発揮しています。 ※ 更新:この事件がもとになり、解雇されました。 【要注意な場所】 片言英語喫茶店(名は伏せます) 四ツ橋筋本町の雑居ビル5Fにある某喫茶店は、かつては英会話喫茶の中ではNo1と言われた老舗です。 しかし今では、少し長らく通った者は誰もが眉をしかめる喫茶店です。 入ってみて何よりも鼻につくのは、オーナーの独裁者的手腕。 まず、座る席を決めさせられます。若くて可愛い女の子はオーナーの近くです。そして、会話の最中でも割って入ってきます。 それだけならまだいいのですが、ちょっと気に入らないと、すぐに出入り禁止にしてしまいます。 オーナー曰く「独断と偏見により、入店を制限させてもらいます」だそうです。 みんなそれを気にしているのだけれど、口に出せば出入り禁止。だから、なんとなーく微妙な雰囲気が店中を漂っています。 1年おきくらいにトラブルで外国人と常連さんががらっと入れ替わります。(ほかの店で互いに出くわして、「あれ?あなたも・・」ってことも珍しくありません(笑))。 また、いろんなところで恨みを買っているのでしょうか。お店の入り口に焦げたマッチが落ちてて、外に下げてあるコートが燃やされてました。 入り口のせまい雑居ビルなので、もしかすると大惨事になってたかもしれません。 また、ビル1階に「○○(店名)の店長へ 差別反対!」などの張り紙が貼られてたりします。 お店の掲示板にもちょくちょく抗議文や中傷文が書き込まれますが、店長が頻繁に消してますね。 最近ではとても怖いところです。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3396.html
「使い魔の仕事を自分の使い魔にたらい回しにするのは、正直どうかと思うのよ、クラレット」 二度寝の悪魔というのは実在すると思う。 たとえばどこぞのメイジもどきの偽使い魔とか。 ~魔法使いと召喚師~ 参考までに……、ルイズの着替えは本人によるものである。 クラレットの「妹ができたみたい」という発言に、少しばかり傷ついたからだ。 * * * 「無駄に楽しそうよね、あんた」 対して、言の主は酷く機嫌が悪かった。 二度寝している間に、『貴族令嬢を暗殺から救った』ということになっていたからである。 本来なら喜ぶべきなのかもしれない。何しろ彼女の評価は『ゼロ』である。 が、しかし、これを広めたのはキュルケ・フォン・ツェルプストーなのだと言われれば 素直に受け取れない。 絶対、何かロクでもないことをたくらんでいる。使い魔略奪とか……。 ――使い魔にまで『ゼロ』の烙印を押させるつもり? 食堂でのキュルケの言葉を思い出す。 一理ある。一理あることが悔しい。 『メイジの実力を見るときは使い魔を見よ』 それはメイジの常識。 裏を返せば、メイジの実力が既知ならば使い魔の実力も知れるということ。 『ゼロ』 最悪の二つ名。 ゼロのルイズの使い魔が、ゼロでない道理はない。 小さな双肩には、己と使い魔、二人分の名誉がかかっている。 だから、止められなかった。 「ミス・ヴァリエール!」 止めるわけにはいかなかった。 「考え事をする暇があるのなら、あなたにやってもらいましょう」 そして……、止まる気もなかった。 渾身の魔力、裂帛の気合、主としての矜持、その他諸々。 こめられるモノは全て杖に込める。 サモン・サーヴァントも、コントラクト・サーヴァントも成功した。 大丈夫。今の私はもう『ゼロ』じゃないのだから。 いざ、『錬金』! * * * 「「はぁ……」」 破壊された教室に響くのは二人分のため息である。 「なるほど……、これが『ゼロ』の二つ名の真相ですか……」 成功の確率がゼロ。実にわかりやすい。 2回の成功くらいでは埋め合わせられない失敗の山に、またひとつ追加。 今回の失敗は忘れられそうにない。 毛色が違うとはいえ、自身の使い魔は術者。 そしてその使い魔の少女――クラレットは、失敗の直後、誰よりも早く主の下に駆け寄り 至近で爆風を浴びたルイズとミス・シュヴルーズを、召喚獣を使って治療したのだった。 『メイジの実力を見るときは使い魔を見よ』 それはメイジの常識。 確かに対応は腹が立つくらい完璧だった。 これでクラレットを「無能《ゼロ》」と評する者はいなくなるだろう。 だけど、それだけ。逆に肩の荷が増えたかもしれない。 というか、使い魔に愛想尽かされるかも。 「失敗というより暴発ですよね、これ」 もっとも、心配されていた当の使い魔は、まったく逆の感想を持っていた。 異世界からの侵略を防ぐ結界の内部、それも高度な儀式の場に魔法をねじ込んだ存在である。 自分も雑念を加えてしまったとはいえ、並の使い手ではないと思っていた。 が、開幕から爆発はさすがに予想外である。 キュルケが教えてくれなければ、自分も被害者の仲間入りをしていたに違いない。 まったくどこまで規格外なのだ、この小さな主は……。 わかったことはそれだけではなかった。 自分の故郷では才能の証であるソレも、この世界では失敗以外の表現がないということ。 そして、故郷の話を伝えたとしても、ルイズには何の慰めにもならないこと。 情けない。自分は護衛獣になったのに、主を癒す言葉さえ持っていないのだ。 「軽蔑した?」 「いえ……身に覚えがないわけでもないので……」 だから、嘘をついた。 せめてこれ以上傷を増やさないように。 「そっか……」 会話はそれっきり。 結局、掃除が終わったのは昼食の時間になってからだった。 * * * 学院長室では二人の教師が額を突き合わせていた。 ハゲでおなじみの『炎蛇のコルベール』と、セクハラでおなじみのオールド・オスマンである。 「始祖ブリミルの使い魔『ヴィンダールヴ』に行き着いた、とそういうわけじゃね?」 スケッチのルーン文字と『始祖ブリミルの使い魔達』に描かれたルーンは、同一のものだった。 「して、彼女、ミス・クラレット自身はメイジなのだね?」 「本人は召喚師と名乗っております。 サモン・サーヴァントを極端に発展させ、複数の使い魔を使い分ける術と……」 「実際は?」 「今日連れていた使い魔は、昨日召喚したものとは違うようでした」 「まさに『ヴィンダールヴ』じゃのお」 あらゆる獣を従える神の笛。わかりやすいことこの上ない。 老人にとって、問題は別のところにあった。 「のう、コルベール君」 「はい?」 「ミス・ヴァリエールは努力家だと聞いておる」 「えぇ、彼女は学年一の努力家ですが、それが何か……?」 「この世のどこにも、彼女に魔法を教えられる者はおらん」 使い魔の属性は、メイジの属性と一致する。 ならば、同じ使い魔を持つ始祖ブリミルとルイズは同じ属性ということになる。 ――即ち、『虚無』 「……努力とは実るものですよ、オールド・オスマン」 中年の教師は、偉大なる老メイジの言いたいことを理解した。 理解したうえで搾り出した……。 ありえないことが起こった時点で、「ありえない」という言葉は意味を失う。 彼女は、その「ありえない」生徒なのだろう。 「よしんば実ったとしても、それがもたらすのは戦乱じゃよ。 コルベール君。君は自分の教え子を戦地へ送りたいのかね?」 コルベールはその問いに答えることが出来なかった。 答えられるわけがなかった。 ※参考 暴発 本来の設定では、「呼び出すつもりの無い召喚獣を喚んでしてしまうこと」(サモンナイト3より) ただし、ここでは、 「たまたま拾ったきれいな石が、あたしの手の中で光を放ち、街をメチャクチャにしちゃった」 という、2の主人公の体験談が元。 リィンバウムでこれを無意識にやらかすと、貧民街の孤児が名門召喚師の後取りになるくらい人生変わります。 護衛獣 召喚師の身を守るためや身の回りの世話をするために召喚された召喚獣。 歴代のシリーズを見る限り、まともに護衛してるのは少数派。 最大のピンチシーンで見せ場をもらうヤツらでもあったり。
https://w.atwiki.jp/shinshirorally/pages/74.html
https://w.atwiki.jp/tabris0913/pages/328.html
Trick or Alice Trick or Alice 「星に願えば」第1弾 シャドウ ライト ラウンド編 ドラマCD 公式特典 セクハラされちゃうスペシャルボイス集 シャドウ・ライト・ラウンド アニメイト限定セット特典 夢心地ミッドナイト ラウンド
https://w.atwiki.jp/siomura/pages/43.html
【国内】塩村文夏氏、「妊娠したと嘘をつき1500万円の慰謝料をもらった」というデマが2ちゃんまとめサイトなどで広まる[7/7]★2 http //peace.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1404733301/23 コピペ用 塩村あやか(みんなの党 東京都議会議員) @shiomura 腹黒いお姫様のツイートが秀逸なので(笑)ほぼ全てをRT。お姫様の割にはタメ口なりね☻ 笑。皆さんもフォローしてみては? 4 42 - 2014年5月11日 https //twitter.com/shiomura/status/465456946854625280 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 上記のとおり塩村議員が秀逸と評価し、リツイートで紹介したのが↓↓↓ ・・・・・・・・・・・・・・・ 塩村あやか(みんなの党 東京都議会議員)さんがリツイート 5月5日 腹黒い♡お姫様 @haraguroPri 男はヤるだけ口だけ最初だけ 17 17 - 2014年5月4日 https //twitter.com/haraguroPri/status/463110089017012225 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 男はヤるだけ口だけ最初だけ 男はヤるだけ口だけ最初だけ 男はヤるだけ口だけ最初だけ これが秀逸ですか‥? 酷い男性蔑視ですね。 しかもコレ、今年(=塩村が「セクハラやじ!」と騒ぎだした 2014年)の5月でっせ。
https://w.atwiki.jp/gaseousform/pages/119.html
https://w.atwiki.jp/gundamzero/
ガンダムキャラがルイズに召還されましたスレ まとめ 今日は - 人召喚されました。 昨日は - 人召喚されました。 現在までの召喚数は計 - 人です。 未掲載作品や新作などがあれば、有志諸君で協力して更新してくれると助かります。 新作掲載時は、五十音順へのリンクも忘れずに。 あくまで同名スレのまとめサイトです。wikiへの直接投稿はお控え願います。 検索 and or Q:あの作品がまとめに無いんですけど……。 A:気付いた人が積極的にやりましょう。 Q:他スレの作品をまとめてもいいっすか? A:スレ住人と書いた職人に確認とってからにしてくださいね。 Q:しまった!間違えて登録しちまった! A:ページ名の変更及びページ削除は管理グループにお任せ下さい。 Q:作品の元ネタが分かりません! A:申し訳ありませんが各自でお調べ下さい。 参考リンクゼロの使い魔(wikipedia) 現行スレ ガンダムキャラがルイズに召還されました 2人目 前スレ もしルイズが召喚したのがトレーズ様だったら 関連スレまとめリンク あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ (本家) ゼロの奇妙な使い魔 まとめ ゼロ使×型月クロスSSスレまとめwiki ハガレンのエドがルイズに召還されたようですまとめサイト@wiki 新世紀エヴァンゲリオン×ゼロの使い魔 ~想いは時を越えて~@ ウィキ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2096.html
前のページを読み直す / 表紙へ戻る / さらにページをめくる 鎖に繋がれたトラクスは……いつも叩いてばかりの私を、きっと恨んでたんだろうな…… 何とか脱出しようとして私を人質にして…… とうとう脱出して、盗賊になって…… でも屋敷に忍び込んだところを、父様に見つかって…… ああ……何て事をするの、トラクス…… 父様が死んでしまった……… ああ……母様や、お姉様たちまで…… 私の……私の家族が死んだのは………私のせい……… 私のせいだ……! 私が悪いんだ……! こんな事になるなんて…… ご主人様に受けた恩を…… 仇で返すなんて…… 「……え?」 何かがおかしい、全てがおかしすぎる。これは夢だ。ただ疲れているだけだ。 私――――ルイズ・フランソワーズは、また目を覚ました。今度は薄汚れた部屋の、低く汚い天井だ。 「そ、そうよね! 私の家族が、ラ・ヴァリエール公爵家ともあろう名家が、そんな簡単に…… 父様も母様も、とってもとっても強いメイジだし! なにより王国随一の権勢!! だ~れが、ああああんな外道蛮人(バルバロイ)一匹相手に、かすり傷でも負うもんですか!!」 そうだ。ちょっとばかり油断してこんな事になってしまったが、絶対に誰かが助けに来てくれる。 愛娘の危機を救いに来ない親はいないし、許婚のワルド子爵はグリフォン隊の隊長だ。 学院からも絶対に捜索隊が派遣されている。忌々しいツェルプストーは来るな……でもやっぱり来て。 第一、王女アンリエッタ様は幼馴染だ。国が動いてくれる。これは必ずだ。 トラクスはすぐに包囲されて十字架に逆さ磔の刑だ。ざまあみろ。愛と友情と権勢は無敵だ。 「……せめて、タバサと二人で脱出できればいいんだけど……」 杖は没収されたままで、爆発を起こすことさえできない。情けない。 トラクスが隠れ家にしたのは、地下の石牢みたいな部屋。誰が置いたのかそれなりに家具はあるし、 奥にはトイレも完備してある。でも狭いし汚いし、寒い。 「こんな置き手紙して~、ミス・ロングビルも悠長なんだからッ」 《ちょっとトラクスに連れられて、食事を探してきます。 朝までには必ず戻るから、このパンとスープを食べて、もう一日お休み下さい。 どんなことがあっても希望を捨てず、頑張りましょう。 ―――ロングビル》 「……冷えてて、硬いし、味が薄いわ。こんなの食べられない!!」 「おなか、空いた」 「ぬうううううう! おおおお!! うらああ!!」 貴族の屋敷、その豪勢な寝室。中年貴族はメイジの誇りである杖を振るい、魔法の水の刃が侵入者を襲う! だがその魔法は、黒髪の蛮人戦士が構えた剣に、全て吸収される!! 「くそァ!! 私がこんなところで! 虫ケラどもの手にかかるなどありえん事だ!!」 「この私が!! 『波濤』のジュール・ド・モット伯が!! こんなわけのわからん戦いにつきあえるかァ!!」 「無知蒙昧なきさまら蛮人は、我々貴族に常に教えを乞わねばならんのだ!」 「きさまらは、我々が導いてやらねば何一つ……がふっ」 ザン、と肉と骨を絶つ音がして、騒ぎ立てる貴族が永久に黙る。首が転がる。 「けっ、うるせええええんだよ腐れ役人が! さっさとカネ出しゃあいいんだよボケ。 おおおおい、そっちはどうだァ!? ロングビル」 また五月蝿い奴が騒ぎ立てる。デルフだ。トラクスは多少返り血を浴びているが、受けた傷はない。 フーケは財宝を見つけ、嬉しそうに笑う。 「うふふふふふふ、あったあった! こんなに貯めこんでやがったよモット伯の野郎! セクハラ親父め、近在の娘どもを集めるばかりでなく、随分私腹を肥やしてやがったねェ」 土のメイジだからか女だからか、フーケは職業を抜きにしても財宝が好きだ。 「どお? あんたのいたトラキアだかスキタイだかには、こんなすんごい黄金の装飾品とかないでしょ」 「……ある。たくさん、綺麗な黄金。細工物、とても細かい。ライオン、グリフォン、イノシシ」 「そおなの? 蛮人のくせに、凄いわねえ」 スキタイ文化の芸術品は、極めて洗練された黄金の装飾品が代表的だ。 「さ、衛兵が集まってこないうちに、帰りましょ。《土くれのフーケ、黄金の胸飾り他を頂きました》っと……」 フーケはモット伯の死体を壁に魔法で埋め込み、血液を床に吸い込ませる。 そして天井に穴を空け、トラクスと共にふわりと飛び出す。財宝はこれまた屋敷の床や壁を通り抜け、 外の地面で待っているゴーレムの掌に落ちる。掌は握られてズズズと沈み、降り立つ二人についてくる。 「よっし、任務完了。お土産に、このモット伯の夜食を持って帰ってあげようかねェ。 きっと、二人ともおなか空かしてるよ」 サンドイッチとワインの入ったバスケットを抱えて、フーケがいい顔で微笑む。 帰る前に、返り血や身体の汚れを川で洗い流し、トラクスは体を拭く。スキタイ式のサウナ風呂が懐かしい。 フーケはまだ胸飾りを見てニヤニヤしている。 「ねえトラクス、スキタイのことをもっと聞かせて? 興味が出て来たの。ほらデルフ、きちんと通訳してね」 「……いい。俺が話す、方が、言葉練習、できるから。だいぶ、上手になった」 「じゃあ、さっき言ってた金銀財宝について聞きたいわ。どんなの?」 デルフとボソボソ相談しながら、トラクスは訥々と語り出した。 「……昔、スキタイの中に、強い王様いた。カネたくさん、財宝たくさん、女たくさん。 王様、一人息子いた。美しい姫様、息子の嫁にする、予定」 「ふぅん。あたしは結婚する気はないけどね」 「婚姻の宴で、王様と息子、自慢した。領地、家畜、財宝、力、女、食べ物。たくさん持っているほど、偉い。 末の席に、貧乏なスキタイの若者、いた。何持ってる、王様聞いた」 「…………?」 「土地ない、財産ない、家族ない。友達いる。死んでも一緒の仲間。これが、宝、と。 王様、笑った。皆笑った。馬鹿にして、笑いものにした」 「…………」 「若者、姫様を見て、惚れた。皆に笑われて、怒った。誇りとか名誉、スキタイの宝。 それで若者、友達集めた。たくさん。それで、王様と息子、殺した。 姫様と王国、自分たちのものになった。強いこと、王様のあかし。皆従った」 野蛮だ。だが、一理ある。 「財宝ある、とてもいい。友達いる、もっといい。最後に勝つ」 「げっひゃひゃひゃ、そうそう! 俺様みたいないかした仲間が、王様の首をちょーーん、よ! そしたらなあんでも手に入るぜええ! 国を治めるのは面倒くせえけどなァア!!」 デルフが雰囲気を台無しにする。文明国で、そうそう簡単に国を乗っ取れてたまるか。 ……ん、国を乗っ取る、と言えば……? 翌朝早く。トリステイン魔法学院。 「オオオオオオルド・オスマン!!! 娘はどこだああああああ!!」 「僕のルイズは、どうなったんです!!?」 ばーーーーんと学院長室の扉が開け放たれ……もとい破壊され、二人の髭の男が入ってきた。 「む、貴様はワルド! 遅いわ!! お前ごときに可愛いルイズは渡せんな」 「義父上! 僕が必ず、蛮人の手からルイズを取り返して、ごべッ」 ルイズの父、ラ・ヴァリエール公爵は、閃光のようにワルドの顔面を学院長室の机の角に叩き付けた。 「おらん!! くそっ、逃げおったな!!」 公爵はダッと窓から外に飛び出し、魔法で空高く飛び上がる。 「くぉらああああああああああ!!!!! このラ・ヴァリエール公爵から、逃げられると思うなァ!!!」 「げぇっ、公爵!! お許しを!!」 「逃がしません事よ、オールド・オスマン」 飛んで逃げ出すオールド・オスマンの前に、マンティコアに乗った女性が立ちはだかる。 ラ・ヴァリエール公爵夫人、『烈風カリン』ことカリーヌ・デジレだ。静かに怒りのオーラを放っている。 「さ、学院長室へお戻り下さい。そこで簡潔に、話を聞かせて頂きますから、ね」 「は、はひ……」 人生終わった。オールド・オスマンは、確かにそう思ったという。 学院長室には、なぜかキュルケもいた。タバサも自分の部屋から消えていたという。 トラクスがらみだ、そうに違いない。直ちに指名手配書が作られ、そちこちに貼りだされる。 王室からも公爵家からも、もちろん学院からも(かなり尻込み気味の)捜索隊が出される。 蛮人トラクス包囲網は、敷かれつつあった。 前のページを読み直す / 表紙へ戻る / さらにページをめくる
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4159.html
前ページ次ページアクマがこんにちわ ■■■ 魔法学院の教師陣では中堅でありながら、変わり者だと揶揄される一人の男がいる。 もう二十年以上、教壇に立つ傍らで独自の実験を繰り返しているその男は、『炎蛇』のコルベールと呼ばれている。 生徒達にとっては、ミスタ・コルベールはあくまでも変わり者であった、『火』の系統を得意としながらも魔法を見せることはごく少なく、魔法を使ってがらくたを作り、失敗を繰り返しているのだとか。 ルイズと人修羅がシュヴルーズの授業を抜け出した頃、コルベールは図書館で書物を開いていた。 ルイズが呼び出した人修羅は、今はまだ問題も起こさず、ルイズの使い魔として大人しく従っている。 しかし内包している力はオールド・オスマンを遙かに超え、当に天災のレベルであると言っても差し支えはない。 何か事件が起こってからでは遅いのだと自分に言い聞かせ、先日の夜から図書館にこもり続けて人修羅に関する手がかりを調べて続けていた。 トリステイン魔法学院の図書館は本塔の中にあり、本棚は高さがおおよそ三十メイルほど、とても人間が手を伸ばして届く距離ではないが、ここが魔法学院である以上図書館を利用する者もまたメイジであり、高低差は何の障害にもならない。 すべての貴族の祖であり、虚無の使い手であった始祖ブリミル。 そこから続くハルケギニアの歴史が、この図書館に詰め込まれていた。 しかし、教師しか閲覧を許されない『フェニアのライブラリー』の中でも、手がかりらしい手がかりは発見できず、コルベールは宙に浮いたままため息をついた。 読み終えた本を本棚に戻すと、次の本に手を伸ばしページを開いていく、手に取ったのは『始祖ブリミルの使い魔達』という本で、始祖ブリミルが用いたと言われている使い魔のルーンなどが記載されていた。 そこに記載されているのは、ガンダールヴ、ヴィンダールヴ、ミョズニトニルン…どれも実際には見たことのない、伝説といわれているルーンの図柄とその名称だった。 ただ一つ可能性があるのは、第四の使い魔。この使い魔については記すことすらはばかられると書かれており、具体的なことは何一つ解らない。 唯一手がかりがあるとすれば『胸にルーンがある』という点だろうか。 ふと人修羅の姿を思い浮かべる…全身に描かれた入れ墨のような文様は、彼の言葉を信じれば『悪魔と一体化した影響』だとか。 可能性としてはこの『第四の使い魔』に最も近い存在かも知れない…そんな漠然とした考えのまま、コルベールはゆっくりと床に着地し、いくつかの本を小脇に抱えて学園長室へと歩きだした。 ■■■ 魔法学院の学院長室は、本塔の最上階にあって豪華なつくりをしており、広さも教室に引けを取らない。 学院長を務めているオスマン氏は、重厚なつくりのテーブルに肘を突いていた。 「ふむ…」 と呟いて引き出しを引き、水キセルを取り出し「ほほ」と笑う。 しかし水キセルはふわりと宙に浮き、部屋の隅に置かれた秘書用の机へと移動してしまった。 「おう、おう」と狼狽えるオスマンが秘書の席を見ると、ミス・ロングビルが水パイプを見て渋い顔をしていた。 「年寄りの楽しみを取り上げて楽しいかね、ミス・ロングビル」 「オールド・オスマン。あなたの健康管理もわたくしの仕事なのですわ。我慢なさってください」 「つれないのう…」 オスマンはため息をつくと椅子から立ち上がり、窓から外を見始めた。 その様子にロングビルは疑問を感じ、何かあったのかと考えを巡らせ、一つのことに思い当たった。 つい先日の『使い魔召喚の儀式』で現れたという、規格外の存在。 自らを人修羅と名乗るそれは、オスマンが直接相対しても実力が図れぬほど強大な存在であり、とても使い魔として使役できるような存在ではないという。 ロングビルにとって人修羅は、全身に装飾を施した平民程度の認識でしかない。 それに彼女はこの学院では少々異質で、生まれついてのトリステイン人でもなければ貴族でもない、貴族の立場を剥奪されたメイジであり、オスマンが個人で雇っている秘書であった。 そのため、何か問題が起きても教師陣に責任を押しつけ、自分はさっさと逃げ出せばいいと考えており、オスマンと違って随分と気は楽だった。 「なあ、ミス・ロングビル。どうにも考えがまとまらないんじゃ、パイプぐらいええじゃろう?」 「駄目です」 「まったく…ぶつぶつ」 ロングビルは手元の羊皮紙に羽ペンを走らせながら、皮肉たっぷりの口調でこう言った。 「セクハラばかりしているから罰でも当たったんでしょうね」 「真理とは、真実はどこにあるんじゃろうか? 考えたことはあるかね? ミス……」 セクハラを非難するロングビルの言葉に怖じ気づくことなく、話を誤魔化そうとするオスマンだったが、不意にその表情に深刻さが混じった。 「難しいことはわかりませんが、少なくとも、わたくしのスカートの中には無いと思いますわ」 「わ、わかった、わかったから離してやってくれ」 オスマンは顔を伏せると悲しそうな顔で呟く、そしてロングビルの机の下から、小さなハツカネズミがふわふわと宙に浮き、オスマンの肩まで届けられた。 「おうおう、モートソグニル。”念力”で捕らえられてしまったのか、大変じゃったのう。…なに、白か、純白か、しかしミス・ロングビルは黒もええと思わんかモートソグニルや。どれどれ約束通りナッツをやろうかの」 オスマンの肩に乗せられた小さなハツカネズミは、オスマンの使い魔モートソグニルであった、ロングビルに捕まってしまったが、しっかりと下着の色を確認できたので、オスマンはとても嬉しそうだった。 「オールド・オスマン」 「なんじゃね?」 「死ねとは言いませんが王室に報告します」 「カーッ! 王室が怖くて魔法学院学院長が務まるかーッ!」 オスマン氏は目を剥いて怒鳴った。声から発せられる波が、まるで突風が通り過ぎたような迫力を伴っている、とてもよぼよぼの年寄りとは思えない迫力だった。 「下着を覗かれたぐらいでカッカしなさんな!そんな風だから、婚期を逃すのじゃよ。はぁ~……まったく若返るのうこの感触、柔らかさ……」 とうとうオールド・オスマンはミス・ロングビルの背後にまわり、堂々とお尻をなで回し始めた。 ロングビルは無言で立ち上がると、床に膝を突いてロングビルの尻をなで回していたオスマンを蹴りはじめた。 「ご、ごめん。痛い。もうしない。ほんとに!マジ痛っ!」 頭を抱えてうずくまるオールド・オスマンをなおも蹴るロングビル、顔がちょっと赤いのは怒っているせいだろう、口元が楽しそうに歪んでいるのもきっと怒っているせいだ、間違いない。 「死ねこのセクハラジジイーー!」 「うひょー!」 ■■■ コンコン、とノックの音が響く。 わずか0.02秒の早業でオスマンはボロボロになった服と髭を整えて窓の側に立ち、ロングビルはスカートと襟を正して席に着いた。 「人修羅です、相談したいことがあって来ました」 「入りたまえ」 「失礼します…っと」 学院長室の大きな扉を開けて、中に入った人修羅は、そこに漂う空気に驚いたのかきょろきょろと学院長室の中を見回した。 入り口のすぐ側に、秘書の席があり、そこに座るミス・ロングビルと一瞬だけ目があった。 「どうかしたのかね?」 「いえ、やっぱり大きな部屋だなぁ…って思いまして」 「ほほほ、そうかねそうかね」 人修羅は『つい先ほどまで殺し合いが行われていたような不穏な雰囲気』を感じていたが、部屋に入ってみると既にその気配は霧散していたので、自分の勘違いだと思うことにした。 「あ、結局ルイズさんと契約することになったんです、それでコントラクト・サーヴァンとを受けたんですけど、そこでルーンが浮かび上がって来まして」 「ふむ、ルーンとな? とりあえずソファにでも座りたまえ。こちらからもいくつか質問したいことがあったので丁度良かったわい」 オスマンはそう言うと、学院長室の中央に置かれたソファに身を沈めた。 ソファは畳より大きいテーブルをはさみ、向かい合うように設置されており、オスマンは自分の向かい側に座るよう人修羅を促した。 「そ、それじゃ失礼します」 もの凄く柔らかいソファの感触に驚いたのか、感触を確かめつつ人修羅が座る、その様子を見てオスマンは「不思議じゃのう」と呟いた。 「不思議?何がですか?」 「いやなに、君のことじゃよ、何というか…こちらの警戒心には敏感に反応するのに、物珍しそうに調度品を見る姿はまるで好奇心旺盛な子供のようじゃ」 「そう見えます?」 「見える。……人修羅君は敵には容赦ないじゃろ?」 人修羅の表情が、ほんの一瞬だけ硬直した。 敵に回った友達を殺した時『仕方ないよね』程度の感情しか抱けなかった自分を見透かされた気がした。 「…まあ、容赦してたら殺されますし、敵を自分の味方に引き込めなかったのは自分の実力不足が原因ですから。敵と戦うか、仲魔にするか、いつも突然に決断を迫られますし」 オスマンはあごひげを撫でつつ、ふぅむと唸った。 「君は頭の回転が速いのう」 「え?そんなことは無いですよ、学校の成績も良くなかったし」 「そんな事ではないのじゃよ、察するんに君は、自分の力ではどうにもならないものを相手にしていた。戦って殺すか、負けて殺されるのか、それしか選択肢を与えられなかったんじゃろう」 「ええ、そうです」 「戦争のようなものじゃな、時代の流れと言うべき大きなものじゃ、君に戦争を生き抜く力があっても、友人にはそれを生き抜く力がなかった…だから戦わざるを得なかったんじゃ」 「………」 「君は友達を説得するために力をつけたが、友達はそうとは思わず、君を敵とみなした……違うかね」 「いえ、細部はともかく、流れはまったくその通りです」 人修羅がオスマンの推察を肯定すると、オスマンはソファに背中を預け、ほんの数秒間目を閉じた。 「ミス・ロングビル。すまんが席を外してくれないかね」 「はい」 ロングビルはすぐに返事をすると、席を立ち廊下へと出て行った。 それを見届けたオスマンは、杖に手をかけて何かぼそぼそと呟き、秘書の席に置かれた水パイプを宙に浮かせて手元へと運んだ。 「すまんの、秘書がうるさくてパイプも吸ってられんのじゃ、一服させて貰ってもかまわんかね」 「いえ、ここは学院長の部屋なんですから、俺…僕のことは気にしないでください」 「そう言ってくれるか、ますます君に協力してやりたくなったぞ。さてコントラクト・サーヴァントについてじゃが……」 「ああ、これですね」 人修羅が左手を差し出すと、手の甲にルーン文字が浮かび上がっているのが見えた。 「これは?」 「ルイズさんと契約をしたときに現れたものです、害意のある攻撃や呪いなら跳ね返しますが、これには害意が無いみたいで」 「見たことのないルーンじゃな…スケッチさせて貰うが、かまわんかね?」 「はい」 オスマンが何か呟くと、オスマンの机に置かれた羽ペンがふわりと起きあがり、机の引き出しから出てきた紙に何かを書きだした。 おそらく人修羅のルーンをスケッチしているのだろうが、その動作に人修羅は驚きを感じた。 「すごいな…」 「ん?何がかね」 「僕が知ってる魔法とかって、戦いに使うものばかりなんです。空を自由に飛ぶとか……生活に根ざした魔法って珍しくて」 「生活に根ざした魔法、か。確かにその通りじゃな。しかし君ほどの力を持ちながら空を飛べないとは、ますます不思議じゃのう」 「大地や生命の創造に携わる仲魔はいたんですけどね、彼らがその力を振るう場所を、僕は失わさせちゃって…」 「…なんともまあ、お伽噺のような話じゃな。しかし嘘とも思えん…」 「すいません自分でも荒唐無稽な話だとは思うんです、でも…」 「検証はできんが、疑うつもりはない。君は自分の力の振るいどころに悩んでいるようじゃからのう。このハルケギニアに無用の混乱を招かぬよう、気をつけているように見える、ならば疑う必要は無いじゃろ」 「そう言って貰えると助かります」 人修羅が頭を下げると、オスマンは楽しそうに笑い声を上げた。 「ほっほっほ。平和は退屈じゃがの、戦争よりはずっっとマシじゃ。君もワシと同じずぼらなところがあるじゃろう? 王宮で着飾って暮らすより、田舎の村でハンモックでも吊り、昼寝でもしていたほうがマシ、そう感じられるわい」 「あー、ハンモックですか、あれは楽しそうですね」 学院長室に二人の笑い声が響いた。 と、そこにさらなる来客を知らせるノックの音が鳴った、オスマンと人修羅はぴたりと口をつぐんでしまった。 「オールド・オスマン。コルベールです」 扉の向こうから聞こえてきた声はコルベールのものだった、オスマンは「ほう、丁度良いところじゃな」と呟いてから、杖を振って扉を開け、コルベールの入室を促した。 ■■■ 「失礼致します。おや、ミスタ・人修羅もおられましたか。丁度良い機会でした」 コルベールは人修羅の姿を見ると、にこりと笑ってそう言った。 「コルベール君、かれはコントラクト・サーヴァントを受けてくれたそうじゃ、今ルーンの確認と、今後のことについて話し合っておる」 オスマンそう言うと、机の上のスケッチをふわりと浮かせ、応接用のテーブルの上にのせた。 コルベールが応接用のテーブルに近づき、小脇に抱えた数冊の本を机に置く、そしてスケッチに視線を移したところで、動きが止まった。 「…ミスタ・コルベール?」 「…どうかしたんですか?」 オスマンと人修羅がコルベールの顔をのぞき込む、するとコルベールは、目と口を大きく開いて、わなわなと震えていた。 「お、おおおおオールドオスマン!これは彼のルーンですか!?」 「なんじゃねそんなに慌てて、すまんが人修羅君、ルーンを見せてやってくれんかね」 「はい」 人修羅が腕を差し出してルーンを見せると、コルベールはテーブルの上に置いた書物をぱらぱらと捲り、あるページを開いてオスマンに見せた。 「見てください…これです」 『始祖ブリミルの使い魔達』と題された本には、人修羅の左手につけられたルーンと全く同一のイラストが描かれていた。 「ガンダールヴ……」 ぽつりとオスマンが呟くと、それを聞いた人修羅が頭にクエスチョンマークを浮かべた。 「ガンダールブ、って何ですか?」 「うむ、まあ、とりあえず説明をせねばならんな。ミスタ・コルベール。君もかけたまえ、立ったままでは話もしずらいじゃろう」 「はっ、はい」 冷や汗をハンケチで拭きながら、コルベールがソファに座る。 その慌てたような二人の態度に、人修羅は一抹の不安を覚えた。 「人修羅君、すまんが、これは魔法学院どころか、トリステイン、いやハルケギニアを巻き込む騒動に発展しかねん話じゃ。それを念頭に置いてくれたまえ」 「は、はあ…」 人修羅は、また何か騒動にでも巻き込まれるのか思い、生返事を返すのがやっとだった。 ■■■ 人修羅と分かれて教室に戻ったルイズは、皆の突き刺すような視線に迎えられた。 だがルイズはばつの悪そうな表情も見せず、シュヴルーズに一言謝ると、すぐに自席に戻っていった。 中庭でコントラクト・サーヴァントを行った後、ルイズは人修羅と一緒に学院長室に行くつもりだったが、人修羅が『報告は一人でも大丈夫だから、ルイズさんは授業を受けた方がいい』とルイズを説得したため、ルイズは一人で教室に戻ることにした。 「ちゃんと私の代理として恥ずかしくない態度を取るのよ」 と釘を刺すのを忘れていないあたり、ルイズも人修羅を自分の使い魔だと認め始めたのかもしれない。 魔法学院の学生として恥ずかしくない態度を取る、それがルイズなりの、人修羅への誠意だった。 ■■■ 授業が終わると、学生達は皆、夕食前の休憩時間を思い思いに過ごしている。 そんな中、ルイズはとぼとぼと学院長室への階段を上っていた。 使い魔とメイジは視聴覚を共有することができる、それを利用して人修羅を呼ぼうと思ったが、ルイズにはなぜかそれが出来なかったので直接迎えに行くことにした。 「まったくもう、主人の手を煩わせるなんて…」 ぶつぶつと文句を言いながら学院長室の前までたどり着くと、ちょうど人修羅とコルベールが学院長室から出てくるところだった。 「おや、ミス・ヴァリエール。丁度良いところでした、君を迎えに行くところだったのですよ」 「私をですか?」 「ええ、ミスタ・人修羅について、話しておくことがありまして、さ、とにかく中へ」 「はい…って人修羅、あんた何かしたの?」 「むしろ何かされた方だと思うんだけど…」 人修羅は困り顔でルイズを見ると、ぽりぽりと頭を掻いた。 ■■■ 「ガンダールヴ…ですか?」 「そうじゃよ。始祖ブリミルが用いたと言われる使い魔の一人じゃ、神の左手と呼ばれ、あらゆる武器を使いこなしたそうじゃが」 「その話は知っています、けれど、その」 「これがその本じゃ」 ルイズは、学院長室で人修羅のルーンがどのようなものか説明を受けていた。 人修羅に刻まれたルーンが、ガンダールヴのルーンと同一であると言われた時、いまいちピンと来なかったが、話を聞いているうちに喜びよりも困惑が上回っているようだった。 「わ、私、魔法が、その、いつも失敗して…それなのに」 上手く言葉が紡げないのか、ルイズにしては珍しく、とぎれとぎれに言葉を発している。 オスマンはそれを手で制し、いつになく真面目な表情でルイズに目を合わせた。 「ミス・ヴァリエール。これは事実として受け止めて貰いたい。いいかね、例え彼がガンダールヴで無かったとしてもルーンは同一のものじゃ。もしこれが王宮に知られれば厄介なことになるじゃろう」 「厄介なことですか?」 納得いかない、という気持ちが出てしまったのか、少し強い口調で返事をするルイズに、オスマンはまたも手で制した。 「よいかね、そもそもワシが魔法学院の学院長を任されているのは、ワシに権力を集中させぬためじゃ。 今トリステインを動かしている大臣達の、子供の頃の失敗談や、そのまた親の失敗談、そして人には言えぬような汚点をワシはよく知っておる。 ワシのように長生きしすぎた者が、権力の中枢にいては困る者が、沢山いるのじゃよ」 「……」 ルイズはオスマンの言葉に、何も答えることが出来なかった、子供の頃はトリステインの王女アンリエッタの遊び相手を務め、将来は立派なメイジとなって国に尽くすことを理想としていたルイズにとって、オスマンの言葉は認めたくない現実であった。 「納得のいってないという顔じゃな、まあ年寄りの戯れ言だと思うてくれ。……じゃが君は年寄りではない、将来のある身じゃ。とにかくトリステインの中枢も善人ばかりではないと思ってくれ」 オスマンは言葉を句切ると、ふぅーと長いため息をついた。 そしてテーブルに肘を突くと、前に立つルイズと人修羅を交互に見据えて、静かに語り出した。 「ガンダールヴはメイジではない、しかし千人の軍隊を一人で退けたと言われる強力な存在じゃ。人修羅君がガンダールヴならば、その力を利用する者が現れてもおかしくはない。最悪の場合ミス・ヴァリエールの家族や友人が人質にされてしまうかもしれん」 「そんな!」 「話は最後まで聞きなさい。仮に彼がガンダールヴで無かったとしてもルーンは同一のものじゃ、アカデミーなどに連れ去られてみなさい、どうなってしまうか分かったものではない」 「………」 「そしてこれが一番大事なことじゃが…人修羅君はな、ハルケギニアで言うところの、先住魔法を使えるそうじゃ」 ルイズがはっとして人修羅を見る。 「ほんとう?」 「…ああ」 絞り出すように人修羅が答えると、人修羅を見るルイズの視線が変わった、まるで、裏切られたかのような驚愕と怨嗟の混ざる瞳で、人修羅をきっとにらみ付けている。 「ここから先はミスタ・コルベールから話して貰おうかの」 「解りました。ミス・ヴァリエール。落ち着いて聞いて欲しい。私も彼も……爆発の魔法を使えるんだ」 爆発…その言葉に、ルイズの脳裏に使い魔召喚の法則とも言うべき、相性の話が思い浮かんだ。 ルイズはコルベールの方に向き直ると、こう言った。 「でも、爆発は失敗だって、いつも言われて」 「確かに『エア・ハンマー』や『ウインド・ブレイク』が暴走したり、『フレイム・ボール』が霧散して、爆発に似た現象を起こすことはある、それらは失敗と言われるが、この魔法は違う」 コルベールがそう言うと、オスマンが杖を振って、机の上に鋼鉄製の壺を練金した。 高さ30サント、直径は20サントほどのもので、金属の厚みはたっぷり1サントはある。 コルベールはポケットの中から媒体となる小石を取り出すと、それを練金で砂に変え、更にその砂を壺の中に入れ、霧状の油に練金した。 そこに杖の先端を向け『着火』のルーンを唱えると、ヒュボッ!と音を立てて壺の中から高さ1メイルほどの火柱が上がった。 「これは『火』と『土』を利用した、爆発の最も簡単な形です」 「これが…」 おそるおそる壺の中身をのぞき込むルイズだが、それが自分の魔法とは違う『爆発』であることに気づき、首をかしげた。 「よろしいですか、爆発を起こすには『ドット』では無理なのです。練金と着火の二つがあってはじめて成り立ちます、しかも油は気化したものでなければなりません。ミス・ヴァリエールは既に『ライン』と同じか、それ以上の魔法を行使していると言えるでしょう」 「私が、ラインですか?」 「あくまでもライン相当です。その理由は…次にミスタ・人修羅から説明して頂きましょう」 ルイズのとなりに立っていた人修羅が、ルイズに向き直って、口を開く。 「教室で見たルイズさんの魔法は『メギド』という魔法に似てる、これはモノを内側から破壊する万能属性の魔法で、バリアー…この世界で言う『固定化』の効果を打ち消す力がある」 「内側から?」 「ああ、教室で見かけた時解ったんだが…ルイズさんの起こした爆発は、コルベール先生が起こした爆発と違って、着火の必要が無いんだ。本来なら『油』『着火』の二行程が必要だけど、ルイズさんの場合は一回の動作で爆発を起こしてる」 「……」 「これは俺が感じたことだけど、ルイズさんが魔法を使う時に出てくるエネルギーと、コルベール先生のエネルギーは大きく違うんだ、コルベール先生は大粒の玉が沢山…ルイズさんの場合は、極小の粒がもっと沢山ある感じ…かな?」 説明を聞いていたルイズは、何を言って良いのか解らず、しばらく沈黙していた。 数十秒経過したところで、おもむろにオスマンが口を開く。 「…ミス・ヴァリエール。君は、虚無の系統かもしれん」 ■■■ ルイズがが説明を受けて部屋に帰ると、既に夕食の時間は過ぎており、食堂から戻ってきた生徒達の姿が沢山見かけられた。 部屋に戻ったルイズは、食事を取る気にもならず、天蓋付きのベッドに寝そべって天井を見つめていた。 虚無の系統かもしれない…そう言われた時、なぜか嬉しいとも思わなかった。 その理由は二つある、唐突すぎたことで実感が涌かない、それが一つ。 もう一つは、虚無という名に付随する、大きすぎるしがらみだった。 オールド・オスマンはルイズに再三の注意を促した、大きすぎる力は周囲に不幸を生む、トリステインでは伝説といわれるメイジ『烈風カリン』の名を使ってまで、大きすぎる力の弊害を説明された。 ルイズは、母カリーヌ・デジレのもう一つの顔を知っている、『烈風カリン』その人である。 一人でオーク鬼の群れやドラゴンを討伐したり、名前だけで反乱軍の戦意を喪失させたりと、その働きは類を見ない。 しかしオールド・オスマンが言うには、烈風カリンという存在に依存しきった貴族達が、現状のトリステインを作り出したと言う。 貴族達は甘え、研鑽を怠った、戦争の愚かさを忘れ肥え太り、己の満足のために賄賂を巡らせている。 それは烈風カリンという人物が『強すぎた』のが原因だと言う。 有名税とでも言うべきだろうか、烈風カリンの名は国交にも利用されたが、引退と共にだんだんとその威光を失っていった。 ガンダールヴの力がどの程度のなのか解らないが、同じように外交の手段として使われてしまうことも十分考えることができる。 ルイズは悩んでいた。 トリステインへの忠誠が、人修羅を害することになるかもしれない。 以前のルイズなら、迷わずトリステインに人修羅を差し出していたかもしれないが、今はそれを肯定できない。 人修羅は、どんな形であれ、ルイズを必要だと言っていた。 それがゼロと呼ばれ続けていたルイズの、最も欲していたことだった。 「………」 ルイズは、むくりとベッドから起き出すと、椅子に座って『やさしい文字の書き方』を読んでいる人修羅に声をかけた。 「夕食、食べに行くわよ」 ■■■ 二人が食堂にたどり着くと、既に燭台の火は消され、後かたづけもほとんど済まされていた。 ルイズがメイドの一人を呼び止めると、人修羅があっ、と声をあげた。 「あ、シエスタ。朝はどうもありがとう。いつ取りに行けばいいかな」 「ミス・ヴァリエールと、人修羅さんですね。洗濯物はこれが終わり次第届けようと思っていました」 自分を置いて話し出す二人に驚き、ルイズは恨めしそうに人修羅の腕をつねった。 「ちょっと、どういう事よ」 「いや、朝、下着なんて洗濯したこと無いって言ったら、シエスタさんが気を利かせてくれてさ」 「差し出がましいことを致しました」 謝ろうとするシエスタを見たルイズが、それを言葉で制止する。 「ああ、謝らなくて良いわ、そうね、確かに素人にやらせるのもいけないわよね…ええと、シエスタだったわね。食事を二人分準備してくれない?」 「手つかずのものがいくつかありましたが、スープなどは冷めています。暖め直すので少々お時間をいただけますか?」 「いいわ、人修羅、奥の席に行きましょ」 ルイズは人修羅の腕をつねったまま、奥の席へと引っ張っていったが、その様子を見たシエスタはこう呟いた。 「…人修羅さん、大変そう」 人修羅は朝と違い、席に着くことが許されたので、ルイズに促されるまま隣に座ろうとした。 椅子を引こうとしたところで、パキリ、と何かが割れる音が聞こえた。 人修羅は慌てて足を上げたが、既に手遅れであった、ガラス製の小さな壜が砕けて、中に入っていたであろう紫色の液体が床に広がる。 「あら?何の臭い…って、何よ人修羅、香水の壜踏んじゃったの?」 「これ香水なのか? まいったな…拭くものを借りてくるよ」 「いいわ、そんなのメイドに任せておきなさいよ、それより臭いが強いから席を変えるわよ」 ルイズが席から立ち上がると、一つ向こうの机の下から、金髪の同級生がはい出してくるのが見えた。 テーブルクロスを捲って出てきたその同級生は、床に落ちた何かを探しているようだった。 「ギーシュ?あんた何してるのよ」 「ん?おや、ヴァリエールじゃないか」 ギーシュと呼ばれた金髪の男性は、テーブルの下からはい出して立ち上がると、キザったらしい仕草で前髪をかきあげた。 「ふっ、なに、僕は一輪の薔薇として責任を果たさねばならないのでね」 何言ってるんだコイツ、みたいな顔でギーシュを見るルイズと人修羅、その表情には哀れみすら浮かんでいた。 「ん?」 ギーシュは何かに気付いたのか、目を見開くと、すんすんと鼻息をたてて臭いをかぎ始めた、どこからか漂ってくる臭いが非常に気になるようだ。 「……ミス・ヴァリエール。何か格調高い香りがしないか?その、愛情のこもった薔薇の香りのような」 人修羅はギーシュの台詞に首をかしげ、ルイズを見た。 ルイズはギーシュの言わんとしていることに何となく察しが付いたようで、ああ、と呟いた。 「もしかして、この香水、モンモランシーの香水?」 「そうだ!そうだよ、解ってくれるかい、愚かな僕は彼女の愛を両手の器に抱えきれず零してしまってね、モンモランシーの愛がこもった麗しい香水を探しているのさ、そのあたりに壜は置いてないかい?」 人修羅の足下を指さしたルイズが、少しだけばつが悪そうに呟いた。 「…あるわよ。割れてるけど」 「そこにあったのか…って何ィーーーー!?」 まるで蛙のような跳躍でテーブルを飛び越えたギーシュが、土下座のような姿勢で人修羅の足下を見ると、そこには無惨にも踏まれ、割られた香水の壜が落ちていた。 「なななな、なんて事を!」 キッ、と人修羅をにらみ付けたギーシュに、人修羅はこう言い返した。 「俺がここに来た時は既に割れていたんだ!君に出来ることは何だ、破片を前にうなだれることか!?違うだろう。聞けばそれは君にとって大切なモノ、ならばその破片を練金してせめて別の形で生き続けるべきだと思わないか!?」 「何だと!?」 「割れた壜として形を失っても愛情は変わらない!そうだろう!?歎くことは誰でもできるが生み出すことはメイジである君しかできない!違うか!?」 「そ、そうか、僕はなんて浅はかだったんだ…よし、ちょっとそこをどいてくれたまえ」 ギーシュが杖をふり念力の魔法を使うと、地面に散らかった破片がふわりとギーシュの手元に集まった。 短くルーンを唱えて、壜の破片に杖を向ける、すると破片は瞬く間に一つになり、青銅で作られた薔薇の花に姿を変えていった。 よく見るとガラスの破片がバラの花びらに埋め込まれており、朝露をたくわえた薔薇の姿を如実に表している。 「凄いな、これが練金なのか…」 感心した人修羅が呟くと、ギーシュはまたもやキザったらしい仕草で顔を横に向けた、どうやら横顔に自信があるらしい。 「ふっ、僕は青銅のギーシュ。練金には自信があるのさ。君はミス・ヴァリエールの使い魔だね、名を聞かせてくれないか」 「俺は人修羅だ」 「人修羅か、東方の蛮族かと思っていたが、どうやら気は利くようだね。覚えておくよ」 「そりゃどうも」 ギーシュは新たに練金した薔薇を手に持つと、先ほどまでの狼狽えぶりはどこえやら、上機嫌で食堂から出て行った。 人修羅がルイズの方を見ると、ルイズは半眼で睨み付けるように、人修羅の顔を見つめていた。 「…口がうまいのね」 「いや、まさかあれで通じるとは思ってなかった。貴族ってあんな単純な奴ばかりなのか?」 「ギーシュは例外よ、たぶん…」 ルイズはふいと視線を逸らし、気まずそうに呟いた。 人修羅は、同レベルの喧嘩をしたことがあるんだなと言いそうになったが、怒られるのもイヤなので黙っていることにした。 ■■■ 尚、この後ギーシュは、薔薇の花をモンモランシーにプレゼントし好評を得た。 しかし不注意で香水の壜を落とし、結果として壜ごと香水を駄目にしてしまったのは覆しようのない事実なので、愛情たっぷりの往復ビンタを受けたという。 前ページ次ページアクマがこんにちわ