約 2,995,694 件
https://w.atwiki.jp/orisuta/pages/1236.html
『Some girls say all they need is dreaming』 帝暦856年4月12日の帝都の空は曇り。 窓を開き、少女――リリー・エアハートは空を眺める。 そもそも帝都では曇りが多いのだ。今日が曇りでも何ら不思議では無い。 仕方ないが、今日ぐらい晴れていて欲しかったな、とも思う。 窓の外、視線の先では、幾筋もの蒸気の筋が白く天へと昇っていく。 それを眺めながら、リリーはお気に入りの帽子を被り、ずれたゴーグルをクイと直す。 ブーツでコツンと床を鳴らし、真鍮製の前釦を上まで留める。 そして壁の姿見を覗いてみれば、飛行服を着た美少女の完成だ。 昔から着ていた飛行服。今日初めて、その本当の役割を果たす事になる。 自分の部屋のドアを勢い良く開けたリリーは、一段とばしに階段を駆け下りる。 その顔は、まるで溢れる笑みを抑えられなかったかのように緩んでいる。 何故彼女がこうも浮かれているかというと、理由があった。 今日は待ちに待った『試験飛行祭』の日なのである。 先の戦争が終わってはや5年。 戦争末期に導入されようとしていた『蒸気飛行機』は、開発が追いつかぬままに終戦を迎えた。 だがそれでも、最後の最後に数度だけ、航空部隊の出撃は行われている。 そして、リリーの父レックス・エアハートは、大空で命を落とした。 それから、5年。 リリーは父の蒸気飛行機を受け継いでいた。 また同時に新たな戦争に備えるため、帝国は再び飛行機に目を向けだしていた。 そうして訪れたのが今日、『試験飛行祭』である。 本当に飛行機は有用なのか?仮に導入するならどんな飛行機がいいか? それらの事を確かめるため、帝国政府が公式に開催したのだ。 そこでは、プロ・アマ問わず集められた飛行機製作者達が、その能力を競う事になっている。 戦時に大した成績を残せなかった事と、根強い飛行船(ツェッペリン)人気から、飛行機への風当たりは余り良くない。 だがそれによるプロの枯渇は、在野の技術者を多いに活気づけた。 現状の飛行機開発は、殆どアマチュア達がリードしていると言ってもいい。 試験飛行祭の出場者は8組、その中にはリリーの名もあった。 階下に降りると、リリーの姿を認めた彼女の叔母イヴリンが、あらあらと声を上げた。 「何だか今日は何時にも増して様になってるわねぇ」 「でしょ?」 リリーは飛行服を見せびらかすように一回転する。 初めて飛行服を着た時と同じ仕草。 「それで、前から言ってたけど今日は帰り遅くなるよ。 ていうか今日は帰れないかも。 でもシューと一緒だから心配ないと思う」 玄関のドアノブに触れながら、振り返り告げる。 リリーの指は、無意識にノブの表面に描かれた模様をなぞる。 「本当に、気を付けるんだよ。 そもそも、私はあの『ヒコーキ』ってモンもよく分からないの。 あんなチャチい機械で空が飛べるってのがまだどうにも信じられないのよ」 そう言ってイヴリンは眉を顰める。 確かに世間は熱に浮かされたように機械化へと突き進んでいた。 が、その急速な進歩は多くの――彼女のような――市民を置き去りにしようとしていた。 近頃の新聞はどこも科学の話題で持ち切りだが、彼らが気にしているのは労働者階級の啓蒙などではなく、ただ売上と世相である。 そんな叔母の心配を、リリーは笑って受けとめる。 「あはは、大丈夫だって。 じゃあ行ってくるね」 そしてリリーはドアを開き、一歩を踏み出した。 ― ――― ―――――― そこは機械の砦だった。 回り続ける無数の歯車に、足元をうねるパイプ。ガラス球の中では水が沸騰している。 上下するピストンの隣では、時計だか計器だかの針が静かに動いている。 その塊は見る人によって美しく整然としている様にも、醜く混沌といている様にも見えるのだろう。 とは言え、そのどれもが、リリーには理解不能の存在だった。 「ちゃんと出来てるんだよね!?」 リリーは、ガチャガチャという作業音に掻き消されぬよう叫んだ。 そして相手の少女もまた、負けじと叫び返す。 「ああ!すっかりきっちり完璧だ! きっと優勝間違いなし!」 「だったら!何作ってるの!?」 そこで少女は作業を止め、リリーの方へと向き直る。 そして、すこしバツの悪そうな顔をすると言った。 「……関係ない物」 それを聞いて、リリーは大げさに驚いて見せる。 「まあ!信じられない! 親友が一世一代のフライトをしようって日に、飛行機を弄るでも無く何を作る物があるって言うのかしら!」 あからさまに演技なのだが、対する少女はこれにすっかり慌てた。 「なっ、ま、待て! し、しかしだな、飛行機の方はもう終わってて、これだって、その、大事な物で……!」 あたふたとシドロモドロの弁明を広げる少女を尻目に、リリーは腕を組んで斜め上を見上げる。 それを拒絶の意思表示と受け取ったのか弁解が一層慌ただしさを増そうとした時、耐え切れずリリーは吹き出した。 「もう!シューったら、演技に決まってるじゃない!」 「え、演技?」 シューと呼ばれた少女は、その言葉にポカンと口を開く。 その呆けた表情は、徐々に憮然とした物へと変わっていった。 「……もう知らん」 彼女こそがこの砦の主で、そしてリリーの親友であるドクター・シュタールである。 若き天才発明家、或いはガラクタ弄りのマイスターガール。 褒貶の差こそ確かにあれど、どちらも彼女の才覚に根ざした呼び名であることには違いない。 「ゴメンゴメン!ちょっとした冗談だから! ほら、これサンドイッチ!さっきそこで買ってきたの。これあげるから」 「……ん」 リリーが持参した紙袋からハムとレタスを挟んだパンを取り出すと、シュタールがサッと掠め取る。 食べ物に釣られる現金な友人に微笑ましさを感じてクスリと笑うと、何が可笑しい?と睨まれた。 彼女たちは同い年、4歳の時にシュタールが近所に越してきて以来の竹馬の友だ。 この程度の戯れは慣れっこで、だからシュタールの機嫌もサンドイッチ一切れで回復する。 「それでシュー、飛行機は?」 シュタールはそれに応えて口を開き何かモガモガ言った後、伝わらない事を理解してサンドイッチを飲み込んだ。 「ん、ちょっと待ってくれ…… おい、コグ!飛行機をここへ持って来てくれ!」 「はいはい」 部屋の奥から声がしたかと思うと、ガラガラと騒音を引き連れて、台車を押し押し若い男が現れた。 その大型の台車の上には、両翼尾翼と車輪を取り去られた飛行機が乗っかっている。 型番『Fr03 ファイアスターター』。これに、彼女の父は『ブリー』という愛称を付けていた。 翼をもがれ、ただの箱のようになった飛行機は何となく不格好で滑稽だ。 「ご苦労」 「ご苦労様です。コグさんはまだ助手を?」 「うん。まあ、相変わらず雑用係みたいなモンだけどね」 このコグという若者は22歳、二人より少し年上の青年である。 外見は長身の優男風だが、痩せぎすであり体躯の良い方では無い。 彼は農家の三男坊だったのだが、1年と少し前に「これからの時代は農業より科学だ」と家を飛び出し、シュタールの助手になった。 近所に住んでいたから選んだのだろうが、科学者になりたい者の選択肢としてはシュタールの下はミスチョイスに思える。 所詮は『発明少女』でしか無い彼女が科学協会に顔が効くはずも無く、彼女も体の良い手伝いが出来たぐらいにしか考えていない。 それでもコグが助手を続けているのは、『科学者になりたい』よりも『実家を出たい』がメインだったからではないかとリリーは密かに思っている。 「さて、元が酷かったからちと難儀したが、完全に改修完了だ」 そう言ってシュタールは側面をコツコツ叩く。 5年前に操縦者を亡くした時、飛行機もまたボロボロの有り様だった。 それをまともに人が乗れるまでに修理し、かつ5年のブランクを埋めるぐらいに性能を向上させたのはシュタールである。 リリーにとって、シュタールが親友でいたことはある種運命的な物であったと言えよう。 「特にエンジンは随分と粗悪な物だったから、私の作った物にまるまる入れ替えたぞ。 5年前かつ初の軍用飛行機だったのだから無理もないのかも知れんが……」 「ねぇねぇ、羽は?」 「ああ、主翼と他諸々は外して奥に置いてある。 バラで持ってって向こうで組み立てた方が楽だろう」 コグが小さく、持っていくのも組み立てるのも殆ど俺だけどね、と言ったがシュタールは無視した。 「だから会場には一人で行って貰う事になる。 こっちは後から飛行機を持ってかにゃならんからな」 「え?そうなの?一緒に行くと思ってたのに」 「なに、向こうで直ぐに合流だ。気にする事は無い」 その後三人は少し雑談して、リリーはシュタールの研究所――または家、または呼ぶ人によってはガラクタ置き場――を出た。 シュタールの研究所から最寄りの駅までは、徒歩で充分である。 リリーの様な若者で無くとも、一々馬車を呼ぶ必要すら無いぐらいに近い距離だ。 この駅からダンフロア行きの機関車で1時間30分程揺られれば、会場のある街に着く。 街の名はレクトリ。遥か昔には商業都市として栄えていたが、今では『都市』の冠も不似合いな地方中小都市だ。 付近にはかつての繁栄の残り香が、遺跡となって点在している。 その街の郊外にある丘とも草原とも広場とも付かぬような草地が、試験飛行祭の会場であった。 ― ――― ―――――― 灰の空に、緑の大地。 一面色の双極は、地平線上で混じる事無くぶつかっていた。 辺りをぐるりと見渡せば、他の技術者や操縦士が飛行機の調整をしているのが見える。 いや、それだけでは無い。 『祭』という名に惹かれて集まってきた群衆、それを相手取る種々の屋台、カメラを磨くぶん屋達…… 隅の方では、優勝者を対象にした賭けが行われているらしく、軽く人だかりができている。 リリーも一瞬見に行こうかと思ったが、配当率で先入観を持ちたくなかったので止めた。 それに、無名の自分にかかる低いオッズを態々確認するのも癪だった。 屋台で買った、蒸かしたじゃが芋をバターで味付けした物を食べていた時、シュタールらが到着した。 それが驚いた事に、コグの運転する蒸気自動車によってである。 「車運転できたんですか?」 「親父に叩きこまれたんだ。これからの農業はトラクターの時代だーっ、てさ。 まさかこんな所で披露する事になるとはね」 駆け寄って尋くリリーに、運転席から居りたコグが答える。 自動車は荷台を牽引しており、バラされた飛行機が固定されていた。 「今から組み立てるぞ」 「あ、そこに居たんだ」 荷台の飛行機の陰からシュタールがひょっこり首を覗かせ、言った。 その手は飛行機を固定している紐を器用に外していく。 「何だか皆、随分とお祭り気分だな。 まあ衆人に私の技術を見せつける事に異存は無いが……何を食っている?」 リリーは問いに簡潔に、芋、とだけ答えると、飛行機を改めて眺め回した。 これが今から鳥となって大空を駆けるのだ。 それが自分の手で行われると思うと、リリーは頭に静かに高揚感が昇ってくるのを感じた。 「芋か……芋は好かん。 よし、コグ、組み立てだ。手伝え」 「はいはい」 リリーが二人の作業を見守ろうと、芝生に腰を下ろした時、突然声が掛かった。 「失礼、ミス・エアハートは居るかね?」 「えっ?」 声の方を振り向けば、そこには立派な偉丈夫が立っていた。 逆だった髪にボリュームのある髭、さかながら獅子を思わせる豪傑である。 左手でその立派な髭を撫で、右手で黒檀のステッキを突いている。 「私ですけど……」 「おお、君か! いやさ、出場者名簿で見てな、探しておったのだ。 成る程確かに、あの男に似ておる」 そう言って男はリリーを眺める。 突然現れた謎の人物に、リリーは困惑するしかない。 「ええっと……」 「血は争えんとは良く言った物だが。 真逆こんな所で会おうとは……ん?ああ!」 そこで男は、リリーの胸中を察したのか、カラカラと豪快に笑った。 「これはこれは、すまなんだ! 成る程、名乗らなくては分かるまい! 儂はアブニー。お前さんの父親、レックス・エアハートの戦友だった男さ」 それを聞いて、リリーもまた、ああ!と叫んで立ち上がる。 「アブニーさん! その、御免なさい!全然気付かなくて……」 「よいよい!随分前に2度ほど会ったきりだものなぁ。 ほれ、お前がこーんなちんまい時の事よ」 そう言ってアブニーは手の平を太腿の辺りで振る。 それに、リリーは笑って応える。 「もう!そんな小さくなかったですよ!」 「はてそうだったかな?年寄ると耄碌してイカン」 イカンなあイカンイカンと繰り返して笑う大男に、リリーも快活に笑う。 「まだまだ元気そうじゃないですか!」 「おーい」 笑う二人に、頭上から声がかかった。 「申し訳無いが、紹介して貰えないかな。 私はそちらの紳士にお初のお目通りでね」 「あっシュー。そっか、そうだよね。 この人はアブニーさん!えっと、大佐?でしたっけ」 「いや、今はもう中将さ」 「という訳でアブニー中将です! 私のパパの友達で、私がまだ小さい時に二回?程家にいらっしゃった事があるの。 アブニーさん、こっちは私の親友のシュー……えっとシュタール。で、こっちがコグさん。 二人が私の飛行機の技術者なのよ」 「うむ。宜しく頼むよ。 このリトル・エアハートは戦友の忘れ形見でもあるしな。 で、これが君の乗る飛行機かね…………うん?ほう、これは」 アブニーは、その無骨な指で飛行機の側面を撫でる。 その顔が、嬉しそうに緩んだ。 「こりゃレックスのブリーを改修したものか! 外板を金属にしたな。成る程……だがこりゃあ間違いなくヤツの飛行機だろう?」 「えへへ、そうなの! 私、パパの飛行機で飛ぶんですよ!」 「しかし、5年前の飛行機だぞ? どうだ?他の連中と競り合えそうか?」 その質問には、右翼部分を接続しながらシュタールが答えた。 「ええ、なんたってこの私が改修しましたからね。 そこらの凡百には負けませんとも」 「そいつぁ頼もしい。じゃあエンジンはどうした?」 「新しい、もっと強力な物と取り替えました」 「ああ、やはりそうか! ファイアスターターのエンジンは弱かったものなぁ。 あれの所為で儂も一度死にかけた。 知っとるか?これを作ったプロフェッサー・エレメンタルも今回の試験飛行祭には参戦してるぞ」 「へえ」 そこで興味深そうにシュタールがふり向いた。 初めてアブニーと真正面から顔を合わせる。 「この機体を作った人が?」 「ああ。 だがな、嬢ちゃんなら気付いとるかも知れんが、ヤツの技術は大した事は無い。 パイオニアだから尊敬こそされちゃあいるが、今や追いつき追い越せよ。 問題はな、ヤツの連れてる操縦者(パイロット)だ」 「操縦者?」 リリーとシュタールの声が重なった。 コグは黙々と作業を続けている。 仕事熱心に見えるが、その実、将軍という位の高い人間にどう接すればいいか分からず黙っているだけだ。 アブニーは髭を撫で撫で、答える。 「うむ。リザ・バラッド、といったか。 30幾つの女だが、これがまた天才的な操縦者でな。 ヤツの機体がヘナチョコでも、この女がスペックを引き出す故厄介になる。 さっき賭場を見てきたが、エレメンタルのオッズは上々だった。ヤツの機体性能だけではそうはいくまい」 それを聞き、シュタールはふむ……と考えこむ。 そして頭を掻くと、口を開いた。 「リリー。まだ始まるまで時間はあるな?」 「え?うん、まだちょっとは」 腕時計を覗き、リリーは答える。 「じゃあ、後でそのプロフェッサーとやらの所に行ってみよう。 私も少し、気になってきた」 「おっ、いいね! 確かに他の飛行機も気になるし!」 「ああ、そうだな。そうしたまえ。 儂の事もエレメンタルの事も知らなかったという事は、参加者の情報は殆ど知らんのだろう? 敵情視察は重要だ。勉強になる事もあるだろうしな」 アブニーはうんうんと頷き、髭を撫でる。 癖なのだろう。 「さて、それでは儂は自分の飛行機の所に帰るよ。久々に会えて嬉しかった。 そうだ、敵情視察第一弾として儂の情報を教えてやろう」 「あっ、そうか。アブニーさんも出場者なんだった。 そう言えば、アブニーさんの操縦はトップ級だって、パパも言ってましたよ」 「ほう、あの若造め、そんな事を言っておったか…… だがな、今回の儂は単なる操縦者じゃ無いぞ。 今回儂が乗る飛行機を作ったのはな、何を隠そうこの儂よ」 恐らく言いたくて仕様がなかったのだろう事を言えて、アブニーは満足気に胸を逸らした。 満面の笑みで己を誇るその姿は、偉丈夫の中に隠れる若々しさを感じさせる。 「えー!本当ですか!?凄いじゃないですか!」 「それは、うん、確かに凄いな。 実際に乗って分かる事もあるなら、大いに有用だろう」 リリーとシュタールがそれぞれ感嘆を口にする。 特にシュタールは、初めてアブニーという人間に純粋な敬意を持った様だった。 二人の少女の声を受け、アブニーははにかんだ。 「とは言え、君のような専門家には敵わんかもな。 一応こういうのに詳しい部下にも手伝わせてはおるが…… おお、そうだそうだ!その部下の下に戻らねばならんのだった。 ヤツは有能だが、一人では何もできんような軟弱者だからな」 アブニーは杖を持ち直し、握り心地を確かめるように持ち手を数度、握っては放す。 彼が常に杖を持ち歩く理由を知る者は殆ど居ない。 さしもの将軍殿も老いてきたのだ、戦場の古傷が痛むのだ、あれは仕込み杖で護衛用だ、と様々な噂はあれど、本人は黙して語らない。 彼が、実際の所は20回目の結婚記念日に妻から送られたのだ、という真実を語る事はきっと無いだろう。 「それにしても、全く、君に会えて良かったよ。 儂は軍人だからな。この学者技術者の林で知り合いに会えてホッとしたわい。 それでは、健闘を祈るぞ少女らよ!真逆、親父の後を追って空の上とは思わなんだが……」 そしてアブニーは、感慨深いものよなと呟きながら、自陣へと帰っていった。 ― ――― ―――――― プロフェッサー・エレメンタルことリーマー・エレメンタルは、中々に紳士的な人物であった。 主に外見面での事である。 口髭をイングリッシュ型に整え、パリッとしたフロックコートにシルクハット。 成る程、科学者(ドクター)というより教授(プロフェッサー)である。 しかし金縁のモノクルまでくると些かやりすぎにも思える。上品さや知性よりも、成金趣味のようだ。 では中身もそのような人物――紳士か知的か成金かというと、そうでない事はリリーらにもすぐに分かった。 「やあ!まずは、初めまして。 僕はリーマー・エレメンタル。まあ気軽に『プロフェッサー』とでも呼んでくれ給え」 名乗りからしてこうである。 どうやら、プロフェッサーは存外に気軽な質らしかった。 リリーとシュタールは順に挨拶し、名乗る。 すると、プロフェッサーはより一層に相好を崩した。 「ああ!君達か! 聞いているよ、僕の飛行機を改造した物で出場するんだろう? それで出場が認められるという事は、随分と改造したのだろうね。 しかし、原作者(オリジナル)である僕直々の進化系たる『Me05』に勝てるかな?」 「お言葉ですがプロフェッサー。 私は、私の改造した飛行機は貴方の物すら越えると自負しています」 それを聞いて明朗に笑うプロフェッサー。 彼の言葉は嫌味や挑発では無く、子供らしい意地から来ているのだろう。 そして、相手になったシュタールもまた、張られた意地を張り替えすタイプであった。 「ちょっと貴方、プロフェッサーに失礼では無くて?」 「いや、いいんだいいんだバラッド君。 このぐらいの気概を持った技術者になら、弄くられても気分が良い」 主に宥められ、リザ・バラッドは渋々といった体で口を噤む。 彼女がアブニー曰くする所『天才的な操縦者』であるという事だった。 アブニーが言っていた通りなら30を超えているというが、中々に美人である。 既にゴーグルを装着しており、上空の寒気に備えてかフードを被っている。 服は上下ともに簡素な物で、いかにもな紳士であるプロフェッサーとは対照的だ。 「それに、君はあれだろ? 間違ってたら申し訳無いが、『天才発明少女』だろう?」 「知ってるんですか?」 「ああ。何かね、『少女なのに凄いのが居る』って科学協会でもちょっと話題だったよ」 その言葉にリリーが、凄いじゃないシュー!と背中を叩く。 当のシュタールは頬を染め、目を逸らした。 「さて、惜しいが僕は飛行機の最終調整があってね。 君らも調整に時間を費やすに越した事は無いよ。安全は第一だ。 まあお互い、頑張ろうじゃないか」 プロフェッサーは手を差し出し、リリー、シュタールと握手して行く。 「え?」 と、リザが頓狂な声を上げた。 プロフェッサーとの握手を終えたシュタールが、すかさず彼女の前にも手を差し出したからだ。 「ほら、何をボサッとしているんだバラッド君。 握手を返してやり給えよ」 「宜しくお願いしますね」 シュタールの顔は微笑んでいたが、リリーはその裏の複雑な感情に気付いた。 感情の正体までは、分からなかったが。 「え、ええ宜しく」 そして、リザとシュタールの視線と手が、絡み合った。 ― ――― ―――――― 「なんか、思ってた感じの人じゃなかったね」 リリーは、所定位置に牽引されていく飛行機達を眺めながらシュタールに言った。 「……そうだな」 「アブニーさんの話だけだと、ただ大したことない人、って事しか分からなかったし。 でも、結構優しそうな人だった」 「…………ああ」 シュタールは生返事である。 ひょっとすると、案外に緊張しているのかも知れない。 その空気を察したのか察してないのか、コグがリリーに話しかけた。 「俺も会いたかったなぁ、その人。 二人して俺を置いてっちゃうんだもの」 「それは申し訳ないと思ってますけど。 でもプロフェッサーですよ、プロフェッサー。 コグさん、ちゃんと対応できます?」 コグさん権威とかに弱いから、とリリーが言う。 「いやー、だって、俺その人の作った飛行機散々弄り回してんだよ? 親近感とかもあるし、大丈夫じゃない?」 それにやっとシュタールは、烏滸がましいぞ、とだけ言った。 コグとリリーは、笑った。 その時、 「すいませーん、エアハートさん、準備できましたー」 全ての飛行機が所定位置に付いたのだろう。 スタッフからお呼びがかかった。 リリーは立ち上がる。 「じゃあ、行ってくるね」 「ああ、勝ってこい」 二人の少女は、手と手を打合せた。 ― ――― ―――――― 合計八機の飛行機が横一列にずらりと並んだその様は、圧倒的ですらあった。 一機一機、それぞれが違った相貌を見せ、静かに佇んでいる。 それぞれの技術者、詰めかけた観衆達、マスコミに政府関係者、無数の視線が飛行機と乗り手に注がれていた。 飛行船を飛ばそうかという話もあったにはあったが、危険という事ですぐに却下された。 ただでさえ八機の飛行機がひしめき合うのに、これ以上空に物を浮かべてどうするというのか。 「リトル・エアハート!お互い頑張ろうではないか!」 「ええ!勿論、負けませんよ!」 リリーの左隣に飛行機を付けたアブニーとそう言葉を交わす。 老将は、久しぶりの衆目の前での飛翔に些か興奮しているらしい。 だが、その言葉は少々喧しかったらしく、リリーは右隣から注意を受けてしまった。 「おいおい嬢ちゃん、大声だすもんじゃねえや。 まだエンジンも回ってねえんだから、普通に喋りゃあ聞こえるよ」 「す、すいません……」 指摘を受け、途端に自分の大声が恥ずかしくなったリリーは、赤面して謝罪する。 しかし、急に萎れたリリーに今度は男が決まりが悪くなったようだった。 「あー、まあそう悄気げんなや。 俺はワリドー・フェガリ。Derek Brandonってトコに雇われた操縦者だ」 決まりが悪くなった男――フェガリは、突然の自己紹介で場を取り繕うつもりらしい。 Derek Brandonとは蒸気機関車の開発で有名な会社であるが、飛行機事業にも乗り出したのだろう。 「だからよ、あんたらみたいに自分の飛行機で飛んでやるぞー、的なのが無いんだよな。 そういう意味では、ちょっと羨ましくもあるよ、あんたらがさ」 そう言ってフェガリは、あれも含めてな、と一番右端に待機する飛行機を親指で指す。 そこに陣取っているのは、自転車に鳥の翼を付けたような異形の物体であった。 「あれ、ですか……」 あれ、とは東方人の発明家が乗るオーニソプターである。 複数の飛行機(エアプレーン)に囲まれた羽ばたき機(オーニソプター)は、さながら歯車の群れの中に紛れた小鳥のように儚げだった。 恐らく、操縦士兼開発者であるというタン・ミオンなる女発明家も、自分の愛機が時代錯誤気味な事は理解しているのだろう。 聞く所によると、祖父の代から続けられていた羽ばたき機開発の、ある種の供養のために出場を決意したらしい。 時の流れに取り残された、哀れな枠組みの鳥。それが大空を翔ける前に、既に時代の寵児は決してしまっていたのだった。 試験飛行祭の規定が緩々だったから紛れこめたとはいえ、最早誰も期待などしていない。 それを分かっていて飛ぶというのは、どんな気持なのだろうか。リリーには想像することもできなかった。 「自分の意地、科学の誇り、会社の威信…… みんな何かを背負って飛ぶんだよ。大小あれ、な」 「ええ、そうですね。 私も……」 リリーは視線を自分の手に落とす。 父の意志、自分の夢、そして、友の思い。 「私も、負けられません」 前を向いてそう言ったリリーに、フェガリは、俺もさ、と呟いた。 直後、メガホン越しに係員の声が響き渡る。 「では皆さん、エンジンを回して下さい! エンジンが温まった頃合いを見て係の者が旗を降ったら、スタートです!」 その言葉を合図に、エンジンを始動。 空気が唸る様な音が満ち、機関の律動を全身に感じる。 八人のパイロット全員の顔が引き締まり、視線は前へ、そして上へ。 両サイドで旗が振られたのを視界に捕らえた瞬間、全機が一斉にスタートした。 歓声が湧く。 スタートは全機ほぼ同時であった。 微小の差はあれど、殆ど横並びになって進んでいく。 もう音は聞こえない。ただ風を切って突き進む。 そして、まるで風の中に溶け込むかと思われた時、ふわり、と車輪が地を離れた。 その瞬間、リリーはまるで飛行機では無くて自分の身体が浮かびあがるかのような錯覚をしたという。 「飛んだぞ!」 どこからか声が上がった。 八機の飛行機が、今、帝歴856年の空に浮かんでいた。 さて、オーディエンスは盛り上がったが、ここまでは序章に過ぎない。 これから行われるのは、八機の飛行機によるレースだ。 ぐるりと逆時計回りに円周を書いて飛び、この場所まで戻ってくる。 その時間を競うのだ。 まずは北西、なだらかな丘が続く方へ。 その後鬱蒼と茂る森の上を飛び、最後は古代遺跡の残骸と、少しだけ街の上を飛んで帰ってくる。 今は八機全てが機首を北西へ向け、丘の上へ突き進んでいた。 状況は既に、膠着状態を脱している。 リザの操るプロフェッサー・エレメンタルの新作『Me05 マーセナリー』が、他を明らかにリードしていた。 後ろではリリーを含め6人が固まって後塵を拝し、それらより更に遅れて、タン・ミオンの羽ばたき機(オーニソプター)『太王巡航』が続いている。 リザのマーセナリーの尻を追いかけながら、リリーはリザに尊敬の念を送る。 アブニー曰くの『ヘナチョコ』で、ここまであからさまに私達を圧倒しているのだ。 だが、負けるつもりは無い。 その時、リリーらの一群から一機の飛行機が飛び出した。 尾翼に輝く黒い一角獣(ユニコーン)のエンブレム。 新興貴族、ヴォルテ伯爵の乗る『ブラック・ユニコーン号』である。 彼は近頃の貴族らしく、機械に大きな興味を持ち、遂に自ら空を飛ぶに至ったのだ。 恐らく貴族の誇りが、リザの後ろに甘んじる事を良しとしなかったのだろう。 事実リリーは、伯爵がこう怒鳴るのを聞いている。 「おのれ、負けるものか!」 その言葉は、前を行くリザに聞こえているとは思えなかったが。 それでも伯爵のブラック・ユニコーンは中々性能が良いと見え、徐々にリザとの差を縮め出した。 だがその時、異変が起こった。 見る間に彼の飛行機が煙を上げ始めたのだ。 無理な酷使がエンジン温度の過剰上昇を招き、排熱機構が不満足にしか稼働しなかった結果、最初の脱落者が出ようとしているのだ。 誇りよりも、命。新興貴族はそう判断したらしかった。 伯爵は、苦虫を噛み潰したような表情をしたまま、パラシュートで難を逃れていく。 あれならきっと、助かるだろう。肉体よりも、誇りについた傷を心配すべきかも知れない。 ヴォルテ伯爵と、その道楽飛行機『ブラック・ユニコーン号』、脱落。 原因、機関の酷使と排熱機構の不調。 早々の脱落者を出して尚、飛行機達は列を乱さず飛んでいた。 逆に言えば、今だに先頭からリザ、その他、羽ばたき機の順序は一切変わっていなかった。 頬を撫でる風の冷たさが、対照的に頬の熱さを伝えてくる。 クールになれ、だが、熱さを失うな。何かで見たような台詞を、自分に向かって呟く。 やがてなだらかな丘の向こうに、森が見えてくる。 小屋などの人の痕跡がまばらに見えた丘と違って、遠くて近い森は黒々と深い。 まるで、森という名の魔物が横たわっているかの様だ。 そしてその向こうには聳える山が、右手には輝く海が見える。 景観の変化が先への到達を意識させたのか、アブニーの飛行機が俄に速度を上げた。 さらに、リリーから見てアブニーの向こう側に居た一台も、追う姿勢を見せる。 そして、根気を絞り出すように、まだ負けていないと主張する様に、羽ばたき機もまた、速度を上げる。 だがそれは、命取りだった。 突如、魔物の爪に薙ぎ払われた様に、飛行機達がガクンと揺れた。 空気が、横から叩きつけるように、空間を突き抜け吹き荒ぶ。 それは、風。 森と丘の境目、海から吹き込み、山へ抜けていく突風。 それは後、気象学が発展してから『気流』と呼ばれる事になる風の暴流。 突然の風に、アブニーらは四苦八苦しながらも、なんとか体勢を建てなおす。 だが一機、魔物の腕(かいな)を逃れられぬ哀れな小鳥が居た。 羽ばたき機(オーニソプター)『太王巡航』。 枠組みの鳥は、暴風に飲まれ、均衡を完全に失ってしまった。 小鳥は、悲痛の歌を唄う。 「いやっ、駄目駄目駄目……! こんな所で、終わりなの……!?」 足掻く。藻掻く。その手は、空を掻く。 二度、ふらふらと揺れ、羽ばたきを失った小鳥(オーニソプター)は、地へと墜ちて行った。 墜落の最中に搭乗者が見た物は、大空だったのか、大地だったのか。 リリーはただ、彼女の無事を心の中で祈った。 東方人発明家タン・ミオンと、そのオーニソプター『太王巡航』、脱落。 原因、気流による突風。 リリーは、アブニーともう一人が体勢を崩している間に、一機だけ抜け出す事に成功していた。 つまり今は先頭から、リザ、リリー、フェガリともう一機、アブニーともう一機、という風になる。 リリーは突風が来る事をある程度予測していた。 確かに、風が来る前に、直感的に不吉な印象はした。 だがそれは、ここいらでは強い風が吹くという事を元から知っていたからに他ならない。 彼女の親愛なる天才が、雲の動きから予測を立て、予め忠告してくれていたのだ。 (ほんとシューには、頭が上がらないわ) 親友への感謝に、頬が自然と上がる。 そして気流が止んだ時、体勢制御に専念していた彼女のブリーは、アブニーらを尻目に、二番手へと躍り出たのだ。 アブニーと並んでいる飛行機は、大きくペイントされた『CMC』の文字からCoppeliusu Mortor Companyの物と知れた。 蒸気自動車の製造で有名なCMCが、飛行機事業にも進出を決めたらしい。 だが元が蒸気機関車製造であるフェガリのD Fと比べると、機関(エンジン)面で劣っている様に思える。 次にフェガリと並んでいる飛行機だが、これは地上に居た時から割りと目立っていた。 他が皆一人乗りの機体である中で、唯一、パイロットが二人乗っていたからである。 操縦者は双子の兄妹であるらしい。 成る程話題性は充分だろうが、二人の人間が乗るというのは、当然ながら一人が乗るより重さで不利になる。 後方を気にするよりも、今は前のリザをどう抜き去るかだ。 そうリリーは結論付けた。 飛行機達は徐々に森へと向かっていく。 此の先の事は何も予測できていない。 灰の大空の中、六機の飛行機が飛んでいく。 ― ――― ―――――― 一方の地上である。ここでは今、三つの場面が進行していた。 「急げコグ!」 「そう言われても……」 蒸気自動車に乗るシュタールとコグの二人は、飛行レース三番目のエリアである古代遺跡の地帯へと向かっていた。 「なんだって遺跡の方になんか行くんです? 理由ぐらい教えてくれたっていいじゃないですか。 こっちは屋台で何か買うのも、賭場でリリーちゃんに賭けるのも止めて車出してるのに」 「お前に言っても仕方ない! それよりこれ、何とかならんのか!」 「だって祭りですよ?仕方ないでしょうに」 彼らの車は、試験飛行祭の入り口付近の人波に阻まれ、遅々たる歩みを余儀なくされていた。 飛行機が飛び立つ様を見てもう満足した者は帰り、戻ってくる様を見たい者は来る。 その双方向の集団は、完全に道を塞いでいた。 まさか、人を轢いてでも行けと言う訳にもいくまい。シュタールは、爪を苛立たしげに噛んだ。 賭場に立てられたオッズ表の名を二つ、係員が消していく。 ヴォルテ伯爵の名が消された時は、幾らかの悲痛な声が上がった。 が、ミオンの名が消された時は、嘲笑うような調子の声が少し出ただけだった。 そしてミオンの名が消された後、一番下に位置する名はリリー・エアハート。 企業のバックアップも本人のネームバリューも無い、一人の少女の名であった。 Coppeliusu Mortor Companyの代表、リジコー・コッペリウスは警察の質問に声を荒らげて反論していた。 「だから!私は本当に何も知らなかったのだ! そもそもヤツを雇ったのは私ではないぞ!確か、お前では無かったか!?」 そう睨まれた秘書、ラスティナは顔を赤くして反論する。 「なっ!資料渡したんだから代表だって眼を通してる筈でしょう! だから貴方にだって責任はあります!」 貴方はいつもそうだ!と秘書が掴みかかると、代表も、何だと!と応戦する。 それを見ながら、彼らに質問をしていた警部は溜息を吐いた。 そこに、彼の部下が入ってきた。 「警部、どうなされましたか。溜息なんか吐いて」 「これが吐かずに居られるか。 俺たちが追ってたテロリストな、何処いったと思う?今頃こいつらの飛行機で空の上だ」 はぁ!?という部下の気の抜けた声と、代表と秘書の罵り合いを聞きながら、警部はもう一度深い溜息を吐いた。 ― ――― ―――――― 視点は今一度空の上へと舞い戻る。 CMCに雇われたパイロット、クラウド・エスケープは眼を細めた。 彼は今こそ操縦者として空を飛んでいるが、その実態はテロリストである。 それも、過激なラッダイト運動の継承者なのであった。 彼らラッダイト者の目的は一つ、全ての機械を破壊し尽くす事。 その構成員の殆どは、急速に台頭してきた機械に仕事を奪われた労働者達で占められている。 自らの職を脅かす危機的機器に対し、彼らは力を以って立ち向かう事を決めたのである。 また中には、機械は悪魔の技術だ、と放言する神の狂信奉者達も居たには居た。 だが、結局ラッダイト運動は歴史の主流になれなかった。 発達した蒸気機関は、皆に平等に恩恵を齎し、その支持層を幅広く開拓した。 支持を失ったラッダイト者達は、散発なテロルを数度起こした後、歴史の表舞台から消えていった。 残されたのは、最早後に引けなくなった元・労働者か、クラウドのような狂人だけだ。 彼、クラウド・エスケープにとって打ち壊し(ラッダイト)は手段では無い。 破壊の為の破壊。暴走の為の暴走。ただただ襲い、ただただ壊す。 そこには指導者達が掲げる高邁な理想も、実行者達が抱く『これで良くなる筈』という希望も無い。 彼はただ、複雑な機械を単純な暴力で持ってぶち壊し征服する事への愉悦以外、無心であった。 そういう意味では、彼は皮肉にも、機械を破壊する者として非常に機械的とすら言えた。 そんな彼が今、眼を細めていた。 舞台が整ったからだ。 都合上、一人づつ仕留める必要があった。 そして、彼は現在最も後方のグループで熱苦しい髭の男と並んで飛行している。 ここから、この瞬間から彼の飛行機皆壊し計画が始まるのだ。 では何がそれを可能にするか? 爆薬か?否。銃火器か?否。剣か、拳か、棍棒か?否!否!否! それを成し遂げるのは唯一つ、己の『意志』に他ならない。 彼は静かに『意志』の名を呼んだ。 「……デッド・ウェザー」 アブニーはすぐに異変に気付いた。 彼の飛行機『パイレーツ』の速度が徐々に落ちてきているのだ。 まず真っ先に、矢張り金属は拙かったか、と思った。 先の戦争において、プロフェッサー作の飛行機達は木製の枠に帆布を張った物であった。 だがアブニーは、実際に乗って、飛んで、戦った身として言う。 飛行機というのは、脆い。 幾ら敵地偵察だけで帰還するといっても、十二分に危険なのだ。 彼が飛行機を作るに当って第一に考えたのが、外板や骨組に金属を使う事であった。 無理な話では無い筈だ。飛行船とて枠組みに金属を使っているではないか。 そうして作り上げたパイレーツは、事実飛んだ。 試験飛行祭の会場に来てからも、CMCやD Bといった企業の飛行機が金属を採用しているのを見た。 また、あのエアハートの娘っ子が乗る飛行機も、外板を金属に変えていた。 特に後者は、Fr03の外板は木より金属の方が良い、と考えた人間が彼一人では無い事を証明している様で嬉しかった。 一方で完全木造の飛行機は、(東方人の羽ばたき機を除けば)3機。 それも件のプロフェッサーや何とかいう貴族など、どうにも『遅れた』連中が木造をやっている様に思えた。 勝てる。その時、今更ながらにそう思った。 しかしそれは単なる思い違いで、結局金属は飛行機に向いておらず、ついに不調を引き連れてきたのだろうか。 だがどうも、そういう訳では無いらしい。 では何が、とすぐさま機械類を確認するが、異常は見当たらない。 ならばまた天候か、と思い見回すが、どうやらそんな気配でも無いようだ。 ただ、コックピットの硝子越しに見る機体に、何とはなしに違和感があった。 一体、何だ? 次の瞬間、背筋を氷の蛇が駆け上るように、悪い予感が身体を突き抜けた。 何か、不味い。 戦場で培われた直感は、アブニーに機関を全力で回させた。 だが、一手遅かった。スピードが、出ない。 「うおおおおおおおおおッ!?」 空中でスピードが出ないという事は、即ち、落下を意味する。 いきなり世界が傾いたかと思うと、全てが上に吹き飛んでいく。 落下の最中、彼が感じた機体への違和感の理由が分かった。 無骨なパイレーツの金属表面は、突如として腐食していたのだ。 ああ、落ちていく。 全く理解は追いつかなかったが、ただ、アブニーは敗北の確信に悔しさだけを感じた。 さあ、漸くお出ましだ。 フェガリは操縦桿を握り直す。 高高度の冷気の中に身を置きながらも、その手にはじんわりと汗が滲んでいた。 彼を雇った雇い主(パトロン)の言葉が脳裏に響く。 曰く、他会社がパイロットにスタンド使いを送り込んでくるらしい。 曰く、対抗するためにこちらもスタンド使いを雇う事にしたんだ。 そしてフェガリの肩に手を置くと、頼んだよ、と言った。 気楽に言ってくれた物だ。 軍時代の同僚とは言え、大して義理があった相手でも無い。 ――いっそ、断っちまえば良かったか。 だが、名誉や金に惹かれて承諾したのは、紛れも無く自分な訳で。 こうなると、良い結果を残さん事には仕方ない。 中途半端な成績止まりでは、全てがパーだ。 ミラーを覗けば、アブニーだかコックニーだかいう老将軍の飛行機が落ちて行くのが見えた。 奴さんも随分直接的な手に出たものだ。 落ち行く飛行機の真上では、淀んだ液体を滴らせながら、敵のスタンドが静かに飛んでいる。 飛行機と人間とを悪意で歪めて融け合わせたかのようなその姿は、この場に対する愚弄にすら思えた。 ――さて、どうする。 落ち着くための煙草を探して懐に手をやり、コックピットの通気性の悪さを思い出し止める。 代わりに、胸元に忍ばせた懐中時計へと意識を澄ませば、歯車の音が心の臓へと伝わってくる。 一定間隔で刻まれる時が、冷静さを導いてくる。 相手が軽い不正程度で来るのならば、こちらもちょっとした妨害程度で済ませる予定だった。 だが、これは少々おいたが過ぎる。 飛行機亜人は滑らかに、フェガリの側を飛ぶ飛行機――双子の兄妹が乗っている物だ――の上へと移動していく。 これ以上、対戦相手が無意味に落ちていくのを見るのは偲びない。 落としにくるなら、落とすしかないだろう。 フェガリの飛行機、『Lo856 ロンディニウム』の翼に影が差す。 羽を広げ大空を舞う鳥の影。だが、どこにも鳥の姿は無い。 影だけが、翼の上を飛んでいる。影だけが、数体飛んでいる。 ふわり、影が膨らむ。形作る。三次元の鳥へと。 次元の壁を超える様に、影の鳥は飛行機の翼という面を突き破って、現世へと姿を現す。 そして敵が液体を降らせようとした瞬間、漆黒の鳥と成った影は、一文字に飛び去り、敵の肩を突き刺した。 「ストーン・テンプル・パイロッツ……!」 『!!』 一閃。 肩を啄まれた亜人が悶える。 そして恐らくは、その本体も。 それは一瞬の出来事だった。 敵は即座に攻撃の主を発見したようだった。 空中で視線が交差し、悪意と敵意の交感が走り抜ける。 ミラー越しに見るその瞳は、まるで奈落の底のように虚ろな暗黒。 空を滑る飛行機男が、髑髏の如き相貌を歪ませ、空気を震わせ唸る。 それもまた、怒りも悲しみも無い、響き渡る虚無。 敵スタンドが、双子の飛行機を捨て、フェガリの方へと飛び掛かる。 その肉体から粘着く液体を滴らせながら。 ふと下に視線を移したフェガリは戦慄した。 森が、枯れている。 滴る液体が何らかの毒性を帯びている事は明白だった。 ――ヤツの下に居るのは危険、か。 敵スタンドは素早く、Lo856の上へと移動しようとする。 その外見に違わず、飛行機にすら追いつくその速度。 しかし、易々と上を取られる訳にはいかない。 フェガリは突如、機関を急減速させる。 飛行機は瞬時に真上の敵を振り切り、後方へと引っ張られる様に後退。 フェガリは歯を食いしばり、伸し掛かるGをやり過ごす。 それは、後に巴戦やドッグファイトで用いられるマニューバ動作であった。 だが、この時代の飛行機には些か過剰な動きである。 飛行機の耐久如何によっては、下手をすれば空にばら撒かれていてもおかしくない。 フェガリは、この一動作の間だけは、一時的にせよ世界で最も熱心な神の信者であったに違いない。 すれ違い様、影から現出したストーン・テンプル・パイロッツが敵スタンドを襲う。 飛行機の戯画のように伸ばされた腕は動かせないらしい。 敵はまともにガードする事もせず、身体を捻って回避しようとする。 だが、ライフルの弾丸のように飛びくるパイロッツをそう簡単に避ける事はできない。 その腰の辺りに、パイロッツの嘴が突き刺さる。 そして、次の瞬間、 『……!!』 パイロッツは影に戻り、敵スタンドの皮膚の上を飛んでいた。 揺れる飛行機のバランスを保ちながら、フェガリは考える。 ストーン・テンプル・パイロッツ。 影の鳥は、ある条件で一時的に実体化し、直線的に突っ込む。 影でいる限りは物理攻撃を受けず、移動兼攻撃が終わればまた影に戻る。 利便性には欠けるが、攻守共に有用なスタンドである。 では、実体化のトリガーとは何か。 それは、触れた対象から『重さを奪う』ことである。 重さを奪い、飛ぶ。 飛んだ先でまた重さを奪い、再び飛ぶ。 飛行は即ち攻撃であり、攻撃は即ち重さの奪取に繋がる。 だがその特性は、飛行機上というシチュエーションでは諸刃の剣だ。 地上でならいざ知らず、ここでは影を投影できる物は飛行機か、雲ぐらいしか無い。 雲はどんどん後ろに遠ざかっていくため、当然、初めに出現するのはフェガリ自身の飛行機の上だ。 そしてそれはつまり、奪う重さは当面、彼の飛行機から賄う必要があるという事だ。 飛行機は繊細だ。 ちょっとした重さのブレが、機動に影響を与える。 だがそれは敵も同じだ。 こちらから飛ばしたパイロッツを敵の飛行機に到達させ、そしてまたこちらへと帰還させる。 これを繰り返す事で、彼我の飛行機の重さを加速度的に減退させる。 まともに動かせなくなるのは両方同じ。 そこから自分だけが生き残れるかは、 ――運次第、か。 だが、やるしかない。 怖いのは敵スタンドの動きだ。 だからまず、牽制としてそちらにパイロッツを飛ばした。 敵スタンドの上で影に戻っていたパイロッツは、既にまた鳥へと変化し、こちらの飛行機へと戻ってきている。 同時に、敵から重さを奪いながら。 よくスポーツなどで『身体が軽い』などと言うが、実際に身体が不意に軽くなったなら、誰が軽やかに動けようか。 当然ながら、筋肉が、脳が混乱し、動きは精彩を欠く。 今、敵は突如軽くなった己のスタンドをまともに動かす事は叶うまい。 急減速したフェガリの飛行機は、高速で敵のCMCのロゴが入った飛行機へと接近していく。 近距離なら、敵スタンドの妨害を受ける前に、素早くパイロッツを突撃させられる。 まだ敵は、こちらの能力に勘付いていない筈だ。 敵スタンド使いとワリドー・フェガリ。その距離が、縮む。縮む。どんどんと近付いていく。 だが、フェガリは敵を侮っていた。 フェガリは、帰ってくるパイロッツを見て、目を見開いた。 黒い、影のような、いや、影の鳥。 その身体に、何かが……そう、粘性の液体が纏わり付いている。 「毒か!?」 影の鳥は、その身から煙を上げながら、真っ直ぐフェガリへ向かってくる。 鳥が帰ってきて、影に戻れば、後に残った毒液はLo856の機体に振りかかるだろう。 「クソッ!」 緊急回避。 高度を下げ、影鳥を何とかやり過ごす。 無理な運転に機体が軋み、フェガリは顔を顰める。 主に見捨てられた影の鳥は、そのままヒョロヒョロと後ろへ飛んでいって、消滅した。 消滅した一体分のダメージがフィードバックされ、フェガリは口から血を流す。 「やるじゃねぇかクソッタレ!!」 上を見上げ、飛行機の中の商売敵――実際にはテロリストなのだが――に向け悪態を吐く。 返事は無い。まるで屍のような、無言。 とはいえ、フェガリも返事などハナから期待していない。 しかも、上を向いた視線は影に遮られる。 「おいおいマジかよ……!」 重さを奪ったパイロッツが消滅した事で感覚を取り戻した敵スタンドが、襲いかかってきていたのだ。 回避できるか? まさか。これ以上この機体で無茶をすると、どうなるか分かったものじゃない。 スタンドで迎え撃つ? パワーの面では非力極まるパイロッツで?しかも、こちらの重さをすり減らしつつ? 打つ手、無し。 そんな文字が脳内に翻る。 毒を滴らせながら迫り来るデッド・ウェザーの髑髏の貌が、 幼いころ動物園で見た、涎を垂らしながら迫り来る肉食獣の顎門とオーバーラップする。 覚悟し、身体を硬くしたフェガリの目の前から、 デッド・ウェザーが、消えた。 フェガリは呆然と、ただ敵が飛んでいった方向を見やる。 ああ、飛んで行くなぁ。 そんな間抜けな考えが頭に浮かび、脳内の何処か別の場所でそんな自分を嘲笑する声が聞こえる。 さっきまで敵がいた所に目をやると、見覚えのある飛行機が居た。 Fr03の改造機ブリー。少女パイロット、リリー・エアハート。そして、その隣に立つスタンド。 少女は睨め付けるように笑って、言った。 「間に合って、良かった」 「フェガリさん!助太刀します!」 「嬢ちゃん!何だ、お前、スタンド使いだったのか!?」 飛行機の上から交わされる会話。 フェガリの言葉にリリーは、はにかんで答える。 「あはは……ついさっきから、です」 「おいおいおい……つまり、何だ? 嬢ちゃんは今さっきスタンドに目覚めたってのか?」 そんな偶然が……と言いかけて、頭を振る。 自分とCMCのパイロットの二人のスタンド使い。 敵対者を飛行機ごと落とす危険人物と空の上。 しかもその毒牙に掛かったのは彼女の知り合い。 こんな状況なら、素質ある人間は目覚めてもおかしくない。 「必然、か」 飛行機の上で呟かれた言葉は、風に紛れて消えて行く。 「え?」 「いいや!何でもねぇ! それで嬢ちゃん!何ができる!?」 問われたリリーは、彼女の飛行機の側面を指さす。 そこには筒状の物体があった。徐々に消えて行く所を見るに、スタンドが創り出した物らしい。 「これです!これを出せるんです!」 「これったって、何だそりゃ?」 その筒は、今で言うところのジェットエンジンという物に他ならない。 だが当然、この時代にそんな物は存在せず、フェガリは頭に疑問符を浮かべる。 「えっとですね、なんか風?かな? とにかくこれ、凄い推進力なんです!」 今のもこれで飛んできて、その勢いでアレを、とリリー。 言いながら彼女のスタンドが、シュッシュッとシャドーボクシングの動きをする。 勢いに乗って殴り飛ばした、という事だろう。 些か覚束ない説明ではあったが、フェガリはその概要を理解する。 そして彼は、提案した。 「おし、嬢ちゃん。 それ幾つかだせるか?よしよし。だったら……」 一方、クラウドは、殴打の衝撃で受けたダメージから漸く抜けだしていた。 垂れた鼻血を、厚手の手袋の甲で乱雑に拭う。 リリーのスタンドのパワー自体は、決して高くはない。 だが、飛行機と並ぶ程のスピードで放たれた打撃は、確かに重たかった。 ニ対一、三者の意志が交差する。 須臾、風の音が、機関の音が、歯車の音が、蒸気の音が、 周りからありとあらゆる音が消え、世界が澄み渡り、空気が張り詰める。 その張り詰める緊張の中で、遠雷の音が響き始めた。 森の入り口に、暗雲が集まり始めていた。 それは、あの気流の突風によって海から運ばれてきた、積乱雲。 刻一刻と生き物のように膨れ上がる灰雲の塊は、時折電を孕んで青白く輝く。 そして今、一本の稲妻が空に入った亀裂のように轟き、世界を覆う緊張のベールを引き裂いた。 三者が一斉に、動く。 まず最初に動いたのはフェガリのLo856。 空中でターンを決め、当初の狙い通り、敵へと接近を図る。 飛行機の翼には渦巻く影。平面の上で羽ばたく黒い鳥達。 軌道は奇を衒わず、直線。 此処に来てフェガリはついに、本来進むべき道を逆転し、敵へと向かっていく事を選んだ。 その道程を阻むように、デッド・ウェザーが立ちはだかる。 未だ敵二人の能力どちら共に不鮮明。 だが、あの影の鳥に何がしか行動を阻害する力がある事は確か。 だから機体そのものがやられる前に、デッド・ウェザーで防御を取る。 それがクラウドの決断だった。 デッド・ウェザーの表皮から滲み出る毒液の力は、先ほど示威した。 敵も迂闊には接触しようと思わない筈だ。 案の定、Lo856は旋回し、デッド・ウェザーを避けて横に逸れていく。 これで一旦は…… いや、待て。違う違う違う! 飛行機は脆い。先の戦争のパイロット達の言を借りなくとも、今まさに搭乗しているクラウドはそれをよく知っている。 ガゼット・テレグラフ紙に、こんな風刺画が乗っていたのを覚えている。 羽の生えた棺桶に乗った骸骨が試験飛行祭の受付に来て『あれが良いならこれでも良いでしょう』と言っている絵だ。 骸骨は、その骨の手で出場飛行機達を指差していた。 それだけの脆さの中、連続で急な運動に晒されたヤツの飛行機は、最早もう一度の曲芸など不可能だと言うことだ。 だが、どうだ。あの飛行機は今もピンピンしている。 何故か。 それは、無理な軌道変更など一切行っていないことを示している。 つまり敵は、最初からクラウドに向かってくる気など無かったという事だ。 だったら……これも、作戦の内ということか。 颶風のように、陣風のように、一機の飛行機が駆け抜けてくる。 デッド・ウェザーの横をすり抜ける様に。 通過の一瞬、その両翼から黒い影をデッド・ウェザーの方に飛ばす。 今更何と疑おう。間違いなく、あの鳥の影のスタンドだ。 回避するためにスタンドを動かそうとして、察する。 もう、手遅れだ。 くぐもった声が洩れる。 腕が、赤い。 血の鮮色を見るのは久しぶりだ。 近頃は、油と歯車の死体ばかり見ていた。 クラウドの眼は、デッド・ウェザーの腕を貫いた影鳥の背に、筒状の物を認めた。 その視認は束の間。 表面を得られなかった影の鳥は、薄れて消える。 次に眼に入ってきた物が、クラウドを固まらせた。 飛行機を戯画した骸骨のようなデッド・ウェザーの横をすり抜けた少女陣風は、一目散にこの飛行機を目掛けて飛んできていた。 暗雲を背にしたクラウドと対照的に、天頂を傾いた陽光を背に迫り来る。 飛行機を擬人化したようなスタンドを携えて。 避けられない。防げない。 この腕では咄嗟に飛行機を動かせない。 ダメージを受け、かつ影鳥の能力を食らったデッド・ウェザーはあのスタンド相手に打ち合えない。 瞬間が引き伸ばされた永遠の中で、クラウドは覚悟を決めた。 リリーの脳裏に、少し前から今この時までの甚だ短い時が、されど濃密によぎっていた。 アブニーが落ちた。 仮に始まりを定めるならそこからだろう。 不調のようには見えなかった老将の飛行機の突然の墜落は、リリーの心を掻き乱した。 だがその感情が凪ぐ暇も無く、新たに大いなる混乱がリリーを襲った。 突如目覚めた異能――スタンド。 その瞬間から、地すべりで見えなかった太古の地層が恐竜の化石を伴って現れるように、視覚の次元が変わってしまった。 突如現出する万魔殿の如き百鬼夜行。 戸惑いの嵐が心中に吹き荒れ、リリーの頭を掻き乱した。 低酸素が齎した幻覚か、感情の泥濘が見せる狂気か。 だが、目の前が真っ暗になりそうになるリリーに、一筋の光明が差し込んだ。 遠く、森の出口の向こう、林立する遺跡の中でこちらを見つめる眼。 大親友ドクター・シュタールの、今や懐かしい瞳だった。 思わず話しかけ、思いがけず返事が来た。 そして教授される、信じがたい話。異能の、スタンドの話。 てっきり親愛なる天才はリリーが能力に目覚める事も予想していたのかと思ったが、向こうも予想外の展開だったらしい。 驚きの交換こそあったが、それでも彼女は情報を冷静に噛み砕いて話してくれた。 それで落ち着きを取り戻せたリリーは、立ち向かうことを決めた。 アブニーの仇(テロリストなのだとシュタールが教えてくれた)を討ち取るために。 そして今、リリーは一直線にその仇の下へと向かっていた。 一瞬ごとに近付くその距離の中で、パイロットの濁った瞳がこちらを睨んでいる。 リリーが拳を握ると、スタンドも拳を握った。 そして肉薄とも言える近距離で、その拳が何度も、敵の飛行機を穿った。 張られた帆布を突き破り、どんどん風通しが良くなってゆく。 最早墜落以外の選択肢は残されていないだろう。 だが、リリーは相手を殺すつもりなど全くなかった。 拳を収めた後、襤褸のようになった飛行機の下部に連なる複数の筒――ジェットエンジン。 落下していく飛行機を見下ろしながら、それでもリリーは、これで死ぬ事は無いだろうと思った。 後は、地面に着く少し前に、エンジンを作動しなければならない。 だが、そろそろかと思ったその時、リリーの横を何かが凄い勢いで落下していった。 回転しながら落ちていくそれは、飛行男デッド・ウェザー。 デッド・ウェザーは落ち行く襤褸の飛行機に追い縋ると、中へと押し入る。 そして、何をする気かと見守るリリーの前で、飛行機は爆裂した。 内側から噴出する粘性のドス黒い液体。 それは、堕ちゆくラッダイト者の最後の意地が、機械を打ち壊す瞬間だった。 エンジンも飛行機も、バラバラになって黒い森に落ちていく。 暗雲は去り、光がまた世界を照らした。 老将軍アブニーと、その手製飛行機『パイレーツ』、脱落。 原因、デッド・ウェザーによるスタンド攻撃。 テロリスト、クラウド・エスケープと、CMCの飛行機『アドベンチャラー』、脱落。 原因、リリーによる攻撃と、その後の自爆。 ― ――― ―――――― リザは、振り返らない。 後ろで繰り広げられた大立ち回りにも、一瞥をくれる事も無い。 負ける訳にはいかないのだ。 だから、前を見つめるしか無い。 私のスタンドでは役に立たないから、そう言い訳するように言い聞かせ、ただ飛ぶ。 最早、彼女達が私に追いつくことはできないだろう。 チラリと後ろを見やる。 例え危険人物を排除するためとはいえ、リリー・エアハートとワリドー・フェガリは後ろに下がり過ぎた。 双子のクロック兄妹の飛行機の速度は脅威になりえない。 ヘルズエンジェルの能力を受けたMe05マーセナリーは、風を切って突き進む。 だが、その時、不意に悪寒が走った。 慌てて背後を見直し、硬直する。 エアハートが、フェガリが、クロック兄妹の機影が、どんどん近づいていた。 おかしい、おかしい、おかしい、おかしい! リリーだけなら分かる。 だが何故全員が加速している? あるいは私を負かすため、全員に能力を振るったのか? まさかそんな、理に合わない。 落ち着くために外を見やり、棚引く白雲を見る。 そして、理解する。 彼女らが加速したのでは無かった。 リザの飛行機がどんどん減速しているのだった。 急いで自らのスタンド、ヘルズエンジェルに会話を飛ばそうとしたが、答える声は無い。 それはつまり、彼女のスタンドそのものが、消失した事を意味していた。 能力による強化の反動が、機体を蝕んでいる。 ただでさえ大したことのない本来のスペックがさらに低下し、追い越されるのも時間の問題だ。 これじゃ勝てない。これじゃ勝たせられない。 どうしてこうなった!? 焦りと悲痛が喉から声を絞りだす。 ふと眼をやった地表で、『天才発明少女』が冷ややかにこちらを見つめていた。 ― ――― ―――――― レクトリの街並みを越え、飛行機たちが会場に帰ってくる。 この一周がまるで戦場だったかのように、その姿は歴戦の勇士すらも連想させた。 飛行機たちの輪郭は、太陽の光を背に浴びて、朧に空へと溶けゆくようだ。 だがやがて、その朧から、先頭の飛行機が抜け出てきた。 群衆から声があがる。 「おい見ろ!」 広がるざわめき。 気の早いぶん屋が、絵になる写真を手に入れようとダゲレオタイプを構える。 プロペラとエンジンの音に驚いた犬が逃げ出し、飼い主がそれを追う。 そして一番大きなざわめきは、賭場を中心に起こっていた。 「あれはプロフェッサーの飛行機か?」 「ああ、そうだ。だが……待て! ありゃ違うぞ!改造機だ!」 その日悪態と共に破り捨てられた賭け券のなんと多かったことか。 一番に会場へと帰還したのは、少女。 リリー・エアハートだった。 ― ――― ―――――― メモを片手に殺到するぶん屋の群れを、疲れたから休ませて欲しいとあしらいながら、リリーは友の姿を探す。 必ず後で答えるから、とインタビュアーを制し、その背を追った。 「シュー、待って!」 止まらぬ親友を追ってテントの角を曲がれば、 そこにはリザ・バラッドが立っていた。 「貴方が、何かしたのね」 リザは、視線で人が殺せるのかという程強く、シュタールを睨む。 「何かしたのは、貴方の方だろう」 思いがけない親友の言葉の冷ややかさに、かけようとした声が出なくなる。 リリーはただ黙って、伸ばした手を所在無く下ろした。 もう、見守ることしかできなかった。 「私のスタンド『マシン・アメージング』は、物の稼働可能時間を制限する事ができる。 貴方のスタンドに能力を使わせて貰った。何か文句でも?」 リリーには背中にか見えないが、今のシュタールは酷く怒った顔をしているのだろう。 リザがたじろいだ。 だが、狼狽えているのはリリーも同じだ。 こんなに怒った親友の姿を見るのは、初めてかもしれなかった。 「あるわよ……文句ならあるわよ! なんてことしてくれたのよ!その所為で私が負けたんじゃない!」 言っていて、リザの中にも怒りが膨れ上がってきたらしかった。 「何よ!大会規定に『スタンド禁止』なんて書いてなかったでしょう! 勝ちたかったのよ!負けられなかったのよ! そのために、私が使えるモノを使っただけじゃない!」 「喧しい!!」 シュタールが吼えた。 「アンタのお陰でプロフェッサーの飛行機が勝ったらどうなる!? 前の戦争の時、軍用飛行機を決めるテストでもアンタが乗っていたそうだな!? その時も能力を使ったんだ!そうだろう!?」 「だったら何だってのよ! スタンドを使うことの何が悪いの!?」 「悪いに決まってるだろうが!!」 その剣幕に、リザの肩がビクリと震えたのが見えた。 「その時のテストで比較対象だったのはD Bだったそうだな。 あの会社の作った飛行機が、試作とはいえプロフェッサーの物に負けるとは思えない! だが負けた。そう、アンタの所為で。だろう!? そしてスペックで劣るプロフェッサーの飛行機が採用された!」 今や、シュタールはリザの襟に掴みかかれる程に詰め寄っていた。 その背が、馴れない感情の発露に震えている。 「だったら!だったら――」 誰かが、大きく息を吸った。 「アンタの所為でリリーのお父さんは死んだんだよ!!」 シュタールは崩れ落ちた。 「シュー……!」 「リリー!?い、何時から……」 リリーは、親友の下に駆け寄ると、そっとその背を抱いた。 自分より小さな身体が、腕の中で震えている。 「シュー、いいのよ。もう、いいの」 片手でそっと頬を撫でると、冷たい雫が掌に触れた。 「でも……でも……!」 「大丈夫だよ。大丈夫」 落ち着かせるように耳元で繰り返す。 自分のためにここまで怒ってくれる友に感謝し、 同時に親友の怒りの訳に気付けなかった自分に腹が立った。 最後にもう一度だけ、大丈夫、と囁いて前を向くと、リザもまた、地面にへたり込んでいた。 「リザさん」 「私は……私が? そんな……だって、あの人の為にって、そう想って…… 誰にも認めてもらえないあの人が可哀想で……それで……」 うわ言のように繰り返すリザの名を呼んで、こちらを向かせる。 「リザさん、貴方は間違っています。 だって何よりもまず、貴方はプロフェッサーさんを騙してる」 そこに、少し立ち直ったシュタールが続ける。 「……プロフェッサーの技術は、前の戦争の時点では、そう低い物では無い。 エンジンなど、確かに目立って劣る面はあるが、それでも改良すれば随分マシになる。 だが、今回アンタの乗る飛行機を見た時、私は直ぐに分かった。 問題点の改良が、追い付いていない」 もうシューは大丈夫だ、そう思ってリリーは腕を解く。 シュタールは名残惜しそうに解かれる手に指を沿わせたが、それでも吹っ切って立ち上がった。 今や、二人の少女が、リザを見下ろしていた。 「私の、所為なの……?」 ポツリと、消え入りそうな声でリザが呟いた。 その言葉が何に対しての物なのかは分からなかったが、リリーは先のシュタールの言葉への物として取った。 「リザさんが良い結果を出すから、プロフェッサーさんも思っちゃったんです。 『これで良い筈だ、これで充分なんだ』って。 でもそれじゃ、プロフェッサーさんが可哀想ですよ」 「プロフェッサーも、決して無能じゃ無い。 もし着実に進歩していれば、今回こそ良い結果を残せたかも知れん。 その芽を摘んだのは、他でも無い。貴方なんだ」 リザは最早、泣き出しそうだった。 「だったら、だったら私はどうすれば良かったの……!? あの人の為に、私は何をすればいいの……!?」 「簡単ですよ」 リリーは、横に立つ親友を見て笑った。 「二人で、頑張って飛行機を作れば良いんです。 誰にも負けない飛行機をプロフェッサーさんが作って、リザさんがそれを精一杯飛ばせば良いんです。 そこに変な力なんて、要らないじゃないですか」 リザは、顔を覆って泣いた。 ― ――― ―――――― あれから二ヶ月が経った。 帝歴856年6月12日の帝都の空は、珍しくも快晴だ。 シューは、目出度く帝国政府の飛行機開発顧問に取り立てられた。 聞けば、最初の会議で『あれは所詮改造機、完全自作の物ならもっと良い性能を出せる!』と豪語したらしい。 その話を聞いて腹を抱えて笑ってしまったリリーは、親友に思い切り睨まれた。 コグさんも、まだ助手を続けている。 最近は忙しくなったシューに割りと仕事を頼まれるようになったらしい。 それでも雑用ばかりだけどね、とは本人の談である。 アブニーさんは、骨こそ折ったもののピンピンしている。 もし帝国飛行隊が再編されるのなら、指導者の地位に着けるかも知れないという話だ。 病室に見舞いにいった時、ベッドの傍らに杖を立て掛けた老将は豪快に笑っていた。 フェガリさんはD Bの意向を受け、民間旅客機事業を起こそうとしているらしい。 だがその前途は多難そうだ。 まだ飛行機は、大勢の人間を運ぶようにはできていないのだ。 ヴォルテ伯は飛行機から手を引いた。 今は自転車を自動で動かすモーターサイクルなる機械を作っているとか。 彼の誇りは、存外に丈夫だったようだ。 羽ばたき機のタン・ミオンは、無事保護された。 森の木に引っかかっていた彼女は、救助の瞬間にも空を睨みつけていたらしい。 それを聞いた時は、苦笑してしまった。 試験飛行祭では殆ど顔を合わせなかったクロック兄妹とは、その後の晩餐会で言葉を交わした。 兄のカルテ、妹のメルテ共に美男美女で、1位でもないのに人に囲まれていたのを覚えている。 彼らは今でも飛行機造りを行っていて、この前も会って話をした。 クラウド・エスケープは逮捕された。 墜落死したかと思われていたが、沼に落ちて気絶している所を発見された。 彼が最後にまき散らした毒が木を枯らし、結果滑らかに着水できたとか。 CMCは警察の追求をうけたが、嫌疑を晴らせたようだった。 それでも下がったイメージは払拭できず、飛行機事業からは撤退。 今はスパランツァーニ博士なる人物と共に機械人形製作に力を注いでいる。 プロフェッサー・エレメンタルとリザさんは、また一から飛行機を作り直している。 リザさんの告白をプロフェッサーがどう受け止めたのかは知らない。 でも、久しぶりにあった二人は、何処か前より幸せそうだった。 みんな、それぞれ道がある。 そして私は―― 「リリー!いいぞ!」 親友の声が、蒼天の下に響き渡る。 私はゴーグルを下ろし、機関を回す。 プロペラが回転し、来たる飛行に向けて機体が脈動する。 私は今でもパイロットだ。 偉くなったシューに合わせて一緒にくっついていったが、大したことは変わっていない。 シューが作った飛行機に、私が乗る。 きっと、まだまだ変わることは無いだろう。 スタンドは『エイシズ・ハイ』と名付けた。 少し自惚れた名前かとも思ったが、実際に一位だったのだから良いではないか。 それに、マシン・アメージングだって相当なものだと思う。 右手で帽子を抑えながら、左手でサムズアップ。 シューがそれに返すのを見て、エンジンをスタートさせる。 頬を撫でる風。 頭上で輝く太陽。 今日もまた、私は空を飛ぶ。 『Live to fly, Fly to live, Aces High』 使用させていただいたスタンド No.4574 【スタンド名】 エイシズ・ハイ 【本体】 リリー・エアハート 【能力】 殴ったものに『ジェットエンジン』を取り付ける No.2516 【スタンド名】 マシン・アメージング 【本体】 ドクター・シュタール 【能力】 触れたものをバッテリー式にする No.6768 【スタンド名】 ストーン・テンプル・パイロッツ 【本体】 ワリドー・フェガリ 【能力】 スタンドに触れた物から重さを奪う No.3001 【スタンド名】 デッド・ウェザー 【本体】 クラウド・エスケープ 【能力】 「毒性の液体」を降らせる 一覧へ戻る 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
https://w.atwiki.jp/smashup/pages/29.html
陣営の概要 秘密基地に様々なアクションを付加することを得意とする陣営。アクションを再利用することもできる。 カード一覧 国内版未発売につき和名は暫定訳なので注意してください。 戦闘員カード カード名 Original Name 戦闘力 能力(カードの本文) Original Text 枚数 スチーム・クイーン Steam Queen 5 継続:あなたのアクションは他のプレイヤーのカードの影響を受けない。 Ongoing Your actions are not affected by other players card. 1 メカニック Mechanic 4 捨て山から秘密基地に付加することができるアクションを選び、そのアクションを追加でプレイする。 Choose an action in your discard pile that can be played on a base and play it as an extra action. 2 スチーム・マン Steam Man 3 継続:この秘密基地にあなたのアクションが付加されているとき、戦闘力+1を得る。 Ongoing Has +1 power if this base has one of your actions played on it. 3 キャプテン・アハブ Captain Ahab 2 起動:この戦闘員をあなたのアクションが付加されている秘密基地に移動する。 Talent Move this minion to a base that has one of your actions played on it. 4 アクションカード カード名 Original Name 能力(カードの本文) Original Text 枚数 ツェッペリン Zeppelin このカードは秘密基地に付加する。起動:あなたの戦闘員一枚を、他の秘密基地からこの秘密基地、またはこの秘密基地から他の秘密基地へ移動する。 Play on a base. Talent Move one of your minions from another base to here, or from here to another base. 2 スクラップダイビング Scrap Diving あなたの捨て山からアクション1枚を手札に加える。 Place an action from your discard pile into your hand. 2 Rotary Slug Thrower このカードは秘密基地に付加する。継続:この秘密基地にいるあなたの全戦闘員は戦闘力+2を得る。 Play on a base. Ongoing Your minions here each have +2 power. 1 Aggromotive このカードは秘密基地に付加する。継続:この秘密基地にあなたの戦闘員が1枚だけいる時、あなたはこの秘密基地において戦闘力+5を得る。 Play on a base. Ongoing If you have a minion here, you have +5 power here. 1 Difference Engine このカードは秘密基地に付加する。継続:この秘密基地にあなたの戦闘員がいる時、ターンの終了時に追加でカードを1枚ドローする。 Play on a base. Ongoing If you have a minon here, draw an extra card at the end of your turn. 1 Ornate Dome このカードは秘密基地に付加する。この秘密基地に付加されている他のプレイヤーのアクションをすべて破壊する。継続:他のプレイヤーはこの秘密基地にアクションをプレイできない。 Play on a base. Destroy all other players actions played here. Ongoing Other players cannot play actions on this base. 1 Escape Hatch このカードは秘密基地に付加する。継続:この秘密基地にいるあなたの戦闘員が破壊された時、捨て山に置く代わりに、手札に戻す。 Play on a base. Ongoing When your minions here are destroyed, place them into your hand instead of the discard pile. 1 Change of Venue 秘密基地または戦闘員に付加されているあなたのアクションを手札に戻す。そのアクションを追加でプレイする。 Place one of your actions that is on a base or minion into your hand. Play it again as an extra action. 1 プレイング Q A コメント(15件まで表示) 名前: コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/kagaminthread/pages/73.html
ギブスン&スターリング『ディファレンス・エンジン』 アイザック・アシモフ『神々自身』『ハイペリオンシリーズ』 ロバート・A・ハインライン『夏への扉』『銀河市民』 エフィンジャー『重力が衰えるとき』 ブルース・スターリング『スキズマトリックス』 カール・セーガン『コンタクト』 ウィリアム・ギブスン『クローム襲撃』『ニューロマンサー』(翻訳がマズー)
https://w.atwiki.jp/dng_steampunk/
ダンゲロス・スチームパンク ――1864年。 世界のありとあらゆるエネルギーは枯渇していた。 人々は苦しみ、エネルギーを求めて争い合った。 だが、そこに一筋の光明が差す。 魔人の生命力を『DP』というエネルギーに変換できることが判明したのだ。 魔人共よ!『DP』を求めて殺しあえ!! 出来るだけ無駄なエネルギー消費を抑え、効率よく敵を殺すのだ!! INFORMATION ダンゲロス・スチームパンクへようこそ! 今回のキャンペーンの各ルールや進行は基本ルールガイドライン2.1に準拠しています 不明な点はこちらを参照するか、総合掲示板でお聞きください 初心者の方へ 初心者の方は以下のサイトを見るとダンゲロスがどんなものか分かっていただけると思います ゲームの雰囲気を知りたい はじめてのダンゲロス(進研ゼミマンガ風のプレイ解説) 第三次リプレイ(実際のゲームのレポート) ゲームの進行を知りたい ダンゲロスLite説明(イラスト入りで分かり易く解説。ただしルールが若干異なります) 基本ルールガイドライン2.1(キャンペーンの進行) (進行の詳細。是非目を通してください) スケジュール キ ャ ラ 募 集 期 間 月日(月) 21:00 キャラクター登録受付開始 月日(日) 23:59 キャラクター登録受付終了 月日(火) 23:59 キャラクター調整受付終了 作 戦 期 間 月日(金) 22:00 陣営分け 月日(火) 23:59 シークレット提出 月日(木) 23:59 スタメン&初期配置提出、先手後手決定 月日(土) 14:00 応援SS&イラスト提出終了、質問受付終了 本 戦 月日(土) 19:30 先手陣営行動提出締め切り(非公開) 月日(土) 20:30 戦闘開始(先手陣営の行動公開) 月日(日) 01:30 1日目戦闘中断予定時刻 月日(日) 20:30 2日目戦闘開始 ※ 記載してある時間になったら開始(終了)です。例えば「24:00」締め切りの場合「23:59:59」はセーフですが「24:00:00」はアウトです キャンペーン情報 GK陣メインGK:はくぐい サブ:ε、薬岡龍汰 キャンペーン種別:ハルマゲドン(本編)
https://w.atwiki.jp/sentai-kaijin/pages/1607.html
「皆またねグッバイベイビ~!」 【名前】 スチームパンクス 【読み方】 すちーむぱんくす 【声】 梅津秀行 【登場作品】 劇場版 超力戦隊オーレンジャー 【所属】 マシン帝国バラノイア 【分類】 マシン獣 【モチーフ】 蒸気機関車 【詳細】 4体のマシン獣が合体した姿。 その直後、巨大化エネルギーを注入されて巨大化する。 バーロ兵に取り押さえられた子供達を人質として体内に取り込み、迂闊に手出しできないオーレンジャーを単眼からの光線で徹底的に攻撃するが、交戦中に体内に侵入したレッドに人質を救出されてしまう(体内は機関車の車内そのものになっている)。 その後、機関車形態で全身の武器から一斉掃射する「スーパーファイナルアタック」でオーレンジャーロボを攻撃するも全く通用しない。 巨大化エネルギーと共に蒸気を煙突から噴き上げると等身大の姿に戻り、そのまま機関車形態で線路の上を逃走するが、先回りをしたオーレンジャーロボのクラウンファイナルクラッシュで鉄橋を切り落とされ、最期は地上への落下によって爆散した(上記の台詞はその際のもの)。 【余談】 「~ベイビー」が口癖。英語かぶれの訛った口調で喋る。 映画公開当時の劇場パンフレットでは上述の4体を含め、カメラトリックも合体に混じっているような記述もあるが、劇中の描写とは異なる。 シリーズ第36作目の劇場版にも「スチーム○○」という名称の怪人が登場している。 蒸気機関車をモチーフにした怪人はスーパー戦隊シリーズにおいて『秘密戦隊ゴレンジャー』の機関車仮面以来の登場となる。 その後『百獣戦隊ガオレンジャー』の蒸気機関オルグ、『魔進戦隊キラメイジャー』のSL邪面のモチーフとして選ばれた。 列車の内装に似た体内に人間を乗せる列車系の怪人はシリーズ第36作目にも登場している。 声を演じる梅津氏は第42話のマシン獣の声も演じている。
https://w.atwiki.jp/srkjmiroor/pages/2755.html
「皆またね、グッバイベイビ~!」 【名前】 スチームパンクス 【読み方】 すちーむぱんくす 【声】 梅津秀行 【登場作品】 劇場版 超力戦隊オーレンジャー 【所属】 マシン帝国バラノイア 【分類】 マシン獣 【モチーフ】 蒸気機関車 【詳細】 4体のマシン獣が合体したマシン獣。 その直後、巨大化エネルギーを注入されて巨大化する。 バーロ兵に取り押さえられた子供達を人質として体内に取り込み、迂闊に手出しできないオーレンジャーを単眼からの光線で徹底的に攻撃するが、交戦中に体内に侵入したレッドに人質を救出されてしまう(体内は機関車の車内そのものになっている。)。 機関車形態で全身の武器から一斉掃射する「スーパーファイナルアタック」でオーレンジャーロボを攻撃するも全く通用しない。 巨大化エネルギーと共に蒸気を煙突から噴き上げると等身大の姿に戻り、そのまま機関車形態で線路の上を逃走するが、先回りをしたオーレンジャーロボの「クラウンファイナルクラッシュ」で鉄橋を切り落とされ、最期は地上への落下によって爆散した(上記の台詞はその際のもの。)。 【余談】 映画公開当時の劇場パンフレットでは上述の4体を含め、カメラトリックも合体に混じっているような記述もあるが、劇中の描写とは異なる。 声を演じる梅津秀行氏は後に本編のマシン獣も担当。
https://w.atwiki.jp/phantasmgear/
【物語】 薄闇が陽光を遮り、街を暗がりに沈めている。機械仕掛けの塔より立ち昇る煤煙が、天蓋となって空を隠し、昼の明るさを奪って久しい。その空を見上げていた男は門衛に促され、外套の内側に吊るしている歯車徽章を示した。 頷き、門衛が吹いた笛の音(ね)を追って、鐘の重い響きが空を突く。大気を震わせ続けている機械の音が、ひと際高くなった。弾み車が曲軸の勢いを受け、扉を飾る無数の歯車を動かし、鎖を巻きつける音には錆の色がある。 【概略】 『STANDARD R.P.G. SYSTEM』を利用し作成した、伝奇スチームパンクTRPG。ヴィクトリア朝時代をモチーフとした架空ヨーロッパを舞台に、人智を越えた力を秘める、先史文明の遺物〈幻想歯車, ファンタズム・ギヤ〉が宿す意思に選ばれ、異能力者〈伝動者, ギヤード〉となった者をPCとして、各国の王室に直結する組織〈歯車匠会〉に所属し、〈産業革命〉以後、同組織と対立する〈偉人議会〉との戦いを主題としたセッションを行う。 【権利表記等】 ■SRSの目的および権利の表記 スタンダードRPGシステム(SRS)は有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチ並びに井上純弌の著作物を利用したサービスです。 SRSの目的は、標準化したRPGの制作およびプレイ環境を共有し、より便利で快適なTRPG環境を作り上げ発展させることです。 SRSを利用するにあたり、SRS目的に同意しこのサービスに参加します。 ■使用したSRSベーシックのバージョン SRSベーシック(Ver.1.01) 2015/04/20 デザイン開始 2020/06/24 ウィキ作成 2023/04/11 再開(パスワード思い出した) 管理者 HUM https //twitter.com/_hum_ ホームページ SUDDEN DEATH PLANNING https //hum97mo.ninja-web.net/ https //w.atwiki.jp/phantasmgear/ 以下の全ページの無断転用、無断転載は禁止。 『SRSの目的及び権利の表記』 『使用したSRSベーシックのバージョン』 上記2点については、 http //www.fear.co.jp/srs/ を参照。 クイックスタート ルール コンバット・クラス ギヤ・クラス 器械(ガジェット) ワールド シナリオ SRSプラグイン ダウンロード クイックスタート 正義の弾丸(ブレイカー 1Lv. / 銀製銃士 2Lv.) 帝都の千刃(イレイザー 1Lv. / 歯車騎士 2Lv.) 勝利の号砲(イレイザー 1Lv. / 車輪砲兵 2Lv.) 双刀の道化(クリーバー 1Lv. / 跳脚猟兵 2Lv.) 蒼空の輝石(ロールシフター 1Lv. / 秘石継承者 2Lv.) 妖精の盟主(ロールシフター 1Lv. / 時計使い 2Lv.) 神託の美姫(ブレイカー 1Lv. / 明晰人形 2Lv.) 黒影の殺意(クリーバー 1Lv. / 切断人形 2Lv.) 瓦斯燈の幻(マルチローラー 1Lv. / 動力人形 2Lv.) 正義の弾丸 クラス ブレイカー 1Lv. / 銀製銃士 2Lv. 特技 《ブレイカー1》[自][ブレイカー 1Lv.] 《Mi防御貫通》[選][ブレイカー 1Lv.] 《StUp惹起》[ブレイカー 1Lv.] 《奮迅》[ブレイカー 1Lv.] 《Maガジェット攻撃A》[選][銀製銃士 1Lv.] 《Mv突破》[銀製銃士 1Lv.] 《DR後離脱》[銀製銃士 1Lv.] 《In照準》[銀製銃士 2Lv.] 幻想器 テイラーの投げ針 《ブレイカー1》の効果により、常時、単体の攻撃対象に対して、メインプロセス中に行うダメージロールに+[キャラクターLv]+2d。セットアップで《StUp惹起》を使用、場面選択の[モブ]に対して[注目:特技使用者]を付帯。イニシアチブで《In照準》を使用、自身のメインプロセス中の命中判定の判定値に+4。ムーブで《Mv突破》を使用して全力移動後、メインプロセスを継続。攻撃対象が同一エンゲージ内に配置されている時、《奮迅》の常時効果が適用され、自身のメインプロセス中に発生するダメージロールに+2d。マイナーで《Mi防御貫通》を使用、攻撃対象の防御修正を、自身のメインプロセス中、ゼロとして扱う。メジャーで[運命点]を消費、《Maガジェット攻撃A》を使用して[ガジェット効果A]を適用、使用した[運命点]は[幻想点]に変換される。加えてこの時、《StUp惹起》のトグル・アクション『我を見よ』を使用、[注目:特技使用者]が付帯する[モブ]が1体以上、場面内に存在している時、メインプロセス中に行う「命中判定の判定値に-4かつ、ダメージロールに+2d」を適用する。さらに、《Mv突破》のトグル・アクション『目標を確認』により、「全力移動を行った時、命中判定の判定値に-4かつ、ダメージロールに+[キャラクターLv]」を適用する。ダメージロールの直後、《DR直後離脱》を使用、エンゲージより5m離れた位置に離脱する。(命中-4、ダメージ+[キャラクターLvx2]+6d) ルール キャラクター作成 判定 戦闘 セッション キャラクター作成 初期作成PCのキャラクターレベルは3。 コンバット・クラスより1つ、ギヤ・クラスより1つ、選択する。 コンバット・クラスのクラスレベルは、常に、ギヤ・クラスのクラスレベル以下でなければならない。 戦闘値の基準 白兵攻撃値 = (反射+知覚)/2 白兵回避値 = (反射+幸運)/2 射撃攻撃値 = (理知+知覚)/2 射撃回避値 = (理知+幸運)/2 行動値 = 反射+理知 耐久力 = 体力基本値 精神力 = 意志基本値 コンバット・クラス ブレイカー イレイザー クリーバー ラインキーパー ロールシフター マルチローラー 蘇生術使い ギヤ・クラス 銀製銃士 歯車騎士 車輪砲兵 跳脚猟兵 秘石継承者 時計使い 明晰人形 切断人形 動力人形 器械(ガジェット) 幻想器(ファンタズム・ガジェット) テイラーの投げ針 汎用器(コモン・ガジェット) SRSプラグイン コンバット・クラス スタイル・クラス 範囲拡大 トグル・アクション ファンブル値の定義 バースト 古いやつ #################################### クイックスタート ルール ワールド シナリオ ダウンロード 正義の弾丸(ブレイカー 1レベル/銀製銃士 2レベル) 帝都の千刃(イレイザー 1レベル/歯車騎士 2レベル) 勝利の号砲(イレイザー 1レベル/車輪砲兵 2レベル) 神託の美姫(ブレイカー 1レベル/自律人形 2レベル) 妖精の盟主(イレイザー 1レベル/時計使い 2レベル) 蒼空の輝石(ブレイカー 1レベル/秘石継承者 2レベル) 双刀の道化(ラインキーパー 1レベル/跳脚猟兵 2レベル) キャラクター作成 判定 戦闘 セッション コンバットクラス ブレイカー イレイザー クリーバー ラインキーパー ロールシフター マルチローラー 蘇生術使い(名前思いつかない) あと1つ ギヤクラス 銀製銃士 歯車騎士 車輪砲兵 自律人形 明晰人形(追加) 切断人形(追加) 時計使い 秘石継承者 跳脚猟兵 ... 車輪砲兵の近接版っぽいもの 動力人形(追加) 器械(ガジェット) 幻想器(ファンタズム・ガジェット) 汎用器(コモン・ガジェット) SRSプラグイン コンバットクラス 1. 常時、セットアップ、マイナーの特技を持つ。 2. マイナーの特技は選択取得であり、2種のみ。 スタイルクラス 1. ムーブ、メジャー、イニシアチブの特技を持つ。 2. 自動取得1、任意取得2。レベル上昇に伴う特技取得枠は1。 範囲拡大 トグルアクション ファンブル値の定義 クリティカル値-10をファンブル値とする。 ファンブル値を直接増減させる特技は設定せず、クリティカル値の増減によるファンブル値への干渉のみを特技データの設計指針として開放する。
https://w.atwiki.jp/fairdol/pages/405.html
販売期間 2013年10月1日(火) ~ 2014年2月1日(土) 10 59 ★5 衣装 ビザーレスチームマスク スチームプリンセス・ヴィクトリア 機械仕掛けの金飾物 画像 ★4 衣装 スチームシティの背景 昼 スチームシティの背景 夕 スチームシティの背景 夜 画像 衣装 機械人形のヘッドドレス 金 機械人形のヘッドドレス 銀 メカニカルマーキスハット ソル メカニカルマーキスハット ルナ 画像 衣装 プリマ・マキナ ジャッロ プリマ・マキナ アズッロ メカニカルマーキス ソル メカニカルマーキス ルナ 画像 ★3 衣装 スチームチェーンハット 茶 スチームチェーンハット 緑 スチームガンナー 茶 スチームガンナー 緑 レトロホイールチェア 赤 レトロホイールチェア 青 画像 ★2 衣装 レトロゴーグル 青 レトロゴーグル 赤 レトロゴーグル 緑 レトロゴーグル 白 レトロゴーグル 黒 画像 衣装 機関銃手 青 機関銃手 赤 機関銃手 緑 機関銃手 白 機関銃手 黒 画像 衣装 スチームワンピース 青 スチームワンピース 赤 スチームワンピース 緑 スチームワンピース 白 スチームワンピース 黒 画像 衣装 懐古の置き時計 水 懐古の置き時計 桃 懐古の置き時計 緑 懐古の置き時計 白 懐古の置き時計 黒 画像 コメント一覧 名前 コメント すべてのコメントを見る (c)Ambition
https://w.atwiki.jp/rixyougi1234/pages/577.html
概要 コミックマーケット85にてENGINE SMOKERから頒布された同人誌。 黄雷のガクトゥーンの舞台であるフランス王国および 紫影のソナーニルの舞台である合衆国の人物達やその周辺設定が掲載されている。 掲載人物(フランス王国編) フィリップ・ベロール ジョセフ・ジョフル ファントマ マリ・キュリー フロレンス・アメギノ・ナイチンゲール ラウル・J・R・ラルティーグ 掲載人物(合衆国編) ヘンリー・フォード ビリー・パーシング アル・カポネ フリッツ・ベア リン・アーチャー エリシア・ウェントワース 掲載SS①『一同、花の都にて』 フランス王国の政府高官との会談のために機関都市パリを訪れた 統治会メンバーの観光模様。あるいは新たなる騒動の予兆。 事の顛末はSTEAMPUNK SOURCE BOOKにて。 掲載SS②『旅の女、旅の少女』 極東を旅するエリシアとリリィ・ザ・シルエットにまつわる短編。 同人誌Lily the silhouetteへと続く。 関連作品 紫影のソナーニル -What a beautiful memories- 黄雷のガクトゥーン -What a shining braves- 名前 コメント 合計: - 今日: - 昨日: -
https://w.atwiki.jp/steampunk/
あ 名前 コメント