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ワルドが、目当ての階段を見つけたらしく、駆け上り始めた。 木でできた階段はどうも安定が悪い。眼下にラ・ロシェールの明かりが見えるが、 生憎とセッコは夜景を楽しむような繊細な神経は持ってないし、そんな時間も今はないのであった。 ふと、不自然な足音に気づく。 「なあー」 それに気づいているのかいないのか、ワルドが久々に口を開いた。 「なんだね?」 「なんか追われてるぜえ。」 「ふむ」 ちょっと見てくるかなあ。 「あ、おい!」 制止するワルドをとりあえず無視して、デルフリンガーを抜き階段を少し下りると、足音が消えた。 ・・・あれえ?確かに、間違いなく音がしたんだがなあ。 「きゃあ!」 上でルイズの悲鳴が聞こえる。 もしかして途中から飛びやがったかあ? あわてて戻ると、ルイズを掴んだ仮面の男とワルドが向かいあっていた。 ルイズごと切り殺すわけには・・・いかねえよなあ、いくらなんでも。 殴るか。幸いにして男はオレに背中を向けている。 「・・・ソル・ラ・ウィンデ」 その時、ちょうど完成していたワルドの呪文が、仮面の男とルイズとセッコをまとめて吹き飛ばした。 「きゃあ!」 「なあああああ!」 「・・・」 うおああ、切るのをためらったオレがバカみてえじゃねえか! セッコは階段に手を突っ込みあわてて這い上がった。 男は手すりを掴んで持ちこたえた。 はるか下へと落ちていくルイズをワルドが急降下してキャッチした。 足場の不安定な階段の上で仮面の男とセッコは睨み合う。 男が低く、低く呪文を唱え始めた。ひんやりとした空気が流れだす。 「相棒!構えろ!」 デルフリンガーが叫ぶ。 「ああ?」 空気が震え、何かが光る。 何だあ、電気か?! えと、ええと、雷は、どんなのによく落ちるんだっけ、細長い、金属? け、剣持ってたら絶対やべえ! セッコは、デルフリンガーから慌てて手を離した。 「これはライトニングクラUGYAAAAAAAAAAAAAA!」 稲妻がデルフリンガーを直撃し、閃光で辺りが突然昼間のように明るくなった。 「あ、危ねえ!目が、目がああ!」 畜生、目がちかちかする、奴はどこへ行きやがった?よく見えねえ・・・ 「デル・イル・・・」 さっきと同じ声で低い詠唱が聞こえてくる。いつの間に上に? 距離約3メートル。いや、メイル、だっけなあ。 この程度よお、武器無しでもひとっとびだぜ! 「くらえっ!」 「きゃあああ!」 あ、あれえ、ルイズの悲鳴? 「・・・ラ・ウィンでえええええええ!な、何をするガンダールヴ!」 なん・・・でだッ!!なんでワルドと間違えちまったんだ?! 「すまねえルイズ、目がくらんで間違えた。」 「何やってんのよ馬鹿!」 「落ち着きたまえ、賊なら逃げたぞ」 「うう。」 うぐぐ・・・オレが声を聞き違えるなんて畜生。 そうだ、デルフリンガーを拾わねえと。 セッコはようやく視力が戻ってきた目をこすりながら階段を下りた。 おお、あったあった。 「ちょっと痛かったぜ相棒・・・」 デルフリンガーが不満そうに呟いた。 「我慢しろよお。それに、今ので錆が取れたんじゃねえか?」 「そんな気もしなくもねえが、俺様を放り出すのはなるべくやめてくれ」 「そうか。」 話しているとワルドが興味深げに近づいてきた。 「さっきの呪文は[ライトニング・クラウド]。風系統の強力な呪文だな」 「ふうん。」 「しかし変だな、人は当然としても少々の固定化がかかった武器程度、軽く黒焦げにするぐらいの威力があるはずなんだが」 怖ええ、直撃しなくて本当によかったぜ。 「この剣、無傷に見えるな。一体何でできてるんだ?」 「知らん、忘れた」 デルフリンガーが答える。 「ふむ、インテリジェンスソードねえ。とりあえず賊は去ったし、次が来ないうちに登ろうか」 階段を上りきった先に、一本の枝が橋のように伸びていた。それに一艘の船が貼り付いている。羽みたいなものがついている以外は帆船だ。 ワルドたちが船上に現れると、甲板で寝込んでいた船員が起き上がった。 「な、なんでぇ?おめぇら!」 「船長はいるか?」 ワルドが杖を抜いて脅すように言うと、船員はすっ飛んでいった。 しばらくして、帽子を被った船長らしき初老の男が戻ってくる。 「なんの御用ですかな?」 「女王陛下の魔法衛士隊隊長、ワルド子爵だ。アルビオンに今すぐ出航してもらいたい」 船長の目が丸くなる。 「無茶いわねえでください、今出たら風石が足りなくなって落っこちますぜ!」 「足りぬ分は、僕が補う。僕は[風]のスクウェアだ」 「まあ、料金さえはずんでくれるならかまいませんが・・・」 「僕ら以外の積荷はなんだね?」 「硫黄で。戦時中のアルビオンでは火薬や火の秘薬の材料として、黄金並みの値段がつきやすんでね。 特に革命中の貴族の方々は気前がいいでさあ」 「ふむ、ではその運賃と同額出そうじゃないか。」 商談成立。船長はにやりと笑って命令を下した。 「出航だ!急げ!」 帆が風を受け、船が動き出す。 「アルビオンには何時着く?」 ワルドが船長に尋ねる。 「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」 「本当にこんなのが飛ぶんだなあ。燃料はなんなんだ?」 「風石だぜ、相棒」 「なんだそりゃ?」 「説明するのめんどくせ」 「使えねーなあ。」 デルフリンガーと会話しつつ甲板をうろうろしていたセッコに、ルイズが話しかけてきた。 「ねえセッコ、抜き身の剣を持ったままうろつくのはやめない?」 「なんかまずいかあ?」 「周りを見てみなさいよ」 「うあ?」 言われて見回すと、船員たちが露骨に警戒してこっちを見てやがる。 渋々デルフリンガーを鞘に収めた。 そんな二人の下へ、ワルドが寄ってきた。 「船長の話では、ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は包囲されているようだ」 ルイズが不安そうに呟いた。 「ウェールズ皇太子は?」 「わからん、生きてはいるようだが・・・」 思ったより更に状況が悪いみてえだ。 「それって、連絡不能なんじゃねえか?」 「陣中突破しかあるまいな、スカボローからニューカッスルまで馬で一日だ」 また馬かよお。 「グリフォンだっけ、あれはどうなんだ。」 ルイズが横から口を挟む。 「馬鹿ね、撃ち落とされちゃうわよ」 あー、そうだった・・・ 「ヴェルダンデが居れば楽勝なのによお。」 「いないものはどうしようもあるまい、着くのは昼だ。少し休もう」 船員たちの大声とまぶしい光で、セッコは目を覚ました。抜けるような青空が広がっている。 「アルビオンが見えたぞー!」 起き上がると、異常な光景が目に飛び込んできた。 「な、なななな、なあああ?!」 目の前に、空中に巨大な何かが浮いている。・・・島、いや大陸かあ? 「驚いた?セッコ、これが白の国アルビオンよ」 近くにいたルイズが声をかけてきた。 驚いたなんてもんじゃねえだろう。なんつう非常識な。 「これが月に何度かこの近くに来るのよ。雨を伴ってね」 浮いてるだけでもどうかと思うのに、動くのかよ。 「うああ・・・」 ぽかんと口を開けていると、見張りの船員が突然声を上げた。 「右舷上方の雲の中より船が接近してきます!」 セッコはそっちを見て呟いた。 「なんだ、普通の武器もあんじゃねえか」 舷側から、十数門の大砲が突き出していた。 横を見ると、ルイズが凄い表情で固まっている。なんでだ? 「旗が掲げられていません!空賊、空賊だああ!」 船員が叫んでいる。空賊、ねえ。 眺めている間にも横付けされた大きな船からぞろぞろと賊が降りてくる。 「ははは、なんと硫黄が積んであるらしいぞ!船ごと全部いただきだぜ!」 むさくるしい男たちが歓声を上げている。 「なあ、これって任務終了じゃねえか?どうにかなんの?」 セッコはルイズの隣にいたワルドに声をかけてみた。 「まあ、いきなり殺されることはあるまい。様子を見るしかないな」 この船に潜って隠れとこうかなあ? いや、ダメだ。 ルイズを放置することになるし、船ごと大砲で撃ち落とされたらどうしようもねえ・・・うう、まだ死にたくねえ・・・。 セッコが生き延びる方法を考えていると、賊のリーダーらしきいかつい男が近づいてきた。 そしてワルドとルイズの方を向き、上から下まで穴が開くほど眺める。 「おや、貴族の客も乗せてるのか。こりゃあ身代金がたんまりもらえるだろうぜ。てめえら!こいつらを運びな!」 ワルドは渋い表情を浮かべ、ルイズは男たちをにらみつけた。 セッコは満面の笑みをこぼしそうになるのを必死にこらえた。外からだと、泣いているように見えたかもしれない。 とりあえず、この場をしのげることは確定したみてえだなあ。 背中のデルフリンガーがセッコの心中を代弁するかのごとくカタカタと揺れた。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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主にもどき板内公式スレッドを参考に、チャット内で出た些細な案もまとめていくようにしましょう。 Wiki はあくまで情報のまとめにとどめて、意見交換などは現行スレでお願いします。 もどき板内公式スレッド 現行:大型パワプロサイト立ち上げ正式計画 ★1 概要 今は故き「パワスク」の後継(相当)サイトの作成。 過疎ってるたまり場。への燃料投下? コンテンツ草案 最新作実況パワフルプロ野球13決定版、14開幕版の攻略や事前情報の掲載 13開幕版以前の過去のパワプロ作品のデータ掲載 応援歌パスワードの掲載(掲示板で公募)、MIDIなどで試聴できるシステムならば人は集まりそう。 裏技、PARコード、最強選手の掲載(厨引き寄せには効果的。誰かできれば頼む) 企画(オーペナ、オリジナルチーム対戦、エキシビジョンマッチ)も多く入れたほうがいいかも。 劇ぱわ、俺ペナの導入も視野に入れておこう。 情報収集はみんなで頑張ろう。2chから情報を仕入れるのも効果的かもしれん。 雑談掲示板(フリー雑談・野球総合雑談・パワプロ雑談)はパワスクと同じスタンスで。 攻略掲示板(サクセス・ペナント・マイライフ等)も同じように。ここはゲスト投稿可にしましょうか。 上記二つの掲示板はパワスクの掲示板と同じサーバ組み込み型フォーラム掲示板が最良かと。 掲示板が発展するかどうかに新サイトの成長とたまり場の活性化がかかっていると思う。 IM(インスタントメッセージ)機能はもちろん入れるべきでーすーよーねー!!ww 査定掲示板(選手査定掲示板は上の二つとは分けたほうがいいと思う。) 選手投稿掲示板(復活前のパワスクではこれが地味に盛り上がってた。厨釣りには有効。) お絵かき掲示板(これは外せないかと。常連の引き込みや交流には大いに役に立つ。) お絵かき掲示板はレンタルのよりも機能的にはパワスクのようなタイプの方がいいですかね? レンタルならすぐに出来て便利な事は便利ですが、過去ログの表示とかむりっぽそうですし。 チャット(もちろんたまり場とは別物のサイト住人用チャット。) 連絡・質問用掲示板(まぁ管理と兼ねて住人からの意見を聞いたり。) ネットゲーム待合掲示板(ハンゲとか人浪の待ち合わせに使えるかも。) チャットはIP表示のある旧たまり場方式が良さげかもしれませんね。 今のたまり場でもいいですが、ここは話し合ったほうが良さそうです。 チャットコマンドは一部の住人(安全性を考えてたまり場住人)にのみ伝えておけば便利かと。 役割 情報収集 コンテンツ作成 サイト(掲示板)管理 交流
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インカローズ(ロードクロサイト) モース硬度:3.5-4 ☆パワーストーンに秘められた力/パワーストーンがもたらす意味☆ 愛と情熱の石・持ち主に積極性と自信を与える 愛情を具現化する知恵や行動力を与えてくれる 情熱を呼び覚ます htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。 意味一覧表に戻る htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。
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4 目的の迷宮 軍港ロサイスはアルビオン王国の空軍の大部分を擁する一大基地である。 世界樹を用いない人工の発着場は中心の塔から桟橋が四方に伸び、桟橋は一つで大型の船が両側に5隻ずつ並べられるほどの大きさを持つ。今でこそ、内戦に駆り出された船や各地の港の警戒に当たる船でやや寂しくはなっているが、その全てが揃い集まったときの最大で40隻にも上る船が並ぶ様は、この地を踏む者たちの心を掴んで放さない。 空軍だけに着目すれば、アルビオンはガリアに匹敵する戦力を有している。地理的な優位も合わさって、空の戦いにおいては無敵を誇る、とまで言われているほどだ。 ロサイスの規模もそれに見合ったもので、発着場の傍には造船所や兵舎、司令塔といった基地に必要な建物が並び、小さな森を挟んだ内陸側にはそれなりの規模の町が形成されていた。 世界各国に誇れる、巨大基地。それがロサイスである。 だが、それを快く思わない人間達もいた。 事情聴取と元々軍向けに運んでいる積荷を持っているために入港した、マリー・ガラント号。その船内にいるホル・ホース達だ。 「予想以上にデカイな……」 その言葉に、エルザと地下水が同意を示す。 ロサイスの到着間際に船員達に起こされたホル・ホースは、既に目を覚ましていたエルザ達を引き連れ、大砲で空いた穴から顔を覗かせて町の様子を眺めていた。 着陸した船の傍の地面では、やや緊張した面持ちの兵士達があっちこっちをウロウロと歩き回っている。時折こちらを見ているが、視線が会うことは無い。兵士達が見ているのはホル・ホース達ではなく、船そのものであるようだ。 船の積荷は硫黄である。火薬の原料となるそれが幾つか破損した樽から零れて、船内に奇妙な異臭を漂わせていた。 この基地に居る兵士達は積荷がなんであるかを知っているのだろう。内戦という事情と合わせてみると、同じ国の同胞を相手にする武器の存在を心中では複雑に思っているのかもしれない。 見える範囲で、兵士の数はざっと二十人。その全てがこちらを見ているわけではないのだが、積荷を気にしているせいか、視線が途切れることは無かった。 「どうすっかなあ……」 穴から顔を引っ込めて、ホル・ホースは帽子を深く被った。 現在、甲板では積荷の値段交渉が行われている。だが、それと同時にホル・ホース達に対する情報を船長は売っているようだった。空賊の頭を捕まえたとなれば、マリー・ガラント号の船長は株を上げるだろうし、ホル・ホースも叩けば埃が出る身だ。金貨何枚で取引されるか分からないが、あまり良い結果は期待できそうに無い。 しかし、逃げるにしても警戒が強過ぎた。船長が基地の軍人と話をしに行っている今がチャンスなのだが、逃げ場がどこにも無いのだ。 エルザの先住魔法で近隣の敵を眠らせる、という方法も考えたが、港町全体を覆うことなんて無理だし、範囲を限定したところで異変を感じ取られて援軍が来たのでは元も子もない。 「これで、地下水の体が耳長野郎のものだったら、力押しで逃げられたんだが……」 「無いものねだりしても仕方ねえだろ、旦那」 はあ、と溜息を吐くホル・ホースに眉尻を下げて地下水は首を振った。 たとえ、空賊に襲われたときにビダーシャルの体を確保出来ていたとしても、その体に魔力は残っていないだろう。どの道、状況に変わりはない。 「樽の中に隠れる、っていうのはダメなの?どこかに運ばれるのを待つとか」 「博打にしては分が悪過ぎるな。荷の確認の為に蓋を開けられたら終わりだし、重さの違いで確実にバレるだろ」 エルザの意見をあっさりと却下して、ホル・ホースはもう一度、船の穴から外を見る。 歩哨の交代時間だけでも分かれば、ある程度逃走経路なども計算できるのだが、そんな情報が手に入る前に船長は軍との交渉を終えるだろう。 既に何人か、ホル・ホース達を監視するように船員達が船の積荷を運びながらこちらの様子を窺っている姿を見ている。天井を踏み鳴らす音からは、入港する前より遥かに沢山の人数が集まっていることも推察できた。包囲網は、少しずつ狭められているらしい。 「穴でも掘るか……?」 意見が却下されてむくれているエルザの頭を撫でつつ、地面に視線を落とす。 幸いにして、地盤はあまり硬そうには見えない。手で掘るのは無理だが、地下水の魔法を使えば脱出路くらいは何とかなりそうな気がした。 「それも難しいと思うぜ。船底に穴をあけて、土掘って逃げようってんだろ?船が着陸する度に船底で押し固められた土はここから見えている土よりずっと硬いはずだ。例え軟らかかったとしても、風の系統のオレじゃあ長くは掘れねえよ」 淡々と事実を説明する地下水に、いよいよもってホル・ホースは頭を抱える。 どうにも打つ手が見つからない。 ここから一人ずつ目に見える敵を殺す、というのも考えたが、異変に気付いた連中が船に突撃してきたら流石に対処が出来ない。下手に乱戦にでもなれば、火力と数に勝るロサイスの軍人達の方が有利だからだ。 孤立無援の状況下で敵地のど真ん中から脱出する方法がまったく思い浮かばず、焦燥感に駆られてホル・ホースは気が付かない内に貧乏ゆすりをしていた。 「……ねえ、お兄ちゃん。もしかして、絶体絶命ってヤツ?」 まだ現状を正しく理解していなかったのだろうか。 冷や汗を浮かべて尋ねるエルザに、ホル・ホースは頬を引き攣らせて目を泳がせる。 「ええええええ?ウソ!本当に?だって、昼寝までしてたから、何か作戦があるものだと思ってたのに……、なにも考えてなかったの!?」 「う、うるせえ!まさか、こんなに警備が厳重だとは思わなかったんだよ!船の穴を利用して逃げ出してやろうと考えてたのに、ここまで警戒がきついとは……」 直球で責めてくるエルザの言葉に胸を痛めつつ、ホル・ホースは指の爪を噛む。 今までで一番の窮地かも知れない。ガリアのヴェルサルテイル宮殿を攻めた時は、ハルケギニアでも上位の飛行速度を持つシルフィードが居たし、ジョゼフを仕留めれば勝利が確定していた。だが、この場では敵の親玉は見当たらないし、逃げるための足も無い。 まったく、なぜ自分は寝るだなんて選択をしたのか。 ホル・ホースは、数時間前の自分を殴り飛ばしたい気分だった。 そんな時、地下水が唐突に声を上げた。 「あ。なんだ?なんか言ってる」 地下水の言葉に、ホル・ホースとエルザが首を傾げ、続いて耳を澄ませた。 話し声なんて先程から聞こえている。上を見上げたところにある天井の向こうは、もう船の甲板だ。船員達の怒号や話し声が途切れたことなど無い。だからこそ、こうして声を潜めることなく話が出来ているのだ。 新しく動きがあったのかと思ったが、それも無いようだ。聞こえてくるものは、船員達の無駄話やそれを咎める怒号ばかり。中にはホル・ホース達に関する話題もあるようだが、実のある話ではない。 しかし、地下水は首を幾度か縦に振り、うーん、と唸り声を上げて眉を潜めていた。 甲板の様子を聞き取っている訳ではないようだ。 誰かと会話をしているらしいが、傍目に見ると精神的にアレな人にしか見えなかった。 「おい、なんだ?どうしたんだよ」 ホル・ホースが声を掛けると、地下水がチラリと視線を送り、溜息をついた。 「仕方ねえ。他に方法も無さそうだしな。首から上だけは返してやるけど、おかしな真似はするんじゃねえぞ」 いよいよもって危ない人か、と思ったところで、地下水が操る空賊の頭の表情が妙に穏やかなものに変わった。地下水が使っていたときとは違う、上品さを感じさせるものだ。 「ありがとう、というのも変かな?この体は僕の物なのだからね」 口調も変わったことで、ホル・ホースとエルザはやっと地下水が何と話していたかに気が付いた。 「そちらのお嬢さんは始めまして、だね。僕の名前はウェールズ。アルビオン王国第一王子のウェールズ・テューダーだ」 体の大半は未だに地下水の制御下にあるため、ウェールズは目礼だけ紹介を終えた。だが、ぼさぼさの黒髪と無精髭で王子とは、まったく説得力が無い。 そのことに本人も自覚があるのか、軽く笑うと困ったような表情を浮かべた。 ガリアで変な王族に囲まれて生活していたホル・ホースたちは、特にウェールズの驚きもせず、ああそうなんだ、と適当に反応を示して話を進めた。 「テメーの名前なんてどうでもいいんだ。そんなことよりも、地下水が喋らせるってことは、なにか言いたいことがあるんだろう?」 王子と聞いても特に驚く様子を見せないホル・ホースに、自分が信用されていないのかと思ったウェールズは、少し言葉を溜めて、左手の薬指に視線を送った。 そこには不思議な色を湛えた石を台座に嵌めた、立派な指輪が嵌まっている。 「左手の薬指に嵌まった風のルビーが僕の身の証になる。不審に思うなら、それを確認して欲しい」 「そんなもんどうでもいいって言ってるだろうが」 一瞬だけウェールズの左手を見たホル・ホースが、そう冷たく言い捨てた。 身の証と言われても、ホル・ホースたちは鑑定が出来るわけではない。確認したところで真実か否かなんて判断できないのだ。 それを、ウェールズは理解していないようだった。 「いいのかい?僕は、これから君達の命運を分けるかもしれない人間だ。信用するに値するかどうか、確かめるべきではないのかい」 ウェールズの言葉をホル・ホースは鼻で笑う。 どうも、価値観が違うらしい。いや、考え方が違うのだろう。 さっさと話の続きをしたいホル・ホースと自分の立場を明確にしたいらしいウェールズの話は上手く交わらなかった。 仕方なく、ホル・ホースは適当な理由をでっち上げてウェールズを納得させてしまおうと考えをめぐらせる。 そして、ちょうど横にある大砲で破壊された船の壁を見て、口を開いた。 「……確認するまでもねえよ。テメーがアルビオンの王子なら、空賊達の船の扱いが妙に上手かったことにも説明がつく。身分を隠した軍を使っての私掠船もどきだな。大方、通商破壊でも狙ってたんだろう?別に珍しくもなんともねえ、在り来たりな手だ」 王党派は貴族派に押されていると聞いている。その場合、敵の戦力を削ぐには、正面から攻めるより、後方を乱したほうが早い。 人手不足を補うため、また、海賊行為による士気の低下を防ぐため、と考えれば、王子が直接出張ってくる理由にならなくもないだろう。 「なんとも手厳しいね」 不躾なホル・ホースの物言いに、ウェールズは苦笑を浮かべて、はは、と笑った。 王党派の内情は、予想通りだったようだ。 「ほれ、さっさと話を進めろ。この状況を何とかする方法があるんだろうが」 船長が不審者を軍に突き出すのは、恐らく、積荷の取引交渉が終わってからだ。船内に危険人物が居ることを知らせて船内に入る理由を与えてしまえば、積荷に細工をされて取引を不正なものにされる恐れもある。 積荷の量が量であるだけに、すぐに交渉が終わるわけではないだろうが、悠長に話している時間が無いのは確かだ。 ホル・ホースの焦りを感じたのか、ウェールズは自分が信用されたものだという前提を持って話を始めた。 「では、手短に話そう。ここから桟橋が見えるだろう?ロサイスの桟橋は骨組みを露出させた、無骨なデザインになっている。万が一敵に破壊された場合にも、すぐに修復が可能なように構造は単純化され、支柱の内側は殆ど空洞になっているんだ」 遠く見える隣の桟橋を指して、ウェールズが構造の解説を行う。 支柱だけで壁が無いということは、中は吹き抜けで移動が可能だということだ。 「そうみたいだな。だが、中を通って逃げるのは無理だぜ?到着前に見たが、発着場は周囲の施設なんかとは離れてる。船に新しく穴でも開ければ桟橋の中には隠れることは出来るけど、逃げ場はどこにもねえ。それに、この兵士の数だ。柱の陰に隠れたとしてもすぐに見つかるだろ」 顎を向けて船の外を示すホル・ホースに、ウェールズは一度目を向けると、穏やかに微笑んだ。 「大丈夫。桟橋の下の地面は土台造りの関係上、少し低くなっていてね。体を寝かせれば大人でも隠れて移動できるんだ。哨戒任務の確認事項に含まれているけど、実際にそこまで見に来る兵は少ないから、見つかる心配もないだろう。情けない話だけどね」 過去、幾度かの視察や抜き打ち検査の時にでも知ったことなのだろう。兵士達の怠慢は身内の恥のはずだが、それが今は助けとなっていることに、ウェールズは複雑な気持ちを抱いているようだった。 穴から隣の桟橋を睨みつけるように見たホル・ホースは、桟橋の下にある影の具合からウェールズの話が真実であることを確認すると、ヒヒと笑ってウェールズを見た。 「逃げ道は確かにあるんだな?」 その言葉に、ウェールズは力強く頷いた。 「発着場の中心にある塔の中央。その真下に隠された避難経路がある。軍の中でも一部にしか知らされない、秘密の地下道さ。ロサイスからの逃亡や、逆にロサイスに奇襲をかけることにも使える。巧妙に隠されているから、知らない人間には発見は難しいだろうね」 そこで自重気味に笑ったウェールズを見て、ホル・ホースはやれやれと肩を竦めた。 「なるほどね。どこの王様も同じようなことを考えるんだな。オレってば、地下通路には縁が深いぜ」 ガリアにも存在した王族用の逃走経路を思い出したホル・ホースに、ウェールズは少しだけ満足そうな笑みを浮かべた。 「基本を抑えることは戦いを勝利に繋ぐ。兵法の基本だよ。つまり、在り来たりな手こそが必勝の一手なのさ」 自分が言った言葉をそのまま返されたことを知って、ホル・ホースは帽子を押さえて愉快そうにヒヒと笑った。 白い雲の絨毯を滑るように、船が空を飛んでいた。 昨夜の内にラ・ロシェールから飛び立ったものとは別の、アルビオンへ向かう旅客を乗せた定期便だ。 左右を見れば、同じような目的を持つ船が二隻、空を併走しているのが見える。大陸間を行き来する船は、様々な事故や空賊などの襲撃を防ぐため、普段から艦隊を形成して運行することが多い。この艦隊もその例に漏れず、三隻を一つの隊として運用していた。 中央を飛ぶ船の後部甲板にある貴族用のテラスでテーブルを囲んでいるのは、“女神の杵”亭の襲撃を乗り越えて翌朝の出発に漕ぎ付けたルイズ達だった。 太陽は頭上に輝き、鮮やかな青に染まった空には白の国の姿が見えている。 アルビオンを直接見るのは初めてであるギーシュと共に、才人も口をだらしなく開けてその光景を見上げ、隣で偉そうにアルビオンの歴史を語るルイズの言葉を右から左へと聞き流していた。 その様子を退屈そうに眺めている赤い髪の少女が、欠伸交じりに呟いた。 「到着は、まだ時間がかかりそうねえ」 わざわざ早起きをして朝一番の船に乗ったのだが、もう5時間以上も経過している。風向きがいいため、普通よりも早くスカボローの港に到着するだろうと船長から話を聞いていたのだが、まさか、船旅がここまで長いとは思ってもいなかった。 最初は空の景色に歓声を上げていたのだが、天気に変化が無いため、変わらない空の姿にすぐに飽きてしまった。そうなると、やることがまったく無いのが苦痛になる。 「到着は夕方」 「わかってるわよ。ちょっと言ってみただけ」 本から目を離さずに声を発したタバサに、キュルケは投げやりの答えた。 出発前に船長から到着予定時間は聞いている。まだ昼を回ったところなのだから、少なくとも、あと4時間はかかるはずだ。 退屈な時間は過ぎるのが遅い。適当に騒いでいるうちに到着するだろうと思っていた予測が大きく外れた為に、キュルケは暇で死にそうだった。 テーブルに力なく頭を乗せて、甲板の隅で寝転がるグリフォンを視界に入れる。そこには、少し背中の煤けたワルドの姿もあった。 今朝から一度として、ルイズはワルドと視線を合わせていない。話しかけられれば対応くらいはするが、酷く事務的で、倦怠期の夫婦を見ているかのようだった。 “女神の杵”亭での出来事が尾を引いているらしい。まあ、メイジの分身ともいえる使い魔を決闘で散々叩きのめした挙句、婚約者を名乗っておきながら魅力を感じない、なんて言ったのだから、今の関係に落ち着いても仕方がないだろう。 グループの輪から抜けてグリフォンと戯れる魔法衛士隊隊長の姿は、あまりにもあんまりな光景で、見ているこっちが辛くなる。かといって、救いの手を差し伸べる気にもなれなかった。 テーブルに寝かせた頭を逆方向に向けると、キュルケは船と船の間を優雅に飛ぶ青い竜の姿を見つける。 ギーシュの使い魔であるヴェルダンデを口に銜えたシルフィードだ。 巨大なモグラの姿をしたジャイアントモールという種族のヴェルダンデは、人間の大人よりも少し大きい体をしている。それを銜えっぱなしでいるのは流石に圧倒的な体の大きさを持つシルフィードでも辛いのか、手に抱え直したり、足で掴んだりと、工夫を凝らして疲れを逃がしているようだ。 本来なら、ヴェルダンデは連れて行く予定ではなかった。アルビオン大陸は空にあるからモグラが役に立つとは思えなかったし、そもそも、ギーシュからして無理矢理任務に参加した口だ。余計な荷物は少ないほうがいい。 だが、トリステイン魔法学院からラ・ロシェールまで土を掘って追いかけてきた根性とギーシュの懇願にルイズが根負けして、仕方なく同行を許可したのである。キュルケやタバサもついてきてしまったのだから、今更使い魔の一匹や二匹、気にするのもおかしな話だろう。 「なんともまあ、ほのぼのとしてるわねえ」 シルフィードに銜えられたヴェルダンデが、つぶらな瞳をキュルケに向けている。馬すら食料にするシルフィードに銜えられているのだから多少は怯えても不思議ではないのだが、そんな様子は微塵も無い。鼻をピクピクと動かすだけで、あとは落ち着いたものだ。 こんなことなら、自分の使い魔のフレイムも連れてこればよかったかしら? 殆ど遠足気分のキュルケがそんなことを考えて、体を起こした。 今日は、とても良い天気だ。 雲は少なく、日は高い。 夏が近いお陰だろう。船は相当な高度を飛んでいるというのに、肌寒さを感じることは無かった。むしろ、柔らかく吹く風が心地いいくらいだ。 湧き上がる眠気に欠伸をしたキュルケは、何か面白いものは無いかと視線をくるくるとあちこちに飛ばす。 なにか余計なことを言ったらしい才人とギーシュをルイズが叩いているが、それは見慣れた光景なので好奇心を刺激されることは無い。タバサは本に夢中になっているし、ワルドはグリフォンに寄りかかっていつの間にか寝息を立てていた。仲間内にキュルケの遊び相手になってくれる人物は居ないようだ。 視線を他に向けると、キュルケたちのいる後部甲板以外にも、中央甲板や船首のほうには人影が見て取れる。 船に乗っている客はルイズたちだけではない。未だ終わらないアルビオンの内戦に参加しようと、昨夜の騒ぎにも姿を現した傭兵達が何十人と船内で身を潜めているし、戦争を食い物とする商人らしき人物や酔狂な貴族も居るようだった。 ただ、キュルケが暇つぶしにでも粉をかけたくなるような男はいないらしい。 退屈そうに溜息を吐いたキュルケは再びテーブルに突っ伏すと、お腹の辺りに違和感を感じて眉を寄せた。 「……そういえば、お昼よね」 日は頭上にある。昼食を取るにはちょうど良い時間だろう。 才人とギーシュの折檻を終えたルイズがキュルケの呟きを聞いていたのか、これだからゲルマニアの女は下品なのよ、と馬鹿にするように言ったところで、小動物の鳴き声のような音をお腹から響かせた。 「トリステインの女は、お腹がすいたら鳴き声を上げるのね」 「う、うるさい!」 ニヤニヤと笑ってからかうキュルケに顔を真っ赤にしたルイズが歯を剥いて威嚇する。 その横で、別の人物が、きゅう、とお腹を鳴らした。 「……もういいわ。お昼にしましょう」 「……そうね」 顔を真っ赤にするタバサを置いて、ルイズはテーブルの傍に寄せ集めた私物の中から大きな籠を取り出した。 テーブルの上に乗せて籠を覆う真っ白な布を取り払うと、そこにはサンドイッチとワインのビン、それにグラスが人数分入っていた。 朝方、まだ朝食の仕込をしていた“女神の杵”亭のコックに無理矢理作らせたものだ。 一緒に入った小皿をグラスと一緒に並べ、サンドイッチとワインを分けると、ルイズは寝入っているワルドに視線を向けて小さく溜息を吐いた。 立って歩けるようにはなったが、ワルドはまだ怪我人だ。水のメイジの魔法による治癒も万能ではない。失われた体力を回復するには時間がかかるのだろう。 まったく起きる様子の無いワルドから視線を外し、まだ頭を抑えて蹲っている男子二人に声を駆けると、ルイズは自分の席に座り直して両手を組んだ。 同じように、キュルケとタバサも両手を組み、遅れて着席したギーシュもそれに倣う。 「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今日も我にささやかな糧を与えたもうたことを感謝いたします」 食事の前の祈りの言葉だ。 トリステインは勿論、ゲルマニアにもガリアにもアルビオンにも女王陛下は居ないのだが、こういうのは定例文を使い回すものなので気にしてはいけない。実際、この祈りの言葉を学んだ当初はルイズたちも何度か首を捻ったが、今では気にならなくなっている。 ただ一人、その辺りの慣習に慣れていない才人だったが、もとより祈りの言葉なんて口にしないから気にする様子も無かった。 代わりに日本式の祈りの言葉を口にすると、目の前のサンドイッチに手を伸ばして勢い良く食らいつき、頬一杯に詰め込む。 「こら!もうちょっと上品に食べなさい!」 あまりに多く詰め込み過ぎて具の一部が才人の口の端から零れているのを見たルイズが窘めた。 「もう、世話のかかる使い魔ね!」 見かねてルイズがハンカチで才人の口元を拭うと、才人が顔を向けて頭を下げた。 「もごごもっごご、もごごごもごもぐもぐ」 何を言っているのかさっぱり分からないが、お礼を言っているらしい。 ルイズは顔を少し赤く染めると、そっぽを向いて自分の分のサンドイッチを見つめる。 「か、勘違いしないでよね。べ、別にアンタの為にやったんじゃないんだから。使い魔の食事のマナーにも気をつけないと、主人であるわたしが恥をかくのよ。そ、そうよ、それだけなんだから!」 どんどん赤くなっていく顔をキュルケとギーシュがニヤニヤ笑って見ていることにも気付かず、ルイズは俯いて兎のようにサンドイッチを齧り始めた。 傍から見れば、ただの照れ隠しだ。だが、鈍感な才人は、ルイズの言葉をそのままに受け取って肩を落とすと、残るサンドイッチを片付けに入る。 落ち込んでいるようだった。 「素直じゃないわねえ」 「まったくだ」 ルイズと才人に聞こえないように顔を寄せて呟いたキュルケとギーシュが、互いに苦笑を浮かべて二人の姿を生暖かい目で見守る。 ルイズと才人の関係は、子供同士の恋愛模様に似ていた。 お互いがお互いの気持ちに気付けず、自分が抱いている気持ちすらも良く分からないために、沢山のすれ違いを起こすのだ。 こういうのは状況に任せて放っておくのが一番なのだが、元々悪戯心の強いキュルケとギーシュにそんなことを要求するのは酷というもの。 ニヤニヤとした二人の笑みはどんどん深まり、どうちょっかいを出してやろうかと想像を膨らませる。 その横で、我関せずと自分の分のサンドイッチをいち早く食べ終えたタバサが、籠の中に残っているサンドイッチに狙いをつけていた。 言うまでも無く、ワルドの分だ。 キラリ、と瞳を輝かせたタバサが周囲の状況を確認する。 物足りないからと人の分にまで手を伸ばすのがバレたら、きっと怒られるだろう。それだけはなんとしても回避しなければ。 そういう思考で隙を窺うタバサは、視界の端でゆっくりとこちらに近付いてくる一人の傭兵の存在に気が付いた。 「失礼。もしや、昨晩“女神の杵”亭におられた貴族の方々ですかな?」 ボサボサに伸びた髪と土と血に汚れた服。それに厚みのある鎧を身に着けたむさ苦しい顔の傭兵が、テーブルから三歩ほど離れた位置に立って声をかけてきた。 「……どちら様かしら」 傭兵に顔を向けたキュルケが尋ねると、傭兵は不恰好なお辞儀をして名乗った。 「自分はドノヴァンと申します。つい昨晩、ラ・ロシェールに到着したため騒動には関与しておりませんが、自分の仲間が世話になったようで、一言お詫びをしに参りました」 どこかで見た貴族の仕草を真似ているのだろう。一つ一つの動きがぎこちなく、それでも必死に形を繕っているのが見て分かる。 礼儀を見せようとしている、ということは理解できたルイズたちだったが、それが警戒心を取り払うかどうかと言えば、否と言えた。 昨晩の騒動に直接の関与をしていないと言っていても、それが真実であるとは限らない。 彼は貴族を襲った連中の仲間なのだ。こうして襲った貴族の前に出れば、共犯や連帯責任などの適当な理由で命を奪われることも考えないはずはない。 それでもルイズたちの前に現れたということは、何か理由があるのだろう。 絶対に自分が殺されない確証があるのか。或いは、先に相手を殺すという意思を持っているかのどちらかだ。 テーブルの下に杖を隠したキュルケは、ドノヴァンを追い払おうと口を開きかけたルイズの足を踏んで止め、これから切り出されるであろう用件を問う。 すると、ドノヴァンは厳つい顔に奇妙な笑みを浮かべて、懐から二枚の紙を取り出した。 変色の仕方が違うところを見ると、違う時期に作られたもののようだ。端が同じような破け方をしているから、恐らく、同じ場所に同じ方法で貼られたものなのだろう。 一番近い位置に居たルイズがそれを受け取り、そこに書かれた文字を読み上げる。 「えっと、なになに。……生死問わず、以下の者を捕らえてガリア王に献上せよ。彼の者は王の命を狙った悪逆非道の暗殺者である。賞金は……百万エキュー!!?」 ルイズの叫びに反応したキュルケとギーシュが立ち上がり、ルイズの横に駆け寄った。 「ウソ!?本当に?あ、本当に百万エキューって書いて……って、あら?ここに描かれている人の顔って……」 「どこかで見た顔だね。……というか、うん。昨日見たよ」 覗きこんだ紙の中央に描かれた人物画を見て、キュルケとギーシュはサンドイッチを食べているタバサに視線を送る。 少し冷たいものを含んだ視線を受けて、無関心を貫いていたタバサが顔を逸らした。 「あ!やっぱり、タバサの知り合いじゃないの!!」 誤魔化すようにサンドイッチを食べる速度を上げたタバサにキュルケが詰め寄り、両肩を掴んで激しく揺さぶる。一方で、ギーシュは紙を見つめて何事かを考えた様子を見せたかと思うと、両手を、パン、と叩いて声を上げた。 「そうか!宿を襲撃した傭兵達は、ミス・タバサの知り合いを狙っていたんだ!そう考えれば、彼らが突然動きを変えたのも理解が出来る。うむ、僕らを狙っていたヤツも居たのだろうけど、大半は賞金に釣られた連中だったというわけだな」 納得がいった。とギーシュが神妙な顔で頷いている。 キュルケは未だに視線を逸らしているタバサを睨みつけると、鼻先が触れ合うほどに顔を近づけて聞いた。 「タバサ。もしかして、知ってた?あの人たちが賞金首だってこと」 「……知らない。それは本当に知らない」 首をぶんぶんと横に振るタバサに疑惑の目を向けるキュルケは、タバサの顔を両手で挟んで動きを止めると、その瞳をじーっと見つめた。 タバサのこめかみに脂汗が浮く。 「もう一度聞くわ。……知ってたわね?」 剣呑な空気を詰め込んだ言葉に、タバサはとうとう首を縦に振った。 やっぱり、と呟いてタバサから離れたキュルケは、腰に両手を置いて悪戯をしている子供を見つけた母親のような顔になった。 「どうして隠してたの!あらかじめ知っていたなら、昨晩の襲撃事件だって他に対処の仕方があったと思わないの?タバサの交友関係に口出しするつもりは無いけど、そういう大事なことを隠したりしないで欲しかったわ」 過ぎたこととは言え、一時は命の心配だってしたのだ。このくらいの物言いはしてもいいだろうと、見ているルイズたちもキュルケを止めようとはしなかった。 だが、タバサは口を塞いでいたサンドイッチを飲み込んで、キュルケの言葉に首を横に振る。 「違う。賞金首だったのは昔の話。わたしが知っているのはそのときのことで、今も賞金首だとは聞いてない」 その言葉にキュルケは目を丸くすると、振り返ってドノヴァンの姿を目に映した。 「どういうことよ」 賞金首が過去のことなら、出された紙はただの誹謗中傷の類となる。 そんなものに振り回されたのかという怒りもあったが、それを今見せる意味が一体なんなのかを確かめるのが先だと、キュルケはしたり顔のドノヴァンを睨み付けた。 「まあ、落ち着いてください、貴族様。もう一枚の紙を見て頂ければよろしいかと」 ドノヴァンの手がルイズの持つ紙を指し示す。 紙は二枚あるのだ。なら、もう一枚の紙に真実が書かれているのだろう。 キュルケはルイズから賞金首の張り紙を奪い取ると、後ろに重なっているもう一枚の紙を上に乗せて、そこに書かれている文字を読んだ。 「……生死問わず、以下の者を捕らえてガリア王に献上せよ。彼の者は王の命を狙った悪逆非道の暗殺者である。賞金は10エキュー。ガリアの名において、それを保証するものなり」 「まったく同じ文じゃないの!」 ルイズが立ち上がり、同じようにギーシュも抗議の目をドノヴァンに向けた。だが、話について行けずにワインをチビチビと飲んでいた才人が首を捻って、先程の手配書との違いを指摘した。 「10エキューなのか。凄い下がり方してるな」 すぐには才人の言葉の意味が理解できずに食って掛かりそうになったルイズは、はっとしてキュルケに顔を向ける。 「じゅ、10エキュー?百万じゃなくて、10なの?」 「……そうみたいね。金額の項目が凄く寂しくなってるわ」 もう一つの手配書をキュルケが差し出すと、ルイズとギーシュがそれを睨みつけるように見た。 確かに、10エキューと書いてある。文章は使い回しらしく、数字の部分だけに空間が空いているせいで余計に金額の小ささが浮き彫りになっていた。 「えっと、罪状は一緒なのよね?だったら、なんでこんなに金額が下がってるわけ?ガリアの王様と裏取引でもしたの?」 ルイズの疑問ももっともだろう。事情を知らない人間にとっては、さっぱり理解できない値動きだ。 しかし、裏取引ならこんな中途半端な額ではなく、いっそのこと賞金そのものを取り下げるのではないか。 そんな疑問に答えられそうな人物が一人だけ居るために、自然と注目は一人の人物に集まった。 「タバサは事情を知ってるわよね?」 キュルケの問いに、タバサは小さく頷く。 しかし、その口からルイズたちの期待するような言葉が飛び出すことは事は無かった。 「今は話せない。いつか話せる日が来るから、そのときまで待って欲しい」 その言葉に、キュルケは仕方無さそうに肩を竦めてタバサの頭を撫でた。 「あなたがそう言うなら、きっと深い訳があるんでしょうね。でも、いつか必ず話しなさいよ」 もう一度、タバサが頷いた。 「……で、結局なんなんだい。君は昨日の事件を振り返ってあれこれ話すために、ここに来たわけじゃないんだろう?」 話がわき道にそれたという自覚があるのか、ドノヴァンはギーシュの言葉に苦笑いを浮かべてボサボサの頭をかいた。 「へへ。とりあえず、自分達が貴族の旦那方を狙ったわけじゃないってことだけ、覚えておいて欲しかったんですよ」 要するに、無罪を主張しているわけだ。 だが、そんなことを主張しなくても、昨晩の襲撃に係わった傭兵たちを司法が裁けるわけではない。傭兵たち一人一人の顔や特徴など覚えていられるはずが無いのだから、自然と襲撃事件は闇へと葬り去られるだろう。 なら、狙いは別にある。 「それ以外にも、何かあるんじゃないの?」 タバサの頭を撫でながらキュルケが尋ねると、ドノヴァンは卑屈な笑いを浮かべてタバサに視線を合わせた。 「その賞金首、貴族様と一緒に居たんでしょう?それはちょいと、不味いんじゃねえですかい?なにせ、その賞金首は王族を殺しかけて追われているヤツだ。もし、そんなヤツと親しいなんて知られたら……」 そこで言葉を止めたドノヴァンに、ルイズたちは顔を真っ青にした。 実際に王を殺してはいないとはいえ、暗殺者と一緒に居るということはそういう目的を持っていると思われても仕方がない。誰の暗殺を目的としているかなんて、ホル・ホースが追われている理由を考えれば一目瞭然だ。 これが公になれば、ルイズたちは王家に反旗を翻そうと画策する逆賊と呼ばれるだろう。 タバサはまだ良い。元々そういうことを計画していたし、ジョゼフ自身にもそれは知られていることだ。今更、ガリア王家が何かを言ってくることは無いだろう。 だが、ルイズ、ギーシュ、キュルケの三人は別だ。特に、キュルケの故郷、ゲルマニアの皇帝は力でのし上がってきたタイプの王であるために、反逆の意図があるなどと思われればどうなるか分からない。 ルイズやギーシュは、天国か地獄かのどちらかだろう。 王女から直接賜わった任務を成功されば、いくらか言い訳の材料が生まれる。逆に、もしも失敗でもしようものなら、スパイの烙印を押されて絞首刑だ。任務の内容が知られている原因がルイズたちにあるのではないかと疑われれば、もう反論の余地が無くなる。 才人はルイズと運命を共にするとしても、その一方で、ワルドは場合によっては言い逃れが出来るかもしれない。 件の暗殺者と決闘をして重傷を負ったという事実は、彼の身の潔癖を証明するのに都合の良いものだ。説得力は十分ではないが、運が良ければ無罪を勝ち取れる可能性もある。 ルイズたちがホル・ホースと一緒に居た時間はたったの一日であるため、一緒に居たと証言できる目撃者は多くないだろうし、ドノヴァンの言うようなことに気付く者は更に少ないはずだ。 ならば、ここでドノヴァンを口封じすれば、ルイズたちは疑いをかけられずに済む。 そう。口封じをしてしまえば、全ては丸く収まるのだ。 真っ先に杖を構えたギーシュが、ドノヴァンを睨みつける。 「おおっと、待った!そういう危ないものはしまって貰うぜ。オレは仲間の代表で交渉に来ただけだ。オレに手を出せば、仲間が事実を言いふらす。こっちにもメイジはいるからな、全員どうにかしようってのは考えないほうがいいぜ」 その言葉に、ギーシュは呻いて杖を下ろした。 「……要求はなに?」 沈んだ表情でそう言ったルイズに、ドノヴァンは満足そうに笑みを深めた。 下品な笑みだ。最初に取った不細工な礼儀は、ルイズたちを馬鹿にしていたのだろう。 「へ、へへへ」 厭らしい笑みを浮かべたドノヴァンがゆっくりと近付き、テーブルの上に置かれた中身の残っているワインビンに手を伸ばした。 赤い液体がドノヴァンの口に注がれ、喉が大きく鳴り響く。 「うめぇ。貴族様ってのは、こんな上手い酒を毎日飲んでるのか?うらやましいねえ」 中身を飲み干したドノヴァンが空になったワイン瓶を放り出して感嘆の息を漏らし、ルイズたちを値踏みするように見つめる。 状況は最悪だ。命を握られたに等しい。 握られた弱みが大き過ぎるのだ。要求されるのが金だけなら構わないし、ある程度の理不尽な条件も、なんとか飲むしかないのだろう。 だが、ドノヴァンが要求したものは、ルイズたちにとって一番譲れないものだった。 「杖を渡せ」 その言葉に、ルイズたちの表情が絶望に染まる。
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トップ→装備→剣→剣/強化あり(ドロップ)→デスサイス 新エイジングケア【D(ディー)】 デスサイス ATK:170~185 スロット:1確認 ATK+10% MDEF+15% 闇属性に半減 ※トレード×、ATK=ファルクスの数値+45? ★ファルクスの強化(ログラスの街の鍛冶屋) ┏ファルクス×1 ┃素敵なヒゲ×4 ┃恐怖の魔眼×20 ┃短い槍の破片×40 ┗666スピナ
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アッテンボローの怪人 掲載サイト Weird Comic Art ジャンル SF ページ数 332ページ 描画法 モノクロ 登場キャラのロボット率 ★★★★☆ 状態 完結 主人公 ??? 【概要】 人類絶滅後の宇宙空間で生活する、7体の奇妙なロボット達。 彼らの元に謎の少女が出現したことから、物語は動き出す…。 紹介・応援コメント テンポの良い掛け合いが楽しい。掛け合いだけでなく、奥行きのある世界観も魅力。 個性的なキャラクター。そして一際目につく大将の魅力…。 気付いたら最後まで読んでた ラストの二人、かっけえええええ! 緑だけがわからない 超展開だと思う。ただ大将はかっけぇ。ロボたちのキャラも好き。 展開も面白いし、キャラも個性的で良い。ラストは感動したな。 こういうSFらしいSFが読みたかった。続編等に期待。 実に読んでいて心地のよいマンガ。地味だけれど雰囲気に浸れる。次回作にも期待したい。 終わってしまってとても残念。もっと読みたかった。 殺された"作者"が気の毒 上の作者が殺されたって方が気になるわ ↑ゴブリンですな…w 地味なんだけど、とても雰囲気のいい漫画だった u2での話もっと読みたかった。 久々に読み直したら、キャラ紹介以外にも色々とクリックできて補足説明が読めるポイントがあった。背景の設定とかも分かって面白い。そして相変わらず大将が良いキャラだ。 出来ればみんな気にしてほしいオイペンドウ・・・ おまけ漫画がわからない 無駄がないです。実に面白い キャラ造形と世界観が独特。ライスボーイが好きな人にもおすすめ キャラの掛け合いがたのしくてサクサク読めた。最後のふたりのページが好きだ。 トップページの機械人間(?)にキュンときたら最後まで読むのオススメ レビューを書く この作品が好きな人におすすめのweb漫画 土星人!プミちゃん ビチバラガ ハイブリッドレイン アッテンボローの怪人 宇宙人。~そして壊れた心と世界~ 10円魔王 このページの登録タグ 500ページ未満 SF 完結 このページのトラックバック trackback トップに戻る
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前ページ次ページ鮮血の使い魔 夕暮れの森の中、言葉は鞄を差し出した。 「誠君をお願いします」 げんなりした顔でフーケは受け取り、ため息をひとつ。 鞄の中身が何なのか、ロングビルとして魔法学院で働いていた時に聞いている。 オールド・オスマン直々に固定化の魔法をかけた生首。 あのエロ爺、余計な事を。 「これを持ってろってのかい? 正直、御免こうむりたいんだけどねぇ」 「危険ですから、誠君を連れて行く訳にはいきません。 それに……世界を裏切った私に手を差し伸べてくれたあなたなら、 一時的に誠君を保護してもらう程度は信用してもいいです」 「世界を裏切ったぁ? あはは。ご主人様だけじゃなく、世界までかい。 あんたの言う『世界』に、私は含まれていないのかい? ずいぶんと都合のいい『世界』だねぇ」 ――もっとも、心を病んだ人間じゃ正常な思考なんかできないんだろうねぇ。 多少の哀れみの色を瞳に浮かべたフーケだが、言葉はうつむいて視線を合わせない。 「……。あなたには感謝しています。色々と教えてくれて、この、剣も」 言葉は血濡れの剣を地面に突き刺した。 教会の中、絶体絶命の時、言葉の前に突如現れたこの剣は、 フーケが魔法で作り出したささやかな援護だったのだ。 教会から飛び出してすぐ、フーケと鉢合わせをした言葉はすぐその事実に気づき、 フーケと共に王党派と貴族派の戦いから逃れ、森の中に潜んでいる最中である。 しかもフーケは、現在地からレコン・キスタの居城への道も教えてくれた。 なぜアルビオンに土地勘があるのか、それは言葉にとってありがたい事なので、 理由などはどうでもよかった。 「クロムウェルは今、レコン・キスタの総司令官って立場みたいだね。 もっとも王党派を倒した暁にゃ、虚無の担い手って立場を利用して、新皇帝様か」 フーケは杖を振って、剣を土くれにし大地に帰した。付着していた血も地面に溶ける。 「今は首都ロンディニウム南部の空軍基地、ロサイスって所にいるはず。 軍港だから宿舎の類は無く、そこいらに将官や兵士のための天幕が張ってあるだろうね。 まあ、その手紙を持って行けば、平民のあんたでもクロムウェルにお目通りがかなうさ」 「……部外者の私は、彼をクロムウェル様と呼べばいいのでしょうか」 「そうだね、それが無難だよ。もし皇帝になってたら『閣下』とでも呼んでやんな」 「解りました。これで、アンドバリの指輪を手に入れる算段はつきました。 後は、どうフーケさんと合流するかですね」 「そうさねえ……この森のこの場所ででいいんじゃない? 四六時中ここにいる訳にはいかないから、一日に二度、 日が沈む頃と、夜が明ける頃に待ってるよ。いなかったらここで待っとくれ。 もし待てない状況なら、目印としてそこの木の根の間に石を三つ並べて置くんだ。 東に行くと川があるから、そこから下流へ下流へと逃げるんだよ。探して拾ってやる」 嫌々協力しているはずなのに、とても面倒見のいいフーケ。 こんないい奴だったかと自問自答し、言葉に親切にしてしまう理由を思い当たった。 ああ、似てるんだ。 自分が大切にしている、妹のようなあの娘に。 ――胸の大きさとか。 ……それだけ? 理由はそんなくだらないのひとつだけ? いや、多少残っていた良心からくる同情とか、武器を使った時の超人的な強さへの恐怖など、 理由は他にも色々あるのだが、多分胸の大きさであの娘を思い出すのも理由のひとつで。 「くっくっ、あっはっはっ……」 そう思うと、フーケは自分が馬鹿らしくて笑えてしまうのだった。 そんなものかもしれない。人が人に協力する理由なんて。 脅されても、あの娘の面影を少しだけ重ねたから、わざわざ教会で剣を錬金なんかして。 「……フーケさん?」 「いや、何でもないよ、こっちの事。 それじゃ、私はもう行くよ。夜が明ける前に姿をくらましたいからね。 他に頼んでおきたい事、言っておきたい事はあるかい?」 「ル……いえ、何も」 「そうかい」 きびすを返し立ち去ろうとするフーケと、同様にきびすを返しロサイスへと歩を向ける言葉。 「ああ、それと」 背中を向けるのを待っていたかのようなタイミングで、フーケの声がした。 「世界を裏切ったとか、私だけ手を差し伸べたとか言ってたけど、 あんたのご主人様も手を差し伸べてたの、気づかないフリするのはよしな」 「――あなたに、私の気持ちが!」 振り向きながら叫んだが、フーケの姿も返事も無かった。 「…………」 しばし誰もいない森を睨んだ後、言葉は空軍基地ロサイスへ向かう。 今度は振り返らなかった。 ロサイスにたどり着いてすぐ、言葉はレコン・キスタの兵士に捕まった。 しかしワルドの死を伝え、預かり物があると言うと、状況は変わる。 半信半疑の兵士が連絡に行き、すぐに将校がやってきた。 「ワルド様からクロムウェル様にお渡しするよう言付かって参りました。 是非、クロムウェル様に直接、ワルド様の最期をお伝えしたいと思います」 ボディチェックを受け手紙以外何も持っていないと確認し、 さらに手紙も本物らしいと解ると、王党派からの刺客という疑いは消えた。 名誉のために命を張る王党派が、暗殺という手など使わないだろいという判断もあった。 こうして、言葉は赤いレンガの発令所に通される。 聖職者らしき姿をした中年が指輪をはめたがいたので、 彼がクロムウェルだろうと思い言葉は微笑んだ。 クロムウェルも手紙を入手できたとの報告に頬を緩めており、 さらにそれを持ってきた言葉の豊かな胸に気づくと、碧眼に劣情の熱が灯った。 「おはつめおめにかかります。ワルド様から手紙を預かって参りました、言葉と申します」 「ほう。変わった名前だね、コトノハ。 いやしかし、君のおかげでトリステインとゲルマニアの同盟を阻止できるよ! 平民ながらよくやってくれた! 君のような乙女が、これほどの大役を成すとは! しかしながら、あの優秀なワルドが死に、なぜ君のような少女が無事だったのか疑問はある。 そこで色々と話を聞きたいのだがいいかな?」 「もちろんです、そのためにここまで来たんですから」 偽りの報告。 自分はかつてワルド子爵の家に仕えていた者で、ワルドには個人的な恩義があり、 これまでも何度かワルドの任務に協力していたのだ。 そして今回の任務を終えれば、ワルドからクロムウェルに紹介され、 レコン・キスタに加えてもらう約束をしていた。 偉大なる虚無の担い手であるクロムウェルこそ、新時代を担う皇帝に相応しく、 ワルドともども忠誠を誓うつもりであったという。 しかし任務は失敗し、ワルドはあのウェールズに討たれ、 今わの際に手紙を託された言葉は一人でここまで逃げ延びてきたのだ。 「クロムウェル様は伝説の虚無を操り、死者すら生き返らせると聞きます。 死したワルド様をお助け願います。 そのためなら私は……身も、心も、クロムウェル様にお捧げします」 うやうやしく頭を下げる言葉。 これでいい、後はチャンスを待つだけだ。 期間は、ワルドの遺体を発見されるまで。それをされれば嘘が知られてしまう。 チャンスは実に早く、その晩にはもう訪れた。 一気に攻め滅ぼされたかに見えたニューカッスル城だが、 レコン・キスタの前線指揮官は苛立っていた。 アルビオン革命戦争の最後を飾るはずだったニューカッスル攻城戦は、 三百の王軍を全滅させるのにい、二千もの損害を受け、 さらに怪我人も合わせれば四千にも上る。 戦死者の数だけ見れば、勝利の代償はあまりにも大きすぎた。 しかし指揮官をもっとも苛立たせているのは、正確にはまだ王軍が全滅していないからだ。 といっても、残っている王軍の数は指で数えられる程度だろう。 もしかしたら指一本で足りるかもしれない。 だが、その指一本が重要なのだ。 国王の首は取ったがしかし、皇太子の遺体が見つからない。 ウェールズはまだ生きている。 名誉だの死に場所だのとこだわった王軍の皇太子がまだ、無様にも逃走しているのだ。 死が怖くなって逃げ出したのかと嘲笑するためには、ウェールズを討ち取らねばならない。 そうせねば、大軍を率いたにも関わらずウェールズを取り逃した無能者として罰を受けるからだ。 故に指揮官は、すでに双月が輝く時間になっても大規模な捜索を行っていた。 皇太子ウェールズがいる限り、アルビオン王家は終わらない。 もしこのまま見つからなかったら、王軍を再建しレコン・キスタに挑んでくるだろう。 とはいえ、まったく手がかりがないという訳ではなかった。 捜索隊の何人かが殺され、あるいは行方不明になっている。 ウェールズを見つけたものの返り討ちにされたのだろう、 よって捜索隊を失えば失うほど、ウェールズの居場所は特定されていく。 肩に灼熱のような痛みが走りながらも、ウェールズは詠唱を完成させた。 「エア・カッター!」 不可視の刃は、矢を放った兵士の喉を切り裂き鮮血を咲かせた。 しかし木陰から、ウェールズの横に回り込んだ兵士が剣を低く構え突っ込んでくる。 脇腹をえぐろうとしたその兵士の手元が突如爆ぜた。 煙が立ち込める中、ウェールズは素早くエア・ハンマーを唱えて兵士を叩き潰す。 「はぁっ、はぁっ」 肩に矢が刺さったままの彼の横を、薄いピンクの髪の少女が通り抜け、 地面に落ちているカンテラ――追っ手が持っていた物――を拾い、灯りを消した。 灯りが消えた森は、一瞬で暗黒に包まれる。 それでも息遣いを頼りにルイズは、ウェールズに寄り添い身体を支えた。 「殿下、申し訳ありません」 「何を謝る。君が援護してくれたおかげで、僕は殺されずにすんだのだよ」 「しかし、私のような足手まといのせいで、ウェールズ殿下にご迷惑ばかり……」 「いいんだ。君がいなければ、僕はもうとっくに死地へと赴いていただろう。 だから今まだ生きていられるのは、ミス・ヴァリエールのおかげなのだよ」 ニューカッスル城攻戦で死ぬはずだったウェールズは、まだ生きていた。 すべては最愛のアンリエッタからの使い、ルイズのためである。 教会での戦いの後、敵兵に阻まれ王軍の本隊と合流できなかったウェールズは、 ルイズを安全な場所まで逃がすため、ルイズの盾とならなければならなかった。 包囲網を抜け、ゲリラ的な戦いで追っ手を確実に始末し、 名誉に泥を塗りながらも、トリステインからの使者を守るため、 彼は生きていなければならなかった。 ルイズは自分が酷く迷惑をかけているのだと理解しつつも、 そんな自分が存在しているためウェールズが生きている事実よ喜んでいた。 このまま、二人で安全な場所に――すなわちアルビオンの外に逃げられれば。 そうすれば、なし崩し的にウェールズを亡命させられるかもしれない。 でも、アルビオンから脱出する船を得られたとしたら、 その時点でウェールズはルイズから離れ、 単身レコン・キスタに特攻をかけるだろう事も解っている。 どうすればいいのか。 そしてもうひとつ、ルイズには気がかりがあった。 「ミス・コトノハが気になるかい?」 見透かされてルイズの表情は沈んだが、暗さが隠してくれた。 「すまない……今の僕は、ミス・ヴァリエールを守るだけで精一杯だ」 「いえ、殿下……感謝しております、私などのために」 「彼女に関しては無事を祈るしかないだろう」 「はい……。殿下、矢を抜かなくては」 「いや、今抜けば出血が激しくなるだけだ。このままでいい。 それよりミス・ヴァリエール。 消したばかりですまないが、カンテラの灯りをつけてくれないか?」 「はい、殿下」 カンテラに火を灯しながら、ルイズはその意味を理解し、うつむく。 ウェールズは魔法で灯りを作る程度の精神力も惜しい状況なのだ。 だから少しでも精神力を節約しなければならない。 せめて、コモン・マジックでもいい、自分も魔法を使えたらとルイズは悔やむ。 「殿下、どこか休める場所を探さなくては」 「ああ。しかし、森に逃げ込んだのは失敗だったかな。 ここが森のどの辺りなのか、少し自信が無くなってきたよ。 近くに川があるはずなんだが、せせらぎの音すら聞こえない」 「……いえ、殿下、聞こえます」 負傷し、精神力も消耗しているウェールズには聞こえなかったが、 そうではないルイズは遠くで水音がしている気がしていた。 さっきまで追っ手と戦っていたから気づかなかったが、 もしかしらた川にたどり着けるかもしれない。 一口でもいいから水を飲みたい。ルイズもウェールズも、酷く渇いていた。 「そうか、ではそちらへ向かおう」 ウェールズを支え、カンテラで足元を照らしながら、ルイズは水音の方へ進む。 少し歩いて、ウェールズも水の流れる音に気づき、 どちらからともなく互いに微笑みかけた。 瞬間、カンテラが弾ける。 真っ暗闇に放り込まれたルイズとウェールズは、慌てて杖を引き抜いた。 カンテラを破壊したのは弓矢か、投石か、ともかく追っ手に見つかってしまった。 周囲で木の葉を踏む足音や、複数の息遣いなどが聞こえてくる。 囲まれた? いや、現在進行形で囲まれつつある? 魔法の詠唱が聞こえた。追っ手にはメイジが混じっているらしい。 もうこれ以上逃げられそうになかった。 ならばせめて一人でも多く道連れにするのみ。 (コトノハ……今どこにいるの? 無事でいるの?) 自分達がここで殺されるにしても、せめて、言葉は無事であって欲しかった。 月明かりをさえぎる天幕の中、裸身がランプに照らされていた。 白い肌は紅潮し、球のような汗が全身に浮かんでおり、 太ももを汗ではないものが伝い落ちる。 すでに汗で濡れしわくちゃになったシーツでそれらを拭った言葉は、 痛むほどに掴まれ爪の跡までついている乳房の前で、指輪を握りしめた。 アンドバリの指輪だった。 おぞましい恥辱と嫌悪を代償に、ついに手に入れた。 湧き上がる感情を抑えながら、言葉は衣服を素早く着る。 ベッドの上では、物言わぬ身となったクロムウェルが仰向けになっていた。 その喉にはナイフが突き立てられている。 空腹を訴える言葉に用意された食事についていたものだ。 一般兵は粗末なパンやスープばかり食べていて、 ナイフとフォークを使って食べるような物が彼女に運ばれてきたのは、 平民ながらも手紙を持ってきた英雄だからこそであった。 食事の後、夜も更け用意された天幕で眠る段になって、クロムウェルが訪ねてきた。 まさかロサイスに到着した晩にチャンスがめぐってくるとは、言葉にとって僥倖だった。 後は隙をうかがい、クロムウェルの上になった時にシーツに隠していたナイフを取り、 その喉元に突き下ろして指輪を奪うというだけの簡単な作業ですんだ。 服を着終えてから、言葉はまだ自分の身体で濡れている部位があると気づいた。 スカートのポケットにあったハンカチで目元を拭い、 そのハンカチと一緒に指輪を左のポケットにしまう。 回収したアンリエッタの手紙も入っているため少々かさばるが仕方ない。 クロムウェルの喉に刺さったままのナイフを引き抜き、それは右のポケットに入れた。 ガンダールヴのルーンは武器に反応するが、 食事のためのナイフはまさにその使用目的通り、武器とみなされなかった。 ――工具であるノコギリとチェーンソーには反応したのに。殺傷力の問題だろうか? ガンダールヴの力で逃げるためには、敵兵から武器を奪わねばならない。 しかし自分の裏切りを知らせるより、このままロサイスを脱出する方が安全だろう。 言葉は、クロムウェルの死体をその場に残し、天幕から踏み出した。 そしてすぐ、巡回していた兵士と目が合った。 「こんな時間に、どちらへ?」 急いで着たためにやや乱れていた服の胸元を言葉は押さえ、唇をきつく結んだ。 その仕草を奇妙に思った兵士が、言葉の天幕に向かって歩き出した。 第16話 代償 前ページ次ページ鮮血の使い魔
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始動要塞アロサイア 火 コスト4 クリーチャー ビッグ・マッスル 1000 ■スタートアップ(ゲーム開始前に、このカードを使用デッキから抜き出し相手に公開してもよい。そうした場合ゲーム開始前の処理をこのカードを除いたカードで行い、自分の手札枚数は4枚にする。その後このカードを開始時の手札に加える。スタートアップはゲーム開始前に1度しか使えない。) ■スピード・アタッカー (F)戦争は、始まる前に終わる。故に始まる前に展開を行う。 作者:あるふぁ スタートアップのテスト。自分で作っておいてなんだけど、相当コスト論難しい。 名前 コメント -
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前ページ次ページ毒の爪の使い魔 ――降臨祭最終日:ガリア王国・プチ・トロワ―― 暖かな陽光に照らされる廊下を、一人のメイドが二つの膳の乗った台車を押しながら歩いていた。 一つ膳の上には、焼きたてのふっくらしたパン、色取り取りの野菜のサラダ、肉汁の垂れるローストチキンなどが乗り、 もう一つの膳の上には、暖かな粥の入った大き目の皿、塩の入った瓶、スプーンなどが乗っている。 メイドは廊下の突き当たり、このプチ・トロワの最奥に位置した豪華な扉の前に立ち、ノックをする。 「誰だい?」 中から少々生意気な感じのする少女の声が聞こえた。 「朝食をお持ちしました、イザベラ様」 メイドはそう答え、扉を開けようと取っ手に手を掛ける。すると…、 「ま、待て!? 入って来るな!!」 その言葉にメイドは怪訝な表情を浮かべる。 朝食を持ってきたのに”開けるな”とはど言うことだろうか? そういえば…とメイドは他の召使達から聞いた話を思い出す。 随分前から、イザベラが自分の部屋に人を入れないようになったのだ。 三度の食事を届ける時だけでなく、用事を言い付ける時もわざわざ自分から部屋の外に出て話をするのだ。 部屋の掃除も、最近はペットの三匹の幻獣と一緒に自分でやっているらしい。 勿論、それまでのイザベラを知っている人からすれば、これらは異常な事態である。 高慢で我侭、非情な性格のイザベラが、自分の部屋の掃除をメイドにさせないなどありえない。 そんな事を考えていると扉が開き、イザベラが顔を出した。 「ご苦労だったね。じゃ、さっさと戻りな」 言いながらイザベラは台車を引っ掴むと、部屋の中に引きずり込む。 メイドは不思議そうな表情でイザベラに尋ねる。 「あの、イザベラ様?」 「何だい? わたしは”戻れ”と言ったはずだよ…」 イザベラはメイドを睨み付ける。 本来ならばその一睨みでメイドはこれ以上無い恐怖を味わい、飛ぶような勢いでその場を去っていただろう。 だが、不思議な事にメイドは然程恐怖を感じなかった。 …イザベラの睨みに凄みが無いのだ。いつもの相手を見下すような、憎悪するような感情が一切感じられない。 代わりに今の彼女から感じる物…、それは”焦り”だ。 何故だか解らないが、今のイザベラには余裕が無い。メイドはそれなりの人生経験からそれを感じ取った。 「どうかしたのですか?」 「いいから! 帰れ! 今直ぐに!」 イザベラの焦った叫び声が、朝のプチ・トロワに響き渡る。 メイドはそんなイザベラを見つめ、小さくため息を吐いた。 こんな態度は普段ならばしない。 今のイザベラが彼女には、癇癪を起こす小さな子供と何ら変わりなく見えたからだった。 「何かお困りな事があれば、その時に。それでは失礼します」 小さく会釈し、メイドはイザベラの前から去っていった。 イザベラは鼻息も荒く、扉を勢いよく閉めた。 「ったく…、わたしが言う事に大人しく従っていればいいのに…どいつもこいつも」 「のほほほほ、いつもと態度が変わりすぎているのですから…変に思っても仕方ないですよ」 暢気な声がイザベラに掛けられる。 イザベラは深くため息を吐き、声の主を睨み付ける。 「…誰の所為だと思ってんだい?」 「のほほほほほほ♪」 楽しそうに大笑いしたのはジョーカーだった。 イザベラの天蓋付きのベッドに横になりながら、片手をヒラヒラと振っている。 先のタルブにおけるジャンガとの大喧嘩の末に大怪我を負い、今はイザベラの部屋で療養中である。 その全身には絆創膏やら包帯やらが巻かれ、実に痛々しい。 イザベラはベッドへと歩み寄る。台車はペットのジャイアントムゥが押してきた。 「まったく……あんたが見た事無いほどの大怪我負って戻ってきた時は、わたしは本当にビックリしたよ。 あんたがそんなになるなんて考えた事も無かったからね…」 イザベラは思い返す。 ボロボロになったジョーカーが自分の部屋に戻ってきた時、イザベラは心底驚いた。 こいつは見た目も性格もふざけているが、色んな意味で油断ならない。 こんな大怪我を負って帰ってくるような事態は今の一度たりとも無かったのだ。 慌てたイザベラはベッドに彼を寝かし、慌てて大量の包帯や水の秘薬などを取り寄せたのだ。 無論、自分の部屋で何をしているかなどは一切秘密にして。 だが、どうして秘密にするのか? それは、使い魔ごときに献身になっている姿を見られたくないからに他ならない。 そんなのは彼女のプライドが許さなかった。 故に、ジョーカーの傷が治るまでの間、イザベラは人の立ち入りを禁じたのだった。 イザベラは台車に乗った膳の一つをベッドの横のテーブルに置く。 瓶に入った塩を粥に適度に振り掛けると、粥の入った皿とスプーンを手に取る。 粥を掬い、ふーふーと息を吹きかけて冷まし、ジョーカーの口元に運ぶ。 「ほら、食べな」 「これはどうも。では遠慮なく」 口に寄せられた粥が無くなっていく。…閉じたような口でどうやって食べてるのか、甚だ疑問である。 スプーンが空になると、次を掬って口元へ運ぶ。そんな事を繰り返していると粥は空となった。 「おかわりはいるかい?」 「いえ、もう十分ですよ」 そうかい、と呟き、イザベラはもう一つの膳を手に取り、自分の朝食を取る。 「あ、そうです。イザベラさん?」 突然、思い出したかのようにジョーカーが口を開く。 「何だい?」 「お外のご様子はどうでしょうか? 今、アルビオンの方は大変な事になっているようですが…」 その言葉にイザベラは怪訝な表情になる。 聞きたがる理由は解る。今、アルビオンに居るだろう”親友”の事が心配なのだろう。 だが、こんな大怪我を負う原因となった相手の事を未だに慕い続けるその感覚は、彼女には理解し難い物があった。 「なんだってそいつの事を心配するんだい…、もう喧嘩別れしたんだろ?」 イザベラの言葉にジョーカーは笑う。 「とんでもない!? ワタクシとジャンガちゃんは深~い絆で結ばれてるんですよ。 それがどうして”あの程度”で切れたりしますか? いやいや、有り得ませんネ」 これほどの大怪我を負ったというのに”あの程度”呼ばわりとは…、イザベラは半ば呆れかえってしまった。 大きくため息を吐く。それを見て、ジョーカーは口を開く。 「イザベラさんだって、心配なんじゃないですか?」 「…何がだい?」 「シャルロットさんの事ですよ」 その言葉にイザベラの両目が開かれ、口元にパンを運んでいた手が止まる。 「な、何でわたしが、あのガーゴイル娘を…心配しなきゃならないんだい? あの娘は裏切り者だよ? 死んで清々はするけど、心配なんか微塵もしてないね」 そして、思い出したかのようにパンを握る手を動かし、イライラを発散させるが如く食い千切る。 それを見つめながら、ジョーカーは、ぷぷぷ、とさも可笑しそうに笑う。 その笑い声にイザベラは、キッと睨み付けた。 「何が可笑しいんだい!?」 「いやいや、イザベラさんも可愛い所が在ると思いましてネ…」 「んな!?」 イザベラは開口する。 「実の所、ワタクシ全部知ってるんですよ…、貴方がガーゴイルや人形と言って表は罵りながらも、 その裏でそんな態度しか取れない自分に悩んでいる事を。いやはや、悩めるお年頃ですか…ピュアですネ。 もう、素直に謝りたいのに謝れない…、そんな自分にイライラして周りに当たる…、そして更に落ち込む悪循環…。 いやはや、素直になれればどれだけ楽になれるやら…。 イザベラさんも本当に大変ですネ…、のほほほほほ―――ギニャァァァーーーーーーーッッッ!!!?」 響き渡るジョーカーの悲鳴。イザベラが包帯の一部を取り去り、瓶の中の塩を擦り込んだのだ。 それを行っているイザベラは無表情…、尚の事怖かった。 一通り擦り込み、イザベラはジョーカーの顔を真っ直ぐに睨み付ける。 「おい、わたしが何だって? もういっぺん言ってみろ、ええ、おいこら!?」 乱暴な口調で問い詰める。 ジョーカーは死にそうな表情で声を絞り出す。 「な、何でもないです…イザベラさん…」 「フン!」 大きく鼻を鳴らし、イザベラは自分の席で朝食を再開した。 それを横目で見ながらジョーカーは呟く。 「まぁ…冗談抜きで心配なんですよネ、お互いに…。いえ…ただの杞憂だと思うんですが、嫌な予感がするんですよ…」 その言葉を聞きながら、イザベラは無言で食事を続けた。 ――同日:アルビオン大陸・軍港ロサイス―― 降臨祭最終日、軍港ロサイスは人で溢れ返っていた。 誰しもが恐怖に駆られた表情をし、我先にと船に乗り込んでいく。 キメラドラゴンの群れと大量のボックスメアン、その双方によってシティオブサウスゴータは壊滅的打撃を受けた。 今回の襲撃によって出た死傷者は連合軍や町の住民を含め、数万人…もしくはそれ以上とも言われている。 怪物同士の同士討ちが無ければ、あの街に居た者全てがこの世には居なかったかもしれない。 同士討ちの隙を突く形で、何とか軍港ロサイスまで連合軍や避難民は退避できた。 だが、それで全てが解決したわけではない。 退避の際の偵察の竜騎士の報告によれば、首都ロンディニウムより敵主力部隊の出撃が確認されているのだ。 タイミングから考えても、先の化け物による襲撃はアルビオン側による物だという事がよく解った。 ぐずぐずしている暇は無い。 ド・ポワチエ等首脳部の人間がいない為、臨時で指揮を取っていたアニエスは本国に退却の許可の打診をした。 だが、事情が飲み込めていない王政府からは許可は出ない。 それでいきなり怒るほどアニエスも子供ではない…、彼女にも本国の人間の考えは解った。 それまで連勝を続けていた軍が突然の化け物の乱入で壊滅し、今は敗走しているなど確かに信じ難い事だろう。 しかし、事実なのだ。このままでは座して死を待つばかり。 アニエスは半日を掛けて本国と折衝し、漸く許可を出させた。 普通の軍人ならば無許可での撤退準備などしないだろう。 アニエスは折衝と平行して撤退の準備を進めていた為、半日が経過した今でも順調に事は進んでいた。 罪を問われるかもしれない…などの考えは彼女には無かったのだ。 ロサイスに臨時で設置された司令部で、アニエスは兵站参謀と話し合っていた。 アニエスは兵站参謀に尋ねる。 「撤退の完了までどれだけ掛かりそうだ?」 「何とも言えませんが…予め進めていたのが幸を制しそうです。おそらく、今夜までには…」 「ギリギリと言ったところか…」 敵の進行速度がどれほどのものかは解らないが、今夜までにここに到達するのは不可能だろう。 折衝と撤退の準備を平行して行ったのはやはり正解だった、とアニエスは思った。 と、誰かが司令部に入ってきた。偵察に出ていたジュリオだ。 「戻ったか。どうだ、敵軍主力の様子は?」 もし、敵軍の進軍速度が予想以上に速かったら…、アニエスの脳裏に悪い予感が一瞬過ぎる。 が、その予感は大きく外れた。 「それがね、随分とおかしな事になってるみたいだよ?」 「何だと?」 アニエスは竜騎士から報告を聞いた。 「敵主力が引き返してるだ?」 ジャンガは眉を顰める。 ジュリオは、ああ、と頷く。 彼はアニエスに報告をした後、その足でジャンガ達の所へと来たのだった。 「変な話だと思うだろ? こちらは化け物達の襲撃でガタガタだ。それを見越して彼等は軍を動かしたに決まっている。 なのに、途中で引き返し始めた。絶好のチャンスを自ら放棄したんだ。変と思わない方がおかしい」 ジャンガは顎に爪を添えて考える。 何故、敵の主力は引き返したのだろうか? キメラドラゴンやボックスメアンとの同士討ちを恐れた? いや、それなら動かす意味が無い。 こちらへの挑発行為? それも考え辛い、意味の無い行為だ。 ならば…引き返さなければならないだけの事態が起きた? では、全軍引き返させるだけの事態とは何だ? 暫し考え――そして思い至った。 「鳥篭の鳥が逃げたんだな」 「鳥?」 タバサが聞き返す。 「ねぇ、それってどう言う事? 鳥って何の事よ?」 ルイズの言葉には答えず、ジャンガは準備運動を始める。 「な、なにしてるのよ、あんた?」 「ちょっと行って来るゼ」 「行くって、何処に行く気なのよ?」 ジャンガは振り返らずに答える。 「敵主力のところだ」 一同全員驚愕する。…何を言っているんだこいつは? 「ま、待ちたまえ!? 君は本気で言っているのか? 四万はいるぞ、敵の主力は!?」 「そうよ! 引き返してくれるんだったらいいじゃないの、放っておきなさいよ!? だいたい、途中のシティオブサウスゴータには、まだあの化け物達が居るでしょ?」 ギーシュとキュルケが慌てた調子でジャンガに言う。 それらを聞きながらジャンガは首の骨をコキコキと鳴らす。 「姫嬢ちゃんが逃げたんだよ」 「「「「「「え?」」」」」」 「だから、奴等が引き返してるのは脱走した人質を確保するためだろ。主力が出てるって事は城は殆どもぬけの殻…。 そんなんじゃ、逃げた鳥を捕まえるのは難しい。だから引き返させたんだ」 「そんなの…解らないじゃない?」 ルイズの言葉にジャンガは笑う。 「キキキ、ああ解らないゼ」 「ちょ、解らないって、あんたね!?」 「だから確かめてくるんだろ? 何かあったらこいつで知らせてやる」 言いながら取り出したのはンガポコだった。先の艦隊決戦の際、ガーレンのメッセージを届けた奴だ。 艦隊決戦の際にメッセージを届けさせたが、その後もこうした事態を想定して手元においておいたのだ。 「じゃあな、ちィとばかし行って来るゼ」 言うが早いか、返事も待たずにジャンガは風のように駆けだした。 ジャンガは限界以上の速度で走り続ける。 「相棒、敵の主力は本当に女王陛下の脱走で引き返したと考えているのかい?」 背中のデルフリンガーの声にジャンガは静かに返す。 「さてな…、正直解らねェ。今しがたも言ったがよ、だから確かめに行くんだよ」 「だがよ、脱走が本当だったら、連れて帰るのは危険じゃねぇか?」 「…だよな」 面倒くさそうな表情で、頭を爪で掻きながらジャンガはぼやく。 「ま、そん時はそん時で考えるゼ」 「行き当たりばったりだな…」 「ウルセェ…」 そんなやり取りをしている間に、あっという間にシティオブサウスゴータへとジャンガは到着した。 ジャンガは一旦立ち止まり、シティオブサウスゴータの様子を見る。 建物は倒壊し、辺りからは火災の名残である黒煙が立ち上っているが、火災そのものは収まったようだ。 デルフリンガーが鞘から飛び出す。 「如何するんだ相棒? 遠回りするか?」 「いや、突っ切る。ここまで走ってきて解った。ガンダールヴの速度なら簡単に撒ける」 そう言ってジャンガはシティオブサウスゴータの中に突っ込んだ。 ジャンガは入ると同時に、キメラドラゴンとボックスメアンの攻撃を受けるとばかり思っていた。 だが、実際はそんな事は無かった。…それ以上に驚くべき光景も広がっている。 「…寝てるだと?」 あちこちに醜悪なキメラドラゴンの姿があった。だが、そのどれもが寝ている。 いや、どんなに不気味な姿の化け物でも生物ならば寝るのは当然だ。だが、少々不自然なのだ。 普通に地面や瓦礫の上にねそべっているのもいれば、飛んでいる最中に落下したとも思える格好で瓦礫に埋まるものもいた。 更に奇妙な事にボックスメアンも活動を停止していた。 どの機体も瞳の光が消えており、操る者がいない操り人形のように地面に崩れ落ちている。 何故だ? 人間の兵は戻して、これらは何故活動を停止させる必要があった? と、ジャンガは視界の端に気になるものを見つけた。 それは幻獣だった。無論、ジャンガの世界のである。 マジックマギ――嘗て学院でジョーカーが放った幻獣。 それも一匹だけでなく、あちらこちらに何匹もいる。 何でこんな所に居るのだろうか? マジックマギは一匹一匹がキメラドラゴンの前に立っている。 時折杖を振ると青白い雲がキメラドラゴンの頭上に現れる。 「ありゃ『スリープ・クラウド』だな。眠りの魔法だよ」 背中のデルフリンガーが呟く。 その言葉から察するにどうやら”こっち”の魔法のようだ。 何故マジックマギが使うのか…など愚問だ。 どうやら、キメラドラゴンが眠っているのはこいつ等が原因の様だ。 ボックスメアンの方は直接マスターコンピューターのスイッチが切られているのだろう。 勿論、それは”どうして眠っているか?”の理由の答えであって、”何の目的で眠らせているか”の答えにはならない。 ジャンガは暫く辺りの様子を伺っていたが、気にせず走り出した。 「いいのかよ、放っておいて?」 「構わねェよ。寧ろ、俺には大助かりだ」 「…この間と同じだな」 いつの事だ…とは聞かなかった。タバサを助けに行った時、見張りの兵隊達が眠っていた事を指しているのだ。 ジャンガはそれを行った犯人に大体見当はついていた。 だが、今回のは何故だか違うような気がする。…ならばどうして? となるが、考える必要も無い。 今はとにかく突っ切るのみだ。 息を切らせながら、アンリエッタは力の限り走った。 街の路地裏を走り、物陰に身を潜めながら周囲の様子を伺い、また走る。 ハヴィランド宮殿を脱出してからは、ずっとこんな調子だった。 そのまま連合軍がいる所まで逃げきろうと考えていたが、現実はそうそう上手く事を進ませてはくれない。 脱走した自分を捕まえるべきだろう…、前線に出ていただろうアルビオン軍がロンディニウムへと引き返してきたのだ。 軍は今、総出で街を捜索し、自分を探している。 竜騎士が空を飛び、トロール鬼などの亜人が表通りを徘徊するのが見えた。 アンリエッタは呼吸を整え、改めて外の様子を伺う。 今度は周囲に気配は無い…。アンリエッタは裏路地を走り出した。 その瞬間、肩に激痛が走った。 痛みに足を縺れさせてしまい、地面に転んでしまった。 見れば肩口にマジックアローが刺さり、傷口から血が流れている。 そこに三人ほどのメイジが現れた。アルビオン軍なのは間違い無い。 一人が下卑た笑みを浮かべながらアンリエッタの髪を鷲掴みにする。 「あぐっ!?」 肩口の傷と髪を無理やり引っ張られる痛みに声が漏れる。 痛みに汗を流しながら、それでもアンリエッタは気丈に目の前のメイジを睨み付ける。 男は笑った。一国の女王と言えど、こうなればただの小娘だと、嘲笑った。 悔しさに唇を噛み締めながらも、アンリエッタは杖を振ろうとする。 だが、別のメイジに杖を持った手を強かに打たれ、杖を落としてしまった。 抵抗の術を奪った三人はそのままアンリエッタを乱暴に立たせる。 一人の首が落ちた。 一人の胴が裂かれた。 一人が血反吐を吐いて倒れた。 突然、命を落とした三人にアンリエッタは訳が解らず、ただ呆然と三人の屍を見つめる。 その屍の向こうに長身の影を見た時、アンリエッタは安堵感を覚えた。 「ジャンガさん…」 相手の名を呼びながら思わず涙を浮かべる。 ジャンガは特に何を思うでもなく、アンリエッタに近寄ると背負った。 デルフリンガーの鞘は多少邪魔だろうが、そこは我慢してもらう。と言うよりも、文句は言わせない。 「テメェで掴まってろよ? 俺は両手使いたいんだからよ」 「は、はい」 肩口はまだ痛むが、掴まっている事が出来ないほどではない。 ジャンガの首に回した手に僅かに力を込める。 瞬間、ジャンガは疾風のように駆け出した。 路地裏を駆け、表通りを突っ切り、立ち塞がる者は毒の爪で片っ端から切り伏せた。 そのまま街の傍に広がる大きな森の中へと逃げ込んだ。 暫く走り、適当な大木の陰で立ち止まると、様子を伺う。 遠くからアルビオン軍の兵士の声が、上空からは竜騎士の乗る竜の羽ばたきや鳴き声が聞こえてくる。 だが、こちらには気が付かない様子だ。 ジャンガはアンリエッタを背から下ろし、自分も腰を下ろした。 「やれやれ、まさかとは思ったがよ…本気で脱獄するとは思わなかったゼ。キキキ、お転婆もここまでくれば上出来だゼ」 「わたくしも必死でしたから……痛っ」 肩口の痛みがぶり返してきた。 傷を庇うように手で覆う。 「手酷くやられたもんだな…」 「…向こうも色々と余裕が無いのでしょう。貴族としての誇りも品性もなくなってきているのでしょうが…」 アンリエッタは先程の男の顔を思い出し、歯噛みする。 ジャンガはそれを見ながら息を吐き出す。 「とりあえず…現状報告しとくか」 懐からンガポコを取り出し、起動させる。 『ン、ンガ?』 目を瞬かせ、ンガポコは起動した。 ジャンガはそのンガポコを見下ろしながら言った。 「メッセージを頼むゼ、伝言ロボ。『姫嬢ちゃんは無事だ。そっちの脱出船の最終便が出そうになったらこいつで連絡よこしな』 以上だ。軍港ロサイスに居る、タバサ嬢ちゃん達に届けな」 『ンガ!』 一声大きく返事を返すとンガポコは空へと飛んでいく。 飛び去っていくンガポコを見て、アンリエッタはジャンガに尋ねる。 「あの、今のは?」 「俺の世界の伝言ロボ。お前らに解り易く言えば、伝書フクロウなんかと変わらねェよ」 「いえ、そうではなく、脱出船とは?」 「ああ…その事か。知らないのか?」 アンリエッタは首を振る。 連合軍がこのアルビオンに来ているのは知っている。 だが、脱出船とは…敗走しているのだろうか? ジャンガは事情をかいつまんで説明した。 降臨祭の最終日になってシティオブサウスゴータに化け物が現れた事。 化け物の大暴れで連合軍はボロボロになり、避難民と共に軍港ロサイスまで退却した事。 今は撤退の真っ最中だと言う事。 自分は敵主力が後退した理由を調べに来た事。 「あの、では何故戻らないのですか?」 「お前バカか?」 いきなりバカと言われアンリエッタはムッとなったが、直ぐに怒鳴る事はしなかった。 「どう言う意味ですか?」 「今の状況考えろ。敵さんは全員お前を探す事に夢中になっている。つまり、お前が連中を足止めしているようなものだ。 実際、お前が足止めになったお陰で撤退の準備は滞りなく進んでるんだ。 このまま真っ直ぐ向こうに戻ってみろ…、敵も全員撤退中の味方の所に呼ぶはめになるぞ?」 「あ…」 アンリエッタは己の迂闊さに項垂れた。 自分は今敵に追われているのだから、ロサイスに戻ればそこまで敵が来るのは明白な事実だ。 確かに、今戻るのは危険と言える、ジャンガの読みは正しい。 「解りました。…でも、いつまでこうしていれば良いのでしょうか?」 「だから、その為にあいつを飛ばしたんだよ。撤退の最後の方で逃げられるようによ。 空に逃げれば連中も流石に追い辛いだろ」 「それはいつ頃になるのですか?」 「さてな…、とにかく待つだけだ…と。敵が此方にやって来たらまた走るからな」 そう言ってジャンガは大木に寄りかかると目を閉じた。寝てはいないだろう。 アンリエッタはため息を一つ吐き、自分も大木に身体を預けた。 今は少し休もう…、アンリエッタも目を閉じた。 前ページ次ページ毒の爪の使い魔
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キムラスカボーン(きむらすかぼーん) 登場作品 + 目次 アビス 関連リンク関連種アビス ネタ アビス 作中説明 レベル 30 備考 イベント HP 8600 TP 0 物理攻撃力 268 物理防御力 293 譜術攻撃力 297 譜術防御力 254 経験値 73 ガルド 45 耐性 - 落とすアイテム コバルトチャンバー(5%) 盗めるアイテム コバルトチャンバー(2%) 出現場所 東ルグニカ平野 (※基準は戦闘ランク:ノーマル。アイテムの数値は入手確率。) 行動内容 突きで前方の相手を攻撃する。 横に斬りつけて前方の相手を攻撃する。 槍を振り下ろして前方の相手を攻撃する。 槍を振り回して周囲の相手を攻撃する。 構えた後、突進して前方の相手を攻撃する。2HIT。 総評 戦争イベントに出現する槍を持ったキムラスカの下級兵士。 コバルトチャンバーを落とし、2HITする突撃攻撃を使うなど、色々上官より恵まれている。 一応、他の兵士よりは戦うメリットがあるが、下手に戦うとイベント終了後の報酬が減るのであまり良くない。 ▲ 関連リンク 関連種 アビス キムラスカナイト キムラスカルーン ▲ ネタ ▲