約 3,786,275 件
https://w.atwiki.jp/theurgy/pages/609.html
ボレロ:4 ついに最後のパートへ入った。 ボレロは元々、長大な曲だ。何度となく同じフレーズを繰り返し、その中でオーケストラの全てに等しいほどの楽器と人数が合わさっていき、最後には壮大な音楽になる……。 それがショートプログラムの短さに切り取られても、フレーズそのものは変わらない。でもその盛り上がりはわかりやすいものになる。一気に、会場を揺らす。 ――呼吸さえ忘れるような静かさ。いくつものスポットライトに照らされた白氷の上。練習の時とも違う不思議な緊張感が、場内に横たわっていた。 刻んできた軌跡の数々も、ステップの度にかきあげられる氷片も、きびきびうねり広げられる足と腕も、その一つ一つが、空気と一緒に煌めいて見えた。 なだらかな孤を描いた助走。ぶらりと振り上げた足を、後ろへ振り上げた。 サルコウジャンプ――このプログラムの中も、特段大きな点数ではない。孤を描いて、振り子にした足の勢いでジャンプする。 もちろんこの一つだけではない。次のループジャンプへ直ちに繋げる。コンビネーションジャンプは回転数を稼げなくても、助走の難しさから点数を獲得しやすい。 僕にできる最大限の挑戦だったが、どうにか成功へこぎ着けた。 か細い拍手が、響き渡る演奏の中でも、僕の耳に届いた。 フィナーレへと導入していく。 後ろ向きに緩やかな孤を描いていた軌道が、中央へたどり着いた瞬間に豹変させる。腕と足を振った回転運動へ転換させる。バックワードのキャメルスピン。つま先一点の重心から、ブレードの中心部へ、そこから垂直に伸びる身体の軸そのものへ。 そのまま、広げられたままだった腕と足をすぼめる。空気抵抗も遠心運動も、全てをリンクの中央に――視界に映り込むプレッシャー全てを払い除けるような、竜巻のような力を伴った高速のアップライトスピン。そして回転の勢いを失わないうちに屈んで足を伸ばしたシットスピン。立ち上がる挙動に合わせて再び足を振って助速をつけた――足首を手で掴みながら、体を大きく広げた、ビールマンスピン。 その回転を止め、両手を振り上げると同時に、曲も終わった。 途端に空間が晴れる。鳴り響いていた音楽と、精一杯を振り絞った演技……どちらとも終わったことで生じる余韻が、呼吸を思い出させてくれた。 そして、拍手が鳴り渡った。力ないが一定のリズムで、静かな拍手がずっと響き続けていた。 歓声なんて聞こえるはずがなかった。がらんと空いた観客席――たった一人しか座っていないそこから、まさか黄色い声が沸き立つことなんて、ありえるわけがない。 そのたった一人は――彼は、ただの無機的な、笑顔であるという情報以外の何も読み取れない顔で、機械のように拍手を続けていた。 リンクの中央――大きく肩を揺らして、僕はただただ、彼の拍手を全身で受けながら、天井の眩しいばかりの証明を、ずっと、見上げていた。
https://w.atwiki.jp/ecobankecocute/pages/9.html
動画(youtube) @wikiのwikiモードでは #video(動画のURL) と入力することで、動画を貼り付けることが出来ます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_209_ja.html また動画のURLはYoutubeのURLをご利用ください。 =>http //www.youtube.com/ たとえば、#video(http //youtube.com/watch?v=kTV1CcS53JQ)と入力すると以下のように表示されます。
https://w.atwiki.jp/nicoratch/pages/407.html
概要 #ref error :画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 クロスフェーダーの左右を逆にして音をより細かく分ける技術。 ベスタクスHPのコラムに拠れば、“VESTAX DJ QUEST'95”で来日した際にミキサーの入力ジャックを必ず自分で差し替えており、プレイが終了すると元に戻していたことに、数人のスタッフが気付いたそうで、その後Q-BERTに話を聞くと、左右のターンテーブルを逆に接続してクロスフェーダー機能を左右逆にすると、“ハムスターが鳴くようなスクラッチができる”という事だったそうな。 その後Q-BERTから“ハムスタースイッチ”をミキサーにつけて欲しいとの要望もあり、まずは1998年発売のPMC-06Proに『クロスフェーダーリバーススイッチ』を搭載。 翌1999年発売のPMC-05ProⅡにも搭載され、今現在スクラッチミキサーには無くてはならない機能になった。 リバースフェーダーのメリットとデメリット 日本国内ではさほどリバースフェーダーのDJがいない事もあり、今ひとつ利点・欠点がわかりづらいのでこれ書いてる人(リバース、ノーマル両方コスる)が独断と偏見でメリットとデメリットを解説。 ※先に結論を書いておくとリバース、ノーマル結局の所どちらを使うかは好みの世界です。 スクラッチ ※メリット スクラッチ時ノーマルの場合フェーダーを操作するタンテの反対側へ「押しやる」様にして音を切りますが、リバースの場合フェーダーを操作する側のタンテへ「押す」様に音を切るため「ボタンを押して音を切る」というようにフェーダーの動きがイメージしやすく初心者には却ってリバースの方がスクラッチがやりやすいです。 またフレアやクラブといったフェーダーを多用する技術はノーマルフェーダーの場合、中指でフェーダーを弾きそれを親指で抑えるためトランスフォーマーに近い音になりがちですが、リバースフェーダーの場合は親指でフェーダーを弾きそれを中指で抑えるためフェーダーを閉じる・開く際の動作コントロールがしやすく、意図的にフェーダーを閉じ気味にしてトランスフォーマーの様な音を出したりとコントロールがやりやすいです。 他にも数多のDJから忌み嫌われる「跳ね返り」が多いフェーダー(SamuraiのCF-Xとか)ですが、フェーダーを閉じる・開くの動作コントロールが非常にやりやすいリバース時は非常に強力な武器になります。 そのため上記の様にフェーダーを多用するDJの場合は習得する価値のある技術です。 ※デメリット まずスクラッチ用ならともかく大半のミキサーにはリバーススイッチが非搭載のためリバースのみだとにっちもさっちもいかない事があります。(特にクラブDJやる人) あと個人的な経験で言えば一度リバースフェーダーでスクラッチを覚えるとノーマルフェーダーを習得するのが大変つらくなります。結局のところクロスフェーダーの動きが逆なだけですが、一度ノーマルで学ぶとリバースの習得は思っているよりも大変です。 ジャグリング ※メリット ノーマルフェーダーとは違い、フェーダーが寄っている方の音が消えるので、まったくの初心者には視覚的にこちらの方がわかりやすいです。またこのフェーダーの向きにより、片手のみでのジャグリングするトリックプレイが少しやりやすくなります。 ※デメリット スクラッチが難しいならジャグリングも……と思いますが、ジャグリングに関しては習得する難易度が思ったよりも変わらないので、よほどタイトなジャグリングルーティンでなければ意外と簡単にリバースからノーマルに移行出来ます。せいぜいジャグリング中や前後にスクラッチを入れるとスイッチを切り替える手間が増えるくらいです。 リバースフェーダーの有名DJ Q-BERT - リバースフェーダー使いといえばこの人。ジャグリングはノーマルフェーダー。 Yogafrog - Thudrumble代表。左タンテのリバースフェーダー。 ie.MERGE - DMC WORLD 2004・2005チャンプ。スクラッチ・ジャグリング共にリバースフェーダー。 Shortkut - 左タンテのリバースフェーダー。ジャグリングはノーマルフェーダー。TripleThreatDJs, ISP, BeatJunkiesのメンバー。 Tigerstyle - 左タンテ。本来はノーマルフェーダーだが、スクラッチのみリバースフェーダー。リバースにする理由は「ノーマルばかりだと飽きるから」らしい。 EPROM - 2007年度ITF・Technical及び、Show Category優勝者。チャンネル逆挿しのリバースでしかも両方のタンテでスクラッチが出来るという器用なDJ。 Or D'Oeuvre - 2007年DMCバトル部門世界2位。右タンテのリバースフェーダー。
https://w.atwiki.jp/yusakunonnon/pages/29.html
ダックノンキュート 成績 父遺伝 母父遺伝 ニックス インブリ 父持続 母持続 持続 - S SS ○S なし A 不明 SS下 生産時狙い 共有に馬主会種牡馬の配合、パラバランス重視でとにかくこれで瞬があがることを願う 引退後総評 スタミナと適正ダウンは痛かったですね、共有入りもならずでした・・、仔でスタミナと適正上がるかなあ・・
https://w.atwiki.jp/mousoupoke/pages/1324.html
ゴートス 分類:ばけひつじポケモン No.23-069 タイプ:[[ゴースト]]/[[ノーマル]] 特性:ファーコート(物理技のダメージを半減する) 夢特性:のろわれボディ(自分に対して相手が使用した技を30%の確率で金縛り状態にする) HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早 ゴートス 90 75 105 50 80 85 ばつぐん(4倍) --- ばつぐん(2倍) あく いまひとつ(1/2) どく/むし いまひとつ(1/4) --- こうかなし ノーマル/かくとう/ゴースト 図鑑 ゴートスの群れは百鬼夜行とも呼ばれている。 技 鳴き声、コットンガード、黒い霧、スモッグ、ゴーストダイブ、シャドーボール、済し崩し、捨て身タックル、鬼火、金縛り、電磁浮遊等 進化 メイ→ゴートス その他 名前の由来はメイ→メェー(羊の鳴き声)+冥、ゴートス→ゴート(羊)+ゴースト。 ゴーストな羊。耐久ポケモンとしては優秀であり、色々な嫌がらせが出来る。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/24th_shadow/pages/47.html
アーキタイプ:キュートジャイアント 優先度: 種族B 能力値C 魔法E 技能D 財産A ■種族:トロール・SURGE(クラス2) ■能力値 強靭力:8(+2) 意志力:2 敏捷力:3(4) 論理力:2 反応力:3(7) 直観力:3 筋力 :7(8) 魅力 :4 エッセンス:0.05 エッジ:1 ■副能力値 コンディションモニター:12/9 イニシアチブ:10+3D6 リミット:精神3 身体10(11) 社交8(9) ■資質 アレルギー(軽度/銀)、依存症(軽度/BTL)、規制装備品(アダプシン) 自制心不足(スリルシーカー)、昼の仕事(10時間/メイド喫茶)、優先目的(探す相手がいる) ■SURGE(クラス2:不利な資質をランダムで決める。下記は一例) 感情の出る髪、貧弱な能力値(意志力)、魅惑 ■能動技能 エチケット:3、交渉(取引):4(+2)、自動火器(アサルトライフル):4(+2)、重火器(グレネードランチャー):1(+2) 素手戦闘:4、知覚:2、統率:1、表現グループ:1 ■知識技能 企業のセキュリティ手順:3、セーフハウス:2、高級レストラン:1、メイド喫茶:2 ■言語 英語:2、日本語:N ■コンタクト コーポレートセクレタリ(ミツハマ、コネ値2/忠実値2)、シムセンススター(コネ値2/忠実値1)、フィクサー(コネ値2/忠実値3) ■所持品 ▼身体強化 アダプシン、強化反射神経(レーティング2)、骨格補綴(アルミニウム)、人工筋肉(レーティング1α) サイバーアイ(レーティング2α/スマートリンク、大光量補正、低光量補正、熱映像視野) トロール削減/Troll reduction(レーティング2)、テイラードフェロモン(レーティング2α)、反応力強化(レーティング2α) ▼武器と防具 アレス・アルファ(エアバーストリンク、ガスベント3/APDS弾5クリップ、炸裂弾5クリップ、炸裂グレネード6発) モーティマー・バーヴィックドレス、グレースコートライン ▼コムリンク エリカ・エリート(機器レーティング4) サブボーカルマイク、シムモジュール(ホットシム対応)、トロード ▼ヴィークル フォード・アメリカー ▼その他の装備 偽造SIN(レーティング4)、クレッドクリス(ゴールド) 偽造免許×6(全てレーティング4/強化反射神経、骨格補綴、人工筋肉、テイラードフェロモン、反応力強化の埋込許可、運転免許) 医療キット(レーティング6)、ガスマスク、ドリームチップ×20 ▼ライフスタイル 中流(2ヶ月支払い済み、種族により100%加算) ■開始カルマ 4(不利な資質の結果によっては3) ■開始所持金 4,085+(4D6×100)新円 ■付記 生来の熱映像視野を喪失。皮膚装甲+1、リーチ+1。 「魅惑」により脅迫を除く社交テスト+1。 キュートジャイアントを見た者は二つの驚きに混乱します。ひとつは彼女の可愛らしさに、そしてもうひとつは自身の遠近感に。 生体彫刻の粋を凝らすことにより、彼女は自分の人種をまるで「大きな人間」のように変更することに成功しました。そして、それは周囲に受け入れられています。 しかし彼女を大きく可愛いだけの存在と見くびったものは手痛い羽目を見ることになるでしょう。舌戦か、あるいは銃弾によって。 彼女には秘めた望みがあります。もしかするとそれがチームの目的と反するときがくるかもしれません。
https://w.atwiki.jp/talesofdic/pages/8376.html
スピリッツリバース(すぴりっつりばーす) 概要 スピリッツリバースとは、HPを回復しつつ攻撃する術のこと。 初出はD2のマグナディウエス。 英語版表記は「Soul Resonance」(Z) 登場作品 + 目次 デスティニー2 ゼスティリア 関連リンク派生技 関連技 ネタ デスティニー2 使用者 マグナディウエス しゃがむと同時に周囲に湯気のようなものを放ち、自身のSPを60回復する。 比較的発生も早く範囲もそれなりにあり、被弾すると火耐性-の状態異常が付く。 SPが少ないときに使用頻度が増加するため、頃合いを見て距離を取ったほうがいい。 ▲ ゼスティリア 習得者 スレイ(神依・風)、ロゼ(神依・風) BG1消費 待機時に"R2"で発動。円範囲内の味方のHPを回復させ、敵にはダメージとSC吸収効果。 分類 回復秘義 属性 風 HIT数 1 消費BG 1 威力 900 詠唱時間 0.83秒 習得条件 初期習得 範囲にHP回復、自身にSC吸収効果 回復秘義の一種。スレイとロゼが最初から修得している。 対象を中心とした範囲内の自身と味方のHPを回復しつつ、敵にはダメージを与える。 範囲はステップ三回分ほどで、敵から吸収したSCは自身のものとなる。 天響術よりも使い勝手がよく、ピンチの時に敵の詠唱を止めつつこちらを回復させることなどもできる。 また風神依が速く動くにはステップか果てぬ影星しか無いので、SCが貰えるのは非常に有用な性能。 詠唱 日本語版 霊現、鏡反! 英語版 You, feel it? ▲ 関連リンク 派生技 ▲ 関連技 ヒールウィンド シャインフィールド ▲ ネタ ▲
https://w.atwiki.jp/yugio/pages/8366.html
リバース・バスター(OCG) 効果モンスター 星4/光属性/悪魔族/攻1500/守 0 このカードは裏側守備表示のモンスターにのみ攻撃できる。 このカードが攻撃する場合、 相手はダメージステップ終了時まで魔法・[[罠カード]]を発動できない。 このカードが裏側守備表示のモンスターを攻撃した場合、 ダメージ計算を行わず裏側守備表示のままそのモンスターを破壊できる。 モンスター破壊 下級モンスター 光属性 悪魔族 行動制限 同名カード リバース・バスター(アニメ)
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/3700.html
時空の海王 リバース・ザ・ワールド UC 水 7 サイキック・クリーチャー:ポセイディア・ドラゴン/リヴァイアサン 3000 ■覚醒-バトルに負けた時、またはそのクリーチャーの効果及び自分のカードの効果で手札を捨てた時以外で自分の他のクリーチャーが墓地に置かれるとき、代わりにこのクリーチャーをコストの大きいほうに裏返しても良い。 (ゲーム開始時、サイキック・クリーチャーは山札に含めず、自分の超次元ゾーンに置き、バトルゾーン以外のゾーンに行った場合、そこに戻す) 覚醒後:《大時化の覚醒者 ニュートラル・ワールド》 作者:ブレードゼロ 【企画】エピソード1・オリジナル【オリカパック】 フレーバーテキスト DMWX-03 「エピソード1オリジナル ライジング・オリカ」海はいつでも穏やかである。ただし、海の王の怒りを買わないかぎりであるが。 収録 DMWX-03 「エピソード1オリジナル ライジング・オリカ」25a/63 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/4173gogo/pages/40.html
深夜。とある研究機関。一人の男が液体に満たされたカプセルの前に立っている。 男は慈しむようにガラスを撫でて、その中で眠っている少女を見つめた。 「10年…か。長かった。…しかしついにこの日が」 「来た、というわけですね」 「だ、誰だっ!?」 この場所には許可無く男以外は入れない。しかし聞こえた女の声に、男は振り向く。 するとそこには美しい銀髪を携え燃えるような赤い目をした女がいた。 「お久しぶりです、旦那様。そして」 「お前は!?」 「さようなら」 一瞬だった。男が反応するよりも遥かに早く、女の蹴りが腹部に突き刺さった。 男の身体は吹っ飛び受け身もろくに取れず近くの壁に当たる。 「さてと……これが」 男が動かなくなったのを横目で確認した銀髪の女は先程まで男が眺めていたカプセルの前に立つ。 そして男がしたように、あるいはそれ以上にその中の少女を慈しむように見つめた。 会長と潤との睨み合いから一週間ほど経ち、クラスは約一ヶ月後にある修学旅行の話で持ち切りだった。 東桜高校は一般的な高校よりも修学旅行の時期が遅い。この地区ならば普通は10月の半ば、つまりちょうど今頃の時期に修学旅行がある。 どうやら他の学校と被らないようにしているらしい。個人的には他の学校との交流も疎かにしない方が良いのではと思うがまあ学校の方針なので仕方ない。 「それではさっきの時間で班を作ってもらったと思うので、それを班長が提出してください」 教壇にいる修学旅行実行委員が指示を出している。こんな期間限定の行事にまで委員会を作るとは、余程自主性を重んじているに違いない。 普段は騒ぐと怒る黒川先生も、今日はクラスの片隅で椅子に座って読書をしていた。 …勿論少しでも変な行動をしようとすれば即座に制裁されるのはこのクラスの面子ならば了解済みだが。 「勝手に英の名前書いちゃったけど良いよな」 「ああ、どうせいつもの3人だし」 手元にあるプリントには『修学旅行班名簿』と書いてあり班長には俺の名前が、班員には亮介と今日…というか一週間ほど休んでいる英の名前が書いてある。 「…どうしたんだろうな、英の奴」 「まあ要っちが心配しなくても良いと思うぜ?メールには"諸事情で休む、理由は後ほど"ってあったんだしさ」 「…まあな」 諸事情って一体何だ?とか思うが亮介の言う通り、今はあまり追及しない方が良いのかもしれない。 それよりもこのプリント、早く出さないとな。 「待って」 急に腕を掴まれる。 誰かと思うと瑠璃色の髪をポニーテールにした女の子が俺の腕、正確に言えばプリントを持っている手を掴んでいた。 「えっと…」 「…こ、こんにちは」 「えっ?こ、こんにちは」 いきなり挨拶をされたので思わず俺も挨拶する。 …クラスメイトの名前をあまり真剣に覚えなかったことを俺は今更後悔していた。亮介は俺達のやり取りを見守っている。 「そ、その…良いプリントね!」 「…はい?」 「いや!そ、そうじゃなくて…そう!良い腕ね!」 何故か腕を褒められてしまった。良く見ると女の子の頬が紅潮している。 「大丈夫?顔赤いけど…」 「それは大丈夫!ってそうじゃなくて!」 机を叩く女の子。自分に突っ込む気持ちは少し分かる。気が付けばクラス中が俺達に視線を向けていた。 女の子の後ろには女子のグループがおり「撫子(ナデシコ)負けるな!」とか小声で囁いている。 「よしっ」 思い切り深呼吸する女の子。可愛らしいというか何というか。 黒川先生は相変わらず読書中である。…これは止めないんですか。 「修学旅行の班員って4人なんだよ!」 「そ、そうだっけ?」 いきなり声を張る女の子に思わず後ずさる。プリントを見ると確かに『班員は原則4名とします』と書いてあった。 「そうなの!…で、その…白川君達は…今3人なんだよね」 「ああ、良く分かったね」 「そりゃあいつも見て…あ!」 「いつも見て…?」 女の子がしまったみたいな顔をする。後ろの女子グループからは「バカ!それは言うな!」みたいな囁きが聞こえた。 「い、今のは忘れて!実はあたし余っちゃって!も、もし良かったら白川君…達の班に入れてもらえない…かな」 顔を真っ赤にして俯きながら言う瑠璃色ポニテの女の子。つまり俺達の班に入りたいということか。 「えっと…」 「良いじゃんか要っち」 亮介が楽しそうに言う。…まあ亮介は基本楽しかったら何でも良いみたいなところがあるからな。 「まあ君が良いなら俺達は…」 「本当にっ!?ありがとう!」 手を力いっぱい握られる。後ろの女子グループは皆でガッツポーズをしていた。 「い、いや…そんなに感謝される覚えは…。あ、名前書いてもらえる?」 「う、うん!ゴメンね、あたし手汗凄くて!」 プリントとシャーペンを渡すと女の子は震えた手で自分の名前を書いていた。小声で「白川君の…」とか何とか言っている。 「はい、出来たよ!」 「あ、ありがとう。…あのさ」 「な、何かな!?」 「…シャーペン」 「あ、ゴメンね!つい…」 「…つい?」 「あ、あははは!何でもないの、何でも!」 女の子は顔を真っ赤にして横に振る。つられて瑠璃色のポニーテールが宙を舞っていた。 プリントには藤川英の下に少しいびつな字で『大和撫子』と書いてあった。 …やまとなでしこ?…偽名…な訳無いよな。 「よろしくな大和(ヤマト)さん」 「よろしくね如月君」 「…よろしく、撫子(ナデシコ)さん?」 「よろ…な、名前で…!」 どうやらやはり読みは大和撫子(ヤマトナデシコ)だったようだ。試しておいて正解だったな。 「…?大和さん、どうかした?」 「えっ…名前…」 何故かいきなりしょんぼりしてしまった大和さん。何かあったのだろうか。 後ろの女子達が信じられないといった様子で俺を凝視している。 「…なあ亮介」 他の人には聞こえないよう亮介に近付いて話す。 「なんだ?モテキング」 「モテキング?…いや、それよりも向こうにいる女子が俺を睨んでいるんだが」 「それがどうした」 「いや、何でだ?俺、大和さんに…何かしたか?」 「……信じられない。これが…主人公」 何故か亮介は地面に膝をついてしまった。大和さんは下を向いたまま「名前…」とか呟いているし、女子からは睨まれたまま。 こういう時にフォローしてくれる英がいかに貴重な存在か分かる。 「英…助けてくれ」 ぽつりと呟いた。 放課後。校舎に隣接する体育館では女子バレー部が部活の準備をしていた。 「へぇ、じゃあ上手くいったんじゃん!良かったね!」 「でも白川君って想像以上に鈍感なんだよ」 「そうそう!本当に信じられない!ね、撫子」 ポールやネットを運ぶ女子の後ろでポニーテールを揺らしながらボールをカゴから出していた撫子が振り向く。 「まあ仕方ないよ。わたしは一緒の班になれただけで十分だから」 穏やかな笑みを浮かべる撫子。思わずその場にいた全員がその笑みに見とれていた。 「…白川君、幸せ者だね」 「本当…。私が男だったらこの場で襲ってるわ」 「はいはい。わたしちょっとトイレ行ってくるね」 そういうと撫子は小走りで体育館から出て行った。 「…………」 体育館から少し離れた女子トイレ。中には鏡の前に立っている撫子以外は誰もいなかった。 「………ありえない」 何かを呟く撫子。顔は濡れており水で洗っていたようだ。 「ありえない」 鏡に向かって呟き続ける。まるで誰かに話し掛けているような口調で。 「ありえないっ!」 いきなり叫び目の前の鏡を叩き割る。右手からは血が溢れ出るが構わず割り続ける。 「ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない」 目の前の鏡が砕け散り右手が血だらけになっていた。それでも彼女は気にも留めない。 「ありえない。……何で、何で白川君の話を楽しそうにするの?」 焦点の定まらない目で鏡があった場所を見つめる。 「何で…白川君の悪口を言うの?」 血だらけの右手を顔の前まで持って来てゆっくり傷口を舐める。まるで何かを労るように優しくゆっくりと。 「…落ち着かなきゃ。白川君の"好きな女の子"に成り切らなきゃ」 全ては彼のため。 元々臆病で人見知りだった性格も彼が好きだって言っていた"奥ゆかしい女の子"に変えた。 "明るい方が良い"って言うから嫌だけど頑張ってクラスの明るい女子グループに入って、女子バレー部にも入った。 彼が"ポニーテールが良い"って言うからこの髪型にした。 そう全ては彼に、白川君に気に入られるため。 「やっと…やっと掴んだんだ…」 彼はいつも部活や要組とかいうふざけた集まりで忙しそうだった。 でも修学旅行なら話は別だ。同じ班になれば確実にチャンスはやって来る。だから焦ってはいけない。 嫉妬の炎は今はいらない。今必要な物は氷のように凍てついた冷静さ。 「わたしは大和撫子。奥ゆかしくて、でも明るくてポニーテールが似合う女の子」 目をつぶる。イメージする。いつものわたしを。 白川君にだけじゃなく、誰に見られても良いように、いつも通りの"大和撫子"に戻る。 「…手、怪我しちゃったな。もう!割れたままの鏡を放置するなんて最悪だよ…」 まるで壊したのが自分ではない別の誰かのように撫子は振る舞った。 放課後。いつものように生徒会室に行く。 テスト週間が近付いて部活が休みになったため、俺達は生徒会で集まって勉強したりくつろいだりしていた。 「…嘘みたいだな」 …そう。嘘みたいなんだ。 先週の会長と潤の睨み合いが嘘のように2人は仲が良い。まるであんなことなかったみたいに…。 「…訳が分からない」 一体2人は何を考えているんだ。あの冷たい目と凍てついた空気。 何かが思い出せそうな…雨の……冷たい…夜の……。 「入らないのかい?」 「あ、悪い……えっ?」 俺の後ろに立っていたのは間違いなく減らず口だが憎めない金髪天然パーマの…。 「久しぶりだね、要」 「…英」 藤川英だった。 「本当に心配したぞ。ろくに連絡も寄越さず…。大体英はな」 「まあまあ、会長。英も悪気があった訳じゃないですから」 「本当に良かった…」 「お帰り…心配した」 「あはは、遥にまで心配かけちゃうとは思わなかったな。…皆ゴメンね」 夕焼けが差し込む生徒会室。 実に一週間ぶりに英が帰って来たということで、皆勉強どころではなくなっていた。 「ったく心配かけやがって…。つーかその腕…」 「うん、実は皆に相談…いや、"依頼"があるんだ」 英の言葉で空気が変わった。右腕はギブスで固定されており骨折していた。 この一週間で何か事件に巻き込まれたのは明らかだった。…嫌な胸騒ぎがするのは俺だけなのだろうか。 一週間前。ちょうど会長と潤が衝突した日の夜中、事件は起こった。 英の父親で藤川コーポレーションの社長でもある藤川栄作が何者かに襲われ重傷を負ったらしい。 彼は一週間経った今も意識を取り戻していない。襲われた現場が厳重な警備下にあったことから犯人は相当の"やり手"だということが分かった。 「…目的は分からない。でも僕には犯人の目星がついたからね。学校を休んで探したんだよ」 英は何処か遠くを見つめていた。さっきから皆が黙って英の話を聞いている。 「随分かかったけど…ようやく3日前に探し出してね。でも…返り討ちにあってこの様さ」 英はおどけるように骨折している右腕を見せる。…笑えないぞ。 「しかしそんな大ニュースやってたか?俺は全然知らなかったんだが。要っちは?」 「…多分むやみに報道しないようにしてるんじゃないか?」 「流石要。まあウチは大企業だからさ。真相が分かるまでは…ね」 どうやらこの一週間で俺達が気が付かない内にとんでもない事件が起こっていたようだ。 「で、英。依頼って言うのは…」 「…うん。何となく話の流れで想像がつくと思うけど…」 「犯人確保」 遥が英が言いにくそうにしていることをさらりと言った。 「…まだ公には出来ないから警察には届けられないんだ。でも僕はどうしても捕まえたい」 珍しく英が強い決意を示していた。 よっぽど父親が好き…な訳ないのは何となく分かる。じゃあ一体…。 「そういえば英、犯人の目星がついてるって言ってたよね?」 潤が英に尋ねる。確かにさっきそいつに腕を折られたとか言っていたな。 「…とりあえず今彼女が何処にいるか、皆に探して欲しいんだ」 そういうと英は一枚の写真を取り出した。 そこには黒髪の大学生くらいの女性と銀髪に燃えるような赤い目のメイドさんが写っていた。 「このメイドは…!?」 会長が写真を見て動揺していた。 …いや会長だけでなく俺以外は写真の中に写るメイドに見覚えがあるようだ。 「犯人は恐らく…彼女だよ。要には今説明するから皆には早速情報を集めて欲しいんだ」 「分かった。では亮介は…」 会長が割り振りをして皆生徒会室を出ていった。 残されたのは俺と英の二人だけ。俺は写真をもう一度見る。 微笑んでいる黒髪の女性は整った顔立ちをしていた。どことなく英に似ている。 そして銀髪のメイドさんは人形のような無表情をこちらに向けていた。 「…要は記憶喪失だから覚えてないと思うけど、僕には姉さんがいたんだ」 「…"いた"?」 「……半年くらい前にビルの爆発事故で行方不明になってさ。そこに写っているメイドと一緒にね」 「…爆発…事故」 初耳だった。 半年前にそんな事件が起きていたことも、そもそも英に姉がいたことも。 「別の事件の調査で僕たち要組が偶然その現場に居合わせてさ。だから皆メイドに見覚えがあったんだ」 「…そう、か」 「ゴメンね。別に隠すつもりじゃなかったんだけど…生存は絶望的だったからさ」 「…気にしてないよ」 家族が事故に巻き込まれたんだ。言いたくない気持ちも分かる。 「黒髪の女性が僕の姉、藤川里奈(フジカワリナ)。そして銀髪のメイドが桃花(トウカ)」 桃花…。 何だろう、つい最近何処かで見たような…。この燃えるような赤い目…。何処かで…。 「なぜ桃花がお父様を狙ったのかは分からない。でも…桃花が生きていたなら」 「英のお姉さんも…」 「…だからどうしても桃花の居場所が知りたいんだ」 折れた右腕を見つめる英。一体お姉さんとの間に何があったのかは分からない。 でも英の決意はひしひしと伝わってきた。 「…分かった。俺も協力するよ」 「ありがとう要。…それからもう一つ良いかい?」 「ああ」 「桃花は武道の達人だ。あの警備を破れるのは桃花ぐらいだと思う」 「…だから犯人はこのメイドさんなのか」 戦うメイド…もしかして師匠が言っていたのは…。 「うん。だから捕まえようとしてもまず返り討ちにあう。…僕みたいにね」 「…笑えねぇって。じゃあどうする?仲間に連絡か?」 「皆にはそうしてもらうつもりだよ。でも要には…戦って欲しい」 「………マジ?」 遠回しに死ねって言ってないか、それ。 「とりあえず今から海有塾に行ってくれ。手配はしておくから」 「…俺に出来るのか?」 相手は日本有数の大企業の警備を一人で破るような奴だ。果たして俺なんかが敵うのだろうか。 「大丈夫。要ならやってくれるよ。僕たちのリーダーだしね」 ウインクをする英。…いや、それ何の根拠にもならないと思うんですけど。 10月にもなると日が暮れるのも早くなる。 生徒会室を出て海有塾の門まで来た時には、すでに辺りは真っ暗になっていた。 「お、来たか要君」 道場の入り口には師匠の源治さんが立っていた。どうやら俺を待っていてくれたようだ。 「師匠!すいませんいきなり。英…えっと藤川君からここに行けって言われたんですけど」 「聞いておるよ。さあこっちに」 師匠に案内されいつもの道場…を通り抜ける。 「あれ?ここじゃないんですか」 「ああ、今回はちょいと特例じゃからな」 道場の奥には扉があり中に入ると地下へと続く階段があった。 「さ、ここからは君だけで行きなさい」 「師匠は?」 「わしはここで見張っておる。…しっかりな」 師匠に促されて地下への階段を下りる。しばらく下りると扉が一つ現れた。 その扉を開けると目の前には上にあるのと変わらない道場が広がっていた。 唯一違うのはここが地下だということか。 「お待ちしておりました」 「うおっ!?」 急に声がしたのでその方向を向くとそこには金髪で赤い目をしたメイドさんがいた。 「…えっと君は確か…」 「はい。優お嬢様の専属メイドをさせていただいている、桜花です」 そう。一週間前に会長のメイドと名乗った桜花さんだ。同時に気が付く。 彼女の風貌はさっき写真で見たあのメイドに瓜二つだと言うことに。 「あの…桜花さんって…双子だったりしますか?」 「?…ああ、そういうことですか」 何がそういうことなのか全く分からないが桜花さんは納得したようだ。 「…いや、どういうことですか」 「つまり要様は私の外見に見覚えがあるのですね。それはそうです。私は桃花をモデルに作られていますから」 「作られて…?ってちょ!?」 いきなり脱ぎだす桜花さん。慌てて止めようとするが桜花さんの透き通るような白い肌が見え豊かな胸が弾力を見せ付ける。 「…どうかされましたか? こちらを見て欲しいのですが」 「な、何言ってるんですか!? つーかいきなり脱がないでくださいよ!」 「……仕方ありません。実力行使です」 「実力…? うわっ!?」 足払いをされ仰向けに倒れる。そこへ桜花さんがのしかかって来た。 無論服など着ているはずもなく二つの膨らみが俺を刺激する。 「触って頂きます」 「わっ!ちょ!?えっ!?なにっ!?」 突然の事態に混乱する俺を余所に桜花さんは俺の右手を掴み自分の背中へ導く。 「んっ…」 「わぁ!?……あれ?」 顔を赤らめる桜花さん。でも背中を触ったはずの俺の右手には冷たい感触があった。 「お分かり…頂けましたか」 立ち上がり背中を見せる桜花さん。 引き締まった身体とお尻に一瞬目が行ったが、背中が大きく開いており中にはコアのような青い水晶が収まっていた。 「背中が…」 「私は人間ではありません。桃花を元にして造られたアンドロイド、"桜花"です」 「……嘘だろ」 思わず腰を抜かしてしまった俺は情けない奴なんだろうか。 海有塾の地下道場。俺はアンドロイドである桜花の話を聞いていた。 藤川家と美空家は昔から交流があったらしい。 桜花は10年ほど前に当時すでに相当の実力者だった桃花の能力を元に、「10年後の桃花」をイメージして造られたそうだ。 「上手く行けば戦力として大量生産予定でしたがコストがかかりすぎた関係で私が最初で最後のアンドロイドとなりました」 「さっきの青い水晶みたいなのは…」 「あれは私のコアです。記憶や制御など様々な管理、そして機能を果たしています。言うなれば心臓ですかね」 目の前に座っている桜花は誰がどう見ても人間にしか見えない。 でも彼女は確かにアンドロイドなのだ。 「10年前なのに今の桃花とそっくりなんだな」 「はい。そこは奇跡としか言いようがありません。ちなみに外観はしっかりしています。女性器もちゃんとありますが…」 「分かったからまた脱ごうとするな!」 メイド服を脱ごうとする桜花さんを慌てて止める。このアンドロイドはやたらと脱ごうとするから困る。 「会長や英は桜花さんのこと…」 「勿論お二人ともご存知ですよ。だからこそこうして私がここにいる訳ですから」 桜花さんが立ち上がり俺と距離を取る。…凄く嫌な予感がした。 「桜花…さん?」 「要様、構えて下さい」 「…やっぱりかよ」 英は言っていた。俺には桃花と戦って欲しいと。 そしてそのためにここにいて、目の前にはその桃花のアンドロイドである桜花さんがいる。 どう考えてもこれは…。 「それでは今から"対桃花実戦プログラム"を開始します」 平たく言えば"桃花"を倒すための特訓だ。 「やるしかないか…」 「行きます」 「っ!?」 それが合図だった。 目にも留まらぬ超高速の動きで桜花さんが間を詰める。そして次の瞬間には 「はっ!」 「ぐっ!?」 同じく超高速の蹴りが鳩尾を狙って放たれていた。 反応…というよりほぼ防衛本能による反射で何とかそれを左腕で防ぐが堪えきれず吹っ飛ばされる。 「終わりません」 「…ちっ!」 壁への激突を受け身で何とか和らげるがその隙にまた間合いを詰められてしまう。 そして超高速の右足からの蹴りを 「っ!喰らうかよ!」 姿勢を低くして間一髪で避けた。俺だって師匠の元で鍛えているんだ。 一度見た技なら避けられる。そのまま右腕に力を込める。 「おらぁ!」 「甘いですね」 俺の右腕が桜花さんの腹部を捉える直前、彼女は身体を回転させた。 まるでダンスのように俺の右腕を避けて 「はぁ!」 「ぐはっ!?」 右足からの回し蹴りが俺の鳩尾を貫いた。 まさか最初の蹴りは回し蹴りの為のフェイク…か。俺はその勢いを殺せず壁にぶち当たった。 「…実戦プログラムを終了します」 「ごほっ!がはっ!」 鳩尾をもろに受けた為、息が出来なかった。そして強烈な嘔吐感を何とか堪える。 …ただ速かった。完敗だ。 「大丈夫ですか?」 気が付くと目の前に桜花さんがいた。手には救急箱を持っている。 「…はぁはぁ。いや、大丈夫…だ」 「無理をしないで下さい。腹部に痣を確認しました。処理します」 「…っ」 目にも留まらぬ速さで傷の治療をする桜花さん。近くで見ると本当に人形の様で何だがそわそわしてしまう。 …さっきの裸、綺麗だったな…いや、考えるな。考えちゃいけない。 「完了しました」 「あ、ありがとう桜花さん」 これ以上の接近は毒だ。桜花さんと距離を取る。 「いえ。…それから桜花さんは止めて下さい。桜花、とお呼び下さいませんか?」 「いや、でもさ…」 「………」 桜花さんにじっと見つめられる。…何か断りづらいな。 「…分かった。これからは桜花って呼ぶよ」 「ありがとうございます」 「その代わり俺も様付けは止めてくれない?何か慣れなくってさ。呼び捨てで良いから」 「分かりました。…要」 「おしっ!じゃあ改めてよろしくな桜花」 「こちらこそよろしくお願いします、要」 握手をする。彼女の手はとても冷たかったけれど何故か悪い気はしなかった。 「さあ、プログラム再開です」 「……ですよね」 とりあえず桃花と戦うまで身体が持つか心配だ。