約 1,885,945 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/289.html
深夜まで困惑したままのルイズでした。そして、その原因となったドアは目の前に・・・ ドアを開ければ困惑からは開放されるかもしれないのですが、今のルイズにその行動をする勇気はありませんでた。 (ああ、悪夢だわ。こここ、こんな事ありえないわ。) ルイズは、頭からシーツをかぶり現実逃避を繰り返していた。 そうこうするうちにルイズに睡魔が訪れそのまま深い眠りへと誘われていったのでした。 翌朝、ドアが静かに開きある人物が入ってくるのでした。その人物はベッドまで行くとルイズをゆすり始めました。 「ルイズ・・」 その人物はおとーさんでした。 「・・・ん・・・ふにゅ・・・」 「ルイズ・・・朝」 「・・・あんた誰? あ、昨日召喚したんだった・・」 ルイズは被っていたシーツから顔を出すとおとーさんに話しかけ窓を一瞥しました 「まだ明るく無いじゃない・・・早いわよ」 そう言うとルイズは眠りにつこうとした。しかし、思い出したようにこう付け加えるのでした。 「そこに置いてある服洗濯しといてね」 そう言いながら、シーツから手を出して脱ぎ捨ててある服を指差すのでした。どうやらドアの事は忘れているようでした。 おとーさんは学園内をウロウロしていました。洗濯する場所がわからなかったのでした。もっとも、「自分の家」へ帰れば良かったのでしょうがそこまで考えつかなかった様でした。 おとーさんは運良く洗い場の方へ出ることが出来ました。更に運がいいことに親切なメイドさんと出会うことが出来たのでした。 「あの、どちら様で・・・あ、ミス・ヴァリエールの使い魔さんですね。白くて宙に浮いているゴーレムだって他のメイドか ら聞きました~」 「洗濯」 「え? あ、ミス・ヴァリエールから頼まれたのですね。でも・・・」 空を見上げるメイドが残念そうに 「今日は霧雨で・・・ お洗濯しても乾きませんよ。私も貴族様から頼まれた分があって困っているのですけどね・・・」 メイドはため息をつきながらおとーさんに話すのでした。 「その洗濯物も預かりましょうか?雨が降っていますから今日は無理ですけど、晴れたらすぐに洗濯しちゃいますから」 おとーさんはそのメイドに洗濯物を手渡すとお辞儀をしてどこかへ行こうとするのでした 「あ、私はシエスタって言います。後で声かけてくださいね~ 洗濯が終わっていたらお渡しますから~」 おとーさんは、シエスタの声に振り返り手を振るとそのままどこかへ消えてしまいました。 シエスタが洗濯を諦めて他の仕事に取り掛かろうとした時、突然爆発音が聞こえてくるのでした。しかし、ルイズの失敗魔法 だと考え何事もなくそのまま仕事に精を出すのでした。 しばらくするとシエスタは呼ばれたような気がしました。呼ばれた方を見るとおとーさんが居ました 「どうしたのですか?」 「晴れた」 おとーさんにそう言われ外を見るとたしかに霧雨は降っていませんでした。外に出て空を見上げると雲も無くいい天気です。 「あ、これならお洗濯できますね」 笑顔でおとーさんを見るシエスタでした。おとーさんは何かつぶやいています 「・・・の為ならエーンヤコーラ・・・」 シエスタは少し首を傾げていましたが、おとーさんも手伝うと言う事になり一緒に洗濯することになりました。 学園内では、先ほどの音で起きる者も居ましたがやはりルイズのだろうと言う事で特に気にする者も居ませんでした。 その時当のルイズは 「ん?何今の音???」 と起き上がり窓から外を見ました 「ん~、いい天気ね。あれ使い魔・・・洗濯に行かせたんだっけ・・・それにしても・・・」 ルイズはドアを眺めながらまた困惑してしまいました (ま、魔法なのかしら・・・でも、詠唱とかしてなかったし・・ なんで扉の向こうから使い魔以外の声がしたのかしら・・・) 昨日はドアを開ける勇気はありませんでしたが、今は少し違いました。 (ちょっと覗くだけなら大丈夫・・・よね) ルイズの中に好奇心が生まれどんどん大きくなっていきました 恐る恐るドアに近づくとドアノブを握り少しだけあけて中を覗いてみました。 おとーさんが部屋に帰ってくると、あのドアの前でルイズが失神していました・・・
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2983.html
前ページルイズ・キングダム!! 新鮮な野菜にたっぷりのマヨネーズをかけて、人間1人を黒コゲにできる強火で一気に焼き上げた香りはたまらない。 戦っている最中からグウグウと食欲を訴えていたお腹も、もう堪らなくなっている。 「ううっ……この薔薇よりも美しいボクのボディラインが……マリコルヌよりも太く……」 「うるさい」 隣で独り苦悩ゴッコに浸っている丸いギーシュに、思わず悪態をついてしまった。 焦るべきではない。ワタシは食事をしたいだけなのだ。 空腹でイライラするのは、私の流儀では無い。 目の前では忙しく走り回る小鬼達。 木を削って作った大き目の皿に、焼き野菜を盛り付けて分配している。 ……しかし野菜だけというのは寂しい気もする。 贅沢を言う気はないが、やはりバランスというのは大事では無いだろうか? と、一匹の小鬼が荷物を開いた。 中からは次々と、大きめの木の葉で包まれたライスボールが現れる。 綺麗な三角に握られたソレは、塩をきかせて黒い海草の加工品をまかれていた。 うん……ゴハンがあるなら話は別だ。 目の前の多種多様な野菜が、全てオカズとして浮き上がってくる。これはとてもイイ。 メインの大きなマヨジャガはほっこりと美味しそうに焼きあがっている。 おイモはぜったいに大盛りで食べようとココロに決めた。 ニンジン、ピーマン、タマネギ、ナスの組み合わせは彩りも嬉しいカンジだ。 巨大なカボチャは潰されてポタージュスープになって出てくる。 そこに、カボチャ頭の胴体、貴重な肉の部分を具として煮込んであった。 うん。これは実に御馳走だ。 彩りに浮かんでいるハシバミ草はもっと大量でも良かったが、まぁこれはこれで満足。 更に桃色髪のルイズ(職業・料理人)が即席でタマネギとキューリをピクルスにしていた。 これは正解だと思う。 こってりとしたマヨネーズ焼きの中で、きっと凄く爽やかな存在になる。 「うおォン! 私はまるで人間火力発電所です!」 ふと見ると、まだ生焼けの野菜をひたすら焼いているコルベール先生の姿。 言動は意味不明だが、一心不乱に焼きの作業に没頭する姿は崇高ですらある。 ピカピカの頭皮も一層美しく輝いて見えた。 「いただきます」 一足先に、ホカホカのイイトコロをいだだく。 百万迷宮生まれの野菜は普段食べている野菜よりも硬い。 硬くて……でもマズくは無い。うん。マズくはない。 なんというか、全体的に濃厚でしっかりした野菜の味がするし、血を吸っているせいか旨味も強いのだ。 普段は野菜より肉の方が好きな私の使い魔、シルフィードも喜んで食べている事からもそれは明白。 なによりやはりマヨネーズまみれの味は、下品で単純だったがわるく無い。 むしろいい。うん、こーゆーのがいいのだ。 なんと言うか、マヨネーズの味は女の子だと思う。 その証拠に、太ったキュルケも美味しさに負けてしっかり食べているのだから。 「なんでキミまで食べているんだいミス・ツェルプストー! 僕達はダイエットして体型を元に戻すべきじゃないのかね! あえて言わせてもらおう! この裏切り者とッ! いいかっ、僕は食べない! 絶対に、何があっても、始祖にかけて食べないねッ!!」 「うるさい」 騒ぐギーシュの関節を思わず掴んでしまった。 こんなのは私の流儀ではないけれど、もう止まらない。 手首を固定しヒジを捻り上げ、ニワトリの手羽を捻るような形にして締め上げる。 「な、なにをするんだねミス・タバサ!」 「あなたはうるさい。読書の時とものを食べる時には、誰にも邪魔されず自由で……救われていなければいけない。独り静かで、豊かで……」 「ギブ! ギブアップだミス・タバサ! って言うか折れるっ! 真剣に折れるからっ!」 <ルイズ・キングダム!> 「……最後の二枚が重かった」 「いやタバサ、アンタ一人前のお皿10枚ペロリといってたから」 なんて事はまぁ、余談である。 ルイズ達は、まだまだ森の中をさまよっていた。 オヤツに焼き野菜のマヨネーズ風味をたらふく食べてお腹一杯。 『小鬼小王』クロビスと『血塗れ』ギーシュ、それに『カロリー過多の』キュルケは、まだ肥満したまんまだ。 まるい。とってもまるい。歩くより転がった方が早いぐらいまるい。 とは言っても実際には全員キンギョに乗っての移動だが、乗られているキンギョも重そうにしていた。 「……なんか今、すっごく失礼な二つ名で呼ばれた気がするわ」 「どうかしたのかい、『カロリー過多の』キュルケ?」 「どうかしたの、『カロリー過多の』キュルケ?」 「どっちから黒コゲになりたいのかしら、『血塗れ』ギーシュ、『ゼロの』……いいえ、『お肉の』ルイズ?」 ビキィ!っと擬音付きで額に血管を浮かばせて、キュルケの掌に火の玉が生み出される。 気まぐれな猫を思わせる眼は悪鬼のように吊り上がり、真紅の髪は炎のように逆立つが―――それでも何処かコミカルなのがデブの悲しさだった。 ブックリほっぺやポッコリお腹なんか、突付くと気持ちいいんじゃないかと思わせる。 ちぃ姉さまが飼ってる猫にも、こんなカロリー過多なデブネコが居たわねぇと、ほのぼのした気分になってるルイズであった。 「だいたい、一緒にマヨネーズを浴びたのに、なんでルイズとタバサは平気なのよ! なんか不公平じゃない?」 今度はムキーッと叫んで文句を言うキュルケ。 カルシウムが不足してるのかもしれないとタバサは冷静に考えた。けっこうヒドイ。 そしてその冷静さのまま、じっと自分とルイズの胸を見る。 続いてキュルケの、普段以上のサイズに膨れ上がった胸を見つめて、口を開く。 「体質?」 「「「「「……(じーっ)……(じーっ)……あー、ナルホド」」」」」 その言葉にルイズを除く全員が三人の胸を見比べ、そして納得した。 タバサは小柄な見た目に似合わぬ健啖家だし、ルイズは大食漢では無いが決して小食と言うワケでは無い。 なのに、悲しいかな身体全体、特にホントは欲しいある部分にも脂肪が付きにくい体質なのである。 「ちょ、待ちなさいよ! あるわよ! 私だって多少はその……ダバサよりは有るんだからね!!」 「なに言ってんのよ。胸も『ゼロ』のクセに」 「……ドングリの背比べ」 「なぁにミス・ヴァリエール。胸の無い女性だって、それはそれで魅力的なものさ!」 「まぁその、貴女はまだまだ成長期ですから、希望を捨ててはいけませんぞ、ミス・ヴァリエール」 誰も「有る」とは認めてくれなかった。 キンギョにつっぷしてグッタリとうなだれるルイズ。 背中に雨雲でも背負いそうな落ち込みっプリである。 流石にちょっと可哀そうかなーと、キュルケやコルベールは慰めの言葉を捜して様子を窺うのだが、そんなルイズに「空気読まない度」ではギーシュに匹敵するクロビスがのほほんとした様子で声をかけた。 「なー、ルイズ」 「………………なによ、まるっ小鬼? アンタも巨乳になっていい気になってるの?」 たっぷり30秒はかけて再起動した途端、ルイズは自分の使い魔にインネン付ける。 小鬼相手に巨乳も何もありえないのだが、傷心のルイズに道理は通じないのであった。 しかし、インネン付けられた方はそんな事にも気づかないナイロンザイルの神経の持ち主。 クロビスの一言は、ルイズのガラスのハートに更なる一撃を加えた。 「なんでルイズは『ゼロ』って言われてたんだー? やっぱり胸がゼロだからなのか?」 「―――死なす!」 両目をギラリと殺気に輝かせ、ルイズは杖を振り上げた。 最早理性のカケラも無い。 怒りに任せてコンマ一秒でファイヤーボールの呪文を唱え、クロビスに向けて解き放つ。 が……当然巻き起こるのは魔法失敗による爆発だ。 これこそルイズが『ゼロ』と呼ばれる、魔法成功率ゼロの証たる失敗魔法。 だが、その魔法はただ失敗しただけではなかった。 アサッテの方向で爆発した魔法から、なんと小鬼が出現したのだ。 その数4匹。 「あれっ?」 唖然呆然と現われたばかりの小鬼を見て沈黙するメイジ達。 角度15度ぐらいに首を捻って、今度は『明り』の魔法を試してみるルイズ。 ポンという爆発音と共に、またもや八匹の小鬼が出現した。 「えーっと……なんで?」 「――――――母神様じゃあ!」 首の角度が32度ぐらいになったルイズに答えたのはオババだ。 驚きからか、その糸のように細い眼がカッとまん丸に開かれている。 「母神様?」 「そう。今の魔法は、我等小鬼を生み出す母神様のチカラと同じものに違いないじゃ」 そしてオババこと『話の長い』バゼバゼは語り始めた。 それは遥かな昔、神々の時代の事だ。 ある所に、とても真面目だが限りなくドジっ娘の女神が居たと言う。 掃除をすれば花瓶を割り、お茶を入れれば転んで相手の頭にひっかける。 コピー(謎の神代語)を頼んでもトナー(謎の神代語)を詰まらせるのは日常茶飯事。 そんなドジにほとほと困った上司神は、誰にでも出来るとても簡単な仕事を女神に命じた。 すなわち、小鬼討伐。 小鬼は弱い。ほんとーに弱い。とことん弱い。 転んだだけでも死ぬし、強い酒を飲んだだけでも死ぬし、何も無くても死ぬ。 実際、先程の戦闘でも「マヨネーズかけられ死」した小鬼多数という状況なのだ。ナムナム。 だから小鬼討伐など神にとってあまりにも簡単な事のはず。 しかし、そんな弱っちい小鬼にも一つだけ特殊な能力が有った。 【仲間を呼ぶ】というその能力は、攻撃を受けた時に相手が絶対的な失敗をすると小鬼が1匹増えるというもの。 そして女神はいつだって絶対的に失敗する超ドジっ娘。 かくして神代の時代から小鬼を攻撃しては絶対失敗を繰り返す女神によって、小鬼は今日もどこかで増え続けているのだと言う。 ゆえに、オババをはじめ一部の小鬼はその女神を『母神』として崇めているのだ。 母神の名は「ファンブル」。 どんな不信心者も決して逃れる事が出来ないと言われる、いにしえの女神である。 「つまり……私が魔法に大失敗するから小鬼が増えるって言いたいワケ?」 「そのとおりじゃー。ありがたやー、ありがたやー」 「―――殺す!」 ナムナムとルイズを拝むオババ&その配下の小鬼信者団。 ルイズは再び怒りのファイヤーボールを炸裂させようとして、やっぱり失敗。 ―――小鬼が11匹増えました。 orz<ルイズ 「いや、しかしこれは素晴らしい能力ですぞ!」 「なんの役に立つって言うんですか、こんなのが……」 「いやいや、知性を持った生命体を無から生み出せるなど、並大抵のメイジには出来ない偉業とおもいませんか?」 善人のコルベール先生は、突っ伏したルイズを必死にフォローしようとしてくれる。 しかし。 「でも小鬼は何もしなくても増えます、ミスタ・コルベール」 失意に沈むルイズのヤサグレ度は深かった。 あまりのヘコみっプリにコルベールも言葉を無くしかけるが、しかし先生なので頑張った。 「そ、それは……いやしかしですね、例えば急に小鬼が沢山必要になった時などはとても有用な―――」 「例えばって、どんな時にそんな事が必要になるって言うんです」 「それはその……」 「なールイズ、その例えばって―――」 ――こんなトキじゃないですかね?―― クロビスとダッパ君がルイズに声をかける。 その声が震えているような気がして振り向けば――― 「グララァガァ! グララァガァ!」 ―――2匹の象が、いた。 ただの象では無い。 白い巨体は森のどの木々よりも大きくて、三日月のように反り返った立派な牙は六本。 大木のような足も六本足で、目は火吹き竜のように真っ赤でギラギラと輝いている。 「グララァガァ! グララァガァ!!」 巨象の名はグララァガァ。 百万迷宮のお伽噺にいわく、誰かに酷く虐められた時、お月様とサンタマリアに祈って手紙を書けば来てくれるという。 2匹も居るのは、きっとハルケギニアのお月様が二つもあるからに違いない。 しかし残念な事に彼等は小鬼やルイズを助けに来たワケではなく、くしゃくしゃにしてしまうために現われたようだった。 大きな足が唸るたび、長い象牙が轟くたび、何匹もの小鬼がまとめてくしゃくしゃにされてしまう。 そもそも生き物としてのサイズからして、小鬼にどうにかできる相手ではない。 コルベール先生が懐から、ハグルマ資本主義神聖共和国でよく使われるような六連発の拳銃を取り出してパンパンと撃ったけれど、 グララァガァの肌に弾丸は刺さらないし、象牙にあたれば跳ね返るし、1匹などは「おや、顔がパチパチするなぁ」などと言う始末だ。 「くそっ! 行けっワルキューレ!」 「ファイヤーボール!」 「エア・ハンマー」 慌てて次々と魔法を唱える三人のメイジ。 しかし、炎と風はグララァガァの肌ではじけてしまい、突き刺そうとしたワルキューレの青銅の槍はグンニャリと曲ってしまった。 しかし、その攻撃のせいで、グララァガァに敵と認識されたのだろう。 真っ赤な目から火を噴出しながら、白い巨象はギーシュ達に襲い掛かってきた。 その前に立ち塞がる小鬼王国の精鋭達―――は、鞠のようにポーンと跳ね飛ばされる。 壁にもならないどころか、一行分の時間稼ぎにもなりゃしない。 迫り来る六本×2で十二本の牙。 当たれば小鬼よりは頑丈なメイジ達でも、くしゃくしゃにされてしまうだろう。 恐ろしいその攻撃から彼等を守ったのは、キンギョであった。 ギーシュが、キュルケが乗っていたキンギョが、その身を犠牲にして乗り手を『かばう』。 当然のように忠実なキンギョ達は息絶えるが、そのおかげで貴重な時間を稼ぐことが出来た。 「…………(小鬼忍法)………………(大小鬼の術!)」 モークの必殺忍術が発動する。 それはあまりに強力なため、新版ルールからは削除された小鬼必勝の戦技であった。 巨大な小鬼は存在する事ができるのか? 出来る。出来るのだ。 ある者は脚を、ある者は腕を、ある者は胴を担当し、およそ10匹の小鬼が一つとなる。 どこから調達したのか木材で組んだ骨組みと、木を引っこ抜いてきたような棍棒を持った姿は、群体にして一体。 既に体格においてグララァガァにも劣らない、それは巨怪と呼ぶべきモンスターであった。 巨体が奔る。 時ならぬ激突に、平和でのどかだったはずの森が激しく揺れた。 グララァガァの振り回す長い鼻を身体で受け止めて、巨大な棍棒で殴りつける大小鬼。 大小鬼の突進を軽々と受け止めて牙を突き刺すグララァガァ。 あんまりな戦いに巻き込まれないように、算を乱して逃げ回る小鬼とルイズ達。 巨大な脚のそばを右往左往するその姿は、逃げ惑う無力なアリンコのよう。 「ってゆーか、なんでこんなのが学校のそばの普通の森に住んでるのよ!」 「それよりルイズ、もっと小鬼を召喚するのだ! これは国王の『勅命』である!」 ルイズの悲鳴を無視してクロビスが叫んだ。 その言葉に、なぜか反発するよりも勇気が湧くような気持ちになる。 普段以上の魔力を込めて、ルイズは力強くファイヤーボールの魔法を唱えた。 まぁ当然失敗するんだけど。 しかし目論みは当たって、爆発の中から現れる15匹の小鬼。 その小鬼達に向かって、モークは再び忍術を行使した。 現われる2体目の大小鬼。 いや、既に現われていた大小鬼の能力によって、別の大小鬼が出現する。 これで合計3体。数だけなら小鬼王国側が優勢と言える。 尤も2体のグララァガァの攻撃を受けていた最初の大小鬼は既にボロボロだったが、しかし。 ――勝ちましたね―― 「だな!」 ダッパ君とクロビスは余裕の表情だ。 なぜと聞くまでも無く、それは起こった。 前線を新たな2体に任せて、ボロボロだった大小鬼が分解して小鬼の群れに戻る。 その小鬼が、再び組み合わさって大小鬼になれば、なんとまったく元気な状態に戻っていた。 「ルイズ! 再び『勅命』を下すぞ! 魔法を唱えよ!」 「はいはい! もうなんだってやってやるわよ!」 調子が出てきたのか、失敗魔法によって更に現われた小鬼は16体。 それらが、またまた組み合わさって2体の大小鬼となった。 「これは……いったいどういう戦術なのかね?」 更に1体が増えて、既に6対2……いや、グララァガァが1匹倒れたので6対1。 戦況がすっかり優勢になったので、手持ち無沙汰になったコルベール先生はダッパ君に聞く。 答えていわく―――大小鬼は、小鬼10匹で1体の巨怪となる『小鬼合体』と、1体から10匹の小鬼になる『小鬼分離』の能力を持っている。 しかも凶悪なのは、一度分離して合体すれば、それまでのダメージは無かった事になってしまうという部分だ。 2体の大小鬼が存在すれば、理論上無限に戦えるこの「無限大小鬼の術」は、あまりにマンチキンなため神に封じられた禁断の技なのであった。 「ちなみに「マンチキン」って何? 私達の世界には無い言葉みたいなんだけど。生き物?」 「鼻歌歌いながらドラゴンの身包みを剥ぐ、エルフ&ドワーフハーフの勇者という伝説だな。 基本ダメージいちおくまんの魔剣を持ったレベル100の魔法剣士だとか、 時速100キロで走って追いかけてくるとか、笑い声は「ポチョムキーン」だとか、好きな食べ物はべっこう飴だとか、苦手な物はポマードだとか、もし出会ったら「ハイハイワロスワロス」と言う呪文を唱えると退散するとか、 小鬼の間ではポピュラーなお伽噺の、凄く強くて恐い怪物の事だぞ」 「夜寝ない子はトロール鬼が来て食べられちゃう、みたいな感じの?」 ――そうですけど、トロール鬼にはボクたちのばあいホントにたべられますね。ふつうに―― やっぱり小鬼の生活って大変だなーとかルイズがもにょってる間に、いつのまにか戦闘は終わっていた。 重々しく地面を揺らして倒れ伏すグララァガァ。 周囲を囲むのは、棍棒持った6体の大小鬼。 まるっきりイジメの構図にしか見えない。 小鬼とキンギョに多数の犠牲が出たが、終わってみれば圧勝&戦闘前より数が増えているという大勝利であった。 おまけの用語解説コーナー『百万迷宮の歩き方』 【ものを食べる時には、誰にも邪魔されず自由で……救われていなければいけない。独り静かで、豊かで……】 言わずと知れた漫画『孤独のグルメ』の名セリフ。 個人輸入商社長のゴローちゃんがメシを食うだけの、ヤマもオチも努力も友情も勝利も無い話だが、 読んでると定食屋にごはん(特に白米)を食べに行きたくなる、中年マンガ読み必読の名著。 必殺技はアームロック。 【女神ファンブル】 言わずと知れた致命的失敗を表すゲーム用語『ファンブル』から。 『小鬼キングダム』の4コマに登場した「この世の全ての不運を背負う女神」様。 外見はどう見てもメガネOL。神様なめんな。 ついでに上司神の外見はコルベール似の頭をしたチョビ髭オヤジ。マジ神様なめんな。 【グララァガァ】 言わずと知れた宮沢賢治の短編『オツベルと象』の作中セリフ。 迷宮キングダムでは11レベル魔獣モンスターで、二回攻撃する上に泣けるほどタフ。 体力だけならドラゴンに匹敵する60点。つまり小鬼の60倍。 正直、本来なら小鬼ごときが敵うような敵ではないのである。 おや、■、川に入っちゃいけないったら。 【ハグルマ資本主義神聖共和国でよく使われるような六連発の拳銃】 ハグルマは百万迷宮世界の4大大国『列強』の一角で、資本主義かつ神権政治というワケワカラン国家形態の王国。 国民は皆様ワーカホリックで、はるか深階に降りて邪神となった始祖ハグルマに金品を送るために働き続けている。 トレードマークは背広とネクタイ。メカとか新商品開発とか経済原理とかが大好き。 六連発ピストルどころかどう見てもオートマチック拳銃です、みたいなのや、巨大ロボットなど、 百万迷宮の水準でもありえないテクノロジーを駆使するが、まぁ他国も色々ありえないのでバランスは取れている模様。 その突撃強襲営業による商品の押し売りや経済戦争、美人局などは非常に恐れられている。 ちなみに、ここで言う経済戦争は当然のように白刃や銃弾が行き交うのでご注意。 六連発ピストルは『オツベルと象』の作中で資本家の大地主オツベル氏が攻めてきた象を撃った武器。 当然痛痒も無く跳ね返され、オツベル氏はくしゃくしゃにされてしまいました。 ゲームのデータ的には攻撃力六面体サイコロ一個分なので、最大値でも10発は打ち込まないとグララァガァは倒せない。 あと六連発だろーがオートマチックだろーがフリントロックだろーが火縄銃だろーが、 迷宮キングダムに弾切れとか弾込めと言う概念(ルール)は無いので同じだったりする。 【かばう】 キンギョが習得している肉弾系のアドバンスド・スキル。 文字通り、攻撃の対象となったキャラクター1体をかばってダメージを肩代わりする技能。 これを持った低レベルモンスターを配置して、より強力なモンスターを生き残るようにするのは敵側の基本戦術と言える。 ただし多用されると非常にウザイとゆー欠点があるが。 王国側にとっても、体力のあるキャラがこの技能をもっておくのは必須だろう。 好意を持っている相手を『かばう』場合、受けるダメージが減少されるのが嬉しい。 【無限大小鬼】 大小鬼は旧版のサプリメントで追加された小鬼のバリエーションモンスターで6レベル。 ダメージを減らす『外皮』と、敵集団を纏めて攻撃できる『範囲攻撃』を持っている上、 『小鬼合体』『小鬼分離』の能力は作中で書いた通りの反則技の運用が可能であった。 たぶん、新版のルールブックに載って無いのもそのせいじゃ無いかと邪推している。 実は『雲散霧消の』モークはこの『小鬼合体』のスキルを習得していたのです。 もし本当にゲームで使用すると「GM死ね!」と言われるので、良い子はマネしないようにねっ! 【ルイズの失敗魔法とクロビスの『勅命』】 スゲェ虚無の担い手であるスゲェルイズ様のスゲェ失敗魔法は、「六面体サイコロ2個」匹の小鬼を発生させるものとする。 この時サイコロの出目が1・1だった場合超スゲェ失敗なので、名前に「小鬼」と付くモンスターを1匹テキトーに出現させること。 詳しい理由は次回で。 クロビスが使った『勅命』は、国王専用のクラス・スキル。 誰かが使った希望(マジックポイント、あるいは精神力のようなもの)を1点余分に使ったとして計算できるようになる。 ルイズの失敗魔法の場合、効果が二倍になるのでサイコロ4つ分の小鬼が出現した。 前ページルイズ・キングダム!!
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6002.html
前ページ次ページ聖剣と、ルイズ 「すげ……」 誰かの呟きの通り、それは凄まじかった。 今までの爆発とは、明らかに規模が違った。爆風や爆音はいつもの通りだったが、絶対的な範囲の違いが感じられた。爆心は遥か遠くだったのが、その場にいた者達の命を救った。今まで彼女を野次っていた同輩の少年少女達は、爆煙に巻かれながら、自分達と彼女が『全くの別物』である事を、この時点で知ってしまった。 「手応えありよ!絶対に成功したわ!」 自信満々で宣言する、見えざる同級生の少女。恐らく小さな胸を張り、煙が晴れて使い魔の姿を見る事を心待ちにしているのだろう。今まで自分を嘲ってきた連中を見返す事が、やっとできると。既にそれは達成されているが、憐れな同級生の姿が、彼女────ルイズには見えなかった。 やがて、煙は少しずつ晴れ、だんだんとそのシルエットを現す────筈だった。 その場にいる全員の視線の先に、いつまで経ってもそれは姿を見せない。全員が、今までの爆発の中心を見ていた。抉られた大地、それだけだ。 「なんだよ、驚かせやがって」 「やっぱりゼロはゼロね」 「これが最後って約束だろ?」 「何が『絶対に成功したわ!』よ。ただ派手になっただけじゃない」 皆が口々にルイズを罵る。不安の裏返しだった。あんな威力、どんなメイジであっても絶対に出せない。自らの存在理由を脅かされそうな、そんな予感から自分を護るための、僅かな抵抗だった。 少ない例外は、赤い髪の少女と蒼い髪の少女、そして禿げ上がった中年くらいだった。 彼らも、失敗したと思っていた。この時は、まだ。 「あー……、ミス・ヴァリエール。残念だが……」 「……なあ、あれ、さっきまであそこにあんな塔あったか?」 禿げ上がった中年、コルベールの言葉は、その小さな問答により、波紋の様に広がったざわめきにかき消された。 「塔?」 「あれだよ。かなり高い」 「何個かあるぞ?」 「何あれ」 学園の塀の向こう、森の先に、空を切り裂く様な長い黒いシルエットが見えた。細く遠く、高い。幾つかの最も近い『それ』もかなり高いが。最も遠いそれは、一際眼を惹いた。 「なあ、もしかして……」 「もしかすると、ね」 数人の生徒達が、レビテーションやフライの魔法で宙に浮かぶ。上からなら、何か見えるかも知れない。そう思ったのだろう。 果たしてそれは正解だった。彼等の眼には、有り得ないものが映っていた。 やたらと静かな上空が気になったのか、一人、また一人と彼等に続いて宙に浮かぶ生徒が増える。そして、それを見て絶句するのだ。 唯一飛べないルイズと、赤髪と蒼髪の少女達、そして教師であるコルベールだけが、大地に残された。 「なんかとんでもないものが見えるみたいね」 赤髪の少女、キュルケが最も遠い塔を見て呟く。 「…………」 蒼髪の少女、タバサは無言だ。何かを考えている様にも見える。 「なに……なんなのよ……私にも見せなさいよー!」 ルイズは喚いている。 それを尻目に、タバサは召喚したばかりの使い魔、風竜の背に乗る。そしてキュルケに眼をやると、彼女は頷いた。最後にルイズに視線をやり、 「乗る」 とだけ、言う。その意味を理解した瞬間、ルイズは風竜に飛び乗った。 そこには、壮大としか言えない光景があった。 森だった場所が綺麗に円形に切り取られ、その中心に最も高い、有り得ないくらい高い塔がある。その周りに中央の塔の半分くらいの背丈の塔が六つ囲んでいる。かなり間を開けて、その更に外周に背丈の低い建造物と得体の知れない何かが四つ。後は手前側に建造物が四つ密集していた。塔から伸びる道が、離れたそれらが付属物であることを示していた。 余りにも巨大で、余りにも美しく、余りにも禍々しい、余りにも巨大な施設だった。誰もが絶句するくらいに。 そしてこれ程の物を造る技術は、この世界、ハルケギニアには絶対存在しない。有り得ないのだ。せいぜい数十メイルが限度の技術で、何百メイルもある塔をどうやって造るのだろうか。 「綺麗……」 ぽつりと、ルイズが呟いた。確かに、ここまで巨大で、かつ精密な建造物は美しかった。感動、いや、畏怖すら覚える。そこにいる全員がそう感じただろう。 「あー、すまないが、コントラクト・サーヴァントを済ませて貰えないだろうか、ミス・ヴァリエール?」 情緒もへったくれもあったものではない。が、コルベールが声をかけたお陰で、その場の全員が正気に戻った。 「ミスタ・コルベール……これも……使い魔なんですか?」 ルイズが不安げに問うが、 「状況から言って、ミス・ヴァリエール。あなたの召喚した使い魔で間違いないでしょう」 と、太鼓判を捺した。 「…………。……タバサ、あの塔に。お願い」 数瞬悩んだが、すぐに彼女はその光景について考えるのをやめた。これは人知を越えたもの、これが何かなんて考えるのは愚かしい、と、あ、タバサのこと、初めて名前で呼んだ、なんてことは思っていた。 タバサは頷き、中央の塔に風竜を飛ばす。あまりにも巨大で広大なため、風竜でもそこそこ時間がかかる。後ろから同級生達が追ってくるが、風竜に追い付ける筈がなく、次々に諦め、高見の見物に入る。 やがて風竜は高度を下げ、中央の塔の根元の近く、ではなく、それよりかなり手前に着地した。塔の非常識な大きさが、距離を見誤らせたのだ。 「嘘、まだあんなに遠いの?」 どれだけの距離があるのかは判らない。だが、ルイズは風竜を飛び降り、塔に向かって駆け出す。 案外短かったが、それでも走るには長い。一体、幅は何メイルあるのだろうか。天辺からは何が見えるのだろうか。汗だくになりながら、その塔の壁に手を突き、霞んで見えない天頂を見る。初めての、成功した魔法が、前例の無いくらい大規模な『施設』。ひょっとして、私は凄い存在なのか、などと思うのも無理はない。 一通り感慨に耽り、しかし風竜の羽音を聞き、あまりゆっくりしていられないと思ったルイズは、さっさと契約してしまう事にした。 「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」 呪文を唱え、塔にキスをする。途端、地面が光り、ルイズに何かが流れ込んだ。 その頃、コルベールをはじめ生徒達は中央の塔に向かいながらその光景を見ていた。 巨大すぎて時間がかかる。先行したルイズ達が豆粒の様に小さく見えるのだ、無理もない。 「コルベール先生、この施設、一体何なんですか?」 生徒の一人に訊かれ、師は困り果てた。一見して、ハルケギニアには存在しないものなのだ。学者としての性格が強い彼にも、この施設が一体、どんな目的で、どんな用途があり、どう使うのか、皆目見当がつかなかった。 「わかりかねますな。ハルケギニアにはこんなもの、存在しませんからな。異世界かも知れませんぞ」 故に、そう答えるしかなかった。彼のその言葉は正解だったのだが、今は知る由もない。 と、その施設に変化が起きた。綺麗に舗装された地面が光り輝いていた。 「先生!なにが……」 「わかりません!皆さん落ち着いて!」 騒ぎのだす生徒達を制し、その光景をじっと観察する。眩しい。 やがて光は外側からゆっくりと輝きを失い、一部を除いて完全に消えた。 それはまるで、何かの紋様に見えた。 「まさか、これは……ルーンか?いやはや、これ程大きいと、案外判らないものですな。しかし珍しい形だ……ッ!」 慌ててメモ帳にその図形を書き写すコルベール。今まで抑えていたが、学者としての血は騒ぎまくっていた。 タバサは、眼下に倒れているルイズに向かい、風竜を下ろした。 駆け寄り、首に手を当て、脈が有ることを確認し、ゆさぶる。 「う……」 ただ気絶していただけのようだ。すぐに眼を醒ます。 「う……ん。頭、痛い……」 頭に手を当て、躯を起こそうとはしない。 「大丈夫?」 タバサも心配するが、全く動かない。ぶつぶつと、痛みを訴えるだけだ。眼に光が無い。 「え……?これ、もしかして……ハルケギニア?あれ?」 だんだんと痛みを訴える呟きから、意味の判らない単語を呟く。 「私……?なんで?い……嫌……これ……」 「ここ……世界の……外側?」 彼女の眼は、自分を、いや、世界を『外側』から見ていた。使い魔の一部によって。 痛みを対価にする様に、それが『何』なのか、ゆっくりと理解する。 「凄いわ……私……力を、手に入れちゃった」 感覚の共有で、視界をジャックしていた。この施設と共に召喚された、遥か天空の彼方に存在する、軍事衛星の視界を。 そして、知識も。 「素晴らしいわ、エクスキャリバー。私の、使い魔」 彼女は、聖剣の名と共に、それが異世界の戦略兵器だという事を知った。 前ページ次ページ聖剣と、ルイズ
https://w.atwiki.jp/yaruoduel/pages/42.html
-‐‐'´ `ヽ、 / \ / / ヽ \ / / / i ヽ ヽ | / / / / | i } 〆 | | | / / /| _L | 〆 | | - 十卅十|ト、/ /レ ィi「 /| リ 〆 | | |ィ厂テトミ 从.{ f爪}「 〉| ィリ 〆 | | |i {.辷リ {心リ イ/ィ 〆 / ∧ i| 、 `¨ / |\ 〆/ i| ', ,. - ァ ∧ |ゝ \ r-、/ィ / ∧ \ ` -' イ| \ \∧ } ノムイ { / /⌒| \` ー r<ー┐ \ \| //´- |././ / i| i >rく \ \ \ \ /イ/r ┴ヘ 〉 / iト、//ヽ\| \ \ | レ'  ̄// ̄ ̄___ノ i| \| Tア| / \ } |r'´ / ___ノ‐ ∨/ / ∧ / ∧ イ\__ ゝ | / ー ノ’ |/ イ |\ \ \ー――‐ / \ / ∨__/ \ \ \ \ / ∧ / / | \ ∧ \. \ / /| ( ( / \ ヽ ノ \. \ イ| | \ \ \ / \ | 名前:ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 所属:デュエルアカデミアパリ校 ライディングデュエル部 所持デッキ 【次元エアトス】 3神獣王バルバロス 2ガーディアン・エアトス 3可変機獣 ガンナードラゴン 2輪廻天狗 2ヴェルズ・マンドラゴ 3異次元の生還者 2強欲で謙虚な壺 3次元の裂け目 1エネミーコントローラー 2サイクロン 3禁じられた聖杯 3闇のデッキ破壊ウイルス 3闇霊術-「欲」 1スターライト・ロード 2追い剥ぎゴブリン 3スキルドレイン 3マクロコスモス 1神の警告 1スターダスト・ドラゴン 1聖刻神龍-エネアード 1No.107 銀河眼の時空竜 2No.66 覇鍵甲虫マスター・キー・ビートル 2ジェムナイト・パー 2ヴェルズ・ウロボロス
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/218.html
「ちょっと!あんた達何をやっているのよ!!」 もの珍しさに二人の周りを囲む人の壁から血相を抱えたルイズが出てくる 「ギーシュ!貴方何を考えているの!?貴族が平民に決闘を申し込むなんて!!」 「これはこれはミス・ヴァリエール、君の使い魔がとある二人の名誉を傷つけてね。それで僕が君の変わりに礼儀を教えようかと思ってさ」 「だからってそんなの!そいつは平民なのよ!」 決闘を申し込まれた男、ロムに杖を向けるルイズ 「そんなの関係ないさ。貴族と平民での間ではね」 第3話 ハルケギニアに巻き起こる拳 トリステイン魔法学院の図書館は食堂がある本塔の中にある。 おおよそ30メイルの高さの本棚が壁際に並んでいる様子は壮観だ。 ここには始祖ブリミアがハルケギニアに新天地を築いて以来の長き歴史が詰め込まれている。 そんな図書館の中には教師のみが閲覧を許される『フェニアのライブラリー』がある そこに一人の中年魔法教師が昨日の夜から寝ずに書物を調べている、コルベールだ 彼は今、一心不乱に自分の疑問を答え本を探している その疑問とは彼の手に持つスケッチに書かれていた。 スケッチに書かれていたのはロム・ストールの左手に浮かび上がったルーンであった (やはり見つからない・・・・、あの様なルーンは召喚の監督を担当してから初めて見るからな・・・・、いやしかしそれ以上に疑問なのは) 一呼吸して自らを落ち着かせる (彼女の使い魔!一応、人間であるか確かめたがディテクト・マジックを使ったが・・・・、人間所では無い!生物でも幻獣でも無かった!!) 彼の読んでいるルーンに関する本の横には、古代魔法によって作られたゴーレムに関する本、過去のエルフにの交流に関する本も置いてあった (一体彼は何者なんだ・・・・)そう考えながらレビテーションで手に届かない本を取る、そして見つけた、それは始祖ブリミルが使用した使い魔達について記述された古書であった (こっこれは!) ページの一節とスケッチのルーンを見比べ目を見開き驚くコルベール (早くオールド・オスマンに伝えねば!) 慌てて本を抱えて飛び出して行った 「いいだろう、受けて立とう」 ロムの一言に周りが騒ぎ出す、今まで平民が貴族と決闘をするなんて事は無かったのだから当然である 「ちょ、ちょっと勝手に話を・・・・」 「うん、それでいいんだ。では食後にヴェストリの広場に来たまえ。では皆、食事を楽しもう」 慌てるルイズにギーシュが話を進めてギャラリーを解散させる 残っていたのはルイズ、ロム、シエスタの三人であった 「あ、あなた殺されちゃう・・・・、貴族を怒らせるなんて恐ろしい事を・・・・」 シエスタが恐ろしいものを見た顔で震えている 「シエスタ、君は先に厨房に戻ってくれ俺はマスターと話がある」 シエスタが横を見ると今でも何かを言いたそうなルイズがいた、そしてそのまま小走りで厨房へ向かった 「あんた、何をしているのよ!勝手に決闘の約束なんかしちゃって・・・・、今すぐ謝りに行きなさい!」 「何故だ」 ロムが表情を変えずに言う 「何故って怪我するかもしれないのよ!いいから謝りに行きなさい!今なら許してくれるかもしれないわ!!」 「駄目だ、彼は言っていた、名誉を賭けて闘うと、俺はそれに答えなければならないんだ」 「こんな時に何を言っているのー!」 この時ルイズは心配していた、いくらロムが強い戦士でも魔法が使えなければこの世界では通用しない ただ単にロムを身の安全を心配していた 「あのね?!闘ったら絶対勝てないし怪我するわ!いや、怪我で済んだらいい方よ!!」 「そんな事はやってみないとわからないだろう」 「聞いて!平民はメイジには絶対に勝てないの!」 するとロムはじっとルイズを見る、 「な、何よ・・・・」 「頼むマスター、この決闘、認めてくれないか」 ロムは続けて言う 「戦士として決闘を申し込まれたからには潔く闘いたい。その代わり俺は必ず勝つ」 ロムの澄んだ目に悩んでしまうルイズ、そして・・・・ 「あ~も~!分かったわ!受けてきなさいよ分からず屋!!けちょんけちょんにやられて少しは反省してきなさい!!」 「感謝する!」 ルイズは起こりりながら自分の席に座る、そしてロムは厨房に戻って行った 「只今戻ったぞ・・・・うん?」 ロムが厨房に戻るとおどおどしたシエスタが、そしてその後ろにはマルトーを中心としたコック達が 「聞いたぞ!あんた貴族と決闘するんだって!?」 「応援しているからな!!」 「あんたが勝ったらここの奉公人皆集めてパーティだ!っと言っても料理は余り物だけどな!」 もう既にお祭り状態だ、シエスタが言うには余りにも心配であったので先輩メイドに相談した所、それがあっという間に広まったらしい 「あの、怪我はしないようにしてくださいね・・・・」 「ああ・・・・」 一方ルイズはと言うと心配をしていた さっきは勢いであんな事を言ってしまったが冷静に考えるとそれはとんでもない事だ、平民がメイジに挑むなんて・・・・ 「あらあらなんであんたそんなに暗い顔してるのよ」 ルイズの隣にキュルケが座ってきた さらにその隣にずっと本を読み続けている小柄で眼鏡をかけ、水色の髪をした少女タバサが座った 「何のよう・・・・」 天敵相手に小さな声を出すルイズ 「聞いたわよ、あんたの使い魔、そうそうロムがギーシュと決闘をするんだってね。 それであんた自身どう思っているのかなーって。心配なの?」 「心配なわけないじゃんあんな奴・・・・」 ルイズは前にあったコップの中身を飲み干しながら言った 「私はあの人が勝つと思うわよ。だってあんなヒョロ男なギーシュより強そうじゃない!タバサあなたどう思う?」 「・・・・・・・・」 タバサは前の皿からパンを千切って黙々と食べている 「・・・・どっちとも興味ない」 「あらそう、面白そうなのにね~」 するとルイズが立ち上がる 「あんたの顔見てたら食欲失せたわ。授業始まるまで部屋で寝てる」 そう言って食堂から出ていった 「あ~あ、何なのあいつ、さっきまで元気だったのに」 「・・・・責任を感じているのよ」 タバサがポツリと言った ヴェストリスの広場は学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にある そこは日中でも日があまり差さない、決闘にはうってつけの場所だがすでにそこは噂を聞き付けた生徒達で溢れていた なんたってあの色男ギーシュとあのゼロのルイズが呼んだ平民の使い魔が闘う、それだけ聞いても見る気を注がせる 「結構集まっているじゃない」「・・・・・・・・」 キュルケとタバサが火の塔側のギャラリーにつく 「ロムさん・・・、大丈夫かしら・・・・」 シエスタも心配して見に来ている、そして・・・・ 「ハァハァ・・・・、何よあいつ、あれだけ偉そうに言っておいて、まだ始まってないじゃないの!!」 あれだけ心配していたルイズもやはり来ていた ギーシュは真ん中に立っていたがそこにはロムは居ない、そしてそのまま時が過ぎた ギーシュが薔薇の花を掲げる 「諸君、僕はとある平民と決闘をする為にここに来た。しかし、肝心の平民はまだ来ていない。これでは決闘が出来ない・・・・」 ギーシュが続ける、その顔には笑みが浮かんでいた 「それは何故だと思う・・・・、そこの君!」 「・・・貴族であるギーシュに怖じけついたから?」 「皆はそう思うかい?」 周りがざわつき始める、まさか・・・・本当に逃げ出した・・・・? 周りがそんな推測をし始める 「彼は今頃になって闘う事が恐ろしくなったのだ、決闘に遅れるなどあり得ないだろう。 しかし僕はそんな事は気にしない次彼に会ったら暖かく迎えようと思う」 (ちょ・・・・ちょっと待ちなさいよ!なんでそう決めつけようとするのよ!) 「まああれだな、主人がゼロだと使い魔もゼロなんだな!」 (マリコルヌあんた何言ってるのー!) まあゼロだからな、ゼロだから仕方ないか、あはははは! 周りがそんな声をそんな事を口にし始めた (何でよ・・・・何でこうなるのよいつもこうなるのよ・・・・) 真っ赤になったルイズは早くここから抜け出しいと思うようになる (ふむ、まさかこうなるとは思ってはいなかったが取り敢えずよしとしよう、これで初勝利だ!) 何に勝利したかは読んでいる貴方に任せた! 「ではこの決闘!これでお開きに・・・・」 そう言おうとした瞬間であった!! 「待てぃ!!!」 「!!?」 突然の声に驚きを隠せない生徒達、彼らは一斉に声の出所を探し始めた ~握れば落ちる砂の一粒は元は巨大な岩石であった~ (いっ今のロムさんの声!どこから!?) シエスタもキョロキョロと当たりを見回す 「・・・・・・・・あれ」 「え?ってあれ!?」 タバサが杖を向けた先にキュルケが絶句する ~風によってそれは砕かれていったのだ~ 「あんた・・・・、何でそんな所にいるのよー!!!」 ルイズが叫んだ先は・・・・、風の塔の頂上に立つ人影に向けたものであった 「我は風となりて敵を討つ・・・・、 人、それを『風蝕』と言う!!」 「何者だ!?」 ギーシュが叫ぶ! 「お前に名乗る名前は無い!!とうっ!!!」 人影は頂上から飛び降り、着地、何事もなかったかの様に立っていた そこに居たのは、紛れもなくロム・ストール本人であった
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7833.html
前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い その夜、ルイズの部屋を訪れた柊は疲れきった表情でテーブルの傍に置かれた椅子に崩れ落ちていた。 天井を仰ぐように背もたれに体重をかけ、両の足を投げ出して小さく呻く。 「くそう……あのオッサンふざけやがって……」 宝物庫を後にしてすぐ、柊はすぐにコルベールに捕まって彼の研究室とやらに連行されたのだ。 薬品やら何やらのにおいが鼻の付くその部屋で、柊はコルベールにファー・ジ・アースの事を根掘り葉掘りうんざりするほどに質問された。 始めの内は一応節度を持って答えていたのだがいい加減億劫になってきて、手っ取り早く0-Phoneを見せたのだ。 これがまずかった。 コルベールは狂喜乱舞して0-Phoneとそのデータベースにある情報を漁り始めたのだ。 しかし柊達がハルケギニアの文字を知らなかったのと同様コルベールもファー・ジ・アースの文字を読めなかったし、放っておくと分解しかねない勢いだったので柊は結局その場を離れることができなかった。 おかげさまで柊は食事を取ることさえできずについ先程まで付き合わされる羽目になったのである。 ちなみに0-Phoneはちゃんと回収してある。 今頃コルベールはデータを書き取った分厚い紙束を見ながら研究にいそしんでいるだろう。 もっともデータベースに載っているのは所詮薄っぺらい知識でしかないので、技術体系も魔法体系も異なるハルケギニアで再現する事はできないだろうが……。 「そういやエリスはどうした?」 ふと部屋の中にエリスがいない事に気付いて柊は勉強机に陣取っているルイズを見やった。 「寝てるわ。部屋に戻って服の整理しようとしたら、あの子倒れちゃって」 「倒れたぁ?」 見れば確かに、大きなベッドが人型に膨らんでいた。 何があったのかと再びルイズに眼を戻したが、彼女にも理由がわからないらしくルイズは眉を潜めている。 「何が不満だったのかしら。やっぱりいくら安くっても千ぐらいじゃだめだったってこと……?」 「エリス……くっ」 どうやら本気で理由がわかっていないルイズを見て、柊はエリスに同情の涙を禁じえない。 ルイズに悪気がない、というのは柊にもエリスにもちゃんとわかっている。 一般人と金持ちの価値観の差が悲劇の元凶なのだ。 (つうかもしかしてここにいる貴族って皆こんな感じなのか……?) 今何気なく居座っているこの場所も何気なくとっている食事も、実は眼が飛び出るほどの高級な場所なのかもしれない。 そう考えると柊はこの学院にいるのが無性に恐ろしくなった。 もしここを出る時に滞在賃をまとめて請求されたら……帰る方法が見つかっても一生帰れないかもしれない。 「ところであんた、なんでここにいるの?」 柊が空恐ろしい未来予想図に思いを馳せていると、机に頬杖をついたルイズが半眼で柊をねめつけるように言った。 「ギーシュの所に居候してるんじゃないの? それとも、ゲボクの本分を思い出して戻ってきたの?」 「冗談だろ。ギーシュの事がなくてもここで寝泊りするつもりはねえよ」 ギーシュから決闘を申し込まれたのでこれ幸いと転がり込んだ柊だが、それがなくともルイズの部屋からは出て行くつもりだったのだ。 何しろこの部屋――というか、彼女の寝泊りしているこの宿舎は女子寮なのである。 ルイズの方は使い魔、いやゲボク扱いとして全く気にしていないが、他の女生徒は完全に割り切ることはできないらしくすれ違うたび微妙な視線を送られるのだ。 「部屋に戻ったらギーシュから言伝があってな。なんでもキュルケが呼んでるんでお前の部屋に来いって」 「……キュルケに?」 その名を聞いた途端、ルイズの眼が吊り上り剣呑な表情になった。 それに示し合わせたように部屋の扉がノックもなく開かれ、艶やかな焔色の髪の少女が部屋に乗り込んできた。 「ダーリン、来てくれたのね!」 「……ダーリン?」 喜色を称えて歩み寄ってくるキュルケに柊は怪訝そうな表情を浮かべる。 しかしキュルケはそんな彼の顔を委細気にする事なく、両の手を広げて柊に抱きついてきた。 「ちょっ……!?」 「な、何してんのよツェルプストーッ!!」 柊は泡を食ってキュルケを引き剥がし、ルイズは怒りも露に叫んだ。 キュルケはルイズの怒号を無視して柊の手を取り、うっとりした目線で彼を見つめたまま口を開く。 「あたしね、恋をしたの」 「……はあ」 「光を纏ってワルキューレをなぎ倒す貴方の姿、とても刺激的だったわ。見ていてどんどん胸の鼓動が高鳴って……貴方がギトーの杖を叩き切った時、あたしの心も一緒に切って落とされてしまったの」 「……はあ?」 ギーシュの決闘が終わった際には、キュルケはエリスの事を考えて躊躇はしていた。 が、その後のギトーとの一戦を見て彼女はそんな躊躇が完全に吹き飛んでしまった。 ギーシュ程度のメイジを倒せる人間なら、探せばそれなりにいるだろう。 しかしギトーは仮にもスクエアクラスのメイジなのだ。 これを真っ向から打ち倒せるような『メイジ殺し』――いや、杖だけを切って不殺ができるのならそれ以上だ――は国どころか世界レベルでも希少な存在といっていい。 そんなレアモノを前にして恋に恋する乙女の事情を慮ってあげることなど、できようもなかった。 「せっかくの虚無の曜日だから二人きりで過ごそうとしたのだけど、ダーリンったらルイズと出かけてしまうんだもの。寂しかったわ」 キュルケはもじもじとしながら柊の手を弄くる。 柊は手を離そうとしたが、がっちりと捕まえられて逃げられなかった。 「いつまで握ってんのよ! さっさと離しなさい!!」 ルイズが肩を怒らせて詰め寄り、強引にキュルケと柊を引き剥がした。 そんなルイズをちらりと見やった後、キュルケは悲しそうに柊を見つめた。 「なんでも剣を買ったんですって? しかも錆びだらけのボロ剣を。ダーリンほどの剣士にそんな得物しか与えないなんて、かわいそう」 「……ありゃお前"等"だったのか」 言いながら柊はちらりと目を扉の方に向けた。 扉の脇ではキュルケと共に入ってきたタバサが壁を背に預け、我関せずと本に眼を落としている。 武器屋でデルフリンガーを購入した後、妙な気配を感じたのだ。 敵意は感じなかったので放っておいたが、どうやらキュルケ達だったらしい。 セリフからすると、デルフが錆を払ったところは見ていないようだ。 「な……何言ってるのよ! わたしはちゃんとした剣を買おうとしたわ! それをコイツが――!!」 「そんなの謙遜に決まってるじゃない。そんな事もわからないなんて、ゼロのルイズは甲斐性までゼロなのね」 「なんですってぇ!?」 まさに怒髪天、といった様子で怒り狂うルイズをキュルケは鼻で笑い、柊から離れてタバサの方へ歩み寄った。 そして彼女はタバサから渡されたソレを、見せ付けるように掲げて見せた。 「ルイズの選んだボロ剣なんかより、ヒイラギにはこっちの方がずっと似合うわ!」 「それは……!?」「げえ……っ!?」 ソレを見てルイズが驚愕に呻き、柊がくぐもった悲鳴を上げた。 キュルケが手にしていたのは最初に店主から薦められたシュペー卿の大剣だった。 お値段二千エキュー。おそらく二千万円以上。 「どう、ヒイラギ? ルイズのボロ剣なんかよりこっちの方がいいわよね? あたしの想いは三千エキューなんかじゃ足りないけど、これだけでも受け取って欲しいの」 本当は値切りまくって新金貨千で手に入れたのだがそんな事はおくびにも出さず、キュルケはしなを作って柊に詰め寄った。 柊はその大剣とキュルケをしばし凝視した後、 「……いや、要らねえ……てか、それ、もういいから……」 げんなりとした表情で言った。 「……え?」 キュルケの表情が笑顔のまま凍りつく。ルイズもぽかんとして柊を見やっていた。 「もうデルフ……ルイズの買ってくれた剣があるから。悪ぃけど……」 「……」 キュルケは呆然としたまま柊を見やっていた。 今の状況が信じられなかったのだ。 容姿性格体形ありとあらゆる点においてルイズに劣る条件はなく、貢物でも遥かに上をいっているはずなのに拒否されたのだ。 生まれて初めて経験したこの事態に彼女は上手く対処することができなかった。 「――っふ。うふふふ……」 と、地の底から響くようなくぐもった笑い声が聞こえた。 柊とキュルケが眼をやると、そこには手を腰に当て、自信満々に胸を反らすルイズがいた。 「残念ねえツェルプストー。ヒイラギは『わたしが選んだ剣』の方がいいんですって。まあ当然よね、だってヒイラギは『わたしの使い魔』なんだから。 ちょっと媚を売ればすぐに尻尾を振るような奴等とはデキが違うのよ……大事なことだから二回言うけど、ヒイラギは『わ た し の 使 い 魔』なんだから!」 「……っ」 意気高々と言うルイズにキュルケはギリ、と歯を噛んだ。 何が気に入らないって、台詞云々よりも隠そうとして全然隠れていないにやけきった面が気に入らない。 しかし言い返す事ができなかった。 柊が自分の買った剣よりもルイズの買った剣を選んだ事実が覆らないからだ。 キュルケは大きく深呼吸すると胸の裡に渦巻く感情を押さえつけて、努めて平静を装って柊に笑顔を浮かべた。 「……残念だわ。でもせっかくだから受け取って下さる? どうせあたしは使わないものだし、お近付きの印に差し上げるわ」 「いや、けどよ……」 言いながら大剣を差し出すキュルケに柊はなお渋ったが、脇からルイズがそれをひったくって満面の笑みをキュルケに投げかける。 「あーらそーお? わざわざありがとうね、キュルケ。せっかくだから頂いておくわ。まあどうせ使わないけどね。なんせヒイラギはわ た し の 選 ん だ 剣 を使うんだから」 「……っっ」 笑顔を浮かべたままキュルケが再び歯を噛み締める。見ればこめかみに青筋が浮かんでいた。 彼女は仰々しく焔髪を掻きあげると、優雅に踵を返して柊から離れると、 「時間も時間だし今日はお暇するわ。今度は二人っきりでお話しましょうね、ダーリン?」 僅かに震える声でそういって、足早に部屋を後にした。 キュルケに続いてタバサも部屋を出る。 扉を閉める間際、タバサが何事かを呟いて杖を振った。 音もなく扉が閉じられた途端、 「 !!!!」 タバサの『サイレント』を持ってしても抑えきれない怒号らしき声が響き、次いで寮全体が揺れるような衝撃が襲ってきた。 テーブルがガタガタと揺れ動き、天井からぱらぱらと埃が零れおちる。 「ふぁっ!?」 その衝撃で眼が覚めたのか、ベッドで眠っていたエリスが慌てて身を起こして辺りを見回した。 「……お、エリス、起きたか……」 「ひ、柊先輩? どうしたんですか? 何かあったんですか?」 普段この部屋にいないはずの柊を見とめてエリスは僅かに頬を染めて髪を撫で付ける。 「いや、それがな。キュルケが――」 頭をかきながら柊が説明しようとすると、それを遮るように。 「――あっははははは!! ざまぁ見なさいツェルプストー!!」 今度はルイズが壊れたように馬鹿笑いを始めて手にしていた大剣を放り投げた。 慌ててそれを拾い上げる柊をよそに彼女は踊るようにくるくると回りながらベッドに向かい、ぽかんとしているエリスに飛び掛かる。 「きゃあっ!?」 避けようとするも間に合わず、エリスは飛び込んできたルイズに押し倒された。 ルイズはエリスをぎゅうぎゅうと抱きしめながら、感極まったように声を上げる。 「エリス! 見た? 見た!? 今のキュルケの顔!!」 「え? えぇ?」 「最高だわ!! 今日の事はラ・ヴァリエールの輝かしい歴史の一枚に加えるべきね!! あはははははは!!!」 「ル、ルイズさ……ひゃあっ!?」 笑いながらルイズはごろごろとベッドを転がりまわり、抱き潰された格好のエリスもそれに巻き込まれてもみくちゃにされる。 よほどキュルケに意趣返しができたのが嬉しかったのだろう、ルイズの奇行と笑い声が収まったのは実に十分ほども経ってからだった。 「……はあ、すっきりした」 長い間暴れまわったおかげで髪も服も乱れ息も上がっていたが、ルイズは満ち足りた表情を浮かばせている。 エリスはといえば何が何だかさっぱりわからなくてただただ憔悴するばかりだったが、目の前の彼女の顔を見てなんとなく安堵を感じた。 ルイズと出逢い共に生活を始めてから、『ゼロのルイズ』と揶揄されながら学院生活を送る彼女のこんな溌剌とした表情を見た事がなかったからだ。 ……と、そこで。 エリスはふと自分達に向けられている視線に気付いた。 「はわぁ!!」 素っ頓狂な声を上げてエリスが顔を真っ赤に染めた。 柊が立派な大剣を手持ち無沙汰に弄くりながら、二人を眺めていたからだ。 「な、なに見てんのよ!」 ルイズもそれに気付いて顔を赤らめ、乱れた髪と服を直しながら叫ぶ。 すると柊は軽く頭をかきながら、小さく笑みを浮かべて言った。 「いや……お前、そういう顔もできるんだな」 「!?」 「いつもしかめっ面とか澄ました顔してたからよ……まあそっちの方が似合ってると思うけど」 「な……っ」 ルイズの顔が真っ赤に染まった。 隣でそれを聞いたエリスは――柊の意見には同感ではあったが、何故か心の中でもやっとした。 「な、何言ってるのよ。ゲボクのくせに生意気なこと言って……!」 「都合のいい時だけ使い魔扱いかよ……」 「うるさいわね! それよりその剣、使ったら承知しないわよ!」 顔を赤らめたまま、誤魔化すようにしてルイズは柊の持っている剣を指差した。 「あ? ああ、これか。使う気はねえよ。デルフがあるからな」 「そ、そうよ。わたしが買ってあげた剣があるんだから、キュルケの剣なんて必要ないんだから」 「当然だろ?」 「えっ……」 さらりと返した柊にルイズは思わず言葉を詰まらせた。 柊は大剣を月衣に収納した後、まっすぐにルイズを見つめて口を開く。 「俺はお前の買った奴……デルフじゃなきゃダメなんだよ」 「ヒ、ヒイラギ……そこまで……」 「あ、あの……ルイズさん……」 ルイズよりは多少付き合いが長く、柊の性格を把握しているエリスがおずおずと口を挟んだ。 しかしルイズはそれに気付かず、どこか照れたような表情を浮かべてもじもじと両の手の指を絡めた。 「な、なによ。普段いけ好かない態度のくせして意外と忠誠心高いじゃない……ツンデレって奴なの?」 そんな彼女の様子に柊は小さく首を傾げた後、爽やかに笑いながら言った。 「……何しろもうデルフと契約済まして魔剣にしちまったからな!」 「…………………はい?」 ルイズの表情がぴしりと固まる。 しかし柊はそれに気付かず、したり顔で言葉を続けた。 「ほら、俺、魔剣使いって言ったろ? だから魔剣以外の剣を使ってもあんまり意味がねえんだよ。まあ契約変更できないことはねえけど、デルフもうるせえだろうし」 「ル、ルイズさん……」 「……それだけ?」 「いや、それだけじゃないぞ。ちゃんと性能の事も考えてる。錆がなくなったデルフなら能力が付加されてる分有利だしな!」 「…………………それだけ?」 「他に何かあるのか?」 「…………………」 「ル、ルイズさん落ち着いて……っ!」 小刻みに震えながら黙り込んでしまったルイズ、そして酷く慌てた様子で彼女に縋りつくエリスに柊は怪訝そうな表情を浮かべたが、 それよりも渡されてしまった大剣の処遇の方が彼にとっては重大事だった。 「しかし、あの剣はどうすっかな。この世界で返品ってきくのか? なあ――」 「用事が終わったんならさっさと帰んなさいよこのゲボクーッ!!」 「ごあっ!?」 ルイズから放たれた失敗魔法が炸裂し、直撃を受けた柊は吹き飛ばされて窓を突き破りながら退室していった。 「柊せんぱあぁい!?」 夜風にエリスの悲鳴が響き渡った。 ※ ※ ※ ――そして彼女は夢を見る。 そこは閉ざされた世界。そこは閉ざされた心の檻。 茨の鎖に繋がれているのは、行き場をなくした一人の少女。 静謐に沈んだその場所で、一体どれほど刻を過ごしたのだろうか。 思考する事さえ放棄した少女の裡に、ノイズが奔った。 ざくり、ざくりと茨を切り刻む音。 抉られるたびに痛みが走る。その片隅で、心が跳ねる。 辿り着いて欲しくないと思いながら、ココに来て欲しいと恋焦がれる。 やがて現れたのは、一人の青年。 魔剣を携えた彼は無遠慮に彼女の心を踏破して底に辿り着く。 顔を上げて彼の顔を見た瞬間、涙が零れそうになった。 それは悔やみの涙か、嬉しみの涙か。 青年はゆっくりとその魔剣を振り上げると―― ―――――少女の胸を貫いた。 瞬間、意識が広がる。 海底のような蒼色から、天照すような金色に。 己が身を貫く魔剣を携えた彼は、少女が今まで見た事のない表情を浮かべていた。 それは敵意の目線。明らかな殺意。 彼は胸を貫く魔剣に力を込めて、何かを言った。 その言葉が終幕。 命が穿たれ消え果てる。存在が砕けて消え果てる。 その身が幾十幾百の『欠片』となって砕け散る―― ※ ※ ※ 「……」 エリスは夜闇に沈む部屋の中で、ゆっくりと身を起こした。 僅かに眉根を寄せて、小さく溜息をつく。 何か――夢を見ていたような気がする。 それがどんな内容だったのか、彼女はそれをほとんど憶えていない。 過去の体験だったような気もするし、まったく覚えのないキオクだったような気もする。 ルイズと契約をして以来、毎晩のように経験する夢だ。 知らず彼女は自らの胸に手を添えていた。 これもその夢を見た後に決まってする行為。 何故かよくわからないが、起きた後は胸に熱さを感じるのだ。 刻まれたルーンが熱を持っているのか、それともその奥に何かがわだかまっているのか。 要するに――エリスは何一つ理解できることがない。 「……ルイズさん?」 ふと部屋を見渡して見れば、隣で寝ていたはずのルイズがいないことに気付いた。 時計を見やればそろそろ日付が変わろうかという時刻。 彼女はベッドから降りると、肌を撫でるような冷気に僅かに身を震わせた。 春先とはいえ深夜に差しかかろうとする夜気はまだ少し冷たい。 まして今夜はルイズが破壊した窓がそのままで、外気がそのまま中に入ってきているのだ。 改めて部屋を見回してみてルイズが部屋にはいない事を確認すると、エリスはクローゼットから服を取り出し軽く羽織ってから部屋を後にする。 その途中、何気なくルイズの勉強机を見やる。 そこに置かれた数冊の本を見つめた後、エリスは小さく笑みを浮かべた。 本塔を臨む広場の片隅で、ルイズは一人座って夜空を見上げていた。 疲労で僅かに汗ばんだ身体をそのままに、彼女は夜闇に浮かぶ双月をただじっと見つめる。 特に何か意図があったという訳ではない。 強いて言えば地上に広がる惨状をあまり見たくない、というくらいだ。 休憩がてらに空を見上げて――そのまま見入ってしまっただけ。 当然ながら紅と蒼の月を見上げるのはこれが初めてではないのだが、何故か最近になって妙に心がざわめくのだ。 「……なんだろ」 思い入れなどないはずなのに何故か奇妙な懐かしさを感じて、ルイズは胸に手を添える。 それまであったはずのものがなくなっているような感覚。 いや、なくなったというよりは―― 「ルイズさん?」 背後から響いた声にルイズは大きく身体を跳ねさせ、慌てて振り返った。 そこには夜着を羽織ったエリスがいた。 なんだ、と呟いてルイズは彼女から顔を逸らし、背を丸めて目の前の広場に眼を向けた。 隣にエリスが座っても、ルイズは眼前の光景から眼を離さない。 広場にはいたる所に大小の穴と焦げ跡、標的にでもしていたのかぼろぼろに朽ちた杭がいくつか散らばっている。 ……なんのことはない、いつもの『魔法』の結果だった。 「……練習、してたんですか?」 「……」 エリスの問いにルイズは答えなかった。ただ、丸めていた背中を更に縮こませただけ。 エリスはそれ以上何も言わなかった。 夜闇の中に沈黙が降りる。 しばしの静寂の後、囁くように声を漏らしたのはルイズだった。 「約束、したでしょ」 「え?」 「貴方に認められるような、ちゃんとした主になるって」 「……はい」 「色々考えたんだけど、正直どうすればいいのかよくわかんなくって。だから……今まで通り、とりあえず普通に魔法が使えるようになろうって」 「……はい」 エリスには決して眼を合わせないまま、呟くように語るルイズを彼女はじっと見守っていた。 ルイズはそんな彼女の視線を受けながら、懐かしい感覚を覚える。 先ほどの双月とは違う、心当たりのある懐かしさだ。 「でも、やっぱりできなかったわ。召喚の儀式に成功して、使い魔もできて、何か変わるかと思ったのに……何も変わらない」 恐らく儀式を行ったあの日にエリスや柊に対して色々とぶちまけてしまったからだろう、ルイズは学院の誰にも言わないような台詞を紡ぐ。 実家にいた頃は姉にそうやって弱音や愚痴を漏らしていた。 そうすると、弱気な発言をしているはずなのに何故か心が軽くなっていくような気がするのだ。 「……一度も成功したことがないんですか?」 「何度も何度もやってると、ごく稀に成功する時もあるわ。でもそんなまぐれ当たりみたいなの、『成功』とは言わないでしょ? 成功した実感なんて何一つないもの」 得意な系統の魔法を唱えると自分の裡に何かが生まれ身体を巡っていく感覚がするのだという。 だが一度としてルイズはそれを感じたことはない。 ごく普通に、皆と同じようにしているのに何故か爆発して、何故か稀に成功する。 なんで爆発するのかわからない。なんで成功したのかもわからない。 使った回数、行った時間、魔法の系統、およそ考え付くことはこれまでにあらかた試してみた。 だが何の光明も見えはしなかった。 魔法を学び始めて十年余りかけて――何一つ進むことはなかった。 ルイズは自嘲めいた笑みを浮かべて、呟いた。 「……わたし、やっぱりゼロなのかしら」 「ゼロじゃないですよ」 間をおかずに返ってきたエリスの声にルイズは思わず顔を上げ、彼女を見やった。 エリスはルイズの視線を受け止めたまま少しだけ言葉を選ぶように間を開けると、優しく語り掛ける。 「魔法が使えなくったって、ルイズさんはルイズさんです。 私、今まで一緒に暮らしてきて、少しだけルイズさんの事を知りました。 授業を真面目に受けてて、勉強を頑張ってる事も知ってます。魔法を使えるようになるために練習してる事も、今知りました。 私と柊先輩がこの世界に来た時色々教えてくれたのも、服を買ってくれたのも……魔法のことはよくわかりませんけど、少なくともルイズさんのそういう部分は、ゼロじゃありません」 「……」 なんだか話をはぐらかされたような気もするが、さほどルイズは憤りも不満も感じなかった。 彼女が今まで生きてきた世界――貴族の世界では、その大前提に魔法がある。 ゆえにその大前提において『ゼロ』と呼ばれていたルイズは、その他の部分についてもほとんど認められることはなかった。 それは貴族同士だけでなく、貴族を見る平民からの視線も同じだった。 エリスの言った台詞自体は初めて耳にする類ではない。 だが、取り繕うでもなくおべっかでもない表情でそれを言われたのは、生まれて初めてだった。 「……そ、そう。ちゃんと見てるとこは見てくれ……っ、見てるのね」 なんとなく照れ臭くなってルイズは頬を染め、眉を寄せてそっぽを向いてしまう。 と、 「……あ、それともう一つ」 思い出したようにエリスが呟いた。 ルイズが目線だけを向けると、彼女はどこか意地悪そうに微笑んでから、言った。 「柊先輩のために異世界の事について調べてくれてるのも、ちゃんと知ってますから」 「っ!?」 思わず大仰に肩を揺らし、眼を見開いてエリスを見やるルイズ。 そんな彼女を見てエリスは可笑しそうに笑みを零した。 「なっ、なにっ、を、言ってるの? なんでわたしがそんな事……っ」 「ハルケギニアの文字、勉強しましたから。机においてある本、そういう関係のものですよね?」 「ち、違うわ! そんなんじゃないのよ! なんでわたしがわざわざ自分の部屋に持ち込んでまで……!」 「図書室で調べてたら、柊先輩と鉢合っちゃうかもしれませんしね」 「~~~っ!」 ルイズの顔が羞恥に紅く染まり、せわしなく手をばたばたとさせて叫んだ。 「わ、わたしはね、貴族なのよ!? 人の上に立つ者としての威厳を保ってなきゃいけないの! 下の者に……特定個人のゲボクに対してあれこれとしてあげるなんて、そんな事しちゃダメなの!」 要するにゲボクとして扱うとしてしまった手前、引っ込みが付かなくなってしまったのだろう。 月光に照らされた薄桃の髪を揺らして弁明するルイズを見ながら、エリスはくすくすと笑いながら答えた。 「でも柊先輩もここの文字を勉強してますから、隠し続ける事なんてできませんよ?」 「だからそんなんじゃないってば! それだけじゃないもん!」 「……?」 ルイズの妙な言い回しにエリスは小首を傾げた。 ルイズも自分の失言に気付いたのか、はっとして視線をさまよわせ、今までとはうってかわって黙り込んでしまう。 「……それだけじゃ、ないのよ」 「ルイズさん?」 伺うようなエリスの声に、ルイズはそれ以上答えることができなかった。 ルイズが時間の合間を縫って異世界の事に関して調べていたのは事実だ。 柊とエリスにそのことを隠していた理由も、半分はその通り。 だが、理由はもう一つあるのだ。 ある意味当然の事ではあったが、それなりに調べて見ても異世界のことなど御伽噺もいいところの話だった。 なのでそこへ帰る――異世界に行く方法なども、夢物語のようなものだ。 しかし仮に……万が一それが見つかったとしたら。 (……貴女も帰っちゃうんじゃないの?) エリスはルイズの使い魔になる事を了承してくれて、実際使い魔との契約をしてくれた。 だが、彼女は『元の世界には帰らない』とも『ルイズと共にこの世界で生きていく』とも言っていないのだ。 仮に口にはせずともエリスがそう思っていてくれたとしても、実際帰る道が開けたとしたらどうなるかわからない……いや、心変わりするような気がする。 少なくともルイズは、自身がエリスのと同じ境遇だったら心変わりしてしまうと思う。 何処とも知れぬ場所に召喚されて、そこで生きていく決心を固めたとしても、帰れるのなら帰りたい。 家族だって唐突にいなくなった自分を……少なくとも姉の一人は心配しているはずだろうから。 「……っ」 自分を重ねて想像してみて、ルイズは胸に刺すような痛みを感じた。 契約をした時にも気づいた事だが、柊があまりにも軽く流してしまったのでそのままうやむやになってしまっていたのだ。 それは――エリスにも元いた場所での生活がちゃんとあって、家族や友人がいるということ。 そして彼女をそれらから引き離してしまったこと。 「ごめんなさい」 「え?」 囁くように漏らしたルイズの声に、エリスは首を傾げた。 ルイズはエリスの顔を見るのが怖くて、俯いたまま口を開く。 「貴女をハルケギニアに召喚しちゃったこと……」 「そんな……普通にやってたのに私たちのところに繋がっただけじゃないですか。別にルイズさんが悪いって訳じゃ」 「それでも、召喚した責任はわたしにあるもの。仕方なかったとか、そんな事になるとは思わなかったとか、そんな風に誤魔化すなんてできないわ」 「……」 目線を合わせないまま、しかしはっきりと告げるルイズの横顔を見てエリスは眩しそうに眼を細めた。 「気にしないでください。柊先輩だって、深刻になる必要はないって言ってたじゃないですか」 「アイツは軽すぎるのよ。訳わかんないわ」 ルイズは吐き捨てるように言ってからはあと溜息をつく。 ちなみに柊が軽く流していたのは彼自身が色々波乱万丈すぎて異常事態への耐性が極めて高いからなのだが、ルイズがそれを知る由もなかった。 それはともかくとして、今ルイズの中では一つの葛藤が生まれていた。 つまりエリスにファー・ジ・アースへ帰ってもらうか、留まってもらうのか。 勿論ルイズとしては使い魔となった彼女にはパートナーとしてハルケギニアに留まっていて欲しい。 だが、彼女の元の居場所の事に思い至ってしまってはそれを無視することなどできるはずもない。 ルイズは夜気の肌寒さに身を丸めながら考えを巡らせ―― 「そうだわ!」 「?」 天啓を得たかのように声を上げた。 頭に疑問符を浮かべているエリスをよそに、ルイズは喜び勇んだ顔で彼女に向き直り、その手を取った。 「あの、ルイズさん?」 「わたし、ちゃんと貴女とヒイラギを元の世界に戻す方法を見つける!」 「は、はい」 「それで……」 「それで……?」 「わたしもファー・ジ・アースに行く!」 「えぇーっ!?」 エリスは驚愕の声を上げるが、ルイズは気にすることもなくエリスの肩に手をやり詰め寄った。 「わたしもファー・ジ・アースに行って、貴女の御家族に会って話をするわ! 貴女をわたしの使い魔にしたい……って、もう使い魔にしちゃってるから事後承諾になっちゃうわね。 でもちゃんと説得して、納得してもらうわ! それなら大丈夫でしょ? 皆に納得してもらえば、貴女がここに残ってわたしと一緒にいても大丈夫よね?」 「……」 一気にまくしたてるルイズを、エリスはぽかんとした表情で見つめる事しかできなかった。 そんな彼女の様子を見て不安になったのか、ルイズは急に声のトーンを落としておずおずと声を上げる。 「……ダ、ダメ?」 「……だめなんかじゃないですよ」 思わず笑みを零してエリスはそう返す。 むしろルイズがそこまで言ってくれたことが、彼女には嬉しかった。 ルイズはエリスの微笑を見て安堵の息を漏らすと、意気込んだように頷いてから喋り始めた。 「それにファー・ジ・アースに行ければ、ちい姉様だって……」 「ちい姉様?」 「……ええ。わたしには姉様が二人いるんだけど、ちい姉様――カトレア姉様は病気なの。原因がよくわからなくって、いつも苦しんでて……その症状が今日話してたキョウカニンゲンだかってのに似てるみたいで。だから……」 「それであの時……」 エリスはオスマンの話を聞いていたときに唐突にルイズが食い付いたのを思い出しながら言った。 ルイズはそのカトレアの事を思い出しているのだろう、僅かに顔を俯けて唇を引き締めると、気を取り直したように頭を振って夜空を見上げた。 釣られるようにして、エリスも同じように夜空を仰ぐ。 「とにかく、そのためにも明日から本腰いれて調べる。柊に見つかったってどうだっていいわ。あいつはまあついでね、ついで。ファー・ジ・アースに行く方法さえ見つかれば――」 そこでようやく重要な事を思い出し、ルイズはぴたりと動きを止めた。 ……ファー・ジ・アースに行く方法さえ見つかれば、総て上手くいく。 「……異世界に行く方法……?」 そもそもの話、前提条件自体が途方もないことだった。 多難すぎる前途にルイズはがっくりと肩を落とし、うな垂れた。 せめてアル・ロバ・カリイエなどならまだ地続きではあるので可能性はありそうなのだが、端的に言って何処とも繋がっていない異世界ではもはや笑い話のレベルだ。 だが実際にこうして異世界の人間――エリス達を前にした当事者としては笑えない。 さらに契約の日の事に加えて約束を重ねた以上悖ってしまうのはプライドが許さなかった。 「もう、何だって異世界なんかから喚びだしちゃったのかしら……」 それでも愚痴くらいは許されるだろうとルイズが憎憎しげに漏らすと、 「……それは貴女がそう望んだから」 何故か答えが返ってきた。 ルイズは顔を上げてその声の主を見やる。 隣に座っていたはずの少女はいつの間にか立ち上がり、夜空を見上げたまま、ゆらりと歩き出した。 「……エリス?」 ルイズは呆然として声をかける。 しかし、エリスは応えない。 そして『彼女』は、答えた。 「一人は守護を望んだ。一人は自ら選んだ。一人は何も望まなかった。そして……貴女は、力を望んだ。だから、『私』が喚ばれた」 『彼女』はルイズに背を向けたまま、ゆっくりと手を差し伸ばす。 天上に浮かぶ双月――紅き月と碧き月をかき抱くように、『彼女』は夜闇を仰ぐ。 「ね、ねえ……」 不安になってルイズは立ち上がり、声をかけた。 しかし『彼女』は語り聞かせるように言霊を紡ぐ。 「その身に宿りし力の『欠片』。その縁だけでは越えられなかった。だから"表"にいる私が喚ばれた。 私はマガイモノだけど、同じ存在には違いないから」 「……」 その言霊に、ルイズは知らず胸に手を当てた。 心臓の動悸が激しい。いや、それは心臓ではない。 身体の中心、身体の最奥、魂とでも言うべきもの……そこにあるナニカが歓喜に揺れている。 そのざわめきは波紋のように全身に広がり、循環していく。 今まで経験した事のないその感覚は――ひどく恐ろしかった。 恐怖とは少し違う、形容しがたい感情。 それを自分の裡と、目の前の少女に感じている。 「あ……あなた……だれ?」 掠れる声を絞り出して、ルイズは問うた。 『彼女』はゆっくりと振り返る。その双眸は紫の瞳と――ヒトならざる青の瞳。 『彼女』はゆっくりと笑みを浮かべる。普段の柔らかい表情はそこにはなく、怖気を感じさせるほどに酷薄で、妖艶な微笑み。 そして『彼女』は、天空の夜闇に聳える紅と碧の月を従えるように其処に佇み、静かに告げた。 『――"我"は破壊者にして、創世者なり』 前ページ次ページルイズと夜闇の魔法使い
https://w.atwiki.jp/sagastar/pages/270.html
ルイズ 肩書き 種族 閃き コマンダー行動 陣形 得意術 盗み適性 魔界人 妖怪・悪魔 蒼龍 蒼龍 - 蒼龍 5 LP 腕力 器用さ 素早さ 体力 魔力 意志力 魅力 8 13 17 18 14 19 18 20 HP 斬LV 打LV 突LV 射LV 体術LV 地術LV 天術LV 増幅LV 80+ 0 0 0 1+ 0 蒼龍7+ 0 0 武器1 武器2 武器3 武器4 防具1 防具2 防具3 防具4 - - 精霊石 高級傷薬 毛皮のベスト ヘッドバンド シューズ - 技1 技2 技3 技4 術1 術2 術3 術4 スペルカード - - - - ニードルショット ダンシングリーフ - - ヒールウィンド HP成長 SP成長 WP成長 斬成長 打成長 突成長 射成長 体術成長 1 0 3 1 0 0 1 0 蒼龍成長 朱鳥成長 白虎成長 玄武成長 太陽成長 月成長 増幅成長 消費軽減 3 1 2 2 2 2 0 - 旅行中の魔界人。 スペカがヒールウィンドなものの、術師として控えめな性能。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4236.html
前ページルイズの恐竜惑星 「使い魔との親交を深めているようですなミス・ヴァリエール」 「これはミスタ・コルベール」 医務室に頭髪の薄い男が入って来た。 ルイズの反応からしてこの男は教師なのだろう、とラプターは判断した。 コルベールはラプターに視線を移した。 「ほう。あなたがミス・ヴァリエールの召還した使い魔ですな」 「今はそういうことになっている」 「それで、あなたの名前は?」 「ラプター、そう呼ばれている」 自分達からすれば異質であろうラプターにあっさり話を振ったコルベールに、ルイズは少し驚いた。 そして、コルベールが両手に何かを持っているのに気付いた。 「...それは俺のクローか」 「はい。少し調べさせて頂きました。実に高等な技術で作られ、材質もまったく未知の物です」 「そうか。こいつをどうする気だ?」 「あなたにお返ししますよ。平民とはいえ武器を取り上げる権利は、我々にはありませんので」 どうやら武器ということは解っているらしい。だが「コレ」の威力を知らないようだ。 特殊合金も易々と引裂き、恐竜の首をはねとばす威力を。 この世界での平民が持つ武器と同程度か、あるいはそれに毛が生えた程度と考えているのだろうか。 ならそう思わせておいてもいいだろう、そうラプターは考えていた。 「ちょっとラプター!主人の私を放っておいて勝手に話を進めないでよ!」 「ならお前から話に入れば良い」 「~~~~~っ!!!」 割り込んで来たルイズを淡々と受け流すラプター。 コルベールはそれに苦笑しながら席を外した。 「部屋に戻るわよラプター」 「ああ」 「...あんたねえ!もっと愛想よくできないの!?」 「生憎そんな訓練は受けてないんでな」 「あーもういいわ!とにかく付いてなさい!!」 前ページルイズの恐竜惑星
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/270.html
ペシペシ 「きゃぁ、きゃぁ」 ペシペシ 「きゃぁ、きゃぁ」 ルイズは「おとーさん」と名乗る白いゴーレムをほうきで叩きながらぐるぐるその場を追いかけ回しているのでした。 生徒たちのほとんどは、その光景を見ながら腹を抱えて笑っていました。 さすがにコルベールは笑いを堪えていたのでしたが、「コホン」と咳払いをし 「ミス・ヴァリエール。ミス・ヴァリエール!! そろそろ追いかけっこを辞めてコントラクト・サーヴァントを済ませてしまいなさい」 と、ルイズに対して声をかけました。 ルイズは立ち止まり肩で息をしながら考えました (ちょっと変わってるけど、コントラクト・サーヴァントを済ませて躾けてしまえば・・・) ルイズはコルベールに返事をすると、おとーさんに向き直り深呼吸をして落ち着いた上で詠唱を開始しました おとーさんは不思議と逃げずにルイズを呆けたように見ていました。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 詠唱終了と同時に、突然おとーさんの口が開くと黒く「げしょげしょ」と鳴く何かを大量に吐き出しました 「!!!!!!!!!!!!!!!」 ルイズは悲鳴こそ上げなかったものの、内心かなりビビっていた。 しかしそこは貴族、そんな事はおくびにも見せずにささやかな胸を再度張って問いかけました 「いい、今の何よ」 「げしょ」 「げしょ?」 「げしょ」 おとーさんは頷くと聞きなおすルイズそう答えました 「げげ、げしょくらい何だって言うのよ」 ルイズはそう言うとおとーさんの額に杖をつきつけ契約をするのでした 「ミス・ヴァリエール、何とか終わったようですね。さて、ルーンを拝見させてもらいましょうか・・・・」 コルベールはそう言って、おとーさんに近づくと左手に刻まれたルーンを見ながら首をかしげるのであった。 おとーさんも不思議そうにルーンを見ているのでした。 「珍しいルーンですね。宙に浮いて喋るゴーレムも初めて見ます・・・おっといけない」 コルベールはルーンをノートに書き写すと待っていた生徒に向かって 「みなさん、本日はこれにて終了します。学園内に戻りましょう」 「ミス・ヴァリエール、あなたも戻りなさい」 ルイズに向き直りにこやかにそう告げるとコルベールは戻って行きました コルベールと生徒は空を飛んで行くのでしたが、ルイズは飛ぶ事も出来なかったので歩いて帰るしかありませんでした。 一歩踏み出したところでおとーさんを振り返り、 「ほら、行くわよ。ぼーとしてないで歩いて行くからグズグズしないの」 一言言うとため息混じりにまた歩き出した おとーさんは空を見上げていましたが、ルイズに言われて素直にその後をついて行くのでした。 その見上げていた空には二つの月が浮かんでいました。 ルイズは部屋に着くと早速おとーさんに色々説明を始めました 自分はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールという名前で貴族である事 この世界には貴族と平民がいる事 貴族は魔法が使える事 おとーさんを使い魔として召喚したのは自分の魔法である事 召喚した使い魔は主人に服従する事 途中から夜食で用意させたサンドイッチを食べながらの説明はそろそろ終わりを迎えようとしていました。 「後、使い魔は主人の目となり耳となり・・・って出来ないみたいだし。秘薬の材料集めも無理そうね。ゴーレムみたいだからそこそこ強いと思うけど主人を守れるかどうかはまだわからないし・・」 そこでちょっと考えたルイズだったが 「とりあえず、出てきたときに掃除してたぐらいだから。掃除、洗濯と身の回りの世話でもしてもら・・・え? そろそろ帰りたい???」 ルイズは「うーん」と唸りながらこう答えた 「サモン・サーヴァントで呼び出した使い魔は、帰る事は出来ないの・・・・え? 自分で何とかする? あんた何言ってるの??」 おとーさんはそのまま部屋から出て行ってしまいました ルイズが困惑しているとほどなくしておとーさんが帰ってきました。古くてボロボロになったドアを抱えて 「何そのドア・・・拾った? 壁につけて特異点をつなげる??? 意味わかんないんだけど」 ルイズに説明しながらおとーさんは部屋の壁にドアを据え付けていきます 「危ないから下がってて? その前にそんな所にドアなんかつけないでよ!! 壁に穴でもあけたら承知しないわよ!!」 ルイズやっぱりこの使い魔はわけがわからないと頭を抱えていると、突然ドアの方から 「シババババババババババババババババッ」 と聞いたことも無いような激しい音と眩いばかりの光が発生しました 「ここ、このバカ使い魔!!! いきなり何やってんのよ!!!」 怒鳴るルイズをよそにおとーさんはおもむろにドアを開きました。 「ただいま~」 「あ、おとーさんお帰りなさ~い」 「ちょっとアンタ!どこほっつき歩いてたんだい!! それにこんなドア作って!!!」 「げしょげしょ」 ルイズは呆然としているのだったた。理解の範疇を完全に超えていたので無理もありません。 その後、キュルケとタバサがうるさいと文句を言いに来たのだがルイズは口をパクパクするだけで何も答えられませんでした・・・
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4641.html
前ページ次ページルイズの魔龍伝 2.異世界の夜に 「普通だったらこの世界に存在する幻獣その他もろもろを呼び出すの。 あんたみたいな良く分からないのが出てくるなんてトリステイン魔法学院始まって初めての事だわ。」 「しかし驚いたな、俺のような姿をした者は本当にいないのか…」 「むしろアンタみたいなゴーレム、どこから出てきたのか私が知りたいぐらいよ」 ルイズの自室、高級そうな調度品が所々に置いてあり貴族のいる部屋、というのが何となく伺える。 ベットに腰掛けるルイズの目の前にはどっしり胡坐をかいて腕組みをしているゼロガンダムの姿があった。 窓から差す午後の日差しも沈みかけて鮮やかなオレンジに色になっている、そんな時間の事である。 「それはいいが…俺の事はゼロと呼んで欲しいのだが…どうしても駄目なのか?」 「絶対にいや」 「ゼロのルイズと呼ばれてるのに何か関係あるのか」 「うるさい!次に同じ質問したら壊すわよ!」 「…ふぅ」 これで二回目の問いかけであったがやはりルイズはむっとした顔で聞き入れてくれなかった。 サモン・サーヴァントはこの日の授業の最後の科目であり 終了後は使い魔との交流という事でルイズのクラスは他より早く放課になっていた。 なのでルイズもゼロを連れて部屋へ戻って使い魔についての説明をしていたのである。 「材料の調達は地理を知るのにいいし、必要なものは君が教えてくれればいいからな」 「うん」 「守る…これも仕方が無い、この世界を知るためにしばらくここに身を置く以上勤めは最低限は果たそう」 「うんうん」 「だが、何で俺が掃除雑用下着の洗濯までせねばならんのだ!」 「だって使い魔の勤めだもの」 軽く怒っているゼロにしれっと言い放つルイズ。 「断る」 「義務」 「…埒が空かんな。仕方が無い、話を変えて俺の事も少し話そう。」 「じゃあ聞かせてもらうわよガンダム」 掃除雑用下着の洗濯を巡る攻防に終わりが付かないと判断したゼロは話題を換え 自分の事について話す事にした。これで理解してもらえば下着の洗濯だけは 避けられるかもしれない、そう信じていた。 「俺の名前は…まぁ知っているか、これでもユニオン族というれっきとした種族の一つだ。」 「しゅ、種族ぅ!?アンタってゴーレムじゃなかったの!?」 「…召喚された時も俺はゴーレムじゃないと言ったぞ」 「だってアンタみたいな種族なんて聞いた事無いわよ。 どこかの高名なメイジが作った自意識があるゴーレムか何かかと思ったわ。」 「それで、俺はこの世界とは別の世界であるスダ・ドアカからやってきたって訳さ。」 ルイズの顔が一気に胡散臭いものを見ている顔になる。 「異世界?全然信じらんない」 「君が信じようが信じまいが俺はスダ・ドアカという世界から来た、それだけだ。」 「…一応そういうことにしておくわ、ゴーレムさん」 下着洗いを回避しようとするならば多少の事は我慢する必要があった、ゴーレム扱いもやむなし。 そう思いつつゼロはルイズの言葉を流しつつ更に説明を続ける。 「あと俺はまぁ…騎士だ、己の剣の冴えで戦う者。流石に騎士ぐらいはこの世界に存在するだろう」 「それならいるわね、あんた自身は魔法とかは使えないの?」 「無縁だな、とりあえず君を守るという事なら出来る実力ならあるさ。」 「ふーん 本当はかなりの事が出来るのだが正直に話した所で絵空事に取られるだけだろうと考え ゼロはとりあえず騎士、という事にした。 あまり力はひけらかさない方が良い、力とは良くも悪くも人を変えてしまうものだという 考えもあっての事ではあるのだが。 「(ゴーレムかと思ったら良く分からないし魔法は使えないっていうし…)」 そっけない受け答えをしながらも内心ルイズは落胆していた。 自分の望んでいた使い魔のイメージとはまるでかけ離れていたのもあるが 金のような鎧に妙なと見た目で、しかもゴーレムにしては 身長がルイズよりやや大きいぐらいの小ぶりな大きさ。 「(…夢と違うじゃないのよ)」 あの夢はなんだったのか、自分を乗せて雄大に飛ぶあの黒い龍はどこへ? 彼女の疑問は尽きなかった。 「という事で下着の洗濯はやってもらうから」 「なぬっ!」 結局ルイズはゼロに下着洗いを命じたのであった。 「…これは何だ?」 「何ってあんたの食事よ」 日もとっぷり落ちて夕餉の時間、大きいテーブルが三つ並び荘厳な飾り付けが施された 『アルヴィーズの食堂』に通されたゼロが目にしたものは 床に置かれた皿と、申し訳程度に小さな肉片が浮かんだ琥珀色のスープ、そしてその皿の隅っこに ちょこんと置かれた小さいパン二切れであった。 「俺の席はどこだ?」 「何言ってるのよ、あんたは使い魔だから床で食べるの」 「…」 「本当は使い魔なら外で食べるんだからね、それだけでもありがたいと思いなさい。 っていうか物を食べるゴーレムなんて初めて見るわよ」 呆れ顔になってるゼロの心境を察してか止めを刺すつもりなのか ルイズの容赦ない一言が炸裂する。 「…」 「ちょ、ちょっとどこ行くのよ!」 「使い魔は使い魔らしく、俺も外で食べる事にするよ」 そう言ってゼロはスープとパンの乗った皿を持つと食堂を後にしてしまった。 当然後に残されたルイズは憤慨していた。 「なっ、なんなのよアイツ!次からは床じゃなくて外に用意してもらうようにしてやるから!」 「大きい月が二つ…か、俺も随分遠い世界に来てしまったもんだな…」 校舎の外、多数の生徒の使い魔が集まりそれぞれのエサを食べている中 どっしり座ったゼロは月を眺めながらパンをかじりスープをすすっていた。 この世界における自分の待遇とスダ・ドアカ界には無い宙に浮かぶ二つの月が 自分が異世界にいるという事をより実感させてくれる。 「文句は言えんが…腹に据えかねるものが…っと、もう空か」 あっという間に食べてしまい目の前には何も無い皿しか残っていなかった。 物足りなさを感じつつも戻ろうとした時、自分のマントに何か違和感を感じたゼロ。 振り返ると尾に炎を灯た真っ赤で、結構大きなトカゲが彼のマントを引っ張っていたのである。 「きゅるきゅる…」 「中々立派な火竜だな、こっちでいうとサザビードラゴンかそのあたりか?」 そのトカゲは自分の足元にあった何かの生肉を加えてこっちに差し出してくる。 「…もしかして俺にくれると?」 「きゅる」 「いいよ俺は。その気持ちだけ有り難く受け取っておくさ」 大トカゲの頭を撫でたゼロを見てたいた他の使い魔達も自分が食べていた餌を運んで来た。 何かの生肉をはじめとして草や虫、ミミズなど野性味溢れる餌がゼロの前に積まれてゆく。 「いや、俺が足りないなとは思ったけど別にそこまでは欲しくないぞ!いいから!お前たちで食え!」 ゼロは皿を手に取ると熱烈的な使い魔達から逃れるように再び食堂へと戻っていった。 その時、右手のルーンがぼんやり光を放っていたのにはゼロ自身も気づいてはいなかった 「(ちょ~っと調子が狂ったけど一日の最後こそは きっちりと主従関係を叩き込んで締めないとね!)」 一日も終わり就寝の時間、ルイズは決意を固めながらゼロと自室まで歩いていた。 「さて、寝る場所だけどあんたはここね!こーこ!」 「床か?」 「そう、使い魔だから当っ然床!これ以上ない位床よ!」 ドアを開けた途端から高圧的な態度で床を指差しゼロに話すルイズ。 「(いくらなんでもこれなら私の立場が上だって気づいて…)」 「そうか、すまないが鎧を置かせて欲しい」 「え?えああそそっ、そうね、そこのクローゼットの隣に置けばいいんじゃないかしら?」 「悪いな」 今まで流浪の身であったゼロにとっては野宿は当たり前、ましてや敵の気配も無いここなら どこであろうと問題なく眠りに就けるのであった。 ルイズの企みはあっけなく幕引き。目の前で鎧を脱いで指定した場所に置くゼロの横で 同じく服を脱いでそこら辺に投げるルイズ。 「ルイズ」 「何よ、ご主人様と呼びなさいって言ってるでしょうガンダム」 「女の子なら多少は恥じらいを持った方がいいぞ」 「使い魔、しかも人間じゃない奴に見られても別に何とも思わないわよ!」 そういってさっさとネグリジェに着替えた彼女はすばやく布団に潜り込んで指を鳴らすと 部屋を灯していたランプも消えてしまった。月の明かりだけが部屋に蒼く差し込む。 「使い魔の説明の時にも言ったけどそれ、明日洗っといてね」 先ほど脱いだ下着を投げ口早に言うとそれっきり彼女は一言も喋らなくなった。 「(やれやれ、とんだじゃじゃ馬娘だ)」 ゼロは脱いだ鎧にかかっていた自身のマントをひったくり、それに丸まって床に横になった。 「(ユニオン族のいない異世界…か)」 心に去来するのはかつての戦いの記憶。 強大な力を持った遺跡、ドゥームハイロウの力によりユニオン族が抹消され 幻魔皇帝がザンスカール族を率い人間を統制支配する悪しき世界。 生き残った唯一人のユニオン族であるゼロは受け継がれた雷の技と 一族に伝わる神の獣、龍機ドラグーンを用いこれに挑んだ。 雷の奥義にて召喚された城は巨人となりて幻魔皇帝と戦い、抹消されたはずの仲間も 精神のみの状態で現世に舞い戻り自身に力を与えた。 集う力はついに幻魔皇帝を討ち破り、消えたユニオン族をこの世に再び戻し平和を取り戻した…。 「(雷龍剣よ、俺はこの世界でどうすればいい?)」 かつての戦いが思い浮かんでは消えていき、その意識も眠りの中にゆっくりと落ちていった。 彼の、長い一日はこうして終わりを告げたのである。 前ページ次ページルイズの魔龍伝