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ゲームデータへ戻る 職業(ジョブ)とスキルへ クレリック[Cleric] プロテクション系 状態回復 スキル名 EX/MT/AT 分類 対象 持ち越し Speed Wait 説明 マジックリセット MT; 防御 味方一人 1 5 火傷・毒・出血・盲目・重症・衰弱状態を全て解除する。 メンドタッチ MT; 防御 味方一人 5 5 重症・衰弱・盲目状態を1つ解除する。解除に成功すると自分のHPを(60)ー(75)回復する。 メンドタッチウル MT; 防御 味方一人 5 5 毒・出血・火傷状態を1つ解除する。解除に成功すると自分のHPを(60)ー(75)回復する。 エイドライン MT; 防御 自分以外 2 5 重症・衰弱・盲目状態を1つ解除する。解除に成功すると自分の重症・衰弱・盲目状態も1つ解除する。 防御系 スキル名 EX/MT/AT 分類 対象 持ち越し Speed Wait 説明 レンジテイクオーバー MT; 防御 味方一人 5 5 間接攻撃を1回ブロックする。 ダイレクトテイクオーバー MT; 防御 味方一人 5 5 直接攻撃を1回ブロックする。 ギフト MT; 防御 味方一人 3 6 (2)ターン魔法攻撃を(10)%の確率で回避する。 イージスガード EX; 防御 自分 持ち越しあり 2 10 3ターン(50)%の確率で物理攻撃をブロックする。 蘇生 スキル名 EX/MT/AT 分類 対象 持ち越し Speed Wait 説明 リボーンワード MT; 防御 自分以外 1 4 HP(10)%で蘇生するが、自分も蘇生された味方も放心状態になる。 職業(ジョブ)とスキルへ 職業(JOB)へ
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614 :龍ちゃん「ちょっと本気だす」 ◆M14FoGRRQI:2009/02/10(火) 18 59 16 『プロローグ』 「うがー!」 おやおや、狂人メーターが振り切れているおかげで逆にいつも冷静なリュウノスケが 珍しく取り乱していますね。一体何があったんでしょうか。 「あんにゃろ、何してんだよっ!」 悪態をつくリュウノスケの足元には少し前の新聞、どうやらここに書かれている事が 原因の様ですね。 1000 :僕はね、名無しさんなんだ:2009/02/03(火) 00 53 31 1000なら次スレ 50が新作発表。 できればロリ百合なので。 50 :Hearts of Lion ◆4wSURDq66Q:2009/02/05(木) 22 45 54 「やりやがった!あの野朗狙い済ましたかの様に50ゲットしやがった! 自分の作品で忙しいだろうから絶対新作なんてでねー!絶望した! 前スレ1000をあざ笑うかの様にageて50とった選択肢スレのヒーローに絶望した! うおおおーん!」 あらあら、とうとう泣いてしまいましたよリュウノスケ。 悲しみは分かりますがあまり作者を理不尽な理由で責めるのは良くないですよ。 「旦那は悔しくないのかよ!この世から一つの炉利百合が消えたんだぜ!」 すいません、今私コナミコマンドで爆発した体の再生に手一杯で性欲とか無いんですよね。 「本当だ旦那の顔賢者モードだ、くそー旦那まで俺の敵かよ!もういい、 こうなったら俺がすげーCOOLなロリ百合を書いてそれに萌える、今日から俺は奈須きのこ級の オナニーをしてやるよ!」 決意は立派ですけど・・・、リュウノスケ、小説の経験は? 「んなもん無いけど妄想に任せて適当に書けばイイモノできるんじゃないの? 今の俺性欲の塊だし。そうだ、どうせなら完成したものを披露して俺がhol作者に代わる 選択肢スレのスターに」 あのですねリュウノスケ、ちょっとそこに座りなさい。 「はい?」 官能小説なめんな。 「ど、どうしたんだよ旦那。なんで怒ってるんだよ」 話す必要が無かったので今まで話しませんでしたが、このジル・ド・レェ、ジャンヌを汚される以外に もう一つどうしても許せない事があります。それは粗悪な芸術を得意げに私の前で披露する事です。 たとえリュウノスケといえども、いえ無二の友である貴方だからこそわざわざ不得意な分野で 素人同然の痛々しい姿を見せないで欲しいのです。というか実際素人ですしね。 「えーっと、よく分かんないけど旦那はエロ小説にうるさいって事?」 はい、私は国一番の貴族としてあらゆる娯楽・芸術に精通しています。無論官能小説もです。 それゆえに、もしリュウノスケが下手糞な小説を書こうものなら― 「ものなら?」 この牙で貴方の頭を噛み砕き、私もすぐに後を追います。 「そっか、わかったよ―」 ああ、分かってくれたのですねリュウノスケ。 「―問題ない、俺の書く作品はきっと旦那も喜んでくれるはずさ。だって俺には、 神様が付いている。神様が望むエロ小説、これで旦那が喜ばないはずがないだろ?」 『龍ちゃん「ちょっと本気出す」』の説明 登場人物 龍ちゃん:ロリペドA。小説など書いた事無いがゲームブックスレの1000の言葉に導かれ ロリ百合18禁でデビューするという無茶を始める。 汁元帥:ロリペドB。貴族なので官能小説にはうるさい。いつもは龍ちゃんの盟友だが 今回はバッドEND担当。偽・最終兵装(コナミコマンド)によりバラバラになった後 いまだに再生中。頭の一部分までしか治っていないので会話は全部念話である。 ルール 全6話の短編かしら~。 途中でバッドENDもあるわよぉ。 プロローグ以降殆ど18禁だから気をつけるのだわ。 エルメロイ物語?あんなカオスや天丼ネタは無いと思っていただきたいですぅ。 【神様ー、とりあえず何のカップリングで書いたらいい?】 月姫分が足りないぞよ:翡翠(+琥珀)×秋葉の炉利百合。 fateこそ文学じゃ:士郎×慎二の炉利百合。 zero最高である:旦那×龍ちゃんの炉利百合。 龍ちゃん「ちょっと本気だす」
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どっかで型月やプロペラが良く使うような斬られている画像や爆発の画像をフリーで配布してるトコねぇかなぁ イメージ背景な ↓らへんで作り方講座やってるから勉強しれ http //slow-f.com/howto/neko/10.htm http //slow-f.com/howto/neko/11.htm
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第13話「Heavens Feel Ⅳ」 ―― -3742日 PM5 32 ―― 新都へ向かうバスの中は興奮醒め止まぬ空気に満ちていた。 貸し切られた車内に乗り合わせているのは、三、四十人ほどの幼い子供達。 年齢は十歳にも満たない程度だろう。 学年で言えば小学校の中学年といった程度だ。 誰もが『幼い』という形容詞から逃れられてはいない。 しかし、白を貴重とした揃いの制服は、彼らの通う学校が普通ではないことを暗に示している。 私立聖祥大学付属小学校。 某県鳴海市に居を構える私立学校であり、その仰々しい名称に恥じない実態の学校である。 小学校から大学までのエスカレーター式進学制度。 公立校のそれを優に上回る水準の学力と学費。 世間でいう名門校の条件を見事なまでに満たした私立校といえるだろう。 そんな彼らが冬木市にいる理由は、別段特殊なものではない。 義務教育にありがちな、単なる社会見学旅行である。 二泊三日の日程で他県の工場施設を見学するという差し障りのない内容だ。 本日分の見学日程は既に終わっており、今は宿泊する予定のホテルへと向かっているところだった。 バスが冬木市の市街に近付いていく。 車内の喧騒が数割増しに大きくなった。 冬木市、新都。 川によって二分された冬木市の東側にあたる地域であり、大規模な再開発計画の最中にある街である。 現状はオフィス街の六割までと駅前パーク、ショッピングモールまでが形を成しているところだという。 彼らの住む街とて、決して新都に引けを取るものではない。 だが、見知らぬ町並みはそれだけで子供達の興奮を煽るのに充分なようだ。 何か珍しいものでも見つけたのか、座席の一角から歓声が上がる。 教員達が咎めないのをいいことに騒がしさは増していく一方だ。 無理もないだろう。 多くの児童にとっては、退屈な工場見学よりもこれからの時間の方が楽しみなのだから。 ある少年は新品同様のビルに夢中になり、ある少女は友達と自由時間をどう過ごすかの相談をしている。 そんな中、一人の少女だけが、不安そうに口を閉ざしていた。 少女は、名を高町なのはという。 ジュエルシードを巡る戦いの中で成長し、後に『闇の書』が巻き起こす事件に遭遇することになる少女である。 「何だろ、この嫌な感じ。もしかして……魔力?」 不安もあらわに、なのはは車窓の外に目をやった。 新都の街並みが後方へと流れていく。 その風景は平穏そのもので、異様なところなど見当たらない。 真新しい歩道も、建設中のビルも、どれもごく普通の物だ。 けれど、この感覚だけは紛れもなく異常だった。 言葉では言い表せない不気味な悪寒。 体内を巡る魔力がさざめき、内から肌を粟立たせる。 恐怖に慄いているわけでもなければ、体温の低下に震えているわけでもない。 ただひたすらに、異質。 なのはは気分を紛らわせようと、軽く車内に視線を巡らせた。 クラスメイト達は誰もが雑談に興じていて、僅かな違和感すらも感じている様子はない。 単なる思い過ごしであればと願うなのはの耳に、教師達の会話が入ってきた。 不自然なまでに潜められた、深刻そうな雰囲気の声。 「あの犯人、まだ捕まってないんですよね」 「らしいですよ。……やっぱり宿泊先を変更しておいた方が良かったかも」 教師達が懸念するモノについて、なのはは一つ心当たりがあった。 いつかのニュースで報じられていた覚えがある。 とある地方都市で発生している連続殺人事件。 表現こそ抑えられていたが、手段の残虐さと異常性は例を見ないものであるという。 その都市の名は、確か「冬木」ではなかったか。 ブレーキ音を響かせてバスが止まる。 どうやら信号待ちの集団に捕まったらしい。 定められた道を行く車両の列は、さながら働き蟻の行進だ。 自分の命を脅かす存在が潜んでいるにも関わらず、いつものように道を走っているのだろう。 事実、これから数時間の後―― 彼らは自分達を、蟻のように潰し得るモノを目の当たりにするのである。 ―― -3742日 PM10 50 ―― なのは達が宿泊するホテルは、未遠川から程近い、十五階建ての中規模なものだった。 ランクも決して低くはなく、近辺に存在した冬木ハイアット・ホテルほどではないが、聖祥大付属の宿泊先としては相応だろう。 「レイジングハート……やっぱりおかしいよ」 十二階の一室、五人の児童が宿泊する部屋の片隅で、なのはは自身のデバイスに語りかけた。 班員達は既に就寝している。 それを察してか、レイジングハートも音量を控えて答えを返す。 "Yes, I also think so." 近辺に『存在した』冬木ハイアット・ホテル。 このある種異様な表現は決して間違いではない。 現時点で冬木市最大の高さと最高のサービスを誇る三十二階建てのホテルは、今や残骸と成り果てている。 原因は不明だが、小火騒ぎの直後に突如として倒壊したのだと報道されている。 冬木という街のおかしさを感じているのは、何も彼女達だけではない。 四件に及ぶ連続殺人事件。 連続児童失踪事件。 湾岸地域での原因不明の爆発事故。 冬木ハイアット・ホテル倒壊。 これほどの事件が積み重なって、異常を感じないほうにこそ無理があるといえるだろう。 もう少し事件の発生が遅れていれば、あるいは旅行の日程が先であれば、この研修旅行は間違いなく中止されていたはずだ。 しかし現実にはそうならず、教員達が絶えず心労に胃を痛めているのだが。 なのははベランダに通じる窓に近付き、カーテンの隙間から外の風景を眺めた。 ――霧が、濃い。 未遠川の周辺が濃密な霧に包まれている。 そのせいで川に架かる大橋の輪郭すら定かではなく、電飾ばかりが霞んで見える。 だが、なのはが感じている異常はそれだけに留まらない。 川の中央に渦巻く、尋常ならざる量の魔力。 常人には決して近く出来ないであろうそれが、なのはの白い肌を粟立たせる。 「やっぱりおかしい……」 なのはは同じ台詞を繰り返した。 理屈の上では理解している。 悪意を持った魔導師が、霧の中で危険極まりない行為に手を染めようとしているのだと。 だが、感情がそれについてこない。 異様な密度で猛り狂う魔力は、まるでどろどろの生き血を絵の具に使った絵画のように狂おしい。 術者の心の底を描き出した地獄絵図だ。 故に、なのはには信じられない。 ここまで歪みきった心の持ち主が、目と鼻の先に存在しているという事実を。 「――っ!」 濃霧の向こうで、水面に変化が起こる。 霧の中、大気を震えさせながら、巨大なナニカが悠然と身を起こしていく。 巨大。 ただひたすらに巨大な、肉の塊。 形容する言葉を思い浮かべることすら躊躇われる異形。 なのははその怪異を呆然と見上げるしかなかった。 そう、ホテルの十二階という高層にありながら、なのははソレを『見上げて』いた。 巨大という言葉が生温く感じるほどの巨体だ。 恐らくは地上――いや、史上においてこれ以上の生命体が地球に存在したことはないだろう。 川岸の民家に次々と電灯が灯っていく。 ガラス戸を閉めていなければ、なのはにも狂乱の声が聞こえたかもしれない。 名伏しがたき存在が、沿岸を目指して行動を開始する。 ".....er! Master!" レイジングハートの呼びかけに、なのはの意識は現実へと引き戻された。 焦る手で鍵を開き、ベランダへと飛び出す。 「いくよ! レイジングハート、セット・アップ!」 "stand by ready. set up." 桃色の魔力光がなのはを包み込む。 瞬時にバリアジャケットが展開され、真の姿を現したレイジングハートがなのはの手に握られる。 アレが何であるのか考えている暇はない。 なのははベランダの手摺を蹴り、夜の空へと身を躍らせた。 ホテルから未遠川までの距離は短い。 余分な思考を挟む暇もなく、なのはは未遠川の上空に到達した。 「…………」 形容しがたい巨獣の周囲を一定の距離を置いて旋回する。 あまりに常軌を逸したグロテスクな外観に、なのはは直視を躊躇った。 頭部に相当する部位はどこにもない。 目も、口も、鼻も、耳も、首すらも見当たらない。 指もなければ手足もなく、胸と胴の境目すら見当もつかない。 ただ只管に大きな肉の塊が、アメーバのように這いずっている。 特徴的な器官といえば、肉のそこかしこから突き出した触手らしきものくらいだろう。 まるで畸形のイソギンチャクだ。 なのはは胸の奥からせり上がってくる酸味に口を閉ざした。 百メートル以上の距離を取って飛んでいるのは、怪物を警戒しているからというだけではない。 生理的嫌悪感が見えない壁のように立ち塞がっているためだ。 「でも……このままじゃ!」 "Divine buster. Stand by." なのはは空中で足を止め、レイジングハートを槍のように構えた。 帯状の魔法陣が杖の周囲を囲み、魔力の集積と加速を開始する。 「ディバイン……」 あれほどの巨体だ。 もはや精密に狙いを定めるまでもない。 砲身と化したレイジングハートから繰り出される爆発的な魔力は、どう放とうと巨獣の肉体を穿つに違いない。 ――それゆえ、心のどこかに油断があったのだろう。 なのはが魔力の解放を宣誓するよりも速く、巨獣から繰り出された触手が、彼我の距離をゼロにした。 "Protection." 「きゃあ!」 瞬時に百メートル以上伸びた触手がなのはを打ち据える。 間一髪で展開されたプロテクションによって直撃こそは免れたものの、サイズに相応しい衝撃力までは殺しきれない。 視界がぐるぐると回り、上下の感覚が消失する。 吹き飛ばされているのか落下しているのかも分からないまま、なのははどうにか姿勢を整えようと足掻いた。 「……あうっ!」 背中から生じた衝撃が全身を駆け巡る。 どこか硬いところに落ちたのだと気付いたのは、首筋に伝わる冷たさと、眼前に広がる夜空を認めた後だった。 普通なら身動きどころか命すら危うい高度だっただろう。 だがバリアジャケットに護られた身体にとっては致命的なダメージではない。 なのはは痛みを堪えて上体を起こし、軽く周囲を見渡した。 豪奢に装飾された大きな橋――冬木大橋。 どうやらそのアーチの中、鉄骨の支柱の傍に落下したようだ。 鉄骨を足場に、なのはは立ち上がる。 見上げるは巨体の異形。 地上五十メートルの高さを誇るアーチと比しても、更にその倍以上はあるであろう体高。 なのはの最大魔砲を以ってしても一撃ではカバーできそうにないサイズである。 どうやって進行しているのか見当もつかないそれは、少しずつではあるが確実に市街へと迫っていた。 「あんなのが街に上がったら……させない!」 再び飛び立とうと、両の脚に力をこめる。 倒せるか否かは問題ではない。 人々に不幸を撒き散らすであろう怪物を放っておくなど、なのはという少女には出来ない。 ただそれだけのことだ。 飛翔の直前、なのはは確かに怪物を見据えていた。 その視界が突如として黒い影に遮られる。 「……っ!」 それが人間の輪郭であることを理解したのは、咄嗟に後方へ飛び退いた直後だった。 闇夜に琥珀色の瞳が光る。 鎧と呼ぶには薄く、平服と呼ぶには異質な濃緑の装備。 絶世と称するに相応しい美貌は、今は怜悧な刃物のような威圧に満ちていた。 「レイジングハート……あの人が近付いてくるの、分かった?」 "......No." 緩やかなアーチの内側で、なのははその男と対峙する。 赤色の長槍を右手に、黄色の短槍を左手に携えて、男はなのはの姿を見据えている。 なのはは無意識のうちに半歩退いた。 あの男の顔を見ているだけで、魔術染みた力の負荷に晒されてしまう。 直接的な害こそは感じられないが、正体の分からない力というのはそれだけで恐ろしいものだ。 ――レジストに成功しているとはいえ、魔貌の効力に一切気がつかないのは、幼さ故なのだろうか。 男が赤い槍の切っ先をなのはへと向ける。 「貴様がキャスターのマスターか?」 その表情は、ただ固い。 苦渋、嫌疑、あるいは否定。 表情から男の真意を確かめることは、なのはには出来なかった。 「……キャスターの、マスター?」 聞き慣れない言葉の羅列を鸚鵡返しに問い返す。 なのはの反応を見て、男はどこか安堵した様子で首を振った。 どうやら彼が抱いていた懸念はある程度払拭されたらしい。 だが、それはなのはにすれば一方的な納得でしかない。 そもそもなのはから見れば、男は巨獣を庇うかのように現れたのだ。 男の真意はともあれ、なのはが彼を味方と考えうる要素は皆無である。 高波のような水飛沫を上げながら、巨獣が沿岸へと迫る。 四百メートルを越える遠大な川幅が幸いして、タイムリミットには幾許かの猶予がある。 なのはは男の視線が巨獣へ移った瞬間を見逃さず、周囲に複数のディバインスフィアを展開させた。 不意を衝いたにも関わらず、男は攻撃の気配を察知し、なのはへ向けて砲弾の如く加速する。 そこまでは予測の範疇だった。 「ディバインシューター、シュート!」 繰り出される五条の魔力弾。 先行して放たれた三射は男の左右と頭上から迫り、回避経路を封殺。 残りの二射が正面から男に襲い掛かっていく。 恐らくこの奇襲は簡単に防御されるだろう。 だがそれで構わない。 これをあえて防御させ、その隙を狙って本命の一手を叩き込むのだ。 直線的に放たれた魔力弾は、吸い込まれるように男の胴体へ命中し――消失した。 「そんな!」 男は防御も回避もしなかった。 呪文の詠唱どころかデバイスのような補助装置すら使用していない。 それなのに、二発のディバインシューターは一切の効力を発揮することなく掻き消えてしまったのだ。 まるで、肉体そのものに魔法を打ち消す力を備えているかのような―― "Protec――" 緊急防御を図るレイジングハート。 その先端部分、赤い珠を囲む金色の環状パーツの隙間に、真紅の長槍の切っ先が滑り込んだ。 火花が散り、削ぎ落とされた金属片が宙を舞う。 切っ先は更に奥へと突き入れられ、バリアジャケットを掠めて停止した。 戦闘の終結は一瞬だった。 なのはの身を護る白亜のバリアジャケットが、魔力の欠片と化して霧散する。 大きな瞳が驚愕に見開かれ、やがて自身の身体へとその視線を落とす。 そこにあるのは、普段着に身を包んだ華奢な体躯だけ。 レイジングハートは突如として機能を停止し、最後の護りたるバリアジャケットも消滅した。 戦闘の体が成り立つ余地すらない。 男が繰り出したのはたった一撃。 その一撃で、なのはは抵抗の余地を残らず刈り取られていた。 「魔術師よ――それがどのような礼装かは知らんが、破魔の紅薔薇の前には全て無力だ」 ゲイ・ジャルグ。 恐らくは赤い魔槍の名。 しかし、男の言葉はなのはに届いていない。 なのはは力なく崩れ、冷たい鉄骨にぺたりと座り込んだ。 瞳に浮かぶ感情は驚きか、それとも恐れか。 男が眼光を鋭くする。 苦々しそうに左腕を持ち上げ、黄色の短槍を振り被る。 「命は取らん。しばらくそこで大人しくしていろ」 雷のように繰り出された短槍がレイジングハートの柄を打ち砕く。 水面にレイジングハートの破片が散って、小さな波紋を残した。 ガラス細工を砕く方が遥かに手ごたえがあったであろう。 あまりにも一方的な、そして決定的な決着であった。 双槍使いの男はへたり込んだなのはを一瞥すると、現れたときと同じように、虚空へと姿を消した。 冷たい風が吹き抜ける鉄骨の足場。 霧は依然として濃いままで、彼女の目では水面の様子すら分からない。 ――ここで、なのはは目撃することになる。 夜空を斬る亜音速の翼。 それすらも容易く叩き落す異形の腕。 光り輝く神話の船と、漆黒の魔力に染まった戦闘機の食らい合い。 そして、魂の隅々まで余すとこなく照らし尽くす、目も眩まんばかりの黄金の光―― ―― -3742日 PM11 00 ―― 極光は河面を舐め、異界の巨獣を余さず焼き尽くした。 かの征服王の宝具を以ってしても足止めが限度であった巨獣は、遠方より振り下ろされた一太刀によって、肉の一辺も残さず消え失せていく。 眩い光が夜景を貫き、そして消えていく。 光輝の御名は約束された勝利の剣―― 「何だよ、あれ……」 河の沿岸で、少年、ウェイバー・ベルベットは呆然と呟いた。 セイバーの左腕は対城宝具だと聞かされてはいたが、これほどだとは予想もしていなかった。 暗さと静寂を取り戻した水面に、深淵の水魔はもはや細胞の一片すら残されていない。 あまりにも壊滅的な破壊力。 ライダーの固有結界やアーチャーの名も知らぬ宝具も凄まじいが、それらと比べても明らかに桁違いだ。 込められた魔力。 圧倒的な熱量。 この世のものとは思えない閃光。 その破壊力はもはや魔術の枠にすら収まらないだろう。 「流石のキャスターも消えたようだ! さっさと引き上げるか!」 鳴り響く雷鳴と、それに掻き消されないほどの大きな声。 ウェイバーは紫電を蹴って降下してくるチャリオットを見上げた。 巨大な牡牛の蹄と車輪が道路を砕き、地震のような衝撃が土手を揺るがす。 慣性をねじ伏せて強引に停止するチャリオット。 巻き起こる粉塵に吹き飛ばされそうになり、ウェイバーは苦々しそうな顔で御者台を見上げた。 「もっと広いところに着地しろ……って……」 御者台に座する巨漢の横から、小さな頭がちょこんと顔を出している。 茶色い髪を二つに結んだ、見たこともない少女の頭。 歳が二桁に達しているかも怪しい顔つきだ。 ウェイバーはしばし呆然とし、そして叫んだ。 「誰だそいつー!」 「ん? 橋の上で震えとったんでな。拾ってきた」 豪放に笑うライダー。 ウェイバーは頭を抱えて蹲った。 橋の上? 震えてた? そんなところに女の子がいるはずがないだろう。 けれどライダーがそんな意味の分からない嘘を吐くとも思えない。 少女が身を乗り出して何か話しかけてきているが、生憎ウェイバーにはヒアリングすら叶わなかった。 「あー、どうやらランサーめに喧嘩を売って返り討ちにあったそうだ。 マスターならばサーヴァントに勝負を吹っかけるわけもないだろうし、大方、聖杯戦争とは無縁の魔術師ってとこじゃあないか?」 硬い顎鬚を擦りながら、ライダーが通訳の真似事を始めた。 時空を超えた知識を付与されているサーヴァントならば、ウェイバーと少女の両方の言語を解するのも容易いのだろう。 「……で、どうして拾ってきたりしたんだ」 「何を言っとる。あの高さから落っこちたら間違いなく死ぬぞ?」 魔術師なら幾らでも手段があるんだ、とはウェイバーは言わなかった。 高所からの落下など、魔術師にとっては気流制御などの初歩的な魔術を駆使するだけで対処できる状況に過ぎない。 だがウェイバーにはそのことをこのサーヴァントに説いて聞かせる気力が残っていなかった。 「はぁ……。とりあえず、その子がどこの誰なのかってことを聞きだしてくれ」 相手は犬猫ではなく暦とした人間である。 元の場所に戻してきなさいで済む話ではない。 ウェイバーは、手早く少女を送り返してマッケンジー邸へと帰ろうと決めた。 魔術師であるらしいとはいえ、夜の街にこんな幼い少女を置き去りにするのは流石に気が引ける。 すぐに隠蔽工作に訪れるであろう魔術協会や聖堂教会へ引き渡そうにも、果たして取り合ってくれるかどうか。 さしもの彼らといえど、今夜はキャスターの所業の後始末に追われてそれどころではないに違いない。 御者台によじ登り、早く出発するようライダーを急かす。 多少の厄介を背負い込むとしても、さっきからセイバーの同行者が向けてきている『可哀相なものを見る目』からさっさと離れてしまいたかった。 と、ウェイバーは少女に語りかけるライダーの言葉の中にマッケンジーという単語を聞き取った。 「おい、まさかうちの住所とか教えてないだろうな」 剣呑に睨むウェイバーに、ライダーは不思議そうな表情を返す。 一体何が問題なのかという疑問がありありと浮かんでいる。 頭を抱えて御者台に突っ伏すウェイバー。 太い指でこめかみを掻くライダー。 そんな二人を戸惑った様子で見比べる少女――高町なのは。 チャリオットを曳く牡牛たちは、背後の騒がしさを気にすることもなく、出発の命を待って喉を鳴らしていた。 これが当時の彼女が知りえた、第四次聖杯戦争。 半月後、兄に無理を言ってマッケンジー邸を訊ねたときには、既にすべてが終わっていた。 バスで通った冬木の街並みはその多くが焼け落ちて、川岸には極光の名残の廃船が無残に座礁。 ライダーは戦いの果てに消滅し、彼女を迎えたのはマッケンジー夫妻とウェイバーだけであった。 聖杯戦争という名すら知らず、偶然に戦場へと迷い込んだ一羽の小鳥。 すべてが終わってから事情を明かされる蚊帳の外の端役。 居ても居なくても影響のない一時の賓客。 それが彼女の配役であり、彼女自身もそれで終わると思っていた。 六十年後に起こるという『次』には関わりえないのだと信じていた。 この不思議な邂逅は次第に記憶の片隅へ追いやられ、本人すらも思い出せないようになっていく。 ――十年後の、とある冬の日までは。 ―― -3742日 PM10 58 ―― 「置き去りにするだけしておいてこの様とは、大した不実だな……」 薄まりつつある夜霧の中、ランサーは自嘲気味に呟いた。 橋上で戦いを挑んできた魔術師の少女。 マスターでないのなら命を取ることもないと、礼装だけ奪ってここに残してきたはいいが、どうやら誰かに先を越されたようだ。 空を仰げば、征服王のチャリオットが稲妻を撒き散らしながら弧を描いている。 着陸する角度を探っているらしいその御者台に、小さな頭がひょっこりと覗いていた。 その様子だけ見れば、サーヴァントに助けられたマスターという構図だ。 しかし、ランサーはあの少女がライダーのマスターではないと知っていた。 ライダーが、自分とセイバーとの戦いに闖入したとき、隣に座していたのは少年であった。 「己のマスターでもないのに助けたのか。まったく、器の大きな王で在らせられることだ」 どことなく皮肉染みた言葉を残し、ランサーは高く跳躍した。 かのサーヴァントの性格を考えれば、あの少女を悪く扱うことはないだろう。 ランサーは疾風のごとき速度で夜の街を駆け抜けた。 今夜、己の破滅が定められたことなど、夢想もせずに。 前 目次 次
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第97管理外世界 『地球』―――その遥か上空。 青く美しいかの星の、大気圏を隔てた宙空。 それを見下ろす形で待機していた現機動6課の旗艦。巡洋艦クラウディア。 「トレース出来ないって………どういう事ですかっ!?」 そのブリッジ内に、まだ少女といっても良い女性の声が響き渡る。 「反応がないの……」 それを受けて答えたのは、前のに比べれば幾分落ち着きの見て取れる声。 眼鏡をかけた理知的な女性から発せられた言葉だった。 しかし、その彼女もまた口調の裏にある微かな震えを抑えられてはいない。 内心の動揺を隠しきれない様相。目の下には深い隈が刻まれている。 見ればその周囲。 コンソロールに向かうオペレーター諸々がハチの巣を突付いたような大騒ぎになっていた。 騒然と動き回る局員達の表情。何かとてつもない不測の事態が起こった事を容易に想像させる。 「あの星はおろか、この宙域全般に、なのはさん達の生体反応を認められない……」 そして一言一言紡ぐように……眼鏡の女性、シャリオ=フェニーノから告げられた言葉。 それは現任務を一通り終え、後発組として到着した元機動6課フォワード陣。 スバルナカジマ。ティアナランスター。エリオモンディアル。キャロルルシエ。 彼らを絶望のどん底に突き落とすに余りあるものだった。 入隊当初は甘さの抜けない新人であったこの四人も幾多の任務、経験を経て今や一人前の局員として成長していた。 だがその彼らをしてこの動揺。高町なのはを初めとした6課中核を担う隊長陣の行方不明というこの事態。 それは物的な危機以上に心情的なそれを以って四人の胸を苛み抉る。 隊が解散する事が決まって後の最後の模擬戦―――己の全てをぶつけ、全部を受け止めてくれた、強くて偉大な先輩たち。 可憐に咲き誇った桜の下で、いつかまたこのメンバーが集える日が来ますようにと頬を伝う涙の元に誓った。 そして今回、期せずして早く訪れた再開の機会は、スカリエッティの脱走という緊迫した状況ではあるにせよ そこに嬉々とした感情を抱いたとしても不思議では無いだろう。 自分の成長した姿を見て貰いたい……そんな思いを抱いて出向したその先でまさかこんな事になっているなんて…… 「ちょっと落ち着きなさい、スバル。」 興奮気味の相棒を嗜めたのはツインテールの髪を束ねた少女、ティアナランスター。 「状況を聞かせて貰えますか? 通信や交信記録とか今、分かっている事だけで良いんです。」 「何も無いの……何も……異常を感じてから二週間、あらゆる空間、次元軸をサーチしたけど痕跡、足跡を全く見つけられない。 まるでこの世界そのものから存在ごと消えてしまったとしか思えないのよ……」 返ってきたのは絶望的な答え。ブリッジに重苦しい雰囲気が流れる。 これは事実上の遭難だ。 あの不沈のトップエース達が、機動6課の主力部隊が任務着手を前にして忽然と姿を消してしまったのだ。 「6課の柱にしてニアSランク魔導士がこぞって行方不明。これはもう私たちだけでどうにかなる問題じゃない…… 今、クロノ艦長やカリム理事官、アコーズ査察官や無限書庫のユーノ司書長も動いてくれてる。」 「私達に出来る事はありますか?」 重苦しい空気の中、真っ先に前向きな姿勢を見せたのはフォワード陣の中で最も幼いキャロルルシエ。 「まずは休んで体力を温存しておいて頂戴……そんな気分じゃないのは分かるけど。 イザという時、真っ先になのはさん達の下に駆けつけられるようにね。」 だが、言うまでもない。 出動部隊である自分達に、事態に対処する術などある筈もなく、ここはオペレーター、そしてその道のエキスパートである者たちに任せるより他に無い。 暗雲立ち込める艦橋の中―――ある者は唇を噛み締め、ある者は虚空に目を泳がせて呆然と立ち尽くすしか術を持たなかったのである。 ―――――― 6課の隊長陣が行方不明になって二週間――― 既に月の半分を浪費しようとしているこの昨今、生え抜きのナビゲーターやエキスパート達が昼夜問わずに動いてそれでもまるで手がかりなし。 はやての副官であるグリフィスや、ヴァイス陸曹長を初めとした生え抜きの隊員達も奔走している中――― 割り振られた部屋でただ時間を潰すなど、消息を絶った隊長達と特に強い絆で結ばれたフォワード陣が我慢出来るはずもなかった。 「スバル。アンタは部屋に戻ってなさい」 「……ティアはどうするの?」 「少し手伝ってくる。ヒヨッコとはいっても執務官補佐だからね……少しはコネや使える情報筋もあるのよ」 「私にも何かやらせてよ!」 「いいから休んでなさい。災害救助のエキスパートでしょアンタは? 出動に備えて万全の体制を整えておくのも仕事のうちよ。」 身を乗り出すスバルに対して上手に手綱を握る彼女の構図。 やはり四人の中ではこのティアナがリーダー格となって場を仕切る雰囲気となる。 彼らにとってもなつかしい空気であった。 「ほら、アンタ達も。」 未だ引っ込みのつかないスバルを諭しながら、ライトニングの二人にも休息を促すティアナ。 「分かりました……行こ、エリオ君。」 今は少しでも体力を温存し、各々が次に繋がる行動を取るしかない。 理屈で割り切れない部分を多々抱えながらも、四人はそこで別れ――沈んだ思いを胸に抱きながら各々の部屋へと帰っていく。 「エリオ君…?」 「あ、うん……ごめん、キャロ。」 不安に沈む少年の顔を覗き見、心配そうな声をあげる白いローブの少女。 6課解散後、僅か一年を隔てぬ期間ではあったが―――少年が、少女が成長するのはとても早い。 当時、子供であった二人もエリオの方は立派な体躯を持った竜騎士見習い。 キャロも僅かながらに女性の魅力を纏う大人の階段を登りつつあった。 しかしながら、それでも家族の安否を気遣う心に年齢は関係がない。 自分を気遣うキャロの視線に力なくも微笑みを返すエリオ。 スターズの二人と別れ、自分達の部屋に戻る二人はその境遇から、互いに兄妹同然の絆で結ばれている。 そしてこの少年、少女を繋げたのは言うまでもなく―――フェイトテスタロッサハラオウン。 生い立ちから辛い仕打ちを受けて心が砕ける寸前だった自分を、持って生まれた力から部族から追放された自分を優しく包み込み 自分の子供のように育ててくれた心優しき金髪の魔導士。 「大丈夫………ティアナさん達の言うとおり、その時が来たら自分達に出来る事を精一杯しよう。」 「………うん」 そして自分達に揺るがぬ力を与えてくれた教導官。 言うなればフェイトとなのはは二人にとって本当の母親であり、父親だった。 大空を翔る白と金の閃光。 常に自分たちを見守り、時には後押ししてくれた二人。 平時は仲睦まじく寄り添う彼女達を少年少女は幻視する――― ―――――― 二人は思う―――― 高町なのはが太陽のような人だとしたらフェイトテスタロッサハラオウンは月だと。 ひっそりと、決してその存在を過度には主張せず しかし確実に優しい光を以って地面を照らし、地上に住まう人達を見守ってくれる。 二人は思う―――― そして信じている。 どんな困難に陥っていようとも……あの二人が一緒にいる限り大丈夫だと。 きっとすぐに帰ってくる。白と黒の法衣を纏ったその肩を並べて。優しい笑顔を称えて。 ただいま……心配かけたね、と。 そんな場面をひたすらに――――少年少女は幻視する。 ―――――― 現実と虚実の狭間にて全てが織り交ざるセカイ――― 高町なのはという太陽はその名に恥じぬ力を見せた。 異世界の英霊を向こうに回し、傷つき地に付しながらも一歩も引かずに戦った。 そして今、今度は月が戦う時が来る。 ただしそれは太陽のそれとは違い、誰にも知られず誰にも主張せず 誰にも称えられない、まるで夜の帳にて皆が寝静まった空を一人、煌々と照らし出すかのように それは誰知る事のない彼女だけの戦いになるだろう。 月の精霊セレーネのように、未だ陰を落とすフェイトの心。 その亀裂との闘い。 幕開けは今、全てが閉鎖された空間にて 自分を慕ってくれる愛しい少年少女の思い届かぬ、無限の欲望の手の平の上にて―――静かに始まるのだった ―――――― Chaser ――― 暗い山道を走るダークメタリックのボディから空気を震わせる排気音が勢い良く響き渡る。 日本の峠道を走らせるには幅広のボディは、しかしこの無人の世界においては些かも不自由を感じさせる事はない。 「どうですか?」 「………ダメだな」 車内においてステアリングを握る金の長髪の見目麗しき女性が何かを尋ね、 それに対して赤みがかったポニーテイルの凛々しい顔立ちの女性が耳に手を当て、かぶりを振って答える。 機動6課の片翼を担うライトニング隊。その隊長のフェイトテスタロッサハラオウンと副隊長のシグナムである。 「もう少しで県境だと思います。通信の状態も少しはよくなるかも……」 小さな声で「ここが海鳴市ならばの話ですが」と付け加えた。 重い空気に支配される車内にて通信手段の途絶に四苦八苦する二人。 沈黙の中、規則正しいスキール音だけがその音を世界に刻む。 「しかし、また偉く安全運転だな。」 「執務官が法廷速度を守らないわけには行きませんからね。」 「それはそうだが、この速度はあまりにもやきもきしないか? 何といっても運転手はお前だ。」 横目で揺れる金髪の奥にある顔を見やるシグナム。 すると少し苦笑した感のある戦友の表情が見て取れた。 「やきもきはしないのですが免許を取る際、何回か注意されました。 その、スピードを出しすぎだと……」 「そうか……やはりな」 クク、と笑いを漏らすシグナムに照れくさそうな表情を作る執務官。 何せ6課最速のオールレンジアタッカーの異名を持つフェイトである。 トップスピードは最新鋭の戦闘機をも凌駕するだろう彼女にとっては時速20~30kmなど止まって見える世界であろう。 かたつむり以下の体感速度で走る乗用車に業を煮やして、ついアクセルを踏み過ぎて怒られる金髪少女の姿が思い浮かんでしょうがない。 「まったく、相変わらずシグナムはフェイトを弄るのが好きだなぁ。」 その騎士の肩上から、フェイトでもシグナムでもない第三者の声が響く。 見ると二人より……否、人間の寸法よりも遥かに小さい、まるで小人のような――― 悪魔が背に背負っているかの如き黒い翼を元気にはためかせる女の子がいた。 剣精アギト。 古代ベルカより残っている純粋な融合機にして、騎士の戦闘力を飛躍的にアップさせる融合型デバイスの少女である。 「も、弄ばれてるんですか…? 私は」 「ただのコミュニケーションだ。気にするな」 「ひっでー! ゴマカしたよ! あはははっ!!」 暗く沈みがちな状況でも、こうした陽気な性格の持ち主がいると随分と違うものだ。 少ない言葉を交わしながら探索を続ける二人+一体。 光の届かぬ山道を走り続ける車は県境と思われる場所を抜け、上り坂続きだった道も勾配のある下りへと変わっていく。 重心が傾き、下腹を持ち上げられる感覚はシートベルトによって肩と胸を締め付けられる感覚によって相殺される。 小高い山道を折り返し、あとは道なりに進むだけで恐らくは10分と掛からぬうちに視界は開け、隣の県の入り口に差し掛かるだろう。 ――――――――そんな時だった 「「……………!」」 車内の空気。 否、中の二人の纏う空気が一変する。 「………? シグナム? フェイト?」 アギトが、おずおずと言葉をかけるが二人は答えない。 答えないままに――その鋭敏な感覚を研ぎ澄ませて今、確かに感じた違和感に意識を傾ける。 ただでさえ無人の空間。人の営む様々な音も喧騒も無いこの世界にて、しかも空気の澄んだ一本道の山道だ。 その空気が震えて音となり、二人の耳に届くのにさして時間はかからなかった。 「後ろからですね…」 「念のためだ。少し速度を上げた方がいいな」 フェイトの車のエンジンボックスから紡ぎ出す排気音とは異なる音。 それは言うなれば、よく真夜中の峠やサーキットで聞くようなタイヤの軋む音。 ギャリギャリ、という耳障りな騒音であった。 まだ自分らを追走してきたのだとは限らない……限らないが…… 「普通の乗用車ですか? それともボックスタイプ…」 「いや、まだよく見えん」 現在、速度は40km弱をキープ。 こんな峠道、それも下りを走るには些か速度超過気味であり、きついヘアピンを抜ける度にギシギシと車体が揺れる。 そして―――その異なる音は、明らかにこちらの速度を上回るスピードで追随してきているのだ。 襲撃という可能性は十二分にある。 ギャリギャリ、ギャリギャリ――― タイヤの擦れる音がだんだんと大きくなっていく。 「車? バイク?」 「いや……」 だがフェイトはここに来てまたも違和感―― (………静か過ぎる) その車輪が道路の接地面を滑る激しい音に反して「それに付随するもの」が全くない事に対する、えもいわれぬ違和感を抱いていた。 そう、モーターとガソリンによって動く自動車。その醸し出すエキゾースト。 激しく回転し、排気ガスを吐き出すエンジンの咆哮が全く聞こえないのだ。 「………!?」 そして隣に座る騎士の様子が一変した事――― シグナムの顔がはっきりと強張り、その目が見張られるのが分かった。 「シグナム…?」 相棒の、密かに息を呑む様子を見逃す執務官ではない。 様相の変化に声をかけるフェイト。それを受けて、騎士はゆっくりと息を吐くように――― 「…………自転車だ」 自分達を猛追してきた影の正体―― 「……………は?」 「追走してきているのは自転車だと言った」 まるでモトクロスよろしく、バンプした峠道の段差をゆうゆうと飛び越えて宙に舞いながら 貧弱な車輪と人力のペダルを伴った乗り物で猛追する姿を今――――騎士の双眸がはっきりと認めたのだ! ―――――― 「ええっ!???」 フェイトが素っ頓狂な声を上げる。 シグナムの顔と速度計を交互に見やりながらステアリングに悪戦苦闘する執務官。 メーターを繰り返し凝視するフェイトの目に映る数値はどう見積もっても40~50kmは軽く出ていた。 「マジかよ……おい!」 アギトも驚きの声をあげる。 「気をつけろ。どうやらまともな通行人ではないようだ」 「そ、それはもう……ええ!」 些か動揺の残る戦友を嗜め、後部に目をやる騎士。 黒い鉄の箱と後方から迫る軽装の二輪がなだらかなS字を抜け、直線に突入した途端 影はまるでジェット噴射でもついているかのように加速を開始し、みるみるうちに接近してきたのだ! 「!! ちっ!?」 舌打ちするシグナムだったが、遅い。 ついにその影とフェイトのクルマが並んだ。 助手席側に並走してくる人力の二輪 。 それを狩る謎の怪人と今、初めて至近で目が合い――― 「えっ!?」 その、二重に意外な事実に驚きの声を上げる二人。 「な、何で……!?」 否、それに小さな少女の吐き出すような声が重なる。 三者の驚愕の理由。 まずはこんな有り得ない速度で追走してくる自転車の操車が競輪選手のような筋骨隆々とした男性――ではなく 美しい髪とスラリと伸びた華奢な手足を車体に絡ませ、その魅力を存分に感じさせる腰をサドルに任せている女性であった事。 (ルー、テシア…?) そして―――その容貌が、かつてJS事件で出会った一人の少女。 ジェイルスカリエッティにその身を利用され、アギトと一緒に行動を共にしていた一人の召喚師の面影を持った女性だったからだ。 紫の髪をはためかせ、両のサドルを蹴りつけて舞うモトクロスライダーの姿は異様としか言いようが無く そしてそんな事よりも遥かに異様で、ルーテシアやその母親とは違う決定的な点。 それは彼女の顔の大半を覆い、表情を隠している眼帯の存在だった。 あれでは完全に視界が閉ざされてしまうだろうに、一体どうやってこの山道を全力疾走で抜けてきたというのか? そして、後部に付かれている時は死角になっていて分からなかった新たなる事実。 疾走する自転車の助手席にもう一つ、人影があったのだ。 そう、風を切り弾丸のように疾走する華奢な女性の狩る自転車は、一定速を出した車に難なく追いついてきたその二輪は―――あろう事か二人乗り。 後部席の人影は男だった。 全身を蒼で統一したスーツに身を包んだ、一見素朴で粗野な出で立ちは しかし精悍で猛々しい相貌。その身に纏う空気が装飾品となり全く貧相さを感じさせない。 そして右肩に担いだ細い棒のようなナニカ―― 物干し竿のような長物が、この場にて得も知れぬ存在感を誇示し異彩を放っていたのだ。 「よう」 だが緊迫した場にあげられた男の声は、取り巻く空気に全く似つかわしくない陽気な響きさえ含んだものだった。 歴戦の勇者であるライトニング隊の二人がどう答えてよいか分からぬほどに、それは開けっぴろげで馴れ馴れしい まるで見知った友人に話しかけるかのような初顔合わせの挨拶。 「さっそくで悪いが――」 だが、そんな事はどうでもよかった。 男にとっては恐らく、初めましての挨拶が陽気なものであろうが険悪な響きを持たせようが何でもよかったのだろう。 何故なら彼が駆け抜けてきたその生涯は――――剣舞い、槍踊る戦場。 「死んでくれや」 言葉など、何の意味も持たないセカイだったのだから。 「!! 貴様ッッッ!!」 ハンドルを握る手が強張るフェイト。 助手席のシグナムが怒号を上げる。 サイドバイサイドで並び疾走する大型のクーペと二輪。 紫の女の後部にて、宙舞う矢の様な激走に全くバランスを崩すことなく男は構えた。 その肩に担がれた細い棒……否、血の様な光沢を放つ真紅の槍を! シグナムとフェイトが行動に移すそれよりも遥かに速く、まるで紅き春雷を思わせる閃光の如く放たれた槍。 その凶つ刃がポニーテイルの騎士の座す助手席のウィンドガラスに深々と叩き込まれていたのだった。 ―――――― 並走するは3Lを勇に超える排気量を叩き出す黒いボディと、自転車。 まるで馬と戦車を並べたような不釣合いな電撃戦。 ともあれ二者は出会い、今まさにその刃を晒して戦闘の火蓋を切った。 先に仕掛けたのは貧弱な馬に身を預けるカウボーイ&ガール。 手に持つ得物で巨大な猛牛を連想させる黒きボディの横っ腹に鋭敏な刃を突き入れたのだ! クルマが車体を大きく揺らし、四つのタイヤが軋みを上げて横滑りする。 濁走するメタリックボディの車内にて、真っ赤な鮮血が飛び散った。 「シグナムぅッッ!」 アギトが悲鳴に近い声を上げる。 このデバイスのロードである騎士の肩口から下げたシートベルトが切断され、はらりと騎士の腿部分に落ちる。 その肩から下―――鎖骨の辺りから噴き出す赤い液体を認め、フェイトの顔も青ざめる。 「………大丈夫だ」 だが、ややもして何事もなかったかのような声を返すベルカの騎士。 懐から抜かれているのは彼女の愛剣レヴァンティン。 狭い車内、しかもシートベルトに身を拘束されていながら、横から突き入れられた稲妻のような槍の軌道を見事、剣先によって逸らしていたのだ。 「………少しへコますぞ」 「え?」 ボソっと呟いた騎士の言葉。 その後、間髪を入れずに轟くボコン!!という大きな鈍い音。 フェイトが息を呑む。 それはサイドドアに刺さった槍を持つ男と、二輪を繰る女をそのままドア越しに蹴り飛ばし、引き剥がした音だった。 「うおっ!?」 声を上げる男諸共に大きく弾き飛ばされた女の乗る自転車が、みるみるうちに後方へと置き去りにされていく。 「すまんな。手荒に扱った」 「い、いえ……」 騎士の伸ばした腕がドアの取っ手を引き付け、助手席のドアは間を置かずに閉められた。 短い謝罪の言葉に、受け答えするフェイトの声は些か固い。 不自然に上ずった声は動揺の現れであろう。 (…………!) だが、シグナムは実はそれどころではない。 容易く斬り払ったように見えたあの一撃の、その全身に寒い汗をかかずにはいられない凄まじい一突きに戦慄を感じずにはいられなかった。 人体において、胸骨と胸筋に守られている正面からよりも、わきの下から縫い入れられるように突いた方が効率よく貫けるもの。 それは―――心臓。 あの敵は間違いなく側面から数分違わず「それ」を狙ってきた。 それも自分だけではなく、隣にいるパートナーをも一度に串刺しにする軌道でだ。 反応が少しでも遅れていれば自分とフェイト、二人まとめて仕留められていただろう。 「そのままガードレール沿いに走れ」 「え? でも……」 「いいから言うとおりにしろ!絶対にそちら側を空けるなよ!」 もし先ほど運転席側に回られて一撃を繰り出されていたら、ステアリングで両手が塞がってるフェイトは為す術もなかったはずだ。 この狭くて小回りの効かない車内であの凄まじい一撃をもう一度防げる保障もまたどこにもない。 何とか助手席から飛び出し、戦闘体勢を整えたいシグナムだったのだが――― (駄目か…) 後方に追随する謎の敵は先ほど思いっきり蹴り剥がしたにも関わらず転倒もせずに追随してくる。 今飛び出すのはよろしくない。 顔を出した途端、あの槍で狙い撃ちにされるのは確実だ。 空戦の基本―― 空を主戦場にする者は、離陸時が一番危ない事を肝に命じるべし。 速度も乗らず、戦闘態勢も整わぬ柔らかい腹を敵に無様に晒すことなかれ、である。 「先に出る。どうにかしてあれを引き離せないか?」 「……やってみます」 フェイトの右足が愛車のアクセルを思いっきり踏み込む。 緊急事態において今更、法廷速度がどうのだの言ってる場合ではない。 アクセルを全開にした事によって加速度的に上がるエンジンの回転数。 それによって叩き出される馬力は凄まじく、例え相手が競輪選手並の脚力を持っていようとみるみるうちにその差が開いていくのは当然の事だ。 だがフェイトらにとっての不幸は、ここが峠の下りだという事。 つるべのように続くヘアピンやS字カーブが続くコーナーの坩堝において、3000cc以上の大排気量を最大限に発揮出来る地点など無いに等しく すぐ間近に迫るヘアピンカーブに減速を余儀なくされる黒い鉄の塊。 その背後に迫る女の隠された両の瞳には、今やはっきりと相手のクルマの減速を表す点灯したブレーキランプが見てとれた。 ここが相手を刺す絶好のポイントである事は自明の理。 この紫紺の女怪が「騎兵」の名を持つ英霊であるが故に、走りにおいて勝負所を見誤るわけもない。 相手の減速にまるで示し合わせたかのように黒いスカートで覆われた腰がサドルから浮き、身を乗り出して重心をぐんと前に倒す。 その時、非力な二輪車は―――峠を駆け下りる流星となった。 「な、なに…!?」 サイドミラーを見ながら飛び出すタイミングを見計らっていたシグナムが歯を食い縛って唸る。 一旦は突き放したかに見えた相手が、恐るべき速さで追い上げてくるのだ! 自転車は人力でありエンジンに当たる部分がその両足であるのなら、女の両足に潜む力はもはや地球上に現存するあらゆる生物を凌駕しかねない。 もっともこんな漕ぎ方を女性が、しかもタイトなミニスカートでぎりぎり腰上を覆ったような格好の女性が間違ってもするべきではない。 何故ならば―― 「おい。中が見えてんぞ中が」 「発情ましたか? 流石、野犬の二つ名は伊達ではないという事ですか」 「抜かせ。誰が貴様の尻など好んで見るか」 ―――倫理的に男性にとって、目のやり場に困る光景が展開される事になるからである。 馬上にてこんなやり取りをかます男女。 もっともこの女性の正体を知れば、そんな恐ろしいモノに劣情を催せる男など数えるほどもいないであろうが。 「こんの野郎……!!!」 穴の開いたクルマのボディから上半身を覗かせたのは小人の少女、アギト。 融合デバイスでありながら自身も炎系の魔法の使い手である彼女の手に得意の炎弾が具現化。 眼前に迫る怪人に火の玉の雨あられをぶち撒ける! まるで数百発のロケット花火を同時に打ち込んだかのような凄まじい弾幕が二輪を駆るライダーを襲う。 だが、まるで炎弾の間と間を縫うように――頼りない車体が右へ左へとあり得ない挙動をアスファルトに刻んで炎熱の道を掻い潜ってくる。 「サ、サーカス野郎がっ! 来るんじゃねぇ! 止まれぇぇぇ!!!」 剣の精が絶叫交じりに手を振りかぶり、その狭い道一杯に広がる炎の壁を生じさせる。 真紅のカーテンを思わせる灼熱の防壁が後方より猛追する化け物ライダーの進行を阻もうとする。 が、アギト渾身の燃え盛る壁は、まるで障子を突き破るかの如く炎の中に何の躊躇いもなく直進したライダーによって突き破られ 何事もなかったように追走を続ける彼女の姿を場に写すのみ。 「信じられねえ……チャリじゃねえよ……あれ」 「実は高性能デバイスというオチかも…… もしそうならシャーリーに持って帰ってあげれば喜びそうですね」 「やめろ。何とかにハサミだ」 U字の形をしたきついコーナーにさしかかり、フルブレーキをかけるフェイトの車体がグリップの限界を超えて横に傾く。 「くっ!?」 限界を超えてしまった車体を制御しようと逆ハンドルを切るフェイト。 空戦の姿勢制御のようにはいかない重いボディに四苦八苦する彼女を嘲笑うかのような横Gの洗礼。 黒い車体が身の毛もよだつスキール音と共にボディを泳がせるコーナー。 そこに後方、何とノーブレーキで突っ込んでくる、もはや火の玉と化した二輪車。 ギャリギャリ、とチェーンが軋む音が場に響き、細いタイヤからはレーシングカーのように火花が飛び散っている。 「―――往きますよ、参号」 それは眼帯の女から、己が手綱を任せる貧弱な機体に向けての言葉。 静かながらも騎兵としての誇りを乗せた言葉と共に―――二輪の操車、サーヴァント=ライダーは 黒い車体に体当たりするかの如き速度でコーナーに突っ込んだのだ! ―――――― 腰下までかかる紫紺の髪が凄まじい向かい風に煽られて、それ自体が独立した生き物であるかのように空に踊る。 ネコ科の獣が全身のバネを総動員する時に取る猫背の姿勢に酷似した姿で 眼帯の女は両手のグリップを捻じ切らんばかりに握り締め、足下のペダルを蹴りつける。 光差さぬ林道を弾丸のように駆け抜けるその姿はまるで一匹の神獣が疾走するかのような桁違いの迫力を以ってライトニングの二人に迫り来ていた。 自由度の高い二輪ならではの、ライダー自身の体重すら利用した荷重移動――ハングオンを駆使し あろう事か明らかに二つのタイヤのグリップを超えるスピード……というか、全くの減速無しでコーナーに突っ込む! 横滑りする二つのタイヤは制御を失い、吹き飛ばんとするその車体を 彼女は地面に押さえつけるかのように車体を倒して凌ぎ、凄まじい角度でのコーナリングを敢行。 ほとんど地面と平行になる体。アスファルトスレスレに傾くほどのハングオン。 その剥き出しの肘と膝を地面に擦り付けてのライディングは道路に黒と赤のベルトのような軌跡を刻んでいく。 黒はタイヤの削れた跡。赤はライダーの右半身の、削られたヒジとヒザから付着した血肉そのもの。 この速度だ。彼女の肉体は公式のスポーツのように分厚いパッドの保護など受けてはいない。 地面に擦り付けられる白い肘、膝が大根おろしのように肉や皮をこそぎ取られ、程なくして骨にまで達するような重症となるのは明白だった。 でありながら、それでも女の繰る自転車は確実に先に侵入した相手の車に迫っていく。 そう、彼女は騎兵。 あらゆる騎馬を使役し、誰よりも早く世界を駆け抜けるもの。 相手が何人であろうとも、自分の前を走る存在など認められる筈が無い。 「ふッ!――――」 目隠しで隠された双眸に今、確実に力が篭る。 女の口元がギリっと歪み、牙を含んだその歯を食い縛る音は車体が風を切る音に寸断されて消える。 地に擦り付けられている右の手足とは逆の足を自在に使いこなし 左足のみのペダルワークで、まるで電車や機関車の車輪を回す骨格の如き速度でホイールを回転させていく姿はもはや曲乗りの域。 超高速で回転するチェーンによってぐんぐんと前に押し出されていく車体。 人間の常識では有り得ないライディングによって、尾を引いた流星の如き暴力的な速さでコーナーを駆け抜ける自転車がついにフェイトの繰るクーペに並ぶ! 「こ、これ以上は……!」 フェイトが歯噛みし、シグナムが舌打ちしながら今一度、剣を構える。 コーナリング最中にてサイドバイサイドで並ぶ両者。自転車の後部席に座す男が再び槍を構えていた! 車体が地面とほぼ平行に傾いている最中でありながら、両の手に槍を構えて振り落とされる素振りさえ見せぬ彼。 未舗装の峠の道路の中、跳ねる車体の上で、しかもコーナリング最中でありながら、真紅の魔槍を手に持ち、右中段に構えて見せたのだ。 赤い光沢を称える槍よりもなお紅い男の双眸がギラリと光る。 そして、カーブに手間取るフェイトの車を完全に抜き去るライダーの「参号」 その追い抜き様に―――ランサーが、構えた槍を車の後輪に渾身の力でブチ込んだのだ! 「う、あっ!?」 自らの愛車に起きた異変―――それが取り返しのつかないものである事をステアリングを握るフェイトが分からぬ筈はない。 右下半身が一瞬浮き上がり、そして地に叩きつける感触に顔を青くする魔導士。 車の右後輪はあえなくバースト。 黒いボディが大きく傾く。 荷重の抜けた車体後部があえなく空転し、その狭いカーブで時計回りに一回転。 盛大にスピンした車体を立て直す術はもはや無く、フェイトとシグナムを乗せた黒いボディがガードレールに激突し 静寂の支配する森に凄まじいクラッシュ音が鳴り響く! 「ああっっ!!?」 車内に走る衝撃と振動は凄まじく、二人と一体の身体を上下左右へと叩きつける。 もはやシートベルトなど何の役にも立たない。 短い悲鳴を上げるフェイトを嘲笑いながら、その手を拱くは死神か―― 3トンを超える鉄の塊はガードレールを巻き込み、それを容易く突き破って漆黒の渓谷へとダイブ。 遥か崖下へと転落していったのだった。 ―――――― アスファルトに帯のように刻み込まれた焦げ臭い跡。 黒い飛沫、そして内溶液が飛び散り、オイルの独特の匂いを場に充満させる。 長いガードレールは無残にひしゃげ、真ん中から捻り千切れている。 後続の玉突きが起こらないのは不幸中の幸いか―――そう、後続の車など来る筈がない。 何故ならここは彼らが踊るための彼らだけの舞台。 セカイはその他一切の生物の存在を認めてはいないのだから。 一体誰が、何のために用意した演出なのか、渦中の者達にそれを理解する術はない。 ともあれ時間にして実に数分弱……電光石火のカーチェイスはこうして幕を閉じる。 奈落に落ちていったダークメタリックのクーペ。 そのボディはグシャグシャに潰れ、立派なフォルムを誇る大排気量のスポーツカーは見る影もない有様となっているだろう。 最もバトルを制した方も無事ではなかった。 操車である紫の女性の乗っていた自転車は今、サドルも、ベダルも、ハンドルも、チェーンも、一所には無い。 最後のコーナリングで相手のクルマを崖に叩き落してほどなく、限界を超えたライディングに耐えられなった二万円弱の汎用自転車は まず前輪、後輪共にバーストし、宙に吹き飛んだ車体がフレームを残し、焼き切れ、捻じ切れ、ひしゃげ 文字通りの空中分解を起こして乗車していた二人を上空へと投げ出していたのだ。 当然、そのような速度で空へと飛ばされた人間が無事で済む筈が無いのだが…… ―――ズシャリ、 だからこそ、このような陰惨な大事故の渦中にあって何事もなかったように地面に佇む二人こそ 正真正銘の人間を超えた存在と呼ばれるものであろう。 とある儀式によって現世に呼び出された一つの奇跡の体現。 地上に形を成した英霊―――サーヴァントと呼ばれる人外の存在。 騎兵のクラスに召還されたサーヴァントライダー。 槍兵のクラスにその身を置くサーヴァントランサー。 いずれも地球の伝承にその名を連ねる伝説上の存在、具現した神秘そのものである。 「ところで、ランサー」 その片方、紫紺の女サーヴァントが些か怪訝な表情で隣の槍兵に問いかける。 「我々は自らの足で走って強襲をかけた方が確実だったのでは…?」 「分かってねえな……戦にも様式美ってもんがあるんだよ。 良い戦車戦だった。久しぶりに堪能したぜ。」 核心を冷静についた騎兵の言葉など聞いちゃいない。 古アイルランドの大地を豪壮な戦車で走り回った過去を思い出し、目を細めるグラディエイターである。 「戦車、ですか? あれは私の新車の参号君ですが」 「うるせえんだよお前は。細かい事をグチグチと…… まあどの道、初顔合わせの挨拶としちゃこんなもんだろ。」 思い出に浸るのを邪魔されて口を尖らせる男が意味深な言葉を吐き、そして―――後方へ向き直った。 その横、ライダーもまた同様に、先ほどのコーナリングで傷ついた肘から滲み出す血をペロリと舐めながらに振り返る。 それは視線の先に二つの気配、佇む影を認めての事だった。 怒気と戦意を含んだ猛々しい気を放つ影を後ろに控えたサーヴァント二体。 男は飄々とした笑みを、女は無表情を崩すことなく、十分な余裕を以って振り返り相対する。 その相手とは言うまでも無く―――― 「貴様ら……」 先ほど谷底へと消えていった筈のライトニングの面々に相違ない。 明確な殺気を放って対峙するシグナムが怒りの声を上げる。 あれだけの事をしておきながら余裕満々で立つ二人を前に少なからず苛立ちを覚える将。 既に二人は、相手がどう出てこようと対処できるようBJを纏った完全武装体勢である。 (む……?) だがそこで騎士が、横にいる友の様子に気づいて訝しげに見やる。 謎の怪人相手に武装し、得意武器のサイスを以って相対している彼女であったが――― 何かこう心ここにあらずというか、精彩を欠いている感が見て取れたからだ。 どこか目が呆然としている節がある。 「テスタロッサ?」 この友人は極めて優秀な執務官にして武装隊の一員だ。 敵を前にしてこのような呆けた態度を取るなど有り得ない。 声をかけるシグナムであったが、 (…………、) その理由に程なくして気づく騎士。 フェイトの意識は今、自分らが落ちていった谷底に向けられていた。 否、自分らではなく――為す術なく落ちていった己の愛車に…… 「集中しろテスタロッサ。敵の前だ」 ああそうか……と思い至り、その傷心が痛いほどよく分かるだけに叱責を飛ばすシグナムの声にも今一張りがない。 元々がほとんど物欲を示さないフェイトが初めて大きな買い物をしたのが―――あの車だった。 今回のように仕事で使う事が大半であったが、忙しい中のたまの休日などに 子供のように可愛がっているエリオやキャロを乗せてハイキングにいったり、なのはを助手席に乗せてドライブしたりと そんなささやかな幸せを謳歌するために購入した彼女唯一の慎ましやかな贅沢。幸せの詰まった黒い箱。 ソレが今、暴漢の手によって無残な鉄屑と化し、谷底へと消えていったのだ。 その失望と悲しみは想像するに余りあるものであろう。 「……テスタロッサ!」 シグナムが再び強い口調で戦友の名を呼ぶ。 「大丈夫です」 乾いた声で答えるフェイト。 「ただ、まだ少し支払いが残っていたので……どうしようかな、と」 はは、と形だけの笑みを作る執務官。 痛々しくて見ていられない。 「保険で払って貰え…」 「いや、そいつは無理じゃねえかな?」 不器用なフォローを入れるシグナムだったが、相槌の声は意外なところからかけられた。 そのフェイトを悲しませている原因を作った目の前の男が、肩に槍をトントンと担ぎながらに飄々と口を挟んできたのだ。 「保険ってのは確か対象の具合によって金額が決まるって話だろ? 半損か全損か?部位は?状況は?と、五月蝿いくらいに状況を鑑みて初めて支払われるわけだが――あれじゃ、なぁ…」 チラリと谷底を見やり、まるで他人事のように口ずさむ男。 「確かにあれでは査定のしようがありませんね。 事故の状況を説明するにも、この状況では――」 そして隣の女性がしれっと続く。 「自転車に乗った二人組の男女に車ごと突き落とされました―― このような説明では冗談としか受け取って貰えません。 それにこの奈落の深さでは物品の回収も絶望的でしょう。」 つらつらと並べ立てる言葉には何故か凄まじい説得力がある。 まるで色々なアルバイトに従事してやけに世俗に詳しいフリーターであり まるで古書や骨董品のバイトで査定というものに精通するパートさんのような口ぶりである。 「かまいません」 だが、やがて(この執務官には珍しく)強い口調で言い放つフェイト。 「あなた方を捕らえて弁償してもらいますから」 本来ならここで犯罪者に対しての勧告、警告をしなければいけないのだが、そんな基本もすっかり頭から吹っ飛んでいる。 この心優しい雷神はかなり怒っていた。 「そいつは困ったな……俺、カネねえんだよ。」 「私は居候の身ですから。まあ、私の愛車もあの通り木っ端微塵なのでそれで痛み分けという事に……」 「……ふざけるな!」 怒りの口調を叩きつけるシグナム。 「そうだな………まあ、アレだ。俺に良い考えがあるんだが」 後ろ手に頭をポリポリと掻きながら、男が相手の怒りをなだめるように割って入る。 親近感の沸く表情は、こんな事態でなければ気風の良い青年にしか見えない。 まるで心底悪いと思ってるかのような男の様相に邪悪なものは感じない。 そんな男が――― 「死ねば―――残りの支払いからは解放されるぜ?」 ――――不意打ちのように、獰猛な殺気を解放した 前 目次 次
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《AGE-NT プロテオ》 光属性 ☆☆☆☆☆ 【岩石族・効果】 自分がダメージを受けた時、このカードを手札から表側守備表示で特殊召喚する事ができる。この効果は自分フィールド上に「AGE-NT プロテオ」が表側表示で存在する場合は発動できない。 ATK 600 / DEF 2000
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アクア・プロテクター 水文明 UC コスト 3 1000 リキッド・ピープル ■自分の「ブロッカー」を持つクリーチャーは、相手のブロックされないクリーチャーの攻撃をブロックすることができる。 (F)「本当に無敵だと思ったか?」----アクア・プロテクター 作者:セレナーデ 《斬隠オロチ》とは違い、正面から堂々と《クリスタル・アックス》の奇襲攻撃を防ぐことができるようになるクリーチャー。 このクリーチャー自身はブロッカーではないので別のブロッカーとセットで。 収録 星戦編 第一弾(プラネット・コマンド) 評価 名前 コメント
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第5話「魔槍Ⅱ」 ――三日目 AM9 12―― そのとき、何の前触れも無く、視界を赤く鋭い光が横切った。 まるで流星のように斜め上から地上へと突き刺さる。 瞬間、凄まじい爆風と共に地面が爆ぜた。 音の域を越え、膨張する大気の壁と化した爆音が周囲を薙ぎ払う。 巻き上がる瓦礫の柱。 衝撃が大地を揺るがせ、亀裂とクレーターの重なった歪な形に打ち砕く。 道路の舗装材は砂細工のごとく粉砕されて、元が何であったのかすら分からない。 「――っあ……」 最初に起き上がったのはスバルだった。 身体を伝い、ざぁ、と砂が落ちる。 右足を踏み出す。 たったそれだけで、スバルの口から苦痛の声が漏れた。 全身が悲鳴を上げている。 どこが痛いのか具体的に言い表せないほどに。 頭がくらくらする。 口中がじゃりじゃりと不快な感触で一杯だ。 バリアジャケットを纏っているとはいえ、『爆心地』の間近にいながらこの程度で済んだのは僥倖だろう。 そう、爆心地。 何者かの放った攻撃が着弾と同時に爆発したとしか考えられない。 辺りは吹き飛ばされた砂埃で靄が掛かっていて、視界がとても悪い。 それでもスバルは視線を走らせていた。 すぐ傍にティアナがいたはずなのだ。 自分と同じように吹き飛ばされて、もしかしたら怪我をしているかもしれない。 靄の向こう、スバルはそびえ立つソレを見た。 奇怪なオブジェだった。 どこかで見たことがあるような、不思議な既視感。 「――――」 紛れもなく、それはハイウェイの残骸であった。 支えとなる巨大な柱の一つが砕け去り、ぶつ切れの車道がそこかしこに散乱している。 破壊は今も収まらず、少しずつ崩落を続けていた。 巨人の拳に叩き潰されたかのような惨状だ。 スバルは、全身に走る痛みも忘れて、引き寄せられるように歩き出した。 あそこに何かがある。 粉塵の霧に覆われた瓦礫だらけの道を進む。 数十秒か、数分か、数時間か。 ぼろぼろの身体では時間感覚も不確かだ。 やがて、マッハキャリバーの車輪が、瓦礫のない地面を踏みしめた。 舗装材が完全に吹き飛んで、土そのものが露出していた。 微風が吹き、粉塵が流れていく。 広がっていたのは、平たく均された土砂以外には何もない、大きなクレーター。 その中央に、真紅の槍が突き刺さっていた。 ぞくりと、背筋が震える。 流れたばかりの鮮血のように禍々しい紅。 これだ。 これが『原因』だ―― スバルは自分が呼吸すら忘れていることに気付いた。 脚がすくむ。 槍の放つ圧倒的な威圧に気圧されて、これ以上先に進めなかった。 だが―― ――ジャリ 靴底が砂を踏む音がした。 クレーターの向こう側から、一歩ずつゆっくりと、誰かが近付いてくる。 スバルの視線は音のする方向に釘付けになっていた。 逃げ出そうという発想が麻痺している。 すぐにでも逃げ出すべきなのに、身体が言うことを聞かない。 粉塵の霧が割れる。 現れたのは、一人の男だった。 狂気を孕んだ紅い瞳に、肩まで届くざんばら髪。 屈強な肉体は薄い鎧に包まれて、左手にも槍のようなものを握っている。 その貌には、欠片ほどの正気もない。 喩えるならば狂える獣。 「――■■■■■――」 言語としての意味を成さない唸り。 狂戦士は大地に突き刺さった紅い槍を握り、一気に引き抜いた。 片目がぎょろりと動き、スバルの姿を捉える。 その直後、スバルは胸の中央を貫かれた。 ――そう錯覚した。 ただ見据えられただけで、死を実感させられる。 呼吸が上手くいかない。胸が痛い。 あそこに在るのはヒトの姿をした狂気だ。 死が――狂戦士がスバルに向き直る。 あの爆発は、アイツが起こした。 つまり、ティアナを。 「……ぁぁぁあああああっ!」 瞬間、スバルは弾かれるように飛び出した。 可能な限りの速度まで加速したマッハキャリバーが、膨大な量の砂煙を巻き上げる。 スバルは狂戦士から目を逸らさず、右腕を振り被った。 カートリッジを一発リロード。 ナックルスピナーが高速で回転を始め、これから放たれる一撃の威力を高めていく。 「リボルバー……シュートッ!」 螺旋状の衝撃波を帯びた魔力の一撃が繰り出される。 辺りの粉塵を吹き飛ばし、無防備に立つ狂戦士へと迫る。 紛れもない必中の軌跡。 だが、外れた。 狂戦士の姿が突如として揺らぎ、リボルバーシュートの射線から掻き消える。 躊躇は一瞬。 スバルは思考するよりも早く、真横へと飛び退いた。 攻撃のために伸ばした右腕。 それが作るほんの僅かな死角から、紅い槍の凶刃が突き出される。 着地し、態勢を整えるスバル。 その瞳が、長槍を構え音もなく突進する狂戦士の姿を映す。 穂先がスバルを貫くまでに、もはや秒の猶予もない。 ≪Protection.≫ 辛うじて展開されるプロテクション。 堅牢なるその守りは魔槍の切っ先を押し止め――貫かれた。 「――え」 押し止めたのはほんの一瞬。 最初から防壁など無かったと言わんばかりに、切っ先は速度を緩めない。 狂戦士が地を蹴った音が今更になって響く。 すなわち、音速を越える突撃。 だが一瞬は止まったのだ。 その一瞬のうちに、スバルは素早く身を捻り、辛うじて狂戦士の牙から逃れる。 死をもたらす凶刃が数センチ先の大気を切り裂く。 回避できたと安堵する暇もなく、槍が消えた。 凄まじい衝撃がスバルの胴体を襲う。 狂戦士は槍の一撃が回避されるや否や、棍棒の如く殴りつける行動に出たのだ。 上向きに振り抜かれた槍がスバルを軽々と持ち上げ、その身を宙に浮かせる。 「――ぁぐ……!」 バリアジャケットのお陰で致命的なダメージには至らない。 しかし掻き混ぜられた三半規管は正しい感覚を失い、スバルの思考をフリーズさせる。 虚ろな視界が捉えたのは、左手の短い武装を構える狂戦士の姿だった。 放たれるは筋力に任せた野蛮な投擲。 それですらも音を置き去りにし、大気を引き裂いて飛翔する。 プロテクションをも容易く貫く威力に耐える術を、スバルは持たない。 抵抗の余地はなかった。 スバルは本能的に目蓋を強く瞑り、貫かれる痛みに堪えようとしていた。 響き渡る金属音。 思わず眼を開くスバル。 飛来していた槍が黒い刀身の剣と衝突し、宙を舞っていた。 「スバル!」 重力に引かれて、何か柔らかいものの上に落下する。 「痛たた……」 「ティ……ア……?」 スバルの下敷きになりながらも、ティアナが上体を起こす。 落ちてきたスバルを助けようとしたが、支えきれずに潰されてしまったらしい。 「どうして、ティアが……」 「どうしてはこっちの台詞! どうして一人で戦ったりするの!」 ティアナは砂塗れの顔をスバルに近づけた。 怒っているというよりは、心配していたという感じの表情。 スバルは言葉を選ぶように口をもごつかせた。 「……ごめん」 最初に出てきたのは謝罪だった。 「ティアがあいつにやられちゃったんだと思って、つい我慢が……」 「……馬鹿」 顔を背けるティアナ。 怒らせてしまったと思ったのか、スバルはしゅんと身を縮めた。 先程の衝突だけで理解できた。 相手は自分とは次元が違う。 逆立ちしたって勝てる手段がない。 そんな敵に一人で向かっていったのだから、怒られるのも当たり前だと思えた。 「――そうだ、アイツは!」 慌ててクレーターの方を見る。 紅槍一本を構え、狂戦士は立ち止まっていた。 そして、スバル達と狂戦士の間に立つ、一人の男。 「エミヤ……さん?」 トレース オン 「――――投影、開始」 エミヤシロウの両手に魔力が迸る。 瞬時に輪郭が構成され、二振りの剣が具現化する。 左には、赤い六角形の幾何学的文様で彩られた、漆黒の片刃剣。 右には、黒剣と同じ形状でありながら一点の曇りもない、白亜の片刃剣。 これこそが宝具・干将莫邪。 対となって存在することを前提に鍛造された、夫婦剣の姿だった。 狂戦士が大地と並行に跳躍する。 もはや突進の域ではなく、肉体そのものが砲弾と化している。 更にそこから上体の膂力を乗せて槍が加速。 視覚の限界はとうに越えた。 禍き残光が一直線にエミヤシロウを穿たんとする。 それを黒剣を以って凌ぐ。 穂先を打ち軌道を逸らす程度の防御。 残像が消えるより早く、槍は狂戦士の元へ引き寄せられ、再び繰り出される。 「――――はぁっ!」 赤い鋭光の奔流を、白色と黒色の旋風が辛うじて押し止める。 嵐のような――比喩ではなく、局所的な暴風が吹き荒れる。 しかし、それも数合。 双剣を重ね、心臓を狙った一撃を正面から受ける。 咄嗟の行為といえ無謀な防御であった。 黒い刀身に亀裂が走り、砕ける。 槍は更に貫通し、白い刀身をも打ち砕いた。 「がっ……!」 直撃は防いだ。 しかし次はない。 間髪入れず致命的な刺突が放たれる。 トレース オン 「――――投影、開始……!」 槍を目掛け振り下ろされる無手。 瞬間に形を成した双剣が、再び槍の軌跡を押し曲げた。 激しい衝突の轟音が都市区画に響く。 そして、静寂。 両者の動きが止まっていた。 双眸は互いを睨み合い、武器と武器は尚も擦れあっている。 神速の剣戟から、一時の膠着状態へ。 スバルとティアナは、呆然と戦いを見守っていることしか出来ていなかった。 エミヤシロウはあの狂戦士と互角に打ち合っているのではない。 死力を尽くし、どうにか食い下がっているに過ぎないのだ。 そのことは互いの姿を見ればすぐに分かる。 肩を上下させて荒い呼吸を繰り返すエミヤシロウ。 疲労の色を微塵も見せず、最初と変わらず唸りを上げる狂戦士。 もう一度打ち合いを始めれば、数秒耐えられるか否か―― ティアナはクロスミラージュを握り締めた。 援護するしかない。 けれど、果たして通用するのか。 不安が震えとなって身体を駆け巡る。 そのとき、狂戦士が嗤った。 口の端を歪め、獰猛な牙が露出する。 アレは戦いを愉しんでいるのだ。 理性を不要とし、戦に狂う。 紛れもない"狂戦士"の姿だった。 殺刃の気迫がエミヤシロウの、ティアナ=ランスターの、スバル=ナカジマの身体を貫く。 眼に見えそうな殺気が背筋を粟立たせ、本能に近い感情を呼び起こす。 即ち、死への恐怖。 今までの戦いなど戯れに過ぎなかったのだと言外に告げている。 それだけで脚は竦み、敵対の意志を砕かれる。 しかしただ一人、エミヤシロウだけは前進を続けた。 「……ぁあ!」 槍を弾き、白剣を持つ右腕を引く。 守るだけでは勝てない。その思いが急襲に転じさせたのか。 エミヤシロウの放った突きが、紅い槍の穂先と衝突する。 歪む刀身。 「■■■――」 槍が回転し、右手の剣を弾き飛ばすと同時に、左の剣で放たれた斬撃をも弾く。 その勢いを残したまま、石突がエミヤシロウの鳩尾を打ち据えた。 足が地から離れ、数メートル後方へと吹き飛ばされる。 瓦礫の上、四肢を投げ打って、エミヤシロウは倒れ伏した。 「がはっ……」 胃液とも血液ともつかない飛沫が散る。 常軌を逸した剛力で無防備な急所を打たれては、立ち上がる力もないだろう。 気力は萎えずとも、肉体が動きはしない。 狂戦士がゆっくりと振り返る。 周囲を睥睨し、次なる獲物を探しているのだ。 しかしすぐ近くにいるはずのティアナ達になかなか気が付かない。 ――気付くはずがない。 戦闘中の隙を縫って発動させたオプティックハイドによって、二人は光学的に不可視となっているのだ。 これは一種の賭けだった。 エミヤシロウが戦っている間にスバルを抱えて離脱するか、姿を隠匿して耐え忍ぶか。 選ぶことが出来た選択肢はこの2つだけ。 前者は逃げ切れなければ終わり。 後者は狂戦士に幻術を看破する能力があれば終わり。 少しでも確率の高い方を、と考え、ティアナはオプティックハイドの使用を選択していた。 けれどこれで終わったわけではない。 狂戦士がその場から立ち去ればそれでいい。 そうでなければ、持久戦だ。 ティアナは未だ立てないでいるスバルを抱き寄せて、片手でクロスミラージュを構えた。 スバルは傷ついている。 エミヤ三尉も倒されてしまった。 いざとなったら戦えるのは自分しかいない。 恐い。 震えが止まらない。 眼から勝手に涙が零れてくる。 「でも……!」 狂戦士が、ティアナ達に背を向けて動きを止めた。 槍を振り被り、乱暴に叩き下ろす。 瓦礫が砕け、噴水のように土砂が吹き飛ぶ。 「■■■■■――――!」 次いで横薙ぎに振り抜き、ハイウェイの支柱だったものを抉る。 無差別に暴れているのだ。 理性以外のどこかで、残った敵が隠れおおせようとしていると判断したのか。 このままでは一帯が更地になるまで暴れ続けるだろう。 それが、ティアナの心に焦りを生じさせた。 立て続けに2度のカートリッジを消費し、ヴァリアブルシュートのチャージを開始する。 近付いてきたら不意打ちで叩き込むための準備だった。 しかしそれが裏目に出た。 狂戦士がこちらに振り向く。 偶然ではない。 紛れもなく、ティアナ達の存在を把握していた。 魔力収束の気配を察知したのか、それともカートリッジの音を聞き取ったのか。 どちらであろうと関係ない。 このとき明らかに、ティアナは冷静な判断を失っていた。 「あ……当たれぇ!」 魔力外殻の精製も不完全なまま、ヴァリアブルシュートが放たれる。 頭部に当たるコースで放たれたそれを、狂戦士は首を軽く傾けるだけで回避した。 最悪の展開だ。 弾道で完全に位置がばれてしまった。 こうなっては、オプティックハイドの隠匿も意味がない。 一歩ずつ、狂戦士はティアナとの距離を詰めてくる。 「あ……ああ……」 クロスミラージュを握る手が震える。 恐怖に身体が竦んでいた。 逃げ出せば、背中から槍が突き刺さる。 戦えば、一分と持たず殺される。 どう足掻いても、ここから先には死だけが待っていた。 と、不意に身体が軽くなる。 「ティア、早く逃げて」 スバルが立ち上がり、ティアナを庇うように両腕を広げている。 停止していたティアナの思考回路が再び回り始める。 「バカ、何言って……!」 「だって、ほら……ティアが一番元気だから。 ティアがヴィータ副隊長やシグナム副隊長を呼んできてくれれば、きっと勝てるよ」 嘘だ。 適当な理由を並べただけなのが見え見えだ。 砂埃の向こうで、エミヤシロウまでも身を起こす。 黒い片刃剣を左手に持ち、右手に失った白い剣を出現させる。 ぼろぼろの肉体とは裏腹に、眼光はその鋭さを無くしていなかった。 「ほら、ティア」 優しい声で言いながら、スバルは拳を握り締める。 回りだしたナックルスピナーの唸りが、彼女の戦意を周囲に知らしめる。 前後をエミヤシロウとスバルに挟まれながらも、狂戦士は動揺する様子一つ見せない。 そもそもそのような感情があるのかも分からないが。 狂戦士が紅い槍を構える。 それを合図に、二人は同時に狂戦士へと駆け出した。 トレース オン 「――――同調、開始!」 「リボルバー……キャノン!」 剛拳が狂戦士の胴へ繰り出され、双剣が右腕と頚椎を狙う。 だが、攻め手が一人から二人へ増えたところで、狂える獣は止まらない。 いつ振り上げたのかも分からない速度で、リボルバーナックルに切っ先が叩き付けられる。 その勢いのまま遠心力を乗せて反転し、エミヤシロウの胴を薙ぐ。 咄嗟に双剣を防御へ回すも、一振りを砕かれ、吹き飛ばされるままに地面を転がる。 狂戦士はそこから地を蹴って、更に反転。 粗暴な蹴りをスバルに見舞った。 わずか数秒。 たったそれだけで、抵抗は潰された。 残されたのは、ティアナ一人。 剥き出しの地面に膝を突き、力なく俯いている。 狂戦士が最後の敵に向き直った。 「……し、だって……」 風が吹き、粉塵が巻き上がる。 「……わたし、だって……」 狂戦士が再度槍を構え、獲物に狙いを定める。 「私だって! やれるんだ!」 絶叫に近い叫びがこだまする。 狂戦士が駆けた。 到達時間など観測できない。 紅い槍が華奢な左胸を貫通し、心臓に孔を穿つ。 その瞬間、ティアナの姿が消滅した。 「――――――!?」 狂戦士の貌に、初めて狂気以外の色が混ざる。 ティアナは目にも止まらぬ速さで狂戦士の懐に入り込んでいた。 否、そんなことは出来ない。 オプティックハイドとフェイク・シルエットを併用し、この接近を実現したのだ。 二人を迎撃するために背を向けた一瞬に、自身をオプティックハイドにより不可視化。 その場にフェイク・シルエットの幻影を残し、肉薄する。 狂戦士は完全に意表を突かれていた。 対応されるより早く、渾身の攻撃を叩き込む――! 展開するはダガーブレード。 魔力刃を得て即席の双剣と化したクロスミラージュの銃口を、狂戦士の身体に突き立てる。 ≪Variable Barret.≫ 同時にクロスミラージュによる自動詠唱。 何発もの魔力弾が密着距離から叩き込まれていく。 物理ダメージに設定された全身全霊の連続攻撃。 いかにこの狂戦士が屈強とはいえ、決してただでは済まないはずだ。 なのに―― 「嘘……でしょ」 なのに――狂戦士は完全に無傷だった。 銃口を押し当てられた部分にすら傷一つ付いていない。 ヴァリアブルバレットの連射はおろか、ダガーブレードすらも効いていなかったというのだ。 耐えられたのではなく、無効化されたとしか言いようががなかった。 だが原因を理解する猶予などない。 狂戦士がティアナの腕を掴み、乱暴に投げ飛ばした。 「きゃあ!」 原型を留めていたハイウェイの支柱に背中から叩き付けられる。 ふっと視線が焦点を失い、ティアナは力なく崩れ落ちた。 仮に連射による追撃を捨て、ダガーモードで攻撃していたのならダメージがあったかもしれない。 しかしそのようなことなど知る由もなく、結末はこの通り。 荒れ果てた区画に動く者はおらず、狂戦士だけが立っている。 狂戦士はもはや振るう理由もないとばかりに、無造作に槍を持ち直した。 獲物を捕らえた肉食獣のように歯を剥き出しにする。 不意に空が暗くなった。 「轟天爆砕!」 太陽を隠した巨大な槌が、振り子のように狂戦士に叩き込まれる。 一身に炸裂する超絶の運動エネルギー。 狂戦士は凄まじい速度でビルのエントランスを突き破り、更に隣のビルディングの壁面に衝突した。 衝突の余波で一階部分の半分が崩れ、三十度以上の角度をつけてビルが傾く。 直撃を確認し、グラーフアイゼンがハンマーフォルムに戻される。 赤の戦衣を纏った鉄槌の騎士が、荒れ果てた戦場に降り立った。 「酷ぇ……。おい、スバル!」 ヴィータは一番近くにいたスバルを抱き起こした。 苦痛にスバルの顔が歪む。 どうやら意識はあるようだ。 「ヴィータ……副隊長……?」 目を開き、右手を伸ばす。 どんな力を受け止めたのか、リボルバーナックルは破壊寸前だった。 ナックルスピナーは三分の二が砕け欠落し、装甲全体にも亀裂が走っている。 それでも肉体へのダメージが大きくないのは不幸中の幸いだろう。 他の二人の容態も確かめなければ。 ヴィータはスバルを横たわらせ、ティアナの方へ向かって走り出した。 その耳に、誰かが走るような音が届く。 「……はぁ?」 辺りには誰もいない。 ぶっ飛ばした敵が近付いてくる様子もない。 けれど確かに音はしていた。 走る音が、硬いものを蹴り跳躍する音に変わる。 「まさか!」 ヴィータは狂戦士を吹き飛ばした先を見た。 ビルの上空に人の姿がある。 赤い槍を携えた狂戦士の姿が。 ヴィータは何が起きたのかをすぐに理解した。 奴はギガントシュラークを受けてなお動き、ビルの壁面を駆け上がり、そこから跳んだのだ。 狂戦士が空中で槍を構える。 刺突ではなく、刺翔の一撃を放つべく。 「まずい……!」 対抗の手を探るヴィータ。 だが、遅い。 紅の魔槍は閃光となり大地に突き刺さる。 爆震と共に巨大な亀裂が走り、砕けた岩盤が崩落し、暗闇が顎を開けた。 ――地下通路。 ヴィータは舌打ちした。 狂戦士が狙ったわけではないだろう。 しかしここで繰り広げられていた激戦が、地形に多大な損傷を与えていたことは想像に難くない。 都市区画の直下を走っていた地下空間の天井が破壊され、奈落のようなクレバスと化していく。 粉塵が、土砂が、瓦礫が、人が。 高架の支柱が、ハイウェイの残骸が、そして廃墟のビルが。 およそ地下空間の真上に存在していた全てのものが、突如として開いた大孔に飲み込まれていく。 規模に反して、崩壊には数十秒も掛からなかった。 やがて天変地異にも等しい破壊が終わったとき、そこにスターズ分隊の姿はなかった。 ――三日目 AM9 20―― どこかで大地の砕ける音がした。 しかし、男には何が起こったのか理解できない。 理解するだけの力が残されていないのだ。 男は廃棄されたビルの壁にもたれかかって、虚ろな眼差しを空に向けていた。 肉体も精神も、生きるための力を失ってしまったかのよう。 ただ右腕の赤い刻印だけが煌々と輝いていた。 「あーあ。チンク姉、こいつ死にかけてるよ。せっかく私達が援護してあげたのに」 誰かの声がする。 「問題ない。まだ間に合う」 別の誰かの声もする。 男には何を言っているのか理解できないが。 「お前には二つの選択肢がある。 このままバーサーカーに魔力と生命力を根こそぎ吸い上げられて野垂れ死ぬか。 それとも――」 ついに聞き取ることすらできなくなった。 少女の唇が動いているだけで、何も聞こえない。 男はただ無心に、純粋な願いを呟いた。 それを聞いた少女達が頷き合い、道を明けるように左右に分かれる。 男の前に、三人目の少女が現れた。 「さぁ、ルーお嬢様」 比較的背の高い少女に促され、三人目が手袋のようなものを外す。 線の細い右手の甲に、三画の聖痕が浮き上がっていた。 前 目次 次