約 487,941 件
https://w.atwiki.jp/kakinoki/pages/113.html
こんにちは、流離太です。 明日ゼミの発表がありますが、なにもかもが億劫になっています。サイト外での交流もそうですが、創作活動も。 アナログ所さんにGFWR、きりかさんの新作にハンター0号と読みたい作品はたくさんあるのに、時間がないという。 本当にみなさん、書くのが楽しいんだなぁ……そういう姿見てると、眩しすぎて溶けそうww よっぽど気が向かない限り、このままROM専ですかね? 学校の怪談の企画は私が主体だから続けますが、もえがはアッキーさんのサイト二周年を祝って企画したやつだから。 きっと、「~しなけりゃ」って思うから苦しくなっちゃうんですね。読みたい時に他人の作品を読んで、作りたい時に創作して――のように、自分のペースでやるのが一番ですね。 そういうのんびりしたのが私の性に合ってるんだな、きっと。 とりあえず現時点での目標は、このサイトに訪れていただけるみなさんと分け隔てなく接することですね。気兼ねなく来れ、訪れてくれるみなさんと管理人が近い距離にいる。そんなサイトにできたらいいですねぇ。 さて、まずは投稿小説掲載しないと……でもなぁ、感想もなしにいきなり載せるのもあれですので、ちょっと待ってくださいね(--; ――前置きが長くなっちゃった(--; 今回は、私の堅苦しくなってしまう部分が生み出したキャラ「渡辺春花」です。 このキャラは、ある意味冬雪や終里よりもお気に入り♪ 一番使いやすいキャラですね、はい。 いや、本当にここまで出張るキャラじゃなかったんですよ、最初は。知世ちゃんタイプのキャラ目指していたんですよ。 でも、お嬢様=腹黒い、という固定観念がそもそもの原因だったかも……。 なんかね、書いていくうちに腹黒さが地ではなく弱い自分を守る虚勢になっちゃって……私もそういう強がりするやつですから、一番感情移入できるんですよね。お気に入りの所以はここに。 でも、腹黒いだけじゃないです。エロも人並み以上に(殴 ……いえ、他者への思いやりは多分誰よりも強いかと(--; メイデンズ2で一番終里のことを気にかけているのは、春花だったりしますから♪ だから、思いいれも他のキャラ以上で、コメントもついつい長く♪ 実は、男性恐怖症だったとか様々な裏設定がありましたが、もうこのまま突っ走ってほしいですww そんな春花にも、ついに彼女が♪ ――いやいや、間違えていませんよ? お相手はGFWRのユイさんですw アッキーさんの言葉ですが、「春花ちゃんはユイさんとくっついてから可愛くなった」だそうです。可愛いかどうかというのは判断しかねますが、ユイさんと春花が一緒にいると、本当に楽しそうで♪ 親として、春花が幸せになってくれたのは嬉しいです。水銀さん、本当にありがとうございます♪ ――しかし、本当にいつの間にこういうことになったのだろう? いや、エピソードは覚えているのですけど……まぁ、幸せそうだからいいやw 私もこの二人のカップリング好きですしw ――う~ん、だめもとでユイさんの使用許可、頼んでみようかな? てなわけで、春花パワーですっかり鬱気分は吹っ飛びましたっ! やっぱり春花はいいです♪ 急に絵に起こしたくなりましたw 「うふふ、美空さんが先でしょ? その後は天爛さん、フルミさん――」 そ、そぅだったね春花……(汗) 多分私の絵なんて誰も待っていないでしょうけど、約束は約束だから描かないと……。 んじゃ、発表もありますしこれにて。 最後にひとつ……キトラ君、ごめんなさい(滝汗 姉さんと、末永くお幸せに。
https://w.atwiki.jp/kakinoki/pages/16.html
夜の通学路。 星空の光と、電灯の明かりだけが頼りな暗闇。 その道を少し早足気味に歩く部活帰りの女子中学生。 最近この辺りも物騒で、痴漢が出るという。 そのようなものと鉢合わせたらと想像すると、自然に冷や汗が噴き出してくる。 それら様々な思いを巡らせていると、曲がり角に差し掛かった。 瞬間、目の前からなにかが飛び出し、思わず身を震わせる少女。 うっすらと目を開けていくと、その正体がわかった。 それは、一匹の黒猫だった。 一声啼くと、少女の足元を素早く走り去って行く黒猫。 少女はホッとし、前を向いた。 何度も点滅する電灯の前には、ひとつの影が立っていた。 紅いコートを着た、長身の女だ。 その口は、大きなマスクで覆われていた。 彼女の本能のようなものが警鐘を告げ、少女は思わず後ろにのけぞる。 「ねえ…。」 マスクに手をかける大女。 「私って、きれいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」 そこには、血の色で染められたかのような耳まで裂けた口が。 カッと開かれた口には、鮫のような歯が連なっている。 数秒後、一人の少女の悲鳴が夜の街に響き渡った。 同時刻、公園。 そこには、遊具がいくつも連なっていた。 「えいっ!! やあっ!!」 その中心で白いシダのついた棒のようなものを振り回す一人の少女。 背中まで髪のある少女は、浅葱の着物に蒼いミニスカート状の袴をはいていた。 彼女の名前は冬雪。 こう見えても、健全な中学生男子だ。 だが、噂から生じた「アヤカシ」と戦う、ホーリーメイデンズの一員「ホーリーアクア」でもある。 ホーリーメイデンズは、四神をその身に降ろす巫女であり、女にしかできない仕事だ。 したがって変身した時、冬雪の体は女性化する。 今、彼女は力を使うための練習をしているのだ。 冬雪は長い間そうしていたらしく、表情には疲れの色が見えていた。 「はぁはぁ…、全然駄目だよ…玄武。」 両手を膝につけ、肩で息をする。 滴る汗が、キラキラと反射し、少女をまた魅力的にする。 このような修行をするのももう三日になるが、全く力の感覚というものが掴めない。 おまけに、こんなところを誰かに見られたらと思うと気が気でない。 そのため、冬雪は心労に押し潰されそうだった。 「う~ん、やっぱり君が女の子初心者だからだろうね。 普通の女の子なら、もっと早くにペースを掴めるのにね。 どうだい、もう一回女の子になってみる?」 「絶対嫌!!」 合体している玄武に対し、きっぱりとした口調で言い放つ冬雪。 「女の子らしい仕草は身についているんだけどね。アクアに変身した時、内股だし」 「な!?」 冬雪は顔を桃色に染め、慌てて脚を開く。 それから、恨めしそうな目をする。 「あのさあ、なんで僕なんか選んだの? 最初から女の子を選べばよかったじゃん」 正直、冬雪にとってそこが一番疑問だった。 なんのために、わざわざ自分を女の子に変えたのか。 それなら最初から女の子を選べばよかったのに。 それに対してやれやれといった口調で答える玄武。 「あのねえ、ボクがなんの基準もなしに選んでいると思う? 人間の人体には、五行属性というものがあるけど、君は特に水の気が強いんだ」 「僕なんかがぁ?」 冬雪は疑わしげな目をした。 平凡以下のような自分がそんな立派なものだとは思えない。 「あまり自分を卑下するなよ。 ほれ、ぼやいてる暇があるなら練習練習。 このままじゃあ、攻撃はおろか、隙だらけだしね。」 「はぁい……」 玄武にせかされ、再び練習をしようとしたその時、一つの光が冬雪に近づいてきた。 それは、駐在の持つ懐中電灯だった。 「コラァ! 女の子がこんな時間に何してるんだ!!」 そう言って近づいた駐在は、冬雪の姿を見て、怪訝な表情をした。 「と、とにかく、早く家に帰りなよ……」 「は、はい……。」 注意を終え、自転車に飛び乗ると、素早く去って行った。 駐在が立ち去ると同時に、目に涙を浮かべる冬雪。 「うっ、うっ、絶対変な女って思われたよ……。だから嫌だったんだよぉ……。」 どこからか、犬の遠吠えが聞こえてきた。 次の朝、冬雪が教室に入ると、眼鏡の少年が唾を飛ばしながら大声を張り上げていた。 同級生の三四郎だ。 「みなさん! 僕の情報網によれば、昨日口裂け女が出たそうです!」 三四郎のやる気とは対照的に、「またいつもの話が始まった」と冷たい視線を送る同級生。 冬雪はなんの悩みもなさそうな三四郎を見て、少し恨めしく感じた。 三四郎は、構わず話し続けた。 「口裂け女は白い大きなマスクをして『私きれい?』と聞いてくるそうです。 それで、どう答えても、耳まで裂けた口を見せて襲ってくるそうです。 さらに聞いた話では、口裂け女は性転換手術に失敗して死んだ男の霊だそうで。 それで、普通の女の子を恨んで、襲ってくるらしいです!」 「なんで性転換手術で口が裂けるのよ。それを言うなら整形手術でしょ?」 ポニーテールの少女が冷たく言い放った。 冬雪の幼馴染の夏月だ。 彼女は、朱雀を宿す炎使い「ホーリーフレア」でもある。 「まったく。心霊研究家が聞いてあきれるわね!」 「なんてこと言うんです!! 僕の情報網を馬鹿にすると、許しませんよ!!」 お互いに罵り合う二人を、冬雪は苦笑しながら見ていた。 その時、教室の戸が開いた。 それと同時に、ひげ面の担任教師が顔を出した。 冬雪を含めた生徒達が慌てて席に着くと、教師は説教を始めた。 「全く、先生が来る前に座ってろよ。 これじゃあ、転校生に示しがつかないだろ。」 その途端、教室は一気に沸きあがった。 「え!? マジで!?」 「男の子? 女の子?」 「馬鹿だなあ。転校生といったら、可愛い女の子に決まってるだろ!」 そんな中、冬雪は周りの雰囲気に乗れなかった。 転校生が来ようと来まいと、彼にとっては関係ない。 今はどうすれば夏月の役に立てるかの方が大事だ。担任教師は、戸に向かって手招きした。 戸を静かに開け、転校生が入ってきた。 それは、セーラー服に身を包んだ少女だった。 髪型はショートカットで、バランスの取れた体つき。 背はスラリと高く、顔や手、スカートから伸びた細長い脚は陶磁器のように白い。 そして顔には…大きなマスクがかけられていた。 静寂に包まれた教室には、白墨の音だけが響いていた。 「彼女の名前は『卜部秋綺(うらべあき)』。 内地の方の中学校から引っ越してきた。 みんな、仲良くしてやってくれ。」 教師は生徒達の態度に、全く気づいていない。 この時ばかりは、冬雪も周りの人間に同調した。 「ねえ、あれってやっぱり……」 「いや、あれはただの噂でしょ」 「……でも」 絶えず秋綺に注がれる教室の視線。 マスクのため表情はわからないが、秋綺はなにも感じていない様子だった。 だが、冬雪はそのように考えなかった。 つい数週間前、自分が女になった時にも同じ視線が浴びせられた。 多分秋綺も、多かれ少なかれ嫌だと感じているはずだ。 そう思ってはいたが、中々話しかけることができなかった。 放課後。 秋綺は荷物をまとめていた。 今日話しかけるなら、これが最後の機会だ。 拳を握り締め、秋綺に近寄って行く冬雪。 「あ、あのさあ……」 冬雪は、うつむき加減で話しかける。 顔を上げ、冬雪に目を向ける秋綺。 吊目気味ではあるが、まつげの長いきれいな目だった。 「よかったら……今日、一緒に帰らない?」 一瞬の沈黙の後、口を開く秋綺。 「いいけど。どうせそのつもりだったし」 秋綺がそう言った時、後ろから夏月が顔を出した。 「あ、冬雪! 今日、卜部さんも一緒に帰るけど、いいでしょ?」 そうだ。 おせっかい焼きの夏月が、これを放っておくはずがない。 冬雪は、自分の奮い起こした無駄な勇気を、苦笑によって打ち消そうとした。 「へぇ、花粉症だったんですか。」 通学路。秋綺のマスクの理由を知り、穏やかに微笑む三つ網の少女。 夏月の親友である春花だ。 彼女はまた、風使いにして青龍の巫女「ホーリーブロウ」でもある。 「そう。今の季節、珍しくもないでしょ?」 やはり、秋綺は全く気にしていないようだった。 その横で、暗い表情でうなだれる三四郎。 「……すいません、僕のせいです。僕が、あんな噂流さなければ……」 そう言う三四郎の肩を、笑いながら叩く夏月。 「なに言ってんの! いつも自信満々のあんたらしくないわよ! それに、この町で起きたことなら、あんたが話さなくたって広まってたって!」 いつも喧嘩ばかりしている夏月が、三四郎を慰めている光景を意外そうに冬雪は見た。 「まあ、困ったことがあったらあたしに言ってよ! そこの冬雪を、いじめっ子から守り通してきたんだから!」 引き合いに出され、居づらそうに苦笑する冬雪。 「遠慮しとく」 秋綺は、間髪いれずに言い放つ。 一瞬、嫌な空気が流れた。 それに見かねて、口を挟む春花と三四郎。 「あ、秋綺さん、断るにしても、もう少し言い方があるんじゃないですか? 夏月さんは好意で言ってるんですよ」 「そうですよ。それに、まだわからないことがあるんだし、夏月ちゃんに甘えてもいいと思いますよ」 秋綺は、二人の言葉には答えずに、ジッと冬雪を凝視する。 射るような視線に、一瞬たじろぐ冬雪。 秋綺は無表情のまま、言葉を発する。 「女に守られてるなんて……情けないやつ」 それだけ言うと、スカートを翻して去っていく秋綺。 あとには、呆気にとられた四人が残されているだけだった。 冬雪は、その夜、なかなか眠れなかった。 「女に守られてるなんて……情けないやつ。」 布団に包まり、目を閉じると、夕方のやり取りが繰り返し映し出される。 時計の針を刻む音が、耳元ではっきり聞こえる。 カーテンの隙間からは、わずかに月の光が入り込んでいた。 冬雪は机の上に置いてある眼鏡をかけ、そっと外に出た。 夜の空には、銀色の星々が硝子を散りばめたように瞬いていた。 月や星の光に包まれながら、ゆっくりと夜道を歩くパジャマ姿の冬雪。 久しぶりに味わった、とても晴れやかな気分だった。 その時、辻から急に現れる人影。 昼間の口裂け女の話を思い出し、思わず身を縮ませる。 目を凝らしてよく見ると、それは秋綺だった。 白いパジャマ姿で、口は相変わらず大きなマスクで覆われている。 今の冬雪が、一番合いたくなかった人物だ。 「なにしてるの?」 抑揚のない声で、冬雪に話しかける秋綺。 逃げようか? いや、そんなことしたら明日から顔を合わせづらい。 とりあえず適当にあしらうことにし、しどろもどろしながら答える冬雪。 「え、えっとねえ、星を見ていたんだ……」 「星?」 「そう。僕ね、昔からなにか悩みがあった時、外に出て星の光を浴びることにしてるんだ。 そうするとね、なんか体が洗い流されるような気がするんだよ……。」 「ふ~ん……男の癖にえらく浪漫チストだな」 また馬鹿にされる。 冬雪はそう思った。 「でも、俺も星は好きかな。碓氷みたいにってわけではないけど、なんとなく」 そう言った秋綺の目は、星空と同様に輝いていた。 その肌は月の光を受け、光り輝いているように見える。 なんだ、いい娘じゃないか。 話してみると、以外と普通の女の子かも。 ホッとし、笑顔を秋綺に向ける冬雪。 「よかったぁ、卜部さんも星好きで。 でも、卜部さん、自分のこと俺なんて呼ぶんだね。」 その時、冬雪はある異変に気づいた。 きれいな目? なぜ花粉症の人間が、きれいな目をしているんだ? 突如眼前によみがえる昼間の噂話。 花粉症じゃないとすれば、マスクをしている理由は……クチサケオンナダカラ? 秋綺から一歩一歩後ずさりする冬雪。 逃げなきゃ。 力が使えないのに、勝てるはずはない。 その時、背中になにかがぶつかった。 それは、なにか柔らかいものだった。 冬雪が振り返ると、そこには中学生くらいの少女が居た。 髪型はロングヘアーで、セーラー服の上に紅いコートを羽織っていた。 その口には、秋綺と同じ大きなマスクがかけられていた。 「こんなところで、子どもが夜のデートかい? 可愛いこった」 目を細め、くつくつと笑う少女。 少女のものとは思えないほどの不気味な表情。 その手には、いつの間にか鉈が握られていた。 「可愛いだろ、この体? 昨日襲った女の子の体だよ」 その場でクルリと一回転する少女。 スカートがふわりと上がり、思わず目をそらそうとする冬雪。 「俺ってさ、性転換手術に失敗した男の霊っていう設定の噂なんだよね。 だからこうやって、女の子の肉体を借りて乗り移ってるんだ。 昨日までは、確かOLだったな……」 なおも笑う少女から一歩一歩離れる。 額からは熱くもないのに一筋の汗が滴り、頭の芯が痺れてくる。 だんだんと恐怖に支配されていく。 もしかしなくてもわかる。 少女の正体は……。 話しながら少女の左手は、顔に伸びていく。 「でもなあ、ひとつ困ったことがあるんだよ。 俺が取り憑いた女はみんな…口が裂けてるんだよおおおおおおお!!!」 一気にマスクを剥ぎ取る少女。 少女の口は、噂通り耳まで裂けていた。 その鮫のような歯の間からは、銀色の筋が幾重にも流れている。 「こ、今度はお前の体をもらうぞ…。」 そう言って、秋綺に近づこうとする口裂け女の前に、冬雪は思わず立ちふさがった。 自分でも、なぜそのようなことができたかはわからない。 もしかしたら、秋綺に弱い男として見られるのが悔しかったからかもしれない。 「じゃ、邪魔をするなあ!!」 叫ぶや否や、鉈を思い切り振り下ろす口裂け女。 思わず目を瞑る冬雪。 駄目だ、完全にやられた。 だが、冬雪の意に反し、頭上で金属がぶつかる音が聞こえた。 「へぇ、かっこいいじゃん。冬雪!」 うっすらと目を開けると、そこには桃色の着物に朱のミニスカート状の袴を履いたポニーテールの少女が居た。 夏月だ。 夏月は、そのまま紅の「オーヌサステッキ」を振り回す。 口裂け女は避けると同時に、空中で一回転し、そのまま地面に着地した。 冬雪は呆気に取られた。「ど、どうしてここに……?」 「朱雀が教えてくれたのよ! 口裂け女がこっちにきてるってさ。 青龍はねぼすけだから、春花はすやすや寝てると思うよ。 それより、早く逃げなよ。あんた、力使えないんだし。ここはあたしがやってあげるからさ」 そう言って小さくウィンクする夏月。 冬雪は無言でうなずき、秋綺の手を引いて、夜道を走った。 「ごめん、ここで待っててよ。」 だいぶ離れたところで、冬雪は秋綺に言った。 「行ってどうするの? なんにもならないと思うよ。」 確かにそうだ。 冬雪はまだ術が使えなかった。 それでも、今の冬雪にはそれしか選択がない。 口裂け女は怖かったが、夏月を失うのはもっと怖い。 「待っててね! すぐ戻るから!」 碧いオーヌサステッキを握り締めながら、走り続ける冬雪。 「古(いにしえ)は天地未だ剖れず、陰陽(めを)分れざりし時、 渾沌(まろが)れたること鶏子(とりのこ)の如くして、ほのかにして牙(きざし)を含めり。 ……時に、天地の中に一物生(ひとつのものな)れり。 伏葦牙(かたちあしかひ)の如し。すなわち神となる。国常立尊と号(もう)す」 言霊を唱え、意識を集中させる。 途端に、冬雪の周囲は海のように蒼い光で満たされる。 髪が腰まで伸びていき、頭には大きく蒼いリボンが現れる。 元々白く少女のような顔には耳までを覆うゴーグル。 手足がどんどんと華奢になり、その小枝のような小さな手には白い手袋がはめられる。 学ランは浅葱色の着物に変化していき、小さいながらも胸にふくらみが出てくる。 ズボンの裾は一体化していき、蒼いミニスカート上の袴となる。 露出された無駄な肉付きのない脚を、柔らかな白いストッキングが覆っていく。 最後に蒼いブーツが足に現れ、変身は完了した。 「夏月!」 冬雪は叫ぶと同時に、口裂け女にステッキを当てようとした。 それを難なくかわす口裂け女。 「冬雪! なんで来たの!? あんた、術まだ使えないでしょ!!」 「でも、でも、夏月を放って置けなくて……」 うつむく冬雪に対し、高笑いする口裂け女。 「ゲハハハハハハハ!! お前、さっきの小僧か? 面白い、俺と同じってわけかよ!!」 口裂け女は醜悪な笑みを浮かべ、自分の胸に手を当てる。 「い、いいよな女の体は。 噂である俺にとって、こいつはたった一つにして最大の楽しみだ。 へへ、俺と同類のお前もそれを楽しめるんだぜ?」 同じ……。 言われてみればそうだ、花子さんといい口裂け女といい、自分に近しい存在だ。 じゃあ、自分は何なんだ? 「冬雪!!」 夏月の叫びで我に戻ったとき、目の前で夏月の体が舞った。 一瞬、なにが起きたかわからない冬雪の上に圧し掛かる口裂け女。 口裂け女はそのまま片手で、ぐいぐいと首を絞めていく。 「く……うぅ……」 「ゲハハハハハハハ!! ちょ、ちょっと揺さぶりゃこれかよ!! やっぱりお前、素人だな!! お前さえ出てこなけりゃ、こ、こいつも俺に勝ってたかもな!!」 口裂け女の体重以上に重く圧し掛かる言葉。 夏月を助けるどころか、逆に邪魔をしてしまった。 「に、にしてもお前、結構可愛いな。元男のくせによ……」 そう言って、冬雪の体をもう片方の手に這わせる口裂け女。 顔から胸、ふとももにその感触が伝わる。 「や……やめて……」 あまりの気持ち悪さのため、次第に涙で歪む視界。 夏月も起きる気配がない。 「へ、へへ、お前の中の四聖獣を追い出して、今度はてめぇの体をいただくぜ。 元男の女に入る……か、考えるだけでぞくぞくするな だ、だけどよお、お前らが悪いんだぜ? たった一つしかない、お、俺の楽しみを奪おうとするから。 だから、か、神に代わっておしおきしてあげるんだよぉ」 「そりゃあお前のエゴだろ?」 突然の少女の声に、二人の視線が釘付けになった。 そこには、マスクをはずした秋綺が立っていた。 月明かりに照らされた中性的な顔には、笑みが浮かんでいる。 「う、卜部さん!? 逃げたんじゃあ……」 呆けている冬雪の上で、口裂け女は目を見開く。 「なあ!? まさかお前は…。」 冬雪の上から素早く飛びのく口裂け女。 その顔は、先程とは違って焦りの色が見えている。 その隙に、慌てて夏月に駆け寄る冬雪。 「夏月、夏月!! 大丈夫!?」 頭を抑えながら、夏月は目を覚ます。 「ふ、冬雪!? なにもされなかった?」 無言でうなずく冬雪。 その体を、夏月は力いっぱい抱きしめた。 真っ赤になる冬雪。 それに構わず、夏月は涙を流して何度も呟いた。 「よかったぁ……冬雪が無事で……。あたし、冬雪がいなくなったら……」 「夏月……」 つられて涙ぐんだところで、事態を思い出す冬雪。 「そうだ!! 夏月、卜部さんが!!」 秋綺の方を向いた時、丁度その目が合った。 静かに言い放つ秋綺。 「力を持たないやつは人を守れない。よく見ておけ、俺の戦い方をな。」 そう言った秋綺の手には、いつの間にか白銀のオーヌサステッキが握られていた。 それと同時に、秋綺の体を白銀の光が包み込んだ。 次の瞬間、ブロック塀に激突する口裂け女。 鈍い音と共に、コンクリートの壁にひびが入る。 「お前にばれないため、顔を隠してたが、どうやら正解だったな。 これで、お前との追いかけっこも終わりだ。」 そう言った秋綺は、檸檬色の着物に、山吹色の袴といった出で立ちだった。 冬雪は口を開け放ち、呆けている。 「卜部さんが……4人目の仲間……?」 「ちょっと! そいつは人間に乗り移ってるのよ!! 手加減しなさい!!」 夏月の怒声に、肩をすくめる秋綺。 「大丈夫だよ。倒したら、取り憑かれた娘も元通りだ。」 そう言うと秋綺は、オーヌサステッキを掲げる。 次の瞬間、電気を帯びた槍に変化するステッキ。 「雷槍!」 辺りに満ち溢れる閃光。 気づくと口裂け女はどこにもおらず、壁には一人の少女が寄りかかっているのみだった。 「やったあ! すごいね秋綺って!」 歓声を上げ、秋綺に抱きつく夏月。 秋綺は顔を赤らめ、それを嫌そうに引き剥がす。 「お前、結構調子いいやつだな……。ていうか、べたべたするんじゃねえよ」 「え~、いいじゃん女の子同士だし!」 なおも抱きつこうとする夏月。 「俺は男だ! 今はこんなだけど……」 「え!? ということは、冬雪と一緒!?」 そのようなやり取りを尻目に、冬雪は別なことを考えていた。 「また……守れなかった……」 二人のやり取りが、雑音のように耳に覆いかぶさってきた……。
https://w.atwiki.jp/kakinoki/pages/15.html
黄昏時。 空が橙と紫に染められるこの時間帯は、 妖が跳梁跋扈していると言われている時間だ。 とある中学校の便所も、夕闇によって深い陰影が刻まれていた。 その一室で、先ほどからしぼるような声が聞こえていた。 「カッ…ハッ…。」 一人の少年は、便所の床に足を広げた形で座り込んでいた。 いや、壁に押し付けられていたのだ。 何者かの青白い手によって。 細長いその手は、少年の首をぐいぐいと絞めていった。 少年はその手を何度も引き剥がそうとしていた。 だが、手は万力挟みのように、その手を緩めることはなかった。 少年は次第にズボンのすそがスルスルと短くなっていくのを感じた。 足に、床のひんやりとした感触が伝わってきた。 髪が耳にかかった時、少年の意識は遠のいていった…。 「ふぁ~あ…。」 冬雪は、自宅の布団の中で目を覚ました。 大きく伸びをした冬雪は、たれ気味の瞼を袖でこすった。 (昨日の出来事は夢だったのかなあ…。) そうだ、そうに違いない。 あんな超自然的な現象が、起こってたまるもんか。 でも…でも、夏月とのことは、現実であってほしかった…。 冬雪がそう思った時、髪が顔にかかるのを感じた。 冬雪は、それをうっとうしげに払った。 髪? 冬雪の眠気は、いっぺんに吹き飛んだ。 それと同時に気づいた、自分がだぶだぶの桃色のパジャマを着ていることに。 朝の碓氷家の食卓。 テーブルの上には、味噌汁と真っ白なご飯が透き通るような湯気を上げていた。 眼鏡にスーツ姿の三十代の男「碓氷冬太(うすいとうた)」は、鮭の切り身をおかずに黙々と箸を進めていた。 その静寂が、いきなり破られた。 眼鏡をかけた長髪の少女が、激しい勢いで扉を開けたのだ。 「冬雪、起きたのね。もう朝ごはんできてるから食べなさいよ。」 そう言って台所から、髪を水色のリボンで留めたエプロン姿の女性が出てきた。 冬太の妻にして、冬雪の母親「碓氷深雪」だ。 「あ、今日は鮭か…じゃないよ!! 息子のこの格好を見て、思うところはないの!?」 深雪は、錯乱している冬雪をじっと凝視した。 「…やっぱりかわいい! 私のパジャマがよく似合うわ!」 「これ、母さんのパジャマぁ!? いや、そういう問題じゃなくて、僕が女になってるんだよ!! 何の疑問も湧かないの!?」 「きっと、昔から女の子がほしいっていう私達の望みが叶ったんだわ! ね、冬太さん?」 「ん、ああ…。」 いきなり話を振られた冬太は、気まずそうに返事をした。 「そんなことより、あんたの制服、部屋の所にかけておいたけどわかった?」 「女子の制服じゃないか!! ていうか、いつの間に準備したの!? それから、僕は学校に行かないよ!! こんな格好で、いけるわけないよ!!」 その時、深雪は大げさに両手で顔を覆った。 「うぅ…。前からおとなしい子だと思ってたけど、やっと一人前の口が聞けるようになったのね…。 これも、女の子になったからだわ…。」 「そういう問題じゃなくて!!」 そう言って言葉を続けようとする冬雪の手を、深雪はガッチリ掴んだ。 深雪は、にっこり笑って口を開いた。 「だけど、親に逆らう子には躾をしなきゃね。」 数秒後、碓氷家の辺り近所に、一人の少女の悲鳴が響き渡った…。 「冬雪ぃ! 早くしないと遅刻するよぉ!」 いたるところに絆創膏をつけた夏月は、大声を上げながら碓氷家の呼び鈴を何度も鳴らした。 「おかしいですねえ。いつもなら、私より先に夏月ちゃんと会ってるはずなのに…。」 春花がかわいい顔を横に傾けた。 その時、扉が開き、深雪が顔を出した。 「ごめん、待たせちゃって!」 深雪はどこか紅潮した顔で、二人に謝った。 「あ、おばさんおはよう!」 「おはようございます。」 二人は同時に頭を下げた。 「冬雪なら、今準備ができたからね。」 そう言って、中にいる誰かの手を引いて、それを引きずり出した。 それは、セーラー服に身を包んだ、眼鏡をかけた少女だった。 俯き気味の少女は、ロングヘアーに桃色のリボンを留めていた。 スカートから伸びた足は、透けるように白く、無駄な肉がなかった。 うつ向き気味な恥ずかしげな態度は、初々しさを感じさせた。 「誰?」 夏月は、怪訝な表情で深雪に聞いた。 深雪は笑顔をたやさず答えた。 「うちの冬雪よ! 昨日から女の子になったの。」 二人は、同時に驚いた。 夏月は冬雪に顔を近づけ、まじまじと観察した。 冬雪は顔を赤らめ、目をそらした。 「うっそ!? ヅラでしょこれ?」 夏月は素っ頓狂な声を上げながら、冬雪の髪を思い切り引っ張った。 「いたい! いたいいたい!」 冬雪は目に涙を浮かべて訴えた。 「ふふ、その髪も胸も本物よ! まだ女の子に成り立てだから、色々と教えてあげて頂戴ね!」 そう言うと、深雪は勢いよく扉を閉めた。 一陣の北風が吹き、三人のスカートをたなびかせた。 「それにしても、なんで女の子になったんですか? もしかして、なにか悪い物でも食べたのですか?」 「ああ、最近変なウイルスも流行ってるしね。 それともなに? 呪い? 改造? 変な女の子に名刺をもらった?」 冬雪は二人のやり取りに対し、何も答えないで苦笑した。 こうして三人の美少女が並んで歩いているのは、絵になっていた。 その時、夏月が得心したように喋りだした。 「あ! 昨日のマッドガッサーにやられたんだった! あれ? でも、マッドガッサーはあたしがたお…モガ!」 夏月は、春花に素早く口をふさがれた。 冬雪は、大きくため息をついた。 「はぁ、本当に昨日から最悪だよ…。 化け物に出会うし、変な亀に話しかけられるし、夏月を助けに行ったら逆に助けられるし…。」 その言葉に、春花が反応した。 春花は、真剣な表情で冬雪の方を向いた。 「ねえ、冬雪君。もしかして、こんな棒をもらいませんでした?」 そう言って春花が手提げ鞄から出したのは、白いシダのついた翡翠色の棒だった。 それを見た冬雪は、慌てて自分の持っている碧い棒を出した。 「ということは、春花さんも?」 春花はこっくりうなずいた。 「夏月ちゃん、どうやら冬雪君は私達の仲間のようです。」 夏月は、顔一杯に驚きの色を表した。 「ま、マジ!? だって、こいつ男でしょ!」 「だからこそ、性転換したのでしょう。水の精霊『玄武』を宿すために…。」 「あの、言ってることがわからないんだけど…。」 冬雪は、すまなそうに話に割り込んだ。 二人は、意外な表情をした。 「あれ? その亀になにも聞いてないの?」 冬雪は、思い切り首を縦に振った。 「ったく、説明ハショったわね! あのねえ」 そう言って説明を始めようとする夏月の肩を、春花は叩いた。 「ねえ、学校遅刻しますよ。」 さっきからいつもよりゆっくり目で歩いていた三人は、慌てて走り出した。 その時、冬雪の目に、紅いワンピースを着た同い年くらいの少女が映った。 長めのおかっぱ頭の少女は、冬雪達のほうをじっと見つめていた。 慌てて目を擦ったときには、もうその少女はどこにもいなかった…。 朝の教室は、騒然としていた。 それも無理がなかった。 なにせ、昨日まで男だった同級生が、女になっているのだ。 皆が、冬雪を一目見ようと集まってきているのだ。 「へー、どんなのかと思ってきたら、結構まともじゃん。」 「ていうか、普通にかわいい!」 「う~ん、こりゃあ女になってよかったのかもよ?」 好奇の目が、冬雪に突き刺さってきた。 今なら、動物園の動物の気持ちがわかるような気がした。 顔を伏せても、視線と話し声が滝のように絶えず降り注いできた。 いっそ、このまま狸寝入りしてしまおうか? 冬雪がそのような考えをめぐらせていたその時、夏月がブルドーザーのように生徒を押しのけた。 「はいはい~、尻尾のないお馬さん方は席についてくださ~い。」 夏月は一通り作業を終えると、冬雪の方を向き、小さくウィンクした。 「まったく下らないこと極まりないですね!」 給食時間。 三人の少女と班を同じくする三四郎は、口から唾と給食を飛ばしながら憤慨していた。 「一般大衆というのは普段退屈だから、こういう非日常的なことがあると、すぐ食いついていくんですよ! 人の迷惑も考えずに!」 「人の迷惑も考えずに噂話を面白半分に撒き散らすあんたには言われたくないと思うんだけど。」 夏月は冷ややかな態度でツッコミを入れた。 冬雪には、その様子が見えておらず、黙々と給食を食べ続けていた。 服を汚さぬよう、男の時以上に慎重にスプーンを運んだ。 その冬雪に春花が話しかけてきた。 「ねえ、冬雪君。放課後に、屋上まできてくれませんか? 夏月ちゃんも一緒なんですが。」 冬雪は、無言でうなずいた。 直感的に、朝の話の続きをするのだとわかった。 「僕もいきます!!」 「女の子同士の話なんだから、あんたはいいの!」 夏月は、張り切っている三四郎をそう言って制した。 その時、冬雪は目を見開いた。 教室の隅の方に、朝の少女が立っていたのだ。 瞬間、少女と目が合った。 少女の目は、冬雪の背中に氷のようなものを走らせた。 「冬雪、なにしてんの?」 夏月の声で現実に引き戻されたその時、少女は再び消えていた。 「ジャーン! これがあたしのオーヌサステッキよ!」 夏月は紅い棒を振り上げた。 「冬雪さんを含めた私達三人は、ホーリーメイデンズなんです。」 「ほーりーめいでんず?」 冬雪は、思わず顔をしかめた。 「あはは、そりゃあ嫌だよね。あたしもそのネーミング、なんとかならないかと思ったもん。」 夏月が頭の後ろに腕を組みながら苦笑した。 「あら? 私は格好いいと思いますけど。」 冬雪は、夏月と同じ表情をした。 春花は説明を続けた。 「ホーリーメイデンズは古来より存在し、噂から生じたアヤカシと戦ってきました。 人間が噂に対して抱く、様々な感情。 それらが凝り固まり、アヤカシが生まれます。」 冬雪は、昨日のマッドガッサーの醜悪な姿を思い出し、戦慄した。 「私達ホーリーメイデンズは、それらに対抗する力を四神から得ています。 冬雪君が玄武の水の力を得たように、夏月ちゃんが朱雀の炎、そして私が青龍の風。」 「あたし達は、その力を体に宿す巫女ってわけ。わかった?」 「たぶん、玄武の力を宿すため、冬雪さんは性転換を起こしたのだと思います。 霊を宿すのは、女性にしかできませんから。」 冬雪はわけがわからなかった。 まるで、御伽噺のような途方もない話。 夢を見ているような、そんな感覚だった。 「…僕、ちょっと顔洗ってくる…。」 冬雪はそう言って、トイレに向かっていった。 「ねえねえ、知ってる? トイレの花子さんの話。」 「知ってる! 確か紅い服着てるんでしょ?」 「うんうん。それで、人の首を絞め殺すらしいよ。」 「確か、何十年か前に男子が行方不明になってるんでしょ?」 「六人くらいいなくなったらしいよ。」 水の感触が、今の冬雪の頭を心地よく冷ましてくれた。 冬雪はハンカチで顔を拭き、眼鏡をかけた。 正面の鏡には、心動かされるほどかわいい少女が映っていた。 悔しいくらい違和感がなかった。 「これが僕…か。」 冬雪の口から、思わずため息が漏れた。 女の子なんて面倒くさい。 おしゃれもしなければいけないし、スカートにも気をつけないといけない。 とにかく、一つひとつ緊張感を持たなければいけないのだ。 早くアカカシを全て倒し、男に戻りたかった。 でも。 でも、夏月と久しぶりにいっぱい話せたことは嬉しかった。 「ずるいよ。」 後ろから突如した声に、冬雪は我に返った。 鏡には、冬雪、そして紅い服の少女が映りこんでいた。 少女の体は、まるで磨り硝子でできた人形のように透き通っていた。 少女は繰り返し呟いた。 「ずるいよ。なんでお前だけ、女になっても幸せそうなんだよ。」 瞬間、冬雪は鏡に押し付けられた。 そして、少女の氷のような腕が首にかけられた。 「お前も死ねばいいんだ。俺のようにな。」 少女の口が三日月のようになった途端、冬雪の首は力いっぱい絞めあげられた。 「ぐ…ぅ…。」 遠ざかっていく意識の中で、冬雪の頭になにかの映像が浮かび上がった。 突如、女の子になった少年。 それは、今自分の首を絞めている少女だった。 少女は、学校では珍獣扱いされ、そのうち女子から陰湿ないじめを受けた。 それを苦に、このトイレで首を…。 しかし、自殺のため、成仏できなくなってしまった。 彷徨っているうちに、トイレの花子さんとされてしまった少女。 少女は噂どおり、少年の首を絞めていった。 そしてそれを、自分と同じ姿に変えた。 冬雪は、かすれる声で話し始めた。 「そうだ…僕は…夏月が支えてくれたから…。 だから君みたいにならなかった…。」 冬雪の手に蒼い光が集まった。 それは、段々と冬雪を包み込んでいった。 花子は、素早く飛びのいた。 次の瞬間、冬雪は碧い棒を持った巫女となっていた。 浅葱色の着物とミニスカート状の蒼い袴が特徴的だった。 「だから、僕は死なない! 夏月達のためにも!」 花子は、大鎌を出現させた。 「ふざけんな…。お前なんかに、お前なんかに、俺の気持ちがわかるかぁ!!」 花子は、大鎌を振り回してきた。 冬雪は、それを紙一重で避けた。 相手の動きを自動追尾する「オラクルゴーグル」のお陰というのもあるが、 少女の体にその大鎌は大きすぎるのだ。 冬雪は隙を見て、オーヌサステッキで大鎌を弾き飛ばした。 鎌は空中を勢いよく舞い、スノコに突き刺さった。 「まだだ…。まだ!」 「もう、やめようよ!!」 冬雪は悲痛な叫びを上げた。 「もう…やめよう…。これじゃあ、同じことの繰り返しだよ…。」 花子は顔を伏せた。 「わかってるよ…。だけど、だけど、噂が俺を拘束するんだ…。 トイレの花子さんとして…人を殺すのをやめてからもずっと…。 ただ…光を…暖かさを…暗くて冷たいところから見つめるだけ…。」 花子は、そう言って方を震わせた。 「その鎖を断ち切るのも、君の仕事だよ。冬雪。」 冬雪は、聞いたことのある声に、思わず声を上げた。 「玄武!」 「さあ、観察力に優れた水使いとして、彼女の鎖を見つけるんだ。」 冬雪は玄武に従い、ゴーグルを顔からはずした。 よく見えないが、なにかどす黒いものが花子を包み込んでいた。 「よし、それをステッキで払うんだ!」 次の瞬間、白いシダと浅葱の袖がはためいた。 それと同時に、黒いもやは塵霧散した。 花子の目が、夕陽を反射して輝いていた。 花子は夕闇の中、硝子のように透き通り、溶けていった。 最後に小さく「ありがとう」と呟きながら。 冬雪は、彼女が消えていった場所をいつまでも見ていた。 「君は、彼女を救ったんだよ。ずっとここでひとりぼっちだった彼女を。 まあ、まずは罪を地獄で償わなければいけないけど。」 ぬいぐるみのような玄武は、冬雪の肩に乗りながらそう言った。 その時、冬雪は体に違和感を覚えた。 いや、正確には元に戻っているのだ。 髪も元通り短くなり、胸もなくなっていた。 「ふむ、男に戻っても、その姿に違和感はないね。」 「え!? アヤカシを全部退治するまで戻らないんじゃないの!?」 慌てふためく冬雪に対し、玄武は冷静に答えた。 「そんなことないよ。君に早く女の子に慣れてもらおうと思って、体験してもらったわけ。 どう? 女の子に慣れた?」 そう言う玄武を、冬雪は笑顔で握り締めた。 「それは余計なお世話を、どうもありがとうございます。」 「ぐえええええええ!!」 玄武は痛みに泣き叫んだ。 その時、トイレの戸が開き、夏月が入ってきた。 「え…あれ…? 冬雪…戻った…の?」 夏月は、呆けた表情で聞いた。 冬雪は青ざめた表情でうなずいた。 「そう…じゃあ…このスケベがあ!! さっさと出て行けえ!!」 今度は、冬雪が悲鳴を上げる番だった。
https://w.atwiki.jp/kakinoki/pages/49.html
登場人物(ウルトラマン対ゴジラ)? 序章「パンドラの箱」 第一章「白き天使と黒き神」 第二章「病魔の棲む街」 第三章「みんなわすれよう」? 第四章「燃えろ! 地球防衛軍」? 第五章「怪獣を見た」?
https://w.atwiki.jp/kakinoki/pages/29.html
名前:碓氷冬雪(うすいふゆき) 性別:♂→♀ 年齢:14 生年月日:1992年 12月5日 血液型:O型 星座:いて座 出身地;北海道旭川市 社会的地位:中学生 性格:普段は臆病で優柔不断。なにかあれば、すぐ顔を赤くする。しかし、誰よりも仲間思いで、その優しさで周りを暖かく包み込む。いざという時に、便りになるタイプ。また、天然ボケも入っている。噂では、怒ると怖いらしい。 趣味:食べること。カラオケ。寝ること。料理。 特技:大食い(店の食料を、全て食い尽くすほど) 苦手:運動、飲酒(飲んだら血の雨が降る) 身長:♂160cm → ♀152cm 体重:禁則事項♪ 髪型:背中までのロングヘアーに大きなリボン。 髪の色:青みがかった黒。 胸:Aカップ 視力:眼鏡着用。 知性:普通。 動物に例えると:亀。 好物:カツ丼、ゴーヤチャンプルー、チャーハン、バナナセーキ、抹茶アイス練乳がけ。 嫌いなモノ:辛いもの、夏月の料理。 イメージカラー:青。 イメージ音楽:ユキアカリ(高倉あずさ作曲) イメージボイス:中原麻衣 一人称;「僕」 履歴:中学二年の頃、聖獣玄武に接触。以来、水の巫女「ホーリーアクア」として活躍する。 親戚関係:両親(父はサラリーマン、母は専業主婦)、祖母、祖父、叔父、叔母、従妹
https://w.atwiki.jp/kakinoki/pages/125.html
どうにも、雨足はとどまるところを知らない。さっきまで青い空にうるさいほど輝きを放っていた太陽も、今となってはすっぽりと雲に覆われてしまい、世界は不気味なまでに静寂に包まれている。 ―――こんなことなら、もう少し速度を出すべきだった。 私は雨さらしになっている愛用のバイクを尻目にひとつため息を漏らす。こんなときに限って律儀に制限速度を守ってしまった。おかげで、目的地まであと一歩というところで立ち往生を食らってしまう。しかも雨宿りにありつけた場所は鉄と錆の臭いがかすかに漂う廃屋の倉庫、そこに申し訳程度に突き出た屋根の下…今日は運が悪いのかも知れない。 せめて、せめてもう少し雨が弱くなってくれれば… 幸い、カフェまでそう距離はない。濡れることを覚悟で走れば、特に問題なく暖かい飲み物にありつけるだろう。 だが――――― 「すごい雨ですねー…」 私の隣にいる少女が、ぽつりと呟く。間近に見える白い肌は、このくすんだ色の空気の中でもはっきりと眩しい光を放っているようだ。 「ん、ああ…まぁ」 私は曖昧に返答する。それは多分、この天気が私に思いがけない時間を持ってきたからだと思う。 私は、ただ黙って何も変わらない、なにもないアスファルトを眺めていた。 ただ黙って。 ―――ただ黙って。 春花は、きれいだ。 ユイ春小説① ~雨~ ――――で、こういう時は何を話せばいいんだ… 私は正直、あまり口が達者ではない。いやむしろ、どちらかといえば言葉は苦手なほうだと思う。別に恥ずかしいとか、そういうわけではない。ただ単純に、昔から世間とは隔離された世界にいたから。ただそれだけだ。 ちら、と春花の方に視線を傾けると、春花も話すことに困っているようで、さっきから体がそわそわと落ち着かない。 いつもにこやかに夏月達と話している、普段の春花からは想像もつかない。罠だとさえ思えてしまう。しかし、滴る雫のように純な瞳がそれを否定していた。 ―――仕方がない、ここは私が話題を持ちかけるしかないか… と思っては見たものの、特にこれと言った話題など見つかるはずもない。世情に疎い私にとっては、尚更のことだった。 (「最近どーだ」、とか…いや、どーだとか言われてもな…返されたら返答しようがないし・・・て、そもそも返答されない前提で考えたら意味ないじゃないか・・・。) 勝手に一人で盛り上がっている私。世間から見れば、きっとただの馬鹿といわれるに違いない。 微妙な温度差をはらんだまま流れていく空気。まだお互い一言しか喋っていない。ああもうしょうがない、思い切って言ってみよう…その後の事は、後で考えればいい。私は首を春花に向けて息を吸い込んだ。…のだが。 「? どうかしました…?」 「いっ、いや別に!…」 ただでさえ暗い中に、これだけ眩しく、華々しい存在感を放っていたなんて、不意打ちだった。春花に見とれた瞬間、私の言葉は萎れた花のようにしぼんでしまった。 前言撤回。恥ずかしいです、死にたいくらい。 結局自分から話しかけることもできず、雨足はさらに勢いを増すばかり。この様子ではまだ当分の間はここにいなくてはならなくなりそうだ…そうなると、尚更話題が必要になってくる。が、それとは裏腹にコンクリートを叩く水の音が、私の頭の中の言葉を次々かき消していく。 ああ誰か―――何でもいい、何でもいいから、何かこの状況を変えてほしい。 しかし、私の切なる願いは意外な形で叶えられる。 ―――後々に、酷く後悔するということも知らず。 「そうだ、今度…二人でどこか行きませんか?」 ふと、春花が口を開く。…これは、世間一般にいう、『デート』では? そう思うと、自然と頬が紅潮してしまう。きっと、鏡を見れば私は熟れた林檎みたいな顔をしていることだろう。 「そ、それは…」 いつもそうだ。いざという時に、言葉が喉につかえて飛び出してこない。いや、下手するといつもかも。 「ほら、今まで二人きりでどこかに行ったことって、なかったじゃないですか。ですから、たまにはと思いまして♪」 確かに、今まで長い間春花と付き合ってきたが、一日中二人きりでいたことはなかった。進展しない関係に満足していなかったわけではない。その先に進むことに怖気づいていたのだろうか。いずれにせよ、たった今、春花に言われるまで、考えもしないことだった。 …素直に信じすぎて酷い目に遭う可能性もないこともないが、それでも。 ―――ひょっとしたら、これは不意に訪れた絶好の機会かもしれない。 「ああ、いいかもしれない」 もう少しマシな言い方をすればよかっただろうか、と言葉を発してから少し後悔したが、そんな陰の念は春花の太陽よりも眩しい微笑みで全て吹き飛んだ。この、ジメジメとした纏わり着く空気もろとも。 「で、では日曜日!次の日曜日、必ずお願いしますね!」 「…わかった、必ずな」 気がつけば漆をはらんだ雲からは暖かな黄色い光が漏れていた。 ところどころに水玉模様を描くアスファルトの上を、二人を乗せたバイクが軽快に走り抜けていく。 それは透き通った春風のように。 それは青空を彩る花のように。 ―――そしてこれからも走り抜けよう…結い紡がれた運命という名の道が、途切れてしまわぬように。 「日曜日、晴れるといいな」 「そうですね」 顔を見合わせる二人。自然とこぼれる笑顔。 水玉は、太陽の光を受けてきらきらと輝く。白い純な百合のように。そんな輝くアスファルトの道を―――白い風が、走り抜けて。 午後。あれだけ分厚かった雲は既に影もなく、空は青の絵の具が染み出したような、そして輝く太陽のうるさい快晴になっていた。
https://w.atwiki.jp/kakinoki/pages/41.html
真城悠さんが作り上げた、現代風ファンタジー。 シリーズに共通するストーリーラインは、謎の少女・華代ちゃんが不思議な能力を使って困っている人を助けてあげるというものです。 しかし、華代ちゃんに悩みを相談した人々は殆どの場合、結果として彼女の能力により異性の姿に変えられてしまいます。 華代「あの、なにかお悩みはありませんか? 私『真城華代』は、ココロとカラダの悩みを24時間受け付けております」 ※「華代ちゃん」シリーズの詳細については、以下の公式ページを参照してください。 「こちょうのゆめ」 「顔文字でゴー(^0^)」 「ジゴラがやってきた」 「ゆきむしのまう頃に ~前夜祭編~」 「ゆきむしのまう頃に ~札流し編~」
https://w.atwiki.jp/kakinoki/pages/11.html
――時は平成の世。 今は昔、闇の中で跳梁跋扈していたアヤカシも、ネオンサインや電灯煌く往来には姿を現さなくなりました。 では、アヤカシはいなくなってしまったのでしょうか? いえいえ、そんなことはありません。 人の心に闇ある限り、彼らは虎視眈々と我々を狙っているのです。 しかし、ご安心ください。 夜の訪れと共に、彼女らはきっと姿を現すでしょう。 日常の中の非日常。 この物語は、心に光を宿し、闇に身を置く少女達の物語―― 登場人物(ホーリーメイデンズ) 詳しい設定は、こちら(ネタバレ注意) ホーリーメイデンズ1 ホーリーメイデンズ2 ホーリーメイデンズ外伝? ホーリーメイデンズ番外編? 花子の悩み相談室
https://w.atwiki.jp/kakinoki/pages/134.html
――時は近未来。といっても、街並みは今の世とほとんど変わらない。街には巨大な鏡のようなビルが所狭しと立ち並び、人々は蟻が地を這うようにせわしなく往来を行きかう。アニメ版GTO後期オープニングよろしく、車もしばらく空を走ることもなさそう。 大きな相違点を挙げるとすれば、それは「メダロットの」存在だ。 「メダロット」。それは、人工知能である「六角貨幣石(メダル)」を搭載した、全く新しいロボットである。ティンペットと呼ばれる基本フレームに様々なパーツを組み合わせることによって、無限の可能性を秘めている。 巷では、この「メダロット」同士を戦わせるロボットバトル、通称「ロボトル」が老若男女問わず流行している。今やメダロットは、人間のよきパートナーとして、携帯電話のような必需品と化したのだ。 登場人物(メダロットM)? Episode1「鷹栖斗的は静かに暮らしたい」 Episode2「二人揃ってツンデレンジャー」? Episode3「覗いてんじゃねーよボケ!!」? Episode4「この小説、ぶっちゃけ眼鏡率多くない?」? Episode5「ファミレスに勉強道具持ち込むと嫌な顔される」? Episode6「霧の童話」?
https://w.atwiki.jp/kakinoki/pages/143.html
第13話 伝説の魔術師と取引 ~北アメリカ地方~ 北アメリカ地方の深夜の住宅地。家族が住む家にカフェなどが数多く建てられているこの場所に酒を飲みすぎて酔っ払いながら自分の家に向かう男がいた。 彼がふらつきながら歩道を歩いていると誰かにぶつかった。ぶつかってきたのは彼なのに彼はぶつかった人物を怒鳴りつけようとした。 その瞬間、彼の上半身と下半身は血を多く噴出しながら真っ二つに分かれた。その人物こそ狂戦士である。 男を切り裂いた狂戦士はいやらしく笑い、北アメリカ中に聞こえるかの如き咆哮をあげ、近くの住宅地に住む人々を強制的に起こし、家から出てきた人々を無差別に切り殺しにかかった。狂戦士は北アメリカ地方を横断しながら虐殺をし始めた。 一人、また一人。狂戦士の刃の餌食となり血を噴出し、その生涯を終わらせられる。小さな少年の生涯でさえも・・。 あるときは人がひっそりと住んでいるところで虐殺をし、大都会で大量の人々を殺し、虐殺は止まることを知らない。 数十万と言う死体をつくり、アメリカの首都に狂戦士がたどり着き、ここでも虐殺が行なわれると狂戦士の虐殺を命からがら逃れて生き残ったものは思った。虐殺を見たものは誰もがこう思ったはずだ。 この虐殺を止める、英雄が現れはしないかと・・・。 その時、人々の思いは天がききいれた。 狂戦士の目の前には何処からあわられたのか、180センチはある背に、白き長髪の髪、自分の身長ほどある白き杖、白きマントを被った老人がいた。 「還るがいい・・悪魔の狭間を生きる未完成の生物よ・・・」 老人がそう言い、杖で地面をコンッと叩いた後、狂戦士を吹き飛ばす数十体の真っ白の騎馬隊が現れた。白き騎馬隊は狂戦士と共に海目がけて走り出した。 「時間は稼いだ。後は任すぞ。強き若者よ・・」 そうつぶやくといつの間にか老人か消えていた。 人々は思った。あの老人は天が作り上げた、英雄だと・・・ ~シンガポール・ホテル地下~ 英雄が狂戦士を退治した頃、ラックは『デット・クロス』の在り処を知るオーガン・ザラスと目を見合わせていた。オーガンが話し出した。 オーガン「ようこそ、若者・・いやラック・ブレイス。私は表はアジアの麻薬密売人、裏はこのシンガポールを守るハンターのオーガン・ザラスだ」 ラック「そんな堅苦しい挨拶はいいし、つまむ物も飲み物もいらない。用件だけを言う。こんなホテルごと自分のアジトにしたやつとそう長く話したくない」 オーガン「用件はわかる。我が祖先が残した『デット・クロス』についてだろ?」 ラック「ああ。『デット・クロス』はこれから起こるかもしれない戦争を無くすことができる唯一の武器だ」 オーガン「それは好都合だ。私はあの代物をもう少ししたら密売人に高値で売ろうと考えていたところだ。よかった、取引をしてくれる人物があわられた」 ラック「交渉成立か?」 オーガン「だが、祖先が残した代物だ。易々と渡すのも癪だ。そこで、それ相当の価値があるものと交換だ」 正彦がオーガンに対する殺戮衝動を必死で抑えている時、ラックは少し考え、ポケットから数枚の紙をオーガンに渡した。 オーガンが紙に書かれている内容を見ると、その紙を折り、自分のポケットに入れた。 その動作を確認すると、ラックが語りだした。 ラック「それに色をつけて100万$を渡す。どうだ?いい話じゃないか?」 オーガン「・・・・いいだろう。ラックよ、お前は若いが悪人との取引をわかっているじゃないか」 ラック「そりゃどうも」 交渉が終った瞬間、地下に息を切らしてやってきたバクスとゲッシュが地下の扉の前にいた。 ラック「お、バクス。どうしたんだ?そんな忙しく来なくても交渉は無事に・・」 バクス「兄貴、最悪だ」 ラック「え?」 バクスとゲッシュは急いでラックと正彦のもとに来て、新聞を2人に渡す。 ラックが新聞を見ると、顔が青くなり、持っていた新聞を落とした。正彦もそれに似た状態になった。 ラック「・・なんてこった・・。狂戦士の虐殺はついにアメリカまで・・」 正彦「世界を・・・無にするつもりか?」 バクス「事態に気がついたみたいだな。それと交渉は終ったみたいだな?オーガンさん、早速ですが・・」 バクスが続きを言おうとしたが、オーガンはバクスの目の前に小さな黒い箱を渡した。 オーガン「約束の代物だ。お前ら次第でこの世界の運命が変わるぞ」 ラック「この惨劇を終らすのはただ一つ。ヴァンサーは命を懸けて作り上げた『デット・クロス』と言う名の狂戦士の心臓を、破壊することだ」 オーガン「破壊できたら・・な・・・」 バクス「え?」 オーガン「独り言だ。さぁいけ」 ラック「ああ」 そう言うと、4人は急いで地下から出て行き、ホテルを走って出て行った。 オーガンはラックからもらった紙を見た。その紙には麻薬の取引に応じる人物のリストだった。 オーガン「・・・あいつらがやっているのは犯罪に近いな・・。まぁ、あいつらの結果次第で世界は滅ぶか、生存するか。決まるがな・・」 オーガンがそうつぶやくと、オーガンは手下と共に麻薬取引の準備をした。 続く