約 1,172,621 件
https://w.atwiki.jp/hakarowa4/pages/46.html
防弾性割烹着頭巾付き 【種類】 着物。昭和の香り。 【スペック】 カレーや肉じゃがを思い出す。 防弾性能は布地が薄いためイマイチ。 9mm弾程度なら防いでくれるかもしれない。 活躍とか +開示する 葉鍵3にも同様のものが出ている。 これを着たものは恋愛フラグが立つとかなんとか。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/8508.html
789 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/04/30(日) 23 06 40 ID softbank060146109143.bbtec.net [141/155] 憂鬱SRW ファンタジールートSS「宵闇の翼、ガリアを舞う」4 F世界 ストパン世界 現地時間1944年10月14日10時33分 ガリア ライン川周辺係争空域「ラインの冠」 「アーベント・フリューゲル」B小隊に補給が届けられたのは、何とか予定時間通りというところであった。 消費した弾薬の補充、損傷したシールドの交換、あるいはパージした武装の代わりを搭載するなど作業は多くにわたる。 武装の多くを外した代わりに武装コンテナを背負った補給装備のMPFが、その作業を進めているのであった。 とはいえ、補給できる量はそこまで多いとは限らない。当面の間に使用する武器と弾薬の補充であった。 このまま長期戦をこなすには不足がある量。それが意味するところは一つである。 『そろそろ撤退かしらね……』 『うん、ガリア軍の撤兵もほぼ終わったみたいだし』 そう、これ以上の長期戦に付き合い消耗を重ねるのは愚策ということだ。 事実として、展開しているカールスラントのガリア派遣陸軍は徐々に後退の動きを見せている。 長距離砲撃によって地面を這うネウロイ個体を次々と潰しながらも、足の遅い戦力を優先して逃がしているのだ。 けれど、それは一つの必然を生むことになる。 『撤兵までの殿は私たち(ウォーザード)ってことかな?』 『大方そのつもりでしょうね。制空権を確保している間に撤兵させないと損害が大きくなるし』 リミットとしては1時間ほどであろうか、と考えたエーリカに通信が入る。 『はい、こちらB小隊レールツァー……はい、はい。了解しました、そのように』 『どうだった?』 通信相手はアーベント・フリューゲルの指揮官であるルドルフ・デッドマンからだ。 後方の指揮車両からは言った指示は至極単純であり、エーリカが想像した通りの内容であった。 『小隊各員、傾注』 後方から送信されてきたデータを共有し、エーリカは指示を出す。 各員のHUDには地図が表示され、各部隊とネウロイの配置および移動の方向などがまとめて羅列されていく。 『現在のところ、ガリア陸軍および救援軍は順次撤退を開始しているわ。 彼らが十分な距離離脱できるまで、空戦隊はここで殿を務めることになった。 私たちは後方のウィッチの部隊と連携してここで阻止線を形成して足止め、その後撤退する』 エーリカの言葉に合わせるように、HUDに表示される地図の上、部隊を示すアイコンが移動していく。 忙し気なそれらは、このライン川を中心とした戦域からの離脱が第一義というのがよくわかる、 『小隊長、ガリア軍は本当に従ってくれるんですか?』 『それは問題ないわ。毎度のようにごねたらしいけど、それでも過去の失敗から押し切られたことになったそうよ』 そう、今回の出撃自体、繰り返されたガリア軍の独断専行に対応するためのモノだ。 ネウロイからの侵攻を受け止めるためならばともかく、積極的にネウロイ支配域に進むことは是とされていない。 その為に散々消耗したのはカールスラントをはじめとした各国軍であったのだ。その積み重なった損耗はどれほどかは言うまでもなく。 ともあれ、である。 『厄介なタイプを後ろに通さないよう、私たちが前面に出る。 油断をせずに行きましょう』 補給作業と小休止は終わり、ここから再び戦いが始まるのだ。 そして、B小隊は再び空の住人となった。彼女らが補給を行っている間にも、戦局はだいぶ動いていた。 それもそのはず、ネウロイもそろそろ増援にうち止めが見えてきたのである。 さらに、ネウロイの航空戦力が航空ウィッチとウォーザードの活躍で減ったことが大きい。 特に、最前線を飛び越えて後方まで届く長大な射程を持つ狙撃砲台型が消え、後方まで届く攻撃が減ったからだ。 790 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/04/30(日) 23 07 40 ID softbank060146109143.bbtec.net [142/155] しかし、それと引き換えに地上型のネウロイへの対処もしなくてはならないということもあり、展開するウィッチやウォーザードの仕事は減っていなかった。 眼下、未だにしぶとくネウロイの地上個体は残り続けているし、航空ネウロイの姿が0になったわけでもない。 ウィッチ、魔導士、そして自分達ウォーザードも順次撤収する必要があることを考えると、引き際を見極めつつ、戦わなくてはならない。 (ちょっと憂鬱ね) 状況としては決して油断できない。そのことを改めて認識したうえで、一つ咳払いをして宣言する。 『B小隊、行くわよ』 エーリカの声とともに、アーベント・フリューゲルのB小隊は一斉に飛び立った。 現地時間同日11時14分 ガリア ライン川周辺係争地域 後方約50㎞地点 カールスラント陸軍集結地点 カールスラント陸軍の部隊は、後退してくる味方を裁く作業に追われていた。 どこに撤退すべきか、どのようにルートを選ぶべきか、航空支援の得られるエリアはどこなのか。 はたまた、部隊の状況--負傷者や死亡者がどれほどいて、戦力の状況はどうであるかなどもやり取りしている。 3号指揮戦車KⅡ型を筆頭に。それに追従するSd.Kfz.9E通信強化型を複数引き連れた、通信支援機甲隊がこれを担っていた。 その護衛となるⅢ号対空戦車M.Flakvierling2および陸戦ウィッチらに護衛されつつ、忙しく通信をやり取りしていた。 「了解、負傷者を優先して下げてください、救護班を控えさせています」 「ルートはそのまま、はい……ネウロイの追撃はウィッチとウォーザード達が防いでいます、急いでください」 「擱座した戦車が……?こちらで回収用のMPFを回します、暫くそのままで。はい、生存を優先に」 忙しいやり取りは、それだけ戦場の整理の必要性が高いことを示す。これら通信支援機甲隊がいなければ、どうなっていたことか。 彼らから見て未来の技術を惜しみなく使ったこの戦力により、この状況下にあっても、各部隊に対して有機的な情報伝達を可能としていた。 この強力なデータリンクにより、迷子になったり、燃料切れになってしまったり、あるいは擱座して徒歩で撤退する兵士を拾い上げることが可能となっていた。 ネウロイからのジャミングを受けることもあるとはいえ、この結びつきはどうしても発生する戦場の霧を掃い、見通しの良い戦場を生み出していた。 (今回の撤退はうまくいってくれそうだな) 通信手たちの忙しいやり取りを聞きながらも、アーベント・フリューゲルの指揮官であるルドルフ・デッドマン大佐は胸中でつぶやく。 もはやこのライン川戦線においてだけでなく、各方面でもおなじみになりつつあるガリア軍の暴走。 時に火消しに飛び回る側にまで大被害が出ることもあるそれが起きる度、現場の人間はこのひやひやした時間を過ごすことになる。 複数どころではない将兵の命と、稀少な武器弾薬を消耗してしまう戦場だから、それは決して慣れることはない。 少し前に迂闊にネウロイを刺激しすぎて大侵攻数歩手前の侵攻を受けたのは記憶に新しい。 そのたびごとに戦訓が蓄積され、あるいは運用する兵器の扱いに習熟していくので、全くマイナスだけではないのが救いだろうか? (いや……問題はそれ以上か) 結局のところ、最大の問題はガリアの国内問題なのだ。 ガリア国内で戦後や発言権をとるために投機的な作戦が立案され、実行に移される。 用意されている戦力はどうあがいても訓練不足で数頼みの烏合の衆。それゆえに毎度大損害で、結局他国が尻拭いをする。 それを問い詰めようにも、ガリアが自国防衛という範疇で動いている建前から、解決が未だにできず、解決のために動くとしても手段が限定された状況。 つまるところ、これがまた繰り返される、ということである。 (しばらくは新戦術や新兵器に習熟するため、と割り切るか) そうでもなければ、ガリアの後方で安穏としており、あまつさえ政治闘争をしている連中に銃を向けるかもしれない。 そうあっては欲しくない。そうでなければ、最前線の彼女たちに向ける顔がないのだから。 ともあれ、今回の戦場の目的である撤退戦は順調。あとは時間経過で完了するだろう。 (ガリアは文句を言ってくるだろうがな) それだけが憂鬱だと、ルドルフは深くため息をついた。 戦場はいよいよ終結へと動き出している。そのことだけが、救いのように思えた。 791 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/04/30(日) 23 08 47 ID softbank060146109143.bbtec.net [143/155] 以上、wiki転載はご自由に。 とりあえずこれで一段落。 後は設定を投げて終わりにします。
https://w.atwiki.jp/puzzle-quest/pages/180.html
アガリアン道路 ■説明 アガリア山脈への道は、ドワーフ達が守っている。 ■隣接するポイント・日数・出現モンスター ポイント名 日数 モンスター ギルドール 1 - ガリア 1 - ■税 ■合流できるキャラクター 王国ガイドに戻る
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1677.html
川原の石を踏み、がりがりとした感触を楽しんでいると、足元にゆっくりの死体を見つけた。 皮が破れ、餡子が漏れ出しているが、綺麗な金髪と帽子からまりさ種とわかる。 周りで数匹の蟻が、大量にこぼれた餡子を巣に持ち帰ろうと、あくせくと働いている。 何が原因で死んだかはわからないが、ゆっくりは本当に些細な事で死んでしまうような 脆弱な生き物なので、このように死体を発見する事も日常茶飯事だった。 だがこの死体の側には、珍しくもう一匹、死体に見えないゆっくりが居る。 金髪と瞳の色から、死体と同じまりさ種とわかるが、お馴染みの黒い帽子が無く 代わりに三角の白い頭巾を額につけている。幽霊のような格好だが半透明ではない。 寝ているのか起きているかもわからない、半分だけ目を閉じた表情で、 口元をわずかに微笑んでいるかのように閉じたそのまりさは 呼吸もしていないかのように微動だにしていない。 こんな所で帽子も被らず動かないゆっくり、まさかこいつも死んでいるのだろうか。 頭巾のまりさの前にしゃがみ込んで、頬を軽くつついてみると、 ゆっくりのもちもちした肌の感触が返って来る。体温とでも言うのか、温度も冷たくは無い。 つついている内に、頭巾のまりさの意識が戻ってきたのか、 眠りに落ちた人間がまれに見せるような、ビクッと震える反応を見せた。 そのまま、少しびっくりしたような表情でこちらを見つめてくる。 「…ゆっ?ゆ…ゆっくりしていってね!」 「あ、ああ、ゆっくりだな」 頭巾のまりさは挨拶を返してもらった事に、満足したかのように軽く微笑むと きょろきょろと左右を見回し、自分の横に落ちている皮と餡子の塊に目を向けた。 すぐ横に居たのだが、もしかしてこの頭巾のまりさが殺したのだろうか。 頭巾のまりさは同族の死体を見るなり少しだけ寂しげな表情をした後、 ずりずりと餡子に口を近づけ、何を思ったか蟻のたかる餡子を食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ…」 「お、おい!」 「ゆ?どうしたの?」 「お前、ゆっくりの餡子でも食べるのか?」 冬篭りで餌が足りなくなるとか、わざと絶食させるとかで共食いを始めるという話も聞くが まだ冬でもなければ連れ帰って虐待している訳でもない。 この頭巾のまりさはどこかで餡子の味を覚えて、食べる為に死体のまりさを殺したのか? 「これはまりさのからだだよ?まりさのからだをどうしようとまりさのかってだよ!」 「? どう言う事だ?」 「わからないの?ばかなの?」 言っている意味がわからず聞き返すと、頭巾のまりさは半笑いの呆れ顔を返してきた。 腹が立つので皮を千切らない程度に頬をつねってやる。 「ゆ゛っ!?なにずるの!?まりざはまりざだよ!」 「ええと、お前が、これなのか?」 頬をつねったまま、頭巾のまりさと死体のまりさを順に指差して確認する。 「そうでずぅぅ!だがらはなぢで!」 幽霊のように白い三角頭巾をつけている変なゆっくりだとは思ったが、 まさか死体と自分が同一人物だと主張してくるとは。 頬から指を離してやると、まりさは涙目になりながらぷくぅぅ!と膨らんで威嚇してくる。 「つまり、この死体のまりさが死んだ後、お前になったのか」 「ぷひゅるる…そうだよ?」 「その、なんだ、ゆっくりは自分の体なら食べても平気なのか?」 「ゆ?あまくておいしいよ?」 さも当然のように答えてくる、美味しければいいのか。 ゆっくりのいい加減さなのか、弱い生き物が食料を得る為には仕方がないのか。 多分いい加減の方なんだろうなぁ、と考えていると、まりさはまた死体を食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ…しあわせー!」 定番のセリフを言うや否やまりさは顔を上に向け、ふわふわと宙に浮き上がる。 天にも登る程幸せなのか、と言うかゆっくりは空を飛ぶ生き物だったのか? 「な、なあ」 「ゆ?」 「何でお前は浮かんでるんだ?」 頭の上に?を浮かべたような表情でこちらを見てくるまりさだが、 視点が高くなった事と浮遊感から、やっと自分が浮かんでいると気付いたようだ。 「わあ!おそらをとんでるみたい!」 「いや、実際に飛んでるんだ。他のゆっくりも飛べるのか?」 「…しらないよ?」 懲りずに半笑いの呆れ顔を返してくる。あまりにも人を馬鹿にした表情に腹が立ち、 おいィ!と鞠をつく要領で頭を叩くと、まりさは勢い良く地面に叩きつけられた。 「ゆべっ!いだい゛ぃぃ!なにずるの゛ぉぉ!?」 痛みからしあわせー!な気分が抜けたのか、まりさは地面に叩きつけられたまま浮かんで来ない。 ひとしきり泣き喚くと、ゆんゆんと小さく泣き声を上げながら、ゆんしょとばかりに立ち上がる。 芝生なら痛いだけで済んだのだろうが、川原の石の上に叩きつけられたので皮が破れていたようだ。 起き上がった拍子に後頭部の傷からどろりと餡子がこぼれ落ちる。 「ゆ゛ぎっ?せなかがいたいよ!なんでぇぇ!?」 「ん?…あちゃあ、大きい傷から餡子がこぼれてるな」 「ゆ゛ぅっ!?ゆっくりできないよ!はやくなおしてね!」 「うーん、直そうにも、材料もジュースも無いな…」 「ゆ゛ええぇ!?おね゛がいだがらなおぢでぇぇ!」 まりさは顔を青くしてじたばたと体をゆするが、暴れる事でますます餡子が漏れていく。 だんだんと痙攣するような動きを見せ始めたまりさは、仕舞いには白目を剥いて、 「ああ、そんなに動くと…」 「も…もっと…ゆっくりした、かった…」 動かなくなってしまった。幽霊なのにまた死ぬのか。 先ほどまで暴れていたゆっくりが動かなくなった為、新しく地面に落ちてきた餡子にも ちらほらと蟻がやって来る。1匹分の餡子が追加されれば蟻も大喜びだろう。 そんな様子を眺めながら、さっきのゆっくりは一体なんだったのかと考えていると、 「ひゅー、どろどろどろどろ…」 「!?」 帽子の死体と頭巾の死体の更に横、一直線に並んだ位置から声が聞こえ、 半透明の丸いシルエットが現れた。半透明ながらも長い髪と三角の頭巾が見え、 後ろの風景が透けて見える体も次第にはっきりとした色へと変わっていく。 「どろどろどろどろ…じゃーん!」 「…またお前か」 完全に透明度を失った所で、新しく登場したまりさは胸を張って叫んだ。 じゃーん!って自分で言うのか。 「ゆー、しぬかとおもったよ」 「実際死んだと思うんだがなぁ」 華麗な復活を褒められたとでも思ったのか、まりさはゆへへ、と笑い 再び自分の体、頭巾を付けた出来立ての死体へずりずりと口を近づけていった。 また食べるのか、死んで幽霊になると腹が減るのだろうか。 そんな考えをよそに、まりさが一口二口と餡子に口を付けたところで、 「そこまでよ!」 「したいをたべてるんだね、わかるよー!」 「それにぼうしをかぶってないんだぜ!ゆっくりしてないやつだぜ!」 共食いにしか見えない光景をぱちゅりー、ちぇん、帽子付きまりさに目撃されてしまった。 「ゆっ?これはまりさのからだだから、まりさがどうしようとかってだよ!」 「? わかんないよー!?」 「むっきゅ!よくみたらふたりもころしてるわ!」 「ひどいやつだぜ!ゆっくりできないやつはしぬんだぜ!」 「ゆっ、ゆうぅ!?」 突然現れた同族からの、激しい非難に困惑する頭巾のまりさ。 やはり他のゆっくりから見ても、自分の体であれ共食いは異常な事らしい。 それ以前に目の前の死体と、それを食べるまりさが同一人物だと気付いていないようである。 「むっきゅっきゅ!せいぎをしっこうするのよ!」 「ゆっへっへ!くるしんでしねぇっ!」 「わかるよわかるよー!」 「ゆっ、やめてね!まりさはわるくないよ!?」 3匹のゆっくりは、川原に転がる石を咥えては次々と頭巾のまりさに投げつける。 その全てはコントロールの悪さから、頭巾のまりさよりもずっと手前に落ちるが、 頭巾のまりさは滑稽にもぴょんぴょん跳ねて、届かない石を避けようとしている。 だが、ゆっくりにとっては足場の悪い川原で飛び跳ねた事で、自分で足を傷つける結果となった。 「ゆがっ!いだいぃ!」 「ちゃんすだね!わかるよー!」 「わるものにとどめをさすんだぜ!」 「むきゅ!ちかづいておしつぶすのよ!」 頭の良いぱちゅりーは投石が届いていない事に気付いたのだろう。 指示通りにちぇんとまりさは、頭巾のまりさに勢い良く迫ると一方的な体当たりを始め、 ぱちゅりーは体力が低く走れないのか、その場から動かずに見物している。 「ゆへへへへっ!しねっしねっ!」 「しぬんだよー!わかってね!」 「やっやべっ、やべでっ!ゆぼぉっ!」 足を傷つけ抵抗の出来ない頭巾のまりさは、2匹からの挟み込むような猛攻に成すすべも無く 餡子を吐き、再び皮と餡子と頭巾の塊へと成り果てた。 荒い息を立てる2匹のゆっくりは、悪者を退治したと達成感をあらわにし、 離れた場所で見ていたぱちゅりーも満足げに、ゆっくりと近づいて来た。 「ゆへー、ゆへー、やってやったんだぜ!」 「わ、わ、わかるよー!」 「むきゅ!これでむれもへいわになるわ!」 悪いまりさを懲らしめるのに夢中になっていたのか、3匹は頭巾のまりさの側で 黙って見ていた人間にやっと気がつき、揃ってこちらに顔を向けて来る。 「ゆっ、わるいゆっくりをやっつけたまりさたちにごはんをよこすんだぜ!」 「そうね!ぜんこうをはたらいたわたしたちには、せいとうなほうしゅうがはらわれるべきだわ!」 「わかるよーわかるよー!」 「さっきのまりさ、そんなにゆっくり出来ない奴だったのか?」 「むきゅ、わたしのめにまちがいはないわ!」 頭巾のまりさを倒したからご褒美をくれ、と言うことらしいが、畑を襲った訳でもないゆっくりを倒しても 人間には何の特にもなっていない。人間に向かって報酬をよこせとは勝手な話である。 それでも自信満々で胸を張っている3匹の横に、半透明なシルエットが現れた。 「ひゅー、どろどろどろどろ…」 「またか」 「ゆゆ、な、なんなのぜっ?」 「むきゅう、なんだかさむけがするわ…!」 「わっ、わからないよー!?」 3匹のゆっくり達はすぐ側から聞こえてくる滑稽な擬音語に、落ち着かない表情で怯えている。 間の抜けた声だが、ゆっくりには怖く聞こえるものなのだろうか。 頭巾のまりさの緊張感の無い顔を見れば落ち着くかも知れないと、帽子のまりさの頭をぽんぽんと叩き、 だんだんと透明さを失っていくシルエットの方を指差してやる。 「ゆっ?」と指差した方を見た帽子のまりさと頭巾のまりさの目が合った。 「どろどろ…じゃーん!」 「ゆっ!?ゆぎゃあああぁぁぁ──!?!?」 「!? おっおっ、おばけぇぇ!?」 「わっ、わかっ、わかっ、わかに゛ゃぁぁぁ!」 「ゆ、ゆゆっ?」 はつらつな笑顔でじゃーん!と叫ぶ頭巾のまりさに、絶叫を上げる帽子のまりさ。 それを聞いたぱちゅりーとちぇんにも恐怖が伝染し、2匹も続けて絶叫を上げる。 頭巾のまりさだけが、他のゆっくりが絶叫を上げる事態について行けない様子である。 「もうやだぁぁぁ!!」 「わがにゃぁぁぁぁん!!」 「むっ、むきゅ、まって、おいてかないで…!!」 「もうおうぢがえる!ぱちゅりーはゆっくりおとりになってね!」 「む、むきゅぅぅっ!?」 帽子のまりさとちぇんが我先にと逃げ出すが、ぱちゅりーは腰が抜けたのかその場から動けない。 助けを求める仲間に、帽子のまりさは泣いて逃げながらもちゃっかりと追い討ちをかけて行く。 そんなまりさとちぇんも、慌てて川原を走った為足に傷を負って転げまわってしまった。 「ゆっ、ゆぎゃぁぁぁ!いだい゛!たずげでぇぇぇ!」 「わぎゃんにゃいよぉぉぉ!!」 「むっ、むきゅぅぅぅん!むきゅぅぅぅん!」 「ゆゆ…いったいどうなってるの?」 「…本当にどうなってるんだ」 まりさとちぇんから見捨てられたぱちゅりーも、もはや泣く事しか出来ない。 先ほど自分を痛めつけた相手が、勝手に怯えて逃げながら自滅する様に、頭巾のまりさも 訳がわからずおろおろするばかりで、事態は進展せずただただ騒音が流れるのみとなる。 余りにも騒がしいし、それに他のゆっくりも幽霊になるのか確認したい。 おもむろに立ち上がると、近くに居るぱちゅりーから踏み潰していく事にした。 「むきゅぅぅぅん!むきゅぅぅうべっ!!!」 「わかんにゅぶ!!!」 「う゛わ゛ぁぁぁぁん!わ゛ぁぁあ゛ぐっ!!!」 少しだけ離れた所で転がっているちぇんとまりさにも平等に引導を渡し、 様子を見てみるが一向にゆっくりの幽霊が出てくる気配は無い。 ただ呆然としている頭巾のまりさと、更に餡子が量産されて大喜びの蟻がいるだけである。 「やっぱり、生き返るのはお前だけか」 「ゆ?」 何の話か理解していない頭巾のまりさは少し考え、 「ゆっ、まりさをいじめるわるいゆっくりをたおしてくれたんだね、ゆっくりありがとう!」 「ん?あ、ああ」 自分に都合の良いように解釈したようだ。笑顔でこちらに跳ねてくる。 ちゃんとお礼を言うし、人懐っこくていいゆっくりじゃないか、と思いきや 「まりさおなかがすいたよ、ごはんちょうだい!」 「……」 自分を助けてくれるとみるや、にこにこ笑顔で余計な要求までしてきた。 やはりゆっくりはゆっくりである。 「さっきみたいに、自分の体を食べれば良いんじゃないのか?」 「ゆー?あんまりあんこばっかりだとあきるよ?」 飽きるのか。やはり半笑いの呆れ顔を見せてくるが、死んでも復活する珍しいまりさ種なら 連れて帰って里の人に見せるのも面白いだろう。つねりたくなるのを我慢して餌付けしてやる事にする。 都合の良いことに、外で食おうとおにぎりを持って来ていたのだ。 「それなら、おにぎりでいいか?」 「ゆっ!おにぎりたべたい!ちょうだい!ちょうだい!」 よだれを垂らして見上げて来るまりさの口に、おにぎりを半分に割って放り込んでやる。 「むーしゃ、むーしゃ」 具こそ入っていないが、少量の塩をふったおにぎりの、餡子の甘みとは違ったうまさに 満面の笑みを浮かべるまりさ。自分の欲求がまかり通ってこれ以上無い程の至福をかみ締めている。 「むーしゃ、むーしゃ、し…」 「どうした?」 しあわせー!と宣言しようと顔を上向きに上げた瞬間まりさは動きを止め、 「おげろぉぉぉ!」 「お、おい!」 突然目を見開いて餡子を吐き出し、痙攣し始めた。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆげっゆげっ」 がくがくと震えながら、目から大粒の涙をぼろぼろと流し、地面に接した足から 酸をかけたかのようにじゅわじゅわと泡を立てながら溶けていく。 「ゆ゛げっ、ゆ゛げっ、ゆ゛っぐり、で、でぎな゛い゛ぃぃぃぃ!」 そう言うとまりさの目玉はぼろりとこぼれ落ち、地面に落ちると、じゅうと音を立てながら 溶けて消える。見る見るうちに頭髪も頭巾も、全てが溶けてしまった。 おにぎりにはゆっくりを殺すような毒も入っていない。ただ塩をふっただけの具なしおにぎりである。 ゆっくりは思い込みの強い生き物だが、幽霊を気取るとこんな少量の塩でも死んでしまうのか。 「…いい加減な生き物だし、また生き返るかな」 そこらに散らばる餡子をせっせとアリが運ぶ中、また笑顔で復活するかと待っていたが、 いつまで経っても頭巾のまりさは現れなかった。 おわり。 その他の作品。 ゆっくりいじめ系791 ゆっくりと瓶 (fuku2335.txt) ゆっくりいじめ系813 赤ちゃんのお帽子 (fuku2368.txt) ゆっくりいじめ系822 ドスの中身 (fuku2386.txt) ゆっくりいじめ系851 どちらかのお帽子 (fuku2437.txt) ゆっくりいじめ系873 べたべたのお肌 (fuku2467.txt) お帽子の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/391.html
川原の石を踏み、がりがりとした感触を楽しんでいると、足元にゆっくりの死体を見つけた。 皮が破れ、餡子が漏れ出しているが、綺麗な金髪と帽子からまりさ種とわかる。 周りで数匹の蟻が、大量にこぼれた餡子を巣に持ち帰ろうと、あくせくと働いている。 何が原因で死んだかはわからないが、ゆっくりは本当に些細な事で死んでしまうような 脆弱な生き物なので、このように死体を発見する事も日常茶飯事だった。 だがこの死体の側には、珍しくもう一匹、死体に見えないゆっくりが居る。 金髪と瞳の色から、死体と同じまりさ種とわかるが、お馴染みの黒い帽子が無く 代わりに三角の白い頭巾を額につけている。幽霊のような格好だが半透明ではない。 寝ているのか起きているかもわからない、半分だけ目を閉じた表情で、 口元をわずかに微笑んでいるかのように閉じたそのまりさは 呼吸もしていないかのように微動だにしていない。 こんな所で帽子も被らず動かないゆっくり、まさかこいつも死んでいるのだろうか。 頭巾のまりさの前にしゃがみ込んで、頬を軽くつついてみると、 ゆっくりのもちもちした肌の感触が返って来る。体温とでも言うのか、温度も冷たくは無い。 つついている内に、頭巾のまりさの意識が戻ってきたのか、 眠りに落ちた人間がまれに見せるような、ビクッと震える反応を見せた。 そのまま、少しびっくりしたような表情でこちらを見つめてくる。 「…ゆっ?ゆ…ゆっくりしていってね!」 「あ、ああ、ゆっくりだな」 頭巾のまりさは挨拶を返してもらった事に、満足したかのように軽く微笑むと きょろきょろと左右を見回し、自分の横に落ちている皮と餡子の塊に目を向けた。 すぐ横に居たのだが、もしかしてこの頭巾のまりさが殺したのだろうか。 頭巾のまりさは同族の死体を見るなり少しだけ寂しげな表情をした後、 ずりずりと餡子に口を近づけ、何を思ったか蟻のたかる餡子を食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ…」 「お、おい!」 「ゆ?どうしたの?」 「お前、ゆっくりの餡子でも食べるのか?」 冬篭りで餌が足りなくなるとか、わざと絶食させるとかで共食いを始めるという話も聞くが まだ冬でもなければ連れ帰って虐待している訳でもない。 この頭巾のまりさはどこかで餡子の味を覚えて、食べる為に死体のまりさを殺したのか? 「これはまりさのからだだよ?まりさのからだをどうしようとまりさのかってだよ!」 「? どう言う事だ?」 「わからないの?ばかなの?」 言っている意味がわからず聞き返すと、頭巾のまりさは半笑いの呆れ顔を返してきた。 腹が立つので皮を千切らない程度に頬をつねってやる。 「ゆ゛っ!?なにずるの!?まりざはまりざだよ!」 「ええと、お前が、これなのか?」 頬をつねったまま、頭巾のまりさと死体のまりさを順に指差して確認する。 「そうでずぅぅ!だがらはなぢで!」 幽霊のように白い三角頭巾をつけている変なゆっくりだとは思ったが、 まさか死体と自分が同一人物だと主張してくるとは。 頬から指を離してやると、まりさは涙目になりながらぷくぅぅ!と膨らんで威嚇してくる。 「つまり、この死体のまりさが死んだ後、お前になったのか」 「ぷひゅるる…そうだよ?」 「その、なんだ、ゆっくりは自分の体なら食べても平気なのか?」 「ゆ?あまくておいしいよ?」 さも当然のように答えてくる、美味しければいいのか。 ゆっくりのいい加減さなのか、弱い生き物が食料を得る為には仕方がないのか。 多分いい加減の方なんだろうなぁ、と考えていると、まりさはまた死体を食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ…しあわせー!」 定番のセリフを言うや否やまりさは顔を上に向け、ふわふわと宙に浮き上がる。 天にも登る程幸せなのか、と言うかゆっくりは空を飛ぶ生き物だったのか? 「な、なあ」 「ゆ?」 「何でお前は浮かんでるんだ?」 頭の上に?を浮かべたような表情でこちらを見てくるまりさだが、 視点が高くなった事と浮遊感から、やっと自分が浮かんでいると気付いたようだ。 「わあ!おそらをとんでるみたい!」 「いや、実際に飛んでるんだ。他のゆっくりも飛べるのか?」 「…しらないよ?」 懲りずに半笑いの呆れ顔を返してくる。あまりにも人を馬鹿にした表情に腹が立ち、 おいィ!と鞠をつく要領で頭を叩くと、まりさは勢い良く地面に叩きつけられた。 「ゆべっ!いだい゛ぃぃ!なにずるの゛ぉぉ!?」 痛みからしあわせー!な気分が抜けたのか、まりさは地面に叩きつけられたまま浮かんで来ない。 ひとしきり泣き喚くと、ゆんゆんと小さく泣き声を上げながら、ゆんしょとばかりに立ち上がる。 芝生なら痛いだけで済んだのだろうが、川原の石の上に叩きつけられたので皮が破れていたようだ。 起き上がった拍子に後頭部の傷からどろりと餡子がこぼれ落ちる。 「ゆ゛ぎっ?せなかがいたいよ!なんでぇぇ!?」 「ん?…あちゃあ、大きい傷から餡子がこぼれてるな」 「ゆ゛ぅっ!?ゆっくりできないよ!はやくなおしてね!」 「うーん、直そうにも、材料もジュースも無いな…」 「ゆ゛ええぇ!?おね゛がいだがらなおぢでぇぇ!」 まりさは顔を青くしてじたばたと体をゆするが、暴れる事でますます餡子が漏れていく。 だんだんと痙攣するような動きを見せ始めたまりさは、仕舞いには白目を剥いて、 「ああ、そんなに動くと…」 「も…もっと…ゆっくりした、かった…」 動かなくなってしまった。幽霊なのにまた死ぬのか。 先ほどまで暴れていたゆっくりが動かなくなった為、新しく地面に落ちてきた餡子にも ちらほらと蟻がやって来る。1匹分の餡子が追加されれば蟻も大喜びだろう。 そんな様子を眺めながら、さっきのゆっくりは一体なんだったのかと考えていると、 「ひゅー、どろどろどろどろ…」 「!?」 帽子の死体と頭巾の死体の更に横、一直線に並んだ位置から声が聞こえ、 半透明の丸いシルエットが現れた。半透明ながらも長い髪と三角の頭巾が見え、 後ろの風景が透けて見える体も次第にはっきりとした色へと変わっていく。 「どろどろどろどろ…じゃーん!」 「…またお前か」 完全に透明度を失った所で、新しく登場したまりさは胸を張って叫んだ。 じゃーん!って自分で言うのか。 「ゆー、しぬかとおもったよ」 「実際死んだと思うんだがなぁ」 華麗な復活を褒められたとでも思ったのか、まりさはゆへへ、と笑い 再び自分の体、頭巾を付けた出来立ての死体へずりずりと口を近づけていった。 また食べるのか、死んで幽霊になると腹が減るのだろうか。 そんな考えをよそに、まりさが一口二口と餡子に口を付けたところで、 「そこまでよ!」 「したいをたべてるんだね、わかるよー!」 「それにぼうしをかぶってないんだぜ!ゆっくりしてないやつだぜ!」 共食いにしか見えない光景をぱちゅりー、ちぇん、帽子付きまりさに目撃されてしまった。 「ゆっ?これはまりさのからだだから、まりさがどうしようとかってだよ!」 「? わかんないよー!?」 「むっきゅ!よくみたらふたりもころしてるわ!」 「ひどいやつだぜ!ゆっくりできないやつはしぬんだぜ!」 「ゆっ、ゆうぅ!?」 突然現れた同族からの、激しい非難に困惑する頭巾のまりさ。 やはり他のゆっくりから見ても、自分の体であれ共食いは異常な事らしい。 それ以前に目の前の死体と、それを食べるまりさが同一人物だと気付いていないようである。 「むっきゅっきゅ!せいぎをしっこうするのよ!」 「ゆっへっへ!くるしんでしねぇっ!」 「わかるよわかるよー!」 「ゆっ、やめてね!まりさはわるくないよ!?」 3匹のゆっくりは、川原に転がる石を咥えては次々と頭巾のまりさに投げつける。 その全てはコントロールの悪さから、頭巾のまりさよりもずっと手前に落ちるが、 頭巾のまりさは滑稽にもぴょんぴょん跳ねて、届かない石を避けようとしている。 だが、ゆっくりにとっては足場の悪い川原で飛び跳ねた事で、自分で足を傷つける結果となった。 「ゆがっ!いだいぃ!」 「ちゃんすだね!わかるよー!」 「わるものにとどめをさすんだぜ!」 「むきゅ!ちかづいておしつぶすのよ!」 頭の良いぱちゅりーは投石が届いていない事に気付いたのだろう。 指示通りにちぇんとまりさは、頭巾のまりさに勢い良く迫ると一方的な体当たりを始め、 ぱちゅりーは体力が低く走れないのか、その場から動かずに見物している。 「ゆへへへへっ!しねっしねっ!」 「しぬんだよー!わかってね!」 「やっやべっ、やべでっ!ゆぼぉっ!」 足を傷つけ抵抗の出来ない頭巾のまりさは、2匹からの挟み込むような猛攻に成すすべも無く 餡子を吐き、再び皮と餡子と頭巾の塊へと成り果てた。 荒い息を立てる2匹のゆっくりは、悪者を退治したと達成感をあらわにし、 離れた場所で見ていたぱちゅりーも満足げに、ゆっくりと近づいて来た。 「ゆへー、ゆへー、やってやったんだぜ!」 「わ、わ、わかるよー!」 「むきゅ!これでむれもへいわになるわ!」 悪いまりさを懲らしめるのに夢中になっていたのか、3匹は頭巾のまりさの側で 黙って見ていた人間にやっと気がつき、揃ってこちらに顔を向けて来る。 「ゆっ、わるいゆっくりをやっつけたまりさたちにごはんをよこすんだぜ!」 「そうね!ぜんこうをはたらいたわたしたちには、せいとうなほうしゅうがはらわれるべきだわ!」 「わかるよーわかるよー!」 「さっきのまりさ、そんなにゆっくり出来ない奴だったのか?」 「むきゅ、わたしのめにまちがいはないわ!」 頭巾のまりさを倒したからご褒美をくれ、と言うことらしいが、畑を襲った訳でもないゆっくりを倒しても 人間には何の特にもなっていない。人間に向かって報酬をよこせとは勝手な話である。 それでも自信満々で胸を張っている3匹の横に、半透明なシルエットが現れた。 「ひゅー、どろどろどろどろ…」 「またか」 「ゆゆ、な、なんなのぜっ?」 「むきゅう、なんだかさむけがするわ…!」 「わっ、わからないよー!?」 3匹のゆっくり達はすぐ側から聞こえてくる滑稽な擬音語に、落ち着かない表情で怯えている。 間の抜けた声だが、ゆっくりには怖く聞こえるものなのだろうか。 頭巾のまりさの緊張感の無い顔を見れば落ち着くかも知れないと、帽子のまりさの頭をぽんぽんと叩き、 だんだんと透明さを失っていくシルエットの方を指差してやる。 「ゆっ?」と指差した方を見た帽子のまりさと頭巾のまりさの目が合った。 「どろどろ…じゃーん!」 「ゆっ!?ゆぎゃあああぁぁぁ──!?!?」 「!? おっおっ、おばけぇぇ!?」 「わっ、わかっ、わかっ、わかに゛ゃぁぁぁ!」 「ゆ、ゆゆっ?」 はつらつな笑顔でじゃーん!と叫ぶ頭巾のまりさに、絶叫を上げる帽子のまりさ。 それを聞いたぱちゅりーとちぇんにも恐怖が伝染し、2匹も続けて絶叫を上げる。 頭巾のまりさだけが、他のゆっくりが絶叫を上げる事態について行けない様子である。 「もうやだぁぁぁ!!」 「わがにゃぁぁぁぁん!!」 「むっ、むきゅ、まって、おいてかないで…!!」 「もうおうぢがえる!ぱちゅりーはゆっくりおとりになってね!」 「む、むきゅぅぅっ!?」 帽子のまりさとちぇんが我先にと逃げ出すが、ぱちゅりーは腰が抜けたのかその場から動けない。 助けを求める仲間に、帽子のまりさは泣いて逃げながらもちゃっかりと追い討ちをかけて行く。 そんなまりさとちぇんも、慌てて川原を走った為足に傷を負って転げまわってしまった。 「ゆっ、ゆぎゃぁぁぁ!いだい゛!たずげでぇぇぇ!」 「わぎゃんにゃいよぉぉぉ!!」 「むっ、むきゅぅぅぅん!むきゅぅぅぅん!」 「ゆゆ…いったいどうなってるの?」 「…本当にどうなってるんだ」 まりさとちぇんから見捨てられたぱちゅりーも、もはや泣く事しか出来ない。 先ほど自分を痛めつけた相手が、勝手に怯えて逃げながら自滅する様に、頭巾のまりさも 訳がわからずおろおろするばかりで、事態は進展せずただただ騒音が流れるのみとなる。 余りにも騒がしいし、それに他のゆっくりも幽霊になるのか確認したい。 おもむろに立ち上がると、近くに居るぱちゅりーから踏み潰していく事にした。 「むきゅぅぅぅん!むきゅぅぅうべっ!!!」 「わかんにゅぶ!!!」 「う゛わ゛ぁぁぁぁん!わ゛ぁぁあ゛ぐっ!!!」 少しだけ離れた所で転がっているちぇんとまりさにも平等に引導を渡し、 様子を見てみるが一向にゆっくりの幽霊が出てくる気配は無い。 ただ呆然としている頭巾のまりさと、更に餡子が量産されて大喜びの蟻がいるだけである。 「やっぱり、生き返るのはお前だけか」 「ゆ?」 何の話か理解していない頭巾のまりさは少し考え、 「ゆっ、まりさをいじめるわるいゆっくりをたおしてくれたんだね、ゆっくりありがとう!」 「ん?あ、ああ」 自分に都合の良いように解釈したようだ。笑顔でこちらに跳ねてくる。 ちゃんとお礼を言うし、人懐っこくていいゆっくりじゃないか、と思いきや 「まりさおなかがすいたよ、ごはんちょうだい!」 「……」 自分を助けてくれるとみるや、にこにこ笑顔で余計な要求までしてきた。 やはりゆっくりはゆっくりである。 「さっきみたいに、自分の体を食べれば良いんじゃないのか?」 「ゆー?あんまりあんこばっかりだとあきるよ?」 飽きるのか。やはり半笑いの呆れ顔を見せてくるが、死んでも復活する珍しいまりさ種なら 連れて帰って里の人に見せるのも面白いだろう。つねりたくなるのを我慢して餌付けしてやる事にする。 都合の良いことに、外で食おうとおにぎりを持って来ていたのだ。 「それなら、おにぎりでいいか?」 「ゆっ!おにぎりたべたい!ちょうだい!ちょうだい!」 よだれを垂らして見上げて来るまりさの口に、おにぎりを半分に割って放り込んでやる。 「むーしゃ、むーしゃ」 具こそ入っていないが、少量の塩をふったおにぎりの、餡子の甘みとは違ったうまさに 満面の笑みを浮かべるまりさ。自分の欲求がまかり通ってこれ以上無い程の至福をかみ締めている。 「むーしゃ、むーしゃ、し…」 「どうした?」 しあわせー!と宣言しようと顔を上向きに上げた瞬間まりさは動きを止め、 「おげろぉぉぉ!」 「お、おい!」 突然目を見開いて餡子を吐き出し、痙攣し始めた。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆげっゆげっ」 がくがくと震えながら、目から大粒の涙をぼろぼろと流し、地面に接した足から 酸をかけたかのようにじゅわじゅわと泡を立てながら溶けていく。 「ゆ゛げっ、ゆ゛げっ、ゆ゛っぐり、で、でぎな゛い゛ぃぃぃぃ!」 そう言うとまりさの目玉はぼろりとこぼれ落ち、地面に落ちると、じゅうと音を立てながら 溶けて消える。見る見るうちに頭髪も頭巾も、全てが溶けてしまった。 おにぎりにはゆっくりを殺すような毒も入っていない。ただ塩をふっただけの具なしおにぎりである。 ゆっくりは思い込みの強い生き物だが、幽霊を気取るとこんな少量の塩でも死んでしまうのか。 「…いい加減な生き物だし、また生き返るかな」 そこらに散らばる餡子をせっせとアリが運ぶ中、また笑顔で復活するかと待っていたが、 いつまで経っても頭巾のまりさは現れなかった。 おわり。 その他の作品。 ゆっくりいじめ系791 ゆっくりと瓶 (fuku2335.txt) ゆっくりいじめ系813 赤ちゃんのお帽子 (fuku2368.txt) ゆっくりいじめ系822 ドスの中身 (fuku2386.txt) ゆっくりいじめ系851 どちらかのお帽子 (fuku2437.txt) ゆっくりいじめ系873 べたべたのお肌 (fuku2467.txt) お帽子の人? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/ameba_pigg/pages/1245.html
利休の黒頭巾 kyoto_hat_rikyu_0911.swf 京都 金閣寺 パソコン 男女共通 ファッション その他 130アメG
https://w.atwiki.jp/1000memomura/pages/67.html
リターナー タイプ 斬 図鑑No 986 名称 赤頭巾の白猫ミルティ 性別 女 レアリティ ☆5 カテゴリ ミルティ CV 五十嵐由佳 イラスト MAX攻撃力 HP 回復力 運 攻撃 3561 HP 3102 回復 1137 運 30 リーダースキル 赤頭巾の純真全てのタイプHP75%アップ・攻撃力150%アップ、4リンク以上攻撃力50%アップ被ダメージ15%ダウン スキル 籠の中のご馳走(22→16)♥マーカーを●マーカーにチェンジ、1ターン●マーカー攻撃力250%アップ全ての状態異常回復 SP攻撃 狼狩りです敵単体1000%ダメージ、10%吸収 特殊能力 大事なお使いリンク先頭時攻撃力100%アップ アビリティ覚醒 覚醒 効果 1 攻撃力10%アップ 2 自身●マーカー時攻撃力10%アップ 3 自身●マーカー時攻撃力10%アップ 4 スキル発動ターン3ダウン 5 自身●マーカー時攻撃力10%アップ 6 スキル発動ターン3ダウン 7 全ての状態異常無効 8 自身●マーカー時攻撃力20%アップ リターナー設定 解説 童話の世界で、無垢な少女として、赤ずきんになったミルティ。かわいらしい赤ずきんは彼女のお気に入り。おばあちゃんへのお届け物として沢山の果物や飲み物などを詰め込んだ籠を持ちながら、今日も彼女はおかしな童話の世界を駆け巡る。 入手方法 千メモ童話フェス(現在入手不可) おすすめ武具 贄羊剣アルゲディ サイラスのキーホルダー 提灯ジャックの鎌 オデュアスの剣 運用方法 リーダーで運用する場合、4リンク以上は3.75倍と高水準の火力を出すことができる。被ダメージ15%もあるので割合攻撃以外ならダメージを抑えることができる。序盤の火力が高いので自身の一番槍も活躍できる。 スキルはやや重い変換のため、周回には少し不向き。3.5倍と高ブーストなので使いどころはそれなりにあるが、クリスマスサラがいると軍配はそちらに上がる。 リターナー特殊能力が一番槍で、尚且つ高倍率の単発アタッカーなので武具は一番槍を生かせるものがいい。LFの倍率によるが、SPが発動すればルリオベールに並ぶほどの火力を出せる。吸収はおまけと考えた方が妥当。吸収目的で編成に入れることはおすすめしない。 小話 ハロウィンの時もそうだが、よく物を上に投げては綺麗にキャッチする。そのバスケット、大事なものじゃないの? リターナー設定にエラッタが入ったことがある珍しいリターナー。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/882.html
川原の石を踏み、がりがりとした感触を楽しんでいると、足元にゆっくりの死体を見つけた。 皮が破れ、餡子が漏れ出しているが、綺麗な金髪と帽子からまりさ種とわかる。 周りで数匹の蟻が、大量にこぼれた餡子を巣に持ち帰ろうと、あくせくと働いている。 何が原因で死んだかはわからないが、ゆっくりは本当に些細な事で死んでしまうような 脆弱な生き物なので、このように死体を発見する事も日常茶飯事だった。 だがこの死体の側には、珍しくもう一匹、死体に見えないゆっくりが居る。 金髪と瞳の色から、死体と同じまりさ種とわかるが、お馴染みの黒い帽子が無く 代わりに三角の白い頭巾を額につけている。幽霊のような格好だが半透明ではない。 寝ているのか起きているかもわからない、半分だけ目を閉じた表情で、 口元をわずかに微笑んでいるかのように閉じたそのまりさは 呼吸もしていないかのように微動だにしていない。 こんな所で帽子も被らず動かないゆっくり、まさかこいつも死んでいるのだろうか。 頭巾のまりさの前にしゃがみ込んで、頬を軽くつついてみると、 ゆっくりのもちもちした肌の感触が返って来る。体温とでも言うのか、温度も冷たくは無い。 つついている内に、頭巾のまりさの意識が戻ってきたのか、 眠りに落ちた人間がまれに見せるような、ビクッと震える反応を見せた。 そのまま、少しびっくりしたような表情でこちらを見つめてくる。 「…ゆっ?ゆ…ゆっくりしていってね!」 「あ、ああ、ゆっくりだな」 頭巾のまりさは挨拶を返してもらった事に、満足したかのように軽く微笑むと きょろきょろと左右を見回し、自分の横に落ちている皮と餡子の塊に目を向けた。 すぐ横に居たのだが、もしかしてこの頭巾のまりさが殺したのだろうか。 頭巾のまりさは同族の死体を見るなり少しだけ寂しげな表情をした後、 ずりずりと餡子に口を近づけ、何を思ったか蟻のたかる餡子を食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ…」 「お、おい!」 「ゆ?どうしたの?」 「お前、ゆっくりの餡子でも食べるのか?」 冬篭りで餌が足りなくなるとか、わざと絶食させるとかで共食いを始めるという話も聞くが まだ冬でもなければ連れ帰って虐待している訳でもない。 この頭巾のまりさはどこかで餡子の味を覚えて、食べる為に死体のまりさを殺したのか? 「これはまりさのからだだよ?まりさのからだをどうしようとまりさのかってだよ!」 「? どう言う事だ?」 「わからないの?ばかなの?」 言っている意味がわからず聞き返すと、頭巾のまりさは半笑いの呆れ顔を返してきた。 腹が立つので皮を千切らない程度に頬をつねってやる。 「ゆ゛っ!?なにずるの!?まりざはまりざだよ!」 「ええと、お前が、これなのか?」 頬をつねったまま、頭巾のまりさと死体のまりさを順に指差して確認する。 「そうでずぅぅ!だがらはなぢで!」 幽霊のように白い三角頭巾をつけている変なゆっくりだとは思ったが、 まさか死体と自分が同一人物だと主張してくるとは。 頬から指を離してやると、まりさは涙目になりながらぷくぅぅ!と膨らんで威嚇してくる。 「つまり、この死体のまりさが死んだ後、お前になったのか」 「ぷひゅるる…そうだよ?」 「その、なんだ、ゆっくりは自分の体なら食べても平気なのか?」 「ゆ?あまくておいしいよ?」 さも当然のように答えてくる、美味しければいいのか。 ゆっくりのいい加減さなのか、弱い生き物が食料を得る為には仕方がないのか。 多分いい加減の方なんだろうなぁ、と考えていると、まりさはまた死体を食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ…しあわせー!」 定番のセリフを言うや否やまりさは顔を上に向け、ふわふわと宙に浮き上がる。 天にも登る程幸せなのか、と言うかゆっくりは空を飛ぶ生き物だったのか? 「な、なあ」 「ゆ?」 「何でお前は浮かんでるんだ?」 頭の上に?を浮かべたような表情でこちらを見てくるまりさだが、 視点が高くなった事と浮遊感から、やっと自分が浮かんでいると気付いたようだ。 「わあ!おそらをとんでるみたい!」 「いや、実際に飛んでるんだ。他のゆっくりも飛べるのか?」 「…しらないよ?」 懲りずに半笑いの呆れ顔を返してくる。あまりにも人を馬鹿にした表情に腹が立ち、 おいィ!と鞠をつく要領で頭を叩くと、まりさは勢い良く地面に叩きつけられた。 「ゆべっ!いだい゛ぃぃ!なにずるの゛ぉぉ!?」 痛みからしあわせー!な気分が抜けたのか、まりさは地面に叩きつけられたまま浮かんで来ない。 ひとしきり泣き喚くと、ゆんゆんと小さく泣き声を上げながら、ゆんしょとばかりに立ち上がる。 芝生なら痛いだけで済んだのだろうが、川原の石の上に叩きつけられたので皮が破れていたようだ。 起き上がった拍子に後頭部の傷からどろりと餡子がこぼれ落ちる。 「ゆ゛ぎっ?せなかがいたいよ!なんでぇぇ!?」 「ん?…あちゃあ、大きい傷から餡子がこぼれてるな」 「ゆ゛ぅっ!?ゆっくりできないよ!はやくなおしてね!」 「うーん、直そうにも、材料もジュースも無いな…」 「ゆ゛ええぇ!?おね゛がいだがらなおぢでぇぇ!」 まりさは顔を青くしてじたばたと体をゆするが、暴れる事でますます餡子が漏れていく。 だんだんと痙攣するような動きを見せ始めたまりさは、仕舞いには白目を剥いて、 「ああ、そんなに動くと…」 「も…もっと…ゆっくりした、かった…」 動かなくなってしまった。幽霊なのにまた死ぬのか。 先ほどまで暴れていたゆっくりが動かなくなった為、新しく地面に落ちてきた餡子にも ちらほらと蟻がやって来る。1匹分の餡子が追加されれば蟻も大喜びだろう。 そんな様子を眺めながら、さっきのゆっくりは一体なんだったのかと考えていると、 「ひゅー、どろどろどろどろ…」 「!?」 帽子の死体と頭巾の死体の更に横、一直線に並んだ位置から声が聞こえ、 半透明の丸いシルエットが現れた。半透明ながらも長い髪と三角の頭巾が見え、 後ろの風景が透けて見える体も次第にはっきりとした色へと変わっていく。 「どろどろどろどろ…じゃーん!」 「…またお前か」 完全に透明度を失った所で、新しく登場したまりさは胸を張って叫んだ。 じゃーん!って自分で言うのか。 「ゆー、しぬかとおもったよ」 「実際死んだと思うんだがなぁ」 華麗な復活を褒められたとでも思ったのか、まりさはゆへへ、と笑い 再び自分の体、頭巾を付けた出来立ての死体へずりずりと口を近づけていった。 また食べるのか、死んで幽霊になると腹が減るのだろうか。 そんな考えをよそに、まりさが一口二口と餡子に口を付けたところで、 「そこまでよ!」 「したいをたべてるんだね、わかるよー!」 「それにぼうしをかぶってないんだぜ!ゆっくりしてないやつだぜ!」 共食いにしか見えない光景をぱちゅりー、ちぇん、帽子付きまりさに目撃されてしまった。 「ゆっ?これはまりさのからだだから、まりさがどうしようとかってだよ!」 「? わかんないよー!?」 「むっきゅ!よくみたらふたりもころしてるわ!」 「ひどいやつだぜ!ゆっくりできないやつはしぬんだぜ!」 「ゆっ、ゆうぅ!?」 突然現れた同族からの、激しい非難に困惑する頭巾のまりさ。 やはり他のゆっくりから見ても、自分の体であれ共食いは異常な事らしい。 それ以前に目の前の死体と、それを食べるまりさが同一人物だと気付いていないようである。 「むっきゅっきゅ!せいぎをしっこうするのよ!」 「ゆっへっへ!くるしんでしねぇっ!」 「わかるよわかるよー!」 「ゆっ、やめてね!まりさはわるくないよ!?」 3匹のゆっくりは、川原に転がる石を咥えては次々と頭巾のまりさに投げつける。 その全てはコントロールの悪さから、頭巾のまりさよりもずっと手前に落ちるが、 頭巾のまりさは滑稽にもぴょんぴょん跳ねて、届かない石を避けようとしている。 だが、ゆっくりにとっては足場の悪い川原で飛び跳ねた事で、自分で足を傷つける結果となった。 「ゆがっ!いだいぃ!」 「ちゃんすだね!わかるよー!」 「わるものにとどめをさすんだぜ!」 「むきゅ!ちかづいておしつぶすのよ!」 頭の良いぱちゅりーは投石が届いていない事に気付いたのだろう。 指示通りにちぇんとまりさは、頭巾のまりさに勢い良く迫ると一方的な体当たりを始め、 ぱちゅりーは体力が低く走れないのか、その場から動かずに見物している。 「ゆへへへへっ!しねっしねっ!」 「しぬんだよー!わかってね!」 「やっやべっ、やべでっ!ゆぼぉっ!」 足を傷つけ抵抗の出来ない頭巾のまりさは、2匹からの挟み込むような猛攻に成すすべも無く 餡子を吐き、再び皮と餡子と頭巾の塊へと成り果てた。 荒い息を立てる2匹のゆっくりは、悪者を退治したと達成感をあらわにし、 離れた場所で見ていたぱちゅりーも満足げに、ゆっくりと近づいて来た。 「ゆへー、ゆへー、やってやったんだぜ!」 「わ、わ、わかるよー!」 「むきゅ!これでむれもへいわになるわ!」 悪いまりさを懲らしめるのに夢中になっていたのか、3匹は頭巾のまりさの側で 黙って見ていた人間にやっと気がつき、揃ってこちらに顔を向けて来る。 「ゆっ、わるいゆっくりをやっつけたまりさたちにごはんをよこすんだぜ!」 「そうね!ぜんこうをはたらいたわたしたちには、せいとうなほうしゅうがはらわれるべきだわ!」 「わかるよーわかるよー!」 「さっきのまりさ、そんなにゆっくり出来ない奴だったのか?」 「むきゅ、わたしのめにまちがいはないわ!」 頭巾のまりさを倒したからご褒美をくれ、と言うことらしいが、畑を襲った訳でもないゆっくりを倒しても 人間には何の特にもなっていない。人間に向かって報酬をよこせとは勝手な話である。 それでも自信満々で胸を張っている3匹の横に、半透明なシルエットが現れた。 「ひゅー、どろどろどろどろ…」 「またか」 「ゆゆ、な、なんなのぜっ?」 「むきゅう、なんだかさむけがするわ…!」 「わっ、わからないよー!?」 3匹のゆっくり達はすぐ側から聞こえてくる滑稽な擬音語に、落ち着かない表情で怯えている。 間の抜けた声だが、ゆっくりには怖く聞こえるものなのだろうか。 頭巾のまりさの緊張感の無い顔を見れば落ち着くかも知れないと、帽子のまりさの頭をぽんぽんと叩き、 だんだんと透明さを失っていくシルエットの方を指差してやる。 「ゆっ?」と指差した方を見た帽子のまりさと頭巾のまりさの目が合った。 「どろどろ…じゃーん!」 「ゆっ!?ゆぎゃあああぁぁぁ──!?!?」 「!? おっおっ、おばけぇぇ!?」 「わっ、わかっ、わかっ、わかに゛ゃぁぁぁ!」 「ゆ、ゆゆっ?」 はつらつな笑顔でじゃーん!と叫ぶ頭巾のまりさに、絶叫を上げる帽子のまりさ。 それを聞いたぱちゅりーとちぇんにも恐怖が伝染し、2匹も続けて絶叫を上げる。 頭巾のまりさだけが、他のゆっくりが絶叫を上げる事態について行けない様子である。 「もうやだぁぁぁ!!」 「わがにゃぁぁぁぁん!!」 「むっ、むきゅ、まって、おいてかないで…!!」 「もうおうぢがえる!ぱちゅりーはゆっくりおとりになってね!」 「む、むきゅぅぅっ!?」 帽子のまりさとちぇんが我先にと逃げ出すが、ぱちゅりーは腰が抜けたのかその場から動けない。 助けを求める仲間に、帽子のまりさは泣いて逃げながらもちゃっかりと追い討ちをかけて行く。 そんなまりさとちぇんも、慌てて川原を走った為足に傷を負って転げまわってしまった。 「ゆっ、ゆぎゃぁぁぁ!いだい゛!たずげでぇぇぇ!」 「わぎゃんにゃいよぉぉぉ!!」 「むっ、むきゅぅぅぅん!むきゅぅぅぅん!」 「ゆゆ…いったいどうなってるの?」 「…本当にどうなってるんだ」 まりさとちぇんから見捨てられたぱちゅりーも、もはや泣く事しか出来ない。 先ほど自分を痛めつけた相手が、勝手に怯えて逃げながら自滅する様に、頭巾のまりさも 訳がわからずおろおろするばかりで、事態は進展せずただただ騒音が流れるのみとなる。 余りにも騒がしいし、それに他のゆっくりも幽霊になるのか確認したい。 おもむろに立ち上がると、近くに居るぱちゅりーから踏み潰していく事にした。 「むきゅぅぅぅん!むきゅぅぅうべっ!!!」 「わかんにゅぶ!!!」 「う゛わ゛ぁぁぁぁん!わ゛ぁぁあ゛ぐっ!!!」 少しだけ離れた所で転がっているちぇんとまりさにも平等に引導を渡し、 様子を見てみるが一向にゆっくりの幽霊が出てくる気配は無い。 ただ呆然としている頭巾のまりさと、更に餡子が量産されて大喜びの蟻がいるだけである。 「やっぱり、生き返るのはお前だけか」 「ゆ?」 何の話か理解していない頭巾のまりさは少し考え、 「ゆっ、まりさをいじめるわるいゆっくりをたおしてくれたんだね、ゆっくりありがとう!」 「ん?あ、ああ」 自分に都合の良いように解釈したようだ。笑顔でこちらに跳ねてくる。 ちゃんとお礼を言うし、人懐っこくていいゆっくりじゃないか、と思いきや 「まりさおなかがすいたよ、ごはんちょうだい!」 「……」 自分を助けてくれるとみるや、にこにこ笑顔で余計な要求までしてきた。 やはりゆっくりはゆっくりである。 「さっきみたいに、自分の体を食べれば良いんじゃないのか?」 「ゆー?あんまりあんこばっかりだとあきるよ?」 飽きるのか。やはり半笑いの呆れ顔を見せてくるが、死んでも復活する珍しいまりさ種なら 連れて帰って里の人に見せるのも面白いだろう。つねりたくなるのを我慢して餌付けしてやる事にする。 都合の良いことに、外で食おうとおにぎりを持って来ていたのだ。 「それなら、おにぎりでいいか?」 「ゆっ!おにぎりたべたい!ちょうだい!ちょうだい!」 よだれを垂らして見上げて来るまりさの口に、おにぎりを半分に割って放り込んでやる。 「むーしゃ、むーしゃ」 具こそ入っていないが、少量の塩をふったおにぎりの、餡子の甘みとは違ったうまさに 満面の笑みを浮かべるまりさ。自分の欲求がまかり通ってこれ以上無い程の至福をかみ締めている。 「むーしゃ、むーしゃ、し…」 「どうした?」 しあわせー!と宣言しようと顔を上向きに上げた瞬間まりさは動きを止め、 「おげろぉぉぉ!」 「お、おい!」 突然目を見開いて餡子を吐き出し、痙攣し始めた。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆげっゆげっ」 がくがくと震えながら、目から大粒の涙をぼろぼろと流し、地面に接した足から 酸をかけたかのようにじゅわじゅわと泡を立てながら溶けていく。 「ゆ゛げっ、ゆ゛げっ、ゆ゛っぐり、で、でぎな゛い゛ぃぃぃぃ!」 そう言うとまりさの目玉はぼろりとこぼれ落ち、地面に落ちると、じゅうと音を立てながら 溶けて消える。見る見るうちに頭髪も頭巾も、全てが溶けてしまった。 おにぎりにはゆっくりを殺すような毒も入っていない。ただ塩をふっただけの具なしおにぎりである。 ゆっくりは思い込みの強い生き物だが、幽霊を気取るとこんな少量の塩でも死んでしまうのか。 「…いい加減な生き物だし、また生き返るかな」 そこらに散らばる餡子をせっせとアリが運ぶ中、また笑顔で復活するかと待っていたが、 いつまで経っても頭巾のまりさは現れなかった。 おわり。 その他の作品。 ゆっくりいじめ系791 ゆっくりと瓶 (fuku2335.txt) ゆっくりいじめ系813 赤ちゃんのお帽子 (fuku2368.txt) ゆっくりいじめ系822 ドスの中身 (fuku2386.txt) ゆっくりいじめ系851 どちらかのお帽子 (fuku2437.txt) ゆっくりいじめ系873 べたべたのお肌 (fuku2467.txt) お帽子の人? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/mtgflavortext/pages/5341.html
あの頭巾が広がると、すべての希望が覆い隠されてしまう。 The spread of its hood eclipses all hope. インベイジョン 【M TG Wiki】 名前
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4370.html
前ページこちらガリア王国プチ・トロワ内北花壇警護騎士団屯所 「きゅいきゅい! 全く性格捻じ曲がってるのね、あの従姉妹姫は!」 上空でシルフィードは主たる少女を乗せてエギンハイム村へと向かっていた。 理由は勿論、両津と同じ翼人たちの排除任務である。 “おや、随分と遅かったね。既に一人向かった所さ” 意地の悪い笑みを浮かべながら、イザベラは彼女達に告げた。 遅いも何もプチ・トロワに住み着いている両津と、 伝書フクロウが届いてからここへ向かうタバサとでは要する時間が違う。 だが言い訳など聞きたくないといった態度を見せるイザベラに何も言っても無意味。 そもそもタバサには反論するという概念が欠如している。 タバサは両津を協力者とは考えない。 もしも両津に後れを取るような事があれば、 それを理由にまた無理難題をふっかけられるだろう。 彼女の嫌がらせを意にも介さずタバサは現地へと飛ぶ。 しかし一つだけ彼女には気掛かりがあった。 平民の使い魔、両津の噂なら幾度も耳にした事がある。 多くの事業を手がけた事業家でもあり、その度に失脚する人物。 だが、彼はメイジでもなければ兵士でもない。 そのような人物が果たして翼人相手にどう戦うというのか…? 何も存在しない森に向けて幾度も矢が放たれる。 その不思議な光景を眺めながら村人は両津に尋ねた。 「あの、一体何をなさっておいでで?」 「決まっているだろう。罠を仕掛けてるんだよ」 そう言って両津は矢の一本を彼等に見せた。 何の変哲もない矢だが矢尻に当たる部分には紐が通されている。 それを木々の間に張り巡らせて、まるで蜘蛛の巣でも張るかのように糸を張る。 しかも糸の一本一本に返しまで付いた釣り針を多数仕掛ける念の入れよう。 「引っ掛かれば痛いじゃ済まん。これで連中が逃げ回るのを防ぐという訳だ」 「しかし、こんなんじゃ連中に気付かれたら終わりですぜ。糸なんて容易く風で切られちまう」 「当然だ。罠とは二重三重に仕掛けてこそ意味のあるものだ、その点は抜かりない」 次に両津は控えさせていた兵に命じ、ある草を持って来させた。 それは二日遅れで到着した両津が呼び寄せた兵達であり、 まるで動く気配を見せない騎士を不審がっていた村人達だったが、 両津の援軍として現れた軍勢を前に俄然やる気を取り戻していた。 「こいつは火に燻べると強烈な刺激を放つ。 そうなりゃ涙や鼻水が溢れて魔法を使うどころの騒ぎではない。 煙で燻してやれば逃げ回って罠にかかるか、墜落するかのどちらかだ」 既に翼人の塒にはこの草が敷き詰められており、両津の合図と共に作戦は決行される。 “勝て、しかるのちに戦え”戦いとは既に仕掛ける前から始まっているのだ。 両津の戦術を耳にした村人達から歓喜の声が上がる。 これで明日からいつも通り仕事が出来るのだと口々に叫ぶ。 だが、その淡い期待は一瞬にして打ち砕かれた。 「リョーツ様。実地検分が終了しました」 「それで?」 「この質と量であれば何の問題もないかと」 「よし。では早速取りかかれ。村人も駆り出して構わん。 昼夜を徹して伐採と建造に当たらせろ。時間との勝負だ」 「はっ!」 両津と兵士の間で交わされる不穏な言葉に、村人達から困惑の声が出始めた。 もう間もなく翼人たちも駆逐され、平穏な日々が訪れるというのに、 一体あの人は何をしようとしているのかと戸惑う。 直後、兵士達が次々と樵達の腕を掴み引き立てていく。 何が起こったのか判らず、村人達が両津に問い質す。 「き、騎士様! こ、これはどういう事ですか!?」 「いいか、よく聞け。ここはゲルマニアとの国境地帯だ。 にもかかわらず今日まで戦火を逃れられたのは翼人達の脅威があったからだ」 良質な材木が貴重な資源なのは地球でもハルケギニアでも変わらない。 ましてや家具や日用雑貨は勿論の事、軍艦に至るまでこの世界では材木が主流なのだ。 となれば両国間で資源を巡る争いが起きても不思議ではない。 実際、この近辺では国境線が度々移動していると聞く。 だがメイジでさえも手を焼く翼人がいる村を、わざわざ襲おうとはしない。 兵士を消耗させてまで村を奪う利点などないからだ。 だが、それも翼人達を滅ぼせば話も変わってくる。 「つまり他国からの侵攻を独力で防がねばならん。 だが案ずるな! ワシにはちゃんと考えがある!」 そういって広げたのは大雑把に描かれた要塞の図面と地図。 まるで森の周囲を固めるかのように幾つもの丸印が付けられ、 その横には小さな文字で要塞と書かれている。 唖然とする彼等の前で両津は力強く言い放った。 「名付けて『両津国境絶対防衛網』! このように各所に要塞を配置する事で敵軍の侵攻を防ぐ! 材料は売るほどあるし、お前らもガリア王国の兵士として徴用される!」 一瞬の沈黙の後、怒号の如く一斉に沸き上がる抗議の声。 しかし、それも兵士達の銃声によって掻き消された。 反抗する意欲を失った村人達を眺めながら両津は満足げに頷く。 「そ……それじゃあ村は…」 「森も含めてガリア王国の管轄下に置かれる、つまりは没収だ」 がっくりと項垂れながら村人達が人夫として連行されていく。 その口々に漏れるのは両津への呪いと絶望の声。 これならまだ翼人たちの方が遥かにマシだったと後悔しても時既に遅し。 もはや平和だった日々は帰って来ず、明日から彼等は強制労働に就かされるのだ。 「村は……村は、もう終わりじゃあ」 「ヨシアの言うとおりだ。きっとバチが当たったんだ」 「ちくしょう! 俺達が何をしたって言うんだ!」 村人達を黙らせるように兵士に指示をすると両津は目算で計算を始めた。 要塞の建造に使うのはそこらの木々で十分。 巨大なライカ欅は市場での流通が絶え、値が跳ね上がった頃に横流しする。 そこから導き出される数字に両津は目を輝かせた。 元手はタダ、労働力は村人達。あまりにもボロ過ぎる商売。 そして防衛網を張り巡らせて国境を守った戦果は、両津の地位の向上に繋がるだろう。 「失礼します! リョーツ様、内通者を捕縛しました!」 ぐふふと笑みを浮かべる両津に、背後から兵士が話し掛ける。 振り返れば、そこにいたのはヨシアだった。 何でも兵士の証言によると、彼は両津の話を聞くなり糸を切ろうと木に登っていたという。 翼人さえ無事ならば自分達が手を引くとでも思ったのだろう。 甘い考えだと笑いながら、両津はヨシアを引っ立てて村の広場に歩き出した。 「せっかくだ。コイツを利用させてもらう」 広場には既に集められた村人達が待機させられていた。 その彼等の眼前には高々と掲げられた一本の柱。 これから何が始まるのか嫌な予感を隠せないまま動向を窺う。 突如、村人達の中から悲鳴が上がった。 そこには兵士達に囲まれて連行されるヨシアの姿。 そして彼を柱に括りつけると兵士の一人が口上を読み上げる。 「この者は事もあろうに翼人たちと内通した裏切り者である。 既に諸君等はガリア王国の兵士。利敵行為はすなわち極刑となる」 いわば、これは見せしめであった。 反抗すれば、それはすなわち死であると見せ付ける為に執り行われる儀式。 止めさせるべきだと村の誰もが思った。 しかし一人として兵士達の恐怖から動く事は出来なかった。 「お前、まさかまだあの翼人と……!」 「……………」 ヨシアの兄サムが立ち上がって声を上げた。 だがヨシアは何も答えず黙ったまま視線を落とす。 たちまちサムの周りを兵士達が取り囲み、槍の柄尻で彼を拘束した。 直後、血管が千切れるような音と共に、サムは槍を掴み兵士ごと振り回した。 唖然とする兵士と村人達の中で、サムは槍を奪いながら吼えた。 「もう我慢ならねえ! こうなったら俺達の手で村を守るんだ!」 「そうだ! 騎士だからって何でも許されうと思うなよ!」 「俺達の村を取り返すんだ!」 サムの檄に次々と村人達は立ち上がり、倒れた兵から武器を奪う。 だが、如何に屈強な樵達といえども訓練を受けた兵隊に敵う筈もない。 両津は顎で指示を飛ばすと、傍に控えた兵士達が鎮圧に乗り出す。 「なるべく殺すな。貴重な労働力だ」 「はっ!」 刹那。飛び出した兵士達の頭上から刃が降り注いだ。 否、それは刃ではなく鋭利となった葉。 思わぬ攻撃に兵士達はたじろぐ。 見上げれば、そこには背に翼を持った人の姿。 翼人と呼び習わす者達がそこにはいた。 「ヨシア!」 「アイーシャ!」 その先頭に立つ少女が拘束された少年の名を呼ぶ。 それに応えるかのようにヨシアも少女の名を叫んだ。 彼女は仲間を説得して助けに駆けつけたのだ。 もし両津の仕掛けた罠が使われていれば誰も助からなかった。 だが、自分達が『地を這う虫けら』とバカにした人間の少年は、 己が身を省みずアイーシャ達に危機を報せようとしてくれた。 彼の献身的な行動とアイーシャの言葉が翼人達を動かしたのだ。 全てはヨシアとエギンハイム村を救う為に。 「ダメです! 敵は寡兵といえども先住魔法の使い手……勝ち目はありません!」 「ええい! ならば時間を稼げ! 後はワシが何とかする!」 次々と兵士達が打ち倒されていく中、両津が指示を飛ばす。 この状況で如何なる策があるのか知らないが上官の命令は絶対だ。 命を受けた兵士達が迫り来る村人めがけて銃を放つ。 しかし、それも翼人たちの先住魔法によって明後日の方向へと外される。 脅えたような声を上げた兵士達を、屈強な樵達が捻じ伏せていく。 村人の奮闘もあってか、既に兵士の大半を捕らえ、残すは両津のみ。 「いたぞ! あそこだ!」 村人の一人が指差した先、そこには切り株に腰を下ろし剣を杖がわりにする両津の鎧姿があった。 もはや趨勢は決しているというのに、あの余裕。 何か隠し玉があるのでは警戒する仲間を押し退けてサムは自分の斧を投げつけた。 「地獄に落ちろ腐れ外道が!」 渾身の力を込めた投擲。 それは容易く兜を弾き飛ばし、両津の素顔を晒したかに見えた。 だが違った。ぐらりと崩れ落ちた甲冑の中身は無人。 そこにいるべき両津の姿は無かった。 「きゃあああああ!!」 誰もが両津の鎧に眼を奪われた瞬間、絹を切り裂くような悲鳴が響き渡る。 視線が集まった先には、両津に捕らえられたアイーシャの姿があった。 アイーシャが翼人たちのリーダーだと踏んだ両津は、彼女がヨシアを助けに来るのを物陰で待ち構えていた。 互いの名前を呼び合った事、向ける視線から恋仲ではないかと推察し利用したのだ。 「抵抗を止めろ! さもないとお前等のリーダーがどうなって知らんぞ! 村人どももだ! 武器を捨てて腹這いになれ! こいつらを嗾けるぞ!」 その恫喝に、一人また一人と翼人たちは地面に降りて膝を屈した。 息巻く村人達も下手をすれば彼等から攻撃されかねないと抵抗を止めた。 村の広場その中心に立つ両津からは村人も翼人も視界の内にある。 誰かが不審な行動を取ればすぐさま気付かれてアイーシャは殺されるだろう。 「くっ……」 下品な笑い声を上げる両津と愛するアイーシャの背を見つめながらヨシアは泣いた。 噛み締めた唇から赤い雫が零れ落ちる。 愛する人を守れないばかりか自分の所為で捕まってしまった。 何も出来ない無力さが悔しくて悲しくて彼の頬を涙が伝う。 ふと気付けば、彼の後ろ手を縛る縄が解けていた。 振り返るとそこには青い髪の少女が立ち、口元に指先を当てて沈黙を促した。 「よーし! 形勢逆転だ! この女を人質にしておけば手は出せまい! いっその事、翼人も戦力として組み込んでみるのも悪くは……ぐあ!」 勝ち誇った両津の頭に衝撃が走った。 有り得ぬ奇襲に面を食らった両津が痛む頭を押さえる。 火花が飛び散る視界の中、彼が見た者は自分に棒切れを向けるヨシアの姿。 その背にはアイーシャを庇い、鋭い視線で両津を睨みつける。 翼人の少女が縋るように彼の背に寄り添う。 「アイーシャは僕が守る!」 「ヨシア……」 倒れた両津に容赦なく振り下ろされる鉄槌。 悲鳴を上げようとも止まらずに叩き付けられる攻撃に、 両津は怒号を上げて立ち上がった。 「痛えじゃねえか、この野郎! 覚悟は出来てんだろうな!」 「それはこっちの台詞だぜ、騎士様よぉ」 背後から聞こえる声に、両津は恐る恐る振り返った。 そこにいたのは殺意を漲らせながら武器を手に立つ翼人と村人達。 だらだらと汗が零れ落ちるのを感じながら両津は下手に出ながら言った。 「いや皆さん話し合いましょう。暴力はいけません。 翼人と人間だって話し合えば分かり合えるんです。 同じ人間なら言葉で分かり合え……」 「お前に人間の血が流れてる訳ねえだろうが!」 サムの一言に続いて一斉に村人や翼人が襲い掛かる。 悲鳴にもならない声、人体から発したとは思えぬ怪音が森中に木霊した。 この数日後、両津は川を流されている所を別の村人に発見される事となる。 悪魔が去ったエギンハイム村では盛大な結婚式が執り行われていた。 その中心にいるのは勿論、ヨシアとアイーシャの二人だ。 村を助けに来てくれた翼人達に、村人達は自分達の考えを改め、 共に協力していく事を誓い合ったのである。 翼人たちもヨシアの勇気ある行動に、人間にも見るべき所はあるのだと知った。 村を救った二人の勇者の伝説は、後々まで村に語り継がれていく事だろう。 文化の違いから衝突したとしても、彼等は共に肩を並べて戦った日の事を忘れない。 そんな感動的な結末を迎えている一方で、 プチ・トロワで一人の少女が怒りに打ち震えていた。 届いた書状には、翼人と村人が講和したので討伐を取り下げる旨と、 翼人達に守ってもらうので軍の駐留は必要ないという内容が書かれていた。 その紙をぐしゃりと握りつぶしながらイザベラはメイドに訊ねた。 「……これって一応アイツが事件を解決した事になるのかね?」 「そ、そうですよ。さすがはイザベラ様の使い魔、あっという間に解決なさって」 「そうかい、そうかい」 メイドの返答に気を良くしたように笑っていたのも束の間、 凄まじい轟音と共にライカ欅製のテーブルが蹴り飛ばされた。 並べられていた豪奢な皿が騒がしい音を立てて砕け散っていく。 それを踏み躙りながらイザベラは咆哮を上げた。 「そんな訳あるかァ! リョーツのバカは何処へ消えた!?」 「そ、それが“ハルケギニアに日本家具の文化を広める”と旅に出たきり行方が掴めず……」 ぎゃあぎゃあとメイドを怒鳴りつけるイザベラの姿を窓越しに眺めながらシルフィードは飛んだ。 その背には青い髪の愛らしいを少女を乗せている。 タバサは手を貸した事を伏せたままエギンハイム村を立ち去った。 自分達で解決できるなら、それに越した事はないというのが彼女の考えだった。 せっかく手にしたお手柄なのに、と残念そうにしている彼女の上で、 タバサは新しく発行された『泣いた赤鬼』という絵本に目を通す。 その表紙の下には小さく“両津出版”という文字が刻まれていた……。 前ページこちらガリア王国プチ・トロワ内北花壇警護騎士団屯所