約 1,172,583 件
https://w.atwiki.jp/aoari/pages/10152.html
頭巾系 一向宗僧兵頭巾 (イッコウシュウソウヘイズキン) 【頭巾】 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (一向宗僧兵頭巾.JPG) 基本性能 価値 重量 防御力 耐久度 5 1.1 11 14 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 − +2 -10 -20 装備可能 僧、薬 装備区分 頭装備 必要Lv 10以上 付与効果 気合+20 備考 一向宗の屋敷の上宮寺僧兵のドロップ 額の部分の装飾がちきりなどとは若干違う。
https://w.atwiki.jp/shinsen/pages/8446.html
変わり兜系 南蛮頭巾兜 (ナンバンズキンカブト) 【変わり兜】 基本性能 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (nanbanzukin.jpg) 価格 買値 売値 --文 --文 生産可能職 職業 技能 鍛冶屋 兜作成之ろ 解体 [[]] 備考 情報募集中 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/nolnol/pages/9147.html
変わり兜系 南蛮頭巾兜 (ナンバンズキンカブト) 【変わり兜】 基本性能 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (nanbanzukin.jpg) 価格 買値 売値 --文 --文 生産可能職 職業 技能 鍛冶屋 兜作成之ろ 解体 [[]] 備考 情報募集中 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/otassya2/pages/8175.html
変わり兜系 南蛮頭巾兜 (ナンバンズキンカブト) 【変わり兜】 基本性能 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (nanbanzukin.jpg) 価格 買値 売値 --文 --文 生産可能職 職業 技能 鍛冶屋 兜作成之ろ 解体 [[]] 備考 情報募集中 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sol-bibliomaniax/pages/363.html
【赤頭巾ちゃんとオオカミさん】 どんどん歩いていくと赤頭巾ちゃんは綺麗なお花の咲くお花畑につきました。 「わぁ、綺麗!でも、おじいちゃんに持っていくのが先だから、また後でこよーっと!」 赤ずきんちゃんはそういって通り過ぎようとしました。そうしたらひょっこりとオオカミさんが出てきて、赤ずきんちゃんを呼び止めました。 赤ずきんちゃんは、おおかみがどんなに怖い動物かわからなかったので、べつだん、怖いともおもいませんでした。 「赤ずきんちゃん、こんにちは。」 オオカミさんは言いました。 「これからどこへ行くのか聞いても良いかな?」 赤ずきんちゃんは答えました。 「勿論!これからね、おばあちゃんの家に行くの」 オオカミさんは聞きました。 「その手に提げているものはなんだい?」 赤ずきんちゃんは答えます。 「これは手提げ籠って云うの。」 「中に入っているものは?」 「お菓子とぶどう酒だよ、おばあちゃん、病気なんだって。だからね、お見舞いに持っていってあげるの」 「おばあさんのお家は何処?(あの人って病気するのかな…)」 オオカミさんは聞きました。 赤ずきんちゃんはこう教えました。 「ここからまた、ずーっと歩いて、森の奥の奥に大きなかしの木が三本立っている下のお家。まわりに胡桃の生垣があるからすぐ解ると思うな」 オオカミさんは心の中で考えていました。 『若いやわらかそうな小娘だ。このこは油がのっていてさぞや美味しいことだろう。おばあさんと一緒にぺろりと食べたら腹も膨れていいだろう。』
https://w.atwiki.jp/midland_dollhouse/pages/1079.html
売り子の頭巾 ぼうし ノーマル ランク0における販売価格 34 販売時間 15 00 手に入るMAP:雪の街角 合成に必要な素材:なし 合成先:火の精霊の髪飾り
https://w.atwiki.jp/touhouvision/pages/546.html
《聴耳頭巾》 No.1559 Command <第十六弾> NODE(2)/COST(1) 効果範囲:目標のカードに及ぶ効果 発動期間:装備 【装備】 (自動α): 〔あなたの場の「種族:獣」を持つキャラクター全て〕は「戦闘修正:+1/+1」を得る。 (常時)(2): 目標の〔あなたの場の「種族:獣」を持つキャラクター1枚〕をアクティブ状態にする。この効果は1ターンに1度しか使用できない。 攻撃力(-)/耐久力(-) 「何か聞こえるな…え?…なんだと?霊夢が!?」 Illustration:黒鴉 コメント 種族:獣を支援するコマンドカード。 種族:獣を全体強化する(自動α)と、アクティブ状態にする(常時)を持つ【装備】。 装備であるがゆえにセット先が必要だが、全体強化はとても優秀。同じく獣を強化する鈴仙・優曇華院・イナバ/10弾と一緒に並べて強化数値を上げていくと良いだろう。セット先が除去されると厳しいのでサポートも忘れずに。 アクティブ状態にする効果はややコストが重く、また1ターン中に複数回の使用ができないものの、獣には大型キャラクターも多いので十分強力。打点強化にも、戦線の維持にも使える効果といえる。 1コストの装備カードであるためナズーリン/16弾でサーチでき、さらにそのナズーリン/16弾そのものが獣であるため良いシナジーを形成する。 また弐番勝負「肉食化弾幕変化」は、種にしたカードが獣ならアクティブ状態にできる上に打点が更に上がる。こちらも相性が良いといえるだろう。 このように効果自体は強力ではあるが、残念ながらこのカードには除去耐性がない。とにかくこのカードをセットしたキャラクターを守り切る運用を心がけたい。 関連 第十六弾 種族:獣
https://w.atwiki.jp/desuga_orimayo/pages/53.html
【傷だらけの天山乗り、ガリアを遠く眺めるラフライダー】 軍艦「日向」。後には「伊勢」も参加する第七航空戦隊隷下の戦闘第六六六航空隊は、 変わり種の人材が集うことで、後世にも名前を知られている。 指揮官からして、良くも悪くも有名な出雲財閥の末娘であり、他にも上官へ歯に衣を着せないカールスラント空軍のベテランエース、 戦闘神経症からアルコール依存症になりかかったオラーシャの戦爆屋、陽気なことこの上ないが特異過ぎる趣味を持つロマーニャの若手、 後に戦隊作戦参謀と結ばれた重爆キラーのエースなど、普通の(まともな)人間を捜す方が難しいほどである。 以下に述べる物語も、そんな六六六空に引き寄せられた、色々な意味で変わり種の2人組である。 片や対地攻撃のエキスパート、片や「傭兵」の戦闘脚乗りと、全く分野の異なるウィッチ2人であるが、 ある意味では、彼女達も招かれるべくして、この航空隊へやってきた。 そのように考えるべきかもしれない。以下、拙い記述ではあるが、その経緯をお読みいただければ幸いである。 *一九四四年九月一五日、一三二〇時、ガリア共和国ストラスブール郊外野戦飛行場。第二爆撃航空団指揮所 「司令、先任参謀。入ります」 「どうぞ」 カールスラント空軍第二爆撃航空団。航空機械化歩兵の多くが制空戦闘任務に就くのに対し、 この部隊は対地攻撃のエースが集まる、陸軍部隊の航空支援エキスパート部隊として勇名を馳せている。 近年のウィッチ航空部隊の中では、珍しい部類に入る航空団である。 何しろ指揮官からして「爆撃王」の名前を賜った、エクスウィッチなのだ。 「アーデルハイトか…その顔色では、やはり彼女の様子か?」 「ええ、ハンナ。正直、彼女は後方に回すか、地上勤務への転属を薦めるべきかもしれません」 航空団司令ハンナ・ルーデル大佐。航空団先任航空参謀、アーデルハイト・ガーデルマン中佐。 何れも、嘗てはスオムス方面で対地攻撃任務に勇名を馳せ、その後も戦線を転々としつつ、無数のネウロイを。 幾度となく自らも撃墜されながらも、時には五〇〇ポンド爆弾で、時には三七ミリ機関砲で破砕してきた、 世界各国を見渡しても、対地攻撃任務のスコアで凌駕されたことのない、不屈のエース達であった。 二十歳を境に魔法力減退受け入れざるを得ず、現在は部隊指揮官。あるいは参謀として辣腕を振るっている。 直接の陣頭指揮は、最早為しうることは出来ないが、彼女達の薫陶と教訓を受け継いだ部隊の、技量と士気は高い。 先日、四四年九月初めにガリアが解放されてからは、早速といってよい迅速さでライン川近隣方面へ展開。 カールスラント奪還を目指し、この航空団は陸軍部隊の守護神として活躍している。 だが、そんな彼女達であっても、出来ることと出来ないことは、どうしても存在していた。 「私も久方ぶりに、部下の報告を疑うという行為を思い出しかけました。こちらを御覧ください」 アーデルハイトの持参した一枚の書類は、飛行計画書と報告書であった。 無論、実働ではなく教練戦闘飛行であるが… 正直なところ、航空学校を修了したばかりの若手かと見まごう、精彩を欠いたフライトであった。 そして、これが本当に新米の行ったものであれば、まだ良い。 しかし、このようなフライトを行うほど飛行時間が短いウィッチは、この部隊に存在しないのだ。 「ベルタ・エッカート少尉…正直、惜しい腕前だ。扶桑のストライカーユニットを縦横に活用して、 30mmでネウロイを撃ち抜く腕前は、私の目から見ても有望株と、今でも考えているが」 「やはり戦友を1人、自分のせいで再起不能にしてしまった。 その思いこみが相当に響いているようです。元々が繊細な若手でもありましたから」 「知っているよ。そうでなければ、異国のストライカーユニットをあそこまで、手足のように活用できるはずもない」 彼女達が話している内容は、若手の対地攻撃ウィッチの1人のことであった。 ベルタ・エッカート少尉。 16歳にして空軍少尉と、階級と年齢は至極普通の人材であり、部隊の中でも大人しく、物静かな人物である。 但し、慎重さに裏付けられた飛行技能。特に、恐怖心に狩られやすく、若手には難しいはずの低空追従飛行技能は、目を見張るものがあった。 カールスラント空軍が、自国のJu-87の旧式化に伴い、扶桑皇国より試験的に導入した長島飛行脚製・攻撃機型ストライカーユニット「天山」。 この貴重な、尚かつ低空高速飛行に適正のある新型ユニットを与えられた後、彼女の才能は開花した。 それこそ高度20メートル未満を平然と飛び交い、執拗に三〇ミリ機関砲を陸戦ネウロイに浴びせかけ、かなりのスコアをあげている。 「あれはスツーカより足が速いが、舵等々にかなりの癖を持っている。 それを使いこなして地上のネウロイを、誤射を殆ど起こさずに撃ちぬいてくる。繊細で才能がなければ、難しい所業だ」 「私も一度だけ飛ばしましたが、エンジントルクが凄まじいですからね。それを使って、陸軍から-」 そしてベルタのユニットには陸上部隊からもよく見える、ユニットに太い、白帯が記されている。 友軍からの誤射を避けるための塗装であるが、今は別の意味合いを持っている。 「ネウロイという病巣を的確に摘出する白衣の技師」 そのように親しまれ、たたえられており、ルーデルの目から見ても「今後のエース候補の1人」として、密かに期待を寄せていた。 自分のような、急降下爆撃を主体とした戦闘スタイルとは異なる。 たとえラロスから上空に被られても、巧みな回避機動でやり過ごし、陸軍部隊の正面から、 陸戦ネウロイを叩き出すまで戦い抜くメンタリティは、対地攻撃ウィッチとして必要な、しかし得難い才能であった。 「ですが、自分を庇った戦友が、最早ウィッチとして空を舞うことは出来ない。 その事実までは、容易に受け入れられていません。正直、今の彼女を迂闊に最前線へ出した場合。死にます、確実に」 アーデルハイトの声音は冷たいものであったが、彼女の怜悧な相貌には深い憂慮が浮かんでいた。 激戦地域ではよくある話だが、その日はジグラッドや多脚戦車を中心とした、中大型ネウロイ多数の浸透突破が執拗に繰り返されていた。 当然、第二爆撃航空団も出撃を繰り返し、陸軍部隊の支援を行ったが、精鋭部隊のウィッチも整備兵も人間であることに違いはない。 出撃が続けば疲労も心労も蓄積し、集中力は低下する。エッカート少尉もその例外とはなり得なかった。 普段なら余裕を持ってかわすことの出来る、ラロス改の緩降下攻撃によりユニットに数発被弾。 大きく速度を落とし、不時着か墜落か。何れかしかない状況において、 この方面へ一個航空群を派遣していたロマーニャ空軍のウィッチが、彼女を救ったのだ。 彼女も激戦の中、主要火器のブレダ12.7ミリ機銃を撃ち尽くし、サイドアームとしてやむを得ず装備していた、 M30型機関銃-粗悪品として名高い-を至近距離から撃ち込み、撃墜することに成功した。 しかしながらその際、恐らくは戦闘爆撃タイプであったラロスの大爆発により、脊椎を含む体幹部に重傷を負ったのだ。 この爆発の余波により2人とも結果として不時着。シールド出力の強力な天山に助けられたエッカート少尉は、至極軽い負傷で済んだ。 「正直、私も似たような経験はしたことがある。だが、誰もがそれを乗り越えられるとまでは思っていない。 彼女が若手と言うことを忘れ、能力を過信し出撃命令を出した私の責任だ」 高い運動性能と引き替えに、防御力を些か犠牲にしたMC202型ストライカーユニットを履いた、 ロマーニャの勇敢なウィッチは、救助に来たカールスラント陸軍装甲擲弾兵と衛生兵が、一瞬息を呑むほどの重傷を負っていた。 幸いにして、同道していた治癒魔法を持つ陸戦ウィッチによる応急処置。 試験的に導入されていた救難用ヘリコプターによる野戦病院への後送により、 彼女は一命を取り留め、常人としての生活は送れるであろうと軍医は診断している。 しかしそれは、つまり二度と空を舞うことは出来ないと言うことだ。 当人は「戦場ではよくあることだし、気にしなくて良いよ」とエッカート少尉を気遣ったが、 自らの不注意が1人のウィッチの将来を潰したことは、彼女の軍務に於ける能力と態度から、精彩を大きく奪っている。 「いまは責任問題をどうこうしても、意味はないでしょう。 ハンナ、やはりあの提案を、正式な命令としてしまっては?」 「連合軍の『提案』…か。物の見事にライン以東奪還作戦に失敗した、 阿呆の提案というのは不安だけれど、海軍の軍艦へ載せる。それは一種の治療にはなるかもしれない」 航空戦艦「日向」。 扶桑皇国海軍「伊勢」型戦艦二番艦にして、14インチ級主砲を有する戦艦としては最も有力な存在として、平和な時代には勇名を馳せた戦艦。 そして今は、第五砲塔爆発という大事故の後、船体後部を空母のように作り替えられ、「航空戦艦」という異形のキメラになり果てた大型軍艦。 当然、扶桑海軍航空隊がまともなウィッチや艦載機を回したがるはずもなく、 現在、形振り構わず連合軍などを経由し、搭乗ウィッチを掻き集めているのは、かなり有名な話となっていた。 「肝心の少尉は、今どうしてる?」 「現在は飛行配置、当直配置からも外れて非番です。外出許可の提出も受けています、行き先は…」 ああ、見当は付くよ。 そう言ってハンナ・ルーデル大佐は、スオムス派兵当時に知り合ったブリタニアのウィッチ。 彼女より薦められて以来、自然と馴染んでしまったダンヒルを、アーデルハイトにまず薦め、 各々に勝手にオイルライターで火を付け、紫煙を吐いた。 指揮官や高級参謀、特に元ウィッチという一線部隊にとっては単なる上官ではなく、「姉」「先輩」とも見られる人間は、うかと溜息などつけない。 これが、彼女達なりの溜息の代替手段であった。 無論、身体能力に支障が出るほどのヘビースモーカーには陥っていないが、こう言うときには役に立つ。 「一服やってからでいい、発令書を制式に記す。確か天山は艦上機だったな」 「腹は決まったようですね、ハンナ」 「このままでは『白衣の技師』にまで、医師が必要になってしまう。 それは最後の手段としておきたい、ああ言う真面目な奴は思い詰めると、な」 エッカート少尉、軍隊での命令に伴う責任は、命令を出した人間が負うんだ。 頼むから、私の責任を勝手に奪って、自分を潰さないでくれ。まだ16歳だろう? 自らも未だ、25歳である若いエクスウィッチの大佐は、言葉には出さず、紫煙に乗せて、 指揮官としてこれから行う命令が、幾ばくかでも彼女の将来を拓ければいい。そんな思いを、徐に吐き出した。 *一九四四年九月一五日、一四一〇時、ガリア共和国ストラスブール市内、野戦病院 元はガリア共和国の国営総合病院を借り切った、臨時の前線野戦病院。 数階建ての鉄筋コンクリート造りで、ネウロイの襲撃からも奇跡的に焼け残ったそれは、なかなかに立派なものであった。 一般的な野戦病院のイメージ、天幕の中で苦吟する負傷兵やトリアージを無表情に行っていく軍医、衛生兵という印象からは、大分離れている。 現在の所、欧州西部最前線であるだけに、各国軍は相当に医療施設にも気を遣っていた。 数年前の欧州撤退で失われた精兵は、ウィッチだけではない。 今や、実戦を数度経験している将兵というのは、何処の前線国家でも宝石より貴重なのだ。 ガリア、カールスラントなど、一度は本国を失った国々の国軍は特に、そういった実状を痛感し、知悉していた。 この野戦病院などは当初、扶桑やリベリオンの病院船から一部、スタッフや機材を駆り出してまで作られている。 「その…具合はどうです、まだ、痛みます?」 「いやさあ、正直あんたの顔色の方が心配だよ。真っ青じゃん、ちゃんと寝てる?」 その中庭。主に歩行困難者がリハビリを行う区画で、エッカート少尉は戦友の見舞いに訪れていた。 とはいえ、その戦友のロマーニャのウィッチが指摘するとおり、面長のそばかすが多少目立つ顔立ちは、青白く、やや頬も痩けていた。 元々が小柄で痩身であるが、今はその印象が更に強い。 見舞われた患者であるロマーニャ空軍、エルザ・アントーニ中尉が寧ろ心配になるほどであった。 「私は、特に体におかしなところはないですから…そういえば、これ、頼まれていた奴だけど」 「おー、これこれ。何でもうちの空軍のウィッチが作ってるって噂なんだけど、面白いんだよねえ」 エッカート少尉がアントーニ中尉に手渡したのは、一見地味な装飾の。 しかし中はかなり派手な、というよりは些か刺激の強い内容のカートゥーンであった。 ベルタ本人は何が良いのかよく分からないが、彼女が喜んでくれるのであればと、 戦地後方でも逞しく開業している書店で、よく「お使い」に行っている。 その度に店主がなま暖かい視線を向けてくるのは、最早気にしないことにした。 一通り、些かどうかと思われる内容のカートゥーンを楽しみながら、 エルザは口調も視線の向きも変えないで、エッカートが今一番、懊悩している内容に切り込んできた。 「ベル、あんたはもう飛ばないのかな?」 「…え?」 「私も12の頃から飛んでるし、脱落したり戦死した奴も見てるよ。 あんた、まだ引きずってるでしょ。顔を見れば、誰だって分かるだろうけど」 「それは…」 こう言うことになって、初めて深く話すようになったのだが、エルザは自分より一つ年上であり、 尚かつ飛行時間は1100時間とかなり長い。それだけに、自分よりも随分と色々なものを見ていたようだ。 その、年齢相応以上の経験から、何かを見て取ったエルザは、まあ仕方ないかと本をパタンと畳み、表情も口調も穏やかなまま。 しかし、視線だけはしっかりとベルタに据えて言い放った。 「私はもう一度飛ぶよ。今は魔法繊維のコルセットして、杖をつかないと歩けなくても。 絶対にもう一度空に上がる。軍医や上官が何と言おうと、カールスラントにもそんなエースがいるみたいじゃない」 「まだ、諦めてないんですね…」 「私も不時着したのは初めてじゃないもの、それにね。 一度救助に来てくれた陸戦ウィッチが、こう励ましてくれたことがあるんだ」 どんな顔をすればいいか分からないベルタに対して、エルザは少し浅黒い顔に、衒いのない笑みを浮かべて伝えた。 「不時着しようが、撃墜されようが、生きて帰ってもう一度空に上がってこそ、一人前のウィッチだって。 何か男の子みたいな外見だったけど、本当に男前だった」 「…有り難う、エルザ」 「扶桑からの話、受けちゃったら?」 「え!?」 ベルタは不意を衝かれ、思わず腰を浮かした。ルーデル大佐からの転属提案は、まだ結論を出していない。 些か強引なところのある彼女としては珍しく、暫くは判断は任せると、考える時間をくれたのだ。 何より、一応は軍命というのは、相応の軍機に該当するものであり、 如何に一六歳の少尉といえど、おいそれと部外者に話すことはない。私、一体何処で口を滑らせて-? 「あはははっ、冗談。うちの飛行群と同じ飛行場の、カールスラントのウィッチが、そんな命令を受けてるの耳にしちゃってさ。 ベルのユニットは艦上機だから、もしかしてと思ってカマかけたの」 「酷いよエルザ、バレたら野戦憲兵に連行されちゃいますよ!」 「大丈夫、口はこれでも堅い方。でもさ」 それまでの笑顔を少し引き締め、エルザはやや真剣な口調になって問いかけた。 「私は、その命令を受けた方が良いと思うよ。環境が変われば人間、心も変わる。 何時までも、過去のことに縛られて、そんな真っ青な顔をして。ベルは飛びたくないの?」 「…飛びたいですよ、でもあの時のことを思い出すと、体が固まって、すくんで、動かない」 疲労と恐怖で強張って、普段と違い全く言うことを聞かない体と魔法力。 着々と近づいてくる敵弾と飛翔音、上空からの射撃、そして目もくらむような大爆発。 気づけば、自分は天山の強力な不時着時シールド展開装置、そして樹林の枝に受け止められかすり傷で済んだが、 目の前には背中一面に、ざっくりと深い傷を負い、そこから吹き出すように血を流す、見慣れない顔のウィッチ。 あの日のことが、ストライカーを身につけるたびに、否応なしに思い出されるのだ。 「まあ、無理強いはしないけど…っていうか、命令出すのは、あのスツーカ大佐だろうし」 「中尉、少尉、申し訳ありませんが、そろそろ面会時間の終了時刻です」 ふと気づけば、2人の側に女性従軍看護士が、些か気まずそうに立っていた。 あれやこれやと話し込んでいる間に、時間は夕刻に近づいていた。 帰隊時刻を考えれば、そろそろ帰られねば脱柵扱いになってしまう。 「ごめん、エルザ。かえって余計な心配かけて…でも有り難う、少し、考え直してみます」 「おー、その時はあの本の新刊。またよろしくねー」 「また私が買いに行くんですね…」 男性同士の恋愛の何が良いんだろうと、げんなりした顔をしながら背を向けるベルタをひとしきり笑い、 正門まで見送り、看護士の助けを借りながら病室へ戻る途中、エルザは、ある事柄を起こす決心を固めていた。 (少しショック療法になるかも知れないけれど、やってみるか…) 「看護士さん、すいません。 原隊へ明日、電報か電話で連絡を取ることは出来ますか?」 ベルタ・エッカート少尉がハンナ・ルーデル大佐から、扶桑皇国海軍出向を制式に命じられたのは、その日の晩。 そして、エルザ・アントーニ中尉から「こいつをお守りと思って元気出せ!」と、威勢の良い文体で描かれた張り紙のされた。 粗悪品として悪名高い筈が、まるで新品のMG42のように整備しつくされた、 ブレダM30型機関銃が届けられたのは、その翌日の午後のことであった。 それが全てのきっかけとなったかは分からない。 しかしベルタの苦悩に一区切りをつけ、心に宿した魔導エンジンに火を灯す要素の一つとなったのは確かだったようだ。 「司令、私も迷うだけなのは止めました。理由は聞かないでください、 只、扶桑へ赴く前に、徹底して天山で飛び直しておきたいのです。ご許可願えませんか」 彼女が、何かを思い詰めた。しかし腹の据わった顔立ちで、 ルーデル大佐直々へ実戦訓練飛行再開の許可を取り付けに出頭したのは、その直後のことであった。 未だに完全ではないのかもしれない、何処かに強い恐れも残っているであろう。 しかし、ベルタ・エッカートという少女が、只、怯え続けるのを止めたことだけは、確かであった。 「良い心構えと面構えだ、少尉。宜しい、ならば私が直々に指導しよう」 「ハンナ、止めてください。もう一度私をスツーカドクトルに戻したいんですか!?」 「飛ぶだけならお前もまだ大丈夫だろう?」 「そんな何処かの扶桑のウィッチみたいな暴言を、指揮官自らが口にしてどうするんです!」 *一九四四年一〇月六日、二〇三五時、ガリア共和国ブレスト上空 (妙なことになっちまったなあ・・・) カールスラント空軍JG78第三中隊所属。ジャンヌ・ヴァルツ曹長は、現在自分が置かれている境遇を、しみじみと振り返った。 今年の九月に、あの第五〇一統合戦闘航空団により、ガリアのネウロイハイヴが破壊された。 自分たちの飛行隊もアルザス・ロレーヌ地方。未だにネウロイの勢力圏下にある、カールスラント奪還を目指して、一路大陸に展開した。 そこから順当に行けば、自分たちは作戦の正否は別として、あの戦域で戦い続けていただろうし、ジャンヌ自身もそれが当然と思っていた。 しかし今は、どういうわけか、連合軍直轄輸送航空団が多用するリベリオン製DC-3型輸送機。 その、尻が痛くなりそうな硬い合成樹脂バンドの座席に収まっている。 武装とストライカーユニットは後部貨物区画に預け、目の前には自分よりも一つか二つ、 年下に見える口数の少ない。何かを思い詰めた風情の少尉のウィッチがいる。 (しかも行き先は扶桑の艦上飛行隊と来たもんだ。得体の知れない少尉ドノと一緒に。 傭兵稼業を続けて数年目、まさか欧州だけじゃなく東の果てにまで「輸出」されるとはねえ) 彼女の眼前にいるウィッチの少尉、ベルタ・エッカートとも幾らか言葉を交わしたが、 余り転属理由は語りたがらず、互いに共通の話題である転属先。 扶桑皇国海軍第六六六航空隊についても、少尉はそれほど話に乗ってこなかった。 階級を笠に着るようなタイプではなく、幾らか会話を交わした内容。そして雰囲気から、明らかに修羅場を相当に潜っている。 しかしながら、今はその物静かそうな顔立ちを、強い決心とも、思い詰めすぎているとも見える表情で、強張らせている。 「ま、しゃあないか」 その一言だけを呟き、ジャンヌは軽く目を閉じた。 どのみち、これから一〇日はかかって扶桑とか言う、極東の果てまで赴くのだ。 その間に話す機会も作れるだろうし、それが出来なかったとしても、どうということはない。 そういう状態には、カールスラント空軍航空機械化歩兵に志願し、任官した時から慣れっこでもある。 (故郷を取り戻したと思ったら、故郷はすっかり気まずくなり、相も変わらぬ傭兵稼業… 悲観ばかりしてもしかたない。人間、なるようにしかならないやね) そう。彼女はカールスラント空軍のウィッチではあるが、カールスラント人ではない。 彼女の国籍、血統は紛れもなくガリア共和国の人間であった。それが何故、他国の軍隊にいるのかは… (思い出すのも馬鹿馬鹿しいほど、遠い話だよなあ) *一九四四年九月二八日一三五〇時、アルザス地方上空四五〇〇メートル (ええいクソッ、あのヒヨッ子小隊長め!) 第三中隊第二小隊の二番機を務めるジャンヌ・ヴァルツ曹長は、口には出さずに内心で悪態を付いた。 自分がお守りを任された、ノイエ・カールスラントの空軍士官学校を出たばかりの小隊長は、ようやく飛行三〇〇時間を超える程度の中尉であった。 使っているストライカーユニットは自分と同じ、メッサーシャルフBf109G2だが、 DB605エンジンのパワーに振り回され、飛行の軸線そのものが安定していない。 そして言うまでもなく、そんなカモには等しくネウロイは食いついてくる。 ジャンヌが防寒用に巻いた私物のマフラーと首筋がこすれるほど、周辺を常に見渡し、 何とか回避してきたが-MERDE!!!また、上から被ってきやがった!! 「エルベ32より31、上空よりラロス-bis二個小隊、降下で突っ込んできます!」 「り、了解!小隊はこれから反転上昇-」 (ああもう言わんこっちゃない!) 今から反転上昇などすれば、降下速度で勝る相手とマトモにぶつかり、一方的に叩かれるだけだ。 何のためにメルスが高い降下性能を与えられているのか。航空課程で教わったことを、初陣のパニックで全部忘れていやがる! ジャンヌは三番、四番機を務める、小隊長よりは余程長く飛んでいる少尉、軍曹のロッテに、 ストライカーユニットの飛行灯で合図を行うと、徐に小隊長のメルスに突っ込み- 「少し痛みますけれど、我慢してくださいよぉ!!」 首根っこをひっ掴んで、強引に降下させた。 何かを叫ぼうとしているが、今、降下状態にある中で迂闊に喋れば、舌をかみ切りかねない。 ジャンヌはマフラーを抜いて中尉の口に突っ込み、そのまま女性としては大柄な170cmを越える体躯と、 それに相応しい膂力で小柄な新米小隊長を抱え込んだまま、400マイル以上の速度で急降下。 一気に高度を2000m以上落とす反面、速度と距離を稼ぎ、ラロス六機の射撃をかわしきった。 見れば、三番、四番機も無事に付いてくる。一息つき、小隊長の口からマフラーを引き抜くと、 彼女はげほげほと咳き込み、半分涙目になりながらも、ジャンヌに食ってかかろうとした。 「そ、曹長!一体上官の命令を何だと-」 「小隊長、アンタ死にたいんですか!?」 ジャンヌの精悍な、女性としては些か迫力のある-何しろ彼女は五年間実戦をかいくぐり、既に飛行時間は一六〇〇時間を超えている- 顔立ちと迫力、そして底響きのする怒声を浴びせられ「ひっ」と、新米の、一五歳の中尉殿は黙り込んでしまった。 「小隊長の背後は私が守ります。しかし、あんなところで反転上昇したらどうなるか、 航空学校で習ったでしょう!蜂の巣ですよ、私ら全員が!!」 「曹長、そのあたりにしておきなさい…中尉、ジャンヌには後で言って聞かせます。 しかし、彼女の言うことは間違ってはいません。 今回に限って、私が指揮を執りますから、それを見本にしてください」 三番機を務める少尉は、軽く目配せでジャンヌに謝意を示した。 事前に取り決めてあったのだ、初陣の小隊長がヘマをしでかした場合、 ドスの利いた声と膂力で自分が押さえ込んで離脱させ、一端は叱りとばす。 その上で、比較的温厚な少尉が自分を窘めるふりをして、指揮権を継承する。 ある意味では、ジャンヌにとっては損な役回りであるが、最早今更気にもならない。 (ガリアからの傭兵風情は、こうでもしないと弾かれ者だ。何より元々-) 『エルベ41より近隣小隊、ケファラス一個中隊と交戦中。 奴等、装甲師団のデポを狙ってる。至急援護頼む!』 「中尉、でしたら今回に限って、私とロッテを組んで下さい。ジャンヌ、お前はグロリアと」 「了解、軍曹。頼むよ!」「任されました」「…分かったわよ」 三者三様の返事に軽く嘆息した少尉に同情しつつも、ジャンヌは周辺監視を怠らない-というか、怠れない。 この部隊の技量は、新米小隊長ドノを除くとけして低いものではないが、今日は数が多い。 さっき振りきった連中は、別の中隊と交戦中。エルベ41が援護を要請してきたのは-まずい!先頭機は既に爆撃コースに入ってやがる!! 「少尉、こっからじゃ普通の手段じゃおっつきません。恐縮ですが-」 「行って来い、曹長。こっちは何とかする!」 「Ja!!」 すっと一息吐くと、ジャンヌは徐に体内の魔法力。それが循環するイメージを脳内で描き-それを爆発的に加速させた。 知らず知らずの間に、唇が凶悪な角度につり上がり、新米小隊長の怯える声が聞こえるが、最早知ったことではない。 先ほどの降下で不良装填を起こした愛銃、ブラウニーM2重機関銃 -カールスラント空軍では、国外出身の志願兵にリベリオン製機銃を与えることが多かった-を再装填し、 ジャムッた50口径弾を吐き出すと、凶悪なまでに放出された魔法力をDB605魔導エンジンに叩き込み、 メルスを先ほどの降下とは比較にならない速度で加速させ、ディオミディアの先頭機へ突っ込ませた。 「な…何なのあれ、滅茶苦茶よ…」 「あれが奴の固有魔法です、一時的に魔力を意図的にブーストさせて…暴れ回るんですよ。 中尉、少し奴から距離を取って接敵します」 「少尉の言うとおりですよ、あの状態の曹長の近くにいたら、最悪、殴り殺されます」 あっはっはっはっ…!! 良い、良いじゃないか。やはりこの感覚を実感しないと、戦った気がしない。 自分の眼下にある故郷を焼き払ったネウロイを。 そして自分の生活を木っ端微塵にしてくれた、ネウロイだけではない何かへの怒りを。 何もかもを放り出して、遠慮なく叩き付けてやれる。 今や犬歯さえむき出しにして、獰猛に笑いながら、 450マイル以上で降下接近するジャンヌは、当然ネウロイの防御砲火を浴びる。だが。 「邪魔だぁっ!!」 一時的に強化された魔法力、それに伴い格段に強化されたシールドで押しのけ、 殺すと決めた先頭のケファラスへの突進を止めない。距離八〇〇、七〇〇、六〇〇、五〇〇!砕けちまえ!! 同じく強化された彼女の魔法力を受け取った五〇口径徹甲弾を、 ブラウニー重機関銃が重い銃声と体の芯に響く振動-何れもが寧ろ心地よい-と共に、一気に吐き出し始める。 半ばバーサーク状態にありながらも、長年の実戦経験に基づいた彼女の見越し射撃は、 正確に狙った中型爆撃機型ネウロイを撃ち抜き続け、四散させる。 先頭機を破砕され、編隊が乱れたケファロスにエルベ41-第四小隊が次々と食らいつき、MG42の射撃を浴びせて脱落させ始める。 悪くはない、悪くはないけれど…もう少し、暴れさせて貰うよ! この固有魔法には、もう一つの副作用があった。普段は大ざっぱでありながら、 周辺の目配りを欠かさない慎重なジャンヌを、一転して戦闘的な性格に書き換えてしまうのだ。 こうなってしまった彼女は、戦友達から密かに「バーサーカー」とさえ呼ばれている。 本人も、その危険性は自覚しており、固有魔法発動のタイミングは、上官や周辺部隊の状況次第で慎重に決めるが、 一度発動してしまえば、一〇分以上は止まらないのだ。何もかもが。 降下速度を反転上昇により、一気に上昇力へ転換させ、次々に集ってきた他の小隊、 中隊が叩き切れていない一機のケファラスに狙いを定める。 先ほどと異なり、今度は敵機の頭を下から突き上げる形で狙い、M2重機関銃の引き金を引くが、 銃口は沈黙したままだ。軽く舌打ちし、素早くバレルロールで回避する。 防御射撃をシールドで弾き返しながら愛銃の様子を見れば、どうやら本格的に機関部がイカレたらしい。 M2は信頼性の高い重機関銃であるが、航空機関銃として用いるには些か故障が多いと、 技術将校がこぼしていたのを、頭の片隅に存在する冷静な部分で思い出していた。 「だったらぁ…!」 ジャンヌは血走った目元のまま、重量三八キロはある重機関銃。 ウィッチが用いることを想定し、ライフル型のグリップとトリガー、銃床式に改造されたそれを、 バトンのようにぐるりと回すと、未だ熱を持つ銃身を掴んで、先ほど自分が殺し損なったケファラスへ、再度降下突撃を開始する。 心なしか、ネウロイに感情など存在するはずがないのに、酷くそれが怯えたように見えた。 それが、一時的に高揚しきったジャンヌの嗜虐心を、一層刺激した。 眼前にケファラスの巨体が迫るのと同時に、彼女は、思い切りブローニング重機を振り上げる。 「今、楽に…してやるよ!」 追いついた彼女の所属する第二小隊の面々が見たのは、シールドを限界にまで高めながらケファロスにまとわりつき続き、 巨大な重機をハンマーのように振るい、ケファラスを「撲殺」している、ジャンヌ・ヴァルツ曹長の姿であった。 この日のJG78の戦果、大型2機、中型6機、小型10機撃墜。被弾負傷3名。全て軽傷。 ジャンヌ・ヴァルツ曹長の戦果、不幸なラロス-bis1機、そして重機の射撃と打突により破砕しケファラス2機撃墜。 損害、ブラウニーM2重機関銃全損、メルスBf109G2中破、曹長当人は随所に擦過傷を負うも意気軒昂。 流石に身を案じ、半ば譴責するように問うてきた少尉に対し、固有魔法が解けた彼女は細かい傷が幾つか増えた顔を、 満足げに笑みで歪め、けろりとした顔でこう言ってのけた。 「まあ、全員生きて帰れるんだから、それで良いじゃないですか」 *一九四四年九月二八日一七三〇時、JG78展開航空基地司令部 とはいえ、あれだけと色々しでかし、何の譴責も呼び出しもなく見逃すほど、軍隊という組織は甘くはない。 医務室で簡易応急手当を受け、数時間の休養を軍医が気遣って取らせた後のジャンヌは、 当然のごとく、戦闘航空団司令部へと出頭命令を食らっていた。 最早慣れっこであり、ウィッチ出身の女医である軍医も「まあ、要領よくやんなさい」と苦笑しながら送り出した。 「ヴァルツ曹長、またしても随分と派手にやったな?」 やはりエクスウィッチの、二十代後半の小柄ではあるが、 ジャンヌの迫力に気圧されないベテランの航空団司令は、苦笑交じりに切り出した。 「今週に入ってぶっ壊したM2重機5挺、破損させたメルス3機。 その倍以上のネウロイを撃墜していなかったら、今頃重営倉だぞ?」 「いやまあ、今回は小隊長がちょっと…上官批判は避けたいのですが、ブルーデス中尉。 もう少し後方の部隊で経験を積んだほうが、よくはないですかね?」 「正論だと思うよ。だがなあ、連合軍のJFWに腕利きを引きぬかれ、戦線は拡大する一方。 正直なところ、人手不足もいいところで。お偉いさんも無茶を言ってくれる」 「そりゃまあ、こんなガリアの『裏切り者』を傭兵としてるんですからね、承知はしていますが」 比較的気さくな航空団司令の会話を前に、思わず出てしまった本音に司令は一瞬顔を強張らせ、 当人もしまったという顔をしたが、司令も、横に控えていた副官も怒りを発することはなかった。 寧ろ、互いに顔を合わせ軽く嘆息すると、嘗ては自らもネウロイと銃火を交えた司令は、再度嘆息しながら、 この部隊の中では屈指のベテランの。しかし未だに18歳の大柄な少女を、若干痛ましい目つきで見つめた。 この司令はネウロイ出現当時、中堅以上として非常に苦労した経験を持っており、副官は事故による負傷で地上勤務に転属した経緯がある。 そんな苦労人二人はジャンヌの心境についても、かなり事細かに気にかけていた。 「やはり、ここに来てから色々辛いか?」 「…それは、その…辛くないといえば嘘になります」 日頃は暴言とも取れる発言を、MG42の発射速度並のペースで上官へ叩き付ける彼女だが -そうでなければ、当の昔に中尉程度には昇進している-この、司令の言葉にだけは返答を一瞬詰まらせた。 「大体は憲兵やガリア警察から聞いてるさ。市街地や実家でのお前さんの様子は。 普段と違って借りてきた猫みたいにおとなしいと。全く…あの宣伝相閣下も、余計なことをしてくれた」 上に述べたとおり、ジャンヌ・ヴァルツ曹長はガリア人志願兵である。 武勲の誉れ高い第五〇一統合戦闘航空団の一翼を担い、 今はガリア復興事業団の立ち上げに関わっているペリーヌ・クロステルマン空軍中尉。 あるいはアフリカ戦線、ヒスパニア戦線や、このエルベ川周辺の戦域で、 カールスラント製E-75陸戦ストライカーを駆使し、 戦場の火消しとして活躍し続けているエレオノール・ベネックス竜騎兵中尉。 彼女達のように、ガリア共和国軍へ参戦しなかった理由は只一つ。 「うちの国はまともに本土を奪還する気があるのかしら…」 愛想が尽きたのだ。本国を蹂躙され、失地奪還が急務でありながら、 リベリオンやブリタニアなどに幾つも亡命政権を作り、主導権争いを繰り返す自国の国体や貴族どもに。 故郷や祖国としてのガリアとなれば、また話は別であるが。 無論、各地のガリア共和国軍将兵は、無為徒食を繰り返したわけではない。 アフリカ方面へ脱出に成功した新鋭戦艦複数などを中核とした強力な艦隊。上記のエースウィッチ達。 あるいは、国外へ持ち出せた膨大な金融資産を対価として得られた、リベリオンの支援により再編された、 ドゴール将軍指揮下の機械化師団複数などが大いに奮闘していることは、 ジャンヌも実戦を潜る中で知っている。彼等を同国人として、誇りに思うこともある。 だが、そういった同胞達の奮闘を知っても、ジャンヌはカールスラント空軍という、 未だに強力な組織と国力を有する軍隊に志願する決心は、揺るがなかったであろう。今でもその様に思っている。 幾ら前線将兵が奮闘しても、それを本来支えるべき国体が分裂し、 主導権争いの余録として対ネウロイ戦争を行っていることに、変わりはないのだから。 ならば、カールスラント奪還を志す以上、途中で否応なしにガリアを解放せざるを得ない強力な軍隊に参戦した方が、余程確実に故国奪還へ貢献できる。 そういった彼女なりの計算に基づいた、それなりの祖国愛によって、 ジャンヌはカールスラント空軍のベテランウィッチに、何時しかなり得ていた。しかしながら… 「あれは…一種の事故です。司令が、気に病まれるこっちゃないですよ」 カールスラントという国家は、リベリオンや扶桑とは違った形で宣伝を重視する。 戦時国家らしく、規格化された高性能ラジオを国民に廉価に販売した上で、 国家が国民に見せたいものを巧みに誘導して、ネウロイへの戦意や敵意を駆り立てるのだ。 カールスラント帝国はその点において、ある意味では天才的な才能を持つ宣伝大臣を得ていた。 「あの萎びた宣伝相閣下を、MG42で蜂の巣にしたいと思ってる奴は、1個連隊では足りないだろうな」 「司令、流石にそれは暴言です。せめて1個旅団に留めるべきでしょう」 そして、その才能を発露する対象の一つとなったのが、ジャンヌ・ヴァルツ曹長であった。 ガリア人でありながら、国家という枠にとらわれず、欧州そのものを奪還することを志した高潔なウィッチ。 その様に銘打って、よりにもよって彼女の見栄えのする戦闘記録フィルムを背景に、 ジャンヌ当人にとってはとんでもない戦意高揚映画が作られてしまったのだ。 ウィッチ当人の同意を得ない戦意高揚映画を作った宣伝相は、皇帝から落雷を浴びせられたが、 一度出まわってしまった映像を取り消せるはずもなく- 「あ、ああ…ジャンヌ…だよね?お帰り」 「…まあ、お疲れ様」 「何か色々変わったね、カールスラント人みたい」 その結果が、五〇一ほどではないにしても、失地奪還のためにネウロイを撃墜し続けた彼女へ、 故郷の人間から距離を置かれ、よそよそしくされるという事態を招いた。 修羅場を潜り続けた気丈な彼女にしても、これは余りと言えば余りの衝撃であった。 流石に物事をわかっている年かさの町長が、 ジャンヌを自宅に招いて労うと同時に、このように説得したのも何処かで刺として刺さっていた。 「皆、分かっているんだ。お前さんがここを取り戻すために、一生懸命戦ったことを。 それでも私らはガリア人で、どうして同じ国の軍隊じゃ駄目だったんだ…と。 政府が分裂したのを承知でそう思っちまってる。すまんな、こればかりは時間薬だ。許しは乞わんよ…」 彼女は傷心の内に、一度実家に戻って数時間、 家族をの時間を過ごすと「ごめん、帰隊時刻が近いから」と、早々に父母、弟妹の元を去った。 過去四年間、家族への仕送りとは別に、郷里に戻ったら皆でお祝いをしよう。 年相応の少女らしい願いのために積み立ててきた貯金。 そして能力を見込まれ、階級こそ曹長であるが並の中尉並(つまり通常の将校であれば少将並の)俸給や手当。その過半。 リベリオンの銀行経由でドルに換算したそれが、ぎっしりと詰まったトランクケースを、 玄関の靴入れにそっと隠し、「有り難う、元気で、さようなら」と書き置きを残し。 ジャンヌが普段はぴしりと伸びた長身を、何故か市街地に出るときは猫背にして隠れるように歩きまわり、 反面、戦闘中はひどく手荒い戦をするようになったのは、これがきっかけとなっていた。 「環境を変えてみるのも、ひとつの手段かもしれないな」 「司令、しかし曹長は-」 「ここで腐らせるよりは余程マシじゃないかな、副官」 誰もが重い溜息をついた後、司令は首を横に振ると、君はブリタニア語は出来たなと言いながら、 司令はまだ珍しい、難燃樹脂で出来た書類挟みをジャンヌへ手渡した。 「転属命令だ。唐突で申し訳ないが、君には扶桑皇国海軍へ出向して貰う。 今、本国では新型空母の建造中だ。それに離着艦出来るウィッチが足りない」 「扶桑って極東の…あの島国ですか。え、何です、航空戦艦?何をしたい軍艦なんだか… 随分と短い甲板ですね。これでメルスを使って降りろとは。お払い箱ですか」 「お払い箱なのは、これから私が見せるものを目にしてから、判断して貰おうか」 *一九四四年一〇月六日、二〇四五時、ガリア共和国ブレスト上空 「曹長は」 それまで、不機嫌と困惑を行きつ戻りつしていた、女丈夫なベテラン下士官へどう話しかけて良いか。 内心、自分も混乱しているが故に切り出せなかったベルタは、 彼女が瞼を閉じかけたとき、思い切って今度はこちらから、話しかけてみた。 「かなりの腕利きなんですね、あんな最新機材。 まだ、私も資料でしかお目にかかったことがありませんでした」 「ああ、それは…それと丁寧語は良いですよ、後はジャンヌとでも呼んでください。 それに、堅っ苦しい口調はなしにしましょうよ」 意外とさばけた人物でもあったらしい。 少し緊張がほぐれるのを感じると、ベルタはジャンヌと呼びかけた。 「じゃあジャンヌで。ごめんなさい、口調ばかりは性分で。 フラックウルフのドーラ、ちょっと羨ましいです。私も資料でしか、見たことがなかったんですよ」 「ありゃ曰く付きでね、ベルタ。本当は-」 そう、基地司令が見せたのは、JG78でも半数が装備しているフラックウルフFw190であった。 しかし、この部隊の機材であるA8タイプと比較すると、違和感がある。 魔導エンジンの収まったノーズが格段に長く、 尚かつ、随所にユニット部品を交換。あるいは修理した痕跡が生々しく残っていた。 「司令、これはA8でもドーラでもないですね?」 「以前にHe219を装備したナイトウィッチが不時着したことがあっただろう。 ユニットは全損だが、エンジンは無事だったものでね」 「で、まあ…私も悪乗りしてしまったんだが、整備班と司令と結託し、 ドーラの設計図を取り寄せ、DB603に換装したってわけだ」 「何つー無茶苦茶を…飛ばしては見せますが、仮にも正式装備の盗難になりません?」 ジャンヌの常識に従った疑問に対して、司令と副官はにやりと人の悪い笑みを浮かべた。 うわア、この二人がこういう顔をする時って、大概ろくな事を言わないんだよねえ。 「拾ったものよ、それも『偶然』。 拾い物を再利用しても、皇帝陛下も空軍総監も連合軍も、怒りはしないわよ」 「しかも、帳尻を合わせるにはフラックウルフのエンジンが『使用不能』じゃないと困るって言うから、 ラロスの実体弾に近いM2で、元のBMW801を外してぶっ壊したのよね」 「それ、マトモに飛ぶんですか…」 確かにベルタのいた第二爆撃航空団でも、扶桑の川滝製「彗星」爆撃ストライカーを原型に、 カールスラント製水冷魔導エンジンへ換装した機材も、かなり配備されている。 しかし、それは歴とした正規部品同士を、製造元の支援を得た上で行った改修である。 反して、ジャンヌの「ドーラもどき」は…言っては何であるが、 早い話が故障品同士の健在部品をつなぎ合わせた、廃品再生である。 正直なところ、まともなウィッチであれば搭乗拒否を行っても不思議ではないし、それを口にしたところで上官は咎める権限はない。 が、このジャンヌという曹長は、なかなか剛胆と言うか、何処か世捨て人のような笑みを浮かべた。 「私はガリア人の志願兵だからね、まともな機材が来ないときは… こうやって故障したストライカーから部品をはぎ取って、直したもので飛んだことも何度もある。 それにうちの整備班は腕が良いんだよ。ちゃんと飛んだ、最大速度を出してもきしみもしない」 「うちのスツーカ大佐でも、そこまでしないですよ…余談ですけど、速度はどれくらい?」 「流石はDB603の最新型。最大出力でぶん回したら、高度6500mで680km/hまで行ったよ。 上昇も降下も申し分ない、あの基地司令。相当気ぃ遣ってくれたらしい。少し、態度悪すぎたかなあ」 ま、それだけの戦果は挙げたんだけどね。あのドーラもどきの試験飛行の時も、 キャリバー50で何機か食ったしとカラカラ笑うジャンヌを、ベルタは呆れとも憧憬とも言えない表情で見つめていた。 自分に彼女ほどの勇気や冷静さがあれば、そもそもここにいなかったかもしれない… でも、何か危ういというか、凄く寂しげなものを感じる。 ジャンヌは強いんですねと言って、何故、そんなに悲しそうな顔をするのだろうか。 「ベルタは扶桑の…テンザンだっけ?あれで対地支援攻撃とはね。 寧ろ、戦闘機より度胸がいるのはそっちじゃないの?」 話題を切り替えたかったのだろう、今度はジャンヌがベルタのストライカーユニットについて尋ねてきた。 「意外と頑丈なんです。シールド出力が大きいし、地表スレスレでも安定して450km/hは出せる。 ラロスをオーバーシュートさせたり、マウザーでジグラッドや多脚を撃ち抜くには、最高なんですよ?」 「そっか、大人しそうな割に修羅場潜ってると思ったら、あのSG2(第二爆撃航空団)の腕利きだったとはね」 「仲間を1人、巻き添えにしましたけどね…でも次は、もうやりません。絶対に」 大人しそうな外観に似合わず、自分と同じくらい節くれた、 恐らくマウザー機関砲を長く扱ってきた手指で、拳と掌を形作り、ベルタは軽く打ち付けた。 流石にスツーカ大佐ことハンナ・ルーデル当人直接の訓練はなかったが、 腹を決めた彼女は連日の飛行訓練で、徐々に本来の技量を取り戻していった。 最後の「実戦試験」という名前での阻止攻撃では、嘗て以上の腕の冴え。 スローロールで敵の対空砲火の軸線を、不規則にずらしながら、MK108で多脚戦車をブチ抜きつつ、 エルザより託された、信じがたいほど快調に作動するM30型重機で歩兵型ネウロイを薙ぎ払った。 ガリアやカールスラント陸軍の装甲師団や竜騎兵連隊は、あの白衣の技師のマークに、 オレンジの帯が加わった理由を怪訝に思ったが、守護天使の再来を素直に喜んだと言われている。 「少尉は強いな…私は、ガリア人のカールスラント軍人だ。これだけで、分かるよな? 荒れて、暴れて、逃げてきたようなもんさ」 「次がありますよ、それにジャンヌは弱くない。私にもう一度飛ぶ勇気を与えてくれたのは… 巻き添えになって、それでも守ってくれて、今は入院してるロマーニャのウィッチでした。 でも彼女は言いましたよ。必ずもう一度、空へ戻ってみせるって」 大丈夫とは言わない、気持ちが分かるとも言いません。だけどジャンヌの背中は、今預かった。私が預かりました。 一緒に、扶桑で任務を終えて、またガリアやカールスラントへ帰りましょう、絶対に。 気弱そうにも見える顔立ちに、意外な芯の強さを浮かべ、ベルタは言い切った。 それは、ある意味でジャンヌが郷里で一番聞きたかった言葉であり、一瞬、腹腔から眼底へ熱いものがこみ上げてきた。 しかし、ジャンヌはそれを気合いで押しとどめた。 ここで涙を見せることは、自分の捨て鉢な何かを補おうとしてくれたベルタへ、余りに失礼だ。 「そりゃあ、こっちの台詞さ。地べたのネウロイどもを薙ぎ払うのは任せる。 その代わり、絶対にあんたの上から被ってくるネウロイは、全部叩き落としてやる。それだけは約束するよ」 2人のカールスラント空軍のウィッチ。使うユニットも、任務も、国籍も、年齢も何もかもが好対照な彼女達は、 輸送機のキャビンの中に軽く響くほど、互いの節くれた。 しかし、少女らしさを幾ばくか残している掌で、ハイタッチを決めた。 DC-3の機長やコパイ、ロードマスターは一瞬、そんな2人をしみじみと眺めていたが、 俺は何も見なかったし、これは一夜の夢だと決め込むことにした。 それ以上を考え込めば、自分達より一〇歳近く年下の、幾度も地獄を潜った少女達。 彼女らを、極東の新たな地獄へ送り届ける我々は何なのだと、 永遠に答のでない思考の坩堝と罪悪感に陥ることを、彼らはよく自覚していた。 奇妙な縁から出会い、皇国海軍が数奇な経緯から作り上げた航空戦艦と、それに集う飛行隊。 彼女達がそこへ辿り着くべく乗り込んだ輸送機は、十日後の扶桑皇国到着を目指し、夜空にエンジン音を轟かせてゆく。 二人がそこで、どのように成長し、戦い、役割を果たしてゆくのかは、また、将来の話に譲りたいと思う。 (流石にジャンヌの迫害場面が余りといえばあまりで、誤字脱字も多かったので再校正を。内容は変わってないなあ…)
https://w.atwiki.jp/sol-bibliomaniax/pages/364.html
【赤頭巾ちゃんとおばあさんに化けたオオカミさん】 『若いやわらかそうな小娘だ。この子は油がのっていてさぞや美味しいことだろう。おばあさんと一緒にぺろりと食べたら腹も膨れていいだろう。』 そこでオオカミさんは赤ずきんちゃんにこういいました。 「赤ずきんちゃん、そこに咲いている綺麗なお花を見てごらん。あの中から一番元気の良いお花を探してそれを花束にしておばあさんに持っていってあげたら、きっと喜ぶだろ う。」 「それは良い考えねおおかみさん!じゃあ私頑張って探すね! まだ時間もあるし間に合うかな。」 「きっと間に合うよ。さあ、探しておいで。」 赤ずきんちゃんは、夢中でお花探しを始めました。 ところが、この間に隙を狙って、オオカミさんはすたこらすたこら、おばあさんのお家へ 駆けていきました。 そして、トントントンと扉を叩きました。 「おや、どなたです?」 おばあさんは聞きました。 「あー…赤ずきんちゃんだよ!お見舞いに、お菓子とぶどう酒を持ってきたの!」 オオカミさんは赤ずきんちゃんの真似ッこをしました。 「だから、ここを開けてちょうだい?」 おばあさんは言いました。 「取っ手を押して入ってきなさい。起き上がれそうにないからね」 オオカミさんは取っ手を押して中に入りました。オオカミさんはすぐにおばあさんの ところへやってきて、一口に呑込んでしまいました。 それから、おばあさんの着物を着て、おばあさんの頭巾をかぶって、おばあさんのお床にごろりと寝て、ばれてしまわないようにカーテンを引いておきました。
https://w.atwiki.jp/nishiparo/pages/335.html
「なんでも言うこと聞くから返して!」 頭巾ちゃんはそう言ってぼくに迫った。 迫ったというより、難癖つけて一方的に攻めてきた感じだったけれど……。 ぼくは十三階段から抜けてくれさえすればよかったのだけど、ここは素直に言うことを聞いてもらおう。 頭巾ちゃんが言うには彼女が十三階段に入った目的は『無銘』というナイフだったらしい。 亡くなったおじいちゃんの墓前に添えるのだそうだ。 そんな良い娘にぼくは『何でも言うこと聞くから』なんていう台詞を言わせてしまった。 本来なら自分は自分の言動を反省するところなんだろう。 でもせっかくだから言うこと聞いてもらおうと思う。 頭巾ちゃんには申し訳ないが……。 しばらくの間、ぼくの家で住み込みで働いてもらうという条件を提示した。 しぶしぶだったが頷いた頭巾ちゃんは一度帰って色々と準備をしてくるらしい。 待ち合わせの場所を指定しようと思ったら、頭巾ちゃんはぼくの住んでいるアパートを知っていると言うので、ぼくは家でひかりさんと一緒に二人で待つことにした。 二時間後、頭巾ちゃんは言った通りに家に来た。 荷物は意外と少ない。 着替えの他に勉強道具を持ってきていた。 珍しいものは何一つ持ってこなかったようだ。 さすがは普通。 なぜ十三階段に選ばれたのかはよくわからないが、あの狐さんのやることだから何か理由があるのだろう。 狐さんの周りに普通な人間がいたらそれこと異色。 異物として、狐さんや周りの人間の目に映るのかもしれない。 まあそんなことはどうでもいい。 頭巾ちゃんは十三階段を裏切ってくれたわけだから。 本当に裏切ったかどうかはわからないけれど、素直そうなこの娘を信じてみよう。 ここにいる間は彼女の意思を尊重することを決意する。 「これに着替えてくれる?」 「メ、メイド服!? なんで!?」 「何でも言うこと聞くんじゃなかったっけ?」 しぶしぶだったけど、頭巾ちゃんは僕の要求を飲んでくれた。 もっとはっきり拒否したら止めたんだけど……。 ぼくは荷物の整理を始めた頭巾ちゃんに服を渡した。 この部屋の中で頭巾ちゃんがいつも着る制服。 頭巾ちゃんが家に帰っている間に用意したメイド服を手渡し、小声で指示を出す。 頭巾ちゃんは目を丸くして驚いたが、やはり月並み。 あえて言うこともないとは思うけれど、驚き方も普通だった。 頭巾ちゃんは早速着替える。 嫌がりはしなかった。 本当に何でも言うことをきいてくれるようだ。 冗談だったんだけど、せっかくだから僕の好みに合わせてもらおう。 指示を実行したか確認するため、ぼくは頭巾ちゃんのスカートを捲くってみた。 何も穿いていない。 その部分がどうなっているのか説明すると、少々卑猥な言葉を多々使うことになってしまうので控えておこうと思う。 頭巾ちゃんは「きゃっ」っと言い、しゃがみ込みながら慌ててスカートを押さえる。 ちゃんと言うことを聞いてくれたみたいだ。 可愛いな。 というわけでぼくに絶対服従の可愛い専属メイドを手に入れた。 ひかりさんが僕に白い目を向けていたのは言うまでもないことだろう。 おわり 戻る