約 1,172,337 件
https://w.atwiki.jp/zeromoon/pages/66.html
前ページ次ページ魔眼の使い魔 真っ赤な空に回転する巨大な歯車 地平の彼方を覆う煉獄の炎 荒れ果てた大地に墓標のように突き刺さる剣、剣、剣 「何なのよ、何なのようコレは!?」 パニクるルイズを庇い赤い外套の男と対峙するメドゥーサ 「挨拶も抜きでイキナリ“無限の剣製”ですか英霊エミヤ」 「嫌な仕事は先送りしない主義なのでね」 肩を竦めるエミヤシロウ 「“守護者”である貴方がこのハルケギニアに何の仕事で?」 「本来ならコッチは『アラヤ』の管理外なのだがね、君らが好き勝手やるものだからとう とう私が出張する羽目になってしまったのだよ。もっとも管理外世界に渡るためにガリア 王の召喚に便乗するという裏技を使わせてもらったがね」 左手を持ち上げたエミヤの二の腕に輝くガンダールヴのルーン 「成程、ルーンの力で基本性能が軒並みブーストされているのですね」 つまりエミヤではなくE・M・I・Y・A 「これでは二人がかりでも勝ち目は薄いぞ?」 ティファニアを庇いつついつになく真剣なハサン 「それよりも問題なのはエミヤの左腕にルーンが刻まれているということです」 ビキィッ! エミヤの頬が引き攣る 「つまりエミヤはガリア王とコントラクト・サーヴァントを……」 「きゃ~~~~~~~~~~~~~~ッ!!」 今目の前にある危機も忘れ腐った歓声を上げるルイズとティファニア 「ぬがああああああああああああああああツ!!!」 血涙を流しながら突っ込んで来たエミヤが手じかな地面に突き立った剣の柄に手をかける 「くあせN8#ph16&;@+p¥ふじこ!?!」 耳と鼻と口から鮮血を迸らせ崩れ落ちるエミヤ 「流石の英霊エミヤも、否、英霊エミヤだからこそこの剣の『毒』には耐えられんかった な」 「随分な言い草だね~命の恩人に向って。ま、久し振りの再会だしかわいこちゃんもいる から全然オッケーだけどね」 ヌラヌラと青光りする刀身をくねらせて軽薄そうに笑う剣 「何故、何故貴方がここにいる…“魔剣ワカメ”!?!」 前ページ次ページ魔眼の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4984.html
前ページ次ページゼロな提督 《教皇よ!》 シャン・ド・マルス錬兵場に、一際大音量でラインハルトの声が響き渡った。 《銀河帝国がハルケギニアへ侵略を企てていたなら、とうの昔にハルケギニアは予の 艦隊に蹂躙されていた。予にその意思がなかったから、卿等は繁栄を享受できていた のだ。 この事実こそが、予が和平を望む証である!》 その言葉に、教皇は何も答える事が出来ない。愕然としたまま立ち尽くしている。ジュ リオも剣を握る手から力が抜けていく。 《卿等のいかなる魔法も、どんな大砲も、予の艦に傷一つすら付ける事は出来ぬ。そ もそも、とどきすらせぬし、魔法や大砲を放つ間も与えぬ。予が腕を振り下ろす間に 全て消し飛ばしてくれよう》 ラインハルトはジョゼフへ向けて手を差し伸べる。 ガリア王とミョズニトニルンは軽やかに悪魔像を模した巨大魔法人形から地上へ降り立 つ。魔法人形は地響きを上げながら会場の人々を離れ、周囲に誰もいない練兵場の隅に座 り込んだ。 光が爆ぜた。 次の瞬間、魔法人形は消えていた。魔法人形が座っていた地面も消えていた。半径十メ イル程の大穴が出来ていた。 それがミサイル攻撃だというのは、会場の人々には分からなかった。だが、頭上の艦か ら棒状の物が撃ち込まれた瞬間に巨大魔法人形が地面ごと吹き飛んだのは分かった。 ブリュンヒルトの側面には多数のミサイル発射口が口を開けていた。 それらが会場へ向けられる砲口なのは、アンリエッタ亡命後すぐに山ごもりをして魔法 の修行を続けていたため真相に関して何の知識も得られず、滑稽な道化と成り果てたギー シュ・マリコルヌ・ヴィリエにすらも分かる事だった。 壊れたアルヴィーを握りしめ、虚しく地面にへたり込むギーシュ達の肩を叩く老人の手 があった。それはオスマンだ。その後ろにはコルベールもいる。 「おぬしらを責めはせんよ。ただ、今はあの者達の言葉を黙って聞くがいい」 三人は、呆然としたまま微動だに出来なかった。 《更に言うなら、あれらの艦は全て無人だ。卿等に分かる言葉で言うなら、ガーゴイ ルなのだ。 教皇よ。お前の『虚無』の魔法が、どれほどの奇跡を起こそうとも、万一あれら全 てを消し去る事が出来ようとも、予には蚊が刺した程の事もない。新たに無人の艦隊 を送るだけだ。次は万の単位で、な。 なお言っておくが、卿等の頭上の艦を破壊したら、当然ながら残骸が降り注ぐぞ。 お前達の頭に》 それは、全くもって余計な台詞だ。 ラインハルトは、わざわざ言われなくても分かっている事を口にした。この点、まだラ インハルトも若く、激情に身を委ねる事もある気性の激しい皇帝ゆえ、少々自らの権力に 酔っていたと言えるだろう。ジョゼフが言うように、見た事もない大艦隊を見て怯えうろ たえる人々を目にして、「ついつい面白くなって」しまっても、非難出来る人は少ないだろ う。 事実、教皇にとって確かにラインハルトの言葉は、言われなくても分かっている余計な ことだった。 ヴィットーリオは聖杖を取り落としていた。怯え震える火竜の背で、膝をついていたの だ。もはや教皇としての威厳はなかった。俯き、噛み締められた唇からは何の言葉も出な かった。頭から落ちた円筒状の帽子のことなど、本人含めて誰も気にする事は出来なかっ た。 その姿はハルケギニアの敗北を、教会権威の失墜を象徴していた。竜に並ぶ恐怖の対象 であるエルフ達をも遙かに上回る軍団が聖地奪還に立ち塞がっている事実を、彼等の気ま ぐれ一つで教会は消滅する事を、エルフ達との和平を受け入れなければ本当に消されかね ない事を示していた。 「はーっはっはっはっはっは!」 ジョゼフの高らかな笑い声が響き渡った。 立ち上がる気力もない教皇へ向けて、満面の笑みで語りかけてくる。 「ま、そういう訳なのだよ! これまでの詳しい話は後々教えてやるが、ともかく、今日の調印式典は全て狂言だった のだ」 そう言いながら、ジョゼフはツカツカと教皇が乗る火竜へ歩み寄っていく。 顔を上げられない教皇へ、実に楽しげに朗々と語り続けた。 「いやあ!全くお前の絶望の程には同情するぞ。 自分の全人生を捧げてきたものが、全くの嘘。 力で真実を否定しようにも、圧倒的な戦力差に手も足も出ない。 しかも、それら全てをハルケギニアの全貴族を前に公にされてしまったのだ。 全くお前は立場がない、運もない、たった今から権威も権力も何もない!」 教皇は、何も答えない。答えられない。 ジョゼフは火竜の傍、教皇の近くまで歩み寄る。 そして腕を組み、うんうんと頷きながら話を続ける。 「あ、そうそう、一つ教えてやろう。 実は銀河帝国の人間は、そこで幻影の姿を現しているラインハルトも含めて、全てが魔 法を使えない人間なのだ。俺も驚いたのだが、その若者の国にはメイジも魔法も存在しな いそうだ。 実際、俺も銀河帝国から迷い込んだ連中の遺留品をかき集めて、部下に調べさせたのだ が、一切の魔法反応が無かった。エルフ達も調べたそうだが、精霊の残渣すらなかったそ うだ」 その言葉に、ラインハルトもヤンも小さく頷く。 だが教皇は頷けない。 「つまり、俺たちの上を飛んでいる、あの神の軍勢がごとき大艦隊も、全て魔法無しで平 民達が作ったガーゴイルだ。ブリミルが俺たちに授けた系統魔法も先住魔法も無しに動か しているのだよ。 つまり平民達の力は、系統魔法を遙かに上回るのだ。始祖がハルケギニアに授けた祝福 なぞ不要、と言うほどにな。始祖の系統である『虚無』の使い魔の一つ、俺の使い魔ミョ ズニトニルンの力で生み出した巨大ガーゴイルですら、ほれ、あの通り。奴等の爆弾一つ で粉々だ!」 ジョゼフはあごをしゃくって会場の隅を示す。 そこには、ミサイルで跡形もなく地面ごと消し飛んだ魔法人形の座っていた場所。 もちろん使用されたのは対艦ミサイルではない。核弾頭を外し、適当に火薬を詰めただ けだ。 王は、わざとらしく肩をすくめる 「いやはや、俺だけでなく、マリアンヌ女王やアルブレヒトにも、エルフ達にすらどうし ようもなかったのだ。 何しろ彼等、エルフと銀河帝国の連中が言う事に一つも嘘偽りは無かった。始祖が奪還 を求めた聖地は、草一本生えない荒野。ど真ん中にある召喚の門は、主たる始祖がいない のに開きっぱなし。そして門から飛び出してくるのは、あの『ドラート』をはじめとした 銀河帝国の軍艦ばかり! おまけに圧倒的軍事力。笑顔で『和平に応じろ』と言われれば否応もない。選択肢が他 になかったのだ」 その言葉には、ハルケギニアの女王や皇帝も頷いた。 そして王は、益々わざとらしく教皇へ微笑んだ。 「だが教皇よ、安心せよ!事の責任は、お前には全くないぞ!うむ、お前は全く悪くない のだ! 教会の教えが誤っていたのは、お前が間違えたからではない。お前の先人達の誤りであ り、そやつらの責任だ。 系統魔法が我等を六千年に渡って守り導いたのは真実だ。我等は系統魔法による恩恵を 受け続けていたのだ。ブリミルが我等を蔑ろにしたなんてことも、全く無い!多少の誤り はあっても、ブリミル教自体は間違っていないのだ!」 その言葉に、教皇はようやくジョゼフの方を見る。 全てを失った若者の目に映るのは、満面の笑みと共に自分を慰める男。 「おお!これはつまり、教会はこれからもハルケギニアを導くべき地位にあるという事な のか!?そうだ、お前が教皇である事に、全ブリミル教徒を率いる地位にある事に変わり はないという事だ! 彼等、銀河帝国も俺たちに和平を申し出た。つまりお前の教皇としての地位も教会の存 在も不問とする、という事でもある。 良かったではないか、教皇聖下よ!お前が聖地奪還を諦めさえすれば、お前は自分の地 位を、権威を守る事が出来るのだ!今まで通りにハルケギニアの貴族と平民達へ始祖の教 えを」 バキィッ! 打撃音が鳴り響いた。 ジョゼフの言葉は、頬にめり込む拳で遮られた。 ガリア王を殴り飛ばした者がいたのだ。 だが、それはジュリオではない。ジュリオの前にはミョズニトニルンが立ちはだかって いたから。落としそうになっていた剣を握り直してジョゼフに斬りかかったのを、無能王 の使い魔が遮っていた。 だが、王の頬には拳がめり込んでいた。翼人女性のアイーシャ、ビダーシャルをはじめ としたエルフ達がいるのに、精霊はガリア王を守らなかった。火竜のブレスからは守った のに、男の拳からは守らなかった。亜人達も、何も言わず驚きも怒りも何もせず、ジョゼ フが殴られるのを黙って見逃した。教皇お付きの神官達が動かないよう見張っているのに も関わらず。 上空にいるヤンやフレデリカも、銀河帝国艦隊も、全く動きを見せない。まるでそれが 当たり前のように。 そう、彼等は見ていた。この茶番劇の役者達は、わざと見過ごしたのだ。 ロマリアの教皇聖エイジス三十二世が、火竜を飛び降りてガリア王を殴るのを。 それが茶番劇の一つであるかのように。 だが、そんな事実にすら、教皇は思い至らなかった。 彼はただ、激情に身を任せた。 身の奥底からわき上がる憎悪と憤怒に身を任せるしかなかった。 「全部…全部、仕組んでいたのか…?」 端正な顔が怒りに歪む。 殴り飛ばされた王は、口の端から一筋の血を流し、それでも笑った。 笑顔で答えたのだ。 「そうだ、全て俺が仕組んだ」 「お前が…!?」 その言葉を、教皇は信じる事が出来なかった。エルフはおろか、銀河帝国という超大国 までがガリア王の筋書きに従ったという事実を信じるのは難しかった。 《ガリア王の言葉は真実だ》 ラインハルトがジョゼフの言葉を真実と保証した。 《それが、ガリア王が協力する条件だったのだ。 エルフ達との和解に応じ、ガリア王としても『虚無』の系統としても銀河帝国との 和平を結ぶ。そのかわり、今日の式典は全てガリア王の仕切りにさせよ、と》 ヴィットーリオの視線は、高速でジョゼフとラインハルトの間を往復する。 ラインハルトの説明に、ビダーシャルをはじめ老エルフ達も同意した。 「我等もガリア王の要求には首を捻った。何のために、こんな寸劇をするのかは全く分か らなかったのだ。 だが、ともかくガリア王は全面協力を約束した。我等やヤンが求めた『不殺』の条件を も受け入れた。実際、ジョゼフの筋書き通りに事は進み、誰も死なずに済んだ。なので、 我等としてもジョゼフの案に異論は唱えなかった」 ドゴォッ! 再び殴打の音が響いた。 もはや殺意すら顔に浮かべた教皇が、今度はジョゼフの腹に拳をめり込ませたのだ。 「それじゃ、それじゃあ、お前はこう言うのか? 全ては、私に恥をかかせるのが目的だったというのか!?」 「く・・・くく、く…。やっと、気が付いたか…」 「なんだ、と?・・・どういうことだ。簒奪者よ、一体どういう事だ!?弟を殺し王位を 奪って、次は教皇にでもなりたい…と、そういうのか!?」 ジョゼフは腹を押さえて膝をついている。だが、苦悶に顔を僅かに歪めつつも、それで も笑顔が消えない。 いや、むしろ、心からの喜びに満ちている。満面の笑みを浮かべている。 「くく、くくく…違う。教皇の地位など興味はない。全ては、この一瞬のために仕組んだ のだ」 「この、一瞬…?私が恥をかく、この一瞬に・・・。な、何故、何故だ。私が、お前に何 をしたと言うのだ?」 「お前は、何もしていない。本当に、お前は何も悪くないのだよ。だが、俺は仕組んだの だ。今日の茶番を、な」 よろめきながら、ジョゼフは立ち上がる。 そして、トリスタニアはおろか、ハルケギニア全てに響きわたらさんとするかのような 声を張り上げた。 「お前に、お前に俺を、殴らせるためさっ!」 確かにジョゼフは告白した。教皇にガリア王を殴らせるために、今回の陰謀を仕組んだ のだ、と。 だが、告白をされたからと言ってジョゼフの意図を理解出来るわけではない。殴りつけ た本人である教皇も、あえてジョゼフ本人を守らないように精霊へお願いしたアイーシャ やビダーシャルなどエルフの人々も、モニターで事の推移を黙ってみているラインハルト 達すらも、彼の意図が分からない。 『ドラート』二機はようやく降下艇の隣に着陸して、中からルイズ達が地上へ降り立っ た。彼等もジョゼフの言葉を黙って聞いている。 ジョゼフは大きく息を吐き、呼吸を整え、静かに尋ねた。 「教皇よ、お前は『虚無』の力が何を源とするか知っているな」 その問に、教皇は目を見開いた。 だが口は開かない。何も答えない。 「知らないのか?それとも言えないのか?なら俺が代わりに言ってやる。教えてやる。 それは、闇だ」 闇。その言葉を口にしたジョゼフの顔は、確かに闇が浮かんでいるように見えた。 たとえ闇が浮かんでいるように見えるのが気のせいでも、その口調には明らかに憎悪が 含まれている。 「怒り、憎しみ、嫉妬、絶望…あらゆる負の感情が源となる。『虚無』の系統たる俺と、そ このルイズが保証する。闇が心を満たす時、『虚無』の力は増す。精神力が溜まり、威力を 上げるのだ。 はっ!慈愛に満ち祝福を授けるのブリミルの系統が闇を糧にするとはな。大笑いだ!」 その言葉にルイズも黙って頷く。 彼女の顔には憎悪は浮かんでいない。ただ静かに話を聞いている。だが隣のヤンは知っ ている。彼女の心が闇に浸食されていた事実を。 「大きな力には、暴走を防ぐために封印がかけられる。 そのため『虚無』の系統にも封印がかけられていた。それが始祖の秘宝だ。地水火風を 象徴する4つの指輪と、「虚無」の魔法を伝える4つの秘宝に触れる時、封印は解除される。 『虚無』が蘇る。 だが、この封印にはもう一つの意味があった…『虚無』の使い手に、その心に、闇を満 たすという効果が、な!」 ジョゼフは吐き捨てる。 その心に満たされた闇を吐き出すかのように。己を焼く憎悪が炎となって吹き出すかの ように。心から忌々しげに。 「昔、俺は何一つ出来なかった。封印のせいで魔法が使えなかった。もちろん俺が本当は 『虚無』の系統だなんて、誰にも分からない。宮中の誰もが、母すらも、俺を暗愚と呼ん ださ。 それに比べて弟のシャルルは何でも出来た。皆、弟が王になる事を望んだ。あいつは、 誰よりも魔法の才に優れていた。五歳で空を飛び、七歳で火を完全に操り、十歳で銀を錬 金した。十二歳の時には水の根本を理解した。俺には何一つ出来ない事を、シャルルは容 易くやってのけた」 弟の事を語り出すジョゼフ。その時の彼には、憎悪ではなく懐古と寂寥と、嫉妬と後悔 がみてとれた。天を仰ぎながら、懐かしげに、羨ましげに、そして悔しそうに弟の事を語 る。 「いや、魔法だけじゃない。あいつは本当に賢かった。俺と互角にチェスを指せたのはあ いつだけだった。あいつがいなくなって、俺のチェスの相手は、俺だけになってしまった。 自分で自分を相手にチェスを指す…なんて退屈な行為だ! 賢いだけじゃない、あいつは優しかった。家臣や父にバカにされる俺を見て、あいつは 言ってくれた。『兄さんは、まだ目覚めていないだけなんだ』『兄さんは、いつかもっと凄 い事が出来るよ』と。俺を気遣って、わざと失敗してくれたことすらあった。本当に、あ いつは優しかった…」 突如、ジョゼフの顔が変わった。再び闇が浮かんだのだ。今度は気のせいでも何でもな い、間違いなくガリア王は顔を憎悪・後悔・絶望で醜く歪ませたのだ。 「そんなあいつが、俺は羨ましくてたまらなかった!俺が持たぬ美徳、才能を全て兼ね備 えていた! だが…それでも憎くはなかったんだ。本当だ。あんなことをしてしまうほど、憎くは無 かった。あのときまでは…」 ジョゼフは俯く。 わなわなと手が震える。 衆人環視の中、ジョゼフの独白は続く。 「病床の父は、臨終の間際に俺とシャルルだけを枕元に呼んだ。他には誰もいない、三人 だけの部屋で、次の王が定められた。 父は、俺の名を口にした。 信じられるか?なぁ、信じられるか!?俺は、本当に王に指名されたのだよ。父にバカ にされ、母に暗愚と呼ばれ、宮中の誰もがシャルルを王に相応しいと思っていた。なのに 父は俺を王としたんだよ!」 彼はヴィットーリオへにじり寄る。いまだ唖然、呆然とする教皇の顔を、上目づかいに 見上げながら、腹の底から叫んだ。 「そうさ、俺は簒奪なんかしていない。本当に、俺は父から王に指名されたんだ。本当に 俺が正当なガリア王なのさ!」 彼は腕を振る。横へなぎ払う、会場の人々へ右腕を振り回す。 この中の誰一人としてジョゼフが正当な王だったと信じていなかったであろう、会場の 貴族達へ、真実を投げかけたのだ。 だが、すぐに彼の腕から力が抜けていく。肩が落ちる。 「俺は喜んださ…父は病気で呆けてたんだろうけど、王の言葉は絶対だ。自分は王になっ たんだ、と。 そして、俺の心は、弟への、シャルルへの優越感で満たされた。シャルルの絶望がどれ ほどのものか。自分のものになるはずだった権力が、一瞬で指の間からすり抜けた絶望は どれ程のものか、とな。弟の悔しがる顔を想像した。それが見たくてたまらなくなり…、 横目で盗み見たんだ。弟の顔を。 そしたら、あいつ、どんな顔をしていたと思う?なあ、教皇様よ。どんな顔をしていた と思うよ」 突然、ジョゼフは教皇の胸ぐらを掴む。 力の限りに、自分の間近にまで顔を引き寄せ、あらん限りに己の怒りと絶望を叩き付け る。 「喜んでやがったっ! 俺の下衆な想像は、まったく外れだったんだよ!あいつはにっこり笑って、なんと、こ う言いやがったんだ。『おめでとう、兄さんが王になってくれて、ほんとうによかった。ぼ くは兄さんが大好きだからね。僕も一生懸命協力する。いっしょにこの国を素晴らしい国 にしよう』とな。 ああ、今でも一字一句覚えてる。あいつには何の嫉妬もなかった。邪気も皮肉も無かっ たんだ。本気で俺の戴冠を喜んでた・・・」 教皇の胸ぐらを掴む手の力が衰えていく。 苦しそうな顔で、ジョゼフは言葉を絞り出した。 「シャルル…どうして、どうしてお前は、悔しがってくれなかったんだ…。どうして、お 前はそこまで優しかったんだ…どうしてお前は、俺が持たない全てを…手に入れていたの だ? 俺は、本当に嫉妬した。あいつは素晴らしい奴だ、優しい弟だった。それに比べて、俺 は、なんて下衆なんだ。なんてクズなんだ。なんて愚かで、無様で、無能で、冷酷で、嘘 つきで、残忍で、阿呆で、間抜けで、嫉妬深くて、弱虫で、ちっぽけなんだ…。 なんで、俺は、こんな・・・惨めなんだ」 ジョゼフの目に、光が宿る。 全てを焼き尽くさんばかりに熱く、鋭く、狂気を帯びた光が。 「俺は、弟が憎くなった。 分かるか?教皇様のお優しくて寛大すぎる御心じゃ、俺の様な下衆の狭い心なんか、わ からんだろう?嫉妬が憎悪に変わったんだよ…殺意になったんだよ! そうだ、俺がシャルルを殺したんだ。簒奪なんかしていない!ただ、憎かったから殺し たんだ!何が悪い?俺は王だ。そうだ、後の禍根を断つためだ。弟を担ぎ上げる連中が国 を割るのを防ぐためさ! いやいや、そんな大義名分もいらんな。俺は王だからな。殺したいから殺した、それで 十分だ!何しろ王権は神から、始祖ブリミルから授かった神聖なものだ。王の行いは神の 行いだ! もちろん誰も信じなかったさ!俺が王に指名されただなんて。証人もいない。だから誰 も彼もが俺を簒奪者と呼んだ。弟を殺して王位を奪ったと、な!」 ジョゼフの自白がトリスタニアを覆う。 次元の壁を越え、自動翻訳されて銀河帝国公用語となりステーションの司令室に響く。 狂った笑い声が、宇宙に満ちる。 「あはははっははははっ!ははっはははは・・・・・ そうだ。俺がシャルルを殺したんだ!シャルル、恨むなら己の才と優しさを恨め。お前 のあの晴れ晴れとした顔が、お前を殺したのだぞ。ほんの少しでも良いから、俺を羨んで くれれば、殺さずにすんだというのに! あの日、狩猟会の最中、俺は弟を殺した。何しろ魔法を使えない無能王だからな。しょ うがないので毒矢で射殺した。ガリアの誰よりも高潔で魔法の才に優れた王子が、ガリア の誰よりも下劣で無能な王子の下賎な矢で死んだんだ! いやいや、それだけじゃないぞ!俺はシャルルの娘も狙った。エルフが調合した、心を 狂わす水魔法の薬だ。俺はあの姪に、シャルロットに飲ませようとした。だが、代わりに 母が飲んだ。おかげで、あの美しい女が、見事に狂ってしまった!人形を自分の娘と思い こんでシャルロットと呼び、自分の娘を俺からの刺客と恐れ、怯えてグラスを投げつける のだ! 教皇よ、知ってるか?なぜシャルロットがタバサと名乗るのか…。タバサってのは、そ の人形の名前なんだよ!人形がシャルロットと呼ばれてしまうから、しょうがないので姪 はタバサと名乗った!以来、シャルロットは人形の様に表情を無くし、人形の名を名乗っ てるんだ!」 再び哄笑が響き渡る。 狂気に満ちた笑いが二つの世界を包む。 狂った王は、ただ笑い続ける。 「・・・俺は、俺は、後悔してるんだ。 あいつの愛した女性を、娘を痛めつけても、あの日の痛みには適わん。祖国を、人々を 苦しめても、あの日の後悔には適わん。なのに、なのに、何故なんだ。後悔してるのに、 心が痛まない…。 そうだ、俺は人間だ。どこまでも人間だ。なのに、何をしても心が痛まないんだ。神は 何故俺に力を、『虚無』を与えたんだ?ああ、『虚無』だ!それはまるで、俺の心のようじ ゃないか! 俺の心は空虚だ。腐った魚の浮き袋だ。からっぽだ。喜びも、怒りも、憎しみすらもな い。シャルルを手にかけたときより、俺の心は振るえんのだよ。まるで油が切れ、さび付 いた時計のようだよ。時を刻めず、ただ流れ行く時間を見つめる事しかできぬガラクタだ よ」 ジョゼフは、教皇の胸ぐらから手を離した。 力なく、地に膝をつく。 ただ、懺悔するかのような自白ばかりが続く。宙の一点をみつめ、うわごとのように呟 き続ける。 「だから、俺は決めたんだ。神を倒すと。兄弟を斃すと。民を殺すと。街を滅ぼすと。世 界を潰すと。 あらゆる美徳と栄光に唾を吐きかけるために。全ての人々の営みを終わらせるために。 取り返しのつかない出来事に、後悔するために。シャルルを手にかけた時より心が痛む日 まで…。世界を慰み者にして、蔑んでやる、と。 人として、涙を流したいから」 ジョゼフは、顔を上げる。 ぼんやりと会場を見回す。彼を見つめる人々を見つめ返す。 全てを失った教皇を、信仰を否定された神官を、貴族の地位が砂上の楼閣と気付かされ たメイジ達を、神権を無くした女王を、聖地奪還を諦めた飾りの皇帝を、哀しげな瞳を向 けるアイーシャを、理性的な中にも同情の視線を向けるエルフ達を・・・。 何より、自分の全てを理解してくれるルイズの涙する瞳を。自分と同じく『虚無』に心 を狂わされつつあった娘を。 ガリア王は、天を仰ぎ見た。 その頬には、止めどなく涙が流れ落ちていた。 両の手を掲げた。 拳を握りしめた。 そして、魂の全てを込めて咆哮した。 「やった・・・俺はやったんだ・・・勝ったんだ! 神を倒したんだ! 俺の全てを奪い取ったブリミルを、ぶちのめしてやったんだ! は、はははは!これで、ハルケギニアは終わりだ!教会はゴミ箱行きだ!貴族なんぞ、 系統魔法なんぞ時代遅れの役立たずだ! どうだ、見るがいい!ブリミルよ、お前の作った世界は崩れ去ったんだ!お前が授けた 系統魔法なんぞ、お前の『虚無』ですら、銀河帝国の艦一隻の砲弾一発にも勝てやしない のさ! 神が授けた、あらゆる美徳と栄光は、貴様が守り続けてきた人間共に唾を吐きかけられ るんだ!神を崇め奉るハルケギニアの営みは終わったんだ!信仰が消滅したんだ!!見 ろ!お前の忠実な飼い犬であるはずの教皇すら、お前の教えを忘れ、怒りにまかせて俺を ぶん殴るほどだ!! あははははっははあはははっ!!見たか、ブリミルのクソ野郎!お前が俺に授けた『虚 無』は凄いぞ!お前が俺にかけた封印は素晴らしいぞ!お前が俺に溜め込ませた闇は強大 だぞ!なにしろ、お前自身を打ち砕く程なのだからなぁっっ!!」 ジョゼフは、高々と両の拳を天に突き上げた。 「勝ったんだ!俺は、ブリミルに勝ったんだあーーーーっっ!!」 笑い声が響く。 世界に響き渡る。 狂った男の、悲劇の王の、人々が無能王と呼んだが故に本当に無能王にされてしまった 犠牲者の、神の生贄の、心からの笑い声が響き渡る。 人が神を倒した。 教会の権威と教典の教えは、暴力と陰謀の前に膝を屈した。 真実が信仰を打ち破った。 六千年にわたる、愚神を讃える狂宴が終わった。 第30話 狂宴は終わる END 前ページ次ページゼロな提督
https://w.atwiki.jp/soundpontata/pages/88.html
聖戦と死神 第四部「黒色の死神」~英雄の帰郷~ Chronicle 2nd←クリックで前画面に戻る アルヴァレス亡命の報は 帝国のみならず ガリア全土に強い衝撃を響かせ疾った… 時代は英雄を求め 反撃の狼煙は上げられた 旧カスティリヤ領が 帝国に対し独立宣戦を布告 旧ロンバルド領 旧プロイツェン領がそれに続き 帝国内部で高まりつつあった聖戦への反感が遂に爆発 アルヴァレスを頼り 軍・民・問わず亡命者が殺到 更に熾烈な四正面作戦を強いられた帝国は 次第に領土を削られ 国力を疲弊していった… そして…戦局の流転は 時代にひとつの決断を投げ掛ける… それは…皇帝 聖キルデベルト六世より プリタニア女王へと宛てられた一通の親書… 帝国暦四年『ベルセーヌ休戦協定会談』 帝国領イヴリーヌ ベルセーヌ宮殿 大理石の回廊を進む薔薇の女王 左にはパーシファル 右にはアルヴァレス 柱の陰には招かれざる客… 黒の教団より放たれし刺客… 死角より放たれし時(クロ)の凶弾… 嗚呼…歴史は改竄を赦さない… 凍りつく時間の中を 崩れ堕ちるアルヴァレス パーシファルの雷槍(ヤリ)が閃き 崩れ落ちるゲーフェンバウアー それは…歴史の流れが変わる瞬間だろうか? それとも最初から全て決められていのだろうか… 「…先に逝ったのか…ゲーフェンバウアー…人間(ひと)とは全く…哀しい生物(もの)だな…」 彼を誘う最期の闇 その中にさえ… 「嗚呼…朱い…何て朱い夕陽なんだ…シャルロッテ…私は必ず…必ず帰って…」 ブリタニア暦630年 英雄アルベール・アルヴァレス イヴリーヌ(ベルセーヌ)宮殿 にて暗殺者の凶弾に倒れる… 彼の墓碑銘にはルーナ・バラッドが捧げた詩の一節が刻まれた… 多くを殺し 多くを生かした 多くを悩み 多くを為した <ベルガの同胞>(アーベルジュ)ここに眠ると… ガリア全土を巻き込んでなお停まらない大戦 その終結には…更に多くの血と涙 五年の歳月を要するのである… 夕陽に染まる丘 寄り添うように並ぶ二つの墓標 白鴉が凛と羽ばたいて往く 終わらない空の向こうへ…
https://w.atwiki.jp/kasisouko/pages/60.html
Chronicle 2nd 1st Story Renewal CD 聖戦と死神 第四部「黒色の死神」~英雄の帰郷~ アルヴァレス亡命の報は 帝国のみならず ガリア全土に強い衝撃を響かせ疾った… 時代は英雄を求め 反撃の狼煙は上げられた 旧カスティリヤ領が 帝国に対し独立宣戦を布告 旧ロンバルド領 旧プロイツェン領がそれに続き 帝国内部で高まりつつあった聖戦への反感が遂に爆発 アルヴァレスを頼り 軍・民・問わず亡命者が殺到 更に熾烈な四正面作戦を強いられた帝国は 次第に領土を削られ 国力を疲弊していった… そして…戦局の流転は 時代にひとつの決断を投げ掛ける… それは…皇帝 聖キルデベルト六世より プリタニア女王へと宛てられた一通の親書… 帝国暦四年『ベルセーヌ休戦協定会談』 帝国領イヴリーヌ ベルセーヌ宮殿 大理石の回廊を進む薔薇の女王 左にはパーシファル 右にはアルヴァレス 柱の陰には招かれざる客… 黒の教団より放たれし刺客… 死角(刺客)より放たれし時(黒)の凶弾… 嗚呼…歴史は改竄を赦さない… 凍りつく時間の中を 崩れ堕ちるアルヴァレス パーシファルの雷槍(ヤリ)が閃き 崩れ落ちるゲーフェンバウアー それは…歴史の流れが変わる瞬間だろうか? それとも最初から全て決められていのだろうか… 「…先に逝ったのか…ゲーフェンバウアー…人間(ひと)とは全く…哀しい生物(もの)だな…」 彼を誘う最期の闇 その中にさえ… 「嗚呼…朱い…何て朱い夕陽なんだ…シャルロッテ…私は必ず…必ず帰って…」 ブリタニア暦630年 英雄アルベール・アルヴァレス イヴリーヌ(ベルセーヌ)宮殿 にて暗殺者の凶弾に倒れる… 彼の墓碑銘にはルーナ・バラッドが捧げた詩の一節が刻まれた… 多くを殺し 多くを生かした 多くを悩み 多くを為した <ベルガの同胞>(アーベルジュ)ここに眠ると… ガリア全土を巻き込んでなお停まらない大戦 その終結には…更に多くの血と涙 五年の歳月を要するのである… 夕陽に染まる丘 寄り添うように並ぶ二つの墓標 白鴉が凛と羽ばたいて往く 終わらない空の向こうへ…
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8435.html
前ページ次ページゼロのペルソナ 女帝 意味…愛情・嫉妬 日本のとある片田舎にある地方都市稲羽市。 昨年こそ連続殺人が起きたり、アイドルや探偵が地元の高校に転校、また謎の霧が発生したなどで妙な騒がしさがあったが 今年はもともとの稲羽市らしい様子を見せていた。つまり何もない田舎町に戻っていたのだ。 そんな静けさを取り戻す町の中で3人の少年が姿を消した。 元の姿を取り戻しつつある町の中で再び起きた失踪事件は、昨年の事件を解決した者たちの心を波立たせた。 陽介、完二、クマたちが姿を消してすぐに里中千枝、天城雪子そして白鐘直斗らは捜索を開始した。 2、3日の調査の結果、彼らがこの町から出たのを見た者がいないことと、 地元の大型スーパージュネス付近で彼らを最後に見た証言が集中していることがわかった。 そのことから彼女たちは彼らはテレビの中に入ってから何らかの事情で戻って来れなくなっていると推理し、現在テレビの中を捜索していたのだった。 テレビの中は優しい風が澄んだ湖面を波立たせ美しい植物たちが咲き乱れる世界だ。ついこの間までは霧が立ちこめ、 恐ろしい怪物がはびこっていたのがウソのようである。 その美しい世界を取り戻したのは千枝たちであったのだが、彼女らには現在それを楽しむ余裕はなかった。 千枝に至っては優しげな世界の中で似つかわしくない今にも泣きそうな表情を浮かべている。 彼女は短いボブという髪型とジャージを好んで着ることからイメージできるよう活発な少女だ、男勝りとさえ呼ばれるほどに。 しかしここぞというときに気弱になりがちなのだった。 「ど、どうしよう!?花村たちぜんぜん見つかんない!」 湖畔の青々とした草原に、千枝、雪子、直斗らが話し合っていた。 テレビの中の世界を駆け回ったのだが、彼らの姿どころか痕跡すら見つけられなかった。 「しっかりして千枝!私たちが弱気になっちゃダメ!」 弱気を見せる親友を勇気付けるのは赤い服を着た少女、雪子だ。 青を基調とした探偵ルックの男装をした少女、直斗も頷く。 「そうです。慌ててはいけません。しっかりと落ち着いて探しましょう」 二人の仲間に励まされて千枝はこくりと頷くが不安は隠せない。彼女らはこの世界で仲間たちを見つけ出す手立てをもっていないのだ。 「霧が晴れてもこの世界は広いですから探すのも一苦労ですね」 直斗がそう言うと雪子がポツリと言ってしまう。 「りせちゃんがいてくれたらね……」 久慈川りせは彼女たちの仲間で索敵など、補助に特化した能力を有しているペルソナを使える。何度も彼女の力に助けてもらった。 そして今こそ、また彼女の力を借りたいところだが、そうもいかない事情があった。 というのはりせはりせちーという通称で親しまれた元人気アイドルで、彼女が稲羽市に来たのは休業のためであったのだが、 今年の四月から彼女は復帰して稲羽市を離れてしまったのだ。 しかも彼女は現在、映画撮影のために長期的に海外ロケに行ってしまっているのだ。 一年近く休業していたアイドルが復帰して一ヶ月足らずでそれほどの規模の映画に起用してもらえるなど幸運としか言いようがない。 だが彼女の力を頼りにしたい千枝たちが間が悪いと思ってしまうのは仕方がないだろう。 そういうわけで連絡もなかなかつかず、連絡が通じて帰ってきた答えは稲羽市に来れるようになるまで一ヶ月ほどかかるというものだった。 りせもいなくなった彼らを心配しているようだったが、彼女にはどうしようもないことであるので、今は仕事に専念するようにと連絡をしておいた。 「りせちゃんもそうだけど彼もまさか親の短期出張に付き合って海外に行ってるなんて……」 彼とは昨年起きた事件を追った特別捜査隊でリーダーとなった少年のことだ。 彼は非常に強いリーダーシップを持っており、こういう困ったときに頼りしたくなる人物だ。 彼女らは頼りになる二人の仲間とたやすく会えないことに運命の悪意さえ感じた。 それでも彼らと合流できるのが先になるのなら自分たちで探すしかないと3人はテレビの中を探し続ける。だが彼女らの苦労は報われることはなかった。 まさか3人の内誰も、名探偵である直斗も見たこともないファンタジーの世界に少年たちが行ってしまったなど思いもよらなかった。 「な、なあ、タバサ。まだ着かねえのか!?」 「もう少し」 現在、陽介とタバサの二人は馬上の人であった。 陽介は馬術を持ち合わせていないため、自分より一回り以上小さい以上小さいタバサにしがみついているというなんとも情けない様子である。 二人は今ガリアの地にいた。 ガリアとはこの魔法の世界ハルケギニアで最大の領土と国力を持つ国家である。陽介たちが呼び出された国はトリステインで、ガリアの北西に位置する。 二人はトリステインからガリアへ入り、ガリアの首都のリュティスに向かっている所である。 陽介はタバサにつれられトリステイン学院を出る際にタバサに言葉数少なくガリアという国に用事があるので馬を駆ってトリステインからその国に向かうと聞いた。 しかし陽介はそこに至るまで何日もかかるとは聞いていなかった。隣国とはいえトリステインの首都近くからガリアの首都への道のりは決して短い道のりではないのだ。 タバサは慣れたもので連日馬に乗ってこたえている様子はないが陽介はそうではなかった。 「もう限界!腰が!ケツが!」 「我慢して」 彼の主の返答は陽介の腰には冷酷ものだった。 ガリア王国の首都リュティスの東端にガリア王家の住まうヴェルサルテイルが存在する。 ヴェルサルテイルの中の小宮殿プチ・トロワがタバサの目的地であり、着くなり彼女はさっさと入っていった。使い魔には外で待つように言付けて。 「人間が使い魔ってのは体裁が悪いらしいし、それか?にしても外で待っとけはちょっと愛がねーんじゃないですかね?」 日は沈んでおり、肌寒い中陽介はごちた。 なんでもタバサはこの国の騎士で依頼を受けているらしい。 この世界の常識がない陽介は、学生でも仕事させられて大変なんだな。と。この世界の魔法使いにとって一般的なことなのだと考えた。 夜の冷えた風に打たれながらしばらく待っているうちにある衝動が彼を襲った。両足をすり合わせるようにもじもじさせる。 「やべえ、なんかモーレツにションベンしたくなっちまった。でもここ宮殿っぽいし、立ちションってわけにも行かねえよな」 突然の尿意に襲われた陽助はきょろきょろと回りを見渡した。 メイドを見つけたので駆け寄り、トイレの場所を尋ねる。彼女は指を差して道を教えてくれた。タバサが入っていった扉の前を素通りすればいいようだ。 「あんがとさん!」 陽介はその方向へ一目散に駆けていった。道を尋ねた少女は、あ、そっちは!と言ったが、トイレが近くあせっている彼の耳には届かなかった。 プチ・トロワの花園に一人の女性がいた。長く青い髪をしておりその青は彼女がガリア王家の血筋であることを証明している。 手入れされた髪、そして彼女が身にまとっている平民どころかなみの貴族なら手の届かぬほど高価なドレスは高貴さをかもし出すが、 今の彼女からは何よりも怒りやねたみなどといった負の感情があふれ出ていた。 彼女、イザベラの機嫌をくずしたのは彼女の従妹の態度であった。 生卵、泥の入った豚の腸を投げつけ、下着姿にしてしもべたちのさらし者にしたというのに表情の一つも変えなかった。 まるで自分のことなど眼中にないかのようにだ。 ガーゴイル 「あの人形、私をバカにしやがって……」 勝手と言えば勝手過ぎる怒りであった。イザベラも自身の身勝手さを感じないわけではない。 しかし自身の矮小さに気付きそうになると、その惨めな気分も従妹のせいだと思わずにいられないのだ。 眉間にしわを寄せ、庭園の花を愛でるというより射殺すような視線で見ているとき、彼女は視界に何者かが入りこんだのに気付いた。 「誰!ここは立ち入り禁止よ!」 「うわっ、え、っと、すいません、今すぐ出て行くんで!」 どうやら若い男のようだ。既に日は沈んでいるが庭園にある明かりで男の姿がぼんやりとだが見える。 黒い服を着た茶髪の少年のようだ。こそこそと去ろうとする姿を見てイザベラは意地悪く口を引きつらせた。 「待ちなさい。ここに来なさい」 陽介はトイレを探しさまよい歩いていると花が咲き乱れ、整えられた木々が並んでいる庭園に入った。 地球ではありえない二つの月光に照らされた庭園は言葉で言い表せないほど美しかった。 花というものに興味のない陽介も思わず見入っていると、突然どこからか大声で怒鳴りつけられた。 どうやらここは入ってはいけないところであったらしい。いそいそと元来た道に戻ろうとする。 しかし彼に警告した女性は何を思ったのか今度は逆に彼を呼びつけた。 陽介はよくわからないまま、言われたとおり彼女に近寄った。なにやらやんごとなき雰囲気の少女であった。 少なくともジュネスでは取り扱えない高級そうなドレスに身を包み、頭に冠をかぶっている。 美人といっていいが、つり目で陽介を射るように見ており、強気さが前面に出ている少女だった。 陽介はそのつり目とそして手入れの届いた長い青い髪と彼女の雰囲気に既視感を覚えた。 少女は陽介の違和感に構うことなくじっと見ながら話しかけてくる。陽介としては少し居心地が悪い。 「もしかしてあんた人形娘の使い魔じゃない?」 「人形娘?」 「人形みたいに感情のない娘よ」 もしかしてタバサのことであろうか?と陽介は思った。 人形とは決していい表現とは言えないが、感情を見せないこととこじんまりとして幼いながらも整った顔立ちは人形のようである。 「えーと、もしかしてタバサのことっスかね?」 なにやらエラそうな少女なので敬語を使っておく。 王族ならこんな砕けた敬語でいいものかと思わないでもないが、目の前の少女は気に留めなかったようだ。 「そう。あの人形にはぴったりな名前よね、タバサって。何あいつ本当にあんたみたいな平民呼び出したの!? 騎士だの言われてるけどあいつの実力もこれで底が知れてるってものね」 話の途中から少女は下品に笑い始める。 陽介はむっとした。ハルケギニアに呼び出されて数日しか経っておらず、無口な彼女のことはよくわからない。 それでも彼女は衣食住を用意してくれているのだ(衣は基本学ランだが下着や学ランの下の上着を借りている)。 そりゃ、ここ数日は馬に乗せ腰を痛めつけてくれたものだがそれが全て彼女の責任とは思わない。 少なくとも完二の主だというSッ気たっぷりの少女に比べてはるかにいい少女だ。 色気たっぷりのクマの主の方がいいが、彼女が子供なのはそれも時間が問題で彼女のせいではない。 「タバサはそこまで言われるほど悪くねーでしょ」 「あんたあいつの肩持つの?」 彼女は面白いものでも見るようににやにやと陽介を見た。陽介は少女の言葉を真っ向から受ける。 「俺はあいつの使い魔らしいですし」 そうは言っても陽介は使い魔が何をするものか理解していなかったが。 この数日過ごしてみてもそれらしいことをした記憶もない。もちろん完二のように身の回りの世話をさせられたいわけではないが。 「ふーん……」 少女は陽介を上から下まで品定めするように見てきた。 陽介は居心地が悪くなり話題をそらそうとして先ほどからひっかかっていたことを尋ねた。 「えーと、あなたってタバサのご家族なんすかね?」 そう先ほど感じた既視感は目の前の少女がタバサと似ていると思ったからだ。青い髪もそうだが目もだ。 眼鏡をしていて物静かなイメージと合わないので印象に残りづらいがタバサはつり目がちなのだ。 「どうしてそう思うんだい?」 「なんとなく似てるって思ったんですけど……」 陽介の返答を聞くと彼女は何がおかしいのか笑い始めた。 「私があいつと?」 「あ、いや、雰囲気っていうかなんというか……」 更に彼女の笑いは強くなりヒステリックとすら言っていいものになった。 「王女の私が没落したあいつと?こき使われるあいつと?無表情のあいつと?トライアングルのあいつと?」 ゲラゲラと笑う少女に陽介は不快感よりも恐ろしさを感じた。 それから彼女は顔を下に向けて、はーあと息をついた。顔を上げたとき、そこから歪んだ笑みは消えていた。 だが、つき物が落ちたような表情は一瞬のことで意地の悪い笑顔を浮かべる。 そして彼女は陽介にぐっと顔を近づけてその指で陽介の胸を指す。 「いいことを教えてあげようか、使い魔。あの人形は喋らないかも知れないが私の趣味はあんたのご主人さま、従妹をいたぶることなのさ」 陽介は言語化された悪意に戸惑う。目の前の少女はどうやらずいぶんとタバサのことを毛嫌いしているらしい。 自分の主とやらになったらしい少女のことを陽助はまだよく知らない。 しかしそれでも彼女の悪口を言われるのはいいものではなかった。その悪意は自分にも向いているのだからなおさらである。 「もしかしてタバサにコンプレックスを持ってるんじゃねえのか」 その言葉は反撃の意を込めたものだった。だが実際、陽介が感じ取ったことでもある。さきほどからの少女の言動にゆがみを感じずにはいられない。 陽介の反撃は予想以上の効果を挙げたようた。 彼女の顔から意地の悪い笑みが消えた。しかしかわりにもっと強烈な感情が表れた。 眉間に深いしわが現れ目は大きく開いて、双眸は陽介を、いや陽介の向こうの何かをじっと憎憎しげににらみつけているようだ。 あ、やべ……。 陽介はその憤怒を見て言いすぎたことを早くも後悔した。 「出て行きなさい……」 底の低い声だった。 「あっ、いや、はい!」 陽介は首をがくがくとさせてうなずいた。 彼女の地雷をこれ以上踏まないようにゆっくりと歩いていこうとするとき背中から声をかけられる。 「名前は?」 「え、花村陽介っスけど……」 彼女の意図が読めないことと、先ほどよりは落ち着いた声であったので彼は思わず正直に答えてしまった。 「イザベラ」 すぐには理解できなかったがどうやら彼女の名前らしい。呼んでいいものか? 「えーとじゃあ、イザベラさん?お元気で?」 そういってイザベラの表情を窺いながら庭園を去る。 陽介が去った後、そこに残るのは当然イザベラだけであった。 「あの使い魔……」 コンプレックスを持っている――その言葉はイザベラの胸に突き刺さった。 それは間違いなく事実であった。そしてイザベラ自身も自覚していた。 彼女とは比べられないほどの魔法の才を持つあの小さな従妹。 彼女以上に王位継承者に相応しいと家臣たちから思われているあのシャルロット。 そのことを考えると胸が悪くなる。 なのになぜ?と自分に問いかける。 なぜ自分はあれほど無礼な平民を返してしまったのだろう? なぜ名前を聞き、教えたりしたのだろう? 気まぐれだ。自分はあれが何かの暇つぶしになると考えた。それだけだ。イザベラはそう考えることにした。 「ハナムラ・ヨースケ……ふふ、変な名前」 イザベラは笑った。その笑みに不思議と悪意はなかった。 その変な名前の持ち主はというと、 「ダメだ、忘れてたけどモレそう!タバサ、トイレの場所教えてくれ!」 「我慢して」 「もっ、無理だって!」 尿意に苦しんでいた。 イザベラのこの夜の行動はきまぐれであった。 しかしその気まぐれは彼女の深い嫉妬を変えていくこととなる。 前ページ次ページゼロのペルソナ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8448.html
前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 第四十四話 大切なもののために 深海怪獣 ピーター 登場 エルフの少女ルクシャナの協力を得て、才人たちはティファニアの捕らえられているガリアに向かって旅立った。 目的地はガリアの、そしてハルケギニアの最辺境の地アーハンブラ。 そこにガリア王ジョゼフの命を受けたビダーシャルとともにティファニアはいる。 再び人間に『変化』したルクシャナに案内されて、才人たちは急ぐ。 ビダーシャルが精製している心身喪失薬によってティファニアの心が奪われるまで、あと十日。 「アーハンブラ城ってのは、そんなに遠いのか?」 学院から旅立って、最初の馬車駅で才人は聞いた。アルビオンにまで旅をしたことはあるけれど、ガリアに行ったことは まだ一度もない。それはルイズも同じだったので、ガリア出身のタバサが答えた。 「遠い。わたしも行ったことはないけど、ラグドリアン湖とは正反対の位置にあるから簡単にはつけない。馬でいくなら、ざっと 見込んで最低一週間……悪くすれば、九日はかかる」 「それはまずいな。下手をしたら間に合わなくなるぞ」 思った以上に時間がかかることに、才人はいらだたしげに固いパンを食いちぎった。ガリア国内はトリステインと違い、ルイズや 才人の持っている特権は通用しないので、あまり無理に急ぐことはできそうもない。ルクシャナ一人だけならば、ジョゼフから 発行された通行証ですぐにどこでも行けるけど、ご丁寧に一人分しか有効性がなかった。 なお、シルフィードで飛んでいこうという考えはキュルケがはじめに言って、タバサに即座に却下された。 「シルフィードはまだ幼体、この人数を乗せたら一時間も飛べない。それに、これから行くのは敵地だということを忘れないで」 その警告は、ルクシャナを除く全員の胸に深く突き刺さった。 そう、ガリア王ジョゼフがこの一件の黒幕であるならば、ガリア王国全土が敵地であるということになる。いつどこで、敵襲を 受けるか想像もできない上に、ガリアの官憲も実質敵であると言える。そんなところで、飛び疲れて動けなくなったシルフィードを 抱えて立ち往生するのは自殺行為でしかない。シルフィードの翼は、万一の際に備えて温存しておくべきだった。 「結局、馬を乗り継いで行くしかないってことか」 楽はできないらしいということに、才人はため息をついた。馬で旅をするのはこれで何度目かになるけれど、地球育ちの才人に とって馬はいまだに尻が痛くなるので、どうも好きになれないのである。 しかし、ぜいたくは言ってはいられない。こうしているうちにも、ティファニアは刻一刻と最後のときへと近づいている。それに、 ただ一人で見知らぬ土地で囚われの身となっている彼女のことを思えば、尻の痛みなどは些細な問題だった。 「さて、じゃあそろそろ出発しようぜ。ルイズ、準備はいいのか?」 「問題ないわ。ここの馬を見てきたけど、どれも十分に旅に耐えられそうよ。今から行けば、明日には国境を越えられると思うわ」 「ようし、ならみんな行こうぜ!」 一行は借り入れた馬に分乗して出発した。ここからは馬車駅を経由しつつ、馬を乗り換えながらアーハンブラを目指すことになる。 街道をガリアに向かって走り、山を越えて、途中の宿場町で一泊して夜を明かした。 翌日、宿場町を出発した一行はガリアとの国境を目指して街道を南下した。 馬を疲れさせない程度に走らせ、道草を食ませて休み、途中で会った農家の親父からりんごを買って腹を満たしながら進む。 そうして国境の関所にまでやってきたときだった。関所の門の前で、一行を思いもかけない人が待っていた。 「ようやく来たね。あんまり遅いもんだから、もう置いていこうかと思ってたところだったよ」 「ミ、ミス・ロングビル! どうしてここに」 なんと、一行の前に立ちはだかるように、今はオスマン学院長の秘書としてトリスタニアでアンリエッタ姫の結婚式典に参加 しているはずのロングビルがいたのだ。彼女は驚くルイズたちを馬から下ろすと、すぐさま激しい剣幕で怒鳴りつけてきた。 「この大馬鹿トンマのガキども! ティファニアが得体のしれない連中にさらわれたっていうのに、なんで私に教えないんだい!」 「す、すみませんミス・ロングビル! あなたに心配をかけてはいけないと思ったんです!」 ロングビルはルイズの胸倉をつかんで、足が宙に浮くほど強く引き上げていた。才人が慌てて止めようとしても、「邪魔だよ!」と、 一喝されて相手にもならない。いつもオスマンのそばで地道に事務をしているときの、温厚で知的な雰囲気は微塵も残ってはいなかった。 しかし、なぜロングビルがティファニアがさらわれたことを知っているのだろうか? そのことを恐る恐るたずねると、彼女はルイズを 放り出して吐き捨てるように答えた。 「お前たちがトリステインに連れてきた、ウェストウッドの子供たちが伝えにきてくれたのさ。衛士隊に捕まりそうになりながら、 私がトリスタニアに来てるってことだけを手がかりにして、右も左もわからない土地で泣きながら私の居場所をつきとめて、 「おねえちゃんがさらわれた」って言ってきたときの、あの子たちの顔があんたたちにわかるかい!」 「あ、あの子たちが……」 ルイズたちは、修道院に預けてきた子供たちがそんなことをしていたのかと愕然とした。まさか、子供たちだけでそこまで無茶を するなどと考えてもしなかった。いや、子供たちは子供たちなりにティファニアを助けようと必死だったに違いない。 ロングビルは子供たちから知らせを受けて、大急ぎで学院に向かった。しかしそのときにはすでに一行は出発してしまった後で、 まずは学院の馬の世話係からトリスタニアに向かったことを聞き出した。ついでトリスタニアの馬車駅で、それらしい一行がガリアに 向かったということを聞いて先回りしてきたのだと語った。 「簡単に足取りがつかめた上、先回りしたとはいえ何時間も待たされたあんたらの間抜けさには感謝さえするよ。けどね、あなたらの うかつのせいでテファに万一のことがあったら、あたしはあんたたちを許さないからね。あまつさえ、自分たちだけで敵地に乗り込もう なんて身の程知らずにもほどがある。まとめて一網打尽にしてくださいって言ってるようなもんじゃない。どこまでも、自分たちだけで 片付けようなんて、うぬぼれるんじゃないよ!」 雷鳴すら子守唄に聞こえるようなロングビルの怒声に、才人、ルイズはおろかキュルケすら縮み上がった。 返す言葉は一つたりとてない。ティファニアがさらわれてしまった原因は、すべて自分たちのうかつさにある。ウェストウッド村に 向かっていたときにもっと警戒していたら、少なくともマグニアに襲われたときに真っ先に事態の異常さを疑っていたら、ティファニアが さらわれるのを防げた可能性はあったのである。 「ともかく、過ぎてしまったことはもういいわ。ここから先は、私も同行します。問題はないわね」 「そ、それはもう……あなたに協力していただけるのでしたら助かります」 少し落ち着きを取り戻したロングビルに、ルイズはほっとしながら了承の意を伝えた。実際、ロングビルが協力してくれるとなったら 非常に心強い。元盗賊、土くれのフーケとして裏社会で生きてきた経験は、これからの旅で未知の土地を渡っていく大きな助けになるだろう。 ほかの面々も異存はなく、一行はロングビルを仲間に加えて国境を越えた。 これより先はガリア王国。ルイズの虚無を狙うジョゼフ国王のお膝元。 いよいよ旅はこれからが本番だと、身構える才人たち。一人ずつ別の馬に乗り、どこから襲われてもいいように間隔をとって進む。 特に誰かが言い出したわけではないが、敵地侵入という緊張感が自然とそうさせていた。とはいえ、まだ旅は長いというのに、 これでは気が持たないだろうから、しばらくすればやめるだろう。 才人はその中で、なにげなく一行の最後尾を歩いていた。そこへ、さきほどの騒ぎをじっと見ていたルクシャナが声をかけてきた。 「あなたたちって、見てておもしろいわね。あなたたちの世界でもハーフエルフは嫌われてるはずなのに、あんなにまで必死になって 助け出そうとする人が、まだいたとは思わなかったわ」 「あんたたちエルフは、肉親や友人がさらわれても平気なのかよ?」 ロングビルや自分たちの必死さを、まるでどうでもいいことのように言うルクシャナに、才人はやや口調を荒げた。 「そんなことはないと思うわよ。あなたたちは、エルフのことを特殊な生き物と思っているようだけど、実際にはほとんど差はないって ことが体験してみてわかったわ。生物的にもハーフエルフなんてものができるとおりに、両者はかなり近い。精神文化にしたって、 形は違っても理解しあえないってことはない。こっちではほとんど知られてないようだけど、サハラでは人間とエルフの商人での 取引が普通におこなわれてるのよ」 あくまで論理的にルクシャナは答えた。しかし才人は、そんな理屈がほしいわけではない。 「そんな建前はどうでもいいんだよ。あんたはたとえば、母親や恋人が敵に連れ去られて平気な顔してられるのか?」 「怒るかもね。私だって、国に母もいるし恋人も待たせてる。恋人のほうはアリィーっていうの、ちょっと怒りっぽくて私の研究に 理解を示してくれない頭の固い男だけど、愛してるわ……ああ、あなたそれで不機嫌そうなのね。でもね、私はどうも情より先に 理屈や研究欲が出てくるタイプなのよね……」 よくないことだと友人にはよく忠告される。それはわかってるんだけどねと、ルクシャナは苦笑してみせた。 才人はそんな態度をとるルクシャナがますます不愉快に思えて、目じりにしわをよせて横目で彼女をにらんだ。 「もう一回言っとくけど、ティファニアやルイズに手を出したらただじゃおかねえからな」 「そんな怖い目をしなくたって大丈夫よ。私にだって、良識ってものはあるから。でも、どうしても私を信用できないっていうなら、 あなたも私を観察してみたらどう?」 「おれが、あんたを観察する?」 思いもかけないことを言われた才人は、うっかり面食らった間抜けな顔をさらしてしまった。 「ふふ、さっきより今の顔のほうがおもしろいわよ。話を戻すけど、あなたと私の間には大きな価値観の差があるのは疑いようも ないわね。けれど、私は学者だから自分で見て確認してものしか信用しない。あなたも私が敵か味方か、そのことは言葉よりも あなたの目で確かめて結論を出してみるのがなによりじゃないかしら?」 「いいのかよ? おれがあんたをどう見てるかは、あんたももうわかってるだろ」 「エルフも蛮人も、ひとつ絶対に共通してると断言できることがあるわ。それは、どんな人間であろうと物事を見るときには、必ず その人なりの善悪の色をつけた色眼鏡を通して判断してる。黄色い眼鏡をかけたら黄色いものは見えなくて、赤い眼鏡をかけたら 赤いものは見えない。あなたの眼鏡の色では私の色は見えないようだけど、眼鏡の色が塗り変わることはよくあるわ」 それだけ言うと、ルクシャナは自分の乗った馬の横腹を蹴って才人の馬から離れていった。 残った才人は馬の背で揺られながら、じっとルクシャナが言ったことを考えていた。 自分が色眼鏡でものを見ているなど、いままで考えたこともなかった。自分の見ている世界に、ルクシャナは映っていない。 その理由はわかる。ルイズやティファニアを人ではなく、研究対象というモノとしか興味をしめしていないあの女が許せないのだ。 今でも正直にいえばルクシャナは嫌いだ。しかし、自分の見る正義が本当にルクシャナの本質を示しているものなのだろうか? あの女は、そう思うのであれば自分を観察してみろと言った。ならば見てやろうじゃないか。最初に思ったとおり、自分の研究欲の ためであれば人を人とも思わない文字通りの人でなしか、それとも別のなにかであるのか。 才人はルクシャナの挑戦を受けてたつことを心に決めた。 ガリアに無事に入国を果たした一行は、それぞれの思いを胸に旅を続ける。 「ここがガリア王国か。ようしシェフィールドめ、矢でも鉄砲でも持ってきやがれってんだ!」 今でもどこかでこちらを見張っているかもしれないシェフィールドに向かって、才人は思いっきり叫んでやった。ガリアに自分たちが 入ったことを知れば、ティファニアを救出しにきたということは子供でもわかるだろう。でなくとも、ルイズの虚無の力を狙っているのだ。 有形無形、どんな方法で妨害してくるか知れない。 しかし、ここまで来たら、もう引き返すことはできない。一行は勇躍してガリアの領内奥深くへと足を踏み入れていった。 ところが、懸念していたジョゼフからの攻撃もなく、拍子抜けするほど平穏に旅は続いた。わずかにひやっとしたことといえば、 パトロール中のガリアの官憲に呼び止められることくらいである。それも、ロングビルやキュルケの機転で切り抜けて、怪しまれる こともなく一行は町や村を通り過ぎることができた。 「何も起きないな。もしかして、奴らティファニアをさらったことで満足して、おれたちがガリアに入ったことに気づいてないんじゃないか?」 「それは十中八九ないと思うわよ。わたしたちに一切感づかれずに見張ってて、ここぞというときに先んじてティファニアをさらったほど 抜け目ないやつらが、私たちをノーマークなんて間抜けすぎる」 なんの妨害もない旅路に、思わず口からでた楽観を、才人はルイズにぴしゃりと否定されてしまった。相手は虚無の担い手を 探すために、怪獣を使って街ひとつつぶそうとした相手、せっかく見つけたルイズという担い手をそうそうあきらめるはずはない。 「ジョゼフとかいう野郎、いったいなにを企んでるんだろう。それにしても、いったいどうやって人間が怪獣を操ってるんだろうな?」 実際、それこそが現在才人たちを悩ませている最大の謎だった。ラ・ロシュールを襲ったやつに、ウェストウッド村に現れたやつ。 ジョゼフは間違いなく怪獣を使役する術を持っていて、しかも一匹や二匹の単位ではない。普通の人間にはそんなことは絶対に 不可能、現代の地球の科学力をもってしても無理だ。 ルイズも首をかしげて、「さあ、見当もつかないわ……」と言うしかない。相手が人間であるというのに、謎だらけであるということが、 ヤプールとは違った形での不気味さを彼らに覚えさせていた。 だが、今はなによりもティファニアの救出こそが第一である。ジョゼフがなにを企んでいるにしろ、襲ってくるなら迎え撃つのみ。 謎もそのたびにしだいに解けていくだろう。 いつ襲われてもよいように、最低限の警戒だけは忘れずに一行は進む。 途中のいくつかの関所や検問を通る際も、やはり手配などはされていないらしく容易に通り抜けることができた。中にははしこく、 旅人に難癖をつけて金をせびり取ろうとする小役人のいる場所もあったけれど、適当な賄賂を渡すとあっさりと通してくれた。 どうやら、ガリアもそんなに国政がしっかりしているわけではないようである。 また、先を急ぐ上で、思ったとおりにロングビルの昔の経験が一行の助けとなった。 一日目から二日目は街道の宿場町で宿をとり、三日目からはロングビルの誘いで街道を外れて山道に入った。 「このさびしい道が、近道だっていうんですか?」 「ええ、地元の人間くらいしか知らない裏道だけど、表街道を行くより半日は早くなるはずよ」 地図にない道を知っているロングビルのおかげで、当初予定していたよりもかなりショートカットすることができた。むろん、 これは彼女が昔ガリアで『お勤め』をしていたころに身に着けた知識である。貴族に恨みを持っていたとはいえ、ティファニアと 子供たちを養うために誇りを捨てて得た経験が、こうしてティファニアを救うためにまた役立つとは、ロングビルは運命の皮肉を 感じずにはいられなかった。 しかし、ガリアに入ってから五日が過ぎたころには、裏道を通ったことで距離と時間がかなり稼げていた。 懸念していたジョゼフからの攻撃も相変わらずなく、ロングビルによると明日にはアーハンブラの地方にたどり着けるという。 ただ、砂漠に近づくにつれて宿場町なども少なくなり、人間の気配も目に見えてなくなっていった。 これより先は人間の侵入をこばむエルフの世界。そこに近づいているという実感が、一行の心臓の鼓動を高鳴らせる。 そして、五日目の夜。もうアーハンブラ城まではひとつも町や村はないという山中で日暮れを迎えた一行は、森の中に テントを張って夜営を行っていた。 「おい、焚き木を拾ってきたぞ。こんなもんでいいか?」 「ごくろうさま。そのへんに積んでおいて、もうすぐ夕食ができるってさ」 高さ三十メートルはあろうかという、杉によく似た木が天を突く森の中に、小枝を燃やす焚き火の灯りが揺れていた。 火の番をしているキュルケの隣に集めてきた木の束を置くと、才人は椅子の代わりの丸太に腰を下ろした。長旅の疲れからか、 キュルケは特に話しかけてこずに、ひざを抱いて座ったままぼんやりと焚き火の炎を眺めている。 ”きれいだな” 焚き火の灯りに照らされたキュルケの横顔を見て、才人はふとそう感じた。彼女の燃えるような赤い髪と合わさって、 一枚の絵画のようによく映える。ルイズの魅力をかわいいと表現すれば、彼女の場合は美しいという言葉こそがふさわしい。 少しの間だけ見とれると、才人はざっと周りを見渡した。少し離れたところでは、ロングビルがナイフを使って簡単な夜食を 作ってくれている。もともとティファニアに料理を教えたのは彼女だけはあるので、手際は見事なものだ。 目を遠くにやれば、タバサが見張りをしてくれている。ルイズは二件建っているテントの隣で、三つ目のテントと悪戦苦闘している。 おれが建てるから休んでろと言ったら、それくらいわたしにだってできるんだからと取り上げられてしまった。才人はそういう 負けず嫌いなところがかわいいんだがなと思ったが、このままだと寝床がゴミにされてしまいかねない。 「あいつは少しは自分の不器用さを自覚したほうがいいんだがな」 頭のよさと手先の器用さは比例しない。つい最近、ルイズが編み物が趣味であることを部屋の中で毛糸をいじっているのを 見かけて知った。とはいえ、意外と女の子らしいところもあるなと感心したのもつかの間、編み物針の中でこんがらがっている つぶれたクラゲのような物体が目に入ると、声をかけないのが優しさだなと思ってそのまま立ち去った。 ルクシャナの姿は見えない。代わりにテントのひとつからランプの明かりが漏れてくるところから、旅のあいだに見聞きしたものを 日記にまとめているのかもしれない。 夕食ができるまでには、もう少し間がありそうだ。才人は焚き火の番はキュルケにまかせて、ルイズを手伝おうかと立ち上がった。 ところが、ルイズに声をかけようとしたとき、急にきつく呼び止められた。 「ちょっと平民、待ちなさい」 「う……ルイズの、お姉さん」 思春期の少年なら、女性に声をかけられるのは歓迎ものであるが例外もある。いやな感じを半分顔に出して振り向くと、そこには 眼鏡を鈍く輝かせて、やや乱れた金髪を顔にかけた女性が、口元を鋭く結んで立っていた。 「ずいぶん迷惑そうな顔をしてくれるわね。私に声をかけられたことが、そんなに不愉快だったのかしら?」 「あっいえ! そんなことはないです。これはちょっと、立ちくらみしちゃっただけで」 エレオノールの、ねずみを前にした猫のような視線に、才人は慌てて弁解をいれた。 今回の旅で、一番意外であったのはエレオノールが同行を申し出てきたことだろう。ガリアに向かうことが決まったとき、 アルビオンのときと同じくエレオノールはトリステインに残るものとみな思った。なにせ、見知らぬ土地で身分を隠してのつらい旅と なることは明白である。ところが、彼女はいやがるどころか当たり前のように旅に同行してきたのである。 ただ、ルイズたちと違い『貴族は平民の上に立つもの』という意識が強固なエレオノールを才人は敬遠し、旅の途中もほとんど 話すことはなかった。むろん、エレオノールのほうも才人を意識的に無視してきたところがある。なのに今になって何の用かと 怪訝な表情をする才人に、エレオノールは人差し指を立てて、自分のほうへ招くしぐさをしてみせた。 「ちょっと顔を貸しなさい」 「拒否権は……ないですよね」 なにせ、あのルイズのお姉さんなのだ。逆らうだけいらない生傷が増えるだけだと黙って従った。 招かれるまま行くと、エレオノールはキャンプからやや離れた森の中で、『サイレント』の魔法を使って周辺の音を消した。 「これでいいわね。さて、平民、少し話があるからよく聞きなさい」 やはり面倒なことだなと、才人はいやな予感が当たったことに内心でげっそりした。大方、ルイズと付き合うことに関して あれこれと言ってくるのだろう。そう考えた才人は、これまでの不満もあって声を荒げた。 「その前に、平民ってぽんと呼ぶのはやめてもらえますか?」 「あら、生意気なことを言うわね。平民を平民と呼んで、なにか悪いの?」 「腹が立つんだよ。おれにだって、親父がつけてくれた名前があるんだ。あんたは自分の名前が人に勝手に変えられても平気なのかよ?」 まっこうから睨み付けてくる才人に、エレオノールは一瞬杖を取り出すしぐさをした。しかし、才人が動じないのを確認すると、 手の甲で眼鏡を押し上げて苦笑した。 「なよなよした見てくれの割には、度胸があるようね」 「ルイズと付き合ってれば、いやでもそうなっていきますって」 「なるほど、言われてみればそのとおりかもね。サイト・ヒラガだっけ? その度胸に免じて、無礼は見なかったことにするわ」 相変わらず居丈高だが、とりあえず自分の名前を覚えていてくれたことには感謝して、才人も肩の力を抜いた。 「それで、わざわざみんなから離れて、なんのお話ですか?」 「その前に、前提として尋ねておくけど、今現在ヴァリエールの家系以外で、ルイズともっとも親しい人間はあなたと思っていいのね?」 「は?」 突然の斜め上からの質問に、意表を突かれた才人は目をしばたたかせた。しかし、エレオノールはまじめな顔で問い詰めてくる。 よくわからないけれど、一応自分とルイズは恋人宣言もしてしまっている。そのことで文句をつけてくるにしても、いいえといえば それを口実に攻めてくるだろう。才人は「はい」と答えた。 「そう……ただの平民のくせして……いえ、そのことはまた別の機会で話しましょう。もう一つ聞くけど、旅に出る前にルクシャナが 私にアカデミーの研究資料を持ってきたのを覚えてる?」 「はい、それがなに……あっ!」 「思い出したようね。そう、あのとき彼女が持ってきたものは虚無に関連するもの。ルクシャナがエルフだったどさくさで、すっかり みんな忘れてるようだけど、この資料にはアカデミーが虚無に関して調べた情報の詳細が記されてるわ」 エレオノールは懐から、羊皮紙五枚ほどのレポート用紙を取り出した。才人から見える裏側には、王立アカデミー発行であることを 証明する印がついている。彼女はそれを手の中で扇のようにあおぐと、才人に差し出した。しかし、才人がトリステインの文字を 読めないために断ると、ため息をついて仕方無げに説明した。 「本当はアカデミーの機密事項なんだけどね。トリスタニアの近郊で、先日古代の遺跡が発掘されたの」 「はい」 古代遺跡と聞いて、才人は先日のアボラス・バニラの事件のことを思い出した。心の中で、なるほどミイラ人間やドドンゴが 眠っていたあそこなら、その可能性はあると思っていた。ただし、コルベールから存在自体は聞いていたものの、さすがに アカデミーに口を出すのは怖かったのでそのままにしていた。 エレオノールは遺跡の発見にいたる経緯や、発掘された遺物について簡単に説明し、その遺跡が始祖ブリミルの生きた 六千年前に建造されたもので間違いないと告げた。なぜなら、遺跡に残されていた碑文を解読した結果、そこにはまぎれもなく 始祖ブリミルの名が刻まれており、彼がそこで戦った記録、すなわち虚無のことも残されていたのだ。 だが、エレオノールはそこでいったん説明を切った。そして、ごくりとつばを飲み、神妙な顔になった才人に、レポートを片手に 問いかけた。 「このことはまだルイズには言ってないわ。どういう意味だか、わかる?」 「なにか、危険なことが記されていたとか……?」 才人の心音が少しずつ高くなっていく。エレオノールは才人の答えにはっきりとうなづくと、自分自身にも言い聞かせるように レポートの一枚目をめくった。 「実を言うと、あまりにも非常識な内容なんで、私自身も信じきっているわけじゃないわ。けれど、虚無の担い手になってしまった ルイズにはいつか伝えなければいけないし、知ることになるかもしれない。そのときに大きく傷ついて、とまどうかもしれない あの子を支えてあげられるのは、ルイズとつねにいっしょにいるあなたしかいないのよ」 だから、ルイズよりも先にあなたに虚無の秘密を伝える。心の準備を整えていてもらうためにね。 エレオノールは才人の決意をうながすと、ヴァレリーが解読した遺跡の碑文を読み上げ始めた。 それは、六千年前の戦争のこと。ハルケギニアからサハラにいたるまで、世界のすべてとそこに住む生き物を巻き込んだ戦いの記録。 かつて始祖の祈祷書から見せられたビジョンのとおりの歴史が、エレオノールの口から語られた。 そして、悪魔の光の出現によって混迷と化していく世界。あのビジョンや、ミイラに見せられた記憶では語られなかった部分に 話が及んできた。 「ここから先が本題よ。覚悟して聞きなさい」 「はいっ」 やはり、見せられなかった空白の場所にこそ重要な何かが起きたのだ。才人は無意識に左胸に手のひらをあて、鼓動の 高鳴りを抑えようと試みた。ミイラ人間に見せられた記憶によれば、追い詰められたブリミルはそこで禁じ手とされていた、 ある方法をとることを選んだはずだ。エレオノールの読むレポートも、すでに最後の一枚になっている。彼女は、そこに記された 未知の歴史、すなわち始祖ブリミルと虚無の秘密に迫る記録を、自らも一度呼吸を整えてから一気に読み上げた。 刹那……最大まで高鳴っていた才人の鼓動は、心停止の一歩手前まで下降させられた。 「そんな……バカな!」 吐き気を抑え、ようやく搾り出した言葉は、今聞いたことを全否定する悲鳴であった。エレオノールもあえてそれを止めようとはしない。 それほどまでに、エレオノールが語った空白の時間の記録は、才人にとってもエレオノールにとっても衝撃的かつ、信じがたいものであった。 ブリミルが選んだ禁断の虚無の最終魔法と、それが招いた破局の運命。 「こんなのでたらめだ! ありっこない。きっと解読が間違ってるんだ」 「それは絶対にないわよ。これを解読したヴァレリーは、アカデミーでも三本の指に入る才女。彼女の優秀さは、私が誇りにかけて 保障する。これは、間違いなく碑文の真実そのものよ」 才人の否定をエレオノールは否定した。アカデミーには選りすぐりの優秀な学者が揃っているが、ヴァレリーほど才覚のあるものは 自分も含めてほとんどいない。本業はポーション開発であっても、古代の書物を読み解く必要から語学の知識にも精通している。 ただ、そんな説明をされなくても才人にも碑文の正しさはわかっていた。空白の期間にいたるまでの内容は、自分たちが見た ビジョンのものと完全に一致する。空白の期間だけが間違っているなど、そんな都合のいいことはありえない。しかし、そうして 一種の現実逃避に向かっても仕方がないだけの衝撃さが、碑文の内容にはあった。 「記録はここまでで、あとは遺跡の崩落で完全に破壊されて再生は不可能だったそうよ。もし、世界に再び危機が迫っているなら この歴史が再現される可能性もあるわ。いえ、むしろ再現させるために虚無が目覚め始めたと考えるほうが理にかなっているわ」 「ありえねえよ。ブリミルが、そんなとんでもねえことをしようとしたなんて……それで、ガンダールヴと……」 才人は最後の部分を言葉にしようとしたが、それが音に変わることはなかった。 始祖ブリミル……ビジョンで見たのは、小柄などこにでもいそうな青年だった。ガンダールヴ……名前は知らないけれど、 エルフの美しい女性であったことを覚えている。凶暴な怪獣軍団を相手に力を合わせて戦っていた。それこそ、現代の自分と ルイズのように。なのに、碑文はビジョンからはまったく想像もできないような記録を残していた。 「まさか、その禁じ手の魔法が、そこまで恐ろしいものだったなんて……いや、まてよ!」 才人はそこで、碑文の内容と自分たちの見たビジョンの内容の矛盾に気がついた。 「どうしたの?」 「あっ、いえなんでも」 祈祷書やミイラのビジョンのことはエレオノールには伝えていないので、才人はごまかした。 だが、心中では気づいてしまった大きすぎる矛盾のことが離れない。碑文の内容が正しいとすれば、この時点で始祖ブリミルたちの 歴史は終わってしまっているはずだ。なのに、ミイラ人間はブリミルとガンダールヴが、”その後”も仲間として戦っている場所に 居合わせている。これはいったいどういうことだ? 決定的に矛盾する二つの出来事が、ともに真実だとすれば、両者をつなぐ間にはさらに何があったのだ? 空白の歴史の、 さらに空白の期間に、すべてを解き明かす答えがあるような気がする。才人は考えてみたものの、それこそカラスを孔雀に変える ような突拍子もない話である。とても想像の及ぶ領域ではなかった。 「あなた、なにか心当たりがあるなら言いなさいよ」 「違いますよ。あんまりのことでパニくってて、頭の中が整理つかないだけです。でも、ひとつだけ確信を持てることはあります」 「聞くわ」 「お姉さんは、歴史が再現されるかもって言ったけど、それは違うと思う。わざわざいろんな形で未来に記録を残したってことは、 自分たちと同じ道を子孫に歩んでほしくなかったからじゃないですか」 歴史が再現されるかもと聞かされたときから、才人は絶対にそうはさせるかと決意していた。世界の危機が訪れたとき、 ルイズが担い手になったのが虚無に選ばれた運命だったとしても、そんなものに黙って従ってやる義理はない。それに、 ブリミルだって、子孫に悲しい思いをさせたくないから、始祖の祈祷書にあれだけ念入りな封印をしていたのだろう。 「直接会ったことはないけど、ブリミルって人はいい人だったと思いますよ。ルイズが読んだ祈祷書の前文じゃ、子孫に使命を たくさなきゃならないすまなさがにじみ出てきてました。それに、過去がどうあれ、おれはなにがあってもルイズを傷つけるような ことはしない。それだけは間違いねえ」 エレオノールは、才人の決意を聞き届けると、自分も不安を吐き出すようにため息をついた。そして、レポートを懐にしまうと、 才人に告げたのだ。 「わかったわ。あなた、ほんとにルイズのことが好きなのね」 「はい」 「即答したわね。由緒あるヴァリエールの娘にたかが平民の男が……ルイズにしたって、こんなのの……まあいいわ。私が どうこう言おうと考えを変える気はないんでしょう。その頑固さだけは認めてあげるわ。死ぬ気でルイズを守りなさいよ」 「はいっ!」 再び即答した才人に、エレオノールは苦笑した。口の中で、才人に聞こえないように「どうしてこの程度の男が社交界には いないのよ」とつぶやく。と、そのとき木の陰ごしに、ルイズがまわりになにやら叫びながら歩いてくるのが見えた。どうやら、 長話がすぎて探しに来たらしい。エレオノールは今日はここまでねと、才人の額を指先で鋭く指すと宣告した。 「ただ、勘違いするんじゃないわよ。ものには優先順位というものがあって、今回はルイズの安全が最優先されただけ。私は そこらの平民がラ・ヴァリエールの娘をたぶらかしたなんて、天地がひっくり返っても許すつもりはありませんからね」 サイレントが解除され、ルイズの自分たちの呼ぶ声が耳に入ってくる。エレオノールはきびすを返し、才人はごくりとつばを飲み、 エレオノールの剣幕の恐ろしさに戦慄しながら後を追った。 キャンプに戻り、夕食が過ぎ、夜はふけていく。 「明日はいよいよアーハンブラよ。交代で見張りを立てて、今日は早く寝ましょう」 ロングビルの提言で、腹を満たした一行は睡魔に従って床に入った。キュルケとルクシャナのテントから灯りが消え、 ロングビルにタバサが眠るテントも暗くなる。そして、ルイズと才人の崩れかけのテントから灯が消えると、あたりは獣避けの 焚き火の音を残して静寂に包まれた。 見張りは二時間交代で、まずはエレオノールが預かって、次に才人が代わった。 何事もなく時間は過ぎて、森の中は時間が停止したかのように変わらない。 才人はやがて、焚き火に薪をくべるだけの単純作業にも飽きてまどろんでくる。肩を叩かれて、交代の時間を告げられたときには 半分眠ってしまっていた。 「交代」 「わっ! タバサか……いけねえ居眠りしてたぜ」 「疲れてる……もう寝たほうがいい」 「そうするか……じゃあ悪いが頼む……ふわぁぁ……」 大きなあくびをすると、才人はテントの中へと帰っていった。 残ったタバサは、焚き火にまきをくべると、さっきまで才人が座っていた丸太の上に腰を下ろした。 それからしばらく、タバサは人形のようにじっと動かず、揺れる炎を見つめていた。 だが、一時間ほど過ぎたころ、タバサは突然立ち上がるとキャンプを後にした。 森の奥へと足を踏み入れ、油断なく周りを警戒する。 すると……森の闇の中から、枯れ葉を踏みつける乾いた音が少しずつ近づいてきた。 「こんばんわ、お嬢さん。こんな夜更けに女の子が一人で出歩くなんて、無用心じゃない」 現れた人影は、言葉の内容とは裏腹に、せせら笑うような口調でタバサに言った。 夜の森の中で、口元だけが浮かんでいるような黒いローブをまとった女は、いまや見慣れた姿になってしまった。 シェフィールドは、タバサの敵意に満ちた視線をなんでもないことのように近づいてくると、フードをずらしてタバサに目元までを見せた。 「さすが、北花壇騎士髄一の使い手と呼ばれるだけのことはあるね。私の気配に気づくなんて」 「……最初から、ずっと見張ってたくせに」 「あら、やっぱり気がついていたの。それは失礼したわね。ふふふ……」 シェフィールドは、タバサの指摘にもまるで動じた様子を見せない。 「いつでも襲撃してこれたのに、どうして放置しておいたの?」 「ふふ、あのお方はお優しいお方だからね。すぐに希望を絶ってはかわいそうだと思われたのよ。あなたのことも、ちゃんと褒めて おいでだったわよ。見張っているのには気づいているはずなのに、それを誰にも言わずに黙ってたんだから」 優しげな声で、まるで珍しい虫を見つけてきた幼児を褒めるように言うシェフィールドを、タバサは眼鏡の奥の瞳を怒りで燃え 上がらせて睨み上げる。しかし、シェフィールドはタバサから決して手を出されないと確信しているように、薄ら笑いをやめない。 「でもね。そろそろ近づけるのも限界、あきらめてもらわなきゃいけないのよ。けど、下手に武力を使って虚無を損なっては大変だわ。 そこで、あなたにもうひと働きしてもらうことにしたってわけ」 シェフィールドは、タバサに赤と青の液体の入った二つの小瓶を手渡した。 「明日の朝食に、虚無の娘とエルフの食べるぶんに赤い薬を混ぜなさい。ほかの連中には青い薬よ。あなたの腕前なら、 気づかれずにそれくらいできるでしょう?」 「なんの薬?」 「赤い薬は、単なる睡眠薬よ。ぐっすりと眠らせて、あとは簡単に主のもとにご招待できるってわけ」 「青い薬は……?」 尋ねられたシェフィールドの瞳が、死に掛けた小動物を見つけた肉食獣のような光を宿した。 「虚無と先住の力以外を、あのお方は所望しておられないわ。不要な駒など、ゲームを楽しむうえで邪魔にしかならないでしょう」 タバサの喉から、声にならない悲鳴が漏れた。体中の血液が沸騰し、歯が自らをも砕くのではないかと思うくらいに強く噛み締められる。 あらかじめ聞く覚悟をしていなかったら、間違いなく激発して魔法を放っていただろう。シェフィールドは、そんなタバサの反応を 楽しむように、彼女の耳元でゆっくりと最後の宣告をした。 「まさか、天下の北花壇騎士さまが、知り合いだからって私情をはさんだりしないわよね? わかってるわよね。この任務に 成功すれば、母親の心を取り戻せるのよ……でも、もし飼い犬が主人に逆らうようなことがあれば……オルレアン公邸で ふせってる母君の身に、なにが起こっても知らないわよ?」 シェフィールドの姿は闇に溶け込むように消えていき、あとには身動き一つできずに立ち尽くしているタバサ一人が残された。 まるで、すべてが夢であったかのような現実感のない時間だった……しかし、手のひらの中に残っている二つの小瓶の冷たさが、 確かに現実のものであると主張してくる。タバサは、それを思い切り地面に叩きつけたい欲求に駆られたが、どうしても腕を 振り下ろすことができずに、一人でうずくまって泣いた。 時間は平等に流れ、星空はハルケギニアのすべてを見下ろしている。住民が消え、沈黙の街と化したアーハンブラも それは例外ではない。 かつて、人間とエルフの血みどろの死闘の場となった古城には、砂漠の物悲しい風が吹きつける。エルフの寿命すら遠く 及ばないほど、この地の歴史を見守ってきた城は、生き物たちの果てしない愚行をあざ笑うかのように、千年この地にあり続けてきた。 しかし、この夜だけはアーハンブラは愚かしい歴史を忘れた、安らいだ眠りに身を任せていた。 ”神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾” ”神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛” ”神の頭脳はミョズニトニルン。知恵の塊、神の本” ”そして、最後にもうひとり……記すことさえはばかれる……” ”四人のしもべを従えて、我はこの地にやってきた……” 優しげなハープの音色とともに、人間とエルフの両方の血を引く娘の歌声が星空に吸い込まれていく。 城の中庭にある池のほとりに腰を下ろしたティファニアは、うっすらと涙を流しながらハープを奏でていた。 母の故郷、エルフの地は目の前だというのに、その距離はアルビオンよりも遠い。 幼い日、忘却の魔法とともに知ったこの歌は、意味はわからなくても、ティファニアを懐かしい感じのする世界へといざなってくれた。 しかし今は、懐かしさよりも同族に心を奪われようとしている悲しさが心を満たしてくる。 ビダーシャルは、明日には私の連れが来る。薬の完成が早まるかもしれんが、悪く思わないでくれと言っていた。 あと何回、この星空を見上げることができるのだろうか…… 悲しくも美しい音色を聞きながら、今の彼女の唯一の友達は池の中から顔だけを覗かせて見守っていた。 続く 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
https://w.atwiki.jp/cmjwgj/pages/64.html
JENA! (1996) 2014 (3) A Table Top Warrior...Jena(COA)状況その2「Battle of Saalfeld」 A Table Top Warrior...Jena(COA)のコマも切断 A Table Top Warrior...Clash of Arms Games”Jena”の翻訳開始 Joan of Arc's Victory 1429 AD (2012) 2014 (1) 閑人工房...Joan of Arcs Victory GCS 2014/03/23 Julius Caesar (2010) 2016 (2) ターン制ストラテジーが好き...http //apz.blog100.fc2.com/blog-entry-55.html 長岡ポーカー&ブリッツ第78回ウォーゲーム例会記録...神々の海 2014 (2) TROOPERS...(COL)Julius Caesar:“まーいわゆるひとつのX.T.R.ですね!…” YSGA例会報告...ガリアの空に風荒れて...(ワーシントン)カエサルのガリア戦争と続けて(Col)ユリウス・カエサル June '44 (2008) 2015 (1) 化夢宇留仁のボードゲームプレイ記録...JUNE-AUGUST '44 2014 (3) YSGA例会報告...2013.07.28(日) YSGA追浜ゲーム集会の様子その8(DDH/CMJ#96)June August'44キャンペーンその❹) YSGA例会報告...2013.07.28(日) YSGA追浜ゲーム集会の様子その7(DDH/CMJ#96)June August'44キャンペーンその❸) YSGA例会報告...2013.07.28(日) YSGA追浜ゲーム集会の様子その6(DDH/CMJ#96)June August'44キャンペーンその❷) YSGA例会報告...2013.07.28(日) YSGA追浜ゲーム集会の様子その5(DDH/CMJ#96)June August'44キャンペーンその❶) マイケルの戦いはまだまだ続く...DDH/CMJ「JUNE - AUGUST '44」を対戦 Jutland (1967) 2016 (2) 千葉会(Chiba Club)...『猿遊会の一日』 千葉会(Chiba Club)...『本日のお料理:ジュトランド』
https://w.atwiki.jp/6war/pages/1234.html
概要 シーア海戦とは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ693年11月、ベルザフィリス国軍とアル国軍の間に起きた海戦である。 戦闘に至るまでの背景 ▲693年11月における勢力図 アル国、バルド国、シャリアル国によるルーディア包囲網という苦境の中、ベルザフィリス国は、ヴァーグリア国との同盟に向かって動き始めていた。 ヴァーグリア国とルーディアといえば、かつて先王ディアルと共にシーザルス国に居た時、彼女が制止したのも聞かずディアルは出兵し、アニスの戦いで敗北した経緯がある。 思えばその事があったからこそベルザフィリス国は生まれたのだが、そのヴァーグリア国に国主ルーディア自らが同盟を申し込む為に赴くのも、奇妙な縁としか言いようがなかった。 ルーディアは最低限の共を連れ、国主不在を悟らせない様に細心の注意を払って山道を進み、10月16日にヴァーグリア国に到着。 国主から外交における全ての責任を託されたヴァーグリア国軍師ガリアがルーディアと面会する。 この時の会見は、ヴァーグリア国の資料に残っている。 最初にルーディアは、言葉を選びながら、乱世の終結に自らが乗り出す事、その邪魔をしないでほしいことを告げようとする。 しかし、ガリアは突如剣を抜くと、ルーディアの喉元に突きつけ「北を平定するには、南の我らを封じ込めたいのだろう、我らは中途半端な弁論より正面から牙を剥く奴に好意を持つ」とルーディアに迫った。 これに覚悟を決めた独眼竜は、剣を突きつけられたまま堂々と「天下は私達が統一します、南をあなた達が治めてください」と、ガリアに言い返した。 包囲網によって、自分たちの未来すらわからないこの段階で、ルーディアは、いずれベルザフィリス国とヴァーグリア国で南北それぞれの覇者となり、不戦条約をもってこの大陸に平和をもたらそうと提案したのだ。 この、大胆不敵な未来予想図に、しばらく沈黙を守ったガリアだったが、笑いながら剣を納め、ベルザフィリス国とヴァーグリア国の同盟に応じた。 この頃、ヴァーグリア周囲の国は、戦乱とまではいかないまでも、各地で火種を抱えていた。 それらの国に使者を送り、多少強引な介入ではあったが、ヴァーグリア国は各地の戦いを鎮静化させていく。 一方で、帰国したルーディアとベルザフィリス国も、本格的に包囲網との戦いに取り掛かることとなる。 アル国が誇るルッダリザ艦隊の脅威もあり、ベルザフィリス国でも急ぎ艦隊が再編され、ムーン艦隊(旗艦ガルーダ)、ザルド艦隊(旗艦ワイバーン)が戦力の中心となっていたが、元々アル国から奪取した艦艇と、急ごしらえで作られた艦艇に対して、アル国は最強を誇るルッダリザ艦隊(旗艦ドラゴンファントム)の他にもサイリオン艦隊(旗艦グリフォン)、ガイナルス艦隊(旗艦サーペント)と、数でも勝っていた。 だが、アル国の綻びが僅かずつだが形となって現れる。 艦隊司令として召集されたフェザリアードは、各地に散っていた自らの子飼いの将ゼス、セルシア、ザーブを呼び寄せて万全の態勢をとるが、彼らが乗艦するのは、ルッダリザ艦隊ではなく、サイリオン艦隊であった。 無敵の艦隊に最強の海将をつければ、ベルザフィリス国との海戦に負ける可能性は限りなく低かったが、アル国首脳部は艦隊の性能だけで勝利できると確信し、政変に批判的だったフェザリアードではなく、ザグルスの親族であり、自分達の息のかかったネイゲイ将軍にルッダリザ艦隊の指揮権を与えていた。 なお、ここから始まる一連の海戦で、ベルザフィリス国艦隊の総指揮官はイェーガが執り行っている。 これはアルディア著の正伝蜉蝣戦記にも記されているが、後世になってから創作された蜉蝣戦記の外伝「鳴鳳の海将」が正史と混同されるほど有名になる。 この物語では、ヒサヴェヌアが艦隊の総指揮をとり、イェーガは副官として登場し、ヒサヴェヌアと生死を共にする一兵卒ライドル、エザグス、オリア、バイズ、エレーナ、リィザが登場人物として各地で活躍する。 しかし今回は正史に重きを置き、彼らの存在はエンパイアコスモスの戦いの最後に少しだけ触れることとする。 両軍の戦力 攻撃側 守備側 アル国軍 軍勢 ベルザフィリス国軍 総兵力13900 兵力 総兵力11700 ネイゲイ 総指揮 イェーガ 軍師 主要参戦者 フェザリアード ゼス ザーブ セルシア ネイゲイ イェーガ ベイン 戦闘経緯 11月22日、シーア海域においてベルザフィリス国とアル国の艦隊が激突。 この時、ベルザフィリス国が取った戦法は、ムーン艦隊を正面からルッダリザ艦隊にぶつけ、敵が火力に奢って正面から押し込んだところを誘い込み、側面から伏せておいたベインが率いる機動力に優れるザルド艦隊に突撃させ三方向から包囲殲滅するというものであった。 ネイゲイは、権力者に媚びる才能には長けていたが、戦場での指揮は素人以下ともいえた。 自分の派閥で手柄を独占するべく海戦の専門家たちを次々と左遷させ、自身の部下を重要な場所に就けていた。 その為、イェーガの罠を見破ることもなく、艦隊の運用方法も出鱈目に隊列を乱しながらムーン艦隊を攻撃し、イェーガの思惑通り包囲されることとなる。 こうして作戦は的中し、ルッダリザ艦隊を完全に包囲し、沈黙させたかに思えたが、フェザリアードには読まれていた。 彼は自らのサイリオン艦隊を決戦から遠ざけ、戦局が膠着した頃を見計らってベルザフィリス国軍を側面から攻撃し、まずはザルド艦隊の右翼部分を削る。 ルッダリザ艦隊をフェザリアードが指揮していると思い込んでいたベルザフィリス国軍は、完全に裏をかかれた。 ここでネイゲイが、フェザリアードと呼応して動けば、ベルザフィリス国艦隊は海の藻屑となっていたが、混乱したネイゲイは、副将の進言を無視して、自分だけでも戦場から脱出しようと艦列を乱しながら撤退していく。 これにより、混戦に持ち込んだベルザフィリス国軍は、アル国のゼスの乗艦を撃墜することに成功するが、それ以上の攻勢は不可能となり、被害を出しながらも後退していく。 戦いの結末 戦力で劣っていたベルザフィリス国の、一か八かの決戦は、戦場においては敗北で終わった。 だが、ネイゲイは、このまま進軍を続ければ、フェザリアードに全ての戦功を奪われると焦り、全艦隊を引き返させエンパイアコスモス要塞へ向かい、艦隊を再編成させる。 彼の愚行が、奇跡の逆転への伏線となっていき、海戦の決着は、エンパイアコスモスの戦いへとなだれ込むこととなる。
https://w.atwiki.jp/nitendo/pages/9313.html
このページでは【ドラガリアロスト】のキャラクター、 タロウ を解説する。 他の同名キャラクターは【タロウ】を参照。 プロフィール 作品別 元ネタ推測 コメント プロフィール タロウ imageプラグインエラー ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (1.png) 他言語 種族 【ヒューマン】 性別 男 職業 【侍】 出身 ヒノモト 趣味 犬の散歩 特技 けん玉 好き 母の味噌汁 苦手 わさび 声優 斉藤壮馬 初登場 【ドラガリアロスト】 臆病者の駆け出し【侍】。 とても駆け出しとは思えない上質な鎧は、父親から譲り受けたもの。 大切にするあまり、他人に触れられることを拒む。 まだ幼く実戦経験もないが、立身出世の志を高く持つ。 作品別 【ドラガリアロスト】 性能 二つ名 初心侍 (ルーキーサムライ) ★ 属性 武器 タイプ HP 攻撃 3 闇 刀 攻撃 701 495 入手 実装日 レジェンド召喚 2018/09/27 スキル 影斬りの太刀(シェア可能/5) Lv3 前方の敵に闇属性のダメージを与える。 闇払いの太刀 Lv2 周囲の敵に闇属性のダメージを与え、「切り傷」状態にする。 EXアビリティ 攻撃力+10% パーティ全員の攻撃力が10%アップする。 リンクEXアビリティ 【闇】HP+7% パーティ全員が以下のアビリティを得る。キャラが闇属性ならHPが7%アップする。 アビリティ 背水の陣・防+50% HP30%以下になったとき、【15秒間、防御力が50%アップするバフ】が発動。この効果は1クエスト中1回まで発動する。 麻痺耐性+50% 「麻痺」状態になる確率が50%ダウンする。 麻痺耐性+25% 「麻痺」状態になる確率が25%ダウンする。 引用 ドラガリアロストDB【ドラガリDB】 サービス初期から実装されている低レアキャラ。 ごく普通のスキルアタッカー。 2020/09/24から配信されたVer.2.0.0以降はスキル2種類両方の威力が上がり、「闇払いの太刀」に切り傷付与が追加された。 まだヒノモトの名が出る前に実装されたキャラのため、キャラストーリーや説明文では出身地の名前が伏せられているが、キャッスルストーリー「挑戦〜初日の出への情熱〜」で正式にヒノモト出身である事が明かされた。 元ネタ推測 デザインは『ナイツオブグローリー』のジョブ「サムライ(男)」をアレンジしたものと思われる。 コメント 名前 全てのコメントを見る?
https://w.atwiki.jp/r2tw/pages/105.html
他の勢力 ネルウィ 「勇気。厳粛。伝統。」 背景 ケルト人とゲルマン人の中間のような存在であるネルウィ族はガリア北部に居住するベルガエ人であり、最も凶猛にして恐れを知らず、その剽悍さは近隣部族に鳴り響いています。 紀元前57年のサビス川の戦いではカエサルの軍団を奇襲し、敗北寸前にまで追い詰めました。戦いに参加した60,000人ものネルウィ族の戦士は残り500人になるまで抵抗を止めなかったのです。彼らは勇敢であることを規範の中心とし、その外貌と評判はスパルタ人に似ていました。彼らは全ての贅沢(特に酒類)を忌避し、それらは精神と肉体を弱める物として退けました。その代わりに彼らの起源であるケルト人とゲルマン人の伝統を尊重し、英雄である戦士を崇拝しました。そのため彼らは並外れた武勇と強力な統率力のある人間を王と族長に選んでいました。 ネルウィ族は戦いにおいて個人的な技能と勇敢さに重点を置き、投槍を除いた投射武器と騎兵を用いることは稀でした。それよりも待ち伏せを好み、敵が現れるや否や稲津のように突進して敵に接近戦を挑みました。 キャンペーンの開始時、ネルウィはアトレバテス族やメディオマトリキ族のような近隣部族と強い信頼関係があり、それだけでなく遠くブリタニアに居住するベルガエ人とも連絡網を構築することができます。従って彼らはガリアの中心部へと侵攻しつつ同盟者との結びつきを強化できる絶好の位置にあると言えます。そして彼らの恐るべき戦い振りと技能により、ネルウィ族は南方あるいは東方に領域を拡大する大きな可能性を持ちます。 恐れ知らずの戦士であるネルウィ族は待ち伏せに熟達しており、自領での戦闘では士気が向上します。しかし質素を旨とした生活様式のため商業や工業から得られる収入は非常に低くなるでしょう。