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海に自ら両足を浸すと、冷たい水が足と頭を冷やしてくれた。 落ち着いてくるにつれて、自分への嫌悪感がどんどんと募ってくる。 ――あの時。 烈しい劣情に駆られて、俺はフシギソウをその場へと押し倒した。先ほど彼女が蔓でそうしたように、その両手を俺の片手で押えこんで。 ベッドにおいてあったリュックが落ちて、中身をぶちまけるのも気にせず、そのまま覆いかぶさろうとして。 リュックの中から落ちた、小さなバッジが目に入ったのだ。 その瞬間、俺の中に記憶されていた恐怖と嫌悪がよみがえり、そして俺自身にそれは向かってきた。 「ご、御主人さま…」 「フシギソウ…ゴメン、俺っ!!」 そうして、センターを飛び出してがむしゃらに走っているうちに、この海岸までたどり着いたわけだ。 (今の俺は、アイツらと何が違うって言うんだ) 右の手に握ったままのバッジを眺める。アルファベットの「R」をモチーフにしたデザインの赤い金属。 これは俺にとっての過去であり、形見であり、呪縛であり、恐怖であり、現在を象徴するものだ。 * * * 俺が旅を始めたのはマサラタウンの家からだが、生まれたときからそこにいたわけではない。 なぜかと言えば、マサラに住む俺の家族は、血のつながった家族では無いからだ。俺が5歳の時に起きた事件の後、俺はあの家に引き取られた。 俺の本当の両親は、それはもう酷い奴らだった。 夫婦揃ってロケット団幹部であり、悪事を働いて萌えもんを捕らえ、あるときは売りさばき、 あるときは調教して悪事に加担させ、従わないモノには暴行を加えたり、ひどいには手下を呼んで犯させるなど、本当に下劣極まりない両親だった。 いや、両親だけではないか。6歳年上の俺の兄も、そのうち両親と同じようになっていった。 たぶん、俺もあのまま育っていたら同じようになっていたのかもしれない。いや、確実にそうなっていた。 だが、実際には俺はそうならなかった。俺はずっと、両親や兄の行動に疑問を持ち続けていたのだ。 そうならなかった理由もあったのだろうけれど、今の俺は覚えてはいない。 そして、俺が5歳の誕生日を迎えて間もない時、ニビの郊外にあった俺の生家は、警察に襲撃された。 もちろん俺の家族は逃げだした。俺とたくさんの萌えもんを閉じ込めた屋敷に火をつけてから。 炎に巻かれる屋敷の中に、ギャラドスと共に飛び込んできた一人のトレーナーがいた。後に俺の義父となるその男は、 屋敷中を食い荒らす炎を恐れることもなく、まだ小さかった俺を助け出してくれたのだ。 その日、屋敷から救出された生き物は俺だけだったと警察から聞かされた。俺の家族は、罪もない多数の萌えもん達を焼き殺したのだ。 その後…俺の処遇に関してはいろいろ揉めたらしい。まぁ巨大犯罪組織の幹部の子供だもんな。 が、警察に多大な貸しを作っている養父が俺を引きとると言ってくれたおかげで、俺はいまこうして旅ができる訳だ。 右手に握ったバッジを見やる。このバッジは、養父に発見されていたときに俺が持っていたものらしい。 俺は何度か捨てようとしたのだけれど、養父いわく「勿体ないだろ、とっとけよ」とのことだ。 …まぁ、シルフカンパニー潜入の時には役に立ったんだけどな。 これを見るたびに、両親や兄の怒号や狂った笑い声、そして被害者の悲鳴が思い返されてくる。 * * * 「…帰ろう…」 所詮、俺はあいつらの子であり、弟なのだ。そう考えると益々嫌な気分になるので、とにかく考えないことにする。 とにかくセンターに戻って、フシギソウに謝ろう。そうすれば、きっと今までどおりに戻るはずだ。 そう考えて海に背を向けると、そこには見慣れた姿が立っていた。 「ま、ますたぁ…」 「ロコン…何でここに?」 そう尋ねると、ロコンは今にも泣き出しそうな顔をしながらこっちに駆け寄ってきた。 「ますたーが、いなくなった、って、きいて、みんなで、さがしてたん、です」 「そっか。ごめんな、心配かけて」 「全くだ。何があったのかは知らないが、私の念話まで拒絶してくるとは思わなかったよ」 「フーディン…」 「その様子だと、解決とはいかなくても落ち着いたみたいだね。戻ろうか」 「ああ…悪かった」 フーディンにも謝罪すると、彼女は若干驚いたように「何も謝らなくても」とつぶやいた。 ロコンと俺に触れて、フーディンがテレポートを発動する。目を開けば、そこはもうセキチクセンターだった。 * * * 「あ…御主人さま」 「ただいま、フシギソウ…その、さっきはごめんな」 「う、うん、気にしないで!あれはボクも悪かったから…」 フシギソウは部屋にいた。浴衣は脱いで、いつもの服に戻っている。 ほどなくして、ピカチュウとシャワーズも帰ってきた。話もそこそこに、それぞれボールに戻って眠りについた。 4日目 - シャワーズ - 今日はみんなと離れて、一人サファリゾーンへ向かった。 図鑑のデータ集めもあるが、もう一度自分自身とひとりで向き合ってみたかったのだ。 ゆっくりとジャングルのようなパークの中を歩きながら、考える。 (俺、これからどうしたらいいんだろう…) 分からない。風呂に飛び込んできたりするのは、みんなに頼んでやめてもらえばいい。 けれど、それで問題は解決するわけじゃない。 もし、またあんな衝動が突然襲い掛かってきたら? 俺はそれが何よりも怖い。みんなを傷つけてしまうのが、そのせいでみんなが俺から離れて行くのが怖い。 答えの出ないまま、時間切れのアナウンスが鳴った。 「…もう一回やるか」 図鑑のデータはほとんど集められなかった。お金に余裕もあるし、もう一回や二回くらい構わないだろう。 * * * 「ニドリーノ・ミニリュウ・ニドリーナ・ガルーラ・タマタマ…それに『なみのり』と『かいりき』か。 まぁ…元は十分に取れたな。なみのりはシャワーズにお願いするとして…かいりきは誰に頼むか」 あと一人連れて行けるわけだから、そいつに頼むべきか。もしくはフシギソウかピカチュウにでも渡すか。 とにかく、もう戻らなくては。答えは出なかったが、それはそれで仕方のないことかもしれない。 ほどなくしてセンターにつくと、入口の前で見慣れたシルエットが俺を待っていた。 「フーディン」 「やぁ、マスター。そろそろ帰ってくる頃かと思っていたよ」 ゆっくりと近づくと、フーディンも壁から離れた。 「少しいいかな。場所を変えて話がしたいんだ」 「…ああ、構わないけど」 「わかった。歩くのも面倒だから、飛ぶよ」 言うが早いかフーディンが俺の手をとってテレポートを発動した。 * * * テレポートした先は、昨日の海岸だった。波が届かないあたりの砂浜を選んでフーディンが座ったので、 俺もそれにならって隣に座る。海に反射している紅い夕日が眩しい。 「マスター、話はすべてフシギソウから聞かせてもらった」 …なんというか、やっぱりその話か。 「いや、責めている訳じゃないんだ。いくつか聞きたいことがあってね。 もちろん無理に答えなくても構わないのだけれど」 「…言ってみてくれ」 「ではまず一つ。マスター、あなたの持っているロケット団のバッジについて聞かせてほしい」 「…あれはもともと俺の物だよ。ロケット団に入っていたわけじゃあないけどな。 俺の両親はロケット団の幹部でな…俺も将来はロケット団に入れるつもりだったらしい」 「御両親は…今は?」 「…警察に踏み込まれた時、俺と捕まえていた萌えもん達を残して家に火をつけて逃げたよ」 そうか、とフーディンは軽くため息をついた。 「では質問を変えようか。 マスター、君は萌えもんを『捕まえる』と言う事はどういう事だと思う?」 「…捕まえた奴の自由を奪って、服従させるって誰かが言ってたな。保護とか言ってる人もいたが」 「まぁそうだな。結果は同じだよ。私達は捕獲された瞬間から、 生殺与奪の権利をすべて捕獲したものにゆだねる事になる。好むと好まざるに関わらず、ね」 その通りだ。俺達はこいつらの自由や今までの生活を無理矢理奪って従えているにすぎない。 …本当に。あいつらと俺と、何が違うんだろうか。 「けど、何がいいたいんだよ」 「少なくとも私達は、自分の主が私達に何をしようとも文句を言えない、と言う事さ」 「…それは、違うだろ。たとえば、フーディン。俺がお前を殴ろうとすれば、その気になればお前は俺を殺してでも止める事ができるだろ? お前たちだって俺に言いたい放題やりたい放題やってるんだし、それくらい――」 「なら、仮に今この場で私が君を殺して自由になったとして、その後はどうなる?」 考えてみる。俺がいなくなったとして、フーディン達は… 「…!モンスターボールか!」 「ご名答。もし私が自由になったとして、どこか遠くへ行ったとしても、誰かがボールを操作すればたちどころに元に戻されてしまう。 ボールのリセット機能は指紋認証が必要だから、私を完全に自由にするには君がいなくてはいけない。 下手に壊したりするのも危ないからね」 「フーディン…お前、ひょっとして俺の所から離れたいのか?」 恐る恐る口にしてみると、彼女に思いきり睨まれた。一瞬だけではあったけど。 「全く、変な冗談はよしたまえ。あくまでたとえ話だし、ナツメに無理を言ってこっちに来たのは私の意思なんだよ」 「…そうか…そうだよな」 「質問もおしまい。日が沈むと海辺は冷える。帰ろうか」 「ああ」 結局フーディンは俺に何を伝えたかったのだろう。わからないまま、テレポートで俺達は再び飛んだ。 センターに戻って、風呂場へと入った。みんなはそれぞれ部屋の中でくつろいでいる。 …俺の頭の中に、いくつかの可能性がよぎっていく。それらをすべて振り払って、シャワーのお湯を浴びる。 「マスター」 声がする。…予想はしていたが、やはり来たか。 振り向いても姿はない。ドアの開く音もしない。けれど、きっとそこにいる。 そう思った瞬間、目の前の水たまりが一気に盛り上がって形を成していく。 数秒の後、そこにはシャワーズが立っていた。 「…シャワーズ、出て行ってくれないか」 「マスター…私には、あなたがずっと耐えているように見えます」 「頼むよ、分かってるならなおさらだ」 …もう、俺は我慢なんてできない。すべて壊してしまう前に、お願いだからここから離れてほしいんだ。 「マスター、私はあなたの為なら――」 がたん、と。イスが倒れた。 昨日と同じように、俺はシャワーズを風呂場の床に組み敷いていた。 息が荒い。頭が熱い。けれど、俺の頭の中では小さなころの両親の姿が写っている。 同じだ。 お前も。 ヤツラと。 同じ―― 「マスター?」 シャワーズの頬に落ちる滴り。…その雫は、俺の眼から流れていた。 「…これじゃあ、一緒じゃないか… 俺は、俺を捨てたあいつらと同じことをしてるんじゃないか!大切な仲間に、こんな、こんなっ…!!」 「マスター…」 シャワーズの細い腕が俺の頬を拭う。 「マスターを捨てた人たちがどんな方たちか、私は知らないですけれど…」 「…ひどい奴らだよ、俺と同じで」 「違います。あなたは、そんなひどい人なんかじゃない」 床に組み敷かれたままのシャワーズが、強い口調でそう言い切る。 「私たちは、マスターを心から信頼しています。あなたはいつでも私達に優しかった。 だけど、マスターは私達に負担をかけたくないと思っているから、いつも一人で抱え込んでしまう」 タマムシシティで出会った時から、シャワーズがここまで必死で話をするのは初めてだった。 「マスターが辛いとき、苦しいとき、今みたいに迷っているとき…その何分の一でもいいんです。 どんな形でもいいから、私にぶつけてください。あなたの苦しみを、辛さを、迷いを少しでも減らせるなら、 私はどんな事だってできます!マスターの何もかも、私が受け入れてみせます!だから…!」 「――ありがとう、シャワーズ」 気づけば、俺は彼女を抱き起こして、力の限り抱き締めていた。 「でも違うんだよ。俺、みんなを傷つけてしまうのが怖いんじゃないんだ。 傷つけて、そのせいでみんなが俺から離れてしまうのが怖いんだ。 お前のマスターは優しくなんかないんだ、ただの臆病ものなんだよ… ごめん、ごめんなシャワーズ、俺…トレーナー失格だよ…!」 本当に、無様でかっこ悪い。俺はシャワーズを抱き締めたまま、何年ぶりかもわからないくらい大泣きしていた。 それでも、彼女は俺のことをぎゅっと抱きしめ返してきた。 「いいんです、マスター。私は…私達は、マスターのそういう所も全部受け入れます。 臆病なところも、優しいところも、全部私達の大好きなマスターなんですから」 「…シャワーズ」 「マスター…」 分厚い湯気の幕の中。2人の姿は、ゆっくりと重なって―― 5日目 - エピローグ - 「マスター、もう朝ですよ、起きてください」 「う…あ」 もう朝か…シャワーズが俺を起こしてくれたらしい。 そう言えば昨日は、彼女と―― 「…シャワーズ、体大丈夫?」 「実を言うと、ちょっと腰が痛いです…」 顔を赤くするシャワーズはやっぱり可愛らしい。 同時に、昨日の彼女の暴走っぷりを思い出す。ちょっと意地悪も思いついた。 「シャワーズ」 「は、はい…」 「また今度、頼んでもいいかな?」 「は、は、は、はいぃぃ…」 さらに顔を赤くして悶えているシャワーズ。ああ、可愛いなチクショー。 「じゃあ、行こうか。今日はジムに挑戦だ!」 「はい、もう朝ごはんもできてます。みんな待ってますよ」 シャワーズは部屋を出て行った。俺も急いで着替えて、部屋を出ようとしたとき、ふと目に入ったものがあった。 赤い「R」のバッジ。けれど、これはもう俺の過去でしかない。俺を束縛することはもうないだろう。 ベッド横の窓を開けて、海へと向けて力の限りに投げつけた。 ―― 赤く輝くバッジは波間に消えて、瞬く間に見えなくなった。 後日談 - おまけ - 「やぁマスター。昨日はお楽しみだったみたいだね。ちなみに私以外の3匹は眠らせておいたから、音の心配はいらないよ」 「黒幕がそれを言うのか、フーディン」 「おや、バレていたか。まぁいい。マスターの肩の重荷もとれたようだし、私としてはオールオッケーだ」 「おいおい…」 「それとマスター。別にシャワーズでなくとも、私達だって君のすべてを受け入れる覚悟はしている事を覚えておいてくれたまえ。 …まぁ、さすがにピカチュウとロコンに手を出すのはまずいと思うけどね。まだ子供だし。 もちろん萌えもんと人間の間に子供はできないんだし、別に私は毎日でも構わないよ?」 「あー…そうか…ありがとな」 「ふふ、礼には及ばんよ、マスター」 「ところでフーディン、最初の3日間は何か意味があったのか?単に俺の反応見て遊んでいただけじゃないのか?」 「まぁまぁ、3日目に意外な展開になったとはいえ、結果は良かったんだから――」 「フーディン、今日はジム戦で汗かいたろ?今から一緒に風呂でも入らないか? 他のみんなと入ってお前とだけ入らないってのも不公平だしな、ついでに今回のお礼とお仕置きもたっぷりしてやろう」 「マスター、落ち着きたまえ…目が、目が怖いぞ。テレポートも封じられているし、 いつの間に『くろいまなざし』が使えるようになったんだ君は」 「さあな。ああ、音の心配はしなくていいぞ。みんなサファリパークの見学に行っててな。 こんな中途半端な時間帯にはセンターもあまり人はいないだろうし、堂々と声出しても構わないぞ」 「え、あのちょっと…」 「じゃ、行こうか。覚悟はできてるって言ったよな?」 「わ、ちょっと待って、や、にゃああああああああああああああああっ!?」 おしまい。 あとがき。 えっと、なんかもうすいませんでしたっ! 最初は本当にお風呂場に乱入して最終的には――という話のはずだったんですが、 予想外に長くなった上に予想外にシリアスな展開に――しかも思いつきなので会話も支離滅裂だし… 次回はもうちょっとまともな文章に仕上げていきたいと思います。 今後もマスターとこのパーティを主役として、ssを書いていきたいと思っています。 それでは、また次の作品でお会いしましょう。 最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました!
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カスタムはキャラクターを作成して戦わせるモードです。 シンプル(カスタム) デュエル(カスタム) タッグ(カスタム) コロシアム(カスタム) シンプル(カスタム) シンプルは、特別なルールは設けません。 renkei2もしくはrenkei3のキャラクター作成法に従ってキャラクターを作り、勝負します。 注意点 アビリティ「準備」を修得している場合は、山札からカードを引いて解決します。 デュエル(カスタム) デュエルは、より駆け引きを重視した一対一の戦闘です。 上級ルールを全て導入した上での戦闘を行います。 詳しくは上級ルールを参照して下さい。 renkei2における上級ルール 上級魔法 エンハンス 熟練戦闘 鍛冶 renkei3における上級ルール なし タッグ(カスタム) タッグは多人数でプレイするモードです。 プレイヤーが偶数人の場合は二つのパーティに分けて下さい。 プレイヤーが奇数人の場合はハンデをつけます。多人数側のパーティは最大スタミナ値を5に減少させて下さい。 なお、この最大スタミナ値修正は通常のルールとは異なり、時間による回復は出来ません。 コロシアム(カスタム) コロシアムモードは、キャラクターを3体作成して、3対3で戦います。 以下の点で、戦闘ルールがrenkeiとは異なります。 3キャラクターを前列後列任意の列に配置する。 スタミナは3キャラクター共有 スタミナの合計は9 誰か1キャラクターがチャージを宣言した場合、スタミナが全回復する。 MPも3キャラクター共有 死亡したキャラクターはゴーストにしても良いし、しなくても良い。 ゴースト化を選んだ場合、毎ターン、チェインの踏み台にするためのスタミナが必要になる。
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君にも見える トキワの森 遠く離れて リーグに一人 リーグ制覇の使命をかけて 四天王まで あとわずか マスターの指示を胸に秘め 帰ってきたぞ 帰ってきたぞ バタフリー 想いを篭めて 狙った敵は とくこう技の おくりもの 空中舞って 銀色の風 懐切り込み サイコキネシス リーグ制覇を果たすため 帰ってきたぞ 帰ってきたぞ バタフリー 大地の上に 崩れる萌えもん 戦いすんで また一歩 はるか彼方に見据えるものは あれが あれが チャンピオン 帰ってきたぞ 帰ってきたぞ バタフリー 「以上、『帰ってきたバタフリー』 作曲は 嫁に3939氏改め 鳥嫁氏でした。 …よかったな、バタフリー」 「こんないいものを…恐れ入ります。ありがとうございました」 「…では、本篇をどうぞ!」 『さぁ、第79回となる萌えもんセキエイリーグ、予選大会がついに始まりました! 今回の予選は、パートナーとともに1人一つ用意された聖火を守りながらチャンピオンロードを抜けて、 大スタジアムの聖火台に焔をともす速さを競うサバイバルレース!はたして、何人が生き残り、夢の本戦へと進むことができるのでしょうか!』 「…始まったな」 「やな。なかなか面白そうな事しとるやん?これやったら予選出るのも悪くなかったかもなー」 「うーん、でもなんか、トレーナーの質がバラバラな気がしますね」 俺達は今、セキエイリーグ本部の用意してくれた宿舎でテレビ越しに予選を眺めている。 今いるのは、シャワーズとフライゴンだけ。他の面々は、外へ出て巨大スクリーンで観戦したいらしい。(フーディンとバタフリーが付き添っているので心配はないだろう) 「たぶん…外見だけ取り繕ったバカだろう。リーグに出たという実績だけでも、それなりの評価は得られるからな。 そのくせ、参加資格はわりあいハードルが低いときてやがる。…そう言う奴らをふるい落とすための予選なんだろ」 「厳しい事言うなぁ、我らがマスターは」 「…ああいうのが万が一生き残ったりしてるとさ、俺は正直気分は良くないな。努力した奴が馬鹿みたいじゃないか」 「けど、それもまた世の中の不公平というか、不思議なところというやっちゃな」 「ま、そうかもな…あと、いい加減離れろフライゴン。シャワーズ、お前もだ」 「嫌です♪」「だって暖かいんやもーん♪」 今の俺は、広い宿泊施設の寝室の一つのベッドに座り、正面のテレビを見ている。その膝の間にシャワーズがいて背中を俺に預け、 背中にフライゴンが抱きついている形…正直、なかなかに前後からいい感触が来てるんだが…それにしたって、軽く暖房も効いてるので暑い。 まだ春先だもんなぁ。毎年このリーグは開催されるが、年によって開催季節が変わる。コンディションの公平性を重視しているのか。 「シード選手でよかったかもな。こうやってのんびり予選を見物できる身分なんだから」 「そうですね。…8つのバッジには、こう言う意味があったんですね?」 萌えもんセキエイリーグ本戦へのシード選手登録条件。それは、 ・ジムリーダーであること ・カントー、ジョウトどちらかの8つのジムバッジをすべて集めること ・国内、別の地方のランキングで特定以上の成績を収めること おおよそこれくらいか。今回のシード権獲得選手は、16+7人。ただし、不参加表明者が二人いる。 サカキと…名も知らない誰かだ。…そもそもサカキは、もうどこかへ高跳びして姿をくらました。 今頃どこかでまた何か企んでいるかもしれないし、案外パートナー達とのんびり過ごしているのかもしれない。どっちでも俺には関係ないが。 「ああ。…お、あの選手のライチュウ、似てねぇ?」 「あ、ホントだ。私達のところと見た目がそっくりですね。同種族だからでしょうか」 「世界には自分と同じ顔が3人はいるっちゅー話やからなぁ…」 3人でくっついたままテレビを眺める。だから暑いってのに。 「てかさ、明日から試合なのに俺達のんきだよなぁ…普通なら、最終調整とかしないか? もう流れと言うかノリでこんな感じだけど」 「大丈夫やて。無理に気ぃ張っても力は出ぇへん。自分のペースでゆるーくやってもええんちゃう?」 「そうですね。下手に気合を入れるよりは、こっちの方が私達らしいかもしれません」 「…ま、そーかもな。そろそろ昼になるし…みんな呼び戻して昼飯にしようか。 フライゴン、荷物持ち手伝ってくれ。シャワーズはみんなを迎えに。…そうだな、フーディンかフシギバナをこっちによこしてくれればいいかな」 「はいな!」 「わかりました」 * * * 「…はい、注文は以上です。はい」 高原内フードコート、『ウインディーズバーガー』。9人分という大量の注文にも嫌な顔一つせず対応してくれる、 店員のウインディの笑顔が眩しい。まぁ少し時間はかかるようなので、番号札をもらって適当な柵を背にのんびりと待つ。 …選手用食堂で食べてもいいんだけど、情報収集の目が常にどっかで光ってやがる。…買物はなるべく俺一人で行くべきかもな。 「ミカン、あたしコレ食べたいな」 「そう…それじゃあ今日はここで買いましょうか、アカリちゃん」 ふと目をやると、白いワンピース姿の少女と、パートナーらしきデンリュウが並んで注文をしているところだった。 …あまり量が多くないからか、ほどなくしてテイクアウトの袋を貰ってカウンターから離れる。 丁度振り返った彼女と、目が合った。 「………?」 「………?」 お互いに曖昧に会釈を交わす。…どこかで見たような顔なんだけどな。 「マスター、知り合いかい?」 「…いや、初対面のはずなんだが…どっかで顔を見た気がするんだよなぁ…」 「ひょっとして、どっかですれ違ったとかちゃうの?」 「んー…違うだろうな…写真か何かで…いいや、そのうち思い出すだろ」 ほどなくして、ウインディが9人分を持って来た。…重そうだ。とりあえず俺が両手に3人分ずつを持ち、 残りを2人に任せる。…フライゴン、なんか熱のこもったまなざしでウインディを見つめんな。たしかにふかふかしてそうだけど。 3人並んで、高原の道を歩く。 俺は両手に袋を、フライゴンは両手で持って少し上を飛び、フーディンは念力で袋を自分の真上に浮かせながら歩いている。 「…マスター、この前雑誌にあったゴシップ記事、知ってるかい?」 「なんだよ?」 「ウインディーズバーガーの裏メニュー。面白いよ?ウェブでバックナンバー探せばあるんじゃないかな」 「あー、それウチ読んだで!ちょっと本気で行きたなったなぁ♪」 …フライゴンが行きたくなる…アレだな。付き合いは短いが、なかなかコイツの性格は分かりやすい。 「ま、その話は食べながらでもできるだろ。冷める前にさっさと戻ろうぜ」 「だね」 「やな」 * * * 全員で適当な場所に座り、テーブルに買った物を広げて皆で食べる。 やっぱり、みんなで食べた方がうまいよな、精神的にも。 今度は寝室ではなく居間。こちらにもテレビがあるので、みんなで予選大会の結果を眺めている。 …どうやら、もうすべて終わっているようだ。 「ん、結構いける。…マサラには、まだないんだよな、この店」 「ライスバーガー…この発想はなかったな…意外と…」 「ん、やっぱこれやね。このポテトの揚げ方が…」 「確かに、独特の感じですね。私には難しいかも」 「どうしても、虫向きではありませんね…おいしいですが、食べにくい。すごく…大きいです…」 「これは食べにくいというか…我としては小さいな。味はいいのだが」 「ライチュウ、そーす、ついて、ます…」 「え、どこどこ?」 「ほら、これこれ。えっと、ティッシュないかなー?」 すごく…カオスだ。 「…!マスター、これ!」 「来たか」 テレビにうつっているのは、本戦トーナメント表。 全選手70人前後が、ずらっと並んでいる。…つまりは、ここに乗っている人間は今年のカントー・ジョウトにおけるトップクラスという事だ。 …まぁ、リーグに出なくて俺たちより相当強いやつらもいっぱいいるだろうけど。 「マスター、君の名前もあるようだよ」 「対戦相手は…アサギシティ、ミカン…って書いてあるな。マスター、しっとる?」 「いや、多分知らない。…けど、ホントにジムリーダーはみんないるんだな。 タケシやカスミ、エリカにキョウ、ナツメ…カツラ…あと、マチスだっけ。ゴミ箱しか記憶になくてな」 「マスター、それはひどいよ…?」 ともかく、試合日程をチェックする。俺達の試合は…開会式の後、第3試合か…早いな。 「明日の…まぁ、昼前くらいだろうか。スタジアムは四天王が入るまでは第2と第3しか使わないらしいから、 普通に考えて午前中になるだろう。朝はしっかり準備しておくように」 『はーい』 * * * 夜。なんとなく寝る前に外に出てみると、案の定廊下の談話室に一人いやがった。 「…寒くないのか」 「ホテル支給のパジャマを甘く見てはいけないよ、マスター」 スタジアムが少し遠くに見える窓。その景色を眺めながら、フーディンと俺は同じソファーに座る。 「マスター」 「なんだ?」 「いよいよ明日だけど…緊張とか、してない?」 「してるさ、凄くな」 今までに経験した事のない戦いだ。観客や、スタジアム、ルール…気になる要素は多すぎる。 …ひょっとしたら、リーグの実力に自分では追いつけていないのではないかという懸念さえ抱いてしまう。 「緊張、って言うのかな。怖いだけかも」 「…私もだよ」 「?」 ふと見れば、フーディンの肩が僅かに震えている。コイツのこんな所を見たのは、…初めてだろうか。 「負ける事が、怖い。実力を出せない事が、怖い。…マスターを、負けさせてしまいそうで、怖い。 いや、単に戦う事が怖いだけかな。…何を言い訳してるのだろう、私は」 「…フーディン…」 …そうだよな、コイツだって戦いは楽しいものじゃない。別に、好きで戦っているわけでもないだろう。 「お前が戦いたくないならないって言ってくれ。…別に、お前達が戦う理由なんてどこにもないんだ」 「戦いたくない、って訳でもないんだけどね。…ただ、流石に今回はちょっと自信が揺れてるだけさ」 「…今までほとんど負けたことのないお前がか?」 「不敗は無敵じゃないんだよ」 「そりゃそうだ。世の中に無敵なんてあってたまるか」 「全くだね」 「…負ける事、傷つくことが怖いのは誰だって一緒だ。俺も、お前も」 「その通りだ。…マスター、明日はよろしく頼むよ」 「任せとけ。みんなで決勝まで行くぞ」 「それじゃ、私はお邪魔みたいだから退散するよ。おやすみ、マスター」 「ああ、お休み。…?お邪魔?」 去っていくフーディンの言葉の意味が分からず部屋の方を振り向くと、一人、そこにいた。 「シャワーズ?」 「…マスター」 すとん、と先ほどまでフーディンがいた場所に腰を下ろすシャワーズ。 「どうした?…眠れない?」 「いえ、少し、寝る前にマスターとお話がしたくて」 「そっか」 先ほどまで隠れていた月明かりが、俺とシャワーズを照らす。夜のスタジアムをぼんやり眺めながら、 なんでもないような話をしていた。 「…とうとう、ここまで来たんですね」 「そうだな。長かったような、短かったような…大変だったよな、色んな事があって」 「でも、楽しかったですよ。少なくとも、私は」 「俺もだよ。お前と一緒にいられて、お前に会えて、本当に楽しかった」 「…マスター、このリーグが終わったら、どうするんですか?」 「考えてない」 「えぇっ!?」 …いや、ホントに思いつかないんだ。 「どうしようかなぁ…ただ、家でニートってのは流石に嫌だからな。まだ冒険を続けるか、 何か仕事を探すかだな。…萌えもん関係の仕事があればいいんだけれど」 「…………」 「シャワーズ?」 反応がない。うつむいているから、顔も見えない。 「マスター…私達は、どうなるんですか?マスターが仕事についたり、新しい旅に出たら…」 「どうするも何も、連れていくに決まってんだろ」 「でも、でも…!私より強い人がいたら、私を置いて行ったりしませんか? …私は、一人になんてなりたくないんです。…それに、私と一緒にいてくれるのはマスターだけなんです。 お願いだから―――」 「うるさい。馬鹿かお前は」 目を潤ませて、体を震わせたシャワーズを思いきり抱き締める。 「誰がお前を置いて行くだと?俺が誰だか分ってるのか?お前を拾ったのは俺なんだ、今更置いて行くかよ」 「で、でも…」 「あぁ、もう!ならこれでどうだ!」 一度シャワーズを離して、ポケットに入れていたある物を取り出し、シャワーズの左の手をとる。 「…これ…?」 「見てわかるだろ、指輪だよ」 「…えっと、左手の…薬指…って!?マスター、ここここ、これ…意味、分かってるんですか!?」 「分かってなかったらわざわざ其処を選んでつけるか普通。…まだ、婚約だけどな。 ちゃんと職業が決まって、身分が落ち着いたら――」 「だ、だって、私萌えもんですよ!?」 「実は俺の義母さんの親も萌えもんだそうだ」 「子供とか、生めませんよ!?」 「忘れてるかもしれないが、俺はあの家の養子だ」 「周囲から、変な眼で見られるかもしれませんよ!?」 「だからどうした。もともと俺は犯罪者の子供なんだぜ?」 「ほ、他のみんなは…」 「実はフーディンとフシギバナには話が通ってるんだ、これが。…別に、今すぐ結婚ってわけでもねーし、 いっそみんなでどっかに住んじまうのも楽しそうだな」 「…私で、いいんですか?」 「何言ってんだ、お前は」 なるべくなら、言いたくない。…恥ずかしいし。けど、言わなきゃ駄目だって分かってる。 「俺は、お前じゃないと嫌だ」 …一瞬、時間が止まったかと思った。と思ったら、いきなりシャワーズの眼から涙が零れおちた。 「……嬉しい…」 「って、おい!?泣くなよ!」 「だって、嬉しいんです。…何か、ホントに一緒にいられるんだな、って…」 「…馬鹿」 「あっ」 ぎゅ、と。もう一度きつく彼女を抱き締めてやった。 「ホントもウソもねぇよ。…ずっと一緒だ、絶対」 「…はい。…明日から私、もっともっと頑張ります」 「そうだな……みんなで、勝つぞ」 「はい!」 * * * 「…来たね」 「来ましたね」 「来ちゃったね」 「来ちゃいましたね」 「…お前ら何してんだ」 「いえ、なんとなく」 「理由は必ず必要なものでもないよ、マスター」 …というわけで、来てしまった試合当日。…俺は今、スタジアムの下、控室にいる。 先ほど開会式も終わって、後は出番を待つだけ。 「…とりあえず、本戦も四天王が入るまでは、3VS3のタイマンの形になる。 第一戦の相手のミカンは、鋼使いだと聞いているからな…出すメンバーを今決めるぞ」 ちなみに、もともと出すメンバーは決めている。 「まず、フライゴン」 「はいな」 「バタフリー」 「はい」 「フーディン」 「了解」 「…みんな色々言いたい事はあるだろうが、とりあえず今回はこの3人だ」 「マスター、どうして私を使ってくれないんですか!?」 シャワーズの問いに、フーディンが答える。 「シャワーズ、それは…死亡フラグ回避のためなんだ」 「はい?」 「たいてい結婚を控えた者が直後に戦闘になると、高確率で死亡するんだ…恐ろしい事に」 「ええっ!?」 「しかしここで戦闘をしなければその確率は格段に下がる!」 「そうなんですか!?」 …俺に聞くな。 『さぁ、ただいまより始まりますのは、一回戦三試合目、 アサギシティジムリーダー・ミカン選手 対 マサラタウンシード選手・クリム選手の試合となります! どちらもかなりの実力者、白熱した戦闘が期待できそうです!』 …実況の声が素晴らしく響く。 空は快晴。時期としては暖かい。…仲間のコンディションも十分。この上なくいい条件だ。 係員に促されて、バトルフィールドへ出る。 フィールドの構造は、俺達トレーナーがいるテラスのようなトレーナーベースから一段下に、 バトルフィールドが展開されている。このフィールド、様々な条件に変化するらしい。…金かかってんなぁ。 『先に入場しますのは、マサラタウン――クリム選手!圧倒的な実力でカントージムリーダー勢を下し、 文句なしのシード選手に認定された若き戦士!今回手持ちには多彩なタイプを揃え、万能的な編成に仕上がっています!』 「マスター、すごい事言われとるで」 「ほっとけ、嘘は言われてないんだ」 ベースの端に立つ。腰ほどまでの柵があるが、ボールを投げるのに支障はないだろう。 『さて迎え撃つのは、アサギシティジムリーダーであり、薄幸の美少女ミカン選手!その可憐な容姿とは裏腹に、 使用するのは頑丈かつパワフルな鋼タイプ!パワーで敵をねじふせる!』 「…むしろ可哀想なのは向こうだろ…常識的に考えて」 「女の子なのに…不憫です…」 「まさに薄幸の美少女やな」 「誰が上手い事言えと…って、あの子…昨日の」 間違いない。フィールドを挟んで向かい側にいる彼女は、昨日ウインディーズバーガーで会ったあの少女だ。 相手もこちらに気づいたようで、軽く礼をしてきた。…こちらも思わず礼を返す。 『さぁ、今回の試合もお互いに三体の萌えもんを選び、一対一で対戦させる形式となります。 戦闘中の道具における援護・萌えもんの交代は禁止されていますのでご注意ください。 それでは、まずは一体目の登場だ!』 「頼むぞ、フライゴン!」 「任しとき!」 『クリム選手はフライゴン! 対するミカン選手は――ハガネールだ! ドラゴン対鋼!これは一戦目から面白い組み合わせ!まさに、最初からクライマックスです!』 フライゴンとハガネールが、フィールドの中央で向かい合う。…審判が、旗を掲げた。 同時に、バトルフィールドが変化していく。…荒れた大地に、大きな岩…荒野か。 『合意と見てよろしいですね!? ただいまこのバトルは全国萌えもん協会における公式バトルと認定されました! ミカン選手のハガネール対クリム選手のフライゴンの待ったなし一本勝負、 それでは――萌えもん・ファイトォッ!!』 …それなんてメダロット?っと、ツッコミやってる場合じゃねぇよな。 「フライゴン、奴のテールに気をつけろ!イワークより格段に重い一撃が来る!」 「おっしゃ!…ウチの強さは、泣けるでぇ!?」 「ハガネール、お願い!」 「…うん!」 「ドラゴン…」 「アイアン…」 互いに相手に向かって突進、それぞれの武器を振りかぶって攻撃態勢へ―― 「クローッ!」「テールっ!」 ――激突音!! 吹き飛んだ土煙の中から、二人が同時に飛びだす。威力は互角。…だが、持久戦になれば防御力で不利だ。 「フライゴン、距離をとれ!近距離で打ち合っても時間の無駄だ!」 「はいな!」 ハガネールの第二撃をかわして、フライゴンが低空から飛翔、相手の真上をとる。 「鋼には炎、やったなぁ…そぉりゃあぁぁっ!!」 「ああああっ!?」 真上から、叩きつけるような勢いの火炎がハガネールを襲う! 鋼タイプに炎は大敵…これで決まるか!? 『ハガネールの射程圏外から、フライゴンの火炎放射ーっ!効果は抜群! まさに炎の滝!熱い、熱すぎる!接近戦の不利を見切り、いち早く射程圏外からの攻撃に切り替える判断力! クリム選手、カントー制覇の実力は伊達ではありません!』 …さぁ、どう出る?まさかこのまま放置とは来ないだろう…フライゴンもそれは分かっているようで、 時々炎を止めて相手の動きを警戒している。 ミカンが身を乗り出した…来る! 「…ハガネール、りゅうのいぶき!」 「は、はいっ!…えーいっ!」 「おっとぉ!?あ、あぶなーっ…」 かろうじてかわしたフライゴンだが、その体に何かが巻きついた。 あれはハガネールの…体の特徴ともいえる、ポニーテールか!? 「…ど、どこまで伸びとんねん…ゴム製か何かかいな…」 軽口をたたくフライゴンだが、確実にハガネールの方に引き寄せられている。 …空中のフライゴン、地上のハガネール…放っておいても、接近戦に持ち込まれるだけ…なら! 「フライゴン、引っ張られるなら突っ込め!」 「!…その発想はなかったわ!行くでぇぇっ!」 『ミカン選手の的確な指示により、ハガネールが見事にフライゴンを捕らえました! しかし敵もさるもの、クリム選手は即座に接近戦を指示!引き寄せられるならこっちから突撃!』 「加速付き、ドラゴン…クローッ!」 「あうっ!」 フライゴンは見事にやってくれた。ダメージはそれほどでもないようだが、テールからは解放されたようだ。 さらに、このチャンスを逃さず背後にまわって後ろからハガネールをつかんだ! 「こ、この…アイアン…うっ!?」 「おーっと、そうは問屋がおろさへんってな!」 ぎちり…と、ハガネールのポニーテールにからみつく物体。フライゴンの尻尾が、その動きを抑えていた。 さらに、気合いとともにフライゴンはとんでもない事をやってのけやがった。 「ふん、ぬぅぅぅりゃあぁっ!」 『な、なんとーっ!フライゴンがハガネールを持ち上げたーっ!?何という怪力、 鋼タイプの重い体を持ち上げている!しかも、自分の尻尾でアイアンテールを封じています!これでは手も足もでないっ!』 「お、重い…?そんな…私…」 あ、ハガネールが涙目になってる。…そりゃそうか、女の子が重いなんて言われたらなぁ… …けどまぁ、バトルの手を抜くわけにもいかないし…フライゴンに頑張ってもらうしかないか。 「気にすることないて、アンタ、見た眼より相当軽いで?普通の女の子と同じくらいや♪」 「ほ、ホント?」 「ああ。ホンマや。…だから…投げるのには、楽なことこの上ないな♪」 「え、え、え、…えええええええええええええっ!?」 『と、飛んだぁぁぁぁーーーっ!フライゴン、ハガネールをつかんだまま自らの領域へと飛翔! まさか、これは…地球投げかーっ!』 「否っ!!」 上空から、フライゴンの力強い声。同時に、ハガネールが落ちてきた。 咄嗟にテールをつきたてて着地したため、ダメージはあまりないらしい。…フライゴン、何をするつもりだ…? 『あ、ああああ!?フライゴン、何か持っている!大きいぞ、何だアレは!?』 「ロ ー ド ロ ー ラ ー や ー っ ! 無駄無駄無駄ァブッ潰れよォッ!!」 「どっから持って来やがったそんな危険物ーっ!!!!」 『なんという、なんという事だ!本当に、どこから出したのか全く分からない!スタジアムの外にはなかったはずだ、 なぜロードローラーがあそこにあるんだーっ!?』 いや、そう言う問題じゃない!そもそもあんなモノ落としたら普通にハガネールだって命が危ないぞ!? って言ってる間にロードローラーが―― 「URYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!」 大きな轟音。…ハガネールの目と鼻の先に、重機は鎮座していた。 そのハガネールは…あ、倒れた。気絶したな。当然といえば当然だけど。 『ハガネール、戦闘不能!よって第一戦は、クリム選手の勝利となります!しかしあのロードローラーはいったい何だったのか… …いえ、それよりも、次の戦闘を行います!両者、二体目を準備して下さい!』 「…バタフリー、頼むぞ」 「はい、分かっています」 「ジバコイル、お願い」 「はい」「あい」「はーい」 荒野のフィールドに、バタフリーが降り立つ。相手は――ジバコイル!コイルの最終形態か! 『第二戦は…クリム選手、バタフリーを投入しました!対するミカン選手は、ジバコイルを繰り出した! タイプの相性では、バタフリーが不利…しかし、マスターの作戦能力は先ほどの戦闘で証明されています! これはいい戦いになりそうだーっ!』 「…バタフリー、分かってるな?」 「はい。まともにやれば、勝てる相手ではありませんね」 スタジアムを見渡す。…うん、行ける。 「ここのスタジアムは、すり鉢状に中央に向かって風がゆるく吹いてる。…お前ならできるだろ?」 「ええ。マスター、すぐに勝利を持ってきますね」 「期待してる」 『―――萌えもん、ファイトォッ!!』 …とはいったものの、正面どころか多少の絡め手では敵うまい。俺の作戦も、確実とは言い切れない。 ジバコイルは、攻防に優れている上に、その索敵能力が非常に高い事が脅威となる。 バタフリー、お前の実力次第だ。…頼むぞ。 『さぁ、開始直後からミカン選手のジバコイルが攻める攻める!左右のコイルの雷撃は全くとどまるところを知りません! クリム選手のバタフリーは防戦一方だ!しかしこちらも巧みに回避を続けています!これは一見膠着状態だ!』 「…………簡単に隠れさせてはもらえませんか」 「みぎー」「ひだりー」「はっしゃー」 『おっと、岩陰に隠れました!これなら電撃は当たりません!バタフリーどう出る!?』 この作戦は、静かに、気づかれないように行わなくてはいけない。この行動を勘づかれてもあまりよくない。 しかし、なるべく早い方がいい。遅くなればなるほど、この作戦は相手にばれやすくなる。 「…19、20、21…」 岩陰の見えない場所でゆっくりと羽をはばたかせ、時間を稼ぐバタフリー。 ――そして、変化は突如として訪れた。 『お、おぉぉぉっ!?いきなり、ジバコイルが地面に落ちたぁあっ!どうなっているんだ!? あれは…眠っている!眠り粉です!いつの間にか眠り粉が撒かれていました! こんな事が出来るのは対戦相手のみ―――なるほど、バタフリーは物影で眠り粉を放出していたのかーっ!!』 …その通り。スタジアムの構造上、風はほとんど常に中央に向かってすり鉢状に吹いている。 すなわち、風の収束点に敵を誘導し、後は物陰から眠り粉を放てば、軽い粉は風にのって敵へたどり着き、その動きを停止させるわけだ。 『こ、これは――ジバコイル、戦闘不能!よって、バタフリーの勝利となります! 何という事だ、有効な戦略とはタイプの不利まで覆してしまうものなのか!これは予想外のダークホースが出現だー! さて、次でラストとなります。両者、3体目の準備をお願いします!』 「…フーディン、お前がシメだ。…勝って来い」 「任せておきたまえ」 「ミカン、あたしが行くよ!」 「アカリ…うん、お願いね」 『―――ファイトォッ!!』 「それぇぇぇっ!!」 デンリュウが放つ無数の電撃が、フーディンを襲う。…だが、この程度で慌てるようなこいつじゃない。 「ヌルいね」 瞬間的にフーディンの姿がかき消え、別の場所に現れ、また消えて、現れ、電撃をことごとくかわしていく。 『さぁ、第3戦ものっけから熱いっ!デンリュウの放つ稲妻の弾幕を、焦りもせずテレポートで回避! 百を超える電気の弾丸が、一発たりとも当たらないっ!無敵BGMでも流れているというのか!?』 …ねーよ。フーディンを見れば、回避できなさそうな雷撃を念力ではじいていた。 「…それじゃあ、今度はこっちから行くよ!」 「ふぐぁっ!?」 ひゅ、と。フーディンが軽く拳を突き出すと、デンリュウがよろめいた。 …念力か?だが、ふつうのサイコキネシスにあんなモーションはないはずだが…。 「私が独自で開発した戦闘技術だ。念によって拳を作り、離れた相手を打つ。 打撃としても念力としても使える私の新技術、名づけて『念拳』!」 「………」 …まんまじゃん… ま、まぁ、名前の事は置いておいても、相当な効果があるようだ。 「あいにく私は君を倒すつもりはない。可愛い子に怪我をさせるのは嫌いでね。 …降参、してくれないかい?」 「やだぁっ!」 「…そうか、残念だ」 フーディンが哀しげに首を振る。 そして、目が光った。ある意味、あれは狂気なのではないかとさえ思うほどに。 「ならば……君が!泣く(降参)まで!殴るのを!やめないっ!」 連打。連打。連打連打連打連打連打連打連打―――!! …気付けば、フーディンの前には、気絶したデンリュウが転がっていた。 「…最後まで、降参せずか。いい根性をしているものだね」 『…何が、起きたのかはよくわかりませんが…フーディン、圧倒的な実力でデンリュウを下しました! これにより、3勝0敗でクリム選手の勝利となります!皆様、健闘した二人のトレーナーに、大きな拍手を!』 奔る歓声に適当に手を挙げて答えながら、軽くため息をはく。…なんか、ドッと疲れたな。 「…よくやったよ、みんな。これで、まずは1勝だ…フーディンのアレは凄まじかったけどな」 「まぁ…正直、やりすぎた感もあるけれどね。念拳では殴られた跡の回復は早いから、問題ないだろう」 「そっか。…部屋に戻ろうか。――なんか、初日なのにつかれちまった…」 「慣れへん環境やからなぁ。当然っちゃ当然やな。はよ帰って皆で休もか」 「…そうだな、帰ろう」 つづく。
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「あ~気持ちい~な~マスタ~」 「そうだな、やっぱり冬場に温泉は王道だ」 「だよな~、来てよかったわやっぱ しかもこの後の酒がまた美味いんだってなぁ?」 「島名産の地酒が用意してあるそうだ、楽しみだな」 「全くだ、旅の疲れが癒えるなぁオイ お、見ろよマスター、あれ、野性の萌えもんじゃねえか」 「さっき張り紙があっただろ、山の方から下りて来てるんだってな ジュゴンなんかもう打ち解けて話してるぞ」 「そうだなぁ、いや全くもって色々な意味で実に開放的だよなぁ、マスター?」 「色々な意味ってのが大体理解できるが俺はそんなにジロジロ見たりしないぞ」 「あんれま、せっかく野性の萌えもんの裸がタダで見られるっつーのに つまんねぇ性格してんなぁ、それともあたいらに気を使ってるとかかい?」 「男女別の大風呂でいいと思ったのに、 無理やり混浴を貸切にして押し込んだのはお前らじゃないか」 「けっ、男が混浴の二文字をガン無視するたぁどうかしてるって話だぜ」 「普通はビビって入れないだろ混浴とか、常識的に考えて ……いやしかし、この光景は、改めて見ると凄いな」 「へっ、それならちょいと声でもかけてみるかい? あのニドリーナとかマスターをちょっと気にしてるみたいだしよ、なぁマスター?」 「……そう思うんだったらその、ちょっと離してくれないか? 声かけようにも、身動き取れないじゃないか」 「何言ってんだい、絶対やーだね、離してやらねぇよ この風呂の中のどの萌えもんよりあたいが勝ってることを マスターに文字通り体で、証明してやるんだからなっ、マスター?」 「全然ゆっくりできない……」 「そういえばこの温泉乳白色だからバレることはないぞ、マスター」 「なにが大丈夫なのか知らないフリしてやるからちょっと黙れお前」
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『君の実力がその程度とは、私の見込み違いだったな。』 最後のジムリーダー、大地のサカキの言葉を背に受けながら、 若き萌えもんトレーナーは瀕死の萌えもん達の入ったボールを抱えて萌えもんセンターに走った。 天候は雨。奇しくも、彼がサカキに負けたと同時に振りだし、吹き荒れる砂嵐をも洗い流す程の『涙雨』となった。 雨のあがった次の日に~On the next day when the rain stopped~前編 「……ってええええっ!!」 全身が引き裂かれる様な痛みに、カイリキーは絶叫しながら飛び起きた。もっとも、折れた腕が邪魔になり、上半身だけを起こす形となったが。 「起きたか……、それと叫ぶな、傷に障る。」 横のベッドで寝かされていたストライクが淡々と喋る。 「……ここはっ……!あたい達……っ」 「見ての通り、萌えもんセンターだ。我々は、あの男に負けた。ジョーイによれば、マスターがずぶぬれになりながら私達を運んできたらしい。」 その言葉の先を読み、ストライクが状況を説明する。 「パルシェンとリザードンは未だ集中治療室から出てこない。ギャラドスとエビワラーは別室で寝ているが、それでも私達よりは軽傷だ。」 嫌な音を立てて軋む身体をねじ曲げて見ると、ストライク自慢の両手の鎌にはぐるぐると包帯が巻かれていた。 自分とは違い折れたりしている場所は無いようだが、それでもじしんの直撃が相当答えたらしく、全身には痛々しい程の治療の痕が見られる。 「……マスターは?」 「別室で治療と……萌えもんリーグの委員から事情聴取を受けている。萌えもんバトルの最中に、お前をかばった事について、でだ。」 その言葉に、カイリキーは思わず天井を見上げた。あの時、トドメに放たれたいわなだれは、間違い無く自分を飲み込んだ。 あの技は下手をすれば死んでいたかも知れない、それほどの威力があった。その濁流に、マスターは飛び込んだ。自分を助ける為に。 だが、萌えもんジムバトルの公式ルールでは、指示と薬の使用以外の対戦トレーナーの介入を禁止している。 それは、誰もが知っているルールだ。一般同士での対戦ですら、萌えもんバトルにトレーナーが直接的に介入する事は無い。 公式ルールを破ればどうなるか、彼も、そして彼の持ち萌えもん達とてよく知っている。 厳重注意、罰金にはじまり、下手をすれば全てのジムバッジ没収。最悪の場合、萌えもんリーグ参加権の永久剥奪。 勿論それらは、よほどの悪事でなければ下されない処分だ。悪意ある萌えもんトレーナーを横行させないでもある。 だが、萌えもんバトル中に自分の萌えもんを庇うというのは、前例がなかった。 つまり、どのような処分を下されるのかが、まるで分からないのだ。 「あたいの…せいで…。」 折れていない腕に力が篭る。悔しかった。自分の力不足の所為でマスターを苦しめた上に、 今まさにマスターの夢が閉ざされようとしている時に、のうのうと寝ていたくなかった。 「……案ずるな、あの時、あの場にいた審判がその委員だ。萌えもんバトルにおける過度の攻撃は禁止されている事もルールにあるし、 証明もされている。お前が不安なのも分かるが……おい、待て!」 迷っていられなかった。悲鳴を上げる身体を叱咤して起き上がり、ストライクが止めるのも聞かず、彼女は病室を抜けだした。 すれ違うジョーイや職員達を何とかやり過ごし、カイリキーは萌えもん病棟から一般病棟へ移動した。 見つかれば、また一からやり直しだ。 大柄な彼女にはとても辛い事だが、一つの使命に向けて全ての細胞が行動しているという感じがあった。 周囲を気にしつつ病室の扉一つ一つに聞き耳を立てるという地味な作業を繰り返し、それでも見つからず、途方にくれてある部屋の前を通った時だった。 「……では、君はカイリキーを助けるために飛び込んだと言うのかい?」 「そうです。」 (マスターの声!) 聞き覚えのない声とある声に、すばやく扉に張り付いて聞き耳を立てる。すぐそばを通りかかった職員が驚いているが、マスターのためには気にして入られない。 「成る程……。」 感心したのか、呆れたのか分からない声と共に、何かを書く音。声しか聞こえないのがもどかしい。 何を聞いたのか、何を話したのか、何を書いたのか。叶うならば、今すぐ部屋に入ってそれを知り、自分の口で弁護したい。 「…以上で、事情聴取は終わりだ。お疲れ様。処分は後日伝えるから、しばらくこの街にとどまってて。その間に、身体と萌えもんをゆっくり回復させなさい。」 「はい。」 後日。彼女が嫌いな言葉だ。はっきりしない事を、彼女は(と言うより彼女等は)何よりも嫌った。 マスターもそれを理解していて、彼女等に何かを教える時、相談する時は全員車座でじっくりと話し合った。 マスターも、委員もそれ以上話そうとせず、何かを片付ける音が聞こえる。どうやら本当に終わったらしい。 結局殆ど情報を得る事は出来なかった。それ所か、なまじ中途半端に聞いたせいで余計にイライラが募る結果となってしまった。 (とにかくばれないうちにここから立ち去らないと……!) 彼女は気付いていなかったが、勿論しっかりばれていた。突如肩をつかまれ、高々と担ぎ上げられる。持ち上げたのは、センターで警備員をしているサイドンだ。 「な、何するんだよっ!?」 「それはこちらの台詞ですっ!!」 その答えは、別の所から飛んできた。腰に手を当て、眉を怒りの形にしているのは、このセンター名物、怒らせると怖い事で有名なジョーイであった。 「あなたはもともと絶対安静の体なんですよ!そんな体で無茶してきて、今すぐ病室に戻ってもらいます!」 「うるさい!マスターの夢の危機なんだ、ほっといてくれ!!」 「お だ ま り っ !!」 萌えもん並みのかいりきで首根っこをつかまれ、こわいかおで睨み付けられてカイリキーは震え上がった。 (ほ、本気で怒った時のマスターと同じぐらいこええっ…!) 「とにかく、あなたは病室に戻ってもらいますっ! サイドン、この子を病棟まで運んで。」 「分かりました、マスター。」 自信たっぷりに頷いたサイドンは、カイリキー軽々と病棟まで運んでいく。 「離せー!降ろせー!」 何とか逃れようとじたばたを繰り出すも、防御も鉄壁のサイドンに効果は全く見られなかった。 「あれは、君の萌えもんかい?」 「そ、そうです。。。」 丁度部屋から出てきた委員とマスターがその珍騒動を見送っていた。 「あれほどの怪我を負ってるのに、君を心配してここまで来るなんて献身的じゃないか。 大切にしなさい。」 「は、はぁ……。」 笑顔を浮かべる委員に対し、マスターは顔を真っ赤にして俯いていた。 続く 次回、マスターの告白にパーティに衝撃が走る!!
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やぁ、萌えもん大好きクラブ隊長こと萌えたい、チョーだよ。 今回、RSEに嫁探しに行こうと思うんだ。 その前に他の嫁たちを紹介しておくよ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― スピアー(♀)(以下:ス)…隊長の嫁その1。性格:こあくま 悪戯好きだが、大抵度が過ぎる。エッチいことはご法度。 ウツボット(♀)(以下:ウ)…隊長の嫁その2。性格:やさしい 隊長の事をいつも心配してくれるいい子。そんなウツボットに対し、隊長は食べられたいらしい。 ファイアー(以下:フ)…隊長の嫁その3。性格:クール マスターボールで捕まってしまったから仕方なくついてきている。知識は意外と豊富? ベトベトン(♀)(以下:ベ)…隊長の嫁その4。性格:ヤンデレ 本人曰く隊長の事が好きらしいのだが、愛情表現が隊長に対して死に至らしめる程。(色んな意味で) 隊長=作者(以下:タ)…一見普通のトレーナー。しかし日頃から妄想が激しい上、理性が崩壊すると暴走する。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― え?毒系が多いって?でもそんなのカンケーねぇ! で、今から拝みに……いや、捕まえようと思ってる萌えもんはこれだっ!! カイオーガ(以下:カ)…(穂氏の絵参照。(正直言って惚れた。性格は間違いなくお嬢だよね?w by作者)) ……と、いうわけで早速俺はそのカイオーガが潜むといわれている洞窟へと来たわけだ。 フ「で、私を使役してここまで飛んできたのはいいが……本当にここにいるのか?」 タ「間違いない、俺の萌え萌えセンサーがヴィンヴィン反応してるからな!」 ベ「……もしかして、ここ……?」 タ「!? ったぁ~!!! そこ触るなっ!!!」 ベ「……硬くなtt」 ス「変態ねぇ……蜂の巣にしてあg」 ウ「え、えっちなのはいけないと思いまs」 タ「だ~もう!! それ以上言うなっ!!! ほれ、行くぞっ!」 フ「何だ此処は……」 眼前には激流が。狭い洞窟内を物凄いスピードで奥へ流れていっている。 タ「落ちたら一たまりもないな……よし、気をつけて行く……っておうあっ!?」 ドンッ ス「さっきスルーしたのと、変な妄想してた罰さ。」 タ「ちょ、おま、それは理不尽……って誰か助けt」 ドボン! タ「うわああああああ!!!」 ウ「あっ!マスターがっ!!!」 ス「あ、落ちちゃった。」 ベ「愛情表現としてはGOOD……ふふふ……」 フ「ったく……仕方ない、追うぞ!」 あ~~れ~~~流されていく~~~~~~ ぶはっ! うまく息が出来ないぜ……! 俺、このまま流されて溺れるのかな……? あ~あ、折角なら嫁達に殺されたかったぜ…… ドンッ! ん? 何かにぶつかったぞ? 『きゃっ!!』 ん?声が聞こえたぞ? いかん、確認ができない……!! ―――――――― ―――――― ―――― ―― タ「……う~ん……」 うぅ……水を多く飲みすぎた…… 俺は生きているのか……? 何か柔らかいものの上に乗ってるような気がするんだ…… 何か弾力のある柔らかいものに顔をうずめてるような気がするんだ…… ?「アイタタタタ…誰じゃ、童が気持ちよく寝てるのにぶつかってくる愚か者は……!」 タ「……ん?」 顔をあげると声の当事者と目があった。 青髪のツインテール、白のドレスに身を包み、手に大きな「ヒレ」。その容姿、まさにストライクッ!! 気付けば、俺はそんな彼女の上に圧し掛かっていたんだ。 そんな彼女の顔が真っ赤になる。 ?「ぶ、ぶぶぶぶぶぶぶ無礼者ぉぉぉぉおおっ!!!!!!」 バチーン!!! タ「うぼぐぁっ!!」 大きなヒレに叩かれて空を飛んでるよ俺…… ?「な、なんじゃ貴様はっ!!」 タ「何だって……俺は一萌えもんトレーナーさっ!」 ?「トレーナーじゃと?丸腰のくせに何を抜け抜けと……!」 タ「それはだな、さっき萌えもんの一人に突き落とされたからだよ!」 ?「な、なんじゃと……!?」 タ「ほら、そう言ってるうちに来たぜ?」 ベ「……あ、死んでなかった……残念」 ウ「不吉な事言わないでくださいよぉ……よかった、マスター……」 ス「……もうちょっと強く押してればよかったかな……?」 フ「……ん? そこに立つ者、明らかにオーラが違うが……」 心配してくれるのウツボットだけだよ…… ?「……む?御主は『火の鳥』じゃな? 何故このような場所にいる。」 フ「……そこのトレーナーになす術もなく捕まったからだ。カイオーガ。」 タ「え?」 まさか、この可愛い子ちゃんがあのカイオーガというのかっ!! カ「で、そこの貴様、一体何の用じゃ!」 タ「お前を……俺の嫁にするために来たっ!!!」 カ「はぁ!? 何を言うのじゃこの愚か者はっ!!」 タ「俺は本気だぜぇ?」 カ「……ぬぬぬ……! ならばよろしい!この童に敵うのなら、仲間になってやってもいいわっ!!!」 突然洞窟内に雨が降り出したぞ……! そうだ、カイオーガの特性はあめふらしだったな。 フ「クッ……戦うのはいいが私はかなり不利だぞ……?水は好きじゃないし、相手のフィールドだからな……!」 タ「フフフ……それなら心配いらねぇ。こっちにはとっておきの切り札があるんだ!」 フ「切り札?」 タ「ジャンジャジャーン! マスターボールー♪」 一同「!!??」 フ「お、おい、マスターボールは以前私に使ったんだろ!? 何故今もあるのだ!」 タ「さぁ、なんでだろうねぇ?」 おおっと、カイオーガのお嬢さんはかなりの焦り顔じゃないか。 カ「な、何で貴様がっ……!」 ジリジリ後ろに下がってますよ?お嬢さん。 タ「さぁ、覚悟しな?」 カ「い、嫌じゃぁぁああっ!!」 タ「逃がすかっ! マスターボール!!」 逃げるお嬢に思いっきり投げる。こう見えても俺野球やっててな、コントロールには定評があるんだ。 よしっ、当たったっ! カ「そ、そんな……」 ボールに吸い込まれていくカイオーガ。微小の揺れの後、カチッと音がした。 タ「フフフ……カイオーガお嬢、ゲットだぜっ!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 早速お嬢をボールから出してやる。 カ「うぅ……卑怯であるぞ……」 涙目のお嬢。それもまた俺の萌え心をそそるんだぜ……! フ「納得いかん、何故お前がマスターボールをもう1個持っている。」 ウ「そうですよマスター、一体何処で手に入れたんです?」 タ「なぁに、俺はマスターボールと言っただけで本物とは言ってないぜ?」 カ「な、何じゃと!?」 タ「ほら、よく見てろよ。」 俺はカイオーガのボールを手に取って、表面をゆっくり剥がしてやる。見る見る嫁達の顔が変わっていくのがわかるなぁ。 フ「……! クイックボール……!」 ス「せこいわねぇ」 ベ「セコイ……」 カ「ひ、ひひひ卑怯じゃっ!! 童を騙しおって……!」 タ「別に俺はマスターボールって言っただけだ、それに、お嬢だったらクイックボールなんてすぐに逃げられたはずさ。」 カ「う……」 タ「でも何故捕まったのか。それは、当たった瞬間にお嬢が諦めたからさ。」 フ「二重の心理トリックか……。まさか、私を捕まえた時も……」 タ「いや、本物のマスターボールさ。だってあの時、スピアーとウツボットしかいなかったんだから。」 ウ「……正直、あの時無謀だって思いました……」 カ「うううぅぅぅぅぅぅぅ……!」 タ「どうしたお嬢? まだ文句でもあるか?」 カ「童の負けじゃっ! ……何処となりと連れてゆけ……」 こうして、お嬢ことカイオーガが仲間になった! 俺歓喜wwwwwwww ―――――――― ―――――― ―――― ―― タ「カイオーガってさ……」 カ「……何じゃ。」 タ「数少ない潮吹きを覚える萌えもんだったよな?」 カ「……そ、それがどうしたというのじゃ……」 タ「いやぁさ、どうやって潮吹きするのかな~って。」 カ「!!!!!!!!!!!」 タ「考えたら何か色々と……」 カ「ぶ、ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ無礼者ぉぉぉぉぉおおおおおおっ!!!」 タ「うわぁっ! ちょっと待てっ!! 水圧で押しつぶすn…あぐっ!?」 ス「押し置きが必要ね。」 ベ「うん……間違えて殺しちゃうかも……ふふふ」 ウ「はわわわわ……マスターがっ!」 フ「……ウツボット、ここは乗っておけ。女性の顔としてな。」 ウ「……え? でも……」 フ「ラストは任せるよ。」 『その後、隊長はカイオーガの水圧に押し潰されスピアーに蜂の巣にされベトベトンに悶絶死させられそうになりファイアーに黒コゲにされウツボットに飲み込まれましたとさ、めでたしめでたし。』 タ「めでたくねぇ!!」 カ「待てっ! この変態めがっ!!!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき 調子に乗ってサーセンwwww 今回はカイオーガということでいつもの登場メンバーとは違い、自分、隊長の嫁メンバーをくまさせていただきました。 カイオーガの萌えもんイメージイラストを描いてくださった穂様、この場を借りて深く感謝致します! グラードン姉さんも、女王レックウザも捨てがたかったんですが、カイオーガお嬢が一番ストライクだったんです、ハイw 後、これを読んだ皆さん。くれぐれも変な妄想を起こさぬようにw せめて、カイオーガとホエルオーの「しおふき」は暖かく見守らずに後ろを向いてやってあげてください。
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前回のあらすじ イワヤマトンネル突入 マスター「ひゃっはぁ!久々の洞窟だぜぇ!! って暗ぁッ!?」 ピカチュウ「ちょっと、なんにも見えないじゃない。」 ギャラドス「うっわ、見渡す限り真っ暗闇だ」 なんじゃこりゃ。 五分の魂を見せることすら叶わんばかりに一寸先が闇だ。 こっちはただでさえ、視力が半分ぐらい回復してきたところだってのに 勘弁してほしいよ・・・ フシギバナ「みんなー、どこー?」 ピカチュウ「ここよー」 ギャラドス「俺はここだぜー!」 マスター「ここだよー!www」 がばっ フシギバナ「きゃっ!?」 うむ、この感触と匂い、間違いなくフシギバナたんだクンカクンカ マスター「大変だ!こうもりの群れが!バサバサバサバサ!wwww」 フシギバナ「や・・・やめてください!」 ギャラドス「バレバレだっつーの」 フーディン「皆さん、落ち着いて。 ピカチュウ。フラッシュを使ってください。」 ピカチュウ「あ、そっか。それ!」 おー、明るい。とりあえず周りの壁や人物像等々の識別はできるようになった。 これでだいぶマシになったね。 マスター「おー、明るくなった。」 フーディン「これで、過度な支障はなくなったはずです。」 マスター「ナイスピカチュウ。これで俺達は先に進める。 さぁ、がんばろう!ゴールへまっしぐらだ!!」 フシギバナ「マスター、そろそろ離してくださいー・・・」 ギャラドス「いつまでフシギバナにひっついてる気だ!」 ゴンッ! マスター「パオーン!」 ピカチュウ「ハイハイ、とっとと進むよ」 いてて。頭がじんじんするよぅ。 んじゃ、ピカチュウたんの言うとおりとっとと先に進むか。 マスター「なんでこんなところにもトレーナーがいるんだろうな。」 ギャラドス「修行だろ、多分」 ピカチュウ「フラッシュなしでよくいられるよね・・・」 よーし、いつものように倒しまくるぞー ・ ・ ・ 「萌えもんファイトー!レディーゴー!」 マスター「頭壊されたら失格な!」 ピカチュウ「死ぬわ!」 ギャラドス「地球がリングだ!」 「家にいるときは萌えもんのイラストとか描いてる」 マスター「イラスト今持ってる?」 「持ってるよ」 マスター「是非見せてください」 「どう?僕のヤドンなんだけど」 マスター「エロイwwwwww」 「メイドコスのたくし上げは至高だと思う」 マスター「同意!同意!同意!123456同意!」 ギャラドス「戦え!」 「あの・・・萌えもんコスプレ知ってます?」 マスター「萌えもんにコスプレさせる人なら知ってます」 「いえ、私たちがコスプレするんですよ、萌えもんの」 マスター「お・・・おもしろそう・・・」 ピカチュウ「間違いなくキモいからやめて」 「俺の萌えもんテクニックでひーひーいわせるぜ!」 マスター「俺のテクニックもすげーぜ? なにせ、俺が萌えもんに近づいただけで 皆ウジ虫を見るような目つきになるんだからな!」 「俺なんか触れただけで、顔面パンチだぜ!」 マスター「俺は、顔面パンチどころか視神経捻られたぜ! 今も後遺症が残ってるんだぜ!」 「まいった!お前の方がテクニシャンだ」 しょうぶにかった! ギャラドス「いや、戦えよ」 「萌えもん図鑑作ってる?くそう!僕もやりたい!」 マスター「ほーれほーれうらやましいだろwwww」 「ちくしょう・・・!ちくしょう・・・!」 ピカチュウ「大人げない」 フシギバナ「なんか変な人いっぱいいるね・・・」 ピカチュウ「マスターみたいなのがうじゃうじゃ」 マスター「ここはなぜか居心地がいい・・・」 フーディン「インドア派に受けがいいみたいですね」 ここで出会ったトレーナー達・・・皆、強敵(とも)と呼ばせていただく!! ギャラドス「うら~かかってこーい。」 フーディン「早いところ潰してしまいましょう」 マスター「ヒドスwwww」 ・ ・ ・ 「やぶれたのか」 「ああ・・・僕くたびれた」 「まけちゃった」 「しょうがないですね」 「どーんと!こっちがやられた!」 「おいらの負けだ」 「やるなあ」 「やーん・・・!がんばったのに」 「おっとっと!パワー負けしたか!」 「ああもう!くやしい」 「・・・暗くてよく見えないんだもん」 「でなおしてくるわ」 「もう萌えもんないわ」 ピカチュウ「こ・・・これで全部?」 ギャラドス「さすがに・・・疲れたぜ」 みんな疲労困憊な様子。だが、トレーナー達と戦ってる内に いつの間にか洞窟の出口までたどり着いていた。 マスター「サンラーイズ!お日様やで!」 ピカチュウ「あー、照らすの疲れた!」 フーディン「ですが、萌えもんバトルはまだ終わっていないようですよ」 マスター「うえあー、こっち側のふもとにもトレーナーいるようですな。きついっつーの!」 フシギバナ「きっとラストスパートだから皆がんばろ!」 ギャラドス「メンバーで一番戦ってるってのにフシギバナは元気だなぁ」 フーディン「毎日の苦労が彼女の体力を底上げしたようですね。」 フシギバナ「そ、そんなに苦労してないよー」 マスター「俺のおかげだ!」 ギャラドス「氏ね」 ・ ・ ・ 「・・・・・・体調が悪いから仕方ないわ」 「ああー!大事な萌えもんちゃんが!」 「すーはーッ!あー負けたわい!」 マスター「よーし!萌えセンにダーッシュ!」 幸い、こっち側はトレーナーが少なかった。 俺達は萌えセンに駆け込み体力を回復した。 さて、シオンタウンに到着した。 これからどうするかな。 続く・・・
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*注意事項(こんなあたいの出ないような花の無し、落ちなしの作品にくらいしか必要ないものね~) *長いです。長過ぎです。ぐだぐだです。 飛ばして読んだり、読むの止めてくださっても構いません。(これもあんたの”ジツリキ”の無さのせいね!) *…悪い点、萌えが足りない点、無駄な点などがありましたら、 遠慮せずばしばし言って下さい!(このどMが!…あれ?Mってどういう意味だっけ?) *ちなみにうちのピッピは『ばかっこ』ですが、 作品には全く登場しませんので大丈夫です。(ば、馬鹿って何よ!馬鹿って言った奴が馬鹿なんだからぁ!) *馬鹿を馬鹿って言ってどこが悪い! それに”ジツリキ”じゃなくて”実力(じつりょく)って読むんだよ、 ねえ君知ってる?知ってるぅ?(う、う~~~!…こ、コメットパーンチ!) *ちょwwwおまwwwww ボカーン (ふっ、ふーん!悪は滅びるのさ!あんな奴のことなんかほっといてとっととSSはじめるさ!) ――――?????_視点 全身全霊をこめたクロスチョップの一撃を受け止められ、 カウンターに食らった電撃の衝撃であたいは後ろに吹っ飛ばされた。 体勢を整え、相手の様子を見るが、 相手がダメージを受けた様子は全くみえない。 最大の一撃をもってしても、あたいの攻撃ではダメージを与えることができなかった。 その事実に、自分の実力の無さが歯痒い…! 「もういい、オコリザル! 勝負は着いてる! これ以上戦う必要なんてない、下がれ!」 マスターの声が聞こえてくる。 言わなくても答えくらい分かってるだろ。 「嫌だ! 絶対に逃げない!」 昔…あたいがマンキーだった頃、 みんなに助けられるだけの自分が嫌いだった。 だから強くなろうと頑張った、ここに来るまで強くなれた。 他の仲間の誰よりも強くなる。 自分がみんなや、マスターを助けられるくらいに強くなってマスターの夢、 リーグ優勝を絶対にかなえるんだ、って。 どんな奴があたいに向かってきても、たとえ勝てないと分かってる相手だとしても、 あたいは敵に背中を向けない。 倒れるまで戦う、そう誓ってここまで来た。 でも、いくらあたいがそう誓ったところで、それはただの誓い。 現実は勝者と敗者がいて、勝たなければ勝負には何も意味が無いのに気づいたのは…マスターの戦法が相性勝負になった時だった。 相性、タイプ、属性…。 そして、―――実力。 「―い! ど――た!?――リザル!」 さっきまですぐ後ろの方にいたのに、マスターの声がどこか遠くから聞こえてくる。 そういや、あの電撃を食らってから、目の前にいる相手がぼやけているのに気づいた。 身体の方も、指先の一本まで、まるで言うことを聞かない。 さっきの電撃、 でんじ、は、…ぐっ! 膝が震えている、ここに来るまで受けたダメージもあるのに、 今こうしてたっているのも不思議な位だ…。 こんな大事な場面で、あと一歩なのに…! あともう少しでマスターは、みんなは、リーグに――! 「ぐっ、ぎぎ、…ぬぅっ!」 一歩足を前に出し、その一歩で地面に倒れた。 それでも、動けなくなっても最後まで相手から眼をそらさない。 今できることはそれしかなかった。 それが今の自分自身の、…限界。 「ハクリュー、…はかいこうせん」 その一声の後、全身を貫く熱い衝撃が走る。 だが身体がマヒしている今はそんな衝撃なんて認識することもできない。 意識だけがゆっくりと暗転していく。 やっぱり、あたいは…駄目なのか。 みんなみたいには…。 「オコリザルーーーーーッッ!!!」 ごめん、マスター…あと一歩だったのに。 あたいの意識はそこで途切れた。 タッタララーン、タラッターン!(初代ポケモンアニメ風な音で) 『オコリザル!一人の限界』 タラララッ、タラッタ、ターラン!(初代ポケモンアニメ風な音で) 萌えもんトレーナー、ジャックはここまで各ジムリーダーとの死闘を繰り広げ、 激闘の末、バッチをすべて集めることに成功した。 目指すは萌えもんリーグ優勝、ただ一つ。 だがリーグ挑戦した彼らは、最後の四天王ワタルに負けてしまう。 これはそんな彼らのリーグ挑戦への物語である。 ――――ジャック_視点 やあ、ジョン元気かい? おお、ジャック、ジャックじゃないか! 元気そうでなによりだよ、HAHAHA! おいおいジョン、そんな笑うこと無いじゃないか。 HAHAHA!何を言ってるんだジャック、 僕らは何度も一緒に夜を共にした中だろ? そんな細かいこと気にするなよぉ、 ほらいつものように、こっちにこいよ。 HAHAHA、今夜は寝かせないぞー。 「「ああ、いい!いいよジョン!アッー!」」 「だぁ~~~!!いい加減にしろ、お前ら!」 さっきから人が落ち込んでいる時に、レアコイルのうちの二人が変な電波を耳元でぼそぼそとつぶやく。 あまりに聞くに堪えない内容とそれを熱演するコイルの声に耐え切れず、俺は二人を振り払った。 そんな反応をおもしろそうに笑いながら、二人はもう一人の場所へ離れていった。 「「3号~、作戦成功いたしました!対象は反応を返す程度の元気は取り戻したようです!」」 ピシッ、と二匹のコイル(自称 1号、2号)が敬礼のポーズを取る。 「うふふ、よくやったわ1号、そして2号。 あともう少しよ。 後もう少しで禁断の扉は開かれるわ」 二人の頭をなでなでする電波の根源であるコイル(自称 3号)は何か意味深そうな笑みでこっちを見ている。 いつもならここで他の奴らの突っ込みがはいり乱闘になったりするのだが、 今日はその様子は一向にない。 実際、この部屋の中でこんなに明るいのはこのレアコイルのみ。 俺やそれ以外のリーグ参加メンバーの気分は最悪だった。 ここに来るまで、俺達は共にカントー地方全てのジムをまわり、 それに勝利してきた。 負けた数は10,20回なんてもんじゃない何度も何度も負け、旅を投げ出したくなった。 だけど俺は一人じゃなかった。 どんなときでも、萌えもんたちはただ俺に着いてきてくれた。 だからどんな困難でも打ち勝てると思ってたし、どんな相手にも根性で這い上がってきた。 相性と入れ替え、そしてトレーニングを重ね俺達はここまできた。 だが今回はいつもにくらべ相手が悪すぎた。 万全の準備を整え、俺達の全力を賭けて挑んだ萌えもんリーグ。 四天王の3人は非常に危ない戦いだったが、俺達は辛くも勝利を収めることができた。 もしかしたらこのままいけるんじゃないかと思った。 だが四天王最後の将、ドラゴン使いワタルは今までの四天王とは格が違った。 苦手の相性のないドラゴン属、そしてその全身を覆う硬い身体の前に、 俺の仲間では全く歯が立たなかった。 メンバー最大の物理攻撃であるオコリザルのクロスチョップすら、 ハクリューの硬い皮膚の前ではほとんどダメージを与えることができなかった。 ワタルの2人目の萌えもんの戦いまでの間に全滅した。 最低でも3人はいたはずだが、今の俺達では話にすらならない。 文字通りの完敗だった。 それから数日後、みんなの傷が完治し、 俺はこれからどうするか考えていた。 最大の敗因はドラゴンに対抗できる仲間がいなかったこと、 だがドラゴンに相性のいい属性がわからず、俺達はただ悩むばかりだった。 相手は四天王のワタル、身体を鍛えたところですぐに勝負に挑めるような相手じゃない。 それに、もう一度俺達があいつと戦うためにはまた四天王の3人を超えなければならない。 あの戦いの場にたどり着くのさえ、俺達には全て辛い戦いだ。 有効な策を練っている中、 不意に部屋の気温が数度下がったような気がした。 部屋の窓が外からの冷たい冷気を含んだ風を運び、 一人の萌えもんが帰ってきた。 「ただいま~」 その萌えもんが空から部屋に入ってきたとき、 窓辺から先ほどより冷たい冷気が部屋中に広まる。 フリーザー、以前ふたごじまで捕まえた伝説の萌えもんの一人。 あの見た目の冷たい印象と違い、元気なボクっこだった。 捕まえる前は戦闘の恐怖で表情も固まっていたらしく、 戦った時はお姉さんの印象が強かったが、捕まえてみると意外や意外元気なボクっこ…。 捕まえた後、どこかそう…、 何か釈然としない、もやもやな気持ちになったのも今では思い出だ。 普段は基本伝説の萌えもんである彼女を俺は使わない。 というよりも、俺じゃ使いこなせない。 すべてを凍らす絶対的な戦闘能力を持つ彼女を使いこなす自信がなかった。 だからといって彼女を野生に逃がすのもパソコンに預けるのも忍びなく、 そして何より彼女の提案もあり、今は放任している。 何でも彼女はカントーを飛び回ったり、見回るという使命があるらしい。 伝説の萌えもんの名は伊達ではない。 各地の萌えもんの様子を見守り、異常があったら彼女はそれを叩く。 忙しい時には1ヶ月くらい帰ってこないこともあった。 自由でとらえどころの無く、どこか不思議なオーラに包まれた萌えもんだった。 「あれ?ますたー、それにみんなどうしたの? なんか元気ないね」 みんなの様子がいつもと違い、自分がいない間に何があったか知りたがった。 …そうだ! 伝説の名を持つ彼女だったら、もしかしたらドラゴンの弱点を知っているかもしれない。 とりあえず、彼女にリーグ戦のことを説明した。 「いやな、…これこれ鹿鹿で」 「…かくかくうまうまってことがあったんだね」 それを聞いたフリーザーは少し考える仕草をとり、何かを考えている様子だった 「ドラゴン…、 そういえば昔ファイヤーから、 ドラゴンは冷気に弱い、って聞いたことがあったような~」 「なにっ!それじゃ冷気が強いお前なら勝てるのか!」 俺の話の食いつき様に驚いたのかフリーザーは驚いていたが、 それだけ今の俺達には余裕が無かった。 どうしても、俺はリーグに勝ちたかった。 「え?ちょ、ちょっとマスター。 これは噂だから確証も何もないですよ?」 「噂だっていい、今は――」 「できることがあるならその全てをやるべきよ」 この会話の中、今まで顔を伏せていたフーディンが立ち上がった。 みんながフーディンに視線が集める中、俺はただ一人俯いたまま顔を上げないオコリザルに気づいた。 あの戦いの後、オコリザルはどこかみんなとは距離をおき、一人で過ごすようになった。 きっと、最後の最後にバトルに出て、負けたことにプレッシャーを感じていると少なくとも思った。 いつものように次の日には馬鹿笑いできるくらい元気になるかと思ったが、一向に元気になる気配は無かった。 「マスター、オコリザルとフリーザーを交代することを提案します」 「「「「!?」」」」 「えっ、ぼ、ボクが?」 「なっ!」 そんなオコリザルのことを心配した矢先、フーディンの提案に俺もみんなも驚きを隠せない。 なぜならその言葉が意味すること、 それはオコリザルに対する戦力外通知に他ならない。 「そ、そんなフーディン!ひどいじゃないですか!」 「……」←怒りの表情 ウインディはそんなフーディンの言葉に食って掛かる。 ギャラドスも口には出してないだろうけどかなり怒っている。 「あら?何か問題でもあるの、忠犬」 「も、問題ありますよ! 僕達はここまでみんなで一生懸命鍛えて、励ましあって、 ともに頑張ってきた仲じゃないですか!どうしてそんな酷い事淡々といえるんです!?」 その口論が始まった中、話題の中心にいるはずのオコリザルは口を開かない。 いつもならウインディが出る幕もなく食って掛かるはずの暴れん坊のこいつがただ黙って何かに耐えるように下を向いていた。 「酷いですって?私達がここに来た目標を忘れた? リーグの優勝を果たすこと、…それがマスターの夢。 なら私達はそれを叶えるのが目標…そうでしょ? だったら…」 そう言って、オコリザルを見ながら言葉を続ける。 「勝てる萌えもんがいるなら、 勝てる萌えもんで行くべきよ」 そうはっきりと断言した。 その一言でウインディも、他のメンバーも何もいえなくなった。 フーディン、お前は確かに正しいかもしれない、 でもいきなりそんな―― 「だったら抜かせばいい」 この空気の中、初めてオコリザルがその重い口を開いた。 その表情にはいつもの怒りも勢いもない。 でも静かな表情で下を向いたまま言った。 「マスターが良いんだったら、フリーザーを加えればいい…」 「お、オコリザル!待て!」 俺が止める前にオコリザルは静かに自分のボールに戻った。 その間、俺も他の萌えもんの誰しもが何も言えず、ただ見送ることしかできなかった。 その何も話せない空気の中、俺はさっきのフーディンの言い方がどうしても許せなかった。 「フーディン、 自分が何を言ったのかわかってるのか?」 「……」 フーディンは何も答えないただオコリザルの入ったボールを見ている。 その表情は顔を伏せてるせいか見えない。 だが沈黙という答えに、俺はますます自分の苛立ちを抑えきれなくなった。 「オコリザルの気持ち、考えたことがあるのか。 あいつは、あいつはみんなの役に少しでも立ちたいからここまで、 ここまでずっと死ぬ気で―――」 パリンッ! 俺のすぐ横にあった花瓶が突然音を立てて割れた。 「なら…あんたはどうなのよ」 フーディンは俺の方を見ない、ただボールを見ている。 その声には怒りや悲しみ、それ以上の激しい感情だった。 「あんたはオコリザルの、 ここまでオコリザルの何を見てきたのよ!」 …返す言葉が見つからなかった。 その日の夜、どこからか冷たい空気が部屋に入り込む中、 俺はその急な寒さで目が覚めた。 「ん? 誰だ?窓を開けたのは…」 寝ぼけ眼で窓のそばまで歩き、窓を閉じようとしたそのとき、 下を誰かが歩く姿が不意に見えた。 あの両手につけているボロボロのグローブ、 見覚えのあるくしゃくしゃの寝癖のような髪型、 あれは… 「オコリ…ザル!?」 寝ぼけていた頭が一気に覚めた。 パジャマ姿も気にせず、俺はオコリザルを追いかけた。 数十分、オコリザルにばれないように慎重に忍び足で追いかけた。 着いた場所はチャンピオンロードとリーグ会場の途中にある岩場、 俺らがここに来る前に最後に登った場所だ。 こんなところまで着て、 何をやろうとしてるんだ、あいつは。 オコリザルを少し離れた場所から岩に隠れて見ていた。 そして、適当な場所が見つかったのか、オコリザルよりも5倍近く大きな岩前でオコリザルは腕を十字に構えた。 あの構えは…。 俺がその見覚えある構えに気づいたとき、 ミシッ! オコリザルのクロスチョップでその岩に亀裂が走り、轟音が空に響く。 だが岩は崩れない。ただひびが入っただけだった。 再びオコリザルは構えを取り、突撃する。 ミシミシッ! だが岩が崩れる気配は依然としてない。 それでもオコリザルはあきらめない。 ミシッ! もう一撃。 ミシッ! もう一回。 ミシッ! クロスチョップのPPが底をついたのか、地面にひざをつけ、荒い息を整える。 岩は依然として崩れる様子は見えず、ただ静かにあった。 本当はすぐにでもやめさせるために走りたかった。 でもできない、今のオコリザルを止められない、止めてはいけないふいんき(なぜか変換できない)だった。 今度は右腕を振り上げ、岩に再び一撃を加える。 ゴンッ! 今度はからてチョップ。 通常のポケモンなら大ダメージを与えるだろう技であっても、 その岩が砕ける様子はなかった。 だがあきらめない。 それでもオコリザルは懸命に岩を叩き続ける。 ゴンッ!ゴンッ!ゴンッ! あいつ…一体何してるんだよ、 あんな…四天王シバのカイリキーのいわくだきでも砕くことのできないような大きな岩になんで挑んでるんだよ。 …違う、挑んでるんじゃない。 オコリザル、 お前は何をその岩にぶつけてるんだ…。 ワタルとの試合を気にしているのか? その挑戦は夜が明け、明け方近くなった今でも続いていた。 両腕のグローブはさらにボロボロになり、その姿も土で汚れていた。 疲労で既に立つこともできないように見えたが、 それでも立ち上がる、這い上がり岩に挑む。 「ウオオオオッ!」 最後の最後の全力を振り絞り、 放った右ストレートのパンチ。 技でも何でもない、ただ勢いだけのパンチだった。 ゴッ。 そのパンチで岩が崩れるわけない。 オコリザルはそのまま岩に抱きつくように倒れる。 このとき、俺は勝手に動き出し、 気づいたときには全力で走りよっていた。 オコリザルに急いで近寄る。 疲れ切った顔、閉じたまぶた、止まらない息の上がり、…胸が痛む。 その姿になるまで見ているだけしかできず、近よって止められなかった自分が憎い。 「おい!大丈夫か、オコリザル!」 「はぁ…、はぁっ…、 ま、はぁ、すたー…はぁ」 「ああ~もうしゃべるな! と・に・か・く!少し横になれ!」 「あっ、ま、マスター!」 オコリザルは俺にされるがままに俺の膝の上に寝かられた。 最初は真っ赤になって、照れているのか少しじたばたしていたが、 やがて抵抗しても無駄と気づいたのか、身体を俺に委ねた。 息も落ち着いたが、 今度は何も言わずに、俺と視線をあわせるのを避けた。 「……。」 「……。」 互いに何も話せなかった。 話す言葉が見つからなかった。 でも俺はオコリザルと話をしたかった。 しばらく無言のまま、ただ時間だけがゆっくり流れる。 俺の視界が太陽の光で一気に広まり、 セキエイ高原に朝が訪れた。 ふと見渡すセキエイの景色、 それは今まで見てきたどの場所よりも荒れ果てていた。 ここは萌えもんトレーナーの多くの者にとって夢の場所であり、 同時に絶望を与える場所でもあった。 一体この風景を見た何十、何百のトレーナーがリーグの夢を捨て、去ったのか。 そして、何人がリーグを優勝してこの景色を眺めたのか。 見渡す限り岩しか見えない荒れ果てた土地とは反対に、 リーグ会場はその中に不自然にぽつんと光を放つように建っていた。 そんな光景を見渡しているうちに、 気づいたら無意識に膝の上で横になっているこいつに話しかけていた。 「…なあ」 「……」 「あの岩に 何をぶつけてたんだ?」 初めて俺の方を向き、その目を見た。 だがまた視線をそらした。 さすがに野暮がすぎたか。 自分の無頓着さになんとも言えず、 次の言葉を捜していたとき、 「不甲斐無さ…、 悔しさ…、 情けなさ…、 …弱さ、そして」 ポツリポツリと話し始めた。 最後は涙声になっていた。 「自分の…限界」 今まで、マンキー…いや、オコリザルは弱音を言ったことなんて一度も無かった。 どんな相手にも、たとえ苦手な相手だったとしてもただ己の拳のみで挑んだ。 何回負けても何度挫けそうになってもこいつは根性で立ち上がったんだ。 そんな現メンバーのエースであるフーディンとは別の意味で、 こいつはみんなに勇気を与えるような存在だった。 カスミとの二回目の戦いでは、苦手な相手であるスターミーの猛攻にみんなが怯えている中、 『は!あんなやつ、 あたいの拳でK.Oにしてやんよ!』 一番最初に飛び出して一撃であえなく玉砕した。 フリーザーの時は、あの全身を貫く氷の視線を受けてみんながすくんだ時に俺を一蹴りし、 『ぼさっとすんな! 全軍!続けええええ!!!』 と渇を入れ、最初に飛び込んでいったのは他ならないオコリザルだ。 一瞬で氷づけになっちまったけどな。 それでも、負けて傷ついても、 瀕死状態になってもいつもあいつは、 『ははは、やっちまったぜ』 と眩しい笑顔の一言で済ませた。 …でも、その姿を見るたびに俺の胸はどこか痛んだ。 それは顔には出さないがみんなの心の中も似たような感じになったはずだ。 オコリザルはみんなを勇気付けても、 先頭に立って守ることはあっても、 あいつは誰の協力も借りず一人で戦った。 その信念を真っ向から否定する勇気が俺には無かった。 それを否定することは、オコリザルの戦いすべてを否定するということ、 そう思ったら何も言いだせないさ。 それからだった。 俺は相手の弱点のタイプだけを出して戦うようになった。 弱点だけ、それ以外は絶対に戦闘に出させない。 その方が効率的だし何よりも、みんなが傷つかない。 俺はオコリザルやみんなに、これ以上瀕死の傷を負わせたくなかった。 でも同時にそれは、 得意なタイプの少ないオコリザルから戦う場を奪うことになるのだと、 わかっていたとしても。 「誰よりも、他の誰よりも強くならねえと、 みんなを引っ張っていこうと思った。 …でも駄目なんだ。 俺はフーディンには絶対勝てない、 フシギバナのようなまとめるリーダーシップもない、 ギャラドスのように海を渡れないし、空も飛べない、 ウインディのような速さもない、 ましてレアコイルのような特殊能力なんてない。 あたいにあるのは…この拳だけなんだ。 マスターがあたいを出さなくなって、できることもなくなった」 オコリザルが顔を向けるのは朝日を隠す大きな岩。 その視線には怒りも、憎しみも無く、 ただ静かな静観があった。 ただ一言、戦闘に参加させろって言えばいいのに、 こいつは…俺が戦いを奪っても何も言わず、 自分の役割を、戦うという役割を果たすために…まってたんだな。 俺が俺の指示で戦うのを待ってたのか。 「この岩があたいの…限界、 崩せない壁」 オコリザル、それは違う。 違うんだよ、何でお前は一人で、 こんな旅の最後の最後のタイミングまで弱音なんてはかず、 そんな意地なんて張りやがって、 なんだよそれ。 今、ここで何か言わないとオコリザルはもう戦えない。 オコリザルにただ戦ってほしいんじゃない、 俺は…今のオコリザルを俺は見たくない、 一人で突っ走るこいつを見ていられない。 「そんなこと――」 「限界って便利な言葉ね」 急に身体が中を浮かび、あの岩から少し離れた場所で身体が地面に落ちた。 膝の上にいたオコリザルは俺が地面に当たった後、俺の上に落ちてきた。 ここまで俺達を運んだ不可視の力…、超能力。 これは…ねんりき!? 「ふ、フーディン!」 俺達をここまで運んだのはフーディンのねんりきだった。 フーディンの後ろにはいつものメンバーがそこにいた。 「おはようございます、マスター、…それにオコリザル」 「び、びっくりしましたよ。 よな…あ、朝起きたら二人がいなくなっていて」 「「「大丈夫ですか、(マスター)(オコリザル)(貞操)!」」」 「…こんな誰もいない場所で二人っきり、 …どきどき」 フーディン、ウインディ、レアコイル、そしてギャラドス…。 オコリザルも驚いている様子だった。 ここはリーグのセンターから数十分も離れていて、 数ある岩のある場所からひとつ。 まさか、こいつらも俺みたいにずっと―― その中でフシギバナが一歩前にでてオコリザルの様子を少し見た後、 俺に顔を近づけ、数十センチ手前まで顔を近づける。 「マスター、オコリザルはこれほどまで疲労しているが、 誰がこんな姿に?」 「え?ええっと――」 必死になって言い訳を言うか言うまいか悩んでいる時、 フシギバナの眼はちらちらと岩の方を向いているのに気づく。 有無を言わせぬ眼で訴えているのが俺にもわかった。 「…あれだよ、あの岩」 この視線に負け、俺はあの岩を指差した。 全員の視線が岩へと移る。 すでに夜も明け、太陽の光にさらされた巨大岩。 オコリザルの超えられない壁。 朝日の光で岩は照らされ、 オコリザルの格闘の後が刻まれていた。 表面から中心にひびは入っているものの、岩の中心部を砕くに至らない。 その何度も何度も拳で刻まれた跡は、オコリザルの必死の抵抗のようで、心が痛んだ。 「ふーん」 「うわぁ、これ全部オコリザルの手形?」 「「「すごぉ~い(痛そうです~)(うわ、岩に血がついてる!)(…血が飛び散るほど激しく)」」」 「……」←何も言えない位驚いている様子。 みんながみんな一長一短の驚きを表現する中、 オコリザルはただ何も言わず黙ったままだった。 そんなオコリザルの様子に気づいたのか、フーディンはオコリザルの近くまで歩く。 オコリザルもフラフラと足元もおぼつかない様子だが、それでも立ち上がり向かい合う。 「…なんだよ」 まだ涙の消えない泣き顔だが、それでもフーディンに向かい合う。 「どうしたの、その情けない顔。 もしかしてあの岩を崩せないのがそんなにくやしかったかしら?」 フーディンの視線を受け一瞥するが、 返す気力が無いのかすぐ視線をそらす。 「…ほっとけ」 昨日よりはすっきりしたように思えたが、 まだいつもの騒がしさとは程遠かった。 「あらあら随分、威勢の弱いこと。 たかだかあんな岩でボロボロになるなんて、あほらしい」 「……っ!」 フーディンに返す言葉が見つからないのか、 何も言わずオコリザルは視線をそらした。 またか、…また攻めるのかフーディン! これ以上オコリザルを攻めるのはいくらお前でも許せないぞ! 「フーd、…ん?」 急に服の裾を引っ張られ、後ろを振り向いてみると、 フリーザーが笑顔で右翼を自分の口に当て、俺が話すのを制した。 今は黙っててあげて、ね? そんなフリーザーの声が聞こえたような気がした。 「まったく、岩なんか壊す意味なんてないのに、 そんなに怒りをぶつけたいなら私達にぶつけるいつもの威勢はどこにいったのかしら。 いつまでもそんな…なさけ、~~~ああもう!イラつくわね! 泣くな、この脳筋!」 ポカッ 話をしている間にフーディンはオコリザルの頭を軽く叩いた。 その力はいつもの喧嘩の時のような激しさではなく、 小さい子を叱るような感じだった。 「あてっ、 い、いきなり何すんだよ」 「いい、この馬鹿猿! 限界、超えられない、そう考える事自体間違ってんのよ! こんなものあんた一人で壊す必要なんてないし、壊さなくたって先なんか進めるわよ! でも、行く手を阻む岩だったら…!」 フーディンが右手のスプーンを岩の方に向ける。 それと同時に俺の耳元でキィィィンという音が響き始めた。 フーディンがサイコキネシスを放つ前の予兆! ミシミシミシミシッ! あの岩がサイコキネシスの超念力の力で表面から崩れていく。 だがサイコキネシスの力のみでは表面が削れても、中の厚い部分までは削れない。 同時に、何か合図したわけも無いのに他のメンバーは動き出す。 ギャラドスのハイドロポンプ、 ウインディのかえんほうしゃ、 レアコイルのトライアタック、 フリーザーのれいとうビーム、 そしてフシギバナのソーラービーム、その全てがほぼ同時に、 オコリザルが付けた大きな亀裂の入っている場所に一斉に攻撃する。 バギギギギッ! …なんだ、みんなわかってるじゃねえか。 本当に大事なこと、オコリザルに伝えたいこと。 俺が…誤解していたこと。 バガアアアアァァッ! てことは一番のわからずやは俺だった、ってことか。 その空に朝を伝えるドードーの声よりも大きな轟音がセキエイ高原に響き渡る。 こうしてオコリザルが挑戦し、負けた岩はみんなの力で呆気なく崩れた。 「…ふん」 そういってフーディンは顔をそらし、オコリザルに背を向け、離れていった。 「あ、え、…え?」 オコリザルはただこの流れについて行けず、 文字通り固まっていた。 みんなが振り返り、オコリザルを見つめる中、 俺は後ろからフリーザーに突かれる。 俺の役割まで決めているのか、お前らは。 …情けない話だ、俺の役割まで用意して、 こんな場面まで作って、さあ頑張れってか。 …ありがとな、みんな。 例えそれしかできることがなかったとしても、 己の全力を掛けること。 …お前の信念、難しいな。 俺はしゃがみこみ、オコリザルの顔をまっすぐ見つめる。 先ほどの岩の衝撃で、 固まったままのオコリザルは俺の視線に気づいても先の衝撃が抜けず、唖然としたままだった。 そんな状態にかかわらず、俺は息を吸い、オコリザルに伝える。 「いいかオコリザル、よぉ~く聞け!」 「な、なに? な、なんだマスター」 オコリザルはこの展開に流される、ただ流される。 今なら、伝えられる。 「俺達はここに来るまでみんな一緒に辿り着いた。 …違う、みんなだからここに辿り着けたんだ。 みんなをまとめるフシギバナ、 無口だが性格はいいだろうギャラドス、 忠犬ハチ公ばりに頑張り屋なウインディ うちのNo.1のエース兼ツンデレのフーディン、 変な電波を常に放ち続ける訳わからんレアコイル、 そして…」 オコリザルの両肩に手を当て、顔を見つめながら話す。 「どうしようもない暴れん坊で、 自分の信念しか信じて疑わず、 負けるとわかっても逃げずに立ち向かう無謀の者の癖に、 それでも絶対にあきらめない。 …オコリザル、おまえだ」 自分でも随分臭い台詞だとわかっているさ、 でもここで言わなきゃいけない。 ここでこいつに教えなきゃいけない。 「俺は、お前を連れて行く。 今のみんなでリーグに行く、そう決めた」 俺がそう言っても、オコリザルは顔をそらす。 「で、でもあたいは…戦う事しかできないし、 ドラゴンの硬さも崩せないし、 フリーザーの方が――」 あ~もう!こいつは、 こういうときに限ってどうしてそんなにうじうじしてるんだ! 「この分からず屋! 強い?弱い?属性? 知ったことか! 俺は、お前がいいの! お前がじゃなきゃリーグを突破しても意味が無いんだよ!」 つい勢いで力いっぱい抱きしめる。 ピキッ 周りの空気が一瞬、零度近くまで冷えたような気が…、 で、でもそんなの関係ねえ! 「俺は、リーグで勝ちたいからお前と行くんじゃない! お前と一緒に勝ちたいからリーグに行くんだ!」 「……。」 ここまで言い立ててきたが、 先に俺の方が頭が冷えてきた。 あまりの勢いでしゃべったのはいいが、肝心のオコリザルが何も反応を返さない。 ただ顔と眼が赤く、それもトマトのように真っ赤に染まっている。 ま、まさか説得に失敗!? それともまた泣かせちまったのか。 なんとも言えない空気の中、ようやくオコリザルの口が動いた。 「……あ、あり、あり、あり」 オコリザルは泣きながら、 それでも必死に何かを伝えようと涙声で、 その言葉を言った。 「ありがとう、ま”す”たー、…み”んなぁ!」 そしてオコリザルは泣いた、 それはオコリザルがマンキーの頃から付き合ってきた俺でさえ初めて見た、 オコリザルの本当の泣き顔だった。 それからしばらくの間オコリザルは俺の胸の中で泣き続けた。 その涙が止まるまでずっと泣き続けた。 ―――― 一ヶ月後 そこには笑顔で庭を走り回るオコリザルの姿が! 「あのときはほんとに駄目かと思ったよ」 「もう二度と巨大岩を崩すことに挑戦なんかしないよ」 「変な妄想を口から溢れて出すの、止めて下さらない?」 「はい、すみません」 妄想が止まらずいつの間にか口から言い出していた俺をフーディンは叱った。 レアコイルの汚染がここまで広がってきたか。 あの日から地獄だった。 後悔はしていない、 でもあんなに張り切られるとは思ってもみなかった。 その日の昼には元気を取り戻したオコリザルは今まで以上のハイテンションでみんなを無理やり特訓を始めさせた。 朝の早朝ランニング、トレーナーバトルでは先頭を無視してバトルと聞いたらすぐに飛んで出て来るようになり、 チャンピオンロードの萌えもん相手に大喧嘩し、洞窟がゆれたのもいい思い出だ。 夜は寝る前まで格闘技の底上げ、兼新たな作戦や熱血のテーマソングについてのミーティング。 朝は起きたらレアコイルの恥ずかしい俺の台詞の目覚まし…、 特訓に全く関係ないのもあるが、今まで異常に忙しくなったのは本当だ。 でも、オコリザルは無茶をして勝とうとすることは無くなった。 ピンチになると、すぐにみんなの手を借りたり、逆にみんなからも助けを呼ばれるようになった。 おかげで以前よりも、みんな今までとは違う意味でも強くなった気がする。 それはきっととても単純なこと、 みんなで戦うことを思い出せたから。 一人で一体を倒せないなら、 みんなの力を合わせて勝つことを、もう一回思い出せたからだ。 それを本当の意味で教えてくれたのは…フーディン。 一番偉そうにしているわりに、結局一番みんなを気に掛けているあいつは流石だな。 でも、あいつに頼ってばかりじゃいけない。 俺だってそうだ、戦法や技を考え、あいつらが気楽に勝てる作戦くらい簡単にひねり出せるようにならないといけない。 今まで以上に俺がみんなを信じないと、四天王や…ここに先に来ているだろうジョンには勝てない、きっと。 ……ん? ……ジョン? いや違う違う、確か…シゲ……ハル? だったっけ?え~っと…誰だっけ? 誰か忘れているような気が…まいっか。 まあ、何にしろ、俺は今再びここに、萌えもんリーグへの入り口に再び立っている。 今度は前のようにはいかない。 もうみんなが倒れるようなことには絶対にしたくないし、そんなことさせない。 今度はみんなで勝つ、勝ってみせる! バシッ! オコリザルが両手にはめているボロボロの…、でもどこか輝きを放つグローブを勢いよくうならせ、 右手をリーグの入り口に構え、大声で宣言した。 「おおっっしゃぁぁぁ!! 四天王ぉ!首あらってまってろやぁぁ!!!」 「またうるさいのが…。 いい加減場を読むことすらできないの、この脳筋」 「ああっ!なんだとこのツンデレ!」 「そんなでかい口で大声上げないでくださらない、耳障りでしかたないわ。 あとツンデレはやめてくださらない、ツ ン デ レは」 「あ~~もう、またはじまったぁ。 もうマスター、マスター! 何とかしてくださいよ~」 「「「この二人の仲は永遠に変わりそうにないですね(犬猿という意味で)(うさぎとかめ的な意味で)(百合ゲラー的な意味で)」」」 「……二人の仲は永遠に」←どこか満足気な様子 「で、でかい口だあ!? く~、こ、このツンツンツンツンデレ!」 「な!つ、ツンを4回も言ったわね!」 「4回がなんだ!、 何度だって言ってやるぞ、このツンツンツンツンツンデレ!」 「5、5回までも…! こ、この脳筋!暴れ猿!なめ猿!無能猿!ヤンデレ(ヤンキーデレ)!」 「い い 加 減 に し ろ 、 お 前 ら は !」 「あらあらこれはいつも騒がしいトレーナーのジャックさん、 ここはリーグ会場といっても萌えもんセンターを兼ねてるんですからね。 耳かっぽじってよおくきけこのダラズ。 センターの前では お 静 か に お願いします」 「げぇっ!ジョーイさん!! す、すぐに鎮圧致すであります!」 「…やれやれだぜ」 フシギバナが静観する中、わいわいがやがやといつもの奴が始まる。 この様子じゃ、誰が来ても、どんな萌えもんがでても、どんな強い奴がいようとも―― 負けるわけがないな! きっと、いや、絶対、…多分(汗)。 と、とにかくさっさと行くか! 「い、行くぞお前ら。 とっととボールに戻れ」 その俺の一言で、一部不満を言い続ける奴もいながらもみんな大人しくボールに入ってくれた。 「へーん!あたいは知ってるぜ、ずっと前にスプーン2つ眼に当てて――」 「ななな、いきなり何ふざけた事言い出すのよ!だだだ、黙りなさい!」 あのー…まだやってるんすか。 もう扉開いてるんですけど…。 こうして俺達は再びリーグ戦へ向かう、 一歩、そしてまた一歩、俺達は進む。 今度こそ勝つために! こうして再び萌えもんリーグに挑戦するジャック。 果たして、彼らはワタルに勝つことができるのか。 そしてリーグ優勝をその手につかむことができるのか。 リーグ優勝を目指す彼らの冒険はまだ続く。 続くったら、続く。 To be continued...(?) 「そういえばマスター、オコリザル。 まあ期待していないし、敢えて聞かないでおいてあげたんだけど、、 結局ドラゴン対策はどうなったのかしら?」 「「あ」」
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- 大みそか午後10時・マサラタウン・マスターの家・自室、こたつを囲んで - ピカチュウ「マスター、今年もあとちょっとだよ!」 マスター「ああ、そうだなピカチュウ」 フーディン「しかし、お母様の年越し蕎麦は絶品だったね。あんなものそうそう食べられる機会はないよ」 ロコン「このみかんもおいしいです」 マスター「いつも義母さんが箱ごと買ってくるんだよ…義父さんがいない時は今まで二人でひと月近くかけて消費したってのに」 シャワーズ「そういえば、マスターのお父様はいったい何のお仕事をされているのですか?」 マスター「まぁ、俺と同じトレーナーだな。一応、セキエイリーグ最長防衛記録持ちの元チャンピオンだ。 今はどっかのリーグで助っ人防衛したり、どっかで講演したり、修業したり、弟子育てたりしてるらしい」 5人「「「「「えーっ!?」」」」」 マスター「すごい人と言えばすごい人なんだろうけど…俺からすればただの変なオヤジにしか見えねぇな。 そもそも俺みたいな犯罪組織幹部の息子を拾って育ててくれる時点で変っちゃ変なんだけど」 フシギソウ「でも、ある意味その人のおかげなんだよね、ボク達と御主人さまが出会えたのは」 マスター「まぁ…そうだな」 フーディン「その人に会った時にはお礼を言うべきかもしれんね。 それじゃあマスター、お母様はお父様とどういう知り合いかたをされたんだい?」 マスター「あぁ、どうやらあの二人は小さい頃から仲がよかったらしいな。所謂幼馴染って奴だ。 義母さんも昔はトレーナーやってたらしい。当時の手持ち萌えもん達は、ほとんど義父さんの仕事を手伝ってる」 シャワーズ「プクリンさんやウィンディさんも、お母様のパートナーだったのですか」 マスター「そうみたいだな。俺がこっちに来た頃はずっとあの子たちに面倒見てもらってたから…」 フシギソウ「マスター、このメモって何ー?」 マスター「ん、…なんだこれ?」 『お題 キャラ紹介をしなさい。一人に対して他の全員がそれぞれ印象を述べよ』 マスター「な、何だこのメモ…いたずらか?」 カーン! マスター「でべしっ!!」 シャワーズ「マスター!?」 ピカチュウ「大丈夫、マスター!?」 ロコン「おねえちゃん、これ…」 フーディン「…金だらいだな、どう見ても。何というか…古風だな、いろんな意味で」 マスター「痛ってぇ…これはもうキャラクター紹介するしか無いみたいだな…」 ・マスター マスター「じゃあ、まずは俺からか」 フーディン「まぁ当然だが、私達5匹のマスターだな。年齢は…」 マスター「10代後半とだけ言っておく。身長、年齢ともに普通だな。どこにでもいる萌えもんトレーナーだ」 ピカチュウ「オーキド博士に依頼されて、萌えもん図鑑完成のための旅をしてる凄い人!」 フシギソウ「その当時はボクもフシギダネで、3匹の中から御主人さまが選んでくれたんだよ!」 シャワーズ「とっても優しいお人で、ロケット団に追われていた私を助けてくれました!」 ロコン「おこると、こわいです…わたしたちはおこられたこと、ない、ですけど…」 フーディン「どことなく普通のトレーナーとは違う何かを感じるね。私はそこに惹かれてパーティに入ったのだけど」 マスター「OK分かった。それ以上言われると恥ずかしくて死んでしまうからホントに止めてくれ」 フーディン「何気にあっちの方も…結構凄いよね」 フシギソウ「う、うん…」 シャワーズ「ですね…」 マスター「ホントお願いだからやめてくれ」 ピカ・ロコ「???」 シャワーズ「今のところ、バッジは7つ、クリムゾンバッジまで。…図鑑のデータは100種類ほどですね」 フーディン「持ち物は…結構普通だね。薬類・ボール・自転車・つりざお・etc… マスター、炎の石と雷の石はいつ使うつもりなんだい?」 マスター「あー、それか?できれば技を一通り確認してからのつもりなんだけど。 今の状態でも十分強いからな、ロコンもピカチュウも」 フーディン「なるほど。…まだ進化はしばらくお預けだね」 ピカチュウ「えー」 ロコン「はい…」 シャワーズ「そういえばマスター、今までかなりの数の萌えもんをゲットされているみたいですけれど、 なぜ私達を使っているのですか?」 マスター「…何でだろうな。…まぁ、持ち運べるボールは6つまでだしな…属性のバランスなんかもあるけど、 基本的には俺の印象と言うか好みと言うか…相性みたいなもので本能的に決めてる。 萌えもんトレーナーってのは大抵がそういう選び方らしいしな」 フーディン「まぁ、場合によってはボックスから6匹目を呼び出していることもある訳だな。 ラプラスやじんすけ君、プテラ、カビゴンがよく入るね」 ・フシギソウ マスター「次はフシギソウな。俺が旅を始める時にオーキド博士からもらった奴だ。 当時はフシギダネだった。ピカチュウが入るまではほとんどこいつと二人旅だ」 フーディン「パーティ内唯一のボクっ娘だな。私達の中でレベルは一番高いのでは?」 シャワーズ「メイン技は、ねむりごな・はっぱカッター・やどりぎのタネあたりですね。 …とっくにもうフシギバナになっていてもおかしくないと思うのですけれど…」 マスター「たぶん、次の作品の時間軸によっては進化してるんじゃないか?ピカチュウやロコンも」 ピカチュウ「マスター、それ何の話?」 マスター「後は…基本的に器用だよな。料理もうまいし」 シャワーズ「背も私達の中では一番高いですよね」 ロコン「むねも、おっきぃ…です」 フシギソウ「え、ちょっとロコン、何言ってんの!?」 フーディン「ふむ…マスター、前回は結局私達全員の裸(タオルあり)を見た訳だが… 主観ではどんな感じだい?何とは言わないけれど」 マスター「…やっぱりそう来るか。怒られそうな気がするが…俺の見た感じでは、 フシギソウ>シャワーズ≧フーディン>>ロコン>ピカチュウだったな。 …まぁ、年少組はしょうがないよな。何がとは言わないけれど」 ・ピカチュウ ピカチュウ「はーい!次はあたし!」 マスター「ご覧の通り物凄く元気な子です。トキワの森で捕獲した訳なんだが、 捕まえた当時は全然懐かなくてな…指は噛まれるわ、電撃落とされるわ。 まぁ次第に慣れて行って、ハナダにつく頃にはもう今みたいな感じだったなあ」 フーディン「まぁ、今でもうちのメンバーの中では一番問題児というか…トラブルメーカーだな」 シャワーズ「いつでもロコンと一緒にいますよね」 ロコン「ピカチュウはいつでも楽しそう、です」 フシギソウ「…正直いって、前回もそこまで出番なかったから話すべきことがあんまりないよね」 ・ロコン シャワーズ「マスター、次はロコンですよ」 マスター「ちょっとした事でマサキの所で預かったんだけど、完全に懐かれてマサキに頼んで譲ってもらったんだよな。 見た目よりずっと強いから、けっこう役に立ってるんだが」 フーディン「慎重を通り越して臆病なのが玉に瑕、と言ったところかな。意思はなかなか強い子だよ」 ピカチュウ「髪の毛がすっごくふかふかで、触ると気持ちいいの!」 フシギソウ「もうちっちゃくてふわふわで、抱き心地最高だよね!」 ロコン「ますたー、またこんど、あたまをあらってくれますか…?」 マスター「あ、ああ…また今度な」 ピカチュウ「ロコンずるいー!マスター、あたしもあたしも!」 フシギソウ「あー、ボクもボクも!」 シャワーズ「…あの、マスター…できれば私も…」 マスター「お前ら…(滝汗) …あれ、フーディン?…大丈夫か、なんか顔が赤いけど」 フーディン「…いや、ちょっと、前回のマスターのSっぷりを思い出してしまって…」 ・フーディン フーディン「ふむ、次は私か。もともとはナツメの元にいたのだが、ジムに挑戦してきたマスターに興味を持って、 無理やりついて行っている」 マスター「当時はユンゲラーだったんだけど、通信交換でフーディンに進化したって事だな」 ピカチュウ「フーちゃんはすっごく頭いいよね!」 フシギソウ「バトルでもすごく強くて、エスパー技で敵を圧倒してるね」 シャワーズ「私達のまとめ役や目付け役を務めたり、マスターの補助をしたりと、一番頑張ってますよね」 ロコン「フーディンおねえちゃんは、すごいひと、です」 マスター「あまりに有能すぎて、時々俺の立場がないんだよな…。実は結構意地悪だったり、 人(萌えもん)をからかって楽しんでたりするし」 フーディン「人聞きの悪い事を言わないでくれたまえ」 マスター「けどその反面、攻められると案外弱いってのも分かったけど」 フーディン「うっ…」 マスター「妙に(ピーー)が(ピーー)だし、この前なんか(ピーー)したりするし…」 フーディン「わ、わぁぁぁっ!?ここは全年齢なんだぞ、危ない発言は止めーっ!」 シャワーズ「いえ、自動的にフィルターが入ってるので、私達には聞こえないんですけれど…」 ・シャワーズ マスター「最後はシャワーズだな。ロケット団につかまりそうになってたイーブイを俺が助けて、 そのままパーティに入れちまったわけだ。水の石を使って進化させた」 フーディン「おそらく私達の中では、最もマスターに対する忠誠心は強いだろうな」 シャワーズ「今だから言えるんですけれど…あの時は本当にもう駄目かと思ってたんです。 そんなときに私を助けてくれたマスターは、私にとっては『白馬の王子様』みたいな存在です」 フーディン「…それは、まぁ…なんというか、熱いね」 フシギソウ「ひゅーひゅー!」 ピカチュウ「ひゅーひゅー!」 ロコン「ますたー、うまにのれるんですか…すごいです」 マスター「いや乗れないけどな。まぁ、俺はもともとロケット団は死ぬほど嫌いだったから… 半分くらいあてつけのつもりでイーブイを保護して、そのままアジトをつぶしたんだが」 フーディン「…それはもう当てつけとは言うまいよ」 フシギソウ「前回のヒロインだったんだよね」 シャワーズ「え、ええ…まぁ一応。ちなみに、あのときは『とける』を使ってあらかじめ浴室の中に隠れていました」 フーディン「マスターの入浴も覗き放題だったわけだ」 マスター「…別に、見ても面白いものじゃなかっただろうに」 シャワーズ「………」 フーディン「当人はこんな感じで顔真っ赤なんだけれどね」 マスター「とりあえずはこれで全部か…」 フーディン「最後の方、ピカチュウとロコン寝てしまったようだけれど」 マスター「別室の方に寝かせてくるか…すぐ戻るから」 シャワーズ「フーディン、…今部屋の隅にこんなものがあったんですけれど」 フーディン「ん…飲料か?なんか変わった匂いがするが…毒ではないようだな。カップもあるし、飲んでみようか」 シャワーズ「…勝手に飲んでも大丈夫でしょうか?」 フーディン「マスターは飲むつもりのものをこんな場所に置いておく人ではないな。 フシギソウ、君も飲むといい」 フシギソウ「うん、飲む飲む!シャワーズも飲もう!」 シャワーズ「え、ええ…けど、このラベルに書いてある『まむし』って何なんでしょうね…」 フーディン「さぁ?せっかくだから、乾杯でもしようか」 「「「かんぱーい」」」 マスター「…ウィンディと立ち話してたら遅くなっちまったな…みんな怒ってないといいんだけど… …って、酒臭っ!なんだこれ!?」 フシギソウ「あ、御主人さま…」 シャワーズ「マスタぁ、おかえりなさいー…」 フーディン「やぁ、遅かったねぇ、うふふふふ。もう半分くらい飲んでしまったよ、ふふふふふ」 マスター「お前ら…ってか、何だよその『まむし』って!どう見ても酒じゃねーか!しかも超キツイやつ!」 シャワーズ「だってぇ、マスターの部屋に置いてあったんですよぉ? マスターも一緒に飲みませんかぁ?」 マスター「いや、俺まだ飲める年齢じゃねぇっていうか、なんでそんなもんが俺の部屋に!?」 フシギソウ「御主人さま…」 マスター「フシギソウ、なんで俺の体を蔓で縛るんだよ、そんでもってその手に握ったでっかいマグカップは何だよ!?」 フーディン「そういえばマスター、知ってるかな?一年の初めにする(ピーー)の事を、姫はじめって言うらしいよ?ふふふふふ」 マスター「それと今の状況に何の関係があるんだよーっ!?」 シャワーズ「年少組は寝ちゃった、今は深夜、あと一時間もしないうちに2008年… ついでにこのお屋敷、壁も分厚いし広いから音も伝わりにくい、後ろにはマスターのベッド… ここまでいってもまだわかりませんかぁ?マ・ス・タ・ぁ?」 マスター「まさかお前ら…やめろ、そのカップを俺に近づけるな!」 フシギソウ「シャワーズ、はいこれ!鼻は塞いじゃうから、遠慮なくやっちゃって!」 シャワーズ「はーい♪さぁマスター、覚悟してくださいねー?んっ…」 マスター「や、やめ…うんっ!?、ぐっ、ごくっ…」 シャワーズ「ん、ちゅ…はっ…マスター、おいしいですかー?」 フーディン「…って、あれ、マスター?」 マスター「…ふ」 マスター「ふふ、ふふふふふふふ、ふはははははははっ!!」 ズズズズズズズズズ… マスター「まったく、お前らは…そこまでして俺にいじめて欲しいのか?」 フシギソウ「…シ、シャワーズ、御主人さまの雰囲気がなにか変わったんだけど」 シャワーズ「で、ですね…あと、フーディンがものすごく怯えてるんですが」 フーディン「し、しまった、また覚醒してるーっ!?」 マスター「特に、フーディン?お前は前も俺にお仕置きされたのに、まぁだ懲りてないみたいだよなぁ?」 フーディン「ひ、ひぃっ!?」 マスター「いいだろう、今夜はお前ら三人纏めて年越しついでに徹底的に可愛がってやろうじゃないか… 一応言っとくが、今更謝ってももう遅いぜ、お前ら… 覚 悟 し ろ よ ?」 シャワ・フー・フシ「「「え、や、あの、きゃあぁーーーーっ!?」」」 おしまい。 あとがき。 すいませんすいませんホントすいませんでした。 年越しのために小ネタとキャラ紹介しようと思ったんですが、なんで最後こう言う展開になってるんだろう。 なんかもうずっとオチがこんな感じになりそうな予感がします。そうならないように頑張りたいけれど。 それでは、また来年お会いしましょう。 読んでくださって、ありがとうございました。皆様、よいお年を!
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さて、今日は何の日かご存知だろうか? 2月14日に行われる熱熱々な者はさらに熱くなり、寒い者はさらに寒くなる行事。 そう、バレンタインだ。 俺も今までそういった行事には無縁の日々だったのだが、今年はそうじゃない。 何しろ、家が騒がしいからだ。 一人部屋に残りベッドの上に寝転がる俺。 リビング・台所の方からはカチャカチャ混ぜる音と色々な声。 そう、萌えもん達がチョコレートを作ってるのだ。 色々心配ではあるが… ―――――――― ―――――― ―――― ―― 「――ま、ますたー…?」 …おっと、いつの間にか眠っていたらしい… 目を覚ますと、ヤジロンが立っていた。 「…ん、どうしたヤジロン…」 「あ、あのぉ……ば、ばれんたいんちょこを……」 ヤジロンの手にはお世辞にも綺麗とは言えない包装で包んだチョコレートがあった。 「ん、ありがと。」 くちゃくちゃになった包装紙を綺麗に取り、中のチョコを取り出す。 「それじゃ、いただきます。」 「…………(ごくり…」 ヤジロンがじっと見る中、口の中へ放り込む。 甘みのある彼女らしい味だ。 ほんわかした様な味が口の中でじわっと膨れ上がり、至福の時を提供してくれる。 「…あの…ますたー、どうですか…?」 「うん、とても甘くておいしいよ。」 「わぁっ…! よかったぁ!!」 笑顔が弾けるヤジロン。 「かなり甘く作ったね。」 「うんっ! 本を見ながらいっしょうけんめい作ったんですっ!!」 「なるほど…勉強やさんだな、ヤジロンは。」 「ますたー、だいすきっ!!」 ヤジロンが飛び込んできた。 …うん、そういう風に飛び込んできてくれるヤジロン、大好きだ。 ―――――――― ―――――― ―――― ―― コンコン…… 夕方近くに部屋のドアを叩く音。 「…どうぞ。」 「……失礼するぞ……」 ガチャリとドアを開けて入ってきたのはカイオーガである。 「…妾の住む地域ではこのような風習はなかったからな…些か納得いかんのじゃが……ほれ。」 カイオーガが恥らいながらもチョコレートを差し出す。 プレゼントのように綺麗に包まれたチョコレート。 「御嬢、ありがと。」 「……べ、別に例を言わんでもよい…余興で作っただけじゃからな。」 「…ん、そうか。」 包みを開け始める。すると、途端に…… 「そ、それじゃ妾は夕飯の支度をするからなっ…!」 慌てて部屋から出て行ってしまった。 「……? どうしたんだ一体……」 不審に思いながらもチョコを口にする。 ヤジロンのチョコとは正反対の、ビターチョコ。 大人の深き渋い味が口の中を突く。 「…うまいじゃないか……さては御嬢、上手くできたか不安だったんだな…」 後で、教えてやらないとな。 うまかったと。 ―――――――― ―――――― ―――― ―― 夜遅く。 もうそろそろ寝ようかという時。 ガチャリ。 ノックもせずに入ってきたのはウツボット。 「…ウツボットか。遅いじゃないか…」 「ふふ、寧ろ早いくらいですよ?」 ニッコリ笑うウツボット。さては日付が変わる直前に……まぁいいや。 「で、もちろん作ってたんだよな?」 「ええ、もちろん♪ ちょっと待ってね…………あった。」 ウツボットは服の中をまさぐり、袋に入ったチョコを取り出した。 「…お前何処に入れてんだよ…」 「私の体温で、微妙に溶けるくらいを保ってたのよ…♪」 …それ以前に、袋にべっとりついた液をなんとかしてくれ… 「…それじゃ、いただきます…」 少し不安になりつつも、口へ頬張る。 …ん? 不思議な味だ… ワインのようなアルコールを使ってるのはわかるけど… このちょっと酸味のあるのは何だ? 果物か…? 「ウツボット、このチョコに何を入れた?」 「ブルーベリーと、ラズベリーを加えてみたのよ、おいしいでしょ?」 意外だな。ウツボットが味に拘るとは……しかし何だ、まるで体が熱くなってくる衝動は…… …ハッ、まさか…!? 「…ウツボット、それ以外に、何を入れた……」 「あれ? わかっちゃいましたぁ?」 「……俺の体が異変を起こしてるんだが?」 「ふふ、実はぁ…私の液もたっぷり入ってますよ…♪」 …予感的中… 「マスター、バレンタインって異性がいちゃいちゃする日ですよね…?♪」 ウツボット、明らかに確信犯だ… …くっ、体が思うように…… 「さぁ、夜をたっぷり、味わいましょ? マスター…♪」 …さては…最初からこうするために、わざわざ夜にしたのか…… 「…っつ、ウツボット、謀ったな…!」 「ホワトデーなんて待ちきれませんもん…ほら、日付変わった今日が、マスターの私に対するホワイトデー…♪」 …だめだ、あまりの熱さに意識が遠くなりそうだ…… ウツボットが俺の上にまたがって…消化液を垂らして…… …俺、死ぬのかな……? 「ふふ、いただきまぁす…♪」