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「・・・ん・・・・・・・・ここは?」 周りを見渡すといかにも海の側の砂浜みたいな白い所だ。でも海はない。何故か波が押し寄せて来ては引いて行く音だけが虚しく響いている。 「ここは私の夢の中」 「エーフィ?」 にしては少し雰囲気が違う。 「残念ながら私は貴方の言う「エーフィ」ではありません」 「じゃあ、一体・・?」 「それは誰にも分かりません。ここは夢だから私はエーフィであり、「エーフィ」ではない」 「それならエーフィはどこに・・・」 「それは教えられません」 「な・・」 何故・・と言いかけた時 「それは「エーフィ」が貴方とは会いたくないと思っているからです」 「!?」 俺の心の中が読めるのか!? 「はい、浅い所までですが」 じゃあ会話をしなくてもテレパシーのようなもので話が出来るってことか。 「でも貴方の心が読めるのはこの空間にいる私だけです。「エーフィ」にそれは出来ません」 「そうなのか・・・」 「それで、話を戻しますが」 「そうだったな。‥エーフィが俺と会いたくない理由って何なんだ?」 「それは、貴方を傷付けたこと」 「俺を?」 「「エーフィ」は貴方を危険にさらし、傷を負わせたことで後悔しているのです」 「どういう事だ?俺はエーフィに危険にさらされた事もないし、傷を負わされるなんて事ある訳が無い!」 「では、パルキアに襲われた事はどう説明をするんですか?」 「それは・・・元はと言えば俺が異常事態を解決しようとしたのが原因で」 「異常事態を起こしたのが「エーフィ」だとしても?」 「!? そ、そんな事、エーフィがする筈が無い!もしあったとしても何か理由があるはず…」 「どのような理由があろうとも、故意に罪を犯すのは重罪ではないでしょうか」 「それとも、貴方はその犯罪者を庇うとでも言うのですか」 「な!?・・・エーフィの事を言っているのか」 俺は出来るだけ冷静を装って言った。 「当然です。それ以外に誰か居ますか?」 「…お前はエーフィの事を何だと思って・・・!」 「私はあくまで客観的に物事を見ているだけですから」 「……っ!…もういい!」 「諦めるのですか?」 「諦めなんかしない!エーフィを探しに行くだけだ!」 俺は宣戦布告のように言い放った。 「………ふぅ、憎まれ役は好きじゃないですね」 「…とは言ったものの、どうすればいいのか」 「あと、言い忘れてました」 「うわ!?いつの間に‥!」 俺は思わず身構えた。 「ここは「エーフィ」の夢。そして私はここの住人。だから「エーフィ」か私は望めば何でも出来ます」 「…だったらエーフィが俺に会いたくないと思っているならどうすれば・・・。」 今、この「エーフィ」に対して怒っていても状況は何も変わらない。そう思い俺は怒りを抑えて言った。 「ですが、ここは「エーフィ」の夢でもあり貴方の夢でもあります。そうで無ければ貴方はここには存在しません。 「エーフィ」が私を貴方と会わせたのは望んだのはこれを貴方に伝えるためかもしれません。もっとも、 私は犯罪者に肩入れするような性格ではありませんが、ここでは「エーフィ」に逆らう事も出来ないので仕方無く協力してるのですよ」 「…俺はそう言う話し方は気に入らないけど…お礼は言っておく。……ありがとう」 「!?」 途端にこの「エーフィ」の顔が赤くなった…気がした。 (な……私は、お礼を言われるなんて‥思ってもいなかったのに…この素直さ… …「あの子」がこの人を好きになるのも分かるような気がします) 「ん?何ぶつぶつ独り言言ってんだ?」 「な、何でもありませんよ。私は役割を果たしたので‥失礼します」 と言うと「エーフィ」の姿が消えた。 「何だったんだ、一体」 まあいいさ、それよりも今大事なのはエーフィの事だ。あの「エーフィ」はああ言っていた。 なら今は何を言ってもエーフィには届かないだろう。本当に後悔しているとしたら俺の言葉なんて 怖くて聞きたくないって思っているだろうからな。 それでも、やるべき事は一つ。後戻りは出来ないし、するつもりも無い。 目を閉じて強く思いながら俺は歩き出した。 ただ、エーフィに会いたいと思いながら。 ------------------------------ ひたすら歩き続けて数分、俺は立ち止まって目を開けた。 ………そこには、さっきと同じ景色が同じように存在するだけだった。 ・・・・たった一点を除いて。 「エーフィ…?」 そう言うとエーフィは一瞬、体をビクッとさせて、こっちを見た。 「マ、マスター……?」 声が震えている。エーフィの目にはよっぽど俺が怖く見えてるのだろう。 この様子を見て、エーフィがあの異常事態を引き起こした張本人だと言う事は明白だった。 俺はエーフィに向かって歩き出した。その時、 「こ、来ないで下さい!」 「!?」 体が宙に浮く。これは・・・サイコキネシス・・ 「……ぐっ!!」 体が垂直に叩きつけられる。パルキアのアクアテールには及ばないものの、これも相当な衝撃で、悪くすれば意識を失っていたかもしれない。 「…!?マ、マスター!………」 これ以上俺が傷付くのが怖いのか、エーフィは俺から目を背ける様に頭を抱えてしゃがみ込んだ。こんな弱々しいエーフィを見たのは初めてだ。 それでも俺は、エーフィに向かって歩き続ける。 それを見たエーフィは、 「……っ…来ないでって言ってるじゃないですか・・・!!」 そう叫ぶとエーフィの左右の場所から、サイコキネシスの塊の様なものが2つ現れ、俺に目掛けて飛んできた。 さすが、エーフィの夢の中だけあって何でも出来るんだな・・・。 「……クッ!!……っ!?」 2つの塊が直撃した為か、さすがに意識が朦朧として来た。2発目は声すら上げられない程の衝撃だった。 「……!!…‥マスター…ダメですよ…そんなの…マスターの体が…」 エーフィが俺の事を心配している。俺が…………何だって?… もう…目が霞んで来た……エーフィが泣いている……全く、…泣き虫だな…… 「何でそうまでして私の味方になってくれるんですか?」 「え?ああ、それはな。俺にとってエーフィが一番大切な人だと思ってるからだな」 何だこれ?走馬灯か?夢の中でも現実と同じで死ぬ事って出来るんだな。 「ええ!?それってつまり…」 エーフィの顔が赤くなる。 「それに俺は……」 そうだ。俺はこの時、どういう思いでこの言葉を言ったのか。忘れてなんかいない。 「もう…来ないで下さいよ……どうして……どうして私なんかの為に必死になるんですか…!?」 「‥そんな事、‥決まってる…」 「…もう…放っておいて下さい…。」 今、俺が言えるのはこれだけだ。 「俺が‥そういう性格って事、エーフィも知ってるだろ…。だから、俺は・・・」 エーフィに不安を抱えないように、今できる最大限の、弱々しい、優しい笑顔で笑って見せた。 サイコキネシスの塊が止めを刺そうと俺に向かって飛んでくる。今度直撃したら恐らく命は無い。 (ああ、俺はここまでか…短い人生だったな。…そういえば‥エーフィと出会って…まだ一年も経ってないんだな…… …………これから沢山の思い出を作って、いっぱいふざけ合って… …そしてエーフィの笑顔を見て、俺も笑顔で返す……そんな些細な事さえ出来ないほど…俺は‥弱かったんだ……) もう泣いたりはしない。 もう、どうしようもならない事だと分かっているから。無駄な抵抗は止める事にした。 「‥マ、マスター…………………マスターーー!!!!」 エーフィがそう叫ぶと、エーフィの左右の場所から、更に2つのサイコキネシスの塊が現れた。 俺は死を覚悟した。何故なら、その新たに現れた塊が、俺に向かって飛んできたからだった。 (これは‥確実に終わったな…) もう既にサイコキネシスの塊との距離はあと十数cm。誰に言われなくても、手段が何も無い事は明白だった。 俺は諦めの意味も込めて目を閉じた。 そしてその時、それが俺の体を貫いた。 「…………」 何だ、死ぬことなんて大したこと無いんだな。そう思った、その時。 「‥大丈夫ですよ、マスター。」 また走馬灯か?…せっかくだし、大人しく見ておくか… 「ん?何がだ?」 「マスターの事は、私が守りますから。たとえ‥どんな事があっても」 「どうしたんだよ、急に」 「えへへ、何でも無いですよ♪」 ああ、これはまだエーフィと出会って間もない頃の記憶か…懐かしいな… …そうだったな…エーフィはいつでも俺の事を守ってくれた。 今度は‥俺がエーフィを救う番なのかな……救う番?……違う。俺はエーフィを救いたい。 …その気持ちだけでここまで来た…でも今のままでは、エーフィを救う事は出来ず、俺は死んでしまう。 ‥そんなのは何の意味もない。ただの無駄死にだ。なら、死ぬ前にやれるべき事はやっておく。幸い、俺はまだ完全に死んだ訳じゃ無い。 そう決意し、俺は目を開けた。 そこには、さっきと同じ光景があった。違う点と言えば、サイコキネシスの塊が一つも無いことと、 エーフィが泣きながらも、微かに安堵の表情を浮かべていることだった。 「……………」 俺は何も言わない。ただ、エーフィに向かって片足を引きずりながら歩き続ける。 エーフィは体をビクビクさせながらも、俺が近付くのを止めようとしない。 そして、エーフィの前まで来た俺は、エーフィを見る。 エーフィは俺と目を合わせると、より一層体をビクッとさせた。しかし、体を震わせながらも俺に対して目を背ける事は無かった。 もう体に力が入らない。それでも俺は・・・ 俺はゆっくりと倒れこむようにして、エーフィを優しく抱き締めた。 エーフィもそれで安心したのか、一気に泣き出してしまった。 そして俺は、最初に聞きたかった事を聞いてみる。 「…エーフィ、何であんな事を?」 「…うぅ…ヒック……だって…マスターと出会ってもうすぐ一年になるのに…思い出が…まだ何もないじゃないですか…。 だから…私…何も事件が無いなら‥作ってしまえばいいって‥そう思って…」 それなら全てが繋がる。それなら異変に気付けるのもエーフィだけで、エーフィが寝ていたり、意識が無い時は雨は降っていた。 「じゃ、じゃあパルキアが出てきた時の事はどう説明すれば…」 「あの人は‥多分…異変を起こした私を…………それなのに、マスターまで巻き込んで…ごめんなさい…マスター……」 「……………」 エーフィは今後悔しているし、十分反省もしている。俺はそう思う。 あの「エーフィ」は、どのような理由があろうとも、故意に罪を犯すのは重罪だと言った。 確かにその通りかもしれない。でも、だからと言ってエーフィ一人の責任にはしない。 「…それならエーフィの罪、俺も背負うよ。‥元はと言えば気をつかってやれなかった俺も悪いしな」 「…そんな‥マスターは悪く無いですよ…」 「‥‥もし、俺が悪くなくても‥エーフィの罪を少しでも背負う事ぐらいは…出来る筈だろ…?」 「……もう‥‥バカですよ…マスターは……」 そう言いつつ、エーフィは泣き止んで目を瞑った。 「マスター・・・」 そして、俺がそれに答えようとした瞬間、 俺は、眠気に誘われるようにどこかへと倒れた。 「……どこだ…ここ…」 辺りは真っ暗だ。エーフィもいない。 「ここは俺の夢の中だ」 「‥‥と…言うことはお前は「俺」であり俺ではないんだな。」 「何だ、分かってるじゃないか。なら話は早い。俺がお前を現実へ覚まさせてやるよ。条件は――」 そう言って「俺」が笑った。 ------------------------------------------ …目が覚める。そういえば座ったまま寝てたんだったな。おかげで膝が痛い。 「…夢…だよな」 そう、昨日の夜から、さっきの事まで。 しかしエーフィは寝たままだ。 「エーフィ、朝だぞ。そろそろ起きろよ」 エーフィは反応しない。 その時、俺は最悪の状況を思い浮かべてしまった。 ―エーフィは、もう二度と目が覚めない― 「…………っ!」 俺はそんな馬鹿な妄想を振り払うかのようにエーフィに言い続けた。 「悪ふざけはやめて早く目を開けろよ…早くしないとエーフィに出会ってから一年が経っちまうだろ…それでもいいのかよ…」 だが反応は無い。 「ほら…早く起きて一緒に思い出を作りに行こう…」 しかし反応は無い。 「エーフィ、俺は‥‥俺だけが存在していても何も出来ないんだ………俺はしっかりしているように見えるかもしれないけど、 本当はとても弱くて……一人では生きてられない位弱いんだよ………」 それでも反応は無い。 「だから………エーフィ………目を覚ましてくれ………頼む‥‥エーフィ………!」 それが決められていた事だったのか。それとも祈りが通じたのか。 その時、 「‥‥‥‥‥‥ん‥‥」 「!!! エーフィ!?」 「………マ…スター………?」 エーフィの声は弱々しく今にも消え入りそうだった。 「………マスター‥‥私…………怖いんです………だから‥‥手を………」 「手を?」 「……………手を握ってくれませんか?」 「ああ、分かった、エーフィが離していいって言うまで握ってるから…………」 少し泣きそうになりながらも俺は答えた。 「ふふ‥‥ありがとうございます、…………私の好きな、‥‥マスター………」 エーフィは再び眠りについた。それが永遠の眠りなのか、それとも、いつもと同じ一時的な眠りなのか、 このときの俺には分からなかった。 ただ、1つだけ分かっていることは、俺がこの場で何を言おうと、何も状況は変わらないこと。それだけだった。 ================================================ あれから何週間が過ぎただろうか。 今年もこの寒い季節がやってきた。とは言っても、それは何週間も前から分かっていた事である。 雪は降らない。 ニュースではそう言っていたが、やっぱり当てにならなかった。 雪は見事に降り、白くなった町並みは、また違った安心感がある。そして今日はクリスマス当日という事もあり、独特の緊張感も漂っていた。 そんな中で、俺は一人病院の廊下にいた。 結局あの後、エーフィは順調に回復。とは言え、まだ無茶は出来ず、定期的にカウンセリングを受けなければならないとの事。 今日はあの喫茶店に2人で行こうかと思っていたのだが、それは叶いそうも無い。 と、その時エーフィが戻ってきた。今日は最後のカウンセリングだったので少し気が楽かもしれない。 「お疲れ様。どうだった、エーフィ」 「どうもこうも無いですよ。いつも通りです」 「そうか。じゃあ家に帰るか。」 「そうですね、マスター。」 「今日は夜に備えて家の飾りつけの続きだな」 「頑張ってくださいね。マスター」 「何言ってんだ、エーフィも手伝うんだよ」 「私がですか!?私病人ですよ!」 「さっきまでな」 「もー・・・マスターったら・・・」 エーフィが少し不機嫌そうに怒る。 「はは‥冗談だよ。エーフィには料理を作るときに手伝ってもらいたいだけだって。」 「本当ですか?まぁそれぐらいなら手伝ってもいいですけど・・」 エーフィが油断している・・・ここで不意打ち。 「・・ありがとう、エーフィ」 最高の笑顔で心から素直に感謝をする。ここまで直球で言ったのは久々だけど。 「!!!!!」 エーフィの顔が瞬時に赤くなった。 「な、ななな何を言うんですか、マスター!?」 「何って・・感謝の気持ちだけど・・・もしかして、今のだけじゃ足りないのか?」 などと、わざとらしく言ってみる。 「な!?ま、まさかマスター最初から!!?」 エーフィの顔はもう真っ赤だ。 「さぁ?どうだろうな?」 「とぼけてないで・・・って待ってください!今日と言う今日は逃がしませんよー!!」 エーフィはあの時、思い出を作りたいから事件を起こしたって言っていたけど、こういう些細な事も思い出じゃないのかなぁ、と俺は思う。 まあ、価値観なんて人によって違うからわからないけど。 そうして家の前まで着く。走って来たからさすがに息が荒い。と、その時、ドアの前に何か置いてあるのが見えた。 オレンジジュース?のようだけど・・・。メモがあったので読んでみた。 「仲良く飲んでくださいね。 とある喫茶店のマスター」 「・・・・・・」 ああ、そういえばこの前、住所教えたんだっけ。 「ま、待ってください・・マスター・・・。」 そこへエーフィが追い着いてきた。 「はぁ・・はぁ・・・・・・・ん?何ですか、それ?」 「はい」 と言ってメモを渡した。 俺はオレンジジュースを持って、エーフィと家の中へ入って行った。 その夜・・・ 「よし!飾りつけ、料理、すべて完了!」 「やっと終わりましたね、マスター」 なんだかんだ言ってエーフィも手伝ってくれた。 「エーフィのおかげで予定より早く終われたな。ありがと、エーフィ。」 「いえいえ、大した事じゃありませんよ。」 と言いつつも照れているのが丸分かりである。 「時間も丁度いい頃合だし、乾杯と行くか」 「はい、そうしましょう♪」 今年最後の行事。2人きりのクリスマス。これは俺とエーフィにとって大事な思い出になるだろう。 明日で俺とエーフィが出会って一年になる。そういった意味でも今日と言う日は俺とエーフィにとって大切なものだった。 「「メリークリスマス!」」 と言って、互いにジュースの入ったコップを交わす。 話題には事欠かない。明日の去年から今日に至るまで、いろんな出来事があった。 その時、エーフィが言った。 「・・・バカですね・・私って・・思い返せばこんなにも沢山の思い出があったなんて」 「でもその1つ1つの思い出を立派な思い出だと思えるのは、エーフィのおかげだと俺は思うけどな」 「でも・・」 「でもは無し!俺が感謝をしてるんだから、今は素直にそれを受け取ればいいんだって」 俺はエーフィの頭を撫でる。…なんで俺、こんなこと言えるんだ? 「・・本当に・・ありがとうございます、マスター」 「ああ。・・・・・・・・・ってあれ?エーフィ、顔が赤いぞ?」 「そ、そういうマスターだって顔、赤いですよ?」 「え?そうなのか?まったく気付かないんだけど・・・」 「・・・なんか私、頭がボーっとしてきました・・・」 「奇遇だな、俺もだ・・・」 なんなんだこの感覚?といっている間にも思考回路が侵食されていく・・・・・ 「・・クラクラするけど一応大丈夫みたいだ」 「そうですか・・・私なんか・・・変な感じです・・」 エーフィはあまり正常ではないみたいだ。 「そういえばますたぁ、夢の中のできごとっておぼえてます?」 「? あ、ああ、一応」 「それならさいごに私がなにを望んだか・・・・おぼえてますよね?」 「まぁ、とりあえずは」 この状況は・・・ 「あれって結局ますたぁとできなかったんですよねー?」 ・・・とてもまずいものを感じる。こういう時の勘は妙に当たる。 「・・・・・」 しまった!黙り込んだのは失敗だった!・・・・もう遅かった。 「と、いうわけでますたぁ、覚悟してくださいね・・・・!」 「何でそうなる!うぅ・・・」 さすがに部屋の中だけあって逃げ場が無い!と迷っていると、 「それじゃあいきますねー・・ますたぁ・・!」 そういってエーフィがゆらりと近づいて来る。…あ、なるほど。あれはジュースではなくお酒だったのか。通りで。 ・・って、今更分かっても何の役にも立たないし! ・・くっ・・・俺にもアルコールが回っているため、あまり速く動けない・・・ なので、数分間俺とエーフィは机を中心にぐるぐる歩き回っていた。 (・・どうする・・・このままじゃアルコールが完全に回って俺が倒れるのが先だ!・・・とはいっても今は打つ手が・・・) と悩みつつ机を中心に歩き回っていると、 「えへへ、ますたぁ、つかまえたー」 と言う声が前からして俺は青ざめた。 「え・・・」 ミスった・・考えに気をとられてエーフィの進行方向が逆になっていた事・・気付かなかった・・・・ 「じゃあますたぁ、かくごしてくださいねー」 それはエーフィの勝利宣言だ。奇跡でも起こらない限り俺に勝ち目は・・・無い。 その時、 「あれ?」 とエーフィが言って、足元がふらふらし始めた。 「やった・・この隙に・・・」 この隙に2階の自室に逃げ込んで鍵をかけてしまえば俺の勝ちだ・・。そう思って足を動かした瞬間、 「ますたぁ、にげちゃあダメですよ・・」 と、服を捕まれ、一緒に倒れてしまった。 結果、俺がエーフィを押し倒したようになってしまった。おまけに、 「フッ」 と言って部屋の蛍光灯が切れてしまった。恐らくは停電だろう。クリスマスだからって電力使いすぎだな。 でも、その代わりに窓から射し込む月の光が、俺とエーフィを照らしていた。 「マスター・・・」 エーフィも少し正気に戻ったのか、多少冷静になっていた。 と、思ったら目を瞑って俺に判断を委ねてきた。 「全く、仕方ないな・・・・」 俺はそういって降参し、エーフィにそっと口付けをした。 ------------------------------------ 「あ・・頭が割れる・・・」 しかしその後の朝、二日酔いで頭痛がしたのは言うまでも無い話だったりする。 END ========================================== 初めまして。初投稿になりますがどうでしょうか。ご意見、ご感想、お待ちしております。 季節外れなのは承知の上で投稿しました。長いSSになってしまいましたが、最後まで読んでくれてありがとうございます。 後編は思ったことをほぼありのまま残して書いたので少し怖いです; 次からはちょくちょく短編の話を書きたいと思うので、よろしくお願いします。
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あの日、あなたが助けてくれたから今のボクがいる・・・ 「陽光の舞い降りる瞬間」 イーブイ「ふぅ~」 昨日からため息ばかりついてるけれど自分でも止められない。 ピカチュウ「なーにため息ついてんのっ!」 イーブイ「ひゃう!」 不意を突かれたイーブイは思わず声を上げてしまった。 イーブイ「いきなりはひどいんじゃないかな?」 ピカチュウ「あはは。ごめんねっ!でもため息つくイーブイがあんまりかわいかったから。ね?」 イーブイ「びっくりしたよ・・・」 驚かされたイーブイは頬をふくらませる。 そんなイーブイを見ながら、ピカチュウはふと真剣な顔になって訪ねた。 ピカチュウ「でも、本当にどうしたの?昨日から変だよ?」 イーブイ「・・・・・」 ピカチュウ「言いたくない?」 そういって下からのぞき込んでみる。 イーブイ「そういうわけじゃないんだけれど・・・」 ピカチュウ「そっかぁ」 ぴょこんとイーブイの隣に腰掛ける。 二人はなんともなしに景色を眺め続けた 半時ほど過ぎたろうか イーブイ「ピカチュウさんはさ・・・」 ピカチュウ「うん?」 イーブイがふと話し出す。 イーブイ「どうやってマスターと旅をすることになったの?」 ピカチュウ「そうだねぇ・・・ボクはさ・・・トキワの森でマスターと会ったんだ」 懐かしそうに語り出す ピカチュウ「マスターとキュウコン・・あ、そのときまだロコンだったんだけどね。 二人がスピアー達の子どもに手を出して追っかけられてさ。大変だったんだ。 で、見るに見かねて助けて・・・それからの腐れ縁かな。」 腐れ縁と言いつつもピカチュウは実に楽しそうに笑っていた。 つられてイーブイも笑う。 ピカチュウ「なんで急に?」 イーブイ「なんとなくかな。ボクのこと思い出してたらさ・・・」 思わず言葉を濁してしまう。 それに伴ってピカチュウもため息をついた・・・ ピカチュウ「そうだったね。ボクもその場にいたのに・・ごめんね。」 イーブイ「気にしないでよ」 イーブイとピカチュウ達との出会い。それはロケット団のアジトでだった。 珍種であるイーブイはロケット団に捉えられ生体実験を繰り返されていたのである。 ピカチュウ達はそんな地獄からイーブイを救い出した。 それ以降パーティーにはイーブイが加わり現在に至る。 ピカチュウ「でも、それがどうかしたの?」 イーブイ「うん・・・・・」 ぽつりぽつりとイーブイは語り出した。 イーブイ「ボクはみんなの役に立ってるのかなって・・・」 ピカチュウ「え・・・」 イーブイ「キュウコン、ピカチュウ、ハッサム、ニューラ、キレイハナ・・・みんな強いのにボクだけ力が無くて・・・」 顔を埋める イーブイ「マスターの・・・命の恩人の力になれないんだ・・・・」 悲しみに満ちた声で呟いた。 ピカチュウ「あ・・」 その言葉にピカチュウは思い出した。 昨日対戦したトレーナーが言っていた言葉を・・・ 『お前、絶対おかしいって。俺ならイーブイ進化させるぜ。なに役立たずのまま育ててんだよ』 ピカチュウ「そ、そんなことないよ!昨日だってあんなに・・・」 イーブイ「でも、ボクがシャワーズになれれば・・・あんなにウィンディにやられずにすんだのに!」 まさにそのとおりであった。 ピカチュウ達のパーティーは水タイプがいない。 ピカチュウは波乗りを覚えてはいるものの本来のタイプではない。 そのためイーブイはパーティー加入直後、シャワーズに進化させてほしいと願い出た。 しかし、 イーブイ「ボクが・・ボクが・・進化できれば・・・」 ピカチュウ「・・・・」 そう。イーブイは進化できなかった。 ロケット団の生体実験の影響で、3つの石のどの力も受けつけなくなっていたのだ。 イーブイ「ボクなんか・・・役たたずなんだ!」 悲痛な声で叫ぶイーブイをピカチュウは思わず抱きしめた。 ピカチュウ「ちがうよ!」 イーブイ「ちがわない!」 ピカチュウ「絶対違う!!!」 イーブイ「!?」 ピカチュウの叫び声に驚いて見る。 ピカチュウ「誰も・・誰もそんなこと思わないよ。」 イーブイ「ピカチュウ・・・」 ピカチュウ「だから、そんなこと言わないでよ・・・」 二人は抱き合ったまま泣き合った。 イーブイ「ピカチュウ・・・ありがとう・・・」 イーブイはぽつりと呟いた。 翌日 イーブイ達の旅は続いていた。 その途中一人のトレーナーが声をかけてきた。 イーブイ達のマスターはそれに応じた。 だが・・・ マスター「はぁはぁはぁ・・・」 ピカチュウ「ぜぇはぁぜぇ・・・」 キレイハナ「うっ!・・・はぁはぁ」 ピカチュウ達は追い詰められていた。 相手の強さは圧倒的だった。 まるで、こちらの繰り出す動き全てが読まれているように・・・ トレーナー「どうしたどうした!もうおわりかぁ!!」 マスター「ま、まだだ!キレイハナ!日本晴れ、光合成!」 キレイハナ「はいっ!」 キレイハナが舞い日差しが増す。 その中で光合成を行いより多くの体力を回復する。 トレーナー「お見通しなんだよぉお!エビワラー炎のパンチ!」 キレイハナ「きゃぁあああああ!?」 マスター「キレイハナ!?」 キレイハナが炎に焼かれる。 その姿にたまらずボールに戻す。 マスター「く、くそ!」 ピカチュウ「おかしいよマスター。まるでボクらのこと知ってるみたいに攻撃してくる」 ピカチュウが言う。 確かにおかしかった。 まるで以前より自分たちを知っているような戦い方だったのだ。 トレーナー「ふふ、当然だ。」 マスター・ピカチュウ「?」 それを聞いたトレーナーが勝ち誇ったかのように呟いた。 トレーナー「俺は、てめえのイーブイを奪い取るために雇われてんだからな!てめぇらのバトルスタイルはお見通しさ」 マスター「なにっ!?」 ピカチュウ「えっ!?」 イーブイ『そんなっ!?』 ただでさえ力不足で胸の痛む光景。 なのに原因は自分だという。 イーブイは罪悪感に駆られた。 トレーナー「せめてもの情けだ。イーブイをよこしな。そうすりゃそこのやつだけは戦闘不能にしないでおいてやるからよ」 ピカチュウを指さす。 マスター「・・・」 イーブイ『マスター!ボクがいく。もうやめて。お願い!』 マスター「大丈夫だイーブイ・・・・まだいける!ピカチュウ!」 イーブイの言葉を遮り、呼びかける。 ピカチュウ「うん!」 マスター「高速移動!そして10万ボルトだ!」 その言葉に応えてピカチュウが走り出す。が トレーナー「無駄な抵抗だっていってんだろぉが!カイリキー捕まえろ!」 ピカチュウ「う、うわぁあ!?」 動きを読まれカイリキーに捕まってしまう。 マスター・イーブイ「ピカチュウ!」 ピカチュウ「ううっ・・」 苦しそうにピカチュウが呻く。 トレーナー「勝負ありだ。とっととイーブイをよこしな!さもなくば・・・」 ピカチュウ「うわぁああああ!」 ピカチュウを締め付ける力が強まった。 マスター「ピカチュウ!」 トレーナー「こいつが戦闘不能どころか死んじまうぜぇ!」 イーブイ『やめて・・・お願い・・・やめて!』 マスター「くそぉ・・・・」 強く拳を握りしめる。 大切な仲間だ。渡したくもない。 しかし、ピカチュウもまた仲間である。 どうすればいいか分からなくなる ピカチュウ「ますたぁ・・・ボクのことはいいから・・・うわああ!?」 トレーナー「役立たずは黙ってろ!」 更に締め付けられる。 イーブイ(ちがう・・ピカチュウは役立たずなんかじゃない・・・!) ピカチュウの一生懸命な姿がよみがえる。 トレーナー「ほら、とっととよこせよ!能なしマスター」 イーブイ(マスターは能なしなんかじゃ・・・ない!) マスターの笑顔が浮かぶ。 トレーナー「ひゃあはっははははあ!サイコーだぜ!無力なやつを見るのはよぉ!」 イーブイ(マスターは・・・みんなは・・・無力なんかじゃない!無力なのは・・・ボクだ) 自分への怒りで狂いそうになる。 マスター「すまない・・・イーブイ・・・俺は」 ボールを頭上に掲げた。 イーブイを出すためにスイッチを押す。 トレーナー「おらおら、はやくだせよこのゴ・ミ!ひゃああはははっはは!」 カチッ イーブイの中で何かが切れた イーブイ(許さない!ボクは許さない!) 誰を? イーブイ(あのトレーナーを!みんなを・・ピカチュウを傷つけたあのトレーナーを!) でも役立たずなのは本当じゃないの? イーブイ(違う!役立たずなんかじゃない!) できるの? イーブイ(かもしれない・・・でも、もう逃げたくない・・・弱いボクでいたくない!) 本当に? イーブイ(やるんだ・・・ボクが・・・うんうん・・違う!・・・ワタシが助けるんだ!) 瞬間 太陽の光が満ちた。 体中に力があふれてくる。 そんな中で小さな声がささやいた ・・・やっとみつけてくれたね♪ ・・・本当のワタシ・・・ ピカァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! マスター「イーブイ!?」 トレーナー「な、なんだ!?」 急激な光に思わず二人が目を閉じる。 次の瞬間。 ???「返してもらうね。ワタシの大切な仲間」 トレーナー「なっ!?」 マスター「イー・・ブイ?」 そこには神々しい萌えもんが立っていた。 胸にはピカチュウが抱かれている。 ???「マスター。ピカチュウを!」 マスター「あ、ああ。」 慌てて受け取る。 マスター「イーブイおまえ。エーフィーに・・・」 エーフィー「・・・」 エーフィーは何も言わずに微笑む。 ピカチュウ「イーブイ・・・頑張れ・・」 頷いて前を向いた。 エーフィー「マスターを・・みんなを・・ピカチュウを傷つけたこと・・絶対に許さないんだから!」 トレーナー「うるせぇ進化しようと・・・」 ドゴォンン!!! エーフィー「外しちゃった。次はあてるからね♪」 カイリキーを吹き飛ばし、にこりと笑いながら言い放つ。 トレーナー「ま、まて!」 エーフィー「答えはきいてないんだ・・・いくよ!」 飛び上がりトレーナーとエビワラーを見下ろす。 エーフィー「サイコ・・・キネシス!」 トレーナー「ううわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?」 トレーナー達は遙か彼方へ吹き飛んでいった。 エーフィー「マスター!みんなは大丈夫ですか?」 マスター「ぎりぎりね。もうちょっと遅かったら危なかったかも・・・」 駆け込んだ萌えもんセンターのロビーに二人はいた。 エーフィー「すみませんワタシのせいで・・・」 マスター「気にすんな。みんな平気だったんだから・・それよりも」 じっとエーフィーを見つめる エーフィー「マ、マスター?」 マスター「進化できたんだな?」 エーフィー「はい・・・マスターの・・みんなのことを思ってたら・・・」 思わず涙ぐむ。 その様子を見ながらマスターは頭をなでた。 マスター「よかったな」 エーフィー「!・・・ハイッ!」 キレイハナ「あ、いたいた!」 ハッサム「お~い!」 エーフィー「みんな!」 治療を終えた仲間が戻ってきた。 キュウコン「進化できたのね?おめでとうエーフィー。」 ニューラ「よかったです!」 次々にみんな祝福してくれる。 そして・・・ ピカチュウ「エーフィー!」 エーフィー「ピカチュウ!」 ピカチュウが抱きついてきた。 ピカチュウ「進化できたんだね!?おめでとう!あと本当にありがとう!」 エーフィー「うんうん・・ピカチュウのおかげだよ・・・」 二人で喜びを分かち合う。 マスターや仲間が微笑む。 幸せなひとときだった・・・が ふにょん ピカチュウ「ふにょん?」 エーフィー「!?!?!?」 ピカチュウは突然ふれた柔らかい感触にくびをかしげる。 一方エーフィーは女の子特有のものを触られて顔を真っ赤にした。 ピカチュウ「えっ!?これって・・・」 ふにょふにょ ピカチュウは尚も触り続ける。 エーフィーは固まったままだ。 キュウコン「こらピカチュウ!いくら仲がいいからって女の子の胸を触るんじゃありません!」 見かねたキュウコンが注意する。 ピカチュウ「えっ!?」 ピカチュウが硬直する。 ハッサム「どうしたのピカチュウ?」 ピカチュウ「エーフィーって・・・」 ニューラ「エーフィーって?」 全員が次の言葉に注目した。 ピカチュウ「おんなのこ・・・だったの~!?」 残り全員「はぁああああああ~!?」 発言内容の素っ頓狂さに思わず全員絶句する。 ピカチュウ「だ、だって。ボクって言ってたし。ボクがだきついても何も言ってこなかったし!」 慌てて弁明を始める。 まあ、とほぼ全員が頷いた。 エーフィーも顔を赤らめながらも納得する。 しかし ピカチュウ「それに前は、こんなにふにょってするくらいおっぱいなかったし!」 その言葉に世界が凍った。 ピカチュウ「あ、あれ?」 きょろきょろと見渡す。 ある者はあきれた表情で ある者はなにかかわいそうな者を見る目で見つめている。 ピカチュウ「エ、エーフィー?」 おそるおそる前を向く エーフィー「ピカチュウの・・・・」 真っ赤な顔の額の宝玉に力が集まる。 ピカチュウ「ちょ、ま・・・」 エーフィー「ぶぅわぁああかああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」 ピカチュウ「うぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!??!?!?」 後日、一生懸命に窓を修理するマスターの姿があった。
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カスタムはキャラクターを作成して戦わせるモードです。 シンプル(カスタム) デュエル(カスタム) タッグ(カスタム) コロシアム(カスタム) シンプル(カスタム) シンプルは、特別なルールは設けません。 renkei2もしくはrenkei3のキャラクター作成法に従ってキャラクターを作り、勝負します。 注意点 アビリティ「準備」を修得している場合は、山札からカードを引いて解決します。 デュエル(カスタム) デュエルは、より駆け引きを重視した一対一の戦闘です。 上級ルールを全て導入した上での戦闘を行います。 詳しくは上級ルールを参照して下さい。 renkei2における上級ルール 上級魔法 エンハンス 熟練戦闘 鍛冶 renkei3における上級ルール なし タッグ(カスタム) タッグは多人数でプレイするモードです。 プレイヤーが偶数人の場合は二つのパーティに分けて下さい。 プレイヤーが奇数人の場合はハンデをつけます。多人数側のパーティは最大スタミナ値を5に減少させて下さい。 なお、この最大スタミナ値修正は通常のルールとは異なり、時間による回復は出来ません。 コロシアム(カスタム) コロシアムモードは、キャラクターを3体作成して、3対3で戦います。 以下の点で、戦闘ルールがrenkeiとは異なります。 3キャラクターを前列後列任意の列に配置する。 スタミナは3キャラクター共有 スタミナの合計は9 誰か1キャラクターがチャージを宣言した場合、スタミナが全回復する。 MPも3キャラクター共有 死亡したキャラクターはゴーストにしても良いし、しなくても良い。 ゴースト化を選んだ場合、毎ターン、チェインの踏み台にするためのスタミナが必要になる。
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マスター「ここがハナダの洞窟かぁ」 フシギバナ「なんだか嫌な雰囲気が漂ってます・・・」 フーディン「恐らくその嫌な予感は的中しているかと。 皆さん、気を抜かないように」 マスター「かいふくのくすりとげんきのかけらあるから大丈夫だろ」 ギャラドス「いや、そういう問題じゃ・・・」 フリーザー「・・・」 ライチュウ「でも何が起こるかわかんないよ。気を引き締めていこ。」 キュウコン「いざとなったら私があなをほるわ」 マスター「頼りにしてるぞーおまいらー」 ギャラドス「へいへい。」 さて、俺達は何をしてるかというと。聞いてのとおりハナダの洞窟前にいる。 いわゆる隠しステージというやつで、中の萌えもんも相当に強いようだ。 まぁ俺の娘達も相当強いわけで、あまり不安ではないが。 さぁハナダの洞窟に侵入。運命やいかに! ・・・ マスター「俺は迷ったぞー!!フリーザー様!!」 フシギバナ「やっぱり・・・」 フリーザー「・・・?」 ギャラドス「なぜフリーザー・・・」 キュウコン「そこは突っ込んじゃダメよ」 また迷った。これだからダンジョンは嫌いだ・・・ 不思〇なダンジョンシリーズみたいにマッピングシステムが欲しいと思う今日この頃である。 それにしても、ここの敵は今まで戦ってきた野生の萌えもんとは段違いだ。経験値ウマーww ギャラドス「マスターの方向音痴と性癖は永久に直らないんだろうな・・・」 キュウコン「バカにつける薬はないって昔のえらい人が言ってたわよ」 俺はどうせバカですよーだ。 だけどお前らがいるおかげで俺はバカでも平気なんだぞ。 フーディン「マスター、遠回りした先にあるはしごを下るのが正解のようです」 マスター「GJ」 さすが我らがフーディンたん。歩き回った道を暗記してくれていたらしい。 お礼に胸 フーディン「へんなこと考えないでください」 マスター「考えてません><」 フーディン先生のスーパーナビゲーションにより俺達は無事に奥の方までたどり着いた。 さてさて、噂の最強萌えもんちゃんはどこかなー? フーディン「!?・・・マスター、気をつけてください」 ギャラドス「こいつは・・・」 おおう、皆なんか真剣そうだ。 どうやらミュウツーたんの気配を近くに感じてるようだ。 俺にもミュウツーたんの殺気が伝わってくるぞ。 皆もここまで真剣なんだ。相当強いんだろう。 だが安心しろおまいら。俺にはあれがあるからなwww ギャラドス「ッ!?お前がっ・・・」 ミュウツー「貴様らか・・・下賤な人間に与する侵入者というのは。」 地獄からの使者、スパイダーマッ!のテーマでも流れそうな登場シーンである。 テッテレー!ポポポポポポポン♪ この娘がミュウツーたんか。 なるほど、なかなかのナイスバディ。 まずは適当に質問して 後でもみもみしてからだの隅から隅まで調べないとなぁ・・ うひひひひ マスター「一つ聞くがミュウツーたんって作られたポケモンなの?ポケモン屋敷の本に書いてあったけど」 ギャラドス「おいっ!質問するなら少しはひねれっ!」 ライチュウ「マスター危ないから下がってて!」 フシギバナ「今近づいちゃだめです!」 ミュウツー「ふん・・・人間が何を言うか!? 、私は人間どもの手によって生み出された人工生命体・・ 私は私を生み出した人間どもを決して許さない・・・ 貴様ら人間にツクラレタという屈辱が分かるか? マスター「ああ、つまりポリゴンみたいなもんかww」 ギャラドス「おい!あいつを不用意に挑発するな!」 キュウコン「マスターなんだか余裕そうね」 フシギバナ「マスター!!危険ですから!」 人間に作られた屈辱?えー そんなもん人間様の俺が知るわけないでしょうww ロボ■ップみたいでかっこいいじゃん。 「劇場版ポケットモンスターミュウツーの逆襲」ってタイトルで映画化すればバカ受けしそうだな。 しかし事情はどうであれ、それなりのコンプレックスを秘めてるようだ。 闇っ子ってデレるとすごいから期待age ミュウツー「ああ、そうだろうな。 私の苦しみ、その体に刻み込むが良い 貴様らもこれ以上人間に与するのならば容赦しないぞ!」 ギャラドス「くっ・・・」 フシギバナ「マスター!逃げてください!!」 ミュウツー「私から逃げられると思うな、人間!」 残念だが逃げるつもりはないっすよww まぁ、お遊びはこれくらいでいいかね。 マスター「そぉい!」 ミュウツー「!?」 フリーザー「・・・」 さすがシルフカンパニー特製マスターボールだ!なんともないぜ! <ピコーン マスター「ミュウツー、ゲットだぜ!!」 フシギバナ「え?」 キュウコン「あらあらw」 ギャラドス「うわぁ・・・」 ライチュウ「これはひどい」 フリーザー「・・・」 マスター「んじゃお前ら帰るぞー」 これからじっくりとミュウツーたんのお話聞かないとなぁ・・・ハァハァ ギャラドス「マスターもシゲルに負けずKYだよな・・・」 ライチュウ「うん・・・」 フシギバナ「でも、私達の心配をしてのことかも・・」 ギャラドス「だからってこれはねーよww」 フリーザー「・・・(あきれた)」 キュウコン「脱出するから皆ついてきなさーい」 マスター「ほいほい」 マスター「ふひひ・・・お家に帰ってじっくり話をきくからねww」 ミュウツー「くっ・・ここからだせ!」 続く・・・?
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膝に手を置いて特に何をするでもなく、ただ待ち続ける蛾が一匹。 それなりに広い施設の休憩室とはいえ余計なものは置いておらず、縦長の部屋に椅子が20ほど左右の壁に並べてあるばかり。 入り口横に自販機が置いてあるものの投げやり感は拭えず、その部屋は待ち合わせの際、それもあまり騒がしい場所で待たない時だけ使われる。 灰色の扉のある壁の反対側は、何も装飾のない灰色の壁で塗りつぶされていた。 その部屋の椅子に座っているのは、やはり毒蛾と呼ばれるモルフォンが独り。 しかし、偶然この扉を開けるものが今日は他にもいた。 「……お? モルフォンじゃんか」 扉を開いて入ってきたのは、やはりもえもんだった。 長身に全身灰色の服、柔らかそうな体と対照的に、振り回されてぶつかったら間違いなく故障確定の岩石ポニーテールをがらがらと引っ張っている――イワーク。 二人は全く別の主人持ちであったが、モルフォンは時々仕事をしており、その関係でちょっとした知り合いになったのである。 あくまでちょっとしたであり、深い親交があるわけではないのだが――。 「ああ、誰かと思えば――」 彼女が扉を閉めて、すたすたがらがらと歩いてきてモルフォンの正面に座ると、モルフォンもまた、イワークに笑いかけた。 「ポッポ並の攻撃力を誇るイワークさんじゃないですか」 「……っておい。褒められてるように聞こえないんだけど、それ」 思わずずっこけるイワークに、蛾はにこにこと笑みを浮かべて、全く変わらない調子で話すだけであった。 むー、とイワークが唸る。 「別に褒めてませんよ?」 「そういう事じゃない、そういう事じゃ。もうちょっと、こう、他に呼び方はないのか?」 彼女がそう詰め寄ると、うーん、そうですねえ……とモルフォンは頭をほんの少し傾げて考える。 いや、実際にはその頭で何を考えているかなど、誰にも窺い知ることはできないのだが。 そして少しだけ悩んだあと、頬に人差し指を当てて、頭を傾げたまま口を開いた。 「素早さが無駄にメノクラゲくらいあるイワークさんですか」 「そうそう、その微妙さが辛くて……ってそういう事じゃない。つーか無駄っていうな、素早さに無駄なんてないぞ」 「防御がそこそこあるけど、実はひ弱で格闘技に疎くて足元がお留守なせいで簡単に突破されることに定評のあるイワークさんですか?」 「バカにすんな! 鼠とか猫ならどうとでもなるんだぞ!」 「あの四天王?も絶賛?のもえもん?であるイワークさんですか?」 「何で疑問符だよ?! つーか最後から二つ目はいらないだろ! あたし仲間外れかよ!」 「進化させると強いけど容姿が、しかし進化させないと辛いという選択で主人を悩み殺そうとする闇のプレイヤーキラー・イワークさんですか?」 「存在自体が罠みたいに言うな! お前、お前なぁっ……!」 そこで我慢ならなくなったのか、イワークは立ち上がって彼女にずんずんと近寄り、がしりと首元の辺りを掴む。 ぎりぎりと締め上げようと、力を入れて、力を入れて―― 「う、うぅ……ちくしょう……ちくしょう……っ!」 ――入らなかった。 掴んだままの腕は下がり、彼女の濁った瞳がじわりじわりと水を帯び始めると、彼女はその場でがくりと膝をつく。 とりあえず離してくれません?汚いですから――そう言うモルフォンの言葉に、体だけが反射して、ぱっと手を離す。 そのまま両腕は、膝と合わせて地をついた。 「やっぱり、あたし役立たずかなぁ……っ? パーティのお荷物かなぁっ……!」 「まあ、戦力にはならないかもしれませんねー」 がっくりと崩れ落ちて、震えた体で声を絞り出していくイワークに、何処までもモルフォンは淡白。 寧ろ鬱陶しく思っているのではないかと勘違いしてしまうほど、その笑顔には変化がなかった。 「分かってたんだ……。マスターに拾われて旅して、なんか途中から全然あたしの攻撃が通らなくなってるし……っ! 相性良いはずの相手が妙に苦しかったり……!」 「無駄に先手取られたり、その上一撃で決められなかったりするんですよね」 「マスターが途中で仲間にしたカビゴンの方が、よっぽど直接攻撃も超能力系の攻撃も耐えられるし、攻撃力高いし! おまけに回復もできて、便利な自己強化もあって!」 「攻撃技のバリエーションも遥かに幅が広いですしねえ」 「う、ううっ……ぐすっ」 どれだけ酷い言い草をされても無視できなかったのは、そのどれもが自分が感じていた事実だったから。 自分の思い出ではなく、傷を抉り出すように自分に叩き込むそれはまさに自傷行為で、気持ちは吐き出す度に彼女の心を苛む。 さらに外から毒をのせてちくちくと刺し続ける相手がいるので、一向に止まる事はなかった。 「そんな事、いまさらだと思いますけど。生まれた時にもう決まってるんですよ、イワークさんの戦闘における大体の劣等なんて」 「ううっ……」 モルフォンにとってはそもそもそんな事は今さらの話であって、価値観の違う二人が絡み合う事はない。 ただ弱さを見せたイワークだけが、がっくりと膝をついて一方的な自傷行為に浸って苦しんでいた。 その時、扉が開く。 「おーい、イワーク――」 「ますたああぁぁぁっ!」 突っ込んだ。 扉が開いて、誰か少年が姿を現して、声を確認しているのかしていないのか、それとも感情をぶつける相手がいればどうでもいいのか。 イワークは即座に身を翻して、部屋に入ってきた少年にダイブする。 長身の女性が飛び込むように抱きつくと、少年は危うく後ろに崩れ落ちそうになりながら何とか持ちこたえる。 「ど、どうしたのさ? イワーク」 「ううっ、ますたぁ……っ! ごめん、あたし役立たずでっ……! 全然バトルの役に立たないし、無理に使われてるって分かってるし……!」 恐らくは涙で塗れているだろう顔を少年の肩に置き、ぐすぐすと声を絞り出してそう叫ぶ。 「外してくれてもいいからっ……! だからお願いマスター、嫌いにはならないでっ……!」 ありったけの彼女の思いを乗せて。 その様子に、彼女のマスターが呆気に取られていたのは一瞬だけのこと。 何が起こっているのか、何でそうなったのかは後回しにして、そのマスターはただ彼女の頭に両手を回して優しく、優しく抱き止めた。 「イワーク、僕がどうして戦ってると思うのさ。そんな事出来るわけ、ないじゃないか。……なんて事を言うんだよ」 「うう、だってっ……! ますたー、ますたぁーっ……!」 「仲間と一緒に、できるだけ大きな喜びを味わいたいからじゃないか。……手段を目的にすり替えたくないよ」 「ごめん……っ、マスター……」 「君は外さない。何があっても、外さないからね」 「うん……うん……っ!」 「ほら、涙を拭いて」 涙目のままの顔を一旦離して、少年は彼女にハンカチを手渡す。 ――彼女がそのままぐすぐすと涙を拭いている間、恐らく自分の方を睨んできていたのは間違いではないのだろう、と一部始終を見ていたモルフォンは思った。 特に言葉を添える事もなく、その睨みに花のような笑顔で返すと、彼の方から目を背けた。 「さ、行こう」 「うん……っ!」 そう言って、彼らは、扉を閉めてその場所から出て行った。 かくしてまたもや、閉鎖した空間に蛾が一匹。 出て行く時に挨拶すらなかったのは気付いていたが、彼女自身それを特に気にすることはなかった。 くすりと笑って、そのまま厳かに立ち上がる。 「戦闘能力がなくても、それが役立たずであるかどうかとはイコールになりませんよねー。受け止めてくれる人がいれば、それでいいじゃないですか」 モルフォンには興味のある話ではあったが、同時に目に映るのが痛々しい話でもあった。 恐らくあのイワークは私の事をそもそも目に留めてもいないのだから、私が彼女を気遣う理屈は一片たりともない。 「一番可哀想なのは――」 扉とは逆側の、ただ灰色の壁に近づいていくと、ちょうど一番端、入り口から見て左端の椅子の前に立つ。 その場で壁を彼女が丸めた手で三回叩くと、かちりと何かが外れる音がして、灰色の壁に四角いパネルが開いた。 無機質な電子音を何回か繰り返し、冷たいレバーを下から上へ―― 「誰でしょうね」 ――上げた。 すると、ただ塗りつぶされた灰色だったはずの壁が透けて、部屋の向こうにもう一つ、暗い部屋が現れる。 ぶん、と耳障りな音を立てながらその真っ暗な部屋の灯りがつくと、そこには。 ちょうど鏡張りのように同じ規模のような部屋に、すしづめ状態で詰め込まれた大量のもえもんが、居た。 「……こんにちは、みなさん」 普通のもえもんでは、なかった。 いや、普通の状態のもえもんでは、というべきか。 狭い部屋に閉じ込められた数十匹のもえもんは、誰もかれもが異常な状態であるのは目に見えていた。 ある者達は部屋の片隅で膝を抱えて動かない。 ある者達は寝転んだまま、死んだように動かない。 ある者達は――まるで救いを求める地獄の亡者のように、彼女達の部屋に光が灯されると共にその透明な壁に張り付いた。 いや、正確には『こちら側』の部屋に飛びついたのだろう。 ぱたぱたと羽を震わせるモルフォンを取って食わんばかりの勢いで張り付かれているその壁は、無限に注ぎ込まれてきた脂と水で薄汚れている。 地獄とそれ以外の世界を隔てる、たった一枚の壁。 「お別れに来ましたよ?」 そう言ってくすくすと笑うモルフォンの声は、向こう側の部屋には届いているかは定かではない。 ただ少なくとも『向こう側』の部屋の声は、こちらには届かない。 レバーを下げてしまえば、その鏡張りの部屋の存在には誰一人気付かずに通り過ぎるだろう。 「もえもんが一度人間の中で、人間に触れて生活してしまえば、野生に戻ってもまた同じように生活する事はできない」 彼女達が涙ともつかなくなったもので顔を汚しながら、亡者の手を近くで伸ばしている事にも気付かずに。 「出たいですか? 出たいですよねー。でも出してあげません」 部屋の奥には、扉に模した雑な絵が書き入れられており、そこにはもえもん種族の名前がいくらか書き記してあった。 カメックス、ラッタ、アーボック、プクリン、ディグダ、ニョロボン、カモネギ、ブーバー、ブースター……。 かろうじて読み取れるのはその程度で、後の名前はぐしゃぐしゃに掠れて読み取ることができない。 「だって、出てどうするんです? どうせ貴方達を受け入れてくれる人なんて、どこにもいはしませんよ。求められないし、受け入れられない」 かりかりと彼女が爪でその透明な壁を引っ掻くと、『向こう側』は何かを期待したのか、それとも一縷の望みに賭けているのか、動きが激しくなる。 最高に滑稽だ、と彼女は思った。 この境界線の様子も、それをこちら側から眺めて余裕綽々でこんな事をしている自分も。 「それに、私のお仕事の一つでもありますから。――いえ、過去形ですけど。お金はあっても腐らないんですよ? ……例え腐ったお金でも、店に持っていけばぴかぴかの新品同然」 彼女はその境界線に近づいて――はふぅ、と息を吹きかける。 それに合わせてくもりが出来ると、彼女はすいすいと指を動かして、文字を描いていく。 相変わらずの で。 「頑張ってください。死ぬわけじゃありませんし、ちゃんとご飯も出ます。せいぜい媚でも売っていたらどうです? そうしたら、誰か主人に救い上げられますよ、きっと。 ……まあ、それが貴方達にとって最適の主人とは限りませんし――見つからなければ、それはそれで楽になれますよ」 ま け い ぬ め 彼女は、レバーを上げた。 ◇ ◇ ◇ やがて部屋には、男が一人やってきた。 一人の相棒を迎えるため。 「モルフォン。待ったか?」 「それはもう。随分時間が掛かりましたねー、てっきり忘れられて何処かへ行ってしまったのかと思いましたよ」 「いや、悪い」 彼女の主はそう軽く謝罪して、頬を掻いた。 「待たせて勝手だが、早く行くぞ。パルシェンとドククラゲに席取りは任せてあるんだが、あんまり放置したくない」 「それは確かに不安ですねー。ひょっとしたら取り直しになるかもしれませんよ? 逆にしたら良かったんじゃないですか?」 「そしたらお前を迎えに来るのに時間がかかるだろう? さ、行くぞ」 「はいはーい」 言うが早いか足早に扉を開けて行く彼に続いて、彼女も席を立ってぱたぱたと扉の外へ向かう。 扉のノブに手をかけて一瞬動きを止めると、振り返って蛾はにっこりと灰色の壁に笑いかける。 誰もいないはずの部屋の、その奥の、奥の奥に向かって。 「それでは、ごきげんよう。今度は外で出会える日を、楽しみにしていますね」 扉は、閉められた。
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数時間も前の話。 宿の受付にて。 恰幅のよいひげの主人が、宿帳に俺たち三人の名前を記入しながらボソリと呟いた。 「あぁそうだ。この町はハロウィンが名物なんでな、旅人のところに来るかは知らんが、いくつか用意をしておいたほうがいいぞ」 「ハロウィン……? いつ行われるんですか?」 「今日だ。日付も知らんのか?」 「……ハロウィンってなじみ薄いですから」 「他所の町はそんなものか……。よし、これでいいか?」 宿帳の名前を見せられる。 俺、べとべたぁ、ふりぃざぁの三人分。 それと……俺たち以外には二組泊まってるみたいだ。 「大丈夫です。一晩お世話になります」 「ほらよ、鍵だ。なくすんじゃねぇぞー」 合鍵はねぇからな、はっはっはー。 なんて豪快に笑う主人をスルーして、俺たちは荷物を下ろしに部屋へ向かう。 「お菓子の準備か……どうする?」 「たべるです!」 「だまるんだべとべたぁ」 「それなら自分に任せてくださいよぅ!」 「? わかった」 普段が普段なだけに、なぜか物凄く頼りになりそうだ。 「ここです」 ジャック・オ・ランタンを頭にかぶった紫の少女が一人、部屋の前に立っていた。 一説にはヘドロから生まれたとも言われる萌えもん、ベトベターだ。 ベトベターは戸の脇にあるべき呼び鈴を、キョロキョロと可愛らしく首を振って探していたが、存在しないと言う結論に達すると、 コンコン 戸を二、三度ノックした。 部屋の中からは、気の弱そうな返事が一度返り、軽い足音が戸の傍へ向かってくる。 足音を耳にして、いよいよ待ちきれなくなったのか、ベトベターは体を震わせ、一つの呪文を小さく繰り返した。 とり、くお、あとりーと。とり、くお、あとりーと。 足音が止み、ノブがカチャリと回った。 「はい……?」 戸から小さく首だけをひょこりと出して、部屋の主は客の姿を探す。 やや濁った水色。大きな耳。ズバット、萌えもんである。 顔が左右に動くたび揺れる前髪から、赤い瞳が紫の少女を捉えた。 かぼちゃを頭にかぶった奇異な姿に一度目を見開き、硬直するが、すぐに理由に思いついたか、表情を崩す。 「とり、くお、あとりーと!」 「あ、ああああのっ。ちょっとまっていてくださいっ」 戸を半開きにしたまま、ズバットはますたー、お菓子をっ、と慌てて部屋の奥に戻っていった。 ものの十秒ほどで、玄関に舞い戻ってきて、 「ハッピーハロウィンです」 大事そうに胸に抱いていた、やや大きめの包みをベトベターに優しく手渡した。 その大きさに比例して、ベトベターのお礼の声も大きくなる。 「あ、ありがとうですっ!」 包みを高く掲げて楽しそうに跳ねて去っていく背中を、控えめな笑顔が見送っていた。 「つぎはここです」 ベトベターが立っているのはもう一組の滞在している部屋の前。 こちらにもやはり呼び鈴はついておらず、先と同様にこつこつと戸を叩いた。 「……」 しかし。 「……」 返事も物音も返ってこない。 「るすですか……?」 数度ノックを繰り返したが、結果は同じ。 しょんぼりとした様子が見てすぐにとれるほど肩をガクリとおろして、自分の部屋に戻っていった。 「おーい、ふりぃざぁ。俺だ。開けてくれ」 「オレオレ詐欺ですねっ そんな手にはひっかかりませんよぅ」 「てめぇマスタードかわさびか直接突っ込まれたいかおい」 「ひぃぃぃぃっ」 べとべたぁと別れてすぐ、俺は自分の部屋へ戻ってきた。 が、体中荷物だらけで扉を開くことが出来ず、中にいるはずのふりぃざぁに頼っていた次第である。 がちゃり。 脅しの一言にはどうにも弱いようで、すぐに扉が開き、ビクビクと体を震わせながら、ふりぃざぁが現れた。 ……。 「なぁ……」 「は、はいっ マスタードかわさびと言われれば……マスタードでおねがいしますっ」 「……」 やっぱりおかしい。 ギアが一個回りすぎているような。 「どーした。なにかあったか」 「……」 「べとべたぁならお前の変化に敏感なんだけどな……」 これは事実であり、そして、ベトベタースキーのふりぃざぁへの脅しでもある。 ぴくりと肩を上げ、ぽつぽつと訳を話し始めた。 「用意してたんですよぅ……」 「かぼちゃのアレか」 「それと……」 「?」 「来客用のお菓子もです……」 「あ……あー……」 「ランタンといっしょに準備をしてたんです」 半分ほど理解した。 ベトベタースキーであり、子供スキーであるふりぃざぁ。 ハロウィンがマイナー行事のこの国であったとしても、それは彼女にとって大事な行事なのだろう。 この町に来ることを提案したのも、よくよく思い出せばコイツだった気もする。 だから……。 「見てください……この悲しい包みたちを」 「うわ……」 テーブルに並べられている包みの数は五十、いや百を越えているかもしれない。 計画性と予見がないといってしまえば一言だが、逆に、それだけ期待していたともとれる。 「一つ、たった一つでも、誰かが貰いに来てくれれば……こんな気持ちにならずに済んだんです」 「一つも売れてないのか……」 それは相当大きなショックだと推察するのに難しくない。 俺だって、似たような経験くらいある。 ただ、それが生き甲斐に近いか近くないか、それだけの差で。 勿論ふりぃざぁにとってのこのハロウィンは前者だったのだ。 「……どうしましょう。捨てちゃいましょうか」 果てに自嘲気味。 全く。 全くもって鬱陶しいヤツだ。 「おい……これ持ってけ」 「……?」 荷物を全部、わけがわからないという表情のふりぃざぁに押し付けた。 廊下まで足を進めていたが、くるりとターンして外へ。 静かに戸を閉める。 「ふぅ……」 戸に背を預け一息。 やるべきことは決まった。 もう一度だけ大きく息をつき、扉から一、二歩離れた場所に立つ。 ……よし。 理由のわからない怒りのような力強さを抑えて、落ち着いたノックを数回。 「はいぃ……?」 戸が開く。 ふりぃざぁは若干でも、まだ子供たちが来ることを期待していたか、俺の顔を見て溜息をついた。 ……さぁて。 俺は呪文を唱えた。 「Trick or Treat ?」 ぽかん、と口を半開きに、ふりぃざぁは硬直する。 そのまま五秒経ち、十秒経ち……。 埒が明かないので、頭にコツンと軽く拳骨を当てて、 「菓子くれないと悪戯するぞ?」 「あ……。は、はいっ」 ち。 どうせなら悪戯してやりたかったんだが……。 表情をぐるぐると変え、最後に光ったふりぃざぁの笑顔を見たらそんな気も失せた。 大慌てで部屋から包みを一つ抱えてきて、 「は、はっぴーはろうぃんですよぅっ!!」 菓子を渡すのも忘れて飛びついてきた。 あーはいはいわかったからちかづかないでねつめたいから。 はなれてと いえないこころ おとこごころ ……願わくば、べとべたぁには見られないように。 恥ずかしすぎる。 「ありがとうですよぅ……ありがとうですよぅ……」 ほんっと、別行動とっててよかった。 「……」 だが。 俺が気付かなかっただけで。 一軒分早く済んでいたべとべたぁは、俺たちを目撃していた。 「残りはどうするおつもりでふりぃざぁ殿」 べとべたぁも戻ってきて、とりあえずはふりぃざぁの用意したお菓子をどうするかについて話をしていた。 「だからわたしがたべるとなんどもいってるですっ!!!」 「お前は貰った分でぶくぶく太れるほどあるだろうが。勿論三人分だから俺とふりぃざぁにも余裕はない」 「えぇと……どうしましょう……」 さっきはいえなかったが今は言うぞ。いいよな? いいよな? 「世間離れしてたんだからお前はもっと計画性を持てよ!」 あーすっきりした。 「で、こいつはいつ頃まで保ちそうなんだ?」 「明日一杯です……はい……」 「わたしg(ry」 捨てるしかないか……。 諦めの結論を下そうとしたそのときだった。 「話は聞かせてもらった!」 「まってニーノ! 勝手にお邪魔しちゃ駄目だよ!」 玄関から怪しげな二人組登場。 こいつらは図鑑で調べなくても分かるぞ。 ばばんと胸を張って登場したのがニドリーノ。 その後ろから様子を窺いつつ現れたのがユンゲラー。 「ポリ呼んでいい?」 「ダメ」 否定の切捨ては以外にも気の弱そうなユンゲラーが放った。 「そこにあるお菓子が処分しきれないと聞いた! 間違いないなっ!」 「はいぃ……」 「だからわたs(ry」 べとべたぁはさっきから何かムキになってないか……? 「じゃあ俺がそれを全部引き取るぜ!」 「ニーノ……もうちょっと落ち着いて……」 「ユンは黙って見てろって、な?」 こいつら誰の萌えもんだ……。 監督不届きで補導されるぞ……。 「勿論ただとは言わない! 金ならちゃんと用意してある!」 「いや、金はいい。貰ってくれるなら持っていってくれ」 「いいの……?」 「当たり前だ。腐らせるくらいなら誰かが貰ったほうがコイツも喜ぶさ」 「はいっ」 こうして、俺達の目下のところの問題は解決となった。
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こことここと…あとここかな。よし、終わり。 「これで終わり。お疲れ様、お大事に。次の方ー」 この子は…あ、ここか。む、麻痺もしてるのか。じゃぁこれも、と。 「はい、おしまい。お疲れ様、お大事に。次の方ー」 この子は…あーあ、寝ちゃってるんだね。眠り粉でも食らったかな?ともかく、これつかってから、これ。 「おはよう、ご機嫌いかが?もう手当ては済んでるよ、お大事にね。はい、次の方ー」 この子は…ん? この痣…こっちにも。これもか。ん、ここのも? 何度か手当てした子だけど…手当ての度に妙な痣が増えてる…? …萌えもんバトルの痣じゃないな。ここらで見かけない萌えもんだけど、何があったんだろう。 「君、ちょっといいかな。この痣とか、これとか。これ、萌えもんバトルのじゃないよね?」 尋ねた瞬間、その萌えもんはびくりと身を縮こまらせる。 「いやね、別に怒ってる訳じゃない。けどさ、治療する立場としては、普通なら無いはずの怪我とか、気になるのさ」 「あ…いえ、これは…その…」 「言えないの?」 「……(こくり)」 「そうか。じゃあ、無理には聞かない。また来るときがあって、そのときに教えられるようだったら、教えてね」 「え…?あ、はい。えと…その…」 「ん?」 「……ありがとうございます、お兄様」 「え…いや、気にしなくていいよ(お兄様…かぁ…)。これが俺の仕事だしね。 よし、これでおしまい。お大事にね」 「…はい…」 その日俺の最後の患者だったその萌えもんを見送りつつ。 何故だか、いやな予感が拭えなかった。 「さあ、今日も地道に訓練、頑張ろうか」 「はーい」 「おー」 ハナダについて早一週間。 今日も仕事の合間を縫って二人の訓練に励む。 新たな町については萌えもんセンターに登録し、仕事の合間にリーフィアたちの訓練にでる。 肉体的に楽では決して無いが、自分が選んだ道である。吐くほどの弱音やするほどの後悔など、何処にも見当たらない。 が、別口で気がかりなことを拾うことはあるわけで。 「マスター、どうしたんですか?なんだか上の空ですけど」 「ご主人様、疲れてるならやすもっか?」 しまいには体を動かしている二人に心配される始末。 「ん?あぁ、ごめんごめん…」 「何か悩みがあったら、相談してくださいね?私達、マスターの力になりたいですから」 「リー姉ちゃんに言いにくかったらあたしでもいいからね!」 健気に気遣ってくれる、二人が可愛らしくて和みながら。 (萌えもんのことは萌えもんに聞いてみるかな…) 二人の心遣いに甘えてみることにした。 「そっか。…実はな」 仕事で時々見かける萌えもんのことを話した。 萌えもんバトルでの怪我は薬で簡単に治せる。致命的と見られるものでも医療装置ならほとんどが助けられる。 しかし、それ以外での怪我は。人の怪我と同じように、治るのに時間が掛かる。 俺の見立てでは── ──その萌えもんは、自分のトレーナーに手酷い扱いを受けている可能性があった。 「トレーナーが…自分の萌えもんに?」 「そんなこと、していいの?」 「スキンシップと言える範疇を超えてしまえば勿論アウト。 で、痣が残るような、それも前の痣が消える前から新しい痣が出来るようなレベルじゃ完璧アウトだな。 着てる白いワンピースがずるずる引きずるくらいに大きいから目立たないんだろうけど… どうにかしてトレーナーを見つけて、暴力を止めさせないと」 「そうですね。その萌えもんがかわいそうです」 「さんせーい。ところでご主人様、なんでワンピースの下の痣が分かったの?」 「服の上から薬は使えないからな。怪我の場所を見せてもらってるときに… …こほん。痣の場所は確認したが、俺の名誉に誓って治療以外のことはしていないからな」 「「ふーーーん」」 相談し、今後の方針が一つ決まったが、同時に二人の疑わしげな目線に悩まされることになった。 非番の日。 地元のトレーナーがたむろしていると言う話を聞いていた俺達は、街の北にある橋を渡り、デートスポットとしても名高い 岬を回ってみることにした。 「おー、いるいる」 ちょっとした林めいた広場に7、8人ほどがうろうろしていた。 「皆やる気たっぷりみたいだな」 「そうですね。頑張りましょうね」 「いっぱいやっつけるぞー!」 意気揚々と乗り込んでいく。見知らぬトレーナーの侵入に皆目の色が変わる。 たちまちバトルが始まった。 「お疲れ様、二人とも」 「今日はたくさん戦いましたね」 「くたびれちゃったー」 危ない場面も何度かあったが、どうにか二人でそこにいたトレーナーをあらかた撃破し。 俺達は林を抜け、ハナダの岬へと近づきつつあった。 「さぞかし素敵な眺めなんでしょうね…」 「まだ日が高いから人はほとんどいないだろうけどな。日没が見られる夕方や、良く晴れた星の見える夜は すごいらしいよ」 「いっぺん見てみたいなぁ」 そんなことを話しながら歩いていると。 「…ん?誰かいるな…」 岬には既に先客がいた。 服装を見るとキャンプボーイか。 そして、その向こうに見えるのは。 ここからでは非常に小さいが、緑の髪に赤い髪飾りのような突起、白いずるずるのワンピース。 (あの萌えもん?) 虐待を受けていると俺が判断した萌えもんだった。 そのほかにも二人、見慣れない萌えもんがいる。三人とも、少年の手持ちのようだ。 「あの子が、マスターが言っていた?」 「ああ。しばらく様子を見よう」 手近な木陰から様子を伺う。 この距離では会話までは聞こえないが… 少年が、萌えもんに怒りをぶつけているようだ。 これはますますもって怪しいと思いながら覗いていると。 俺の推察、そしていやな予感は、現実のものであると示された。 「……!!」 少年が足を振り上げ、萌えもんを蹴り飛ばしたのだ。 情け容赦なく。一瞬もためらうことなく。 彼、いや彼らにとってはいつもの事なのだろう。 「!! マスター!」 「わかってる!」 こうなれば黙ってみているわけにはいかない、その場から出た俺達は少年に向かって駆け出そうとした。 しかし、 「あら、あなたトレーナーなの?勝負してもらうわよ!」 その場でまだバトルしていなかったトレーナーに捕まってしまった。 急いでいると言っても、聞く耳持たずに萌えもんを繰り出してくる。 どうにか勝利した頃には、少年を見失ってしまっていた。 「くっ…」 「マスター、また見つけられる時が来ます。気を落とさないでください」 「そうだよ、ご主人様。次見つけたときにとっちめちゃえばいいよ!」 「…それも、そうだな。ありがとな、二人とも」 だが、あの少年を捕まえ、止めさせるのが遅れれば遅れるほど。 あの萌えもんの体の痣は、増え続けることになる。 そのことが、俺の心を苛んでいた。 その日から丁度4日後。 「さて。今日はハナダジムの公開戦だ」 「どんなジムリーダーさんなんでしょう」 「現カントージムリーダーの中で最年少、女性ジムリーダーだな。 性格としては歳相応らしいが、その実力は紛れもなくジムを率いるものだそうだ。 というわけで、ヒトカゲ。ニビのときみたいなマネは勘弁な」 「う…わ、わかってるもん」 反省はしているみたい。 これなら大丈夫だろう。 と言うことで、萌えもんセンターのすぐ横、ハナダジムへと向かった。 岩タイプ使いのタケシのジムとは大きく違い、ハナダのジムは巨大な室内プールの様相を呈していた。 普通のプールとの差異は、ところどころに頑丈な足場が置いてあるところか。 アナウンスがなり、ジムリーダーカスミが姿を現す。 「……」 なんというか、見知らぬ多くの人間の前に水着で登場ってのは、年頃の娘としてどうなんだ。 幾ら室内プールといっても自分ひとりだけ水着って、恥ずかしいんじゃないのか? 等と考えるあたり、俺も自分で思ってるほど心が若くはないらしい。 「さて、どんなバトルなのか、見せてもらうか」 ニビでも思い知らされたことだが、ジムリーダーは強い。 タケシの場合はイワークの前にイシツブテを倒せるトレーナーが少ないようだったが、カスミはそれとは違う。 ここでのルールは戦闘中に入れ替えはありらしく、ヒトデマンの様子を見てためらわずに引っ込めてくる。 ヒトデマンと交代か、あるいは倒されるかするとカスミの片腕、スターミーが現れる。 そのスターミーの強さが尋常ではない。 ほとんどが水場である地の利から、高速で水中を泳ぎまわり相手に狙いを定めさせない。 そして相手がまごついて見せる隙を確実に捉え、サイコキネシス・十万ボルト・冷凍ビーム・水の波動といった多彩な技で粉砕する。 お陰でタケシを倒したがカスミのスターミーが倒せないというトレーナーがたくさんおり、萌えもんセンターは他の都市より大忙しだ。 …あ、これで8人目。次がラストみたいだな。 「あいつは…!」 岬で見かけた、萌えもんに暴力を振るっていた少年。 「またキミ?ちょっとは成長してるんでしょうね?」 カスミのセリフを聞く限り、何度も挑戦しているらしい。 「うっせー!こんどこそバッチもぎ取ってやるから覚悟しやがれ!」 乱暴な口調で言い返し、萌えもんを繰り出す。 最初の萌えもんは、俺が手当てをしていた萌えもんではなかった。 だが、ハナダの岬で一緒にいた萌えもんだった。 「いけよ、ヒマナッツ!メガドレイン!」 ヒマナッツと呼ばれた少年の萌えもんが、開始と同時に足場を飛び移ってカスミのヒトデマンに襲い掛かる。 「ヒトデマン、水にもぐって」 だが、手馴れた様子のカスミの一言で、ヒトデマンは水中に身を躍らせ、容易く攻撃を回避する。 「いい加減、その萌えもんじゃ先制攻撃は無理だって学んだら?萌えもんがかわいそうよ」 「うっせーってんだよ!おらヒマナッツ、ぼやぼやしてねーで追っかけろ!」 少年の怒声に、慌ててヒマナッツが水に飛び込む。 しかし、どう見ても水タイプではない少年のヒマナッツはヒトデマンを追うどころか泳ぐので精一杯。 そうなればヒトデマンの敵ではない。 「ヒトデマーン、終わるまで水の波動ー」 カスミも明らかにやる気が無い。毎度の展開なのだろう。 まともに動けないヒマナッツに、ヒトデマンの放ったリング状の蒼い衝撃破が立て続けに叩き込まれ…… 手傷一つ負わせられないまま、ヒマナッツは戦闘不能に。 その後の展開も、ほとんど同じ。 次に繰り出されたブルーというらしいピンクの萌えもんもヒマナッツと同じ運命をたどり、 最後にでてきた、俺が良く手当てしたあの萌えもん───ラルトスも、テレポートで接近して念力を一度当てたに終わった。 「なんなんだ、あいつ……まるで考えてないじゃないか」 その日の試合のなかで最もひどい試合だった。 他の挑戦者は早々にスターミーを投入されたり、あるいはヒトデマンの多彩な防御技で翻弄されて敗北していた。 だが、あの少年相手にカスミが命じたのは、水にもぐれ、と水の波動を打ち続けろ、の二つのみ。 それでも最も早くに終わった。 試合終了の合図のときの少年の態度から、敗因が自分にあるだなどとは欠片も思ってはいまい。 「萌えもんのことを、まるで考えていない……」 少年に対する怒り。それと同等以上に、自分の萌えもんにあんな態度をとるトレーナーがいるという事実に。 俺は、ショックを隠せなかった。 「結局、対策らしい対策は思いつかなかったな」 「そうですね…」 分かったのは、ヒトデマンは持久戦に優れ、逆にスターミーは短期決戦を得意としていることぐらい。 公式戦にリーフィアが出られない以上、戦えるのはヒトカゲだけだが、あれでは勝てるはずが無い。 いや、リーフィアが出られたところでスターミーの冷凍ビームがある。 今の俺達には勝ち目を見出すのは難しかった。 「ともかく、どうにかして勝たなきゃ先に進めないからな。 いい案でも浮かべばいいんだけど」 「私達だけで勝てないのなら、他に野生の萌えもんを仲間に入れるしかないんじゃないですか? 幸い、そばの草むらで草萌えもんを見かけましたし」 「んー……そうなんだよなぁ」 しかし、そうしてカスミを破ったところで、その後はどうするのか。 これから先のジム戦で、勝てないからといっては都合のいい萌えもんを捕まえては戦わせ、終わったら預かりシステムに任せるのか。 そう考えると、どうしても俺には野生の萌えもんを捕まえるという選択肢は選べなかった。 「あーあ……誰かがこの子を引き取ってーって、萌えもん連れてきたらいいのに。 そしたら、ご主人様も引き取るでしょ?」 「事情によっては引き取るけどさ。そんな偶然に期待するわけにもいかないし、何よりそんなことは無いほうがいい。 自分の捕まえた、自分の萌えもんにくらい、トレーナーなら責任持って欲しいよ」 それは、まだまだ駆け出しながらもトレーナーとして、また萌えもんセンターに勤める職員としての、 俺の正直な気持ちだった。 続く あとがき もう開き直って各街に2、3話書くことにしました(爆) 冒頭から目一杯フラグ撒いてます。 これまでに書きそびれましたが、ヒロキの思考の中では萌えもんは一人二人と数え、その他の場面では一匹二匹と数えてます。 お陰でただでさえ読みにくいのがなおさら読みにくいですが、萌えもんセンターの人々は皆そんな風なものだということでご理解ください… お月見山であった事とか思いっきり省いてます。もう既にレッドとグリーンが通過した後なので、ロケット団も化石もとうに無いってことで。 あとマサキが出ません。図鑑作ってるわけじゃないし船のチケットはレッドがもらってるしでうわさすら出ませんでした。 いまいちはっちゃけるというか、お茶目なテンションが書けません。小ネタとかのような、ツッコミかイジラレが限度です、ボケが出来ません。 始めの方に撒いた設定のせいでリーフィアの出番が出にくいのはどうしようもないです。ごめんよリーフィアごめんよ。 カスミと暴力少年の口調もいまいちしっくり来ない… 設定ではカスミもこの少年も15ってことにしてます。14歳の設定(だったかな?)の気がしたけどサトシもシゲルもいない世界だし。 20過ぎのヒロキからしたら15って少年であってるよね? 冒頭の手当てのときのあの子(もうこの話の中で名前出してるけど)の「お兄様」ってのは妙な意味は全く持たせてません。 「マスター」あるいは「ご主人様」はそのときのその子に既にいるので、他に適当な呼び名を超丁寧に、としたらああなりました。 ポーカーフェイスなりにヒロキは密かにあの場で萌え萌えしてるんです。ちゃんと仕事してるあたりはプロですから。 ちびっ子萌え…はヒロキじゃなく筆者です(オイ)ヒロキは仕事上からも健全…なはず。 ごちゃごちゃ言い訳してたらあとがきまで読みにくい…ほんとすみません。 こんなダメ筆者でも続きを期待してくれるなら脳汁溢れさせるかいがあります。 お付き合いいただき、誠にありがとうございます。
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旅にでて一週間ほどたった。 普通に進めば、セキチクについててもいいころだ。 だけど、俺はまだ12番道路をいったりきたりしている。 12番道路は釣りの名所と言われ、水萌えもんを仲間にするのにはもってこいの場所だ。 最初は船で行こうとクチバに向かったのだが、グレンへの船は出てないと言われ、それからずっとここで釣りをしているわけだ。 「……釣れん」 《きょうもつれないの?》 「ああ、今日も駄目そうだ」 さすがにこの会話も慣れてきた。できたらしゃべってもらいたいところだが。 それにしても釣れない。 あのクチバの釣り親父に騙されたか。何もないよりましだが。 ……釣れねぇ。釣りは忍耐力だって誰かが言ってたな。 さすがにキレそうだ。 何か向こうの方が騒がしいな。バトルでもしてんのかな? 「見に行ってみるか?」 カラカラはうなずく。 「んじゃ、いくか」 俺たちはその人だかりの方に向かっていった。 人だかりはやっぱりバトルだった。 話を聞くと、最近毎日ここでバトルをしているらしい。しかも、毎日同じような結果だとか。 片方はスターミー。もう片方は…見たことない萌えもんだな。 水タイプみたいだけど、十万ボルトとか電気タイプの技を使えるのか。 でもスターミーに当ってないんだよなぁ。 全部‘かげぶんしん’でかわされてるんだよな。 当ればいいとこいくと思うんだけど…。あ、倒れた。 「そこまで!スターミーの勝ち!」 審判をやってた人が叫ぶ。 「今日も同じだったか」「でも惜しかったわよねぇ」 人々が感想を言いながら立ち去っていく。 「今日も俺の勝ちだったな。ずっと同じ戦い方じゃいつまでも勝てないぜ。じゃあな!」 そう言って駆け出していくスターミーのトレーナー。あっちはクチバだから萌えもんセンターにでもいくのだろうか。 俺もその場を離れようとしたとき、急にものすごい怒声が聞こえた。 「お前のせいで今日も負けたじゃねえかよ!!お前なんかもういらねえ!!そのままくたばっちまえ!!」 瀕死の萌えもんに怒鳴りつけるトレーナー。萌えもんはぐったりしてほとんど聞こえていないだろう。 しばらくしてその場を去ろうとするトレーナー。 「置いてっていいのか?」 俺はそのトレーナーに聞いた。 「いいんだよ!あんな弱いやつ!」 予想通りの答えだった。目を見ても嘘なんかついてない事がわかる。 「じゃああの娘引き取っていいか?」 「勝手にしろよ!ほらよ!そんな弱いや…」 モンスターボールを渡される。それと同時にその萌えもんのもとに走る。何か言っているが気にしない。 萌えもんをボールの中にいれ、また走る。 近くのセンターまで全力で走る。 「…どうですか?」 「大丈夫ですよ。体の方はすっかり元気になりました」 ほっ、と肩をなでおろす。 「でも心の方は……」 「大丈夫です。それはこちらでなんとかしますよ」 そういってから萌えもんのとこまで案内してもらう。 「ところで、そろそろ頭から降りてくれないか?」 走るときに乗せたのが気に入ったのか、ずっとそのままだったカラカラに話しかける。 《やだ》 あっさりと却下される。 (あたし、なんでこんなところに?) 気がついたら、ベッドの上にいた。 混乱している頭の中を必死に整理する。 (えっと、バトルに負けて、起き上がれなくなって、それから……) だめだ、その後が思い出せない。 (あれ、そういえばご主人様はどこ?) そう思い、体を起こす。 すると、センターの人と知らない人が部屋にはいってきた。 「よう、起きたか」 知らない人に話しかけられる。 「私のご主人様はどこ?」 私はその人に問いかけた。 「私のご主人様はどこ?」 まあ、当然の質問だよな。 さてどうしたものか。 「まあちょっと待て、その前におまえの名前は?」 「えっ?ランターン…」 「オッケー、じゃあランターン、この辺じゃあ見かけないけど七島辺りからきたのか?」 「前はジョウトにいたの」 それから何回か質問を繰り返す。こっちのことも教えながら。 「じゃあ本題に入るか。なんでここにいるか…はわかんないよな。ここで目が覚める前のこと覚えてるか?」 「えっと、バトルに負けて、起き上がれなくなって、それから……」 だめだ。やっぱり思い出せない。 でもこの人どこかであった気がする……。それも最近の気が…。 「それからが思い出せないの」 「そっか、思い出したら教えてくれ。あとご主人様探しに行こうとするなよ。今日一日はここにいろ。」 そう言って、その人は部屋から立ち去ろうとする。 その人の頭に乗ってた萌えもんがこっちにくる。手に持ってるメモ帳を見せる。 《からだだいじょうぶ?》 そう書かれている。この娘しゃべれないのかな? 私は「大丈夫だよ」と答えた。 急にカラカラが頭から飛び降りる。 ランターンと話がしたいのかな? 「ここにいるか?」 カラカラに訊ねる。 《うん》 ずいぶん返事早いな。 「じゃ、逃げないように見張っとけよ」 そう言って部屋からでる。 「どうなんですか?」 ジョーイさんに訊ねられる。 「たぶん、覚えてますよ。何があったかは」 「えっ!?」 「あれは多分思い出せないんじゃなくて、思いだしたくないんだと思います」 「そんなことあるんですか!?」 「人間でもあるじゃないですか。昔虐待を受けてて…ってやつ。それとおんなじですよ、一時的なものですけど」 絶句するジョーイさん。そりゃそうだ。 はっきり言って俺はかなりキレている。本当なら今すぐにでもあのトレーナーをぶん殴りたい。 でもその前にやるべきことがある。殴るのはそれからだ。 「あの…」 その場を去ろうとしたときジョーイさんにたずねられる。 「何でそこまでわかるんですか?あのランターンのこと」 「昔、似たような症状の子にあったことがあるんですよ。だからそういう方向の勉強もしてたんですよ」 「なるほどそれで…」 「じゃあ、あいつらにジュースでも買ってきますね」 「おーい、ジュース買ってき…ってなんだよ」 部屋に入るとベッド上で眠る二人の姿。 しょうがないか、話の続きは明日にしよう。 俺は二人に布団をかけて、部屋のソファーで眠った。 ~続く~
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萌えもん 小説 「ERMA(エリートルーキーマスターアキヒロ)」 第1話 「ショックな出会い」前編 ナレーター(以下ナ)「これは、もう1つの太陽系、地球と完全にそっくりな もうひとつの地球の話である。」 ナ「この地球は、私達の地球と、1つだけちがう。 そう萌えもんと言う不思 議な生き物が、存在する。」 ナ「これは、ある少年の、大きな物語である。」 ?「zzz ん?朝か。 んーよく寝た。」 ?「時計は、・・・5:30か、30分早いけどねむくないな。」 ?「ちょっとげーむでもy」 母親(以下母)「アキヒロ起きたの?1階に下りなさいよ。」 アキヒロ(以下ア)「えっ母さん、なんでおきてるって気がつくの?」 母「声が大きいから。」 ア「用に筒抜けか、欠伸が・・・眠気覚ましにゲームするから6時に降りる よ。」 母「何言ってんの今降りなさい。」 ア「やだ。」 母「ミニリュウ はたくでねむけをとりなさい。」 ア「降りるよ!それだけはかんべんして。」 1階に降りた俺は、母とミニリュウの料理姿を見ながら出発の準備をしてい た。 俺はアキヒロ、今日から萌えもんトレーナーになることになった11才のどこ にでもいる少年だ。 ただ・・1つだけ違うのは父と祖父が萌えもんトレーナーでしかもチャンピョ ンというすごい一族であること。 2人とも今も旅して盆と正月に3日ずつ家かえらない。 余談だが2人の手持ち合計12匹は、すべてメスなのだが、・・・よく母もコ ガネに住む祖母も不倫くさいのに怒らないものだ。・・・イライラしてるみた いだけど・・・。 ミニリュウ(以下ミ)「アキヒロさんご飯できたよ。」 ア「わかったよ。」 彼は、母のミニリュウだ。父の2匹ハクリューの倅らしいが彼の父は今我が家 にいて今庭でバトルの練習をしている。 ア「おーい、ハクリューご飯できたぞ。」 ハクリュー(以下ハ)「わかりました坊ちゃん。今行きます。」 さて朝ご飯食べるか。そして台所に行った。」 中編に続く
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海に自ら両足を浸すと、冷たい水が足と頭を冷やしてくれた。 落ち着いてくるにつれて、自分への嫌悪感がどんどんと募ってくる。 ――あの時。 烈しい劣情に駆られて、俺はフシギソウをその場へと押し倒した。先ほど彼女が蔓でそうしたように、その両手を俺の片手で押えこんで。 ベッドにおいてあったリュックが落ちて、中身をぶちまけるのも気にせず、そのまま覆いかぶさろうとして。 リュックの中から落ちた、小さなバッジが目に入ったのだ。 その瞬間、俺の中に記憶されていた恐怖と嫌悪がよみがえり、そして俺自身にそれは向かってきた。 「ご、御主人さま…」 「フシギソウ…ゴメン、俺っ!!」 そうして、センターを飛び出してがむしゃらに走っているうちに、この海岸までたどり着いたわけだ。 (今の俺は、アイツらと何が違うって言うんだ) 右の手に握ったままのバッジを眺める。アルファベットの「R」をモチーフにしたデザインの赤い金属。 これは俺にとっての過去であり、形見であり、呪縛であり、恐怖であり、現在を象徴するものだ。 * * * 俺が旅を始めたのはマサラタウンの家からだが、生まれたときからそこにいたわけではない。 なぜかと言えば、マサラに住む俺の家族は、血のつながった家族では無いからだ。俺が5歳の時に起きた事件の後、俺はあの家に引き取られた。 俺の本当の両親は、それはもう酷い奴らだった。 夫婦揃ってロケット団幹部であり、悪事を働いて萌えもんを捕らえ、あるときは売りさばき、 あるときは調教して悪事に加担させ、従わないモノには暴行を加えたり、ひどいには手下を呼んで犯させるなど、本当に下劣極まりない両親だった。 いや、両親だけではないか。6歳年上の俺の兄も、そのうち両親と同じようになっていった。 たぶん、俺もあのまま育っていたら同じようになっていたのかもしれない。いや、確実にそうなっていた。 だが、実際には俺はそうならなかった。俺はずっと、両親や兄の行動に疑問を持ち続けていたのだ。 そうならなかった理由もあったのだろうけれど、今の俺は覚えてはいない。 そして、俺が5歳の誕生日を迎えて間もない時、ニビの郊外にあった俺の生家は、警察に襲撃された。 もちろん俺の家族は逃げだした。俺とたくさんの萌えもんを閉じ込めた屋敷に火をつけてから。 炎に巻かれる屋敷の中に、ギャラドスと共に飛び込んできた一人のトレーナーがいた。後に俺の義父となるその男は、 屋敷中を食い荒らす炎を恐れることもなく、まだ小さかった俺を助け出してくれたのだ。 その日、屋敷から救出された生き物は俺だけだったと警察から聞かされた。俺の家族は、罪もない多数の萌えもん達を焼き殺したのだ。 その後…俺の処遇に関してはいろいろ揉めたらしい。まぁ巨大犯罪組織の幹部の子供だもんな。 が、警察に多大な貸しを作っている養父が俺を引きとると言ってくれたおかげで、俺はいまこうして旅ができる訳だ。 右手に握ったバッジを見やる。このバッジは、養父に発見されていたときに俺が持っていたものらしい。 俺は何度か捨てようとしたのだけれど、養父いわく「勿体ないだろ、とっとけよ」とのことだ。 …まぁ、シルフカンパニー潜入の時には役に立ったんだけどな。 これを見るたびに、両親や兄の怒号や狂った笑い声、そして被害者の悲鳴が思い返されてくる。 * * * 「…帰ろう…」 所詮、俺はあいつらの子であり、弟なのだ。そう考えると益々嫌な気分になるので、とにかく考えないことにする。 とにかくセンターに戻って、フシギソウに謝ろう。そうすれば、きっと今までどおりに戻るはずだ。 そう考えて海に背を向けると、そこには見慣れた姿が立っていた。 「ま、ますたぁ…」 「ロコン…何でここに?」 そう尋ねると、ロコンは今にも泣き出しそうな顔をしながらこっちに駆け寄ってきた。 「ますたーが、いなくなった、って、きいて、みんなで、さがしてたん、です」 「そっか。ごめんな、心配かけて」 「全くだ。何があったのかは知らないが、私の念話まで拒絶してくるとは思わなかったよ」 「フーディン…」 「その様子だと、解決とはいかなくても落ち着いたみたいだね。戻ろうか」 「ああ…悪かった」 フーディンにも謝罪すると、彼女は若干驚いたように「何も謝らなくても」とつぶやいた。 ロコンと俺に触れて、フーディンがテレポートを発動する。目を開けば、そこはもうセキチクセンターだった。 * * * 「あ…御主人さま」 「ただいま、フシギソウ…その、さっきはごめんな」 「う、うん、気にしないで!あれはボクも悪かったから…」 フシギソウは部屋にいた。浴衣は脱いで、いつもの服に戻っている。 ほどなくして、ピカチュウとシャワーズも帰ってきた。話もそこそこに、それぞれボールに戻って眠りについた。 4日目 - シャワーズ - 今日はみんなと離れて、一人サファリゾーンへ向かった。 図鑑のデータ集めもあるが、もう一度自分自身とひとりで向き合ってみたかったのだ。 ゆっくりとジャングルのようなパークの中を歩きながら、考える。 (俺、これからどうしたらいいんだろう…) 分からない。風呂に飛び込んできたりするのは、みんなに頼んでやめてもらえばいい。 けれど、それで問題は解決するわけじゃない。 もし、またあんな衝動が突然襲い掛かってきたら? 俺はそれが何よりも怖い。みんなを傷つけてしまうのが、そのせいでみんなが俺から離れて行くのが怖い。 答えの出ないまま、時間切れのアナウンスが鳴った。 「…もう一回やるか」 図鑑のデータはほとんど集められなかった。お金に余裕もあるし、もう一回や二回くらい構わないだろう。 * * * 「ニドリーノ・ミニリュウ・ニドリーナ・ガルーラ・タマタマ…それに『なみのり』と『かいりき』か。 まぁ…元は十分に取れたな。なみのりはシャワーズにお願いするとして…かいりきは誰に頼むか」 あと一人連れて行けるわけだから、そいつに頼むべきか。もしくはフシギソウかピカチュウにでも渡すか。 とにかく、もう戻らなくては。答えは出なかったが、それはそれで仕方のないことかもしれない。 ほどなくしてセンターにつくと、入口の前で見慣れたシルエットが俺を待っていた。 「フーディン」 「やぁ、マスター。そろそろ帰ってくる頃かと思っていたよ」 ゆっくりと近づくと、フーディンも壁から離れた。 「少しいいかな。場所を変えて話がしたいんだ」 「…ああ、構わないけど」 「わかった。歩くのも面倒だから、飛ぶよ」 言うが早いかフーディンが俺の手をとってテレポートを発動した。 * * * テレポートした先は、昨日の海岸だった。波が届かないあたりの砂浜を選んでフーディンが座ったので、 俺もそれにならって隣に座る。海に反射している紅い夕日が眩しい。 「マスター、話はすべてフシギソウから聞かせてもらった」 …なんというか、やっぱりその話か。 「いや、責めている訳じゃないんだ。いくつか聞きたいことがあってね。 もちろん無理に答えなくても構わないのだけれど」 「…言ってみてくれ」 「ではまず一つ。マスター、あなたの持っているロケット団のバッジについて聞かせてほしい」 「…あれはもともと俺の物だよ。ロケット団に入っていたわけじゃあないけどな。 俺の両親はロケット団の幹部でな…俺も将来はロケット団に入れるつもりだったらしい」 「御両親は…今は?」 「…警察に踏み込まれた時、俺と捕まえていた萌えもん達を残して家に火をつけて逃げたよ」 そうか、とフーディンは軽くため息をついた。 「では質問を変えようか。 マスター、君は萌えもんを『捕まえる』と言う事はどういう事だと思う?」 「…捕まえた奴の自由を奪って、服従させるって誰かが言ってたな。保護とか言ってる人もいたが」 「まぁそうだな。結果は同じだよ。私達は捕獲された瞬間から、 生殺与奪の権利をすべて捕獲したものにゆだねる事になる。好むと好まざるに関わらず、ね」 その通りだ。俺達はこいつらの自由や今までの生活を無理矢理奪って従えているにすぎない。 …本当に。あいつらと俺と、何が違うんだろうか。 「けど、何がいいたいんだよ」 「少なくとも私達は、自分の主が私達に何をしようとも文句を言えない、と言う事さ」 「…それは、違うだろ。たとえば、フーディン。俺がお前を殴ろうとすれば、その気になればお前は俺を殺してでも止める事ができるだろ? お前たちだって俺に言いたい放題やりたい放題やってるんだし、それくらい――」 「なら、仮に今この場で私が君を殺して自由になったとして、その後はどうなる?」 考えてみる。俺がいなくなったとして、フーディン達は… 「…!モンスターボールか!」 「ご名答。もし私が自由になったとして、どこか遠くへ行ったとしても、誰かがボールを操作すればたちどころに元に戻されてしまう。 ボールのリセット機能は指紋認証が必要だから、私を完全に自由にするには君がいなくてはいけない。 下手に壊したりするのも危ないからね」 「フーディン…お前、ひょっとして俺の所から離れたいのか?」 恐る恐る口にしてみると、彼女に思いきり睨まれた。一瞬だけではあったけど。 「全く、変な冗談はよしたまえ。あくまでたとえ話だし、ナツメに無理を言ってこっちに来たのは私の意思なんだよ」 「…そうか…そうだよな」 「質問もおしまい。日が沈むと海辺は冷える。帰ろうか」 「ああ」 結局フーディンは俺に何を伝えたかったのだろう。わからないまま、テレポートで俺達は再び飛んだ。 センターに戻って、風呂場へと入った。みんなはそれぞれ部屋の中でくつろいでいる。 …俺の頭の中に、いくつかの可能性がよぎっていく。それらをすべて振り払って、シャワーのお湯を浴びる。 「マスター」 声がする。…予想はしていたが、やはり来たか。 振り向いても姿はない。ドアの開く音もしない。けれど、きっとそこにいる。 そう思った瞬間、目の前の水たまりが一気に盛り上がって形を成していく。 数秒の後、そこにはシャワーズが立っていた。 「…シャワーズ、出て行ってくれないか」 「マスター…私には、あなたがずっと耐えているように見えます」 「頼むよ、分かってるならなおさらだ」 …もう、俺は我慢なんてできない。すべて壊してしまう前に、お願いだからここから離れてほしいんだ。 「マスター、私はあなたの為なら――」 がたん、と。イスが倒れた。 昨日と同じように、俺はシャワーズを風呂場の床に組み敷いていた。 息が荒い。頭が熱い。けれど、俺の頭の中では小さなころの両親の姿が写っている。 同じだ。 お前も。 ヤツラと。 同じ―― 「マスター?」 シャワーズの頬に落ちる滴り。…その雫は、俺の眼から流れていた。 「…これじゃあ、一緒じゃないか… 俺は、俺を捨てたあいつらと同じことをしてるんじゃないか!大切な仲間に、こんな、こんなっ…!!」 「マスター…」 シャワーズの細い腕が俺の頬を拭う。 「マスターを捨てた人たちがどんな方たちか、私は知らないですけれど…」 「…ひどい奴らだよ、俺と同じで」 「違います。あなたは、そんなひどい人なんかじゃない」 床に組み敷かれたままのシャワーズが、強い口調でそう言い切る。 「私たちは、マスターを心から信頼しています。あなたはいつでも私達に優しかった。 だけど、マスターは私達に負担をかけたくないと思っているから、いつも一人で抱え込んでしまう」 タマムシシティで出会った時から、シャワーズがここまで必死で話をするのは初めてだった。 「マスターが辛いとき、苦しいとき、今みたいに迷っているとき…その何分の一でもいいんです。 どんな形でもいいから、私にぶつけてください。あなたの苦しみを、辛さを、迷いを少しでも減らせるなら、 私はどんな事だってできます!マスターの何もかも、私が受け入れてみせます!だから…!」 「――ありがとう、シャワーズ」 気づけば、俺は彼女を抱き起こして、力の限り抱き締めていた。 「でも違うんだよ。俺、みんなを傷つけてしまうのが怖いんじゃないんだ。 傷つけて、そのせいでみんなが俺から離れてしまうのが怖いんだ。 お前のマスターは優しくなんかないんだ、ただの臆病ものなんだよ… ごめん、ごめんなシャワーズ、俺…トレーナー失格だよ…!」 本当に、無様でかっこ悪い。俺はシャワーズを抱き締めたまま、何年ぶりかもわからないくらい大泣きしていた。 それでも、彼女は俺のことをぎゅっと抱きしめ返してきた。 「いいんです、マスター。私は…私達は、マスターのそういう所も全部受け入れます。 臆病なところも、優しいところも、全部私達の大好きなマスターなんですから」 「…シャワーズ」 「マスター…」 分厚い湯気の幕の中。2人の姿は、ゆっくりと重なって―― 5日目 - エピローグ - 「マスター、もう朝ですよ、起きてください」 「う…あ」 もう朝か…シャワーズが俺を起こしてくれたらしい。 そう言えば昨日は、彼女と―― 「…シャワーズ、体大丈夫?」 「実を言うと、ちょっと腰が痛いです…」 顔を赤くするシャワーズはやっぱり可愛らしい。 同時に、昨日の彼女の暴走っぷりを思い出す。ちょっと意地悪も思いついた。 「シャワーズ」 「は、はい…」 「また今度、頼んでもいいかな?」 「は、は、は、はいぃぃ…」 さらに顔を赤くして悶えているシャワーズ。ああ、可愛いなチクショー。 「じゃあ、行こうか。今日はジムに挑戦だ!」 「はい、もう朝ごはんもできてます。みんな待ってますよ」 シャワーズは部屋を出て行った。俺も急いで着替えて、部屋を出ようとしたとき、ふと目に入ったものがあった。 赤い「R」のバッジ。けれど、これはもう俺の過去でしかない。俺を束縛することはもうないだろう。 ベッド横の窓を開けて、海へと向けて力の限りに投げつけた。 ―― 赤く輝くバッジは波間に消えて、瞬く間に見えなくなった。 後日談 - おまけ - 「やぁマスター。昨日はお楽しみだったみたいだね。ちなみに私以外の3匹は眠らせておいたから、音の心配はいらないよ」 「黒幕がそれを言うのか、フーディン」 「おや、バレていたか。まぁいい。マスターの肩の重荷もとれたようだし、私としてはオールオッケーだ」 「おいおい…」 「それとマスター。別にシャワーズでなくとも、私達だって君のすべてを受け入れる覚悟はしている事を覚えておいてくれたまえ。 …まぁ、さすがにピカチュウとロコンに手を出すのはまずいと思うけどね。まだ子供だし。 もちろん萌えもんと人間の間に子供はできないんだし、別に私は毎日でも構わないよ?」 「あー…そうか…ありがとな」 「ふふ、礼には及ばんよ、マスター」 「ところでフーディン、最初の3日間は何か意味があったのか?単に俺の反応見て遊んでいただけじゃないのか?」 「まぁまぁ、3日目に意外な展開になったとはいえ、結果は良かったんだから――」 「フーディン、今日はジム戦で汗かいたろ?今から一緒に風呂でも入らないか? 他のみんなと入ってお前とだけ入らないってのも不公平だしな、ついでに今回のお礼とお仕置きもたっぷりしてやろう」 「マスター、落ち着きたまえ…目が、目が怖いぞ。テレポートも封じられているし、 いつの間に『くろいまなざし』が使えるようになったんだ君は」 「さあな。ああ、音の心配はしなくていいぞ。みんなサファリパークの見学に行っててな。 こんな中途半端な時間帯にはセンターもあまり人はいないだろうし、堂々と声出しても構わないぞ」 「え、あのちょっと…」 「じゃ、行こうか。覚悟はできてるって言ったよな?」 「わ、ちょっと待って、や、にゃああああああああああああああああっ!?」 おしまい。 あとがき。 えっと、なんかもうすいませんでしたっ! 最初は本当にお風呂場に乱入して最終的には――という話のはずだったんですが、 予想外に長くなった上に予想外にシリアスな展開に――しかも思いつきなので会話も支離滅裂だし… 次回はもうちょっとまともな文章に仕上げていきたいと思います。 今後もマスターとこのパーティを主役として、ssを書いていきたいと思っています。 それでは、また次の作品でお会いしましょう。 最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました!