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第1回オリスタ人気投票 集計結果 ★一番好きなスタンド 投票期間 2009/08/?~11/1 スタンド名 得票数 得票率 マーラ・ザ・ビックボス 31 (52%) ティーン・エイジ・UFO 10 (17%) キャッツ・グローブ 9 (15%) No.136 ラヴ・スイーツ(笑) 3 (5%) ティン・カース 3 (5%) No.101 ユー・ジャスト・ウォント・セックス 2 (3%) No.178 アイオナ 2 (3%) 投票総数 60 ★デザインが好きなスタンド 投票期間 2009/08/?~11/1 スタンド名 得票数 得票率 No.97 フラッシュ・フォワード 5 (33%) No.119 ドント・ストップ・ミー・ナウ 2 (13%) No.29ブラック・アイボリー 2 (13%) No.40 ボンド 2 (13%) No.122 CRA¥(クレイ) 1 (7%) No.141バッドフィーリング 1 (7%) No.56 スルー・ザ・ファイア 1 (7%) ウォーター・ボーイズ 1 (7%) 投票総数 15 ★使ってみたいスタンド 投票期間 2009/08/?~11/1 スタンド名 得票数 得票率 No.153 レディー・ガガ 5 (33%) パーペチュアル・トワイライト 4 (27%) No.101 ユー・ジャスト・ウォント・セックス 2 (13%) No.61 ホワイト・チョコレート 1 (7%) No.89 ダフト・パンク 1 (7%) ワンステップフォワード 1 (7%) ヴォルザック 1 (7%) 投票総数 15 ★戦闘が強そうなスタンド 投票期間 2009/08/?~11/1 子供が遊びで話す『スタローンとジャン・クロード・バンダムはどっちが強い?』 そのレベルでいいよ。 スタンド名 得票数 得票率 No.145 ICHILOW 7 (32%) アクセンスター 6 (27%) 浅田魔王 5 (23%) No.93 1000 2 (9%) サテライト・O 2 (9%) 投票総数 22
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ID 5oouBF1w0 ヨーカ vs かふら ID ddHZIiSo0 林原 温子(アッコ) vs 五百旗頭 実 ID ddHZIiSo0 スパイダー vs エツィオ・クラーツ ID GLrpfcIc0 ヘクター・ギボンズ vs ギアッチョ
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■最優秀本体部門賞 投票総数 31 第1位 5票No.6293 ザ・ウィナー 【絵師】ID L0Xo0Kvb0 第2位 3票 No.6297 ネクスト・アルカディア 【絵師】ID OlXLc/0Vo No.6318 ブラスト・トリート 【絵師】 ID x04K/5i60 第4位 2票 No.6325 ディファイング・グラヴィティ 【絵師】ID 57XtZVfv0 No.6336 モライナキ 【絵師】ID Nahl2Dsc0 第6位 1票No.6211 エンドレス・レクイエムNo.6296 スカイフォールNo.6303 イリーガル・ムーブNo.6309 スピン・オフ【絵師】 ID 5Mxi8N8I0 No.6309 スピン・オフ 【絵師】 ID NerSJBgY0No.6316 アックス・トゥ・フォールNo.6321 ブラッディ・フラック・プルーフNo.6322 ヒヒイロカネNo.6324 リフレクティアNo.6327 リーサルウェポン・デザート:ライダーNo.6335 ライドウNo.6339 ムービッツNo.6343 マグネチック・ヘブンNo.6373 ジャスト・コミュニケーションNo.6376 シークレット・ヘブンNo.6380 バック・エット・ハレルヤ
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1 / 2 ページ ―― オリジナルのスタンドを考えて絵師にデザインしてもらうスレ ―― ―― オリスタトーナメントスレ! ―― この空前のイベントを前に秘密裡に選ばれたオリスタ民達の熱気は……今まさに沸点に達した!! 「お・つ・い・ち~~~~~~~!!」 「 1さ~~~~~~~んッ!!」 「乙イッちゃんステキ~~~~~!!」 スー…… 乙1「地上最強のスタンドを見たいか―――――ッ!!!」 「「「「オ―――――――――!!!」」」」 乙1(ワシもじゃ……ワシもじゃみんな!!) 乙1「選手入場!!」 2 / 2 ページ 『全選手入場です!!!!』 親泣かせは生きていた!!さらなる研鑽を積みダメ人間が甦った!!"エロ小僧"「アリウム・セパ=エイト・ハンドレッド」だァ―――ッ!!! 物質同化型はすでに私が完成している!!サイボーグ化スタンド「バレエ・メカニック」だァ―――!!! 噛みつきしだい噛ませ犬にしてやる!!セーラー服少女「エンヴィ・キャットウォーク」だァッ!!! スタンド戦術なら俺の能力がものを言う!!優男の金髪フェミニスト「ドッグ・マン・スター」!!! 真の色気をしらしめたい!!やわらかいおっぱい「ポール・ムニ」だァ!!! ドラッグレースなら三階級制覇だがスタンドバトルなら全階級オレのものだ!!日本のプッチ神父「コスモ・スピード」だ!!! 打撃対策は完璧だ!!綻ばせるスタンド「イーグル・ハート」!!! 全世界の自然現象は私の中にある!!天気の神様が来たッ「ヒューマン・ネイチャー」!!! タイマンなら絶対に負けん!!集中線で注目集めたるフラッシュヘッド「ライン・ライダー」だ!!! なんでもありならこいつが怖い!!ドラ息子の傲慢暗器使い「マイシクル・ティアーズ」だ!!! バルセロナから気持ち悪い男が上陸だ!!トカゲスタンド「オホス・デ・ブルッホ」!!! 制約のないケンカがしたいから警察官になったのだ!!プロのケンカを見せてやる!!「ニール・コドリング」!!! 地元の土産に甲子園の土とはよく言ったもの!!選手時代の秘技が今実戦でバクハツする!!甲子園準優勝投手「トライアングル・スクランブル」だ―――!!! ナイフ術こそが地上最強の近接戦闘術だ!!まさかこの男がきてくれるとはッッ「ジャック・ナイフ」!!! カチ割りたいからここまできたッ、キャリア一切不明!!林業のスタンドファイター「バッド・バード・ラグ」だ!!! 私は空中戦最強ではない、スタンドバトルで最強なのだ!!御存知ホウキスタンド「スター・キャスケット」!!! スタンドの本場は今やブラジルにある!!センセイを驚かせる奴はいないのか!!「アナザー・センチュリー・エピソード」だ!!! おっぱいデカァァァァァァいッ!説明不要!! B101cm(推定)、Hカップ!!「メテオ・クラッチ」だ!!! 比喩表現は実際に使ってナンボのモン!!超メタスタンド!!兄貴デザインから「メープル・リーフ・ラグ」の登場だ!!! 茜はオレのもの、邪魔するやつは思いきり殴り思いきり蹴るだけ!!見境なき自動操縦スタンド「エンヴィー」!!! ボールを弾ませにここへきたッ!!スーパーボールジャグラー「テンポラリー・プレジャー」!!! 占いに更なる磨きをかけ、"占い師"「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」が帰ってきたァ!!! 今の自分に撃ち損じはないッッ!!百発百中ガンナー「ナポレオン・ソロ」!!! 荒野の魔女のスタンド能力が今ベールを脱ぐ!!欧州から「ゴースト&ダークネス」だ!!! 観客の前でならオレはいつでも全盛期だ!!手負いの曲芸師「タイト・ロープ」松葉杖で登場だ!!! 美容師の仕事はどーしたッ!!闘士の炎未だ消えずッ!!ロケット花火も巨大ロケットも思いのまま!!「クレセント・ロック」だ!!! 特に理由はないッエージェントが強いのはあたりまえ!!財団にはないしょだ!!愛煙家「タール・ムース」がきてくれた―――!!! ライブで磨いた実戦スタンド!!ロックバンドのデンジャラスドラマー「デリケート・サウンド・オブ・サンダー」だ!!! 「引力」だったらこの人を外せない!!超A級弁護士「グラビティ・オブ・ラヴ」だ!!! 超一流ダンサーの超一流のスタンドバトルだ!!生で拝んで金よこしやがれッ!!ストリートの黒人キッド「ティー・ペイン」!!! 纏衣装着型はこの男が完成させた!!ディザスターの切り札「T-REX」だ!!! 若き騎士が帰ってきたッ!! どこへ行っていたンだッ、英国紳士ッッ!! 俺達は君を待っていたッッッ!! 「フリーズ・フレイム」の登場だ――――――――ッ!! ▼単発SS一覧へ戻る
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1 / 10 ページ 1隻のオンボロ漁船が、静かにゆっくりと港から滑り出していく。 抜けるような青空。穏やかな海。 バカンスで来ていたとしたら、これ以上は望めないくらいの天候条件だった。 そんな漁船の甲板上。 加賀 御守道(かが・みもち)は携帯電話を片手に、もう片手でメモ帳をめくりながら、誰かと話し込んでいた。 「……もうすぐ決勝戦よ。ええ、『貴方のお陰で』準決勝は勝ち残れた……いえ、生き残れたわ」 『チョット危ナカッタヨナー』 彼女の囁きに、胸ポケットの中の万年筆が合いの手を入れる。 電話の相手は彼女の、いや、彼女『たち』の知り合い。この一連の『イベント』の中で知り合った相手だ。 「とりあえず軽く調べた範囲じゃ、『まっとうな方法』で妹さんの状況を打開するのは難しいみたい。 法的にも制度的にも、見事に打つ手が見当たらないわね」 『ヒッデェ嵌メラレ方、シタモンダナ!』 加賀御守道は、ロンドン市警の警部である。 その肩書きが1回戦の際にも役立ったし、勝負の合間の情報収集にも役立った。 彼女の職業上、『合法的な方法』が残っていれば望ましかったのだが……完全に潰されているなら、仕方がない。 「で、『まっとうではない方法』についてだけど……仮にやるとしても、簡単ではなさそうよ。 私が知りえた範囲だけでも、障害になりそうなポジションに何人か『スタンド使い』がいるみたい。 とりあえず現時点で把握できたことを纏めて、そちらの手元に届くよう手配しておいたわ」 『デモ、内容ハ期待スンナヨ! 時間モ無カッタシナ!』 借りを作ってしまったからには、返さねばならない。 相手が提示したのは、勝敗1つと、能力4回分。 彼女が受け取ったのは、勝敗1つと、能力1回分。 受け取るシールの枚数を「あえて減らした」のは、つまり、彼女が提供できる『協力』もそれに見合った程度でしかないため。 4枚すべて受け取って、それに頼りきって優勝なんてしてしまったら、彼女からの『返礼』もそれ相応のモノに膨れ上がってしまう。 職務と命に支障のない範囲での、情報提供。 それが、加賀警部の背負える精一杯の『お返し』だった。 「そろそろ携帯の電波も途切れるわ。 ……そうね、『追加の情報提供』が出来るように、貴方も願っておいて。それじゃあね」 『マ、別ニ死ヌ気ネェケドナー!』 軽く溜息1つつくと、通話を切る。 辺りを見回せば、漁船はいつしか港を離れ、穏やかな湾から外洋へ向かって進み始めている。 そう。 万年筆からの声が言う通り、加賀警部はこんなところで死ぬつもりなどさらさらない。 「帰って来れない可能性」も考え、早めに「シール1枚分のお礼」を済ませはしたが、ここで終わるつもりなど毛頭ない。 手掛かりにも乏しい殺人鬼、『ジャック・ザ・リッパー』の捕縛。 それが加賀警部の願いであり、この大会に挑む理由であった。 見事優勝し、『大会主催者』側からの協力が得られれば、それが最善。 高い情報力と組織力を持つ彼らなら、きっと大きな助けとなることだろう。 しかし、不幸にもそれができなかったとしても、こんなところで事件の捜査を途切れさせる訳にはいかないのだ――! 2 / 10 ページ 一方その頃。 豊念寺惑火(ほうねんじ・まどか)は同じ船の上、操縦士のおっちゃんと楽しく話し込んでいた。 3 / 10 ページ やがて――2人の選手を乗せた漁船は、予定の地点にまで辿り着く。 何も無い海の上。見渡す限りの水平線。 合流地点に待ち受けていた一隻のクルーザーに、『操縦士のおっちゃん』は跳び移る。 これでこちら側の漁船に残されたのは、選び抜かれた2人きりだ。 「会場は広い海の上、ゆえに人目を気にする必要なし。 運営側の『もう一隻』が離れるのを待って勝負を開始。 決着がついたらクルーザーが戻ってきて私たちを拾ってくれる予定、か……」 「で、どーします?」 惑火と2人、ここまで運んできてくれたおっちゃんを見送りながら、加賀警部は少しだけ考える。 隣に立つ巨乳女子高生は、決勝戦の相手だという。 ここまで勝ち残ってきたからには、何らかの面で優れた人物なのだろうが…… こう言っては悪いが、パッと見の印象からして「馬鹿そう」だ。 知恵と機転を己の強みと認識する加賀警部にとって、つけこまない理由がない。 申し訳ないが――ここは少し、策を弄させてもらおう。 「そうね、『もう一隻が離れるのを待って』というのも漠然としてるし…… ――5分。 今からきっかり5分後に、甲板の上で『始める』ことにしましょう。それまではお互い不意打ちとかナシ、ってことで。 お手洗いかとか食事とか、何かしておきたいことがあるならその間に済ますこと。どう?」 「了解でーす」 彼女はニッコリ笑うと、ふと何かを思い出したような様子で下腹部を軽くさすり、船室の方へと小走りに降りていった。 どうやら本気でトイレに用事があるらしい。この船には小さなモノながら、いちおうの設備は整っている。 その無防備な後姿にフッと笑うと、加賀警部は身を翻した。 「ほんと、いい子よね。でも有難いわ」 『不意打チハ、『ぷらいど』ガ許サナインジャ、ナカッタノカ?』 加賀警部のポケットの中で、万年筆が嘲るような声を上げる。 それに対し、彼女は全く動じることなく言い放った。 「今回の決闘の『ルール』は明示した上で、ちゃんと同意まで取ったでしょう? これで足元を掬われるのなら、そんな隙を晒した方が悪いのよ。 覚えておきなさい。 『法(ルール)の番人』ってのはね――逆に『法(ルール)の抜け穴』についても、誰よりも詳しい存在なのよ」 4 / 10 ページ ……そして、5分が経った。 「うーん、加賀さん遅いなー。 ひょっとして、『おっきいほう』なのかなー」 豊念寺惑火は、1人甲板で待ちくたびれていた。 惑火が「用事」を済ませて甲板に上がるのと入れ替わりに、船室のほうに降りて行った『対戦相手のお姉さん』。 ちょっとキツそうな雰囲気もあるが、丁寧な物言いと紳士的な態度に、惑火はすっかり信頼しきっていた。 容易い相手ではないだろうし、勝ちたいという強い意志も感じたが、しかし、卑怯な真似だけはきっとしない。 まだ出会って間もない相手ではあったが、何故か惑火には強く確信が持てた。 「それにしても、汚い船だねー。 おっちゃんも廃船寸前の古い船だって言ってたし、壊しても沈めても気にすんな、とも言ってたけど……」 惑火は周囲を見回す。 遠目には綺麗にも見えた中型の漁船だったが、こうしてさほど広くもない甲板に出てみると、あちこちに黒い油染みが目立つ。 この手の汚れは船にはつきものではあるのだが……島暮らしの惑火には、それは十分承知のことなのだが。 それでも、この船の汚れはけっこうひどい気がする。惑火は溜息をついて首を振る。 と――次の瞬間、何の前触れもなく。 惑う火の視界の隅っこで、何か黒いものが動いて――! 「――ッ!?」 『……5分、経ッタゾ!』 反射的に飛びのいた惑火の眼前を、「嘲るように喋る黒い槍」が掠める。 いや、それは槍というよりも、大型魚を捕らえるのに使われるような『銛(もり)』。 甲板の油染みから飛び出したその『銛』は、そのまま別の油染みに着地し、溶けるようにして消える――いや、消えたように見えた。 「え、な、何っ!? ちょっと、加賀さんは!?」 『ダカラ、言ッタロ。『5分後』ニ『始める』ッテ』 加賀警部は未だ出てくる気配もなく、謎の声だけがどこからともなく響く。 そして先ほど銛が出てきたところでも、消えたところでもなく、全く別の油染みから黒い人影が立ち上がり、楽しそうに告げる。 『始メマシテ、ダナ! 俺ノ名前ハ、『ニール・コドリング』。加賀御守道ノ、『スタンド』ダ!』 5 / 10 ページ 「――『きっかり5分後』に始める、って言ったでしょう? これは『スタンド使い』同士の戦いよ。 約束どおり、私の『スタンド』は『そこ』にいる。約束どおり、『そこ』で『始めた』。文句は言わせないわよ」 加賀警部のスタンド、『ニール・コドリング』は、本来は遠隔操作型のスタンドである。 パワーやスピードといった性能が本体からの距離に依存する関係上、接近戦もやってできないことはないが…… やはりその本領は、ある程度の距離を取った上での戦いだ。 初戦、準決勝と2回続けてその特性を使う機会がなかったが、しかし決勝ともなれば総力戦である。 存分に、遠隔操作型の恐ろしさを味わって貰おう。 「……でもやっぱり、アイツだけじゃ決め手に欠けるか」 物陰から戦いの様子を覗きながら、加賀警部はひとりごちる。 『ニール・コドリング』だけを先行させて仕掛けたのは、甲板の油染みを利用したヒット&アウェイの連続。 真っ黒な油の染みの上では、同じく真っ黒なインクは『目立ちにくい』。 不定形で姿を変えられる『ニール・コドリング』がぴったり上に乗ってしまえば、まず肉眼では見分けられない。 惑火が席を空けた隙に甲板を調べつくして、どこにどんな染みがあるのか完璧に把握している。 また、液体状のこのスタンドなら、僅かな隙間を伝っての移動も簡単だ。 傍目には、ある染みから別の染みまで瞬間移動しているようにも思えることだろう。 甲板にある無数の油染みの全てに対して、警戒せねばならない……これはやられる側にとって、大きな負担である。 甲板上では、惑火も自分のスタンドを出して必死に応戦しているのが見える。 燃える炎のような印象の、人型のスタンド。 おそらく近距離型。 ブンブンと宙を切る拳の音だけでも、圧倒的なパワーが伝わってくる。 が……それでも、『ニール・コドリング』を捉えきれない。 常に相手の死角へと移動し、銛や刃物に姿を変えて襲い掛かるインクのスタンド。 いまのところ上手く深手を負わずに避けきれているようだが、それでも少女の身体のあちこちに、浅い傷が刻まれている。 「パワーだけじゃなく、スピードも結構あるのか……思ったより、反応がいい。 『この距離』だと、アイツだけじゃあ一手足りないみたいね」 これで決まってくれれば楽ではあったのだが、どうもそこまで美味しい話は無さそうだ。 『ニール・コドリング』は距離によってその性能が変化するスタンド。 この距離では、いくら条件を整えたところで致命傷になるようなクリーンヒットは望めないらしい。 さりとて、加賀警部自身が近づいてしまえば、スタンド性能は上がるが本体を狙われてしまう。それでは本末転倒だ。 「でもね……この『大会』。 どうやら『スタンド』単体の性能を比べあうものではなく、総合的な人間性を比べあうものらしいわよ?」 6 / 10 ページ 加賀警部は思い返す。 初戦――拳1つ交わすこともなく、ただ交渉のみによって勝利を「買った」。 準決勝――拳銃を持ち出し、他のスタンド使いの能力を持ち出し、それらを活用した上で勝利を得た。 どちらも「反則負け」にはならなかった。 警告の1つも与えられなかった。 無効試合、とされる危険も覚悟していたというのに。 つまり、このイベントの運営側は、それら全てを「あり」だと認めてるということ。 それこそ、対戦相手との同意さえ上手く取り付ければ、『殴り合い』以外の方法で決着をつけることも可能だろう。 ダーツでもいい。ポーカーでもいい。ジャンケンでもいい。 会場が雪原とかなら、雪合戦でもいいかもしれない。 まあ、あまりに相手側に不利なモノを提案しても、拒否されてしまって成立しないだろうが…… とにかく、予め負けた者が降参する、と約束をした上で何らかのゲームを行い、打ち負かす。 相手が約束を踏み倒すような恥知らずでもない限り、これで勝利となるわけだ。 「こんな会場設定じゃなければね。 何かコッチに有利な『ゲーム』を考えたんだけど……」 残念ながら、船の上、という状況で自然に提案できるモノと言ったら、『釣り勝負』くらいしか思いつかない。 そして別に加賀警部は釣りが趣味という訳でもないし、ここまでの移動中にさりげなく聞きだした話では、豊念寺惑火は島暮らし。 下手したら、相手側の得意分野かもしれないのだ。 そんな地雷を踏むくらいなら、真面目に普通に「殴り合い」で済ませた方が確実だ。 「……ま、こんなモノを持ち出す以上、『殴り合い』どころか『殺し合い』にしかならないんだけど」 甲板の上の戦いは、未だ膠着中。 惑火が近くにあった救命用の浮き輪を手にとって、自らのスタンドに殴らせる。 炎の尾を引いて撃ち出された浮き輪は大きな油染みに命中するが、『ニール・コドリング』はとっくにそこから逃げている。 「物体を『飛び道具』にするスタンド、か…… いいわ。『撃ち合い』で勝負を決めましょう?」 加賀警部は懐から拳銃を取り出す。報告書のことを考えると頭が痛いが、しかし使わずに済ませられる相手でもないようだ。 もともと彼女の策は、2段構え。 『ニール・コドリング』が油染みに偽装してヒット&アウェイを繰り返すのが第一段階。 そして第二段階は―― 「もうちょっとだけ気を引いて頂戴ね、『ニール・コドリング』。じっくり狙いをつけたいから。 あの巨乳娘の片足でも撃ち抜けば、この均衡も崩れて、簡単に決着できるでしょう?」 遠隔操作型のスタンド使いにとって、スタンドから離れている本体は弱点でもあり、また強みでもある。 これは卑劣な不意打ちなどではない。 気づかなかった奴が悪い、思いつかなかった奴が悪い。 これはそういうレベルの、スタンド戦におけるセオリーの1つなのだ――! 7 / 10 ページ 豊念寺惑火は、そして覚悟を決めた。 「だんだん、わかってきた……!」 神出鬼没の、黒い不定形スタンド。 速度自体は大したものではない。パワーもそう大したものでもない。 けれど、この環境と恐ろしく噛み合っている。 カウンター狙いでここまで耐えてきたが、このままヒット&アウェイ攻撃を続けられたら――惑火の方が、先に参ってしまう。 ここまでは浅い傷だけで凌いでいるけれど、いつどんな深手を負わされるか分かったものではない。 けれど、惑火は慌てない。惑火は諦めない。 だって、気づいてしまったから。 青く澄み渡った空を見上げて、大海の真ん中、惑火は大声で宣言する。 「でもね、もう分かったからッ! 加賀さん、貴女のスタンドは――『油のスタンド』ねッ!! 自在に姿を変えて、油から油へ移動する、油のスタンドッ!!」 自信満々に、惑火は吼えた。 見事なまでの、ドヤ顔だった。 8 / 10 ページ 加賀御守道は、そして盛大にずっこけた。 「あ、あの子馬鹿?! い、いや、勘違いしてくれるなら有難い話なんだけど……!」 じっくり狙いをつけて、今まさに撃とうと思った瞬間にコレである。 その身につけられた傷の匂いでも嗅いでみれば、『油』という予測が間違ってることくらい、すぐに分かるだろうに。 むしろ、その匂いで『インク』というネタがバレることは、十分に覚悟していたというのに。 すっかり毒気を抜かれてしまった加賀警部は、しかし次の瞬間、予想だにしない惑火の行動に、首を傾げた。 「……? どっちに向かって、身構えて……?」 惑火とそのスタンドが、拳を構える。 やや前傾姿勢で、腰を落として、拳を構える。 しかしその視線の先は、『ニール・コドリング』が姿を消した染みではない――それどころか、油染み1つない、甲板の真ん中。 「――ん~、メタメタメタメタメタメタメタメタメタメタメタメタメタメタメタメタ…………!」 唐突に惑火とそのスタンドが、無数の拳を繰り出す。 豊かな胸をぶるんぶるんと揺らしながら、一気呵成にラッシュを繰り出す。 しかしその拳の先には何もない――床、つまり甲板しかない! 何も無いところを、「船そのもの」を、ただひたすらに殴っている! やがて――甲板が少しずつ、『熱』を帯び始める。 離れている加賀警部にはまだ何も感じられない程度だが、近くに潜む『ニール・コドリング』にはその感覚が伝わってくる。 そういえば、惑火のスタンドが撃ち出した浮き輪は、炎の尾を引いていたっけ。 殴った対象に『熱』を込める――それがこのスタンドの本来の能力? でも……! 「まさか、『油』が相手だから、熱すれば『燃える』とか思ってるんじゃないでしょうね……?! いくらなんでも、そんな温度にしたら貴女が持たないわよ!?」 見当外れな惑火の行動に、加賀警部は眉をひそめる。 いや、『油』でこそないものの、実のところ『インクのスタンド』である『ニール・コドリング』は、確かに熱には弱い。 その含有する水分が全て飛んでしまえば、姿を自在に変えることはできなくなる。おそらく身動きも取れなくなる。 けれども……そのためには、いったいどれほどの熱量が必要なのだろう? 少なくとも、少し離れた所にいる『ニール・コドリング』が影響を受けるよりも先に、中心点にいる惑火が参ってしまうのは確実だ! それに気づいているのか、いないのか。惑火は迷うことなく、そのまま乱打を続けて…… 「――――メタメタメタメタメタメタメタメタメタメタ……メテオ・クラッチっ!!」 やがて、最後にひときわ大きく甲板を殴りつけて、惑火の動きが止まる。 ……何も起こらない。 ほんのりと船全体が温かくなった程度で、何も起きない。 全身全霊のパワーを使いきったのか、ただ惑火とそのスタンドが、ぜえぜえと荒い息をついているだけだ。 微かな哀れみを込めて、加賀警部は改めて拳銃を構える。 「一発逆転のアイデアも、空振りに終わったみたいね。ご愁傷様。 もう終わらせてあげるわ。素直に倒れなさい」 いったんその照準を惑火の胸――というより心臓につけた加賀警部は、つう、とその銃口をズラして太股に狙いをつける。 殺すほどの相手ではない。けれど、きっちりとカタはつけなければ。 拳銃の引き金にかけた指に力が篭り、そして…… 次の瞬間。 不意に起こった激しい振動に、加賀警部はたたらを踏んだ。 9 / 10 ページ 「な、なにっ!?」 「……『メテオ・クラッチ』。 私のスタンドの能力は、『殴ったものに熱を込め』、『その熱を燃料にモノを飛ばす』能力――」 ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ……! 船が揺れる。地震のように揺れる。 回りを見回しても、海面は未だ穏やかなまま。 なのに船だけが激しい嵐の中にあるかのように、大きく揺れている! やがて、音も無く炎が立ち上がる。 燃えるモノなどないのに、燃えているモノなど何も無いのに、船の中央から天に向かって大きな火柱が立つ! そう、それは先ほど一度見せられた光景。 浮き輪が弾丸として飛ばされた時と全く同じ、でも、スケールだけはケタ違いな――! 「これだけの大きさ、これだけの浮力。 単発のパンチではとても『足りなかった』けれど…… 私のありったけを打ち込んで、『この船そのもの』を、『弾丸』にしたッ!」 揺れ続ける船の上で、豊念寺惑火は力強く宣言する。 船に込められた膨大なエネルギーが、船を上から強引に押し込んでいく。 みるみる喫水線が上がる。海面が近づいてくる。 そのサイズのせいか、動きそのものはゆっくりとしたものだったけれど―― 浮力にも水の抵抗にも逆らって、大きな船そのものを、真下に向かって、海底に向かって『撃ち出した』! もはや、いったん動き出してしまった、この巨大な『弾丸』。止められる者など、存在しない! 「こんな、馬鹿な……ッ!」 「『油のスタンド』……ってことは、水に落ちれば『浮かぶ』わよねッ! 何も無い海の上で『浮かんで』しまえば、もう逃げも隠れもできないわよねッ! 浮かんできたところを、今度こそ綺麗にぶっ飛ばすッ! さあ、付き合ってもらうわよっ!」 やがて海水が流れ込んでくる。海面が船の縁を越え、一気に無茶苦茶な流れの渦に巻き込まれる。 もはや銃を撃つどころの騒ぎではない。加賀警部は戦慄する。 いや、惑火の言っていること・狙っていることは、相変わらず的外れもいいところなのだけども。 インクは熱に弱い。 でもそれ以上に、『水』には――大量の水には、めっぽう弱い! 万年筆に使われるインクというのは、実は、全て水溶性なのだ! 油性のインクは使わない、いや使えない! 「に、『ニール・コドリング』! 戻りなさ……ガボッ、ゴボガボッ!?」 慌ててスタンドに帰還を命じる加賀警部。しかしその言葉は途中で途切れざるを得なかった。 船1隻が、無理やり沈没させられたのである。 船室に含まれていた大量の空気が、巨大な泡となり上がってくる。激しい水の流れが渦を巻く。火柱がさらに周囲の水をかき乱す。 とてもではないが、泳げるような状況ではない。 ただでさえ、加賀警部の身体は脂肪の少ない、絞られた身体――つまり、水に浮きにくい身体だというのに――! 万年筆の中への避難が遅れた『ニール・コドリング』が、海の水に溶けていく。 無限にも等しい水の中に、拡散していく。 声にならない悲鳴を上げて、存在自体が薄れていく。 物質同化型でもあるこのスタンド、通常のスタンドと違って任意の解除が効かない。 そして――スタンドへのダメージは、本体へのダメージでもある! ただでさえ溺れる加賀警部の四肢から、力が抜けていく。 意識が遠のく。 死すらも覚悟する。 こんな所で。こんなことで。まだやるべきことがあるのに。 渦巻く水の中、成す術も無く加賀警部が沈んでいく。船と一緒に、暗い暗い、海底へと―― がしっ。 暗い海の中、何かが、『熱い体温』を持った何者かが、加賀警部の手首を掴んだ。 . 10 / 10 ページ 「……ぶはぁっ!」 「……はあっ、はあっ、はあっ……」 げほげほっ、と咳き込んで、飲み込んでしまった海水を吐き出す。 何が起こったのだろう。加賀警部はぼんやりする頭で周囲を見回す。 青い空。 眩しい太陽。 揺れる海面。 そして、自分の身体を支える、柔らかい感触―― 「へへへっ……加賀さん、だいじょーぶだった?」 「貴女……」 それは――豊念寺惑火。 海面に浮かびながら、いや、立ち泳ぎで加賀警部の身体を支えて、至近距離で笑っている。 曇りひとつない開けっぴろげな笑顔で、そこにいる。 そういえば、島で暮らしていると言っていたっけ。 手帳にメモした記憶がある。道理で泳ぎも得意なわけだ。 ……浮き袋のような存在感を示す、その双丘のお陰もあるのだろうけれど。年上の女性として、ちょっとだけ悔しい。 「『油のスタンド』がどこに浮くかなーって思って待ってたら、加賀さんが沈んでいくのが見えちゃってさー。 そういや、スタンドがどこにも居なかったけど、あれってやっぱり、加賀さんが溺れちゃったせい? こんなことになるなんて、思ってなかったんだけど」 「……あなた、最後まで気づいてないわけね……」 加賀警部は深い溜息をつく。 まったく、なんという強運の持ち主。見当違いの行動が、見事なまでに正解に結びつく。 おまけに命まで助けられて、これはもう、文句のつけようがない。 「参ったわ。降参よ。貴女には、勝てる気がしないわ。 ジャック・ザ・リッパーの捜査も、こうなってしまったら自力で頑張るしかないわね」 「??? 何か困ったことでもあるの? これも何かの縁だし、手伝えることあったら手伝うけど?」 きょとんとした顔で、無邪気につぶやく少女。 加賀警部は少しだけ思う。 全てが一段落したら、この子、ロンドンへ招待してあげようかしら。 一般人を巻き込むのは気が引けるけども、この子の強運があれば、ひょっとしたら――! 遠くから運営側のクルーザーが近づいてくる。 沈んだ船を操縦していたおっちゃんが、心配そうな顔で身を乗り出している。 笑顔で大きく手を振る惑火を横目に、加賀警部は、心地いい敗北感にしばし身を委ねた。 ★勝者: 本体名 豊念寺 惑火 スタンド名『メテオ・クラッチ』 ▼一覧へ戻る
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――数か月後。 ステッラ・テンペスタは久しぶりに訪れた喫茶店でお茶をゆっくりと飲んでいた。人と会う約束をしているが、待たせるよりも待つ方が好きだ。 待ち時間のうちに、様々なことを考えられる。彼が物思いにふけっていると、待ち人がようやく現れる。 「遅れてすいません! 待ちました?」 「いや、俺も先ほど来たばかりだ。問題はないぞ。ジョルナータも、幹部になったばかりだから大変だっただろう」 駆けてきたのか、額に薄汗を浮かべてやってきたジョルナータへとステッラは気安げな笑みを浮かべた。 彼女は、「ホントに大変ですよ」と大きく頷いてみせる。 『ヴィルトゥ』壊滅後、北イタリアを再び版図に収めたパッショーネでは大規模な配置換えと人事変動が行われた。 掃討作戦に関わったメンバーの中から相当の数が幹部へと昇格し、また優秀な幹部が新たな縄張りを任せられた。 中でも『ヴィルトゥ』ボス殺害任務を指揮したステッラは、特に殊勲を認められ、また元々その地域に明るかったこともあり、ローマ担当に配置換えとなった。 その後釜として、ネアポリス担当に抜擢されて、構成員を驚かせたのが、ボスを直接始末し、その他にも数々の成果を挙げたジョルナータである。 今日は、前の担当であるステッラに、新幹部としての相談をするために待ち合わせをしていたのだ。 「大変、と言っても『コード・オブ・ザ・ライフメーカー』を使えるだけまだいいだろう。あれならば自分の都合に全てを合わせられるのだから」 ステッラのもっともと言えばもっともな指摘に、ジョルナータは肩をすくめてみせる。 「あー……、あれは進化したという『真実』そのものを改竄して元のインハリット・スターズに戻しちゃったんです。 分に過ぎた力を持つことで慢心したくはありませんでしたから。一応『矢』は保管してますけど、必要な時でもない限り使わないことに決めました」 「……そうだな、それでいい。それが一番いいやり方だ。ジョルナータ、お前は賢いな」 「賢くなんてないですよ。幹部になったのを機に、高校も中退しちゃいましたし。と、言っても前からサボって不良グループにいた訳なんですけどね。 勉強不足ですから、もしウオーヴォさんにサポートしてもらえなかったら、たぶんとんでもないポカをやらかしちゃってますよ。 サポートと言えば、最近ドンナさんから一人いい人を回してもらえたんですけどね……」 ジョルナータが幹部としての苦労や悩みを次から次へと話し始める。ステッラが、自分の経験から答えを返す。 歓談が続くうち、ジョルナータはふと話を止め、店を見渡した。次に彼女の口が開いた時、そこからはしんみりした口調が漏れた。 「この店で、私は初めてボスに会ったんです。まさか、それから一月も経たないうちにネアポリスを任されることになるだなんて思ってもいませんでしたけど」 「その時は、腹違いの兄だとは思わなかったのだろう? ウオーヴォが満面に汗をかいていたぞ、『まさかボスの義弟となるだなんて』とな。 結婚は、いつ行うんだ?」 その問いかけに、ジョルナータは頬を幽かに紅潮させ、 「たぶん、それほど先にはならないと思います。お腹が目立たないうちに済ませないと、ちょっとみっともないですから」 軽く腹に手を当てて微笑んだ。その中には子供がいるのだ。 「そうか、なるべく早く日取りを決めるといい。でないと他の幹部が予定を組みづらいからな」 「……肝に銘じます」 ジョルナータが照れて頬を掻いたその時だった。 「ステッラさん、お久しぶりです。そして探したぞ、ジョルナータ。君に陳情したい、という客が急に訪れてな、今待たせているところだ」 「ジョルナータさん、……じゃなくってお母様、お客さんを待たせちゃダメだよ!」 幼い女の子を肩車して足早にやってきたウオーヴォが彼女をせかしたのは。 「あらあら、それは大変! ステッラさん、そういう訳ですのですいませんけどここで失礼しますね。またご鞭撻のほどをよろしくお願いします!」 慌てて立ち上がったジョルナータは、あいさつを済ませると二人と共に足早に歩み去っていく。その仲睦まじい背中を目で追いながら、ステッラは呟いた。 「幸福とはああいうものだ。これでいい、彼女たちにはそうなるだけの資格はあるんだ。……フ、俺もそろそろよい伴侶を探さねばならないか」 【インハリット】オリスタSSスレ「宝石の刻(とき)」【スターズ】トゥルールート END < 前へ 一覧へ戻る 次へ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用、AI学習の使用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
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1 / 11 ページ この駅前から約1キロ続く商店街は 各々の店が自慢のイルミネーションで軒先を飾り付け、この町の名物になっている。 夜23時半過ぎ、その商店街のイルミネーションを見に来ている人達が イルミネーションの一部のように美しく照らされているのが、駅前の噴水広場からでもよく見えた。 噴水の水しぶきがイルミネーションの光でキラキラ光りながら夜の闇に消えていく。 「……綺麗だ。」 ニコロは噴水手前のベンチに座り、それをじっと眺めていた。 “ニコロ”と言うのは単なるあだ名で、彼の本名は『同心 こころ(ドウシン ココロ)』 二つ“心”があるから“ニコロ”と、昔から周囲に呼ばれていた。 日雇いの仕事で金を稼いて世界中を旅するニコロにとってそれは 故郷の日本と、旅先の国の二カ所に心を置いてるような不思議な気分にさせる名前だった。 …ふと、ニコロは旅先で出会ったある国の人の言葉を思い返す。 『私達は一日の終わりに必ず、何か美しいモノを見る。 そうすれば…どんなに辛い一日だったとしても、最後は美しいモノを見た事が心を癒してくれるんだ。』 ―――これから、俺は誰かと戦う。 ―――その結果がどうだとしても、またこの美しい風景を見に来よう。 ニコロはそう心に決めると、鼻息まで真っ白になった。 「心が、暖まってきたな…。」 招待状に指定されたこの噴水広場には、まだ誰も現れない。 ニコロは噴水の水しぶきを眺めながら、静かに闘志を燃やしていた。 2 / 11 ページ 駅前の噴水広場は、噴水を中心にしてコンパスで小さな円を描いたような形をしていて その円周に、恋人達が愛を語り合える程度の間隔を空けてベンチが置かれている。 その噴水広場のニコロの座っているベンチの向かい側 噴水を挟んだ反対側に、実はニコロが来る前から一人の女が座っていた。 「ただの電球が光ってるだけで何が面白いんだか。…馬ッ鹿じゃないの?」 『アゲハ・フラテリカ』はそう思いながら美しい風景に背を向けていた。 普段の煌びやかなドレスではなく、随分地味な服装だった事もあり イルミネーションの影になっているベンチに座るアゲハは、暗闇に沈んでいるようだった。 事実、アゲハは沈んでいた。 煌びやかなドレスと言っても、決して貴族のような生活をしている訳ではなく……その逆だった。 夜の街で知らない男に声をかけ、体を重ね、金を受け取る。そういう生活をしていた。 だから、アゲハにとっては こういう場所も、そこに生きる人間達も、その何もかもが眩しすぎたのだ。 …アゲハは、母親の言葉を思い出していた。 『私達は夜 お日様が眠る時に光を借りて羽ばたき、お日様が起きる朝に光を返して眠るのよ。』 ―――あの女はそうやってアタシの元から羽ばたいた。 ―――なのに…アタシはちっとも羽ばたけない。羽ばたいてるのはいつだって、客の財布だけだわ…。 アゲハはくわえていた煙草を忌々しく地面に投げ捨てた。 吐いた息が、まだ煙草の煙のように夜空に揺らいでいる。 「心が、凍えそう…。」 招待状に指定されたこの噴水広場には、まだ誰も現れない。 アゲハはこのままずっと居るような……そんな深い闇に沈んでいた。 3 / 11 ページ その時――― ニコロの座るベンチから見て右側、 アゲハの座るベンチから見て左側、 噴水広場の駅側入り口に、シワの寄ったスーツをだらしなく着た中年の男が現れた。 ニコロとアゲハは対戦相手が現れたと、噴水広場の小さな空間に緊張が走る。 男は広場をギョロっと鋭い目つきで見ると響く様な声で言った。 「よぉ~し~よしよしよしよし、参加者は揃ってるなぁ~? ニーチャンが『同心 こころ』、そっちのオネーチャンが『アゲハ・フラテリカ』だな? 招待状の提示は必要無い、顔は覚えて来たからな。」 状況が全く把握できていないニコロとアゲハを前に男は勝手にしゃべり続けた。 「おれがお前達の試合の『立会人』だ。 時間が無いからな、パッとやってパッと解散しような。 いや、時間が無いってのは別にな、 深夜のサッカー観たいから早く済ませたいと思ってるなんて事は…全ンッッ然ンンー~―…ないぜ? ……ないぜ??」 「すいません、何言ってるんですか?」 「ちょっと何言ってんのよ!」 ようやく開いた立会人の言葉の隙間に、ニコロとアゲハが同時に立ちあがって言葉を差し込んだ。 ―――!!? ニコロとアゲハはハッとした。 「……? 何だよ、お前達。お互い、相手が居る事に気付いてなかったのか? 昔のドラマじゃあるめーし。」 立会人が呆れていると 時間がきたのか、フッと広場の噴水が噴出を止めて静かになった。 広場にさっきと違う緊張が走った。 ニコロとアゲハの目の前に突然、お互いの対戦相手が現れたのだ。 「まぁいい、ご対面が済んだなら移動するぞ? ついてこい。 …あと、アゲハ・フラテリカ。 その吸い殻は拾え。おれが捨てといてやるからよ。」 4 / 11 ページ 三人は商店街の前にやってきた。 商店街は“何かを待っている”かのようにイルミネーションの中を立ち止まっている人も多く 静かに盛り上がっている雰囲気が伝わってきた。 立会人は商店街の入口を背に2人に振り向くと、一応ネクタイだけ整えた。 「よし、じゃあ略式だが… これより試合のルールを説明する。」 「…え? こ、ここでやるんですか?」 ニコロは商店街の混雑を視界に入れながら訊いた。 「…何だぁ? お前の家でやりたいか?、同心 こころ。」 「い、いや、そうでなく…」 「“普通の人間”が居る所でやるのかって事よ!」 アゲハが眩しそうに眼を細めて立会人を睨んだ。 「やるよ? ギネス認定のビックリ人間だらけのパーティ会場でだって試合はやるぞ、アゲハ・フラテリカ。 とりあえずな、時間が無いんだよ。 まずは試合内容を説明するからきけよ。質問はその後だ。」 立会人は特に表情も変えず淡々と答えた。 5 / 11 ページ 「この商店街のイルミネーションはな、今日の0時キッカリに一斉に消灯する。 今日はその消灯するイベントを観にこれだけの人間が集まってるってわけだ。」 「…馬ッ鹿みたい。 ただ消えるのを観るだけの為に?」 アゲハが冷めた口調でそっと言い捨てた。 「俺はこの商店街を1キロ真っ直ぐ行った外れで待つ。 お前達は0時までに、この商店街を抜けて俺の元に来い。 …ただし、脇道とかは使わずにな? 先に来た方がこの試合の勝者だ。 だが、0時になってイルミネーションが消えたらその時点で時間切れ。 つまり0時までにどっちも来てない時は両方とも敗者って事で運営には報告する。ロスタイムも無し。 …簡単なルールだろう?」 「先に商店街を抜けた方が勝者…? …そ、それで?」 ニコロは拍子抜けたように訊いた。 「先に来た方が勝者なら後に来た方は敗者だろ。銀メダル欲しいか? …言っておくがな、 ここでこうやってまごまごしている間にも時間が過ぎてる事を忘れるな? 0時きっかりに消灯って事はもう20分…いや、19分くらいしかないんだ。」 「先にこの商店街を抜ければいいって事ね? ―――『ミストレス・メーベル』!!」 アゲハの背後にムチを持った人型のスタンドが出現した。 「おぉっとーーー!!待てよ、アゲハ・フラテリカ。 もう一つだけルールがある。 お前が言う、その“普通の人間”に対してスタンド能力を使用する事は厳禁、つまり失格だ。 ちなみに当然だが、 相手が失格しても0時までに商店街の外れに来なきゃ勝ちにはならないからな。」 ―――!? そう言われて、ニコロとアゲハは改めてこの商店街の人混みを見た。 そんな簡単に抜けられるものではない。 「よぉ~し。準備は出来てるか知らないが、時間は誰にとっても平等であるべきだ。 お前達にも、俺にもな。 …これより、第1回戦を始めるぞ!!」 そう宣言した瞬間、立会人はフッとその場から消えてしまった。 何かの能力だろうが そんな事を気にするより先に、2人は立会人の言葉に弾かれるように商店街の中に飛び込んでいた。 6 / 11 ページ 長い直線になっているこの商店街は、車が2台ギリギリすれ違える程の幅があるが イルミネーションを観に来た人間同士がすれ違う事さえ困難にしていた。 ―――相手より先にゴールに着く。…何かが奇妙だ。 人混みを器用にかわしながら、ニコロはそう思った。 旅慣れているニコロにとって、この程度の人混みは珍しいモノではなかった。 しかし、それでもニコロは時間に間に合わないと感じていた。 過激な言い方をすれば ここに居る人間を全員なぎ倒して真っ直ぐに走って行かない限り無理だ。 たがそれは失格になる。それがルール。 ―――どういう意図なんだ?これは…? そのルールがニコロには引っかかる部分が多すぎた。 その答えを頭の中で探っていると、ふと前方に何か作業をしている団体が居る。 商店街の人間らしき格好だ。消灯する準備だろうか? 「『バーサス・ドッペルゲンガー』ーーーーー!!!!」 ニコロの背後に人型のビジョンが現れると、 力強く地面を殴りつけ、その反動でニコロは団体を飛び越した。 ―――そういえば、対戦相手の女は何処に…? その疑問の答えは目の前に突然現れた。 ニコロの前にアゲハがスタンドを出して立ちはだかったのだ。 「競争相手は先に潰しとこうって事、誰でも考えるわよね? …ヤル気のある男って好きよ?」 アゲハはすでに臨戦態勢に入っている。 商店街の十字路になっている少しひらけた場所だった。 7 / 11 ページ 「待て、話をきいてくれ!!」 ニコロは『バーサス・ドッペルゲンガー』を引っ込め、攻撃の意志が無いことをアゲハに見せた。 しかし…… 「“話をきいて欲しい”なんて、ベッドの上へのお誘いなのかしら? 言っておくけど、アタシは“高い”わよ?」 バシィッ!とするどい音がして、ニコロは右足に違和感が走った。 ―――何だ!? ニコロが自分の右足を見ようと少し体を曲げた瞬間、 右足が本来曲がらない方向に折れ曲がり、ニコロはバランスを崩して倒れた。 「うわっ!? …こ、これは!?」 「アタシの『ミストレス・メーベル』は、鞭の痕を「折れ線」に変える能力! …貴重な体験でしょ、その足の曲がり方。」 ニコロの右足は棒を曲げたようになっている。鞭の跡と思われる点線が服の上からしっかり見えた。 骨折の感覚はないが 折れ曲がった事で血が止まり、止血されたように指先の感覚が鈍る。 「ぐっ…。もっと奇妙な体験談が聞きたいなら後でいくらでも話してやるさ…。 今は戦ってる時間なんて無いってのに…!」 ニコロは折れ曲がっていない方の足で無理矢理立ち上がった。 「そうね。今は戦ってる時間は無い。 それに…もうそんなフラミンゴみたいな様でアタシより先にゴール出来るとは思えない……けど!!」 アゲハの『ミストレス・メーベル』が鞭を振りかぶった。 「立ち上がってくる事は気に入らないわ!! 鞭は何の為にある!? 鞭は“屈服”させる為にあるのよ!!『ミストレス・メーベル』!!!」 「このままだと二人とも失格になるんだぞ!!」 その言葉に弾かれたように『ミストレス・メーベル』の鞭はニコロに当たらず、手前の地面にしなった点線の跡がついた。 「な……なによ、それ。」 アゲハは初めてニコロの目を見た。 眼鏡の奥の瞳はアゲハが今まで見た事のない表情をしていた。 「この試合は、そういう試合なんだ。 …分からないか?」 端から見た二人は喧嘩してるカップルのようだった。 8 / 11 ページ 「この試合は、“どちらかが相手を勝たせる試合”だ…。」 ニコロは『バーサス・ドッペルゲンガー』にもたれかかるようにして言った。 「…相手を勝たせる? 馬ッ鹿じゃないの!?なに言ってんの!?」 「最初から時間はギリギリ、この商店街の人混み、 お互いが別々にゴールしようとしても恐らく間に合わない。 …本来なら、スタンド同士の殴り合いひとつで終わる試合の筈なのに―――だ。 それさえやる時間も本来はない。」 「あぁ、そう。 わかったわよ、つまり貴方“自分を勝たせろ”って言いたいのね?」 アゲハは言葉半分に聞いていた。 「…違う。俺が君を勝たせる。」 「そんな嘘をよくも!!!『ミストレス・メーベル』!!!!」 アゲハの『ミストレス・メーベル』が鞭でニコロの左足を打とうとした瞬間、ニコロが素早く先に動いた。 「『バーサス・ドッペルゲンガー』ーーーーーー!!!!!!」 ズキュゥゥーーーーーーーーーーーーーーーン ニコロのスタンド『バーサス・ドッペルゲンガー』が近くにいたイルミネーションを観ている男に触れた。 男に何かを注入しているような、そんな風に見える。 明らかにニコロが何かの能力を“普通の人間”に向けて使ったのだ。 「なっ!!馬ッ鹿じゃないの!? 貴方!!なにをしているのよ!!!」 アゲハは思わず叫んでしまった。 「…これで俺は失格だ。 時間が無いんだ、もう道は二つしかない。 2人とも時間切れで失格か、君が勝つか……だ。」 「……2人とも、失格ってわけか。」 商店街の外れはイルミネーションの光からも外れて薄暗く、小さな街灯が寂しさをさらに倍増させていた。 大通りに面したこちら側にも駅があるが、終電も近づいたこの時間帯にも関わらず人気は全くない。 そんな中、立会人は商店街の外れから商店街内に広がるイルミネーションを遠目に眺めていたが それはフッと音も無く消え、わっと人々の歓声のような弾んだ空気が一瞬だけ通り抜けてきた。 「…残念だな。」 そう呟くと立会人はその場を離れ、商店街は静かに眠りにつこうとしていた。 9 / 11 ページ ―――が、 ふと何か地響きのようなものを感じて、立会人は商店街の方を振り返った。 「何だ!? …………ん!!!!???」 視界に入った商店街のアーチの時計はまだ0時になっていないように見える。 慌てて自分の腕時計で確認するが、デジタルの表示は 23 53 だった。 「…まさか、イルミネーションの消灯が早まったのか!?これは予定にない事だ!! あの2人はそれを知る筈もない!!」 立会人が急いで商店街の外れに戻ると、突然… ┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”!!!!! 商店街の中から大勢の人間が我先にと飛び出して来た!! 「ななな、なんだぁーーーーーーーー!!!!」 まるで競争しているようにカップル達までもが商店街から、大通りの駅に向けて一目散に走って行く。 しかし何かに脅えて逃げて来たとか、そういう雰囲気ではなく 純粋に競争する事を楽しむ、スポーツマンのような熱気があった。 あやうく巻き込まれる寸前に立会人は離れた場所に移動する。 ┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”┣”ド ド ド ド ド …… 一通りの波が過ぎた後、ようやく立会人は商店街の外れに戻って来れた。 「な、何だったんだ?今のは…。 マラソンのスタートみてぇな…。終電だってまだ十分余裕あるってのに……。」 立会人は大通りを飲み込んでいく人の波をただ茫然と眺めていた。 「時間は誰にとっても平等であるべきって言ってたじゃないの。 アタシ達にも、貴方にも、あの人達にも…ね?」 「…!?」 立会人が振り返ると、そこにはアゲハが立っていた。 「アゲハ・フラテリカ!?」 「時間、間に合ってるわよね?」 「あ、あぁ…」 立会人は促されるように時計を見た。まだギリギリ0時にはなっていない。 10 / 11 ページ 「ふぅ、なんとか間に合ったみたいだな…。」 少し遅れてニコロも商店街の外れに現れた。 「おい、何なんだったんださっきのは!???」 「商店街を抜けるのにイルミネーションを観ている人が邪魔だったので、 イルミネーションを消灯してもらったんです。」 「し、消灯してもらった!?」 …だから消灯が早まったのか、と立会人は表情を変えずに納得した。 しかしそんな事が出来る筈が――― 「同心 こころ……お前…!!」 「俺のスタンド『バーサス・ドッペルゲンガー』は“闘争心を煽る”能力。 一人能力を流すだけで、その闘争心は伝染するように広がって行くんです。 それを、たった一人の商店街の人間に流すだけで… あとはドミノ倒しの様に商店街の人達は“我先に消灯する”ように、そう仕向けました。」 「…失格は承知の上って事か。 イルミネーションが消えた後の、あの競争するような人の群れも “イベントが終わって家に帰る”という闘争心を煽って競わせたわけだな。」 「…はい。」 「女に勝ちを譲るとは、紳士だな。」 「そんなつもりはないですよ。 ただ、今日という日の最後に“勝負に負けて落ち込んだ女性”を見たくはないですから。」 「はっ、そいつぁ格好のよろしい事だな。」 立会人の言い方は茶化した風だったが、意味はしっかりと理解したような含みがあった。 11 / 11 ページ 「じゃあ…まぁ、改めて この試合はアゲハ・フラテリカ、お前の勝ちだ。 次の試合の招待状は後日、似たような形で送られる筈だ。 また相手が譲ってくれるなんて思うなよ?」 「…分かってるわよ。」 アゲハはそう言い捨てると 帰ろうと商店街に足を向けたが、ふとニコロにそっと話しかけた。 「ねぇ…なんなら貴方、“タダ乗り”でもしていく? 別にそれくらい……アタシは構わないけど。」 「……。 折角だけど遠慮するよ。見たいモノがあるんだ。」 「そう…。 じゃあ、さよなら。 あと――――ありがと。」 アゲハはそのまま商店街をさっきまで居た駅の方へ引き返して行く。 立会人は軽く会釈したが、アゲハは返す事もなかった。 「さて、俺は観たいモノがあるしクールに去るぜ。 ところで… あのいい女の肌よりも見たいものってのは何だ?」 ニコロはそのまま黙って、 静まり返った商店街を歩いていくアゲハの後ろ姿を眺めていた。 ★勝者: 本体名 アゲハ・フラテリカ スタンド名『ミストレス・メーベル』 ▼一覧へ戻る
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私は虹村那由多。M県S市杜王町のぶどうが丘高校に通う高校1年生だ。 現在私は地元のレストラン『トラサルディー』でウェイトレスのアルバイトをしている。 仕事は忙しいが、幼い頃からの顔見知りの店長や一緒にバイトをしている友人と、充実した日々を送っている。 ……充実した日々を送っている、はずなんだけどなぁ…… ** 「姉ちゃん、ゲームやんねーか?」 トニオさんが里帰りしてるからバイトはお休みだ。花のGWを、テレビの前でごろ寝して過ごしていた私に、垓がそんな誘いをかけてきた。 もちろん私には異存はない。 「いいぞー。で、何のゲームだ? つまんないゲームだったら、私の『リトル・ミス・サンシャイン』の正義の鉄拳がうなるぞ」 「大丈夫だって。オリスタがゲーム化した、とかで色んなジャンルのがあるから、一つくらいは気に入るだろ」 と、垓はゲームがたくさん入った袋をこれ見よがしに振ってみせる。あんだけあれば、まあ一つや二つは面白いのがあるだろう。 「よし。じゃ、ジャンルの選択は任せた」 「OK、なら姉ちゃんを攻略して股を開かせたり、クララベラちゃんを監禁して凌辱したりするエロゲーから……」 ガオン! 『リトル・ミス・サンシャイン』の掌が、熱気を残して垓の目の前を通り過ぎた。 「さーてと、次寝ぼけたことをぬかしたら去勢な。具体的には、手刀でアレちょん切った後、傷口と斬り落としたのを燃やして、治療不可能にするってことだけど」 「い、イエッサー……」 ええい、涙目でこっちを見るな。ショタなら少しは胸キュンするかも知れんが、自分より背の高い変態の弟に涙目で上目遣いされたところでキモいだけだ。 「えーと、じゃあ『ディ○ボロの大冒険』風のローグライクは?」 「最初からそれを出せ。この馬鹿犬」 弟が出したCDをゲーム機に入れる。画面に現れたダンジョンは、結構本格的だった。 「どれどれ……。ふーん、このセーブデーターだと、攻撃用ディスクがレジーナ・チェリ、防御用がエイフォックス・ツイン、能力用はマグダレーナ様か。 見た感じ結構いい状況だな。お、ワン・ショット・アット・グローリーの射撃ディスクだ。装備しとこ」 「だろ? 結構やりこんだんだぜ?」 垓がニヤニヤ笑うのを横目に、私はどんどんゲームを続けてく。ヤバい、これ面白いわ。しかし、 「ギャー! 開幕モンハウ来たー! げ、しかもハムバグのキャンディー飛ばしでエイフォックス・ツイン+99のディスクが呪いつきのロンに!」 「姉ちゃん、おちつけ! まず、レジチェの能力を発動させろ!」 あ、こいつやりこんでる。開幕モンハウくらい平気で進められるようには用意できてんのか。 「レジチェの能力発動、っと……。えーと、『時間の外の世界』ってことで、攻撃できなくなる代わりに透明化・壁すり抜け可能になる訳か。助かったー……」 ほっとした私は、壁をすり抜けて隣の部屋へと逃亡にかかる。けど、 「姉ちゃん、寄り道とかせずまっすぐに……って、アーッ!」 10ターンで能力の効果が切れて、キャラが壁の中で立ち往生した。当然、 「『死因:壁の中で時間の流れの中に出てしまい、生き埋め』……。えーと、本家ディアボロって、オートセーブだったような……」 「……お、俺のデータが。せっかく育ててきたディスクが……」 やばい、ものすごくいたたまれない。垓が、ものすごく落ち込んでる。こんなに落ち込んだのは、クリア目前だったエロゲの入ってたパソコンにお茶をぶちまけてぶっ壊してしまった時以来だ。 「わ、私は悪くないからな! 10ターンで効果が切れることを言わなかったあんたにも問題はあるから! つ、次は格ゲーやろう!」 強引に話をそらし、私は次のゲームを引っ張り出した。キャラ選択画面には、女医時やらバッジョやら見覚えのあるキャラが沢山だ。 「オリスタSSの格ゲーねぇ……。とりあえず、クスリ売りでも使うかな」 「……姉ちゃんがそれを使うってんなら、俺はルーチェwith鬼畜ちゅみを選ぶぜ!」 二人揃って使用キャラを選んで、いよいよ対戦がはじまる。クスリ売りは、相手を眠らせて無防備にさせる能力と、クスリ投与によるスーパーアーマー化、そしてスタンド使いの癖に拳銃なんて飛び道具を使う癖の強いキャラらしい。 けど、パワー・スピード共に最弱クラスの電ちゅみ相手なら大丈夫だろう。そんな風に思った自分がバカだった。 開幕早々、クレーンによる投げをくらってダウンした揚句、起き上りに鬼畜ちゅみが尻尾で拘束した揚句突進してくる技でハメられて、挙句の果てには、 「おっしゃ、超必くらえ!」 ヤケに燃えた垓の入力を受けて、画面の無邪気鬼畜少女が「きゃーっ、たっのしーーーーーーーーっ!」とか言って、ミニガン乱射しながらトラックで特攻をかけてくる。 ピヨってたおかげで直撃をくらった私のクスリ売りは、体力がまだ半分くらい残ってたのに一撃でKOされてしまう。 え、ちょっ、一撃必殺技なんて、ありなの?! 「あー、これ原作再現ね? ディープ・フォレストさんのトラック投げとか、ルーチェのトラック突撃とか、トラックが関わる必殺技は、クスリ売りに対してのみ一撃必殺になるんだわ。 ヤム○ャが栽○マンの自爆くらうと一撃死になんのと同じよ」 「知ってんなら、予め教えろ……」 「俺のセーブデータをふいにした姉ちゃんが言える言葉じゃねーよ」 とかいいつつ、垓は次のゲームを取り出した。 「なになに? 『スーパータクマワールド』? なんだ、あのぼっちはとうとうマ○オのお株まで奪ったか?」 内心呆れつつ、私はゲームを開始した。本家と違ってタクマは、ジャンプ力がなく、基本は床に沿って歩くゾンビを飛ばして攻撃するらしい。 つまりは、チビ○リオとファイアマリ○を足して二で割ったみたいなのが初期状態な訳だ。 「ブロックを下から叩いてっと……、何だこれ? 『グラットニーのディスク』?」 ブロックから出てきたディスクに触れると、タクマが大きくなった。なるほど、スーパーキノコみたいなもんなのか。 「って、あれ? ゾンビが出てこない」 「あー、そりゃそうだろ。今のタクマのスタンドはグラットニーなんだから。パンチで攻撃したモノを大きくしたり小さくしたりできるぜ」 「んー、つまり飛べないマントマ○オみたいな感じ?」 「そうそう、結構使う機会は多いぜ?」 そんなこんなで、私が操作するタクマはステージを順調に進んでく。で、 「なんだこれ? 『丈二印の下剤入り便所カレー』?」 「あ、それはスターみたいなもんね。取ると、催してきて、トイレを探してタクマが一定時間全ての敵をふっ飛ばしながら猛ダッシュしていく訳よ。 ただ、制限時間が来ちまった際に敵に触れちまうと、モザイクのかかったモノをひり出しながら1ミスになっちまうけど」 「悲惨だなー……」 私は、ちょっぴり琢磨に同情した。 < 前へ 一覧へ戻る 次へ > 当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用、AI学習の使用を禁止します。 [ トップページ ] [ ルールブック ] [ 削除ガイドライン ] [ よくある質問 ] [ 管理人へ連絡 ]
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1 / 6 ページ 学生服に身を包んだ少年、相羽道人は暗闇の中を歩いていた。 迷路のように曲がりくねった狭い路地。薄汚れた高い石壁。乗り捨てられ錆まみれになった車。 肝試しでもするのでもなければ、開発と発展から見捨てられた、 この「旧市街地」に敢えて立ち寄ろうとする者はいない。 今日のような月明かりもほとんど無いような夜なら尚更だ。 道人「本当にこの場所であっているのかな……」 携帯のディスプレイの光で、大会運営から送られてきたハガキに描かれた小さな地図を照らして、何度も確認しながら歩みを進める。 しばらくすると中央に枯れた噴水の置かれている少し開けた広場のような場所に出た。 2 / 6 ページ ?「あんたが3回戦の対戦相手か……」 広場の奥の方から声がしたと思うと、ニット帽を被った若い男が、闇の中からヌッと姿を現した。 男は、道人から数メートルほど離れた場所で立ち止まると、再び口を開いた。 バド「俺の名前はバド=ワイザーだ。ベルギーで富豪の用心棒のようなものをやっている。あんたは?」 バドのただならぬ雰囲気に圧倒されそうになるも、道人も返事をする。 道人「俺は……道人。相羽道人。高校生だ。」 バド「お互い自己紹介も済んだことだ。さっさと始めて、さっさと終わらそうぜ!『スロー・アタック』!」 バドの背後に人型のスタンドヴィジョンがおぼろげに浮かび上がる。 それを認めるや否や、道人も自身のスタンド、『ブレイク・フリー』を発現させ、相手の攻撃に備えようとする。 道人「『ブレイク・フリィィィィイイイ!』」 3 / 6 ページ バド「(あの筋骨隆々のヴィジョンから推測すると相手のスタンドも近距離型だろうか……?) 何れにせよ、近接戦に持ち込んでしまえば、俺の『スロー・アタック』の能力ならば問題は無いはず)」 バドは地面を勢いよく蹴って道人の方へ突進し、殴りかかろうとする。 バド「うぉおおおおおおおおおおおおおお」 『スロー・アタック』の拳を必死に叩きこもうとするが、『ブレイク・フリー』も同じようにラッシュで応戦する。 ラッシュ合戦は互角状態が続き、ある瞬間、お互い図ったように同じタイミングで距離を取る。 どちらも相当体力を消耗したせいなのか、肩で息をしていた。 バド「……」 道人「……」 一息ついて、道人がふと自身の体に目を遣ると、重大な異変が起っているのに気付く。 道人「うわぁぁぁぁあああああああああ」 道人の右腕は、まるで干からびた野菜のように、くしゃくしゃにしぼんでいた。 『ブレイク・フリー』の右腕も同じようにしぼみ、使い物にならない様子であった。 バド「(さっきのラッシュ合戦の最中に、あんたの右腕を少しずつ『コーティング』した上で、空気を抜いて少しずつ『しぼませた』…… 『スロー・アタック』のスピードと精密な動きならば、気づかれずに仕込むことも不可能では無い。 もっとも、それに気付かずラッシュに耐えたのは予想外だったが……)」 4 / 6 ページ バド「(夢中で気づかなかったさっきならまだしも、その恐慌状態で俺の攻撃が受け切れるかな……)」 バドは再び『スロー・アタック』を出し、道人に殴りかかろうとする。 混乱状態の道人は、何もできないうちに殴り飛ばされ、数十メートル後ろの石壁に勢いよく叩きつけられた。 道人「……ぐっ」 右腕が既に使い物にならないのに加えて、 先ほどの壁に叩きつけられた衝撃で右足までも骨折して、動かせなくなったようであった。 道人「(……このままじゃ押される一方だ 何か起死回生の策を考えないと……)」 不自然な方向に曲がった脚を庇いながら、『何か』使えるものはないかと周囲を見回す。。 5 / 6 ページ バド「(少し殴り飛ばす力が強すぎたか……一体どこに行った?あの手負いの体でそう遠くへは行けないはずだが……)」 街灯も建物の明かりも無い場所である上、月も光も無い真夜中である。 まともに視界が効くのは、多く見積もっても3メートルかそれ位。 バドはトドメを刺そうと、先ほど自身が殴り飛ばした男を求めてを広場を彷徨っていた。 バド「あれは……」 広場の隅のほうで、物陰から地面に沿って、淡い光が僅かに漏れていた。 バド「(あれは、この場所に来るときに、あのガキが手に持っていた携帯のディスプレイの光?)」 バドは用心しながら、その僅かに漏れる光の方へ歩み寄る。 バド「(ションベンちびらせながら、ママに助けのメールでも打ってるのか?)」 腰を屈めて、光の漏れている場所を覗きこもうとする。 彼の探していた男はそこにいた。 バドの予想したような恐怖に駆られた顔ではなく、自信に満ちた顔で。 6 / 6 ページ 道人「ブレイク・フリィィィィィィィィィィィイイイイイ!!!!」 道人の掛け声が聞こえた瞬間、バドの視界は溢れるばかりの強い光で満たされ、反射的に目を瞑ってしまう。 バド「(うっ……眩しくて何も見えない!……一体何なんだ!)」 そして、目を再び開けたときに、眼に入ったのは、二つのライトを光らせ、猛スピードで自身の方に迫ってくる錆びついたトラックであった。 バドは、暗闇のせいで気づかなかったが、道人が身をひそめていたのは、広場の隅に放置されたトラックの車体の下であったのだ。 バド「!!!!! な、な、な、な、なん」 道人「(……『ブレイク・フリー』は束縛を破壊し、秘められた力を解き放つ能力! 放置されていたトラックの『束縛』を破壊し、元通り、いや、元以上の力で動くようにしたッ!)」 バド「スロォォォォオオオオー・アタック!!!」 今から動いて避けることのできる距離、スピードではないと判断したのか、バドはスタンドで受け止めようとする。 普通の車なら『スロー・アタック』のような近距離型のスタンドでも受け止められたかも知れないが。、 これは『ブレイク・フリー』の能力により秘められた力を解放された、言わば、リミッターのぶっ壊れた車である。 バド「……うっ」 『スロー・アタック』の能力で、しぼませて対処するにしても、車ほどの大きさの物体ともなると、 コーティングするだけでも時間がかかり思うようにいかない。 そうこうしているうちに、四肢の骨から嫌な音が鳴り出す。 バド「……俺の負けだ」 バドが自らの敗北を宣言したのを認めると、道人は『ブレイク・フリー』を解除した。 数十年の眠りからたたき起こされた錆びだらけのトラックは再び眠りにつき、 そして、空気を抜かれたようにしぼんでいた道人の右腕も元通りの状態に戻っていた。 ★勝者: 本体名 相羽 道人 スタンド名『ブレイク・フリー』 ▼一覧へ戻る