約 3,152,085 件
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/219.html
ジョルニブレット最後の踊り 女たちの歌 Ⅰ: 毎年 冬が来て 戦争が1つ2つ始まりそうな理由が 特になければ (争いごとは本当に厄介なもの) 女王リメンとその旦那 家来を集めて陽気な騒ぎ 舞踏会があると聞けば いの一番に駆けつけるのは ゲイルのオギン・ジョニブレット卿 あらゆる美しき乙女にとっての災い 女たちのリフレイン ああ可愛い女たち 気をつけて ひときわ可愛い女性は特にご用心 ジョルニブレットは美男子だけど あのきれいな手を思い切って握ってしまったら ひどい魔法をかけられて 初めてのダンスがそのまま最後のダンスになってしまう 男たちの歌 Ⅰ: あの社交行事に 出かけた者たちは皆 お辞儀もできれば姿勢も良くて どんなダンスのステップも知っていた 女王リメンとその旦那 命じて吹かせるトランペットの大音響 すると誰もためらうことなく お祭り騒ぎの始まり お嬢さん方 初めてダンスを踊るなら ジョルニブレットみたいな男には近づかないで 男たちのリフレイン: ああ仲間たちよ 説明してやってくれ 兄弟よ 分かりやすく教えてやってくれ あの男はずっと前からあんなことをしていて 最後の曲が演奏される前に 美しき乙女は涙を流し 初めてのダンスがそのまま最後のダンスになってしまう 女たちの歌 Ⅱ: ゲイルのオギン・ジョルニブレット卿は 国で最も美しい女たちが 舞い踊る姿を見ていた 熊皮の兜をかぶった男が来て訊ねる 「女王リメンとその旦那 気晴らしのために開いた大宴会 お好みはどの麗人?」 ジョルニブレット卿が指さしていわく 「彼女だ あの胸の揺れと編んだ髪を見たまえ 僕が愛して別れるにはうってつけじゃないか」 女たちのリフレイン 男たちの歌 Ⅱ: 熊の仮面の男は 女たちのダンスが終わる前に ゲイルの領主のそばから離れた そしてトランペットが鳴り響き 女王リメンとその旦那 女たちを誘うように男たちに求めた 尊大な態度で他の女たちの前を通り過ぎて オギンが近づいていったのは胸が揺れていたあの女 しかし彼女も無視され その悩み多き命は救われた 新たに選ばれた乙女は雪のように清らかだった 男たちのリフレイン 女たちの歌 Ⅲ: 楽団の演奏が流れるやいなや 美しい乙女はオギンの手を握り 彼の立派な馬車を誉め称えながら 女王リメンとその旦那の 婚礼のために作られた曲に合わせて踊った 凝った飾りの皮鎧を身にまとって 倒れたりよろめいたりすることなく 優雅に振る舞いながら 継ぎ目の金具がきしむ音もさせずに 甘い夢のように軽やかに踊るのは本当に難しいもの 女たちのリフレイン 男たちの歌 Ⅲ: リズムは速くなり 遅くなり 男性らしい優美さと拍子の取り方にかけて 彼を上回る者は一人もなく 領主ジョルニブレットは 女王リメンとその旦那にまで称賛されることになった 美しい船が港に入ってくるように 皮の重さをまったく感じさせることなく彼は滑らかに動いた 乙女らしい口調で彼女はささやいた 「もう遅い時間だわ それにしても皮鎧を着てこんなにも優雅でいられる人は見たことがない」 かわいそうな話だが そんな彼女を彼は傷つけなければならなかった 男たちのリフレイン 女たちの歌 Ⅳ: すさまじい勢いで曲が演奏されるうちに 彼は気になり始めた この乙女は今まで一体どこに身を隠していたのだろう 「女王リメンとその旦那に求めに応じてこのダンスを踊る前 僕は君の姿を女性陣の中に見かけなかった」 「舞踏会に到着した時にドレスが破けてしまったのよ」 彼女は微笑みながら 男のように深い声で言った 「召使いたちが急いで直してくれたけど その間 私は革の鎧と熊の兜をかぶっていたの」 女たちのリフレイン 茶4 詩歌
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/225.html
錠前の設計と製造 私はこれまで、何人もの泥棒と出会ってきました。彼らにとって錠前とは、それが守っている部屋や箱の中身を盗むために破るものでしかありません。私は彼らと関わった経験を生かし、こうした悪意を退けることのできる錠前の構造を考案しました。 錠前を作るとき、もっとも重要なのは素材です。安物の真鍮や銅でできた錠前はちょっと強く蹴られたらすぐ壊れてしまうので、役にたちません。よい素材としては、鉄よりも鋼鉄をおすすめします。それよりも強固な素材となると、値段も高くなるし扉自体も同じような素材で作る必要がでてくるでしょう。私などは、木箱の小さな錠はかかったまま、箱の部分をばらばらに壊されて悔しい思いをした経験があります。 こうした基本的なことが決まったら、次にタンブラーの片寄りに注目しましょう。鍵穴に対して7度の片寄りを与えておくと、ねじれによって鍵が滑らかに動きます。まっすぐなピックで錠前を破ろうとする泥棒にとって、こうしたねじれのある鍵穴は頭痛の種です。 同じように、タンブラーのばねの部品はそれぞれ違った職人の作ったものを使うとよいでしょう。職人によって、ばねの弾力の強さは違います。こうした違いが、錠前を破りにくくするのです。 産業・商業 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/113.html
開拓、征服、順応: シロディールの社会史 グウィリム大学出版局 第三紀344年 歴史家によっては、人間のタムリエル入植をスカイリムのノルドの軍事拡張政策の一環としてとらえる傾向にある。実際には、スカイリムが興る以前から人間はタムリエルに入植し、そのほぼ全域に散らばっていた。彼らは「ネディック人」と呼ばれ、その中にはシロディール人の始祖、ブレトンの先祖、ハンマーフェルの原住民が含まれており、ひょっとすると今はなきモロウウィンドの人間も含まれていたかもしれない。厳密に言えば、ノルドは「ネディック人」の一派でしかなく、タムリエルの先住種族であるエルフと平和的に共存する道を見つけられなかった唯一の種族である。 イスグラモルがタムリエル最初の人間の入植者でないことははっきりしている。実際のところ、イスグラモルはアトモラから移り住むという長い伝統にのっとって、「帰還の歌」にあるように「アトモラの内乱から逃げようとしていた」のである。イスグラモルがやってくるまでの数世紀のあいだ、タムリエルはアトモラにとっての「安全弁」であったのだ。不平分子、反体制派、反逆者、土地を持たない若者たち、その誰もがタムリエルという新世界を目指して、アトモラからの困難な横断をやり遂げた。最近の考古学的な発掘調査で、ハンマーフェル、ハイ・ロック、シロディールへの人類最初の入植は神話紀8001,000年であることがわかった。これは、ハラルドよりも前にいたとされる12人のノルド王が歴史的に実在したと想定しても、イスグラモルがやってくる数世紀前のことである。 「ネディック人」はエルフの土地では少数派であるため、先住種族とは平和的に共存するより道はなかった。ハイ・ロックやハンマーフェル、シロディールでは、それにおそらくモロウウィンドでもそれにならって「ネディック人」は繁栄し、神話紀の最後の数世紀に勢力を拡大していった。「帰還の歌」に歌われるように、こうした順応はスカイリムでのみ失敗した。これは推測だが、アトモラからの援軍がそばに控えていたため、ノルドの始祖たちはスカイリムのエルフの権威に屈する必要はないと感じたのではなかろうか。実際のところ、初期のノルドの年代記には、歴史上最初のノルド王とされるハラルド王(第一紀113221年)が中央集権国家としてスカイリムを統合すると、「アトモラの傭兵は故郷に帰還した」と記されている。史実はどうあれ、経過は決まっていた。スカイリムでの拡張は軍事的に進められていき、征服によってフロンディアが延びるとそこへ人間が定住していくのだ。この地での人間とエルフの領土の境界は比較的はっきりしていた。 それでも、この「紛争地域」を飛び越えて、他のネディック人はエルフの隣人と混じりあっていった。第一帝都のノルド軍がついにハイ・ロックとシロディールに進軍したとき、彼らはブレトンとシロディールの始祖が既ににエルフに混じって暮らしていることに気づいた。実際のところ、ノルド人はエルフとブレトンを見分けるのに苦労していた。これらの二種族はそういうレベルまで混血が進んでしまっていたのだ。ノルド軍の到着により、ネディック人とエルフのバランスは乱れた。ノルドがハイ・ロックとシロディールまで勢力を拡大したのはわずかな期間(200年に満たない)にすぎないが、その影響は甚大であった。それ以降、この地域での実権はエルフから人間へと移っていったのである。 歴史・伝記 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/74.html
呪文の手引き 入門編 魔法使い見習いのあなたへ 最強とうたわれる魔術師もかつてはみな初心者だったのだ。彼らに共通しているのは幼いころから魔法に親しむうちに興味が芽生え、潜在能力が開花し、何年もかけて修練を積んでいったということだろう。恐れを知らない心でスキルを磨き、新しい呪文を学び、精神と肉体の鍛錬に明け暮れ、のちに誰からも一目置かれるような比類なき力を身につけたのである。 タムリエルの魔術師ギルドは知識と魔力の求道者の最初の停車駅であり、それはいつの時代においても変わらない。一般向けの魔法サービスを提供しながら幅広い魔法の販売も行っており、魔術を志すものなら何よりもまず足を運ぶべき場所であろう。個人の魔法販売業者も見つかるが、品ぞろえの豊富さという点では魔術師ギルドにはとてもかなわない。 スペルの多くは初級魔術師の手には負えないものだ。たとえば姿を消す魔法は難度が高いため、見習いレベルの術者ではとても使いこなせない。どの宗派であっても修練を積んでいけば実力が伸びていき、十分な力が身につくころには、さらなる高みを目指したいと感じるようになるだろう。初心者は魔法がうまく使いこなせないからといって挫折するのではなく、そこに課題を見つけることで、負けるものかと意気に燃えてもらいたい。落ち込んだりせずに、いっそう高度なスキルを追い求めてほしい。吸収のスペル、下級デイドラや強力なデイドラ、それにアンデッドを召喚するスペル(ただし、研究目的においてのみ許される)、火炎や寒気や雷撃といった魔法から身を護るスペルなど、学ぶべき上級魔法はいくらでもあるのだから。 特定の宗派をきわめたいという魔術師は、どんどんその宗派のスペルを身につけて、試せるチャンスがあれば貪欲に活かすとよいだろう。専門性を求める魔術師も、まんべんなく学びたいという魔術師も、魔術師ギルドに会員登録しておくことをお奨めしたい。実績のあるギルドのメンバーなら、一般向けのサービスだけでなく、上級の呪文や付呪といったメンバー限定の特別サービスも利用できるようになる。こうしたサービスは社会そのものを危険にさらしかねないため、魔術師評議会が太鼓判を押した上級メンバーだけが使えるように制限されているのだ。 魔法の扱いについてもっと知りたいという市民は、地元の魔術師ギルドの大賢者が相談に乗ってくれるだろう。 白1 魔法学・薬学 魔術師ギルド関連
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/202.html
狼の女王 第6巻 ウォーヒン・ジャース 著 筆:第三紀2世紀の賢者インゾリカス 第三紀120年 アンティオカスの娘、15歳の女皇キンタイラ・セプティム二世の戴冠式は、蒔種の月3日に執り行われた。彼女の叔父であるリルモス国王マグナスとギレインの王セフォラスは式を見守ったが、叔母であるソリチュードの狼の女王ポテマはそれ以前に王宮を去っていた。ポテマは自分の王国に帰ると、反乱の準備を始めた。後にレッド・ダイヤモンド戦争と呼ばれる戦いの発端であった。皇帝の支配に不満を持つ諸国の王や領主たちが、新しい女皇に対する反乱軍に加わった。ポテマは何年も前からこれらの同盟国を増やしていたのだ。 反乱軍による、帝都に対する先制攻撃は成功した。スカイリム全域とハイ・ロック北部で、帝都軍は反乱軍の攻撃にさらされた。ポテマの反乱勢力は各地で暴動や謀反を誘発しながら、伝染病のようにタムリエル中に広がっていった。その年の秋、ハイ・ロック沿岸に位置し帝都側の同盟国だったグレンポイントの公爵が、緊急に帝都軍の応援を要請した。これを受けて、キンタイラは狼の女王に対抗する勢力の士気を高めるため、自ら兵を率いてグレンポイントへ向かった。 第三紀121年 「敵軍がどこにいるのかはわかりません」と、公爵は、当惑しきって言った。「郊外のあらゆる場所へ偵察を出したのですが。陛下の軍がこの地に到着したと知って、北方へ退却したのではないかと」 「こんなこと言ってはいけないけど、戦いたかったわ」と、キンタイラは言った。「叔母さんの首を串刺しにして、それを掲げて帝都中を行進したかったのよ。彼女の息子のユリエルは軍隊を帝都州の州境ぎりぎりに置いてこっちを挑発してるの。どうして反乱軍の勢力はこんなに勝ち進んでいるのでしょう? 彼らが戦いに強いの、それとも帝都の人たちは私が嫌いなの?」 秋から冬にかけて、何ヶ月も泥の中を行軍してきたキンタイラは疲れきっていた。ドラゴンテイル山脈を越える途中、彼女の軍隊はもう少しで伏兵の一団とはち合わせそうになった。穏やかな気候のはずのドワイネン男爵領で猛吹雪におそわれたのは、狼の女王側の魔術師のしわざに違いなかった。行く先々で、彼女は叔母の悪意を感じていた。そして今、その狼の女王と直接対峙できるという期待も裏切られてしまった。彼女はほとんど我慢の限界にきていた。 「純粋で単純な、恐怖による支配ですよ」と、公爵は答えた。「恐怖こそ、狼の女王の最大の武器です」 「聞いておきたいのだけど──」公爵の言う恐怖が声に表れないように努力しながら、キンタイラは言った。「彼女の軍隊を見たのですか? 彼女がアンデッドを召喚して兵士として使っているというのは本当ですか?」 「いいえ、実際にはその事実はありません、ただ、彼女はそういった噂が流れるように仕向けているのです。彼女はいつも夜間に攻撃を仕掛けます。戦略的な理由もあるでしょうが、そのような恐怖を呼び起こすためでもあるでしょう。私の知るかぎり、実際の彼女は、通常の軍隊にいるような魔闘士や処刑人以外の霊的な戦力は持っていません」 「夜襲ばかりというのは…」キンタイラは考え込んだ。「人数をわからなくするためだと思うわ」 「それに、こちらの気付かないうちに兵を配置に付けることができます」公爵が付け加えた。「彼女は奇襲の達人です。東から行軍の音が聞こえたときには、彼女の本隊はすぐ南まで近付いてきているのです。でも、こういったことは明日の朝話すことにしましょう。あなたがたのために、城の一番よい客間を用意しておきましたから」 キンタイラは塔の上に用意された彼女の部屋で、月の明かりと獣脂のろうそくの灯りを頼りに、帝都にいる婚約者のモデラス伯爵に手紙を書いた。彼女はこの夏にでも、祖母のクインティラが愛した蒼の宮殿で結婚式を挙げたかったのだが、この戦争がそれを許さないだろう。手紙を書きながら、彼女は窓の外の中庭と不気味な枯れ木を眺めた。胸壁の上に、帝都軍の兵士が2人、数フィートほど離れて立っていた。まるでモデュラスとキンタイラのようだと、彼女は思った。そして、その例え話を詳しく手紙の続きに書き始めた。 ノックの音がして、彼女の詩的な作業は中断された。 「お手紙です、陛下。モデュラス伯爵からです」と、若い使者が言って、彼女に手紙を渡した。 短い手紙だった。彼女は素早く目を走らせ、使者が下がって休もうとする前に読み終わって訊いた。「何か変だわ。彼はいつ、これを書いたの?」 「1週間前です」と、使者は答えた。「緊急の手紙だと言われたので、伯爵が兵を動員しておられる間に急いでお届けにまいりました」 キンタイラは使者を下がらせた。モデュラスの手紙には、グレンポイントでの戦闘のために援軍を要請する内容の手紙をキンタイラから受け取ったと書かれていた。しかし、グレンポイントでは戦闘は起こっていないし、彼女は今日やっとグレンポイントへ到着したばかりだった。誰が彼女の筆跡を真似て手紙を書き、モデュラスの率いる帝都軍を帝都からハイ・ロックへ誘い出したのか? 夜の空気が窓から流れ込み、寒気を感じたキンタイラはかんぬきを下ろすために窓のところへ行った。胸壁のところに、さっきの兵士たちの姿はなかった。枯れ木の陰からくぐもった揉み合いの声が聞こえ、そちらのほうに身を乗り出したので、キンタイラは背後で扉が開いたことに気付かなかった。 彼女が振り向くと、そこにはポテマ女王とグレンポイント公爵メンティンが、衛兵の一団を引き連れて立っていた。 「素早いですね、叔母様」と、彼女は一瞬硬直した後、口を開いた。それから公爵に向かって言った。「何があなたを寝返らせ、帝都に歯向かうように仕向けたの? 恐怖?」 「それと金ですよ」と、公爵が簡潔に答えた。 「私の軍はどうなったの?」と、キンタイラは、ポテマの顔を正面から見据えながら言った。「こんなに早く戦闘が終わったの?」 「あなたの軍は全滅したわ」と、ポテマが笑みを浮かべて言った。「戦闘はなかったけど。静かで、手早い暗殺だけよ。戦闘があるとしたら、ドラゴンテイルでモデュラスの軍を潰すときと、帝都に残ってる帝都軍の兵士たちを片付ける時ね。戦況はいつでも報告してあげるわ」 「それで、私はここであなたの捕虜になるってわけ?」キンタイラは、言いながらこの石造りの塔の強固さと高さに気付いた。「ちくしょう、なんてぶざまなの! 私は女皇なのよ!」 「悪いようにはしないわよ、あなたを5級の支配者から、1級の殉教者に昇進させてあげる」と、ポテマがウィンクしながら言った。「ありがたく思ってはくれないでしょうけどね」 物語(歴史小説) 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/23.html
ウェイステン・コリデイルの 空中庭園 [この書物はもともとドワーフ語で書かれ、エルフ語に翻訳されたもののようだ。エルフ語は断片的にしか判読できないが、エルフ語を研究する者が他のドワーフ語書物を訳出するには事足りるかも知れない。] ……導き手アルトマー・エストリアルは炎足をもって、四角形の庭が死して横たわる街の中心へと先導した…… ……は礎や鎖や船にその名の由来を尋ねた…… ……大地の骨からの脱出を何故固化した音を利用して数えようとしなかったのか、あるいは凍結した炎を糧としなかったのか…… ……私がかつて書いたのことになった語、我らが下賎なる近縁がその無知ゆえに「芸術」と呼ぶあれを…… ……だが言葉も経験も、我らが祖先たちの移ろいやすい戒律に反する奇妙にして恐ろしき法の粋を浄化することはない。 [翻訳部分の最後には、別の書き手によると思われるドワーフ語の注釈があり、それは以下のように訳すことができる。] 「燃えさかる裁断球を置くがいい、ヌプスルド。おまえのエルフ語は語句は正しけれど、正しく誤読することはできない」 民族・風習・言語 紫1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/61.html
九大神の騎士 ソリチュードのカロライン 著 九大神の騎士の存在は今ではほとんど忘れられているが、当時、その名はシロディール中に── というよりも、帝都中に知れ渡っていた。セプティム帝都では初期のある短い期間、全ての人々が彼らの冒険談に夢中になった。しかし、彼らの名声は、他の多くの有名人の噂話とともにレッド・ダイヤモンド戦争の混乱の中で人々に忘れられ、今では彼らの修道院がどこにあったのかすら誰にもわからない。 九大神の騎士は、第三紀111年、アイル戦争で英雄的な活躍を見せたアミエル・ラナス卿によって結成された。その目的は、何千年ものあいだ失われていた、伝説の聖戦士ペリナル・ホワイトストレークの武器や防具などの聖遺物を探し出し、取り戻すことであった。彼らは第三時代初期の自信と野望に満ちた風潮の申し子であった。タムリエルが統一され、人々が何世紀ぶりかの平和を謳歌していたあの時代、不可能なことなど何一つなかったのである。 アミエル卿が騎士たちを率いてエリングレンのワイアームを倒し、第一紀から行方不明だった聖戦士の胴鎧を持ち帰ると、結成まもない九大神の騎士の名声は一挙に広まった。すぐに、その当時の偉大な騎士たちが九大神の騎士に加わろうとやってくるようになり、シロディールのウェストウィルドにあった九大神修道院は高潔で善良な者を磁石のように引きつける場所となった。九大神の騎士は国中の賞賛の的であった。コロヴィアの名門貴族の御曹司ベリック・ヴリンドレル卿が加わる頃には、九大神の騎士は帝都で最も栄光ある騎士団になっていた。その後比較的短い期間に九大神の騎士はさらに3つの聖遺物を発見し、その度に彼らの名声はより高くなっていった。誰もが、最終的に彼らが8つの聖遺物全てを取り戻すだろうと信じて疑わなかった。 しかし悲しいことに、彼らの当初の信念は第三紀121年に始まったレッド・ダイヤモンド戦争による帝都の分断と荒廃の中で途切れてしまった。当初、アミエル卿は騎士たちを戦争に参加させないつもりであったが、彼らの名声がそれを許さなかった。多くの騎士たちが帝都の名門家庭の出身であり、どの家もこの血なまぐさい市民戦争でどちらかの側について戦っていたのである。ベリック卿が最初の離脱者であった。彼はセフォラスの側について戦うため、聖遺物である剣とグリーヴを身に付けて戦場に向かった。他の多くの騎士たちもまた、その後まもなく九大神の騎士を離れ、敵味方となって戦った。 九大神の騎士の最後は、その初期の栄光に比べてひどく不名誉なものとなった。第三紀127年、セフォラスの勝利で戦争が終結すると、ベリック・ヴリンドレルは勝軍の功労者として重要な位置につくこととなった。第三紀131年に帝都が発令した九大神の騎士の解散布告の背景には、ベリック卿の圧力があったと見られている。この布告はほとんど形式だけのものであったが、アミエル卿の尽力にもかかわらず九大神の騎士が再結成されることはなかった。 九大神の騎士によって取り戻された聖遺物はどうなったのだろうか? 聖戦士の剣とグリーヴはベリック卿が持ち去ったが、それらが今どこにあるのかはわかっていない。聖戦士の篭手は、コロールのステンダール聖堂の床に安置されている。第三紀139年、カシミール卿が不名誉な死を迎えた際そこに残したまま動かされていないのである。聖戦士の胴鎧の所在は不明である。アミエル卿は第三紀150年に九大神修道院に一人で住んでいたところを通りがかりの旅人に目撃されているが、それ以降の彼の運命と胴鎧の行方は歴史の謎となってしまった。このようにして、九大神の騎士は歴史の彼方へ消え去ってしまったのである。 ダンジョン 九大神の騎士関連 歴史・伝記 赤3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/142.html
黒い矢 第1巻 ゴージック・グィネ 著 ウォダの女公爵の夏の邸宅地に召使いとして雇われた時、私はまだ若かった。それまで貴族の称号を持った人たちと接する機会など、ほとんど無かった。エルデン・ルートには豪商、貿易商、外交官、それに役人たちが大きな事業や娯楽のための派手な邸宅を持っていたが、私の親族は彼らのような社交界の人たちとはまったく無縁だった。 大人になっても手伝う家業はなかった。そんな折にいとこから、遠く離れた地所で召使い募集の噂話を聞いた。そんなに遠くでは志願者も少ないだろうと思い、私はヴァレンウッドのジャングルをひたすら歩いて向かった。歩いて5日がたとうとするころ、同じ方向へ向かう騎馬の一群と出会った。ボズマーの男が3人に同じくボズマーの女が1人、ブレトンの女が2人、ブレトンの女が2人、ダンマーの男が1人。皆そろって冒険者の身なりであった。 「あなたもモリヴァにいくの?」そう聞いてきたのはブレトンのプロリッサだった。それから私たちは互いに自己紹介をした。 「そこかどうか分からない」と私は答えた。「ウォダの女公爵のところで仕事があると聞いて向かってるんだけど」 「それなら近くまで連れて行ってあげるよ」ダンマーのミッソン・エイキンがそう言うと、私を馬の背に引っ張り上げてくれた。「でも、モリヴァに戻る学生たちに送ってもらったなんてことは女公爵には絶対に言わないほうがいいよ。雇ってもらえなくなるかもしれない」 馬に乗っている間、エイキンは自分の身の上話を聞かせてくれた。モリヴァは女公爵の地所から一番近くにある村で、そこにすばらしい腕前の有名な弓の使い手がいるとのことだった。長年の軍隊生活のあと、そこで隠遁生活を送っていた。彼の名はヒオメイスト。引退したにも関わらず、弓術を学びたいと訪れる生徒を受け入れていた。そのうち、偉大なる教師がいるとの噂が広まり、彼の元をたずねる生徒があとを絶たなくなった。ブレトンの2人はハイ・ロックの西地区からやって来たと言う。エイキンもモロウウィンドの大火山近くにある故郷からはるばる大陸を渡って来たのだ。彼は故郷から持ってきたという漆黒の矢を見せてくれた。私はこれほど見事な黒を見たことがなかった。 「聞くところによれば……」とボズマーのコペールが言った。「女公爵は元は帝都の人間だったが、帝都が成立する前に家族全員でこの地に移り住んだらしい。そうすると、彼女もすっかりこのヴァレンウッドの地に慣れ親しんでいると思うだろ? ところが実際はそうでもないらしい。この村とその弓学校を嫌っているそうだ」 「彼女はジャングルの中の交通網でさえ、支配下におさめようとしてるのよ」と言ってプロリッサは笑った。 情報をもらって礼を言いながらも、その偏屈そうな女公爵に初めて会う日がだんだん恐ろしく思えてきた。木々の間から初めて邸宅が見えた時でさえ、心の不安は何一つ晴れなかった。 それはかつて、ヴァレンウッドで見たことのないような建物であった。石と鉄とが組み合わさってできたその巨大な邸宅には巨獣の顎のように尖らせた胸壁が並んでいた。邸宅近くにあった木のほとんどが、ずいぶん前に切り倒されたようであった。その当時はひと悶着起こったであろうが、女公爵はバズマーの農民など恐れていなかったようだ。邸宅は木々に変わって灰緑色の堀で囲まれていた。それはまるで人口の島のようにも見えた。このような光景は、ハイ・ロックや帝都からもたらされたタペストリーの図柄で見たことはあっても、故郷では決して目にしないものであった。 「門のところには門兵がいるようだから、このへんでそろそろお別れだ」と言いながら、エイキンは馬をとめた。「ここまで私たちと一緒に来たことは内緒だよ」 私は彼らに礼を言って、彼らの弓術の腕前が上がるよう幸福を祈った。彼らは馬を進ませ、私は歩き始めた。すぐに正門のところへ着き、気づくとそこは厳重にも頑丈そうな警備がしかれた高い柵があった。門兵に召使いの仕事を探しにきたことを告げると中へ通してくれ、門兵は先に広がる芝生の反対側にいるもう1人の門兵に指示を出し、跳ね橋を下ろして渡らせてくれた。 最後の警備網、正門にたどりついた。門の上には巨大な鉄製のウォダ公の紋章がかかげられていた。その上にはさらに鉄片で強化されており、金であしらわれた鍵穴が1つあった。門兵がドアを開けてくれ、灰色の石材で積み上げられた、陰鬱かつ巨大な邸宅内へと招きいれてくれた。 女公爵とは客間で挨拶を交わした。彼女は爬虫類のように痩せて、皺だらけだった。この時はシンプルな赤色のガウンを着ていた。彼女は決して笑顔を作る努力をしない人であることは明らかだった。面接の質問はたった一つだった。 「帝都貴族に雇われた若い召使いの仕事とは?」と聞く彼女の声はしなびた革のようであった。 「わかりません」 「そう。これまで見てきた召使いたちは自分に何が求められてるかなんてまったく知らなかったわ。仮に知っていると答えたとしても、私、そんな召使いは気に入らない。あなた合格よ」 邸宅内での生活にはたいして楽しみもなかったが、一番下っ端の召使いの仕事はそれほどきつくはなかった。女公爵の留守番以外にすることがほとんどなかったのである。暇な時は2マイルほど歩いてモリヴァまで行った。ヴァレンウッドの同じような村でもそうだが、この村でも特別変わった出来事は起こらなかった。だが、近くの丘陵斜面にはヒオメイストの弓術学校があり、時々お弁当をこしらえて、練習を見にいった。 プロリッサとエイキンとは練習のあと会うようになった。エイキンの話す会話のテーマはもっぱら弓術に終始した。彼のことは好きだったが、プロリッサのほうが魅力ある人にうつった。美しいブレトンだったからではなく、彼女はどうやら弓以外の世界にも興味があるようだったからだ。 「小さい頃にハイ・ロックでクイルサーカスを見たわ」ある時、森を歩きながら彼女はこう話し出した。「老いも若きも知っているほど長いことやっているわ。あなたももし機会があれば、是非見にいくといいわ。芝居あり、余興あり、あっと驚く曲芸や弓芸も見られるわ。私もいつかは腕を磨いて、あのサーカス団に加わることが夢なの」 「いつ腕が磨かれたかなんてどうやってわかるんだ?」と私は尋ねた。 その問いかけに対して、彼女からの返事はなかった。振り向くとそこに彼女の姿はなかった。周りを見渡しながら困惑していると、頭上の木のあたりから笑い声が聞こえてきた。彼女は枝の上に立ち、にっこりと微笑んでいた。 「私は弓の使い手としてじゃなく、できれば曲芸師として参加したいの」と彼女は言った。「もしくはその両方ね。ヴァレンウッドは学びの場としてもっとも適した場所よ。ここの森にも教えを請うべき偉大な先生たちがたくさんいるわ。たとえば猿人とかね」 彼女は一旦体をかがめ、左足で踏ん張り、右方向へ飛びはねたかと思うと、さっそうと別の枝へと移っていた。彼女に話しかけ続けるのは大変だった。 「それってイムガのことかい?」と私はどもりながら言った。「そんな高いところにいて、怖くない?」 「平気よ」と彼女は言いながら、さらに高い枝へと飛び移っていく。「秘訣はね、下を見ないこと」 「降りてこない?」 「そのうちね」と彼女は言った。今や地上から30フィートの高さにいる彼女は、バランスをとるように腕を伸ばし、細い枝の上を歩く。そして、道の向こう側にかろうじて見えるほどの門を指差し、「この木から女公爵の邸宅に手が届きそうだわ」 彼女が枝から飛び降りたその瞬間、私はハッと息をのんだ。彼女は宙返りをしながら、膝をやや曲げて見事に着地して、「これも技の1つよ」と言った。私は、あなたならきっとクイルサーカスの花形団員になれると激励した。もちろん、今でならそんな未来は訪れないことを知ってる。 その日は早めに邸宅に戻らなければいけないことを思い出した。私にはめったに仕事がないのだが、女公爵に来客がある時は邸宅内にいなければならなかった。それもたいした仕事ではなく、晩餐の間、気をつけの姿勢で立っているだけであった。目の前を執事や給仕係が忙しなく料理を運び込み、空いたお皿があれば下げていく。しかし召使いの私は、この部屋では形式ばったただのお飾りとなるのであった。 しかし、少なくとも私はそこで、その後起こるドラマの─観客となった。 赤3 随筆・ルポルタージュ 黒い矢 第2巻 ゴージック・グィネ 著 私が女公爵の邸宅で従事した最後の晩餐会には、驚いたことに、モリヴァ村長とヒオメイストが他の客と共に招かれていたのである。召使いたちは噂話に夢中である。村長の訪問は以前にもあったが、非常に稀である。しかし、ヒオメイストの出席は考えられなかった。女公爵のこのような行為は、何を意味しているのだろうか? 他の会食に比べればいささか冷たい雰囲気が漂っていたが、晩餐会そのものは滞りなく首尾よく進んでいた。ヒオメイストも女公爵も、口数は共に非常に少ない。皇帝ペラギウス四世に新しく生まれた息子と後継者であるユリエルについて、一同に議論を投げかけようとした村長であったが、その試みは人々の興味を余り惹かず失敗に終わってしまった。すると、ヴィルア卿婦人── 年上ではあったが、妹の女公爵よりも快活である── が、エルデン・ルートでの犯罪とスキャンダルとについて水を向けた。 「ここ数年、情勢が悪くなっているから、エルデン・ルートから離れるよう姉に言ったんです」と言って女公爵は村長と目を合わせた。「つい最近もモリヴァ丘に彼女の邸宅を建てられないか、そのことを話し合ったばかりです。でも、ご存知の通り、あそこはスペースが足りないでしょう? でも運よく、良いところを見つけました。ここから数日ばかり西の方の川岸の広い野原で、本当に理想的なところです」 「それは非常に結構ですね」と、言って村長は微笑むと、ヴィルア卿夫人の方に顔を向けた。「建設はいつから始められますかな?」 「その場所にあなたの村を移した、その日からね」とウォダ女公爵は言葉を返した。 村長は女公爵が冗談を言っているのだと思って彼女を見た。しかし冗談ではなかった。 「川岸に村を移したら、どれほど商益が上がるか考えてみてください」とヴィルア卿夫人は陽気に言った。「それに、ヒオメイストの学生たちも、その素晴らしい学校に通い易くなるでしょう? みんなのためになるんですよ。そうすれば、妹の土地を勝手に踏み荒らす者も少なくなり、心安らかになれるでしょうね」 「今はあなたの土地に入り込むようなものたちはいませんよ」とヒオメイストは顔をしかめた。「このジャングルはあなたのものではありませんし、いずれそうなることもありませんでしょう。村人たちがここを出て行くよう説得されるのは構いませんが、私の学校が移ることはありませんよ」 それから、晩餐会が和やかな調子に戻ることは決してなかった。ヒオメイストと村長が中座を申し出て、一同も客間に酒を求めて出て行き、私が呼ばれることもなかった。その夜は、壁越しに笑い声が漏れてくることはなかった。 翌日、その夜も夕食会が予定されていたが、いつものように私はモリヴァへと足を運ぼうとしていた。しかし、跳ね橋に差し掛かる前に、衛兵が私を連れ戻して言った。「何処に行くんだ、ゴージック? まさか村じゃないだろうな?」 「どうして行けないの?」 彼は遠くに立ち昇る煙を指さした。「今朝早くに火事が起きて、今も燃えてる。どうやら出火元はヒオメイスト学校だ。山賊の仲間の仕業だろうな」 「ステンダールよ!」と私は叫んだ。「学生は大丈夫ですか?」 「分からないが、生き残ってたら奇跡だろうな。未明の出来事で、ほとんどみんな寝入ってただろうからね。師匠の遺体、いや、『師匠だったもの』は見つかったそうだよ。それに、君の友達の女の子、プロリッサの遺体もね」 その日は失意のうちに過ごした。そんなことはありえないとは思ったが、私はあの2人の老貴族、ヴィルア卿夫人とウォダ女公爵が村と学校にいらだちを覚え、それらを灰にしてしまおうと企んだのではないかと直感した。夕食の席では、たいしたニュースでもないかのように、モリヴァでの火災についてほんの少し触れるだけであった。しかし、私は初めて女公爵が笑うのを見たのである。その笑顔を、私は死ぬまで決して忘れないであろう。 翌朝、私は村に行って、生き残った人々の手伝いが何かできないか見に行ってみることに決めた。召使いの間を抜けて豪華なロビーに差し掛かったところで、前の方から何人かの声が聞こえてきた。そこには衛兵とほとんどの召使いが集まっていて、ホールの中央に掛けられている女公爵の肖像画を指さしていた。 肖像画の女公爵のまさに心臓の位置を、1本の黒檀でできた矢が刺し貫いていたのである。 私はすぐに気づいた。それはミッソン・エイキンのものだ。彼が見せてくれた矢筒の中にあった1本、彼いわく、ダゴス・ウルで鍛え上げられた代物である。私はまず最初に安心した。親切に自分を邸宅まで乗せて来てくれたダンマーは、生き残っていたのだ。そして次に、玄関に集まった一同と同じことを考えた。どうやって、衛兵、門、堀、そして、分厚い鉄の正門を突破できたのだろうか? 私のやや後から来た女公爵は、明らかに激怒していたが、育ちの良さからか、その薄い眉を上げてみせただけであった。早急に召使い全員に、始終、邸宅の敷地を警備するよう新たな仕事を命令した。私たちは普段の仕事に加えて、厳重な警備を敷くことになった。 翌朝、この厳戒態勢にも関わらず、新たな黒い矢がまたも女公爵の肖像画を刺し貫いた。 こんなことが一週間も続いた。ロビーには少なくとも一人の人間を置くようにしていたが、どういうわけか、ほんの一瞬警備のものが目を離した隙に、いつも、矢が絵のところで発見されるのであった。 警備する者たちの間で、寝ずの番の間に聞いた物音や不審な出来事を知らせるよう、一連の複雑な合図が考案された。最初は、日中の不審な出来事の報告は城主が、夜間の出来事の報告は衛兵隊長が受け取るように取り決められた。しかし、女公爵は夜眠れないということなので、結局彼女に直接伝えることになった。 邸宅の雰囲気は、陰気から悪夢へと変わっていった。1匹の蛇が這い、堀を渡るのが目に入ったら、ウォダ女公爵は一目散に東の翼面に駆けて行き、丹念に調べ上げた。一陣の突風が芝生に生える木々の1本の葉をざわめかせただけでも、やはり「緊急事態」扱いだった。不運だったのは、偶然1人で邸宅の前を歩いていた旅行者たちである。彼らに何の罪も無いのは明白であるにも関わらず、まるで戦争に遭遇したように暴力が振るわれた。確かにある意味、戦争であった。 そして毎朝、彼女をあざけるかのごとく、正面玄関には矢が突き刺さっていた。 ある早朝の数時間、肖像画を警備する嫌な仕事に私も駆り出された。もう矢が見つからなければ良いのにと思いながら、その肖像画の正反対に置かれた椅子に腰掛けて、私は一瞬でも目を離さないようにした。ところで、読者には1つのものを眺め続けるという経験はあるだろうか? それは奇妙な効果を生むものであった。ほかの全ての感覚が消え失せてしまうのだ。そのため、部屋に駆け込んできた女公爵が私と肖像画の間に立ちはだかった時には、驚いたものであった。 「門からの道のむかいの木の陰で何かが動いているのよ!」と彼女はわめいて、私を脇に追いやり、おたおたと金色の鍵をかけ始めた。 彼女の体は乱心と興奮に震えて、鍵は上手くかからない。手を貸そうと彼女に近づいた時には、すでに女公爵の目は鍵穴を見つめてひざまづいていた。鍵は入ってくれたようである。 まさに、その瞬間、矢が到達した。しかし、決して肖像画まで届かなかった。 それから数年後、私がモロウウィンドで貴族を楽しませている頃、ミッソン・エイキンに再会した。私が邸宅の召使いから、名の知れた吟遊詩人に出世していたことに、彼は感心していた。彼自身はアシュランドに帰り、彼の師匠であるヒオメイストのように引退して、教師兼狩人という簡素な生活を送っていた。 ヴィルア卿夫人は街を移さないことを決め、モリヴァの村は再建されたそうだと、彼に話した。それを聞いて彼は喜んだが、私が本当に知りたかったことを尋ねるきっかけは見つけられなかった。自分の考えは馬鹿げていると思ったからだ。つまり、あの夏の毎朝、門に対して道を挟んだところに生えていたプロリサスの木の陰から、門と芝生と堀と鍵穴を通り抜け、ウォダ公爵の肖像画へと矢を放ち、最後には、彼女自身にも矢を放ったということだ。そんあことは明らかに不可能である。私は聞かないことにした。 その日の内に別れたが、彼はさよならと手を振って、こう言った。「ゴージック、元気にやってそうでなによりだ。あの時は椅子を動かしてくれてありがとう」 茶2 随筆・ルポルタージュ
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/44.html
我々は狐の指であり、影の子たちである。そして巷では盗賊ギルドとして知られている。 グレイ・フォックスの従徒に科せられる戒律は三つのみである。 一つ、ギルドの他の構成員から盗むことなかれ。 二つ、仕事に際しては何ぴとも殺めることなかれ。我々は闇の一党とは違う。動物や妖魔であれば必要に応じて殺傷してもかまわない。 三つ、貧しき者たちから盗むことなかれ。平民および物乞いたちは、特に帝都の波止場地区においては、グレイ・フォックス自身の庇護の下にある。 以上三つの戒律のどれを破っても、盗賊ギルドからの追放が待っている。殺人を犯した場合、再びギルドに加わるには血の代償を支払わなければならない。血の代償は殺めた人一人毎に支払う必要がある。支払先はギルドのドイエンであれば誰でもかまわない。 ドイエンたちはギルド長の手であり、目でもある。構成員はドイエンから命令を受け、ドイエンを通じて恩恵に与る。ドイエンは帝都の判事たちに和解金を支払い、構成員の罪を帳消しにしてくれる。無論、これには若干の上納金が伴う。 ギルド長はグレイ・フォックスである。彼に関する公の場での話題は禁止する。ただし、人々のほとんどが彼を伝説に過ぎないと思い込むよう取り計らうものとする。 我々は盗賊であり、決して石工や書記官ではない。各人が自らの判断で盗みを行う。ギルドは強盗の手助けも邪魔もすることはない。ただし、盗んだ物品はギルドの盗品商しか買い取ってくれないことが判明するだろう。他の商人は盗品を受け付けてはくれない。 盗賊ギルド内での昇格に値するには、盗品商たちに十分な価値の盗品を売ることが条件となる。ギルド内での地位が高くなるにつれ、より多くの盗品を売る必要が生じる。 何らかの形でグレイ・フォックスに助力をするよう命じられた場合、最良の情報源が物乞いであることを忘れるなかれ。彼らの目および耳はいたるところにある。ただし、若干の出費は覚悟せよ。只では何一つ話してはくれない。少なくとも真実は。 ギルドは構成員の面倒を見るものとする。ドイエンたちはいずれの構成員にかけられた賞金をも取り消すことができる。ただし、これには衛兵に賄賂を支払うための資金が必要となるため、構成員はドイエンに罰金額の総額の半分を支払わなければならない。 盗賊ギルド関連 社会 赤3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/103.html
ペリナルの歌 第5巻:モールリアスへの愛情 [編者注:1巻から6巻に収められた文章は、帝都図書館所蔵のいわゆるレマン文書から採られたものである。この文書は、第二紀初期に無名の研究者によって集められたもので、古代文書の断章の写しからなる。古代文書のそもそもの出所は不明であり、いくつかの断章は同時期に書かれた(同じ文書からの断章という可能性もある)ものと考えられている。しかし、6つの断章の成立時期に関する学術的な合意は得られておらず、ここでもその断定は避ける。] モールリアスがカイネの息子であることは厳然たる事実である。しかし、ペリナルがシェザリンであるかどうかについては語らないほうがいいだろう(あるとき、ダガー使いのプロンチヌがそれを言って、その夜蛾を喉につまらせて死んだ)。しかし、モールリアスとペリナルが互いを家族と呼び合ったことはよく知られている。モールリアスが弟分であり、ペリナルは彼を甥と呼んでかわいがった。しかし、これらは単に神々に近い不死身の彼らの気まぐれな遊びだったのかもしれない。ペリナルは、戦いに関してはモールリアスに助言などしなかった。この半牛人は素晴らしい戦いぶりを見せていたし、兵をうまく導き、憤怒に身を任せることもなかったからだ。しかしペリナルは、モールリアスがペリフに対して募らせていた愛にだけは警告を与えた。「モール、俺たちはアダだ。愛によって何かを変えなくてはならない。さらなる怪物をこの地上に生み落とさないように気をつけろ。お前が思いとどまらなければ、彼女はお前を愛するようになり、お前のせいでシロドはその姿を変えてしまうぞ」これを聞いたモールリアスは彼の雄牛のような姿を恥じ、彼がパラヴァニアにとって醜すぎるのではないかといつも思い悩んでいた。ペリフが彼の服を脱ぐのを手伝ってくれるときなどは特にそうだった。ある夜、彼は小月神の月の光に鼻輪を光らせ、鼻を鳴らして言った。「彼女はまるでこの鼻輪の光のようだ。ときどき気まぐれに光り輝くが、夜にこうして頭を動かせばいつでもそこに見ることができる。そして、俺は決して手に入れられないものを知るのだ」 歴史・伝記 赤1