約 3,520,818 件
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/58.html
天空の子供たち ノルド族の者は自らを天空の子供たちだと信じている。スカイリムを天が大地に息吹を吹きかけて彼らを作り出した場所とし、世界の喉と呼んでいる。ノルド族は自分たちを永遠の外来者かつ侵略者と見なしており、たとえ他の一族を打ち破り支配下に入れたとしても、それらに対して親近感を感じることはない。 ノルド族にとって息と声は生命の粋というべき要素であり、強大な敵を倒したノルドは相手の舌を戦利品として持ち帰る。これらの舌から作られたロープは、魔術のように言葉を蓄えておくことができる。ノルドはアカヴィリのソードマンの気合同様、自らの力を叫び声に込めることができる。ノルド族最強の戦士たちは「舌」と称される。ノルド族は街を攻める場合、攻城兵器や騎兵などは用いない。門の前にくさび状に陣形を組むと隊長が気合として力を発声して門を打ち破り、斧で武装した歩兵たちが街の内部へと雪崩れ込むといった按配である。この叫び声は武器の刃を研いだり、敵に直接打撃を与えたりもできる。しばしば見られる結果は敵を押し戻したり、操ったりすることである。強靱なノルドは雄叫びで仲間の士気を高めたり、突撃してくる敵の戦士を怒号で止めたりできる。最も偉大なるノルドともなると、何百マイルもの遠方から特定の相手に呼びかけたり、叫び声を投げかけてその到達点に転移することで素早く移動することもできる。 最も強大な部類のノルドは口を開くだけで破壊を巻き起こしてしまうため、通常は猿ぐつわをはめ、手話とルーン文字を使って意思疎通を行う。 スカイリムの奥地へと進むにつれ、人々の秘める力とその精霊的な側面が強まっていき、それに伴って住居などの必要性が減っていく。風はスカイリムおよびノルド族にとって根本的な要素であり、遥か遠方の荒野に住む者たちの体には常に風がまとわりついている。 民族・風習・言語 茶1
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/63.html
闇の兄弟たち ペラニー・アッシー 著 その名が示すとおり、闇の一党は暗黒に包まれた歴史を持つ。彼らの生き方は、兄弟の一団以外には秘密である。(「兄弟」という表現は総称である。彼らの中で最も恐ろしい暗殺者のうちの数名は女性であるが、それでもしばしば兄弟と呼ばれる) どのようにして影の中で生き続けているのか、なぜ彼らに依頼しようとする人々には簡単に探し出せるのかなどは、彼らを取り巻く謎の一部にすぎない。 闇の一党は、宗教的な一団であるモラグ・トングから第二紀に生まれた。モラグ・トングは儀式的殺害を彼らに促したデイドラの霊、メファーラの崇拝者たちであった。創世記には誰も先頭に立って牽引しなかったため、彼らも他の行き先不透明な新興宗教団体のように混乱しており、集団として身分の高いものを殺そうとはしなかった。しかし、これは夜母の台頭によって変化した。 後に闇の一党となったモラグ・トングの指導者たちは、夜母と呼ばれていた。同じ女性が(女性かは定かではないが)第二紀から闇の一党を指揮していたかは分かっていない。信じられていることは、初代夜母がモラグ・トングの重要な教理を生み出したことだ。その信条は、メファーラは、彼女の名において犯される殺人ごとに強くなるが、特定の殺人他に比べてさらに良いとされていたことだ。憎悪からの殺人は欲から生まれた殺人よりもメファーラを悦ばせ、偉大な人物の殺害は、あまり知られていない人を殺すよりもメファーラを満足させた。 モラグ・トングによって犯された、知られている初の殺人で、この教理が受けいれられたおおよその時期は予想できる。第二紀の324年、ポテンテイト・ヴェルシデュ・シャイエは彼の王宮、現在はセンチャルのエルスウェーア王国にて殺害された。すぐさま夜母は、壁にポテンテイトの血で「モラグ・トング」と書くことによって、下手人の素性を公表した。 それ以前のモラグ・トングは事実上、魔女の集まりのような、比較的平和の中で暮らしていた。時折、迫害を受けたがたいていの場合は取り合わなかった。闘技場と化したタムリエルがバラバラに分断されていた時期に、驚くべき同時性でモラグ・トングは大陸全土で非合法とされた。国王たちは皆、教団の廃絶を最優先事項とした。その後100年間、彼らに関しては何も伝えられていない。 特に他の暗殺者ギルドがタムリエル史上に散発的に出現していた最中、モラグ・トングが闇の一党として再び現れた時期を特定するほうが難しい。闇の一党に関する初めての言及を見つけたのは、ヒゲースの血の女王アーリマヘラの日誌のなかである。彼女はその手で敵を殺すか、必要であれば、「我らの一族が祖父の代から雇ってきた秘密兵器、夜母とその闇の一党の手を借りてでも」と語っている。アーリマヘラはこれを第二紀の412年に書き記しているので、もし彼女の祖父が本当に雇っていたのであれば、闇の一党は最低でも360年から存在していたものと推測できる。 闇の一党は教団であると同時に事業であったことが、闇の一党とモラグ・トングの重要な違いである。支配者や裕福な商人たちは、この一団を暗殺者ギルドとして利用した。闇の一党は、この儲かる事業がもたらす明確な恩恵と、彼らの必要性から、もはや支配者は彼らを迫害できないという副次益まで得た。彼らは必需品の商人のような存在となっていた。とても高潔な指導者であっても、闇の一党を粗末に扱うのは愚かである。 アーリマヘラの日誌への書きこみから間もなくして、おそらくは闇の一党の歴史上、もっとも有名な連続処刑が行われた。430年、薄明の月のある晩、クロヴィアの皇帝、サヴィリエン・チョラックと彼の相続人の全員が惨殺された。四日目の晩、敵が大喜びするなか、クロヴィア王朝は崩壊した。皇帝セプティムが出現するまでの以後400年にわたり、タムリエルは混乱に支配された。これと比較できるほどの処刑は記録されていないが、この秩序のない空白期間に闇の一党はゴールドで肥え太ったに違いない。 歴史・伝記 茶1 闇の一党関連
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/219.html
ジョルニブレット最後の踊り 女たちの歌 Ⅰ: 毎年 冬が来て 戦争が1つ2つ始まりそうな理由が 特になければ (争いごとは本当に厄介なもの) 女王リメンとその旦那 家来を集めて陽気な騒ぎ 舞踏会があると聞けば いの一番に駆けつけるのは ゲイルのオギン・ジョニブレット卿 あらゆる美しき乙女にとっての災い 女たちのリフレイン ああ可愛い女たち 気をつけて ひときわ可愛い女性は特にご用心 ジョルニブレットは美男子だけど あのきれいな手を思い切って握ってしまったら ひどい魔法をかけられて 初めてのダンスがそのまま最後のダンスになってしまう 男たちの歌 Ⅰ: あの社交行事に 出かけた者たちは皆 お辞儀もできれば姿勢も良くて どんなダンスのステップも知っていた 女王リメンとその旦那 命じて吹かせるトランペットの大音響 すると誰もためらうことなく お祭り騒ぎの始まり お嬢さん方 初めてダンスを踊るなら ジョルニブレットみたいな男には近づかないで 男たちのリフレイン: ああ仲間たちよ 説明してやってくれ 兄弟よ 分かりやすく教えてやってくれ あの男はずっと前からあんなことをしていて 最後の曲が演奏される前に 美しき乙女は涙を流し 初めてのダンスがそのまま最後のダンスになってしまう 女たちの歌 Ⅱ: ゲイルのオギン・ジョルニブレット卿は 国で最も美しい女たちが 舞い踊る姿を見ていた 熊皮の兜をかぶった男が来て訊ねる 「女王リメンとその旦那 気晴らしのために開いた大宴会 お好みはどの麗人?」 ジョルニブレット卿が指さしていわく 「彼女だ あの胸の揺れと編んだ髪を見たまえ 僕が愛して別れるにはうってつけじゃないか」 女たちのリフレイン 男たちの歌 Ⅱ: 熊の仮面の男は 女たちのダンスが終わる前に ゲイルの領主のそばから離れた そしてトランペットが鳴り響き 女王リメンとその旦那 女たちを誘うように男たちに求めた 尊大な態度で他の女たちの前を通り過ぎて オギンが近づいていったのは胸が揺れていたあの女 しかし彼女も無視され その悩み多き命は救われた 新たに選ばれた乙女は雪のように清らかだった 男たちのリフレイン 女たちの歌 Ⅲ: 楽団の演奏が流れるやいなや 美しい乙女はオギンの手を握り 彼の立派な馬車を誉め称えながら 女王リメンとその旦那の 婚礼のために作られた曲に合わせて踊った 凝った飾りの皮鎧を身にまとって 倒れたりよろめいたりすることなく 優雅に振る舞いながら 継ぎ目の金具がきしむ音もさせずに 甘い夢のように軽やかに踊るのは本当に難しいもの 女たちのリフレイン 男たちの歌 Ⅲ: リズムは速くなり 遅くなり 男性らしい優美さと拍子の取り方にかけて 彼を上回る者は一人もなく 領主ジョルニブレットは 女王リメンとその旦那にまで称賛されることになった 美しい船が港に入ってくるように 皮の重さをまったく感じさせることなく彼は滑らかに動いた 乙女らしい口調で彼女はささやいた 「もう遅い時間だわ それにしても皮鎧を着てこんなにも優雅でいられる人は見たことがない」 かわいそうな話だが そんな彼女を彼は傷つけなければならなかった 男たちのリフレイン 女たちの歌 Ⅳ: すさまじい勢いで曲が演奏されるうちに 彼は気になり始めた この乙女は今まで一体どこに身を隠していたのだろう 「女王リメンとその旦那に求めに応じてこのダンスを踊る前 僕は君の姿を女性陣の中に見かけなかった」 「舞踏会に到着した時にドレスが破けてしまったのよ」 彼女は微笑みながら 男のように深い声で言った 「召使いたちが急いで直してくれたけど その間 私は革の鎧と熊の兜をかぶっていたの」 女たちのリフレイン 茶4 詩歌
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/225.html
錠前の設計と製造 私はこれまで、何人もの泥棒と出会ってきました。彼らにとって錠前とは、それが守っている部屋や箱の中身を盗むために破るものでしかありません。私は彼らと関わった経験を生かし、こうした悪意を退けることのできる錠前の構造を考案しました。 錠前を作るとき、もっとも重要なのは素材です。安物の真鍮や銅でできた錠前はちょっと強く蹴られたらすぐ壊れてしまうので、役にたちません。よい素材としては、鉄よりも鋼鉄をおすすめします。それよりも強固な素材となると、値段も高くなるし扉自体も同じような素材で作る必要がでてくるでしょう。私などは、木箱の小さな錠はかかったまま、箱の部分をばらばらに壊されて悔しい思いをした経験があります。 こうした基本的なことが決まったら、次にタンブラーの片寄りに注目しましょう。鍵穴に対して7度の片寄りを与えておくと、ねじれによって鍵が滑らかに動きます。まっすぐなピックで錠前を破ろうとする泥棒にとって、こうしたねじれのある鍵穴は頭痛の種です。 同じように、タンブラーのばねの部品はそれぞれ違った職人の作ったものを使うとよいでしょう。職人によって、ばねの弾力の強さは違います。こうした違いが、錠前を破りにくくするのです。 産業・商業 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/112.html
アズラと箱 ドゥーマー太古の物語 第11部 マロバー・サル 著 ナイルバーは若いころは冒険心にあふれていたが、やがてとても賢い老ドゥーマーとなり、真理の探究や俗説の見直しに生涯をささげた。彼は実にいろいろな定理や論理的構造を打ち出しその名を世間にとどろかせていった。しかし彼にとって世界の多くはいまだなお不思議なものに満ち、とりわけエイドラとデイドラの本質は謎そのものであった。探求の結果、神々の多くは人類などによるつくりごとであるという結論に達した。 しかしながら、ナイルバーにとって神道力の限界以上の疑問はなかった。偉大なる存在がこの世全体の支配者なのであろうか? もしくは謙虚な生き物たちが自ら己の運命を切り開く力を持っているのだろうか? ナイルバーは自分の死期が近いと予感し、最後にこの疑問に挑まなければならないと感じた。 彼の知人でアシーニックという聖なる鐘の司祭がいた。司祭がベタラグ=ズーラムを訪れた際に、ナイルバーは彼に神道力の本質の探究に挑むつもりであることを話した。アシーニックは恐れおののき、そのような謎に手を出さないよう説得するもナイルバーの決心は固かった。司祭は神への冒涜になることを恐たが、最後には愛する友のため手伝うことに同意した。 アシーニックはアズラを召喚した。司祭が彼女の力への信仰を誓ういつもの儀式を行い、アズラが司祭には危害を加えないことを約束すると、ナイルバーと彼の多くの教え子たちは召喚の間へと大きな箱を運び入れた。 「この地に降り立つアズラよ、あなたは黄昏と暁の神であり、神秘の支配者である」とナイルバーは語りかけ、できるだけ従順な態度に見えるようにした。「あなたの知識は絶大です」 「そのとおり」とデイドラは微笑んだ。 「たとえば、この箱の中には何が入っているのかお分かりでしょうね」とナイルバーは言った。 アズラはアシーニックの方に向き直った。険しい顔だった。司祭は急いで、「神よ。このドゥーマーはとても賢く、尊敬された人物です。どうか私を信じてください。これは貴方様のお力を試すためではございません。しかし、この科学者と疑い深い連中の念をはらすため貴方様のお力をどうかお見せください。何度私のほうから説明しても、彼はその目で確かめたいという信念を持っているのです」と釈明した。 「もしこのドゥーマーたちが持ち込んだやり方で私の力を示すのであれば、その力はこれまで行ってきたことよりも印象的な業となるであろう」とアズラは怒鳴り、そしてナイルバーの目を真っ直ぐに見た。「箱の中には赤い花が1本入っている」 ナイルバーは表情を変えず、箱を開けて中身を見せた。箱の中身は空だった。 教え子たちはいっせいにアズラの方を向くと、彼女は姿を消していた。唯一アシーニックだけが彼女が消え去る前に「神の業」を見た。彼はただ何もしゃべることが出来ず、震えているだけであった。彼は呪いがふりかかった、と確信した。しかし先ほど証明された神道力についての考え方の方が呪わしかった。ナイルバーは青ざめ、足元もおぼつかなかったが、彼の顔は恐れではなく喜びで輝いていた。疑問に過ぎなかった真実の証拠を見つけた、という笑顔だ。 教え子の2人は彼を支え、もう2人は司祭を支え、召喚の間から出て行った。 「私は長い年月をかけて研究してきた。数え切れないほどの実験をこなし、独学で何ヶ国語も学んだ。最終的な真実を私に教えてくれた技術でさえ、ただ食べていくためだけに努力する貧しい若者だった頃に身に着けたやり方だ」と賢者は言った。 ベッドに上がる階段に連れて来られた時、彼のゆったりとしたローブのたもとから1枚の赤い花びらが落ちた。ナイルバーはその夜、息を引き取った、彼の死顔は知り得たことに満足して穏やかなものだった。 出版社注: これはドゥーマーのオリジナルの物語とはまったくの別物である。エルフ語に翻訳したものとも異なるが、物語の本質は同じものである。ダンマーにはナイルバーに関する同じような話が伝わっているが、その物語では、アズラはひっかけであることを見破り、答えることを拒んだ。彼女は疑念にかられたドゥーマーを殺し、ダンマーには冒涜に対して呪いを与えた。 エルフ語版では、アズラは空箱ではなく、直方体に変化する球体を入れた箱で試された。もちろんエルフ語版は、オリジナルのものに非常に近いもので、また難解な内容でもあった。おそらく「舞台マジック」の説明はゴア・フェリムがこのようなトリックを劇中で魔術を使わずに試した経験にもとづいてフェリム自身が付け加えたものである。 このマロバー・サル版ではナイルバーは孤独に描かれ、ドゥーマーの持つ多くの長所を表現した。ナイルバーの疑念はエルフ語版ほど絶対的なものでなく、ドゥーマーや貧しい司祭の名もなき家に呪いがかけられてもなお称賛されている。 神の本質が何であるにしろ、またドゥーマーがそれに対していかに正しかったか、または誤っていたかとしても、この物語はドワーフがタムリエルから消えた謎を解き明かしている。ナイルバーたちはそもそもエイドラとデイドラを欺くつもりはなかったのかもしれないが、彼らの疑念は神々の命に背いていた。 デイドラの神像関連 小説・物語 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/74.html
呪文の手引き 入門編 魔法使い見習いのあなたへ 最強とうたわれる魔術師もかつてはみな初心者だったのだ。彼らに共通しているのは幼いころから魔法に親しむうちに興味が芽生え、潜在能力が開花し、何年もかけて修練を積んでいったということだろう。恐れを知らない心でスキルを磨き、新しい呪文を学び、精神と肉体の鍛錬に明け暮れ、のちに誰からも一目置かれるような比類なき力を身につけたのである。 タムリエルの魔術師ギルドは知識と魔力の求道者の最初の停車駅であり、それはいつの時代においても変わらない。一般向けの魔法サービスを提供しながら幅広い魔法の販売も行っており、魔術を志すものなら何よりもまず足を運ぶべき場所であろう。個人の魔法販売業者も見つかるが、品ぞろえの豊富さという点では魔術師ギルドにはとてもかなわない。 スペルの多くは初級魔術師の手には負えないものだ。たとえば姿を消す魔法は難度が高いため、見習いレベルの術者ではとても使いこなせない。どの宗派であっても修練を積んでいけば実力が伸びていき、十分な力が身につくころには、さらなる高みを目指したいと感じるようになるだろう。初心者は魔法がうまく使いこなせないからといって挫折するのではなく、そこに課題を見つけることで、負けるものかと意気に燃えてもらいたい。落ち込んだりせずに、いっそう高度なスキルを追い求めてほしい。吸収のスペル、下級デイドラや強力なデイドラ、それにアンデッドを召喚するスペル(ただし、研究目的においてのみ許される)、火炎や寒気や雷撃といった魔法から身を護るスペルなど、学ぶべき上級魔法はいくらでもあるのだから。 特定の宗派をきわめたいという魔術師は、どんどんその宗派のスペルを身につけて、試せるチャンスがあれば貪欲に活かすとよいだろう。専門性を求める魔術師も、まんべんなく学びたいという魔術師も、魔術師ギルドに会員登録しておくことをお奨めしたい。実績のあるギルドのメンバーなら、一般向けのサービスだけでなく、上級の呪文や付呪といったメンバー限定の特別サービスも利用できるようになる。こうしたサービスは社会そのものを危険にさらしかねないため、魔術師評議会が太鼓判を押した上級メンバーだけが使えるように制限されているのだ。 魔法の扱いについてもっと知りたいという市民は、地元の魔術師ギルドの大賢者が相談に乗ってくれるだろう。 白1 魔法学・薬学 魔術師ギルド関連
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/40.html
帝都調査委員会による報告書 イオニスの惨事 委員長 ポトライド卿 Ⅰ: 準備 皇帝のアカヴィル遠征計画は270年、タムリエル・アカヴィル間海域の島々における小王国の征服から始まった。282年にエスロニーのブラック港が陥落し、皇帝ユリエル五世は最終目標であるアカヴィル征服の準備を始めた。皇帝はまず、ブラック港の補修と強化を命じた。遠征中の指令基地および補給地として利用するためである。同時に皇帝は、アカヴィルへの最後の海峡を渡るための数多くの巨大な輸送船の建設を命令した。必要となる輸送量に、海軍の船だけでは不充分であったためである。ここからわかる通り、皇帝のアカヴィル遠征計画はエスロニー征服が完全に終わる以前からの周到な準備の上で行われており、決して一部で揶揄されているような思いつきの類ではなかった。 284年にエスロニーの王子バショモンが皇帝の支配下に下り、皇帝の全精力はアカヴィル遠征計画に注がれることになった。285年と286年には、アカヴィル周辺の海路および沿岸の地形を偵察するために海軍が派遣された。また、多くの帝都の知識人が、魔術師もそうでないものも集められ、情報集積にあたった。そうして集められた情報に基づき、アカヴィル南西のツァエシという王国が最初の攻撃目標として選ばれた。 同じ頃、皇帝は遠征軍を組織しはじめていた。この遠征のために新しく極東艦隊が編成され、その威容は海軍の他の艦を小さく見せるほどであった。極東艦隊はタムリエルの歴史上最も強力な艦隊といわれている。第5、7、10、14部隊が最初の上陸戦に投入され、上陸地点に拠点が確保された後、第9、17部隊が増援部隊として加わる作戦であった。この上陸作戦は軍全体の規模に比べて小規模に思えるかもしれないが、大規模な部隊を長期間維持できるほどの補給経路が確保されていなかったことを思い起こさなければならない。加えて、皇帝および遠征軍の司令官たちは、侵攻作戦に対する反撃は少なくとも初期の段階ではそれほど激しいものではないと踏んでいた。さらに決定的だったのは、一度に4部隊が限界という海軍の輸送力であった。 我々が調査した限り、皇帝による遠征の準備に欠陥はなかったといえる。侵攻前に得られた情報(現在から見れば不充分であるが、当時知り得た限りの情報については申し分ない成果であった)に基づくなら、当委員会は当時の皇帝が軽率でも無謀でもなかったと確信する。遠征軍の戦力が小規模すぎたとする批判が一部にあるが、もし仮により多くの部隊を輸送し維持できる方法が確保されていたとして(帝都全体の経済を停止しなければ不可能だったろうが)より多くの部隊の投入は惨事の規模をむしろ増大したと思われる。まして、あの強奪者キャラモンの教訓も記憶に新しかった。皇帝はタムリエルの外に戦力を集中することは帝都の防衛力を弱めると考えたのである。(そして、我々はこの考えを支持する)むしろ、当委員会では遠征軍が大規模すぎたと考えている。皇帝が2部隊を新しく編成したこと(加えて、第5部隊を再編成したこと)を考え合わせたとしても、この惨事で遠征軍を失ったことは帝都軍全体の戦力を諸国に対して弱めることにつながり、現在の状況を招いたといえるであろう。このことから考えると、アカヴィル侵攻に必要な戦力に対し皇帝の全体的な戦力が不足していたといえる。もし帝都を守るべき戦力を投入して遠征部隊の規模を大きくしていたら、帝都は皇帝の遠征中に崩壊していたかも知れない。 Ⅱ: アカヴィル侵攻 288年雨の御手月23日、遠征軍は晴天のブラック港を出発し、6週間の航海の後アカヴィルに到着した。上陸地点は大河の河口に位置するツァエシの小さな入り江で、タムリエルに近いこと、また豊かな河口の地形が内陸への進軍と食料の現地調達に好都合だったことから選ばれた。最初の頃は全てが順調であった。ツァエシの住民は遠征軍の姿が見えるとすぐに町を捨てて逃げたので、遠征軍は難なく町を占領しその地をセプティミアと名づけた。アカヴィルにおける最初の占領地であった。工兵が町を要塞化し、港を極東艦隊の到着に備えて改修している間に、皇帝は2部隊とともに内陸へ進軍した。周りの土地は豊かで水脈に恵まれているようであった。次の町の住民も抵抗することなく逃げ、無傷で町を占領することができた。この町はイオニスと名づけられた。セプティミアより広く周辺の支配に都合のよい位置にあったため、皇帝はイオニスに司令部を置いた。 遠征軍は、いまだに反撃らしい反撃にあっていなかったが、敵の騎馬兵の姿がしばしば見かけられ、大規模な偵察隊以外は軍の本体から離れることができなかった。遠征軍に唯一欠けていたのが騎馬隊であった。輸送艦の限られた容量のせいであったが、さしあたっては魔闘士たちが魔術による偵察によってその不利を補っていた。 皇帝はツァエシの王、もしくは誰であれその地を治めるものと接触するために何人もの公使を送ったが、その誰もが戻ってこなかった。今から考えれば、この試みが貴重な時間を無駄にしたといえる。イオニスで足止めを喰らっていたこの時間に、そして敵がまだ侵攻に動揺しているうちに、さらに進軍すべきであった。しかし、当時皇帝はツァエシの王が遠征軍の戦力に恐れをなして降伏し、交渉によって戦闘で被害を出すことなく占領できるであろうと予想していた。 同じ頃、4部隊がセプティミア・イオニス間の道路の敷設川沿いの番兵所の建設、2つの町の要塞化などにあたっていた。これらの作業は後に彼らを救うことになる。騎馬隊がいなかったため、偵察は困難で、2つの町の連絡は敵の奇襲に常におびやかされた。この時点で、奇襲に対する有効な策は無かった。 当初の計画では上陸後の拠点が確保でき次第、増援部隊が投入されるはずであった。しかし、ここで致命的な判断がその到着を遅らせることになった。艦隊を使い、増援部隊の前に入植者をアカヴィルへ輸送するという決定である。原住民が町を捨てて逃げたため、彼らに占領地での物資の生産をさせることができなくなっていたという状況から、入植者を呼び寄せて食料などを現地調達することで物資輸送経路の不充分さを補うべきだというのが皇帝と元老院の一致した意見であった。加えて、物資輸送の経路上にあるイェスリーで反乱が勃発しており、物資の問題をさらに深刻にしていた。元老院は第9、17部隊をこの反乱の鎮圧にあたらせ、遠征軍の物資輸送経路を正常化するべきであると確信していた。 入植者の帝都市民は、暖火月中旬にセプティミアに到着し始め、彼らは(兵士たちがすでに始めていた仕事を引き継ぐ形で)春に収穫する作物の耕作にとりかかった。このとき、相当数の騎馬も同時に到着し、そのおかげで新しい植民地に対する奇襲の数は格段に減った。また、ついにツァエシからの特使を名乗る者がイオニスに到着して和平交渉が始まり、遠征軍は穏やかなものになるはずの冬に備えていた。 このとき、元老院は皇帝に、艦隊とともにタムリエルに戻って、冬の間帝都内の差し迫った課題に取り組むべきであると進言したが、皇帝はアカヴィルに残ることを選んだ。これは幸運な選択であった。なぜなら、艦隊の大部分が、皇帝の乗る艦隊も含めて、初冬の嵐によって帰還途中に破壊されたのである。288年から289年にかけての冬は異常な大嵐が長期にわたって吹き荒れ、計画されていたアカヴィルへの物資輸送も不可能になった。このことは魔闘士から皇帝に報告され、遠征軍は現在持っている物資で冬を越すことになった。 Ⅲ: 遠征軍の壊滅 アカヴィルの冬そのものも、予想されていたより厳しいものであった。物資輸送の問題に加えて1,000人以上の入植者がいたため、遠征軍の食料は不足していた。さらに、ツァエシ側からの奇襲は激しさを取り戻しており、2つの町の外で食料を調達する兵士がしばしば襲われた。セプティムとイオニスの間にある要塞のうちいくつかが吹雪に乗じて奪われ、他の要塞も維持が困難になり放棄された。結果として2つの町の間の通信は魔術によってのみ可能となり、このことは部隊の魔闘士たちに大きな負担をかけた。 薄明の月5日、ツァエシ王の側近と名乗る集団がイオニスに到着し、和平の提案を伝えに来たと主張した。しかし、その夜その卑怯な公使たちは町の門番を殺し、町の外で待機していた彼らの軍隊を呼び入れた。彼らの狙いは明らかに皇帝の暗殺であったが、王宮を守っていた第10部隊が勇猛で警戒を怠らなかったので何とか食い止められた。言うまでもなく、この事件によって皇帝とツァエシ王の和平交渉は決裂した。 やがて春が来たが、問題はさらに増えた。期待されていた春の雨の変わりに東からの熱風が吹き始め、それは強さを変えながら夏まで続いた。作物は不作となり、南中の月になると河は完全に干上がった。前年には小船でイオニスの上流まで行けるほどの水量であったというのに、である。これらの悪天候がアカヴィル特有のものか、あるいはツァエシ側の魔術による操作によるものであったのかは定かではない。当委員会は前者の立場を取る。なぜならば、ツァエシがそのような強力な魔力を持っていることを示す材料は存在しないためである。ただし、これによって後者の可能性が完全に否定されるわけではない。 長引く悪天候のため、輸送艦隊はなかなかブラック港を出港できなかった。第二の種月初旬になってようやく出発したものの、再び嵐に襲われ、8週間後にやっとのことでセプティミアに到着したときには多くの艦が失われていた。アカヴィルの食糧事情は悪化の一途をたどっていたため、皇帝は魔闘士団の大部分を艦隊に同乗させ、夏の間続きそうな悪天候を彼らに操らせることにした。この頃になって、元老院は皇帝に遠征を中止し遠征軍とともにタムリエルに帰ることを提案した。しかし、皇帝は艦隊が今や4部隊を一度に運べる規模を持たないことを理由にこの提案を却下した。確かに、一部の部隊を次の艦隊が来るまでの間アカヴィルに残してゆくことは士気を低下させたであろうというのが当委員会の見解である。しかし、同時に、遠征部隊全体を失わずに済むならば、1部隊を犠牲にすることもやむを得なかったと考える。ともかく、この局面が後の惨事を防ぎうる最後の機会であったというのが当委員会の一致した意見である。結局、艦隊は補修と物資の補給のためにタムリエルへ送り返され、このことが遠征軍の運命を決定づけることとなった。 ここから先、アカヴィルで起こったことの詳細は明らかになっていない。大部分の魔闘士が艦隊に乗り込み支援にあたっていたので、遠征軍とタムリエルの間の通信は制限された。アカヴィルの情勢が悪化するにつれ、かの地に残った魔闘士は多くのことに限られた魔力を振り分けねばならなかったのである。それだけではなく、ツァエシもまた不可解な方法により魔闘士たちの魔力に影響を及ぼしていた。アカヴィルの魔闘士たちは魔力の異常な低下に悩まされ、元老院とアカヴィルの交信を受け持っていたシロディールの魔術学校はアカヴィルの魔闘士との通信が(訓練を積み、交信に慣れているはずの師匠と弟子の間ですら)困難であると訴えた。当委員会は、アカヴィルとの将来の戦争に備えるため、このツァエシの謎の魔力について魔術学校で研究する必要があると考える。 南中の月中旬、皇帝は町に限られた人数の守備隊を残して進軍を開始した。皇帝はツァエシがその戦力を北の山地の向こう側に集結しつつあるという情報を得ており、彼らの総戦力が揃う前にこれを攻撃し物資を奪う作戦であった。物資の欠乏が限界に達していたからだ。この急激な進軍はツァエシ側を動揺させた。遠征軍は山を越えてツァエシ軍の駐屯地に攻め入り彼らを打ち破った後、指揮官(貴族と思われる人物)を捕虜にした。しかし、まもなく皇帝は退却を余儀なくされたが、退却は困難を極めた。皇帝はイオニスに戻ったが、町はツァエシ軍に包囲され、セプティミアにいる守備隊もまた包囲されて合流は不可能であった。この時になると、数少ない魔闘士たちの主な仕事は、兵士の生命を支える水を作り出すことになっていた。魔術学校ではあまり教えない技術である。艦隊は魔闘士の支援もあって無事にブラック港へ帰還したが、289年の残りの間中エスロニーを吹き荒れた猛烈な嵐により、アカヴィルへ戻ることは不可能になった。 元老院と皇帝との最後の交信は霜天月初頭のことであった。星霜の月の頃になると、状況を重く見た元老院は危険を犯してでもアカヴィルへ戻るよう艦隊に命じた。相変わらずの大嵐にもかかわらず、艦隊はなんとかアカヴィルにたどり着いた。魔闘士との交信に成功し、彼らがまだイオニスで持ちこたえていることがわかると、皇帝側に希望が湧いてきた。遠征軍がイオニスを脱出してセプティミアへ戻り、艦隊と合流するための作戦が急いで練られた。これが、遠征軍との最後の直接的な交信であった。艦隊がセプティミアに到着した時、守備隊は強大なツァエシ軍の強襲を受けていた。艦隊の魔闘士たちは生存者が乗船し艦隊が退却できるまで敵をできる限り長い間食いとめなければならなかった。 セプティミアまでたどり着くことができた、数少ない遠征軍の生き残りに依れば、皇帝は二日前、夜に乗じ軍を率いてイオニスを出発し、敵陣を突破することに成功したが、その後セプティミアへの途中で圧倒的な軍勢に包囲されたという。皇帝と第10部隊の英雄的な最後の戦いによって、第14部隊の生存者がセプティミアへたどり着くことができたのであった。その夜、2人の第10部隊の生き残りがセプティミアに到着した。かれらは敵陣が勝利の祝いで混乱している中を運良くすり抜けたのであった。彼らは皇帝の死を確認したと証言した。皇帝は第10部隊の遮蔽壁を立て直しているときに敵の矢に射抜かれたのである。 Ⅳ: 結論 当委員会は、アカヴィル遠征の失敗にはいくつかの要因があり、残念ながらその全てが予測不可能であったと考える。 広範囲にわたる事前調査が行われたにもかかわらず、遠征軍の装備はアカヴィルの状況に対して不充分であった。予期しない悪天候は軍隊と海軍の能力を大きく損なった。もし遠征中に極東艦隊の大部分が失われていなければ、遠征軍は289年のうちに退却できたであろう。また、悪天候によって魔闘士の大部分が艦隊の支援にまわることになり、皇帝はその後の戦いで魔闘士の力を利用できなかった。そして、289年のイオニスを襲った干ばつは食料の現地調達を不可能にし、包囲された際の状況を悪化させた。 ツァエシ軍の戦力も、事前の情報を上回っていた。主要な戦いは皇帝と元老院の交信が途切れた後に起こったため、ツァエシ軍が遠征軍に対して投入した最終的な戦力の規模はまだわかっていない。しかし、遠征軍の4つの精鋭部隊が退却を余儀なくされ、数ヶ月間包囲されたことから見るに、ツァエシ軍は数の上で遠征軍を上回っていたようである。 前に述べたとおり、当委員会はアカヴィル遠征の計画そのものは批判していない。当時知りえた情報に基づけば、計画は妥当なものであった。成功の可能性がほとんど無い計画であったように見えるのは、我々が現在持っている情報を加味して考えているからに過ぎない。そして、当委員会はこの惨事から学ばねばならない教訓がいくつかあると考える。 まず一つは、ツァエシが強力な未知の力を操っているという可能性である。彼らがあれほど広範囲にわたって天候を操っていた可能性は限りなく小さいように思える(実際、3人の委員はこの点を報告書に入れることに反対した)が、この件は調査に値するというのが委員会全体としての見解である。及ぼしうる影響が甚大である以上、どんな小さな可能性も無視してはならないであろう。 次にツァエシが海軍と呼べるような海軍を持っていないらしいという発見である。遠征軍は海上で攻撃を受けたことがなく、極東艦隊が戦った相手は天候のみであった。実際、当初の計画では艦隊の一部がアカヴィルに残り沿岸の任務にあたるはずであったが、かの地では大型艦が陸に近づける地点は限られていた。セプティミアの北と南の沿岸に広がる無数の岩礁、砂州、小島などのためである。また、セプティミアおよびイオニスの周囲には材木にできる木が生えておらず、浅い沿岸の海域を航行できる小さい船を現地で造ることも不可能であった。将来のアカヴィル遠征においては、アカヴィルに対する海軍の優位(残念ながら遠征軍はこれを生かせなかった)を利用するため、何らかの方法で海軍による沿岸での任務を可能にしなければならないであろう。 三つ目に、将来、再度の侵攻に着手する前には、さらに長期にわたるアカヴィルに関する情報の集積が必要になるであろう。先の遠征に先立って4年間の広範囲にわたる調査が行われたが、これは不充分であったと言わざるをえない。天候は全く予想外であり、ツァエシ軍は情報よりもはるかに強力であり、和平交渉も完全な無駄であった。アカヴィルは我々の予想を裏切る異質な特徴を持つ土地であり、将来の侵攻計画はかの大陸の自然、政治、人民についての入念な事前研究なくしては成功しないであろう。 最後に、現在のあらゆる情報を考慮すると、現時点でのアカヴィル遠征は無謀であるというのが当委員会の一致した結論である。特に、現在の帝都の状況では、帝都軍の部隊はタムリエルにとどまるべきである。いつの日か、統一された平和な帝都は再びアカヴィルの地へ赴き、イオニスの惨劇と皇帝の死に対する報復を果たすであろう。しかし、その日がいつなのかはわからないが、少なくとも現在ではないのである。 歴史・伝記 茶3
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/202.html
狼の女王 第6巻 ウォーヒン・ジャース 著 筆:第三紀2世紀の賢者インゾリカス 第三紀120年 アンティオカスの娘、15歳の女皇キンタイラ・セプティム二世の戴冠式は、蒔種の月3日に執り行われた。彼女の叔父であるリルモス国王マグナスとギレインの王セフォラスは式を見守ったが、叔母であるソリチュードの狼の女王ポテマはそれ以前に王宮を去っていた。ポテマは自分の王国に帰ると、反乱の準備を始めた。後にレッド・ダイヤモンド戦争と呼ばれる戦いの発端であった。皇帝の支配に不満を持つ諸国の王や領主たちが、新しい女皇に対する反乱軍に加わった。ポテマは何年も前からこれらの同盟国を増やしていたのだ。 反乱軍による、帝都に対する先制攻撃は成功した。スカイリム全域とハイ・ロック北部で、帝都軍は反乱軍の攻撃にさらされた。ポテマの反乱勢力は各地で暴動や謀反を誘発しながら、伝染病のようにタムリエル中に広がっていった。その年の秋、ハイ・ロック沿岸に位置し帝都側の同盟国だったグレンポイントの公爵が、緊急に帝都軍の応援を要請した。これを受けて、キンタイラは狼の女王に対抗する勢力の士気を高めるため、自ら兵を率いてグレンポイントへ向かった。 第三紀121年 「敵軍がどこにいるのかはわかりません」と、公爵は、当惑しきって言った。「郊外のあらゆる場所へ偵察を出したのですが。陛下の軍がこの地に到着したと知って、北方へ退却したのではないかと」 「こんなこと言ってはいけないけど、戦いたかったわ」と、キンタイラは言った。「叔母さんの首を串刺しにして、それを掲げて帝都中を行進したかったのよ。彼女の息子のユリエルは軍隊を帝都州の州境ぎりぎりに置いてこっちを挑発してるの。どうして反乱軍の勢力はこんなに勝ち進んでいるのでしょう? 彼らが戦いに強いの、それとも帝都の人たちは私が嫌いなの?」 秋から冬にかけて、何ヶ月も泥の中を行軍してきたキンタイラは疲れきっていた。ドラゴンテイル山脈を越える途中、彼女の軍隊はもう少しで伏兵の一団とはち合わせそうになった。穏やかな気候のはずのドワイネン男爵領で猛吹雪におそわれたのは、狼の女王側の魔術師のしわざに違いなかった。行く先々で、彼女は叔母の悪意を感じていた。そして今、その狼の女王と直接対峙できるという期待も裏切られてしまった。彼女はほとんど我慢の限界にきていた。 「純粋で単純な、恐怖による支配ですよ」と、公爵は答えた。「恐怖こそ、狼の女王の最大の武器です」 「聞いておきたいのだけど──」公爵の言う恐怖が声に表れないように努力しながら、キンタイラは言った。「彼女の軍隊を見たのですか? 彼女がアンデッドを召喚して兵士として使っているというのは本当ですか?」 「いいえ、実際にはその事実はありません、ただ、彼女はそういった噂が流れるように仕向けているのです。彼女はいつも夜間に攻撃を仕掛けます。戦略的な理由もあるでしょうが、そのような恐怖を呼び起こすためでもあるでしょう。私の知るかぎり、実際の彼女は、通常の軍隊にいるような魔闘士や処刑人以外の霊的な戦力は持っていません」 「夜襲ばかりというのは…」キンタイラは考え込んだ。「人数をわからなくするためだと思うわ」 「それに、こちらの気付かないうちに兵を配置に付けることができます」公爵が付け加えた。「彼女は奇襲の達人です。東から行軍の音が聞こえたときには、彼女の本隊はすぐ南まで近付いてきているのです。でも、こういったことは明日の朝話すことにしましょう。あなたがたのために、城の一番よい客間を用意しておきましたから」 キンタイラは塔の上に用意された彼女の部屋で、月の明かりと獣脂のろうそくの灯りを頼りに、帝都にいる婚約者のモデラス伯爵に手紙を書いた。彼女はこの夏にでも、祖母のクインティラが愛した蒼の宮殿で結婚式を挙げたかったのだが、この戦争がそれを許さないだろう。手紙を書きながら、彼女は窓の外の中庭と不気味な枯れ木を眺めた。胸壁の上に、帝都軍の兵士が2人、数フィートほど離れて立っていた。まるでモデュラスとキンタイラのようだと、彼女は思った。そして、その例え話を詳しく手紙の続きに書き始めた。 ノックの音がして、彼女の詩的な作業は中断された。 「お手紙です、陛下。モデュラス伯爵からです」と、若い使者が言って、彼女に手紙を渡した。 短い手紙だった。彼女は素早く目を走らせ、使者が下がって休もうとする前に読み終わって訊いた。「何か変だわ。彼はいつ、これを書いたの?」 「1週間前です」と、使者は答えた。「緊急の手紙だと言われたので、伯爵が兵を動員しておられる間に急いでお届けにまいりました」 キンタイラは使者を下がらせた。モデュラスの手紙には、グレンポイントでの戦闘のために援軍を要請する内容の手紙をキンタイラから受け取ったと書かれていた。しかし、グレンポイントでは戦闘は起こっていないし、彼女は今日やっとグレンポイントへ到着したばかりだった。誰が彼女の筆跡を真似て手紙を書き、モデュラスの率いる帝都軍を帝都からハイ・ロックへ誘い出したのか? 夜の空気が窓から流れ込み、寒気を感じたキンタイラはかんぬきを下ろすために窓のところへ行った。胸壁のところに、さっきの兵士たちの姿はなかった。枯れ木の陰からくぐもった揉み合いの声が聞こえ、そちらのほうに身を乗り出したので、キンタイラは背後で扉が開いたことに気付かなかった。 彼女が振り向くと、そこにはポテマ女王とグレンポイント公爵メンティンが、衛兵の一団を引き連れて立っていた。 「素早いですね、叔母様」と、彼女は一瞬硬直した後、口を開いた。それから公爵に向かって言った。「何があなたを寝返らせ、帝都に歯向かうように仕向けたの? 恐怖?」 「それと金ですよ」と、公爵が簡潔に答えた。 「私の軍はどうなったの?」と、キンタイラは、ポテマの顔を正面から見据えながら言った。「こんなに早く戦闘が終わったの?」 「あなたの軍は全滅したわ」と、ポテマが笑みを浮かべて言った。「戦闘はなかったけど。静かで、手早い暗殺だけよ。戦闘があるとしたら、ドラゴンテイルでモデュラスの軍を潰すときと、帝都に残ってる帝都軍の兵士たちを片付ける時ね。戦況はいつでも報告してあげるわ」 「それで、私はここであなたの捕虜になるってわけ?」キンタイラは、言いながらこの石造りの塔の強固さと高さに気付いた。「ちくしょう、なんてぶざまなの! 私は女皇なのよ!」 「悪いようにはしないわよ、あなたを5級の支配者から、1級の殉教者に昇進させてあげる」と、ポテマがウィンクしながら言った。「ありがたく思ってはくれないでしょうけどね」 物語(歴史小説) 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/254.html
ブラヴィル:ニベンの娘 サシィーア・ロングリート 著 ブラヴィルはシロディールの中でももっとも魅力溢れる町で、質素ではあるが、美しさと過去の栄華で彩られている。帝都南部を訪れる人は必ず、ブラヴィルの賑やかな河港沿いを散策し、地元の子供たちとのおしゃべりを楽しむ。もちろん村の伝統である、有名な“幸運の老女”の像に祈りの言葉もささやく。 アトモラの民がやってくるよりもはるか何千年も前のこと、地元アイレイドの人々が今日のブラヴィルの近くで長く暮らしていた。今のニベンにあたるこの場所では、食料が供給され、輸送機関もあり、今よりずっと人口が多かった。彼らは孤立していたところで住んでいたため、自分たちの住む土地をなんと呼んでいたのかは定かではないが、彼らの使う言葉で“家”と意味する言葉で呼んでいた。アイレイドは塹壕を掘って侵入に備えていたので、ブラヴィルはアレッシア軍が第一紀の二世紀に自由化した土地の最後の1つだった。その時代のものは文化的なことも考古学的にも何も資料が残っていないが、放蕩と堕落の物語が伝説化されたことはマーラに感謝すべきだ。 いかにしてアイレイドがそのように長く苦しい期間を生き長らえたのかは今日の学者たちの間でも討論されている。しかしながら、女帝の大隊長の1人であるテオ・ブラヴィリアス・タサスはこの地で勝利の栄誉をつかんだのである。地名はこの男の名にちなんでいる。 テオ・ブラヴィリアス・タサスは激しい抵抗にあいながらも、少なくとも4度に渡ってその村を侵攻したと言われている。しかしいずれも夜明けの時間帯になると、彼の率いる軍隊ほぼ全員が息絶え、殺されてしまうのであった。次に百人隊が到着するまでに、この要塞化された町は再びアイレイドの人々で溢れていた。2度目の侵攻が成功したあと、地下の秘密のトンネルが発見され、埋めはしたものの、夜明けとともに軍隊は再び死滅し、町の人々が戻ってきた。3度目の侵攻が成功したあと、軍隊が町の外側に配置され、攻撃の兆しがないか道路や河川を見張っていたが、そのような兆しは見られなかった。しかし翌朝、侵攻していた兵士たちの死体が町を覆う胸壁から投げ出された。 テオ・ブラヴィリアス・タサスは、アイレイドの人々がこの町のどこかに隠れて夜が更けるのを待ち、兵士が寝ている間に殺しているに違いないとにらんだ。問題は、どこに隠れているかであった。4度目の侵攻のあと、彼は兵を引き連れて、町中のあらゆる角、あらゆる物陰をしらみつぶしに調査して回った。もう探す当てがなくなった頃、この大隊長は2つのことに気づいた。誰も登ることができそうにない、町にそびえ立つ垂直の壁の高いところにくぼみがあって、狭い踏み台になっていた。町なかの川の岸に、明らかに帝都のブーツのものではない、誰かの足跡がくっきりと残っていた。 アイレイドの人々は身を隠す手段を2つ持っているようだ。まず、空中浮揚で壁を高くのぼり、高い所に身を潜めるものと、川の中に潜り込んでその中で呼吸ができるものがいるようだ。奇妙なエルフの輪をかけて奇妙な隠れ場所を見つけてしまえば、もう夜中に軍隊を襲われないように注意することは比較的簡単であった。 しかし、魔術師ギルドが仲間たちにマジカの方法を教えられるよう体系づける何百年も前に、このような呪文の技が町全体に浸透していたのは信じがたいかもしれない。しかしながら、このことはアルテウム島のサイジックが神秘をそういう名前で呼ばれる以前から発展させたのと同じように、シロディール南部のこの不思議なアイレイドが、変性の流派となるものを発展させたという証拠であるとも思える。ブラヴィル征服の当時もそれ以降も、他のアイレイドたちが己の姿を変えることができたという考えは、決して拡大解釈ではない。ブラヴィルに征服される以前の人々は、獣や怪物に変身することはできなかったが、自分たちの姿を隠せる術は持っており、それがとても役立っていたことは確かだ。しかし、結局彼らの身をいつまでも生き長らえさせるほどの力は発揮されなかった。 今日のブラヴィルにアイレイドの存在は微塵も感じさせないが、様式の異なる驚くべき建築物が彼らの存在の証拠である。慈悲深きマーラ大聖堂や領主邸宅などと同じくらい美しくて魅力的で、ブラヴィルの手によらないもので有名なのは、「幸運の老女」という彫刻である。 「幸運の老女」と彼女自身にまつわる物語は、多すぎて列挙できないほどだ。 彼女の母親はブラヴィルの売春婦で、父を知らない子として生まれたと言われている。その不幸が幸運の始まりであった。彼女はほかの子供たちからいじめられ、彼女の父親が誰なのかをしつこく尋ねられた。毎日、彼女はいじめから逃げるように泣きながら小さなボロ家へと帰るのであった。 ある日、ステンダール司教がブラヴィルへと慈善活動を行いにやってきた日のこと。彼は小さな女の子が泣いているのを見つけて、その泣いてるわけを尋ねると、自分の不幸がつらくて、自分の父親が誰なのかがわからないから泣いているといった。 司祭はしばらく考え笑顔でこう答えた。「君は優しい目を持ち、嘘をつかない口を持っている。そんな君は明らかにステンダールの子どもだよ。神のご自愛を受け、思いやりを持ち、当然幸運もたずさえている」 司祭の思いやり深い言葉はその後の彼女を変えた。彼女は誰の子かと尋ねられるたびに、元気いっぱいに「私は神の子よ」と答えるのであった。 やがてその少女は大人になり、バーで働くようになった。お客に対して優しく、穏やかで、飲み代をツケにしてやることもしばしばあった。ある雨の強い夜、彼女はボロをまとった若い男に店の中へと入れ、雨宿りをさせた。その男はお金を一銭も持っておらず、ややケンカ腰で無礼な態度であったが、彼女は男にご飯も食べさせ、寝床も貸してやった。翌朝、男はお礼の一言も言わずに出て行ってしまった。彼女の友人や家族は、もしかしたら危ない男だったかもしれない、もっと用心するようにと彼女に忠告した。 1週間後、皇族の馬車がブラヴィルを訪れた。帝都の王子がその馬車に乗っていた。彼はまったく見違えていたが、まさにあの時彼女が助けた若い男であった。王子はあの時の自分の言動と行動を何度も謝罪し、あれは魔女の一群にさらわれ、呪いをかけられていたのだと説明した。あとになってようやく意識を取り戻したのだと話した。彼女は大変なお礼を受け取り、もちろん優しい彼女は町の人々とそれを分け合い、その後も心ゆくまで長生きしたそうだ。 いつ町の広場に彼女の像が建てられたのか、それを作ったのは誰なのかを知るものはいないが、彼女の像は第一紀の時代から何千年とそこに立っているのである。今日に至るまで、観光客もブラヴィルの人々も、苦労の中で神の幸福が得られるように“幸運の老女”像を訪れる。 魅力と幸せのつまったブラヴィルの村の、より魅力的な一面である。 歴史・伝記 茶2
https://w.atwiki.jp/oblivionlibrary/pages/18.html
影を盗む ウォーヒン・ジャース 著 第1章 ろうそくの明かりがつき、泥棒はまばたきをしながら立ち尽くした。見つかってしまったのだった。泥棒は年若い少女で、身なりは汚く、ぼろぼろの黒い服を着ていた。数週間前、町一番の仕立て屋から盗み出したときは小奇麗で高級な服だったのだが。彼女の顔からは徐々に驚きが消え、無表情で手に持った金をテーブルの上に戻し始めた。 「なにやってるんだ?」と、ろうそくを持った男が、暗がりから出てきて言った。「聞くまでもないでしょ」と、少女は憮然として答えた。「泥棒してるに決まってるじゃない」 「まだ何も盗られてないようだから」男はテーブルに戻された金を見て笑った。「泥棒とは言えないな。盗もうとはしていたんだろうけどな。私が聞きたいのは、なぜうちに泥棒に入ったのかっていうことなんだよ。私が誰だか知ってるんだろう。鍵のかかってない家に入ってきたわけじゃないんだからな」 「他の家にはもう全部入って盗んじゃったのよ。魔術師ギルドの霊玉も盗んだし、最上級の警備で守られた砦の宝物も盗んだ。ジュリアノス聖堂の大司教からもお金を騙し取ったし、ペラギウス皇帝のポケットからも盗んだ。彼の戴冠式の最中にね。それで、次はあなたの番だと思ったってわけ」 「光栄だね」男はうなずいた。「さて、君の試みは失敗したわけだけど、どうする? 逃げるのか? 泥棒をやめるのか?」 「あなたの生徒になるわ」と少女は答え、笑みをこぼした。「この砦の錠前は全部やぶったし、警備の人たち全員の目をかいくぐってきたの。あなたが作った錠前と、あなたが配置した警備なんだから、訓練されてない人間にとってそれがどれほど難しいか知ってるでしょ。6ゴールドが欲しくてここへ来たわけじゃないのよ。私にそれができるって証明したかったの。私をあなたの生徒にしてよ」 隠密行動の達人は泥棒の少女を見た。「君の技術は十分高い、訓練は必要ないだろう。君の計画はまずまずだが、それについては教えてあげられることがありそうだな。そして、君の向上心は絶望的だ。君は今までの人生を盗みをしながら生きてきて、今ではやりがいのためではなく、楽しみのために盗みをしている。そういう性格は直らないし、そういう性格の人間は早死にする」 「盗めない物を盗んでみたいと思ったことないの?」と、少女はたずねた。「盗んだ人の名前が永遠に残るようなものを?」 達人は何も答えなかった。彼はただ眉をひそめた。 「あなたの名声に惑わされていただけみたいね」少女は肩をすくめ、窓を開けた。「一緒に歴史に残るような大仕事をする相棒をお探しかと思ったんだけど。あなたの言うとおり、私の計画はそんなに素晴らしくなかったのね。逃げ道のことは考えてなかったけど、なんとかここから逃げることにするわ」 泥棒の少女は、垂直な壁をすべり下り、暗い中庭を素早く走りぬけると、数分もしないうちに廃酒場の2階の彼女の部屋へ帰りついた。暗い部屋の中で、達人が彼女を出迎えた。 「いつ追い越したのかわからなかったわ」彼女は息をのんだ。 「道で、ふくろうの鳴き声がして振り返っただろう」彼は答えた。「泥棒の技術のうち、一番重要なのが相手に隙をつくることだ。そのために準備するときもあれば、偶然を利用することもある。これが最初の授業だ」 「それで、最後の試験はどんなことをするの?」少女は笑った。 彼がその計画を話したとき、彼女はただ目を丸くするだけだった。どうやら彼は、彼女が思っていたとおりの怖いもの知らずだったようだ。まったく彼女の期待通りだった。 第2章 薪木の月8日までの1週間、リンデールの空は暗く、うごめいていた。カラスの大群が雲のように太陽を隠していたのだ。彼らの耳障りな鳴き声とうめき声で、ほかの音は何も聞こえないほどだった。村人たちは家に閉じこもって扉と窓にかんぬきをかけ、このもっとも不吉な日々を生き延びられるよう祈るだけだった。 召喚の儀式の日、カラスたちは声もたてず、まばたきもせずに、その黒い瞳で渓谷へ向う魔女たちの行列を見ていた。月は出ておらず、薄暗がりの中で魔女たちを導く明かりといえば先頭の魔女の持つたいまつだけだった。彼女らの白い服は輪郭を失ってぼんやりと浮かび上がり、まるで消え入りそうに揺らめく亡霊の群れのようだった。 空き地の真ん中に、一本の高い木が立っており、その全ての枝には無数のカラスたちがひしめき合って、身動きもせずに儀式を見守っていた。魔女たちの長がたいまつを木の下の置き、他の17人の魔女たちはそのまわりに輪になって並んだ。そして、ゆっくりと、すすりなくような声で奇妙な詠唱を始めた。 魔女たちが歌い続けていると、たいまつの炎の色が変わってきた。炎の大きさは少しも変わらなかったが、その色はみるみるうちに灰色になり、それに照らされた魔女たちは脈うちながら降り注ぐ灰をかぶったように見えた。炎の色はますます暗くなり、まだたいまつが燃えているにもかかわらず、あたりはまるで真夜中の森のような暗さになった。たいまつの変化はとどまることろを知らず、とうとうその炎の色は漆黒よりも黒く、虚空のような名付けようのない色になっていった。炎は魔女たちを照らしていたが、それは普通の光とは程遠いものだった。彼女らの白い服は黒く変わった。ダークエルフの魔女は緑の目と象牙のように白い肌になり、ノルドの魔女は墨のように黒い肌になった。頭上で見守っていたカラスたちの羽は、魔女たちが着ていた服のように真っ白になった。 デイドラの王女、ノクターナルが色のない色の穴から進み出た。 彼女は魔女たちの輪の中心に、青白いカラスで満たされた木を玉座のようにして、高慢な態度で立っていた。魔女たちは高貴な支配者に対する服従を示すため、服を脱いで裸になった。彼女は夜のマントに身を包み、魔女たちの歌に笑みを浮かべた。それは彼女の神秘、隠された美、永遠の暗い影、そして太陽の火が消えた後の神聖な未来を謳い上げていたのだった。 ノクターナルはマントを肩から滑らせるように脱ぎ、裸になった。魔女たちは地面に目を落としたまま、顔をあげずに闇を賛美する歌を歌い続けた。 「今だわ」少女はつぶやいた。 彼女はこっけいなカラスの変装を身に付け、一日中木の上にいた。ひどく居心地が悪かったが、魔女たちが集まってくると彼女は体の痛みも忘れて他のカラスたちと同じように固まった。彼女と隠密行動の達人は苦心して計画と調査を重ねこの渓谷を探し出し、ノクターナル召喚の儀式がどんなものかも調べ上げていた。 ゆっくりと、静かに、泥棒の少女は低い枝へと下りて行き、どんどんデイドラの王女の方へ近づいた。途中、彼女は一瞬緊張を解き、達人はどうしているだろうかと考えた。達人は、この計画に自信があるように見えた。彼が言うには、ノクターナルがマントを脱ぎ捨てたとき、彼女に隙をつくる出来事が起こる。もしその瞬間に少女が正しい位置にいれば、マントを盗むことができるというのだ。 少女は一番低い枝を、カラスたちを慎重に押しやりながら横に移動した。カラスたちは、達人の言ったとおり王女の裸の美しさに身動きもせずに見とれていた。少女はもう、手を伸ばせばノクターナルの背中に触れる位置まできていた。 歌声がだんだんと大きく盛り上がり、少女は儀式が終わりに近づいていることを知った。ノクターナルは魔女たちが歌い終わる前に再びマントを身に纏うはずだった。そうなれば、マントを盗む機会は失われてしまう。少女ははやる気持ちのまま、枝を握りしめた。もし、達人がこの場に来ていなかったらどうしよう? これが本当にただの試験だったとしたら? ただ、こういうことができると示すためだけの計画で、本当に盗むつもりは最初からなかったのでは? 少女は腹を立てていた。彼女は彼女の仕事を完璧にやり遂げたのに、隠密行動の達人と呼ばれるあの男は恐れをなして逃げ出したのだ。この1ヶ月、計画のために、達人は彼女にいくつかのことを教えてくれた、だがそれが一体何になるというのだ? ただ、彼女は一つだけ得るものがあったと思っていた。あの夜、達人の砦に忍び込んだとき、彼女は1ゴールドだけくすねていたのだが、達人はそれに気付いていなかったのだ。それは、ノクターナルの手の届くところからマントを盗むのと同じくらい大きな意味を持つ盗みの成果だった。隠密行動の達人からでも何かを盗めるという証明だったのだ。 少女はこの考えに夢中になっていたので、男の声が闇の中から「王女様!」と叫ぶのが聞こえたとき、一瞬空耳かと思った。 次の叫びが聞こえて、彼女はそれが空耳でないとわかった、「王女様! 泥棒がいます! うしろです!」 魔女たちはいっせいに顔をあげ、叫び声をあげた。儀式の神聖さはやぶられ、魔女たちが少女のほうへ近づいてきた。カラスたちは我にかえり、羽を撒き散らし、ヒキガエルのような叫び声をあげながらはじけるように飛び去った。ノクターナル自身も、ゆっくりと振り向いた。 「汝、我を欺き汚さんと試むるか?」王女が囁くような声で言うと、漆黒の影が彼女の体から立ちのぼり、死のような冷たさとともに少女を包み込んだ。 生きたまま闇に飲み込まれながら、少女は最期の瞬間、地面にあった王女のマントがなくなっていることに気付いた。そして、彼女は全てを理解し、王女の質問に答えた。「私? 私は、あなたに隙を作っただけよ」 デイドラの神像関連 小説・物語 茶2