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ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その2から そんなこんなで、出発当日。 ハルヒから電話をもらった俺は、パッケージング・バイ・ハルヒのトランクを、俺の部屋から玄関へと運び、その到着を待っていた。 ほぼ予定時刻に、すでに涼宮家を満載したライト・バン型タクシー(?)が、うちの家の前に到着した。 「いわゆる空港行きの乗り合いタクシーだ。予約している飛行機の便を連絡しとくと、タクシー会社が調整して、ドア・トゥ・ドアで送迎してくれる。今日は、おれたちだけみたいだが」 とハルヒの親父さんが、運転手に代わってそのシステムを説明してくれる。 「それじゃあ、行ってくるから」 と家族に、特に妹に、言い聞かせるように旅立ちの挨拶をする。 「ご迷惑かけないようにね。涼宮さん、お世話になります」 「こちらこそ。無理を言ってすみません」 「いえいえ、うちの馬鹿息子は、本当にハルヒちゃんにはお世話になりっぱなしですから」 といった親たちのエール交換は、当人たちには「どうでもいい」というレベルを遥かに超えて「今日のところは、どうかひとつ、そこまでにしておいてくれ」というべき方向へどんどん発展していってしまう。 俺がハルヒの方を見ると、ハルヒも俺の方を見ていて、目の中で首を縦に振っている。よし、それじゃあ、 「そろそろ行かないと」 と俺が口火を切り、ハルヒはそれに合わせて、親父さんの脇をかるく肘でつく。 「ごほん。そうだな。じゃあ行ってきます」 大きな音で咳払いし、大きな声で親父さんが宣言。皆がうなずいて、車がゆっくりと前で出た。 「あれ、妹ちゃん」 車は走り出したが、妹が走って追いかけてくる。 うう、兄ちゃん、そこまでのドラマはいらないぞ。いつもどおりの妹でさえいてくれれば、カバンにこっそり入ってさえなければ。 「あれ、妹ちゃんが手に持って振ってるの、パスポートじゃないの?」 「わはは。お約束だな。大方、トイレに行っている間、持っててくれ、と預けたままってところか?」 親父さん、図星です。 車は止まり、俺とハルヒが飛び降りる。 俺はパスポートを受け取り、ハルヒは妹の頭をなでる。 「キョン君、気をつけていってくるんだよ。ハルにゃん、キョン君をお願いね」 「うん、わかったわ。絶対、元気にして帰すからね」 いや、それはやり過ぎと言うか、胸を張り過ぎというか。それから妹よ、あまり殊勝なことを言うな。そういう時は「お土産、忘れないでね」くらいにしておいてくれ。でないと、最近ただでさえゆるい兄の涙腺が……。 「ほら、キョン。ちゃっちゃと行くわよ。飛行機は、遅刻したナショナル・チームだって待ってくれないんだから」 確かに、ここでこれ以上ドラマを掘り下げたら、また搭乗まで話が進まなくなるだろう。 別れを惜しみつつ、いざ行かん、天国にだって近いという、なんとかいう南の島。 「それと、あんたのパスポート貸しなさい」 素直にハルヒに渡すと、ハルヒかバックから出した布製のケースみたいなのに俺のパスポートを入れて、返してきた。 「ほら、パスポート・ケース。これで首から下げられるから、なくさなくて済むわ」 「ちなみにお手製だそうだ」 「親父、うっさい」 午前の道は、俺たちの前途を祝福するかのようにガラすきで、空港へは登場予定時効の3時間前に着いてしまった。 「余裕があるに越したことはない」 と親父さん。 「俺なんか離陸の30分前に、食パンをくわえて出国審査を受けたことがある」 「あんたは転校一日目から遅刻するヒロインか!?」 ハルヒのつっこみも、今日は長打こそないが、確実に芯で捉えている。ボール(?)が見えている証拠だ。 「ちょっとチェックインしてくる。キョン君、わるいがそこのカートに積んでトランクを運んで付いて来てくれ」 「はい」 ハルヒの母さんとハルヒと俺のトランクをカートについて、自分のトランクを転がしながら先を行く親父さんの後を追う。 カウンターでは、これも親父さん的にはきっと恒例なんだろう。ナイストゥミーチュー、スパシーボなどなど、怪しい多国籍人を装う話術でカウンターのお姉さんの目を白黒させながら、それでも当初の目的を果たしてしまう。なるほど、ハルヒ母+ハルヒが、遠くで他人の振りをしているのは、このせいか。と、親父さんに気付いたのか、カウンターの奥の責任者っぽい人がカウンターにやって来た。 「ベルさん、今日は出張じゃなくて家族サービスかい?」 「何度も言うが、俺は鈴宮じゃなくて涼宮だ」 「こっちの彼は、お初だね?」 「ここはどこの飲み屋だ? こいつは保安官補でキョン。ついでにいうと、俺の娘と恋仲だ。まあ、いずれは決闘だな」 「おいおい、ハルヒちゃんも、そんな歳か。少年、しっかりやれ。この親父は悪いやつじゃないが質は悪いぞ」 「ははは」笑うしかないよな、ここは。 「おい、有能な彼女が手続きができたって、言ってるぞ」 親父さんは、ややオーバーアクション気味に、責任者さんに不平をいう。 「オーライ。じゃ、トランクに貼ったこのシールの切れ端を持ってってくれ。あとでトランクを探すのに役に立つ。ボンボヤージュ(よき旅を)!」 「発音がなってないよな。ま、とりあえず、ハルヒたちと合流するか」 その必要はなかった。カウンターでの一部始終を、涼宮家の女性軍は遠目ながらもしっかり見ていて、絶妙のタイミングで自分たちの位置を知らせるように歩いてきた。というより、彼女たち自体が、遠目からでも見落としようがない存在感やら何かを周囲に発散しているのだ。 そんな訳で、俺の隣にいた親父さんは言った。 「おい、いいだろ。あそこにいるのは、おれの女房なんだ」 「ぐっ」 さ、さすがにその手は……使うのは、何だかいろいろ怖い。 「すまんな。たまには年長者に勝ちを譲るのもいいもんだろ?」 その気になったら全戦圧勝じゃないですか、と心の中で言う。へたれ、俺。 「旅はまだ始まったばかりだ。陽気にいこうぜ、キョン君」 「ちょっと親父! またキョンをいじめたでしょ!?」 ハルヒが、つかつかつか、と早足でやってくる。ロボットのように肩をすくめる親父さん。 「オー、マイ、ドウター。ワタシガ、イツ、ゴシュジンサマ ヲ ソンナ メ ニ」 「読みにくいだけから、出典が明示できない物真似はやめなさい」 「でも、ふざけてるのはわかるだろ?」 と、ひらりとかわす親父さん。 「いつ真面目なのかが、わかんないの!」 それをも狙い打つ娘ハルヒ。 「いつもこんな感じよ」 と日だまりのようなニコニコ笑顔を絶やさないハルヒ母。 「はあ」 とすでに慣れてきているが、それがよいことなのかどうか、未だに判断がつかない俺。 次は手荷物検査場はずだったが、 「ああ、キョン君、俺たちはこっちから行こう」 「向こうの列、すごく混んでましたね」 「手荷物検査場はどうしてもなあ。関西の空港も優先ゲートができて助かってる」 「親父、わがままなくせに、待ったり並ぶのが嫌いだからね」 「わがままだから、嫌いなんだ」 俺たちが向かっているのは、専用ゲート(専用保安検査場)というところのようだった。なんたら会員(ゴールド・メンバー?)になっておけば、ただでさえ混む手荷物検査場も専門の(つまり空いている)検査場で済ますことができるし、さっき預けたトランクも優先取り扱いされて、到着後あまり待たずに受け取れるのだとか。どうすればメンバーになれるかって?親父さんによれば、 「要はたくさん飛行機に乗りゃいい」 だそうだ。 「といっても、伊丹じゃ、もう何が優先やら、って感じで混んじまってるがな」 優先検査場というだけあって、手荷物検査はあっけなく済んでしまった。ありがちな時計やらキーケースなんかの出し忘れを、事前にハルヒのやつに注意されていたからではないこともない。 「出国検査場じゃ、こうはいかんぞ」 とニヤニヤして脅す親父さん。 「おどかすんじゃない。パスポートにハンコ押してもらうだけでしょ」 とつっこむハルヒ。ほんと、いつもこんな感じなんだろうな。 「ハンコ押すだけだが、国の外に出しちゃいかんやつもいるからな」 「このメンバーだと、親父よね」 「笑い事じゃないぞ。俺のツレなんか、家族旅行なのに、昔やった悪事がバレて大変だったんだぞ」 「だったら3人でバカンスを満喫するまでよ」 「だから、ツレの話だよ」 出国検査場もまた、なんということもなく、一人づつパスポートを見せ、ハンコを押してもらう。 ハルヒの親父さんのパスポートは、さすがにすごいハンコの数だ 「全部、仕事でだ」 と、やれやれ顔をつくって親父さんは言う。 「早く引退して、ひきこもりになりたいよ」 「親父がひきこもって何する気よ」 「庭でライオン飼って、夕方になったらドビュッシーを弾く」 「なにそれ?」 「映画だ、『007カジノ・ロワイヤル』の古い方。見たことないのか? あの希代のバカ映画を」 とりあえず、これで「出国OK」ということだな。形的には、一応これで外国に出た、ってことになるのか。 「向こうに専用ラウンジなんてものもあるが、おまえら、どうする? 搭乗までは、まだ結構時間はあるが」 「免税店とかあるんでしょ? ちょっと見て回るわ」 とハルヒはすでに、俺の手首を引っ掴んで、スタンバイの体勢。 「さっそく二人になりたい、とハルヒは思った」 オヤジさんは肩をすくめてみせる。 「へんな心理描写いれるな」 「じゃ、これからは茶々を入れてやる」 「よけい悪い! あんまりかわらないけど」 「検査が全部済んだと言っても浮かれるなよ。確率的には、今から搭乗するまでが、一番馬鹿みたいな失敗が多い」 「大丈夫よ」 ハルヒもおれも、パスポートとチケットは、ハルヒ謹製のパスポート・ケースに入れてある。 「時間厳守だぞ。時間が来たら、ナショナル・チームでも飛行機は待たんからな。で、おまえら時計持ってるのか?」 「あ」 「普段ケータイで時間を見てるような連中は、こういうはめに陥る。免税店で安いやつを見繕ってこい」 親父さんに一本とられたのが悔しいのか、ハルヒはアヒル口になって、無言で俺を引っ張っていく。 ハルヒの母さんはニコニコと俺たちを見送り、自分の鞄から布のブックカバーをつけた文庫本を出して読み始める。親父さんもそれに合わせてか、上着のポケットからペーパーバックを取り出す。 ハルヒは振り返らず、前だけを見てぐんぐん進む。俺は引かれていく。 「時計なんて、空港中いたるところにあるじゃない!」 「まあな」 「向こう着いたら、時間を忘れて遊ぶんだからね!」 「ああ、そうだな」 ハルヒはどこからかカードを取り出した。正確には取り出して構えた。 「腹立ちまぎれに無駄遣いしてやるわ」 「こらこら」 なんなんだ、その高級そうなクレジット・カードは? 「ブランド品なんかに興味はないけどね」 何故だか、恨みはないけどね、と聞こえるぞ。 「店ごと買うとか言うなよ。機内持ち込みできんぞ」 「わかってるわよ、そんなこと」 そりゃ、わかってるだろうけどな。 「ねえ、キョン。あんた、すごーく高い時計欲しくない?」 ほら、そうやって必ず不穏なことを思いつくんだ、おまえは。 「おまえはどうすんだ?」 「そんなの2つも買えないわよ。すごく高いんだから」 「全然高くないやつ、2つにしろよ」 「だーめ。もう決めたの」 「ヤクザかナンバーワン・ホストでなきゃ持てないような時計はいらんぞ」 「あほ。そんな時計、あんたに似合わないわよ」 じゃあ、「俺に似合う、すごーく高い時計」を探しているのか? それはすごーく嫌な予感がするぞ。 「はい、これ。安心しなさい。何十万も、何百万もするものじゃないから」 「あ、ああ」 「総称でパイロット・ウォッチって言ってね、文字通りパイロットがつける腕時計ね。元祖のブライトリング社のなら、満十万するけど。この文字盤の周囲についてるリングがあるでしょ。これが回るの。目盛りの刻み方が変なのに気付いた? これ回転計算尺になってるの」 「計算尺ってなんだ?」 「計算が、とくにかけ算と割り算だけれど、一瞬でできるものね。尺という位で、物差しタイプが一般的だけど、それを円形にまとめたものがこれ。パイロットは計器やコンピュータがみんな狂っても、残燃料と空港までの距離だとか、落下速度と地上までの距離とか、計算したいものが沢山あるでしょ、それも時間がらみで。だから時計に計算尺をつけたのは大正解ってわけ」 「ほう」 「わかってないわね。親父の腕時計、見た?」 「え?いや」 「まあ、あっちは元祖の本物だけどね。何万年に数秒しか狂わない電波ソーラー式時計の時代に、毎日10秒以上も狂う自動巻時計って何考えてんのかしらね。計算尺の使い方は、どうせ搭乗まで暇だからゆっくり教えてあげるけど、親父に聞けば、語りに語り続けるわ。旅行が終わっちゃうわね、多分」 わー、すげえ聞きたいが、今は聞きたくない感じ。 「だが、ひとつきりで、どうすんだよ」 「まだ、わかんないの?」 いや、わかってはいるが、今わかるわけにはいかない、というか。 「あんたがあたしの『時計係』になるに決まってるでしょ」 ラウンジの、ハルヒの親父さん&母さんのところに戻った。ハルヒが鼻息も荒く、俺の左手首を、とくに親父さんに、見せびらかすように高らかにあげる。俺は自由になる右手でこめかみを押さえる。オー、ジーザス。ああ、ほんとにすいません。 親父さんは「やれやれ」という意味のジェスチャー、ハルヒ母は読んでいた文庫本を口に当てて笑いがこらえられない様子だ。 「娘よ、やってくれたな」 「どう? ぐうの音も出ないでしょ?」 「負け惜しみで言うんじゃないが、キョンを日本に置いていったらな、どこかのバカの国際長電話代で、そんなもの5、6個は買えたぞ」 「と言ってる時点で、完全に負け惜しみね」 「ぐう」 しかたない、といった感じで本をしまったハルヒの母さんは、 「お父さん、いつ搭乗口に向かいます?」 「もう15分もすればアナウンスがあるだろうが、少し遅めに行こう」 「そんな、とろとろとしたことでいいの?」 腰に手をあてて胸を張り、暫定勝者ハルヒが親父さんを見下ろす。 「日本人は時間とアナウンスには従順だからな。合わせて動くと混雑を応援に行くようなもんだ。俺たちの席は前の方だから、少し遅れて乗り込む方が邪魔にならなくていい」 「あー、たいくつ、たいくつ!」 電車の長椅子に上って窓を見たいから靴を脱がせろと騒ぐ幼児のように、暴れ出すハルヒ。涼宮家ではこれにどういう風に対処するのか、後学のためにしばらく見ていよう。 「なんのために、キョンを連れてきたんだ」 って、親父さん、いきなり俺頼みですか? ハルヒの母さん、もう笑いスイッチ入ってますね? 「キョンはそんなんじゃなーい」 お、ハルヒ。あまり期待してないが、言ってやれ。 「キョンはね、キョンはね・・・」 それじゃ、古来の、針が溝をなぞっていた頃の壊れたレコードだ。 「・・・うー……と・に・か・く、キョンなのよ!」 「随分とテツガク的な惚気をありがとう」いや親父さん、今のは惚気では、ないと思います、よ。 「ハル、暇なら何か読む?」 「うん。母さん、何持ってきたの?」 「旅行には、やっぱり旅行記よね」 「って、えーと、クセノポン『アナバシス』? カエサル『ガリア戦記』? クラウゼヴィッツ『ナポレオン戦争従軍記』? って、全部、旅行記じゃなくて戦記でしょ!」 「あら、でもみんな遠征してるわよ」 「遠征は、旅っていえば旅だけども!」 「俺のを読むか?」 「期待しないけど、聞くだけは聞いてあげる。・・・Making a Good Script Greatって、何これ?」 「映画のシナリオをどう書き直すかのマニュアル本だな。ハリウッド映画だと、制作費が馬鹿でかくて映画が当たるか当たらないか不確定だから、映画自体に保険をかける。保険会社がキャスト表とシナリオを分析して、これだと当たりそうだから保険の掛け金は低くてこれくらいでいいや、このシナリオだとヒットしそうにないから掛け金を高くしよう、ってな具合にな。で、保険の掛け金を低く抑えたい映画会社やプロデューサーは、シナリオを『シナリオ・コンサルタント』のところに持っていくんだ。シナリオ・コンサルタントは元のシナリオの長所を生かしながら短所を修正していくんだな。どうやれば冒頭シーンで客を引きつけられるとか、どうやって泣かせるとか、いろいろ手練手管がある訳だ。これはそのシナリオ・コンサルタントの一人が書いたマニュアル本で・・・」 「そんな本読んで、どうしようっての?」 「あ、この映画はあの手をつかってやがる、ちがう、そこで例の手を使えばいいのに、といろいろ突っ込めて楽しいぞ」 「キョンは、あんな悪魔に魂売っちゃ駄目だからね」 俺はすこーし、その本を読むのもいいかもしれん、と思ったぞ。次作の超監督とかが。俺が読むと、俺が窮地に陥る気がしたので、口にはしないがな。好事魔多しとは、こういうことを言うんだろうか。 日本語と英語で、搭乗開始を知らせるアナウンスが流れた。 あちこちで腰を上げ、指定された搭乗ゲートの方へ流れていく人たち。親父さんと母さんは読書を続け、ハルヒと俺は、買ったばかりの腕時計の計算尺リングを回して、1.69×2.7といったかけ算をしているのだが、頭を付き合わせ、手を取り合って、何をしてるように見えるんだかね。 「人ごみが薄くなってきた」 親父さんがゆっくり腰を上げた。他の3人もそれに合わせて立ち上がる。 「ぼちぼち、ぶらぶら、まったり、行くか」 とにかく全く急がないで進もうという親父さんの提案に、他3人はそれぞれ違った風にうなずいた。多分、考えていることなんかも、それぞれに違っているんだろう。 搭乗口は、さっきまでゴッタ替えしていたようだった。自動改札みたいなのの側に係員のお姉さんが立っていて、そこでチケットを入れると、席の位置を示す半券みたいなのが出てくる。 親父さんはシナリオのリライト・マニュアルを読みながら、チケットをいれ、 「パスポートは?」と問いかけ 「あ、拝見します」という返事を待たずに、ポケットからパスポート入れを出して係員に渡している。あれもハルヒ謹製と見た。 「何をやるにも不真面目ね」 続いてハルヒがぷんぷん怒りながら通っていく。続いて俺。最後がハルヒの母さん。さすがに本はしまってある。 「思ったより、飛行機飛んでないわね」 大きなガラスの向こうの滑走路を見ながら、ハルヒの母さんが言う。 「国内便はみんな伊丹にいっちまった。午前10時から午後4時まで、ここから成田へ行く飛行機は一機もないそうだ」 という親父さんの答えに、 「そうなの」とハルヒの母さんはつぶやいてチケットをしまった。 すでに搭乗予定のほとんどの人が乗り込んでおり、飛行機の中に入ると中にはぎっしり人が詰まっていた。 親父さんが言ってたとおり、俺たちの席は、入り口からたいして離れていないところにあった。 ハルヒに窓側を譲ろうとしたが、「キョン、あんた始めてなんだから、あんたが窓際行きなさい」と頑として聞かない。 ようやく俺の頭に、いつぞやの古泉の言葉が浮かんだ。 「わかった。じゃあ窓際に座らせてもらうぞ」 「どうぞ」 3人がけの席で、ハルヒは俺の隣に座る、その向こうが通路側になりハルヒの母さん。親父さんは通路を挟んで、さらにその向こうに座る。 機長の自己紹介やら、救命設備の説明アナウンスやらが流れて、スチュワーデスさんが踊っているように装着の実演をやっていた。 「最近はビデオ流して済ますのが多いがな。マイナーな路線ほど、今のダンスが見れる」 2つ席の向こうから、親父さんが解説してくれる。 こうしてしっかり席についてから、離陸のために飛行機が滑走路を走り出すまでの時間がけっこう長い。これだけでかい空港でも、滑走路の数は少なくて、待ち時間なんかがあるためだそうだ。 全然別の経験なんだが、予防注射って奴は、注射のちくりという痛みよりも、注射されるまで並んで待っているのが案外つらいんだよな。 気がつくと、ハルヒの母さんの、ニコニコという音がほんとにしそうな笑顔からも、親父さんの何故か声はしないが「ゲラゲラ」というのが伝わってきそうな笑いからも、どこか生暖かい視線にも似たものが飛んで来ていた。 なるほど。そういえば、いつも騒がしいとなりの奴が、席に着いた途端に、借りてきた猫のようじゃないか。 「なあ、ハルヒ。ひょっとしておまえ、飛行機こわいのか?」 「ば、ばかじゃないの? 怖いわけがないじゃない!」 「鉄の塊が飛ぶのは、おかしいとか、信じられないとか、その手の類か?」 「こ、こんなもんはね、目つぶって寝てたら、いつのまにか現地に到着してるものなの!」 「それだと機内食も食えないだろ。ほら、手、貸せ」 「は?なに?」 「手だ。握っといてやる」 「あんた、ばかじゃないの。……親もいるってのに」 「かまわん。俺は気にせんぞ」 「あんたが気にしなくても、あたしが気にするわよ……その、ちょっとは」 「じゃあ、そっちの目はつぶってろ」 「意味わかんない。……わかったわよ、握ればいいんでしょ、握れば」いかにも渋々といった感じで、俺の手を取りに来る。 「……離したら、承知しないからね」 「母さん、ピンチだ。たすけてくれ。自分の娘と婿に萌え死にそうだ」 「まだ婿じゃありませんよ」 「『恋愛が与えることができる最大の幸福は愛する女性の手を握ることである』(スタンダール)」 「何か言いました?」 「いいなあ、って言ったんだ」 「飛行機に乗るなんて、いつものことじゃありませんか」 「忘れられんフライトになりそうだ」 その4へつづく
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俺の日常はきっと赤の他人から見れば、まあ大変ねとか、苦労なさっているんですねとか 言われてしまうようなきわめて非日常的な状態にあるんだろうが、俺にとってはこれが楽しくて仕方がない ごくごく普通の日常であると断言できる。 宇宙人・未来人・超能力者。こんなのが得体の知れない情報爆発女を中心に闊歩している世界に 俺のようなきわめて一般的平凡スペック人間がコバンザメのようにくっついて歩いている光景は、 確かに不釣り合いと言えばその通りである。が、いったんそんな現実を受け入れてしまえば、 細かいことはもうどうでもよくなり、どうやってこの微妙に非日常を満喫するか考える毎日だ。 てなわけで、本日もハルヒ発案による不思議探索パトロール中である。 相変わらず、ハルヒの望むような変なものが見つかるわけでもなく、ほとんどSOS団という謎の集団による 食べ歩き・散策・名所巡り状態になっているが。 「にしてもだ。ハルヒが本当に変なものに遭遇を望んでいるなら、とっくに見つかっていそうだけどな」 俺は朝比奈さんをうらやましくも抱き寄せほおずりしながら歩くハルヒを尻目に言う。 それにすぐ横を歩いていた古泉は苦笑しながら、 「涼宮さんにとってそういった奇怪なものを見つけることよりも、我々と一緒に遊ぶことの方が楽しいのでしょう。 そうでなければあなたの言うとおり、今頃町中がエイリアンやUMAで溢れかえっていますよ」 確かのその通りだろうな。実際に俺もそんな物騒な連中が現れずに、こうやって遊び歩いている方が遙かに楽しい。 ハルヒ自身も未知との遭遇がなくても、現状の不思議探索パトロールで満足しきっているんだろうな。 と、古泉は珍しく胡散臭さのない屈託のない笑顔で、 「このままこの日常が続けば良いですね。僕のアルバイトもいっそのこと無くなってしまった方がいいですし」 そんなことをしみじみとつぶやく。 お前達の言うようにハルヒが世界を平然と作り替えられる能力を持った神的存在って言うなら、 この平穏な日常は永遠に続くだろうよ。ハルヒがそう望み続ける間はな…… ……この時まで俺はそう確信していた。 ◇◇◇◇ 「ちょっと公園で一休みしましょう」 そうハルヒの一声で俺たちは公園のベンチに座る。ところでハルヒさん。いくら何でもずっと朝比奈さんに抱きついたままなのは どうかと思うぞ。全くうらやまし――じゃない、少しは朝比奈さんの迷惑を考えろよな。 「いいじゃん。今日は思ったよりも寒かったからカイロが必要なのよ。う~ん、さっすがみくるちゃんは暖かいわね」 「ふえ~」 ハルヒの傍若無人の振る舞いに朝比奈さんは困り切った顔を浮かべているんだが、 ついついそんな彼女にもこうエンジェル的優美かつ華麗さを感じ取って見とれてしまう俺も相当罪深い。 アーメン。俺の男としての性を許してくれたまへ。 一方の長門は相変わらずの無表情ぶりでベンチの上にちょこんと座っている。すっかり謎の超生命体印の宇宙人というよりも 文芸部部長兼SOS団最大の功労者という肩書きが似合うようになった。そんな彼女も今日もいつも通り無表情・無口で 無害なオーラを延々と見せているところから別に変なことが背後やら水面下とかでうごめいてはいなさそうだな。 ふと、ここでハルヒと目が合ってしまった。なんてこった。俺としたことが飛んだミスを。 「ちょっとキョン。のどが乾いたからみんなにジュースを買ってきなさい。あ、当然あんたのおごりでね」 「何で俺が」 横暴極まりない俺への指令に、俺は抗議の声を上げるが、ハルヒは朝比奈さんを抱きしめたまま、 「今日も遅刻したじゃん。罰金よ罰金! ほらほらぶつくさ言わないでとっとと買ってきなさい! あ、あたしは暖かい紅茶でね♪」 満面の笑み100%を浮かべているところを見ると、全く今日もいつもの傍若無人ぶり全開だな。 いつもどおりってのも安心できると言えばそうなんだが。 俺は長門と古泉、それに朝比奈さんの要望を聞くと、近くの自販機を探し始めた。 ちなみに俺の癒しの朝比奈さんは、ごめんなさいとぺこぺこしていたが、そんなに謝る必要なんてありませんよ。 あなたがアルプスの天然水が飲みたいというなら、今すぐ新幹線に飛び乗っていくことなんておやすいご用ですぜ。 しばらくきょろきょろと見回していた俺だったが、やがて公園に乗ってはしる道路の向こう側に 自販機が並んでいるのが目に入った。俺は横断歩道の信号が青になったことを確認し、小銭を数えながらそこを渡り始める。 ――キョンっ!? 後頭部に突然ハルヒの声がぶつけられる。そのあまりに突飛な声に何事だと俺は右回り180度ターンで振り返っている途中で 気がついた。俺の鼻先30センチのところにばかでかい巨大トラックがいることに。 当然ながら空中に突如出現したわけでもなく、猛スピードで信号を無視して俺に突っ込んできている。 鈍い衝撃が俺の鼻に直撃した以降、俺は何も感じなくなった―― ◇◇◇◇ ――キョンっ――キョンっ――お願い――目を開けて―― ハルヒの声だ。何だやかましい。言われなくてもすぐに起きてやるよ…… 俺はすぐにまぶたを開こうとして気がついた。どれだけ強く力を込めて目を見開こうとしても まるでそれを拒否するかのように、強くまぶたが閉じられている。目の上の筋肉辺りは動いているようだったが、 肝心のまぶたは力を込めると逆にしまりが強まる。くっそ――どうなってやがる…… ――キョンくん……どうして……こんなことに―― 次に聞こえてきたのは朝比奈さんの声だ。耳に届く美しい言葉に俺は再度目に力を入れるが、やはり開かない。 ずっと続く闇の中、朝比奈さんのすすり声だけが俺の脳内に響く。ここで気がついたが、俺の手足も俺の意志に反して 全く動かなかった。まるで全身に釘を打ち込まれたかのように身体が硬直し、直接的な痛みよりも 動くはずの俺の身体が動かないというもどかしさに、俺は強烈ないらだちを憶えた。 しばらくして朝比奈さんのすすり泣きも聞こえてこなくなった。そのままどれだけの時間が過ぎたころだろうか。 いい加減、自分の身体が動かないことにあきらめつつあったころ、今度は言い争いが聞こえてきた。 はっきりと言葉の末尾が聞こえないが、片方が古泉の声であることはすぐにわかった。聞いたことのない男の声と 激しくやり合っているみたいだ。おい古泉、そんな声を出すなんてお前らしくないぞ。どうした? しばらく意味不明な怒声のキャッチボールが続いていたが、やがてバンという大きな音とともにそれが止まった、 ――何――やってんのよ――病人の前なのよ!? 出て行って! 出て行ってよ!―― ハルヒの声だ。すまん、ハルヒ。助かったよ。これが続いていたら俺の耳がくさっちまいそうだ。 ん? 今ハルヒはとんでもないことを言わなかったか? なんだったっけ……ま、いいか。ちょっと眠くなった。寝よう…… ――やあ、キョン―― ……ん、誰だよ。人が寝ているってのに…… ――久しぶりに顔を合わせたかと思えば、こんなことになってしまうとは、ついていないと言えば良いんだろうかね? ……うっさいな、俺は眠いんだよ。寝かしてくれ…… ――僕は君が起きているつもりで話すよ。いまさらだけどね。少しでもその意味を理解できているなら―― 俺はここで眠りに落ちた…… 一体どのくらい経ったんだろうか。眠っては起きてまた眠っての繰り返しの日々。いい加減飽きてきたんだが、 起きても指一本動かせず、目すら開かないのでどうしようもない現実だ。聞こえてくるのは耳を通してではなく 頭蓋骨を伝わってくるようなぼやけた声だけ。最初はそれを聞き取ろうと努力したんだが、どうやら俺がどうこうしても 無駄なようだ。はっきり聞こえてくるときとそうでないときの違いは、俺の意志や努力とは関係なかった。 そして、久しぶりにはっきりと聞こえた声。 ――ゴメン、キョン。全部あたしの責任よ。あたしがあの時あんたを使いっ走りにしなければよかった。 ――あたしが悪いの――――――――――――ごめんなさいっ――――本当にごめんなさい――だから目を開けて――お願い―― そんな悲しそうな声を出すなよ、ハルヒ。お前のせいじゃないに決まっているだろ? 自分をあんまり責めるなよ。 らしくなさすぎるほうが帰って俺を不安にさせるんだからさ。大体、あんなことはいつもどこかで起きているんだから―― あれ? なんだっけ? 俺、なんかとんでもない目にでも遭ったのか? なんだっけ…… それから果てしない時間が過ぎたような気がする。 もうはっきりした声も聞こえなくなり、雑音のような声らしきものが俺の脳内に拡散していく毎日。 飽きたなんて言う感覚すら通り越して、意識が麻痺しているんじゃないかと思いたくなるほどの無感状態になっていた。 寝て起きて寝て起きて寝て起きて寝て起きて――もう考えることすらうっとおしくなってきている。 ――あきらめないで。 長門の声だ。すごく久しぶりに聞いた。ちょっとうれしくなる。すまないがちょっと俺の目を開ける手伝いをしてくれないか? ――今、わたしは何もできない。 そりゃまた白状だな。SOS団の仲間だろ? ――あなたと意識レベルでの言語的会話をすることが、わたしにできる唯一できること。 なら、せっかくだ。話でも聞かせてくれ。そうだな。おとぎ話でもいいぞ。いい加減、退屈で感覚が麻痺しているんだ。 ――残念ながらわたしにはあなたの身体構造の再起動を促せるような言語刺激を持ち合わせていない。 そうか。それなら仕方がないな。そろそろ眠たくなってきたから、寝るよ。 そうだ、また退屈になったら話してくれないか? ――もうこのインタフェースであなたと会うことは二度と無いかもしれない。でも聞いて。 なんだ? ――このままでは涼宮ハルヒはこの惑星にすむ知的生命体全てからの憎しみをぶつけられる。 ――そして、世界は消滅する。 は? なんだそりゃ。そんなことがあってたまるか。 ハルヒはな、確かに行動が突飛だったりわがままだったりするが、何だかんだで常識的な奴なんだよ。 人を本気で傷つけたりとかなんてしないしな。見た目で判断するんじゃねえよ。 誰も彼もが誤解しているってなら俺が教えてやる。ハルヒって奴が本当はどんな奴って事をな…… そう思った瞬間、今までの目の拘束状態が嘘だったかのように消える。 そして、俺はゆっくりと目を開いた…… ~~その1へ~~
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第三章 7月7日…とうとうこの日が来てしまった。 俺は何の対策も考えていない。 何かいい考えは無いかと考えている間に午前の授業が終わった。 昼飯は一年の時と同様谷口や国木田と食べている。 卵焼きを突いていた谷口がこんなことを言い出した。 「涼宮って去年の7月7日おかしくなかったか?俺学校の帰り道で東中の前通るんだけどさ、 俺去年の七夕の日学校が終わってゲーセンによってから帰ったんだ。たしか8時ごろ、 東中の前を通ったら涼宮が校庭でずっと立ってたんだ、しかも雨が降ってたのに傘もささずに。あれなんか意味あるのか?あいつのやることはやっぱよくわからん。」 「ふ~ん、そうか」俺は平然を装った。なんとなく動揺しているのを見られるのはまずい気がした。 心の中では適当に済ませばいいなんて考えていた俺をもう一人の俺が殴っていた。俗に言う心の中の天使と悪魔と言うやつである。 そして悪魔のほうが天使にぶっ飛ばされたわけだが、天使が勝ったところでどうにかなるわけでもなく俺は途方に暮れていた。 午後の授業もあっという間に過ぎ、とうとう部活の時間だ、今日だけはあいつと顔を合わせたくないのだが行かないほうがめんどくさいことになる気がするので文芸部室へと足を運んだ。 すると足取りが重かったせいか俺が部室に着く時には全員がそろっていてハルヒが嫌な笑みを浮かべた。 この瞬間俺は背筋が凍りつくような寒気を感じた。 このときの俺はこれから何が起こるかなんて知るよしも無かった。 ハルヒは全員がそろったと言うことでこう言った。 「今日は七夕で不思議も油断しているかもしれないわ!今日はこれから久しぶりに市内探索しましょ!!」 なんだって?最近驚いてばかりってのに驚きだ。市内探索?今から? 実は今までに5回市内探索が行われたのだが、結局一度もハルヒとなることは無かった。 そしてハルヒは例のごとくどこにしまっていたのか爪楊枝を取り出し例のごとく俺たちは爪楊枝を引いた、 そして驚いたなんと俺とハルヒがペアになっていたのである。 その瞬間明らかに長門、古泉両名の顔が明らかにゆがんだ。 ハルヒは言った。「何であんたとペアなのよ。まあいいわ、足手まといにならないようにしなさいよ!」いかにもハルヒらしい発言が聞けて俺は安心した。 「わかってるよ。」そう言い返しておいた。俺はなんかうれしいかった、それが何故かはわからないが。 そして夕方5時過ぎに俺とハルヒは学校を出た、そして行くあてはあるのかと聞いてみたするとハルヒは当然のように「東中。」 俺はそうか何しに行くんだ?とわざと聞いてみた。 するとちょっと怒ったように「あんた昨日の話聞いてたの?あたしは人を探しているのよ!」と答えるハルヒ。 俺は何故か行ったらまずい様な気がした、しかし断る理由も無く、思いつきもしなかったため「冗談だ、なら急ごう」そう言ってハルヒの前を歩いた。 北校から中学まで30分ほどで着いた。着いたはいいがまだ部活やら補修やらで残っている生徒がいるようだこれでは中に入れない。 「どうする?ハルヒ。」と聞いてみる。 「そうね、今入るのはまずいわねどこかで時間を潰しましょう。近くにちょうどいい公園があるわ、そこに行きましょう。」 あの変わり者のメッカか…こいつも好きらしいな断る理由も無い。 「わかった。」と答えた。 公園に着くと二人でベンチに座った。傍から見れば完全にカップルだ。 お似合いに見えるかは置いといてだな。 「だいだい8時ぐらいまでは待ってなきゃだめだろうな。」と俺。 「そうね、後2時間ぐらいね」とハルヒ。 「なんか話しでもするか。」 そして俺たちはしゃべり続けた。 新しいクラスがつまらないこと、朝比奈さんのコスプレ衣装の希望、これからのSOS団の活動内容について、新しい担任がむかつく事 そしてあっという間に2時間が過ぎた。 ハルヒが時計を確認し「そろそろ時間よ、行きましょう」そして後についていく俺。 学校に着くとさすがに真っ暗で携帯のライトで周りを照らした。 そしてこの後俺は信じられない光景を目の当たりにする ハルヒがライトを向け俺の名前を呼ぼうとしたときだ。 「キョ… 涼宮ハルヒがいきなり倒れたのだ、俺は焦った。 こんなに焦ったのはハルヒが消失しちまったとき以来だ。 焦りながらも俺は古泉に電話を掛けた、後から考えればナイスな判断だったと思う。 「古泉!!ハルヒが倒れた!!!!」 「どうしました落ち着いて下さい。」 「北校でハルヒが倒れたんだよ!!」 「わかりました15分…いや10分で向かわせます。」 「わかった。早くしてくれ」 こんな感じだったと思う、あまり覚えていない。 たぶん10分ぐらいで救急車が着たんだろうが俺には3倍ぐらい長く思えた。 そして機関御用達の病院にハルヒは検査入院ということで入院した 第四章
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「ねぇキョン?」「ちょっと!聞いてるの?キョン!?」「それでねキョンはね、」「あっ!そうそう、キョンそれからね」「キョンっ!」「そう言えばキョンは…」「キョン明日はね…」「ねぇキョンは?」「ほらキョン!ちゃんと聞きなさい!」 ……まったく飯の時とか2人でテレビ見てる時位は静かにして欲しいな。 孤島の1件からハルヒと付き合う事になってしばらく経つ、授業中も、部活の時も、その後も、休日も、寝る前でさえ電話で、そう…ほぼ丸一日中俺と一緒にいるのに、なんでこいつは話題が尽きないのかね? まるでマシンガンやアサルトライフル…いやガトリングガンやバルカン砲だな…いや弾切れがある分羅列した銃器の方がましだな。こいつの話題は切れないしな。 「なぁハルヒ…何でお前はそんなに話題が尽きないんだ?こんなにずっと一緒に居るのによ。」 「ったく…たまに自分から口を開いたと思ったら…何よそれは?良い?あたし達はNTじゃないから、黙っていても分かり合えないのよ?」 ……そう言えばこの前一緒に某ロボットアニメを見たな… 「それにあたし達は恋人どうしなのよ!?お互いが一番に分かり合ってなきゃだめなの?それ位はアホキョンにでも分かるでしょ?だから、こうやって毎日毎日あたしが話してるのよ!」 なるほどな…でも俺もっと簡単に分かり合える方法知ってるぜ? 俺は無言でハルヒを抱き締めた。 「ちょっと…キョン!?」 ハルヒのヤツは、顔真っ赤にして抗議しながらも、俺に体を預けて大人しく抱き締められている。ったく…こうしてりゃ静かなんだけどな。 「……分かったわよ…じゃあこれからは、いつでも分かり合える様にこうして抱き締めなさい…良いわね……」 真っ赤にしてゴニョゴニョ言うハルヒは可愛いが……墓穴ほったなこりゃ… 終わり
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第1章 ―春休み、終盤 結局俺たちは例の変り者のメッカ、長門のマンションの前の公園で花見をしている …はずだったのだが、俺の部屋にSOS団の面々が集まっているのはなぜだ? よし、こういうときはいつものように回想モード、ON 「我がSOS団は春休み、花見をするわよ!」 ハルヒの高らかな宣言を聞き、俺は少し安心した 春といえばハルヒの中では花見らしい もっと別のものが出てきたらどうしようかと思った ま、原因はさっきの古泉が付き合う付き合わないとか言っていたせいだろう 春は恋の季節と歌った歌があったからな 「お花見…ですか?」 ハルヒの言葉に北高のアイドルにして俺のエンジェル、そしてSOS団専属メイドの朝比奈さんが反応した 「そ、お花見。言っとくけどアルコールは厳禁だからね!!」 アルコール厳禁を宣言するだけなのに何がそんなに楽しいのか、ハルヒの笑顔は夜空に栄える隅田川の打ち上げ花火のようにまばゆい光を放っていた 「わぁ…あたしお花見って初めてで…すごく楽しみ」 対抗意識を燃やしたわけではないだろうが、それに負けじと朝比奈さんの笑顔も春の花畑を優雅に舞う蝶が羽休めのためにチューリップに静かにとまったかのような清楚な微笑みだった 「このメンバーでお花見とは、楽しくなりそうで僕も楽しみです。」 ハルヒに従順なイエスマン、古泉も相変わらず微笑をうかべたまま反対しようとはしない もちろん長門はというと寡黙なその視線を分厚い文庫本に注いでるだけだ と、いうわけでSOS団お花見計画は満場一致で開催が決定された しかし、春休みに楽しい予定が入ったからといって時間の流れというのはその時間を頭出ししてくれたりはしない 目の前に立ちはだかるでっかい問題をどうにかするのが先だった そう、すべての学生の不倶戴天の敵 ―もうわかるだろう、奴の名は学年末テストだ どうにかしようとは思っていても結局至極当然のように放課後になると俺はここ、文芸部の部室にいるわけで、それは鳥が空を飛ぶように、魚が水の中を泳ぐように足が部室をめざすのだから仕方ない このままだと俺がリアルにハルヒの力によってではなく、俺の力不足によって1年生をループすることになるのですべてのプライドを捨て、部室でネットサーフィンしてばかりの我らが団長様に教えを請うことになった ハルヒはこんなのもわからないのといった表情で、それでいて勉強しているというのにどこか楽しそうで、それでも親切丁寧に俺に勉強を教えてくれた しかも、教えるのがやたらうまい 俺のバカ頭で、見ただけで頭が痛くなりそうな数式を頭を痛めつつだが、なんとか解けるまでにしてくれた なるほど、だからあの眼鏡の少年は将来タイムマシンに準ずるものを開発してしまえるのか だから画家にはならないでくれ もう二度と俺のモンタージュを書かないように、と思ったのは余談だ なんやかんやで学年末テストでは学年でとまではいかないがクラスで5本の指に入るくらいの点数を叩きだすことができた 担任の岡部もびっくり仰天だっただろう ハルヒ様様だ テストが終わればあとは春休みを待つばかりで俺はwktk…じゃなかった、期待して到来を待った 春休みまでの数日で俺が古泉にボードゲームでかなり勝ち越したことも付け加えておこう ―そして 春休み初日 天気予報で今年の桜開花予想を聞いたハルヒは終業式の日のうちに本日の集合を決めていた その場で話し合えばいいのにハルヒはいちいちみんなで集まりたいらしい その点に関しては俺も異論はないが なので俺がめずらしく一念発起し、たまには俺以外の―そうだな、古泉辺りが理想だが、 他の団員に喫茶店代を出させてやろうと思っても俺含むすべての団員がハルヒの願いによって操られるためいつでも最後に到着するのは俺だ なぜハルヒが俺におごらせたいのかは謎だが というわけで結局いつもの喫茶店に俺たちはいるわけだが1ついつもと違うことといえば長門が2つの合宿以外で見せなかった制服ではない私服姿でいることだ 淡い水色のワンピース その寒涼系のコーディネートはひどく似合っていて何かあるのかと勘ぐった俺の思考を一瞬止めた しかし、勘ぐったのは束の間、長門から特に特別な表情は読み取れなかったため特異な理由があるわけではなく、 ただたんに長門が‘そうしたかったから’このワンピースを着ていると悟った俺は「よく似合っている」の一言で片付けることにした ハルヒはというと春というより夏に近い格好で、ノースリーブシャツにキュロットといった服装 愛しのマイエンジェル、朝比奈さんはタートルネックにスリットの入ったロングスカートとこれまた何ともそそる格好をなされていた 蛇足だが古泉はワイシャツにジーパン、そのうえにスプリングコートを羽織っていた それが道行く女性の視線を集めたのはいうまでもない 「今年の開花予想は4月3日だって。例年より早いらしいけど、地球温暖化の影響によって東京の桜はかなり早く咲くらしいの。 それを考えると騒ぐ程のことではないってテレビでいってたわ」 温暖化云々と地球環境問題のことを聞くと危惧するべきだろうが、俺は正直、ホッとしていた 学校が始まってからの開花だったらどうしようかと考えていたからだ これもハルヒの力によるものかもしれないのだが 「と、いうわけでキョン、場所取りお願いね、ちゃんと前の晩から徹夜するのよ」 さらりととんでもないことをぬかしたハルヒは穏やかな笑顔で俺を見つめた 仕方なく反論を用意した 「確かに場所取りは重要だがいくらなんでも一人で徹夜はひどいだろう、せめて…」 せめて古泉も道連れにと言い掛けたところでハルヒが口を開いた 「誰も一人で行けなんていってないでしょ?大丈夫」 そのあと、ハルヒは南極に白くまが、北極にペンギンが住み、地球の自転、公転が逆になっても耳を疑うようなことを言った 「あたしもいくわよ」 と、いうわけで何度かの市内探索パトロールを経て、4月2日夜、ハルヒに呼び出された俺は変り者のメッカの例の公園でハルヒとともにブルーシートを広げ、場所を確保している さすが変り者のメッカというべきか他にも数ヶ所で場所取りの人材が場所を確保している ちなみにハルヒが場所取りを立候補したのは「あんただけに今年の1番桜を見せるわけにはいかない、むしろあたしが見るべきよ」というものだった 次の日の昼頃に他の連中が来てドンチャン騒ぎをしたのだがハルヒが「やっぱり花見は満開のときがいいわね」と言ったため本日4月5日にもう一度花見が割り当てられたのだったが ―雨 一言で片付く事象で花見は中止 なぜかSOS団は俺の家に集まっているといった状況になっている 回想モード、終わり 第2章
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ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その7から シャワーの音が止まった。 少し経って浴室のドアがゆっくりと開く。 俺はベッドの端に、そっちには背を向けて座っていた。 「スケベなこと考えてる顔ね」 「そんなことはない」 「だとしたら失礼な話よね」 こっちに近づいてきた奴が、後ろから俺の首に両手を回してくる。 「だいたい、うしろからじゃ見えないはずだろ」 「あんた、背中までポーカーフェイスのつもり?」 「ただの仏頂面だ」 「ホテルの最上階。二人っきり。邪魔が入る恐れなし。タオル一枚の美女が背中に体重をかけてくる。これで何が不足か、聞こうじゃないの?」 俺はゆっくりと口を開いた。 「子供の名前を考えてた」 「うっ。……なかなかやるわね」 「うそだ。最悪のタイミングで、ムードぶち壊しのことを言うことになるかもしれんが、この旅行ももうすぐ終わりだ。だから率直に聞くぞ」 「……いいわよ。あんたが空気を読めないで不躾なことを聞くのは、べつに今に始まったことじゃないわ。どうせ……」 「あのケンカの後、親父さんはめずらしく本気で怒ってた。おまえ、『足で砂を目に投げた』って、意味わかるか?」 「その通りの意味でしょ。あのとき、あたしははだしだったし、足の指で少しくらいなら砂をつかめるわ。手でするみたいに、足を振って握ったものを離せば、投げるみたいなことはできるわね」 「それは、涼宮ハルヒがやることか?」 「どういう意味よ」? 「買いかぶりならそう言ってくれ。俺の知ってるハルヒは、そりゃ時にはめちゃくちゃなやり方をすることはあるが、それでもおまえなりの筋ってものを守る奴だ。あれは親父さんのいうとおり『汚い手』なのか?」 「そうよ」 ハルヒは挑むような目で言った。「だから、何?」 「何故だ?」 「勝ちたかったからよ、当たり前じゃない!」 「当たり前じゃない。お前と親父さんのケンカはそういうんじゃなかっただろ?」 「何も知らないくせに、勝手なこというな!」 「ああ、何も知らんさ。だけどな!」 「うるさい!うるさい、うるさい!」 「ハルヒ!」 「どうせガキっぽいひがみよ、あんたが!……あんたはひどい目にあっても親父をかばって……、あんたはそういう奴よ。あたしの親で無くても、そうするだろうって、分かってる、でも……」 「おまえの母さんや親父さんこと、俺は正直すごいと思ってる。まあ、おまえの親じゃなくても、そう思うかもしれないが……、あの人たちに会ったり話したり昔のことを聞く度にな、俺がまだ気付いてないハルヒに光があたって、今まで見えなかったハルヒが見えるような気がするんだ」 「あたしはあんたにむちゃくちゃ言って、むちゃくちゃさせて、でもそういう風に許されるのは、甘えられるのは、あたしだからだ、って思いたかった。だから、だからあんたが親父をかばって、あたしは完全に頭に血がのぼったわ。あんたをどんなことをしてでも取り返さなきゃ、どんな手を使っても勝たなきゃって。あんたにだってわかるように、親父とのケンカは勝つとか負けるとか、そういうんじゃなかったのに。親父が怒るのも、悲しく思うのも当然よ」 「あーもう、ぼろぼろ泣いて、めちゃくちゃ。……こっちみるな!」 「どうして?」 「あんた、変態? どS? 人泣かしといて、楽しむなんて」 「べつに楽しくはない。……ちょっと抱きしめていいか?」 「このエロキョン! いいに決まってんでしょ!!」 「雨になりそうね、お父さん」 「気圧の変化か。つらいのか?」 「少しはね。でも、起きられないほどではないわ」 「置き引きシスターズも雨天は休業か」 「人気のない浜辺も悪いものじゃないけど。一緒に歩く?」 「その前に朝飯だ。いや、起きなくていい。ベッドに持ってくる。フランス人も裸足で逃げ出すような、甘いカフェオレ付きだ」 「そんなの、いつ用意したの?」 「これからだ」 「ベッドで食べるのが好きね」 「だらしがないのが好きなんだ。このまま雨が上がるまで、ぐずぐずしていよう」 「帰りの飛行機が飛んでいっちゃうわ」 「それもいいな」 「ふふ。そうね」 「残念ながら明日には止むさ。いや、今日中かもしれない」 「天気予報?」 「いや、これ」 「てるてるぼうず。そんなの、いつ用意したの?」 「夜なべした。リビングのソファは占拠したぞ」 「お父さんって、何でもありね」 「『一途』と『馬鹿』は、ちょっとした綴りの違いなんだ」 「キョン?」 「ああ、すまん。起こしたか?」 「うん、ううん、ああ、そうね」 「どっちだよ?」 「もしかして雨降ってる?」 「ああ。窓から外見ると、水の中にいるみたいだぞ。……調子よくないのか?」 「そうじゃないわ。昔のことを思い出しただけ。……夢を見たんだけどね」 ハルヒは言葉をつづけた。 「小さい頃、溺れたことがあってね。親父が飛びこんで、母さんが人工呼吸してくれたんだって。覚えてるわけじゃないけど」 「……だから、おまえも助けに飛び込んだのか?」 「そうじゃないわ。泳ぎは得意だと思ってたし、そんなことで泳げなくなるのも悔しいから、ちょっとムキになってたこともあるけど。助けたのには理由なんてない。気付いたら、やっちゃってた、って感じね」 「そうか」 「溺れたのは覚えてないけど、その後、自分が謝ったのは鮮明に覚えてる。親父に謝ったのなんて、あんたからしたらバカみたいだと思うかもしれないけど、あれっきりよ」 「……」 「親父があたしの頭にぽんと手を置いて、『間違えたと気付いたら、ごめんなさいと言えばいい。それだけだ』って。どれだけ泣いたか分かんないし、どれだけ謝ったかもわからない。ただ延々と涙が止まらなくて、繰り返し繰り返し『ごめんなさい』って言ってた」 ポットから聞こえる音が変わって、お湯が沸いたことを知らせていた。 二人分のコーヒーを入れて戻ってくると、ハルヒはベッドの端に座って、窓の外を見ていた。 ホテルはこのあたりで一番高い建物で、座ったまま窓から見えるのは雨雲と窓ガラスを叩く水滴だけだった。 「飲むか?」 「ん」 「……あとで、海に行かないか?」 「どうして? 今日みたいな日に行ったって、あるのは砂と水だけよ」 「こっちに来て、まだおまえと泳いでない」 「でも水着も何もないわよ」 「水着どころか傘だってないぞ」 「買いにいく? でも、この土砂降りの中、泳ぐの?」 「泳がなくてもいいさ」 「何しに来たのよ、あたしたち」 「さあな。だが、なんでここにいるかは俺にだって分かる」 「なんでよ?」 「おまえがここにいるからだ」 ハルヒは軽く衝撃を受けたように軽く口を開いて、すぐに、このバカ何を言い出すんだ、という顔になった。 「キザキョン」 はて、おれは何かキザなことを言ったか? おまえが連れてきたから、おれはこんな亜熱帯の島に来たんだろう。 「はあ。わかんないのが、あんたよね。それはもう、よーく知ってるはずなんだけど」 ハルヒは、となりの部屋にいたって聞こえるくらい、大きなため息をついた。 「もう、こうなったら海でも何でも行くわよ!」 「ごちそうさま。おいしかったわ」 「朝からカツカレーはなかったかもしれんが」 「ベッドでとる朝食向きじゃなかったかも。出張中、いつもこんなの食べてるの?」 「海外旅行も7合目くらいになると、急に日本食を食べたくならないか?」 「カツカレーを?」 「よそでまずい寿司なんか食うよりはな。どういう訳だかトンカツよりもうまいと感じる」 「おいしいと思うものを食べる方が、食事は楽しいわ」 「何を食べるかより、誰と食べるかじゃなかったか?」 「時には一人で食事をしなきゃならないこともあるもの」 「それはそうだ」 「故郷を甘美に思う者はまだ嘴の黄色い未熟者である。あらゆる場所を故郷と感じられる者は、すでにかなりの力をたくわえた者である。だが、全世界を異郷と思う者こそ、完璧な人間である」 「なんだ、それ」 「昔の誰かが言った言葉ね、きっと」 「俺のくちばしは黄色いな」 「誰だって、完璧にはほど遠いわ」 「完璧な奴は、どこからも何からも遠い訳か」 「そして誰からも、ね」 「好きなものくらい、好きに食わせろ、だ」 「お腹もふくれたわ。仕事にかかりましょう」 「雨なのにか?」 「雨だからよ。人が少ない方が探しやすいわ」 「母さんだけが分かってることがある気がするんだが。教えてくれないか?」 「そうかしら? 私が思ったのは、意外と簡単なことよ」 「というと?」 「溺れている真似というのは結構難しいわ。何しろ泳げる人相手に嘘をつく訳だから」 「そりゃそうだな」 「ぶっつけ本番では無理だと思わない?」 「なるほど」 「練習するなら、カモになってくれる観光客のいないときにむしろ、やりたくないかしら」 「合点がいった」 「今日は私を信じてみません?」 「いつだって信じてる。出掛けよう」 「で、なんなのよ、このデカイ傘は?」 「ゴルフ用らしいぞ」 「あたしが言ってるのは、そういうことじゃなくて」 「ホテルが貸してくれたんだ。傘なんて、この辺りじゃ売ってないとさ」 「だから、そういう……」 「ゴルフをやる外国人ぐらいしか、この島じゃ傘なんてささないんだと。雨が降ったら街も道も人も濡れる。当たり前じゃないか、と言われた」 「その通りだわ」 「その通りだけどな」 「あんた、泳ぎにいくんじゃないの? どうせ濡れるじゃないの」 「水着も売ってないそうだ」 「この辺りじゃみんな裸で泳ぐ訳?」 「さっきからビービー鳴ってるのは何だ?」 「持たされたケータイよ。電源は切ってあるけど、濡れると救難信号が出るそうよ」 「それくらいの音で周囲に聞こえるのか?」 「ずぶぬれになれば、ワンワン鳴り出すらしいわ。雨くらいじゃ周りも助けようがないでしょ?」 「やっぱり傘があって正解じゃないか」 「音だけなら、ビニール袋にでも入れておけばいいのよ」 「ケータイをか?」 「そう」 「この辺りじゃ、雨の日は、みんな着衣で泳ぐんじゃないのか?」 「どうせ濡れるから?」 「そうだ」 「晴れの日は、大抵トップレスだけどね」 「なんだと?」 「水着の跡が残るように日に焼けるのが嫌なんじゃないの?」 「俺が言ってるのは、そういうことじゃなくてな」 「じゃあ、どういうことよ?」 「……目の毒だ」 「はあ? 毒はあんたの頭にたまってんじゃないの?」 「かあさん、当たりだな。おきびきシスターズだ。雨なのにご苦労なこった」 「あら、ほんと」 「びっくりしてるのか?」 「少しね。あてずっぽですもの」 「母さんのあてずっぽが外れたことなんてあったか?」 「そりゃありますよ。じゃないと、生きていても楽しくないでしょ?」 「人生には他にも楽しいことがいろいろあるぞ」 「そうね。『たとえば?』って聞いていい?」 「もちろん」 「じゃ、たとえば?」 「水泳とか」 「お父さん、泳げたの?」 「海外か、でなきゃ人命救助のとき限定だけどな」 「そういえば、小さい頃ハルが溺れたこと、ありましたね」 「自分の指や腕を無くしても、最初から無かったことにすればいいし、忘れる自信もあるが、女房や娘はそうはいかん。だから、ちょっと本気出したんだ」 「どうして、いつもは本気出さないの?」 「知ってる奴に見られたら、恥ずかしい。あ、水泳の話だぞ」 「わたしも、お父さんとこうして話すのは楽しいわ。これも人生の楽しみのひとつね」 「俺がどういうことを話すかくらい、母さんなら分かるだろ?」 「いい映画やお芝居は、結末が分かっていても、何度見たって、楽しいのよ」 「ちがいない。……車はこの辺りにとめておくか」 「彼女たちがいる波打ち際まで、砂浜を歩いて行くの?」 「うん。なんか、まずいかな?」 「お父さん、遠くからでもすぐ分かる方だから、多分彼女たち、蜘蛛の子散らすように逃げて行くと思うわ」 「悪魔の親父だからなあ。『ハルヒを出せ〜。隠すとためにならんぞ〜』って感じか?」 「うずうずしてる。やってみたいのね?」 「悪役ほどおもしろいもんはないぞ、母さん」 「人生、楽しくって仕方がないって感じね」 「悩み事は、時間と精力があり余ってる若いやつらにまかせよう」 「とりあえず、どうします?」 「やっぱりこの手しかないか」 「何に使うの、このバット?」 「やりたいのは「矢ぶみ」だったんだが、拳銃はそこいらでいくらでも買えるのに、弓矢とか手に入らなくてな。とりあえず、このバットをあいつらの近くまでぶん投げるから、バットに油性マジックでハルヒ宛のメッセージを書いてくれ」 「なんでバットなの?」 「非常識だし目立つだろ。あと重心が端のほうにある長いものは遠心力をその分使えて、より遠くへ投げられるんだ」 「文面はどうします?」 「そうだな。『ハルヒへ、夕刻、この浜で待つ。おまえも女なら一人で来い。親父』でいいだろう。そうそうハルヒはHARUHIと書いといてくれ。でないとシスターズの連中が、あのバカ娘のことだと分からんかもしれん」 察するに、災難だったのは、置き引きの姉妹たちだった。 彼女たちは、この街の路地という路地、水路という水路を知り尽くしていたが、大きな街でたった二人の人間を(たった半日で)捜し出すのは相当な苦労だった。 俺たちを最初に見付けたのは、昔ハルヒが「助けた」このある少女だった。彼女が姉妹たちを呼び、一番小さい女の子が俺たちにバットを差し出した。 ハルヒはそれを左手で受け取った。 「来たわよ、バカ親父。なんか用?」 「よく逃げずに来たな。ご褒美にハンデをやろう。泳ぎで勝負なら、そっちも異存あるまい。但し、俺は「人命救助」じゃないと本気が出せんから、誰かに『溺れる役』を頼むことにしよう。指名はおまえにまかせる」 さすがに悪魔と呼ばれるだけの親父である。罠が何重にも仕掛けてある。 相手に選ばせるように見える個所はすべてまともな選択肢ではない。しかも選択の前提として、一方的な条件が提示されている。選ぶためにはそうした前提を飲まねばならず、普通なら自由意思を発揮できる選択という行為自体が、どちらの選択肢を選んだにせよ選択者を拘束していくのだ。 最後の「おまえにまかせる」も同様にえぐい。その含んだ意味は「まかせる」とは名ばかり、この勝負を受けるなら、危険な目に合う役割をハルヒが選ばなければならないという、命令なき命令、強要なき強要だ。 ハルヒの母さんは、親父さんの言葉を、おきびきシスターズに同時通訳していた。ワンテンポ遅れて、その意味を理解したシスターズたちは激高し、そして二人の少女が前に歩み出た。 ひとりは、ハルヒが「助けた」ことのある、ベテランの「溺れ役」だった。 もうひとりは、ハルヒとシスターズたちの家である船にいたとき、部屋を覗いていた、あの少女だった。 ハルヒの母さんが事情をおれに説明してくれた。 「人見知りらしいの、彼女。だから浜で大人たちの手を引くより、泳ぎがうまくなって、次代の「溺れ役」を目指しているそうよ。今日も先代のあの娘に稽古をつけてもらってたですって」 気付くと、おれも一歩前に出ていた。どう考えても、彼女たちを巻き込む話じゃない。シスターズの義侠心には心打たれるが、その手のものこそ、悪魔親父に狙い打たれるだろう。 ハルヒは前に出た3人を見て、ため息をついた。 「落ちたものね、他人を巻き込まないと勝負もできないなんて」 「ふん、さすがに引っかからんか。頭は冷えたようだな」 「おかげさまでね」 「その目……泣いたか。なるほど、ちっとは見れる面になった訳だ」 「言ってなさい。わかってるだろうけど、ハンデはいらないわよ」 「母さん、風向きが変わった。こりゃ、ひょっとすると、ひょっとするぞ」 「お赤飯なら準備してありますよ」 「だそうだ。思いっきり来い」 「言われなくても!」 勝負は一瞬でついた。それが勝負と呼ぶべきものだったとすれば。 いつもはハルヒのすべての攻撃を受け切ってから動く親父さんが、先に突きを放った。 ハルヒはそれを知っていたかのように左側に倒れながらよけ、親父さんの腕が伸びきったところで、それを鉄棒の要領でつかみ、腕を軸にして一回転した。回転の最中にもハルヒのカカトは、親父さんの顎とみぞおちを打った。親父さんは膝を突き、後ろ向きに倒れた。 「親父、ごめん」 「おいおい、マウント・ポジションとってから言うセリフじゃないぞ」 と言いながら、親父さんはハルヒの打ち降ろす掌打を、残った腕一本で奇跡的にさばいてる。 「あたし、あいつといっしょになる。そして幸せになる」 「まさか、こんな情けない状態で聞くことになるとはなあ。娘の顔とセリフは感動的なのに」 ハルヒは打ち降ろす手は止めないまま、涙を流していた。期待と不安と感謝の気持ちでいっぱいになった、明日の式を控えた花嫁のように。多分、ハルヒと親父さんの間で何かが終わり、また変わろうとしているのだろう。 掌打がひとつ、ふたつ、とクリーン・ヒットした。さすがの親父さんも、表情を歪ませる。 とどめだった。ハルヒの両手が親父さんの側頭部をつかむ。親父さんもこの機会を待っていたのか、ハルヒの手を払うかわりに、ブリッジのため頭の横に手をつく。ハルヒが自分の頭を、親父さんの鼻先に叩きつけた、ように見えた。ハルヒの体重がその瞬間前に移るのに合わせて、親父さんは足を突っ張り脱出をはかろうと目論んでいたのだろう。しかし親父さんの全身から力が抜けた。ハルヒの唇が、親父さんの額に「決まった」ので。 「やれやれ、おでこ、か」 「あ、あたしとしては最大限の努力と妥協の結果よ」 ハルヒは跳ね起きて、ぱっと立ち上がった。 「さあ、敬意は払ったわよ」 「オーケー。それで手を打とう」 親父さんは仰向けに倒れたまま、肩をすくめた。 「あー、もったいねえ。こんないい女に育って他人にやることになるんなら、あの時、死ぬ気で助けるんじゃなかった」 「なによ、それ」 「しかたがないか。思わず飛びこんじまったんだから」 「ツンデレよ、ハル」 ハルヒの母さんが、あの透明な笑顔で笑った。 「お父さん、照れてるのよ」 「母さん、あっさりとどめを刺さないでくれ」 いや、それはここにいる誰もが知ってると思います。 「あー、もったいねえ、もったいねえ」 「うるさいわよ、そこ。もっと他に、先に言うべき言葉があるでしょ?」 「ちぇっ、わかったよ……。ま・い・り・ま・し・た。 ……これでいいか?」 「結構よ……それと」 ハルヒがちらっと俺の方を見た。おれはうなずく。ハルヒもうなずき返す。 「それとね。……ふう、あの、いろいろ、その……ありがとう、お父さん」 その日の夕食は、すばらしいものだった。ハルヒの母さんが「本気」を出したのだ。 「赤飯まで!ほんとに準備してあったんですか?」 「昔の人の知恵って偉いわね。ほら、お手玉。」 「へ?」 「あれの中って、小豆が入ってるの。もち米だとか、蒸すためのせいろとかは、中華街に行くと手に入るし。中華街なら世界中の大抵の都市にあるわ」 「ってことは、お手玉をいつも?」 「旅行って、待ち時間ばっかりでしょ。手を動かすとまぎれる退屈さもあるの。うるさいのが二人もいて、私は退屈しないと思ってた?」 「いや、そんなことは」 「キョン君は、明日みたいにお天気のいい朝を寝坊するのが幸せなタイプね」 「ははは。そうですね」 「ちょっと、キョン!いつまで食べてんのよ! 花火するって言ってあったでしょ!」 いつもの奴が、いつものようにズカズカとやって来た。 「ほらほら」 とハルヒの母さんは笑う。 「もう食べ終えたさ。ちょっと話をしてただけだろ」 「なに、母さんに見とれてたの? 何度もいうけど人妻よ」 「おまえはおれに、あの人と死闘しろっていうのか」 「悪魔の親父よ。手加減しないわよ」 「花火をやろう。その話は、夢に見そうだ」 俺はハルヒの手を引いて、コテージのベランダから、夜の砂浜へ出た。コテージの光が落ち着くくらい暗くなるところまで言って、なにかずるい手で持ち込んだのだろう、火薬の固まりの袋を取り出した。 「あんた、線香花火なんてベタなもの、いきなり出してどうするつもりよ」 「どうするって、火をつける」 「それは最後にするもんでしょ。で、じーっと火の玉を見て、自分のが落ちたらがっかりして、相手のが落ちたらバカにすんの」 「それこそベタだろ」 そして、「家族旅行」の最後の日の朝。 目が覚めると、ベランダにひとり親父さんが残っていた。 「何か、食うか? サンドウィッチなら作れるぞ。あと時間さえあれば大豆から豆腐もつくる」 「親父さんが?」 片手でか? 「人間、不便すると、なんとかするもんだ。実をいうと、ここに作った奴がある。サンドウィッチだけだが、好きなの食え。……母さんの大好物なんだぞ」 親父さんは、トレイを俺の前に置いてくれた。俺はひとつ食い、二つ目に取りかかろうとした。 「うまいです。……あれ、その本?」 「ん?ああ。昔、読んだことがあるんだがな。昨日、置き引きシスターズにもらったんだ。連中は、悪魔がいつも日本語に飢えていると思ってやがる。つまりお供え物って訳だ」 「おもしろいんですか?」 「穴があったら飛び越えて、どこかに走り去りたくなるほどだ。猫マニアのロリコンが、コールド・スリープとタイム・マシンを使って、出会った時には6歳だった女の子を『俺の嫁』にする話だ。今なら発禁ものだな。福島正実入魂の訳だと、こうだ。『もしあたしがそうしたら——そうしたら、あたしをお嫁さんにしてくれる?』。萌えるだろ?」 「ええ、まあ」と俺はあいまいな返事をした。誰だって、この場合、こうするだろ? 「なんだ、つまらん」 俺が乗ってこないのがわかると、親父さんはテーブルの上に本を投げ出した。 「食えるだけ食ったら、ちょっと歩かないか? ここの海もしばらくは見おさめだ」 「また来たいです」 「今度はおまえらが、おれたちを連れて来い。海外でやると余計な奴を呼ばなくていいから、意外に手間も楽らしいぞ。ちなみに俺の兄貴は神主をやってる、本職は教師だが。よくある話だな」 「実家、神社なんですか?」 「俺も資格だけはとったぞ」 絶対にちがう神様のにしようと、この時の俺が硬く誓ったとしても、誰も責められまい。 親父さんと二人、海に添って歩いた。 「あれで腕、折れてなかったんですね」 「途中で手を離しやがったんだ。娘に手加減されるようじゃ、おしまいさ。まあ、いい時期だ。子離れ、親離れ。俺たちにも時間はたっぷりある」 親父さんはにやりと笑って言った。 「ボコられながら、あんなセリフを聞いた親父なんて、世界で俺くらいだぞ。ほんとに、あんな奴でいいのか?」 「はい」 「まあ、どうしようもないバカだが、あれでも大事な娘なんだ。よろしく頼む。……返すといっても、引き取らんぞ」 「はい」 その後、聞いた話をひとつだけ記しておきたい。 いつもはハルヒに先手を取らせる親父さんが、なぜあの時に限って先に動いたのか? 「勝ち急いだんだ。小便に行きたかった」 親父さんがゲラゲラ笑ったので、おれもつられて笑った。この話はこれで終わりにした方がいいという意味だと思ったので、俺は思うところはあったけれど、それ以上聞かなかった。 「まあ、なんといおうと負けは負けだ。そうだろ?」 砂浜をしばらくいくと、二人分の足跡が残っていた。足跡の先には、美しい母親とその娘が歩いていた。おおきな身振りをまじえて、髪をくくった娘の方が何かを熱心に話している。 「ハルヒたちだ」 「キョン君、伏せろ」 親父さんに、いきなり砂浜に押しつけられるように倒された。 「ててっ。……どうして隠れるんですか?」 「あー、つまり……」 親父さんは小さく咳払いした。 「いい絵はな、少し離れて見るのがいいんだ」 そして横を向いて、アヒルの口になる。どこかの誰かにそっくりだ。 「……つぶされて倒れてる俺一人カッコ悪いですね」 「ひがむな。そのうち、おまえの時代が来る」 「……」 「その時がきたらメールででも教えてやる」 * * * * 旅から帰った次の日はもちろん、一日中眠った。 ハルヒからは再三、俺の安眠を妨害するメールや電話が矢のようにかかってきたが。その度、眠そうに対応したせいか、ハルヒの電話の声はいつも怒っていた。 「なんで、あんたは、そんなにグーグー、いつも寝てるのよ! どんなのび太よ! 今のあたしほど、暗記パンとどこでもドアを必要としている人間はいないわね。もちろん食べるのはあんたよ!」 まあ、いつもと、ホンの少し違っているという程度だと、その時は思ったのだが。 「要するに、端的に言い換えて、短く言えば、独り寝がさびしいって言ってんのよ、あたしは! ……げ、親父、なんでそんなとこに立ってんのよ!」 「よお、キョン。時代がきたな!じゃ」 「こら、親父!待ちなさい! キョン、いまのどういう意味? 後でしっかり聞くからね!」 「そのうち」ってのは、早速ですか! というより、帰ってきていきなりですか、親父さん。 電話の向こうで、遠ざかる二人の足音を聞きながら、あの親父さんに一矢報いるためにあいつにまた「逃避行」でも持ちかけたらどうだと、不意に頭を占拠したアイデアを、俺は心の中で両手をクロスしながら、懸命にダメ出しするのに忙しかった。 ーーーおしまいーーー ハルヒと親父3 — 家族旅行プラス1 シリーズ ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その1 ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その2 ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その3 ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その4 ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その5 ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その6 ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その7 ハルヒと親父3−家族旅行プラス1 その8 家族旅行で見る夢は (家族旅行プラス1のスピンアウト作品)
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時が過ぎるのは早いもので、気が付けばもう9月上旬。 俺がこの北高に入学してからもう1年と数か月が過ぎ去った。 8月下旬になっても夏の残暑は獲物を捕まえたタコのようになかなか日本から離れなかったが、流石に9月になるともう秋だなと感じる日が多くなってくる。 SOS団も全力稼動中で、春先に起こったまさに『驚愕』の連続だった事件の後は、特に肝を冷やすような事件はなく、鶴屋家主催の花見や、夏合宿などのその他もろもろのイベントを消化し、そろそろわれらがSOS団団長で、神様というステータスを持つ涼宮ハルヒが文化祭におけるSOS団の活動内容について模索している頃だな… 今回はいったい何をしでかすのやらと、紫の上に先立たれた光源氏なみの憂鬱感を感じながら、もう慣れてしまったハイキングコース並みの通学路を通り教室へと向かう。 教室に入るとハルヒはちらっとこちらを見るとすぐに窓の方へ向き直ってしまった。 何か暇つぶしを思いついたときに見せる太陽拳をこえる眩しい笑顔を見せないところを見ると、 今日も平和な日常が流れるのだと この時は思っていた。 だってそうだろ? 『驚愕』の事件の後のイベントでは特に不機嫌になることもなかったし、むしろ物心つく前のガキのように騒いでいた。イベントがないときだって、大規模な閉鎖空間ができたなんて報告は古泉から聞かされなかった。 ハルヒは実際に現在の生活に不満は抱いてなかったのだ。しかし、ハルヒは今日、まさに俺を『錯乱』に陥れるような事件を起こす。 ――涼宮ハルヒの錯乱―― 俺が席に着くと、ハルヒは道端の小石に語りかけるようにこう言った。 「キョン、あんた、SOS団クビよ。今日からこなくていいわ」 あの~、ハルヒ君?君はなんと仰ったのですか? 「あんた、こんな日本語も分かんないの?クビって言ってんのよ」 「おいおい、なんでだよ?俺、なんか悪いことしたかよ?!」 「しらないわよ!うっさいわね!…もう話しかけてこないで」 教室の時間が、いや、全世界が停止した。 おいおいおい、待てって、なんなんだこの状況? 誰か分かる奴がいたら今すぐここにきて状況を説明しろ!! 俺はハルヒになんか変なことをした覚えはないし、先に述べたとおり、ハルヒに特に変わった様子はなかった。それにもうすぐ文化祭という、イベント好きのハルヒが闘牛のように飛びついて行く暇つぶし候補があるのだ…。 ではなぜ?…なんでこんなにも急に不機嫌になったんだ? いや、不機嫌どころか俺を退団させるって、どういう風の吹き回しだ?! 自分の不機嫌に俺を巻き込んでんじゃねえよ!! ハルヒの不機嫌の理由を考えているうちに午前中の授業が終わった。午前中に俺はハルヒが俺を退団に処した理由について一つの結論を出していた。授業中のハルヒのシャーペン攻撃がなかったおかげで十二分に熟考できたからな。 俺は、自分のはじき出した解答の答え合わせをするためにハルヒ以外のSOS団のメンバーを文芸部室に集めた。 「いったいどうしたのですか?あなたの方から僕たちを集めるなんて、珍しいですね?」 古泉は、困ったような0円スマイルを顔に張り付けている 「ああ、ちょっと厄介な問題が発生したもんでな」 「?涼宮ハルヒは、今のところなんの情報操作を行っていない。また、彼女には何の情報操作も行われていない。」 長門は首を右に1ミリほど傾げて補足する 「だろうな、今起こっている問題は何の力がなくても起こり得るからな」 「キョンくん?」 朝比奈さんは不安そうに俺を見上げてくる。 「今日の朝のHR前で、ハルヒに退団を命じられた」 全員の顔が凍りついた。俺は若干焦っていたなぜなら、俺が午前中に出した答えとは 『SOS団でキョンにドッキリを仕掛けよう!!』というものであった。 それならハルヒの朝の言動も理解できる。イベント好きなハルヒのやりそうなことだし、錯乱している俺をどこかで映像に残していて、文化祭で放映するとかなどというしょーもないことを考えていることもありえるからな。 この全員の表情も演技かもしれん。演技であってほしい 「みんな、今からの俺の問いに正直に答えて欲しい。これって、ハルヒが提案したドッキリかなんかじゃないのか?」 「……いえ、少なくとも僕は涼宮さんからそのようなことは聞いておりません」 「私も涼宮ハルヒからそのようなことは聞いてない」 「私もきいてないですぅ」 返ってきた答えは俺に奈落の底にある迷宮に落とされたような困惑を与えた。このようなハルヒがらみの話題に対して冗談を言うような奴らではない。まず、古泉から余裕の笑みが完全に失われ、青ざめている。朝比奈さんなんか失神してしまいそうだ。長門も表情こそあまり変わらないものの、動揺しているのはひしひしと伝わる。…ということは 「ええ、あなたの退団は涼宮さんの…」「わかった」 「ふぇ?キョンくん?どうしたんですか?」 「もう…いい」 俺は精一杯の笑顔を取り繕って 「今までありがとな、古泉、今まで散々悪態ついてきたけどお前の事、割と好きだったぜ?…男同士の友達としてだからな。長門、お前には助けられっぱなしだったな…恩返しできなくて、ごめんな?朝比奈さんも、あなたのお茶は天下一品でしたよ」 「…」 「…」 「…」 全員が長門譲りの三点リーダの沈黙をしたところで 「さようなら」 俺は部室を後にした。 はあ、慣れないことはするもんじゃない。自分でも、自分の笑顔が不自然だと分かった。 ハルヒのあの核融合全開の太陽のような輝きの笑顔に比べたら、俺の笑顔なぞ、向日葵のような太陽の眩しさに顔向けできるようなものでなく、せいぜい月下美人の花のように太陽のいない夜に咲く花くらいの輝きしかないのさ。…長続きしない面もそっくりだ。 …もうあの笑顔を見ることもないだろう。 そう思うと胸の奥に何かが突き刺さるような感じがする。 ……なんだろう、この感覚。 今まで味わったことのない…何とも言えぬ寂寥感、あいつから必要とされないだけでこんなになるなんて。でも、仕方ないな…ハルヒが…神がそう望んでいるなら……。 ……もしかして……いや、そんなことは、…でも……。 午後の授業も終わり、ハルヒは俺に声もかけずに教室を飛び出していった。その後ろ姿にいつもより勢いが感じられないのは俺の気のせいだろう。結局あれからなにも話をしなかったな俺は携帯を取り出し、ある奴に電話をかけた。 ――その頃・文芸部室―― これは困ったことになりましたね。まさか涼宮さんが彼を拒絶するなんて…。この事態に『機関』も恐慌状態です。彼が涼宮さんの精神安定剤のような働きをしていたのですから。 でも、涼宮さんはその薬の投与を自ら否定した。 今後、彼女の精神状態がどう転ぶかは 「まさに『神のみぞ知る』…ですね」 いま、文芸部室には涼宮さんと彼を除いた部員が集まっています。議題はもちろん『涼宮ハルヒの今後』について。 今回の事態に対して、『機関』『未来人勢力』『情報統合思念体』の3勢力は協力協定を結び、この事態の解析、及び今後の対策についての協議をすることとなりました。いままでいがみ合っていた勢力が協力関係を結ぶほど、今回のことは大事なのです。 「今回の出来事は、未来の規定事項から大きく外れているんです」 とは、未来人勢力代表の朝比奈みくるの言葉です。先の出来事で異時元同位体の朝比奈みくるによれば僕は上級要注意人物で、彼よりも禁則事項に該当する項目が多いはずなのですが、未来人勢力は今回特別に禁則を解除するそうです。 「本来ならばキョンくんはSOS団の団員その1の平団員として、高校生活を全うし、涼宮さんと同じ大学へ進学するはずだったのです」 最後まで、昇格なしですか…んっふ、彼は世界のために一番活躍しているんですがね 「その大学には、貴女や、僕、そして長門さんはいるのですか?」 「はい、大学に入った後もまだまだ不確定要素があるんです。それを消化するにはSOS団の存在が必要不可欠になんです。あっ、SOS団も結成するんですよ♪」 ですが、今回の出来事で、それが規定事項でなくなったと、 「そうですね…未来からもそれなりに大きい時空改変が観測されているらしいんです」 そうですか…、長門さん。今回のことに宇宙人は関与していないんですか? 「情報統合思念体からは何の報告も来ていない。彼にも言った通り、情報操作の痕も残ってない」 九曜周防らの『天蓋領域』からの干渉は? 「それもない。現在、天蓋領域には情報統合思念体の監視がある。九曜周防については前回の事件以降、天蓋領域に回帰している。」 ということは宇宙人も今回の事件には関与していないと? 「そういうことになる」 ということは、今のところ一番可能性が高いのは…… 「涼宮ハルヒが彼の退団を望んだということ」 「やはりそうですか…」 どういった心境の変化なんでしょうね……今までは彼が離れようとしても放さなかったのに… タッタッタッタッタタタタ… おや、涼宮さんが来たようですね。ではこの話はお開きにしましょうか ――何時もの喫茶店―― 4時半…約束の時間まであと30分もある。SOS団ご用達のこの喫茶店も、一人でいると違って見えるもんだな。俺がここに人を呼んだのは、俺の中に浮かんだもう一つの解答の答え合わせをするためである。だが、俺はこの答えが真実であってほしくない。だが……可能性はある。 俺が時間を待つ間、口がさびしいのでコーヒーを注文し、それを何も考えないまま啜っていると、ドアの鈴が鳴った。 ――カランカラン… 俺が呼びだした二人は俺を見つけると、一人は軽くお辞儀をし、もう一人は手を挙げ、席に座った。 「久しぶりだね、キョン。またこうして会えるとは思っていなかったよ。」 「お久しぶりです、キョンさん」 俺が呼んだのは、橘と佐々木の二人だ。悪いな、二人とも、学校の勉強で忙しいだろうに。 「くっくっ、水臭いよ、キョン。僕らは“親友”じゃないか。遠慮することはない」 「私も、前回といい、前々回といい、何度もご迷惑をおかけしてしまって…」 そのことはもういい橘、お前にまず聞こうか。 「なんでしょう?」 以前、佐々木こそが、ハルヒの能力を持つはずだった存在だといっていたよな? 「…はい」 前の事件から何か佐々木の能力に変化はあったのか? 「一応は…」 やはり…そうなのか? 俺の出したもう一つの解答は『ハルヒの能力が佐々木に譲渡、或いはコピーされたことにより、佐々木がハルヒに情報操作を施した』こと。自分の力を自覚した状態の佐々木なら、長門の目を欺くことも簡単だろう。 「なぜ、そんなことを聞くんだい?キョン」 「ああ、実はな…」 俺は今日あった出来事を話してやった。 「…それは……また急な話だな。だが、それが僕たちと何の関係があるんだい?」 「幻滅しないで聞いてくれ……俺は、お前がそうなることを望んだからではないかと思っている。」 「……なんで僕がそんなことを望むというんだい?」 「前回の事件の後、おまえと二人で話したよな?今回のことがあって、その内容を思いだしたんだ」 「そして気づいた……お前の気持ちに」 「…」 「すまんな…親友のくせに、気付いてやれなくて…俺はあの時『勘違いをすべき』だったんだ」 「………」 「だが…お前の気持ちにには答えられん……こればかりは、な」 「…………」 「…ひぐっ……うっく…」 突然、佐々木が堰を切ったかのように泣き出した。 わりぃ、突然でショックだったか? 「ああ、ごめん…ぐすっ…嬉しいの……キョンが、私を女としてみてくれたことが…んぐっ…私の気持ちに気づいてくれたことが…」 女言葉で話す佐々木は割かし可愛かった 泣いた佐々木が落ち着くまでに10分かかった。すると佐々木は何時もの口調で 「それで、僕がキョンといつも一緒にいる涼宮さんに嫉妬しているから君をSOS団から離そうと僕が思ったと考えたんだね?」 ああ、その通りだ。すまんな、下卑たこと考えて 「いや、いいんだ、キョン。ただ、信じてくれ。僕は“親友”として君の幸せを願っているんだ。君をSOS団から離そうと、ましてや涼宮さんを利用してなんてそんな外道なことはしない。」 ?…なんでそこでハルヒなんだ? 「…」 「…」 二人は上流階級のパーティーに紛れ込んできたホームレスを見るような目で俺を睨んできた… やめてくれ…泣きたくなっちまう 「「はああああああ」」 二人はマリアナ海溝よりも深いため息をついた 「キョン…君って奴は常に僕の予想斜め上を行く奴だな…」 なんだよ、俺は偏差値にしたら50ジャストの超普通人だぞ? 「じゃあ聞くが、さっきはなんで僕の告白を断ったんだい?」 それは…もしかしたら… 「言っておくが、僕には願望実現能力はないよ。ちなみに、もう閉鎖空間も発生していないらしい」 へ?どういうことだ? 「それは私から説明します」 橘が徐に話し始める 「前回の事件が終了し、現実世界に戻ってきたと同時に、佐々木さんの力は消滅しました。佐々木さんは元から一般人だったんです。能力に変化があったというのは、能力の消失のことです」 おいおい…冗談だろ? じゃあ、前回の事件はなんだったんだよ?!佐々木が神とかなんだとか… 「それは藤原さんが言った通り、自分の思い通りの未来を勝ち取ろうとした時に、都合のよかったのが佐々木さんだったんです。精神の強い方ですし、涼宮さんの『鍵』である貴方にかなり近い存在だったので……何より、力を自覚して使えるし…その藤原さんの陰謀を察知した涼宮さんが佐々木さんに力を与えたんです…一時的にね」 なんてこった……じゃあ俺に近い人物なら誰でも良かったのかよ?! …すまんな佐々木、変なことに巻き込んじまって。 「くっくっ、謝らないでくれ、キョンこちらとしては大変貴重な体験をできたんだ…むしろ感謝したいくらいだよ」 …そうかい。おっと、もうこんな時間だ。悪いな二人とも、時間とらせて今日はサンキューな。 「ええ、さよなら、キョンさん」 「また逢おう…親友」 「って、待ってくれ!!まだ僕の質問に答えてくれてないじゃないか!!」 ……そんなの、言わなくてもお前にはお見通しだろ?“親友”? 「!!!……ああ、そうだな」 ――文芸部室―― キョン君のいなくなった初日の部活、どうなるのでしょうね?…やれやれです 「みんな!!集まってるわね!!」 外面だけは何時もどおりですね。まるで何もなかったかのように… 「…まだ彼が来ていない」 「ん?…彼?…ああ、キョンのこと?あいつならもう来ないわよ。私から退団を命じたから」 ……まるで昨日のドラマの内容のように言ってくれますね………まあ、そこも彼女らしいといえるでしょう。 「そんな事よりも、今から文化祭で行うSOS団の活動内容を発表します!!」 「ちょ、ちょっと待ってください!!涼宮さん!!!」 涼宮さんの饒舌を止めたのはなんとあの朝比奈さんでした。 「どどどどど、うしてて、キョ…キョンくんをt」 「黙りなさい」 涼宮さんは窓の方を向いて仰いました。 思わず鳥肌が立ちましたよ。いやあ、こんな声も出せるんですね?涼宮さん。今の貴女は怒った時の森さん位迫力がありますよ? おやおや、朝比奈さんもあんなに顔を蒼くして…彼女でなくてもそうなるでしょうが 「金輪際、キョンの事を口にするのは禁止するわ。それと、団活に関わらずキョンと接触するのもだめよ。それが守れないものは…」 此方をくるっと向いて ケンタウロスさえ射止めてしまうような眼光で 「死刑よ」 何時も“彼”に言ってのけるそれとは違う、本当の意味での“死刑”を宣告されたような気がしました 「携帯の電話帳も、キョンの分を削除してもらうわ。…いいわね?」 ~一か月後~ ハルヒからSOS団の退団を命じられてから一か月。 SOS団という縛りがなくなった俺は放課後や休日の時間を持て余していた。最初の2週間くらいは谷口や国木田とつるんだり、クラスの女子と遊びに行ったりもした。 これが、俺が以前思っていた理想の高校生活だったはずなんだがな… 俺はすぐに物足りないと感じるようになった。何かにつけてSOS団のことを思い出し、女の子といるときにはなぜかハルヒの事を思い出す。 それらが嫌になった俺は、SOS団の事を忘れようと、ひたすらに勉学に励んだ。すぐに効果は出るもんじゃない。 だが、この2週間ちょっとで授業の内容は何となく理解できるくらいにはなっていた。俺もやればできるもんだな。 その間他のSOS団のメンバーからは何の連絡も来ていない。電話をしてもいつも留守電になっているし、例え校内で顔を見て、お互いに目が合ったとしても直ぐに逸らされ、話そうとしても取り合ってくれない…… これだけでも十分つらかった。今までの当たり前だった繋がりが何の前触れもなく断たれてしまうつらさは想像以上だった。 ハルヒが退団を命じた翌日、席替えがあった。 ハルヒは変わらず窓側最後尾。俺はハルヒの席から前に一個、右に二個という中途半端な位置に置きやがった……視界の端にハルヒが映る席だった。 それからはハルヒと話そうとしてもあいつは逃げていくように俺の前から走り去った話を聞いてもらおうとしても肩を掴むとローキック、腕を掴めば逆の腕から繰り出される裏拳。 正面から止めようとすれば ボディー → 頭突き → ドロップキック の3連携か、 ボディー → 回し蹴り → シャイニングウィザード の3連携だ。 体の傷よりも、心が痛むのは、俺の気のせいではないだろう。 放課後、いまだに部室に行きそうになる足の方向を下駄箱へと修正し、今日は勉強した後ランニングして体を鍛えてみるか、などと考えつつ、学校前の坂を下りて行った。 人通りの少ない所まで歩を進めていくと、 道路の反対側に朝比奈さん(大)がいた やはり来てくれましたか、朝比奈さん(大)。朝比奈さん(大)もこちらに気付いた。 十中八九、今回の出来事についてだろう。 さて今回はどうなる事やら朝比奈さん(大)が道路を渡ってくる。その刹那 バキィ…グシャッ 一瞬何が起こったのか分からなかった。必死に目の前の光景について理解しようとしていると ブチッ…ガラガラッ……ズンッ 俺は絶句した。 朝比奈さん(大)が角材の下敷きになっていたのだ柱の下から覗く鮮紅色の水たまり。 急に血の気が失せる感覚が襲い、あたりに吐瀉物をまき散らした。 なんで?なんでこんなことに…?……うっっ!! 『僕はあなたを救いたいんだ、姉さん』 『だめだ、いずれやってくる分岐の合流ポイントであなたは消滅する』 あの空間での藤原の言葉が脳内で再生される。 まさか…こんな時に… 俺は何も考えられなくなり、 目の前が暗転した ――古泉の自室―― 僕は今、『機関』が用意してくれているマンションの自室にいます つまるところ、今日のSOS団の活動を、涼宮さんは休止なされました。 そういえば、今日で彼が退団してからちょうど1ヶ月になりますね、彼はどうしているのでしょう? 本来ならば、彼を含めたSOS団全員の1日の行動は『機関』によって24時間監視されている はずなのですが、涼宮さんが部室で彼の退団を報告し、我々に彼との接触を禁じてからというものの彼の行動が掴みにくくなっているのです。最近では、もう彼が在宅しているときくらいしか 機関は彼を認識できていません。 もちろん僕も例外ではありません。学校で見かける以外、彼を認識できませんから本当は伝えたいことがかなりあるんです。 『機関』の一員として、そして、SOS団副団長として… しかし、如何せん涼宮さんがそれを阻みます。 学校で会うときは、彼の背後にいつも涼宮さんがいるのです。 まるで「口をきいたら死刑」という視線でこちらを睨んできます。 朝比奈みくる、長門有希も同様で、彼と接触できないでいます。 僕と朝比奈みくる、長門有希の3つの組織はすべて「静観する」という姿勢を見せています。 初めての出来事ですからね、慎重になるのも当然と言えるでしょう。 僕もこの意見には同意します。この1ヶ月、閉鎖空間も数回発生しました。 規模もそれなりで、『神人』の強さも並といったところでしょう。 しかし、その中で通常とは違う点が一つ…。 発生の原因が違うんです。 今までは彼の行動、挙動、言動に対して不満、不安、などの精神の不安定化が起きた時に発生していました。涼宮さんの力を狙った組織による事件の際も、普段とは違う発生の仕方でしたがそれも彼のためであって結局のところ、発生原因は彼に帰結するものでした。 けど、この1ヶ月で発生した閉鎖空間の発生原因はほかならぬこの僕だったのです。彼に学校で会おうと彼の教室に向かい、彼を見かけたとき、彼の自宅に行こうとしたとき、まさにその瞬間僕の携帯が振動します まるで、僕を彼に近づけたくないというように…。 彼女は第六巻の鋭い方です。おそらく、無意識下で僕の、彼への接近を遠ざけているのでしょう。 僕が閉鎖空間の原因になっている以上、これ以上涼宮さんの機嫌を崩すわけにはいきません。 僕の最大の任務は『涼宮ハルヒの精神の安定化』です。幸い彼も彼なりの普通の生活を行くっているようですし、これ以上彼にかかわろうとするのは、デメリットのほうが大きい。 彼への接近を一時中断しましょうか。 ……?おや?携帯が鳴っていますね? 『機関』のメンバーからですか…… ハイ… 彼の足取りがつかめた?今どこにいるんです? ……へ?病院? 今、僕は彼の入院した病院へ向かっています。 無論、朝比奈さんと長門さんも一緒です。僕が呼びました。 その道中 「長門さん、彼が病院へ搬送されたことについて、何かご存じありませんか?」 長門さんは、一瞬躊躇うようなそぶりを見せ、朝比奈さんのほうを見ました。 「ふぇ?」 「ある程度予測はできる。しかし、この場で話すことは推奨できない」 そう言うと、長門さんは口を紡いでしまいました。 「朝比奈さん、未来との連絡は?」 「えっ?えぇえと……辛うじてまだ連絡はつきます…けど……」 けど? 「私、時間移動ができなくなっちゃいました…」 それではあなたは元の時間に帰れないじゃないですか!! 「それはそうですけど…でも、この事件が解決するまでどのみち帰れませんし、帰れないならそれはそれでいいかなぁ、なんて思ったりもするんですよ」 その時僕は思った。ああ、朝比奈さんにとってはSOS団はもう故郷のような存在に、帰りたいと思う場所になっているのだと。等という会話をしていると彼のいる病院に着いた。 彼の身が案じられる。僕たちは病院内へ入ろうと自動ドアの前へと進みました。 その時 「あんたたち、何してるの」 聞き覚えのある声。 そう、我々の目の前にいるのはSOS団団長、涼宮ハルヒ、その人である。 「実は僕の親戚がこの病院に入院していらしゃるので、お見舞いに。お二方は今日は団活は休みだからと付き添ってくれたのですよ。僕もよく皆さんのことを紹介してるんですよ。いつかの機会にぜひ合わせてくれとも言っていたので、ちょうどよいかと思いまして」 僕はとってつけの言い訳をする。口が裂けても彼を見舞いに来たなどとは言えない。 「ふーん」 涼宮さんはさも信じられんという眼差しを僕に向ける。 「涼宮さんは、どういったご用件で?」 とっさに話題を変える。 「薬を処方してもらいに来たのよ」 涼宮さんは錠剤の入った袋を僕たちに向けてぶらぶらさせている。 「「「えっ」」」 長門さんまでも声を出して驚いてしまった……。 この薬は… 「ところで、古泉君?」 「は、はいぃ!!」 突然声をかけられ、思わず声が裏返ってしまった 「ぷっ。なによそれ」 涼宮さんがいたずらっぽく笑う…正直、たまりません……。 「お見舞いは、どうしても今日じゃなきゃダメ?」 「いえ、そういう訳では…」 「じゃあ、今度にしてくれない?」 え? 「せっかく団員みんな揃ったんだし、このままこの町で不思議探索しましょ」 …違う、『みんな』揃ってなどいない。この彼が欠けたSOS団など、朝比奈さんのおもうSOS団ではない。 「レッツゴー!!」 涼宮さんは、精神安定剤をバッグにしまうと僕の手首を引っ張って走り出した …ああ、神よ、……あなたは何をお望みなのです?
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「ねえあんたたちっ! みゆきちゃん見なかった!? こっちの方に飛んできたはずなんだけど……」 「いや知らんが、ハルヒよ。あんまり着物姿で走り回らないほうがいいと思うぞ。折角鶴屋さんの家の人から綺麗に着付けて貰ってるんだ。着物だって借り物なんだし、鬼ごっこが出来る程ここが広大だからといって早速始めちゃダメだろ」 「そんなのやるわけないでしょ! みゆきちゃん、着替え中に髪留めを取るのを渋って逃げちゃったのよ。どこ行ったのかしら……」 桃色の振袖を着飾るハルヒは、八重桜の下で座ってでもいればこれ以上ないほどの美麗な風貌を見せているのだが……やはりと言うべきか、こいつは裾をまくって鶴屋さん宅の廊下を跳ね回っている。 「涼宮さんらしくて良いではありませんか。ああやって快活な姿を見せていてくれるほうが、こちらとしても心が安らぎます。それに……」 古泉は俺に笑顔を向けると、 「異世界の問題も、無事に解決したことですしね」 ……現在、俺たちは鶴屋さん宅での俳句大会を終えて、どうせなら八重桜を背景にみんなで記念写真を撮っておこうというハルヒの提案と鶴屋さんの同意によって始まった女性陣の和装への着替えを、男性陣が待つという形になっている。 つまり今はゴールデンウィーク真っ最中であり、こうやって俺たちが平穏無事に今日を過ごせているのは、当たり前なことだが世界がちゃんと正気を保っているからだ それは俺たちの行動によって異世界の問題がちゃんと解消されているからに他ならないが、それについて語る前にまず、俺が今日ここに来て知った二つの驚きの事実について話しておこう。 一つ目は、鶴屋家の秘密の蔵に壊れた亀型TPDDが保管されていたことだ。 それを見せられて驚きを隠せない俺と古泉を見ながら、ニヤニヤを隠せない上級生はこう言った。 「いやーごめんねっ! あたし実は知ってたんだ、みくると有希っ子の正体っ。あたしが中一のときだったかな? これがいきなり空からうちの庭に降ってきてさ、中から、みくると大人っぽい有希っ子が出てきたんだよ? あたしは宇宙人もなんも信じてなかったんだけど、流石にあの登場で自己紹介をされちゃった日にゃあ、いくら鶴にゃんでも信じざるをえないねっ! あやや、あのときはたまげたっ」 「……じゃあ鶴屋さんは、かなり前からその事実を知ってたんですね?」 「ま、そういうことになるかなっ。まこと申しわけないっ。んで、そこで二人から事情を聞いてさ、正体どころか今日までの話をあらかた聞かされてたんだっ。いやあ、無事に世界が続いてくれて良かったにょろ! こうなったってことは、キョンくんはあたしの質問に答えを出したってことだよね。宇宙人と未来人、どっちを選ぶかって話っ」 「ええ。そうなるんでしょうね」 あとで気付いたのだが、恐らくこの人は、その問題を俺に投げかけることによって自分にとって大事な人は誰かということを考えさせたかったのだ。素直じゃない俺を上手く手玉にとった、なんともひねくれた問題である。流石は鶴屋さんだと言わざるを得ない。 「にゃはは。結局キョンくんが選んだのはハルにゃんだったってことだよねっ。ラブレター見たよ、あっついあつい! 触ったらこっちまで火傷しそうさ!」 何故あの手紙の存在を知っているのかについては後回しにしておく。 「それにさ、驚いたって言えばまだまだあるんだ。二人が墜落して出てきたときなんだけど、どうやらみくるが操縦ミスしちゃったっぽくって、大人の有希っ子はそれはもう鬼のようにみくるを叱ってたにょろ! もうみくるは半泣きで、しかも大切な部品が別の時代に落ちちゃってさあ大変! そして、それを見ちゃったあたしに二人が協力を求めてきたってわけさ。ほんと、高校に入ってから二人に再会して、みくるはドジッ娘のまんまだったけど、有希っ子のあまりの大人しさには我が目を疑っちゃったよ! まるで別人さっ」 ああ、通りで最近長門と仲良くなってきた朝比奈さんが、大人になるとまた長門を恐れてしまっていたわけだ。それに、未来の長門はそんなに饒舌なのだろうか? 俺のイマジネーション能力では皆目見当もつかないので、是非一度見てみたい気がする。そして、そのときに紛失した部品があの金属棒だったってわけだな。 続く二つ目の事実なのだが、それは谷口と周防九曜が知り合いであり、しかもクリスマス前に谷口が付き合ったと言っていた相手が、なんとこの周防九曜だったという話だ。 また、谷口は人違いだったというおマヌケな理由で振られちまったんだそうな。 まさか周防九曜は俺と谷口を間違えたなんて言うんじゃなかろうなと思いきや残念ながらそうだったため、谷口のどこが俺に似ているんだと当然の抗議を申し立てたとき、古泉は「いえ、お二人には実に良く似た部分がおありですよ。だから中学生の涼宮さんも………と、これは秘密です」などと、どうやら谷口もハルヒに告白をしていたということを匂わせるような発言をした。ま、別に聞かなくてもいいことさ。 と、ここでも一つ疑問が生じたと思うので説明しておく。 今回の鶴屋家主催花見俳句大会、実は参加者がSOS団以外にも佐々木たちや俺の妹、そしてミヨキチやハカセ君に至るまでSOS団関係者のほぼ全員が集合してしまっているという様相を呈しているのだ。 谷口と周防九曜が運悪く鉢合わせたことやこのイベントの参加者がこれだけの数に肥大化したことにも驚きを隠せないが、それを容易に許容できる鶴屋家の敷地面積と二つの意味での懐の深さにもあらためて一驚を禁じ得ない。 まあ、ここにやってくる繋がりとして他のメンバーはなんとなく分かるとして、佐々木たちがここに参加しているのは、会誌を仕上げた土曜日の次の日、世界の運命を分ける日であった日曜日にSOS団と鉢合わせたからだ。異世界の問題については、ここから説明を始めよう。 異世界ではそこでハルヒが俺たちの正体に気付いたことによって、みんなの記憶が失われてしまった。 しかしそれは今回の詩集、SOS団の面々が自分自身を題材にしたポエムを朝比奈みゆきが異世界にもたらしたことがキッカケとなって異世界は正気を取り戻した。 そうやって全てを知った異世界の俺たちは、こちらの世界に同期する道を選んだと聞いている。 その選択はSOS団団員のみんなが全てを団長に一任して導き出されたものらしい。 つまり異世界の俺たちはハルヒに全てを打ち明け、その上で、分裂した世界のこれからをどうするのかハルヒ自身の意思に委ねたというわけだ。 そしてあいつはこちらの世界を選び、分かたれた世界を一つにした。 俺には、どうしてハルヒがその選択をしたのかわかる。 非日常が日常になり、その身に過ぎた力があるのを知ってしまったとき……ハルヒはなんと答えるのか。 ――SOS団。涼宮ハルヒと俺たちの冒険は、本当が嘘になる世界で不思議を見つけることが目的じゃない。普通でも普通じゃない日々の中で、気の向くままに遊んでいるのがSOS団であり、ハルヒの……俺たちの望みなんだ。 そう思ったとき。 鏡の世界から投げられたハルヒの願いを、俺は確かに受け取った気がした。 ……とまあ、今回ハルヒが書いたポエムにも、それを感じさせるような言葉があったんだがな。 俺のポエムを見た後にハルヒが書いた、答えはいつもあたしの胸に、から始まる詩の中に。 そしてこちらの世界の日曜日では、俺たちは土曜日に中止となった不思議探索を通常営業で行った。 そこでばったり出会った佐々木たちをハルヒが俳句大会に誘ったのを発端に、続々と参加者が増えていったという次第なのである。 うん。今日までの流れの説明としてはこんなものだろう。 しかしまあ、佐々木と橘と周防九曜は分かるとして、藤原がやってきたのは正直意外だったな。こいつはてっきりこっちの誘いを断ってくるものだと思ってたよ。 「ふん。この国の文化に触れておくのも、僕のこれからの任務において有意義だと思ったんでね。たまには予定表にない行動をしてみるのも悪くはないよ」 「未来人の任務……これは僕の予想にしか過ぎませんが、もしかして貴方は、日本書紀を作成して聖徳太子という虚構の人物を作り出すのではないですか?」 女性陣の着替えを待機している男共が軒を連ねているあまり面白くない風景で、古泉が藤原に言う。こいつらの隣に並ぶというのもなんて居心地が悪いことなんだと思いながら、 「なんだそりゃ。つまり、聖徳太子はいなかったとでも言うのか?」 こくりと古泉。そして人差し指を立てながら、 「ええ。日本書紀でその存在が語られている聖徳太子が実は存在しなかったというのは、最近世間にも周知されてきている事実です。僕はね、このように往々にして歴史書が実際の事実と違っているのは、実はそれが未来人によって作成されていたものだったからなのではないかと想像してしまうんです。こういった方法であれば直接的にその時代を変えることなく、それからの未来を導いていけますからね。実際に聖徳太子という人物の存在は、現代の僕たちを形作る上で重要な影響をあたえていますから」 古泉の台詞に、ぷいと顔を背ける藤原。古泉は、藤原不比等がどうたらと話を続けていたかと思いきや「それよりも」と藤原の視線を自分に向けさせると、「あなたには、色々と伺いたいことがあるのですが」 藤原は溜息をつくように、 「彼女から聞いているよ。というより、全てを知らされたと言うべきか。……まさか朝比奈みくるの組織も長門と繋がっていたとはね」 「どういうことだ?」と俺が聞くと、 「長門は、僕の組織と彼女の組織を統制することによって世界を両側面から回していたのさ。僕の組織の方がどちらかといえば表で、彼女の方が裏になる。だから、こちらの方が朝比奈みくるたちよりも知らされている情報が少なかったんだ。……だが、その真実を知ったからといって、僕たちはこれまでの行動意義を疑ったりはしないよ。全ての行動が自らの意思によってなされたことに変わりはないんだ」 「その思想は《機関》の理念にも通ずるところがありますね」 そりゃ何なんだ、と聞くと古泉は遠い目をして、 「……目の前に続くこの道を、我々は自らの意思で歩いていくのだろうか、はたまた見知らぬ者の意思によって歩かされるだけに過ぎないのか――。人はその疑念を抱いた瞬間に、自身の立っている場所すら見失ってしまうことがある。しかしそれは、過去を振り返ってその道に不安を抱いた者が陥る自縄自縛の考えでしかないのです。他人の駒になってしまうことは忌避したいものですが、それを気にしてばかりいて、己が立ち止まっていることに気付かないというのは輪をかけて愚かしい行為だ。だから、僕たちはいつだって自分の意思をもって前に進むことを忘れてはならないのですよ。他の者の意思など、実は何の関係もないのです。自分の足を進めることが出来るのは、自身の意思の力以外には存在しないのですからね」 「つまり、いつだってやれることをやるだけってことか?」 「その通りです。それこそが真実に至る唯一の方法であり、また、あなたの生き様でもありますね」 これは素晴しいことです、と古泉。俺は別にそんな高尚な考えで動いているわけじゃないんだがな。出来ることしかしないだけなんだ。 「それは簡単なようでいて相当難しいことなのですよ。己に出来得ることを見極め、それを実行に移す。これは見極めるというだけでも至難の技だというのに、あなたの場合はほぼ直感的にそれを理解、行動し、その姿勢をいついかなるときも崩さない。良くも悪くも理詰めの考え方しか出来ない僕からすれば、あなたの真実を見る能力は天才的で驚嘆に値します。だから僕は、あなたには敵わないなと思うのですよ」 あんまり褒められても気味が悪いだけでしかないぜ。それにおだてられたからといって、俺がお前に敵うなんて勘違いはしない程には客観的に自分を判断する力は持ってるつもりだ。 俺たちの会話を黙したまま聞いていた藤原はチラリと古泉を見やると、 「……そこまで考えが及ぶなら、僕がキミに話すことはないんじゃないのか?」 「そうですね、あなたがもたらしてくれた理論のおかげであらかたの予想は立っています。涼宮さんの情報創造能力の正体、そして未来組織の正体についてもね。こちらから話をして様子を伺ったほうがいいのならそうさせて頂きますが」 「どの道僕が言えないこともある。キミの推論を聞いているほうが良さそうだな」 「ではまず、僕の考える情報創造能力の正体についてお話しましょう」 すると古泉は俺に、今度は四本の指を立てて見せ、 「この物質世界の物理法則は、複数の『力』によって支配されてます。それらの力は宇宙開闢の際一つの力だったものが分化して形成されたものだと推察され、これらの力が元々一つであったなら、その全てを統合し、宇宙の仕組みを統一的な原理から考えられるのではないかといった試みがなされているのですが……現在はその全ての力を統一しようとする理論の《超大統一理論》は実証されていません。が、そこで涼宮さんの時空改変能力の登場です。彼女が世界を『箱』から『紙』に変えたことによって次元の性質、つまり世界に内包されていた『力』が統合され、あの情報創造能力が発生しています。このように、世界の入れ物を変えることによって中身を統一させるという理論が涼宮さんによる《超大統一理論》であり、それは能力の発現により実証も得ている。つまり彼女に備えられた神の力の正体は、宇宙の始まりに存在し、僕たちの世界の全てを創造した『大いなる力』だったというわけですね」 まさか、あの唐変木な力にそんな正体があったなんて想像もしなかったよ。単に無茶苦茶なだけだと思ってたからな。 「なんだ。じゃあハルヒは、その力を発生させるために時空を改……」 と言いかけたところで俺は理解した。 そうか。ここでもやっぱりハルヒは力が欲しかったんじゃない。 あいつが時空を改変した理由は、小説誌に書いたハルヒの時間平面理論に関する論文が全てを語っている。 SOS団を恒久的に存続させるための方程式。 つまり俺たちと出会うことを望んだあの小さいハルヒが、SOS団でいつまでも過ごしていけるような世界を夢見て、それが時空の改変に繋がったのだろう。《あの日》に出会った俺が『鍵』となって、ハルヒは次元の箱を開いてしまったんだな。 すると古泉は遠い目をして、 「……実を言うと僕は、機関に限らず、SOS団にもいつか終わりの日はやってくると思っていたんですよ。本音を言うと今回の事件でそうなるのではないかと。……でも、そうではなかった。物語を構成する起承転結において『結』とも言えるあの出来事を通して、逆に僕たちは一つになることが出来たんです。――ここで僕は考えてしまうんですよ。ひょっとしてSOS団には、終わりなどないのではないかとね」 「……それはそれで怖い感じもするが、その理由はなんなんだ?」 古泉は微笑み、 「――SOS団が『結』を迎えたとき、そこには『団結』という言葉が形作られるからです。現に《機関》は、これから長門さんを始めとして情報統合思念体と共に歩むことに決めました。個人ではなく組織としてであれば、悠久の時を生きる長門さんをずっとサポートしていくことが可能ですからね。そして未来の《機関》こそ、朝比奈みくるさんや藤原さんの所属する組織、時間の流れの外側に身を置く時空管理局となるのでしょう。これから《機関》はそのように形態を変えていくからこそ、未来の理論も伝えられたのではないかと」 ……今まで散々話を聞かされてきたが、『団結』ね。まさか最後をそんな適当な話で締めてくるとはな。脱力せざるをえないぜ。 「そうですか? 終わりの話としては相応しいかと。それに僕は、この理論が一番好きですよ」 ふん、と俺が鼻を鳴らすと、藤原は話が終わったのを見計らったように、 「ところで古泉一樹。あんたは長門をどう思ってるんだ? 彼女といつまでも一緒にいたいだとか、そういうことは思っていないのか?」 いきなり藤原は何を言い出すんだろうか。たまらず俺は古泉に目を配る。 「流石に僕には、ずっと長門さんの傍にいるなんてことは出来ませんよ」 その言葉の意味はなんだと問いただしてやろうかと思ったが、古泉は間髪入れずに、 「ですが、そうですね……せめてこの命が続く限りは、彼女と共に過ごして行きたいものです」 そんなことを屈託のない笑み混じりに話していたとき、 「おわっ!? な、長門?」 「…………」 長門がいつの間にか俺たちの隣にちょこんと正座していた。 青紫色の着物に身を包んだ長門は、虚を突かれた古泉に視線を向けて首をこてんと傾けると、 「……古泉一樹」 そして言った。 「それは、プロポーズ?」 こいつはお前と一生添い遂げる覚悟みたいだしな。プロポーズなんじゃないか? 俺がそんなことを言うと古泉はやや困りながらもまんざらでもない反応を見せ、その姿を見ていた藤原は小憎らしい笑みを作り、 「ふん。せいぜい尻に敷かれないようにするんだな。僕が存在するためにも、頑張って欲しいと思っているよ」 「それは……」 古泉は微量の驚きを顔ににじませている。それは俺も右に同じだ。 まさか藤原は、長門と古泉の……? 「理論的には可能」 長門が淡々と口を開いた。 「ヒューマノイドインターフェースが行使する情報操作能力は、あくまでハードではなくソフトの問題。有機生命体としてのわたしの構成情報は人類のそれと同等であり、あなたたちとのあいだに生物学的な意味での差異はない。つまり、もしわたしと古泉一樹がセッ………………」 はい。テイクツー。 「わたしが普遍的な女性として生きることには、どんな弊害や支障も発生しない。唯一問題があるとすれば、相互間の精神的な問題だけ」 「じゃあ長門、お前は古泉のことをどう思ってるんだ?」 「…………」 じっと古泉の顔を見つめる長門。 「わからない。……でも、彼がわたしを守ってくれようとしてくれたことは知っている」 そして確かに、長門はにっこりと微笑んで言った。 「ありがとう」 もうおめでとうとしか言いようがないぜ古泉。これから頑張っていけば、なんとかなりそうな予感がするじゃないか。長門の笑顔を独り占めするなんて、うらやましいやつめ。 「あまりいじめないで欲しいな」 古泉は苦笑し、 「それになじり合いの勝負ならば、こちらには必勝のカードがあることをお忘れなく。組織の人間ではなく対等な友人関係としてであれば、追い詰められた僕がそのカードを切らないとは限りません」 なに言ってんだ。それはお前たちが血みどろの抗争をやってるってのが嘘だったことで相殺だ。言われなきゃわからんとはいえ、えらく無意味な嘘をついたもんだな。 「それ相応の苦労はしているつもりですよ。それに、組織には裏の顔があるほうが面白くはありませんか? 《機関》はそれこそ独占企業のようなもので、いわば敵なしの平穏そのものでしたからね。あなたの好みに合わせて、軽く色をつけてみただけです」 「そりゃお前の趣味だろうが。それに考えてみれば、一番の対抗組織だったであろう橘京子の組織とですら流血沙汰を起こしていた様子はなかったんだから、俺も気付くべきだったよ」 古泉は小さく笑い、 「それはうかつでしたね。ですが、そんな嘘を通すために当時敵対していた彼女たちと口裏あわせをするわけにもいきませんし、流石にそこまで安穏としていたわけではありませんから」 話を戻しましょう、と古泉は、 「長門さんとのことは正直戸惑っています。ですが……」 無表情を貼り付けている長門を見て、 「カマドウマ事件のとき、彼女に読書以外の趣味を教えるという件を後回しにしていたことを思い出しましたよ。そろそろ、それを考えるべき時期のようですね」 そう言いながら、古泉は流麗な笑みを長門に向ける。 俺が長門の表情に変化がないか凝視していると、 「もちろんそれはあなたもです。なんせ、あなたの方は既にラブレターまで渡しているのですから」 ここでネタ晴らしといこう。鶴屋さんやこいつがあの手紙の存在を知っている理由は、ある意味で俺の自業自得であり、ひとえにハルヒの暴挙のせいでもある。 思い出して欲しい。俺の書いたポエムは、本来機関紙に掲載されるためのものであったということを。ちなみに俺がそれを思い出したときは戦慄したね。 そう。ハルヒはあれをなんのてらいもなく無編集のまま機関紙に載せたのだ。 これはまさに俺の自業自得なのだが、ハルヒがあの内容をまんま載せた行為は暴挙だとも言えるんじゃなかろうか。 そうして俺のポエムは、機関紙の配布完了とともに全校生徒はおろか異世界にまで知れ渡ってしまったのである。 「……やれやれ」 俺はすべての憂鬱な事柄をこの一言で済ますことにした。人間諦めが肝心なのであり、ここで俺がまともに神経回路を繋いでしおうものなら、ひょっとして俺は空を飛べるんじゃないかと考え始めて暴走を開始するのは必死だからである。 「あ、キョン先輩。近くに涼宮先輩はいないですよね? フフ。この格好どうですか? 着物なんて初めて着ちゃいました」 物陰からぴょんと跳ねて朝比奈みゆきが姿を現した。エメラルドグリーンの着物姿をくるりと見せて微笑んでいるのは実に愛らしいのだが、いかんせんスマイルマークの髪留めが格好に似合っていない。 「むう。これはしょうがないんです。あたしすごいくせっ毛で、他の人にいじられるよりはこのまま留めておきたいんです」 そういうものなのかね、と思っていると、 「あなたに渡したいものがある。こっちに来て」 「ほえ?」 長門が朝比奈みゆきを呼びつけて渡したものは、髪飾りだった。 「それ、もしかしてあの金属棒のか?」 聞きながら品物を見てみると、それは透明なガラスで作られたような綺麗な雪の結晶だった。 「って、花じゃないじゃないか。雪には六花って呼び方もあるらしいが、花言葉なんてあるのか?」 すると藤原が、 「アイリス? ちょっと貸してくれ」 と長門から髪飾りを受け取り、それを陽にかざすと、 「アイリスの花言葉は『架け橋』だよ。それはアイリスという名前が、虹を意味しているからなんだ」 雪の結晶が光を受けて、藤原の顔にスペクトルが映し出される。長門はこくりと頷き、朝比奈みゆきを見つめて、 「あなたが平和な日常を送れるようになるためのお守り。出来るだけ身につけておいて欲しい」 そういうことかと思ったね。 朝比奈みゆきは、朝比奈さんが北校を卒業した後で北校に入学し、朝比奈さんの後釜としてSOS団に入ってくる予定らしい。学校でむやみに能力を使ってしまわないようにと考えた長門の配慮なのだろう。 そしてこの花言葉を選んだ理由は、朝比奈みゆきが思念体と人の仲を取り持つような生い立ちをしてきたからなのかもな。それに確かアイリスには、他の花言葉もあったような気がする。 「うわあ、とっても綺麗……。長門おねえちゃんありがとう! じゃあこれは代わりにあげちゃいます。あ、お揃いがいいな」 と言って、自分の髪留めを長門のと同じ形の雪の結晶に成形した。おいおい、誰か他のやつに見られやしなかっただろうな。 「僕も満足した。なぜか長門はこれを僕に触らせようとしなくてね。ほら、返すよ」 藤原が朝比奈みゆきに髪飾りを渡し、そしてみゆきの髪飾りを受け取った瞬間、パキン。という不穏な音が周囲に響く。 「あ」 藤原が髪飾りを掴み割ってしまったのを見て、全員が思わず声を出した。 長門は無駄のない動きでみゆき製髪飾りを藤原から掠め取ると、 「……あなたにはもう触らせてあげない」 「な……」 藤原は怪訝な顔をして、そういうことか、と呟く。 藤原と長門がそんなコントをしているとき、朝比奈さんがぱたぱたと近づいてきて、 「待たせちゃってごめんなさい。あ、長門さんとみゆきちゃんも一緒みたいで良かった。みんなの着替えが終わったからそろそろ写真を撮るみたいです。あそこの木の下に集合って言ってました」 朝比奈さんは、オレンジというよりは山吹色と表したほうが相応しい着物に身を包み、素人目からでも分かるその良質な作りの服は、それだけでいずれかの童話にナントカ姫として出てきそうな程彼女を引き立てていた。 と、この和服姿とは別に、俺は朝比奈さんの姿を見ていて一つ思うところがある。 今回の異世界騒動なのだが、タイミングが良いのか悪いのか、この朝比奈さんは《あの日》の裏で起きていたこの事件を知らないのだ。大人の朝比奈さんが知らなかったので当然なのだが、これはもしかして、小さい朝比奈さんの負担を減らそうという未来の長門の配慮だったのではないだろうか。朝比奈みゆきに髪飾りを譲ったり、あいつは自分のことよりも周りを優先させてしまう節がある。それを考えても、やはり俺たちが一緒に過ごせる時間のなかで、長門のために俺たちが伝えられることはすべて伝えて行きたいと切に思う。 それに未来では朝比奈さんも待っているし、みゆきだって藤原だっている。考えてみれば、俺の子孫とハルヒの子孫がそろえばSOS団が結成出来そうだよな。 出来れば、俺はそうなって欲しいと願いつつ。 「みんな集まったみたいね! じゃあ早速この色紙に未来へのメッセージを書いて頂戴。未来って言っても大人の自分にじゃなくて、遠未来の未来人に向けたものよっ」 「なんだ、タイムカプセルの準備はしてないみたいだが、しないのか?」 「気付いたんだけどね、タイムカプセルは自分たちで掘り起こすべきであるイベントなのよ。それにあたしたちの行動は未来にとって常識レベルの歴史になってるはずだし、あたしたちの生み出したものは石油並みに生活に必須なものとして使われているんじゃないかって思うわけ」 あながち間違いでもないことを揚々と言い切るハルヒは、 「だからタイムカプセルを残したところで、未来人にとってはあたしたちが石炭をお宝として見つけるようなもんでしょ? それより、SOS団からのありがたいメッセージがあったほうが喜ぶはずよ。ってことで、みんなで寄せ書きをしてそれを埋めようってことにしたの」 ふふんと誇らしげに胸を張る。なにが誇らしいのか俺には分からないが、良案なんじゃないか? なんてったって紙は安全だからな。奇怪なメカや珍妙な物体が長い間箱の中に入ってるよりましだ。 俺が将来このメッセージを掘り起こすであろう朝比奈さんたちの身を案じていると、くっくっと特徴的な笑い声が聞こえ、 「涼宮さんは面白いことを考えるね。この場に来てしまうのは正直気が引けたんだが、理由もなく断るような真似をしなくて正解だった。ほんとに楽しいね、ここは」 ハルヒも長門も朝比奈さんも相当に男の目を引っかけるのだが、俺の目はそれに少々慣れていたのかも知れない。 普段と変わらぬ口調と服装のアンバランスさが何らかの効果をもたらしているのか、緋色の着物姿の佐々木は文句なしに美人だった。 「ほら、佐々木さんに見とれてないで、あんたからまず書いちゃって。もし面白くないことを書いたりしようものなら、なにが面白かったのかをみんなの前で説明させるからね」 ぐっとくる台詞を言うじゃないか。なんせ、これが冗談じゃないっていうんだからな。 ここでの面白いとは何のことを言うのだろうと思いつつ、俺はハルヒから渡されたサインペンと色紙を構える。何を書こうか。 「そうだな……」 ここは一つ、未来のSOS団結成に足りない俺とハルヒの枠を埋めてもらって、あっちのほうでSOS団を結成してもらうように頼んでおくか。 俺はスラスラとペンを走らせて、その辺でアホな面を下げていた谷口へと色紙を手渡す。 すると谷口は「ぎょっ」というありえない悲鳴を出し、 「おいおい。ポエムの件に関しちゃあ俺も書くように言ってたからよ、たとえラブレターを読まされても文句は言わん。まさか本当に書いちまうとは思ってなかったが……。しかしだなキョンよ。こんなところでまでノロけられちゃあ流石に滅入るぜ?」 何を言ってるんだなんて言葉はお前には飽きるほど言ってきたと思うんだが。いい加減俺にも分かりやすく物事を話してくれると助かる。 「貸しなさい」とハルヒは色紙をひったくると、俺が書いたメッセージを見るやいなや顔を朱に染めて、 「……ばっ! あんた、なんてこと書いてんのよ!? バカじゃないの、このエロキョン!」 いやあ罵られている理由がまったくの不明であるがゆえに、こちらとしてはなんともリアクションがとれないぜ。 一体いま何が起きているのかを確認しようと、俺も再度自分の言葉を確認してみると、 「げ」 どうやらとんでもない齟齬が発生しているらしいということに気がついた。 「ち、違う! これはそういう意味じゃないんだって!」 「おや、ではどのような意味なのです? そのままの意味ではないのですか?」 小憎らしいスマイルを浮かべて俺をなじる古泉。さっきの仕返しをしてきやがるとは、お前も中々やるようになってきたじゃねえか。いいだろう、覚悟しろよ古泉? 今からお前が未だかつて見たことのないほど頭を下げて降参する男の姿を見せてやる。 そんなこんなを言いながら、全員が集合していることもあって、場内ははやしたてるように一気に騒がしくなった。が……。 俺は、自分の書いた言葉に対するみんなの誤認を強くは否定出来なかった。 一人の少女の憂鬱から始まった物語。 それはいつの間にか俺たちの物語となって、これから先の未来へと続いていく。 しかしまあ、俺はここらで、未来に向けた俺とハルヒのメッセージをもって長く続いたこの物語に一応の節目をつけておこうと思う。 まず、我らが誇るべきSOS団創設者であり絶対不可侵なる団長、涼宮ハルヒの言葉はこれだ。 『未来永劫、SOS団に栄光あれ!』 みんなで撮った集合写真を見せられないのが悔やまれる。みんなこの言葉を胸に、相当良い笑顔をうかべていたんだぜ? そして最後を締めくくるのは、僭越ながら俺の言葉である。 先に言っておくが、俺はSOS団と、みんなと、そして何よりハルヒに出会えて最高に良かった。 そんな俺が書いた言葉は……、 『俺とハルヒの子供をよろしく』 さて。 この言葉が将来どんな意味を持つことになったのかは――禁則事項だ。 涼宮ハルヒの団結 完
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最終章 その後、朝比奈さんとハルヒには妹のお守りを頼み俺はその間に校庭の隅に穴を掘り、朝比奈さん(大)と長門の遺体を埋めた、古泉の遺体は見つからなかった。 恐らく閉鎖空間の消滅とともに消滅してしまったのだろう。 それから五日間、俺とハルヒと朝比奈さんは学校にも行かずに家に引きこもっていた。 長門の必殺技のおかげで世界は大混乱していた。北向きに放たれた衝撃波は一瞬にして中国、韓国、北朝鮮、モンゴル、ロシアとその方向にある大体の国を新地に戻してしまっていた。 当然学校も休みである。日本に土地的に被害はなかったのだが経済は混乱中であった。しかし働かずに飯は食えないのでほとんどの店は大体四日後には通常通り営業していた。 六日目、布団の中で蹲っていたら携帯がなった。朝比奈さんであった。 「あのぅー、実は未来から指令が来ていたんです。七日前に。今気づいたんですけど。 実はそれによると 『今、これをみているときにはとても悲しいことがあったはずです。 ですがあなたはそれを乗り越えなければなりません。例え未来の自分の死を見てしまったとしても、親しい友人が亡くなったとしても。 あなたは強い子です。だからかならず乗り越えられます。 本当につらいと思いますが、私からの最後の指令です。 あの日から一週間たったらキョン君を呼び出してこれからあなたがすべきことを全て教えてもらって下さい。 彼は全て知っています。 それがすんだらすぐに未来に帰って下さい。 あなたはこれから一週間前のあの日のために剣術を習ってもらいます。 こんなことを言うのもなんですががんばって下さい。』 って事なんですけど。どういう事なんでしょうか。」 おそらくは七夕や消失騒動のときや一週間後の朝比奈さんが来たときのことだろう。 「わかりました、今から会えますか?ハルヒも一緒に。」 それからハルヒにも電話をかけ。喫茶店「夢」で会うことになった。 「元気そうだな、ハルヒ。朝比奈さんも。」 「どう見たら元気そうに見えるのよ。馬鹿ね。」明らかに元気のなさそうなハルヒ。 会釈する朝比奈さん。 世間話をする余裕などなくすぐに本題に入った。 七夕のとき俺を導いてくれたこと、 ハルヒがいなくなったとき助けてくれたこと、手紙で指示を出してくれたことなど全て包み隠さずに教えてあげた。 ハルヒは完全に非現実的な話や裏話を聞いて少し元気になったようだった。 「わかりました。いままで本当にありがとうございました。私は未来に帰ります。」 そして何ながらハルヒと抱擁を交わす。 そして瞬きした瞬間に、消えた。 自分が死ぬ運命を知っていて、友達の未来のために活動し、友達の未来のために命を捨てる。 なんて強い人だったんだろう。 ハルヒは俺に背を向けわなわなと肩を震わせていた。 泣いているのだと思うと思わず抱きしめたくなった。 が俺のそんな感情すぐにかき消される事となった。 いきなり振り向いたハルヒはこう言った。 「キョン、SOS団は何をする活動だったか覚えてる?」 「確か…『宇宙人や未来人や超能力者を探しがしだて遊ぶ。』だったか?」 「そう、正解。でも本当はその目的は果たされていた。そうよね。」 「そうだな。」 「じゃあSOS団って何の略省だったか覚えてる?」 「『世界を大いに盛り上げる涼宮ハルヒの団』だろ?」 「じゃあ私が有希やみくるちゃんや古泉君や世界中のみんなのために今何をしようと考えているかわかるわね?」 「いーや、わからん。」これは嘘だった。大体のことは予想できる。 「まあいいわ。あんたは私に黙ってついてくればいいのよ。」 そういうとハルヒはいつぞやのように俺の手を引っ張り走り出した。 俺はこの瞬間思った。 サンタクロースなんてもんは信じてなかったが今は信じられるような気がする。 なぜなら宇宙人がいて未来人がいて超能力者がいた。それならサンタが存在してもおかしくない。 もしかしたらハルヒは俺にとってのサンタクロースなのかもしれない。 極端に強引なサンタだが。 これから何をするかって?決まってるだろ? この団長様と世界を大いに盛り上げるのさ。 THE END