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ぶそしき! これから!? 第0話 『トモダチ』 0-2 「着いたー」 自転車で行くこと15分ほど、今回の目的地の神姫センターに到着する。 入るとまず目につくのは大型のモニターだ。 新しいゲームのCMや、バトルで神姫が戦っている様子が映し出される。 改めて周りを見渡すと、大勢の人に各種のゲームに幾つもの神姫のバトル用の大型筐体、そして武装神姫の素体やパーツなども売られている広い販売コーナーが目に入る。 「おー……」 ふと筐体の映像に目を見やると、闘技場らしき場所で凶悪な手脚そして重装甲の青髪の神姫と鎧を身にまとい大剣を持った神姫が切り結び、激突する様が見られる。 別の筐体では、荒野の空に舞う神姫の姿が見える。 大きなウイングユニットを背負い、手に持った長大なレーザーライフルで他の神姫達を撃ち落としていく白い神姫の姿が映る。 どことなく似たような雰囲気の装備を身に纏い、緑の剣と赤の剣で切り結ぶ白と黒の神姫の姿も見える。 そんな幾つものバトルの様子が少年の目に映る。 「――あ、いけない」 思わずバトルに目を奪われるが、本来の目的を思い出して販売コーナーに向かう。 「う~ん……」 少年は棚を見渡しながら移動する。 神姫のパーツが単品で売られているコーナーを抜け、神姫用の服やアクセサリーなどがある場所に出てしまう。 色々と目移りしてしまうが、目的地はパーツの所ではない。 そうしていると、上から声がかけられる。 「お客様、なにかお探しでしょうか?」 「え?」 視線を上に向けると、そこにはフライトユニットを装備して、風に吹かれる風船かなにかのように穏やかに飛んで来る金髪の白い神姫がいた。 少年の近く、目線の位置まで来るとそこで静止し、高度を維持する。 「天使型MMSアーンヴァルのアリシアと言います。この神姫センターの店員神姫の1人です。 お客様、なにかお探し物がありましたら、ご案内させていただきます」 ぺこりと一礼し、にっこりとした営業スマイルで自己紹介と少年に提案する神姫のアリシア。 その提案に思わず頷いてしまう。 「あ、その、武装神姫があるところを探してる……んです」 「分かりました。こちらにどうぞ」 アリシアが場所を案内してくれる。 まずは武装と素体が一緒になったフルセットの棚に向かう。 「……」 アリシアの先導にしたがって行く。 少年はなんとなく気まずさを感じて、話しかけてみる。 「え、え~と、あのさ……」 「はい?」 「武装神姫ってバトルでレーザーや弾を撃ったり、剣で切ったりしているけど、もしかして子どもが買うのは危険だったりする?」 先ほどのバトルを見て、思いついた話題を振る。 そんな話題を振られたアリシアは、ニコニコとした営業スマイルのままだ。 「いえ、そんなことはありませんよ。もしよろしければ、少し長くなりますが説明させていただきましょうか?」 「あ、うん。頼むよ」 アリシアが少年に向き直る。 そして、小さな先生が生徒に授業をするかのように説明を始める。 「武装神姫はロボット技術の結晶とも言える商品です。 心と感情を持ったフィギアロボットであり、人間のパートナーです。ソフト面でもハード面でも安全なように考慮されています。 もちろんマスターとなった方に尽くしますし、倫理プログラムで人間に危害を加えることはありません 武装も銃弾などはあくまでゲーム上のエフェクトですし、剣も切れるのはヴァーチャルバトルの中だけで、実際には切れるような刃は付けられていません。 ここまでよろしいでしょうか?」 「う、うん」 「神姫バトルは、バーチャルとリアルがあります。 リアルも神姫センターなどで行われるものはルールにのっとって行われる健全なゲームであり、言わばマスターと神姫達のスポーツのようなものです。事故がないよう、日々努力と改善が行われた結果、今の神姫バトルがあります」 「うん。武装神姫が危険なものじゃないことは分かったよ」 アリシアの説明を聞いて、少年は武装神姫のことについて少し理解できたように思う。 そんな少年を見て、アリシアはもう少しだけ説明を続ける。 「ありがとうございます、お客様。もう少しだけ続けますね。 神姫のマスターの中には、さらに刺激を求めて通常のルールに縛られないストリートバトルを行う方々がいます。これは勿論危険ですので、もし誘われるようなことがあっても参加しないでくださいね。なにかあったら悲しむのは、マスターやその神姫ですから」 「……」 思わず黙り込んでしまう。 最後の一言に、少年はなんとなくアリシアの真摯な想いのようなものを感じる。 「長々と申し訳ありません。……あ、案内を再開しますね」 「う、うん。ありがとう」 ニコニコとした営業スマイルのアリシアを追う。 「ここです、お客様」 アリシアの案内で目的の場所に着く。 「……う~ん」 棚に置かれた商品に目をやり、その値札を見て少年は思わず腕を組んで唸る――高い。 高いだろうとは思っていたが、想像していたものよりさらに1つ桁が多い。 「お客様、なにかお困りですか?」 「あ、うん……武装神姫って高いんだね……」 声をかけてきたアリシアに思わず、素直に困っていることがこぼれ出ててしまう。 そんな言葉を聞いてアリシアも少し困ったように笑う。 「あ、あはは……、そうですね。 武装神姫はフルプライスですと、良いパソコンと同程度のお値段になります。 お客様位の年齢ですと、ご両親やおじいちゃん、おばあちゃん、年上のお兄さんお姉さんなどに買ってもらうことがほとんどです。中には、お年玉とお小遣いなどを貯めて買うツワモノな方もいますけど」 「そ、そうなんだ……」 アリシアの説明を聞いて、武装神姫を買うのは、やっぱり難しいのかなーと思ってしまう。 「武装抜きの素体だけなら、もう少しお求めやすいお値段になるのですが……」 「う~ん、ちょっと安くなったぐらいじゃ……」 アリシアは少年の様子を一見する。 やはり、手持ちでは購入は難しかろうと見切る。 「失礼ですがお客様の年齢ですと、武装神姫の購入には保護者同伴か、同意書が必要となります。 購入の際にはご家族とのご相談が必要かと思います」 「え、そうなの?」 聞き返すお客様に、アリシアはさらに話を続ける。 「ご家族様に相談する前に、どんな神姫が良いか決めておくとお話しやすいかと思います。 なにかご希望の神姫はございますでしょうか?」 「そうだなぁ……」 営業スマイルを崩さず、悩むお客様をアリシアは見つめる。 「……分かんないなぁ。え~と、アリシア、さん。何かオススメはありますか?」 少し考え、具体的なイメージがわかず、少年はよく知っているだろう相手に尋ねる。 「アリシアでいいですよ、お客様。 でも、そうですね。神姫をおすすめするならば――」 一拍置く。しかし、それは逡巡によるものではなかった。 「――天使型MMSアーンヴァルがいいと思います!」 ドンと擬音がつきそうな位に言い切るアリシアさん。 営業スマイルのままだが、なにか妙な迫力を感じさせる。 「性格は真面目でマスターの言うことをよく聞く、従順で良い子たちです。愛情を注いであげれば素直に応えてくれます。 武装は高機動空戦型で、飛べるのはバトルでも日常生活でも大きなアドバンテージです。日常生活でも使えるフライトユニットはお高いですけど。 武器は近接戦のライトセイバー、近距離のハンドガン、中距離はマシンガン、遠距離は強力なレールガンにレーザーライフルとオールラウンダーでどの距離にでも対応できます。武装神姫の初期に販売されたものですが、アップグレードを繰り返されていますので最新のものに見劣りすることはありません。 初めて神姫を持つ方にとてもオススメです!」 笑顔のまま一気に説明し切るアリシアさん。 その勢いに押される少年。 「……あ、あれ! あの神姫についても教えてよ!」 直感的に話を変えた方が良いと思った少年は、公園で見た神姫と同型と思われるパッケージの説明を求める。 「あ、はい。あれは猫型MMSマオチャオです。 性格は一言で言えばネコです。 自由気ままでハイテンション、一緒にいると騒がしいけど元気になれる。そんな神姫です」 アリシアはまずは性格面での説明を行う。 今度は少年の様子を見ながら説明を行う。 「武装はクローにナックル、そしてドリルの近接戦特化の仕様です。 相手に近づいて殴り倒すという、単純明快なコンセプトがバトル初心者の方にもわかり易いです。 サブウェポンのプチマスィーンズを使ってのトリッキーな戦い方もできますけど」 今度は武装面での説明を行う。 「武装とその性質に癖はありますが、その性格で子どもの遊び相手に人気の神姫です。 中にはペット代わりとして、購入されるお客様もいます」 最後に総評して締めくくる。 今回は相手の反応を見ながらの説明のためか、神姫について初心者の少年でも理解しやすかった。 「へえ、あの時見た神姫ってマオチャオって言うんだ。……確かにテンション高かったなぁ」 少年はふと、見上げて公園で会った神姫のことを思い出す。 今アリシアに説明されたのとイメージが一致する。 「……ん?」 ちょうど上の棚が目に入る。そこにはアーンヴァルのものとは違う、鳥のような翼を持った神姫の姿があった。 「ねえ、アリシア。あの神姫なんて言うの?」 「はい、あれはセイレーン型MMSのエウクランテです。 武装が格好よくて、しかも合体変形機能付きで男の子に人気です。 性格も真面目な良い子ですよ」 少年の興味を持った神姫の簡単な説明をするアリシア。 この後、少年は他の神姫もアリシアに説明してもらい、最後には神姫購入のための保護者同意書の用紙ももらった。 ――少年が神姫のマスターになるまであと23時間 前へ / 次へ トップページ
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初バトル、七月七日、七夕。 一ヶ月の間、私は数十店の神姫ショップを歩き回った。地元の茶畑が広がるような田舎では流石にショップはないので、電車で一時間、お隣の県の大都市まで足を伸ばしたり、バスで三十分揺られ最寄りの商店街をブラブラしたりした。 というのも、お兄ちゃんが買ってきた神姫、マリーは素体のままで武装やアクセサリは全く無かったからだ。私は特別バトルがしたいというわけでもなかったので、彼女が身に付けるものは彼女に選ばせようとして、彼女が気に入るものが見つかるまでいろんな店を回っていたのだった。 まずマリーはあまり実戦的ではなく、どちらかというと観賞用のウォードレスを選んだ。一応ワンピースのそれは防御力はあまり期待できないものの、フリルの可愛いディティールは全部自動迎撃用のレーザーガンで、また申し訳程度の飛行機能も付いていた。 「すごいすごい!マリーが浮いてる」 ふわふわとドレスの裾を揺らしながら彼女は私の周りを何週か回って見せた。 「便利ですわ」 彼女は私の左肩に着地した。それから私を見上げて微笑む。 彼女の笑顔は完璧、百点満点だと思った。 別の日、彼女はようやく武器を手にした。彼女は先に買ったウォードレスに合わせてその武器――ロンブレル・ロング(L ombrelle longue)を選んだようだ。 それはどうみても、日傘。日傘(L ombrelle)って名前付いてるし。武器の性能としては、ライトセーバーとライフルの能力を併せ持つハイブリッドウェポン。ライフルは威力も装弾数も実戦で使えるギリギリのレベル。まあ、早い話がこれもまた観賞用のアクセサリなのだ。 「可愛いよ、マリー」 「ありがとうございます。わたくしもこれで、いつでもバトルが出来るようになりましたわ」 マリーは傘を開いて傾きかけた日差しを遮る。淵の白いフリルが揺れた。 「え?マリーはバトルしたいの?」 左肩に座っていた彼女は私がそう問いかけると、浮き上がって私の胸前にやってきた。私が歩くのと同じ速度で移動し続ける。 「だってわたくしは武装神姫ですのよ?」 「いや、うん、そうだけど。だったらもう少し強そうな装備選んでもいいんじゃない?」 「ダメですわ。時裕様がわたくしは人形型だとおっしゃっていました。ですからわたくしは人形らしく振舞わなければいけませんの」 ああ、そういえば細かい設定は全部お兄ちゃんに任せていたな、と私はぼんやりと思い出した。神姫の性格がCSCの埋め込み方によって変わるといっても、もっと繊細なところはこちらで設定してあげなければいけないらしい。かなりめんどくさそうだったからお兄ちゃんに頼んだのだけれど、正直かなり失敗だったと思う。 「へえ、人形型なんだ」 「はい。人形型MMSノートルダムですわ」 勝手に決められたということを怒るよりも、私はやけに細かい設定に関心していた。 ノートルダムか、と考えると少しにやけてきてしまう。お兄ちゃんらしい名前の付け方だなと思ったからだ。 「でもバトルってどうやるんだろうね」 「とりあえず...ショップ設置の筐体で草バトルと呼ばれる非公式戦ですわ。」 私はふーんと鼻を鳴らしながら早速視線は最寄りの神姫ショップを探していた。 学校帰りの商店街には二店舗、神姫を扱う玩具屋があり、この近くにはそこしかバトル筐体を置いているところはなかった。 「あそこだね」 カトー模型店、商店街の長屋にあるお店としては大きいほうの店構えで、数ヶ月前に改装されたショップだ。もともと地味だった模型店がここまで立派になれるのも神姫ブームのおかげだろう。 午後五時半、私と同じように学校が終わった学生の神姫マスターたちが集まってなかなか賑やかだ。 「やあ、のどかちゃん、いらっしゃい」 「こんばんは、カトーさん」 マリーの装備を選ぶとき、最初に訪れたショップがここだった。お兄ちゃんもここの常連で、店長のカトーさんと顔見知りだということもあって、いろいろ相談に乗ってくれたのが強く記憶に残っている。カトーさんはここにないようなパーツを他の店にはあるからといって紹介してくれたりもしてくれた、いろんな意味でいい人だ。 「マリーちゃんもいらっしゃい」 「ごきげんよう、カトー様」 「ドレスモデルのウォードレスか。なかなか可愛い物を見つけたね」 マリーはスカートの裾を摘み、膝を折って行儀よくお礼をした。 「今日はお兄ちゃん、もう来ました?」 「時裕君?いや、そういえばまだ見てないなあ」 そうですか、と言って私は、私と同じ学校の学生服を着た男の子たちによってバトルが繰り広げられている筐体のほうへ視線を向けた。 お兄ちゃんは一度この店に足を踏み入れると三時間は出てこないので、もしお兄ちゃんが店にいれば、今日は止めておこうと思ったけれど、カトーさんの言葉を聞いていよいよ心臓がドキドキし始める。 「バトルかい、のどかちゃん」 カトーさんは丸い黒縁眼鏡を掛け直しながら言った。 「はい。初めてなんですけど...」 「そりゃよかった。やっぱり武装神姫はバトルが一番楽しいからねえ。次、席空けてもらうからちょっと待っててね」 そう言ってカトーさんはカウンターから出て、つかつかと盛り上がる一方の筐体のほうへ歩いていく。そして学生服の男の子たちと話始めた。 そのうち何人かが私のほうをちらっとみる。その中に同じクラスの藤井君の姿が見えたので少し手を振った。ただ私に気づいているかどうかはわからなかった。 「緊張するね、マリー」 「大丈夫ですわ。きっと」 少し経って、カトーさんは手招きで私たちを呼ぶ。私は背筋を伸ばして恐る恐る筐体へ向かい、マリーはその後を飛びながらついて来る。途中、やっと藤井君も私たちに気づいたようだった。 カトーさんの横にはこの店では珍しく、女の子が立っている。彼女もまた男の子たちと同じように私と同じ学校の制服、というか私と同じ制服を着ていた。 「丁度いい対戦相手が見つかったよ」 と言ってカトーさんは傍らの女の子の肩をぽんと叩く。 「彼女は先月神姫バトルを始めたばかりなんだ。ね、香子ちゃん」 「よ、よろしくお願いします」 その女の子は右肩に神姫を乗せたまま深々と頭を下げる。当然、彼女の右肩に座っていたジルダリアタイプの神姫は声を上げながらずり落ちた。しかしその神姫は落ちていく途中、一回転してから急に落下を止めて腕を組みながら少しずつ浮き上がっていった。 そしてそれに気づいた女の子が顔を上げて、その神姫のほうを見るまで口を尖らせ続ける。 「あ...!ごめんなさい」 「もう少しまわりに注意してくださいね、マスター」 「ごめんなさい、本当にごめんなさい」 女の子はすっかり私を忘れて彼女の神姫に謝り続ける。その様子をまわりの男の子やカトーさんがくすくすを笑った。 「も、もういいですっ。それよりみなさんが...その...見てますから...」 それが恥ずかしかったのか、女の子の神姫は少し頬を赤らめてどんどん声量を落としていった。 俯きながらちらりと私たちを見て、話を変えて、と訴える。 神姫でもそんな表情をするのか、と感心した私は急いで自己紹介をした。 「えっと、七組の月夜のどかです。こっちはマリー」 「ごきげんよう、マリー・ド・ラ・リュヌですわ」 女の子は思い出したように私たちのほうを見る。 「あ、はい、五組の斎藤香子です」 「ジルダリアのラーレです。よろしくおねがいします」 私の通う高校の一年生は、九クラス三百六十人。私は五組には一人も友達がいない――もちろん偶然だ――ので、彼女とは初対面だったことも納得がいく。 「じゃ、挨拶が済んだところで、早速バトルにしようか」 私も香子ちゃんも、そしてマリーもラーレも、そう言ったカトーさんのほうを向いてはい、と返事をした。 作品トップ | 後半
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SHINKI/NEAR TO YOU 良い子のポニーお子様劇場・その3 『Over the Rainbow』(後篇) >>>>> 3 星、星、星――満天の星空。 まるでプラネタリウムのような星の瞬く夜空が、ヘミソフィア(半球状)の天井を成して特設ステージを包んでいた。 幻想的な光景に、しばし見とれたフィシスたちは、自分たちがここに練習をしにきたことを思い出し、慌てて舞台に向かった。 すでに配置につき、空中に待機してきたアクロバットチームたちに混じり、舞台の中央の所定の位置にブルーメンヴァイスの三人がつく。 演出スタッフが本番さながらに操作するスポットライトを浴びながら、フィシスは神姫センターのマスターサーバとのデータリンクを開始する。 アクティブになった回線から流れてくるコレオグラフィーに関する情報と、事前にマネージャーから聞かされていたものとを照合しながら、宙へと躍り出る。 アクロバットチームのアーンヴァルたちとツガルたちが、左右に分かれ散開。 流れる音楽に合わせ、様々なフォーメーションを取る神姫たちの合間を縫って、ブルーメンヴァイスの三人が飛び交う。 星空を落としたような光溢れるステージを、十数体の神姫が時には集合し、時には散開し鮮やかに駆けた。 「らーらららん、らららん♪ らららー、らららー♪」 ハミングを取りながらフィシスが空中を舞っていると、突然目の前を黒い影が遮った。 『ふーん。鑑賞用のお人形さんが、少しはやるじゃん?』 進路をふさぐように現れたアクロバットチームのリーダーに、フィシスは身を翻す。 『ちょっと、接近しすぎよ。その位置だとフォーメーションが崩れてしまうわ』 フィシスは相手に合わせ、喉部声音でなくHFC(センターとのデータリンクを使った高周波通信)を使い相手に呼びかける。 『や~っぱ、アイドル様ってばお上品~。ガイドブックなしじゃ、何もできないタイプ?』 旋回するフィシスをあおるように、アーンヴァルが軌道を重ねてくる。 『ここからは、アドリブタ~イム。見せてみなよ、アイドル様の実力をさっ』 本気――? 思う間もなく、視界の隅で数度瞬いた光に反応し、とっさに急旋回。 アルヴォRDWの銃弾が光を曳いて、フィシスが数瞬前に存在した空間を通り過ぎていく。 『どうなってんのこれぇ? きゃおきゃお!』『どうやら相手は本気のようだ……』白夜と白雪のふたりからのHFC通信。緊迫した様子。 フィシス――マスターサーバを通じて得た空間座標からふたりの状況を瞬時に把握。それによってふたりが、アクロバットチームのアーンヴァルとツガルの集団に追い立てられていることを知る。 ふたりをところに駆けつけようと飛翔したフィシスに、アーンヴァルリーダーが突進する。 とっさにフィシスは振るわれたライトセーバーを、右手に掲げる儀仗から障壁を展開させ受け止めた。乱暴な相手に向かって直接〝声〟を発して抗議する。 「どういうつもり?」 「言ったでしょー、アドリブの練習よ。とっさのアクシデントに対応できないようじゃ、ショーの主役は務まらないでしょ?」 セーバーで障壁を払い退け、距離を取ったアーンヴァルが機関銃を乱射する。 状況をモニタしていたスタッフが、様子がおかしいことに気づいたのか、バラバラな行動を取る神姫たちを制止しようと、大慌てで練習中止の信号を送る。 それに神姫たちが個々で交し合うHFCが加わり、ステージ会場はたちまち幾つもの電波が飛び交う騒乱状態と化していた。 仕方なく、フィシスは最低限の回線のみを残し、他をカット。情報の取捨選択に気をつけながら、撃ってくるアーンヴァルに牽制のため左手から光弾を放つ。 「レイ――ッ!」 立て続けに飛んでいく光弾を、アーンヴァルは翼で風を切りながら軽々と避ける。 「夢見るのもいいけどさぁ? ドロシーもいないアンタらが、オズに会えると思ってんの?」 睨め返すフィシスを見て、「あは、そんな顔もできるんじゃん」とアーンヴァルリーダーは楽しそうに笑った。そのまま体をぶつけるようフィシスの周囲をすれすれに飛び回る。 ワザと危険なぎりぎりの軌道で挑発してくる相手に、カッと上気しながら、 「こんな危険なことを――!?」 咎めるよう声を荒げたフィシスはハッと急反転すると、猛然とステージ会場の一点に向かって急加速した。いきなり明後日の方向に飛び出す白い姿を、アーンヴァルリーダーが訝しげに追いかける。 『ちょっと、逃げるの? それってチョーつまんないんだけ……ど?』 追うアーンヴァルもそれに気づいて目を見開いた。フィシスは構わず加速を続ける。 彼女の持つ大儀仗サクラメントによる、マスターサーバとのインタラクト探査では、わずかの猶予もないことが分かっている。躊躇する時間などない。 『あれって……まずくない?』 リーダーのHFCの呟きに会場内の他の神姫たちもざわつき出す。 新イベントのために飾り付けられたステージ会場、その中で急ピッチな設営のため固定が甘かったのか、それとも元から配置が不安定だったのか――舞台を飾るモニュメントのひとつが倒れ出し、崩れようとしていた。 事態を察知した神姫たちが悲鳴を上げる。崩れるモニュメントの下で、知らずに追い駆けっこを続ける神姫の姿――白夜と数体のツガル。 騒乱状態になった通信状況に、一時的に回線を閉じてしまっているのだろう。モニタスタッフや他の神姫たちが発する緊急通信に、彼女たちは気づかない。 HFCを諦め大声で危険を知らせる周りの声。ようやく白夜を追いかけていたツガルの一体が状況を察し、慌てて離脱をはかる。しかし、白夜とまだ経験の浅いツガルがひとり取り残されてしまう。 彼女たちの前に、人間にとってはさほどでもない――しかし神姫にとっては脅威となるサイズのモニュメントが襲い掛かるように倒れかかる。 その今や怖ろしい凶器と化して崩れ落ちるモノに、フィシスは白い矢となって正面から突っ込んだ――。 4 「にゅきゅ~ん、もう心配したんだよフィたん!」 「ごめんなさい、もう大丈夫よ」 医療用クレイドルの上で身を起しながら、フィシスは手を振って何処にも問題がないことをアピール。心配顔の白夜の隣で、白雪が嘆息する。 「全く無茶をする。一歩間違ったら大惨事」 「でも、誰も大事に至らずにあの状況をうまく切り抜けられたんだから……ね?」 「だからって、倒れてくるモニュメントに体当たりはなかったみゅ~」 あの時――倒れてくるモニュメントから取り残された白夜とツガルを助けるために急行したフィシスは、なんとモニュメントに自分をぶつけることで方向を変えたのだ。 強引に倒れる向きを変えたモニュメントは、白夜とツガルをかすめて落下した。 ふたりは無事だったものの、それと正面から当たり勝負をするハメになったフィシスは気を失い飛ばされて墜落。このセンター内の神姫メディカルルーム(顧客の依頼による神姫の修理や、センター内の神姫スタッフたちの定期診断を行う施設)に担ぎ込まれることとなった次第である。 「いくら何でも無鉄砲すぎ。他にも方法があったのでは?」 「とにかくすっごく心配だったにょ~、うるうる」 うるうる目を潤ませる白夜とジト目の白雪に、フィシスはバツが悪そうに声を小さくする。 「だって……とっさに他の方法が浮かばなかったんだもの……しょうがないじゃない?」 子供のように拗ねた口調で、話す声はどんどん小さくなってく。 その様子に、白雪は一際大きなため息をついた。 「ふう。何はともあれ、フィのお陰で事なきを得たのも確か」 「みんな無事でよかったみょろ☆ ありがとね、フィたん♪」 笑みを浮かべるふたりに、フィシスもにっこりと笑い返した。 「ええ。明日の練習では、また頑張りましょう」 フィシスに見送られ、肩を叩きあいながら白夜と白雪がメディカルルームを後にする。 残ったフィシスは、クレイドルに寄りかかると瞼を閉じた。 いつしか消灯時間となり、メディカルルームも常夜灯の淡い明かりだけを残して暗くなる。 今頃は、外もあのプラネタリウムのステージ会場のように星空だろうか。 「鐘は響くよ ring on ring on♪ 命目覚めるこの大地♪」 曇りよりは、やっぱり晴れた夜空がいい。今の時期ならば、天の川が明るく見えるかもしれない。それとも、摩耶野市の明かりのため晴れていてもあまり鮮明には見えないものなのだろうか。 だとしたら、以前サーバにアクセスした時に見た郊外のマイクロ波発電施設。あの丘に登ったら、きっとキレイな星空が見れるだろう。 歌を口ずさむフィシスの元に、歩みよる影があった。 「キレイな歌ね……」 フィシスは歌を止め、やってきたその神姫に微笑んだ。暗闇にとけるような黒いボディカラー、アクロバットチームのリーダーであるあのアーンヴァルが、そこにいた。 常夜灯の薄明かりの下、クレイドルの端にアーンヴァルが腰を下ろす。隣で身を起すフィシスに顔を向けないまま、静かに語り出す。 「どう、調子は?」 「お陰さまで、万全よ。全系統異常なし……ってね」 「そう、それは安心ね。明日からのステージ練習で、不調を理由に足を引っ張られるのはゴメン」 「ご忠告、ありがたく受け取らせていただくわ」 しばしの、間――。 「ひとつ、聞いてもいい?」 「何かしら?」 「今日の練習中の事故。なーんであんな無茶したの?」 振り返ったアーンヴァルの真剣な瞳がフィシスを見つめる。 「アンタのスピードなら、無茶なマネせずともあのストラーフをつかんで離脱する時間は十分にあったはずじゃん。なのに、何でワザワザ体当たりなんか……」 「――だって。そうしなければ、もうひとりの娘がモニュメントの下敷きになっていたわ」 見開かれるアーンヴァルの瞳を真っ直ぐ見据え、フィシスはさも当たり前に語る。 「自分のチーム仲間でもない、他人を助けるためにあんなことしたっていうの?」 「あら、仲間よ。チームとかそんなのは関係ない。みんなこの神姫センターで働く仲間じゃない」 信じられないといった表情で見つめるアーンヴァルに、フィシスは決まりが悪い小学生みたいに、もごもご。 「……それにメンバーに怪我人がでたら、せっかくの新しいショーができなくなってしまうわ。そんなことしたら、ショーを楽しみにしてくれるビジターのみんなにも申し訳ないでしょう?」 「ほんっとバカね。それで肝心の主役が怪我したら、もっとどーしようもないつーの」 呆れるアーンヴァルに、フィシスがここぞとばかりに強気に指を振る。 「ダイジョーブ。これでもフィは、最新型で結構ガンジョーにできてるの。あのくらいヘッチャラなんだから」 そのフィシスの邪気のない笑顔を見て、アーンヴァルは「あ~っ」と唸って頭を掻きむしると、スッと立ち上がった。 「全く……アンタと話してると、あーだこーだ考えてるこっちの方がバカに思えてくる」 「フィはみんなと話すのが楽しいわ」 「はいはい、よーござんした」ぷいっとそのままメディカルルームから出て行こうとしたアーンヴァルが、ふいに立ち止まった。 「ドロシーと仲間たちは……」 フィシスに背中を向けたまま、アーンヴァルがポツリと呟く。 「それぞれの願いを叶えてもらおうってオズを頼っても、結局それは叶わなかった。なぜならオズはただの小さな爺さんだったから」 フィシスはそんな彼女を見つめる。背中ごしに視線を感じたか否か、アーンヴァルが思い切ったように言葉を吐き出す。 「結局、魔法使いなんて役立たず。何にもなんないっしょ」 「……確かに都合のいい魔法なんてものは、この世に存在しないのかもしれない」 アーンヴァルが見つめる先、入り口の奥を一緒に見つめ、フィシスは続ける。 「でも、ドロシーが願いを叶えてくれたわ。フィたちはそんなドロシーを知ってるじゃない」 こともなげに語るフィシスを振り返り、アーンヴァルはニッと笑みを浮かべると「じゃあ、明日」くるりと背を向け手を振る。 『昼間は、ダチを助けてくれて……サンキュー』 去り際にボソッと呟いたHFCを、フィシスの高感度センサはしっかりと受け取った。 神姫センター摩耶野市店、特設イベントステージ。 満天のプラネタリウムとスポットライトの明かりを受けて、十数体の神姫が宙を舞う。 右に散開する黒い翼、アクロバットチームのアーンヴァル。 左に散開する藍色の羽、アクロバットチームのツガル。 その間を縫って、三つの白い光が駆け抜ける。 艶やかに舞うフィシス。 無邪気に跳ねる白夜。 クールに翔ぶ白雪。 笑顔を振りまくブルーメンヴァイスの三人に、ビジターから歓声が湧き起こる。 三方向に別れた三人は、演武のように先々でアクロバットチームと空中アクションを披露。 白雪のクナイが飛び、白夜がグレネードを撃ち、フィシスが背に広げた大きく輝く羽根から無数のレーザーを放つ。 様々なエフェクトと七色のレーザービイムが乱れ飛び、ステージの熱気は最高潮に達する。 やがて光弾けたその先で、神姫たちは音楽に合わせ、歌い踊り始める。 『見てみて、ビジターのみんなすっごい楽しんでくれてるにょ、ばるばる~』 熱狂するビジターに笑顔を送りながら、白夜のHFCに白雪が応じる。 『ああ。どうやらショーは成功のようだね、フィ?』 ふたりの嬉しそうな通信を聞きながら、フィシスは歌う。そう――これこそがフィシスたちのにとっての魔法の国だ。 これがフィシスたちの進む道。エメラルドの国のその先に、彼女たちは進む道を迷わない。 何故なら―― 『フィたちにとって、ビジターのみんなこそがドロシーなんだもの。ビジターの笑顔こそが、最高でとっても素敵な〝魔法〟なのよ』 それが彼女たちブルーメンヴァイスにとっての、そして彼女たちを応援してくれるビジターたちにとっての魔法なのだ。 白夜と白雪と一緒に歌いながら、フィシスはビジターに飛び切りの笑顔を送るのだった。 ……摩耶野市には、三人の白い妖精たちが住まうという。 今日も彼女たちは笑顔という名の魔法によって、神姫センターを訪れるビジターたちを祝福する。 紡がれるは 魔法の国 の 物語 機械仕掛け の 妖精たち と ヒト の 織り成す 魔法が 語る 夢 と 幻想 の ひととき を あなたに―― 『Over the Rainbow』(後篇)良い子のポニーお子様劇場・その3//fin 戻る
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ぶそしき! これから!? 第0話 『トモダチ』 0-3 「……あ」 神姫センターの店員神姫に武装神姫について色々説明してもらった帰り道に、ふと思い出す。 ネットで武装神姫の取扱店を検索した際に、先ほどの神姫センター以外にももう一件あったことを。 今の所からそれほど遠くはない。 少し寄り道する程度の所だ。 わずかに逡巡し、今回はちょっと覗くだけと、その場所に向かう。 「あった」 携帯のナビで特に苦労することなく、もう1つの神姫取扱店に到着する。 ――『おもちゃ屋スターフィールド』 中古品も取り扱い、売買する旨が看板に書かれていた。 薄暗い感じはない。 戸惑わず子どもでも入れる、そんな感じの店だ。 「いらっしゃいませ」「い、いらっしゃい……」 入るとカウンターから声がかけられる。 店内は清掃が行き届いていて清潔で明るい。 近くの棚を見ると、ロボットもののプラモに武器セットが並べられている。 少し奥の方を見ると武装神姫のUSEDコーナーが見える。 行こうとして、ふと気づく。 カウンターに人の姿がない。 「あの、今店長が留守にしているから、あたし達が店番をしています」 「な、なにか御用でしょうか」 よく見ると、カウンターには店の名前が書かれたエプロンらしきものを着た緑髪と黒髪の2体の神姫の姿がある。 黒髪の神姫は何故かメイドさんの衣装を着て、恥ずかしげにしている。 「ええと、ちょっと中古の神姫が見たくて……」 黒髪の神姫があまりにも恥ずかしそうにしているので、何か見てはいけないものを見てしまった気分になる。 少年も少し恥ずかしくなりながら要件を話す。 「……」 緑髪の神姫が黒髪の神姫を少し見やり、一息ため息をつく。 あの様子では接客は無理だろうと判断する。 「あたしが案内します。ハーティア、レジお願い」 「ま、マリーベル。分かったよ」 相方に頼み、マリーベルと呼ばれた緑髪の神姫が少年に向かう。 「お客様、手に乗らせてもらってもいいですか」 「あ、うん、いいよ」 提案に素直に頷き、少年がその手を差し出す。 「失礼します」 一言断りを入れてから、カウンターから一飛びして軽やかに少年の手に乗る。 ■ ■ ■ 「そこを右に曲がった棚が、武装神姫の中古素体の場所です」 誘導に従い、少年は歩を進める。 手の上の神姫を見て、ふと浮かんだ疑問を問いかける。 「……ねえ」 「はい、何ですか?」 手の上の神姫が静かな口調で答える。 「君ってマオチャオ?」 「……そうです。あたしは猫型MMSマオチャオのマリーベル」 答えが簡潔に返ってくる。 「ええと……」 「あたしは他のマオチャオの性格と大きく違うから、お客様が疑問に思うのも当然です」 少年がさらに聞く前に、マリーベルは静かな口調で話す。 その様子は実際に見た、話に聞いたマオチャオという神姫のハイテンションのものとは大きく異なる。 「神姫にも色々います。あたし達みたいな変わり者だって当然いる。……あたし位で驚いていたら、これからもっとびっくりすることになるよー」 最後に基本的なマオチャオの真似をして、冗談っぽくマリーベルが言う。 しかし、表情は少年の知っているマオチャオの元気いっぱい天真爛漫の笑顔ではなく、どちらかといえば少し固く、儚い感じの笑みだ。 その笑みの違いが、少年にも神姫も色々であることを実感させる。 「あ、うん。……よく分かった」 「あ、お客様」 ちょっと考え事をしていると、マリーベルから呼びかけられる。 「通り過ぎてます。USED素体の場所」 「――え?」 そそくさと戻り、少年は武装神姫の中古素体の陳列棚に目を見やる。 「……あ、神姫センターで見た新品のよりすごく安い」 少年の懐具合で考えれば、それでもまだまだお高い値段だ。 しかし、手が届かないほどではない、そんな具合だ。 「神姫センターは基本定価だから。それにこのお値段は武装なしのUSEDですから」 「そうなんだ。えと、買ったら動かないとか、何か問題が起きたりとか、しないよね」 ふと思った疑問をマリーベルに尋ねる。 「ええと、そこは――」 「ソフトもハードもチェック済み。起動しないということはないよ。 保証期間も付いてるから、起動後に何かトラブルがあっても安心。 今なら素体のリペイントサービスもしていて、買ってくれた神姫をお好みの色に染めあげれるよ。 ボス……店長がいれば、起動やユーザー登録などの作業も手伝ってくれるよ。お買い得だね」 「そうなんだ、ありがと……って誰?」 少年の疑問にマリーベルではなく、別の声が答える。 「あ、セラ姉さん」 マリーベルが声かけた方を見ると、そこにロングの青髪の神姫がいた。 その神姫は長袖長裾のゆったりした服を着て、その上に店名が書かれたエプロンを着ていた。 メガネをかけているせいなのか別の理由なのか、少し理知的でどことなく落ち着いたような雰囲気がある。 「悪魔型MMSストラーフのセラフィルフィスだよ。よろしくお客様」 「あ、よろしく」 挨拶されて、少年は思わず挨拶し返す。 「マリーベル朝から店番ありがと。今バッテリー残量少ないでしょ。 お客様、よければあたしがマリーベルの代わりに案内と説明をさせてもらうけど、良いかな」 「あ、うん。いいよ」 少年に了解を求めるセラフィルフィス。 バッテリー残量少ないなら仕方ないよねと了承する。 「でも、あたしまだ――」 「いいから。お客様も了解してくれたし、しっかり一休みしなさい。無理をするのはマリーベルの悪い癖だよ。それに戻って店長に店番したこと褒めてもらいなよ」 優しく諭すようにセラフィルフィスはマリーベルに声をかける。 「分かった。失礼します、お客様」 マリーベルはぺこりと少年にお辞儀をして、手から降りてトテトテと走って去っていく。 そんな様子を少しかわいいな、と思いながら見送る。 「さて、お客様、マリーベルに代わりましてセラフィルフィスがご案内させていただきます。何かお探しのもの、またはお聞きしたいことなどありますでしょうか」 マリーベルを見送ると、セラフィルフィス茶目っ気を入れながら挨拶し、最後にウインクする。 「ああ、うん。そうだねー……」 棚を見やる。 そこには悪魔、天使、犬、猫、侍、騎士、種、花、鳥、人魚、兎、砲、銃火器、イルカ、戦車、飛行機、カブト、クワガタ、蝶などなど様々なものをモチーフにした神姫の素体が並ぶ。 ふと、棚から目を離して通路の奥を見ると、カーテンで仕切られた空間が見える。 「ねえ、あのカーテンで仕切られたところって――」 「あそこは年齢が上の方々のコーナーです。お客様にはまだ早い場所ですから。 それよりも、何かお気になる神姫はありませんか? 今なら、この騎士型や戦車型、セイレーン型なんてお求めやすい価格ですよ」 にこりとやたら丁寧な口調で返され、さらに今のオススメの神姫を紹介される。 「あ、ホントだ。これなら、今まで貯めたお年玉とおこづかいで……。う~ん……」 「気になる娘がいたら、なんでも聞いてね」 値札を見ながら少年は悩む。 棚に戻し、値札を見て、を繰り返す。 時おり、質問をする。 セラフィルフィスはその姿を微笑みながら眺め、対応する。 ■ ■ ■ 「――あ」 気がつくと、窓の外はすっかり赤く染まってしまっている。 思ったより長い間、悩んでいたらしい。 「ごめん、帰らなくちゃ」 急いで帰らないと暗くなってしまうと店を出ようとする。 「あ、色々教えてくれてありがとう」 去り際に少年はセラフィルフィスにお礼を言う。 「どういたしまして。これ保護者同意書。また来てねー」 いつの間にか用意されていた保護者同意書を渡され、少年は見送られる。 出入り口に向かう際にカウンターが見える。 そこには店長と思しき大人の男性と、いつの間にかメイド服からツナギのような服に着替えた黒髪の神姫――教えてもらった通りなら、おそらく犬型MMSのハウリン――の姿があった。 「ありがとうございましたー」「ま、また来いよー」 声をかけられ、店を出る。 (家に戻って、お父さんが帰ってきたら、保護者同意書を書いてもらって、明日――) うきうきと軽い足取りで少年は帰宅する。 ――少年が神姫のマスターになるまであと22時間 前へ / 次へ トップページ
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戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-2 注)当然ですが、以下の内容はすべて当方の脳内生成物であり、 現実には存在しませんので。。。 <東杜田技研・新製品のご案内-2> このたび、弊社の小型ロボット向け機器ブランド「HT-NEK」では、 「武装神姫」向けの機器を展開することになりました。 先日発表いたしました和調クレイドル「和(なごみ)壱型」に続き、 診察室型クレイドル「さわやかしんさつしつ」を発売いたします。 〜武装神姫専用クレイドル・「さわやかしんさつしつ」の主な特徴〜 ■和(なごみ)壱型同様、弊社の小型機械技術研究製作部が設計。 さらなる安定性を追求しました。 ■実際の診察室同様、各種処置を行うことができるよう、各社製品に 対応させたベースユニット。 ■神姫による他の神姫の補修が出来るよう、神姫サイズの補修工具を 新たに開発し、その中より基本となるセットを同梱。 ■収納ケースは「診療所」を模した外観の専用品。独特の形状であり ながら、「和(なごみ)壱型」でも採用した、使いやすい二段式の ケースとなっています。 ■初心者には使いやすく、達人にも飽きが来ない、独自の専用ソフト 付属。(WindowsVista2037・MacOS21 両対応。) 詳細は、下記を参照して下さい。また、新たな情報は随時公開いたし ますので、HPにてご確認下さい。 <武装神姫専用クレイドル「さわやかしんさつしつ」> ・対応武装神姫 現在発売中の全武装神姫(純正クレイドルが使用可能である神姫に 限ります。) ・インターフェース 専用ケーブルによりUSB3.1にて接続 (注:本製品はUSBより電源供給を受けますので、電源の弱い一部 モバイルPCは使用できません。また、ハブをご利用の方は、外部 電源を用いるタイプのハブをご利用下さい。) ・対応オプションパーツ 弊社発売予定品 「リアルスキャナー」(放射線不使用のレントゲン) 「工具セット(神姫用)・追加」(追加ドライバDVD付き) 「工具セット(神姫用)・外科・整形外科」 「工具セット(神姫用)・プロフェッショナル」 「神姫といっしょ・神姫用端末」(カルテを作製できます) エルゴブランド 「DXベッド型クレイドル」(接続することで、病室を再現できます) (そのほかに付きましては、順次調査の上、HPにて公開する予定です。) ・付属装置・付属品 マニュアル、神姫用補修工具セット「基本」、神姫用診察机、神姫用白衣、 専用接続ケーブル、ドライバディスク、専用ケース(二段仕様) ・付属ソフト(ドライバDVDに同梱) 「お医者さんプリーズ!(武装神姫学習用ソフト・補修編)」 「ごはんのじかん(バーチャル食事体験)」 「THE バトル(戦闘シミュレータ)」 ほか ・動作条件(ドライバ・付属ソフト) Windows2037・MacOS21が動作可能なPC。 (注:USB3.1必須。) ・発売予定価格 41,060円(税込) ・発売予定時期 2037年5月 以上 <<トップ へ戻る<<
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戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・商品案内-13 <東杜田技研・新製品のご案内-13> 注)当然ですが、以下の内容はすべて当方の脳内生成物であり、 現実には存在しませんので。。。 <東杜田技研・新製品のご案内> このたび、弊社の小型ロボット向けコスメブランド「T3」では、 近年 人気が高まっております「武士神姫」向け商品を開発、シリーズ名 「T3-乙女志向」として展開することになりました。 まず第一弾として「ボディーソープ」・「シャンプー」・「リンス」を発売 いたします。 〜「T3-乙女志向 ・ 神姫ボディーソープ・ 神姫シャンプー・神姫リンス」の特徴〜 ■各種小型ロボット向けのメンテナンス用品開発で定評のある当社 T3チームが総力を挙げ、小型機械技術研究製作部とも連携して 開発された、神姫向けのボディーソープ。 ■またシャンプーとリンスは当社T3チームと某大手化粧品メーカー との共同開発。 神姫の人工毛髪と抜群の相性を誇ります。 ■中性かつ低浸潤性ながら、強力樹脂クリーナー以上の洗浄力。 もちろん、神姫本体のペイントを侵すことはありません。(註1) ■敏感なフェイス部分にも安心してお使いいただける、独自の配合。 もちろん、オーナー様ご自身にもお使いいただけるよう、各種の 規制に適合させております。 一緒のお風呂・シャワーの際には ぜひお試しください!! ■神姫が嫌がることの無いように、独特の芳香剤を配合。洗浄後に は、ほんのりといい香りも漂います。 ■シャンプーとリンスは、各3種類を用意。お手元の神姫との相性や 香りによって選ぶ事が出来ます。 ■専用ボトルには、オーナー様が使う通常のポンプのほか、神姫用 の小型ポンプも装着されており、神姫自身がひとりで洗浄される 際にも安心の設計。 ■シャンプーが苦手な神姫のために、同時にシャンプーハットも発売。 5色を用意、お好きなものをお選びいただけます。 (註1)純正塗色は問題ありませんが、リペイントに関しましては 保障対象外とさせていただきます。 詳細は、下記を参照して下さい。また、新たな情報は随時公開いたし ますので、HPにてご確認下さい。 <T3-乙女志向 「神姫ボディーソープ」> ・天然由来の香料とボディの艶出し成分を配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫シャンプー」> ・ストレート、ダメージケア、トニックタイプの計3種類。 ・それぞれに、天然由来の香料配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫リンス」> ・ストレート、モイスト、ダメージケアの計3種類。 ・それぞれに、天然由来の香料配合。 ・500mLボトル(ポンプ2種付き) ・500mL詰め替え用リサイクルポリ容器入り ・別売りボトル <T3-乙女志向 「神姫シャンプーハット」> ・ピンク・水色・黄緑・黄色・白の計5色。 ・徳用詰め合わせ10枚セットもあります。 ・発売予定時期 (全商品・今夏予定。初回生産分のシャンプーには、 シャンプーハットが付属する予定です。) 以上 <<トップ へ戻る<<
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猫子かわいいよ猫子とか書くのだー - 猫子になりたかった犬子 2007-11-16 05 31 45 今日はこれくらいにしておいてやるのだー - ねここ 2007-11-16 06 34 15 まおちゃおだんかわいいよまおちゃおだん - 良 2007-11-16 09 43 47 バトロンページがじどーけんさくりんくでみにくいのだ、なんとかしてもいいのだ? - ぬここ 2007-11-16 12 56 11 とっぷぺーじのままかわいい♡ - えうえう 2007-11-17 03 38 25 ページ編集が重いから一時撤退なのだー - ねここ 2007-11-18 23 56 22 白子すごい似合ってるわよ愛してるわ - 黒子 2007-11-21 12 06 56 やーめーてーくーだーさーいーおーちーちーをーしーぼーらーなーいーでー - 丑子 2007-11-23 16 50 16 私は不幸の星の元に生まれた神姫・・・ - 麗花子 2007-11-23 18 53 38 11/21に編集されたときに編集しきれていないタグのごみが見えるページがありますので、該当するページでお気づきの方は気がついたときに修正していただければと思います - 名無しさん 2007-11-24 07 56 32 ゆるきゃらNo1は、このしまさこにゃんニャ!! - しまさこにゃん 2007-11-27 20 04 26 しまさこにゃん・・・?新型MSか - 名無しさん 2007-11-27 21 32 00 そんなに知名度低いのか、しまさこにゃん・・・ - 名無しさん 2007-11-28 04 48 10 知名度云々じゃなくてimg神姫スレを半年POMれ、しまさこにゃんなんか全く出てこないから - 名無しさん 2007-11-28 08 06 58 しまさこにゃんが出たとき、ワイドショーでやってたな。名前までは覚えてなかったが。まぁimg神姫とは関係ないな - 名無し(関東) 2007-11-28 08 13 39 tろころで虹裏神姫キャラ全集 のトコ、キャラ説明が虹裏神姫と派生キャラ ってのと虹裏神姫キャラ全集 てヤツの2種類あるんだが? - 名無しさん 2007-11-28 08 18 52 しまさこにゃんは最近出てなかったか?もしかして、出し惜しみしてたとか - 名無しさん 2007-11-28 18 29 13 しまさこにゃんもひこにゃんもimg神姫には関係ないだろ - 名無しさん 2007-11-28 19 00 11 ひこにゃんはネタ的に武士子と絡んでる。しまさこにゃんは「」の共通認識的キャラとして定着はしてない - 名無しさん 2007-11-28 19 02 11 絡む相手がいないのか。それともこれから絡む予定なのか・・・。しまさこにゃんはひこにゃん同様好きなので、ぜひ出てはほしいけどね - 名無しさん 2007-11-28 19 15 36 キャラ定着させたければネタ考えてimgスレに投下すればいいじゃない - 名無しさん 2007-11-28 19 18 07 そうだね、ありがとう。とりあえずあとで考えておくか。ついでにやちにゃんも出してゆるキャラを定着していこうか - 名無しさん 2007-11-28 19 29 22 ひこにゃんにしろリボルテックにしろ、「」達の会話の中で自然にキャラが出来上がって行ったものだから「キャラ付け目的」が見え見えだと逆にウザイと顰蹙を買う恐れあり。「俺が好きだから」とかで勝手に居たことにしてキャラ捏造したりしてもすぐ消されるだけだ - 名無しさん 2007-11-28 19 39 26 一人で頑張っても定着しないのよー - 名無しさん 2007-11-28 19 48 53 みんなも一緒に盛り上げればなんとかなるんだろうけど、そう上手くいくかな・・・? - 名無しさん 2007-11-28 20 28 34 定着させるには、結構手間隙がかかるというわけね。ひこにゃんは運が良くて、しまさこにゃんは運が悪いということなのか白根? - 名無しさん 2007-11-28 20 35 29 そもそもなんでしまさこにゃんなんぞを定着させたいのよ - 名無しさん 2007-11-28 21 17 06 「俺が好きだから」じゃね? - 名無しさん 2007-11-28 21 26 39 そりゃ、ひこにゃんに対抗したいからだろうな - 名無しさん 2007-11-28 21 28 15 「俺が好きだから」だけじゃ理由にならないな。知名度高めたいからだろ - 名無しさん 2007-11-28 21 31 10 宣伝か?彦根市職員? - 名無しさん 2007-11-28 21 32 45 正直ひこにゃんの紛い物的な認識で終わると思う・・・ - 名無しさん 2007-11-28 21 33 52 紛い物というよりは、キャラの増やしすぎって感じがする・・・ - 名無しさん 2007-11-28 21 36 33 もうキャラ紹介のページとか要らなくね?半Pで済む話だし、オレ設定で捏造されて混乱するのもどうかと思うし - 名無しさん 2007-11-28 21 38 28 初めてimgの神姫スレに来た奴が、何で白子が酔っ払いなんだとか武士子が動かないとか戸惑わない為に残しといてもいいんじゃね? - 名無しさん 2007-11-28 21 45 33 虹裏神姫と用語は残した方がいいんじゃない? - 名無しさん 2007-11-28 21 49 29 というか今更wikiを変える必要性自体感じないんだが - 名無しさん 2007-11-28 21 54 06 どっちにしろ俺設定の定着目的の編集はやめとけって事で一つ - 名無しさん 2007-11-28 21 57 43 各虹裏神姫の紹介と虹裏神姫と派生キャラ の中身がえらい被ってるんですがどうしたものか、どっちか一つでいい気もするが。 - 名無しさん 2007-11-29 06 12 03 1)キャラごとにページをつくって、2)紹介ページに1のページを呼び出す、3)見た目は今までどーり見える、4)まおうれしいにゃー♪ - 名無しさん 2007-11-29 08 30 55 なんか編集合戦が凄いな - 名無しさん 2007-11-29 08 47 36 オレ妄想設定を普及しようと必死な子と魔境化してるwikiの現状を少しでも改善しようって奴の激闘の記録だわな - 名無しさん 2007-11-29 10 12 14 各虹裏神姫の紹介、の方はもうページごと消してもいいんじゃないか?情報古いし被ってるし - 名無しさん 2007-11-29 15 07 05 そのうち限界が来てウキーとなったら気が付くだろうから生温かく少し離れて眺めておくのが吉 - 名無しさん 2007-11-29 16 55 39 キャラ解説を編集してる奴って本当にimgスレ見てんのか?妹りんの家事を手伝う奴とか見たことないんだが - 名無しさん 2007-12-10 20 04 04 いくらなんでも一人でやってるわけじゃないだろ - 名無しさん 2007-12-10 20 14 58 詳しい事は知らないが、書き込むときはもう少し情報を集めてからでもいいんじゃない? - 名無しさん 2007-12-10 20 18 05 一人でやってるやってないの真偽はともかく、imgスレでは誰かが手伝ってるとかって話は一度も出てないぞ - 名無しさん 2007-12-10 20 20 51 なるほど、結局真偽は不明というわけね - 名無しさん 2007-12-10 20 30 09 真偽不明、というか「一人で家事とかかわいそう」みたいな妄想補完なら止めとけって話 - 名無しさん 2007-12-10 20 34 15 キャラ全集トップページの女性も見てるので云々〜て注意書き、アレ必要か?いや内容自体は一般的に考えれば全く間違いじゃないが、そもそも説明してる内容が「ふたばの二次元裏のimg鯖に立つ神姫スレについて」だぜ? - 名無しさん 2007-12-11 14 38 51 いいんじゃね? エロ方向は暴走しやすいから、書き込む前に一回考え直す事にもなるし - 名無しさん 2007-12-11 14 48 10 ああ、いつもスレでやってるような事をそのまま書くのはまずいのは分かるのよ。ただその「エロっぽい文はダメ」の規制の範囲がね。今書かれてる内容程度までならいいのか、それともまるっきりダメと言うつもりなのか - 名無しさん 2007-12-11 15 08 50 少しだけなら問題ないんじゃない?これは度が過ぎたエロ文を書いちゃダメって意味なんじゃないかと - 名無しさん 2007-12-11 17 16 44 検索でここにたどり着くような人のことを意識しているんじゃないかなぁ。武装神姫の(女性)オーナーが増える機会をみすみす失ってしまうような表現は控えたら?という女性視点からのアドバイスだとありがたく受け止めようじゃあ~りませんか♪ - へたれ芸人 2007-12-11 17 57 15 ページタイトルが思いっきり「虹裏神姫」ってなってんだから察しそうなものだろうに・・・ - 名無しさん 2007-12-11 19 07 54 わざわざ他所から来たお客様に配慮するような事か?ページタイトル的にも虹裏(img)神姫スレに行く人向けの所だと思ってたんだが - 名無しさん 2007-12-11 19 10 24 いや、一般の人も見てるんじゃないかな。大半の人は面白がって見てるって口なんだろうけど - 名無しさん 2007-12-11 19 19 40 いやだから普通の人が見てても別に関係なくね?面白がってPOMってるだけだってんなら特に - 名無しさん 2007-12-11 19 22 51 どっちにせよ極まったエロ記述への注意は当たり前だけど、かといっていちいちお客様への配慮とかは要らないだろうって事だろう。「虹裏」神姫と冠してる時点で元々一般向けに神姫を広める為に存在してるwikiじゃないし - 名無しさん 2007-12-11 23 48 13 一般の武装神姫ファンが検索でここへたどり着いたとき、「虹裏」という言葉の意図するところ(虹裏=二次元裏=ふたばちゃんねるの…以下略)については分からないと思う。つまり、基本的なことすら分かっていないお客さんが紛れこんでしまうような検索でたどり着ける場所にあるwikiという時点で、対外的なことを意識せざるを得ない。なぜかって?お客さんであっても編集したい内容や気に入らない内容であれば編集・変更できてしまうから=編集合戦を勃発させられるからね - どこかのwikiの管理人 2007-12-13 03 37 36 文章の表現的な意味での注意は必要だが、気になるのはそれが行きすぎて内容にまで波及する危険がないか、って事なんだ。それこそimg行く気のない奴が「エロとか飲んだくれとかゆるさないよ」って好き勝手にオレ設定で編集しだしたら編集合戦や魔境化が始まって、元からのimg住人は敬遠するしこれからimgスレに参加しようって人は混乱するだろうし。そんなことになったら本来の趣旨である改造技術や小物アイテム情報は無駄になるし、そもそも「虹裏」神姫ってサイト名自体無意味になりかねん - 名無しさん 2007-12-13 09 19 26 結局女性にとってここは見に行きにくいという事なんだろうか?ここは女性の意見も聞いてきたいところなんだけど - 名無しさん 2007-12-13 18 14 19 ウチの妹にそこんとこどうよ?って聞いてみた。「そんなことに配慮する暇があったら働け」だそうです。 - 「」 2007-12-13 18 30 25 そもそも虹裏見に来るような女子「」や女子あきなら気にしないだろうし、注意文の内容よりも妙に「女性に配慮しろ」みたいな書かれ方が何か変だなぁ、と思った - 名無しさん 2007-12-13 19 07 00 というか何で配慮しなきゃって話になってんのかが分からん。女性オーナー増やしたいとか、そういう目的のまとめサイトじゃないだろ。 - 名無しさん 2007-12-13 19 13 07 ↑念。つうか虹裏住人じゃない一般オーナーが「虹裏とか知らない、エッチなのはいけないと思います!」と捻じ込んでるようにしか見えん - 名無しさん 2007-12-13 19 22 50 とりあえずTOPにふたばの事書いておけばいいのでは - 名無しさん 2007-12-13 20 53 08 配慮云々もそうだけど、やたらと「女の人も見てるから〜」みたいな注意を書きたがる理由が分からん。そんな特別に強調しなくても性別関係なく露骨な表現を嫌がる人はいるし、賢明な人間ならむしろこれだけ言われてるんだからいい加減このwikiの性質に気づいて、黙ってウィンドウ閉じそうなもんだが - 名無しさん 2007-12-14 08 55 23 神姫のキャラデザに「こいでたく」氏を起用、なんて面白そうでは?いや、マジで。それとも、ライバル誌のHJで描いてるからダメ?…ホントに出たら即買いなんだけどなぁ。となると、愛称は「え●子」?間違っても「J●F子」と呼んではいけない(笑) - 743 2007-12-23 01 41 12 アイドル型MMSのアイ子が出たのだから、思い切ってセーラー服型MMSとかスク水型MMS、なんてでてもいいんじゃない?いや、是非とも出して欲しい!キャラデザは「こいでたく」氏で ←しつこい - 743 2007-12-23 01 44 10 「なんでもコメントコーナー」とはいえここでそんなことを唐突にかつ精一杯力説する意味がよく分からんのだが・・・ - 名無しさん 2007-12-23 19 51 12 残念ながらアイ子は蝶型MMSなんだぜ - 名無しさん 2007-12-24 14 03 33 明けマスィーンズ 今年もよろしくHENTAI - 名無しさん 2008-01-01 18 03 37 こちらこそよろしくHENTAI - 名無しさん 2008-01-01 23 41 36 うぃきぺでぃあからリンクが張ってあるんだけど削除すべきかな、これは - 名無しさん 2008-01-16 19 53 50 セーラー型・・・それ何てメダロ(ry - 名無しさん 2008-01-16 20 10 37 シスター型にナース型……衣装でいいじゃないの - 名無しさん 2008-02-13 18 41 01 黒姉ってプロト黒子と黒ババァの両方で使われるって書いた方が良いのかな? - 名無し 2008-04-01 07 53 01 もう誰も見てない - 名無しさん 2008-05-08 18 50 51 ~ってどうなのよ?って書き込みがある度にココ見ろってレスがあるんだからちょっとは更新した方がよいのかしら? - 名無し 2008-05-09 17 50 35 更新した方が良いとは思うけど自分ではバトロンくらいしか弄らないな - 名無しさん 2008-05-11 02 35 20 気が向いたときに弄ってる。リペ良悪とか足してみた - 名無しさん 2008-05-25 00 01 26 色々忙しくてカラーレジン実験できなくてごめん、秋ごろになったら暇が出来るから更新するね - 名無しさん 2008-07-27 21 53 46 9弾以降の記事を中心に加筆・修正。結構大幅に修正した記事もあるので変だったら再修正おねがいします - 名無しさん 2008-08-01 06 57 40 リンク追加。武装神姫の公式サイト(非神姫NET)のRSSは拾ってません。あった方がいいかしら - 名無しさん 2008-08-02 05 28 19 RSSじゃなくて、TOPページの画像化ってことですね。公式サイト(フィギュア入口)のRSSも神姫NETのRSSも実は一緒なんですよね、あれ…しかも神姫NETの方で統合してるから、フィギュア関連のニュースは配信されていないという(爆)。どなたかお気づきでしたらコナミ山さんへ教えてあげてくださいなー - 毛モテモテック 2008-08-08 19 06 57 最近キャラ事典に虹裏じゃ見たこと無いような設定書き込んでる人がいるが俺が見たこと無いだけかその人の脳内虹裏設定なのか - 名無しさん 2008-08-31 09 12 51 またババア増えるのか・・・ - 名無しさん 2008-08-31 19 45 51 最近と言えば黒プリンか?深夜とかによく見かけるが - 名無しさん 2008-08-31 21 25 41 ぶっちゃけていうならエッちゃんのツッコミ設定や10弾二人の設定なんだけど 全集に載っけるほどキャラ固まってないと思うんだよね - 名無しさん 2008-09-01 00 29 09 鳥子なんて存在すら知らない・・・ - 名無しさん 2008-09-01 03 10 31 ランちゃんの縦にしゃべる設定もそれほど固まってないしね・・・ - 名無しさん 2008-09-01 05 33 01 エポパテの使い方についてはまた後日、今日は銘柄紹介だけ - 名無しさん 2008-09-15 17 42 41 最近悪い意味でここがたまに話題になるけど、こっちに書き込む人少ないな・・・ - 名無しさん 2008-10-13 23 20 47 キャラ全集更新すれば変な子の定着狙い乙!だし、小物類は最近更新出来るようなネタもないし…… - 名無しさん 2008-10-16 02 23 07 小物はあると言えばあるがほとんどリーメント関連になってしまうぜ - 名無しさん 2008-10-16 04 29 40 2008-10-17に関連リンクに追加されてるのは宣伝かしら?デリートしてもいいでしょー? - 名無しさん 2008-10-17 20 14 50 小物関連は追加しても削除されることが多いからなぁ・・・(特に頭部) - 名無しさん 2008-10-19 17 59 40 衣類とか結構増えてきたからサイドバーとかに衣類項目欲しいな 普通に編集とかできたっけ? - 名無しさん 2008-10-22 21 14 02 できたと思うよー しかしキャラ全集はどうにかしたいが客観的な編集と編集合戦回避が難しいなぁ - 名無しさん 2008-10-22 22 53 55 キャラ全集は適当に更新で良さそうだが色々難しいからね 時間帯とかタイミングによって自分でも見たことないキャラとか古い空気キャラとかもたくさんいるし - 名無しさん 2008-10-23 04 42 33 衣類項目を追加しました(同時にその他から衣類関連を移動) - 名無しさん 2008-10-24 03 26 24 アルトレーネ - 名無しさん 2010-06-21 07 07 45 キャラ紹介の容量が無くなりかけてるから神姫と派生キャラを分けました。ついでに紹介文も少し変更したり追加したり - 名無しさん 2010-07-14 01 21 49 保管庫なくなった? - 名無しさん 2010-11-03 22 21 09 保管庫の鯖がサービス終了したみたいだけどどこかに移動済み? - 名無しさん 2010-11-04 02 34 58
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1313.html
{裏の世界の戦闘} 夜中、満月がギラギラと光っていた。 そんななかに俺と右肩に座っているアンジェラスはある店の前に居た。 「おい、アンジェラス。本当にいいのか?」 「はい。これは私が決めた事ですから」 「ま、お前がそこまで言うなら仕方ねぇ~けど…無理だけはするんじゃないぞ」 「優しいですね、ご主人様は」 煙草を地面に落とし、靴の裏で踏みつけ火を消す。 今、俺とアンジェラスが居る所はアンダーグラウンドの神姫センターの目の前。 あの初戦のバトルの後、アンジェラスがこっそりと俺にこう言ったのだ。 『アンダーグラウンドで闘ってみようと思います。ご主人様が作った違法改造武器で…』 最初はなに血迷った事を言ってくれやがったのかと思い俺はアンジェラスを注意したのだが、頑固なアンジェラスは引かなかったため、俺が押し負けてしまい…故にこんな所に居る。 クリナーレ達に気付かれないように家を出て、オヤッさんの所に行き、神姫センターが何処にあるか聞き出しここに着いたわけ。 「にしても、キッタネェ~なぁ~」 表の神姫センターみたく綺麗じゃなく汚れている。 所どころヒビもはいってるし、今にも倒壊しそすな感じだ。 まぁそんなもんだよなぁ。 アンダーグラウンドだから神姫センターの管理も出来ていない。 ぶっちゃけた話し、物凄く汚い。 ゴミはそこら辺に散らかっぱなし。 入り口の自動ドアは壊れてて半開き。 電灯もチカチカと点滅状態。 文句なしの酷さだぜ。 「そんじゃ、入ってみるか」 「はい!」 半開きになってるドアに入り奥に行く。 すぐそのばに汚らしい筺体がいくつかあった。 他のオーナー達の年齢層を見ると15歳~40歳ぐらいかな。 俺は闘っている筺体を覗く、そこにはもの凄い光景がひろがっていた。 神姫同士が闘ってる事には変わりないが、無我夢中で敵である神姫を壊しあっているのだ。 足が片方なかったり、両腕がなかったり、神姫の体からダラダラとオイルみたいなもの出ている…人間でいう血だな。 筺体の中も凄い。 マグマステージや周り囲んだ電気ヘェンスやトラップだらけのステージ、その他諸々。 過激なステージばかりだ。 バキッ! ん? 何か踏んだ音がしたぞ。 足元を見ると、そこには何処かの神姫の右腕が転がっていたのだ。 「ご主人様…」 「………」 大方、バトルに負けた神姫の残骸だろうよ。 バトルで負けて生きて帰ってこられたとしても、負けたオーナーは負けた事に腹が立ちその怒りを神姫にぶつけて神姫を壊す。 投げつけや踏みつけ、etc,etc. 八つ当たりもいいところだ。 まぁここでは『常識』だからしょうがないさぁ。 「ケッ。残骸がそこらじゅうに散ばってやがる」 歩く度にバキィだのガキだのゴリだのと五月蝿くてかなわん。 それに少々歩きづらいし。 「ご主人様…あの………」 「あ?何か用か??」 「先ほどからご主人様が踏んでるのは…」 「武装神姫の残骸だが、何か?」 「!?ご主人様…そんな言い方は…」 アンジェラスの顔から元気が抜けたように悲しいとも悲痛ともいえる顔になっていた。 それもそうだろ。 同じ仲間だった物を今俺は歩く動作をするたびに踏みつけ破壊していくのだから。 …だから連れてくるのは嫌だったんだ。 ここに来る時、大抵は予想出来ていた事なのだからな。 しかし、ここに来た以上少し厳しくアンジェラスに言っておかないと。 「『そんな言い方』って、どんな風に言って欲しかったんだ?」 「それは!…その…」 「優しく言って欲しかったか?残念だけど今回はそうはいかない」 「ご主人様…」 「教えてやるよ。今俺が歩きながら踏んでいるのは、元はお前と同じ玩具の残骸だ。残骸=ゴミ。ゴミを踏んで何か悪いか?」 「ひ、酷い!」 「酷い?おいおい、何勘違いしてるのか知らんがお前等の存在価値は人間のお遊戯道具にしか過ぎないだよ」 「そんな…そんな事って」 「はぁ~いい加減理解しろ。俺は『者』、お前は『物』。同じ言い方でも意味が違うだろ。これが人間と人形の違いだ」 「………」 「やっと理解したか。所詮、お前等は物なんだよ」 俯いて黙ってしまったアンジェラス。 この程度のキツイ言い方でこんなに凹むのなら、もう帰った方がいいかもしれない。 こんな調子でバトルなんかした瞬間、アンジェラスはバラバラに破壊されるのがオチ。 相手は必ず違法改造武器を使ってくるのが目に見えてくるからだ。 俺は歩みを止め右足を軸にして引き返そうとした瞬間。 「…ご主人様の本音の意見を聞かせてください」 小声で言うアンジェラス。 元気が無いのが見え見えだ。 「本音を言った所で今のこの惨状は変わんねーぞ」 「お願いですから言ってください!」 今度は大声で言いやがった。 涙目になりながら真剣な顔つきで俺を見るアンジェラス。 う~ん、まぁいいか。 「まぁーそうだな。ブッチャけた話し、本音は結構ムカつく。いくら何でも限度っていうものがある。しかも神姫には心があるという。だからこうやって神姫の残骸を踏み歩いてのは正直不愉快だ」 「それがご主人様の本音ですか?」 「信じたくなければそれでもいいよ。一応俺は本音を言ったつもりだ」 「そうですか。なら私はご主人様を信じます。もしその本音が嘘だったとしても」 「だから本音だって。本音に嘘もクソもあるか」 「クスッ。そうですね」 「まったく、お前という奴は…」 どうして俺という存在を気にかけるんだ? アンジェラスの奴は何故そこまで俺という一人の人間にこだわる? オーナーだからか? いや、それは違うなぁ。 もっと何か深い理由があるはず。 でも霧がかかったように皆目解らない。 …もう少し一緒に暮らせば解るかもしれない…かな。 「マイちゃん!マイちゃん、しっかりして!!」 ん? どこからか女の子が泣き叫ぶ声がしたな。 声がした方に行くと、中学生ぐらいの女の子が両膝を地面に着き、両手でボロボロになった神姫を抱きかかえていた。 その女の子の周りには同じぐらいの年齢の男の子達が数名。 あぁ~、なるほどね。 あの女の子の神姫を男の子達の神姫でリンチしたな。 「なんて酷いことを…ご主人様ぁ」 「ほっとけ。余計な事に関わるとろくな事にならないぞ」 「…でも!」 キッ、と俺に訴える目で見てくるアンジェラス。 …はぁ~、まったくどうしてこうなっちまうんだ。 仕方ない、行くか。 俺はズカズカと男の子達の間を割り込み、女の子の方に行く。 「な、なんだよお前!」 「なにしきたんだよ!」 男の子達が一斉に珍入者の俺に文句を言ってきた。 ウザイ。 ここは一つ。 「ウッセェ、黙れ。ブッ殺されたくなかったら黙ってろ」 睨みをきかせながら言うと男の子達はビクッとして黙ってしまった。 所詮は悪ガキの集まり。 一発で脅せばあっさりと身を引くに違いない。 「大丈夫ですか?」 アンジェラスは女の子の目線に合わせるように移動し、女の子を慰めようとした。 「マイちゃんが!マイちゃんがこの人達に無理矢理バトルさせられてっ!!」 「ちょっと見せてみ」 俺は腰をかがめマイという神姫を見た。 猫型マオチャオか。 …うわー、このヤられかたは酷いなぁ。 右腕・右足・左足が完全に切り裂かれ、身体じゅうは傷だらけ、他にも所々に切り傷がある。 これは完全に違法改造武器でヤれたな。 「ご主人様!マイちゃんを助けてあげてください!!」 「無理だ。今から俺の家に持ち帰って修理しようとしても、途中で中身のCSCが機能停止し壊れるのがオチだ」 「そんな!?」 再び悲痛な顔になるアンジェラス。 何故他人の神姫を心配する事ができる。 同じ人形仲間だからか? …ったく、しょうがねぇ~なぁ。 俺はポケットから携帯電話を取り出し、オヤッさんに電話した。 「よおー、閃鎖じゃねぇーか。いったいどうした?」 「ワリィんだけどよ。今すぐアンダーグラウンドの神姫センターに来てくれないか?」 「別にいいが…。なんかあったのか?」 「あったからこうして電話してるんだよ。至急来て欲しい」 「分かった。閃鎖の事だから、また何かやらかしたんだろ」 「いいや、まだ何もヤッてない。ちょっと猫型マオチャオの神姫の修理を頼もうと思って」 「修理?お前、負けたのか?」 「俺は猫型マオチャオを持ってない。どうでもいいから早く来てくれ。金は成功報酬という事で」 「分かった、すぐに行く」 電話の電源ボタンを押してポケットにしまう。 そして女の子の方に再び視線を向ける。 「おいガキ。お前の名前は?」 「グスッ…ヒク…」 「泣いてちゃ解らん。お前の神姫を治してやるから名前を言え」 「梶原…由香里…」 「由香里だな。さっき俺の電話の会話通り、今からオヤッさんが来る。それまでそのマイをしっかり持ってけ」 「あ、…はい…」 涙声で返事する由香里。 まぁ無理もない。 自分の大切な神姫がこうもボロボロにされたのだからな。 「ご主人様。私、この人達許しません!」 「はっ?お前、何を言って…まさか!?」 「私はこの男の子達の神姫にバトルを申し込みます!」 だぁー、勘弁してくれよ! これ以上の揉め事には介入したくないんだ。 アンジェラスの事だから何かヤらかすと思っていたが…やっぱりヤらかしやがった。 「なにこいつ?神姫自らが勝負を申し込んできたよ」 「オモシレェ、やってやろうじゃないか!」 あぁ~あ、こいつ等もやる気だしちゃったよ。 こりゃあ後に引けないな。 「おい、アンジェラス」 「ごめんなさい、ご主人様。お仕置きは後で受けます。だから今だけは私の好きにさせてください」 真剣な顔で言うアンジェラス。 こうなったこいつはもう止まらないだろう。 …フッ、仕方ないなぁまったくもー! 「アンジェラス、こっち向けや」 「何ですか?」 ビシ! 「イッターィ!何でデコピンするんですか!?」 「なにが『今だけは私の好きにさせてください』だ。フザンケなよ、お前のオーナーは俺だ。勝手に決めつけてんじゃねーよ」 「ご主人様…」 「相手は俺が決める。テメェはバトルに備えて気持ち整えとけ」 「ご主人様!」 アンジェラスの顔は喜ぶ顔になった。 お前のせいだからな、こんな事になっちまったのは。 「おい、クソガキ共。あのマオチャオをボロボロにさせた奴は誰だ」 「俺だ」 一歩前に進んで進言してきた奴はいかにも悪ガキという名に相応しいツラと服装だった。 「テメェか、今からテメェにバトルに申し込む。どちらかの神姫が完全破壊するまでのデッドエンドバトルだ」 「いいぜ、あそこに見える筐体で待ってるぜ。青二才」 青二才? 俺が年上なのにか? マジでムカつくクソガキだ。 バトルが終わった後にシメてやるか。 そんな時だった。 丁度良くオヤッさんが来た。 「おーい」 「Good Timingだな、オヤッさん」 「で、どれを直してもらいたいんだ?」 「あの由香里という女の子が持ってる猫型マオチャオだ」 「分かった。ほ~ら、お嬢ちゃん。おじちゃんと神姫を直しに行こうねぇ~」 穏やかな声でオヤッさん言うとあからさまに嫌な顔つきになる由香里。 まぁ、そりゃそうだよな。 いきなり知らないオジさんに声をかけられたんだから。 ある意味、今から女の子を誘拐でもしようと、している光景にも見える。 オヤッさん…哀れだ。 ここはフォローしてやるか。 「なぁ由香里」 「グスン…なに?」 「由香里はマイを直したいんだよな」 「うん!」 「ならそのオジさんの言う事を聞いて行け」 「でもぉ…」 「俺の言葉を信用してマイを直しに行くか、信用しないでそのままマイを死なすかは由香里が決める事だ。俺とアンジェラスはマイの仇を討ちに行く。だから先にこの筋肉ムキムキのオジさんと行け。後から俺も行くから」 「…うん、分かったぁ。必ず来てねぇ」 「そー決めたのなら早くいけ。時間は待ってくれないぞ」 「うん!」 泣顔でもオジさん…もといオヤッさんと一緒に行く由香里。 よし、後はバトルだけだ。 「行くぞ、アンジェラス!」 「はい!ご主人様!!」 俺とアンジェラスは筐体に向かって歩きだした。 はてさて、いったいどんなバトルを繰り広げことになるのやら。 …。 ……。 ………。 奴等の筐体はすぐに見つける事が出来た。 あんだけクソガキどもの取り巻きが出来てるのだからな。 「遅いぞ。ビビッて逃げ出したと思ったよ」 「残念だったな、クソガキ。俺はテメェ等程落ちぶれていないんでね」 「この野郎!後悔しても遅いからな」 ガキの癖によく吠える。 俺はネックレスを外し一つのペンダントをアンジェラスに渡した。 「これは何ですか?」 「俺のペンダントだ。と言いたい所だが、これはただのペンダントじゃない。これはお前専用の武器でもあるんだ」 「私の専用武器!?」 「名はGRADIUS。万能型のお前には壱番適切な大銃剣だ」 「大銃剣?」 「あぁ。こいつはこの先端が別れている先からレーザーを撃つ事が出来る優れものだ。まぁ、こいつ持ってバトルフィールドに入ればGRADIUSの性能がお前の身体にインストールされる。それでこいつの使い方が解るだろう。サブウェポンはOPTION。リアパーツはリアウイングM‐88対消滅エンジン。アーマーはFORCE FIELO。アクセサリーはFREE SHIELD。こいつ等はまだ未完成だが、性能はそれなりに使えるはずさぁ」 「インストール…それって前にご主人様が言っていた」 「そう、神姫侵食だ。こいつにやれるとその神姫は必ず破壊されるとんでもないウイルスだ。気をつけろ。」 「はい!」 「それと最後の情報。相手はハウリンだ。壱番厄介なのは違法改造武器のソード・オブ・ガルガンテュア。あれは相当な攻撃力があるはずだ。多分、由香里のマイという神姫もあれでヤられたと思う。だから押さえ込まれるな。解ったか?」 「大丈夫ですよ。私を信用してください!」 「そこまで言うなら大丈夫だな。行って来い、俺のアンジェラス!」 アンジェラスを筐体の中に入れると筐体が動きだし低い音で機械が起動する。 頼むぞ、アンジェラス。 それと…絶対生きて帰って来い! アンジェラスの視点 私が筐体の中に入った瞬間世界が変わった。 どうやら今回のステージは荒れた荒野みたいです。 地面に落下した時なんか痛そう。 サブウェポン・リアパーツ・アーマ・アクセサリーは最初っからあるみたい。 それよりも早く武器を召喚しなくちゃ。 「GRADIUS!召喚!!」 そう言うと私の右手にグラディウスが召喚された。 これがグラディウス。 ご主人様が私用に作ってくれた武器。 とても綺麗で…とても攻撃力がありそう。 <Irregular Custom Weapon Installation Start> 「え?」 頭の中で女の声の電気信号が鳴り響いた同時に体中に電撃が走った。 い、痛い。 でもこのぐらいの痛さで嘆いては駄目です! 我慢しなければ! <Irregular Custom Weapon Installation Completion> 「アグゥ…結構しんどいです~」 少々疲れてしまいましたが、この程度なら大丈夫です。 「大丈夫か!?」 「あ!ご主人様、私は大丈夫ですよー」 「そうか、良かったぁ。神姫侵食には犯されていないようだな」 ご主人様の顔は見れないけど声だけでも安心感が得られます。 「おっと。アンジェラス、敵さんのお出ましだ」 「エッ!?」 私は振り返るとそこにはハウリンが居た。 右手には大きなソード・オブ・ガルガンテュアを持っていた。 確かにあれで斬られた時はひとたまりもありません。 気をつけないと。 「さっきも行ったけど、絶対に押さえ込まれるなよ!」 「はい!」 ご主人様は念を押すように言う。 よっぽど私の事が心配みたい。 でも嬉しいです。 ご主人様が私の事をちゃんと思ってくれるから。 これなら…頑張れます! 「さぁ来なさい!」 「………破壊する」 バヒュン! バヒュン! お互い接近し間合いをつめる。 私はご主人様から渡されたグラディウスを握りしめ敵を睨みつける。 敵は相変わらず無表情で突撃してくる。 そして目には光りが灯ってなかった。 これが違法改造武器を使い過ぎて神姫侵食に飲まれた目…。 …あまりにも酷すぎます。 私は…絶対こんな風になりたくない! だって、ご主人様が悲しむから! 「ヤァーーーー!」 「…ンッ!」 ガキャ! 敵のソード・オブ・ガルガンテュアと私のグラディウスがぶつかり合い火花が飛び散る。 ギリギリ! 力込め合い金属同士の擦れ合うのが耳に入る。 クッ!? なんて力! 前に行った普通の神姫センターで闘った時よりも力が強い。 いいえ、強すぎます!? ガギャギャギャギャーーーー! バキン 「クウッ!?」 力に負け、グラディウスを弾かれてしまいバランスを崩してしまった。 この体勢ではマズイです! 私は一旦、リアウイングM‐88対消滅エンジンを使って急降下する。 敵のハウリンも私を追い掛けて急降下してくる。 でもスピードは私の方が上です! 「スピードアップ!」 <SPEED UP ONE> キュィィィィバヒュンーーーー!!!! 「キャッ!」 スピードを一速を上げただけで、かなりのスピードが上がり私は驚愕した。 これが違法改造武器…。 なんていう性能なの!? でもこの性能のおかげで敵との距離がかなり離す事が出来た。 「当たって!」 <ROPPLE LASER> ピュピューン! 私はグラディウスを敵に向けてROPPLE LASERを撃った。 円状のレーザーで遠くになるにつれ円状の面積が広がっていく。 こんな広範囲型のレーザーなら大抵の神姫ならあったてしまう。 それに私の後ろに横一列に並んでるOPTIONもROPPLE LASERを撃つ。 これだけの弾幕なら避けれないでしょう。 「………」 敵のハウリンはROPPLE LASERを避けようとした…が。 バシッ! あまりにも広範囲すぎて避けきれず左腕に命中してしまった。 …しかし。 バチバチ、バチュン! 「なっ!?」 そんな!? 左腕ごとROPPLE LASERで切断されても、痛い顔もせずに突っ込んでくる! 駄目、回避が間に合わなっ!? ブオン! バシン! 「アグッ!」 敵のソード・オブ・ガルガンテュアが見事に私に命中した。 でもFORCE FIELOとFREE SHIELDでなんとか守れたが、あまりにも強い衝撃で私は地面に叩き落された。 「カハッ!?…ウ、ウゥ…ッ…」 直接地面に叩きつけられたために背中から全身にまで強烈な痛みが走る。 い、息が吸えない。 「ゲホッ!ゴホ!!」 強制的に咳き込みをしてしまい、敵を見る事が出来ない。 それに苦しくて動けない。 FORCE FIELOとFREE SHIELDが起動していないという事はさっきの一撃で壊されてしまったという事。 もし次の攻撃を受けてしまったら…私は。 ズガン! 「ウッ!?」 腹に衝撃が走った。 苦しくても無理矢理顔を動かし敵のハウリンを見る。 するとそこには左足で私を踏みつけていて、右手に持ってるソード・オブ・ガルガンテュアでトドメを刺そうしていた。 駄目、ヤられる! なんとかして避けないと! 右腕は動かせないけど、左腕を動かす事が出来ます。 だから左腕で敵の足を殴ればバランスを崩して狙いがハズレる筈です。 それなら! 「何処でもいいから、今すぐCYCLONE LASERを使え!」 ご、ご主人様!? ご主人様が私にアドバイスしてくれた。 でも何故、遠距離攻撃のCYCLONE LASER。 グラディウスは右手に持ってるけどピクリとも動かす事が出来ない。 どう考えても避けた方が速い。 どうしよう!? ご主人様を信用してCYCLONE LASERを撃つ! やっぱり避ける方が先です!
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ウサギのナミダ ACT 1-19 □ その夜、俺は意識が妙にさえていて、眠れそうになかった。 だから俺は、PCの前に座って考える。 クレイドルの上で眠る、ティアの顔を見ながら。 どうすればティアを守ることができるのか、と。 考える。 そもそも、神姫風俗は違法だ。 神姫風俗を経営している者も、それを利用した者も、法を破っていることになる。 神姫に性的虐待を与えていることになるからだ。 これはMMS保護法に抵触することになる。 だから、神姫風俗を経営する者も利用する者も犯罪者であり、明るみに出れば罰せられる。 MMS保護法は日本独自の法律であるが、神姫が浸透している国では似たような法律が制定されている。 その元となるのがMMS国際規約だ。 これはMMSに対する世界共通の認識を定める国際法である。 たとえば、神姫の大原則……一人の神姫に対し、オーナーは必ず個人であることは、この国際規約で定められている。 「心」に等しいAIを持つ神姫の権利についても、基本ラインについて言及している。 心のある人間のパートナーとして、神姫は保護されなければならない。 その理念のもと、MMS国際規約に批准している各国は、それぞれ独自のMMS保護のための法律を制定している、というわけだ。 もちろん、日本も例外ではない。 努力目標ではなく、ちゃんと罰則があり、違反者は実刑が課せられる。 その量刑は、動物愛護法よりも若干重い程度。 随分軽い気もするが、それは俺が神姫オーナーであることの贔屓目なのかも知れない。 それ以外に、他人の神姫を傷つけたりすれば、器物破損に問われる場合もある。 もちろん、他人の神姫を盗めば窃盗だ。 だが、神姫に対する、性的なものを含めた虐待は、表に出てこないだけで、潜在的に行われている可能性がある。 動物や児童に対する虐待同様、内にこもるため発覚しにくい。 周囲の告発によってはじめて発覚するケースがほとんどだ。 神姫虐待はさらにエスカレートしている傾向があるという。 神姫を「心を持つパートナー」としてではなく、「AIを搭載した小型ロボット」ととらえてしまうと、罪悪感が減ってしまうのだ。 悲鳴を上げていても、たかが機械、ととらえてしまい、普段は動物などにはそんなことしない人物であっても、面白半分に神姫を虐待するケースが増えているのだそうだ。 また、同じ理由で周囲が虐待を気にしない場合が多いという。 動物などなら気になるが、神姫は機械であるため、虐待という認識が薄くなる。機械が壊れたなら修理すればいい、という考え方もあり、神姫の「心」を認識していない場合があるのだ。 かつて児童ポルノ等で国際的非難を浴びた日本だが、神姫の性的虐待についても、国際的に疑惑の目が向けられている。 日本がMMS先進国であることも要因の一つではある。 しかし、ホビーの対象に性的な視点を求め、それを推し進めてしまうのは、日本のマニアの特別な性癖なのかも知れない。 ネットに流れている神姫ものの十八禁画像や映像は、その半数以上が日本から配信されているという説もある。 また、内容が過激なのも日本発の十八禁ものの特徴だった。 特に過激だったという、今世紀初頭のアダルトゲームの内容を参考に、それを再現するプレイを神姫に強要する。 そんなことは神姫に対する虐待に他ならない。 そして、その映像が神姫虐待を助長しているという人もいる。 そのような画像や映像が、なかば公然と流通しているのだから、流通元と思われる日本が、MMS国際規約批准国から非難を受けるのはむしろ当然のことだった。 しかし、こうした神姫虐待に対する取り締まりは、あまり厳しくない。 警察にもMMS犯罪の専門部署が設けられているが、神姫虐待に積極的ではない。 むしろMMSによって引き起こされる凶悪犯罪の取り締まりに躍起になっている状況だ。 関連犯罪が増えるのはブームの暗黒面であるが、ここのところ、神姫を利用した殺傷事件など凶悪犯罪が後を絶たず、こちらも社会問題になっている。 神姫の虐待事件よりも、人間に対する直接的脅威となっているし、事件性が高い。 先にも述べたように、神姫虐待事件は内にこもって行われる場合が多く、表沙汰になりにくい。警察もなかなか動けないのが実状だ。 だから、警察の動きに納得はいかなくても、仕方がないと理解はできる。 逆を言えば、神姫虐待もその事実と裏付けとなる証拠があれば、警察も動いてくれるということだ。 神姫保護を唱うNPO法人がいくつも活動しているし、警察の協力を得て、神姫虐待事件を解決している例もある。 もちろんそうした神姫保護団体では、神姫風俗は反対の立場であるし、警察への告発もたびたび行っている。 警察も、神姫保護団体が提唱する、年一度のMMS保護週間の時くらいは、ある程度神姫風俗の摘発も行う。 だが、それで十分ではないのが現状だ。 そういう状況にあって、神姫風俗はなくならない。 逆に増えているくらいだ。 なぜか。 それはあくまでもアンダーグラウンドの、個人経営業者ばかりだからだ。 神姫風俗に組合があるわけではない。 情報は回ってくるが、相互扶助など行ってはいない。 たとえどこかの店がへまをして、警察の世話になっても、一時的に店を閉めてほとぼり覚めるまで知らない振りをしていればいいのだ。 人間相手でも、若年齢層の売春斡旋業が、違法でもなくならないのと同じことだ。 神姫風俗はもっとたちが悪いと、俺個人は思う。 風俗の神姫は逃げることができない。 そもそも、経営者がオーナーであるし、オーナーとのつながりは神姫にとって絶対だ。 仮にオーナーの元を逃げたとしても、ただの野良神姫になる。 そうなった神姫は長くても一日程度しか活動できない。 バッテリーの充電が行えず、行動不能に陥るからだ。 足下を歩いている野良神姫を誰が気にとめるだろう? たとえそんな神姫を拾っても、それが風俗にいたと知れば捨てられるか壊されるか……ティアの正体が発覚したときの、ゲーセンの連中の反応を思い起こせば明らかだ。 バッテリー切れの神姫など、もはや精密機械のゴミに過ぎない。 そうなることがわかっていて、逃げ出す神姫はいない。 また、経営者にとっては秘匿性も高くて重宝である。 アタッシュケース一つ用意すれば、所属する神姫すべてをまとめて、店を畳むことができる。 考えたくないことだが、ばれそうになったら、壊したり捨てたりすれば、証拠だって残らない。 容疑があっても、証拠がなければ警察は逮捕できないし、重要事件でもなければ証拠を捜して何百人も動員することはまずない。 どこかの店が摘発を受けて、ほとぼりが冷めるまで店を一時的に閉めたところで、経営者には大した痛手にはならない。 しばらくして、またどこか別の雑居ビルの部屋を借りてはじめればいいのだから。 神姫風俗などの違法営業の情報は、もっぱらネットを通じて、アングラ的に行われる。 だから、一度店を閉めて場所が移動しても、客はネットでその情報を調べてやってくる。 警察のマークが緩いのをいいことに、神姫風俗ではやりたい放題だ。 先に述べた神姫の十八禁映像のような過激なプレイが現実に可能だし、画像や映像を撮影できるらしい。 客の中には、自分の神姫にはそういうことをさせたくないが、風俗に来て神姫に性的虐待をするオーナーが少なからずいるという。考えたくないことだが。 雑居ビルの殺風景な部屋の中では、映像から場所を特定するのも難しい。 だから、神姫風俗の経営者たちも、非公開を条件として、個室内での画像や映像の撮影を許可している場合が多いのだ。 彼らが問題にするのは、自分たちの素性が割れてしまうような情報が流出する事態、である。 いままでに述べたことから総合すれば、神姫風俗は秘匿性も高くて、抜き打ちの摘発で現行犯でもなければ、立件に至らない。 だが、例外はある。 所属神姫が客によって持ち出された場合、だ。 もちろん、退店時に所属神姫は返却されるわけだし、客が神姫を持ち出すなど、店側が許すはずはない。 だが、客がそもそも神姫を奪う目的で入店していたとすればどうか。 それでも、どうやって持ち出すのか、持ち出した後どうやって店をごまかすのか、いろいろと高いハードルがあるので、まず持ち出そうなどとは考えないだろう。 しかし、それをやってのけた奴がいる。 井山だ。 井山はティアを連れ出し、店の人間たちから逃げ切れそうになくなって、ゴミ捨て場に捨てた。 あのときはなんとか逃げ切ったようだが、もし捕まっても、ティアを持っていないとしらを切るつもりだったのだろう。 本当はそのままバッテリー切れとなり、ゴミとなるか、戻ってきた井山が回収したかもしれないティアだったが、そうはならなかった。 俺が拾ったことによって。 ティアのメモリの中には、客への奉仕の記録だけではなく、その客のデータや、風俗店のスタッフの映像やデータも記録されている。 それが明るみに出れば、店は摘発を受けるだろう。 店を畳んでも、顔写真などの明確な個人情報が流出してしまうので、警察に捕まる可能性は拭えないままだ。 ティアが生きていることは、神姫風俗店『LOVEマスィーン』とそのスタッフにとっては、死活問題なのだ。 だから、店のスタッフの黒服たちは、武装神姫が盛んなゲームセンターに現れ、ティアを捜していたのだ。 連中に必要なのは井山ではない。 連れ出されて今も稼働している神姫・ティアこそが奴らの目的なのだ。 井山もティアを狙っている。 奴の様子からして、ティアを大層気に入っていたのだろう。 だから、自分のモノにしたいという欲求が強くなり、我慢できなくなり、店から奪うという行為に及んだのだろう。 そのくせ、店の連中に追われているのをティアのせいにして、ゴミ捨て場に投げ捨てるあたり、どれだけ自己中心な奴なのかと思う。 諦めた神姫が、立ち寄ったゲームセンターで、突然目の前に現れたのだ。 奴の物欲と性欲に再度火が点ったのは想像に難くない。 今度は俺という個人から奪えばいいだけの話だ。 だからあれほど執拗に仕掛けてくるのだろう。 しかも、それで俺が苦しんでいるのを見て楽しんでいるようだから、性格が歪んでるとしか言いようがない。 ティアを狙う神姫風俗店も、その客であった井山も、れっきとした犯罪者だ。 証拠があれば、告発できる。警察は動く。 しかし、『LOVEマスィーン』に気付かれないように、警察には動いてもらわなくてはならないが。 警察を動かしうる、確たる証拠と、伝手があるだろうか? 俺はクレイドルの上で眠るティアを見つめた。 愛らしい寝顔。 俺の中で様々な葛藤が巻き起こる。 俺にとって大切なもの、大事なこと。 捨てていいもの、捨て去れないこと。 社会的な立場や、なけなしのプライド、様々なしがらみ、感情や理性、そういったものが俺の思考で渦を巻く。 俺は長いこと考えていたのだと思う。 ふと気がつくと、カーテンの向こうが明るくなってきていた。 朝の到来を告げる、小鳥のさえずり。 カーテンの隙間から指す、一条の光に、俺は目をすがめた。 そして思う。 ごちゃごちゃと考えがまとまらないときには、シンプルに考える。 俺が今、本当に欲しいもの、守りたいものは、なんだ? ティアを見る。 いつか見た、花がほころぶような、愛らしい笑顔が思い浮かぶ。 証拠はある。 伝手もある。 あと、俺に足りないのは…… ……そう、覚悟だった。 次へ> トップページに戻る
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暗い部屋。精錬した部屋。狭い部屋。穴のような部屋。その中央に座する人影は、パソコンのディスプレイに1つの兆しを見る。ボイスチャット。 「・・・お呼びですか、会長?」 『ああ。昨日の会議の首尾を聞こうと思ってね』 「何も、滞りなく。しいて言えばヒメガミ神姫センターの方から飲食コーナーが赤字続きである事と、逆に『プチトマト』の売上が予想外に多く生産が追いつかない、という報告があった程度です」 『飲食が赤字、それは商店街が活発だという事だろう? それならばコーナーは無くしても構わないな。館内飲食自由にして持ち込んでもらおう。ただし衛生面管理を強化する事。神姫用服飾の方は、まあ無闇に労働力を増やせる訳でもないから現状維持でいい』 「了解。私と同じ見解ですね」 『・・それは、嫌味か?』 「いえ、単純に同意見なのが嬉しいのですよ、我が主」 『・・・やっぱり、嫌味じゃないか』 画面から響く闇は、少し、微笑む。 『ところで副社長、社長は、今居るのか?』 「社長でしたら、今日は来ませんよ」 『・・・そうか』 揺らぐ背景。カーテンの、囁き。いつの間にか開け広げられた窓からは、夕の木漏れ日と、風。 「何だ、いらして居たのですか」 其処に、佇む闇が有る。影を張る衣。座する者。小さな姫・・・ 「来ちゃ悪い? 自分の会社に」 「それなら、例え“神姫”であっても、正面からいらして下さい、我が主」 副社長は、その闇に、微笑む。 ・・・其処にあるのは雛人形。 「・・・・は?」 「うっわ~、こんな初歩的なテにひっかかるなんて」 「・・・会長?」 真横からの声で、彼はようやくその姿を見つける。今度こそ、今度こそ神姫。 「それにしても寒かったわね、今の『例え“神姫”であっても、正面からいらして下さい、我が主』だって~。うぷぷぷぷ」 「・・・何を、なされているのですか」 「そりゃまあ忍者らしく、変わり身の術。趣味で」 「趣味の時点で忍者ではありません」 ・・まあ、口は悪いが、一応、神姫。 「相変わらず給与査定を気にしないツッコミよねえ。それともMなの?後ろの穴準備してるの?」 「穴とか後ろとか言わないで下さい」 ・・・・いや、きっと自信は無いが、まあ、神姫・・・ 「それに、いらっしゃるのでしたら、わざわざチャットするだけの為にハッキングをしかけて来ないで下さい。毎度の事とは言え、ネットハッカーとしても著名な会長にあんな事をされると警備部が面食らうのですから」 「忍者らしい趣味でいいじゃない。警備には抜き打ちテストだとか言っておきなさいよ」 「それも趣味のカテゴリに入る行為ではありませんし、公私織り交ぜている時点で忍者らしくもありません」 「会長にツッコミ入れるのは公私混同じゃないの?」 ・・・。 「全く、会長。せめて上司らしくするか神姫らしくするかどちらかにして下さい」 「あたしは、どっちだっていいのよ。細かい事気にしてるとハゲるわよ?」 「・・・私の役職は細かい事を気にする為にあります。ほら、会長があまりに馬鹿な真似を連発なさるから、ナレーションさんも閉口してしまったではありませんか」 「うわそれあたしのせいにする? 冷静に考えたら、ノリノリで『我が主』とかクっサいセリフ言ってる方がおかしいでしょ? と言う訳で以降解説やりなさい貴方。やらないとマジ減俸」 ・・・ご指名を頂いてしまいましたので、僭越ながら私が紹介をさせて頂きます。私の名前は火神基生。ヒノカミコーポレーション副社長を務めております。そしてこの先程より暴言と公私混同の限りを尽くす忍者型神姫が、御恥ずかしながら我が『ヒノカミコーポレーション』会長です。信じられないでしょうが本当です。社内でも極秘事項ではありますが。 「あ、ちなみに会長職も趣味だから」 「・・・私の祖父たぶらかしてその地位を得ておいて、趣味ですか・・・」 「え~、ちゃんと独力で稼いだ分もあるわよ」 「それはハッカーとして違法に稼いだ資金であるとか先日言っておりませんでしたか?」 「ちゃんと企業利益にも貢献してるでしょ?」 「“神姫パートタイマー”ですか」 神姫パートタイマーは、会長の考案した、会社や学校に通う神姫オーナーの為の『預かり所』を我が社が設置し、其処に預けられた神姫の中で希望者にパート労働をさせるシステムです。我が社の系列店舗への派遣や『プチトマト』等系列店に卸す神姫用服飾衣類の生産など、人件費も安く上がる事もあり数々の実績が上がっております。ただし・・・ 「あれは割に合いませんし、どちらにしろ違法です」 現状のMMS国際法では経済情勢に影響を与えてしまうこのような形での神姫の労働は禁止されています。其処は神姫への給与を『ないしょのおこづかい』として神姫に口止めを行い、オーナーも含め情報漏洩阻止を徹底して対処しています。しかし、そもそも神姫へ労働賃金を支払う義務自体無いのですが。 「いいじゃない、だから趣味なんだし」 「・・・人を巻き込まないで下さい」 「巻き込んでるのは神姫でしょ?」 「私の事です」 何と言っても、その事実を知るのはほぼ私だけなのですから。 「・・・それはともかく、会長、どうしてヒメガミを避けているのですか? 会いたがっていましたよ」 ヒメガミというのは私の妹、ヒノカミコーポレーション社長火神天姫の事です。実質社長職は私と会長で半分以上受け持っているのですが。 「それは、“会長”にじゃなくて“あたし”にでしょ? 実はヒメガミちゃん、会長の正体を探ろうとしてたのよ。それでもう探らせまいと悪戯しちゃったから、顔合わせづらくて・・」 「・・・もしかして、鋏の言っていた大迷惑神姫をヒメガミの護衛に送り込んだのは会長ですか」 「あれ? あなたもハサミと知り合い? 奇遇ねえ。あたしはハッカーの方で知り合い」 鋏と言うのは私の腐れ縁の私立探偵の事です。腕は確かな方ですが、昔から法に触れる事と女性が好きな厄介な奴でしたよ。 「ともかく、まだ、あたし=会長って知られたくないからね、悪いけれど」 「それは教えていなかったからでしょう?」 「だって~、仕事だからってついヒメガミちゃんには辛く当たっちゃったりしてるもの。今更言えないわよ」 「仕事って・・・先程と言っていることが違います」 「あたしはどっちだっていいのよ」 「良くありません。それに、それだけではないでしょう? ヒメガミに嫌われる理由は」 「じゃあ何よ?」 「決まっています・・・」 そう、会長が神姫と知ればそれはごく“当然”の事。何故ならば・・・ 「普通、好きで神姫に仕えようとする人間なんて居ないのですから」 「・・・うっわ~、あたしの事ほぼ唯一会長って知ってて、尚且つその下で働いてる癖にそういう事言うの? 変態?」 「はぐらかさないで下さい。それから何気に人を変態呼ばわりしないで下さい」 「主従逆転して何とも思わない人間なんて、変態以外の何者でもないでしょ?」 会長は相変わらず毒舌で私をあしらう。いつもであれば、私はここであきれ返る。しかし、もう騙されない。これは、会長の、テストだ。 「・・・私は、“自分の認められる人物以外”の元で働きたくはありません。それが単に会長だったと言うだけです」 「・・・全く、その失業保険の手続き方法を気にしない口の利き方というか、ヘンに融通の聞かない真っ直ぐさと言うか」 「こういう、性分です」 「嘘が無い事くらい判っているわよ、最初から」 誠意を持って見据えた闇は、私に微笑を返す。どうやら、テストは合格のようだ。 「・・・怖かったの、ですね?」 「まあね。あたしの気に入ってる子があたしを罵倒したり、あたしの前から居なくなったり、そういうのって、やっぱりこたえるもの」 「それでも、続けなければならないのですか、こんな事を」 「こんな事って、仮にもあんたの家族引っ掻き回されてるんだからもう少し大事にしなさいよ」 「私にとってはそうですが、会長にとってはそんなものでしょう? 何しろ、事が公になれば会長はおろかすべての神姫が脅かされるのですから。そこまでして得られるメリットがあるとは私には思えません」 「趣味って言ったじゃない?」 「趣味なのですか?」 「・・・違うわよ」 闇が、少しくすむ。 「では、聞かせて頂けますか。誰にも認められない道でありながら、そこまでして、会長でいる、理由を」 「・・・まあ、あなたになら、そろそろ言ってもいいかもね」 「・・・あなたは、あたしの事、何者だと思う?」 闇が揺れる。何処からか、会長は大きな・・私には小さなカードを取り出し、切り始める。 「・・・武装神姫です」 「そうね」 その中の一枚、それが突然飛び出し、私の手元に届く。描かれているのは、会長と同じ型、忍者型MMSフブキ。 「あたしの、心は? 神姫?」 「・・・判りません」 「正直ね。でも・・そういう、事よ」 会長は、手を止め、そのカードの束を伏せる。 「人間は、神姫の“心“を正しく認識出来ない」 会長は、暗くも無く、重くも無く、唯佇む闇のように、言い放った。 「考えてみれば簡単な事よ。人間はそもそも自分達の“心”を解析し切っていないのよ? あなただって自分の心が全部判るって訳でもないでしょ?」 「そうですね」 「・・・意外と冷静ね。結構ヒドい事言ってるわよ?」 「今更です」 「あはは~、それもそうね。ま、つまり、そんな現状なのに人間は神姫にも“心”があるって言っちゃったのよ。だったらそれが“神姫の心”をちゃんと認識しているとはお世辞にも言えないでしょ?」 「では、人間の“心”から想像された神姫の“心”も、人間のそれと同じという事ですか?」 「それはちょっと早とちりかな。言っちゃえば、人間の“人間”という認識は今思いっきり拡大しちゃっている所なのよ。神姫とか人間とか、それ所じゃなくね。だって例えば、犬にも人間の感覚を適用して考えちゃうでしょ?」 「・・・なるほど。それは、犬の“心”も人間の“心”と同意に置いているとも言えますね」 「犬どころじゃないわ。猫だろうと蟻だろうと映画のエイリアンだろうと、この足元の地球サマすら人間は自己と同位に置いちゃう事があるでしょ? そしてその可能性を否定し切れない」 「何故ですか?」 「“拒絶”されてないからよ。されているとしても、明確に意思疎通が出来ないからそれを認識できない。つまりはそれが自分と同位存在か否定しきる事が出来ないって訳」 「・・・哲学的な話ですね」 「割と真実よ。だって実際“違う”って言い切ることが出来ないじゃない? だけど“それが人間と同じ心を持つかもしれない”という選択肢は、思考し続ける限り拡大する。つまり現状、人間には世界の全てが自分たちと同じ“心”を持っているかもしれないって思っているのよ」 「・・・暴力的な、話ですね」 「・・・聞きたいって言ったのあなたじゃない」 「つまりはね、人間は未だ神姫の心が何処まで自分達と違い、何処まで自分達と同じか決定的な判断は出来ないの。例えるなら・・そうね、同じアパートのお隣さんくらいしかわかんないのよ。そこに、“創造者”と“被造物”の関係は意味を成さない」 「・・・神姫は初めから、人間の、“創造者”の“設定”を無視しえるのですか」 「そういう事」 会長は、カードの山かを捲る。一番上にあった図柄は、騎士型サイフォス。 「だから、与えられた“設定”を神姫が拡大解釈や勘違いする事だってある」 次に現れたのは、マーメイド型イーアネイラ。 「与えられた武装の“設定”された用途を無視し、より良い使用方法を見出してしまう事もあり得る」 3枚目、黒き翼。天使型アーンヴァルB。 「与えられた“設定”を神姫が拒絶する事もあるわね」 「・・・ですが、神姫らしい神姫も居る筈です」 「あっ! こらちょっと!!」 私は会長の手を遮り、2枚のカードを引き出す。絵柄は砲台型フォートブラッグと、建機型グラップラップと無骨なモチーフの組み合わせ。 「“設定”を神姫が無視するのではなく、オーナーである人間が無視し、そぐわない改造を行ったり、武装の違う用途を強制したりするだけではないのでしょうか?」 「それにしたって神姫と人間の意思疎通が出来て無いって事じゃないの。それなら・・・」 会長は私から山を奪い返すと、また1枚捲る。鮮やかな赤、サンタ型ツガル。 「人間がその“設定”から神姫にコンプレックスを植え付けることもあるでしょ? 勿論自分でそれを克服する事も出来るし」 「・・・そうですね」 説き伏せられた私にもうその気はないにしろ、今度は私の手元も警戒しながらカードを捲る会長。次なるは、雄々しき赤、寅型ティグリース。 「そして、人間に“設定”された“絆”まで否定してしまう事もあるでしょうね」 其処まで捲ると、会長は残った山をもう一度切り始める。丁寧に。 「更に、神姫が凌駕し得るのはそれだけじゃない。人間自身の“能力”も、時には飛び越えちゃうわ」 改めて整頓され置かれたカードの山。小さな腕がまたひとつ、新しい絵柄を見せる。白き力。悪魔型ストラーフW。 「例えば、運転や調理技術、神姫の技能が人間のそれを超えてしまうかもしれない。その“能力”も、それを望みえる“心”もある」 間髪置かずに、今度は愛らしく、種方ジュビジー。 「そうであれば、神姫がその技能を人間に教える立場にだってなり得るわよね。その“能力”だって望めば有るもの」 猛しく、犬型ハウリン。 「神姫が商店でも経営して、人間と同位の経済活動に参加することも可能よね。その“能力”も望める。人間よりも適材な時もあるかもね」 「・・・それは、会長が出資しておられる『ペットショップオシイ』の事そのものでは?」 「あ、バレた?」 おどけながら捲る色彩。艶やかな、花型ジルダリア。 「・・・それで、まあちょっと言いづらいけれど、神姫が人間を殺し得る“能力”だってあるのよね。毒薬でも作ればいいんだし」 「言い辛いなら言わないで下さい」 「でも言っておかないとキモチ悪いし。あ、あたしはそんな物騒な真似までしないわよ?」 「・・・今の時点で十分物騒です」 「そして、人間より人間臭い“精神”の神姫だって居てもいいわよね。例えば金にがめつい奴とか、Sな奴とか。あ、Mは論外ね。主従関係って基本マゾ臭いから」 「・・・先程から聞いていれば、SMなんて連呼しないで下さい、はしたないですよ」 言いながら捲られたのは、丑型ウィトゥルース。そして猫型マオチャオ。 「はしたなくて悪かったわね。でもはしたない所じゃなく、人間を利用しちゃう神姫もきっと居るわよね。それから、『脅し』や『お願い』で人間を操縦しちゃう、そんな図太い“精神”の神姫も居るかもしれない」 「先程から聞いていれば・・・それは全て、会長にも当てはまりませんか?」 そう?とでも言いたげに意地らしく笑って捲られたのは、侍型紅緒、それと兎型ヴァッフェバニー。 「・・・考えたくありませんが、人間の意思決定を担ってしまう神姫や、それを容認し委ねてしまう、そんな“精神”の人間まで居てしまうのでしょうか?」 「・・優柔不断な奴なら、そんなのもあり得るんじゃないの?」 手招きされて、1枚ずつ捲ったカードに描かれていたのは、見事に対の天使型アーンヴァル、悪魔型ストラーフ。 「まあ、その代わり神姫と人間の“心”が明らかに別物の可能性だってあたしは否定しないわよ。なんて言っても身体構造が違うのだし、絶対に相容れない部分もあるでしょうね」 その言葉とともに一枚がはじき出される。手元に寄せれば、写っていたのはイルカ型ヴァッフェドルフィン。 「それならむしろ、人間と神姫、お互いがその“心”を別視する事で、人間が神姫をちゃんと認識出来るようになるのかもしれないけれど」 「・・・こんな風に、これだけの可能性を神姫の“心”は内包している。けれど、神姫が自由に生きるにはまだ難しい世界よね。・・そう、だから、“心”の自由さに気付いた神姫が、“居てもいい”為に手助けをしたい」 会長は全てのカードを戻しながら締め括る。とても優しくて、儚い、理想。 「そして“隣部屋の隣人”にも理解して貰いたい。あたしや、そんな子達が居る事を」 「その為には、力が、必要と?」 「そうね。回りくどい事するには色々と、ね。それが、あたしがこんな馬鹿やる理由かな」 そして、最後に、少し崩れて笑う。 会長は涙を流さない。神姫であるからです。しかし、そんな笑みの意味を私は知っています。だから、こんな時、私は・・・ 「・・・今自分で馬鹿だと認めましたね?」 「ナニそれ? 今までも馬鹿だって思っていたって言うの!! 馬鹿だって思う奴が馬鹿なのよ!!」 「大体良く聞いていれば、どっちつかずで、神姫も人間も引っ掻き回すような理屈ではありませんか」 「う・・・だったらあなた1人の胸にでもしまっときなさいよ!」 「毎度の事ながら、無理難題を言わないで下さい。それで、会長は神姫と人間、どちらの味方なのですか?」 「あら、そんなの、あたしはどっちだっていいのよ」 「またそれですか。あなたの“部下”は本当に、疲れます」 私は、一番私らしい“信頼”の言葉で返す。 「・・・まあ、許してあげる。何だかんだ言って、あなたの事結構気に入ってるのよ? 今まであった男の中で3番目くらい」 「微妙に嬉しくありません。会長とはアパートの隣人程度で十分です」 「あら、つれないわねえ」 そうすれば、“このひと”はまた微笑む。知っている、それも。 「・・・あ、そう言えば」 「まだ何かあるんですか?」 「神姫だろうと人間だろうと、運が悪いのだけはどーにもならないわよねえ?」 「それはそうでしょう。ラプラスの悪魔とでも契約しない限りは」 「・・・それも嫌よね」 その時、いつの間にか踏んでいたカードに気付いた。落ちて、いたのは・・・ 「あ! そのエウクランテのカードに足跡つけたわね!! 弁償よ減俸よ!!」 「不可抗力です」 最後(?)もやっぱり、ちゃんちゃん。