約 3,790,762 件
https://w.atwiki.jp/mioritsu/pages/643.html
私はベースを買った。 この十カ月、私はいつも律と一緒にいて、律といろんなものを共有して……好きなものまで一緒になって。 結局楽器を始めることになったのだ。 初めて律の家に遊びに行った時、律にザ・フーというバンドのDVDを見せてもらった。 その時、ちょっとだけ興味を持った。 というのは嘘だ。 音楽に最初から興味があったわけじゃない。ただ単に、律が好きなら私も、という軽い気持ちだったのだ。 だからこっそり律の音楽雑誌を読んで私も楽器をやろうと思った。 でもギターはなんか目立つから嫌だった。だから悩んだ末にベースを購入したのだ。 私もベースやろうかな、と言った時の律の喜びようと言ったら……。 私の名前を何度も呼んで、抱きついてきた。 あの時の律は、どこか変だった。 喜んでくれるかと思ったけど、律は泣いたのだ。 それがよくわからなかった。 律の部屋で、セッションをした。 あいにくバンドを組んでいない……というか元よりバンドを組むつもりはさらさらなかったので、二人だけでずっと演奏するのが普通だった。 ベースとドラムはリズム隊という一つの括りなので、一応はセッションが可能だった。 『ベースとドラムは一括り』というのは、なんとなく嬉しかった。 律はというと、あまり盛大にドラムを弾けないのが悩みだった。 「隣に迷惑なんだよなあ……音がすごいから」 「ベースも同じだよ。まあただのアパートでセッションすること自体いろいろと間違いなんだけど……」 律はドラムセットのシンバルに触れた。私はベースを担いだまま立っていて、その律の様子を見ていた。 「はあ……やっぱり、軽音サークルに入ったほうがいいのかなあ」 律が溜め息混じりにそう言った。 一瞬喉が詰まった。 「サークル……」 無意識にそう呟いていた。 「澪?」 名前を呼ばれたけど、私は反応できなかった。 サークルに入れば、思いっきり演奏はできるだろう。 防音もなされていないアパートの一室でアンプに繋げてベースを鳴らすのも、勢いよくドラムを叩くのにも限界はある。 他の住民の方に迷惑だし、何より目立ってしまう。 だから、サークルに入れば思う存分演奏はできる。 それはいいことだろう。 でも、私は釈然としなかった。 サークルに入るなんて……。 すでに出来上がっているサークルの輪。どのくらい人数がいるのかわからないけれど、でもすでに四月から十カ月だ。 もうメンバーは仲良くなっているだろう。 そんなすでに出来上がっている仲良しサークルに、今更入るなんてことは私にとって怖くてたまらなかった。 ただでさえ人と話すの苦手なのに、サークルだなんて。 しかもすでに出来上がった仲良しの中に入り込むなんて。 頭の中でサークルに入った私を想像してみる。 でもどうやったってオロオロして、どぎまぎして、律の傍にずっといて……話しかけられたって全然会話は繋がらなくて。 それで皆に呆れられて、嫌な思いさせて、それで一人になっちゃうんだ。 律も、私を放ってサークルの人と――。 律? 律は私と違って、明るくて、友達を簡単に作れて……。 律がサークルの人たちと仲良くやっている姿が浮かんでくる。 それが頭で再生されると、胸が一杯になった。 (……律に嫉妬してるのかな) 私なんかと真逆で、太陽みたいに明るくて、皆を笑顔にする。 だから、律のことを好きな子がいたって不思議じゃない。 律が誰かと仲良くしたりする姿を想像したり、実際律が誰かと仲良さそうにしたり……私にはできないことを平気で律はやってのける。 私はそんな律が、羨ましいと思っているのかもしれない。 だから、こんなにも痛いんだ。 「澪、どうかしたのか?」 律が私に声を掛けた。 私の気持ちも知らないで、呑気に構えて。 なんだよ……。 「なんでもないよ……今日は終わりにしよう」 私はベースを下した。 律は私を見て怪訝な顔をするけど、そうだなと返して立ち上がった。 ■ 夜、律と電話した。 結局律が誘われたバレンタインのお食事会の話題になった。 私は布団に寝転んで、律の声に耳を傾ける。 「食事会、どうしようかな」 「なんでそれを私に言うんだ? 律が自分で決めればいいだろ」 「そうだけど、でも……澪なら、どうする?」 考えてもみない質問だった。 私が律なら、どうするのだろう。 私のことを好きだと言ってくれる子がいて、その子が一緒に食事しませんかと誘ってくる。 でも、どうなんだろう。私は律と一緒にいたいから、断ってしまうかもしれない。 だけどその子の気持ちもありがたいと思ってしまうかも。 いや、私は何を言ってるんだ。 律と一緒にいたいからってのはおかしいだろ。今私は『私が律だったら』の例えを考えているんだ。 私が律だったとしたらの話だ。それなのに律と一緒にいたいからってのはおかしい。 律が二人いることになってしまう。 だとすれば、逃げる理由がなくなる。 だって私が律なら……。 私が律なら、澪と一緒にいたいから断るなんて選択肢はないんじゃないか。 だって律は、友達がたくさんいて。 私みたいに、『律だけ』っていうのがないから。 律は私を特別な奴だと思っていないんじゃないのか。 それが怖くて仕方がない。 随分前に、私のことを特別だと言ってくれた律。 でも、それが今でも続いてるのか。 そう考えると、律じゃない私は何も言えない。 「おい澪ー、寝るなよ」 「寝てないよ」 「じゃあ答えろって。澪ならどうするの?」 私が今ここで何を言えば、律はその子の元へ行かないのだろう。 食事会を断る選択に律を導くことができるんだ? ……馬鹿澪。 そこは律が決めることだって自分で言っておいて。 結局、律のことが好きだというその子の恋路を邪魔しようとしてる。 行けばいいだろって、昼間は言ったくせに。 そう言って、律がそうするって言わなくてよかった。 私は私の発言が一番わけがわからない。 律に断ってほしい。その子との食事を。 そう言うのは、間違いなのかな。 でも、そうしたいんだ。 律に、そっちに行って欲しくないんだ。 「断る、かな」 「……そうか。じゃあ私は、どうしようかな」 律は普通の、波のない普通の声で言った。 私は自分の馬鹿さ加減に呆れる通り越して怒りが高まってきた。 自分勝手すぎるんじゃないのかよ。 私は居た堪れなくなって……本当はもうこれ以上この話はしたくなくて。 何より律がこの話題のことを考えているという事実から目を背けたくて。 「そんなことより、課題やれよ」 「そうだった! じゃあ、電話切るな。また明日」 「ああ……」 私は携帯を枕に叩きつけた。 ……もう、胸が痛くなるばっかりだ。 私はどうにか時間が痛みを消してくれることを願って、さっさと寝た。 私は、どうしたんだ。 律と一緒にいたら、私は変になってるんだ。 律が誰かと仲良くなること。 律とすでに仲のいい誰かがいること。 律のことを好きな誰かがいること。 ……私は、そんな律に嫉妬しているかもしれないこと。 ああもういいや、寝ちゃおう。 そうすれば、また明日律に会えるんだから。 こんな痛みとも、お別れできるはずなんだから。 ■ 2月7日 晴れ 澪に習って日記をつけ始めて、もう一カ月は経つ。 一回も澪は日記を見せてはくれないけど、日記って案外楽しそうだ。 面倒だけど、後で見返したらいろいろと面白そう。 今日、私のことを好きと言ってくれる子がいると友達から聞いた。 複雑な気持ちになった。嬉しいは嬉しいのだけど、応えられそうになかった。 しかもバレンタインに食事に誘われてしまった。 どうしよう。 そしたら澪の奴、行けばいいだろだなんて。 ショックと言えばショックだ。嘘かもしれないけど、でも。 断れって言ってほしかったなあ。 そんなのわがままか。 バレンタイン、澪はどうするのかなあ。 戻|TOP|次
https://w.atwiki.jp/mioritsu/pages/649.html
いつも通り大学に行くと、いつも通り律がいた。 「おはよ、澪」 「……おはよう、律」 私は先週、律を突き飛ばして逃げ帰り、そのままだった。 だから律には申し訳ない気持ちで一杯だった。 律も多少は怒ってるんじゃないかって思っていた。 だけど、律はそんなのも忘れたようにケロッと笑っているのだ。 私は拍子抜けすると同時に、優しすぎる律に泣きそうになった。 律は、本当にいつも通りだった。 講義が終わったら、あの子と食事に行くくせに。 そんな兆候も微塵と見せない。 「行こうぜ」 「……うん」 いつも通りのはずだけど、ほんの少しだけ静かだった。 廊下を歩いている間は、全然話さなかった。 講義室に入っても話さない。 私はチラチラと律を見てしまう。律と何度も目が合った。 その度に、恥ずかしくなって目を逸らすのだった。 何を私は緊張してるんだ……。 緊張してるのは、当たり前だ。 私は、今日の内に律に告白するんだ――。 だからこんなにも、落ち着けなくて。 律の方が気になるんだ。 講義の間も、律は比較的普通だった、気がする。 でも、いつもよりそわそわしているように感じた。 律はいつも講義をいい加減に……というよりも、外見だけはあまり真面目ではない空気がある。 頬杖を突いて、いつも眠そうな横顔を見せているからだ。 でも今日は、お気に入りだという黄色のペンでたまにチャカチャカ机を叩いたり…… そしてやっぱり何度も私と目が合うのだった。律も私を気にしてるのかな……。 いつも通りに隣に座っている。 でも、糸がピンと張っているように張り詰めた雰囲気。 講義中だからそりゃ静かなものだけど、でもいつものように穏やかではなかった。 何より体に力が入る。いつものようにちょっと力を抜くようなことができなかったのだ。 私は人差し指のお腹のあたりを親指で何度もさすっているだけしかできなかった。 熱があるんじゃないかと思うほど、額も熱い。 講義は、ノートこそ真面目に取ってみるものの頭にはまるで入らず、教授の言葉は右から左へと通り抜けて行っていた。 ただ頭には、律にどうやって告白しよう。そしてどうやってチョコレートを渡そうかの段取りを決めることだけしかなかった。 ふわふわ時間には、段取り考えてる時点で、もう駄目だと書いたけど。 でも、頭でその状況を思い描かなければ、とてもその時になって言葉など出てきそうもなかった。 実際、律のことを好きだと自覚してから、先ほどの挨拶しかしていない。 今までは、律のことを好きだと思っても、それは恋愛感情ではなく、友達としてだと思ってたんだ。 だから、律のことが恋愛として好きだと自分が知っている状態で律と話すのは、多分もっと緊張する。 口下手になる。 想いなんて、伝わりにくくなってしまう。 私に振り向いてもらいたい。 もしあの子が、律と付き合う気がなくても。 律に、私を好きになってほしいんだ。 だから、頑張るんだ。 精一杯想いを伝えるんだ。 それから、いつものように食堂の窓際の席で、律と一緒に昼食を食べる。 この席で昼食を食べることは暗黙の了解と化していたので、まったく言葉を交わさなくても私たちはここに座り、昼食をとっていた。 それでも、お互いが頑なに喋らない。 だけど、最初に沈黙を破ったのは律だった。 「……澪」 「……何?」 律は、食事会の事もあるからかあんまりお腹を満たすようなものは頼まなかった。 先週と同じハンバーガーだ。しかもそれ一つだけ。 私は突然の呼びかけに、やっぱり声は出なかった。 だけど、律と話せないのも心苦しくはあったので、絞り出すように返事はできた。 「講義終わったら、どうすんの澪は? やっぱり……帰るのか?」 実は『理学部の子』と四時半に噴水で待ち合わせしているのだけど、それは言ってはいけない約束になっている。 特に律には言うなと念を押されているから、なんとか誤魔化さなければいけなかった。 だけど、上手い嘘が思い浮かばなかった。 第一、律の前で酷く緊張しドキドキしているのに、まともな嘘など吐けそうもない。 第一なぜ誰にも言ってはいけないのかよくわからないのだ。 でも一応言われているのだから、言ってはいけないんだろうな。 私はなんとか言葉を捻りだした。 「……帰るよ。律は食事会だし、特にやることもないし」 嘘だ。 しかし、一瞬だけ律は表情を失くした。 でもすぐに笑う。 「そっか。わかった」 寂しそうに目を細めて、ハンバーガーを食べるのを再開した。 私は、どうしようもないけど。 でも嘘をついたことはちょっとだけ申し訳なかった。 後で嘘をついたことは謝るしかない。 問題は、いつチョコレートを渡すかだ……タイミングが全然掴めない。 誰かに物をプレゼントすること自体が、私には慣れないことなのだ。 律には何度も物を渡したことはある。初めてあげたあのオススメの文庫本もそうだ。 だけど今度ばかりは違うんだ。渡すことや、それを言うことによって。 ……関係が崩れちゃうことだってあるんだ。 それが、まだ怖いままで。 想いを伝えるんだって昨日から、何度も意気込んでる。 確かに意気込んではいるのに、でも友達でも親友でもいいから、関係が続くのなら告白なんてしなくてもいいんじゃないかって怖いんだ。 私は、律しかいない。 だから律を失ったら、私はまた一人だ。 ……違う。 一人に戻るのが怖いから、律と関係を崩したいわけじゃないんだ。 純粋に、律と離れたくないよ……。 でも、食事会がどうとか、××さんに恋愛感情がどうとかって話されてから。 もうそんなのが抑えきれなくなって。 このままで私は満足かって、全然そんなことなくて……。 恋人になりたいなって気持ちもどんどん出てきたから。 だからこうして、鞄にチョコレートを潜めている。 どうにかして渡したい。 律に受け取って欲しい。 できるならば、律と付き合いたい。 恋人同士になりたい。 律は私の事、好きじゃないのかもしれない。 たくさんいる友達の中の、一人かもしれない。 だけど、私にとってはたった一人なんだ。 いろんなことを教えてくれたし、私の初めてばっかりの律。 だから特別な律と、もっと特別になりたい。 こんなこと思える相手も、律だけだから。 ■ その日の講義が終わった。 今は四時。これから三十分後に、噴水の前で『理学部の子』と私は話をする。 一体どんな話なのかわからない。想像もできない。 顔も名前も知らない相手と、初対面で何を話すのだろう。 それはずっと疑問だった。 でも、私はもっと不安なことがある。 このままじゃ、律にチョコレートを渡せない。 朝から、渡そう渡そうって思ってるのに。 ふとした瞬間でも、さあ渡すぞって気にはなるのだけど、恥ずかしくて、そして怖くて鞄から取り出せない。 言葉を出そうとしたって、唇の上で彷徨うだけに終わった。 渡したいけど、『渡したい』のままの私。 情けなくて。悔しくて、講義中に何度泣きそうになったかわからない。 結局私は、律にいろんなことを教えてもらったけど、それを返せない臆病者なんだって……。 何が自信を持つために律と口調を似せるだよ。 結局口調だけ変わったって自信も何もついてないじゃないか。 律にだって怖がる。ただ好きだよって言葉が言えないなんて。 たった四文字にいつまで悩んでるんだよって。 昨日まで、詞まで書いてあんなにふわふわしてたのに。 幸福がどうだとか、祈ってたくせに。 今は、もう諦めようかって気さえしてきたのだ。 もういいんじゃないかって。 チョコレートなんて、捨ててしまおうかな。 律が私のこと好きなわけないだろ……。 「澪、じゃあ私行くから」 律が立ち上がって、私に言った。まだ私は椅子に座って、教材を鞄に詰めている途中だった。 律は何食わぬ顔で私を見降ろしていて、私は小さな声で返事するだけしかできなかった。 「う、うん……」 「それと」 律はそれから、目を逸らして頬をかきながら言った。 微妙に頬を染めているのはなんでかわからなかったけど、私は心が全然穏やかじゃなかったのでその表情には何も言えなかった。 「……やっぱり何でもないわ。じゃあな。また後で」 律は手を振って、講義室から出て行った。 私はその後ろ姿を見つめていて、どうしようもなく胸が縛られた。 それを振り払うように、鞄へ教材をしまう行為を再開する。 だけど、やっぱり胸は痛いままだった。 それでいいんだろうか。 あんなにも頑張って、律への想いを込めたチョコレートを作った。 あの時は、初恋が律だって気付いてやたらとふわふわして、よくわからなくて。 嬉しいような、でも気付いてしまった寂しさもあって……。 まるで絡んだ糸みたいに、一体それがどんな風に交わって絡んでいるのか自分でもわからないぐらいぐちゃぐちゃだった。 そんな勢いのまま、今日を迎えてるから。 今になって、怖い。 怖いよ。 失敗したら、律はどこかへ行っちゃうのかな。 私から、遠くに行っちゃうかもしれない。 そんなの、耐えられない。 私は、律が大好きだから。 律がいなきゃ、駄目なのに。 もし律が私から離れちゃったら、どうなるんだろう。 ……やっぱり、告白なんてやめよう。 チョコレートも、どうせ美味しくなんかないだろうし。 律が気に入ってくれるわけがないんだ。 あんなの捨ててしまえばいいんだ。 私が告白しなければ、律は今までみたいに一緒にいてくれるかもしれないんだ。 昨日勇気が出てきたとか意気込んでたくせに……。 土壇場で逃げるなんて。 やっぱり私、駄目な奴だな……。 私は鞄に荷物をしまい終えて、立ち上がった。 時計を見ると、四時五分だった。あと二十五分はある。 中庭へはすぐに到着するけど、遅れて迷惑を掛けるのも申し訳ない。 十五分ぐらいは早く行けばいいかな。 それぐらいなら全然余裕だし、向こうより遅くなるなんてことはないだろう。 私は、講義室を出た。 早く話を終わらせよう。 どんな話かもわからないけれど。 ゆっくりと廊下を歩く。 ……律とあの子は、五時に待ち合わせと言っていた。 一体どこで待ち合わせてるんだろう。噴水前じゃないと思うし、もしどこかのレストランへ行くのならバスか何かを使うのかな。 そうなると大学前のバス停とかかな。 付き合う気はないし、私から奪う気もない? どういう意味か、昨日からずっとわからないままだ。 じゃあ何のために、律と今日の計画を立てたんだろう。 律に告白するためじゃないのか? 律とバレンタインを過ごしたいからじゃないのか? 律にチョコレートを受け取ってほしいからじゃないのかよ。 それなのに、付き合う気もないって。この日の食事会は何のためにあるんだろう。 一日だけ律と一緒に過ごせれば、それで彼女は満足なのだろうか。 名前も顔も知らない。ただ一度だけ電話しただけ。 その電話の声すらも、私には何の情報もくれやしない。 そんな彼女が、これから律と食事会に行く。 やっぱりモヤモヤしてる。 ……律は、五時まで何をしているんだろう。一度家に帰ったりしてるのだろうか。 五時集合なら全然間に合うし。それとも、どこかで時間を潰してたりするのかな。 私は首を振った。 ……律のことは、今はいい。 私はその『理学部の子』と話すことだけ考えてればいいんだ。 私は中庭に出た。 ちょっと歩けば、待ち合わせ場所の噴水だ。 だけど、そこには思いがけない人物がいた。 「……澪?」 「……律?」 そこに立っていたのは、律だった。 ■ 「……澪?」 噴水前で、『理学部の子』に会いに来た私。 でもそこにいたのは、律だった。 「……律?」 私は訳がわからなかった。 今の時刻は、四時十七分。待ち合わせは四時半だった。 もう少しで、あの子はやってくるはずなのに、実際いるのは律。 どういうことなのだろう。 五時に、あの子とどこかで待ち合わせをするんじゃなかったのか? 予想外の展開に、心臓が高鳴り始めた。 律が表情を引きつらせながら私に尋ねてくる。 「……ど、どうしたんだ? 何か用でもあったのか?」 「い、いや……違うんだ」 「じゃあ、なんでここに?」 律自身も、なんで? というように辺りを見回して混乱している様子だった。 私は唇を舐めた。 口の中もカラカラに乾き始める。 やばい、混乱してるぞ私。 「律こそ……なんで、ここにいるんだ?」 私は左手で自分の鞄を撫でていた。 渡せなかったチョコレートが眠っている。 律は後頭部を触りながら返した。 「えっと、ここで待ち合わせしてるんだ、理学部の子とさ。四時半に」 「――えっ?」 なんだって? 私は思わず声をあげてしまった。 聞き取れなかったから声をあげたんじゃない。 律の言った言葉が、どうにも私の考えていた答えと大きく食い違っていたからだ。 私の動作に、律は不思議に思ってか首を傾げる。 「どうしたんだよ?」 「本当に……ここに、四時半?」 「って、私は言われたけれど」 どうなってるんだ? 私は焦りに焦っていた。というよりも、これは焦りというより状況が噛み合わないことに対する混乱だった。 自分の持っている情報と律の情報が噛み合わない。 しかし落ち着こうにも律と突然出会うものだから、心臓が高鳴って落ち着けない。 ドキドキして顔も熱くなって……もう訳がわからない。 落ち着け。 律は、四時半に噴水前で、その理学部の子と待ち合わせだった。 私は、四時半に噴水前で、その理学部の子と待ち合わせだった。 実際そこにいるのは、律じゃないか。 どういうことだ。 第一あの子は言っていた。 『田井中さんとは五時に待ち合わせしているんです』って……でも今律は、四時半にここで待ち合わせしていると確かに言ったのだ。 おかしい。情報がうまく伝わっていないのか? あの子の口調からして確かにきちんと取り決めているように思えたのに。 じゃあ、どうして律はここにいるんだ? 「私も、理学部の子に、四時半にここにきてって言われたんだけど……」 「マジかよ!?」 私の言葉に、律も顔を歪ませた。 「……どうなってんだ?」 それはこっちが聞きたい。というよりも、私と律が『理学部の子』に問い質したいところだ。 どう考えてもおかしいんだ。食い違いなんてものじゃない。 だってあの子は五時に律とどこかで待ち合わせと言ったじゃないか! なのにどうして、四時半にもなっていない噴水で、私の目の前に律がいるんだ! よりにもよって、律だなんて……。 ただでさえ律といるのは自分の胸をドキドキさせる要因であるのに、いざ『理学部の子』と話そうと思って噴水に来てみたら律がいる。 そんな予想もしなかった展開も相まって、もう胸が爆発しそうだった。 お互いが訳がわからないから、やっぱり視線が交錯しあう。 その度に私は、この胸の高鳴りが律に聞こえてやしないか、顔が真っ赤になっているのを悟られてはいないかと冷や冷やしていた。 現実、喉が震えて声も出にくい。 「とりあえず、えっと……? 澪は、四時半にここに来てと言われた」 「う、うん……」 状況確認のためか、律は落ち着いた様子だった。 でも、後頭部を撫でながら喋るのは律の、恥ずかしがったり照れている時の癖でもある。 だけど私は、今律が何を考えているか読めなかった。 律の心を簡単に読めれるのなら苦労なんて何もないのだ。 「私も……ここに四時半に来てと言われたんだ」と律。 「『理学部の子』に?」 「いや、××さんを通してだけど……」 「じゃ、じゃあそこで何か伝言ミスがあったんじゃないか?」 そうとしか考えられない。 つまり、私は『理学部の子』から直接電話をもらった。 しかし、律はその子ではなく××さんから連絡をもらったようだ。 となると、本人ではない××さんの情報の方が間違っている確率が高いんじゃないか。 本人の口からの方が信憑性は高いだろうし……でも、××さんが間違うのかなあ。 律は、息を吐いて言った。 「……ま、まあ待ってようぜ。本人が来ればわかるだろ」 「そ、そうだな……」 私と律は、お互いにぎこちなく笑い合った。 時刻は四時二十五分。 私たちは噴水の縁に、二人分ぐらいの距離を置いて座った。 第二話|TOP|次
https://w.atwiki.jp/sponsoracjapan/pages/836.html
日本テレビ系列 日本テレビ 土曜 日テレ系土曜ドラマ イノセンス 冤罪弁護士 共通事項 基本の放送時間…22 00~22 54 筆頭スポンサーは絨毯の上にカラー表記 2019年1月19日 ♯01(新・22 00~23 09) 1’00”…Aj AJINOMOTO(0’30”=AGF)、Galaxy、Kao、SUZUKI 0’30”…大東建託、suumo、PROMISE、ヘーベルハウス 2019年1月26日 ♯02 1’00”…Galaxy、Kao、SUZUKI、Aj AJINOMOTO 0’30”…ヘーベルハウス、PROMISE、suumo、大東建託 2019年2月2日 ♯03 1’00”…Kao、SUZUKI、Aj AJINOMOTO、Galaxy 0’30”…PROMISE、ヘーベルハウス、大東建託、TRAINING GEAR SIXPAD(PT) 2019年2月9日 ♯04 1’00”…SUZUKI、Aj AJINOMOTO、Galaxy、Kao 0’30”…レイクALSA、大東建託、ヘーベルハウス、PROMISE 2019年2月16日 ♯05 1’00”…Aj AJINOMOTO、Galaxy、Kao、SUZUKI 0’30”…大東建託、レイクALSA、PROMISE、ヘーベルハウス、 2019年2月23日 ♯06 1’00”…Galaxy、Kao、SUZUKI、Aj AJINOMOTO 0’30”…ヘーベルハウス、PROMISE、レイクALSA、大東建託 2019年3月2日 ♯07 1’00”…Kao、SUZUKI、Aj AJINOMOTO、Galaxy 0’30”…PROMISE、ヘーベルハウス、大東建託、TRAINING GEAR SIXPAD(PT) 2019年3月9日 ♯08 1’30”…SUZUKI 1’00”…Aj AJINOMOTO、Galaxy、Kao 0’30”…大東建託、ヘーベルハウス、PROMISE 2019年3月16日 ♯09 1’00”…Aj AJINOMOTO、Galaxy、Kao、SUZUKI 0’30”…大東建託、suumo、PROMISE、ヘーベルハウス 2019年3月23日 ♯10(終) 1’00”…Galaxy、Kao、SUZUKI、Aj AJINOMOTO 0’30”…ヘーベルハウス、PROMISE、suumo、大東建託
https://w.atwiki.jp/mioritsu/pages/642.html
<第二部・登場人物> 秋山澪……N女子大学一年生・第二部の主人公 田井中律……N女子大学一年生 ××……N女子大学一年生・律の友人の一人 曽我部恵……N女子大学二年生・律と澪の高校時代の生徒会長 平沢唯……N女子大学一年生 <第二部> 律と出会って、十か月が経った。 私はバスに乗った。 同じように乗っていく人たちは、大抵私と同じぐらい若い。 イヤホンを耳にしている女の子もいれば、友達と楽しそうに談笑している子たちもいる。 このバスは女子大行きだから、ほとんどの乗客は女の子だった。 おそらく大抵はN女子大の学生だろう。だけど案の定私と交流がある人はいない。 いや、いる方がおかしいのだ。 私は冷えた指先を撫でた。 席は空いていなかったので、仕方なく吊革に捕まる。 片手が吊革を掴むと手を温めることができないので厄介だ。 それも手袋を忘れてしまった今日に限って席が空いていないなんて。 今日の運勢は最悪かもしれなかった。 マフラーに顎をうずめる。お気に入りの白いマフラーだ。 もう冬を感じるようになって二か月余り。 暦は二月。 大学の講義にも慣れきって、友達がたった一人しかいないという状況にも慣れた。 今年度の手帳は埋まりつつあって、それとはもう一月ほどでお別れだ。 手帳にはいろいろお世話になった。 (……寒い) だけどこれでも、もう少しで冬は終わるんだ。 でも、まだ冬は長かった。 ■ 「そういや澪ー、試験の課題終わった?」 「なんだよ律。まさかまだ終わってないのか?」 私たちはいつもの窓際の席で昼食を食べていた。 律はいつもここの麺類は安いんだ言ってうどんだったり蕎麦だったりを食べていたけれど、今日はハンバーガーだった。 どうやら今月はあまりお金がないらしい。さては先週買ったあれか。 律はハンバーガーを手に持ったまま、ちょっと恥ずかしそうに目を逸らす。 「だってさー、フロアタム買ったんだから練習に気合が入っちゃって」 「私だってこの前ワウ買ったんだからな。だけどちゃんと課題したんだぞ」 「なんでバンドメンバーいないのにワウなんだよ!」 「だって欲しかったし。律だってバンド組んですらないのにフロアタムなんて」 「し、仕方ないだろ欲しかったんだし。それでさあ澪」 「なんだ?」 「課題、手伝ってくれないかなーなんて……」 律がハンバーガーを置いて、合掌した。 私は別に怒っているわけじゃないのだけど、とりあえず泣き喚いて懇願してくる律の姿も見てみたい。 なによりここですぐに折れてしまうと私らしくはなかった。 昔はもっと単純だったんだけどなあ。 「自分でやらないと力がつかないだろ? テストもあるんだから」 「だって課題難しいじゃん。あの問題集の答え配らないとはなんて教授だ」 「答え配ると答えだけ見て提出するだけの人が増えちゃうからじゃないか? お前みたいにさ」 「失敬な! 一度でも答え見たことあるかよ私が」 「……ないけど」 「ほら見ろ! 澪がいれば答えなんて必要ないのさ」 「そこに誇ってどうすんだよ」 そんなやり取りをしていたら、私たちのテーブルに誰かが近づいてきた。 「二人とも仲いいわね」 そう言ってやってきたのは、律の友達だった。 確か、××さんと言ったかな。 私も一応、その人の名前だけは知っていた。 律は彼女のことを友達だけどさん付けしていた。どうやらうまい呼び方がないらしい。 律が大学に入って最初に仲良くなったというグループのうちの一人である。 私は彼女……それでなくとも律以外の誰かとは全然仲良くなかった。 だから彼女が話しかけてきたと同時に、さっきまで律に対して威勢を放っていたくせに委縮した。 私は口を閉じて、両手を膝の上に揃えて俯いた。 「何? どうしたの?」 律がハンバーガーを食べながら、その××さんに問うた。 「秋山さんの前じゃあれだから、ちょっと来てくれないかな?」 私の名前が出たので、上を向いた。律はよくわからないという表情で、彼女に連れて行かれてしまった。 連れて行かれたといっても遠くではなく、私に会話が聞こえないぐらいの位置だった。 食堂のほぼ真ん中だ。 私に聞かれたらあれって、どういう意味だろう。 二人は固まって何やら話している。私は食事のことなんかすっかり忘れて、その様子だけを茫然と見つめていた。 律はなぜか照れるように後頭部を手で触っていた。 その様子を見ていて、なんだかズキズキした。 律と出会ってから、こういうことばっかりだな……。 私は箸を持って、すっかり冷めてしまった味噌汁を飲んだ。 ■ 「なんだったんだ、さっきの話?」 午後の講義へ行く途中の廊下で、私は尋ねた。 律は天井を見ながら唸った。 「んー……澪は特に関係ない、けど」 「でも気になるだろ」 気になるんじゃなくて、隠されているような気がして嫌だからだ。 律は私の目をチラッと一瞬だけ見て、唸った後言った。 「いや、なんか……友達の友達に食事に誘われたというか」 律の濁らすような言葉が、少しだけ胸に刺さった。 何かを誤魔化そうとしてるのかな。 「友達の友達? お前の友達じゃないのか?」 「会ったことない人らしいよ。なんか別の学科の人なんだけど……」 「なんでそんな会ったこともない人が食事に律を誘うんだ?」 「……」 律は黙った。 私は気になって仕方なくて。 だけどこれ以上深追いすると、なんか律に踏み込んでるように思われるかもしれなかった。 律が誤魔化すように言ったり、黙ったり間があったりするのは、私にその事を話したくないからなんじゃないのかって。 そんな風に思ってしまった。 だから、これ以上話をするのはやめようかと思った。 律が嫌なら、私はそれをしたくない。 出会ってからずっと、私は律に嫌われたくない一心で動いてきた気がする。 もちろん最近は少しばかり律に突っ込んで話するようにもなったし、律と訓練して言葉遣いも強くなった。 ちょっとだけ律をあしらってみたりでもできる。課題ぐらい自分でやれだとか。 そういう風に律に言えるようになったのは進歩だろうか。 だけどいつだって私は律に嫌われたくなんかないのだ。 「言いたくないなら、いいけど……」 「言っていいの?」 「私に教えられないようなこと?」 午後の講義に向かう人の波。その中にいる私たち二人。 律は、どこか辛そうな表情をしていた。何か良くないことがあったんだろうか。 でもさっき二人で昼食を食べていた時はそんなことなかった。 表情が後ろ暗くなったのは、やっぱり××さんに連れて行かれた後からだと思う。 何か嫌なことでも言われたのか。そんな様子はなかったのに。 「……じゃあ、言うよ」 「うん」 「……私のこと、好きな奴がいるんだって」 「――」 え? 突風が私を吹き抜けるように、冷たい感覚がまず頭を殴った。 それから、じわじわと心の中から水が溢れ出す様にモヤモヤし始める。 お腹のあたりがぐるぐる痛んで、もう頭も痛くなって。どこも痛いだけになった。 だけど、いたって冷静だった。 「そ、そうなんだ……なんて子?」 「理学部の子らしいけど……さっきも言ったけど会ったことはないし、名前も教えてくれないんだ。××さんと同じ高校だったんだって」 ××さんのことはよく知らないけど、私と律とは違う県出身だと言っていたような気がする。 だとすると、やっぱり私と律は『その子』のことを知らないことになるだろう。 「へ、へえ……そうなんだ」 ズキズキ。 「それで?」 「……その理学部の子がさ、今度のバレンタインの食事に誘いたいんだって私を」 律は今度は下を向いて、告げた。長い横髪が律の横顔を隠す。 つまり、その『理学部の子』は律が好き。 バレンタインに食事に誘いたい。 でも話しかけるのは恥ずかしい。 だから高校から一緒の友達である××さんに頼んで、律への気持ちを伝えてもらった……。 そして律とバレンタインに食事をすることも言伝たと。 そういうわけかな。 講義室に辿り着いて、私はドアを開けた。すでに何人か人はいたけど、みんな友達と談笑していて少しばかり騒がしさがある。 まだ一応お昼休みみたいなものだったし、見慣れた光景でもあった。 私と律はいつもの一番前の席に向かって歩む。 「で、なんでそれが私に聞かれちゃまずいんだ?」 「どういうこと?」 私は鞄を机の上に置いて、律に問うた。 「だって言ってたじゃないか。私の前だとあれだからって」 「あー……それは、あれじゃない? 色恋話だし……澪は一応関係ないし」 私はその一言が微妙にショックであった。 律の色恋話に私が無関係。 確かにそうだ。私はただ単に律の友達ってだけだし、家族でも幼馴染でもない。 だから律のプライベートな会話に入り込んだり割り込む権利や理由なんてものは存在しない。 そこは律が決めることだし、私がどうこう口出しする問題じゃないだろう。 じゃあなんでショックなんだ私。 さっきからキリキリと胸が痛むのはなんでだよ。 私は席について鞄を開けた。 律も隣に座る。 鞄の奥を見つめながら、私は言った。 「それで……受けたのか」 一番重要で、聞きたいのはそこだった。 「返答はまだいいってさ……私も、考えたいし」 律はいつになく憂いた表情でそう言った。 律のことを好きな誰かがいる。 それを聞いて律が舞い上がらないのが、せめてもの救いだった。 なんで、律が喜ばないのが救いなんだ? おかしいだろ。自分のこと好きって言ってくれたり、食事に誘ってくれたら喜んじゃうのは当たり前だろ。 律はたまたまそうじゃなかったけど、律のこと好きっていう子がいたら、律は……律は、ちょっとだけ嬉しいんじゃないのか? だけど私は微塵も嬉しくなんかないんだよ。 そこに私は、私自身に対して疑問を抱かずにはいられない。 なんでこんな気持ちになるんだよ。 律が、律を好きな子の誘いにすぐに乗っからなかった。 そこに、喜んでるだなんて……。 無性に、苛立った。 怖かったのかもしれない。 「……行けばいいだろ。せっかくなんだし」 私は、勢いでそう言ってしまった。 ここで行ってほしくないとは、言えなかった。 だけど。 「……本当にそう思ってるのか?」 律の、少しだけ低い声が返ってくる。 私はそれがあまりにも予想外の反応だったので、声をあげて律を見た。 「えっ?」 「……なんでもねーよ」 律はぷいっとそっぽを向いてしまった。 ……なんなんだよ。そうしたいのはこっちなのに。 でも、律は何にも悪いことしてない。 それなのに、なんだか律を責めたい。 ■ 「あ、曽我部さんじゃないかあれ」 その日の講義が終わって廊下を歩いていると、律が声を上げた。 視線の先には、桜ケ丘高校時代に生徒会長をやっていた曽我部さんが確かにいた。 相変わらずだと思うけど、私が高校時代に先輩を見た時より数段綺麗になっている印象だった。 大学生ってこんなにも変わるものなのかな。私はまったく変わっていないなあ。 すれ違い様に、二人は立ち止まった。 「あら、田井中さん」 「どーもっす」 律は知り合いなのかよ。 そう突っ込もうとするけど、人前だから言えなかった。 「澪は知ってるよな。生徒会長やってた曽我部さんだよ」 「……こんにちは」 初対面の人との会話は本当に弱い私だ。 律以外は大抵初対面になるのだけど、人見知りはほとんど直っていない。 少しぐらいそういうの直せるかもと期待して律の口調を真似る特訓を二人で半年ほどしたけど、結局似たような口調になるだけで性格は直らなかった。 しかもその口調を使えるのは律の前だけで、他の人には敬語で接してしまう。 初対面の曽我部さん。私は委縮して緊張した。 でも、一応挨拶だけはできたぞというわずかな達成感はあった。 それだけで達成感なんて本当に弱い。 「こんにちは。えっと……?」 曽我部さんは言いながら首を傾げた。 私の名前がわからない、のだと思う。曽我部さんは律を見た。 律は私を見て一瞬呆れると、私の肩に手を置いた。 「こっちは秋山澪です。私たちと同じ桜高だったんですよ」 「そうなの。じゃあ私の後輩ってわけね」 「……」 喋りたいのに喋れない背徳感。 それは律と出会った最初の頃からひしひしと感じていた。私は喋りたくないわけじゃないんだ。だけど喋りたくなんかないんだ。 私が喋ったって、どうせおどおどして途切れ途切れで……相手に迷惑を掛けちゃうだけだから。 だから極力あんまり話したくないといつも決めているのに。 曽我部さんは私に何も言わずに、律に話しかけた。 「どう? もうすぐテストみたいだけど」 「え? は、はい。まあなんとかやれてますよ」 律は取り繕うような笑いを見せた。 嘘つけ。さっきまで私に困ったように懇願してきたくせに……。 私は苛立ちを感じずにはいられなかった。 「おーい恵! サークル遅れるよ!」 先を歩いていた曽我部さんの友達が、声を上げた。 「あ、ごめーん! それじゃあ二人とも。またね」 「お疲れ様ですー」 律は駆けていく曽我部さんの後ろ姿にそう言った。 私はなんだかそわそわして落ち着かなくなって、何も言わずに胸の前で手を握りしめていた。 初対面とはつくづく相性は悪く、結局変われていない自分の情けなさを痛感するばかりだ。 「はあー、すげーな大学生って」 「……うん」 「大学入って二年であんなに変わるのかねー」 「律は、大学入る前の曽我部さんを知ってるのか?」 知っているかのような口ぶりの律に、私は聞くしかなかった。 律は両手を後頭部に回して、呑気に返す。 「私バスケ部の部長だったからなあ。生徒会室とか行く機会があったんだけど、その時に知り合いになったんだよ」 「あ、そう……」 バスケ部の部長、か。 その話は会った時からよくする。律は快活で元気な、運動神経のよい女の子だ。 バスケをする姿はよく映えるだろう。部長になっても不思議じゃない。 となると部長会議なんかに出てても普通だから、その関係で曽我部さんと知り合いになったんだな。 「私は全然変わってないよなあ、一年なのに」 「そうだな」 「澪は変わったけどな。口調なんて、四月と比べるとさ」 律は無邪気に白い歯を見せる。 もう曽我部さんの話題は終わったのに、なぜかモヤモヤは尾を引いた。 心の中の私は、なんとか振り切って律の言葉についていく。 「口調だけしか変わってないけどな……」 「それでも、強そうに見えるよ」 「見えるだけで、中身は……」 「でも少なくとも、私に対しては前よりも自信持ってくれるじゃん」 それは律に、心を許しているからだ。 律は私を、どんどん崩していく。 今まで頑なに誰かと一緒にいることを拒み続けて、逃げて逃げて逃げまくった私を簡単に捕まえて。 優しい笑顔で、ずっと話しかけてきたのだ。 それが私にとって最初は大変でも、いつからかそれだけが安らぎに変わっていて。 律にだけ、私は……――。 「それより、帰ろうぜ」 「この後は何するんだ?」 「とりあえずセッションだけしない?」 講義を終えてから、律の家で一時間ほど楽器をつつく。 それで六時くらいになって、私はやっと家に帰るのだった。 それが去年の十月ぐらいから続いていた。 「ああ」 ただ今日は、ちょっとだけ乗り気になれなかった。 律のことを好きな子が理学部にいて、その子が律を食事に誘ったこと。 それがバレンタインの日だということ。 私以外の人と、律が以前より知り合いだったこと。 律には、私よりもたくさんの友達がいること。 いろんなことが、引っかかりすぎている。 「行こっか」 「……うん」 こんなこと、なかったのに。 最近律を意識することが、顕著になってきた。 それは。 どういうことか、よくわからないけど。 第一部|TOP|次
https://w.atwiki.jp/magicman/pages/33451.html
無頼幻獣イノセント・ビャッコ VR 自然文明 (7) クリーチャー:ビーストフォーク/ドリームメイト 5000 ■このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分の山札を見る。その中から、名前に《大勇者》または《フィオナ》と書かれたカードを1枚、バトルゾーンに出してもよい。その後、山札をシャッフルする。 ■自分のクリーチャーはすべて、バトルゾーンにある自分のビーストフォークとドリームメイト1体につきパワーを+1000され、「パワード・ブレイカー」を得る。 ■自然の進化クリーチャーを、コストを2少なくし、自分のビーストフォークまたはドリームメイトの上に置いてもよい。 作者:げげろ フレーバーテキスト 森に住まいし勇者たちと夢の担い手たちが手を取り合い、フィオナの森と自然の民を守り、平和へと導く新たな勇者がここに生まれた。 (コメント) 類似した見た目や性質を持つ古参種族xハイブリッド種族の構想の一環で考えたクリーチャーその3。 とにかくフィオナ愛を詰め込みたかったぼくのかんがえたさいきょうのフィオナカード() 能力により自身のビーストフォークやドリームメイトを種として、《森夢龍 フィオナ・フォレスト》や《護りの角フィオナ》 或いは《大勇者》と付く進化ビーストフォークが踏み倒せます。 カード指定であるため《Dの森域 フィオナ・ザ・ハート》も問題なくバトルゾーンへ出すことが可能。 進化クリーチャーのコスト低減には制限がないため、パワードブレイカー持ちの大勇者「大地の猛攻」を連発したりも可。 評価 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/syugyou/pages/123.html
総資産100億兆ジンバブエドルといわれている世界最大のヅラ屋 『組織』から声帯兵器や能力者を買いこんでいて その軍事力は一大国をゆうに超す 組織の資金源になっているためレジスタンスから敵視され また、力をつけすぎたため組織からも警戒されている イノセンス一族が経営を独占している 役員 イノセンスキモハゲ イノセンスレス遅 イノセンスマイナス イノセンス盛岡 イノセンスX イノセンスD14 イノセンスふーみん イノセンスまぐ イノセンス慟哭 イノセンスメシ イノセンスMr勇み足 イノセンス㈲梨香 イノセンス鶴屋 イノセンスBIN イノセンスCZK イノセンスマイナス イノセンスがちゃ 戦闘員 イノセンスおたんちん イノセンスモトモリ イノセンスフェムト イノセンスVitz イノセンスむに イノセンスマイナス 料理課 イノセンスところてん 相撲課 イノセンス横綱 葬式課 イノセンス住職 教育課 イノセンスYUBA イノセンスロジャー 犬課 イノセンス蜜犬 イノセンス割引犬 移動用 イノセンス36号車 下ネタ処理課 イノセンスキンクマ ネガティ部 イノセンスコザケン
https://w.atwiki.jp/talesofdic/pages/14746.html
防具:イノセンス 鎧 ガード クローク 胴着 ギルドクエスト専用防具 鎧 ルカ、スパーダ用の防具。全12種類。 名称 物防 術防 買値 売値 ランク アビリティ アビリティ効果 入手方法 オートクチュール 10 7 20 - - - - 他:ルカ初期装備 レザーメイル 19 13 100 - - - - 店:レグヌム チェインメイル 36 25 360 - - - - 店:ナーオス シルバーメイル 48 34 660 - - - - 店:アシハラ シルバープレート 60 42 1000 - - - - 店:ガラム バトルスーツ 78 55 1720 - - - - 店:ガルポス ナイツアーマー 96 67 2580 - - - - 店:マムート ミスリルメイル 132 92 4860 - - - - 店:テノス ゴールドアーマー 180 126 22700 - - - - 店:サニア村 マム・ベイン 216 150 - - - - - 拾:ギルド管轄区域 フロギストメイル 244 182 100000(GRADE) - - 防御上昇 防御+5% ギ:ナーオス プリズムメイル 237 188 100000(GRADE) - - 落下お金増加 ドロップガルド増加 ギ:ガラム ▲ 防具:鎧(TOI)を編集 ガード イリア、リカルド用の防具。全12種類。 名称 物防 術防 買値 売値 ランク アビリティ アビリティ効果 入手方法 レザーガード 7 6 20 - - - - 他:イリア初期装備 チェインガード 14 12 60 - - - - 店:レグヌム スケイルガード 30 26 320 - - - - 店:ナーオス シルバーガード 41 35 580 - - - - 店:アシハラ バトルガード 50 43 850 - - - - 店:ガラム ナイツガード 60 51 1220 - - - - 店:ガルポス ロイヤルガード 79 67 2120 - - - - 店:マムート ミスリルガード 102 87 3540 - - - - 店:テノス プリンセスガード 192 165 - - - - - 拾:ギルド管轄区域 レアガード 162 138 22350 - - - - 店:サニア村 テクタイトガード 217 200 - - - ダッシュ 移動速度上昇防御-5% ギ:アシハラ オーダーガード 224 194 - - - 業師の技法 スタイルポイント+20% ギ:マムート ▲ 防具:ガード(TOI)を編集 クローク アンジュ用の防具。全12種類。 名称 物防 術防 買値 売値 ランク アビリティ アビリティ効果 入手方法 クローク 6 7 20 - - - - 他:アンジュ初期装備 ホワイトクローク 12 14 60 - - - - 店:レグヌム シルククローク 22 26 220 - - - - 店:ナーオス フェザークローク 30 36 440 - - - - 店:アシハラ マジッククローク 37 44 660 - - - - 店:ガラム シルバークローク 48 58 1120 - - - - 店:ガルポス ミスティクローク 66 79 2080 - - - - 店:マムート ドルイドクローク 77 92 2840 - - - - 店:テノス ミスリルクローク 120 144 17300 - - - - 店:サニア村 エルダークローク 150 180 - - - - - 拾:ギルド管轄区域 クイーンクローク 180 180 - - - - - 拾:ギルド管轄区域 ジュエルクローク 203 218 100000(GRADE) - - 吸い上げ ドロップアイテム遠隔回収 ギ:ガルポス ▲ 防具:クローク(TOI)を編集 胴着 エルマーナ用の防具。全11種類。 名称 物防 術防 買値 売値 ランク アビリティ アビリティ効果 入手方法 白帯の胴着 10 8 40 - - - - 他:エルマーナ初期装備 ジャージ 17 14 100 - - - - 店:レグヌム カラテカの服 30 25 300 - - - - 店:ナーオス 真紅の胴着 43 36 620 - - - - 店:アシハラ 刺繍胴着 56 47 1060 - - - - 店:ガラム 黒帯の胴着 72 60 1720 - - - - 店:ガルポス チャイナドレス 94 78 2940 - - - - 店:マムート 鳳凰の衣 114 95 4340 - - - - 店:テノス 銀狼の闘衣 156 130 20300 - - - - 店:サニア村 黄龍の闘衣 186 175 - - - - - 拾:ギルド管轄区域 神仙の法衣 210 212 100000(GRADE) - - 癒しの翼 HP回復術技の効果増加 ギ:テノス ▲ 防具:胴着(TOI)を編集 ギルドクエスト専用防具 ギルドの依頼で使用することになる防具。全20種類。 依頼を受けると強制的に全員に装備される。 名称 物防 術防 ランク アビリティ アビリティ効果 入手方法 早口の護服 12 10 - 古語詠唱 術の詠唱時間-20%最大HP-50% 依:rank1 やる気ゼロの鎧 18 15 - 能力衰退 攻撃・知性-30% 依:rank1 舞踏会用のドレス 24 20 - 跳躍前 前ステップ延長 依:rank2 皮ツナギ 30 25 - - - 依:rank2 レインコート 36 30 - 気配消し 敵の発生が減る 依:rank3 巡礼用のローブ 42 35 - リジェネ HP自動回復 依:rank3 打たれ弱い鎧 48 40 - ハンデ 全能力-20%獲得経験値+10% 依:rank4 防弾チョッキ 54 45 - 防御上昇 防御+5% 依:rank4 ストーンアーマー 60 50 - 石化防御 石化無効化40% 依:rank5 当世具足 66 55 - イダテン 移動速度上昇最大HP-15% 依:rank5 レジストローブ 72 60 - 術抵抗 術ダメージ-20% 依:rank6 星の光ドレス 78 65 - 会心の心得 クリティカル率+40% 依:rank6 獅子王の鎧 84 70 - ハンデ2 全能力-40%獲得経験値+15% 依:rank7 親衛隊の軍服 90 75 - 攻撃の代償 攻撃+5%知性-10% 依:rank7 大魔導師のお古 96 80 - - - 依:rank8 消防隊の耐火服 102 85 - 防御の代償 防御+5%敏捷-20% 依:rank8 よれよれのコート 108 90 - ハンデ3 全能力-60%獲得経験値+20% 依:rank9 クラウンスーツ 114 95 - エスケープ 逃走までの時間を短縮 依:rank9 返り血の鎧 120 100 - HPの代償 最大HP+20%最大TP-50% 依:rank10 ライブ用のハッピ 126 105 - ハンデ4 全能力-90%獲得経験値+25% 依:rank10 ▲ 防具:ギルドクエスト専用防具(TOI)を編集
https://w.atwiki.jp/itmsanime/pages/986.html
【作品名】PS2用ソフト D.C.I.F. 〜ダ・カーポ〜 イノセントフィナーレ OP 【曲名】IF この世界で 【歌手】CooRie 【ジャンル】サウンドトラック 【価格】¥200 □■iTMS■□
https://w.atwiki.jp/mioritsu/pages/647.html
私はサボったその日、すぐに家に帰って寝ていた。 家に帰ってきたのが午前九時半で、今は午後十時だった。 どうやらまるまる十二時間は寝ていたみたいだった。 お昼御飯も晩御飯も食べていない。 だけど全然食欲はなく、頭には律の顔が浮かんでいた。 (……律) 律。 私の、初めての友達。 今まで誰とも友達にならなかった、そしてなれなかった私にとって、初めての。 初めてあんなに人と話した。 初めて家族じゃない人とご飯を食べた。 一緒に授業を受けた。 一緒に買い物にも行った。 お互いの誕生日を祝った。 クリスマスも一緒にいて。 冬休みは、同じ地方だって知ってたから一緒に帰って。 それで、実家も近くだったから一緒に遊んで。 年越しも一緒で。 初詣も。 ずっと。 この一年ずっと、ずっと一緒だった。 律は友達がたくさんいるのに、いつも私と一緒にいてくれた。 私は律しか友達がいない。 律はたくさん友達がいる。 だけど律は、私といることを選んでくれた。 律は、私の寂しさを知っていたかもしれない。 知らなかったのかもしれない。 律が私じゃない誰かと一緒にいることが、私は嫌なのだと。 それを律が知ってたから、私と一緒にいてくれたのかもしれない。 そうじゃないのかもしれない。 でも、どっちでもいい。 律は私と一緒にいた。 どんな時も、一緒にいたんだよ。 だから、一緒にいられないのも怖いんだよ。 律のことを好きだと言っている、その子と食事をするって聞いて。 怖くて。 一緒にバレンタインを過ごせないのかなって、怖くて。 そしてもしかしたら。 律が私を放って、その子のところに行っちゃうんじゃないかって。 怖いんだ。 平沢さんと、律が話してる場面に出くわした時、怖くなった。 律が曽我部さんと元々知り合いだったと知った時、痛くなった。 律が誰かと一緒にいたりすることを想像する時、震えた。 私は、律に嫉妬してるんじゃない。 律と一緒にいる、私以外の誰かに嫉妬してたんだ……。 だけど律と一緒にいるのは、楽しいんだ。 話してるのは、楽しい。 だけど、それだけじゃなくて。 最近は律といたら、恥ずかしくって。 律の事見てると、可愛いなって思ったり。 律の体を変に意識しちゃったり。 エッチなこと考えたり。 笑ってくれたりすると、私はドキドキしてしまう。 律の隣にいて、一緒にいて、ご飯食べて、一緒に講義受けて。 一緒に演奏して。 名前を呼んでくれるだけで、痺れるんだ。 『澪』って、律の口から出るだけで、心が躍ったりするんだ。 一つ一つが、楽しいのに。 最近は、直視できないよ。 律を見ていたら、胸が張り裂けそうになるんだよ。 『田井中さんの事、好き?』 『私にとっても、澪は特別』 『澪』――。 『澪を一人にしたら悲しんじゃうだろうしなー』 『もっと早く出会いたかったな』 これが。 これが、好きってことなの? 律のことが、私は。 好き。 好きなんだ。 律のことが、好き。 律の顔を思い出すだけで、落ち着けなくなって高揚したり。 律が話しかけてくれるだけで、嬉しくて楽しくて。 律が他の誰かと仲良くしてて、胸が痛くなるのも。 一日中律のことを考えてるのも。 好きだから。 私は、律に恋してるんだ。 「律……」 律は、私の初めてをなんでも奪っていく。 今度も、奪われちゃったな。 初恋。 ■ 三連休だった。 今まで祝日は律と一緒にいたけれど、律を突き飛ばした揚句逃げた。 さらにメールも電話も無視した手前、少しだけいつものように律と会うのは居た堪れない。 だから今回の祝日三連休は律とは会わないことにした。 私は律に今ものすごく会いたい。でも、律は怒ってるんじゃないだろうか。 そう思ったのだ。 三連休の初日の今日は、建国記念日の十一日だ。 バレンタインまで、あと今日含めて三日。 十四日には、律は『理学部の子』と食事をするんだ。 もしかしたら、律との恋が成立してしまうかもしれない。 律に限って、そんなことはないだろうけど……。 でも二人がくっついてしまったらどうしよう。 信じてるけど、でも、怖い。 でも、どうしようかも全然思いつかなかった。 結局お昼の十二時までは、寝たり起きたりしていた。 でもやっぱり、律の顔は浮かんでくる。 それだけで胸は痛いのだけど、でもやっぱりふわふわした気持ちはするのだ。 (……詩) ふと、頭に浮かんだ。 私は文芸部で、詩を書いていた時期がある。 あの時は意味不明な、よくある言葉の模倣でしかなかった。 (……作詞) 今は『詩』ではなく、『詞』なのかもしれない。 一応、音楽やってるわけだから。 律とやってて、いつかは歌詞を書いてみたいと思ってた。 それが今、ふと思い出されたのだ。 私は、布団からのそりと出て勉強机に向かってみた。 適当なルーズリーフに、ペンを走らせる。 不思議なほどに、言葉が溢れてきた。 律を見てると、胸がドキドキする。 ふわふわしてるし、暖かい。 (君を見てると――) 好きって昨日自覚して、さらに眠れなくなって。 夜が切なくなった。 (好きになるほど――) もう少し私が勇気を振るえば、何かが変わるのかもしれない。 昨日みたいに、恥ずかしいから逃げるんじゃなくてさ。 (何かが変わるのかな――) でも、律を見るとやっぱり恥ずかしさで顔が真っ赤になりそうだ。 そうなると、普通に話すのはどう考えても難しい。 だからって段取り考えたって、それは全然自然でもない。 (全然、自然じゃないよね――) でも、話したら。 なんとか話せば。 その後は、どうにかなるよな。 だって律といるのは、楽しいし嬉しいから。 私に笑顔を、たくさんくれるから。 (どうにかなるよね) 「書けた……」 律の事考えてたら、律の事だけで歌詞が書けた。 これに曲をつければ、もう立派な曲になる。 もちろんバンドなんてないのだけど。 私はルーズリーフを机に置いて、それを見つめた。 ……恥ずかしい歌詞かもしれない。 律に歌詞を書いてみたよって言ったら、笑われちゃうかな。 それも、いいかもな。 タイトルは、どうしようかな。 「ふわふわ……タイム」 ふわふわ時間。 それはまさに、私が律と出会って送った日々のことだった。 律と恋人同士になりたい。 そんな想いは、どんどん膨れ上がっていた。 ■ 2月11日 くもり 澪、怒ってるかなあ。 メールもしたし電話もしたのに、応答がないってことはそうだよな。 今までずっと一緒にいたのに、バレンタインは他の子となんて。 私の馬鹿野郎。大馬鹿野郎だ。 最初に澪が行けばって言ったから、少し頭にきて。 澪の嫉妬が見てみたいななんて気持ちで受けるんじゃなかった。 「これでいいかよ」なんて煽ったけど、私馬鹿みたいだな。 いや、実際馬鹿だ。本当に馬鹿だ。 馬鹿律。マジで情けない。 でも下宿まで行ったら迷惑だろうな。 会いたいな。でも、そっとしておいた方がいいのかな。 ってか、澪の奴鈍感だよなー。 気付けって。私の気持ちぐらい。 澪、大好きだよ。 日記に書いても意味ねーよ私も。 戻|TOP|次
https://w.atwiki.jp/puzzlederby/pages/395.html
セントライト(オス) 属性 副属性 タイプ 副タイプ レアリティ コスト 地 - スタミナ 芝 S☆5 17 レベル スピード スタミナ 根性 1 176 468 59 75 702 2340 176 スキル/強化型 地のやすらぎ(ストーンと回復ブロックを地属性ブロックに変化)/- Lスキル/強化型 三冠の加速(1ターンで3属性以上で同時にアタックするとスピード2倍)/- 進化素材1段階 日本ダービー 優勝盾(地) 優勝盾(地) 優勝カップ(地) 進化素材2段階 皐月賞 日本ダービー 日本ダービー 菊花賞 優勝盾(地) 入手方法 パズダビチャレンジ ジャパントリプル