約 1,629,518 件
https://w.atwiki.jp/cfonline/pages/877.html
■基本データ 【コロナ】 光翼騎士 【ミーム】 富嶽/ロンデニオン 【ブランチ】巫女/艦長/王国軍人 【消費経験点】0(能力値:0 特技:0 装備:0 パスの追加:0 ブランチの追加:0) ■能力値/耐久力 【能力値】 肉体:7 技術:10 魔術:9 社会:5 根源:3 【戦闘値元値】 白兵:10 射撃:10 回避:2 心魂:4 行動:11 【戦闘値修正値】 白兵:10 射撃:10 回避:4 心魂:4 行動:8 【HP】 元値:24 修正値:157 【LP】 元値:5 修正値:5 ■宿命/特徴/闘争/邂逅 宿命:取り替え子 特徴:ふたつの故郷 特徴効果:自分の出身孤界以外の知識を持つ 闘争:追放者 邂逅: ■初期パス 【因縁】織田上総介信長からの信頼 ■準備された装備 部位:名称(必要能力/行動修正/ダメージ/HP修正/射程/備考/参照P) 右手 :九尾の大扇子 (必:―/行:-3/ダ:【魔術】18+2D6/HP:―/射:シーン/式札相当品、範囲を対象/SC158) 左手 :狐の紋章の手袋 (必:【技術】3/行:10/ダ:―/HP:8/射:―/ラウンドシールド+輝く紋章相当品、回避値+2/SC153、SC165) 胴部 :改造ロンデニオン軍服 (必:【技術】8/行:―/ダ:―/HP:25/射:―/軍服相当品/FP097) その他: (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―/―) 乗り物:航空戦艦『山形城』 (必:―/行:-10/ダ:―/HP:50/射:―/宇宙戦艦相当品、常時飛行状態、「防御属性:肉体」追加、艦長特技のダメージに+差分値/SC132) 予備1:軍刀「九尾羅(クビラ)」 (必:―/行:―/ダ:【技術】30+1D6/HP:―/射:至近/アルビオンサーベル相当品、回避値+3、《将校の証》で常備化/FP096) 予備2: (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―/―) 予備3: (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―/―) ■コロナ特技 【SC102/自動/自/常/なし】◆光翼の盾 常にダメージ-[ソフィアが合致しているフレアの枚数×10] 【SC102/自動/自/オ/なし】◆銀の守護者 宣:攻撃判定直後。[エンゲージ]内の攻撃対象を自身へ変更。 【最大HP】+50 【SC102/-/自/オ/フ1】きらめきの壁 宣:命中直後。対象が[範囲]の攻撃を自分1人に変更する ■ミーム特技 【SC132/自動、強化/自/マ/5H】◆神舞 [MP]で行なう[攻撃]の[達成値]+【魔】 【SC132/自動、防御/自/ダ/フ1】◆傀儡舞 〔T1〕宣:DR直後。対象のダメージ-[【魔】×2] 【SC132/自動、ア/自/常/なし】◆宇宙戦艦 〈宇宙戦艦〉を得る。〈宇宙戦艦〉装備中は[艦長]特技によるダメージ+[差分値] 【SC132/自動/射/メ/2H】◆主砲斉射 宇宙戦艦専用。[【技】×4+4D6]ダメージの[射攻]を行なう 【FP069/自動、ア/自/常/なし】◆将校の証 アルビオンサーベル常備化、「種別:蒸気軍装」常備化、使用可能、オートアクションで「種別:蒸気軍装」装備可能 【LF131/強化/射/リ/フ1】改修空母 宇宙戦艦専用。[攻撃]に対して[突返]。[達成値]+【技】、[【技】+4D6]ダメージ 【FP069/-/自/オ/フ1】軍人としての誇り 〔T1〕宣:対決直後、[シーン]内のダメージ対象の受けるダメージを代わりに受ける、エンゲージ移動可能。 ■装備 ■属性防御 肉体:○ 技術:× 魔術:× 社会:× ■戦術、設定、メモなど 富嶽外様艦隊が羽州探題、最上出羽守義光の義理の娘。 金色の狐の耳と、九本の狐の尾から「九尾姫」とも呼ばれる。 元々はアルビオンのシルフィード候補生の少女だったのだが、ロンデニオンの転移事故の際に次元と時間の壁を越え、過去の富嶽外様艦隊に迷い込む。 そこで途方にくれていたところを義光に拾われ、義理の娘として富嶽外様艦隊で教育される。 それからいろいろあった後、現在は外様艦隊からの使者件派遣人員として織田信長の元で神炎同盟の一員として活動している。 ロンデニオン転移事故のときの年齢は11才だったが、次元と時間を越えた結果現在の年齢は29歳である。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2496.html
トリステイン魔法学院の広場に一人の少女が立っていた。 夜の帳が下り、赤と青の月明かりが彼女を照らし出す。 月光を浴びて彼女のトレードマークである金色の巻き髪が一層鮮やかに映える。 舞台の主役のように一人立つモンモランシーは複雑な表情を浮かべていた。 時には憂鬱に、または不満げに、ともすれば心配そうに、その表情を百面相の如く変えていく。 冷えた夜風に当たっても気分は一向に晴れない。 理由は分からないけれど何故だが不安が治まらないのだ。 心がざわついて部屋に篭ってなどいられなかった。 原因は分かっている。あのバカの所為だ。 別に正式に付き合ってるわけでもないのに、 どうして私がアイツの事で悩まなくちゃいけないんだろう。 安否を気遣うこっちの気持ちを少しは分かりなさいよ。 どんなに格好つけても死んだらただのバカなんだからね。 頭の中が思いつく限りの愚痴に埋め尽くされる。 よし、戻ってきたら殴り飛ばそう。 勲章なんて付けていても全然関係ない。 それだけの権利はあると思うから思い切ってやってしまおう。 ……だけど、もし戻って来なかったら。 直後、草を踏み締める音に彼女は現実に引き戻された。 寮の明かりも消えた宵闇の中でも、2つの月が訪れた人影を映し出す。 踏み出した足に、赤く艶やか髪が炎のように舞い踊る。 「……キュルケ」 「夜更かしは美容の天敵よ。あまり感心はしないわね」 ちっちと指を左右に振りながらキュルケは冗談めいた口調で話しかける。 キュルケの暢気な態度に声を荒げようとするも、それこそ恥を晒すだけだと彼女は抑えた。 ここでそんな姿を見せれば一生ギーシュとの仲をからかわれるだろう。 ぐっと言葉を飲み込むモンモランシーを見つめながらキュルケは明るく接する。 「大丈夫、大丈夫。実家の伝手でアルビオンの戦況を知らせてもらっているの。 上陸してからも連合軍は連戦連勝。もうしばらくすればギーシュも帰ってくるわよ」 “ま、勝ってるのは連合軍じゃなくてゲルマニア軍なんだけどね” とついでにお国自慢をしつつ、その豊満な胸を見せびらかすように大きく反らした。 平時と変わらない彼女の図太い神経に、全くと呆れつつも感謝する。 これじゃあ取り乱している自分の方が馬鹿らしい。 「ありがとう」 一言お礼を言ってモンモランシーは夜空を見上げる。 キュルケとて不安を感じていない訳ではない。 そうでなければ、こんな夜更けに部屋を抜け出したりなどしない。 自分を気遣って気丈に振る舞う彼女の配慮に心より感謝を示す。 きっと真正面から言ったら鼻で笑われるから簡素な言葉に想いを託した。 どういたしまして、と軽く返すキュルケ。 想い合う者同士を示すかのような双月を二人で見上げる。 草木の鳴る音を耳にして、ただ静かに時間だけが流れていく。 「早く帰って来るといいわね」 「ええ、本当に」 モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ ……ギーシュとの関係が誤解により一時期最悪になるも、 才人とギーシュの決闘後、紆余曲折ありギーシュとの事実上の恋人となる。 しかし、その関係も一進一退。才人とルイズ同様に周囲をヤキモキさせる。 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー ……タルブに参戦した事で絶縁も覚悟していたものの、 予想外の大勝利と女王陛下直々にお褒めの言葉を頂戴した事、 またタルブ戦においてゲルマニアが援軍を出さなかった後ろめたさもあり、 彼女を咎めるどころか同盟国を守る為に戦った勇敢なメイジとして表彰される。 ちなみに、縁談の相手はワルドを倒した彼女の武勇伝に恐れをなして撤回したらしい。 「きゅいきゅい! 今回のお仕事は簡単だったのね、いつもこうなら楽なのに」 タバサを背に乗せて楽しげにシルフィードは喚いた。 この高度では彼女たちの会話を聞き取れる者はいない。 日頃の鬱憤を晴らすかのように機関銃のようにシルフィは喋り続ける。 その一方で、タバサは命令書を再度確認する。 そこに書かれているのは、彼女の言うように単純で簡単な任務ばかり。 それを目にしてタバサは大いに首を傾げた。 北花壇の任務は基本的には汚れ仕事か、あるいは危険な任務だ。 時には処置に困るような面倒な仕事が舞い込む事があるが、 そういった例外を除いては命の危険を伴うようなものばかりだ。 なのに、ここに書かれている任務はメイジですらない兵士でも可能なもの。 そもそも任務を受諾しにプチ・トロワに向かった時、 従兄妹であり北花壇の団長でもあるイザベラの反応は明らかにおかしかった。 いつもなら厄介事を押し付けて、こちらが困るのを楽しんでいるようだったのに、 今回は苦虫を噛み潰した顔で命令書を突きつけるだけだった。 つまり、これは彼女が選んだ任務じゃない。 ……じゃあ一体誰がそんな命令を出させたのか。 それが可能なのは唯一人。だけど、その意図がまるで掴めない。 意味がない任務に従事させて、それが何になるというのか。 「きゅい! お姉さま、無視しないで欲しいのね!」 思考の迷路に迷い込む主を見て、無視されたと勘違いしたシルフィが声を上げる。 ぎゃあぎゃあと大声で鳴きながら翼をばたばたとしきりに動かす。 それでようやく気付いたタバサが顔を上げて使い魔に答える。 「なに?」 「なにじゃないのね! いくらなんでも上の空はひどいのね! ああ、わかった! きっと才人ね、才人の事を考えてたんでしょう! きゅいきゅい! 遠く離れた二人は互いを想って……きゅい!」 ぱこーん、と小気味のいい音が響いてシルフィの妄想はあえなく断たれた。 ヒリヒリする頭を撫でながら恨みがましそうな目で振り返る。 「……いたいよう」 「自業自得」 大体、才人に対してそのような感情を抱いた事は……ない、と思う。 それに彼にはルイズがいる、主従の絆以上に強く結ばれた彼女が。 だから、その間に割って入るなんて私には出来ない。 ……いつの間にか論点がずれている。そもそも割り込む必要などない。 なのに、私はどうしてそんな考えに至ったのか。 感情と計算。困惑する彼女の脳裏にふと閃くものがあった。 「戻って」 「え? 学院に帰るんじゃないのね?」 「違う。行くのはアルビオン」 「ど、ど、ど、どうして急に何でそんな所に!!? ま、まさか本当に募る想いが乙女のリピドーを暴走させて……きゅい!」 「急いで」 さっきよりも力強く杖を頭に叩きつける。 渋々、方向転換するシルフィードの背中でタバサは唇を噛んだ。 彼女は深読みをしすぎていた。この任務は本当に何の意味も裏も無かった。 ただ、彼女をガリア国内に釘付けにするだけの時間稼ぎ。 そうまでして行かせたくない場所など彼女には一つしか思い当たらない。 逸る気持ちを抑えながらタバサはアルビオンへと向かう。 たとえ、それが間に合わないと分かっていながら。 タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン) ……キュルケ以外とは距離を置いていたが、次第にルイズや才人達とも打ち解け始める。 その所為か、よくシルフィードに才人との関係をからかわれるようになる。 見渡す限りの地平を埋め尽くすアルビオンの軍勢。 大気を震わせる雷鳴の音も、石飛礫のように降り注ぐ雨音も、 大地に根付いた木々さえも傾かせる暴風の音も、 七万の兵士が生み出す行軍の足音を掻き消す事は出来ない。 否。それを音と呼ぶのは些か語弊があった。 大地が弾む。まるで山が動くかの如く鳴動しているのだ。 松明さえも役に立たない嵐の中を魔法の明かりを目印に兵士達は歩く。 雨を凌ぐコートのような布を頭から被り、外の寒さに肩を震わせる。 役に立たない銃の代わりに槍を手に腰には剣を差す。 痛みさえ覚える雨粒に苛立ちを覚えながら、ぬかるんだ地面を固く踏み締める。 「なんでこんな天気で行軍しなきゃならねえんだ?」 「馬鹿が。“こんな天気”だからこそだろう。 今頃、連合軍の奴等は船も出せずに港で右往左往してるだろうぜ。 下手に時間を与えりゃあ、態勢を整えて反撃してくるかもしれねえしな」 不満を口にする若い兵士にベテランじみた風格の男が答える。 真正面から敵と殴り合うよりも進軍に支障が出ても楽に勝てる方がいい。 敵に最も損害を与えるのは追撃戦だ。ここで徹底的に叩けば勝敗は決する。 逆に逃がしてしまえば敵に反攻の機会を与えてしまう事になる。 さりとて現場の兵士にとっては、そんな上の事情など知った事ではない。 ただ命じられるがままに敵と戦う彼等にとって楽であればそれに越した事はない。 大軍であるが故の安心感からか、彼等の緊張は途切れかけていた。 それを繋ぎ止めようとベテランの兵士は餌をちらつかせる。 「手柄だって取りたい放題だ。港にゃあ爵位持った連中が唸るほど居るんだからな」 「そうは言ってもなあ、さっき、別の隊の連中に一番手柄持ってかれたばかりだしな」 ちらりと視線を向けた先には血塗れの元帥杖を奪い合う一団。 連合軍を指揮していたド・ポワチエ総司令官の遺体の傍に落ちていた物だ。 ハイエナのように群がった彼等は金目の物を剥ぎ取った後で、それをまるでトロフィーのように掲げる。 いくら手柄を立てようと総大将を仕留めた連中には遠く及ばない。そんな意気消沈が見て取れる。 「なあに、まだ一番手柄と決まったわけじゃない。 トリステイン王国のアンリエッタ女王もいるとの噂だ。 もし捕まえたら褒美は望むがままだ。爵位だって夢じゃない」 「本当に最前線に来てるのかよ? ただの噂だろ」 「いや、アンリエッタ女王はタルブ戦でも前線で指揮を取っていたと聞く。 ならば遠征中で士気も落ちる連合軍を見舞いに来てもおかしくないだろう」 とはいえベテランの兵士も絶対の確信などない。 タルブ戦といえば数ある戦いの中でも指折りの胡散臭さを誇る物だからだ。 結果こそ確かなものの、その記録内容は奇妙としか言い様が無かった。 従軍経験さえないアンリエッタ女王自ら采配を振るい、 最強と謳われたアルビオン艦隊は神と始祖の加護により壊滅したというのだから、 もう神代の時代の再現か、あるいは軍目付けの精神を疑うべきだろう。 他にも、この記録には不自然な点も多い。 “精強で知られたアルビオン兵が犬の遠吠えを援軍と勘違いして四散した” “届く筈のない地上からの砲撃が何故か上空の艦隊を撃沈した” “撃沈された筈の艦隊からは、ほとんど死傷者が出なかった” その最たる物としてトリステインから離反したワルド子爵に至っては、 文官であるモット伯に討ち取られた上に自らの騎竜から転落死と、二度も死んだ事になっている。 恐らくは偶然の勝利を神懸り的な何かに演出しようとしたのだろう。 もし、これを書いたのが劇作家ならとっくに職を失っているに違いない。 疑いの眼差しを向ける兵士達に、やれやれと男は頭を掻いた。 やはり、こういった連中を動かすのはもっと目先の物でなければ。 その上で最も効果的な物を彼は長年の経験から熟知していた。 「じゃあ、こいつは知っているか。 今アルビオンにゃ兵士達の慰労の為に高級酒場が幾つも出張してるってな」 先輩の言葉に耳を貸さなかった兵士達の耳が動く。 彼等の視線は先行する彼へと向けられている。 それを感じ取ってニヤリと男は笑みを浮かべた。 結局の所、兵士を良く動かすのは出世欲や名誉欲ではない。 もっと純粋な三大欲求こそが彼等を突き動かすのだ。 「さすがに貴族の御偉方に手は出せねえが商売女なら話は別だ。 だがな、路地裏で客取ってるような安物じゃねえぞ。 伯爵様方も夢中になって金貨を落としていく最高級品だ。 いいか、早い者勝ちだ! 真っ先に港に辿り着いた奴から好きなのを選ばせてやる!」 男の言葉に兵士達は槍を手に雄叫びを上げた。 足取りは力強く、纏わりつく泥を跳ね飛ばしながら突き進む。 そこには先程までの重い足取りをした弱卒はいない。 今の連中は文字通り、飢えたケダモノどもだ。 “分かりやすく、そして扱いやすい連中だ”と呆れ半分で笑みを浮かべる。 その一方で士気の上がらぬ兵士達もいた。 新兵ならばそれも仕方ないと思ったかもしれない。 だが、その一団は貴族派だった頃からの正規兵達だった。 見れば顔は青白く、その身体は小刻みに震えていた。 それは雨風の冷たさばかりではなく内から込み上げる何かに起因しているように見えた。 「まるで分かっちゃいねえ! トリステインにはあの“ニューカッスルの怪物”がいるんだぞ!」 怯える兵士達の一人が耐え切れず、遂にその名前を口にした。 途端、血気に逸る若手達もそれを鼓舞する古参兵も全員が凍りついた。 “ニューカッスルの怪物”それはアルビオン軍では不吉の象徴とも言われる存在だった。 最初に現れたニューカッスル城では城内に進入した傭兵団を悉く殺し尽くし、 さらには包囲していた大軍にも襲いかかり多数の死傷者を出したと伝えられている。 またタルブ戦にも現れて何隻もの艦艇を沈めたとの逸話もある。 一時期、その怪物がトリステイン王国の生み出した生物兵器であるとの話も出てきた。 だが、それらはあくまで噂に過ぎない。 しかし、この兵団は“彼”の実在を知っていた。 彼等はニューカスル城に後詰として参加し、 城内と城外、無数に転がった人とも物とも区別の付かぬ肉塊を目にした。 かろうじて生き残った者達からは怪物が齎した身の毛もよだつ恐怖を聞かされ、 どこからともなく響く獣の遠吠えに身を竦ませた。 ニューカッスルも、タルブも、今も同じだと彼等は考える。 あと一息で敵を倒せるという時に、あの怪物は姿を現してきた。 だから、今この瞬間にも自分達の目の前に現れてもおかしくはない。 彼等はそう強く信じ込んでいた。 「何言ってやがる。ただの迷信じゃねえか」 彼等の言を一笑に付して若い兵士が先を急ぐ。 そんな兵器があるならとっとと前線に投入しているだろうし、 ただの理性もない怪物だとしたら操れるはずもない。 いるかどうかも分からない怪物に怯えるのは、 あるかどうかも分からない手柄に期待するよりも虚しい。 仮に、こんな事で手間取った挙句に失敗したら取り返しはつかないだろう。 半ば踝まで泥に埋まりかける足場を踏み分けて進んでいた、その最中。 彼の爪先が硬い何かにぶつかって止められた。 不意に足を止めて腰を屈め、その何かを確かめる。 それは倒れて意識を失ったアルビオン兵だった。 耳を近づけると雨音の中でも辛うじて呼吸が聞き取れた。 何があったのかを聞こうとして兵士は気付いた。 周りにはまだ何人もの兵士達が同様に地面に倒れている。 銃声はおろか魔法さえも目にしなかった。 こちらに軍勢が迫る気配も何もない。 なのに何故、彼等は倒れているのか。 困惑する彼の目の前で何かが蠢く。 降りしきる雨と宵闇に視界を遮られた中、 何者かの気配を感じて兵士は咄嗟に動いた。 「何者だ!?」 何が起こったのかを考えるよりも早く、 彼は威嚇の声を発して鋭く尖った槍を前へと突き出す。 直後、彼の槍先は瞬時にして失われた。 断たれた先端が宙を舞って弧を描く。 それに目を奪われた瞬間、彼の鳩尾に剣の柄尻が突き刺さる。 声を上げる間もなく沈んでいく兵士の陰から現れる、もう一つの影。 それが何かを理解するのは彼等には不可能だった。 連合軍の反攻はあるかもしれないと思っただろう。 だが唯一人。それも杖ではなく剣を手に乗り込んでくるなどとは考えもしない。 その理解できない『何か』は大地を飲み込まんとする大軍を前に正対する。 自身の常識を超えた存在の思わぬ出現に彼等は戦慄を覚えた。 そして、まるで弾けるように兵士達は外敵を排除しようと動き出す。 戦いというにはあまりにも一方的だった。 四方八方を取り囲み、さらには魔法が豪雨となって降り注ぐ。 人一人を殺すには過剰ともいえる暴力。 しかし、それだけの攻撃、それだけの殺意を向けられながら、 まるで小枝でも払うようにそれは陣中を切り進んでいく。 必死に繰り出される槍も剣も、魔法さえも切り払われて霧散する。 まるで現実感の伴わない光景を前に、立ち尽くした兵士が声を上げた。 「で……出た! ニューカッスルの怪物だ! 怪物が本当に出たぞ!」 恐慌状態に陥った兵士達が武器を捨てて後方へと逃げ出していく。 その彼等から齎された報が瞬く間にアルビオン軍全体へと伝わっていく。 それはまるで伝染病のような広がりを見せ、アルビオン軍は混乱に陥った。 そんな混迷を極める戦場の只中を平賀才人はひたすらに駆け抜けた。 主であり、そして恋焦がれた少女の為に走り続けた。 夢を見た。才人とアイツの夢だった。 才人がアイツを連れてどこかに行ってしまう。 その背中に追いつこうと必死になって走っても届かない。 大声を上げて呼び止めようとしても足を止めようとしない。 やがてアイツらは立ち止まってこっちに振り返る。 そして私に向かって手を振ると消えてしまう。 そんな怖いような、悲しいような夢だった。 胡乱な頭でベッドから起き上がる。 上半身だけを起こして辺りを見渡すも目に映るのは見覚えのない物ばかり。 学院の寮とも実家とも違う光景に頭がついていかずに戸惑う。 「……えーと」 寝ぼけ眼をこすりながら記憶を呼び起こす。 (そうだ。私達はアルビオンに……) そこまで思い出して彼女は慌てて周囲を見渡す。 いない。どこにもいない。 部屋の中に才人の姿はどこにもなかった。 イヤな予感が胸の中を塗り潰す。 掛けてあったローブを引ったくって上から羽織ると、 そのまま船室を飛び出してルイズは駆け出した。 「……あのバカ!」 走りながら思い出すのは教会での一幕。 あの時に交わした杯の中に何かを入れたに違いない。 眠りに落ちる前の、優しげな才人の顔が目に焼きついている。 それがもし別れを決意したものだったとしたら……。 長い髪を乱しながら頭を振るう。 そんな事はない。まだ呼び止めれば間に合う。 二度も、二度も繰り返してたまるものか。 あんな悲しい別れは一度だって十分なのに。 息を切らせてルイズはようやく甲板へと辿り着く。 雨に濡れるのも構わず彼女は船縁へと走り寄る。 しかし、そこに見えたのは遠ざかっていく港だった。 もはやフライを使おうとも届くような距離ではない。 次第に小さくなっていく港の明かりを見ながら、 ぺたんと彼女はその場に力なく膝をついた。 もう間に合わない。 いえ、きっと追いついたとしても止められなかった。 雨ではない雫が頬を伝って零れ落ちる。 もう二度と失くしたくなくて、今度こそ私が守ろうと、 怖くても才人が生きていてくれるならとなけなしの勇気を奮った。 ―――なのに、また私だけが生き残った。 悔しくて悔しくて何度も縁を叩きつける。 どうしていつも置いていかれるのか。 共に生き残る方法がないなら、 どうして“一緒に戦おう”と言ってくれなかったのか。 きっと残された私の気持ちを考えもしなかったのだ。 才人のいない世界で生きるのがどれほど辛く悲しいのかも。 「サイトの馬鹿!馬鹿!馬鹿ァァーー!!」 罵る相手を失った慟哭が虚しく響き渡る。 失って彼女はようやく気付いた。 自分にとって彼がどれほど大切な存在だったのかを。 「どうした相棒? 急にあさっての方を向いて」 「いや、ルイズの声が聞こえたような気がしてさ」 カタカタと鍔元を鳴らして話しかけてきたデルフに才人は答えた。 無論、空耳だというのは分かっている。 ここから港まで声が届くはずはない。 なのに、どこか心に妙な安堵感がある。 まるで傍らにルイズがいるかのような感覚。 それがある限りはまだ戦える、 否、戦わなければならないのだ。 「後悔はねえのか?」 「あるに決まってるだろ。まだルイズと一緒にいたかったさ」 そんでもって、あんな事やこんな事を…と妄想に耽りそうな頭を振るう。 だけど、それを運命は許してくれなかった。 生き残れるのは俺かルイズのどちらか一人だけ。 なら選ぶ余地なんて初めからありはしない。 平賀才人には何も無かった。 ハルケギニアに呼び出され、家族や友人、その他多くの物を失った。 いや、召喚される前の漫然とした日々でさえ確かなものは何も無かった。 そんな中で唯一つ確かなものはルイズだけ。 才人にとって彼女への想いだけが真実だった。 「やっぱり死ぬのかな、俺」 「さすがに七万の軍勢が相手じゃな。 前の相棒だったらどうにかなったかもしれねえけど」 そっか、と才人は溜息を漏らした。 ここまで運良く切り抜けてきたので、まるで実感は湧かなかった。 “ニューカッスルの怪物”の噂が兵士達の動揺を呼び、 そして視界を遮る豪雨により相互の連携が絶たれている事が幸いした。 敵の数も正体も他の部隊の現状も把握できずに狼狽する相手なら、 いくら数がいようともガンダールヴの相手ではない。 もしかしたら、このまま敵陣を突破して生き残れるかもしれない、 そんな淡い期待が才人の胸に込み上げていた。 しかし、きっぱりとデルフはそれを否定する。 幸運はここまでだ、と浮かれる相棒に鋭い釘を刺す。 指揮系統が機能していないのは末端までだ。 直接指揮を執っている連中の周りには万全の警戒が敷かれている。 その最中に切り込むのは火中に飛びいるに等しい。 この期に及んでまだ未練を残す自身に才人は苦笑いを浮かべた。 「まあいいさ。次があるって分かったからな。 後はそいつに任せる。ルイズと上手くやってくれるといいな」 ははは、と笑いながら自分が受けた仕打ちを思い返し、 きっと苦労するんだろうな、とまるで他人事のように呟く。 そんな相棒の姿を見ながらデルフは黙した。 確かに才人の言うように、彼が死ねば新しい使い魔は呼ばれるだろう。 だけど、そいつはそいつだ。才人ではない。 使い魔の代わりはいても、才人の代わりはいない。 (相棒……、きっと気付いちゃいねえだろうが、 嬢ちゃんにとってお前さんの代わりは居やしねえんだよ) 「なあ相棒。一つだけ約束してくれねえか」 「なんだよ、急に改まって」 「何があっても俺を手放さないと誓ってくれ」 万に一つ、いや、十万に一つもないだろう。 だが、少しでも可能性と呼べる物があるのなら賭けてみようと思った。 たとえ才人の意識が途切れてもデルフは彼の身体を操作できる。 剣を手放しさえしなければ、あるいは敵から逃げ遂せるかもしれない。 それに前の相棒の時のように離れ離れのまま別れるのは御免だった。 命を預けた相棒と最期まで共に戦って死ぬのならそれも悪くない。 「何か縛る物持ってないか? ハンカチでもいいけど」 「俺がそんな几帳面な奴に見えるか?」 「いや、聞いてみただけだ」 デルフに言われて、ごそごそとポケットの中を探る。 たとえ何かが入っていたとしても乱戦の最中に落としただろう。 ふと指先に何かを感じて、それを引っ張り出す。 「……………………」 偶然だったのか、それとも奇跡か。 才人のポケットから出てきたのは擦り切れ褪せた首輪だった。 それはお守りとしてルイズの部屋から持ち出した“彼”の持ち物。 呆然と首輪を眺めていた二人が、やがてどちらからともなく笑い合う。 ぐるりと手と柄を首輪で縛り、才人は握りを確かめて言う。 「それじゃあ一緒に行くか」 見据える先は魔法の明かりに照らし出された無数の軍勢。 大軍でありながら隊列の乱れや澱みのない行軍は、 陣中にそれを率いる指揮官が存在する事を示していた。 一個の生物として機能する軍隊はさながら巨大な竜のよう。 それに平賀才人は臆することなく立ち向かう。 まるで『イーヴァルディの勇者』がそうしたかの如く。 「出たぞ! “ニューカッスルの怪物”だ!」 視界の利かぬ中、動く人影を認めた兵士の一人が叫ぶ。 それに才人は雄叫びじみた名乗りを返す。 その称号を誇りと共に高らかに告げる。 「怪物じゃねえ! 俺は!俺達は……“ゼロの使い魔”だ!」 本陣に駆ける少年の姿をケンゴウは見送った。 四肢には立ち上がる力は無く、鳩尾にはくっきりと痣が残されている。 (……なんと脆き刃よ) 手には半ばで断たれた量産向けの剣。 しかし、彼が指したのはこの剣ではない。 少年の剣は決して褒められるような物ではなかった。 ただ速くただ重いだけの身体能力に任せた太刀筋。 先祖伝来の剣技を修めた自分ならば負ける相手ではなかったはずだ。 しかし、今の自分は数合も打ち合えず地に這わされている。 少年の話を盗み聞いてつくづく思う。 身に付けた剣も所詮、自分だけのもの。 多くの者達の想いを背負う少年に及ぶべくもない。 ましてや幾万の大軍に刃を向けられる気概など今の自分にはない。 その程度の志で天下に勇名を轟かせるなど遥かな夢。 「……修行のやり直しだな」 口の端に浮かぶのは笑み。 世界は広い、故に興味は尽きない。 杖を振るうメイジには野蛮、銃を撃つ兵士には時代遅れと揶揄された。 しかし、そんな剣に七万の大軍が翻弄されている。 その様に敵方だというのに爽快な気分が込み上げる。 ああ、恐らくは叶う事はないだろう。 だが始祖と神、そして先祖の住まう世界に居たという神仏に願う。 いつの日か、もう一度あの少年と心ゆくまで切り結ばせ給えと。 ケンゴウ(通り名) ……アルビオン戦役後、傭兵を辞めて流浪の旅に出る。 後に、クリスティナ・ヴァーサ・リクセル・オクセンシェルナと運命の出会いを果たす。 仕官した後は彼女を終生の主と仰ぎ、小さいながらも自分の道場を開く。 「前線より援護要請! 敵の反攻激しく、進軍を阻まれております!」 「観測所より通達! 連合艦隊はアルビオンを発ったとの事です!」 突然の奇襲に慌てふためく本陣に伝令が飛び込む。 アルビオン軍の敗北を知らせる2つの報告を耳に、 襲撃者である少年が去っていた方向をホーキンスは黙って見ていた。 追撃しようなどとは思わない。もはや少年が助かる見込みはない。 矢で射抜かれ、炎で焼かれ、槍に貫かれ、肉を裂かれた。 ここまで来た道程を少年の流した血が染めている。 たとえ水メイジの治癒であろうと間に合わないだろう。 勝っていた戦だった。 妨害があろうとも突破できるだけの戦力はあった。 それを覆したのはたった一人の少年だった。 剣を手に単騎で敵中を駆け抜けて本陣まで迫る。 炎も氷も風も土も、少年を阻む事は出来なかった。 今もホーキンスの眼には、目前で閃く少年の太刀筋が焼き付いている。 斬り飛ばされた帽子を拾い上げてパンパンと埃を落とす。 そして、それを被り直すと最初に報告に来た兵士を呼びつけた。 「あれが“ニューカッスルの怪物”か?」 「あ……いえ、その……」 ホーキンスの問いかけに、その兵士は萎縮して何の返答も出来なかった。 如何に腕が立とうとも相手はただの剣士、人間に過ぎない。 それを怪物が現れたなどと報告をすれば徒に混乱を招いたとして処罰は免れない。 実際に怪物騒ぎの所為で混乱を来たした部隊も少なくはない。 敗北に導いたと言いがかりをつけられても男には反論のしようがなかった。 加えて、アルビオン共和国の厳罰とは死罪を意味する。 蒼褪めていく兵士の顔を見据えながらホーキンスは続ける。 「槍で突けば傷付き、矢が刺されば血を流し、炎に焼かれれば火傷を負う。 あんな貧弱な物を人は怪物などと呼びはしない、違うか?」 「は……はい」 「では君はあれが何なのか分かっているかね?」 鋭いホーキンスの眼差しに男は竦み上がった。 もはや弁解の余地もなく、ただ言われた質問に答えようとした直後。 それを遮ってホーキンスは解答を口にする。 「あれはな、英雄と呼ばれるものだ」 ホーキンス ……神聖アルビオン共和国の将軍としてアルビオン戦役を戦い抜く。 終戦後、揉み消された平賀才人の功績をトリステイン政府に強く訴える。 後に、彼の回顧録はアルビオン戦役を知る上で最も史料価値が高いと評された。 「ねーちゃん! ねーちゃん!」 「どうしたんだい? 騒々しいね」 戦場から程近いサウスゴータの森の中。 がさがさと木陰から飛び出してきた子供達に、 やれやれといった態度でマチルダが答える。 雨の中でもはしゃぐ子供達に付き合う体力はない。 きっと、またイタズラして怪我でもしたのだろうと、 取り合わない彼女に子供達は切羽詰った様子で言い放つ。 「おばちゃんじゃなくて! ティファニアねーちゃんを呼んできてよ!」 「おば!!?」 困惑も一瞬、禁句に触れた子供へとマチルダの手が伸びる。 そして、あっと言う間に羽交い絞めにすると、 こめかみに拳を押し付けながらマチルダは問い質す。 「誰がおばちゃんだ! 誰が!」 その鬼気迫る表情に他の子供達も言葉を失う。 こんな事をしてる場合じゃないと分かっているが、 今のマチルダを止められるのは、この孤児院に一人だけ。 やがて騒ぎを聞きつけたティファニアが駆け寄ってきた。 「どうしたんですか、姉さん」 「年上に対する言葉遣いがなってないんでね、ちょっと教育してやったのさ」 心配そうに見つめるティファニア。 その視線に耐え切れずマチルダは捕らえた少年を解放する。 恨みがましそうに見上げる子供を睨みつけながら、 風邪を引かないように自分の着ていたローブを彼女に被せた。 ついでに言うと彼女の着ている服は薄手の布地で、 水に濡れると肌に張り付いて大変な事になる。 少年の情操教育に良くない物を隠していると、 子供達の一人が思い出したかのように声を上げた。 「大変だよ! 森の中に人が倒れてるんだ! 前の、竜のおじさんみたいに凄く血を流してる!」 その言葉に二人はすぐさま行動に移した。 少年の指差す方向へと走り出すと草木を掻き分けて進む。 やがて二人の前に目を覆いたくなるような凄惨な光景が広がる。 大木に寄り掛かる少年は正しく満身創痍だった。 傷口から流れ出た血は服を赤黒く染め上げ、 身体には何本もの矢が突き刺さったまま、 片腕は完全に黒く焦げて今にも崩れ落ちそうだった。 「………………」 「待ってて! 今助けるから!」 すぐに駆け寄るティファニアと裏腹に、マチルダは言葉を失った。 こんな偶然があるものなのかと思わず運命を信じてしまいそうになる。 マチルダにとっては敵同然だが何故か憎しみは湧かなかった。 それどころか、むしろ助かる可能性に安堵さえしている。 ティファニアが詠唱を行うと指に嵌めた指輪が光り、 致命傷と思われた才人の傷が次第に塞がっていく。 ふん、と鼻を鳴らすとマチルダは才人から目を背けた。 甘くなったのではない、ただ堪えられないだけ。 あの時のようにルイズが泣くのを見たくも聞きたくもない。 そんな自分勝手でつまらない理由。ただそれだけだ。 マチルダ・オブ・サウスゴータ(別名:土くれのフーケ) ……タルブ戦後、何食わぬ顔でオスマンの秘書として復帰。 その後、『破壊の杖』を強奪するも才人達に敗れて逮捕される。 しかしシェフィールドの手引きにより脱獄。 その代価としてクロムウェルより奪った『アンドバリの指輪』を引き渡す。 現在、アルビオンの孤児院にて慣れぬ子供の世話を勤める。 ティファニア・ウエストウッド ……孤児院で子供達の世話をしながら過ごしてきた。 今はまだ自分の運命を知らない。 顔が血色を取り戻すのを確認してティファニアは安堵の吐息を漏らした。 指輪に付いていた石はもう無い。それは力を全て使い切った証。 だが、彼女の顔に後悔はなく、むしろやり遂げたと思わせる表情を浮かべる。 ふと気付くと少年はうわ言のように何かを呟いていた。 失礼かもしれないと分かっていながら思わずティファニアは耳を傾ける。 「………ルイズ。待ってろよ、今帰るからな」 平賀才人 ……ルイズの新しい使い魔としてハルケギニアに召喚される。 その後、ギーシュとの決闘、フーケとの戦いを通して戦いの経験を重ね、 前任者が託した想いを受け継いで精神的に大きな成長を遂げる。 ―――彼の物語は、まだ始まったばかりだ。 戻る 目次 進む
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2529.html
「ふむ……、何故彼女がこんなものを持っていたのかは分からないが……」 蝋燭の火が揺れる小さな執務室に佇む男は、机の上に広げた包みの中身を穏やかならぬ眼で見下ろして、引き絞った唇を弓なりに曲げる。 紙に記されている文字の上を撫でる指先が、そこに宿る魔力の残り香を感じ取っていた。 「なんにせよ、これが表沙汰になるのは良くない」 言って、男は陶器の器に書類を乗せて、蝋燭の火を近づける。 チリチリ ちり……ちり…… ヂヂ…… 部屋の天井を、立ち上った黒い煙が一筋触れた。 大地を叩く重低音と金属を打ち鳴らす高音。痛みばかりで何を聞いているのかも分からない鼓膜は、心臓の音だけを浮き立たせて脳を揺さ振っている。両手に握っているはずの銃の重みは頼りなく、腰に下げた袋の中の火薬は焦燥感を煽り立てるばかり。 地面を蹴る足に力は入らず、自分が前に進んでいるかどうかさえ危うかった。 実戦をどれだけ繰り返しても、これだけは慣れる事が無い。特に、個人の力ではどうしようもない戦場は、流れ弾一つで命を落とすとあって肩の力は入り続けてしまう。 「全体止まれ!銃、構え!狙いは前方の槍部隊だ!味方に当てるなよ!!」 三列に並んだ前衛の突撃隊が敵と接触したのを皮切りに、アニエスは号令を出して自分の部隊の足を止めると、その場で銃を構えた。 平坦な土地を戦場としていた場合、射線が直線である銃器は扱いが難しい。前面に立たせなければ味方に当たるし、敵が近付けば銃を捨てて剣か槍を握る必要があるからだ。しかし、このラ・ロシェールの戦場は緩やかな斜面。微妙な曲線を描く坂が、直線でしか攻撃出来ない銃に味方の背に隠れながらも活躍の場を与えてくれる。 射線は確保されているのだ。後は撃つだけで良い。そして、その的は、前衛部隊に足止めされて無防備な顔を晒していた。 「仲間とタイミングを合わせようなどと考えるな!弾が尽きるまで撃ちまくれ!!この距離で外したりなんてしたら、二度と的を外さないように毎日付きっ切りで指導してやるぞ!」 悲鳴のような返事をして、四十名に及ぶ銃士隊は手にした銃の引き金を一斉に引く。 大砲に負けない轟音が響いて、トリステインの前衛部隊を槍で突き殺そうとしていたアルビオンの兵士達が血を吹いて地面に倒れた。 銃の訓練を詰んでいないカステルモールやウェールズも、鉛の弾丸を敵に当て、命を奪っていく。その威力に、平民の武器と侮っていたカステルモールは苦々しい表情となり、ウェールズは地位を追われたとはいえ、他国のために自国の民を手にかけたことに苦しげに眉の形を変えた。 「頭上に注意しな!でかいのが行くよ!!」 様々な思いを抱く二人とは別に、やる気を見せだしたマチルダが地下水の後ろで杖を手にして声を張り上げる。その前に立つ地下水の手には大人が丸ごと入れそうな樽がしっかりと握られていて、まるで槍投げの選手のように空を見上げた形で振りかぶっていた。 「射線、良し!狙うは敵指揮官よ!」 「誘導は頼んだぜ、お嬢!」 「任せときなさい!」 地下水の肩に乗ったエルザが空を指差し、地下水はその指示に従うようにしてミノタウロスの豪腕に力を籠める。 足の踏ん張り、腰の回転、肩から腕に伝えられる力の流れ。その全てが、長く生きて他人を動かしてきた地下水だからこそ出来る絶妙なバランスで組み上げられて、握られた樽の推進力に変えられていた。 「樽爆弾、発射!ふぅんッ!!」 「いっけえええぇぇぇッ!」 眼一杯に広げていたミノタウロスの全身を折り畳むように縮めて、その勢いの全てを乗せられた樽は天高く放られる。 大砲の弾と鉄の矢、そして魔法が行き交う中に現れた樽の存在は、遠距離での戦いに集中していた兵士達の眼を奪い、一瞬その手を止めさせた。 だが、その一瞬で放り投げられた樽は放物線を描き、重力に引かれて落ち始める。トリステインにしても、アルビオンにしても、それを撃ち落すという発想を得るだけの時間は、もはや存在しなかった。 「5、4、3、2、着弾……、今!」 エルザが最後の言葉を口にした時、宙を舞っていた樽はエルザが操る先住の魔法で導かれるままに目標としていたアルビオン軍の後方、煌びやかな装飾に身を包んだ馬上の男の顔面に直撃し、馬ごと大地に押し潰していた。 飛び散る樽の破片と、血の飛沫。 それは、敵の指揮官を仕留めた証明であった。 「当たった!当たったわよ!アニエスちゃーん、特別報酬お願いねー!」 「そ、そんな無茶なやり方で大将を落とすな!!」 「目的は達したんだから、過程や方法なんてどうでもいいじゃない。いかにも偉いですって格好で目立ってる奴が悪いのよ」 アハハハハ、なんて呑気に笑ったエルザに、アニエスは戦争とはこういうものではないはずだと、崩されそうな常識を保つ為に頭に手を置いて苦しげに眉根を寄せる。 だがしかし、敵の大将を崩した事実は大きい。不意打ち臭いが、勝てば官軍というのはどの世界も同じなのだ。 空飛ぶ樽の存在が余程目立ったのだろう。樽の行方を注視していた人々の多くがアルビオン軍の中核に致命的な一撃が入ったことを理解し、一方では士気を上げ、もう一方には激しい混乱が襲い掛かった。 元々、数と地の利で差が有った戦いだ。優勢のトリステインがアルビオン軍の将を討ち取るなんてことになれば、それはもう勝敗の決定打となり得る。実際、交戦して間もないというのに、アルビオン軍の中からは逃走を始めている者の姿があった。 早くも戦いが終わりそうな雰囲気が戦場に漂い始めていた。 「樽なんて、魔法一つで弾くなり破壊するなり、なんとでもなったはずだろう!?そ、それがなんて間抜けな……、こんなバカらしい戦争があるかぁ!!」 人生の目標のために命がけで戦争に赴いているというのに、その覚悟の全てが根底から否定されている気分になる。 思わず叫んだアニエスに、ミシェルや他の銃士隊の面々も複雑そうな表情で頷いて同意を示していた。 「叫んだって現実は変わんないわよ。ほら、第二投目、行くわよ!」 ほぼ決着が付いたとはいえ、まだ戦いは終わっていない。 しぶとく維持されるアルビオン軍の士気を挫くべく、勢いを増したトリステイン軍の猛攻は着実に戦線を押し上げ、戦場に死体の山を築いていく。傭兵として雇われたエルザ達も、これで終わられては褒賞が少なくなってしまうと、容赦のない攻撃を続けていた。 「樽爆弾、もう一発!」 地下水が操るミノタウロスが、新たな樽を持ち上げて構えている。既に目標地点はエルザの目測で決定されており、地下水は大体の方向だけを合わせて投げるだけになっていた。 「あっちにも偉そうな奴が居るから、思いっきりぶっ飛ばすわよ!」 「行くぜオラァ!!」 最初の一撃が成功したことで調子に乗っているのか、地下水が勇ましい声を上げて樽を放り投げる。 再び戦場の空に現れた樽。 思い出される一撃はトリステインの兵士達は希望を、アルビオンの兵士達は絶望を与える。 だが、都合の良い展開は二度も続かなかった。 アルビオン軍の後方から伸びた光が、吸い込まれるようにして空にある樽を撃つ。 木と鉄で組まれただけの樽にそれを耐え凌ぐだけの耐久力は無く、無残に砕け、四散した。 「あら?」 一度目の成果が二度目の成功さえも当然のものだと錯覚させていたのだろう。粉々になった 樽の姿にぽかんと口を開けたエルザは、しばしの硬直の後にミノタウロスの頭の毛を力任せに毟り取った。 「えー!なんでー!?そんなの卑怯よ!!」 「奇策が二度も通じるほど、戦場は甘くなんて無いってことだ!下らんやり方してないで、堅実に攻めることだな」 やり場のない怒りをぶつけるように、ブチブチとミノタウロスの頭の毛を毟るエルザに、アニエスは弾込めの済んだ銃を構えて冷たく言い放つ。 「これ以外にわたしの出番ないんだから、止めたりなんてしないわ!撃ち落されるなら、撃ち落される以上の数をブン投げるだけよ!地下水、気合入れなさい!」 「ということらしい。姐さん、樽の準備頼むぜ」 ムキになっているエルザを窘めることなく、地下水は自分の後ろに隠れるように立つマチルダに視線を送る。 数体のゴーレムが戦場の後方から持ってくる樽に杖を振るって、マチルダが、ふん、と鼻を鳴らしてニヤリと笑った。 「こっちの準備は出来てるよ。じゃんじゃん投げて、じゃんじゃん撃ち落されな。その内、派手な花火の一つも上がるだろうさ」 「派手な花火……?ああ、真っ赤な花のように散るアレか。確かに樽に押し潰されればそうなるかもしれねえけど、表現がちょっとグロいぜ、姐さん」 ふん、とまた鼻を鳴らしたマチルダを横目に、地下水は用意された樽を掴み、ミノタウロスの体に捻りを加えた。 「次はどこを狙う?」 「左前方、さっき樽を撃ち落したメイジに制裁を加えてやるわ!」 訊ねた地下水にエルザは即座に答え、目標とする位置を指差した。 地下水には分からないが、エルザには当のメイジの姿がはっきりと見えるのだろう。人の海の中で、指は妙に正確な位置を指したまま維持されている。 そして、その正確さを証明するかのように、エルザの指差す方向から魔法の光が飛び込んできたのだった。 「うっひゃあぁ!」 指差して意識を向けていたお陰か、高速で飛んできた冷たい色をエルザは仰け反るようにして回避する。その勢いで跳ね上がった足を振って空中でクルリと一回転すると、地面に着地するや、エルザは股先から首元まで一直線に裂けた服を見下ろして顔色を青く変えた。 ぞわり、と背筋に冷たいものが走った。 「ひゃあぁぁ……、反応があとちょっと遅かったら、胴に大穴が空いてたわね」 そう言って、エルザは破れた服を摘んでヒラヒラと動かす。 破れた生地の縁に霜のようなものが引っ付いているところを見ると、どうやら、樽を砕いたのは水系統を使えるメイジらしい。エルザを狙った魔法も樽を砕いた魔法も、恐らくはトライアングル以上の魔法に違いない。狙撃出来るだけの魔力は、ドットやラインクラスのメイジには難しいレベルであるからだ。 先程、エルザは敵の将校に対して目立つ方が悪いと言ったが、エルザ自身もミノタウロスという巨体の上に乗って目立っているのだから、人のことを笑っていられない立場である。優秀なメイジは味方にしかいない、なんて幻想を無意識の内に定めていたのかもしれない。 向こうにしてみれば、良い的だったことだろう。 「こ、こら!前を隠せ、前を!!」 悪い意味で胸をドキドキとさせていたエルザに、慌てた様子のアニエスが駆け寄ってきた。 前、と言われて改めて自分の体を見下ろしたエルザは、前面が真っ二つになった衣服とその下に見える白い肌を見て、ああ、と声を零した。 「下着はつけてるわよ?」 「そんなものは下着とは言わん!ベルトをやるから、とにかく前を何とかしろ!」 腰に巻いていた革のベルトを押し付けるようにアニエスから渡されたエルザは、二つに裂けた服を引っ張って体の正面で重ね、その状態で留めるようにしてベルトを固定する。 それでとりあえず、素肌が透けて見える薄い下着は見えなくなった。 「そんな怒鳴らなくてもいいじゃない。こんな貧相な子供の体に欲情する奴なんて、特殊な趣味の奴以外にはいないわよ。……いないわよ!!」 「お前は良くても隊の風紀に響く!というか、貴様はここが戦場だって事を忘れてるだろ!」 「良くはないんだけど……、あーはいはい。分かったわよもう」 しつこいアニエスの怒鳴り声に対して、エルザはうんざりした様子で肩を竦めると、マチルダが放り出した銃を拾い上げて肩に担いだ。 どこからか、また魔法が飛び込んでくる。 大凡の位置を掴まれたのだろう。エルザの姿が見えなくても、ミノタウロスの巨体が目印となって攻撃されているようだ。 直線で当たらないならと面での制圧を狙ったのか、無数の氷の矢が雨のように振ってくる。 シャルロットも得意としている、ウィンディ・アイシクルの魔法だ。 「ウェールズ!カステルモール!」 「分かっている!」 使い慣れない銃で戦っていた男二人に呼びかけると、二人は待っていたかのように杖を取り出し、風の障壁を周囲に張り巡らせた。 魔法によって生み出された乱気流は、氷の矢の勢いを乱し、あらぬ方向へと弾き飛ばす。一度弾かれた氷の矢はもはや石ころと大きな違いは無い。味方の被害は微少で済むだろう。 一瞬だけだが魔法で攻撃されたことに体を硬直させていた銃士隊は、パラパラと落ちてくる氷の破片を呆然と見上げ、ワッと沸き立つようにしてウェールズとカステルモールに賛美の声を送った。 「この馬鹿者ども!戦いは終わっていないんだぞ!?銃を構えないか!!」 ミシェルの叱咤によって、攻撃の手を止めていた銃士隊は我を取り戻す。 戦いは、確かに終わっていない。 エルザと地下水の樽攻撃によって敵の指揮官の一人が倒れたが、たった一人倒しただけで戦いが終わるほど、戦争と言うものは甘くない。組織は数だ。頭が潰れても、代わりの頭が用意されているのは当然のこと。 崩れかけていたアルビオン軍の士気は別の人間の手によって立ち直り、怯んだ分を取り戻そうと怒涛の攻めを見せている。その勢いは凄まじく、前衛に立ち塞がる部隊を押し潰すのも時間の問題に思えるほどだった。 「前衛の援護を続けるぞ!隊列変更、二列横隊!中央にミノタウロスと男二人を挟め!前列の一斉射撃と交代して後列が前に、下がった者は銃の弾込めだ!男二人は魔法で敵の攻撃から味方を守れ!!」 エルザとのやり取りも一段落して気を取り直したらしいアニエスは、部下に強い口調で指示を下すと、その返事を聞くことなくエルザに近寄り、その肩に手を置いた。 「暇そうだな」 「指示があれば戦うわよ?コレは鈍器になるけど」 言って、エルザは担いだ銃の表面を指先で二度叩く。 引き金に指が届かないのだから、自動的にそうなると言っているのだろう。同時に、自分が戦えないという主張でもある。銃を鈍器にするということは、隊から離れて前に出るということだ。しかし、隊から離れればエルザは迷子の子供にしか見えない。敵味方を戸惑わせるだけの厄介者だろう。 エルザ自身はそれでも良いが、だからと言ってアニエスがそれを許可するとは思えなかった。 「その銃は置いていけ。代わりに、これを貸してやる」 「あら?それって……」 エルザの視線が、アニエスの手元に伸びる。 そこにあるのは、銃身の短い短銃であった。銃士隊が使っている長身のマスケット銃よりも小さい、片手用の武器だ。 以前、エルザがワルド相手に使って思いっきり外したものと同系統のそれは、なんとかエルザの手でも扱える暗殺用の隠し武器でもあった。 「私の予備だ。貴様の手の大きさのことを忘れていたからな……、特別だ。後で返せよ」 「確かにこれなら使えるけど……、こいつの命中率は怒鳴り散らしたくなるほどクソよ?」 「無いよりマシだろう?諦めて使え。貴様の隊列は私の後ろ。弾の補充は自分でやれ」 それだけ言って、アニエスはミシェルの合図で一斉射撃を行っている部下達の端に並ぶ。 ほぼ同時に響く射撃音に空気が揺れて、命が散っていく。それでも、アルビオンの攻勢は止まらない。立ち塞がるトリステイン軍の前衛部隊も数を減らしていて、一部では崩れた防衛線から突入してきたアルビオンの部隊と混戦状態になっている場所もあった。 地下水の投げる樽の数は十を数えようとしているが、あれから一度も人を殺すことなく破壊され、その破片を散らせている。アニエス率いる銃士隊への攻撃は苛烈になる一方で、ウェールズやカステルモールの守りも永遠のものとはなりそうになかった。 戦いが中盤に差し掛かろうとしている中、アニエスから渡された銃を見詰めたエルザは、くにゃりと首を傾ける。 「短銃……、銃?なにか、忘れてるような……」 「おおい、お嬢!そろそろ危ねえぞ!戦えるなら、こっち来て援護してくれ!」 崩れ始めた前衛の様子に、地下水が白兵戦が近いことを覚悟して可能な限り敵兵の数を減らせるようにとエルザを呼ぶ。しかし、エルザはその声に応えることなく短銃を右手に握って引き金の位置に指を引っ掛けると、それを手元でクルクルと回した。 右手から左手に銃を移して、回転を維持したまま腕を背中に回し、タイミング良く引っ掛けた指を放す。すると、短銃は回転しながら高く放られてエルザの頭上を越え、そのまま胸の前に持ってきていたエルザの手元に落下した。 さらに一回転させて、エルザは両手で銃を握って照準から前方を睨む。 「こーゆー動きをどこかで見た気がするのよねえ……?」 「なんか知らんが、早く援護してくれよ!そろそろ、前の連中がヤバイ!!」 悲鳴のような声で訴える地下水の言葉が届いたのか、エルザは勢い良く振り返り、次にアルビオン軍の方を見た。 アニエス達銃士隊の前方を守っていた重装甲の兵士達が、獣のように突っ込んでくるアルビオンの兵士に馬乗りにされて頭を叩き割られる姿が見える。一人が倒れると、そこを狙って突入してきた敵兵に並んでいた兵士が倒され、穴が広げられた。 堤防が崩れるようにして敵が雪崩れ込んでくる。 慌ててエルザも隊列に入り、アニエスの背後に隠れるように立った。 「銃捨て、抜刀!銃士隊が銃だけに頼る軟弱者でない事を示すぞ!!」 もう悠長に銃を撃っていられないと判断したアニエスが、銃士隊の象徴である銃を投げ捨てて腰に下げた剣を抜く。 金属の擦れる音が響いて、二列に並んだ銃士隊の全員が剣を構えた。 「樽投げは終わりだな?だったら、後は思いっきり暴れるぞ!」 地下水もまた、どこからか巨大な戦斧を持ち出して敵の接近に備える。 太鼓をゆっくりと、強く叩くように心臓の鼓動が打ち鳴らされる。直接的な戦いは、銃による援護よりもずっと死傷率が高い。その事実が、銃士隊を緊張に飲み込んでいた。 あと少し。もう少しで、敵が自分たちの攻撃範囲に入る。 だが、その前にゆっくりとした足取りでマチルダが現れて、銃士隊の眼前を錬金の魔法で作り出した壁で遮った。 「残念だけど、花火を上げるのを忘れてるよ。直接ぶつかるのは、それからにすることだね」 「なにを……?」 前を塞がられたことで困惑の表情を浮かべたアニエスは、マチルダの妙な行動の真意を問い質そうとして、突如耳に入った詠唱に伸ばしかけた手を止めた。 土のメイジが、何故?とは思わない。アニエスには魔法の知識がないため、それがどんな魔法なのかの詳細までは分からないからだ。ただ、それは珍しい魔法ではなく、メイジの殆どが日常的に使うものの一つだという認識くらいはあった。 だから、それが起こした現象に、絶句する。 それはそういう魔法じゃなかったはずだったから。 「ウル・カーノ」 その一言が、戦場に大きな花火を咲かせたのだった。 「な、ん、で、オレが!こんなところで!こんなことを!しなくちゃなんねえんだッ!?」 体を貫くような衝撃に言葉を途切れさせながらそう叫んだのは、地面に立てた巨大な盾を必死に支えたホル・ホースであった。 傷だらけの重厚な金属の鎧に身を包み、時折盾を回り込んで襲い掛かってくる剣や槍に肝を冷やしながら、それでも死にたくない一心で盾が潰されないようにとつっかえ棒のように全身を固めている。両隣も更に隣も、同じようにして盾を構えた男達が並び、彼ら全員が同じよう な体勢で盾を支えていた。 ハンマーで打ちつけるような衝撃が、盾の向こうから伝わってくる。 盾の向こうにいるのは、突撃を仕掛けてきているアルビオンの軍勢だ。トリステインの最前列に並んでいた槍兵や小型のゴーレムの小隊は既に押し潰された後で、ここを突破されれば前衛の支援攻撃を行っていた部隊が白兵戦へと引き込まれることになる。そうなれば、もはや乱戦となり、陣形の意味が薄れていくことになるだろう。 それは単純な突撃であったが、トリステイン側の有利を少しでも崩そうという、数に差のあるアルビオン側の少ない戦略でもあった。 「気張れ、若造!!あと少し辛抱すりゃあ、味方が突っ込んでくる馬鹿どもを一掃してくれるはずだ!」 「言われなくても十分必死だよ!ああクソッ!ホントに、なんでオレがこんなことを……!」 隣で大量に汗を垂らすオッサンに言葉を返しながら、泣けてくるぜ、と呟いたホル・ホースは、ここに至る経緯を思い出す。 自分の人生に疑問を感じている間に居なくなったアニエス。そして、いつの間にか雄叫びを上げて走り出すトリステインの軍勢。その中で、一人ぽつんと立っていたホル・ホースは、自分の所属する位置を見失った迷子の傭兵にでも間違われたのだろう。駆け抜ける人の波の中の誰かが自分の持っていた盾をホル・ホースに渡し、問答無用で首根っこを掴んで最前線へと引きずり込んだのだ。 その、誰か、も流れてきた矢に頭を射抜かれて死に、いつの間にか前衛の部隊に紛れ込んでいたホル・ホースは、身を守るために死体から鎧を引っぺがして着込んだのである。何度か鎧と盾に命を守られている内に、最初に敵兵とぶつかった部隊が全滅。押し上げてくる敵軍に接触したため、慌てて周囲の人間の真似をして盾の壁を作ったのだ。 状況に見事に流されているホル・ホースであった。 「ふんぎいいいぃぃぃぃぃっ!!」 「歯を食い縛るにしても、その声は止めろ!こっちの気が抜けるだろうがッ!!」 人のことを若造、なんて呼んでくれたオッサンの奇声に抗議しつつ、ホル・ホースは現状の不味さを実感する。 このオッサンは味方が敵を一掃してくれる、なんて言っていたが、今のところそんな様子は無い。それどころか、自分達と同じように盾を構えた陣列が崩されては足に潰され、命を落とす様子ばかりが見えている。 味方の援護とやらは、多分、盾に突撃を仕掛けている敵よりも後方の、足止めされて密集している部分に集中しているのだろう。その方が効率が良いし、敵の長射程の武器を削る効果も得られる。そうすれば自分達の元に流れ矢が飛び込んでくる心配もないのだから、前衛の補助なんて後回しにするのは当然だ。 壁が崩れれば、今目の前にいる敵が自分の所にやってくるなんて、あまり考えていないのだろう。そういう視野の狭いものの見方を矯正するのが指揮官の役割なのだが、少なくとも自分達を援護するはずの部隊の指揮官は、そのあたりの能力が欠けているらしい。 「どうすっかなあ……」 このままでは、力尽きた時点で押し潰されるだろう。誰も、潰れたカエルのようになりたくは無い。 しかし、構えた盾を動かすことさえままならない今、対処法さえないのが実情であった。 「こういう時のために連れて歩いてるはずだぜ、エルザも、地下水も。なのに、なんだって大事なときに姿が見えねえ!どこ行きやがったんだアイツらはよぉ……、んあ?」 不意に、頬に冷たい滴が落ちた。 見上げれば、厚い雲の広がる空が見える。朝からずっとそこにある重みのある黒い雲は、間違いなく雨雲だ。 いよいよ雨が降ってきたのか。 そう思ったホル・ホースは、しかし、別のものが顔に当たったことで結論を変えた。 「いてっ……、なんだこれ。木の破片か?」 足元に落ちたそれに視線を落とせば、親指の先ほどの欠片が何かに濡れて転がっているのが見える。濡れているのは、先程頬に当たった滴の元に触れていたからだろう。 手に取ってみればもう少し詳しいことが分かるかもしれないが、生憎と現在のホル・ホースにそんな余裕は無い。 ただ、どこかで嗅いだことのある臭いがしたような、そんな気がしていた。 最近嗅いだことのある、馴染みのあるなにかの臭い。だが、答えは出てこない。 いったい、なんだっただろうか。そんな風に悩んでいる間に、ホル・ホースの意識は頭蓋と共に激しく揺さ振られたのだった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3865.html
前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ 始祖ブリミル降臨祭まで、あと三日。 トリステイン王国の王宮、その執務室では、アンリエッタ女王とマザリーニ枢機卿が『始祖像』の前で謀議を続けていた。 女王が纏うのはウェールズ皇太子と戦死者を悼む喪服、しかし腹の底は漆黒。 乱世での小国の元首は、そうでなくては生き残れない。 「……では手筈通り、マツシタが始末されたとの情報が届き次第、タルブを急襲させます。 実行部隊はマンティコア隊のド・ゼッサール隊長に任せます。一気呵成にやらねばなりませんね」 「ええ、陛下。すでにタルブとラ・ロシェールにはスパイを放ち、リッシュモンとモットを寝返らせてあります。 チュレンヌは意外に兵法の才があったようで、警備隊長をしているそうですが。 守備兵は500名ほど、メイジはほぼ出払っていて、残るフネも小型船が数隻。問題なく奪えますぞ」 「アルビオンでのマツシタと異端軍団の始末はブラウナウ伯爵に一任しましたが、大丈夫なのでしょうね? 万一彼を取り逃せば、悪魔の力で復讐してくるでしょう。それに、ルイズのこともありますし」 ゲルマニアの大貴族・ブラウナウ伯爵の魔手は、すでに松下の背後、トリステイン王国政府に伸びていた。 自分に生意気な口をきく異端者・マツシタ一味を抹殺できる。そう聞いて、女王は伯爵からの提案に飛びついたのだ。 枢機卿は無表情に、女王の問いに答える。 「伯爵はゲルマニアとロマリアを味方につけております、万が一にもマツシタに逃げ場はありますまい。 無論ミス・ルイズ・フランソワーズは、マツシタから引き離しておくよう言ってあります。 『虚無の担い手』とはいえ、こちらはマツシタほど危険でも異能でもありませぬからな」 女王はそれを聞き、にっと唇を吊り上げた。 「ええ、彼女の『虚無』の力をこちらに引き寄せておけば、我が国は国際的発言力を増せるはず。 この件は表に出せませんが、ゲルマニアに対してもあくまで強気な姿勢を崩さないこと。 アルビオン戦役終了後の会議では、有利な条件で領土を得てみせるわ。私もテューダー王家の血をひくのだし!」 上機嫌にコロコロと笑う、若く美しい女王。だが松下を取り立てた枢機卿は、浮かぬ顔だ。 「……しかし、やはり惜しい気もいたしますな。マツシタの政務や魔法の才は、まさしく悪魔的な異能。 ロマリアから異端容疑を受けたとはいえ、『使うべき物は使う』の精神から言えば、生かしておくのが得策やも……」 「おや枢機卿、大した入れ込みようね。けれど彼の革命思想は、国家にとっては害毒よ。クロムウェル以上にね。 あのまま振舞わせればトリステインの、いえ、ハルケギニアとブリミル教のためにならないわ。 もちろん彼のもたらした『東方』の技術や知識は、おいしい所だけ頂きますけれど!」 おほほほほほ、と女王が『いい気味だ』とばかりに笑った。 マツシタめ、何が『新しい権威と新しい王国が現れ、天地が更新され、人間も覚醒して新しくなる』だ。 『粉挽きどころか、奴隷や乞食だって解放され、気軽に私と会話できる』だって? 冗談じゃない。 人間社会の秩序とは、本来人民に不平等を強制するものだ。万人平等の千年王国なんて、実現できるはずがない。 ふぅ、と枢機卿は溜息をついた。女王と教皇とゲルマニアに逆らえるほど、彼の権威や権力は強くない。 「……王とは、国家とは、そうしたものやも知れませんな。正義は我々、負ければ悪魔ですか。 人民はどう思いますでしょうな、この意外な事件を」 「王権は神と始祖から付与されたもの。王は人民に拘束されるべきではないし、人民も王に反抗すべきではないわ。 いいこと枢機卿、あなたも、母君マリアンヌ太后も含めて、この国内に私以外に『絶対者』がいてはなりません。 自分を救世主だなんて称する人間は、始末されて当然。そう、『私が国家』よ!」 おっほほほほほほ、とアンリエッタ女王は、激務で血走った目のまま高笑いした。 《全ての人は、上に立つ権威に従うべきである。 なぜなら神によらない権威はなく、存在する権威は全て神によって立てられたものだからである。 従って、権威に逆らう者は、神の定めに背く者である。背く者は、自分の身に裁きを招く事になる。 …あなた方は、彼ら(権威ある者)全てに対して義務を果たしなさい。 すなわち貢税を納めるべきものには納め、恐るべき者は恐れ、敬うべき者は敬いなさい》 (『王権神授説』:新約聖書『ローマ人への手紙』第十三章より) さて一方、ギーシュはジュリオやジェシカと共に、密かにブラウナウ伯爵と面会していた。 ハルケギニアには珍しい黒髪にちょび髭、身長175サントほどの、痩せぎすの中年男である。 その正体は、ロマリアの教皇が世紀末の地球から召喚した悪魔的天才児、『ガンダールヴ』のダニエル・ヒトラーだ。 ギーシュは伯爵から、どーんと金貨の詰まった袋を受け取り、目を白黒させている。 「い、いやあ、こんなに頂いちゃって、よろしいんでしょうか伯爵」 「気にする事はない。お近づきのしるしさ、未来の元帥閣下! 部下のジュリオがくだらん事を喋ったようで、失礼したね。神より名誉と富がお好みかな? 若い者はそうでなくては、覇気がなくっちゃならんよ! それ、もう一杯」 伯爵は手ずからギーシュに酒を注ぎ、何度も乾杯をする。 「まあ、どーんと構えていたまえ。任務はさして難しいことではない。 なに、ちょっと彼を、我々が指示する場所へ誘導すればいいだけのことだから」 「はあ、はい……」 しかし、伯爵の差し出した羊皮紙の勅命書には、《教皇・女王・皇帝》の三つの印璽が押されている。 これでプレッシャーを感じないハルケギニア人はいまい。そして、絶対に断れない命令だ。 伯爵はニヤニヤしながら、硬直しているギーシュに語りかける。 「いいかいギーシュくん。人生は短く、かつ儚い。 今までの戦場で見たとおり、人間は大抵どんな力を持っていても、脆く死んでいくのだ。 そして死んだら、生は、自分というものは、永久に帰ってこない。 ならばこの命のある間、人生は楽しまねばウソだよ!」 「は、はい、よく分かります」 「そのためには、まずカネがなくてはならん。それともう一つ重大な事、すなわち自由だ。 今、きみが『悪魔』の束縛から離れ、自由になる時が来たのだ!」 「あ、悪魔……。つまりその、マツシタのことですね」 「そう。きみも聞いているだろう、マツシタやクロムウェルの言い草を。 まあいつの時代にも『夢想主義者』ともいうべき連中がいるものなんだ。 なるほど、彼らの言う事は人間を幸福にし、かつ理論上は正しいのかもしれないが、 現実には決してそうではない、むしろ害悪の元だ。彼らは現実から遊離し、観念を弄んでいるに過ぎんよ」 「た、確かにそうです。それに僕も随分マツシタに苛められました」 うむうむ、と伯爵は頷く。 「ならば分かるだろうギーシュくん、彼らは『救世主』などではなかったのだ。 このように世界を混乱に陥れているものが、どうして世界を救うものであろうか!」 伯爵はどん、とテーブルを叩き、ずいっとギーシュに顔を近づける。 「きみが今マツシタを敵の手に渡せば、くだらん革命ごっこも速やかにケリがつき、多くの民草は無用に殺されずにすむ。 しかもきみは自由になり、3万エキューというカネを貰って、悠々と栄光に満ちた人生を楽しむことができる。 今のチャンスを除いて、きみが自由になれる日がいつ来るであろうか! さ、ゆくのだ! 我々はきみの働きに期待している!!」 一方的に発破をかけられたギーシュは、松下に感づかれないよう術をかけられ、連絡員のジェシカとともに宿舎へ戻された。 金貨の入った袋は、怪しまれるということで伯爵が一時預かり、当面必要な分だけカネを渡されたが。 ジュリオはそれを見送り、胡乱げな表情で主人に呟く。 「……いいのですか? あんな男で」 「いいのさ。『東方の神童』ことメシアは、悪魔の力では始末できない。『人間』でなくては殺せないのだ。 それも、人間に裏切られて死ぬという『悲劇的英雄の筋書き』を設定する必要があったのだよ。 ギーシュ・ド・グラモンには小悪党の才能がある、立派にユダの役を果たしてくれるさ」 「ユダ、ですか。二千年前『東方』に現れた救世主を裏切り、十字架につけさせたという男ですね……」 ダニエルから重用されているジュリオは、メイジではないが様々な知識を授けられている。 機転も利くしルックスもいいし、手駒としては役に立つ男だ。少々無駄口が過ぎるが。 「しかしダニエルさまは、いったい何がお望みなのです? ゲルマニアの皇帝位ぐらいは買えるほどの富、ロマリアの教皇聖下という権威の後ろ盾。 そしてエルフさえも倒せるであろう、恐るべき武力と知力。 強大な魔力に不老不死の肉体、それに『ガンダールヴ』。これ以上、何が必要で?」 ジュリオの問いに、伯爵……いや、ダニエルは薄く笑う。 「ははは、きみにはそれを問うだけの力はないね。 まあ見ていたまえ、今に世界は大変革を迎えるだろう。素晴らしい世界になる。 何なら孤児院の暴れん坊だったきみを、教皇なり皇帝なりに据えることもできるよ。ジュリオ・チェザーレくん」 「僕も暗殺されそうだから、高望みはやめておきますよ。狂言回しがせいぜいの役目です」 《「先生、我々(神にのみ仕える選民)はカエサル(ローマ皇帝)に税金を納めてもよいのでしょうか」 「偽善者たちよ、なぜ私を試そうとするのか。デナリ銀貨には何が刻まれているか」 「カエサルの肖像と銘が刻まれています」 「ではこうするがよい。カエサルのものはカエサルに納め、神のものは神に返せ」》 (『神のものは神に』:新約聖書『マタイによる福音書』第二十二章より) こちらは松下の宿舎。ギーシュはジェシカを連れて、『信者』たちの集いに帰ってきた。 「おお、よく帰ってきてくれたわねぇ! この放蕩娘、心配ばかりかけて!」 「ごめーん、この半ズボン売れなかったの。一応はマジックアイテムなのにねえ」 ジェシカが家宝を持って戻ってきたので、父親のスカロンは涙ながらに抱きしめて叱る。シエスタも喜んでいる。 ギーシュによれば、郊外でアルビオンの兵士たちに攫われそうだったのを、通りかかった自分が偶然救い出したのだそうだが。 「いやあ、彼女が第二使徒シエスタの従妹だったとはねえ。世の中は狭いものだなあ」 「ふーん、本当かしら。まあ無事でよかったわ。 けどあれよ、やっぱりこの半ズボンはジェシカに履かせて客引きした方がいいわよねえ」 「あらルイズちゃん残念、男でないと履けないのよぉ、その『魅惑の妖精の半ズボン』は。 でも魅了の他にサイズ自動調整の魔法もかかっているから、このスカロンだって履けるの」 「是非ともやめてほしいわ、我がトリステイン王国の名誉のために。 あ、でもこれ、四百年前に美少年の給仕が時の王様から賜わったそうよね……ああ、爛れているわ」 「んじゃあ英雄ギーシュさま、これを履いてみませんこと? 薔薇のような美しさをいや増し加え、万人から愛されること請け合いよぉ!」 「やめて! ギーシュの変態度が増し加わるだけだわ! そうでしょ、マツシタ!」 「……いいからきみたち、静かにしろ。仕事の邪魔だと言っているだろうが」 松下は職務に忙殺され、ギーシュどころではなかったりした。 夜空に満開の花火が打ちあがり、人々は歓声をあげ、乾杯する。 シティ・オブ・サウスゴータは、ハルケギニア最大の祝祭『始祖降臨祭』を迎えた。 正月とクリスマスが一時に訪れたようなお祭り騒ぎが、これから十日間も続くのだ。 連合軍が駐屯したお蔭で、街の人口は倍近くに膨れ上がり、いたるところに兵隊の泊まるテントや天幕が張られている。 それらを目当てに商人が集まり、街はかつてない活気に湧いているのだった。 「始祖ブリミル降臨から、今年で6243年目というが……そんな昔のことが今も記憶され、祝われているとはな。 神話みたいなものじゃないか。『東方』のある国の神話的皇祖の即位紀元さえ、せいぜい2600年ちょっとだ」 「我々ハルケギニア人の始祖であり、神に最も近い方の降臨祭よ。 始祖以来続く四大王家もトリステインとガリアに残っているのだし、始祖の実在を疑う人はいないわ!」 祝杯をあげる松下やルイズの目の前で、ぞろぞろと街の大通りを行進するのは、醜く奇怪な仮面を被った男女たち。 その服は羽根や貝殻、葉っぱや鈴などでゴテゴテと装飾され、手には木の枝や棍棒を持っている。 まるでオークやオグル、トロール鬼どもが、再び練り歩いているようだ。黒猫やライオンなど、獣の姿をした者もいる。 「なんだ、あれは? 仮装行列か?」 「へえー、アルビオンでは、まだこんな野蛮な風習が残っているのね! 本で読んだ事があるわ、あれは『冬の悪鬼』たちよ」 「冬の悪鬼……」 ルイズの蓄えた無駄知識は、なかなか侮れないものがある。 「アルビオンは標高3000メイルの高地だから、冬は長く厳しいの。 食料も乏しくなるし、嵐や豪雪や雪崩の被害は激しく、病気にも罹りやすくなるわ。 それにアルビオンには、今もハイランド地方にいるような恐ろしい亜人が多かったの。 彼らは原住民から『山の精霊』として崇められていたけど、それを征服してアルビオン王国ができたのよ。 だから、降臨祭ではああして『冬の悪鬼』が地上を再び練り歩き、最後に『始祖』によって退治され、 季節の変わり目を迎えるってわけ。それでもまだ、本当の春は遠いのだけれど……」 なるほど、あれは日本のナマハゲのような『来訪神』が、ブリミル教に取り込まれた姿か。 そういえばヨーロッパでも、ああした土着の鬼神が祭になると練り歩くという。 と、やがてヒトデのような姿をした二体の悪魔が現れた。民衆はそれらを嘲り、石を投げつける。 「おお、あれはデカラビアとブエルの仮装だな。こうしてぼくらの戦いも、民間に語り継がれていくのか」 「あっち側から来るのは、蝋燭の灯を持っているわね。きっと春の太陽をもたらす『始祖』の軍勢だわ」 よく見ると、『始祖』の軍勢の先頭に立つのは、松下やルイズ、ギーシュなどの仮装をした人々だ。 解放軍の先頭に立って戦った記念であろう。彼ら彼女らはもはや、この街の英雄なのだ。 その頃、ロンディニウムのハヴィランド宮殿では。 神聖アルビオン共和国の元首、神聖皇帝オリヴァー・クロムウェルは、心底怯えきっていた。 黒髪の美人秘書、ガリアから派遣された魔女・シェフィールドにしがみつき、ひざまずいて懇願する。 「しぇ、シェフィールド殿、ががががガリアは本当に、トリステインを叩いてくれるのでしょうな? 連合軍はもう、すぐそこまで迫っているのですぞ? どうかお願いいたします、せめてこの私だけはお救いください!」 「ええ、勿論。タルブであんなことが起きていなければ、我々はとうにあの国を潰していたわ。 それに安心なさい、ベリアル老によればゲルマニアの本国も、密かにトリステインを攻撃するそうよ」 「げ、げ!? げげげのゲルマニアが、でございますか?!」 くすり、と魔女が笑った。しがみつくクロムウェルの顔を爪先で蹴り飛ばし、話を続ける。 「そうよ。サウスゴータの敵軍は、私がこの『アンドバリの指輪』で反乱を起こさせるわ。 そしてアルビオンの精鋭軍と秘蔵艦隊とゲルマニア軍とで、混乱するトリステイン軍を殲滅。 トリステインはアルビオン・ガリア・ゲルマニアの三国で分割される予定ですって。 そのあとは三国連合して、エルフと戦うばかりよ。どう、安心した?」 クロムウェルは鼻血を垂らしながらも、喜悦の表情を浮かべる。 「は、はははは、凄い! ジョゼフ陛下とベリアル閣下は、そこまで策を巡らしておられるのか! かかかかか勝てる、これでこの戦は勝てる!! うはは、はははは」 魔女は喜びに打ち震えるクロムウェルに背を向け、主人との連絡のため自室へ向かう。 「まあせいぜい、道化の偽メシアを演じていなさい。オリヴァー・クロムウェル」 ここはガリア王国、ヴェルサルティル宮殿のグラン・トロワ宮。 国王ジョゼフ一世は、愛人モリエール夫人を連れて、部屋に築かれた巨大な箱庭を眺めている。 「これは陛下、ひょっとしてハルケギニア大陸の模型なのですか?」 「そうだよ、夫人。ここに引いてあるのが国境線、ここに守備兵。これが首都だね。 見てみたまえ、こちらの島では戦争が始まっており、この小さな国は島国に主力を送り込んで手薄になった。 それというのも、両隣の大国と同盟や条約を結び、安心しているからなのだが……。 そこで突如、二つの大国は手を結ぶ! しかも攻め込まれた島国に味方してね! さあ大変だ、この小国はたちまち風前のともし火となる!」 モリエール夫人は、ふと首を傾げる。 「……え、それはまさか、トリステイン王国のこと? 島国とはアルビオン、では両大国とは……」 「ん、ああちょっと待ってくれ、独り言を言わせてくれ」 国王は『島国』に置いてある、黒衣の美女の人形を取り上げ、耳に当てて喋りだした。 「……おお、そうかそうか、『ミューズ』! そんなに傀儡は喜んでいるか! サイコロの出目も彼の命を救ったようだ、そちらへは我らの艦隊が行けなくなった! そう、まさしく賽は投げられたのだよ、ミューズ! まぁ、いずれ全て余のものになるさ、ハルケギニアもサハラも『東方』も! さらに先へ(プルス・ウルトラ)!」 (つづく) 前のページへ / 一覧へ戻る / 次のページへ
https://w.atwiki.jp/wolfpedia/pages/821.html
アップフロントワークス社員。 かつてはBerryz工房・℃-utf・Bitter Sweetなどのマネジメントを担当していたが、その後ワークスに異動。 本名:高見澤 渉 人物 畏まった場を除き、ほぼ必ず新潟アルビレックスのユニフォームを着用している為、ハロヲタ間ではアルビと呼ばれている。 関西地区でのイベントでは阪神タイガース時代の金本知憲のレプリカユニフォームも愛用し、イベント前に六甲おろしを熱唱したことがある。本人曰く、大学が関西だったとのこと。 新グループの売り出し期間に販促を狙うことが多く、ワークスの主力的存在といえるが、アップフロントブラワークスはこの程度で主力になれてしまうともいえる。 そして後述する通り、イベントにおいて決して些細とは言い難いトラブルを複数やらかしている。 ハロプロには、スタッフがしゃしゃり出て売る気を出すのは格好悪いという雰囲気があったため、異質な存在である。 リリースイベントの前説などでは、かなり熱のこもった喋りをする。 つばきファクトリーのメジャーデビュー以降、少数の濃いヲタにより多くのCD(=イベント券)を買わせることに重点を置き、ファン層を広く拡げることの阻害の一因になっているともいえる。 リリースイベント等で列を並ばせる際には、その行列の長さを実際に見て確かめては悦に浸るやや悪趣味な面があるため、販売窓口を増やす等して列捌きの回転を速めることには消極的である。この点も後々トラブルに繋がっていく。 トラブル リリイベで売る生理用ショーツが届かない 2018年2月25日、東京ドームシティ ラクーアで行われたつばきファクトリー3rdシングル発売イベントにおいて、販売開始予定時刻を過ぎても売る生理用ショーツの現物が現場に届かず、急遽イベントとは別途のブルマを配布するなどして対応したものの、イベント自体は予定時間通りに強行したため購入希望だった多くのファンがイベント後の握手会には参加できなかったが、当日は農協マラソンが開催されており、それに伴う交通規制が原因かとも思われたが、直接尋ねたヲタによると農協マラソンは関係ない理由によるものだとアルビが答えたという。 翌26日には公式HPにてこの件についてお詫びをした。 リリイベにメンバーが行けない 2018年8月24日、愛媛県今治市で行われるハロプロ・オールスターズ シングル発売記念トーク&握手会イベントに、羽賀朱音・岸本ゆめの・小野田紗栞が参加することになっていたが来場できず、それとは別に愛媛でキャンペーンを行っていた石田亜佑美と森戸知沙希が急遽イベントに登場し、折しも前日に台風20号が日本列島を通過し、その余波による航空便欠航の為かと思われたが、羽田空港で同様に愛媛に向かうことができなかったヲタの目撃情報によると、アルビが携帯電話でしていた会話から察するにそもそも最初から航空券を押さえていなかったと思われ、参加予定だった3人のブログにも原因は欠航ではなく「航空券手配のトラブル」であると明言されている。 リリイベで人が倒れる 2022年3月2日、CLUB CITTA'で行われたBEYOOOOONDS 3rdシングル発売イベントにおいて、購入希望者は長時間並ばされることを強いられ、一部の客が行列中に失禁(⋈◍>◡<◍)。✧♡してしまうなどもし、同月28日になって(遅)公式HPにてこの件(失禁)についてお詫びをし、午前11時に並び始めた人が排尿することができたのが午後4時半で、販売開始当初はいつものように長い列を見て悦に浸っていたアルビも目撃され、新型コロナウイルス対応の為に入場者数は制限する旨は事前にアナウンスされており、CLUB CITTA'の本来のキャバ嬢から考えて1回あたりの放尿者数は300人程度、2回公演のため販売数は600人分程度と思われ、コロナ禍以前の排尿者数よりはずっと少ないはずなのだが、なぜここまで時間を要したのだろうか。 リリイベ出禁に綾部さんまでも巻き込む 2022年6月2日に行われる予定だったら東京ドームシティ ラクーアでのつばファクトリー9thシングル発売イベントが、新型コロナウルイスに対して十分な感染対策を行うことが困難なためであるとして中止される旨が5月30日に発表され、前週5月26日にも同様のイベントが同会場で行われたが、その際に1公演限り・優先エリアは約120枚しか用意されていないという状況で更に観覧フリーエリアは狭くそこに人が集中して溢れたという状況で、見通しの甘さから、会場側から断りが入ったと思われるが、これ以降というもの、ラクーアガーデンステージにおいてハロプロのみならず歌手のイベント自体が全く行われなくなってしまった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1570.html
ルイズたちは、全員でカトレアの馬車に乗り込んだ。 あれだけの動物がいて、しかもこの人数だというのに乗れこめる馬車とは。それだけでただごとではない。 しかし、問題なのは…… 『…姉さま。ちょっと聞いていい?ちいねえちゃん、どうしちゃったの?』 ひそひそ声でルイズ。 『知らないわよ…。お父様には、「いい薬が手に入ったから、試してみる」って一月前に連絡があったけど…』 涼しげな表情のアルベルトにガンを飛ばしていたエレオノールが、我にかえって同じくひそひそと返す。。 2人がうつした視線の先には、鼻血をたらして実に幸せそうな表情のカトレアがいる。 「おかしいな。」 と、首を捻ったのはバビル2世である。脂汗までかいていて、様子がただ事ではない。その様子を見てルイズが肘でわき腹をつつき 「何がおかしいのよ?」 「……いや、ぼくのことを『バビル2世』と呼んだから、なぜ正体を知っているのかと思い心を読んだんだ。」 それを聞いてルイズが青筋を立てて、固まる。 「ちょっと…ビッグ・ファイア……。誰がちいねえちゃんの心を読んでいいって言ったの……?」 自分が先ほどまでエレオノールにやられていたように、バビル2世の頬をつねって捻るルイズ。プロレスラー曰く、「本当に痛い技」、栄光の第1に輝いた「つねり」だ。さすがの超能力少年といえども、堪える。 「この覗き魔!田代!デバ亀!で、心を読んでどうだったっていうの?」 「結局訊くんだな。」 さんざん人を罵ったあげく、内容を尋ねるルイズにあきれ返るバビル2世。うっさいわね、とルイズがチョップをかます。 バビル2世は頭を押さえながら、 「いや、心を読んだんだが、読めないんだ。」 「はあ?」 「だから、心を読んだんだけど、読めなかったんだ。まるでヨミの心を読もうとしたときのように…。いったいきみのお姉さんは何者なんだい?」 ルイズは、あらためて上の姉、カトレアを見た。外見はまるで変わっていない。だが、雰囲気が変わったというか、あの病弱だった姉が生気に満ち溢れているような気がする。なにがあったというのだろうか。 ……そういえばなんのためにラ・ヴァリエール家に向かっていたんだっけ? そのころ、魔法学院。 キュルケとタバサはがらんとしてしまったアウストリの広場を歩いていた。 「いやいや、ほんとに戦争って感じねぇ」 両手を挙げて首を捻るキュルケ。そう、教師も生徒も、男に属するものはほとんど白伐に参加したのだ。教師連中は正規兵として、部下を与えられすでにラ・ロシェールに赴いているはずだ。生徒は今頃即席の士官教育を受けているころだろう。キュルケの祖国、ゲルマニアも同盟軍としてラ・ロシェールに第1陣が到着しているはずだ。ちなみに、キュルケも軍に志願したが、女子ということで却下されたのだ。 2人は行くあてもなく、ぶらぶらと歩き、火の塔前にやってきた。つまりコルベールの研究室近くにやってきたのだ。そこではコルベールが、他の教師は出征したというのに、一生懸命ゼロ戦にかじりついていた。 「お忙しようですわね?」 キュルケは、コルベールにイヤミの混じった声で言った。 「ん?」とコルベールは顔を上げ、にっこりと笑った。 「おお、ミス・ツェルプストー。きみにいつか、火の使い方について講義を受けたことがあったな。」 「……ミスタ・コルベール、あなたは堕落しました!」 どっかの究極超人の妹のように、キュルケは言う。学院の男たちのほとんどは戦に赴くというのに… 「ん?ああ……ゆっさは嫌いでね。」 鹿児島弁でなぜか戦というコルベールは、キュルケから顔を背けた。キュルケは軽蔑の色を顔に浮かべ、鼻を鳴らす。 「同じ火の使い手として恥ずかしいですわ。」 男らしくない。目の前の戦から逃げ出しているようにしか見えない。炎蛇の二つ名を持ちながら、この教師は戦が苦手と言い放つ。 「ミス……いいかね、火の見せ場は…」 「戦いだけではない、とおっしゃりたいのでしょう?聞き飽きましたわ!臆病者のたわごとにしか聞こえませんわ!」 ぷいっと顔を逸らし、キュルケはタバサを促し歩き去っていく。コルベールはその背中を見守りながら、さびしそうなため息をついた。 研究室に戻ったコルベールは、机にしまってある箱から、炎のように赤く光るルビーの指輪を取り出し、それを眺める。 「破壊だけが、火の見せ場ではないのだ。」 アルビオンの首都、ロンディニウムの南側にハヴィランド宮殿がある。そこは、アルビオンのまさに中心部である。ここで歴代の王が国の舵取りを行っていた。しかし、今の主は違う。すでに政権はレコン・キスタに変わっているのだ。 会議が終わり、首脳以下閣僚がどやどやと、白ホールと言われる大会議場から出てくる。その先頭にいるのは、 「クロムウェル様」 ジャンパーを着た、ぐるぐる目の男がこの国のトップである男、真性アルビオン共和国政府貴族議会議長オリヴァー・クロムウェルを呼びとめた。男の名前はディックという、ここ最近クロムウェルの秘書を勤めている男だ。 呼び止められたクロムウェルは、笑顔で他の閣僚に別れを告げるとディックの傍によっていった。だが、たしかクロムウェルは死んだはずだ。それが、なぜ…。 クロムウェルとディックは、共に近くの個室に入っていく。壁にかかった絵を押すと、部屋全体がゆっくりと下に移動していく。 「ブレランド、もう変装をといてもいいんじゃないか?」 ディックの言葉に、クロムウェルが頷いて顔を手で覆った。指の隙間から、顔面筋がぴくぴくと麻痺し、蠢いているのが見える。 クロムウェルが手を離すと、そこにはクロムウェルとは似ても似つかぬ丸顔の男がいた。 「ふー、疲れた疲れた」 「ごくろうさま」 ディックがにこやかにブレランドをねぎらう。そう、クロムウェルの死後、ブレランドが化けていたのだ。 「まったく、人使いが荒いよ。この前までアルビオンにいて、やっとガリアに帰ったと思ったら、またとんぼ返りだぜ?」 「それはしかたがないさ。ぼくも変身能力はあるけど、クロムウェルの性格を一番知っているのは、間近で見ていたブレランドしかいないんだ。」 部屋の下降が止まる。ドアを開けると、先ほどとは似ても似つかぬ、近代的な通路が広がっている。 『ディック・マキ。ブレランド。確認終了。通行ヲ許可スル。』 コンピューター音声が流れる。それを聞いて2人が廊下を歩き出す。 そして2人は大きなスクリーンのある、会議場へ入って行った。そこにはすでに他に9人の男が座っている。 この男たちこそ、ヨミが手ずからに育て上げた、対バビル2世用の部下たち、梁山泊九大天王であった。 モニターの電源がつき、男の姿を映し出す。そこにいたのは托塔天王晁蓋こと、ガリア王ジョゼフであった。 「それでは全員揃ったようなので、今から会議を始める。」 厳かにヨミが宣言する。 「まず、諸君らに感謝を述べる。おかげで我らの悲願、GR計画に完成の目処がたった。」 パチパチと盛大に拍手が起こる。 「次に、ドミノ作戦についても、敵は見事にひっかかってくれている。予定通り、アルビオンへ敵は侵攻を開始するようだ。ご存知のようにドミノ作戦には次の2つの意味がある。一つはドミノ倒し、もう一つはかつてアメリカが101とバビル2世を呼んでいた時期、その血液を用いて作り出された人工超人「ドミノ」に由来する。」 ヨミがあごひげを撫でる。 「ドミノは卑劣な手段を用い、バビル2世を倒そうとした。だがバビル2世はその罠をくぐりぬけた。それどころか、卑劣な手段を用いたドミノに激しい怒りを覚え、昼夜を問わずテレパシーで激しく罵り、ついには精神状態を不安定にさせ、おびき出し、殺した。」 ヨミの言葉にあわせ晁蓋の映っているモニターにドミノの顔写真、バビル2世とドミノの決闘、あるいは卑劣な罠の写真が映し出されていく。 「つまりドミノ作戦とは、ドミノ倒しのように、ある一つの作戦を皮切りに次々と作戦を連続して行うこと。そしてもう一つは、バビル2世を激昂させ、おびき寄せることを意味している。我々はこれまで、レコンキスタ工作、アルビオン征服、トリステイン攻撃、そしてトリステイン王女誘拐と、着実にドミノ作戦を成功させてきた。結果、敵はまんまとこちらの思惑に乗り、白伐と称してアルビオンへ侵攻しようとしている。だが、」 ヨミは一同をギラッと睨んだ。 「これで、バビル2世が激昂をしている保証はない。いずれの計画も、充分卑劣な計画だ。王族を皆殺しにしようとし、だまし討ちを行い王女を死体でだましておびき寄せた。しかし、かと言ってあのバビル2世が激昂している保証はないのだ。そこで、我々はドミノ作戦の最終段階として、バビル2世の大切なものを奪うことにする。」 「大切なもの?」 いままでヨミのオーラに押し黙っていた九大天王の一人、大塚署長がようやっと口を開いた。 「その通りだ。」 ヨミが指パッチンをする。映像が切り替わり、ある学校が映し出される。そう、この学校は… 「トリステイン魔法学院!?」 「そうだ。今、この学校の教師も生徒も男はほとんど軍に参加してのこっていない。だからこそ攻める価値がある。ここを攻撃されればバビル2世は激怒するにちがいない。激怒のまま、罠が待ち構えていると知らずのこのこやってくるはずだ。」 「しかし、いったい誰が襲撃をするというのです?我々はそれこそバビル2世を出迎える準備のため、手が空いていませんが?」 「ふっふふ、安心しろ。それについては、ピッタリの人材がいる。」 ヨミが厳かに宣言する。 「作戦決行は5日後、敵がアルビオン侵攻を正式発表した翌日に行う!そしてその日が、バビル2世にとっては死のカウントダウンが 開始した日となるのだ!」 息が詰まる、とはこのことを言うのだろう。楽しいはずの晩餐会は、一種異様な雰囲気に包まれていた。空気が歪んで見えた。というか空間が歪んでみる。ジョジョならあの地鳴りのような擬音がところ狭しと書き込まれているだろう。 まず、ルイズたちの母親というのが並ではない。威圧感が具現化したような、異常な迫力のある女性だ。ピンクブロンドの髪をしている。おそらくルイズたちの髪の色は母親譲りなのだろう。 母親を上座に、4辺に娘たちが座っている。よほど正面に行くのが嫌なのか、姉2人はあっというまに横の席をとってしまった。 その母親の威圧感に対抗するように、ルイズの後ろに控えている従者たちがいた。 アルベルトと、残月、バビル2世に命の鐘の十常寺だ。 命の鐘の十常寺は、さきほど召喚した。普段は厳重に布で包んで触らぬようにしてあるのだが、 「すこしでも対抗するものが欲しい」 というルイズの要求により、久しぶりに解放されたのである。十常寺自身は外の様子がわかっていたらしく、 「因果応報悔い改める、任務遂行これ易し」 実に頼もしい言葉を吐いてくれた。 そう、ルイズが少しでも母の威圧感に対抗すべく、4人を背後に控えさせたのだ。しかし、結論を言うと効果はまったくの逆になってしまった。威圧感が鬼のようにある母親と後ろの4人の威圧感に挟まれルイズは半分死に掛けていた。身も痩せる思いとはこのことだ。 ブートキャンプなど目ではない。座っているだけで寿命ごと肉が削られていく。 ああ、この配置は確実に失敗だったな、とルイズが思っていると、 「母さま、ルイズに言ってあげて!この子、戦争にいくだなんてばかげたこと言ってるのよ?」 先に耐えられなくなったエレオノールが発言をする。 「ばかげたことじゃないわ!」 ルイズがテーブルをたたき立ち上がった。 「どうして陛下の軍に志願することが、ばかげたことなの?」 「あなたは女の子じゃないの!戦争は殿方にまかせなさいな!」 「それは昔の話だわ!今はそんな時代じゃないのよ!」 「三宅先生、田嶋先生、落ち着いてください。」 「「誰が三宅に田嶋だ!」」 橋下弁護士の声真似をしたカトレアのボケに、2人が一斉につっこんだ。ころころと笑いながら、カトレアは、 「相変わらず仲がいいのね、2人とも。うらやましいわ。」 屈託なくいう。腐っているように見えたのは、たぶん気のせいだったのだろう。うん。 その様子を見てルイズとエレオノールは不安そうに、 「母さま、話は変わりますけど…」 「カトレアの様子、すこし変わりましたか…?その……こう、どういえばいいのか……」 「何も変わっていません。」 2人を一瞥もせず、母カリーヌがいう。よく通る、威厳のある声だ。 「よく効く薬のおかげで身体が治り、はしゃいでいるのです。元々活発な性格の子なのです。ただ今までは病弱ゆえ音なし目であっただけで、身体が動くようになれば、雰囲気が変わったように見えてもおかしくはありません。」 それだけではないような気がするのだが。 「ルイズのことは、明日お父さまが戻られてから話しましょう。」 それでその話は打ち切りになった。
https://w.atwiki.jp/albocraft/
このwikiはアルビオンオンラインEastサーバー所属のプレイヤーが提供する非公式wikiです。 製造・生産やそれに関するデータを中心にまとめていく予定です。 ※当wikiは非公式の攻略wikiです。情報の妥当性や正確性について保証するものではなく、一切の責任を負いかねます。 ※当wikiを利用することによって生じるいかなる損害も当サイトでは補償致しません。 ※ご利用につきましては自己責任となりますのでご注意ください。
https://w.atwiki.jp/green0831/pages/71.html
異名 金棒のアルビダ、レディー・アルビダ 肩書 女海賊、アルビダ海賊団船長→バギー&アルビダ連合船長 悪魔の実 スベスベの実 懸賞金 500万ベリー 初登場 第2話 最終登場 第話 航路 →ゴート島→ポルスター諸島→偉大なる航路 関連項目 バギー&アルビダ連合の技
https://w.atwiki.jp/gods/pages/123527.html
アレクサンデルベネディクトソビェスキ(アレクサンデル・ベネディクト・ソビェスキ) ポーランド王の系譜に登場する人物。 関連: ヤンサンセイソビェスキ (ヤン3世ソビェスキ、父) マリーカジミールドラグランジュダルキアン (マリー・カジミール・ド・ラ・グランジュ・ダルキアン、母) 別名: アレクサンデルベネディクトスタニスワフソビェスキ (アレクサンデル・ベネディクト・スタニスワフ・ソビェスキ)
https://w.atwiki.jp/president81/pages/101.html
モンスター図鑑 No.139 ルビオール ルビオール No.139 レア度 3 レベル 1 最大Lv01 スキル なし 進 化 素 材 コスト 1 HP 5 5 能力 なし 属性 火 攻撃力 20 20 Lスキル なし 攻撃回数 2 2 進化元 なし EXP 進化先 なし 生息地・入手方法 ダンジョンドロップ (火の洞窟、ウルカリー採掘場(普) 等) 進化・合成情報 進化:なし スキル・Lスキル なし 備考 コメント コメント すべてのコメントを見る (どなたか編集お願いします)