約 1,629,447 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4762.html
『お聞きください この割れんばかりの歓声! ハルケギニア史上初となる トリステイン-アルビオンの親善試合 国立トリステインスタジアムは熱狂で満ち溢れております! それもそのハズ! 今日 スタジアムには我等の小さな女神が戻ってきたのです!! 背番号10 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!!』 スタジアムの熱気を全身に浴びながら、桃色髪の少女がフィールドを駆ける。 小さな体躯を懸命に動かし、稲妻のようなスピードで突き進む。 (このフィールドに 私は戻って来た・・・) 「えっ」 「なにィ!?」 『ああーっとォ!? これは ルイズ選手の18番・イリュージョンフェイント!! アルビオンのディフェンスラインを華麗に抜き去り 早くもキーパーと1対1・・・ いや違う! アルビオン司令塔・ワルド選手が立ちはだかります レコン=キスタから投降し フィールドプレイヤーへと転向したアルビオンのエースが この位置まで下がっていた!!』 「私は勝つ! ここで勝って そしてアイツに・・・」 「甘いぞォ ルイズ!!」 ワルドの叫びと同時にその姿が僅かに揺らぎ、直後、五人のワルドがルイズへと襲い掛かる。 「偏在スライディング部隊だあぁ~!!」 「・・・ッ! キャアアア!!」 逃げ場のない5人がかりのスライディングが牙を剥き、小柄なルイズの体を大きく吹き飛ばす。 「ルイズ! いくら君が伝説の虚無-サッカーの申し子だからといって たったひとりでアルビオンの牙城を崩せると思うなよ!」 「・・・まだまだ これからよ!」 『この場面は少し強引過ぎたか? ボールはアルビオンへ ワルド選手自身が上がっていきます!!』 かつてのハルケギニアには存在しなかった究極のスポーツ、 そして、トッププレイヤーが魅せる空前の名勝負に、スタジアムの熱気は最高潮へと達した。 「本当に素晴らしい勝負だ! いやあ 方々に骨を折ってこの試合を組んだ甲斐もあったというものだ」 周囲の熱狂を受け、アルビオン皇太子・ウェールズが立ち上がる。 発する言葉は熱を帯び、徐々に早口になっていく。 一国の代表という立場も忘れ、彼の心は少年時代のそれへと帰っていた。 一方、隣の席に座るトリシテイン王女・アンリエッタは、一言も発しない。 ただ、どこか遠い目をしながら、ひたすらにボールの行方を追っている。 「・・・どうなされました 王女? 何か心配事でも」 「いえ・・・ ただ 私は大きな過ちを犯したしまった、と」 「・・・?」 ―1年前― 碌に魔法を使えず、『ゼロのルイズ』と揶揄されていた少女が召喚した使い魔は みすぼらしい格好をした平民の少年であった。 初めは自らの未熟さを呪い、少年を呪った彼女であったが やがて、彼がこっそりとしていた奇妙な球遊びに徐々に興味を持つようになった。 彼女は学園で初めての『トモダチ』と出会い、少年に、そしてサッカーの魅力に惹かれていった。 『トリステインのゴールデンコンビ』の名が国中に広がり始めた頃には 彼女は既に、『トモダチ』を触媒とした、幾つかの虚無の力に目覚め始めていた。 トリステインの貴族達は、少女の力を軍事的に利用するべきであると主張した。 アンリエッタは、友を道具として利用する事に迷いながらも、それを是とした。 家臣団をまとめるため、他に選択は無かったし、それこそがトリステインの未来に繋がると信じていた。 少女が命令を受け入れた時、少年は姿を消し、少女は『虚無』を失った・・・。 「何故 少年がルイズの元を去り 彼女が力を失ってしまったのか・・・ 今なら分かります ルイズの力は国を救うためのものではなく 人々の心を救うためのもの この人々の熱狂が それを証明しています。 私は自分勝手なエゴのために 彼女の大切な友人を奪ってしまった・・・」 「だが 全てが遅かったわけではないでしょう サッカーとの出会いは 私の運命 そして 今やアルビオンの重臣となったワルドの運命をも大きく変えてしまった サッカーを世に広げるため この試合の実現に向け 貴方がどれ程心を砕いてきたか 私は知っています」 「ウェールズ様・・・」 「見届けましょう 彼女たちの情熱が この試合の結末が ハルケギニアに何をもたらしてくれるのかを!」 『これはスゴイ! ワルド選手 これで8人抜きだあああ~!! 時に稲妻の如く 時には疾風の如くトリステイン陣を切り裂いていく!! そして! ついにキーパーと1対1ッ!!』 「コイツで決める! 受けてみろッ この必殺の一撃を!!」 ワルドが右足を大きく振り上げる。 大気の異常な流れが、グラウンドにほどばしる静電気が、次に放たれる一撃の威力を予感させる。 「ウィンドブレイクショオォォットッ!!」 『で、で、で、出たァァァー!? 成功率100%を誇る ワルド選手のウィンドブレイクショット!! 唸りを上げて トリステインGK・ギーシュ君に襲い掛かります!!』 (猛烈な疾風を纏ったW.B.S・・・ ただ待ち構えていては ボール触れることもできずに吹き飛ばされてしまう) 「これだああああああああああ!!」 『ああーッと!? ギーシュ君のこれは・・・ 錬金!? ギーシュ君 ワルキューレ7体分のブロンズアーマーを全身に纏って踏みとどまったーッ!?』 「体のどこかに当たってくれえええッ!!」 超重量と逆風の中、全身でボールの軌道を塞ぎに飛び込むギーシュ。 「甘いぞォ!! そんな小細工で 俺のW.B.Sが防げると思うな!」 『ギーシュ君ボールをキャッ・・・ ああ!? アーマーがブッ飛んだ!? 猛烈なシュートの威力が両腕を弾き ボールが顔面を直撃ッ!! そのままギーシュ君の体ごと ゴールネットに吸い込まれていくゥ~!?』 「ぐおおおおおおッ!!」 ガンッ !! 『いや・・・ 止めた!? 止めましたッ!! ギーシュ君 両腕でゴールバーを掴んで踏みとどまったァ!! 文字通り体を張ったスーパープレイで ゴールを守り抜きました!!』 「な なにィ!!」 必死にボールに覆いかぶさりながら、ギーシュはその場へと崩れ落ちる。 「大丈夫!? ギーシュ!? ここは一度外へ・・・」 あまりの惨劇に、その場に駆け寄ろうとするDF陣を、ギーシュ自身が手で制する。 「へ・・・ 平気さ ボールは・・・ トモダチだからね!」 (そう言えば それを教わったのはアイツとの決闘の時だったな この試合 アイツも何処かで見てるんだろうか・・・) 「さあ行くぞ! 反撃開始だッ!!」 溌剌とした表情で、ギーシュが天高くボールを蹴り上げた。 『なんという荒々しいドリブル! パスを受け取ったキュルケ選手 強引に中盤を突破していく』 体を張ったプレイの連続に観衆が再び沸き立つ。 フィールドを駆けるキュルケの瞳が静かに燃える。 (まったく あんなプレイを見せられちゃあ こっちも熱くならざるをえないじゃない!) 「やってやるわよ! タバサ 準備はいい!?」 「・・・・・・」 キュルケの合図を受けタバサの瞳がキラリと光る。 『ここはタバサ選手へのパス・・・ではない? ボールは二人の中間に転がり・・・ え!? 早くもシュートの体勢か!?』 「「いっけええええええええ!!!」」 鏡合わせとなった二人の蹴り足が同時にボールを捉え、前方に一直線に弾き出す。 『これは何とッ 超ロングシュート!! キュルケ選手のファイアーショットと タバサ選手のハンマーショットが同時に炸裂!? ヘキサゴンスペルクラスの強烈なツインシュートが飛び出したァァァ!!』 「馬鹿な!? どんなに強烈とはいえ センターサークルから放ったシュートが決まるものか!?」 「フン! もちろんそうそう都合よく行くなんて思っちゃあいないわよ!」 ワルドの叫びにキュルケが応じる。同時にボールが不自然な変化を見せ始める。 『ボールは一直線にゴールへ・・・ いやッ! 曲がったァァァ!! ボールは左へと大きく反れ・・・ そこに ルイズ選手が詰めて来ている!? これはまさかシュートではなく DFを切り裂くダイレクトパスかッ!?』 「私とキュルケではキック力が大きく違う 当然 ボールは大きく曲がる・・・」 『オフサイドの笛は無し! しかし このスピードボールに追いつけるのか?』 ルイズが走る。ボールに向かって一直線に駆ける。 (トモダチは 手を使われる事を嫌うんだ・・・) ルイズの脳裏に、かつての彼の言葉が響く。 (あなたがいなくなった時 私は裏切られたと思った あなたもボールも 私の事を見捨てたのだと思った・・・でも違った あなたはトモダチを サッカーを愛していた だからトモダチもあなたに応えてくれた 裏切ったのは私のほう・・・ トモダチを愛していない私に トモダチが応えてくれるはずが無かった・・・) 『ルイズ選手ダイレクトに飛び込む! 届くかァ!?』 (今なら言える・・・ 私はサッカーが好き この試合で最高のプレイをして それを証明する そして そして もう一度・・・) 「いやあああああああ!!!!」 『届いたー! ルイズ選手のゼロトラップランニングボレーシュート!! しかし!? GKのマチルダ選手も反応しているぞ!!』 「なめるなあああ!!」 マチルダが飛びつく、その右腕に土くれが集まりだし、直ちにゴーレムの巨大な右腕が出現する。 『出たァ――!!!! S.G.G.K(スーパー・グレート・ゴーレム・キーパー) マチルダ選手のパンチング! シュートを大きく弾き返したァ!!』 「・・・ッ!? そんな!?」 鉄槌の如き一撃を受け、ボールは中央付近まで一気に押し返される。 『激しい主導権争いの末 ボールはラインを割りました -ッと ここで選手の交代があるようです。』 ショックを受け、その場に棒立ちになるルイズ。 彼女だけではなく、トリステインイレブンの顔は一様に暗い。 「完璧なシュートだと思ったのに」 「あのキーパーを 破る事は出来ないのか・・・?」 「・・・・・・」 「 あ き ら め る な ! ! み ん な ! ! 」 フィールドにこだまする雄たけびに、ルイズが稲妻に打たれたように顔を上げる。 『ああっと! 先ほど交代したばかりのトリステインの12番 ワルド選手へのパスをカットした!?』 「なにィ!?」 ルイズだけではない、トリステインの面々が呆けたように12番をつけた少年を見つめている。 「やらせるかあああ!!」 『ワルド選手が追いついた しかし これは危険なプレイ! 真後ろからタックルに行ってしまっ・・・ え ええ!?』 眼前で起こる光景に、冷や水を浴びせられたように観客が静まり返る。 少年は、まるで後ろに目があるかのように、5人のスライディングを次々と切り返していく。 蝶々サンバ、ジグザグサンバ 縦横無尽のボール捌きで、次々に敵を抜き去る12番。 「ス スゴイ」 「なんで魔法も使わず あんなプレイができるんだ・・・!」 「まさか あの12番・・・!!」 「帰ってきたのね! サイトッ!!」 ルイズの叫びに、観衆が再び沸き返る。 ヘッ、と サイトが笑う。 「この一発 ワイン一本分の価値があるぜ!」 手にしていたワインの小瓶を投げ捨てる。同時に、才人の左足に黄金のルーンが出現する。 「このセンタリングで勝負を決めろ! ルイズ!!」 才人の左足が黄金の軌跡を描き、ボールが大空へと舞い上がる。 『サイト君からのセンタリング しかしこれは大きい~! これはミスキックか? ・・・いや いつの間にか ゴール前にタバサ選手が詰めているーッ!!』 「タバサ! こっちよ!」 「分かってる」 タバサの頭上めがけ、ルイズが飛び上がる。タバサが詠唱を唱える。 「「ス カ イ ラ ブ ハ リ ケ ー ン !!!」」 『なんとおおおッ!! タバサ選手のエア・ハンマーをスパイクで受け止め ルイズ選手が上空へ一気に飛び上がる きりもみながら空中で体勢を変え・・・ そ そしてこれは~!?』 (覚えてるわね サイト・・・ これは あなたが私に教えてくれた 最初のシュート) 「オーバーヘッドキイイイィィィック!!」 『出たアアアァァァ!!! ルイズ選手のスカイラブオーバードライブエクスプロージョンシュートだああああああ!!!! 今世紀最高の究極シュートが遂に炸裂!! しかしこれは マチルダ選手の真正面か~!?』 「いえ 違う!?」 「あのシュート キーパーの股下を狙っている!!」 「そうだルイズ! ゴーレムの巨大な両腕に死角があるとしたら そこしかない!!」 「こ こんなシュートオオオオオオ!!!!」 「いっけえええええええ!!!!」 全身に土くれを纏いながら、シュートを止めに行くマチルダ。 閃光、ついで爆音が炸裂し、巨大な土柱が舞い上がった。 『ゴ ゴオオオオオオオオオオオルッ!! 決まりました!! 土くれごとマチルダ選手を吹き飛ばし ルイズ選手のシュートがッ! ネットを突き破りました!! そして どうやらここで 試合終了のホイッスル!』 「やったわ! 私・・・私 やったわッ!」 「・・・勝った!」 「今まで最高のシュートだったわよ!ヴァリエール!」 たちまちチームメイト達に揉みくちゃにされるルイズ。 敗れたアルビオン面々にも、不思議と悔しさが見られない。 観客の割れんばかりの拍手がイレブンを包む。 そして、仲間たちを掻き分け、才人がルイズの前へ歩み寄る。 「サイト・・・」 「・・・・・・」 「サイト・・・私 ずっと信じてた・・・ サッカーを続けていれば きっと もう一度 あなたに逢えるって・・・ だから」 「・・・バッカ野郎」 今にも泣き出しそうな少女。その、薄桃色に輝くブロンドの髪をぶっきらぼうに撫ぜる才人。 「あんまりやきもきさせやがるんでよ 思わず飛び出しちまったじゃあねえか・・・ あんなスッゲえプレイができるなら 最初からやりやがれ」 「・・・何よ 主人に黙って 勝手に姿を消したくせに・・・」 二人がまともに会話を出来たのはそこまでだった。 友人たちの祝福の嵐が、再び二人を揉みくちゃにする。 『ああ! 今 ユニフォームの交換が始まりました 死力を尽くした両雄の間で結ばれた深い友情! 実に美しい光景です! ありがとう! ありがとう選手たち! うう もうガマンできない!! サイトさんステキ~!! サイトさんサイコ~!!』 興奮のあまりマイクをかなぐり捨て、グラウンドへと飛び出すシエスタ。 その行動を皮切りに、興奮が頂点に達した観客たちが、次々と飛び降りてくる。 万人の祝福の中、やがて、ルイズの小さな体が3度、鮮やかに宙に舞った。 ―それは、ハルケギニアに初めてサッカーが誕生した瞬間だった。 いくつもの問題を国家間に抱えるハルケギニアの地は、今後も幾度となく難局にさらされる事になるだろう。 しかし、彼女たちの情熱が、現実の壁を突き崩す一矢になる事は間違いない。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5960.html
薄暗い部屋の中、外から聞こえてくる剣戟と魔法による爆音に、そこにいる子供たちは、ただ脅え震えていた。 その部屋にはメイジもいたが灯りの魔法をかけようとはしない。灯りに気づいた外の怪物が襲ってくるのを恐れているから。 本当に灯りをつければ怪物が襲ってくるのかと言えば、そうさせないために外ではメイジたちが怪物と戦っているのだが、恐怖は人の冷静な思考を奪う。 「どうしてこんなことになったんだろう?」 ポツリと呟かれた子供の声。 それは、このハルケギニアの誰もが一度は抱く答えの出ない疑問。 その言葉に、部屋にいるピンクブロンドの髪の少女がビクリと震えたことに気づいた者はいない。 超時空放浪の使い魔 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし"使い魔"を召喚せよ!」 それが何度目の失敗を経た詠唱なのかは、もはや本人にも分からない。しかし、何度もの失敗の後ついに召喚の門は開き彼女の前に使い魔となるべき存在が現れる。だが……。 「あんた誰?」 自分で呼び出しておいてコレはないだろうと思うが言わずにいられない。 使い魔といえば、普通に思い浮かぶのは黒猫かカラス。凄いものならドラゴンなどの幻獣。しょぼくてもネズミ辺りの小動物だろう。しかし、自分の目の前に現れたのは何なのか。 自分はメイジだと言わんばかりに手には杖を持ち、マントを身につけた冴えない顔に頼りない表情。 粗末と言うほどではないにしろ薄汚れボロボロになった、貴族ならまず着ないような服装の少年。 そんなものが現れて冷静でいられる者がいるわけがない。 「誰って、ヘインって名前の魔導師だけど……」 「魔導師? ってメイジよね。アンタ貴族なの?」 人間を、しかも貴族を使い魔にしたメイジなど聞いた事もない。いったいどういう事なのかと困惑するルイズだったが、ヘインと名乗った少年もまた困惑の極みにあった。 「メイジにはなったことがあるけど、貴族になったことはないよ……」 デーモンロードの召喚に失敗して魔界に連れて行かれなければ、貴族にくらいなれてたかもしれないけど。一応英雄の仲間だし。 呟いた後半の言葉が届く前に、ルイズは怒鳴るように背後に声をかけた。 「ミスタ・コルベール!」 「なんだね。ミス・ヴァリエール」 答えたハゲ頭の中年男子にルイズは要求する。 「召喚のやり直しを要求します!」 「何故そうなるのかね?」 「だって、人間ですよ! それにコイツ貴族の地位を剥奪されたメイジですよ。そんな奴を使い魔にしろって言うんですか!?」 貴族はすべからくメイジであるが、メイジが全て貴族というわけではない。そして、貴族でないメイジはかなりの確率で犯罪に携わっている。そんな者を使い魔にすることを潔癖な少女は容認できない。どうせ使い魔にするなら自分に相応しい神聖で美しくそして強力なヤツがいい。 まくし立てるが現実は無常である。コルベールはやり直しを認めない。 そんな2人のやり取りを見て、少年はふと思いつく。 「えーと、ルイズだっけ? その子は使い魔を召喚したかったんだけど、出てきたボクに不満があるってことだよね?」 横から口を出され不満になるルイズだが、その通りだと頷く。 「それなら、ルイズに召喚されたボクが更に召喚して、それを使い魔にすればいいんじゃないかな?」 「そんなことができるのですか?」 信じられない。と言うコルベールに少年は頷き、「神聖で美しく強力なのがいいんだよね?」と懐から召喚のための道具を取り出す。 「それは?」 「ワセリン」 ペタペタと何かを体中に塗りたくり、今度は鉄アレイを取り出しなにやら呪文を唱えると少年の前方に光が満ち、ソレが現れた。 「これが……神聖で美しく強力な使い魔……?」 「うん」 答える自信満々な少年の前に立つ生き物。それは体長3メイルを超える巨人であった。 ソレはいい。ソレはいいのだが……。 筋骨隆々とした体躯を包むのは、パンツただ一枚。体は何かを塗っているらしくテカテカ艶光り、スキンヘッドの頭を乗せる顔は、何か言いようのない笑みを浮かべている。あと丁度、股間がルイズの顔の高さにあるのがかなりイヤだ。 「却下」 「えー!? 何が気に入らないって言うのさ」 「全部よ。全部! こんなの連れて帰って使い魔だって紹介したら何を言われるか分からないわよ。いっそ、召喚に失敗したって馬鹿にされる方がマシよ!」 「しょうがないな。じゃあ、とびきり最強のヤツを召喚するよ」 不満たらたらの様子で、少年はまた何かを取り出し呪文を唱える。 と、今度は黒い煙が生じ、それが集まり形を作る。そして現れたのは……。 「何……これ……?」 側頭部に曲がった角を生やし、赤く輝く三つ目を持つ髑髏。そんな頭と猛禽のような爪を生やした両手以外を赤き衣で隠した禍々しき巨人。人の身では、けっして抗えない力を内包していることが見て取れるそんな存在。 「混沌の王カオス。分かりやすく言うと全てのモンスターの親玉ってことになるのかな?」 「とんでもないもの召喚するんじゃないわよ! そんなの使い魔にできるわけないでしょ!」 「もう、わがままだな。分かったよ。ボクが召喚できるモンスター全部出すから、好きに選んでよ」 「ちょっ」 止める間もなく、少年は次々と召喚していく。 小さな妖精、巨大な蜘蛛、美しき天使、神々しいドラゴン。他にも様々なものを召喚したあと少年は言う。 「これだけいれば、一匹ぐらい気に入ったのがいるよね。じゃあ、ボクは行くから」 「行くってドコに?」 「生まれ故郷の大陸を探してる旅の途中なんだ。じゃあね。 行くよ兄貴!」 最初に召喚したスキンヘッドの巨人に声をかけると、巨人はイイ笑顔をして少年を持ち上げ。そして飛んだ。 そうして、少年が巨人と共に飛び去り。彼が召喚したモンスターが残され「ちょっと、これどうするのよ」という少女の声は虚空に消えた。 どうしたものかと、少年が召喚したモンスターたちを見回して、ルイズはイヤなことに気づいてしまった。 少年が兄貴と呼んだ巨人以外は皆、虚ろな目でただそこに鎮座していたというのに、彼が去った途端モンスターたちの目に正気の光が戻りはじめたのだ。 光の女神ルシリス。それは、混沌の王と対極に位置する存在である。 ふと気づくと、彼女は見知らぬ地に立っていた。何故こんなところにいるのかと疑問を抱いたが、その疑問はすぐに吹っ飛んだ。 彼女のすぐ側には、自身の大敵たる混沌の王が存在していることに気づき、あちらも彼女を認識してると知ったからである。 「カオス。何故あなたがこんなところに?」 「さあな? しかし、そんな事はどうでもいいことではないのか?」 その通りだ。光の女神と混沌の王は決して相容れない存在であり、お互いを容認することはない。 「そうですね。見れば、あなたは現身のようです。聖剣などなくとも、ここで打ち滅ぼしましょう」 「それは、お互い様だろう」 自分や混沌の王は、簡単に召喚できるような存在ではないが、召喚魔法の使い手が特定のアイテムをそろえた場合、その術者に分身である現身を送ることがある。そうして召喚された存在は普通術者の命令を聞くだけの傀儡のような物なのだが、どうやら今の自分達は、術者の制御を離れ本体の自我を得た状態らしい。 見回すと、同じように召喚されたらしい者達が周囲におり、光の眷属はルシリスの闇の眷属はカオスの周りに集って行き、お互いの王の号令を待っている。 そうして、この地での光と闇の戦いが始まった。 結論から言うと、ここでの戦いは決着がつかなかった。ルシリスにしろカオスにしろその本質は、自身の元で戦う者に力を与える者であって己が戦う存在ではないのである。どれほどの力を持っていても、自身と同格の力を持つ者を倒すことは出来ない。 故に彼らは、この場での決着をあきらめ、自身の加護を受けるに相応しい勇者を求めて去ることになった。 そして、両者が立ち去ったその場には、何事が起こったのか理解できていないルイズたち学院の生徒と、何体かのモンスターの屍が残され、学院はいくらかの調査を行ったが、その時に作られた書類には、ルイズの使い魔召喚の失敗と落第の結果だけが記された。 その後、しばらくしてハルケギニアの様々な地で多くのモンスターが現れ人を襲うようになる。それを指揮していたのは、ガリアの軍であった。無能王と呼ばれた男が、混沌の王と手を組んだのだ。 その強大なモンスターたちの力にハルケギニアは即座に制圧されるかと思われたが、そうはならなかった。 ガリアが混沌の王の力を得たように光の女神の力を得た者もまた現れたのだから。 アルビオン王国皇太子ウェールズ・テューダーである。 貴族派との内乱でもはや風前の灯だと思われた王党派であったが彼らは光の女神の加護を受け力をつけ、またハルケギニア中を襲ったモンスターの標的にはアルビオンも含まれていた。 アルビオンのほとんどを制圧していた貴族派はモンスターの対応に追われ、いつしか光の女神の加護を受けた王党派に押し返され王国の支配権を奪い返されていた。 そうして、ハルケギニアは、光の女神の加護を受けたアルビオンと混沌の王と契約を結んだガリアの二国による戦場になるかと思われたが、そこにロマリアが横槍を入れる。 ブリミル信仰以外を認めないロマリア教皇は、光の女神を認めず、アルビオンもガリア同様滅ぼすべき敵だと断じたのだ。 こうしてハルケギニア全土を巻き込む戦争が始まり、三国以外の国は、モンスターに襲われてもブリミルを信仰するが故にアルビオンに助けを求めることができず、自国の軍にのみ頼り脅える生活を強いられることになったのであった。 ぶっちゃけルイズのせいである。 その後、トリステイン王女アンリエッタがウェールズ王子と結ばれ、アルビオンとトリステインが同盟を組んだり、ルーンストーンを使いまくって火水土風の全ての属性のスクウェア・スペルを使いこなし1人でヘクサゴン・スペルだって使えるようになったウェールズがカオスを倒し、最終的には滅んだロマリアやガリアを支配する偉大な王になるのだが、それは別の機会に語られることもあるだろう。
https://w.atwiki.jp/oeidrerheui/pages/49.html
死の大陸からのテキスト起こしをする必要がある。 死の大陸に流れ着いた一行。 ジェイは酷い目にあった、と怒りだしてパーティから抜ける。(後先考えず、突発的に抜けるのである) 「ばかやろう!俺は今急いでるんだ!なのになんでこんなところに!お前らのせいだぞ!」 ディノ「そんなこと言われても…」 マリミリ「しょうがないわ!」 ジェイ「一刻も早くここから出るのにガキがいたんじゃ足手まといだ。俺は行くからな!!」 3人で彷徨っていると、寺院が見えてくる。そこに、ジャックスがいる。 (当初の予定だと、首から下しかなく「顔を探してくれ!」と言われる予定だったが、演出が難しいなら考える) そして、久々に人間と会えた、そしてそれがレックスの息子だと知り大喜びのジャックス。 ジャックス「もう10年近く、人と話してなかったんだ!だからとっても嬉しい!(喜びの舞)」 ディノ「10年かぁ~そりゃ長かったな」 ジャックス「最後に話したのは、レックスという冒険家だったよ」 ディノ「…それ俺の親父だ」 「わお!本当ですか?!」 という流れ ミリア「アンデットにも怖いもんがあるのねー」 マリア「……(ちょっとビビっている)」 しかし、夜な夜な恐ろしいモンスターの鳴き声が聞こえて怖くてしょうがないという。 どうやら、巨大な船に乗った黒装束をまとった男たちが、ここから東の洞窟に何かを遺棄しているらしい。 それがもしかしたらモンスターかもしれない、という。 そこでジャックスがパーティインし、一緒に東の洞窟に行くことになる。 そうしたら、死の大陸の枯れ果てた森と、洞窟などのダンジョン、ゴーストタウンなどを攻略する。 ボスはバランス良く配置。 洞窟のダンジョンに失敗した生物兵器が遺棄されているが、その中の一匹がこの地で息を吹き返し、大暴れしていた。 圧倒的な強さにびっくりする一行。一旦は逃げる。 隠れている間に、レックスとの思いでやらジャックスの内面がちょろっと語られる。(次に再登場の伏線?) しかし、またモンスターがやってくる気配がして戦うこととなる。 黒装束がモンスターの返り打ちにあって死ぬ場面などを目撃する。 その後、黒装束の乗ってきた船を使い、大陸を脱出する。 ジェイは「あんな酷いこと言ったのになんで探すんだよ、お人よしだな」と戻ってくる。 ジャックスとはお別れ。 その後船が勝手に動き、帝国の監視をくぐりぬけ、知の泉アカデミアに到着する。 そこで、父親の地図と、リューインという男の存在を知る。 エデンの研究がされてたりする。 そこを後にすると次につくのはゴドウィンである。 またジェイは「ここに用があったんだ」と抜ける。 出来ればジェイ視点の操作、できなければ普通にディノ目線の操作になる。 何度も書いてるのでここでは割愛。 脱出すると、ヴィクターに言われた渓谷が見える。そこ以外どこにも行きようがないのでそこへ行く。 そこで犬族の人たちとガイドがどうとかでもめる 犬族の勇気ある青年、ウィラムが案内してくれる。 ウィラムを裏切るのが、ジェペだが弓の名人であり、結局は助けてくれる。 ウィラムは10年前の騒動を話してくれる。そのレックスが欠片を持って言ってしまってから災いが起きたというのだ。 ディノはさすがに肩身が狭い。しかし、帝国がクリスタルを奪っても悪だくみに使えなかったという部分は無視?している 犬族としては神聖なクリスタルを持ちかえったというレックスは迷惑な存在である。 とりあえずこの辺は後回しにして ジェペは村を裏切って侵略者(帝国)側に行ったと思われていた。 村中で裏切り者と言われていたが、ディノに助けられ改心し、村を助ける(弓矢で) ディノというより双子の方がいいかもしれない。 ジェペは敵側の一員で村への道案内をしていたが、夜中に罠を解除しようと森を探索していたところ、罠に引っ掛かってしまい、 足を負傷する。そこをマリア(かミリア)に見つかってしまう。 「あなた・・・?だあれ?」 「クソ、見つかっちまった。こんな姿じゃいずれ殺される。良いから早く村のもんに俺を差しだすんだ」 「…なんだかよく分からないけど、いやよ」 「お嬢ちゃん、俺が足をケガしてるからって逆らっていいってわけじゃないんだぜ」 「ちょっと待ってて!」 とマリア(ミリア?)が傷の手当てをしてくれる(ミリアだとケアルであっという間なんだけど) 「…おまえはいったい?」 「おーい、そこに不審者はいなかったか?」 マリア、ひたすらに首を振る。 後でマリアがピンチになったときに弓矢で助けてくれる。 そこで、犬族の○○とジュペが対峙 「裏切り者め!のこのこ帰って来やがって!」 その喧嘩はともかく、帝国と初めてここで相まみえるのだ。 最初に出迎えるのは、ノーバード・ヴォルケンシュタイン大佐である。 そこでクリスタルとディノの持っている欠片が揃ったところで、風のクリスタルの力が元に戻りそれを奪おうとしているのだ。 帝国に奪われると、実験に使われ、ダーククリスタル化してしまう。ダーククリスタル化すると、ヴィクターのところに持っていかれて、 残りかすを抽出して製品を作るのである。 そして、ジュペと青年は仲直りはするがやってきた帝国によって軒並み集落を荒らされ、さらに村民を皆殺しにしようとしてくる。 (こういうのはヴィクターの方がいいのか?帝国=悪だからここは大佐にやらせるか) ジュペと青年たちで助けて逃げ出すが、ディノたちは逃げ遅れてしまう。 そこで、テレジアが助け船を出してくれる。 これは、例えば道が崩壊しただとか、崖から落ちそうだとかそういう大きなピンチを用意できる。 双子が光を浴びて悲鳴を上げる。 テレジアの城 飛竜が下ろしたのは氷の城の前であった(出来れば5のような城の真ん中が良いけど、それは演出次第) 降り立った時に双子たちが「なんだか懐かしい感じがする…」などという。 主人公たちはとにかく城の中を進み、テレジアのいる間まで行く。 城の中にはモーグリとか可愛いものが働いている。 間につき話しかけると、 「無事だったのね。良かったわ」 「まぁ、二人ともこんなに大きくなって…」とイメージとしては双子に抱きつくのだがゲーム画面だとどうなるのか。 「貴方は…?テ…レジア?」 ↑どこかで双子の寝言で「テレジア…」と言っている場面がある。 ディノ、双子が異世界の初対面の女性の名前を呼ぶのにびっくりする。 テレジア「私のこと、忘れないでいてくれたのね」 双子「でも、貴方の名前しかわからないわ!」 テレジア「少し長くなるけど話を聞いてくれるかしら」 「私は昔、アネットという師匠と二人でここに暮らしていたの 回想 アネット「テレジア、魔法の力はね、正しく使わないといけないのよ。間違った使い方は全てを滅ぼしかねないわ」 テレジア「はい、お師匠様」 場面暗転 エヌオー(若い見た目)「お前が一番の魔道士と名高いアネットか。弟子入りしたいんだ」 アネット「よろしいでしょう。何が一番と呼ばれる所以か、その目でお確かめなさい」 エヌオー「…(偉そうに言いやがって、などと思っている)」 暗転 テレジア「アネット様、あのようなぶしつけな男をなぜここに置くのです?」 アネット「来るものは拒まず、去る者は追わず、よ。弟子入りを断る理由はないわ」 テレジア「でも…」 暗転 エヌオー「こんなんじゃまだ弱い!もっと強い魔法があるはずだ!あの女俺には絶対に教えないつもりだな!」 テレジア「なんて口をきくの!いい加減になさい!」 「だまれ!」 ドカッ! と殴る動作。 エヌオー、アネットの部屋の書物を勝手に漁っている。 実はこの氷の城に、最強魔法のアルテマが封印されていて、それをしったエヌオーがそれを探しに行く。 封印されているのはアルテマ・メテオ・メルトンの三つである。 追いかけるも時すでに遅く、メテオ・メルトンは取られている。 アルテマを奪われるのを阻止しようとしたら、アネット、アルテマを食らい重傷を負う。 息も絶え絶えの中、アネットエヌオーにオールドをかける。 しかし、それは解放した時だけで、エヌオーが修得するには至らなかったorアルテマが使える、どっちがいいのか。 悲しみに暮れたテレジアは、ワールドのあちこちに頒布している、復活の秘儀の書を使い、師匠を蘇らせようとするが、 涙で手元が狂い、魔導を暴走させてしまう。 双子が流れた時と、レックスのワープの時期は一緒か?双子が流れた時に、レックスがワールドに飛ばされたなど そして、それを利用した機械帝国による魔道士迫害、機械の台等…など。 となると、これは12年前になる。12年前には機械帝国の基礎は出来てないといけない。 双子はその時に手違いで魔動が暴走し、生まれた生命体であると告げられる。 ひとまず休みなさいと言われる。 城のバルコニーで悲嘆にくれる双子。 マリア「お父さんとお母さんがいないなんて・・・ ミリア「私達はいったい何者なの? ジェイ「どんな出生だろうとお前らはお前らだよ 落ち込むな ディノ「マリアとミリアは俺の大事な仲間だよ 次の日 テレジア「昨日は重い話をしてしまってごめんなさいね。 マリミリ「… 「…あんまり好いてくれてないのね。残念だわ。 テジレア「ところで、クリスタルを狙っているのはやっぱり機械帝国だったようね。 ディノ「俺のこの欠片と何か関係が? テレジア「あのような機械をどこかで作っているはずなの まずはそこを潰すべきだわ 飛竜で探していると、ハイラント編になる。 ケガした飛竜を手当するアーデルハイトという少女 避難民と戦争 死の商人とミーデルフォン 混乱する国内に焦りを募らす王女 復興を手伝うことになった主人公一行。 復興しないかぎり、飛空艇を手に入れることができないからだ。 レックスの地図にアルビオンの山の所在地が描かれており、そこへ向かう。 アルビオンのいる間に辿り着くが、アルビオンは深い眠りについている。どうしても反応してもらえないどころか、 山に悪性の霧が立ちこめ、退去せざるをえなくなる。 霧から離れた場所で野宿をしていると、アーデルは夢の中でアルビオンと対峙する。 アルビオンは泣いて懇願するアーデルをただ見つめるだけである。 下山し、失意の中国へ戻ったアーデルにさらなる試練が待ち受ける。 クーデターが起こり、国がさらに混乱していたのである。国内には機械帝国の軍がなだれこんでいた。 そこで、機械帝国の軍人と一騎打ちになるが、不利な状況でピンチに陥る。 その時心の底から民を救って欲しいと願った時に、アルビオンが飛んでくる。 アルビオン
https://w.atwiki.jp/daoine/pages/400.html
グラオザントラント(PixivファンタジアⅤ) ガルガディア帝国東部にある地域。 ガルガディア帝国東部にある地域、 あるいは東部全体を示す地名であると思われる。 聖帝国騎士団、アルビオン軍ら各部隊と共に ガルガディア帝国軍の主要戦力にその名がある。 ■ 語源はドイツ語のGlau(灰色)Sand(砂)Land(地・国)と思われる。 Glausandlandで「灰砂の地」の意か。 .
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5809.html
前ページIDOLA have the immortal servant 六人と一匹を抱えているシルフィードは今ひとつ本来の速度を出すことができなかった。 だが、レコン・キスタは、オルガ・フロウとの交戦に手一杯だった。 ウェールズとジェームズ一世の脱出も知る由がなかったし、察知できたとしても、その場合は追撃部隊を最優先でオルガ・フロウが叩く。結局はシルフィードを追うことなど叶わなかっただろう。 一行は敵に追い立てられることも無くアルビオンを離脱し、夕方頃にはトリステイン魔法学院の近くまで無事帰ってくることができたのである。 その間キュルケ達はデルフリンガーから『女神の杵』亭で別れた後の経緯の説明を受けていた。ルイズから話を聞こうにも、アルビオンを脱出してからこっち、殆ど放心状態だったからだ。 「先住で、人間に姿を変えられる者もいる」 フロウウェンの変身について話が及ぶと、タバサはそう口にした。事実として、彼女の使い魔であるシルフィードがそうなのだ。 「じゃあ、あれがおじさまの本来の姿だって言うの?」 「わからない」 タバサは首を横に振った。あれが本来の姿なのか、それとも一時的に姿を変えられるのか。テクニックの類ではないとも言い切れないが、少なくともルイズもデルフリンガーも、あれを知らなかったようだ。 シルフィードが肩越しに振り返ってタバサを見やる。 主の話に、シルフィードは補足を入れたかったが、口にヴェルダンデを咥えたままで何も喋れないのがもどかしい。最も、何も咥えていなくても、タバサは皆の前でのシルフィードの発言を許してはくれなかっただろうが。 シルフィードがあれに感じたのは、本能的な恐怖だ。それを後押しするように、精霊達があれは忌むべきものだと教えてくれた。 「デルフリンガー。マグは何か知らないの?」 マグはフロウウェンの文明の防具であるが、独自の意思と知性を持っている。そしてデルフリンガーはマグとの意思疎通が可能であった。それを思い出して、キュルケが問う。 「マグは、あれは自分達とは似てるが違うって言ってるな。俺もあれを見てから、なんか引っかかるものはあるんだが、一向に思い出せねえ。まあ……何だ。思い出せたらすぐ知らせる」 困ったような声でデルフリンガーが答える。 「おじさまに関しては、現時点じゃ、情報が少なすぎるわね」 キュルケが肩を竦めた。 「ワルド子爵について。情報の漏れ方からして、白い仮面のメイジは遍在」 タバサが言うと、ウェールズが頷いて、その推論に同意する。 「恐らくはそうだろうな。だが、レコン・キスタとは袂を分かつような口振りだった。だとするなら、何故ラ・ヴァリエール嬢や僕に襲い掛かったのだろうな」 「クロムウェルは虚無の力を持つと、噂が流れたことがあろう」 それまで話を黙って聞いていたジェームズ一世が静かに口を開いた。 「それが『アンドバリ』の指輪を根拠にしたものだとしたら、虚無に魅せられて従う者もおろう。じゃが、秘密さえ知ってしまえば子爵にとってレコン・キスタは不要。 大方、手柄を立てて信頼を得て、クロムウェルの寝首をかこうと思ったのではあるまいか」 一同はなるほどと頷いた。確かに、それならばワルドの行動にはつじつまが合う。 そうすると、ルイズに求婚していたのは、虚無の力を欲するが故の行動ということになる。 やっぱりろくでもない男だった、とキュルケは溜息をついてルイズの方を横目で見やるが、彼女はワルドの話が出ても無反応で押し黙ったままであった。 やがて、草原の向こうにトリステイン魔法学院が見えてくる。すると、学院からもこちらの姿を確認したのか、学院上空を舞っていたマンティコアが編隊を成し、シルフィードに向かって飛んでくる。 「私はトリステイン王国魔法衛士隊マンティコア隊隊長、ド・ゼッサールである。貴公らは何者か!」 マンティコアの背に跨る、髭面の男の誰何の声が飛んだ。 「こちらにおわすのはアルビオン王国国王ジェームズ一世陛下であらせられる。私はアルビオン王国皇太子ウェールズ・テューダー。至急、アンリエッタ王女陛下に取り次ぎを願いたい」 「へ、陛下と、皇太子殿下にあらせられる!? こ、これは知らぬこととは言えとんだご無礼を……!」 隊長は二人の顔を認めると、蒼白になって帽子を脱いだ。 「このような状況では詮方ないことだ」 ウェールズは笑う。ド・ゼッサールはその言葉に胸を撫で下ろした。 マンティコア隊が一行の周囲を飛んで守りを固め、ド・ゼッサールは一足先にジェームズ一世到着の報をアンリエッタに知らせる為、魔法学院へと飛んだ。 一行はマンティコア隊に中庭へと誘導される。シルフィードが着地し、ウェールズとジェームズがその背から降り立つと、アルビオンの貴族達が歓声を上げて二人に詰め寄った。 「陛下! 殿下! ご無事でしたか!」 「突然ゲートが閉じてしまったので、何が起きたのかと心配しておりもうした!」 「あいや、各々方。心配をかけた。これこの通り、朕らは健在であるぞ」 ジェームズ一世が言うと、一同は笑い合った。 「アンリエッタ姫殿下と、オールド・オスマンがお待ちしております。こちらへ」 「うむ。では参ろうか」 ド・ゼッサールが、一行を本塔へと案内すべく先導する。アルビオン王党派が口々に謝意を述べて一行を見送った。 後になって聞いたことだが、突然ゲートが消えたのでかなりの混乱があったらしい。アンリエッタとオスマンが宥めたので一先ずは落ち着いたが、二人の身に何かがあれば、アンリエッタはかなりまずい立場になっていただろう。 そんな経緯もあって、アルビオン貴族達は国王と皇太子の身を案じていた。その反動故か、二人が顔を見せた時の王党派の喜びようといったら凄まじいものがあったのである。 学院長室にルイズらが通されると、そこにはアンリエッタとオスマンが待っていた。 アンリエッタはウェールズとジェームズに微笑みかけたが、一行の中に血と泥で汚れたルイズを認めると、血相を変えてルイズに駆け寄り、彼女を抱き締めた。 「よ、汚れます。姫さま」 「汚れがなんだというのです。ルイズ。ああルイズ。よく無事に帰ってきてくださいました」 「姫さま……」 アンリエッタのねぎらいの言葉に、ルイズの頬を涙が伝う。 「怪我をしているのですね。ルイズ」 ルイズはあちこちを擦り剥いていたが、アンリエッタが治癒の魔法でそれを塞いでくれた。 「勿体のうございます。姫さま……。どうか、わたしなどのことより、陛下と皇太子殿下を」 「ルイズ……」 アンリエッタはルイズと数瞬の間見詰め合っていたが、彼女から離れると公人の顔に戻り、ジェームズとウェールズに向き直って恭しく挨拶をした。 「陛下。ウェールズさま。遠路、よく参られました。トリステイン王国はアルビオン王家を心より歓迎致しますわ」 「此度の姫の御厚意、誠に痛み入る。朕と、朕の臣民らに代わり、心より御礼申し上げる」 それから、アンリエッタは二言三言、ジェームズと言葉を交わすと、キュルケ達に言う。 「あなた達も、よくルイズを助けてくださいました」 「勿体無いお言葉にございます」 「ワルド子爵と、ルイズの使い魔が見えないようですが?」 一行を見渡して、アンリエッタは尋ねる。 「子爵は……貴族派の手の者でした」 「そんな……魔法衛士隊にまで裏切り者が……?」 その言葉に、アンリエッタは衝撃の色を隠せない。 ルイズの婚約者ですら裏切りを働くとは、最早誰を信じればいいのかすらわからない。 「やはり……『アンドバリ』の指輪の力ですか?」 「いいえ。ワルド子爵は自分の意思で動いていたようです。わたしの使い魔は……」 ルイズは俯いて言い淀む。 「フロウウェン殿は、朕らを逃がす為に囮となってアルビオン艦隊の足止めに向かった」 ルイズの言葉を、ジェームズが引き継いだ。アンリエッタはルイズとジェームズの顔を交互に見て、蒼白になった。 「そ、それでは彼は……!?」 「アルビオンに残られた。かの者がいなければ、朕らは生きてトリステインの土を踏むことも無かったであろう」 「そんな……。一体何があったというのです!?」 アンリエッタの言葉を受けて、キュルケがデルフリンガーから聞いていた顛末を語る。 傭兵の襲撃。ラ・ロシェールからの脱出。空賊に偽装したウェールズと出会ったこと。亡命を決めた矢先の艦の消失。ワルドの裏切り。フロウウェンの変容。アルビオンからの脱出。 傍らで涙を堪えながら話を聞いているルイズの姿が、アンリエッタの目に痛ましかった。ルイズの心はどれほど傷つけられたであろうか。 ワルドを同行させさえしなければという後悔と自責の念に駆られ、アンリエッタは目を伏せた。 しかし、ルイズが自分から志願しなければ、恐らくアンリエッタはワルド単独で密使を送ることになっていたはずだ。 その場合、王党派の亡命も無かっただろうし、手紙は奪われ、『アンドバリ』の指輪の情報を掴んだことが、ただ漏れてしまうだけという最悪の結果に終わっていたはずだった。そういう意味では、アンリエッタに運があったのだと言える。 オスマンが口を開いた。 「姫。ミス・ヴァリエールは長旅で疲れておる様子。詳しい話は後日伺うとして、今日のところは休ませてやるのがよろしいでしょう」 その提案にアンリエッタは頷き、一行は学院長室から退出した。 退出した途端、全て終わったという実感が押し寄せてきて、ルイズの身体から力がどっと抜けていった。 ルイズは俯いて、嘆息した。改めて自分の身体を見れば、酷い有様だった。 『エア・ハンマー』で弾き飛ばされ、鍾乳洞を転がった時に付いた泥。それからフロウウェンの血。それらで衣服は勿論、髪も、顔も、手も、足も汚れていた。 ブラウスについた血の痕を見ながら呆然としているルイズに、キュルケは首を横に振る。それから、彼女の腕を取った。 「何よ、ツェルプストー……」 いつもなら自分が触れようものなら烈火の如く怒り狂うであろうルイズだが、振り払おうともしない。相当重傷だ。 「まずはお風呂よね。長旅で汗でべた付いて、気持ち悪いったらないわ。着替え持ったらみんなで大浴場行くわよ。じゃあ、またね、ギーシュ」 「ん? あ、ああ。また」 キュルケはそのまま有無を言わさず、ルイズを引っ張っていく。タバサもそれに着いていった。 「……女の子同士の友情、か」 ギーシュは三人の後ろ姿を羨望の眼差しで見送りながら、溜息をついた。 ルイズとはそれほど親しかったわけではないが、最近何故か行動を共にする機会が多かった。 あの勝気なルイズが、あんなに落ち込むのを見るのは、初めてだった。 「やっぱり……誰であれ女の子の悲しむ顔は、見たくないな」 モンモランシーや姫殿下が、笑顔でいてもらう為に。自分には何ができるのだろう。 生きて帰ってこれた喜びも束の間のものだ。自分は兄達と違って魔法の才能に乏しい。 だが、もう少しできることはあるはずだ。 生徒達が平時に利用する時間とはズレていたので、大浴場はキュルケ達の貸切であった。正確には、大浴場の掃除に来ていたシエスタがいた。 「ど、どうしたんですかっ! ミス・ヴァリエール!?」 乾いた血と泥と涙と汗の痕で、ルイズは普段の毅然とした姿が想像できないほどボロボロだった。思わず詰め寄って、シエスタは事情を尋ねていた。 「あなた。名前は?」 隣にいたキュルケが問う。 「シエスタ、です」 「もしかしてヴァリエールと親しいの?」 「いえ、その。ヒースクリフさんとよく話をしているもので」 「そう。おじさまと……」 キュルケは目を閉じると、アルビオンに行ったことと、やむなくフロウウェンが敵の目を引き付ける為に囮として残ったことを、掻い摘んでシエスタに説明した。シエスタはその言葉に衝撃を受けたらしい。 「じゃ、じゃあヒースクリフさんは!?」 「わからないわ」 青い顔で問うシエスタに、キュルケは首を横に振った。 「あたしは、無事だって信じてるけどね。ねえ、シエスタ」 「……なん……でしょうか」 「あなたも一緒にどう?」 キュルケは大浴場の湯船を指差して言う。 「え?」 いきなり何を言い出すのだろう、ミス・ツェルプストーは。自分にも一緒に入れ、ということだろうか。 だが、貴族の風呂に平民が入ることは許されてはいないはずだ。 シエスタが戸惑っていると、キュルケは声を潜めて、シエスタに言った。 「ヴァリエールがあんなだし、ちょっと頼めないかしら。あたしとヴァリエールは不倶戴天の敵だし、ね」 不倶戴天の敵などと言いながら、彼女はルイズのことを気にかけているのだ。それが解ったから、シエスタは頷いた。 シエスタはタオルを身体に巻くと、ルイズを座らせ髪を濯ぎ、次いで泥と渇いた血と汗を、桶に汲んだ湯で丁寧に洗い流していく。その間も、心ここに在らずといった調子で、ルイズはされるがままであった。 華奢な身体だった。白蝋のような肌理細やかな肌はシエスタから見ても羨ましいくらいだが、暗く沈んだ表情と合間って、余計に弱々しく見える。 シエスタはルイズが学院でどんな立場であったかを、見て知っている。それでも、こんなにルイズが小さく見えたことは無い。 いつも胸を張って歩いて、気難しい拗ねたような顔をして、小さな身体でも精一杯自分を大きく見せている少女だった。 それでもフロウウェンが来てからは、肩肘を張るようなところが少なくなって、自然に振舞うようになってきたと思う。そんな少女に、始祖ブリミルはどうしてまた大事な人を取り上げてしまうような運命を課すのだろう。 ブリミル教の司祭あたりならこれも試練などと言いそうなものだが、ブリミルはメイジ達の崇める存在であるし、シエスタは殊更信心深いというわけでもない。ただ、ルイズが気の毒で、フロウウェンの身が心配だった。 ルイズの身体を一通り洗うと、その手を引いて湯船に導くと、縁に背を預けさせた。 「…………」 キュルケに連れられるまま大浴場に来たが、自分はどうしてこんなところにいるのだろう、何をしているのだろうと、ルイズは自問する。取りとめの無い思考が頭を埋め尽くす。 疲労と湯船の心地よさで鈍った思考では、考えは少しも纏らなかった。ただ、フロウウェンのことだけが、片時も頭を離れない。 フロウウェンはどうなったのだろう。こちらの合図に気付いて、ちゃんと逃げてくれただろうか。 (どうして、あの時わたしは―――) 皆、ルイズの側にいたが、あまり多くの言葉は発しなかった。大丈夫だと安請け合いなどできないし、慰めを口にすればフロウウェンが帰ってこないことを認めてしまうことになる。 側にいてやることぐらいしか自分達にできることはない。けれどそれは、今は気付かなくても支えになってくれるものだと、タバサもキュルケも、シエスタも知っていた。 戦闘の時間はわずかだったが、レコン・キスタの被った損害は計り知れなかった。陸軍は兵器も軍馬も使い物にならず、負傷者を見れば怪我をしていない人員を数えた方が早いという惨状だ。 では空軍はといえば、あの短時間の戦闘の間に多数の艦が航続能力を失くし、竜騎兵も多数が撃墜され、相当な被害を受けた。 だというのに、死者の数は全軍が受けた損害の割にはさほどでもない。その内訳の殆どは陸軍では仲間に踏み潰された結果だとか、空軍の場合、同士討ちの流れ弾や竜が撃墜されて逃げ遅れたというものであった。 水の秘薬はあっという間に足りなくなり、傷病兵の治療もままならない状況だ。多数の傭兵達が脱走していることも手伝って、士気もどんどん下がっている。 戦闘から二日を経過した今でもレコン・キスタは軍の立て直しができていなかった。貴族派は無人のニューカッスルを遠巻きに陣から囲んだまま、未だ恐怖と混乱から立ち直れず、あの城に近付くことができずにいるのだ。 神聖なる王権に杖を向けた報いなのではないかという噂が広がっていた。王党派の降将や貴族議会の過半数、有力なアルビオン貴族が戦闘中に突然死したことにもそれに拍車を掛けている。 実際のところは、『アンドバリ』の指輪の制御を断たれてしまったからだ。全軍で同時に起こったことである為に目撃者は数え切れず、今更指輪の力を再度行使して大っぴらに生き返らせるわけにもいかなかった。 クロムウェルが死者を蘇らせる『虚無』を用いることができるというのは、公になっていることではないからだ。 公にしてロマリアに目を付けられてしまえば、虚無を標榜した以上は力を見せろと審問されるだろう。精査されれば指輪の力がバレてしまう可能性がある。 また、『アンドバリ』の指輪自体が伝承やら御伽話の類として伝わっていて、クロムウェルの能力に思い当たる者がいないとも言い切れない。 だから、神秘性を高めることで自分のカリスマを高める手段として指輪を利用してはいたが、クロムウェルは一部の者にしかその力を見せていなかったのである。 それも、裏目に働いていた。 虚無の力が真実であってもなくても、制御が解けてしまったことで、クロムウェルの復活の魔法は完全では無いということを、その「一部の者達」に知らしめてしまう結果になった。 王権に歯向かった報いなどという噂が広まっていれば尚のこと。虚無の加護はクロムウェルになどないという結論に達してしまう。 そういった背景もあって、クロムウェルはゆっくりと確実に求心力を失いつつあった。 それでも戦さに勝てれば良いはずなのだが、ほぼ全軍を示威の為にニューカッスルに結集させていたのが致命的だった。例え、他国と結ばないトリステイン軍単独と戦っても、大敗は火を見るより明らかなのだ。 問題は「既に見えている負け戦」を、どう少ない被害で切り抜けるかという段階なのだが、これをそつなくこなせる者は古今名将と呼ばれるだろう。勿論クロムウェルに、そんな手腕は無い。 傭兵が我先に逃げ出している状況だ。レコン・キスタの現状は遅からずトリステインに伝わる。こちらから講和などと言い出せば弱っていると告白するに等しい。 クロムウェル自身もその現状を把握していた。だができることはと言えば、トリステインの貴族らが日和見で、こちらに攻めてこないことを祈るだけだ。 ガリアの援軍は期待できない。傀儡に過ぎない自分がこれほどの失態を犯せば、陰謀の漏洩を恐れてシェフィールドがそのまま刺客になることだって有り得る。故に信頼には足らないが、他に縋るものもないので邪険にもできない。 トリステインとアルビオンの立場は、たった数日で逆転していた。 「どうすればいい。どうすればいいのだ……」 焦燥し切った顔で天幕の中を右往左往するクロムウェル。シェフィールドはそれを冷やかな眼差しで見やる。自問自答するような調子ではあったが、その実自分にアイデアを求めているのが解ったからだ。 『アンドバリ』の指輪をクロムウェルに知らせたのはガリア王ジョゼフと、その使い魔のシェフィールドであったが、それは始祖と虚無を貶めてやろうという目的があったからこそだ。 クロムウェルがシェフィールドをどう思っているかは知らないが、無様に怯えて指輪の制御を手放してしまうような男を助ける義務など彼女にはない。 何より既にジョゼフの興味の対象は、あの黒い巨人に移っている。これからの流れを見届け、レコン・キスタがどうなるかに目算がついたら、シェフィールドは巨人の調査に向かうことになるだろう。 伝令の兵がクロムウェルの天幕に駆けつけてきて、報告した。 「申し上げます! ニューカッスルに遣わした使者の報告によりますと、ニューカッスル城は無人とのこと!」 「無人……?」 クロムウェルは眉を顰めた。巨人がニューカッスルを護るように現れ、王党派は行方知れず。何とも、不気味な話だ。 あの巨人さえ現れていなければ、恐れをなして逃げ出したのだと笑うこともできただろうに。 それから数刻後、ようやくレコン・キスタはニューカッスル城に足を踏み入れるに至る。 そして、ウェールズの部屋から発見されたアンリエッタの書状は、これ以上無いほどクロムウェルの肝胆を寒からしめたのであった。 自分の名を呼ぶ声と、ドアをノックする音。 ルイズは目を覚ました。 部屋は薄暗かった。空は厚い雲に覆われて、静かに雨が降っている。 「っ……」 首に手をやってルイズは眉をしかめる。 寝起きの気分は最悪だった。首が痛む。枕が無かったからだ。 ワルドにエア・ハンマーで撃たれた時に手放して、そのままニューカッスル城の港に置いてきてしまったらしい。 覚醒しきらない意識のままベッドを這い出して、機械的に扉を開ける。と、そこにシエスタが立っていた。 「……シエスタ……」 ぼうっとした表情で、ルイズが言う。 「はい。お昼になっても姿がお見えにならないので、その……」 キュルケからはそれとなくルイズを見ていて欲しいと頼まれている。シエスタ自身も同じ気持ちでいた。 「そう……。もう、お昼、なんだ」 気の無い返事を返すルイズを、シエスタは心配そうな目で見やった。 ルイズは緩慢な動作で部屋の中に戻って着替え始めた。 シエスタがそれを手伝おうとすると、ルイズは首を振って止める。 「いいの。一人でできるから」 「も、申し訳ありません。ミス・ヴァリエール」 かえって迷惑だったか、とシエスタが俯く。そんなシエスタを見て、ルイズは申し訳ないような、居た堪れない気分になった。だから視線を逸らして、ぶっきらぼうに言った。 「別に……邪魔っていうわけじゃないわ。ヒースとの約束だからそうしてるだけ。だから……そうだ。わたし昼食に行って来るから、部屋の掃除をしておいて貰えると嬉しいんだけど」 「掃除、ですか?」 「わたしの部屋、少し人の出入りが激しかったから」 王党派の避難経路に使われたということもあり、床が汚れていた。誘導にあたったアルビオン兵の手際が見事だったせいか、部屋の中のものが荒らされた形跡はないが。 「わかりました」 シエスタはにこりと微笑んで頷く。 ルイズはシエスタの笑顔を背中に受けながら見送られ、アルヴィーズの食堂に向かった。 食堂に一歩立ち入るなり、自分に視線が集まるのがわかる。 最賓の客であるジェームズ一世と、皇太子ウェールズ、王族の親類縁者は学院に逗留しているがアルビオンから亡命してきた人々は、土メイジを総動員して学院の隣に作らせた仮設の建物で過ごしている。 見慣れぬ人々が別の建物に隔離されたということもあり、学院にはどこか緊迫した空気が流れてはいたが、表向きは平穏を取り戻していた。 ただ―――ルイズがアルビオン貴族の出現に何か関係しているのではと噂が広がっていたのだ。 王党派が避難を始めたのは生徒達が朝食の為に食堂に向かってからだったので、ルイズの部屋から避難民が溢れてくる光景を目撃した者はいない。 だがそれでも、女子寮からアルビオンの貴族が出てきたことまでは隠せていない。 さらに魔法衛士隊のワルドと共に彼女が学院を出て行く姿を何人かの生徒が見ていた。 歳相応の好奇心と想像力もあって、それとアルビオン貴族を結び付ける者がいたのである。 アルヴィーズの食堂でも昼食をとるために現れたルイズらは注目の的であった。 だが、キュルケはあけっぴろげに見えてその実口が堅く、タバサに聞いてみても暖簾に腕押し。お調子者のギーシュですら、欠席中のことを聞くと歯切れが悪くなるのだ。 消去法で残ったルイズはというと、現れてみれば目に見えて暗い表情であった。 皆は彼女の纏った雰囲気に尻込みして何も聞けずにいたが、自分の顔を伺っている者が多いことはルイズにも解る。余り気分の良いものではなかった。 味もよく解らない、つまらない食事を終えて自室に戻ると、床の掃除はもう終わっていて、シエスタがベッドを整えているところだった。 戻ってきたルイズの顔を認めると、シエスタが少し申し訳なさそうな顔で言ってきた。 「ミス・ヴァリエール。あの、ベッドの中から封筒を見つけたんですが」 「封筒……?」 ルイズの反応で、シエスタは封筒の存在を、彼女が知らなかったことを悟った。 「あ。もちろん、中は見てませんよ? くしゃくしゃになっちゃうといけないと思って、机の上に置いてあります」 見れば、その言葉通り机の上に封筒が一通、置いてある。封筒には一言、「ルイズへ」と記されていた。 「……―――!」 呆けたような面持ちであったルイズは、それを認めた瞬間、大きく目を見開いて封筒に飛びついた。 慌ててそれを開いて、中に入っていた手紙を広げる。左から、右へと視線が動いて、文字を追う。 『ルイズへ。 もし、この手紙を見付けた時、オレの身に何もなく、日々が平穏であるなら、ここから先は読まずに、この手紙を見つけたことも忘れて欲しい。 そうでない時。つまり、オレがお前の前から姿を消して、帰ってこないような場合だけこの手紙を読んで欲しいのだ。そう思ってこれを認めている。 ところで、しっかりと読める文章になっているだろうか。なにぶん、こちらの文字は覚えたばかりだから、きちんとオレの意図が伝わっているかは不安が残る。実はこの手紙も、何度か書き直しているものなんだ。 ―――と、話が逸れたな。 もし、オレが自分の意思でお前の前から姿を消す時が来るなら、それはオレがオレで無くなった時だろう。 こう言っても何のことか解らないだろうから、最初からオレのことや、ラグオルを取り巻く状況を説明しておく必要があるだろうな』 ―――間違いない。これは、フロウウェンが自分に宛てた手紙だ。 逸る心を抑えて、手紙を読み進める。そこには、想像を絶することが記されていた。 パイオニア計画とラグオルの真実の姿。フロウウェンの立場。理想と現実の間で揺らぐ苦悩。 ラグオル地下の巨大遺跡。古代宇宙船内部の亜生命体。その討伐部隊の指揮を取ったこと。 生還の代償に受けたD因子の傷。正気の沙汰とは思えぬオスト博士の実験。政府の裏切り。爆発と覚醒。そして、リコ・タイレル。 まるで、物語を読んでいるようでもあり、悪夢の中に迷い込んだようでもある。 そこまで読んだ頃には、フロウウェンが何故自分の前から姿を消さねばならなかったか、ルイズも察しがつくようになっていた。ルイズの考えを裏付けるように、文面は続く。 『この星では奴からの精神への干渉を感じない。あの傷もない。だから一時は逃れられたのかとも思った。 だが、ラグドリアン湖の水の精霊がオレのことを連なる者、と言ったことを覚えているだろうか。 水の精霊は、オレの身は人の血肉を持ちながら自分達に近い物であり、しかし違う何かだという意味で『自分達に連なる者』だと言った。そして、水の精霊の知りえない不確定の要素が二つあるとも言った。 これについて、オレはこう推測する。生体AIオル=ガのコアとD因子のことではないのかと。 もしもまだ、オレの体内にD因子が存在しているのであれば、お前の近くにいるわけにはいかない。 侵食が始まらないのは、ここには本体である存在がいないからなのかも知れん。再びあの化物の姿となったとしても、奴からの干渉さえ無ければ、或いは自我を保てるのかも知れん。 だが、例えそうであっても、D因子の存在を野放しにするわけにはいかないと思っている。 これが、お前の前から姿を消さなければならない理由の全てだ』 やがて、くしゃりと、ルイズの表情が歪んで、その両目から涙がぽろぽろと零れた。それでも歯を食いしばって、手紙を読み進める。最後まで読むことが、自分の責務だと言わんばかりに。 『そうはならないことを祈っている。 オレは、ハルケギニアに召喚されたことも、ここで過ごす日々も、悪くは無いと感じている。ここは居心地が良い。だからこそ惑うのだ。ここにいて良いものかどうか。 オレがお前の前から消えた場合は……オレのことを身勝手な人間だと罵ってくれても構わない。 だが、力は無くとも意思を支えに戦うお前の姿は尊いものだ。 祖国にも理想にも裏切られたオレではあるが、お前だけには剣を捧げる価値はあると思えた。だからどうか、その心を忘れないでいて欲しい。 願わくば、ルイズの道行きに幸多からんことを』 最後に記された、ヒースクリフ・フロウウェンの署名までを読み終え、やがてぽつりと、ルイズが言った。 「……ったの」 「え?」 ルイズは嗚咽を漏らし、途切れ途切れに言う。 「ヒースが、怖かった……。わたし、助けてもらったのに……怖がったから、行っちゃったのかなって……。 わたしが、いけなかったのかなって……ヒースは、わたしのこと……こんなに、考えて、くれてた、のに……!」 手紙を握り締めてルイズは涙を零す。 シエスタはルイズの肩を抱いた。 ルイズが驚いたような表情で見上げると、シエスタは真っ直ぐその目を見詰め首を横に振った。 「ミス・ヴァリエール……わたしは良く事情を存じませんけど……そうじゃないと思うんです」 シエスタは詳しい経緯を知らない。けれど、ルイズが怖がったからいなくなったというのは、違うと思う。シエスタの目にはいつだってフロウウェンは穏やかで優しい人に見えた。 子供の頃、シエスタはタルブの近くの森で、野犬に襲われたことがある。窮地を救ってくれたのは父親だった。 野犬も怖かったが、山刀を振り回して野犬を撃退した父の形相も恐ろしくて。助かったというのに混乱して泣き出してしまったことがある。 そして、それを後悔した。 「大事な人を守りたいから、必死になるんです。それはきっと優しい姿にはなれないけれど」 フロウウェンはきっと、ルイズを笑って許してくれるだろう。悪いことをされたとも感じないに決まっている。 けれど、ルイズが後悔しているのはそういうことではない。 シエスタには解っていた。大事な人を怖がってしまった、自分が許せないのだ。 ルイズの目にまた新しい涙が溢れてきた。 シエスタの胸に顔を埋めて、ルイズはごめんなさい、ごめんなさいと謝りながら泣きじゃくる。 怖がるのも仕方ないと弁護することはできよう。だが自分が許せないというのは、他者にはどうすることもできない。 自分の場合は、後で母親に泣きついて、それから父親に謝った。 せめて―――誰かに心情を吐露することで、少しでも楽になれるなら。 シエスタはただルイズの小さな肩を抱き締めて、柔らかな桃色の髪を撫で続けた。 前ページIDOLA have the immortal servant
https://w.atwiki.jp/magicalgirlwar/pages/26.html
クロス案 いろいろ はやてとケロちゃんの地元トーク シグナム、明日菜に剣術指南 ルイズがアルフとザフィーラを見て「私もこんなまともな使い魔が欲しかったぞ」と言う。 赤ずきんがシグナムに対して「私と同じだね」と言う(「火の魔法」担当の剣士繋がり) ヴァルがザフィーラとの戦闘でジェドの仲間だと思い込む。 ヴォルケンズが味方になった後ヴァルがザフィーラに対して「お前俺とキャラ被ってるんだよ!」って言う。周りが「どこも被ってないじゃん」とか言われてヴァルが不機嫌になる。 3匹(リーヤ、ヴァル、ジェド)まとめて犬呼ばわりされて「狼だ!」と言い返したり 異世界編でガウリイとシグナムの対決とか盛り上がりそう 夜天の魔導書=人工「異界黙示録の写本」関係 夜天の魔導書は本来、人工的に作られた完全な「異界黙示録の写本」を目指していた 夜天の魔導書を作った人物は異世界で不完全な異界黙示録の写本をいくつか見つけてそれの完全版をつくろうと思ったとか。(補足)竜族が守ってる異界黙示録以外の写本は断片的だったりして不完全なものばかり (補足2)「異界黙示録」ことクレアバイブルはかつて魔王と戦い、相打ちとなった神様の記憶の破片のこと。触れながら問いかけることで知識を与える(ただしそれは理解できるとは限らない)物体。 原作では時空のねじまがった空間にありました。(その後魔族の攻撃によってそこへの入り口は閉ざされた) 写本と呼ばれるものが存在し、クレアバイブルの知識の一部がつづられてます。 ブラッディーダガーやデアボリックエミッションを不完全な無系統の魔法、神滅斬や重破斬の小型版とか。 ゼナファ(伝説の魔獣ザナッファー)のデータも入っていて、故に闇の書の防衛プログラムはあんな形で更に強力なバリアがあるとか。 これまでに蒐集した膨大な魔法データを蓄積しているっていう設定もあるから、闇の魔法に関する情報とかも入っててもおかしくはない… 闇の書の発動に合わせて闇の魔物のデータが具現化して現れるっていう展開もありだな闇の書の意志が覚醒した時に、中級クラスのボスが出てくるとか?トゥルーデの3体のしもべとか、プリキュアの四天王の奴らとか データが実体化したって事にすれば倒した敵も再び出せる 魔法によって作り出されたユニット(使い魔と魔族)は出て来ても良い 夜天の魔導書が闇の書になったきっかけは、魔族(フィブリゾか誰か)が人間には過ぎた力だから暴走させれば、面白いとか思ってデータ改変したとかフィブリゾ戦がより一層引き立つ 夜天の魔道書を何度も改変されて闇の書となったキッカケの人物を作り出すのは面白そう この設定にするなら異界黙示録は元々が神族の精神体だから、神聖呪文のデータが夜天の魔導書時代に登録されていて、 更にその後フィブリゾに闇の書に変えられた際に魔族系統の呪文(金色の魔王の情報含む)が与えられたから両方使えると。 光の勇者の伝説 言い伝えによれば、伝説の勇者は、あまたのいかなる武器を使いこなし、更には火や水や風や大地をも自らの刃と化したという。 中でも伝説の魔獣ザナッファーを切り裂いた光の剣は如何なる物をも断つともいう。 その右手には勇者の証となる刻印が刻まれている。 とまぁこんな感じでちょっと前に上がってた光の勇者設定(ガウリィ、サイト、ニケ)を文章化してみたり… 裏設定で、この語られている人は初代ガンダールヴで右手の刻印もちでなんかの拍子でゴルンノヴァでザナッファー倒してて、火とか水とかは召喚された際についてきた現代兵器とかでいいんでは無かろうか?(最後のはスタオ2のフェイズガンみたいな解釈でおけ) ラスボス 736名無し ラスボスはオリジナルがいいと思うんだけど、どうかな? 737シルバー 前スレでもその話出たんですよね。ちなみにその時はオリジナルは入れるべきじゃないって結論でした。 まだストーリーも決まってないので時期焦燥だとは思いますが作品別でラスボス候補をあげてみると さくら→ユエorエリオル。話の進み具合にもよりますが多分さくらカードまでは詰め込めないのでユエ。しかも明らかにラスボス向きじゃないので除外ですね。 なのは→闇の書の闇。異常な再生能力や転生機能、採取した魔力の性質などもコピー出来る。更にとんでも敵を吸収させればラスボス化もおかしくない魔法少女界のAI1。だが、せっかく2期からやるのではやて&ヴォルケンズの参入がラストだけと言うのも…却下。 ネギま→フェイトorヘルマンor超。話の進み具合にもよりますが、どれもラスボスには役不足感が否め無いと思います。 プリキュア→ジャアクキング(復活)。設定的にもルビーアイの一つなので申し分ない。原作では現実世界に降臨。ただ、恐らく一部ラストもジャアクキング スレイヤーズ→フィブリゾ。これもラスボス候補。裏で手下を暗躍させる(ゼロスなど)ので各キャラの因縁を作ることも可能。 グルグル→ギリまでは無理となると必然的にラスボス候補は見当たらない。 740名無し ゼロ魔はまだ魔王級のは出ていないのでだめですね。虚無の担い手の対決起こってないし。 赤銃はシンデレラが強いので防衛プログラムと同化させてエルデ先生化。 鍵を取り込むし、魔法というターミナス・エナジーを使えるので――ってこれじゃあMXの再現になってしまうな。 絡ませるのはいいと思いますよ。矛盾も起こらないだろうし。 いっそのこと、なのは様に金色の魔王を取り付かせて ラスボスをやってもらうとか言う手もあるかも。 741名無し L様じゃどうしようもないから素直にルビーアイの欠片にしとこうぜ 742名無し たしかに強すぎるよな。ルビーアイならなんとか勝てそうだし。 異世界の都市のクロス 822シルバー ゼロ魔の4国は今回のアトラス=コーダイみたいにくっつけることは出来ないでしょうか? 823ゼロ魔 大幅に設定を変えれば大丈夫だと思いますけど流石に4国を一つにするのは厳しいですね。 ガリアは王位継承などでなどで起こった悲劇とか、 教皇が治めているロマリアは教皇のほうが地位が高かったりしますし、アルビオンの滅亡がありますから 824シルバー アルビオンはサイラーグにして一緒に吹っ飛ばされちゃうのはどうです?w ガリアかロマリアはセイルーンと合わせられそうかな? 825ゼロ魔 いいですね、おもしろそうですよ。ロンディニウムと言う所は昔大火事あったり、 アンドバリの指輪を使ってシティオブサウスゴータを占領する連合軍三万を操るとかありますし でも、浮遊大陸なのがちょっと問題かな? 826シルバー アルビオンは相性良さそうですね。大火事の件は昔の伝説の魔獣ザナッファーあたり被せられる。浮遊大陸…。見せてあげよう、ラピ)ry フラグーンも生えてるからマジでラピュタになっちまうw 828シルバー サイラーグとアルビオンはいけそうだけど、セイルーンは難しいかなぁ…。トリステインはどうです? 835シルバー セイルーンをにゼロ魔の4国のうちの一つを合わせられないかと。 サイラーグとアルビオンの同一化は行けそう何で実質三国ですけど。 その場合のグルグルのシュギ村イベントをセイルーン内(領内?)で行う場合に空と地の腕輪を4の4に組み込めないかと言う事なんです。 836ゼロ魔 ゼロ魔ではっきりと数が分かってるので組み込むのは難しい。 セイルーンは信仰や白魔法が厄介。アルビオンのサウスゴータは円形状の城壁と内面に作られた五芒星形の大通りが特徴なので巧く組み合わせられるかな? でもそうなるとアルビオンに国が二つになって色々やっかいな事になるしなー。 837シルバー なる程、ではセイルーンと合わせるのと腕輪は諦めましょうか。 あと、ゼロ魔でシルフィードが人間形態になってましたね。スレイヤーズでも黄金竜のミルさん達も同じですね。 で、そこで閃いたのですがスレイヤーズのディルスとガリアってのはどうでしょう? ドラゴンズピーク(シャイターンの門も)近いのでエルフやドラゴンが絡んでくるのもスムーズに出来ますしディルスはスレイヤーズでも敵対…というかガーヴ一味がいるのでやりやすそうかと 840ゼロ魔 おそらく大丈夫でしょう。でもディルスとガリアの王家をどうするかが問題ですよね。 ディルス王家には居なくなってもらうとかは……不味いですかね? 841シルバー ディルスの王家はまんまガリアに入れ替えてガーヴ(ラーシャート&ラルターク)にいいように使われる、って言い方はおかしいけどそんな感じはどうでしょ? でもまぁこの話やるとしても3部だから急ぐ必要は無いですけどね。 842ゼロ魔 それだとアルビオンの反乱軍とちょっとかぶっちゃうから協力者くらいで良いじゃないかな? まあ、とりあえず保留ですかね。 スレイヤーズTRYの神託 作るスレ 483-484 光と闇の狭間の力、これを光魔法ニケ・闇魔法ククリ・虚無のルイズ 五つの星のかけら、五つの星の人 地球・ネギの魔法世界・スレイヤーズ・赤ずきん・と『光の園』の力を使うプリキュア という設定はどうかなと。 作るスレ 495 TRYの神託、俺も考えてみた 全作品での合体攻撃は最終決戦で使えそうだし 光・チャチャ 闇・リナ 狭間・さくら&ククリ 五つの星の欠片 プリキュア(光の園) ルイズ(始祖ブリミルのいた世界(≠地球にはできないものか)) 赤ずきん(異世界編の世界) なのは(ミッドチルダ) ネギ(現実世界) 時系列 89名無しさん ちょっと気になるんだが1見てるとなのははシリーズになってるけどプリキュアはMAXheart無しなのか? そうするとなのはは何処までやるかは知らないが(流石にSSまではやらんだろうが)そちらが無印からA sに入ったらプリキュアの方がMAXheartに入らないと時系列がおかしくなると思うんだが 同様にカードキャプターさくらもさくらカード編に入る関係上の時系列問題があるけど映画版は流石にやらないよね? 90シルバー 現実世界編はまだいじる予定なので確定では無いのですが、今の案ではなのはのみA sからスタート何ですよ。 時系列の件は自分も気にしていてプリキュアは無印、さくらはクロウカード編まででちょうど一年間なのでそこまでで考えています。 ちなみにネギまとゼロ魔の作品内での一年ってどのあたりまでかわかる人いますか? あとなのはって確か無印とA s併せて一年じゃなかったでしたっけ? 91ゼロ魔 調べたらだいたい八ヶ月くらいですね。 94シルバー 8か月というのはなのはの事でしょうかね? 8か月で心も戦闘力もあそこまで進化する小学3年生って… 不死関係 136ゼロ魔 アンドバリの指輪と仮面の石って被りますかね? 141シルバー 仮面の石ってセイグラムのやつですか?指輪の方がわからないんで自分ではなんとも… 142ゼロ魔 簡単に説明すると指輪は人を操ったり、死者を生き返らして操る代物です。 魂を封じ込める契約の石とはちょっと違いますけど 143◆cw6NU9U4lA アンドバリの指輪に関しては能力が冥王の能力と被るので冥王を出したいですね 冥王がウェールズを生き返らせて操り、アンリエッタを誘拐するとか まあそこまで話が展開するかどうか分からんですが 144ゼロ魔 なんだか“それも私だ”の人を思い出しちゃった 145シルバー あー、て言うとティファニアがサイトとギーシュ?を生き返らせたヤツですね? あれって回数制限とか無いのかな? やれるかわからないけど伏線張るくらいなら出来そうですね。 しかし、死者を甦らせるって扱い危ないですね。プレシアママンとかが知ってたらエラいことにw 人間以外のものも効果あるのかな? フィブリゾがアンリエッタ誘拐するメリットって何かあっ…、あるな。ルイズも虚無使いだからガウリイと一緒に連れてかせると言う手も… フィブリゾはまぁほぼそれも僕だ、だから連想しますよね、というかモロそのポジでしょう。 146ゼロ魔 ティファニアが持ってたのはサイトを生き返らすのに使い切っちゃったから詳細不明。アンドバリの指輪とは別ですよ。 アンドバリの指輪は水の精霊曰く、偽りの命らしいからホントの蘇生じゃないらしい。解呪したら元の死体に戻っちゃうからね でもプレシアママが欲しがるよね絶対。所有者のガリア王に勝利したから次の巻で見つかってもいいはずだけど…… フィブリゾに「それも僕だ」ってセリフ言わして欲しいです。 147 名無しさん 有る程度の魔族なら死者を生き返らせることもできるんだけどな ゼロスもすぺしゃる8巻でやってるし 148名無しさん あれは脳死に至ってない心停止状態を回復させただけで 実際に脳死にまで至った人を生き返らせることはほぼ無理だよ
https://w.atwiki.jp/dai_zero/pages/35.html
前ページ次ページ鰐男 「では頼んだぞ」 クロコダインの声に答え蒼空に舞い上がる漆黒の翼 それは鷲と見紛うばかりの三羽の大鴉だった 大鴉に続いて一斉に飛び立つ夥しい鴉の群れに陽の光は遮られ 局所的な日食が発生したかのようにウエストウッドの森を薄闇が包む やがて鴉達はおのおののリーダーの下に集合すると 空を流れる三本の河となって別々の方向に散っていく 全体の指揮を執るのはジョウスケ ウエストウッドの森を縄張りとする鴉達(以後ウエストウッド・グループと呼称)の リーダーだ クロコダインの“航空参謀”を自認するジョウスケは配下の鴉達を使って マチルダの行方を探していたが未だ発見できていない そこで捜索範囲を広げるべくビギンヒル・グループのリーダーオクヤスと マンストン・グループのリーダーヨシカゲに協力を仰ぎ アルビオンの鴉のおよそ半数を動因する大捜索網を敷こうとしていた 「大丈夫だ、きっと見つかる」 祈るような表情でいつまでも空を見上げるハーフエルフの少女の肩に クロコダインはそっと手を置いた その頃マチルダは地の底にいた 正確にはベルファストの街を少し外れた山の中に切り開かれた露天掘りの鉱山で 街から徴用された男達に混じって強制労働に就かされていた 労働は過酷 食事は劣悪 かろうじて胸と腰を隠せるだけのボロ布を着させられ 朝から晩まで好色な看守達に小突き廻される 日々消耗していくマチルダにとって唯一の慰めは アシャー・ウォードとの再開だった 「嫁入り前の娘が何て格好だい」 竪穴の底で顔を合わせたウォードの第一声がそれだった 「文句はモーティマーに言っとくれ」 憮然と答えるマチルダの肢体を包むのは申し訳程度に肌を覆う粗末な布地 明らかに看守達の目の保養を目的としたそのコスチュームは 「恐竜百万年」のラクエル・ウエルチさえ白旗を掲げるサービス振りだ 「密輸?」 「みんな命惜しさに口を閉ざしちゃいるが公然の秘密だ ここで採れた風石は十中八九“床下”の闇ルートに流れてる」 空に浮かぶアルビオンの住人の言う床下とは地上のことだ 並んでツルハシを振るいながら看守の目を盗んで言葉を交わすマチルダとウォード 「ちょっと待っとくれ、風石貿易はアルビオンの生命線じゃないか いくら王宮でふんぞり返ってるのが寸足らずな連中ばかりでも たかだか田舎町一つ牛耳ってる程度の悪党に空軍を出し抜くことなんて…」 「出来るんだよ」 ウォードはマチルダの耳元に顔を寄せ声を潜めた 「レコン・キスタ、か…」 鉱山が深い眠りに落ちた深夜 囚人棟を抜け出したマチルダは闇に包まれた坑道の中を 獲物に忍び寄る山猫のように一切の気配を断って移動していた 昨日までの下調べで看守の大まかな配置と交代のスケジュールは掴んでいる 鉱山の中に限るなら監視の目を盗んで動き回ることはさほど難しくない 問題は鉱山からの脱出だった それも出来るだけ早く逃げ出さねばならない 「レコン・キスタがモーティマーの後ろ盾になっている」 昼間ウォードから聞いた話が事実なら事態は気に入らないどころではない 隠し鉱山の運営に一枚噛んでいるような貴族ならいざとなったら 証拠隠滅のため囚人ごと鉱山を吹き飛ばすくらい平気でやる マチルダに言わせればそうした連中にとっては 平民の生死より毎朝の食卓に上る卵の茹で加減のほうがよっぽど問題なのだ そしてそういった貴族が何より嫌いなマチルダは当然自分一人が抜け出すだけで 済ませるつもりはなかった 完全に “裏の仕事モード”に切り替わったマチルダの頭の中では このくそいまいましい鉱山を叩き潰し囚人全員を脱走させる計画の青写真が 描かれつつありそのためにも正確な情報が必要だった 息を殺して看守棟に忍び寄るマチルダは 突然背後の暗がりからあがった声に凍りついた 「こりゃ驚いた、こんな所で何してんだ“フーケ”?」 前ページ次ページ鰐男
https://w.atwiki.jp/kenkyotsukaima/pages/49.html
謙虚な使い魔~アンドバリの呪縛~ アルビオン艦隊旗艦『レキシントン』号の後甲板から、艦長のボーウッドは鋭い眼をもって、深夜の砂浜を見渡していた。 タルブ攻略が開始されて以来、ボーウッドは卑怯なだまし討ちであるこの作戦への批判も、人間らしい情も、政治的不満もすべて頭から吹っ飛び、ただ忠実なる軍人となっていた。 隣ではクロムウェルが満足気な表情を浮かべて、タルブの砂浜に展開するアルビオン軍の松明の灯りを眺める。 「どうだね、ミスタ・ボーウッド?降下隊は無事、傭兵隊と合流できたのかね?」 「はっ、閣下。先ほどの伝令によれば、砂浜に降り立った三千、それに集められし傭兵隊の一千、合わせての四千が陣を編成中との事です」 「うむ、予定通りだな。それに加え、『支援者』からの水陸両用艦の二隻も間もなく到着するだろう。余が聞いたところ、何でも有能なメイジ達を集めた部隊が乗っているそうだ。戦力として五百、いや……一千と見ていいだろう」 その時、伝書フクロウの伝令を携えた水兵が二人の前に駆け込んできた。 「偵察隊より伝令!申し上げます!ラ・ロシェール方面にトリステイン王国軍が部隊を展開。その数二千。敵隊の中にトリステイン王女アンリエッタの旗印を確認!また、王国軍は明朝の日の出とともにラ・ロシェールを出撃し、タルブにて我々を迎え撃つつもりである、との事です」 「無謀な、制空権を取られ、数でも劣るのに、敢えて野戦を望むとは」 ボーウッドは静かに呟いた。 「この『親善訪問』に、御多忙であろう王女殿下が直々に迎えに出てくれるのだ、実に光栄な事ではないか。ミスタ・ボーウッド、くれぐれも王女殿下に粗相があってはならない。この『レキシントン』号で持て成す準備をしたまえ。確か、王族には二十一発の『礼砲』が習わしだったな?」 クロムウェルはにやりと不敵な笑みを浮かべる。 言葉に含まれた皮肉の意図を理解したボーウッドは直ちに水兵達に命令を下す。 「左砲実弾装填!夜明けまで半舷交代で待機!」 「左砲実弾装填、アイ・サー!」 ボーウッドは地平線の彼方を見つめ呟く。 「あと数刻で夜明けだな……トリステインの王権もそれまでか……」 ルイズとブロントを乗せたシルフィードは、黒鷲の先導の下、タルブ寺院近くの林に降り立った。 「以前と違って、夜は不気味ね……」 砂浜に灯るアルビオン軍のかがり火が薄らと見える以外、五歩先も見えない暗さだった。 先を歩く黒鷲の姿は闇夜に紛れてその姿が全く見えなくなってしまったが、鳴き声でルイズ達を誘導しているようだった。 シルフィードはきゅい~となんとも弱弱しく鳴き声を漏らし、オドオドとしている。 「図体に似合わず、あんた意外と臆病な風竜なのね」 と言いつつ、ルイズもブロントの腕にしがみ付いている。 「うるさい、気が散る。一瞬の油断が命取り」 「バレる、ってこんな所までアルビオンも展開しているわけないじゃ……もがっ!」 ブロントが咄嗟にルイズの口を塞ぐ。 「もっふぉ、ふろんふぉ、ふぉにふぃふぃふの」 「バレて援軍とか呼ばれて一巻の終わり」 そう静かに囁いた後、ブロントは林の奥を指差す。 松明だろうか、六つ程明かりが揺ら揺らと林の向こうで踊っている。 ルイズは耳を澄ますと、男達の喧騒が聞こえてくる。 『おい、襲撃されているぞ!』 『明かりを消せ!』 『何が田舎の寺院はお宝が眠っている、だ!メイジがいるなんて聞いてないぞ!』 『ぬぐぁ!』 風に吹かれ、木々がガサガサと激しく揺れる。 枝が弾けるような音とともに、明かりが一つ一つ消えてゆく。 やがて、林の中の明かりが全て消え、風も止み、辺りは静寂を取り戻す。 ルイズはブロントに口を塞がれたまま、じっと息を殺した。 シルフィードも茂みの中に頭を隠してふるふると震えていた、もっともその首から下は丸見えだったが。 闇の向こうからルイズ達に歩み寄って来る一つの足音があった。 パキ…パキン…ペキ… 枝を踏み折る乾いた音が次第に大きくなる。 ルイズは杖を抜くと、音が鳴る方向へと向ける。 ブロントもその手を腰のデルフリンガーにあてる。 足音はぴたりと止まる。 代わりにそこから「クァッ」と黒鷲の鳴き声が聞こえ、ばさばさと翼がはためいた。 「敵じゃない、私だ」 闇の向こうから語りかけた者が<ライト>の魔法を唱え、その杖の先に光を灯す。 ウェントゥスだった。 彼が着ていたガンビスンが泥だらけになっていた。 所々、茶色かかった赤い染みが付いていた、血だろうか? 「ウェントゥス様!お怪我は!?」 ウェントゥスは首を振った。 「大丈夫、そんな無茶はしてないよ。私が倒れてしまってはタルブの皆を守る者がいなくなってしまうからね。この服に付いているのは、一儲けを試みて本隊から外れ、寺院を狙ったはぐれ傭兵達のものだ」 ウェントゥスは手にした杖を鞘に収めた。 「良く来てくれた、友よ。この通り、私一人では一度に数名の傭兵を相手するのがやっとでね。あまり派手にやって寺院の存在がアルビオン本隊に知られてはまずいので、我ながら姑息な手段だが、夜襲をかけていたところだ」 「見事な仕事だと関心はするがどこもおかしくはない。他にはいにぃのか?」 「先程ので、寺院に興味を持った『信心深い』者たちは全て始末した筈。今確認して貰っている、鳥にしては夜目が利く方でね」 ウェントゥスが上を指差すと、上空から甲高い黒鷲の鳴き声が返ってきた。 「シエスタや、タルブ村の人達は無事なの?」 「ああ、みんな無事に寺院の中に避難している。流石ブロントの姉上が建てただけの事はあるな、並のメイジでは傷も付けられない程頑丈な寺院だよ」 イージス誇らしげな表情を作り、頷く。 「当然じゃの。セラーヌがこれを建てた際、護る事に置いて右に出る者のないこの神楯イージスがその設計に携わったのじゃ。祭礼の場としてより、むしろ砦と呼ぶに相応しいかものう」 デルフリンガーが鞘から少しだけ刃を覗かせる。 「おい、イージス。てめ、仮にもタルブの御神体様だろ。姉御の村が大変だって時に、てめえの自慢している場合か?」 イージスはしかめ面の様な表情を作る。 「わかっておる。まずは村を焼いて回った竜騎兵隊を何とかせねばならぬ。そやつら我が物顔で飛び回っておるうちは、王軍も手がだせぬわ」 ウェントゥスは頷く。 「あれは確かにやっかいだ。制空権を握られたままでは、地上の王軍は火竜のブレスの格好の餌食になるだろう。時折、王国も竜騎兵を送っているようだが、あの方法ではハルケギニア最強を誇るアルビオン竜騎兵隊を打ち破れるわけがない」 イージスはにやりとする。 「ほう、流石少数にて大軍を相手にしていた事がある者じゃのう。そう言うからには何か良い方法があるのじゃな?」 「……寡兵を以って大軍を制す、か。そうだな、こちらも風竜があれば手が無い事もないが……」 茂みに頭を隠して震えているシルフィードに一同の視線が集まる。 「きゅい!?」 じっと見つめられる熱い視線を感じたシルフィードが首をぶんぶんと横に振る。 イージスはワザとらしい程に悲しそうな表情を作る。 「乗り気ではないようじゃの。仕方ないのう、このままタルブの裏名物、『トゥーナのかぶと煮』が二度と食せぬ様になってしまうとは、至極残念じゃ」 シルフィードの目がキラリと光る。 「ピリリとジンジャーがきいた甘辛い秘伝のタレで、骨から肉が蕩け落ちる程までに煮込んだ丸ごとのトゥーナの頭。このレシピを守ろうと、我こそはと立ちあがる風竜はおらぬのか……私が口利きすれば村の者は喜んで作ってくれるだろうに」 「きゅい!きゅい!」 シルフィードは嬉々として自分の事を指差した。 「おお、勇気ある決断!そちの様に勇敢なる風竜が、名乗り上げた事に、私は感動を禁じえない!」 「きゅい!きゅい~!」 大げさに演技するイージスを見て、デルフリンガーがハバキを鳴らして笑う。 「へっ、イージス、口先で丸めこむなんてよ、前からてめのそういう狡賢い所が気に入らねえんだよ。大体よ武具なら……」 「デルフや、潮風に当たるとそちの輝く見事な刀身に良くないのう。しっかりと鞘に収まると良いぞ」 「お?そうか?そうだな、おい相棒、俺様をしっかりと鞘の中にしまってくれ、隙間から潮が入ってこねえようにがっちりとな!」 ブロントは言われたように、デルフリンガーを鞘にがっちり嵌め、更に留め金をしっかりと掛ける。 ウェントゥスが軽く笑う。 「ハハハ、さて。緊張がほぐれた所で、急ごうか。夜が逃げてしまう前に始めなくてはな。友よ、弓はどれ程扱える?」 ブロントは首を横に振りながらカバンから弓と矢筒を取り出す。 「俺は弓術はどちかというとまったく使えないのだが」 ブロントの背中に背負われたイージスが呟く。 「あまり謙遜するでない。その左手の紋様があれば、そちも一流の狩人以上に弓を使えるはずじゃ」 「それは頼もしいな。うむ、そうだな、これで行こう」 ウェントゥスは思いついた作戦の内容を皆に伝える。 ルイズが少し不満そうな顔をする。 「ウェントゥス様、それは、少し卑怯じゃないかしら?」 「さあな、私は貴族ではないからな。空賊流儀で言えば、不意打ちだまし討ちは基本でね」 ブロントは頷く。 「先に違法行為で仕掛けてきたのが奴等だろ。俺は今のところ我慢してるけどいつ怒るが爆発するかわからない」 「そ、それもそうね」 ルイズ達はシルフィードの背に跨る。 「よし、行くぞ。ええと、何といったかな……まあいい、飛び立て『イーグル』号よ!」 「きゅい!?きゅい!きゅい!」 『イーグル』号と呼ばれたシルフィードは何やら否定をするように両手をぶんぶんと振る。 「ハッハッハッ、気にいったか!よし、『イーグル』号、微速浮上」 「きゅい~……」 シルフィードは主人のタバサ以外に人語で語る事を固く禁じられており、名乗り上げ正す事もできなかったので『イーグル』号と呼ばれるのを受け入れるしかなかった。 後でたっぷりとツナの頭をお腹いっぱい食べさせて貰うんだから、と自分に言い聞かせてシルフィードは音を抑えてゆっくりと飛び立った。 タルブ上空。 ハルケギニア最強の竜騎兵隊と謳われるアルビオン竜騎兵は旗艦『レキシントン』号を中心として、タルブの上空を巡回していた。 その数およそ二十騎。 暗闇の空の中、竜騎兵隊は互いに<ライト>の魔法を用いて連絡を取り合っていた。 『日ノ出ト共ニ、トリステイン軍ハ総攻撃ヲ仕掛ケテクル。警戒ヲ怠ルナ』 杖の先の光りを点滅させる法則は軍によって違い、空の覇者たるアルビオン竜騎兵のそれは、他国軍に手の内を読まれぬ様にともっとも複雑を極めた暗号ですらあった。 南の空に、チカチカと光が瞬く。 『東ノ空ニ敵竜騎兵斥候ガ飛来。各騎散開シ、追跡セヨ』 『レキシントン』号の周りを旋回していた竜騎兵はその信号を次々と他の竜騎兵に伝え、『レキシントン号』を離れ散開する。 またチカチカと光が瞬く。 『敵艦隊ヲ上空ニ発見。上空カラノ奇襲ニ警戒セヨ』 一人の竜騎士が上空を見上げる、 (夜に乗じて艦隊を用いた奇襲?トリステインはまだ艦隊をもっていたのか?) 「クァッ」 鳥の鳴き声が耳の横を掠める。 その時、一陣の風が隊員の頬を撫で、鈍い振動がその竜騎士の体に伝わる。 (な、何だ?高度が落ちているぞ。どうした!?) 騎乗した火竜を見ると、その首は穴をあけて抉られており、矢が矢羽根まで深く刺さって絶命していた。 きりもみしながら騎士は火竜ごと、タルブより離れた東の草原に、静かに墜落していった。 ウェントゥスは<ライト>の魔法で、アルビオン竜騎兵の暗号を用いた嘘の信号を空に送る。 アルビオン空軍の暗号を熟知していたウェントゥスの偽の信号であるとも知らず、撹乱されたアルビオン竜騎兵は空を右往左往と飛び回り、ひたすら上空を警戒し、低空で羽音もたてずに滑空するシルフィードには気が付いていない。 「友よ、いい腕だ。『イーグル』号、旋回して先程と同じ針路を戻れ」 ウェントゥスに<サイレント>の魔法をかけられたシルフィ―ドは静かに距離を取り、旋回する。 「クァッ」 単独で飛行する竜騎兵を目標として捉えた黒鷲が合図の鳴き声を送る。 ウェントゥスはブロントの肩を叩く。 「上方四十度、左に二十五度。微調整は私の風でやる」 ブロントは頷き、左手にローゼンボーゲンを構える。 左手のルーンから、弓術に関する技術の全てがブロントの頭に流れ込む。 魔法すらも凌ぐ程の威力を秘めた狩人の技が、体中に刻みこまれる。 ブロントの目が鷹の様に細くなり、上空に浮かぶ火竜の影を狙う。 固く張られた弦に矢を掛け、引き絞る。 弓を握る手がバチバチと電流がほとばしる。 「ウィンデ!」 ウェントゥスが杖を振ると、火竜へと繋がる風の通り道を作る。 ブロントはその作られた風の道に矢を乗せて放ち、矢が火竜へと吸い込まれ、突き刺さる。 「次、上方三十二度。正面だ。ここからでは首が見えない、翼を狙えるか?」 「隠された力を発揮する披露宴となる」 ブロントは矢筒から四本の矢を右手の指それぞれに挟むと、それを纏めて同時に射掛け、矢の<乱れ撃ち>を放つ。 散弾の様に放たれた矢が、火竜の翼に穴をあけ、片翼を破かれた火竜はぐるぐる回転しながら地面へと落ちてゆく。 次々と落ちてゆく竜騎兵に、不振に思い始めた竜騎兵が信号を送る。 『敵襲ヲ受ケテイルノカ?正確ナ情報ヲ報告セヨ』 ウェントゥスが杖で光りを送る。 『コチラハ異常ナシ、北ノ空二不審ナ動キアリ』 闇の向こうから返答が返って来る。 『ソノ方ノ所属ト名前ヲ名乗レ』 『雷ヲ運ビシ風ノ<ウェントゥス>』 竜騎兵が次の行動へと移れる前に、ガクンと火竜が右に傾いた。 火竜の右翼が矢によって胴体に縫い付けられていたのだ。 「くそ、トリステインの空に一体何が潜んでいるというのだ!うぉおおおおお!」 騎士は雄たけび上げながら草原へと墜落していった。 タルブの遥か上空に浮かぶ『レキシントン』号。 クロムウェルは、艦に取り付けられた水時計を確認する。 「間もなく夜明けだな。ミスタ・ボーウッド。君は実に運が良い。二つもの王権が潰える所をその目で見る事をできるなど、そうそうない事だぞ」 ボーウッドは表情を一つ変えずに白む空を見つめていた。 彼は軍人として、何とも言えぬ違和感があった。 空がやけに静かだった。 艦の周りを巡回する火竜のきりきりと響く鳴き声が静まっている。 トリステイン軍の総攻撃に備え休憩を取っているのだろうか? いや、展開している竜騎兵に艦に帰還する命はまだ誰も出していないはず。 (竜騎兵隊はどうした?姿が見えないぞ) その時、伝令の水兵が飛び込んでくる。 「差出が『支援者』と書かれた閣下宛ての伝書です!」 クロムウェルはにこやかに笑顔になる。 「おお、遂に水陸両用艦隊が到着したのか?よい、読み上げたまえ」 「はっ!」 伝令は伝書を広げ、高らかに読み上げる。 『支援者ヨリ送ラレシ我ガ艦隊ハ、オルレアン上空ニテ、『ブラックコフィン』号名乗ル空賊ニ襲撃サレシ。拿捕ハ免レタガ、両艦共ニ小破。作戦続行不能トノ判断ニヨリ帰還ス。『親善訪問』作戦ノ成功ヲ祈ル』 「なんと、ここまで来て空賊とはついてないな。仕方あるまい、我々だけでも十分に戦力でトリステイン軍を上回っているのだ。予定には変更はないな、なあミスタ・ボーウッド?」 クロムウェルがそう問いかけていた時、ボーウッドは別の伝令が渡したであろう伝書を読んでいた。 「何かあったのかね?」 「どうやら、昨晩のうちに竜騎兵隊が夜襲にあったようです。展開していた二十騎がいつの間にか撃ち落とされた、と」 クロムウェルは驚愕する。 「誰にも気取られず、アルビオンが誇る竜騎兵隊を撃ち落とせる精鋭を、トリステインは持っていたとでもいうのか?」 「生存した者の証言によれば、『風の如く忍び、雷の如く穿つ』謎の魔物が空に潜む、とあります」 クロムウェルは両手を広げ、頭を振る。 「馬鹿な、魔物などいるものか」 「ええ、しかし空中戦を熟知した相当な手錬がいたのは確かでしょう」 「子爵はどうした、彼も落とされたのかね?」 「いえ、報告では子爵殿の風竜は被害に含まれておりません。しかし、艦内にも子爵とその風竜の姿は無いようです」 「ふむ……まさか子爵が?いや、それは無いか。あのワルド子爵であろうと、流石に竜騎兵二十騎を相手にする空の技量は持ち合わせていないはず。それに一度裏切った祖国にまた加担する意味が無い」 「閣下、竜騎兵隊は全滅しましたが、本艦『レキシントン』を筆頭に、艦隊は未だ無傷です。ワルド子爵も彼なりに何か策があるのだろう。作戦の続行に何も支障はありません」 「そうであったな、ミスタ・ボーウッド。大事の前の小事に気を取られてはいかぬな。例え竜騎兵を落とす魔物がいようと、この艦隊の艦砲射撃を止める術はないからな。おお、夜が明けるぞ」 地平線から太陽が覗かせ、明るむ大地と共に、陣を組むトリステイン軍の姿を露わにした。 ボーウッドは艦に命令を告げた。 「左砲艦砲射撃用意!寝ている者は全員叩き起こせ!」 タルブ上空。 「何とか夜明けまで竜騎兵を全て潰す事ができたみたいだな」 シルフィードに跨るウェントゥスが白む空を見て呟いた。 一番前に座っていたルイズは驚いた表情で、地に落ちた竜騎兵を見渡した。 「信じられないわ、竜騎兵隊をこんな方法をもってたった一騎で倒しちゃうなんて。空賊流と言うのも凄いのね」 ウェントゥスは笑う。 「ハハ、今回は良い条件がたまたま揃っていたからだよ。これほどの利がいつもこちらにあれば空賊稼業も楽なのだがね。それに大局を動かすほど事ではないさ。上空に浮かぶ艦隊がトリステインにとっては大きな脅威であるのは依然変わりない」 ブロントが黙って、煙を上げ、焼け落ちたタルブの漁村を眺めていた。 潮の香りが混じる家屋の焼けた臭い、立ち上る煙と揺らめく海がブロントの心を揺さぶる。 今にも血が逆流し、頭の先を突き抜けて行きそうな感覚であった。 「どうしたの?ブロント」 「なんでもにい」 ブロントの左手が激しく火花を散らしている。 辺りの偵察に飛ばした黒鷲の目を借りて、ウェントゥスは目を瞑っている。 「ようやくトリステイン側も到着したようだな……何故だ!?」 突然ウェントゥスは声を荒げる。 「何故先頭の旗印がユニコーンと水晶の杖なのだ!?」 「え……それってもしかして姫さまの……?」 「ゲルマニア軍の到着を待たずに、アン自らが軍の先頭に立ち、戦場に赴くとは……、察するにゲルマニアは援軍を出すのを渋ったのだろうな……」 ルイズは心配そうに尋ねる。 「勝ち目はあるの?」 「難しいな、アルビオンの半数程の王軍しか集められていない。何より上空のアルビオン艦隊がいては万に一つも可能性は無いだろう。せめて艦砲射撃を遅らせる手立ては……くそ、あれだけの艦隊を一度には無理だ!」 ブロントはウェントゥスに背中を向けたまま語りかける。 「おいィ?お前それで良いのか?」 「良くはない!アンリエッタを護るべきものがあそこにいないのだぞ?ゲルマニア軍も、王宮の国軍も!あのままでは、アンリエッタは……」 「最強の義務は最強のプレッシャーとなって襲いかかってくる。お前それで良いのか?」 「友よ……一体何を」 「お前はこんな所で俺に話したりする余裕があるのか?」 ウェントゥスははっとした顔になった。 ブロントの背中に背負われたイージスがウェントゥスに面と向かって語る。 「彼女を護るべき者なら、今ここにおるではないか」 「しかし、私がアンを……今更そのような身勝手は……」 「なんじゃ、不意打ちだまし討ちが得意な空賊流を見せた者が、今更その様な事気にしておるのか。空の無粋な者共が気になるのなら心配は無用じゃ。このタルブを護りし神楯イージスが言うのじゃ、任されよ」 ウェントゥスは強く唇を噛む。 「……いいのか、この私が、この手で……?」 「お前がいないアんリエッタに未来はにい」 ブロントはウェントゥスの襟を掴み、シルフィードから放り投げる。 「ちょ、ちょっとブロント!」 ルイズが慌てふためくが、ウェントゥスは動じず、落ちながら<フライ>の魔法を唱える。 ウェントゥスは晴れ晴れとした笑顔で、飛び去るシルフィードに向けて叫ぶ。 「友よ!また大きな借りができてしまったな!そちらは任せたぞ!」 黒鷲が勇ましく鳴き、ウェントゥスの高らかな笑い声が轟く。 「さあ、行くぞ!この恥知らずのウェントゥス、今参る!」 黒鷲は主人の手を引き、王軍の下へと羽ばたいていった。 「と言ったものの、イージス、本当に何とかできるの?あれ」 ルイズは空の艦隊を指差す。 「逆にそちを問おう。そちはその祈祷書を持ちながら、何をしておるのじゃ?」 「……悪かったわね、何もできない『ゼロ』で」 「では何故この戦場に来たのじゃ?何かを成し得たかったのではないのか?」 ルイズはうー、と唸る。 「わたしだって、何とか姫さまの力になりたいと思っているわよ。でもブロントみたいに戦える訳ではないし、ウェントゥス様みたいに知略があるわけでもないわ」 イージスが威厳を込めて笑う。 「ホッホッホッ、そちが如何なる能力を持っているか等些細な問題じゃ。肝心なのはそちが、相手をどう想ってやり遂げるかじゃ。それを踏まえて、今一度祈りでも捧げてみれば良かろう」 (姫さま……わたしは……) ルイズはふとポケットの中に入れたあったアンリエッタよる譲り受けた水のルビーをそっと指に嵌めた。 (わたしは、ただ祈る事しかできないの……?) ルイズが何気なく、始祖の祈祷書を開いた時、ルビーと祈祷書が光り輝きだした。 「な、何よこれ!?」 第23話 「いきなりトリステインの危機」 / 各話一覧 / 第24話[後編] 「追憶の風に抱かれて」
https://w.atwiki.jp/30mmcolors/pages/101.html
名前:シェルミー・ノーラ 色:青 能力:「空間跳躍」 性格:おっとりマイペースな性格。しかし戦争孤児となったトラウマにより、攻撃的な人格(アシュリー)という二つ目の人格が生まれてしまっている二重人格者 人格が入れ替わると髪色が緑から青へと変わる 一人称: 二人称: 所属:遊撃部隊アルビオン隊 機体:ヴェイルライディール 旧:カイユーダス
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4295.html
戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ 3章 (29)トリステインの女王アンリエッタ 「それでは、再びミスタ・ウルザに質問致します」 二十二の瞳に見つめられたオスマンが口を開いた。 「二十の竜騎兵を蘇らせ使役するのは、あなたの言うところの魔法ならば可能とのことでしたが、それでは敵の中にその魔法を使えるメイジがいるということになりませんかな? 我々の知らぬ理を識る誰かが、アルビオンに荷担しているということに」 円卓の寄る辺、起立しているのは再びオスマンとウルザ、二人の白髭。 「その通りです。オールド・オスマン。そして私――我々は、その者と既に遭遇しております」 場の支配権は完全にこの老人達のものになっている。 「ふむ、なるほど。 では、そのあなたと同じ力を持ちながら敵に荷担している者の名を、明らかにして頂きましょう」 流れの横車を押すのは、オールド・オスマン。 「彼は元トリステイン王国魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵であります」 演出、脚本、進行、全てオスマンの手による寸劇、あるいは喜劇が幕を開けた。 「それでは、我々の知らぬ魔法、そしてそれを扱うことのできるワルド子爵。この二つをふまえた上で、改めて三ヶ月前から遡り、一連の出来事を整理していくこととします。 ではミズ・サウスゴータ。あなたが知る限りの事柄で、不可思議に思ったこと、理解できないと感じたことを話して頂きたい」 促され立ち上がるマチルダ=フーケ。両の眼鋭く、オスマンを睨み付ける。目の前の相手が自分にとって味方なのか、敵なのか、それを見極めんとする。 対して老人は、いつもの通りに人の良さそうな好々爺の面持ちで、立派な白髭を手で撫でている。何もかも、数ヶ月前と変わらない姿。 だが、対峙する自分の立場はその頃とは全く違っている。最初はロングビル、その次はフーケ、そして今はマチルダ。 今この場に立っている自分にとって、この老人は何者であるかを考える。この老人の手の中にある青写真のにおいて、自分がどこに描き込まれているかを考える。 トリステインの新女王は、この食えない老人のペテンに乗ることにしたらしい。では自分はどうするか? 「……」 しばし黙考し、考えを整理する。 今のところ、流れは自分にとって悪くない。全ての責任をワルド一人に押しつけ、自分自身の罪に対しての免罪も得た。 最大のネックであった、口にすると戯言に過ぎなかったワルドの力も、あの使い魔の老人のおかげで、ある程度の信頼性を得られた。 正直、上手くいきすぎていると感じるくらいに順調である。 そして、その全ては、この場を仕切っているオスマンの誘導によるものである。 ここまで考えたところで、マチルダの中で心が決まった。 「ええ、ございます。 わたくし自身も信じられなかったので話さなかったのですが、先ほどのお話を聞いていくつか……」 ここで彼女は手の中にあるカードのいくつかを切った。ここはオスマンに協調しておくのが得策という判断である。 良い流れの時には逆らわないで身を任せる、これも彼女の流儀であった。 「彼が自分で使い魔、と呼んでいた竜と傭兵のメイジのことでございます」 改めて、先ほど喋らなかったことに他意はないと前置きしてから、マチルダは話を始めた。 「彼が使い魔と呼んでいるのは、竜と人です。使い魔を二匹、それも片方が人などというのは聞いたことがありませんでしたので……」 そして、マチルダは自分が見聞きした事実を語った。 竜の方は名前が分からない、男の方はメンヌヴィル。 それぞれルーンの位置は額と右手。 竜の方のルーンはクロムウェルの側近であったシェフィールドという女性の生首から引き抜いて、それを竜の額に貼り付けて使い魔にした。 メンヌヴィルの方は、竜が使い魔となって暫くたってから雇われ、ワルドがどこからか持ってきた切断された人間の右腕に刻まれていたルーンを移植され、使い魔にされた。 そしてマチルダは使い魔のルーンを他のものに移植する、その行為が余りにおぞましかったことと、移植される側、この場合切断された『頭』と『右腕』になるのだが、それが体から切り離されているにも関わらず、 『生きている』状態であったことがまるで悪夢のような光景であったことを身振り手振りを交えてマチルダは語った。 マチルダの話を聞き終えたオスマンは、何度も頷きを返し、それからウルザにこう問うた。 「ミスタ・ウルザ。我々が知る限り前例のない話ではありますが、使い魔のルーンの移植、そのようなことが、果たして可能なのですかな?」 即座 「条件さえ整えば、可能でしょう」 ウルザが答えた。 オスマンはマチルダだけでなく、続いてモット伯爵から戦場で見聞きしたことを、それを終えると更にはルイズ・タバサ・ギーシュ・モンモランシーにウェザーライトⅡにて体験したことを、語るように促した。 オスマンが質問し、問われたものがそれに答える。その中で解決されない疑問や不可解な点はウルザが補足する。 そうして誰もが断片的な情報しか持っていなかったニューカッスル落城以後の空白の三ヶ月の全容が、オスマンの手によって見事に形作られていった。 ここからは物語を追ってきた読者諸兄の皆様にとっては、いささか単調なやりとりが続くこととなる、よって内容を纏めて流れに沿って記すに留めさせて頂く。 三ヶ月前、ニューカッスル城の決戦以後、一時行方不明となっていたワルドが、新たな力を手に入れてアルビオンへと帰還を果たす。 ワルド、死者を意のままに操る術を使い、アルビオンを瞬く間に掌握する。 真実に近づいたクロムウェルの側近、シェフィールドがワルドに捕らえられる。 シェフィールドの『頭』からルーンが抜き出され、ワルドが召喚した竜へと移植される。 ワルド、ガリア王暗殺のためガリアへ渡る。 タバサがガリア王暗殺を目撃し、地下牢へと投獄される。 ワルド、王周辺の貴族達を抱き込んで傀儡の女王を擁立する。 ワルド、ロマリアへと渡り、数日後に『右腕』を手にアルビオンへと帰還する。 ワルドがメンヌヴィルを雇い、『右腕』からルーンを抜き出し、これを移植し彼を使い魔とする。 ガリア王国からトリステイン王国へ宣戦布告。同時、ガリア・アルビオンとトリステイン・ゲルマニアが戦争状態へと突入する。 ワルド、浮遊大陸アルビオンをゲルマニア領空へと移動させ、進軍を開始。 帝都陥落。 間諜によりガリアによるトリステイン南部攻撃作戦の情報がもたらされ、トリステイン軍の大部分が南部へと集結する。 マチルダ、トリステイン攻撃の混乱に乗じてアルビオンを脱出、ガリアへ。 タバサを救出。タバサ、マチルダ共にトリステインへと向かう。 トリステイン魔法学院周辺に、突如アルビオン軍が現れ進軍開始。モット伯爵が王軍へと伝令を飛ばしつつ迎撃に。 モット伯爵がメンヌヴィル率いる屍竜騎兵と交戦。モット伯爵一人を除いて迎撃に出た兵士が全滅。 トリステイン魔法学院襲撃を受けるが、殆どの者は事前にウルザが準備していたマジックアイテムで王都へと脱出する。逃げ遅れたルイズ・タバサ・ギーシュ・モンモランシー・マチルダがウェザーライトⅡに乗船する。 ウェザーライトⅡ、アルビオン軍艦、機械竜、屍竜隊、メンヌヴィル、使い魔の竜と次々に交戦する。 現れたワルドとウルザが交戦。最中にルイズが魔法を放ち、進軍していたアルビオン全軍を壊滅させる。 「ふぅ……」 桃色の唇をカップに口づけ、冷えて久しい紅茶を含む。乾いた喉に、心地よい潤いがもたらされた。 諮問会開始から既に四時間が経過している。広すぎる円卓の間に残るのは女王アンリエッタとその側近マザリーニだけである。 その他の参加者には既に退室が命じられており、魔法による自動筆記も終了している。 次の予定である別の会議の開始まで三十分、アンリエッタにとっては久しぶりとなる休息の時間である。 だが、その表情は優れない。それは横に座るマザリーニにしても同じこと。 二人は共に先頃の諮問会で行われていたやりとりを思い出していた。 「どこまでが、真実なのでしょう?」 静寂の中で呟いたのはアンリエッタ。その声は毅然とした女王の仮面を外した導くことに脅えを抱く、齢十七の娘そのものである。 アンリエッタとて馬鹿ではない。自分が政治上の都合により王位に就いていることは自覚している。 この国には今、強い指導者が必要なのである。 未曾有の混乱、これまでにないほどの大きな戦争、それを乗り切るためには誰しもが認める『完璧な王』が必要だったのだ。 『始祖の加護を受け、聖なる光でアルビオンを撃退した偉大なる女王』という立場は国を纏める上で都合が良い、ただそれだけのこと。 自分の力によって座にあるわけではない。救国の英雄が王となるならば、むしろ本来の意味で女王の椅子に座るべきはルイズであるべきだろう。 だが、アンリエッタはそれを分かっていながら女王の椅子に座り続ける。 それが彼女に課せられた役割であるから、王族に生まれた者の責任であるから。 例えそれが、国民を欺くことになろうとも。 だがこの時間、言うならば舞台裏。役者が舞台を降りて次の出番までの間、素の自分に戻っても良い時間。 「どこまでを信頼して良いものか、私には判断しかねます……」 弱々しく紡がれた言葉は、脚色無い少女の本音。 「仮に、全てを真実とするならばどういたします?」 その質問に、マザリーニがいつも通りの声で答える。 「……恐ろしいことです。始祖が降りたったこの地以外に、別の世界があるなどと……そして直接的ではないにしろ、その世界からの侵略などと、まるで子供が夜に見る悪い夢のようです」 アンリエッタは本当に全てが悪い夢だったらと思う。聞いたこともないような世界の話、存在も疑われていた失われたはずの五柱の一角、過去に類を見ないような世界中を巻き込んだ大戦争、その全てが自分が王となった代で起こるなど。 「……私には荷が重すぎます」 これこそが自分の言葉、身の丈に合った言葉、消えてしまいそうな呟きを、そんな想いに駆られて漏らす。 ザーザーという音が、窓辺から聞こえる。いつしか外は雨、勢いよく降っているらしい雨の足音が部屋の中まで伝わってくる。 「あなたしかおりません」 ただ雨音だけが響く部屋で、マザリーニが言葉を発した。そして更に、続けて言う。 「いえ、あるいは探せば他にも適任者がいるかも知れません。ですが、私はそれでも、あなたこそがこの局面に置いて最高の『王』だと信じております」 「……ご冗談はお止しなさい。私を王位に据えたあなた自身が一番分かっているはずです。私には人を導く指導力も、何かを判断する決断力も欠けていると。先ほどの話が真実とするならば、この度の争乱はこの世界を左右しうるもの。 私ごときの器は頑張っても精々平時の『王』。このような局面に、私のような凡庸な者が『王』でいて良いはずがありません。それに何より私は私情を挟む『王』。 この度の戦いを、ウェールズ様の敵討ちとして望んでいる私がいないと言い切れません。あるいはウェールズ様の元へと逝ける機会だと思っているかも知れません。そういったやましい心を持った『王』ならば、それは兵を、民を巻き込んで国を道連れにしてしまいます」 一息に、思いの丈をぶちまける。 アンリエッタは国を、民を愛している。だからこそ、自分の私情によってそれらを損なうことを何よりも恐れていた。 自分自身が分からない、自分の心が分からない。 国民を愛している、けれど未だウェールズも愛している。もしもその時、二つのどちらかを選べと言われたときに、自分がどの様な選択をするのか、分からない。 「自分のことも分からぬ『王』に、誰がついてくると言うのでしょう。そんな弱き『王』は必要ありません」 本音だった。 自分のような小娘が王などと、間違っている。それこそが即位以来、ずっと彼女が抱え続けてきた想いであった。 話の最初から最後までを、黙って見ていたマザリーニの視線に耐えられなくなり、アンリエッタは窓へと視線を逃がす。 外の雨は益々勢いを増し、叩きつけるような激しいものとなっていた。 「それでも」 強くなった雨音にかき消されないようにか、先ほどよりも強い調子で、 「あなたこそが、王に相応しい」 マザリーニは言った。 その言葉に、反射的にアンリエッタは我を忘れて席を立つ。 「……っ。 一体この私のどこが王に相応しいと言うのですか! 能力は平凡で、好いた殿方一人に右往左往、王の血筋に生まれたというだけで、本当は市井の娘と何ら変わらないただの小娘ですわ! こんな私のどこが! あなたは『王』に相応しいと言うのですか!?」 自分を卑下しているのではない、これは、歴然とした事実なのだ。 だが、そんなアンリエッタを前にしてもマザリーニの言葉は変わらない。 「それでも、あなたは『王』に相応しい」 繰り返された言葉に、アンリエッタは力一杯拳を握り締める。 「どうしてっ!?」 激しいアンリエッタの詰問に 「あなたには、華がある」 マザリーニは余裕の笑顔を返したのだった。 「……華?」 「ええ、そうです。華と言って分からなければ魅力と言い換えても良いでしょう。人が望んでも手に入らぬ天性の魅力、あなたにはそれが備わっている」 「魅力、……そう、魅力。でも、そんなものが何の役に立つというのです。確かに『王』たるものにカリスマは必要です、しかしそれが『王』としての能力を凌駕するとは、私には思えません」 マザリーニの言葉に毒気を抜かれたように、再び腰を下ろすアンリエッタ。 「おやおや、アンリエッタ女王陛下は『魅力』を侮っておいでのようだ」 「侮るも何も……たかだか人を惹きつけるだけでしょう。そんなものが政治や戦争の、何の役に立つというのです」 「確かに、魅力は政治や戦争に直接役に立つものではありません。ですが、立派な武器となるものです」 「……」 「人を惹きつける力、それも天性のものとなれば別格。例えあなた自身に力が無くとも、あなたよりも優秀な周囲の者達があなたを喜んで支えるでしょう。 そしてその者達はあなたが最善の決断に至るように力を尽くし、その決断には喜んで支持をして実現させるために力を注ぎます。そして時に補佐し、時にあなたを諫める。 あなたはそこにいれば結構。そんなあなたを助けようとする者達の力を十二分に引き出すのですから。そう、『魅力』とは指導者にとって最も必要とされる希有な資質なのです」 普段は決してこのような強い調子で喋ることのないマザリーニの言葉。 しかも、それを要約すると『あなたはとても魅力的だ』 呆気にとられて一瞬惚けたような顔をしたアンリエッタだったが、そのことに思い至り、上品に手で口元を隠してくすくすと笑い声を漏らした。 「マザリーニ枢機卿。もしかして、今、私はとても失礼なことを言われたのかしら? まるで私が人を惑わす魔性の女のような口ぶりでしたけれど」 「いやはや、その通りのことを申しただけですぞ。気に入らないのでしたら、言い換えて差し上げましょう。あなたは天性の『人ったらし』です」 「はははっ! お止しになって、それこそ私が希代の悪女のようではありませんか」 ついに堪えきれなくなり声を出して笑うアンリエッタ。それを眺めるマザリーニも穏やかな笑顔を返した。 「陛下には陛下にしかない武器がございます。あなたは自身を恥じ無くてよろしいのです。あなたは立派な『王』となるでしょう」 「……なぜかしら、あなたにこんな事を言われるのはとっても可笑しいことなのに、心が楽になった気がします。王になって初めて……真に人の口から私が『王』になったことを肯定された気がします」 「いいえ、女王陛下。私以外にも多くのものが、女王陛下を認めております」 「それも、私の魅力によるものなのかしら?」 「左様です」 「そう……それでは、その数少ない取り柄を使って、この国を良くしていきましょうか」 そう言ったアンリエッタは、苦労をかけるであろう側近に向かって、華のような最高の笑顔を見せたのであった。 女王陛下万歳!女王陛下万歳!女王陛下万歳! ―――トリステイン国史記より抜粋 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む