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「……二体?」 目を醒ますや否や、アリスは困惑した。 その理由は。 「ゆっくりしていってね!!!」 「おはよう、アリス」 緩んだ顔と、落ち着いた表情。 「何でまりさが二体!?」 面相の異なる、しかして同じゆっくり魔理沙が二体構えていた。 「おはよう! おはよう!」 「挨拶は一回でいい」 片方は頻りに飛び跳ねて主人の朝を迎え、もう片方はそれを冷静に戒める。 「なんであんたたちは普通に接してるの……」 家主のアリスが、この状況に最も馴染めずにいた。 東方分裂饅頭 ~ふえーるゆっくり~ 「ご飯、ご飯!」 「はいはい、今作るわよ」 くい、とアリスが手をひねると、棚に座っていた人形が次々と起き上がり、台所へ向かって飛んで行く。 「貴女はおねだりしないのね」 「お腹はすいている」 ぐう、と冷静なまりさの顎のあたりから餡の虫の声が聞こえる。 「そ、そう……(可愛げがないなあ、こっちは)」 アリスは食堂に向かう。 「さあ、テーブルに座って待ってなさい」 「うん!」 「はい」 片方は跳ねながら、もう片方は地面を静かに這いながら、食堂へ向かう。 (区別がしやすいからいいなあ) アリスもその後について行く。 「よっと」 まりさを持ち上げ、ベッドに乗せる。 まりさを持ち上げ、ベッドに乗せる。 (二体に増えても、やることは変わらないわね……) 「さて、寝ましょうか」 「おやすみ!」 「おやすみ……」 続く? 名前 コメント
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各キャラ紹介文 アリス と メディ と 人形 ここは ありす と にんぎょうたち の AA が ほかんされている ぺーじ したの りんく から あいにいこう _,,.. --─- 、..,_ ,. '"´ ___,,,,....、,,,_ `ヽ. , '´,.- ''"´ ̄ ̄`"''ヽ ヽ, ' , / /' / , i ,ハ Y ヽ. ', (ゆっくりしていきなさいよ・・・) ,' i !/ ハ / ヽ _,ハ ', i O i ! 'ー- レ' -― .Ti !ハノ ,' o !ヘ ,ハ !rr=- r=;ァ. イ/ i 〈 ヽ ヘハ'  ̄  ̄ " ハ〈 ハ ) | .l、 " 'ー=-' "/ / ノ / ノ ノ ,iヽ イ/ ン' イ ノ ∬. '〈r'k' /r'7ア´ ̄`ヽ ! /_ン┌-┐ ノ /イ Y.(i _i rくヽ/!ノ __ ,ゝ \ \/`/ メ `ヽ、_二、___イ __,,,....,,,_ _,..,_ _人人人人人人人人人人人人人人人_ i´ 7 ̄`ヽ `, //| `i > ゆっくりしね!!! < '、 '、 | | / / / /  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ ,.>、ヾ´ ̄l |二7∠、イン' , '´_,,.. ->'´ ̄ `ヽ、. ,.-、 ,.、 / 「 , '" `' 、!ヽ. | >-< ! イ `/ / / i i i `く .i 7, '´ , , , ヾ ,' ,' ハ-‐ト ハ ハ ‐i-ノ!. ', 7 i i /_レ' i/_! ',. 〈 i / / __, .!ノ |ノ .、!__ハ、! , ,ゝ 〈_iレレ' o oレヘ! シネ!!! ノ .ノへ,ハ! (ヒ_] ヒ_ン ハ/レ' / !|ゝ、 _ヮ ノ| | ,' ノ i ','" ,___, "' .i ', .〈,ヘ,ゝ'<ゝr7ヽレ' i 〈 ノ ト.、 ヽ _ン , イ ノ,.ゝ ヽ/、__!_」ムl__,.ゝ `ヽヘ `〈へハ,ノ,、 _____, ,.イ ハへ(ゝ `,'ー'ァ'、,」_,i ', メディスンの となりに いる にんぎょうの なまえは ここでは 「スーさん」 だけど げんさくでは 「スーさん」は すずらんばたけの なまえだから ちゅうい してね +淫.アリス 基本AA 淫.アリス 基本AA ■左向き ■正面向き ■右向き +乱.アリス・マーガトロイド1 乱.アリス・マーガトロイド1 ■ベーシック○左向き ○正面 ○右向き ■思った事を口に出さないアリス ■アリスがラーメン ■アリスラッシュ ■魔理沙をナデナデ ■ヤンデレ ■私のために争わないで ■緋想天やられ顔 ■監視するアリス ■ぶりっ子(死語)アリス○普通のアリス ○舞台裏 ■省エネ時代 ■結婚しました ■上をむいてキス ■魔理沙からのプレゼント2 +ア.アリス・マーガトロイド2 ア.アリス・マーガトロイド2 ■アリスの逆襲 ■きめぇアリス ■鳥人拳アリスver. ■ハングドアリス ■ブラウジング ■ご冥福をお祈りします ■キラキラ ■口笛アリス ■きもんげテイマー ■遊戯王GX「絶望の国のアリス」 ■乳首ファイヤー ■新しいボディ ■孤独なアリスのために戦う女、スパイダーマッ! ■スパイダーマがパイルダーオン +リ.アリス・マーガトロイド3 リ.アリス・マーガトロイド3 ■TENGA ■妬ましいアリス ■ファイブオブアカインド ■ひろゆき ■きめぇ丸寄生 ■決戦の秋来る ■かわいいアリス ■かわいいきめぇ丸とそのオマケ ■かわいいロリス ■夢の国 ■Don't I miss you a lot forever? ■キター ■スーパーそこまでよタイム ■ベネット ■ヨコハマアリスがガチャッ ■人形劇 ■ボーリング +ス.アリス・マーガトロイド4 ス.アリス・マーガトロイド4 ■仕事人アリス ■謎のヒーロー アリス丸 ■アリスの夏休み○宿題 ■アリスクール ■エビが… ■タバコ ■照れアリス ■引きつり笑顔 ■非想天則の移動起き上がり ■シルエット ■ドラゴラム ■糸繰り人形 うどんげ ■ハート +俺.アリス・マーガトロイド5 俺.アリス・マーガトロイド5 ■くたくた ■歌舞伎 ■必殺仕事人 ■忍者 ■マガトロ2:50 ■ウサ耳アリス ■おわり ■ウインク ■冬の怪談 ■メカアリス ■わたしです ■怒符「ロイヤルアリスさん」 ■ディフェンス ■クリスマスなんて…… ■クリスマス ■見返りアリスさん○見返りサンタ ○見返り門松 +の.アリス・マーガトロイド6 の.アリス・マーガトロイド6 ■ピース ■東方ALIVEに出演した結果がこれだよ!!! ■チョコレート作り ■首吊蓬莱人形 ■ハートマーク ■リラックス ■ホットミルク ■スローロリス ■ザバー ■ミニアリス人形 ■名前間違いすぎ ■見返りロリス ■ププッ ■感動もしくは爆笑を我慢? ■こっそり早弁 ■何を読んでる・・・? ■頭痛 ■拳に侵食 ■ナス ■朝 ■チャーミング ■最近りりしいアリス ■ウインナー ■ひょっこり ■ムンナ ■ファイト ■アリンゲ +嫁.アリス・マーガトロイド7 嫁.アリス・マーガトロイド7 ■ごめんね ■あんぐり ■はわわ ■ニコニコ動画のアイドル ■ウインク ■? ■L ■大慌て ■電気の無駄遣い ■ニャリス +`.アリス・マーガトロイド8 `.アリス・マーガトロイド8 ■眠い ■読書タイム ■お人形アリス ■風呂上り ■寝癖 ■アリスってやつかわいい ■アリスマッドネスリターンズ ■ポッキー ■ツインテール ■ダブルピース ■安易なレズキャラ扱いに憂う +チ.淫乱アリス1 チ.淫乱アリス1 ■魔理沙からのプレゼント1 ■淫乱アリス ■おはよう今日もいい天気だ(アリス編) ■腹話術 ■アリス一家 ■かわいい淫乱アリス +ュ.整形アリス1 ュ.整形アリス1 ■整形アリス ■アリス・ナジャ ■魔理沙といっしょ ■リグル ■蟻ス ■一人クリスマス ■アリスマスツリー ■ヤンデレアリスの楽しいクリスマス ■クリスマスおわり ■ガチャ ■整形before/after ■整形失敗 ■お正月 理想編 ■お正月 現実編 ■セレブ ■整形アリスの帰宅 ■夜道 ■逆襲のアリス ■肉体をも整形したアリス ■足…!? ■整形アリスと人形 ■でっかい整形アリス +ッ.整形アリス2 ッ.整形アリス2 ■募金 ■プンプン!! ■目目連 ■キャプ翼体型 ■アリスのワンダーランドへようこそ ■デフォルメ整形アリス ■ブロック崩し ■みんな~ ■アリスちゃんが見てる ■テレビ ■細身 ■輪っか作り ■三大美女 +!.整形アリス3 !.整形アリス3 ■ゆっくりこっちくんな ■風呂上り ■たわしアリス ■ポッキー ■整形ロリス ■トリック難易度レベル⑨ ■2011年生まれのキラキラネーム +!.親不孝アリス1 !.親不孝アリス1 ■アリス救出の専門家、スパイダーマッ! ■積み木崩し ■お母さんがきゅうさく おばけから救出 ■積み木崩し病の治療 ■お母さんからのクリスマスプレゼント ■アリスの旧作リスマス +!.親不孝アリス2 !.親不孝アリス2 ■ゆうじのクリスマスプレゼント ■ゆうじの大掃除 +!.最近かわいいアリス !.最近かわいいアリス ■最近かわいいアリス ■最近かわいいというより、もはや変なアリス ■殴られアリス ■さよなら最近かわいかったアリス +!.最近かわいいアリス2 !.最近かわいいアリス2 ■最近かわいいアリスがまりさとキス ■最近またかわいいアリスとお母さん ■最近かわいいアリスが監視 ■裾咥え ■かわいいアリス、バーガーを食べる ■かわいくて優しいアリスとれいむ ■かわいいアリスとお洗濯 +!.最近かわいいアリス3 !.最近かわいいアリス3 ■ +!.メディスン 基本AA !.メディスン 基本AA ■左向き ■正面向き ■右向き +!.メディスンとスーさん1 !.メディスンとスーさん1 ■メディスン・メランコリーとスーさん ■オプーナ購入権 ■メディスンとスーさん!? ■毒舌メディスン ■言っちゃだめー! ■出番 ■サトミタダシ ■メディとおそらさん ■里帰り ■デモ ■人集め ■ゲラゲラゲラ ■うどんげとゲラゲラゲラ ■かわいいメディスン ■猛毒 ■俺のログには何もないな ■2レスをまたいだ結果こんな風に見えた +!.メディスンとスーさん2 !.メディスンとスーさん2 ■ボーちゃん ■うー!うー! ■メディスン・ヨコハマとスーさん ■お座りメディスン ■もうだめディスんねこのスレ ■壷 ■ブチ切れメディスン ■涙の訴え ■比ディ隹ン ■紅魔毒掌波 ■パッチェ強制隠居 ■メディスンとスーさんと静葉 ■ショルダータックル ■シェー ■ここは妄想スレじゃありません ■自分でもよく分かってなかった ■毒ナース +!.上海人形と蓬莱人形1 !.上海人形と蓬莱人形1 ■上海人形 ■上海人形と蓬莱人形 ■スク水上海 ■松岡上造 ■シャンハイキック ■ひとりかくれんぼ ■アリス最近かわいい ■アリス=スタンド 上海=本体 ■ジークシャンハイ ■反抗的 ■でかい上海 ■見なかったことにしておこう… ■かわいいシャンハイ ■かわいい蓬莱 ■シャンハーイホラーイ ■⑨でもわかるネット慣用句講座 第1回「マッチポンプ」 +!.上海人形と蓬莱人形2 !.上海人形と蓬莱人形2 ■上海の勘違い ■上海がに ■流石人形 各キャラ紹介文 アリス と メディ と 人形
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Aから B、 「ゆっくり! ゆっくり! ゆっくり~!(霊夢! 私お手伝いするよ! ちょっと聞いて!)」 「はいはいうるさいわね。今忙しいんだから離れなさいよ。今日の宴会は地下の奴らまで来るんだから、たくさん酒がいる分早く用意しないといけないのよ」 博麗神社にて、博麗霊夢が自らの顔を模してリボンを付けた生首に飛び掛られ、 うざったそうに眉を顰めている。 その生首の名はゆっくりと呼ばれている、幻想郷に突如出現した謎の物体だ。 ゆっくりは涙目で霊夢に飛び掛り続ける。 「ゆっくりしていってよ~!(私の話聞いてよ!)」 「ゆっくりできないっての」 霊夢は胸の辺りまで飛び跳ねてくる涙目のゆっくりを手で払い、 これまで行なってきた宴会の準備の作業を再開する。 「霊夢~、酒の用意は万全だぜ~」 「おつまみの準備もできたわよ」 霊夢の友人である魔理沙とアリスが声をかけながら近寄ってくる。 二人の背後には霊夢と霊夢のゆっくりの関係のように、 魔理沙とアリスの二人に対し、それぞれの特徴を持ったゆっくりがそれぞれ一匹ずつ飛び跳ねている。 「霊夢のところのゆっくりって本当に甘えん坊ね」 「そうなのよ……。こいつときたら私が忙しいことを知ってるのにこうして擦り寄ってきて……うざったいったらありゃしない」 霊夢は若干苛立ちを交えながら吐き捨てる。 「私のとこのもかまって欲しがりだが、霊夢のところはとびっきりだな」 「あれ? どうかしたのゆっくり」 「なんだ? ゆっくり同士で話し合いでもするのか?」 魔理沙とアリスのゆっくりがぽんぽんと跳ね、霊夢のゆっくりに近寄る。 霊夢のゆっくりに対して説得を試みているのだろうか。 少女達が若干期待しながら成り行きを見守る。 「ゆっくり! ゆっくり! ゆゆう!(どうかしたの? 主人と痴話喧嘩でもした?)」 「ゆっくり~! ゆゆゆ!(もしかして女の子の大事な日? タンポン貸してあげよっか? それとも貴方はナプキン派?)」 「ゆゆっくり!(何でもないよ! 向こうに行ってて)」 「 「 ゆ~!(あ、ちょっとこら!) 」 」 けれど、二匹が声をかけたにもかかわらず、霊夢のゆっくりは尚更霊夢に引っ付く。 魔理沙が「駄目だこりゃ」と頭を抱えた。 「私の言ってることがわからないのかしら……まったく」 「ゆっくりの方だって私達の言葉を喋れないんだから、私達の言葉なんてわからないのかもな」 「とはいっても……私が忙しいことぐらい見てわからないの? ……まったく、何を考えていることか知ってみたいものだわ」 「う~ん、『腹減った! 仕事してないで飯よこせ!』だとか、『もっと私を優しく扱え! かまえ!』みたいな感じなのかな? それにしてはちょっと様子がおかしいけどな」 「ま、後でさとりにでも聞いてみることにするわ」 霊夢は淡白な様子で答えた。 今日は地下の妖怪達も来る。彼女達はゆっくり達とは初の顔合わせになる。 そのときに心を読む程度の能力を持つさとりに聞けばいいだろうと考えた。 「ゆっくりしていって――(霊夢~――)」 「ほら、邪魔よ」 ばしっと、霊夢は飛び掛る自らのゆっくりを手で払いのけ、おつまみを乗せたお盆を持っていった。 ◇ 幻想郷に突如出現した動く生首、ゆっくり。 ゆっくり達は幻想郷の有名人達の顔を模して潰した生首のような姿をいるが、 それ以外の生態は謎に包まれており、どこから来たのか全くの不明で、 「ゆっくりしていってね!」と鳴くことから「ゆっくり」と名づけられたこと以外は誰もわからない。 けれど、そんな謎の存在ゆっくり達にもある一つの共通点があった。 それはその顔のモデルになった人間や妖怪、果ては妖精にひどく懐くということだ。 モデルとなった少女達は自らの姿を模した謎の生き物が擦り寄ってきてどう扱えばわからず、 とりあえず放置する者、仲良くなって共に暮らす者、非常食としてとっておく者と様々だった。 そして先ほどの霊夢のゆっくり。 霊夢の神社の庭にある日いきなり出没し、まるで親に出会った迷子のごとく霊夢にひたすら懐いた。 霊夢は退治するべきか放っておくべきか迷ったが、特に悪さをするわけでもないので放置することにした。 そして今では霊夢とゆっくりが奇妙な同棲生活を行なうこととなったのである。 ◇ 「乾杯!」 「「「かんぱ~い!」」」 今夜の宴会は非常に賑やかなことになった。 博麗神社の庭では人間、妖怪、妖精、鬼、天人、神、様々な種族が入り乱れて、 派手に豪快に呑めや歌えやの大騒ぎ。 これまで特に交流がなかった面々も酒の力で互いの距離感が近くなり、飲み比べでその度量を認め合っていった。 そして宴会が進むに連れて、次第に気が合う者同士でいくつかのグループに分かれていく。 酒に強く騒ぎ立てる者達、お喋りに興じる者達、少し距離を置いて自分のペースで飲む者達。 皆が皆、自由に酒と場の雰囲気を楽しんでいる。 そんな中、ある一角が周りの目を引いた。 「ゆっくり!(お酒最高!)」 「ゆっゆっ! ゆっく、ゆっくり!(あっ! それ私の! 返してよ! 主に口移しで!)」 「あ~う~(ねぇ、野球拳しようよ!)」 「きゃなこ~ん(うちら脱ぐものが殆ど無いじゃん。そもそも手が無いからジャンケン出来ないし)」 ゆっくりである。 ゆっくり達が庭の端の方に陣取って、集まり、酒宴に興じている。 ゆっくり達はころころ、ぽてぽてとその丸い体を転がし、 飛び跳ねながら、口しかないのに器用に酒を注ぎ、呑み、つまみを食す。 そんな生首たちの酒宴の様子を、幻想郷の少女達は伺っていた 「あいつらって、ゆっくり達って本当に何者なんでしょうね?」 妖夢が周囲に聞かせるように呟いた。 「特に何かをしでかすわけでもないですし、それどころか私の場合何故か仕事を手伝ってもらったこともあるんですが」 彼女はゆっくり妖夢に自らの庭師の仕事を手伝ってもらっているので感謝の気持ちもあるのだが、 妖夢自身はゆっくり妖夢の事を何も知らない。 「ゆっくりねぇ……新種の妖怪って感じでもないわね。あんな感じで私達の姿に似せているのは一種の擬態かしら? ……まぁ似てないし、何者かわからないけど、放っておいても無害だし別に大丈夫じゃない?」 パチュリーが「どうでもいいし」と付け加え、興味なさげに冷めた表情で妖夢の質問に答える。 ゆっくりパチュリーは図書館の本を読むだけで、特に何もしてこなかった。 いてもいなくても関係がないのなら、毛玉のようなどうでもいい存在だ。 「私のところのゆっくりは何だか年中ゲラゲラ笑ってうるさいから迷惑なのよね~。もう少しおとなしくして欲しいんだけど」 うどんげが唇を尖らせながら不満げに呟く。 魔理沙はニヤリと悪そうに笑いながらうどんげの方を向いた。 「そんなに邪魔なら兎鍋にすればいいじゃないか。うどんげのゆっくりだから兎みたいだし。何なら今から捌くか?」 「共食いみたいなんで勘弁して……。私の姿を真似ているものが食べられていい気はしないし」 「そうか、それはありがたい。うどんげがゆっくりの代わりに酒の肴に捌かれてくれるなんて」 「何でそうなるのよ!」 うどんげがばんと床を叩いて突っ込む。 「だけどゆっくり達って本当に賑やかね。う~う~鳴いてて、私達には何喋ってるかわからないけど」 「何を話してるのかな?」 腕を組んで考え込むレミリアと首を傾げるフランドール。 彼女達の言葉に反応して、魔理沙がぽんと手を叩いて注目を集める。 「そういえばさっき霊夢と同じ話をしたんだよ。『ゆっくりって何を話しているのかな』って」 「へ~、やっぱり『お腹すいたよ、ごはんちょうだい』とか、『あそんで~』とかかな?」 「いや、言葉が通じないことをいいことに命令形で話しているのかもしれないわ。『飯』『風呂』『寝る』」 段々と皆が魔理沙の話に注目を集めていく。 『ゆっくり達はどのようなことを話しているのか』 それが宴会に参加している者達の興味の中心となった。 普段は「犬や猫が何を話しているかどうでもいいようなものだろ」と興味なさげに言うような者達でさえも、こっそりと耳を傾けている。 何故ならゆっくりは自分達の姿を真似ているのである。 自らに関係がありそうなことなら多少の興味はあるというものだ。 ◇ 「すいません遅れました。それと灼熱地獄跡地での炉の仕事が滞っていて、お燐とお空は残業で来れません。こいしも今日はちょっと連絡が付かなくて――」 「お、さとりじゃんか――そうだ! おまえいいところに来たな!」 魔理沙はやってきたさとりの顔を見るなり、何かを企むような顔で擦り寄って手をとる。 突然手を握られたさとりは何事かときょとんとしながら魔理沙の目を見る。 「な~さとり~、おまえ『ゆっくり』って知ってるか~」 「『ゆっくり』……ですか。地上で最近話題になっている、幻想郷の少女を模した饅頭顔の生首のことですね。私はまだ見たことはありませんが、それがどうかしました?」 「実はちょっと頼みがあるんだけどさ~」 「『さとりにゆっくりの考えていることを読んでもらおう』ですか。貴方、私の事を通訳か何かと勘違いしていませんか? ……してますね」 さとりがその座った目をより細めてジト目となり、呆れながら言う。 「いいじゃないかよ~。減るもんじゃないし~。お願いさとりちゃ~ん」 「馴れ馴れしいです。それに酒臭い。酔っ払いは突拍子もないことを考えるから苦手です」 「だったらなんでこんな場所来てんだよ~。ホントは誘われて嬉しいんだろ~。うりうり~」 「想起『二日酔いの朝』」 「ぎゃあああああああああああ!! 酔いで空が落ちてくるぅぅぅぅ!!」 トラウマを蘇らせた魔理沙が頭をぶんぶん振りながら痛みにうなされる。 調子に乗った結果馬鹿を見た小娘の醜態に、周りからゲラゲラと笑い声が上がった。 「でも私も興味あるわね。悪いけど貴方、ゆっくり達の通訳お願いしてもいいかしら?」 「ね~、貴方心を読めるんでしょ~。だったらやってみて~」 そんな衆人達を掻き分けてきたレミリアと、彼女に手を引かれたフランがさとりに対してお願いする。 普段だったら恐怖の対象であるさとりの読心も、酔っ払いの席では誰も気にしない。 思ったことがすぐ口から出るためだ。 とはいえ、さとりは気軽に能力を行使するように頼まれて若干気が引けてしまう。 能力によって疎まれた過去を持つ彼女は、その扱いに関しては誰よりも慎重だ。 「え~と……貴方達、もしゆっくりの心の中が仮に「ご飯よこせ~。この召使いめ~」みたいな感じで貴方達に対して過度に偉そうだったりしたらどうするんです?」 「 「 今夜のおつまみにする 」 」 即答だった。周りを見れば他の少女達もうんうんと頷いている。 さとりが心を読む間も無かった。 素面の状態でもゆっくり料理をやりかねない彼女達。 酔っ払って自制心が効かなくなった今では、何か失礼があったらゆっくり達はおつまみの刑は免れないだろう。 「……やっぱり駄目です。動物は喋れない分欲求に正直ですから、あまり夢や幻想はもたないであげてくださいね」 さとりはそう言い残すと彼女達から離れた。 不満げな声が挙がったが、ここで捕まったら面倒なことになる。 こういった場合は別のグループに入るのが一番だ。 さとりはキョロキョロと周りを見渡しながら、その場を離れた。 ◇ 「いいところに来たじゃないの、さとり。相変わらず遅れてくるわね」 さとりが辺りをうろうろとしていると、縁側で座っている博麗霊夢に声をかけられた。 反応して霊夢の顔を見ると、頬がほんのりと赤く上気している。酒によるものであろう。 けれども何か気がかりなことがあったのか、いつもよりも酔いのまわりが悪いように見える。 「こんばんは、霊夢さん。色々あって遅れてすいません」 「別にそれぐらいで謝らなくていいわよ。ところでアンタって意外と宴会好きよね~」 「まぁ、それなりには」 さとりはしれっと答えたが、実際にはそれなりどころではない。 さとりは実のところ、宴会が大好きである。先ほど魔理沙に言われたことは図星であった。 さとりは心を読む程度の能力が他人に嫌われるとあって、基本的に表に出たがらないが、 宴会にはよく参加する。 酔っ払い同士なら頭の中が空っぽであり、なおかつ考えるよりも先に口が働く。 皆が心を読まれることを気にするような状態ではないため、さとりのことを疎まない。 そのためにさとりだって楽しめる。酒は潤滑油なのだ。 「ところで【いいところに来た】とはどういう意味です?」 「あのさ、【ゆっくり】って何者か、話には聞いてる?」 「えぇ、一応は。最近幻想郷に突如出現した動く生首のことですよね。そのゆっくりがどうかしました?」 霊夢が背後を振り向きつつ指を示す。すると霊夢の姿を模した生首が蕩けるような顔をして、 「ゆ~♪ ゆ~♪(霊夢~♪)」と声を出しながら、霊夢の背中にすりよっている。 どうやらあれが動く生首ことゆっくりなのだろうと、さとりは推測する。 「こいつが、ゆっくりが何を言いたがっているのか教えて」 「どういうことです?」 「ゆっくりは【ゆっくりしていってね!】に関することしかいえないから、わけがわかんないの。それに私のゆっくりときたら、何でかしらないけど暇さえあったら私に引っ付いてくるのよ」 「へぇ……それはそれは」 「それだけならまだいいけど、よりにもよって宴会の準備で忙しい時にくっついて来てうざったかったの。私がいくら言っても聞かないし……」 霊夢はうんざりとした顔で言う。 さとりは霊夢から事情を聞いた。 ゆっくりは突如博麗神社の庭に現れたこと。霊夢に対して親のように懐くこと。 霊夢が邪険にしてもかまわず向かってくること。 そしてつい先ほども宴会の準備があったのに引っ付いてきてきたこと。 「はぁ、そんなことがあったんですか」 「だから、さとりのその読心でゆっくりが何考えてるのか教えて。何であんなことをしたのか知りたいし、な~んか妙な気分なのよね~。私の勘が騒ぐっていうか」 さとりは一瞬「失敗した」と思った。 面倒ごとから逃げて来たのに、逃げた先で更に面倒なことに巻き込まれてしまった。 またどうにか理由をつけてこの場を後にしようかとも思った。 だが―― 「ゆ~♪ ゆっくりぃ~♪(ん~♪ 霊夢大好き~♪)」 さとりはゆっくりの心の中の、霊夢に対する好意を感じた。 どうやらあの生き物には言葉が通じないがゆえに、その溢れんばかりの好意が上手く伝えられないようだ。 それを霊夢は上手く受け取ることが出来ていないのだろう。何だか微笑ましい。 さとりは何となく、少しくらいだったら想いを伝える手伝いをしてあげてもいいと思った。 「わかりました。やってみます」 言うが早く、さとりはゆっくり霊夢の顔を覗き込む。 それに反応して、ようやくゆっくりはさとりに気付き、上目遣いで見つめる。 「こんばんは」 「ゆっくりしていってね!(小五ロリだ!)」 「………………」 さとりの動きがピタリと止まり、辺りの空気が凍る。 「あれ? さとりどうかしたの?」 「いえ、何でもありません。軽いかるちゃーしょっくとでもいいましょうか……」 さとりは頭を振って気を取り直して再度ゆっくりに近寄り、声をかける。 「私の名前は古明地さとりっていうの。私は貴方の言葉がわかるわ」 「ゆ~! ゆっくり! ゆぅ~!(私と話が通じるんだ! すげ~)」 「ねぇ、貴方はどうして霊夢――自分の主人にそこまでかまってもらいたいの? さっきだって宴会の準備の邪魔をしたって聞いたけど、それは本当なの?」 「ゆっくり! ゆぅぅ~! ゆっくり!(え~と、だったらちょっと説明するね。あのね、話すと長くなるんだけど~)」 「ふむふむ――」 さとりはゆっくりと会話をする。 どうやらゆっくりは人語を話せないが、人語を理解することは出来るようだ。 さとりは読心の能力を持つため、本来はゆっくりは声を出す必要がないのだが、 ゆっくりは思ったことがすぐ口に出る性質があるのか、声を出して喋ってくる。 それをさとりは聞き続けた。 「――なるほど、よくわかったわ」 「ゆっ!(どもね!)」 さとりが得心を得た。くるりと霊夢の方を向く。 「で、何だって?」 「え~とはい、何でもこの子は、霊夢さんのお手伝いをしたかったそうです」 「お手伝い?」 「そうです。お手伝いです。普段お世話になっている霊夢さんのお手伝いをしたかったのだけど、何をすればいいのかわからなかったそうです」 擦り寄ったり甘えることによって邪魔ばかりしていたと思っていたゆっくり。 そのゆっくりの真意が手伝いをしようとしていたなどとは、意外な答えに霊夢が驚く。 「霊夢さん、一ついいですか?」 「何よ」 「霊夢さんはその子に好かれているのはわかりますか?」 「う~ん、ゆっくりときたら暇さえあれば甘えてくるからそんな気はしてたけど……けど、私はこいつに対して特に可愛がってやったりとかしてないわよ。なんでこんなに好かれるのかさっぱり」 「そうですね、例えるなら霊夢さんのことを好いている方達、紫さんや魔理沙さんなどに対して、霊夢さんは特別可愛がったりしていますか?」 「いいえ。まったく。それどころかよく弾幕ごっこでドツく」 「それだけですか?」 「まぁ……その後よく一緒にお酒を飲むけどね」 「それと同じですよ。霊夢さんのさっぱりとした人柄にみんなが集まるんです。この子は『霊夢大好き! 霊夢と一緒にいたい!』という気持ちが溢れかえっています。裏表のない霊夢さんが大好きだそうです」 「でも、今日は邪魔してきたと思ってぞんざいにあつかったし、嫌われてもおかしくないんじゃないの?」 霊夢が反論するかのように答える。 「ゆっくり~ゆっくり~(そうでもないよ。霊夢がそういう人だって知ってるし、そういったところ含めて好き。さっきだって、忙しくなくなったら私が甘えててもどかしたりしなかったし)」 「霊夢さんがそういった人だということはわかっているそうです。だから大丈夫だと。そういったところを含めて好きだそうです。それに忙しくなくなったら、ゆっくりが甘えてきたときにされるがままにしてたそうじゃないですか」 「え~と、それはあれよ。酒の席でつまらないことでイライラするのも嫌じゃない。だからちょっとくらいならいいかなと思っただけよ。ホントに邪魔だったらどかすわ」 霊夢がばつの悪そうな顔をしてそっぽを向く。 「ゆっゆっゆっくり(それと、宴会の準備邪魔してごめんね。忙しかったのに)」 「宴会の準備の邪魔をしてしまったことについてはこの子も申し訳なく思っています。忙しいところにかえって邪魔をしてしまったと、反省をしているようです」 「そうなの?」 「ゆ~ゆ~(そだよ。ごめんね)」 霊夢がゆっくりの方をちらりと見る。その目には若干の戸惑いがあった。 霊夢は基本的に人妖に好かれるさっぱりとした気質を持つが、 あまりこういった類の、子が親に向けるような愛情を受けたことはない。 どういった反応をすればいいのか戸惑うその様子は博麗の巫女というよりも、 一人の少女のそれであった。 「霊夢さん」 「な……なによ」 「霊夢さん、そんなに肩肘を張らなくても大丈夫ですよ。この子は自然体の霊夢さんが好きなようですから。それに私個人としては子供や小動物に優しい霊夢さんっていうのは気持ちが悪いです。霊夢さんって子供の飴玉とか奪いそうですし」 「おい」 「確かに熱心に好かれると、時にはうざったくなってしまったり、どうしても手が離せなくなってかまえなくときがあるのはしょうがないでしょう」 「無視すんな」 「ですが――」 さとりの突如真剣味を増した声に霊夢が気圧される。 普段のさとりは基本的に根暗だ。 けれどペットや、言葉の喋れない存在に関わるとこのような真摯な性格になる。 だてに地霊殿の主はやっていない。 「ですが自分を好いてくれる相手には、どうか無下に扱うようなことはしないであげてください。嫌われるのは簡単ですが、好かれるようになるのは難しいです」 さとりがふっと、自嘲するようなため息を吐きながら言った。 「まぁ、私は霊夢さんなら大丈夫だと思いますけどね。その姿を見ていると」 さとりは縁側に座る霊夢と、その隣に並びながら霊夢に寄りかかるゆっくりを見る。 ゆっくりの顔はとても幸せそうだった。 愛する母に抱きつく子供のような安心感を醸し出す至福の表情だ。 こんな顔をすることが出来るような者は滅多にいない。 なんだかんだいって普段霊夢がゆっくりにたいして世話を焼いていることが伺える。 「え~と、これはその、あれよ。あんまり駄々をこねてて五月蝿かったから、こうすれば黙るからこうしただけよ」 「はいはい。わかりました」 さとりはにこやかに笑いながら霊夢に言った。 霊夢はさとりのそんな姿を見て、自らの頭をわしゃわしゃと掻き毟る。 「あ~もう、この話はもうおしまい!」 そう言うと霊夢は自らのゆっくりを膝の上に乗せた。 上に乗ったゆっくりは即座に目を輝かせ、口元がわぁっと開き、幸せ一杯の顔をする。 「ゆっくりしていってね♪(霊夢大好き♪)」 「……まったくしょうがないわね。こういうことはたまにしかやってあげないから、あんまり忙しいときに引っ付いてくるんじゃないわよ」 「ふふふ……」 「それとさとり、アンタもさっさと酒飲みなさい! 宴会で素面が真面目なこというんじゃないわよ!」 「はいはい。わかりました」 悪態をつきながらゆっくり霊夢を膝の上に乗せる霊夢。彼女の心の中は妙なこそばゆさで一杯だった。 さとりはその微笑ましさに思わず頬が緩んでしまった。 ◇ 「ところで貴方、最後にひとつ聞いてもいい?」 さとりがこれで時分の役目は終わったと思いその場を離れる前、 ゆっくりに対して感じた素朴な疑問があった。最後にそれを聞いていこうと彼女は考えた。 「ゆ?(どしたん?)」 「貴方達って何で幻想郷の女の子の姿をしているの?」 「ゆっくり――(それはね――)」 ◇ ザッザッザッと、さとりは霊夢とそのゆっくりから足早に離れた。 ゆっくり達が幻想郷の少女達の姿をしている理由。 それ自体はある意味「わかりやすく」「微笑ましい」理由だったが、 決してモデルとなった少女達には口外できないものであった。 霊夢に対しては上手くぼやかしてきたが、このままだとボロを出しかねない。 今日は日が悪い。さとりは一刻も早く帰ろうとする。 けれど―― 「すげ~!! ねぇねぇ、あたいのゆっくりがどんなこと考えてるか教えてよ~」 「私のゆっくりは! 私のゆっくりは!」 「な、何ですか貴方達!?」 気が付けばさとりの周りには観衆が集まっている。 一度は撒いたのに、愚かなことにも再度捕まってしまった。 先ほどのさとりによる一連の光景は中々変わった見世物だったため、皆の興味を引いた。 そのために少女たちは離れたところから見学していたのだ。 そしてさとりの手腕に感心した少女たちは、今度は自分の番だと引っ付いてきたというわけである。 「どうせだからさとりにみんなのゆっくりが何考えてるか教えてもらおうよ~!」 「いいね~!」 「もう決定だね~!」 「そ~なのか~そ~だよね~そうするっきゃないね~」 「私のゆっくりだから、きっとさぞかしカリスマ溢れた台詞を言ってるのでしょうね」 「えと……あの……ちょっと待って……」 皆が勝手に話を進めている。徒党を組んだ酔っ払いは手が付けられない。 彼女達は期待の篭った視線をさとりに向けた。さとりは思わず気圧される。 場の雰囲気に完全に飲まれていた。 「ち……ちょっと席を外しま――」 どうするべきか、逃げるべきかとさとりが迷い、 取り敢えず先ほどと同じように逃げようとその場から背を向けた瞬間、 何者かに肩の辺りをガシッと捕まれた。 「今度は空気嫁よ」 「ひぃっ!」 気配もなく近寄ってきた衣玖が能面のような笑顔でさとりに呟いた。 ギリギリと、衣玖の指がさとりの肉付きの薄い肩に食い込み、 さとりの顔が青ざめる。 「頑張ってさとりちゃ~ん!」 「いけいけ~!」 「さとり~! 愛してるよ~! ちゅっちゅさせて~!」 前門の衣玖、後門の酔っ払い。 いや、周りを囲まれた今となっては四面楚歌。 さとりに選択権はなかった。断れば何をされるかわからない。 「わかりました! わかりましたよ! 行って来ます!」 こうなったらどうしようもない。上手く誤魔化すしかない。 さとりは普段あまり出さない大声を上げると、ゆっくり達が集まる場所に向かった。 とてとてと歩いてゆっくり達の集まりに近寄る。 するとゆっくり達は皆何者かに対して首を傾げる。 「みんな、こんばんは」 さとりはゆっくり達に向かって声をかける。 けれどもその音量は小さく、雰囲気も暗い。 外の世界の歌のお姉さんとはかけ離れている。 「ゆっくりしていってね!(小五ロリだ!)」「ゆっくりしていってね!(ロリだ!)」 「ゆっくりしていってね!(小五だ!)」「ゆっくりしていってね!(ちっちぇ~!)」 「ゆっくりしていってね!(スモック着せたくなるね!)」「ゆっくりしていってね!(ハァハァ!)」 「ゆっくりしていってね!(ほっぺ柔らかそう!)」「ゆっくりしていってね!(エロ同人朗読させたい!)」 ゆっくり達は対称的に元気よく、 歌のお姉さんに向かう子供達のような天真爛漫な姿でさとりに挨拶を返す。 どうやらさとりは歓迎されているようだ。 ゆっくり達はさとりに対し、どうかここでゆっくりしていって欲しいと言っているのかもしれない。 はやし立てた少女達はそう考えながらワクワクしながらその光景を見守った。 ============================================ 「ゆゆっくり! ゆっくりしていってね! ゆっくり~! ゆゆっ!(私達の正体は元【毛玉】なんだよ。ほら、紅魔異変のとき道中で弾を撃ってくるアレね。弾幕で打ち落とされた毛玉たちが、自らを打ち抜いた少女に惚れて、自分もその子に近づきたいって願って願って、その子になりたいと思った他の毛玉と毛玉トーナメントして勝ち残ったら毛玉の神様が願いを叶えてくれたんだ) 「ゆっくりしていってね~(私は霊夢にぶち抜かれたときにそのかっこよさに惚れて、一生この人についていこうって決めたんだ! 競争率がめっちゃ激しかったけど、こうなったらもう最高だよ! 霊夢ってあれでなかなか面倒見がいいから、一緒にご飯を食べることも出来るしお風呂にも入れる。お布団にもぐりこんで抱き枕にしてもらえることだって出来るんだよ!) 「ゆゆゆっくり~! ゆっくりしていってね!(霊夢って本当に可愛いよね~。何気にスタイルいいし、睫毛長くて鼻筋が通っててまさに女の子っていう顔してるし、髪の毛はさらさらでイイ匂いだし、体はしなやかで触り心地最高だし、そして何よりもあの性格がたまんない。あの子結構子供っぽいところがあって愛嬌があるんだよ。無防備な寝顔とかみてるとつい襲っちゃいたくなるんだよね~。パァンされるからやらないけど。そうだ知ってる? 霊夢って自分では見えないところにほくろが三つあってね~――)」 ============================================ 「え~とね、今日はみんなに聞きたいことがあって来たの。突然だけど、皆は主人のこと好き?」 「ゆっくり~(いやマジ大好きだね、魔理沙。もう結婚してくれって感じ)」 「ゆゆ~(天然系の巨乳箱入りお嬢様最高!)」 「むきゅ~(病弱少女っていいよね。看病の名目でいつか色々したいよぅ)」 「ゲラゲラゲラ(元新参ホイホイだと……私は一向に構わん! ウサ耳ブレザー万歳!)」 即答である。 ゆっくり達は目をキラキラと輝かせ、我先にと大声で主張する。 「えっと……どんなところが好きなの?」 「ゆっくり!(魔理沙って実は意外と寂しがりなんだよね~。えっへっへ~)」 「ゆゆ~(私のモデルって実は生娘なんだよねぇ……。考えてもみれば箱入りのお嬢様なのにすぐ死んじゃったから。そのくせ自分のとこの庭師には経験豊富な大人の女を演じているのに、演じ切れていないのが微笑ましいっていうか、性経験が無い庭師だからバレずにすんでいるのが可愛らしいというか)」 「ウサウサ(私の主人も中々純情なところがあってさ~。いや~、マジでムラムラくるわ~)」 「わかるよ~(無垢な猫耳ロリたまんねぇ……色々いけない遊び教えたくなるよ……)」 「よいぞっ!(性的な意味で)」 「じゃお~ん(中華まん! 中華まん! おっきい中華まん二つ!)」 「あたいったらゆっくりね!(幼女のもち肌最高! ぱねぇ!)」 「あ~う~(※R-18映像のため、さとり第3の目によるフィルターがかかりました)」 「ちんちん(○んちん)」 さとりは一気呵成にまくし立てて来るゆっくり達に対していくつか相槌を打ち、 それぞれの話を聞きいれた。 「え~そうなんだ――うんうん――へぇ――わかったわ。それじゃあ、私はこれで失礼するわね」 するとさっと少女達の方に戻ってきた。 「皆さんすごく好かれていますよ」 さとりは一拍間を置いて、にこやかに笑いながら言った。 「あれでわかるとはすごいな……」 「どんな感じ?」 「私のゆっくりは何だって?」 「百聞は一見にしかずです。ちょっと待って下さい」 さとりはゆっくり達の方を向くと、少女達に存分に甘えるように呼びかけた。 ゆっくり達は散らばって、それぞれのモデルとなった者のところに近寄っていく。 ぴょこぴょこ、ぽよんぽよん、ぱたぱた。 皆の表情は太陽のように輝いている。 「これが答えです。この子達が何者であってもいいじゃないですか。可愛がってあげてください」 さとりはいい笑顔だ。 「私のゆっくり、いつも庭師の仕事を手伝ってくれてありがとう」 「みょ~ん!(ちーんぽ!)」 「ちょっと、う~う~言うのやめなさいっていってるでしょ!」 「う~♪ う~♪(ロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリさいこぉぉぉ!!! WU~!WU~! WRYYYYYYYYYYYYAAAAAAAAAAAAA!!!」 「えへへ、くすぐったいよぅ」 「ゆっくりしね♪(フランちゃんウフフ)」 抱き合う妖夢とゆっくり、レミリアとほっぺプニプニの柔らかさ比べをするゆっくり、フランにちゅっちゅするゆっくり。 それらを初めとして、少女達が自らに擦り寄るマスコットのような物体と仲良く触れ合っていた。 「それでは私はこれで。今日は少し早めに帰らせてもらいます」 さとりはそんな美しき光景に背を向けて、神社の外に向かってスタスタと歩いて行った。 「え~、さとりってばまだ全然酔っ払ってないじゃん。ゆっくりしていけよ~」 「それは……いえ、何でもありません。少し身体の調子が悪いので」 「きっと酔っ払いの頭の中を見て酔っ払ったんだ~」 「キャーこのスケベ~!」 「え……えぇと、はいそういうことです」 さとりはばつが悪そうにしながらも帰ろうとする意思は変えないようだ。 ふとさとりが霊夢と膝枕されるゆっくりをちらりと見た。 ◇ さとりは無言のまま博麗神社を後にする。 今日は家に帰ったら早くお風呂に入ってお燐とお空を撫でて寝よう。なでなでふにふにしよう。 そんなことを考えながら早く帰ろうとすると、目の前には三つの影が現れた。 「うにゅ~(フュージョンしたい! フュージョンしたい!)」 「おりんりんらんどはっじまっるよ~(お○ん○んらんどはっじまっるよ~)」 「こいこがれるようなゆっくりがしたい!(余計な詮索はするな)」 ゆっくりだ。それも三匹。 お空、お燐、こいしの姿をしたゆっくり達だ。 ぽよんぽよんと飛び跳ね、さとりの方に向かってくる。 さとりはさっと身を翻して別の方向に向かって走る。 走って走って、その場から離れようと―― ぽむっ。 何かがさとりの胸の辺りにぶつかって来た。 柔らかい。 さとりは思わずそれを受け止め、抱きかかえてしまう。 ………… ………… ………… さとりが恐るおそる視線を下に向けると、 薄紫色のショートヘア。 ジト目。 ハート型のカシューチャ。 そう―― さとりの姿をしたゆっくりが! 「さっとりしていってね!(さとり!さとり!さとり!さとりぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!さとりさとりさとりぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん んはぁっ!古明地さとりたんの紫色ショートの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!! 間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!! ZUN絵のさとりたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!! 緋想天則に出演させたいよさとりたん!あぁあああああ!かわいい!さとりたん!かわいい!あっああぁああ! えっちな同人誌もたくさん発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!! ぐあああああああああああ!!!ゲームなんて現実じゃない!!!!あ…同人誌も動画もよく考えたら… さとり ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ちれいでぇええええええん!! この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のさとりちゃんが私を見てる? 表紙絵のさとりちゃんが私を見てるぞ!さとりちゃんが私を見てるぞ!挿絵のさとりちゃんが私を見てるぞ!! 動画のさとりちゃんが私に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ! いやっほぉおおおおおおお!!!私にはさとりちゃんがいる!!やったよダディ!!ひとりでできるもん!!! あ、同人誌のさとりちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!! あっあんああっああん神主さまぁ!!う、うにゅほお!!おりぃいいいいいいん!!!こいしぃいいいいい!! ううっうぅうう!!私の想いよさとりへ届け!!目の前のさとりへ届け!)」 ◇ 「イヤアアアアアアアアアあああああああああああああああああああ!!!!!」 ◇ 「さとりったらいきなり帰ろうとしたり、突然叫んだり、一体どうかしたのかしら?」 「ゆっくりしていってね!(んほおおおおおおおおおお! 霊夢のおっぱいあたってるぅぅぅ!! マジいい匂いサイコォォォォォォ!!!)」 霊夢はヘヴン状態のゆっくりを抱きかかえながら首をかしげた。 いい話だった。そしてオチに吹いたww -- 名無しさん (2009-08-26 19 01 04) 一切の自重のないそのオチとその覚悟、僕は敬意を評する!! 取り合えずゆっくりゆゆこ(もしくはゆーびぃ?)とは良い酒が飲めそうだ。 -- 名無しさん (2009-08-26 19 29 22) 正直なんて物じゃねえ。本能の赴くままかw 解らないままの方がいいこともあるんですね、わかるよー ゆっくりと同じこと考えてたから、これから天子に押し潰されに逝ってきます -- 名無しさん (2009-08-26 19 51 05) ゆっくりの正体の個人的予想 ・パチュリーの魔法実験で生まれた ・永遠亭の実験で誕生した ・妖精? ・どこからともなく現れた饅頭 毛玉が元になったとかは全く思いつきませんでした -- 名無しさん (2009-08-26 20 14 02) やはり三天王の一角は伊達じゃないな……!(褒) -- 名無しさん (2009-08-26 21 12 19) A-パートでほのぼのし、このパートで吹いたww -- 名無しさん (2009-08-27 20 04 30) ここで落とすとはwww -- 名無しさん (2009-09-11 20 48 33) あれ…作品は違えど 私 は こいつらとゆっくりできる んだ… -- 名無しさん (2010-02-26 05 34 04) ゆっくりスケベww -- 名無しさん (2011-09-21 08 56 33) WRYYYYYYYYYYYYAAAAAで吹いたwww -- 名無しさん (2013-01-19 17 01 01) 名前 コメント
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暗い夜道を男は走っていた。走って逃げていた。 そんな男が、屋台の灯を見つけて安心するのは当然のことだ。 男は息を切らせながら屋台に入ったが、屋台のオヤジは男を見る事も無く、 「どうしたんだい、お客さん。そんな慌ててさ。」 と、背を向けて聞いてきた。 「はあ、はあ……。いや、さっきあっちで恐ろしいもんみちまってさ……」 男はそう言うと、途切れ途切れながらも話し始めた。 男が夜道を歩いていると、道端で、女がしゃがみ込んでいる。 どうやら泣いているようだ。「どうしましたか?」 男がそう声を掛けると、女はこちらを振り向いた。 すると…… 「ゆっくりしていってね!!!」 そう言った女の顔は、先程の後ろ姿の頭とは一致しない、大きさで、 下脹れで鼻のない、目の形も異様な、世にも不気味なものだった。 「不気味?」 話の途中でオヤジが聞き返す。 「兎にも角にも、不気味なんですよ。けど……あれをどう説明すりゃあいいのか……。」 「簡単ですよ、そりゃ。それよりも……」 背を向けていたオヤジが振り向いた。 「ゆっくりしていってね!!!」 男が気を失うと、ふっ、と屋台の灯が消えた。 ―― ゆっくり怪談の人 名前 コメント
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妹紅と饅頭 蓬莱の人の形、藤原妹紅は、庵で暇を持て余していた。 この時間、友人の慧音は寺子屋で子供たちに勉強を教えているのだ、邪魔をするわけにはいかない。 最大の暇つぶしは輝夜との殺し合いなのだが、こんな昼間からそんな不健全な行為を行う気にはなれなかった。 自分も、慧音に絆され、随分と丸くなったものだ。 妹紅は小さく溜息を吐いたが、その表情はどこか幸せそうだった。 「そうだ、博麗神社にでも行ってみようかな」 妹紅は、先日弾幕り合った紅白の巫女のことを思い出した。 純粋な人間であるにも関わらず、人間離れした実力と、どこか不思議な雰囲気を漂わせる霊夢。 そんな彼女に惹かれ、あらゆる人妖が博麗神社を訪れるという。 霊夢の方も、賽銭を寄越さない客人たちでも、追い返したりはしないようだ。 「まぁ、邪険にされることはないでしょ。一応人間なんだし」 そう呟くと、妹紅は緋色の翼を広げ、神社へと飛び立った。 「なんだ、珍しい顔だな」 神社に降り立った妹紅に最初に声をかけたのは、霊夢ではなく、その隣で茶を啜る魔理沙だった。 「何よ、私が来たら行けない?」 「いや、悪くはないさ。ただ、珍しいなと思って」 それとも、私が知らないだけでお前もよくここに来るのか?と魔理沙が尋ねると、霊夢が代わりに答え、また尋ねた。 「妹紅がここに来るのは初めてよ。何か用事でもあるの?」 「別に用事はないんだけど、暇で暇で仕方がなくて」 一人でぼうっとしてるより、三人でぼうっとしてる方がいくらか楽しそうでしょ?と言うと、 魔理沙が、違いない、と笑って言い、 霊夢は、どうだかね、と呆れたように言った。 そうして、三人で茶を啜りながら他愛ない話などをしていると、ふいに霊夢が呟いた。 「そういえばあんた、前に饅頭怖いなんて言ってたわね・・・」 「なんだ、落語か?」 「いや…話のノリで言っただけよ。でも確かに、ここに饅頭が出てきたらあまりの恐怖に心臓が止まるかもしれない」 そうおどけてみせたが、 「あら、私にはそんな酷いことはできないわね。楽園の素敵な巫女さんはとっても優しいの」 と一蹴されてしまった。 というか、おまえは何を言っているんだ。 「そうだな、そういう悪戯は私の十八番だ。すぐ戻ってくるから大人しく待ってろよ? 」 魔理沙は、そう言い終らない内に箒に跨り、瞬く間に飛び去っていった。 「…お茶、お代わり」 「はいはい」 しばらくして、白い袋を抱えた魔理沙が戻ってきた。 「なぁに、それ」 「饅頭だぜ」 「動いてるわよ」 「動く饅頭だぜ」 ほら、と袋を開けると、中から飛び出したのは… 「ゆっくりしていってね!!! 」 楽園の素敵な生首だった。 「霊夢、初めて会ったときから人間とは思えない強さだったけど…やっぱり人間じゃなかったのね」 「何言ってんのよ、それのどこが私に似てるのよ。失礼ね」 そうは言っても、頭に付けた真っ赤なリボンは、まさに霊夢が付けているそれだ。 確かに、この生首の顔を霊夢だと言ってしまうのは、少し失礼かもしれないが。 「これはゆっくりれいむって言うんだ。最近神社の周りとかに増え始めたんだが、竹林の方にはまだいないみたいだな。どうだ、怖いか?」 「怖いっていうより、なんだか気持ち悪い」 「これで意外とかわいいところがあるんだぞ。わたしの飼ってるゆっくりありすも、頭を撫でられるのが好きで…」 魔理沙がれいむとやらの頭を撫でると、ゆーゆーと気持ち良さそうな声を出した。 「ゆっくりありす?」 「アリスみたいなゆっくりだ」 「そんなのまでいるのね」 「ゆっくりもこう、も探せばいるかもしれないな」 それは勘弁してほしい。 「で、これが饅頭なの? 」 「そうだよ!れいむ、おまんじゅうなんだよ! 」 魔理沙ではなく、その腕に抱かれた饅頭が答えた。 「喋るのね」 「しゃべるよ!すっごいしゃべるよ! 」 「うるさいわね」 「ごめんなさい!おこらないでゆっくりしていってね! 」 ゆっくりしていってね、か。 それでゆっくりという名前なのか。 「ほら」 魔理沙が、ゆっくりれいむを差し出した。 「何よ」 「これはおまえにやるよ、大事に育ててやれよ」 「は?」 「あら、良い退屈しのぎになるんじゃない? 」 「永遠亭もたくさん兎を飼ってることだしな、おまえも対抗してみたらどうだ。大事にしたら身体が生えて、存外役に立つかもしれないぞ? 」 「まさか!? 」 思わず受け取ってしまったが最後、ゆっくりれいむは妹紅の腕の中で、おねえさんよろしくね!と叫んだ。 「なんだ、ゆっくりじゃないか」 夕刻、庵に戻ると寺子屋から戻った慧音に会った。 「慧音、知ってるの? 」 「あぁ、無害だし、言葉を話すこともできるからな。里の子供たちに人気なんだ」 こんなものが流行るとは、最近の若い者の感性は不思議だ。 「おねえさん、こんにちは! 」 「あぁ、こんにちは。ほら、礼儀正しいだろう? 」 「うーん…こいつ、妖怪なんじゃないの? 」 「さぁ、どちらかというと妖精に近いような気がするな。何にせよ、妹紅がペットを飼うなんて、珍しい」 「いや、これは…」 「これを機に命の大切さを学んで、殺し合いだなんていうのも止めてくれると嬉しいんだが」 「それとこれとは別でしょ」 「む…まぁ、妹紅がこうした小さな命にも目を向けてくれたことが嬉しいよ」 「…」 妹紅も、不死とはいえ、命の重さ、大切さというものを忘れてしまったわけではない。 自分と輝夜は例外として。 ただ、ふてぶてしい顔をしてゆっくりを見て、命の大切さを説くことは、なんだか滑稽に思えた。 (殺しても死ななそうな顔ね) だが、嬉しそうな慧音の顔を見ていたら、そんな無粋な言葉を口にすることが憚られた。 (まぁ、どうせ寿命も短いんだろうし、少しくらい飼ってやっても良いかな) こうして、妹紅とゆっくりの生活が始まった。 朝、ゆっくりしていってね!!!という大声で目が覚めた。 「…うるさい…」 「おねえさんおはよう!!! あさだよ!!! ゆっくりおきてね!!! 」 「わかった…起きるから、静かにして。寝起きにあんたの声はきつい」 「わかったよ! ゆっくり静かにするね! 」 相変わらず大きな声だったが、それでも先ほどよりはいくらかマシになった気がする。 妹紅は、寝巻きからいつもの服に着替え、布団をしまう。 「そういえば、餌って何をあげればいいんだろう」 饅頭だから、砂糖などの甘いものが必要なのだろうか? わざわざ菓子類を調達するのは面倒だ。 「れいむ、なんでもたべれるよ! おやさいも、おにくも、だいすきー! 」 それはありがたい。 妹紅は、いつものように川でてきとうに魚を捕ることにした。 道中、やはりれいむは騒がしかった。 不死鳥の翼を見て、火が怖いと泣き喚いたかと思えば、無理やりにでも抱えて飛んでみれば、お空を飛んでると大いにはしゃいだ。 青い空、澄んだ空気、生い茂る木々、鳥の囀り、そんな当たり前のもの全てが、れいむを喜ばせた。 きれいだね すてきだね たのしいね そう言って笑うれいむが、なんだか羨ましく思えた。 川で魚を捕って、焼いてやる。 それを食べたれいむは、目を輝かせて叫んだ。 「しあわせー!!! 」 そしてガツガツと物凄い勢いで平らげていく。 「れいむ、おさかなはじめてたべたよ! 」 「そうなの? 」 「そうだよ! おみずはこわいから、おさかなはとれないの! おみずにぬれたら、ゆっくりできないよ! 」 「ゆっくりできないって、死ぬってこと? 」 「そうだよ! あんこがなくなったら、しんじゃうの! 」 そういえば、これは饅頭だったな、と改めて思い出した。 饅頭にも、死という概念があるのか。 「あんた、死ぬのは怖い? 」 れいむは、先ほどまてとは打って変わり、とても静かな声で答えた。 「とっても、こわい」 適当に暇をつぶして、庵に戻ってゆっくりしていると、雨がパラパラと降ってきた。 「ゆゆっ! 雨だ! ゆっくりできないよ!! 」 「馬鹿ね。家の中にいるんだからゆっくりできるでしょ」 「そっか! おねえさんすごいね!! 」 なんだか、ゆっくりに褒められてもあまり嬉しくないな。 むしろ馬鹿にされているような気がしてきて、軽く突付いてやれば、れいむはころころと後転していった。 「ゆゆ~!? 」 「あはは」 そんなことをしていると、ふいに、戸を叩く音が聞こえた。 「誰だ?」 出迎えれば、雨の中、永遠亭の兎が一羽、雨の中立っていた。 後ろでれいむが、いらっしゃい!! などと叫んでいるが、無視して話を始める。 「姫様が、いつもの時間に、いつもの場所で、と」 何のことはない、いつものお誘いだ。 「今日も?雨が降ってるんだけど」 兎が、その幼い顔に似合わぬ、意地の悪い笑みを浮かべた。 「殺り合う前から言い訳ですか?らしくもないですね。ここのところ負け続きですからね、臆病になるのも無理はないですけれど」 カッ、と全身が熱くなる。 「まさか。不死鳥は雨ごときで掻き消えたりはでしない。私の復讐の炎も同じことだ」 「そうですか、では」 兎は何食わぬ顔で去っていく。 「れいむ、私は出かけるからね。ここでゆっくりしてな」 「ゆっ!? おそとはあめがふってるよ! 」 「わたしはゆっくりじゃないから平気。輝夜と殺し合うってのに、そんなものを気にする方が馬鹿だったわ」 「ゆっ!? 」 しまった、口を滑らせた。 「ころしあいって!? だめだよおねえさん!!! ゆっくりできなくなっちゃうよ!!! 」 「あんたには話してなかったけど、私は死なないの。永遠にゆっくりできるのよ 」 「ゆっ!!? 」 「だから、殺し合いなんて別に―」 「うそだっ!!! 」 れいむが叫んだ。 「嘘じゃない、なんならあんたの前で死んで見せようか?すぐに生き返るよ」 「ちがうよ!!! ちがうの!!! 」 れいむは、駄々をこねる子供のように、ぐずぐずと続ける。 「けがをしたら、いたいよ!! いたいのは、ゆっくりできないよ!! 」 「そんなの、慣れてるから平気だって― 」 「だって、あおいおようふくのおねえさんだって、かなしむよ!!! 」 痛いところを、突かれた。 「…慧音は、解ってくれる。でも、あんたは、あんたに、私の何が解る!? 私の歴史を知ってるとでも!? 私の屈辱を!痛みを!苦しみを!! 」 たかが饅頭のくせに。 そう吐き捨てたときの、れいむの悲しそうな顔。 妹紅はそれを見なかったことにして、庵から飛び出した。 その晩、妹紅は、完膚無きまでに輝夜に負けた。 「いつもに増して腑抜けてるわね。どうしちゃったの? 」 輝夜にまで、そんなことを言われる始末だった。 「あなたがそんなんじゃ、私が困るのよ。良い暇つぶしの相手が見つかったと思っていたのに」 何を言い返しても、負け犬の遠吠えでしかない。 だから妹紅は、黙って聞いていた。 「…ねぇ、妹紅。私は、殺し合いじゃなくても、暇は潰せると思うのだけれど」 だって、あなたって、見てるだけで面白いわ。ちょっと馬鹿なところが。 からかうように付け加える。 「まぁ、私が憎いというなら、いくらでも付き合ってあげるわ。それこそ永遠に、ね」 その言葉を最後に、輝夜は立ち去った。 「…馬鹿みたいだ」 身体に降り注ぐ雨が、冷たい。 獣でも寄ってきたら厄介だな、と思いながらも、立ち上がる気力もなかった。 「…」 結局、ただの意地なのだ。 千年もの間、意地を張り続けている。 そうしないと、自分を保てないような気がした。 けれど、それはただ、子供が駄々をこねているようなものだ。 いつもと同じような傷。 けれどいつも以上に体が重くて、寒かった。 (…あいつに、あやまらなくちゃなぁ) 目を瞑る。 遠くから、あの喧しい声が聞こえた。 「おねえさん!!! 」 走馬灯だ。 この身体になってから、何度も見てきた。 しかし、飼い始めてたった一日の饅頭を見ることになろうとは。 「おねえさん! ゆっくりしてないでおきてね!!! 」 (まったく、こんなときでも煩い奴だな…) 「おねえさん!! 」 その喧しさが、なんだか心地よかった。 だが、 「おねえさん!!!!!!! おねぇぇぇええええぇぇえええさあああぁぁあぁぁああぁん!!!!!!!!!! 」 「うるせぇぇええええええぇぇぇぇええ!!!!!!!!?? 」 あまりの声量に飛び起きた。 人間の身体ってすごいね、その気になれば何でもできるんだ。 「ゆっ!!! おねえさんっ!!! 」 「ちょっと! なんであんたがここにいるのよ!!! 」 驚いて怒鳴りつけると、れいむは身体を震わせて泣き出した。 「ごめ゛んな゛ざいぃぃぃ!!! お゛ねえざんにひどい゛こといってごめ゛んな゛ざいぃぃぃ!!! 」 おこらせて、ごめんなさい。ごめんなさい。 何度も謝るれいむを抱き寄せて、雨から守ってやる。 「そんなことのためにここまで来たの? 死ぬかもしれないのに! 」 れいむの身体はだいぶ濡れていた。 とりあえずは庵に戻ろうと、立ち上がる。 「ゆっくりできなくなるのはやだよ!! 」 ゆっくりなんて、人間よりも、下手したらそこらの小動物よりも弱い生き物だというのに。 しぬのは、こわい れいむは、そう言っていた。 「おねえさんとゆっくりできなくなるのはやだよ!! 」 濡れて力が出ないのだろう、ぐったりとしながらも、れいむは叫んだ。 「れいむは、おねえさんとゆっくりしたいよ!!! 」 おねえさんとおそらをとぶのは、とってもたのしかった おねえさんといっしょにたべたごはんは、とってもおいしかった おねえさんのせなかのひは、こわいけれど、とってもきれいだった れいむは、何度も何度も、妹紅に言った。 おねえさんがだいすきだということ。 いっしょにゆっくりしたいこと。 妹紅は、慧音と出会った日のことを思った。 人間が好きだと、自分を好きだと言ってくれた慧音のこと。 とてもうれしかった日のこと。 「ごめんね、れいむ。…ありがとう」 一際強くれいむを抱きしめて、呟いた。 れいむは、ゆっ、と一声鳴いた。 庵に戻ると、れいむのからだを丁寧に拭いてやる。 「ゆゆ~、くすぐったいよ~ 」 「少しは我慢しなさい」 掌の上に小さな火を起こして、身体を温めてやる。 「ゆゆっ、きれいだね! れいむ、おねえさんのひ、すき~ 」 れいむは無邪気に笑う。 妹紅も、笑って言った。 「おねえさん、じゃないわよ」 「ゆっ? 」 「妹紅、私の名前。自分も紅く染まれって意味なのよ」 「もこーにぴったりな名前だね! 」 おそらく、意味もよく解らず言っているのだろうが、それでも、なんだか嬉しかった。 「もこー」 もこ、もこ、もこー 楽しそうに何度も 「ねぇ、れいむ」 「なぁに、もこー」 「あんたは、ちっぽけで、弱い命なんだよ」 「うん」 「だからね、あんたがゆっくりできるように、私が守ってあげる」 「じゃあ、れいむがもこーをゆっくりさせてあげる! 」 これってぷろぽーずなんだよ!とれいむは言った。 プロポーズか、ならば幸せにしてもらわないとな、と妹紅は思った。 これからは、退屈しなくてすみそうだ。 次の日、妹紅の庵を訪ねた慧音に、ふたりは叫んだ。 「「ゆっくりしていってね!!!! 」」 おわり はじめまして、まめちこ、と名乗らせて頂きます。 もこたんが饅頭怖いと言っていたなぁ、と思い始めたら止まらず、勢いで書き上げてしまいました。 落雷で停電したときはもう…orz なんだかありきたりな感じではあるのですが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。 ゆっくりはかわいいですね。 今回のゆっくりはありえないくらい賢い感じなのですが、おばかなゆっくりもかわいいですよね。 ゆっくりもこうとか、増えて欲しいです。 とらうまになるよ!! それでは、お読みくださって、ありがとうございます。 妹紅と輝夜の関係がいいですね。意地を張ることしかできない妹紅と、殺し合わなくても共に過ごせるのではないかと思いながらあえて戦いを受ける輝夜。二人がゆっくりが加わったことによってこれから救われたらいいなと思います -- 名無しさん (2008-09-06 17 18 54) やっぱり愛で最高 虐めから移ろうかな -- 名無しさん (2008-10-03 22 37 00) 後日談も是非!! -- 罪袋 (2009-07-14 16 38 39) ありきたりとか作者さん言ってるけど、キャラの心理描写が良くて全然ありきたりじゃなかったです。 -- 名無しさん (2010-05-03 19 37 04) ゆっくりは人間の精神的パートナーになれると思うの。 -- 名無しさん (2010-11-27 19 23 28) 名前 コメント
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『ゆっくり_公園_あまあま』 5KB 虐待 自業自得 日常模様 共食い 野良ゆ 子ゆ 都会 うんしー テンプレ内容ですが御容赦 「間抜けなくらい気持ちの良い晴れだな~」 公園のベンチで空を眺める。 呟いた独り言に、応じる者はいない。 こんな天気の良い日に労働なんてする気が全く起きないのは、致し方のないことだ。自然の摂理と言ってもいい。 目を瞑って伸びをする。―――嗚呼、気持ちが良い。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ」 せっかくノンビリ出来ていたのに、雑音が混じった。 ゆっくり出来ないゆっくりの声だ。公園の野良ゆっくりだろう。 声が近づいてきて、足元で止まる。 「ゆっ! お兄さん、ゆっくりしていってね!」 お決まりの挨拶によって、気分を害された。 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 「ゆ!? ゆっくり、『していってね!!!』」 ……面倒な。 どうやらこいつらゆっくりは、定型文の『ゆっくりしていってね!』に同じ言葉を返して貰わないと、ゆっくり出来ないらしい。 「うるせぇ!」 「ゆっ!? このお兄さん、ゆっくりしてないよ! ゆっ、ゆゆ~」 チッ、うっせーな。 心の中で『反省してまーす』と言ってみる。 「お兄さん! まりさはあまあまが欲しいよ! あまあま! あまあま!」 「……」 「家族全員分で良いよ! ゆっくりしてないですぐ用意してねっ!」 家族ぅだぁ~? しかも物乞いしているのに目上目線だし。 片目を開けて、足元のゆっくりを一瞥する。 でかくて薄汚い、バスケットボール大のまりさと、その周りにハンドボールくらいの子まりさ2匹を確認した。 「あまあま! あまあま!!」 「あまあまほちぃ~」 「おちびちゃんがお腹空かせてるよ! グズは嫌いだよ、ゆっくりしないでとっとと用意してね!」 「だが断る」 「ゆがーん! 何断ってるのぉおおおおお!? 拒否権はないんだよっ、人間さんは本当にお馬鹿さんだね!」 ゲヒャヒャヒャと、下品な笑い声を上げる親まりさ。 オレは無言で片足を上げ、子まりさのうち一匹を踏み潰した。 「あまあまちょーら、ぶべっ!」 「あまあま~。くじゅっ、くじゅっ。うぷぷぷぷ」 「……何で可愛い可愛いまりさのおちびちゃんを潰してるのぉおおおおお!? ワケ分かんないでしょぉおおおおおお!! 謝ってよねッ!! 今からお前はまりさの奴隷だよ!! 絶対に許さないからねっ!! ぷく~~~~~」 空気を吸って頬を膨らませ、威嚇してくる。 上体を起こし、親まりさの口めがけて足を蹴り入れた。 ぐしゃり ゆっくりの脆い歯が砕け、空気が抜けていく。 「◎×△□~~~!? ごの゛、ぐぞに゛ん゛げん゛、ごろ゛じでや゛る゛~!!」 蹴った足で親まりさを踏み付け、逃げられないようにする。 「ぐぞ~~~! ぐぞ~~~っ!!」 うるさいので、口と地面が接触するように転がして、喋れないようにした。 「◎×◎□! ×□×△ッ!!」 まともに声にならないのに、何か話そうと抵抗している。 いや、抵抗して話そうとしているのか? まあ、どっちでも良い。 「あまっ、あまっ! まだ~? ちょーだいっ! あまあまっ!」 一方子まりさは、姉妹が死んだにも関わらず無頓着に、あまあまを要求し続けていた。 「あまあまが欲しいのか? なら、そこに転がっている、砕けた饅頭でも喰ったらどうだ?」 「あまあまっ!?」 オレの言葉に過敏に反応し、踏み潰した饅頭(元子まりさ)へ嬉々として跳ねて行く。 が、すぐにUターンして戻って来た。 「これ、くちゃ~~~い! たべれないよぉ」 死んだ同族はダメなのか。 「じゃあ、これはどうだ?」 足元の、でかい饅頭(親まりさ)を指差す。 「ゆぴゅ?」 理解してないらしい。 分かり易いように、落ちていた枝で親まりさの臀部を傷付け、分厚い皮に包まれていた中の餡子を、外気に露出させた。 自由な片足で子まりさを蹴り転がし、近付ける。 「ほら、そこの饅頭、餡子が出ていて美味しそうだろ?」 「ゆ~~~。ゆぅ? あま…あまっ!? あまあまっ! あまあまっ!!」 垂れた餡子にそろりと舌を這わせ、顔を輝かしたと思ったら、ガツガツと食べ始めた。 「うっめ! これめっちゃうっめ! はむっ、はふっ、くふ~~~っ」 子まりさが餡子を頬張るたび、親まりさがビクンビクンと震えて叫ぼうとする。 大方、『おちびちゃんやめて!』とか『まりさの中身食べないで!』とかだろう。 おうおう、食欲旺盛なこった。 さっきまでの3倍くらいに体積が増してるぞ、この子まりさ。 「ぷふ~~~。まりさは だいっ まんっ ぞくっ だよ! うーん、なんだかうんうんしたくなっちゃったよぉ。うんうんするよ~。うーん、うーん……スッキリー! 今度は眠くなってきちゃったよぉ……すーや…すー…や…する…よー……」 喰ったら出して、眠りやがった。 押さえつけていた足を少しずらし、親まりさの顔を出してやる。 「ど、どぼじで…どぼじでごんな゛ごどずるの゛ぉ゛……?」 「あん? お前らがあまあま欲しがったんだろうが。お前自身があまあまだっつーのによぉ」 「食べられたら痛いに決まってるでしょぉおおおおおお!!? そんなことも分からないの!? やっぱり人間はクズでのろまでゲスなぐぐむぐう…ぼ…△×○△…!!」 妙な言いがかりをつけられそうになったので、再び転がして口封じをする。 やっぱりこいつらゆっくりとは、まともな話は出来そうにない。 幸せそうに眠る子まりさに対し、身体の中心目掛けて踏み抜いた。 「ぶちょらぺっ!?」 しばらくピクピクと痙攣していたが、眺めているうちに動きが止まる。 親まりさの方も足をどかしてやり、オレは立ち上がった。 「……っぷふー! バカな人間はようやく分かったみたいだねっ! でも、もう遅いよ! 絶対に許さな……」 右足を大きく後ろに振り上げ、渾身の力を込めて親まりさの頭部を蹴っ飛ばした。 「ぁいヒィッ!?」 ドンッ! パラパラパラ…… 綺麗に砕けた饅頭の破片が、辺りに散らばった。 「ゆっくりって……何なんだろうな」 どことなくスッキリした表情で、心の内の疑問を呟く。 少なくともこの男にとっては、ストレス解消に役立っている可能性が高い。 公園のカラスが、新たな餌が出来たのを祝って一声鳴いた。
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俺設定があります。特に魔理沙とゆっくり。 幻想郷では月日の数え方が現代日本と違いますが、作中ではわかりやすさのために~月~日と表記させていただきます。 霧雨魔理沙は「ただいま」という言葉が嫌いだ。 魔理沙は基本的に日中は外出する。 例外は魔法の研究が立て込んでいるときとよほど天気の悪い日くらいで、 普段は神社に図書館に人形遣いの家に妖怪の山など、幻想郷のありとあらゆる所を飛び回り、 今の生活を謳歌して生きる事を精いっぱい楽しむ。 そんな彼女も日が暮れると当然家に帰る。 帰る家の無い子供は妖怪の家に招かれディナーにされるからだ。 けれども魔理沙の帰る家は人里の中ではなく、暗い暗い魔法の森の中。 実家から勘当されつつ自らも絶縁をしたために自業自得の境遇。 当然、家の中には誰もいない。 強がりな彼女がそのことを指摘されると否定することは言うまでも無いが、 まだ十代の半ばも過ぎていないような多感な少女にとって、 家路に着いたとき誰からも迎えてもらえないということは心の奥がちくりと痛む。 それは特に自宅の扉を開けて「ただいま」という瞬間に強くなる。 その一言は愛する家族に帰りを待ってもらっている少女ならばあまり嫌な響きを持たないが、 家の中に帰りを待ってくれる人がいない者にとってはそうではない。 暗く無音の室内に帰ったそのとき、誰かが作った温かい食事が用意されているわけではなく、 外の寒さに凍えた体を温めてくれる風呂が沸いているわけではなく、 何よりも温かい言葉で出迎えてくれる者がいない。 そんな冷たいものだらけの世界に入ると、ふと自分がその世界で一人ぼっちなのではないかと錯覚してしまう。 だったらそんな言葉を言わなければいいのに、幼い頃に身につけた習慣というものは中々消えないものだ。 だから自宅に帰り、誰もいないこと場所に移る「ただいま」という瞬間がすごく嫌いだった。 【大丈夫、扉を開ける瞬間がどれだけ寂しくても、家の中で戦利品を物色していればまたすぐに楽しい気分になれる】 魔理沙はいつもそう自分に言い聞かせるながら自宅の玄関を開ける。 当然家の中は真っ暗。食事のときに一日の事を話す相手はいない。自分以外に音を発する存在はいない。 それが彼女の日常だった。だがしかし、そんな状況から転機が訪れた。 魔理沙がある日「ただいま」と家のドアを開けると、『――ね』と、返す声が聞こえた。 【そいつら】が何物であるか詳しく知るものはいない。 実験の事故で生まれた新生物? 未知の侵略者? 新種の妖怪? はたまた幻想郷の神の気まぐれ? 【そいつら】は正体不明。そして幻想郷のいたるところで出没した。 _人人人人人人人人人人人人人人人人_ > ゆっくりしていってね!!!<  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^YY^Y^Y^ ̄ ,,.. -―- ..,, /\ /\ ./ (ヒ] ヒン) ヽ { '" ,__, "' .} \ ヾ_ノ / `ー-----ー^ 『ゆっくりしていってね!』『ゆっくりしていってね!』と繰り返し鳴き続ける饅頭顔共。 幻想郷の住人達によって安直に名づけられた名前は【ゆっくりしていってね!】。縮めて【ゆっくり】。 ゆっくり達は自分達が何者であるか自分達でもわからなかったが、そのゆっくりの本能の赴くままにポンポンポンと飛び跳ねながら幻想郷中に拡散していったという。 魔理沙の家の中にもゆっくりが現れた。 最初は追い出すことも考えたし、実験用に取っておくことも考えた。 そうしてどう扱うか考えながら家の中に住ませているうちに、 結局紆余曲折を経て、魔理沙はゆっくりをペットとして飼う事にした。 家の中で帰りを待ってくれる生き物が欲しかったのかもしれない。 だから毎日声をかけた。触れた。育てた。 そしてゆっくりという存在は育て主や観察対象に似るものらしく、 他のゆっくり達も拾った主やよく触れ合う妖精や妖怪と似た姿をするようになっていった。 そういう場合はゆっくり○○と、そのモデルになった者の名前がつく。 わかりやすさは大事だ。それは魔理沙のゆっくりにも同じ事が言えた。 _,,....,,_ -''" `''-、 ヽ ヽ | ;ノ´ ̄\ \_,. -‐ァ | ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ _,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7_..,,-" rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7"-..,,_r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノ `!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ `! !/レi' (ヒ_] ヒ_ン レ'i ノ ,' ノ !'" ,___, "' i .レ' ノノ ( ,ハ ヽ _ン 人! ( ,.ヘ ,)、 )>,、 _____, ,.イ ハ 魔理沙のゆっくりだからゆっくりまりさと呼ばれるようになった。単純である。 魔理沙は一緒にごはんを食べてくれる存在が出来た。寝る前に話しかけられる存在が出来た。 家の中は騒がしくなった。楽しくなった。 だがもちろんいい事ばかりではない。 ゆっくりは魔理沙の言葉を覚えて語彙が増え、生意気になった時期があった。 その際魔理沙はゆっくりのことを疎ましく思った事もある。 面倒に思った事もある。喧嘩をした事もある。 けれども、ゆっくりが家に居なければ互いに喧嘩することさえも出来ずにいた。 誰もいなければ喧嘩は出来ない。だから喧嘩出来るだけ幸福なのかもしれない。 何よりも魔理沙が「ただいま」と言ったら、ゆっくりは『ゆっくりしていってね!』と返してくれる。 自分を出迎えてくれる存在は心の隙間を埋めてくれた。 今日も魔理沙の家には明かりが灯っている。ゆっくりがいる。出迎えてくれる奴が居る。 魔理沙はいつしか家のドアを開けることが怖くなくなっていた。 「ただいま~」 霧雨魔理沙は「ただいま」という言葉が嫌いだった。 今は―― 『おかえりまりさゆっくりしていってね~。あ、コーラと今週のジャンプ買って来てくれた?』 扉を開いた先の広間。 その一角を支配する大量のラノベや漫画、同人誌、散らかったティッシュ、鉄アレイ、 電力回線世界観その他諸々について突っ込みどころ満載な蛸足配線のゲーム機とパソコン。 そして背を向けたままのゆっくりまりさ。 ゆっくりまりさはニートになっていた。 今、霧雨魔理沙は「ただいま」という言葉が別の意味で怖い。 ◇ 「どうしてこうなったァァァッ!」 『ゆっ?』 ダムが突如決壊するかのように、魔理沙はとうとう耐え切れなくなって叫んだ。 ちゃぶ台をひっくり返しながらの魔法の森中に響く大絶叫である。 「ゆっくり! お前何か違うよ! これ絶対に何か違うよ!」 『何が?』 「上手くいえないけど、何かお前の『おかえり』と『ゆっくりしていってね』はどこか投げやりって言うか、愛がないよ!」 ゆっくりの『おかえり』は今日も魔理沙に背を向けたまま振り返ることすらないで、 モニターに目を釘付けにしながらの『おかえり』であった。 冷めているにも程がある。 「それにお前の趣味ってペットの生態じゃないだろ! ペットってのはこういう駄目人間臭い一日の過ごし方しない! ゲームやんなパソコンいじんな! その丸っこい身体でどうやってそんな繊細な操作してるんだよ!」 魔理沙は間欠泉地下センター入り口(天則のお空ステージ)を見てからは幻想郷の科学力について突っ込む事をやめたが、流石に自分の家で世界観崩壊されると黙っていられなかった。 そもそもどこから電力を引いているかわからない。ここは魔法の森なのに。電線はどこにあるんだよ。 『えー、ゆっくりってペット扱いだったのー。家族って言ってくれよ家族って』 「何偉そうなこと抜かしてるんだよ! ご飯作るのも風呂を沸かすのも洗濯する(ゆっくりの帽子も含む)のも全部私ばかりじゃないか! せめて家事ぐらい手伝えよ!」 『いいじゃんそれ魔理沙の仕事だろ。それにゲームとか漫画ないと暇なんだもん。ペットって結構暇なんだよ』 「暇なら暇なりに時間の使い方あるだろ? なぁゆっくり、お前今日何してた?」 『一日中家でパソコン使ってネットサーフィンしてた。ISDNはゆっくりしてるんだよ』 「外出ろよ! せめて友達と遊べよ!」 『寒いんだよ。寒死するって』 「それを言うなら凍死だ!」 『だからおうちでゆっくりするのさ』 今は二月。幻想郷は冬真っ盛りである。 『それにまりさだって天気悪いときは家の中に引きこもって研究してるときあるじゃん~。だからこれは研究なの。ゆっくりの研究』 「一緒にするな! お前がしてるのは怠惰と堕落の研究だ! せめて罪悪感とか感じろよ! 何家の中に居て穀潰しやってて当たり前のようにしてるんだよ! 外出ろよ!」 『ゆっくりはインドア派の生き物なんだよ~。家の中で出来る仕事をして、家の中で出来る趣味をするんだよ。そう、ゆっくりの仕事はその家の主人にゆっくりを提供することさ! ゆっくり癒してあげるからこっちおいで!』 そうゆっくりまりさが言った瞬間、チリンチリンと魔理沙の家の呼び鈴がなった。 間の悪いことこの上ない。一体誰だよと魔理沙が毒づく。 一方ゆっくりまりさは魔理沙を放ってすぐさま玄関のドアを開けに向かう。 するとそこにはゆっくりれみりぁとダンボール型ゆっくりのうーぱっくがいた。 ,. -───-- 、_ rー-、,.'" 〒 `ヽ、. うー♪うー♪ _」 i _ゝへ__rへ__ ノ__ `l ~ く `i / ゝ-'‐' ̄ ̄`ヽ、_ト-、__rイ、 ~ \ ゝイ/__,,!ヘ ハ ト,_ `ヽ7ヽ___ }^ヽ、 ~ .r'´ ィ"レ'ノ‐! ヽ ! レ ヽ-ト、ハ〉、_ソ ハ } \ /ヽ/ ハ ⌒ ,___, ⌒ )/| ハ / }! i ヽ ~ / / ハ ! /// ヽ_ ノ /// / / |〈{_ ノ } _」 ~ ⌒Y⌒Yハレ!ヽ、 //レ'ヽハヘノ⌒Y⌒Y´ `⊥ー-.⊥´ __/│ヽ / |\_____ / / /| ♪ / / / |/ あまぞーん♪ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ..| | 18禁ゲーム ...| ..| | . .| ..| | ⌒ ,___, ⌒ | ..| | /// ヽ_ ノ /// ..| ..| | ロリコン .| / |__________|/ 『うー♪(宅急便だよ~♪)』 『ゆっくりしていってね!』 『う~(あ~、ごめんね。仕事がまだ残ってるの)』 『そうですかわかりました。じゃあこれ御代です』 『う~♪ う~♪(まいどありがと~ね♪ それじゃおたっしゃで~♪)』 魔理沙はゆっくりまりさの外面のよさに若干イラつきを覚えつつも、 置いていかれたダンボールに視線が向く。 「……ナニコレ?」 手癖の悪い魔理沙は極自然な動きでがさがさとダンボールを開けた。 ここでひとつ幻想郷について説明するべきことがある。 幻想郷とは外の世界(俗に言う現代社会)から忘れ去られ幻想と化したものが流れ着く世界だ。 骨董品、妖力を持った武具、朱鷺などの絶滅動物、果ては古いゲーム機など、様々なものが流れ着く。 “外の世界から追い出された存在”も例外ではない。 追い出され忘れ去られ無き物として扱われるような、そんな存在達。 規制という名の権力による暴力にて追いやられた悲しい存在達。 その名はロリポルノと呼ばれていた。 ぶっちゃけるとうーぱっくの中身は幻想入りしたエロリ漫画、エロリゲーであった。 幻想郷では外の世界で追い出されたエロスでネチョでグログロな創作物が溢れかえっているのである。 ゆっくりまりさの趣味はその収集であった。 幻想郷に住むその手の趣味を持つ輩にとってはア○ネスは救いの女神となる。 そう、今幻想郷で最も信仰を受けているのは博麗神社の巫女でも守矢神社の風祝でも命蓮寺の尼僧でもない。 外の世界のロリコン殺し、ロリコンブレイカーのアグ○ス・チャンだ。 ハイル○グネス! アグ○スマンセー! アグネ○ハラショー! 幻想郷にやって来たら住民の総力を挙げて殲滅すっけどな! 「こんなにたくさん、一体何を買って――」 魔理沙が手に取った本の表紙に写るのは身長140cm程度の金髪の可愛らしい少女が醜悪な男によって組み伏せられている絵だ。 どことなく魔理沙に似ている。魔理沙は思わず興味本位でパラパラとページを捲る。 内容は少女に男達が群がり―― 「アウアウああああああうああああはうああああ――」 あまりにも刺激が強すぎた。魔理沙は目を回し顔を真っ赤にしながらあたふたとうろたえる。 魔術は性との関連が強いため、知識だけは人一倍あるが実践とは程遠い生娘の魔理沙。 それに知識だけはあるといっても、オブラードに包まれたものだ。 がさつさを表に出して強がってはいるが、その根っこは人里の良家のお嬢様である。 同年代の少女達よりもずっと初心なのだ。 『キャベツ畑やコウノトリを信じてる可愛い女の子に 無修正のポルノをつきつける時を想像するような下卑た快感さ……ゾクゾクするねぇ』 「ヘンタイ! へんたいッ! 変態っ!」 魔理沙は顔を真っ赤にしたまま瞳に涙を浮かべて叫ぶ。 対するゆっくりまりさは表情をあまり変化させないがその実恍惚の笑みを浮かべているのが魔理沙もわかった。 『さぁ気を取り直して、ゆっくり癒してあげるからこっちにおいで!』 「癒しっていうか厭らしいよ! ッ――ゆっくり……ゆっくり……お前はッ」 認めたくは無い。けれど現状を認めるしかなかった。 「ゆっくり! お前はペットじゃない! ニートだ! ニートなんだ!」 ニート。 労働の義務を全うすることなく朝から晩までネチョい妄想して過ごす寄生虫だ。 あああ、まさか自分の身近な存在がニートになるなんてと魔理沙は頭を抱える。 しかもロリオタプーの三重苦である。最悪である。 「何でッ! 何でお前はニートなんかになっちゃったんだよ! 成長したといえるのは語彙ぐらい! 趣味は何だかわけわかんないしッ! 外で遊ばないし! どうしてこうなっちゃったんだよぉ!」 魔理沙は号泣した。ひたすら滂沱の涙を流す。 育て方を間違えたのだろうか。そのうち犯罪でも犯すのかもしれない。 いいえ、あの子はそんな子じゃないわ。魔理沙の中の女神が「うふふ」と慈愛の微笑を浮かべて言った。 「ひっく……何見てんだよッ……?」 『ロリの泣き顔ハァハァ♪ ハァハァ♪(softolkボイスで)』 そんな子なんだよいい加減認めろ。魔理沙の中の女神が「へっ」と煙草をふかしながら言った。 「でてけぇ! お前もう出てけぇ! 出てけっ! 出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけ出てけぇ!」 『ゆっゆっゆっゆ♪』 「もうやだぁぁぁぁぁぁ! おうちかえるぅぅぅぅ!」 家出少女霧雨魔理沙。実家に帰りたいと心から思ったのは久しぶりだった。 ◇ ゆっくりとの関係がギクシャクしてから数日が経った。 魔理沙はあれからアリスや霊夢、早苗などの友人の家を梯子するように泊めてもらっていて、 魔法の森にある家には帰っていない。 そして当然人里にある実家は候補にすら上がっていない。 ゆっくりの前ではああ叫んではしまったが、勘当された手前実家には帰れないし帰る気も無い。 けれどいつまでも誰かを頼り続けるわけにはいかず、 ゆっくりとの問題を解決して自分の家に戻らなくてはならない。 だからこそ、今日催されている博麗神社の宴会はある意味うってつけだった。 酒の席では普段疎遠な奴とも気兼ねなく相談することが出来る。 そして魔理沙はとある人物の前に居る。 あいつだったら、あいつだったら今のゆっくりにどう対処すればいいかわかるかもしれない。 「永琳、ニートの扱い方を教えてくれ!」 「一体何よ藪から棒に」 八意永琳は魔理沙の突然の申し出に眉を顰めた。 「お前のとこの輝夜って引きこもりっていうかニートだろ? 今日だって宴会に来てないし、妹紅も最近見かけないって言ってたぞ」 その途端永琳が怒りを露にし、大魔神のように表情をくぁっと変えた。 「何一時期の悪評を真に受けたような失礼な事を言ってるの! 今時姫の事をニート呼ばわりだなんて風評被害もいいところだわ!」 魔理沙は思わず気圧される。流石に人をいきなりニート呼ばわりは失礼だったのかもしれない。 「あ~……まぁ貴族とかそういった身分にいた人間が外で働くことはおかしかったらしいしな。あいつの価値観が違うだけなんだろ……。悪かったよ」 「姫はニートなんかじゃないわ! 私が監禁してるだけよ!」 「お前が元凶かよ!」 「監禁調教事件の犯人、八意永琳逮捕しました。霧雨魔理沙さんご協力に感謝します」 「クッ、謀ったわね霧雨魔理沙。この恨み一生忘れないわ」 「お前が勝手に自白しただけだろ!? 永遠に恨むなよやめろよ!?」 魔理沙は通報を受けてやってきた警察にドナドナと更迭される永琳を見送る。 意図せずして一つの事件が終わりを迎えたが、幻想郷ではこのようなこと日常茶飯事だった。 「はぁ…………しょうがない、次は教育の線から当っていくか」 次に魔理沙が頼りにしたのは人里にて寺子屋の教師をしている上白沢慧音である。 「なるほど、教育について悩んでいるのか。わかった、少し話を聞こう」 慧音は快く魔理沙のお願いを聞き受けた。 普段交流の無い者と立ち入った話をする勢いが持てる。これだから酒の席というものはいい。 酒が入り饒舌になって、魔理沙の言葉を促す。 「――そういうわけだから最近ゆっくりと上手くいってないんだよ」 魔理沙は視線を外に向ける。 霊夢とそのペットのゆっくりれいむがどたばたと宴会場を駆け回っている。 『ゆっくりのんでいってね!』 「ゆっくり~、つまみ持ってきて~」 『まかせとけ!』 霊夢と共に宴会の手伝いをする、霊夢のゆっくりである、ゆっくりれいむ。 器用にも頭の上にお盆を載せて右に左に大忙しだ。 魔理沙はその光景を羨ましく思った。いいなぁ、仲良くて。 そんな魔理沙の傍で、話を聞いていた慧音が頷いた。 「なるほどな。ところで参考になるかわからんが、人間の年頃の子供にも家族との間に距離を作ろうとする時期があるんだ。思春期ってやつだな」 思春期。いわゆる家族との仲が上手くいかなくなる時期のことを示すと慧音は言う。 「ゆっくりにこれが当てはまるかは知らんが、ゆっくりとその飼い主の関係は、ペットと飼い主と言うよりも親子の関係に通じるものが多い。ゆっくりは見た目など飼い主に影響を受ける面も多いしな」 「え~親子~、そりゃないぜ」 「いや、お前はつまるところ、ゆっくりと自分の関係が変わるのではないかという事に対して不安なのだと思うが、どうだ? 親子仲が悪くなってしまうことが嫌だとか――」 「………………」 魔理沙の沈黙。 慧音も失言をしたと気付き申し訳なさそうに顔を伏せて目元を歪ませる。 人里では良家である霧雨家の家庭事情はそれなりに有名であるためだ。 そんな中、二人の間にぬぅっと入り込む影。 「ねぇ魔理沙、ゆっくりが家の中で引きこもってることが不安なのは何となくだけど理解できるわ。確かに家族が引きこもっていたら不安になるのはしょうがないわよ」 真顔でやってきたのはアリス・マーガトロイド。魔理沙の友人の魔法使いだ。 いつ頃から聞いていたのか、すんなりと会話の中に入ってきた。 アリスが話の流れを変えるように魔理沙に声をかける。 「アリス……」 「だけどゆっくりが家の中で漫画読んだりゲームやったりしてるぐらいどうってことないじゃない。私のゆっくりもフィギュア(ぶっかけ)が趣味だけど、周りの人が不快にならないようにある程度自重してるわ。魔理沙が泊まりに来たときもそうしてたしね。他人に迷惑を掛けなければ趣味は誰だって自由だと思わない? 自分の家の中にいる存在とはいえ、ある程度の妥協は必要よ」 「だけどあいつ、いつか他人に迷惑掛けそうじゃね?」 「いいえ、漫画やゲームで発散出来ているうちはそれにこしたことはないわよ(現実では不可能なシチュエーションも楽しめるし)。他人に迷惑は掛からないわ」 「そっ、そうなのか?」 「えぇ、第一どんな趣味も心の中に秘めているなら自由よ。妄想まで縛られたら皆生きていけないわ(嗜好はエスカレートするものなのよねぇ)」 「うちのゆっくりはああいう趣味なのに隠さないでオープンなんだけど……」 説き伏せるアリスとゴニョゴニョと口ごもる魔理沙。その間に更にすっと入る者が一人。 「心の中に秘めているだけなら自由? 馬鹿いうなこのやろー。こちとらその考えてるだけでもセクハラうけてるようなものなんじゃー」 「さとり!?」 古明地さとり。心を読む程度の能力を持つ覚り妖怪である。次から次へと今日は色んな奴が魔理沙に絡んでくる。 いつものような陰気さはまるで見られず、子供のように喚いている。 さとりは泣きながら訴えているところを見ると、大分酒が入っているらしい。 いつものように心を読む程度の能力を使う余裕さえもないようだ。 「霧雨魔理沙、貴方は甘いれす。お砂糖の上にハチミツをぶっ掛けてコンデンスミルクを加えたぐらい甘い甘すぎる!」 「何がだよ! 何でそこまで言われなきゃいけないんだよ!」 「ペットというものは年がら年中発情してるものなのです。可愛い子猫やチワワでさえも、女の子を見たら人間だろうがなんだろうが『獣姦してぇニャ~』『孕ますワン孕ますワンうへへへへ』とまず確実に思っています」 「知りたくも無かったよそんな事実!」 ママーこれかってーワンちゃん買ってー。 あらまぁどうしましょ~? 奥様、その犬はバター犬としてお子様の性教育にもぴったりですよ。 あらまぁ素敵さっそく買うわ~。名前はチーズがいいかしら~。 「どうしても気になるならさっさと去勢すればいいじゃないですか。そりゃもうざっくりと」 「グロいよ!」 真顔で言い放つさとりに魔理沙が突っ込む。慧音が脱線した話を戻す。 「え~と……話をまとめると結局のところ、相手を自分の都合のいいままにしておきたいって言うのは我侭の一種なんじゃないか? 互いの落としどころとなる妥協点を見つけて、関わっていくしかないだろう」 「ペットもいもーともずっと自分のものにしておいていいじゃないれすかー! あの子達は私のしょゆーぶつなのれす! 私のものなのれす! 世界で一番可愛い大事なペットなの家族なの~!」 「もういいお前黙れ」 「さとりは参考にしない方がいいわね(さとりを落せばペットも付いてくるわね)」 「同感。愛が重すぎる」 酒が入ると素になるものだ。 放任主義者のさとりだが、実は物凄く束縛したがっているのかもしれない。 そうしないのは自らについて知っている上での計算か、あるいはペット達の事を考えての良心ゆえか。 魔理沙はゆっくりとの日々を思い返す。自分もゆっくりには自由にさせていた。 昔は外で遊ぶのが大好きな奴だった。外に出て友達に『ゆっくりしていってね!』と挨拶して、 森の中でキャッキャと遊んで、暗くなる前に家に帰って魔理沙を出迎え、 その日何があったかを食卓で話していた。 「最近ゆっくりがわかんない……」 その一言にはやるせなさと切なさが混ざり合っていた。 宴会はそろそろいい時間になってきた。 ここで一旦お開きにして、二次会をする者はそのまま残り明日仕事や用事がある者は帰る。 幹事役である霊夢が魔理沙の傍にやってきた。 「大分夜も遅くなったことだし今日泊まってく?」 帰り支度をする者が居る。 泥酔しているさとりはペット達に担がれて帰る。慧音は明日に備えて帰る。 残って宴会を続けるものが居る。 鬼達はまだまだ夜はこれからだ酒もってこいと残る。 自分はどうしようかと魔理沙は考え込んだが、ふと視界の中に入るものがあった。 霊夢のゆっくり。ゆっくりれいむは帰る者にも残る者にも『ゆっくりしていてね!』と声をかけている。 それを見ていると、魔理沙は自らのゆっくり、ゆっくりまりさのことを思い出す。 「……いや、今日は帰るよ。いい加減家の中には洗い物が溜まってるだろうしな」 「そっか、わかった。まぁアンタのことだから帰り道は大丈夫だろうしね」 自宅には帰らなかったが、蓄えは十分にあった。 ゆっくりまりさはそれを食べて過ごしているだろうが、洗い物が溜まっているだろう。 理由がなければ帰ろうとは思わなかった。理由があるから帰る。 「霊夢、アリス、またな~」 「じゃあね、魔理沙」 「気をつけて帰るのよ(性的な意味で)」 魔理沙は星の輝く夜空を飛んでいった。 ◇ 慧音がゆっくりは子供のようなものだと言っていた。 魔理沙は口では否定したものの、納得できる面もある。 ゆっくりが一緒にいると面倒くさいときは山ほどあったが、 その一方で自分の庇護の元で育っていくのは、とてもとても嬉しかったものだ。 ゆっくりまりさは最初から流暢に喋るわけではなかった。 「ゆっくりしていってね!」という言葉を鳴き声のようにベースにして、 魔理沙達周囲の人妖の言葉遣いを真似て覚えていった。 魔理沙は今でも覚えている。ゆっくりまりさが初めて喋った日の事を。 それはゆっくりが魔理沙の家に居つくことになってしばらく経ったある日のことだった。 「ただいま~」 『ゆっくりしていってね!』 「言われなくてもゆっくりしていくぜ」 家に帰った魔理沙は荷物を下ろし、夕食の支度をしながらゆっくりに話しかける。 最近新しく加わった日課だ。 これまでは楽しくなかった家の中に帰ってからの時間で、楽しくてたまらない日課。 「ほらゆっくりご飯だぞ~」 『ゆっ!』 「全く、ご飯の時間になったら現金にも嬉しそうにしやがって。畜生の恩義なんて所詮そんなものだよな~。食事と寝床を提供する奴ぐらいにしか思ってないんだ」 とひどい事を言ってはいるものの、その頬はゆるんでいた。 自分の作ったご飯を美味しそうに作ってくれる者が家の中にいる。 そいつの分のご飯まで用意しなければいけないのは面倒だが、 その苦労も美味しそうに食事をしてくれる者がいると軽く吹き飛ぶ。 「な~どうなんだゆっくり~。美味しいかほれほれ~」 『ゆっくりしていってね♪』 む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~と間の抜けた擬音でもしそうな様子でゆっくりまりさは魔理沙が与えたご飯を食べていく。 「おかわりが欲しかったら魔理沙さんおかわり下さいって言ってみろ饅頭顔め~」 『ゆ~?』 「魔理沙だよまりさ! ま・り・さ!」 それはただの気まぐれだったのかもしれない。 魔理沙はそうするだけで楽しかった。返事まで高望みしていなかった。 だが―― 『ま…………り………さ?』 途端、魔理沙は目を丸くした。 ゆっくりが人の言葉を覚える。このような話は他のゆっくりを飼っている奴等からも聞いていない。 そう、その頃のゆっくり達はまだ言葉を覚える固体がいなかったのだ。 だから魔理沙はそれが信じられなかった。 「おいゆっくり!? お前喋れるようになったのか!? そうだよ、ま・り・さ! ほら言ってみろ、ま・り・さ!」 『ま……り・さ、ま・り・さ……。まりさ。まりさ! まりさ!』 「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」 『まりさ! ゆっくりしていってね!』 まりさ。自分の名前を呼んだ。 魔理沙は思わずゆっくりまりさを脇に抱えてその頬を拳でグリグリと押し付けた。 その動作の速度は物凄く速く、ゆっくりまりさを抱えるその腕でぎゅううと締めて、拳には慈しむように力が入っていた。 人の親が、我が子が言葉を発した瞬間の気持ちとはこのようなものなのかもしれないと魔理沙は思った。 自分のこれまで過ごしてきた日々が実を結び花開いたような、途方もない充実感。 祝杯でも挙げたくなるほどだ。 「ははっ! お前私の言ってる事わかるか? 私の言ってる事通じるか?」 『ゆっくりしていってね! まりさゆっくりしていってね!』 「通じるようだな! すげー! なぁゆっくり、私の作ったご飯って美味しかったか?」 『ゆっくりしていってね♪』 「よしッ!」 かいぐりかいぐりとゆっくりまりさの頭を思い切り撫でる。そう、力の限り思い切り。 『まりさゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!』 「そうかもっとやってほしいかこのドMめほれほれ~もっと力を込めてやる~」 『ゆ゛~~』 「あははっ冗談だよ冗談~よしよし~~」 魔理沙はゆっくりまりさがこの先言葉を覚えたら『ゆっくりやめていってね!』とでも嫌がりそうなくらいの力加減で撫でていた。 だが、それも無理のない事だった。 まさかここまでうれしいことがあるとは思わなかった。 自分にこのような面があるとは意外だったと魔理沙は感じていた。 『ゆっくりしていってね♪』 ◇ 「ただいま~」 魔理沙は数日振りに日課である帰宅の挨拶を行なった。 けれども家の中からは声が返ってこない。 『ゆっくりしていってね!』も『おかえり』もない。無言無音そのものだった。 ゆっくりは家の中にいるのならばたとえ背を向けていても返事だけは返す。 帰ってきてないのだろうか? 家の中に明かりが灯っているのに? 外で遊んでいる? あの出不精がこんな時間まで? 「ゆっくり~! ゆっくり~! 主人の帰還だぞ~! 何も言う事ないのか~!」 返事は無い。 魔理沙は気がついたら早足になり、家中をキョロキョロと見回していた。 あまり広くない一軒屋の魔理沙邸である。 その結果、ゆっくりはすぐ見つかった。 部屋の隅。タンスのすぐ横だ。 ゆっくりまりさは餓死しかかっていた。 「ゆっくり!? ゆっくり! 起きろよ! おい! しっかりしろよ!」 『ゆ゛……ゆ゛……って゛…………いっ……てね……』 衰弱しているゆっくりまりさを見て、魔理沙は大急ぎで台所に向かい、 栄養価が高く衰弱していても食べられる食材である蜂蜜を持ってきて、すぐさまゆっくりまりさの口の中に放り込む。 ゆっくりまりさは最初は真っ青な顔をしていたが、段々と顔色がよくなってきた。 でたらめな生き物だけあって回復力もでたらめだ。 「何で何も食べてないんだよ!? 食料の蓄えぐらいあったろ!」 『ご飯作ってくれると思って……』 思わずずっこけた。心配した自分が馬鹿だった。 「食事ぐらい自分で作れよ!」 『料理出来ないんだよぉぉぉ』 魔理沙は呆れながら苦笑する。もはや苦笑する以外になかった。 料理を作れないなら食材をそのまま丸囓りするぐらいのことはしろ。 生活能力が無いどころの話ではない。 「このままでは本格的にマズイんじゃないかコイツ」と、危機感が募った。 「ん?」 ふと視線をすぐ傍のタンスに向けると、なにやら漁った後のようなものがあった。 「……なぁゆっくり。私のドロワが全部無くなってるんだけど知らないか?」 『ごちそうさまでした』 「…………は?」 『ゆっくりの主食は乙女のドロワなの☆ 生でも美味しいドロワの刺し身♪』 「餓死しろ!」 『本当はパンツ派なんだけどね~』 「パンツが無かったらドロワを食べればいいじゃない」聖者ガンジーの格言である。 ◇ 月は二月。日は十日。二月十日。通称ニートの日。 魔理沙はある決心をした。 このままだとゆっくりはどんどん駄目になる。 「ゆっくり、お前働け」 『はぁ?』 ネチョ同人誌を読みながら眉を顰めて不満を露にするゆっくりまりさに魔理沙はレーザーを叩き込んだ。 こんがりといい匂いを発しているゆっくりまりさに、魔理沙は話を続ける。 「なあゆっくり、お前なんでニートになったんだ?」 『家族会議っすか?』 更にレーザーを叩き込んだ。 ゆっくりまりさは黒焦げになって、食したら癌になりそうなこんがりとした匂いが部屋中に広がる。 「お前せめて他のゆっくりと一緒に遊びに行ったりとかしないのか?」 『あのリア充どもがっ。へっ。趣味合わないんすよああいうのとは』 駄目だこりゃ。 結局のところ、誰かに苛められたというわけでも何でもない。ニートになった理由なんてないのだ。 元々そういう気質があって、要するに根っからの社会不適合者なだけ。 こんな奴でも昔は森の中で昆虫採集をして、河原で遊んで、友達の家に行ってと、 健全な日々があったことを懐かしく思う。 『そもそも幻想郷ってニートだらけじゃないっすか、妖怪とか。 ※ニート 就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人を示す。ほらね』 「反論させてもらけど妖怪は人間を驚かしたり怯えさせるのが仕事だしなぁ。小傘だって人間を驚かそうと頑張ってるし、ルーミアだってめんどくっても人間襲ってるし」 『だったら引きこもりでもいいじゃない! あの紫もやしな魔女のゆっくりなんて引きこもってても何にも言われないんだよ! ただ飯ぐらいのくせに!』 「お前パチュリーの耳に知られたら実験材料にされるぞ」 社会不適合でもいいじゃない。幻想郷にはニートだらけじゃないのとゆっくりまりさは抗議する。 紫が聞いたら泣くぞお前。 (むしろ働かせることが主目的じゃないんだよなぁ……) 魔理沙はゆっくりが働かなくてもある意味構わない。 元々ペットだし、働くことが主目的の存在ではない。 だが、ゆっくりまりさがこのままの生活スタイルだと更に堕落してしまうのではないか、自分無しでは生きていけなくなることに不安を感じるようになったのだ。 「いいかゆっくりよく聞けよ。お前は今ここな」 毎日が夏休みだ 2chって楽しいな ←この辺。 「そのうちこうなる」 何をしてたんだもう手遅れだ 「こうなりたくなかったらキチンと働け。仕事しろ。お前このままだと本格的に駄目になるぞ」 『子供は遊ぶのが仕事っていうじゃない!』 「それは友達と遊んで社交性を身につけたり家の中で嗜好品を楽しむ事で将来の役に立てろって意味だ。お前のような将来性のない遊びは違うんだよ」 『わかったよ! だったらラノベ作家目指すよ!』 「ヤメテ! お願いだから身の程を知って!」 反論するゆっくりまりさに対して魔理沙は本気で止めた。 その道だけは決して選んではならないと本能が告げていた。 「ほんっとうに暇な奴っていうのはロクなことをしないものだな」 『自分の事は棚にあげてるよこの小娘』 「やかましい。私は結構忙しいんだよ、外によく出るしな」 『へっこのリア充気取りめ。女の子のところばかりに行ってる百合予備軍の小娘が』 グリグリグリ。取り敢えず両拳でゆっくりまりさのこめかみをねじくり回す。 『じゃあ家事手伝いでどうっすか?』 「手伝ってないだろお前」 『自宅警備員舐めないで下さい。侵入者が来たら永遠にゆっくりさせてあげますよ』 「どこからその自信は来るんだよ……」 ハァ……と、魔理沙は深いため息をついた。 これは筋金入りである。いつの間にか我が家のゆっくりは骨の髄までニート体質が染み付いてしまった。 どうするべきかと頭を悩ませる。 「なぁゆっくり、お前今日から奴隷になれ」 『はぁ? 何言ってるんスか先輩? ――――あ~、ペットじゃなくて愛玩用の性奴隷にしたいわけっすね? いっすよ。自分受けもいけますから』 「何馬鹿な事いってるんだよ!? 奴隷型の弾幕ってあるだろ? アレだよアレ!」 奴隷型の弾幕。使い魔となる者を用いて弾幕を張るスペルカードの一種だ。 『え~。身内で就職すると色々不都合が出るからやだ~。やめるとき大変だし~』 「……気を使ってあげた私が馬鹿だったよ」 『それに今十分仕事してるじゃん』 「何の仕事だよ?」 『魔理沙をゆっくりさせる仕事だよ』 「言っておくが最近の私はお前にゆっくりさせてもらった覚えはないぞ」 途端ゆっくりの顔色が青く染まり、ガクガクと震える。 『え……マジ? ホント? 冗談抜き? 冗談だよね? そうだよね? ね?』 「ちょっ、お前なんでそんなに焦ってるんだよ?」 『ねぇマジ? 本当にゆっくりした覚えないの?』 「あぁ、お前がニート化してて気が休まらなくって――」 『ウボアー』 「うわああああああああああああ! ゆっくりどうしたああああああ!」 粒子状になって消えてゆくゆっくりまりさ。 幽霊が成仏するか雑魚モンスターがニフラムを受けたらこのような消滅の形を迎えるのかもしれない。 それもそのはず、精神的な存在である妖怪達にとって自らの存在意義を否定されるということは死に等しい事。 ゆっくりが妖怪というカテゴリーに含まれるかは定かではないが、自らの存在を否定されることによるダメージは計り知れない。 ゆっくりまりさは怒り狂った顔で怨嗟の声を叫び続けた。 『ぐぬぅぅぅぅぅぅ! 呪ってやるぞおオオオオ! この世全てを呪ってやるゥゥゥ! ゆっくりを否定したこの世界をォォォォォ! そして私も消えよう永遠ニィィィィ!!』 「わかった! わかったよ! お前に十分ゆっくりさせてもらっているよ!」 『ユ楡ユ楡遊柚湯油ゆ愉……』 「お前のゆっくりは幻想郷一だよ! だから頼むから回りに迷惑をかけるなよ!」 『え、やっぱそう思う? さっすが~。魔理沙もゆっくりの大事さをわかるようになってきたね~♪』 瞬時に表情と体を元に戻らせたゆっくりまりさが質問する。変わり身の早さには定評がある。 「(うわ、マスパぶっ放してぇ……こいつ本当にめんどくせぇ…………)」 魔理沙は自らを抑えるための妥協点として取り敢えずゆっくりまりさを足でグリグリと踏んづける。 自暴自棄になって周囲に迷惑を掛けられたらたまらない。 扱いにくい事この上ない。反抗期の子供というのはこういうものなのだろうか? 全く中途半端に力と知恵をつけているから尚更性質が悪い。 次ページへ 名前 コメント
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「う~あづい~・・・」ゆっくりれみりゃがだれている。 今、幻想郷では諸般の事情から電力が不足しており「欲しがりません秋までは」のスローガンの元、絶賛節電中。 ここ、こうー♪まかんでもエアコン使用禁止令が出てしまったのだ。 「おぜうさま、そんなだらしないことでは瀟洒なゆっくりにはなれませんよ」ゆっくりさくやがたしなめる。 「エアコンが使えなくてもゆっくり涼む方法はあります。まずは水風呂に入りましょう」 れみりゃを水風呂に入れると、風呂上がりに爽快バブシャワーを全身に塗る。 「う~♪ひえひえ~♪」 「仕上げよ!めーりん、ペットボトルの水持ってきて!」 「じゃおっ!了解!」冷蔵庫の前に立つめーりん。 「違ああああう!そこじゃない!」 さくやのナイフがめーりんの帽子に刺さる。 「ちょ、帽子に少女ゆっくりを仕込んでなかったら永遠にゆっくりしてたよ!」 「冷蔵庫の正面に居たら扉を大きく開けなくちゃならないでしょ!側面に立って開け幅を小さくしなきゃ」 「あっ、そうか」 「取る前にどこに何があるかイメージしてから素早く取るのよ」 「じゃおっ!」めーりんの三つ編みがヒュンヒュンと素早く取り出す。 仕上げにペットボトルの水をれみりゃにかける。 「う~!ちべたあぁぁぁい!」 れみりゃの体をバスタオルで微妙に水滴が残る様に拭く。 すかさず扇風機の前に座るれみりゃ。ドロワ一枚の姿はカリスマブレイクにも程があるがこのさいそんな事は言ってられない。 爽快バブシャワーの冷んやり感とさらさら感が風による気化熱冷凍法の効果をアップさせる、しかし水が乾くと風はむしろ温風に変わる。 さくやはそこでおもむろに扇風機のスイッチを切った。 「う~なんでぇ~」 さくやは霧吹きでれみりゃの体を湿らせると、めーりんは冷凍庫から凍ったペットボトルを扇風機の前に置いて再び扇風機のスイッチを入れた。 「うー!」 再び体が冷んやりし始めた上に風そのものも冷んやりして来た。 「おぜうさま、ペットボトルに足をつけてみてください」 「足が冷えれば全身も冷えてきますよ」 「う~♪涼しい~♪」れみりゃがようやくゆっくりしはじめると 「うー!さくやー!氷が溶け始めたよー!」 子供プールに氷を入れてつかっているふらんが叫ぶ。 「あっ!いもうとさま!しかしもう氷は・・・」 「そんなことよりおうどんたべましょう!」 ざるうどんを抱えためーりんが入って来た。 「う~・・・でもぬるいんじゃ・・・」 シャキーン! 「冷たーい!」 「これも仕上げに冷やしたペットボトルの水で締めてますからね、コシが違いますよ!」 「めーりん、ぱちゅりー様は?」 「アイスノンの上でこあくまが選んだホラー小説を読んでるわ」 見ると疲れて眠っているこあくまの羽はそれでも緩やかにぱちゅりーに風を送っている。 お腹が膨れたふらんも、ようやく落ち着いたれみりゃも寝付いたようだ。 「私たちもそろそろゆっくりしましょうか・・・」 「そうですね~・・・」 さくやとめーりんはのろのろと冷蔵庫に向かう。 「ゆふぅ~冷えたシリコンのPADはゆっくりできるわねぇ~・・・」 「めーりんはこのアイスノンでシエスタするよ・・・」 「それじゃゆっくり・・・」 「していってね~」 zzz... 夏は知恵を絞ってゆっくりしていってね!!! 名前 コメント
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日曜日の朝、俺は昼過ぎになってようやく目を覚ました。 昨日の飲み会が遅くまでかかり朝ようやく眠ることができたからだ。 今から飯を作るのも億劫なので、カップラーメンでも食べようかと台所に行くとそれは居た。 「ゆっくりしていってね!!!」 カップラーメンの上に生首のような、顔のある饅頭のような物体が乗っかっていた。 突然の出現と気味の悪さに一瞬固まった後、すぐさま部屋へと戻る。 そして今の状況を整理した。 俺は朝起きた、そしたら謎の物体が台所にいる。 あの物体はなんなんだ?無害か危険なのかその判断もつかない。とりあえず触れないに越したことはなさそうだ。 そうこう考えているうちに台所から声がかかる。 「3分たったよ!!!ゆっくり食べてね!!!」 台所を覗くと、謎の物体はカップラーメンから下りて横でふんぞり返っていた。 本人曰くカップラーメンの食べれる準備が出来たということなのだろうが安全かどうか実に怪しい。 だが、あのカップラーメンは明らかに俺が買っておいたものである。 このままずっとこの調子というわけにもいかないので、意を決してあの物体に話しかけてみることにする。 「お前は何者だ?なんで俺の家にいるんだ?」 「私はゆっくりれいむだよ!!!お兄さんをゆっくりさせにきたよ!!!ゆっくりしていってね!!!」 「何で俺をゆっくりさせに来たんだ?」 「お兄さんが普段ゆっくり出来てないからゆっくりさせにきたよ!!!それより麺が伸びちゃうよ、ゆっくりはやく食べてね!!!」 ゆっくりはやくって何だよ…、いや、それより気になることがある。 「お前どうやってそのカップラーメンを準備したんだ?手足ないだろ。」 「お兄さんをゆっくりさせるためなら何でもできるよ!!!」 結局明確な回答は得られなかったが、とりあえず危険はなさそうなので近づいてみる。 近くで見ると本当に丸い。生首のような気持ち悪さはあるが柔らかそうな感じが俺に触りたいという欲求を生む。 ぷにぷに。お、かなり気持ちいい。ぷにぷにぷに。 「ゆっ、れいむをつついてる暇があったら、ラーメン食べてね!!!麺がゆっくり伸びちゃうよ!!!」 「これはちゃんと食べれるのか?」 「バカにしないでね!れいむがゆっくり準備したから大丈夫だよ!!!」 まぁ、とりあえずこれの言うことを聞いて箸とカップ麺を持って部屋に向かう。 何故かこのゆっくりれいむという奴もついてきた。 ふたをあけて見るが、どうやらスープの素もかやくもちゃんと入っている、いつも俺が作っているものと一緒だ。 だがやはり恐怖心は拭えず恐る恐る食べてみる、すると… 「 …… 麺がのびのびだ…。」 「ゆっくりした結果がこれだよ!!!」 ラーメンも食べ終わったところでこのゆっくりれいむについて聞いてみた。 「お前は一体どこから来たんだ? というかお前は一体何者なんだ?」 「ゆっくりはゆっくりできない人のところに現れる素敵な饅頭だよ!!!」 ああ、やっぱり饅頭だったのか。 「で、その素敵な饅頭とやらはどうやって俺をゆっくりさせてくれるんだい?」 「れいむと一緒にいればゆっくりできるよ!!!」 ………、よく分からないがとりあえず特別どうこうするつもりはないらしい。 正直こんなのに居座られても迷惑なのでさっさと追い出すことにしよう。 ゆっくりれいむをつかんで玄関まで持っていく。 「わぁい、お空を飛んでるみたい!!!」 何か暢気なことを言っているが気にせず俺はドアを開けゆっくりれいむをほっぽりだした。 「ゆべっ!!!」 「生憎俺はゆっくりできてるんで他の人でもゆっくりさせてくれ。じゃあな。」 そういって扉を閉めて部屋へと戻る。全く一体なんだったんだろうな、あれ。 しかし部屋へ戻った俺を待っていたのは予想外の光景であった。 「ゆっくりしていってね!!!」 追い出したはずの饅頭が俺の机の上にいた。 「お兄さん、全然ゆっくり出来てないね。れいむがゆっくりさせてあげるね!!!」 「どうやってここに入ってきたんだ!!!???」 「ゆっくり移動しただけだよ、それよりお兄さんもう少しゆっくりしてね!!!」 やばい、やばいぞ俺。変なのにとりつかれちまったみたいだ。 どうする?どうする?そうだとりあえず外へ出よう。こいつのいない所で落ち着いてゆっくり考えよう。 そういって必要最低限のものを持ち俺は外へ飛び出した。 外でもあの非常識な饅頭が現れやしないかと思ったが、それは杞憂に終わり外でしばらくゆっくり過ごすことができた。 あの饅頭のことは明日霊媒師になんなりみてもらうことにするとして俺は家に戻った。 できれば饅頭がいなくなっていることを願ったが残念ながらその期待は裏切られた。 「お兄さんおかえり!ゆっくりしていってね!!!」 お前がいるからゆっくりできないんだよと思いつつ、家にあがる。 するとゆっくりれいむのとなりには皿とギョウザが置いてあった。 「当店自慢の一口餃子です。ゆっくり食べてね!!!」 「餃子?餃子なんてどうやって作ったんだ?そもそも食材がないだろ?」 「れいむにかかれば食材なんて関係ないよ!!!」 「食えるか、そんな怪しいもん!」 「ゆ、お兄さんゆっくり出来てないね。いらないなられいむが食べちゃうよ?」 「勝手にしてくれ。」 「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」 全く何なんだ、こいつは。 「いい加減出てってくれないか。何で俺なんかにとりつくんだよ。」 「お兄さんまだ全然ゆっくりしてないよ!ゆっくりするまでれいむが一緒に居てあげるよ!!!」 「結構だ!」 我慢の限界に来た俺はゆっくりれいむを窓から投げ捨てる。ここは2階だ。これでいなくなってくれれば。 そう思って後ろを振り返るが…… 何も居なかった。 「やれやれ…」 少し落ち着いたのでベッドに腰をかける。それにしても何やら頭が重いな。 あいつのせいで色々考えてたからか?そう思いふと鏡を見ると いやがった…。俺の頭の上に……。 むんずと捕まえてゆっくりを壁に向かって投げつけた。 いい音をしてぶつかったがゆっくりれいむはこちらを向いて 「おお、こわいこわい。」 とほくそ笑んでいるだけであった。 もはや打つ手なしの俺はそのままベッドに横たわった。 疲れたな、もうただゆっくりしたい。そんな気持ちになった。 「ゆっくりしていってね!!!」 ああ、もうゆっくりするよ。それが一番だ。 ただぼんやりと俺が横たわっている一方、ゆっくりれいむは忙しなく動いていた。 俺の菓子を食べやがったと思ったら俺の所に持ってきたり 汚い家の床のごみを集めてたり、台所に消えていったと思ったら1時間後に戻ってきたり こっちがゆっくりしろよといいたくなるぐらいに動き回っていた。 そしておもむろにゆっくりれいむが俺の服をひっぱり出してきた。 「イェ~イ、ゆっくりしてる~?」 「久しぶりに話しかけてきたと思ったらそれかよ。」 「それはとにかくお兄さん、お風呂が沸いたよ。ゆっくり入ってってね!!!」 「風呂!?」 驚いて俺が風呂場に行くと確かに風呂が沸いていた。 ふと見ると汚かった台所もきれいになっている。 「これ全部お前がやったのか?」 「ゆっくりできるように頑張ったよ!!!」 一体どうやったのかと聞こうと思ったが、元々非常識物体なのを思い出してやめた。 今はゆっくりと風呂に入ることとしよう。 風呂からあがるとゆっくりれいむはゆっくりしていた。 ゆっくりゆっくり言っているがそういえばゆっくりれいむがゆっくりしているのは今日初めてなように思える。 「なんだか随分ゆっくりしているな。」 「お兄さんがゆっくりしてるから、れいむがやれることがなくなっただけだよ!!!」 ああ、そういうことか。人をゆっくりさせて初めてゆっくりできるのか。 そう思うと何か微笑ましくなってしまった。 「おい、ゆっくりれいむ。ビール飲むか。キンキンに冷えたのがあるぞ?」 「ゆっくり飲むよ!!!」 ゆっくりれいむを長座した膝にのせ、右手に自分のビールを左手にゆっくりれいむのビールを持って ゆっくりとビールを飲んだ。こんなにのんびり飲むビールはいつ以来だろうか? 「ゆ~、ゆっくり酔ってきたよ!!!」 「ハハハ。お前は酒に弱いのか。」 「ゆっくり酔っただけだよ!ここから先は強いよ!!!」 そういってプクーっと膨れるゆっくりれいむ。膨らむ感触も心地よい。 「そういやつまみがないな。ちょっと取ってくるよ。」 「ゆ、それなられいむをお食べなさい!!!」 「お前食えるのか? っていうか食われてお前は大丈夫なのか?」 「食べられてダメな饅頭なんていないよ!ゆっくり食べてね!!!」 「そうか、じゃあ頂きます。」 そう言ってゆっくりれいむを掴むとあっさりとかけらが取れてしまった。 さっきはあれだけ叩きつけてもびくともしなかったのに…。 そしてゆっくりの一片をいただく。 … … 甘い 今まで食べたことのないような甘さが口に広がった。ほっぺたも脳も蕩けるような、そんな味だった。 「うっめ、めっちゃうっめ。これ。」 がらにもない言葉でリアクションをとってしまう。それほどの美味さだった。 まさに天に昇る味、夢の中にでもいるような感覚が俺を襲った。 … … … ふと目覚めると俺はベッドの上で寝ていた。 布団もちゃんとかぶっている。 あれは夢だったのか? 机の上を見るとデジタル時計が月曜の朝を表示している。どうやら夢ではないようだ。 ビールの缶は二つあるし、床も台所もピカピカだ。 たがどれだけ辺りを見回してもあのゆっくりれいむの姿は見当たらなかった。 するとビールの缶の下にメモのような紙が置いてあった。 「ゆっくりしていってね!!!」 ゆっくりできない人の元にやってくる… か。 「もう少しお前がゆっくりしていってくれれば良かったのに」 そう笑って俺は仕事へ向かう支度を始めた。 今日からは少しゆっくりと過ごしていこうと思う。 ゆっくりできない人のところへ現れるゆっくり饅頭 今日はあなたのところへやってくるかもしれない……。 うわああ可愛い! うちにも来ないかなー -- 名無しさん (2010-03-18 15 36 40) プリーズ カム トゥー マイハウスッ!!! -- 名無しさん (2012-05-04 23 56 26) あー、ゆっくりできないなー(棒読み) -- 名無しさん (2012-07-31 21 30 37) なんかカワイイ・・・・・ -- ゆっくり好きのただのオタク (2012-10-23 21 24 42) 名前 コメント
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ここはゆっくりハウスの専門店「うー☆べるハウス」 ゆっくりの家を売る店である。 人間から見るとおもちゃの家みたいだがゆっくりにとってゆっくり出来る場所”ゆっくりプレイス”は非常に大事なものである。 ゆえにゆっくりハウスもそれぞれにあった多種多様なゆっくりハウスが揃っている。 今日もきもんげがゆっくりリグル相手に営業トークをしていた。 「お客様は虫カゴタイプなんてどうでっしゃろ?」 「なんだか檻みたいでゆっくりできないよ…」 「では樹木型なんてどうでっしゃろ?別売りの神社型ゆっくりハウスと合体させることもできまっせ」 「リグルはきめぇ丸みたいな鳥タイプでも甲殻類でもないし……」 「それではオーソドックスなキノコ型は?」 「う~ん、ちょっと違うんだよね~」 「ではこのリカちゃんハウス型は?中央からくぱぁと割れまんがな」 「それってアリスとかメディスンやひなみたいな人形タイプのゆっくりのおうちじゃない」 「それじゃこのかまくらタイプは?今の季節涼しいですよ」 「レティやチルノはいいだろうけどリグルは寒いの嫌いだし」 「じゃ、じゃあこの墓石タイプは!地下室もあってゆっくり出来ますよ!」 「それはこがさやよしかのおうちでしょ!だんだんリグルから離れていってるよ!」 「う~ん。もうモデルハウスはこれで全部ですわ…」 失望しながらカタログをパラパラめくるリグルの顔がぱあっと輝いた。 「えっ?これは住宅タイプじゃなくて店舗タイプですけど……」 「これがいい!」 「まいどありがとうございます!ゆっくりしていってね!」 そしてリグルの新居にみんなが遊びに来た。 「れいむ、まりさ、きめぇ丸!れみりゃ、フラン、めーりん!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 リグルの新居は一般住宅タイプのゆっくりハウスではなくサウナだった。 さっそくれみりゃ、フラン、めーりんはサウナに入っていった。 「おお、暑い暑い」 「水風呂もあるよ!ゆっくりしていってね!」 「おっ、ゆっくり涼むんだぜ!」 まりさは水風呂に飛び込むとぷかぷか浮かんでゆっくりしていた。 「でもれみりゃ、フラン、めーりんの3頭はもとが蒸籠で蒸す中華まんタイプだけにサウナは大好きだろうけどリグルは平気なの?」 とれいむが問いかけると 「リグルは気づいたんだよ……自分が何者なのか」 「え?」 「れいむが紅白饅頭、まりさが黒大福であるように……」 「リグルは蒸しパンだったんだよ!」 _人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人_ _,,....,,_ _> ナ ゝ ナ ゝ / 十_" ー;=‐ |! |! <-''" > cト cト /^、_ノ | 、.__ つ (.__  ̄ ̄ ̄ ̄ ・ ・ <ヽ  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ _ | ;ノ´ ̄\ \_,. -‐ァ __ _____ ____ ,,r' ゙i\ ,r'"´ `ヾ `゙\ | ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__, _,, '-´  ̄ ̄`-ゝ 、イ'´  ̄ ̄ ̄`゛''┘., / . ヽ、_,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7 ´ ヽン、' 、 `' 、i ,/ヾ、 i rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/`7=─- -==',i r'l、\ jヽ ハ , !、 , ;; ;;;/ ヽ ;;;;/r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! iヾ_ノイ iゝ、イ人レ/ルヽ|レ'rr=r レ' |/(,. ト゛'、`', ;;;;' === ji, ===i!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' ,ゝ ( ヒ_] ヒ_ン)| .||`i -=;ァ' l ,.! }'==|, |=|, .|`! !/レi' (ヒ_] u ヒ_ンレ'i ノ ! u ,___, 「 !| ゙i '‐=ー uレ.,r'レ;' `ーー" i ーー",' ノ !u ,___, i .レ'.',. ヽ _ン L」|ヘi / {, }-i `i u `ー´ /j ( ,ハ u ヽ _ン 人! ||ヽ、 u,ノイ/ u u ,イ「レヽ ! ,∠二フ /,.ヘ,)、 )>,、 _____, ,.イ ハル `` ー--─ ' ル´ヘ __, /i~レ \ /`ーt/ / (注・このSSだけの設定です) 「しかしあの看板何とかならなかったの?」 「サウナなんか新築物件にないって言われたからしかたなく中古物件で」 ┏━━━━━━━━━━┓┃ 2 4 会 館 ┃┗━━━━━━━━━━┛ アッー! ググッたらとんでもないところにつながったw -- 名無しさん (2012-07-14 23 50 54) ここって〇〇場だったのか リグルは結局尻をいじられる運命にあるんですね(しんみり -- 名無しさん (2012-07-15 01 06 47) 名前 コメント