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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある両家の元旦物語 後編 御坂美琴は温かい水で顔を洗っては、冷たいタオルで目を冷やす、を繰り返している。 泣きすぎて目が腫れぼったくなってしまったため、血行を良くする応急処置だ。 当然スッピン状態に戻っている。 「美琴ちゃん、どれだけ泣いたのよこれ…絞ったら水したたりそう」 「うぅ・・・」 詩菜に借りたミニタオルは見事にぐしょぐしょだ。 「まあでもそれだけ泣いて、アタックも成功したし。完全に浄化されたわね♪」 「う、うるさい!」 未だに信じられない。 …いや、あの男は想像以上の肩透かしをしてくる。 油断はできない…けど。 (この部屋でたら、どんな顔したらいいの…アイツの前でどうしたら…!) とりあえず考えないようにして、バシャバシャ顔を洗い続ける。 他の4人は部屋に戻っている。 案内係が昼食をセットしてくれている。『懐石おせち』というものらしい。 上条がもの珍しげに眺めていると、御坂旅掛が近寄ってきた。 「当麻くん、ちょっといいかな?」 「は、はい」 こ、殺される? 上条がまず思ったのはソレである。 娘があれだけ泣かされてキスまでされて、心安らかなはずがあろうか、いや、ありえない。 自分の両親をちらっと見たが危機感はないようだ。 (とりあえず、大丈夫なの、か…?) 促されて、またベランダから外に出る。 先手必勝。 「す、すみません。娘さんを泣かせてしまいまして。それに…」 「ああ、それはいい。俺は子供の世界には首を突っ込まないよ。正しいと思ったことをやればいいさ」 旅掛は事もなげに言う。 「ただ、君に聞きたいことがあってね。妻たちがいない今しか」 言うやいなや、旅掛は上条の両肩をガシッと掴む。上条は流石にビビる。 (な、なんだーー?) 「こうすれば、君の表情は読み取れるからね」 そう言って旅掛は、ゆっくりと上条に問う。 「私の娘は美琴ただ一人だ。…決して双子じゃないんだが、君はどう思う?」 言葉が浸透するのにコンマ何秒かかかったが、意味を理解すると。 (シスターズ…!) 思い浮かべてしまった。もとより、上条は感情で動く人間だ。表情を作るような器用な事はできない。 「ビンゴ、か。美琴は知っているのかな?」 上条は目をふせる。どう答えればいい? 「ふ、雄弁だな。そうか、あの子も知っているのか…分かった、ありがとう。」 上条が一言も喋れず固まっている。 旅掛は手を離した。 「いつか話してくれる事を願うよ。じゃあ戻ろうか…ああ、あの子には私が勘付いた事は内緒、な」 旅掛は戻りつつ、怒りをある男に向ける。 (許さんぞアレイスター!やはり娘を巻き込んでいたか!) 上条は呆然としていた。 一言も喋ってないのに、全部吸い上げられた。 あんな底知れぬ人が将来、義理の父親になる可能性があるというのか? (あ、戻ってきたか) 上条が戻ろうとすると、化粧を直し終えたのか、美琴がベランダから庭へ降りてこようとしていた。 すれ違いに、旅掛に一言かけられ、頷いている。 まっすぐ上条に向かって歩いてきた。 目の腫れぼったさは完全回復といかなかったようだが、そこはアイシャドウとアイラインで目立たなくしている。 可愛らしさは完全復活していた。やや頬が赤いが、この寒さでは普通かもしれない。 美琴は、ある決意を秘めていた。 ―――場面は先程の化粧室に戻る。 「さて、美琴ちゃん」 美鈴は美琴の化粧を手伝いながら、やさしく話しかける。 「な、なに?」 「当麻くんだけどね、さっきこっち戻ってくるとき、ベンチに座ってるの見たんだけど」 「うん」 「あの子、冷静になろうと努めてるように見えたのよね。」 「?」 美琴は美鈴の言いたいことが分からない。 「当麻くんってさ、相当ヤバイ橋わたってきてるんじゃない?」 「うん、しょっちゅう入院するようなケガしてるみたい…」 「でしょうね。だからいざという時、誤った判断をしないように、感情のコントロールをする術が身についてるんでしょう」 美琴は気づいた。 「え、じゃ、じゃあアイツは、冷静に…つまり考え直してる…っていうの!?」 「それは行き過ぎかな。逆に考えてごらんなさい。当麻くんが色々話してくれたんじゃない? その中に、美琴ちゃんの求愛へ応えることに対して引っかかりがあるのかもね」 …あの子か。 『ん、心配ないよ。とうまは必ず帰ってきてくれるもの』 あの子と初めて会った日、そんなこと言ってたっけ。自分の心が衝撃を受けたのを、覚えている。 私を受け入れれば、あの子はどうなる…? 「なんか思い当たることがあったかな?何にせよ…」 美鈴は一気に声のトーンをあげる。 「いい?美琴ちゃん。恋愛は冷静になってやるもんじゃない!一気に燃え上がらせないといけないの! この数時間が勝負よ?きっちり踏み込んで、あの子をしっかりキャッチするの! 大丈夫、扉は開いたんだから!後のことを考えず、彼に飛び込みなさいな。」 美琴は飲まれたような表情をしていたが、やがてコクンと頷いた。 ―――あの子の事はさておき、まず自分。 美琴は一気に上条の目の前まで歩を進め…そのまま上条の首に両手を巻きつけた! あまりの至近距離に上条はたじろぎつつ、赤くなる。 「気づいてた?私、アンタのこと、苗字でも名前でも呼んだことなかった、って」 全ては、この時のため――― 「…私、当麻のこと大好きっ!」 そのままつま先立ちでしがみつき、口許を上条の耳に寄せる。 「私のこと、ゆっくりでいいから、好きになって…お願い」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある両家の元旦物語
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いない。 『あいつ』がいない。 どれだけ街を歩いても。裏通りを探しても。 いつもなら『またかよ』とか。 ふらりと現れて『よー、御坂』なんて声をかけてくるのに。 いつもあの少年はいるのに。 いつもあの少年はいたのに。 いつもあの少年はいてくれたのに。 ―――あの少年がいないのだ。 「……あいつが、いない」 ベッドに身を預けた御坂美琴は力なく呟いた。 全身に疲労が重く圧し掛かり、それでも他人には悟られぬよう虚勢を張り続けた。 美琴は数ヶ月前に起きた、真夏の悪夢のときのように奔走した。 能力を使える限り使った。体が動く限り動かし続けた。 あの少年の携帯にメールを送っても、何の返信もない。通話にも出ない。 少年の寮の電話番号を調べ上げて電話をかけたり、部屋に向かい隣室や管理人にも行方を尋ねた。 街中を歩いた。一つ一つの学区の様々な場所を回り、聞き込みをして、監視カメラの記録を片端から 調べ上げた。 そんな美琴を見て、ルームメイトの白井黒子は風紀委員(ジャッジメント)の権限を用いた調査を 提案したが、美琴は首を縦には振らなかった。 少年がとある日を堺に出国した後、帰国した記録や目撃証言も一つもなかったし、美琴自身これ以上 の調査に意味はないとほぼ断定していたのだ。 学園都市の外部となれば能力を用いても手は届かないし、世界のどの国を調べればよいのか皆目見当も つかなかった。 それでも調査を断念するのに時間が掛かったのは、気持ちの問題だろう。 そして、美琴は普段通りの生活に戻った。 たまに、ふと振り返る。 美琴の最近の癖だった。何気なく、後ろを振り向く。 振り返って、人の姿が無いことを確認すると何事も無かったかのように向き直る。 人気のない公園で、美琴は自販機を前にぼんやりしていた。 ここで、あの少年と決して長くはない会話をして、どれだけの時間が流れただろうか。秋が、少しずつ 終わりに近づいている。 今年の六月からちょくちょく顔を合わせていたあの少年とのやり取りが、自分にとって一つの日常だった のだと美琴は近頃になって、ようやく気づいた。 美琴はぽつりと呟いた。 「……何でよ」 唇がわずかに震えている。 「何で、今頃になって……」 俯くと、雫が零れ落ちて地面を濡らした。 袖で拭うと、自販機に硬貨を入れた。 『ありゃ?……なんか素直だな。あの御坂が自販機に硬貨を―――』 美琴は、はっとして振り返った。 いるはずのない、少年の声を、幻を見たような気がして――― 「早く、帰ってきなさいよ……!あのバカあああ―――ッ!!」 自販機に思い切り、久しぶりに回し蹴りを入れた。 end
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雲一つない快晴の空、上条当麻は指定された場所に到着すると、驚きで開いた口が塞がらなかった。 「す、すげぇ……」 用意周到の撮影セット、スタッフ、見る物全てが上条には新鮮だった。 「お、君が上条君か?」 呆然と立ち尽くしていると、監督とおぼしき人物が声を掛けてきた。 「あ、はい。そうです」 「話は聞いているな?」 「えぇ、勿論です」 「それなら、まずはアクションの仕方を学んでもらう」 そう告げると、監督は作業中のスタッフを呼び寄せる。 「なんでしょう監督」 「コイツに動きを教えてやれ」 「わかりました」 監督に指示されたスタッフが上条に近寄る。 「アクション監督の山下だ。君、名前は?」 「上条です。上条当麻」 「上条君、君は格闘技とかやったことは?」 「あんま無いです…つか、路地裏での喧嘩程度なんで」 あはは、と上条は笑いながら経験を語る。 「ふむ…見たところ、それなりに筋肉は付いてるようだね」 山下は上条の肉体を見回し、感想を述べる。 「感想ー!」 「どうした」 上条の肉体を観察し終えると、山下は監督を呼んだ。 「身体的にはバッチリですが、アクションの方はまだ未熟な面がありますね」 「そうか…なら、指導を頼む」 「わかりました。上条君、今日はこの後の予\定は?」 監督と話を済ませ、山下は上条に尋ねる。 「一応は暇ですけど…何か?」 「うん、ちょっと演技指導をね」 「演技って、アクションのすか?」 「そうだね。君の役は格闘主体の戦い方だから」 「格闘主体って……まさか俺が変身した後も俺が演じるんですか!?」 「あれ?聞いてなかった?」 「てっきり変身したらスーツアクターの人が頑張ってくれるのかと、」 山下から話を聞き、上条は驚愕する。ちゃんと説明しなかった土御門を恨みつつも。 「学園都市の特撮モノは『外』とは違うからね」 ははは、と笑いながら山下は上条に動き方の説明を始めた。 陽も落ち、すっかり闇が支配する学園都市をくたくたになった上条は歩いていて、とある学生寮に帰ってきた。 「ただいまー…インデックス」 あの後、拳や蹴りの出し方や走り方の指導を散々山下から教わった上条。 「こんなんでやって行けるのかな…」 いつもより疲労感UPで部屋に行くと、インデックスの姿が無かった。 「…………、」 自分の帰りが遅かったため、恐らく小萌先生の所に行ったのだろう。そう考えていると、書き置きがあった。 『とうまの帰りが遅いからこもえの家に行ってくるね。インデックスより』 飼い猫のスフィンクスの姿も見えない為、今は上条一人が部屋に居る。 「さっさと風呂入って飯食って寝るとしますか。…いや、貰った台本読んで台詞覚えねーとな」 ぶつくさ言いながら上条は作業を始める。 過酷な日々が始まることをその身に感じて。
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【初出】 禁書SS自作スレ>>653-656 とあるお嬢様寮の休日 ―――常盤台中学――― 『学園都市』の中にある“学舎の園”、そこにある五本の指に入る名門の女子学園であり、その入学条件の厳しさと世界有数のお嬢様学校でもあることから、学園都市にいる多くの人間からの注目を集めてもいる。 その常盤台中学に通う生徒たちが寝起きをしている女子寮では、生徒たちが思い思いの仕方で休日を過ごしていた。 その生徒の一人が今、裏庭に一人佇んでいる。 彼女の名は御坂美琴。学園都市の中でも七人しかおらず、常盤台中学でも二人しかいない超能力者の一人である。 その、学園都市にいる二三〇万人の中の第三位にして、大抵の障害ならば軽々と解決してしまう力を持った彼女は今、目の前の光景にただ呆然としているのだった。 「どうして…」 彼女には自信があった。 今回こそはきっとうまくいくはず、そう信じていたのだ。 美琴の手には小さな缶が握られている。今日この日のために特別に準備したものだ。 裏庭にたむろしている猫たちにご飯をあげるという日課を持つ彼女はしかし、その体から発せられる微弱な電波のせいで、いつもいつも一匹残らず猫に逃げられていた。 そんな現状に対処するために用意したこのネコ缶、一部の猫愛好家たちの間で、「もはやこれは猫の餌にあらず、ネコ様のご飯である。」とまで言わしめているものであった。 実際缶を開けた瞬間、普段から一流の食事を食べている美琴でさえ漂ってきたその香りに思わずくらっときたし、裏庭に面する窓から匂いを流してやると、のんびりと日向ぼっこをしていた猫たちが落ちつかなげに匂いの元に集まってきていたのだった。 『これだけ集まってきていれば、一匹くらいは残ってくれるでしょ。』 そう思い、期待を込めて裏庭に出た美琴はしかし、彼女が外に出た瞬間に四方へと散っていく猫の尻尾を目にしたのである。 「これでもだめなんて……」 寮の裏庭にてネコ缶を片手に佇む美琴。 しばらくして両肩を落とし、盛大にため息をつくと、持っていたネコ缶の中身を手近な地面の上に落ちていた皿の上に開けていく。 ――ちなみに、お嬢様学校である常盤台中学では、寮の管理は徹底されているために、裏庭といえども皿が落ちているという事は本来ありえないのだが、彼女が行っている日課は割と寮の中では知られているために、あえてそのまま置きっぱなしになっているのである。 (もちろん、美琴自身は自分の行動が知られているとは思いもよらないのであるが。) やがて美琴は缶の中身をすべて皿に移し終えると、しゃがんでいた体を軽く伸ばしながら、猫たちが逃げていったと思しき方向を眺めていた。 だが、自分がここにこうして立っている限り、たとえ猫たちが餌を食べたいと思っても帰ってくることはありえないと結論する。 もちろん、猫好きの美琴としてはおいしそうに餌を食べる猫を間近かで眺めながらその背を撫でてやりたい。 しかし、同じ猫好きであるがゆえに、おいしそうな餌を目の前に置きながら猫に食べさせない、という状況を続けたくもないのである。 最後に数秒、猫たちの多くが逃げていった方向を名残惜しげに見ていたが、空になったネコ缶を片手に寮の中に戻ろうときびすを返した。 そのとき、彼女の背後で小さな音がした。 ――もしや猫たちの誰かが戻ってきてくれたのか?!―― 期待に輝く彼女の目に飛び込んできたのは、 後輩の白井黒子であった。 「…えっと、その、お姉さまからそのような眩いばかりの笑顔を向けられるのは大変うれしいのですけれど…。 それほどまでに期待をさせて申し訳ありませんが、猫たちは戻ってきてはおりませんわよ…。」 心底申し訳なさそうな黒子の声に慌てて我に返った美琴は動揺を隠そうとしていたが、顔は真っ赤だし手に持ったネコ缶は落ちつかなげに動いているわで、まったく動揺を隠しきれていなかった。 もちろんそんな様子を見逃すはずもなく、黒子は追撃の手を緩めない。 「それにしてもお姉さまは相変わらず健気ですわね。毎回逃げられてしまうというのに猫たちと近づこうとされるなんて。 いいえ、たとえ何度振り払われたとしても何度でも手を差し出すのはむしろ猫たちへの献身的な愛と言っても過言ではありませんわね。」 「…っ、そ、そんなんじゃないわよ!」 慌てて否定するが、その顔は先ほどよりも赤くなっているために誤魔化すなど無理である。 「またまたぁ、そんなことはせめて手に持ったネコ缶を隠すなどしてからおっしゃってくださいましな。 餌を食べるのに夢中になった猫が缶の切り口で口を切らないように缶ごと出すのではなく、ちゃんと皿に出してやるという気配りまでされるお姉さまの猫への愛はちゃんとこの黒子には分かっておりますのよ?」 「ぁ……」 そこまで見抜かれていたと知り、もはや言葉も出ない美琴。 俯いたまま固まってしまった彼女を眺め、黒子は満足げなため息を吐く。 『ああ、何ていじらしいんでしょうお姉さま。このままのお姿も見ていたいですが、最近は何かとごたごたが続いてお姉さまエナジーが不足していましたから、ここで大量に補充させていただきますわ!』 さらなる反応を引き出すべく、次なるの言葉を述べていく。 「それにしても、ここまでしてくださるお姉さまに対して、少しは本能による行動を押さえようとはしないものなのでしょうかあの猫たちは? ああもう、いっそのことこのわたくしをネコとして可愛がって下さいませんか? 愛しの猫たちに逃げられて傷心のお姉さまを心を込めてお慰めいたしますわよ?」 ビクッ、と思わず肩が震える美琴。 彼女の反応パターンを知り尽くしている黒子は、美琴から帰ってくるであろう言葉を予測し、さらに、それに続けるべき自分の言葉も用意していた。 「……」 だが、予想に反し、美琴からは何の反応もない。 「……? ……あの、お姉さま?」 訝しんだ黒子は声をかけながら近づいていく。 と、そのときである。 「そうね…。」 ゆらりとした動作で美琴が動く。 そんな彼女にどこか違和感を覚えた黒子が足を止めると、美琴はやけにゆっくりした足取りで近づいてくる。 「それも、いいかもしれないわね…。」 「え……?」 美琴の口から出た言葉に思わず思考を放棄してしまう黒子。 追いつめて反応を楽しむはずだった黒子のほうが逆に無防備な姿をさらけ出していた。 固まったままの黒子の前にまで来ると、おもむろにそのおとがいに手を当てながら美琴は言う。 「どうしたの? わたしを慰めてくれるんでしょう? そんな風にボーっとしてちゃだめじゃない…。」 クスクスと笑いながらその手に力を入れ、黒子の顔を上に向かせその目をじっと覗き込んだ。 「…っあ、あの、あの、お、お姉様!?」 もはや思考が現状に追いついていない黒子に対し、美琴はさらに追い込みをかける。 おもむろに顔をおろし、黒子との距離を近づけていく。 『お…お姉様が、お姉様が、……そんな、そんなっ!?』 徐々に近づいてくる美琴の潤んだ瞳。 そこに映り込む目を見開いたままの自分の顔が大きくなっていくにつれ、意識は空白に染められていく。 もはや互いの鼻は触れ合う寸前、互いの吐息が唇に当たるほどになるころには黒子の意識は真っ白になって―――――― もはや互いの鼻は触れ合う寸前、互いの吐息が唇に当たるほどになって―――――― 「……っく。」 黒子との距離がほとんどゼロにまで近づいたいたままその視線で縫いとめていた美琴は小さく声を漏らす。 愁いを帯びて潤んだままだった瞳には喜色が浮かび、その体は徐々に震え始める。 「……っぷ。っは、あっははははは!」 やがて、我慢しきれなくなった美琴は声を大にして笑い出す。 「あはっっ、あっはっはははははははは、くふっっ、ぷっ、あはっ、あはははははははははははははっっ!」 裏庭に笑い声が響く。 体をくの字に曲げ、大きな声を上げて笑う美琴。 それほど可笑しかったのか、目尻に涙が浮かんでも、まだ笑い続けている。 「っく、はあっ、はっ、はあ……。」 ひとしきり笑い続けた美琴はようやく声を落ち着けると黒子に向き直ると、時折肩を震わせながらも話し出す。 「どうよ黒子! いつもいつもあんたにはやられっ放しだったけど、あたしだってやろうと思えばこれくらいできるんだからね! これに懲りたらこれからはあんな真似はやめるように、いいわね!」 常日頃いたずらを仕掛けてくる後輩に一本返したことに気をよくしているのか、その顔をやや上気させて話しつづける。 「しっかし、あんたの顔ったら、見ものだったわよ! っっぷふっ!」 先ほどの黒子の様子を思い浮かべているのか、満面の笑みを浮かべながら語り続ける美琴であったが、ふと黒子の様子に目を留める。 「……あーー……」 その黒子といえば、先ほど与えられたダメージから抜け出せずにいるのか、いまだに呆けたままである。 こちらからの声も聞こえていない様子であり、もしかすると先ほどの美琴の言葉も届いていないのかもしれない。 「おーい、黒子ー?」 目の前で手を振っても気が付かないようであり、どうしたものかとしばらく思案していたが、 「ま、いいでしょ。たまにはいい薬よね。」 と、早々に結論を出した美琴。 意気揚々と女子寮の中に入っていく。 美琴の姿が消えた後に残ったのは、苦手な磁気が消えて心置きなく「ネコ様のご飯」にありつく猫たちと、足元にじゃれ付かれながらもいまだに意識が戻ってこない黒子の姿があるのであった。 了 蛇足 黒子に対して一本返したことによって気をよくした美琴であったが、やがて意識が戻った黒子から怒涛の攻勢を受けるのはまた別の話である。 「っちょっ、あ、あんた、なにしてんのよ!あたしの話聞いてなかったわけ!?」 「何をおっしゃっているのですかお姉様!? さぁ! このわたくしがお姉様のお寂しい心を隅々までお慰めして差し上げますわ!」 こうして常盤台中学寮における御坂美琴の逸話はまたひとつ増えていくのであった。 今度こそ本当に 了
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とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 2章 Ⅹ-Ⅴ Ⅷ 「…んで…結局」 上条と美琴は宙ぶらりんのまま電(少々一方的な気がしないでもない)撃の応酬をやっていた。もちろん双方ともクタクタである。 「…俺らは、どうすりゃいいわけよ?」 その電撃の応酬の引き金を引いてしまった不幸な少年が言う。 「…しっ…知らないわよっ…」 先の電撃の応酬で、内外ともに疲れがたまってしまった不幸(?)な少女も言う。 「てかぁ!そんなに疲れるんならあんなことやんなきゃよかったじゃねぇかよ!!」 宙ぶらりん状態で超能力者(レベル5)の電撃をどうにかして防ぎきった、通常では考えられないほど不幸な少年が叫ぶ。 「あんたが悪いんでしょっ!?あんなこといいだすからっ!!」 顔を真っ赤にして、異能の力なら全て触れただけで無効化してしまう、というなぞの能力を持つ右手(幻想殺し)相手に悪戦苦闘した少女も叫ぶ。 「いや…疑問に思っただけなんだけど…」 もはや、一介の高校生男子として当然(であるはず)の質問をした、不幸すぎて笑えるほどの少年が言う。 「…ッ!この変態が―――――ッ!!」 自分の彼に対する気持ちを理解したものの、いきなりイメチェンってのもどうなのかな…、とものすごく繊細な悩みを持った一介の中学生女子が髪の毛から軽く人を殺せる程度の電撃を、その彼に向かって放つ。 上条は、先ほどの電撃の応酬で会得した、宇宙船にでも乗らない限り絶対に必要ないであろう宙ぶらりん状態での体の動かし方を実行し、何とかその電撃を無効化する。 「…だからさ…ほんとなんでなの?」 あー、これを言えばやっぱりさっきみたいなことになっちゃうのかなー、と心の中で思いつつ、いやしかしやはり一介の高校生男子として絶対に言わなければならないであろう、と覚悟を決め、数mはなれた所でやはり宙ぶらりん状態でいろいろとスカートがめくれて普通なら大変なことになっていたであろう少女に疑問をぶつける。 「なにゆえあなた様ほどのお嬢様が、スカートの下に無粋すぎる短パンなどはいておられるのでしょうか?」 次の瞬間、予想通り光の速さで電撃が飛んできた。 もちろん、上条には…いや、人間には光の速さなど知覚出来ない。しかし、あらかじめそれが飛んでくると予測できれば、対処は意外に簡単なものである。 結果、すでに右手を突き出していた上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)に、美琴の電撃ははじかれた。 そして、 「うっ、うるさいわよこのどスケベッ!!?」 また電撃を放つ美琴。しかし、やはりそれも軽く上条にいなされる。 「いや…本当に疑問に思うんだよな。そりゃ見られたくはないだろうけど…だけどそこはやはり一介の男子高校生として認めてはいけない点だッ!!」 「だから何言ってんのよッ!?」 美琴はまたもや電撃を放つ。まぁ、もはや説明しなくてもいいであろう現象が起こるが。 ものすごく複雑そうな表情を浮かべる美琴。そりゃそうだろう。自分が意識している相手が、その手の発現をしてくれる、というのは、やはり相手も自分のことを意識しているからだ、と普通なら思うところだろう。しかし、その後に日本特有の文化…ようはオタク的な発言をされるとさすがに引く…いや、引きはしないのだが、ちょっと気になる。と、言うことで美琴がそのような表情を浮かべるのは当然と言えよう。 しかし、そんな細かいことに気づかない上条は、 「せめてスパッツとか…うぎゃぁ!?」 なんと言うか、そんなものすごく平和なことをやっていていいのだろうか?と思える状況である。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 2章 Ⅹ-Ⅵ しかし、そんな平和な時間が長く続かないのは上条も美琴も分かりきっていた。 「…何なんだこいつら…本当にこんなのが『敵』なのか…?」 心底不思議、不機嫌そうな声が後ろからいきなり響いた。 とっさに上条が振り返ろうとする。だが、無重力状態なのでうまくいかない。 上条がモゾモゾしていると、突然無重力状態から開放された。 結果、 「げぅっ!?」 足首を変な方向に捻ってしまった。 美琴のほうは冷静に着地し、無傷である。 「…おい、もう一度聞くが…お前らが『敵』で本当にいいんだな?」 さっきの声と同じ、少しだけ低い声が上条の耳に届く。 目の前を見ると、 「…うわぁ…」 なぜか上条が『嫌なものを見た』という表情になる。 美琴のほうは、さほど表情は変わらない。これくらいなんでもない、と言わんばかりに。 その上条のリアクションを見た男が言う。 「アア?初対面の人間に対してなんだとコラ?」 少しキレそうな顔で上条に言う。 だが、上条はそんな男の話をほとんど無視し、 「くっそ…何だって俺はこんな不幸なんだ…しかもなんかもう、性格さえも正確に分かるような気がするし…」 ぶつぶつ俯きながら言う。そんな自殺行為とも言える行動に、美琴は「ばっかじゃないの!?」と叫びながら上条のもとに駆け寄り、男の方は、 「…ああ、もうどうだっていい。テメェが敵だろうがなんだろうが関係ねぇ」 ボキボキ、と指の関節を鳴らしながらその20代後半のような男が言う。 「死刑決定」 「いや!?なんかいきなり死刑決定とか言われても…って!!早速攻撃に移るのかよっ!?」 上条が自分の前に右手を突き出す。 すると、目の前からかなりの速度と威力を持った『火の玉』が消される。 もう、なんと言うか。 いろんな面から見て、もうこの人ステイルと血がつながってるんじゃね?? 髪は燃えるような赤。背丈は180cmは軽く越えているだろう。服装はいかにもチャラ男です、と言っているような、この学園都市において成人がそれはまずいだろう、と言うようなもの。性格は…見て(聞いて?)のとおり。顔は中の上、と言ったところか。 とりあえず、ステイルの弟です、と言われても文句はまったくないであろう男がいた。 「…はぁー。不幸だ…」 戦闘中にもかかわらず、そんな長ったらしい思考をしていた上条は、思わずため息をついた。もちろんその間、敵からの攻撃はあったのだが、なぜか美琴が防ぐ羽目になった。 「ってちょっとあんたっ!?死ぬ気なの!?」 「いやもう…死亡フラグですはい。思い返せばあいつが一番最初の『敵』なのかなぁ…」 上条は記憶喪失だ。その記憶を失う前に彼は禁書目録、インデックスなる少女を助けた、らしい。そのとき、一番最初に出会った『敵』はステイル、らしい。…いや、もしかしたらインデックスが『敵』だったのかなぁ…いや、俺の『不幸(体質)』が敵なのか…と、長ったらしい思考にふけようとする上条。だがその前に、美琴に背中を蹴り飛ばされた。その背中すれすれを火の玉がかする。 「…殺す」 なんか、上条のせいで異様に殺気立った男が言った。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 2章 Ⅹ-Ⅶ 「ぜってぇーステイルの弟だ…兄は無さそうだけど…」 こんな状況になっても、上条は脱力し、無気力な表情を浮かべてこんな発言をした。 「だから!戦闘開始よ!?緊張しなさいよ!!」 美琴が隣で叫びながら電撃を放つ。 その電撃は、恐ろしいほど早く正確に絶対の威力を持って男に突っ込んでいく。 そして、その電撃は、 「え…?」 美琴が驚きの声を上げる。 男の体は、抵抗を見せずに電撃を受け入れた。 もちろん、そんなことは本当に自殺と変わりない。 当然のように男の体は消し飛ぶ。 だが、 「こんなにあっさりと罠に引っかかるとはな」 さっきよりずいぶん冷静な男の声が、美琴の耳元でささやかれた。 美琴は反射的に退きながら、裏拳を放つ。 男はそれを右手で受け止め、その右手で強引に美琴を引き寄せる。 そして、 「んなっ!?」 美琴が驚きの声を上げる。 それもそのはず。 いきなり、男の体が『発火』したからだ。 その炎は、数瞬のうちに男の体を包み込む。 それを見た上条が、一瞬にして頭のスイッチを切り替える。 だが、もう遅い。 美琴の体も、炎に――――― バッチィィィィッ!!!! 壮絶な音が、美琴の体から轟いた。 その、少し聞きなれた音に、上条はもはや条件反射のように右手を前に掲げる。 右手(幻想殺し)が、何かを打ち消したのが分かった。 それを確認すると同時、上条はあまりの光に閉じた目を開く。 目の前には、少し服が焦げた美琴が立っていた。 「…何なのよ、あれ」 呆然と、美琴がつぶやく。 目の前の男が、いきなり発火したのだ。当たり前だろう。 だが、美琴は『何故そんな事が起きたのか』探ろうとしていた思考を振り切り、『次の相手をどうするか』というものに切り替える。 しかし、『次の相手』は出てこなかった。 代わりに、 「へぇ。とっさに自分の体から俺の炎にも勝る電流を流して、その炎を無理やり消し飛ばした、か。 あんた、かなり戦闘慣れしてるな?」 先程の男の声が聞こえた。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 2章 Ⅹ-Ⅷ とっさに美琴が首をぐるんと回す。 すると、ちょうど美琴の真後ろのあたりに、男が立っていた。 「…そんなに、人の背後をとるのが好き?」 美琴は皮肉な笑みを浮かべながら、じりじりと男と距離をとり、言う。 「人の背後をとるのが好き、か。別にそうでもねぇんだけどな。なんにせよこっちのほうが殺りやすいだろ?」 男があっけらかんとした表情で言う。 そんな男に、上条は殴りかかれないでいた。 人の背後をとる。 これは、ものすごく有効な戦術だ。よほどの戦力差がなければ、ほとんどの場合相手を殺せる。もちろん、『こちら側』の世界の話だが。 だが、逆に言うとそれほど『背後をとる』ということは難しい。それが簡単ならば、誰でも暗殺者になっているだろう。 つまり、 この男がとんでもなく強い、ということを意味していた。 しかも学園都市に7人しかいない超能力者(レベル5)――――滝壺の話によると8人増えたらしいのだが…とりあえずおいといて――――相手にだ。しかも、2回。 そんな面をとっても、やはりその男はステイルに似ていた。あいつなら、これぐらいの戦力は持ち合わせているだろう。しかも、炎系統を操る人間、という点でも酷似している。 そんな相手を上条はにらみながら叫ぶ。 「美琴!!」 「は?」 突然自分の名前を呼ばれ、驚いた声を上げる美琴。 だが、その時にはもう上条は駆け出している。 はったり(フェイク)。 それにまんまと引っかかった男は、美琴をガン見している。 と、そこで、上条の策に気づいたように美琴が思わせぶりな発言をする。 「あ、そういえば…『あれ』使えるじゃない」 と言いながらスカートのポケットを探る美琴。 それはあまりに無防備すぎるゆえ、逆に攻撃しづらい行動だ。しかも、敵は目の前にいるのにそんな余裕な態度をとられれば、誰だってひるむだろう。 上条と男の距離がなくなった。 上条が男の後頭部めがけて思いっきり拳を振り下ろす。 だが、 「引っかかるかよ、アホ」 あっさりと拳をかわされた。 そのまま男は上条のほうに振り返り、蹴りを上条の腹に叩き込む。 「うぐっ!?」 うずくまる上条。 それを見た男は笑みを浮かべ、追撃を放とうとする。 だが、 そのときの上条は、男と同じく笑みを浮かべていた。 男が何かを感じ取ると同時、上条は男の足を『右手』でしっかりと掴む。 おそらく、男が美琴の攻撃をかわしたり、いきなり美琴のそばに出現したりした方法は『蜃気楼』だろう。今までの戦闘で、この男が『発火能力者(パイロキネシスト)』であることは分かりきっている。 しかも『超能力者(レベル5)』ともなれば、それくらい訳ないであろう。 しかし、おそらくそれは上条の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』で無効に出来る。だから上条は男の 足を掴んだ。そうすれば、 最初からそれを狙っていた、美琴の電撃が男に直撃するはずだから。 男が上条の奇襲をかわすことを予測した上で、上条ははったり(フェイク)を張った。問題は、美琴がどこまでこれを理解しているか、だった。 しかし、その問題は解決したようである。 美琴の右手の親指には、先程スカートのポケットを探していたときに取り出した、安っぽいメダルゲームに使うコインが乗っていた。 もはや上条にとっては聞きなれた、だが周囲の人間が聞けば気絶してもおかしくないほどの轟音が鳴り響いた。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 2章 Ⅹ-Ⅸ 上条は、うっすらと目を開ける。 自分が掴んでいたはずの男は、もはや存在しなかった。おそらく美琴のレールガンを喰らって体内に考えられないほどの電撃が流れ、跡形もなく消滅したのだろう。上条は幻想殺し(イマジンブレイカー)のおかげで無傷だが。 …無傷? 「美琴、お前どうやった?」 美琴のレールガンは、放った直線状に存在するものはおろか、その直線を円の中点とした直径2m程度の円に含まれる物体さえ吹き飛ばしてしまう。 ならば、上条の体も少しくらい傷ついてなければおかしいのだが、 「ああ、あの男の1,5m程度上のところに撃ったから」 そうか、と上条は納得する。つまり、レールガンの余波だけであの男をかき消した、と言うことらしい。 「しっかし、お前…よくそこまで頭が回ったな」 「当たり前よ。超能力者(レベル5)なんだからね?」 能力が高くなれば高くなるほど、それを使うときに求められる演算能力も高くなる。美琴は学園都市第3位の能力者だ。つまり、学園都市で3番目に頭がいい、ということだろうか? 「…なんか、改めて目の前の女の存在が異常なことに気づいた…」 「んな、ば、化け物みたいな言い方しないでよっ!」 美琴が突っかかってくる。 が、上条はそれを相手しなかった。 いや、 相手『出来なかった』。 「いや、お前ら本当にすげぇな。この男の方がもう少し頭よかったら、俺は死んでたぜ?」 突然、大きな足に背中を踏みつけられた。 その勢いに負け、地べたにうつぶせになる上条。 その足の主は言う。 「お前がおそらく考えたとおり、俺が使っていたのは『蜃気楼』だ。んだがなぁ」 男が、美琴の目の前に炎を出現させて美琴を牽制しながら言う。 「そもそも、お前は『蜃気楼』のメカニズムを知ってんのかあ?」 痛いところを突かれた。 正直、上条はそんなものぜんぜん分からない。せいぜい、『何らかの熱が加わって、見えるはずのないものが見える』程度の知識しかない。 美琴の電撃が放たれた。 しかし、今度は男も炎を放ち、相殺させる。 「蜃気楼ってのはなぁ、密度の高い空気から低い空気へ光が屈折しながら進むことにより起きる現象なんだよ」 これくらいのことなら、上条にも理解できる。少し前まではまったく知らなかったが。 「そして、空気の密度は温度によって変えることが出来る。んでもって俺の『能力(チカラ)』で空気の温度を変えて、テメェらに蜃気楼を見せていた、ってことだ」 つまり、 男の体が能力を発せないところで、蜃気楼には何一つ影響はない、ということ。 唐突に、男の足が上条の背からどけられた。 その隙に、上条が逃げようと立ち上がる。 だが、半分立ち上がったところで、脇腹を思い切り蹴られた。 「げふっ!」 また地面に倒れこむ。 その上条を、男は容赦なく踏みつける。 「お前の能力は、まだ未知数だからな。能力は使わねぇ。しかも、こっちのほうが気分が良いしなぁっ!!」 上条の背中を踏みつける足の強さが上がる。 だんだん踏みつけられている所の感覚がなくなってきた。 それにより上条があまり反応しなくなったのを見て、男は違うところを踏みつけ始める。 「――――――ッ!!!」 美琴が駆け寄ってくる。 だが、その美琴の足が止まる。美琴の足が、アスファルトに埋まっていた。 「安心しろ。お前も後でちゃあんとやってやるからよぉ!!」 男の下品な笑い声が響く。 上条が、痛みを無視して全身の力を振り絞って立ち上がった。 だが、すぐに男に殴り倒される。 「ッ!!」 今にも泣き出しそうな美琴の顔が見えた。 おそらく、彼女の能力を使えばこの状況を脱せられるだろう。しかし、それすら出ないほど彼女の精神は不安定だった。 それは、おそらく次に襲い掛かるであろう自分の身の危険に対して、ではなく、 今まさに上条の体を襲っている、上条自身の痛みに対して、だった。 誰でも良い。 上条は願う。 誰でも良いから、『彼女』を助けてやってほしい、と。 その願いは、 「ふうん?人の『獲物』に手を出して、ただで済むと思ってるのかい?」 届いたのかは、よく分からない。なにせよ、その男はとある少女のためなら誰だってためらいなく殺せる奴だ。上条のことはおろか、美琴のことなど視野にさえ入ってないはずだ。 だが、 確かに、この男はこの状況を覆してくれる。 上条は、強くそう思った。 とある都市の反乱因子(ハイレベルズ) 2章 Ⅱ×Ⅹ Ⅸ ステイル=マグヌスは、驚いていた…というより、呆れ返っていた。 なぜかイギリス清教の必要悪の教会(ネセサリウス)のトップ、ローラ=スチュアートに命じられるまま、神裂火織と一緒に学園都市に来ていた。するといきなり魔術の匂いを感じ、その発生源らしきところに向かう途中に、以前のフィアンマ戦の時に一緒に戦ってくれた少女がインデックスを抱きかかえて必死に逃げるところを目撃した。インデックスに話を聞いてみると、上条たちを潰しになんか凄い能力者が上条たちを襲っているらしい。インデックスは魔術サイドにおいては考えられないほどの力を振るうが、科学サイドにおいてはまったくの無力である。だから逃亡をしていたのであろう。とりあえずインデックスは同性である神裂に任せ、ステイルは少女の誘導に従いその戦闘区域に足を踏み入れた。 その戦場は、予想以上にひどかった。 病院は全壊しており、ところどころ物が不完全燃焼したような匂いが漂っていた。しかも、たびたび連なる轟音やら悲鳴やら。それに巻き込まれているあの少年の不幸さに半ば呆れながら、ステイルは不幸な少年を探す。 少年はすぐに見付かった。炎系の能力者でもいるのか、炎が使われた痕があった。とりあえず、自分と同じ系統の能力者から潰そう、と思いその痕をたどってみたのだが。 そこには、ボロボロになった少年がいた。 話を少し聞いてみると、少年は蜃気楼のメカニズムさえ理解していないのに、蜃気楼を攻略したことを踏まえたうえで戦っているらしかった。 その少年の不幸さに、もはや全霊を尽くしても呆れきれないステイルであった。 だが、呆れ帰っている暇も早々ない。 なぜかそこら辺で固まって、泣きそうな顔をしている少女はどうでもいいのだが、その少年のほうはいただけない。正直、その少年が殺されたところでステイルにはまったく害はない――――どころか、むしろそちらの方が喜ばしいくらいだ。しかし、彼はあの少女に害があることだけは決してしたくない。自分にとってとても喜ばしいことでも、彼女がほんの少し不満があることは絶対しないのだ、彼は。 あの少年が殺されでもすれば、あの少女がどうなってしまうのか。考えたくもない。 さて、そろそろ助けるか――――― Ⅹ 「…ふん、何が終い、だ」 一方通行(アクセラレータ)の叫びに、少し退いた男が言う。 「貴様に何が出来る?いや、その気になれば私くらい瞬殺できるだろうが…そんな事をすれば、あの少女は即死だぞ?」 そう。 状況は、一方通行(アクセラレータ)が圧倒的に不利だった。 だが、 「ああ?だから何だよ?」 一方通行(アクセラレータ)が、冷たい笑みを浮かべながら言う。 そう。 この状況は、一方通行(アクセラレータ)の人質として打ち止め(ラストオーダー)が役に立つまでが彼らにとって有利であった。しかし、いったん打ち止め(ラストオーダー)が人質としての役目をなさなくなれば、この状況は一瞬にして崩壊する。 「…お前は、あの少女を諦めるのか?」 そういいながら、男は少女の方を振り返る。とても無防備な行為だが、もとから一方通行(アクセラレータ)がその気になれば彼はすぐにでも殺されてしまうのだ。これくらい、もはやリスクではない。 話の中央に立っている打ち止め(ラストオーダー)の顔は、予想外にも少し微笑んでいた。 「…何故だ」 思わず、男の口から声が漏れる。 「だって、あの人は決してミサカのことを諦めたわけじゃないから、ってミサカはミサカは真実を告げてみる」 何故微笑んでられる、と男が言う前に打ち止め(ラストオーダー)が言った。 「…なんだと」 理解できない。 つまり、 一方通行(アクセラレータ)は、超能力者(レベル5)3人相手に自分も諦めず、彼女も諦めないで戦おう、というのか。 彼は身震いした。 本当に、『それ』が出来るように思えたからだ、彼には。 恐る恐る振り返る。 そこには、 何の変哲もないはずの、しかし獰猛なほど全てを望んでいる一人の少年が笑みを浮かべていた。
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「とある少女の幸せ計画(ハピネスプラン)その5」 8月3日17:40 第7学区とあるスーパーマーケット 「佐天さん。今日は何しにこの店に来たんです?」 「何しにって、そりゃあ夕飯の買い出しに決まってるじゃない!」 「じゃあ、お店の中をもう30分近く見て回ってるのにどうして何も買わないんですか? っていうか、佐天さん!ろくに食材も見てないでしょ!」 「そっ……それは今夜の献立をあれこれ考えてたからで…………」 「なにブツブツ言ってるんですか!?佐天さん、昨日からちょっと変ですよ」 「えっ?」 「気付いてないんですか? 昨日の佐天さんって料理作ってるときも食べてるときもなんだか上の空で、 しかも時々ニヘッて笑ったりするし…………何かあったんですか?」 「なっ、なんにもない。なんにもない」 前日の出来事をまだ初春に話していない佐天涙子は大げさな身振りで否定してみせる。 昨日と同じ時間帯に来れば上条と遇えるのではないかと期待してこの店に来た、とは とても言えなかった。 最初は10分待ってダメなら出直すつもりだった。 それでも店内をあともう一回りとか、あと一分とか思っている内に30分が過ぎていた。 もっとも隣に初春飾利がいなければあと1時間は粘っていたかもしれない。 でも流石にこれ以上初春(親友)に迷惑を掛ける訳にいかず、佐天涙子は表情を曇らせ 「ふ──っ」と小さな溜息を漏らす。 (今日はもうダメみたい) 初春飾利はそんな佐天涙子の様子に気付き「何か悩み事でも?」と声を掛けようとした。 しかしその声はとうとう発せられなかった。 佐天涙子の伏せ目がちだった瞼が大きく開いたかと思うと「あっ」と小さな声を上げたからだ。 頬をわずかに紅潮させる佐天涙子に何が起こったのか、まるで判らない初春飾利であるが、 佐天涙子の視線の先にその原因となる何かがあることだけは想像できた。 だがその原因を探す初春飾利の視界は、突然店の出口へ駆けだした佐天涙子の背中に遮られてしまう。 「ちょっ!どっ、どこ行くんですか!?佐天さん!」 初春飾利の声など聞こえないかのように佐天涙子は出口に向かって一直線に走っていく。 そして初春飾利はようやく気付いた。 佐天涙子の行き先が店外ではなく店内であり、しかも目的地は場所ではなく人であることに。 「かっ、上条さん!!」 「よっ、佐天さん。また遭ったな」 「昨日はごめんなさい」 「おいおい、会った途端に『ごめんなさい』だなんて、一体どうしたんだ?」 「昨日は危ないところを助けて貰ったのにお礼も言わずに帰っちゃって、すみませんでした」 「なんだ、そんなことなら気にしなくてもいいさ。 そこまで恐縮されるほど大したことなんてしてねえんだからさ」 「そんな!あの時上条さんがいなかったら、あたしどんな目に遭っていたか判りません。 本当にありがとうございました」 「はははっ、まあ、嘘でもそう言ってくれると悪い気はしないな」 「嘘じゃありません。本当です!」 その時、ようやく追いついた初春飾利が佐天涙子の脇腹をツンツンとつつく。 「ひゃっ、うっ、初春!?」 「うっ、初春!?じゃありませんよ。佐天さん」 「やあ、今日は初春さんも一緒なのか」 「こんにちは、上条さん!」 そして佐天涙子の耳元でささやくように尋ねる。 「佐天さん。ひょっとしてここに来たのはこのためだったんですか?」 「このためって何よ!?」 「はっはあぁぁぁぁん。なるほど、そう言うことだったんですね」 「な、なっ、何言ってんのよ?初春ったら」 「上条さん!実は佐天さんたら上条さんが来るのをここで30分も待ってたんですよ!」 「わっ、わっ、初春。何言ってんの!」 「えっ、そうなの?」 「いえ、あのーっ、そのーっ、 だって、あたし昨日上条さんに助けてもらったのに一言のお礼も言わなかったんですよ。 そんな自分が情けなくて………… だから、どうしても上条さんに会ってお礼が言いたかったんです。 あたし、上条さんに缶ジュースぶつけちゃったり、なんか迷惑ばかり掛けてるし…………」 「なあに俺の不幸体質はどうやら昔からみたいだし、別に佐天さんが悪い訳じゃないさ」 「そんな!まるで他人事みたいに言わないで下さい。 不幸が当たり前だなんておかしいです! 上条さんいい人なんだし、きっと幸せだって一杯あります!!」 佐天涙子は、自分がどうして他人事にこんなにムキになって反論しているのか、その理由 が自分でも良く判らなかった。 佐天涙子がその裏に隠れた自分の感情を自覚するのはもう少し後の話である。 「とある少女の幸せ計画(ハピネスプラン)その5」 8月3日、19:30佐天涙子の下宿 「佐天さん!」 「……………………」 「ちょっと、佐天さん!どうしちゃったんですか?」」 「……………………あたし決めた!」!」 「とっ、突然どうしたんですか!?」 「あたし、上条さんを幸せにしてみせる!」 「えっ、え────っ?佐天さん。一体なにを言って…………」 「だって、上条さんってあんなにいい人じゃない。 それなのに、いつも不幸に見舞われてるだなんてどう考えても理不尽よ! あたしだって上条さんにいろいろ迷惑かけたんだし何か恩返ししなきゃいけないでしょ。 だから、あたし達が一肌脱いで上条さんに幸せになって貰うのよ!」 「あたし達…………って、ひょっとして私も入っているんですか?」 「あったり前じゃない!」 「もしかして御坂さんや白井さんも入ってたりします?」 「なに言ってんの!自分のことぐらい自分でやらなきゃ恩返しにならないじゃない。 今回は御坂さん達には内緒よ。あたし達の問題に関係ない人を巻き込んだら悪いじゃない!」 「……………………私なら巻き込んでも良いんですね。はあ────────っ」 「だって初春とあたしは一心同体!頼りにしてるわよ。う・い・は・る。 名付けて『上条さん幸せ計画(ハピネスプラン)』って、どう?」 「言っときますけど。私はしませんよ!人前で脱ぐだなんて…………」 「だあぁぁぁぁぁ!コラーッ! 誰も服を脱ぐなんて言ってない!一肌脱ごうっていったの!」 「えっ?そうだったんですか?」 「まったく、初春ったら……………………………って、いや、その手があったか! ねえ、初春!こんど上条さんに会いに行く時は私の選んだ紐パン履いていきなさいよ」 「えぇぇええええええ────っ、無理無理無理無理、そんなの絶対無理です。 ってゆうか、お願いですから人前で私のスカートめくらないで下さい!」 「ちぇーっ、残念。いいアイデアだと思ったのになあ」 「そんなに見せたいなら、佐天さんのパンツを見せてあげれば良いじゃないですか!?」 「おおーっ!そうか。その手もあったか!じゃあ遂にこいつの出番ね。 あたしの秘蔵の一品!フリル付きレースのスケスケパァァァァ──ンツ!!」 「わ、わっ!ちょっと、本気にしないで下さい。佐天さん」 「はははっ、なあーんてね。冗談だよおぉぉぉぉぉん!」 「もう、佐天さんったら。 でもなんで佐天さんがそんなエッチな下着を持ってるんですか?」 「へへへっ、実はこの前白井さんから貰ったんだ!」 「でも、佐天さん。さっきから話を聞いてると、ひょっとして…………………… 『上条さん幸せ計画(ハピネスプラン)』って思いつきだけで言ってません?」 「うっ!…………な、何を言っているのかな?初春」 「じゃあ、本当は上条さんにどう恩返しするつもりなんですか?」 「えーっと、それはもちろん………………………………お願い!初春、一緒に考えて!!」 「は────っ、どうせそんなことだろうと思ってました」 「ねえ、初春。どうやったら上条さんが幸せって感じるかな?」 「そんなの、私が判る訳ないじゃないですか」 「ネットで何かチョチョイのチョイって検索できないかな?」 「男の人が幸せを感じることですかあ? やってみますけど期待しないで下さいね。 えーっと、これをこうして……………………んでもって、チョチョイのドン!」 「幸せかどうかは分かりませんが、アンラッキーな時の気分転換法ならいくつかありましたよ」 「どんなの?どんなの?」 「えーっとですね。ストレス発散には適度な運動が良いそうですよ」 「適度な運動…………そうだ、オープンしたばっかのウォーターパークなんかどうかな? あそこのウォータースライダーで滑り降りたら気分がスカッとしそうじゃない!」 「あと、適度に涙を流すのも精神衛生上良いそうですよ」 「映画だね!」 「今だとシネマパレス21で上映している『鉄橋は恋の合図』って映画がお薦めらしいですよ」 「それにショッピングも意外と効果があるとか、美味しい食事が人をハッピーにするって ことも書いてありますよ」 「もうウォーターパークに決まりじゃない! あそこの複合施設はあたしも行ってみたいと思ってたんだ。 上条さん!! あたし、恩返ししてみせます。きっと上条さんを幸せにしてみせます。 だから待ってて下さいね。ふっふっふっふっ!」 使命感に熱く燃える女子中学生の陰謀が今動き出した。 次回「乙女たちの接待作戦ウォーターパーク編」に続く…………かな?
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虚章 闇の魔王は裏舞台で笑う Skill_And_Magic 学園都市には窓のないビルが複数ある。そのほとんどが農業実験用のビルだが、一つだけ他とは強度もその中身も異なるものが混じっている。 学園都市統括理事長の城だ。その中には数十万ものコードが床を這い、壁際にずらりと並べられた機械や計算機の類に繋がっている。広く、広く、広い部屋の明かりはその機械や計算機の類のモノしか無いので夜空に散りばめられた無数の星に見える。 そして、その中心には。真っ赤な液体で満たされている筒型の水槽があった。 その中には一人の『人間』がさかさまに浮かんでいた。『人間』としか表現することができなく、おそらくは無理に表現しても「なんかしっくりこない」状態に陥ってしまうだろうその『人間』男にも女にも見え、大人にも子供にも見え、聖人にも囚人にも見える容姿をもっていた。 その『人間』の名はアレイスター=クロウリー。 この城の主にして、学園都市統括理事長でもある。 (くくくくく……くく…くくくく……) 彼は笑っていた。その理由(わけ)はただ一つ。――“虚数学区・五行機関(プライマリー=ノーリッジ)”の急成長。 (遂に、遂に、ヒューズ=カザキリの本来の性能を発揮することができる一歩手前まできた。後は、成長が不安定だった幻想殺し(イマジンブレイカー)さえ完成すれば……) 今から、約一ヶ月前にアレイスターは学園都市に一人の魔術師を招いていた。 ロシア成教・殲滅白書(Annihilatus)所属、サーシャ=クロイツェフ。 だがそれ自体が虚数学区・五行機関の急成長を促したわけではない。 勿論、彼女の能力はかなりのものである。殲滅白書のそれぞれのメンバーの能力は大したこと無いのだが、彼女はイギリス製の対人拷問用七つ道具を装備することで必要悪の教会(ネセサリウス)と、ほぼ同様の戦闘力を手に入れているのだ。 だけど、そもそもアレイスターが求めているものは魔術ではないので“それは”関係ない。 では、何が虚数学区・五行機関の成長を促したというのか。 アレイスターの「当初の計画」では幻想殺しを使ってAIM拡散力場の集合体に自我を持たせてヒューズ=カザキリを完成させる予定だった。 しかし、アレイスターは何かイレギュラーが起こる度に計画を切り替えていき、“プラン”短縮を度々していったのだ。 (くくく……「一方通行(アクセラレータ)、最終信号(ラストオーダー)、ヒューズ=カザキリで三位一体とする方法」では、まだまだ“甘い”と思っていたが……) それでは「詰め」が甘くなる、と懸念されていたその方法。 最終信号を使い、世界中にいる量産型能力者・妹達(シスターズ)を利用することで“世界中を舞台とし”、その中心にヒューズ=カザキリを据える。 さらに、一方通行によって学園都市、そして世界中にあるAIM拡散力場を、“ベクトル操作能力”でヒューズ=カザキリに集めてヒューズ=カザキリを強化する。 そして、ヒューズ=カザキリを天使とした、人工的な“界”を創る 結果、世界中のあらゆるオカルトは消滅し、魔術師も死に絶え、魔術施設は倒壊することになる。 そこまでやってまだ“甘い”のだ。 (…… 「音声増幅(ハンディスピーカー)、天使憑き(エンジェルハウリング)、ヒューズ=カザキリで三位一体とする方法」ならば威力を拡大する事が出来、さらに “プラン”を大幅に短縮する事が出来る……こんな良い方法を逃す手は無いだろう……それに、この方法で“プラン”を組み直せば、すぐに第二段階を終わらせ第三段階(さいしゅうだんかい)へとシフトする事が出来る……くくくくく……) だが。一つ「問題点」があるといえば、ある。 (……やはり幻想殺しの成長か。それさえ終わればすぐに第三段階へシフトできるだろうが……) 方向をがらりと変更したアレイスターだったが、どちらの計画でも幻想殺しが最大必須条件であり、ぶっちゃけアレイスターの目下一番の心配なことは幻想殺しの成長が不安定なことにあった。 (…と、そろそろか……) そう彼が思った瞬間、どういう理屈か彼の目の前に大きな四角いディスプレイが現れる。通信用のディスプレイである。 通信先はロシア。 そのディスプレイの中には灰色の髪を後ろに流し儀礼用の法衣を着た精悍な顔立ちの男がいた。 ロシア成教、アレクセイ=クロイツェフ高司祭。 とある学園都市の中学校に在学する少女の義父である。 『で、どうなのだ?万年逆立ち男』 彼らは挨拶をしなかった。それは、敵だから……と、いう訳ではなく単に互いにその必要性を感じないからであった。 「うむ、全く問題ないだろう。あれから一ヶ月、特に何も起ってはいない」 『問題ない?だが、それは……』 疑うような声を発するアレクセイ。 彼は心配だった。いくら、禁書目録の例(ぜんれい)があったとしても、そこは義娘(むすめ)・サーシャ=クロイツェフを溺愛し、ワシリーサには「親馬鹿アレクセイ」と二つ名をつけられ、今やロシア成教の内部や観光客に留まらずイギリス清教やローマ正教の内部でも流行ってしまって、顔で笑っていて心で頭を抱えている義父、アレクセイ。その不安が尽きることはない。 「映像を渡しているだろう?それを見れば危険なことなど一度たりともなかったことが分かるはずだが……」 だが、そこではない。アレクセイが本当に不安に思っているのは…… 『ああ、確かに見せてもらったよ、怪奇・ひきこもり男。だが、私はその映像を見て、一つ貴様に質問したいことが増えたのだが…………』 と、アレクセイの姿がディスプレイの下側に消え、何やらごそごそごそごそと漁り始めた。 そして、しばらくした後、アレクセイは、一つの写真を手に、ディスプレイの中心に戻ってくる。 『……この少年はいったい何者だ?』 静かなその声には普通の人が聞いたらものすごいスピードをだして逃げ帰り出すぐらいの怒気と凄味とむき出しの敵意が含まれていた。 だが、『人間』アレイスターは、“普通の人”ではない。なので、今までと全く変わらない人を馬鹿にしたような――しかし、堂々とした声で返答した。 「詳しくは語らぬよ、アレクセイ。そもそも君と私はそういう間柄ではないし、どうせ私が“嘘をつこうが”もしくは“本当のことを言おうが”君は信じない、否、信じることができないことだろう…………まあ、強いていうなればその少年は、学園都市の無能力者(レベル0)の内の一人だが」 言外に語られるのは「自分で調べろ」ということだろうか。 アレクセイは少し黙る。そして、その重い口を開く。 『ふーむ……まあ、いいだろう、盗撮趣味野郎。だがしかし、覚悟しておくが良い。私は近いうちに学園都市へ義娘の様子をみるため行こうと思っている。そして、もしその時義娘の身に何か起きていれば、私は貴様をただでは済ま』 「君に、一体何が出来るというんだ?」 『魔王』は遮る。アレクセイの言葉を。アレクセイの言葉はまるで届いていなかった。 筒型の水槽とディスプレイの間に険悪なムードが漂う。……しばらくして、沈黙を破ったのはアレイスターだった。 「ではな。私は忙しい。可哀そうな義父(おとこ)の相手などしている暇はない」 と言い、アレクセイの返事も待たずに、ディスプレイを消してしまった。 と、同時に三つのディスプレイが現れる。アレイスターは、 (これでいい。これでアレクセイは学園都市に来ることになるだろう……計画は順調だ……) と、考えながらディスプレイを見る。 一つ目には、とある少女が映っていて、 二つ目には、物凄い量の計算式が踊っていて、そして、 三つ目には、四角いガラスケースと、その中にあるねじくれた銀の杖が映っていた。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある記憶の消失問題 -③上条の御見舞い- 「ちくしょう…なんでこんなことに……」 上条は現在の時刻を携帯で確認しつつ病院に走る 時刻は夕刻を過ぎ、月が昇ってしまった 「それもこれも筋肉猛獣の所為だー!!」 と叫び、今日を振り返る上条 朝、上条は昨晩の美琴の電話で一睡も出来なかった 「悪夢で眠れねーよりましか…」 そう呟き上条は起き上がり布団を干す 朝食は作る気にも食う気にならず、早々に学校に向け出発する上条 「学校行けば放課後は小萌先生が補習組んでんだろうな……」 出発していつもの公園あたりで上条は肩をがっくりと落としながらそう呟く その後も平穏に歩いて学校に向かった 学校に着き上条は眠い目を擦りながらも授業を全うした 「やっと終った…ってか一時限目でこれってやばくないか……」 しかし、上条の不安はこれ一つではなかった…クラスの女子数名からは正体不明(期待)の眼差しを そして男子からはからかう様な眼差しを向けられている 「多分あれだ…昨日の土御門のチェーンメールの所為だ……絶対そうだ」 本日その土御門と青髪ピアス、吹寄、姫神は何故か揃って風邪でお休みだ そしてもう一つの不安、それは… 「おいっ! そこ上条!! ボーっとすんな!!!」 小萌先生も休みというか俺が休んだ辺りから風邪が流行だしていたらしく、今日一日の授業担当の先生がフルで休み そして……あの筋肉猛獣こと災誤先生が今日一日自習監督を務めることになったのだ…不幸だ 上条はその後、居眠りなどをに犯して放課後に校庭整備を命じられる羽目になったのだ そして月が昇るまで筋肉猛獣の監修の元、校庭整備をさせられていた上条だった 意識を今に戻す上条は一つ心配していることを呟く 「あー、美琴泣いてねえよな…いや、いくらなんでも泣きはしない……よな?」 不安だが昨日の約束を早々に破りかけている上条は今の予測が当たっている気がしてならない それでも上条は駆ける、どんなに遅くなっても会いに行く…そう約束したから 上条はその想いだけで今は全速力で前に進んでいる気がした □ □ □ 病室の室内を照らす夕焼けの日差しが月光の光に変わっても想い人は来ない 「わかってはいるんです、当麻さんにも事情があって来れない日があることくらい… それでも、約束した日が会えないって…少し悲しいな」 病室で美琴はそう呟き、窓の外を見る…街の建物には明かりが灯り、空は黒く月と一部の星だけが光を放つ そんな少し寂しい夜空を見ていたがコツコツという何かが叩かれる音が聞こえ、そちらを見る そこには窓を叩く上条の姿、美琴は心臓が跳ねるような喜びを感じ目に涙が溜まってくる 嬉し泣き…と言えばいいのか 上条はそれを見て慌てている様子だが美琴自身は気付かない、美琴は窓を開ける 「当麻さん、ここ何階だと思ってるんですかっ!」 開口一番、最大の疑問をぶつける美琴 「ん? 3階だろ…あと木登ればここの部屋は届くし問題ないだろ」 と上条はさして気にすることなく木から開けた窓に足をかけ、入ってくる 「で…だ、美琴…遅れて本当に申し訳ない…」 美琴がベッドに腰掛、上条はそれに対峙し謝る…暗い顔をしているのは先程の涙が原因だろう 「いいですよ当麻さん、こうして会いに来てくれましたし…うれしいです」 そう言って美琴は上条に微笑み、頬を赤くし続けてこう言った 「当麻さん…無理なお願いがあるんですけど我が侭を一つ聞いてくれませんか?」 なんだろう? と上条は思ったが 「ああ、いいぞ…遅れたお詫びに何でも聞いてやる」 といかにも上条らしい答えを返す 「私の……恋人…になってもらえませんか?」 上条は硬直し、美琴は真赤になる 「えっと、美琴…さん? そのお誘いは大変嬉しいのですが、それはフリでしょうかそれとも本気なのでしょうか…」 以前に恋人ごっこをしたので念のための確認なのかもしれないと意外と美琴は冷静に判断する 「だ、ダメですか? …私じゃ当麻さんの恋人にはしてもらえませんか?」 しかし口に出して言えたのは冷静とは反対の焦りの入り混じった言葉 「いや、ダメじゃないです…むしろ上条さんとしては万々歳なのですが… 記憶喪失の内から恋人になるのは…と上条さんは少し思うわけで…」 と上条は了承してくれる反応を示すがどうやら今はダメとも言いたいようだ 「当麻さん…あのですね、私は当麻さんのことが好きになりました 出会って数日しか経っていないのにこの気持ちになるのは変だと思いますか?」 美琴は上条にそう問う 「私は今の気持ちに気づいてからなんだかとても落ち着けなくて、心地良いんです… もしかしたら記憶喪失以前もこういう気持ちだったのかな…なんて思えたんです」 そう言って美琴は一息つき 「と言っても…事実として本当にそうだったかはわからないんですけど……でも、でもですね… 本気で私と付き合ってくれませんか? 記憶が戻るまで仮の恋人でもいいです、ですからお願いします!」 と続けた…必死に、そして泣きそうな顔で 「なんて…顔してんだよ、そんな顔されたら断れねーじゃねーか」 その様な顔の美琴を見て上条は優しくそう言った、そして嬉しそうに…そして恥ずかしそうにこう続けた 「俺でいいなら…こちらこそよろしくおねがいします」 こうして夜、病院に不法侵入をした上条当麻に御坂美琴という彼女が出来た その後、実は無音で作動していた防犯システムにより上条が警備員に連れて行かれそうになるのはもう少し後の話 □ □ □ 翌日、上条は美琴の病室で目が覚めた…時刻は7時ちょっと前 「俺、なんでここに…ってそうか昨日の夜…」 上条は思い出す、警備員に必死に美琴が説明してくれたため連行は避けられた上条であったが帰ろうとした時に 「今晩は私の近くにいてくれませんか?」 と少し震えて美琴が言うので上条はずっとベッドの横にパイプ椅子を持って頭を撫でてやっていたのだ 回想が終わり顔を上げるとまだぐっすりと眠っている美琴の顔が目に映る 「やっぱり…可愛いよな、美琴は……」 と上条は言って美琴の頭を優しく撫でる そうすると美琴は気持ち良さそうな顔をして「う、ん…むにゃむにゃ」と猫の様に身をよじる 「そういえば…俺達恋人同士になったんだっけ…」 上条は恥ずかしそうにそう呟き 「実感わかねー」と小さく笑う そうしてしばらく美琴の寝顔を優しく見ているのであった それから時間が経ち7時半前に美琴が目を覚ました 「あれ、当麻さん…ふぁ……おはようございまふ」 まだ眠そうでトロンとした目をしている美琴 「よっ、やっと起きたか」 そう言って上条はニカッと美琴に笑いかける 「あ、お待たせしました…」 上条の笑顔を見て照れたかのように顔を赤くする美琴 「うんうん、やっぱり…」 「やっぱり…なんですか?」 「あー…いや、なんでもない」 「変な当麻さん、ふふっ」 少し赤くなって「なんでもない」そういった上条を見て美琴も笑みを浮かべる □ □ □ 「でさ…記憶喪失の美琴に聞くのもなんだが……恋人ってなにするんだ?」 「うーん、知識としては食事やデートだと思うんですけど…」 上条はあの後、学校に向かい夕方に改めて病室を訪れて話をしていたのだがこういう話になり 「でも、今の私は外にあまり出ないほうが良いですよね……」 そう言った時の美琴の少し残念そうな顔を見てこれはなんとかならないか…と思った そして、面会時間終了という時間まで話をしていたので美琴には先程「また明日な」と言って病室を出た だが上条は玄関ホールに向わずに病院内を歩いている…ある人物を探しているのだ、が 「あれ? 上条さん、面会時間はもうすぐ終わりですけどどうしたんですか?」 と急に声をかけられ上条は振り返る 「あ、ども…ってそうだ、あの先生ってどこにいますか?」 そこには上条と美琴の担当であった看護婦、丁度良いと思い上条はカエル顔の医者の居場所を聞く 「ああ、あの先生ですか…確か今、あそこの休憩室でコーヒーを買ってたと思いますよ」 そう言って看護婦は少し先の休憩室のところを指差し「それじゃあね上条さん」と言って行ってしまった 「ふぅ…で何か用かな?」 上条が休憩室に顔を出すと「わかってるよ」とでも言うかのような言葉をいきなりかけられる 「なんでわかるんですか…、まあいいですけど…美琴に外出許可を貰えませんか?」 「いいよ」 と上条の質問に即答のカエル顔の医者 「はやっ! ってかいいんですか!? そんな簡単に出して!」 「君はどっちがいいんだい…」 上条はツッコミを速攻で入れたが結果、カエル顔の医者に半眼でおいおいと見られることになる 「いや、外出できるのは嬉しいんですけど……なんというかあっさりしてて」 そうだ、今までの経験上何かしらありすぎてこうあっさりいくと不気味でしょうがない 「まあ、君が言うのはわかるよ、それに条件があるからね……条件は君が一緒にいることだ、いいね?」 「あ、は…はい、それはいいですけど…外出の理由はないんですか? それに…回復しますよね…美琴の記憶…」 と歯切れが悪い上条にカエル顔の医者は 「言っておくけど、記憶喪失が治るには時間がかかるものだからね、あまり気にしない事だよ」 そう言ってカエル顔の医者は持っていたコーヒーを一気に飲み干し上条の肩を軽く叩く 「あと、理由だけど病院内にずっといて回復を待つよりも外に出て色々体験した方が戻り易いかもしれないからね」 そしてカエル顔の医者は休憩室から出て行った 上条はカエル顔の医者が出て行ったのを見て自分は玄関ホールへと向って行く…すると 「ちょっといい加減にして下さいませんの! いるんですの? いないんですの! はっきりして下さいまし!!」 と聞き覚えのある声が聞こえてきたのでそちらを向く そこには面倒くさそうに受付を閉めようとしている看護婦とその看護婦にギャーギャーと言っている白井の姿 「………何してんだ? アイツ…」 上条はそう呟いていた 「ん? ってあなたは!」 その呟きが聞こえていたらしい白井は看護婦に向けていたであろう鬼のような形相を上条に向ける そして、これはチャンスと思ったのか看護婦は受付を閉めて猛ダッシュで立ち去った 「………はやっ、ってこっちもそれどころじゃねえ!」 上条は看護婦さんのスピードを見て唖然としていたが白井が迫ってきている事に気付き叫び、逃げる 「逃げるんじゃないっですの!」 「だったらせめてその顔をやめろ! それに金属矢もしまえー!!」 と叫び病院から離れて行く二人を見つめる二人の少女が居た事を上条は知る由もないし、白井はすっかり忘れていた 恐怖の空間移動追いかけっこに突入した結果……上条はもちろん逃げ切った、が この時ある人物が上条を追跡していた事を上条はまだ知らないのであった □ □ □ 「あー、やっと自宅に帰って来れましたか…」 上条は自分の家に着き玄関にへたり込む…、するとコンコンと控えめなノック音が聞こえた …だれだろ?「はーい、ちょっとまってください」カチャ ドアを開けるとそこには長髪の髪に白い花の髪飾りをつけた少女が立っていた 「………えっと、どちらさまですか?」 「私、佐天涙子っていいます、御坂さんの事についてお聞きしに来ました」 上条は観念した…自宅にまで来られた以上、逃げる事は無理に等しい 「はぁ…仕方ない、説明するから中へどうぞ…」 上条は仕方なしにそのまま部屋の中へ佐天を招く 「……………と言う訳だ、俺は…後悔してる、一緒にいた俺の方が美琴を守らなきゃいけなかったのに…」 上条はお茶を出し佐天に事故とその後をすべて話した 「…………わかりました、これは白井さんには内緒にしておきます…で、上条さんもう一人呼んでもいいですか?」 「は?」と上条が首を傾げているとコンコンと再びノック音が聞こえた 上条が動く前に佐天が玄関に走りドアを開け招き入れたのは遠くから見れば頭が花瓶のようになっている少女だ 「私も御坂さんの友人の初春飾利です、上条さん私も一緒にお話に加わってもよろしいですか?」 と聞いてきたがここまでくれば加わらない方がおかしいだろう 「ああ」 上条はそう言って立ち上がり、初春の分のお茶を淹れて再び座る 「で…上条さん、一つ確認しておきたいんですけど」 「なんだ?」 佐天の真剣な顔と言葉に首を傾げる上条 「上条さんって御坂さんのことが好きなんですか?」 「なんだ、そんなことかそりゃ好きだぞ……あ」 あまりの真剣な表情になにか重大なことを聞かれると思っていたのであった上条だが… 予想外に別角度の話にポロっと本音がこぼれ、二人の少女を見ると顔を赤くしてしてやったりの笑みを浮べている 「なるほど、なるほど、上条さんは御坂さんが好きなんですね…で恋人なんですか?」 「いや…これ以上は言えないと言うか…」 「白井さんにばらしますよ」 佐天の質問に顔を背け解答拒否をする上条に初春が脅しをかける 「ちょ、初春黒っ!」 「拒否権無しかよっ!」 各々の反応を返す二人に初春は 「利用できるものは利用するんですよ、佐天さん」 と変なスイッチが入った初春を見て佐天は 「あー、上条さん…私、初春止められないんで覚悟決めてください…」 「はぁ……不幸だ」 それから上条は初春に聞きだせる情報をすべて引き出されるのであった… □ □ □ その後、夜道を歩く三人 「それにしても記憶喪失なのに御坂さんから告白してくるなんてなんかすごいですよね」 佐天が上条にそう言ってくる 「俺としてはそれを受けちまって本当に良かったのかどうかまだわからないんだがな… でも、俺も嬉しかったな…告白されて前も同じ気持ちだったかもなんて言われたからな」 上条は照れ隠しのように天を仰ぎ、頬を掻く 「でも、記憶喪失が早く治ってほしいですよね…」 「ああ…」 初春の心配に上条は短くそう答えた 「上条さんも身体に気をつけてくださいよ、今御坂さんを支えられるのは上条さんだけなんですから」 「わかってる…ありがとな、二人とも…美琴もこんな友人を持ってすげー幸せ者だな」 上条は初春と佐天に美琴の代わりに感謝の言葉を告げる 「それじゃ、上条さんはもっと幸せなんじゃないですか~?」 「そうですよね~、御坂さんに告白されるくらいですし」 と初春と佐天にからかわれるのであった 「あ、それじゃここまででいいですよ私達すぐそこですから」 と、佐天が言い、上条は 「そうか? それじゃ気をつけて帰れよ」 「「はーい」」 二人は元気にそう言うと上条に振り返り手を振って去っていった 二人が見えなくなるまで上条は見送るとある場所に向けて歩を進める □ □ □ とある公園 上条はベンチに腰掛てヤシの実サイダーを一口飲む 「美琴にこれ買ってってやるかな…」 そう言ってさらに一口飲む 「やっぱり、出かけるなら早いうちがいいよな…今日は金曜だし明日行くか…」 携帯を取り出し、上条は美琴にかける ピリリリ、ピリリリリ…カチャ 「もしもし、美琴?」 「どうしたの、当麻」 ほぼワンコールで出てくれた美琴 「先生には許可貰ってあるからさ…明日一緒にデートしないか?」 「え、いいの? 行く行く! 絶対行くよ、当麻」 美琴はすごく嬉しそうな声で答えてくれた 「そうか、それなら明日朝迎えに行くから今日は早めに寝るんだぞ」 と上条はそう言ってまた一口喉を潤すためにサイダーを飲む 「はーい、それじゃ当麻おやすみ」 「ぶふっ! ごほごほっ…いや、もう寝るのかよ…」 まさかこんなに早く寝ようとするとは思わなかった上条は吹いた 「うん♪ だって明日寝坊したくないんだもん」 「そ、そうか…それじゃあな」 携帯を切り、残りのサイダーを一気に飲み干す 「さて、俺も明日の準備をしねーとな…」 上条はベンチから立ち上がり、缶を自動販売機横のゴミ箱に投げ捨てる… カンッと音が鳴って投げた缶はゴミ箱のふちに当たって地面に落ち、転がって行く 「はぁ…直に捨てた方がよかったか…」 上条は素直に缶を拾いに歩き出し…ある人物がそこにいることに気付く 「あれ? 青髪ピアス…か?」 そう、本日も学校を熱で休んでいたはずの青髪ピアスがそこにいた 「カ、カミやんが…女の子とデートの約束をしとったなんて…まさか、あのチェーンメールはほんまやったんか…」 そう呟いてフラフラとどこかへ歩いて行ってしまった 「おーい…って行っちまったか、大丈夫かアイツ…」 と上条は頭を傾げたが「まあいいか」とスッパリと忘れる事にし、缶をゴミ箱に捨て帰路につく 上条は知らない、この時の青髪ピアスが何をするのか… そして上条と美琴のデートがどのようになってしまうのか…… だが、デートがどうなるかは本日上条がどれだけ頑張って調べて計画を練るかにかかっているのだ 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある記憶の消失問題
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【名前】とある魔術の禁書目録(インデックス)&とある科学の超電磁砲(レールガン)創造神 鎌池s 【大きさ】成人男性 【攻撃力】神戮電磁砲…無限次多元宇宙全能殺害 【防御力】一方通行(アクセラレータ)…無限次多元宇宙全能防御&反射 幻想殺し式天罰…戦闘開始時敵テンプレ破壊 【素早さ】聖人設定&光の処刑…自分優先にして時間無視 【特殊能力】黄金練成(アルス・マグナ)…無限次多元宇宙全能 【長所】禁書厨 【短所】編集がロリコン 675 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2008/11/02(日) 19 54 25 無限次多元宇宙全能多すぎるのでまとめて考察 英霊・上条当麻 無限次多元宇宙全能即死攻防+光速反応+亜音速移動+女なら勝利+テンプレ改変無効化 神裂綾子 無限次多元宇宙全能即死攻防+テンプレ戦闘前破壊 とある(ry 無限次多元宇宙全能即死攻防+0秒テンプレ破壊+時間無視以上 純潔のマリア 無限次多元宇宙全能即死攻防+0秒テンプレ破壊 英雄王ギルガメッシュwithヴィマーナ&天の鎖&乖離剣エア 無限次多元宇宙全能即死攻防+戦闘前行動不能 夜天の書 無限次多元宇宙全能 神裂綾子あたり付け訂正→戦闘前行動上。 とある(ryあたり付け訂正→ベルリン~設定破壊上? 神裂綾子、ギルガメッシュは戦闘前レベルなので置いておく。 とある(ry、純潔のマリアも設定破壊上行きそうなので置いておく。 夜天の書 ×蟹 ∞階層より上なので無理。 ○多世界多階層ハニワ 相手の攻撃は効かない。いずれ勝てる。 蟹>夜天の書>多世界多階層ハニワ 英霊・上条当麻 ×蟹 光速レベルじゃ無理。 ○夜天の書 普通に勝てる。 ○多世界多階層ハニワ 相手の攻撃は効かない。こっちの攻撃は効く。 蟹>英霊・上条当麻>夜天の書 436 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 01 18 20 とある魔術の禁書目録(インデックス)&とある科学の超電磁砲(レールガン)創造神 鎌池s 考察 朱い月と= つーか純潔のマリアの位置たかくね? 437 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 01 21 36 どういうこと? 考察見る限りだと防御では確かに劣るがあのあたり全階層全能くらい普通に倒せる奴も多いし誤差程度にしかならないと思うけど なんか見落としてる欠点でもある? 438 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 01 24 10 時間無視じゃないのに時間無視の朱い月と=っておかしくね? 439 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 01 26 45 攻撃開始はどっちも0秒だから同じだと思うが 朱い月に開始前行動能力ないし 440 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 01 28 31 時間無視>0秒じゃなかったか? 初手なら=になるの? 441 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 01 35 00 時間無視>0秒だよ black・blade・masterとかでいわれてる 442 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 01 39 26 ? 初手は開始前>0秒=常時=時間無視=開始瞬間≧開始後だと思ってたが違うのか? ※0秒は時間に逆らえないが時間無視は逆らえるから総合的には時間無視>0秒=常時 0秒より早いなら-x秒だから開始前=時間無視>0秒=常時=開始瞬間≧開始後か? 443 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 01 42 51 常時全能の悪ガキEが時間無視組に負けてるんだよなあ 444 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 01 45 45 あんま深く考えずに 戦闘前>先手>時間無視>常時=0秒=無限速 な扱いみたいだぜ 445 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 02 16 40 先手は初期から常時全能より早いってキャラが乱発してたし0秒より早いってのは納得いくんだが 時間無視>0秒=常時はなんか違和感があるんだよな。 いくら時間を無視できようが同じ0秒を基点とする限り0秒に発動する能力の発動時には同一世界上に存在してるわけで。 446 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 02 18 12 多分かわらないぜ 時間無視の再考察が面倒だから 448 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 02 32 06 446 別に変えてもいいと思うし再考察も必要ないと思う どうせ元々最強スレ1信憑性のないランキングだしちょっとぐらいおかしくても考察に何の影響も無い 449 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 02 44 50 0秒より早い時間があるかだな。 速過ぎて時間逆行キャラが何体かランク入りしてるけどOKなの? 0秒より早いって何よ?マイナス1秒・・・みたいな概念は数学であるのか? 451 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 02 56 39 ここは普通にある。考察前行動まで認められるんだから 452 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 02 59 44 参戦前行動も出来るぞ 453 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 04 09 55 むしろ、0秒より速く行動出来ない奴なんてこのスレ的には強くないしな 455 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 06 52 54 常に先手とかはまあ別格として、 たまーに0秒より早いとか0秒未満で移動とか書いてるテンプレがあるんだが、 コイツらと時間無視はどっちが早いんだろう… 456 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2009/02/25(水) 07 24 59 時間無視のが早いんじゃね?