約 3,210,622 件
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2768.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある幼馴染の幻想殺し 序章 ④再会 上条が退院した翌日、上条は美琴に連れられ第四学区のレストランへと向かっていた。 レストランに入ると上条にとって非常に懐かしい男性と女性が待っていた。 「旅掛さん、美鈴さんも…」 御坂旅掛と御坂美鈴… 二人は美琴の両親で幼かった上条にとって両親を除いた唯一の大人の味方であった。 「久しぶりだな、当麻君」 「…はい、お久しぶりです」 美琴が上条の顔を見ると何処か浮かない顔をしている。 上条を両親に会わせれば喜んで貰えると思っていただけに、 美琴はどうすればいいか分からなくなっていた。 「それにしても大きくなったわね。 10年も会ってないんだから当たり前か」 「あれから10年も経つんですね」 (そうか、お兄ちゃんはまだ あの時のことを…) 美琴は上条が喜ばせると思ってしたことが上条を逆に苦しめていることに気付く。 上条にとって御坂家との思い出は楽しいものであると同時に、 当時の自分を取り巻いていた状況を思い出させる苦いものでもあるのだ。 美琴は自分の浅はかな行動に自己嫌悪を覚える。 そんな美琴の心情を察したのか、上条は美琴の肩に手を置いて言った。 「そんな顔するな。 旅掛さんや美鈴さんに会えて嬉しいって気持ちも本物なんだから」 「…ごめんね」 そんな二人の様子を見て旅掛は言った。 「すまない、当麻君。 俺達も当麻君と久しぶりに会いたくなったんだ。 それに当麻君に大事な話もしなくちゃいけないからな」 「大事な話ですか?」 「取り合えず座ってちょうだい、当麻君の話も聞きたいし」 「…分かりました」 そして上条と美琴は四人席のテーブルに腰掛けるのだった。 「まあ、そんな感じです」 上条は主に学校での生活について旅掛と美鈴に語って聞かせた。 日々の不幸はあるものの、楽しい日々を送っている。 その言葉に旅掛と美鈴も笑顔を見せるのだった。 「刀夜さんの判断は正しかったかもしれないな。 オカルトと対極に位置するこの街なら、以前のようなことには…」 旅掛はそう言って口を噤んだ。 「すまない、不用意なことを言ってしまって…」 「気にしないでください。 さっきも言った通り、俺は楽しい日々を送ってます。 それにいつまでも過去ばかり見ているわけにはいきませんし」 「当麻君がそう思えるようになって本当に良かったわ」 「まあ、こう思えるようになったのは最近なんですけどね」 「…当麻君、君に一つお願いがある」 「何ですか?」 「これから先、ずっと美琴ちゃんのことを支えてあげてくれないか?」 「…」 「俺もまだ美琴ちゃんから詳しい話を聞いたわけじゃない。 だが美琴ちゃんが何か大きなものを抱えてしまったことは分かってる。 俺達は美琴ちゃんがいつか自分から話してくれるようになるまで、 親として美琴ちゃんを支えるつもりだ。 でも美琴ちゃんのことを本当に支えてあげられるのは、当麻君しかいないんだ」 「…逆に俺が傍にいることで、美琴に不幸が降りかかるかもしれませんよ」 「当麻君が決して不幸なんかじゃないことを私達は知ってるわ。 でも当麻君が自分を不幸だって決め付けてる限りは幸せは決して訪れない。 当麻君が本当に美琴ちゃんを不幸にすると思ってるなら、 私達の勝手だけど この話は断ってちょうだい」 「…俺は先日 美琴の笑顔と言葉に救われました。 美琴の笑顔を見て、あんな風になる前の自分を思い出すことが出来たんです。 そして美琴の言葉で、美琴のためにも自分の幸せを諦めないことを決めました」 「当麻…」 「正直に言うと まだ恐い部分はあります。 美琴は俺にとってかけがえの無い大事な存在だから。 大切に思えば思うほど、何かあった時のことを考えると恐くなるんです。 でも もし何かあっても美琴のことは必ず守ってみせます。 だから 美琴との交際を許してください」 上条の言葉に美琴は思わず涙ぐむ。 そして旅掛と美鈴の顔には満面の笑顔が溢れているのだった。 「当麻君は本当に強くなった。 そして今の君になら安心して美琴ちゃんを任せられる。 良かったな、美琴ちゃん」 「うん」// 美琴は涙を袖で拭いながら旅掛の言葉に頷く。 すると美鈴がカバンの中から、一枚の紙と何かの鍵を取り出した。 「そんな美琴ちゃんにプレゼントがあります!!」 美鈴はそう言って紙と鍵をテーブルの上に置く。 「あの、これは?」 上条は何か嫌な予感がして美鈴に恐る恐る尋ねる。 「まずは中身を見てちょうだい」 上条と美琴が紙を覗き込むと、そこには常盤台学生寮退寮受理と書かれていた。 「ちょっ、これどういうこと!?」 「ふふ、当麻君と美琴ちゃんの恋人生活のお膳立てをしようと思ってね」 「もしかして、この鍵は?」 「うん、当麻君と美琴ちゃんの愛の巣の鍵よ」 それを聞いた途端、美琴の顔は一気に赤く染め上がる。 そして上条は逆に頭を抱えて溜息を吐いた。 「どうした 当麻君、嬉しくないのか?」 「嬉しいとか、それ以前の問題でしょ? 俺達は学生で、しかも美琴はまだ中学生ですよ」 「だから、ちゃんと当麻君には選択肢を残しておいたわ。 当麻君の寮の退寮手続きは流石に取ってない。 だから、美琴ちゃんと暮らすのがまだ早いと思ったら断っていいのよ」 美鈴に言われて、上条は隣に座る美琴を見る。 自分が心から守りたいと思い、支えてあげたいと思った大切な少女。 その体は華奢で何かあったら簡単に壊れてしまいそうである。 傍にいてあげたい、何より自分が傍にいたい。 なら年上の自分が傷つけないように注意を払えばいいだけだ。 「…分かりました、お心遣い感謝します」 そして上条と美琴の同棲生活が決まるのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある幼馴染の幻想殺し
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1059.html
【初出】 禁書SS自作スレ>>812-814 音が空間に響いた。 それは強い打撃音であり、打撃の主は一人の男だ。 鋭い打撃を受けた黒い影は派手に吹き跳び、その背を壁へと叩きつけられて倒れ伏す。 一方、打撃を放った男はとても戦闘後とは思えない飄々とした様子で周りを見渡した。 薄暗い広場。 正確には路地裏に位置する場所だが、そう表現しても構わないだろう。 その広場には十人程の男達が倒れており、そのどれもが黒い全身タイツを身に纏っていた。 怪しすぎる。 「気味の悪い連中だにゃー。オレにそっちの趣味はねーぜよ」 ケラケラと軽い口調で笑う男に僅かに差し込んだ太陽の光が当たる。 金色に染められた短髪に動きやすそうな黒いティーシャツと茶色のズボン。 首から掛けられた安物っぽい金色の首飾りと青いサングラスが妙に男を不良っぽく見せていた。 男は欠伸を一つ。 妙に長い腕を使い、頭を二、三度掻いて、ここまでの経緯を思いだす。 事の始まりは何時も通り、愛する妹の無事を確認と後をつけていたら、唐突に何者かの視線を複数感じた。 勿論、プロのスパイである男はその視線にすぐに気づきつつも、すぐには迎撃せず、暫く泳がせてみる事にしたのだ。 その方が相手の出方も伺いやすくと思い、妹の身辺警護を再開したのである。 別に妹を愛でる時間を削るのが勿体無かったわけではない。 昼になるまで、その身辺警護という名のストーカー行為は軍隊仕込みっぽい妹のストレートを土産に追い返されるまで 続いたわけだが、その間もついてくる視線達は男に張り付いたまま。 いい加減理由の一つでも聞いてやろうと気が立っていた男は、視線達を人気の無い場所まで誘導した。 そして、人気の無い場所に来るなり現れた全身タイツの男達。 気配をあまり感じさせなかったためプロだと思っていたが、あまりにも格好が馬鹿すぎる。 流石に全身タイツはないだろう。 その全身タイツ達は男を取り囲むなり無機質な声で一言、 「動くな」 格好と合わない無機質な声に違和感を感じた男は取り敢えず一歩。 「止まれ」 と言われたので、止まってその場で派手にダンスを踊り始めてみた。 「怪しい動きをするな」 三段移行した末の曖昧な要求。 それに対して取り敢えず思いつく限りの怪しい行動をしてみたら、いきなり黒タイツ達は襲いかかってきた。 そして、結局、黒タイツ達を返り討ちにして現状に至るわけだ。 男は周りを見渡し、取り敢えず襲撃の目的を聞こうと手近な黒タイツへと歩み寄っていく。 そこでようやく気づいた。 黒タイツの中身の体が無くなり、代わりとばかりに日常的に見る"とある液体"が其の場に広がっている事に。 「水?」 首を傾げつつ、しゃがみ込む男。 襲撃者達は黒タイツだけを残し、その身を透明な水へと変えていた。 いや、変えていたというよりも、戻ったという表現の方がこの場合は正しいのだろうか。 「………」 それを見た男の表情が一瞬険しくなる。 "人間"が突然"水"になった。 しかし、男はその考えを即座に否定する。 これは逆だ。 "人間"が"水"になったのではなく"水"が"人間"の形を模していたのだ。 「能力、魔術……これはどっちなのかにゃー?」 ふと、男は黒タイツを中心に広がっている水溜りに浮く妙な物を発見した。 その形は簡略されてはいるものの、頭部や四肢を申し訳程度に再現した物体。 色折り紙で作られた薄っぺらい人形だ。 折られた部分を辿って開いて行けば、内側にビッシリと書かれた古臭い漢字の数々。 男には、この漢字の形、配置に見覚えがあった。 「式神操術の符……これは、陰陽師だにゃー?」 陰陽師。 それは、世界各地に隠れるようにして存在する数多の魔術系統の一つの形である。 表では無いとされている、世界の法則を歪める裏技。 その術を要する者達の総称を魔術師と呼ぶ。 そして、今、目の前にある符を使った術は、男が以前まで使っていた魔術と近いものがあった。 正確な系統こそ違うものの、似た様な水を利用した術式を得意としていた男は思わず笑みを漏らす。 「これは天才陰陽博士の土御門・元春さんへの挑戦状と見て良いのかにゃー?」 今は既に魔術を使えない男――土御門はそれでも自信に満ちた獰猛な笑みを口元に浮かべる。 しかし、その目は鋭く、此処には居ない敵を見据えていた。 広場に静寂が満ちる。 だが、その静寂は一分と続かなかった。 「この道は一体、なーンなーンでーすかー?」 「あ、あの、落ち着いて……きっと、もうすぐ出口、ですよ。……たぶん」 「気楽でいいよなァ、眼鏡はよォ」 「め、眼鏡……」 唐突に広場の中央を横切る道、その片方から響いて来る中性的な声と女性の声。 去るか、と考えるが四方は壁。 声が響いてくる道と逆方向にも道があるが、行こうとしても距離が遠すぎる。 恐らく、急いだとしても声の主達が土御門の姿を発見する方が先だろう。 それは拙い。 水溜りは何時の間に広がって消えているが、問題はそこら中に落ちた黒タイツだ。 下手したら何らかの事件か、黒タイツをそこら中にばら撒く変態と見られて通報される恐れもある。 多角的スパイの看板を背負った土御門にとって、極力目立つ行動は避けたい所なのだ。 しかし、腕を組んで思案するものの、打開策は中々思いつかない。 ……これでは、そうそう身を隠す場所なんてないにゃー――。 どうしたものか、と首を捻る土御門。 その際に、ふと、土御門の横に位置する壁と壁の間、其処に開いた隙間に目が行く。 其処に挟まっている分厚い厚紙のような物が土御門の目を惹いた。 「これがあったか――ッ!」 すぐさま厚紙を隙間から取り出し、本来あるべき姿へと組み立て始める。 完成に数秒。 声は段々と近づいてくる。恐らく接敵まで残り数十秒もないだろう。 組み立ては完了。 後はこの中に入るだけだ、と土御門は己の手腕に感動する。 「一世一代の勝負……漢、土御門・元春、往くぜい……!」 接敵までもう数秒も無い。 小声で叫ぶと同時、土御門はその物体の中へと飛び込んだ。 ○ 暗い路地裏を風斬・氷華は白い少年と共に歩いていた。 「ったく、本当にいつまで続きやがンだァ?」 路地裏に白い少年――一方通行のウンザリとした感じの声が響く。 「……で、でも……あ、何か出口のような感じが……」 その隣に並んで歩く風斬は、一方通行の声に慌てて路地裏の終わりを指差す。 彼は風斬に言われて目を凝らして先を見てみるが、眉を顰めただけだった。 「思いっきり中間地点って感じの広場じゃねェか」 「あ、あれ……?」 それを聞いて同じように目を凝らす風斬。 成る程、確かに先にあるのは広場であり、その先には今歩いている路地裏の入り口と同じ様なものがある。 風斬はそれを見て項垂れ、 「あ、あう……ごめんなさい……」 「……敬語」 「え?」 下げた頭をキョトンとした表情で上げる風斬。 面倒臭そうにボリボリと頭を掻きつつ、風斬を横目で見やる一方通行。 「なンっか、さっきからムズ痒いと思ってたンだけどよォ。その敬語だ」 一方通行は視線を前方へと戻し、 「最近使われてねェもンだから、逆に気持ち悪りィンだよ。だから、やめろや」 横暴に聞こえる一言。 しかし、それは遠慮無く接して欲しいという気持ちの表れとも取れる一言だ。 それを聞いた風斬は一瞬驚きの表情を作った後、すぐさま思わず笑顔になってしまう。 この目の前の少年は、素直では無いが根は優しいといったタイプの人間らしい、と風斬は一方通行を評価する。 隣でニコニコと笑い続ける風斬に気づき、一方通行はウンザリした様子で、 「オマエよォ……マゾかなンかかァ?」 「?」 突然放たれた言葉に首を傾げる風斬。 どういう意味だったろうか、と言葉の意味を頭の中の三角柱を回転させて検索すること数秒。 検索終了と同時に風斬の顔は真っ赤に染まった。 「ち、違……ッ!」 すぐさま腕を振りつつ慌てて一方通行の放った言葉を否定する風斬。 それを見て一方通行は少しだけ楽しそうに笑みを浮かべ、 「冗談だってーの。本気にすンな、馬鹿眼鏡」 「馬鹿じゃ、ないもん……」 顔を真っ赤に染めて少しだけ俯きながら人差し指同士をくっつけていじける風斬。 などといじけている間に広場に出てしまった。 妙に整然とした暗い広場。 申し訳程度に光が差し込んでいるが、それも通って来た通路と同程度の明度しかもたらしていない。 路地裏だと言うのに妙に整備された広場は、スッキリとした雰囲気を見るものに与える。 ただし、ただ一点を除いては、だが。 風斬と一方通行は同時に固まった。 とある一点に視線を釘付けにされる風斬と一方通行。 「何だろう……あれ」 思わず風斬はその一点――広場の壁際で暴れるダンボールを指差した。 「俺に聞くンじゃねェよ」 一方通行は呆れた表情でそれを見て、溜息を一つ。 ダンボール自体は大きめだが、広場の端にあるせいかあまり目立たない。 しかし、その暴れっぷりがその存在を異常にアピールしていた。 一方通行は嫌そうな顔をしつつも、ダンボールへ向かって歩きだした。 一瞬、どうしたのかと首を傾げるが、慌ててそれを追う風斬。 「ったくよォ……なンだァ今日は厄日かァ?」 「ど、どうするの……?」 ダンボールの目の前へと到着する二人。 風斬は謎の未確認ダンボールを見て、やや不安になったのか、一方通行の服の袖を掴んで引っ張る。 途中、『ちいさすぎたぜよー!?』などとダンボールから聞こえたような気がしたが気にしない。 「あ、危ない……かもしれないよ……?」 心配で思わず声をかけるが、一方通行はあァ?とコチラを向き、 「どーせ、捨て猫かなンかだろうよォ。捨てンなら、もうちっと人通りが多い所に捨てやがれってンだ、クソったれが」 口調こそ荒いが、そこには猫に対する優しさの様なものが見え隠れしているようにも風斬には聞こえた。 そのせいか、不安よりも、なんだか妙な気持ちが大きくなった風斬は嬉しそうな笑みを一方通行へ向かって浮かべる。 その表情を見て、またウンザリした様な表情を作る一方通行。 彼は暫くニコニコと笑う風斬と顔を見合わせていたが、暫くしてダンボールへと向き直り、 「……さってとォ」 「……本当に、猫……なのかな?」 「―――」 疑問の声を上げるが、返事は無い。 しかし、構わず一方通行はしゃがみこんでダンボールの隙間へと手を入れる。 だが―――、 「?」 訝しげに表情を変える一方通行。 それを見て風斬は首を傾げ、 「え、えっと……どうしたの……?」 「内側からガムテープでも張ってやがンのかァ?結構硬ェぞ、こりゃァ」 それなら引っくり返せば早いだろうが、中に猫がいるのだとしたら無茶は出来まい。 そう考えて風斬は更に一方通行の評価を更に上げる。 後ろからの尊敬の眼差しを向けるが、一方通行は気にせず溜息を一つ。 「こンなトコで大事にとっといたバッテリーを消費なンてしたかねェンだけどなァ……仕方ねェか」 そう言って、一方通行は首に付いたチョーカーからぶら下がっている黒い棒状のものを操作する。 少しの間を置いて、彼は再びダンボールへと手をかけた。 紙を破くような音と共に開かれるダンボールの扉。 その中には――、 「にゃ、にゃー」 「……」 「……」 なんだか猫なで声をこちらへ投げかけてくる金の短髪にサングラスをかけた大男が詰まっていた。 風斬は暫く固まっていたが、一方通行の復帰は数秒早かったようだ。 すぐさまダンボールを閉じる一方通行。 ……え、えーっと……猫が男の人で猫で男で……。 「オス……ッ!?」 「ツッコミどころはそこかァ!?」 唐突に妙なところに驚く風斬に対して思わずツッコミを入れる一方通行。 「だ、だって……猫が大きな男の人に……っ!」 「ありゃどう見ても不審人物だろうがァ!」 「不審人物とは酷いにゃー」 「黙ってろ」 「……」 ダンボールの中から男が立ち上がるが、それを男の方を見もせずに一蹴する一方通行。 男はいじけたのかダンボールの中にしゃがみ込んでのの字を書き始めた。 「あの……落ち込まないで、ください……あの人も悪気があって、言ってるわけじゃ……」 あまりの落ち込み具合を気の毒に思い、風斬が俯く男に声をかけると、彼は僅かにコチラへと向き、 「……ツンデレかにゃー?」 「え?いや、あの……たぶん……?」 と風斬は思わず放たれた言葉を肯定する。 ツンデレ。 意味合い的には、普段はそっけないが、いざという時は優しい人――だった筈だ。 ……うん……たぶん、間違ってない、筈……。 頭の中でもう一度確認して拳を握る風斬。 その視線の先では男が頬に汗を流して口元を引きつらせていた。 「だァれが、ツンデレだァ……あァ?」 「ひぅっ!?」 唐突に、後ろからどす黒い空気を感じる。 これは駄目だ。振り向いたら駄目だ、と本能が警告するが、もう遅い。 恐る恐る振り返る風斬。 後ろには憤怒に満ちたオーラを放つ羅刹が笑いながら立って――、 ○
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2719.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者 第3章 ③入院とこれから… いつもの病室で上条はベッドに横になりながら窓の外を眺めていた。 ベッドの隣では美琴が上条のために林檎の皮を剥いている。 カエル顔の医者は呆れた顔で上条に治療を施しながら、もっと自分を大切にしなさいと上条に注意を促した。 上条は困った顔で頷くものの、恐らくこれからも世話になり続けるだろうことを確信していた。 つい先ほどまで上条と美琴を見張るように黒子もいたのだが上条と美琴が放つ熱い空気に中てられ、 トボトボと病室を出て行ったのだった。 そして美琴と二人きりになった上条は窓の外から美琴に視線を戻すと問いかけるように言った。 「なあ、美琴?」 「どうかした?」 「俺ってこのままでいいのかな?」 「…」 「俺は何よりも美琴のことが大事だ。 でも何かあると必ずと言っていいほど首を突っ込んじまう。 今回も偶々怪我をするだけで済んだけど、これから先も無事ですむとは限らない。 少しは俺も美琴のために落ち着くべきなのかな?」 「…私はね、当麻が傍にいてくれなきゃ駄目になっちゃう。 重い女って思われちゃかもしれないけど、私にとっては当麻が全てなの。 当麻がもし居なくなったら生きていく自信がない。 当麻を危険に巻き込もうとしてるのに矛盾してるよね」 「…」 「当麻もそういう意味じゃ矛盾の中にいるんだと思う。 私が大事だって言っておきながら、私を残して危険な場所に行こうとするし… でも当麻には私にも自分にも嘘を吐いて欲しくない。 だって当麻が自分の信念に真っ直ぐ従ったお陰で、私は今ここにいるんだもん」 「…そうだな」 「だからね、どんなに辛くても当麻を止めることは私には出来ない。 その代わり必ず私のいる場所に帰ってきて」 「約束するよ、俺は美琴を一人にしない」 「…口だけじゃ駄目」 「そうだな」 上条は体を起こすと美琴の肩を両手で抱き寄せ唇を重ねる。 二人の口づけは約束の証… 絶対に守らなければならない約束がある時に唇を重ねるのが二人の恒例なっていた。 それはこの温もりを決して失わないための決意の現れでもある。 こうして二人は絆をさらに深めていくのだった。 そしてそんな二人の下に小さな乱入者が現れる。 「お姉さまもヒーローさんもラブラブ過ぎてまだ生まれたばかりのミサカには目の毒かもって、 ミサカはミサカはそう言いつつも興味津々と言った様子で覗いてみる」 上条と美琴が声のした方を見ると病室の入り口から打ち止めが顔を覗かせていた。 「あっ、ミサカネットワークを遮断するのを忘れてた。 うわー、祝福と嫉妬が混じった感情でネットワーク上が大変なことになってる!?」 そう言いながら両手をバタつかせてはしゃぐ打ち止めの頭にコツンと拳骨をする手があった。 「病院の中で走るなって言ってンだろォがよ。 それに上条とオリジナルの邪魔をするよォな真似しやがって」 打ち止めに拳骨を食らわしたのは一方通行だった。 もちろん反射は切ってある。 例え不意打ちの可能性があろうとも通常時は能力を切っておく。 それが一方通行なりの一つのけじめの着け方だった。 「また怪我しやがったンだってなァ。 流石ヒーローと言いてェところだが、てめェを心配する人間は山ほどいやがるンだァ。 少しは自重しやがれェ」 「サンキューな、心配してくれて」 「べ、別に俺が心配してるとは言ってねェだろォが!!」 「男のツンデレは見苦しいかもって、ミサカはミサカは苦言をあなたに呈してみる」 「誰がツンデレだ!?」 こうして見ていると一方通行も打ち止めも仲のいい兄妹にしか見えない。 しかしその関係は歪なものだ。 一万人ものクローンを殺した男とそのクローンの一人である少女。 二人の関係は言葉で表せるようなものではなかった。 「ったくアンタらは少し緊張感ってもんを持ちなさいよね。 …それで私が居る時にわざわざアンタが顔を出したってことは何か話があるのよね?」 「…あァ」 美琴の質問に対して一方通行は短めに返事をする。 「あのね、お姉さま。 ミサカは他の妹達より一足先に退院できることになったんだけど…」 「ええ、先生から聞いてるわ。 一緒に暮らすよう頼まれてるもの」 「ミサカはお姉さまとも一緒に暮らしたいんだけど… 出来れば、この人と一緒に暮らしたいの!!」 「…本気で言ってるのね?」 「うん」 「打ち止めは自分とコイツの関係を本当に分かってる?」 「ミサカもこの人がしたことが許されないことは分かってる。 でもヒーローさんが教えてくれたように、死んでいったミサカとミサカは別人なの。 そしてこのミサカを助けてくれたのは他でもないこの人で…」 「…そうね、死んでいった妹達と打ち止めは確かに別人。 例えミサカネットワークがあろうとも、あなた達は別々の…たった一つの命を持ってるの。 そのことがちゃんと分かってるなら私からは何も言わない。 だって打ち止めは私の可愛い妹だけど、私の所有物というわけじゃないもの。 自分の意思でコイツに助けてもらったことに感謝して支えてあげたいなら、打ち止めのしたいようにしなさい」 「お姉さま!!」 「俺は救いよォがねェ屑だ。 これから一生かけても妹達に頭を上げることは出来ねェだろォ… そして前にお前が言ったよォに、本当ォに謝らなきゃいけねェ相手はもォこの世にいねェ。 だけどアイツらに少しでも報いる方法ォがあるとすれば、今生きている妹達を守ってやるくらいしかねェと思ってる。 それにこのガキと共に暮らすってことは今の俺には許されねェくらい甘いことだってことも分かってるつもりだァ」 「確かにアンタにとっては甘すぎる選択だと思う。 正直どの面して言ってるのって感じよ。 だけどさっきも言ったけど私に打ち止めの気持ちを押さえつける権利はない。 …だから私がアンタに望むのは二つだけ。 アンタが殺した妹達…アンタの犯した罪から目を逸らさずに、前に進みなさい。 そしてアンタを慕ってくれている打ち止めを裏切るようなことだけは絶対にしない。 それだけよ」 一方通行は美琴の言葉に黙って頷く。 そうして一方通行は前に向かって一歩を踏み出した。 その一歩は一方通行にとってこれから先、決して揺らぐことがない確かなものなるのだった。 それから時は少し流れ学園都市では大覇星祭が開催された。 今の上条にとって初めての大覇星祭は恋人である美琴と過ごす思い出深いものになる。 上条家・御坂家、両家を巻き込んだ熱い体育祭が始まろうとしていた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2455.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人の旅行物語 チーン 軽い電子音と共にエレベーターの扉が開いていく。 いるか? パーン!! 何だ!?火薬のにおいが… 銃?俺、撃たれたのか…? まるで現実感がない。 と、何かが突進してきた。 朦朧としていた意識が徐々に覚醒していく。 ようやく部屋を見渡すことができるようになる。 ??? 「おめでとう!よく辿り着いたわね、上条君♪」 「なんで…?」 驚いたことに部屋の中にはクラッカーを手にした美鈴さん、母さん(詩菜)、親父(刀夜)、そして見知らぬ男性がいた。 美鈴さんに至ってはこっちを見て、お世辞にも上品と言えないニヤニヤ笑いを浮かべていた。(ちなみに他の3人は満足そうに頷いていた) (ということは…) ここで俺は意識を自分に突進してきたものに戻した。 「御坂…なのか?」 「…」コクリ 御坂は顔を胸に埋めたまま頷いた。 「これどういうことせうか?」 「…」 待てど御坂はなにも話してくれない。 と、ここで美鈴さんがさっきまでのニヤニヤ笑いを引っ込めて、いつになく真剣な顔で話しかけてきた。 「それには私の方から説明するわ」 美鈴さんは一部始終を話してくれた。 要はこういうことらしい。 御坂は何か悩み事を抱えてたらしく、母親たちに相談して結果、良い案を考えてもらったらしい。 それというのが、今回の旅行というわけだ。 つまり、御坂が俺を旅行に誘ったり、誘拐工作を行ったのも、全ては母親たちの指示によるものだったということだ。 あの電話による声も旅掛さん(事情説明の最中、紹介してくれた)によるもので、どう職権乱用したのかは不明だが、 パトカーを呼んだのも彼の仕業ということだと。 五和達は偶然ということになるし、不明な点もいくつもあるが、はっきりしてるのは俺が両親達+御坂の手の平で踊らされたということだ。 「ごめんなさい…」 「どうしたんだ急に?別にいいよ、もう怒ってなんかないし」 「なんで?私はアンタを振り回したのよ!」 「んなことどーでもいいんだ。御坂が無事だったんだろ。だったらそれでいいじゃん。」 そう言ってやったら 御坂はさらに力強く抱きしめてきて、泣き出した。 俺にはその涙の理由が分からないから、とりあえず頭を撫でてやることしかできない。 ダメだな、俺って… 御坂が落ち着いた頃を見計らって聞いてみた。 「なあ御坂、今回の旅行って御坂の悩みとどう関係してくるんだ?」 「えっとそれは…」 「それは?」 「こういうことよー!!」 そう言うなり、御坂の顔はどんどん近付いていって…俺達の距離は0となった。 どのくらい経っただろうか? おそらくほんの10秒だと思う。だけど俺にはもっと長く感じられた。 何をされているかを理解するのに約4秒、全てを理解するのに約3秒、その甘美な時間を味わえた時間は約3秒。 一つになった影が再び別れる時、俺は物足りなさを感じた。 「これが私の気持ち。伝わった…?////」 「ああ。十分伝わった」 「俺、お前がいなくなってからずっと御坂のこと考えていた。」 「他の奴らにいろいろ言われて、最初何のことか全然分からなかった。挙句の果てには告白させちまったしな…」 「えっ!?それでどうしたのよ…」 御坂の顔があせりと不安で塗りつぶされていく。 纏うオーラも一気に暗くなった。 「断わったよ。好きな人がいるからってな」 あいつは一瞬明るい顔をしたが、すぐに元に戻った。 「なんて顔してんだよ。お前だよ、御坂。俺はお前が好きなんだよ」 「嘘…」 「嘘じゃねーよ!」 「だってそんなのおかしいじゃない!今まで私のことスルーしてきて、kンッ!?」 分からず屋の口はふさぐってな。 驚いたのかアイツは抵抗する素振りを見せるが、すぐに俺のキスに答えてくれた。 「これで信じられるだろ。まだ何かごちゃごちゃ言うようならまたその口ふさぐぞ」イケメンAA 「あ、あああの、その…////」 「上条当麻は御坂美琴さんが好きです。よかったら付き合ってくれませんか」 「ばか…。どんだけそのセリフを待ったと思ってるのよぉ。うれしいよぉ」ナミダポロポロ 「御坂美琴も上条当麻さんが大好きです。よろしくお願いします」ダキッ 「ああ。こちらこそよろしくな、美琴」 「うん。それでねあの…誓いのキス、しよ?」 何なんですかこの子はー!!ウルウル目+首コクッ+上目遣いで頼まれて断われるわけない。 (やばい…ありえないほどかわいいすぎる!) 「この上条当麻喜んでさせていただきます!」 恋人としてのファーストキスは先ほどまでのとはまた別物だった。 先ほどのもよかったが、今のそれは格別な感じがした。 「あーら、初々しいわねー」 「「へ?」」 声のしたほうを見ると美鈴さんはニヤニヤして、母さんは口に手を当てて微笑んでいた。 親父は「ああ、娘が遠い所に行ってしまった」と言って地面に指で”美琴”と書いている旅掛さんを慰めていた。 そういえば、忘れてたあああ!!! 完全に2人の世界に入り込んでいた。 と、そばでパチパチと空気が帯電し始めた。 (これってまさか…) 案の定美琴は電気を撒き散らしていた。 これは気絶する3秒前!マズイ、止めなければ! 「間に合えー!!」 「ふにゃああああああああああ!!!」 「ぎゃああああああああああああ」 俺は遠くなる意識の中、せめて親達に被害が及ばないようにと必死に右手を伸ばした。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人の旅行物語
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/654.html
とある喫茶店の一日 〜Mad_Tea_Party〜 君はこんな噂を耳にしたことはないかな? その喫茶店には、普通にはありえない出会いが待っている。 現在過去未来の全てにおいて接点のないはずの人とも、“偶然”巡り会えてしまう不思議なカフェ。 アーネンエルベ。 もしも街を歩いている時、そんな名前の看板を見かけたなら。急ぎの用事がないなら、足を踏み入れてみるといい。 とても貴重な経験が出来るはずだ。 まあ身の安全の保証は出来かねるが……いやいや、何事も自己責任ということだよ。 店自体の質もとてもいい。マスターオリジナルのブレンドコーヒーに、軽めのツナのサンドウィッチ。あとはモンブランでもあれば言うことなしだ。 そうそう、座るならテーブル席を選ぶべきだ。向かいに座る人がいたなら、その人はきっと、君が絶対に出会えない相手だろうからね。 キィッ、と擦れる音を立てて木製の扉が開く。カランコロンという鈴の音が、少し遅れて続いた。 視界に入ってきたのは、電灯を極力排した薄暗いカフェテリア。まあ雰囲気づくりは悪くない。さびれていると言い換えることも出来そうだが、どうせ“この街”では平日の昼間に繁盛している店はないから気にすることもないだろう。 案の定、並べられたテーブルはどれも空席だった。たった一つ、奥まった場所に置かれたテーブルに赤っぽい制服の少女と白っぽい修道服の少女が陣取っている。白昼堂々サボリとはたいした度胸だ。修道服ということは、第十二学区の学生かもしれない。わざわざこんな所まで足を運んだのは、教員の見回りを回避するためだろうか。 (…………ン?) 不意に、自分の思考に疑問が浮かぶ。 “こんな所”って、一体どこだ? この店に入る前に、街のどのあたりを歩いていたのか思い出せない。 しかし、疑問が違和感に変わる前に、カウンターから声がかかった。 「——いらっしゃいませ。お一人ですか?」 男にも女にも、大人にも子供にも、聖人にも囚人にも見える人物。ついでに言えば店長とも店員ともとれる態度だった。長すぎる髪を大きな三つ編みに束ね、花柄のエプロンをつけてコーヒーカップを持ち上げている姿に、彼はなぜだか対軍兵器級のツッコミを入れたくなったが、ギリギリで自制する。 「……あァ」 「テーブル席とカウンター席がございますが、どちらに?」 「テーブル」 「かしこまりました。左手奥のCテーブルをお使いください。注文がお決まりになりましたら、卓上のベルを鳴らすか、カウンターに直接声をかけてくだされば承ります」 手振りで了解したことを伝えると、彼は支持されたCテーブルとやらに向かう。静電気で髪の毛を持ち上げられているような奇妙な感覚があったが、不思議と店を出ようという気にはならなかった。 ——その喫茶店には、普通にはありえない出会いが待っている。 いつ聞いたのかも思い出せない、うさんくさい噂話を真に受けた訳でもないのだが。 こうして学園都市最強の超能力者、一方通行(アクセラレータ)は、今日という取り戻せない日をアーネンエルベで過ごすことになった。 時刻は午後一時。少し遅めのランチタイム。 ◇ ◇ 一方通行が座ったテーブルの二つ隣り、Aテーブルには、赤と白の対照的な少女達が座っている。 クリームソーダのアイスに刺さってしまったストローと格闘している修道服の少女がインデックス。注文した紅茶に自前のブランデーをボタボタ足らしている冬用制服の少女がサーシャ=クロイツェフ。 彼女達は、一方通行が想像したように学校をサボってこの店に来ていた訳ではなかった。二人はもともと学園都市のどの学校にも所属していない、いわゆるモグリの住人なのである。 しかし、それも実は今日までの話。 「明日から、かぁ。いいなぁサーシャは。ロシア成教公認で転入出来るなんてー」 「そうは言うけど、あくまで諜報活動の一環としてであるし。むしろ周りの人たちを騙しているようで気が引けるというか」 インデックスのぼやきに、サーシャが控えめに答える。 ここ最近の彼女たちの話題は、「サーシャの学園都市への転入」に集中していた。 一端覧祭と『灰姫症候(シンデレラシンドローム)』の事件が無事終わり、さあ別れを惜しもうとした所へやって来た国際郵便。開けてみれば近所の中学校への転入手続き書類とサーシャに当分の間学園都市への駐留を命じる指令書だったのだから驚いた。 えらいこっちゃえらいこっちゃと騒ぎながらも準備しているうちに、いよいよ明日が初登校の日。 今は学生向けのデパートで注文しておいた冬服教科書その他の必要雑貨をまとめて引き取ってきた帰りなのである。テーブルの下にはパンパンに膨れた紙袋がいくつも置かれていた。大分冷え込んできたこともあって、冬服だけは受け取ってすぐに着替えたが。 ちなみに、サーシャは転入先である夕凪中学校の女子学生寮に既に部屋を与えられていたが、そちらではほとんど寝泊りしていない。これまで通りとある少年の部屋に押しかけ居候のような形で暮らしている。 「でも、さあ」 インデックスの愚痴は止まらない。ここ数日ずっとだ。 上条さん家の白シスターは、決して赤シスターを妬んでいる訳でも、ましてや恨んでる訳ではない。それだけは絶対だ。 けれども、 『サーシャが学校に行くようになると、また私は昼間一人ぼっちになっちゃうもん』 口に出した訳ではないが、サーシャは友人のそんな隠された本音を察してしまっていた。 自分が属している魔術サイドとは敵対していると言って差し支えない科学サイドの街で、朝から放課後までという長い時間をたった一人で過ごす寂しさはどれだけのものだろう。サーシャはようやく出会えた、さの寂しさを分かち合える友達なのだ。 その彼女までが、学校に通うようになれば。 (……問一。どうすればいいのでしょう?) 落ち込み続ける友にかける言葉も浮かばず、天にまします我らの父とかに祈ってみる赤シスター。だがそう簡単にありがたいお告げを下さるほどこの作品(せかい)の神様は親切じゃない。 その代わりと言ってはなんだが、感覚的には右斜め後方から幻聴じみてか細い女の子の声が聞こえてきた。 (えっと。……とりあえず、何でもいいから褒めて、褒めて、褒めまくってみるのはどうですか……?) なるほど。ありがとう私の天使(スタンド)。 (え、そんな、私オラオラとかアリアリとかだが断るとか出来な——あれ、もしかして今後私ってそういう扱いなんですか?) それこそ神のみぞ知る、だ。 サーシャ=クロイツェフは意を決し、怒涛の褒め殺し作戦を敢行する。 「そう、だ。インデックス、注文した時と今日と、デパートまでの道案内をしてくれてありがとう。やはりこの辺りの地理には、まだ慣れていないから」 「大した事じゃないよ。私が案内できたのは、昼間暇な時にぶらぶらするコースだったからだもん。——うん、昼間、暇だから」 一層暗くなる声に、サーシャは第一撃が裏目に出てしまった事を悟る。 「うう……ん、荷物も、半分持ってくれて、感謝している。これはとても一人で持てる量ではない」 「……でもさりげなく教科書とかの重い袋を自分で持って、服とか靴なんかの軽い方を私に回してるよね」 続く第二撃が(両者の)ボディをえぐるように打つ。 「ああああああ。そ、そのクリームソーダ、おいしい?」 「うん。サーシャのおごりだけどね。とうまは私にお金持たせてくれないから」 第三撃が急所に当たった! 効果は抜群だ! 「…………大丈夫?」 「うん。うん。大丈夫だから……今は貴女のために祈らせてください……」 挙句の果てに慰められてしまう。十行足らずで精神的にフルボッコされたサーシャの明日はどっちだ。学校か。 その頃、彼女達の二つ隣のテーブルで白く、白く、白い超能力者が四肢を震わせてツッコミ衝動に耐えていたことを知る者はいない。 誰にだって出会いを選ぶ権利はある。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/42296.html
とあるりんう【登録タグ KOUICHI VOCALOID drm と まらしぃ 初音ミク 曲 曲た 粗品 藍瀬まなみ】 作詞:粗品 作曲:まらしぃ 編曲:KOUICHI 唄:初音ミク(調声:drm) 曲紹介 まらしぃ氏と霜降り明星の粗品氏によるコラボ曲。 まらしぃ氏のアルバム『シノノメ』収録曲。 調声をdrm氏が、絵画を長谷梨加氏が、動画を藍瀬まなみ氏が手掛ける。 歌詞 (動画説明文より転載) うるさい うるさい 誰も喜ばない セミが5匹鳴いてた方がマシ 暗い 暗い センスの無い霖雨 エニグマティックにさ 踊ろう魂 ここは私 最後に任されたい 色にまみれた 第七感 悲しい 他に他に意見があるものは? 濡れる袖の音 逆に愛しい 取って付けた 雑な誠意 洗濯して 乾燥して 家に返すわ グランロスの 魔女が笑う 「そうですか(笑)」 星の癖に偉そうだ ふざけるなこれは 後で大事 伏線になる どうしよう! この感情は! きっと 苦しい悔しい哀しい淋しい ハズレ ハズレ 残念また今度 引き出しから見えるギグが欲しい ハズレ ハズレ 残念また今度 素朴なプライバシー 祝詞は時に不吉 不吉 短絡的な妄想 青春を賭けた楽器眺め 壊れてる 晴れないな 昨日から 空ばかり見て 特別な 部屋の隅 私はここにいる 星の癖に偉そうだ ふざけるなこれは 後で大事 伏線になる どうしよう! この感情は! ああ 嬉しい楽しい優しいほんとに? 星はいつも嘘つきだ とんでもない夢 語ってほら むき出しでほら どうしよう! この感情は! きっと 苦しい悔しい哀しい淋しい いつだって空の色が正しぃ コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1145.html
雷電は、街中を走り回り情報収集をしていた。情報収集と言っても、今の雷電に出来ることは、路地裏を住処とする 不良たちやスキルアウトと言った若者に聞くぐらいしけできる事はなかった。だが、そんな奴らの情報で黒幕を探し出せるはずはなかった。 (ダメだ…出回りすぎて、元がたどれん……一万人は使ってたらしいし…つか、もっと増えんじゃねーのか?) 正直こんなことをしていても無駄だろうは、思っていたが、雷電自身、動かずにはいられなかったのだ。 ただ、あてもなくバイクを走らせていると 「まったく、動きすぎだ!探したぞっ!」 バイクと同じスピードの機械コウモリが現れた。 「キバット!?」 「珠理からの連絡だ…一回戻れ!!」 「……ここからじゃあ、遠い…じじいのとこに行く!」 「分かった」 報告を受けて、直ぐにバイクをUターンさせて、雷電は、表通りから外れたとある店へと急いだ。 「…それが『幻想御手』の正体か…」 「…あぁ…一万人もの脳を繋げることによる演算能力の向上」 『そうとしか考えられないわ』 電話のスピーカーごしに珠理の解析を聞いた。一緒に聞いているのは雷電の装備を用意してくれる、 「じじい」呼ばれている、人物である。 「珠理ちゃんから聞いたときは信じられなっかたが…たしかに、これなら可能だ」 『これなら簡単にレベルを上げられ、なおかつ、足がつき難くなる』 「だがよ…一体誰がこんなもんを?」 じじいと呼ばれる男の質問に雷電は答えなっかた。なぜなら、もう既に目星はついていた。 「珠理……調べて欲しいことがある」 『………もう…やってるわ』 「なんだ?もう誰か見当がついてんのか?」 「………こんな事できる人間を…俺は一人しか知らない…」 答えはほとんど出ていたが雷電はずっと心の中で間違いであってくれと願っていた。 そして、スピーカーから返事が返ってきた。 『……分かったわ』 「どうだった?…」 『残念ながら……当たりよ』 「…そうか」 「だから、誰なんだよ?」 一人だけ答えの出ていない男はずっと尋ねてきたが、そんな彼を無視して 「会いに行ってくる」 「いやっ!?だから!!」 『無駄よ!』 2人の会話をスピーカーがさえぎった。 『すでにアンチスキルが乗り込んだけど、もぬけの空だったそうだわ…』 「ちっ!俺は出るぞ!!」 「おっ!おい!まだ装備は…」 「キバットだけでいい!!」 そう言って、出入口に向かう雷電を男は呼び止めて携帯を投げた。 「なくしたんだろ?持っとけ…」 「……ありがとう」 携帯を珠理と繋げて、勢いよく外へと飛び出した。 いつもと違い雷電は走っていた。もしも、本気になればバイクよりずっと早く移動できるからだ。 携帯を耳に当て、犯人の情報を待ち続ける雷電にようやく珠理からの報告が来た 『分かったわ!……第10学区の原子力近くの道路でアンチスキルと交戦中…』 「分かった…」 『でもっ…本当にあなたが出る必要あるの?彼女一人ぐらいなら…』 「…もしもお前の言った通りにあいつが『幻想御手』のネットワークを支配しているなら… アンチスキルなど役に立たん!俺が直接会って話をつける!」 『話って!?あいつが何の覚悟なしにこんな事すると思ってんの!?話合いじゃ解決出来ないわよ!!』 「そんなこと分かっている…」 『だったら!!』 「俺はあいつを友達だと思ってる…」 「えっ!?」 「いっつも、無愛想で人目を気にせず服を脱ぐし、何を考えているか分からん…だが…俺は友達だと思ってる」 『ディック……』 「友達を友達が止めるの当たり前だろ…」 『…………』 「後で連絡する…」 『えっ!?』 そう言って携帯を切った。 「キバット!」 「よっしゃあ!!キバって行くぜぇ!!! ガブッ」 「変身!」 機械コウモリに噛まれた所から変わった形状の模様が広がり、雷電の身をコウモリのような鎧が包み込んだ。 次の瞬間、スッと雷電の姿は消えて、その場から消え去った…。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2602.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸なHappy days 御挨拶 第二章 御挨拶 (私、上条当麻は美琴大好きな人間である) おい、懲りろよ。いまの状況考えろよ。 上条はなんか高級そうな食事をしていた。 心配するな諸君!! テーブルマナーは美琴のおかげで完璧なのだ。 そのため、現実逃避もできてしまう。 (……美琴の親だわ) 「不幸の代わりに大好きだと叫ぶ! くっく、あははははは! それが習慣になってるなんて、とんだバカップルね、あっはっはっはっは、ひーっ!」 『がっはっはわっはっはー』と戦国武将のように笑う御坂ママ、美鈴。 上条は御坂との最初の出会い、自販機前の事を思い出していた。 その武将の横にはマフィア、いや御坂パパ、旅掛が座っている。 彼女のパパさんってだけで恐いのに、ガラ悪すぎだろ。 しかも顔に影が入っています そして、目がやきもち焼いている時の美琴と同じだ。 (そりゃ、初対面の人間が 「娘を呼び捨て」 「大好きだ宣言」 「その後に、付き合っています発言」 「さらに愛しの娘来ません報告」 ……うん、間違いなく誰でもキレるわこれ) 意外と冷静な上条。 彼は腹をくくっていた。 (高校生で死ぬとは、短い一生だった) 変な方向に。 っていうかお前さんすでに二回は死んでるだろ。 上条は窓の外を見た。 (空が……青い……) 同時刻、美琴も同じ感想を抱いていた。 コツッ、とグラスが置かれる音が聞こえ、 美琴はあわてて視線を空から正面に移す。 また、現実逃避したようだ。でも、仕方ないだろう。 彼氏の御両親と旅館で一緒に食事をしているのだから。 (……しかも援護なし) こんなはずではなかった。 挨拶の第一声は 「御無沙汰しております。改めまして、御坂美琴と申します」キラキラ だと決めていたのに……。 (あーもう!! 当麻大好き!!) いやだから懲りろよ。 (あれから、お義母さまお話にならないし……) そうやってビクビクしていたら、ドタバタと音がした。 何事かと廊下を見たら、お義父さまが仲居さんに押し倒されている。 「あぁ、すみません、大丈夫ですか!!?」 「お気になさらず。そちらこそ怪我はありませんか?」 「……えっ、あ、はい、大丈夫です!!」////////// 心なしか仲居さんの顔が赤い。 (ああ、親子だな) 美琴さん、彼氏の両親の前でその顔はいかがかと……。 「あら。あらあら刀夜さん、またですか、またなのですか、またなのですねの三段活用」ゴゥ!! あっ、口を開いた。 「か、母さん!! これは私のせいではありませんのことよと言いますか、 全然うれしくはないわけではないといえどもごめんなさいでやんす」 二人とも完璧に上条の親だった。 あのニッコリ笑顔でキレられるとこわいのよねー。 などと、お義母さまに遠くにいる彼氏を重ねて見ていたら、向こうもようやくひと段落ついたようだ。 「改めまして美琴さん、当麻がいつも世話になっています」 お義父さま、頬の紅葉マークで台無しです。 そんな感情を押し殺し、 「いえ、こちらこそいつも迷惑をかけてしまって」 なんて社交辞令。 そして美琴はお義母さまの方へ視線を移す。 「……苦労、なされていますね」 「あらあら、当麻さんもですか」 ふふふふふふふふ、と暗く笑う女性陣に、 上条刀夜の背筋が震えた。 (何だ、何だ?) なにかしら冷たい波動を受けた上条当麻は周囲を見回す。 まあ、発信源は御坂パパに違いないだろう。 ちなみに御坂ママはまだ笑っている。 「……当麻君」 そらきたー、今から会いに行くよ昔のオレ。 などと思っていた上条は次の瞬間、 「美琴ちゃんはかわいいよね~!! 負けず嫌いで、涙目になって頑張るところや、 照れ屋で、恥ずかしくて顔を真っ赤にするところとか、 実はか弱いのに強がっちゃうところとかさー……」 開いた口がふさがらない。 そのころ、美琴も変な顔になっていた。 しかしお義母さまはまだ続ける。 「それは昔からでして、 どんな子にも手を差し伸べていたし、 どんな困難にも立ち向かっていったんです。 本当は危ないことして欲しくなかったのですが、 正しいと信じて行動する時、子供とは思えないほど凛凛しくて……」 上条も美琴も別の場所で同時に混乱ている。 しかし、 「そんなかわいい美琴ちゃんに……」 「そんなふうに頑張っていた当麻さんが……」 二人は、空気が変わるのを肌で感じた。 「お前さんは相応しいのか?」 「いつのまにか周りの人に、ある名前で呼ばれるようになりました。それが、」 「「疫病神」」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸なHappy days
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1407.html
プロローグ とある朝いつもより早く目が冴えてしまった。というより、あまり眠れていないと言ったほうが近いのだろう。 「あァ、こんなンでいいのかァ…」 学園都市第一位『一方通行』は考える。 自分が光を求め手にした今の生活しかし… 今まで研究とはいえ散々な殺しを続けてきた自分が 今更光を求めるなど… 「本当に今が求めていた最高なンで「おっはよーうってミサカはミサフゲェェ」 「うるせェーンだよ。部屋入る時は、ノックしろって言ってンだろうがァ」 「ふぉめんなふぁいっふぇミふぁふぁふぁミふぁふぁふぁあやふぁってふぃふ」 「なンなンですか?飯なンですか?ごはンなァーンですか?」 「せいかーい!!ってミサカはミサカはテンション高めで言ってみたり!!ところで毎度毎度ノックするのはメンドーイって ミサカはミサカは抗議してみる。」 「あン…それはだn「あぁそっか!男の子だもんね!朝はつらい時もあ、る、よね、って鬼の形相の、アナタを、みつ、めてみ、る…」 「どォーこォーでェーそんな事をならったんですかァ?打ち止めちャァーン」 「えと…テレビかな?ってミサカはミサカは逃げに転じて猛ダッシュ!!」 「チッ、後でお仕置きだn!!」 不意に口を閉じる。 こんな悪党が日常でこんなにもナマ温くなってしまったのかと… 「ハァ…コーヒー飲むかァ…」 一方通行は思う。あの時にもし考え方を変えていられたらと。 一方通行は嘆く。なぜあんなことをしたのかと。 一方通行は考える。なにかあの時に戻れる。そんな方法はないのかと。 パート2 「あるんだよ」 「あァ?」 「だからあるんだよ」 白い修道女『禁書目録』ことインデックスは言う。 ・ ・ ・ 最近、一方通行はライバルであった『幻想殺し』を持つレベル0上条当麻と 親しい(?)友好関係を築いていた。もちろん妹達の事も許していた。 今は、互いの居候について話し合ったりしている。まるで公園で話し合う母親たちのようだ。 しかし、今上条はいない。先程、学園都市第三位『超電磁砲』の御坂美琴に 「勝負よ!!今日こそ勝つからね!!覚悟しなさい!!」ビリビリ 「ゲッ、ビリビリ!えぇ…もう知りません…なんだかもう日常的になって不幸とも思えなくなってきましたよ」 「じゃーいーじゃないの!勝負よ!勝負!!」 「そもそもなんで上条さんにばっかつきまとうんだよ!!いくら上条さんが生死の堺をさまよったってラブコメに繋がらないの! あ~泣けてきた…不幸だ…」 「・・・・る・もし・・ない・・いじゃ・・いの」 「なに?聞こえねぇよビリビリ?」 「繋がるかもしれないじゃないのってぇいってんのぉぉぉ!!」 「バカ!!超電磁砲乱発すんなぁぁぁ!!」 「少しは、あたりなさいよぉぉ!」 「あァーー平和ァですねェー平和ァ」 「おぃぃぃ!!一方通行!!これを見て平和だっていうならお前の眼は節穴だぁぁぁ」 「三下ァ、俺が超電磁砲に加勢しないだけありたがく思いやがれェ」 「ふぅぅこぉぉうぅぅだぁぁぁぁぁぁ~~~~」 と言い人混みの中へ(というより人込みをかき分けて)進んでいった。 今は、打ち止めもいない。 お昼寝を寮でしている。決して口ぐせが面倒だから登場させないわけではない。 従って今は、一方通行と白いシスターしかいない。 「空気なんだよ」 「おわァ!いたのかァ、まっシスター…」 「むぅー、その名前にはあなたには言われたくなかったかも。そして絶対読者は、私がいなかったと思っているかも!!」 「作者に言えェ…作者にィ・・・」 しばし沈黙が生まれる。 沈黙を破ったのはインデックスだった。 「あくせられーたーは、変えたい過去ってある?」 一方通行の体がビクンと跳ね上がった。一瞬このまっシスターが記憶操作系の超能力者と錯覚するくらいだった。 「なンでだァ…」 「神の声が聞こえた気がしたからだよ」 「(やっぱタダもンじゃァねェのかァ?)そんな都合のいいもンねェだろ」 「あるんだよ」 「あァ?」 「だからあるんだよ」 その言葉に一方通行は体を強張らせ、少しばかりの希望を抱いた。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1927.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説 1日目 『少年』は今スーパーにいた。 お目当てはお一人様1パックの卵、タイムセールで安くなる豚バラ肉、使用頻度の高いもやしもきれかけていたはずだ。 余裕があれば本日4割引の冷凍食品コーナーも見てみよう。あとソーメンはもういらない。 そんな予定を立てていたのだが、予定は予定、そううまくいかないときもある。 卵もバラ肉も売り切れ。冷凍食品もろくな物は残っていない。もやしは買えるがそれだけだ。あとソーメンはもういらない。 少年は補習で遅くなっていた。いや補習はいつものことだが、 財布をなくし、ケータイを落とし、明日提出しなければならない宿題のプリントの束もカバンから消えていた。 それらを探し出すのにえらい時間をくってしまったのである。 結果的に教室の自分の机の中で、それらはすべて見つかったのだが、いろんな意味で泣けてきた。男だって泣きたい時がある。 (どーすっかなー…今からじゃメシ作る時間もないしな…) 少年は自分の寮にペット(?)を一匹と一人飼っている。三毛と白だ。 三毛のほうはおとなしいが、問題は白のほうだ。ハラペコがデフォルトな為、こんな時間に帰ったら 「とうまーとうまーおなかがすいたんだよ!ごはんはまだなのかな! はやく食べたいんだよ!ごはん!ごはん!ごはん!ごはん!」 という珍しい鳴き方をしてくる。 だったらお前が作れよ…と思う者も多いだろう。しかしそれは家主である少年によって禁止されている。 実は以前、彼女はレンジを爆発させたことがある。 本人はぼたんを押したらこうなったと泣きながら主張したが、家庭用電化製品に自爆スイッチは搭載されていない。 話し合いの結果、たまたま押した場所が爆発するツボだった。と言う結論に至る。 これは「爆砕点穴の悲劇」として語り継がれ、彼女には台所使用禁止法案が制定されたのである。 (仕方ない。ちょっと高いけど弁当でも買うか。俺もプリントやんなきゃだしな。 …ま、一番安いのでいいよな。) だが一番安いシャケ弁も売り切れている。店員に聞くとぼさぼさの茶髪の男が全て買い占めて言ったらしい。 どんだけ食うねん!と、顔も名前も分からないその男にツッコミを入れる。 許してやってくれ。その男もシャケ弁を買ってこなければ、ブ・チ・コ・ロ・されるという極めて特殊な状況にあるのだ。 ちなみにその男も『不幸な王子様』と肩を並べる、3種類の都市伝説の1つ『シャケ弁ハンター』と呼ばれているのだが、 それはまた別のお話。 仕方なく少年はかなりお高めの、チキン南蛮SP(スペシャル)弁当と猫缶をひとつずつ。 自分用におにぎり2個(おかかとツナマヨ)を買い、スーパーを後にした。 (はー…結局何も聞けなかったなー…) 佐天はとぼとぼ歩きながら今日のことを思い出していた。 白井から突如投下された爆弾発言。『逢引』と『ペア契約』。 あの後も何度も御坂から聞きだそうとしたのだが、浅いところから攻めようとすると、はぐらかされる。 かと言って、深いところに踏み込もうとすると罠カード「漏電」が発動する。 このカードは、相手プレイヤーに直接雷属性のダメージを与え、LPを0にするという恐ろしい効果を持つ。 当然、公式大会では禁止されている。 そんなこんなで時間が過ぎ、最後は 「アー!もうこんな時間ダワー!黒子!早く帰らないと寮監に怒られるわよ! さー帰ろう!今すぐ帰ろう!」 と、半ば強引に解散させられ【にげられ】た。 (こーなったら上条さんを連れて来るしかないよね。やっぱり。 ていうかあたしも会って見たいし。) もはや「都市伝説の人」に会いたいから、「御坂の好きな人」に会いたいへ佐天の思考はチェンジしている。 (よし!明日上条さんの高校に言ってみよう!初春に聞けば場所も分かるし!) ひょっとしてこれはストーカーなのかな?と一瞬頭によぎったが、 御坂さんの恋の行方【こんなおもしろいこと】ほっとけるかー!と思い直した。 この子は本当にいつでもテンションが高いなぁ。 ちょっとコンビニでも寄ろうかなと思った瞬間 「きみひとり~?あぶないよ~こんな時間に~俺たちが家まで送ってあげるよ~。」 声をかけられた。 相手は3人組の男性達【スキルアウト】。明らかにこの人たちと一緒のほうが危ないといった風貌だ。 1人目はくすんだ金髪で両耳と唇にピアス。声をかけてきた男だ。 2人目は左腕と左頬にタトゥーを彫ったスキンヘッドの男。 3人目は鉄下駄を履き、学ランを着て、葉っぱをくわえた大男。 …3人目だけなんか違くね?などといっている場合ではない。 (ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!) LEVEL0の中学1年生佐天に、ヤンキーふたりと番長ひとりをたおすスキルはない。 何回やっても何回やっても、E缶だけは最後まで取っておいても倒せないだろう。 どうすればいいかアワアワしていると、 「あーいたいた土御門。悪いな、買い物してて遅くなっちまった。」 ツンツン頭の少年が乱入してきたのである。 ツチミカドとはどうやら佐天にたいしていった名前のようだ。 なるほど、偽名を使えばノートに名前を書き込まれても死ぬことはない。 「それじゃーツレがお騒がせしましたー…」 そういいながら佐天【ツチミカド】の腕をつかむ少年。 佐天はその少年の顔に見覚えがあった。初春のパソコンで見たはずだ。 御坂から話を聞こうとしたはずだ。明日会いに行こうとしてたはずだ。 LEVEL0なのに電撃が効かず、「不幸だぁー!」という口癖を持つ。 戦闘力は4か5程度。ヤムチャ位しか倒せない。 都市伝説『不幸な王子様』にして、御坂美琴【しんゆう】の想い人。 上条当麻がそこにいた。 上条【じゃまなやつ】の乱入にスキルアウトの3人の目つきが変わる。 「なんだよお前~その子は俺たちに用があるんだぜ~?」 「邪魔すんじゃねぇぞゴルァ!殺されてぇのかゴルァ!」 「おなごじゃい…本物のおなごじゃい!逃がしてたまるかい!!」 3人目はちょっとだまれ。あと偽者のおなごって何だ。 「いやいやいや。だからコイツ俺の友達なんですって。な!土御門?」 「ええ!そりゃあもう!このツチミカドはあなたの友達ですよ。ハイ!」 空気が読めてノリもいい子で助かった。と、上条は思った。 以前、とあるビリビリ中学生を助けたようとしたときはえらい目にあったものである。 もっとも、そのときの記憶は『今』の上条にはないのだが… ちなみに佐天は頭をフル回転させ、この状況をどうするか、ではなく下の名前を考えていた。 (よし!ツチミカド・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールにしよう!) 何でこんな余裕あるの?そんな名前の日本人がいるか。本当に覚えられるのかお前。随分すごい魔法が使えるんでしょうね! …いかんツッコミきれない。ノリが良すぎるのもどうかと思う。 じゃーそーゆーことで…とその場を逃げようとする上条だったが、突然 「うおーーー!!逃がさん!!おなご!!逃がさんどーーーー!!!!」 と3人目がブチ切れた。 かぁ!気持ち悪ぃ!やだお前ぇ! ついでに両手も燃えている。発火能力者。LEVELも3はありそうだ。 ぬうぇい!という掛け声とともに、両手の炎は上条めがけて投げられた。 直撃した!…はずだった。が、上条は無傷だった。傷どころか服も燃えていない。 ただ右手だけを前に伸ばして。 その場にいた上条以外の人間には何が起こったのかわからない。 スキルアウトの3人はどんな能力だ?と動揺し、佐天は電撃だけでなく炎も効かないという事に驚いていた。 彼の右手には幻想殺しという力が宿っている。 それが異能の力ならば、魔術だろうと超能力だろうと波動拳だろうと打ち消せる能力。 チャンス!周りはキョトンとしている。 「おい!走るぞ!」 上条はツチミカド・フランソ…え~と…ナン・ト・カカン・トカの腕を右手でつかみ走り出した。 ちなみに左手には、学生カバンとスーパーの袋がしっかりぶら下がっている。 少しして、3人が追いかけてきた。 かわいい女の子に 「待って!私を置いていかないで!」 なんて言われたら待つだろうが、 誰が好きこのんで、イカつい野郎×3に 「待てやゴルァー」 といわれて待つか。 こちとら逃げ足には自信がある。 こっちは女の子【ハンデ】を連れてはいるが、こんな不幸【じょうきょう】良くあることだ。 スーパーの袋を持ち、必死の形相で逃げる上条。 その姿はあまりにも、王子様というイメージとはかけ離れていた。 普通の高校生が、普通の中学生の腕をつかんで逃げている。 そんな今の自分たちの姿に、佐天はクスッと笑った。 どうやら撒いたらしい。 上条は本当に逃げ慣れているらしく、この辺りの地理にはくわしいようだ。 日曜7時の旅番組でしか通らないような、路地裏や狭い道をぬけて、今は開けた場所にいる。 サイコロもさぞ転がしやすいだろう。 「ここまで来りゃ平気だろ。あんた怪我とかは大丈夫か?」 「あ!おかげさまであたしはまったく何の問題もないです。」 「そっか。気をつけろよ?この辺にはあーゆーのがいるから。」 「えへへ…すみません。」 「で?おまえンちってどっち?」 ハイ? 「いやいやいや!違いますよ!?ワタクシは紳士であって 先ほどのようなことが起こらないようにボディーガードなどをやろうとした次第でして 決して送りオオカミなどというゲスい真似など微塵も…」 「…プッ!…あっはっはっはっは!!」 上条の必死すぎる弁解に佐天はとうとうふきだした。 上条も分かってもらえたかと、ホッとした。 「じゃーあたしの寮までお願いします。歩きながらお話しましょうよ!『上条さん』!」 「あー何だ御坂達から聞いたのか俺の名前…」 上条はいきなり名前を呼ばれてビクッとした。もしかしたら『前の俺』の知り合いか!?と、思ったようだ。 だが話を聞けば、この佐天涙子という女の子は御坂や白井の共通の友人のようだ。 「上条さんもすごいですねその右手!どんな能力も効かないなんてムテキじゃないですか!」 「いや…そこまで便利じゃないんだけどな?あ…と、ここか?佐天の寮。」 「はい!今日は本当に色々ありがとうございました!」 「いやいいって。佐天こそ気をつけろよ。じゃあな。」 「あ!待ってください!明日お暇ですか!?」 「ん~どうだろ…補習がなければ多分…」 「だったら明日ここのファミレスに来てください!」 そういって佐天は、今日いたファミレスのチラシをカバンから出す。 何で?と、言いかけた上条に佐天はすかさず 「今日のお礼をさせてください!」 悪いとは思ったが、せっかくの好意を断るのもどうかと思い、明日会う約束をして上条は帰っていった。 紆余曲折あったが、結果的には「明日上条と会う」という当初の目的は達成された。 「よーし!明日は御坂さんも呼んで根掘り葉掘り聞きまくるぞー! そんでふたりをいい感じにしてー………?」 と、意気込んだところで佐天は胸がチクリと痛むのを感じた。 だが、風邪でもひいたかな?と、あまり深く考えずに、そのままカバンからケータイを取り出した。 「おっす!初春?明日なんだけどさー……」 都市伝説 『不幸な王子様』 どこからともなく現れて、困っている女の子を助けてくれる。 そして助けられた女の子は高い確率でその人のことを 好きになってしまう。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある不幸な都市伝説