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思春期を殺した少年の翼 ◆mist32RAEs 玄関を開けてすぐのところにソレはあった。 様々な種類の草木が周囲に生い茂る、外見だけがおんぼろな山中の洋館。 その出口から出てきたヒイロとファサリナを出迎えたのは少女の死体だった。 茂みの真ん中に投げ出された血まみれの死体だ。 上等な服にいくつもの銃創。そこから溢れ、すでに生乾きの赤黒い液体。 よく見れば身体のそこかしこに死斑が浮き出ており、耳や鼻から血液混じりの体液が垂れ流され始めている。 生前はさぞかし見目麗しい少女であっただろう。 だが今は誰もが目をそむけるほどに死の気配を振りまいているだけの物体に成り果てた。 これが死だ。 人がモノになる。 そこに幻想はない。 人が腐り果てる。 そこに美しさなどない。 ソレはもう人ではない。 「リ……リリー……ナ……」 それはヒイロの掠れた声だった。 ファサリナは少なくともここで出会ってから、この少年のこんな声を聞いたことはなかった。 鍛え上げられ、引き絞った若い身体が微かに震えている。 何があろうとも動揺とは無縁と思われた鉄面皮のこの少年が、だ。 それだけでファサリナはヒイロの心中を察した。 この死体の首元を見れば、自分たちと同じ境遇であることは容易く知れる。 そしてヒイロの知る人物であることも彼の反応を見れば一目瞭然だ。 ファサリナにその名前を教えなかったのは警戒していたが故だろう。 ゼクス、トレーズなどの名前とは違う、迂闊には教えられない大事な名前だったはずだ。 その名前の持ち主である少女。この目の前の死体が……リリーナ。 下手に声などかけられない。 ゆえにヒイロの呟きを最後として、この場に空虚な静寂が満ちていった。 今は彼は何を思うのだろう。 ファサリナがヒイロについて知ることはあまり多くない。それゆえにその心中を慮ることなどできなかった。 佇む少年は動かない。まるで一枚の写真のようにファサリナの見る風景は固まっていた。 「…………少しお伺いしてもよろしいでしょうか、ヒイロ」 無視しているのか聞こえていないのか、反応はなかった。 ただ立ち尽くして少女の死相を凝視している。 その視線を遮るようにしてファサリナはかつてリリーナと呼ばれた少女の遺骸へ、そろりと身を寄せた。 その手には洋館の内部から携えてきたカーテンの布地がある。 ヒイロが動かぬ間に館の中から調達してきたのだ。 それをイスラムの女性が纏うスカーフのようにしてリリーナの身体へ巻きつけていく。 「何のつもりだ……」 弱々しく呟くように。 その声には力がなかった。 「この方は貴方の大事なひとなのでしょう……?」 「何のつもりだと聞いている」 やや強い声。 だがいまだに虚ろな感情を隠せるほどのそれではない。 「弔う前にせめて死化粧を」 「……化粧?」 「ええ、この方の姿を見ることができるのはこれで最後。ならば出来る限り美しく、貴方の想い出の中へ刻んであげたいと思います……」 手櫛で髪を軽く整え、顔の汚れをカーテンの裾で丁寧に拭きとってやる。 ヒイロはその作業を邪魔しない。佇み、ファサリナがリリーナを清める作業を言葉ひとつ発さず見つめていた。 自分の背後に立つ少年は今、悲しみとともにこの少女の記憶を己の脳裏に焼き付けているのだろう。 それでいい。肉体は死んでもその生前の記憶は誰かの心の中に残る。 ならばその死者はその思い出の中で永久に生きることになると、同志たるカギ爪の男はそう言っていた。 ファサリナの記憶の中にはあの優しげな微笑が今でもはっきりと思い出せるほどに深く刻まれている。 そう、例え肉体は死んだとしても自分の中で同志は生き続けているのだ。 だからこその理想のために躊躇わずこの身を捧げることができる。平和と調和を目指すその想いが胸の中にある。 ヒイロにもそうあって欲しい。この少年は強い。安々と悲しみに折れるような人間ではないだろう。 だがこの島に連れ去れられてきた現状のファサリナにとっての唯一の希望たる彼には、自分と同じ気持ちを理解して欲しい。 無愛想だが妙に誰かの気持ちに敏感なところのある不器用な彼に、自分の気持ちを理解して欲しい。 汚れた女だ。自覚はしている。 よりによって、少女の死によって悲しみにくれるヒイロ・ユイにこの自分を理解して欲しいと、浅ましくもそう言っているに等しい。 だってこの哀しみは一人で背負うには重過ぎる。傷の舐めあいでもいいから誰かの理解が、温もりが欲しかった。 同志が生きているにせよ死んでいるにせよ、その理想のために自分がやるべき事は多く、道は険しい。 その道をたった独りで行けというのか。誰かを頼りにするのはそんなにもいけないことなのだろうか。 そんなはずはない。ヒイロでも、異常とも言えるほどの強靭な精神であろうとも、そんな気持ちを少しでも抱かないはずはない。 だって彼は、ああ見えてとても優しい子だとファサリナは思うからだ。 ヒトは結局自分のことしか理解できない。 ゆえに自分の弱さを真っ直ぐに見つめられればこそ、誰かの弱さを汲み取れる優しさが生まれるのだから。 それができるなら、きっと――、 ――ごめんなさい。 この少女がヒイロにとってどんな存在なのかは知らない。 だがこころの中で謝りの言葉を呟いて、ファサリナはリリーナの唇に彼女自身の血で紅をひいた。 半ば乾いたその血は赤というより暗褐色に近い。 生前は清楚で明るい雰囲気を纏っていたと思われる快活そうな少女の猊は、白蝋と見紛うばかりの青白い肌にダークな口紅という組み合わせによって、妖艶ともいえる気配に包まれていた。 血に汚れてボロボロのドレスはその全身を包んだカーテンの布地によって隠されており、その顔はファサリナの化粧によって見違えるようだ。 茂みの緑に覆われたローブ姿の美しい少女がそこにあった。 「なぜこんなことをする」 ヒイロの質問は先ほどと同じだった。 ファサリナは全ての作業を終えて振り向き、少年の真ん前まで歩み寄る。 相手は微動だにしない。だからこちらからさらに一歩近づく。 「……答えろ」 互いの瞳の中に向き合う相手の姿が映る、それほどの近さ。 ヒイロの瞳は揺れている。それがファサリナには見えた。 「ヒトは死んでしまってもその人を大切に思う人間の記憶の中で生き続けます。それこそが思い出というものではないでしょうか」 「……否定はしない」 「それに……女は想いを寄せる殿方には一番美しい姿を見せたいと思うものです。この方もきっとそう思うでしょう」 「何を勘違いしているか知らないが、俺とリリーナは――」 ファサリナがさらに一歩踏み出した。 顔と顔が触れ合う距離。 ふわりと柔らかな風が女の匂いを含んでヒイロの肌に触れた。 そしてその発生源たるファサリナの肌も触れ――――なかった。 「ええ、ですからこれは私の一方的な勘違いです……ごめんなさい、ヒイロ」 まさに触れるか触れないかの距離で、生めかしい薄桃色の唇が言葉を紡いだ。 その言葉をくだらないと切って捨てる、そういうことをヒイロはしない。 ただ無言で答えを隠す。否定ではなく、答えることを拒絶。 「――同志が生きている確率は……殆ど無いと言っていいでしょう」 「何?」 すっと距離をとってから視線を外して、ファサリナは言った。 冷静に考えればわかることだったのだ。 「同志を付け狙う者の名前を覚えておりますか」 「ヴァン……だったか」 「ええ、彼は思い返せば同志のことを『カギ爪』と呼んでいました。おそらく彼は同志のお名前など知らないのでしょう」 「そうか……俺とお前の情報のみによる推測だが、この島には何人かの括りごとに何らかの面識がある人間同士が集められている」 名簿にファサリナの知る名前は、自分自身の他にいくつかある。 ヒイロも数こそ違えど知る名前が複数あるという。 つまり知り合いが全くいない人間はここにはいないのではないだろうか。 この何でもありのサバイバルにおいて、面識のある知り合いという存在は、徒党を組んで身を守る上でとても有効だ。 それにヒイロにとってのリリーナのように、ファサリナにとってのカギ爪のように、守りたい存在があるならばこそ自ら捜索のために動くだろう。 その逆としてヴァンという男のような誰かの命を付け狙う人間という存在にとっても、理由こそ違えどその誰かを探しに自ら動く動機となる。 自分だけの命が大事なら、どこかに引きこもっていれば生存確率は格段にアップする。 だが皆がそうしていたら、ほとんどのプレイヤーは遭遇する確率が激減、殺し合いも発生する確率は同様に低くなる。 結果、帝愛の言う『ゲーム』はつまらないものになるだろう。少なくとも自分たちを監視して殺し合いを眺める存在にとっては。 ヒイロもファサリナも知人の捜索にあたって一人での単独捜査に限界を感じているからこそ、こうして行動をともにしているのだ。 それがないならわざわざ危険を承知で歩きまわったりはしない。見知らぬ誰かと組むこともなかったろう。 帝愛はそれを見越してこのような人選をしたのだとしたら。 「ヴァンという男が名簿を見たとき、カギ爪の本名が書かれていたとしてもそれが目的の人物とはわからない……」 「ええ、ですから彼にもわかるように『カギ爪の男』と書いたのでしょう」 理屈は合う。 ヒイロもそれを認めた。 だがそれを認めるということはファサリナ自身が最も認めたくない想像を認めることと同義だ。 「それを受け入れてこれからお前はどうする気だ」 「同志の理想を果たすために動きます。同志の想いは私の胸の中で生きている。私はそれを実現させなければなりません」 「生き残って同志とやらの代わりを果たすために動くか。それがこのゲームに乗るということなら……」 ――お前を殺す。 ヒイロは無言でそれを伝える。 その瞳の中に最早、揺れは無い。 「ヒイロ、貴方の中のリリーナさんは貴方に何を望むのですか?」 「質問の意味が理解できかねる。わかるように言え」 「貴方が最も守りたかったヒトはもうこの世にいないのですよ? そしてそれは私も同じ」 ファサリナはそっと悲しげに眼を伏せた。長いまつげが濡れた瞳に被さり、眼から透明な液体を溢れさせる。 ヒイロ・ユイはたしかに強い。だがその強さはその若さには余りにも似あわず、ゆえにファサリナの眼には歪に映った。 感情を肯定するも、自身の感情そのものは完全に制御しているように見える。 まるで恐怖を知らない、完璧に訓練された兵士のようだ。 そんな彼が揺れたのはこの少女の死を見つめた時だけだった。 土壇場でも揺らぐことなく、自分の生き死にの境目ですらクールに状況を見つめることができるにも関わらずだ。 リリーナという少女がヒイロの大切な人物だということは誰にでもわかる。 しかしそのような人間らしい感情を持ち合わせているのに、なぜこうも自分を生き死にの埒外へと捨てられるのか。 ファサリナには未だにヒイロ・ユイを完全に理解することはできない。 だが完全に理解せずともアキレス腱を握れればそれで十分。 「……だから何だ」 「私たちは……協力できるのではないでしょうか。もし主催の力が死者を生き返らせることが可能であるなら――」 「馬鹿げている。冷静になって考えろ」 「それをいうならば、私達がここへ連れ去られた事自体がすでに馬鹿げたことです」 それを完全に否定する意見をヒイロは持っていないはずだ。 ファサリナ自身、世界中で暗躍するカギ爪の組織では幹部といってよい。 そんな組織の最重要人物を拉致など、少なくともファサリナの知る世界の人間にできるわけがない。 「……だとしたら、どうする。優勝賞金の十億では、お前と俺の求める人物をそれぞれ五億×2で蘇生・帰還させればそれで終わりだ」 「私はそれで構いません。同志の胸の中で私はあの方の記憶となって、そして一つになるのですから」 「自己犠牲か……俺もそうだと何故お前は考えられる?」 きっとこの少年も同じはずだ。 少なくとも彼にとって最も大事な存在は己ではないのだ。 だから例え自身がどうなろうとも、リリーナという名の少女のことを最優先にするだろうという確信があった。 「貴方は平和を求める同志のお考えを私から聞いたときに、その思想を肯定して下さいました。 ですが貴方はその一方で、このゲームを主催する帝愛に戦いを挑むことを躊躇っているようには見えません」 「怖気付いたのかファサリナ。奴らは確かに強大だが、お前がその力に屈するというなら、敵として排除するまでだ」 「そうではありません、貴方自身のあり方のお話をしているのです」 「俺自身だと……!」 なぜファサリナがヒイロ・ユイの事をそう思ったのか。 それは一つの疑問がきっかけだった。 平和を肯定し、だが戦いに躊躇いを見せない――矛盾したように見えるこの二つの要素は少年の中でどうやって並びたっているのか。 争いを忌避するから平和を求めるのではないのか。 ならば何故迷いなく闘争の中へ飛び込む決断を下せるのか。 その答えはおそらくこれだ。 「貴方は平和を肯定する――ですが、その平和の中に貴方が入ることを考えていない」 ヒイロは答えない。 だがその平和を担う存在がヒイロ自身でないことはファサリナにも解る。 その研ぎ澄まされたナイフのような闘争技術と冷徹な意思は、戦争のためだけに存在するものだからだ。 「貴方の言うように行動して、結果として勝利するに至ったとしましょう。ですが、その確率はどれほどのものなのでしょうか? 怖いのではありません。私の存在の全ては同志のためにあります。同志が理想を追い求めるのならば、その理想のためにこの身を捧げます。 ですが私は貴方とは目的を違えるものと思っていました。貴方が何のために戦っているのかわかりませんでしたから。 ゆえに言い出せずにおりました。貴方は強い……そして……貴方のような殿方の敵になるのは辛いことです。 ですから――」 ちゃきり。 コルトガバメントの冷たい音。 「ヒイロ……」 少年の右手が構える暗い銃口がまっすぐにファサリナを狙っている。 「もういい、わかった。お前は俺とは道を違えた。ならばここで殺す」 「いいえ、違いません。貴方は私と同じです!」 「違う。俺は、己の妄執と作戦目的を混同などしない」 「ならばなおのこと貴方の冷静な判断で見極めて下さい! 貴方の言うようなことで同志が生き返る確率はどれほどのものですか!? 私達を拉致してきた彼らの言う事を鵜呑みにすることは確かに危険かも知れません。 ですが普通は、わざわざここまで大規模な仕掛けを施してまでこんな回りくどいことをするでしょうか!?」 そうだ。 相手は――帝愛は普通ではないのだ。 どうやって自分たちを連れさってきたのか分からない。 どうやっていつの間に爆弾首輪を取り付けたのか分からない。 どうやってこのデイパックに質量を無視した荷物を入れられるようにしたのか分からない。 「彼らに勝てますか? よしんば勝ったとしても私達の求める人間を生き返らせることができなければ、それは勝利でも何でもありません。 つまり彼らが生き返らせる技術を持っていることを信じなければ、貴方の作戦は成り立たない。 貴方は帝愛の常軌を逸した『魔法』を信じているのです! 人を、人間を生き返らせることが可能だと!」 「……!!」 ヒイロの表情が変わった。 眉間に険しい皺がよって、その秀麗な眉目を歪ませている。 ぎりっ、と歯が軋む音が聞こえてきそうなほど唇の端に力がこもっているのがわかる。 「もし貴方が……自らの命すら捨ててこの方を救いたいと願うのならば、私たちは協力できるはずです。 二人で生き残りましょう。私達全てを生きながら拉致した相手と戦うよりは、勝率は遥かに高いのではないですか?」 「…………最後に残ったお前が俺を裏切り、同志と二人で生還する可能性もありえる」 「その時はどうぞ……約束のとおりにしてください」 ――お前を殺す。 以前、ヒイロはファサリナにそう言った。 ファサリナの提案では、優勝者となるのはヒイロ・ユイ。 そして望みはリリーナとカギ爪の蘇生と帰還。 自身の生死は度外視。 だがファサリナとて何の計算もなしでこの少年を信じたわけではない。 このようなことを約束しようと、最後まで生き残ることができなければ一切の意味を成さないのだから。 今の段階ではどうとでも言えるただの口約束でしかない。 その時になってヒイロが信じるに値しない相手と分かったならば、その時はその時だ。 だが彼がファサリナが感じた通りの人間だったなら――ヒイロに殺してもらえるのは悪くないことかもしれないとファサリナは思っていた。 「先程、私に手榴弾を分けていただいたお返しです……もし協力していただけるなら、これを」 「ゼロシステムだと……!?」 前もって確認しておいたファサリナの支給品のひとつだ。 携帯できるようにメット型になっており、これをかぶる事で効果を発揮できるらしい。 だがいまいちデザインがごつくて気に入らず、そして説明書きに書いてあったリスクの大きさゆえに今まで使おうとは思わなかった。 だが強靭すぎるほど強靭な精神を持つこの少年ならば、もしかしたら有効に使えるのではないだろうか――そう考え、ヒイロに渡そうと思ったのだ。 「ククク……ハハハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」 メットを手にとって説明書きを読み終わったヒイロは突如として笑い出した。 彼のこんな行動など全く予測していなかったファサリナは思わず首をかしげながらも問う。 「ヒ、ヒイロ? いったい……」 「……いいだろう。ならばお前の選んだ未来が正しいかどうかゼロに聞いてやる……!」 戸惑うファサリナをよそに、皮肉気な形に口元を歪めながらヒイロはおもむろにそのメットを被ってスイッチを入れた。 ブゥン、という起動音と、続いて甲高い電子音。 その連続する音はモーターが回転数を上げるように、どんどん速くなっていった。 「ぐっ……」 「ヒイロ……!?」 ――――そして少年は血塗られた未来を垣間見る。 ◇ ◇ ◇ 殺した。 殺し続けた。 ナイフで、銃弾で、毒で、爆弾で、モビルスーツで。 貫いた、切り裂いた、燃やした、沈めた、押し潰した。 一度としてその意味を疑わず、その価値を慎重に推し量り、弱者の声なき声の代弁者として、己の感情など一切顧みることなく。 地球政府に立ち向かい、凶弾に倒れたコロニーの英雄――ヒイロ・ユイの名を与えられたのはそのためだ。 少年の肉体はコロニーのためにあった。 少年の感情は平和を求めるものたちのためにあった。 少年自身のために少年が動くことなど何一つとしてなかった。 だからこんなことはいつもどおり。 いや――もしかしたら名もなき少年は今、初めて己自身の中から沸き起こった感情に従ったのかもしれない。 平和を創り上げるのは彼女の役目だ。 自分は戦うことしかできないから。 だから平和をもたらすことができたなら、彼女に自分は必要ない。 殺した。 死んだ。 殺した。 死んだ。 殺した。 死んだ。 たくさん、たくさん、たくさん、たくさん――――だから、どうした。 「命なんて安いものだ…………特に俺のは」 ――――――――――リリーナ。 ◇ ◇ ◇ 「ぐううっ! はぁっ……はぁっ……」 「ヒイロ!」 息も荒く、ヒイロは膝をついてかぶっていたそれを脱ぎ捨てた。 どさりと草のうえにヘルメットが落ちる。 そこへファサリナが心配そうな表情で駆け寄った。 「大丈夫ですか!? 貴方ならと思ったのですが、やはり……」 「いや……問題ない」 ゼロが見せた未来はすでになく、ヒイロの目の前にはファサリナの心配そうな表情と、そしてリリーナの遺体。 状況を確認する。訓練によって身体に無意識レベルで染み込んだ行動。 身体能力問題なし。 精神面、ゼロシステムからの回復まで数秒。 肉体の動きを確認するようにゆっくりと立ち上がった。 「ファサリナ――」 「はい」 第二回の放送が近い。 太陽が真上でギラギラと輝きながら二人を見つめていた。 その光に照らされたファサリナは、どこか写真のようにぼんやりとヒイロの瞳に写っていた。 「答えは出た。俺は――――」 C-3/憩いの館/1日目/昼】 【ファサリナ@ガン×ソード】 [状態]:健康 [服装]:自前の服 [装備]:ゲイボルグ@Fate/stay night [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1個(確認済み) M67破片手榴弾x*********@現実(ヒイロとはんぶんこした) 軽音部のラジカセ@けいおん(こっそりデイバックに入れた) [思考] 基本:ヒイロと協力、無理だと判断した場合単独で殺し合いに乗る 1:ヒイロと共に行動する 2:間欠泉を調べ終わったら、早く新しい同士を集めたい 3:なるべく単独行動は避けたい 4:ゼロなどの明確な危険人物を排除。戦力にならない人間の間引き。無理はしない。 [備考] ※21話「空に願いを、地に平和を」のヴァン戦後より参戦。 ※トレーズ、ゼクスを危険人物として、デュオ、五飛を協力が可能かもしれぬ人物として認識しています ※ヒイロを他の惑星から来た人物と考えており、主催者はそれが可能な程の技術を持つと警戒(恐怖)しています ※「ふわふわ時間」を歌っている人や演奏している人に興味を持っています ※ラジカセの中にはテープが入っています(A面は『ふわふわ時間』B面は不明) 【ヒイロ・ユイ@新機動戦記ガンダムW】 [状態]:左肩に銃創(治療済み) [服装]:普段着(Tシャツに半ズボン) [装備]:基本支給品一式、ゼロシステム@新機動戦記ガンダムW コルト ガバメント(自動銃/2/7発/予備7x5発)@現実、M67破片手榴弾x*********@現実(ファサリナとはんぶんこした) [道具]:B-2と記された小さな紙切れ@現実 『ガンダムVSガンダムVSヨロイVSナイトメアフレーム~戦場の絆~』解説冊子 [思考] 基本:??? 1:リリーナ…… [備考] ※参戦時期は未定。少なくとも37話「ゼロ対エピオン」の最後以降。 ※D-1エリアにおいて数度大きな爆発が起こりました。 ※ヴァンを同志の敵と認識しています ※ファサリナの言う異星云々の話に少し信憑性を感じ始めています。 ※ファサリナのことは主催に対抗する協力者として認識しています。それと同時に、殺し合いに乗りうる人物として警戒もしています。 【ゼロシステム@新機動戦記ガンダムW】 正式名称「Zoning and Emotional Range Omitted System」(直訳すると「領域化及び情動域欠落化装置」)。 分析・予測した状況の推移に応じた対処法の選択や結末を搭乗者の脳に直接伝達するシステムで、端的に言うと勝利する為に取るべき行動を予めパイロットに見せる機構である。 高性能フィードバック機器によって脳内の各生体作用をスキャン後、神経伝達物質の分泌量をコントロール。 急加速・急旋回時の衝撃や加重等の刺激情報の伝達を緩和、或いは欺瞞し、通常は活動できない環境下での戦闘行動を可能とする。 更に外部カメラ、センサーによって得た情報を、パイロット自身の視聴覚情報として伝達する事も可能である。 しかし本システムが提示する戦術とは、基本的に単機での勝利を目的としたもので、目的達成の為であればたとえ搭乗者の意思や倫理に反する行為も平然と選択する。 状況によっては搭乗者自身の死や機体の自爆、友軍の犠牲もいとわない攻撃など、非人間的な選択が強要される事もあり、これがパイロットの精神に多大な負担をかける。 そのため、ただゼロシステムを使うだけではシステムに命令されるがまま暴走するか、もしくは負荷に耐え切れず精神崩壊・廃人化を招く恐れがある。 本システムを体験したデュオ・マックスウェル曰く、「まともな人間に扱える代物ではない」とのこと。 ヒイロはエンドレスワルツの五飛戦において、このシステムの命令を完全に捩じ伏せながら戦っていた。 このロワ内では携帯できるようにメットの中にシステムが内蔵されている。外見デザインはTV版最終決戦でドロシーがかぶったものを参照。 時系列順で読む Back 神浄の恋せぬ幻想郷(後編) Next 「 」に挑む意思 投下順で読む Back 神浄の恋せぬ幻想郷(後編) Next 「 」に挑む意思 133 戦場の絆 ヒイロ・ユイ 171 燃えつきない流星 133 戦場の絆 ファサリナ 171 燃えつきない流星
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H and S. ◆hqt46RawAo これはまだ放送前の時刻である。 エリア【F-1】地区。市街地にて。 無人の民家が立ち並ぶ路上を歩きながら、魔術師エツァリは頭の中を整理していた。 数時間前まで、エツァリは他の参加者に出会うことも無く、その身に危険が迫る事もなく、ただ一人きりで歩くだけであった。 しかし彼はここ数時間の内に、実に様々な事態に見舞われる事となったのである。 知らされた想い人の死、発見した少女の死体、固めた決意。 そして、それを揺るがしかねない敵との圧倒的な力量差を知り、この島に来て初めて他の参加者と接触した。 これに加えて、最後には首輪を解除した女性を発見したのだ。 再び一人きりになった彼が、一気に得た情報を分析し、 自分がこれより何をすべきかに思慮を巡らせたのは至極当然の行動であり。 それによって、自身が置かれている状況を正しく理解する事も、また自明の理であった。 □ エツァリは市街地を進む。思考しながらも、その歩みはかなりハイペースなものだった。 (さて、それでは一つ一つ考えをまとめていきますか。正直…考えたくない事も多々あるのですがね……) まず思考するのは主催者について。これから立ち向かっていく敵についてだ。 (異世界から人を集める力。……聞いたことも有りませんが、インデックスの魔道書の力であればあるいは……) エツァリはヴァンとの情報交換によって、このゲームに参加している者の大半が、異なる世界より集められていると見当をつけていた。 ヴァンの言う事を完全に信用した訳ではないが、ヴァンが語った世界観には実感が込められていたし、無駄な嘘をつくタイプにも見えなかった。 それにもし間違っていても、後に他の参加者と交流すればすぐに分かることだ。実害は何処にもない。 故に、今はその前提で思考を進める事にする。 (しかし例え『異世界間の人物転送』が魔道書の力だとしても、インデックスを洗脳したものが別に居るはず) このゲームが遠藤とインデックスの二人だけで企画された物とは到底思えない。 インデックスを操り、その力を利用している者が裏に居るはずだ。 それがエツァリが知る世界の人間なのか、それとも異世界の者かは判断できないが。 (今の時点では黒幕の正体なんて想像もできないですね……) せいぜいが、あの漆黒の鎧姿の男を一参加者として捕らえる程に強大としか予想できない。 他の参加者と交流するなどして情報を増やし、推測していくしかないだろう。 あの男より強大など、エツァリには頭が痛くなる話であったが、いまだ正体が見えていない分、 彼は立ち向かう事にそれほど恐れを抱く事もなかった。 次に首輪について考えてみる事にする。 このゲームの主催者を殺し、死者蘇生の業をもって御坂美琴を生き返らせる。 彼にとっては、これが最終目標。 ならばいかなる行動方針で動こうとも、最終的には主催者達と戦わなくてはならない。 その土俵に立つ為には首輪の解除が必須な課題だ。 しかし、その方法を知っているであろう女は眠り続けるばかりである。 ただの眠りには見えず、いつ起きるかもわからない。 だからエツァリは一度、自分が持てる知識で解除法を推定してみることにした。 彼は、回収した首輪を触りながら思案する。 (この薄さ……学園都市の技術でも致死レベルの爆発物を仕込むには無理がある。ならば機能の大半は魔法で構成されているのだろうか? しかし、それならば上条当麻の右手で即解除されてしまう事になる。 逆に『異世界の進んだ技術力』で説明をつける事もでますが、それだけだと今度は参加者の魔法や技術次第で、いとも容易く解除されるかもしれない) 幻想殺しと魔術師、その両方を縛るには技術力と魔術の両立が不可欠と考える。 (つまりこの首輪は複数に渡る異世界の魔法と、異世界の技術力を組み合わせて作られた代物。 解除するにはそれぞれの世界に対応した魔術に精通する者と、それぞれの世界に対応した高度な技術力を持つ者、 それらが複数人揃わなければならない。と言ったところでしょうか……?) それなりに形になった首輪への考察を基盤に、今度は具体的な解除法を考えていく。 (使われている魔術の中には当然僕達の世界の魔法も混じっているはず、これは上条当麻と合流できればイマジンブレイカーで打ち消せるはずだ。 問題は他世界の魔法と技術力か……。魔法はすべて上条当麻が消せると楽観的な仮説でいったとしても、技術力だけはどうしてもネックになりますね……) エツァリ自身や彼が知る人物に、機械工学に対応できる人間がいない以上、この島の中で技術力に秀でた人間を何人か見つけるしかないだろう。 『上条当麻』か『魔術に秀でた者』、それに『異世界技術に対応した複数の技術者』を一同に揃える必要がある。 これが、エツァリが彼なりに考えて出した首輪解除法の結論だった。 この仮説が正しいとすれば急がねばならない、解除に必要不可欠な人物が全て死亡してしまったら、首輪を解除する手段が消え果る。 (そうならない様に、この人には早く起きてもらいたいんですがね……) 心の中でボヤキながら、エツァリはディパックの中の女に思いを馳せる。 (この女の人が目を覚まして、ハッキリとした首輪の解除法を示してくれれば、あるいは簡単に……ん?) そこまで考えたとき、彼はどこかに無視できない引っ掛かりを覚えた。 今しがたの首輪に関する考察。 それが的を射たものであると仮定して、眠る女が首輪を解除した言う事はすなわち……。 「…………ありえない」 エツァリの口から呟きがもれる。 予兆のような危機感に見舞われ、思わず足を止めていた。 「たった十二時間、いや六時間以内に『魔術師』と『技術者』を揃えた?」 ヴァンの話ではこの女を最初に発見したのは、第一回目の放送より前の事だったらしい。 それまでににエツァリが考案した条件を満たすことなど到底不可能だ。 もし、他に方法があったとして、それが例え単独で行える物だとしても。 六時間以内に条件を満たして首輪を解除し、にも拘らず市街地の真ん中で眠りこけて起きない。 そんな状況がありえるだろうか? 今しがたエツァリは上条当麻などの要因を考えて、首輪の強固さをよく理解した。 それを踏まえて考えてもみれば、そもそもこの短時間で首輪を解除できる事の方が既に異常。 これではまるで、最初から首輪を着けていないほうが釈然とするような。 つまり―― 「この女はまさか……」 参加者ではない、主催者側に属する人間。と、考えたほうが自然ではないだろうか? 「―――ッ!」 その直感に、エツァリの全身を強烈な悪寒が走り抜けた。 背負うディパックがやけに重く感じる。無論錯覚だ、何を詰め込もうともディパックの重量に変化は訪れない。 彼はようやく、自分がどれほど異質な存在を背負っていたのかを理解したのだ。 (この女は何者だ?自分は一体なにを背負っている?) あふれ出した焦燥と寒気を押さえつけ。 エツァリは他の全てを思考からそっちのけて、女の正体を推測した。 (有り得ない短時間で首輪を解除せしめた人物。 あるいは参加者外、主催者かそれに繋がりうる人物) 思い浮かんだのはその二択。 どちらにしても、全力で警戒しなければならない不確定要素だ。 まるで死神を背負っているような感覚に囚われる。 とはいえ、放り出して逃げるわけにもいかない。 この女は主催者への重要な手がかりになるかもしれないし、首輪を外す事が出来るかもしれない要員をここで手放わけにはいかない。 膨大な危険が伴おうと、ここは接触しなければならないだろう。 いざとなれば此方には、切り札のトラウィスカルパンテクウトリの槍がある。 しかし、もしもこの女が主催の一味ならば、ただディパックに入れて持ち歩くなど危険極まりない。 手足を縛るなどして、目を覚ました時のために備えるべきだ。 (ああ……しかし縄がない。もう一度ショッピングモールに行かなければなりませんね……。 それに、この姿も不味い、主催者と繋がっている可能性のある正体不明の人物に、素顔を見られるのは避けたい) 落ち着きを取り戻しつつ、彼は判断をつけていく。 (この女が主催側の人間なら、恐らく参加者全ての情報も知りえているでしょう。 そんな相手に正体を明かしては、同時に自分の手の内を全て明かすようなものだ。 トラウィスカルパンテクウトリの槍も察知される……) 故に、この相手には他人の体で対応するべきだと、彼は判断した。 後に生じるかもしれない問題も、今は無視する。 本当の素顔を捨て去る事は出来ないが、貼り付けた仮面ならいつでも剥ぎ取る事が出来るのだ。 そして、仮の顔なら替えが効く、他ならぬ新たな素材こそ、この眠る女の皮膚である。 (焦らず、好機と捉えましょう。今の僕ほど主催者に近い参加者はおそらく居ない) そんな確信を胸に、エツァリは取り出した護符を握り締めた。 (主催側に接触する一大事だとすれば。警戒に、護符の一枚くらいは安いものですね……) □ 時刻は放送後へと進められ、場所もエリア【F-1】地区ショッピングモールへと移される。 ほとんど廃墟と化した百貨店の三階にて、荒耶宗蓮は意識を取り戻した。 まずは現状整理。周囲の状況と、自身の状態の把握に努める。 (ふむ……) 自身の状態に関しては数瞬で理解した。 意識の転移は無事成功、代替の肉体的損傷は皆無。しかし適合率は最悪と言っていい。 やはり急ごしらえで偽装した人形だった為か、この肉体は魔力の廻りが驚くほど悪い。 これまでの制限とは比較にならない程の能力抑制を受けている。 使用する脳が切り替わった為にギアスの効力を逃れ、再び魔術の行使が可能になったのはいいが、 三重に展開したまま移動が可能だった結界も、この体では恐らく一重しか展開できず、また常時展開も不可能。 体が女性の物に変わったことで格闘能力も減少している。 (これは少し、想定外だったか……) 弱体化どころの話ではない。これでは場合によると、武装した一般人にすら殺されかねない。 早急に対策を講じなければならない。 これまでの様にサーヴァントに向かって正面切るような立ち回りは不可能だ。 以降は、やり方を変える必要がある。 (それを考える前に、やらねばならない事が有るな) 少し遅れて周囲の状況を理解する。 ここはショッピングモール三階の、とある販売店の中。 元々何を売っていたのか分からない程に店内は滅茶苦茶であったが、近くに転がっていた看板がその場所を示している。 どうやら『日曜大工屋』という店であったらしい。 その床に荒耶宗蓮の肉体は転がされていた。 彼はそのまま床に体を投げ出した状態で、眼球だけをギョロギョロと動かして索敵する。 果たして人影は――あった。 2メートル程左に、ロープを物色している少女が一人。 荒耶に対して背を向けており、彼が起きた事には気づいていない様子だ。 それ以外にはこの場に誰もいない。 ならば、彼にとってするべき事はまず一つであり、 これからの事について考えるのは、その後でよかった。 「蛇蝎」 女性の物でありながら重苦しい呟きが発せられ、結界が周囲に広がっていく。 踏み込んだ者に静止を強要する領域が、少女を絡め取る。 「――なぁっ?!」 少女が驚いた声を上げたが、それも一度まで。 結界に囚われた少女は、それ以降声も発せぬままに硬直する。 それを見越し、荒耶も一気に全身を起こした。 馴染まない体の違和感に耐えながら少女の背後へと詰め寄り、首根っこを引っ掴んで、うつ伏せに押し倒す。 女性の腕力になったとはいえ、相手も少女。彼がしくじる事など当然無く、制圧は滞りなく完了した。 「――――!」 未だ静止の結界に囚われている少女は悲鳴も上げられない。 ただ苦悶の表情を浮かべながら、荒耶を睨む。 (このあたりが限界か……) 展開された結界は、既に揺らいでいた。 やはり一重であっても、移動しながらの使用には限界があるようだ。 事は早々に済ませるべきだろう。 荒耶は少女の首を握る力を強めた。 「――」 そして、荒耶の口から短い呪文が発せられ、首を押さえていた彼の掌から、魔力が少女の首輪へと流れ込んだ。 流し込まれた魔力は首輪の外面を覆っていた魔力の流れに溶け込み、一つの効果を示し始める。 荒耶宗蓮はこの島の結界を配備する役を請け負うと同時に、首輪の製作に携わった者の一人でもある。 核となる内部機器を操作する事は出来ず、よって単独では首輪の解除までは出来ないが、 首輪に対する外部干渉を防ぐ為の礼装の製作における中心となったのは、まさしく彼の魔術である。 であるならば。触れる事によって、それらに干渉する事は当然可能であり。 それによって、首輪の機能を一部だが阻害することも出来るのである。 今彼がやった事こそ正にそれ。 首輪外面に流れる魔力をいじり、首輪に仕込まれた盗聴器の集音を阻害させること。 やがて結界は消滅し、再び少女の体に自由が戻る。 既に首からも荒耶の手は離されており、すぐさま少女は四つん這いで荒耶宗蓮から距離をとっていった。 そうして、真っ直ぐにディパックへと縋り付き、中に入っていた銃を抜き取った。 「すまなかったな、こちらに害意は無い。私は君の味方だ」 店内のテーブルに腰を掛け、こちらに銃口を向ける少女に暗く沈んだ視線を返しながら、荒耶は初めて会話らしき声を掛けた。 声だけは優しげな女性の物である。しかし本来の荘厳な質を失わない魔術師の声。 それに話しかけられた少女――加治木ゆみの貌をした者は緊張感を高める一方であった。 荒耶は銃を構える加治木ゆみの正体がエツァリであることなど、とっくに看破していた。 エツァリは橙子人形が放送前から眠っていた故に、荒耶が加治木ゆみの死を知らぬ物と思い込んでいた。 しかし、実際には第二回放送はともかく、第一回目の放送は荒耶も把握している。 死んだはずの人間の姿を騙れる者は参加者では限られてくる。加えて、新しい体の皮膚が一部切り取られているのを見れば瞭然だった。 しかし、ここはあえて騙されたフリをする。 荒耶とエツァリが対等なのだと錯覚させてやるために。 加治木ゆみ――の皮を被った魔術師エツァリの首輪に仕込まれた盗聴器は無効化させた。 これで会話を始めても、主催者側に荒耶の生存が知れる事は無い。 ここまで弱体化した荒耶では、単独で式を捕らえる事などもはや不可能。 この体が完全に馴染むまではまだまだ時間が掛かる。ならばそれまで座して待つ、というわけにもいかない。 万が一にもゲームに乗った者に出会う事は死を意味する。今度こそ保険は無い、これ以降は安全策で望むべきだ。 荒耶にとって、今は一刻も早くマンションへと向かう事が最優先だった。 そこならば体の適合も短時間で可能だろうし、主催の目と殺し合いに乗った者の目を同時に逃れる事が出来る。 しかし、そこにたどり着く為の道のりにも危険が伴うだろう。 なればこそ、彼が目の前の魔術師を利用しない手は無い。 (我が目的の成就のために利用させて貰うぞ、異世界の魔術師よ……。) 目的はただ根源へと至る為、荒耶宗蓮は厳かに言葉を紡ぎだす。 「私の名は蒼崎橙子、魔術師だ」 こうして、仮面を被った二人の魔術師が邂逅した。 ■ 「私の名は蒼崎橙子、魔術師だ」 嘘の名乗りが、荒れた店内に響く。 エツァリは未だ銃を下ろす事無く、それには応えない。 荒耶はさらに言葉を続けた。 「質問だが、君は殺し合いに乗っているのか?」 「乗っていません。貴女はいったい何者ですか?」 その問いに、ようやくエツァリも言葉を返した。 同時に自らも問いを投げ、答えを待つ。 「私は主催者側の人間だ」 エツァリは自分の予想が的中していた事を知り。 更に探りを掛けた。 「証拠は?」 「ふむ……確か、君の名は加治木ゆみだったな。特に親しい人間は、この島には東横桃子のみ。 後何人か顔を知っている者もいるが、友人と呼べるのは東横だけだろう。こんな所でいいか?」 荒耶は『参加者の個人情報を知っている事』を証拠として示した。 正体を見破っている事は、悟らせない。 対してエツァリは、手に入れた「借りた顔の主の情報」を記憶に刻み込んだ。 (なるほど、では『加治木ゆみを殺した人間』か『東横桃子』にさえ出会わなければ、変装のボロが出る事は無い……か。) そうすると当然、問題になってくるのは東横桃子であり、その特徴を知る為に更なる問いを投げた。 「確認の為に聞いておきます。東横桃子の外見的特徴は?」 その後幾つかの問答を終え、ようやくエツァリは銃を下ろす。 とりあえず、目の前の女が主催者側の人間で、本当に害意が無い事は分かった。 そして、彼は核心に迫る問いを投げる。 「貴女が主催者側の人間なら、一体なにが目的で接触してきたのですか?」 「それについては最初から話そう、まず私が何故このゲームに関わることになったのかだが……」 荒耶が語った経歴はまとめると大体以下の様な物であった。 自分は主催者達の目論見を察知して、それを止める為にゲームに紛れ込んだ者である。 この島の結界の構築を請け負い、首輪の製作にも関わった。 期を見てゲームを内部から崩壊させようと狙っていたが、主催者側から信頼されておらず、ゲーム開始と同時に殺された。 だが、間一髪で支給品に紛れ込ませておいた代替の肉体へと意識を移し、生きながらえた。 今まで眠っていたのは体への適合がなかなか終わらなかった為である。 嘘が半分と本当が半分という割合だったが、エツァリにそれを判別するすべは無い。 「先程の無礼は盗聴器を止める為のものだ。主催者達に生存を知られる訳にはいかんのでな」 それでも、エツァリは納得する一方で、未だに警戒感を拭えずにいた。 確かに今現在は、目の前の女に害意が無いのは理解した。もし殺す気なら先程エツァリは死んでいただろう。 しかし、そうそう都合の良い存在が、都合よく自分の目の前に現れるだろうか? 最低でもこの女の言う事を全て丸々信用するのは危険すぎる、と判断する。 やはり、警戒心を保ち、正体は隠しておくべきだろう。 味方だと判断するには早過ぎると断じ、エツァリはポケットの中の黒曜石を握り締めた。 いざとなれはこれを使って打ち倒す、と言う意思をこめて。 「僕は自分の目的の為に主催者達を殺します」 「なるほど、君は主催者を打倒する為に行動するか……。なら我々は協力し合える関係かな」 「貴女はこれからどうするつもりですか?」 「『敵のアジト』に向かうつもりだよ、そこに幾つか主催に対抗する術を施してある……。 君も来るか?あそこなら、あるいは首輪の解除も可能かもしれん」 その問いにエツァリは無言で頷いた。 目の前の女が敵か味方かはまだ判断が下せないが、主催者側であることは確実で、『敵のアジト』に何か在るのも確かだろう。 ならば、今はとにかく付いて行って、本当に味方であればそれでいいが、敵であれば撃退する。 リスクは承知だったがやるしかないだろう。 この女には油断せず、二度と先程の様な隙は見せまいと、彼は硬く心に誓った。 □ 二人がショッピングモールを出た瞬間。 ショッピングモールの屋外駐車場にて、荒耶はそれを見つけた。 「加治木ゆみ、これが何だか分かるか?」 荒耶は駐車場の隅に取り付けられている二つの装置を指で指す。 近づいてみるとそれぞれに、『首輪換金装置』『無人自動販売機』と書かれている。 「ああ、蒼崎さんは放送を聞き逃していたんでしたっけ。 先の放送で『首輪をペリカに換金するシステム』と『ペリカを使える自動販売機』が設置される事になったんですよ。 しかし、考えてみると妙ですね。何故このタイミングで、こんなシステムが導入されたんでしょうか? 首輪を持っていられると都合の悪くなる出来事でもあったんでしょうか?蒼崎さんは何か心当たりありますか?」 「いや……」 それとなく探りを入れるエツァリに、首を振る荒耶であったが当然彼にはその理由が分かっていた。 (魔術行使に対する防御礼装の停止。焦ったか……遠藤) 彼が意識を取り戻した後も、首輪への魔力流入は途絶えさせている。 当然そんな事をすれば主催側に荒耶の生存が知れることになるし、彼にはもう主催側に払う義理も無かった。 これをむしろ好機として行動する。 主催が彼の事を死んだと思っているのなら、これ以降は殺し合いの扇動に労力を割かれることなく自由に動く事が出来る。 問題は能力の低下だけで、それもマンションに着けば解決するのだ。 その為に、エツァリには武器となり、盾となって貰う予定である。 「首輪換金は論外として、自動販売機の方は……っと」 エツァリの言葉につられて、荒耶も販売機の方を見る。 そこに書かれていたメニューは以下の通りであった。 ――――――――――――――――――――――― ミネラルウォーター :120ペリカ 拳銃 (エンフィールドNo.2) :1000万ペリカ 散弾銃(モスバーグM590) :2000万ペリカ バイク(V-MAX) :3000万ペリカ タコス移動販売車(片岡優希仕様):4000万ペリカ ヘリコプター(燃料極小) :1億ペリカ ※時間経過で商品は増えていきます。 ※各地の販売機によって、商品は多少変更されます。 ――――――――――――――――――――――― それを見て、エツァリの表情が僅かに曇る。 「僕の持ち金ではバイクまでが限界ですね。あと一千万あれば車を買えたのですが……」 「ならば二人乗りで行くしかないだろう。君は運転が出来ないか。」 「でき……あー、できません」 彼は運転出来たのだが、自分が加治木ゆみの姿をしていた事を思い出し、出来ないと偽った。 「……そうだったな、なら私が運転しよう。君は後ろに乗りたまえ」 「…分かりました」 そうして、エツァリは持ち金を全て使い、バイクを購入する。 すると一台も車が止まっていなかった駐車場の真ん中に、大型の黒いオートバイが出現した。 二人は一応警戒しながらも、特に驚きもせずに現れたバイクへと近づく。 「ふむ……これならば二人乗りでも問題ないな。君も早く乗りたまえ」 さっそく、荒耶がそれに跨り、後ろをポンポンと叩いた。 続いてエツァリも後ろから跨った。 ただ、そうすると当然、エツァリは蒼崎橙子の体を後ろから抱きしめる形となり―― (なんというか……二重の意味で心苦しいですね……) 女性化した自身の胸を、荒耶の背中に押し当てる体勢になる。 湧き上がる微妙な気持ちを押さえつけ、エツァリはポケットの黒曜石の硬さを意識することにした。 「では、出発するぞ……」 「……はい」 何はともあれ、バイクは走り出す。 むかう先は『エリアA-5にある敵のアジト』 姿かたちを変えつつも、譲れぬ信念を胸に、二人の魔術師が動き出した。 【E-1/屋外駐車場/一日目/日中】 【海原光貴@とある魔術の禁書目録】 [状態]:健康、疲労(中)、加治木ゆみに変身状態 [服装]:白いシャツにジーパン [装備]:S&W M686 7ショット(7/7)in衝槍弾頭 包丁@現地調達 、黒曜石のパワーストーン@現地調達 [道具]:支給品一式、コイン20束(1束50枚)、衝槍弾頭予備弾薬35発 洗濯ロープ二本とタオル数枚@現地調達 、変装用の護符(蒼崎橙子)、加治木ゆみの首輪、変装用の衣類 [思考] 基本:主催者を打倒し死者蘇生の業を手に入れて御坂美琴を生き返らせる。 0:胸が気になる。 1:蒼崎橙子(荒耶)について行き、首輪の解除と、主催を倒す方法を見つけ出す。 2:蒼崎橙子(荒耶)に対して警戒を怠らないようにする。 3:上条当麻、白井黒子を保護 4:バーサーカーと本多忠勝を危険視 [備考] ※この海原光貴は偽者でその正体はアステカのとある魔術師。 現在使える魔術は他人から皮膚を15センチほど剥ぎ取って護符を作る事。使えばその人物そっくりに化けることが出来る。海原光貴の姿も本人の皮膚から作った護符で化けている。 ※主催者は本当に人を生き返らせる業を持っているかもしれないと思っていますが信用はしていません。 ※上条当麻には死者蘇生は効かないのでは、と予想しました。 ※加治木ゆみを殺したのは学園都市の能力者だと予想しています。 ※ヴァンと情報交換を行いました。 ※東横桃子の外見的特徴を把握しました。 ※『「上条当麻」か「魔術に秀でた者」、それに「異世界技術に対応した複数の技術者」を一同に揃える事』で首輪の解除が可能かもしれないと考察しています。 ※荒耶宗蓮によって首輪の盗聴機能が無効化されています。破壊ではなく無効化なので、主催者側に察知される事はありません。 ※蒼崎橙子の正体が荒耶宗蓮である事には気づいていません。 ※加治木ゆみに化ける為に護符を使用しました。今現在の姿は加治木ゆみそのものです。 【荒耶宗蓮@空の境界】 [状態]:身体適合率(低)、発現可能魔力大幅低下、格闘戦闘力多少低下、蒼崎橙子に転身状態 [服装]:白のワイシャツに黒いズボン [装備]:バイク(V-MAX)@現実 [道具]:オレンジ色のコート [思考] 基本:式を手に入れ根源へ到る。しかし今は体を完全に適合させる事に専念する。 0:バイクの運転を続ける。 1:なるべくゲームに乗った者に出会わないよう、主催に気づかれないように行動する。 2:『敵のアジト』にむかい、体を適合させる。 (工房に寄っていくかは考え中) 3:道中の危険に対し、エツァリを利用して乗り切る。 4:必要最小限の範囲で障害を排除する。 5:機会があるようなら伊達政宗を始末しておきたい。 6:利用できそうなものは利用する。 ※B-3の安土城跡にある「荒耶宗蓮の工房」に続く道がなくなりました。扉だけが残っており先には進めません。 ※D-5の政庁に「荒耶宗蓮の工房」へと続く隠し扉があります。 ※現在の状態で使用できる結界は『蛇蝎』のみです。常時展開し続ける事も不可能です。 ※エリア間の瞬間移動も不可能となりました。 ※時間の経過でも少しは力が戻ります。 ※接触している加治木ゆみの正体がエツァリであることには気づいていますが、気づかないフリをしています。 ※今現在、体は蒼崎橙子そのものですが、完全適合した場合に外見が元に戻るかは後の書き手にお任せします。 時系列順で読む Back 解明への灯 Next 苦痛 投下順で読む Back 解明への灯 Next 苦痛 163 徒物語~ももこファントム~(下) 荒耶宗蓮 186 secret faces 148 それは不思議な出会いなの 海原光貴 186 secret faces
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255 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/29(水) 03 45 37 ID 1UeJnRhM みんなわいわいがやがやと楽しく過ごしているが、アレを忘れていないか! というわけでいくつか考えたネタの内、出来たところまでを投下。 ~~死者スレ・たまり場~~ とーか「突然ですが、これから貴方達に大掃除をしてもらいます」 「「「「「な、なんだってー!」」」」」 カイジ「…この光景ってどっかで見たことないか?」 部長「所謂お約束の反応ってやつよねー」 利根川「しかし何故大掃除など、っと聞くのも野暮だな」 黒桐「この一年間で大量の物が溢れていますからね」 会長「ゴミを放置した結果が先日のG騒動を引き起こしたしな」 五飛「うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 ゼクス「ハハハ、ワタシニハナンノコトダカワカラナイナ?」 ユフィ「な、なんであれ綺麗さっぱりな状態で新年を迎えるためにも大掃除をしましょう!」 閣下「それでは諸君、エレガントを心掛けて掃除をなしたまえ」 ~~死者スレ某所~~ 刹那「しかし、俺の部屋は掃除しようがない程片付いているが」 ヒイロ「同感だ。必要最低限の物以外を持ち合わせることがないからな」 デュオ「いや、平時の青少年が部屋の中にパイプベッドと机だけしか置いてないとか質素過ぎるっていうレベルじゃねーぞ!」 紬「ガンダムバカ、手が空いているのならアジトを掃除してくれないかしら?それとザ・自爆には格納庫を任せたいけど?」 刹那「わかった」 1「任務了解」 紬「よろしくお願いします」 アーニャ「ツムギ、今は手空いている?貯め込んだ記録を一緒に整理してほしい」 紬「ごめんね、今からバンドの練習部屋の片づけをしなくちゃいけないの。代わりにデュオさんを連れていってね」 アーニャ「(神原も不在、あれを片付けるには人手が必要……)わかった」 デュオ「って俺の意思なしで話が勝手に進めるなよ!?」 アーニャ「何か不都合?」 デュオ「……あーもういい、俺も暇だから手伝ってやるよ」 256 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/29(水) 07 15 17 ID 79WAQnmE バサカ「では、スコップを借りていきますね」 アーチャー「む? スコップなど、何に使うつもりだ?」 バサカ「ちょっと川の流れを変えて、まとめて押し流そうと思いまして」 アーチャー「 ……その方法はやめろ――!! 」 【バサカ アウゲイアス式大掃除 未遂確認】 遅くなったけどラジオの人GJ!! 257 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/29(水) 16 48 24 ID TcbJLyr. ~~死者スレラジオスタジオ~~ 玄霧「それでは現パーソナリティーのお二方にはスタジオの清掃を頼みます」 筆頭「OK!そんじゃ、この中にある道具を全部外に出すぜ」 神原「部屋の掃除はその後だな」 玄霧「では安藤さん、ここの指揮はあなたにお任せしますね」 安藤「わかりました。じゃあ、最初にこのテーブルを…」 藤乃「あの、部屋の掃除が終わったのですが…」 玄霧「おや、随分と早かったですね」 藤乃「まだここに来て日が浅いですから、あまり物も置いていませんし」 玄霧「そうですか。でしたらスタジオの清掃を手伝ってもらえませんか?」 藤乃「という訳でお手伝いに参りました」 安藤「じゃあ藤乃さんは神原さんと一緒に向こうの片づけをしてください」 藤乃「わかりました。神原さん、よろしくお願いします」 神原「こちらこそよろしくお願いします。ところでこの機会に藤乃さんに尋ねたいことがあるのだが」 藤乃「はい、なんでしょうか?」 神原「うむ、実は本編でライダーさんとイチャイチャしていたことについてだが」 藤乃「なっ、あれはいちゃついていたわけでは!」//// 神原「まあそこは否定してもらっても構わないが、私の今後の活動に役立てるためにいろいろと…」 筆頭「Hey、神原、talkより手を動かしな」 安藤「それにいまここで話を聞いてしまうと後のラジオで話題がなくなってしまいますよ」 神原「ふむ、それは困るな。仕方がない、ここは自重しよう」 筆頭「放送でも自重しろ変態」 ~~おまけ・スルー推奨~~ C.C.「~♪」 マリアンヌ「……なんでC.C.が掃除をしているのかしら……全く想像していなかった光景なんだけど」 C.C.「!!!」(物陰に隠れてマリアンヌをチラ見) マリアンヌ(えっ!!何いまの反応!!) C.C.「あ、あのう、どちら様でしょうか?…あっ!も、もしかして、新しいご主人様でしょうか!?」 マリアンヌ「まさかのギアス習得前の人格モード!!!?何があったのよC.C.!!!」 ※今ではどうでもいいことだが、クリスマスの夜に誤ってたまり場が『大掃除』されそうになってたね。
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386 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/10(火) 02 14 42 ID pu7O425c マリアンヌ「って、あなたたちりっちゃんのお見舞いはどうしたのよ」 唯「い、いやぁ…いざ打ち明けようと思ったら気まずくって…」 かじゅ「うむ…あれだけ苦労させておいて、実はかまかけただけでしたというのは…」 マリアンヌ「だからっていつまでも黙ってるわけにはいかないでしょう。ほら、みんな来なさい」 νHTT一同「は~い…」 マリアンヌ「さてと。……?何だか騒がしいわね」 暴れちゃ駄目…! もう点滴も終わったからいいだろ!拘束具を解いてくれよ!――こうなりゃ… ズガガガガ! 真・豆鉄砲で拘束具を破壊した…!?修理が終わっていたの? ガチャッ 律「へへへ…これで私は自由だ――って」 マリアンヌ「何やってるの、りっちゃん」 律「マ、マリアンヌさん!それにみんなも!?」 唯「り、りっちゃん!その…」 律「え、えと、あの…」タジタジ 紬「りっちゃん聞いて!この前りっちゃんの練習不足を責めたけど…あれは嘘だったの!」 律「…はぁ?」 あずにゃん「確かにちょっとリズムがおかしかったりした場面もありましたけど、そこまで律先輩の演奏酷くなかったです」 プリシラ「でも、ほら…りっちゃん最近合同練習場に顔出してくれてなかったじゃん。だから、どうにかして来てもらおうと思って」 かじゅ「みんなではめるような真似をしてしまったのだ。すまなかった」 律「何…」 唯「ごめんね!りっちゃん、騒動続きで疲れてたんだよね。休む時間が欲しかったんでしょ?なのに私達、勝手なことを…」 律「…」ハァ 律「確かに私も練習不足だと思ってたよ。だから申し訳ないとも思ったし、反省して練習に打ち込んだんだ。ホントにみんなの足を引っ張ってたと思う。ごめん」 紬「りっちゃん…」 律「でも、でもな……」 律「ついて良い嘘と悪い嘘があらあああああああああぁぁ!!」ビエエエェ 唯「あっ!りっちゃん待っ――」 ガチャッ アーニャ「…逃がさない」ゴゴゴ 梓「アーニャ!?ってか、何そのライフルみたいなの!何するの!?」 バシュッ 律「うっ☆」ドサッ 唯「りっちゃああああああああああん!!」 紬「…麻酔銃ね。でもそれ人に向けて撃って良かったの?」 アーニャ「治療中に脱走するのが悪い」 プリシラ「キャスターさんにばれたら殺されるかもよ」 かじゅ(本当に踏んだり蹴ったりだな、律…)
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作者・◆h8fJExUfEI氏 ハムスターランドバトルロワイアル本編 ハムスターランドバトルロワイアル本編SS目次・時系列順 ハムスターランドバトルロワイアル本編SS目次・投下順 ハムスターランドバトルロワイアルキャラ別追跡表 ハムスターランドバトルロワイアルの死亡者リスト ハムスターランドバトルロワイアルの支給品一覧 ハムスターランドバトルロワイアルの参加者名簿 ハムスターランドバトルロワイアルのルール&マップ
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Paradox Spiral(前編) ◆C8THitgZTg 靴底が床を叩く音を聞き、荒耶宗蓮は瞼を開いた。 一切の光源がない暗がりも、魔術師の視界を遮るには至らない。 荒耶は目を細め、闇の向こうに佇む黒衣の来客を見据えた。 「随分と変わり果てたものだな、荒耶宗蓮。 今になって呼び出されたときは何事かと思ったが、その様を見ては納得せざるを得ん」 暗黒と静寂に満たされた空間。 ここを言い表す言葉は幾つか存在する。 敵のアジト。 小川マンション。 奉納殿六十四層。 しかし、機能と用途を端的に表現するならこう呼ぶべきだろう。 『荒耶宗蓮の工房』と。 無論、F-5エリアの地下にある工房とは存在を異にする。 あちらは他の主催達を欺くために設けた、いわば"新しい工房"だ。 一方この工房は、殺し合いを舞台を造り出すより以前から存在している。 小川マンションを太極の具現とし、両儀式を捕えようとしたそのときから。 "新しい工房"と比較して言うなら"古い工房"とするべきか。 殺し合いの始まりより更に以前。 会場内にマンションを移設する際に、荒耶は工房ごと地下駐車場までもを移していたのだ。 尤も、当初の予定では、あくまで小川マンションを管理する場所として利用するつもりであった。 新たな工房が潰えたときの予備とする考えも僅かにあったが、実際に使うことになろうとは思ってもみなかった。 なにせ、ここは会場の管理運営には最適化されていない。 拠点として戦い抜くには不足が多すぎる。 会場に干渉する機能は乏しく、新たな工房ほど多くの場所には繋がってはいない。 そういう観点で言えば、荒耶宗蓮は追い詰められているのかもしれなかった。 「姿形など些事に過ぎぬ。目的を果たすに足る性能があれば支障はない」 「それは重畳だ。荒耶宗蓮の『救済』を見られないのでは、私も手を貸す甲斐がないからな」 低い声を暗闇に響かせながら、黒衣の男は一抱えもある大きさの物を床に落とした。 荒耶は男の言葉を無表情に聞き流し、床に転がった物に視線を向けた。 ぴくりと眦が動く。 見紛うはずなどない。 網膜に焼きついた鮮烈な光景。 脳裏に刻み込まれた生臭い状態。 荒耶をこの窮地へと追い込んだサーヴァント、セイバー。 その亡骸が無造作に転がっていた。 「ふむ、あのときに消滅したと思っていたが」 生気もなく横たわるセイバーを一瞥し、荒耶はようやく黒衣の男に意識を向ける。 男は両手を腰の後ろで組んだまま、口元だけに笑みを浮かべた。 「開始直後にセイバーのマスターが令呪を使っている」 ふむ、と荒耶は頷いた。 たった一言だが理解するには充分過ぎる。 荒耶は男の言葉を継いで、セイバーの亡骸が在る理由を語り始めた。 「ギアスが私の魔術を封じたことで、抑えていた令呪の効力が発揮されたか。 確かに、キャスターの亡骸が残り続けている以上、セイバーもまた消滅していないのが道理である」 荒耶は再びセイバーに視線を落とした。 教会で斃れたキャスターが消滅しなかったのは、政庁で肉体を喪う以前に確認している。 同じサーヴァントでありながら、亡骸の末路に違いが出るとは考えにくい。 「そういうことだな。私としては、消滅してもらったほうが回収の手間が省けてよかったのだが」 セイバーは絶命し、肉体はその場から消え失せた。 恐らく、居合わせた全ての者がそう思っていることだろう。 しかし現実にはそうではなかった。 ギアスの効力。 荒耶の機能喪失。 令呪が齎す強力な作用。 それらが絡み合った結果、セイバーは令呪の行使より十数時間遅れ、首輪を残して瞬間的に移動したのだ。 存命のうちに首輪が外れたのか、死体が移動したのか、それとも絶命と移動は同時だったのか。 細部は想像するしかないが、確実なことが一つだけある。 目の前の男は、令呪の行使地点に移動したセイバーを回収し、わざわざここまで持ち込んだということだ。 「荒耶。私は帝愛がやろうとしていることよりも、おまえの『救済』に興味を抱いている。 しかし、だ。奴らへの協力を怠るのでは何かと都合が悪くなる」 「要求があるのなら、明確に言え」 荒耶の眼差しに晒されてなお、男は萎縮する様子すら見せない。 堂々と、己のあるがままに振舞い続けている。 「何、些細な野暮用だ。アレに最低限の機能を与えるには、サーヴァントの魂が五体分は必要となる。 故に、今までに死んだ分を回収しておきたい。どこかの死神に魂ごと殺されてはかなわないのでな」 荒耶は表情を崩さない。 末世を想う哲学者の如く沈黙し、男の要求を吟味する。 「承諾した。おまえの要求を受け入れよう、言峰綺礼」 ◇ ◇ ◇ 二人分の重みを支えた自転車が、ゆっくりと林道を進んでいく。 普段なら気にならないような微かな斜面も、今は少し大変だ。 ペダルを踏み込むたびに、士郎の身体が左右に揺れる。 坂の途中での一件から、二人の間に会話はなかった。 関係に何らかの悪影響が生じたわけではない。 ただ単に話すタイミングと内容が見つからないだけである。 「もう少しだな……」 士郎は傾斜を登ることに意識を注ぎ。 「…………」 黒子は猛烈な気恥ずかしさに俯いていた。 「……不覚ですわ」 小声でぽつりと零す。 嘘偽りのない本心だったとはいえ、駄々をこねる子供のように泣きじゃくってしまったのだ。 呆れられてはいないだろうか。 幼稚だと思われてはいないだろうか。 そんな漠然とした不安が胸を疼かせている。 黒子は、士郎の制服をきゅっと握った。 これくらいなら、荷台から落ちないためだと思ってくれるだろう。 やがて自転車は林道を抜け、一段と開けた場所に出た。 林に遮られていた風が髪を靡かせる。 乱れかけた髪を押さえながら、黒子は何気なく周囲を見渡した。 まるで公園のような広場だ。 公園といっても遊具が並ぶ児童公園ではない。 充分な自然とある程度整えられた平地からなる、休養を取るための公園である。 時が時なら、人々の憩いの場所になっていたに違いない。 士郎の肩越しに、白い教会の外壁が見えた。 『神様に祈る場所』とはそういう意味だったのか。 黒子がそんなことを考えていると、唐突に自転車が停止した。 予想もしていなかった急ブレーキで、否応なしにバランスが崩れる。 華奢な肩が背中にぶつかり、片方の頬が制服と密着した。 「何ですの、急に」 黒子は努めて冷静なリアクションを返した。 ここで少女らしい声を上げて退くなんて、自分に似合う反応ではない。 あえて身体を密接させたまま、目の前の教会を見やる。 新築というほど真新しくはないが、さほど老朽もしていない外観。 大まかなシルエットは三角形で、実に教会らしい造りをしているといえる。 「言峰教会……本当に、そうだったのか」 「士郎さん、あの教会をご存知なのですか?」 士郎の声には驚きと不安の色が混ざっていた。 言峰という名称の意味は分からずとも、あの教会が彼にとって既知であることは察せられる。 「ああ、俺の街にある教会で、言峰綺礼って奴が神父をしてる」 ハンドルを握る手に力が篭るのを、黒子は見逃さなかった。 見知った建物を見つけたというだけではあるまい。 黒子は表情を引き締め、士郎に発言の続きを促した。 「その言峰教会が、どうかしたんですの?」 「言峰は……言峰綺礼は、聖杯戦争の監督者なんだ」 聖杯戦争。 たった一つの単語によって、黒子は事の重大さを理解する。 もし教会の発見が数時間早ければ、単なる不思議として軽く流していただろう。 しかし、今となっては看過できるはずもない。 『この殺し合いは聖杯戦争の模倣では』と仮説を立てた矢先に、本物の聖杯戦争と縁あるものと遭遇する―― 偶然と片付けるには余りに出来過ぎている。 二人はどちらからともなく自転車を降り、教会までの短い距離を歩き始めた。 「なっ……」 「あっ……」 風向きが変わる。 教会の方から吹き付ける風に混ざった、生臭い臭気。 そして、扉の隙間から漏れた濃赤色の痕跡。 士郎は自転車を投げるように倒し、教会へと走り出した。 だが、先に動いたはずの士郎よりも早く、黒子が扉の前に出現する。 「お姉さま……!」 濃厚な死の気配を前に、黒子の心に浮かんだ情景。 それは、扉の向こうで息絶えた、御坂美琴の姿。 理屈もなく、根拠もなく。 ただ恐怖心のみに後押しされた衝動だった。 おぼつかない手付きで取っ手を握り、重い扉をこじ開ける。 「――――っ」 酸鼻を極めるとはこのことをいうのか。 瞼を開けば鮮烈な赤色が視覚を犯し、息を吸えば甘ったるい鉄の匂いが嗅覚を溶かす。 口腔を満たす空気に血の味を感じ、黒子は唇を閉ざした。 一歩踏み出そうとして、脚が動かないことに気付く。 そこで黒子は、自分が恐れているのだと自覚する。 死体への嫌悪感ではなく、カーテンを被せられて横たわる亡骸の正体を。 竦む両脚を引きずるように、黒子は教会の中へと進もうとした。 「待て、黒子!」 士郎に肩を掴まれ、強引に外へと引き戻される。 その力が思ったよりも強くて、黒子は抵抗することも忘れてしまった。 「士郎さん……」 「俺が見てくる。黒子はここで待っていてくれ」 そう言い残し、士郎は教会の礼拝堂へと入っていく。 ぴちゃり、と血の海を靴が踏む音。 がさり、と死体に掛けられたカーテンが擦れる音。 三枚のカーテンを一枚ずつ丁寧にめくっては、亡骸の姿を確かめていく。 黒子はその間、開きっぱなしの扉に寄りかかり、士郎をじっと見続けていた。 やがて士郎は最後の亡骸を確かめ終えて、入り口の方へと戻ってきた。 「…………あの」 黒子は言い淀み、目線を伏せる。 そんな黒子の肩を、士郎は軽く叩いた。 「たぶん……『お姉さま』はいなかった」 「そうですか……」 士郎の報告を聞いたとき、黒子の胸に奇妙な感情が湧きあがった。 あえて表現するなら――安堵。 まだ現実を直視したくないという。 せめて綺麗なカラダであってほしいという。 どうしようもない願いが叶えられた安心感だ。 「俺より少し年上の男と、高校生くらいの女の子で……」 そこで士郎は言葉を切った。 続きを言うべきか悩む素振りを見せてから、意を決したように、手にしていたものを見せる。 それは、僅かに血痕の付着した、黄色のカチューシャ。 「……あの子が、田井中律って子なんだと思う」 キャスターが荷に入れなかったがために、光秀の略奪を免れた品であることは、士郎は知らない。 ただ、物陰に落ちていたそれを少女の遺品と見定め、手に取っただけだ。 「そう、ですの……」 黒子は一歩退いた。 安堵してしまった。 無残な死体が『お姉さま』ではないと知り、良しと思ってしまった。 代わりに、秋山澪の大切な人が斃れていたというのに。 それを知って尚、胸の奥の安堵が消えないのだ。 何という醜さなのだろう。 何という身勝手さなのだろう。 自分自身へのささやかな慰めに満たされて、他者への哀悼が浮かばない。 「士郎さんは……これからどうするおつもりですか……?」 「そうだな、もう少しここを調べたいかな」 黒子は俯いたまま、唇を軽く噛んだ。 そして、士郎のデイパックに手を掛ける。 「でしたら、ペリカを預けて頂けませんか? じきに消えてしまうんですから、使い切ってしまわないと」 「お、おいっ……!」 尤もらしい事を述べながら、黒子は士郎のデイパックを奪い取った。 理由なんてどうでもよかった。 今の自分を、彼に見られないようにできるなら。 黒子はデイパックを抱え、逃げるように教会の奥へと駆け込んでいった。 ◇ ◇ ◇ マンションの内部を歩き回ること十数分。 階層をひとつ登るたびに、エツァリは困惑の度合いを深めていた。 違和感を的確に表す言葉すら見つからない。 極めて高度な魔術が編み込まれていることは、おぼろげながらに理解できる。 さりげなく、それでいて確実に、人の心に干渉する。 違う、と、自身の考えを否定する。 精神に干渉する力は呪術的なものではないようだ。 マンションの構造そのものが、人を狂わせるように出来ている。 巧みな照明配置。 ぱっと見には正常としか思えない壁の色彩。 微かに傾斜し、平衡感覚を狂わせる床。 どのような発想に立てばこんな構造を考案することが可能なのか。 しかし、魔術的要素が全くないわけでもない。 幾つもの妙技が絡み合い、この異界を作り上げているのだ。 力の底が見えない。 濃霧に包まれた深淵を、手探りで進んでいるような錯覚。 蒼崎橙子は、ここに主催者への対抗手段があると言っていた。 それは半分正しく、半分誤っていたのではないか。 この建物自体が強大な魔術の体現とするなら。 対抗する術とは、この異常なマンションそのものなのでは―― エツァリはそこで思索を打ち切った。 肝心の蒼崎橙子は、肉体の調整を行うと言って地下へ降りていったきり戻ってこない。 次の行動を起こすのは、彼女の用件が済んでからだ。 せめて、対抗する術とやらについて聞き出さなければ。 あるかどうかも分からない餌に釣られて盲従するなど愚行の極みだ。 仮に、蒼崎橙子が大した力を持っていなかったとしたら。 自分は勝ち目のない反抗に付き合わされ、その結果、全てを失うことになるだろう。 確かに、このマンションを構築した物理的、魔術的な技術は凄まじい。 しかしそれが彼女の力だという保障はないのだ。 他人の成果物を自身のものと偽り、信用を得る――典型的な詐術である。 「まずは、見極める。全てはそれからだ……」 エツァリはあえて、心のうちを言葉にした。 誰かに聞かせるためではない。 己へ向けた自己確認だ。 おーーーーーーーーーーーーーーん。 不意に、そんな音が聞こえてきた。 壁を震わせ、床を揺らし、廊下の先から響いてくる振動音。 それがエレベータの駆動音であると気付くのに、そう時間は掛からなかった。 エツァリは呼吸を殺し、音のするほうへ顔を向けた。 このマンションは奇妙な構造をしている。 半月形の二つの建物が隣り合って並ぶことで、完全な円柱形を成している。 円柱の中心をエレベータが貫き、それを包むように建物があるといった感覚だ。 1階と2階はリクライゼーション用の施設として作られており、東西のロビーとエレベータが廊下で繋がっている。 住居があるのは3階以上。 エレベータから南北に廊下が伸び、外縁部で左だけに曲がることができるようになっている。 例えば、エレベータを降りて南にいけば、建物の外周を180度回り、行き止まりにぶつかる。 つまり北の廊下は西棟の外周を、南の廊下は東棟の外周をそれぞれ囲んでいるのだ。 住居としての居住性よりも、別のことを重要視した設計なのだろう。 「……」 エツァリは5階の東棟、その外周部にいる。 このなだらかな曲線の廊下を南へ辿り、角を右へ曲がれば、まっすぐな廊下の先にエレベータの乗降口がある。 逆に言えば、そこまでしなければ、エレベータを確認することができないのだ。 だからこそエツァリはエレベータに近付いていく。 廊下は完全な行き止まりだ。 隠れる場所は部屋の中しかない。 エレベータが上昇を停止する。 エツァリは曲がり角に身を隠して、南北を貫く廊下を覗き見た。 扉が、開く。 ◇ ◇ ◇ 「白井!」 黒子が礼拝堂の奥に消えてから、遅れること数秒。 士郎は黒子の後を追って走り出した。 乾きかけの血糊を踏み越え、中庭へ通じる通路を駆け抜ける。 ほんの数秒だった遅延は、しかし致命的なまでに長すぎた。 空間転移を使いこなす黒子と、そういった能力を持たない士郎とでは、運動性が天と地ほどに違うのだ。 「……くそっ」 己の判断の遅さに毒づく。 すぐにでも駆け出すべきだったのに、不要な迷いを挟んでしまった。 黒子が『お姉さま』のことで思い悩んでいるのなら、自分が割り込むべきではないのでは、と。 思い返せば、なんて見当違いな考えだったのだろうか。 関わるべきだとか、関わるべきではないとか、そんなことは関係ない。 たとえ何の役に立てなくても、黒子の隣にいなければならなかったのだ。 一緒に生きて帰ると約束したのだから。 薄暗い礼拝堂を抜け、太陽の下に躍り出る。 あまりの眩しさに目が眩み、一瞬だけ思考が空白になった。 やがて、網膜が過剰な光量に慣れていく。 真っ白だった視界に色彩が戻る。 白亜の壁と床。 古い木枠の窓。 緑の蔦。 青い鎧戸。 色付いていく風景の中、ただ一点だけ、闇が落ちていた。 「あ……」 最初は、目が眩んだときの残光だと思われた。 視線を動かせば一緒に動くような、見せ掛けの暗がりだと。 「な……に……?」 太陽の光を浴びていながら、そこだけ抜け落ちたような、黒い輪郭。 そこに在るのに、そこに在ると思えない異常。 超えられぬ壁のごとく立ちはだかる、黒い魔術師。 士郎は殆ど本能的に身構えていた。 ――気配が、ない。 それどころか、目の前にアレが存在しているということ自体を信じられない。 知らず、カリバーンの柄を掴む手に力が入る。 世界中の苦悩を刻み込んだような面持ちを上げ、魔術師は問うた。 「おまえが衛宮士郎か」 聞く者を魂から屈服させる声が、士郎の鼓膜を揺する。 士郎はカリバーンを強く握り、黒い魔術師を睨みつけた。 「……白井はどうした」 空間転移で中庭を通り過ぎていない限り、黒子もここを通ったはずだ。 返答によっては、あの魔術師と戦わなければならない。 魔術師が静かに一歩を踏み出す。 無造作な前進だというのに、士郎はそれに反応することが出来なかった。 「白井黒子に用はない。私の目的は、衛宮士郎、お前だけだ」 「そうか……それならっ!」 だんっ、と石材で舗装された地面を蹴る。 相手が自分を狙っているのなら、尚更逃げるわけにはいかない。 この場を切り抜けたところで、相手は諦めてくれないだろう。 最悪、どこかにいる黒子が人質にされる危険もある。 だからこそ、ここで倒す。 半人前の士郎でも、対峙する相手の脅威は痛いほどに理解できた。 奴は間違いなく強い。 それでも、勝機を感じていないわけではなかった。 手にした得物は"勝利すべき黄金の剣(カリバーン)" 鉄パイプや角材を強化して振るうのとは比べ物になるまい。 彼我の距離を数歩で詰め、金色の刃を振り上げる。 「―――はあっ!」 「不倶、」 突然、士郎の体が停止する。 「金剛、」 振りかざした腕までも、嘘のように動かない。 「蛇蝎、」 「な―――」 士郎は言葉を失っていた。 流動の耐えた大気に。 そして、自身を戒める三重の結界に。 「―――蛮勇。力量の差も測れぬか」 固く握られた拳が、士郎の腹を殴り上げる。 衝撃が腹筋を突き抜け、柔らかな内臓をシェイクした。 立て続けにもう一方の拳が突き刺さる。 「がはっ……!」 視界がブレた。 息をつく暇など与えられない。 内臓のどこかが破れたか。 肺から追い出される呼気に血が混じる。 魔術師の拳は、一撃一撃が必殺の威力を持っている。 耐えられるとして、あと何発――それとも、既に。 「な、んで―――おまえ―――」 何故自分を殺そうとするのか。 そう問おうとしたが、発音未満の震えが口から漏れるだけだった。 「理解せぬなら、それまでだ。お前に価値はない」 魔術師が再度拳を握る。 結界の戒めが緩み、士郎の身体がぐらりと傾く。 刹那、鉄槌じみた打突が、無防備な胴体を直撃した。 「―――――――――――――がっ」 「ぬ―――――――――――――?」 鉄の塊が衝突したかの如き轟音。 骨格が軋む。 意識が断線する。 戒めから解き放たれた肉体は、拳の衝撃をもろに受けて、砲弾のように吹き飛んでいった。 ◇ ◇ ◇ こつん、こつん。 階段を下る靴音が、地下の空間に響き渡る。 「地下聖堂……ですわね」 黒子は階段を最下段まで降りてから、ちょうどいい高さの段に腰掛けた。 膝と一緒に二人分のデイパックを抱き寄せる。 勢いのままに逃げ出して、こんなところにまで来てしまった。 結局、どうして自分は逃げてしまったのか。 それすらも、改めて考えなければ理解できない。 きっかけは教会の扉から漏れ出た血糊。 あれを見た瞬間、首筋から血の気がさぁっと引いて、冷静さを失った。 扉の向こうに『お姉さま』の変わり果てた姿がある――そんな錯覚に襲われたのだ。 後は負の連想ゲームの繰り返し。 勘違いに気付いて安堵を得たのは、士郎が教会の亡骸を調べてくれてからのこと。 ああ、そうだった。 身勝手な安堵感に喜んだことを自覚して、居た堪れなくなって逃げ出したのだ。 ―――静かだ。 耳が痛くなりそうな静寂の中、呼吸だけがやけに大きく聞こえる。 彼はどうしているのだろう。 言い残した通りに、教会を調べているのだろうか。 それとも、自分を探して歩き回っているのだろうか。 「駄目ですわ、こんなことじゃ……!」 左右の頬を軽く叩く。 こんな有様では――――に合わせる顔がない。 思えば、殺し合いの始まりから十五時間ほど経っているが、死体と間近に接したのはこれが始めてだ。 最も死が近くにあったのは、ギャンブル船で死んだカイジの件だ。 しかしそのときですら、黒子は死体を目の当たりにしていない。 カイジの死体を見つけたのはゼクスと衣で、見張りをしていたのは士郎だけ。 だから、教会で誰かが死んでいると気付いたとき、必要以上に気が動転してしまったのだろう。 黒子は地下聖堂の黴臭い空気を思いっきり吸い込んだ。 そうして、腹の底から吐き出していく。 「……よしっ」 早く彼の元へ帰ろう。 帰って、ごめんなさいと謝ろう。 黒子はそう心に決めて、階段から立ち上がった。 「おまえ一人、か」 男の声が、地下聖堂に反響する。 黒子は咄嗟に身構え、周囲を見渡した。 「どなたですの? 覗き見なんて悪趣味は止めて頂きたいですわね」 「ふむ、これは失礼した」 聖堂の奥から、革靴の音が近付いてくる。 暗闇からの一方的な攻撃すら覚悟していたのに、拍子抜けするほど正直な対応だ。 少しずつ男の輪郭が明瞭となり、黒子の目でも判別がつくようになっていく。 丈長の外套、黒い神父服、首から提げたロザリオ。 声の主は、見るからに神父然とした風貌の男であった。 黒子は警戒を絶やさずに、男をつま先から頭頂部まで観察する。 顔付きは日本人的だが、体格は非常に恵まれている。 目測だが、一九〇センチは越えているに違いない。 「こんなところに神父様がおられるなんて、場違いもいいとこですわね」 「面白いことを言う。教会に神父がいるのは当然だろう」 いいえ、と黒子は首を振る。 「地上の建物で何が起こったのか、知らないとは言わせませんわ。それに……」 抱えていたデイパックを床に落とす。 それと同時に、筆記用具のペンを三本、指に絡めて抜き取っていく。 「わたくし、だいぶ暗さに目が慣れてきましたの」 ペンの一本が手から消える。 未知なる相手と遭遇したとき、提示される選択肢は決して多くはない。 "対話" "逃亡" "無視" "降伏" そして黒子が選んだのは――"敵対" 神父の眼前にペン先が迫る。 しかし神父は最小限の動きで腕を振るい、その脅威を打ち払った。 次の瞬間、黒子の姿が階段の上から掻き消える。 一切のタイムラグもなく、黒子は黒衣の神父の死角に現れた。 黒子は神父の背中に触れながら、暗がりの向こうに視線を向けた。 接触から空間転移までの一瞬に短い思索を巡らせる。 ちょうど神父が現れた方向に、誰かの亡骸が横たえられている。 薄暗い上に距離はあるが、生きた人間でないのは間違いない。 頭と身体が切り離されれば、人は死ぬのだから。 それに、教会の死体は二つだったのに、弔った形跡は三つもあったのだ。 ここまでくれば、誰でも見当がつくというものだ。 「理由は聞きたくありませんわ」 神父を同一位置で空間転移させる。 ただし、頭を下に、脚を上にと、上下の位置をひっくり返して。 普通、人間は瞬間的な上下の反転を体感できない。 体感できないことは慣れようがなく、対処も極めて困難だ。 ジャッジメントの職務において何度もやってきた所作であり、その度に高い効果を上げてきた。 それなのに。 頭から落下するはずの神父が、空中で突然動きを止めてしまった。 「えっ?」 ――違う。 神父は頭が床にぶつかるより早く、両腕を支えに突き出したのだ。 そのまま腕をバネのように折り、曲芸じみた動きで身を翻す。 距離を取れと直感が告げる。 反射的に、黒子は自身を階段まで転移させていた。 「……っ」 反撃を想定し、油断無く構える黒子。 だが、神父は漫然と黒子の方へ向き直るだけで、決してそれ以上の行動をしようとしなかった。 警戒し続ける黒子を滑稽に感じたのか、神父の口元に薄く笑みが浮かんだ。 「どうして攻撃してこないのか……そう考えているようだな」 黒子は答えない。 どうせ図星を突かれたことは見抜かれているのだ。 余計なことは頭から追い出して、次なる攻撃に備えている。 頬を冷や汗が伝う。 神父との距離は六メートル程。 黒子にすれば、走って詰めるには広すぎるが、空間転移なら精妙な制御が望める間合いだ。 この距離を相手はどうやって埋めるのか。 ダッシュ? 飛び道具? それとも何かしらの能力を? 膠着状態が続くかと思われた矢先、神父はおもむろに襟元を緩め、黒子に己の首を見せ付けた。 そこには、本来あるはずの物――首輪が存在していなかった。 「あっ……!」 「理解して頂けたかな」 黒子の反応を見届けて、神父は襟元を正した。 「私は主催側の人間……言うならば、ギャンブル船の黒服達の同類だ。 会場運営の一部を取り仕切るが、生存者に手を出すことも、生存者同士のやり取りに介入することも認められていない。 尤も、こうして死体になった後であれば、保守管理の一環として干渉することもあり得るのだがな」 そう言って、背後の亡骸を目線で示す。 発言のうち何割が真実かは分からないが、少なくとも主催側に立つ人間だというのは信憑性がある。 事実、黒子はギャンブル船で参加者以外の存在と出会っているのだから。 「君と遭遇したのはただの事故だ。私からは一切の危害を加えないと約束しよう。 だが、君が戦闘の続行を望むというなら、こちらも必要最小限の自衛措置を取らせてもらう」 「……分かりましたわ。そういうことでしたら、こちらも矛を収めますの」 手元に残っていた二本のペンが消失する。 黒子は、神父の言葉を全て信用したわけではない。 教会で殺戮を繰り広げた者の正体は分からず、この神父が不干渉を貫く保証もない。 しかし躍起になって打ち倒そうとするほどの理由もなかった。 神父の視線を感じながら、二つのデイパックを左右の肩に掛けていく。 「ところで。貴方のお名前、お聞かせ願いません?」 立ち去る直前、黒子はさり気ない口調で問いかけた。 ふむ、と神父が口元を僅かに緩めて思案する。 その顔は、判断が難しいことを要求されて悩む後ろ向きな感情ではなく。 どちらを選択したほうが楽しいかを考えている、前向きな意思に裏打ちされているようであった。 「私の名については機密とさせてもらおう。簡単に教えてしまっては、些か面白味に欠ける」 面白味――その表現が黒子の頭の隅に引っかかった。 名前を教えられない取り決めだ、ということなら理解は早い。 黒服も個人名は分からなかったし、聞いても答えてくれなかったに違いない。 しかし、面白味に欠けるとはどういう理屈なのか。 「聖職者なのに随分と意地が悪いんですこと。高みの見物でお楽しみですか」 「否定はしない。白井黒子、おまえのこれからも楽しみにしている」 黒子は神父と向かい合ったまま、半歩だけ退いた。 ――やはり、この男は黒服達とは違う。 空間転移に対処してみせた身体能力は元より、殺し合いに携わる意思が違い過ぎる。 そもそも、遭遇が事故だと主張していることすら白々しい。 声をかけたのはあちらなのだ。 何かしらの明確な意図を持って接触してきたに決まっている。 黒子は胸に警戒心を隠したまま、改めて神父の顔を見た。 せめて顔付きだけでも覚えておこうと思ったが、どうやら要らぬ心配のようだ。 「今はまだ期待したほどではないが、奴と行動を共にしているのは喜ばしい誤算だよ」 「お褒めに預かり……光栄ですわね……」 こんな胡散臭い顔―――忘れたくても忘れられない。 「では、謝礼の代わりに情報を一つ進呈しよう。 ここの換金装置と販売機は、教会内の一室に設置されている」 そう切り出して、神父は部屋の位置を詳細に告げていく。 まるで、勝手知ったる我が家を案内するかのような流暢さで。 ここに至り、黒子の仮説は確信へと傾いていた。 「察していると思うが、参加者が換金により装備を整えることは、我々にとっても望ましいことだ。 利用するか否かは君の信念に委ねよう。……それと、忘れ物だ」 神父は床に落ちていたペンを拾い、山なりに放り投げた。 それを受け取ろうとした拍子に、黒子は神父の姿を視界から外してしまった。 再び顔を上げると、神父がいたところには、濃密な闇だけが広がっていた。 床に転がされていたはずの亡骸まで見当たらない。 「あんなに分かりやすく振舞うなんて……」 まるで、あえて正体を見抜かせようとしているかのようだ。 黒子は誰もいない暗闇を―――言峰綺礼がいた場所を睨み付けた。 呆れてものが言えない、としたいところだが、却って不気味すぎる。 生存者に干渉しないなんて嘘っぱちだ。 たった数分間のやり取りで、こんなにも自分を惑わせているのだから。 黒子は視線を切り、地上へ向けて転移した。 時系列順で読む Back 魔王信長(後編) Next Paradox Spiral(後編) 投下順で読む Back 魔王信長(後編) Next Paradox Spiral(後編) 198 好奇心は猫をも殺す 荒耶宗蓮 203 Paradox Spiral(後編) 198 好奇心は猫をも殺す 海原光貴 203 Paradox Spiral(後編) 201 セイギノミカタ 衛宮士郎 203 Paradox Spiral(後編) 201 セイギノミカタ 白井黒子 203 Paradox Spiral(後編) 言峰綺礼 203 Paradox Spiral(後編)
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ソードマスターマサムネ ◆qh.kxdFkfM (ちっ、シケてやがる) 伊達政宗は衣を翻し、そこをあとにする。『円形闘技場』はその名の通り、ただ円を囲むように観客席があるだけで、ほかにめぼしいものはなかった。 しいていえば袋に入った数枚の紙切れくらいだが、そんなものを拾うほど『独眼竜』は落ちぶれてはいない。自分が欲しいのはもっと実戦で役に立つものである。 神原駿河のような変態とは違うのだ。闘技場の外、草原の上で地図を取り出す。次に向かう『憩いの館』はここから北西に行ったところにある。 デバイスの機能を使えば、迷うことはないだろう。そして最後には『城』を……。 「あン……?」 その時だった。城を見上げていた政宗の目の前で、彼の城は震え、やがて――――。 「嘘だろ、おい……」 瓦解。崩壊。倒潰……。表す言葉は数多くあれど、事実はひとつ。 レプリカの安土城は、政宗の到着を待たずして、その存在を終えたのだ。 「Shit! どんなクレイジーな野郎の仕業だ?」 そこでふと、放送の内容が脳裏を過ぎる。正確には、死亡者発表の一部分だが。 (小十郎……) ここにきて、彼は一度も死体を見ていない。それどころかまともな戦闘さえ経験していないのだ。 それは偶然なのか、はたまた主催とやらの作為なのかは分からない。ただ、それが『死』というリアルをこの戦国武将から遠ざけたのは間違いない。だから、つい考えてしまう。 『竜の右目はまだ生きていて、それを隠しているだけではないのか』 『そもそも片倉小十郎はもともといないのではないか』 今あそこで繰り広げられている『暴力』の中へ行けば、確実にそんな甘えは吹き飛ぶだろう。 最悪、仏になった男を拝むかもしれない。それにあいつは事あるごとに言っていたではないか。無謀はよせ、我慢を覚えろと。 だから、あそこには――――。 (悪いな、小十郎) 政宗はぐっ、と地面を踏みしめる。脳が命令を下し、足の指が、裏が、腱が溢れる力に震えた。 辺りに吹いていた風はいつの間にか消え、頭を揺らしていた草は黙する。 跳躍――――着地――――跳躍――――着地――――跳躍――――! (お前は、もう俺の中じゃ生きてねえんだ) 地面を踏んでいた足が木々をとらえ、踏み台にする。その足取りに一切の迷いはない。 そこに何かが――――少なくとも強者が――――いるなら、向かわずして何が武将か。 これは性なのだ。戦場を駆け、戦塵に塗れることを喜びとする自分の本質なのだ。 (小言ならあっちで嫌ってほど聞いてやるからよ。今は草葉の陰で見物してな) 政宗は不敵に笑い、『城』の跡地へ向かう。そこにいるであろう強者と、そこにあるであろう戦場を求めて……。 「こいつはひでえ……」 予想はしていたが、ここまでとは。瓦礫の山を前にした男は感嘆す。まるで支えを失って崩れたかのように、周りにあまり被害はない。 城という形が崩れて、そのまま山になったというのが表現として正しいのかもしれない。政宗はもはや形だけの門をくぐり、周囲に目を配る。 しかし、下手人と思われるような人物はいなかった。 「奴さんはもう退散しちまったか」 あるいは建築がヘボで自壊したか……。さすがにそれはないだろうと『独眼竜』思い直し、探索に入る。といっても、積もった材木を退かすだけだが。 「馬の一頭くらいは調達してぇんだがな」 これといった変化もなく、ただ黙々と材木を放り投げる作業を続けていると、さすがの奥州筆頭も疲労を感じ、木陰で休憩をする。 こういうことは本来、小十郎の領分だ。地道な作業――農業の手伝いをあいつはよくやっていた。あきもせず。それを尻目に刀を振っていたのが、随分と昔のように感じる。 「……なんだこりゃ」 水を飲もうと取り出したはいいが、この中身が透けた竹筒は何だ。先端が窄んだ妙な形をしている。 叩いてみると、硬いような、軟いような……何とも形容しがたい。振ってみると水音がするから、たしかに水は入っているはずなのだが……。 「割れば中身は出るだろうが……」 しかし容易くは割れないだろう。仮に割ったとしても、それは粉砕するわけで、当然水は周囲に飛び散り、飲む分はあるかどうか。 「ちっ、こんなことなら神原にでも聞いておくんだったぜ」 冷やかされそうな気もするが、それでも最終的には説明してくれただろう。まあ、今となっては後の祭りだが。 政宗は仕方なくそのままペットボトルを戻し、額に浮かぶ汗を手で拭い、立ち上がる。 「ん?」 そこでふと、瓦礫の間から輝きが見えた。つまり、そこには光を反射するものが存在するということだ。 その煌きは政宗がよく目にするそれであり、それはすなわち――――。 ――――刀。 「ハッ、やっぱりあったか」 城とは、拠点である。戦国時代において、城は軍事基地であり、金庫でもある。 城主――つまり国が管理する財産がそこには蓄えられている。食料であったり、金銭であったり……。 それは財宝も例外ではない。 宝物庫、そこに貯蔵されるは武人にとってまさしく宝そのもの。 「いいぜ、これなら申し分ねえ」 その中から宝刀だけを見つけ出し、検分。そして六本を佩く。錆や歯こぼれもなく、どれも非の打ち所が無い業物ばかりだ。 試しにと政宗は先ほど開けられなかった水筒を高さの合う瓦礫の上に置く。 右手は柄を、左手は鞘を。 踏み込みと捻りは同時に。 ――――抜刀。 その瞬間がまるで制止したかのように、草が、風が、葉が、その動きを止める。弧を描いたその光は、まさしく一閃と称すに相応しい。 ――――納刀。 チン、と音が鍔から漏れる同時に、キャップがぽとり。この時、この戦国武将は刀のありがたみを再度深く認識した。 それはともかく、政宗はようやく水にありつけたのである。 「密封するに越したことはないが、開けられなきゃ意味がねえな」 渇いた喉に久方振りの飲料水を流し込みながら、宝物庫の周りに存在する残骸を足で除ける。まだ何かあるかもしれないからだ。 擦らせていた足が、何かに引っ掛かる。どんなに力をいれても、びくともしない。不審を抱いた政宗は、その周囲の木端を払う。 「こいつは……」 城の土台となっていた石垣に、鉄でできた奇妙な取っ手がついた蓋があった。空の入れ物を放り投げ、それを引っ張ると、 ズズッ ズズン 重厚な音とともに、現れたのは、光りなき空洞であった。政宗は眉をしかめる。隠し扉? なぜこんなところに。いや、そんなことはどうでもいいか。 「案外簡単に見つかったな」 主催をぶっ潰す。その目的が達成されるのだ。ほかに何を構う事があろうか。敵の親玉がいる場所など限れている。 戦場では本陣、平素では城か寺だ。今回はその城が壊れたから、地下へ逃げたってことだろう。『独眼竜』は刀に手を掛け、ゆっくりとその闇へ潜る。 (小十郎、お前の弔い合戦だ。派手に暴れるぜ) 通路は石段で作られ、壁面も当然石材でできている。男はその暗闇を息と音を殺して下りていく。 本来なら基本支給品である懐中電灯を使うべきなのだろうが、戦国時代を生きる人間にはあれが何なのか分からなかった。 鈍器ではないかというのが、現時点での伊達政宗の見解である。 (ここだな) 目の前にうっすらと扉が確認できる。恐らくこの先にあの胸糞悪い野郎と、小娘がいるはずだ。政宗はすでに研ぎ澄まされた気を、最大限まで高める。 そして――――。 「覚悟しなッ!」 扉を勢いよく蹴破り、一振りの宝刀を構える。そのまま流れるように眼前の敵を、 「なっ……」 敵を……。 「こいつは一体……」 敵は、いなかった。政宗の動揺に合わせるように、薄闇が電光に裂かれる。 そこはがらんどうの空間――いや、しいて言えばそこには少なからず物象は存在した。 焼けた鉄板、それに垂れる水滴、湧き上がる蒸気……。政宗は怪訝な顔で熱気を感じる鉄板に近づき、そこで片目の視界があるものをとらえる。 彼は表情を怪訝から驚愕に変え、目標を鉄板からそれへ変更し、接近する。 「おいおい。こいつはちょいと興が過ぎるんじゃねえか?」 そこには透明な棺があった。 そこには一糸纏わぬ少女の亡骸があった。 「くくくくくく……なるほど、こいつは確かにクレイジーだぜ」 刀を握っていない方の手で顔を覆い、苦笑する政宗。しかし、それは数秒のことであった。顔から手を離した男の顔に、笑みなどなく、そこに存在するのは、 憤怒。 「ずいぶん舐めた真似してくれるじゃねえか」 光が、風が、音が、 その瞬間、彼を中心に現れ、消える。 それに呼応するように、 棺はズレ、 液はドロリ。 その空間はある男の研究施設である。その男は主催者でありながら参加者となり、ここに訪れていた。 しかし、“出入り口が違った”。男が入ったのはE-5に位置する『展示場』からだ。政宗のいるB-3にある『城』からではない。 なぜそんなことが起るのか。その理由は主催者とその男の都合にある。男の目的は『死の観察と蒐集』であり、そのためには拠点と成り得る研究施設が必要不可欠。 当初は男が転移し、実行する案もあったが、それは『ゲーム』の趣旨に反するという苦情が出た。あくまでも参加者の能力は『制限』によりなるべく均等にしなければならないということである。 その後、妥協案としてある方策が立てられた。 すなわち、『施設そのものの転移』である。正確には主要施設のどこかにそこへ通じる『門』が設けられ、関係者以外には見つからないように細工を施すのである。 そしてそこをターミナルにしないように、『入った施設からしか出られない』という制御を付加する。これなら、件の『制限』にも引っ掛からず、男の研究の妨げにはならない。 その案件は、それで問題なく片付いたはずだった。 はずだった。 閑話休題。 戦国時代を生きる伊達政宗は許せなかった。戦場で人が死に、その存在を、生涯を終えるのは理解も納得もできる。 皆、そういった覚悟を持ち合わせて、戦を行っているからだ。自分もいつかはそうなるかもしれないと、腹を括っている。 死んでいった小十郎もそのはずだ。しかしこの少女はどうだ。なぜただの少女が首を斬られ、あまつさえ死後も辱められなければならない。 女は戦うべきじゃない。女とは、家にいてしかるべきなのだ。 だが、主催はそんなことも弁えず、この年端もいかぬ少女を殺し合いの舞台に放り込み、結果として、下手人にその未発達な体は弄ばれた。 彼女にだって、夢や将来があったはずなのに。 政宗は、それが許せなかった。 「悪いな嬢ちゃん。死に装束にはちと派手だが、勘弁してくれ」 地上に掘られた即席の穴の中に、件の少女はあった。遺体に付着していた液体はガーゼでふき取ったが、さすがに髪にこびり付いたものは無理だった。 宝物庫にあった無駄に高そうな一重で身を包んだ彼女の上に副葬品として金銀・宝石の数々が降り注ぐ。朝日がそれを輝かせ、まるでひとつの美術品のようだ。 実際、この少女は成長すれば美人であったろう。政宗はもう何度目かわからない歯噛みをした。 「こいつは手向けだ。あっちには俺の連れもいるんだ。山分けしてくれ」 これは代償行動なのかもしれない。あいつの遺体も仇も分からぬ現状が、この少女を手厚く葬らせているのかもしれない。 彼はふとそう思い、そして拳を強く握った。最後に別れを告げ、亡骸に土を掛ける。締めに材木の一つをそこに差し、男と少女の邂逅は終わった。 しばし、黙祷。 ……。 …………。 ………………。 腹の中で渦巻く怒りが、主催と下手人に止まらず、自分自身にまで及んでいた。ここに来て自分は今まで何をしてきた? 大層らしい目的を吐くだけで、やっていたことはどこぞの女との物見遊山。そうしている間も、片倉小十郎は命を散らして闘っていたというのに。 (小十郎、お前のことだ。女子供を護ろうとしたんだろうな。お前はいつも) 実直であった。 献身であった。 忠義であった。 「馬鹿野郎がっ……!」 自分の背中を護るのではなかったのか。共に天下を取るのではなかったのか。何くたばってやがる。政宗は頭を垂らし、俯く。しかしそれも短い時間のことで、すぐに顔を上げる。 そこにあるのは確固たる決意。 (小十郎、俺はやるぜ。お前抜きで主催を潰して、そのまま天下まで一直線だ) ――――阻むものはなんであれ、叩き斬るッ! 本来、この時点で伊達政宗は『城』に向かうことも、刀を手にすることも、少女の遺体と対面することもなかった。 『憩いの館』へ向かい、そこにいるであろう人間と接触し、共闘か対立をするはずであった。 その後『城』へ移動することになっても、宝物庫へこんなに早く辿り着くことなどできなかったであろう。 当然、地下へも侵入はできまい。 しかしこんなアクシデントを誰が考えられる? 設計にも地盤にも資材にも問題がなかったその山城が、主要な柱とその周囲の建材を喪失し、崩壊するなど。 しかしこんなアクシデントを誰が考えられる? 十重二十重の罠で侵入困難だったはずの宝物庫が、罠を発動することなく土台もろとも崩落し、その財宝を無防備にさらずなど。 しかしこんなアクシデントを誰が考えられる? 構造的、視覚的に感知できないはずの隠し扉が、隠蔽する施設そのものを破壊され、露見するなど。 それが一参加者の手によって行われるなど、誰も予想できるわけがなかった。 「ん? なんだありゃ」 眼下に広がる景色に、変化があった。何か巨大なものが動きまわったかのように、土煙が舞っている。 「あそこにあるのは――――駅か」 地図とデバイスで確認して、政宗は呟く。確かそこには好敵手、真田幸村がいたはずだ。それと他に何人かの参加者。 時間的に神原駿河と枢木スザクも到着しているころかもしれない。まあ、真田幸村は相当の手練。心配することはないと思うが……。 (死ぬんじゃねえぞ、真田幸村) 変化はほかにもあった。薬局の下、工業地帯の辺り。そこで何かが宙を舞い、それを人――なのかどうか判然としないが――が叩き落そうと躍起になっている。 どちらもかなりの距離がある。 (ちっ、どうして俺の遠くでばかりpartyが起こるかねえ……) だが、と政宗は不敵に笑う。あっちが離れてるなら、こっちが近づけばいい。馬はないが、自慢の脚は健在だ。小十郎とは違ってな。問題はどちらへ行くか、だが。 (そんなのは動きながら考えればいい) 『独眼竜』は地を蹴り、疾走する。当ても方策もあやふやで、何一つ定まっていない。しかし、その信念だけは、ブレず曲らず挫けず、天下を目指す武人のそれであった。 「奥州筆頭・伊達正宗! 推して参るッ!」 政宗は知らない。駅にはゴクアークでキョウアークな者たちが、レツアークな者を狩らんとしていることを。 政宗は知らない。工業地帯にはザ・フジミと目されるサイアークな者が暴虐の限りを尽くさんとしていることを。 しかし、だからこそすべてを終わらせる時…! 今はただ、この者が救世主であることを願おう。 そう――――。 マサムネの勇気が世界を救うと信じて…! 【B-3/城/一日目/昼】 【伊達政宗@戦国BASARA】 [状態]:健康 ソードマスター [服装]:眼帯、鎧 [装備]:大包平@現実、童子切安綱@現実、燭台切光忠@現実、中務正宗@現実、雷切@現実、和泉守兼定@現実 [道具]:基本支給品一式(ペットボトル飲料水1本、ガーゼ消費)不明支給品1(武器・確認済み)、田井中律のドラムスティク×2@けいおん! [思考] 基本:自らの信念の元に行動する。 1:Let s Party! 2:駅(D-6)か工業地帯(E-4)を目指す。 3:主催を潰す。邪魔する者を殺すことに抵抗はない。 4:信長、光秀の打倒。 5:ゼクス、一方通行、スザクに関しては少なくとも殺し合いに乗る人間はないと判断。 6:戦場ヶ原ひたぎ、ルルーシュ・ランペルージ、C.C.に出会ったら、12時までなら『D-6・駅』、 その後であれば三回放送の前後に『E-3・象の像』まで連れて行く。 [備考] ※信長の危険性を認知し、幸村、忠勝とも面識のある時点。長篠の戦いで鉄砲で撃たれたよりは後からの参戦です。 ※長篠で撃たれた傷は跡形も無く消えています。そのことに対し疑問を抱いています。 ※神原を城下町に住む庶民の変態と考えています。 ※知り合いに関する情報をゼクス、一方通行、プリシラと交換済み。 ※三回放送の前後に『E-3 象の像』にて、信頼出来る人間が集まる、というゼクスのプランに同意しています。 政宗自身は了承しただけで、そこまで積極的に他人を誘うつもりはありません。 ※政庁で五飛が演じるゼロの映像を見ました。映像データをスザクが消したことは知りません。 ※スザク、幸村、暦、セイバー、デュオ、式の六人がチームを組んでいることを知りました。 ※荒耶宗蓮の研究室の存在を知りました。しかしそれが何であるかは把握していません。 また、中野梓の遺体に掛かりっきりで蒼崎橙子の瓶詰め生首@空の境界には気付きませんでした。 ※中野梓が副葬品(金銀・宝石)と共にB-3付近に埋葬されました。 ※宝物庫にはまだ何らかの財宝(金銀・宝石以外)があります。 【伊達政宗の入手した宝刀】 どれもが名の知れた業物。国宝級のものもある。政宗は自身に必要な数だけ宝物庫から精選した。 【大包平@現実】 童子切安綱とともに日本刀の最高傑作として知られる。岡山藩主の池田家の重宝。国宝。 【童子切安綱@現実】 銘 安綱 酒呑童子の首を刎ねた刀とされる。大包平とともに日本刀の最高傑作として知られる。安綱は伯耆国の刀工。国宝。 【燭台切光忠@現実】 伊達政宗がこの刀で家臣を斬った勢いで、そばにあった燭台も切れたことが由来。 【中務正宗@現実】 本多忠勝(本多中務)が所持していたことから。国宝。 【雷切@現実】 立花道雪(戸次鑑連)が雷または雷神を斬ったと伝えられる刀。 【和泉守兼定@現実】 土方歳三の愛刀。会津11代兼定が松平容保に従い上洛し、京都で鍛えたもの。 柾目鍛に五ノ目乱の波紋を焼き、当時の拵がついている。昭和40年6月9日、日野市指定有形文化財となる。 時系列順で読む Back みんな! 丸太は持ったか!! Next 魔王再臨 投下順で読む Back 試練、あるいは黙示録 Next とある馬イクの河口横断記 騎士 失格 (後編) 伊達政宗 165 揺れる片の眼 悲を呼ぶ邂逅!(前編)
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【オープニング】 話数 タイトル 作者 登場人物 000 オープニング――《開会式》 ◆tILxARueaU 帝愛グループ、遠藤勇次、インデックス、龍門渕透華、天江衣、利根川幸雄、上条当麻 【第001話~第050話までの本編SS】 話数 タイトル 作者 登場人物 001 002 003 004 005 006 007 008 009 010 011 012 013 014 015 016 017 018 019 020 021 022 023 024 025 026 027 028 029 030 031 032 033 034 035 036 037 038 039 040 041 042 043 044 045 046 047 048 049 050
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た行の死者名鑑 【田井中律】 【竹井久】 【伊達政宗】 【張五飛】 田井中律 , .ィ ´  ̄ ̄ ミ ー-. . / . , >ー 、 / . . ′ . / . . ト、 / ;′. . / / . .. . |ハ / / . / . . ! . ′ / / /. .ィ . . '. |/ . / . /|. i . l/. //_ |. | . '. ノ. . / . ;. .l l . | /´ ̄ | ′ |、 .! /イ. ./ . ァミ||. |. |ム≦ミ |′/| | 廴__ |. /. ィ . / '^ハ ! . l. |チぅ | | ' z=ミ! リ リ ノ. ' /. .| 八 (ヽ | . . |. ヒツ / ィん| |' /i /  ̄彡=ヘ | . ヽ.__ !. ∧ . l /′ヒソイ/ . |′ .人 _.∠ -―┴―< l. . ∧| ' {/ . . .| `Y´ / \'. . .∧| _ ノ. . . . .| __ _, -‐―‐- 、 人 / __ ヽ. . ト、 ‘ ’ イ. . . . | .;′ ∠-ァ―` / ヽー、 `Y´ ,′ , 彡'´ ミヽ '. 小 >‐ 彡ァ'|. . . /|/ .// /イノ^{-ヽ七ヾ \ \ { / ヽV ト { / ノ |. .∧′ .{八ィ三彡 三三三 ルい ⌒`ヘ/ヽ-‐ァ 廴/ |八|ノ/ |/ | 小 ヽ、 ン⊂⊃ _ ⊂⊃´/ ̄> `ー'\~^ーゝ / |/ ´. . . { 〉 |ノ〈 | ヽ | / /{ \_j / / r< ___メ ̄ヽフ / ヽ. リ/. | ノ {. //| ゝ _ / /∠ヘ/ ヽ 乂 ,′ / ヽ こ / |. ´ |{ i≧z‐ァヘ(/ _ン/ ,′ ∨彡 入 、_ ノ′ レ\N{>'´〈/-/了〕 弋/\/. ′ ヽ ヽ >' >‐ " ./ /7/ ∧ \| \ 、 丶 l 彡 >'´ 厶 \/ |└――,―=ォ―┘| \ ヽ ミ ト(`<イ. `ー^>j__/ \\| `. ∧ ∨ヽ` | 》 了 ヽ o ヽヽ 【名前】田井中律 【作品】けいおん! 【登場話数】7話 【死亡要因】斬首(信長の大剣) 【スタンス】対主催 「未来憶ネクロシス」で初登場。参戦時期は二年生の文化祭演奏・アンコール途中から。 自分の置かれた状況を理解できず錯乱するも玄霧のカウンセリングを受け、精神を安定させる。 しかし懐中電灯で遊ぶという不用意な行動からレイに玄霧を殺され、追い打ちにブラッドチップを飲まされカギ爪の男意外を殺せと脅される。 その後トリップ状態で彷徨う中サーシェスに殺されかけるもキャスターに回収される。 もしかしたらここが彼女のターニングポイントだったのかもしれない。 意識がまともにないのをいいことにキャスターにうふん、あはんされてしまう。UBWルートの「聖女凌辱」を超えるといえば分かる人には分かるか。 だが意識を取り戻した後、キャスターを説得し、協力してもらうことを取り付ける。 そして遂に念願の澪と再会。感動にむせび泣く。………………おまけに光秀を連れて。 再開の感動に喜んでる間にキャスター、幹也が斬殺。そして始まるスーパー☠フルボッコ☠タイム。 手始めに右足、次いで左腕。止めは与えずにあくまで嬲るだけ。 そんな中でも律が気にするのは親友の澪の身。澪の手を取ろうと残った腕を出そうとして―――興の冷めた光秀にアッサリと首を落とされた。 とんだ転落人生だったが彼女の不幸っぷりは死後にまで持ち越された。 同じく死者スレ行きのキャスターと延々とあらあらうふふタイム。 死んだ後も責め苦を受け続けるとかまさに地獄……最近はようやく慣れ(てしまっ)たようだが。 AAは問題の髪下ろしver。誰とか言ってはいけません。おかしくねーし! ≪総受けカワイソス≫ 竹井久 __/__/ / ; ; \/ \ _|  ̄~ーっl / / //ハi i |ー | / // / / / / / 、,' /ノ|; | _(二 | i.,/jl / ナクフl/ 、~\| / / '┬'、 / / |/レ /-=≠ . =ミ。 i| /| // //` ' ~ ` | / リ イ ''''' ' ,,,,,`ソ / /i ~ | ` l | ー~ー 、 / / / / ~ .i ノ ! | i / / / | /ノ \ r ~⌒ソ{ /| ./ | l i ;.ヽ. ー─ | /|l' / | `ト,i i/~' / ンー─_;个 イ; | i| | / ヾ | √ ̄ヽ/ ノ ノ| | ノ| i/ ト,へ | ./ / /.| .| /i! |y'l i \\| / / / | / .l|. / ヾ_ 'レ'__ ./ | / l| | |  ̄/ `、/ l| | l ̄l' /;---l| | / l l ヽ // ̄ ̄ / | .| \ ./ / | .| / ./ |__| / / / ̄ \_ 、 ./ /,,/| \ Y; i./ |  ̄ \ i| ! / . \ | \,/ ' \、| 「'ー─────────┴ソ /___________| /゙i i .i .i .i \前AA設置者にはわるいけど、AAを代えさせてもらったわ。なぜこれかって?なんとなくね。(※本当はへそだしに目がいきました by 新AA設置者) 【名前】竹井久 【作品】咲-saki- 【登場話数】1話 【死亡要因】転落死 【スタンス】対主催? 「塔――The Tower――」にて登場。 ゲーム開始直後にビル屋上で錯乱した中野梓を発見。危険と知りながらも、自身の悪待ち主義に従い接触を試みる。 その結果、梓をいったん落ち着かせる事には成功した。 しかし、梓から目を離した一瞬の隙に、自身が持っていた銃(弾は抜いてあった)により再度梓から誤解され、ビル屋上から突き落とされる。 落下していく最中、死の間際。彼女は最後に見た梓の純粋な泣顔に己の命を預けたのだった。 学生議会長としての貫禄か、彼女の行動は終始落ち着いたものであった。 果たして、彼女の最後の悪待ちが報われる時は来るのだろうか……。 とか思ってたら、その数話後に梓はあっけなく死んでしまい、やはり悪待ちは悪待ちかと思われた。 がしかし、今度は梓が残した蟹を憂が回収。 不安定なマーダーがしがらみを断ち切る事態に発展した。 大きな目で見ると、彼女の待ちはまだ終わっていないのかもしれない。 今後の憂の活躍次第では、竹井久の悪待ちが何かを引き起こす事態に繋がることになるかもしれない。 多分、危険な意味で。 余談になるが死亡してからずーっと放置されていた彼女の死体だが、 第二回放送直前に俺とホンダムコンビとの戦いで疲弊したバーサーカーにより、捕食されてしまった。 これにより彼女は二代目死体損壊王という嫌な称号を獲得した。 だがあえてここでは別の称号を贈りたい。 称号≪竹井さんおいしいです≫ 伊達政宗 ____ / / 弋=‐ ._ x<ニニニニニ>、 , '" , ′ \ `¨‐=ニニニニニニニニニ>'" / >._ ` ̄ ̄ ̄¨´ .イ /ニ=‐-=ニ. ___ . <ム ./ニニニニニニニニニニニニニニ>_くニ 〉 /ニニニニニニニj=ri irzzr='´ rタ i ヾ∧ ./ニニニニニニニj i | 圭圭} |刈 ∨〉 イニニニニニニニニi 从 `¨¨´ 〉} 从 i ∨〉___ \ニニニニニニニ j i i ハ、 くニ=-‐ァ . i j }_//// 〈 \二ニニ斗'^V | i {ヘ、 ⌒ ′ 从////7 ∨////////'∧| 从 个 . _ノ ', ' ∨////_ 〉/////////'ハ, ', ', ', ', ', ', ', ', '〈///,'ニニ ..、 ////////////'i, ', ', ', ', ', ', ', '/ ∨'〈ニニニニ ヽ /////////////,'弋____ニ=ー---〈 ∨ハニニニニ∧/////ニ=ー-..._/////////'ヽ ', .∨ハニニニニ∧∨//ニニニニニニ}`'<//////,∧ ', ∨jニニニニ∧ ∨ニニニニニニニ} ヽ/////,ハ ', 〉|ニニニニニ∧ {ニニニニニニニム ∨/////} ', i/iニニニニニ ∧ ゙マニニニニニニム ∨「ヽィ⌒V⌒7┐ . j/|=-‐¬ }_ } {ニニニニニニ 八 }/! く__ノ 〈__/>'"´ i } `'く ゙寸ニニニニニニニヽ ∧∨ _/ | } ハ \ニニニニニニニ〉 ∧∨ /∧ 八 i \ニニニ/ ∧∨/〈〉/ / ( ヽ |i ヽイ .∧ /〈〉/∨} /ニニ } | | }/> /〈〉/ ∧∨二ニ//_> ._ニニニ ノ jノ {ヽへ /〈〉/ ∧∨ニニニーァ/ニニニ 、ニ く__ノ \ /〈〉/ ∧∨ニニニニ/〈/////ハ 【FULL NAME】伊達政宗 【STORY】戦国BASARA 【NUMBER】10話 【DEATH】衰弱死(頭蓋損傷その他) 【STANCE】対主催 「モンキー&ドラゴン」より初登場。Stanceは当然Anti帝愛。 Goodsである大量のBoys Love Bookを前に立ち尽くす所、SkyよりDiveしてきたのは元の持ち主、神原駿河。 とりあえず神原を「異国上がりの変態町娘」としてEnemyでない限りはPartyを許すことに。 その間ずっとRapid fireに放たれる神原のHENTAI talkの相手をすることになるがそこは奥州筆頭、Coolに受け流す。 Governmentにて枢木スザクに会い、神原をLoverである阿良々木がいるD-6 Stationへスザクと向かわせ、自身はEastへとひとり向かう。 Best partnerであった片倉小十郎の存在と、その死を嘆きながら。 Castle of Azuchi―――の崩壊跡でTreasure warehouseを発見、六本のJapanese swordをGetする。 更に偶然Joker荒耶宋蓮のSecret baseに侵入、中野梓のCorpseを丁重に埋葬し、Battle fieldを求め野を下る。 道中で小十郎が救った命、福路美穂子(但しRainy devilによる存命)と平沢唯(気絶中)と邂逅。 ここでアッサリ本来の持物である六爪を福路美穂子からGetしたので、swordsはAnti帝愛を掲げる同士のSignとして活用することに。 Colosseumにいる明智光秀の存在を聞き向かおうとしたその矢先、一頭のBike―――じゃなくて馬イク(Ride on BAKA)が現れる。 Rainy美穂子のDirect attackで悶絶させた後、BAKA―――もといヴァンとの話というところで目撃したのは、馬に担がれていた小十郎のCorpse。 Broadcastで美穂子がReckless drivingしたのを抑え一人小十郎と向かい合い、Collarを悪用されないためにも小十郎の首を切る。 今一度美穂子らと別れ、ColosseumにてHENTAI―――明智光秀と遂に対峙。 これまで一度としてBattleに立ち合わず、背中を預けられるPartner、決着を待ち望んでいたRivalsは悉く先に逝き、政宗のStressもFull Gauge。 Facilities Serviceでの澪の歌をBGMにした地雷Death matchで独眼竜の初陣は幕を上げた。 一進一退のFierce battleを繰り広げるが、最後は決意を固めた澪のDrumstickで光秀は死に、結局はPoor combustionで終わってしまう。 Restの後、澪を逃がし政宗は新たなBattle fieldへ。 待ち構えるはBest of Greece hero、Heraclesことバーサーカー。 バーサーカーのPowerに対し政宗はSkillで挑む。戦況は互角だが、光秀との戦いで消耗していた政宗が次第にDefeat moodになっていく。 Reinforcementsに来たヴァンとのTagでも変わらず駆け付けた美穂子まで加わり、trioによる突撃を敢行する。 結果としてバーサーカーの右上半身を奪うも、ヴァンは死に、政宗もLeft wristを砕かれHelmetが外れたFaceにHead buttを喰らい意識不明の重態に陥ってしまう。。 比較的無事だった美穂子にFacilities Serviceによる治療を受けさせるためDrugstoreに連れられるが、そこに来たのは帝愛StaffのMABO―――言峰綺礼。 Angra Mainyuによる治療を美穂子と政宗の択一で求められ、美穂子は自身に使い、政宗はそのまま命を消失していく。 悪意に咽ぶ美穂子に最後のYellを送り、独眼竜はその左眼を閉じた。 序盤まではややAirだったものの後半の2大Battleでその存在感を誇示。戦国武将の面目躍如といったところである。 無念の退場となったものの彼のSoulは忠臣とで救った一人の少女に、 そしてそのSoulのSymbolは人知れず、Crime avengerを目指す少年が継いでいくことになる。 竜の魂は、確かに次代に引き継がれているといえよう。 TITLE≪竜魂継承≫ 張五飛 ,... - ' "  ̄  ̄  ̄ ` ー ...、 ,.. f " Z、 ̄`\ `ヽ、 / > `\ / 三⌒ \ / r''''''" _ \ / > `ヽ、...、 ヽ / _ F 、___ `ヽ、 、 ヽ / /.__ Y F" 、ヽノ `ヽ、 ヽ \ \ l / / Y ) ヾ" \.Y イト、 l. ヽノ | l l l (.  ̄` 、l __,l | | \」 f__ |l | L \` .|! l \_ ,、 Y '、 / ̄ / _, イ ゞ / / __. / | ヽ / l /ー‐ 、 \ ! レ ヽ、 /L_ `L/ / ノ ` l ヽ / / / l \ 、 | / / ./. | 、`ー-- ' / / | `ー / / | / / | _ / _,,-''" | / / ` ー-、____/ _, -''" | / 【名前】張五飛 【作品】新機動戦記ガンダムW 【登場話数】10話 【死亡要因】全身粉砕 【スタンス】対主催? 「正義のためなら悪となる」から登場。EWの大気圏上空でヒイロと対決する直前から参戦。 殺し合いに乗った者を排除すると共に、原作通り忌み嫌う弱者の「脅威」となって「戦う意思」を奮い立たせるべく行動を開始。 さっそく最初に立ち寄ったタワー最上階でゼロに扮し参加者全員に向けて喧嘩を売る。ああ、ゼロ本人の逆鱗に触れたし… 宣戦布告後、タワーの駐車場で「刹那のバイク」を入手。しかし操作に手間取り、ライトの点灯を忘れるといううっかりミス。 それが原因ですぐ近くにいた船井組のベンツと事故を起こしかけるがなんとか回避、気を取り直して船井達を襲撃し恐怖を与える。 次に武器を求めホールを訪れて『一発の広間』の条件を満たすも、結局望む物とは違ったアイテムを手に入れただけだった。 第一回放送で名簿外の死者やリリーナ・ドーリアンの死亡をきっかけに自らが「脅威」となる意味が薄れたことを感じる。 さらに確認した名簿に死んだはずのトレーズの名前が載っている事に動揺、そして自身の行動に疑念を抱き本来の冷静さを取り戻す。 学校を調査後、公園に向かう途中にライダーの暴走特急に追い回され、D-6駅周辺のデパートで今度はサーシェスを轢きかける。 たび重なる不幸に苛立っていた五飛はサーシェスを邪険に扱うも情報を交換し、別れた後デパートに向かう。 しかし移動手段が手に入らずゼクスにも会えず、さらに『ガンダムVSガンダムVSヨロイVSナイトメアフレーム~戦場の絆~』で惨敗して憤怒した五飛は時間を忘れて練習モードを挑戦し連勝した。しかし気付いたら放送直前であった。 ここまで単独行動で好き勝手やっていたごひ。しかし、ここから先は幸運か不運か共闘者と狂者達に出会う。 まず、駅に向かうデュオと式、再度サーシェスと遭遇したところで第二回放送が流れ、さらに魔王織田信長が来襲!! サーシェスを駅に逃がし、五飛と式の連撃とデュオの後方支援で挑むも圧倒的戦闘力に押され撤退を余儀なくされる。 迫る信長を何とか振り切った三人は、しばしの休憩の後、スザクを探すデュオ達と共に政庁へ向かう。 だが政庁にスザクはおらず、代わりに占拠していたのは本物のゼロが率いる腹黒の騎士団であった。 他のメンバーが情報交換を行い協力体制を敷く中、彼は空気を読まずに弱者である彼らに憤怒する。 しかし彼らなりに策を練って抗っていることを確認し、ホールで手に入れたUSBメモリをルルーシュに渡す。 荒耶宋蓮の死体を確認しに向かう前に唯に澪が来訪、彼らと情報交換で自身の知らぬ所で死んだトレーズに内心怒りを込み上げていた。 そんな中、本日出会う二体目の強敵バーサーカーが政庁に乱入!! 五飛はデュオと式と共に立ち向かうも苦戦を強いられ、ルルーシュの策が失敗したその時、五飛の瞳は紅く輝いた!! 洗脳された彼は「もやしがせいg……じゃなかった、「貴様は!俺が倒すっ!!」と言って一人で突撃!! しかし、ギアスで戦闘力を強化をしたところで化物バーサーカーに敵うわけもなく、ルルーシュの捨て駒としてその身を散らした。 今回も彼はネタに走り、ゼロに化けたり戦場の絆で遊び尽くすなどやはりはっちゃけていたwww そして最後に誤字から生まれた「超五飛」という名を手に入れた!!やったね!ごひ 称号≪悪のギアス戦士 超五飛≫
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恐怖の調理法あれこれ ◆0hZtgB0vFY 線路の上をひた走る影がある。 人の身とは思えぬ速度は、その者の特異な存在故であろう。 両の足で線路を蹴る、その動作自体は何処でも見られるありふれたものだ。 しかし早い。単純に脚力を誇るというわけでもない。 強固な線路を蹴り出す度に力強い足が人ならぬ加速を生み出す、わけではないのだ。 俯瞰的な視点で見るとよりはっきりする。 速度に緩急が無いのだ。 まるで車輪を用いてるかのように一定の速度で、しかし確実に前へと進む。 二本の足にてこれを行う不自然さが、見る者に奇怪な印象を与える。 地にねばりつくように、這いずるように、あるいは滑るように。 落ち着かぬ心を振り払うように走り続けたライダーは、線路の半ばで足を止める。 振り返れば駅は遠く、ここまで来れば安全であろうと思える場所まで辿り着いていた。 戦闘の疲労もあり、一度ここで一休みするのも悪くないと、人目につきずらい場所を選び腰を降ろす。 『たかが人間相手に何てこずってるのよ!』 不意に声が聞こえた気がする。 思わずびくっと背筋を伸ばし、周囲をきょろきょろと見渡す。 当然、居るはずもない相手である。 『まったく、だから貴女はグズなのよ』 またも聞こえた声に驚き振り返る。 やはり、誰も居なかった。 頭を振って意識をはっきりさせた後、怪我をした右腕を見下ろす。 人間の勇者と、狩りではなく戦いを行ったのは、随分と久しぶりである。 そのせいかと苦笑しつつ背もたれ代わりの壁によりかかる。 ライダーは遙かな昔、何人もの人間の勇者達を屠ってきた。 その後は、決まって二人の姉に何やかやと言われたものである。 そもそも二人の姉目当てに来た連中を、ライダーが代わりに撃退していたわけであるから文句を言われる筋合いなど無いと思うのだが、素直に罵られるがまま頭を垂れていた。 ロクでもない思い出だが、それでも、笑みが零れるのは何故であろう。 ライダーは聖杯戦争に思いを馳せる。 セイバー、アーチャー、バーサーカー、キャスターがこの地に来ているらしい。 残るはランサーとアサシン。たった二人であるが、二人のみであるのなら他のマスターを殺しつくすのも難しくはあるまい。 ただ、そこで真のマスターの存在に気付けるかどうかは別だ。 シンジはあの性格だ。ライダーが居ないにも関わらず、無駄に目立つ行動をしてさっさと殺されている事だろう。 となれば後は……と考えると少し愉快な気分になれる。 令呪の有無に関わらず、あの子は、何というか味方をしてやりたくなる。 上手くここで生き残れれば残るサーバントは二人。 しかもライダーのマスターを殺したと油断しきっている相手だ、奇襲の得意なライダーにとってこの上無い良い状況である。 今の所魔力の充填はかなり良い回り方をしている。 そろそろ結界を敷いて、大規模な魔力吸収を試みてもいいかもしれない。 もしさっき見逃した少女が結界に巻き込まれるような事になれば間違いなく死ぬだろう。 それもまた運命、結界から逃がれる運があれば生き残る事もあるだろうし、正直、どちらでも良かった。 ッザー どうも調子がおかしい。 短期間に血を吸いすぎて酔いでもしたか? いや、それほど急なペースでもない。 あのC.C.という少女の血に妙なものでも混ざっていたのかもしれない。 少し控えるべきか。いや、さほど実害もないし、何より全てを殺し尽くさねば真のマスターの元へは戻れないのだ、ならば仕方無いだろう。 ああ、やはりC.C.も、あの少女も殺しておくべきだった。 今から戻って殺そうか。全員殺す事が条件であるのだから仕方が無い。 笑いがこみ上げる。 後々がどうのと考える必要もなく、出会う者全てを殺し、血を吸わなければならないのだ。 人差し指で、とんとんとこめかみを軽く叩く。 やはり調子がよろしくないらしい。 偶々真逆の発想があったとしても、先に下した自身の判断を覆す必要はないはず。 どちらが生きようと死のうと、どうでもいいはずなのだから。 恐れるような事態なぞ、どちらであろうと起こるはずはないのだから。 ライダー自身も気付かぬ無意識下に恐れている事が、あるかどうかなど当然ライダーに判断出来るはずもなく。 ならば恐れ故回避した行動があるかどうかも判断出来ぬ道理であった。 ◇ 福路美穂子が目を覚ましたのは、意識を失ってどれ程の時が経ってからであろうか。 緊張に満ちた時間であると認識してた故、ほんの僅かなきっかけですら目を覚ましてしまったのだろうか。 幸か不幸か、そのまま致命的な事態に陥る事も無く、悪意を持つ何者かに発見される事もなく、美穂子は目覚めた意識と共にその身を起こす。 彼女は責任感のある女性だ。 記憶にある出来事を、無かった事として無視するような真似はしない。 ふらつく体を支えられるよう両膝に力を込め、同時に上体が崩折れぬよう手を膝につきながら、ゆっくり、ゆっくりと歩き出す。 視線が低いせいか視界は常より狭い。 それでも数歩歩くだけで、それを見つけられた。 ホームの灯火に照らされて、土気色の肌を晒し倒れる男。 腹部は、そこだけ墨汁をぶちまけたような黒に染まっている。 「片倉さん!」 慌てて駆け寄ろうとして足がもつれ、小十郎の遺体の側に倒れ掛かる。 額にぬるっとした感触、ライダーも流石に床に落ちた血液までは嘗めとっていかなかったらしい。 顔を上げると、すぐ側に、見た事も無い程生気を失った人のカタチがあった。 「っ!」 思わず息を呑むのも無理はなかろう。 震え怯え後ずさりし、悲鳴を上げて逃げ去るか、腰を抜かして動けなくなるのが美穂子の世界でのこの年の子の反応だ。 しかし、美穂子はきっと小十郎を見据え、既に流れ出るものもない腹部の傷にバッグから取り出した包帯を巻く。 小十郎の大柄な体から上衣を脱がし、それこそ父のものしか見た事が無い男性の裸体を、苦労しながら包帯で綺麗にくるむ。 それが終わると今度は胸に手を当て、何度も呼びかける。 人が来るかも、またあの怖い女性に襲われるかも、そんな危惧は歯牙にもかけず、何度も何度も小十郎の名を呼ぶ。 そして、左腕の手首を取り、心臓に耳を当て、口元から出る吐息が無い事を確認した時、彼が、死んだ事を理解した。 片方開いた目は興奮の為か充血し、これだけの作業をこなした程度で荒い息を漏らす。 温和で穏やかな表情は失われ、歯を食いしばり、頬の引きつった状態のまま顔が固定されてしまっている。 同じ学校の者が彼女を見ても、一目ではそれと気付けぬだろう形相をしているが、美穂子はそんな自身にも気付いていなかった。 次に美穂子は小十郎を置いたままホーム内を駆け回る。 書かれている壁の表示に目を配り、焦りからかやたら狭くなっている視界にも関わらず目的の物を見つける。 AEDと書かれた緊急時用の装備を手に取ると、蓋を開いて慎重に、音声ガイダンスに従って処置を行う。 機械音声が心室細動ではない為、AEDは使用しないよう忠告すると、がっくりとその場に膝を落とした。 「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」 美穂子の吐く息の音だけがホームに木霊する。 「はぁっ……い、移動、しないと……他の、駅を使う人が……困りますし」 小十郎の上から両脇に手をかけ、ずりずりと小十郎を駅長室まで引っ張っていく。 ベッドのようなものを期待したのだが生憎そんな気の利いたものはなく、仕方なく室内の机を移動し、スペースを作り床に寝かせる。 小十郎の体躯を引きずるのは美穂子には随分な労苦であり、筋肉の痺れた腕を撫でて痛みを紛らわせる。 殊更に大きな動作で振り返り、駅長室の片隅にある掃除用具入れであるロッカーを開く。 モップとバケツを持ち、途中見かけた水道で水を足し、美穂子は飛び散った血潮の掃除を始めた。 ホームの天井から降り注ぐ青白い輝きに照らし出された彼女は、小十郎の遺体をいじっていたせいか、制服の所々に濃い染みを作ってしまっている。 櫛が何の抵抗も無く吸い込まれそうなふんわりとした髪も、赤黒くメッシュに染め上げられている。 美穂子は何度も何度も言い聞かせる。 自分がやらなきゃ、と。 元々誰かに仕事を任せるのは苦手なのだ。 名門風越のキャプテンをやっていたが、こういった性質はリーダーに相応しいとは言い難いだろう。 かつて遭遇したことの無い事件の連続に、美穂子が動揺していないわけでは無論ない。 現にこうしてモップを操る腕も足も小刻みに震えたままだ。 小十郎の遺体を治療していた時はもっとひどかった。 一工程ごとに、小十郎の体に触れる度に、ありったけの勇気を振り絞るための時間が必要であった。 気の遠くなるようなそんな作業を、しかし美穂子は最後までやりとげ、汚れを全て拭き取った後で駅長室に戻る。 途中、打ち捨てられた六本の刀を見つけ、これは小十郎にとって大切な物であったと全てを拾い集めた。 美穂子は両手で抱えるようにして刀を持ちながら、じっと小十郎を見下ろす。 この刀をご遺族に、小十郎が心から大切に思っていた主君という方に届け、亡くなった事を伝えなければ。 次のやるべき事ははっきりしているのに、そこで、決して止まる事の無かった美穂子の動きが静止した。 刀を胸に抱き締めながら、泣き虫であったはずの彼女は、ようやく涙を溢す。 小十郎の真摯で立派な態度、初対面でも、美穂子のような子供相手でも礼儀を尽くす、そんなしっかりした人間であったと美穂子は小十郎を捉えていた。 壮健な肉体と全身からあふれ出す覇気は、これからもっともっとたくさんの事を成し遂げられる、そんな気概を感じられた。 そんな彼が失われた事が悲しくてならなかった。 彼の家族も小十郎を誇りに思っていただろう、文句無くそう思えるような素晴らしい人間。 そんな彼が道半ばにして倒れる無念を考えると悲しくて仕方が無かった。 大切に思っていた主君を何としても守らねばと悲壮な表情を浮かべていた。 そんな彼が主君と出会う事すら出来ず命を落とした事が悲しくてたまらなかった。 この時福路美穂子は全てを忘れ、ただひたすらに、小十郎の死を悼んでいた。 何かを生み出す悲しみではない。 ただ悲しむためだけの悲しみ。恨む事よりも、恐れる事よりも、自責に囚われる事よりも、何よりも先に美穂子は悲しんでいた。 自分を後回しにし、他人の考える事を、自身が払う労力と天秤にかける事すらせず気にかける、それが福路美穂子のあり方であった。 だからこそ今はまだ、この戦場の狂気を目の当たりにしたにも関わらず、恐怖に怯え竦むような事も無かったのだろう。 【F-3/駅付近線路沿い/一日目/早朝】 【ライダー@Fate/stay night】 [状態]:魔力充実++ 右腕に深い刺し傷(応急処置済み) [服装]:自分の服、眼帯 [装備]:猿飛佐助の十字手裏剣@戦国BASARAx2 閃光弾@現実×2 [道具]:基本支給品一式x3、不明支給品x0~6(小十郎から奪ったものは未確認)、風魔小太郎の忍者刀@戦国BASARA ウェンディのリボルバー(残弾1)@ガン×ソード [思考] 基本:優勝して元の世界に帰還する。 1:魔力を集めながら、何処かに結界を敷く。 2:出来るだけ人の集まりそうな街中に向かう。 3:戦闘の出来ない人間は血を採って放置する。 4:不思議な郷愁感 5:雑音? [備考] ※参戦時期は、第12話 「空を裂く」より前。 ※C.C.の過去を断片的に視た為、ある種の共感を抱いています。 ※忍者刀の紐は外しました。 【F-3/駅ホーム/一日目/早朝】 【福路美穂子@咲-Saki-】 [状態]: [服装]:学校の制服 [装備]: [道具]:支給品一式、不明支給品(0~1)(確認済み)、六爪@戦国BASARA [思考] 基本:池田華菜を探して保護。人は殺さない 1 池田華菜を探して保護 2 伊達政宗を探し出して六爪を渡し、小十郎の死を伝える 3 上埜さん(竹井久)を探す。みんなが無事に帰れる方法は無いか考える 4 阿良々木暦ともし会ったらどうしようかしら? [備考] 登場時期は最終回の合宿の後。 ※ライダーの名前は知りません。 時系列順で読む Back こんなに近くで... Next 試練/どうあがけば希望?(前編) 投下順で読む Back こんなに近くで... Next 存在 087 Only lonely girl ライダー 122 fragile ~こわれ者~ 087 Only lonely girl 福路美穂子 118 ひとりにひとつ