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第四回放送候補 タイトル 作者 A 第四回定時放送 ◆5iKodMGu52 B 第四回定時放送 ~十二時(リミット)~ ◆SDn0xX3QT2 C 第四回定時放送 ~二四時間後~ ◆W.hp1QcmWc D 第四回定時放送「これから」 ◆hANcxn7nFM
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麻雀黙示録カイジ 衣編 ◆6lyiPawAAI 希望の船・エスポワール……。 元々の用途からして希望の船と呼ぶのをためらってしまうこの船。 この殺し合いの最中でも新たな惨劇を巻き起こしていた。 「クソっ…! どうしてこんなことになっちまったんだ…!」 エスポワールの甲板に立つ、カイジ。 その傍らには物言わぬ骸と化したかつての宿敵、利根川幸雄の姿があった。 そして利根川によって海に突き落とされた八九寺真宵……生存は絶望的である。 こんな惨状になったのは僅か数十分前の事だった。 しかも一瞬……、本当に一瞬。 ものの数分で2人の命が消えた。 そのあっけなさにカイジは戦慄せざるを得ない。 「人の命は何よりも重いってのに、なんだってこんなあっさり逝っちまうんだ! こんなのはもうたくさんだ!」 ここに来てカイジは新たに決意を固める。 ――これ以上、人の命が失われてはならないと。 (利根川を殺してしまった俺が何を考えるかって嘲笑われるかもしれないけどよ…… だからって他人を殺すとか救わないとかそういうのにはならねぇ!) カイジは自分が無力に近いことも分かりきっている。 そこは皆で協力し合い、力を補うしかない。 (戦国武将にかぶれる訳じゃないが、たしか『三本の矢』とかいう逸話もあった……ような気がする) ちなみに、その『三本の矢』の逸話の持ち主が、人を駒のように扱ったりする世界もある。 ここでカイジ、ハッと思い至る。 「天江にこの事を伝えなきゃならねぇな…」 どう伝えていいかも分からないが、カイジはレシーバーを手に取る。 「天江、聞こえるか?」 『……』 「おーい、天江! 聞こえてないのか?」 『うるさい! この人殺し!』 「な!?」 ◇ ◇ ◇ カイジが利根川を撃ち殺した……。 その事実を前にして恐怖に駆られた衣はひとまずスイートルームに戻ってきた。 「か、カイジが利根川を……」 その瞬間、衣の脳裏に血の海に沈む利根川の姿がフラッシュバックする。 「ひぃっ!? こ、衣も利根川みたいに殺されるのか……?」 思えば真宵がいないのは既に殺されたからではないか。 となれば、残っているのは最早自分だけ。 その自分の身に危険が迫っている。 だが、衣は動く事ができず、ただ震えるほかない。 「ひっく、と、と~かぁ……グラハムぅ……ひっく、誰でもいい、誰か衣をた、助け…ひっく」 それどころか泣くのをこらえるので精一杯だった。 無理もない。 孤独な日々を送っていたとはいえ、自分が殺されるなどと考える事は当然無かった。 平和な世界で暮らす人間がこの環境に適応するなんてそうそうできる事ではない。 衣ほど精神的に幼ければなおさらである。 そのまま数分、いや数十分が過ぎたように衣は感じた。 その頃になると、ようやく落ち着いてきた。 「うぅ……そう、とーかもグラハムもここにはいない。衣はまたひとりぼっちになってしまったのだ……」 しかし、落ち込んではいられない。 死んでしまっては友達を作るなど夢のまた夢。 ……自分で道を開くしかない。 衣はそう心を固めて次に打つべき手を考える。 ここでふと、疑問が浮かぶ。 (何故カイジはすぐに行動してこない?) こちらに来るにしろレシーバーから様子を探るにしろ、殺す気があるのであれば早めに動くのが最善のはず。 (よもやあれが全て不慮の事故だったとでも言うのか? いや、まだ分からない……) そう考えるにはまだ材料が揃っていない。 不用意な打牌は敗北を呼ぶ事になる。 そして、この場合の敗北は即座に死を招く事になりかねない。 まずはどこかに避難すべきだと考える。 しかし、下手に動くと捕まる可能性も高い。 外に逃げても殺し合いに乗る者が近くにいないとも限らない。 (そうだ、戦闘禁止エリアのギャンブルルームへ向かおう!) ギャンブルルームへのギャンブル目的以外での長期滞在は禁止だが、カイジの様子を窺いつつ動く分には申し分ないだろう。 それに衣には別の目算もあった。 それこそ自分にしかできないような事の……。 「そうと決まれば早速動かないと!」 ここ、3階スイートルームから2階ギャンブルルームまで距離としてはそんなでもないが、 甲板にいるカイジが戻ってくる可能性も否めない。 衣はチーズくんを抱えなおして入り口に向かう。 いや、正確には入り口に向かう直前で足を止めた。 ベッドの上に置いたままのレシーバーを思い出したからだ。 ――その時。 『天江、聞こえるか?』 「……!!」 カイジからの連絡が来た。 何故こんなタイミングで連絡してくるのか衣には計りかねた。 それ故に一旦様子を見る。 『おーい、天江! 聞こえてないのか?』 それにしても、穏やかな口ぶりだった。 人を2人も殺した人間とは思えない冷静さが感じられた。 もっとも、それはカイジ側でも気持ちの整理をつけていたからなのだが、衣はそれを知る由もない。 ある種、暢気とも言える口ぶりに、衣はカッと頭に血を上らせる。 「うるさい! この人殺し!」 『な!?』 ……しまった。 衣は自らがした事の愚かさを呪う。 これではカイジが2人を殺したのを見たと言っているようなものだ。 落ち着いて話を合わせ、逃げる算段を整えるのが最善だったと今さらに思う。 こうなった以上、一刻の猶予もない。 衣はスイートルームを出てギャンブルルームへ向かう。 ◇ ◇ ◇ 『うるさい! この人殺し!』 「な!?」 天江はここの様子を見ていた……? だが、全てを見ていたならば、カイジの行動に多少は仕方がないと思う部分があってもいいはず。 しかし、今の口ぶりからだとそんな様子は一切感じられない。 (か、勘違いされてるんだっ……! 俺が殺し合いに乗っている者だとっ……!!) このまま勘違いされてはたまらない。 カイジは急いでレシーバーで反論する。 「ち、違うんだっ……話を聞いてくれ!」 『バタバタバタ……バタン!!』 「くそっ! レシーバーを置いていきやがった!!」 カイジは甲板の扉を開け、3階へと駆け下りる。 そして廊下の向こう側を凝視する。 「あの子供みたいな体格と長い金髪っ……! 間違いなく天江っ……!!」 カイジは誤解を解くべく、全力で追いかける。 「待てっ、待ってくれ!! 天江っ!!」 大声を出すカイジの存在に衣も気付く。 (誰が待つものか……!!) 先を走る衣は階段へと差し掛かる。 しかし、一見小学生のような衣と成人男性のカイジでは身体能力に差がありすぎた。 衣が2階への階段を半ばまで下りようかという頃、カイジも階段まで到着する。 「天江っ!! 待てって言ってるだろ!」 「誰が人殺しの言う事なぞ聞くものか!」 「だから、それには色々勘違いがあるんだよっ……!!」 階段においても一段飛ばしで衣に迫るカイジ。 もう両者の差はほぼないに等しかった。 「とりあえず、話を聞けっ!!」 カイジが衣に手を伸ばす。 衣もそれに気付くが、最早どうしようもない。 (捕まる……いや、こんな所で捕まるわけにいくものか!) ――その瞬間、エスポワール内の全ての照明が消えた。 「なっ……!? うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 叫び声と共に衣の横を何かが転がり落ちる音がする。 衣はそれに目もくれず、ギャンブルルームへとひた走る。 その姿は仄かに青白く包まれており、正に異彩を放っていた。 そして数十秒後、エスポワール内の照明が再び灯った。 ざわ… ざわ… ざわ… ざわ… ――2階の階段前。 1人の男が倒れ伏していた。 打ち所が悪かったのか、ピクリとも動かない。 今わの際にその男は何を思ったのだろうか。 何にせよ、物言わぬ人間の意思など分かるはずもない。 今、分かるのはまた1人の若者の命が失われたという事だけである……。 【伊藤開司@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor 死亡】 「って、死んでねぇぇぇぇぇぇ!!!!」 ガバッと起き上がる男、伊藤カイジ。 【伊藤開司@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor 生存確認】 「なんなんだよ、今のビジョンは!!」 ふん、死んでいなかったか、カイジ。 「え、何今のナレーション? もしかして利根川なのか!?」 さて、何のことだか分からんな。 「というか、2階まであと数段で足踏み外したところで捻挫が関の山だろうよ。幸い俺に怪我はなかったが……」 そんな事より奴を追わないで良いのか? カイジよ。 「そうだった。こんな所で、利根川の亡霊と話してる暇はなかった。 その前に利根川っ! お前を殺してしまった俺だが、許してくれとは言わない。 俺自身がお前を許せるような気にはならないからだ。 だけど、もし俺が死ぬ時が来たらそっちに行って殺してしまったことは詫びるっ……!!」 ……ふん、せいぜい生き地獄を味わうがいい。 「ああっ、そうさせてもらう!!」 駆け出すカイジ。その背中には何の迷いもない、か……。 ヒヨッコが……せいぜい貴様の生き様を見させてもらおうか。 ◇ ◇ ◇ カイジもまたギャンブルルームへと辿り着く。 衣がここにいるような予感が何となくしたからだ。 「天江……やっぱりここにいたか」 カイジが見据えるその先には仁王立ちする衣の姿があった。 「カイジ、如何にお前が殺し合いに乗っていようとも、ここで戦闘はできん」 「だから、俺は殺し合いになんか乗ってないっての……」 「問答無用! とはいったものの、衣にも違和感がある……だから」 神妙な顔つきの衣。 これが日常であれば、アンバランスなその表情に笑う事もできるだろうが、ここは非日常である。 カイジは緊迫した面持ちで、さらに続く衣の言葉に耳を傾ける。 「だから?」 「だからカイジ。衣と麻雀で勝負せよ!」 「……は?」 緊迫したこの状況で衣から出た言葉、それは麻雀っ……!! これにはカイジ、意表を突かれるっ……!! 「ま、待て。何でそうなる?」 「衣にはこの状況を打開できる手段が麻雀しかないのだ。 それに、相手が全力で来るならその人となりも何となくは分かる」 「マジかよ……」 天江衣の麻雀における支配。 それは1人に狙いを定めたものならば絶対的なものとなる。 まるで相手の思考を読むかのように……。 名門・風越の池田などは8万以上あった点棒を0になるまで弄ばれるという始末だった。 「どうした。やるのか、やらないのか」 「待った。俺は県大会に出たとかいうようなお前ほどの力はない。 麻雀の勝ち負けで俺が殺し合いに乗っているかどうか定めるのは暴挙だ」 「その事に関しては問題ない。何も衣に勝てといっているわけではない。 お前が全力で戦い、その姿勢を見たいと衣は言っているのだ。これでもまだ戦おうとはせぬか?」 「……俺はいいにしても、黒服に聞く事がいくつかある」 そう言い放つとカイジは傍に佇んでいた黒服に目を向ける。 朝方、利根川とここにいるカイジによって無残なほどの惨敗を喫した黒服。 ほぼ廃人状態になっていたのも昔の話とばかりに平静を保っている。 「ん? よく見るとあんた、別人じゃないか?」 「ギャンブル以外の質問には一切答えられない」 明らかに別人だった。 皆が離れていた時に何があったのだろうか。 ラジコンを操縦していた時も船の入り口を通って黒服が交代するのを見た覚えはない。 となると、このエスポワール内に他の人員が詰めているとも考えられる。 一旦カイジはその考えを打ち切って、黒服へと再び目を向ける。 「今、ディーラーを必要とするギャンブルはどうなってる? 確か使用不能になってたはずだ」 「その件についてだが、つい先ほどまた解禁となった」 「それはディーラーが交代したからか?」 「ギャンブル以外の質問には一切答えられない」 やはり、黒服が入れ替わるとギャンブルゲームはまた使用可能になるらしい。 入れ替わる時がいつだったのかが分からないのが不気味ではあるが……。 「カイジ! まだか」 「もう少し待て。麻雀についての詳しい説明を聞こうか」 「いいだろう」 ルールについてはおよそ一般の麻雀と変わらないものだった。 ただ、賭けるものが血液か、はたまたペリカか、ということである。 「100点で10万ペリカ……ということは2万5千点で2500万ペリカか」 「さらに、このエスポワール内の麻雀には特別ルールがある」 「特別ルールだぁ?」 エスポワールでの麻雀の特別ルール。 それはオンライン麻雀かオフライン麻雀かということである。 オンライン麻雀だと各地にある端末に繋がった相手と打つことができる。 こちらにはハロが打牌を反映して打つ仕組みである。 参加者が打った牌もICチップの認証で相手側に認識される。 もう1つのオフライン麻雀。こちらもそう難しくはない。 要は船に集まった参加者と打つという事だけである。 少し違うのはレートを参加者の合意で変えられる事である。 ただし、最低が1000点=10万ペリカなので、レートは上げる事しかできない。 また、イカサマ(通しなど)が発覚した場合は即首輪を爆破される。 能力じみた物に関してはその限りではない。 「って事は、オフラインだとディーラーも入るのか?」 「いや、参加者が足りない場合はディーラーではなく主催側の用意した人員がハロに反映される」 これであらかたの内容は聞いた。 カイジは改めて衣に向き直る。 「天江、賭けるものはどうするんだ?」 「残っているペリカがあるはずだ」 「……なるほどな」 幸いにも5000万ペリカ以上はまだ残っていた。 会議室から取ってくれば使える。 「どうした。まだやる気にならないのか?」 「いつまでも勝手な事言ってるなよ。俺だってやる時はやるんだっ……!!」 「そうでなくてはな!」 卓に着く衣。 カイジは一旦ギャンブルルームを出て会議室から5000万ペリカを取って戻ってくる。 それを黒服に渡すや否や席に着く。 特殊な端末に接続されたハロ2機も席に着く。 「ソアッ! ソアッ!」 「ツカエナイコ! ツカエナイコ!」 そしてカイジと衣の真剣勝負が始まる。 東一局 ドラ表示牌・西 東家 ギャンブル船01(カイジ):25000(親) 南家 のどっち :25000 西家 紫炎姫 :25000 北家 ギャンブル船02(衣):25000 (いきなり俺の親番か……天江がどんな打ち手かも分からないから不利か) さらにカイジの配牌もあまりいいものではなく、この局は守りに徹するしかない。 だが、衣はカイジの守勢を見切ったかのように一気に攻勢に出る。 「ポン」 「ポン」 (あっと言う間に天江が2副露……) 衣が鳴いたのは一索と一筒。 チャンタか、はたまた清老頭・混老頭の可能性も捨てがたい。 そして三順目。 「ツモ」 7⑤⑤⑤北北北 7 一一一①①① 「な、なんだその手牌は!? どう考えても早すぎるっ……!!」 思わず立ち上がるカイジ。 イカサマじゃないかと黒服の方を見やる。 「伊藤カイジ、座れ。爆破されたいか」 「……ああ」 しかし、予想に反して黒服は何も言わない。 考えてみれば、イカサマすれば即爆破すると言っていたのだから、既にしていないとおかしい。 ただし、『能力じみた物に関してはその限りではない』とも言っていた。 カイジは再び座る。 (どういう事だ? これじゃまるで天江に能力があるとか言ってるようなものじゃないか。 だが、そんなのはありえない。そう、これはまぐれだ! それ以外の何物でもない!) カイジ、能力を認めようとはせず、またもこれはまやかしと切り捨てる。 だが、天江衣の麻雀における力、それはまさしく本物。 それに気付かなければ、カイジに勝機は訪れないっ……!! 「トイトイ北ドラ3。3000-6000」 「……」 「どうした、臆したか。カイジ」 「なんだとっ……!!」 「臆したというならば……世界が暗れ塞がると共に、お前の命脈も尽き果てる!」 平常とは打って変わって好戦的な衣に若干戸惑うカイジ。 だが、カイジも伊達に死線を潜り抜けてはいない。 この程度で臆するはずもない。 「ふざけるなよっ……勝負はまだこれからだろうがっ……!!」 「その意気やよし! 来い、カイジ!!」 希望とはかけ離れた船、エスポワール。 その内部で続く2人の戦いはまだ始まったばかり……。 【現在のカイジと衣の勝負経過】 東二局開始前 東家 ギャンブル船01(カイジ):19000 南家 のどっち :22000(親) 西家 紫炎姫 :22000 北家 ギャンブル船02(衣):37000 【B-6/ギャンブルルーム/一日目/昼】 【伊藤開司@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】 [状態]:健康 [服装]:私服(Eカード挑戦時のもの) [装備]:シグザウアーP226(15/15+1/予備弾倉×3)@現実、レイのレシーバー@ガン×ソード [道具]:基本支給品、Draganflyer X6(残りバッテリー・20分ほど)@現実、Draganflyer X6の予備バッテリー×4@現実 [思考] 基本: 皆の命は皆で守るっ……!! 1:天江に勝つ……そして誤解を解くっ……!!(※勝ち負けは関係ないと言われても負けるのは悔しい) 2:麻雀が終わったら、またエスポワールに近づく参加者を見張る 3:魔法、超能力を認めようと努力するが難しく、ちょっと困ってる 4:『5分の退室可能時間』、『主催の観覧方法』が気になる。 [備考] ※Eカード開始直前、賭けの対象として耳を選択した段階からの参加。 ※以下の考察を立てていますが、半信半疑です ・帝愛はエスポワールや鉄骨渡りの主催と同じ。つまり『会長』(兵藤)も主催側。 ・利根川はサクラ。強力な武器を優遇され、他の参加者を追い詰めている。かつギャンブル相手。 ・『魔法』は参加者達を屈服させる為の嘘っぱち。インデックスはただの洗脳されたガキ。 ・戦国武将はただの同姓同名の現代人。ただし本人は武将だと思い込んでいる。 ・八九寺真宵は自分を幽霊だと思い込んでいる普通人。 ・天江衣の麻雀はおそらく運に任せたまぐれ。 ※エスポワール会議に参加しました ※利根川との議論で以下の考察を立てました。 ・澪と光秀は手を組んでいて、ゲームに乗っているかもしれない。 ・グラハムと衣は手を組んでいて、ゲームに乗っているかもしれない(ただしカイジはあまり信じていない)。 ・参加者は精神異常者ではないか。 ※甲板には利根川の死体とデイパックが放置されています。 【天江衣@咲-saki-】 [状態] 健康 [服装] いつもの私服 [装備] チーズくんのぬいぐるみ@コードギアス反逆のルルーシュR2 [道具] [思考] 基本:殺し合いには乗らない、麻雀を通して友達を作る 0:来いカイジ! ついでに打ち筋からカイジの性根を見切る 1:エスポワール会議組と一緒に行動する(※ただしカイジをのぞく) 2:ひとまず一万ペリカを手に入れて、ギャンブル船で『麻雀牌セット』を手に入れる 3:そしてギャンブルではない麻雀をして友達をつくる 4:グラハムが帰ってきたら麻雀を教える 5:チーズくんを持ち主である『しーしー』(C.C.)に届けて、原村ののかのように友達になる 【備考】 ※参戦時期は19話「友達」終了後です ※利根川を帝愛に関わっていた人物だとほぼ信じました。 ※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。 ※エスポワール会議に参加しました 【天江衣の能力について】 賭博各種において常に強大な手を引き出す。 所謂、豪運(少なくとも麻雀、ポーカーで発揮可能) 満月の夜になるとさらに力を発揮する。 どの程度の能力か、麻雀の他に使えるかどうかは後の書き手にお任せします。 また、気が昂ぶると自分がいる建物を停電させる事ができる。 ※軍用ジープと4500万ペリカを交換しました カイジと衣が麻雀用に5000万ペリカ使用中です 銃器などとペリカを交換したかどうかは後にお任せします ペリカ残量、最大5800万ペリカ(ペリカード分含む) ※会議室に以下の物が置かれています 基本支給品×3、神原のブルマ@化物語、ティーセット@けいおん!、特上寿司×21@現実、 空のワインボトル×4@現実、ルイスの薬剤@機動戦士ガンダムOO、 シャトー・シュヴァル・ブラン 1947 (1500ml)×26@現実、紬のキーボード@けいおん! ペリカード(3000万ペリカ)@その他、2800万ペリカ@その他 ※スイートルームにレイのレシーバー@ガン×ソードが置かれています。 【ギャンブル船について(追記)】 ギャンブルルームの黒服は自身が持つペリカ限度額まで負けると、他の黒服と交代になる。 交代方法及び、交代された側の黒服の行方については不明。 黒服の交代に伴い、カードゲーム、ディーラーを必要とするギャンブルは再度使用可能。 【ギャンブル船の麻雀ルール】 オンライン麻雀とオフライン麻雀の2つがある。 オンライン麻雀は各地の端末と対戦可能。ルールも同じ。 オフライン麻雀はギャンブル船内での対戦となる。 参加者が足りない場合はオンラインと同じく主催側から面子を補充。 ルールはオンライン麻雀と同じだが、レートの引き上げが可能(ただし参加者の合意の上) 時系列順で読む Back 魔王再臨 Next それは不思議な出会いなの 投下順で読む Back ガンダムVSガンダム Next それは不思議な出会いなの 141 試練、あるいは黙示録 伊藤開司 168 麻雀残酷物語(前編) 141 試練、あるいは黙示録 天江衣 168 麻雀残酷物語(前編)
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優&愛 ◆1aw4LHSuEI 硬い音。無機質な、冷たい音。規則正しくリズムを刻む。 この廃墟となったビルの暗い廊下。静かに響き渡った音。 剥き出しのコンクリートの上を幾人かで歩いている様だ。 廊下には窓が無く、夜明け過ぎの今でも闇が満ちていた。 丸い光が揺れながら進み行く。闇を切り裂いて広がる光。 懐中電灯によるものだろうか。照らされた床は不均一だ。 その間に見える宙を舞う埃がまるで霧のようにも見えた。 三人の人間が歩いていた。 一人は、一行の最前列を歩く赤のチャイナドレスを着た短髪の少女。その瞳は何を含んでか、爛々と怪しく光っている。 一人は、二番手を行く黒の制服を着た少年。辛いことでもあったのか。甘い顔に見合わない厳しい表情を浮かべている。 一人は、最後尾を勤める少女。ゴシックロリータ調の服を着て膨れ面。少々機嫌が悪そうにしながら後ろを付いていく。 「そういやよお、旦那」 静寂を破るように先頭の少女が顔を半ば後ろに向けて言葉を発する。 無言のまま廃墟を歩き続けることに飽きてしまったのかもしれない。 ……状況的に見て、恐らく旦那というのは自分のことなのだろうな。 そう考えたルルーシュはサーシェスに何だと素っ気ない返事をした。 「どーしてこんな廃ビルを探索しようと思ったんだ?」 言っちゃあアレだが、こんなところに何かあるもんかね。 廃ビルだぜ? 廃ビル。名前通りに荒れ放題じゃねえか。 軽い口調で言うサーシェスに、ルルーシュも軽く応えた。 「随分と今更な質問だな。もう最上階だぞ」 「まあなあ。けど今更に気になったんだから仕方ねえだろ」 気になった。と、いうよりはここまで全く成果が上っていないことが原因か。 結果さえ出ていれば、人は多少の理不尽にも耐えることが出来る。だが……。 上手くいかなければ納得済みだったはずの事さえ疑惑が浮かんでくるものだ。 黒の騎士団を纏めていた経験から、ルルーシュはそれを充分に承知していた。 「……サーシェス。お前はこの施設をどう思う」 「ぁあ? どうって、どういうことだよ」 「単純に、感想としてでいいさ。廃ビル、という施設を聞いてどう思う?」 「……はあ、そうだな。なんつーか分不相応な感じがするな」 一瞬考える素振りをして、サーシェスは軽く答えた。 二人の話し声だけが、冷たく静かな廊下に響き渡る。 「ほう」 「他の施設はなんつーかアレだ。確かに訳わからねえのもあるが、何となく特別なのは分かる。 けどよ、『廃ビル』っつーのは普通って言うか……ただのボロいビルだろ?」 「施設として地図上に示してあることに違和感がある、ということだな?」 「ああ……。まあ、そういうことかな」 「それだ」 「はあ?」 「普通なら描写されるまでも無い建物が地図上にわざわざ描かれている。 つまり、逆に言えば描かれるだけの何かがある、ということだ」 「一見ボロいだけのこのビルにか」 「一見ボロいだけのこのビルにだ」 「はぁん。なるほど」 旦那は色々考えてんだな。そう言ってサーシェスは肩をすくめる。 それで、と。話のついでと言うように振り返り憂に向かって聞く。 「お譲ちゃんは何も思ったりしなかったのかよ?」 「別に……。私はルルーシュさんの指示に従うだけですから」 「へえ。随分といい子ちゃんなんだな」 「おい、サーシェス……」 「へいへい。無駄口はこのへんにしときますよ、っと」 唇を釣り上げて笑った後、前に向き直って探索を続けるサーシェス。 このあたりの切り替えの速さはやはりプロかと、ルルーシュは思う。 「……と、そんなこんなでやっとだが、これがこの階最後の部屋だな」 「そして、屋上を除けばこのビルで唯一未探索の場所、か。よし、サーシェス。開けてくれるか」 「あいよ」 目の前に現れたのは鉄製の硬く閉じられた扉。 磨硝子もはめ込まれていない無骨な金属の塊。 冷たい把手を握り捻り、最後の部屋は開かれ。 「――――あれ、固え」 なかった。 「……サーシェス?」 「開かないんですか」 「や、まてまて。ノブは回るから鍵がかかってる訳じゃねえ……。あー、畜生! 古いから錆び付いちまってんのか!? くそっ、くそっ! 開け開け!」 端正な顔をゆがめて紡がれるのは似合わぬ悪態。 柔らかそうなその唇を不機嫌そうに捻じ曲げて。 スリットが翻り太腿が覗くのも一向に気にせず。 サーシェスは扉に何度も何度も蹴りを咬ました。 しかし扉もなかなか強情で動く気配は見せない。 「開かないなら俺が代わりに……」 「や、旦那は無理だろ。もやしだし」 「そうですよ。ルルーシュさん。無理はしないでください」 「――お前達。俺をなんだと……」 運動不足。かつ過労気味の貧弱な学生だと思われている。 現実は非情である。男性として体力的に頼られない存在。 それが悪逆皇帝、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだった。 尤も、憂としては怪我を心配しての言葉でもあるけれど。 「仕方ねえ。旦那に無理させるわけにもいかねえし、ここはいっちょ本気出してみっか!」 構えを取り、集中。理論的に考えていた反射速度に限らない肉体強化。 電気と磁力により足のツボを刺激し、キック力を遥か増強させる――! 繊細、かつ大胆な電流のコントロールによって高まっていく脚の筋力。 チャージ完了。気合も充分。掛け声一発みせて、放つは必殺回し蹴り。 「ちょいさああァァーーーーーーーーーー!!」 紫電が走り軌跡を描く。直撃と同時に響き渡る轟音。 幾ら硬く閉じられた扉とて耐えられるものではない。 「いよしっ、開いたぜー」 「……ああ、良くやった。サーシェス」 「ははっ、それほどでもねえよ」 「…………」 ここぞとばかりに過剰なほどの賛辞を送るルルーシュ。 満更でもないのか目を細めてそれに応えるサーシェス。 そんな二人を白い目で見た憂はどこか機嫌が悪そうに。 それを無視して一人で先に部屋の中へと入っていった。 「…………」 「…………」 残された二人は顔を見合わせて。 片方は肩をすくめ笑みを浮かべ。 片方は額を押さえ溜息をついた。 ● ● ● 【憂の場合】 どうしてだろう。 いらいらする。 どうしてだろう。 気に入らない。 あの人が。 あの人と話しているルルーシュさんが。 なんとなく……もやもやする。 不透明で、よくわからない。 どこかしらもどかしくて手が届かない。 どうしてだろう。 あの人が視界に入る。 心が、ざわめく。 …………。 わからない。けれど、これだけはわかる。 私は、あの人が嫌いだ。 ● ● ● ……それにしても頭が痛い。 廃ビルの探索を終えたルルーシュ・ランペルージは、ホバーベースの制御室で額を押さえて考えた。 結論から言えば期待以上の結果だった。――いや、はっきりと想定以上のものが出たと言ってもいいだろう。 あの後、三人で最後の部屋を調査した結果、サーシェスが棚が二重底になっていることに気付き、 その下からデータディスクが見つかったのだ。 他の箇所も充分な捜索をしたが他には何も見つからず、それのみを探索の成果としてホバーベースへと帰還した。 ――――その、中身が問題だった。 帰ってきて早速中身をチェックしたルルーシュは驚愕することになった。 ……それは、首輪の詳細な設計図だったのだ。 ある程度以上の機械技術、知識。充分な工具。 それさえあれば十全に――とまでは言わないものの、十分に首輪を解除できるだろうという予想が出来るほどに詳細な。 なぜ、こんなところにこんな情報があるのか? くるくると左手でデータディスクを回しながら――右手は骨折している――ルルーシュは考える。 …………いや、この情報がここにあったことをどう考えるべきか? 普通に考えれば、こんなところにこのような貴重な情報があるはずがない。 否、あってはならないのだ。 折角首輪という方法で参加者を拘束しているというのに、それを自ら解く方法を会場内に残すなど本末転倒もいいところ。 例えるならば、牢屋の中、囚人の手の届くところに出口の鍵を置いておくようなものだ。 ここまで準備された計画だ。主催がうっかりとミスをして配置した、という可能性は限り無く低いだろう。 いや、そもそも探せば見つかる程度にではあるが隠蔽されていたのだ。偶然置かれたとは考えにくい。 誰かが何らかの目的で設置したと考えるのが自然だろう。 ……と、なれば考えられる可能性は大きく二つに絞られる。 一つは主催者は首輪を外すところまでをゲームと考えている。だから、分かりにくいが見つからなくはない箇所に情報を隠していたという可能性。 もう一つは運営側に参加者達に協力するような人間がいて、脱出のための情報を流しているという可能性。 このどちらか……いや、こんな怪しい施設にあからさまに配置されていたことを考えれば……前者の可能性が高いだろうか――? ……予想していなかったわけではない。 随分と前から首輪を外すことがゲームのうちだという予想は立ててきた。 その裏付けが取れた。それだけのことだと言うことも出来るだろう。 だが、予想が当たることは決して嬉しいことではない。 そうであるとするならば、首輪を外したところで未だ主催者の手の中から抜け出せていない、ということに他ならないのだから。 つまり、元の世界へと帰還しようと思うなら、首輪を外すだけでは――足りない。 更にもう一手。主催者、リボンズ・アルマークの裏をかく鍵が必要となる。 そのためにも、今使える手札――騎士団の面々――を最大限活用しなければいけない。 何一つ無駄に出来るような余裕は、ないのだから。 だからこそ―――― 「――ルルーシュさんっ♪」 ハッとして、閉じていた目を開く。 探索の後シャワーを浴びてくると離れていた憂が戻ってきたようだ。 答えるために顔を上げたルルーシュの目に映ったのは楽しげに笑みを浮かべる憂。 少しだけその髪に湿気が残っているのを感じる。 「どうですか、この服。そろそろ汗かいてきちゃったし着替えたんですけど……似合ってます?」 はにかんで笑う彼女は確かにさっきまでのゴスロリとは違う服を着ていた。 くるり。その場で一回転。 スカートが翻り螺旋を描く。 ふわりと捲れ上がったそれはしかしその中身までさらけ出すようなはしたない真似はせず。 腿と靴下の間に絶妙の領域を作り出すに留まった。 ……少しだけ、ルルーシュは呆けて見とれた。 クリーム色のその服は、彼に取って見慣れた、或いはどこか懐かしいアシュフォード学園の制服だったからだ。 「……ああ、いいと思うぞ」 「ほんとですか? あはっ」 ……ルルーシュは少しだけ状況を忘れて少しセンチメンタルな気分になる。 その制服は、彼にとって日常の証だったからだ。 学園の一生徒とゼロとの二重生活を続けることはルルーシュにとって大きな負担だったに違いない。 それでも決して学園に通うことを辞めようとはしなかったのは。 ……打算もあっただろうが、平穏を感じていたから、という理由も少なからずあったのだろう。 その制服を平穏とは程遠いこの場で、ギアスで操り傀儡にしている少女が着ているというこの状況で。 何も感じ入ることがないほどに、ルルーシュは理性的に生きられているわけではなかった。 ――本当に、本当に少しだけ。 芝居も無しに、口元に自嘲を含む笑みが浮かぶ。 「ゴスロリばっかりだと飽きちゃいますしね!」 「……そうだな」 ああ――――それにしても。 ゴスロリ、やめてしまったのか……。 似合っていたのに……。 …………。 ……頭が痛い。 そんなことを思うルルーシュだが、顔には微塵も出さずに。 嬉しそうにはしゃぐ憂と戯れるのだった。 そして、暫しの後。 「さて、それはそれとして出かけるか」 「はい? どこへですか?」 「折角着替えたんだ。新しい服でショッピングといこうじゃないか」 気軽に女の子をデートにでも誘うように。 ルルーシュ・ランペルージは手を差し伸べた。 ● ● ● 【ルルーシュの場合・1】 表情には出さない。 態度に出すことはない。 けれども、自分の中で膨れ上がるそれを抑えきることができない。 その感情の名は――不安。 ――どうやって逃れればいい? この殺し合いから。 現状、具体的な目処など何も立っていない。 考えれば考えるほどに逃げ場が失われていく。ただ、行き止まりだけが明らかになっていく。 憂やサーシェスに漏らすことはないが――弱音の一つでも吐きたい気分だ。 けれど――それを許してくれる相手は、状況はここにはない。 虚勢を張ってでも、貫かねばならない。 トップが弱さを晒しても、同情がもらえるはずもなく。 悪戯に部下の不安を煽るだけなのだから。 ――そもそも諦めることなどできない。たとえそれが那由他の彼方でも。 俺には、俺たちにはやらなければいけないことがある。 続けなければいけないことがある。 そのためにも、ここで果てるわけにはいかない。 最初から、道はない。 この先がたとえ袋小路だとしても――進むしか、無いのだ。 だが――。 どうすればいい。 首輪を外すことはその気になれば十分に可能だろう。 けれどもその後にどうすればいいのか。 いや、そもそも外してもいいのだろうか。 これほどあからさまに首輪を外せと言わんばかりに置かれた情報。 首輪を外すことは主催者たちの思惑通り……。 むしろ、ゲームを次の段階に進めるだけなんじゃないか? ――少なくとも、その可能性を捨て去る訳にはいかない。 と、なれば。軽々しく首輪を外すわけには行かなくなってくる。 これ以上の情報が望めるかはわからないが……。 少なくともスザクと合流し、情報の交換と戦力の補強を行った後のほうが好ましいだろう。 ――慎重になりすぎているか? だが、今すぐに首輪が爆破されるというわけでもないのだ。 慎重と臆病は違う……が、ここはまだ慌てる場合じゃない。 まだ猶予はある。ならばその与えられた時間をできる限り有意義に使うべきだ。 なにしろ、首輪を外した後に何が待ち受けているのか、俺たちには想像もつかないのだから。 わからない。そうだ。俺たちは未だ何の解決の糸口もつかめてはいない。 主催者が有している戦力はどれほどのものなのか。 ――軽く見積もっても参加者総員が力を集めたよりも少ないとは思いがたい。 こちらを一掃出来るだけの武力。それを持っていないと考えるのは流石に楽観がすぎるだろう。 足りない。これから購入しようとしている機体とて、向こうに用意されたものだ。 全ては奴らの手のひらの中――。本当に抗うことが出来るのか。 ――笑えてくる。 いつだって変わらないな。 絶望的な状況は何度もあった。 これは、その中でも最大級だ。 だが、俺のやることは変わらない。 余裕ぶった態度でいよう。 大物のように見せかけよう。 敵も味方も騙し通そう。 最後まで。 それが、それだけが。 この俺が果たせる、唯一の役割だから。 ● ● ● 紅蓮弐式(ぐれんにしき)。 初の純日本製にして第七世代相当のナイトメアフレーム。 全高4.51m。全備重量は7.51t。 基本性能としては、全体的に高く、特に機動性能に優れている。 だが、何よりも注目されるべくは右腕部に搭載された「輻射波動機構」だろう。 このシステムは右掌から高周波を短いサイクルで対象物に直接照射することで、膨大な熱量を発生させて爆発・膨張等を引き起こし破壊するというもの。 掴んだKMFの装甲や武装の加熱破壊の他、輻射波動によって発生する振動波によって砲撃から機体を丸ごとガードする障壁としての使い方もある。 また右腕は大型に加え伸縮機構が備わっており、KMF1機ぶん離れた間合いでも射程圏内に入る。 まさに必殺兵器と呼ぶにふさわしく、この紅蓮弐式というナイトメアフレームの代名詞のような武装である。 (wikipedia参考、抜粋) 「これが……紅蓮ですか」 紅に染められたスリムなボディ。 見るものを威圧するような長大な右腕。 ホバーベースに搭載されたナイトメアフレーム、『紅蓮弐式』を見て平沢憂は放心したようにそう呟いた。 「ああ。そして、これからお前の愛機になる」 「……すごい」 カタログスペックだけでは分からない紅蓮弐式という機体の芸術的完成度。 圧倒的な才能を持つ憂はそれに何か感じ入るものがあったのか。 ルルーシュの言葉にも反応を返さず見惚れたように紅蓮を見つめていた。 「……これ、本当に私が使ってもいいんですか?」 「勿論だ。今、俺達の中で一番ナイトメアの操縦が上手いのはお前だからな。 三億ペリカと決して安い買い物ではなかったが、十分以上それに値する結果を出せると信じている。 期待しているぞ、憂」 「はい!」 にこやか笑顔を浮かべる憂。 それに応えるルルーシュ。 何も事情を知らずに表情だけを見ていれば。 ――ひょっとして、仲のいい兄妹の様に見えるのかも知れなかった。 「えへへ……。ねえ、ルルーシュさん。お腹すいてませんか?」 「ん? ……そうだったな。結局後回しにしたんだったか。悪いな、憂。作ってくれるか?」 「任せてください! 今度こそ私の手料理ご馳走しますね!」 そうして和やかな空気のまま。 平沢憂は格納庫から飛び出していき。 ルルーシュが一人、そこには残された。 「ふぅ……」 ため息が、一つ。 目線の先に映るのは紅蓮弐式。 ルルーシュにとっても印象深い機体。 かつて頼りになる手足であった彼女。手足でなかった彼女が搭乗していた機体。 それをもう一度、自分に服従する少女を乗せるという事実は――どこか、滑稽にもルルーシュには思えた。 勝つしか無い。そのためにはためらってなどいられない――。 言い聞かせるまでもない。ちゃんと理解している。迷いもない。 だが――。 「考えていても仕方ない、か」 五飛とヴァンの首輪を換金し、廃ビルの施設特徴「まとめ売り」で安く売っていたオートマトン三機を一億ペリカで購入。 後々のことを考えて、残しておくペリカを計算に入れれば、これが今できる最大限の装備だ。 今の手札でどこまで勝負になるだろうか。 ルルーシュは考察に入るが、どこまで行こうとも所詮は机上の理論。 果たしてこの物語の行く末がいかなるものか。 さて、それは。やってみなければわからない。 ● ● ● 【サーシェスの場合】 好き? 嫌い? 好き? なあんか、知らねえけど、あのお嬢ちゃんに嫌われてるのか俺? おかしいよな。こんなに紳士に振舞ってるってのによ。 はは。ま、それは冗談だとしても、仲が悪いのは問題だよな。 いや、一方的に敵視されてるだけで、俺としちゃあむしろ気に入ってるんだがね。 やっぱ、さっきまで敵だったってのがまずいのか。 弱るよなー。甘い甘い甘い。あれほどの才能があってもやっぱりお嬢ちゃんってことかね? 昨日の敵と手を結び、さっきの味方の背中を刺す。 それぐらいは心得て欲しいもんだぜ。 ……いやはや、しかし。ここは。あれだな。 仲を深めるためにでも、トークタイムと洒落込みますか――。 ● ● ● 「いやあ、羨ましい限りだな、お嬢ちゃん」 「…………」 ホバーベース廊下にて。 戦争狂と殺人者は遭遇した。 この廊下には二人だけ。冷たい廊下に二人きり。 正直なところを話してしまうと、憂はこの傭兵が苦手だった。 いや、もっとはっきりと嫌いだ、と言ってしまってもいいかも知れない。 何故か。と聞かれても困る。 さっきまで殺し合いをしていた相手だから簡単には割り切れない、というのもあるだろう。 けれどもそれ以上に。 生理的嫌悪感。自分でもよくは分からないけれど。 あまり近寄りたくないと、そんなことを思っていた。 だから、ルルーシュがいるわけでもないこの場で取り繕って仲良くなどしたくない。 そんなことを考えて、少女はかけられた言葉を無視して通り過ぎようとした。 「まあ、待てよ」 手を伸ばし、行く先を遮るもまた少女。――少なくとも、外見は。 不快そうに眼を細めて平沢憂はアリー・アル・サーシェスを見た。 「なんですか」 うざったい、という気持ちを隠そうともしない口調。 そんな様子を物ともしないでサーシェスはにやりと笑う。 「おいおい、一人だけ新しい機体買って貰ったからって調子に乗ってねえ? 俺とは立場が違うってかよ」 「――不満だったんですか、リーオー?」 「ははっ、なーんちゃって、うそうそ! お下がりの機体は慣れてるし、別にあいつも悪かあない。 相手が生身なら充分バケモノどもだって相手できるだろうからな。贅沢言う気はねえよ」 「だったら、何の用ですか」 「いーじゃねえか、ちょっとぐらいお話しようぜえ? 俺、あんたのこと結構気に入ってんだよ」 「……私は、」 あなたと仲良くする気はないです。 そう、告げようと口を開きかけたその瞬間。 憂の意志とは無関係に目に映る光景が変わり、背中に覚える衝撃。 「――――っ!? なっ……」 「――そう冷たいこと言うなよ。傷つくだろ?」 サーシェスは憂の手を取って体ごと壁に押し付けた。 当然のように憂はもがいて離れようとするが、体ごと密着されて逃れられない。 暫く暴れそれを理解して、怯えたような、憤るような顔を憂は見せる。 それが気に入ったのか。にやけた表情を浮かべてサーシェスは互いの顔を呼吸を肌で感じるほどに近づけた。 「……くっ、離せ……!」 「おいおい。落ち着けよ。こんなのスキンシップだろ?」 嫌悪感を耐え切れず暴れる憂だが、どうも体に力が入らずうまく動かない。 外見上、身体能力的には大して変わらないはずの少女に一方的に抑えこまれてしまう。 それはサーシェスが傭兵として培ってきた経験からの拘束術。 如何に力が女子中学生の域まで落ちていたとしても、何の訓練もない少女を動けなくするには充分なものだった。 憂はしばらく抵抗していたが、やがて無駄だということが分かったのか、力を抜いて大人しくなった。 「……。なんの、つもりですか……。」 「ぃやぁぁぁああぁぁっと、俺の話を聞いてくれるみてえだな。嬉しいねえ」 顔に似合わぬねちっこい眼をしてサーシェスは哂う。 戦争狂が元の姿のままならば身の危険を感じるところなのかもしれないけれど。 自分と大してかわらぬ少女の姿であるためにそこまでの考えには至らず。 憂は苦々しげにサーシェスを睨みつけるという反応だけに終わった。 「……用があるなら、手短にしてくれませんか」 「旦那のために飯作るんだっけか。ははっ、可愛いねえお嬢ちゃんも。 ……そう睨むなよ。わかったわかった。本題に入るさ」 「……はやくしてください」 できるだけ視線を合わせないようにしながら、憂は言う。 そんな様子を知りながら、勿体付けるように貯めてサーシェスは世間話のようにそれを訊いた。 「――――なあ、お嬢ちゃん……。あんたはどうして人を殺す?」 憂は少し呆然とした。 そんなことを言われるとは思っていなかった。 そして、もうひとつ考えた。 それはルルーシュと出会ったばかりの頃、同じようなことを彼に訊かれたときのことだった。 「どう、して……?」 固まってしまった憂に追い打ちをかけるように、サーシェスは言葉を続ける。 「――――ああ、その通り。人間って奴はどんな理由だろうと人を殺せるもんだ」 例えば正義、例えば信仰、例えば愛情、例えば友情、例えば憐憫、例えば拒絶、 例えば憤怒、例えば自由、例えば使命、例えば後悔、例えば約束、例えば自愛、 例えば肉欲、例えば食欲、例えば金欲、例えば快楽、例えば名誉、例えば他愛、 例えば狂気、例えば正気、例えば善意、例えば悪意、例えば退屈、例えば満足、 例えば復讐、例えば平和、例えば慈善、例えば相違、例えば誤解、例えば理解、 例えば偽善、例えば超然、例えば支配、例えば苦痛、例えば怨恨、例えば嫌悪、 例えば求愛、例えば偶然、例えば必然、例えば運命、例えば信念、例えば感動、 例えば崇拝、例えば期待、例えば障害、例えば堕落、例えば諦観、例えば決意、 例えば警戒、例えば保険、例えば当然、例えば貧困、例えば憂鬱、例えば救済、 今日もどこかで誰かが誰かを殺す。めくるめく多彩な理由を持って。 「……人は、理由なしに人を殺せねえ。だがな、どんな理由であれ人は人を殺す。 俺には分かる。どいつもこいつもが俺の目の前で殺して殺して死んでいったお蔭でな。 ……だったら、お嬢ちゃん。あんたの願いは、理由は何だ? あんたは一体何を求めて殺人を犯した?」 さも愉快そうに戦争狂は語る。 気圧されたのか呑まれたか。 引きつった顔で少女は言葉に詰る。 「わ、私は……」 「んん? 私は……なんだよ? お嬢ちゃん」 平沢憂はアリー・アル・サーシェスを正しく理解していなかった。 しかし、少女としての直感か。本能的に悟っていた。 それを今、理性的にも理解する。 こいつは危ない。 離れたい。ただその一心で、憂は質問に答えた。 ルルーシュに尋ねられたときと、同じ答えを。 「死にたく、ないから……! 私は、生きていたいから……!」 「……へえ、だから、殺したってぇのか? 自分の為に? 他人を取り除いてぇ!?」 「それが……なんだっていうんですか!!」 ――口から出た言葉は、ほとんど悲鳴のようだった。 「悪いですか!? 生きていたいって、それだけが理由で、人を傷つけちゃいけないんですか!!?」 「仕方ないでしょう!?」 「私は私は私は私は私は私は私は私は私は」 「私は!!」 「死にたくないんです! だって……!」 「何も無いのに!」 「大切な何かを!」 「無くしてしまったのに!」 「だから!」 「ただ、生きていきたいだけなのに!」 「ここで死んじゃったら……!」 「死んでしまったら!」 「本当に、なにも掴めないで終わってしまう!」 「私にはなにも無いってことになってしまう!」 「そんなの、嫌だ」 「私は、嫌だ……」 「死にたくない!」 「死にたくない!」 「生きていたい!」 「だから!」 「私は、私は、それだけで!」 「人を殺して傷つける……!」 「でも……!」 「……それって、悪いことなんですか!?」 涙をにじませて吐き出される言葉。 追い詰められた感情の発露。 彼女は何を失ってしまったのだろう。 彼女は何を得てしまったのだろう。 ああきっと。 『献身』 それが彼女の起源。 だけどそれも諸刃の剣。 ブーメランの様に自分へ帰る。 ひとえにもたらされる奉仕は相手のみならず自身にすら依存をもたらす。 真に向かうべき『献身』の対象を、あらゆる意味で失った。 心から世界から。損なわれた最愛。 そんな彼女に生きる意味も死ぬ意味も。 ――――殺す意味も。 伽藍堂の身では求められるわけもなかったのだ。……自身では。 だから、代わりを得た。 誰かに代わる誰かを得て。理由の全てをそこに委ねた。 空っぽの自分を、抜け殻のような希望を。 彼に従うという手段が、目的に変わっているという矛盾にすら気づかずに。 ……いや、その事実から目を逸らして。 ただの一度誤った。「生きたい」というのが自身の願いだと思い込んで。 けれども……誰が彼女を責められようか? 彼女だって普通の、一人の女の子に過ぎないというのに。 「ああ――勿論お嬢ちゃんは悪くねえ」 「――――え……?」 ははは、と。 ははははははは、と。 ははははははははははは、と。 ははははははははははははははは、と。 アリー・アル・サーシェスはさも愉快そうに哂った。 「誰もが誰かを犠牲にして生きている。生きるってことは誰かを犠牲にするっつーことだ。 信念? 愛? 正義? 信仰? 名誉? 快楽? 阿呆らしい!! 誤魔化さなくたっていいんだぜ! 何を恥じることがある? 生きるために殺すってのは、他のどんな理由よりも健全で正しい、生物として当たり前のルールってやつだ! 胸を張れよ、お嬢ちゃん。俺の見る目は正しかった。気に入ってるぜ、惚れ直した! ――――やっぱり、あんたはこっち側の人間だ……!!!」 平沢憂は硬直してその言葉を聞いていた。 激昂が醒めていく。 泪が引いていく。 きもちわるい。 違う。そんなのじゃない。 ……こいつは、違う。 自分が知っている、誰とも、違う。 「ち、違う……」 「ぁあ?」 華菜さんと、違う。 阿良々木さんと、違う。 安藤さんと、違う。 ルルーシュさんと、違う。 桃子ちゃんと、違う。 式さんと、違う。 デュオさんと、違う。 五飛さんと、違う。 澪さんと、違う。 あの、バーサーカーとすら、違う。 こんな奴は、 「いっしょに、しないで……!」 逃げたい。 逃げられない。 だけど精一杯の勇気を出して、憂はサーシェスを睨みつけた。 「……は。怖がらせるつもりは別に無かったんだけどな」 ぱっ、と。 にやけたままにサーシェスは体を離して憂を解放した。 憂は一瞬だけ呆けた。まさかこんなに簡単に開放してくれるとは思わなかったからだ。 その後で目が覚めたようにサーシェスを振り払って疾走する。 気持ち悪かった。少しでも遠くに行きたい。 振り返らずに走りだした憂の背中に、サーシェスの声が響いた。 「お嬢ちゃんよ! 何も謙遜することはねえんだぜ? 誇れよ。 あんたには戦争屋の素質がある。それも、この俺以上の、人殺しの天才を名乗れるだけの才能がだ。 受け入れな。愛しい恋人のように。自分の醜悪さを。そうすりゃきっと――――」 俺みたいになれるさ。 そこだけは、ふざけた口調じゃない。なんでもないことかのようにサーシェスは言う。 憂は分かった。分かりたくないけれど、分かった。 ……こいつは本気でこんなことを言っている。 何のつもりかはわからないけれど。嫌がらせでも何でもなく、ただ、自分の思ったことを言っている。 ……関係ない! 後ろは振り向かない。振り向けない。 怖くて、辛くて、震えていた。 ただ我武者羅に、懸命に走った。 そのうち幾分か離れてサーシェスの気配もなくなったころ、足がもつれて転んでしまう。 痛かった。 憂は目を閉じて少しだけ考える。 サーシェスの言ってることはおかしくて、てんで的外れだと思うけれど、同時に全てを否定しきれない自分もいた。 ……やっぱり、よく分からない。 目を開いた。冷たい廊下の床が見えた。瞳から涙が零れた。なんだか悲しかった。 それでも、立ち上がる。ルルーシュのためにご飯を作らなければいけない。 何となく惨めで、何となく負けたみたいだ。しゃくりあげる声はなかなか止まない。 だけどルルーシュには心配をかけたくなくて。 憂は玉ねぎをいっぱい使った料理をつくろうとそのとき決めた。 ● ● ● ――そして第五回定時放送は告げられた。 ● ● ● 時系列順で読む Back 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- Next 優&愛(後編) 投下順で読む Back 夢 ユメモノ 物 ガタリ 語 -ころもリミット 上- Next 優&愛(後編) 288 GEASS;HEAD END 『再開』 ルルーシュ・ランペルーシ 優&愛(後編) 288 GEASS;HEAD END 『再開』 平沢憂 優&愛(後編) 288 GEASS;HEAD END 『孤独』 アリー・アル・サーシェス 優&愛(後編)
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236 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/25(土) 00 14 38 ID U5E727ag ~~上条当麻自室~~ ビリビリ「静かね……」 上条「ああ」 ビリビリ「あ、見て当麻! 雪よ雪!」 上条「クリスマスイブの雪か……」 ビリビリ「……なんか、こうしてるとさ……この世界に私達二人っきりになったみたいじゃない?」 上条「そうだなー……」 ~~部屋の外~~ インデックス「うう~……なんかいい感じなんだよ…とうまのバカ……」 士郎「で、何で俺達まで上条の部屋を覗いてるんだ?」 インデックス「そんなの決まってるんだよ! あの短髪女がとうまにいかがわしい真似をしないように監視するんだよ!」 黒子「はあ、何を言うかと思えば……大体、百歩譲ってお姉様があの殿方を好いておられるのは認めるとしても、お姉様にその先に行くような甲斐性があるとは到底思えないですのよ」 インデックス「甘いんだよ! とうまだって若い男の子なんだし、短髪女に迫られたら……ううん、むしろとうまの方から押し倒す事だって有り得るかも!」 黒子「……そ、それは危険ですわね……」 インデックス「でしょ!? という訳で、もしあの二人が間違いを犯しそうになったら即座に踏み込むんだよ!」 黒子「了解ですの! この白井黒子、お姉様の貞操を守る為全力を尽くす次第ですわ!」 士郎「……やれやれ」 237 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/25(土) 02 55 42 ID TIfXnjLY ~~???~~ ???「ふっふっふ…やるなら今のうちね」 ~~雪降る空の下~~ 美琴「~♪」 当麻「おいおい、そんなにはしゃぐほどの事じゃないだろ」 美琴「だって滅多にないホワイトクリスマスよ、とても素敵じゃない♪それに…ックシュン!…ちょっと冷え込んできたわね」 当麻「まさか風邪じゃないだろうな?ほら、俺のコートを貸してやるから、この後のライブに備えて体を温めておけよ」 美琴「あっ、ありがとう…///」 ~~二人の世界の外~~ インデックス(と、とぉぉぉぉぉうまぁぁぁぁぁ……!!!) 黒子(か・み・じ・ょ・う・と・う・ま!!!それ以上お姉様に近づいたら…!!!) インデックス「……あれ?そういえばあなたの彼氏は?」 黒子「なっ!か、彼氏とかそんな…って士郎さんがいない!?」 ~~さらに所変わって~~ 士郎「あれ?黒子達は?というかここはどこだ?」 ???「よし、お兄ちゃんだけ転移してきた、作戦成功ね♪」 士郎「……なあ、これってイリヤの仕業なのか」 イリヤ「うん、そうだよ。お兄ちゃんと一緒にクリスマスを楽しみたいから拉…連れ出しちゃった♪」 この後?考えてないから続きませんよ?しかしもっと上手く書けないのかよ俺orz 238 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/25(土) 03 25 34 ID XUqDKwiw 黒子「士郎さんはどこに…?でもお姉さまも…」 インデックス「どーするの?」 黒子「…」ギリッ インデックス「えーっと…」 黒子「ここは任せましたわよ!」ダッ インデックス「ちょ、ちょっと待つんだよ」 黒子「今日士郎さんはわたくしと過ごすんですの。それが二人で交わした約束ですの!」 【黒子 士郎探索へ】
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最強証明―― ◆rfP3FMl5Rc 最強たれと彼らは願われた。 最強であることを彼らの小さき主達は喜んだ。 彼らは覚えている。 己が主がかけてくれた言葉を、残していった想いを。 故にこそ、彼らが為すべき事は決まっていた。 Stage:F-1エリア中央部さる駐車場 「■■■■■■■■■■■■■■■■――!!!!!!」 襲い来るはサーヴァントバーサーカー。 使い魔の一種に身をやつしてはいるが、その正体はギリシャの大英雄ヘラクレス。 理性を奪われ狂戦士へと堕とされた彼にはかって知恵と勇気を振り絞り神が課した数多の試練を突破した英雄の面影は残っていない。 代わりに2メートル半の鉛色の巨体に詰められしは全てを壊し尽くせと蠢く狂気。 根底にあるのはマスターたるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンの元へと戻り護らんとする強い意思。 「……………………………………ッ!!!!」 迎え撃つは戦国最強本多忠勝。 群雄割拠の戦国時代において最強と謳われた実力者。 3メートルにも届く鋼鉄の鎧武者が背負いしは葵の紋と主君の願い。 争いのない平和な世の為、盟友と共に民を護り、打倒織田信長、誅せよ非道なりし帝愛グループ! それこそが謀略に倒れ、真に東照大権現として天へと帰った亡き主への最大の手向け。 決して道を交えることの無い二つの最強が武器を交え、吼え叫ぶ。 歩くだけで地を揺るがし、走るものなら地盤を砕く巨人同士の戦いは壮絶なものだった。 一合――大地が割れ 二合――住居が薙ぎ払われ 三合――大気がひしゃげ果て 四号――夜天が悲鳴を上げる バーサーカーが握りしは只人なら数人がかりでも持ち上げることすら叶わない大戦斧。 軍配を模したそれはかの甲斐の虎が得物なり。 武田信玄の超人的な力量を受け止めえる大戦斧は大英雄をして不足は無い武具だった。 大きさならば一方の本多忠勝が手にせし物も負けてはいない。 いや、そもそもそれは人の為に鍛えられた鋼ではなかった。 対ナイトメア戦闘用大型ランス。 機動兵器としては小柄とはいえ全項4メートルを超える機体用の槍を、あろうことか本多忠勝は片脇に抱え込んでいた。 「……………………………………ッ!!!!」 横薙ぎ、一閃。 本多忠勝がバーサーカーを跳ね除け、大きく距離を取る。 この戦いにおいては牽制程度にしかならない威力だったが、常人からすれば衝撃波と巻き起こる砕けたアスファルトの散弾だけでミンチになりかねない。 周囲に誰もいなかったのはバーサーカーにとっては不運であり、本多忠勝には幸運であった。 けれど、その幸運にいつまでも甘えてはいられない。 戦い始めたのが開けた場所だから良かったものを、このまま近くに見えている構造物へと突っ込めばどれだけの犠牲が出るか。 家内で隠れ震えている力無き民もいることだろう。 彼らを巻き込むことだけはあってならない。 本多忠勝は早期に決着をつけるべく、葵の門の刻まれた背部機関よりフレアを吹かしランスを突き出し疾走するっ! 「……………………………………ッ!!!!」 10丈もの距離を刹那に詰める速度での突撃。 3メートルにも至る巨体を砲丸としての一撃は刺突などという言葉では生温い。 ――貫き穿つ そうとしか形容できない必殺の刃は 「■■■■■■■■■■■■■■■■――!!!!!!」 標的へ届くことなく中空で前進を遮られる! バーサーカーが大斧で受け止めた――からではない。 烈風もかくやという勢いで突進してくる強敵に対して、バーサーカーもまた暴風と化し同時に踏み込み斧を振り下ろしていたのだ。 結果、寸分違わぬ速さで繰り出された槍と斧は両者の狭間で激突し火花を散らすこととなる。 ぎゃりぎゃりと、ぎしぎしと。 共に頑強に作られているはずの武器が軋みを上げる。 相手を押し切ろうと込められる主と獲物の怪力を一身に受けることとなってしまえば当然。 いかな業物といえど1分とかからずに灰燼と帰すだろう。 問題ない。 一分とかからずに相手を粉砕すればいいまでのこと!! 「■■■■■■■■――!」 大英雄の豪腕が唸る。 鍔迫り合いに競り勝ったからではない。 突如として軍配斧を押し止めていた抵抗が消失したからだ。 ホバーじみた移動を活かして戦国最強はくるくると旋回しつつ瞬時にバーサーカーの背後へと周り込んだのだ。 その迅きこと、まさに雷が如し! 速さを味方につけたまま続けて繰り出された槍撃の鋭きこと雷鳴の如し! 大英雄が体勢を立て直し左回りで振り向かんとするも光の速さを前にしては遅い、遅すぎる! ならばこそ理性を極限まで削がれたことで研ぎ澄まされた本能はバーサーカーに軍配斧を斬るのではないもう一つの用途で使用させた。 即ち、仰ぐ。 速度が足りない分を大扇を振るうことで起きる烈風のリーチで埋めようとしたのである。 冗談みたいな作戦である。 しかし、忘れる事なかれ。 英雄には荒唐無稽な伝説がつき物だということを! 「……!?」 鋼の如し筋肉に覆われた人一人ほどの大きさを誇る豪腕と、同じく扇部分だけでも人一人覆い隠せるだけの面積を持つ軍配。 馬鹿げた二つの要素が合わさって小型の嵐が発生する。 規格外の勢いの向かい風を受け、本多忠勝の勢いは完全に削がれてしまう。 その隙を大英雄は見逃さない。 軍配を振り抜いて尚、バーサーカーの回転は止まらなかった。 生じた遠心力を右拳を打ち出す動作に直結させ、渾身の鉄拳を本多忠勝へと叩き込む! 「■■■■■■■■■■■■■■■■――――!!!!!!」 苦悶の叫びを代弁するかのように、忠勝の全身より蒸気が上がる。 分厚き鎧も半神の鉄槌の前では用を成さない。 みるみるひしゃげ、捻じ切れ、砕け散っていく。 爛々と輝いていた赤き瞳も体内の危険を知らせるかのように激しく点滅を繰り返す。 この殺人遊戯の場へと連れてこられるより前、長篠の地にて度重なる連戦の果てに一度は地に伏したあの時のように。 あの時のように…… ――忠勝、戦国最強の名に恥じぬ戦いをわしにもう一度見せてくれ。忠勝! 本多忠勝は深い傷を負い、一番大切な時に傍にいることが叶わず、主君を助けることができなかった。 再び動けるようになった時、小さい身体に本多忠勝など到底及びもしない大きな志を抱いていた主は手の届かぬところへと行っていた。 涙は、出なかった。 流す必要も無かった。 徳川家康は彼が夢見たように日本全土の平和の守り神となったのだ。 ならば天上から日ノ本を照らす主に恥じないよう、最後のその時まで地上より民を守り続けよう。 一度と言わず、二度でも、三度でも、四度でも。 “東照権現”徳川家康に相応しき“戦国最強”本多忠勝として。 「……………………………………ッ!!!!」 ギアを一気にトップへ移行。 三段階の加速を経て本多忠勝の巨体が一瞬にして月夜の空へと舞い上がる。 突き刺したままの右腕に引きずられる形で空へと放り出されたバーサーカーは唐突な足場の消失により力の伝達に失敗。 続く忠勝の変則軌道に耐えられず振り落とされる。 ヘラクレスは怪鳥を撃ち落したことはあっても、空を飛び戦ったことは無かった。 空中戦では圧倒的に本多忠勝に分がある。 地上での激闘が嘘のように何の抵抗に会うことも無く、本多忠勝は落下するバーサーカーの真上を取る。 高高度からの落下の衝撃に加え重力加速を味方につけた超重量級の忠勝による突撃。 空中で自由に動けぬ身では、回避することも防御しきることは不可能。 必殺必中を期した本多忠勝が一筋の稲妻となりてバーサーカーへと突き刺さる。 ――ドッゴオオオオォォォォォオオオオオオオオン! 響く激突音、掻き消される狂戦士の断末魔。 舞い上がった砂塵が晴れ轟音が収まった大地にて生きているのは腕を組み二の足で立つ本多忠勝のみであった。 あくまでもこの時点では 心せよ、戦国最強よ。 今、汝の眼前に聳えし者は、守るべきものの為ならば一度と言わず、十二度も立ち上がらんとする者也!! ―――バーサーカーは、強いね その言葉を、覚えている。 狂気に侵されたバーサーカーには壊す、殺す以外に大切な小さき少女を護るすべは無い。 構わないと、意思無き英雄はそれでも魂で思った。 かって愛する家族を自らの手で殺してしまったこの狂気で、今度はあの一人ぼっちの娘を護れるというのなら。 彼女が望んだ最強のサーヴァントとして喜んで狂おう。 「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――!!!!!!」 物言わぬ骸となった強敵より武器を引き抜き立ち去ろうとしていた忠勝の前でバーサーカーは再び力を取り戻していた。 あれだけ派手に腹部に空いていた大穴は既に無い。 本多忠勝の目の前で時が蒔き戻るかのように塞がったのだ。 だが真に驚愕すべき事態はその後に訪れた。 「……!?!?」 ありえざるべき事態に動じることなく、再殺せんと放った突きが、なんと武器を持たぬ右手一本で受け止められていたからだ。 兜に隠れた無機質な眼が見開いていた。 これまで一撃入るごとに僅かなりとあった確かな手応え。 それが全く感じられなかった。 現にバーサーカーの開かれた掌は傷一つ負っていない。 どころか狂戦士はランスの穂先をきつく掴み忠勝のバランスを崩した上で空いた左の斧で切り伏せんとしてきたのである。 槍の展開ギミックを再度使用し狂戦士の手を払い全速で空中に回避したが、避け切ることはできなかった。 本多忠勝の鎧の胸部装甲に右斜め一文字の傷が刻まていた。 一連の復活劇を可能にした不可思議な現象こそバーサーカーらサーヴァントの半身とさえ言われる宝具の効力。 生前彼らが持っていた武器や固有の能力・魔術・特徴や、あるいは彼らを英霊たらしめる伝説や象徴が具現化したモノ。 バーサーカーのそれは彼が為した前人未到の功績に由来する。 “十二の試練(ゴッド・ハンド)”。 十二の試練を乗り越えたことによって与えられた神の祝福。その冒険の数だけ死を無効化、蘇生する! 加えて一度殺された攻撃や並大抵の英雄の奥義を無効化するバリアとしての効果も兼ね備えたまさに鉄壁の鎧である。 もっとも赤き弓兵に五度殺された後にこの地に呼ばれた上に、死因たる攻撃以外は無力化できない制限が課せられているのであるが。 そして当然そんな制限が必要な怪物と互角に戦えるトンデモにも課せられていないわけもなく。 「……………?」 ゴッド・ハンドを噂に聞く南蛮の妖術かと警戒し、遥か上空に止まったままだった本多忠勝がふと首を傾げる。 とっとと降りて来いとばかりに吼え続けるバーサーカーの声を煩わしく感じたからではない。 気のせいか高度が徐々に下がっているように思えたからだ。 否。 気のせいではない。 明らかに本多忠勝は落ちている! しかもバーサーカーがいるのとは海を挟んで逆方向の地へと向かって。 実は安土城に向かう途中で連れてこられた本多忠勝は、修理に辺り盾や砲台などの追加装備の没収だけでなく飛行機能は不備を残されていた。 高高度からのヒットアンドアウェイによるワンサイドゲームになればつまらないと判断された為だ。 よって地上での多段加速や普段の低空疾走くらいは満足にこなせる絶妙な按配で仕上げられている。 「……………」 「■■■■――」 二人の距離が徐々に遠ざかっていく。 邪魔だと海を睨み付けるのを止めたバーサーカーは本多忠勝を見上げ、不時着に備えつつ本多忠勝はバーサーカーを見下ろしていた。 天と地に分かれた二人の交わす視線の意味は再戦の約束か、未だかって見えたことの無かった好敵手への賞賛か、はたまた邪魔するものへの敵意か。 口で語らず、行動で表す二人の真意は他の誰にも分からない。 主の生死も、殺し合いに乗ったか抗ったかも、生まれた国も世界も何もかも違うというのにどこか似ている二人の最強が再度あいまみえるのか。 それもまだ知る者は居ない。 バーサーカーVS本多忠勝 結果:ドロー。 最強証明――ならず 【F-1/エリア南部/1日目/深夜】 【バーサーカー@Fate/stay night】 [状態]:健康、狂化 [服装]:上半身裸(デフォルト) [装備]:武田信玄の軍配斧(石動配)@戦国BASARA [道具]:デイパック、基本支給品 [思考] 基本:イリヤ(少なくとも参加者にはいない)を守る。 1:立ち塞がる全ての障害を打ち倒し、イリヤの元へと戻る。 2:本多忠勝とはいずれ決着をつけたい? [備考] ※“十二の試練(ゴッド・ハンド)”Verアニ3 ・合計12回まで死亡してもその場で蘇生。状態を健康にまで回復。耐久力を大きく上回るダメージを受けた場合は複数の命のストックを消費。 現在残り蘇生回数6回。 ・無効化できるのは一度バーサーカーを殺した攻撃の2回目以降のみ。 現在無効リスト:対ナイトメア戦闘用大型ランス、干将・莫耶オーバーエッジ、偽・螺旋剣(カラドボルグ)、Unlimited Brade Works ・首輪の爆発での死亡時には蘇生できない。 ※参戦時期は 14話 理想の果て直後です 【武田信玄の軍配斧(石動配)@戦国BASARA】 人一人分のサイズはあろうかというほど大きな軍配型の斧。 軍配の淵に刃が付いている。超人的な武田信玄の扱いにも耐えられることからかなり頑丈。 【F-1/エリア南部海上/1日目/深夜】 【本多忠勝@戦国BASARA】 [状態]:疲労(中)、胸部装甲破損(12話時イメージな穴が空いています)、墜落中 [服装]:全身武者鎧 [装備]:対ナイトメア戦闘用大型ランス(コーネリア専用グロースター用)@コードギアス 反逆のルルーシュR2 [道具]:デイパック、基本支給品 [思考] 基本:徳川家康(参加者にはいない)の遺志を継ぎ戦国最強の名に恥じぬ戦いをする。 1:織田信長、明智光秀、主催者グループを打倒する。 2:まずは手ごろなところに着地する。 3:バーサーカーとはいずれ決着をつけたい? [備考] ※参戦時期は第12話で安土城へと向かっている途中。 尚、後述の飛行機能以外は主催者の力で修復された模様。 ※バックパック内の装備は没収されているため、原作ゲームにおける攻撃形態、防御形態、援護形態使用不可。 他、ゲーム版での固有技、バサラ技が使えるかはお任せ。 ※主催者側から飛行機能に制限が課せられています。短時間低空飛行には問題ありません。 【対ナイトメア戦闘用大型ランス(コーネリア専用グロースター用)@コードギアス 反逆のルルーシュR2】 所謂巨大ロボ用の突撃槍。周りの刃が展開するギミックがあるものの、特にビームを放ったりもしない普通の西洋槍。 ※F-1エリア南方での戦いは相当派手に立ち回りました。ただ、構造物への被害は大きいですが、 基本が斬りあいだったため最後の高度からの落下突撃以外は音的には派手ではなかったかもしれません。 時系列順で読む Back モンキー&ドラゴン Next Vince McMahon 投下順で読む Back モンキー&ドラゴン Next Vince McMahon 本多忠勝 038 機動戦士ホンダム00~ツインドライヴ~ バーサーカー 067 狂戦士の夜
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電車男 ◆LwWiyxpRXQ しゅう、と空気が抜けるような音を響かせながら電車は扉を閉じた。 つかの間の停止を終えた電車は静かに加速し始め、この場を離れようとする。 ルルーシュ・ランペルージはその際に起こる慣性の感覚を身に受けながら、閉じる扉を電車の座席から見ていた。 ルルーシュは電車を降りなかった。 駅に降りて、情報を集めるべきかと迷ったが、闇雲に動き回っても得られる物はたかが知れている上、 自分の体力を考慮するに徒歩で移動するよりも、このまま電車で移動した方が断然効率が良い。 また、特に行く当てもないのに、無理をして外を出歩くにはリスクが高過ぎる。 その他の色々な観点からも考えた結果、ルルーシュは電車に留まるという選択をしたのだった。 ルルーシュは無事に電車が発車したことを確認すると、視点を扉から手に持っている一枚の紙に切り替える。 それは地図だった。 簡略に記された島の全容を眺めながら、ルルーシュは静かに思考を巡らせていた。 (このゲームからの脱出。 海で囲まれ脱出の難しい会場、『帝愛』の持つデイパックを初めとした物理法則を無視したオーバーテクノロジー、死者すら蘇らせるという『魔法』。 そのような要素を見ると、一見、それはとても困難に思える) だが、とルルーシュは静かに呟く。 呟きながら、彼は自らの首にそっと指先を這わした。 正確には首ではなく、その首に仕掛けられた無骨な首輪に。 (首輪。 『帝愛』にいくら力があろうと、参加者を直接縛っているのはこれだけだ。 これさえ何とかすれば、脱出へは一気に近づく) 逆にいえば、それは首輪を何とかしなければ何もできないということだが、ルルーシュは首輪の解除自体はそう難しくはないだろうと考えていた。 指を這わせながら、彼は首輪の材質を確認する。 それは間違いなく、金属だった。 (『帝愛』が『魔法』又はそれに類する力を持っているのは確かだ。 だが、参加者の拘束という、このゲームの進行においてかなりの重要度を誇る筈の仕事は首輪――つまり、機械的な要素によって行っている) 対処の仕様がない『魔法』ではなく、機械技術によっての拘束ならば自分にもやりようはある。 勿論、この首輪に未知の技術が使われている可能性はあった。 が、それにした所で、わざわざ首輪という機械を用いていることを考えれば、基本的な構造は通常の技術によって成り立っている筈だ。 (この場にこの首輪に対応できるような技術者がいるかは分からない。 もし居るのなら協力を得たいが、『帝愛』がわざわざゲームを破綻させる要素を参加者に入れている可能性は低いだろう。 先程まで、そう思っていた。 だが――) ルルーシュは地図のある一点を指で指した。 そこは会場南部の、機械をイメージしてあるのだろう灰色の色彩で彩られた場所だった。 即ち、宇宙開発局。 (宇宙開発局。この施設の存在でそれも分からなくなった。 名前からしてこの施設は工学系の研究施設だろうし、隣には工業地帯まである。 下手をすれば首輪を解除しかねない施設がこの場にある。 これは恐らく自信。奴らの、絶対に参加者に脱出されないという『帝愛』の自信) ルルーシュは開幕においての司会役の男を思い出す。 遠藤と名乗った男の高圧的な態度は、自分たちが絶対的に安全な場に居ると信じているようだった。 (そして、その自信故、この場に技術者を参加させている可能性は十分にある。 絶対とは言えないが、宇宙開発局などという施設があるということは、それを扱える参加者もいるのだろう。 よって今後の方針としては、先ずこの宇宙開発局を目指し、そこを拠点にして技術者を探し出す) 幸いにして、宇宙開発局は駅から近く、この電車に乗り続ければそう長くは掛からない。 自身の体力に自信のないルルーシュからすれば、それはかなり有益なことだった。 今後の方針を一先ず決めたルルーシュは、とりあえず地図をデイパックに戻そうとする。 大体の内容は既に頭に入れているので、しばらく見る必要はないだろう。 そして、その途中、一つの威圧的な銃器に視点が行った。 ミニミ軽機関銃。 自分の支給品であり、人を殺す武器。 それは護身用として自らの隣に置いておいたのだ。 (俺は……敵が多いからな。いや敵だらけといってもいい) ルルーシュが電車での移動を選んだのも、出来るだけ他者との遭遇を避けたかった、というのもあった。 ゼロレクイエムの為に演じた悪逆皇帝。 数え切れない程の暴挙を働いた自分は、この場の大半の人間から憎悪を抱かれている筈だ。 ましてや今の自分の姿は皇帝服であり、悪い意味で目立ってしまう。 自分にとって他者との遭遇は会敵といっても過言でなく、高い可能性で戦闘になってしまうだろう。 (幸運なことに装備には恵まれている。大抵の者なら撃退できるだろう。 それにギアスもある。 『俺を襲うな』とでもギアスを掛ければ、自分自身の護身くらいなら簡単にできる筈……) そう考えながら、ルルーシュは自分が生存を考えていることに気付き、少し笑ってしまった。 どうせ自分は死ぬ運命にあったのだ。この場で死ぬことに別に恐れはない。 自分から死にいく気はないが、己の生に固執する必要もない筈だ。 (この場に来る直前で見たナナリーの姿に、少し未練があるのかもしれないな) ルルーシュはもう見ることは出来ないであろう、最愛の妹の姿を思い出しながら考えを改めた。 今、優先すべきなのは己の生存ではなく、救世主ゼロ――枢木スザクの生存だ。 ナイトオブゼロとして動いたスザクも、ルルーシュと同じく、敵が多い。 ならば、自分が他者に掛けるべきギアスは『俺を襲うな』などの利己的な物ではなく―― 「『枢木スザクを守れ』 他の参加者に会ったら、そうギアスを掛けるべきなのかもしれないな……」 【B-5/電車内/一日目/深夜】 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】 [状態]:健康 [服装]:皇帝ルルーシュの衣装 [道具]:ミニミ軽機関銃(200/200)@現実、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2 ウェディングドレス@機動戦士ガンダム00 [装備]: [思考]:スザクは何としても生還させる 1:宇宙開発局へ向かい、そこを拠点に技術者を探す。 2:スザク、C.C.と合流したい 3:首輪の解除方法の調査 4:撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ! 5:他の参加者に会ったら『枢木スザクを守れ』とギアスを掛ける? 6:自分の生存には固執しない [備考] ※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。 死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。 ※頭の中では様々な思考が展開されています。しかし、現時点ではどれも憶測の域を出ていません 時系列順で読む Back Card Next アンチファンタジー/井の中の蛙 投下順で読む Back Card Next アンチファンタジー/井の中の蛙 033 魔人が蘇る日 ルルーシュ・ランペルージ 073 施設Xを追え
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crosswise -white side- / ACT2 『もう何も怖くない、怖くはない』(1) ◆ANI3oprwOY 蒼天が、にわかに曇り始めていた。 ――エリアE-1、市街地。 空虚な町が戦火にくべられ、赤く赤く燃えている。 繰り返された激烈の衝撃がコンクリートの大地に大きな爪あとを残し、上がる炎の色が空を不気味に照らしている。 耳に聞こえるのは壊滅音、怒声、銃声、爆音。鼻につくのは異臭、硝煙、火薬、血流。 ここは戦地。鉄と血と彩られた場所。限りなく幻想と近しい現実とよべる。 望む望まないに関らず、踏み入れるものは脆弱な者から順に生命を消化されていく、まるで怪物の腹の中。 「……ひゃは、ったく手こずらせやがってよォ。おかげで無駄な時間くっちまったろォが」 そんな戦火の中心地。 燃える巨大長方形の箱の群、立ち並ぶ高層オフィスビルの一棟にて。 此度の戦地の主賓といえる存在、一方通行は哄笑を上げながら、異界を見下ろしていた。 眼下に崩壊した広大な繁華街をじぃと見渡し、やがて数少ない無傷の建造物の内一つに目をとめ。 新しい獲物を見つけたと哂っている。 「そこ、か。オーケーオーケー、ンじゃさっそく殺しに行ってやるから、動くなよォ?」 大型の建造物が密集する繁華街の中でも、ひときわ巨大な施設。 『ショッピングセンター』と地図上には示される、そこに並べて建てられた立体駐車場。 この殺し合いにおいて、戦う力を持たぬ者達が潜んでいる拠点。 殺意を振りまく災厄の原点が今、狙いを定めているのはそこだった。 一方通行は目標に座標を合わせて、両足に力を込めていく。 場所を割り出したのだから踏み込んで、腕を軽く振るえば簡単に、死体がいくつか積み上がると確信し。 「……って、なンだ、まだ闘れるつもりかよ。こりねェなァ」 しかしそこで、させぬと言うように、地鳴りが一つ。 繁華街の北部近く、がらがらと瓦礫を崩し、立ち上がったのは巨大な人型の影だった。 ショッピングセンターの正面にて、防衛拠点を守らんと立つ、機械の姿。 ガンダムエピオンと呼ばれる、力無き者を庇う、最後の盾にして砦である。 「なンてな。まァそうするとは思ってたっつゥか。 その為にここまで連れて来たわけだしよ。 わかるぜわかる、不可能でもやンなきゃしゃあねェよなァ? カワイソウデスネー」 一方通行は立ち塞がる壁のような機械人形を呆れ顔で眺めながら、両足から力を抜く。 代わりに肩を回し、首の骨をこきりと一度鳴らし、言った。 「けどよォ。じゃァどうすンだオマエら? 勝ち目がねェのは分ったろォが」 容赦なき絶対者が、劣勢者に届かぬ声で問いかける。 強者は弱者を屠るもの。戦場とは、常にそのように在る。 ぶつかる二つのどちらかが強く、どちらかが弱い以上、必然の成り行きであろう。 人道倫理に照らし合わせ、どちらが正義でどちかが悪かなど、関係ない。 殺す側が強く、また生き残り、生き残った者が正義となるのがこの場所の法則(ルール)だ。 そのルールに則れば、このとき正義は彼にあった。 「こンだけの時間、俺と戦れンのは素直に褒めてやるがよ。 まだ俺の時間は三分の一も減ってねェ。 俺に力を出させずグダグダ話を引っ張るだけじゃァ、ことは動かねェンだよ」 たとえ所業が悪であろうとも、彼はこの場で間違いなく強者であるが故に。 圧倒的な優勢に立つ故に、言葉は全て真実となる。 「まァ、無駄口はこの位にして始めるか。第二ラウンドだ。 もっともこれ以上、過度な期待はできそうにねェみてェだが……」 一方通行の消耗は僅か五分にも満たない能力消費。 比べて、繰り返された戦闘の果てにエネルギーの消費を重ね限界の近い、敵の盾。 勝敗はここに、明白だった。 「じゃァな、お疲れ三下諸君。 それなりに『よくがんばりました』をくれてやるからよ、力抜いて、眠れ――」 そして目前には、晒された立体駐車場。 敵の急所を容赦なく見据え。 もう既に先の見え透いた戦場にて、一方通行は無力な抵抗者達へと、少し早めの別れ言葉を告げていた。 ■ ■ ■ ■ crosswise -white side- / ACT2 『もう何も怖くない、怖くはない』 □ □ □ □ /もう何も怖くない、怖くはない(1) 「やって……くれたな……我々はまんまと……誘導……されていたと……いう……ことか……」 そこはまるで、蒸し焼きの獄界だった。 茹で上がるような室温と、尚も上昇し続ける体温。 四方を機械に囲まれた窮屈な個室の中で一人、トリガーを握る男は孤独な戦いを続けている。 「………………っ……ご……ぁ……っ」 男は悶え苦しむように、痛烈なうめき声を漏らしていた。 「………ぎ……っ……」 心の臓はドクドクと早鐘を打ち続け、吐く息はひたすらに熱く荒い。 幾筋もの汗が額から伝い、男の眼を通過していき、やがては顎の先から落ちていく。 ポタポタと、汗の礫が、落ちる。男の膝元や、トリガーを握る腕の上に。 ボタボタと、血の滴が、落ちていく。男の口元から、零れ落ちていく。 それら一切を拭う余裕など、男にはもう残されてはいない。 だが、それでも前を見続けた。 苦しくとも、辛くとも、痛くとも。 たとえ濁りきった視界だろうとも、いまはただ前を見なければならない。 見続けなくてはならない。 緊張、高揚、混じり在った複合感情の只中で―― 「が…ぐ…はッ……はははッ!」 その男、グラハムエーカーは、己の生を実感する。 血を吐きながら薄笑う。 「ここまで、か」 結局のところ、戦況が一方的なものとなるに、そう時間は掛からなかった。 この戦いが始まってより、敵手たる一方通行との激突は計六回。 まだたったの六度しか戦闘と呼べる交差は起きていないにも拘らず、既に戦況は絶望的な様相を見せていた。 現状はもう、戦いと呼べる状態かすら定かではない。 もう、敵からの王手がかけられている。 この瞬間に、ガンダムエピオンが背に守るもの、ショッピングセンターひいてはその中にいる者達の存在が、戦況の行く末を決定的なものにした。 数分前、戦闘の最中、離脱していたはずの阿良々木暦や他のメンバーをモニターに捉えたグラハムは、軽い眩暈すら覚えた。 守るべき者達のため、これまで離した距離、稼いだ時間、その全てを無に還された瞬間である。 両儀式を武器として運用するにおいてすら、エピオンの動きにはかなりの制限があった。 そこに加えて、背後にある建造物を守りながらの戦闘続行など、誰の目にも不可能だった。 この唐突に切り替わった位置関係、不運な偶然とは思えない。おそらく誘導されていたのだろう。 一方通行との戦いの渦中で、敵の僅かな隙を見つけ出し、空中戦に持ち込むという攻めに出た、あの瞬間に。 攻めた、勝機を掴んだ、そう思ったことがそもそもの間違い。あれらは全て一方通行の誘いだったのだ。 グラハムと式をここへ誘い出し、手っ取り早く、グラハムとその仲間全員を葬る為の罠だった。 そうして、賭けに破れた者は代償を支払わされる。 そこから先はもう、説明するまでもない。 何一つ見所の無い時間稼ぎだった。 ガンダムエピオンは外堀からじっくりと埋めるようにいたぶられ、その損傷を増やしていった。 数手先の”詰み”が決定された戦いとはかくも無様なものである。 それでもグラハムエーカーは背後の守護対象を守りきりながら、これまで二度の襲撃をやり過ごしていた。 自らの身体にかかる負担すら無視した機動で動き、そのスピードを制御し、 ショッピングセンターを守り抜きながらなお、エピオンの装甲も落されていない。 正しく、驚嘆するべき諦めの悪さである。 その代償が、 「ぎ……ぐ……ッ」 自身の身体の限界だった。 やはり、エピオンの装甲、背後に守る仲間の命、双方を同時に守り抜くなど不可能であった。 不可能を可能にする為、彼は自らの身体を生贄にしようとしている。 現在進行形でグラハムエーカーの五体は崩落の一途を辿っていた。 この戦いにおいて幾度も繰り返した無茶苦茶な航行の数々。 たとえ装甲の内側とはいえ、エピオンの機体スペックをフルに活かした高速機動をこう何度も繰り返しては、 パイロットスーツすら着用していない彼の肉体に看過できないダメージが蓄積し続けるのは自明であった。 そして、崩落が近いのは彼の身体だけではない。 たった数度の戦闘で不落の盾(装甲)に、崩壊の兆しが見えている。 サイドモニターにはエピオンの肩部に立つ、両儀式の姿。 彼女の蒼眼が装甲を透かして見るように、こちらへと真っ直ぐに向けられていた。 グラハムにも、彼女にも、実の所は分っている。エピオンの盾(装甲)はもう長くもつまい。 この戦法では既に敗北していると。 「すまなかったな……私の我が侭につき合わせてしまった」 聞こえてはいないだろうが、グラハムは申し訳無さそうに詫びる。 事実、両儀式にはグラハムのやり方を押し付ける形になっていた。 この戦い、この戦法に、両儀式は付き合う必要が無かった。 彼女にしてみればこの戦いはまずいかに勝負の土俵に立つか、接近を成し遂げるか、から始まるのだ。 大質量の圧殺攻撃がこない、かつ邪魔の入らない一騎打ちに望んでこそ、勝敗の是非が問われる。 それをこのような回りくどい戦い戦法で戦ったのは、ひとえに『何よりも優先して時間を稼ぎたい』と考えたグラハムの意向。 実際グラハムは、一方通行を殺しえる両儀式の刃を積極的に『殺すために刺す刃』とせず、主に『力を抑えるために向ける刃』として使っていた。 安全性と確実性を優先したとも、消極的ともいえるこの戦法は全て、仲間を、一人の少女を救いたいがために。 だが状況がこうなってしまっては裏目以外の何物でもない。 グラハムエーカーはここで脱落する。それはもう、半ば決定された事実であるのだから。 「だが、責任くらいは、残された勤めくらいは果たすつもりだよ」 グラハムエーカーはここで終わる。 死する。これはもう避けられない顛末である。 機体の状況、身体のコンディション、そして何よりも場の状況が、 これ以上の戦闘続行は死に至るだろうと告げている。 だがそれでも退く気は無い。 不退転の覚悟で望む。 たとえ、死ぬことになろうとも。 「私はまだ……負ける気など皆無だ……!」 空で戦い、死ぬなら本望。 軍人として、空に憧れた者として、死に場所として悪くない。 ただしそれは本懐を果たしてからのこと。 「守ると誓った者達を、決して傷つけさせはせん。たとえ敵が何者であろうとな!」 己の背後に守るべき者達がいる限り、その脅威を打ち倒さずして、どうして死ねようか。 その勤めを果たさずして、どうして諦められようか。 いいとも、来るがいい怪物。この命を喰らうがいい。 ただしその時こそ、勝利の時だ。 ああ悪くない、姫を守る騎士の役。悪と刺し違えてでも貫く、守護と正義。 乙女座に生まれた男子として、心踊らぬ筈が無い。 「行くぞガンダム、最後の戦いだ」 そしていつも敵はそこにある。 ずっと、強敵(とも)はここに在ったのだ。 グラハムエーカーは今、真実、ガンダムとの最後の対決に挑んでいる。 今までずっと、外側からぶつかり合い、そして超えようとあがいてきた存在。 心を捉えて止まなかった存在の、その内側にいま、グラハムはいるのだ。 ならばこれこそが真のせめぎ合い。 内側より超えて見せろと、その声が聞こえるようだ。 最後の戦いがガンダムであったなど、 やはりグラハムとガンダムは運命の赤い糸で結ばれていたに違いない。 守るべき、者。 戦うべき、存在。 二つの思いがグラハムを最後の空へと舞い上がらせる。 恐怖は無い。ただ胸の高鳴りだけがここに在る。 ならばその感情に、一体何と名前をつけようか。 と、今更問うまでもあるまい。 「ああ、この気持ち――まさしく愛だッ!!」 恐怖は無い。 何も怖く無い、怖くは無い。 グラハムエーカーは、グラハムエーカーとして、ただ愛だけを胸に、最後の空を飛んでいた。 □ □ □ □ /もう何も怖くない、怖くはない(2)/あるいは阿良々木暦の俯瞰風景『もう何も恐くない』 ショッピングセンター第一駐車場。 ショッピングセンターと直接連結された立体駐車場であるその五階に、僕等は逃げ込んでいた。 向かい側のビルに陣取ったナイトメア(枢木曰くガレスというらしい)による砲撃と、余波。 それによって追い立てられるように辿り着いた場所で、柵の向こう、広がるビル街を見ていた。 目の前の、殺し合いを見ていた。 「先ほども言ったように、僕達は現在、ランスロットと分断され、孤立状態にある」 枢木の淡々と語る声、だけどあまり耳には入らない。 見守る戦場は、圧倒的な、もう見ていられないほどに、こちらの劣勢だった。 グラハムさんの操るガンダムエピオンは既に数多くの損傷を負い。 なおも僕らのいる駐車場を死守するために傷を増やしている。 「機体は瓦礫に飲まれたか。あるいは破壊されたか。 分らないがどちらにせよ、大通りの道が瓦礫で塞がれている以上、徒歩では回収に向えない」 薄汚れた立体駐車場の床と天上に囲われて。 僕はここにいる。 天江もいる。 枢木もいる。 インデックスだって無事にここまで逃れていた。 だけど、ディートハルトはいない。 彼は砲撃の際、一瞬だけ僕等を守る動きを見せた後、ナイトメアごと瓦礫の雨に飲まれてしまったらしい。 周囲のビルやショッピングセンターの外壁が砕けた際の、コンクリートの落石。 その光景を見たのは僕じゃなく、枢木だ。 ディートハルト自身はランスロットが行動不能に陥る一瞬前に、機体を乗り捨てるように飛び降りて離脱していたらしいけれど、その後の足取りは分らない。 同じようにランスロットも、土の下に埋まっているのかどうかも、今どこに在るのかさえ、瞭然としないようだった。 この立体駐車場の五階、作の向こうは広大な町が広がっていて、だけどから見下ろせる範囲内には見当たらない。 「ここから死角になる、ショッピングセンターの側面。ランスロットはおそらくそこに在る。 状態は不明だが。 消去法からしてもそうだし、僕が最後に視認した位置でもある。まず間違いない」 枢木は接続した義手を試すように腕の間接を曲げながら、そんなふうに語っていた。 「僕の腕が治っても……このままじゃ無意味だ」 事実を、冷たく語っていた。 だけどこのとき僕は、それどころじゃなかったんだ。 「グラハム!」 天江の叫びが聞こえる。 この島にきてから、僕は無力に打ち震える以外のことが出来たろうか。 自問したところで答えは明らかに、否だった。 誰の目にも、僕には何も出来ていない。 それじゃあ何がしたかったのか、そんな事を今は思う。 「グラハムっ……!」 少女の手を、天江の手を掴みながら。 「よせ……もう無理だ……っ!」 そんな、諦めの言葉を告げながら、戦場に近づこうとする天江を押さえ込んでいた。 僕にはそんなことしか、出来ずにいた。 「あららぎ……」 天江はようやく僕の存在に気がついたように、身体から少しだけ力を抜く。 「このままじゃグラハムが……」 その質問に、僕はつい枢木を見る。 傍らに立っていた枢木は、目を閉じて、首を振る。 「現実的なことだけを言うと、あの戦場はもうすぐ敗北に終わる。 グラハムさんの立てた戦術では、もう一方通行を打倒できないことは明らかだ。 彼もそれをよく理解している。だからああして、僕等を守ることだけに時を費やしているんだろう。 もってあと二回。早くて一回の交戦で、エピオンは落される」 枢木の言葉は、絶望的な状況を箇条書きするようだった。 「じゃあ、どうすればいい?」 「だから、どうしようもない。彼らの戦場に僕らが介入することは……残念だけど出来ない。 僕の腕が治ったところで、ランスロットが瓦礫の向こうにある以上はね。 いま僕達が生きるためにやるべきことは、グラハムさんを助ける事じゃない。 どうやって、戦う術を手に入れるか、だ」 枢木の言葉は酷く残酷なようで、正しい。 僕らが第一に考えるべきはグラハムさんが落ちたあと、如何にして一方通行と戦い続けるかだ。 そのためにまず、瓦礫の向こう側にあるランスロットを回収しないといけない。 枢木がショッピングセンター前にあるその機体を再度駆り、一方通行と戦える構図を作る。 その上でじゃないと、ルルーシュとの連携は図れない。 「まずはここから出て、ランスロットにたどり着くために、砲撃を止めなければならない。 対面するビルの、あのナイトメアを抑える必要がある。 となるとここから迂回してビルに侵入。そして最上階にある敵機を叩く。 確実に敵パイロットからの反撃が予想されるが、それでもこちらから動かないことにはジリ貧だ。 警戒するべきはグラハムさん達の戦闘の余波だけど……」 「待ってくれ」 分ってる。 でも駄目だ。それじゃ遅い、遅すぎるんだよ。 「ここからランスロットを直接回収することは出来ないのか? 多少は危なくても、そのほうが迅速にルルーシュと連携でき」 「駄目だ。リスクが高すぎる。 道中でガレスの射線に入ることになる上に、 そもそも直接回収にむかったところで、どうやってあの瓦礫をどかすつもりだ?」 取り付く島も無い。 「ディートハルトが機体を手放した以上、ランスロットの自力復旧は見込めない。 僕の持つ機械による遠隔操作にすら反応を示さないとなると、どうしても他の機動兵器の手が欲しい。 戦闘中のグラハムさんにそれが出来ないなら、やはりあのガレスを押さえるしか方法は無いだろう」 どれだけ正しくても、その言葉は天江を見捨ていることを意味している。 「敵機があの場から動かない理由は、やはり僕等をここに釘付けにするため。 追撃が来ないのはパイロットとしての運用が不可能だからと推測できる。 となると敵はこちらを監視できて、なおかつ機体を守れる場所にいるだろう」 天江の命はきっと、それまでもたないはずだ。 「ガレス内部か、またはその近く、対面したビルのどこか。 この電波環境でなお遠隔操作が届く位置が考えられる」 「枢木……頼むから……」 「僕は君の自殺に付き合うつもりはないよ。 せめて勝つ道筋を見つけ出してから、口を開いてくれ」 どうあっても、枢木は頑として譲らない。 勝算の欠片も無い僕の言葉では届かない。 体から力が抜けて、するりと僕の手から天江の腕が抜けていく。 駄目なのか。 結局僕には何も出来ずに、天江をこのまま……死なせる事になるのか。 「僕はグラハムさんの戦いを見届けてから、あのビルに向かう」 ヘッドセットを耳に当てながら、枢木はそう言った。 おそらくあの受信機のむこうにいるグラハムさんと、何らかの連携を取っているんだろう。 グラハムさんの死を前提とするような。それをグラハムさんが覚悟していたとしても。 天江の死を前提とするような。それを……グラハムさんは知らないはずだ。 僕は、天江を託されている。僕だけが天江の危機を正確に知りえている。 だというのに、死なせてしまうのか。 僕は…… 「天江?」 その時ふと、気がつく。 先ほどまで心配そうに戦場を見ていて、今にも柵から飛び出しかねなかった天江が、一言も発していない。 床に座り込んだまま、じっと中空にあるエピオンを見て――いない。 天江は僕の言葉にすら気がつかないように、一心に手元を動かしていた。 「お前……なに……やってるんだ……?」 天江が見つめる先。 そこには麻雀牌と地図、方位磁石が並べられていた。 そして、そんな天江の傍らには、インデックスが座り込み、何事かをボソボソと告げていた。 「おい、何を考えて……」 僕はインデックスの肩に手をかけようとした。 こいつはいまだに主催の一味だった。 これ以上天江に何を吹き込もうとしているのか、 見当もつかないとはいえ、近づけたくはない。 けれど、天江はそんな僕を手で制するようにして、 「そいつを貸せ」 と、言った。 枢木にむかって。 顔も見ずに手を突き出し、トランシーバーを指しながら。 「…………」 枢木は少し迷ったみたいだけど、 「手短に、頼む」 そう言って、天江に機材を手渡した。 きっと、グラハムさんへと、最後の言葉を告げようとしていると、そう思ったのだろう。 僕も思った。だから止めようとした。まだその時じゃない。 僕は諦めたくなかった。 けれど天江は、すぐに受信機を耳に掛けようとせず。 「そう、か……」 顔を上げて、柵のむこうの戦場を見据えたまま、ポツリと呟いていた。 何事かに、気づいたような表情で、いちどだけ頷いて。 驚いたような表情が、氷解していく。 「やはり、そう……なのか、……は」 やがて全て悟ったように、それは笑みに変わっていき……。 「あららぎ」 そして、僕を見た。 僕をみて、にっこりと、口元を儚げに綻ばせた。 「ごめんな」 そう言った。 それだけで、僕は分ってしまった。 この子は……ああ……。 「衣は……きっと、もう助からない」 やめろ。 「あららぎは、助けようとしてくれてたんだな。 うん、嬉しかった。だけど、ごめんな。 衣は……」 やめろ、言うなよ。 「衣はもういい。もう、いいんだ」 首を振ったりするな。 そんな晴れやかな顔で、諦めたようなことをいうなよ。 泣きそうな表情で、嬉しそうに何を言ってんだよ。 「衣は分ったんだ。ここが衣の戦場なんだって。 いま、衣は戦うことが出来るんだって……」 「……どういう意味だ?」 その言葉に、枢木も、驚いた声を上げる。 「だからもう、十分だ」 「十分って……何が十分なんだよ。お前は……!」 お前は生きていてくれればいい。 それで僕やグラハムさんは救われる、なのにお前は……お前は何を言い出すんだ。 「衣はずっと守られてた。グラハムに何も返せなかった。 それでいいって、グラハムは言ってくれた。 だけどもう……衣は守られるだけなんて……いやだ」 天江は麻雀牌を並べていく。 ずらりと、インデックスの呟きを聞きながら、ものすごい速さで並べていく。 形作られる、それはさながら、このビル街のジオラマのように僕には見えた。 「気づいたんだ……『ここならば戦える』って。 だから……ごめん、な」 哀しそうに、天江は僕に、そう詫びる。 目に涙をいっぱいに溜めて、死の恐怖に震えながら、にも拘らず、嬉しそうに告げたのだ。 ごめんなさい、と。 それは明確な、拒絶のように聞こえた。 断絶のようにすら思えた。僕はそんな言葉が、聞きたかったわけじゃないのに。 「君はさっきから何を――」 「衣は、戦う」 枢木の言葉をすら遮って、彼女は強く言い切った。戦うと。 最後に一度だけ、涙を拭って、 拭った袖の下、その口元を歪ませて。 「戦えるんだ、だから今、衣は嬉しい」 残り僅かな命を、ここで燃やし尽くせれば本望だと。 面白いとすら彼女は言う。 その貌を見た瞬間、僕は、信じられないことに、この少女に寒気を感じていた。 いや、寒いだなんて表現じゃ生ぬるい、凍りついたと言っていい。 「戦える……やっと、やっと戦うことが出来るのだ……!」 下ろす袖の下、その瞳が、煉獄の炎の如くに燃えている。 なんだ? こいつは? 「目前の異能。その強靭。種に相違在り。ならば一切を児戯に堕とそう。 衣が相違を合わせよう。魑魅魍魎跋扈する地獄。是だ。 相手にとって不足は皆無。 この戦場、この『場』全てを衣の支配下に置く。 その役、種は違えど、戦いであることは同義だ。 ならばそこへ、衣は往こうか」 こいつは誰だ? 見たことの無い、『天江衣』がここにいる。 その圧倒的な気迫に、僕も、枢木さえも、何も言えなくなっている。 「嗚呼、衣はもう、何も恐くない」 もしかすると彼女は対局の際、こんな表情を浮かべているのかもしれない。 死への恐怖など欠片も感じさせない、壮絶な笑み。邪悪とすら表現できる悦楽の表情。 その貌を見れば断言できる、彼女は守られるために生まれてきたような、そんな脆弱な生き物では断じて無かった。 この『天江衣』は紛れも無く、強く、恐ろしい何かを宿した怪物だ。 人を喰らい得る、他者を徹底的に圧倒し蹂躙し完膚なきまでに叩き潰す。 そういう位階違いの強さ、戦慄すら、感じさせた。 「開幕だ」 一閃される、少女の細い腕(かいな)。 そこに燃える焔を、僕は確かに、幻視する。 「さあ謳え凡念。 譬え、一切合財、烏有に帰そうとも。この戦だけは譲らない――!」 そして僕は知る。 きっと言葉は届かない。 覚悟を決めた『天江衣』に、僕の説得は響かない。 誰が何を言おうと、彼女は決して退かないだろう。 「天江……お前は……」 この少女は――ここで死ぬ。 それを知る。 戦って、死ぬ。 真実、ここで果てるまで戦うことを、選んだのだから。 □ □ □ □ /もう何も怖くない、怖くはない(3) ビル街を爆速で躍動するガンダムエピオン。 その動きは既に、正道をかなぐり捨てていた。 笑いとも悲鳴ともつかぬ叫び声が人知れずコックピットに木霊する。 機体は人体の限界を超えた速度で急上昇。 手の平に乗せていた両儀式を、とあるビルの屋上に残した後。 目視した敵手の姿へと特攻を仕掛けていく。 「っ、おい……お前っ!」 地上から式が発する抗議の声になど頓着せず、エピオンただ目前の敵へと、敵へと駆けた。 そのような暇和は無い、これから防ぐべき蛮行は、彼女を乗せたままでは追いつけない。 中空にあるそこに、ショッピングセンターを狙い撃とうとしていた一方通行へと、急速に接近する。 投げ放たれていた建造物の一投げをシールドでもって防ぐだけに留まらない。 可能な限り、全ての攻撃動作を仕掛けていく。 ビームソードによる斬撃、通用しない、承知していた。 ヒートロッドによる一閃、通用しない、承知していた。 機体の左足部による蹴撃、通用しない、承知していた。 委細承知している。 それでも実行する。ひたすらに攻めた。 攻めて攻めて攻めて攻め続ける。 それこそが勝機、グラハムエーカーが信じている勝利への、唯一の道筋だった。 攻めるたびに、そのたびに攻撃はそらされ弾かれ跳ね返されて、エピオンの装甲に傷を増やし続ける。 装甲の終わりを早め続けた。 それでも、退くわけにはいかなかった。 攻撃の手を止めることは出来なかった。 中空にて死の舞いを踊るエピオン。 ビームソードの閃光が幾重にも散り、小規模の連鎖爆発が巻き起こる。 ヒートロッドが乱れ飛び、弾かれ、ビル街を火に染め上げる。 だが全ては片手一本で払われて、 弾かれたように退避したエピオンに、今度は一方通行が急降下で仕掛けていく。 咄嗟の迎撃、渾身の左の足部が跳び、一方通行に激突する。 当然、何の効果も上げていない。 どころかメキリ、と、足部が窪む。 蹴りの威力を全て反射され、自慢の装甲が歪む。 が、構わずに押し込んで、一方通行の座標を無理やり変えようと。 「オオオオオッ!!!」 ブーストを全開に吹かせ、そのまま邁進。 だかそれすら叶わない。 敵は微動だにしない。 メキメキと、よりいっそう装甲が窪んだだけだった。 「来いッ」 そこに駆けつける死の風。 一方通行が損傷を更に広げようとする刹那。 いつの間に拾い上げられていたのか、両儀式がエピオンの足部へと走りこむ。 刀の攻撃範囲から逃れた一方通行。だが更にエピオンが追撃する。 またしても、両儀式を近場の建造物の上に置いたままで。 「逃がさんッ!!」 「お前、滅茶苦茶だぞ……」 正に両儀式の言葉のまま、滅茶苦茶の特攻撃だ。 ただ傷だけを増やす追撃。意味のない。 死にに近づくだけの挙動。 その度に装甲は抉れ、無茶な挙動にパイロットは血を吐き、終わりが近づいていく。 それでも攻め続けなければならなかった。 攻撃の度に損傷する。 攻撃の度に血反吐を吐く。 それでも、こちらが攻撃するということは、敵は能力を使うという事だ。 こちらが攻撃し続けるということは、相手は能力を使い続けざるをえなくなる。 一方通行の能力に時間制限があるということは、スザクを通して知っている。 攻め続けた果てに、時間切れを狙う。 どうあっても両儀式との一対一に持ち込めない現状、その他に勝ち筋は見えない。 攻撃。 攻撃。 攻撃。 攻撃。 繰り返す。 繰り返して、払われて、落ちていく。 まだまだ足りない。膠着状態だった時間を除けば、まだたったの数度しか交戦していない。 実際の戦闘時間に換算すれば、未だ五分にも満たないのだ。 具体的にどれだけ力を使わせれば底をつくのかは知らないが、薬局の時を思い出せば、まだまだ足りない事は分る。 ならばコンスタントに攻め続けていきたい、しかしそれをするには機械対人ではあまりにサイズの差がありすぎた。 一度見失えば、次にどこから攻撃が来るのか予測できない。後手に回らされてしまう。 それでは駄目だ。それではもう、あと二度の交戦ともたずにグラハムは陥落してしまう。 それほどの余裕すら、残ってはいないのだ。 もう一つだけ、手が無いわけではない。 誘い込み。 薬局の時の様な、何かを餌にして両儀式の戦える場に一方通行を呼び込む。 しかしこれはグラハムの大切な者を危険に晒す行為に他ならず。 グラハムにはどうしても、選べない。 だからいま、攻める。 たとえ矛をかなぐり捨ててでも、 盾だけになろうとも、ひたすらに攻めた。 攻めて攻めて攻めて攻めて攻めて攻め続けて せめてこの身(装甲)が朽ち果てる前に、あの少女を守らせてくれ。 後に戦い続ける者達へと、残せる戦果を上げさせろ。 その一心で、痺れの治まらない腕で、操縦桿を握った。 「…………ご、が……」 だがそれすらも、叶わないというのか。 グラハムは遂にこの時、光を失っていた。 身体の酷使は臓腑だけでなく、脳にすら及ぶ。 くらりと揺れた視界、色の失せる世界。 その一瞬後に、揺れる機体。 深刻な反撃を受けた。 堕ちる。 死ぬ。 そんな断片的なことは分る。 だが具体的なことが見えない。 分らない。視界に映らず、脳が認識しないままで落ちていく。 攻めきれなくなったときに切るカード、両儀式の居る位置すらも、これでは分からない。 このままでは終わる。 そう、グラハムは理解した。 口惜しい。未練だ。 守るべき者を守れずに、戦いの結果を見届ける事無く死んでいく。 そしてあと一つ、何かが足りなかった。 今なら分る。 グラハムの操る装甲。 両儀式の刃。 これだけでは、まだ足りなかった。 もう一つ、何かが必要だった。 それは敵の頭脳に対抗するべきもの、そう戦術眼、オペレーション。 戦場を俯瞰し、操り、事を優位に運ぶ手綱。 兵たるグラハムは、それを持たない。 戦士たるグラハムと式を、背後から支えてくれる、バックアップ。 参謀の言葉が、『指示』が、欲しかった。 そう、例えば、 『左方に跳べ、其処に両儀が在る』 今聞こえた。 このような声が欲しかったのだ。 「――――!!!!」 意識が、一瞬にして覚醒する。 目をカッと見開き、それで視界はもどらなくとも、腕を、トリガーを、もう一度強く握り締めた。 今確かに聞こえた『声』には、それほどの威力が在ったのだ。 頭にかかっていた靄など彼方に吹き飛ばし、機体を、その『声』の言うままに駆動させる。 地面に叩きつけられる寸前に、ガンダムエピオンは息を吹き返し、ブースト。 左方向へと軌道を変えて、立ち並ぶビルを薙ぎ倒しながら跳躍する。 遅れて地に降りた一方通行がすぐさま追撃を仕掛けるも、その場所は、 ある建造物から、躊躇なく飛び降りた両儀式の、落下してくる場所だった。 「ちっ」 「ほんとオレにはつれないよな。相手してくれるの、一回だけなのかよ」 退く、一方通行。 直前で視界を取り戻したグラハムにより、エピオンの腕が中空の両儀式を受け止める。 式が一息をつく暇すらなく。 『虚偽だ。敵は不退。左方より来たるぞ』 盾を構える。 言われた通りに、敵は来た。 エピオンの視界の外、ビルを突き破って。 小破した腰部を狙ってきた一方通行を、エピオンの左腕のシールドが受け止める。 「――――?」 何故、防がれたのか分らない。 と言った様子の一方通行。 再び動き出す前に、両儀式を肩に乗せ、エピオンは後ろに飛ぶ。 『その動作は否だ。回帰後、本懐の守衛こそを担え』 ビームソードを抜刀。 右に残っていたビル郡を纏めて切り裂き、一方通行へと落としていく。 視界を塞いだ隙に旋回。一方通行の背後へと回り込む。 案の定、落下してくるビルを弾き飛ばして、一方通行はすぐさま跳躍していた。 背後にあったショッピングセンターへと攻撃を仕掛けんとし、だがそこには既にエピオンが回り込んでいる。 『喰らうべきは視界。奴が受け入れる五感を穿つ』 再びシールドで弾く、一撃。 すぐさま式が肩部から飛び降り、接近を仕掛ける。 そこへと意識が集中した一方通行に対して、振り上げるビームソード。 振り下ろす、斬撃。 『故に、地を裂け――グラハムッ!!』 路上を、倒壊した建造物が積み上がったその場所を、金緑色のブレードが両断した。 巻き上がる砂塵、瓦礫、粉塵。 一方通行とエピオンの間に、濃茶色の壁を形成する。 次いで、上に向けられたシールドの上に、式が着地。 迎え撃つ姿勢を整えた。 敵の視野を遮った上での迎撃体勢。 これでは一方通行とて迂闊に踏み込めない。 決して不可能に思われた、建て直しを、成した。 「なにを……?」 「――ん?」 グラハムはこの時、一つの錯覚を得ていた。 声が聞こえていない両儀式も、同じく。 その、圧倒的な気配。絶対的な存在感。 無視できない、感情の焔。 確かに、背後に、感じていた。 背後のショッピングセンターより雪崩れし不可視の激流が、たったいまこの戦場を飲み込んだのを。 「君は何をやっているんだ、天江衣ッ!!」 それは足りなかった1ピース。 盾、矛、そしてもう一つ。第三の要因。 限界を迎える身体を、背中を支えてくれるような声。 戦場を俯瞰し、動かす。指示。 敵の位置を、味方の位置を、戦局を、指揮を伝える、オペレーター(通信士)。 充足させるその声は紛れも無く、天江衣の声だった。 「君は……君は……!」 『今は何も言うな、グラハム。衣はグラハムの傍に居る。最後まで傍に居ると、そう決めたよ』 「しかし君はこんな所にいるべき人間では無いんだ!」 『嫌だ、衣も戦う。だって』 「――くっ」 『ここが衣の、戦場だからな――!』 やり切れぬ思いに反して、身体は動く。 的確すぎる、的確すぎて不自然に思えるほどの指示によって。 否、指示自体は大雑把で場当たりなものだ。 瑣事加減や具体的な動きはグラハムに委ねられている。 参謀の言葉としてはあまりに欠陥がある。 しかしその通りに動けば、不思議と事が上手く行くようだった。 自然に、自然すぎて不自然に思えるほどに、戦場が都合よく転がっていく。 『敵は右方』 ビル街の中空で、続行される攻防。 『両儀の位置は後方に在り』 限界などとうに超えているはずの戦場で、エピオンはいまだに顕在している。 残り数度が限界に思われる交戦だったにも拘らず、激突は気がつけば十を超えている。 綱渡りの様な戦況、確かにそうだった筈だ。 にも拘らず天江衣の声が響いてより、一度の窮地も無い。 『敵の本旨は依然此方だ。まだ退くな!』 戦場を俯瞰できる声があるから、だけでは説明が付かない。 何か別の物がある。 別の要因を、感じている。 運命の変っていくような、『支配』されいてるような。 全てがその声の通りに、上手く行くような、改竄。 さながら、ツキの女神に愛されたギャンブラーにも似た。 どれ程絶望的な賭けに見えても、滅茶苦茶な確率であろうと、そもそも勝つ気すらなくとも、かくあるべしと勝利する。 勝利してしまう事が条理であるかのように、事が上手く働いてしまうような実感。 「なンだ?」 それはグラハムの敵にとって、即ち一方通行にとって、真逆の事態を意味しているだろう。 全てが、悪く働くような。 悪性の支配を、運が全て敵に回るような錯覚を。 何をしようと上手く行かない、裏目に出る。 引き換え敵は、意味の分らない強運でもって窮地から逃れ出る。 まるで足元から不可視の海水が湧き上がってくるようだった。 このビル街全域を、瞬く間に大量の塩水が満たしていく。 錯覚ではなく、それに足を取られている。 戦場が海となり、ここに巨大な『流れ』が発生する。 グラハムエーカーと一方通行との間に在る違いは、その流れが己に利するか害するか。 そして海水の発生源とは今この時、一方通行が見つめる――ガンダムエピオンの更に向こう―― ショッピングセンター第一立体駐車場にて戦場を見下ろす、一人の少女に他ならない。 「これは――?」 強運を、操る。否、この表現は適当ではない。 これは最早、運ではない。 運否天賦に介入した、能力。 天江衣の強大なる――『場の支配』そのものだった。 □ □ □ □ 時系列順で読む Back crosswise -black side- / ACT1 『疼(うずき)』(二) Next crosswise -white side- / ACT2 『もう何も怖くない、怖くはない』(2) 投下順で読む Back crosswise -black side- / ACT1 『疼(うずき)』(二) Next crosswise -white side- / ACT2 『もう何も怖くない、怖くはない』(2)
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crosswise -white side- / ACT1 『PSI-missing』(2) ◆ANI3oprwOY /PSI-missing(2)/あるいは阿良々木暦の俯瞰風景『接続(善)』 強烈な圧迫感が全身を打ち据えていた。 鼓膜に叩きつけられる風切り音は、金切り声のように甲高い。 僕は飛ばされないように必死で踏ん張っている。 もう、目なんか到底開けていられない。っていうか顔を前に向けることすら至難。 少しでも口を開ければ見えない異物感が喉の置くまで進入し、呼吸困難を引き起こす。 「枢木! いくらなんでも速すぎる!」 戦場から離脱を開始してより数分、ランスロットの速度は段違に上昇していた。 手の平に乗った僕等のことなんか若干無視した勢い。 分っている、そのぐらいの速度じゃないと駄目だ、確かにそうだ。 だから僕はいい、耐えられる。 だけど腕の中に抱える天江が、もう限界だ。 「構うなあららぎ。衣は大丈夫だから」 呟かれる言葉は力強く、だけど苦しそうだ。 僕は少しでも天江の負担が減るようにと、彼女を抱え込むことしか出来ない。 「けど、……?」 更に言葉を続けようとして、しかし急に当たる風が軟化した。 轟々と耳をイカれされていた音が弱まっている。 きつく閉じていた両目も、薄っすらと開くことが出来た。 「なっ」 僕の身体越しに天江もポカンと、それを見る。 いつのまにか、真っ白い修道服に身を包んだインデックスが僕達の正面に立っていた。 「何を、してるんだ?」 彼女はこの風の中で微動だにせず、僕等の前で風を受け止めている。 相変わらず冷たく、無機質な、感情を感じさせない視線で僕達を見ていた。 「私には、『歩く教会』の防護があります」 素っ気無い言葉一つだけ。 インデックスは僕等に背を向けて正面を見据えた。 原理は分らないけど、風除けになってくれるってことか。 「……ッ」 内心で、歯噛みする。 どうして僕はこういつもいつも、出来ることが無いんだろう。 あの場に残ってグラハムさんの助けになることも出来ず、 天江を救うこともルルーシュ頼みで、 風除けすらインデックスより役に立たない。 まして、この状況を打開する方法なんて浮かびやしない。 ランスロットはビル街の小道(といっても大通りと比べての小道だ。ランスロット大のロボが通れる位の道幅は在る)を疾走している。 速度は手の乗った僕らが振り落とされないギリギリの……いや多分、許容範囲を超えている。 これほどの勢いで移動して僕らが無事なのはきっと、枢木の操縦の腕が特段に良いからだ。 実際、僕にはそんなの分らないけど、そうでも思わなければとても乗っていられない。 「くそ、せめて飛んで行ければ……」 ランスロットには飛行機能があるらしい。 それでも地上を進む理由は敵に見つからないためだ。 せっかくグラハムさんと式を囮にしてまであの場から離脱したというのに、 空中に飛び上がってしまえばすぐに発見されてしまうだろう。 もともと空中を移動してこなかったのは信長に見つからないためなんだ。 それが一方通行に遭遇してしまって、こうして分散するはめになっているけど……。 「もしかしてアイツ……僕等の居場所が分かってるんじゃ……」 それは最悪の予想だった。 だけど実際出会ってしまっている以上、否定しきれない予感。 前回の襲撃といい、今回の待ち伏せといい、タイミングが不自然すぎる。 どうにもこちらの動きを読んで仕掛けてきているような、周到さがあるのだ。 もしそうなら、アイツがグラハムさん達を無視して僕達を追ってくる可能性は捨てきれない。 背後から今にも奴の笑い声が追ってくるようで。 いや、それ以前にグラハムさん達はまだ無事なのか。 もうやられてしまっているんじゃないか。 ああ、駄目だ。ネガティブな考えしか浮かんでこない。 「プラスになることを考えろ」 自分に言い聞かせるように、口の中で小さく呟く。 一人で腐ってたってしょうがない。 それじゃ本当にただの役立たずだ。 僕にしか出来ないことを考えるべき。 この場で、操縦に集中している枢木と、ディートハルト。 追い詰められている天江、何を考えてるかも分らないインデックス。 その中で僕にしか出来ない事は、まあ、地味ながら、さっきからやってはいるんだけど。 「ていうかいい加減、繋がれよっ」 通信機を耳に当て、ルルーシュへとコールする単純な仕事。 まずは奴に僕らが移動し始めたことを教えなければならない。 合流を急ぐ意味はもちろんある、天江の時間はもう残り少ない。 更にグラハムさんと式への援軍の見込みも、もうルルーシュ以外にかける望みが無い。 この状況を打開するためには、どうしても奴の強力が不可欠だ。 諦めず懲りず、繋がるまではコールし続ける。 「それ、と」 もう一つ、さきほど考え付いた作業を開始する。 コックピットで機体の操縦をしている枢木に、僕の考えを伝えないと……。 □ □ □ □ ジェットコースターのような逃避行の中で、 僕らが辿り着いたのは巨大なショッピングセンターだった。 地図に記された要所の一つでもある、南西の巨大施設だ。 ショッピングセンター第二駐車場。 僕らはいまそこにいる。 ショッピングセンターを出てすぐの場所にある、屋外駐車場だ。 ちなみに第一駐車場はショッピングセンターと直接繋がっている立体駐車場を指すらしい。 後は北上して、ルルーシュと合流する予定。 けど、その前にやることがある。 「枢木……いけそうか?」 「金額は足りてる」 枢木の腕の再生だ。 ショッピングセンターのサービスを利用して、枢木の片腕に義手を接続する。 式が教えてくれた情報は間違っていなかった。 枢木、僕、天江、インデックス。 第二駐車場に備えられた首輪換金機の前にて、四人で見据えている。 『青崎燈子の義手』と記されたタッチパネル式の画面を。 「…………」 枢木は黙したまま、指先で画面に触れて、サービスの使用を選択した。 しばし、静寂の間が入る。 少々、時間が掛かるようだった。 僕はその間にルルーシュへの通信を再度試みた。 相変わらず電波状況は最悪のようだ。 何度コールしてもノイズしか聞こえない。 それでも僕はルルーシュへと呼びかけ続けていた。 枢木の腕が治れば、状況は改善する。 僕は枢木と話した結果、そう結論をつけた。 枢木は言っていた。腕が万全でさえあれば、ランスロットで空を行ける、と。 それはつまり、例え一方通行に発見されようと、操縦技術が戻ればルルーシュとの連携がすぐにでも可能になる。 枢木にはその自信があるということだ。 天江を助けたい僕にとっても枢木にとっても、理に叶っている。 だからここに来た。枢木の腕を直しに。 僕は賭けた。ルルーシュとの合流、それが活路になることを。 「…………まだ……か?」 いぶかしむ枢木の声が聞こえた。 僕も通信機を耳にかけたまま、自販機を見る。 冷蔵庫大の金属箱は沈黙を守ったままだった。 「壊れている?」 おかしい。 薬局の例をなぞるなら、ここから主催の者が現れ……ってパターンが予想できる。 けれど、一向に何も起こらない。 このままじゃ最悪無駄足だ。またしても主催者の罠が仕掛けられているのか……? なんて事を考えていたとき、突如背後から、内臓を震わせるほどの地鳴りが聞こえて―― 「「「…………!!!???」」」 『ずぅぅぅん』と太く重たい尾を引いて、僕らの腹の中をかき回しながら抜けていった。 僕も、枢木も、天江も、一様に振り返る。 何の……音だ……? 背後に聳えるビルの山脈の向こうで何が起こっているのか。 分らないけど。嫌な予感以外の何も感じない。 急がないと。 そう思って再度、自販機を見たとき。 「お待たせしました。 これよりサービスを執行します」 誰かが唐突に、抑揚無く語りだした。 「本来、この場でのサービスを担当していた者は現状では動けないようです」 声に一同全員、振り返る。 そう『振り返った』のだ。 現れた誰かを見るのではなく。 それは僕らの内の一人を、すたすたと枢木に歩み寄り、真っ白い修道服の長い袖に通した腕を伸ばす、 「よって、禁書目録が代行として魔術の行使を行ないます」 主催者、インデックスに、全員の視線が集中していた。 「な……」 突然のことに、僕を含めた全員が絶句するなか。 差し伸べられたインデックスの手の平の上に、何かが形作られていく。 「使用治癒術式の厳選開始――完了。 前執行者が使用していた異世界魔術の応用が現状にて最も短時間にて発動可能な魔術と認識。 術式使用方法の照合――完了。 治癒に必要となる義腕部の転送は滞りなく遂行。 ――警告。腕部接続時の術式に禁書目録の理外の法あり」 凄まじい早口で何事かをまくし立て始めた少女に、僕らは呆気に取られるしかない。 それ以上に異質なのは、彼女の手の上に乗せられていたソレ。全員が凝視していた。 「い、インデックス……?」 心配そうにインデックスを見ていた天江の視線も、もちろん固定されている。 それは、一本の腕、だった。人間の腕だ。血の通った腕、ビクンビクンと胎動している。 断面からは骨と血が見える。何故こぼれ出さないのか疑問なくらいに、生々しい。 「前執行者の術式を解析―――――――失敗。 警告。同様の工程では術式の再現は不可能。 前執行者の異世界魔術工程を参考に、独自の解釈で魔術の再解析を試行―――――成功。 結果から逆算、媒体の効力のみを解析、同様の奇跡の再現が可能。 警告。この術式の使用は禁書目録独自の魔術仕様が必要。 魔術使用許可を申請――許可されました。禁書目録にかけられた制限の解除を確認」 誰にともなく……自分にか? 留守電を再生するかのように、淡々と言葉を重ね続けるインデックスを、みなが唖然と見守る中で。 彼女は枢木へと、両手に抱え持った『腕』を差し出した。 「接続はすぐに終わります。傷口をお見せください」 「ちょ、ちょっと待てよ……! インデックスお前……!」 背筋を冷たいものが伝う。 鋭い刃物が背骨に当てられているような、無視できない寒気だった。 こいつが今言ったことは、原理とか魔術とか分らないけど、 やってることはつまり主催者の立場に身を置く奴の振舞いだ。 これはどういう事だ? インデックスとディートハルトは主催を裏切ったんじゃないのか? だから彼女は天江を助けたいって、思ったんじゃないのか? そんなやつがどうしてサービスの執行なんか……。 「やめろ」 インデックスの肩を掴もうとしてた僕を、枢木の手が阻んでいた。 「けど」 「尋問は後でいい」 見下ろせばインデックスもまた、冷たく突き放すように僕を見上げている。 「ここで時間を費やすことは、本意では無いはずです」 その無機質な声、無感情な瞳、思えば最初に見たときから何一つ変わっていない。 変わってはいなかった。 僕は大きな勘違いをしていたのかもしれない。 だとするならばこれは、この状況は未だに主催者の手の上って事になるんじゃないか……? 「……わかったよ」 僕はインデックスへと伸ばしていた手を引っ込める。 確かに枢木の言うとおり、今はこれより優先することがある。 一刻も早く腕を直すことが、先決だ。 天江は一刻を争う事情を抱えているんだ。 インデックスのことはその後で考えるべきだろう。 今はそれより―― 僕は腕の接着を開始した枢木達から視線を切って、背後を見る。 駐車場から少し離れたところには、ランスロットに乗り込んだディートハルトがいる。 インデックスより、奴の狙いが分らなくなってきた。 奴ははっきり言ったんだ。『我々』は裏切り者だ、と。 にも拘らずインデックスは、未だに自分が主催者側の人間なのだと、隠す気がなかった。 奴は何かを僕達に隠している。思えば肝心なことは何も言って無い。 天江の制限時間に、僕の目はきっと曇っている。 なにか……重要なことを見落としているような……。 『ザザザ――ブッ…………』 その時、耳の中で聞こえた音に、僕は意識を引き戻された。 通信機が、通話状態になっている。 「ルルーシュ!? おい聞こえるか!? 今僕達は――!」 僕は救われるような心地で状況をまくし立てた。 不安材料はあるけど、状況は好転してきている。 これでルルーシュからの援護が得られる。 枢木の腕も治った。 状況だけ見れば、悪くない、希望の光は消えてない。 通信が繋がったということは、多分ルルーシュと僕らの位置が近づいてきてるってことだ。 合流は近い、援軍が近づいてきている、グラハムさんと式を助けられる。 僕らの戦力は完全になる。後はどうやって一方通行を撃退するかを編み出せすかだけど。 そこは智将ルルーシュの出番だろう。 僕はその後に、奴と対決することになるかもしれない。 それでも今は目の前の敵への対応が必要なのだから。 「ザザザザ――!」 やっぱりノイズが酷い。 すぐにでも切れてしまう事だろう。 とにかくこっちの状況だけでも正確に伝えないと。 そう思って声を張り上げていた時だった。 ――状況は立て続けに巻き起こる。 それに、僕は気が付いていなかった。 「……何だ?」 ざわざわと、背後が騒がしいことが気になって振り返る。 天江が、僕の背後、ランスロットの更に背後を指差してた。 腕の接続を終えた枢木もそれを見る。 次にインデックスが、最後に僕が振り返って……。 「――――!?」 天江が指差した先には、一棟のビルがあった。 ショッピングセンターに向かい合うように建てられた建造物、けれど天江が指差していたのはそれ自体じゃない。 その上の、屋上にあったものだ。 巨大な給水機か何かの陰になっていて今まで見えなかったんだろう。 いやそれにしたって何故アレに気がつかなかったのか、皆目検討もつかないけれど。 天江によって、その姿が認識できるようになった瞬間。 「あれは……ナイトメア……フレーム……?」 枢木の呟きが聞こえた。 それは確かに、あのナイトメアと呼ばれるモノなのだろう。 大きさが大体一緒くらいに見える。 だけどあれは、ランスロットとも、サザーランドとも違う。 知らない機体だ。でも今はそんなことが問題じゃなくて。 問題はその機械が抱えた巨大なロケット砲みたいなものが、僕らの方向に向いている、ことで……。 「……こ、ここから離れろォッ!!」 僕は全力で叫んでいた。 叫びに応じるように、天江が一歩下がった。 僕が叫ぶ前から、枢木は既に動いていた。 インデックスはそ知らぬ顔で行動を開始した。 皆がばらばらの行動を取る中で―― 僕等に向けられていた災厄の銃口は厳かに、閃光と焦熱を迸らせた。 □ □ □ □ 「ザザザザッ――あー、あー、もしもし? ノイズ酷いっすねー、聞こえてるっすか?」 『まだなんとか……聞こえてるよ。でもこれ以上距離が開くと途切れちゃうかもな。で、そっちはどうだ?』 「いやぁー、なかなか期待通りにはならないみたいで。死人はゼロみたいっすよ。 やっぱり直接狙わないとあたらないっすね」 『そうか、でも、目的は達成できたんだろ?』 「あ、はい。そのあたりに関しては上々っす、足止め完了しました。 むこうのロボットも瓦礫の向こう側、あの人たちだけじゃどかすのは無理そうっすね。 埋まってなくても、道が塞がってるようじゃ誰にもたどり着けないっす」 『敵の機動兵器は封じた、か。ならもう十分だよ。お前はこれ以上動かなくていい。 同じポイントに敵が来れば逐次砲撃してくれ。それだけでいいから』 「了解っす。とは言え、もう誰も戻らないと思うっすけど……」 『それでもだ。無理に動かれて、勝手に死なれたら私が困るんだよ』 「あーはいはい、分りました。わたしはもうココから一歩も外に出ないっすから、澪さんは澪さんの仕事をして下さい」 『うん、分ってる。任せとけ』 「はい、任せました」 『じゃあ終り次第連絡するから、あの場所で落ち合おう』 「ええ、ではまた」 『…………なあ、モモ』 「なんすか?」 『……死ぬなよ?』 「澪さんは…………役目を果たしたら、適当に死んじゃっていいっすよ?」 『ははっ……やなこった』 通信が、切れる。 どことも知れぬ小さな部屋の中で、少女はソファにもたれかかっていた。 通信機に添えていた手を離して、もう片方の手に持ったそれを見つめる。 「んー、やっぱり本調子にはほど遠いっすねー。感覚全然ないっすよ」 ボロボロの腕の先に持つ、トリガー(引き金)。 それは、ナイトメアフレームの遠隔操作機器だった。 彼女には機動兵器を操縦した経験など無い、練習も積んでいない。 故にパイロットとして戦うことなど出来はしない。 しかし、『引き金を引く』事だけならば、誰にだって出来る。 「……ん」 引き金を、引っ掛けた指でクルリと回したその時、彼女はふと懐かしい気配を感じた。 それはもう遠い日の記憶にすら思える、あの肌寒い不条理(オカルト)の手触り。 ああ想定外がまた一つやってきた、と。 そんな、番狂わせの予感を確かに感じとりながら。 「それじゃあ、私達も……」 今は兎も角、と。 彼女は開け放たれた窓の外を見つめ。 ふっと、口元に笑みを浮かべて、小さく小さく呟いた。 「戦闘開始、っすね」 □ □ □ □ /PSI-missing(3) 吹き上がる炎が大気を焦がし、立ち上ぼる陽炎が空間を歪ませる。 大出力のスラスターより噴出し、全長十七メートルにも及ぶ巨人の全身を持ち上げるそれは、空の世界へ飛翔を為さしめる光の翼だった。 深紅の人型戦闘兵器、ガンダムエピオンは轟々と金緑色の軌跡を描きながら空を登り往く。 敵対するモノに対抗する唯一の手段をその装甲と、その掌に宿して舞い上がる。 「耐えてくれよッ!」 男が叫ぶ。 巨体の内側にて、操縦桿を握るグラハム・エーカーはこの時、パイロットとしての真価を問われていた。 この程度の機体上昇、エピオンにとっては造作もない。機体が秘めるポテンシャルの一割にも満たない瑣事。 しかし、機体の手の内に抱え込まれている生身の両儀式に掛かる負担は計り知れない。 全速力の運動性能を引き出せば、装甲の内側にいるグラハムにすら命の危険が及びかねない程、この機体は本来から強烈な暴れ馬である。 それを御するのみならず、機体の外側に剥き出しなっている唯一の攻勢手段を気遣いながらの航行―― ましてや戦闘など、狂気の沙汰としか言い様の無い行為だった。 空を飛ぶエピオンを、追う影が九つ。いずれも大質量の砲弾だった。 金属の鉄柱、コンクリートの外装、木製の骨組み、雑多な物物で構成されたそれは、地に無数に建ち並ぶ建築物そのものである。 立ち並ぶビル、民家等がそっくりそのまま地より抜き放たれ、エピオンを追尾してくる。 ともすれば滑稽とも言える光景も、勢いがミサイルの如しならば脅威でしかありえない。 砲弾が描く軌跡、その全てが同一ではない。天に孤立する巨人を落とさんとする包囲弾。 取り囲むように、曲進してくる六発。僅かに遅れて円の内側から狙い撃つ、三発の直進弾。 安易な判断は許されない。 エピオンの全速力をもってすれば、容易に離脱もできようが、しかし急劇な高速航行は式の肉体を壊してしまう。 故に、勝利のために、この時のグラハムエーカーに求められている技能は以下の三つである。 一つ、両儀式に害の及ばない航行速度を維持する。 二つ、一つ目の制限を守った上で迫り来る砲撃をやり過ごす。 三つ、上記二つを完遂した上で反撃に転ずる。 不可能。まるで不可能な難題だ。 そもそも自然の摂理を数え切れぬほど無視した攻撃を前に、 エピオン最大の強みである機動力を封印したまま対抗し、あろうことか反撃に転ずるなど夢のまた夢。 ただの理想論である。妄想に過ぎない、非現実。 「ならば――」 そう常人ならば、脳裏に浮かぶ不可能の三文字によってすぐさま振り払う。 馬鹿げた妄想。 諦めることが、正しい道理であり、 「ならば、そんな道理、私の無理でこじ開けるッ!!」 しかし、違った。 この乙女座の男、グラハム・エーカーは違うのだ。 なぜならば、彼はしつこく諦めも悪い男、俗に言う人に嫌われるタイプなのだから。 「ぜえぇぇぇあぁぁぁッ!」 裂帛の気合と共に、繰る手綱。 グラハムは手元で暴れる駻馬を全力で押さえ込み、己の意志を叩き込む。 手始めに機体の左手を同じ位置に固定させ、左腕部のシールドを下方に突き出した状態で、残りの全身を更に上空へ押し上げて。 ――ときに、パイロットとMSの関係とは、つまりヒトとモノのコミュニケーションである。 しかしそれは常ならば意志の非意識の疎通となる。 内なる会話。人による訴えに対し、機械による従順な行為の変換。 グラハム・エーカーとガンダムエピオンのそれは、暴力的の一言に尽きた。 非意識ではありえないと思えるほどの、まるで意志を持っているかのような、機械の反逆が此処に在る。 逆らうはずの無い非意識が、手先で御せる筈の機械人形が、まるで言うことを聞こうとしない。 放つ命令に意義を唱える。否、否、否だと訴える。操れない、制御できない、という次元の理ですらない。 真逆、魔逆、操るものを操らんとする妖魔の業。 恐るべき事に反意の作用は機械の内側だけでなく、グラハムの内側にも生じている。 意識に、介入されている。 このような機体を、グラハム・エーカーは知らない。 人の反応速度を完全に無視した滅茶苦茶な機体スペック。 実戦を想定するにはあまりに不可解な武装構成。 そして、グラハムの脳裏すら操らんとする悪魔的システム――ゼロ。 暴れる、暴れる、暴れ続けて止まらない。 指先の繊細な動作など受け付けない。 今にもこの機体はグラハムの制御を振り切って、心を食いちぎって、解き放たれようとする。 抱え守る式など無視して暴発する。その速度で、彼女を殺す。 一瞬選択を誤るだけで、力加減を誤るだけで、呆気なくグラハムの意志など関係なく、制圧し、 自由を取り戻し、全速力で押し潰し、全てを壊し、下方の敵を殺し、勝利を、 そう勝利を、勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利を勝利だけを―― 「ああ、いいぞッ! 悪くない抱擁だッ! 私の心すら焼きつくさんとするのかッ!」 勝利を拒絶するならば此処に、もう一つあるモノは繊細な手技などではなく―― 「だがまだぬるいッ!ぬるいぞッ!もっと、もっとだッ!そうだもっと感じあおうじゃないかッ! 私からも、今こそ、抱きしめよう、ガンダムッ! 抱き合おうじゃないか、ガンダムッ!!!!!」 意中のモノの気を引き付けんが為の情熱的な、男の手技である。 押さえ込み捻じ伏せ組み敷き蹂躙せんとする、野太い腕である。 内なる炎をで鋼の機体を焼き尽くさんとする、情の抱擁である。 「さあ、行こうかッ! 力ずくで抱きしめ合おう! 私は全力で、君を抱きしめて放さんッ!」 そして始まる攻防戦。 向かい合った一つの意志と、一つの非意識。 ぶつかり合い、潰しあい、抱き締め合った、暴虐的な意思疎通は乱反射して戦場へと。 「ああそうとも!! 多少強引でなければ、ガンダムは口説けんからなぁ!!」 両儀式を抱えた手は固定。 どれほど、ガンダムが暴れようが、ここだけは動かさない。 譲らぬ一線、ゼロが示した偽りの勝利は、いかに勝利であろうと、グラハム・エーカーの勝利ではありえない。 「私の道を切り開け! 私に勝利を齎すならば! 君の力を示してみせろ!」 エピオンの左手を自ら封じる以上、使える攻撃部位は右手のみ。 グラハムに許された現状唯一の攻撃手段、機体の腰部にマウントされたビームソードを抜き放つ。 大気を焦がしつくす金緑色の刀身が、天を突き刺すように高らかに掲げられた。 まずは、先んじて向かい来る、六つの砲撃に対する迎撃を決行。 機体の向きを傾ける。 ビームソードを水平に構え、スラスターを吹かせながら、瞬間的にブーストすべき位置を調節し。 「はぁぁぁぁァッ!!」 『その場』で回転した。 同じ場所、同じ座標で、ガンダムエピオンの推進力をフルに発揮して機体の全身を回転させる。 ビームソードが、空間に何重にも斬撃のエフェクトを描き、斬る。 同時直撃を狙い打たれていた六の砲撃が、等しく同時に切り裂かれた。 それは既に達人の枠外にすら届きかねない。 驚嘆すべき機体制御力が成し遂げた、至宝とすら表現できるほどに磨きぬかれた経験と、 一握りの才能による、正しく『エース』パイロットの為せる技だった。 「ぐ……が……は……っ!」 代償は、多大なる圧力。 身体への負荷。 Gを一身に引き受けたグラハムは、 コックピットで血反吐を吐きながらも次なる動作を行なおうとする。 「……来た、か!」 直感的に察していた。 敵は近い、仕掛けてくる。 直後、予感違わず、エピオンの左腕部シールドへと横向きに激突した一棟のビル。 そこに加えられるインパクト。 盾の内側に守られた式を狙ってのものだ。 遅いと知りつつグラハムは対応を開始する。 しかし驚くべきことに、狙われていた式はとっくに対応を成し遂げていた。 衝撃が届く寸前、少女はその場で跳躍を敢行していた。 床下からの、不可視であった攻撃をを容易く、中空に飛び出すことで回避する。 古来の絶技、侍の歩法。 目さずとも、殺気の距離を測る、感じ取る、間合いの読み。 限定的ではあるものの、未来予知にも届く域の直感併用。 しかし、それだけで窮地を脱するには不足だった。 タイミングとしては完璧の跳躍も、 次の刹那に足場が消えてしまえば、身投げに等しい自殺行為に置き換わる。 式の反応が最適であっても、更に横方向からの攻撃に晒されたエピオンの動きには、同調していなかった。 少女の足場が消え失せた瞬間。 エピオンは砲撃の攻略に成功する。 がしかし、その一瞬の間に、グラハム・エーカーは肝心の両儀式を見失っていた。 「不覚ッ!!」 全ての砲撃を止め、撃ち落とした。 破片が無数に落ちていく中空。 舞い散る瓦礫をくまなく探れど、落ちる人影は見えない。 「どこに――」 「よォ?」 代わりに、 絶対零度の如き怖気が、 グラハムの背中に深々と突き刺さった。 「貴様ッ!」 機体を反転させ、エピオンの滞空していた位置より、更に上空を仰ぎ見る。 視界に映るものは、早朝の空と、天に浮かぶ雲と、エピオンを取り囲むように未だ浮く、空中でバラバラになった建造物の破片。 その内の一つ、中ほどで折れた高層ビル、横向きに落ちていくその上に立つ者が一人。 見間違いようの無い敵手の姿。 先の砲弾に紛れエピオンより更に上空に陣取った、一方通行の姿だった。 「そろそろ、逝っとくかァ?」 足場のビルを蹴り飛ばし、直下のエピオンへと喰らいにかかる。 これこそが十発目の砲弾。隠し球、変化球、魔球。 「まだだ」 両儀式という敵への抑止力を失ったいま、 敵の接近を持続的にを許すエピオンの装甲は、強度を失いハリボテに成り下がる。 矛は単体でも戦えるが、盾は矛と一体でなければまともに機能し得ないのだ。 接近そのものを回避するしかない。 即座にエピオン急降下を開始するエピオン。 しかしパイロットは己の動作に反する言葉を叫んでいた。 「まだ、退くわけにはいかんのだ」 戦闘が始まってから、そう長い時間は経っていない。 グラハムはこの一方通行との戦いで、回数にして三度の交差を越えてきた。 その間に、何度死線を潜ったか分らない。 しかしまだ足りない。スザクとの通信は電波状態が悪く、途切れたままだ。 北の集団と合流するには、まだ時間が足りないだろう。 これだけの時間では、あのか弱くも優しい少女の安全を確保するには足りない。 しばし、もうしばしの間。 もたせなければならないというのに、現状、矛を失った盾には時間稼ぎすらままならない。 エピオンの攻撃では何一つ出来ない。 先ほどまでは何とか保っていた、形式上の膠着状態すら、保てずしかし、グラハムは退けないのだ。 「認めん、認められんぞ私は!」 もう何度目かも分らない、絶対絶命。 紛れもない窮地。 されど同時に、彼の味方たる『矛』は、そう容易く折れるものではなく。 「おい、さっさと指示出してくれよ。オレも死にたくは無いんだけど」 「は――やはりな!」 落ち続けるガンダムエピオンの傍らで、同じく落下の一途を辿っていた高層ビルの、破片の上。 グラハムの確信通り、両儀式はそこにいた。 一方通行と同じように、シールドによって防がれ折れた一発目の砲弾の破片を足場にし、 灰色のビルの壁、コンクリートの上に、無傷で立っている。 あの一瞬、跳躍の瞬間、エピオンの手を離れた刹那の判断で、彼女は落下するビルの壁へと飛び移っていたのだ。 「私は信じていたぞ!」 「早くしろって」 「ああ、承知しているッ!」 とはいえ、このままでは地に叩きつけられる運命の少女へと、 エピオンの左手が伸び、拾い上げ、そして一方通行への道を作る。 「飛ぶぞ、両儀式ッ!!」 旋回するエピオンの腕。 装甲を蹴り飛ばし、ただ一人重力に逆らって、再び飛翔する少女。 その目前には、翳された一本の刀。 右手が柄を、左手が鞘を握り、キン、と鉄の音をたて、白銀の牙が顕となる。 今度こそ完全に黒鞘を破棄して、式は構えを取った。 鉄と空の路を駆け抜けながら、選択された型は――八双。 己の肩の上にて、左の手で柄を握り締める。 刃を水平に寝かせ、鋭利な切っ先を目前に向けた特殊型。 意味する技とは、殺法とは、殺傷力のみを追求する牙の刺突。 握るその古刀に、銘は無い。 煌く刃には曇り一つ無く、現世の空を今も、在りし日と変わらずに映している。 左手で放つ突き技を得意とし、無敵の剣とも称された一人の剣士が振るいし剣術。 かの日、それを実戦の元に行使した正義の凶刃。 決して紛うことの無い、名もなき名刀。鍛えし者の名を、鬼神丸国重といった。 「――――」 式は、空を見る。 金緑色の閃光が過ぎていった先に、澄み渡る掃天。 それに劣らぬ蒼き眼光をして今、降りてくる一方通行の姿を、確かに見据え。 大量の瓦礫と共に降りてくる声を、聞いた。 「ち、そォかよ。そンなに俺と闘りてェンなら、いっぺンだけサシで遊ンで――」 「――――」 踏み込みは、もう不要。 最低限の推進力は既に得ている。 じきに失われる前進だが、構わない。 いつか重力に囚われようとも、こちらから接近せずとも、斬るべき対象は自ら迫り来る。 そして今度は、決して逃がさない。 「オマエ……誰だ?」 「――」 質問に、少女は笑う。 『両儀式』は、とても女性らしい微笑で敵を迎えた。 「まァ、誰でもいいンだけどよ」 瞬間、爆ぜるような突き上げが、蒼天を穿つ。 両儀式は左腕を、弓の如くに絞りきった頂点から、解き放った。 腕、腰、足、回転する全身で狙い撃つ。 一点に込められた力は空間すら突き破るように、天へと伸ばされる。 もう同じ手は使わせない。 たとえ風圧の盾を展開されようとも、両儀式の切っ先は大気すら貫き通す。 空気の断層すら、殺してみせる。 今や中間の空を操ろうと、一方通行には迫る刃を止められない。 もうじき刃は空間を次々と突き刺し、刺し抜き、穿ち抉って、到達は数秒にも満たない間隙の後―― 「しゃァらァくせェェェェンだよッ!!」 相対する一方通行は、退避を選ばなかった。 掲げられる手。右腕が、更に上空へと伸ばされる。 空を掴むように、そこにあった塵芥を握る。 掃天に拡散した億万の瓦礫の破片、空気に充満した埃の粒、そのベクトルを、操った。 構成されたそれは、真昼に降り注ぐ流星だった。 上空より一方通行に触れた瓦礫の破片が、その全てが殺意の豪雨となりて炸裂する。 向かう先は当然、下方より迫り来る蒼き殺意、その刀身に収束する。 攻撃が避けられぬなら、その穂先を潰すまで―― 「「――――!!」」 瞬間、規格外の双方、同時に確信した。 突きの速度を、見切れず。 されど一方通行は構わず。 澄んだ刃にピシリと、僅かな亀裂が生まれ。 されど両儀式は構わず。 刃を伸ばす。 手を伸ばす。 そして、交錯する両者の影。 瞬く間もない、刹那の攻防の終わり。 上空に抜ける、両儀式の刀身が、砕けて散った。 下方に抜ける、一方通行の首に、薄く赤い筋が走った。 「――っ」 「……は」 苦む、両儀式。 哂う、一方通行。 決着、未だ訪れず。 両者、四度目の交差を終えていた。 刹那の先に、五度目の攻防を見据えながら。 □ □ □ □ /PSI-missing(4)/あるいは阿良々木暦の俯瞰風景『合流(悪)』 何も、見えない。 しばらくの間、僕の視界は完全にブラックアウトしていた。 痛みなんて、もう何度も経験しすぎていて、慣れてしまっていた。 だけど、見えないことは怖かった。 ええっと僕は……僕達はどうなったんだっけか。 イマイチ思い出せないけれど。 なにがどうなったのかも分らない。 どうなってもいい、そう思わないことも無かったけど。 これ以上失うものもない、そうかもしれないけど。 だけど、このまま僕が死ぬのも。 誰かが死ぬのも、不思議と、嫌なんだって、少しくらいは、未だに思えた。 「――――くぁ……」 奇声っぽい呻きを上げながら起き上がる。 身体は動く。ははは、じゃあ大丈夫だ。僕はまだ大丈夫だぞ。 それならきっと、他のみんなも大丈夫。そのはずだ。 そうじゃないと、困るんだ。 「…………あ」 景色が戻る。 平和な風景を期待していたわけでもないのに、覚悟していたはずなのに、呆気に取られる。 僕の目の前には抉られたアスファルトの路面と、薙ぎ倒されたビルと、炎と、瓦礫の山があった。 そして、目の前には、巨大なロボットが、横たわっていた。 あれは確か……ガンダム・エピオン……だっけか? 「なん……だ……これ」 なんでこんな所にあるんだよ。 式と一緒にあの交差点に残って、一方通行と戦っていたんじゃなかったのか? それがどうして……こんな近くに。 えっと、アレ、僕は、僕たちはいま、何やってたんだっけ? ショッピングセンター前にいて、それで枢木の腕が治って、それで隣のビルにロボットがあって、動き出して、砲撃……され……て。 てか、ああ、くそ、やっぱ駄目だ。もう、立てな…… 「立て」 い、と思っていたんだけど。 不思議と身体が軽くなった。 いや、肩を持ち上げられたのか、いつ間にか隣にいた枢木に。 枢木は、僕の身体を引きずるように支えながら、燃える風景の中、どこかへと歩いていく。 くそ……やっぱコイツ、けっこう身長高いな……。 なんて、ボケたことを思いながらも。 「天江は……天江……は……どうなったんだ……よ?」 酷い耳鳴りの中で、僕は何とかそれだけを聞いた。 生き延びているのか、どうなのか。 「生きている」 枢木は、簡潔に答えて、指差した。焼け焦げたコンクリートの道の先。 そこは、ショッピングセンターの第一駐車場。立体駐車場の入り口。 天江と……そしてインデックスが、立っている。 こっちにむかって何かを叫んでいる天江。 そして駆け寄ろうとしている天江を、煤けたシスター服のインデックスが、無表情のまま袖を掴んで止めている。 良かった。ふう、あの馬鹿、そんなとこにいないでさっさと逃げろよ。 僕なんかに構ってどうすんだっての。 「って、なんで、だ?」 「なに?」 「なんでだ、いったいどこに行こうとしているんだ、僕達は」 「分るだろう。あそこだ」 僕の問いに枢木の指が、やはり立体駐車場を指している。 「ここは危険だ。ひとまずあそこに逃げ込んで、やり過ごすしかない」 「逃げ込む? あの、駐車場に?」 いや、待てよ。 まて、まてまてそれは、駄目だ、駄目すぎる。 やり過ごすだって? そんな時間、もうないのに。 「馬鹿いうな。なんでそんなこと、ランスロットは……!?」 アレに乗ればすぐにルルーシュ達の所に着くんだろ。 お前の腕が治ったら、飛行ユニットが使用できてそれで、なんとかなるんだってそういって……。 なのに、枢木は頭を振ってただ一言、こう言った。 「何を言っている? ランスロットはいま……そうか、君は見ていないのか。兎に角、いまは無理だ。後で説明する」 「そん……な。危険なら尚のこと隠れてる暇なんてない。 早くルルーシュのところにいかなきゃ駄目なんだろう……!」 こいつはさっきから何を言ってるんだ? ガラガラと音をたてて、足場が崩れていく感覚がする。 「君こそ馬鹿を言わないでくれ、いやまて……君は、もしかしてまだこの状況が分っていないのか?」 そうして怪訝そうな顔をした枢木が、ソレを指した。 「もう一度、アレを見てみろ。そして考えろ」 壊滅したショッピングセンター周辺を。 いや違う、幾つかの建造物を下敷きにして横たわる、ガンダムエピオンを、だ。 あ……ああ、なるほど、それで理解力のない僕にも流石に伝わった。 エピオンがここにある。 つまり、グラハムさんがここにいる、つまり、 「はは……」 なるほど、そういうことかよ。 ああ、なんて、ことだ。 「分ったろう。奴が、すぐそこまで来ている」 枢木の言葉を聞くまでもない。 エピオンがここに在るということは、自然、それと闘っていた者もここにいる。 よく見れば、エピオンの、大空へ伸ばされた手の平の上、そこに両儀式が見えた。 そして彼女は下方を、地面を見下ろしていて、そこに、そこに――奴がいた。 忘れもしない。 白髪の、赤目の、狂気の、超能力者の、一方通行。 奴も、式を見ていた。 もう僕からは視線を切り、エピオンと繋がるヘッドセットを通して、連絡を図ろうとする枢木。 応えるように、エピオンの腕が動く。 それはつまり中にいるグラハムさんもまだ生きているっていことだ。 斜めになった腕を式が駆け下りる。 奴も、一方通行も動く。 なんて、化け物だ。 襲撃、待ち伏せときて、次は戦地誘導。 僕は、僕らはそれを、愕然と見送るしかなかった。 あってはならない事が起こってしまう。 戦場が、僕らに追いついてしまった。 揺れ続ける僕の視界では、間違いなく、絶望的な状況が再び動き出している。 天江衣の死まで、残り時間、約三十分。 いまだ、希望との合流は成らぬまま。 再び僕らの目の前で、殺し合いが始まっていた。 【 ACT1 『PSI-missing』-END- 】 時系列順で読む Back crosswise -white side- / ACT1 『PSI-missing』(1) Next crosswise -black side- / ACT1 『疼(うずき)』(一) 投下順で読む Back crosswise -white side- / ACT1 『PSI-missing』(1) Next crosswise -black side- / ACT1 『疼(うずき)』(一)
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第二回定時放送X動き出す現状X新たなる刺客(?)◆hqt46RawAo 少女の声が、再び島中に響きわたる。 それは誰かの死を告げる声であり。 同時に、聞く者全ての生を告げる声なのだ。 死した者には死した事実を、生き残った者には更なる死地を示すだろう。 だがこれはただの予兆にすぎない、多くの未来へつながる一つの分岐点でしかないのだ。 すべてはこれを聞く者達に懸かっている、彼等が何を見出し、そして何を選択するか。 それによって、未来は大きく変動する。 やがて―― 己の生を噛み締める者、誰かの死を想う者、気に留めず次の戦いへと赴く者。 誰であろうと分け隔てなく、殺人遊戯の第二幕は上がる。 幾多の屍を礎に、それぞれの物語が動き出す。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 『こんにちは、インデックスです。 予定していた時刻になりましたので、これより第二回定時放送を開始いたします。 戦闘中の方や会話中の方は一時中断とし、放送の内容に集中される事を推奨します。 ――――――――――。 ――――――――――。 ――――――――――。 では、よろしいでしょうか? 放送を続けます。 まずは例によりまして死者の発表から始めたいと思います。 この6時間の間における死者は―― 【真田幸村】 【キャスター】 【黒桐幹也】 【田井中律】 【八九寺真宵】 【利根川幸雄】 【刹那・F・セイエイ】 【本多忠勝】 【船井譲次】 【琴吹紬】 【アーニャ・アールストレイム】 【荒耶宗蓮】 【セイバー】 以上13名となりました。 これで、残る参加者は37名となります。 次に禁止エリアの発表です。 【C-2】【D-6】【G-6】 今回は以上三つのエリアとなりました。 十五時以降、進入した参加者の首輪は爆破されます。 また、同じく十五時以降はエリア【列:5~7】の範囲が雨天となります。 この雨は第四回定時放送時まで続く見込みです。 最後に、列車の運休に関しましては更なる問題が発生いたしましたので、運行復旧は第三回放送時まで延期となりました。 なお、線路上に禁止エリアがありますが、車両内部は禁止エリア外となっておりますので、皆様ご心配なく。 私からは以上です。 引き続き遠藤様から重要な発表がありますので、皆様お聞き逃しの無いようご注意ください。』 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 『遠藤だ、クククっ……重畳……! まさか13人も死ぬとは俺も思わなかったぞ……!実に嬉しいサプライズだ……! 諸君らの中にも『第二回放送時では死者が減る』と考えていた者が居ただろう?我々もそう考えていたさ……! だが…この現状はどうだ?たったの十二時間で、参加者全員の約半数が死んだ訳だ……! これが何を意味しているか、賢い者には分かるかな? 殺し合いに乗った人間が異常に多かった?何人も連続で殺せる強力な参加者が存在する? もしくはその両方か?いやいやそれ以外にも……?! まあ…結論は諸君らそれぞれに任せるとしよう。 さて前座はこれ位にして、そろそろ本題に入るとしようか。 重大発表とは即ち、ギャンブル船と円形闘技場についてだ……! まずギャンブル船について説明させてもらおう……! すでに知っている者もいるだろうが、優勝賞金のペリカはこの島の中でも得る事が出来る……! それを優勝するまでとって置く事も選択の内だが、得たペリカをギャンブル船で使用すれば、強力な武器を購入する事が出来るのだ……! ふふっ……驚いたかな?まあこれも既に知っている者が居たろうが……。 さて、そのギャンブル船だが、実は三時間後に二つの変化がおきる事となる……! 一つ目は購入景品の増加だ、今までは単純な武器や防具、またはお助けツール類しか購入出来なかった……! しかしこれからは、更に強力な武器……!強力な防具……!そしてなにより魔法の力を得る事が出来るようになる……! 魔法……!そう、魔法だ……! 力無き哀れな者達に力を授ける魔法……!ただの殺人鬼を魔人に変える魔法……! それら全てそこに在る……! 力を欲する全ての者達よ……!ギャンブル船に急げ……!今すぐ……! ……と言いたいところだが、ここで二つ目の変化が問題になる……! なんと、このギャンブル船は三時間後に移動を開始するのだ……! 行き先は【F-3】の船着場……! ここの近くに居る者は座して待つほうが良いとも言える……! そこでまた重要になってくるのが、円形闘技場についての説明だ……! ギャンブル船の出航に間に合わず、ペリカが使えなくて嘆く者も居るかもしれない……! だが、心配するな……! もしギャンブル船の出航開始に間に合わなくても、円形闘技場に行けば良い……! 三時間後に我々は円形闘技場へスタッフを配置し、新たなギャンブル場を設置する……! ペリカで購入できる景品も、ギャンブル船に比べて量も質も大きく劣るがそれなりに豊富だ……!魔法の力を得る事はできないがね……! 更に、円形闘技場で出来てギャンブル船ではできない事が一つある……! それは『キルポイントの交換』だ……! 何の事か聡い者ならもう分かってしまったか? 実は諸君らの首輪の中には、諸君らが今まで奪った命の数に応じてポイントが加算されている……! そしてそれらのポイントは、円形闘技場にてペリカに返金可能だ……! さあ、どうする諸君? 出航前のギャンブル船へと急ぐかな? それとも一旦は円形闘技場へ出向き、ペリカを増やしてからゆっくりと船着場に到着したギャンブル船へと向かうかな? 当然、どちらでもない行動もまた選択の内だがね。 だが諸君等にはこの変化を十全に活かし、さらに殺し合いを充実させて貰いたい……! 俺からの発表もこれで終わりだ……! では諸君ら……!第三回目の定時放送でまた会おう……!』 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 「ふう……」 明るい放送室の中、マイクを切り、一つ息をついて、 遠藤は座っていた椅子に、深くもたれ掛かる。 横を見やると隣に座るインデックスが、相変わらずの無表情で彼を見返していた。 顔色はいつも通りの無表情だったが、その視線に言いようの無い何かを感じた彼は、 「なにか……不満でもあるのか?」 知らず、そんな問いを投げかけていた。 その質問に、インデックスはやはりいつも通りの無機質な声で答える。 「十二時間で約半数。確かに順調かと、しかし…」 「順調すぎる……か?」 言葉の先を読んだ質問に、少女は肯定を返す。 「確かに死亡人数だけを見れば順調ですが、想定外の死が一つあります」 「荒耶宗蓮……か。確かに奴を失った事は少々痛い。これから更に殺し合いを盛り上げてもらう矢先に、死なれてしまったからな」 帝愛グループにとって、求められる物はより苛烈な死、そして凄惨な死である。 なぜならそれが彼らの“顧客”達のご要望なのだから。 それらを演出する為に、荒耶宗蓮のような主催の息が掛かった人間が重宝したのだ。 事実、彼か演出した琴吹紬によるシアン化カリウムを使った一連の惨劇は非常に受けがよかった。 「これ以降、ゲームの進行を円滑に進める為には荒耶宗蓮に代わる演出家が必要なのでは?」 それは主催の都合よく動き、ゲームを盛り上げてくれる存在。 殺し合いを助長し、また自らも果敢に殺しを遂行できる人物。 遠藤には心当たりがあった。 「分かっている、そのために俺から一つ提案があるんだ……!」 黙って先を促す少女に遠藤はそれを告げる。 「荒耶の代わりになるには、ちょうど良い奴が居るじゃないか……!喜んで我々に協力してくれそうな男が一人……!」 果たしてその男とは誰か? 少女は無表情ながらも少し考え、しかしすぐに見当をつけた。 「なるほど……アリー・アル・サーシェス。彼を使うつもりですか……?」 【第二回定時放送終了(ゲーム開始12時間経過)@残り37名】
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第一回放送候補 タイトル 作者 A インターミッション――《第一回定時放送》 ◆tu4bghlMIw