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ひたぎエンド(ビフォー) ◆0zvBiGoI0k #1 RETREAT(敗走)――――――――――――――――――――――――――――― 阿鼻叫喚ともいえる戦場跡―――元薬局で枢木スザクとグラハム・エーカーは黙々と作業を続けていた。 正式な名乗りも対話もなしに、ただ「生きる」という共通目的のもとにこうして負傷者の救出にあたっている。 その余裕もないほどに状況は過酷であり、急を要するものだったからだ。 今必要な認識は、自分たちは戦いに敗れた敗残兵ということ。その事実だけだ。 戦い―――あれを戦いといえたのだろうか。 怪我人や非戦闘員も多く含めていたとはいえ5人以上もの徒党で1人を囲み撃つ。 多勢に無勢。言葉にしてみれば惨い虐殺だろう。事実あれは虐殺に近いものだった。 ただし立場は、全くの逆だったが。 死を与える側はただの1人の悪鬼(バケモノ)で、 他は、それに狙われた被害者(イケニエ)でしかなかった。 まさに災害。 嵐や洪水はヒトが立ち向かっていいものではない。 あれは抗うものでなく、逃げるべきものであった。 それでも逃げる選択を取らなかったのは、そこに留まる命があったから。 蜘蛛の糸の様に絡めとられてしまった男の命。 それを救わんと手を伸ばした結果、全員が糸に捕らわれることになり、結果がこの惨状。 あの場に集っていた4つの命を瞬く間に奪い、消して行った。 残ったのは糸から解き放たれた男、スザクと、敵の直接的な殺意を受けなかったため辛くも命を拾ったグラハム。 そして今も眠る白井黒子と、阿良々木暦のみだ。 誰もが浅くない傷を負い、体力も枯渇しかけている。 特に黒子と阿良々木の2名は深い傷を負っており、早急な手当てが必要だった。 「不幸中の幸い、とは……このことをいうのだろうな」 「……そうですね」 ここで数少ない幸運だったのは、施設の自動販売機がギリギリ原型を留めて機能していたこと。 それと、ユーフェミアの持っていた荷物から大量のペリカが見つかったことだった。 その額は現金でおよそ3000万、カードに入っている分も含めて総額は6000万を超す。 破壊の痕を免れていた、スザクの治療魔術が行われていた控え室に置かれていたため戦闘の余波で失われることもなかった。 元はギャンブル船にて伊藤開司を殺して奪われたそれが、ここにきて彼らの命綱となるのは皮肉としか言いようがない。 それでも、正気を取り戻した彼女が最後に残したこの荷物は、 絶望にまみれたこの場においての、唯一の希望といってよかっただろう。 薬局というだけあって、品ぞろえは医療品が多かった。 包帯一巻き20m、2000ペリカを5つ。 痛み止めと、注射タイプの麻酔をひとつずつ。 その他適当に治療に使えるものを買い込み、計2万ペリカ。 「生きろよ……2人共……」 青ざめた顔で眠る2人にグラハムは希うように包帯を巻く。 肩口の損傷が酷い黒子に麻酔を打ち、ガーゼをあてがい包帯を巻く。 阿良々木の方は全身に及ぶものだった。体の至る個所に銃創が見られるが、奇跡的に致命傷になる傷は残されていなかった。 元吸血鬼という特異な体質のおかげだろうか。腹部などの比較的重い傷を優先的に処置した。 時間をかけずにごく簡易的な処置に留めたがこれでひとまずは急場を凌げるだろう。 散らばった荷物は集める暇がない。散乱しているデイパックだけを拾い集めた。 瓦礫の山になった薬局では細かいものは見つけられないし、そもそも殆どが大破しているからだ。 戦場ヶ原と阿良々木が放ったGNビームキャノンは砲身が喪失して完全に使用不能。 ファサリナの所持していたプラネイトディフェンサーも流れ弾で何個も損壊している。 探せば無事なのも見つかるかもしれないが、それで効果があるかは疑わしく、また探す時間も到底なかった。 目に付いた程度だけでも拾おうと思ったグラハムの目に付く輝きがあった。暗闇の中でもその存在を誇示する、鮮烈な赤を。 手に取ったそれはファサリナが所持していた槍だった。ゲイボルグという、英霊の象徴ともいえる神秘を宿した武具。 それをグラハムは知る由もないが、仲間の遺品というだけでも手に取る価値はあった。 柄を強く握り締め、短く深く、黙祷の意を示した。 この場に来ている筈の、C.C.の姿は終ぞ見つからなかった。 印象的な緑髪も、その肢体の一片も薬局には残されてはいなかった。 ひょっとすれば上手く逃げだせたのかと思えたが、赤いペンキをぶちまけたような変色した壁、 そこに落ちていた、血濡れた首輪に掘られた名前を見て、その期待は脆くも砕かれた。 (死んだ……?C.C.が?) 不死者であるC.C.の死。スザクには俄かに信じ切れるものではなかった。 だが、1人の生き残りを賭けた殺し合いという場にいること。 最初の一方通行との戦いの折に体の治りが遅いと漏らしていたこと。 そして、参加者の誰もが嵌められている首輪がここにあること。 ならば歴として残された証拠から、事実は事実として認めなければならない。 彼女は、死んだのだと。 彼女は、これでよかったのだろうか? 永劫ともいえる時を生き続けた不死者。 無意味で無駄で、人としての生の意味が薄れ切り、それでも生き続けるしかない日々。 その苦悩を、苦痛を、スザクは知らない、知る術もない。 そんな無味乾燥な存在の終焉を願っていた魔女も、最後はその願いを拒否した。 ゼロレクイエムの成就、ギアスを持つルルーシュの死にも彼女は異を挟まなかった。 心中はどうあれ望み通りに死を迎えられたここでの彼女と、望みを捨てて呪いの人生を生きていくことを良しとしたいつかの彼女。 それは、いったいどちらが幸せであったのだろうか? にゃあ、と鈴を鳴らしたような音が意識を現実に呼び覚ます。 見れば足元にアーサーがいる。見上げてスザクを見るその瞳は、いったい何を語るのか。 「ああ……行こう」 首輪の硬質な感触を握る手で確かめる。 不死者の死という不条理も、死者への悼みも後だ。 今は、生きる。それだけを見ていればいい。 血の海に倒れ伏す妙齢の美女。生々しい赤に濡れたその様は、誰に施されたのでもなく艶やかな死化粧を象っている。 その遺体―――ファサリナからグラハムは今、彼女の首に嵌められていた首輪を採集した。 元より、彼女の損傷は酷いものだった。 頭に、首に、胸に、内蔵に、全身をくまなく抉り取られた姿はあの時の爆発の凄まじさを如実に物語る。 意図していたかは分からないが、彼女が前にいたことでその後ろにいた少年達は吹き荒れた散弾の暴力を免れたのか。 スザクから、ファサリナの首を刈る提案を受けたグラハムは難色を示しながらもそれを受け入れた。 これほどの傷ではここから運び出すこともできない。衝撃を与えてしまえば五体がバラバラになってしまいそうだ。 そしてそのまま放置することも許されなかった。ファサリナの強さは今し方見せつけられたばかりだ。その首輪より得られるペリカも相当な筈。 一方通行のような危険人物にそれが渡ってしまえば手の付けようがなくなる。 それはそのまま、自分達の生き残る確率の減少だ。捨て置くわけにはいかない。 実に合理的で、まったく正しい選択なのは疑いようがない。 故にグラハムも否定しようがなく、葛藤を胸に秘めながらもその首を落とした。 首も繋がってるようでそうでない位に傷付いていたから、首を落とすのにも殆ど力は要らなかった。 まるで枝が花弁を散らすように、あっけなく首は千切れ落ちる。 細く、虚ろに見開かれた光の無い眼を閉ざしてやることが、彼に出来る精一杯の施しだった。 同様の理由でユーフェミア・リ・ブリタニアと戦場ヶ原ひたぎの遺体も運び出した。 こちらは損傷が最小限だったために首だけ落とすこともなかった。 それだけは阿良々木を案じるグラハムと、スザクにとっても有難いことだったろう。 体力の限界もあり、デイパックに詰め込む形になるしかないのもやむを得ない。 彼女らの首が無残に落とされ、更なる破壊を呼び起こす温床になるよりは耐えられる苦痛だ。 「……さて、それではどこへ向かう?」 デイパックよりジープを取りだし運転席に乗り込むグラハム。 ややガタついてるが走行には支障がない。 「できるだけ、ここから離れて下さい。徒歩では簡単に辿りつけない所まで」 後部座席に阿良々木、黒子を横たえさせ助手席にスザクが乗り込む。 眠る2人にとって乗り心地は劣悪だろうがそこは耐えてもらうしかない。 「それはどういう意味だね?」 「説明します」 訝しむグラハムにスザクは説明する。先ほど相対した敵、一方通行(アクセラレータ)の能力と、それにかせられた制限を。 あらゆる事象のベクトルを操作する万能にして不可侵の能力。 それ故に15分という短時間でしか能力を行使できず、再発動には1時間のインターバルを置く必要があること。 「……そうか。力が使えない今なら追われる心配もなく、距離を離せば次に会うまでの時間が稼げるというわけか」 その意図を悟ったグラハムの言葉にスザクも頷く。 一方通行が仮にグラハム達を見つけても制限が解けない限り追跡はできない。 今見つけられたら彼にとっては一巻の終わりだ。絶対に補足されないよう立ち回るだろう。 体力が尽きかけてるスザクやグラハムでは見つけ切れない住宅街に身を潜めてる筈だ。 時間が過ぎても能力で追うわけにはいかない。肝心の戦闘時に時間が切れては元も子もないからだ。 よってこの与えられた1時間で態勢を立て直し、残りの逃げおおせた時間で迎え撃つ準備をしなければならない。 他の殺し合いに乗った者同士での潰し合い、というのは淡い期待だろう。4回目の放送での死亡者の数がそれを裏付けている。 明らかに少ない数。積極的に殺害に踏み切る参加者がかなり少なくなったことを意味する。 そしてここまで生き残ったからには、誰もが一方通行に並ぶ実力者だということ。 そんな者が偶然出会い、戦い、共倒れになることを狙うなどあまりにも見通しが甘い。 あの敵は、いつかまた必ず道を阻みに来る相手だ。 その時の為の対策。装備、戦術、人材を揃えて、打ち倒さなければならない。 そうでなければ、散った命がなにひとつ報われることがない。 「了解した。ならば早急に船に戻るのが先決だが、それでは後ろの彼らの体力が持たないかも知れない。 どこかで一端休憩を挟むべきだが……」 「船……ギャンブル船のことですか?」 「ああ済まない、伝え損ねていたな」 グラハムは簡潔にギャンブル船について説明した。 様々なギャンブルでペリカを稼ぎ、商品を購入できること、そこにはKMFを始めとした機動兵器も売りに出されていること。 戦いに向かない者をそこに待機させていることを。 情報交換も兼ねてやはりどこかで息を整えることが必要そうだ 思い至るのは【憩いの館】だが、そこは船とは真逆の位置だ。 それだけではなくそこまでの道を挟む【D-3】はじきに禁止エリアになってしまう。 行きはともかく帰りには多大なロスだ。 だが結局グラハムが憩いの館へハンドルを向けることはなかった。 理由は、まずその異常に気付いたスザクが発端だった。 「……待って下さい。あの方向、煙が出ていませんか」 スザクが指差した方角、北の山岳地帯からうっすらと黒い線が空に伸びている。 深夜を越えたのもありあまり目立たなかったが確かに黒煙が上がっていた。 森が燃えてるにしては限定的過ぎる。延焼もしてないようだ。 そう、森林と切り離された場所にあるものが燃えたら、ああいう風に煙が立つのでは――― 「っもしや、あそこは……っ!」 誤りがなければ、煙が昇る地点と、デバイスの地図上にある憩いの館の地点とは方角が一致する。 戦闘の余波か、意図的に放火したのか。 どちらにせよ安息を得られる場所でないことは容易に想定できた。 「北行きは断念だな……」 「……僕も賛成です」 ◇ 「……誰もいないか。当然だな」 半ば諦めていたとはいえ、それでも表情を曇らせざるを得ない。 ここは【E-3】の象の像。かつてゼクス・マーキスが参加者を呼び集める集合場所に指定した位置だ。 無論、そこには人の姿は一切見えない。集合時間は3回放送の前後だ。 既に4回目の放送を越えた後、6時間以上留まり続ける道理もなかろう。 「ですが、ここに誰かが来たのは確かでしょう」 周囲を見渡していたスザクの視線が指す先は、まぎれもなく人の残した痕跡。 巨大な像の台座の一部に空いた穴。明らかに人為的に崩された隠し扉。 扉の先は一寸先の闇。洞窟特有の風を切る音が耳に響く。 「気にはなるが……今はその暇もないな」 怪我人を背負った疲労困憊の状態では探索もままならない。 闘技場付近で見つけた地下施設といい、調べる対象が多いのは幸運であり、不運でもある。 「販売機は剣や槍が多いようですね。ナイトメアは……ヴィンセント、か」 販売機の品を確認するスザク。「New!」の文字に続く『RPI-212ヴィンセント』【2億3000万】の表記に目が留まる。 ランスロットの量産型として開発された機体だ、そのポテンシャルは高い。 けれども片腕がない今の自分では宝の持ち腐れだ。そもそもペリカもまったく足りない。 『腕の再生までは当サービスでは不可能です。別途のサービスにて対処ください』 目覚めたばかりの途切れ途切れの意識の中、誰かがそう言っていた、気がする。 それは、別の施設でなら腕を繋げるサービスがあるということか? 半信半疑だが、それができるのなら戦力の大きな補強になる。 ここのサービスは――― 【施設サービス:換金律2倍(この換金機で首輪を換金した場合、金額は2倍になる)】 ―――そう都合良くはいかないか。 内心でそう独りごちる。 背後を振り返ると、内容を見たグラハムの渋い表情が見える。 「グラハムさん、でしたか?この施設サービス、使わない手はないと思いますが」 グラハムの表情の意味を察しながらもあえてスザクはそこを突く。 人物像はおろか名前すらまだ正確に聞いてないが、これまでの短いやりとりからこの男が優れた軍人であることは確かなようだ。 この場で行うその行動の意味と、その有用性にも当然気付いてるはず。 「………………………………」 デイパックよりファサリナの首輪を取りだし見つめるグラハム。 ギャンブル船でヒイロ・ユイと共に出会った妖しい雰囲気を身に纏う女性。 主催を打倒するという意志の元で同調し、短い時を同行した。 上条当麻を橋に落としたことについて言及することこそあれど、嫌悪するまでの理由にはならない。 善し悪しはどうあれ、これが全員のためになると彼女なりに考え起こした行動だ。 上条当麻は無事だろうか。脚を傷付けられ川に落ちたのだ。最悪溺れ死んでいる可能性もある。 だがグラハムは彼を救出するという選択を取れなかった。より言うなら取る余地がなかった。 満身創痍のグラハム達ではこの暗闇の中、川に流された少年一人を見つけ出すなど至難の極みだ。 あの場を全力で退避する以外に自分達が取れる行動はなかった。それほどに余裕がなかった。 その間に襲撃者に会えば自分達は間違いなく全滅する。それはきっと過ちではない。 それでも、グラハム・エーカーが上条当麻を捨てたという事実は、決して覆りはしない。 そして今も、自分達を守るべく戦った女性(ひと)の首を刈り、それを捨てようとしている。 直接的な危機に見舞われていなかった伊藤開司の時とは何もかもが違う。 この行為の如何次第で自分達の生死までもが変わってくるかもしれないのだ。 その葛藤、苦悩もまた帝愛の望み通りなのか。 体中から滲み出んばかりに嫌悪と憤慨がこみ上げてくる。 だがそれは主催、帝愛グループへではなく、グラハム自身へと向けられたものだ。 あの戦いで一番役に立てなかったのはまぎれもなく自分だ。 これ程に戦いで無力感を感じたことなど生涯においてない。ガンダムとの戦いですら。 心の何処かで、侮りがあったのかもしれない。 安寧な時間であったとは決して言えないが、24時間の間一度として戦いというものに直面した機会がなかった。 この島で繰り広げられている「殺し合い」がこれ程に激しく、残酷なものであると思いもしなかったことを、果たして否定できるのか。 いったい幾つの悲劇があったのだろう。どれだけの血と、涙と、慟哭が吐き出されたのだろう。 その全てに責を感じる必要はないかもしれない。 所詮自分はフラッグファイターであり、一介の軍人であり、一人の人間だ。 全ては救えず、誰もが幸福になれる結末など望めない。 どうしようもないと、仕方がないことなのだと切り捨ててしまってもよいのかもしれない。 だが散った命は、救われなかった人々の死は、そんな言葉では済まされない。 彼らの、彼女らの人生はここで終えてしまったのだ。 誰もこんな所で、こんな死に方をしていいはずがなかったのに。 ささやかでも誇れる、輝かしい日々が待っていたはずなのに。 意志は元より、純粋な体技が逸脱したファサリナ。 特殊な能力を持ちながらもあくまで一般の学生である白井黒子と阿良々木暦。 非力でありながら想い人の為奮起した戦場ヶ原ひたぎ、ユーフェミア・リ・ブリタニア。 仔細は知らぬが、おそらくは誰かを守るため身を投げ出したC.C.。 先ほどまで半死人でありながら、強靭なまでの「生きる」力を見せ生き延びた枢木スザク。 あそこで散った者も皆、何かの強い思いをその胸に抱いていた。 大切な人の死に悲しむみながらも、黒子は生を続け人を守る道を選んでいる。 阿良々木と戦場ヶ原。愛する者の為に戦うその姿は人の強さを、未来の可能性を感じさせた。 ファサリナには夢があると言った。命を懸けるに値する使命なのだと。 ユーフェミアは己の罪を認めそれに向きあうために、そして掛け替えのない人のために命を尽くした。 「生きる」。単純だが誰もが持つ純粋な希望はスザクをあそこまで燃え上がらせた。 自分には、なにがあっただろう。 軍人に戦う意味というものを問うのはナンセンスだという事は理解している。 だがこうしてこの目で戦う意思を見せつけられると、思う所はある。 己の生きる証。ガンダムの打倒。戦友を、矜持を奪っていった、愛と憎しみが相克する特異点。 個人的な妄執であるのは百も承知だ。承知の上で、阿修羅の道へと足を踏み入れた。 世界など、どうでもいいと言い切る程に。 彼らとの違いは、それなのか。 未来のない一つの目的にのみ固執した男と、未来を目指す人々との。 それもやはり承知していた。それが愚かであると弁えていたはずだ。 だから、自分は非力なのか? 故に、己は誰も守れないのか? 「……だとしても、それが私の歩みを止める理由にはならない」 ガコン。 意を決するように、換金機へ手を差し出す。 ゴミ箱にリサイクル品を出したような軽快な音。これが人の生の証と思うには余りにも軽薄過ぎた。 途端、下からバサバサと紙の束が落ちてくる音が聞こえる。 元の金額が6500万。それが倍加し1億3000万ペリカの表示が出る。 それは果たして彼女の価値に足り得る値なのか。 ―――問うまでもない。 「――――――行こう。この辺りは工場地帯だ。隠れる場所には事欠かない」 非力も、恥も、屈辱も甘んじて受けよう。罪も罰も、受け入れる。 最も愚かな行為は歩みを止めること。その時グラハム・エーカーは阿修羅から餓鬼道へと身を堕とす。 戦えぬ弱き人々を守る。それが軍人としての責務であり、信念。 ここでグラハムが動く理由にはそれだけで十分だ。 そこに偽りはないと信じ、男は歩みを続けていく。 その象徴ともいえる小さな友を思い浮かべながら。 #2 REST(一息)――――――――――――――――――――――――――――――― 工業地帯、つまり工場というのは脂臭く、衛生環境に欠けるイメージがあるがそれは誤りだ。 今となってはほぼ全てが機械任せであるが、それでも機械である以上人が制御する管理室というものがある。 それら作業員たちの休憩部屋も当然存在する。機械にだって清潔な整備が欠かせない。 滅菌作業が必須な部屋も多くあるだろう。食料品の生産工場であれば尚更だ。 それらが売買されるにあたって最も重要なのは商品の安全性だ。 不純物や細菌の混入を防ぐためには徹底的な、病的ともいえる程に神経質になる。 グラハム達が訪れた工場も、そういう類に含まれるものだった。 食品工場ではないようだが、某かの精密品を扱う場所であったらしい。 壁は白を基調とした色で揃えられ。一定の大きさの機械が来訪者を迎えるように整頓されている。 人のいた形跡は皆無であり、やや大きめの無人のスタッフルームへと足を運ぶ。 積荷を降ろし、隣の仮眠室と思しき部屋に怪我人を寝かせ、デイパックに詰め込んでいた遺体も静かに横たえる。 薬局での戦いからようやく訪れた休息にスザクも脱力して椅子に腰を下ろす。 「――――――ふう」 深く息を吐いた途端、残りの腕と足に一気に重みが乗せられた。 四肢だけではない。肩、腰、胸、首―――全身の間接が悲鳴を上げ軋み出す。 走ってもいないのに、息が切れる。汗が噴き出す 当然といえば当然の代償。正しい流れなら既に冷たい死体になっていた体だ。 戦いの間はギアスで捻じ伏せてきたがそこから先はスザク個人の意思だけで保ってきた。 一度その意思を放棄した瞬間に、思い出したように体の負担が蘇ったのだ。 あまりに重く、眠ることすら苦痛になりそうだ。 「君も休んでいるといい。あれだけの重傷だ。本調子になるまで治させてはもらってないだろう?」 ガラスの破片で出来た全身の刺し傷に包帯を巻き終えシャツを着直したグラハムが前に座る。 正確には傷自体は完治していても体がそれに馴染み切ってないだけだが、そう大差はない。 「遅くなったが自己紹介だけでもしておこう。私はグラハム・エーカー、見ての通り軍人だ」 「……ナイトオブゼロ、枢木スザクです」 「ナイトオブ……何かの称号かね?」 「そう受け取ってもらって構いません」 「ふむ、まあそこは後々に置いておくとしよう。今は互いの名乗りだけで十分だ。君にも今多く語るのは苦痛だろう」 デイパックから大量のミネラルウォーターのボトルを取りだしながら言葉を続ける。 苦痛というのは肉体のことを言ったのか。それとも、心のことか。 キャップをひねり中の水が外気に晒される。そのまま飲むかと思いきや、それをスザクへと渡した。 一礼をしながら受け取り口へと運ぶ。一口だけと思ったが、喉に流れる水分を感じてから二口三口とのどを鳴らす。 「…っ…っ…っ…っ…っ…っ……はぁっ」 息をつきボトルから口を離したときには半分以上も中身が減っている。 そこでようやく自分が乾いていたことに改めて気付いた。 心底喉が渇いた時はただの水でも至高の清水に思えると言うが、どうやら本当らしい。 「食糧も揃えている。気は進まないかもしれないが蓄えられるうちに蓄えた方がいい。 彼らの看病は私に任せて、今は英気を養ってくれ」 サンドイッチやピザの箱を机に並べ席を立つグラハム。 阿良々木達が眠っている部屋を開け、部屋にはスザク一人となった。 「………………」 おもむろにサンドイッチを手に取り片手で器用に封を開ける。中身はレタスに包まれたトマトサンド。 口に運び、租借し、飲み込む―――気が起きないので水で無理やり流し込む。 食指が湧かない。体に必要なのは分かるがそれを受け付けない。疲労した状態ではままあることだ。 せき込みかけながらも1人分を完食し終え、椅子に体重を投げ出す。 部屋の2人が目を覚ますまでこのまま弛緩していようとも思う中で。 一つの黒い影を見た。 「…………アーサー」 呼び声に振り向くことなく一点を見つめる黒猫。白で統一された部屋の中で目立つ黒い毛並みの背中をこちらに見せている。 視線の先には、毛布で隠された大きな膨らみ。 僅かに、赤く滲んでいるのが見える。 油の切れたゼンマイ仕掛けのように鈍い脚を動かし傍まで腰を下ろし片腕でアーサーを抱え上げる。 ……中身は、見ない。「それ」を見ても感じるものは先と同じだ。 告げるのはあの一言だけで十分だった。ものいわぬ骸に何を語っても、酷く空しいだけだ。 そのまま席を戻ろうとする途中に、指先に鋭い痛みが走った。見れば、いつものようにアーサーが指を噛んでいる。 その感覚も、今ではどこか懐かしい。 椅子の近くで下ろし、適当な皿に水を注ぎパンを添える。 と、何が不満だったのか机に昇ったアーサーはそこに置いてあった複数のデイパックのうちひとつを弄っている。 そこに入ってる何かを出そうとするように。 スザクもそれが気になり荷を開く。そこから出てきたのは、 にゃあ。 にゃあ。 …にゃあ。 猫だった。三毛と子猫の。 「……猫?」 こんなにいたのか。主催は何を思って猫を支給したというのか。 自分らにとってのアーサーのように、この猫も参加者が飼っているのものだろうか。 デイパックの中は窮屈だったのか体を大きく伸ばす2匹の猫。アーサーもそれに釣られて体を震わせる。 見た所仲がいいらしい。外に出してやりたかったのかとアーサーの心中を考えてみる。 1匹が3匹に増えたことで水とパンを少し増量する。いずれも地面に降り、近づき鼻をひくつかせている。 やがて揃って水を呑み始めた3匹を見て、今度こそスザクは四肢を投げ出した。 時系列順で読む Back 理想の果て(後編) Next ひたぎエンド(アナザー) 投下順で読む Back おわりのはじまりⅤ「最後の挨拶」 Next ひたぎエンド(アナザー) 280 疾走する超能力者のパラベラムⅣ 白井黒子 282 ひたぎエンド(アナザー) 280 疾走する超能力者のパラベラムⅣ 阿良々木暦 282 ひたぎエンド(アナザー) 280 疾走する超能力者のパラベラムⅣ グラハム・エーカー 282 ひたぎエンド(アナザー) 280 疾走する超能力者のパラベラムⅣ 枢木スザク 282 ひたぎエンド(アナザー)
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参加者以外の登場人物一覧 【ゲームの主催側の人物】 リボンズ・アルマーク@機動戦士ガンダム00 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night インデックス@とある魔術の禁書目録 遠藤勇次@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor ディートハルト・リート@コードギアス 反逆のルルーシュR2 忍野メメ@化物語 原村和@咲-Saki- 言峰綺礼@Fate/stay night 【人質】 宮永咲@咲-Saki- 【見せしめ】 龍門渕透華@咲-Saki-
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船旅 ◆aCs8nMeMRg 東横桃子、平沢憂、そしてルルーシュの三人は揚陸艇に乗り込んだ後、それぞれ別々の行動を取った。 桃子はルルーシュの用意していた湯やシャンプー、ボディソープを使って身体を流し、 憂はルルーシュが作った朝食を食べ、 そしてルルーシュはおもし蟹から力を奪った後、そのまま格納庫に残り、もう一度船内を調べ直していた。 ルルーシュはここまで、身体を流すための湯を用意したり、爆弾や盗聴器作り、さらには朝食作りに情報交換など、 色々な事に追われていて、この格納庫を含めればかなり広い揚陸艇の船内を隅々まで確認したわけではなかった。 桃子と憂が動けない今、迂闊に船を動かすのは得策ではないし、船内を探索するにはいいタイミングだった。 「やはり、あったか」 そうして格納庫の中を確認していくと、黒の騎士団で使っていた耳に引っ掛けるタイプの通信機をいくつか見つけることが出来た。 試しにスイッチをオンオフしたり、マイクを叩いたりしてみる。 どうやら問題無く使えそうだ。 薬局に向かった後に憂とはぐれてしまったことから、次は通信機でも作ろうかと考えていたルルーシュだったが、自分で作る必要は無くなった。 (……さて、そろそろだろう) そんな収穫もあり、時間もある程度経過したところでブリッジに戻ろうとしたルルーシュは、 その途中、ブリッジの少し手前で立ちつくしている桃子の姿を見つけた。 「桃子」 「わっ!……ル、ルルさん?」 ルルーシュは普通に、アッシュフォード学園の学生であった頃の口調で呼びかけただけだったが、桃子は声をあげて驚いた。 ぼんやりしていたところに声をかけられたからか、あるいはこうして呼びかけられること自体に慣れていないせいかもしれない。 「もう体は流し終えたようだな」 「はい」 「それで、どうした?入らないのか?」 「いや、中にはゴスロリさんがいるっすから……」 「憂か?…同世代の女の子同士、仲良くすればいいだろう」 「むっ、無理っす!」 事も無げに言ったルルーシュの言葉を、桃子は全力で否定した。 「さっきのゴスロリさんとルルさんの会話、マトモじゃなかったっすよ!!一体何なんっすか、あの子!? それにルルさんも、なんであんなに平然とゴスロリさんの相手が出来たんっすか!?」 確かに憂の言動は、平和に暮らしてきた者にとって刺激が強すぎたかもしれない。 まして、ルルーシュが止めなければ桃子は出会った瞬間、憂に殺されていたところだったのだ。 「まあ待て…そうだな、まず憂の状態についてだが」 信じられないといった様子で矢継ぎ早に訊いてくる桃子を制しながら、ルルーシュは順番に質問に答えることにした。 「憂は、自分自身の変化に少々興奮しているんだろう」 「変化?興奮?」 どういうことっすか?と言うように首をかしげる桃子に、ルルーシュは説明を続ける。 「俺の口からお前に語っていい事じゃないと思うから詳細は省くが、憂は今までずっと思い悩んでいた。 おそらく、この島に来てからずっと、だ。 その思いを、あの蟹に出会ったことで断ち切った」 「あの蟹さんに出会って?」 「ああ、桃子はあの蟹がどういう存在なのか理解出来たか?」 「何となくっすけど、人の思いと重みを持って行っちゃう…神様みたいなものっすか?」 「そうだな、あれはそういった力、人の思いを引き受け、断ち切る力を持った蟹だ」 「はあ」 「まあ、あの蟹については深く考えずに、そういうものだと思っておけばいいだろう。 それに、今はその力も失われている。問題は無い」 「失われているって、分かるんっすか?」 「ああ、後で見てみるといい。色や雰囲気が変わっているぞ」 ルルーシュはそこで蟹の話題をいったん打ち切り、憂の話に戻った。 「さて、少し話が逸れたが、 要するに憂は、この島に来てから心の中を占めていた思いが唐突に消えたことで急に心が楽になり、 それまでの反動で興奮している…ハイになっていると表現すれば分かりやすいか?」 「あー、そうっすね。」 「興奮が治まってくれば、桃子の言うマトモじゃない状態も改善するだろう。 食事を取っている間に、多少は落ち着いたんじゃないか?」 「だと、良いっすけど」 そうして話が一段落したところでルルーシュはブリッジへ向かって歩き出し、桃子は慌ててそれを止めた。 「ストップっす、ルルさん!出来ればもう一つの質問にも答えてほしいっす」 「なぜ俺が平然と憂の相手が出来たか、だったか?」 「はい」 「俺は、今まで色々な奴を相手に色々なやり取りをしてきた。時には命がけで、な。それだけのことだ」 「……い、命がけっすか。ルルさん、元の世界では何をしてたんっすか?」 命がけという言葉に若干ビビりながらも、桃子は疑問を口にする。 「それは、必要があればその内教えてやる。 さて、あんまり憂を待たせても悪い。ブリッジに戻るぞ」 「あ……」 ルルーシュは桃子の疑問には答えず、今度こそブリッジへと歩きだし、桃子は渋々後について行った。 「あ、ルルーシュさん」 「憂、食事は終わったか?」 「はい、ごちそうさまでした。とても美味しかったです」 「そうか、それは良かった」 ブリッジの中で待っていた憂と、ブリッジへ入ったルルーシュはごく当たり前のあいさつ、当たり前の会話を交わした。 (う~、誰々をブチ殺すとか言ってた人となんでこんなに平然と会話できるんっすか? 私には真似できないっす) そんな事を考える桃子を余所に、ルルーシュと憂はしばらく、料理は得意だのといった他愛の無い会話を交わしていた。 「それで、これからの事なんだが、しばらく俺達三人は行動を共にする。それはいいな?」 「はい、良いですけど…三人って?」 「ああ、桃子!」 どうやら、憂には桃子が見えていないようだ。 ルルーシュは後ろを振り向くと、出入り口のドアに寄り掛かっていた桃子の名を呼んだ。 「は、はいっす」 「ああ、あなたは、さっきの」 「東横桃子っす」 名前を呼ばれ、仕方なく姿を現した桃子は憂に軽く会釈すると、ルルーシュの側に寄って行った。 「ルルさん、やっぱり私も話に加わらないと駄目っすか?」 「当り前だろう」 「はぁ。…でも、今ルルさんには私が見えてたみたいっすね。ゴスロリさんには見えてなかったのに」 「ああ、少し慣れてきたかな」 「あのー」 そんなことを話している二人に対して、憂が少し不満げに声をかけた。 「それで、これからどうするんですか?」 「ああ、その前に憂、それに桃子も、これを持っておけ」 ルルーシュはデイバッグの中から先ほどの収穫、通信機を取り出して二人に手渡した。 「これは?」 「何っすか?」 「通信機だ。もしまたはぐれたら、これを使って連絡を取り合う。 通信範囲は、この島くらいなら端から端までカバーできるはずだ」 「あ、はい、わかりました」 「了解っす」 そして、ルルーシュは簡単に通信機の使い方をレクチャーした後、今後の話に移った。 「さて、今後の行動についてだが、まずは二人の意見も聞いておこう。何かあるか?」 「いえ、私はルルさんにお任せするっす」 桃子は即答だった。 「そうか、憂はどうだ?」 視線を向けられた憂は、一呼吸間をおいてからそれに答えた。 「私は、早く阿良々木さんをブチ殺してギターを取り返したいです」 「…………!」 「フム、そうだったな。詳しく話してみろ」 そんな桃子の言葉に絶句する桃子と、当然のように応えるルルーシュ。 その反応は対照的だった。 (ダメだ。やっぱりこの二人にはついていけないっす) そうして、憂がルルーシュに阿良々木暦と出会ったときの事を話し終えるまで、 桃子は二人の会話を聞き流す事にした。 「阿良々木暦と戦ったのが二時頃、場所はC-6か。」 「はい」 そんな桃子にはお構いなしに、憂とルルーシュの会話は進んでいく。 「五時間以上経っているな。流石にこれでは行き先を絞り込むことはできない。 五時間あればこの島のどこへだって行ける」 「けど、お姉ちゃんを見つけたら戻ってくるって書置きが残ってましたし、 一度、様子を見に戻ってみたいなって思います」 「なるほど、分かった。しかし、その書置きだと憂の姉が見つかるまでは戻らないとも取れるな」 「あ、確かにそうですね」 「可能性の問題だが、その阿良々木という奴が憂の姉…唯といったか? 唯を見つけてその場所に戻ってくるとなると、今度は五時間では短い。そう急いで戻ることも無いだろう」 阿良々木暦と平沢唯が、少なくとも一時間ほど前の時点では出会っていない事を知っているルルーシュだったが、 流石にその事は口にせず、可能性は低いと言うだけに留めた。 「う~ん」 「そんな顔をするな、行かないとは言っていない。近くまで行ったら立ち寄ってみよう」 「んーはい、分かりました。それでいいです。 それで、ルルーシュさんはこれからどうしようと思っているんですか?」 憂は完全には納得できていないようだが、とりあえずルルーシュの考えも聞こうと一旦引いた。 「そうだな、とにかくこの地図にある施設を調査しようと思っている。 憂は見ただろうが、この船も元はF-6の展示場に隠されていたものだ」 「はい」 「他の施設にも、同様に何かが隠されている可能性は高い。 それに、地図にこうやって地図に記載されているんだ。 他の参加者、例えば唯や阿良々木もこういった施設を目指すんじゃないか?」 「あ、そうですね」 唯と阿良々木の名前が出ると、憂もなるほどと頷いた。 「それで、どこから調べるんですか?施設といってもいっぱいありますよ?」 「ああ、施設の重要度を予測して優先順位を付けることは出来るが、それは所詮予測でしかない。 実際のところ、手近な場所から順番に潰して行くしかないだろう」 「そうですか、近いところというと展示場、は、ルルーシュさんが調べたんでしたよね」 「そうだが、少し確かめたい事ができた。まずは展示場に向かう」 「え、何ですか?確かめたい事って」 「世界について、だな」 「世界?」 「桃子」 「は、はい」 今まで、全く会話に参加していなかった桃子が突然名前を呼ばれ、肩をビクッとさせた。 「あ、居たんですか」 憂には、また桃子が見えていなかったようだ 「お前は名前を呼ぶたびに驚いているな。 まあいい、さっきお前と話した世界の事について、憂に教えてやってくれ」 「わ、私がっすか?」 「俺はこれから船を動かす。そっちは任せたぞ」 そう言うと、ルルーシュは船を操作するために席を立ち、桃子と憂の二人に背を向けた。 船を動かすといっても、同じブリッジ内で操作するのだから会話は可能なはずだが、説明は桃子に任せたという態度だ。 「何ですか?世界についてって」 「えっと、どうもルルさんと私とでは住んでる世界が違うみたいなんっすよ」 仕方なく、説明を始める桃子だったが。 「確かに、ルルーシュさんって独特の雰囲気ですよね。なんか、私達とは住む世界が違うっていうか」 「あ、いや、そう言う事じゃなくて…いや、それも言えてるっすけど、え~と、ルルさ~ん」 結局、桃子はひとりではうまく伝えることが出来ず、何度かルルーシュにフォローしてもらいながら、 どうにか憂に“別の世界”の事を教えたのだった。 「よし着いた。下りるぞ、二人とも」 「はい」 「了解っす」 そうこうしている内に、船は展示場の近くに接岸し、ルルーシュは二人を促しながら船を下り、 憂と桃子もそれに続いた。 「で、その蟹さんも連れて行くんっすか?」 桃子と憂が少し遅れて船を下りると、そこにはあのおもし蟹を連れたルルーシュが立っていた。 「ああ、この手綱で操れるのは分かったが、どの程度動けるのか知りたいからな。 手持ちのスペックは把握しておくべきだろう。…憂」 「はい」 「お前が乗れ。元々、こいつに手綱を付けたのは憂だからな」 「あ、はい。分かりました」 そうして、三人と一匹(?)は展示場へ向かったのだが、その途中もルルーシュは憂との会話を桃子に任せ、自分は黙々と前を歩いて行った。 「へぇ、東横さんって大人っぽく見えるけど、私と同い年だったんだね。 桃子ちゃんって呼んでいい?」 「モモでも桃子でも、お好きなように呼ぶといいっす」 「うん、桃子ちゃん」 おもし蟹に立ち乗りしている憂の顔は、地面から約2メートルの位置にある。 桃子はそんな上から降ってくる声に答えながら、横の蟹を見て思った。 (うぅ、消えていたいっす) 展示場の中には、様々な宇宙に関わる物の模型が解説付きで展示されていた。 アポロやH-Ⅱといったロケットや人工衛星、スペースシャトルに宇宙ステーション、 更には、軌道エレベーターやスペースコロニーといった物まである。 少し毛色の違った物では、ヨロイと呼ばれる機動兵器を衛星軌道上の倉庫に打ち上げるため奮闘した者達の事例が紹介されていたりもした。 そんな展示を見ながら、ルルーシュが二人に向かって口を開いた。 「これらはどれも、俺の世界には無かった物だ。お前たちの世界ではどうだ?どれか知っている物はあるか」 ロケットとは、言わば高度に計算された火薬の塊だ。 サクラダイトを利用した超電導技術が進歩し、ナイトメアフレームのような人型機動兵器が存在する一方で、 火薬類に関してはあまり発達していないルルーシュの世界において、ここにあるようなロケットは存在していなかった。 憂や桃子と出会う前にここを訪れた時、ルルーシュはこれらの展示にあるような物が実現しているとはとても思えなかったが、 異なる世界が存在するの可能性を知ったことで、もしやと思ったのだ。 「はい、アポロとかH-Ⅱとかは聞いたことあります」 ルルーシュの問いに、まず答えたのは憂だった。 「こっちの、人工衛星や宇宙ステーション、それにスペースシャトルもニュースとかで見たことあります。桃子ちゃんは?」 「私も同じっす」 「そうか、もしかしたら憂と桃子は同じ世界の出身なのかも知れないな。 こっちの軌道エレベーターやスペースコロニーはどうだ?」 「そっちは知らないです。桃子ちゃんは?」 「私も知らないっす。それに、西暦2297年なんて、もし同じ世界でもずーっと未来の話っす」 「だよね。こっちのアフターコロニーっていう年号は聞いた事も無いし。そっちのヨロイとかも見たこと無いです」 二人は、展示の説明文にあった年号などを見て、口々に言った。 「なるほどな、そういえば今は何年だ?自分の感覚でいい」 「200*年っす」 「200*年です」 桃子と憂の声がほぼハモった。 「年号は、西暦か?」 「「はい」」 続けて聞いたルルーシュに、今度は二人の声が完全にハモった。 「えっと、ルルさんは自分の感覚だと何年なんっすか?」 少しの間、恥ずかしそうに憂と顔を見合わせていた桃子が照れ隠しのようにルルーシュに尋ねた。 「俺の感覚だと、今は皇歴2018年だな」 「皇歴?」 「2018年、ですか」 「ああ、聞いたことは…無いようだな。俺の世界ではよく使われている年号なんだが」 「嘘…じゃないですよね。ルルーシュさんって、本当に別の世界の人なんですね」 「ああ、これでハッキリした。主催者は別世界への移動、または別世界からの召喚が可能。 そしてこちらは未確認だが、タイムスリップもできるのかもしれない」 その後、三人はトイレなどの休憩のついでに、少々雑談をした。 「そういえば、ルルーシュさんって外国の人ですよね?日本語お上手ですね」 「ここの展示なんかの説明も全部日本語で書いてありますけど、読めてるみたいっすね」 「ああ、もう九年以上日本で暮らしているからな。日本語は問題ない」 「ルルーシュさんの世界にも日本ってあったんですよね?」 「ああ、その辺りはあまり変わらない。 世界が違うというよりは歴史が違うと言った方が正しいのかも知れないな」 そんな雑談を交えつつ、三人はこれからの行動を確認した。 「さて、この後だが…俺はこの近くの施設だとD-5の政庁が気になっている。 しかし、そこでの成果によるが、その先は陸路を行く事になるかもしれないから、 まずは先に船で回れる南側のホールやタワーの探索を済ませておこうと思う。 その後は、政庁とその周辺の施設を調査し、C-6、憂の言っていた民家へ向かう。それでいいか?」 「はい」 「いいっすよ」 地図を広げて説明するルルーシュに、二人とも納得したようだ。 「よし、では船に戻るか」 「「はい」」 再び、憂と桃子がハモった。 「ルルーシュさーん、桃子ちゃーん、早く早くー」 憂を乗せたおもし蟹は颯爽と駆け、あっという間に船にたどりついてしまった。 憂はおもし蟹を操るのにだいぶ慣れてきたようだ。 「はぁ、あの蟹さん、見た目より速いっすね」 「どうやら、憂ともだいぶうち解けたようだな、桃子」 「え、まあ普通に話してる分には、その、普通の子っすね」 「早くー、早く阿良々木さん見つけて殺すんですからー」 「……ああいうところは普通じゃないっすけど」 「フッ、だがもうそれほど怖くは無いだろう?」 ルルーシュの言う通り、最初は憂を怖がっていた桃子だったが、何度か声をハモらせているうちにその恐怖心はだいぶ和らいでいた。 「まさかルルさん、それを狙ってここに立ち寄ったんっすか?私とゴスロリさんがうち解けるように」 「さあな」 「はぐらかさないで欲しいっす」 「…いくら徒党を組んでも、烏合の衆では意味が無い」 「やっぱりキザな人っすね。言い方が」 「だから放っておけ……。む!」 「どうしたっすか?」 ルルーシュは突然黙り込むと、耳に手を当て、ゼロスイッチ(仮)とCDプレイヤーを取り出した。 「あ、クチビルさんの方、何かあったっすか!?」 桃子は知っている。 ルルーシュの耳には盗聴器が拾った音を伝えるイヤホンが入っており、CDプレイヤーは船井達の車に仕掛けた発信機の情報が表示され、 そしてスイッチは、車に仕掛けられた爆弾の起爆スイッチだという事を。 「静かに!」 だから、そう言われたら素直に黙る。 「……どうやら、車に仕掛けた爆弾は無駄になりそうだ」 しばらくしてルルーシュは顔を上げ、そう言った。 「それって?」 「車は乗り捨てられた。それと一つ情報だ」 「何っすか?」 「名簿に名前のあった荒耶宗蓮。こいつは魔術師で、このゲームの主催者側の人間らしい」 「ええ!?」 「今さらそんなに驚く事じゃない。 参加者の中に魔術師がいるのも、主催者サイドの人間が紛れ込んでいるのも想定済みだ」 「そ、そうっすか」 「浮かない顔だな。何を考えている?」 「その、ルルさんは違うっすよね?」 「主催者サイドではないかという意味か?…違うと言えば信用するか?」 「それは……」 「では、もう俺は信用できないか?」 「……いいえ、そんなことはないっす!」 「ほう」 「今、私を不安がらせると、一番危険なのはルルさんっす。私、銃も持ってますから。 もしルルさんが主催者側だったら、わざわざそんな危ないことはしないっす。 ルルさんは多分、盗聴器で聞いた情報を正直に教えてくれんだと思うっす」 「フッ、わかっているじゃないか。説明する手間が省けたぞ」 「でも、聞くだけ聞いて黙っててもよかったのに、どうしてわざわざ教えてくれたっすか?」 「決まっている」 「?」 「俺たちは仲間だろう?」 「なっ」 意地の悪い笑みを浮かべてそう言ったルルーシュに対して、桃子は二の句が継げなかった。 【F-5/海上/一日目/午前】 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】 [状態]:健康 [服装]:アッシュフォード学園男子制服@コードギアス反逆のルルーシュR2 [装備]:ゼロスイッチ(仮)@コードギアス反逆のルルーシュR2、CDプレイヤー型受信端末、リモコン、イヤホン@現地制作、 [道具]:基本支給品一式、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2、ミニミ軽機関銃(183/200)@現実 、 ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュR2、“狐”“泥眼”“夜叉”の面@現実、 サクラダイト爆弾(小)×9、サクラダイト爆弾(灯油のポリタンク)×2@コードギアス反逆のルルーシュR2、 盗聴機、発信機×9@現地制作、単三電池×大量@現実、通信機×5@コードギアス 反逆のルルーシュ [思考] 基本思考:枢木スザクは何としても生還させる 1:東横桃子、平沢憂と行動を共にする。 2:殺しも厭わない。東横桃子、平沢憂、スザク、C.C.、ユフィ以外は敵=駒。利用できる物は利用する。 3:スザク、C.C.、ユフィと合流したい。 4:南側の施設(ホール、タワー)を調査した後、政庁に向かう。 5:偽ゼロの放送を利用して、混乱を起こし戦いを助長させる。 6:“金で魔法を買った”というキーワードが気になる。 7:首輪の解除方法の調査、施設群Xを調査する? [備考] ※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。 死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。 ※参加者が異なる時間平面、平行世界から集められている可能性を考察しています。 ※モモから咲の世界の情報を得ました。主要メンバーの打ち筋、スタイルなどを把握しました。 ※自分のギアスも含めて能力者には制限が掛っていると考えています。 ※おもい蟹が怪異たる力を全てルルーシュに預けました。どんな力を使うかは後の人にお任せします。 ※モデルガン@現実、手紙×2、遺書、カギ爪@ガン×ソード、皇帝ルルーシュの衣装@コードギアス反逆のルルーシュR2、 シティサイクル(自転車)、ジャージ(上下黒)、鏡×大量、キャンプ用の折り畳み椅子、消化器、ロープ、カセットコンロ、 混ぜるな危険と書かれた風呂用洗剤×大量、ダイバーセット、その他医薬品・食料品・雑貨など多数@ALL現実 揚陸艇のミサイル発射管2発×2機、ミサイル×4発@コードギアス反逆のルルーシュ 現在支給品バッグに入れています。 ※揚陸艇の燃料…残り23キロ分 ※荒耶宗蓮が主催者側の魔術師である事を知りました。 【東横桃子@咲-Saki-】 [状態]:健康、ステルス解除 [服装]:鶴賀学園女子制服(冬服) [装備]:FN ブローニング・ハイパワー(自動拳銃/弾数15/15/予備45発)@現実 [道具]:デイパック、基本支給品(-水1本)、FENDER JAPAN JB62/LH/3TS Jazz Bass@けいおん!、通信機@コードギアス反逆のルルーシュ 遠坂凛の魔力入り宝石@Fate/stay night×10個 [思考] 基本:加治木ゆみを蘇生させる。 1:ルルーシュを利用し(利用され)、この場での生き残りを考える。 2:覚悟完了。ステルスを使う時は麻雀で対局相手の当り牌を切る時の感覚を大事にする。 3:ルルさん、キザっすね。ゴスロリさんは、少し怖くなくなったっす。 [備考] ※登場時期は最終話終了後。 ※カギ爪の男からレイに宛てて書かれた手紙は中身を確認せずに破り捨てました。 ※荒耶宗蓮が主催者側の魔術師である事を知りました。 【平沢憂@けいおん!】 [状態]:健康、拳に傷、重みを消失、ふわふわタイム(少し落ち着いてきた)、満腹 [服装]:ゴスロリ@現実 [装備]:ギミックヨーヨー@ガンソード、騎英の手綱@Fate/stay night、拳の包帯、おもし蟹@化物語、 [道具]:基本支給品一式、日記(羽ペン付き)@現実、桜が丘高校女子制服、カメオ@ガン×ソード、 COLT M16A1/M203(突撃銃・グレネードランチャー/(20/20)(1/1/)発/予備40・10発)@現実、 果物ナイフ@現実(現地調達)、阿良々木暦のMTB@化物語、包帯と消毒液@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor 通信機@コードギアス反逆のルルーシュ [思考] 基本:ルルーシュとバンドを組みたい。皆を殺す。 1:ルルーシュさんの作戦、言う事は聞く。お姉ちゃんは無理には殺さない。 2:モモさんはルルーシュさんが仲間だと言っているので殺さない。 3:阿良々木さんに会ったらブチ殺して、お姉ちゃんのギー太を返して貰う。 [備考] ※ルルーシュの「俺を裏切るなよ」というギアスをかけられました。 ※中野梓についていた「おもし蟹」と行き遭いました。姉である平沢唯に対する『思い』を失っています。 【通信機@コードギアス反逆のルルーシュ】 黒の騎士団が使っていた、耳に引っ掛けるタイプの通信機。 時系列順で読む Back ガンダムVSガンダム Next 協議の果てに迷える戦士達 投下順で読む Back 闇に潜むキーワード見つけ出そう Next いざや開かん、冥底の門 136 ぶっ生き返す/ふわふわタイム(後編) 平沢憂 163 徒物語~ももこファントム~(上) 136 ぶっ生き返す/ふわふわタイム(後編) ルルーシュ・ランペルージ 163 徒物語~ももこファントム~(上) 136 ぶっ生き返す/ふわふわタイム(後編) 東横桃子 163 徒物語~ももこファントム~(上)
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641 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/03(金) 18 11 04 ID nvGC8W62 ロリブルマ「ふふーんだ!そっちがルール無用ならこっちだって考えがあるんだから!」 カマやん「頼むぞ、聖杯よ」 ロリブルマ「任せといて!行くわよ! やっちゃえ!バーサーカー!」 ムギ「…そんな!」 バーサーカー「■■■■■■■■■■■!」 ロリブルマ「どう?主催者権限で死者スレ内に限り令呪復活よ!」 D「きょ、狂戦士復活ーっ!琴吹選手防戦一方だーっ!」 K「令呪による強制召喚ならびに命令強制か…この畳み掛け方は流石だな」 カマやん「さて…来たか」 ライダー「魔術師!勝負です!」 アーニャ「狙いは飽くまでイリヤ」 D「あーっと!アーニャ騎、上空からイリヤ騎を強襲ーっ!」 K「サーフィンボードアタックか、ふむ」 642 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/03(金) 18 43 58 ID b8I0wJ.c 上条「だぁぁっ、いい加減目を覚ませ御坂!」 ビリビリ「何よ! あのちびっ子とはあんなに楽しそうにじゃれてた癖に、私とは話すのも嫌だっての!? そりゃ、私には胸も無いし、可愛いげも色気も無いけど……私だってアンタの事……!」 上条「駄目だ、幻想殺しが効いてねえ! 畜生、どうにか出来ないのかよ! 何で俺はこんなに無力なんだよ……!」 アーチャー「……止むを得ん、最後の手段だ」 上条「何か手があるのか!?」 アーチャー「見た所、この術式はイリヤの服装が核になっている。 つまり、イリヤを「タイガー道場の一番弟子・ロリブルマ」というキャラクターに置き換える事で術式を固定しているという訳だ」 上条「いや、さっぱり意味不明なんですが」 アーチャー「つまり……こういう事だ!」 上条「え、な、何だこれ!? 何で上条さんいきなり張り付けの刑に!?」 アーチャー「動くなよ、的が外れる。 ……上条ミサイルアロー、発射!!」 上条「ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァーッ!!!」 D「ああっとおぉぉぉぉ!! プールサイドから上条当麻を括り付けた巨大な矢が発射されたぁー!」 K「む、流石に幻想殺し相手では荒耶の結界も通用しないか。 矢自体は外れたが、上条当麻がイリヤにしがみついたようだ」 D「な、なんとぉぉぉぉぉ!! イリヤスフィール選手の体操着が消え、水着があらわにーーー!! このままブルマも消えてしまうのでしょうかーーー!!」 K「さて、バーサーカーが助けに入ったからな。 そう簡単には行くまい」 643 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/03(金) 19 13 08 ID hF5V4Iig バシャバシャバシャバシャ!!!! 妹A「貴方は計画の邪魔になるので排除します、とミサカは主催サイドの目的を建前に持ち出します」 妹B「貴方は私達ミサカシリーズのモノです、とミサカは心中を暴露します」 上条「ちょ、お前達引っ張るな、ってどこ触っているんだ///」 妹C「とりあえずロリブルマから離れて下さい、とミサカは上条当麻の右足を引っ張ります」 妹E「ハーレムは最高ですよ、とミサカ達はちょっと顔を赤らめながら左足を引っ張ります」 上条「ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァーッ!!!」 ザッパーン! D「おおっと!ミサカシリーズが上条当麻を捕縛!!イリヤスフィール選手のブルマは守られたぁーー!」 イリヤ「あ、危なかったわ…」 妹D「ミサカABCEはどうしてしまったのか、とミサカは困惑気味に見つめています」 妹G「今はそれよりアーニャから逃げましょう、とミサカは提案します」 イリヤ「よし、妹D妹Gのブースト承認!アーニャを水中に落として優勝を貰うわよ!!」 ???「そうはいきません」バシャ! 妹D「なに!!これでは動けない!!、とミサカは驚愕の表情を出します」 イリヤ「しまった!貴方の存在を忘れていたわ!!」 妹G「何故あなたは正常なのですか、とミサカは驚きつつ質問をします」 ファサリナ「フフフ、どうやら気絶して平気だったようです」 D「なんとぉー!!ファサリナ選手が妹D選手と妹G選手を抑えたぁー!さらに上空からはアーニャ選手が迫ってきている!!」 644 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/03(金) 20 05 38 ID hF5V4Iig ヒイロ「ファサリナ、よくやった」 ムギ「ザ・自爆!ガンダムバカにゴーストも!」 真宵「オーナー、大丈夫ですか?」 ムギ「ええ、ちょっときついけどまだ大丈夫よ」 ライダー「しかし、バーサーカーの裏切りは予想外です。魔術師も相手にしなければならないのに、骨が折れるわ」 アチャ「なら私がバーサーカーの相手をしよう。お前達は荒耶宗蓮を任せる」 海原「……また一人で倒すと言うのですか?無謀ですよ!貴方の攻撃は耐性で効きませんよ!」 アチャ「ふん、時間稼ぎぐらいにはなるさ」 ムギ「なら、アーチャーさんとライダーさんはバーサーカーさんを食い止めて下さい。私は海原君と共にあの魔術師を討ちます」 アチャ「……いいだろう。ライダー、足を引っ張るなよ」 ライダー「それはこっちのセリフですよ」 刹那「では、俺達は事態収拾のためにイリヤスフィールの捕縛しに向かう」 ムギ「ええ、任せるわガンダムバカ。ゴースト、彼らの補佐を宜しくね」 真宵「任せて下さい!」 カマやん「ふむ、戦力増強と共に各個撃破しに来たか。サーシェス、イリヤスフィールを狙う輩を排除しろ」 首輪ちゃん「オーケー!あのガキ共は俺に任せな!くぅーっ!この緊張感、ワクワクするぜぇ!!」 カマやん「アーチャーとライダーでバーサーカーを食い止めるか。それに琴吹紬と魔術師エツァリ……もう一人ぐらい戦力が欲しいところだが」 ことみー「なら私が手を貸そう」 カマやん「言峰綺礼か。実況中継の解説はどうした」 ことみー「今の私は審判だ。ただ暴徒を抑えに来ただけさ」 カマやん「そうか、ならその手を借りるぞ」 ヒイロ「まずい、ファサリナが妹達の電撃攻撃を受けている。急ごう」 リリーナ「ヒィィィイィィィロォォォォオオオオ!私を放っておいて何で他の女を殺そうとしているのかしらぁぁぁぁぁぁああああああっ!!!」 ヒイロ「なんだリリーナ!邪魔をするな!!」 リリーナ「うるさい!!!早く私を殺しにいらっしゃああああああああああああああい!!!」 ヒイロ(ぐっ、なんだこのプレッシャーは!殺される!!) 刹那「ヒイロ、彼女の事はお前に任せた。俺達はブルマを取りに行くぞ!」 ヒイロ「ちょ、刹那!俺をおいていくな!」 首輪ちゃん「ところがぎっちょん!!そう簡単に行かせる訳がねぇぇぇだろう!!!」 刹那「サーシェス!邪魔をするな!」 首輪ちゃん「おう、クルジスのガキかぁ!それに軍師気取りのクソガキ!さあ、一緒に戦争を楽しもうぜぇぇぇえええ!!!」 真宵「これは厄介ですね」(サーニャさん、もうしばらく一人で頑張ってください!) 646 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/03(金) 20 26 38 ID eF7/jpbY レイ「水をくれ」 黒桐「まいどー」 レイ「…………」 黒桐「レイさん」 レイ「何だ」 黒桐「彼女達は一体何をしているんでしょうか」 レイ「騎馬戦だ」 黒桐「僕には世界びっくり人間ショーに見えるんですけど」 レイ「……騎馬戦だ」 黒桐「さっきから人が空飛んだり水着からピザが出たり騎馬組んだまま波乗りしたり気合いで銃弾撃ち落としたりしてるんですけど」 レイ「気にしたら負けだ」 黒桐「しかし!」 レイ「ここでの騎馬戦は人が空飛んだり水着からピザが出たり騎馬組んだまま波乗りしたり気合いで銃弾撃ち落としたりするのが普通なんだ」 黒桐「…………はぁ。なんか達観してますね」 レイ「狂ったもの勝ちだからな、ここは」 黒桐「そんなものですかね」 レイ「そんなものだ」 647 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/03(金) 21 36 57 ID sw5.tDdU ロリブルマ「全くレディを裸にひん剥くなんてなに考えてるの?!シスターズ!念入りに殺しておきなさい!」 妹A「願ってもない事です、とミサカはロリブルマに感謝します」 妹B「やはり究極の愛はカニバズムですね、とミサカは口をぬぐいます」 妹C「その前に拘束した挙句●●●でしょう、とミサカは官能的な提案をします」 妹E「エンジョイ&エキサイティング!とミサカはルパンダイブします」 上条「不幸だあああああああああああああああああああ!」 ビリビリ! 妹ABCE「「「「ウワァーッ!とミサカは車田演出的に後方に吹っ飛んで気絶します」」」」 上条「く、くそ!この殺る気満々の電撃は…?!」 ビリビリ「あんた達ねぇ…わたしと同じ顔して犯る事が汚いのよ…」 上条「お前はアーチャーが抑えていたはず?!あ…(バーサーカーと戦うアーチャーを見る)なにやってんだよ、あいつは!?」 ビリビリ「ねぇ…あんたさぁ…まだあたしの全力、食らった事ないわよねぇ?」 上条「ま、待て!話せばわかる!」 ビリビリ「うっせー!タラシは黙ってろーっ!全力!超電磁砲ンンンンンン!!」 カッ! 上条「ひっ?!あ、あれ…?」 ビリビリ「あたしとあんたの戦いを邪魔されたくないのよ…引っこんでろ、化け物ども!」 D「おーっとぉ!御坂御琴の全力レールガンがアーチャー、ライダー、バーサーカーに炸裂! バーサーカーはワンキルですぐに立ち上がったが、アーチャーもライダーもグロッキーだぁぁぁぁ! アーニャ選手、ライダー選手が放り投げたおかげでかろうじて空中に難をのがれたが、もはや落下するのみ! これは決まったかぁ?!」 D「あ、解説いなかったか…張り合いが無い…。ともかく、フリーになったバーサーカーがなおも琴吹紬を狙う狙う狙う! さらにエツァリうずくまったぁー!さらに逃走ーっ!いや、向かった先には御坂御琴ぉーっ! どうやらラブアタックをかける模様です!」 海原「御坂さん!今まで言えなかった事を言います!すk…」 ビリビリ「引っこんでろっつってんだろ!ドサンピン!」 バシュゥゥゥゥゥゥ… D「逝ったぁぁぁぁぁぁ!エツァリ消滅!消滅です!上条当麻、一歩も動けずぅぅぅぅ!」 ビリビリ「あんたが正々堂々とあたしと戦わないからどんどん人が死ぬじゃないの! さぁ来なさいよ!全力でぶっ潰してあげるから!」 上条「そうか…分かったよ…なら全力でお前を止めてやる!」 D「御坂御琴と上条当麻のガチンコ開始ぃぃぃ!」 648 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/03(金) 21 43 53 ID sw5.tDdU D「さらにバーサーカー&言峰氏が琴吹紬を蹂躙んんん!耐え忍ぶのがせいぜいかぁーっ!」 ロリブルマ「ふふーんだ。あとはあの無口が落ちてきたら試合終了ね。 そしたら死者スレに用はないから状況を放っておいて現世に戻ろうっと」 ひゅーん、どさっ! アーニャ「そうはいかない」 ロリブルマ「ちょ、ちょっと!上から降ってきてひっつかないでよ!レディの胸を直に触るなぁ!」 D「おーっとぉ、アーニャ選手、どう落下地点をずらしたのか!イリヤ騎の頭上に降ってきたぁーっ! 完全に組み伏せてます、アーニャ選手!それでも鉢巻きを取らないのはロリブルマに帰るタイミングをやらないためかぁーっ!」 アーニャ「ブルマー寄越せ」 ロリブルマ「そ、そんなこと出来るわけないでしょ?!それにこのブルマ、脱げなくなってるのよ!」 アーニャ「やっぱり。下調べの通り。結界の核もそこ」 ロリブルマ「!何故それを?!」 アーニャ「ブリタニア騎士の工作員としての実力を舐めないで」 刹那「実際に調べたのは俺だ」 真宵「情報を総確認して結論出したのはなにを隠そう私です!」 カマやん「ほう…貴様らの工作能力を舐めていたか…誰の差し金だ?」 ロリブルマ「どうでもいいでしょ!さっさと頭上のこの痴女を始末してよ!」 カマやん「興味はないな。そやつにブルマをどうこう出来る力はない。自力で排除してみろ」 ロリブルマ「げ、現世で殺してやるんだから!」 カマやん「どうとでも言え」 649 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/03(金) 22 24 50 ID b8I0wJ.c ムギ「くっ……ここまでなの……?」 K「ふむ、他愛無い。 この分ならばわざわざ出番る事も無かったか。 さて、後は任せたぞバーサーカー。 私はアールストレイムから反則を取り試合を終了させるとしよう」 ?????「そうは行くか」 バシュン!! K「む……これは偽・螺旋剣。 アーチャーよ、何故まだ立っている」 アーチャー「私の投影した天覆う七つの円環(ロー・アイアス)が、たかが女子中学生のコイントス風情に撃ち抜かれるとでも思うか?」 ライダー「かなりシビアでしたけれどね。 さて、私はアーニャ援護に向かいます。 貴方は言峰とバーサーカーの足止めを」 アーチャー「ああ。足を止めるのはいいが―――」 「別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」 ライダー「ふ……大きく出ましたね。 では、任せましたよ」 K「……逃がしたか。 さて、暴徒の鎮圧を始めよう」 アーチャー「さて、鎮圧されるのはどちらかな?」 ムギ「私も……まだ終わっていません!」 バーサーカー「■■■■■■■■■■■■!!!」 650 :名無しさんなんだじぇ:2010/09/03(金) 23 03 39 ID FRKTbn0M みっちー「ああ、皆さん楽しそうですねぇ」 ヴァン「………」 みっちー「本当に楽しそうだ」 ヴァン「………」 みっちー「なのでこの拘束具を外してくれませんかねぇ?」 ヴァン(なんで俺がこいつの見張りしなきゃならねえんだ)
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GEASS;HEAD END 『離別』 ◆hqt46RawAo ■ 『序章:ago』 ■ 意識が朦朧としている。 ぼやける視界のままで、私は暗い夜道を猛スピードで進んでいた。 ナイトメアフレームに乗って。 ……ナイトメア、フレーム。 今の私、秋山澪にとっての最大の武器であり鎧。 機体の足部が段差を超えるたびに、私が座っているシートもがたごと揺れる。 ハッキリ言って乗り心地はあまり良くはない。 私は、確か……。 あの女、蒼崎橙子って名乗った女から逃れられ、いや、見逃されて、それから……。 それから私は……。 私はどうしたんだっけか……。 たしか象の像まで逃げたあと、福路美穂子が持っていた首輪を使って新しいロボットを購入して、それから……それから何をしようとしていたんだっけ……。 よく、分らない。 ハッキリとしない。 朦朧としている。 意識が白濁している。 ごとごとごとごと、響く振動音だけが私のはっきりと捕らえる大半の事象だった。 ぴー、ぴー、と。どこからか、警告音が鳴っている。 いけない、これはいけない。 集中しなくちゃ駄目だ。 意識をハッキリさせて、ちゃんと前を見ないと駄目だ。 レーダーを見て、進行方向を考えないと……。 こんな暗い夜道、ただでさえロボットの操縦なんて慣れてないのに……。 「……あ」 ほら案の定だ。 機体が何かに激突して……。 操作を誤ったと、自覚した時にはもう遅い。 コックピットを揺らす凄まじい衝撃に、私は機体ごと激しく揺られて。 遠ざかる警告音。 意識が、闇に沈んでいく。 序章:夢、逃げ出した後――了 Next Chapter▽ ■ 『一ノ章:Break bonds』 ■ 間合いそのものは約一歩半といったところか 何かあった際、制圧するには少し広すぎる距離だ。 しかし殺害に及ぶならばお互いにその限りではないだろう。 そのように、デュオ・マックスウェルは乾いた思考で目算する。 もし、隣に立つ少女がもう一度此方に銃を向けた場合に如何にするか。 交渉に応じた少女、それが再度戦闘になるパターン、まあ十分あり得る。 ルルーシュと合流した瞬間に仕掛けてくるかもしれない。 話し合う気など無いかもしれない。 彼女はそもそも数の不利など度外視して攻撃してきたのだ。 緊張を緩めるにはまだ早い。 そして、そうなってしまえば今度こそ、無力化だけして生かすことは難しい だからもし、そうなれば、彼は殺す。 殺すだろう、例え相手が少女であろうと。 躊躇無く撃つだろう。 ためらいは有り得ないし、許されない。 自身や仲間の危機に繋がるからだ。 (やれやれ、賢い選択をしてくれれば助かるんだがな……) 彼は元々殺したいと考えて戦っていたわけではなく、むしろ逆、人の死や苦しみを見たくなかったから、終わらせたかったからこそ戦い、そして殺してきた。 そんな彼は知っている。 人が戦場で戦うと決めたなら、その手は綺麗なままにすることなどできない、と。 戦うならば、何かを変えたいと思うなら、手は汚れていく。それは当たり前であり事実彼が辿った道だ。 だから、ためらいは無い。 その代わり、彼はいつも願っている。 早く戦いが終わるように、一人でも犠牲を減らせるように。 願い、動く。 「お、来たみたいだぜ?」 近づいてくるルルーシュの姿に、隣の少女が声を上げた。 「ああ、そうみたいだな」 明るい声。 対して銃はすぐにでも抜ける。お互いに。 隣の少女に注意をむけながらも、周囲の警戒にも余念はない。 ここにはもう一人、対処するべき脅威――もう一人の侵入者がいるのだと、彼は知っている、いや正確には信じさせられている故に。 不確定の脅威と不明瞭な脅威、2方向への警戒。 彼といえど、一人では少し荷が重い。 やはりここでも、デュオ・マックスウェルは苦労人だった。 ■ 今の東横桃子にとっては、全ての音が遠くに感じられた。 男女の話し声。 廊下に響く四つの足音。 それら全てが、己の心音に比べれば小さく思えるくらいに。 事態は刻一刻と、変わろうとしている。 前方を歩くルルーシュと平沢憂。今まで味方として接してきた二人。 その二人に、更に前方からデュオ・マックスウェルと共に近づいてくる茶髪の少女。 彼女こそが凶兆だ。 桃子は決断を迫られていた。 選択肢は、そう多くない。 何もしないか。 何もせずに逃げるか。 殺して逃げるか。 皆殺して終わらせるか。 ――それ以前に、殺せるのか? 選択には時間制限がある。 タイムリミットはルルーシュが近づいてくる少女に接触する瞬間まで。 「……………」 数値にすれば、残り10秒ほどしかない。 「…………っ」 ――殺そう。 決断までは数秒と掛からなかった。 殺さなくてはならない。 迷っている暇はない。 いつか殺すのではない、今殺す。 目の前の男を排除するタイミングは今、現在なのだと、桃子は理解した。 数メートル前方を歩く青年――ルルーシュ・ランペルージ。 彼がこのまま茶髪の少女と接触すればどうなるか、実際のところ断定まではできない。 全てはあの少女とルルーシュが、どう考えるかにかかっている。 けれど、そう低くない確率で桃子にとって不都合な事態になるだろう。 それをこのまま指をくわえて見ているのは一番の愚考だ。 それでは、今すぐに逃てはどうか? やはりそれも愚考。確かに迅速な離脱こそが一番危険の少ない行動だろう。 しかし今逃げる事とは即ち、ルルーシュとの敵対が確定するということでもある。 次に会うときは、間違いなく敵として見なされる。 ならば殺すのか? そうとも、殺すのだ。 最早彼との共闘は難しい、ルルーシュはもうすぐ味方ではなくなる。敵になる可能性が高い。 それならば、せめて敵になる前に排除する。 ルルーシュの強さは知っている。腕力ではなく、その思考力を桃子は知っていた。 なぜなら隣でずっと見てきた。たった一日ばかりの付き合いだが、彼の怖さはよくよく理解させられた。 それを学び、自分の強さにしようともしたほどに。 「殺さ……なくちゃ……」 最終的に殺す人間、未来の強敵、その一番殺しやすい瞬間が今かもしれないのだ。 ならば行動しなくては。 桃子は何かに圧されるように、青年の背中に向って一歩を踏み出す。 「殺さなきゃ……駄目なんだ……私は……」 ここまで思考したのなら、残りの時間は殺害方法に当てるべき。 だというのに、東横桃子は、 「殺……す……っ!」 ああ何故こんなにも心臓の音が煩いのか。 などと、無駄な思考に貴重な一秒を費やしていた。 ■ 前方から歩いてくる茶髪少女の重要性を、最も早い段階で察していたのはやはりこの男であった。 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは相応の緊張をもって彼女を出迎えつつ、己の頭脳をフル回転させる。 船内にて一方的に戦闘を仕掛けてきた目の前の少女は、挙動からしてただの人間ではありえない。 これはごく当たり前であり、見ればわかる事。 だが、それだけではなく参加者としても、他の人間とは一線を介している可能性があるのだ。 ルルーシュは彼女の顔を知っていた。 『おくりびと』――その機能における最大の特徴とは、『殺人犯である可能性が高い人物』の顔を知れることである。 自然、殺人容疑者の写真には皆ある程度注目するものの、死んだ人間の顔は知人でもなければなかなか記憶に残らないものだ。 しかしルルーシュは覚えていた。 彼自身の記憶力が良かったのもあるが、『彼の知人がおくった人物の写真』であったことも要因の一つであろう。 茶髪の少女――C.C.がおくった少女――死んだ人間の顔。 それが今、目の前にあるのだ。 いったい何故か? これはいかなる自体が齎した異変なのか? 双子が参加者にいた、瓜二つの人間がいた。 などの可能性は一応あるが、名簿を見る限り平沢姉妹以外には血縁者同士の参加は見られない。 何よりルルーシュ自身が、尋常ならざる背景を彼女の後ろに感じている。 はたしてこの奇妙な印象はどう説明をつければいいのだろう。 目の前にしている人間が放つ、他人の皮を被っているようなアンバランスな感覚。 隠そうともしない、イレギュラーの気配。 接触までの僅かな間に思考にふける。 そのとき不意に隣から、ちょいちょいと、腕を引っ張られる感触があった。 「えと……ルルーシュさん、あの人……味方になってくれるんでしょうか……」 平沢憂の小さな手がルルーシュの袖口を掴んでいた。 どこか不安そうな瞳がこちらを見上げている。 「さて、分らないな。だが少なくとも、俺達と話す気にはなったようだ」 「もし仲間になるとしても。多分、私、あの人は好きになれそうにありません。なんだか、嫌な感じがします……。 ……? …………そういえばあの顔、どこかで……見たような…………」 察しの良い憂もまた、遅れてその違和に気がついたようである。 まだ正体には思い至っていないが、『嫌な感じ』に関してはルルーシュ以上に敏感に察知しているようだ。 ルルーシュは憂が袖口を握り続けることには別段頓着せぬまま、思考を更に働かせた。 敵の正体に関する考察を出来るだけ多く並べ立てる。 こちらにとって最強のカード、ギアスを使うタイミングを想定する。 しかし最終的には交流を経てから判断すること。 なんにせよ憂にまで、まだ話してもいない段階から『好きになれない』とハッキリ言われる手合である。 最大限の警戒をもって接触するべきだ。 そして、その接触までは残り数秒もあるまい。 彼我の距離は二メートルほど。 どちらからともなく第一声を発する。 「――?」 その直前に、ルルーシュは己の背中に小さな衝撃を感じた。 すとん、という。 軽い感触それだけで、ああ後ろから刺されたのだなと、彼は知ることが出来た。 なぜならこの感覚はルルーシュの知っている感覚。 彼にとって『この殺害方法』は初めての経験ではなかった故に。 「……ああ」 背に、じわりと熱が広がっていく。 「それでいい、正解だ。桃子」 ■ 桃子は青年へと、更にもう一歩踏み出した。 これで彼我の距離は後三歩分。 息を潜めながら、ルルーシュの背中へと近づいていく。 ドクン、ドクンと、身体の内側が煩い。 「…………」 ドクン、ドクンと、まるで耳元で鳴っている様に心音が近い。 「…………ッ……」 一歩一歩に多大な集中力を必要としている。 体が緊張で硬くなっているのが自覚できた。 「……はぁ……っ……はぁっ……」 マズイと自覚する。荒くなっていく息使いを抑えられない。 咄嗟に口元を手で押さえて、音を殺した。 察知されたか、と更なる緊張に全身が硬化するものの、ルルーシュは未だ振り返らない。 本当に気が付いていないのか、それとも知らぬフリをしているだけか。 桃子には判断できない。 分らない。 自分は今、ちゃんとステルスできているのか。 消えれているのか、それとも……。 「…………っん……」 唾を飲み込んでもう一歩、踏み込む。 確かめている時間はない。 残る距離は、たったのニ歩分だ。 (それにしても……なんで……こんなに……) 何故、自分はここまで緊張しているのかと、自問する。 そんな場合ではないと分っていながらも。 人を殺す事は初めてではない。 桃子はもう既に二人の人間を直接手に掛けている。 それに関して逃避もしていない、殺すために殺したのだと受け止めている。 いまさら殺人に関して悩むことなどないはずだ。 そもそもルルーシュを殺す事など前々から画策していたことなのに。 なのに、なぜ、こんなにも、緊張しているのか。 心臓の音が煩いのか。 (躊躇って……いる?) 今までの殺しと、今から始める殺し。 違いがあるとすれば、一つだけ。 (裏切る……ことを……?) 殺す事にはなんら変わりない。 しかし今回の場合、桃子は知ってしまっている。 ルルーシュという人間に、仲間として触れてしまっているのだ。 本当の意味で、知っている人間を直接的に殺すのはこれが始めて。 思えば、ルルーシュや憂を殺す為の策は全て、人任せなものばかりを想定していたような気がする。 例えば殺し合いに乗った者に殺させたり、澪に殺させたり等の同士討ちを狙ったり。 現に目の前の少女を利用しようと企んだりもした。 誰かを利用して誰かを殺させる想定ばかり。桃子のスタンス上それはなんら不思議な事ではない。 しかし振り返ってみれば、彼らを直接手に掛ける事だけはまるで想定していなかった。 『黒の騎士団、行動開始だ』 彼の言葉が、リフレインする。 ――馬鹿みたいだ。 なんら混じりけ無く、桃子はそう思った。 己がこの男にそこまでの思いを持ってしまっていた事にも驚きだが。 それ以前に、今更すぎる。あまりにも、くだらないのだ。 人の命を奪う事よりも、人を裏切るほうが辛いだなんて。 いまさら、絆を壊す事を怖がるだなんて。 自分で自分に虫唾が走る程の贅沢だと思う。 結局、桃子にとってセイバーと荒耶宗蓮を比較的簡単に殺せたのは、それほどの繋がりを持たなかったからなのだ。 けれどルルーシュは違う、平沢憂は違う。 『どうして……こんなにも胸が苦しいんでしょうか……?』 知っている。知ってしまっている。彼と彼女の思いを。 こんな物はいらないと切り捨てたはずだ。そもそも情なんて感じたことも無かったはずだ。 表向きは仲間だろうと、いつ裏切っても恨みっこなしの仮初の同盟、皆が合意の上だった。 腐りきった絆、汚れた繋がり。 (……………こんな、もの) それでも、仲間だった。 表向きでも、偽りでも、確かな繋がりだった。 嘘で塗り固められた関係だろうと、その前提だけは本当だった。 ああ腐っている、でも絆。 ふざけた代物、普通の人間ならば醜悪にしか思えないモノ。 唾棄すべき関わり合い。黒の騎士団。 そんなものに桃子がどれ程の価値を見出すのか。 今この時、壊すという時、震えてしまった両腕が答えだ。 この躊躇こそが真理だ。 (ははっ……なんすか……それ、馬鹿馬鹿しいにも程があるっすよ) 東横桃子という少女。 人生において『ただ一つ』を除いて、おおよそマトモな繋がりなど持たなかった少女。 誰よりも孤独を知っている彼女。誰よりも孤独な日常と共に在った少女。 世界から隔離されていた人生。 だというのに、いや、だからこそ。 こんなにも歪な繋がりであろうと、大事なものに思えてしまった。 決して手放せない、宝物に思えてしまっていた。 「…………ッッッ!」 決意が鈍る。力が抜ける。 手に握っていた凶器が下ろされていく。 ふざけている、馬鹿げている、なんという醜態だろうか。 まさか己がこんな葛藤に陥るなんて。 情に動きを止められるなんて甘さ、想像だにしなかった。 そんなものはこの集団内でも、せいぜい秋山澪あたりしか感じないことだと思っていたのに。 「――――」 結論を言ってしまえば、東横桃子はただの『やさしい女の子』だったということだ。 冷酷ではない、非情ではない、無感などではない。 孤独を知り、絆の大切さを知り、良識を知り、優しさを人に与えられる。 ただステルスというやっかいな体質をもって生まれただけの、一人の平凡な女の子。 加治木ゆみが後輩として大切に思い、『欲しい』と叫んだのはそういう少女だった。 だから、ここから先へは踏み出せない。 東横桃子とは、そう在らなければならない。 知らぬ者を殺すなど作業に等しい。 だが感情を持って執行する殺人の重さには堪えられない。 それが彼女の限界。優しい彼女の正しい在り方。 限界を超えて前へと進む事は許されない。 なぜならその行為は他でもない、加治木ゆみに対する最大の裏切りになるからだ。 (…………ごめん……なさい……) ならば、 (……ごめんなさい……先輩……) ならばこの時、 (私は……) 凶器を握りなおした少女は誰だ? (それでも私は殺します) 更に一歩を踏み出してしまえる少女は誰なのだろう? (先輩、私は……先輩の嫌いな私に為ってでも……やっぱり先輩が欲しいっすよ……) 最後の一歩を踏みしめる。 少女は進んだ。 絆を捨てる道を、東横桃子を捨てる道を歩む。 少し前までの彼女なら、ここで足を止めてしまっていたかもしれない。 絆の鎖に縛られていたかもしれない。 けれど今の彼女は己を突き動かすモノを持っていた。 全てはその一念に帰結する。 直面した地獄の光景。 赤で塗りつぶされる思い出。 ぐちゃぐちゃに砕け散った、大切な者の残骸。 『先輩……まだ、終わりじゃないっすよね……?』 もう絶対に返される事の無いその答え。 踏みにじられて、血塗られて、汚された夢の結末。 それを目にした時、どうしても消せない思いが在った。 ――認められない。 間違っているかどうかなど知らない。 道を踏み外していようと知るものか。 自分も含めて一切合財、何がどうなろうと関係ない。 ただ、認められない。 こんな『終わり』なんて絶対に認めない。 ハッピーエンドじゃなくてもいい。 例えバッドエンドでもいい。 それでも、あんな終わり(デッドエンド)だけは絶対に認る事など出来ない。 現実の拒絶。 駄々をこねる子供の様な。 幼稚な、けれど純粋な願い。 それが今の東横桃子にとって最大の原動力だった。 「だから、さよなら……ルルさん……」 こうして桃子は己の刃を突き立てる。 ガキンと鈍く響いた音は刃が砕ける音であると同時に―― ここまで危うい均衡で、それでも、細くとも確かに繋がっていた彼女達の繋がりが、遂に断ち切れる音だった。 ■ 「ああ、正解だ……桃子」 ルルーシュは一瞬にして状況を把握する。 表面上で身に起こったことだけでなく、その裏にある背景までも推定できた。 別に計算通りなどではない。それでも分る事であった。 たったいま己の背に刃を付きたてた者。 それは顔を見るまでもなく、状況的に東横桃子ただ一人しかありえない。 下手人が桃子ならば、その事情背景も透けて見えた。 大幅に早められた裏切り。 桃子がこの行動に及ぶ真理。 策と、誤算と、しかし覚悟の上の実行。 『はやまったな』、と思う反面、ある意味では正解だとも思う。 桃子なりに考えたのだろう。 今は桃子にとって一番の期ではない。ルルーシュを殺すには早過ぎる。 残る参加者はまだ二十人前後も存在する。 準備を始めるには頃合だが、実行するにはどう考えても不適切だ。 だが、考えても見ればいい、それはルルーシュとて承知している事のはずだ。 桃子にとって最適のタイミングでルルーシュを殺すという事は、すなわちルルーシュにとっても桃子が動くタイミングは明確となる。 今はまだ共闘が最適、しかし決別の時は確実にやってくる、そしてその時期はお互いが意識している。 ならば勝利の行方とはそれまでの準備とその時の決断に委ねられるだろう。 回り道のようで、結局は策と策の真っ向勝負になることは明白だった。 ではここでどちらが有利なのか。その時、ルルーシュと桃子、どちらが勝つのか。 東横桃子は知っていたのだ。 化かしあいでルルーシュに勝つことなど出来ない。 卓上の経験により、先手を読む計算は桃子も得意とするが、ルルーシュは別格だ。 小賢しい考えなど見通される。策など筒抜けになっている。桃子がどう動けば最適なのかすら知られている。 その上で詰まされている。 ならば、あえて失敗してやればいい。愚かになって、悪手を実行すればいい。頭の良さを逆手に取ればいい。 この場においては、最適のタイミングをずらして攻撃すればいい。 あえて速すぎるタイミングでアクションを起こせば、即ちそれはルルーシュの思慮の外。彼女はそう考えたのだろう。 その結果がこの状況。 桃子は、少なくとも彼女の内では裏目――窮地となり、自ら動かざるを得なくなった。 だとすれば、それは結果的には失敗である。しかし同時に、正解でもあったのだ。 彼からすれば最大の愚挙にしか思えないが、それでも幾つかある正解の内の一つだ。 認めざるを得まい。前提の段階で失敗していようが、行動そのものは悪くない。 そして尚、この瞬間における桃子の手際は完璧だった。 突然の窮地でありながら決断は速く、動きも正確さを欠いていない。 決して小さくない緊張だったろうに見事ステルスを維持し続けた。 攻撃手段も良い。 高威力だが目立つ武装を選ばず、ただのナイフによる刺殺の実行。 これならばルルーシュ一人を殺して、その後あわよくば憂を殺して、すぐに逃げに移れる。 接近のリスクは最大だが、それでも銃よりもサイスよりも、この状況に適していた。 少なくとも、この時の桃子の行動には何一つミスは無かった。 「そう、九割、正解だ」 ガキン、と刃の砕ける音がする。 振り返るルルーシュの背中で、桃子が握っていたナイフがへし折れた。 銀の刃は彼が着込んでいた制服を刺し貫いたものの、その下から現れた白い布地にぶつかった瞬間に止められた。 『歩く教会』――掛けられた制限を差し引いても防弾チョッキを遥かに超える堅牢さを誇る防御礼装。 当然、少女が振るうナイフの一突き程度、止める事は造作もない。 はたして彼はその防具をいつの間に背に巻きつけていたのだろうか。 タイミングがあるとすれば、侵入者との戦いがひと段落着いたとき、デュオと別行動していた少しの時間以外ありえない。 つまりは――この展開すらもルルーシュにとって想定の内だった、ということになる。 ルルーシュは振り返る、予想違わず背後には彼女の姿があった。 東横桃子の目を、その深い瞳を覗き込む。 「いや、十割か」 しかし彼女の目は、『何故?』と語りかけていなかった。 攻撃失敗に対しての動揺など微塵も映していなかった。 そこから意味を読み取るとしたら、『そうか』程度のものだろう。 なぜなら、桃子は事実を受け入れていたのだから。 攻撃は失敗した。それだけの事実、何故も、どうしてもない、理由の詮索などに意味はない。 失敗したというのなら、それはそれだけのことなのだ。 『次』を実行すればいい。 もとより攻撃手段など、ナイフ一本ではないのだから。 この展開は桃子とて、在り得るものとして覚悟していたのだから。 だから、桃子は砕けて床に落ちたナイフになど目もくれず、 振り返るルルーシュのこめかみに、制服のポケットから引っ張り出した拳銃――FN ブローニング・ハイパワーを突きつける。 前段階で安全装置は既に外してある。後は引き金を引き絞るだけだ さよならは二度も告げない。 (もう十分だな) このぐらいが潮時だろうとルルーシュは決断した。 (お前はもう十分に成長したよ、桃子) 兼ねてから想定していた一つのプラン。 実行するかどうかは微妙なところであったが、 (共闘は、もうお終いだ) 東横桃子は強くなった。出会った頃よりもずっと。 だから、彼女の成長に心からの祝福と裏切りを―― 「東横桃子――お前は――」 この世で最大の賛辞と、 「――――――――――――――」 そして呪いの言葉を、贈ろう。 「――――――――――――――」 示された別れのカタチ。 響き渡る銃声の中、それは確かに、東横桃子のもとに届いていた。 ■ 受け止められない現実を直視したとき、私の口から漏れたのは言葉にならない曖昧な声だった。 「…………ぁ……え?」 一発の銃声が轟いた。 からん、と薬莢が床に落ちる音がした。 そして振り返れば、背後には銃を持った東横桃子が立っていた。 「……え?」 そこまでは、別にいい。多分、大した事ではない。 けれど、どうしてだろう。 どうして、ついさっきまで隣で話していた彼が、倒れていくのだろう。 どうして、彼の後頭部から血が噴出して、それが私の顔に降りかかるのだろう。 どうして、握っていた彼の袖口が、私の指の間からするりと抜け落ちていくのだろう。 どうして、彼は倒れたまま、起き上がらないのだろう。 どうして? すぐには理解できなかった。 理解なんて、したくなかった。 「…………嘘」 現実を認めたくなくて、そんな言葉が零れ落ちる。 けれど嘘ではなかった。 彼は死んだ。 助けてくれるって、言ったのに。 まかせろって言ったのに。 信じていたのに。 なのに居なくなってしまうのか? 私をまた、一人にするのか? 「……うそ……嘘……ッ!!」 現実を受け入れる事も出来ないまま、その言葉だけが頭の中をぐるぐる回る。 ――うそつき。 ■ 「……ぁ……れ?」 東横桃子が我に返ったとき、状況はちょうど一コマ程とんでいた。 ルルーシュが倒れている。頭から血を流して死んでいる。 それは当たり前の事であり、重要な事ではない。 大事なのはこの瞬間、計画は明確な狂いを見せていたということ。 銃を使わされたのは不本意だったが、それでもまだ状況は桃子に利するはずだった。 銃声で桃子の居所は知れる、だがそこにはタイムラグがある。 誰しも想定しない場所からの突然の銃声。突然の死。 背後なら言わずもがな、正面からの不意打ちに人は慣れていない。 確実に混乱が起こる。 だからその内に、もう一人くらいは殺せる。少なくとも逃げる事はできるだろう。 即座に冷静に動く事さえすれば、優位に立ち回れたはずだ。 そしてまず確実に、この場で最も警戒すべき対象、桃子に一番近い位置にいる敵――平沢憂は動けない。 突然さを差し引いても、ルルーシュの死は彼女の視線を釘付けにし、全身を膠着させるに足る意味を持つはずだ。 少なくとも桃子はそう考えていたし、そしてその考えは真実だ。 だから、その間に、無防備な憂へと銃弾を叩き込む……はずだったというのに。 「桃子……ちゃん……?」 なのに、もう既に、憂の目は桃子に向けられている。 疑問、恐怖、驚愕の視線に貫かれている。 おかしい。 必要な工程が一つ足りない。 憂が、桃子以外の全員の視線がルルーシュの死に囚われる瞬間が、桃子の好機がスッポリと場面から抜け落ちていた。 「桃子ちゃん……どう……して……?」 「…………ぁ」 「ねえどうしてっ……どうしてこんなッ……!」 すでに驚愕を通り過ぎた平沢憂がパニックに陥りかけているのは分った。 けれど答えることなど出来ない。落ち着かせるために返す言葉など見つかるはずはない。 桃子は裏切った、殺した、終わらせた。言い訳も弁解も出来はしない。 どうしてかと聞きたいのは、此方も同じだ。 ルルーシュを撃った直後、ほんの一瞬、一秒にも満たない刹那、桃子は意識を手放していた。 不可解な間隙。 それだけで有利な状況が死地へと切り替わっていた。 「…………そっか」 『――よろしくね。桃子ちゃん』 切り替わる。 「そっか……そうなんだ……」 『――辛いときは『友達』にも頼ってくださいっす』 平沢憂の、疑問と恐怖の視線が、殺意だけを込めた目線へと。 友達を見る目が、外敵を見る眼に切り替わる。 「あ……ああああああぁ…………!」 憂は桃子の返事など待つ必要も無かったのだ。 答えなど、最初から目の前にしかないのだから。 それが例え、どれほど認めたくない現実であろうと。 再び彼女達の身体を紅く濡らした彼の鮮血こそが、覆しようのない事実なのだから。 「ぁあああ、あ、ぅ……うぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!!!」 ずいぶんと遅れて暴発する慟哭の絶叫。 それと共に、憂はスカートのポケットから己の拳銃――S W M10を引き抜いた。 両手で、撃鉄を起こす。 目前の敵に向って銃口を突きつける。 「……っ!!」 同時、桃子は漸く自分の手が銃を握ったままぶら下がっているのを自覚して、慌てて両腕を振り上げる。 至近距離で向かい合う銃口。 ぶつかり合う殺意。 ここに、絆は砕け散った。 遂に彼女達の道は決定的に分断された。 かつて芽生えた小さな感情など、全て泡沫の如くに消えていく。 けれど今だけは、願いも、動作も、叫ぶ言葉すら、同じ。 「「――死ねッッ!!」」 この瞬間においてのみ、二人の意志は一つだった。 ■ そして二度目の銃声が轟いた。 二つに重なっていたものの、音色は特に一度目から変動せず。 反響の後にはパチッパチッと、何かが弾けるような音が鳴っていた。 「「……………………え?」」 二人の少女が発する、疑問の声は重なった。 引き金を引き絞る直前であった指は止まり、桃子は正面を、憂は背後に目を向ける。 「あー」 ソレは状況把握から最も遠い場所にあった。 ソレは事情背景から最も遠い場所にあった。 「あー、なるほど。なるほど、なるほど、ナルホドねぇ」 にも拘らず、ソレは誰よりも何よりも速く動いた。 「お嬢ちゃん達はここで戦争をおっぱじめるってぇわけかい」 事情を最も速く察して動いた平沢憂よりも。 最初から全てを承知して行動を開始していた東横桃子すらも置き去って。 「だったらよぉ、つれねぇじゃねえか……なあ?」 この場の誰よりも速く、鮮やかに、電速でもって先制する。 「そろそろまぜろよ」 鮮血と共に、第二の死が降り注いでいた。 コルトガバメントから発射された.45ACP弾が、ソレの隣にいたデュオ・マックスウェルの胸部を吹き飛ばし、あたり一面に血糊を撒き散らす。 少年の体は廊下の壁にべったりと血液の一本線を引きながら滑り落ちていった。 弾ける飛沫は生命の雨。 赤いスコールはこの場に居る全ての者に降り注ぐ。 それを最も浴びたのは当然、一番近くに居たソレである。 「ふ……はははッ……」 ソレ――彼――彼女――アリー・アル・サーシェスは告げる。 全身を染め上げる赤色を気にもせず、頬にへばりついた肉と鮮血など気に意に介さず。 電光石火の一挙動を可能とした蒼い稲妻を全身からバチバチと放ちながら。 「はははははははははははははははははははははッッッ!!」 汚すように、悪戯ぶように、犯すように、殺すように。 本来は純情で可愛らしい少女の顔を血に濡らし、凄絶に歪めて哂いながら告げるのだ。 「さあッ! 戦争の始まりだッ!!」 けれどやはり同時に、可憐な貌で。 戦争屋は、開戦の号砲を打ち上げた。 一ノ章:千切る絆――了 時系列順で読む Back 正義の味方 Next GEASS;HEAD END 『戦場』 投下順で読む Back 裏切り者、二人と一匹 Next GEASS;HEAD END 『戦場』 283 殺意の火薬庫 東横桃子 288 GEASS;HEAD END 『戦場』 283 殺意の火薬庫 アリー・アル・サーシェス 288 GEASS;HEAD END 『戦場』 283 殺意の火薬庫 デュオ・マックスウェル 288 GEASS;HEAD END 『戦場』 283 殺意の火薬庫 平沢憂 288 GEASS;HEAD END 『戦場』 283 殺意の火薬庫 ルルーシュ・ランペルージ 288 GEASS;HEAD END 『死神』 284 理想の果て(前編) 秋山澪 288 GEASS;HEAD END 『死神』
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右手に剣を左手に死者を 心に激しい殺意を抱き締め ◆Nfn0xgOvQ2 紅蓮の海を突き抜け北上し、ある工場の一角に狂戦士は腰を下ろす。 先程の乱戦にて失われた魔力を回復させる為、少々休息が必要だ。 ならば休息のついでに今後の事を思考しよう。 まずはあの焔の海より持ち出した少女の亡骸。 数多の弾丸によりその身を打ち貫かれ、全身を赤く染めている。 顔に傷が無いのが唯一の救いだろうか。 死者を無碍に扱う事が出来ぬゆえ、ここまで運んできた。 ゆえにこの場に捨て置くという思考はない。 かといって今の己では少女を十分に弔ってやる事はできない。 ならばせめて、この少女の亡骸がこれ以上の辱めを受けぬよう人気のない所に安置するとしよう。 首輪を解除しようとする輩が、その首を切り落とし首輪を手に入れ様とするかもしれないからだ。 だが自分の目的は一刻も早く、主であるイリヤの元にたどり着く事。その為に全ての参加者をせん滅する事。 一々人気のない場所を探している暇はない。 だからその場所自体はまたあとで考えるとしよう、それよりも優先する事が己にはあるのだ。 それはそれとして出来れば今は、他の参加者には会いたくないものだ。 会えば己は本能のままに殺戮を開始する、そうなれば戦いの余波で少女の遺体がどうなるか分からない。 少女の亡骸を気にかけながらの戦闘など、狂戦士たるこの身には不可能だ。 もし戦いの余波に巻き込まれてしまえば、どうなるかは目に見えている。 仮に今この場に力の無い参加者が表れたとしよう、そうなれどうなる? 決まっている、相手を破壊しつくす唯それだけの事。 『理性』より『本能』が勝る、それが狂戦士としての己の性であり枷なのだ。 だからこそ休息をしている今は、誰にも会いたくはない。 少女の亡骸の事はこれでいいとして、次は現状の己の武器だ。 先の戦いで手にしたこの剣。 己の本能が警告を発している、この剣を他者の手に渡すなと。 この漆黒の剣、いかな英雄の宝具かはしれないが一度その力を解き放てば、己の残りの命全てを根こそぎ奪いかねない力を秘めている。 それほどの神秘を内包している事を狂戦士は感じ取る。 それもその筈、“最強の幻想”として聖剣のカテゴリー内では最上位に位置する剣。 そこらにある、凡百の剣とは格が違う。 もし大英雄・ヘラクレスとしての己ならばこの上なく最上の武器にもなりえただろう、だが狂戦士・ヘラクレスにおいてはそうはいかない。 狂戦士たる今の己ではこの剣の真名の開放は行えない。 それはまだいい、最大の問題は己にとってこの剣はいささか小さいということだ。 バーサーカーからすれば短剣やナイフの様だとまでは言わないが、何となく物足りないきがしなくもない。 無論それで戦えないというわけではない、大英雄としての技術があるならば十二分に戦える。 だが狂戦士としてかつての技術が一部封印されている今は、忠勝に持っていかれてしまった斧の様に、自らの剛力を存分に生かせる獲物の方が好ましい。 己の培った業を封じられているならば、引き換えに手にした強力を越える剛力で補うのみ。 ならば武器を得る為にどこに向かう? いや、そもそも武器を調達できそうな場所が近くにあるのか? ないならば他の参加者を襲い、武器を奪った方が効率がよいだろう。 そう思いつつバーサーカーは跳躍する。 手頃な建物屋根を飛び渡り、あるいはよじ登りそこから辺りを見回す。 すると北の山に城が立っているのを見つける。 ヘラクレスの生きた時代の常識からすれば、城があるならばそこを守る兵士が存在する。 ならばその兵士が武装する為の鎧や武器があるやもしれない。 加えて、宝物庫には宝具が隠されている可能性もある。 真名が解放できずとも、宝具そのものは並みの武具より格段に優れた存在である。 むしろ宝具があるならば、他の参加者の手に渡るほうが危険。 さらに付け加えれば、見失ったキャスターがあそこに陣地を築いたならば、それこそ難攻不落の要塞になりかねない。 ならば次に目指すべきは城だ。 ここに呼ばれて既に三度も殺されている、なかなかに豪傑達が集まっているようだ。 血沸き肉躍る。 尋常なる戦いは望む所、拒む理由はどこにも無い。 だが己の目的を間違えてはいけない、自分の目的は兵達との決闘ではなく、主を救うために参加者たちをせん滅する事。 だと言うのに、まだ唯の一人も殺す事が出来ていないとは何たる無様。 それでも大英雄の名を頂いた者か、狂戦士の所業だと言うのか!? ここは一度必殺を期す為に己の装備を整える。 確実に完全に、相手を壊して斃して滅して打ち破るため。 一刻も早く主の元にたどり着くために。 ふと視線を下げれば山の中腹に古びた洋館らしきものが…… あんな所にあの様な洋館があっても、わざわざ足を運ぶ者はおるまい。 …そうかそれならば、この少女の亡骸はあそこへ安置するか。 そう思考し、リリーナの亡骸を抱えなおすとバーサーカーは北へと駆け出した。 川を越えのを駆け抜けるその途中、一回目の放送が訪れるが 名簿外の参加者 死者 禁止エリア だが、この狂戦士には殆どがどうでもよかった。 例え、その腕に抱き抱える少女の名が呼ばれていたとしても、さりとて気にする事もない。 ただ記憶の片隅に禁止エリアの位置だけを記憶した。 幾らか経ちバーサーカーは洋館の前にたどり着く。 この様な倒壊しそうな洋館ないに留まる酔狂はおるまい、それはそれで好都合。 だが自分の巨体では玄関から入る事は出来そうになく、無理に侵入すればそれを引き金にして洋館が倒壊する恐れもある。 しかたなくバーサーカーは、リリーナの遺体を館の玄関にそっと横たえる。 運が良ければ、心ある誰かがこの少女を弔うだろう。 ならばと、狂戦士は歩みを進める。振り返る事無く。 今の己が気にかけるのはただ一人。 その一人の少女の元へ確実にたどり着くため先を急ぐ。 全ての参加者を血の海に沈める為に。 「■■■■■■■■■■■■――!!」 咆哮 それは次なる死闘への期待か勝利への誓いか、バーサーカーは驀進する。 バーサーカーは気がつかなかった。目の前の館の地下に二人の参加者がいる事に。 だがそれは仕方がない事だ。 憩いの館にはある一つの仕掛けがしてあった、それは内部にいる参加者の気配を遮断するというものだ。 ここは名前の通り、憩いの場所なのだ。 戦闘行為の禁止の処置こそされていないものの、ある程度戦闘にならない様に、または回避する為の仕掛けがいくつかなされている。 館内の参加者の気配の遮断はその一つだ。 もしその処置がなされていなかったなら、バーサーカーは本能のままに殺戮を開始しただろう。 だが結果として戦闘は起きなかった。 それは今は亡きリリーナにとっては嬉しい事だろう、自分の亡骸を弔う事が起因してヒイロが命の危険に晒されてしまうなど、微塵も望んでいないのだから。 さて、ヒイロがこの洋館を出るときに、突如現れたリリーナの亡骸を見てどう思うかそれは神のみぞ知る。 【C-3/憩いの館付近/1日目/朝】 【バーサーカー@Fate/stay night】 [状態]:健康、狂化 [服装]:上半身裸(デフォルト) [装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、食料(缶詰セット) [道具]:なし [思考] 基本:イリヤ(少なくとも参加者にはいない)を守る。 1:城に向かい武器を探す。 2:立ち塞がる全ての障害を打ち倒し、イリヤの元へと戻る。 3:キャスターを捜索し、陣地を整えられる前に撃滅する。 4:次こそ本多忠勝と決着を着けたい。 [備考] ※“十二の試練(ゴッド・ハンド)”Verアニ3 ・合計12回まで死亡してもその場で蘇生。状態を健康にまで回復。耐久力を大きく上回るダメージを受けた場合は複数の命のストックを消費。 現在残り蘇生回数4回。 ・無効化できるのは一度バーサーカーを殺した攻撃の2回目以降のみ。 現在無効リスト:対ナイトメア戦闘用大型ランス、干将・莫耶オーバーエッジ、偽・螺旋剣(カラドボルグ)、Unlimited Brade Works おもちゃの兵隊、ドラグノフ 大質量の物体 ・首輪の爆発での死亡時には蘇生できない。 ※参戦時期は14話 理想の果て直後です。 ※エクスカリバーが黒く染まっています。 ※E-2南西部から中央部にかけてバーサーカーが通った破壊跡ができました(多数の家屋・電柱・街路樹・線路の残骸あり)。 ※銃撃により一度、コンテナにより一度、都合二度死亡しました。 時系列順で読む Back 夢! Next サクラ(イ)大戦 投下順で読む Back 狂気の拠り所 Next サクラ(イ)大戦 098 煉獄の炎 バーサーカー 132 みんな! 丸太は持ったか!!
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さよならのありか ◆qh.kxdFkfM そこはあの日のままだった。気がつくとヴァンは長く赤い絨毯の上に立っていて、目の前に自身が打倒した師がいた。 「ガドヴェド……? なんで」 「何を呆けている。今日はお前の――お前たちの記念すべき日だというのに」 「んあ?」 周りを見れば、どこか見たような連中が長椅子に座っている。ヘンなカップル、ヘンな水兵、ヘンな水着の女とヘンな下着の男。 ヘンな……。そんな多くの人間の中に、見知った顔があった。自分にもっとも近い、最前列の長椅子だ。 「ウェンディ、これはどういうことだ」 するとエビフライのような髪型の少女は驚いた顔をして、 「何言ってるのよヴァン。あなたの結婚式じゃない」 隣で短い青髪の女がため息を吐く。 「そうよ。ウェンディやアタシをつっぱねて結婚するんだから、幸せになりなさいよね」 「はあ?」 そこで初めて、隣に誰かがいるのに気づく。純白のウェディングドレスに身を包んだ女性。 顔はベールに覆われて、誰かは分からない。 「それでは誓いの口づけを」 神父であるガドヴェドがそういうと、ウェンディたちとは反対側の席が沸く。 『よっしゃ。一発キツいのをお見舞いしてやれ』『我が弟子よ、正義のキッスというものを見せてやれ』 『うむ。口付けとは神聖でなければならん』『わしじゃだめかい?』『駄目にきまってます!』 「…………」 ヴァンは恐る恐るベールを剥ぐ。もしかしたらエレナかもしれない。そうでないにしても、相手が誰かは気になる。 「ヴァン」 そこにいたのは……。 「プリシラ……」 自身を好きだといってくれた、少女の姿がそこにあった。その顔は笑っていて、泣いていて……よくわからない表情だ。 「ごめんね、ヴァン。返事を待つのも聞きにいくのも、できなくなっちゃった」 「それはどういう」 その先は口から出ることはなかった。彼の視界は少女の顔が大部分を占め、その涙がきらきらと輝いているのが見える。 やがて自分が何をされているのか認識した時、自身と重なっていたプリシラは突然体勢を崩した。 「おい! どうし……」 抱き上げようと手を伸ばすが、彼女の体に触れることなく、腕は少女を通り過ぎた。何度やってもそれは変わらない。 まるで雲を掴もうとしているみたいだ。 「くそっ、くそっ! なんで掴めない!」 「ヴァン、『死』とは何だろうな」 顔を上げると、ガドヴェドは悲痛な表情をヴァンに向けていた。 そこで初めて周囲の人間が消え、教会だったはずの場所が真っ暗闇な空間になっていたことに気づく。 「お前は私と同志を斬った。しかしそれがはたして『死』なのだろうか」 「何わけのわからないことを言ってやがる!」 人は斬られれば死ぬ。そして死んだ人間は生き返らない。 その絶対原則をヴァンは叫ぶ。すると強面の男はふっと顔を綻ばせる。 「そうだ、それでいい」 そこでヴァンの視界はブラックアウトした。 「うっ……」 朝日が目にささるような感覚とともに、ヴァンの意識は覚醒していく。 どうやら調味料に酒が含まれていたらしい。もうあの弁当は食えたものじゃない。 男は直前まで使っていたみりんのボトルと喰いかけの弁当を、とりあえずそばで未だに眠り続けている女性の前に置いておく。 もしかしたら食べるかもしれないし、食い物を粗末にするのは気が引けた。決しておしつけたわけではない、決して。 「…………」 寝る前のことを思い出す。カギ爪、レイ、ファサなんとか……。死んだはずの奴らがなぜか生きていて、ここにいるらしい。 …………。 …………。 …………。 「まあいいか」 そういうことは会った時に考えればいい。もしかしたら間違って載せたのかもしれない。 少なくとも自分は直接カギ爪の死を見ている。そっちの方が、こんな紙切れの情報より絶対に真実なのだ。 「なんかまた腹減ったな」 それからしばらくして、弁当と牛乳をひとつずつ平らげたヴァンは、再びショッピングセンターに舞い戻っていた。 することがあるわけではない。少なくともあそこにいるよりはマシだろうという考えだ。 「お……」 そこでヴァンはあるものを見つけた。男ならば――いや、ここはあえて漢と表記させてもらおう――誰しもが興味を抱くであろうそれに、その漢も例にもれず、興味津々という面持ちで向かっていった。 数十分後、ヴァンはとある機動兵器――モビルスーツ(MS)を操っていた。 オレンジのカラーリングをしたそのMSの名は、アリオスガンダム。 ほかにも色々な種類があったが、ヴァンはこのMSの変形機構が自身のヨロイであるダンと似ているのでこれを選択した。 「なかなかいいもんだな」 そう感嘆するヴァンの顔は、まるで少年のような輝きを放っていた。 アリオスはヴァンの意のままに宙を浮かび、空を舞う。停止、着地。 GNビームサーベルをふりまわす。再び飛翔。今度は変形し、飛行形態で中空を漂う。 「これからどうするかな」 空を見上げ、ふと考える。当面のメシは確保した。アリオスを手にした今、暇で時間を持て余すことはないだろう。 …………。 …………。 …………。 「まあいいか」 とりあえず、アリオスの改造でもしよう。意気揚々と追加武装と思われるパーツを調達するその男の姿を、緑のデュアルアイは静かに見守っていた。 仮にこのガンダムに意志と発声機能があるならば、おそらくこう言うだろう。 『こんな状況で何をしているんだ、この馬鹿は』、と。 【E-1/模型店内/1日目/朝】 【ヴァン@ガン×ソード】 [状態]:満腹、アリオスに夢中 [服装]:黒のタキシード、テンガロンハット [装備]:ヴァンの蛮刀@ガン×ソード 、アリオスガンダム@現実 [道具]:基本支給品一式、調味料×大量、徳用弁当×6、1L入り紙パック牛乳×5 [思考] 基本:何をしたらいいのか分からないが、自分の感情の赴くまま行動する 1:とりあえずこれ(アリオス)で遊ぶ 2:向かってくる相手は倒す 3:主催とやらは気にくわない [備考] ※26話「タキシードは明日に舞う」にてカギ爪の男を殺害し、皆と別れた後より参戦。 ※ヴァンは現時点では出会った女性の名前を誰一人として覚えていません。 ※死者が蘇生している可能性があることを確認しましたが、結論は保留にしました。 ※蒼崎橙子の人形@空の境界はF-1に放置しました。 ※第一回放送を聞き逃しました。 【アリオスガンダム@現実】 ガンダムの支援機を支援するガンダム。一部からは船の備品だと思われている。パイロットの必要性は賛否両論である。 ●MSの最大特徴を再現する1/100シリーズ。アリオスガンダムの“変形”機構を再 現しながら、より組み立てやすいパーツ構成を実現。 ●飛行形態へ変形可能。先端は分かれてクローに。各種ロック機構で変形も簡単。 ●遊び方を考慮した変形後のロック。変形機構を利用した力強いポージング表現が可能。 ●付属品:GNビームサーベル x 2、GNツインビームライフル x 1、GNビー ムシールド、武器用握り手×2(左右)アクションベース対応ジョイントパーツ(MS 用・飛行形態用2種) 定価:\2,730 時系列順で読む Back インターミッション――《第一回定時放送》 Next 機械人形の館 投下順で読む Back インターミッション――《第一回定時放送》 Next 機械人形の館 101 Unlimited Cooking Works ヴァン 128 偽者(レプリカ)、E-2学校に死す!
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See visionS / Fragments 6 『あめふり』 -Others-◆ANI3oprwOY ◆ ◆ ◆ /あめふり - Others - ◆ ◆ ◆ - 枢木スザク - ざあざあと。 落下してくる透明の飛沫に余分な混じりはない。 砂粒や油の含まない純粋な水。 飲み込んだとしても一切人体に害を及ぼさない清らかさは、この雨粒が人工物であることの証明だった。 気温は低い。 落ち着いていた雨脚が強くなった現在ではなおのこと、良い環境とは言いがたく。 それでも、動かなければならない者がいる。 このとき枢木スザクは行動しなければならなかった。 ショッピングセンターの惨状を確認した後、彼は愛機の元へと戻っていた。 ランスロットの周りを一周。 機体の状況を確認し、スザクは足を止める。 あくまでも目視で分かる範囲でではあるが、関節部や駆動に直接影響する部分への損傷はない。 装甲の損傷が大きく耐久性には期待できないが、エナジーフィラーの補給さえできれば動かすことは可能だろう。 そう考えつつも、スザクは自分の判断に自信を持ってはいなかった。 スザクは技術者ではない。KMFについて専門的に学んだこともない。 さすがに修理やメンテナンスに関する最低限の知識は有しているが、それだけだ。 だからこそ、本当に動くのかどうか、一刻も早く確かめる必要がある。 エナジーフィラーの入手はスザクにとって急務といえた。 では、どうやって手に入れるのか? 思いついたのは、自動販売機。 ペリカはある。 ルルーシュが遺したメッセージに従って廃ビルを探せば、ペリカの入ったデイパックをみつけることができた。 機体の整備を行うのに最低限必要と思われる工具を揃えても、二億近いペリカが手元に残っている。 廃ビルの販売機にはなかったが、この島にあるすべての販売機を当たれば ひとつくらいはエナジーフィラーを売っている販売機があるかもしれない。 希望的観測だという自覚はある。 だが、他に当てがない以上はやってみるしかない。 ショッピングセンターの販売機は瓦礫に埋まって使えない。 となると、ここからいちばん近いのは…… そこまで考えたところで、スザクの思考が止まった。 原因は、痛み。 警戒は怠っていなかった。 それでも避けられなかった、気づくことさえできなかった存在に与えられた衝撃。 後に訪れた痛みは、鮮烈にして強烈。 じくりとした熱が左足首から全身に伝わっていく。 幾度となく味わってなお慣れることのない、けれどとても馴染みのあるそれは 「……アーサー、君は……」 足元へと視線を落とせば、足首に噛みついている黒猫の姿が見える。 他にも、三毛猫と、アーサーとは別の黒い子猫。 学校を出る際、比較的安全だろうと半ば強引に阿良々木暦に預けたはずの猫が三匹、 いつの間にかスザクの足元に集まっていた。 「アー、サー、はなしてくれ、お願いだから」 やっとの思いで喰いついた歯を自分の足首から引き剥がす。 マンションのクローゼットにあった服に着替えた際、新調した靴下は雨にぬれてもいないのに湿っている。 構わずアーサーを抱きかかえて立ち上がろうとしたところで、彼はスザクの腕の中からするりと抜けだしてしまった。 「アーサー待って」 アーサーを追おうと、スザクは慌てて立ち上がり振り返った。 それは考えなんて何もない、反射的に為された行動。 結果、スザクの瞳は、それまで不自然なまでに視界に入れようとしなかった、壊れたモノに捕らわれる。 「……………」 視線の先にあるのは、サザーランドだった物―――ルルーシュの棺。 スザクはそれを、ただ、見つめる。 「………何をやってるんだろうな、僕は」 自嘲を含んだ声と、唐突に鳴り出した電子音が重なった。 電子音の意味を瞬時に理解したスザクは、ハッチが開いたままのコクピットを覗き込む。 思ったとおり、通信を知らせる光が点滅していた。 通信機を持っていた、あるいは今持っている可能性のある人間は限られる。 そのうちの誰であれ、応じなければならない必要性は感じられない。 だが、スザクは迷っていた。 応じるか、応じないか。 出たいか、出たくないか。 必要性はないと、答えは出ているはずなのに。 電子音は鳴り続け、光は点滅を続けている。 ◆ ◆ ◆ - 両儀式 - ぴちゃりぴちゃり、と。 遠く、鳴る音が聞こえる。 何処かで雨漏りでも起こっているのだろうか。 室内にいても聞こえ続ける水の音に、私は少しばかり気分が悪くなる。 薄暗い部屋、湿った匂いが充満していた。 倒壊したショッピングセンターの付近に比較的損壊の少ないアパートを見つけ、 一階の部屋に入って腰を落ちつけたのはいいが。気分は落ち着いた状況から程遠かった。 ここ一帯の電線が断ち切られた影響だろう、このアパートの電気は死んでいるようだ。 とはいえ水道はなんとか生きていたし、幸い替えの着物は持ち歩いていた。 おかげで雨に濡れた体を流すことも、土のついた服から新品の服に着替えることもできた。 流石に替えのジャンパーまでは持っていなかったけど、それはこの家の居間にかけられていた物を拝借した。 私の趣味とは少し違うけど、まあ我慢出来ないこともない。 コレがないと、気分的な意味でも、また気温の下降っぷりを鑑みても、しっくりこない。 雨漏りの音は何処から聞こえるのか。 この部屋でないことは確実だけど。探す気にもならない。 外から見てもアパート自体の支柱が大きく傾いていて、そのくらいは当然に思えたし、水道管から水漏れしてないだけマシだ。 そも、立て付けが歪んで開かないドア。あれを切り裂いて半ば押し入るように侵入し、着替えた後、ベッドに腰掛けた。 ただそれだけのことで、驚くほどの疲れに襲われている。 対応できるかどうか分からない雨漏りの場所を探す余力なんて、残っていない。 壁に背をつけて座った姿勢にもやがて耐えられなくなり。 私はゆっくりとベッドの上で身を横たえた。 すぐに睡魔が襲ってくる。 黒々とした何かが意識を飲み込んでいく。 私は抵抗せず、飲まれていく。 意識が掻き消える寸前。 よくわからない景色が、いくつも見えた。 それは、死だった。 最初に、首を吹き飛ばされた金髪の少女の、死。 次に、私が知らなかった、あいつの、死。 浅上藤乃の、死。 衛宮士郎の、死。 やはり見覚えのない、デュオの、死。 背中で絶えた、白井黒子の、死。 そして最後に、天江衣の、死。 ―――どれも、死だ。 知っている死もあるし、知らない死もある。 けれどそれが死であるならば、私は誰よりも知っている概念、そのはずだ。 克明に見慣れている、ただの『死』だ。 なのにどれも、どれも、今ならば、今までと全く違うものに感じていた。 やりたいことは知っている。 漠然とだけど、わかっている。 ただ私の中に残ってるユメを、見続けていたいと。 そのためにしなければいけないことも、理解した。 そう、分かってる。今は眠っても構わない。眠ってしまうべきだ。 指先が冷たくなっていく。 だから、余計な考えを捨ておいて。 眠りにつく寸前に思ったことは、一つだけ。 ―――ああ、それにしても、この世界の『死』は、やけに重い。 ◆ ◆ ◆ - 阿良々木暦 - ぽたぽたと。 髪の先から雫が落ちる。 まったくもって足が重い。 靴底に鉛でもひっついてるみたいだ。 ガムテープでぐるぐる巻きにしてなんとかひっつけた手首の痛みより、足の怠さの方が気にかかる。 確かに今は、心のもやもやはなくなった。 わだかまっていたことは、平沢のヨーヨーにぜんぶ削ぎ落とされたみたいだ。 僕に残っているのは、降り止まない雨の冷たさと。 だからといって何も出来ないという、不甲斐なさだけ。 枯れ果てた町を歩き始めて、まだそんなに時間はたっていない。 歩き回ってはいるけれど、グラハムさんが座り込んでいた場所からそう離れてもいない。 ショッピングセンター駐車場(跡地)前。 自販機や換金機が置かれていたはずの場所に、僕は平沢と共にやってきていた。 目的はもちろん。使えるような装備品を探して、ということなのだけど。 これが見事に瓦礫の下に消えている。 もちろん換金機も、何処を見渡してもない。 あるのはコンクリートの塊と土埃、そして泥の水たまりだけ、といったところだ。 グラハムさんや枢木の乗っていたロボットがあれば、まだ瓦礫の下を探索する余裕があるかもしれないけれど。 僕(と平沢)だけじゃあ、人手不足以前の問題だろう。 一面、崩落の残滓と、戦の傷跡。 それが僕らが戦ったこの場所の、変わらぬ景色。 さっそくの無駄足、しかも、だ。 「……嫌がらせのつもりだろうか?」 ここにきて雨が強まっていく。 さっきまでは、傘も要らないくらいまで弱まっていたのに。 あまりにも今の僕等の状況にマッチしていたから、突っ込むのも忘れていたけれど。 後でインデックスには、この現象についてもう少し詳しく聞いておこう。 まあ、なにはともあれ、とにかく。 「これでまた、やることが無くなったわけだけど」 ペリカ無し。 武器無し。 力無し。 そして目的も無しとくれば、困ったもんだ。 次の放送の後、ここに現れるという、主催者。 リボンズ・アルマーク。神を名乗るもの。僕らにとってはすべての元凶。 だけど僕には、戦う方法なんて、無い。 あの威圧感。 あの存在感。 あの絶対感。 不足無く、神を名乗るに相応しいだろう。 少なくともこの場所において、誰も敵わぬものをそう呼ぶならば。 で、僕も、おそらく他の誰もが感じたはずだけど。 ――あれには勝てない。 何があろうと。何であろうと。 抗うものが、抗うべき僕等である限り。 僕らはあれに連れてこられ、戦わされる贄。 前提そのものが、既に優劣を決定づけているから。 僕等が僕等である限り、あいつには、絶対に勝てないって分かってる。 だけど、それでも、続けるって決めた。 目の前の戦いが避けれられないならば、それをやろうって。 ハッピーエンドはもう望めない。 だけど、それでもいい。 生きたい。生きて、何かを変えたい。 哀しい結末だけは、変えられないとしても。 何かを、変えたい。 もっとも奇跡なんて高尚なもの、いまさら期待するお花も、流石に僕の頭のなかにすら咲いてない。 放送の声はああ言っていたけれど。 これには僕の、僕なりの持論もある。 だけど実際、何を変えれば僕は満足するんだろう。 問題とはつまり、これ。 僕は何をするのかということだった。 戦える人物は、まず僕自身と、同じようにまだ生きたいと願っている平沢と。 そして新たに、式と、枢木。 蓋を開けてみれば、思ったより頑張ってる奴はたくさんいたわけで。 これは僕としては予想外というか、なんというか。 心折れてしまった人達の立ち上がる、手伝いが出来ればとか、実はちょっぴり思ってた。 あるいはバラバラになってしまった僕等を、纏めることが出来ればとか、思ってはいた。 人は人を救えない。身にしみて知った事実。そして僕はもう、これを曲げることはないだろう。 僕に出来ることはちっぽけで、ほとんど何の足しにならないだろうけど。 それでも、ちっぽけなことが僕の抵抗になるなら、なんて、僕にしては珍しい、カッコつけた主人公っぽいノリを……。 「ま、柄じゃないことは出来ないよなぁ……」 結局のところ、やっぱり僕にはそういう役は無理だったわけだ。 枢木はとっくに決めてた。 やるべきこと。 式だって知ってた。 やりたいこと。 僕なんかよりずっと、あの二人は具体的に。 僕が小さいことで悩んで、うじうじやって。やっと吹っ切れた時、あいつらはとうに腹を括ってた。 自信なくなるというよりも、自分の小ささを再確認させられる。 あいつらには、僕の力ない手助けなんて要らないみたいだった。 だからこそ困った。 これじゃあせっかく再出発したのに、さっそく何もすることがないじゃないか。 どうしたものか。まったくこれだから僕って奴は……。 無力感が体の力を奪う。 止めてしまえと囁きかけ、眠ってしまえと足を止める。 だから僕は、そんな僕自身を痛めつけたくなる。 『雨が止む前に』 それは僕がさっき即興で決めたルールだったはずだ。 いつかこの雨は止むと、インデックスは言っていた。 雨が止むまでゆっくり休んで、からじゃ遅い。 敵は強大で、待ってくれない。 つまり僕は、それより早く結果を出したい。 なのに、現実はこれだ。 焦りばかりが膨らんでいく。 いっそ素手でこの瓦礫の絨毯を掘り返して見ようかとさえ、回らない頭は考えてるぐらいだ。 なにか欲しい。なにか、能力でも、武器でも、情報でも、なんでもいいから。 時間なんて、きっとあっという間に無くなってしまうのに。 「雨が……止む前に……」 動かなきゃ、ならないから。 焦れる思いに突き動かされるままに。 僕はまた、前に進もうと。 「……?」 だけどその時、凍えてかじかんだ手に、感触があった。 僕の背後にいる女の子の手、平沢の手だった。 僕と同じように体温が低下して、だからこそもう曖昧になっていた感覚に、ぎゅっと握る熱が伝わる。 一瞬、頭が空白になっていた。 ……ああ、まったく。 未だに、自虐ネタには困らないみたいだ。 「ごめんな。無駄足に付きあわせた」 今の状況がわかれば、驚くほど頭が冷えていく。 ガチガチになった体と同じか、それ以上に冷えていく。 僕はこの雨の中、いつまで女の子を歩かせているつもりなのだろう。 傘もささずに。馬鹿じゃないのか。 こんな状況を羽川に見られたら、きっと叱られるだろうな。 「……もどろうか?」 それは、一番言いたくないセリフだった。 一番したくない行為だった。 何の成果も上げられずに、式や枢木にもう一度会っても、きっと何も変わらないと思っていたから。 最低限、僕に出来る事を見つけないと、あいつらと肩を並べたり、ましてや、力を合わせて戦おうだなんて、言えない。 だけど強まる雨と低まる体温に、震える平沢をこれ以上引っ張りまわすことは出来なかった。 「…………」 小さく、頷いた平沢を見て。 僕は瓦礫の絨毯に背を向ける。 ここからグラハムさんが居たところまで、五百メートルもない。 式か枢木の痕跡を、残っているならば追って、合流する。 気は進まないけれど。やってみるしかないだろう。 「寒いなぁ」 強まる雨。 震える平沢の手に、熱を感じ。 ようやく僕は、自分の体がどれだけ冷えていたかを知った。 うん、いやまったくもって。まるで成長していない。 「あー。やっぱり、どうしようもないな。僕は」 笑い出しそうな気分で呟くと。 また、ぎゅっと、平沢の手の感触が、強まった。 意味するところは分からない。 だけどそれは、存外悪くないもので。 一人じゃなくて良かったって、僕は素直に思えたんだ。 ……。 ………。 …………。 で、さて、結論から言うと。 式の居場所はすぐに見つかった。 足跡とかは雨で消えてたから、けっこう苦労するかなーと思っていたんだけども。 幸い、そう時間がかかる事無く彼女のいるアパートを特定できた。 彼女は雨宿りと言っていたから。 おそらくショッピングセンター跡地の近く、極わずかに残った建造物のどこか、という時点で結構絞り込めていた。 そのうえ、玄関のドアがスパァーンと自然にはあり得ないくらい綺麗な切り口で割られていたら、そりゃ余裕で特定と言ったところだろう。 「ひどい有様だな。臭いもキツイ」 式には再会して早々、やんわり(?)と風呂に入ってこいと言われた。 放送前の戦いであれだけボロボロになって、雨に打たれたりとしたのだから当然だろう。 アパートの電気は死んでいるようだったけど、幸運なことに水道は生きているらしい。 玄関口で突っ立っていた平沢を風呂場の方に行かせて、僕は式が不快にならない程度の距離をとって待機するとする。 レディーファーストだ。 正直、今までの状態からして、風呂場まで一人で行けないと言い出さないか不安だったけど。 そんな事は無かったらしい。安心したような、残念なような。 なんて冗談も、ここに至っては寒さを引き立たせるだけだけど。 じきにシャワーの音が聞こえ始め。 僕はふと思い立つ。 この雨の中で、枢木は何をしているのだろう。 もうそんなに雨宿り出来る場所なんて多くはないはずだ。 一面の建造物はほぼ倒壊していて、無事なものは数少ない。 建物の体を成していても、いつ崩れるか分からないものばかりだ。 「ふむ……」 呼んでやるか。 なんて、気分になってくる。 何か方法があれば、だけど。 平沢の持っていた通信機とか。 妙な気持ちの変化だった。 さっきまでは、結果を出さないと会っても仕方ない、なんて思っていたのに。 考えてしまったからには行動したくなってたりする。 まあいいか。 僕がフラグを無視するのは今に始まったことでもないし。 なんて考えて。 僕は枢木と連絡を取る手段を考え始めていた。 時系列順で読む Back See visionS / Fragments 6 『あめふり』 -Index-Librorum-Prohibitorum Ⅱ- Next See visionS / Fragments 6 『あめふり』 -One more- 投下順で読む Back See visionS / Fragments 6 『あめふり』 -Index-Librorum-Prohibitorum Ⅱ- Next See visionS / Fragments 6 『あめふり』 -One more-
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crosswise -black side- / ACT2 『舞姫(まいひめ)』(一) ◆ANI3oprwOY 客観視点における、織田信長とルルーシュ・ランペルージ、アリー・アル・サーシェスの二陣の戦力分析―――。 信長の装備は黒い覇道に染まる聖剣カリバーンにGNビームガトリング、元々保有していた瘴気操作。 王の選定に使われた至高の名剣は鉄を紙も同然に裂き所有者に絶対の勝利を与え、 重装備を冠するガンダムの武装の一品は、威力と軽量を併せ持った優良な武装だ。 そして、肉体に備わった特異性。赤黒い波動を手足のように使役する力。 彼が今まで殺めてきた人の怨嗟を取り込んだが如くの、底なしの悪意。 それらを存分に使いこなす腕と肉体の戦闘力は、確かに一騎当千の強さだ。 それでも単機、あくまで身一つでの戦陣である。 個人の武で覆せる数の差には限界がある。 少なくとも数の上でならルルーシュ側が上回っていた。 憂が離れた現在、ルルーシュとサーシェスとの2人組でのフォーメーション。 ルルーシュはホバーベースで指揮を取っているため直接戦っているのは実質サーシェス1人になる。 そのサーシェスも、生身ではなくモビツスーツリーオーに乗っての戦闘。 全長16.2メートル、重量7トンの人型兵器。武装などなくとも人間相手には充分過ぎる巨体。 雑多な小火器程度では装甲に穴一つ空けられず、足を上げ、地に着ける衝撃だけでも体は木端に吹き飛ばされる。 本来人と機械にはそれだけの差がある。どれだけ戦国武将が強大でも人である以上倒しようはあり、対策も立てられだろう。 ―――しかし、それはあくまで可能性に収まる領域に過ぎない。 既存の戦略、定められたルールを覆す不条理の存在が、世界には在る。 人の面を被った鬼は、常識という只人の住処を喰らい、呑み込んでいく。 従いも、抗いも、残らず無用。 許された道は、ただの一本。 絶望を抱いて溺れ死ぬ末路のみしか与えはしない。 それでは、徹頭徹尾死ぬがよい。 ■ □ □ □ □ crosswise -black side- / ACT2 『舞姫(まいひめ)』 ■ ■ ■ ■ □ /舞姫・弐ノ剣旋 「ぬううぉあああッッッ!」 憤怒と殺意で凝り固められた叫びが、木霊となって地を響かせる。 無数の怨嗟を放つ姿は、人の輪郭を溶かす陽炎となりて発露される。 敵対する人間のみならず、世界全てに向けられた覇気が戦場を包み込む。 「サーシェス、撃ち続けろ。決して近づけさせるなよ!」 「はいはい、分かってますよって―――!」 将の声に頷くモスグリーンの機兵が破滅の銃を構える。 照準固定。エネルギー充填完了。攻撃準備いつでもよし。 目標は正面の重々しい威容。 黒い霧を這わせ、体格差などお構いなしに突っ込んできている。 「狙い撃ちだぜ!」 躊躇なく、操縦桿の引き金を引く。それに連動して巨体の指がトリガーを強く引き、消滅の粒子光が照射された。 溢れる奔流。人智の粋、科学の結晶たる機械が火砲を上げる。 直撃せずとも、かすりでもすれば、サーヴァントであろうと戦国武将であろうと、致命傷となることは間違いない。 だが光線は宙を突き抜け消えるのみ。 標的には悉く命中せず、徒に痕跡だけが残っていく。 衝動的な直感で信長は熱線をかいくぐり、徐々にしかし確実に距離を縮めていく。 考えられないほどの反射神経と運動能力だった。 如何に強大な威力を持つビームライフルといえど、その攻撃は指向性。 それも直線にしか向かわない、軌道としてはとても単純なもの。 破壊力、速度、連射回数。判断材料はいくらでもある。 既にビームライフルの有効範囲を見切っていた信長にとって、必殺の威力を持つ銃はもはや必殺とはいえない。 銃身が焼き付け出し、連射を中止される。 MSにとって対人戦でなら然程問題ない事態も、音速下で移動する男にとってはこの上ない隙だった。 飛び交う弾雨が消えた大地を好機とばかりに踏み込みを加速させる。 影を携え走る姿は幽鬼の如く、されどそこに潜む殺意の火花は羅刹のそれ。 間合いを詰める信長に対し、サーシェスのリーオーは反応しない。 銃が再度、使用可能となるのには5秒とかからないが、その間には潜り込んだ魔剣がリーオーに喰らいつくだろう。 それに、反応する必要もなかった。 サーシェスの役割は攻撃で敵を追い散らすもの。 その間隙を埋めるのが、今の彼の役割なのだから。 艦の振動音に紛れて、耳を劈く銃声が信長へ届く。 正体を窺うよりも先に、驚異に対する本能が俊敏に動いた。 地を蹴り、瞬転により避けた空間が、飛来した数百の礫によって破砕されていく。 上方を見れば、銃撃の主である巨大な影が信長を見下ろしていた。 黒の騎士団の旗艦たるホバーベース、そのデッキに設置されている円柱のオブジェから数多の銃口が伸びている。 対人暴徒鎮圧用に開発された無人機械。船の各所に取り付けられ、示された命令は攻撃(キル)の一点のみ。 オートマトンの軍勢は忠実に、無慈悲に、命知らずに冷えた殺意を差し向け佇んでいた。 「フン、周到な事よ、なァ……」 城に潜む王からの指令を受け、総身を引き裂く第二撃が掃射される。 奇襲の正体が機巧仕掛けとわかり、信長は侮蔑も顕に鼻を鳴らした。 この程度の弾幕、信長にとっては豆鉄砲も同然だ。 瑣末な三段撃ちを前にして脚を止める道理はない。 剣を上げ振るわれた衝撃波により、降下する無数の銃弾は微塵も残さず溶け消える。 他愛もなく迎撃し、より深く前進せんと―― しかし、闇が晴れた視界に飛び込んできたのは、直進する巨大な槍。 後尾から火を発し、対ナイトメア用のミサイルが肉食獣のような獰猛さで獲物へ喰いつかんと迫っていた。 自らの瘴気に視界を遮られたのを見込んでの不意撃ちも、しかし信長はさして反応に窮することもない。 光景を見るまでもなく察知できていた脅威を、左腕に装着された機銃で危なげなく撃ち落とす。 粒子弾丸に抉られた飛翔体は一気に引火。 眼前で炸裂して起こる爆発も、信長は涼風に当たるかのように平然と受け止める。 「――小癪」 だが進撃に全く影響がなかったわけではない。 一度目の銃撃への反撃は疾走の速度を僅かに緩め、間隙を突いた誘導弾には足を止めざるを得なかった。 総じてたったの五秒。 それは、リーオーの銃砲に機能を取り戻させるだけの時間を稼いでいる。 「ナーイス援護旦那!」 機能を取り戻し再動するビームの閃光。 さしもの信長もこれに真っ向から挑む愚は冒せない。 回避には間に合うが、漸く接近した機会を逸する。 この繰り返しも、一度や二度ではない。 堂々巡りの、振り出しに戻る戦況。 信長が前進し、それをルルーシュ達が押し返す。 時間は浪費され、戦況は次第に膠着状態へともつれ込んでいった。 (互角とはいえないが……今のところは順調か) 一歩も引かず向かってくる信長に対応を迫られる傍ら、ルルーシュは思考する。 憂が離れてから、少なくとも十分は経過したか。 通信状態は未だ回復していないが、なんの問題もなければそろそろ予定地点に辿り着いているだろう。 この戦い、自軍がどれだけ持ちこたえられるかが焦点となっている。 最終防衛ラインを守りきり、援軍が到着すれば、勝利の方程式も見えてくる。 よってルルーシュとサーシェスは、今の状態の維持に全力を注いでいた。 自軍の最大のアドヴァンテージ、それは言うまでもなく機動兵器の保有にある。 その巨体と火力とを最大限に活用して、的確に防衛線を張り巡らしていた。 コンビネーションは完璧といってよかった。 火力を持つサーシェスが攻め、ルルーシュが後方から援護する。 武装が内蔵されてないホバーベースには、これまでルルーシュが回収、購入した装備をつぎ込み要塞化してある。 オートマトン。 遠隔装置で起動できるようにしたそれは、対人相手ならば充分通用するだけのものを備えていた。 戦国武将相手には物足りないものではあるが、リーオーの攻撃が途切れる瞬間を補うには必要に足るものだ。 サーシェスもまた己の役割を正確に理解し、将のプラン通りに動いて見せている。 油断なく躊躇のいない連携は、とても即興とは思えぬ程の鮮やかな手並みだ。 過程も内面も問わず、ただ相対した敵を倒すという一点のみで結託している2人。 あらゆる私情、感傷を無視し目的のために動いているが故に、ここまでの共闘を可能にしている。 征天魔王相手に、二人の戦略は確かな成果を上げていた。 (しかし……このままではいずれジリ貧だ。 憂が帰ってくれば問題はないが、果たして間に合うか……?) だが、逆に言うならば、足止め以上の成果を上げられていないということでもある。 憂が援軍を引き連れて戻るまでの時間稼ぎの名目であるが、こちらも手は抜いていない。 隙を見せようものなら即座に叩けるだけ執拗に攻撃を重ねている。 全力で攻めておきながらも、拮抗させるだけで手一杯なのである。 否、これだけの戦力を投入していながら拮抗を強いられている時点で、こちらの不利と言っていい。 敵の動きは以前と変わらぬ制圧前進。 それがこちら側にとって最も不利となるのが分かっているように姿勢を変えようとはしない。 こちらの作戦に気づいているのか、気に留める必要なしと余裕でいるのか、あるいは既に策を講じているのか。 手持ちの装備も有限だ。このペースで続けていたら遠からず息切れするのは火を見るより明らか。 火種尽きた人間が、猛獣に抵抗する力はない。抵抗の手段を失った瞬間、なす術なく喉元を破られるしかない。 勿論、手を緩めてはすぐさま付け入られる。わかっていても配分を変えることはできない。 つまり、未だ主導権は敵の中にある。攻めるも守るも向こうの出方次第なのだ。 一刻として無駄にできぬ今、趨勢は敵側に握られている。 作戦目的を達成するためにも、その優位を奪う必要があった。 綱渡りよりもなお細い、針の糸を渡る慎重さでルルーシュは戦場の操作を試みる。 (ははっ……まいったね、ここまでブッ飛んでるとは思わなかったぜ) 一向に埒の明かない戦況に、サーシェスもまた歯噛みしていた。ままならない今の己の状態を。 考えるよりもこの機体、扱いづらい。 操作性でいえばむしろ簡単な方なのだろう。生産性重視の量産機なのだから特別な機巧もない。 だがこのリーオーはモビルスーツの技術体系からして違う。 シートの座り具合はいいとして、コンソールやらモニターやら何もかもサーシェスが知るものと異なっているのだ。 既知のものとは微妙に違っている分、余計に紛らわしい。 そして今更ながら、この新しい体にも煩わしさを感じていた。 なにせ成人にも届かぬ若すぎる肉体、それも女のものである。 質感も違えば手足の長さも違う。身体バランスと頭での感覚がまったく釣り合っていない。 正真正銘の意味で違う体を操ってる状態なのだから当然だ。 むしろそれだけのハンデが課されているにも関わらずここまで戦えているサーシェスの順応性こそを讃えるべきだろう。 長年の培われた経験と、本人が備える戦闘センスがあってこその芸当だ。 (ああもう……面白れえじゃねえか畜生!) とはいえ、現状を嘆く暇はサーシェスにはない。 愚痴をこぼす暇があるなら攻撃のスイッチを一回でも多く押し込む方が合理的である どれだけ劣悪な環境であろうとも戦う事を強いられるのが傭兵であり、戦争屋だ。 無いものねだりは利かない、あるものだけを駆使して乗り切るしかないのだ。 徐々に追い詰められてる事態が、迫る敵の強さと出鱈目さが、サーシェスの頬を吊り上げる。 そうだ、こうこなくっちゃいけない。これでこそ戦争だ。 生と死の境界線の綱渡り、これを愉しまずして何が人生か。 狂ってる?何を今更、言うのが遅すぎる! もっと地獄を。もっと戦争を。 だから撃つ。殺す。戦う! 後悔なんてのは死んでからでも早過ぎる。 今はこの、化物退治を心行くまで堪能するのみ―――! 「っ―――?野郎、何処行きやがった……」 しかして、狂宴は唐突に締められる。 敵の姿が、モニターから消失していた。 捕捉しきれないのではなく、存在そのものが消えている。 一端、銃撃を止める。舞い上がった埃が落ちて視界が晴れていく。 荒涼とした市街地には、黒い鎧の男の姿はどこにもなかった。 姿形のみならず、あれほど戦場を跋扈していた殺気も立ち消えている。 ビームをもろに受け跡形もなく散ったという考えは……あまりに安易というものだろう。 (そこいらに隠れたのか?つくづく都合の悪い真似してくれるな……) ならば、周囲に身を潜めたと考えるのが自然だろう。 林立したビル群、瓦礫の山脈、入り組んだ路地裏。 そこは鋼鉄の木々が犇く現代の樹海に等しい。 人が隠れるには事欠かないフィールドだ。 地が割れんばかりの震動が一転し、オフィス街は不気味な静寂に抱かれる。 気持ちの悪い余韻ばかりが残り、一方的に戦闘は打ち切られた。 『どうする旦那。おとなしく道を譲ります、ってワケじゃなさそうだぜ?』 ルルーシュとサーシェスはこの静止の意味するところを察する。 ゆさぶりをかけられている。 己の姿を消すことでこちらの動きを誘発しようとしている。 保有していた先制権を手放してでも均衡を崩しにきた。 あの外套は電波を遮断する機能でもあるのか、生体反応にもかからない。 不用意に進み、背後を取られでもすればその時点で絶体絶命だ。 この戦いで最も恐れるべき事態は、信長の接近を許すことだ。 信長の攻撃の間合いはこちらより何十倍も劣る。人と機械との絶対的なリーチの差だ。 反面、接近時での攻撃力はあちらが遥かに上回る。これもまた、超人と機械故の覆らぬ差でもある。 そもそもモビルスーツの巨体は人間大の大きさを攻撃するには不向きだ。射撃となれば殊更に的が小さ過ぎる。 通常時で何の問題もないのは、モビルスーツの破壊範囲は容易に人を巻き込み、人にはモビルスーツに損害を与える手段が極めて少ないからだ。 だからこそ信長はそれを覆す。常識を越える存在は常識にとっての天敵となる。 広範囲攻撃を回避しリーチを埋めるだけの俊敏さと、装甲を破るだけの武力を持つ信長は、モビルスーツと相性が非常に悪い。 だが待ち伏せを恐れ委縮していれば一向に目的地には辿り着けない。 こちらには徒労、向こうには体力の回復の猶予を与えてしまうだけだ。 「進むぞ、サーシェス」 逡巡の計算の末、智将は結論を下す。 この戦場において、織田信長はルルーシュ達の進行を阻む障害でしかない。 いずれ倒す敵ではあるが、決して最優先対象ではない。 何より考えるべきなのはスザクとの合流。ここで退くというのならわざわざ追撃する理由はない。 既に現在地はE-1を通過している。ここからスザク達がいるショッピングセンターまで飛ばせば時間は長くかからない。 万全の備えを取って対決するのに、越したことはない。 無論、その間このまま見に徹するだけの相手とは思えない。 その姿を、声を、戦いぶりを目の当たりにして得た敵の概要。 そこから導き出せる人物像からして、時間稼ぎなどという小細工に固執するわけがない。 近く、必ず攻めてくると確信している。 『大丈夫か?中々下手を打てない状況だぜこりゃ』 「悠長にしてはいられない。時間をかけるだけ俺達が不利になる。道を空けるというのなら進んでやるさ。 それに、次の手なら大体の見当はつく」 攻めてくるというのなら、手の内を見破ってしまえばいい。 それこそが、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアにとっての戦いに他ならない。 自分が敵の立場ならどう動く。どこから攻めるか。 敵は戦艦一艘に巨大兵器一機。射撃武器も持ち正面突破は分が悪い。 己は生身の単騎。身体能力は超人的。右手に剣を左手に回転銃、背後の外套は攻撃、防御に応用可能。 遠距離は圧倒的に不利、対して近距離は絶対的な有利な関係。 互いの戦力、敵の戦力を照らし合わせる。長所と短所、利点と欠点を浮き彫りにする。 空想をイメージし、現実の結果を手繰り寄せる。 導き編まれたカタチは、鮮明な姿として映し出される。 燦々と光る輝きに目を眩ませながら、空を昇る太陽を見上げた。 ◆ ◆ ◆ 果たして、織田信長はそこにいた。 ルルーシュ達が現在いる地点より数百メートル先、 他の建築物より一際高いオフィスビルの屋上。 その給水塔の上を陣取っていた。 太陽を背に回し、その後光を存分に受けながら天守閣に君臨する。 眼下に広がる戦場を見下ろし、信長は改めて敵を睥睨する。 火器を満載した動く城。山岳ほどの身の丈を持つ機巧の兵士。 鉄砲伝来以降、日の本に浸透していった道具による戦争のひとつの到達点。 一時前に現れたハリボテとは違う、本物の超常の兵器。 戦国で決してまみえる筈のない異形を目にしても―――織田信長は己が不利を一時も感じなかった。 成程機械の兵団大した強さ也。 肉体の強度も精神の統一も要らず、引き金を引くだけで殺す行い。 人が人を殺すために産み出した叡智の結晶にして極北。 これが隊伍を組むだけの数を揃えればそれだけで戦局は決するだろう。 だが、それがなんだというのだ。 戦とは、殺し合いとは、人と人とが生で演じる行いである。 自らの手に持つ刀で肉を斬り、構えた銃弾で骨を穿つ。 火で炙り、水で沈め、土に埋め、金で飼う。 それらの鬼畜を己が手で処してこそ人であり、戦いであり、殺し合いだ。 匣に引きこもり、自らの手を汚さずして殺すなど、信長には童の児戯にも及ばない自慰でしかない。 故に、あの一団は信長の脅威足り得ない。児戯では魔王を殺せない。 今は消えた、戦国最強にも似た紅い武者もそう。 力の上ではかの三河武士に届くというのに、実際は防戦がやっとという惨状だ。 それは技術の不足がどうのではなく、戦に赴く心意気の違いだ。 人を殺す覚悟、全てを滅さんとする殺意、覇気があれにはまったく足りない。 戯れに玩具を弄ぶ者にどうして魔王が遅れを取ろう。 だが、例え遊びとはいえ、遊びの気概でこの信長に弓引いたのだ。 それを流す寛容さなど、持ち合わせるなど思うてはおるまい。 「おーし見つけたぜ。旦那の言う通り、上を取りにきやがったな」 ビルにて構える信長を、サーシェスもまた視界に収めた。 相手の上を取るのは戦での常套手段、それがビルを超す巨大兵器となればなおさらだ。 信長がルルーシュ達に決定的な打撃を与えるには、直接接近する他ない。 そして、モビルスーツの人間の絶望的な間合いの差を埋めようとするのなら、制空権を取ることが一番手っ取り早い。 よって付近に立ち、かつリーオーを越すだけの高さを持つ建造物を探すことで苦もなく見つけることができた。 奇襲の隙など与えはしない。 真上を通り過ぎる前に足場を壊して叩き落とす。そうすればまた振り出しに戻る。 ビルの崩落に巻き込まれるという目論みは甘いが、これで同じ策は使おうとはしないはず。 改めて攻め直すにせよ隠れるにせよ、更に時間には余裕が生まれる。 そうすれば、戦況は次第にこちらへと傾くだろう。 「せっかく登ってもらって悪いが、すぐに下山してもらうぜ!」 何十発目かの光線銃が放たれる。狙いは魔王ではなくその足場。信長を押し上げてる高層ビルだ。 そびえる壁の中心に風穴が空く。 コンクリートの塊は、紙屑のように呆気なく貫通する。 たった一発でビルは圧倒的な熱量で支柱を溶かし、瞬く間に形状を崩していく。 そのまま崩落するだけのビルは、しかしそれで変化は終わらなかった。 「―――なに?」 『……あ?』 ルルーシュ、そしてサーシェスが視線の先の光景に違和感を抱く。 真ん中を穿たれたビルの、あり得ない変化に。 ビルが震えている。否、蠢いている。 まるで、蟲の群体に棒を突き入れたようにざわめき、輪郭が崩れていく。 日影に置かれて分かりにくかったが、ビルは黒く変色していた。 蠢動はやがてビル全体が雪崩の容量で崩れ落ちる。 そしてビルだったものは、圧倒的な量の『泥の滝』へと変性と遂げた。 「余の前に人はなく―――」 ルルーシュが信長を見失い発見する間までの数分、信長はビルに己の瘴気を注ぎこんでいた。 給水塔から流された汚泥は水道管を伝わり、ものの数秒で全体を包み込む。 サーシェスがビームを発射する瞬間にそれを解放。コンクリートのビルは一瞬で泥の塊へと変容する。 この時点でビルの内部は炎に包まれ、ゼリーのように融解を始めていた。 「余の後にも人はなし――」 そこに更なる熱の奔流が飛び込み一気に膨張、風船のように破裂し、溜めこまれた泥が一気に流れ出した。 瘴気はいまだ信長の制御化にある。蠢動は激しさを増し、ビルが雪崩の勢いをもって崩れ落ちていく。 破裂時の衝撃が加えられて、泥はアメーバのように飛散し地面に飛び込む。 黒色の滝が、リーオーの前の道路にぶち撒かれ、街路樹を瞬く間に穢していく。 大通りを、わき道を、万弁なく世界を黒色に染め上げる。 染める、全てを黒く。 「望み通り―――天から堕ちよ」 『死の河』が、一切合財を呑み込みに解き放たれた。 ◆ ◆ ◆ 街に河を産み出すという非常識甚だしい事態に対し、ルルーシュとサーシェスの行動は迅速だった。 もはや理解する必要もない。その危険度は一目瞭然だ。 全てに勝るのは、どうあれに対処するという方法の実践でしかない。 「サーシェス、ポイントD-6、右の赤いビルだ!!」 『わかってらあっ!』 言うが早いか動くが先か、リーオーは主の命を受け銃口を向ける。 戦闘開始前に分類されてあったエリア分けのデータと指揮に従い、目標を確認、射撃。 支柱を破壊された赤ビルは問題なく倒壊。 絶妙の角度でルルーシュ達の前、即ち川の激流の進行上に落とされる。 即席で造られたダムに激突する大波。 飛び散る大量の黒飛沫が、衝撃の凄まじさを物語っている。 水は高所から低所に注がれる。存分に地の利を生かされた泥の勢いは怒涛の如しだ。 亀裂から、墨汁のような泥が滲み出てきた。 壁が黒く染まり、堰を切って決壊する。 ただの水ならばともかく、灼熱を帯びた泥は急場凌ぎでは止められない。 それどころか周りの建材まで融かして吸収し、再び侵食を開始する。 「次!同ポイント、左25度の柱!30度から50度の先のビル一群!」 『あいよお!』 それでも、最初の圧倒的な勢いはダムとの衝突を重ねるごとに減っている。 このまま休まず壁を作り続ければ停止させる事は可能だろう。 積まれていく瓦礫の山。その度に波と壁はぶつかりあい、阻害と浸食が鬩ぎ合う。 『こいつも喰らっとけっ!』 銃一丁のみであったリーオーがここで戦法を変える。 ライフルの放熱が間に合わないと見てマウントから柄を取り出す。 そこから放出されたエネルギーは剣の形状を取り、形通りの用途を果たす。 真横に振るわれたサーベルはまとめて周囲の建造物を斬り裂き、地に墜とす。 止まない大質量の投入に遂に浸食が遅れを見せはじめた。 それでも、堰流が完了してルルーシュに安堵はない。そもそも完全に濁流を封鎖出来てはいない。 水の恐ろしさは自在にあらゆる場所へ忍び込む浸透性にある。 せき止めたのは正面の大通りでしかない。正面に躍起になる間に左右の泥は何の妨害もなく道を侵し続ける。 むしろ波の大部分が集まっていた正面が塞がれたことで、側面からの勢いが増してきている。 「これは、水攻めか……ッ!」 この構図、この攻撃は、ホバーベースを城と見たてての戦略だ。 進行を阻むように水を敷いて城を囲い込む、戦国時代における城攻めの策のひとつ。 後に、彼の武将の最大の後継者となった男の十八番ともいえる手段。 灼熱の溶岩が、無形の影となり城を暗く染めよと波打つ。 水攻めの本領は城を外より隔離させること。 補給を断絶させ、兵士の士気を削ぐことにある。 スザクとの合流を急ぐ現在、脚を止められることは敗戦を意味する。 ”だが―――浅い!” 元々泥の総量は然程多くはない。ビル一棟分では街の一画を包むには量が足りない。 あくまで即席の遮断、時間が経てばすぐに乾く。如雨露で砂漠に水をやるようなものだ。 生身ならともかく、機動兵器越しなら悪環境であれ進行は不可能ではない。 恐らく信長の狙いはそれとは別にある。 戦場を限定することにより、間合いを詰めにくるための。 「東に動いて突破する!道を作れ!多少荒くとも叶わん!」 西には川。南は自らの手で封鎖。北は論外。進路は自ずと東に限られる。 分かりやすい、誰にでも分かる程に。 それ以外、取りようがないとしても。 「それと、警戒を強めろ。来るぞ!!」 その先に、飢えも振るわな魔獣が潜んでいるとわかっていても。 「りォーかぃ――って、おいおい……言わんこっちゃねえぞ旦那!!」 飛沫とは違う、確かな輪郭を持った影が進行上に仁王立ちする。 疑いなくその姿は征天魔王・織田信長。 ――遂に、致命の接近を許した。 奇策を以て的将の目論みを破り、してやったりの顔を見せ疾駆。 距離はもう10メートルを切っている。 即ち、魔王の剣戟の射程圏内。 狙うは一つ、直線距離上最も近い、リーオーの巨体。 「ッッックソがぁ!!」 半ばやけぱち気味にライフルを投げ捨てるサーシェス。 どの道、この間合いでは飛び道具は意味を成さない。照準を合わせる余裕もない無用の長物だ。 代わりに空いた手にサーベルの2刀目を握り締める。 2刀流となった機兵は、なお止まらず進撃する魔王を沈めんと立ちはだかる。 遮二無二振り下ろす唐竹の縦一閃。 単調極まる挙動だが威力は折り紙付き。粒子の刃は受け止めることを許さない。 が、あっさりと避けられる。 蟻ほどの大きさの敵に機動兵器の動きは全く追いつけない。 信長にとっては蜂に刺されるがままの巨像のようなもの。鈍重過ぎて欠伸が出る。 空振りした勢いそのまま、地面ごと削り切ろうと横一閃に移行するが、もはや遅すぎた。 すでに信長はリーオーの足元へと到達している。 ここまで来れば全てにおいて人が速い。 ましてや人でないものなら、赤子を捻るよりもなお容易い。 防御の隙も与えず、右の膝へ剣を突き入れる。 チタニウム合金の加護もない関節部は、黒き奔流を纏いし黄金の剣に苦もなく貫かれた。 貫通部分から、黒煙が立ち上る。 追撃に、貫通された部位から瘴気を注ぎ込むことで、付近の機関は熱暴走を起こしていた。 過負荷を起こした膝は完全に機能を停止、重量を支え切れず真横にねじ折れる。 立つだけのバランスを失った二足の人型は意図も簡単にくず折れていく。 手で支え倒れるのだけは阻止するサーシェスだが、無駄な足掻きと理解していた。 膝が折れる。正に敗北の証明ではないか。 ここに、呆気なく、勝負は決した。 「っ――が、まだだぜッ!」 サーシェスの敗北はここに決まったも同然である。 だが、だからといってこのまま頭を垂れることとは別問題だ。 いさぎよく負けを認めなどしない。死の間際までも足掻き続ける。 人間はそのぐらい生き汚くなるべきだと笑う。 スラスターを全開で吹かして上空へと飛ぶ。ヒトでは及びようのない空の世界へと逃げる。 地面に手を着くと同時に、周到にも捨てたライフルを拾っていた。 さっきのお返しだ。今度こそ逃げ場はない。上から砲身が焼け付くまで撃ちまくってやる。 「逝っちまいィ――あ?」 ガツン、と、そのとき何処かで奇妙な音がした。 モニター外の視界の外。映像は映らない。 研ぎ澄まされた闘争本能のみで、サーシェスは正確にその正体を知る。 真上―――リーオーの頭部に何かがぶつかった。そして今も、そこに立っている、と。 先んじて動いていた信長が、機体の態勢を崩した合間に駆け上がり、先を取っていたと思い至るのは、そう難しくなかった。 "退避など許さぬ。ここで逝ね" 声は目でも耳でもなく、直感から感じ取られた。 背筋も凍りつき砕ける死刑宣告。首元から注がれる黒い波動。 幾条の大蛇が機体の全身を包み込む。 人体に例えれば、血流から強酸を注がれたようなものか。 肉が、骨が、内臓が焼かれていく。 機械に意思と感覚があれば、さぞ悶絶していたことだろう。 「……いや、喉も焼かれちゃ声も出ないか」 エラーを表示し続けるモニター。 火を吹き狂う計器類。 オーバーヒートを起こすコクピットの内部。 さも他人事のように、サーシェスはせせら笑う。 「ハハッ。こりゃ駄目だ」 炎上しながら墜落する機体でひとり呟いた台詞は誰にも届かずに消える。 その意味などなんのことはない。 単なる諦観だった。 背後の未練も先への恐怖も何も無く、傭兵はただ静かに引き金を引いて。 「悪いな、だん――」 爆散。 朝空に花火が上がった。 ◆ ◆ ◆ 撃墜。 それは星の落ちるようだった。 赤い、赤い、鋼鉄の塊が、炎を纏って堕ちていく。 ひゅるひゅると、燃えながら僅か、南の方角に向って足掻くように滑走した後、それは中空で粉々に砕けた。 明けの空に、盛大な花火が咲いて散る。 人の生み出した科学と技術と武力の結晶。 モビルスーツと呼ばれたそれが、鉄クズと化し、軌跡のみを残して消える。 ここに、たった一人の男が、為した。 戦国武将、織田信長。 黒き戦の鬼が、打ち倒した敵の死する轟音を、背後に轟かせ。 残す一騎、大将を見据え、笑う。 ――まずは一つ。さて、貴様はどこまで楽しませてくれるのか。 そう、問うている。 「見せて……やるさ」 相対する最後の将は、表情一つ変える事無く、答えた。 「見せてやろう」 未だ眼前に立ちはだかる敵の王。 敵はこれまで相対したことが無いほどに強大 既に唯一の駒を殺られ。 武装は最早、非力な数点と、己の持つ策のみ。 喉元に突きつけられた王手(チェック)を前にしても。 決まったも同然の、詰みを理解していたとしても。 「最後まで、な」 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、敵だけを見据えていた。 【舞姫・弐ノ劍閃――了】 時系列順で読む Back crosswise -white side- / ACT2 『もう何も怖くない、怖くはない』(2) Next crosswise -black side- / ACT2 『舞姫(まいひめ)』(二) 投下順で読む Back crosswise -white side- / ACT2 『もう何も怖くない、怖くはない』(2) Next crosswise -black side- / ACT2 『舞姫(まいひめ)』(二)
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503 :名無しさんなんだじぇ:2010/08/29(日) 00 50 43 ID zW7NWgWE 神原「なんと、アーニャちゃんは向こうについたか」 紬「こっち側の人間だと思っていたけど…出番欲しさに尻尾を振っちゃったのね」 神原「何、彼女のことだ。きっとぬかりなくカメラは終始回しつづけるだろう」 紬「そうね。それに、こっちにも心強いサポーターについていただいたし」 キャスター「律ちゃんが頑張るならこっちを応援するのは当然よ♪」 神原「おぉ、ついにこちらにもサーヴァントの応援がついたのだな」 キャスター「うふふ…ダウン時の闘魂注入は任せなさい」ワキワキ 律「!」ゾクッ