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47 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/17(日) 20 47 31 ID YbiTrU5Q 海原「あ、あの、妹Fさん?」 妹F「はい、なんでしょうか?とミサカは返事します」 海原「あっ、あ、あの時、あの別れ際の…ア、アレって…////」 妹F「あの時?別れ際?アレ?…一体何のことでしょうか?とミサカは疑問符を並べます」 海原「…えっ。あの時、ってつい最近のことですよ。ほら、カイジさんを誘拐した後から主催関係者の立ち入り規制が入るまでの間の」 妹F「?そんなことありましたっけ?とミサカ何も思い出せずにいます」 海原「えええっ!ど、どうしたんですか!?あ、あんなことしてきたのに忘れたんですか!?」 妹F「???」 R妹「それはですね、とミサカは説明好きのお姉さん役を買って出ます」 海原「な、なにかあったんですか!?」 R妹「私の記憶(記録?)のによりますと、妹達が死者スレから撤収した後リボンズ様が一部調整を行って感情の規制および記憶の改竄を行いました、とミサカは知られざる真実を語ります」 海原「え、えええええっ!!!」 【海原君を弄るのが大好き♪】 48 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/17(日) 22 24 42 ID lHFwsBhE C.C.「やれやれ、あのボーヤは相変わらず女運が無いようだな」 部長「海原君だもの、仕方ないわよ。 さて、上条君には何かご褒美をあげないとね」 上条「ご褒美?」 マリアンヌ「ほら、一発で本物の美琴ちゃんを当てたじゃない。 その賞品みたいなものよ」 上条「いや、今のは御坂から教えてくれたようなもんでしょ」 C.C.「(聞いてない)そうだな……美琴、お前がボーヤの彼女になるというのはどうだ?」 美琴「へ? ちょ、ちょっ、何でそんな話になるのよ!!?///」 マリアンヌ「あら、案外お似合いじゃないかしら?」 美穂子「いい考えだと思います。 ねえ、上埜さん」ニコニコ 部長「そうよねえ、美穂子」ニヤニヤ 上条「ちょっと待ったぁ!! お互いの気持ちも考えずにその場のノリで付き合うっておかしくないか!? 少しは御坂の気持ちも考えてやれよ!!」 C.C.「じゃあボーヤの方は満更でも無いと?」 上条「そりゃあまあ御坂は可愛いし、案外気が付くし、結構いいかも……って何言わせてんだ!!」 美琴「え……あ、えーっと……///」 妹E「まったくしょうがないわね。 お姉様が踏ん切り付かないんだったら、代わりにこのミサカEが付き合ってあげるわよ」 美琴「って、それあんたが当麻と付き合いたいだけでしょ!! そんな事される位だったら私が当麻と付き合うわよ!!」 部長「はい決まりー♪」 美穂子「お二人共、おめでとうございます」 マリアンヌ「お幸せにね、お二人さん」 美琴「え゙!!? あ、いや、その~~……」 上条「えーと……上条さん、状況が良く掴めないんですが……」 美琴「な、何よ!! 私が彼女じゃ不服だっての!? 何か文句があるなら言ってみなさいよゴルァ!!!」 上条「いえ滅相も御座いませんワタクシ非常に光栄に存じておりますですハイ!!」 美琴「よし! じゃあ、今からあんたは私のか……か、彼氏なんだからね!/// 分かった!?」 上条「は、ハイ!!」 妹E「まったく、世話の焼ける二人よね。 ……あーあ、せっかくお姉様の口調を完璧にマスターしたのになあ。 ……けどまあ、あの調子なら進展も遅いだろうし、ミサカにもまだチャンスはあるわよね、うん」 49 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/17(日) 22 42 46 ID lOSflf1I インデックス「………………………………………」 ヴァン「チェストォォォォォォォォ!」 幸村「お…お…御館様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 ヴァン「よーし俺の勝ちだな。おら、出すもん出せ」 幸村「御館様……不甲斐ない幸村を許してくだされ……」ジャラジャラ インデックス「…………………とうまのバカーーーーー!!!」 二人「ぶべら!?」 50 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/17(日) 22 42 51 ID hoqPl8SE インデックス「うう~」 リボンズ「どうしたんだい、彼を盗られて悔しいのかい。イカ娘」 インデックス「誰がイカでゲソか!」 イリヤ「口調変わってるわよ」
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221 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/19(日) 23 42 33 ID Y5ENauuI ~~たまり場食堂~~ 上条「クリスマスの予定?」 ビリビリ「えーっと、ほら、ね……せ、せっかく付き合ってんだからさ、クリスマス位何か恋人っぽい事してもいいんじゃないかなーって思って」 上条「んーと、つまり御坂さんはワタクシ上条さんとクリスマスにイチャイチャしたい、と」 ビリビリ「ストレートに訳すな馬鹿ぁ!!////」ビリビリ 上条「うわっと!! あ、あっぶねえ……いきなりビリビリは無いだろ御坂!」 ビリビリ「うるさい!! アンタはYESかNOかで答えればいいの!! 予定あんの!? 無いの!? どっちよ!!」 上条「えーと……何か用事あったかな……」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 上条「……何だろう、このウケると思って繰り出したギャグを誰も聞いてなかったかのような寂しさは」 ビリビリ「……つまり、何の用事も無い、と。 よーし、じゃあ決まりね」 上条「はあ……ま、決まったからには楽しみますかね」ボソッ 222 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/21(火) 00 46 50 ID 0GOBs8nc ~小十郎の畑~ 小十郎「よし……クリスマスってのがどういうもんか詳しくは知らねぇが、こんなもんでいいか?」 部長「ええ、上等すぎるぐらいだわ……ありがとう、片倉さん」 とーか「これだけ大きなモミの木なら、立派なクリスマスツリーが出来ますわね」 アーチャー「モミの木……あれは、畑……なんだよな?」 政宗「突っ込むだけ野暮ってもんだぜ、アーチャー」 【小十郎の畑 クリスマスツリー用のモミの木伐採完了】 223 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/21(火) 00 51 51 ID iJkw9pAA 黒子「な…な、な、な…なんということですの~~!!」 美琴「な…、なによ。急に現れて大声出して。」 黒子「これが騒がずにいられましょうかっ。どういうことですの!お姉様ともあろう方が…、年に一度のアニバーサリーを共に過ごす殿方がよりにもよってこんな、こんな…」 美琴「こんな…なによ?」 黒子「…こんな野蛮で品の無い無能力者なんて!いつも言っておりますが、お姉様はもっと御自分の立場を弁えて、相応しい方と付き合うべきですの!」 上条「えらい言われようだな…」 美琴「あんたねぇ、人のか…か…、その、か、彼氏をつかまえてその言い草は……ん?」 黒子「どういたしましたの?」 美琴「ふ~ん、じゃああんたの言う素敵な殿方ってどんな奴なのかしら?」 黒子「そ、それは…、そうですわね。例えば、心根が優しくて、芯が強くて、万人に分け隔て無く接することが出来て、料理や家事なんかも出来たりして、危険を顧みず他人のために戦うことが出来る。そんな方でしょうか…」チラッ そんな黒子の視線の先には… 士郎「おい、アーチャー。クリスマスパーティー用の食材、ここに置いとくぞ。生ものは冷凍庫と冷蔵庫に分けとくな。」 アーチャー「ああ、それでかまわんよ。」 美琴「…要するに、あんたは私が衛宮士郎と付き合う分には問題ないってことでいいのかしら?」 黒子「な!!?な、な、それは駄目ですの!!」 上条「アーチャーの野郎はサラッと無視ですか…」 美琴「あら~?私は素敵な殿方とやらと付き合わなきゃいけないんじゃなかったのかしら?それとも彼は素敵じゃない…と。」 黒子「す…素敵な殿方ですわ!!ですが、それはその……。!…そうですわ♪」 美琴「ん?」 黒子「お姉さまがアニバーサリーを共に過ごす相応しい相手はここにおりましてよ!」 美琴「…どこよ?」 黒子「わたくしですわ!」 美琴「ハァ?」 黒子「お姉様のルームメイトにして後輩たるわたくしでしたら何の問題も無いと思いませんの?」 美琴「あんたねえ、そんなこと言ってていいの?あれ見なさいよ。」 黒子「へ?」 セイバー「シロウ。そろそろクリスマスですね。」 シロウ「ああ、そうだな。」 セイバー「クリスマスといえばパーティー。パーティーといえば…」 士郎「はいはい、腕によりをかけて料理を振舞わせてもらうよ。」 セイバー「それは良かった。では、クリスマスイブは、その、私と過ごしてもらうということで…」 黒子「な!?だ…駄目ですのー!!」 セイバー「ク…クロコ!?」 黒子「まったく、貴女という方は油断も隙もありませんわね。」 セイバー「こういうものは早い者勝ちと相場が決まっている。行動を起こさなかったのはあなただ。」 黒子「ま…まだ、分りませんわ。士郎さんは返事をしていませんもの!」 アーチャー「ハァ…、まったく。どういう人間関係だ。」 士郎「何なんだ、この騒ぎはいったい…」 アーチャー「当の本人はこの様か。言ってて私自身むなしいが…」 美琴「黒子。セイバーの言うことも一理あるわよ。今、行動を起こさないでどうするのよ!」 黒子「お姉様……。…そう、ですわね。士郎さん!手を拝借いたしますわ!」 士郎「え?黒子…って、わ!」シュンッ セイバー「シロウとクロコが消えた!…おのれ、卑怯な!!こうなったら、エクスカリ…」 アーチャー「おい、セイバー。」 セイバー「なんですか、アーチャー。私は今忙しい…」 アーチャー「クリスマス用の料理の味見をしてもらいたいのだが。」 セイバー「うっ…、良い香りですね…。しかし、今は…」 アーチャー「ターキーにローストチキン。ケーキもあるが?」 セイバー「ぜひ、味見させていただきましょう。」 美琴「やれやれ…、世話の焼ける後輩だわ。」 上条「お疲れさん。ほれ、ジュース。」 美琴「…ありがとう……」 上条「…?どうかしたか。」 美琴「素敵な殿方の条件…か。結構あてはまってるかもね。」 上条「ん…なんだって?」 美琴「なんでもないわよ。ふふ…」 224 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/21(火) 01 41 58 ID 23UVPxXc 小萌「えーっと…あっ」 美琴「あれ、小萌先生?」 小萌「探しましたよー、御坂ちゃん」 当麻「先生、御坂に何用ですか?」 小萌「大切な連絡ですよー」 当麻「大切な連絡?」 美琴「その連絡ってなんですか?」 小萌「それはですね…じゃじゃーん!ν放課後ティータイムクリスマスライブ決定のお知らせですよ!しかも…」 美琴「しかも?」 小萌「その舞台こそ、御坂ちゃんのヴォーカル復帰の舞台となるのですぅ!」 当麻「あれ、お前ν放課後ティータイムのメンバーだったのか?」 美琴「知らなかったの!?…って無理もないか。最近はラジオのパーソナリティがメインでヴォーカルは唯さんに任せっきりだったから。でも風邪をひいてる律さんと梓さんは大丈夫なんですか?」 小萌「はい、田井中ちゃんはもう全快してますし、中野ちゃんもあと一晩寝れば大丈夫って平沢ちゃんが言ってました」 美琴「そう…ですか…」 小萌「顔が暗いですよー、久々のヴォーカル復帰なんですから元気に行きましょうよ。上条ちゃんも聞きたいですよね、御坂ちゃんの歌声?」 当麻「ああ、それは確かに。こいつがどんな感じで歌うのかには興味がありますね」 美琴「うっ…よーしやるわよー!」 小萌「その意気ですよー。さてせんせーはメンバーのサンタコスチュームを用意しなければいけませんねー」 当麻「がんばれよ、御坂」 美琴「あっ、あったりまえじゃないの!(こいつといる時間が減るけど…やるからにはがんばなきゃね)」 【ν放課後ティータイムクリスマス美琴復帰ライブ 開催決定】 225 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/21(火) 20 25 13 ID YZOv5HJM カイジ「クリスマスか。考えてみればこんなに大勢で迎えたのは初めてかもしれん…」 226 :名無しさんなんだじぇ:2010/12/22(水) 00 35 00 ID g6hW3g.2 士郎「…で、いったい何なのさ。こんな所に連れて来て。」 黒子「……(どういたしましょう。勢いで行動してしまいましたわ。でも、お姉様がくださったこのチャンスは…)」 士郎「…?なあ、くろ…」 黒子「士郎さん!!」 士郎「は、はい!」 黒子「あの…その、クリスマスイブに何か予定は…その、ありまして?」 士郎「へ…?」 黒子「ですから、イブの予定ですわ。」 士郎「あ、ああ。そうだな…。たまり場食堂の手伝いでもしようかと思ってたんだけど。それが、どうかしたのか?」 黒子「そうではなくて。誰かと過ごすとかいうご予定は?」 士郎「んー、特定の誰かとの約束は無い…かな。」 黒子「!…でしたら、その、わたくしとご一緒してくれませんこと。」 士郎「え?」 黒子「あ、いえ、その。士郎さんもパーティーでお忙しいでしょうし、無理にとは言いませんけど。その、できれば士郎さんと一緒にクリスマスを楽しみたいんですの…」 士郎「あ…、ああ、かまわないさ。俺なんかでよければ。」 黒子「本当ですの!?」 士郎「ああ、嘘はつかないよ。あっちでは約束は果たせなかったけど、こんなささやかな誓いくらいは守らせてくれ。」 黒子「士郎さん…。約束、ですわよ。」 士郎「ああ、約束だ。」
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疾走する超能力者のパラベラムⅤ ◆hqt46RawAo ◆ 『全て終わった後に/迷いと答え/もう一度』 ◆ 「――まァ、そォいう事があったわけだ」 長き語りは終わる。 一方通行は自分が見てきた事実をありのまま告げた。 死と生。戦いの行方。嘘はない。 殺した者は『殺した』と。 生きている者は『殺し損ねた』と。 偽らずに、全てを上条に語った。 「それでのろのろと南下してきたところ、オマエとばったりってな」 上条は暫くの間言葉を発する事も出来なかった。 ずっと、一方通行の語る事実をかみ締めるように、拳を固く握り続けていた。 「なんでだ……?」 漸く搾り出した声は震えていた。 「なんでお前はそんな事を……」 「あン? 説明しなきゃわかンねェのか?」 「…………ッ」 問いかけつつも、上条は半ば答えに辿り着いていた。 おそらくは、自分のせいなのだ。 上条があの時、無意識に一方通行よりも御坂美琴を優先したから。 あの状況で死体に拘った。 上条なりの生き方を通した結果が、一方通行を凶行に向わせた。 「畜生……ッ」 一層、強く拳を握り締める。 もう取り返しが付かないのだ。 失われた命も自分の間違いも。 あの時こうなると知っていれば、などという言い訳はきかない。 結果が全てであり。 結果的に上条は間違えた。 事実はそれだけなのだ。 (じゃあどうすれば、良かったんだよ……) 既に知らされた間違い。 にも拘らず上条は迷う。 どうすれば良かったかなど明白なのだ。 上条は自分の生き方を貫き、それが結果的に巡り巡って人の死に繋がっただけ。 それは間違いでもあり、同時に避けようもない事故でもある。 だが上条には流せない。 割り切れない。 今までこんな事は無かったのだ。 彼は彼なりに生きて、それで彼の世界を守る事が出来た。 なのに今回はどうしても上手く行かない。 幾ら決意を固めても、全力でぶつかっても好転しない事態が在る。 あげく、自分の生き方、やり方を否定された。 何故なのか? 自分は何も変わっていないはずだ。 だが、全てが否定され、現に全ては裏目に出た。 大切な仲間は失われた。 守ると約束した人間はもう死んだ。 その上、確固たる己も否定された。 何も変わっていない筈のに、全てが否定される。 全てが間違いだった。 ならば……。 (俺は……何かを間違えているのか?) 結局はそこに帰結する。 揺らぐ意志が、決して揺らがない生き方を見失う。 「俺は……」 「で、俺がなンでここでオマエとしゃべくり続けているかというとだな」 上条の呟きを無視して一方通行は話し続ける。 顔を上げた。 当然、一方通行が殺し合いに乗ったのだとすれば、ここで上条と戦う事になる。 だが彼は暢気に話す一方で、未だに自分から仕掛ける事はない。 「最初はな。オマエとちっとばかし喋り終わったらそれでサイナラしようか、とも考えていたンだ……。 なンせ残り時間が後一分もねえ。その右手と真っ向勝負はちと分が悪りィだろ?」 「なら、なんで……」 何故まだここに留まっているのか。 「ああでも、やっぱ駄目だ。駄目なンだよ、今のオマエは駄目だ……。ふざけンじゃねえぞ?」 その瞬間、押さえつけれられていた怒気と殺意が顕になる。 「今のオマエの存在だけは許せねえ。死ンじまえよ、今すぐに……。この世から消えうせろ」 狂気の叫びではなく。 冷たい失望の刃が上条を刺す。 完全にキレていた。 この時、一方通行は己を支配する狂気を超える程の怒りを湛えていた。 一方通行自身にも、その怒りの正体は理解できていない。 彼は今、己の内側から沸きあがる不可解な感情に突き動かされている。 「……勝負だ。リターンマッチだぜ最弱(さいきょう)」 一歩、踏み出した。 一方通行はこのとき、狂気からも、理屈からも乖離した行動をとっていた。 殺意に狂わせる脳裏の存在に従うならば、有無を言わさず出会い頭に上条を殺していた筈である。 未だに残る理性の判断に従うならば、残り時間のリスクから早々にここを立ち去っていた筈である。 今の彼を突き動かすものは、怒り。 目の前の存在が我慢ならないという。 それは、意地という言葉に言い換えることが出来るかもしれない。 もう一歩、踏み込む。 近づいていく。 あの、幻想殺しに。 その歩みに、向ってくる敵の姿に上条はたじろいだ。 自分を見失いつつある彼には闘う覚悟も定まらないまま、強大な敵が再び目前に在る。 今はもう、拳の握り方も分らないというのか。 「クソッ! ………ォッ!!」 迷いに答えを出せないまま、揺らいだまま上条は挑んだ。 揺らいだ意志で足を引きずりながら敵へと駆け出した。 一方通行はそれを待ち受ける。 静かに歩き続けながら、約10メートルの距離が縮まっていくことを良しとする。 それは正に勝負だった。 彼は知っている。 住宅街、左右に逃げ場なしというこの状況。 遠距離攻撃徹すれば一方通行に負ける要素はない。 そして近距離は勝機が薄い。 にも拘らず、待ち受ける。 まるで上条当麻とだけは、同じ土俵で闘う事を決めていたように。 距離が詰まっていく。 ぐんぐんと、あっという間に、10メートルは5メートルに、5メートルは1メートルに、 そして、ゼロへ。 「「…………っらァッ!」」 重なる叫び。 同時に腕が伸びる。 拳が飛ぶ。 上条の右腕に、一方通行も己の腕で答えた。 交錯する腕(かいな)、しかしその差は歴然だ。 やはり上条当麻の拳が速い。 一方通行の腕は遅い。 それは分りきっていたはずの展開。 理が逆転することなど当然無く。 一方通行の腕よりも速く、上条の拳が一方通行の頬を殴り抜いた。 「……ギァッ!」 蟲が潰れたような声を漏らす。 無様に、殴られる。 だが一方通行は倒れなかった。 本来ならば、ここで吹っ飛ばされているはずだというのに。 「温りィ……。なンだァ? 今の糞みてェなパンチはァ……?」 殴られ、よろめきながらも一方通行は嗤った。 なんて情けない。 己はこんな無様な拳に敗北したのか、と。 「……!?」 そして上条はその挙動に意表を突かれていた。 敵の能力を知ればこそ、ありえない筈の挙動だった。 両手が、触れただけで死を呼び込む一方通行の破壊の両腕が、 それが通用しないはずの上条の右手を掴み取っている。 (何故!?) その言葉で上条の脳裏が満たされる。 だがマズイ。 嫌な予感だけはヒシヒシと伝わってきた。 このままでは、このまま身体を捕らえたままでは……。 (まさか、コイツ……本気(ガチ)で俺と勝負しようってのか……!?) 缶コーヒーやら銀球やらガラス片やら風やらの、優位な遠距離攻撃を一切省いた。 完全なる近距離戦。 小細工無しの格闘。 一方通行を知る上条にとって、それが一番意外な選択肢だった。 そして一方通行の手は上条当麻を捉えきれない。 だが唯一、捕らえられる可能性がある場所が在るとすれば。 殴る際、どうしても敵に触れなければならない、その右手に他ならない。 「まさか……!」 一方通行は最初からそこのみに注目していた だが本来ならばその手を捕らえる事も許さなかったはずだ。 殴り抜いた瞬間、一方通行は地を転がっていた筈なのだから。 けれどそうはならなかった。 それは拳のにぶり。 引き起こした要因はやはり迷いか。 迷いに揺れる意志と、 既に狂気すら飲み込んで前進する意志との差。 一方通行はよろめきながらも、決してその手を離さない。 上条当麻の右手を掴んで離さない。 絶対に逃がさない。 「…………ッッ!!」 そして伸びてくる破壊の手。 遂に届く。 上条当麻の無防備な胴体へと。 そこから逃れる為には、方法は、一つ。 「…………グ、ガハッ!!」 またしても響く打撃音と小さな声。 上条当麻は右手を掴まれたまま、 そのまま再度、一方通行を殴り抜いたのだ。 今度こそ吹っ飛ばされる一方通行の身体。 「はッ。 なンだよ、まだ見所は残ってやがる……。 殺し損ねちまったか……」 地を滑りながらも彼は嗤って言った。 だが上条は、既に満身創痍の体だった。 「ガ……グッ……ゴホッ……ゴホッ……」 体内から大量の血が逆流してくる。 口から流れ出す鮮血。 足の傷口から噴水の如き勢いで赤が吐き出されていく。 血流操作が中途半端な所で止められたからか。 上条は一方通行に触れられながらも、未だに即死は避けていた。 しかし十分なほど身体の内部を破壊され、凄まじい激痛が全身を巡っている。 「ギッ……がぁ……!!」 耐えなられない。 立ち上がる事が出来ない。 死に、瀕する。 そんな時でも上条の脳裏を占める感情はやはり一つ。 己は何を間違えていたのか。 どうする事が正しい道だったと言うのか。 本当に、自分のやり方はただの思考停止の成れの果てであり。 アーチャーやスザクやファサリナの言葉が正しいとでも言うのか。 理想を切り捨てて、犠牲を良しとして生きれば、こんな最後を迎えなかったのか、と。 「俺は……それでも……認めたくねえ……曲げたくねえんだ……」 感情が、知らず言葉となって溢れ出していた。 「何が。悪いんだよ……。皆が助かる道を選んで、最高のハッピーエンドを願って、何が悪いんだよ!! 畜生!!」 知らず叫びとなっていた。 誰にも向けられない、独白。 けれど、それに答える者が、今は居たのだ。 「……なンにも、悪くねえよ。そうさ、オマエはそれで良いンだよ」 思わず耳を疑った。 上条は伏せていた顔を上げる。 その視界は真っ赤に染まっていた。 聴覚にもガタがきている。 だが、聞き間違いではない。 目の前の一方通行は。 他でもない、相対しているこの宿敵は今確かに、上条当麻を肯定したのだ。 「…………な……?」 「あァ? なに驚いた顔してンだよ。 オマエは何も間違えちゃいねェって、言っただけだろうが……」 心底呆れた声で一方通行は話す。 「そりゃァ、オマエの考え方に理屈で難癖つけてくる奴も居るだろ。 まァ確かにオマエはちっとばかしカッコつけすぎだとは思うけどな……」 驚きを隠せない上条へと言葉を紡ぐ。 「けどよォ……オマエはその理想を、現実に変える力を持ってンじゃねえか」 お前は俺とは違うだろう、と。 悪に、闇に落ちなくとも、 正道を行きながらも全てを助けるだけの、強さを持っているだろう、と。 彼は言う。 「何をごちゃごちゃ悩ンでやがンだ馬鹿野郎が……。 今のオマエが弱いのは、あの時、傍に居た誰かがいねェからだろうがよ。 だが、それも含めて力だったはずだ。オマエは確かに、強かったはずだろォが。 だからこそ許せねェ。そのオマエがこンな所でカスみてェにいじけてやがるザマは、見てるだけで虫唾が走る……」 どのような運命の巡りなのか。 この島で誰もが否定し拒絶した上条当麻の理想と生き方。 それを唯一理解し、肯定し、回答を示すのはこの宿敵だった。 「そら、立てよ最強。オマエは何も悩む事なンざねェ。その強さと理想は俺が保障してやるとも。 なぜならオマエ……忘れたなンて言わせねえぞ? オマエは他の誰でもねェ―― この世で唯一、俺を倒した男なンだろうがッ!!」 お前は強い。間違いなどない。 その道を行く事に躊躇いなど憶えるな。 上条当麻にはその理想を成し遂げる強さが在る。 一方通行は本気でそう、言っていた。 本気で、信じていた。 一方通行はようやく己の怒りの正体に思い至る。 彼は我慢できなかったのだ。 自分を唯一倒した男が腐っていくのが、耐えられなかったのだ。 結局彼だけは、誰よりも上条当麻の強さを信じていたのだ。 他でもない、上条当麻に敗北した者として。 「…………あぁ……」 その言葉を聞いた瞬間、 上条はまるで頭の中の靄が、すべて吹き飛んだような気がした。 全身を激痛で苛まれる中で脳裏だけが何故かすっきりとしている。 「…………そう……だな」 ただ代わりに、憤りが湧き上がってきた。 自分が何を見失っていたのかを理解する。 己の理想に間違いは無かった。 それは目の前の敵が示してくれた。 後はもう一つだけ、上条自身が辿り着かなければならない答えが在る。 ではいったい何が足りなかったのか。 それも既に目の前の彼が示してくれた通りだ。 彼の隣に居た仲間が、今はもう居ない。 そう言う意味で、確かに上条は弱くなっていた。 だから……。 「ははっ……くそ……強くなりてえな……」 本当に情けない。 結局、己は仲間に助けられてばかりだった。 いざ一人になってみれば、現実はこんなものだ。 「俺は……強くなりてぇ……!」 だから今、上条は力を欲した。 たった一人でもすべてを守れる力を。 全ての不条理を殴り飛ばせるほどの力を。 「ああ、だったら……こんな所で死んでらんねぇか……。そうだよな」 そして、前に進む事を選んだ。 迷いはもうない。 己の弱さは自覚した。嫌というほど思い知った。 だが、迷いはもう無いのだ。 ならば後はその先に向って進むのみ。 「悪かったな……手間をかけさせた……」 「謝るなよ。オマエが俺に殺される事実はかわらねえ」 「ははっ……そうかよ。じゃあ、いくぜ」 「ああ、きやがれ」 そうして漸く、上条当麻は立っていた。 自分の戦いの舞台に、確固たる己を持って。 「俺は強くなる。その手始めに、まずはてめえを助けてやる!」 他ならぬ。『幻想殺し』上条当麻の声で、言った。 ■ ――ああそうだ、その眼だよ。 駆け抜けてくる少年の姿に、一方通行はどこか懐かしい思いを感じていた。 ――その拳だよ。 こちらを真っ直ぐに見据えるその眼光。 力強く振り上げられたその拳。 ――そいつに、俺は負けたンだ。 不思議な感覚だった。 まるであの日に戻ったようだ。 目の前の少年と始めて闘ったあの夜に。 ――そして、そいつに俺は……。 思い出す。 目の前に在る。 あの夜、颯爽と現れて、悪であった己を拳一つで殴り飛ばしたあの姿。 絶対に辿り着けないと今も確信する。 忘れられないヒーローの体現者。 その姿に――憧れた。 ――俺は……。 確信する。 理屈ではない心のどこかで直感する。 自分はやはり、今回も勝てないのだろう。 絶対にかなうものか、あの眼に、あの拳に、あの上条当麻に……。 ――俺はもう一度……。 これで、全部おしまいだ。 悪い幻想(ユメ)は上条当麻が全部殺してくれる。 己は負ける。 ――あの拳が俺に届けば、それで終われる。 その確信と共に、一方通行は幻想殺しを待ち受けた。 全ての不浄を払う。 上条当麻を待っていた。 ◆ 『終幕/はじまりのおわり』 ◆ 「……そう、か」 その結果は実の所、意外でもなんでもなかった。 倒れた者はもう動かない。 ならば、未だに立つものこそが勝者だ。 「ああ……それじゃァ、俺の勝ちだな」 即ち、ここに立つ一方通行こそが勝者となる。 路上に倒れた上条当麻には、もう既に息は無かった。 死んでいる。 不完全ながらも血流の逆流を受け。 内臓に重大なダメージを負い。 血を流しすぎた。 その順当な結果。 至極自然に、完膚なきまでに、普通に、死んでいる。 一方通行には分っていた筈だ。 すでに上条には決定的な一撃を与えていた事など。 即死でなくとも、上条は致命傷を負っていた。 それを知っていたにも拘らず、彼は驚いていた。 己の勝利に、上条の死に、疑問を感じている。 「けどよ。なンで、だ?」 何故自分は勝利しているのか。 目の前の幻想殺しと戦って、それで勝ってしまった。 その理由を問う。 答える者は居ない。 上条当麻はもう死んでいる。 この場には一方通行以外の誰もいない。 「いいのか?」 誰にともなく、一方通行は問い続ける。 この世の摂理はこの結果を良しとしたのか。 一方通行がこの先に行く事を認めるというのか。 ヒーローの敗北。 それを是とするのか。 「そういう事なのか?」 答える者はいない。 ならば、残っているのは結果だけだ。 正義が死んで、悪が勝ったという。 それだけだ。 「そう……か。そうかよ…………ヒ、ハ、ヒャハハッ! ヒャはハハハハハはハハハハはハハハハハハハハはッッ!!!!!! ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッッ!!!!!」 最後の幕が閉じる。 終わりは勝者の狂笑にて。 それが何を意味していたのかは誰にも分らない。 怒りか。 慟哭か。 歓喜か。 だがいずれにせよ、彼はもう迷う事など無いだろう。 疑問を挟む事もない。 ひたすらに。 どこまでも、この果て無き修羅の道を行くだろう。 その手がいつか、目指した救いに触れるまで―― 【上条当麻@とある魔術の禁書目録 死亡】 ■ 【E-4 南部の住宅街/二日目/黎明】 【一方通行@とある魔術の禁書目録】 [状態]:精神汚染(完成)、肩口に打撲、能力使用不可能 [服装]:血みどろの私服 [装備]:アンチスキル用ニニ口径ゴム弾拳銃@とある魔術の禁書目録 [道具]:基本支給品一式×4、缶コーヒー各種@現実×多数、首輪×3(アーチャー、利根川、ゼクス)、 H K MARK23 ソーコムピストル(自動拳銃/弾数5/12発/)@現実、3499万ペリカ、おもちゃの双眼鏡@現地調達、 真田幸村の槍×2、H K MP5K(SMG/40/40発/)@現実、その他デパートで得た使えそうな物@現地調達、ピザ×10@現実 Draganflyer X6(残バッテリー約10分)@現実、Draganflyer X6の予備バッテリー×4@現実、士郎の首輪解析メモ デイパック(サーシェスの死体入り)、ノートパソコン@現地調達、オレンジハロ@機動戦士ガンダムOO、9mmショート弾(14発) 救急救命セット@現実、柳刃包丁@現実、工具一式@現実、雑誌@現実×多数、真田幸村の首輪、 果物ナイフ@現実 作業用ドライバー数本@現実 タバコとライター@現実、ショットガンの予備弾丸×78 文化包丁@現実 レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード、ドラグノフ@現実(10/10)、 GN首輪探知機@オリジナル、平バール@現実、麻雀牌@咲×31個、ユンケルスター@現実×8 コンビニの商品多数(内容は後の書き手さんにお任せします) [思考] 基本:どいつもこいつもブチ殺して打ち止めを守る。 0:――――――。 1:打ち止めを守る(※打ち止めはゲームに参加していません)。 2:このゲームをぶっ壊す! 3:首輪を解析する。首輪を解除出来たらあの女(荒耶)をブチ殺す。 4:サーシェスの死体について、何か情報を集めてみる。 [備考] ※飛行船で首輪・制限の制御を行っている・主催側で制限を調節できるのではないかと仮説を立てました。 ※ゼクス、政宗、神原、プリシラ、スザク、レイと情報を交換しました。 ※ライダーの石化能力・藤乃の念動力の制限・信長の瘴気・荒耶の魔術(不完全)を分析しました。 ※橙子(荒耶)の名前は知りませんが、首輪の魔術礼装の作者ではないかと考えています。 ※ゼクスから士郎が解析した首輪の構造情報を入手しました。 ※赤ハロとオレンジハロ間で通信が出来るようになりました。通信とは言えハロを通しているため、声色などはハロそのものにしかなりません。 ※当麻と式の力で、首輪の魔術礼装をどうにかできる可能性があると判断しています。 ※最悪の場合、生存者の中で殺し合いに乗った人間は、己を含めて四人しかいないと予想を立てており、 その内の二人は織田信長と浅上藤乃であると判断しています。 ※サーシェスの名前が放送で呼ばれなかった事には、死体に首輪が無かった事も含めて、 何か厄介な裏があると見ています。 時系列順で読む Back 疾走する超能力者のパラベラムⅣ Next おわりのはじまりⅠ「少女には向かない職業」 投下順で読む Back 疾走する超能力者のパラベラムⅣ Next おわりのはじまりⅠ「少女には向かない職業」 280 疾走する超能力者のパラベラムⅣ 一方通行 286 覚醒ヒロイズム 280 疾走する超能力者のパラベラムⅠ 上条当麻 GAME OVER
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夢幻の如くなり(後編) ◆mist32RAEs ◇ ◇ ◇ ゼクスらを見つけたのは偶然だった。 というより、こちらも信長から離れるために移動していた最中、バッタリ遭遇してしまったに過ぎない。 まだ制限は解除されておらず、今の自分は無力な素人だ。 だがあの女が引いたということは、それを知らなかったのか。 「誰かと思えばホントにゼクスかよ。で、テメーあの女に俺の制限のこと喋ったのか?」 「あいにくそんな暇も余裕もなかったがな……見ての通りのくたばり損ない、さ……」 やはり。 一方通行はそんなゼクスに対し、ハッと皮肉げに笑った。 確かに怪我の具合を見れば、長くはもたないだろうということは明らかだった。 念のために構えた支給品の二二口径をだらりと下ろして、ゆっくりとゼクスの表情を覗き込む。顔色は極めて悪い。 「ま、最初に言っとくけど助ける気ィねーから俺。ちょいと死ぬ前に知ってること色々喋ってくれや。断ったら少し寿命が縮むだけだがよォ? そのまま死ぬよかだいぶ痛ェ目に合うんじゃねーかなァ、ギャッハッハッハッハ!」 それは本心だった。 できれば今すぐ衝動に任せて血の華をぶちまけてやりたいが、今は能力が封じられており武器はゴム弾の拳銃ひとつ。 しかも相手は放っておけば、じきにくたばる身だ。すでに満身創痍でろくに抵抗すらできないだろう。 そんなヤツをわざわざ殺してもイマイチ楽しくなるとは思えなかった。 それより、この制限下でも制圧出来る相手に出会ったチャンスを利用し、情報を手にいれるべきだ。 正直にいって今後の戦いで相手を殺さぬように手加減できるとは自分で思えなかったし、する気にならなかった。 頭の中で声が聞こえ始めた。内なる衝動が殺せ、殺せと叫んでいる。 ぎしりと歯を食いしばり、この場はどうにかそれを押さえ込んだ。 「殺し合いに乗った……んだな」 「……べェつにィ? やるこた変わっちゃいねェよ。邪魔な奴はブッ殺して、ゲームの主催もブッ潰してやるだけだ。 俺の都合のために虫ケラがいくらか死んでも知ったこっちゃねェ。踏みつぶして進むって、ただそれだけのこった」 今の一方通行は狂っているが最優先事項を忘れたわけではない。 殺人衝動にさえとらわれなければ、何をすべきか、そのためには何が必要かという思考を推し進めることは可能なのだ。 先程の戦闘で頭に血が上っていたのは確かだが、制限による無力化で冷静な判断力をどうにか取り戻した。 とりあえずゼクスから情報を手に入れること。そしてその荷物を奪い取ることが目的だ。 情報はいわずもがな、荷物の中に使える支給品があれば、無力化されている間はそれが頼りになる。 手に入れておくに越したことはないだろう。 「とりあえずもうすぐくたばるんだから、その荷物はいらねーよな? 俺が貰ってやるから寄越せオラ。ホレ、手に持ってるその拳銃もだよ」 はじめに支給されていた品の最後の一つ――アンチスキルのニニ口径ゴム弾拳銃を突きつけながら、ゼクスのデイパックを奪う。 まともに人を殺すことすらできない銃モドキに頼ることになるとは思わなかった。 あちらはこの銃がゴム弾であることなど知らないせいか、抵抗はない。またはすでにその力も尽きたか。 とにかく次だ。まだ用件は済んではいない。 「で、だ。こっちが本題なんだが、あと何分かで俺の制限が解ける。つまり能力をまた15分だけ使えるようになるわけだ。 そん時にテメーに手伝ってもらいたいことがある。それまで死ぬんじゃねェぞォ? 終わったらサックリ楽に殺してやっからよォ」 「……」 すっかり忘れていたが、先刻手に入れたアーチャーの首輪を解析しなければならない。 しかも都合のいいことに他にもう一つサンプルがみつかったので失敗しても代わりがきく。 そのもう一つとは言わずもがな、眼前のゼクス・マーキスのことである。 「目的のために手段は選ばないということか……」 「ハッ、よく言われるけど違うんじゃねェのかァ? 目的のためならとっちゃいけない手段ってのが最初からあんだろうがよ。 目的を定めた時点で手段ってのは限られてんだよ。そいつを見失った奴が選ばねェとか抜かすわけだ」 「お前は……違うと?」 「最初からなァ、元から俺が欲しいものは変わってねェよ。ちょいと事情が変わって、ちょいとやり方を変えたってだけだ」 そろそろ時間だ。時間を確認する。 路地の薄闇をぼんやりと照らす首輪のランプが赤から緑へ変わった。 「さて、時間だ」 「なにを……する気だ」 「まあ見てのお楽しみだ……っと」 ゼクスの顔をのぞき込むような動作で正面に腰を下ろし、無造作に片手で顔面を掴んだ。 驚いたように目を見開いてこちらを見ているが、能力が使えるようになった時点で向こうにはどうすることもできない。 (おとなしくしなァ、俺の声が聞こえるなら黙って頷け) (な……ぐっ!?) (俺とテメェの声をベクトル操作して直接お互いの頭蓋骨に響くように調整した。口ン中でモゴモゴやれば聞こえるはずだ。やってみろ) (いわゆる……骨伝導という奴か。お前は盗聴機を想定して……?) ゼクスもすでに気付いていたか。主催への反抗をブチあげただけはある。 この調子なら他にも何かすでに情報を得ているかもしれない。 (他にもこの首輪について何か知ってやがるな……どーせ直にくたばるんなら素直に全部ブチまけていけよ。 テメェの大事なリリーナちゃんの敵討ちくらいやってやるからよォ) (……私が接触した参加者――二十世紀末の日本からやってきた魔術師の解析結果だ……。 これから話す内容は、基本的に彼の時代における技術を基準にしたものになる……。 外面には視覚による情報の偽装・抑制を行うことに特化した概念物・礼装が埋め込まれ、現在も機能している。 視覚妨害以外にも礼装が存在……恐らく魔術行使に対する防御、ただし魔力供給がされていないため、死体から外された状態では機能していない。 中心部には金属……知る限りの材質において該当するものなし。トランシーバーに似た構造の装置が存在……機能の断定は不可能。 ICチップらしきものが存在……機能の断定は不可能。電磁石と共に液体が存在……知る限りの液体に該当するものがない。 製作技術――技術と工程。車、電化製品といった二十世紀の技術の範囲外で作られている。 その技術品に対し、視覚妨害・魔術妨害の機能を持つ限定礼装によって保護を行っている。 以上だ……私の荷物に情報をまとめたメモがあるから後で確認するがいい) (ヘェ……いいぜ、今ので全部覚えた。おかげでだいぶ仕事がはかどりそォだ) 一方通行が暮らす学園都市の技術レベルは、おそらくその魔術師とやらの時代よりも実質数十年は進んでいる。 実際に調べてみれば新たにわかる事もあるだろう。制限もあることだし余計な手間を食っている暇はない。 再び能力を封じられる時間までに、やれる限りのことをしておかなくてはならないからだ。 (……こいつは) 早速、ゼクスを掴んだほうとは逆の手でアーチャーの首輪を取り出し、解析を開始する。 一見でその断片すら解析できない要素が複数存在。これが魔術の礼装というやつか。 液体……おそらく液体爆薬、そしてトランシーバーについては多少未知の要素があるものの想定の範囲内だ。 バイタルサインをチェックする機能と見られる回路あり……しかし現在は機能していない。 爆薬、そしてそれに付属する回路と繋がっているが……止まっている。 ということは、おそらくこれを禁止エリアに放り込んでも爆発はしないだろう。 問題は魔術礼装……一方通行にとって未知の領域だ。 ここに来てから未知の力に触れたのは二回。一度目は織田信長の黒い影――侵食する瘴気。 そしてもうひとつ……一方通行の操作したベクトルすら乱す、あの女の能力――停止の結界。 どちらかといえば後者のものに性質が近い。 首輪をしていなかったあの女は主催側の人間である可能性が高い――つまりこの首輪ギミックの作者である確率は高い。 信長の能力であれば、すでにあっさり反射できるほど解析は済んでいるのだが、そううまくは行かないようだ。 (こっちは解析終了だ……次は生きているテメェの首輪を調べる。残り……9分と28秒。こりゃ楽勝だなァ。 しかしこっちのヤツと違って、そいつは今もバイタルサインのチェックが生きてるだろうぜ。ま、俺自身は反射で済むワケだがよ。 テメェは俺がしくじれば爆発してオシマイなんだが、今更恨む筋合いでもねェだろう? そんときゃ大人しく諦めなゼクス) (いいさ……今更こんな生命など惜しくはない……帝愛打倒に辿り着くための捨て石になれというなら、なってみせよう……!) (ヒャッハッハ……いい心がけだ。んじゃまァ――) (……だが!) 手首を強い力で握り締められた感触があった。 隻腕も同然のゼクスによって、一方通行の手が掴まれている。 反射的に、殺すか――と思い立った瞬間、ベクトル操作によるものではない、はっきりとした肉声が耳に響いた。 「これだけは……聞いておけ……一方通行……!」 「てめ……」 「いいか……勝利とは……水に落ちた犬を棒で叩くことだ……っ!」 「……はァ?」 少なくとも殺意はない。 何かを伝えようとしていることは分かる。 しかし、この死にかけの男は果たしてまともな思考で喋っているのだろうか。 思わずその顔をのぞきこんでしまう。 ゼクスの眼には確固たる意志の光があった。 思い出す――最強のレベル5たる自分の前に立ちはだかった、ボロボロになりながらも一歩も引かなかった男がいた。 そして、それを守るように立ちはだかった女がいた。あいつらも――確かこんな眼をしてはいなかったか。 一瞬、我を忘れる。 「……オマエ」 「勝つ事とは……負かすこと、蹴落とすこと、躓いた者を踏みつぶすこと、相手の傷口を広げて塩を塗りこむことだ……! 勝ち残るとは……屍の山を超えていくことだ……! 決して美しいことではない……残酷でさえある……っ!」 そしてその事実に気づいたとき、自分が憧れた/殺したくてたまらない存在が、内なる思考の中で歪んでいく。 まるで鼓動のように、どくんと自身の体が震えたように感じた。 「私は甘すぎた……ヒイロ・ユイのようには、それが、できなかった……ゆえに此処で無為の内に死ぬのは当然の事なのだろう……! 一方通行……貴様がそれでも勝ちたいと望むなら、鬼になれ……ッ!!」 一方通行の中で突如、爆発するように殺意が芽生えた。 黒い感情に満ちた、熱に浮かされたような狂喜が尋常とは思えぬ高ぶりをもたらす。 鬼気迫る――まさにその言葉がぴったりとハマる。 「ハハァ…………いいぜ、死ねよ」 ――首輪だけを残して、ゼクス・マーキスが歪む。 バンッッッ!!――と、自動車のタイヤが爆ぜるかのような鈍い破裂音が響いた。 「くか――」 びちゃり、びちゃり。 「くくかきくかこ――」 湿った柔らかい何かがべちゃべちゃと叩きつけられる音。 「くかきかここかこくかくかか――」 それが断続的に続く中、甲高くどこか非人間的な響きの哄笑が生まれ、徐々にそのボリュームを上げていく。 「くか――ぎゃは、ぎゃは、ぎゃははははははははははははははははははははははははははははははははははは ひゃっはっはっはっはっはははっはっはっはっはっはっははははははあははひゃはひゃひゃひゃはは、ひゃは ゲホッ、ゲホッ、ぎゃは、ひゃははははははははははははははははははははははははははははははははははは ゲッハハハ、ハハハハハハ、ハハ、ハハハハハハハハハハハ、ヒャッハッハッハッハッハッハッハッハッハハ ギャハハハハハハ―――――――――――――――――――――――――――――――ッッッッッッ!!!!」 可笑しくて可笑しくてたまらない。 息が切れるまで笑いつづけ、むせてもなお収まらずに笑い続ける。 口裂けの怪物みたいに、いっぱいに広げた口腔から、こみ上げてくる衝動のままに感情をぶちまけた。 楽しい。楽しい。 殺すのは楽しい。 スッキリ爽快、殺す度に思考がクリアになっていく感覚すらある。 「笑わせてくれんじゃねェか負け犬君がよォ! いいぜェ! 文句なしの完全勝利、キルゼムオールでキッチリ締めてやらァ!! 鬼になれだァ!? 悪魔でも魔王でもなってやらァ! 俺を誰だと思ってやがる!! 俺は最強で無敵のレベル5様なンだ!! テメェやそこらの雑魚みてェな弱い生き物なんかじゃねェンだよォォォォ!!!!」 べっとりと赤く染まったアスファルトの中心、生臭い血と骨と臓物の中で彼は吼える。 表面にゼクス・マーキスと刻まれた銀色のリングをその手に握り、夜の街に孤独な悪党が咆哮を轟かす。 その叫びはまるで誰も寄せ付けぬ悪鬼。 または寂しくて泣いている童のようで――。 【D-5 南部/一日目/真夜中】 【一方通行@とある魔術の禁書目録】 [状態]:精神汚染(完成)、能力使用不可(使用可能まで約一時間) [服装]:私服 [装備]:パチンコ玉@現実×少量、アンチスキル用ニニ口径ゴム弾拳銃@とある魔術の禁書目録 [道具]:基本支給品一式×2、缶コーヒー各種@現実×多数、首輪×3(アーチャー、利根川、ゼクス)、 H K MARK23 ソーコムピストル(自動拳銃/弾数5/12発/)@現実、3499万ペリカ、おもちゃの双眼鏡@現地調達、 真田幸村の槍×2、H K MP5K(SMG/40/40発/)@現実、その他デパートで得た使えそうな物@現地調達、ピザ×10@現実 Draganflyer X6(残バッテリー約10分)@現実、Draganflyer X6の予備バッテリー×4@現実、士郎の首輪解析メモ [思考] 基本:どいつもこいつもブチ殺して打ち止めを守る。 0:能力が使えるようになるまで身を隠す。 1:打ち止めを守る(※打ち止めはゲームに参加していません)。 2:このゲームをぶっ壊す! 3:首輪を解析する。首輪を解除出来たらあの女(荒耶)をブチ殺す。 4:上条当麻は絶対に絶対に絶対に絶対にブチ殺す。 [備考] ※飛行船で首輪・制限の制御を行っている・主催側で制限を調節できるのではないかと仮説を立てました。 ※ゼクス、政宗、神原、プリシラ、スザク、レイと情報を交換しました。 ※ライダーの石化能力・藤乃の念動力の制限・信長の瘴気・荒耶の魔術(不完全)を分析しました。 ※式の力で、首輪の制限をどうにかできる可能性があると判断しています。 ※橙子(荒耶)の名前は知りませんが、首輪の魔術礼装の作者ではないかと考えています。 ※ゼクスから士郎が解析した首輪の構造情報を入手しました。 【アンチスキルの22口径ゴム弾拳銃@とある魔術の禁書目録】 学園都市のボランティア警備員であるアンチスキルが使う暴徒鎮圧用拳銃。 反動が小さく素人でも扱える22口径、弾頭もゴム製で、あたってもせいぜい肋骨が折れる程度の威力しかない。 ◇ ◇ ◇ デパートの上層部から眺める真夜中の街並みは、街灯の人工的な明かりが星屑の海を思わせる。 戦国の世にはない、天井から床まで一面すべてギヤマンでできた透明な壁。 そこから透けて見える夜景を眺めつつ、第六天魔王こと織田信長は建物内で調達した酒瓶に口をつけた。 足元に広がる下界をよくよく見てみれば、先刻の戦による余波であちこちから火の手が上がっている。 まさに戦場の跡。打ち砕かれし建築物は朽ち果てた姿を晒し、骸は誰にも顧みられぬまま捨て置かれる地獄。 信長にとっては見慣れたものだ。汚れし世に救いなど一辺も無く、邪気と魔性に満ちた人界――それが戦国。 「夜に参ずるは黒凶つ……下天の内に充ち満ちて……永劫現を貶めん……」 再び酒をあおった。 一旦、外套と鎧を外しており、その下の肉体に布切れを裂いて包帯の代わりとし、傷を覆ってある。 今は休息の時だ。ここから見る限り、辺り一帯は静かなものである。 遙か遠方からでも立ち昇った、先程のような大きな戦の機は未だ見えない。 天の理なくば、是非も無し。 ここは力を蓄え、刻来れば地獄の釜を開くが如き鏖殺の戦を始めるべし。 百鬼眷属、我が背名にあり。 我が刃は厄災の刺。 我が覇道は疾走する狂喜。 我が抱きし闇は浮世を慟哭する魂で満たし、死に至る病で埋め尽くす。 我が名は第六天魔王――織田上総介信長也。 「人間五十年……下天の内をくらぶれば……」 織田信長は、この幸若舞・敦盛の一節をことあるごとに好んで舞った。 天下にその名を轟かせた桶狭間の合戦を思い出す。 武田と伊達を手玉にとり、今川の首を労せず討ち取ってみせた。 「夢幻のォ……如く……なりィ……」 能独特の朗々たる声が響きわたる。 凄絶な笑みを浮かべながら、いまの信長はこの死地を楽しんでいた。 「一度生を享けてェ…………滅せぬ者のォ……あァるべェきィかァァァァ……!」 信玄坊主ではないが、動かざること山の如しという言葉が今の状況には相応しい。 あと一刻も立たず放送とやらが流れるだろう。 その放送ごとに、この戦場における機は大きく動く。 死者の読み上げ――この殺戮遊戯における参加者――同盟相手、もしくは敵対関係の生存確認。それによる戦略の変更。 禁止エリアとやら――それによって移動すべき経路は大きく変わる。 信長はかつてそれを三度伝えられた経験で、もし自ら動くならばそれからだと正しく理解していた。 「全く……安い座興よ……」 持っていた酒ををすべて飲み干すと、無造作に瓶を床に投げ捨て、笑った。 魔王は今この時だけ殺戮の手を休め、無心で、ただ夜を眺めていた。 【D-5 南のデパート最上階/一日目/真夜中】 【織田信長@戦国BASARA】 [状態]:疲労(小)、ダメージ(中)治療済み [服装]:ギルガメッシュの鎧 [装備]:カリバーン@Fate/stay night [道具]:なし [思考] 基本:皆殺し。 1:放送後、荒耶の言葉通り、西に向かい参加者を皆殺しにする。 2:荒耶は可能な限り利用しつくしてから殺す。 3:首輪を外す。 4:もっと強い武器を集める。その為に他の者達の首をかっきり、ペリカを入手する事も考慮。 5:高速の移動手段として馬を探す。 6:余程の事が無ければ臣下を作る気は無い。 [備考] ※光秀が本能寺で謀反を起こしたor起こそうとしていることを知っている時期からの参戦。 ※ルルーシュやスザク、C.C.の容姿と能力をマリアンヌから聞きました。どこまで聞いたかは不明です。 ※視聴覚室の遮光カーテンをマント代わりにしました。 ※トランザムバーストの影響を受けていません。 ※思考エレベータの封印が解除されましたが、GN粒子が近場に満ちたためです。粒子が拡散しきれば再び封印されます。 ※瘴気によって首輪への爆破信号を完全に無効化しました。 ※首輪の魔術的機構は《幻想殺し》によって破壊されました。 ※具体的にどこへ向かうかは、次の書き手にお任せします。 ※荒耶との間に、強力な武具があれば譲り受けるという約束を結びました。 ◇ ◇ ◇ OZで長い時間を過ごした私は、戦争の中に勝手な美意識を持ち込んでいた。 戦う者同士、敵と味方にわかれていても、唯一認め合うことのできる精神としてだ。 私には守るものを持つ資格がない。だが、彼らに――ヒイロ・ユイらに言わせれば、この考えこそが甘いのだろう。 美意識を気取った体裁など必要ない。そんな戦いしかできないがゆえに、私はここで倒されただけのこと。 これは戦争なのだ。命をかけても学ばなければならないものがある。それができねば死ぬだけだ。 しかし戦いは激化するがゆえに、置いていかれぬ為には人間としての感情さえ必要としなくなっていく。 私は一人の兵士、自分の意思として、その流れに逆らう道を選んだ。 ヒイロ・ユイ……お前は純粋すぎる、そして優しすぎる。しかし、そうでなければ生きる資格がないということか。 ならば私は、どこまでも生き抜いてみせるべきだったのか。誰よりも厳しく、戦士として。 だが……リリーナを失い、その屍を踏み拉いてまで、修羅の道を踏破した果ての勝利にどんな価値があるというのだ? お前は強すぎる。私には……無理だ。 「そうか…やはり律儀な男だよ君は。だからこそ私も信頼がおけるというものだ」 ――トレーズ・クシュリナーダ。 幻か……それとも、この無様な私を地獄から笑いにきたのか。 「そういえば君の気が済むのかね。この世から戦いはなくならん。ならば常に強者が世界をおさめればいい。 人々は強い者に支配されることに喜びすら感じる。世界は戦い続けることが自然なのだ」 ――それが貴様の理想か。 「言った筈だ。私の理想など、一人の人間の妄想でしかない。 歴史は日々の積み重ねで作られる。個人の未来などに興味はない。 ゼクス・マーキス――いや、我が永遠の友ミリアルド・ピースクラフト。 君に会えたことを悲しく、また嬉しく思う。だがこの戦場は変わっていく。私の力が不足していた。 人の進む道はあまりにも気ままだ。ふくれあがる力が、これほどまでに人の心を置き去りにしていくとはな」 そうでなければ勝てはしない。 ゆえに貴様は敗れたのだろう。そして、この私も。 そうまでして得た勝利に価値を見出せぬがゆえに。 互いに生き残るべき人間ではなかったということだ。 「……古き良き伝統と人間の奥深い感情が築き上げた、いたわりの歴史。 私は戦うことが時に美しいことと考えると共に、命が尊いことを訴えて、失われた魂に哀悼の意を表したい。 私は、人間に必要なものは絶対的な勝利ではなく、戦う姿、その姿勢と考えている。 しかしモビルドールという心なき戦闘兵器の使用を行うロームフェラ財団の築く時代は、後の世に恥ずべき文化となりはしないか。 また一方で、戦わずにはいられない人間性を無視する完全平和をたたえる……。 宇宙コロニーの思想は、その伝統を知らぬ無知が生み出す哀れな世迷い言と感じていたものだよ」 だが――その宇宙から彼らが生まれたのだろう。 「そう。その境遇の中から、私の理想を超えた新しい戦士達が生まれた。それがガンダムのパイロット達だ。 彼らの純粋性に満ちあふれた感情の前に、私が愛した伝統はかすんで見えた。 守るべきものを失い、さらに守ってきたものに裏切られた戦士は歴史上敗者であるにも関わらず。 しかし彼らにその認識はない。それどころか、彼らはまだ戦う意思に満ちあふれていた。 美しく思われた人々の感情は常に悲しく、重んじた伝統は弱者達の叫びの中に消え失せる。 戦いにおける勝者は歴史の中で衰退という終止符を打たねばならず、若き息吹は敗者の中より培われる。 ならば私は……敗者になりたい」 だが貴様は、いや私もその敗者にはふさわしくないということさ。 むしろそれは衰退する勝者としての思考だろう。 人は場所、時間、環境を選んで生まれる事は出来ない……。 格差というものは確かに存在し、ゆえに生まれた瞬間、それぞれが生きる境遇は異なっている……。 それが宿命だ。そして世界はあまりに無慈悲で残酷なのだ。 「我々は衰退すべき勝者として生まれたがゆえに……結果として敗れるべき勝者にしかなれなかったと……?」 いや……私や貴様が焦がれた彼らは、そんなことなど露ほども考えていない。 彼らは、ただ明日を求めただけだ。 勝者か敗者か、きっとそんなことは最初から関係ないのだよ、トレーズ。 残酷な世界。 無慈悲なる宿命。 孤独に過ぎる冷たい荒野をただ一人で進まねばならぬとしても……。 「それでも彼らは――ただ明日を求めた、か」 ああ。 そうだ。 きっと、それこそが――、 【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW 死亡】 時系列順で読む Back 夢幻の如くなり(前編) Next Moonlight Blue 投下順で読む Back 夢幻の如くなり(前編) Next Mobius Noise 258 夢幻の如くなり(前編) ゼクス・マーキス GAME OVER 258 夢幻の如くなり(前編) 織田信長 275 拡散スルハ死ノ恐怖 258 夢幻の如くなり(前編) 一方通行 267 生物語~すざくギアス~(上)
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作者・◆UwuX8yY6RQ氏 私、◆UwuX8yY6RQの個人ロワ第二段。 オリキャラ+出典キャラでバトルロワイアルをしようという企画です。 獣人率多めと、個人的趣味が丸出しです。 10/2/28 完結。ありがとうございました! 個人趣味ロワ本編 個人趣味ロワ本編SS目次・時系列順 個人趣味ロワ本編SS目次・投下順 個人趣味ロワ追跡表 個人趣味ロワ参加者名簿 個人趣味ロワ支給品一覧 個人趣味ロワ死亡者リスト 個人趣味ロワルール&マップ 個人趣味ロワ各種設定
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174 :名無しさんなんだじぇ:2010/11/08(月) 02 45 21 ID cnQ2wHZI 【第五回放送を見て…】 部長「和…」 和「あれしか方法がないんです…あれしか…」 とーか「本当にいやらしいところを付いてきますわね、あの黒い神父!」 かじゅ「選択肢をわざと狭めて見せて後戻りできないようにする…まさに詐欺師の商法だな」 美穂子「精神的に追い詰められていると、アレは本当にどうしようも出来ませんから…」 池田「キャプテン…」
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crosswise -black side- / ACT3 『勇侠青春謳(ゆうきょうせいしゅんか)』(二) ◆ANI3oprwOY ―――――――――――――――――――― ◆ ◇ ◆ ――――――――――――――――――――――― ―――そうさ、楽しんだもん勝ちだぁな、つまりはよ。 /勇侠青春謳・劍撃ノ参<諧謔> ――誰だって自分の人生の主役は自分自身だ。 そんな言葉をきいたことが、きっと誰でも一度はある。 けれども、幼き頃のディートハルト・リートにはそれが真実だとは到底思えなかった。 世界は欺瞞に満ちていて、視界は虚栄に塞がれて。輝いて見えるものなどは何もなくて。 目に映る全ては偽物にしか見えなかった。 同じような顔で笑って、同じような顔で泣いて。 明日死んでも世界に何ら影響をあたえることがない、いくらでも代わりの利く存在。 焦点があっていないような、フレームに収まっていないような、どうでもいいことばかりが起こる毎日。 誰も彼もがその程度だった。――自分自身も含めて。 そこそこ真面目で、それなりに人付き合いの良い仮面をかぶりながら生きているうちに、彼は確信にも似た自覚を持つに至る。 ――間違いない。私は『脇役』だ。 誰に言われるまでもなく、理解した。 世界にはきっと二種類の人間がいて、自分はその劣った方だ。 きっとどこかで輝きを見せているだろう彼らとは違う――。ディートハルト・リートは、違うのだ、と。 ……だからといって、落胆に暮れたというわけではない。 なるほど、そういうことかと得心したというのが本音だっただろう。 納得がいった。 両親も、友人も、恋人も、自分自身も偽物で。 世界にとってどうだっていい存在で。 だからこそ、日々はこれほどまでに味気なかったのだと。 そう、受け入れることが出来た。 やがてディートハルトは放送業界へと入る。 彼は偽物で、しかしだからこそ本物に憧れた。 恋焦がれたと言ってもいい。 本物の、『主役』に近づくには、そこはとても都合が良かった。 性にもあっていたのだろう。 彼は次々と企画を成功させて敏腕プロデューサーと呼ばれるようになっていった。 そこで、彼はもうひとつの自分の本質に気がつく。 完成した本物よりも、これから完成へと向かう本物のほうが興味深いものがある、ということに。 それはあるいはコンプレックスの裏返しだったのか。 自分では気にしていないつもりでも、未完成なものが完成に至るというその図式に不完全な自分自身を重ねていた、ということなのか。 いや、それは恐らく誰しもが持っているようなものなのだろう。 未熟な雛がやがて成長し、大空へと羽ばたく姿を美しいと思うように。 ディートハルトは、それが少し他人よりも深く、また苛烈であったというだけなのだろう。 そして、このふたつの精神が。 何事もなければ一人のプロデューサーとして平穏に平凡に終わっていたはずの彼の人生を大きく狂わせることとなる。 ――『ゼロ』との出会い。 そこにディートハルトは『未完成』な『本物』の『主役』を感じた。 いままでも何度も仕事で『本物』の気配を感じてきてはいたけれど。 格が違う。核からして違う。 間違いなかった。 この『ゼロ』こそが、本当の、『本物』だ。 幼い頃から求めて止まなかった答えがそこにある。 ――この世界の『主人公』は誰なのか? それこそが、私なのだ。 ……そう、ゼロが答えたような気がした。 黒の騎士団へと入団したディートハルトは、すぐ近くでゼロの功績を見ることが出来る立場となった。 昔からの望みどおりに。 本物を、この目で。『主人公』を近くで感じることができる。 それは素晴らしいことだ。 もっとも、ゼロからそれほど信頼を置かれてはいないだろう。 ディートハルトに限ったことではないが、本当に重要な案件は黒の騎士団員にすら多くは明かされていない。 しかし、それでも構わないとディートハルトは思う。 むしろ、それほどに超然と自分たち『脇役』などは遠ざけていて欲しい。 自分は『脇役』を脱したいと、『主役』に加わりたいと願っているわけではないのだから。 彼を見れば杞憂かとも思うが、万が一にも不純物を混ぜて輝きを濁らせることなどあってはならない。 分相応に、自らの領分をこなして、『主人公』が完全へと変わろうとする過程を見ることが出来るならそれでいい。 それ以上に望むものなど他にはない。 ディートハルトは満足していたのだ。 自分の人生に。 そんな最中だった。 この殺し合いに招かれたのは。 嗤う男に告げられた内容には確かに驚かされた。 魔法、超常能力、平行世界。そのどれもがディートハルトの常識を超えている。 自分が今置かれている状況を考えれば受け入れるしかなかったが、平常であればとても信じられたものではなかっただろう。 そして、そのような完全に近い力を持って行うことが殺し合い、ということに少しばかりの呆れる気持ちもある。 ……だが、けれども狂った発想だ、などとは思わなかった。 要するに、人間の死に様を見たいということなのだろう。 何のことはない。 自分が放送業界にいたころから人間はかわりない。 メディアを少し見れば明らかなように、人間は昔から悲劇が好きなのだ。 残酷だ、悲劇的だ。なんと可哀想なことだろう。 そう口にしながら画面からは目が離せない。 最悪の結末を今か今かと舌なめずりをして待ち望んでいる。 それが少しリアリティを増して行われるというだけだ。 本質的な部分はなんら変わっていない。 ――ディートハルトは数瞬の戸惑いの後に答えを返す。 協力しよう、という趣旨の言葉を。 放送全般の取り仕切りを任されたディートハルトは名簿に目を通しながら思う。 自分の勘が正しいのなら、ここには『本物』が押し込められているのだと。 そんな連中が殺し合いをすればどうなるのか。 惜しいと思う気持ちがある一方、興味を持っているということも否定はできない。 プロデューサーとしての業か。それとも自身もまた矮小なバッドエンドマニアなのか。 ――どちらでも構わない。 ああ……だって、それ以上にまだ死ねないという気持ちが強かった。 ディートハルトが居なくなろうともゼロは目的を果たすだろう。 ディートハルトという存在は、ゼロにとってはその程度の取るに足らぬものに違いない。 だが、ディートハルトは、『ゼロ』の完成をまだ見ていない。 それが見てみたい。 それを見るために、その為だけに生きてきた。 そのためならば、ディートハルトは他人の命も、自分の命すらも惜しむ気にはなれなかった。 だから、逃げた。 だから、ルルーシュ……ゼロがここにいるならば力になろうと思った。 好きを見計らい会場へと降りてでも、絶死の領域だろうと躊躇うことはなかった。 彼ならば何とかしてくれるという思いもあった。 彼ならば――この絶望的な状況をも覆すに違いないと狂信めいた確信すら覚えた。 そうだ……。まだ死ぬわけにはいかないのだ。 私には、まだ。役割がある。 言わなければならないことがある。 伝えなければならない。 リボンズ・アルマークは首輪を解除させようとしている。 具体的に、何をしようとしているかはわからない。 探ろうとも見えては来なかった。 だが、我々にとって良いことだとは到底思えない。 ああ――禁書目録も信用に値しない。 あいつは阿良々木暦に天江衣の首輪の情報を渡した。 本来の権限を越えて。 なぜそんなことをしたのか――? 言うまでもない。 リボンズ・アルマークとつながっているから、暗に首輪を外せと要求するかのような情報を流したのだ。 信じられない。どいつもこいつも。 流れも読めぬ愚か者も、リボンズの息のかかった犬どもも。 ただひとり、ゼロだけが。 ゼロだけが、この窮地を、覆してくれる。 だから、私は生きなければならない。 まだ、この“機体”をゼロへと届けなければならない。 少しでも彼の助けになりたい。 虎の威を借る狐と呼ばれようが構わない。 勝手に呼びたくば呼ぶがいい。 そんな、ものじゃない。 憧れも。嫉妬も。正しくはない。 信仰――少し近い。だが、違う。それだけじゃない。 この感情を正確に、一言で説明することなどできないのだろう。 まだ、死ねないのだ。 ディートハルトは考える。 まだ見ていない。 まだ、見ていないのだ。 それは、きっとすぐ、もうすぐ、あるはずだ。 ゼロが世界を統べる姿を見たいとまでは、言わない。 ここから無事に脱出できるとは――思っていないから。 だから、せめて。 リボンズ・アルマーク。 あの、絶対的強者を。 『完成』仕切ったあいつを――。 打ち砕く姿を見せて欲しい。 死ねない。 見苦しいと罵りたくば罵るがいい。 命汚いと哂いたくば哂うがいい。 知ったことか。 私は、違う。 偽物の人生を偽物とも気づかぬまま生きるお前たちとは違う。 安全なところから必死に生きている人間を嘲る薄汚いお前たちとは違う。 たとえ偽物だとしても。 それでも本物に焦がれた。 近づくために危険をも恐れることはなかった。 私は、ただ見たかっただけなのだ。 ゼロ、あなたなら。 お願いだ。私にとっての神よ。 「――――見せてくれ……。ルルーシュ・ランペルージ……!」 走馬灯。 これまでの人生が流れては消えて行く。 つなぎとめているのは精神。 ただ、求める希望。 純粋に、欲しかった。 未来が見たかった。 ディートハルト・リートという男はそれだけだった。 それだけだから――。 ここで、終わるのだ。 「……あ? 旦那なら今頃死んだんじゃねえの?」 「――――――――――――な」 目を見開いたディートハルトに応えるのは乾いた銃声。 既に致命傷を負っていた身に何ができるはずもなく。 こうして今日もまた一つ。 明日も動かぬ死が積み上がった。 【ディートハルト・リート@コードギアス 反逆のルルーシュR2 死亡】 ■ ■ ■ 「……ったく。一撃で仕留められねえとは俺の腕も鈍ったかねぇ。妙にしぶとい奴だったな」 地に伏せる死体を見下ろしながら、下手人は飄々と言葉を放つ。 見た目は中学生女子。中身は中年男性。その名はアリー・アル・サーシェス。 彼が、若しくは彼女こそが――ディートハルト・リートを殺害した犯人だった。 愚痴愚痴言いながらもだらしなく顔は歪んでいる。 ――一度は拒んだ報酬だったが、何、こういうものなら悪く無いとサーシェスは思う。 胸を弾ませながら(※比喩表現であり、実際の身体描写とは異なる)ごそごそと死体を漁る。 「んー。さてはて、っと……」 いやはや、しかし。 アリー・アル・サーシェスは命を落としたはずではなかったのか? 織田信長との戦いによって爆散するリーオーと運命を共にしたのではなかったのか? 「はっ……バカいっちゃいけねえぜ」 どうして、なぜ。戦争屋アリー・アル・サーシェスともあろうものが下らないプライドに囚われて仮の雇い主のために命を賭けなければならないのか。 くだらない――それは、勝てるなら勝てる方がいいだろう。負けたならやり返してやりたいとも思うに違いない。 だが、それは全て生き延びることが前提だ。 そう――アリー・アル・サーシェスは負けていない。誰よりも足掻いて生き延びる。 ルルーシュが、憂が、スザク、信長が身命を賭ける闘争とて、彼にとっては変わらぬ日常。 いつもどおりの戦争でしかなかった。それ故に、いつもどおりに逃れただけだ。 ――戦争は、生き延びたものの勝ちなのだから。 (――だったら、旦那よりもあの化物よりも、俺の勝ちってことでいいよなぁ?) かかか、と。輝きを見せながら死んでいったもの共を見下しながら端正な顔が歪む。 ああ、そうだ。格好良く死んでいけばいい。真っ直ぐに、希望を目指して、美しく王道をいけばいい。主役らしく。 俺は構わない。悪党の脇役で構わない。小狡く小賢しく小汚く。邪道を醜くすり抜けて。 そして――最後まで生き延びてやろう。 「はは。これだから戦争はやめられねえ――っと、あったあった。これか。大将に聞いてた通りだな」 そうしてサーシェスがディートハルトから取り上げたのは一本の鍵。 目当ての物を見つけてにんまりと微笑んだ後に、“それ”を見上げる。 ディートハルトが主催の元から逃れる際に使用した“機体”。 ルルーシュのために力になろうと、ほか参加者を危険視し、自分が直接使用するべきではないと隠蔽しておいたMS。 そうして、こうやって手にした“起動キー”を合わせれば……そう、“それ”はサーシェスのものとなる。 笑いが止まらない。思えば満足の行く装備を持って戦えたことなどなかった。それはそれで制限プレイのようで楽しいものだったが――。 ゴキゲンにサーシェスは高らかと、再び自分のもとに舞い戻った愛機に対して呼びかけを行う。 「――――さあ、頼むぜ。楽しませてくれよ、アルケー……!」 【勇侠青春謳・劍撃ノ参<諧謔>――了】 ■ ■ ■ このようにして、一人の放送屋が消えて、一人の戦争屋が舞台へ戻った。 笑う哂う藁藁う。戦争屋の声が響く。死に死に死に死ぬ死体は何も語らない。 そんな音声を背景に、こうして幕間の喜劇は閉じた。 【 ACT3 『勇侠青春謳(ゆうきょうせいしゅんか)』――了】 時系列順で読む Back crosswise -black side- / ACT3 『勇侠青春謳(ゆうきょうせいしゅんか)』(一) Next crosswise -black side- / ACT4 『逆光(ぎゃっこう)』(一) 投下順で読む Back crosswise -black side- / ACT3 『勇侠青春謳(ゆうきょうせいしゅんか)』(一) Next crosswise -black side- / ACT4 『逆光(ぎゃっこう)』(一)
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大逆転物語 -THE MIRACLE OF THE ZONE- (1) ◆XIzIN5bvns 『充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。』 とあるSF作家が定義した法則の一つを、グラハム・エーカーは思い出す。 この身を切る夜風はとても涼しげで心地がいい。やや強めの向かい風を受けながら、グラハムは思考の海に身を沈める。 例えば、ある意味では自分もまた『魔法』が一般的な世界に生まれ育ったとも言えるのでは無いだろうか。 地球と宇宙を結ぶ、巨大な軌道エレベーター。各国の兵士たちが駆る人型起動兵器、モビルスーツ。 その中でも特別な存在であるガンダム、それの心臓部である太陽炉。 彼にとって常識であるこれらの存在は、過去の人々にとってはまるで空想の中のマジックアイテムのように見えるのでは無いのだろうか。 そう、数百年前に日の本の地を駆け抜けた戦国武将と呼ばれる人々にとっては、特に。 ……最も、流石にそんな人間がこの会場にいるとは思えない。あくまで、もしいたとしたらの話ではあるのだが。 (乙女座の私としては、ロマンチズムを感じずにはいられないな…) 「グラハム! 何かが見えてきたぞ、あれがギャンブル船では無いのか?」 微笑を浮かべながら物思いに耽っていたグラハムは、同行者の声によって現実に引き戻される。 可愛らしい少女が小さな手で指さす上空を見てみれば、木々の間から宵闇に浮かび上がる巨大な船影が覗いていた。 ライトアップがされているのだろう、おぼろげに浮かび上がるその姿は一種異様な威圧感すら感じさせる。 だが、今は自分の腕の中にいる小さな同行者―天江 衣にとってはそうでは無いらしい。 「ギャンブル船では、麻雀が出来るかな…? 衣は早く、沢山友達を作りたい!」 サラサラとした金髪をたなびかせながら、衣は楽しげに柔らかな黄色いマスコットを抱きしめる。 年相応に無邪気なその行動は、まるでテーマパークへ行くのが待ち切れない子供のようであった。 (こんな状況でなければ、心を和ませる光景なのだがな) 衣に気づかれぬように小さくため息を付きながら、グラハムは己が手の先にある『モノ』に意識を集中させる。 グラハムは、『魔法』という不可思議な物の存在を信じている訳では無い。 確かに、そのようなファンタジックな概念自体は彼にとっては好ましい物ではあるが、かと言って現実に存在するのかと聞かれれば否と答えるだろう。 『我々は金で魔法を買った』 遠藤という、この殺し合いの進行役を名乗った男が告げたそれは、ある種の名言ではある。 しかし、ただのハッタリにしか聞こえない事もまた事実。 そんなオカルトありえません、などという声がどこからか聞こえてきそうだ。 だが、グラハムは『魔法』とも言うべき事象に遭遇してしまった。目の前で、まざまざとそれを見せつけられてしまったのだ。 「それにしても、お前は凄いな。電光石火、疾風怒濤! もう目的地に目前にまで迫っているぞ!」 キャッキャとはしゃぎながら、衣は背後の男が駆っている『モノ』の首を撫でてやる。 その手付きがくすぐったいのか、はたまた心地良かったのか。衣の手に反応して、『モノ』はブルリと震え、小さく嘶いた。 その『モノ』――いや、仮にも生物に対して『モノ』と呼ぶのは失礼に値するだろう。 その『生物』は、『馬』。赤い装飾をその身につけた、巨大な軍馬。 天江 衣に支給された支給品の一つ、であった。 ※ それと邂逅したのは、トンネルの調査を終えてギャンブル船へと向かおうとした直後の事。 沢山の友達がいる世界を作る、そう豪語して足取りも軽やかに先を行く衣の背中を見送った時にその異変は起きた。 衣が背負ったディパックの口から、突如として馬の首が生えたのだ。 これには流石のフラッグファイターも度肝を抜かれた。 しかも、生えてきた馬の首はどうやら生きているようであり、徐々にその体をディパックからはみ出させていく。 『な、なんだ? 急にディパックが重く…なんだ!? グラハム、衣のディパックはどうなってる!?』 と怯えた様子を見せるディパックの主の事などお構いなしに、馬はその身を窮屈だったであろう空間から脱出させ、晴れて雄大な大地へと帰ってきた。 ある意味、少女による馬の出産という異常な光景を最初から最後まで見せられたグラハムも、 重さから解放された事でようやく後ろを見て、突如として現れた馬の姿を認識した衣も、ただ茫然と目の前の光景を見ていることしか出来ない。 ディパックから馬と同じくひらひらと飛びだして、足もとに流れ着いた紙切れ――― 『武田軍の馬。天下が誇る武田騎馬隊の要。こちら側で特別に躾けた為、素人でも乗りこなすことが可能です』と書かれたそれにグラハムが気づいたのは、数分ほど後の事であった。 ※ ギャンブル船は、エリアB-6の北部、廃村の港部分に当たる場所にしっかりと存在していた。 ここに至って、トンネルに続きギャンブル船もまた地図通りの場所に設置されている事が判明する。 とは言え、まだ確認が取れたのが二つきり。 もう二~三の施設をこの目で確認するまでは、『各参加者の地図の情報に差異がある』という仮説を否定するには尚早だろう。 タラップから船内の駐車場に侵入し、ひとまず適当な場所に馬を止めながら、グラハムはこの先の予定を考える。 経緯はどうあれ、支給品の中に馬が合ったのは僥倖と言えるだろう。 バイクや車などとは速度面では比べるべくもないが、先ほどまで自分達がいたような森や山のような悪路を進むには都合がいい。 同行者が衣のような小柄な少女である事もあって、二人乗りでもなんら移動に支障がない事は今しがた確認したばかりだ。 支給された地図に情報操作がないとすれば、この会場の半分以上は舗装もされていない自然のままであるようだし、 これから先は地図内の施設を回ろうと計画しているグラハム達にとっては願ったりかなったりだろう。 だが、一つだけ。 「グラハム。この馬は、ここに置いて行くのか?」 説明書きの通りに良く躾けてあるのだろう。 見知ったばかりの主の命令ですらも忠実にこなし、素直に駐車スペースに佇んだままの馬を撫でてやりながら、衣が不安げに尋ねた。 彼女の言わんとしている事はわかる。船内まで馬に乗って行く事は流石に出来ない以上、一旦適当な場所に留めて行く必要がある。 だが、起動にキーが必要な車類ならいざ知らず、ただの馬がむきだしに置いてあるのでは、他人に奪われる恐れも大いにあり得た。 しかし、こればかりはどうしようもない。 「仕方ないだろう。こればかりは、運を天に祈るしかあるまい」 「………そうだな。いいか、知らない人間に付いて行ったりしてはダメだからな。 衣達が帰ってくるまで、いい子で待ってるんだぞっ」 グラハムの言葉に一瞬悲しげに眼を伏せた衣であったが、すぐに馬を元気づけるかのように笑顔になり、そう呼びかける。 呼びかけを受けた馬の方もまた、それに答えるかのように少女へと顔を寄せた。 互いに、随分と懐いてしまったようだ。 「わっ、こらっ…くすぐったいぞ」 叱るような声をあげた衣の方もまた、その表情は輝くような笑顔だ。 殺し合いという血なまぐさい場所において、なんとも心を和ませる微笑ましい光景に一瞬頬が緩むが、 ふとグラハムは衣の腕の中にいる黄色いマスコットへと視線を向ける。 衣の体より一回り小さい程度のそのぬいぐるみは、小さな黒い帽子に眠ったような目で微笑みを浮かべていた。 『チーズくんのぬいぐるみ』、というのがそれの名前であるらしい。軍馬がディパックから飛び出してきた際に、 一緒にこぼれ落ちてきたのが発見のきっかけとなった。 かなり大きめのそれは小学生程の体型の少女にはかさばる荷物であるが、彼女は決してそれを離そうとはしなかった。 と言っても、それは単純にこの可愛いマスコットが気に入ったからという理由では無いようだが。 『このぬいぐるみは、【しーしー】という参加者の大切な物らしい。だったら、衣がその人に届けてあげて、衣と友達になってくれるようにお願いするんだ!』 ぬいぐるみについての説明書きを読んだ後の衣の言葉だ。 その身に抱きながら離そうとしないのは、そうしておいた方が【しーしー】…もとい、【C.C.】なる参加者が見つけやすいからだろう。 グラハムとしては何度か説得も試みてはみたが、彼女の意志は固かった。 詳しい事はわからないが、ぬいぐるみが縁で友達を作る、という事になんらかの拘りがあるように思えた。 ともかく、押し問答を続けても仕方あるまい、とグラハムの方が先に折れる事になったのだが………。 閑話休題。気になるのは、それとは別の事だ。 先ほども述べたように、このぬいぐるみはかなりの大きさだ。 そう、馬はもちろんの事、このぬいぐるみ単体でも他の基本支給品と共にディパックの中に詰め込める物では無い。 (容量がほぼ規格外のディパック、か……これは超高度に発展した科学の産物か、それともマジックアイテムなのか…) 苦しい仮説を立ててみるならば、主催側にはかのイオニア・シュレンベルグのような超天才が協力者として技術提供を行っている、と見る事も出来るが、 判断材料が少なすぎる現時点では、それこそ実際に『魔法使い』が協力している、という仮説と信憑性は変わらない。 もしもこの場に、己が親友であるビリー・カタギリがいたならば、もっと正確な予測を立ててくれたかも知れないが、結局は無い物ねだりだ。 「何をしているんだ、グラハム? 早く先を急いで、麻雀をしに行こう! ルールは衣がちゃんと教えるから心配しないでいい!」 そんな事を考えている内に、幼い相方は痺れを切らしてしまったらしい。 大きなチーズくんを抱きしめたまま、急かすように足踏みをしてこちらを見ている彼女にやれやれと苦笑を浮かべると、 グラハムは衣を伴って船内へと足を踏み入れた。 ※ 地図上には『ギャンブル船』と記されていたこの施設であったが、どちらかと言えば『豪華客船』と呼んだ方が差し支えがないのではなかろうか。 廃村の港にて外観を眺めた時から感じていたが、この船は途轍もなく広大だ。 途中途中で、『順路・ギャンブルルームはこちら』と書かれた表札がなければ、特定の目的地にたどり着くのは困難であっただろう。 逆を言えば、この船の適当な客室に紛れ込んでみれば、追手を撒く事も出来るのかも知れないが。 閑話休題。表札の道案内が存在していたお陰か、グラハム達はすぐにギャンブルルームへとたどり着く事が出来た。 上部に『ギャンブルルーム』と書かれたシンプルな看板を携えた、巨大な両扉を前にしてグラハムはそのノブに手をかけた。 ゆっくりと、そのドアを押し開く。いざという時の為に、片手にはコルト・パイソンが握られている。咄嗟の事態にも対応は出来るだろう。 少しずつ広がっている隙間から、部屋の中の様子を窺う。 扉の巨大さと同じく、そのホールもまた巨大な空間が広がっていた。 人間がゆうに百人は入るのではないかと思わせるスペースに、幾つか遊戯台らしきものが見える。 吹き抜けとなっている高い天井に、二階部分へ登る階段までが見受けられる。 上にもまた、別の遊戯台が用意されているのか、それとも全く別の何かが待ち受けているのか。 そして、観音開きになった扉の向こうから、乾いた破裂音が耳に入ってきた。 ――――パン、パン、パン、パン。 しかし、それは命を刈り取る為の凶弾が放たれる音では無い。 「ようこそ、ようこそ…………!」 若い男の声が聞こえる。グラハムの物とは別の第三者によるものだ。 破裂音と声、双方の発信地はホールの中央部から――そこに、一人の男が立っていた。 「ここはギャンブル船……希望の船『エスポワール』のギャンブルルーム……!」 黒づくめのスーツに、真っ黒いサングラス。とても堅気の者には見えない服装をした男が、パン、パンと手を鳴らし続けながら口上を続けている。 そして、その首には、首輪が存在していなかった。 それに気づいたグラハムの目が僅かにしかめられる。参加者全員に枷として嵌められている筈の首輪、それがないという事は即ち――― 「私は、このギャンブルルームにて……ディーラーとして、本部から派遣された者だ……! 参加者間で行われる、ギャンブルの監視役としての命も受けている……!」 グラハムの脳裏に浮かんだ疑問を即座に見抜いたかの様に、黒服の男は自分の立場を説明する。 ここに至って彼はようやく拍手を続けていた腕を止め、ホール内に設えてある様々な遊技台を指し示し始める。 「ここにはありとあらゆるギャンブルが揃っている……! ルーレットやポーカー、ブラックジャックのようなメジャーな物も……! 花札やチンチロリン、チェス、麻雀などもある……! 麻雀については、パソコンを通じてのネット麻雀も完備している……!」 麻雀、という言葉に反応するかのように、衣のリボンがピクンと動く。 黒服が指し示した台を見てみれば、確かに見なれた麻雀台が存在していた。 (やっぱりここでは麻雀が出来るんだ…! 衣にも、色んな友達を作れる場所があるんだ!) 少女の喜びを如実に表すかのように、リボンがゆらゆらと揺れ動く。 感激のあまり普段以上にきつく抱きしめられたチーズくんは苦しそうにも見えたが、今ここにそれを気にする人間はいない。 「他にも、オリジナルのギャンブルとして…! Eカードに、特設ルームにて行われる『勇者の道』(ブレイブ・メン・ロード)…! 女性参加者限定だが、特別な水着を着用した上での、水上アスレチックレースなども用意させてもらった……!」 黒服は、ただ淡々と説明を続ける。 Eカード、という言葉と共に指さされたのは、『先攻』、『後攻』、そして『皇帝』、『奴隷』、『距離』などという奇妙な言葉と表が描かれているホワイトボードだ。 そしてまた、ホールの奥の方を見てみれば、傍に『この先、特設会場』と書かれた立札のあるドアがあるのが確認できた。 『勇者の道』(ブレイブ・メン・ロード)、そして水上アスレチックという物の詳細は分からないが、 何やら大がかりな設備が必要なギャンブルという事なのだろうか。 女性限定、という枕詞に主催側のいささか無粋な思惑を感じ、グラハムの顔が微妙に歪んだ。 「また、このギャンブルルーム及び特設会場でのみ…参加者間での戦闘行為はすべて禁止とされている……! このルールに違反すれば、その時点で首輪が爆破される……! それには、ディーラーに対する攻撃も含まれている……! 妙な気は起こさない事だ…!」 そう言う男の視線は、グラハムの片手へと注がれている。そこに、自分を殺しうる拳銃があると知った上での警告……いや、脅迫か。 癇に障る部分が無いわけではないが、無理を通して命を散らすのはそれ以上に馬鹿馬鹿しい。 無言のまま、グラハムはコルト・パイソンをディパックの中へと仕舞った。 戦闘行為が全て禁止されているという事は、裏を返せば自分たちの身の安全も保障されているようなものだろう。 よほどの事がない限りは、主催側から自分達の命を奪う可能性も低い。 「しかし、だからと言ってここは避難場所でも、休憩場所でもない……! ギャンブル中などの理由がある場合を除き……ただ単にここに留まり続ける事は許可しない……! そのような行動が見られた時は、力づくでの強制退去…最悪の場合は首輪の爆破も視野に入れている…! くだらない希望は、捨てておく事だ…!」 付けくわえるように更なる警告を行い、男は僅かでも殺し合いから逃れられる術を潰す。 主催者は、どうしても自分達に心休まる時間と場所を提供したくない心づもりのようだ。 「そう、この空間での勝負は全てギャンブルにて行われる……! ランダムに参加者に支給された、ペリカさえあれば…また、それが無くとも別の代償を払えば…! その時点で、何者であろうとギャンブルに参加する権利が与えられる…! ここは、ありとあらゆる逆転(ミラクル)が起きうる場所……! 起死回生の一手によって、奴隷が皇帝を打つ事も……! 身体的強者を、身体的弱者が思うまま蹂躙する事さえありうる……!」 両手を広げながら、黒服は更にルール説明を続ける。 この殺し合いの舞台に置いて、異彩を放つ『ギャンブル船』の特別ルールを、初めてのルーム入場者たる二人の参加者へと解説する。 「改めて歓迎しよう、グラハム・エーカー、天江 衣……! ようこそ、希望の船『エスポワール』のギャンブルルームへ………!」 再び、男の両手が一つに重なり、数回ほどの乾いた音がホールに響く。 それを最後に、ギャンブルルーム内を沈黙が支配する。物音一つしない静寂。 静かな事が逆に耳に痛い事もあるのだと、ふと衣はそんな事を思った。 「……幾つか質問したい事がある。いいだろうか」 銃を仕舞い、丸腰となったグラハムが黒服へと尋ねる。 しばらくその顔を見つめていた男は、ゆっくりと頷いて口を開いた。 「答えるかどうかはこちらで判断させて貰うが、それでも良いのならば聞こう…」 「それは僥倖。こういった状況では、僅かなりとも情報は貴重だ。ありがたく情報収集をさせていただこう」 ふ、と浮かべた微笑は主催側への皮肉が込められた物なのか、それともただ単に喜びから洩れた物なのか。 二人の会話を横で眺めることしか出来ない衣には、判断は出来なかった。 なんとなく、チーズくんに半分顔をうずめる。 「まず、一つ。ここにいるディーラーは、貴方一人だけなのか?」 「……主催側から派遣された人間は、俺一人きりだ」 「ふむ……それは妙だな。たとえば、これは純粋な疑問から尋ねたいのだが… 複数人の参加者がここに現れ、不意を打ち、悪意を持って貴方に襲い掛かったとして…即座に全員の首輪を爆破する事が出来るのか?」 そう言いながら、グラハムは目の前の黒服の男を検分する。 服装や立ち居ふるまいから言って、少なくとも堅気ではなく裏…たとえば、ヤクザやマフィアなどに属していそうな雰囲気は持っている。 が、かと言って武術武道の達人に見えないのも確かだ。 常人ならばともかく、グラハムのような訓練を受けた軍人複数相手に対応しきるのは、不可能なように思えた。 だが、そんな質問を受けても黒服の顔色は変わらない。 「確かに、俺一人では不可能だ……だが、首輪爆破の指示を出すのは、俺では無くここを監視している外部…… つまりは、本部の人間だ…たとえ俺を殺したとしても、参加者達の末路は変わらない…!」 「監視……だと?」 思わず、ルーム内へと目を走らせてみれば、天井や壁など数か所にカメラが設置されているのが程なく見つかった。 ここの部屋の状況は、逐一リアルタイムで殺し合いの主催側へと流れているという事か。 ぞっとしないな、と思わずグラハムは肩を竦めた。 「しかし、それでもたった一人でここのディーラーを務めるのは骨が折れそうだな。 今回は二人きりだったからいいが、それ以上の大人数がここでギャンブルを始めたとすればどうする?」 「問題ない……人間は俺一人だが、協力スタッフはちゃんと用意してある……!」 黒服の男がしばらく懐の中を探り、そこから小さなベルを取り出す。 それをリン、と涼やかな音で鳴らせば、数秒もしない内に上、ホールの二階部分からガタゴトという物音が聞こえてきた。 何事かと二階へと続く階段を見てみれば、サッカーボール程の球体がこちらへと向かってくるのが目に飛び込んでくる。 『ハロ、ハロ』 『ギャンブル、ギャンブル』 『ザワ、ザワ』 「うわぁ……!」 それも、大量に。色取り取りの、おもちゃの様な球体が、羽のような両サイドの板を動かしながら飛行したり、転がったりしながら降りてきていた。 「ぬ、ぬいぐるみが動いてる!? 凄い、あんな物衣も見た事がないぞ!」 「MS……ではないな、流石に…小型の、ロボットか?」 ある意味ファンタジックな光景に、子供っぽい精神が刺激されたのだろう。衣は目を輝かせながら転がってくる球体達を眺めている。ぴょんぴょんと跳ねはじめたりもする始末だ。 対するグラハムは、多少驚きはしたものの冷静だった。 元より巨大なMSが闊歩する世界にて生まれ育った身であり、小型ロボット程度の科学技術ならば見慣れている。 そもそも、この球体ロボットはグラハムと同じ世界から集められた存在なのだが、グラハム自身はその事を知る由もない。 黒服は、自分の足もとに転がってきた適当な一体をつかみ取り、解説を続ける。 「ギャンブルの監視、及びディーラーはこの小型AI、『ハロ』達も行う。人員的問題は全てクリアされている……! 見ての通り、これらにはまともな手足が無いが…」 『ウソ、ウソ! テアシ、アル! テアシ、アル!』 その説明が気に入らなかったのか、手の中のハロはバタバタと暴れ、やがて上下の両サイドからニュッと小さな手と足を生やした。 予想外のギミックに衣が「おぉ…!」と歓声を上げたが、それらを意に介さないままに黒服はハロをホールの奥へと運んで行く。 そして、ホールの隅に並んでいたロボットらしい物体の上部、半円状の穴のあいた部分に腕の中でジタバタと暴れるハロを押し込んだ。 『ハロ、ハロ! ガッタイ、ガッタイ! ゴー、ゴー!』 ロボットと接続されたのに反応し、ハロの両目が赤くチカチカと輝く。 それに合わせてモーター音のような物が聞こえだし、やがてそれまで全く動かなかったロボットがゆっくりと立ち上がった。 頭部を排除した人型のような姿をしたそれは、何度か確認するように両腕を動かし始める。 それを見届けた黒服は、再びグラハム達の前へと戻り、ハロが搭載されたロボット、小型MSもその後に続く。 「この通り、ハロを搭載する事の出来る小型MSによってそれを補う…! 各種ギャンブルのルール、テンプレートは既にプログラミング済みだ…!」 『トランプ、キル! トランプ、キル! シャッフル、シャッフル!』 ハロの方はパフォーマンスのつもりなのか、手近な遊技台にあったトランプを手に取るとその場でシャッフルを始める始末だ。 しかし、グラハムの目から見ても、その手付きは鮮やかでありAIのプログラミングには見えない程なのも事実。 ふと傍らの衣の様子を見てみれば、まるで魅入られたかのように感心した表情でハロのトランプさばきを眺めていた。 (全く、良くも悪くも子供らしい) 一瞬だけクスリと小さく笑みを漏らし、本人が聞けば再び激怒しそうな事を考えながら、グラハムは黒服の男へと視線を戻す。 「ここがギャンブルルームとして問題なく稼働出来る事は理解した。 そして、ギャンブルを行うためにはランダムで支給されたペリカが必要らしいが… それを増やすことが出来たとして、メリットが得られるのは優勝後に限定されてしまうのではないか?」 「いや、それだけに留まらない……! 優勝後に限らず、この会場において、所持ペリカを増やす事によるメリットはちゃんと存在している……! これを見てみろ…」 グラハムの疑問に首を振って答えた黒服は、すぐ傍の遊戯台の上に置いてあった一冊の分厚いファイルを差し出す。 ずっしりとした重量のあるそれを捲って見れば、まず最初に飛び込んできたのは黒光りする拳銃の写真がいくつかと、 それぞれにつけられたネームプレート、そしてペリカ表示の札だった 『トカレフTT-33』 【800万ペリカ】 『デリンジャー』 【600万ペリカ】 『ベレッタM92』 【900万ペリカ】 『RPG-7(グレネード弾×3、煙幕玉×2付属)』 【2500万ペリカ】………… 「なるほど、ペリカと引き換えに武器となる銃器を購入できる、と……」 「銃器類は、特別な付記がない限りは装弾数分の弾丸も込みで支給する……! ただし、それ以上の予備弾丸、弾倉はまた別途購入してもらう……!」 解説を聞きながら更にファイルを読み進めてみれば、後半に行くにつれて奇妙なアイテムまで見受けられるようになってきた。 曰く、桜ヶ丘高校軽音部のデモテープ、特殊繊維製伸縮自在の水着、ピザハット特別ピザ詰め合わせセット、etc,etc……。 殺し合いに何ら役に立つとは思えないそれらは、やはり価格設定も【5000ペリカ】、【100ペリカ】、【1ペリカ】などと極端な値段が付けられている。 「銃火器の類…殺しあいにおける重要度が高い物であればある程高額という事か。合理的かつ分かりやすくはあるが、それにしても随分と暴利だな」 「価格設定に対する不満は受け付けない……!」 やれやれ、にべもない―と一通り目を通したファイルを閉じた後で肩を竦める。 さて、どうしたものか。先の馬の件もあり、衣と共に自分の支給品を確認してはみたが、ペリカらしき物は入ってはいなかった。 銃火器類の購入、という特典は魅力的ではあるが、先立つ物がないのでは意味がない。 ならば、ここは素直に退出するという選択肢しか―― 「………グラハム。衣は、ここでは麻雀が出来ないのか?」 傍らから聞こえた、消え入りそうな小さな声。 見てみれば、いつの間にか遊戯台に積み上がっていたトランプタワーを前に泣き出しそうな瞳の少女が存在した。 『ハロ、ハロ?』 早くも二個目のトランプタワーを完成させようとしていたハロが、気遣うような声を漏らす。 しかし衣はそれに応じる事もなく、ただグラハムをじっと見つめていた。 「衣は……友達を、作れないのか……?」 きゅ、と可愛らしい迷子のマスコットを抱え、まるで捨てられた子犬のような眼差しを向ける様は、その手の筋の人間が見れば理性を一瞬で剥ぎとっていたであろう。 だが、グラハム・エーカーはそのような特殊性癖を持ち合わせてはいない。 「残念だが、そうなるな……ペリカという元手がない以上、ここで麻雀を打つ事は出来ない。 いや、そもそも同行している我々同士でギャンブルを行った所で大して意味がないというのも実情だ」 「ペリカやギャンブルなんてどうでもいい! 衣はただ、グラハムや他の誰かと麻雀で遊びたいだけなんだ! ……それでも、ダメなのか……?」 「……………これは難問だな」 幼い少女の健気な訴えを聞き、流石にグラハムの良心が痛みを覚え始める。 しかしこればかりはグラハムがどう努力した所でどうにかなる問題では無い。 ならばどう説得した物か……おねだりしてくる娘のあしらい方の重要性を、こんな状況下で嫌という程に身につまされるとは、流石のフラッグファイターも予想出来なかった。 「………ペリカが無くとも、ギャンブルをする方法はある…」 「…っ、それは本当なのか!?」 気まずい沈黙を破ったのは、意外な人物。 このギャンブルルームの主とも言える、黒服の男が告げた言葉を聞き、衣の顔に笑顔が浮かび、グラハムの顔に驚きが浮かんだ。 「最初に言っていただろう……。 ペリカが無くとも、別の代償を払えば、ギャンブルへの参加資格は与えられる……! その代償は、天江 衣…お前だけでなく、一人を除き参加者のほぼ全員が払う事の出来る物だ…」 「じゃあ…じゃあ、今の衣でも麻雀を打てるんだな! あ…けれど、グラハムの言うとおり、私とグラハムとがギャンブルをしても詮無き事……」 太陽のような笑顔を見せた衣だったが、すぐに先ほどグラハムに教えられたもう一つの問題に気づき、再び顔を曇らせる。 グラハムと衣が一つのグループとなっている以上、そのグループ間でペリカやそれに準ずる物の遣り取りをしてもメリットは得られないのだ。 だが、それに対しても黒服は一つの対案を提示する。 「問題は無い……ギャンブルは参加者間で行われるだけでなく、こちら側……主催側と行う事も出来る…… 麻雀に関して言えば…こちらで3人までメンツを用意する……そのメンツを下す事が出来れば、点数に応じたペリカを与えよう…!」 男の説明に応じるかの様に、ハロを接続した三体の小型MSが麻雀台の近くへと移動し始める。 『ワハハ、ワハハ!』 『ウム、ウム!』 『タコスダジェ、タコスダジェ!』 ぱたぱたと頭部側面の板を開閉させながら、紫、黒、橙のハロがそれぞれ奇妙なセリフを飛ばす。 なんだかどこかで聞いたような記憶があるように感じたが、衣はそれを疑問に思うだけの余裕はなかった。 その心に満ち満ちている物は、深い喜び。 ――衣の友達が、増やせるかも知れない! 『ヤッタネ、コロモ! ヤッタネ、コロモ!』 衣の感情を察したかのように、トランプを自由自在に操っていた先ほどのハロが賞賛の声を上げた。 うん、と嬉し涙まで浮かべながら元気よく頷いた衣は、トテテと可愛らしい足音を立てながら麻雀台まで向かおうとし、 「―――――失礼」 「ふにゃっ!?」 その腕を、他ならぬ同行者の手によって掴まれた。 小さく告げられた謝罪の声に含まれていた緊張に気づかぬまま、衣は思わずグラハムの顔を睨みつけた。 「何をするんだグラハム! グラハムは、衣が衣の友達がたくさんいる世界を作るのを邪魔する気なのか!?」 「誓ってそんなつもりは無い。だが、それをするのはもう少しだけ待っていて欲しい。…肝心な情報をまだ聞いていない」 少女を強引に引きとめた軍人の視線は、しかしてその少女へは向いていない。 グラハムが見ているのは、少女では無く、ある意味でこの事態を作り上げた張本人。 ギャンブルルームのディーラーを名乗った男を見据えた表情は、その奥底に僅かな怒りすら感じさせる。 「改めて尋ねよう。『参加者のほぼ全員』が支払う事が出来る、ペリカの『代償』とはなんだ?」 グラハムが思うに、それはそう簡単に払える物では無い。 優勝後の換金制度や、このギャンブル船にて行われる景品交換制度を見てみても、ペリカという存在はそれなりに貴重な物だ。 だと言うのに、『誰でも払える何か』を用いれば容易にペリカを手に入れるチャンスが来るとは、この悪趣味な殺し合いの主催者にしては虫が良すぎる。 ならば、何らかの裏があると見るのが妥当……では、その裏とは何なのか? それがはっきりしない限り、この純粋な幼い少女の身の安全が保障されない限りは、麻雀開始を認めるつもりはない。 そして、その問いに対して黒服が口を開きかけるの当時に、車輪を回すような軽い音が部屋の中を駆け巡った。 一同の視線が、その音の発信源へと注がれる。 『ハロ、ハロ。ジュンビ、ジュンビ』 音の正体は、車輪の移動音。その何かを、麻雀台へと運んでいるのは、先ほどまで衣を楽しませていたトランプのハロだった。 彼が持っているのは長いシャフト部分。細長いそれの先にはポリビニールの袋のような物が付いており、またその反対には、鋭い針。 ハロのもう片手にはなにやら機械らしき物が抱えられており、目的地へとそれらを運び終わるのと機械と細長いそれの接続作業を始める。 なんだっけ。あれ、衣も見た事がある。 そうだ、昔、病院なんかで―― 「………代償として払ってもらうのは、『血液』だ」 先ほどまで嬉しく飛び回っていた心臓が、氷のような腕で握りつぶされた気がした。 「レートは10万ペリカ=10cc……参考までに言えば、人間の場合、平均として2000ccの採血までは可能であるとされているな……。 しかし、血液をそのままペリカに換える事は禁止する……ペリカが配布されるのは、あくまで勝負に勝利した後…結果が出た時点で、血液の採取もしくはペリカの配布を行う…」 『サイケツ、サイケツ』 ハロの無邪気な機械音声が、淡々とした説明に続く。 先ほどまではあんなに可愛らしく見えたロボットが、急に無気味な存在へと変貌を遂げたようだった。 「また、代償を血液以外に限定しているギャンブルもある……たとえば、このEカードは…」 「もういい。もう、それに関する説明は結構だ」 尚もギャンブルについての解説を行おうとするディーラーを、強引に押しとどめる。 『このギャンブルルームでの戦闘行為は禁止』。その意味がようやく理解できた。 ここは決して安全地帯などでは無い。ただ、命を奪うための手段が、『戦闘』では無く『ギャンブル』へと形を変えただけの事だ。 もしかしたら、既にギャンブルが原因で血を奪われ、命を失った哀れな参加者もいるのかもしれない。 ………これ以上、おぞましい話を聞くのは沢山だ。 (何よりも…これ以上この子を傷つけたくはない) ほんの数分前まであんなに求めていた場所を呆然と眺めている少女に心を痛めながら、グラハム・エーカーは苛立ちに奥歯を噛みしめた。 ※ 「……次に訪れた時には、ペリカを用意できている事を期待する…」 ともすれば皮肉に取れるような黒服の声にも振り向く事は無く、グラハム・エーカーは天江 衣の手を引いてギャンブルルームから退出していった。 残された一人の男は、仕組みに従いゆっくりと閉じた扉の音と立ち去って行く二つの足音を聞き届ける。 『カタヅケ、カタヅケ』 『ワハハ、アトシマツ、アトシマツ』 ふと聞こえてきた別の声に反応し、麻雀台の方を見てみれば、先ほどまで集まっていたハロ達が麻雀牌や採血器具の回収を行っているところだった。 しばらく何とはなしにそれを見ていた黒服だったが、やがてハロ達に一つの指示をだす。 「いや、片づけるのはいい…それよりも、参加者がいつ来ても対応できるように採血装置の用意だけを済ましておけ……」 『ハロ、リョウカイ、リョウカイ!』 命令を忠実に聞き届け、手分けして各遊戯台に採血装置をセットし始めるハロ達を見ながら、苛立たしげに舌打ちを一つ打つ。 無理もない。この黒服とて、こんな殺し合いの会場にたった一人で飛ばされた事に対して大きく不満を持っている。 主催者側の人間として、先ほどここを訪れた二人をはじめとした全参加者のパーソナルデータはしっかりと頭に入れてある。 つまりは、この会場には知性を持たない巨大な化け物や、簡単にこの船すら破壊する事の出来る危険人物がいる事を、彼はしっかりと理解している。 首輪による拘束が無くとも、その命は参加者と変わらず風前の灯……! 自分の身の安全は、このギャンブルルームでのみ保障されている。 もしもここから出てしまえば、脱出などを考えてしまえば…遠からず待っているのは、無残な死…! デッドエンド……! その事実を、彼はよく知ってしまっているのだ。 この場所に派遣されたのが、彼一人だけなのもそれが理由だ。 命を落とす危険がある場所に送り込む人間はたった一人で十分…帝愛はそう判断を下していた。 では、なぜそのスケープゴートにこの男が選ばれたのか? 理由は簡単だ。仕事上でミスを犯し、組織から切り捨てられた。ただそれだけの事。 帝愛が定期的に主催するギャンブル大会、それに参加したとある参加者がいた。 どうにかそれに勝ち残り、僅かながらも富を勝ち取ったはずのその参加者だったが、ツキがまだ自分にあると思い込んでしまったのか…軽率な行いから一つミスを犯してしまった。 大手を振って仲間の元へと帰ろうとした道すがら、魔が差してしまったのか別の賭博へと手を出し、せっかく得た富を全て失ってしまったのだ。 原因は『賭け麻雀』。見事にカモにされたその人物は、最早見る影も無かった。 余りにも情けなさすぎる結末。その参加者を元の場所まで送り届ける役目を負っていたこの黒服は、見るに見かねた結果、無償で自分のポケットマネーを参加者に与えてしまった。 それが、いけなかった。この帝愛の体質と最も相反する行動を取ってしまった男は、(当時の)会長の逆鱗に触れ、降格・左遷の処分を受けた。 そうした結果が、今現在の状況だ。 いつ自分の命が尽きるかもわからない会場内で拘束され、ただ参加者とギャンブルを命じられた損な役回り。 ペリカ交換用の武器類を強奪し、本格的に帝愛に反旗を翻す道もないわけでもない。 だが、それはあまりにも現実的では無い。帝愛で働いている男は、帝愛の巨大さ…恐ろしさ…決して逃げられぬ事の出来ぬ、その組織力をよく知っている。 故に、反抗を企てる気など起きる筈もない……ただ、命じられた仕事をこなし、汚名返上を図るしかない。 もしも、途中でその命を失った場合には、同じように切り捨てられた帝愛の役員が来るのか、それとも補充などは行われないのか…それは彼にもわからない事だ。 しかし、まだ完全にその命が散らされると決まったわけでは無い。 怒りや絶望を押し殺し、ギャンブルルームの主はまた新たな参加者を待ち、ゲームの終了を待ち望む。 この場から生き残れば、あるいは再び返り咲く可能性が生まれるかも知れない。 それもまた、一つの逆転(ミラクル)………。 ※ 時系列順で読む Back 運行休止(サスペンション) Next 大逆転物語 -THE MIRACLE OF THE ZONE- (2) 投下順で読む Back 運行休止(サスペンション) Next 大逆転物語 -THE MIRACLE OF THE ZONE- (2) 051 衣 龍門渕のロリ雀士 天江衣 079 大逆転物語 -THE MIRACLE OF THE ZONE- (2) 051 衣 龍門渕のロリ雀士 グラハム・エーカー 079 大逆転物語 -THE MIRACLE OF THE ZONE- (2)
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ネタバレ名簿 8/10【新安価ロワイアル】 ○アトミック(◆rgd0U75T1.)/○キャシャーンVj(◆Vj6e1anjAc)/○メタルマックスfR(◆fRBHCfnGJI)/○ストライダーマグロ(◆100ZZ542nE)/○魔界塔士hq(◆hqLsjDR84w)/●397 ‐歌の契約者‐(◆397hRRvW1w)/○魔法少女ジョインジョインZ9(◆Z9iNYeY9a2)/○AC版 CAPの拳(◆CAP.3FrrY.)/●oub×アーク(◆oub/vvrBRg)/○つるぎのフレデリカuP(◆uPLvM1/uq6) 6/7【モバマス・ロワイアル】 ●恋色アイドルP(◆yX/9K6uV4E)/○最高の友達P(◆j1Wv59wPk2)/○カウントガールズP(◆John.ZZqWo)/○心奥の使者P(◆n7eWlyBA4w)/○ベテラントレーナーP(◆ncfd/lUROU)/○ストロベリーエンジェルP(◆44Kea75srM)/○心情の紡ぎ手P(◆ltfNIi9/wg) 5/6【仮面ライダーオーズバトルロワイアル】 ●◆QpsnHG41Mg/○◆MiRaiTlHUI/○◆z9JH9su20Q/○◆l.qOMFdGV./○◆qp1M9UH9gw/○◆SrxCX.Oges 5/6【多ジャンルバトルロワイアル】 ○【ライダー】エウーゴ(◆ew5bR2RQj.)/○【世紀王】K.K.(◆KKid85tGwY)/○【誓約者】ダブルエックス(◆.WX8NmkbZ6)/○【寄生獣】イーボゥ(◆EboujAWlRA)/●【魔人皇】ジーヴ(◆GvGzqHuQe.)/○U1(◆U1w5FvVRgk) 6/6【ドラゴンクエスト・バトルロワイアルⅡ】 ○悪しき世界の人々・ワンダブル(◆1WfF0JiNew)/○ハガク(◆HGqzgQ8oUA)/○クルツ(◆CruTUZYrlM)/○空虚と夢と現と幻の住人・ウィフェ(◆YfeB5W12m6)/○そしてエデンへ・ティユーフ(◆TUfzs2HSwE)/○星空の語り人・トゥープル(◆2UPLrrGWK6) 4/5【RPGキャラバトルロワイアル】 ○ファルン(◆FRuIDX92ew)/○アイディー・ウィンチェスター(◆iDqvc5TpTI)/○ダブリュクル・アーミティッジ(◆wqJoVoH16Y)/○リクス・エレニアック(◆6XQgLQ9rNg)/●ラッド・エヴァンス(◆Rd1trDrhhU) 4/5【俺ODIOロワ】 ○金融編「観柳」(◆EDO/UWV/RY)/○◆TIENe3Twtg/●反旗編「野望」(◆w3jhWtfiTI)/○転生編「欲望」(◆fRBHCfnGJI)/○崩壊編「絶望」(◆Cxilshz3Mg) 4/5【新西尾維新バトルロワイアル】 ○『雄健魁偉』零崎崩識(◆mtws1YvfHQ)/●『横溢邁進』零崎音織(◆ARe2lZhvho)/○零崎傾識(◆xR8DbSLW.w)/○零崎継識(◆VxAX.uhVsM)/○零崎憑識(◆wUZst.K6uE) 5/5【パラレルワールド・バトルロワイヤル】 ○KAIXA・ムラカミ(◆qbc1IKAIXA)/○ヴァイス・シュバルツ(◆Vj6e1anjAc)/○エンド・メーカー(◆4EDMfWv86Q)/○Black Liner(◆Z9iNYeY9a2)/○人でなしのヴィニス(◆vNS4zIhcRM) 4/4【あと3話で完結ロワ】 ○◆XksB4AwhxU【虫ロワ】/○◆c92qFeyVpE【絶望汚染ロワ】/○◆rjzjCkbSOc【謎ロワ】/○間違えた世界(◆MobiusZmZg)【Splendid Little B.R.】 2/4【川崎宗則バトル・ロワイアル】 ○銀河皇帝ムネリン(◆555/vRw0s2)/○川崎宗則全一(◆7WJp/yel/Y)/▲Mr.川崎宗則(◆51/314RH96)/●川崎宗則殺し(◆I9C.OZ3.G6) 4/4【中学生バトルロワイアル】 ○◆wKs3a28q6Q/○ロックンローラー・七原秋也(◆jN9It4nQEM)/○◆7VvSZc3DiQ/○ホワイダニット(◆j1I31zelYA) 4/4【ニコニコ動画バトルロワイアルγ】 ○オリーブオイルの伝道師(◆Olivescz6Q)/○キチガイコマンドー!(◆FbzPVNOXDo)/○ハサン・0uDu0SETOk(◆0uDu0SETOk)/○いつも4人のczaE(◆czaE8Nntlw) 4/4【バーチャルリアリティバトルロワイアル】 ○第二相”嘘吐き(◆7ediZa7/Ag)/○第三相”遍在する目”(◆4vLOXdQ0js)/○第四相”激戦”(◆uYhrxvcJSE)/○第一相”心描き”(◆nOp6QQ0GG6) 4/4【Perfect World Battle Royale】 ○感電(◆LjiZJZbziM)/○"電光機関(ブリッツガイスト)"(◆ZrIaE/Y7fA)/○悪のカリスマ(◆Ok1sMSayUQ)/○"神風"(◆tzc2hiL.t2) 4/4【変身ロワイアル】 ○ヤレッシュサツリキュア(◆LuuKRM2PEg)/○仮面ツナイダー1号(◆OmtW54r7Tc)/○速筆戦隊ハヤインジャー(◆gry038wOvE)/○超光戦士カキテリオン(◆7pf62HiyTE) 0/4【ホラーゲーム・バトルロワイアル】 ●1、2年目の宇宙人(◆WYGPiuknm2)/●3年目の傭兵(◆TPKO6O3QOM)/●ザ・フォッグ(◆cAkzNuGcZQ)/●日野様がまだ生きておられる(◆hr2E79FCuo) 3/4【マルチジャンルバトルロワイアル】 ○ウォット・ザ・エクスピード(◆Wott.eaRjU)/●ゴーキュー・ザ・キャラマスター(◆GOn9rNo1ts)/○「換える者」キューオ・ザ・マスターグリーン (◆OQO8oJA5SE)/○「戦う者」スクイズ・ザ・バトルファング(◆SqzC8ZECfY) 3/4【リリカルなのはクロス作品バトルロワイアル】 ○叡智の司書長(◆7pf62HiyTE)/●暗黒の破壊神(◆WslPJpzlnU)/○非情の殲滅者(◆HlLdWe.oBM)/○灼熱の英雄王(◆Vj6e1anjAc) 4/4【ロワイアル×ロワイアル】 ○革命家・ワイルドセブン(◆W91cP0oKww)/○創設者(◆CFbjQX2oDg)/○最強の防人(◆1yqnHVqBO6)/○来栖圭吾(◆IRxFfnsX8c) 3/3【アニメキャラバトルロワイアル3rd】 ○◆hqt46RawAo/○◆SDn0xX3QT2/○◆1aw4LHSuEI 3/3【オールジャンルバトルロワイアル】 ○◆.pKwLKR4oQ/○◆OQfaQnysJI/○◆KV/CyGfoz6 3/3【2ちゃんねる・バトルロワイアル】 ○モララー・ザ・カオス(◆m8iVFhkTec)/○ネラー・ザ・ダークネス(◆i7XcZU0oTM)/○マーダー・ザ・スコッパー(◆shCEdpbZWw) 2/2【オールスターロワイヤル】 ○PEPSI MAN(◆4Wptyf8HGw)/○全ての星の始まり(◆26Zf504quw) 2/2【古生物バトルロワイヤル】 ○賢者竜トロオドン(◆JUJ3JcJgbI)/○誘惑の蛇(◆BdIG1U8FAs) 2/2【少女漫画キャラバトルロワイアル】 ○◆F9bPzQUFL./○◆RVCXqfgcSM 1/2【新々漫画バトルロワイアル】 ●麻雀超人(◆wKs3a28q6Q)/○ミスターブタ(◆OmtW54r7Tc) 1/2【新漫画バトルロワイアル】 ●螺旋と信頼のリンカー(◆9L.gxDzakI)/○愛と運命のテラー(◆JvezCBil8U) 2/2【全開バトルロワイアル】 ○全開の追求者(◆uBeWzhDvql)/○全開の到達者(◆Zi/dWEr9fQ) 2/2【東方Projectバトルロワイアル】 ○◆27ZYfcW1SM/○◆gcfw5mBdTg 1/2【二次キャラ聖杯戦争】 ○《始まりの剣》セイバー(◆.OpF6wOgZ2)/●《紅槍の仮面使い》ランサー(◆3gGiI31R5A) 1/1【アナザールート・バトルロワイアル】 ○結末の観測者(◆5Kdjgy1wTM) 1/1【INFLATION BATTLE ROYALE】 ○水銀の綴り手(◆AuHgijPLos) 1/1【ジョジョの奇妙なバトルロワイアル3rd】 ○サヴェージ・ガーデン(◆c.g94qO9.A) 0/1【テラカオスバトルロワイアル外伝】 ●マグニスさま(◆nkOrxPVn9c) 1/1【AAAキャラ・バトルロワイアル】 ○キャラクターボイスは東地宏樹(◆cAkzNuGcZQ) 1/1【波平さんがバトルロワイヤルを主催するスレ】 ○全一 1/1【ネギまバトルロワイヤル】 ○作者6 1/1【ヒーローズ・バトルロワイアル】 ○血塗られた英雄譚(◆aWSXUOcrjU) 1/1【平成仮面ライダーバトルロワイアル】 ○未来への系譜/仮面ライダーミライ(◆MiRaiTlHUI) 1/1【漫画キャラバトルロワイアル】 ○康一君(◆hqLsjDR84w) 114/134
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命短し恋せよ乙女(後編) ◆LJ21nQDqcs 「どうした!第六天魔王が名乗ったのだぞ?平伏するばかりでなく、返事をしてみせぃ!」 戦場にてただ一人佇む織田信長であったが辺りに動くものはない。 「詰まらぬ。全て死に絶えたか」 そうポツリと漏らすと、鉄の騎馬にのって逃げおおせた者共を追うべく踵を返す。 トレース、オン 干将・莫耶が信長の背に向かい猛烈な速度で迫る。 しかし命中の直前。 双刀はまるで独自の意志を持つかのようにはためくマントによって、粉砕された。 次いで新たに呼び出した干将・莫耶を携え、突進するアーチャーの熾烈なる一撃を、 信長は嘲笑をもって長大なる刀、物干し竿で弾き返す。 「奇襲とは卑怯よなぁ、弱者よ!」 「卑怯?あいにく誇りなんぞと言うものはとっくに捨てていてね!」 超長剣・物干し竿にとってクロスレンジ、つまり通常の白兵距離は死角と言ってよい。 干将莫耶のような短剣の間合いならば、なお致命的だ。 アーチャーはそれを狙い、懐に入り必殺の間合いで一撃を放つ。 また一撃、 さらに一撃、 そして一撃。 踊るように繰り広げられる、双剣の間断ない芸術的とも言える攻撃は、 しかして最早剣術を超えた領域にある信長の悪魔的技術によって、全てが短剣ごと粉砕される。 いや、そればかりではない。 払い切った全てがアーチャーに対する攻撃として転化し、襲いかかった。 しかし弓兵は軽業師のように身をそらし、飛び退り、前転し、飛びかかる。 手に持つ短剣を粉砕されては複製し、一撃を放っては粉砕されて身を躱す。 クロスレンジにおいて全く不利を感じさせず、ハンデだとでも言わんばかりに対応する信長と、 それでも懐に入り続け粉砕されようとも無限に複製し、突撃し、切り返しに反応して回避し続けるアーチャー。 傍目には互角に見えるが、その実、信長には未だ瘴気による一撃とマントによる一撃がある。 対するアーチャーはまさにジリ貧であり、攻撃の手段と防御の手段を徐々に削り取られて行く一方。 「一人で余に匹敵しようなどとは片腹痛い!せめて、うぬを五人連れて参れ!」 「誰が一人と言った!」 その瞬間、黒き閃光が信長に襲いかかる! 信長の右側より果敢に攻め続けるアーチャーの丁度逆側、 左後方より岩剣が音速を超えて放たれ、土煙が辺り一帯を覆う。 音が追いつき轟音が辺りを包むと、衝撃波が土煙を吹き飛ばした。 無論、あの程度の爆発では滅ぶに能わず。 黄色い雨合羽も健在な、左腕全てを獣毛に覆われし不屈の愛戦士。 レイニーデビル完全体、神原駿河。 参戦。 ■ 実の所アーチャーにとってレイニーデビル=神原駿河は敵でしか無い。 逆もまた真なりで、神原は明確にアーチャーをも攻撃の対象としていた。 自らの腹に深々と短剣を突き刺した男を許せるほど、神原駿河は寛容ではない。 だがアーチャーの体術がそれをさせなかった。 彼の驚異的な戦場把握能力は神原が未だ健在で、近いタイミングで襲いかかってくることを察していた。 故にジリジリと、自分と神原の狭間に信長を誘導した。 第六天魔王は何故そのような移動をするのかと言う理由は分からずとも、当然意図は理解していた。 にも関わらずアーチャーの策を許してしまったのは、彼の体術がやはり超越していたからに他ならないだろう。 結果。 神原駿河の初撃は信長に見舞われた。 信長がかの者を敵と認定するには、十分過ぎるほどの強烈な一撃。 かくてアーチャーは1対2という絶望的な状況から、どうやら2対1、もしくは1対1対1の三すくみと言う かなりマシな状況に好転させることに成功した。 一瞬とはいえ、アーチャーが信長を凌駕した瞬間である。 ◇ 一方神原駿河は手綱を離された狂犬のように、見境なく両者に襲いかかっていた。 攻撃対象は二人。 自らの腹に短剣を突き刺した黒衣の男。 今しがた戦場ヶ原を殺さんとした漆黒の鎧の男。 手綱を離せばそのように見境なく暴れるであろうことは戦場ヶ原には分かっていた。 だが爆風から身を呈して自分を守った神原の姿を見て、 偶然か故意かは分からぬが、自分の唇に唇を合わせた後輩の姿を見て、 唇を離し、ポロポロと涙を流す可愛い後輩の姿を見て。 戦場ヶ原ひたぎは察してしまった。 『神原駿河』と言う存在は、抜け殻ではなく未だそこにあると言う事に。 その僅かに残った命の炎を、自分の為に激しく燃やさんとしていることに。 自分の過保護が神原駿河を、彼女が燃やさんとしている炎を、くすぶらせていると言う事に。 だから一瞬とはいえ手綱を離してしまった。 「いきなさい」 行きなさいなのか、生きなさいなのか、逝きなさいなのか。 言った戦場ヶ原にも分からなかった。 ただ次の瞬間、神原は戦場に赴く。 愛を守らんとする為に。 ■ 戦場ヶ原ひたぎは微かに湿る唇を抑えて、身を起こした。 視線の先には、戦場ヶ原の想像と動体視力を遥かに超えるレベルで行われる、死闘。 踊るように踏み込むアーチャー、それを全て弾き返す信長。 頓着せずに巨大な岩剣を振り下ろす神原、それをマントで受け流す信長。 マイペースに攻撃を続ける神原に合わせるようにして、間隙を付いていくアーチャーであったが、 それでも信長の牙城は遥か高くそびえ、君臨している。 第六天魔王の頂きは未だ、遠い。 「万死に値するわ、神原。あとで確実に殺してあげるから、 だからそんな黒尽くめの変態男など、倒してしまいなさい」 見ればやや離れた位置に上条当麻と、そしてC.Cがいる。 上条当麻は未だに気絶しているのか倒れたまま。 目立った傷も無いことから、とりあえずは無事であろう。 一方のC.Cは、と言えばあちこちが血でまた汚れているようだが、 死んではいないようで、ピンピンしている。 その証拠に彼女は激戦をよそに、戦場ヶ原にたったったっとスキップしながら近づいてきた。 「逃げないのか?」 不思議そうにC.Cは尋ねる。 悠然として戦場ヶ原は応える。 「あの戦いで黒尽くめの変態男を倒せなければ、どちらにせよ私たちは生きてはいないでしょうね。 逃げ切る算段も無いし、どう行動しても無駄。ならここで観戦している方が良くないかしら?」 「そうは言っても考えているのだろう?手段を」 全てを見透かしたように語る碧髪の少女。 侮辱されたかのように思ったのか、戦場ヶ原はやや眉をひそめて応える。 「考えてないとでも思ったのかしら。 それは遥かに侮辱ね。人間は考えることによって他者と区別されるの。 考えていないとしたらそれは人間ではなく、ただそこに存在しているだけの置物ね」 「生憎と私にはここから逃げうる手段など考えもつかない。 いや、私一人であるならばいくらでも手段は思いつくが、 全員含めての逃亡手段となると、コレは最早魔法や超能力の類だな」 両者の舌鋒は、今ここに至っても衰えることを知らない。 ならば戦場ヶ原には思いつくのか、とC.Cは挑戦的で不遜で不敵な瞳で彼女を見つめる。 「一つ思いついたけど、とてもじゃないけどバカバカしいわ。 口にするのもはばかられるわね。第一、あの二人を一度こちらに呼びつける必要があるのだもの」 「なるほど、道理を引っ込める必要がありそうだな」 そう言い終わると、この究極に相性が悪い二人の女性は、気味が悪いことに一点を見つめる。 未だ昏倒し続ける上条当麻を。 そしてまた仲がいいことに、同じタイミングで溜息を思わず漏らすのだった。 「無理ね」 「無理だな」 ■ 「どうした、魔王!減らず口の数が減ってきたぞ?流石に余裕がなくなってきたか?!」 アーチャーは身を低くして物干し竿の一撃を躱し、膝を付くほどの低姿勢でそのまま短剣を押し込む。 それを信長は手首を捻って物干し竿を回転させ容易に受けきり、そのまま対手の首を狙う。 アーチャーは膝まづく形で上体を逸らし、その一撃を空振りさせる。 さらに身体のバネを用いて飛び上がり、なおも信長に肉薄する。 一方、神原も執拗に岩剣を打ち付ける。 地面を擦りながら火花とともに繰り出される遥かに重く、鋭い一撃は、 しかして闇を凝縮したかのような瘴気で強化されたマントによって包まれ、威力を殺される。 アーチャーも神原も、人智を超えた戦士であった。 しかしその二人をもってしても、信長の鎧にすら触れることが出来無い。 これは式、デュオ、五飛と比べて、彼と彼女が劣っていると言うわけではない。 信長の瘴気の充実と、本気の度合いが先程の戦いとは違うのだ。 神原もアーチャーも必殺の一撃をくり返し浴びせている。 第六天魔王と言えど、その一撃であろうと食らえば倒されるまでは行かないまでも、 かなり危ない状況に陥るだろうことは想像に難くない。 傲岸不遜な織田信長をして、それを否定出来ないほどに二人の攻撃は熾烈なのだ。 よって鎧で受けきる、と言う発想自体が無い。 全ての攻撃は、その身で受ける前に弾き返し、粉砕し、減衰させる必要が、この戦いではあった。 確かにアーチャーの言うとおり余裕は無かったのかも知れない。 だがそれも先の戦いに比べれば、のこと。未だ信長は全力を出さずにいた。 油断はないが、愚民ごときに自分の全力を引き出せるとは思えなかったし、 事実、彼女と彼は信長の全力を今のところ引き出せていなかった。 剣とマントと瘴気。 この三つを複合させた戦いを、この島において未だ信長は本格的には試していない。 この島での制限下で、どこまで出来るのか、どこまで辿りつけるのか。 剣とマント、剣と瘴気については既に実戦で試している。 (そろそろ全力で攻撃する慣らしに入るとするか) そのタイミングを測るための沈黙であり、全力を出させた戦士たちに対する黙祷である。 「そろそろ飽いた。第六天魔王の全力。見せてくれよう」 アーチャーの剣戟を粉砕しながら、神原の怒涛を受け流しながら、 第六天魔王・織田信長は宣言する。 空間が黒く歪むのをアーチャーは感じる。 心眼スキルが、非常に速いレベルで身の危険を知らせる。 (最早逃げるのが最上の策、と言うことか!) だが退くことは出来無い。そのきっかけが無い。タイミングが無い。 神原駿河の爆発力も最早限界に近い。 信長はアーチャーの攻撃も神原の攻撃も、粉砕せずに身を回転させて弾き返す。 次の瞬間、マントと瘴気と超長剣が一体となって、竜巻を形成する。 「是非も無し!」 アーチャーと神原はその渦の中心に、否も応もなく引きずり込まれる。 圧倒的な手数が、暴虐が、力が、瘴気が、二人を暴力的に叩き続ける。 波状攻撃とは、飽和攻撃とは、このことだ。 神原とアーチャーは信長の絶対的なキルゾーンに脚を踏み入れてしまった。 岩剣が削り取られ、剣製が消耗していく! 物干し竿が神原の首を狙い、マントがアーチャーの首を捉えたその刹那、 「ふざけるんじゃねええええええええええええええええええええええ!!」 立ち上がる一人の少年の姿。 歩く恋愛フラグ。レベル0。無能力者。虚言使い。幻想殺し。 全てに不屈を誓い、強要するもの。 上条当麻である。 ■ 上条当麻は許せずにいた。 自分の目の前で殺し合いが行われていることに。 それが自分がどうにか出来るレベルを、遥かに超越した戦いだと言うことを認めることに。 そしてなにも出来ずに立ちすくむのが最良であると言う、幻想に。 「ふざけんじゃねぇぞ、てめぇ!なに問答無用で殺し合いをしていやがる!」 信長は上条当麻の言動に呆れて、竜巻のごとき戦闘形態を解いていた。 チャンスとばかりに打ち込まれるアーチャーと神原の攻撃を、軽くいなす。 「愚民には理解出来ぬ!我は第六天魔王!それが全てぞ!」 顔は正面の上条を見続けながらも、左右から攻め立てる二人の攻撃はしっかりと跳ね返す。 傍目にもレベルの違いは歴然であった。 「なにをしている少年!貴様などがここに割って入ったところで、なんの足しにもならん! 少女たちを連れて即刻逃げろ!」 信長の長剣をすんでで躱したアーチャーの怒号が響く。 「織田信長、とか言ったな!確かにお前は強いよ! 俺なんかが割って入ったところであっという間に死ぬしか無いだろうよ! だけどよ!なんでそんなに強いのにこんなゲームに乗っていやがる!? なんでこんな所で殺し合いをしていやがる?! 首輪を付けられて、あいつらの思惑に乗って、それで魔王を名乗っていやがるのかよ!」 「小童ぁ!」 憤怒の信長は瘴気を上条に飛ばす。 地を走る瘴気が飛び跳ねて襲いかかるが、しかし上条はそれを右手で消滅させる。 信長の眉がハッキリと驚愕と興味を示す。 「そうだ、織田信長!お前は全く俺なんかより遥かに凄いよ!偉人だよ! ならなんで、このゲームをぶち壊そうとしやがらねぇ?! なんでこんなくだらねぇことを踏みつぶして、前に進もうとしやがらねぇ?! お前があいつらをまず始末しようともせずに、殺し合いをしているのは何故だ?!」 「我と同じ舞台に立ち、あまつさえ魔王たる余と対等の立場で話す、 うぬのような虫けらを叩き潰すためぞ!」 それを聞いて上条当麻は遂に歩き出す。駆け出す。走り出す。 「なら言ってやる!対等だの虫けらだの、こんな状況で言うならば! こんなゲームに参加させられて、こんな首輪を付けられて、まだそんな幻想を言うならば!」 右手を握り、怒号を吐き出し、そして跳躍する。 アーチャーと神原は信長に対して同時に一撃を打ち込み、剣とマントで受けざるを得なくする。 残る武器は瘴気のみ。 信長は瘴気を槍の形に固定させると、上空に次々と射出する。 しかし上条当麻は右手を前に突き出し、その全てを消し去る。 空中で右手を再度握り締め、振りかぶり、そして前に押し出す。 これこそが上条当麻の代名詞。上条当麻の持つ、唯一の能力。 幻想殺し、イマジンブレイカー! 「その幻想をぶち殺す!」 ■ 信長にとって許せぬことに、ただの凡夫に過ぎぬと勘定に入れていなかった少年の一撃は、 瘴気の壁を易々と突き破って、自らの身体に到達した。 流石の魔王にとってもこの能力は未知数であり、致命的な箇所への打撃は脅威であった。 よって対手の狙いを微妙にずらさんとする為に、身をよじる。 それがアダとなったのか、それが幸いであったのか。 上条当麻の幻想殺しは織田信長の首、その自由を拘束する首輪に直撃した。 キュイイイィィィィン 上条当麻の脳裏に、幻想殺しが作用したときに漂う、独特の音が響く。 (通った?!) 確かに、間違いなく、ハッキリと。 幻想殺しイマジンブレイカーは首輪に作用した。 ■ 「来なさい!神原!」 「引き上げるぞ、アーチャー!」 信長に幻想殺しの一撃が見舞われた瞬間、いやその直前。 すでに遥か後方へと走り去っていたC.Cと戦場ヶ原ひたぎが、同時に叫んだ。 言われるまでも無い、とアーチャーは未だ空中で拳を振り抜いている上条当麻を抱え、 跳躍をもって戦線を離脱する。 神原もまた、床を踏み抜く疾走をもって全力で後退した。 「させぬわァ!」 信長も幻想殺しの一撃を喰らいながらも瘴気を飛ばして、三人の前に檻を形成する 幻想殺しと言えど、物理的に言えば単なる高校生のパンチである。 その程度でひるむ第六天魔王ではない。 しかしその瘴気の檻すら、アーチャーの脇に抱えられた上条当麻によって霧散させられる。 瘴気を信頼しすぎたためか、信長の追跡は遥かに遅かった。 多少の差を付けられても女二人の足もある。 問題なく追いつけるだろうと言う慢心も、どこかにあったのかも知れない。 ■ 一方、戦場から離脱した五人は走りながらも、戦場ヶ原の悪だくみを聞いていた。 そこにアーチャーが物言いを入れる。防御陣は二重にすべきだと。 「それは受け入れられないわね。わたしの案は全員を生きて逃がす方法よ」 アーチャーの真意に気づいた戦場ヶ原が反論する。 「あぁ。だが"全員"を"生きて逃がす"ならこれが最上だ。違うか?」 アーチャーの偽悪的な微笑に、戦場ヶ原は傍らで手を繋ぐ神原の顔を見ずにはいられない。 自分を信じて疑わない忠犬のようなその目に、戦場ヶ原はポツリと呟く。 「熱き血潮の冷えぬ間に、明日の月日はないものを」 ある歌の一節。刹那の激情を能しとする青春歌。 華と散るらんとする神原に、これ以上の場はないのではないのか。 「分かったわ。でも私は諦めが悪いわよ」 戦場ヶ原は頷い"てしまっ"た。 五人の眼前は"絶望の城"が崩壊した為、地平線まで真っ更に見える。 南東の方角にひたすら走っていた戦場ヶ原ひたぎは、ついに目的地に到達する。 直線距離にすれば50メートルも無い。彼女ならば一足飛びである。 そして息付く暇もなく走りながら、ディバックを背中より外し小脇に抱えて、"ソレ"を引っ張り出す。 すなわち 【飯田線車両@咲-Saki-】 線路に車輪を当てはめ、一気に滑り落とすと、そこには二両編成の電車が現れた。 「どんな幻想だよ、コレ」 流石に呆然と立ちすくむ上条を、アーチャーはさっさと車両の中に押し込んだ。 神原を車両の上に、アーチャーを車両内に配置し、車掌室には残りニ人が押し込まれる。 飯田線車両は最大で85キロしか出せない、急勾配を意識した車両である。 よって最大速度を出せたとしても、信長を振り切ることは難しい。 要するにこの車両こそが決戦場なのだ。 やがて飯田線は走りだす。 車窓から見える景色は、徐々に速さを増していることを教える。 そして屋根の上にドスン!とした落下音が響き渡る。 「おいでなすったか。さて、神原がどれほど持ち堪えるかな」 アーチャーは車内で緊張に身をたぎらせた。 ■ 「なるほど、これが"れっしゃ"か。なかなかに頑丈で、そして力強きものよなぁ」 信長は感嘆とした表情で語る。 神原は応えない。 いや、応えること自体が最早出来無い。 洒脱なジョークと破廉恥な言葉の洪水も、最早彼女から聞くことは出来無い。 あげることが出来るのは、ただ獣のごとき咆哮のみ。 それを悲しいと思うことすら、彼女には出来無い。 その身は既にレイニーデビルのものなのだから。 そう、もはや下級悪魔との契約と、神原自身に唯一残った戦場ヶ原への愛だけが 彼女の生命を繋ぎとめていた。 「自らの言葉を持たぬか。その戦いぶり、傍若無人ぶり、本多忠勝を思い出すな。 いや、その腕、猿か。"覇王"などと言ってはしゃぐ、あの小童をも思い出す」 信長の脳裏に浮かぶのは、愛に生きる可憐な少女とは似ても似つかない、いかつい戦国武将たち。 喋ることの出来ぬ神原に変わり、彼が饒舌になるのは、やや興奮しているためか。 「猿の分際で我の前に立ちふさがるとは笑止千万!立ちふさがるもの、全て滅ぼす!」 超長剣・物干し竿を構え、マントを翻す。 「是非も無し!」 物干し竿を横薙ぎに振るった信長は違和感を感じた。 先程の戦、この猿めはこちらの攻撃にあわせ、あの岩剣を振るいこちらの攻撃ごと潰してみせた。 だが今はそれはない。 いや、防御自体を捨てている! 神原の身体をやすやすと切り裂く超長剣。 だが神原はそれを意に介そうともせず、前に押し出て岩剣を振り回す。 それをマントで受け流しながら、信長は敵の真意に気がついた。 この猿はこちらが剣とマントの二刀流であることに対抗するために、 防御を捨てて攻撃一辺倒に打ち込むつもりなのか、と。 「詰まらぬ!死兵なぞは雑兵が相手すべき生兵法ぞ!」 信長の攻撃はどれも二の太刀要らず。一撃必殺である。 それをただ喰らって反撃をしようなどと、単なる自殺行為だ。 打ち合いなどではなく、一方的な虐殺でしか無い。 だが神原は勝算をもってこの戦い方を選んだ。 いや、既に勝算など計算できる状態ではない。 レイニーデビルの本能が、この戦法を選んだ。 列車の屋根へ赴く神原に向かって戦場ヶ原が語った言葉がある。 「神原、哀れな姿になってまでわたしに尽くしたいと言うのなら、 ここであいつの足を、死ぬ気で止めなさい」 望むところだった。 もし神原に意識があったのならば、一も二もなく首を縦を振ったことであろう。 もはやこの身は先輩、戦場ヶ原ひたぎへの愛で出来ている。 だから信長の足止めをするのに、命など要らなかった。 信長を止めることが先輩への愛を表現することになるからだ。 ■ 運転室にて前方を見やる戦場ヶ原は、何故可愛い後輩を死地に送り出したのかと自問自答していた。 あのような言葉をかければ、神原駿河は本当に命をかけてしまうだろう。 ならばなぜ。 「いいのか?」 C.Cが問う。それ以上は言わない。 おそらくは、いや、まさしくその質問の意図は今戦場ヶ原の胸中にあるものと同じであろう。 「えぇ。全員が生き残る方法は僅かとは言え、コレしか無いのだもの」 アーチャーがこのプランを受けたのは、単純により多くのものが確実に生き残る案だったからだ。 "全員"が生き残るなどと言う絵空事を信じてはいない。 だが上条当麻は信じて疑わない。 よって列車の上で行われている戦闘が、傍目には一方的な虐殺になっていることなど想像もしていない。 ある程度まで踏ん張ったら、無理をすることなく車両内部に降りてくる。 そうするであろうと聞いていたし、アーチャーがここにいるのは二段構えの防御陣ゆえと聞いていた。 だから多少の間の抜けた問答を戦場ヶ原と繰り広げていた。 「それにしても、戦場ヶ原、さん。」 「なにかしら上条くん。運転している彼女の邪魔にならない程度でお願いするわ」 C.Cは器用にもレバーを操って電車を運転する。初めて見る操作系にも関わらず、その様子に躊躇はない。 「こんな便利なものを支給されていたのなら、わざわざ駅であんな長い間待つ必要は無かった、と 上条さんは思うんですがねぇ?」 「愚問ね、上条くん。私が列車を運転出来ると思っているのかしら? それにどこで事故が起きたのか分からない状況で、列車を走らせるなどといった愚行を 私がするとでも思っているのかしら?」 上条は押し黙るしか無かった。 そして車両は目的地にあと少しで到達する。 D-6駅。真田幸村が横死した、運命の場所へ。 ■ 何度打ち込まれただろうか。 神原の身体はもはやぼろぼろであった。 全身に切り傷を負い、欠損した部位も数多い。 だが、捨て身の攻撃は遥かに数は少ないものの、信長にクリーンヒットを与えていた。 レイニーデビル完全体、神原駿河の一撃は鋭く、そして重い。 常人ならば両断されているであろうその攻撃を、信長は三度にわたり受けていた。 気合で立ってはいるものの、疲れ知らずの信長が、休養を欲するほどにダメージを蓄積させた。 今また信長の一撃が振るわれ、神原が同時に信長へと岩剣を振るう。 神原が右肩口から斬られ、信長はマントによって減衰したものの完全ではなく、岩剣は腹部を強打する。 思わず膝をつきそうになったのは、信長の方であった。 常ならば狂気の言葉を奏でる口元に、今は一筋の血筋が滴っていた。 どうやら内臓へのダメージは深刻らしい。肺にダメージが至るのも時間の問題であろう。 信長にとって、許されざるべき事態である。 対手の表情はまぶかに被った着物によって見えぬが、おそらくは壮絶な笑みをでも浮かべているのだろう。 しかしここまで攻撃に耐える敵というのも本多忠勝以来である。 この華奢であろう身体の何処に、そのような耐久力が秘められているのか。 レイニーデビルは下級悪魔である。 尤も下級と言えど、決して劣っているわけではない。 知能を持たぬからこそ下級悪魔なのだ。 悪魔の本分は人を騙し、翻弄し、魂をすすることである。 故に悪魔の階級は主に知能の優劣によって決められているのであろう。 この下級悪魔レイニーデビルの耐久力、我慢強さは眼を見張るものがあった。 さらに神原自身の不屈の精神により、 レイニーデビルはなかなか彼我の実力差に絶望することが出来ずにいた。 神原駿河、およびレイニーデビルが観念した瞬間、かの悪魔は契約を放棄して宿主から抜け出る。 だが神原駿河は観念しない。 だから神原駿河は諦めない。 故にレイニーデビルは契約を放棄出来無い。 そして列車は最終地点に到着する。 作業用ハロ達が必死になって復旧活動を続けるD-6駅へ、速度を変えずに突っ走る。 ■ 「頃合だな。列車から離れるぞ」 アーチャーは運転室に赴き、C.Cと戦場ヶ原ひたぎを脇に抱える。 「ちょっとまてよ!?神原がまだ降りてきてないぞ!」 上条当麻が案の定反抗する。 プランの底に潜む真意を、彼だけが飲み込めずにいた。 「彼女は自らが捨石になることを選んだ。その意志を無にするな、上条当麻」 C.Cが上条に告げる。 無論それで引き下がる上条ではない。 「馬鹿野郎!そんなことがゆ」 アーチャーによる当て身が上条の身体をくの字に曲げた。 そのままアーチャーの腕の中で四肢をぶらんと下げる。 「ここまで予想通りの行動をするとはな」 アーチャーが皮肉に顔を歪ませる。 「仕方ないわ。それが上条くんなのだもの。 でも、私達までその厳しさを共有することは、無いわ」 「説得する時間も、共有する時間も、今はない、と言うことか」 C.Cは珍しくも戦場ヶ原の思考を理解した。 「同調しないで頂けるかしら。今は少し気が立っているの」 そういって彼女は自分を脇に抱えようとするアーチャーを拒絶した。 「私は神原が降りてくるまで待つわ」 アーチャーは呆れ顔で反論する。 「女、このまま行けば列車は横転するぞ?」 「私は当然生き残る。神原も連れて行く。全部出来なければ気が済まないの。 最初に言わなかったかしら?私は諦めが悪いの」 強欲の限りを彼女は発揮する。 「なるほど。では理想に抱かれたまま死ぬわけだな」 「運が悪ければそうなるかしらね」 アーチャーの皮肉など戦場ヶ原にとっては些事である。彼の方など見もせずに言い放つ。 瞬間、当て身が炸裂し、戦場ヶ原も意識を失う。 「生憎とこちらは全員生きて帰らすために行動していてね」 彼はそう言うと気絶した二人を脇に抱え、C.Cをおんぶして最早横転するのみの列車から跳躍して離れる。 そして近くのビルの屋上に跳び乗った。 見れば列車は切り結ぶ二人を屋根に乗せたまま横転し、 作業車や作業場、ハロ達を大量に巻き込んで大爆発を起こしていた。 アーチャーが最後の仕上げをするべく、千里眼を発動して目標を見定めると、 弓を出現させ、同時に剣をつがえる。 一瞬にして剣を射撃に適した形態に変形させ、魔力を集中する。 そして気合とともに射出する。 「偽・螺旋剣(カラドボルグ)!」 ■ 横転した列車の傍らでなおも信長と神原は組み合っていた。 信長が地に足を付けることによって、形勢は大きく傾いた。 瘴気によって大幅に切れ味と威力を増したマントによって、岩剣を遂に両断して無力化すると、 瘴気を凝縮したかのような真黒き超長剣によって神原の首は跳ね飛ばされた。 無残に転がる神原の首。 信長はようやくと激戦が終わったことを確信し、刀をついて一息を入れた。 しかし、である。 神原の首を拾い上げる手が、信長の目に映る。 その腕を、 その肩を、 その胸元を 信長は見覚えがあった。 当然であろう。 それは首を失った神原自身であった。 首を失えば人は死ぬ。 そのような自明のことにいちいち突っ込む人間はいない。 しかし神原駿河は行動をもってそれに反論した。 その不屈の精神は、かような幻想など打ち砕き、首を抱えて岩剣を振りかぶる。 「まやかしがぁっ!」 首を跳ねて死なぬのならば、魂魄全てが抜き出るまで切り刻むのみ! そう決断し、刀を振り上げた信長の目に一本の矢が映る。 それは信長のやや後方に突き刺さり、大爆発をまたもや起こす。 数棟のビルが爆発により瓦解し、押し倒され、信長の後方に巨大なバリケードを築く。 それを見た瞬間、神原駿河は遂に前のめりにどう、と倒れた。 ゴロゴロと転がる首に映る表情は満足気で、何処か微笑んでいるようにも見える。 「奴らなにが目的で、あのような」 そう思った信長は先程の放送で告知された立ち入り禁止エリアを思い出す。 『三時間後、午後三時以降より立ち入り禁止エリアが三つ増加します。 今回の閉鎖エリアは【A-2】【C-7】【D-6】の三箇所です。』 信長は慌てて自らの居場所を確認出来る《でばいす》を取り出して確認する。 【D-6】 14:59:59 「なにぃ?!」 驚愕する信長の耳に、機械的な警告文が響き渡る。 立ち入り禁止区域に入りました。速やかに退去して下さい。 立ち入り禁止区域に入りました。速やかに退去して下さい。 立ち入り禁止区域に入りました。速やかに退去して下さい。 信長は辺りを見回す。 周囲は倒壊したビルで立ち塞がれていた。 「賢しいわ!」 倒壊したビルを飛び越えようとした刹那、脚を掴まれて信長は一瞬立ち止まる。 振り返り見れば、首のない神原駿河のもはや悪魔の抜けて綺麗になった左腕が信長の脚を掴んでいた。 否。掴まれたのでない。既に掴まれていたのだ。 巨大に膨れた左手が、元の細い小さな神原の左手に戻った為か。 僅かに掴むには足りなかった信長の脚を、神原駿河の左手は今、掴んでいた。 「小娘えええええええええええええええええええええええ!」 次の瞬間、三度の爆音がD-6駅を蹂躙した。 【E-6北部/住宅地/一日目/午後】 【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュR2】 [状態]:疲労(小)、健康 [服装]:血まみれの拘束服 [装備]: [道具]:基本支給品一式 阿良々木暦のマジックテープ式の財布(小銭残り34枚)@化物語 ピザ(残り60枚)@コードギアス 反逆のルルーシュR2 オレンジハロ@機動戦記ガンダム00 [思考] 基本:ルルーシュと共に、この世界から脱出。 不老不死のコードを譲渡することで自身の存在を永遠に終わらせる――? 1:さてスザクは何処に行ったのやら 2:ルルーシュと合流する 3:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない 4:正直、ひたぎとは相性が悪いと思う 5:………それでもまぁ少しは慰めてみようか [備考] ※参戦時期は、TURN 4『逆襲 の 処刑台』からTURN 13『過去 から の 刺客』の間。 ※制限によりコードの力が弱まっています。 常人よりは多少頑丈ですが不死ではなく、再生も遅いです。 【アーチャー@Fate/stay night】 [状態]:健康 魔力消費(中) [服装]:赤い外套なし、hollowスタイル [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、不明支給品×1(確認済み)、臙条家の鍵@空の境界、虎竹刀@Fate/stay night 、聖骸布X2@ [思考] 基本:本当の“答え”を見つけ出す。 1:この場において過去の改竄は無駄。 2:単独行動を取り情報を集めながら衛宮士郎を捜し出す。 3:2の過程でルルーシュ、アーニャ、ユーフェミア、を見付けたら3回目の放送なら象の像へ集うよう伝える。 5:臙条家の鍵の合う場所を探す。 6:荒耶、赤毛の男(サーシェス)に対し敵意。 [備考] ※参戦時期は衛宮士郎と同じ第12話『空を裂く』の直後から ※凛の令呪の効果は途切れています ※参加者は平行世界。またはそれに類する異界から集められたと考えています。 ※デイパックの容量に限界が無いことに気付きました。 ※「絶望の城」は殺し合いを促進させるための舞台と考えています。 ※「臙条家の鍵」は何らかの重要施設、武器が隠されている扉を開けるものと考えています。 ※スザク、幸村、暦、セイバー、デュオ、式の六人がチームを組んでいることを知りました。 ※スザク、駿河、レイと情報交換を行いました。「絶望の城」については伏せてあります。 ※聖骸布の上着が幻想殺しによって壊れました。 一応布自体はまだ残っています。 【戦場ヶ原ひたぎ@化物語】 [状態]:疲労(小)ポニーテール、気絶中 [服装]:直江津高校女子制服 [装備]:文房具一式を隠し持っている、ヘアゴム スフィンクス@とある魔術の禁書目録、 アーサー@コードギアス 反逆のルルーシュR2、あずにゃん2号@けいおん! [道具]:支給品一式 X2 不明支給品(1~3、確認済) 、バールのようなもの@現地調達 [思考] 基本:阿良々木暦と合流。二人で無事に生還する。主催者の甘言は信用しない。 0:神原… 1:上条当麻に協力。 2:ギャンブル船にはとりあえず行かない。未確認の近くにある施設から回ることにする。 3:正直、C.C.とは相性が悪いと思う [備考] ※登場時期はアニメ12話の後。 ※安藤から帝愛の情報を聞き、完全に主催者の事を信用しない事にしました。 ※安藤の死亡によりギャンブル船に参加者が集められているかは怪しいと考えています。 【上条当麻@とある魔術の禁書目録】 [状態]:健康、気絶中 [服装]:学校の制服 [装備]: [思考] 基本:インデックスを助け出す。殺し合いには乗らない。御坂の遺体は必ず連れて帰る。 0:……… 1:戦場ヶ原ひたぎに同行。阿良々木暦を探す。戦場ヶ原ひたぎと3匹の猫の安全を確保する 2:インデックスの所へ行く方法を考える。会場内を散策し、情報収集。 3:壇上の子の『家族』を助けたい 。 4:そういえば……海原って、どっちだ……? [備考] ※参戦時期は、アニメ本編終了後。正体不明編終了後です。 ■ 第六天魔王・織田信長は、爆発して散ってしまった神原駿河の首に、未練があった。 人の身でありながら、ここまで魔王の身体を傷つけた者は、おそらくこの少女が最初で最後であろう。 敵ながらもその戦いぶりは、やはり見事であった。 出来れば丁重に葬ってやりたいと言う気持ちは、信長と言えど僅かばかりあった。 だが、それよりも信長の心にあるのは、首輪による主催側からの拘束より解放されたと言う実感であった。 未だ首に首輪はあるが、その機能の殆どを信長は相殺した。 この首輪には魔術的な仕掛けと、技術的な仕掛けが施してある。 その両方を封じなければ、首輪の爆破装置からは免れぬ。 しかし魔王は偶然にもそれを成し遂げた。 魔術的機構。 これは上条当麻の一撃により沈黙した。 あれを首輪で受けた事は、今思えば僥倖と言う他ない。 次に機械的な機構。 これについては全くの偶然の産物。 信長の鎧は本来、金に輝いているはずである。 しかし現在は瘴気によって黒く染まっている。 なぜか。 瘴気が光の全てを吸収し、閉じ込めてしまっているからである。 そして瘴気は、どうやら光だけではなく、ある種の信号も吸収する。 すなわち首輪に対する爆破信号。 いずれもただの偶然、幸運と片付けることが出来るだろう。 だが、それらが積み重なって魔王は今なお健在。 何らかの意志が彼に生きよと告げているようであった。 最早、拘束具は拘束具にあらず。 第六天魔王は無人となったD-6駅を悠然と歩く。 首輪による強制力は封じた。 あとは島に残る虫けらどもと、主催者を一掃するのみ。 「…皆殺しだ」 信長の高笑いだけが辺りに響き渡った。 【D-6/駅/一日目/午後】 【織田信長@戦国BASARA】 [状態]:健康、全身に裂傷、腹部に大ダメージ、疲労(大) [服装]:ギルガメッシュの鎧、黒のマント [装備]:物干し竿@Fate/stay night、マシンガン(エアガン)@現実 [道具]:基本支給品一式、予備マガジン91本(合計100本×各30発)、予備の遮光カーテンx1 、マント用こいのぼりx1 電動ノコギリ@現実 トンカチ@現実、その他戦いに使えそうな物x? [思考] 基本:皆殺し。 1:いざ戦場へ ……。 2:目につく人間を殺す。油断も慢心もしない。 3:信長に弓を引いた光秀も殺す。 4:首輪を外す。 5:もっと強い武器を集める。 6:ちゃんとした銃器を探す。 8:高速の移動手段として馬を探す。 9:余程の事が無ければ臣下を作る気は無い。 [備考] ※光秀が本能寺で謀反を起こしたor起こそうとしていることを知っている時期からの参戦。 ※ルルーシュやスザク、C.C.の容姿と能力をマリアンヌから聞きました。どこまで聞いたかは不明です。 ※視聴覚室の遮光カーテンをマント代わりにしました。 ※トランザムバーストの影響を受けていません。 ※思考エレベータの封印が解除されましたが、GN粒子が近場に満ちたためです。粒子が拡散しきれば再び封印されます。 ※瘴気によって首輪への爆破信号を完全に無効化しました。 ※首輪の魔術的機構は《幻想殺し》によって破壊されました。 ■ 神原駿河にとって戦場ヶ原ひたぎとはどのような人物であったのか。 先輩であり、敬愛する人間であり、陸上部のエースであり、 ヴァルハラコンビの片割れであり、エロの師匠であり、 だがやはり、一言で言うならば『最愛の人』であった。 例え命にかけても、魂を悪魔に売ってでも守りたかった最愛の人。 言葉も失い、理性も失い、それでもなお、守りたいと願い続けた。 その無事を命をかけて、見守ることが出来て。 神原駿河は満足だった。 【神原駿河@化物語 死亡】 時系列順で読む Back 命短し恋せよ乙女(前編) Next 境界線上の水平線 投下順で読む Back 命短し恋せよ乙女(前編) Next 境界線上の水平線 194 命短し恋せよ乙女(前編) 戦場ヶ原ひたぎ 魔王信長(前編) 194 命短し恋せよ乙女(前編) 上条当麻 魔王信長(前編) 194 命短し恋せよ乙女(前編) アーチャー 魔王信長(前編) 194 命短し恋せよ乙女(前編) C.C. 魔王信長(前編) 194 命短し恋せよ乙女(前編) 神原駿河 GAME OVER 194 命短し恋せよ乙女(前編) 織田信長 魔王信長(前編)