約 1,869,129 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6676.html
前ページ次ページゼロの社長 「『姫様』、失礼します。起床の時間です。」 アニエスが扉を叩き、ノックがアンリエッタの部屋に響く。 普段ならば、侍女達が支度をしに来るのだが、今日は特別だった。 今この部屋にいるのは魔法でアンリエッタに扮したシエスタであり、それを知っているのは極わずかの人間のみ。 またシエスタ自身からボロが出ないためにと、アンリエッタが一番信用できるアニエスにシエスタの事を任せたのだった。 「・・・『姫様』?失礼します。」 一向に主からの返事が無いため、扉を開けて入ると、そこには目の下に少しクマができている アンリエッタの姿をしたシエスタがいた。 心なしか少し顔色も悪い。 「・・・・・・眠れなかったのか?今日は魔法学院での使い魔品評会に出席する事になっているから、しっかりと寝ておけといったはずだが?」 「そうなんですけれど・・・あいたたた、頭痛が。」 シエスタは昨晩、結局空腹と緊張で一睡もできないままだった。 もっとも、ただの平民だったはずのシエスタがいきなりお姫様の代役。 その心情は推して知るべしと言ったところだろうか。 「とりあえず何か腹に詰め込んで、学園までの馬車の中で眠っておけ。近づいたら起こしてやる。」 「はい。すみません・・・」 ふぅ・・・とため息が出てしまうのは、二人とも同じようだ。 (初日からこれでは先が思いやられるな。姫様たちがアルビオンから行って帰ってくるのに少なくとも5日。 何とか隠し通せれば良いが・・・不安だな。) 一方で、夜通しずっと走りつづけたルイズ達一行を乗せた馬車は、現在昼を過ぎた頃、やっとの事で『港町ラ・ロシェール』にたどり着いた。 「早い・・・ふつう馬で2日の距離なのに。」 「それは馬に乗ってゆっくりしていった時の話だよ。 実際それよりかなりスピードを出せていたし、姫様から頂いたラ・ロシェールまでの地図から最短距離で行けば、 このくらいの時間につけるのはわかっていた。」 ちなみに馬車の速度が通常よりも早くできたのにはわけがあった。 レビテーションの応用で、馬車そのものを浮かせることで荷重を減らすというように利用し 馬への負担を減らしてはどうかというアイデアを海馬が提案し、実行したためである。 なお、馬のコントロールを海馬が担当。コルベールとタバサが交代でレビテーションの制御をしていた。 しかしこの方法。傍目から見たら非常に不気味である。 馬が馬車を引くというよりもむしろ疾走しているくらいの速度を出しているにもかかわらず その背には馬車が繋がっており、しかも馬車が空を浮かんでいる。 実際にラ・ロシェールまでの道でこれを見かけた人々の間で、あの道には夜幽霊馬車が出るという噂が後々に広まったとか広まらないとか。 「便利なものだな、魔法というのは。」 「こんな事に使おうと思うのはあんただけだと思うわ。」 けろっとしている海馬とは対称的にルイズが顔色悪そうに馬車から降りてくる。 まぁ、そんな速度で走ってる馬車は左右に曲がれば当然のように揺れる。 凄く揺れる。 ある程度吹き飛びそうになる分には二人がコントロールしたものの、それでも細かく曲がり道があった場所でも 何もしないで座っていたルイズの脳みそは激しくシェイクされ、完全に乗り物酔いといった状態だった。 なお、キュルケ、アンリエッタ共にその提案に対して即座に『絶対に揺れる』と判断し 眠りのポーションを使用して睡眠をとるといった対策をとった。 海馬、コルベール、タバサが平気な理由は三人曰く「慣れている」とのことだった。 「うぇ…気持ち悪い…」 「だらしないわねぇ、ルイズ。これからが本番だって言うのに。」 「うっさい。そそくさと寝てた奴に言われたくないわよ…うぇ…」 「ほらほら、きついなら吐いてきなさいよ。一回吐いちゃえばすっきりするわよ。」 「日陰のところで休んでいろ。乗り物酔いは暫くすれば直る。」 ルイズの状態が酷いので、アンリエッタが木陰へと連れて行く。 「も、申し訳ありません姫様…」 「気にしないの。それより、今は姫様じゃなくて…なに?」 流石に服装を変えているとは言え、姫様姫様と連呼していれば気づかれてしまう。 そして一応の対策として、アンリエッタには海馬が適当に偽名をつけた。 「すみません…ピケル様…」 徹夜ということもあってか木陰に入ったルイズはそのままアンリエッタの膝の上で寝てしまった。 そのすやすやと寝てしまったルイズの寝顔を見ながら、アンリエッタは微笑んだ。 「もう、ルイズったら。様はいらないのに。」 偽名とは言え、ルイズが自分を姫ではなく名前で読んでくれることが、少し嬉しかった。 場所は変わってトリステイン魔法学院。 正門前には生徒たちが整列しており、一糸乱れず「姫殿下御一行」を待っていた。 一方でその待たれている姫様はといえば… 「姫様!姫様!そろそろ魔法学院に到着します。起きてください。」 夢の真っ只中にいた。 夜睡眠をとっていなくて、不味いとはいえ食事をとり、馬車の適度な揺れに揺られていれば 意識はすぐに夢の国へご招待であった。 「………ハッ!?」 ガバッと、正門直前で目を醒ますシエスタ。 流石に馬車の中で爆睡していたと言う噂が広まるのは不味い。 姫様的に。 「ふぅ…危ない危ない。」 「本当にしっかりしてくれ…」 ふと寝ぼけ眼でシエスタが学院のほうを見ると、仕事仲間のメイド達が駆けより、馬車のほうへと真紅の絨毯を敷いていた。 シエスタが何気なく手を振ると、そのメイドの少女は顔を真っ赤にして頭を下げ、そそくさと帰ってしまった。 (あ、そうか。私今姫様なんだっけ。) 普段とは違う視点で普段いる場所を見ると、新鮮だなあと他人事のように考えていると、馬車の扉が開いた。 「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおな――――――り――――――――!!」 「あまり気負わなくていい。落ち着いて、城で出る前に教えた通りにやればいい。」 アニエスの言葉を無言で頷き返し、シエスタは馬車から降りた。 しゃん!という杖の音がまっすぐに響き、姫の進む道を作り上げている。 (落ち着いて、気取らず慌てず優雅に。そして何より大切な…) シエスタは笑顔を見せ、大きく手を振った。 そして一歩づつ、本塔の玄関で待つオスマンとロングビルのほうへと歩んでいった。 その歩みを後ろに続きながらアニエスは思った。 (急ごしらえの代役の割には様になっている。…が、あの笑顔は薔薇というよりも、向日葵だな。) 「ただいまより、本年度の使い魔お披露目を行います。」 司会進行役の教師の声が響く、学院内の広場に特設されたステージでは、生徒たちが次々と 春に召喚した使い魔を紹介していた。 シエスタと学院長は、特設テントの下に用意された椅子に座りながら、次々と披露されていく芸を眺めていた。 「国のためとはいえ王女の代理とは、また難題じゃのう。」 オスマンはなんでもない風を装いながらシエスタに話し掛けてきた。 シエスタも、視線を変えずに答える。 「はい。でも、学院長やアニエスさん達のおかげで、今のところ支障なくすんでいます。」 オスマンには、詳しい事情をアンリエッタ本人から伝えていた。 流石に王女自身が戦地に乗り込むという危険極まりない作戦に反対はしたものの、 アンリエッタの強い意志と同行する海馬、コルベールを信じた上で協力する事となったのだった。 シエスタにかかっている変身の魔法も、オスマンの力による部分が大きい。 「学院長。これは極秘裏の事ゆえ…」 「大丈夫。このテントの中の会話は外には聞こえないようにしてある。」 そう言いながらステージのほうを見ると、モンモランシーがバイオリンと共に使い魔のカエルと音楽を奏でていた。 「だが、問題は姫殿下たちのほうじゃ。いくら海馬くんたちが付いているとは言え、今のアルビオンは戦場。 何事もなく戻ってきてくれればよいが…。」 そう言われてシエスタは再確認した。 なんでもない風に行ってしまったけれど、海馬たちが向かった先は戦場。 そこに行く危険を犯しているアンリエッタ姫殿下の代理人として過ごさねばならない以上、下手な真似はできない。 シエスタはそう思い直しながら、海馬たちの無事を祈っていた。 「ん…。あれ?」 ルイズが目を覚ますと、既に外は夜だった。 「目が覚めた?ルイズ。」 傍らで本を読んでいたアンリエッタが話し掛けてくる。 「馬車から降りた途端倒れてしまったから、とりあえず近くの宿で部屋を借りたの。 他の者はアルビオン行きの船の手配とかで、今は出払っているけど。」 「申し訳ありません。せっかく早く着いたのに、私のせいで足止めを…」 「気にしないでルイズ。予定よりも早くこれたんだもの。少しくらい―――」 「でもっ!急がなければいけないのに!」 「どちらにしても、アルビオンに出航できるのは明日になるわ。ちゃんと体調を整えて明日に備えましょう。 そろそろ皆戻ってくる頃でしょうし、食事にしましょうか。」 「………はい。」 アンリエッタの笑顔と優しい言葉こそがルイズにとっては辛かった。 アンリエッタの為に、ゼロの自分でも何か役に立てれば… そう思っていたのに幸先から足手纏いになってしまったことが、辛く悔しくて堪らなかった。 程なくして全員が戻ってきたので、場所を酒場に移すことになった。 いくつもの食事が運ばれてきて、皆一様に食事を満喫していた。 アンリエッタは、今まで食べてきたものより遥かに美味しいと喜んでいたし、 タバサはなぜか延々とハシバミ草のサラダばっかり、それもその量がその小さい体のどこに納まるのかというくらいたくさん食べていた。 だが、ルイズはといえば余り食が進んでいなかった。 その様子が気になったのか、珍しく海馬のほうから声をかけてきた。 「まだ体調が戻らないのか?」 「えぇ…ちょっと食欲がなくて。でも、もう大丈夫よ。」 「そう言うことは健康そうにものを食べてから言うんだな。」 「うるさいわね…。あんたに何がわかるのよ…。」 と、その時、ガシャーンと大きな音がして酒場の扉が開かれた。 風体の悪そうな連中が数人…いや、十数人か。 その連中は他の客を押しのけまっすぐにこちらへと向かってきた。 「なっなに!?」 先鋒の二人の剣が、ルイズとアンリエッタのほうへと向かっていく。 ガキン、とそれを武器屋で買った剣で受け止める海馬とコルベール。 海馬は強引に押し返し薙ぎ払うように一人目を切り伏せる。 一方、コルベールもどこで覚えたのか、相手をものともせずに気絶させた。 「ほう、やるじゃないか。しかしこいつら…」 「…おそらく傭兵だろう。彼女が姫殿下だと知ってか知らずかは判らないが、ここで戦闘を続行するのは危険だ。ミス…いや、キュルケ。」 「ルイズとピケルを連れて外へ出ろ!店の中のほうが闘いにくい。適当な窓を蹴破って港へ向かえ! タバサは俺たちの援護を!適当にあしらったら合流する!」 「オッケー!こういう荒事って、ちょっとわくわくするわ。行くわよ、二人とも!」 「……了解」 キュルケを先頭にルイズ、アンリエッタと続いて玄関から向かって一番奥の窓を蹴破り、3人が外へ出たのを確認すると 残った3人は周りの傭兵達へと戦闘を開始した。 海馬はなぜか、初めて剣での戦闘を行うというのに、体の軽さを感じていた。 (ふむ、これが爺の言っていたガンダールヴの力か。便利なものだが…こんなもの俺には必要ないっ!!) 数人を切り倒したところで、トン、と背中がぶつかったタバサから声がかけられた。 「……質問」 「何だ。」 「ピケルって何?」 「デュエルモンスターズの、魔法の国の王女の名だ。」 「……納得」 「さぁ~て、このあたりが良い感じかしら」 キュルケ達が走り抜けた先は古びた連兵場だった。 かつては栄華のあったこの場所も、今ではただの置き物場。 夜の闇も相まってそこは酷く寂れているように感じられた。 「ルイズ、追っ手の数は?」 「9人。走りながら数えたわ。」 「それじゃ、一人頭3人って所かしら?」 などと言っている傍から傭兵たちが襲い掛かる。 が、その凶刃は彼女達に届く事はなく、一様に通り過ぎた白い閃光によって叩き折られていた。 そしてその白い光はアンリエッタの目の前に降り立ち、白銀の猛虎へと姿を変える。 「ちょっ!?ええっ!?」 「ドゥローレン!我に刃を向ける不届きものを成敗しなさい!」 突如として現れた巨大な虎に驚く傭兵達。 いや、驚いていたのはキュルケもだった。 海馬と同じデュエルディスクを、あろうことかトリステインの王女様が持っているなんて。 そんなことを考えていると、相手の傭兵達にも動きがあった。 所詮獣。数で押せば勝てるとふんだのか、4人がドゥローレンを囲み予備の刀で襲い掛かる。 ただの獣相手ならば、熟達した彼らの技量があれば倒す事は可能だっただろう。 現に彼らは過去にいくつかのモンスター退治を行った事があり、ドゥローレンぐらいの大きさの獅子を仕留めた事もあった。 しかし、その一瞬の油断が命取り。 彼らの目の前にいるのはただの虎にあらず。 ドゥローレンは結界を護る氷の一族のなかで、虎王の名を持つ最強の虎。 その鋭い爪は傭兵達の鎧を軽々引き裂き、ドゥローレンの周りには相手を寄せ付けない吹雪が舞っていた。 迫り来る傭兵達を次々になぎ倒していく氷結界の虎王。 あっという間に追っての内6人が倒される。 「さて、これで6人。私とルイズのノルマは終了でいいかしら?」 ふと見れば、残りの3人は慌てて逃げ出していた。 「なによ、私らが出る幕ないじゃないの。ねぇ、ルイズ」 「うん…そうよね…」 敵を撃退したというのに、なにやら浮かない表情のルイズ。 アンリエッタはといえば、ドゥローレンを戻してデュエルディスクをまたメイド服のスカートの中に仕舞っていた。 「さぁ、港まで急ぎましょう。」 「え、えぇ…。ほら、行くわよルイズ。」 そんな様子を眺めながら、ルイズは思っていた。 (姫様があんなに強いのなら…、私は一体何のためにここにいるのよ。) ルイズ達は途中で空中から探索に来ていたタバサと合流し、シルフィードの背にのって港まで飛んでいった。 港には海馬とコルベールも既に来ており、アルビオンへの貨物船の船長と話をしていた。 「今から船を出すように言っておいた。敵に狙われた以上、この町に長くとどまるのは危険だからな。」 「いや、ですから。今から出るんじゃ風石の量が足りないんですってば。 今から出航しても途中でおっこっちまいますよ。」 中年の船長はまだ承諾してないと、慌てるように返す。 「風のメイジがいればその分は補えるでしょ?」 「…(コクン)」 「さっきも言ったがこれは王国の勅命だ。断れば、それは貴様の命で償える程度のものかな?料金は積荷の分まで含めて出してやる。さっさとしろ!」 「は、へい。わ、わかりました。すぐにでも!!!」 海馬の脅迫におびえる船長。 船長は駆け足で船員達を集めて、船の出航準備をはじめた。 「お疲れ様です、『姫様』。」 「ありがとう、ア…アニエス。」 学院から城に戻ったシエスタは、ふぅ、と疲れのため息を吐いた。 緊張と周りにいた学生達を騙しているという罪悪感からの疲れがあったが、戦地に向かったアンリエッタや海馬のことを思えば この程度の事で根を上げるわけにはいかないと、気合を入れなおす。 「でも、あのお料理だけは…」 これから出るであろう夕食の事を思いだし、少し憂鬱な気分になる。 「それなら、食事のときに酒を飲んだらどうか?。 少し位酔いが回れば、多少物の味などわからないでしょう。」 「酔っている上に戻しそうな位不味いものが出てきたら…。」 あの冷めた上に油が浮かんで固まった正直スープといってはスープに失礼な存在を思い出した。 他にも、妙な匂いのするサラダとか、火のとおり方が半端な温野菜。 昨日の食事でちゃんとした味になっていたのは… 「『姫様』に言う言葉ではないがパンでもかじってるしかないんじゃないか?」 「うぅ…でも、ここで付くられている料理よりはお酒は味の心配がいらなそうです。」 思えば、これが悲劇の幕開けであった。 もともとトリステイン城の料理は決して不味いものではなかった。 素材は各地から最良のものが届けられるし、料理人も名の知れたものが集まってはいた。 が、しかし王城の料理というものは、まず完成しても毒見のために数人が試食し、 調理場から食堂までの長い通路や階段通過した上で食卓に並ぶ。 これではどんなにアツアツの料理が作られてもつく頃には冷め切ってしまっている。 名の知れた料理人達も、いつしかどうせ冷めて不味くなったものしか王族の口には入らないと怠惰な姿勢になり、 その料理脳でも錆び付いていった。 もはや彼らは料理人ではなく、ただの作業員と化していた。 今日も作業が終わり、片づけが始まるまで酒瓶を片手に談笑していたのだが なにやら慌しい声と、ドスドスといった力強い足音が近づいてくる事に気づいた。 「この料理を作ったものはだれだぁ!!!!!!!!」 シーン…と、談笑に興じていた者達も全員が全員、調理場の扉のほうに視線が集中した。 そこにはいつも微笑を絶やさず、美しい花のようだった表情を怒りの色に変えて今にも襲い掛からんとするアンリエッタ王女の姿があった。 しかもその手には、先ほどまで食卓に並んでいた幾つかの料理が載った皿が乗っていた。 「ひ、姫殿下。一体なにが…」 料理長が慌ててアンリエッタ王女の前へと駆け寄る。 いつもと変わらないような料理を出したはずだったのだが、まさか怒鳴り込まれるとは思ってもいなかった。 それは回りの料理人達も同じようで、わけがわからないという表情だった。 「なにが…ですって?えぇ、答えてあげましょう。 あなた達に料理をする資格はなぁい!これなら…いえ、魔法学院の食堂のまかないと比べるのも失礼だわ!」 慌てて追いついたアニエスが、周りでおろおろする侍女達から話を聞くと、 どうやら昨日と同じく食欲がなさそうだった王女が、パンをかじりながらワインを一口飲んだ途端豹変。 いきなりいくつかの皿をつかんで飛び出していったとのこと。 途中で調理室までの道を聞かれたメイドも、あんな恐ろしい表情の姫様は見たことが無いと涙を流していた。 「ひっ、姫様。落ち着いてください。ちゃんと話をしなければ料理人達もわかりませんよ。」 「なら言ってあげるわ。毎食毎食こんなものを出されて、もう我慢の限界! これが料理!?ふざけるにも程があるわ!せっかく育てられた材料をこんなゴミに変えられて、 お百姓さんたちがこれを見たら何度涙を流す事か!!」 急に今度は泣き出す始末。 アニエスは、この元凶が酒だと直感で判断した。 (しまった…彼女に酒を飲ませるんじゃなかった。まさかこんな結果になろうとは…) しかし、そのアンリエッタの発言に少しはプライドがあったのか今度は料理長のほうが怒りを顔に表してきた。 「わ、我々が作ったものをゴミとおっしゃりますか!? ならばこちらも言わせて頂きたい。せっかく作った料理を、毒見や長い廊下を使うことで、ゴミに変えているのは誰だと!」 「料理長!姫様に対してその口の利き方は…」 「いえ!確かに平民の身分ではありますがこのヨシーオ・マルイ。亡き先王直々にこの調理場を任された―――」 「プッ…くくく…あっはっはっはっは」 今度は笑い出した。もう酔っ払いは手がつけられない。 とにかく放って置けば大変な事になると判断したアニエスは強制的にでも自室に連れ帰る判断をした。 「りょ、料理長。姫様は酔っておられる。今日はこの辺で…げっ!?」 ふとシエスタのほうを見ると、その目は据わっており笑い声とは対称的なまでに冷えていた。 「こんなものを作っておいて料理長?先王から任された? 」 そう言うと料理人たちを押しのけて、シエスタは食品庫からいくつかの材料を取り出してきた。 そしておもむろに手袋を投げ捨てるとそれらの材料を使って料理をはじめた。 「なっ!なにぃー!!姫様の包丁が…早すぎて見えない!?」 「みっ、見せ掛けだけだ。あんなスピードで扱えば雑になる。」 ざわざわと料理人たちも周りの侍女たちも誰もがシエスタの料理姿に見とれ始めた。 あっという間に前菜が完成し、次の料理に取り掛かる。 「こっ…これは…」 「なんと…」 あまりの味の違いに、愕然となる料理長や他の料理人たち。 次々に繰り出される魚料理、肉料理、スープ、デザートまで全てがあの食卓に並ぶものとは比べ物にならない味わい。 フルコースが出揃う頃には、この料理場には久しく無かった美味の匂いが立ち込めていた。 料理長は脱帽し、がっくりと膝を落とした。 「姫殿下…。あなたの料理の腕前はわかりました。しかし…」 「理解するところが違っています。…料理長、もう一度、それを食べてみてください。」 シエスタが差し出したのは、最初のほうに出した魚の料理と同じもの。 いくつかの調味料に魚を漬け込み焼くというシンプルな手法の料理だが、それは素材の味を生かした料理だった。 しかし、最初の内に作ったそれは既に冷めていた。 「…………美味い…。」 「確かに、毒見や長い廊下は、作り立てを食べる料理には厳しい相手かもしれない。 しかし、ならば調理法でそれを克服する事をどうして考えないのか。 これは漬け込む調味料を濃い味にすることで、熱を失い冷めてしまった後でも味を保つ事ができる。」 「………」 「料理とは、ただ食べるだけのものではありません。材料を作る人、それを調理する人、 いくつもの人の手を通って食卓に並ぶものです。 先王も、あなたの料理に感動してここを任せたはず。ならば…」 そう言うとシエスタは、動き回ったせいと酔いのせいか、ふらっと倒れた。 転ばないようにアニエスが抱きかかえると、シエスタはそのまま眠ってしまった。 「料理長…あのだな、姫様は大変酔っておられてだな。今日のことはその…」 「我々は…今まで何を作っていたんだ。」 「へ?」 見れば周りの料理人たちまでもが涙を流し始めていた。 「お酒に酔われていたとは言え、姫様にあのような言葉を言わせてしまうなんて… あえさまつ料理まで…」 「俺たち、間違ってた。間違ってたよ!」 「料理長!!もう一度、ちゃんとした料理を!」 「あぁ、このままじゃ俺たちはただの負け犬だ!!」 (……なんだ、この状況。) アニエスが戸惑っていると、料理長が泣きながらシエスタの作った料理を味わっていた。 「あんた…姫様が起きたら、伝えてくれないか?明日からは今まで以上のものを作って見せるから、 先王に頼まれた食卓を、二度とあんなもので覆ったりしないと誓うと。」 背にシエスタを抱えながら、アニエスは答えた。 「それは、私の口からよりも、お前達の料理でお伝えすればいい。」 そう言って調理場から立ち去っていった。 結局その夜、調理場から明かりが消える事は無かった。 次の日の朝食は、無駄なく飾らず、思い直した彼らの素直な気持ちが表現されていたが、 シエスタは昨夜の記憶がまるでなく、何があったのかと不思議に思っていた。 前ページ次ページゼロの社長
https://w.atwiki.jp/aquarianagetcg/pages/786.html
Character Card [[WIZ-DOM]] [[ミスティック]]/[[ワーカー]] 2/(2)/1 [[シンクロ]]/チャージ1 No.PP014 Rarity - Illustrator 桜沢いづみ Expansion プラチナアーティストパック「桜沢いづみパック」 カード考察 地味に(2)シンクロが強力。純潔の騎士“アニエス・ラ・ブルー”の隣に立つとかなり強い。 横取られにくく、補給線としても使えるのでデッキに空きができたら1枚忍ばせておくと良い。 ちなみに名前の長さでもアクエリアンエイジ一二を争う程の強さを誇る。まさに一騎当千といったところか。
https://w.atwiki.jp/ws-tcg/pages/61.html
2008年9月13日発売 ナンバーはW03。ヴァイスシュバルツWサイドのブースターパック第3段となる。 収録カード 全100種+パラレル仕様8種 番号 種類 レアリティ 色 カード名 ZM/W03-001 キャラ RR SP 黄 雪風のタバサ ZM/W03-002 キャラ RR SR 黄 メイド服のルイズ ZM/W03-003 キャラ R 黄 “平民の使い魔”サイト ZM/W03-004 キャラ R 黄 ジュリオ・チェザーレ ZM/W03-005 キャラ R SR RRR 黄 ルイズ&シエスタ ZM/W03-006 キャラ R 黄 サイト&シエスタ ZM/W03-007 キャラ U 黄 シルフィード ZM/W03-008 キャラ U 黄 ヴァリエール公爵夫人 ZM/W03-009 キャラ U 黄 シャルロット・エレーヌ・オルレアン ZM/W03-010 キャラ U 黄 黒ネコのルイズ ZM/W03-011 キャラ U 黄 竜使い タバサ ZM/W03-012 キャラ C 黄 “ゼロの使い魔”サイト ZM/W03-013 キャラ C 黄 ゼロのルイズ ZM/W03-014 キャラ C 黄 無口なタバサ ZM/W03-015 キャラ C 黄 タバサ&イルククゥ ZM/W03-016 キャラ C 黄 ウェールズ・テューダー ZM/W03-017 キャラ C 黄 閃光のワルド ZM/W03-018 イベント R 黄 ディスペル・マジック ZM/W03-019 イベント U 黄 軍事教練 ZM/W03-020 イベント U 黄 竜の羽衣 ZM/W03-021 イベント C 黄 使い魔品評会 ZM/W03-022 イベント C 黄 ヘキサゴン・マジック ZM/W03-023 クライマックス CR 黄 契約 ZM/W03-024 クライマックス CC 黄 タバサの秘密 ZM/W03-025 クライマックス CC 黄 手合わせ ZM/W03-026 キャラ RR RRR 緑 ハーフエルフ ティファニア ZM/W03-027 キャラ RR 緑 カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・ファンティーヌ ZM/W03-028 キャラ R 緑 スカロン ZM/W03-029 キャラ R SR 緑 次女 カトレア ZM/W03-030 キャラ R SR 緑 水着のシエスタ ZM/W03-031 キャラ R RRR 緑 エレオノール&カトレア ZM/W03-032 キャラ U 緑 ティファニア・ウエストウッド ZM/W03-033 キャラ U 緑 “ちい姉さま”カトレア ZM/W03-034 キャラ U 緑 オールド・オスマン ZM/W03-035 キャラ U 緑 ルイズ&カトレア ZM/W03-036 キャラ U 緑 シエスタ ZM/W03-037 キャラ C 緑 ヴェルダンデ ZM/W03-038 キャラ C 緑 ジェシカ ZM/W03-039 キャラ C 緑 ルイズ&ティファニア ZM/W03-040 キャラ C 緑 青銅のギーシュ ZM/W03-041 キャラ C 緑 ミシェル ZM/W03-042 キャラ C 緑 土くれのフーケ ZM/W03-043 イベント R 緑 ルイズのアルバイト ZM/W03-044 イベント U 緑 お仕置き ZM/W03-045 イベント U 緑 魅惑の妖精のビスチェ ZM/W03-046 イベント C 緑 メドゥーサの眼鏡 ZM/W03-047 イベント C 緑 サイトの意地 ZM/W03-048 クライマックス CR 緑 動物合唱隊 ZM/W03-049 クライマックス CC 緑 二人でお風呂 ZM/W03-050 クライマックス CC 緑 ゴーレム ZM/W03-051 キャラ RR SP 赤 微熱のキュルケ ZM/W03-052 キャラ RR 赤 “ガンダールヴ”サイト ZM/W03-053 キャラ R SR SP 赤 虚無のルイズ ZM/W03-054 キャラ R 赤 サイト&デルフリンガー ZM/W03-055 キャラ R SR 赤 キュルケ&タバサ ZM/W03-056 キャラ R 赤 犬猿の仲 ルイズ&キュルケ ZM/W03-057 キャラ U 赤 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー ZM/W03-058 キャラ U 赤 燠火のケティ ZM/W03-059 キャラ U 赤 伝説の剣 デルフリンガー ZM/W03-060 キャラ U 赤 ルイズ&サイト ZM/W03-061 キャラ U 赤 水着のルイズ ZM/W03-062 キャラ C 赤 平賀才人 ZM/W03-063 キャラ C 赤 乙女モードのサイト ZM/W03-064 キャラ C 赤 セーラー服のルイズ ZM/W03-065 キャラ C 赤 ウェディングドレスのルイズ ZM/W03-066 キャラ C 赤 炎蛇のコルベール ZM/W03-067 キャラ C 赤 恋多き女 キュルケ ZM/W03-068 イベント R 赤 虚無の力 ZM/W03-069 イベント U 赤 再契約の証 ZM/W03-070 イベント U 赤 人質救出作戦 ZM/W03-071 イベント C 赤 ワルドの裏切り ZM/W03-072 イベント C 赤 ダングルテールの虐殺 ZM/W03-073 クライマックス CR 赤 伝説の使い魔 ZM/W03-074 クライマックス CC 赤 ご褒美 ZM/W03-075 クライマックス CC 赤 微熱の誘惑 ZM/W03-076 キャラ RR 青 長女エレオノール ZM/W03-077 キャラ RR RRR 青 ルイズ&アンリエッタ ZM/W03-078 キャラ R 青 ルイズ&エレオノール ZM/W03-079 キャラ R SP 青 トリステインの王女 アンリエッタ ZM/W03-080 キャラ R SR 青 特別講師 エレオノール ZM/W03-081 キャラ R SR 青 バニーガールのシエスタ ZM/W03-082 キャラ U 青 銃士隊隊長アニエス ZM/W03-083 キャラ U 青 セーラー服のシエスタ ZM/W03-084 キャラ U 青 シェフィールド ZM/W03-085 キャラ U 青 アンリエッタ&ウェールズ ZM/W03-086 キャラ U 青 アンリエッタ・ド・トリステイン ZM/W03-087 キャラ C 青 香水のモンモランシー ZM/W03-088 キャラ C 青 幼なじみアンリエッタ姫 ZM/W03-089 キャラ C 青 アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン ZM/W03-090 キャラ C 青 オリヴァー・クロムウェル ZM/W03-091 キャラ C 青 エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール ZM/W03-092 キャラ C 青 犯人を追うアニエス ZM/W03-093 イベント R 青 惚れ薬の力 ZM/W03-094 イベント C 青 水の精霊 ZM/W03-095 イベント C 青 エクレールダムールの花 ZM/W03-096 イベント C 青 王家に架かる虹 ZM/W03-097 イベント C 青 ちびルイズつねられる ZM/W03-098 クライマックス CR 青 刻印を探せ! ZM/W03-099 クライマックス CC 青 風と水の誓い ZM/W03-100 クライマックス CC 青 復讐の刃
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7195.html
前ページ次ページ毒の爪の使い魔 「テメェ、生きてやがったのか…」 「死んだと思ってたかよ? 残念だなァ…このとおり生きてるゼ。まァ、俺自身あん時は死ぬと思ってたがよ…キキキ」 ジャンガとガンツは互いに相手を油断無く見据える。 片やニヤニヤ笑いながら余裕綽々で相手を見据え、片や獲物を狩る獅子の様な鋭い目付きで相手を睨む。 気まずい空気が辺りに漂う。 ルイズとタバサは、それを敏感に感じ取っていた。 何しろ二人は彼等がどういう関係なのかを嫌と言うほど知っている。 どうしてあの亜人の少年が此処に居るのかは解らない。だが、非常に不味い事態なのは解っていた。 「あ、あの二人とも?」 恐る恐るルイズが声を掛けるが、二人は見向きもしない。 「ここは遊び場でないぞ? 揉め事ならば外でやれ」 ド・ポワチエがそう言ったが、やはり二人は視線を逸らさない。 亜人如きに無視された事にド・ポワチエは憤りを覚えた。 「聞こえないのか!? 揉め事ならば外でやれと言っている」 やはり二人は動かない。 ド・ポワチエはいよいよ我慢がいかなくなった。 「貴様等! このわたしを無視するとは、どういうつも――」 BANG! ビュン! 一発の銃声と空気を切り裂く音が同時に響いた。 ド・ポワチエの背後の壁に縦一文字の亀裂と一つの大きな銃痕が生まれた。 突然の事にその場の殆どの者が理解できなかったが、ルイズとタバサは直ぐに理解できた。 ド・ポワチエの言葉を遮る様にジャンガはカッターを放ち、ガンツは金色の十字のマークが刻まれた赤い銃を撃ったのだ。 そのタイミングは事前に打ち合わせでもしたかのように、寸分違わず同時に放たれた。 「な、な…」 言葉を失うド・ポワチエ。 二人は相手から視線を逸らしてすらいない。 ジャンガは大袈裟な位、大きなため息を吐く。 「よォ、ここはウゼェ奴が横から茶々入れてきやがる。場所変えようじゃネェか?」 「ああ、構わねぇぜ? 俺もそう思ったところだ。…つーか、テメェと意見が合うなんざ驚きだぜ」 呆れた様な表情を浮かべながら、ガンツは両手を広げる。 「キキキ、そりゃそうだ」 笑いながらジャンガは言った。 ガンツはジュリオへ顔を向ける。 「急に用事が出来たんでな…、戻るのは少しばかり後にしてもらうぜ」 「構わないよ。けれど、船酔いの方は大丈夫かい?」 「…気にしないようにしてんだ。思い出さすんじゃねぇよ…」 「これは失礼した」 あっさりと謝罪するジュリオにガンツはため息を吐いた。 「オイ、クソガキ? 俺もちょいと用事を済ませてくるゼ」 そう言うジャンガを不安を隠そうともしない表情でルイズとタバサが見つめる。 「ちょ、ちょっと…あんた、あいつとは…」 「一人で行っちゃだめ」 慌てる二人をジャンガは愉快そうに眺め、笑った。 「オイオイ、何マジな顔になってんだよ? ちょっとばかり昔のよしみで話をするだけだゼ」 「で、でも…」 「ウルセェな…、ガキが口挟む事じゃネェんだよ。黙って大人しく待ってろってんだ」 そして、ジャンガとガンツは部屋を後にしたのだった。 暫く船の中を転々とし、漸く落ち着ける場所を見つけた。 そこは船の底部に位置する薄暗い通路だった。 「…この辺でいいか」 「ああ…、ここならそうそう邪魔も入らねェだろう」 ガンツの呟きにジャンガは同意する。 そしてガンツはジャンガに向き直った。 「さてと、色々と聞きたい事は在るんだがよ…」 「そりゃ俺もだ。まさかとは思うが…地獄の果てどころか、こんな異世界にまで俺を追って来た訳じゃネェだろうな?」 「違ぇよ」 「そりゃそうだよな」 ジャンガはそう言って、キキキ、と笑う。 「にしてもよ…何で銃を抜かないんだ?」 「……」 「前だったら有無を言わさず俺にぶっ放してきやがったのによ?」 ジャンガの言葉にガンツは、フッ、と含み笑いをする。 「もう復讐は終わったからさ。テメェを一度見逃した…その時にな」 「ホゥ?」 「確かに俺はお前を殺したかった…、親父を裏切ったお前を何処までも追い詰めて、殺したいと思ってたさ だがよ…お人好しなアイツやオッサンと一緒に居て、情けねぇお前の命乞いを見て、 段々テメェのやってる事が馬鹿らしく思えてきたんだよ…。 流石にクロノアの奴がお前にやられた時は、ぶっ倒すつもりで撃ったがよ…」 「……」 「ま、とにかくだ…、俺はお前の事はもう然程憎くはねぇよ。 いけ好かねぇ奴だとは思ってるが…少なくともガキの様にムキになって追い掛け回すつもりは無ぇ。 一度決着をつけたのに、お前が生きてると解ったらまた追いかける…、それこそただのガキだ」 「……キ、キキキ」 それまで黙ってガンツの話に耳を傾けていたジャンガだったが、唐突に笑い出した。 「キキキ、キキキキキキキ!」 「何が可笑しい?」 以前ならばその笑い声に苛立ち、怒鳴り声の一つでも上げただろう。 だが、今のガンツはいたって冷静だった。 「キキキ、いや…少し前まで、馬鹿の一つ覚えみたいに親父の仇を取るとか言って、 俺を追っかけまわしていたガキが、暫く見ない間に随分と大人になったもんだ、と思っただけだゼ」 嫌みったらしく言うジャンガ。 そんな彼にガンツはため息を吐く。 「テメェは相変わらずみたいだな…」 「キ、そう簡単に変わるもんかよ、このジャンガ様がよ?」 「だろうな。…あのクレバスに落ちた後、テメェはこっちに来たのか?」 「ああ…そうさ。あの俺の後ろに居た、桃髪のクソガキに召喚されたんだよ」 ジャンガはガンツにこれまでの経緯を語った…。途中、色々と適当に誤魔化したが。 話を聞き終わってガンツはジャンガに尋ねた。 「一つ聞きたい事がある」 「何だ?」 「お前はここで何を企んでるんだ?」 「…別に? まァ…強いて言えば、この俺の楽しい”玩具箱”で遊ぶ事が目的だな…」 「フン、なるほどね? お前を慕ってる嬢ちゃん達も、ただの玩具かよ?」 「それ以外に何かあるか?」 「……別に。正直俺に不都合な事が無けりゃ、お前がここで今何をしてようが構わねぇさ」 「俺を放っておいていいのかよ…ガンツ坊や?」 「俺がお前を追っていた理由は親父の仇討ち以外ないからな…。それに俺は正義の味方なんかじゃねぇ。 必要以上に他人の事には口を挟まねぇし、首も突っ込まねぇ主義なんだよ」 それはガンツの本心だった。 世の中を一人で旅し、立ちはだかる困難は己の力だけで乗り切ってきた。 そんな彼は「人は裏切る時は平気で裏切るんだよ」と言い切ったりもした。 嘗ての冒険でも、ムゥンズ遺跡で悪夢の実験のために囚われていた人々も、 ジャンガを追う目的の為に、彼は平気で見捨てた。 別にそれは彼が非情だからというわけではない…、”自分には関係無い”からだ。 自分は自分、他人は他人と割り切り、周囲に流されず己の考えで行動する……それがガンツだった。 もっとも、そんな彼も時には周囲の意見を聞き、協力する事の大切さを冒険の仲間から学んだりもしたのだが…。 「ま、そう言うわけだ。俺はお前が何をしようと構わねぇ。だが…俺の邪魔もするな。 もし、妙なまねをしたら…後ろからでも撃つ」 そう言ってガンツは鋭い目付きでジャンガを睨んだ。 ジャンガはわざとらしく震えて見せた。 「お~お、こえェ、こえェ。んな事ァ解ってんだよ。俺だって漸くウゼェお前から解放されたんだ…。 また追いかけっこをやるのはご免だゼ」 「解ってんならいいさ」 そう言ってガンツはその場を歩き去ろうとする。 その背に向かってジャンガは声を掛けた。 「おい、ちょっと待てや? 俺からも少しばかり聞かせろ」 ガンツはジャンガを振り返る。 「いいぜ。だが、手短にしろよ。あの野郎を待たせるとうるせぇからな…」 「それだゼ…、一匹狼のお前が何であんな優男なガキと一緒に嫌がるんだ。 あんな確実に何かしら企んでる奴と、好き好んでつるんでる訳じゃねェよな…?」 ガンツは大袈裟な位、大きなため息を吐いた。 「確かになお前の言うとおりさ。本当だったらつるんだりしねぇよ。…ちょいと、訳在りでな」 「訳?」 ああ、と呟き、ガンツはこれまでの経緯を語り始めた。 テメェらが起こした事件が終わってから、俺は賞金稼ぎとしての一人旅に戻った。 賞金首を追いながら、あちこちを転々としてな。 で、二、三ヶ月ほどが経った頃か? ある日、いつものようにレッドクランを走らせていたら、突然俺は光に包まれた。 それはほんの一瞬だったさ。だが、その一瞬の間に俺はそれまでとはまったく別の場所に居たんだ。 「別の場所?」 ああ、と言って頷き、ガンツは話を続ける。 俺が光に包まれる直前まで、レッドクランを走らせていたのは人影なんか見えない荒野だった。 だが、光に包まれた後、俺の周りには人が大勢居やがった。どいつも見ない面をしてたが、 そんな事よりも気になった事があった。街だったんだよ…その時、俺が居たのは。 メイジ? 召喚? いや、その時はまだそんな事は知らなかったし、多少混乱していた事もあったから解らなかった。 だが、今思い返してみてもこっちでやってる普通の召喚とは違うみたいだったぜ。 最初は街の雰囲気から天空寺院の近くかと思ったが…肝心のそれが見当たらなかった。 周りの連中は俺を見ながら、ひそひそ何かを話してるしよ…。 そしたらさ、変な連中が現れてよ…俺が何者かとか色々尋ねてきやがった。 その質問を俺は妙に感じたよ。 俺は一応は名の通った賞金稼ぎだしよ、余程の田舎でもない限り知らない奴なんざ居ないはずなんだからよ。 まぁ、人が来たのは好都合だったからよ…俺も此処が何処だか尋ねたさ。 するとそいつら何て言ったと思う? ”下賎な亜人が敬虔たる我々ロマリアの神官に声を掛けるな”だとさ。 ロマリアなんて聞いた事も無かったし、何処かのチンピラの集まりかと思ってな、銃をぶっ放して軽くそいつ等に脅しを掛けた。 するとな、そいつら杖みたいな物を取り出して、何をするかと思えば炎やら氷やら風やらをぶっ放してきやがった。 ま、後はそいつらと街中でやりあう羽目になってよ…暫くはドンパチが続いたぜ。 何とか全員黙らせると、空からデッカイ竜が降りて来やがった。それに乗っていたのが、あの野郎だったのさ。 あいつは俺と連中のドンパチを空の上から見物してたらしくてよ、 俺の腕前が凄いとか何とか世辞を次から次から言って…、俺をデッカイ寺院へと誘った。 あからさまに怪しい勧誘だったが…他に行く当ても無かったしよ、あえて乗ってやった。 で、連れて行かれた先で会わされたのがロマリアの教皇とか言う奴だ。 「教皇だ?」 「俺も詳しくは知らねぇがよ、天空寺院の大巫女のような立場にあるみたいだぜ」 「ホゥ?」 「ま、それで俺はその教皇…ヴィットーリオって奴と話をしてよ、ここが別の場所どころか…全くの別世界だって知ったわけだ。 正直、最初は信じられなかったがよ……通貨の単位も違うし、ブリミル教なんてのも知らねぇ。 終いにはジュリオの奴に竜であっちこっちを少々飛び回ってもらって完全に理解したさ」 そこでガンツは一息ついた。 ジャンガは顔を俯けて暫く考え込んでいたが、ガンツに視線を戻す。 「お前がここへ来たのは召喚じゃない…つったな?」 「ああ、そうみたいだぜ」 「じゃあ…お前は何の所為でここに来た?」 「さあなぁ…、結局奴等でも解らないらしいしよ。ま、今となってはどうでもいい事だけどさ。 ”如何して来たか”よりも”どうやって帰るか”の方が俺には重要だしよ」 「…あんのかよ、その方法?」 「知るかよ…。だいたい、知っていたら俺はとっくに帰ってるぜ」 「だろうな…」 ガンツは再びため息を吐く。 「ま、そんな矢先に奴等が帰る方法を探してくれるとか言って来やがった」 「タイミング良過ぎだな…、下心見え見えだゼ」 「ああ…、奴等は俺に交換条件として”帰る方法が見つかるまで自分達の手伝いをしてくれないか?”って言ってきやがった。 ま、お前の言ったとおり何か企んでるのは間違いなかったがよ…さっき言ったとおり、他に当ても無かったしな」 「で…、協力体制をとって、こうして他所の国の戦争に首を突っ込みに来たと?」 「正直乗り気じゃなかったがよ…”お偉い教皇様”が世を乱すアルビオンと戦うトリステインに協力しなさい、つってな。 ――船に乗るなんて知ってたら嫌でも来なかったがよ」 ”お偉い教皇様”の部分に皮肉な調子を含めながら、そう言ったガンツの顔が青くなる。 …どうやら、船酔いがぶり返してきたらしい、今にも戻しそうなほど辛そうな表情だ。 ジャンガは首を振り、ため息を一つ吐いた。 「ったく…情けネェ。どうしてそんなに船に弱いんだか…。バッツが見たら泣くゼ?」 「…うるせぇ。だいたい、テメェを憎くなくなったとは言ってもよ、許してはいねぇんだからな? 馴れ馴れしく親父の名を語るんじゃねぇ…、うう…」 壁に手を着き、ガンツは苦しそうに項垂れる。 ジャンガは呆れたような表情でそんな彼を見つめている。 「解ったからもう行きやがれ…、こんな所で吐かれたら俺だって迷惑だゼ」 「ああ…言われなくても…そうさせてもらうさ…」 息も絶え絶えになりながら、ガンツは壁に手をつきながら、のろのろと亀の様な歩みで歩き去っていった。 ガンツを見送った後、ジャンガは背中の鞘を足の裏で乱暴に蹴り上げた。 鞘からデルフリンガーが出てくる。 「うわっと? な、なんだよ?」 「よォ、今の話聞いていたかボロ剣?」 「今の話? …悪ィ、寝てたんで聞いてなかった」 その言葉にジャンガの目尻が吊り上る。 「あン? 剣の癖に居眠りだァ? ふざけんじゃねェよ…」 「仕方ないだろ? 眠くなるんだから…」 どおりで静かなわけである。 ジャンガは半ば呆れて大きくため息を吐いた。 「まァいい。一つテメェに聞きたい事がある」 「何だね、相棒?」 「俺と同じように別の世界からハルケギニア<ここ>へ来た奴がいる。 そいつは俺と違って召喚じゃなかったようだが…、何か心当たりみたいなものはあるか?」 「知らん」 「…真面目に答えろ」 ジャンガの目付きが鋭くなり、言葉にドスが利いてくる。 デルフリンガーは慌てた。 「おい、こら待て!? 俺は真面目に答えたつもりだよ! 本気で知らないんだってば。 だいたい、サモン・サーヴァントで別の世界の亜人が連れて来られるなんて事態が、そもそも前代未聞なんだからよ!? サモン・サーヴァント以外の方法での異世界からの召喚なんざ見当がつかねぇよ!」 必死に答えるデルフリンガーの言葉にジャンガは鼻を鳴らす。 「ったく…メンドくせぇ」 一言吐き捨て、ジャンガは踵を返した。 ――トリステイン・ゲルマニア連合軍が港町ロサイスに上陸してから約三週間…。 連合軍の当初の予定ではロサイス付近で決戦を行い、そのままロンディニウムへと進行するはずだった。 だが、敵は反撃をしないばかりか、首都ロンディニウムへと立て篭もり、長期戦の構えを見せたのだ。 敵地での長期戦は望むところではないし、何よりトリステインの国力では長期戦は不可能である。 短期決戦を想定していた為に、兵糧などの補給物資は六週間分しかないのであった。 しかも…問題はそれだけに留まらない。 まず、敵の巧妙な足止め。 連合軍は上陸から二週間ほどが経過した先週、漸く攻勢が開始された。 それにより、シティオブサウスゴータを完全占領し、ロンディニウムへの足掛かりを確保できた。 だが、敵軍は撤退の際にシティオブサウスゴータの食料を全て奪っていったのだ。 その為、連合軍は兵糧の補給ができないばかりか、街の住民に施しをしなければならなかった。 そして、問題はもう一つ…、アルビオン側から休戦の申し込みがあったのだ。 新年の数日前から降臨祭の終了までと言う事で、その期間は二週間ほど。 それだけの期間で何が出来るのか? と疑問に思うが、何が出来るか解らずとも時間など与えたくは無い。 更に付け加えれば、敵はアンリエッタ女王を捕らえているのだ。 連れ去った以上、殺すつもりは無いだろうが…正直どうなるか解らない。 一刻も早い救出が望まれるが、降臨祭の間はどんな戦も休戦するのが慣例だ。 結局、こちら側の兵糧の問題もあり、アルビオン側の申し込みを連合軍は受け、降臨祭の間は休戦する事となった。 青空に数多くの花火が撃ちあがる。ハルケギニア最大のお祭りである、降臨祭の始まりを告げる物だ。 今日から十日間ほど、連日飲めや歌えの大騒ぎが続く。 シティオブサウスゴータの市民はおろか、連合軍の兵士達も一緒に騒いでいた。 そんな街中の状況を冷やかな目で見つめている人物が一人居た。――ルイズだ。 「まったく…どいつもこいつも、恥ずかしくないのかしら…。 シティオブサウスゴータの人は敵を歓迎するし…、連合軍は戦争中だってのにバカ騒ぎして…。 だいたい、敵の所には姫さまが捕まっているのよ? …こんなバカ騒ぎしている暇なんて無いじゃないのよ…」 ブツブツと言いながら、ルイズは道に転がっていた紙コップを蹴り飛ばす。 そんな彼女の横にガンツが並んだ。彼も今は暇をもらっていたのだ。 「そんなにカリカリすること無いだろうが? ま、お前の気持ちは解らないでもないがよ…、そんなに思いつめんな」 ルイズはガンツを振り返らずに口を開く。 「なんでよ? 今は戦争中なのよ…、気を抜く事なんて許されないわ」 「姫さま…って奴の事が気になるのか?」 「そうよ…、アンリエッタ女王陛下…わたしが心を許せる、わたしを必要として、親友と言ってくれる大切な人」 ガンツは腕を組む。 「俺はその女王陛下に面識なんか無いからよ…、正直他人事にしか感じないがな。 なるほど…、それじゃ気が立っていてもしかたねぇな」 「そう言う事よ」 「だがよ…、そんなんじゃ命落とすだけだな。こう言った状況だからこそ、もっと気を落ち着けやがれ」 「…わたしにもバカ騒ぎをしろって言うの?」 ガンツは組んでいた手を解き、両手を広げて見せた。 「いや、勢いはそのままで構わねぇが、少しは状況を良く見据えろって事さ。 知り合いのお子ちゃまがよ、アンタと似たような状況になった時に、知り合いのオッサンがそんな言葉を言っていたぜ…」 ガンツの言葉にルイズはため息を吐いた。 「はぁ~、どうしてそんな風に楽観視が出来るのかしら? あんたが居た所の亜人は皆そうなの?」 「さてな…」 ガンツはそう言って、それっきり黙る。ルイズは再度ため息を吐いた。 そこで、ルイズは辺りを見回し、ジャンガの姿を探す。 しかし見当たらない…、何処へ行ってしまったのだろうか? その時、背後から声が掛けられた。 「ここに居たか、探したぞ」 「あ、アニエス?」 やって来たのはアニエスだった。銃士隊は近衛の隊だが、こう言った総力戦には参加するのが習いだった。 銃士隊が参加する事を知った時、総司令官のド・ポワチエは苦い表情をしていた。 規模こそ違えど、銃士隊の隊長は遠征軍を指揮する将軍と同格かそれ以上の官位なのだ。 何としても元帥になりたいド・ポワチエは、銃士隊の参加を快く思っていなかったのだ。 それは何も手柄を横取りにされる、と思っただけではない。 メイジではない平民に何が出来る、軍議の際に上座に座られては困る、などの軽視もあった。 結局はアンリエッタがいない為、臨時に政治の杖を振っているマリアンヌ太后やマザリーニ枢機卿の推薦もあり、 ド・ポワチエは渋々承諾をしたが、銃士隊に対する軽視は変わらなかった。 事実、出港直前の会議にはアニエスは参加していなかった。いや、できなかった。 ド・ポワチエの指示で補給物資の運搬の補助や監督などをさせられていたからだ。 だが、アニエスはそんな事は特に気にしてはいない。 彼女にとっては軍議に出るよりも、この戦に参加する事が出来ただけでも良かったのだ。 正直、手柄などどうでもいい。ポワチエが欲しがるなら好きなだけくれてやるつもりだった。 彼女の目的はただ一つ――自分の新たな心の拠り所であるアンリエッタ女王陛下の救出だけだった。 アニエスは簡潔にルイズに用件を伝える。 「総司令部からお前に呼び出しが掛かっている」 「わたしに? まだ休戦の最中なのに…」 少し考え、ルイズはアニエスに尋ねる。 「どんな用なの?」 「さて…、わたしには詳しい事は何一つ教えられて無いのでな」 「信用されて無いんだな?」 ガンツの言葉にアニエスは苦笑する。 「煙たがられていると言った方が正しい。…平民風情に何が出来る? それが総司令官の考えなのだ」 「へっ、どんな奴にもそれなりの長所が有るってのによ…、頭が固すぎだぜ。そんなんで司令官が務まるのか?」 「有能でない事は認めるがな…、とりあえず無能ではない事はこのシティオブサウスゴータの占領から解る」 侮蔑の色を隠しもしないでガンツとアニエスはそんな事を言ってのけた。 勿論、周囲に気取られないように小声だが。 そんな二人の会話にルイズは口を挟んだ。 「とにかく、呼び出しが掛かっているのね?」 「ああ、付いて来てくれ」 そう言ってアニエスはルイズを伴って歩き出そうとする。 しかし、ルイズはアニエスを呼び止めた。 「ちょっと待って。…使い魔が居ないのよ」 「あいつが? 一緒ではなかったのか」 「ちょっと目を離している間にいなくなっちゃったのよ。…ご主人様を放っておいて何処で遊び惚けてるのかしら?」 「いいじゃネェかよ…、祭りなんだしさァ。カリカリしすぎなテメェの方がバカなんじゃネェか?」 噂をすれば影…、とはよく言ったものだ。ルイズは大きくため息を吐き、後ろを振り返る。 「ジャンガ! あんた、何処へ行っていたのよ!? ご主人様をほったらかしにする…なんて……」 ルイズの声は徐々にトーンが下がっていった。 そこにはジャンガが立っていた。それは別に問題ではない。 彼の隣にはタバサが立っていた。それも大した問題ではない。 ――問題なのは二人が持っている二つの瓶だ。 「あ、あんた…それって?」 ルイズはジャンガに詰め寄りながら、震える指先でジャンガが腕に抱えている瓶を指差した。 瓶は無色透明、中には一輪の花が咲いている。 その花の色は二つの瓶でそれぞれ異なっており、ジャンガの花はピンク色、タバサの花は青色をしている。 ジャンガは花の入った瓶を見る。 「ああ…、こいつか? そこら辺をブラついていたらよ…タバサ嬢ちゃんが来てな。この花を渡してきたんだよ」 「タバサ…?」 目付きを鋭くし、ルイズはジャンガとタバサを交互に睨む。 気にせずジャンガは話を続ける。 「それでタバサ嬢ちゃん…いきなり「誓いをして欲しい」何て言ってきてよ…。 最初何の事だか解らなかったがな、あまりにしつこく言ってくるんでよ…。 ま、面白そうだったから付き合ってやったんだ」 「…それで?」 「俺は”足手纏いにならない限り、テメェを片腕として認めてやる”って言った。 タバサ嬢ちゃんは”俺に認められてる限り、足手纏いには決してならない”って言いやがった。 そしたらよ…、この花が急に咲き初めてな。キキキ、面白い花だよな~? 聞いてみたらよ、これは誓いの証なんだとさ。で、俺にこっちの色の花を持っていてくれ…ってさ。 正直に言や、花なんかに興味は無かったがよ…。ま、別に持っておくのも悪くはネェよな、キキキ」 ジャンガの話を聞きながら、ルイズは身体を振るわせる。 エクレールダムールの花――二人の人間の絆を象徴し、互いの事が解るというマジックフラワー。 この花を持ち寄って誓いの言葉を言うと花は咲く。 それ故、結婚式に用いられる事も多く、カップルの間では人気の一品である。 ルイズは歯を噛み締める。ギリギリと音が鳴るほどに噛み締める。 自分が居ない間に…この使い魔は何をしているんだ? ご主人様を放っておいて…他人と誓いの言葉を交わす? …別に結婚式でもなんでもないし、誓いと言ってもそれは当人同士の間の物だから、自分が口を挟む道理は無い。 だが……何故だか物凄く悔しい。 ルイズはチラリとタバサを見る。 タバサは相変わらずの無表情だった――が、その頬がほんのりと赤く染まっているのに気が付いた。 「は?」 呆然とするルイズに向かって、タバサは表情を崩さないまま右手を上げ、 「ぶい」と言いながらピースサインをして見せた。 ルイズの歯軋りが一層激しくなる。 こ、こここ、この小娘…、ひ、ひひ人の使い魔に、て、手を出して……何余裕ぶってるのかしら? てか、こいつ使い魔よ? 亜人よ? 忘れ掛けてるかもしれないけど…あなた殺されかけたのよ? そいつと誓いの言葉を交わすなんて…何考えてるのかしら? ち、ちち、誓いの言葉…誓いの…誓いの…ち、ちちち、ちち、誓いの言葉をぉぉぉぉーーー!? そこまで考えてルイズは顔を真っ赤にし、踵を返すとアニエスの方に歩いていく。 「行きましょう、アニエス」 「いいのか、彼を連れて行かなくて?」 「いいのよ! あんな猫! 優柔不断で自由奔放すぎるあんな奴に、この戦争の意味なんか解らないわ! わたし一人で話は聞くわ! さ、案内してアニエス!」 「わ、解った」 ルイズの気迫に多少押されながらもアニエスは彼女を伴い、その場から歩き去っていった。 後に残されたジャンガは爪でポリポリと頬を掻く。 「何がそんなに癪に障ったんだ、あのクソガキ?」 「…少し調子に乗りすぎた」 タバサがポツリと呟いた。 前ページ次ページ毒の爪の使い魔
https://w.atwiki.jp/takujoupachinko/pages/144.html
シンデレラボーイ系 CRシンデレラボーイTX メーカー タイヨーエレック タ イ プ 確率変動デジパチ 継続 回数 15R9カウント 出 玉 数 約1800個 賞 球 数 3 5 10 15 大当り確率 1/383.0 高確率時1/38.3 時 短 全ての大当たり終了後100回 連荘率 66.7% 備 考 突然確変タイプ!! Pワールド 公式Web http //www.taiyoelec.co.jp/products/nenkan/archive/sinderera.html 2chテンプレ ■リーチ予告 ◆シンデレラチャンス 突然訪れる激アツチャンス!ボタンを押して(3回)ボーナス、小役を揃えろ! 『7』か『レラ』が揃えば確変大当り ※TXで成功すれば『突然確変』になる。成功時の停止図柄は通常時『R・7・7』、確変時『2・レラ・4』 ・チェリー、スイカ、ベルが揃う ・右リールから停止 ・左リール縦に『ベル・スイカ・ベル』で停止 ◆シンデレラボーイ予告 テンパイ後、タイトルロゴカットインで信頼度UP! ◆変身予告 乱馬とレラが入れ替わればSPリーチ確定!同時にモードもチェンジ! ◆エキストラ予告 背景変化順 歓楽街 → 倉庫街 → ビル街 → レラ宅 → ブティック街 → 歓楽街へ… ○歓楽街 リーチかも?・・・赤い服の女の子が走る(マヤ) SPリーチ確定・・・緑の服着た娘が小躍り、マッド・ビッグ・ブラザーズが車で横切る ○倉庫街 リーチかも?・・・クルーザーに黒服 SPリーチ確定・・・クルーザーに孫大人、クルーザーに孫大人&黒服 ○ビル街 リーチかも?・・・白い鳥&『シンデレラボーイ』看板 SPリーチ確定・・・銀の鳥&銀の『シンデレラボーイ』看板、金の鳥&金の『シンデレラボーイ』看板 大当り確定・・・虹色の鳥&虹色の『シンデレラボーイ』看板 ○レラ宅 リーチかも?・・・犬 SPリーチ確定・・・着物着たオサーン(レラの乳・白雪寒太郎)、カイジ風の男(前野さん) ○ブティック街 リーチかも?・・・ヒゲの歌うオサーン SPリーチ確定・・・メガネっ娘がチャイナ服に着替える、ティンカーベル ◆場面予告 【乱馬モード】 ○歓楽街(乱馬) ビリヤードをプレイ・・・玉の数字により信頼度が変化。大きい方が熱い。『R』は激アツ!『当』絵柄は大当り確定! ○ビル街(ピノキオ) 『新しい情報は入ってないぜ』・・・リーチかも? 『おまえ!!やばい奴に狙われてるぞ』・・・SPリーチ確定 『今日は特別サービスだ』・・・SPリーチ確定 『おまえの相棒頑張ってるみたいだ』・・・レラ系SPリーチ確定? 『大当りかもな』・・・大当り確定 ○ブティック街(アリス) 『左右図柄を揃えてみて』・・・ガセ多数。成功で大当り? 『○のリーチを見せて』・・・ガセ多数。成功で大当り? 『ドロシーに会わせて』・・・リーチ確定。ドロシーリーチに発展で大当り確定? 『あなた達の特殊な力を見せてちょうだい』・・・SPリーチ確定。カーチェイスor突入リーチのSP発展で大当り? 『アジトに潜入して欲しいの』・・・カーチェイスリーチor突入リーチ確定 ◆場面予告 【レラモード】 ○歓楽街(レラ) スロット・・・子役が揃えばSPリーチ確定。『7』が揃えば大当り確定。ボタンは一回のみ。 ○ビル街(おばさん、おぢさん、ドクターグリム) 事務所のドア開く → 誰も居ない・・・リーチかも? 『リリィちゃんは見付かりまして?』・・・リーチかも? 『あなたにしか出来ない仕事なのです』・・・SPリーチ確定 『ふふふ 久しぶりじゃな』・・・大当り確定 ○ブティック街(アラミス) プレゼントの箱 → フン!・・・ガセ プレゼントの箱→花束『うふっ』・・・リーチ確定 プレゼントの箱→大きな指輪『まあまあね』・・・リーチ確定 プレゼントの箱→首飾り『やるじゃない』・・・SPリーチ確定 【乱馬モード&レラモード共通】 ○倉庫街(ワニ) ワニ登場のみ・・・リーチかも? ワニがクチをパクッ『!』・・・リーチかも? ワニのクチの中に首飾り・・・SPリーチ確定 ○レラ宅(ドロシー) ドロシー・・・右図柄すべりor左右すべり発生、ガセもあり ◆メッセージ予告 ○乱馬モード(セリフ:レラ) 『・・・・』・・・リーチかも?リーチになっても熱くない 『チャンスよ』・・・リーチ確定 『期待していいわ』・・・SPリーチ確定 『マッド・ビッグ・ブラザーズに気をつけ…』・・・カーチェイスリーチ確定 『水の中に…サメがいるから気をつけ…』・・・突入リーチ確定 『私の体でもあるんだから…』・・・SPリーチ確定(乱馬系確定?) 『いつまでこんな生活が…』・・・SPリーチ確定。熱い? 『やったー!大当たりね!!』・・・大当り確定! ○レラモード(セリフ:乱馬) 『・・・・』・・・リーチかも?リーチになっても熱くない 『チャンスだぜ』・・・リーチ確定 『期待しといてくれよ』・・・SPリーチ確定 『悪いけど…マッド・ビッグ・ブラザーズに気をつけ…』・・・カーチェイスリーチ確定 『敵のアジトの入り口が水中にあるらしいぜ。サメがうようよいるから気をつけてくれよ』・・・突入リーチ確定 『いつまでこんな生活が続くんだ…』・・・SPリーチ確定。熱い? 『今日はついてるね~』・・・大当り確定! ◆音声予告 『Reach』の代わりに『Ranma』『Rela』が出現すれば信頼度UP! ◆保留予告 黄色い車・・・通常 紫の車・・・リーチ確定 ゴージャスな車(城付き?)・・・SPリーチ確定・チョイ熱 ◆ステップアップ予告 SU1 乱馬カードがフリフリ・・・ウンコー SU2 レナカードがフリフリ・・・リーチかも? SU3 乱馬カードが回転・・・リーチ確定 SU4 乱馬・レナカードが回転・・・SPリーチ確定・激アツ SU5 乱馬・レナカードが表向きで停止・・・超激アツ ■リーチアクション ◆ノーマルリーチ 信頼度:☆ 全てのリーチの基本。極たまに当る。 図柄停止後、中図柄が元の位置に戻る・・・ドロシーリーチへ 図柄停止後、画面が暗くなり時計塔がクローズアップ・・・乱馬系orレラ系リーチへ ◆パイソンリーチ(乱馬系) 信頼度:★☆ SP★★☆ 乱馬が当り図柄を打ち抜けば大当り(3回チャンス) 失敗してもさらに発展あり!(3枚とも同じ図柄を打ち抜けば発展確定!) 孫大人の後ろの3×3の的に向かって3発弾を発射! 図柄が揃えば大当り。図柄の並びにより、ダブル・トリプルになるパターンもあり。 9マス全部が同じ数字で当る場合もあり。確変確定? ◆カーチェイスリーチ(乱馬系) 信頼度:★★ SP★★★☆ 乱馬がマッド・ビッグ・ブラザーズとカーチェイスを繰り広げる。 対決カットイン時に、画面の左下にドクターグリム出現で大当り確定! 外れても発展あり!乱馬がレラに変身、ボイルとタイマン対決。 復活当り・・・アリス出現「油断大敵ね」 ◆フルボディリーチ(レラ系) 信頼度:★☆ SP★★~★★★ レラがフルボディスーツのファスナーを上げようとするが、おっぱいが大きいせいで中々締まらないという凄いリーチ。 ある意味この機種の見所の一つであり、これを見る為に打つ人も多い。別名『おっぱいリーチ』 Wリーチ確定。ファスナーを上げきると大当り! 外れ後『やだ~』で終了だが、『ふぅ~、行くわよ』のセリフと共にさらに発展あり! 図柄にぶら下がりながら、大当り図柄を掴みにかかる。 左の窓から図柄が出現でトリプルリーチになる事もあり。キャラ出現の場合も。 レラのカットインが入ると信頼度UP! 何も無し < 七つの銃痕 < アラミス < ドロシー < 孫大人 ◆突入リーチ(レラ系) 信頼度:★★ SP★★★☆ レラがサメと対決。3匹目のサメを倒す事が出来れば大当り。 全部のサメが同じ図柄の場合、大当り確定! 外れても、さらに発展!乱馬に変身し、ピーターから逃げきれ! 対決カットイン時に、画面の左下にドクターグリム出現で大当り確定。 復活当り・・・乱馬が手榴弾を投げて壁を破壊 ◆R&Rリーチ 信頼度:★★★★ 『R』図柄がテンパイすれば発展。(左に『R』が停止した時点で確定?) ボタンを押してカードを裏返せば確変大当り。乱馬 → レラの順番 乱馬・レラで外れた後『やっぱり二人じゃなきゃな』で大当り確定! ◆ドロシーリーチ 信頼度:★ 時計塔のシーンから、乱馬系orレラ系リーチを選択する前に発展。 左右の図柄も同時に回転し、チャンス図柄テンパイから確変図柄テンパイに変化する事もある。 最初の図柄と変化無しの場合は大当り確定!確変図柄 → チャンス図柄は大当り確定&昇格確定? ◆全回転リーチ 信頼度:★★★★★ ノーマルリーチ終了後、画面の下からドクターグリムが登場! 『これが人類の夢なんじゃあ~!!』 勿論、大当り確定!確変図柄での停止を祈れ! ■再抽選 ━ ライジングチャンス ━ ◆1stチャンス チャンス図柄が揃った後、ボタンを押してカードが裏返り停止すれば確変昇格! 3回チャンスあり! 最後にクルッと回転する復活パターンもあり ◆2ndチャンス 最終ラウンドで乱馬とレラが銃を発射!カードが裏返れば確変昇格! 大当りラウンド中(5、8、11ラウンド)に『チャンス』が出るほど期待度UP! 『チャンス』0回でも昇格する事はあるが、逆に3回でも昇格しない事もあり。 ※『DX』では2ラウンド目に出現し、カードが裏返れば3ラウンド目が始まり15ラウンドまで継続 ※『HK』では9ラウンド目に出現
https://w.atwiki.jp/imagin-of-aaa/pages/13.html
トップページへ戻る 《マーリン》 《イヴ》 《works 274》 《ミナ・アグリッパ》 《クララ・クロオーネ》 《ソニア・ホノリウス》 《ルツィエ・フォン・フリッシュ》 《イザベル・フランドール》 《クラリス・パラケルスス》 《ステラ・ブラヴァツキ》 《ポーラ・ウァレンティヌス》 《マギナ・マグス》 《オルガ・レフトウィック》 《ジリアン・マキャフリー》 《ジャンヌ=ヨハネスⅧ》 《エリナ・ロアール》 《クリス・クレアモンド》 《ソフィア・フローレンス》 《ディーナ・ウィザースプーン》 《リサ・マクドゥガル》 《アンドレア・ヴェルレーヌ》 《ヴィヴィアン・レイン》 《中浦 智律》 《アレキサンドリア》 《コロナ》 《安西 マナ》 《ヘルマ・トリスメギストス》 《マクスウェル・マグヌス》 《ルミ・フラメル》 《Works317》 《アナスタシア・ビフロンス》 《ナターリア・メリル》 《フレア・シュナイダー》 《アニエス・ラ・ブルー》 《アミー》 《ルネ・ジェヴォーダン》 《クラウ・ソナス》
https://w.atwiki.jp/pachikaisekidata/pages/573.html
ドキッと!ビキニパイ2 ゲームフロー・基本仕様 ビキニパイシリーズの第2弾となる本機は、 ボーナスとARTで出玉を増やすタイプとなっている。 ARTは1Set30Gの押し順ART。 1Gあたりの純増枚数は約1.7枚。 上乗せG数は最大300G。 ドキッと!ビキニパイ2TOPに戻る
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9313.html
前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 「女王陛下、ロマリア巡礼団……ただいま、ただいま帰還いたしました!」 「ミシェル、それに皆さん。よくぞ、よくぞ帰ってきてくれました」 そう、あのサビエラ村での戦い以来、帰路を急ぎに急いできたミシェルたち一行がとうとう母国への帰還を果たしたのだ。 ミシェル以下銃士隊、ギーシュ以下の水精霊騎士隊の誰もが薄汚れた姿とボロボロの身なりのままで、一目見ただけでアンリエッタにも彼女たちの苦労が忍ばれた。 隣に控えているアニエスも感無量といった様子で、表情こそ抑えているものの、後ろに回した手がわずかに震えている。反対側に控えたカリーヌは感情が見えないが、帰ってきた彼女たちを見る目は穏やかだ。 ミシェル、ギーシュらはアンリエッタにロマリアであったことの詳細をすべて報告した。ロマリアがもはや闇の勢力の手の中にあること、そして消息不明となった才人とルイズのことを。 「申し訳ありません姫様。わたくしたちの力が足りないばかりに、姫様の大切なご親友までも」 「いいえ、あなたたちの責任ではありません。ロマリアからの通達があったときに、わたしも覚悟を決めていました。ルイズとサイトさんの身になにかあったことは間違いないのですね。なに、ルイズのことです、きっとどんな困難も乗り越えて帰ってきてくれるでしょう。それよりもミシェル、あなたこそサイトさんを失ってよく戻ってきてくれました」 「わたしも姫様がミス・ヴァリエールを信じていると同じようにサイトを信じています。きっとあいつは帰ってきます。帰ってこないなら、こっちから探しに行きます。そのためにも、わたしが先に折れちゃだめなんです」 強い意志を秘めたミシェルの眼に、アンリエッタやアニエスは、以前のミシェルとは大きく違ったなにかを感じた。 一方で、ルイズの母であるカリーヌの表情はやはり読めない。娘への信頼感か、可愛い子には旅をさせろと思っているのか、それとも若かりしころにくぐってきた冒険の数々を思い出しているのだろうか。ティファニアはそんなカリーヌの姿に、遠い思い出のかなたの母を思い起こしていた。 失ったものは大きい、だが同時に得たものも大きかった。なにより、アンリエッタは欲していた情報を手にすることができたのだ。 「ロマリアが、教皇陛下がそんなことになっていようとは、世の中の人は想像だにしないでしょうね。ですがこれで、聖戦に対するわたしの姿勢は決まりました。なんとしてでもロマリアを止めなくては、ハルケギニアは人間とエルフの共倒れになってしまうでしょう」 「女王陛下、我ら水精霊騎士隊は全力で陛下をおささえします。聖戦に迷っている貴族の中で、我らの家族親類の説得はお任せください」 「ありがとう、ミスタ・グラモン。あなたのお父様が聖戦反対に回ってくださればとても心強いですわ。ですが、トリステイン一国が聖戦反対にまわったところでたかが知れているでしょう。アルビオンのウェールズ様にはわたしからお話しするとして、ゲルマニアかガリアのどちらかでも聖戦反対に回らせることができれば」 トリステインは小国で発言力は弱い。アルビオンも復興中で、トリステインと今では国力に大差はない。大国であるガリアとゲルマニアの両国の発言力は強いけれど、ロマリアはジョゼフを虚無の担い手である英雄王として大々的に宣伝している。ジョゼフがロマリアと手を組んでしまった以上、ガリアの立場を動かすには王座交代でもしないことには不可能だろう。もう一方のゲルマニアは、アルブレヒト三世が俗物なために強いほうにつくだろう。正義感を持たずに勝ち馬に乗ろうとするだけのあの男を説得するのはかなり困難だ。 このままでは、最悪ハルケギニアは聖戦賛成派と反対派の国で戦争になる。いや、教皇にとってみればそれも望むところなのだろう。 アンリエッタはつくづくトリステインの力のなさにむなしさを覚えた。女王などともてはやされたところで、自分の意思の届くところなどはハルケギニアから見たら猫の額のような範囲にすぎない。 「アルビオンはヤプールの策謀で大きな傷を負って、やっと立ち直りかけているところです。あまり無理を言うことはできません。それにしても、次はロマリアのヴィットーリオ聖下が下僕にされるとは、ヤプールの陰謀の根はどこまで深いというのでしょうか」 ヤプールはこれまで、数々の常識を超えた作戦でハルケギニアを狙ってきた。残念ながらこちらはその度に後手後手に回るしかなく、歯がゆい思いをし続けてきた。 しかも、今度はアルビオンと違ってトリステインの力が及ばないロマリアの、教皇が敵である。よく考えたものだ、このままではハルケギニアは自滅の道を一直線となる。 奴は以前、サハラでの戦いで戦力の大半を失ってしばらくおとなしくしていたが、裏では陰謀の根を張り巡らせていたということか。それが、ファーティマが襲われたことからも考えて、ついに表立って動き始めたということなのか。 宇宙は広く、アンリエッタたちがロマリアの異変もヤプールの仕業だと勘違いしてしまったのも仕方がない。だが、真実がどうだとしても問題の深さが緩和されるわけではなかった。 アンリエッタの憂鬱は、そのままここにいる全員の憂鬱であった。こちらは小国トリステインと満身創痍のアルビオンの二国に対して、敵はハルケギニアの精神世界の支配者であるロマリアと大国ガリア。力関係の是非など考えるまでもなく頭が痛くなってくる。どう考えても真っ向から戦って勝てる相手ではない。 だが、どうにかしなくてはハルケギニアは滅びる。なにか、状況をひっくり返す妙案はないものかと考えても、アンリエッタにも、アニエスやもちろんギーシュたちにもなにも浮かびはしなかった。 ところがそのときである。謁見の間の硬く閉ざされた扉が激しく外から叩かれ、女王陛下に緊急の知らせがと兵士が伝えてきた。 「何事ですか、わたくしは今些少の用に関わっている暇はないのです」 「お、恐れながら女王陛下に申し上げます。たった今、アルビオンから緊急の竜騎士が参りました。ウェールズ国王陛下より、アンリエッタ女王陛下へと緊急の書状を持参したのことです」 「ウェールズ様から! わ、わかりました。すぐに通しなさい」 アンリエッタはウェールズから緊急の知らせと聞いて動揺したが、ウェールズから自分へということであれば少なくともウェールズの身になにかが起きたわけではないと気を落ち着かせた。 厳重な身体検査を受けた使者が謁見の間に通され、使者の手から書状がまずはカリーヌに手渡された。もしも怪しげなところがあれば即座に仕掛けごと撃滅するためだ。 「問題はありません。確かにアルビオン王家からのものです、魔法の封印は解除しました。どうぞ」 「ありがとうございます。皆さん、お話の途中ですが、しばし失礼いたします」 玉座に座ったまま、アンリエッタはウェールズからの書状に目を通し始めた。 澄んだ瞳が広げられた書状の上をすべる。その様子を、アニエスやミシェル、ギーシュたちはじっと控えたまま見守り続けた。 しかし、書状を読み進めるアンリエッタの表情がしだいに険しくなり、冷や汗さえ浮かび始めたではないか。 「こ、これは……なんということでしょう」 「じ、女王陛下、ウェールズ国王陛下はいったいなんと言ってきたのですか?」 アンリエッタのただならぬ様子にアニエスが質問した。むろん、ほかの皆の視線もアンリエッタに注がれる。だが、アンリエッタは彼らの疑問に答えることなく怒鳴るように命じた。 「アニエス、すぐに竜籠の準備を! グリフォンでもマンティコアでもかまいません。アルビオンに使者を送る、最短の方法を用意しなさい。それからカリンさま、大至急ここにミス・エレオノールを呼んでくださいませ!」 「ひ、姫様? いったいどうしたと」 「事は一刻を争います。とにかく先に手配をしてください。それにミシェル、疲れているところをすみませんが、あなたにもアルビオンに飛んでもらいます」 有無を言わせないアンリエッタの剣幕に、カリーヌを除く全員が圧倒されていた。 しかし、アンリエッタをここまで慌てさせ、かつミシェルを必要とする事態とはいったいなんなのであろうか? アンリエッタはアニエスが手配のために出て行き、カリーヌが召還文を託した使い魔を飛ばすと、呼吸を落ち着かせて話し始めた。 「皆さんにもこれからお話しします。ですがどうやら、事態は我々が考えているほど単純ではないようです」 緊張したアンリエッタの口から、ウェールズが伝えてきたアルビオンで発生した”ある問題”と、それに関する相談が語られた。 カリーヌを除く全員の顔が驚きを隠せずに歪む。いったいアルビオンでなにが起きたというのであろうか? そして、それがトリステインにどう関係してくるというのであろうか? それはこの前日、東方号がキングザウルス三世に襲われている頃にアルビオンで起きていた。 内乱から立ち直り、復興を進めているアルビオン王国。その首都ロンディニウムのハヴィランド宮殿で、ひとつの異変がウェールズ新国王のもとに持ち込まれていた。 「陛下、陛下! 大変、大変ですぞ!」 「どうした大臣? そんな慌てふためくと、せっかく平和が来てほっとしている民が不安がるぞ、落ち着いて報告したまえ」 「申し訳ありません。ですが陛下、信じられないことです。宝物庫においでください。我が王国の秘宝が、あの宝箱が動き出したのです」 「な、なんだって!」 仰天したウェールズは、休憩時間の紅茶も放り出して駆け出した。 ハヴィランド宮殿の宝物庫、そこには王国が伝統とともに受け継いできた数々の宝が仕舞われていたが、そこの奥深くに収められた一抱えほどもある金属の箱が鈍い光を放っていた。 「こ、これは……確かに動いている。伝説では、この数千年間、なにをしても開く気配すらなかったというのに」 ウェールズの目の前で不思議な光を放つ銀色の箱、それはアルビオン王国に、一説では始祖の時代から伝わっているとされ、守り通すように伝えられている家宝であった。見た目は銀色の金属の箱だが、実際になにでできていて何が入っているのかは誰も知らない。開けようとしても、どんな力も魔法も通じなかった。ウェールズ自身も、子供の頃は遊び道具にしているうちにむきになって開けようといろいろ試みたものの、結局傷ひとつつけることはできなかったのだ。 それが、今このときに開こうとしている。いったい何故? しかし、その疑問に答えが出る前に、箱は静かに開き、その中のものをウェールズの前に現した。 「こ、これは……岩、か?」 箱の中に入っていたのは、一抱えほどの黒々とした岩であった。 唖然とするウェールズ。なんということだ、我が王国が代々守ってきた秘宝の中身がただの岩? これだけもったいつけて開いた宝箱の中身がただの岩だというのか? 落胆の暗さでウェールズの目の前がくらくらと歪む。しかし、落胆するのはまだ早かった。 「へ、陛下、岩が、岩が光り始めました!」 「なに? な、なんと!」 岩が突然まばゆく輝き始めた。 これはいったい? やはり、王国の秘宝はただの岩ではなかったというのか! 光は岩を包んで膨れ上がり、やがて子供ほどのサイズになると唐突に消えた。そして、そこに残っていたのは。 「きゅう~?」 あっけにとられるウェールズたち。なんと彼らの目の前には、赤い体をした見たこともない生き物が、眠たげな顔をしてちょこんと立っていたのだ。 「こ、これは……これが、我が王国の秘宝の正体……?」 見るからに弱そうなとぼけた姿。これが、数千年来守ってきた秘宝? このちっぽけで奇妙な動物に、なんの意味があるというんだ? 混乱するウェールズたちの前で、不思議な生き物は子供のように無邪気にぴょんぴょん飛び跳ねて周りを見渡していた。その様子に、敵意などは感じられない。 というよりも、むしろ愛くるしささえ感じさせる容姿に、その場に立ち会っていた女性兵士のひとりはうっとりと顔を緩めていた。 だが、ウェールズはふと、その生き物が首からひも付きの小箱を提げているのに気づいた。 小箱の中身は、手紙と、ある”贈り物”。差出人の名は、平賀才人。 そして、この手紙と贈り物が、ハルケギニアの運命を劇的に動かすスイッチになることを、まだ誰も知らない。 続く 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
https://w.atwiki.jp/youtube7818/pages/17.html
YouTube水着・ビキニ・下着最新動画 水着動画 showrss プラグインエラー RSSが見つからないか、接続エラーです。 ビキニ動画 showrss プラグインエラー RSSが見つからないか、接続エラーです。 下着動画 showrss プラグインエラー RSSが見つからないか、接続エラーです。
https://w.atwiki.jp/familiar/pages/4217.html
ここは…………どこ……だ? 見知らぬ天井、見覚えの無い室内、窓の外には見慣れない風景。 頭が……痛い? 酷く痛むと言うわけではないが、焦燥すら感じるほどの違和感に居てもたっても居られなくなる。 「大丈夫?」 静かな声に驚いてそちらを見ると、綺麗な女性が…… 「エルフ!」 慌てて部屋の反対端まで距離を取ると、どこか傷ついた表情で俯いたエルフが黙って部屋を出る。 なんだ? ここはどこなんだ? どうして、エルフがここに居るんだ? …………それより……俺は? 「誰……だ?」 言葉も分かる、今まで過ごしたこの国の名前も、一般常識も欠けてはいない。 が……自分の事も、ほんの5分前まで自分が何をしていたのかも思い出せない。 「なんだ? なんなんだよ? ……エルフか? さっきのエルフなのか?」 自分と関わった記憶は無いはずなのに、エルフという言葉に喚起される恐怖が自分の中に確かに存在した。 自分の中に存在するはずの、自分の過去。 失われるはずの無いそれが、どれだけ記憶を探ろうと見つからない。 何を信じたら良いのか分からない。 悪い夢を見ているような感覚、しかし俺は今間違いなく目覚めている。 気が狂ったのか? どことも知れぬ場所で、これから先どうやって生きていく? 思わず叫びだしそうな自分を必死に押さえているその時、 「大丈夫ですか?」 何処かで聞いた事の有る声が俺を救う。 「あ……あなたは……じょ、女王へ……」 陛下、そう綴ろうとした俺の唇が、柔らかい指先で封じられる。 「アン、そう呼んで下さいまし、以前……そう言いましたよ? 使い魔さん……いいえ……サイトさん」 ……俺の……名……なのか? 「記憶は大丈夫ですか?」 優しい瞳がじっと俺を見つめるだけで、無意識のうちに膝が折れその場に跪く。 この人は女王陛下だ、間違いない。 穴だらけの俺の記憶、その中でも消えてなかった一般常識が、 この方の素性を俺に知らせる。 「……大丈夫なのですか?」 恐れ多くて声が出ない。 緊張で喋れない俺の頬に、軽く冷たい感触が触れる。 「じょ、女王陛下っ」 俺の頬に触れるのは、緊張に震える陛下の両手。 逃れようとする俺の頭が優しく抱きしめられ、何も考えられなくなった。 「良いのですよ、もう何も考えなくても良いのです。 帰れなくなってしまったのですもの、昔の事など忘れたい。 そう仰ったのは貴方自身です」 頭の奥が痺れるような、甘い衝動に身を任せたまま、 陛下の言葉を繰り返す。 「帰……る?」 「あぁ……忘れてしまったのですね。少し……長くなりますけれど、 わたくしが教えて差し上げますわ」 それは、とても信じられない話。 俺は異世界から無理矢理連れてこられたのだと、苦難の末に見つけた帰る方法は、 自らの主の手によって破壊され、最早俺はこの世界で暮らすしかなくなった。 悲嘆にくれる俺は、記憶を消すことの出来るメイジに、全ての過去を消し去るように頼んだと言う。 「あの……ど、どうして陛下……が?」 「貴方は、わたくしの英雄ですもの、 覚えていませんか? アルビオンかの地にて、貴方は7万の大軍を退けました。 思い出してください、貴方は彼女の為に…………それなのに……」 アルビオンの退却戦……聞いた事が……有る……あれは……俺が? 「ええ、貴方は英雄なのです。この国において、わたくしですら敬意を払う。 他に代えようも無い貴人です」 いつの間にか跪いた俺と陛下の視線が同じ位置に有った。 陛下が俺を抱きしめてくれる。 ……俺は……英雄なんだ。 空っぽだった俺の中に、ゆっくりと自信が満ちていった。 生きていくことすら困難に思えていたのに、『アン』の助力があるのなら。 ようやく一息吐き、周りを見回す。 ……窓の外の景色を見慣れないのは当然で、ここは…… 「王城?」 「ええ、そうですわ」 優雅な身のこなしで、音もなく立ち上がった『アン』がそっと俺を引き起こす。 恐る恐る立ち上がった俺は、『アン』と微笑を交わした。 「貴方にプレゼントが有るのです」 「プレゼント?」 王族から送られるもの…… 想像もつかなかった。 「とーっても素敵なモノですわ」 『アン』が俺の手を引いて、人気の無い廊下を進む。 夕日に照らされた廊下を、二人きりで歩く。 「貴方を裏切ったモノを、用意しましたわ」 「うら……ぎり?」 「貴方の帰り道を奪った女です」 ……俺の過去を捨てさせた原因。 「貴方のお好きになさってくださいましね」 『アン』が開いた扉の向こうには一つのベットが有って…… ――髪の長い女が、拘束されていた。 「これが『ルイズ』です」 ルイズには聞こえない大きさで囁かれた声に押されるように部屋に滑り込んだ俺の脳裏には、 『貴方のお好きになさってくださいましね』 その言葉だけが響いていた。 豪華なベットの上に目隠しの上からでも自分の好みだと分かる女が、黒い革紐で拘束されていた。 両手両足から一本づつそれぞれベットの四隅に伸びていて、大の字に寝かされたルイズ。 『貴方のお好きになさってくださいましね』 コレ……を……好き……に? 後ろを振り返ると、アンはもう居ない。 しかも扉もしっかりと閉じていた。 つまり、人目を気にする事も無い。 ふらふらとルイズに近寄る。 王城に相応しい、高価な絨毯が俺の足音を完璧に消し去っていた。 目隠しまでされたルイズは、俺がこんな側に居ても気付かない。 「お前が……悪いんだ」 だって、陛下がそう言ったから。 王の言葉に間違い等ある筈も無いのだから。 これからの自分の行動を正当化する言葉に、ベットの上のルイズは暴れだす。 「んっーーーー、んっんんんんっ」 ……往生際の悪い女。 薄い高価そうな寝巻きを…… 「ちっ……」 両手が拘束されていたら脱がせることが出来ない。 何か無いか? 周りを見回す俺の目に、サイドテーブルに乗せられた鋏が写る。 流石陛下、周到な事だ。 「これで……、楽しめそうだな」 「んっ……んんんっ! んんんっ」 ジタバタと暴れるルイズをよそに、薄い胸元から鋏を入れる。 ジャキジャキと響く音に、ルイズは身体を硬直させる。 「暴れたらどこが切れるか分からないな」 聞こえる様にそう呟いてから、冷たい鋏を直接身体に押し付ける。 「ひっ……」 たっぷりと時間かかけて、抵抗する気力を根こそぎ奪う。 楽しい。 記憶は無いと言うのに、どうすれば相手の心を砕けるのかを、 俺は十分に知っているらしい。 乳首を摘むように挟んで動きを殺したまま、空いている手を下着の中に滑り込ませる。 言葉で嬲りながら、温度と感触を楽しむうちに、我慢が…… 「あぁ、そうか……我慢なんかしなくて良いんだっけ」 俺は好きにして良いんだ、何しろ俺は王すら敬意を払う英雄。 ――夜も更けてから学院に戻ると、ルイズさんとサイトがずっと待ってくれていた。 「おかえりなさい」 「おかえり、テファ」 二人のお出迎えがとっても嬉しい。 「ただいま、サイト、ルイズさん」 ルイズさんが目を細めながら、『サイトが先?』って言ってる…… 次は気をつけよう。 「姫さま、何の用事だったんだ? テファ」 「うん、あのねサイト……」 この国の女王は、とても優しい人だと分かって、凄く嬉しかった。 わたしの魔法に、こんな使い方があるなんて、思いもしなかった。 「あのね、聞いてサイト、凄いの、わたしの魔法が自分の身を守る以外ではじめて役に立ったの」 陛下に引き合わされたのは、重犯罪者だっていう男の人だった。 『彼の罪を許すことは出来ませんが、やり直す機会を与えてあげたいのです』 そういって、その人の過去を全て消して欲しいと頼まれた。 悪い事をした人でも、過去のしがらみを切って、遠くで真面目に働かせてあげたいと。 どんな人でも、これからはやり直す機会を与えてあげられると、 『貴方のお陰ですね、ティファニア』 そう言ってくれた。 「この国の人たちはみんな幸せね」 そう言ったわたしの言葉に、サイトもルイズさんも、自分の事のように喜んで…… 「姫様はいい人だよ」 「自慢の幼馴染ですもの」 優しい人ばかりのこの国が、わたしはまた一つ好きになった。 『ルイズ』を十分に味わった俺は、ようやく少し落ち着いて部屋を見回す。 質素な部屋だった。 部屋に使われている素材は高価なのに、調度品が少ないのが妙だ。 『貴方のお好きになさってくださいましね』 そのあとどうすれば良いのか、陛下に聞くのを忘れていた。 まぁ……いいか。 なにしろ俺は英雄らしい、好きにさせても…… 「貴様っ、何をしているっ!」 見慣れない服を着た女が、問答無用で切りかかってくる。 はっ、笑わせてくれる、7万の大軍と互する俺が…… 容易く避けて見せたはずなのに、突き抜けるような衝撃に身動きが取れなくなる。 「誰かっ、誰か集まれっ、陛下の部屋に曲者だ!」 ちょっ、待てっ、俺は……俺はっ…… 「お、俺は英雄だっ、サイトさまだっ、お前らっ、軽々しく俺にっ!!」 「嘘を吐けっ、サイトはもっと若い! この国の恩人を語るとはなんと不貞なっ!」 は? アニエス隊長と呼ばれる女の言葉に、俺の思考は完全にストップする。 次々に集まってくる女達、どうやら彼女達は近衛らしい。 ……俺が……サイトじゃ……な……い? じゃあ、俺は誰なんだ? 不安で世界が壊れそうになる中、最後の希望が部屋に現れた。 ――アンだ。 「何が有ったのですか? アニエス」 「申し訳有りません、陛下。陛下の部屋でこの者がメイドを……」 メ……イド? 部屋をゆっくりと見回したアンが、真っ直ぐに…… ベット……へ? あれ? ちょっと? ちょっと待ってくれ、俺は? 俺の所に来ないのかよ? 「かわいそうに……大丈夫?」 「へ、陛下……わ、わたし……わたし……」 ドレスが汚れるのにも構わず、優しく優しく傷ついた女を慰める陛下。 ……ちょっとまてよ……まってくれよ、なんだよ? なんだよそれは? 「お前はこっちだ」 冷たい声で宣告され、ずるずると部屋から引きずり出される。 「へ、陛下……お洋服が……お洋服が……も、申し訳有りません」 「いいのです、わたくしの服も、わたくしも、貴方達国民の為に有るのですから」 遠くで話し声が聞こえる。 …………それで……俺は、いったい誰だったんだ? 「奴は貴族の政治犯でした」 あの男は、幾つもの条件に適合する者のリストの中から、アニエスが自ら選んだ男。 「独房の中に居たはずなのですが、何者かの手引きで脱獄していたようです」 誰にも気付かれぬよう、証拠の一つも残さぬよう、慎重に連れ出したのはアニエス。 欲望が加速するようにと、記憶を奪う前に一服盛ったのも。 「彼の家の方はどうしましたか?」 「事の次第を説明の上、厳重な注意と……この件の『けじめ』について連絡しておきました」 全ては陛下の指示のまま。 「問題はそれだけでは有りませんよ、アニエス」 「はっ、場所が陛下の部屋である事から、今回の凶行の目標は陛下で有った可能性が高いと思われます」 既に貴族派の一部が、アニエス達に責任を取らせようと暗躍を始めていた。 「警備を……見直さねばなりませんね」 「その通りです陛下……例えば……」 「「信頼できる第三者によって、内部から問題点を指摘してもらう」」 貴族や近衛の息が掛かっていない者。 反対派の意見を封殺できるだけの、『名誉』を持つ者。 ――女王が絶対的に信用できるもの。 つまり…… 「「アルビオンの英雄」」 全ては彼を側に置くための…… 無言で下がるアニエスを眺めながら、アンリエッタは強く自分を抱きしめる。 『早く……早くいらして下さいまし……』 王としての職務に、自らの心が砕き散らされる前の最後の希望。 ――ひとりは、さみしいの、はやく、あいに、きて。 凍える季節ではないというのに、アンリエッタの身体は自然に震えだす。 貴方に会いたい。 はらはらと涙を零しながら、何時までもそこに立ち尽くした王は求めるものの到着を狂おしく待った。 全ての事は計画通りに流れ、哀れな犬が罠に落ちるまで、あとほんの数日。 王は望みのものを一撃で手に入れるための牙を、ただ砥ぎ続ける。 その肉を喰らい尽くす日を夢見て。