約 2,717,207 件
https://w.atwiki.jp/generation-world/pages/15.html
アスピーテ 特徴 搭載 COST SIZE 捕獲 HP EN 攻 防 機 移 宇 空 地 水上 水中 4×2 287100 5×5 6 38700 110 45 19 6 6 B B - - - 武装 名前 威力 EN MP 射程 属性 命中 CRI LOCK 備考 対空機関砲 1500 8 0 1~2 連射 80 20 8 ビーム砲 3500 36 0 1~16 BEAM射撃 60 5 4 中央1ラインがない前方長方形 援護射撃 2000 30 0 1~12 貫通BEAM 80 0 - アビリティ 名前 効果 備考 備考 ギンガナム艦隊の戦艦。武装が少なくビーム砲も貫通BEAMでは無くBEAM射撃。 サイズが大きい上にコストも高い。この艦よりも、まだアルマイヤーなどを生産した方が良いかもしれない。
https://w.atwiki.jp/mariofullmarathon/pages/13.html
トップページ マリンピック2011@wikiにようこそ
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/363.html
57 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/03/07(金) 23 24 55 ID Fybgsp4k ※※※ 心が震える。 そう云う“何か”を留めおきたいと願うのは、至って普通の感情だと思う。 例えば景色を。 例えば世界を。 例えば想いを。 本当に美しいと感じた時。 心に。 写真に。 或は絵画に。 記録し、記憶しておきたいと考えるのは当然の事だと僕は考える。 歴史上の誰かが行幸先の景色を認め、「この風景を切り取って持って帰れ」と、命じたのは有名な話。 歴史も、そこに生きた人人の在りかたを残そうとする行為も、それらの近親なのだろう。 “それ”を志す僕の姉。 彼女は今、広い庭で胴衣を着て、型を取っている。 流れ、止まり。また流れ。 それはさながら舞の様で。 見ていると――それだけで心が震える。 纏う空気も。 凛とした生き方も。 “残したい何か”、“留めおきたい何か”、と云うのは、多分、こういうものなのだろう、と思えた。 「クロ、そんな所に座ってないで、貴方も身体を動かしたらどう?」 縁側にぼんやりと腰掛けている僕に、姉は目を向ける。 「最近怠けているでしょう?身体は常に動かしておかないと駄目よ?」 「しろ姉さんこそあんなに長いこと寝込んでたのに、急に動いたりして平気なの?」 「勿論」 僕の問いに、姉は胸を張る。 「この間までは臥せっていたから、その分の勘を取り戻しておかないと」 云いながら放つ突きは速い。 体重の乗せ方、力の入れ方、総てが理に適っている。 当たったら痛そうで、確かに復調したようには見えるが。 「僕に、しろ姉さんの相手は無理だよ」 「仕合え、とは云ってない。身体を動かしなさい、そう云ってるの」 なんなら、一緒に走りこみでもする? 等と姉は笑いかけ、僕は首を振った。 「運動とは一寸違うけど――外を歩いて来るつもりだよ。それなら良いだろう?」 「クロ、何処かに出掛けるの?」 「うん」 僕は空を見上げる。 ほぼ真上には、自分の部屋。 その隅には。 「この間描いた絵、五代さんとこに持って往こうかなって」 「――」 姉は笑顔。 笑顔のまま、沈黙する。 「・・・しろ姉さん?」 「・・・・」 返事は無い。 もう一度話しかけると、姉は「何?」と傾首した。 「いや、急に黙ったから、どうしたのかって思ってさ」 「何でもない。少し考え事をしていただけ」 云いながら、顔を左右する。 「今日は物置の掃除をする予定なの。だから、すぐに戻ってらっしゃい」 僕は頷く。 もとより長居するつもりはさらさら無い。 「2時間以内に帰って来るのよ?」 「えぇっ」 (いくらなんでも) それでは殆ど往復する時間しかないのだが。 58 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/03/07(金) 23 27 11 ID Fybgsp4k 「何か問題が?」 「いや・・・」 僕は引きつった顔で姉を見る。 彼女は涼やかに笑っていた。 断れるわけは当然無かった。 と、云うわけで、支度を済ませた僕は、絵の包みを片手に玄関に立っている。 立っているのだが―― 「しろ姉さん」 「なぁに、クロ?」 「うん・・・その・・・袖を離してくれると助かる」 「ええ、そうね」 玄関に立つもう一人は、先ほどから僕の服をちょんと摘んで離してくれない。 「・・・・」 「・・・・・」 「あの。袖」 「ええ」 「・・・・・」 「・・・・・・」 漸く離す。 すると。 「クロ、気をつけて往って来るのよ?」 姉は僕を抱きしめて離れるが、指だけはまた袖に掛かった。 (しろ姉さん、無意識でやっているのか?) さっきからこの繰り返しだ。 とは云え、僕も時間を無駄にするつもりは無い。 「じゃあ往って来るね」 「あ・・・」 「ん?」 「絵、重いでしょう?なんだったら、置いていっても良いのよ?」 「いや、それだと出掛ける意味がないから」 「じゃあ、出掛けなければ良いわ。そうしましょう?」 等と云いながら、僕の袖をくいくいと引っ張る。 云ってることや、やってることが支離滅裂だ。どうしたのだろうか? 「そういう訳にもいかないよ。約束は守らなきゃ」 「約束・・・」 それはいつも姉が云っていること。 信義を守れる人間になれと。 「マキャベリズムを実践するなら、約束は場合によっては破棄して良いはずよ」 「うん。そうだね。でもそれが今の状況と何の関係が?」 「・・・・ぅ・・・・」 袖から手が離れた。 僕はもう一度往って来ますと云い、家を出た。 ドアを閉める時に見えた姉の姿は、しょんぼりとして小さかった。 ※※※ 絵里ちゃんの居住区域――雪見台へは、電車を使って往くことになる。 下下のものと、高貴な方方の住む場所には隔たりがある。 隔たりはいくつもあるが、物理的なものの一つとして、単純に距離がある。 だから移動のために駅前に来たのだが―― 「ん~。困るんですよね~。私、貴方がたに興味無いですし」 目の前から、柔らかい声がする。 どこかで見たようなニコ目の美人さんと、軽い感じのする髪を染めた男2人がそこにいた。 どうやら、彼らは必死に女性を口説いているようだが、まるで相手にされていない様子。 「ねね、いいじゃん。俺達と遊びに往こうよ?」 「貴方達、高校生ですよね?帰ってお勉強したほうが良いですよ?」 「え~?お姉さん、年下嫌い?」 「いいえ。寧ろ大好きですよ?」 59 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/03/07(金) 23 29 30 ID Fybgsp4k 「じゃあ、オッケーじゃん。遊び往こうよ」 男の一人が馴れ馴れしく手を掴もうとする。 (あ、まずい) 僕は咄嗟に声を出す。 「おい、アンタ等、そのヘンにしとけ」 「あ?」 3人と――周囲にいた人人が僕を見つめた。 「何だ、オメェ?俺ら今忙しいんだよ」 「アンタ等の忙しさなんか知らないよ。怪我したくなかったら、その辺にしとけ」 「あ?」 僕の忠告を挑発と受け取ったらしい。男の一人の顔つきが変わった。 「誰が誰に怪我させるって?」 「怪我するのはアンタ等。させるのは僕じゃあ無い」 「何訳わかんねえ事云ってんだ?ブッ飛ばされてぇのか?」 彼は僕に近づいて睨め上げる。威嚇のつもりなのだろうが、無防備に過ぎる。僕が不意に目を突いたら どうするつもりなのだろう。 (云っても無駄かな?) そう思った刹那、男の片割れが仲間の肩を掴んだ。 「やめとけ、周り見てるぞ」 「チッ」 睨んでいたほうの男は、舌打ちして唾を吐くと背を向けて歩き去った。 「やれやれ・・・」 僕は肩を竦める。 と―― 「クロくんっ」 柔らかい“何か”が、ぎゅむっと僕に押し付けられる。 「嬉しいです。助けに来てくれたんですね」 「ええ。主に、彼らのほうを」 いくら僕でもナンパしただけで血反吐はいてのた打ち回る男2人を見たくは無い。 「云い遅れましたが、こんにちは。甘粕先輩」 「はい。こんにちは。だけど他人行儀な呼び方は駄目だって、いつも云ってるじゃないですか」 頬を膨らませながら、殊更僕に抱きついてくる。 何と云うか、堂に入った抱きつき方だ。年季のせいだろうか。 「私、とても嬉しいです。クロくんは、お姉ちゃんのピンチには、何時でも駆けつけてくれるんですよ ね?」 「ピンチだったのは、あの2人組みだと思いますが」 「あのまま身体とか触られてたら、私、怖くて泣いていたかも知れません」 「うん。恐怖で泣くのは、彼らのほうでしょうけどね」 「もう、酷いですよ」 云いながら、すりすりと頬を擦り付けてくる。どうやら機嫌は良さそうだ。 「甘粕先輩、他人に身体触られるの、嫌いでしたよね」 「男の人に触られるのが、ですね。だって私はクロくん専用ですから」 先輩は頬を染めて「えへへ」と笑う。 僕は頬を掻いた。 瞬間、身体が斜めに傾いた。組んだ腕を引っ張られた為だ。 「一寸、甘粕先輩?」 「私のこと助けに来てくれた優しい弟くんには、お姉ちゃんが御馳走しちゃいます。往きましょ?」 くいくいと僕を引き摺って往く。武道をやっているからか、はたまた生来のものか、この人は何気に力 が強い。 「待って下さい。僕、これから用事があるんです。申し訳ないですが、お付き合いできません」 しかもそれは時間制限付きなのだ。 「大事な用なんですか?」 「ええ、まあ」 「私よりもですか?」 じぃっと見上げる。素なのか計算しているのか、ニコ目のせいで胸中を測りかねる。 僕は云う。 「甘粕櫻子と云う個人よりは遥かに小事ですが、何かを御馳走になる時間よりは大事かと」 「むぅぅ~」 先輩は口を尖らせ、 60 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/03/07(金) 23 31 44 ID Fybgsp4k 「私より、画家志望の女の子の方が大事なんですね?」 「え?な、何で往き先判るんですか」 「判りますよぅ」 と荷物を指差す。 「この前のデートの時、お話聞かせてもらったじゃないですか。それ、クロくんの描いた絵でしょう? なら、答えは一つです」 「明察には恐れ入りますが、それなら話は早いと思います。そういう訳なので、今日のところはお付き 合い出来ません」 「どうしても駄目ですか?」 「どうしても駄目です」 「大好きな櫻子お姉ちゃんが誘ってるのにですか?」 「すみません」 僕は頭を下げる。先輩は「判りました」と身体を離した。 「そう云う事情なら仕方ないですね。潔く諦めます」 先輩のは笑顔だ。 ニコ目だからではなく、普通の笑顔。 「ホントすいません。埋め合わせはしますので」 「はい。期待しています」 矢張り笑顔。 清清しいほどの笑顔。 (拗ねると思ったんだけどな・・・?) 疑問には思ったが、僕にも時間が無い。もう一度頭を下げて背を向ける。 『声』が聞こえたのは、その瞬間だった。 『さ、櫻子お姉ちゃん、大、好き』 「!!!」 ぎょっとして振り返る。 “無理矢理云わされた”かのような引きつった声。 それは紛う事無く――鳴尾クロのものだった。 「せ、先輩、今の・・・っ」 「あれ?クロくん。往かなくて良いんですか?」 携帯を片手に持った先輩は、満面の笑みで僕を見つめている。 『さ、櫻子お姉ちゃん、大、好き』 もう一度聞こえた。 矢張り空耳ではない。 「それ・・・こないだの・・・・」 「ああ、この声ですか?私の癒しです。聞くと幸せになれるんですよ。落ち込んだ時とか特に」 「そうじゃなくて、何で携帯に・・・」 「何でって、録音したからですよ?」 笑顔のまま首を傾げる。 『あの時』 僕がその科白を云わされた時、この人は携帯を弄っていた。 (あれは、録音のためだったのか――) 頭を抱える。 「ホラ、見てください。写真も撮ったじゃないですか。ちゃんと待ち受けにしたんですよ?」 「うぉ」 画面の中には、相思相愛にも見える男女が映っている。勿論、今ここにいる2人だ。 「アツアツですよね?この幸せを姉同士の誼で鳴尾さんにも分けてあげようかなって思ったんですよ。 写真と音声の同時送信です」 「同時送信です、じゃないですよ!こんなのがしろ姉さんにしれたら、僕はただじゃ済みません」 「大丈夫ですよ。私達姉弟の仲の良さを知って貰うだけなんですから。寧ろ祝福してくれると思います よ?」 そんな事あるわけが無い。 判り切っているくせに。 僕はもう一度「勘弁して下さい」と声を出した。泣き声に近かったかもしれない。 「まあまあ、私のことは良いじゃないですか。それよりホラ、急いでるんですよね?どうぞ気にせずに 往って下さい。お姉ちゃんよりも、他の娘の所へ」 61 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/03/07(金) 23 34 00 ID Fybgsp4k ニコニコ。 にこにこ。 悪魔が笑っている。 「せ、先輩」 「何ですか?」 「よ、宜しかったら、お付き合いさせてください」 ※※※ 「器用であるとか、小才がきくとか、頭の回転が速いとか、そんなのは“優秀”に属する能力であって “天才性”とは無縁だと思うんです」 『Silurian Period』 それが先輩と遣って来た喫茶店の名前。 この間の画材店、『Ikonographie』の傍に在る、全面水槽張りの不思議なお店だ。 その卓で僕の対面に座る甘粕櫻子は、五代絵里に渡す予定の絵を見てそう呟いた。 「どういう事ですか?」 僕は尋ねる。 「言葉通りです」 ティーカップを撫でながら彼女は云った。 「天才であることと、優秀であることは違います。世間では天才と優秀をイコールで考える方が多いよ うです。人より勉強が出来れば“天才だ”、人より運動が出来れば“天才だ”と褒めますが、これは事 実ではないと私は思っています。勿論、優秀な天才も存在しますが、優秀でない天才も存在します。他 方、天才を凌駕する“偉大な凡人”もいるでしょう。・・・まあ、天才は一個の属性であって、凌駕、 勝ち負けなんて基準はおかしいのですが」 「納得出来なくは無いですが・・・。それが何か?」 もう一度問う。 甘粕櫻子の真意が読めない。 先輩は答えず、柔らかい動作で紅茶を口に運んだ。 「例えば――鳴尾しろ」 「姉さん?」 「彼女はまず間違いなく“優秀”に属する人間です。文武両道、書画の道にも通じていますし、性格は 兎も角、能力的には器用です。でも――“あれ”は天才ではありません。人より一寸秀でているだけで す」 「・・・・・」 「事、思考や表現に限れば、天才とは“発想”出来る者のことであると私は考えます。凡人は――例え 才人・才子であったとしても、“連想”までしか出来ません。“無いもの”を見、“無いもの”を表現 し、無から有を創り出す。それは、天才だけが持ち得る能力です」 「成る程。それはそうかもしれませんけど、一体全体どういう話ですか?」 僕が首を傾げると、先輩は“笑顔で笑って”席を立ち、僕の隣に遣って来て、ぎゅうっと抱きしめた。 「成績は良好。但しそれは頭の良さから出なく、生真面目に予習・復習をしているから。運動もそれな り。取り立てて得意なことも無い。完全な凡人。けれど、ある“表現”においては、際立った個性を有 する人がいる。そう云ってるんです」 「は?」 「ふふふ」 甘粕櫻子の機嫌は良い。 感触は柔らかで、身体を鍛えている割には、そのへんの女の子よりも遥かに上質である。 「ふぅ~」 「あの、耳に息吹きかけるの止めて下さい」 「え~。じゃあ、じゃぁ、クロくんがお姉ちゃんに吹きかけてください」 「いや、勘弁して下さいよ」 「勘弁しませんよ~。クロくんのこと、可愛がるのもいぢめるのも大好きですから」 だからもっと、イチャイチャしましょう? 大きく柔らかな双丘に埋められ、ぐりぐりと頭を撫でられる。 気持ち良いが、居心地が悪い。 「甘粕先輩、毎回毎度、何て云うか・・・全力ですね」 僕は諦め混じりに呟いた。 この人は、こういうことには真っ直ぐだ。 「一期一会の精神ですから」 彼女の声はいつにも増して柔らかい。 62 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/03/07(金) 23 36 54 ID Fybgsp4k 甘粕櫻子はその声のまま、僕の頭を撫で続ける。 「出会いがあれば、別れもあります。誰よりも大切な人だって、いずれは失うことになりますからね。 永遠なんて何処にも無い。永遠が無い状態だけが永遠に続くんですよ。だから私は、今を大事にしたい んです」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 目の前にある世界。 それは、この世には無いものだ。 此処ではない何処か。 幻想の――それも、卓抜した幻視の結晶。 それが、四角い窓の向こうに広がっている。 此処には無い。 つまり、私が持ち得ない世界。 思い描けず、想い視る事も出来ない世界。 多くの表現者が目指し、けれど到達し得ない未踏の地。 それが、四角の中に納まっている。 ありもしない世界。 あり得ない法則。 幻だから存在出来る永遠と不滅。 それは、世界との断裂。 私との、埋まらぬ距離。 この絵に。 唯、それだけを思い知らされた。 薄くて、でも無限の景色のあちら側にいる人間は、私の評価を気にしているのだろう、どことなく落ち 着き無い様子でソファに座っている。 「お父さんは凄いです」 「え?」 唐突な私の言葉に、彼――鳴尾くろは首を傾げた。 それはそうだろう、あの人はここにいないし、この絵とも丸で関係ないのだから。 私は「何でもありません」と首を振る。 私の父は、画家になれなかった。 それだけの実力が無かった。 云い換えれば、こうやって、力の差を――否、表現力の有無を見せられ続けてきたという事。 その度に打ちのめされたはずなのだ。 けれど、父は今でも絵が好きでいられる。 それはとても凄いことだと思う。 目の前の絵。 以前見たそれとは、比較にならぬほどの出来栄え。 見るものを圧倒し、吸い込むような広大な世界観。 呆けて、感動して、その先に来たのは、自分の無力。 この人の歳になった時、自分はこの場所まで辿り着けるのだろうか? その場所はあまりにも遠く、霞んで見えない。 果ての無い差を知って、泣きそうになった。 「・・・・・」 不思議そうに私を見ている男の人。 お姉さんによく似て、背が高くて、目つきも鋭いのに。 違和感を感じるくらい、穏やかな喋り方をする人。 そう――穏やか。 それが私の『視る』、あるがままの鳴尾くろ。 安息を司る、暗闇のような人。 人となりだけならば、彼の肉親に何度も聞いていた。 彼の姉に。 鳴尾しろという人物は、諸事に冷徹。私情を挟まない人だ。 故に、評価も適正、極めて信頼の出来る人物評を下す人。 その鳴尾しろが、弟の話になると蕩けたように身を捩らせる。 凛とした薄い微笑しか他人に見せないあの人が、子供のように、或は少女のように爛漫に笑うのだ。 だから私は、鳴尾くろに興味を持った。 この人にこんな顔をさせるのは、どんな人物だろうと。 63 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/03/07(金) 23 39 00 ID Fybgsp4k 初見は、少し怖そうに見えた。 話してみて、穏やかだと気付いた。 そして絵を見て――もう一度、強い興味が湧いたのだ。 だからといって。 「くろさんって、お付き合いしている女の人がいらっしゃるんですか?」 こんな失礼なことを聞くなんて、自分でも思わなかったけれど。 「えぇ?」 彼は目を丸くする。 それは当然だろう。脈絡が無い。 父の事といい、今日の私は突飛にすぎる。 「あ、すみません。何か、急に変なこと云って・・・」 「いや、別に頭まで下げなくても良いよ。・・・でも、何でそんな事気にするの?」 「はい。あの・・・」 私は鼻孔に意識を集中する。 多分、間違いではない。 「くろさんから、女の匂いがします」 「え?」 「しろさんのそれとは全然違う、柔らかい香がしています。これだけしっかりと染み付いているって事 は、余程に密着していたって事ですよね?相当親しくなければ、そんな事しないかなって」 「あ~・・・・」 何か思い当たることがあるのだろう。 くろさんは困ったように頭を掻いた。 「くっついていたと云うか、囚われていたと云うか・・・。まあ、その、恋人ではないよ。そもそも、 僕にはそういうの、いないしね」 「好きな人、いないんですか」 何故かホッとした。 「いや、恋人がいないって事」 それって、つまり。 「好きな人はいるって事ですか?」 「うん。いるよ」 困ったように笑っているけれど、声に澱みは無く、迷いも無い。 「まあ、詮無い話だけどね。しろ姉さんが認めてくれるとも思えないし」 確かに鳴尾しろという人物は、そういうのに厳しそうだ。 (それとも) 或は、厳しさ以前の問題の相手なのだろうか。 それ以上踏み込むことは私には出来ない。 誰を想っているのだろう。 目の前の男の人は、とても穏やかに笑っている。 その姿を見て、私の胸が、幽かに疼いた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 漸く家に帰り着く。 云い渡された2時間は、とうに過ぎている。 遅参の連絡も何度か携帯で入れたけれど、返事は無い。 姉は出掛ける時は携帯を持ち歩く人なので、家に居て、かつ携帯の傍にはいないのだと了解した。 つまり、予告どおり物置の掃除をしているのだろう。 一体、家事というものは得手不得手の他に、好みがある。 例えば姉は料理も裁縫も出来るけれど、特に好むのは清掃だ。 潔癖症――なんて揶揄されることがあるくらい、整頓掃除に余念が無い。 そんな彼女だから、暇があれば家の掃除をしている。 多分、今も。 僕は荷物を自室に置き、汚れても良い服に着替えると、姉の部屋には往かず物置に直行した。 果たして、そこには開かれた扉と、ゴホゴホと咽る声。 「しろ姉さん?」 声をかけると、すぐに返事がある。 「クロ、帰ってきたのね?」 咳き込みながら現れたのは、白い頭巾に割烹着を着た肉親だ。 64 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/03/07(金) 23 41 06 ID Fybgsp4k 姉は所謂「カッコイイ」系の服が似合う人なので、こういう姿は奇妙に映る。いや、愛嬌があって可 愛いとも云えるが。 「ただいま、しろ姉さん。随分咽てるね」 「埃を吸い込んでしまったからね。ここも適度に掃除しないと駄目ね。それより――」 ジロリと姉は僕を見る。 「今一体何時だと思っているの?約束の2時間は過ぎているでしょう?」 柳眉を逆立てて僕に寄る。 誤魔化しても仕方ないので、素直に謝ることにする。 それは、事情を説明することと同義だ。 「甘粕!?」 説明も半ば――否、始めたばかりで、姉は声を荒げる。 あの先輩の名前。 矢張りそれはこの人には鬼門のようだ。 僕の両肩はしっかりと掴まれ、身体をガクガクと揺さぶられている。 「あの女に誑かされて遅れたのね?邪悪な人間とは付き合っちゃいけないっていつも云っているでしょ う?」 (邪悪・・・) 「いや、事情が事情で」 「ナンパなんて放って置けば良いの!あの女をどうこう出来る人間なんて、そうそういないんだから」 「甘粕先輩がどうこうしそうだから、止めたんだけど」 「兎に角!甘粕には近づいちゃ駄目よ?クロだって、あの女の噂は聞いているでしょう?」 「毀誉褒貶半ばだよね」 「良い噂なんて擬態に決まってる」 姉は頬を膨らませる。 甘粕櫻子に纏わる噂は、両極端である。 優しい、親切、天使のよう、温かい人。 そう呼ばれる一方で。 鬼、悪の手先、邪悪の化身、地獄からの使者etc・・・。 まったく異なる評価が下される。 尤も、本人は悪い噂など何処吹く風。 「きいておそろし みていやらしい そうてうれしや あまかすさくらこ」 等とあの柔らかい声で謳っているほどだ。 「僕の身体が2つあれば、早く帰ってこられたんだけど」 「何を莫迦な事を云っているの?」 姉はジロリとこちらを睨む。 身体が2つなんて事は有り得無いのだから、1つの身でどう時間を使うかが重要―― そう教誨されるのかと思ったのだが。 「幾つあっても同じでしょう」 「え?」 「2つあれば2つ。3つあれば3つ。10あれば10。100あれば100。身体の数に関係無く、ク ロは私の傍にいなければいけないの。数の問題ではないでしょう?」 「・・・・」 そうなんだ、知らなかった。 「クロ、取り敢えずそこに座りなさい。甘粕に誑かされた貴方にお説教します」 遅れたことじゃなくてそちらが主なのか。 結局、30分程お説教をされて、漸く物置の掃除に入る。 入り口付近の荷物は姉が既に片付けていたので、作業はその奥からになった。 「この辺は古い本とかが主だね」 随分と埃を被ったハードカバーの本の山。 僕が適当に退かそうとする傍で、姉は1冊1冊中身を確認している。 彼女は『片付けの最中に漫画を読み始める』タイプではない。 だから当然、何事かの目的があって掃除と検索を両立させているのだろうが。 「しろ姉さん、何か探してるの?」 「アルバム」 返答は簡潔に。 「アルバム?それってしろ姉さんの部屋に無かったっけ?」 「幾冊かはね。でも、1冊足りない。だからそれもついでに探しているの。そちらは自分で見つけるつ もりだから、クロは掃除に集中して良いわ」 姉らしい截然とした態度だ。 65 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage 2008/03/07(金) 23 44 06 ID Fybgsp4k 手伝う、と云った所で、 「片付けに集中しなさい」 と怒られるのは目に見えている。だから僕は冊子の開鑿に力を注いだ。 こう云う場合、姉は無駄口を叩きながら作業はしない。僕もそれに倣う。 幾分かそうしていたが、それでも先に口を開いたのは僕のほうだ。 「あ」 と、間の抜けた声を薄暗い倉庫内に響かせた。 「しろ姉さん、アルバムって、あれじゃない?」 書籍の山脈の中に見覚えのある背表紙を発見する。想起すると成る程、あんな感じの写真入れが昔あっ たような気がする。 姉が振り向き、僕はアルバムらしき本に手を伸ばす。 勢いが強かったからか、場所が悪いせいか、狭矮な空間に埃が舞った。 「うわ。ごほっ、ごほっ」 「う、けほ、けほ」 2人とも咽る羽目になった。 「この辺は特に埃が凄いな、しろ姉さん大丈夫?」 「ごほっ、ごほっ」 姉は頷きながらも咽続けている。 少し遠い分、僕よりは埃を吸い込んでないはずなのだが、そうでもないのだろうか。 「ごほっ、げほっ、こほっ」 「しろ姉さん、咽方凄いよ、ほんとに平気?」 「ええ、けほ、大丈夫。それにしてもこんな場所に本を置くなんて。痛んでしまうじゃない」 「多分捨てる予定だったんじゃないかな。母さん、面倒臭いとすぐその辺に放り込むし」 母はややズボラな一般人なので、こういったことをやらかす場合が多い。纏めて放り込み、忘れ果てた のであろう。 「アルバムは捨てるべきものでは無いでしょう?ろくろく確認もせずに仕舞ったのね。後で怒っておか ないと」 不機嫌そうに云いながら、埃化粧をされた本を開いて往く。 「うん。間違いないわ、これね」 やや痛み、やや色あせた写真がそこにある。 小学校時代の数年分を写したものらしかった。 「うわ、懐かしい」 なんとなく見覚えのある過去達に僕は顔を綻ばせる。 そこには小さいしろ姉さんがいて、この頃から美人さんだったと再確認させられる。別の写真には甘粕 先輩。彼女はこの頃から発育が良く、妙な色気がある。 「クロ」 姉はアルバムを閉じる。 「掃除に集中しなさい。見たかったら、後で私の部屋に来れば良い」 探していたと云っても、やはりメインは掃除である。姉はアルバムを除けると、さっさと作業を再開し た。 僕は「ごめん」と返事をし、整頓に取り掛かる。 アルバムの中には―― 手を動かしながら、思い起こす。 (見なければ思い出さないクラスメイト達がいた) 一期一会。 甘粕櫻子は先程僕にそう云った。 その通り、彼らの大部分とは、もう逢うことも無いのだろう。 それでも、深く思い入れがある訳では無いのだから、「そういうものか」で済んでしまう。 けれど、と僕は考える。 僕の親しい人人とも、別れはいずれ遣って来る。 僕はそれに耐えられるのだろうか。 逆に、僕がなくなるとしたら、その人たちは、悲しんでくれるだろうか。 どちらにせよ、“その時”は必ず訪れる。 僕は姉を見る。 姉は咽ながら、黙黙と作業を続けていた。
https://w.atwiki.jp/mugenkaiki/pages/12.html
08 終わりなき古戦場 09 永遠の桃源郷 ステージ概要固有ドロップ 祠の場所 攻略チャート 敵(ノーマル) 敵(ハード) ステージ概要 依頼人 ノーマル ハード 所要時間 ⏳⏳⏳⏳ 難易度 🕯🕯🕯🕯 固有ドロップ SR 上半身 落伍者のシャツ ダーティーガード 侵食耐性20%更に防御+15、SAN値+10 祠の場所 メリーゴーランドと観覧車の間 攻略チャート 忍者屋敷 雑誌で逆さてるてる坊主の作り方を見る キャンプ場跡地 地面から麻紐を拾う レストラン 右テーブルの上からペーパータオル 広場 左チケット売り場から輪ゴムを拾う 観覧車 観覧車に逆さてるてる坊主を括りつけ、隣の管理レバーを操作する 防空壕跡地 右穴からドライバー 火薬庫 地面かれハーフリング スケートリンク 奥の側溝からハーフリング メリーゴーランド ボスバトル 敵(ノーマル) 有効カメラ 望遠 逃避 敵 ボス 遊戯する悲劇の令嬢 遊戯する惨劇の男 命刈り取る手×2 30 金満男 30 陸軍衛生兵 30 命刈り取る手×2 幻覚使用 遊戯する悲劇の令嬢、金満男、陸軍衛生兵 侵食使用 命刈り取る手 敵(ハード) 有効カメラ 逃避 敵
https://w.atwiki.jp/jpops/pages/8381.html
スピッツをお気に入りに追加 スピッツのリンク #bf Amazon.co.jp ウィジェット スピッツの報道 ムロツヨシ『FNS歌謡祭』で“営業”「どこそかの歌合戦、どこそかのJのカウントダウンライブ、話待ってます」:山陽新聞デジタル|さんデジ - 山陽新聞 Crispy Camera Club、ミニ・アルバム『季節風』来年1/26リリース決定。リリース記念ライヴを来年2月東阪で開催 - Skream! 本日12月8日放送「2021 FNS歌謡祭」第2夜のタイムテーブル発表。スピッツ、あいみょん、乃木坂46、[Alexandros]、東京事変、桑田佳祐、矢部浩之、平手友梨奈ら出演アーティストの全歌唱曲も公開 - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE 徳永英明、中島美嘉、向井秀徳、氷川きよしが“福岡が生んだスター”の名曲をカバー! シーナ&ロケッツも降臨(THE FIRST TIMES) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース Spotify、2021年に国や時代を超えて聴かれた音楽を振り返る年間ランキングを発表(Billboard JAPAN) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【ウェイブハント】スピッツを吹く頭半オーバーのチューブに遭遇!! 松下諒大と澤田昇太によるアドレナリン全開セッション - カラーズマガジン スピッツのオリジナルライブを2022年1月29日(土)に放送&配信! ライブは北海道・帯広で収録 - モデルプレス WOWOWで2022年1月29日(土)より「2カ月連続!スピッツ オリジナルライブ&メイキング」特集の放送・配信決定! - PR TIMES 「カムカム-」「鬼滅」…主題歌の題名が星 仙台の空でも見られるの? - 河北新報オンライン スピッツ、今夜『CDTVライブ!ライブ!』で「大好物」を初披露! 『FNS歌謡祭』出演も決定(THE FIRST TIMES) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース スピッツ草野マサムネ、 あの人気女優 の歌声に衝撃!「それまで俺知らなかったんで」 - COCONUTS 本日11月29日放送「CDTVライブ!ライブ!」、スピッツ、Snow Man、EXILE、倉木麻衣、JUJUら出演 - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE スキマスイッチ「メッセージや表現を感じて」と語る新作を2枚同時発売(ananweb) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 佐々木敦&南波一海の「聴くなら聞かねば!」 7回目 後編 松隈ケンタとアイドルソングのメロディを考える(音楽ナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「FNS歌謡祭」で井上芳雄&浦井健治が歌唱!ミュージカル特集の出演者決定(ステージナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 『2021FNS歌謡祭』、スピッツが初出演 木梨憲武はマツコ、ミッツ、中井貴一とコラボ(クランクイン!) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 『FNS歌謡祭』出演第2弾29組発表 スピッツ&松田聖子ら登場、恒例の豪華コラボ企画も発表(オリコン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 小林右京、「顔が良いやつは音楽をやるな」のTV初パフォーマンスが決定(THE FIRST TIMES) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 徳永英明×中島健人&菊池風磨、KinKi Kids×なにわ男子らコラボが続々『FNS歌謡祭』(TV LIFE web) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 作家、画家の大宮エリーさんが、忘れられない音楽とその思い出。(クロワッサンオンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 草野マサムネ、『あの番組のテーマ曲』が苦手だったと告白…「聴くと未だにキュッと緊張する」 - COCONUTS 「中型犬」の犬種であなたが一番好きなのはどれ? 3犬種を紹介!(ねとらぼ) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース スピッツはなぜ愛される?その魅力を「分裂」というキーワードで読み解く書籍発売 - 音楽ナタリー BE FIRST&SEVENTEEN総合1位、YOASOBI「怪物」3億突破、宇多田ヒカル来春アルバム発売へ:今週の邦楽まとめニュース(Billboard JAPAN) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【先ヨミ・デジタル】LiSA「明け星」DLソング現在1位、優里/『短編マクロスF』主題歌が続く(Billboard JAPAN) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース スピッツ、DREAMS COME TRUE、山下達郎……“食”を通した描写が音楽に与える効果を探る - Real Sound 足立佳奈、初めてギターで弾いた曲はスピッツの「チェリー」。「すごく美しいアルペジオが好き」(THE FIRST TIMES) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース スピッツ、『劇場版「きのう何食べた?」』主題歌“大好物”MV公開 - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE スピッツ、劇場版「きのう何食べた?」主題歌のMV公開(動画あり) - 音楽ナタリー スピッツ、猫と鳥の小さな大冒険!? 新曲「大好物」MV公開(MusicVoice) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ポージングが得意なスピッツ 披露する動画に39万人が驚愕 「人、入ってます?」(Hint-Pot) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース スピッツのほぼ全ての歌詞は『性と死』がテーマだった!?ダイノジ大谷が持論展開し話題に - COCONUTS スピッツ主題歌「大好物」×未解禁シーン満載の本編映像!「劇場版『きのう何食べた?』」スペシャル映像公開(THE FIRST TIMES) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 草野マサムネ、カラオケで歌ってもらうと「ちょっと嬉しい」スピッツの楽曲を明かす! - COCONUTS 67年ぶり平均台金の芦川うらら 名前の由来はスピッツ名曲ロビンソンから - ニッカンスポーツ 【天才犬現る】スマホの画像と全く同じポージングをして見せるスピッツに「うわ〜賢い!! 」「こんなことあります?!! 」とツイッターで驚きの声 - マイナビニュース 『SPITZ JAMBOREE TOUR 2021 “NEW MIKKE” THE MOVIE』 スピッツを“見っけ”よう、Streaming+特製イラスト全員プレゼント決定 - http //spice.eplus.jp/ スピッツ アリーナツアーの映像作品を公開|日テレNEWS24 - 日テレNEWS24 ハライチ岩井、スピッツのライブで好きなところを明かす「スピッツファンとして誇れる」 - COCONUTS 国民的人気バンド・スピッツの夢とは…「新宿ロフトのステージに立つのが夢だった」|ロフト創業者が見たライブハウス50年 - 日刊ゲンダイDIGITAL 「関ジャム」2時間SPでミスチル、B z、嵐、星野源、宇多田ヒカル、スピッツなど9組の名曲ベスト10発表 - 音楽ナタリー スピッツ、『劇場版「きのう何食べた?」』主題歌“大好物”11月3日配信リリース決定。新アー写も公開 - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE スピッツ書き下ろし「何食べ」主題歌、映画公開日に配信リリース(音楽ナタリー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【JAPAN最新号】スピッツ、再見っけ! 名曲集『花鳥風月+』全曲解説。そして、ついに全開放される“NEW MIKKE”ツアー劇場&オンライン上映直前コラム - rockinon.com スピッツ、最新アリーナ・ツアーの模様をを劇場公開(CDジャーナル) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ツアー終了から、わずか2週間! スピッツ、最新ツアー映像の劇場上映が本日よりスタート(THE FIRST TIMES) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース スピッツ『花鳥風月+』、アルバムチャートで好調 身体性豊かなボーカルが体現する“ロックのダイナミズム”とは? - リアルサウンド 上白石萌歌 リスナーのオーダーで「勇気の出る曲」にスピッツを選曲(TOKYO FM+) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【ビルボード】桑田佳祐『ごはん味噌汁海苔お漬物卵焼き feat. 梅干し』が総合アルバム首位 スピッツ/ヒゲダンが続く(Billboard JAPAN) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース スピッツ、椎名林檎、BUMP OF CHICKEN……カップリング曲にも名曲揃い 今、改めて聴きたいアーティストの“B面集” - Real Sound 『スピッツ玉手箱ジュークボックス展覧会』がタワレコ上田で開催 - CINRA.NET(シンラドットネット) スピッツ アリーナツアー完走!ツアー模様が劇場公開決定 - デイリースポーツ スピッツ、『SPITZ JAMBOREE TOUR 2021 “NEW MIKKE”』横浜公演を劇場公開 オンライン上映も実施 - http //spice.eplus.jp/ タワレコ上田店でデビュー30年間を振り返る「スピッツ玉手箱ジュークボックス展覧会」 - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE 草野マサムネ、スピッツの歌詞について言及!「意味がよくわかんないとか言われることありますけど…」 - COCONUTS スペシャル・アルバム『花鳥風月+』リリース記念!スピッツ特集イベントを「LOUNGE」で開催 - PR TIMES ラジオDJ・赤坂泰彦が語る、長年活動し続けるTHE ALFEE&スピッツの魅力 - ホミニス デビュー30周年のスピッツが11年ぶりに「NO MUSIC, NO LIFE.」ポスター意見広告シリーズ登場! - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE 名曲「チェリー」のPVを見た6歳男子が“スピッツの事実”に衝撃! 子どもならではのかわいい発見を描いた漫画にキュンとする(1/2 ページ) - - ねとらぼ 本日のYouTubeは【スピッツ/涙がキラリ 】 テツandトモ 公式ブログ - lineblog.me 渡辺美里 “植木等”や“スピッツ”ら男性ボーカルの名曲をカバー(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース スピッツ、11月3日公開の『劇場版「きのう何食べた?」』主題歌として新曲“大好物”を書き下ろし。楽曲を使用した予告映像解禁 - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE 『ハチミツ』で知るスピッツのバンドとしての風格(OKMusic) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース スピッツ『空も飛べるはず』実は 不穏で怖い 歌だった!?ピース又吉が独自視点で徹底解説「恐怖感がそこはかとなくずっと漂ってる」 - COCONUTS 草野マサムネ、話題になった甲本ヒロトの発言に持論「ちょっと作り手からすると恥ずかしいかな」 - COCONUTS 「夜に駆ける/YOASOBI」、「優しいあの子/スピッツ」、「君は天然色/大瀧詠一」など、ヒット曲を爽やかなピアノで奏でるしあわせがいっぱい詰まった『JAZZで聴きたい しあわせソング』リリース! - PR TIMES 女優・西野七瀬の“五感の偏愛”に迫る「スピッツはアルバムを全部聴くほど“沼”にハマりました」最近の音楽事情から、リピートする映画まで(with online) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「どうやって踊るんだろう」草野マサムネ、ダンス動画を検索して『SAMと踊ろうディスコダンス』に行き着く - COCONUTS スピッツデビュー30周年。草野マサムネの歌詞の魅力を3人が綴る - CINRA.NET(シンラドットネット) スピッツ、『SPITZ JAMBOREE TOUR 2021 “NEW MIKKE”』が開幕 初日公演のオフィシャルライブレポート到着 - http //spice.eplus.jp/ 草野マサムネ「少なくともスピッツには絶対無理」関ジャニ∞の楽曲を大絶賛! - COCONUTS スピッツデビュー30周年を記念して「ハチミツ」「フェイクファー」バンドスコアが復刻 - ナタリー スピッツ|スペシャル・アルバム『花鳥風月+』CDとアナログ盤が9月15日発売|『色色衣』『おるたな』のアナログ盤も同日発売 - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE 上白石萌歌の「スピッツ」呼び捨て発言が波紋…丁寧すぎる「さん付け」はむしろ失礼? - 現代ビジネス スピッツ草野マサムネ、観客席を見て驚き!?「かなりプレッシャーを感じながら歌っていました」貴重な企画に「神回」の声 - COCONUTS 祝・メジャーデビュー30周年!スピッツ特集! - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE スピッツの「HOLIDAY」歌詞が完全にストーカーで怖すぎると話題に - ニコニコニュース スピッツ、CD+7インチアナログシングルの豪華2枚組で「紫の夜を越えて」リリース | Daily News - Billboard JAPAN SPITZ 草野マサムネ×あいみょんの音楽対談!Official髭男dismメンバーの14歳の音楽体験!山下達郎、福山雅治からのスペシャルコメントも! - PR TIMES 溢れ出るスピッツ愛…!あいみょん「言葉を操るのがなんか怖くなりました」衝撃受けた名曲を告白 - COCONUTS Chappieの楽曲が配信解禁!スピッツ草野、井上陽水、川本真琴、細野晴臣ら参加のアルバムも - ナタリー 4月9日放送「ミュージックステーション 3時間SP」、スピッツ、SHINee、秦基博、緑黄色社会、折坂悠太、Travis Japan出演決定 - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE デビュー30周年記念!スピッツの特集イベントを新機能『LOUNGE』で開催 - PR TIMES スピッツ草野マサムネの可愛すぎる勘違い、ボーカルが手ぶらだけど…?子供の頃に不思議に思っていたこと - COCONUTS スピッツ「紫の夜を越えて」フルサイズテレビ初披露 『CDTVライブ!』SP第2弾発表 - ORICON NEWS JAPAN最新号 表紙はYOASOBI! [Alexandros]/sumika/スピッツ/RADWIMPS/King Gnu/フォーリミ/SUPER BEAVER/BiSH - rockinon.com スピッツがデビュー30周年迎えた本日「紫の夜を越えて」リリース、4人でのラジオ配信も - ナタリー スピッツゆかりの場所“デニーズ南阿佐谷店”でメンバーへ独占インタビュー!この模様をWOWOWで3/27(土)に放送・配信する。さらに放送に先駆けて、プロモーション映像ではその一部を“チョイ見せ”! - PR TIMES スピッツ、デビュー30周年記念し全作品対象CD購入者応募抽選キャンペーン決定 - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE スピッツ、デビュー30周年記念日へ向けてSNSカウントダウン企画スタート - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE 【スピッツ】アルバム人気No.1を決めよう! あなたが一番好きな1枚はどれ? 【人気投票実施中】 | ねとらぼ調査隊 - ねとらぼ 【スピッツ】あなたが好きなシングル曲はどれ?【人気投票実施中】 | ねとらぼ調査隊 - ねとらぼ スピッツがWOWOW初登場、一夜限りのライブ「猫ちぐらの夕べ」を舞台裏&インタビュー交えて放送 - ナタリー 土岐麻子が歌うスピッツ「楓」配信、カバーアルバムの全曲試聴トレイラーも公開(コメントあり) - ナタリー スピッツ、新曲“紫の夜を越えて”がTBS系「NEWS23」新エンディング・テーマに決定。本日1月4日初オンエア - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE スピッツが一夜限りのワンマンを収めた 映画 『スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ”』を観た - http //spice.eplus.jp/ スピッツ、TBS「NEWS23」の新エンディングテーマを書き下ろし - ナタリー スピッツ、本日12月21日21時より映画『スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ”』オンライン上映スタート。ライヴ・レポートも公開 - TOWER RECORDS ONLINE - TOWER RECORDS ONLINE スピッツ、映画『スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ”』12/21よりオンライン上映開始 - rockinon.com スピッツ - 音楽ナタリー - 音楽ナタリー スピッツとは スピッツの48%は柳の樹皮で出来ています。スピッツの47%は魂の炎で出来ています。スピッツの2%は大人の都合で出来ています。スピッツの1%はやらしさで出来ています。スピッツの1%は雪の結晶で出来ています。スピッツの1%はスライムで出来ています。 スピッツ@ウィキペディア スピッツ Amazon.co.jp ウィジェット 掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ スピッツ このページについて このページはスピッツのインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるスピッツに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/562.html
296 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage New! 2008/11/08(土) 15 26 58 ID wE+e31Ox ※※※ 趣味。 鳴尾しろと云う人間の趣味を、僕はあまり多く知らない。 いみじくも甘粕櫻子が指摘したように姉は優秀な人間であり、オールラウンダーである。 だから、編み物や調理も上手く、それ故それらは趣味であるのか実用であるのか、判らない。 読書もそう。彼女は歴史書や思想書の類を読む事を好むけれど、蓄積された知識は将来への肥やしとし て活用されるべきである、との考えから、そのまま論文に活かされる事が常である。 趣味も実益も不可分。 多分、それが実態だ。 「何故、別ける必要があるの?」 姉は僕の疑問にそう答えた。 定義付けやカテゴライズは必要に応じてされるべきであって、それ以外には用いても仕方がない、或い は単純に不可能である、というのが、彼女の弁だ。 「歴史とは、いかに物事を多角的に捕らえ得るかにかかっている。安易な分類は思考の硬直を招き、視 野を極端に狭める結果になる」 という考えが根幹にある所為かどうかは判らないが、姉は決めつけの類を好まない。就中、状況不明瞭 な質問は、それが遊びの問答であっても嫌いであるようだ。 たとえば、 「貴方にとって、一番○○なのは、何ですか?」 こう云うものを特に厭う傾向にある。 「ガチガチの堅物がそんな事を云っても、冗談にしか聞こえませんよ?」 と、誰かが云っていたが、それはこの際置いておこう。 兎も角、そんな姉の不可分な行動の中で、数少なく趣味と断じられるものの一つが、将棋であった。 一体、鳴尾家の人間は先祖からして将棋を好む。 僕等の父親、は嘗てはプロ棋士になりたかったそうで、成人して後、対戦相手を家族に求めた。僕や姉 が将棋を覚えたのは、つまり、それが理由だ。 不可分――その話の続きじゃないけれど、月月の小遣いが紙幣一枚の父は、真剣で酒代を稼いでいるく らいで、これも趣味と実益の合いの子であると云えるのかもしれない。 姉は真っ直ぐな人柄だ。 だから、それが武技であれ将棋であれ、外連味のない正統派の戦い方を好む。 今僕の目の前にある将棋盤――そこに配置された相手方の囲いは金矢倉。定石そのものである。 対する僕は穴熊一辺倒で、父などには、 「またそれか、性格が出てるなぁ」 と呆れられる事も少なくない。 盤の向こう側には、ドテラを羽織った姉が居る。 機嫌は良さそうだが、顔色はあまり良くない。 まだ、風邪が治っていないのだ。 それが少し心配だが、僕が一局指しているのは、つまり、療養中の姉の暇つぶしの相手としてだ。 彼女は恐るべき早指しである。 即断即決で駒を動かすが、総て理に適っている。 彼女の攻め方は『鋭い』と評すべきだろうか。 的確にウィークポイントにだけ、攻勢を仕掛けて来るのだ。 「クロはもう少し外に出た方が良い」 囲いを穴だらけにしながら、姉は笑った。 将棋か、リアルか、どちらの意味で云っているのだろう? 姉の部屋に入り浸って外出回数と時間が減っている事を戒めているのか。 それとも、防禦優先の僕の差し方に対してなのか。 或いは不可分な問いなのか。 質問の意図を察し切れないまま、意識を悲惨な戦場に向けて呟いた。 「父さんがね」 「ん?」 「桂馬の使い方が上手い奴に負けると、普通に負けるよりもストレスが溜まるって」 「待ったはしないわよ?」 「うん。まあ、知ってたけどね」 「そう。王手」 「・・・」 想像がつくだろうが、将棋でも姉には敵わない。 僕は肩を竦めて立ち上がる。 297 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage New! 2008/11/08(土) 15 29 09 ID wE+e31Ox 「どこに往くの?」 「今し方、敬愛する姉君さまに、外に出ろ、と云われたからね」 「・・・私といる時は、外に往かなくて良いのよ?」 白く綺麗な腕が、きゅっと弟の服を掴む。 私といる時はって、貴女といる時が殆どな訳ですが。 そうツッコミたかったが、なんだか寂しそうな表情だ。妙な罪悪感が湧いてしまう。 僕は気持ちを切り替えるように、巫山戯た物云いをする。 「姉君さまは、舌の根も乾かぬうちに、前言を翻すおつもりですかな?」 「一面の事実は、イコールで総てに適用されるものではない。外に出るのは大切だけれど、今である必 要もすぐである必要もないわ」 「――母さんに買い物を頼まれているだけだよ。今日は卵が安いんだそうだ」 僕自身の意志では無い。 言外にそう云うと、姉は暗い表情を消して、真顔になった。 「母さんはどこに?」 「居間。煎餅囓ってるはず」 「そう少しお説教してくるわ」 眉を逆立てて起き上がろうとする姉を必死で押さえる。家の手伝いくらい、して当然だと思うのだが。 「家の事を家の人間がするのは当然。でも、子供に面倒を押しつけて親が怠惰でいて良いと云うもので もないでしょう?」 正論だ、とは思うけれど、何故だか必死な感じがする。いや、単純に怒っているだけだろうか?だとし たら、何に? 「鳴尾さんって、嘘が下手ですよね?」 場違いな。 この場にはないはずの、もの凄く柔らかい声が、背後から突然響いた。 良く知る、誰かの声。 目の前にある姉の顔が、不快そうに歪んで往く。 僕は頭を抱える。 何故ここにいるのかなんて、どうでも良い。どうか余計なトラブルに発展しませんように、と。 「素直にクロくんから引き離されるのが耐えられない、許せないって、云えば良いんですよ」 振り返れば、自称・姉がいる。 いつも通りの柔和な笑顔をした甘粕櫻子は、片手に洒落たビニル袋を下げて、僕に笑顔で微笑んだ。 「クロくん、こんにちは」 「あ、ど、どうも・・・」 肩越しに頭を下げる。 僕の後頭部から、鋭い声が飛んだ。 「クロ。不審人物とは口をきいてはいけないって、いつも云っているでしょう?」 「不審者じゃないですよ?私、この子のお姉ちゃんですから」 態とらしい動きで肩を竦める。 次いで、むにゅっと、柔らかい何かが背中に押しつけられた。背後から抱きしめられたようだ。 「ふふ~。クロくんの感触、大好きです」 「いや、あの・・・」 僕もこの『感触』は嫌いではないけれど、居心地が悪いのは嫌だ。困る。 そう思った瞬間。 ひゅん、と僕の顔の傍を何かが掠めた。 「あんっ」 と、云う、とぼけた声がした。 僕の横を通り抜けた『何か』を、先輩は躱したようである。 「鳴尾さん、将棋の駒は、投げる為の物じゃないですよ?」 めっ、とか云って姉を叱る。 明らかに挑発する為の物言いだった。 「甘粕、クロから離れろ」 「赤い糸で絡まっているので、それは無理です」 「では、妄想を命ごと断ち切ってやろう」 姉の目が細くなった。 本気で怒っている時の、彼女の特徴だ。 甘粕先輩も身の危険を感じたのだろう。 「もう、冗談です。そんなに怒らないで下さい」 298 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage New! 2008/11/08(土) 15 32 14 ID wE+e31Ox 自称の姉はアッサリと戒めを解くと、手に持っているビニル袋を差し出した。 これをどうぞ、と、優雅な動きで将棋盤の上に置く。 挑発の限りを尽くしておいて、それを無かった事にするかのように。 「お風邪を引いてるって聞いたので、お見舞いに来たんです。早く治して下さいね?」 「見舞い?お前が私の為に?」 「いいえ。クロくんの為ですよ。だって早く治してくれないと、クロくんにうつっちゃうかもしれない じゃないですか」 にっこり笑ってそんな事を云う。 この人、場を掻き回しに来たのだろうか。 度重なる侮辱に怒り横溢する実姉は、病床から偽姉を睨み付ける。 「見舞いなどいらない。さっさと帰れ」 「これ、『Euclase』のミルクプリンなんですが」 「見舞いを置いてさっさと帰れ」 「鳴尾姉弟はいつ見ても飽きないですね」 ふふふ、と笑い、甘粕先輩は歩き出す。まっすぐに、出口へと。 「また来ます」 「二度と来るな」 アッサリと。 あまりにもアッサリと、彼女は退出して往く。 (何だか気味が悪いな・・・) そう思ってしまうのは、失礼だろうか。 「クロ」 「何?」 「買い物、往ってきて良いわよ。私はやることが出来た」 再び『不審者』の通行を許した身内を説教しに往くのだろう。 姉の顔色は悪いはずだが、怒りに塗り潰されてそうは見えない。 程程にしてあげてね、と呟いて、僕は和室から退去した。 廊下に出てすぐ、ズボンのポケットに違和感を感じた。 手を突っ込むと、かさりと音がする。 「何だ?何か入れてたかな」 出てきたのは、一枚の紙切れ。 それに目を通し、僕は頭を抱えた。 『大好きなクロくんへ。かどの公園で待っています。お姉ちゃんより』 「・・・」 すぐ帰る訳だ。 あの人、姉の目の前で堂堂と僕に誘いを掛けていたとは。 姉を怒らせたのも、目眩ましの為だろう。平静な状態ならば、多分気づくはずだから。 態態プリンを持って来たのも、『見舞』いを強調する為なのだろう。手ぶらでやって来れば、姉に逢い に来た等と云っても、信用されるはずがない。 真に計算され尽くしている。 実は甘粕先輩のアドレスは、最近姉に抹消させられた上に、着信拒否登録させられている。 非通知設定や知らぬ番号がコールされた時は、自分に知らせるようにとも云われており、電話という手 段に抜け道はない。 我が愛姉は療養よりもこんな事に血道を上げているのだから、何とも嘆かわしい事である。 ともあれ、彼女が僕に誘いを掛けるとしたら、こうやって直接逢いに来るしかないはずだが、僕は姉と いる事が多い。 特に、最近は具合の悪い身内の看病の意味もあるから、付きっきりに近い。 シャットアウトに相似した状態であったのだろう。 そう考えると、少し申し訳なくなる。 甘粕先輩は僕を可愛がってくれているのだし、往きすぎる行為は兎も角として、邪険にするのは忸怩た るものがある。 だから僕は、消極的だが自発的に誘いに応じる事にした。 泣きそうな顔で娘に怯える母親から買うべき物のリストを貰い、外に出る。 足は商店ではなく、公園へ。 299 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage New! 2008/11/08(土) 15 34 49 ID wE+e31Ox 近所の公園は名もない(あるのだろうが、僕は知らない)小規模な場所だ。 以前は遊具が狭そうに佇んでいたのだが、子供が遊んで怪我をしたらどうする!?というヒステリック な抗議を受けて撤去されてしまった。 今はベンチと砂場しか無く、子供は消えて、犬の散歩をする大人や主婦等、高齢者しか見なくなった。 そんな場所に、スポーツカーが駐車されているのだから、目立って仕方ない。 オーギュオック。 それが、目の前にある車を作った会社の名前。 重工業から精密機器まで、技術部門を一手に牛耳る大企業だ。 『良い物だから、高く売る』を合い言葉にしていて、その通り、レベルの高いものを高価格で売りつけ いるようだ。 値は張るが製品は確かなので、一部、高級志向の人間には人気があるという。 「この車、甘粕先輩のですか?」 待っていた人――甘粕櫻子に挨拶もせず、僕は質した。 「お姉ちゃん、て云って下さい。他人行儀は駄目ですよ?」 事が成ったからか、甘粕先輩は上機嫌で僕に腕を絡めた。 勝利者の余裕、とも云うべき笑顔である。 「買ったのはお父さんですし、名義もお父さんです。でも、乗り回してるのは、私ですね」 事実上の専用車と云う事か、と納得する。 この人の家は裕福だ。 雪見台に住んでいる訳ではないので、周囲からは成金の家と目されているらしいが、この人は当然、そ んな評判を気にしない。それは美徳と云うべきだろう。 「私、柔術習っているじゃないですか」 嘗て、柔らかい先輩はそう云った。 「私の通っていた道場って、名門だったんですよ。技量も指導も一流でしたが、心根が腐れてまして、 名族にあらずんば人にあらず、を地で往く場所でしたから、一般人は迫害される傾向にありましたね」 あっけらかんと、そんな事を云う。 女子の苛めは、男のそれよりも陰険だと、彼女は笑う。 「辛くなかったんですか?」 「そういう日は、可愛い弟くんを抱きしめに往きました」 陳腐な僕の返答に、先輩は冗談で返した。 外見や声だけでなく、内面も柔軟なのだと再確認した。 「私は『やられっぱなし』ではいなかったので、そのうち待遇も改善されましたけど」 「された、ではなく、させた、じゃないんですか?」 「ふふ~。どうでしょう?」 と、彼女は笑顔で云って、それから僅かに目を落とす。 「・・・でも、仲良かった娘は、自殺しちゃいました」 「――そんなに、酷い環境だったんですか?」 「酷いかどうかは相対的なものですけどね、その娘、光陰館(こういんかん)の寮暮らしでしたから、 道場にいなくても辛かったのかもしれませんね」 「・・・」 光陰館。 この街の人間ならば誰もが知る名門校の一つ。 最高峰の学府ではあるが、家柄や血統に対する差別が激しい、と評判のある場所だ。 伝統や風習とは、一人歩きする怪物である。これらを御し得る者こそが、本物の貴族なのだと、しろ姉 さんは云っていた。 「先輩は強いですね」 「そう思いますか?」 「だって、耐えて往けたんでしょう?耐久力も、強さのうちだと思いますけど」 僕がそう云うと、先輩は眉をハの字にして笑った。 どこか寂しそうな笑みだった。 「慣れているだけですよ。感覚が鈍磨しているんです」 「慣れている?」 「私、道場に通う以前から差別されていましたから」 差別? 先輩が? 「それって、どういう――」 先輩の人差し指が、開きかけた後輩の唇に触れた。 彼女はちいさく首を振る。 僕は、それ以上何も聞けなかった。その資格がなかった。 300 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage New! 2008/11/08(土) 15 37 23 ID wE+e31Ox 「私には、可愛い弟がいます。それだけで、充分なんですよ。それだけで、どんな事にも我慢出来るん ですよ」 そして、彼女は今も僕の横で微笑んでいる。 えっちな身体をしっかりと腕にくっつけて、上機嫌に。 「クロくん、最近鳴尾さんにばかり構っていて、私には全然じゃないですか」 見かけ上は拗ねたように云う先輩に、取り敢えず頭を下げる。最近全然、と云うのは、事実だ。 「いや、その・・・すみません」 「許しません」 罰です。 そう云って、ぎゅ~っと、頬を押しつけてくる。柔らかい。 「え~と、恥ずかしいんですけど」 「罰ですからね。幸福である訳がないです」 (甘粕先輩、凄く嬉しそうな顔してるな・・・) えへへ、とか云ってる。 僕は気持ちを切り替えて、姉を自称する昔馴染みに向き直る。 「それで先輩、今日は一体どうしたんですか?」 「お姉ちゃんが弟に逢うのって、理由はいらないと思いますけど」 「それはそうでしょう。でも、ただ逢いに来た訳じゃないんでしょう?」 「せっかちさんですね、ここじゃなんですから、移動しましょう?」 にっこり笑うと、、彼女は僕を車に乗せる。 否。押し込んだと云うべきか。 「あの、僕には買い物が・・・」 「気にしない、気にしない」 彼女は笑顔で遮って、法定速度を上回るスピードで爆走を始めた。 やって来たのは、飲食店が軒を連ねる大通り。 以前に仏蘭西料理を御馳走になった『trahison』がある区域だ。 本日連れ去られて来た場所は、『ふく禮』と云う名の、ふぐ料理店である。 トラフグを主に取り扱う高級店で、調理には時間がかかる。 早く帰らないと姉が心配する、僕がそう告げると、甘粕先輩は一瞬、むぅ、と頬をふぐみたいに膨らま せて、それから人の良い笑顔をつくった。 勿論、人が良いのは表面上だけである。 「鳴尾さんの欠点の一つは、お説教が長い事です。怒りの度合いに連動して延長する傾向があります。 ですから、クロくんのお母さまには、お菓子を差し上げておきました」 つまり、姉の目から見れば、賄賂に見えるように状況を操作した、と。 説教が長引けば、時間の経過も忘却される。 きちんと計算してある訳だ。 「それは判りましたけど、間食は一寸・・・」 「食べた後、運動すれば良いです。何なら、裏通りの方に往きますか?」 裏通りには、ラブの付くホテルが密集している。 「やん。何云わせるんですか」 とか、頬に両手を添えてクネクネしてる人がいる。 スルーさせて貰おう。 どうでも良いが、この人、先程から白子酒を痛飲しているが、飲酒運転するつもりなんだろうか。お 酒には頗る強いらしいが、酔ったふりをして抱きついて来る事があるから、警戒はしておくとしよう。 「それでですね、クロくん」 すすすす・・・と、身体を寄せて来る。 僕は距離を置こうと試みるが、それよりも早く捕捉されてしまった。 「デート先を決めたいんですけど、どこか希望がありますか?」 「・・・唐突ですね」 「唐突じゃないですよ?この間、仏蘭西料理食べた帰りに、お願いしたじゃないですか」 「あー・・・」 そう云えば、そうだった。 奢りになった代わりに、そんな話をしたはずだ。 そう思った瞬間、僕の背筋が冷たくなった。 今いる場所。 それを思い知る。 「・・・まさか先輩、今日の『ここ』も奢りですか?」 「はい。お姉ちゃんが御馳走しちゃいますよ。気にせず食べて下さいね?」 301 永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM sage New! 2008/11/08(土) 15 39 46 ID wE+e31Ox 「・・・今度は何を要求するつもりですか?」 「要求だなんて、人聞きが悪いですよ」 (否定しないって事は・・・) 文字通り、これは『餌』だ。 僕は再び蜘蛛の巣にかかったらしい。 「いや、自分で払います」 「クロくん?」 甘粕先輩は気味の悪いほど柔和な笑顔を『作って』、僕に抱きついた。 「ここ、すごぉ~く高いんですよ?お財布の中に、福沢翁が何人いますか?」 「・・・」 そこいらへお使いに往くだけだった僕に、持ち合わせなどあろうはずもない。 判っていて。 それを見越して、夜討ち朝駆けに僕を『攫った』のだ。 勝敗は既に決している。 戦略的勝利を確定されてしまえば、戦術的勝利は困難で、また多くの場合、無意味だ・・・と、しろ姉 さんが昔云っていたなと思い出す。 僕がガックリ首を垂れ下げると、先輩は忖度したのだろう。より上機嫌になった。 「クロくんは、良い子ですね」 「先輩は悪い子ですね」 「も~。酷いですよ。それで、お願いがひとつあるんですが」 おいでなすった。 「何でしょう。無茶はやめて下さいね?」 「無茶じゃないですよ。天凜を活かして欲しいだけですから」 「天凜?」 僕が首を傾げると、甘粕先輩は「ええ」と頷き、笑顔で笑った。 「絵を一枚――描いて欲しいのです」 ※※※ 結局、僕の右手に買い物袋がぶら下がるまで、二時間強を要した。 ふぐは美味しかった。悔しいくらいに。 ともあれ、時間的には早期に解放されたと云うべきだろう。 「しろ姉さん、怒っていなければ良いけどな・・・」 早く帰って来い、という電話はなかった。 これは姉にしては珍しい現象だ。 そんなに説教が長引いているのだろうか? 卵の入った袋をぶらぶら揺らしながら考えていると、丁度家から着信があった。 (しろ姉さんかな?) 多少の説教は覚悟しよう。 そう思って電話に出ると、届いたのは、母の声。 取り乱したようなその声を聞いて、僕の頭が真っ白になった。 母はこう云ったのだ。 「至路が倒れた」と。
https://w.atwiki.jp/asagaolabo/pages/575.html
《永遠のアイドル》 【えいえんのアイドル】 《永遠のアイドル》 ボスの対象 関連称号 関連リンク 獲得条件(説明) バージョン アイドルチームを20回倒す 18 ポップンミュージック18 せんごく列伝のネット対戦に登場したボスバトル関連称号。 アイドルチームのボスを20回倒せば獲得。 対戦回数がかかる上に期間も考えると、結構なプレイ回数が必要となる。 しかし、アイドルチームの体力が全体的に低いため倒しやすく、20回撃破称号の中では一番入手しやすかったのでは。 ボスの対象 ビーくん ジュディ タイマー 星野そら ミニッツ 関連称号 撃破内容 称号 1回 《新人アイドル》 テーマ別全員 《スーパーアイドル》 20回 《永遠のアイドル》 関連リンク ボスバトル 称号/ポップン18 ネット対戦全般/ポップン18
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/33438.html
すぴっとばいと【登録タグ GUMI おおたに す 曲】 作詞:おおたに 作曲:おおたに 編曲:おおたに 唄:GUMI Sweet Whisper 曲紹介 忘れられない人がいたり、いなかったり おおたに氏の3作目。 歌詞 (動画より書き起こし) 案の定その女の子は僕を好きで 橙色のクレヨンで塗りつぶした 肝心なことはいつも隠れてしまうの? 大事な人は太陽が連れ去ってしまうの? 消えた水色 使いすぎてなくなった 青と白を混ぜても 「違う」ってただのわがまま いつかの色はどこにもない 流れる時代と 年をとる僕と 横にいた君は 消え去ってしまって 案の定その女の子は僕を嫌って どぎつい赤のクレヨンで塗りつぶした 肝心なことはいつも忘れてしまうの? 明日になれば君だって 流れる時代と 年をとる僕と 太陽が君を 連れ去ってしまって 案の定その女の子を僕は忘れて 橙色のクレヨンも新しく買った 肝心なこともいつか変わってしまうの? 大事な人もいつかは変わってしまうの? 八十年の命を削りとりあって 僕らもいつか運命の人と出会う 「残った僕の命を君にあげるから 残った君の命を僕にくれよ」 コメント ものすごく素敵な曲なのに広まらないのが本当に悲しい -- 名無しさん (2016-04-09 02 49 48) この曲の雰囲気ほんとに好き 埋もれてるのが本当に残念 -- 名無しさん (2017-01-10 22 18 08) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/seigeki/pages/20.html
神を持つ者 作者wikiの人◆SlKc0xXkyI 1931年、アメリカ――――。 禁酒法による治安の悪化や、世界恐慌による大不況が襲う暗黒の時代。 20年代の繁栄は見る影もなく、忌まわしきブラック・チューズディの爪痕は、国内の隅々にまで刻まれていた。 労働者や失業者の暴動が頻発し、人々は明日の暮らしを思えば、安らかに眠ることもままならない。そんな人々を尻目に、一部の裕福な者だけが天上のごとき、豊かな生活を送っていた。 夜は暗く、明日は見えず……しかしそんな時代にも、神の家はあった。 教会である。 日曜日ともなればミサが開かれ、敬虔なクリスチャンの集まる場所。 堂内に設置されたいくつもの長椅子の上、幼い少女が腰かけていた。 富裕層の出身らしい、たくさんのフリルとレースをあしらった、小奇麗なドレス。小枝のように細く愛らしい指は、一度も汚れに触れたことがないかのように白い。 少女は胸の前で両手を組み、銀のロザリオを握り締めて祈っていた。 そんな彼女に、横手から話しかける声があった。 神父「お嬢さん。熱心にお祈りしているようですが、何をお祈りされているので?」 少女「神父様……パパが病気になったの。 早く元気になって欲しいから、神様にお願いしてました!」 神父「それはそれは。お父さんも、君のような娘を持って幸せですね。 きっと神様も、君の祈りを聞き届けてくれることでしょう」 少女「本当? ねえ神父様、ウソじゃないよね?」 神父「本当ですよ。主は全ての人を平等に救ってくださるのです」 そう言って神父が微笑んだ時、教会の扉が開いた。 入って来たのは薄汚れた恰好の、みすぼらしい男だった。 一目で浮浪者と分かる彼は、そのまま教会の隅に体を横たえてしまう。 神父「……お嬢さん、ちょっと失礼しますね」 少女「神父様?」 怪訝そうな少女の声に答えず、神父は近くにいた若い牧師に声をかける。 目は不機嫌そうに浮浪者を見ており、牧師はただ頷いている。 そして話が終わったのか、牧師は浮浪者へと近づいて行く。 牧師は浮浪者に何か言ったようだが、少女の耳には届かない。 だが浮浪者は、すっくと腰を上げ、肩を落として教会から出て行ってしまう。 神父「やあ、お待たせしてすみません。 最近は教会を宿と勘違いする人が多いのですよ」 少女「勘違いって……でもさっきの人、困ってたんでしょう?」 神父「そうですね。確かにお困りのようでしたが、こちらも困るのです。 教会は神の家であって、浮浪者の家ではないのですから」 少女「でも……神様は、誰でも平等に……救ってくれるって……」 神父「ああ、何か勘違いされているようですね。 いいですか? ――貧乏人に神はいないのです」 少女「………………」 神父「そうそう、お嬢さんのお父上は病気だそうで。 千ドルほど寄進していただければ、きっとすぐに良くなるでしょう」 少女「……ねえ、神父様。 神様って……優しいかな?」 神父「とてもお優しい方ですよ――出すものを出していただければ、ね」
https://w.atwiki.jp/ooorowa/pages/275.html
永遠の物語 ◆z9JH9su20Q PREV Kの戦い/青の覚醒 ライダーベルトから吐き出された正六角形の金属片が連なり重なり、さやかを覆い隠す外殻とも言うべき鎧を形成して行く。 変身を終えた時には、装着者である華奢なさやかとはかけ離れた重厚さと力強さを漂わせるフォルムをした、一人の仮面の戦士がそこに立っていた。 「仮面ライダー……っ!」 驚きと、忌々しさを等分に混ぜたナスカが目にしている戦士こそ。戦いの神の名を戴くマスクドライダー――仮面ライダーガタック・マスクドフォームの威容だった。 ナスカの敵意が膨れ上がって行くのに対し、ガタックの仮面の奥で、さやかは一度、微かに震えた。 それは、恐怖による物ではない。 確かに悪と戦う力を得たのだという確信からの、武者震いという奴だった。 「いや……今更仮面ライダーになったから、何だと言うつもりですか?」 二人目の宿敵の存在に衝撃を受けた様子だったのも一瞬。平静さを取り戻したナスカがそう吐き捨てたのを、エターナルが鼻を鳴らして笑い飛ばす。 「言ったはずだ。俺達の切り札だとな」 「仮面ライダーといえど、クリュサオルは防ぎきれない……そのことは既に理解されているでしょう?」 言い終えると共に、ナスカが超加速を始める。 それとまったくの同時に、さやかの変身したガタックもまた、腰部のゼクターの角へと手を伸ばしていた。 「そうかもね!」 《――Cast Off――》 さやかが負けん気を込めた声で応じると共に、ガタックを構成する装甲の隙間が発光する。 光芒が漏れた直後、ガタック本体から離れたその装甲板は大気が道を譲るのを待たず、空気の壁を食い破るようにして四方へと飛び散った。 音速超過してなお余りある射出されたアーマーは、まださやかの目で追える程度――つまりは音速程度で動いていたナスカが回避行動に移る前に、即座に距離を詰め、着弾していた。 「――がっ!?」 一抱え分もある金属片が、数秒足らずで一エリアを駆け抜けるだけの初速度で放たれたのだ。その程度で倒せるわけはなかったが、それでもナスカの超加速を中断させるのに十分なだけの打撃を、キャストオフされたアーマーは与えていた。 そして敵が体勢を崩している隙に、逆にガタックはいよいよ戦闘態勢を整える。 《――Change Stag Beetle――》 装甲が吹き飛び顕になったのは、洗練されたライダーフォームの立ち姿。両肩に降りていた二本の角が起立し、一目でクワガタムシの意匠だと判別できる形へと仮面を変化させていた。 「だけど……全部躱せば関係ない!」 克己に窘められた、これまでのさやかが選び続けて来た戦い方――それももうやめだ。 「さやか」 そう決意するガタックへと、エターナルが静かに呼びかけた。 「任せる」 「うん……!」 信頼の言葉を交わし、頷き合う。そんな二人の様子に、舐められていると感じたのか、怒りの篭った声を上げてナスカが再びの超加速を発動する。 「クロックアップ!」 同時に、さやかの変身したガタックも。 《――Clock Up――》 スラップスイッチを押した次の瞬間、勝利を歌う音色が、余韻たっぷりにさやかの耳に残響した。 音速を超え、さやかの目には青い霞としてしか捉えられなかったはずのナスカが、ガタックまで残り四歩のところで唐突に停止する。 いや、それは体感する速度の落差がありすぎて停止したように見えただけだ。だがそれでも著しく動作が停滞し、ナスカの猛襲はまるで映像をコマ送りで見ているかのような歩みとなる。 全てはガタックに搭載された、クロックアップシステムの恩恵だった。 体内を流れるタキオン粒子を使うことで、異なる時間流へと自在に移動する驚異の超能力。発動すれば使用者の体感時間は圧倒的な加速を見せ、このように超音速移動すらも蠅の止まるようなスロー映像へと変更させるという、反則的な切り札だった。 最早停止し、ただの的となったナスカへと、さやかはガタックの両肩に備えられた双つの曲剣・ガタックダブルカリバーを抜き放って襲い掛かった。 未だクリュサオルを振り下ろしきれず、がら空きとなっている腹部へと一閃。抉れた皮膚が火花として飛び散り、ナスカの身体が螺旋に回転しながら宙に浮かび始める。 自らの切り上げたナスカへとさらに一閃、二閃。両のカリバーを交差させ、袈裟斬りにして振り下ろす。火花が吹き飛び、圧縮された時間の中、連続で叩き込んだ猛攻が、ナスカの身体に与えた傷が視認できるようになったさやかは、十分な踏み込みが確保できる分の距離だけ、ガタックダブルカリバーを握ったまま後退した。 「――ライダーカッティング!」 《――Rider Cutting――》 カリバーフルカムを基点に双刃を重ね、ハサミのような形状にした直後。ガタックゼクターから放出された虹色の稲妻のような粒子の塊が、ガタックダブルカリバーの作るハサミの中に蓄えられて行く。 「――これで終わりだァああああああああああああああああっ!!」 自らを鼓舞するように、さやかは気合の声を張り上げる。 一度人間としての姿を見ているとは言え、ナスカのような怪人を、最早人間だと思うことはさやかはやめていた。 もちろんそれは、身体が人間ではないから、などではなく――己の欲望のために他者を傷つける、その精神を受け入れられなかったためであったが。 この強大な悪をこの手で倒すことで、さやかはマミや克己達のような、一人前の戦士と自負して戦って行くことができるだろう。 これ以上ナスカに脅かされる人を生まないためのこの一撃は、自分にとっての新しい運命の扉を跳び越えて行くための第一歩なのだと――そう感じたガタックは、突撃を開始した。 《――Clock Over――》 さやかが必殺技の構えのまま駆け出した時に、その電子音は声を上げた。 「え――っ!?」 刹那の間も開けず、時は正常な流れへと回帰する。 ナスカの落下が早まり、隣で彫像のように停止していたエターナルのローブがはためき出す。突如全身を襲った痛みに悶えながらも、ナスカが迫り来るガタックの存在を認識し、迎撃に刃を構えるまでに――ガタックは、彼我の距離を踏破することができなかった。 ――さやかの不幸は、クロックアップの持続時間が完全にランダムであったことだ。 本人の主観でだが、長ければ数分。短ければ数秒。そんな上下の幅が広いクロックアップのタイムリミットの中で、さやかが引いたのは極めて短い部類の上限だった。 故に想定が狂い、正面からのこのこ歩いてナスカに飛び込むこととなった。 それでもクリュサオルが自身に届く前に、ナスカを両断できるとしてガタックは前進を続け――突然強度を増した空気の抵抗に、足が一歩分、鈍った。 最早それが、空気の抵抗などではなく。 ナスカが迎撃に放ったサイコキネシスであることは、散々苦しめられたさやかには明白であった。 (まっ、ずい……っ!) ガタックの仮面の奥で、さやかが息を呑んだ直後。 最大出力モードのクリュサオルと、タキオン粒子を纏ったガタックダブルカリバーが、正面から衝突を果たした。 ○○○ ○○○ ○○○ ○○○ ○○○ ――断ち切られて行く。 自身に与えられ、管理する強大な力の一部、二振りの曲剣のうちの片方が切断されて行くのを、ガタックゼクターは静かに見ていた。 クロックアップの解けたガタックよりも、常時体内にタキオン粒子を蓄えたままのガタックゼクターの方が、時間流への干渉は容易だ。故にガタックゼクターは目の前で、実際には標準時間で半秒も保たないはずの相克の場面を、クロックアップ中であるかのような遅延した映像として読み取っていた。 このままでは、クリュサオルという光剣の切っ先は――元々変身を司る、ガタックゼクター自体が狙いなのだろう、ガタックの腰の辺りに直進して来る。 相手は特に強度に優れた刀剣を軽々切り裂く光刃だ。いかに超金属ヒヒイロノカネで全身を構築したガタックゼクターでも、足場にしたライダーベルトごと容易く両断されるだろう。 そうなれば――その裏に隠してある美樹さやかのソウルジェムにも、直撃が及ぶことになる。 そのことに気づいた時点で、ガタックゼクターは自発的にベルトから飛び出していた。 ――そもそもガタックゼクターからすれば、勝手に支給品扱いされようと、こんな殺し合いなどに協力してやるつもりはなかった。 なぜ人類の自由と平和を守るために生まれた自分が、よくわからない目的で人間を傷つけるために使われてやる義理があるのか。いや、あるはずがないと――隙を見てベルトを奪還し、殺し合いには関係を持たないままやり過ごそうと、ガタックゼクターは最初考えていた。 だがいざ自身のベルトが与えられたのは、この理不尽なバトルロワイアルの打破を目指す――若さ故に少し暴走しがちなところはあるが、想像を絶する悲惨な境遇の中、それでも正義を捨てずに戦おうとする、一人の少女だった。 正直この殺し合いに関わろうなどとは――それ以前に、資格者以外の人間に力を貸す気などは、ガタックゼクターの中には微塵もなかったのだが。 あの諦めずに戦い続ける相棒がこの少女を見たら、放っておくだろうか――と。そんな疑問を抱いてしまったことが、今思えば運の尽きだったのかもしれない。機械の癖に、自ら厄介事に首を突っ込むとは、どこの酔狂な男の影響を受けてしまったのやら。 それでも相棒とどこか通じるところのある、そして相棒なら必ず助けようとするだろう少女の危機に飛び出したことも。最早乗りかかった船だと、相棒でもない少女を資格者として認め、力を貸したことも。 焼きが回ったなと自嘲しながらも、相棒に顔向けできない結果にはならなさそうだと、どこか誇りに思いながら――ガタックゼクターは、斬撃の軌道をソウルジェムから逸らすために、絶対的な死の中へと突撃を敢行した。 ○○○ ○○○ ○○○ ○○○ ○○○ 自らの構えた曲刀が光刃によって切り裂かれて行く様子に、しかしガタックは怯めなかった。 大出力モードのクリュサオルの間合いを前に、今更後退してももう遅い。それならやられる前にやるしかないと短絡的に結論付け、ガタックはライダーカッティングの体勢を気合で維持したまま踏み込み続けるが――超金属の剣は、儚い粒子に分解されて、クリュサオルの輝きの中に融けて行く。 ナスカの念動力は着実にそれを掻き分ける仮面ライダーの脚力をして、得物が断たれる前にその切っ先をナスカへと届かせることを阻み続けていた。 だけどここで押し通せないようでは。さやかはこれからも曲がることなく進んで行くことはできないだろうと、意地を通すために猪突を続ける。 最悪、刺し違えてでも倒さなければ。ほんの数秒にも満たない激突の間に、さやかはそんな決意を固める。 自分は友達を、仲間を、たくさんの人を守るために魔法少女になったのだから――この悪もまた倒せないようでは、「任せる」と言ってくれた仲間の信頼に応えられないようでは、結局はただの無価値な石ころになってしまうのだから――! 「――――えっ?」 さやかの全身を包んでいたヒヒイロノカネが、それが構築された時の様子を逆再生したかの如く無数の正六角形へと霧散し始めたのは、まさにそんな切羽詰った決意を固めた瞬間だった。 セルメダルが底をついた? 否、コアを使ったさやかには、まだ三十枚以上の余裕がある。 敵の攻撃に変身が維持できなくなったのか? 痛覚は遮断していたが、それでも感じるはずの衝撃は届いていないのだから、それもまた違う。 混乱する脳で何が起きたのかを理解しようと、幾つも考えが現れては消えて行く。ガタックの仮面が消失し、顕になったさやかの瞳に――直接その原因が映った。 さやかの臍の上ぐらいの位置――ベルトに留まっていたはずのガタックゼクターが、持ち場を離れて飛翔していたのだ。 「はぁっ!?」 この危機に、理解の追いつかない光景を目にして、思わずさやかは憤りの篭った声を上げていた。 そこでようやく、さやかはナスカの攻撃の狙いがバックル部分であることに気づく。基幹となる部位をピンポイントで破壊することで、ガタックの変身を解除させる意図だったのだろう。 つまり狙われたのはガタックゼクターで。その危機を察知し、逃げ出したということなのか? (ふざけないでよ……っ!) 自分のこの戦いに縣ける想いを認めて、その力を貸してくれたと思っていたのに。 その力を最も必要とするこの瞬間、我が身可愛さに逃げ出したというのか。 そんな疑いが、一瞬にも満たない刹那のうちに、さやかの中で怒りとして燃え上がる。 ……そう、そんな刹那しか、さやかの感情が爆発する暇はなかった。 何故なら次の瞬間には、そんな気持ちは忘却したように、彼女の心は真っ白になっていたのだから。 (――えっ?) ライダーベルトから離れたガタックゼクターは、そのままガタックダブルカリバーの片割れを今まさに両断したクリュサオルへと、自分から突撃していた。 白兵用武器であるダブルカリバーよりも、ガタックゼクターは頑健さが劣っていた。光子の流れに触れただけで、あっさりとその外装を削り取られる。 それでもガタックゼクターが決死の特攻を仕掛けたために、クリュサオルがライダーベルトに到達するまでに、微かな隙が生じた。 同時にオーバーフローしていたさやかの思考は、今更ガタックゼクターの真意を悟った。 ガタックゼクターの捨て身の防御がなければ、今頃クリュサオルはライダーベルトを貫いていた。 ……その下にあった、さやかのソウルジェムごと。 ゼクターとはそもそもが、生まれた理由が人々を守るためという存在だ。そのために生まれ、人間のような私欲という物を持たないだろう機械を疑った自分を、さやかは恥じた。 そして自分を助けるためにその身を犠牲にした……僅かな時間とはいえ、一体となって悪と戦った相棒がその形を失って行く様に、さやかの奥から謝罪や自己否定といった類の。抱く者に歩みを止めてしまう感情が、じわりと染み出て来そうになった。 だが、それに心が浸ってしまう直前。微かにさやかを振り返ったガタックゼクターが、まるで自身を呼び掛けるかのように小さく身震いしたのを、確かにさやかは垣間見た。 「うぅあぁあああああああああああああああっ!!!」 余計な感傷は、胸の隅に引っ込めた。 今はガタックゼクターがその命で作ってくれた勝利への道、それを駆け抜けるのが先決だ! ガタックの変身が完全に解除されてしまうよりも前に。さやかはまだ手の中に残った、片方だけの曲刀でライダーカッティングを続行する。 ガタックゼクターがクリュサオルを弾いたことで、さやかの斬撃の通り道が、確かにそこに開いていた。既に大部分を抜けていたサイコキネシスによる拘束を、最後の一押しで全て振り切る。 爪先が地を抉ってガタックの身体を送り出し、そしてカリバーの切っ先が、確かにナスカの腹へと突き刺さった。 クワガタの顎を模した剣の先端に蓄えられた、大量のタキオン粒子がナスカの皮膚を抉る。虹色の極光が拡散し、その場の全員の視界を白で埋め尽くす、膨大なエネルギーの奔流だった。 しかしナスカが吹き飛ぶ手応えと共に、その輝きは唐突に収まった。 理由はわかっている。ガタックの変身が、ナスカを倒し切る前に解除されたためだ。 その原因となった者を、さやかは責めることができなかった。 「ガタックゼクター……」 ぽつりと漏れた呼びかけに答えるかのように、そいつはさやかの眼前に飛んで来た。 機体の半分を失い、滞空も安定していない、今にも機能を停止してしまいそうな姿で。 墜落しそうなガタックゼクターを、さやかは思わず両手で受け止める。半分だけでも原型を留めていた機体に残っていたとは思えないほどの熱量に掌が灼熱して行くが、魔法少女の変身を保っているさやかにとっては問題にならない些細なことだ。 それでもまるで、さやかの火傷を気遣うかのように。接続部がガタガタになった、一本だけ残った顎を開閉することで何かを伝えるようにしながら、さやかの掌から飛び立とうとする。 「……良いんだよ」 そんな姿を、さやかは見ていられなかった。 「ごめんね……」 目を伏せ、思わず抱き寄せると――ガタックゼクターは数度の駆動音を鳴らした後、さやかの胸の中で動くのをやめた。 ……何をやっているのだろう、自分は。 そんな疑念が沸き起こる。 力を手に入れたと、舞い上がり。結局克己がしてくれたのと同じように、たださやかは力を貸して貰っただけに過ぎないのに。そんな自分を庇ったために、さやかは新しい『仲間』を……死なせてしまった。 「……笹塚さん。追加のメダルを頂きたいのですが」 続く自己否定の思念は、そんな声が耳に刺さることで引っ込められる。 再び抜き放ったナスカブレードを杖代わりにしながらも、ナスカは未だ変身を保っていた。 「仲間が居たの……っ!?」 こんな状況でも雑に放り投げる気にはなれず、腰を落としてガタックゼクターの残骸を足元に降ろして、さやかは愕然と呟く。 そんなさやかをまた庇うように――ばさりとローブを翻しながら、エターナルが両者の間に飛び込んで来た。 鈍いはずがない彼が介入するのが、随分遅れて感じるのは――それだけあの衝突の間、自分は緊張していたのだろうか、などとどうでも良いことを無感動に認識する部分があることに、さやかの中のこれまた一部が驚いていた。 残る部分は、引き続き戦いへの集中を余儀なくされていた。 そんな彼女の前で油断なく敵手を睨むエターナルだったが、ナスカが放ったパイロキネシスによる炎を防ぐ余力もなかったのだろう。さやかの手を取って跳躍し、強引にさやかに攻撃を回避させた。 「あぁ……ああっ!?」 ナスカの炎は、内部機械を晒すガタックゼクターの残骸を襲っていた。元より融解していた断面から可燃部分に伝って行き、見る見る勢いを強めてゼクターを呑み込む。 涙を堪えてナスカを睨むさやかだったが、飛び出す前にエターナルが右手でそれを制した。 「笹塚さん……?」 同時に聞こえたのは、無感情なナスカにしても酷く調子の外れた、困惑の声だった。 ナスカはクリュサオルでエターナルを牽制しながら、警視庁の出入り口に近づこうとする。そんなナスカの様子を見たエターナルは、またも嘲弄を含んだ挑発を放った。 「おまえの探している相手には、どうやら逃げられたようだな」 もはや相手にも、メダルを補充する手段がないとわかるや否や、エターナルはナイフを手元で回転させながら、遠慮なく距離を詰め始める。 対しナスカは、脇に転がっていたクリュサオルをまた超能力で引き寄せると……立っているのも辛そうな姿勢だというのに、エターナルへと切りかかった。 だが、既に両者の消耗の度合いは、再びの逆転を果している。大出力モードではないクリュサオルはエターナルエッジに容易く受け止められ、エターナル自身の能力である、蒼い炎を纏った拳がナスカへと突き出される。 直撃したのは、ライダーカッティングを受けたのと同じ場所。痛烈な一撃を喰らったナスカは後退り、傷口を押さえながらエターナルを睨みつける。 構わず無言で距離を詰めようとするエターナルの横に、ライダーベルトを着けたままさやかも並んだ。 そんな二人の形相に、負けずと気迫を振り絞っていたナスカだったが……さやか達の間合いに再度捉えられる直前、その足が一歩下がった。 「おのれ……」 ナスカは小さく、無感情な声で呟いた。 「おのれぇえええええええっ!!」 続いたのは怨嗟の込められた、憎しみを隠そうともしない絶叫だった。 だが、この相手を許せないという感情は、さやかとて負けはしない。 エターナルとともに、ナスカの憎悪の叫びなど意に介さず二人は追撃を加えようとしたが、出鼻を挫くようにナスカの眼前で突如砂煙が爆発的な勢いで舞い上がった。それ自体はダメージにならなかったが、目隠しとしては十分過ぎた。 それが晴れたのは、エターナルが得物で切り裂いたからだけではなく――何かが音速を超え移動した、衝撃波による影響もあるのだろう。 「……奴自身も逃げた、か」 悔しいのか、それとも安心したのか。感情の種類を嗅ぎ取らせない、ただ事実を確認するような声音でぽつりと、エターナルが呟いた。 「――っ!」 その言葉を聞いたと同時に、我慢しきれずにさやかは踵を返した。 ガタックゼクターの残骸を燃やして行く火の手は、未だ収まっていなかった。 剥き出しとなっていた内部機関は既に融け落ち、現在進行形で塗装が剥がされて行くが、逆を言えばもうこれ以上この程度の炎が、ガタックゼクターを壊すことはできないのだろう。 それでも、これ以上ガタックゼクターだった物の形を変えられたくなかったさやかは、火が消えるように両手を押し付けていた。 肉の焦げる異臭が漂ってくるが、まだ炎は止まらない。マントを脱いで被せてみるが、それも完璧な消化法とは行かなかった。ナスカの残して行った火の始末すら満足にできない自分が情けなくて、思わずさやかの目元に透明な雫が染み出してくる。 しかしマントの上に音を立てて落ちたのは、さやかの落涙ではなく……変身を解いた克己が逆さに持っていた、飲料用のペットボトルの水だった。 「……克己」 「俺もそいつには助けられた。丁寧に弔ってやってくれ」 さやかの胸中を慮ってか、克己は淡々とそれだけを告げて来た。 さやかはこくんと、小さく頷いた。 そうして消火を終えた後、ガタックゼクターを野晒しにしたまま置いておきたくはなかったさやかは、変身を解く前に簡単ながら穴を掘っておいた。 その中にガタックゼクターを埋葬し、上から砂を掛け終えた後……さやかは胸の中に蟠った物を、堪えきれずに吐き出した。 「あたしって、何なんだろうね」 「……あん?」 ガタックゼクターを埋める間、傍らで見張りをしてくれていた克己が、そんな風に反応した。 聞いてくれる相手がいるからか、自分でも驚く程すらすらと、さやかは感情を吐き出していく。 「だってさ……あたしがいなかったら、あんたはそんなに傷つかないで済んだじゃない」 克己の背中には、未だ完治に至らぬ黒く炭化した傷跡が残っていた。 「変身したのがあたしじゃなかったら、ガタックゼクターだって壊れずに済んだかもしれない」 未熟なさやかでなければ、ガタックゼクターがその身を犠牲にせずとも、ナスカを攻略することができたかもしれない――そんな疑念が、さやかの心に刺さっていた。 もう、大好きな男の子に気持ちを告白する資格すらないのに――悪と戦う魔法少女としても、結局は同じ目的のために戦う仲間の、足手纏いにしかなれていないだなんて。 魔女や怪人のような悪と戦うしか能がない、ソウルジェムという石に成り果てたはずだったのに。そのたった一つの意義すら果たせない、本当にそこにあることに何の意味もないただの石ころでしかないのではないかと……さやかは無性に不安になっていた。 「――俺が自分の判断ミスを、おまえみたいなガキに責任押し付けると思っているのか?」 憮然とした様子で鼻を鳴らし、克己は憎まれ口を叩いてくれた。 でも、と反論しようとしたさやかを無視して、克己は続ける。 「そもそも終わったことを悔やんで何になる。それで何かが変わるわけでもないだろ」 「……あんたはすぐに忘れちゃえるから、そんなことを言えるんだよ」 思わず呟いてから、ハッとした。 今の言葉は、口にして良いようなことではなかった。それなのに自分は…… 「……そうかもなぁ」 一瞬、克己の声が寂寥を滲ませたのに気づき、さやかは身を竦ませた。 (……バカだよ、あたし。何てこと……!) 「だが、だからこそ言ったはずだ、さやか。せめておまえは忘れるなってな」 責めるでもなく、呆れるでもなく。さやかの無思慮で彼を傷つけた発言を受け止めた上で、背中越しに克己は訴えかけて来る。 「ガタックゼクターが教えてくれたことを忘れるな。何かを守るのは、いつだって難しいことなんだってことをな――こんな死体の一つ守るのも、容易くはなかっただろう?」 傭兵として何年も戦って来た克己の言葉には、つい最近まで平穏な日々を怠惰に過ごすだけだったさやかにはない、重みがあった。 微かな自嘲を含んだ問いかけの後に、克己はさらに続ける。 「おまえが考えなきゃいけないのは、自分じゃなければなどという下らん仮定なんぞじゃなく、そのことだ。おまえはまだまだヒヨっ子だ、そう簡単に何でも上手く行くなんて考えない方が良いということを、肝に銘じておくんだな」 「でも……だったらあたしはっ、どうして魔法少女になったのよ!?」 克己が諭して来るのに、思わずさやかは反発していた。 「こんな、魔女を殺すしか意味のない石ころにっ! それだけの役目だって満足にできないのなら、あたしは、どうして……っ」 叫ぶ勢いは、尻窄みに消えて行った。自分で口にしていて、耐えられなかったから。 克己の言うように、人々を守るということすら満足にできないのなら……さやかが魔法少女になった意味は、本当に、どこにあるというのか。 「もう……全然、わかんないよ……っ!」 「……どうしてってそりゃ、おまえが巴マミって奴のことを正しいって思ったからだろ」 思わず泣き崩れそうになったさやかに対し、まるで呆れたような声で克己が答えた。 何をわかり切ったことをと言わんばかりの応答に、逆に呆気に取られたさやかが黙って凝視するのを目にして、克己は少し緩めていた表情をまた真顔に戻した。 「なぁ、さやか。俺はここに来る前、ビレッジを潰すために戦っていたと言ったよな?」 克己の言葉に、さやかも思い出す。風都タワーで情報交換をしていた頃に教えられた、克己とエターナルの出会いとなった戦いのことを。 超能力兵士を開発するための実験場とも言うべき箱庭。そこで囚われ、希望を失ったことで生きながらにして死人のようになったビレッジの住人達。 それでも、紛れもなく今生きている彼らの明日を奪い続けるドクター・プロスペクトを許すことができず、実験体の村人達に蜂起を呼びかけたという。 結果として、村人達は克己に煽られた形で支配に反旗を翻し。克己自身をビレッジの住人達を救うため、そしてドクター・プロスペクトという悪を裁くため、単身その居城に乗り込み、そこで惹き合ったエターナルに変身したと言っていた。 「あそこの敵で一番の戦力だったのは、間違いなくさっきの財団Xの男だったが……俺は奴を倒し、プロスペクトの持っていたヘブンズフォールの制御装置を破壊したとはいえ、メモリを持ったプロスペクトを残したまま、ここに連れて来られた。 だが俺は、ビレッジにいる連中のことを心配していない。何故だかわかるか?」 克己の問いかけに、さやかは内心首を振っていた。 克己の置かれた状況に自分が立ったなら、きっとさやかは残してきた者達が心配で気が気でないだろう。だというのに確かに克己は、そんな様子を微塵も感じさせていなかった。当然、それに関する記憶が抜け落ちて行っているわけではないというのに…… 何故、克己はビレッジのことを心配していないのか、さやかにはさっぱりわからなかった。 「さやか。本当に尊いものというのは、どんなに忘れ去られて、それが元々なんだったのか、誰も思い出せなくなっても――それでも記憶として受け継がれ、残って行くもんなんだと、俺は考えている」 そんな克己の言葉に、さやかは彼の演奏するハーモニカの音色を連想した。 全てを忘れてしまうはずの克己の中にも、いつまでも残り続けているものがある……だからこそ考えついた言葉だろうと、何となくさやかは想像していた。 「それと同じだ。生きている奴らの明日を、誰にも奪わせたくない……そして何より、自分の明日が欲しいっていう俺の気持ちは、必ずあいつらにも受け継がれていると信じている。だったら途中で俺がいなくなったとしても、あいつらは諦めやしないだろう。諦めないなら、必ずやり通すさ……俺の仲間も、もう駆けつけているはずだからな」 だから心配していないのだと、今は目の前のバトルロワイアルを潰すことに集中しているのだと、克己は言う。 だがさやかには、それがどう自分の話と繋がるのかが、まだ把握できていなかった。 「そいつと同じさ。巴マミって奴はおまえに跡を継ごうと思わせるだけの立派な、正しい魔法少女だった。おまえの憧れる正義の魔法少女、そのものと言って良い」 「そうだよ……マミさんは、とっても凄い人で。でも、あたしは……」 「おまえ達の言う正義ってのはだな、さやか。それを目にした者に、必ずその意志を受け継ぎ、後を追ってみせると思わせる想いのことだと俺は考えている。どれだけ懸命に、そのために生きるのか、だ。そういう意味じゃ、わかり易い力のあるなしなんざ正義であることに関係はない。ならおまえは確かにマミの後を継いだ、立派な正義の味方だろ?」 克己なりに、さやかは正義を成していると励ましたいのだろう。 そう理解した時、さやかの口元に、無意識に冷淡な微笑が浮かんだ。 ……何て表面的な、薄っぺらい台詞だろうか。 克己のことは、もっとずっと凄い奴だと思っていたのに……そんな失望と共に、さやかは彼の言葉を否定する。 「だけど……結局悪い奴らに負けていたら、何も護れてないじゃん。意味ないよ」 「そんなことはない。おまえが引き継いでいなきゃ、そこでマミの正義は途絶えていた。 そして言っただろう。本当に尊く、正しいなら。それは受け継がれて行くものなんだと。 仮におまえが、どこかで倒れることがあっても。おまえの願いが本当に正しいなら、それを見た者が後を追おうとするはずだ。その次も、そのまた次も。そして誰かが必ず成し遂げる」 さやかがほとんど聞くことを放棄しているというのに、動揺する様子もなく、克己は自分の考えを訴え続ける。その態度が揺らいでいた言葉の信憑性を、まだ少しだけ保持していた。 そして――息を吸って、それまでよりも力を込めて、克己は言い放った。 「少なくとも! もしもおまえが志半ばで倒れることがあったなら、俺はおまえの分も、引き継いでやって良いと思っている」 驚きだった。 あれだけ悪ぶっている克己が、こんなことを恥ずかしげもなく言い放ったのが。 「さっき何かを守るのは難しいと言ったな。今言った通り俺だって、何もかも一人でやらなきゃいけないのなら、途中で放り出してここにいることになるんだからな。 だがその気持ちを強く持ち続ければ、必ず同じ気持ちで戦う奴らが現れる。俺達みたいにな。 一人じゃ死体一つ守るのも難しくても、そうやって頭数を揃えていけば……正義の味方っていうのは、一つの街や、国や! 果ては世界なんて大逸れたのも、守れるようになるもんなんじゃないのか?」 ――これはさやかの知らないことだが、克己の言葉を象徴するような例として、佐倉杏子の存在が挙げられる。 一度は心が折れ、当初目指していた正義の味方を諦めた杏子だったが――この先、本来なら訪れたはずの時間軸で、他ならぬさやか自身が彼女に見せた正義の味方としての姿勢が、その心にかつて抱いていた祈りを取り戻させたように。 またこのバトルロワイアルでも、最期の瞬間まで仮面ライダーとして人々を護り続けた剣崎一真の姿に心を打たれ、やはりその願いを取り戻したように。――その最期を、決して杏子が忘れることはないだろうと、確信したように。 確かな正義の心は、脈々と誰かに受け継がれ続けて行くものなのだ。 杏子にそれを伝えたさやか自身が、マミからその心を渡されたのと同じように。 「まだ一人で思うように行かないなんてこと、気にするな。俺だって満足に戦おうと思ったら、仲間が必要なんだ。一人ぼっちで戦い始めたばかりのおまえじゃ、それで当たり前だ。 なら、どうしてウジウジ悩む必要がある。一人で無理なんだったら、誰かから手を借りれば良いだけだ……違うか?」 「……あんたが言うことも一理あるかもね、克己。ありがとう」 だが、杏子のその後を知らない今のさやかは、それでもまだ、克己の言葉を受け容れられてはいなかった。 「でも……あたしはそれを認められないよ。皆を危険な目に遭わせたくないから、魔女や悪党を退治しようって言うのに……後に続こうと思ってくれる人を巻き込んじゃったら、そんなの本末転倒じゃん」 「御袋かおまえは」 そんなさやかの反論を、克己はまた呆れた様子のツッコミで一蹴する。 「お、おふくろって……」 「おまえの過保護さは御袋と変わらんって言っているんだ。 いいか? おまえ、この先も俺にずっと横から口出しされて、面倒見て貰いたくはないだろう?」 「そりゃ……そうよ」 多分、克己が意図しているのとは別の意味で。 こんなに酷い言葉をぶつけ、足を引っ張ってばかりの自分なんかのために、これ以上克己を拘束したくないとさやかは感じていた。 「俺もそうだ。いつまでもおまえの御守りをしたいとは思っていない」 対して克己は、さやかが克己によって自由を縛られていることを――例えば戦闘に参加するのに一々許可が必要な現状を、疎ましく思っているとでも――いや、実際先程まではその通りだが――考えているのだろう。御守り、という部分を強調しながらそう告げて来た。 「じゃあ、おまえの護りたいって考えている奴らはどうなんだろうな」 「そんなの……私達みたいな目になんか、遭わない方が良いに決まってるじゃん」 「違う。いつまでも護る護ると……言うなりゃおまえという檻に守られたとして、これからも永遠に檻の中で飼い殺すのがそいつらのためになると思っているのか、って言っているんだ」 克己のその言葉は、さやかにとって衝撃的であった。 まるで、頭を思い切り殴打されたかのような感覚は、その言語の意味を理解して、頭に染み込ませることができなかったからだろう。 「飼い殺……す?」 だからさやかは鸚鵡返しに、尋ね返すことしかできなかった。 ああ、と。克己はさやかに頷き返す。 「おまえに護られていなけりゃ、魔女のせいで自由に生きていくこともできないなんてのは……そしてそのままであることをおまえが望むって言うなら、それはおまえが居なけりゃ生きていけないよう、飼い殺しているって以外になんて言やぁ良い」 かつて――恭介の気を惹きたいなら、さやかなしでは居られぬよう五体不満足にしてやれば良いと、杏子から悪意を持って挑発されたことがあった。 あの時自分は、それを確かに強く否定したはずなのに―― 「ちが――」 「違うだろ、おまえが本当に願ったことは」 思わず動転し、否定の言葉を紡ごうとしたさやかに対し。克己はまたも責めるのではなく、諭すようにそう告げて来ていた。 「おまえが護りたいって思ったのは、今はおまえっていう檻に囲われた奴らが……そんな檻の中じゃなくても、自由に生きていけるような未来(明日)じゃなかったのか、さやか」 その言葉に。固形化した魂の奥底に、澱となって沈んでいた感情を突き刺されて、さやかは両目を見張った。 そうだ、あたしは…… 克己の言う通り。マミさんがずっと守ってきたものを、そこで終わらせたくなかったから。 まどか達見滝原市の人々が、魔女にその未来を、奪われないようにしたかったんだ…… 「確かにおまえが魔法少女になった経緯を考えれば、反発したいのも無理はないかもしれん。だがなぁ、さやか。結局おまえが自分でその力を得ることを決心したように……どんな答えを選ぶのかは、そのためにどうするのかは、あくまでそいつが決めることだ」 さやかの様子の変化を目にしながら、克己はさらに続けていた。 「色々あって見失っていたんだろうが、忘れるな、と言っただろう。その初心ぐらいは、大事にしておけ……俺ができない代わりにな」 そう少しだけ寂しそうに、また羨ましそうに告げて、彼は余りらしくない長広舌を終えた。 「克己……」 「ん?」 そんな彼に、今度はさやかが自分から訪ねていた。 「さっき言ったの、本当なの……?」 「どれがだ?」 「もし……あたしが途中で倒れちゃった時は、あんたが引き継いでくれるって」 「おまえは自分が間違ったことをしているつもりなのか?」 「っ……そっか」 婉曲な肯定に――ついさっきまで胸を満たしていたのとは違う感情で、さやかの声が震えた。 「あんたになら……任せられるかもね」 そう思えたことで。 一緒に背負ってくれる相手が居てくれるだけで。 ――こんなにも心が、軽いなんて。 「……落ち着いたか?」 克己の問いに、淀むことなくさやかは、「うん」という言葉を吐き出せた。 「あんたの言う通り、だね……事実としてあたしはあたしなんだから。あたしじゃなかったら、なんて考えるのはやめにするよ」 「賢明だな」 したり顔で頷く克己に、さやかはさらに宣言する。 「あんたの言う通り……ガタックゼクターが教えてくれた、何かを護ることの難しさも、もう忘れない。だけど、難しいからって投げ出したくもない。だからあたしは、もっと強くなる」 「そうか。ならまた後で鍛えてやる。御守り役をいつまでもやってはいられないからなぁ」 「うん。一人で戦えないって言っちゃう克己のために、早く肩を並べて戦えるようになってあげるよ」 意表を衝かれ真顔になった克己に、さやかはしてやったりと笑みを刻んだ。 まどかをからかって、よく浮かべていたこの笑顔になったのも、何だか随分久しぶりのような気がした。 「その第一歩。あたしにあんたの怪我、治させてよ」 クリュサオルに与えられた炭化した断面は、NEVERの再生力でも回復が未だに追いついていなかった。その治癒に克己はメダルを消費しているのだろうが、恐らく費用対効果はさやかの能力の方が上だ。 「断る。これは俺の落ち度だ。おまえのメダルを消費する理由はない」 「さっき一回受け取ってるくせに」 ツッコミに口を噤む克己が可笑しくて、くすりと微笑を呑み込みながらさやかは続けた。 「一緒に戦う仲間なんだから、メダル数ぐらいは均等にしたいじゃん。これ、さっきの買い物であんたが言ったことだよ?」 「…………好きにしろ」 根負けしたように、腰を下ろした克己はその傷ついた背中をさやかに託した。 青色の魔力光を放つ治癒魔法で優しくその肉体の欠損を修復させながら、さやかは少し悪戯したい心地で克己に話を振った。 ……重苦しい雰囲気には、あまりしたくはなかったから。 多分そんなことを望んで、ガタックゼクターは果てたのではないと思うから。 「っていうか克己さー、さっき何だかお母さんにいつまでも縛られるのは誰だって嫌みたいなこと言ってたけど、傭兵やってるのにお母さんにまだあれこれ言われてるってこと?」 「……いや。文句も言わずに、NEVERの結成にも協力してくれたし、ガキの頃に死んだ俺の体をここまで大きくもしてくれた。居てくれなきゃ困ることはあっても、逆はないな」 「ふーん……じゃあ克己って、そんな年になっても結構お母さんに甘えているんだ?」 「な……んだとぉ!?」 勢いよく振り返った克己は、怒気を孕んだ両目で射抜いて来た。 だが初めて見る克己の羞恥心を孕んだ激昂の様子に、冷徹な普段とのギャップがおかしくて……そして嬉しくて、さやかは声を上げて笑ってしまった。 「あっははははは、ちょっと克己、何その声、本気過ぎだって! 図星なの?」 「誰がだ!? ……ちっ、しばらく落ち込ませたままにしておいた方が良かったか」 憮然とした様子で正面に向き直った克己が、まだ肩を怒らせたままなのにまたさやかに笑い声を上げさせる。笑い上戸になってしまったようだった。 ……こんなに腹の底から笑えるのは、本当にいつぶりだろうか。 「ははははは……うん。あんたにもできるじゃん、克己」 「何?」 「人間らしい表情がさ」 その言葉にハッとしたように、克己は自身の顔に触れていた。 そのビックリした様子に、さやかはまた自然と笑みが込み上げて来て……可笑しさよりも、親愛の情を含んだ微笑みを彼に向けた。 「やっぱり克己も、まだ死人なんかじゃないよ」 「……勘違いだ」 「意地張っちゃってもぉー可愛いなぁこいつぅー!」 何だか本当に、魔法少女のことで悩む前に戻れたようで――そして克己がムキに反応するのが実に楽しくて、さやかは魔法を発動し続けながらもけらけらと笑い転げていた。 横隔膜の痙攣に苦しみ、目元を拭いながらさやかは必死に呼吸を整えて、克己にできる限り真剣な調子に戻して話し掛けた。 「だからさ克己。あんたもまだ人間なんだよ、きっと。……本当に死んでるわけじゃないから、あんただっていつか死んじゃうかもしれないんだよね」 「……そういうことになるな。ま、俺は――自分の存在をこの世界に刻み付けるまでは、本当の死を迎えてやる気なんぞ永遠にないがな」 そうふてぶてしく言い放つ克己に、さやかは確かにあんた殺しても死ななさそうだもんねと呟きながら、伝えたい言葉を口にした。 「それでももしさ、何かの間違いであんたが死んじゃったりしたら……その時はあたしが、あんたの気持ちを引き継ぐよ」 そのさやかの言葉に、驚いたように克己は彼女を振り返った。 「そうして欲しいから、忘れるなって言ったんでしょ? 覚えておいてあげるよ、永遠に」 それで対等じゃん、とさやかは言い足した。 そして、だからこそ克己はエターナルメモリの適合者なのだろうと、内心で推測していた。 彼が”永遠”と惹き合った理由――それは彼が死者という、終わりある生とは違う永遠の世界の住人だから――などではない、きっと。それだけならば他にもNEVERがいる以上、克己だけの”運命”にはなり得ない。 ――せめておまえは忘れるな、何もかも。 この言葉や、それと同じ意味合いのことを、彼は何度もさやかに伝えて来た。 それはきっと、克己は自分が忘れて行ってしまうから、代わりに周りの人にずっと記憶していて欲しいからなのだろうと、さやかは考える。 だが周囲がそれを聞き届けても、残念ながら克己の願いはいつか風化して行く。NEVERでなくとも、人の記憶とは忘却されて行くものだから。いつかは大道克己という個人やその名を知る存在は、この世界から消え去ってしまうだろう。 それでも、さっき克己がさやかに伝えようとしたように――本当に尊いモノは、その名前や出自が、判別するための外観が忘れ去られようと。一番大切なその”中身”、本質はずっと受け継がれて行くのだ。克己の中に残り続け、またさやかにも伝えられたあの演奏のように。 克己の言う、世界にその存在を刻み付けるということは。 きっと今の克己が抱いている想いを人々に残して逝けるよう、最後の瞬間まで懸命に生き続けるという意味なのだ。 ビレッジで希望となったように。克己は二度目の死を迎えるまでに、それを今生きている者達の記憶に刻みつけて……彼らが子々孫々と伝え続けてくれることを望んでいるのだ。 そんな、人々に受け継がれる”永遠の記憶”になりたいと願う克己だからこそ――エターナルのメモリと惹き合ったのだろう。 だから彼の中には、自分が消えることへの恐れや怯えは存在しないのかもしれない。たとえ今ここで朽ち果てようとも、永遠の記憶として人々の中に残っていけるのなら――自分一人のちっぽけな死など、彼にとって忌避する理由がないのだから。 だから彼はNEVERであろうと、明日を求めて懸命に生き続けるのだ。 事実その克己の姿を、さやかは生涯忘れることはないと、迷うことなく信じている。 ――そして、これからはさやかも。 マミから自分へ、そして克己や、次の誰かへと受け継がれていく、平和と自由を欲する正義という名の”永遠の記憶”は、決して途切れることはないと信じられるから。 さやかがどこかで倒れても、さやかの願いの根源は、克己や誰かが叶えてくれるなら。 もう……絶望する必要なんて、ない。 それは、代わりが効くからさやかが無価値などという意味ではなく。正しいと思う生き方を懸命に貫くことが、自分の願いを永遠にしてくれるということなのだから。 ――あなたはその人の夢を叶えたいの? それとも夢を叶えた恩人になりたいの? ――他人の願いを叶えるのなら、なおのこと自分の望みをはっきりさせておくべきだわ。同じようなことでも全然違うことよ、これ。 ――そこを履き違えたまま進んだら、きっとあなた後悔すると思うから。 マミにこう言われた時、さやかは自分の考えが甘かったと自覚したはずだったのに……それをまた、忘れてしまっていた。 さやかはただ、恭介の演奏をもう一度聴きたかった。あのバイオリンをもっともっと、大勢の人に聴いて欲しかった。 さやかはただ、マミの頑張りを無駄にしたくなかった。これ以上大切な人を失わずに済む力が欲しかった。誰にも失わせずに済む力が欲しかった。 確かに恩人として、また正義の味方として感謝されたいという下心もあったと思う。さやかだって人間だから、そんなものに惑わされることもあるけれど。 それでも今なら、自分の本当の願いが何だったのかを、もう忘れない――そう断言できる。 だからもう、さやかは魔法少女となったことを後悔しない。 同じように。たとえ傷つくことがあるとしても、戦いに臨むその人が、本当に自分の意志で決めたのなら尊重すべきだと、今なら思えた。マミだってさやか達に対してそうだったから。 もう――誰かが自分の後に続いてくれるということも、怖くはない。 「――終わったよ、克己」 さやかの言葉を最後に暫く続いていた沈黙を、治療の終了を告げる声が破る。 克己はぐるんと肩を回しながら立ち上がり、その後も掌を開閉したりして、調子を確かめた後に……にぃっと、その口元を歪める。 「大したもんだな、魔法少女の癒しの力って奴は」 「それを願った契約だから、あたしは特に凄いらしいからねー」 誇らしく思いながら伝えたさやかは、克己にこれからの方針を尋ねることにした。 ○○○ ○○○ ○○○ ○○○ ○○○ 自分の気持ちを本当に正しいと感じてくれる人がいたら、その気持ちを記憶して欲しいと、してくれたら嬉しいと思うから。 さやか自身も、自分が正しいと思ったもののことを、これからは忘れず生きて行こう。 特に――そのことに気づかせてくれた恩人のことを、さやかはずっと、覚えていたい。 (私……ガタックゼクターのこと、忘れないよ) さやかの腰には、変わらず銀色のベルトが煌めいていた。 【一日目 夕方】 【G-5/警視庁】 ※南の入り口付近にライドベンダー@仮面ライダーオーズの残骸が放置されています。 ※二階の南側にある部屋に双眼鏡@現実が放置されています。 ※克己とさやかの今後の行動については後続の書き手さんにお任せします。 【大道克己@仮面ライダーW】 【所属】無 【状態】健康 【首輪】15枚 0枚 【コア】ワニ(一定時間使用不可能) 【装備】T2エターナルメモリ+ロストドライバー+T2ユニコーンメモリ@仮面ライダーW、 【道具】基本支給品、NEVERのレザージャケット×?-3@仮面ライダーW 、カンドロイド数種@仮面ライダーオーズ 【思考・状況】 基本:主催を打倒し、出来る限り多くの参加者を解放する。 1.さやかが欲しい。その為にも心身ともに鍛えてやる。 2.T2を任せられる程にさやかが心身共に強くなったなら、ユニコーンのメモリを返してやる。 3.T2ガイアメモリは不用意に人の手に渡す訳にはいかない。 4.財団Xの男(加頭)とはいつか決着をつける 5.園咲冴子はいつか潰す。 【備考】 ※参戦時期はRETURNS中、ユートピア・ドーパント撃破直後です。 ※回復には酵素の代わりにメダルを消費します。 ※仮面ライダーという名をライダーベルト(ガタック)の説明書から知りました。 ただしエターナルが仮面ライダーかどうかは分かっていません。 ※魔法少女に関する知識を得ました。 ※NEVERのレザージャケットがあと何着あるのかは不明です(現在は三着消費)。 ※さやかの事を気に掛けています。 ※加頭順の名前を知りません。ただ姿を見たり、声を聞けば分かります。 ※仮面ライダーエターナルブルーフレアのマキシマムドライブ『エターナルレクイエム』は、制限下においてメダル消費60枚で最大の範囲に効果を及ぼします(それ以上はメダルを消費しても効果範囲は広がりません)。 エターナルレクイエムの『T2以外の全てのガイアメモリの機能を永久的に強制停止させる』効果は、最大射程距離は半径五キロ四方(エリア四マス分)となります。 また発動コストにセルメダル10枚が設定されており、それ以上メダル消費の上乗せをせず使用すると、半径二千五百メートル四方(エリア一マス分)に効果を及ぼします。 なお、参加者個人という『点に対して作用する』必殺技としての威力は、メダルの消費数を増減させても上下することはありません。メダル消費量で性能に制限を受けるのは、あくまでMAPの広範囲に『面として作用する』ガイアメモリの機能停止に関する能力だけです。 【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】 【所属】青 【状態】健康 【首輪】20枚 0枚 【コア】シャチ(一定時間使用不可能) 【装備】ソウルジェム(さやか)@魔法少女まどか☆マギカ、NEVERのレザージャケット@仮面ライダーW、ライダーベルト(ガタック)@仮面ライダーディケイド 【道具】基本支給品、克己のハーモニカ@仮面ライダーW 【思考・状況】 基本:正義の魔法少女として悪を倒す。 0.克己を乗り越えてより強くなる。 1.克己と協力して悪を倒してゆく。 2.克己やガタックゼクターが教えてくれた正義を忘れない。 3.T2ガイアメモリは不用意に人の手に渡してはならない。 4.財団Xの男(加頭)とはいつか決着をつける 5.マミさんと共に戦いたい。まどかや仁美は遭遇次第保護。 6.暁美ほむらや佐倉杏子とは戦わなければならない。 【備考】 ※参戦時期はキュゥべえから魔法少女のからくりを聞いた直後です。 ※ソウルジェムがこの場で濁るのか、また濁っている際はどの程度濁っているのかは不明です。 ※回復にはソウルジェムの穢れの代わりにメダルを消費します。 ※NEVERに関する知識を得ました。 ※ガタックゼクターは破壊されました。 NEXT リベンジャーズ