約 194,393 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2039.html
注・ゆっくりらしからぬゆっくりが出ます。 幻想郷の人里から少し離れた場所に緑の森が有る。 その森に住んでいるゆっくり達はとても幸せだった。 何故ならここには外敵である筈のれみりゃなどもほとんどやって来る事も無く、人里の人間も好んで立ち入る事も無かった。 時折、無謀なゆっくりが人里に悪さをしに行く場合も有ったが、再犯でもしない限りは直ぐに殺される事も無い。 流石に2,3度となれば別だが、そこまでの再犯を重ねるゆっくりで有れば、逆に人間に裁いて貰った方が平和になる。 幻想郷の人間は融和的で、罪を犯したゆっくりとその他のゆっくりを混同するなどという、短絡的で愚かな考えはしなかった。 その為、狩りや木の実の採取に長けたゆっくりまりさと、ぱちゅりーにも負けない明晰な頭脳を持ったれいむが率いるその群れは、 仲間同士で争う事も無く、困った事が有れば群れの仲間同士で協力し日々を謳歌していた。 ある越冬の時では、食料が芳しくない家の者に群れのゆっくり達が少しづつ食料を提供し、その家族は無事一匹も欠ける事無く冬を越した。 ある梅雨の季節では、暴風で破壊されたゆっくりの家が有ったが、群れのリーダーであるまりさはその家が直るまで住人を快く自らの家へと招き入れた。 相互扶助。 その群れのゆっくり達は全て、その言葉は知らずとも、その行動を実行する事が出来た。 かつ、いつまでも他の者に頼るなどという甘い考えのゆっくりなどは存在せず、この群れはとても良好に機能していた。 やがてそのまりさとれいむは群れの皆から祝福され結婚して家族となり、より一層の繁栄を為し得るかに見えた。 そう、一週間程前までは。 「ゆぅぅ、なんでこんなことに・・・」 薄暗い洞窟の奥で、ボロボロの身なりのれいむが居た。 少し前まで群れの長であったれいむである。 黒々とした艶の有った髪も見る影も無く荒れ、頭のリボンもネズミにでも齧られたかのように所々千切れている。 それにも増して、かなりの暴行を受けたのだろうか、その身体にはそこかしこに真新しい傷が出来ていた。 その場所にしても、洞窟の中の狭い一室の入り口を柵で覆い、まるで牢屋のように作られている事から、その状況が尋常で無いのは一目瞭然であった。 「まりさたちはだいじょうぶかなぁ・・・」 いつまでも続くかに思えた幸せの時を思い出してしまい思わず嗚咽が漏れる。 最愛のゆっくりを思い浮かべると涙が零れる。 部屋の片隅で丸い身体を震わせ、えぐえぐとただ悲嘆に暮れなき続けるしか、今のれいむには出来る事は無かった。 一週間前、群れで大規模な反乱が起こった。 その反乱により、群れを率いていた群れの幹部達の多くは捕らえられてしまったのだ。 夫であるまりさと子供達は間一髪の所で逃げ出す事に成功したが、れいむはその時自ら犠牲となり囚われの身となってしまった。 「ゆふふ、惨めなものね」 そんなれいむを嘲笑うような声が聞こえたかと思うと、数匹のゆっくりがその部屋の中に入ってくる。 先頭のゆっくりは普通のゆっくりには扱えぬ筈の火の付いた松明を口に咥えている為、部屋の中が一気に明るくなった。 ほとんどは数週間前に群れにやってきた新参のゆっくり達だが、中には昔から群れに住んでいた見慣れた顔のゆっくりも居る。 そして遅れて入ってきたゆっくり。 煌びやかな髪が松明の炎に照らされて鮮やかな光を放ち、その優雅な佇まいにはゆっくりで有りながらも何処か厳かな雰囲気を漂わせる。 薄暗い洞窟の中でそのゆっくりの存在感は一層際立ち、周りの者の眼を引く。 「ゆっ!?おまえは……ゆっくりしねぇ!!」 涙を流していたれいむであったが、その姿を一目見た瞬間、まるで鬼にでも取り付かれたかのような形相に変わり目の前のゆっくりに飛び掛かろうとした。 だが、周りの者達がすぐさま盾となりそれを阻み、れいむを跳ね飛ばす。 そのまま壁に叩き付けられ「ゆぐぅ」と短い呻き声を上げたれいむに、追い討ちとばかりに数匹のゆっくりが圧し掛かる。 「いつもむだなことをしないでね!!ゆっくりりかいしてね!!」 「いたいよ、ゆっくりやめっ、てびゅっ!!やめて、に”ゅ!!」 「ちーんぽ!!ちーんぽ!!」 まりさ種やみょん種、中には同種のれいむ種まで居る。 それらは足元のれいむの声などに一切耳を貸さずにひたすら飛び跳ねれいむを苦しめる。 数は元よりろくに食事も食べていない弱ったれいむは成す術も無く、そこから逃げ出す体力も無い。 「ゆぐっ、やめ”、びょひゅ……いだい”よ、ゆっぐりぃ」 「おお、よわいよわい」 「な”んでごんな……ゆべっ!!ゆびぃ!!」 反論を挟む余地の無い暴力。 段々とれいむの眼から生気が失われていき、その叫び声も「ゆぐっ!!ゆげぇ!!」から「ゅみゅ…、ゅきゅ……」と弱々しくなっていく。 淡々と行われるその暴行を冷ややかな眼で見詰めていたあのゆっくりがズイッと前に出ると、周りの者はそれに反応してすぐさまその場から飛び退いた。 後に残されたのは、その口から餡子を垂れ流し、楕円形の形になってしまった瀕死のれいむである。 「ゅ……ゅ……」 「おやおや、わらわがわざわざ会いに来てさしあげたのに、あなたはもうゆっくり死んでしまいますの?」 ビクビクと痙攣を始めたれいむの前で、明らかに他のゆっくりとは違う流暢な話し言葉で呼び掛けた。 すると、このまま死んでしまうかに見えたれいむの眼に少しだけ光が戻る。 そして動かぬ身体で眼だけを動かし、眼の前のそのゆっくりを憤怒の炎が宿った眼で睨み付けたのだ。 「ゆぐぐ…このぉ、おんしらずのゆっぐりめぇ……」 「ゆふふ、わらわはそなたの様なゆっくりに受けた恩など覚えがありませぬ」 「ゆぎぃぃ!!きさまなんか、れいむとおなじれいむなんておもえないよ!!」 憎しみを込めて力一杯に叫ぶと同時に、横から別のゆっくりが体当たりをし、れいむは又もや吹き飛ばされ壁に打ち付けられる。 「おまえのようなゆっくりとおなじにするなだぜ!!はくれいむさまとおよびするんだぜ!!」 取り巻きの一匹であるまりさが体当たりをし、そうれいむに対して叫ぶ。 その後ちらりと、はくれいむと呼ばれたゆっくりれいむに眼を向け、ニヤリと口元を歪ませる。 はくれいむに惚れているのだろうか。 まりさなりのアピールを欠かさない。 はくれいむと呼ばれたそのゆっくりはれいむ種でありながられいむ種ではなかった。 髪は透き通るように白く普通のれいむ種の黒とは対極にあり、暗闇の中でもその存在感は際立っていた。 更には頭に付けられているれいむ種のトレードマークであるリボンも、赤い部分は真っ白に染め上げられ、その姿は正に「はくれいむ」と呼ぶに相応しかった。 姿だけでは無い。 その雰囲気もれいむ種どころか、他のゆっくりと一戦を隔す程に厳かで幽玄。 ゆっくりでありながらも、カリスマと言うべきだろうか、他ゆっくりを引き付ける何か持っている。 だがその本質は残酷で冷徹。 一ヶ月程前に数匹の取り巻きと群れに加わり、独自のやり方で群れの指導者に気付かれずに多くの仲間を作っていき、 瞬く間に反乱を起こして群れを乗っ取った。 そう、彼女こそが例の反乱の主導者であり、眼の前のれいむの幸せを打ち砕いたゆっくりなのだ。 そして一方のれいむは打ち付けられた衝撃と積み重なった暴行のダメージで「ゆべぇぇぇ!!」と汚らしく餡子を吐き出し続けるばかりである。 「おお、ぶざまぶざま。わらわがこのようなゆっくりと同じなど、考えただけでおぞましい」 そんなれいむの様子を中傷した笑みで見ながらそう呟くと、周りの者も全くだとばかりに笑いの声をあげる。 れいむは言い返す気力も無く、ただただ餡子と涙を吐き出し続けるだけであった。 クスクスと笑いながらその様子を暫く眺めていたはくれいむであったが、ふと思い出したようにれいむに問い掛ける。 「……ところで、あなたの夫であるまりさは何処にいるのかしら?」 かなりの量の餡子を吐き出し若干落ち着いたれいむは、その言葉にピクリと反応する。 だが、返答する気配は見せず貝のように押し黙ったままだ。 「はくれいむさまがしつもんしているんだぜ、ゆっくりこたえるんだぜ!!」 「……ゅ、なんどきてもれいむはこたえないよ」 一瞬言葉に詰まった。 ここに来てから何度も尋問され、その度に拒否をして暴行が行われる。 餡子脳であるがその恐怖はこの一週間でしっかりと刻まれ、その痛みと恐怖を思い出して少し言葉に詰まった。 だが、れいむは愛するまりさを裏切る気など毛頭無い。 例えこのまま殺されても絶対に喋らないと、そう心に誓っていたのだ。 「ゆゆっ!?うそをつくんじゃないぜ、おまえがにがしたんだからどこにいったかしっているはずなんだぜ!!」 「れいむはしらないっていってるよ……ゆっくりりかいしてね」 「ゆぎぃ!!おまえそんなことをいってどうなるかわかっているんだぜ!?」 れいむの馬鹿にしたような受け応えに、頭に青筋を浮かべそうな程に真っ赤になりながらまりさは凄む。 だが、周りは敵だらけというそんな状況でもれいむは怯えた表情も出さず、その口元に笑みを浮かべ。 「でも……まりさならめのまえにいるよ?」 「ゆっ?どこなんだぜ!?」 そうれいむが呟くとまりさはキョロキョロと見渡すが、何故か周りのゆっくりは一斉にそのまりさの方を見る。 「ゆぅぅ、でもわたしのしっているまりさとはちがうみたいだね」 「ゆ?どういうことなんだぜ?」 「わたしのしっているまりさとちがって、ばかでゴミくずでまったくゆっくりできてないね」 「ゆゆっ!??」 れいむのその言葉に唖然となり、その餡子脳に考えを巡らす。 このれいむはなにをいっているんだぜ? まりさがきいているのはむれをひきいていただめまりさで、ここにいるのはこのさいきょうまりささまだけなんだぜ。 そのうえ、ばかでゴミくずでゆっくりできない? だれのことをいってるんだぜ? 暫くグルグルと考えを巡らすと、流石のまりさにもどういう事か理解出来てきた。 れいむはしてやったりという風にその口元に中傷の笑みを浮かべる。 「ゆぅ!!こ、こいつ、このまりささまをばかにしてるんだぜ!?」 「ゆゆっ、ゆっくりりかいできたんだね。ゴミくずからオガクズにいいかえてあげるね」 湯気が出そうな程に全身を真っ赤にして、瀕死のれいむ今にも飛び掛らんとするまりさ。 その様子に怯む事無くれいむは更に罵倒を続ける。 「あかくなったらつよくなるとでもおもってるの?さんばいなの?しぬの?」 「ゆぎぃぃぃ、まりさはおこったんだぜぇぇ!!ゆっくりしねぇ!!」 このまま嬲り者にされたまま生き長らえるくらいなら、このまま死んだ方が良いとれいむは思っていた。 そうすれば、れいむを助けに来ようとするまりさを危険な目にあわせる事も無い。 ただ一つ心残りが有るとすれば、最後に一度で良いから愛する家族に会いたかった。 それを思うとやはり涙が零れる。 そして死が怖くなり、段々と震えが起きそうになる。 れいむはそんな湧き上がるものを、歯が欠けそうなほどに奥歯を噛み締めてぐっと堪えた。 こんな非常なゆっくり達にこれ以上惨めな姿を晒さないためである。 まりさが地を蹴る瞬間、れいむはそっと眼を瞑る。 すると死ぬ事への恐怖も不思議と消えていった。 はくれいむに一矢報いたかったが、この馬鹿なまりさに屈辱を味あわせてやっただけで満足しよう。 れいむはそう思った。 「ゆっくりお止めなさい!!」 突然、その部屋に怒声が響く。 その声にれいむを殺そうとすべく飛び上がる瞬間のまりさは身を竦めて動きを止める。 周りの者も眼を丸くして、はくれいむの方を見遣る。 「おお、愚か愚か。そのようなゆっくりの罵詈雑言に耳を傾けるとは」 「ゆぅ……でもはくれいむさま、こいつはまりさのことをばかにして……」 「お黙りなさいな。このゆっくりは死ぬ気力も無いから口先であなたを煽動し自らを殺そうとしているだけなのですよ」 「ゅぅ……」 「それにこれ以上やっては死んでしまいます。このゆっくりにはまだまだ役に立って貰わないと」 まりさは、はくれいむにそう諭され眼を地面に落とす。 格好良い所を見せようと張り切ったつもりがこんな事になるとは思っていなかった。 「ゆふぅ……あなたはまだまだ激流にゆっくりと身を任せる事が出来てないようですわね」 そんな様子のまりさにはくれいむはそう呟き、一瞥する。 その顔はこの世の終わりとでも言おうか、先ほどから一転、真っ青に血の気が引いている。 「ですが、あなたの忠義心は十分に評価していますわ。今後もわらわの部下として精進なさい」 思いも寄らぬ言葉。 それを聞いてまりさの表情はぱっと華やいだ。 二転三転、器用なものである。 しかし、はくれいむのその飴と鞭の使い分け様はやはり他のゆっくりには真似が出来るものではなかった。 周りで見ている者達も、仲間といえどまりさの馬鹿さ加減に呆れる一方で有ったが、逆にそれを許すはくれいむの懐の深さを際立たせる所となった。 そしてはくれいむにとってこの一連の流れは十分に計算通りのものであり、愚かなまりさを傍に置いている理由の一つでもある。 正に悪のカリスマというべきであろうか。 「ゆゆっ、そんなことをいいながられいむをころすどきょうがないだけなんだよね!!」 その一連のやり取りの中、れいむが声を上げる。 はくれいむを挑発しているのだ。 「ゆふふ、愚か者は声だけは立派に張り上げますのね」 「そうやってゆっくりしてられるのもいまのうちだけだよ、はやくれいむをころさないと、ゆぐっ!!?」 そんなれいむの言葉を遮る様に周りのゆっくり達が二匹回り込み、その口に縄を噛ませる。 れいむはモガモガと口を動かすが一向に外れようとしない。 後ろでちぇんが器用にその縄を結び、猿轡が完成した。 れいむの唯一の抵抗を不可能にし、これ以上餡子を吐かれたりするのを防ぐためである。 「ふぁにするの!?ふっぐぃ、ふぁずしてね!!(なにするの!?ゆっくりはずしてね!!)」 「なにいってるかわからないよー♪」 ちぇんのその言葉に周りのゆっくりは苦笑し、バタバタと暴れるれいむに冷ややかな視線を浴びせる。 そして、はくれいむは周りの一匹に目配せした。 松明を咥えたゆっくりみょんである。 そのままみょんはじりじりとその松明をれいむへと近付けて行く。 「ふぐっ!!ふぁぐいよ、ふっぐりふぁがれてね!!(ゆぐっ!!あついよ、ゆっくりはなれてね!!)」 「ふぁめてね!!ふぁ……あ”ぐぅぅぅい”ぃぃぃぃ!!(やめてね!!やめ……あづぅぅぅい”ぃぃぃぃ!!)」 壁に追い込まれたれいむの身体にその松明の先端が押し付けられる。 逃げる事も適わずにその肌は焼け焦げていき、チリチリと髪が焼け千切れていく。 左右に避けようとしても、周りのゆっくりに押し戻される。 「ふ”ぇい”ぶが、ふぉべち”ゃう!!ふぉべちぁうっべばぁぁぁぁ!!(れいむが、こげちゃう!!こげちゃうってばぁぁぁぁ!!)」 「ゆへへ、さっきまでのいせいはどこいったんだぜ?」 まともな言葉も出せずに涙を流して壁へと張り付くれいむの無様な姿を見て、先ほどのまりさも溜飲が下がったようだ。 必死の形相のれいむに構わず、みょんはグイグイとその火をれいむに押し付ける。 辺りには焼き饅頭の香ばしい匂いが立ち込め、それが段々と焦げた匂いへと変わっていく。 すると急に、ぼわっとれいむの頭に火の手が上がる。 本格的に髪に引火してしまったのだろう。 「ふぎゅあ”ぁぁぁぁぁあ”あ”あ”あ”あ”ぁあぁ!!」 頭に火を付けて眼を見開き、言葉に成らぬ叫び声をあげたれいむに松明を持っていたみょんも思わず後ろに下がる。 引火した火を消そうとれいむがゴロゴロと地面に転がり、その様子に周りで見ていたゆっくり達も後ろへと退いた。 「びゅぅべいぶのびゃびばぁぁ!!おびぼんぎゃあぁぁあぁぁ!!(でいぶのがみ”がぁぁぁ!!おりぼんがぁぁぁぁぁ!!)」 「ぶぁふへへ、ふぁりしゃあぁぁあ!!ぶあぁぁぁりじゃあ”ぁぁぁ!!(だすけてぇ、まりじゃあぁぁあ!!ま”あぁぁぁりざあ”ぁぁぁ!!)」 一度は死を覚悟しながらも、じわりじわりと蝕む苦しみに思わずれいむはまりさに助けを求める。 だが当然まりさは来ない。 身体の全水分を眼から垂れ流しながら、必死に愛するゆっくりの名前を叫びながられいむは転げ回るだけだ。 やがてそのまま全身に火が廻り焼け焦げてしまうかに思えたその様子を、たじろぐ事も無く見ていたはくれいむは後ろに控えていためいりんに合図を出す。 すると、めいりんが咥えた水の入った容器をれいむに投げつける様にぶつけ、辺りに水が飛び散ると共に見事に炎は鎮火された。 「まりさもひをけすのにきょうりょくしてやるんだぜ!!ぺっ!!」 「わかるよー、ちぇんもしーしーしてあげるねー♪」 そのまま痙攣を繰り返すだけの動かないれいむに対して、無情にもまりさは唾を吐き掛け、ちぇんもチロチロと尿を浴びせ掛ける。 その後に、ちぇんはれいむが死んでいるのか不思議そうに眺めていたが、 未だにプスプスと煙をあげてはいるものの、何とかれいむは生きているようだ。 「めいりん、そのゆっくりの縄を外して差し上げなさい」 「じゃお!?じゃおおおおおお!!」 戸惑いはしたものの、めいりんはれいむに結び付けられていた猿轡を外しに掛かった。 縄は半分焦げ付いていたので、結び目を解く必要も無く簡単に外れる。 そのままめいりんは、半分焦げ饅頭になったれいむの顔を覗き込んだ。 髪は以前の半分の所まで焼けて巻き上がり、アフロとまではいかなくても奇抜なものとなっていた。 その上リボンも所々焼け、穴がそこかしこに覗き、以前のれいむからは見る影も無い。 「……ゅひゅぅ……ゅひゅ……」 顔を近付けてみるとどうやら息をしている。 めいりんはホッと、ゆっくりには存在しない筈の胸を撫で下ろした。 今はこのようにはくれいむの部下となってはいるものの、めいりんは自身を群れに加え、 野生では虐められるのが当たり前の自分を一ゆっくりとして扱ってくれたれいむが好きであった。 ただ、反乱の時は突然の事でどちらに味方すれば判らず、オロオロしている内に群れははくれいむの手中に収まり、めいりんも言われるがままに部下となってしまった。 しかしそうは言ってもそう簡単に割り切れるものでは無く、このようにはくれいむの部下でありながらも気付かれずにれいむの身を案じる事もあった。 「めいりん、よく出来ました。ゆっくりお下がりなさい」 「じゃおぉぉぉ……」 「ゆ!?このばかめいりん。ゆっくりさがれとおっしゃってるんだぜ!!」 「じゃお!?」 はくれいむの呼び掛けにすぐに応えなかっためいりんに、まりさが身体をぶつける。 大した痛みは無いものの、目の前のれいむに何もして上げられない事を悔しく思い、めいりんは悲しい顔をしたまま後ろへと下がる。 残されたれいむは火傷の痛みだろうか、白目を向いたまま時折ビクリビクリとのた打ち回る。 「ゆふふ、今日はこのくらいかしらね」 れいむのその様子を満足そうに眺めながら、はくれいむは口元に笑みを浮かべる。 そのまま近くのゆっくりに何事かを囁くと、くるりと踵を返してその場を後にしようとした。 後ろには側近の者達が続き、後には命令を受けたゆっくりとその他に数匹のゆっくりが残る。 監視役とれいむの世話をする群れに長く居たゆっくりである。 はくれいむはこの様にして群れに長く留まっていたゆっくりの自分に対する忠義心を試し、旧体制の反乱の芽を潰すよう心掛けていた。 れいむの世話をしているゆっくりが何かしら不穏な動きをすれば監視役がそれを報告し、即座に対処する。 新たなる群れを作るのに不穏分子は早く潰すに越した事は無い。 敢えてれいむに近付け、その選別を行うのだ。 「あ、そうそう……」 突然ピタリと、はくれいむはその歩みを止め「今日はそなたの親友を招いていたのであった」と振り返らずに話し出す。 「先日であろうか、そなたを助けようとわらわ達に歯向かった愚か者達がおってな」 「確か主犯格はぱちゅりーと名乗る者だったらしいが……」 その言葉に、混濁していたれいむの意識が揺り動かされる。 れいむの最も信頼のおけるゆっくりの内の一匹。 子供の内から一緒に群れで暮らしてきたゆっくりに違いない。 「ちぇんよ、あれを持って来させよ」 「わかるよー♪」 はくれいむにそう言われたちぇんはピョンピョンと何処かに跳ねて行き、暫くすると何匹かのゆっくりが風呂敷に包まれた何かを引き摺るようにやってきた。 ゆっくりと、れいむの捕らえられた部屋へと風呂敷が運び込まれる。 「ぱ……ちゅ、りぃ……?」 グルリとれいむの眼が白目から黒目へと切り替わり、弱々しく声をあげる。 眼の前の風呂敷の中にぱちゅりーが居るのだろうか? 自分の為に捕らえられてしまったというのか? そんな疑問が浮かび、哀しみが込み上げて来る。 その一方で不謹慎ではあるが、今まで会う事が出来なかった仲間に会う事が出来る事への喜びが湧き上がったのは確かであった。 れいむのその眼に微かに光が戻ったのを確認すると、はくれいむが合図を出す。 するとばさりとその風呂敷が広げられ、そこには丸い物体が置かれていた。 紫色の帽子に月の飾りを付け、その更に紫色の美しい髪は昔のまま色褪せてはいない。 間違い無い、れいむの親友のぱちゅりーだ。 「ぱちゅ、ぱぢゅりー、よがっだ、いぎでだんだね」 もう、ろくに動かない身体をズリズリと動かして、そのぱちゅりーへと近付く。 半分焦げた身体に痛みがまだ有ろうが、眼の前に親友がやってきてくれた事でそんな事など気にもならなかった。 ジッとれいむの方を見詰めるぱちゅりーに少しづつ近付いて行く。 「ぱちゅりー……ぱちゅり……ぃ?」 やっと肌を接する程に近付いて、ある異変に気付く。 このぱちゅりー、先ほどから身動ぎ一つしないどころか、眼を開けたまま瞬き一つしないではないか。 それに近くで見ると判る。 肌が何処か変な、何と言うか乾いているというべきであろうか、あの瑞々しさが無い。 更に近付いて、肌を接してみるとあの柔らかいぱちゅりーの身体とは思えない、岩肌にも似た感触を覚える。 そのままぱちゅりーに呼び掛けながら、顔を覗き込む。 返事も無く、そしてその瞳は眼の前にいる筈のれいむを捕らえることも無く、何処かずっと遠くを見ているようだ。 光が無いその眼もやはり乾いていた。 周りのゆっくり達もその異常さに気付く。 「こ、これ……」 「それを作り出すのには苦労した」 異変に気付いたれいむの様子に、満足そうにしながらはくれいむは説明を始める。 「わらわの美意識からしても、反逆者とはいえそのぱちゅりーは中々に美ゆっくりであってな」 「どうにかして、その姿を永遠にゆっくりと留められないだろうかと思案したのじゃが……」 凍り付いた表情でれいむは、はくれいむへと視線を泳がす。 「他の反逆者に協力してもらって、どうにか作り上げる事に成功したわ」 「樹に吊るして下から炎で燻しあげる……そなたのような愚か者には理解出来ぬだろうが、燻製焼きというものであってな」 「ただ普通にやっては、他の反逆者のように最後は見るに耐えない悲惨な表情で死に絶えるものだから」 「そのぱちゅりーは飾りを取った後、全身にきつく布を巻きつけて表情が崩れぬよう工夫したのじゃ」 この眼の前のゆっくりは何を言っているのだろう? れいむはそんな表情で何も言えずにその言葉を聴き続けた。 「一番難しかったのは、閉じたままはつまらぬ故に事前に眼の周りを動かぬよう焼き固めておく事だったわ」 「その時には酷く抵抗しておった……むきゅむきゅと泣き叫びながら、そなたの名前も大声で叫んでおった」 「後は両目だけを覗かせ、先ほど説明したように蓑虫の様に布を巻きつけ吊り上げ、一晩中下から煙で燻し上げたのじゃが……」 「そこから覗く瞳はひたすらに涙だけを流し、赤ん坊のように潤んだそれは何処か愛おしさすら覚えたのぅ」 「絶命する随分前には、もはや瞳の水分は完全に失われて何も見えてはおらなかった様子だが」 途中から、れいむの頭の中を鐘がガンガンと打ち鳴らすように感覚を覚えた。 普通のゆっくりであればはくれいむの喋る事を半分も理解できなかったであろうが、半ば賢いだけにれいむはその残酷な情景を頭に浮かべてしまった。 先ほど自分が味わったあの苦しみと息苦しさを、ぱちゅりーは一晩中も味わわされたのだ。 そうでなくてもぱちゅりー種は元来ぜんそく持ちである。 少しのホコリや砂を呼吸が出来なくなる程、それを煙で燻し上げるなどどれほどの苦しみであろうか。 想像を絶する。 「ゆ”あ”あ”ぁぁぁぁぁぁ、ばぢゅりぃぃぃぃ!!くるしかったよね?ゆっくりできなかったよね?」 眼の前の最早形だけで命の無いぱちゅりーに、それでも頬をすり合わせて涙を流す。 れいむの頭にぱちゅりーと過ごした、数々の想い出が去来する。 まだ賢く無かった子供の頃に様々な事をぱちゅりーから学んだ。 群れの皆で協力して、れみりあを撃退した時に一緒に群れを指揮した事。 親友でありながらも師でもあったぱちゅりー。 まりさとの結婚で一番喜んでくれたのもぱちゅりーだった。 それらを思い起こすと、身体中の水分が涙となって流れ出していく。 それが段々と黒々しくなり、完全に餡子が流れ出しても止まる事は無かった。 そして少し前に、ぱちゅりーに会えると喜んだ自分を呪った。 そんな馬鹿な自分のせいでぱちゅりーが死んでしまった。 そう思えて仕方なかった――そして。 「ゆっぐじぃぃぃ……ごろじでやるぅぅぅぅ!!」 餡子の涙を流したその顔で、はくれいむの方へと向き直る。 その余りの迫力に、周りの取り巻きは怯えた表情を浮かべ、後ろへと思わず遠退く。 だが、肝心のはくれいむはというと、涼しげな表情でその様子を嬉しそうに眺めるばかりであった。 「ゆっぐじぃぃぃ、ゆっぐじぃぃぃぃ!!」 ずりずりと火傷で動かない身体を引き摺ってはくれいむの方へと向かう。 ゆっくりとは思えないどの行動の原動力は、凄まじい怒りに寄るものだろう。 それにハッとしたかのように、取り巻きのゆっくり達が間に割って入るがはくれいむは「ゆふふ、よいよい」とすぐさま退けさせた。 そのまま後少しで、はくれいむに喰いつける距離まで辿り着こうかという地点で、バタリとれいむは突っ伏すように顔を地面に向けて動かなくなってしまった。 「じゃ……じゃおおぉぉぉ!!」 近くで怯えながら見ていためいりんがすぐさま駆け付け状態を確かめる。 気絶しているだけで、どうやら死んではいないようだ。 だが、その顔は憤怒の表情で固まったまま動かない。 「じゃおおぉぉぉ!!じゃおぉぉぉ!!」 「なにやってるんだぜ、ゆっくりそいつにとどめをさすんだぜ!!」 取り巻きのまりさが声を張り上げる。 愛しのはくれいむを殺そうとしたそのれいむをそのままにしておくべきではないと思ったが、自分が近付いて殺す事は怖くて出来なかった。 めいりんは涙を流しながら顔を左右に振りそれを拒否する。 再びまりさが声を張り上げるがそれも拒否する。 「まりさのいうことがきけないばかめいりんなんて、ゆっくりできなくしてやるんだぜ!!」 「じゃ、じゃおおおぉぉぉん!!」 怒りのその言葉とゆっくり出来なくされると言われ、困惑するめいりん。 そんなやり取りと眺めていたはくれいむが、ゆっくりと指示を出す。 「ゆふふ、まだまだその愚か者にはゆっくりと楽しませて貰わなければならぬ」 そう言うと、周りで様子を見ていただけのゆっくり達にすぐさま治療に当たらせた。 どういう事かよく判らないといった表情のまりさも、ハッと我に返ると先ほどとは正反対に 「そのれいむをころすな」や「もしできなかったら、そいつらもゆっくりできなくするんだぜ」などと喚いている。 はくれいむはそれを暫く眺めていたが、ゆふふと笑い声をあげると踵を返して、今度こそは本当にその場を後にした。 そして更に一週間後、その洞窟の誰も知らない空洞の中を這いずるように一匹のゆっくりが進んでいた。 ゆっくりまりさである。 そのまりさはブツブツと何事か呟きながら、大人のゆっくりでは狭いその空洞の間を縫うように進み続ける。 その眼には何かしらの決意が見て取れた。 随分と進んだ後、開けた場所に出ると同時に一匹のゆっくりが目に付く。 反乱の一端を担っていてゆっくりみょんである。 見張りであろうか。 深夜のためうつらうつらと身を揺らせるそのみょんに気付かれぬよう、まりさは帽子から鋭く尖った木の枝を取り出す。 それを口に咥えると、ゆっくりとその背後へと近寄る。 すると突然、まりさの気配に気付いたのだろう。 みょんが振り向きそのまりさを確認すると、仲間を呼ぶために声を張り上げようと身体を膨らます。 その一瞬の間に、まりさはゆっくりしないで口に咥えた凶器をみょんへと突き刺す。 何が起こったのかイマイチ理解出来てないみょんの身体の中心を抉るようにそれを掻き回し素早く抜き取る。 するとそこから大量の餡子が噴出しだす。 みょんの眼は次第に生気を失い白目を剥き最後には、 「ぱ、ぱいぷ…かっとぉ……」 と呟き、その場に力無く倒れた。 まりさはそのみょんの最後を悲しそうな眼で見遣った後、帽子を被り直して先へと進み始めた。 この程度の事で感傷に浸っている場合じゃない。 そうまりさは自身に言い聞かせているようあった。 「れいむ、ゆっくりまっててね……まりさがぜったいにたすけだしてやるからね」 続く 後書き・はくれいむの喋り方はハクレイ4000年の歴史のせいでしょう。 by推進委員会の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2057.html
注・ゆっくりらしからぬゆっくりが出ます。 幻想郷の人里から少し離れた場所に緑の森が有る。 その森に住んでいるゆっくり達はとても幸せだった。 何故ならここには外敵である筈のれみりゃなどもほとんどやって来る事も無く、人里の人間も好んで立ち入る事も無かった。 時折、無謀なゆっくりが人里に悪さをしに行く場合も有ったが、再犯でもしない限りは直ぐに殺される事も無い。 流石に2,3度となれば別だが、そこまでの再犯を重ねるゆっくりで有れば、逆に人間に裁いて貰った方が平和になる。 幻想郷の人間は融和的で、罪を犯したゆっくりとその他のゆっくりを混同するなどという、短絡的で愚かな考えはしなかった。 その為、狩りや木の実の採取に長けたゆっくりまりさと、ぱちゅりーにも負けない明晰な頭脳を持ったれいむが率いるその群れは、 仲間同士で争う事も無く、困った事が有れば群れの仲間同士で協力し日々を謳歌していた。 ある越冬の時では、食料が芳しくない家の者に群れのゆっくり達が少しづつ食料を提供し、その家族は無事一匹も欠ける事無く冬を越した。 ある梅雨の季節では、暴風で破壊されたゆっくりの家が有ったが、群れのリーダーであるまりさはその家が直るまで住人を快く自らの家へと招き入れた。 相互扶助。 その群れのゆっくり達は全て、その言葉は知らずとも、その行動を実行する事が出来た。 かつ、いつまでも他の者に頼るなどという甘い考えのゆっくりなどは存在せず、この群れはとても良好に機能していた。 やがてそのまりさとれいむは群れの皆から祝福され結婚して家族となり、より一層の繁栄を為し得るかに見えた。 そう、一週間程前までは。 「ゆぅぅ、なんでこんなことに・・・」 薄暗い洞窟の奥で、ボロボロの身なりのれいむが居た。 少し前まで群れの長であったれいむである。 黒々とした艶の有った髪も見る影も無く荒れ、頭のリボンもネズミにでも齧られたかのように所々千切れている。 それにも増して、かなりの暴行を受けたのだろうか、その身体にはそこかしこに真新しい傷が出来ていた。 その場所にしても、洞窟の中の狭い一室の入り口を柵で覆い、まるで牢屋のように作られている事から、その状況が尋常で無いのは一目瞭然であった。 「まりさたちはだいじょうぶかなぁ・・・」 いつまでも続くかに思えた幸せの時を思い出してしまい思わず嗚咽が漏れる。 最愛のゆっくりを思い浮かべると涙が零れる。 部屋の片隅で丸い身体を震わせ、えぐえぐとただ悲嘆に暮れなき続けるしか、今のれいむには出来る事は無かった。 一週間前、群れで大規模な反乱が起こった。 その反乱により、群れを率いていた群れの幹部達の多くは捕らえられてしまったのだ。 夫であるまりさと子供達は間一髪の所で逃げ出す事に成功したが、れいむはその時自ら犠牲となり囚われの身となってしまった。 「ゆふふ、惨めなものね」 そんなれいむを嘲笑うような声が聞こえたかと思うと、数匹のゆっくりがその部屋の中に入ってくる。 先頭のゆっくりは普通のゆっくりには扱えぬ筈の火の付いた松明を口に咥えている為、部屋の中が一気に明るくなった。 ほとんどは数週間前に群れにやってきた新参のゆっくり達だが、中には昔から群れに住んでいた見慣れた顔のゆっくりも居る。 そして遅れて入ってきたゆっくり。 煌びやかな髪が松明の炎に照らされて鮮やかな光を放ち、その優雅な佇まいにはゆっくりで有りながらも何処か厳かな雰囲気を漂わせる。 薄暗い洞窟の中でそのゆっくりの存在感は一層際立ち、周りの者の眼を引く。 「ゆっ!?おまえは……ゆっくりしねぇ!!」 涙を流していたれいむであったが、その姿を一目見た瞬間、まるで鬼にでも取り付かれたかのような形相に変わり目の前のゆっくりに飛び掛かろうとした。 だが、周りの者達がすぐさま盾となりそれを阻み、れいむを跳ね飛ばす。 そのまま壁に叩き付けられ「ゆぐぅ」と短い呻き声を上げたれいむに、追い討ちとばかりに数匹のゆっくりが圧し掛かる。 「いつもむだなことをしないでね!!ゆっくりりかいしてね!!」 「いたいよ、ゆっくりやめっ、てびゅっ!!やめて、に”ゅ!!」 「ちーんぽ!!ちーんぽ!!」 まりさ種やみょん種、中には同種のれいむ種まで居る。 それらは足元のれいむの声などに一切耳を貸さずにひたすら飛び跳ねれいむを苦しめる。 数は元よりろくに食事も食べていない弱ったれいむは成す術も無く、そこから逃げ出す体力も無い。 「ゆぐっ、やめ”、びょひゅ……いだい”よ、ゆっぐりぃ」 「おお、よわいよわい」 「な”んでごんな……ゆべっ!!ゆびぃ!!」 反論を挟む余地の無い暴力。 段々とれいむの眼から生気が失われていき、その叫び声も「ゆぐっ!!ゆげぇ!!」から「ゅみゅ…、ゅきゅ……」と弱々しくなっていく。 淡々と行われるその暴行を冷ややかな眼で見詰めていたあのゆっくりがズイッと前に出ると、周りの者はそれに反応してすぐさまその場から飛び退いた。 後に残されたのは、その口から餡子を垂れ流し、楕円形の形になってしまった瀕死のれいむである。 「ゅ……ゅ……」 「おやおや、わらわがわざわざ会いに来てさしあげたのに、あなたはもうゆっくり死んでしまいますの?」 ビクビクと痙攣を始めたれいむの前で、明らかに他のゆっくりとは違う流暢な話し言葉で呼び掛けた。 すると、このまま死んでしまうかに見えたれいむの眼に少しだけ光が戻る。 そして動かぬ身体で眼だけを動かし、眼の前のそのゆっくりを憤怒の炎が宿った眼で睨み付けたのだ。 「ゆぐぐ…このぉ、おんしらずのゆっぐりめぇ……」 「ゆふふ、わらわはそなたの様なゆっくりに受けた恩など覚えがありませぬ」 「ゆぎぃぃ!!きさまなんか、れいむとおなじれいむなんておもえないよ!!」 憎しみを込めて力一杯に叫ぶと同時に、横から別のゆっくりが体当たりをし、れいむは又もや吹き飛ばされ壁に打ち付けられる。 「おまえのようなゆっくりとおなじにするなだぜ!!はくれいむさまとおよびするんだぜ!!」 取り巻きの一匹であるまりさが体当たりをし、そうれいむに対して叫ぶ。 その後ちらりと、はくれいむと呼ばれたゆっくりれいむに眼を向け、ニヤリと口元を歪ませる。 はくれいむに惚れているのだろうか。 まりさなりのアピールを欠かさない。 はくれいむと呼ばれたそのゆっくりはれいむ種でありながられいむ種ではなかった。 髪は透き通るように白く普通のれいむ種の黒とは対極にあり、暗闇の中でもその存在感は際立っていた。 更には頭に付けられているれいむ種のトレードマークであるリボンも、赤い部分は真っ白に染め上げられ、その姿は正に「はくれいむ」と呼ぶに相応しかった。 姿だけでは無い。 その雰囲気もれいむ種どころか、他のゆっくりと一戦を隔す程に厳かで幽玄。 ゆっくりでありながらも、カリスマと言うべきだろうか、他ゆっくりを引き付ける何か持っている。 だがその本質は残酷で冷徹。 一ヶ月程前に数匹の取り巻きと群れに加わり、独自のやり方で群れの指導者に気付かれずに多くの仲間を作っていき、 瞬く間に反乱を起こして群れを乗っ取った。 そう、彼女こそが例の反乱の主導者であり、眼の前のれいむの幸せを打ち砕いたゆっくりなのだ。 そして一方のれいむは打ち付けられた衝撃と積み重なった暴行のダメージで「ゆべぇぇぇ!!」と汚らしく餡子を吐き出し続けるばかりである。 「おお、ぶざまぶざま。わらわがこのようなゆっくりと同じなど、考えただけでおぞましい」 そんなれいむの様子を中傷した笑みで見ながらそう呟くと、周りの者も全くだとばかりに笑いの声をあげる。 れいむは言い返す気力も無く、ただただ餡子と涙を吐き出し続けるだけであった。 クスクスと笑いながらその様子を暫く眺めていたはくれいむであったが、ふと思い出したようにれいむに問い掛ける。 「……ところで、あなたの夫であるまりさは何処にいるのかしら?」 かなりの量の餡子を吐き出し若干落ち着いたれいむは、その言葉にピクリと反応する。 だが、返答する気配は見せず貝のように押し黙ったままだ。 「はくれいむさまがしつもんしているんだぜ、ゆっくりこたえるんだぜ!!」 「……ゅ、なんどきてもれいむはこたえないよ」 一瞬言葉に詰まった。 ここに来てから何度も尋問され、その度に拒否をして暴行が行われる。 餡子脳であるがその恐怖はこの一週間でしっかりと刻まれ、その痛みと恐怖を思い出して少し言葉に詰まった。 だが、れいむは愛するまりさを裏切る気など毛頭無い。 例えこのまま殺されても絶対に喋らないと、そう心に誓っていたのだ。 「ゆゆっ!?うそをつくんじゃないぜ、おまえがにがしたんだからどこにいったかしっているはずなんだぜ!!」 「れいむはしらないっていってるよ……ゆっくりりかいしてね」 「ゆぎぃ!!おまえそんなことをいってどうなるかわかっているんだぜ!?」 れいむの馬鹿にしたような受け応えに、頭に青筋を浮かべそうな程に真っ赤になりながらまりさは凄む。 だが、周りは敵だらけというそんな状況でもれいむは怯えた表情も出さず、その口元に笑みを浮かべ。 「でも……まりさならめのまえにいるよ?」 「ゆっ?どこなんだぜ!?」 そうれいむが呟くとまりさはキョロキョロと見渡すが、何故か周りのゆっくりは一斉にそのまりさの方を見る。 「ゆぅぅ、でもわたしのしっているまりさとはちがうみたいだね」 「ゆ?どういうことなんだぜ?」 「わたしのしっているまりさとちがって、ばかでゴミくずでまったくゆっくりできてないね」 「ゆゆっ!??」 れいむのその言葉に唖然となり、その餡子脳に考えを巡らす。 このれいむはなにをいっているんだぜ? まりさがきいているのはむれをひきいていただめまりさで、ここにいるのはこのさいきょうまりささまだけなんだぜ。 そのうえ、ばかでゴミくずでゆっくりできない? だれのことをいってるんだぜ? 暫くグルグルと考えを巡らすと、流石のまりさにもどういう事か理解出来てきた。 れいむはしてやったりという風にその口元に中傷の笑みを浮かべる。 「ゆぅ!!こ、こいつ、このまりささまをばかにしてるんだぜ!?」 「ゆゆっ、ゆっくりりかいできたんだね。ゴミくずからオガクズにいいかえてあげるね」 湯気が出そうな程に全身を真っ赤にして、瀕死のれいむ今にも飛び掛らんとするまりさ。 その様子に怯む事無くれいむは更に罵倒を続ける。 「あかくなったらつよくなるとでもおもってるの?さんばいなの?しぬの?」 「ゆぎぃぃぃ、まりさはおこったんだぜぇぇ!!ゆっくりしねぇ!!」 このまま嬲り者にされたまま生き長らえるくらいなら、このまま死んだ方が良いとれいむは思っていた。 そうすれば、れいむを助けに来ようとするまりさを危険な目にあわせる事も無い。 ただ一つ心残りが有るとすれば、最後に一度で良いから愛する家族に会いたかった。 それを思うとやはり涙が零れる。 そして死が怖くなり、段々と震えが起きそうになる。 れいむはそんな湧き上がるものを、歯が欠けそうなほどに奥歯を噛み締めてぐっと堪えた。 こんな非常なゆっくり達にこれ以上惨めな姿を晒さないためである。 まりさが地を蹴る瞬間、れいむはそっと眼を瞑る。 すると死ぬ事への恐怖も不思議と消えていった。 はくれいむに一矢報いたかったが、この馬鹿なまりさに屈辱を味あわせてやっただけで満足しよう。 れいむはそう思った。 「ゆっくりお止めなさい!!」 突然、その部屋に怒声が響く。 その声にれいむを殺そうとすべく飛び上がる瞬間のまりさは身を竦めて動きを止める。 周りの者も眼を丸くして、はくれいむの方を見遣る。 「おお、愚か愚か。そのようなゆっくりの罵詈雑言に耳を傾けるとは」 「ゆぅ……でもはくれいむさま、こいつはまりさのことをばかにして……」 「お黙りなさいな。このゆっくりは死ぬ気力も無いから口先であなたを煽動し自らを殺そうとしているだけなのですよ」 「ゅぅ……」 「それにこれ以上やっては死んでしまいます。このゆっくりにはまだまだ役に立って貰わないと」 まりさは、はくれいむにそう諭され眼を地面に落とす。 格好良い所を見せようと張り切ったつもりがこんな事になるとは思っていなかった。 「ゆふぅ……あなたはまだまだ激流にゆっくりと身を任せる事が出来てないようですわね」 そんな様子のまりさにはくれいむはそう呟き、一瞥する。 その顔はこの世の終わりとでも言おうか、先ほどから一転、真っ青に血の気が引いている。 「ですが、あなたの忠義心は十分に評価していますわ。今後もわらわの部下として精進なさい」 思いも寄らぬ言葉。 それを聞いてまりさの表情はぱっと華やいだ。 二転三転、器用なものである。 しかし、はくれいむのその飴と鞭の使い分け様はやはり他のゆっくりには真似が出来るものではなかった。 周りで見ている者達も、仲間といえどまりさの馬鹿さ加減に呆れる一方で有ったが、逆にそれを許すはくれいむの懐の深さを際立たせる所となった。 そしてはくれいむにとってこの一連の流れは十分に計算通りのものであり、愚かなまりさを傍に置いている理由の一つでもある。 正に悪のカリスマというべきであろうか。 「ゆゆっ、そんなことをいいながられいむをころすどきょうがないだけなんだよね!!」 その一連のやり取りの中、れいむが声を上げる。 はくれいむを挑発しているのだ。 「ゆふふ、愚か者は声だけは立派に張り上げますのね」 「そうやってゆっくりしてられるのもいまのうちだけだよ、はやくれいむをころさないと、ゆぐっ!!?」 そんなれいむの言葉を遮る様に周りのゆっくり達が二匹回り込み、その口に縄を噛ませる。 れいむはモガモガと口を動かすが一向に外れようとしない。 後ろでちぇんが器用にその縄を結び、猿轡が完成した。 れいむの唯一の抵抗を不可能にし、これ以上餡子を吐かれたりするのを防ぐためである。 「ふぁにするの!?ふっぐぃ、ふぁずしてね!!(なにするの!?ゆっくりはずしてね!!)」 「なにいってるかわからないよー♪」 ちぇんのその言葉に周りのゆっくりは苦笑し、バタバタと暴れるれいむに冷ややかな視線を浴びせる。 そして、はくれいむは周りの一匹に目配せした。 松明を咥えたゆっくりみょんである。 そのままみょんはじりじりとその松明をれいむへと近付けて行く。 「ふぐっ!!ふぁぐいよ、ふっぐりふぁがれてね!!(ゆぐっ!!あついよ、ゆっくりはなれてね!!)」 「ふぁめてね!!ふぁ……あ”ぐぅぅぅい”ぃぃぃぃ!!(やめてね!!やめ……あづぅぅぅい”ぃぃぃぃ!!)」 壁に追い込まれたれいむの身体にその松明の先端が押し付けられる。 逃げる事も適わずにその肌は焼け焦げていき、チリチリと髪が焼け千切れていく。 左右に避けようとしても、周りのゆっくりに押し戻される。 「ふ”ぇい”ぶが、ふぉべち”ゃう!!ふぉべちぁうっべばぁぁぁぁ!!(れいむが、こげちゃう!!こげちゃうってばぁぁぁぁ!!)」 「ゆへへ、さっきまでのいせいはどこいったんだぜ?」 まともな言葉も出せずに涙を流して壁へと張り付くれいむの無様な姿を見て、先ほどのまりさも溜飲が下がったようだ。 必死の形相のれいむに構わず、みょんはグイグイとその火をれいむに押し付ける。 辺りには焼き饅頭の香ばしい匂いが立ち込め、それが段々と焦げた匂いへと変わっていく。 すると急に、ぼわっとれいむの頭に火の手が上がる。 本格的に髪に引火してしまったのだろう。 「ふぎゅあ”ぁぁぁぁぁあ”あ”あ”あ”あ”ぁあぁ!!」 頭に火を付けて眼を見開き、言葉に成らぬ叫び声をあげたれいむに松明を持っていたみょんも思わず後ろに下がる。 引火した火を消そうとれいむがゴロゴロと地面に転がり、その様子に周りで見ていたゆっくり達も後ろへと退いた。 「びゅぅべいぶのびゃびばぁぁ!!おびぼんぎゃあぁぁあぁぁ!!(でいぶのがみ”がぁぁぁ!!おりぼんがぁぁぁぁぁ!!)」 「ぶぁふへへ、ふぁりしゃあぁぁあ!!ぶあぁぁぁりじゃあ”ぁぁぁ!!(だすけてぇ、まりじゃあぁぁあ!!ま”あぁぁぁりざあ”ぁぁぁ!!)」 一度は死を覚悟しながらも、じわりじわりと蝕む苦しみに思わずれいむはまりさに助けを求める。 だが当然まりさは来ない。 身体の全水分を眼から垂れ流しながら、必死に愛するゆっくりの名前を叫びながられいむは転げ回るだけだ。 やがてそのまま全身に火が廻り焼け焦げてしまうかに思えたその様子を、たじろぐ事も無く見ていたはくれいむは後ろに控えていためいりんに合図を出す。 すると、めいりんが咥えた水の入った容器をれいむに投げつける様にぶつけ、辺りに水が飛び散ると共に見事に炎は鎮火された。 「まりさもひをけすのにきょうりょくしてやるんだぜ!!ぺっ!!」 「わかるよー、ちぇんもしーしーしてあげるねー♪」 そのまま痙攣を繰り返すだけの動かないれいむに対して、無情にもまりさは唾を吐き掛け、ちぇんもチロチロと尿を浴びせ掛ける。 その後に、ちぇんはれいむが死んでいるのか不思議そうに眺めていたが、 未だにプスプスと煙をあげてはいるものの、何とかれいむは生きているようだ。 「めいりん、そのゆっくりの縄を外して差し上げなさい」 「じゃお!?じゃおおおおおお!!」 戸惑いはしたものの、めいりんはれいむに結び付けられていた猿轡を外しに掛かった。 縄は半分焦げ付いていたので、結び目を解く必要も無く簡単に外れる。 そのままめいりんは、半分焦げ饅頭になったれいむの顔を覗き込んだ。 髪は以前の半分の所まで焼けて巻き上がり、アフロとまではいかなくても奇抜なものとなっていた。 その上リボンも所々焼け、穴がそこかしこに覗き、以前のれいむからは見る影も無い。 「……ゅひゅぅ……ゅひゅ……」 顔を近付けてみるとどうやら息をしている。 めいりんはホッと、ゆっくりには存在しない筈の胸を撫で下ろした。 今はこのようにはくれいむの部下となってはいるものの、めいりんは自身を群れに加え、 野生では虐められるのが当たり前の自分を一ゆっくりとして扱ってくれたれいむが好きであった。 ただ、反乱の時は突然の事でどちらに味方すれば判らず、オロオロしている内に群れははくれいむの手中に収まり、めいりんも言われるがままに部下となってしまった。 しかしそうは言ってもそう簡単に割り切れるものでは無く、このようにはくれいむの部下でありながらも気付かれずにれいむの身を案じる事もあった。 「めいりん、よく出来ました。ゆっくりお下がりなさい」 「じゃおぉぉぉ……」 「ゆ!?このばかめいりん。ゆっくりさがれとおっしゃってるんだぜ!!」 「じゃお!?」 はくれいむの呼び掛けにすぐに応えなかっためいりんに、まりさが身体をぶつける。 大した痛みは無いものの、目の前のれいむに何もして上げられない事を悔しく思い、めいりんは悲しい顔をしたまま後ろへと下がる。 残されたれいむは火傷の痛みだろうか、白目を向いたまま時折ビクリビクリとのた打ち回る。 「ゆふふ、今日はこのくらいかしらね」 れいむのその様子を満足そうに眺めながら、はくれいむは口元に笑みを浮かべる。 そのまま近くのゆっくりに何事かを囁くと、くるりと踵を返してその場を後にしようとした。 後ろには側近の者達が続き、後には命令を受けたゆっくりとその他に数匹のゆっくりが残る。 監視役とれいむの世話をする群れに長く居たゆっくりである。 はくれいむはこの様にして群れに長く留まっていたゆっくりの自分に対する忠義心を試し、旧体制の反乱の芽を潰すよう心掛けていた。 れいむの世話をしているゆっくりが何かしら不穏な動きをすれば監視役がそれを報告し、即座に対処する。 新たなる群れを作るのに不穏分子は早く潰すに越した事は無い。 敢えてれいむに近付け、その選別を行うのだ。 「あ、そうそう……」 突然ピタリと、はくれいむはその歩みを止め「今日はそなたの親友を招いていたのであった」と振り返らずに話し出す。 「先日であろうか、そなたを助けようとわらわ達に歯向かった愚か者達がおってな」 「確か主犯格はぱちゅりーと名乗る者だったらしいが……」 その言葉に、混濁していたれいむの意識が揺り動かされる。 れいむの最も信頼のおけるゆっくりの内の一匹。 子供の内から一緒に群れで暮らしてきたゆっくりに違いない。 「ちぇんよ、あれを持って来させよ」 「わかるよー♪」 はくれいむにそう言われたちぇんはピョンピョンと何処かに跳ねて行き、暫くすると何匹かのゆっくりが風呂敷に包まれた何かを引き摺るようにやってきた。 ゆっくりと、れいむの捕らえられた部屋へと風呂敷が運び込まれる。 「ぱ……ちゅ、りぃ……?」 グルリとれいむの眼が白目から黒目へと切り替わり、弱々しく声をあげる。 眼の前の風呂敷の中にぱちゅりーが居るのだろうか? 自分の為に捕らえられてしまったというのか? そんな疑問が浮かび、哀しみが込み上げて来る。 その一方で不謹慎ではあるが、今まで会う事が出来なかった仲間に会う事が出来る事への喜びが湧き上がったのは確かであった。 れいむのその眼に微かに光が戻ったのを確認すると、はくれいむが合図を出す。 するとばさりとその風呂敷が広げられ、そこには丸い物体が置かれていた。 紫色の帽子に月の飾りを付け、その更に紫色の美しい髪は昔のまま色褪せてはいない。 間違い無い、れいむの親友のぱちゅりーだ。 「ぱちゅ、ぱぢゅりー、よがっだ、いぎでだんだね」 もう、ろくに動かない身体をズリズリと動かして、そのぱちゅりーへと近付く。 半分焦げた身体に痛みがまだ有ろうが、眼の前に親友がやってきてくれた事でそんな事など気にもならなかった。 ジッとれいむの方を見詰めるぱちゅりーに少しづつ近付いて行く。 「ぱちゅりー……ぱちゅり……ぃ?」 やっと肌を接する程に近付いて、ある異変に気付く。 このぱちゅりー、先ほどから身動ぎ一つしないどころか、眼を開けたまま瞬き一つしないではないか。 それに近くで見ると判る。 肌が何処か変な、何と言うか乾いているというべきであろうか、あの瑞々しさが無い。 更に近付いて、肌を接してみるとあの柔らかいぱちゅりーの身体とは思えない、岩肌にも似た感触を覚える。 そのままぱちゅりーに呼び掛けながら、顔を覗き込む。 返事も無く、そしてその瞳は眼の前にいる筈のれいむを捕らえることも無く、何処かずっと遠くを見ているようだ。 光が無いその眼もやはり乾いていた。 周りのゆっくり達もその異常さに気付く。 「こ、これ……」 「それを作り出すのには苦労した」 異変に気付いたれいむの様子に、満足そうにしながらはくれいむは説明を始める。 「わらわの美意識からしても、反逆者とはいえそのぱちゅりーは中々に美ゆっくりであってな」 「どうにかして、その姿を永遠にゆっくりと留められないだろうかと思案したのじゃが……」 凍り付いた表情でれいむは、はくれいむへと視線を泳がす。 「他の反逆者に協力してもらって、どうにか作り上げる事に成功したわ」 「樹に吊るして下から炎で燻しあげる……そなたのような愚か者には理解出来ぬだろうが、燻製焼きというものであってな」 「ただ普通にやっては、他の反逆者のように最後は見るに耐えない悲惨な表情で死に絶えるものだから」 「そのぱちゅりーは飾りを取った後、全身にきつく布を巻きつけて表情が崩れぬよう工夫したのじゃ」 この眼の前のゆっくりは何を言っているのだろう? れいむはそんな表情で何も言えずにその言葉を聴き続けた。 「一番難しかったのは、閉じたままはつまらぬ故に事前に眼の周りを動かぬよう焼き固めておく事だったわ」 「その時には酷く抵抗しておった……むきゅむきゅと泣き叫びながら、そなたの名前も大声で叫んでおった」 「後は両目だけを覗かせ、先ほど説明したように蓑虫の様に布を巻きつけ吊り上げ、一晩中下から煙で燻し上げたのじゃが……」 「そこから覗く瞳はひたすらに涙だけを流し、赤ん坊のように潤んだそれは何処か愛おしさすら覚えたのぅ」 「絶命する随分前には、もはや瞳の水分は完全に失われて何も見えてはおらなかった様子だが」 途中から、れいむの頭の中を鐘がガンガンと打ち鳴らすように感覚を覚えた。 普通のゆっくりであればはくれいむの喋る事を半分も理解できなかったであろうが、半ば賢いだけにれいむはその残酷な情景を頭に浮かべてしまった。 先ほど自分が味わったあの苦しみと息苦しさを、ぱちゅりーは一晩中も味わわされたのだ。 そうでなくてもぱちゅりー種は元来ぜんそく持ちである。 少しのホコリや砂を呼吸が出来なくなる程、それを煙で燻し上げるなどどれほどの苦しみであろうか。 想像を絶する。 「ゆ”あ”あ”ぁぁぁぁぁぁ、ばぢゅりぃぃぃぃ!!くるしかったよね?ゆっくりできなかったよね?」 眼の前の最早形だけで命の無いぱちゅりーに、それでも頬をすり合わせて涙を流す。 れいむの頭にぱちゅりーと過ごした、数々の想い出が去来する。 まだ賢く無かった子供の頃に様々な事をぱちゅりーから学んだ。 群れの皆で協力して、れみりあを撃退した時に一緒に群れを指揮した事。 親友でありながらも師でもあったぱちゅりー。 まりさとの結婚で一番喜んでくれたのもぱちゅりーだった。 それらを思い起こすと、身体中の水分が涙となって流れ出していく。 それが段々と黒々しくなり、完全に餡子が流れ出しても止まる事は無かった。 そして少し前に、ぱちゅりーに会えると喜んだ自分を呪った。 そんな馬鹿な自分のせいでぱちゅりーが死んでしまった。 そう思えて仕方なかった――そして。 「ゆっぐじぃぃぃ……ごろじでやるぅぅぅぅ!!」 餡子の涙を流したその顔で、はくれいむの方へと向き直る。 その余りの迫力に、周りの取り巻きは怯えた表情を浮かべ、後ろへと思わず遠退く。 だが、肝心のはくれいむはというと、涼しげな表情でその様子を嬉しそうに眺めるばかりであった。 「ゆっぐじぃぃぃ、ゆっぐじぃぃぃぃ!!」 ずりずりと火傷で動かない身体を引き摺ってはくれいむの方へと向かう。 ゆっくりとは思えないどの行動の原動力は、凄まじい怒りに寄るものだろう。 それにハッとしたかのように、取り巻きのゆっくり達が間に割って入るがはくれいむは「ゆふふ、よいよい」とすぐさま退けさせた。 そのまま後少しで、はくれいむに喰いつける距離まで辿り着こうかという地点で、バタリとれいむは突っ伏すように顔を地面に向けて動かなくなってしまった。 「じゃ……じゃおおぉぉぉ!!」 近くで怯えながら見ていためいりんがすぐさま駆け付け状態を確かめる。 気絶しているだけで、どうやら死んではいないようだ。 だが、その顔は憤怒の表情で固まったまま動かない。 「じゃおおぉぉぉ!!じゃおぉぉぉ!!」 「なにやってるんだぜ、ゆっくりそいつにとどめをさすんだぜ!!」 取り巻きのまりさが声を張り上げる。 愛しのはくれいむを殺そうとしたそのれいむをそのままにしておくべきではないと思ったが、自分が近付いて殺す事は怖くて出来なかった。 めいりんは涙を流しながら顔を左右に振りそれを拒否する。 再びまりさが声を張り上げるがそれも拒否する。 「まりさのいうことがきけないばかめいりんなんて、ゆっくりできなくしてやるんだぜ!!」 「じゃ、じゃおおおぉぉぉん!!」 怒りのその言葉とゆっくり出来なくされると言われ、困惑するめいりん。 そんなやり取りと眺めていたはくれいむが、ゆっくりと指示を出す。 「ゆふふ、まだまだその愚か者にはゆっくりと楽しませて貰わなければならぬ」 そう言うと、周りで様子を見ていただけのゆっくり達にすぐさま治療に当たらせた。 どういう事かよく判らないといった表情のまりさも、ハッと我に返ると先ほどとは正反対に 「そのれいむをころすな」や「もしできなかったら、そいつらもゆっくりできなくするんだぜ」などと喚いている。 はくれいむはそれを暫く眺めていたが、ゆふふと笑い声をあげると踵を返して、今度こそは本当にその場を後にした。 そして更に一週間後、その洞窟の誰も知らない空洞の中を這いずるように一匹のゆっくりが進んでいた。 ゆっくりまりさである。 そのまりさはブツブツと何事か呟きながら、大人のゆっくりでは狭いその空洞の間を縫うように進み続ける。 その眼には何かしらの決意が見て取れた。 随分と進んだ後、開けた場所に出ると同時に一匹のゆっくりが目に付く。 反乱の一端を担っていてゆっくりみょんである。 見張りであろうか。 深夜のためうつらうつらと身を揺らせるそのみょんに気付かれぬよう、まりさは帽子から鋭く尖った木の枝を取り出す。 それを口に咥えると、ゆっくりとその背後へと近寄る。 すると突然、まりさの気配に気付いたのだろう。 みょんが振り向きそのまりさを確認すると、仲間を呼ぶために声を張り上げようと身体を膨らます。 その一瞬の間に、まりさはゆっくりしないで口に咥えた凶器をみょんへと突き刺す。 何が起こったのかイマイチ理解出来てないみょんの身体の中心を抉るようにそれを掻き回し素早く抜き取る。 するとそこから大量の餡子が噴出しだす。 みょんの眼は次第に生気を失い白目を剥き最後には、 「ぱ、ぱいぷ…かっとぉ……」 と呟き、その場に力無く倒れた。 まりさはそのみょんの最後を悲しそうな眼で見遣った後、帽子を被り直して先へと進み始めた。 この程度の事で感傷に浸っている場合じゃない。 そうまりさは自身に言い聞かせているようあった。 「れいむ、ゆっくりまっててね……まりさがぜったいにたすけだしてやるからね」 続く 後書き・はくれいむの喋り方はハクレイ4000年の歴史のせいでしょう。 by推進委員会の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/45.html
225 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 02 48 ID vvg88tHe 寿司が食いたい。 綾瀬喜十郎は、風呂場の、もうもうたる湯気の中で、何故か唐突にそう思った。 回る寿司でもいい。 回らない寿司なら、なおいい。 かねは、ある。 先週、こっそり馬で当てた二万が、まだそのまま残っている。 この金の事を妹たちに知らせる気は当然、無い。奴らがその金の存在を知れば、たちまちの内に没収されてしまうからだ。 “うちの家計はいま、苦しいんですのよっ” の一言で。 幸い、晩飯もまだだ。腹も減っている。 そう思ったら、矢も盾もたまらず食べたくなってきた。 ――はまち、うなぎ、たい、甘えび、納豆巻き。赤だしも飲みてえなぁ……。 喜十郎は、洗面器で湯舟から、その熱い湯を自分の顎にぶちまけた。 泡はもう残っていない。 ヒゲの剃り跡がちりちりするが、彼は気にせず、湯船に身を沈めた。 熱めに沸かし直した湯が心地いい。 髪は洗った。 身体も洗った。 ヒゲも剃った。 後は身体をあっためて、あがるだけだ。 寿司食いてえなぁ 彼は、心中に再び、そう呟いた。 しかし、彼は知っている。 結局、自分は寿司を食べに行く事は出来ないだろう、という事を。 この我が家に於いて、自分に、そんな自由は与えられていないという事を。 すなわち――。 「――お兄様、お背中を流させて頂きます」 扉がからりと開くと、胸元をかろうじてバスタオルで隠した、全裸同然の少女たちが風呂場に入って来た。 一人ではない。 五人だ。 年齢はまちまちだが、そのいずれもが美しい。もしくは美しく育つであろう、そう思わせる美少女たちであった。 彼の――喜十郎の妹たちであった。 226 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 04 26 ID vvg88tHe 無論、彼は、この風呂場への闖入に、何の許可も与えていない。 しかし、この少女たちは、なんのためらいも無く、まるで当然の義務を果たす者のように、兄の眼前に肌を晒し、兄が浸かる湯船から湯をすくい、身体に浴びる。 それでも、少女たちの一人は、兄の一目瞭然な不機嫌さに、やや怯えた様子を見せる。 「あの、お兄ちゃま、やっぱりその、勝手に入ってきて……怒ってる?」 喜十郎は、半ば諦めたように苦笑いを浮かべ、泣きそうになっている妹の一人に応えてやった。 「……とにかく、取りあえず湯に入れ。風邪を引く」 「あっ、はいっ!」 彼女たちの中に一種、ほっとした空気が流れたようだ。 基本的には、いかに傍若無人な彼女たちとはいえ、妹たちは妹たちで、やはり兄の機嫌は気にしていたのだろう。 「それでは失礼いたします」 そのまま彼女たちは、無駄に広い湯舟に、次々にその肢体を沈め、年頃の少女らしい雑談を交わし始めた。 喜十郎は、そんな妹たちの様子を見て再び溜め息をついた。 「――桜(さくら)、ちょっといいか」 「はい?」 彼女たちの中でも一際長身の少女が、その声に振り向く。 ツインテール、というのだろうか。腰まで伸びた栗色の長髪を左右に分け、両方の肩口で結わえ、垂らしている。そんな子供っぽい髪型と、大人びた相貌が生み出すアンバランスさが、彼女に絶大な魅力を与える効果をなしていた。 その頬が淡く桃色に染まっているのは、決して熱めの湯のせいだけではない。 喜十郎の声音は、そんな彼女の期待には、まず添わないであろう険しさを含んだものであったが、――桜と呼ばれた彼女の表情には、それを残念がる気配は微塵も無く、ただ、彼に声をかけられた、という事実が嬉しくてたまらないようであった。 「昨日言ったはずだな。今後の俺の入浴には、介添えは一切無用だ、と」 「ええ」 「なら、何故ここにいる」 湯舟の隅で、自らの背を壁にして他の妹たちに聞こえないように一応、気を遣う。 この質問を、何故この場にいる妹たち全員ではなく、桜個人に問うのかと言えば、この桜こそが、綾瀬家の六人姉妹の長姉であり、どんな時でも常に彼女たちの音頭を取る役割を担っているからだ。 「本当に分からないの? ――全く、お兄様ったら……」 227 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 05 23 ID vvg88tHe まただ。 桜から“お兄様”と呼ばれるたびに、喜十郎は、何とも言えないむず痒さのような感覚を背中に感じる。 実際、喜十郎と桜は、半年しか誕生日が離れておらず、学校でも共に同じ教室で、机を並べて授業を受けている。だから、そんな桜が自分の事を“兄”呼ばわりするのは、喜十郎にとって、かなり奇異に感じられる行為だった。 その感覚は、無論、今でも変わっていない。 湯気の中でうつむいたその美貌に拡がったのは、嘲笑、とでも言うべき表情だった。 「簡単よ、お兄様に理解してもらうためよ」 「理解?」 桜は自分の唇を、れろり、と舐めた。 その真っ赤な舌と、唇の端からこぼれ落ちる一筋の唾液が、たまらなくいやらしい。 もう、さっきまでのひそひそ声ではない、風呂場にいる全員に聞かせる声だった。 いまの桜は、まぎれも無い、ここにいる妹たち全員の利益代表として、兄と交渉しようとしているようだった。 「お兄様は、これでも由緒正しき綾瀬家の時期当主。常に身だしなみには気を遣ってくれないと、私たちの恥にもなるわ」 音すら立てずに桜が湯舟から立ち上がる。 その背後には、さっきまで雑談していたはずの四人の妹たちまでが、無言でこっちを見ていた。桜と同じく、年齢に似合わぬ潤んだ光をその目に宿らせて。 「だから私たちが、お兄様を綺麗にするの。私たちに出来る範囲でね」 喜十郎の両頬に手を添え、熱のこもった目線で彼を見下ろし、桜は兄に訴える。 「すまないが、俺はそこまでガキってわけじゃない。自分の身体くらい自分で洗える」 喜十郎は、何かから逃れるように桜の手を払うと、湯舟から立ち上がった。 「今日だってもう、洗うべきところは洗い終わったよ。当然、背中もな」 捨て台詞のように言い放つと、振り向きもせずに彼は湯舟から出た。――はずだった。 228 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 07 49 ID vvg88tHe 湯舟の敷居をまたいだ瞬間、喜十郎はひっくり返って湯舟に落ちた。 彼の重心が片足に移った瞬間、桜が喜十郎の手首を引っ張ったのだ。 「あらあら」 兄を湯舟に沈めてなお、涼しい顔で桜は妹たちを振り返る。 「私には洗い終わってるようには見えないのだけれども……みんな、どう思う?」 「そうですわねぇ。確かに、兄君さまのお背中は、まだまだ垢が残っておられるようにお見受け致しますわ」 ポニーテールにくくってなお、桜と同じく、ほとんど腰まで隠れる長髪の少女――春菜(はるな)が、長姉の問いに歌うように答える。 「うん。ぴっかぴかに洗えば、お兄ちゃまはもっともっと綺麗になるって詩穂も思うなっ」 肩のあたりでこざっぱりと切り揃えられたショートカットの少女――詩穂が、ポニーテールの姉に調子を合わせる。 「くしししし、うん。ヒナもヒナもそう思うっ」 五人の妹たちの中で一番幼い少女、いや幼女か?――比奈(ひな)までもが、きらきらと輝く瞳を兄に向けていた。さっきまで遊んでいた船の玩具には、もはや一片の興味も残っていないようだ。 「大丈夫ですか兄上様。お湯は飲まれてはおられませんか?」 桜や春菜同様、腰まで伸びた長髪の少女――真理(まり)が、喜十郎に寄り添い、気遣う。もっとも、彼女の髪型はポニーテールではなく、その圧倒的な量の黒髪を三つ編みにまとめている。 「ああ、ありがとう。真理」 喜十郎にとって姉妹の中では、この真理こそが一番気の置けない存在であった。 「でも――」 ただし、 「兄上様のお体で洗い残しがあるのは、どうやらお背中だけでは無さそうですわ」 「真理……!」 一度スイッチが入ってしまえば、この真理という少女は、姉妹の中で一番の残忍性を発揮する、サディスティンに変貌するという欠点があったが……。 229 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 09 17 ID vvg88tHe 「五対一。民主主義の勝利ね」 いつの間にか彼の背後に忍び寄った桜に反応して、思わず立ち上がった喜十郎の背を、春菜が羽交い絞めにする。 「くっ、放せ春菜っ!」 「みなさん、用意はよろしいですかっ?」 「いつでもいいわよっ」 妹たち全員の位置を確認するように、桜が素早く視線を走らせ、そのまま叫ぶ。 そして、その声に呼応するように少女たちが各々、配置につく。 まるで手馴れた作業をするように、その動きには迷いが無い。 詩穂は喜十郎の右手を。 真理は喜十郎の左手を。 比奈は喜十郎の股間を。 春菜は喜十郎の背中を。 そして桜は、そのまま喜十郎の正面に自らの身体を預け、その豊満な乳房を押し付ける。 いかに男女に体力差があったとしても、五対一では所詮、勝負にはならない。 喜十郎は、全身を妹たちの肉の檻に封じられ、微動だに出来なかった。 「放せっ! 放せっ! 放せぇぇっ!!」 「いやですわ」 かぷり。 「――っ!!」 春菜が、背後から彼の耳朶を甘噛みする。あたかも捕らえた獲物の悲鳴を塞ぐかのように。さらに次の瞬間、桜が、だらしなく開けた喜十郎の唇を文字通り塞いでしまう。無論、花びらのような自らの唇で、である。 「ああ~~~っ、桜ちゃんずるぅいっっ! 詩穂もお兄ちゃまとキスしたいぃぃ~~~」 「ふふふ……詩穂ちゃんもあまり、がっつかないで下さいまし。兄上様のお体がどこでも美味なのは、あなたもご存知でしょう?」 そう言うと、真理は兄の左乳首に舌を這わせる。 「――っっっ!!」 もとより口を塞がれた兄の悲鳴は、真理のいやらしい囁きと桜のキス、さらには彼の耳朶にしゃぶりつく春菜の口舌音によって、簡単にかき消されてしまう。 「んふふふ……ほんと、美味しゅうございます、兄上様……」 「ああっ! じゃあ、じゃあ、詩穂もぉ!」 その上で、今度は詩穂の舌が、彼の右乳首に襲い掛かる。 「んぐっ! ふぐっ! んんんんっ!!」 230 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 11 17 ID vvg88tHe 二つの乳首と耳朶、さらに舌をしゃぶり尽くす情熱的な接吻。 妹たちが風呂場に闖入してきた時点で、例えこうなる事は予想していたとしても、やはり喜十郎の陽根は、硬く膨れ上がってしまった。――最も幼い末の妹、比奈の眼前で。 「くししし。それじゃあ、おにいたま、一番気持ちのいいところ、ヒナが責めてあげるね」 何度、快楽の中に身を浸そうとも、この瞬間だけは――この屈辱だけは慣れる事が出来ない。少女どころか幼女と呼ぶに相応しい末の妹に、自分のペニスを弄ばれる、この瞬間だけは。 いや、比奈だけではない。 この少女たちは、自分を責める上で、まだ全然、本気になっていないのだ。 何度も何度も彼女たちに、この身を嬲りまわされていた喜十郎には分かる。 その証拠に――。 「ねえ桜さん、今日の“ノルマ”はどのくらいになさいます?」 耳朶から口を放した春菜の言葉に、桜も応えるように兄の舌を解放した。 「そうねえ、……二時間ってところかしら」 にっ、にじかんっ!? 喜十郎は、真っ青になってふるふる、ふるふると首を振る。 そんな彼を見て、桜は慈しむような、とびっきりの笑顔を浮かべる。 そして、自由になった喜十郎の唇に、今度は右側から詩穂が跳びつき、深く己の舌を絡ませる。 ノルマとは、即ち妹たちが兄を責める時間的・回数的条件である。 六人の妹たちが常時身辺に付きまとう彼にとって、時間・回数に制限を定めない性交渉は、彼の日常生活に支障をきたす可能性があり、それゆえに彼女たちは“ノルマ”という形で、互いに歯止めを掛け合っていた。 しかし、やがて“ノルマ”は変質し、いまや妹たちが集団で兄を弄ぶ際の、単なる指針と化してしまっていた。 「二時間は長いですわ、桜ちゃん。せめて一時間で切り上げないと、折角の深雪(みゆき)ちゃんのお料理が冷めてしまいますわ」 「あっ、それ確かにまずいよぉ。深雪ちゃんって普段やさしいけど、怒ったらすっごく怖いんだよぉ。ヒナ、一度怒られたことあったもん」 231 淫獣の群れ sage 2007/10/09(火) 04 12 15 ID vvg88tHe 深雪とは、詩穂の姉にして真理の妹。つまり、この場にいない六人目の妹のことである。 現在、彼女は厨房で家族全員分の夕食を調理している最中であり、十代前半にして、己の料理の味が落ちる行為を何よりも嫌う、こだわりの料理人であった。 もっともそれは、喜十郎に関する好意の量が、他の姉妹に比較して少ないという意味では決してない。 彼の身体を愛撫するのと同次元で、彼に食べさせる愛情料理に精魂を傾ける、というだけの話であり、要は他の姉妹たちと、その人間的本質は何ら変わらない少女なのだ。 「では桜さん、今回の“ノルマ”は一時間ということで宜しゅうございますか?」 「……仕方ないわねえ。不本意だけど今日のところはこれで勘弁してあげる」 「良かったですわねえ兄君さま。桜さんの優しさに、きちんと礼を言わねばなりませんよ」 そう言いながら春菜の指が、背後から喜十郎の肛門に、ずぶりと侵入する。 「――ぃぃぃぃっっ!!」 思わず詩穂から、口をもぎ離して悲鳴をあげる喜十郎。 「ああっ! お兄ちゃまったら、ひどいなぁ、もう!」 温和な詩穂にしてもムッとしたのか、右乳首に爪を立てる。 「そんなひどいお兄ちゃまには、お仕置きだよっ」 「ぁぁぁっ!! いたいいたい詩穂ぉっ!!」 「痛いの? 痛いのはどこなの、お兄ちゃまっ?」 「むねがっ、むねがいたいよぉっ!」 「胸じゃないでしょっ!? なんで教えた通りに言えないの、お兄ちゃまっ!!」 詩穂が、乳首もちぎれよと言わんばかりに、さらに爪に力を込める。 「あああああおっぱいれすっ!! いたいのはおっぱいれすぅっ!!」 「あら詩穂ちゃん、もう兄上様にお仕置きするのですか?」 半分うっとりしながら彼の左乳首を舐めていた真理も、 「仕方ないですわねえ、もう少し兄君さまで楽しみたかったんですけど……」 彼の肛門をほじくり返しながら、背骨に舌を這わせていた春菜も、 「ま、いいじゃないの。これはこれで楽しいんだから。ね、お兄様?」 詩穂の唇が離れた後の、喜十郎の右乳首を責めていた桜も、 「くしししし、わるく思わないでね、おにいたま。ヒナはただ、くーきを読んだだけなんだからね」 亀頭をちろちろと舐めていた比奈も、 一斉に、喜十郎の身体に歯と爪を立て始めた。 「~~~~~~~~~っっっ!!!!」
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2064.html
「ゆっくりちくろ」 ある男がゆっくりを求めて山へ入った。 ゆっくりが幻想郷の甘味事情を一変させて随分と経つ。 加工所による廉価で安定した供給は、芋や果実では味わえない濃い甘さを庶民の手に届くようにしたが、 日々食べるとなれば滅多に食べれない頃とは味も変わってくる。 昔は甘味と言えば滅多に食べれないからこそとんでもなく甘く、売るほうも塩を入れて少ない砂糖で甘く感じさせたり、 どぎついほどに甘い物が高級品として出回ったものだが、毎日食べれるほどに普及した今では、甘さ控えめでいくつでも食べられる味が人気だ。 しかし男はそれでは満足できなかった。頭が割れるような強烈な糖分の塊が欲しかった。 そのためには自分で作るしかない。 開けたところに出るとゆっくりがいた。近づくと 「ゆゆ!にんげんがきたよ!」 「ゆっくりにげるよ!」 などと声がする。 「まりさがおとりになるからみんなはゆっくりいそいでね!」 そう言って一匹のまりさがこちらへ向かってきた。作戦を自分でばらしているのでは世話がない。 「ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだよ……ぜ!ば、ばかなにんげんはさっさとでていくんだぜ!」 近づいた後、人間の手が届かない所でとび跳ねながら挑発してくるまりさ。演技は大根だ。 男が目線を上げると、群れが右手の雑木林に入って行くところだった。 「なにそののろさ。うんちなの?しぬの?くやしかったらまりさをつかまえてみるんだぜ!」 男が歩きだすと大げさなほど後退して挑発し、誘うように左手へ跳ねていく。 (せめて口に出して言わなければなあ) そう思いながら男はまりさを無視して群れが消えた雑木林へ向かう。 「どぼじでそっぢにいぐのおおおお!?」 シカトされたまりさが口調も忘れて叫ぶ。 「まりざはごっぢなんだぜえええ!?ばがにずるまりざをいじめてみるんだぜええ!?」 男は顔も向けず、ゆるゆると雑木林に近づいていく。 まりさは必死に跳ねて追いつくと、ぼよんぼよんとコミカルな音を立てて男の足に体当たりをした。 「そっぢにはなにもないんだぜ!?まりざのおうぢはむこうなんだぜええええ!?」 男が歩くたびに蹴られることになりながら、まりさはまとわりつくのを止めない。転がってもすぐさま向かってくる。 雑木林に入ると逃げたはずのゆっくり達がいた。 「まりさがにんげんをひきつけてくれるかられいむたちはゆっくりできるよ!」 「ゆっくりー♪」 どうやらまりさの囮で安心していたらしい。警戒も怠ってゆっくりしている。 「みんなにげでええええええ!」 まりさの声でれいむが視線を上げると、騙したはずの人間と、土で汚れたまりさがいた。 「俺は饅頭が食いたい。一匹差し出すなら他の奴らは見逃してやろう」 男は群れの前でそう告げる。 男が目の前に現れた時は狂乱状態になったが、逃げ出そうとする奴らは 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりしていってね!」」」 条件反射の硬直時間を利用して手近な枝で串刺しにされた。 「逃げたら刺す」 比較的賢いゆっくりの集まりなのか、逃走が不可能と知るとおとなしくなった。 一人差し出せば、他全員の命が助かる。ゆっくりに対しては破格の条件と言えた。では、誰が犠牲になるか。 「おにいさん!さっきはごめんなさい!おわびにまりさをたべてね!」 そう言って真っ先に声を上げたのがおとりになったまりさだった。挑発の必要がなくなったからか、だぜ口調ではなくなっている。 「まりざだめえええ」 れいむが泣いて抗議をする。 「ゆ!れいむ!むれのみんながみつかったのはまりさのせきにんだよ!れいむはまりさのぶんもゆっくりしてね!」 「まりさはむれのためにきけんなおとりをやってくれたよ!これいじょうぎせいにならなくていいよ!」 群れ全体が沈痛なムードに包まれる。さながら出征の壮行会。 「あー悪いんだけどな」 「ゆ?」 「お前は土で汚れてるから駄目」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおお!?」 まりさの泣き顔が歪む。いったん決まりかけた安堵感を奪われ、群れのゆっくりたちの顔には戸惑いが浮かぶ。 まさか、自分が食べられなくてはいけないのか。原始的な恐怖は餡子脳を縛るには十分過ぎた。 群れのゆっくりはどれも平均より清潔で丸々としていた。どれを食べても当たりが期待できる。 「そっちで選べないんなら勝手に選ぶぞ」 「おにいさん、れいむをたべてね!」 沈黙に痺れを切らせた男がそう声をかけると、弾かれるように先程のれいむが叫んだ。 「どぼじでぞんなごどいうのおおおお!?」 「れいむいっぢゃだめえええ!」 「ぢんぼおおおおお!?」 「むぎゅうううう!?」 「おねーしゃんちんじゃやだあああ!」 随分と信望があるれいむなのか、群れ全体が怒号を発して引き止める。そんな群れを慈しみをこめた目で見渡したあと、 れいむは男に向き直った。 「おにいさん!れいむならだいじょうぶだよね!?これでむれのみんなはゆっくりできるんだよね!?」 「直接危害は加えん」 そう返事をしてれいむを掴み、帰ろうとする。外では手も汚いし、携行の飲料水も乏しい。 「みんな、ゆっくりしていってね!」 「「ゆ、ゆっくりしていってね!」」 「むきゅん!だめよ!」 愁嘆場に背を向けたところ、物言いがついた。 「このばでたべてくれないとにんげんはしんじられないわ!」 「なにをいっでるのばちゅりぃぃぃ!?」 すわ身代りかと思えば予想外の抗議に、まりさは信じられないといった形相で叫ぶ。 「みんなよくきいて!にんげんはずるがしこいのよ!たべたあとににげたからってうそをついてまたくるかもしれないのよ! つらいけどむれのあんぜんのためにはみんながれいむはきちんとたべられたというしょうにんになるしかないの!」 「そんな……」 なんという猜疑心。その気ならば嘘をつかずに一斉に捕まえれば済むだけなのだが、第一ゆっくり相手の約束なんざ人間の温情で 成立しているようなものなのだが、気を回す割りにはその辺の前提がすっぽり抜けている。所詮饅頭の知恵。 男は腹が減っていることは確かだったので、適当に塵を払ってかぶりつく。 「ゆっ……!」 れいむの押し殺した声が聞こえた。さらりとした上品な甘さ。美味いが、この程度なら人里で買えば済む。 「あんま美味くないなあ」 「れいむがおいしくないわけないでしょおおお!!!」 男のつぶやきに、まりさがどこかずれた反論を叫ぶ。 この短時間に感情の振幅が激しかったためか、髪が乱れて目の輝きが尋常ではない。 あちらを素直に食っておけばよかったかと思ったが、約束したのでれいむを食うことにする。しかし甘みが足りない。 ゆっくりは苦痛を味わうほどに甘くなるらしいが、汚れた手で餡子をいじりたくないし髪飾りもきちんと味わいたい。 仲間を殺すさまを見せるのがスタンダードだが、約束したのでそれも出来ない。 傷を付けずに苦痛を味あわせる方法。設備もない野外で出来ることは何か。野外だからこそ出来ることは何か。 『まりざのおうぢはむこうなんだぜええええ!?』 「あ」 思いついた。 「なあれいむ。お前の家に案内してくれないか?」 巣は目の前にあった。上手いこと根の隆起を利用して屋根にした穴だった。 中にゆっくりがいればともかく、単体としてはただの気にも留めない深めの穴だ。 奥をのぞいてみると滑らかな石や昆虫の死骸が貯め込まれていた。 「ここがれいむのおうちかあ」 男は意識して柔らかいしゃべり方で話しかける。 「大きくて住みやすそうだね。作るの大変だったろう?」 「うん……まりさもてつだってくれて、ふたりで……」 痛みに堪えながら、かじられた頬が動かぬよう小声でれいむが答える。 「まりさは一緒に住んでないの?」 「むきゅ!けっこんしてないふたりがおなじやねのしたにいるのはふうきがみだれるわ!」 ラブコメの外野のようなことを言うぱちゅりー。 あれだけ仲がいいのにつがいではないということは、大きさでは分からないがまだ成熟し切ってないのだろう。 甘みが少ないわけが納得できた。ともあれ、 「もう誰も住まないなら壊していいよね」 そう言って、足で穴を崩していく。 「れいむのおうちがあああ!」 「でいぶとまりざのだからものがああ!」 叫ぶと共にこぼれる餡子を受け止め、舐める。甘さが強くなったが、まだ足りない。 もっと悪魔のように黒く天使のように純で、まるで恋のように甘くなければ駄目だった。 土が宝物の石も昆虫も埋めていく。淵を削って落とし、深い穴が広く浅いくぼみに変わったところでよく踏んで均す。 「おもいでのだからものおおおお!」 半狂乱で掘りかかろうとするまりさ。しかし踏み固められた地面は簡単には掘り進めない。 穴掘りに夢中になっているまりさは放っておいて、男は群れの一同に語りかける。 「なあみんな。これでれいむとお別れだ。何か言っておくことはないかな?」 「れいむ、いままでありがとう……」 「みんな……」 「いやそんなんじゃなくてね」 「「?」」 「今まで気を遣って言えなかった不満、無いかな?」 「れ、れいむはまりさといちゃいちゃしすぎよ!ふしだらだわ!」 「れいむにふまんなんてないよ!」 と言っていた一同だったが、 「れいむがおいしくないと他の子も食べちゃうかもなあ」 と脅すと、口火を切ったのはぱちゅりーだった。それでもまだ注意するような物言いだ。 「とかいはにいわせてもらえばれいむはまりさにたよりすぎよ!こんかいだってもっとおくまでにげていればよかったのよ! それをれいむがあんぜんだっていうから……いうがらああああ!ぁぁあれいむじなないでぇぇええ」 責めてると思ったら泣き出すアリス。これなんてツンデレ?それも次の告発で終わる。 「おねーしゃんはまりしゃたちにおやつはきまったじかんにっていってるのに、よるまりしゃおねーしゃんとこっそりたべていてずるいよ!」 「なんでじっているのおおぅ!?」 「どういうことよれいむうううう!」 「あいびきだねわかるよー」 「まりざはわたざないがらあああ!れいむがいなくなったあどひとりじめするがらああああ!」 死にゆく者にムチ打つありす。 「むきゅ!れいむ!つごうのいいときだけるーるをおしつけるようではわるいこよ!」 追討ちをかけるぱちゅりー。 「わるいこがたべられるのはじごうじとくだねー、わかるよー」 本当に分かっているのか傷口に塩を塗り込むちぇん。 「ちぃーんぽっ」 もはや何言ってんだか人間では分からないみょん。 「「ゆっくりしんでいってね!」」 逢引が発覚しただけでこの言われよう。果たしてまりさはどれだけのフラグを立てていたのか。 さっきまではれいむは命がけで群れを救おうとする尊い犠牲だったのに、今では公開処刑、吊るし上げである。 「れいむ!たからものをほりかえしたよ!まりさはれいむのことをずうぅっとわすれないよ!」 天然スケコマシがやりとげた笑顔で戻ってきた。しかし離れていたうちに急変した場の雰囲気についていけない。 「どぼじでみんなれいむのわるぐちいっでるのおおおおお!?」 「まりさ!おいしくないれいむがわるいんだよ!」 「むきゅ!くるしむとおいしくなるということは、おいしくないれいむはくるしんでなかったのね!」 「れいむほどゆっくりしてるゆっくりがおいしくないわけないでしょおおおお!?」 「いいおもいばかりしてるわるいゆっくりなんだねー。わかるよー」 「おばえらにでいぶのなにがわがるっでいうんだあああああ!」 矢継ぎ早にれいむを罵倒されたまりさは声を張り上げて仲間に襲いかかった。 「おいしくなくてごめんなさい……おいしくなくてごめんなさい……」 れいむは泣きながら謝り続けている。そろそろいいかと餡子を舐めてみる。脊髄に衝撃が走るほどに甘い。かなりいい感じだ。 だがもうちょっといけそうか? 「れいむ。見てごらん。まりさが暴れてるよ」 そう声をかけると、れいむの目の焦点が定まる。 「まりさっ!?」 まりさは複数の仲間に体当たりを繰り返していた。ぱちゅりーは一撃で中身をこぼし、ありすとちぇんがまりさの攻撃を受け止めている。 「ちーんぽっ」 その隙にみょんが頭上からのしかかり、押さえつけた。 「まりさ!わるいのはれいむなの!」 「れいむはなに゛もわ゛るぐないいいい!」 「わるいの!おいしくないれいむはくるしんでないずるいゆっくりなの!」 「れいむ。助けたかった仲間が死にそうだねえ」 「ゆゆ!?」 「ほら、ぱちゅりー。体弱いんだろ?」 二匹だけの世界に入っていたところを引き戻す。ようやく瀕死状態のぱちゅりーに気付いたようだ。 「ああああ゛ぱちゅりぃぃぃぃ!どおじでえ゛え゛え゛え゛」 滂沱の涙で手が濡れる。甘ったるい匂いはシロップか。 「ごめんなさい!ごめんなさい!ゆっくりばっかりしているわるいれいむでごめんなさい!おいしいものたべててぼめんなさい! まりざといっじょにたべたぢょうぢょざんおいじがったですうう!おはなさんはなんでもおいじがっだですうう! つめたいおみずおいじがったでずうう!でいぶはどろみずがおにあいでしだあああ!」 どこかのマラソン選手を彷彿とさせる言葉を発し始めたれいむ。その餡子を男は鬼気迫る形相で食らう。 甘い、甘いぞ。既に舌の感覚がなくなるほどなのに、舐めるたびに甘みが毒々しく舌を打つ。甘過ぎて頭痛がする。 それでいて瑞々しく、食べるたびに喉の渇きが癒される。 「おうちにすめててごめんなざい!まりざにてづだわぜでごめんなざい!れいむはまりざをひどりじめしようどしていたわるいこでずうう! ともだぢがいてごめんなざい!みんなでずるひなたぼっごぎもちよかったですうう!あかちゃんたちかわいかったですうう! いっばいおうだをうだってゆっぐりしまじだあああ!ありずどばちゅりぃぃ、めいわくかけてごめんなさいいい! ちぇんとみょん、いつもおぞくであじをひっばっでごめんなざい!!れいむはみんなどながよぐできでてじあわぜでじたあああ!」 走馬灯のような懺悔が紡がれるたびに、騒いでいた群れが静かになる。れいむがどれだけ自分たちのことを大事に思っていたか分かったのだ。 そのれいむに、ひどいことを言ってしまった。 「ごめんなさい!れいむのことわるいゆっくりっていってごめんなさい!」 「うまれでぎでごめんんざいいい!いづもあまえででごべんなざいいい!」 詫びの言葉は届かない。れいむが錯乱状態にあるのはもちろんのこと、恐ろしい速さで男がれいむを貪っているからである。 既に顔面とそれに付随する餡子しか残っていない。それも一口で噛み砕かれる。最期におかあさんとだけ残して、れいむは男の腹に消えた。 男が我に返ると残りのゆっくり達が汚れたまま放心していた。 ぱちゅりーは死亡。まりさも強く押さえつけられて瀕死。ありす、ちぇん、みょん、とばっちりを受けて子ゆっくりもぼろぼろだ。 存在すら忘れられていた、串刺しにされたゆっくりもいる。かつての清潔さと福々しさは見る影もない。 どうしてここまでこの群れは崩壊してしまったのだろう。俺はただ美味しいお菓子が食べたかっただけなのに。 そう思いながら今度こそ男はその場を後にした。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4197.html
『愛された果てに』 40KB 観察 家族崩壊 現代 独自設定 失礼します。 anko2611 ゲスゆっくり奮闘記1 anko2622 ゲスゆっくり奮闘記2 anko3414 ゲスゆっくり奮闘記3 anko3417 ゲスゆっくり奮闘記4 anko3456 れいむのゆん生 anko3458 まけいぬとゆっくり anko3461 ゆっくりに生まれて anko3484 ゆっくりブリーダー anko3489 休日とゆっくり anko3652 ドスについて anko3715 ゆっくりに餌を anko3729 はじめてのぎゃくたい anko3730 はじめてのしいく anko3794 まりさとの勝負 anko3843 野球部のゆっくり anko3855 ゆっくりと会話してみた anko3932 ゆっくり観察日記 anko3933 ゆっくりと子供 anko3953 しんぐるまざーの朝は早い anko4016 虐められるためのゆっくり anko4094 普通の人とゆっくり 「」ゆっくりの台詞 『』人間の台詞でお願いします 「ゆっくりおきるよ!」 朝のまだ早い、やや薄暗いだろう時間の、ある大きな群れ。 そこに所属する一匹のまりさが巣の中で声をあげた。 木の根元に作られた広く、またすべすべの巣の中、奥のベッドで寝ている番のれいむに、その子供たちを見ながら彼女はニッコリ笑う。 一家の長として、これから狩に向かう彼女は家族の寝顔を見て、それをエネルギーに頑張ろうとしているのだ。 それと同様の光景は、周囲に乱立する木の根元にある巣で数多く見られている。 それらを朝の日課を終えたのか、広い群れの敷地の木の根元からぞろぞろと父親役だろうゆっくりが出てくる。 まりさ種が一番に多く、次にみょん種、ちぇん種など活発なゆっくりが続き、れいむ、ありす、ぱちゅりーなどもチラホラ見られた。 まりさは、近隣のゆっくりたちに声をかけながら食事を探すために跳ねながら移動していく。 「きょうっも! おいっしい! ごはんっさん! たっぷり! あってね!」 疲れるだろうに、まりさはゆっくりらしく自分の考え行動を大声で喋りながら跳ねていく。 街中の、惨めに這いずって、黙々とゴミを漁るゆっくりとは対照的な伸び伸びとして姿。 他のゆっくりも同じように声をあげ、皆笑顔で飛び跳ねながら狩に向かっていっていた。 まりさはしばらく跳ねて、いつもの狩場にたどり着いた。 既に、そこには何匹ものゆっくりがいて狩を開始しているようだった。 早い者は、既に十分な食料を得てこれから巣に戻って家族とゆっくり過ごそうとしている者もいる。 「ゆっ! まりさも いそがないと!」 それを見て、まりさは同じく狩を始める。 「きょうっも おいしいごはんさんがたくっさんだよ! まりさはかりのたつゆんだね!」 目につく限りの食料をどんどん帽子に詰め込んでいき、ほんの短時間でまりさの帽子と口の中は食料で埋め尽くされていた。 通常の野生ゆっくりの数倍の食料を手にしたまりさは、笑顔のまま巣に向かって跳ねだした。 「ゆふふ、きょうも たっくさんごはんとれたよ! これで、れいむもおちびちゃんも おおよろこびだよ!」 相変わらずの不思議饅頭、口を閉じたまま喋ってニヤニヤ気味の悪い笑顔を浮かべていた。 そして、自分の巣に飛び込むようにして入る。 「ゆ! ゆっくりただいま!」 「ゆ! まりさおかえりなさい!」 「「おちょーしゃん! おきゃえりなしゃい!」」 まりさの声に、既に起きていて朝のうんうんの真っ最中だったらしい子供と、その手伝いをしていたれいむが声を返した。 大き目の葉っぱの上に、うんうんをさせていたれいむは、それを舌で器用に丸めると巣の奥に開いた穴に落とした。 「ゆふふ、きょうもしっかりうんうんできたねおちびちゃん」 「ゆっ、それはえらいね! たくさん うんうんして どんどんおおきくなってね!」 「「ゆ! わかっちゃよ! しょれよりごはんにしちぇね!」」 毎日うんうんするのは健康と成長の証、親からそう言われて育ったまりさとれいむは、子供のうんうんに笑顔を浮かべて頷きあう。 二匹の子まりさ子れいむは、褒められたのは嬉しいけれどお腹が空いているのが優先なようで、涎を垂らしながらまりさを見つめていた。 「ゆ! ごめんねおちびちゃん、ついわすれちゃってたよ! すぐにごはんにしよーね、れいむおさらをよういしてね!」 「ゆっくりりかいしたよ! ゆっしょゆっしょ」 まりさの声に、れいむ巣の奥から大きめの葉っぱを持ってきた。 「ゆっぺ! ゆふふ、きょうもおいしいごはんがたっくさんだよ!」 「「ゆ、ゆわぁぁああ!! おいちちょー! おちょーしゃんしゅごーい!!」」 口の中のご飯を葉っぱに吐き出すと、子供たちは目を輝かせうれしーしーまでしながら喜んでいた。 それに「ゆふゆふ」笑いながら満足したまりさは、帽子の中の食料を奥の食料庫に放ってから戻る。 しっかり躾をされているのか、その間も子供たちは涎を垂らしながらも、ご飯には口を着けず待っている。 子まりさは、お下げを振り回しながら「ゆわゆふ!」と目を輝かせて涎を垂らしていて。 子れいむは、もみ上げをピコピコさせながら、何故か底面を持ち上げもるんもるんと振っていた。 「ゆわぁ、おちびちゃん とってもぷりてぃーだよぉ hearts;」 「まりさもおなじきもちだよ! さ、あんまりおちびちゃんをまたせたら かわいそうだから ごはんにしようね!」 親子四匹で大きな葉っぱに乗った山盛りの食料を囲む。 二匹の子供は、今か今かと涎を垂らして、二匹の親はその可愛さに頬を緩ませていた。 そして。 「それじゃ、ゆっくりいただきます!」 「「いちゃじゃきまーーす!! はむ! ぐちゃぐちゃ! はぶ! ぱにぇ! これ! はんぱねぇ!」」 汚れるのも構わず、大量の食料に頭から突っ込んで尻を振りながら貪って行く二匹を、両親は優しく見守る。 「ほんとにゆっくりしてるね!」 「まりさのおかげだよぉ、おいしいくささんに、きのみさんに、おちびちゃんが だいすきなちゃいろさん、こんなにたっくさんとってきてくれたから……まりさは ほんっとうにじまんのだんなさんだよ!」 「ゆふふ、それほどでもないよ、まりさはれいむたちが いるからがんばれるんだもん」 二匹は身体を寄せて、親愛を表す優しいすーりすーりを繰り返す。 寒さを凌ぐのではなく、性欲の発散でもない、お互いの頬をゆっくり優しく、暖かさを確かめ合うような行為を、最愛の子供を見ながら繰り返した。 「「ゆげっぴゅ! みょう いらにゃいよ! ゆっぷ!」」 山盛りの食料の一部を貪り切った二匹は、食べ進んだ所で食べかすだらけの体を仰向けにして、膨らんだ腹を見せつけながら動きを止めた。 「ゆふふ、たっくさんむーしゃむーしゃしたね! おちびちゃん、ぺーろぺーろしてあげるよ!」 「ゆひゃひゃ! くしゅぐったいよ!」「れいみゅも! れいみゅもしちぇね! すぐでいいよ!」 れいむは、二匹の身体についた食べかすをその長い舌で舐めとっていく。 その姿を見ながら、まりさは幸せに浸っていた。 優しい妻に、可愛い子供の成長、これ以上の幸せはないと信じて笑みを浮かべる。 「ゆふふ、みんなゆっくりしてるね……」 これまでの自分のゆん生を振り返って、苦労を思い出すと涙が出そうになるが、まりさは父親としてそれを飲み込む。 子供の頃の姉妹の死、何回も経験した越冬、おうち作りの苦労、れいむとの熱愛、狩の辛さ。 様々な記憶が、今の幸せに繋がっていると思うと、感情が震えだしていた。 「まりさ? どうかしたの?」 「ゆっ!? な、なんでもないよ……おちびちゃん、ねちゃった?」 「うん、みて、かわいいねがおだよ……」 静かになったまりさを心配して、れいむが声をかけてきた。 それにビクッと反応して、目線をれいむに向けると、彼女はお腹を一杯にして眠りだした子供二匹を優しく見つめていた。 まりさたちは、食事をしたら直ぐにご飯あとのすーやすーやを始めるのは、大きくなる秘訣だとそう教わっていた。 まりさは、ずーりずーりと底面を静かに這わせて、草のベッドで眠りにつく子供たちの頭をお下げでそっと撫でる。 「ゅ、ゅぴぴ、れーみゅの、こんしゃーとに、あちゅまってくれて、ゆぷぅ」 「ゆぴー、ゆぷー、まりしゃ、ちゅいにどしゅになっちゃの じぇぇ、ゆぴぴぅ……」 寝言を漏らしながら、幸せ一杯の寝顔を見せている二匹を、まりさとれいむは満面の笑顔で見つめる。 「かわいいね、おちびちゃん」 「うん、れいむも そうおもうよ」 しばらくその幸せをかみ締めるように、寝顔を堪能した二匹は、静かに子供の食べた後の食事を開始した。 時より、ベッドの方を見て、夫婦で微笑みあったりしていた。 食事を終えて、余った食料をれいむが色々分別するのを見ながらまりさは外を見つめる。 「……れいむ! まりさ ちょっとおさんぽしてくるよ!」 「ゆ! わかったよまりさ、おひるにはかえってきてね!」 「ゆん! あたりまえだよ、それじゃあ おちびちゃんをよろしくね!」 れいむに子守を任せると、自慢の帽子を一番格好良いと思っている角度で被って巣の外に出る。 「ゆっゆ~ん! きょうもいいてんきだよ!」 朝の狩では急いでいて感じる暇もなかったけれど、今日も空は青空で心地よい暖かさだった。 「そろそろなつさんがくるんだね」 まりさは夏が好きだった、暖かいし、何よりまりさが生まれたのは3回前の夏。 子供が生まれたのは秋の終わり、そう考えると秋も好きだなと、まりさは考えていた。 「むきゅ、まりさ、こんにちは、おさんぽかしら?」 「ゆ? おさ! ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね」 暖かい森の中を進んでいたら、まりさの所属する群れの長であるぱちゅりーが声をかけてきた。 この長ぱちゅりーは、10回以上のの越冬を経験した頼れる長だった。 「まりさ、おちびちゃんはげんきかしら?」 「げんきだよ! きょうもごはんさんたーっぷりたべて いまはすーやすーやタイムのまっさいちゅうだよ!」 「それはよかったわね、おちびちゃんがおとなになるまでのにねんかん、しっかりそだててあげるのよ?」 長の言葉にまりさは笑顔で、自信に満ちた笑顔で頷いた。 「とうっぜんだよ! まりさがそうしてもらったんだから、まりさもおちびちゃんをたいっせつにそだてるよ!」 まりさの言葉に満足したのか、長はニコニコ頷いて、ゆっくりとその場を後にした。 その後ろ姿を見送ってから、まりさはまた進み出した。 周りには、もう季節を一回りして子ゆっくりサイズになったゆっくりたちが声をあげて走り回って遊ぶ姿が見える。 それを横目に見るように、親ゆっくりが複数集まって世間話をしたりもしていた。 「ゆふふ、みんなゆっくりしてるね」 その光景に笑顔を浮かべながら進み、ちょっと開けた池がある場所に出た。 「ゆっ、こんなとこまできちゃったんだね」 まりさはうっかり遠出してしまったことに驚きながらも、ゆっくり池に近づく。 この池にはにとり等が住む他に、群れの皆の大切な水分補給の役目を担っているのだ。 歩きつかれたまりさは、池に近づいて水を飲むと、しばらくその場で休憩を始めた。 「……ゆっ、そろそろかえるよ! おちびちゃんとごはんにしなくちゃね!」 十分ゆっくりりたのか、思い立って直ぐにぴょんぴょん跳ねて巣に向かう。 周りにも同じように、跳ねて巣へ戻ろうとするゆっくりが何匹もいた。 そのゆっくりに負けないように跳ねて、まりさはれいむと子供の待つ巣に向かった。 「ただいま! ゆっくりかえったよ!」 「ゆっ、まりさおかえりなさい」 「「おちょーしゃん! おきゃえり! おにゃきゃしゅいたよ!」」 巣に戻ると、れいむと遊んでいた可愛い我が子が出迎えてくれた。 相変わらず食欲旺盛な子二匹だけど、それがまた可愛らしく感じられるのか、まりさは明るい笑顔を見せた。 「れいむ、またせちゃったみたいだから、さっそくごはんさんにしよーね」 「わかったよ、ちょっとまっててね!」 「ぎょはんだよ! まぃちゃのむーしゃむーしゃタイムだよ!」「れいみゅのむーしゃむーしゃだよ!」 まりさの声に、二匹は直ぐに涎を垂らして、また嬉しーしーを漏らしながら震えていた。 「まったく、おちびちゃんはくいしんぼうさんだね! ゆふふ」 「ゆっ、みんなごはんだよ!」 れいむが朝のように大き目の葉っぱに、食糧庫に保存しておいたものを持ってきた。 一番多く取れて、保存の利く茶色いものがメインに、乾燥した山菜なども乗せてあり、それなりに彩りがある。 「それじゃあ、ゆっくりいただきます!」 「「いちゃじゃきましゅ! はぐむぐ! むーしゃむーしゃ! ぱねっぇ! こりゃむっちゃぱにゃい!」」 食事が開始されれば朝の焼きまわしだ。 尻を振り乱しながら、お下げともみ上げをピコピコさせて、全身で食糧に突っ込んで食べるだけ食べたら眠る。 理性と対極に位置してそうなその姿を、親二匹は笑顔で見つめていた。 我が子が成長するに必要な栄養を全力で摂取しているのだから、当然のように幸せなのだろう。 「「おちびちゃん、いっぱいたべて、いっぱいおっきくなってね!」」 …………。 ………………。 「いたいよぉおおおぉお!! れーむのあんよがいたいよぉおおおおお!!」 「ゆ、ゆぁ、ゆわぁあああ!! お、おちび、おちびちゃんがぁああ!!」 「れ、れいむ、おちついて! まずはおちついてね!!!」 一冬越えた春先、もう外に出られるくらい大きくなった二匹の子供の内、子れいむが転んで底面、あんよを切る大怪我をしてしまった。 ゆっくりにとって足の怪我は死活問題、即座に死ぬ危険はないけれど、治さなければ一生の問題になってくる。 れいむは、それを解っていて大声でうろたえていた。 その姿に、自分だけはしっかりしなくてはと、まりさは語調を強くしながら叫ぶと、どうしたら良いかを考える。 そして、直ぐに思い至ったのか、ハッと息を呑んだ。 「おさに、おさにきけば なおすほうほうが きっとわかるのぜ!!」 「ゅ、ゆう?」 「おさはなんでも しってるのぜ! まりさがいまからおさにきいてくるから まってるのぜ!!」 まりさはゆっくりしないで、巣の外に出た。 外はもう暗くなっていたけれど、関係ない。 どこからか「う~う~」と、れみりゃの声が聞こえて来たけれど、大切な子供の為に危険も顧みず走り出した。 「おちびちゃん! まっててね、いま まりさ、が……ゆぴぃ、ゆぷ~」 ……。 …………。 「ゅ? ゆっくりおきるよ! ……ゆ?」 翌朝、いつもみたいに巣の中で目を覚ましたまりさは、不思議な気分に包まれた。 「ゆぅ?」 しかし、それが何だったかは思い出せなかった。 ただ、何か妙だなぁ、と思っただけで直ぐに忘れ、いつものように寝ている家族に見て笑いそして狩にでかけた。 「まりさはかりのたつゆんだから、きょうも たっくさんごはんとってくるよ!」 そっと見たベッドの中の子れいむ、まりさに向けているあんよの一部が薄っすら色が変わっていたが彼女はそれに気付かないで跳ねていった。 いつものように狩に向かう皆の流れに乗って狩場に向かうと、いつものようにご飯を口と帽子につめて、来た道を引き返す。 家につくと、何やら中から声が聞こえてきた、どうやら家族が起き出したようだ。 「ゆっ、ただいま!」 「おちびちゃん、ほんっとにだいじょうぶ? どこかへんなとこはない?」 「ゆぅ? なにいってるのおきゃーしゃん、れーむどこもいたくないよ?」 「おとーしゃん、おかえりなのぜ! まりさもそろそろかりにいきたいのぜ!」 まりさの声に反応したのは子まりさだけで、れいむと子れいむは何やら話していてこちらに気付いていないようだった。 しばし、そろそろ狩に行きたい言う野球ボールくらいの大きさになった子まりさと話してから、れいむと子れいむに声をかける。 「れいむ、いったいどうしたの?」 「ゆ、まりさ……」 「おかーしゃんが、さっきかられーむにだいじょうぶ? だいじょうぶ? ってきいてくるんだよ! れーむどこもいたいいたいじゃないのに」 れいむは心配そうな顔で、子れいむをチラチラ見ながら、子れいむはちょっと不機嫌そうな顔でまりさを見てきた。 「れいむ、おちびちゃんがどうかしたの?」 「まりさ、なんだね、おちびちゃんが いたいいたいだったきがするんだよ でも おちびちゃんはだいじょうぶっていうし」 不確かながら、何やら不安を感じているらしいれいむを、まりさは優しくぺーろぺーろした。 「ゆふふ、れいむはやさしいね でも、おちびちゃんは れいむがまもって くれてるから きずひとつないよ」 「ゆぅ~ん、まりさぁ、ありがとうね、れいむ あんっしんしたよ! ぺーろぺーろ」 まりさの行為でれいむは安心したのか、不安そうな顔を引っ込めて笑顔を浮かべた。 れいむが自分の心配をしなくなったので、子れいむはまりさが取ってきた食糧の前で食事の合図を今か今かと待っていた。 それは子まりさも同じらしく、チラチラ親を見ながら涎を垂らす。 「ゆっ! れいむ、そろそろごはんさんにしようね! おちびちゃんがまってるよ!」 子二匹に気付いたまりさは、れいむに声をかけてゆっくり這いずって朝食を始めた。 それからしばらく平和な春が過ぎて、異変は夏に起きた。 そろそろまた秋が訪れてるちょっと前、子ゆっくり二匹が巣立ちをする目前の時期だった。 毎朝のように狩に出かけたまりさは、狩場に起きている最近の変化に声を漏らした。 「きょうも くささんがないよ……ゆん、さいきん ずっとだよ でもちゃいろさんが たくさんあるから だいじょうぶだね!」 ここ数日、普段持ち帰っていた山菜や、木の実などが丸っきり姿を消していたのだった。 その代わりに大量に置かれていたのは、普段は草よりやや大目くらいにある茶色い食べ物。 とりあえず他にないし、それは甘くて美味しいので持ち帰って皆で食べることにした。 「ゆ! かえるよ!」 声をあげて跳ねだした、周りには他のゆっくりも元気に巣に戻っているところだった。 まりさは、その波に乗るように負けぬように跳ねながら、また微妙な違和感を覚えた。 「ゆ…………きのせいだね!」 何だか、少し周りのゆっくりが少ない気がしたけれど、まりさは気にせず家路を急ぐことにした。 「ただいま! きょうも ちゃいろさんがたっくさんだよ!」 「「やったー! おとーさんありがとー!」」 「まりさ、おつかれさま!」 巣に戻れば、もう大分大きくなって巣立ち目前の子二匹と、新たにお腹に子を宿したれいむが迎えてくれた。 いつものように葉っぱにとってきたものを置いて、残りを保存する。 そうしてから、皆で朝の食事を始める。 もう頭から食糧に頭を突っ込むこともなくなった子れいむと子まりさと同じタイミング食事を始める両親は、二匹に巣立ちについて色々と教えているようだった。 巣の作り方、番の見つける基準、子育ての仕方、それらを思い出話と交えながら楽しそうに語っていく。 「ふたりとも まりさの じまんのおちびちゃんだから とってもゆっくりした かぞくをつくれるよ!」 「「ゆん! ありがとうおとーさん!」」 食事を終えると、子ゆっくり二匹は友達と遊びに外に跳ねていった。 既に二匹には意中のゆっくりがいるらしいので、目的はどちらかと言うとそちらだろう。 まりさは、二匹が跳ねていった巣の出口を皆がら息を吐く。 「もう おちびちゃんも すだちのじきなんだね」 「そうだね、まりさ……このおちびちゃんも きっとゆっくりしたこにそだてようね」 まりさの声に聞いて、れいむは揉み上げで自分の膨らんだ腹部を撫でる。 大分大きくなり、そろそろ生まれる新しい我が子に、慈愛の笑みを向けていた。 それは、まりさも同じで、優しい視線でれいむの中の我が子を撫でるように見つめる。 「まりさと れいむのこなんだから きっとゆっくりしたこになるよ!」 「ゆふふ、そうだね」 二匹は寄り添い、次の生まれてくる子供のことを熱心に話し合った。 それから数日経ち、相変わらず山菜が取れない日々が続き、秋になったある日二匹の子供は両親にこう切り出した。 「おとーさん、おかーさん、まりさとれいむははなしが あるのぜ」 「ゆん……わかってるよ」 「ゆぐっ、ゆぐ、ゆあーん! ゆあーん!」 子まりさの真剣の表情から内容を察したまりさは重く、そして嬉しく受け止めて。 れいむは、内容を察した上で寂しさから声をあげて泣いていた。 子れいむ、子まりさも何かに耐えるように身体を震わせ目に甘い涙を浮かべながらも笑顔を浮かべて話し出した。 「れ、れいびゅと、ま、まりじゃは、ひ、ひとりだち、するよ!」 「いばばで、ぁりがぼうなのぜぇ!!」 「ゆん、ゆん……こちらこそ、だよ」 「ゆわぁぁあん! やだよ! やだよぉおお!! いっちゃやだよぉおお!!」 涙を流さぬようにする三匹の分も泣くように、親れいむは大声で泣き続けた。 それでも、時間は残酷に過ぎて行く。 子れいむの番になるちぇんが迎えに来たところで、子まりさもこれから番になるありすと迎えに行くと言うので巣を出て行った。 れいむは最後の最後まで二匹にすーりすーりを繰り返して、二匹が巣を出てからもずっと大きな声で泣いていた。 「ゆん、れいむ すーりすーり、だよ」 「ばりざぁぁあああ!! おちびちゃんが、おちびちゃんがぁああ!!!」 「ゆん、だいじょうぶ、きっとすぐに かわいいおちびちゃんをつれて あいさつにきてくれるよ、ゆん」 泣きじゃくるれいむを、まりさはずっと優しく優しくあやし続けた。 その日まりさは、泣きつかれたれいむをぺーろぺーろして、一筋だけ涙を零すと、れみりゃの声を聞きながら眠りについた。 ……。 …………。 ………………。 「ゅ? なんだか、さむい、よ? ゆぅ?」 まりさが目を覚ますと、そこは見たこともない場所だった。 今まで住んでいた森の中と違う、暗く鬱葱と草が茂り、ジメッとした地面の上にまりさはいた。 「どこ……ここ……」 呆然としながら、まりさは周囲を見回すと直ぐ後ろには番のれいむが寝ていた。 頬に涙の跡をしっかり残したれいむの身体を、まりさは自分のお下げで優しく揺する。 「れいむ、れいむ! おきてね!おきてね!」 「ゅ、ゆうん、なに、まりさ、もうかりはおわったの? ゆ? ゆ? なんで、れいむおそとにいるの」 寝ぼけ眼を揉み上げで擦っていたいたれいむは、自分がいる場所を認識して目を覚ました。 まりさと同じく周囲をキョロキョロ見回してから、不安そうな顔を見せる。 「ま、まりさ、こ、ここ、どこ? なんだか ゆっくりできないよ……」 「まりさも、わからないのぜ……むれのもりとは なんだかちがうみたいだよ」 まりさは言いながら、群れのあった森を思い出す。 柔らかく歩きやすい地面に、綺麗で巣になる木、綺麗な草花に、爽やかで暖かい風。 そのどれもがここにはない、地面は硬くごわごわしていて。 捻じ曲がって、どこか化け物みたいで途方もなく大きな樹木、どこか攻撃的に尖った草花、ジメッとして青臭い風。 どれもこれもがまったく自分の常識外だった。 しかし、泣きそうなれいむを前に自分まで泣く訳にはいかないと顔を引き締める。 「ま、まずは だれかさがそうね! ここがむれのどこか わからないと おうちにかえれないからね!」 そして、努めて明るくまりさは振る舞い、れいむに声をかけた。 その姿に、れいむは少し安心したのか小さめの笑顔を見せて頷き、浮かんでいた涙を揉み上げで拭い消した。 「そ、そうだね! はやくおうちにかえってごはんにしようね! じゃないとおなかのおちびちゃんもおなかをすかせちゃうよ!」 「ゆん! じゃあ、いこ、んゆぎゃぁぁぁあぁああ!?!?!」 「ば、ばりざぁぁぁあ!?!」 一声気合で、一歩跳ねたまりさは大きな声をあげて転げまわった。 「い、いだい、いだいいぃいいい!! あんよがいだいぃいいいぃいいい!!!」 「まり、まりさ、お、おちつ、おちつ、ゆわぁぁあん!! ゆわぁぁああん!!」 今まで見たことがないくらいの動揺を見せてまりさに、れいむは落ち着かせようとするが、直ぐに自分の限界が来て泣き出してしまった。 まりさの跳ねた先には、やや大きめの小石が転がっていて、その上に乗ってしまったのだ。 その鋭い痛みにまりさは声をあげて、涙を流して転げまわる。 転げまわる度に、硬い地面や石、痛い草に身体を傷つけられて更に声をあげ続ける悪循環。 まりさのゆん生では味わったことのない痛み、それが全身を支配していた。 まりさのこれまでは、こんな石を踏んだこともなければ、こんな痛い草に触れたことも、ごわごわの土に触れることもなかった。 何故なら、まりさは室内で飼われていたゆっくりなのだから。 ――――。 ――――――。 ある都市の中心に立てられた、屋内型森林公園。 かなりの広さと、行き渡った設備は一ヶ月の内に四季を再現する、少し寂れていた街の活性に繋がっている施設だった。 その施設の名前は〔ゆふぁりパーク〕名前の加減から想像出来る通りの、ゆっくり園と呼ばれる場所だった。 ゆっくり園とは、屋内に土を敷き、草花を植えて、野生のゆっくりの生活を街に再現するという触れ込みの、ゆっくりの動物園のような場所だった。 ゆっくりに人気に肖り、日本中に数多くのゆっくり園が出来ていたが、ここはそれとは規模も施設も桁違いだ。 収容ゆっくり数は、通常のゆっくり園が一つの群れに相当する150~300に対して、驚きの2300匹。 通常種だけでなく、希少種、捕食種まで完備されている。 しかも、普通のゆっくり園ではないような四季の整備により、より野生のゆっくりの生活を見れるという触れ込みで、週末になれば日本中から多くの人が詰め掛けていた。 柔らかい土を引いて、小石一個でも取り除いて、芝生を敷いたり、ゆっくりの肌を傷つけない草花を植えて、いつでも快適に暮らせる環境を整えてあった。 一週間ごとに季節が変わり、知らず知らずにゆっくりたちは一ヶ月を「いちねん」と呼んでいた。 基本的に内部のゆっくりは自分たちが建物の中にいるとは考えてない、人間と接触は0になるようにされていたから。 夜になれば、れみりゃの声をスピーカーで流して、巣に戻らせてからラムネスプレーが全域に撒布されて、例外なく睡眠状態にして、その間に園内の掃除や、調整、傷を負ったりしたゆっくりの治療などを秘密裏に行う。 一般客が通るのは、床からほんの2mほどの位置を蜘蛛の巣のように通されたアクリル製の通路だ。 この通路には仕掛けが施されていて、ゆっくりが見上げてもそこに人がいるとは判断されない作りになっていた。 ゆっくりにとっては見えないというのは認識出来ないと一緒であるために、いくら喋ろうが気付くことはない。 これにより、人間と関わらない本来のゆっくりの姿を楽しめるという風に言われていた。 巣も全て、木を模したオブジェでその内部は、それぞれオブジェに設置されたモニターを通じて通路から確認出来るようになっていた。 巣の奥にはうんうんを捨てる穴があり、そこに放り込まれると最終的に全ての巣から集まり捨てられる仕組みになっていた。 ゆっくりが集まるポイントも人工的にいくつも作られていて、そこにはアクリルの大き目のラウンジ状態になっていて多くの人が集まる。 そんなゆふぁりパークの一日は、まずは係員が広大な敷地の指定されたポイントに、餌となるゆっくりフードと、山菜など野山でも取れるだろう食料を置くところから始まる。 大きな木の板の上に、それらを置いておけば、あとはゆっくりが〔狩り〕をしにやってきて勝手に持っていく。 餌やりが終わると開園で、しばらくすると起き出したゆっくりの狩り風景を見ることが出来る。 そして入場客を案内したり、モニターでどこかでゆっくりが問題を起こしていないかを観察する。 危ないものがないゆっくり園ではそうはないが、ゆっくりは弱いので怪我をすることは多々ある。 なので、怪我をしたゆっくりを発見したらその程度によって対処する。 即座に治療が必要なら、その区画にラムネスプレーを噴射して対処。 それ以外は夜になってから、治療を行う。 そして、四季の代わりによって変化するゆっくりの生活を入場客に説明する姿をちらほらと確認出来た。 このゆふぁりパークは、ゆっくり愛護団体により運営されていて。 〔野生本来のゆっくりのゆっくりらしい生活を見れる!〕という触れ込みによる多くの客を呼んでいたが。 施設のコストと、来場客からの入場料が徐々に釣り合いが取れなくなっていった。 それに伴い、野生のゆっくりが狩りをしてとれるだろう山菜や木の実など、手がかかるものを出せなくなり、ゆっくりフードだけを与えるようになっていき。 ゆっくり好きから支援などもあったが、終に財政が破綻してしまった。 残ったのは大量も大量のゆっくり。 希少種、捕食種などは他のゆっくり園や、希望者に引き取られていったが、通常種の扱いに困ってしまった。 1700近い不良債権たるゆっくりたち。 普通なら加工所行きだけれど、まかり間違ってもゆっくり愛護団体の施設、それだけはなしとされた。 しばらくは〔野生のゆっくり〕という触れ込みで里親を探したり、ペットショップに持ち込んだりもしたが。 ただゆっくりしただけで、躾も何もされてないゆっくりを飼いたがる人も、売りたがるペットショップもそうそうなかった。 種ゆや、生餌としてならという申し出もあったけれど、施設の人は怒りを露に断った。 『あなたたちはこんな可愛いゆっくりに、良くそんなことが出来ますね!』と。 怒っても何してもゆっくりの行き先は見つからない。 ゆっくりフードはまだ在庫はあったがそれもいつかは尽きてしまう。 もう加工所に頼むしかないのか、となったときに誰かが言い出した。 『あの、前に人間が育てたオランウータンを森に返すとか、見たんですけど』 その言葉に、施設の面々、愛護団体は名案と大いに賞賛した。 『ここのゆっくりは野生の環境で育てて来たんだ、野生に返しても生きていけるはずだ!』 殺すことはしない、自分では世話出来ないから誰かに押し付けたいけど相手がいない、だから捨ててしまえ。 そんな思考回路で、こっそりと大量のゆっくりが手分けして各地の山や森に捨てられた。 それぞれの心の中は、野生に返してやると言う崇高な使命で埋め尽くされていた。 それを大義名分に、野生ではありえない優しい空間で、異常な空間でしか生きてこなかったゆっくりを、厳しく辛い本当の野生に返したのだった。 ……。 …………。 「ゅ……れいむ、ごはんさん、とってきたよ」 「ゆ……これっぽっち、なのぉ?」 まりさが野生に返されて早数日。 今までの世界とはまるで違う生活に、二匹は傷つき疲弊しきっていた。 ふかふかで柔らかくて、いくらでも跳ねれた地面。 いつでも爽やかで暖かかった空気。 有り余るくらい取れた大量の食糧。 そして、快適な巣。 そのどれもが存在しなかった。 あの日、痛みから何とか起き上がったまりさは、泣いてるれいむを宥めて、進みだした。 奇しくも街中のゆっくりのように、無言でずーりずーりと底面を這わせての移動だった。 それもまるで鑢の上を歩くように激しい痛みを与えてきたけれど、跳ねて進めばどんな目に合うか解らないので仕方がない。 しかし、歩けど歩けどかつての群れにたどり着けない、と言っても痛みで悶えたり、慣れない本当の地面で疲れたりで50mも進めていなかったのだが。 段々暗くなり、異様な寒さに餡子が芯まで冷え切りそうになったまりさは、泣きつかれたれいむの為に巣を作ることにしたのだが。 かつての巣作りは、木のオブジェの根元に立てかけられた枝を外すだけの作業。 それしか巣の作り方を知らないまりさは、大きな木の根元を舐めたり、お下げで叩いたりするしかなかった。 「おでがいでずぅううぅう!! きさん! ばりざにおうぢをくだざいいいい!!」 そんな声と、必死に土下座する声が森に響いていた。 しかし、そんなことで巣が出来るはずもなく、まりさはれいむに謝って木の根元で身体を寄せ合って眠った。 季節は本当の秋、作られた秋ではない寒さと豊穣の季節、外で寝るには寒すぎた。 二匹は、いつまでも泣きながら身体を擦り合わせていた。 そして今にいたる。 相変わらず木の根元を拠点にしている二匹だったが、その生活はギリギリを通り越してアウトだった。 まりさは、体中傷だらけ泥だらけで、痛みで泣くから涙の跡が頬に染み付いて、そこに更に泥などがついて怪しい化粧のようになっていたし。 髪はぼざぼさで、今まで傷一つなく大事にしてきた帽子はヨレヨレ、栄養不足で頬はこけて、寝不足で隈が出来ている。 れいむは狩りにいかない分まだましかと言われればそうでもない、まりさに巣作りを任せられたれいむは、木の根元で日がな懇願したりしているので疲労が限界に達していた。 腹に子を宿しているのもあり、頬がまりさよりもこけている。 以前は、朝に狩りに行き、大量の食糧を取ってきていたまりさだけれど、今では一日中這いずり回って、僅かな、しかも苦くて硬い草をとってくるだけになっていた。 「ごめん、でも ぜんっぜんごはんさん なくて……」 「ゅう、これじゃ、おちびちゃんがゆっくりできないよ……」 申し訳なさそうに頭を下げるまりさから目を逸らして、れいむは自分のお腹を見つめた。 「まりさは かりのたつゆんじゃなかったのぉ? ひもじいよう……」 「っ!」 意図はあったのかなかったのか、まりさに対して責めるような言葉を向けた。 その言葉に、まりさは唇をかみ締めて震えだした。 「れ、れいむこそ、おうちはまだできないの? もう、なんにちたってるとおもってるの?」 そして、まりさは自分で思っていた以上に強く、非難するようなことを言ってしまう。 言ってから、少し罪悪感を覚えたけれど、毎日毎日必死に狩りをしているのは自分なのだからと正当化しようとしていた。 しかし、れいむはまりさの言葉にワナワナと震え、歯を食いしばった。 「こんな、こんなニガニガさんしかとってこれないまりさに なんでれいぶがせめられないど いげないのぉおおおぉおお!!!」 「ゆひっ……!」 涙を流して叫び、びたんびたんと身体を暴れさせるれいむに、まりさは息を呑んで一歩引く。 「ぼう! ごんなぜいがついやだよぉおおぉおおお!!! おながすいだよぉおお!!」 「れ、れいぶ、れいぶぅ! ごめんね、ごべんねぇぇえ!!」 「「ゅ、ゆわぁぁぁぁああんん!!」」 二匹はまるで輪唱をするように声を合わせて泣き続けた、疲れ果てて眠ってしまうまで。 朝、どちらともなく起き出した二人は、お互いの愛情を再確認しようとザラザラの肌ですーりすーりを繰り返していた。 そして、ぽつりぽつりと話し出した。 「おちびちゃんは ゆっくりさせてあげなきゃね、れいむ」 「そうだね、まりさ、あったかいおうちで、おいしいごはんをむーしゃむーしゃさせたいね」 「ゆん、そうだね、おちびちゃんはゆっくりできるもんね、がんばろう……かりに、いってくるよ」 「いってらっしゃい、れいむも おうちをつくれるように がんばるね」 二匹は、これから生まれる子供の為に、頑張ろうと誓い合って、それを糧に動き出した。 まりさは食糧を、れいむは住居を。 それぞれ必死で求めることにした。 しかし、必死になっても、野生知識0の二匹では何も出来ることはなく。 まりさは口や舌を傷つけながら、硬い草を少量とって来て、れいむは木に対する懇願を続ける、ただそれだけだった。 なるべくれいむに優先的に食事をさせて、生まれてくる子供の栄養に回すようにさせていた。 流石にまだ慣れはしないし、今まで甘いゆっくりフードを食べていたので苦い草なんか受け付けないけれど、食べなければ死ぬので二匹は必死に食べて暮らしていた。 そして、予定よりかなり遅れて、ついに子供が出産のときを迎えた。 今日ばかりは暗い表情を消して、二匹は新しい我が子の誕生に笑顔を浮かべる。 「ゅぎぎぎぎ、う、うばれる、よぉお!!」 「れいむ! がんばって! おちびちゃんはまりさがうけとめるよ!」 体中に気持ち悪い汁を浮かべて踏ん張るれいむの前で、まりさは帽子を咥えて構える。 これから飛び出る我が子を受け止めるために、そしてそのときは来た。 「ゆっ、ゆっ! ゆっぽぉおぉおおお!!」 「しぇかいいち ぷりぷりてぃーなれーみゅがこうっりんしゅるよぉおおお!!」 尊大な声を合図に、子れいむがまりさの帽子に飛び込んできた。 「ゆ、ゆわぁぁぁああ!! てんしさんのたんっじょうだよぉおお!!」 「ゆぎぐ……あ、あれ? もうひとりおちびちゃんがいるきがしたのに……」 涙を流して誕生を喜ぶまりさとは対象的に、れいむは不思議そうにない首をかしげていた。 れいむは、子供は二匹いると考えていたのだけれど、生まれたのは子れいむ一匹、お腹に残っている様子もなかった。 「ゅう……ゆっ、ふしぎなこともあるんだね! おちびちゃーん、れいむがおかーさんだよ!」 直ぐにその不思議を餡子の隅に追いやると、バカ面下げて生まれた子れいむに近寄っていった。 「ゆげっぴゅ、おきゃーしゃん! おとーしゃん! ゆっくちしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 生まれて初めての挨拶をしてくれた子れいむに、二匹は全力の「ゆっくりしていってね!」で返す。 「まりさのおちびちゃん、とっても、とぉってもかわいーよぉお!!」 「ゆぅぅん! かんっどうてきだよぉお!!」 「げっぴゅ、れーみゅきゃわいい?」 「「とうっぜんだよぉおおお!!」」 この森に捨てられ、もとい野生に返されて久しぶりのゆっくりを全力で堪能していた。 それも長くは続かなかったのは当然極まりないけれど。 ……。 …………。 「しゃっしゃと さいしょのあみゃあみゃもっちぇこぉおぉおおおい!! このクズおやどもがぁぁぁああ!!」 「お、おちびちゃん、お、おちついてね! おちついてね!」 子れいむ誕生から数日。 れいむは必死に子れいむを宥めようとしていた。 この子れいむ、何故だか苦い草はまだしも、まだましな草などを優先的に食べさせているのに、どれも食べては吐き出すを繰り返していた。 そして、食べさせたことなどない筈の「あまあま」をしきりに要求してくるのだった。 ほとんど食事を取らない取れない状況に、未だに巣はない、自分をゆっくりさせない親に子れいむは簡単にゲスの兆候を見せている。 れいむとまりさがいたような、満たされた空間ではゲスは生まれない、何故ならゆっくりで満たされているので、それ以上を求めないからだ。 そして、他の者も自分と同レベルのために、向上する意欲も生まれない。 だから、ゲスは存在しなかった。 そのために、この子れいむは二匹が始めて出会うゲスだった。 ゲスと言っても可愛い我が子、ゲスを知らないこともあるし、ゆっくりさせてあげられてない自覚もあったので二匹は精一杯頑張っていた。 まりさは、気絶するくらいまで頑張って狩りをして帰って、子れいむに罵られて。 れいむは、まりさが帰るまで子れいむの癇癪を受け止めながら木に「おうぢをぐだざいぃいいい!」と頭を下げる日々。 「おでがい、じばず、きさん、おうぢぃ……」 「しゃっしゃと! あみゃあみゃもってこい! ゲスクズゴミカスおやぁぁぁ!!」 必死に木に頭を下げるれいむの身体に、子れいむは何度も体当たりを繰り返していた。 肉体的なダメージはなく、ただただ心が痛いその行為にれいむは枯れない涙を流していた。 「れい、む……ただ、いば」 「ゆぅう、まりさ、おがえりなざい……」 大分暗くなった頃に、帽子にも穴が開いてボロボロのまりさが帰ってきた。 お互いに目を合わせて、収穫がなかったことを理解して落胆する。 そんな二人の悲哀をぶち壊すように、子れいむは声をあげた。 「ゆきゃきゃ! ゆっくりできないクソおやがかえってきたよ! きょうこしょはあみゃあみゃとれたにょ!? まともに かりもできにゃいの!? このむのー!!」 「ゆぎっっ!!」 かつては、自分のことを「かりのたつゆん」と称したまりさである、狩りについて貶されるのが何よりゆっくり出来なかった。 たとえ、それが用意された場所でしか得られない称号であっても、その事実を知らない限りでは一生「かりのたつゆん」だったのだから。 それでも、平和にゆっくりしたゆん生を送ってきたまりさは怒りという感情の置き場を知らずに、ただ我慢するだけだった。 「ごめん、ごめんね、おちびちゃん、すくないけど、これたべてね……れいむ、はなしがあるよ」 「ゆん?」 どうにか手に入れた柔らかい草や木の実を子れいむに渡すと、れいむを呼んで話をする。 「もう このきさんは まりさたちにおうちをくれないみたいだから ここをいどうしよう、どうにかしてむれにかえろう!」 「ゆっ! …………ゆん、そうだね、ここにいたらおちびちゃんもゆっくりできないしね」 まりさの提案にれいむは頷いた。 子れいむは「げろまじゅ! こんにゃのしかとってこれないむのーはしね!」と、食べては吐き出して、一番美味しい部分だけを食べていた。 そんな我が子の姿をしばらく眺めてから、れいむとまりさは明日の移動の為に、吐き出された草をもそもそ食べだした。 「ゆきゃきゃ! こにょクジュはへんったいだね! れいみゅのつばしゃんがついたのがだいしゅきなんだから! きみょいよ!」 「「……むーしゃむーしゃ」」 笑われながらもそれに耐えて、どうにかして群れに帰りたいと二匹は無言で涙を流した。 「ゆゆ? にゃににゃいてりゅの? れいみゅがこわかったの? ゆぷぷ! なさけにゃいね! ゆぷぷ、ゆぷぷ!」 「「…………」」 ……。 …………。 「ゆへ、ゆへぇえ、まだ、つかないの、お」 「ば、ばりざ、そろそろ、おちびちゃん、かわるよ……」 次の日、起きてから直ぐに二匹は行動を開始した。 近場にある枯れ草などを食べてから、子れいむを頭に載せて必死に森の中を進んでいく。 交互に子れいむを運んで、ぐずる彼女をあやしながら、群れに帰ることを夢見て進む。 どこがゴールかも解らず、つい先日までぷにぷにだったあんよをガチガチのまっくろにして、綺麗だったお飾りをボロボロにしながら必死に必死に這いずり回っていき。 「「ゆ、ゆわぁああぁああ!!」」 「ゆ? にゃんにゃの?」 三匹がたどり着いたのは一面の野菜野菜野菜。 中にはかつて餌として与えられていたものもあり、久しぶりにゆっくりした食事が取れると二匹は涙を流して喜んだ。 寝ぼけている子れいむを、まりさは頭から下ろすと自信に満ちた大声で話す。 「みて! おちびちゃん! これがきょうのごはんさんだよ! たっぷりたべてね!」 「ゅ、ゆわぁああ!! こりぇじぇんぶれーみゅの!?」 「「ゆふふ、おちびちゃんゆっくりしてるね!」」 目を輝かせて、野菜の群れに飛び込んだ子れいむを二匹は幸せそうに見つめていた。 子れいむはとりあえず手ごろな野菜に齧り付いては、違う野菜にと食べながら移動していく。 「まぁまぁ! これめっちゃまぁまぁ! さいしゃのあみゃあみゃにはまけるけど、めっちゃそれなりぃ!」 子れいむは「それなり」を連呼しながら、どんどん食ながら進む。 その姿に笑みを浮かべていた二匹も、そろそろ自分もと久しぶりの満足いく食事を始めた。 「「むーしゃむーしゃ! しあ 「にゃにやってるにょぉおお!!」 ゆ?」」 二匹が食事を始めたら、野菜を掻き分けて子れいむが鬼の形相でやってきた。 「お、おちびちゃ……」 「いま! にゃにをやってちゃの!?」 「む、むーしゃむーしゃ、だよ? どうしたの、おちびちゃん?」 あまりの形相に怯えながら、二匹はそう告げた。 その言葉に、子れいむは怒りを露に震えて叫びだす。 「これは! じぇんぶれいみゅのだよ!? おまえら みたいなむのーなクズに いっこでもわけてあげりゅと おもったにょぉおお!?!?」 「「ゆ!?」」 確かにさっき「こりぇじぇんぶれーみゅの」とか言ってはいたが、まさか本気とは思わず二匹は固まる。 「れーみゅをゆっきゅりさせにゃかったばちゅだよ! そこでれーみゅのむーしゃむーしゃタイムをみててね! たべたかったら さいしょのあみゃあみゃもっちぇこい! このクズ!」 口の周りに野菜クズをつけたまま、生みの親たる二匹を大声で怒鳴りつけて行く。 そのあまりにもあまりな態度に二匹は硬直してしまっていた。 そして、れいむは前から気になっていたことを恐る恐る聞くことにした。 「お、おちびちゃん? まえからいってる、さいしょのあまあまって、なに? れいむ、あまあまなんかあげたおぼえない、よ?」 子れいむがことあるごとに引き合いに出してきた「さいしょのあまあま」その存在がふと疑問になり、れいむは質問した。 その言葉に、子れいむはあからさまにれいむを小馬鹿にした表情を作り、語りだした。 「ゆふぅ、まっちゃく ゆっきゅりしてにゃいおやは あたまだけゆっくちしちぇってるんだね! れいみゅがうまれるまえに おまえのぽんぽんの なかにおいてあっちゃしゃべるあみゃあみゃだよ! れーみゅのこちょをおねーちゃんとかよぶ ずーずーしいあみゃあみゃだよ!」 「…………」 「ゆ、どーゆーこと? れいむ? れいむ?」 れいむは子れいむの言葉と一緒に、生んだときを思い出していた。 「そうだよ……ふたり、いたんだよ……」 「ゆ?」 ぶつぶつ呟くれいむを、まりさは心配そうに覗き込んだ。 まりさは理解出来ていなかった、何故なら腹に子を宿したのれいむだったから。 そして、れいむはしっかりと理解した、してしまった。 栄養が足りなくて、この子れいむは一緒に生まれるハズだった妹を食べたのだと。 想像すらしていなかった禁忌の同属食いに、この態度。 平和に暮らしていた、作られた森で生きていれば一生知らなかっただろう怒りがれいむを支配していた。 「こ、ごのぉおおぉおおおおおぉおお!!!!」 「ゆぴ?」 「れ、れいむ? どうしたの? どうしたのれいむ!?」 怒りを叫びに変えて、大地が震えるように声を弾き出した。 今まで喧嘩すらしたことのなかったれいむは、怒りをどうしたら良いか理解出来ずに、涙と声で発散していた。 「ゆぅ、きみのわりゅいゆっきゅりだね れーみゅはむーしゃむーしゃにもどりゅよ! ゆぴょ!?」 大声で叫び続けるれいむを見限って、子れいむは再び野菜を食べに行こうとして何かにぶつかった。 「にゃ、にゃにしゅりゅの!? れいみゅのきゃわいしゃに しっちょしにゃいでね!」 『ったく、これから収穫だってのに、ざっけんなよ、協定はどうしたんだよ糞ゆっくり!』 子れいむがぶつかったのは、れいむの叫びを聞いてやってきた畑の持ち主の青年だった。 この畑がある村は、まりさたちがやってきた森にある群れと協定を結んでいた。 もちろん相互の理解なんてものはなく、人間が仕方なく住まわせてやっているレベルで、用もなしに森から出たゆっくりは直ぐに潰されるし野菜に手を出すなんてもっての他だ。 無論、まりさたちは群れのゆっくりではないけれど、人間にはそんな違いはわからない。 これから収穫の野菜のいくつかを駄目にされたのだ、純粋に腹立たしいに決まっている。 「にゃにいっちぇるの! しゃっしゃとれーみゅにあやまっちぇね!」 「ゆぐがぁぁぁぁああぁああああ!!」 「れいむ?! れいむぅ!!」 彼の前では、子れいむが憤り、れいむが叫び、まりさがオロオロしていた。 青年は前からゆっくりが大嫌いだったが、協定の為に山狩りなどは出来ないでいたし。 森の群れのゆっくりはそれなりに優秀で、森から出ることはなかった。 しかし、今回野菜を食べられたことでゆっくりを根絶やしに出来ると青年は歪んだ笑みを浮かべていた。 ……。 …………。 「ゆぎゃぁぁっぁああああ!! やべでぇっぇええ!! ゆるじでぇぇぇえええ!!」 「ゆるす! わけが! ないのぜ! おまえたちの! せいで! あやうく! むれが!!」 森の中にある群れの広場で、まりさが群れゆっくりたちに何度も体当たりをされていた。 あの後、青年が皆に話して群れのゆっくりを呼びつけたのだが、三匹が群れのゆっくりではないと解った為に、駆除の思惑は外れてしまった。 その腹いせにれいむは青年に踏み潰され、まりさと子れいむは群れに引き渡され、せいっさいの真っ最中だった。 何とか人間に目をつけられないように暮らしていたのに、余所者のせいで駆除されそうになったのだから群れの怒りは相当のものだった。 まりさは帽子を引きちぎられ、足を棒で裂かれた上で袋叩きにあっている。 子れいむは、というと。 「だしぇぇぇぇぇぇええ!! れーみゅをこんにゃくしゃいとこにいれちぇ ただですむとおもっちぇるにょ!?」 群れのうんうんを集める穴に放り込まれて、一生そこでうんうんを食べて暮らせと命じられていた。 子れいむは、そんなことは出来ないと大きな声で鳴いてはいるが、それは群れのゆっくりを楽しませるだけで。 「ゆぴゅ!? く、くしゃいぃい!! やめちぇ! うんうんしにゃい、ゆげぇぇえ!!」 「ゆぷぷ! あのゲスちび、ゆっくりしてないね!」 今もまた、子れいむ目掛けてうんうんが放られた様だった。 まりさはまりさで、ずっと暴行を受けてもはや意識が朦朧としていた。 そんな彼女の前で、大きなまりさと、ありすが何やら話をしているようだった。 「さいきん よそものがふえたのぜ」 「しかも、いなかものばっかりね、どーゆーことかしら?」 二匹の話すとおりに、最近森に見たことないゆっくりが増えてきたのだった。 もちろん、ゆふぁりパークで捨てられた、もとり野生に返されたゆっくりたちだ。 この森には、まりさたち以外にも何家族か捨てられていて、その何匹かがこの群れに着たり、村に行ったりしていた。 群れに来たゆっくりは、「かりのたつゆん」を名乗っていたくせに、まったく狩が出来ず、しかも巣も作れないし、何も出来ない能無しばかり。 そして、村に出たゆっくりのせいでこの群れが疑われて、今回のような駆除の原因になりそうになったりしていた。 長であるありすは大きくため息をついて、ボロボロのまりさを見つめる。 「どこのいなかからきたのかしら? このいなかものは」 野生に返されたゆっくりたいは、その大半が死に絶えて、残りは各地で様々な被害を起こしていた。 畑荒らし、人間に喧嘩を売る、子供のお菓子を狙う、住居侵入。 人間とうまくやっている群れの崩壊、野生ゆっくりとの諍いなど等。 数え上げたらキリがないほどの被害を出していた。 そんな被害の引き金ともなった愛護団体は、そ知らぬ顔で捨てゆっくりの問題に噛み付き、非常識な飼い主、虐待趣味について言及して 『ゆっくりを捨てるな! ゆっくりに愛を!』と歌っていた。
https://w.atwiki.jp/hutaba_ranking/pages/42.html
※ちょっと基本にかえってリハビリ 『森の消毒』 D.O ここは人里から少し森に入った所にある、平和でのどかなゆっくりプレイス。 気候も穏やかで大きな動物もおらず、背の低い草が青々と茂り、 木々も程よくまばらに生えているため、日の光も柔らかに大地を包む。 豊かにして優しい、実にゆっくりとしたゆっくりプレイスであった。 「ぱちゅり~!きのみさん、たくさんとれたのぜ!」 「むきゅ~・・・むきゅん!おつかれさま! じゃあ、これとこれはほぞんしょく、あとはみんなでたべましょう。」 「ゆっくりりかいしたのぜ!みんなー!ちょぞうこまではこぶの、てつだうのぜ!」 「「「わかるよー!!」」」 こんな場所なら当然だろうが、ここにはゆっくりの群れが住み着いていた。 まだ住み着いて一回しか冬を越していない、若い群れだ。 長はそこそこ賢いぱちゅりーが、補佐はその旦那さんであるまりさが行っている。 頭脳労働はぱちゅりーが行い、その提案に沿って群れを動かすリーダーがまりさの役割。 あえてぱちぇを長としているのは、その方が群れのみんなが言う事を聞いてくれそうだからである。 元からリーダー格のまりさについては、特に肩書きを必要とはしてなかったのであろう。 ともあれ、能力をきちんと考えた役割分担で、群れの運営はなかなかに上手くいっていた。 そんなゆっくりプレイス内にある一本の枯木の根元。 そこにれいむは住んでいた。 「おかーさん!おかえりなさい!!ゆわーい、いもむしさんだー!」 「おちびちゃん、ただいま!」 れいむはまだまだテニスボールサイズの子ゆっくり。 赤ちゃん言葉は抜け切り、お外を元気に跳ね回れる程度には成長しているものの、 まだまだ独り立ちは先のことだ。 それでも、父まりさが狩りの途中に命を落として以降、、 母れいむが狩りに行っている間は、妹たちの世話をしながらお留守番を一生懸命がんばっている。 「はやくむーちゃむーちゃさせちぇにぇ!れいみゅ、おなかぺーこぺーこにゃんだよ!」 「ゆゆ!?れいむ、おかーさんにおかえりなさい!がさきでしょ!」 「ゆぴっ!?・・・ゆぅ、ゆっくちおかえりなしゃい・・・ごめんにぇ。」 そんなれいむには、2匹の妹達がいる。 好奇心旺盛で元気いっぱい、少々わがままなのが玉にきずだが、 それでも姉である自分のいうことは素直に聞く次女れいむ。 「むーちゃむーちゃ、むーちゃ、ち、ち、ちあわちぇー!!」 「ま、まりさぁ。おくちのまわりがよごれてるよ。ぺーろぺーろ。」 「ゆぅぷ、ちゅっきりー!おねーしゃん、ありがちょーなのぢぇ!」 それと、とっても甘えん坊で、いつも自分にべったりの、お姉ちゃん子の末っ子まりさ。 れいむの可愛い妹達。 ホントは姉妹ももっと多かったのだが、野生の世界は全員無事に成長させてくれるほどには甘くない。 それでも、れいむは優しい母れいむと、自分を慕ってくれる妹達に囲まれて、 この上なくゆっくりした毎日を送っていた。 「しつれいするみょ~ん!おちびちゃんたち、あそびにいこうみょ~ん!」 「わかるよー。ちぇんたちとおそとであそぼうねー。」 「むほぉ!むほぉぉ!」 れいむ一家が仲良く昼ごはんをむーしゃむーしゃしていると、 今日も群れの保育担当であるみょん達が、赤ゆっくり達に遊びのお誘いに来た。 天気のいい日には、この群れでは赤ゆっくり達を広場に集め、みんなで仲良く遊ばせているのだ。 同年代の赤ゆっくり達を仲良く遊ばせることで、将来大きくなってからも群れが結束するように、との考えである。 まあ実際のところは、手のかかる赤ゆっくり達を一時的にでも一か所に集めて管理し、 親ゆっくり達の負担を軽減しようという狙いがあったりするのだが。 「ゆあーい!れいみゅ、みょんおにぇーしゃんたちと、あしょんでくるにぇ!」 「ゆふふ。じゃあ、みょん、ちぇん、ありす。おちびちゃんをよろしくね。」 「むほぉおお!!」 「ゆぃ。まりしゃ、おかーしゃんとゆっくちしゅるのじぇ!」 「ゆ?ゆふふ。おちびちゃんは、まだまだあまえんぼさんだね。」 もちろんどんな赤ゆっくりでも連れていくわけではない。 ベッドから這い出れない、生まれて数日以内の赤ゆっくりは、もちろんおうちで母親が世話をするし、 末っ子まりさのようにまだまだ精神的に幼い赤ゆっくりは、両親の元に残ることも多い。 「おかーしゃん!おねーしゃん!いってくるにぇ!」 「「ゆっくりいってらっしゃい!!」」 ともあれ、普段おうちからも出してもらえない赤ゆっくりにとって、 この青空お遊戯会は、おとな社会への最初の一歩なのであった。 次女れいむは保育みょん達の方に跳ねながら、母達に輝くような笑顔を見せて出発の挨拶をした。 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 そしてこれが、れいむ一家が仲良く顔を合わせた最後の時になった。 ------------------------------------------------- 「むきゅきゅ、まりさ。むれのおちびちゃんたち、ゆっくりしてるわね。」 「そうなのぜ~。これもぱちゅりーのおかげなのぜ~。」 「むきゅぅん。まりさがきょうりょくしてくれてるからよ。ゆぅ・・・すーりすーり。」 「だ、だめなのぜぇ。こんなおそとですっきりーなんて、はずかしいのぜぇ。すーりすーり・・・」 群れの素晴らしいゆっくりっぷりに、思わずすっきりーしてしまいそうになる長ぱちゅりー達。 保育みょん達が集めた赤ゆっくり達は、その長ぱちぇと補佐まりさが見守る小さな広場の中で、 楽しそうな声を上げながら遊びまわっていた。 「おし~りふりふり、の~びの~び!うんうんさんも~おでかけするよ~!す~す~、すっきり~!」 「「「うんうんしゅるよ~!しゅっきり~!」」」 保育ちぇんは最近お腹の調子が悪いおちびちゃん達を集め、お通じをよくするうんうん体操をさせる。 「むほぉおお!むほぉおお!むほぉ!」 「「「みゅ、みゅほぉおお!!ちゅ、ちゅっきり!」」」 保育ありすは赤ありす達を集め、都会派になるための礼儀作法やコーディネート技術を教えている。 「ちょうちょしゃん!ゆっくちまっちぇ~!」 「ゆっくちこっちにくるのじぇ!まりしゃがむーちゃむーちゃしてあげるのじぇ!」 「おはなしゃん、れいみゅにゆっくちたべられちぇにぇ!」 また、お腹がすいた赤ゆっくり達は、狩りの練習を兼ねて野原の美味しい恵みを味わう。 本能的に備わっているのであろう。 遊びの内容も、将来おとなになってから役立つ技能を身につけるのに必要なものなのだ。 「まりしゃがぷくーするのじぇ!ぷっきゅ~!」 「ゆわわ~、しゅごいにぇ!まりしゃはさいっきょうのゆっくりだにぇ!」 「ゆゆぅ~ん。でも、おとーしゃんのほうが、ぷっく~はおっきいのじぇ!おとーしゃんがさいっきょうなのじぇ!」 口の中に空気を溜めて体を膨らませる、威嚇行動であるぷくーの練習をしている赤ゆっくりもいる。 これなら、将来は家族達を守っていける、立派なおとなになれることだろう。 「かけっこだよー!ちぇんについてこれるー。」 「みゅほぉ!みゅほおお!!」 「あ、ありしゅ?おめめがこわいよー!?」 森で生きるには、駆けっこの速さも大事な技能だ。 多くのおちびちゃん達は、有り余る元気を発散させるように、広場の端から端まで元気に跳ねまわっている。 ・・・この広場で遊ぶおちびちゃん、群れの次代を担う新しい生命達は、 子育てのベテランである保育ゆっくり達に見守られ、元気に遊びながら目に見えるほどスクスクと成長し続けていた。 その明るい未来に、一点の曇りすらないかのように・・・ ガサッ。ガサッ。 「ゆぅ?」×200 そこに、なんの前触れもなく、突然の来訪者が現れた。 「むきゅ?・・・にん、げんさん?」 それは、長ぱちゅりーを含め、群れでも数匹しか見た事のない生き物。 ゆっくりと同じ言葉を使い、胴付きゆっくりのような体を持った不思議生物。 ・・・『にんげんさん』。 「ぽかーん。」×200 赤ゆっくり達は、その未知の生物を見て、逃げるでもなく声をかけるでもなく、 口をぽかーんと開けてその姿を見上げていた。 にんげんさんは、ひとりではなく、この広場をぐるっと囲めるほどの人数がいて、 そして手には、先端が赤くメラメラと燃える棒、松明を持っていた。 まだ真昼間で、森の中でも心地よいほど明るいというのに。 しばらくお互いに無言のまま、広場には静寂が続いた。 「おにーしゃん!ここは、れいみゅたちのゆっくちぷれいすだよ!ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!」 その静寂を破り、最初ににんげんさんに声をかけたのは、ここにいた赤ゆっくり達の中でも特に好奇心の強いゆっくり。 あの、れいむ一家の次女れいむだった。 ジュゥゥ・・・ボゥワッ! そして、次女れいむがおにいさんに近づき、声をかけると同時に、 その頭に松明の火が押し付けられた。 「ぴぃうっ?・・・ぴ・・・」 妹れいむは、か細い悲鳴をわずかにあげてころころと2、3回転がると、そのまま炭になって動かなくなった。 「・・・・・・むきゅぅぅうう、みんなにげてぇぇえええ!!」 突然の光景に、ここにいた全てのゆっくりが考える事を止めたかのように茫然となった中で、 長ぱちゅりーの叫びが静寂を切り裂いた。 「ゆ、ゆわぁぁああ!おちびちゃんたち、ちぇんのおくちにはいってねー!」 「むほぉおお!むほ、むほぉっ!」 「みんな、はやくまりさのおぼうしにはいるのぜ!にげるのぜぇええ!!」 「めらめらしゃんは、ゆっくちできにゃいぃぃ!」 「ゆぴぁああん!おにぇーしゃんのおくちに、ゆっくちはいりゅよ!ゆっくち!!」 「ゆっくちー。おくちのなかなら、あんしんだにぇ!」 長の叫びは、群れの全員を自失の状態から現実に返すことに成功した。 保育ゆっくり達は、自分達のお口に赤ゆっくり達を入らせていく。 子供達をお口の中に入れるこの行動は、ゆっくり達が自分の子供達を危険から守る時に行う、本能的行動だ。 親のお口の中に赤ゆっくりを入れることで、 外敵から隠す・親の体を外敵からの盾にする・逃走が必要な時はそのまま赤ゆっくりを連れていく、 といった効果を無意識に狙って生まれた本能なのであろう。 「むきゅっ、みんな!おちびちゃんをおくちにいれたら、はやくここからにげるのよ!!」 「「「ゆっくりりかいしたよ!!」」」 そしてお口に、近くにいた赤ゆっくり達を数匹づつ入れた保育ゆっくり達は、 長ぱちゅりーの指示に従って広場から飛び出していったのであった。 お口に赤ゆっくりを満載したせいで、這うように遅い歩みではあったが。 長ぱちゅりーはその間にも、次の指示を補佐まりさに出す。 「むきゅ、まりさ。まりさはみんなのおうちをまわるのよ! ここにきてないおちびちゃんたちを、はやくにがしてあげて!」 「ゆっくりりかいし・・・ゆゆっ!?ぱちゅりーはどうするのぜ!?」 「ぱちぇは・・・にんげんさんと『こうしょう』してみるわ!」 長ぱちゅりーは、最も危険な任務を自分に課すつもりだった。 「そ、そんなのあぶないのぜ!いっしょににげるのぜ!!」 「ぱちぇのあんよじゃ、まりさのあしでまといよ! それに、おはなしするのは、ぱちぇはむれでいちばんじょうずだわ! まりさはまりさの、ぱちぇはぱちぇのできることをするのよ!むきゅんっ!!」 「ゆ、ゆ、ゆっくりりかいしたのぜ・・・にげきったら、またすーりすーりしようなのぜー!」 ぱちゅりーはその弁舌をもって人間と交渉を、まりさはその脚力とリーダーシップをもって群れの避難誘導を、 お互いに能力を生かして最善の役割を果たそう、長ぱちゅりーはそう言って補佐まりさを説得した。 だが、それは半分正しく、半分嘘だった。 長ぱちゅりーは自分が生き残れない可能性が高いと理解しながら、 みんなが逃げる時間を稼ぐためにここに残ったのであった。 ・・・そして、もちろん補佐まりさもそれを察していた。 「むきゅ!にんげんさん、ぱちぇたちは、ここでゆっくりしてるだけよ! もしなにかめいわくをかけたなら、あやま『ジュゥゥウウウウウ』びゅ・・・」 結局、長ぱちゅりーは時間を5秒も稼げなかった。 長ぱちゅりーは顔面だけを松明で軽く炙られ、目と口だけを潰されたまま死ぬ事も出来ずに放置されて、 群れの崩壊する悲鳴を最後の最後まで聞き続けることになったのである。 お口に赤ゆっくりを入れて広場から逃げ出した保育ゆっくり達も、 その這うような鈍足のせいで早々に追いつかれ、近場の木の洞に逃げ込むのがやっとだった。 「むほぉおお!ぷっくー!!」 「ありしゅおにぇーしゃん、がんばっちぇー!」 「ゆっくちまもってくれちぇ、ありがちょー。」 保育ありすは、もはや逃げ切れない事を悟り、近場の木の洞に赤ゆっくり達を放り込むと、 その入り口を塞ぐようにぷくーっして赤ゆっくり達を守っていた。 隙間なくぷくーっで塞がれたその入り口からは、人間さんの手どころかイモムシ一匹も入る事はできないだろう。 そこに松明を持った人間さんが近づく。 「むほぉ!ぷっくー!!」 どむっ。 ジュゥゥゥゥウウウ。 「む・・ほごぉ・・・とか・・いば・・・・・・」 人間さんと向かい合った次の瞬間には、保育ありすのまむまむを松明が貫いていた。 せめてもの救いは、ありすの中枢餡がその一撃で砕かれ、ほとんど一瞬で絶命出来た事だろう。 ジュゥゥウウウウ!ボゥワッ!ジュジュジュウウ! 「ゆぴゃぁああん!あちゅい、あちゅいぃいいい!!」 「どうしてめらめらしゃん、はいってくりゅのぉおお!?こっちこにゃいでぇぇえ!」 「ありしゅおにぇーしゃん、どうしちぇ、たしゅけちぇくれにゃ・・・『ボゥッ』ぴぅっ!」 松明の先端はありすの体をやすやすと突き破って、木の洞の奥まで届いていた。 ありすには、逃げ場のない洞の中で焼き尽くされるおちびちゃん達の悲鳴が、聞こえていただろうか。 保育みょんとちぇんも、人間さんに追いつめられていた。 2匹は背後の木の根元に10匹ほどの赤ゆっくり達をかばいながら、周囲を人間さんに取り囲まれている。 もはや逃げ道を作るには、人間さんと戦って包囲を破るしかなかった。 「みょぉおん!みょんがこのけんで、みちをつくってやるみょん!みょっ!!」 ぶんっ!ひょい。ぶんっ!ひょい。 鋭く尖らせた木の枝を振りまわしながらみょんは包囲に突撃したが、 その木の枝の一撃一撃は、人間さんにあっさりとかわされる。 「がんばっちぇ~!みょんおねーしゃーん!」 「ゆっくちまけにゃいでー!」 「みょぉおおん!げんきひゃくばいだみょん!!みょっ!」 声援に力づけられさらに攻撃を続けるみょん。 だが、何回か突撃を続け、もう一撃、そう思った時、ふとみょんは後頭部の熱に気づいた。 「みょ・・・」 「「ゆぴゃぁぁああん!みょんおにぇーしゃぁああん!!」」 メラメラメラ・・・ 人間さんは、みょんの攻撃を軽くかわしながら、その松明をみょんの髪の毛にかすらせていた。 そして、みょんがその熱に気づいた頃には、みょんの髪の毛はほとんど全体が炎に包まれていた。 「みょぉぉ!?ぉおお・・・!!」 ゆっくりは、特にその皮膚や髪の毛は燃えやすい。 みょんが高熱の中で、自分がもうすぐ走る事も、 声を出す事も出来なくなる事を悟るまで、それほど時間はかからなかった。 だから、みょんはその最後に残された力全てを、おちびちゃん達への叫びに注いだ。 「お、おぢびぢゃんだち・・・にげでぇぇえええ!」 「みょ・・・?」 だが、そんなみょんを処理済みと判断した人間さんは、 その時すでに赤ゆっくり全員を火だるまにし終えていた。 「ぴょ・・・ぴ・・・」 「あちゅ・・・ぴぃ・・・」 「やめちぇぇぇええ!めらめらしゃんこわい『ボウッ』ぴ・・!ぴゃ!?・・・」 「みょ・・ん・・・」 「おぢ・・び・・・・・・」 ちぇんはみょんの死にざまを見て、すでに戦意も保育役としての誇りも失っていた。 目の前でおちびちゃん達を焼き尽くされるのを茫然と眺めながら、よろりと仰向けになり、腹を人間さんに見せる。 これは、ゆっくりの全面降伏を意味していた。 「だ、だずげでよー・・・。ちぇんはむていこうだよー、わかるー・・・?」 もちろんそんなことどうでもいい人間さんは、ちぇんの腹のど真ん中に松明を押し付けた。 たっぷり一分ほどかけて、ちぇんは炭になった。 一方その頃れいむ一家は、補佐まりさに先導されて群れの避難場所に向かっていた。 その集団は、生まれたばかりでベッドからも這い出られないような幼い赤ゆっくりと、 その母ゆっくり達でほとんどを占められていた。 「みゃみゃー、どこいくにょ?ゆっくち!」 「とってもゆっくりできる、あんぜんなところだよ。ゆっくりあんしんしてね。」 「ゆぁーい!みゃみゃのおくちのなか、ゆっくちしちぇるにぇ!ゆゆぅ~ん。」 母ゆっくり達は、赤ゆっくり達をお口の中に入れ、 なるべく自分達の不安を伝えないように話しかけながら這い進んだ。 そんな中、れいむ一家の母れいむが、決意を固めた表情で補佐まりさに話しかけた。 「まりさ・・・れいむは、おちびちゃんをさがしてくるよ!」 母れいむは、保育みょん達に預け、広場に遊びに行かせた次女れいむを諦めることができなかったのだった。 たとえ自分の身を危険にさらし、残り2匹のおちびちゃんが母親を失うことになってしまうかもしれないとしても。 「な、なにいってるのぜ!?れいむ!!」 「みょんたちがいるからだいじょうぶだとおもうけど・・・やっぱりむかえにいかないと・・・」 補佐まりさも、群れで最初に焼き殺されたのが、このれいむ一家の次女れいむだと言うことにまでは気づいていない。 だから、母れいむを止めるのに躊躇してしまった。 「まりさ、おちびちゃんたちをよろしくね!おちびちゃん!れいむはすぐもどってくるからね!いいこにしてるんだよ!」 「おかーさん!はやくかえってきてね!ぜったいだよ!」 「ゆっくち、いってらっしゃいなのじぇ!」 「ま、まつのぜ!れいむー!!」 そして、補佐まりさは母れいむを止め損ねてしまったのであった。 ぐしゃ。 母れいむは、変わり果てた次女れいむの姿を目にすることは無かった。 木の影から不意に顔を出した人間さんに、すれ違いざまに松明を振り下ろされ、 一撃で顔面を砕かれて息絶えたからである。 ------------------------------------------------- 母れいむとの永遠の別れの後、補佐まりさに先導されたれいむと末っ子まりさは、 群れの生き残り達と一緒に大きな洞窟へと避難していた。 人間さんでもすっぽり入れるほど大きな広い洞窟。それが、群れであらかじめ決めていた緊急時の避難場所。 他にも人間さんの目をかいくぐった生き残りがいれば、全員ここに集まってくるはずであった。 洞窟の中には、れいむと末っ子まりさ、補佐まりさの他には、 10匹程の母ゆっくりと、その幼いおちびちゃん達が一家族あたり4~5匹づつ。 それが全てである。 「ゆぅーん。このどうくつしゃん、ゆっくちしちぇないよぉ。」 「ごめんね、ちょっとがまんしててね。」 「みゃみゃー、おなかすいちゃよぉ。むーちゃむーちゃさせちぇにぇ。」 「いまは、ごはんがないんだよ。ちょっとだけがまんしててね。」 洞窟の中では生き残りのゆっくり達が、不安をまぎらわそうと、寄り集まってお話をしていた。 れいむ姉妹も例外ではなく、補佐まりさにぺったりくっついて、お話をしている。 「おきゃーしゃん、おそいのじぇ。」 「ゆぅぅ、きっともうすぐもどってくるよ。まりさもがまんして、ゆっくりまとうね。」 「そうなのぜ。きっとだいじょうぶなのぜ。」 ばさっ。 その時、洞窟内の地面全体を覆うように、網がかぶせられた。 「ゆわぁぁああ!?なんなのこれぇぇええ!!」 「ゆっくちうごけにゃいー!みゃみゃー!」 「な、なんなのぜ!このあみさんは、なんなのぜぇぇ・・・え?」 網の向こうには、人間さんが立っていた。 最初から、全ては人間さんの計画通り。 ゆっくりの行動、子連れならどのくらいの速さで逃げるか、 そして、このゆっくりプレイス内で最後に逃げ込むとすれば、それはどこか・・・ ・・・全てを計算した上で、逃げ込みやすく捕まえやすい、適度な広さの洞窟を用意していたのだった。 その後、網に捕まった群れの生き残りのうち、赤ゆっくり達は卵パックのような容器に優しく分別され、 母ゆっくり達はダンボールに乱暴に突っこまれて、最初に襲撃に遭った広場のど真ん中まで連れてこられた。 「ゆぅ・・・ゆぅぅ~、にんげんさん!いもーとを、すえっこまりさをかえしてね!」 「ゆんやぁ~ん。ゆっくちできにゃいのじぇ~。」 れいむ姉妹もまた、離ればなれにされていた。 れいむはダンボールの中に、末っ子まりさは卵パックの中へと。 そして、広場のど真ん中にはたき火が作られ、その上には水を張った、炊き出し用の大鍋が湯気を上げている。 れいむは実際に火を見た事などなかったのだが、メラメラと輝くそれと、白い湯気を上げる鍋が、 とてつもなく不吉な物に見えていた。 ちゃぷちゃぷちゃぷっ・・・ 「ゆわーい!みずあびしゃんは、ゆっくちできりゅにぇ!」 「ゆっくちー!」 そんな不安をよそに、赤ゆっくり達の方からきゃっきゃと楽しそうな声が聞こえてきた。 何事かと見てみると、人間のおねえさんが、ボウルに張った水で赤ゆっくりを丁寧に洗ってあげているのが見える。 「ゆ、ゆぅう!!そうだよ!おちびちゃんたちは、ゆっくりできるんだよ!ゆっくりさせてあげてね!!」 「おねーさん、ありがとー!」 「ゆわぁ~。おちびちゃんたち、ゆっくりしてるよぉ~。」 補佐まりさとれいむを除く母ゆっくり達は、みんな自分達のおちびちゃんが嬉しそうに水浴びしているのを見て、 早くも先ほどまでの恐怖を忘れて、ゆっくりし始めていた。 だが、それも人間さんが、赤ゆっくり達全員をキレイに洗い終わるまでのことだった。 「こーりょこーりょ、ゆっくちー。」 「ぷりゅぷりゅぷりゅっ!しゅっきりー!」 水浴びを終えた赤ゆっくり達は清潔な布巾の上に乗せられ、 赤ゆっくり達はこーろこーろ、ぷーるぷーるして水分を切っていた。 そうしてみんながすっきりーとした表情でゆっくりしていると、 先ほどのおねえさんが、何やら変わった手袋を両手につけて、 手近にいた赤れいむをつまみあげる。 「おしょらとんでるみちゃーい!」 そして、手袋をつけた両掌で包み込むと、 ごしっ・・・ごしっ・・・ 2回ほど揉んだ。 「ゆっぴ?ぃぃいいいいあぁああああああ!?」 おねえさんが手のひらを開けると、そこには髪の毛と薄皮がきれいに削り取られた、 スベスベ真ん丸饅頭の『元』赤れいむがいた。 「いぢゃぁぁああいぃぃ!!みえにゃい!いぢゃい!?みゃみゃぁぁあああ!!」 その皮膚はムラなく薄皮がこそぎ取られ、まぶたと目玉の表面も削り取られている。 髪の毛もお飾りも、薄皮と一緒に手袋の中に残っていた。 「「「ど、ど、どうぢでぞんなごどずるのぉおおおお!!」」」 そのおねえさんが付けていた手袋は、ゆっくり用皮むき手袋。 表面がやすり状になっており、野生ゆっくりの汚れた皮膚や髪の毛などを削り取るために作られたものだった。 森に響き渡る悲鳴は、おねえさんが手をごしごしと揉むたびに大きくなっていった。 「ゆびゃぁあぁああ!!やべぢぇええええ!!」 「おぎゃあぢゃあああん!!」 「みえにゃい!みえにゃいよぉおお!!いぢゃぁぁあい!!」 数十匹の赤ゆっくり達が、あっという間にスベスベの薄皮饅頭になっていく。 それはゆっくり達にとって、まさしく地獄の光景だったであろう。 悲鳴を上げつづける母ゆっくり達に混じり、れいむも必死に叫び続けた。 そんなれいむの視界に、れいむの良く知る、世界で最も愛する存在の姿が映った。 「おにぇーぢゃん!たしゅけちぇぇぇええ!!」 「まりさ!ゆ、ゆぁあああん!!おねーさん、やべで、やべであげでぇぇええ!!」 末っ子まりさの順番は、赤ゆっくり達の中で、一番最後だった。 「いやなのじぇ、だじゅげ」 ごし・・・ごしっ・・・ そして、集められた赤ゆっくり達は、一匹残らず薄皮饅頭になった。 「ゆぴゃぁあああ!!ゆっぐぢでぎにゃい、ゆっぐぢでぎにゃいぃぃいい!! おぎゃーしゃん、おにぇーじゃん!ゆびゃぁぁああああ!!」 「どうぢで・・・どうぢでぇ、ゆっぐぢぢでだのにぃ・・・」 れいむは、可愛い末っ子まりさを、守りきることが出来なかったのだった。 『元』赤ゆっくり達の悲鳴が周囲に響き続ける中、 母ゆっくり達は、自分達のおちびちゃんの、あまりにも痛ましい姿に、 泣き叫ぶ気力も残されておらず、ただすすり泣くように懇願し続けた。 「もうやべで・・・ゆっぐぢぢで・・・」 「おちびちゃ・・・ぺーろぺーろさせてぇ・・・」 その様子を気にしているのか、母ゆっくり達にはおねえさんの表情からはなにも読みとれなかった。 そして、おねえさんは薄皮饅頭を数十個乗せたおぼんを持ち上げると、 たき火の上でクツクツと音を立てる大鍋の前に運び、 じゃぽじゃぽじゃぽっ おぼんの中身を大鍋の中に落としていった。 「「「ゆっぴゃぁぁあああああああぁぁぁぁ・・・・・こぽ・・・こぽ・・・」」」 「「「おぢ・・・おぢびぢゃ・・・」」」 赤ゆっくり達は、一匹残らず大鍋の湯の中に溶けて消えていった。 ダンボールに入れられたゆっくり達は、それからしばらくの間放置された。 母ゆっくり達の詰め込まれたそのダンボールには、 赤ゆっくり達からこそぎ取られたお飾りや、髪の毛も放り込まれていた。 母ゆっくり達は、自分のおちびちゃん達の、お飾りと髪の毛をぺーろぺーろして泣き続ける。 だが、やがてたき火の火が弱くなったところで、そのダンボールから完全に気力を失った補佐まりさが取り出された。 「ゆ・・・やべで、やべでぐだざい・・・もういいでじょ・・・あとのみんな・・・ だずげでください・・・ぱちゅりーにやぐぞぐぢだんでず・・・だずげるっで、みんなだずげ」 ひょいっ・・・ボゥッ 「ゆぁぉ・・・」 補佐まりさは、一瞬で火の中に消えていった。 「やべでぇぇえええ!!」 「もうやぢゃ、もうやべぢぇ、ゆびゃぁぁあああ!」 それから間もなく、可愛いおちびちゃん達の物だったお飾りごと、母ゆっくり達はたき火に投げ込まれていった。 「どうぢで・・・どうぢでぇ・・・ゆっぐぢ、ゆっぐぢぃ」 最後に残されたのは、子ゆっくりだったためダンボールの中で一番小さかった、れいむだった。 ひょい。 恐怖と絶望で体が動かなくなっていたれいむは、逃げる事もできず、人間さんにあっさりつまみあげられた。 「おねえざん・・・どうぢで・・・?」 れいむは、すでに生を諦めていた。 ただ、それでも、どうしても質問せずにはいられない疑問があった。 れいむは、恐怖で震える口から、必死で声を絞り出したのだった。 「どうぢでごんなごどずるの・・・れいむたち・・ゆっくりしてただけだよ・・・?」 ひょいっ・・・ボッ そしてれいむは、疑問に対する答えを最後まで得ることなく、たき火の中に放り込まれて炭になった。 それから数分後、 ゆっくりの楽しげな声が消えた、かつてのゆっくりプレイスには、 美味しそうなお汁粉の鍋と、それを囲い談笑する人間さん達だけが残された・・・
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/2176.html
書きたかった事 親は子を見限れるのか でぶれいむ。ぶよぶよ 注意点 口の中いっぱいに食べたら一日分の食事くらいの設定です 作者 チェンマガツ? 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」」 うららかな陽気に誘われてまりさとれいむ、そしてその子供達いずれもれいむ種の四匹が背の低い草が生い茂る原っぱで思い思いにくつろいでいる。 両親は子供達が遠くに行かないよう見守り、子供達は四匹仲良くかけっこや押し合いを興じている。 今年の冬も無事越す事ができ、順調にご飯も集まったことから早めの子作りをして番は群れのゆっくり達よりいち早く幸せそうな日々を送っている。 れいむが子供達を呼ぶとその小さな体で一生懸命に跳ねてくる。 そよそよと撫でるように静かに吹く風やその大きさの割にのっそりと動く雲のおかげでここはとてもゆっくりできる。 そして番と子供達は寄り添って昼寝を始める。 天高く昇った太陽が体を温めてぽかぽかと気持ちよく、日光はまるで餡子にまで染み渡るようだ。 そんなゆっくり達の平穏を破る者が現れた。 片手に鞄を持った人間だ。わざわざゆっくりがいる森の奧までハイキングをしてくるような変わった男である。 「ゆっくりしていってね!!」 無防備に眠っているゆっくりの家族に向かって男は挨拶する。 すると眠そうな目をしながら律儀に挨拶を返してきた。 「「ゆっくりしていってね!!」」「「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」」 「おにいさん、ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだからでていってね!!」 「まあそんな事言わずにここでゆっくりさせてくれよ」 「れいむたちはねむねむなんだよ? そんなこともわからないの?」 「せっかく君たちに美味しい食べ物を持ってきてやったんだがいらないのかい?」 男のその言葉に反応したのは子供達だ。今は睡眠欲よりも食欲が優先される時期なのだろう。 男の足下まで跳ねてきて、我先にとぴょこぴょこと垂直に飛び上がる。 「しょれってゆっきゅりできりゅ?」 「ああできるとも」 「れいみゅにいっぱいちょうらいね!!」 「れいみゅも!! れいみゅも!!」 「はいはい順番にね。お前達はいらないのかい?」男は番であるまりさとれいむにも呼びかける。 「ゆゆっ!! れいむたちにもちょうだいね!!」 「よしよし」 どうやら家族全員が男からのご飯に興味をもったようである。 男は手持ちの鞄から大きいおにぎりを一つ取り出しゆっくり達の背後に向かって放り投げた。 すると男の手を離れ放物線を描くおにぎりを家族全員が目で追う。 そしてゆっくり達は一目散に駆けだした。 おにぎりに一番近い位置にいるのは親であるまりさとれいむであり、あっという間におにぎりに食らいついていた。 それに遅れたのは子供達である。男の足下にいたうえ、親よりも移動速度も遅いのだ。 急いで跳ねていくがきっと辿り着いた頃には無くなっているだろう。 「にゃんでにゃげたのー!!」 「ゆえーん、いじわるしないでにぇ!!」 男に悪態を付きながら必死に跳ねていった。 そのうちの一匹の赤れいむが出遅れた。 男の足下で跳ねていて丁度着地してグニャっと変形しているときに男がおにぎりを投げた赤ゆっくりだ。 姉妹達の様子からようやくご飯が遠くにあることを知って、泣きながら後を追い始めたが完全に出遅れていた。 男はその赤れいむを見逃さなかった。 素早く背後から捕まえては叫ばれないように口に粘着テープで蓋をする。 さらに後ろ髪のリボンともみあげの飾りを奪って鞄の中から透明な箱を取りだしてそれにれいむを放り込んだ。 次に男が取り出したのは別の透明の箱でその中には飾りのない同じ大きさの赤れいむがいた。 そのれいむにこれまた素早く先程奪った飾りを取り付け、怪我をしないようそっとご飯の近くに投げた。 もちろんこの間の男の行動を家族のどのゆっくりも見ていなかった。それほど男の与えたご飯に注視していた。 そして男は静かにその場を去った。親であるれいむとまりさは自分の子供の中身がすり替わった異変に気が付くだろうか、いや気が付かない。 飾りで個体識別をするゆっくりにとってもはや本体は付属品なのだ。 まるでおまけ付きお菓子のような存在である。 余談はさておきゆっくりの家族の様子を見てみよう。 「うっめ、めっちゃうっめ」 男の投げたたった一個のおにぎりを親まりさと親れいむは二匹で食べ終えてしまった。 「おかーしゃん、おにいしゃんのごはんは?」 「ゆあああ、おいしくてぜんぶたべちゃったああああ」 「どおじでわけてくれにゃいのぉぉぉ」 「おかーしゃんのばきゃぁぁぁぁ」 「ごめ゛んね゛えええええええ」 泣き崩れて情けない表情の親子の元に男によって中身の変えられた赤れいむが近づいてきた。 「おなかへっちゃからごはんちょうらいね!!」 「ゆう?」親まりさは声のトーンが少し低いその赤れいむを少し不審に思った。 こんな声の子供がいたっけ。でも姿は間違いなくまりさの子供だし……。 だがそれ以上まりさは深く考えない。 「みんなおうちにかえってごはんたべようね!!」 「「「「ゆゆ~ん」」」」 親まりさは自分の気持ちを一旦押し込めて子供達のご飯を与える事を先決した。 どうせ気のせいだろう。よく思い出せば前からこんな感じだったさと何とも楽観的に考えながら家族仲良く帰宅したのだった。 「こんにゃのじゃたりないよ!! もっちょもってきてにぇ!!」 「おちびちゃんちょっとたべすぎだよ……」 親達が保管していたご飯を子供達に配り、皆で食べ終えさらに一匹だけおかわりをした直後の赤れいむの台詞である。 残り三匹の赤れいむはと言えば、お腹いっぱいで丸々としたその姿のせいかころころと巣の中を転がり回っている。 しかし残り一匹の様子がどうもおかしいのだ。 この一匹は親まりさが昼間の原っぱで異変を感じた一匹だったが、どこがおかしいのかわからないでいる。 「ゆゆっ……、しかたないからもうすこしもってくるね」 そう言って親れいむは食物庫に入っていく。食べ物の保管量に関しては申し分無いのでなんら問題ないが、今までに無い事態に少し戸惑っていた。 「れいむはそだちざかりなんだね!!」 親まりさはむしろそれを喜ぶ事にした。そうだ自分達が子供の頃もこれくらい食べたものだ。 いつも親の手を煩わしていた気もする。 そう思いこむ事にした。そうして問題を先延ばしにしてしまった。 「さあおちびちゃん、ゆっくりたべてね!!」 「はふはふ、むしゃむしゃ、がつがつ……」 「いっぱいたべてゆっくりおおきくなってね!!」 気持ちいいの食べっぷりに両親の頬は緩んだが、しかしそれを豹変させる台詞を赤れいむは吐く。 「まだしあわしぇーできにゃいよ!! もっちょちょうだいにぇ!!」 「「ゆ゛ゆ゛っ!!」」 結局その後普段の五倍の量を食べて赤れいむは渋々満足した。 あれほど食べたのにかかわらず体型が変わらないのが不思議なくらいだ。大食いの赤れいむの横で眠る姉妹はあんなにも丸々しているのに……。 そこには両親は気が付いていない要素があった。この赤れいむのサイズが一回り大きくなっていた事だ。 たった一回の食事で急激な成長をしたことになる。 中身の餡子が増えただけでは表皮が追いつかず破裂しかねないが、この赤れいむはその特異的な柔軟な皮のおかげで形を保っていた。 ようやく眠りについた赤れいむを見つめながら親まりさと親れいむは安堵のため息をつく。 しかしその安堵もその日の晩のご飯の時に打ち砕かれた。 再び大量のご飯を要求する一匹の赤れいむによりあれほど蓄えていた食料も残りわずかになってしまった。 「このちびちゃんはごはんをたべすぎだよ……」 「ゆゆっ……。まりさががんばってごはんをあつめるからだいじょうぶだよ!!」 就寝前に両親が一匹の赤れいむについての話をした。 ご飯を食べ過ぎる本人ももちろん心配だが、明日も明後日もこれから先ずっとこのペースで食べ続けられると家族全員のご飯が無くなってしまう心配があった。 翌朝、親まりさと親れいむが目覚めるといつもの挨拶を交わし合う。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!」」」 あれ?とまりさとれいむはどちらともなく思った。 そしてもう一度、今度は少し大きめの声で挨拶をする。 「「ゆっくりしていってね!!!!」」 「「「ゆっきゅりしちぇいちぇね!!!!」」」 まりさとれいむは巣の中をよくよく見回した。 そこにいるのは赤れいむが三匹だ。たしか自分達の子供はもう少し多かったような気がするのだが。 「おかーしゃんどうしちゃの?」 二度にわたる挨拶に赤れいむの一匹は不思議そうな顔をしている。 もう一匹は未だ眠そうな顔を、そして残りの一匹は朝からとても元気である。 「おなかへっちゃからごはんちょうだいね!!」 「そうだね、ごはんにしようね!!」 「れいむたちはゆっくりまっててね!!」 自分達の子供が一人減っている事に気が付かない親まりさと親れいむ。 ご飯の催促を受けてまりさが単身朝ご飯の調達に向かい、れいむは子供達と歌を歌ったり頬擦りをしながらその帰りを今か今かと待つ事にした。 所変わってここは町の加工場、ゆっくりたちの阿鼻叫喚に包まれるまさにゆっくり地獄と呼べる空間に冒頭に出てきた男が勤めていた。 男が勤務する部署は廃棄物処理の工程に携わっていた。 ゆっくり食品の製造過程においていくつか発生する商品適応外のものを処理することがメインで、その他にも繁殖、飼育中に出てくる残飯、発育不良品、死体等の処理も行うのだ。 この工場ではそういった物を一元化してゆっくりに処理させる工程にある方法を取っていた。 いわゆるゆっくりコンポストである。 コンポスト内には工場稼働中は常にゆっくりの餌となるものが流し込まれていった。 一般家庭や街角に設置してあるコンポストとは比にならないほどの処理効率を求められた内部のゆっくり達は、世代を経るたびにそこで生き残る術を身につけていった。 コンポスト設置当初は何度もゆっくり達は処理しきれない餌にまみれて死んでいき、工場全体の動きを停止せざるを得ない状況に陥らせた。 そこで男達が投入したのが表皮の伸縮性の高いゆっくりだった。 ゆっくりの食欲が完全に満たされるのは自分の体がパンパンになりこれ以上ご飯が食べられなくなったときだ。 つまりその状況までいかなければいくらでも食べ続ける事ができた。 そして通称コンポストゆっくりと呼ばれる大喰いのゆっくりが誕生した。 表皮が厚くさらにとても伸びるコンポストゆっくりはコンポスト内を溢れかえらすこともなく、その無限の食欲で廃棄物処理を行っていった。 このゆっくりは大喰いもそうだがやたらと成長が早いこともその特徴だった。 沢山食べるから早いのか、もっと沢山食べるために早く成長するのかは定かではない。 またコンポストを空にするのが彼らの目的であるためうんうんしーしーもきわめて少ない。 その体皮も手伝って体内の老廃物はすべて溜め込んでいるようだった。 結果コンポスト内では水ぶくれ気味で健康的なゆっくりからすればかなり太った体型となっていた。 男はこのコンポストゆっくりを興味本位で野に放ち、野生での適応は可能かを試してみる実験としてまりさとれいむの子供をすり替えたのだ。 そしてそのコンポストゆっくりの赤れいむはまさに猛威を振るっていた。 朝のうちから狩りに出かけた親まりさが昼ご飯も兼ねてかなりの量のご飯を取ってきていた。 昨日の昼ご飯、晩ご飯のことを考えれば二回の食事はこれくらいあれば食べ盛りの赤れいむも満足するだろう、そう思った結果である。 一般的なまりさからしてもとても優秀なご飯回収量といえる。 しかし、その大量のご飯はあっという間にコンポストれいむの食欲によって消費されることになる。 「むーしゃ、むーしゃ、ふまんぞくー」 「「なんでええええええ!!」」 ゆうに一回の食事量の十倍は超えている、それも成体ゆっくり換算でだ。 見てみるとコンポストれいむの体高はすでに子ゆっくり並の大きさで、球体というより円柱に近い形をしている。姉妹と比べるとその異様さは目立つ。 たった一回の食事でここまで急成長し、さらにデブ体型である。コンポストれいむ恐るべし。 親まりさとれいむは戦慄した。このままでは親の威厳が保てないと感じた。 どこのゆっくりの世界に子供に満足にご飯を与えてやることのできないゆっくりがいるのかと。 子供をゆっくりさせてやれない親はゆっくりできないゆっくりだ。 なんとしてもゆっくりさせてやらねばならないというような変な責任感の元に朝ご飯が終わると両親揃って赤ゆっくりを巣に置いて狩りに出かけてしまった。 しかしここで妙な気合いを出すのは無駄な行為であるとはまりさとれいむは知る由もない。 それはいくらご飯を持ってきてもコンポストれいむに満足という言葉はないからだ。 太陽が空高く昇りきった頃、親まりさとれいむはその帽子と口に入るだけご飯を入れて自分達の巣に帰ってきた。 巣で待っていたのは同い年とは思えないほど体格差のあるれいむの姉妹が二匹待っていた。 「ゆゆゆっ!! れいむはどこにいったの!?」 親れいむは子供が一匹いなくなっていると気が付いた。この狭い巣の中では隠れようもないのでやはりいないのだ。 「しらにゃいよ!! おきたらいにゃかったよ!!」 「ゆっくりはやくごはんちょうだいね!!」 「もしかしておそとにでていっちゃったの!?」 「どおじですでまっでないのおおおお!!」 しかし赤れいむが巣から出た形跡は全くなかった。なぜなら巣に戻ったときに巣の入り口の偽装は破られてはいなかったからだ。 「ゆっくりはやくごはんちょうだいね!!」 「「れいむはすこししずかにしてね!!」」 両親はしつこく催促してくる赤れいむにご飯を与えて黙らせる。 その間に巣の周辺の捜索していなくなった赤れいむの行方を追った。 しかしどうしても発見できなかった。赤れいむの移動速度なぞたかが知れている。 ご飯を探している時間がかなりあったとしてもそれほど遠くまでいけないのだ。 それでも見つからないというのは捕食種に食べられたと考えるのが妥当だった。 「ゆあーん、おちびちゃんがだべられだあああああ」 「れいむしっかりするんだぜ、のこったれいむたちをゆっくりそだてればいいんだぜ」 「ばでぃざ、ごめんね゛ええええええ」 「れいむがあやまることじゃないんだぜ。ゆっくりすにもどるんだぜ」 子供が一匹いなくなったことを後悔するれいむとそれを何とかなだめようとするまりさ。すでにいなくなったのが二匹目であることはわかっていないようだが。 そんな二匹が巣に戻ると今度は驚く事態が発生していた。 「もっとごはんちょうだいね!!」 「「ゆがーん!!」」 あれほど集めたご飯がもうすでに消えていた。朝与えた量の二倍はあったのに。 さらに巣の中にあったなけなしの蓄えもすっかり消えていた。 丸々とした赤れいむとほとんど成体サイズに近い赤れいむの対比も両親を驚かせる。 たった二日ばかりでもうすでに自分達と同じ大きさまで育ってしまった。 しかし心はまだ赤れいむのそれである。 「「しゅーりしゅーり」」 隣にいる普通の赤れいむとはまるで親子のようなご飯後の頬擦りをする。 力加減を誤れば赤れいむが潰されそうな勢いで頬擦りするので両親は内心ハラハラしてそれを見守っていた。 そのうち昼寝の時間なのか二匹は寄り添って寝息を立て始めた。 それを確認するとまりさとれいむは巣を飛び出した。 この時間を見計らって両親は再び大量のご飯を用意しなければならないのだ。 両親が巣から出たあとしばらくするとコンポストれいむは目を覚ました。 その空腹から満足な睡眠をとることはできずたびたび起きてしまうのだ。 そしてその寝ぼけ眼に入ってくるのは美味しそうなご飯だ。 とても丸々として美味しそうなご飯。 その餡子に刻まれた記憶では丸々としたゆっくりはご飯でしかないのだ。 もはやその体格差から小細工など必要ないから姉と呼んでいた赤れいむを豪快に一飲みにしてしまった。 こうしてこのれいむは三匹の姉妹を寝ているときに襲っては食料にしていた。 両親が気が付かぬよう別段に気をつけていたということはないがたまたま見つからなかった、それだけのことである。 しかしそれはどこか自分が生き延びていくために行ったという自然な光景にも見えた。 自分に親が集めてきたご飯を集中させることが目的であるようなそんな光景だ。 とある群れのリーダーであるゆっくりぱちゅりーは最近起こっていたご飯泥棒をついに捕獲することに成功した。 自分達の群れには属さないが群れの近くで住んでいる薄汚いまりさとれいむの番だった。 大量のご飯を盗んでいるはずなのに本人達は痩せ細っているのが不可解だが盗みの現場を目撃した限りやはり犯人なのだろう。 「むきゅー、いままでもっていったごはんをかえしてもらうわ!!」 「ゆっくりりかいしたよ……」 「まりさたちについてくるんだぜ……」 ぱちゅりーが泥棒ゆっくり達にご飯の返還を要求すると二匹はそれにすんなりと応じた。 自分達の非を認める潔さがあるのに盗みを働いたことがなおさらぱちゅりーの理解の範疇を超えていた。 森の中を二匹を先頭に多くのゆっくりがぞろぞろと這っている。 自分達のご飯を返してもらうため二匹の巣に向かっているのだ。 かなりの量が巣に溜め込まれているとみて群れから成体ゆっくりのほとんどが駆り出された。 二匹の巣の前に到着すると不思議な物が目に入ってくる。 巣の前にうずたかく積まれた土の山である。 これだけの量があれば、山を固めてそれをくり抜く事で地上の巣を作る事が出来そうだ。 群れのゆっくりがゆっくりできそうな土の山に見惚れている間に、先頭にいたまりさとれいむは巣の前に着くと中に向かって叫んだ。 「「ゆっくりできるごはんだよ!!」」 「むきゅ、そのなかなのね!! みんなゆっくりとりかえしてね!!」 「「「「ゆゆ~!!」」」」 まりさとれいむの様子から巣の中に持って行かれたご飯があるものとぱちゅりーは判断して、群れのゆっくりに号令を掛けた。 その声に反応のしてゆっくり達が列になってぞろぞろと巣の中に入っていった。 これだけの土を掘り返した巣だ。中はきっととてもゆっくりできる空間になっているだろう。ぱちゅりーは巣の外から中の様子を予想した。 どんどん群れのゆっくりが入っていくがまだその流れは止まりそうにない。 二十はいた大人のゆっくりが巣の中に入っていた。それだけの数が入っても窮屈そうな声が聞こえてこない辺り、中の広さは予想以上なのだろう。 ぱちゅりーは巣の住人と一緒に巣の外で群れのゆっくりが出てくるのを待っていた。 しかしいくら待っても中に入っていったゆっくりが出てくる様子はない。 いくら広いと言ってもご飯の匂いを嗅ぎつけて食物庫に入り、ご飯を口に入れて出てくるくらいならそれほど時間はかからないはずだ。 「おかしいわね。ゆっくりしてないででてきてね!!」 ぱちゅりーは痺れを切らして自らその巣の中へと入っていった。 それほど広くない入り口付近のトンネルをどんどん奧に入っていくと急に柔らかい地面の部屋が現れた。 その空洞は部屋と呼ぶにはそれほど広くなく大人三匹が入れば窮屈になる部屋だ。 不思議なのはその狭さなのに群れのゆっくりはどこにもいないのだ。 「むきゅー、みんなはどこかしら。むぎゃ!!」それがぱちゅりーの最期だった。 突然部屋の天井が下がってきてぱちゅりーを押しつぶした。 すると天井は再び上がり、また下がってくる。そのうちぱちゅりーだったものは部屋の奥へと消えていき、群れのゆっくりと合流した。 いずれも完全に潰された形ではあったが。 「れいむ、あのむれのこどもたちをここにゆっくりつれてきてね。まりさはすをひろげるよ……」 「ゆゆっ、わかったよ……」 肉体的にも精神的にも疲れ切った二匹のゆっくりは一秒の時間も惜しいとばかりにすぐに動き始める。 自分達の子供をゆっくりさせるためだけの親と成り果てたゆっくり達の姿である。 結局自分の子供の異変に疑問を持つのは最後まで無かった。 むしろ自分達の不甲斐なさを呪うほど子供に傾倒してしまった。 自分達がゆっくりであるためには大喰らいの子供をゆっくりさせてやらなければならない。 もし出来なければ自分達はゆっくりできないのだ。 やはりゆっくりという生物はゆっくりできないようにできているようだ。 どこかで子供を見捨てれば別のとてもゆっくりできたゆん生があったのかも知れない。 しかしもしの世界は実現しない限りあり得ない話であったのだ。 そんなゆん生はこの両親にはこれからもなく、忙しなくご飯やときにはゆっくりをかき集める日々が死ぬまで続くのだ。 加工場の男は不幸な二匹が死に絶えるのを見届け、野生に放したサンプルに挨拶をした。もちろん巣の中に向かってお互いの姿は見えないままでだ。 「れいむ、ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていってね!!」 巣の中からはれいむの重低音が響く声が聞こえてきた。この声はコンポストゆっくりが太りきったときの特徴でもある。 「そんなことよりもごはんちょうだいね!! まだしあわせーできないよ!!」 巣の中からご飯を求める声が聞こえてくる。 きっとこいつも最期までご飯を求め続けた事になるのだろうと思う。 幸せを知らぬまま死ねるのは不幸も知らないという意味で幸せなのかも知れない。 男は持参していたドスパークに用いられるキノコを巣の前に一山置き、中のコンポストれいむに話しかけた。 「巣の前にキノコを置いたから食べるといいよ」 「ゆっくりたべるよ!!」 その瞬間巣の中から大蛇のようなれいむの舌が伸びてきてキノコをかっさらっていった。 その様子を見届けると男はその巣を後にした。 男が森を後にした頃、木々を揺らす地響きと共に巣の中から黒い煙が吹き出した。 あとがき カッコウの托卵っぽいのをテーマに書いてみました。 自分より体の小さな親に育てられるカッコウの写真を思い浮かべて貰えると丁度そんな感じかも。 初期のありすが托卵で増えるという設定は今ならかなり面白そうな気がする。 コンポストれいむの成長と共に移動が困難になり、巣を拡張することで肥大による圧迫を防いだそうです。 巣の中にまりさ達が入るときは親であると叫びながら入っていったそうな。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4311.html
『単純群れ虐殺5』 21KB 虐待 虐殺 群れ 子ゆ 自然界 現代 anko4257の続きです 完結編 *「anko4257 単純群れ虐殺4」の続きです。 *長くなったものを分割したつくりです。1(anko4244)から続けて読んでいただけると幸いです。 ~前回のあらすじ~ お山の群れに虐待お兄さんがやってきて、群れの皆、ドスまりさまでもがボコボコに。 おちびちゃんたちも餌食になる中、お兄さんはぱちゅりーにゲームを持ちかける。 「ぱちゅりーがおたべなさいと中身をゲロる以外の方法で自分を殺せば、君たちの勝ち。 死なないまま3分経過したら僕の勝ち。そういうゲームだよ。はいスタートー」 「む、むっきゅうぅうう!!?」 無慈悲に宣言し、一応腕時計で時間を確認する。 ぱちゅりーは一気に冷静さを失い、ふさふさな紫の髪の毛を振り回して、あたふたとしている。 「ちなみにルール違反したら、即おちびちゃんたちを潰すからね」 「「「ゆ、ゆんやあああああ!!にゃんでええええ!!」」」 「落ち着いてね。ルール違反したら、だ。ぱちぇおばさんがちゃんと死んでくれたら、あまあまあげるよ」 「「「ゆわわーいっ!!あみゃあみゃー!!」」」 反射オンリーで構成されている救いようのない餡子脳を数匹、手のひらに載せる。 人間さんの手は体温を持たないゆっくりからすると温かく、ゆっくりできるらしい。 あまあまがもらえると信じきり、「あっちゃかいすべすべさん」の上でこーろこーろゆっくりし始めた。 ありすやれいむも含め、保育ゆんは餡の繋がってない他ゆんの子にも実に献身的に愛を注いだというのに、子ゆっくり側からは都合のいい奴隷ぐらいにしか捉えられていないのだろうか。 「ほら、時間がないよ。この枝……ああさっきの結界か。これを使って自分をぷーすぷーすしてねっ」 「む、むきゅぅうぅぅ……!!」 ”けっかい”として先ほど入り口にぽつんと転がされていた裸の枝を手渡す。 「はやきゅちんでねっ!!」と子ゆっくりに応援されて、目を瞑り、恐る恐る枝を自分の肌に近づける。 体の弱いぱちゅりー種といえども成ゆんで小さな枝の一つも持てないはずはない。 髪の毛や枝がぷるぷると震えているのは、恐怖のためだ。 「むきゅぅ……むきゅぅ……ゆぅぅううう!!できないっ!!できないわぁあっ!!!」 「「「ゆゆーっ!!なにやっちぇりゅんだぁぁぁああ!!さっさとぷーしゅぷーしゅしてちねえええ!!」」」 「こわいのよっ!!とっってもこわいのぉっ!!こんなのぜったいみゅりいぃいいい!!」 枝が髪の毛を離れてころんと転がる。 ぱちゅりーが呪い殺さんばかりに恨みがましい目で人間さんを見る。 早くも自分たちが騙された、あるいは遊ばれているだけと気付いたのだ。 「仕方ないなぁ。僕がこうして枝を持っててあげるからね。目を瞑って真っ直ぐ跳ねてくれば死ねるよ」 「むきゅうぅう……!むきゅううう、ゆえぇぇぇええ……!!」 気付いたところでもう遅い。 状況は今や、いやむしろ初めから、圧倒的強者たる人間さんが完全に支配している。 そもそもおたべなさいをする覚悟を決めた時点でさっさと死んでおくべきだったのだ。 目の前で自ら命を絶つことで虐待人間さんに一矢報いてやろう。 そんなことを考えてしまった自分をぱちゅりーは今更ながら悔いた。 「「「ちーねっ!ちーねっ!!さっさとちーねええ!!」」」 今のぱちゅりーに出来ることは、人間さんの決めたルールに従い、死ぬことだ。 悪魔のような人間さんが約束を守る保証はないが、少なくとも自分がゲームを放棄すれば、おちびちゃんたちも自分もありすたち同様に苛め殺されるだろう。 だがしかし。 頭では分かっていても、あんよが震えてまともに動かない。 生半可に頭が良く、行動の結果を想像できてしまうために、とても普段どおり勢いよく跳ねるなんて出来ないのだ。 「ずーりずーり……ゆぇぇ、ずーりずーりぃぃ……ゆっぴぃぃぃいいい!!!」 「「「ゆわあぁぁぁあ!!ぱちぇおばしゃん、ゆっくちちんだねっ!!あみゃあみゃー!!」」」 「むっぎゅううう!!!むりでずぅぅう!!にんげんざん、ゆるじでぐだざいぃいいいい!!!」 「いやいや何を言ってるんだい、ぱちゅりーもおちびちゃんたちも。 まだほっぺが少し抉れただけだ。残り時間は少ないよっ!ハリーハリーハリー!」 「ぼういいでずっ!!どうぜごろずんでしょ!!?ぱぢぇもおちびぢゃんだちも、ひとおもいにごろじでぇぇええ!!!」 「「「どぼじでぞんなごというにょぉぉおお!!ぱちぇおばしゃんだけ ちねばいいでしょぉおお!!」」」 「仕方ないなぁ。よしルールを緩和してあげよう。それゆけ、おちびちゃんたちっ!」 子ゆっくりたちを地面に下ろし、各々に爪楊枝を咥えさせる。 これから何が始まるか理解したぱちゅりーは、恐怖でしーしーと下痢うんうんを漏らし、ずりずり逃げようとしている。 天井知らずのストレスだろうに中身を吐かないのは、ルール違反だけは絶対に避けるという、歪に残った意地のせいか。 「ぷーすぷーすして、ぱちゅりーを永遠にゆっくりさせてね。そしたらおちびちゃんたちの勝ちでいいよっ」 「「「ゆゆーっ!!ゆっくちりきゃいしちゃよぉおお!!」」」 「ゆ゛っぴぃぃいいいい!!!!こないぢぇえええええれえれえれ!!」 「みょんのめにもとまらにゅ かりぇいなぷーしゅぷーしゅっ!!をくりゃええ!!」 「むっきゅぅぃぃいいい!!おぢびぢゃんだぢぃぃい!!やめぢゃああぁぁあぱちぇのしゅべてをみとおす、すいしょうみちゃいなおめめしゃんがあぁぁぁああ!!」 「ゆぶぶっ!まりちゃのかいっしんのいちげき!!にゃのじぇっ!いちゃいのじぇえ?」 「きゃわいいれいみゅにっ!!あみゃあみゃよこさにゃいからっ!!こうなりゅんぢゃよっ!!」 「ちぇんたちは えらばれたゆっくちにゃんだよーっ!!こんにゃところで ちねにゃいんだねぇ!わきゃれよーっ!!」 ほとんど動けないまま四方を囲まれて、子ゆっくりの容赦ないぷーすぷーす!に蹂躙されるぱちゅりー。 が、多少中身を流失しているものの、所詮は子ゆっくりに爪楊枝で突かれる程度。 痛みと絶望で大げさに絶叫はしていても、なかなか永遠にゆっくりする気配はない。 「さて、3分なんてとっくに過ぎてるけどね。はい、時間切れでーす!どーんっ」 「むきゅっ!!?む゛ぎゃぁ゛っ゛!!!」 「「「ゆゆーっ!ぱちぇおばしゃん、こんどこそゆっくち ちんだねっ!!」」」 ぱちゅりーは望みどおり一思いに踏み潰され、生クリームがびちゃびちゃと周囲に飛び散った。 子ゆっくりたちはお世話になった保育ゆんの死を全く悼むことなく、「ゆっゆっおー!」と元気に鬨の声を上げている。 いつの間にそんなに憎くなったのか、残骸にちーちーやうんうんをかけては喜んでいる始末だ。 「れいみゅたちのしょうりぢゃよっ!!」 「みょんっ!けんじゅちゅのたちゅゆんのみょんがいりぇば、とうっじぇんだみょん!!」 「おい!くしょにんげんっ!!しゃっしゃとまりちゃたちに あみゃあみゃよこすのじぇええ!!」 「何言ってるの。時間切れでゲームオーバー。君たちの負けだよ」 「ゆぁ~ん?ふじゃけちぇりゅのじぇぇえ?さいっきょうのまりしゃしゃまたちに、はむかうきなのじぇ?」 「あみゃあみゃよこちぇ、じじぃ!!にょろまは きりゃいだよぉおれいみゅ!とりしゃんになっちゃよっ!!」 「調子乗った君たちにはこれから相応の地獄を見てもらうけど……まずはこのうっざいわさ種からかなぁ」 「ゆぴぃぃい!!わしゃわしゃはなちぇえええ!!いちゃいぃぃいいいい!!」 「とりあえずぶちぃっ」 「ゆっびゃあああぁぁああ!!!」 奇形汁饅頭から耳かきの綿毛のような揉み上げを両方引き千切る。 本体から離れて尚わさわさとうざったらしく膨らんでいる様を見ると、気持ち悪いものを触っているように思えてならない。 ひとまずれいみゅの傍に捨てる。 「れいみゅのわしゃわしゃしゃんっ……どぼぢでぇ……もうわしゃわしゃできにゃいぃいぃ……」 「どうしようかな。うーん……そうだ、れいみゅも泣いてるし、お目目に返してあげようか」 「ゆぐっ!!ゆぼぼぼぉお!!!」 わさわさの根元を刺すようにして、両方の眼窩に無理やり押し込んでみた。 眼球は潰れてしまっただろうが、痛みのためか異物侵入のためか、止め処なく涙が溢れてくる。 暴れてわさわさが外れないようにしばらく押さえてみると、期待したとおり、わさわさが目に定着した。 砂糖水の涙が傷口を塞ぐ媒介になったのだろうが、全くもってふざけた生物だ。 「なんにゃにょぉぉお!!?なにもみえにゃいぃい!!わしゃわしゃしゅるぅぅううう!いっぢゃあああ!!」 「おお……何か突然変異でこんなハエいたなぁ。なんて気持ち悪いものを作ってしまったんだ」 両目から生やしたわさわさをうねうねと動かして、その度に痛がりながら在らぬ方向にずりずりと彷徨っていく。 いずれ生き残りのゆっくりにお化けとしてリンチされるか、エサが取れずに衰弱死するだろう。 「次はまりちゃかなー」 「ゆっひぃぃいい!!こっちくるにゃああぁああ!!しぇ、しぇいっしゃい!されちゃいのかじぇえぇえ!?」 「幾ゆん目かの最強のまりちゃ君、しーしー垂らしながらじゃ説得力ないよっ」 「ゆっ!しょうだじぇっ!まりちゃをいじめりゅと、どしゅとおとーしゃんが だまっちぇにゃっぢゅぅうううっ!!」 「おとーさんは知らないけど、ドスはもうダメだろうなぁ。 君はスタンダードに餓死していってね。蟻さんに食べられてもいいよっ!」 火力を弱めた改造チャッカマンであんよをこんがりと焼き、地面に放る。 ついでに「じだいのどずになりゅまりぢゃの かっごよずぎるぴかぴかくろぼうし」も外して目の前で灰にした。 これでまりちゃは迫害される定めにあるお飾りのないゆっくり。 他ゆんにエサを運んでもらうなどして万が一にも生き残る可能性すら潰えた。 お下げは残しておいてあげよう。いつまでも好きなだけ無意味に振り回してていいよ。 情け深くってごめんねっ 「そろーりそろーりぃぃ!ゆひぃぃぃ、ちぇんはゆっくちにげりゅんだねぇぇ!!」 「みょんっ!まっちぇよぉっ!ちぇんははやしゅぎりゅみょぉぉおん!!」 「やあ、おまたせ。次は君たちの番だよ」 「「ゆっぴぃぃぃいいいい!!!にゃんでにんげんしゃん、みょんたちに おいちゅけりゅにょぉぉお!!?」」 1mも離れていないところを這っていた子ちぇんと子みょんを捕まえる。 あんよに水平に爪楊枝を刺し込み、動きを封じて放置。 「ゆびぇぇええん!!ぼうゆるじでぇええええ!!たちゅけちぇくだしゃいみょぉぉおん!!!」 「わぎゃらだいよぉぉおおお!!?ゆっくちさしぇちぇよぉおおお!!ぢぇんたち、きゃわいいおちびぢゃんにゃんだよぉぉお!!?」 「はいはい、ちょっと待っててね」 まだうっすらとゆルサンの煙が残る”ほいくえん”の洞に、身を屈めて入り込む。 目当ては奥にある大きな鳥の巣ベッドだ。 ぽんぽんと叩くと、中から苦悶の表情で目玉を飛び出させ餡子を吐いて死んだ赤ゆっくりの残骸がぼろぼろと転げ落ちた。 子ちぇんと子みょんをそのベッドさんに寝かせる。 すると、お昼寝の時間でも思い出して安心したのだろうか。 「べっどしゃん、ふーかふーかゆっくちぃい!!」と、すぐにあんよの痛みも忘れてゆっくりし始めた。 「にゃん……にんげんさん、やっとわかっちぇくれたんぢゃにぇ?みんにゃでゆっくちしたほうがしあわしぇーにゃんだねー」 「でみょ、ちゃんとあやまっちぇほしいみょんっ!みょんたち、すっごくこわきゃったみょんっ!!」 「はいはいゆっくりゆっくり。今からベッドさんを燃やして君たちには焼きチョコになってもらうよっ」 「「どぼぢでぞうなりゅにょぉぉおおお!!!?」」 「ゆん国でもゆ獄でもいいけど、向こうではみんなやぱちゅりーと仲良くねっバイバイっ!」 「「ゆ゛ん゛や゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!あぢゅっ!!あぢゅいぃぃい!!ゆっきゅりにげ……どぼじであんよしゃん うごきゃにゃいにょおお!!」」 子ちぇんと子みょんがしっかり炎に巻かれて身をよじって苦しんでいるのを眺める。 とりあえず目の前のゆっくりはすべて処理した。 少し離れたところから、痛みとストレスの余り発狂してれいぱー化したらしい保育ゆんありすの嬌声や、相変わらず通常ゆっくりに苛められているらしいお帽子無しドスまりさの悲鳴が聞こえてくる。 うん、穏やかないい午後だ。 一息入れよう。 ペットボトルの水を飲んで戻ると、鳥の巣ベッドの火は消えており、皮や髪は焼け焦げているものの「おみじゅ……」などと喋る余裕すら残している黒焦げの白黒チョコ団子が二つあった。 このままでもすぐに息絶えるだろうが、せっかく頑張って死なずに耐えてくれたのだ。 全身の皮が溶けて中身が剥き出しになっているので、チューブのからしとわさびを埋めるようにたっぷりかけてあげた。 唯一動く目玉をぎょろぎょろさせ、枯れたはずの涙を流して喜んでいる。 「さて、”次”で最後かな」 「っ……!!」 誰もいないはずのまあ山奥と呼んでいいぐらいのところ。 草むらの中からわずかに例の特徴的な声が聞こえている。 そろそろ頃合だ。 先ほどから時折かさかさと揺れていた草むらに手を突っ込み、触れた柔らかいものを掴み上げてみる。 それは「おそらをとんでるみたい!」などとも叫ばず、ぷるぷると紫の髪を震わせていた。 「あの参謀ぱちゅりーはなかなかの策士だったわけだけど……残念だったねぇ」 「むきゅっ……」 野球ボールより少し大きいぐらいの子ぱちゅりー。 恐らく参謀ぱちゅりーの子どもであり、ゆルサンで死んだ赤ぱちゅりーの姉だろう。 参謀ぱちゅりーは自分とおちびちゃんをいわば囮と目くらましにして、この子だけでも逃がそうとしたのだ。 もしぱちゅりー種のおちびちゃんが何匹もいる中でやられていたら、気付かなかったかもしれない。 「君は多分次代を担う参謀ぱちゅりーになるはずだったんだね。優秀なの?3って分かる?」 「……にんげんしゃん。ゆっくちしないでぱちぇをころしなしゃいっ」 「ほう。何とまあ」 子ぱちゅりーの目は母親と同じく据わっている。 手のひらの上に乗せられ、指でむーにむーにと掴まれていながら大したものだ。 「もう嫌と言うほど見てたと思うけど、虐待されるのは痛いよ?ぱちゅりーはゆっくりしたくないの?」 「ゆっくちしたいといえば させてくれりゅのかしら?にんげんしゃん、じぶんがやってきたことをおぼえてないの?おばかしゃんなの?」 「拙いながら意趣返しとは高等な。ほらこんな風に痛いんだよ?ぺっちーんっ」 「むぎゅっ!!」 デコピンで強めにおでこを叩いてみる。 痛みに弱い子ゆっくりなら、これでも一発で悶絶し、トラウマになるほどのダメージとなる。 「むっきゅぅぅ……!いたいわっ……いたいけど、なんてことないわっ」 「頑張るね。じゃあ、こういうのはどうだろう。ぷーすぷーす」 「むっぎぃぃいぃいい!!!」 爪楊枝で浅く頬を刺してみる。ちーくちーくの方が正確だろう。 人間でもキリやアイスピックで皮膚を刺されれば堪らない。 ゆっくりにとってもデコピンとは比べ物にならない激痛だ。 子ぱちゅりーはそれでも必死に歯をかみ締め、涙の溢れる目を瞑って耐えている。 「みんなはもっといたくてくるちいことをされたわっ……!ぱちぇもないちゃうけど…… ぜったいに にんげんしゃんなんかにまけにゃいわっ!!」 「ふむ……」 潤んだ目をキリッとさせて、子ゆっくりらしからぬ気迫でそう言い放つぱちゅりー。 それを一旦地面に下ろす。 小さなぱちゅりーは人間さんの手から解放されても気を緩めず、変わらずこちらを睨み付けている。 「負けない」とはまりちゃたちの言うような、ゆっくりしてない人間にゆっくりが劣るわけがない、制裁して格の違いを思い知らせてやる、といった意味ではないだろう。 何もかもを相手の思い通りにはさせまい。 身体は蹂躙されようとも、餡子の中に宿る抽象的な何か、ゆっくりとしての尊厳だけは守り通してみせる。 参謀ぱちゅりーの中にもあった覚悟を、このほんの小さな子ゆっくりが獲得していた。 それも「おたべなさい」という逃げの形ではなく、痛みに耐え切るという攻めの姿勢で、だ。 「君みたいな子をね……」 「……?」 子ぱちゅりーの頬をつんつんと指で突きながら語りかける。 「絶対に死なさず徹底的に苛め抜いてね。生きたいだの死にたいだの叫び始めるのを見るのはとっても楽しいんだけど……」 「むきゅっ……っ!!」 「流石にそれだけのハードプレイが出来る準備はここにはないんだよ。オレンジジュース必須だし」 「むきゅぅ……」 「今ここで君を潰しても面白くなさそうだから、もう帰ろうかな。後味が微妙だと嫌だしね」 そういって後ずさり、子ぱちゅりーから少し離れる。 もう時間も時間だし、本当に帰らなくてはならない。 トレードマークの罪袋を外し、荷物の方に向かう。 流石に見逃されると聞いて、遠ざかっていく人間さんの背を見送る子ぱちゅりーの緊張が、僅かに緩んだ。 「まあ君みたいな小さなおちびちゃんなら、お持ち帰りすればいいだけなんだけど……?」 「っっっ……!!!」 くるりと振り向いた人間さんから放たれた一言に、不意を突かれて凍りつく。 素顔を晒してニヤリと笑った人間さんは、今のぱちゅりーから見ると下劣な悪魔そのものであり、生クリームの底から凍えるような冷たさを感じる。 それは人間さんの言っていること、つまり自分がお持ち帰りされて今の決意など跡形もなくなってしまうほど凄惨な虐待を受けることが真実であると確信させるのに十分なものであった。 どっすぅぅうんっ!! 瞬間、少し離れたところから何か巨大なものが落ちたような轟音が響く。 仕掛けが上手くいったようだ。 子ぱちゅりーの相手を一旦止めて、音のした方、ドスの帽子を捨てた方に向かう。 「ゆべぇぇぇぇええ……ゆぇぇええんん……!!まりぢゃのおぼうぢぃぃ、どぎょぉぉおお……!!?」 数十分前とは別ゆんに見えるほど疲労心労で痩せこけたドスまりさが、見事に潰れていた。 自分のお帽子を下敷きにし、落下の衝撃であんよが盛大に破れ、もりもりと餡子が漏れ出している。 全体的に崩れた山のように見えるそれは、威厳ある長の面影を一切残していない。 「おぼうぢぃぃい、がばいいばりぢゃのまっぐろなおぼうぢざんっ……ゆっぐぢでてきちぇにぇぇ……?」 お帽子のないヘンテコなドスとして延々通常ゆっくりに罵倒され、いじめられたためだろう。 哀れ、幼児退行を起こしている。 ドスまりさも可愛く小さな赤ゆっくりとして生まれたときは父まりさのお帽子に受け止めてもらったのだろうが、ゆん生最後の瞬間である今、奇しくもそれに似た状況を再現していた。 ドスを苛めていた通常ゆっくりは、恐らく多くがドスの進行に巻き込まれて潰れ、残ったものも大半が崖からの落下で死んだのだろう。 ドスの周りでわずかに「おしりがいちゃいぃぃいいい!!」と悶絶しているゆっくりは、先に落ちたドスをクッションにすることで生き延びたものか。 お帽子が最初に落とした場所から一切移動していないことから、善良優秀なゆっくりたちによるお帽子救出は失敗したのだと分かる。 ドスのあんよと餡子に埋もれてわずかに尻を振っているゆっくりたちを見るに、その顛末は予想したとおりのものだったのだろう。 数匹の成体ゆっくりが上手く協力すれば巨大なドスのお帽子でも引きずることなら出来る。 だが、各々がてんでバラバラの方向から引っ張ったために綱引きをしているだけの状態になり、しばらくして落下してきたドスに潰されたのだ。 「いいね。ドスもみんなも、よくもまあバカみたく予想通りにやってくれました。 ゆっくりできたよっ」 「ゆ゛っ……にんげんしゃん……」 声をかけると、宙をさ迷っていたドスの目が弱弱しくこちらに向けられる。 「にんげんしゃん……どぼぢでごんなごどずるの……?まりぢゃだぢ、なんにもわるいこちょちてにゃいのにぃ……」 「僕は絶滅主義者じゃない。だから、強いて言わずとも楽しむためだなぁ。 君たちが泣き喚いて無様に潰れていく姿を見ると、とってもゆっくりできるんだよ」 「ぞんなぁっ!!おがじいよぉおっ!!みんなでゆっぐぢじようよぉぉおお……!!ゆぇぇぇええ……!!」 「そうそう、そんな顔だよ。ありがとうねっ。 永遠にゆっくりするまでもう少しかかるだろうけど……長い間お疲れ様」 ドスまりさが最早一切動けず、致死量の餡子を流失し始めていることは確認できたので、その場を去る。 木の洞の前に戻ると、子ぱちゅりーが逃げずに待っていたばかりか、別の子まりちゃがやって来ていた。 ”ほいくえん”の子ゆっくりを見過ごしていたのではない。 ドス虐待を始めた辺りから草むらから飛び出してきて、父であるらしい英ゆんまりさが入れられた透明な箱に立ち向かい、必死にそれを助けようとしていた健気なまりちゃだ。 見逃してやっていたのだから、さっさと逃げればいいものを。 人間さんと戦うつもりだろうか。 「むきゅぅぅ!!いいから、まりちゃは にげなしゃいっ!もうすぐにんげんしゃんが もどっちぇくるわっ!」 「だまっちぇねっ!ぱちゅりーこそ、ゆっくちしないで まりちゃとおかざりをこうかんしちぇねっ!!そしたら にげちぇねっ!!」 「そんなことしたりゃ、まりちゃがにんげんしゃんに おもちっかえりっ!されちゃうでしょおぉお!!」 「いいんだよっ!!まりちゃが みがわりさんになるよっ!!にんげんさんに こりょされるよっ!!」 「どぼじでぞんなごというのぉぉおお!!?」 「いきてねっ、ぱちゅりー!!ぱちゅりーはゆっくちしたゆっくりだよっ!むれをよろしくにぇっ!!ゆんっ!」 「むきゅぅぅうるるるる!!」 強引にナイトキャップを奪われたぱちゅりーが、さらに体当たりを喰らって転がる。 すぐ傍に近づいてきた人間をやっと察知して、慌ててナイトキャップを被り、金髪のまりちゃが振り向いた。 「まりぢゃはばぢゅりーだよっ!!にんげんしゃん、ゆっぐちしていっぢぇねっ!!」 「やあ、まりちゃ君。英ゆんのおとーさんはもういいのかい?」 「ゆ゛ん゛っ、おどーざんは ぼうだめだっで いうがらぁ……ゆ゛!?ちがうよっ!!まりぢゃはまりぢゃじゃないよっ!!」 「賢者の子どもであるぱちゅりーだけでも助けようとした、ってところかな。偉いね、まりちゃ君」 「ゆっびゃあああ!!ちぎゃうぅぅうう!!まりぢゃはぱぢゅでぃぃだよぉおお!!むっぎゅりじでいっでえええ!!」 「むきゅうううう!!にんげんしゃん、ぱちぇはここよっ!!」 転げた先の草むらから子ぱちゅりーが飛び出してきた。 「どぼじで でてきちゃうにょぉおお!!」とお下げを振り回すまりちゃに近付き、目を細めてすーりすーりする。 姉が妹に対してするそれとも見えるが、あえて言うならば、もっと違った意味合いがあったのだろう。 まりちゃが落ち着くと、先ほどまでと同様のキッとした目で一度だけこちらを睨み、再びまりちゃに寄り添った。 「むきゅ……ありがとう、まりちゃ。もういいのよ……」 「ごべんねぇぇ……!にんげんしゃんにみやぶられちゃっちぇ、ぎょべんねぇええ……!!」 「しかたないわ。それよりまりちゃ、ぱちぇとずっといっしょにゆっくちしましょう」 「ゆぅぅぅう……!??ぱちゅりー、なにいっちぇ……」 小さなお下げで涙を必死に拭いながら、まりちゃが呟く。 「ずーっといっしょにゆっくちよ。にんげんしゃんに ぎゃくたいされちぇも、えいえんにゆっくちしちぇも、ぱちぇはずーっとまりちゃとゆっくちしゅるわっ」 「ゆ゛ゆ゛ぅ゛っ!ばりぢゃもずるよっ!!ぱぢゅでぃと、ずーっどずーっどゆっぐぢずるよぉぉおお!!」 ゆんゆん泣く子まりちゃと、それに優しく寄り添う子ぱちゅりー。 ずっと一緒にゆっくりするとは、婉曲的だがゆっくり独特の求婚の表現だ。 極限状態における吊り橋効果なのか普段からそうだったのか分からないが、このまりちゃとぱちゅりーは番になることを互いに宣言したのだ。 すぐに破壊できる脆いものとはいえ、最早目の前には二匹だけの世界が出来上がっていた。 虐待を楽しむ侵略者にとって相手にされず蚊帳の外というのはそれなりにダメージとなる。 ぱちゅりーの狙いはそういうところにもあるのだろう。 ここで「今からお前らの仮初の幸せを滅茶苦茶にしてやる。互いを憎むようになるまで虐待だあヒャア」と突っかかるのは、それはそれで楽しいが、まあ野暮と言うものだ。 少なくとも今この瞬間における人間さんの”負け”を意味するはずである。 身を屈めて近付き、「ゆぴぃっ!」と怖がるまりちゃを制して、お飾りを元通り被せてやる。 「怖がらなくていいよ、まりちゃ君。日が暮れ始める。さっきも言ったけど、僕はもう帰るよ」 「むきゅっ……」 「ぱちゅりーも身構えなくていい。お持ち帰りするのは、優秀な英ゆんのまりさだけだ」 「ゆぅぅぅ……おとーしゃんっ……!!」 「まあまあ、こればかりは僕の”狩り”だから諦めてねっ」 ぱちゅりーたちから離れ、後片付けを始める。 ゆっくりの残骸は雨が来ればすべて溶けるが、ゆルサンから爪楊枝まで虐殺に使った道具はちゃんと持って帰るのがマナーでありルールだ。 人里の畑を荒らした無垢な英ゆんの入った透明な箱に蓋をし、大きなカバンに何とか詰め込む。 今までのやり取りをちゃんと聞いていたらしい英ゆんまりさは「だして」だの「たすけて」だの喚かなかった。 しかし、わが子や故郷との別れ、そして自分に待っている運命を考えてか、涙だけは大量に流している。 下敷きになっている赤ゆっくりの残骸がこれを吸収し、まりさのあんよが溶けることはないだろう。 それにしても重い。 元々あれこれ道具を持ってきた上に、成ゆん1匹が追加されたら堪らない。 まあ帰るまでが虐待だ。 「それじゃあ、まりちゃ、ぱちゅりー。ゆっくりしていってね。 ”また来るよ”」 手に持ったお飾りの罪袋を振り、寄り添ったままの小さな二匹に別れを告げる。 麓の農村まで歩いて数時間。 現代社会から放置され、人も資本も踏み入らないこのような山でこそ、彼らのようなゆっくりが育つ。 次は何をしようか。 『単純群れ虐殺』 終わり ----------------------------------------- 読んでいただいてありがとうございました。 初投稿の習作ということで、多数の偉大な先達方からネタやセリフをお借りしています。 これからよろしくお願いします。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1303.html
前 「れいむ、ちょっといいかしら?」 毎晩恒例の会議が終わり、それぞれ自分たちの部屋に帰ろうとする中、側近ぱちゅりーがれいむを呼び止めた。 「ゆ? どうしたのぱちゅりー?」 「むきゅ……ちょっと、お話があるの……まりさとありすは先に寝ててね」 「ゆっくりわかったんだぜ! おやすみみんな!」 「ふたりとも! ねぶそくはびようによくないからむりしないではやくねるのよ!」 そういって部屋に戻っていく二匹を見送ると、二匹はゆっくりと洞窟の外へ向かった。 「ゆぅ~、ぱちゅりーったらふたりがいるのにだいたんすぎるよ~」 洞窟の外に出て早々に、れいむの態度が豹変した。 猫なで声……とでもいうのだろうか、実に気持ち悪い声でぱちゅりーに甘えだした。 実はこの二匹、こっそりと付き合っていたのである。 番いにならずに付き合うという形をとっていたのはれいむに前夫のまりさの子供たちがいるためだったが、二十匹の子供たちと当のれいむは浮気をした挙 句すっきりのしすぎで死んでしまった父まりさなど等に見限り、すっかりぱちゅりーを慕っている。 すでにこっそりと言いながらも、群れ一番賢いぱちゅりーと群れ一番子だくさんでやさしいれいむの関係にドスを除くほとんどのゆっくりが気が付いてい た。 「むきゅ~、実はれいむに話しておきたいことがあるのよ……」 「ゆ? どうしたの?」 「実はにんっしんしてるまりさ達なんだけど……」 「ゆ! あのあかちゃんがすごくゆっくりしてるまりさたちだね! きょうもみにいったらまたおおきくなってたよ!」 ぱちゅりーとれいむが言っているのは、あのお兄さんが改造したゆっくり達と同じ出産室にいた動物型妊娠のゆっくり達のことである。 あのゆっくり達はぱちゅりーの見たところ植物型出産のゆっくり達と同じ日に出産を迎える見立てだったのだが、あの地獄の出産劇の後もそういった気配 はなく、むしろ今まで以上にゆっくりとし、今まで以上の食糧をむさぼり、わずか二日で二倍近くまで肥大化していたのだ。 「ぱちゅりーの経験からすると、あのまりさ達の赤ちゃんはもう生まれてなくちゃいけないはずなのよ! それがまだ生まれていない上にあんなにふとっ ちゃってるのは……」 「ふとっちゃってるのは?」 「想像にんっしんに違いないわ!」 「な、なにそれえええええええ!?」 「むきゅ! 前の群れにもいたんだけれど、赤ちゃんが本当はできていないのに出来てるって言って、ぶくぶくと太っちゃうことなのよ!」 ぱちゅりーの言っていることは本来の想像妊娠とは違っているが、ゆっくりが想像妊娠した場合の餌の大量摂取と肥満はセットのようなものなので、ゆっ くりにとってはあながち間違いではない。 「ゆ! それはほんとうなの!」 「むきゅう…にんっしんしてからもうお日さまが二十回以上昇ったわ。あのまりさ達には赤ちゃんは生まれないのよ」 「ゆー! それじゃあみんながっかりするよ! あかちゃんがうまれるのたのしみにしてたのに!」 れいむの言うとおり、二日前の惨劇以来この群れのゆっくり達は動物型で妊娠している十匹のゆっくり達が赤ちゃんを産むのを楽しみにしていた。 ゆっくりするという行為に赤ん坊を眺めることを含めるゆっくり達にとっては、やはり普通に生まれた赤ちゃんを見たいという思いが強いのだろう。 「むきゅ! だからね……れいむ……ぱ、ぱちゅりーとれいむで赤ちゃんを作ってみんなを喜ばせましょうよ!」 この言葉にはれいむも驚いたようで、はっと目を見開いた。 いきなり子作りをしようと言われたのだから無理もないが。 「も、もちろんだいさんせいだよぱちゅりー! ゆっくりあかちゃんがうまれればみんなげんきになるよ!」 だがぱちゅりーの言葉と同じくらい素早くれいむは返事をしていた。 どうやらぱちゅりーがこういうのをずっと待っていたらしい。 「む……むきゅー! れ、れいむー!」 先ほどお兄さんと妖怪兎が賢い賢いとほめちぎっていた二匹とは思えない様子で交尾を始める二匹。 もともと自分たちが敷いたすっきり制限でいろいろと溜まっていたのだろう。 ぺにぺにのない二匹はお互いのモチモチとやわらかい頬をやわらかく、それでいて激しくすり合わせる。 「すーり! すーり! ぱ、ぱちゅりーのほっぺたすごくふわふわでゆっくりできるよー♪」 「むきゅぅ♪ れいむのほっぺたももちもちであったかいよぉ♪ すーりすーり♪」 ヌメヌメとした液体を体から染み出し、洞窟の前で交尾にいそしむ二匹のゆっくり。 今まで群れの体面や何やらですっきりできなかったのだから無理もないが、群れの仲間の出産状況を理由にすっきりするとは、この二匹ゲスの一面があっ たのかもしれない。 「ぱぱぱぱ、ぱちゅりー! もうがまんできないよー!」 「むむむむむむきゅー! ぱちゅりーもだよおおおおお!」 だからなのか、群れでトップクラスに賢く、群れでいちばん狩りのうまい二匹は交尾に夢中でついに気がつかなかった。 「「すっきりー!!!」」 自分たちの背後にいる…… 「むきゅう♪ れいむううううううう、ゆっくりした赤ちゃんよぉ!♪」 「ふとくてしっかりしたくきだね! これならゆっくりしたこがうまれるよぉ♪」 「むきゅぅ♪ おちびちゃんたちにも妹ができるね!」 「れいむはすごくうれしいよ! ゆっくりしたこにそだっ」 ぶちい!!!! 「むぎゅ!」 「あ、ああああああああああ! あがぢゃんがああああああああああ!」 一人の鬼意惨に。 「い~~~~~~い実ゆっくりだなあああああ! ちょっと貰うぞ!」 「むびゅうううううううううううううううう! ぱちゅりーのあがぢゃんがああああああああああああ!」 「ゆっぐぢでぎばいにぶげんはじねええええええええええええええ!!!」 久しぶりのすっきり。愛おしい相手との初めてのすっきり。その末に授かった赤ちゃん。 その茎を勢いよく引きちぎ李、恍惚の表情を浮かべるお兄さん。 光学迷彩を解いたその姿は、久しぶりの直接的な虐待にヘブン状態なのか全裸だった。 「その叫び声最高だよ! さすがお兄さんの大好きなド饅頭!」 そう叫ぶが否や、二匹のゆっくりの口に手を突っ込んで舌をつかんで持ち上げる。 「「んんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!」」 「兎からお前らを始末する許可はもらっている! すでにお前らの餓鬼どもも確保済みだあああああああああああああああああ!」 『私を”鬼意惨”と見込んで依頼を下さったのならば、信頼していただきたい』 『わかったウサ。幹部たちを殺して直接群れに介入するあなたの計画、了承するウサ』 そう、お兄さんが妖怪兎に許可を求めたのはぱちゅりー達を殺し、飾りを用いてゆっくりになりすまして介入するという、群れ虐待における非常にオーソ ドックスかつ危険なものだったのだ。 通常飾りで個体を識別し、飾りさえついていれば人間でさえ仲間と認識してしまうゆっくりだが、ドスまりさなどの比較的頭のいい個体には見分けられて しまう。 だが、一週間以上この群れを監視したお兄さんは気が付いていた。 この群れのぱちゅりーに対する過剰ともいえる期待と信頼に。そしてドスまりさの馬鹿さに。 だからこそ、ドスと幹部ゆっくりによる軋轢が生まれる前に群れをコントロール出来るこの手法を提言したのだ。 そして直接的な虐待のお墨付きをもらったお兄さんはヘブン状態になり、全裸に光学迷彩スーツを着込むとぱちゅりーとその恋人である幹部れいむを虐待 するために洞窟に向かったのだ。 そして鬼意惨と化したお兄さんの頭の中にあるのは、一週間以上にわたる幸せなゆっくり達を見続けたことにより溜まりに溜まったフラストレーション、 それだけである。 「なーにが依頼じゃ! なーにがじっくりじゃ! あの兎が勝手なこと言いやがって! 俺はもっとシンプルな虐待がしたいんだよ!」 「ばべでえええええええええええええ!」 「じだがいだいいいいいいいいいいいいいいいい!」 「今夜に限っては依頼は関係ねええええええええええええ! ひゃああああああああああ! 虐待だあああああああああああああああ!」 深夜二時。 ゆっくりの群れを虐めるために作られた森の中に、お兄さんの奇声が響き渡った。 そしてこの夜、森の賢者(笑)と称えられたぱちゅりーとれいむの地獄が始まった。 「ほらよ、ついたぜ!」 「ぶぎゅべ! むぎゅうううううううう!」 「いだいよおおおおお! ゆゆゆ!! ばがな”じじいばれいぶだじをおうじにがえじでね”! ……ゆ!?」 全裸のお兄さんに捕まれ小屋についた二匹が最初に見たのは、床にある真っ黒な塊とそれに生い茂る緑色の茎だった。 普通のゆっくりなら気がつかなかったかもしれないが、頭のいい二匹はすぐに気がついたようだ。 「おじびじゃんだじがあああああああああああああああ!」 「どぼじでごんなごどにいいいいいいいいいいいいいいい!」 「そのとおおおおり!!! てめえらが気持ちわりい逢引ごっこで交尾してたんでなあ! 親切なお兄さんが餓鬼どももすっきりさせてやったんだよ!」 相変わらずのハイテンションで叫んだお兄さんは、れいむの子供たちのなれの果てから赤ゆっくりのなり始めがついたままの茎をブチブチと引きちぎると 、まな板の上に乗せた。 「む、むきゅう! ちびちゃん達の赤ちゃんがついた茎を千切らないでね! まだ茎を餡子にさせば大丈夫だからやめてね!」 ぱちゅりーはお兄さんの行為に即座に反応したが、れいむの方は「ちびちゃんちびちゃん」と呟きながら餡子の塊にくっついている。 強すぎる母性のせいで合理的判断が取れなくなるれいむ種の典型的行動だった。 「はーっはっはっは! だーれがやめるかゲスぱちゅりーが!」 「むきゅ! ぱちゅりーはゲスじゃないよ! ゆっくり訂正してね!」 「いーやゲスだね! 自分ですっきりを制限しておきながら仲間が出産しないのをいいことに自分達はすっきりしちまうような奴はゲスなんだよ!」 「むぎゅ!」 うろたえるぱちゅりー。どうやら自覚はあったようだ。 「で、でもそれはしょうがないのよ! 群れのみんなを励ますためにも赤ちゃんは必要だったのよ!」 「ぞうだよ”! ぞでなのにぱじゅりーをげずよばばりするじじいはじねえええええええ!」 立ち直ったのか一緒になってお兄さんに罵声を浴びせるれいむ。 群れのゆっくりと同様に、いやそれ以上に信頼し、尊敬しているぱちゅりーを馬鹿にされたのが許せないのだろう。 「うるせえ!」 だがお兄さんにはそんなことは関係ない。 素早くスプーンをつかむと、それでれいむの両目をくり抜いた。 「ぎゃああああああああああああああ! でいぶのがばいいいおべべがあああああああああああああ!!」 「む、むぎゅううううう! ぷぺ!」 愛しいれいむに起きた惨状に思わずクリームを吐き出そうとするぱちゅりー。 しかしお兄さんの素早い腕がぱちゅりーの口をホチキスでふさぎ、それを許さない。 「落ち着けぱちゅりーさんよお。群れのやつらなら明日生まれる赤ゆっくりのおかげでしっかりとゆっくりできるさ!」 「…!!!」 「どぼいうごどなのおおおおおお! そうぞうにんっしんじゃだいのおおおおお!」 「想像妊娠? んなわけあるか! あいつらの出産が遅いのは俺が出産を遅らせる薬をあいつらの餌に混ぜ込んだからだよ」 お兄さんの言葉に絶句する二匹。 「それだけじゃない! 二日前に生まれた赤ん坊どもをああいう風にしたのも俺だよ」 「!!!んー!!!! んんんー!」 「どぼじでぞんだごどずるのおおおおおおおお!」 「それはなあ……お前らを虐待するためだあああああああああああああ!」 「ぎゅべえええええええええええええええ!」 ネタばらしで二匹のリアクションをたっぷり楽しんだお兄さんは、本日のメイン虐待を始めた。 「さあ! ゆっくりクッキングの始まりだぜ!」 「やべでええええええ! だずげでぱちゅりいいいいいいい!」 「んんーーーーー!!!!」 「まずはゆっくりの皮を剥きまーす!」 「ぶぎゃあああああああ! でいぶのもじもじのおばだがああああああああ!」 れいむの体の表面を包丁で器用に向いていくお兄さん。 肌色だった表面みるみるうちに白い饅頭になっていく。 「そして虫なんかをさんざん食べて汚い口をえぐりとりまーす! リアクションがほしいので喉は残しまーす!」 「むがーーーーーーー!!!! がーーーーーーー!」 「そしてさっき子ゆっくり達を交尾させて作った実ゆっくり付きの茎を強火で炒めまーす!」 「はへへーーー! ははひふへはひほーーーーー!(やめてーーー! まだしんでないよーーーーー!)」 喉だけで器用に叫ぶれいむ。 薄情なことにぱちゅりーは目と口の部分に穴のあいただけの饅頭になったれいむを見て、気絶してしまっている。 「塩こしょうで味を調えて完成! ゆっくりの実ゆっくり付き茎炒め!」 「んはーーーーーーーーーーーーーーーー!」 「そしてリアクションに飽きたれいむは温い油に入れて二時間かけて揚げ殺しまーす♪」 「ひひゃああああああああああああああああああ!」 油の入った鍋に突っ込まれ、ふるえながらゆっくりと油鍋の下から伝わってくる熱に怯えるれいむ。 お兄さんの言うとおり、すべてを失った悲しみを抱えながらすさまじい恐怖と狂うに苛まれあげ饅頭になるのだろう。 「さあて……やっぱりただ直接やるだけだとすっきりはするけどあんまり達成感はないなあ……」 すっかり溜まっていたフラストレーションを吐き出して通常に戻ったお兄さん。 イライラ解消のためだけに計画変更を認めさせられた妖怪兎はとんだ迷惑だろう。 「なんだかんだ兎には文句言ったけど……やっぱりじっくり虐待っていいよなあ……」 呟きながら静かに気絶したぱちゅりーを手に取るお兄さん。 「というわけで安心してくれぱちゅりー。あの群れは俺がしっかりとゆっくりさせてやるよ」 ひどくやさしい声で囁きながら、ぱちゅりーの帽子を取り上げるお兄さん。 そんなお兄さんの言葉にも、命より大切な帽子を取られたことにも、濁りきったぱちゅりーの眼は何の反応も示さなかった。 (むきゅう……ここは?) 体中に感じるズキズキとした痛みでぱちゅりーは目を覚ました。 愛しいれいむがひどい目にあわされているのを見て、思わず気絶してしまったところまでは覚えているのだが、その後は…… (むきゅ! そ、そうだ! れいむ! れいむは!) れいむを探そうと慌てて辺りを見渡そうとするぱちゅりーだが、なぜだかあたりは真っ暗で、そのうえ声も出すことができない。 (ど、どういうことなのおおおおおお! れいむううううう! ドスうううううううう! みんなああああああああ!) 必死に声を張り上げ、飛び跳ねようとするが、体に全く力が入らず、それはおろか自分の体が物に触れている感覚すら感じることが出来ない。 (むきゅうううううう! どういうことなの!) 慌て、混乱するぱちゅりー。するとその時、懐かしい、そして今のパチュリーにとって救世主ともいえる声が聞こえてきた。 「ぱちゅりー! ゆっくりおはよう!」 ドスまりさの大らかでとてもゆっくりとした声だ。 ぱちゅりーはようやくこのゆっくり出来ない状態から解放されると思い、ドスに挨拶を返した。 (ゆっくりおは)「ゆっくりおはよう! ドスまりさ!」 だが、その耳に聞こえたのは自分の声ではなく、昨日れいむとちび達を殺した憎むべき人間の声だった。 (む、むきゅうううう! ど、どうしてあの人間がいるのおおおおお!) 「ゆ! ぱちゅりーどうしたの? なんかおおきくなったみたい!」 そのドスまりさの声でぱちゅりーは気がついた。 あの人間は帽子を取り上げて自分になり変っているのに違いないのだ。 (むきゅう! 騙されちゃだめよドス! あの人間が群れに行ったらみんなゆっくり出来なくなるわ!) 帽子でのごまかしが聞くのは概ね普通のゆっくりまで。 ドスともなれば大きさなどに違和感を感じてそれに気がつくことが出来るはずだ。 ぱちゅりーはドスまりさに一縷の希望を託したが……。 「実は夜の内にぱちゅりーには体が生えてきたんだよ。これでもっとみんなをゆっくりさせてあげられるよ!」 (ああああああ! だめよドス! だめよおおおおおおお!) だが、ぱちゅりーの願いは、 「すごいねぱちゅりー! どすはぱちゅりーみたいなゆっくりがそっきんでとってもうれしいよ!」 愚かなドスまりさには届かなかった。 (どすううううううううううううう!) 「ありがとうドスまりさ! これもドスまりさのおかげだよ! これはそのお礼だよ!」 「ゆ! なにそれ! しろくてまんまるでとってもゆっくりしてるよおお!」 (むきゅ!) しろくてまんまる。 ドスのその言葉にぱちゅりーはあることに気がついた。 自分がドスと自分になりすました人間の近くにいるのに、なぜドスは帽子がないとはいえ自分に全く反応しないのだろうか。 その時、最後に見たれいむの状態を思い出す。 目を抉られ、体中の皮を削られてまるでお饅頭のようになったれいむの姿を……。 (むきゅううう! まさか! まさかあああああああ!) 「これは森で見つけたお饅頭だよ。れいむ達が見つけてくれたんだ、ドスまりさにあげるよ。」 「ゆうううう! ぱちゅりーありがとうねええええ! 本当にぱちゅりーはゆっくりしたそっきんだよおおお!」 そう言って舌でお兄さんが抱える饅頭をからめ捕るドスまりさ。 その表情は甘い物が食べられる喜びでとてもゆっくりとしていた。 (むきゅううううううううう! ドス!やめてえええええええ! ドスうううううううううううう!) 「ゆーっくりいただきまーす! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 (いぎゃああああああああああああああ! ぶぎゅううううううううううううううう!) 少し間の抜けた、けれどもゆっくり達のことを第一に考えているドスまりさ。 前の群れでも、そして今の群れでも頑張っている、尊敬すべきドスまりさ。 (いぢゃいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! どすうぅぅうううううぅううううう……………) そのドスまりさに咀嚼されて、目と口と皮を失ったぱちゅりーは苦しみながら死んでいった。 「美味しかったドスまりさ?」 「とってもゆっくりできたよぱちゅりー!」 「それはよかった。さあ、朝礼を始めようドスまりさ」 「ゆっくりわかったよ! あれ、そういえばれいむとおちびちゃんたちはどうしたの?」 「ああ、れいむ達には新しい餌場を探しに行ってもらったんだよ。少し群れを留守にするから待っててあげようね」 「ちびちゃんたちとおとまりだね! ゆっくりわかったよ! さあ、みんなをおこすよお!」 成長したそっきんと働き者の幹部たち。 そしておいしいプレゼントにとてもゆっくりした気持ちで、ドスまりさは声を張り上げた。 「ゆっくりしていってね!!!」 ※どうも、えらい間のあいた割には虐待模写が少なくてすいません。 一応話の筋は考えてあるので、暇を見つけてじっくりと描き上げますので、もうしばらくお待ちください。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2126.html
前 「れいむ、ちょっといいかしら?」 毎晩恒例の会議が終わり、それぞれ自分たちの部屋に帰ろうとする中、側近ぱちゅりーがれいむを呼び止めた。 「ゆ? どうしたのぱちゅりー?」 「むきゅ……ちょっと、お話があるの……まりさとありすは先に寝ててね」 「ゆっくりわかったんだぜ! おやすみみんな!」 「ふたりとも! ねぶそくはびようによくないからむりしないではやくねるのよ!」 そういって部屋に戻っていく二匹を見送ると、二匹はゆっくりと洞窟の外へ向かった。 「ゆぅ~、ぱちゅりーったらふたりがいるのにだいたんすぎるよ~」 洞窟の外に出て早々に、れいむの態度が豹変した。 猫なで声……とでもいうのだろうか、実に気持ち悪い声でぱちゅりーに甘えだした。 実はこの二匹、こっそりと付き合っていたのである。 番いにならずに付き合うという形をとっていたのはれいむに前夫のまりさの子供たちがいるためだったが、二十匹の子供たちと当のれいむは浮気をした挙 句すっきりのしすぎで死んでしまった父まりさなど等に見限り、すっかりぱちゅりーを慕っている。 すでにこっそりと言いながらも、群れ一番賢いぱちゅりーと群れ一番子だくさんでやさしいれいむの関係にドスを除くほとんどのゆっくりが気が付いてい た。 「むきゅ~、実はれいむに話しておきたいことがあるのよ……」 「ゆ? どうしたの?」 「実はにんっしんしてるまりさ達なんだけど……」 「ゆ! あのあかちゃんがすごくゆっくりしてるまりさたちだね! きょうもみにいったらまたおおきくなってたよ!」 ぱちゅりーとれいむが言っているのは、あのお兄さんが改造したゆっくり達と同じ出産室にいた動物型妊娠のゆっくり達のことである。 あのゆっくり達はぱちゅりーの見たところ植物型出産のゆっくり達と同じ日に出産を迎える見立てだったのだが、あの地獄の出産劇の後もそういった気配 はなく、むしろ今まで以上にゆっくりとし、今まで以上の食糧をむさぼり、わずか二日で二倍近くまで肥大化していたのだ。 「ぱちゅりーの経験からすると、あのまりさ達の赤ちゃんはもう生まれてなくちゃいけないはずなのよ! それがまだ生まれていない上にあんなにふとっ ちゃってるのは……」 「ふとっちゃってるのは?」 「想像にんっしんに違いないわ!」 「な、なにそれえええええええ!?」 「むきゅ! 前の群れにもいたんだけれど、赤ちゃんが本当はできていないのに出来てるって言って、ぶくぶくと太っちゃうことなのよ!」 ぱちゅりーの言っていることは本来の想像妊娠とは違っているが、ゆっくりが想像妊娠した場合の餌の大量摂取と肥満はセットのようなものなので、ゆっ くりにとってはあながち間違いではない。 「ゆ! それはほんとうなの!」 「むきゅう…にんっしんしてからもうお日さまが二十回以上昇ったわ。あのまりさ達には赤ちゃんは生まれないのよ」 「ゆー! それじゃあみんながっかりするよ! あかちゃんがうまれるのたのしみにしてたのに!」 れいむの言うとおり、二日前の惨劇以来この群れのゆっくり達は動物型で妊娠している十匹のゆっくり達が赤ちゃんを産むのを楽しみにしていた。 ゆっくりするという行為に赤ん坊を眺めることを含めるゆっくり達にとっては、やはり普通に生まれた赤ちゃんを見たいという思いが強いのだろう。 「むきゅ! だからね……れいむ……ぱ、ぱちゅりーとれいむで赤ちゃんを作ってみんなを喜ばせましょうよ!」 この言葉にはれいむも驚いたようで、はっと目を見開いた。 いきなり子作りをしようと言われたのだから無理もないが。 「も、もちろんだいさんせいだよぱちゅりー! ゆっくりあかちゃんがうまれればみんなげんきになるよ!」 だがぱちゅりーの言葉と同じくらい素早くれいむは返事をしていた。 どうやらぱちゅりーがこういうのをずっと待っていたらしい。 「む……むきゅー! れ、れいむー!」 先ほどお兄さんと妖怪兎が賢い賢いとほめちぎっていた二匹とは思えない様子で交尾を始める二匹。 もともと自分たちが敷いたすっきり制限でいろいろと溜まっていたのだろう。 ぺにぺにのない二匹はお互いのモチモチとやわらかい頬をやわらかく、それでいて激しくすり合わせる。 「すーり! すーり! ぱ、ぱちゅりーのほっぺたすごくふわふわでゆっくりできるよー♪」 「むきゅぅ♪ れいむのほっぺたももちもちであったかいよぉ♪ すーりすーり♪」 ヌメヌメとした液体を体から染み出し、洞窟の前で交尾にいそしむ二匹のゆっくり。 今まで群れの体面や何やらですっきりできなかったのだから無理もないが、群れの仲間の出産状況を理由にすっきりするとは、この二匹ゲスの一面があっ たのかもしれない。 「ぱぱぱぱ、ぱちゅりー! もうがまんできないよー!」 「むむむむむむきゅー! ぱちゅりーもだよおおおおお!」 だからなのか、群れでトップクラスに賢く、群れでいちばん狩りのうまい二匹は交尾に夢中でついに気がつかなかった。 「「すっきりー!!!」」 自分たちの背後にいる…… 「むきゅう♪ れいむううううううう、ゆっくりした赤ちゃんよぉ!♪」 「ふとくてしっかりしたくきだね! これならゆっくりしたこがうまれるよぉ♪」 「むきゅぅ♪ おちびちゃんたちにも妹ができるね!」 「れいむはすごくうれしいよ! ゆっくりしたこにそだっ」 ぶちい!!!! 「むぎゅ!」 「あ、ああああああああああ! あがぢゃんがああああああああああ!」 一人の鬼意惨に。 「い~~~~~~い実ゆっくりだなあああああ! ちょっと貰うぞ!」 「むびゅうううううううううううううううう! ぱちゅりーのあがぢゃんがああああああああああああ!」 「ゆっぐぢでぎばいにぶげんはじねええええええええええええええ!!!」 久しぶりのすっきり。愛おしい相手との初めてのすっきり。その末に授かった赤ちゃん。 その茎を勢いよく引きちぎ李、恍惚の表情を浮かべるお兄さん。 光学迷彩を解いたその姿は、久しぶりの直接的な虐待にヘブン状態なのか全裸だった。 「その叫び声最高だよ! さすがお兄さんの大好きなド饅頭!」 そう叫ぶが否や、二匹のゆっくりの口に手を突っ込んで舌をつかんで持ち上げる。 「「んんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!」」 「兎からお前らを始末する許可はもらっている! すでにお前らの餓鬼どもも確保済みだあああああああああああああああああ!」 『私を”鬼意惨”と見込んで依頼を下さったのならば、信頼していただきたい』 『わかったウサ。幹部たちを殺して直接群れに介入するあなたの計画、了承するウサ』 そう、お兄さんが妖怪兎に許可を求めたのはぱちゅりー達を殺し、飾りを用いてゆっくりになりすまして介入するという、群れ虐待における非常にオーソ ドックスかつ危険なものだったのだ。 通常飾りで個体を識別し、飾りさえついていれば人間でさえ仲間と認識してしまうゆっくりだが、ドスまりさなどの比較的頭のいい個体には見分けられて しまう。 だが、一週間以上この群れを監視したお兄さんは気が付いていた。 この群れのぱちゅりーに対する過剰ともいえる期待と信頼に。そしてドスまりさの馬鹿さに。 だからこそ、ドスと幹部ゆっくりによる軋轢が生まれる前に群れをコントロール出来るこの手法を提言したのだ。 そして直接的な虐待のお墨付きをもらったお兄さんはヘブン状態になり、全裸に光学迷彩スーツを着込むとぱちゅりーとその恋人である幹部れいむを虐待 するために洞窟に向かったのだ。 そして鬼意惨と化したお兄さんの頭の中にあるのは、一週間以上にわたる幸せなゆっくり達を見続けたことにより溜まりに溜まったフラストレーション、 それだけである。 「なーにが依頼じゃ! なーにがじっくりじゃ! あの兎が勝手なこと言いやがって! 俺はもっとシンプルな虐待がしたいんだよ!」 「ばべでえええええええええええええ!」 「じだがいだいいいいいいいいいいいいいいいい!」 「今夜に限っては依頼は関係ねええええええええええええ! ひゃああああああああああ! 虐待だあああああああああああああああ!」 深夜二時。 ゆっくりの群れを虐めるために作られた森の中に、お兄さんの奇声が響き渡った。 そしてこの夜、森の賢者(笑)と称えられたぱちゅりーとれいむの地獄が始まった。 「ほらよ、ついたぜ!」 「ぶぎゅべ! むぎゅうううううううう!」 「いだいよおおおおお! ゆゆゆ!! ばがな”じじいばれいぶだじをおうじにがえじでね”! ……ゆ!?」 全裸のお兄さんに捕まれ小屋についた二匹が最初に見たのは、床にある真っ黒な塊とそれに生い茂る緑色の茎だった。 普通のゆっくりなら気がつかなかったかもしれないが、頭のいい二匹はすぐに気がついたようだ。 「おじびじゃんだじがあああああああああああああああ!」 「どぼじでごんなごどにいいいいいいいいいいいいいいい!」 「そのとおおおおり!!! てめえらが気持ちわりい逢引ごっこで交尾してたんでなあ! 親切なお兄さんが餓鬼どももすっきりさせてやったんだよ!」 相変わらずのハイテンションで叫んだお兄さんは、れいむの子供たちのなれの果てから赤ゆっくりのなり始めがついたままの茎をブチブチと引きちぎると 、まな板の上に乗せた。 「む、むきゅう! ちびちゃん達の赤ちゃんがついた茎を千切らないでね! まだ茎を餡子にさせば大丈夫だからやめてね!」 ぱちゅりーはお兄さんの行為に即座に反応したが、れいむの方は「ちびちゃんちびちゃん」と呟きながら餡子の塊にくっついている。 強すぎる母性のせいで合理的判断が取れなくなるれいむ種の典型的行動だった。 「はーっはっはっは! だーれがやめるかゲスぱちゅりーが!」 「むきゅ! ぱちゅりーはゲスじゃないよ! ゆっくり訂正してね!」 「いーやゲスだね! 自分ですっきりを制限しておきながら仲間が出産しないのをいいことに自分達はすっきりしちまうような奴はゲスなんだよ!」 「むぎゅ!」 うろたえるぱちゅりー。どうやら自覚はあったようだ。 「で、でもそれはしょうがないのよ! 群れのみんなを励ますためにも赤ちゃんは必要だったのよ!」 「ぞうだよ”! ぞでなのにぱじゅりーをげずよばばりするじじいはじねえええええええ!」 立ち直ったのか一緒になってお兄さんに罵声を浴びせるれいむ。 群れのゆっくりと同様に、いやそれ以上に信頼し、尊敬しているぱちゅりーを馬鹿にされたのが許せないのだろう。 「うるせえ!」 だがお兄さんにはそんなことは関係ない。 素早くスプーンをつかむと、それでれいむの両目をくり抜いた。 「ぎゃああああああああああああああ! でいぶのがばいいいおべべがあああああああああああああ!!」 「む、むぎゅううううう! ぷぺ!」 愛しいれいむに起きた惨状に思わずクリームを吐き出そうとするぱちゅりー。 しかしお兄さんの素早い腕がぱちゅりーの口をホチキスでふさぎ、それを許さない。 「落ち着けぱちゅりーさんよお。群れのやつらなら明日生まれる赤ゆっくりのおかげでしっかりとゆっくりできるさ!」 「…!!!」 「どぼいうごどなのおおおおおお! そうぞうにんっしんじゃだいのおおおおお!」 「想像妊娠? んなわけあるか! あいつらの出産が遅いのは俺が出産を遅らせる薬をあいつらの餌に混ぜ込んだからだよ」 お兄さんの言葉に絶句する二匹。 「それだけじゃない! 二日前に生まれた赤ん坊どもをああいう風にしたのも俺だよ」 「!!!んー!!!! んんんー!」 「どぼじでぞんだごどずるのおおおおおおおお!」 「それはなあ……お前らを虐待するためだあああああああああああああ!」 「ぎゅべえええええええええええええええ!」 ネタばらしで二匹のリアクションをたっぷり楽しんだお兄さんは、本日のメイン虐待を始めた。 「さあ! ゆっくりクッキングの始まりだぜ!」 「やべでええええええ! だずげでぱちゅりいいいいいいい!」 「んんーーーーー!!!!」 「まずはゆっくりの皮を剥きまーす!」 「ぶぎゃあああああああ! でいぶのもじもじのおばだがああああああああ!」 れいむの体の表面を包丁で器用に向いていくお兄さん。 肌色だった表面みるみるうちに白い饅頭になっていく。 「そして虫なんかをさんざん食べて汚い口をえぐりとりまーす! リアクションがほしいので喉は残しまーす!」 「むがーーーーーーー!!!! がーーーーーーー!」 「そしてさっき子ゆっくり達を交尾させて作った実ゆっくり付きの茎を強火で炒めまーす!」 「はへへーーー! ははひふへはひほーーーーー!(やめてーーー! まだしんでないよーーーーー!)」 喉だけで器用に叫ぶれいむ。 薄情なことにぱちゅりーは目と口の部分に穴のあいただけの饅頭になったれいむを見て、気絶してしまっている。 「塩こしょうで味を調えて完成! ゆっくりの実ゆっくり付き茎炒め!」 「んはーーーーーーーーーーーーーーーー!」 「そしてリアクションに飽きたれいむは温い油に入れて二時間かけて揚げ殺しまーす♪」 「ひひゃああああああああああああああああああ!」 油の入った鍋に突っ込まれ、ふるえながらゆっくりと油鍋の下から伝わってくる熱に怯えるれいむ。 お兄さんの言うとおり、すべてを失った悲しみを抱えながらすさまじい恐怖と狂うに苛まれあげ饅頭になるのだろう。 「さあて……やっぱりただ直接やるだけだとすっきりはするけどあんまり達成感はないなあ……」 すっかり溜まっていたフラストレーションを吐き出して通常に戻ったお兄さん。 イライラ解消のためだけに計画変更を認めさせられた妖怪兎はとんだ迷惑だろう。 「なんだかんだ兎には文句言ったけど……やっぱりじっくり虐待っていいよなあ……」 呟きながら静かに気絶したぱちゅりーを手に取るお兄さん。 「というわけで安心してくれぱちゅりー。あの群れは俺がしっかりとゆっくりさせてやるよ」 ひどくやさしい声で囁きながら、ぱちゅりーの帽子を取り上げるお兄さん。 そんなお兄さんの言葉にも、命より大切な帽子を取られたことにも、濁りきったぱちゅりーの眼は何の反応も示さなかった。 (むきゅう……ここは?) 体中に感じるズキズキとした痛みでぱちゅりーは目を覚ました。 愛しいれいむがひどい目にあわされているのを見て、思わず気絶してしまったところまでは覚えているのだが、その後は…… (むきゅ! そ、そうだ! れいむ! れいむは!) れいむを探そうと慌てて辺りを見渡そうとするぱちゅりーだが、なぜだかあたりは真っ暗で、そのうえ声も出すことができない。 (ど、どういうことなのおおおおおお! れいむううううう! ドスうううううううう! みんなああああああああ!) 必死に声を張り上げ、飛び跳ねようとするが、体に全く力が入らず、それはおろか自分の体が物に触れている感覚すら感じることが出来ない。 (むきゅうううううう! どういうことなの!) 慌て、混乱するぱちゅりー。するとその時、懐かしい、そして今のパチュリーにとって救世主ともいえる声が聞こえてきた。 「ぱちゅりー! ゆっくりおはよう!」 ドスまりさの大らかでとてもゆっくりとした声だ。 ぱちゅりーはようやくこのゆっくり出来ない状態から解放されると思い、ドスに挨拶を返した。 (ゆっくりおは)「ゆっくりおはよう! ドスまりさ!」 だが、その耳に聞こえたのは自分の声ではなく、昨日れいむとちび達を殺した憎むべき人間の声だった。 (む、むきゅうううう! ど、どうしてあの人間がいるのおおおおお!) 「ゆ! ぱちゅりーどうしたの? なんかおおきくなったみたい!」 そのドスまりさの声でぱちゅりーは気がついた。 あの人間は帽子を取り上げて自分になり変っているのに違いないのだ。 (むきゅう! 騙されちゃだめよドス! あの人間が群れに行ったらみんなゆっくり出来なくなるわ!) 帽子でのごまかしが聞くのは概ね普通のゆっくりまで。 ドスともなれば大きさなどに違和感を感じてそれに気がつくことが出来るはずだ。 ぱちゅりーはドスまりさに一縷の希望を託したが……。 「実は夜の内にぱちゅりーには体が生えてきたんだよ。これでもっとみんなをゆっくりさせてあげられるよ!」 (ああああああ! だめよドス! だめよおおおおおおお!) だが、ぱちゅりーの願いは、 「すごいねぱちゅりー! どすはぱちゅりーみたいなゆっくりがそっきんでとってもうれしいよ!」 愚かなドスまりさには届かなかった。 (どすううううううううううううう!) 「ありがとうドスまりさ! これもドスまりさのおかげだよ! これはそのお礼だよ!」 「ゆ! なにそれ! しろくてまんまるでとってもゆっくりしてるよおお!」 (むきゅ!) しろくてまんまる。 ドスのその言葉にぱちゅりーはあることに気がついた。 自分がドスと自分になりすました人間の近くにいるのに、なぜドスは帽子がないとはいえ自分に全く反応しないのだろうか。 その時、最後に見たれいむの状態を思い出す。 目を抉られ、体中の皮を削られてまるでお饅頭のようになったれいむの姿を……。 (むきゅううう! まさか! まさかあああああああ!) 「これは森で見つけたお饅頭だよ。れいむ達が見つけてくれたんだ、ドスまりさにあげるよ。」 「ゆうううう! ぱちゅりーありがとうねええええ! 本当にぱちゅりーはゆっくりしたそっきんだよおおお!」 そう言って舌でお兄さんが抱える饅頭をからめ捕るドスまりさ。 その表情は甘い物が食べられる喜びでとてもゆっくりとしていた。 (むきゅううううううううう! ドス!やめてえええええええ! ドスうううううううううううう!) 「ゆーっくりいただきまーす! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 (いぎゃああああああああああああああ! ぶぎゅううううううううううううううう!) 少し間の抜けた、けれどもゆっくり達のことを第一に考えているドスまりさ。 前の群れでも、そして今の群れでも頑張っている、尊敬すべきドスまりさ。 (いぢゃいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! どすうぅぅうううううぅううううう……………) そのドスまりさに咀嚼されて、目と口と皮を失ったぱちゅりーは苦しみながら死んでいった。 「美味しかったドスまりさ?」 「とってもゆっくりできたよぱちゅりー!」 「それはよかった。さあ、朝礼を始めようドスまりさ」 「ゆっくりわかったよ! あれ、そういえばれいむとおちびちゃんたちはどうしたの?」 「ああ、れいむ達には新しい餌場を探しに行ってもらったんだよ。少し群れを留守にするから待っててあげようね」 「ちびちゃんたちとおとまりだね! ゆっくりわかったよ! さあ、みんなをおこすよお!」 成長したそっきんと働き者の幹部たち。 そしておいしいプレゼントにとてもゆっくりした気持ちで、ドスまりさは声を張り上げた。 「ゆっくりしていってね!!!」 ※どうも、えらい間のあいた割には虐待模写が少なくてすいません。 一応話の筋は考えてあるので、暇を見つけてじっくりと描き上げますので、もうしばらくお待ちください。 このSSに感想を付ける