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注・ゆっくりらしからぬゆっくりが出ます。 幻想郷の人里から少し離れた場所に緑の森が有る。 その森に住んでいるゆっくり達はとても幸せだった。 何故ならここには外敵である筈のれみりゃなどもほとんどやって来る事も無く、人里の人間も好んで立ち入る事も無かった。 時折、無謀なゆっくりが人里に悪さをしに行く場合も有ったが、再犯でもしない限りは直ぐに殺される事も無い。 流石に2,3度となれば別だが、そこまでの再犯を重ねるゆっくりで有れば、逆に人間に裁いて貰った方が平和になる。 幻想郷の人間は融和的で、罪を犯したゆっくりとその他のゆっくりを混同するなどという、短絡的で愚かな考えはしなかった。 その為、狩りや木の実の採取に長けたゆっくりまりさと、ぱちゅりーにも負けない明晰な頭脳を持ったれいむが率いるその群れは、 仲間同士で争う事も無く、困った事が有れば群れの仲間同士で協力し日々を謳歌していた。 ある越冬の時では、食料が芳しくない家の者に群れのゆっくり達が少しづつ食料を提供し、その家族は無事一匹も欠ける事無く冬を越した。 ある梅雨の季節では、暴風で破壊されたゆっくりの家が有ったが、群れのリーダーであるまりさはその家が直るまで住人を快く自らの家へと招き入れた。 相互扶助。 その群れのゆっくり達は全て、その言葉は知らずとも、その行動を実行する事が出来た。 かつ、いつまでも他の者に頼るなどという甘い考えのゆっくりなどは存在せず、この群れはとても良好に機能していた。 やがてそのまりさとれいむは群れの皆から祝福され結婚して家族となり、より一層の繁栄を為し得るかに見えた。 そう、一週間程前までは。 「ゆぅぅ、なんでこんなことに・・・」 薄暗い洞窟の奥で、ボロボロの身なりのれいむが居た。 少し前まで群れの長であったれいむである。 黒々とした艶の有った髪も見る影も無く荒れ、頭のリボンもネズミにでも齧られたかのように所々千切れている。 それにも増して、かなりの暴行を受けたのだろうか、その身体にはそこかしこに真新しい傷が出来ていた。 その場所にしても、洞窟の中の狭い一室の入り口を柵で覆い、まるで牢屋のように作られている事から、その状況が尋常で無いのは一目瞭然であった。 「まりさたちはだいじょうぶかなぁ・・・」 いつまでも続くかに思えた幸せの時を思い出してしまい思わず嗚咽が漏れる。 最愛のゆっくりを思い浮かべると涙が零れる。 部屋の片隅で丸い身体を震わせ、えぐえぐとただ悲嘆に暮れなき続けるしか、今のれいむには出来る事は無かった。 一週間前、群れで大規模な反乱が起こった。 その反乱により、群れを率いていた群れの幹部達の多くは捕らえられてしまったのだ。 夫であるまりさと子供達は間一髪の所で逃げ出す事に成功したが、れいむはその時自ら犠牲となり囚われの身となってしまった。 「ゆふふ、惨めなものね」 そんなれいむを嘲笑うような声が聞こえたかと思うと、数匹のゆっくりがその部屋の中に入ってくる。 先頭のゆっくりは普通のゆっくりには扱えぬ筈の火の付いた松明を口に咥えている為、部屋の中が一気に明るくなった。 ほとんどは数週間前に群れにやってきた新参のゆっくり達だが、中には昔から群れに住んでいた見慣れた顔のゆっくりも居る。 そして遅れて入ってきたゆっくり。 煌びやかな髪が松明の炎に照らされて鮮やかな光を放ち、その優雅な佇まいにはゆっくりで有りながらも何処か厳かな雰囲気を漂わせる。 薄暗い洞窟の中でそのゆっくりの存在感は一層際立ち、周りの者の眼を引く。 「ゆっ!?おまえは……ゆっくりしねぇ!!」 涙を流していたれいむであったが、その姿を一目見た瞬間、まるで鬼にでも取り付かれたかのような形相に変わり目の前のゆっくりに飛び掛かろうとした。 だが、周りの者達がすぐさま盾となりそれを阻み、れいむを跳ね飛ばす。 そのまま壁に叩き付けられ「ゆぐぅ」と短い呻き声を上げたれいむに、追い討ちとばかりに数匹のゆっくりが圧し掛かる。 「いつもむだなことをしないでね!!ゆっくりりかいしてね!!」 「いたいよ、ゆっくりやめっ、てびゅっ!!やめて、に”ゅ!!」 「ちーんぽ!!ちーんぽ!!」 まりさ種やみょん種、中には同種のれいむ種まで居る。 それらは足元のれいむの声などに一切耳を貸さずにひたすら飛び跳ねれいむを苦しめる。 数は元よりろくに食事も食べていない弱ったれいむは成す術も無く、そこから逃げ出す体力も無い。 「ゆぐっ、やめ”、びょひゅ……いだい”よ、ゆっぐりぃ」 「おお、よわいよわい」 「な”んでごんな……ゆべっ!!ゆびぃ!!」 反論を挟む余地の無い暴力。 段々とれいむの眼から生気が失われていき、その叫び声も「ゆぐっ!!ゆげぇ!!」から「ゅみゅ…、ゅきゅ……」と弱々しくなっていく。 淡々と行われるその暴行を冷ややかな眼で見詰めていたあのゆっくりがズイッと前に出ると、周りの者はそれに反応してすぐさまその場から飛び退いた。 後に残されたのは、その口から餡子を垂れ流し、楕円形の形になってしまった瀕死のれいむである。 「ゅ……ゅ……」 「おやおや、わらわがわざわざ会いに来てさしあげたのに、あなたはもうゆっくり死んでしまいますの?」 ビクビクと痙攣を始めたれいむの前で、明らかに他のゆっくりとは違う流暢な話し言葉で呼び掛けた。 すると、このまま死んでしまうかに見えたれいむの眼に少しだけ光が戻る。 そして動かぬ身体で眼だけを動かし、眼の前のそのゆっくりを憤怒の炎が宿った眼で睨み付けたのだ。 「ゆぐぐ…このぉ、おんしらずのゆっぐりめぇ……」 「ゆふふ、わらわはそなたの様なゆっくりに受けた恩など覚えがありませぬ」 「ゆぎぃぃ!!きさまなんか、れいむとおなじれいむなんておもえないよ!!」 憎しみを込めて力一杯に叫ぶと同時に、横から別のゆっくりが体当たりをし、れいむは又もや吹き飛ばされ壁に打ち付けられる。 「おまえのようなゆっくりとおなじにするなだぜ!!はくれいむさまとおよびするんだぜ!!」 取り巻きの一匹であるまりさが体当たりをし、そうれいむに対して叫ぶ。 その後ちらりと、はくれいむと呼ばれたゆっくりれいむに眼を向け、ニヤリと口元を歪ませる。 はくれいむに惚れているのだろうか。 まりさなりのアピールを欠かさない。 はくれいむと呼ばれたそのゆっくりはれいむ種でありながられいむ種ではなかった。 髪は透き通るように白く普通のれいむ種の黒とは対極にあり、暗闇の中でもその存在感は際立っていた。 更には頭に付けられているれいむ種のトレードマークであるリボンも、赤い部分は真っ白に染め上げられ、その姿は正に「はくれいむ」と呼ぶに相応しかった。 姿だけでは無い。 その雰囲気もれいむ種どころか、他のゆっくりと一戦を隔す程に厳かで幽玄。 ゆっくりでありながらも、カリスマと言うべきだろうか、他ゆっくりを引き付ける何か持っている。 だがその本質は残酷で冷徹。 一ヶ月程前に数匹の取り巻きと群れに加わり、独自のやり方で群れの指導者に気付かれずに多くの仲間を作っていき、 瞬く間に反乱を起こして群れを乗っ取った。 そう、彼女こそが例の反乱の主導者であり、眼の前のれいむの幸せを打ち砕いたゆっくりなのだ。 そして一方のれいむは打ち付けられた衝撃と積み重なった暴行のダメージで「ゆべぇぇぇ!!」と汚らしく餡子を吐き出し続けるばかりである。 「おお、ぶざまぶざま。わらわがこのようなゆっくりと同じなど、考えただけでおぞましい」 そんなれいむの様子を中傷した笑みで見ながらそう呟くと、周りの者も全くだとばかりに笑いの声をあげる。 れいむは言い返す気力も無く、ただただ餡子と涙を吐き出し続けるだけであった。 クスクスと笑いながらその様子を暫く眺めていたはくれいむであったが、ふと思い出したようにれいむに問い掛ける。 「……ところで、あなたの夫であるまりさは何処にいるのかしら?」 かなりの量の餡子を吐き出し若干落ち着いたれいむは、その言葉にピクリと反応する。 だが、返答する気配は見せず貝のように押し黙ったままだ。 「はくれいむさまがしつもんしているんだぜ、ゆっくりこたえるんだぜ!!」 「……ゅ、なんどきてもれいむはこたえないよ」 一瞬言葉に詰まった。 ここに来てから何度も尋問され、その度に拒否をして暴行が行われる。 餡子脳であるがその恐怖はこの一週間でしっかりと刻まれ、その痛みと恐怖を思い出して少し言葉に詰まった。 だが、れいむは愛するまりさを裏切る気など毛頭無い。 例えこのまま殺されても絶対に喋らないと、そう心に誓っていたのだ。 「ゆゆっ!?うそをつくんじゃないぜ、おまえがにがしたんだからどこにいったかしっているはずなんだぜ!!」 「れいむはしらないっていってるよ……ゆっくりりかいしてね」 「ゆぎぃ!!おまえそんなことをいってどうなるかわかっているんだぜ!?」 れいむの馬鹿にしたような受け応えに、頭に青筋を浮かべそうな程に真っ赤になりながらまりさは凄む。 だが、周りは敵だらけというそんな状況でもれいむは怯えた表情も出さず、その口元に笑みを浮かべ。 「でも……まりさならめのまえにいるよ?」 「ゆっ?どこなんだぜ!?」 そうれいむが呟くとまりさはキョロキョロと見渡すが、何故か周りのゆっくりは一斉にそのまりさの方を見る。 「ゆぅぅ、でもわたしのしっているまりさとはちがうみたいだね」 「ゆ?どういうことなんだぜ?」 「わたしのしっているまりさとちがって、ばかでゴミくずでまったくゆっくりできてないね」 「ゆゆっ!??」 れいむのその言葉に唖然となり、その餡子脳に考えを巡らす。 このれいむはなにをいっているんだぜ? まりさがきいているのはむれをひきいていただめまりさで、ここにいるのはこのさいきょうまりささまだけなんだぜ。 そのうえ、ばかでゴミくずでゆっくりできない? だれのことをいってるんだぜ? 暫くグルグルと考えを巡らすと、流石のまりさにもどういう事か理解出来てきた。 れいむはしてやったりという風にその口元に中傷の笑みを浮かべる。 「ゆぅ!!こ、こいつ、このまりささまをばかにしてるんだぜ!?」 「ゆゆっ、ゆっくりりかいできたんだね。ゴミくずからオガクズにいいかえてあげるね」 湯気が出そうな程に全身を真っ赤にして、瀕死のれいむ今にも飛び掛らんとするまりさ。 その様子に怯む事無くれいむは更に罵倒を続ける。 「あかくなったらつよくなるとでもおもってるの?さんばいなの?しぬの?」 「ゆぎぃぃぃ、まりさはおこったんだぜぇぇ!!ゆっくりしねぇ!!」 このまま嬲り者にされたまま生き長らえるくらいなら、このまま死んだ方が良いとれいむは思っていた。 そうすれば、れいむを助けに来ようとするまりさを危険な目にあわせる事も無い。 ただ一つ心残りが有るとすれば、最後に一度で良いから愛する家族に会いたかった。 それを思うとやはり涙が零れる。 そして死が怖くなり、段々と震えが起きそうになる。 れいむはそんな湧き上がるものを、歯が欠けそうなほどに奥歯を噛み締めてぐっと堪えた。 こんな非常なゆっくり達にこれ以上惨めな姿を晒さないためである。 まりさが地を蹴る瞬間、れいむはそっと眼を瞑る。 すると死ぬ事への恐怖も不思議と消えていった。 はくれいむに一矢報いたかったが、この馬鹿なまりさに屈辱を味あわせてやっただけで満足しよう。 れいむはそう思った。 「ゆっくりお止めなさい!!」 突然、その部屋に怒声が響く。 その声にれいむを殺そうとすべく飛び上がる瞬間のまりさは身を竦めて動きを止める。 周りの者も眼を丸くして、はくれいむの方を見遣る。 「おお、愚か愚か。そのようなゆっくりの罵詈雑言に耳を傾けるとは」 「ゆぅ……でもはくれいむさま、こいつはまりさのことをばかにして……」 「お黙りなさいな。このゆっくりは死ぬ気力も無いから口先であなたを煽動し自らを殺そうとしているだけなのですよ」 「ゅぅ……」 「それにこれ以上やっては死んでしまいます。このゆっくりにはまだまだ役に立って貰わないと」 まりさは、はくれいむにそう諭され眼を地面に落とす。 格好良い所を見せようと張り切ったつもりがこんな事になるとは思っていなかった。 「ゆふぅ……あなたはまだまだ激流にゆっくりと身を任せる事が出来てないようですわね」 そんな様子のまりさにはくれいむはそう呟き、一瞥する。 その顔はこの世の終わりとでも言おうか、先ほどから一転、真っ青に血の気が引いている。 「ですが、あなたの忠義心は十分に評価していますわ。今後もわらわの部下として精進なさい」 思いも寄らぬ言葉。 それを聞いてまりさの表情はぱっと華やいだ。 二転三転、器用なものである。 しかし、はくれいむのその飴と鞭の使い分け様はやはり他のゆっくりには真似が出来るものではなかった。 周りで見ている者達も、仲間といえどまりさの馬鹿さ加減に呆れる一方で有ったが、逆にそれを許すはくれいむの懐の深さを際立たせる所となった。 そしてはくれいむにとってこの一連の流れは十分に計算通りのものであり、愚かなまりさを傍に置いている理由の一つでもある。 正に悪のカリスマというべきであろうか。 「ゆゆっ、そんなことをいいながられいむをころすどきょうがないだけなんだよね!!」 その一連のやり取りの中、れいむが声を上げる。 はくれいむを挑発しているのだ。 「ゆふふ、愚か者は声だけは立派に張り上げますのね」 「そうやってゆっくりしてられるのもいまのうちだけだよ、はやくれいむをころさないと、ゆぐっ!!?」 そんなれいむの言葉を遮る様に周りのゆっくり達が二匹回り込み、その口に縄を噛ませる。 れいむはモガモガと口を動かすが一向に外れようとしない。 後ろでちぇんが器用にその縄を結び、猿轡が完成した。 れいむの唯一の抵抗を不可能にし、これ以上餡子を吐かれたりするのを防ぐためである。 「ふぁにするの!?ふっぐぃ、ふぁずしてね!!(なにするの!?ゆっくりはずしてね!!)」 「なにいってるかわからないよー♪」 ちぇんのその言葉に周りのゆっくりは苦笑し、バタバタと暴れるれいむに冷ややかな視線を浴びせる。 そして、はくれいむは周りの一匹に目配せした。 松明を咥えたゆっくりみょんである。 そのままみょんはじりじりとその松明をれいむへと近付けて行く。 「ふぐっ!!ふぁぐいよ、ふっぐりふぁがれてね!!(ゆぐっ!!あついよ、ゆっくりはなれてね!!)」 「ふぁめてね!!ふぁ……あ”ぐぅぅぅい”ぃぃぃぃ!!(やめてね!!やめ……あづぅぅぅい”ぃぃぃぃ!!)」 壁に追い込まれたれいむの身体にその松明の先端が押し付けられる。 逃げる事も適わずにその肌は焼け焦げていき、チリチリと髪が焼け千切れていく。 左右に避けようとしても、周りのゆっくりに押し戻される。 「ふ”ぇい”ぶが、ふぉべち”ゃう!!ふぉべちぁうっべばぁぁぁぁ!!(れいむが、こげちゃう!!こげちゃうってばぁぁぁぁ!!)」 「ゆへへ、さっきまでのいせいはどこいったんだぜ?」 まともな言葉も出せずに涙を流して壁へと張り付くれいむの無様な姿を見て、先ほどのまりさも溜飲が下がったようだ。 必死の形相のれいむに構わず、みょんはグイグイとその火をれいむに押し付ける。 辺りには焼き饅頭の香ばしい匂いが立ち込め、それが段々と焦げた匂いへと変わっていく。 すると急に、ぼわっとれいむの頭に火の手が上がる。 本格的に髪に引火してしまったのだろう。 「ふぎゅあ”ぁぁぁぁぁあ”あ”あ”あ”あ”ぁあぁ!!」 頭に火を付けて眼を見開き、言葉に成らぬ叫び声をあげたれいむに松明を持っていたみょんも思わず後ろに下がる。 引火した火を消そうとれいむがゴロゴロと地面に転がり、その様子に周りで見ていたゆっくり達も後ろへと退いた。 「びゅぅべいぶのびゃびばぁぁ!!おびぼんぎゃあぁぁあぁぁ!!(でいぶのがみ”がぁぁぁ!!おりぼんがぁぁぁぁぁ!!)」 「ぶぁふへへ、ふぁりしゃあぁぁあ!!ぶあぁぁぁりじゃあ”ぁぁぁ!!(だすけてぇ、まりじゃあぁぁあ!!ま”あぁぁぁりざあ”ぁぁぁ!!)」 一度は死を覚悟しながらも、じわりじわりと蝕む苦しみに思わずれいむはまりさに助けを求める。 だが当然まりさは来ない。 身体の全水分を眼から垂れ流しながら、必死に愛するゆっくりの名前を叫びながられいむは転げ回るだけだ。 やがてそのまま全身に火が廻り焼け焦げてしまうかに思えたその様子を、たじろぐ事も無く見ていたはくれいむは後ろに控えていためいりんに合図を出す。 すると、めいりんが咥えた水の入った容器をれいむに投げつける様にぶつけ、辺りに水が飛び散ると共に見事に炎は鎮火された。 「まりさもひをけすのにきょうりょくしてやるんだぜ!!ぺっ!!」 「わかるよー、ちぇんもしーしーしてあげるねー♪」 そのまま痙攣を繰り返すだけの動かないれいむに対して、無情にもまりさは唾を吐き掛け、ちぇんもチロチロと尿を浴びせ掛ける。 その後に、ちぇんはれいむが死んでいるのか不思議そうに眺めていたが、 未だにプスプスと煙をあげてはいるものの、何とかれいむは生きているようだ。 「めいりん、そのゆっくりの縄を外して差し上げなさい」 「じゃお!?じゃおおおおおお!!」 戸惑いはしたものの、めいりんはれいむに結び付けられていた猿轡を外しに掛かった。 縄は半分焦げ付いていたので、結び目を解く必要も無く簡単に外れる。 そのままめいりんは、半分焦げ饅頭になったれいむの顔を覗き込んだ。 髪は以前の半分の所まで焼けて巻き上がり、アフロとまではいかなくても奇抜なものとなっていた。 その上リボンも所々焼け、穴がそこかしこに覗き、以前のれいむからは見る影も無い。 「……ゅひゅぅ……ゅひゅ……」 顔を近付けてみるとどうやら息をしている。 めいりんはホッと、ゆっくりには存在しない筈の胸を撫で下ろした。 今はこのようにはくれいむの部下となってはいるものの、めいりんは自身を群れに加え、 野生では虐められるのが当たり前の自分を一ゆっくりとして扱ってくれたれいむが好きであった。 ただ、反乱の時は突然の事でどちらに味方すれば判らず、オロオロしている内に群れははくれいむの手中に収まり、めいりんも言われるがままに部下となってしまった。 しかしそうは言ってもそう簡単に割り切れるものでは無く、このようにはくれいむの部下でありながらも気付かれずにれいむの身を案じる事もあった。 「めいりん、よく出来ました。ゆっくりお下がりなさい」 「じゃおぉぉぉ……」 「ゆ!?このばかめいりん。ゆっくりさがれとおっしゃってるんだぜ!!」 「じゃお!?」 はくれいむの呼び掛けにすぐに応えなかっためいりんに、まりさが身体をぶつける。 大した痛みは無いものの、目の前のれいむに何もして上げられない事を悔しく思い、めいりんは悲しい顔をしたまま後ろへと下がる。 残されたれいむは火傷の痛みだろうか、白目を向いたまま時折ビクリビクリとのた打ち回る。 「ゆふふ、今日はこのくらいかしらね」 れいむのその様子を満足そうに眺めながら、はくれいむは口元に笑みを浮かべる。 そのまま近くのゆっくりに何事かを囁くと、くるりと踵を返してその場を後にしようとした。 後ろには側近の者達が続き、後には命令を受けたゆっくりとその他に数匹のゆっくりが残る。 監視役とれいむの世話をする群れに長く居たゆっくりである。 はくれいむはこの様にして群れに長く留まっていたゆっくりの自分に対する忠義心を試し、旧体制の反乱の芽を潰すよう心掛けていた。 れいむの世話をしているゆっくりが何かしら不穏な動きをすれば監視役がそれを報告し、即座に対処する。 新たなる群れを作るのに不穏分子は早く潰すに越した事は無い。 敢えてれいむに近付け、その選別を行うのだ。 「あ、そうそう……」 突然ピタリと、はくれいむはその歩みを止め「今日はそなたの親友を招いていたのであった」と振り返らずに話し出す。 「先日であろうか、そなたを助けようとわらわ達に歯向かった愚か者達がおってな」 「確か主犯格はぱちゅりーと名乗る者だったらしいが……」 その言葉に、混濁していたれいむの意識が揺り動かされる。 れいむの最も信頼のおけるゆっくりの内の一匹。 子供の内から一緒に群れで暮らしてきたゆっくりに違いない。 「ちぇんよ、あれを持って来させよ」 「わかるよー♪」 はくれいむにそう言われたちぇんはピョンピョンと何処かに跳ねて行き、暫くすると何匹かのゆっくりが風呂敷に包まれた何かを引き摺るようにやってきた。 ゆっくりと、れいむの捕らえられた部屋へと風呂敷が運び込まれる。 「ぱ……ちゅ、りぃ……?」 グルリとれいむの眼が白目から黒目へと切り替わり、弱々しく声をあげる。 眼の前の風呂敷の中にぱちゅりーが居るのだろうか? 自分の為に捕らえられてしまったというのか? そんな疑問が浮かび、哀しみが込み上げて来る。 その一方で不謹慎ではあるが、今まで会う事が出来なかった仲間に会う事が出来る事への喜びが湧き上がったのは確かであった。 れいむのその眼に微かに光が戻ったのを確認すると、はくれいむが合図を出す。 するとばさりとその風呂敷が広げられ、そこには丸い物体が置かれていた。 紫色の帽子に月の飾りを付け、その更に紫色の美しい髪は昔のまま色褪せてはいない。 間違い無い、れいむの親友のぱちゅりーだ。 「ぱちゅ、ぱぢゅりー、よがっだ、いぎでだんだね」 もう、ろくに動かない身体をズリズリと動かして、そのぱちゅりーへと近付く。 半分焦げた身体に痛みがまだ有ろうが、眼の前に親友がやってきてくれた事でそんな事など気にもならなかった。 ジッとれいむの方を見詰めるぱちゅりーに少しづつ近付いて行く。 「ぱちゅりー……ぱちゅり……ぃ?」 やっと肌を接する程に近付いて、ある異変に気付く。 このぱちゅりー、先ほどから身動ぎ一つしないどころか、眼を開けたまま瞬き一つしないではないか。 それに近くで見ると判る。 肌が何処か変な、何と言うか乾いているというべきであろうか、あの瑞々しさが無い。 更に近付いて、肌を接してみるとあの柔らかいぱちゅりーの身体とは思えない、岩肌にも似た感触を覚える。 そのままぱちゅりーに呼び掛けながら、顔を覗き込む。 返事も無く、そしてその瞳は眼の前にいる筈のれいむを捕らえることも無く、何処かずっと遠くを見ているようだ。 光が無いその眼もやはり乾いていた。 周りのゆっくり達もその異常さに気付く。 「こ、これ……」 「それを作り出すのには苦労した」 異変に気付いたれいむの様子に、満足そうにしながらはくれいむは説明を始める。 「わらわの美意識からしても、反逆者とはいえそのぱちゅりーは中々に美ゆっくりであってな」 「どうにかして、その姿を永遠にゆっくりと留められないだろうかと思案したのじゃが……」 凍り付いた表情でれいむは、はくれいむへと視線を泳がす。 「他の反逆者に協力してもらって、どうにか作り上げる事に成功したわ」 「樹に吊るして下から炎で燻しあげる……そなたのような愚か者には理解出来ぬだろうが、燻製焼きというものであってな」 「ただ普通にやっては、他の反逆者のように最後は見るに耐えない悲惨な表情で死に絶えるものだから」 「そのぱちゅりーは飾りを取った後、全身にきつく布を巻きつけて表情が崩れぬよう工夫したのじゃ」 この眼の前のゆっくりは何を言っているのだろう? れいむはそんな表情で何も言えずにその言葉を聴き続けた。 「一番難しかったのは、閉じたままはつまらぬ故に事前に眼の周りを動かぬよう焼き固めておく事だったわ」 「その時には酷く抵抗しておった……むきゅむきゅと泣き叫びながら、そなたの名前も大声で叫んでおった」 「後は両目だけを覗かせ、先ほど説明したように蓑虫の様に布を巻きつけ吊り上げ、一晩中下から煙で燻し上げたのじゃが……」 「そこから覗く瞳はひたすらに涙だけを流し、赤ん坊のように潤んだそれは何処か愛おしさすら覚えたのぅ」 「絶命する随分前には、もはや瞳の水分は完全に失われて何も見えてはおらなかった様子だが」 途中から、れいむの頭の中を鐘がガンガンと打ち鳴らすように感覚を覚えた。 普通のゆっくりであればはくれいむの喋る事を半分も理解できなかったであろうが、半ば賢いだけにれいむはその残酷な情景を頭に浮かべてしまった。 先ほど自分が味わったあの苦しみと息苦しさを、ぱちゅりーは一晩中も味わわされたのだ。 そうでなくてもぱちゅりー種は元来ぜんそく持ちである。 少しのホコリや砂を呼吸が出来なくなる程、それを煙で燻し上げるなどどれほどの苦しみであろうか。 想像を絶する。 「ゆ”あ”あ”ぁぁぁぁぁぁ、ばぢゅりぃぃぃぃ!!くるしかったよね?ゆっくりできなかったよね?」 眼の前の最早形だけで命の無いぱちゅりーに、それでも頬をすり合わせて涙を流す。 れいむの頭にぱちゅりーと過ごした、数々の想い出が去来する。 まだ賢く無かった子供の頃に様々な事をぱちゅりーから学んだ。 群れの皆で協力して、れみりあを撃退した時に一緒に群れを指揮した事。 親友でありながらも師でもあったぱちゅりー。 まりさとの結婚で一番喜んでくれたのもぱちゅりーだった。 それらを思い起こすと、身体中の水分が涙となって流れ出していく。 それが段々と黒々しくなり、完全に餡子が流れ出しても止まる事は無かった。 そして少し前に、ぱちゅりーに会えると喜んだ自分を呪った。 そんな馬鹿な自分のせいでぱちゅりーが死んでしまった。 そう思えて仕方なかった――そして。 「ゆっぐじぃぃぃ……ごろじでやるぅぅぅぅ!!」 餡子の涙を流したその顔で、はくれいむの方へと向き直る。 その余りの迫力に、周りの取り巻きは怯えた表情を浮かべ、後ろへと思わず遠退く。 だが、肝心のはくれいむはというと、涼しげな表情でその様子を嬉しそうに眺めるばかりであった。 「ゆっぐじぃぃぃ、ゆっぐじぃぃぃぃ!!」 ずりずりと火傷で動かない身体を引き摺ってはくれいむの方へと向かう。 ゆっくりとは思えないどの行動の原動力は、凄まじい怒りに寄るものだろう。 それにハッとしたかのように、取り巻きのゆっくり達が間に割って入るがはくれいむは「ゆふふ、よいよい」とすぐさま退けさせた。 そのまま後少しで、はくれいむに喰いつける距離まで辿り着こうかという地点で、バタリとれいむは突っ伏すように顔を地面に向けて動かなくなってしまった。 「じゃ……じゃおおぉぉぉ!!」 近くで怯えながら見ていためいりんがすぐさま駆け付け状態を確かめる。 気絶しているだけで、どうやら死んではいないようだ。 だが、その顔は憤怒の表情で固まったまま動かない。 「じゃおおぉぉぉ!!じゃおぉぉぉ!!」 「なにやってるんだぜ、ゆっくりそいつにとどめをさすんだぜ!!」 取り巻きのまりさが声を張り上げる。 愛しのはくれいむを殺そうとしたそのれいむをそのままにしておくべきではないと思ったが、自分が近付いて殺す事は怖くて出来なかった。 めいりんは涙を流しながら顔を左右に振りそれを拒否する。 再びまりさが声を張り上げるがそれも拒否する。 「まりさのいうことがきけないばかめいりんなんて、ゆっくりできなくしてやるんだぜ!!」 「じゃ、じゃおおおぉぉぉん!!」 怒りのその言葉とゆっくり出来なくされると言われ、困惑するめいりん。 そんなやり取りと眺めていたはくれいむが、ゆっくりと指示を出す。 「ゆふふ、まだまだその愚か者にはゆっくりと楽しませて貰わなければならぬ」 そう言うと、周りで様子を見ていただけのゆっくり達にすぐさま治療に当たらせた。 どういう事かよく判らないといった表情のまりさも、ハッと我に返ると先ほどとは正反対に 「そのれいむをころすな」や「もしできなかったら、そいつらもゆっくりできなくするんだぜ」などと喚いている。 はくれいむはそれを暫く眺めていたが、ゆふふと笑い声をあげると踵を返して、今度こそは本当にその場を後にした。 そして更に一週間後、その洞窟の誰も知らない空洞の中を這いずるように一匹のゆっくりが進んでいた。 ゆっくりまりさである。 そのまりさはブツブツと何事か呟きながら、大人のゆっくりでは狭いその空洞の間を縫うように進み続ける。 その眼には何かしらの決意が見て取れた。 随分と進んだ後、開けた場所に出ると同時に一匹のゆっくりが目に付く。 反乱の一端を担っていてゆっくりみょんである。 見張りであろうか。 深夜のためうつらうつらと身を揺らせるそのみょんに気付かれぬよう、まりさは帽子から鋭く尖った木の枝を取り出す。 それを口に咥えると、ゆっくりとその背後へと近寄る。 すると突然、まりさの気配に気付いたのだろう。 みょんが振り向きそのまりさを確認すると、仲間を呼ぶために声を張り上げようと身体を膨らます。 その一瞬の間に、まりさはゆっくりしないで口に咥えた凶器をみょんへと突き刺す。 何が起こったのかイマイチ理解出来てないみょんの身体の中心を抉るようにそれを掻き回し素早く抜き取る。 するとそこから大量の餡子が噴出しだす。 みょんの眼は次第に生気を失い白目を剥き最後には、 「ぱ、ぱいぷ…かっとぉ……」 と呟き、その場に力無く倒れた。 まりさはそのみょんの最後を悲しそうな眼で見遣った後、帽子を被り直して先へと進み始めた。 この程度の事で感傷に浸っている場合じゃない。 そうまりさは自身に言い聞かせているようあった。 「れいむ、ゆっくりまっててね……まりさがぜったいにたすけだしてやるからね」 続く 後書き・はくれいむの喋り方はハクレイ4000年の歴史のせいでしょう。 by推進委員会の人 このSSに感想を付ける
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『愛された果てに』 40KB 観察 家族崩壊 現代 独自設定 失礼します。 anko2611 ゲスゆっくり奮闘記1 anko2622 ゲスゆっくり奮闘記2 anko3414 ゲスゆっくり奮闘記3 anko3417 ゲスゆっくり奮闘記4 anko3456 れいむのゆん生 anko3458 まけいぬとゆっくり anko3461 ゆっくりに生まれて anko3484 ゆっくりブリーダー anko3489 休日とゆっくり anko3652 ドスについて anko3715 ゆっくりに餌を anko3729 はじめてのぎゃくたい anko3730 はじめてのしいく anko3794 まりさとの勝負 anko3843 野球部のゆっくり anko3855 ゆっくりと会話してみた anko3932 ゆっくり観察日記 anko3933 ゆっくりと子供 anko3953 しんぐるまざーの朝は早い anko4016 虐められるためのゆっくり anko4094 普通の人とゆっくり 「」ゆっくりの台詞 『』人間の台詞でお願いします 「ゆっくりおきるよ!」 朝のまだ早い、やや薄暗いだろう時間の、ある大きな群れ。 そこに所属する一匹のまりさが巣の中で声をあげた。 木の根元に作られた広く、またすべすべの巣の中、奥のベッドで寝ている番のれいむに、その子供たちを見ながら彼女はニッコリ笑う。 一家の長として、これから狩に向かう彼女は家族の寝顔を見て、それをエネルギーに頑張ろうとしているのだ。 それと同様の光景は、周囲に乱立する木の根元にある巣で数多く見られている。 それらを朝の日課を終えたのか、広い群れの敷地の木の根元からぞろぞろと父親役だろうゆっくりが出てくる。 まりさ種が一番に多く、次にみょん種、ちぇん種など活発なゆっくりが続き、れいむ、ありす、ぱちゅりーなどもチラホラ見られた。 まりさは、近隣のゆっくりたちに声をかけながら食事を探すために跳ねながら移動していく。 「きょうっも! おいっしい! ごはんっさん! たっぷり! あってね!」 疲れるだろうに、まりさはゆっくりらしく自分の考え行動を大声で喋りながら跳ねていく。 街中の、惨めに這いずって、黙々とゴミを漁るゆっくりとは対照的な伸び伸びとして姿。 他のゆっくりも同じように声をあげ、皆笑顔で飛び跳ねながら狩に向かっていっていた。 まりさはしばらく跳ねて、いつもの狩場にたどり着いた。 既に、そこには何匹ものゆっくりがいて狩を開始しているようだった。 早い者は、既に十分な食料を得てこれから巣に戻って家族とゆっくり過ごそうとしている者もいる。 「ゆっ! まりさも いそがないと!」 それを見て、まりさは同じく狩を始める。 「きょうっも おいしいごはんさんがたくっさんだよ! まりさはかりのたつゆんだね!」 目につく限りの食料をどんどん帽子に詰め込んでいき、ほんの短時間でまりさの帽子と口の中は食料で埋め尽くされていた。 通常の野生ゆっくりの数倍の食料を手にしたまりさは、笑顔のまま巣に向かって跳ねだした。 「ゆふふ、きょうも たっくさんごはんとれたよ! これで、れいむもおちびちゃんも おおよろこびだよ!」 相変わらずの不思議饅頭、口を閉じたまま喋ってニヤニヤ気味の悪い笑顔を浮かべていた。 そして、自分の巣に飛び込むようにして入る。 「ゆ! ゆっくりただいま!」 「ゆ! まりさおかえりなさい!」 「「おちょーしゃん! おきゃえりなしゃい!」」 まりさの声に、既に起きていて朝のうんうんの真っ最中だったらしい子供と、その手伝いをしていたれいむが声を返した。 大き目の葉っぱの上に、うんうんをさせていたれいむは、それを舌で器用に丸めると巣の奥に開いた穴に落とした。 「ゆふふ、きょうもしっかりうんうんできたねおちびちゃん」 「ゆっ、それはえらいね! たくさん うんうんして どんどんおおきくなってね!」 「「ゆ! わかっちゃよ! しょれよりごはんにしちぇね!」」 毎日うんうんするのは健康と成長の証、親からそう言われて育ったまりさとれいむは、子供のうんうんに笑顔を浮かべて頷きあう。 二匹の子まりさ子れいむは、褒められたのは嬉しいけれどお腹が空いているのが優先なようで、涎を垂らしながらまりさを見つめていた。 「ゆ! ごめんねおちびちゃん、ついわすれちゃってたよ! すぐにごはんにしよーね、れいむおさらをよういしてね!」 「ゆっくりりかいしたよ! ゆっしょゆっしょ」 まりさの声に、れいむ巣の奥から大きめの葉っぱを持ってきた。 「ゆっぺ! ゆふふ、きょうもおいしいごはんがたっくさんだよ!」 「「ゆ、ゆわぁぁああ!! おいちちょー! おちょーしゃんしゅごーい!!」」 口の中のご飯を葉っぱに吐き出すと、子供たちは目を輝かせうれしーしーまでしながら喜んでいた。 それに「ゆふゆふ」笑いながら満足したまりさは、帽子の中の食料を奥の食料庫に放ってから戻る。 しっかり躾をされているのか、その間も子供たちは涎を垂らしながらも、ご飯には口を着けず待っている。 子まりさは、お下げを振り回しながら「ゆわゆふ!」と目を輝かせて涎を垂らしていて。 子れいむは、もみ上げをピコピコさせながら、何故か底面を持ち上げもるんもるんと振っていた。 「ゆわぁ、おちびちゃん とってもぷりてぃーだよぉ hearts;」 「まりさもおなじきもちだよ! さ、あんまりおちびちゃんをまたせたら かわいそうだから ごはんにしようね!」 親子四匹で大きな葉っぱに乗った山盛りの食料を囲む。 二匹の子供は、今か今かと涎を垂らして、二匹の親はその可愛さに頬を緩ませていた。 そして。 「それじゃ、ゆっくりいただきます!」 「「いちゃじゃきまーーす!! はむ! ぐちゃぐちゃ! はぶ! ぱにぇ! これ! はんぱねぇ!」」 汚れるのも構わず、大量の食料に頭から突っ込んで尻を振りながら貪って行く二匹を、両親は優しく見守る。 「ほんとにゆっくりしてるね!」 「まりさのおかげだよぉ、おいしいくささんに、きのみさんに、おちびちゃんが だいすきなちゃいろさん、こんなにたっくさんとってきてくれたから……まりさは ほんっとうにじまんのだんなさんだよ!」 「ゆふふ、それほどでもないよ、まりさはれいむたちが いるからがんばれるんだもん」 二匹は身体を寄せて、親愛を表す優しいすーりすーりを繰り返す。 寒さを凌ぐのではなく、性欲の発散でもない、お互いの頬をゆっくり優しく、暖かさを確かめ合うような行為を、最愛の子供を見ながら繰り返した。 「「ゆげっぴゅ! みょう いらにゃいよ! ゆっぷ!」」 山盛りの食料の一部を貪り切った二匹は、食べ進んだ所で食べかすだらけの体を仰向けにして、膨らんだ腹を見せつけながら動きを止めた。 「ゆふふ、たっくさんむーしゃむーしゃしたね! おちびちゃん、ぺーろぺーろしてあげるよ!」 「ゆひゃひゃ! くしゅぐったいよ!」「れいみゅも! れいみゅもしちぇね! すぐでいいよ!」 れいむは、二匹の身体についた食べかすをその長い舌で舐めとっていく。 その姿を見ながら、まりさは幸せに浸っていた。 優しい妻に、可愛い子供の成長、これ以上の幸せはないと信じて笑みを浮かべる。 「ゆふふ、みんなゆっくりしてるね……」 これまでの自分のゆん生を振り返って、苦労を思い出すと涙が出そうになるが、まりさは父親としてそれを飲み込む。 子供の頃の姉妹の死、何回も経験した越冬、おうち作りの苦労、れいむとの熱愛、狩の辛さ。 様々な記憶が、今の幸せに繋がっていると思うと、感情が震えだしていた。 「まりさ? どうかしたの?」 「ゆっ!? な、なんでもないよ……おちびちゃん、ねちゃった?」 「うん、みて、かわいいねがおだよ……」 静かになったまりさを心配して、れいむが声をかけてきた。 それにビクッと反応して、目線をれいむに向けると、彼女はお腹を一杯にして眠りだした子供二匹を優しく見つめていた。 まりさたちは、食事をしたら直ぐにご飯あとのすーやすーやを始めるのは、大きくなる秘訣だとそう教わっていた。 まりさは、ずーりずーりと底面を静かに這わせて、草のベッドで眠りにつく子供たちの頭をお下げでそっと撫でる。 「ゅ、ゅぴぴ、れーみゅの、こんしゃーとに、あちゅまってくれて、ゆぷぅ」 「ゆぴー、ゆぷー、まりしゃ、ちゅいにどしゅになっちゃの じぇぇ、ゆぴぴぅ……」 寝言を漏らしながら、幸せ一杯の寝顔を見せている二匹を、まりさとれいむは満面の笑顔で見つめる。 「かわいいね、おちびちゃん」 「うん、れいむも そうおもうよ」 しばらくその幸せをかみ締めるように、寝顔を堪能した二匹は、静かに子供の食べた後の食事を開始した。 時より、ベッドの方を見て、夫婦で微笑みあったりしていた。 食事を終えて、余った食料をれいむが色々分別するのを見ながらまりさは外を見つめる。 「……れいむ! まりさ ちょっとおさんぽしてくるよ!」 「ゆ! わかったよまりさ、おひるにはかえってきてね!」 「ゆん! あたりまえだよ、それじゃあ おちびちゃんをよろしくね!」 れいむに子守を任せると、自慢の帽子を一番格好良いと思っている角度で被って巣の外に出る。 「ゆっゆ~ん! きょうもいいてんきだよ!」 朝の狩では急いでいて感じる暇もなかったけれど、今日も空は青空で心地よい暖かさだった。 「そろそろなつさんがくるんだね」 まりさは夏が好きだった、暖かいし、何よりまりさが生まれたのは3回前の夏。 子供が生まれたのは秋の終わり、そう考えると秋も好きだなと、まりさは考えていた。 「むきゅ、まりさ、こんにちは、おさんぽかしら?」 「ゆ? おさ! ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね」 暖かい森の中を進んでいたら、まりさの所属する群れの長であるぱちゅりーが声をかけてきた。 この長ぱちゅりーは、10回以上のの越冬を経験した頼れる長だった。 「まりさ、おちびちゃんはげんきかしら?」 「げんきだよ! きょうもごはんさんたーっぷりたべて いまはすーやすーやタイムのまっさいちゅうだよ!」 「それはよかったわね、おちびちゃんがおとなになるまでのにねんかん、しっかりそだててあげるのよ?」 長の言葉にまりさは笑顔で、自信に満ちた笑顔で頷いた。 「とうっぜんだよ! まりさがそうしてもらったんだから、まりさもおちびちゃんをたいっせつにそだてるよ!」 まりさの言葉に満足したのか、長はニコニコ頷いて、ゆっくりとその場を後にした。 その後ろ姿を見送ってから、まりさはまた進み出した。 周りには、もう季節を一回りして子ゆっくりサイズになったゆっくりたちが声をあげて走り回って遊ぶ姿が見える。 それを横目に見るように、親ゆっくりが複数集まって世間話をしたりもしていた。 「ゆふふ、みんなゆっくりしてるね」 その光景に笑顔を浮かべながら進み、ちょっと開けた池がある場所に出た。 「ゆっ、こんなとこまできちゃったんだね」 まりさはうっかり遠出してしまったことに驚きながらも、ゆっくり池に近づく。 この池にはにとり等が住む他に、群れの皆の大切な水分補給の役目を担っているのだ。 歩きつかれたまりさは、池に近づいて水を飲むと、しばらくその場で休憩を始めた。 「……ゆっ、そろそろかえるよ! おちびちゃんとごはんにしなくちゃね!」 十分ゆっくりりたのか、思い立って直ぐにぴょんぴょん跳ねて巣に向かう。 周りにも同じように、跳ねて巣へ戻ろうとするゆっくりが何匹もいた。 そのゆっくりに負けないように跳ねて、まりさはれいむと子供の待つ巣に向かった。 「ただいま! ゆっくりかえったよ!」 「ゆっ、まりさおかえりなさい」 「「おちょーしゃん! おきゃえり! おにゃきゃしゅいたよ!」」 巣に戻ると、れいむと遊んでいた可愛い我が子が出迎えてくれた。 相変わらず食欲旺盛な子二匹だけど、それがまた可愛らしく感じられるのか、まりさは明るい笑顔を見せた。 「れいむ、またせちゃったみたいだから、さっそくごはんさんにしよーね」 「わかったよ、ちょっとまっててね!」 「ぎょはんだよ! まぃちゃのむーしゃむーしゃタイムだよ!」「れいみゅのむーしゃむーしゃだよ!」 まりさの声に、二匹は直ぐに涎を垂らして、また嬉しーしーを漏らしながら震えていた。 「まったく、おちびちゃんはくいしんぼうさんだね! ゆふふ」 「ゆっ、みんなごはんだよ!」 れいむが朝のように大き目の葉っぱに、食糧庫に保存しておいたものを持ってきた。 一番多く取れて、保存の利く茶色いものがメインに、乾燥した山菜なども乗せてあり、それなりに彩りがある。 「それじゃあ、ゆっくりいただきます!」 「「いちゃじゃきましゅ! はぐむぐ! むーしゃむーしゃ! ぱねっぇ! こりゃむっちゃぱにゃい!」」 食事が開始されれば朝の焼きまわしだ。 尻を振り乱しながら、お下げともみ上げをピコピコさせて、全身で食糧に突っ込んで食べるだけ食べたら眠る。 理性と対極に位置してそうなその姿を、親二匹は笑顔で見つめていた。 我が子が成長するに必要な栄養を全力で摂取しているのだから、当然のように幸せなのだろう。 「「おちびちゃん、いっぱいたべて、いっぱいおっきくなってね!」」 …………。 ………………。 「いたいよぉおおおぉお!! れーむのあんよがいたいよぉおおおおお!!」 「ゆ、ゆぁ、ゆわぁあああ!! お、おちび、おちびちゃんがぁああ!!」 「れ、れいむ、おちついて! まずはおちついてね!!!」 一冬越えた春先、もう外に出られるくらい大きくなった二匹の子供の内、子れいむが転んで底面、あんよを切る大怪我をしてしまった。 ゆっくりにとって足の怪我は死活問題、即座に死ぬ危険はないけれど、治さなければ一生の問題になってくる。 れいむは、それを解っていて大声でうろたえていた。 その姿に、自分だけはしっかりしなくてはと、まりさは語調を強くしながら叫ぶと、どうしたら良いかを考える。 そして、直ぐに思い至ったのか、ハッと息を呑んだ。 「おさに、おさにきけば なおすほうほうが きっとわかるのぜ!!」 「ゅ、ゆう?」 「おさはなんでも しってるのぜ! まりさがいまからおさにきいてくるから まってるのぜ!!」 まりさはゆっくりしないで、巣の外に出た。 外はもう暗くなっていたけれど、関係ない。 どこからか「う~う~」と、れみりゃの声が聞こえて来たけれど、大切な子供の為に危険も顧みず走り出した。 「おちびちゃん! まっててね、いま まりさ、が……ゆぴぃ、ゆぷ~」 ……。 …………。 「ゅ? ゆっくりおきるよ! ……ゆ?」 翌朝、いつもみたいに巣の中で目を覚ましたまりさは、不思議な気分に包まれた。 「ゆぅ?」 しかし、それが何だったかは思い出せなかった。 ただ、何か妙だなぁ、と思っただけで直ぐに忘れ、いつものように寝ている家族に見て笑いそして狩にでかけた。 「まりさはかりのたつゆんだから、きょうも たっくさんごはんとってくるよ!」 そっと見たベッドの中の子れいむ、まりさに向けているあんよの一部が薄っすら色が変わっていたが彼女はそれに気付かないで跳ねていった。 いつものように狩に向かう皆の流れに乗って狩場に向かうと、いつものようにご飯を口と帽子につめて、来た道を引き返す。 家につくと、何やら中から声が聞こえてきた、どうやら家族が起き出したようだ。 「ゆっ、ただいま!」 「おちびちゃん、ほんっとにだいじょうぶ? どこかへんなとこはない?」 「ゆぅ? なにいってるのおきゃーしゃん、れーむどこもいたくないよ?」 「おとーしゃん、おかえりなのぜ! まりさもそろそろかりにいきたいのぜ!」 まりさの声に反応したのは子まりさだけで、れいむと子れいむは何やら話していてこちらに気付いていないようだった。 しばし、そろそろ狩に行きたい言う野球ボールくらいの大きさになった子まりさと話してから、れいむと子れいむに声をかける。 「れいむ、いったいどうしたの?」 「ゆ、まりさ……」 「おかーしゃんが、さっきかられーむにだいじょうぶ? だいじょうぶ? ってきいてくるんだよ! れーむどこもいたいいたいじゃないのに」 れいむは心配そうな顔で、子れいむをチラチラ見ながら、子れいむはちょっと不機嫌そうな顔でまりさを見てきた。 「れいむ、おちびちゃんがどうかしたの?」 「まりさ、なんだね、おちびちゃんが いたいいたいだったきがするんだよ でも おちびちゃんはだいじょうぶっていうし」 不確かながら、何やら不安を感じているらしいれいむを、まりさは優しくぺーろぺーろした。 「ゆふふ、れいむはやさしいね でも、おちびちゃんは れいむがまもって くれてるから きずひとつないよ」 「ゆぅ~ん、まりさぁ、ありがとうね、れいむ あんっしんしたよ! ぺーろぺーろ」 まりさの行為でれいむは安心したのか、不安そうな顔を引っ込めて笑顔を浮かべた。 れいむが自分の心配をしなくなったので、子れいむはまりさが取ってきた食糧の前で食事の合図を今か今かと待っていた。 それは子まりさも同じらしく、チラチラ親を見ながら涎を垂らす。 「ゆっ! れいむ、そろそろごはんさんにしようね! おちびちゃんがまってるよ!」 子二匹に気付いたまりさは、れいむに声をかけてゆっくり這いずって朝食を始めた。 それからしばらく平和な春が過ぎて、異変は夏に起きた。 そろそろまた秋が訪れてるちょっと前、子ゆっくり二匹が巣立ちをする目前の時期だった。 毎朝のように狩に出かけたまりさは、狩場に起きている最近の変化に声を漏らした。 「きょうも くささんがないよ……ゆん、さいきん ずっとだよ でもちゃいろさんが たくさんあるから だいじょうぶだね!」 ここ数日、普段持ち帰っていた山菜や、木の実などが丸っきり姿を消していたのだった。 その代わりに大量に置かれていたのは、普段は草よりやや大目くらいにある茶色い食べ物。 とりあえず他にないし、それは甘くて美味しいので持ち帰って皆で食べることにした。 「ゆ! かえるよ!」 声をあげて跳ねだした、周りには他のゆっくりも元気に巣に戻っているところだった。 まりさは、その波に乗るように負けぬように跳ねながら、また微妙な違和感を覚えた。 「ゆ…………きのせいだね!」 何だか、少し周りのゆっくりが少ない気がしたけれど、まりさは気にせず家路を急ぐことにした。 「ただいま! きょうも ちゃいろさんがたっくさんだよ!」 「「やったー! おとーさんありがとー!」」 「まりさ、おつかれさま!」 巣に戻れば、もう大分大きくなって巣立ち目前の子二匹と、新たにお腹に子を宿したれいむが迎えてくれた。 いつものように葉っぱにとってきたものを置いて、残りを保存する。 そうしてから、皆で朝の食事を始める。 もう頭から食糧に頭を突っ込むこともなくなった子れいむと子まりさと同じタイミング食事を始める両親は、二匹に巣立ちについて色々と教えているようだった。 巣の作り方、番の見つける基準、子育ての仕方、それらを思い出話と交えながら楽しそうに語っていく。 「ふたりとも まりさの じまんのおちびちゃんだから とってもゆっくりした かぞくをつくれるよ!」 「「ゆん! ありがとうおとーさん!」」 食事を終えると、子ゆっくり二匹は友達と遊びに外に跳ねていった。 既に二匹には意中のゆっくりがいるらしいので、目的はどちらかと言うとそちらだろう。 まりさは、二匹が跳ねていった巣の出口を皆がら息を吐く。 「もう おちびちゃんも すだちのじきなんだね」 「そうだね、まりさ……このおちびちゃんも きっとゆっくりしたこにそだてようね」 まりさの声に聞いて、れいむは揉み上げで自分の膨らんだ腹部を撫でる。 大分大きくなり、そろそろ生まれる新しい我が子に、慈愛の笑みを向けていた。 それは、まりさも同じで、優しい視線でれいむの中の我が子を撫でるように見つめる。 「まりさと れいむのこなんだから きっとゆっくりしたこになるよ!」 「ゆふふ、そうだね」 二匹は寄り添い、次の生まれてくる子供のことを熱心に話し合った。 それから数日経ち、相変わらず山菜が取れない日々が続き、秋になったある日二匹の子供は両親にこう切り出した。 「おとーさん、おかーさん、まりさとれいむははなしが あるのぜ」 「ゆん……わかってるよ」 「ゆぐっ、ゆぐ、ゆあーん! ゆあーん!」 子まりさの真剣の表情から内容を察したまりさは重く、そして嬉しく受け止めて。 れいむは、内容を察した上で寂しさから声をあげて泣いていた。 子れいむ、子まりさも何かに耐えるように身体を震わせ目に甘い涙を浮かべながらも笑顔を浮かべて話し出した。 「れ、れいびゅと、ま、まりじゃは、ひ、ひとりだち、するよ!」 「いばばで、ぁりがぼうなのぜぇ!!」 「ゆん、ゆん……こちらこそ、だよ」 「ゆわぁぁあん! やだよ! やだよぉおお!! いっちゃやだよぉおお!!」 涙を流さぬようにする三匹の分も泣くように、親れいむは大声で泣き続けた。 それでも、時間は残酷に過ぎて行く。 子れいむの番になるちぇんが迎えに来たところで、子まりさもこれから番になるありすと迎えに行くと言うので巣を出て行った。 れいむは最後の最後まで二匹にすーりすーりを繰り返して、二匹が巣を出てからもずっと大きな声で泣いていた。 「ゆん、れいむ すーりすーり、だよ」 「ばりざぁぁあああ!! おちびちゃんが、おちびちゃんがぁああ!!!」 「ゆん、だいじょうぶ、きっとすぐに かわいいおちびちゃんをつれて あいさつにきてくれるよ、ゆん」 泣きじゃくるれいむを、まりさはずっと優しく優しくあやし続けた。 その日まりさは、泣きつかれたれいむをぺーろぺーろして、一筋だけ涙を零すと、れみりゃの声を聞きながら眠りについた。 ……。 …………。 ………………。 「ゅ? なんだか、さむい、よ? ゆぅ?」 まりさが目を覚ますと、そこは見たこともない場所だった。 今まで住んでいた森の中と違う、暗く鬱葱と草が茂り、ジメッとした地面の上にまりさはいた。 「どこ……ここ……」 呆然としながら、まりさは周囲を見回すと直ぐ後ろには番のれいむが寝ていた。 頬に涙の跡をしっかり残したれいむの身体を、まりさは自分のお下げで優しく揺する。 「れいむ、れいむ! おきてね!おきてね!」 「ゅ、ゆうん、なに、まりさ、もうかりはおわったの? ゆ? ゆ? なんで、れいむおそとにいるの」 寝ぼけ眼を揉み上げで擦っていたいたれいむは、自分がいる場所を認識して目を覚ました。 まりさと同じく周囲をキョロキョロ見回してから、不安そうな顔を見せる。 「ま、まりさ、こ、ここ、どこ? なんだか ゆっくりできないよ……」 「まりさも、わからないのぜ……むれのもりとは なんだかちがうみたいだよ」 まりさは言いながら、群れのあった森を思い出す。 柔らかく歩きやすい地面に、綺麗で巣になる木、綺麗な草花に、爽やかで暖かい風。 そのどれもがここにはない、地面は硬くごわごわしていて。 捻じ曲がって、どこか化け物みたいで途方もなく大きな樹木、どこか攻撃的に尖った草花、ジメッとして青臭い風。 どれもこれもがまったく自分の常識外だった。 しかし、泣きそうなれいむを前に自分まで泣く訳にはいかないと顔を引き締める。 「ま、まずは だれかさがそうね! ここがむれのどこか わからないと おうちにかえれないからね!」 そして、努めて明るくまりさは振る舞い、れいむに声をかけた。 その姿に、れいむは少し安心したのか小さめの笑顔を見せて頷き、浮かんでいた涙を揉み上げで拭い消した。 「そ、そうだね! はやくおうちにかえってごはんにしようね! じゃないとおなかのおちびちゃんもおなかをすかせちゃうよ!」 「ゆん! じゃあ、いこ、んゆぎゃぁぁぁあぁああ!?!?!」 「ば、ばりざぁぁぁあ!?!」 一声気合で、一歩跳ねたまりさは大きな声をあげて転げまわった。 「い、いだい、いだいいぃいいい!! あんよがいだいぃいいいぃいいい!!!」 「まり、まりさ、お、おちつ、おちつ、ゆわぁぁあん!! ゆわぁぁああん!!」 今まで見たことがないくらいの動揺を見せてまりさに、れいむは落ち着かせようとするが、直ぐに自分の限界が来て泣き出してしまった。 まりさの跳ねた先には、やや大きめの小石が転がっていて、その上に乗ってしまったのだ。 その鋭い痛みにまりさは声をあげて、涙を流して転げまわる。 転げまわる度に、硬い地面や石、痛い草に身体を傷つけられて更に声をあげ続ける悪循環。 まりさのゆん生では味わったことのない痛み、それが全身を支配していた。 まりさのこれまでは、こんな石を踏んだこともなければ、こんな痛い草に触れたことも、ごわごわの土に触れることもなかった。 何故なら、まりさは室内で飼われていたゆっくりなのだから。 ――――。 ――――――。 ある都市の中心に立てられた、屋内型森林公園。 かなりの広さと、行き渡った設備は一ヶ月の内に四季を再現する、少し寂れていた街の活性に繋がっている施設だった。 その施設の名前は〔ゆふぁりパーク〕名前の加減から想像出来る通りの、ゆっくり園と呼ばれる場所だった。 ゆっくり園とは、屋内に土を敷き、草花を植えて、野生のゆっくりの生活を街に再現するという触れ込みの、ゆっくりの動物園のような場所だった。 ゆっくりに人気に肖り、日本中に数多くのゆっくり園が出来ていたが、ここはそれとは規模も施設も桁違いだ。 収容ゆっくり数は、通常のゆっくり園が一つの群れに相当する150~300に対して、驚きの2300匹。 通常種だけでなく、希少種、捕食種まで完備されている。 しかも、普通のゆっくり園ではないような四季の整備により、より野生のゆっくりの生活を見れるという触れ込みで、週末になれば日本中から多くの人が詰め掛けていた。 柔らかい土を引いて、小石一個でも取り除いて、芝生を敷いたり、ゆっくりの肌を傷つけない草花を植えて、いつでも快適に暮らせる環境を整えてあった。 一週間ごとに季節が変わり、知らず知らずにゆっくりたちは一ヶ月を「いちねん」と呼んでいた。 基本的に内部のゆっくりは自分たちが建物の中にいるとは考えてない、人間と接触は0になるようにされていたから。 夜になれば、れみりゃの声をスピーカーで流して、巣に戻らせてからラムネスプレーが全域に撒布されて、例外なく睡眠状態にして、その間に園内の掃除や、調整、傷を負ったりしたゆっくりの治療などを秘密裏に行う。 一般客が通るのは、床からほんの2mほどの位置を蜘蛛の巣のように通されたアクリル製の通路だ。 この通路には仕掛けが施されていて、ゆっくりが見上げてもそこに人がいるとは判断されない作りになっていた。 ゆっくりにとっては見えないというのは認識出来ないと一緒であるために、いくら喋ろうが気付くことはない。 これにより、人間と関わらない本来のゆっくりの姿を楽しめるという風に言われていた。 巣も全て、木を模したオブジェでその内部は、それぞれオブジェに設置されたモニターを通じて通路から確認出来るようになっていた。 巣の奥にはうんうんを捨てる穴があり、そこに放り込まれると最終的に全ての巣から集まり捨てられる仕組みになっていた。 ゆっくりが集まるポイントも人工的にいくつも作られていて、そこにはアクリルの大き目のラウンジ状態になっていて多くの人が集まる。 そんなゆふぁりパークの一日は、まずは係員が広大な敷地の指定されたポイントに、餌となるゆっくりフードと、山菜など野山でも取れるだろう食料を置くところから始まる。 大きな木の板の上に、それらを置いておけば、あとはゆっくりが〔狩り〕をしにやってきて勝手に持っていく。 餌やりが終わると開園で、しばらくすると起き出したゆっくりの狩り風景を見ることが出来る。 そして入場客を案内したり、モニターでどこかでゆっくりが問題を起こしていないかを観察する。 危ないものがないゆっくり園ではそうはないが、ゆっくりは弱いので怪我をすることは多々ある。 なので、怪我をしたゆっくりを発見したらその程度によって対処する。 即座に治療が必要なら、その区画にラムネスプレーを噴射して対処。 それ以外は夜になってから、治療を行う。 そして、四季の代わりによって変化するゆっくりの生活を入場客に説明する姿をちらほらと確認出来た。 このゆふぁりパークは、ゆっくり愛護団体により運営されていて。 〔野生本来のゆっくりのゆっくりらしい生活を見れる!〕という触れ込みによる多くの客を呼んでいたが。 施設のコストと、来場客からの入場料が徐々に釣り合いが取れなくなっていった。 それに伴い、野生のゆっくりが狩りをしてとれるだろう山菜や木の実など、手がかかるものを出せなくなり、ゆっくりフードだけを与えるようになっていき。 ゆっくり好きから支援などもあったが、終に財政が破綻してしまった。 残ったのは大量も大量のゆっくり。 希少種、捕食種などは他のゆっくり園や、希望者に引き取られていったが、通常種の扱いに困ってしまった。 1700近い不良債権たるゆっくりたち。 普通なら加工所行きだけれど、まかり間違ってもゆっくり愛護団体の施設、それだけはなしとされた。 しばらくは〔野生のゆっくり〕という触れ込みで里親を探したり、ペットショップに持ち込んだりもしたが。 ただゆっくりしただけで、躾も何もされてないゆっくりを飼いたがる人も、売りたがるペットショップもそうそうなかった。 種ゆや、生餌としてならという申し出もあったけれど、施設の人は怒りを露に断った。 『あなたたちはこんな可愛いゆっくりに、良くそんなことが出来ますね!』と。 怒っても何してもゆっくりの行き先は見つからない。 ゆっくりフードはまだ在庫はあったがそれもいつかは尽きてしまう。 もう加工所に頼むしかないのか、となったときに誰かが言い出した。 『あの、前に人間が育てたオランウータンを森に返すとか、見たんですけど』 その言葉に、施設の面々、愛護団体は名案と大いに賞賛した。 『ここのゆっくりは野生の環境で育てて来たんだ、野生に返しても生きていけるはずだ!』 殺すことはしない、自分では世話出来ないから誰かに押し付けたいけど相手がいない、だから捨ててしまえ。 そんな思考回路で、こっそりと大量のゆっくりが手分けして各地の山や森に捨てられた。 それぞれの心の中は、野生に返してやると言う崇高な使命で埋め尽くされていた。 それを大義名分に、野生ではありえない優しい空間で、異常な空間でしか生きてこなかったゆっくりを、厳しく辛い本当の野生に返したのだった。 ……。 …………。 「ゅ……れいむ、ごはんさん、とってきたよ」 「ゆ……これっぽっち、なのぉ?」 まりさが野生に返されて早数日。 今までの世界とはまるで違う生活に、二匹は傷つき疲弊しきっていた。 ふかふかで柔らかくて、いくらでも跳ねれた地面。 いつでも爽やかで暖かかった空気。 有り余るくらい取れた大量の食糧。 そして、快適な巣。 そのどれもが存在しなかった。 あの日、痛みから何とか起き上がったまりさは、泣いてるれいむを宥めて、進みだした。 奇しくも街中のゆっくりのように、無言でずーりずーりと底面を這わせての移動だった。 それもまるで鑢の上を歩くように激しい痛みを与えてきたけれど、跳ねて進めばどんな目に合うか解らないので仕方がない。 しかし、歩けど歩けどかつての群れにたどり着けない、と言っても痛みで悶えたり、慣れない本当の地面で疲れたりで50mも進めていなかったのだが。 段々暗くなり、異様な寒さに餡子が芯まで冷え切りそうになったまりさは、泣きつかれたれいむの為に巣を作ることにしたのだが。 かつての巣作りは、木のオブジェの根元に立てかけられた枝を外すだけの作業。 それしか巣の作り方を知らないまりさは、大きな木の根元を舐めたり、お下げで叩いたりするしかなかった。 「おでがいでずぅううぅう!! きさん! ばりざにおうぢをくだざいいいい!!」 そんな声と、必死に土下座する声が森に響いていた。 しかし、そんなことで巣が出来るはずもなく、まりさはれいむに謝って木の根元で身体を寄せ合って眠った。 季節は本当の秋、作られた秋ではない寒さと豊穣の季節、外で寝るには寒すぎた。 二匹は、いつまでも泣きながら身体を擦り合わせていた。 そして今にいたる。 相変わらず木の根元を拠点にしている二匹だったが、その生活はギリギリを通り越してアウトだった。 まりさは、体中傷だらけ泥だらけで、痛みで泣くから涙の跡が頬に染み付いて、そこに更に泥などがついて怪しい化粧のようになっていたし。 髪はぼざぼさで、今まで傷一つなく大事にしてきた帽子はヨレヨレ、栄養不足で頬はこけて、寝不足で隈が出来ている。 れいむは狩りにいかない分まだましかと言われればそうでもない、まりさに巣作りを任せられたれいむは、木の根元で日がな懇願したりしているので疲労が限界に達していた。 腹に子を宿しているのもあり、頬がまりさよりもこけている。 以前は、朝に狩りに行き、大量の食糧を取ってきていたまりさだけれど、今では一日中這いずり回って、僅かな、しかも苦くて硬い草をとってくるだけになっていた。 「ごめん、でも ぜんっぜんごはんさん なくて……」 「ゅう、これじゃ、おちびちゃんがゆっくりできないよ……」 申し訳なさそうに頭を下げるまりさから目を逸らして、れいむは自分のお腹を見つめた。 「まりさは かりのたつゆんじゃなかったのぉ? ひもじいよう……」 「っ!」 意図はあったのかなかったのか、まりさに対して責めるような言葉を向けた。 その言葉に、まりさは唇をかみ締めて震えだした。 「れ、れいむこそ、おうちはまだできないの? もう、なんにちたってるとおもってるの?」 そして、まりさは自分で思っていた以上に強く、非難するようなことを言ってしまう。 言ってから、少し罪悪感を覚えたけれど、毎日毎日必死に狩りをしているのは自分なのだからと正当化しようとしていた。 しかし、れいむはまりさの言葉にワナワナと震え、歯を食いしばった。 「こんな、こんなニガニガさんしかとってこれないまりさに なんでれいぶがせめられないど いげないのぉおおおぉおお!!!」 「ゆひっ……!」 涙を流して叫び、びたんびたんと身体を暴れさせるれいむに、まりさは息を呑んで一歩引く。 「ぼう! ごんなぜいがついやだよぉおおぉおおお!!! おながすいだよぉおお!!」 「れ、れいぶ、れいぶぅ! ごめんね、ごべんねぇぇえ!!」 「「ゅ、ゆわぁぁぁぁああんん!!」」 二匹はまるで輪唱をするように声を合わせて泣き続けた、疲れ果てて眠ってしまうまで。 朝、どちらともなく起き出した二人は、お互いの愛情を再確認しようとザラザラの肌ですーりすーりを繰り返していた。 そして、ぽつりぽつりと話し出した。 「おちびちゃんは ゆっくりさせてあげなきゃね、れいむ」 「そうだね、まりさ、あったかいおうちで、おいしいごはんをむーしゃむーしゃさせたいね」 「ゆん、そうだね、おちびちゃんはゆっくりできるもんね、がんばろう……かりに、いってくるよ」 「いってらっしゃい、れいむも おうちをつくれるように がんばるね」 二匹は、これから生まれる子供の為に、頑張ろうと誓い合って、それを糧に動き出した。 まりさは食糧を、れいむは住居を。 それぞれ必死で求めることにした。 しかし、必死になっても、野生知識0の二匹では何も出来ることはなく。 まりさは口や舌を傷つけながら、硬い草を少量とって来て、れいむは木に対する懇願を続ける、ただそれだけだった。 なるべくれいむに優先的に食事をさせて、生まれてくる子供の栄養に回すようにさせていた。 流石にまだ慣れはしないし、今まで甘いゆっくりフードを食べていたので苦い草なんか受け付けないけれど、食べなければ死ぬので二匹は必死に食べて暮らしていた。 そして、予定よりかなり遅れて、ついに子供が出産のときを迎えた。 今日ばかりは暗い表情を消して、二匹は新しい我が子の誕生に笑顔を浮かべる。 「ゅぎぎぎぎ、う、うばれる、よぉお!!」 「れいむ! がんばって! おちびちゃんはまりさがうけとめるよ!」 体中に気持ち悪い汁を浮かべて踏ん張るれいむの前で、まりさは帽子を咥えて構える。 これから飛び出る我が子を受け止めるために、そしてそのときは来た。 「ゆっ、ゆっ! ゆっぽぉおぉおおお!!」 「しぇかいいち ぷりぷりてぃーなれーみゅがこうっりんしゅるよぉおおお!!」 尊大な声を合図に、子れいむがまりさの帽子に飛び込んできた。 「ゆ、ゆわぁぁぁああ!! てんしさんのたんっじょうだよぉおお!!」 「ゆぎぐ……あ、あれ? もうひとりおちびちゃんがいるきがしたのに……」 涙を流して誕生を喜ぶまりさとは対象的に、れいむは不思議そうにない首をかしげていた。 れいむは、子供は二匹いると考えていたのだけれど、生まれたのは子れいむ一匹、お腹に残っている様子もなかった。 「ゅう……ゆっ、ふしぎなこともあるんだね! おちびちゃーん、れいむがおかーさんだよ!」 直ぐにその不思議を餡子の隅に追いやると、バカ面下げて生まれた子れいむに近寄っていった。 「ゆげっぴゅ、おきゃーしゃん! おとーしゃん! ゆっくちしていってね!」 「「ゆっくりしていってね!」」 生まれて初めての挨拶をしてくれた子れいむに、二匹は全力の「ゆっくりしていってね!」で返す。 「まりさのおちびちゃん、とっても、とぉってもかわいーよぉお!!」 「ゆぅぅん! かんっどうてきだよぉお!!」 「げっぴゅ、れーみゅきゃわいい?」 「「とうっぜんだよぉおおお!!」」 この森に捨てられ、もとい野生に返されて久しぶりのゆっくりを全力で堪能していた。 それも長くは続かなかったのは当然極まりないけれど。 ……。 …………。 「しゃっしゃと さいしょのあみゃあみゃもっちぇこぉおぉおおおい!! このクズおやどもがぁぁぁああ!!」 「お、おちびちゃん、お、おちついてね! おちついてね!」 子れいむ誕生から数日。 れいむは必死に子れいむを宥めようとしていた。 この子れいむ、何故だか苦い草はまだしも、まだましな草などを優先的に食べさせているのに、どれも食べては吐き出すを繰り返していた。 そして、食べさせたことなどない筈の「あまあま」をしきりに要求してくるのだった。 ほとんど食事を取らない取れない状況に、未だに巣はない、自分をゆっくりさせない親に子れいむは簡単にゲスの兆候を見せている。 れいむとまりさがいたような、満たされた空間ではゲスは生まれない、何故ならゆっくりで満たされているので、それ以上を求めないからだ。 そして、他の者も自分と同レベルのために、向上する意欲も生まれない。 だから、ゲスは存在しなかった。 そのために、この子れいむは二匹が始めて出会うゲスだった。 ゲスと言っても可愛い我が子、ゲスを知らないこともあるし、ゆっくりさせてあげられてない自覚もあったので二匹は精一杯頑張っていた。 まりさは、気絶するくらいまで頑張って狩りをして帰って、子れいむに罵られて。 れいむは、まりさが帰るまで子れいむの癇癪を受け止めながら木に「おうぢをぐだざいぃいいい!」と頭を下げる日々。 「おでがい、じばず、きさん、おうぢぃ……」 「しゃっしゃと! あみゃあみゃもってこい! ゲスクズゴミカスおやぁぁぁ!!」 必死に木に頭を下げるれいむの身体に、子れいむは何度も体当たりを繰り返していた。 肉体的なダメージはなく、ただただ心が痛いその行為にれいむは枯れない涙を流していた。 「れい、む……ただ、いば」 「ゆぅう、まりさ、おがえりなざい……」 大分暗くなった頃に、帽子にも穴が開いてボロボロのまりさが帰ってきた。 お互いに目を合わせて、収穫がなかったことを理解して落胆する。 そんな二人の悲哀をぶち壊すように、子れいむは声をあげた。 「ゆきゃきゃ! ゆっくりできないクソおやがかえってきたよ! きょうこしょはあみゃあみゃとれたにょ!? まともに かりもできにゃいの!? このむのー!!」 「ゆぎっっ!!」 かつては、自分のことを「かりのたつゆん」と称したまりさである、狩りについて貶されるのが何よりゆっくり出来なかった。 たとえ、それが用意された場所でしか得られない称号であっても、その事実を知らない限りでは一生「かりのたつゆん」だったのだから。 それでも、平和にゆっくりしたゆん生を送ってきたまりさは怒りという感情の置き場を知らずに、ただ我慢するだけだった。 「ごめん、ごめんね、おちびちゃん、すくないけど、これたべてね……れいむ、はなしがあるよ」 「ゆん?」 どうにか手に入れた柔らかい草や木の実を子れいむに渡すと、れいむを呼んで話をする。 「もう このきさんは まりさたちにおうちをくれないみたいだから ここをいどうしよう、どうにかしてむれにかえろう!」 「ゆっ! …………ゆん、そうだね、ここにいたらおちびちゃんもゆっくりできないしね」 まりさの提案にれいむは頷いた。 子れいむは「げろまじゅ! こんにゃのしかとってこれないむのーはしね!」と、食べては吐き出して、一番美味しい部分だけを食べていた。 そんな我が子の姿をしばらく眺めてから、れいむとまりさは明日の移動の為に、吐き出された草をもそもそ食べだした。 「ゆきゃきゃ! こにょクジュはへんったいだね! れいみゅのつばしゃんがついたのがだいしゅきなんだから! きみょいよ!」 「「……むーしゃむーしゃ」」 笑われながらもそれに耐えて、どうにかして群れに帰りたいと二匹は無言で涙を流した。 「ゆゆ? にゃににゃいてりゅの? れいみゅがこわかったの? ゆぷぷ! なさけにゃいね! ゆぷぷ、ゆぷぷ!」 「「…………」」 ……。 …………。 「ゆへ、ゆへぇえ、まだ、つかないの、お」 「ば、ばりざ、そろそろ、おちびちゃん、かわるよ……」 次の日、起きてから直ぐに二匹は行動を開始した。 近場にある枯れ草などを食べてから、子れいむを頭に載せて必死に森の中を進んでいく。 交互に子れいむを運んで、ぐずる彼女をあやしながら、群れに帰ることを夢見て進む。 どこがゴールかも解らず、つい先日までぷにぷにだったあんよをガチガチのまっくろにして、綺麗だったお飾りをボロボロにしながら必死に必死に這いずり回っていき。 「「ゆ、ゆわぁああぁああ!!」」 「ゆ? にゃんにゃの?」 三匹がたどり着いたのは一面の野菜野菜野菜。 中にはかつて餌として与えられていたものもあり、久しぶりにゆっくりした食事が取れると二匹は涙を流して喜んだ。 寝ぼけている子れいむを、まりさは頭から下ろすと自信に満ちた大声で話す。 「みて! おちびちゃん! これがきょうのごはんさんだよ! たっぷりたべてね!」 「ゅ、ゆわぁああ!! こりぇじぇんぶれーみゅの!?」 「「ゆふふ、おちびちゃんゆっくりしてるね!」」 目を輝かせて、野菜の群れに飛び込んだ子れいむを二匹は幸せそうに見つめていた。 子れいむはとりあえず手ごろな野菜に齧り付いては、違う野菜にと食べながら移動していく。 「まぁまぁ! これめっちゃまぁまぁ! さいしゃのあみゃあみゃにはまけるけど、めっちゃそれなりぃ!」 子れいむは「それなり」を連呼しながら、どんどん食ながら進む。 その姿に笑みを浮かべていた二匹も、そろそろ自分もと久しぶりの満足いく食事を始めた。 「「むーしゃむーしゃ! しあ 「にゃにやってるにょぉおお!!」 ゆ?」」 二匹が食事を始めたら、野菜を掻き分けて子れいむが鬼の形相でやってきた。 「お、おちびちゃ……」 「いま! にゃにをやってちゃの!?」 「む、むーしゃむーしゃ、だよ? どうしたの、おちびちゃん?」 あまりの形相に怯えながら、二匹はそう告げた。 その言葉に、子れいむは怒りを露に震えて叫びだす。 「これは! じぇんぶれいみゅのだよ!? おまえら みたいなむのーなクズに いっこでもわけてあげりゅと おもったにょぉおお!?!?」 「「ゆ!?」」 確かにさっき「こりぇじぇんぶれーみゅの」とか言ってはいたが、まさか本気とは思わず二匹は固まる。 「れーみゅをゆっきゅりさせにゃかったばちゅだよ! そこでれーみゅのむーしゃむーしゃタイムをみててね! たべたかったら さいしょのあみゃあみゃもっちぇこい! このクズ!」 口の周りに野菜クズをつけたまま、生みの親たる二匹を大声で怒鳴りつけて行く。 そのあまりにもあまりな態度に二匹は硬直してしまっていた。 そして、れいむは前から気になっていたことを恐る恐る聞くことにした。 「お、おちびちゃん? まえからいってる、さいしょのあまあまって、なに? れいむ、あまあまなんかあげたおぼえない、よ?」 子れいむがことあるごとに引き合いに出してきた「さいしょのあまあま」その存在がふと疑問になり、れいむは質問した。 その言葉に、子れいむはあからさまにれいむを小馬鹿にした表情を作り、語りだした。 「ゆふぅ、まっちゃく ゆっきゅりしてにゃいおやは あたまだけゆっくちしちぇってるんだね! れいみゅがうまれるまえに おまえのぽんぽんの なかにおいてあっちゃしゃべるあみゃあみゃだよ! れーみゅのこちょをおねーちゃんとかよぶ ずーずーしいあみゃあみゃだよ!」 「…………」 「ゆ、どーゆーこと? れいむ? れいむ?」 れいむは子れいむの言葉と一緒に、生んだときを思い出していた。 「そうだよ……ふたり、いたんだよ……」 「ゆ?」 ぶつぶつ呟くれいむを、まりさは心配そうに覗き込んだ。 まりさは理解出来ていなかった、何故なら腹に子を宿したのれいむだったから。 そして、れいむはしっかりと理解した、してしまった。 栄養が足りなくて、この子れいむは一緒に生まれるハズだった妹を食べたのだと。 想像すらしていなかった禁忌の同属食いに、この態度。 平和に暮らしていた、作られた森で生きていれば一生知らなかっただろう怒りがれいむを支配していた。 「こ、ごのぉおおぉおおおおおぉおお!!!!」 「ゆぴ?」 「れ、れいむ? どうしたの? どうしたのれいむ!?」 怒りを叫びに変えて、大地が震えるように声を弾き出した。 今まで喧嘩すらしたことのなかったれいむは、怒りをどうしたら良いか理解出来ずに、涙と声で発散していた。 「ゆぅ、きみのわりゅいゆっきゅりだね れーみゅはむーしゃむーしゃにもどりゅよ! ゆぴょ!?」 大声で叫び続けるれいむを見限って、子れいむは再び野菜を食べに行こうとして何かにぶつかった。 「にゃ、にゃにしゅりゅの!? れいみゅのきゃわいしゃに しっちょしにゃいでね!」 『ったく、これから収穫だってのに、ざっけんなよ、協定はどうしたんだよ糞ゆっくり!』 子れいむがぶつかったのは、れいむの叫びを聞いてやってきた畑の持ち主の青年だった。 この畑がある村は、まりさたちがやってきた森にある群れと協定を結んでいた。 もちろん相互の理解なんてものはなく、人間が仕方なく住まわせてやっているレベルで、用もなしに森から出たゆっくりは直ぐに潰されるし野菜に手を出すなんてもっての他だ。 無論、まりさたちは群れのゆっくりではないけれど、人間にはそんな違いはわからない。 これから収穫の野菜のいくつかを駄目にされたのだ、純粋に腹立たしいに決まっている。 「にゃにいっちぇるの! しゃっしゃとれーみゅにあやまっちぇね!」 「ゆぐがぁぁぁぁああぁああああ!!」 「れいむ?! れいむぅ!!」 彼の前では、子れいむが憤り、れいむが叫び、まりさがオロオロしていた。 青年は前からゆっくりが大嫌いだったが、協定の為に山狩りなどは出来ないでいたし。 森の群れのゆっくりはそれなりに優秀で、森から出ることはなかった。 しかし、今回野菜を食べられたことでゆっくりを根絶やしに出来ると青年は歪んだ笑みを浮かべていた。 ……。 …………。 「ゆぎゃぁぁっぁああああ!! やべでぇっぇええ!! ゆるじでぇぇぇえええ!!」 「ゆるす! わけが! ないのぜ! おまえたちの! せいで! あやうく! むれが!!」 森の中にある群れの広場で、まりさが群れゆっくりたちに何度も体当たりをされていた。 あの後、青年が皆に話して群れのゆっくりを呼びつけたのだが、三匹が群れのゆっくりではないと解った為に、駆除の思惑は外れてしまった。 その腹いせにれいむは青年に踏み潰され、まりさと子れいむは群れに引き渡され、せいっさいの真っ最中だった。 何とか人間に目をつけられないように暮らしていたのに、余所者のせいで駆除されそうになったのだから群れの怒りは相当のものだった。 まりさは帽子を引きちぎられ、足を棒で裂かれた上で袋叩きにあっている。 子れいむは、というと。 「だしぇぇぇぇぇぇええ!! れーみゅをこんにゃくしゃいとこにいれちぇ ただですむとおもっちぇるにょ!?」 群れのうんうんを集める穴に放り込まれて、一生そこでうんうんを食べて暮らせと命じられていた。 子れいむは、そんなことは出来ないと大きな声で鳴いてはいるが、それは群れのゆっくりを楽しませるだけで。 「ゆぴゅ!? く、くしゃいぃい!! やめちぇ! うんうんしにゃい、ゆげぇぇえ!!」 「ゆぷぷ! あのゲスちび、ゆっくりしてないね!」 今もまた、子れいむ目掛けてうんうんが放られた様だった。 まりさはまりさで、ずっと暴行を受けてもはや意識が朦朧としていた。 そんな彼女の前で、大きなまりさと、ありすが何やら話をしているようだった。 「さいきん よそものがふえたのぜ」 「しかも、いなかものばっかりね、どーゆーことかしら?」 二匹の話すとおりに、最近森に見たことないゆっくりが増えてきたのだった。 もちろん、ゆふぁりパークで捨てられた、もとり野生に返されたゆっくりたちだ。 この森には、まりさたち以外にも何家族か捨てられていて、その何匹かがこの群れに着たり、村に行ったりしていた。 群れに来たゆっくりは、「かりのたつゆん」を名乗っていたくせに、まったく狩が出来ず、しかも巣も作れないし、何も出来ない能無しばかり。 そして、村に出たゆっくりのせいでこの群れが疑われて、今回のような駆除の原因になりそうになったりしていた。 長であるありすは大きくため息をついて、ボロボロのまりさを見つめる。 「どこのいなかからきたのかしら? このいなかものは」 野生に返されたゆっくりたいは、その大半が死に絶えて、残りは各地で様々な被害を起こしていた。 畑荒らし、人間に喧嘩を売る、子供のお菓子を狙う、住居侵入。 人間とうまくやっている群れの崩壊、野生ゆっくりとの諍いなど等。 数え上げたらキリがないほどの被害を出していた。 そんな被害の引き金ともなった愛護団体は、そ知らぬ顔で捨てゆっくりの問題に噛み付き、非常識な飼い主、虐待趣味について言及して 『ゆっくりを捨てるな! ゆっくりに愛を!』と歌っていた。
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「ゆっくりしていってね」とゆっくりれいむが言う。そこは、森の中誰もいないはずなのにれいむは 、「ゆっくりしていってね。ゆっくりしていってね。」と言いつずける。するとアリスが来て「ねェれいむ誰にゆっくりしていってねと言っているの?」するとれいむは「ここにねしょうらいれいむを飼ゆにしてくれるにんげんさんが見れるの!」 「ゆゆそれほんとなのれいむ」「ほんとだよ」「良かったね!れいむ、ほかのゆっくりに伝えなくちゃ」「みんな、アリスを見て実話れいむが飼ゆになりのよ」するとみんなは口々に「れいむが飼ゆになるのッはとてもゆっくりできるよ」「とかいだわ」「むきゅそれはいいことね」すると子ゆが来て「頑張ってねぇ」「ゆっくりちたいょ」そこに一人の人間がいる。するとこの村のゲスが「おいそこのクソジジイまりさを飼ゆにしてね。」 ・・・ こんにちは僕が書いたこのダクの作品は初めてです。後でこのゲスがどうなりかこの群れはどうなるかはご自由にお考え下さい。これで確かな事は、れいむが飼ゆになる事です。
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『こうっかん 中編』 56KB 制裁 自業自得 越冬 群れ ゲス 自然界 独自設定 中編 そして……。 「どういうことなのぜええええええ!こんなふざけたはなしを、うけいれろっていうのかぜえええええ!」 「いったいなんなの!このいなまものまるだしの、こうしょうけっかはああああああああああ!」 「どうもこうも、これがおさであるれいむのけつだんだよ!はやくこのけっかを、むれのみんなにつたえてきてね!」 ここは大きな群れにある長れいむのおうち。 長れいむは、長ぱちゅりーとの二匹だけの会議の後、すぐに自身の群れへと引き返していった。 そして会議の結果を幹部二匹に伝えたのだった。 しかし、長れいむの口から告げられたその内容を聞くや否や、声を荒げる幹部二匹。 その態度から長れいむの決断に不満があるのは明らかだった。 「ふざけるんじゃないのぜえええええ!おやさいぷれいすをてにいれるのはいいとして、 そのじょうけんが、まりささまたちのぷれいすをあけわたすことは、どういうことなのぜええええええ! そんなばかげたじょうけんを、ほんきでうけいれたのかぜええええええええ!」 「まったくあきれたわ!そんなありさまで、よくおさをなのってはずかしくないものだわね! もういいかげん、さっさといんたいしたらどうかしら?そのほうがこのむれのためよ!」 口々に長れいむの決定を非難する幹部まりさと幹部ありす。 長れいむの決断。 それは、長ぱちゅりーの提案した土地の交換を全面的に受け入れることだった。 「ゆふん!なんといわれようと、これはおさであるれいむがきめたことだよ! しょせんかんぶであるまりさたちに、もんくをいうけんりはないんだよ!」 「いくらなんでも、げんどってものがあるのぜええええええええ! ぷれいすがせまくなったら、せっかくどれいをてにいれても、ぞんぶにゆっくりできないのぜええええ!」 「まったくだわ!いなかものどもに、たっぷりとあいのこういをおしえるには、とかいはなひろいおうちがひつようなのに!」 「ゆゆ?ああそうだったよ!そういえばいうのをわすれていたよ! よていしてた、れいむたちと、ぱちゅりーたちとのむれのがっぺいのはなしはなしになったよ!」 「ゆへ?」 「なっ!」 長れいむの口から何気なくもたらされた事実に対し、驚きを口にする幹部二匹。 「ちょ、ちょっとまつのぜえええええ!それじゃどれいは? がっぺいのみかえりにえるはずの、まりささまのどれいのはなしはどうなったのぜええええええええ!」 「そんなもの、とうぜんなしにきまってるでしょ! だいたいぷれいすをこうかんするんだから、そのあとでむれをがっぺいしてもいみないでしょおおおおお! そんなこともわからないの?ばかなの?しぬの?」 長ぱちゅりーからの受け売りをそのまま口にする長れいむ。 だがそんな理屈で怯む幹部たちではない。 「ゆがあああああああああああああああ!ばかなのはれいむのほうなのぜえええええええええええええ! ぷれいすはわたす、どれいもあきらめる、それだけやって、えるのがおやさいぷれいすだけじゃ、どうかんがえてもわりにあわないのぜええええええ!」 「そうよ!そうよ!ふざけないでちょうだい! だいたい、ありすにとってはおやさいなんかよりも、どれいたちにとかいはなあいをおしえるこういのほうだいじなのよおおおおお! あああああああああああ!ちきしょおおおおおおおおおおおお!ありすの、いちだいすっきりはーれむけいかくがあああああああああ!」 ぷれいすを渡す上に、当然得られると思っていた奴隷も得られないと知り、もはや幹部二匹は長れいむへの侮蔑を隠そうともしない。 「れいむ!いまならまだまにあうのぜ!もういちど、ぱちゅりーのところへいって、このはなしをことわってくるのぜ! そして、むれのがっぺいでもなんでもいいから、とにかくまりささまのどれいをてにいれるのぜ! おやさいぷれいすなんて、そのあとで、やつらからうばってしまえばいいだけのはなしなのぜ!」 「そうね!そうするべきだわ!そして、それがすんだられいむはそっこく、おさをやめなさい! それがあなたがこのむれにたいしてできる、いちばんのことなのよ! さぁぐずぐずしないではやくいきなさい!さっさとするのよ!」 怒りのためか本来の自分らの立場を忘れ、長れいむに協定の取り消しをするように迫る幹部まりさと幹部ありす。 今までは内々にその不満や野心を隠してきたこの二匹だが、ここまであからさまな態度に出たのははじめてのことである。 つまりはそれだけ腹に据えかねた事態だということだ。 「いいかげんにしてね!だれにたいしてものをいってるの!」 だがそれでも長れいむは全く動揺していなかった。 むしろ望むところだといった視線で、長まりさと長ありすを睨みつける。 「たしかに、まりさやありすのいうとおり、どれいがてにはいらなかったことや、ぷれいすがちょっとせまくなっちゃったことはざんねんだよ! でも、れいむはこんかいのけんで、おやさいがかってにはえてくるぷれいすをてにいれたんだよ! これはとりひきとしては、じゅうぶんすぎるせいかだよ! それに、もしこれいじょうをのぞむようならば、ぱちゅりーたちのむれとのせんっそうはさけられない! れいむはむれのおさとして、むれのゆっくりたちに、むだなぎせいをしいるせんっそうできないんだよ! ただじぶんたちがゆっくりすることばかりかんがている、まりさやありすとちがってね!」 群れ全体の利益のために、これ以上の要求をすると発生する戦争は出来ないと説く長れいむ。 本当は戦争をしたくない一番の理由は、戦闘になれば一番に自分が狙われるのを知っているからであるが、 もちろんそんなことはおくびにも出さない。 「ゆががああああ!せんっそうがさけられないというのなら、やってやればいいのぜええええ! いやむしろ、ほんとうにむれのゆっくりのことをかんがているのなら、せんっそうすべきなのぜええええ! それでゆっくりも、おやさいも、なにもかもあのぱちゅりーからうばってしまえばいいだけのはなしなのぜえええええ!」 「んほおおおおおおおおお!そのとおりよおおおおおおおおお! ありすもせんっそうはいやだったけど、もうそんなこといってられないわあああああああ! こうなったら、とかいはなあいをおしえるのは、せんっそうでつかまえたほりょでもかまわない! だから、むれをあげてのせんっそうめいれいをだすのよれいむ!」 「いやだよ!」 きっぱりと否定する長れいむ。 「なにをふぬけたことをいっているのぜれいむ! むれぜんたいのりえきのために、せんっそうするべきのぜ! むれのことをかんがえらないれいむは、おさしっかくなのぜ!」 必死に力説する幹部まりさ。 「ゆふん!なにがむれのためだよ!じぶんのゆっくりのためのくせに、ばかいわないでね! そんなにせんっそうがしたいのなら、まりさやありすたちがせんっそうしたいゆっくりをあつめてやればいいよ! それならべつにれいむはかまわないよ!」 「ゆなっ!なにをいっているのよれいむ!せんっそうはおさのしじによってはじまるのよ! そうじゃないとすべてのゆっくりがさんかしないわ!」 「だからこそだよ! れいむは、むれのみんなのゆっくりがだいじだから、せんっそうはしないといっているんだよ! でもまりさやありすがどうしてもせんっそうがしたいというのなら、せんっそうにさんせいしているゆっくりだけで、せんっそうしてかまわないといっているんだよ! それならじこせきにんだしね! でもこのままだまっていても、れいむのてがらでおやさいぷれいすがてにはいるというのに、わざわざせんっそうしたいなんてかんがえてるゆっくりが、 このむれにどのくらいいるのかなぁ?」 「ゆがっ!ぐっ!それは……」 痛いところを突かれたうろたえる幹部まりさ。 長れいむはわかっていた。 自分の決断に反対するゆっくりが少数派であることが。 「ゆふん!せんっそうなんて、このむれのゆっくりは、ほとんどそんなことのぞんでないんだよ! ほんとうにむれのことをかんがえてないのはどっちなの! わがままはよそでやってよね!」 見下したように言う長れいむ。 長れいむの予想は極めて正しかった。 実際に長れいむの提案が群れ中に知れ渡ったとして、その選択を非難するゆっくりは、 幹部まりさや幹部ありすのような、奴隷を得ることを楽しみにしていたような少数派だけである。 多くのゆっくりは、そんなことよりもお野菜ぷれいすの取得を望むだろう。 それがわかっているからこそ、長れいむは幹部二匹にこれほど否定的な態度を示されても余裕なのだ。 そもそもこの二匹が反抗的な行動を取るであろうことは、事前にした分析で予測済みのことである。 いまさら慌てることはない。 「ゆががががが!こんな!こんなことがぁあ!」 「なんなの!なんなのよ!れいのくせに!」 逆に幹部二匹の旗色はかなり悪いといえる。 期待していた奴隷は得られない上に、今回のれいむの功績が群れのゆっくりたちに支持されれば、 自分たちの長就任への夢は遠のくばかり。まさに踏んだり蹴ったりである。 苦肉の策として、しきりに長れいむに戦争をするように迫ったのも、別に群れの利益のためではなく自分らの欲望のためと、 戦争で出た犠牲の責任を、長であるれいむに押し付けて失脚を狙うためである。 しかしどうやらそのたくらみは完全に長れいむには看破されていたようであり、長れいむは絶対に戦争はしないと言い張っている。 つまりは完全にしてやられた形になる。 今まで実力は自分たちのほうが上であると、密かにバカにしていた長れいむにここまでやり込められるのは、 幹部二匹にとってはこの上ない屈辱である。 しかし現実問題として打つ手がない。 完全に手詰まりの状況であった。 「ゆふふふふ!りかいできたなら、さっさとこのこをむれのみんなにつたえてきてね! ぷれいすのいどうはあすだよ!」 うな垂れ、黙っている幹部たちに長れいむが笑顔で言う。 それは自身の判断が正解だったと確信する、まごうことなき勝利宣言であった。 一方その頃、長ぱちゅりーの群れでは。 「むきゅ!みんな急いで移動のための荷物をまとめて! できるだけ多くの食料を持っていくのよ! ただし!事前に説明した通り、畑に生えているお野菜はもっていっちゃダメよ! アレが今後の私たちの運命を左右することになるんだからね!」 「「「「ゆゆー!」」」」 てきぱきと指示を出す長ぱちゅりーと、それにそれに応じる群れのゆっくりたち。 今、長ぱちゅりーの群れでは明日の移動に向けての準備の真っ最中だった。 「でもくやしいみょん!くろうしてそだてたおやさいを、あのれいむたちなんかにわたすのは!」 「そうね、せっかく育てたお野菜を食べられないのはとても残念だろうけど、今回ばかりは諦めてもらうほかしかたないわね。 ここで欲を出して、群れが崩壊してしまっては意味がないもの。 でも大丈夫よ!お野菜はまた作ればいいんだもの、今度はもっと広い土地を活用してもっと沢山作れるようにするわ」 「みょん!それはわかってるみょん!」 流石に苦心して育てたお野菜畑を、あっさり明け渡してしまうという長ぱちゅりーの策には群れのゆっくりからも反対意見が出たが、 それでも奴隷になったり、戦争して滅びるよりははるかにましだ、ということで群れ内の意見は一致していた。 それに命さえあれば、今度は広くなった土地でお野菜はまた作ればいいのだ。 今やこの群れのゆっくりたちはそのことを理解していた。 ゆえに移動準備は長ぱちゅりーが思っていたよりも問題なくスムーズに行うことが出来た。 「わかるよー!ぜんゆっくり、いどうのじゅんびがかんりょうしたよー! あとはあすをまつばかりなんだねー!」 「そう、ありがと。 ここまでのところは作戦通りね。 あとは、あのれいむたちがどうでるか……」 「わかるよー!だいじょうぶだよー! きっとおさのさくせんどおりうまくいくよー! いままでだってそうだったんだからねー!」 「そうね!そうなるといいわね……」 長ぱちゅりーはふぅ、と溜息をつく。 (今ぱちぇがやっていうことは、人間さんでいうところの詐欺師ってところかしらね。 だまされているあのれいむにはまったく同情しないけど、これはあまり気分はいいものじゃないわね) 長ぱちゅりーは黄昏時の空を見上げながら、ふとそんなことを思ったのだった。 次の日。 「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!」 「うめぇ!これめっちゃうめぇ!」 「がーつ!がーつ!」 「びゃあ!うまいいいいいい!」 ここは元長ぱちゅりーが治めていたぷれいす。 そこに存在している今まで大切に育てられてきた野菜畑にて、我が物顔でお野菜を食い散らかしているゆっくりの一団があった。 言うまでもなく、元長ぱちゅりーのぷれいすに移住してきた長れいむの群れのゆっくりたちである。 このお野菜ぷれいすは正式な土地の交換の代償として手に入れたものなので、 別にこれらのゆっくりが悪いことをしているというわけではないのだが、 何故かこのゆっくりたちの態度には人を不快にさせる何かがあった。 「ゆふふふ!おちびちゃんあわてないで!まだまだたっくさんおやさいはあるからね!」 「すきなだけむしゃむしゃするよー!なくなったって、どうせおやさいはまたかってにはえてくるんだからねー!」 「みょん!こんなゆっくりとしたぷれいすをてにいれるなんて、さっすがおさだみょん!」 「ちぇんははじめからわかってたよー!おさはたよりになるよー!」 一通り満腹になるまでお野菜を食して満足したのか、次々に長れいむを賞賛し始める群れのゆっくりたち。 「ゆふふふふ!それほどでもないよー!ゆふふふ!」 それに対してこみ上げる笑みを隠せない様子で応える長れいむ。 実際長れいむは有頂天であった。 今まで群れのみんなからはなんとも思われてなかった自分が、こうして皆からはっきりと認められ、賞賛されている。 自分を密かにバカにしていたであろう、幹部まりさや幹部ありすをまんまと出し抜き、群れ中の支持を一身にあつめているのだ。 多少当初の予定とは多少狂ったものの、結果としては自分の望み通りとなった。 そうとも!これこそが長としての本来の自分の実力なのだ! もう誰にも親の七光りなんて言わせない! この群れの長は自分こそが相応しいのだ! 多少ぷれいすが狭くなったからといって、それがどうしたとういのだ! この『お野菜が勝手に生えてくるゆっくりぷれいす』さえあれば、自身のゆっくりは保障されたも同然だ! そろそろ迫ってきた越冬の季節もなんら恐れることはない! 全てうまくいく! 何故ならこのむれの長は、このれいむさまだからだ! 「ゆぷぷぷぷ!ゆふ、ゆふふふふふふふふ!」 いつまでもニヤニヤとしている長れいむ。 この瞬間、長れいむは今までのゆん生の中で一番のゆっくりを感じており、まさにゆん生を謳歌していた。 「ちっ、きにいらないのぜ!」 そしてそれを少し離れた端のほうからじっと睨んでいるゆっくりが一匹。 幹部まりさだった。 今回の件では幹部まりさは別段何か失態をやらかしたというわけではないので、自身の支持基盤を失ったというわけではない。 だが無党派層ゆっくりたちによって、長れいむばかりが賞賛されているこの状況を鑑みれば、これは事実上自分の完全なる敗北であった。 望む物は得られず、れいむの支持率が上がったことにより自分の長への道は遠のくばかり。 不満をぶちまけようにも、群れ全体が長れいむムードに染まっている現状、下手をすれば自分が悪者扱いだ。 何だってこうなった! 本来ならば、あそこで笑っているのは自分だったはずなのに! いや、もし自分が長だったらのならば、お野菜ぷれいすだけでなく土地も、奴隷だって一緒に手に入れていたはずだ! クソ!チキショウ!何だってあんな駄ゆっくりが! 「くそ!まりささまだって!まりささまだって……」 悔しそうに呟きながら、幹部まりさはガブリと乱暴にお野菜にかぶりついたのだった。 さて、こうして長ぱちゅりーのぷれいすと長れいむのぷれいすとのこうっかんは無事成功した。 このこうっかんは若干のシコリを残しつつも、双方ともに非常に満足の行くものであり、 通常の取引ならば、これでめでたしめでたしといったところであろう。 しかし残念ながら……。 いや、当然のことながら。 これで話が済むはずもない。 長れいむは……。 いいや、長れいむの群れのゆっくりたちは。 ある重大な勘違いをしている。 それは人間ならば誰の目にも明らかな事実。 いちいち偉そうに言わずともみんな気づいていることだ。 だがあえて言おう。 その勘違いとは。 『お野菜が勝手に生えてくるゆっくりぷれいす』なんて世の中をナメ切ったゆっくりの妄想の産物は、この世のどこにも存在しないということである。 そして月日は流れる。 始めに異変に気づいたのは子ゆっくりたちだった。 あるいは子ゆっくりは生まれてまだ間もないために、いわゆるゆっくり界に蔓延る思い込みがそれ程強固でないのが原因だったのかもしれない。 とにかく、始めに違和感を口にしたのは子ゆっくりたちだった。 「ゆゆ?なんだかおやさいがすくなくなってきているきがするよ?」 「そうだねぇ、まえはもっとたっくさんあったはずなのに、なんだかへってるかんじがするよ!」 畑を前にし、野菜の数が減ってきたと主張する何匹かの子ゆっくり。 そりゃそうだ、実際野菜の数は減っている。 ゆっくりが食べてしまった分だけ、野菜の数が減るのは至極当然のことだ。 なんらおかしいことではない。 だが、長れいむはそんな子ゆっくりたちに諭すように言った。 「ゆゆん!ばかなかこといわないでね!おちびちゃんたち! ここは、おやさいがかってにはえてくるゆっくりぷれいすなんだよ! むーしゃ!むーしゃ!したおやさいは、しばらくすればまたかってにはえてくるんだよ! おちびちゃんたちは、へんなことしんぱいしないでゆっくりしてればいいんだよ!」 長れいむは自信たっぷりに胸をはって主張する。 「「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」」 そしてその主張に元気よく返す子ゆっくりたち。 別に子ゆっくりたちだって、本気でお野菜ぷれいすがどうこうしたとか考えたわけではなく、 ただちょっと疑問に思ったことを口に出しただけで他意はない。 だがこういった日常のちょっとした変化が、大きな出来事の前触れであることは珍しくない。 優秀な統治者ならば、こういったことには常に気を配っていてしかるべきである。 しかし長れいむは自ら率先してこの変化の芽を握りつぶした。 こうして長れいむたちの群れのゆっくりは、一つの重大なきっかけを自ら見過ごすことになる。 今の段階で気づけていれば、まだいくらでも打つ手はあった。 だが、もう全ては遅い。 順調に、着実に。 その時は迫ってきていた。 そうこうしているうちにまた月日は流れ……。 「ゆん?なんだかおやさいぷれいすのようすが……」 「へんだねぇ……おかしいねぇ……」 「へってるよ!まちがいなくおやさいがへってるよ!」 畑へとやってきたゆっくりたちが、にわかに騒ぎ出している。 それも当然で、畑に生えているお野菜の量は初期に比べて今では半分以下にまで減少していた。 流石にここまで劇的な変化が起これば、いくら能天気なゆっくりたちといえど次第に認識しだす。 お野菜が減っているという事実に。 「ゆん?どうしたのみんな?へんなかおしちゃって!ゆっくりしてないよ!」 そこへ、のこのことやってくる長れいむ。 「おさぁあああ!なんだかおやさいさんがへってるみたいなんだよおおおお! どうなってるのおおおおおおおおお!」 「ゆん?おやさいさんが? ゆーむ!」 畑に集まっているゆっくりたちに指摘され、じぃーと畑を凝視する長れいむ。 確かに言われてみれば昔よりもだいぶお野菜が減っているような気がする。 だがしかし。 「ゆん!たしかにほんのちょっとだけおやさいさんがすくなくなってるかもね! で?それがどうかしたの?」 何の問題ですか?といった表情の長れいむ。 「ゆっ!だっておやさいがこのままへっていっちゃったら、いつかは……」 一匹のまりさが、不安げに長れいむに訴える。 始めこそ沢山あったお野菜だが、その数は目に見えて減ってきている。 このまま減り続ければ、いずれはお野菜がなくなってしまうのではないかと疑うのは至極真っ当な発想だ。 しかもこれが平時ならともかく、今の季節は秋の真っ只中を少し過ぎた時期なのだ。 本来ならとっくに越冬の準備に取り掛かっているところである。 だがこの長れいむの群れのゆっくりたちは、お野菜を当てにして殆どのゆっくりが全く越冬の準備をしていなのだ。 このような状況で、もしお野菜がなくなったら……と一部のゆっくりが危惧を感じるのは無理からぬ話である。 しかし長れいむは、そんな焦燥に駆られているゆっくりたちを子バカにしたような目で見つめ返す。 「はぁ?なにいってるの?あたまだいじょうぶなの? いったいなにをいいだすかとおもえば、なにもしらないようなおちびちゃんじゃあるまいし! そんなんで、おとなのゆっくりとしてはずかしくないの? おやさいはかってにはえてくる!これはじょうっしきだよ! そしてこのばしょには、おやさいがはえていた!だからまたここにはまた、たっくさんのおやさいがはえてくるんだよ! そのぐらいのことがわからないの?ばかなの?しぬの?」 心底呆れたような口調で長れいむが言う。 「ゆっ、ゆう!でももしはえてこなかったら……。 げんにおやさいのかずはへっているわけだし……」 「くどいよ! まったくなんなの!こんなにあたまのわるいゆっくりが、れいむのむれにいるなんておもわなかったよ! じゃあかってにすれば!れいむはきょうもこのぷれいすで、おやさいをむーしゃ!むーしゃ!するから! きょうも、あしたも、あさっても!ずっとずっと、えいっえんにね!」 それだけ言うと、長れいむは今では半分ほどに数を減らした野菜へと向かう。 「ゆっ、ゆう!おさがそういうんだったら!」 「そうだね!おやさいはかってにはえてくるものだしね!」 「わかるよー!しんぱいしすぎなんだねー!」 「…………」 長れいむが自信満々で畑に向かったの見て、オロオロしていたゆっくりたちもまた畑へと向かう。 多少の胸騒ぎを感じていたとしても、ここ最近好き放題食べているお野菜の味の魅力には到底抗いがたい。 ふらふらとひきつけられるようにお野菜へと集まっていくゆっくりたち。 そして今日も今日とて群れのゆっくりたちは、己の欲望の赴くままにお野菜を食い散らかすのであった。 そしてまたしばらく月日が流れ、秋の終わりをいよいよ肌で感じ始めた頃。 「ゆがあああああああああああああああ! はえてこないよおおおおおおおおおおお! ぜんっぜん、おやさいがはえてこないよおおおおおお! どじでえええええええええ!なんでなのおおおおおおおおおおおお! おやさいさああああああああああん!ゆっくりしないではえてきてねえええええええ!」 そこにはお野菜の九割を食いつくし、残りが約一割程度の量となった畑で慌てふためく長れいむたちの姿があった。 「おさああああああああ!どうなってるのおおおおおお! こんなちょっとじゃ、えっとうにまにあわないよおおおおおおおお!」 「はえてくるっていったのにいいいいいい!うそつきいいいいいい!どうするのおおおおおおおおおお!」 「わがらないよおおおおおお!なんとかしてよ、おさあああああああ!」 「しるかばかああああああああ!こんなのれいむのせいじゃないよおおおおおおおお! おやさいさんがわるいんでしょおおおおおおおおおおお! かってにはえてこないからああああああああ!れいむわるくないよおおおおおおおおおお!」 今やほとんどの面積が土だけになった畑で、大パニック状態の群れのゆっくりたち。 実際これはヤバイ状況だ。 前にも述べたが、この群れのほとんどのゆっくりたちはお野菜を当てにしていたために、 今ではもう間近に迫っている越冬の準備を全くといっていいほどしていないのだ。 このままでは確実に越冬失敗し、群れは壊滅状態におちいることだろう。 「みょん!おさがだいじょうぶだといったから、みんなあんしんしておやさいをたべたんだみょん! いまさらわるくないなんてはなしは、つうようしないみょん!」 「そうだ!そうだ!」 「このせきにん!どうとるつもりなの!」 「なんとかしてね!はやくなんとかしてね!」 「さっさとしろ!このぐず!」 「しね!むのうなおさはゆっくりしね!」 今までの賞賛とはうって変わって、掌を返すように長れいむを責め立てる群れのゆっくりたち。 「ゆがあああああ!ちっ、ちがうんだよ!これはなにかのまちがいなんだよ! おっ、おやさいさんはいまちょっと、きゅうけいしてるんだよ! きっとそうだよ!だっ、だからもうすこしだけまってね!そうすればきっと……」 「ゆっへっへっへっへ!もうすこしまてばなんだって? まりささまたちがむしゃむしゃしたいときに、おやさいがはえてこないぷれいすなんて、とんだけっかんぷれいすなのぜ! しょせんれいむがてにいれたおやさいぷれいすなんて、そのていどのものだってことぜえええええ!」 必死に弁解する長れいむの横から割り込むようにして、大声で主張するゆっくりがいる。 それはここ最近ではめっきりおとなしくなっていた幹部まりさだった。 否、別におとなしくしていたわけではない。 ただ虎視眈々と機会をうかがっていたたけだ。 今の状況のように、長れいむの信頼が揺らぐ絶好の機会を! 「みんなきくのぜええええええええ!みてのとおり、このむのうなおさであるれいむがてにいれたおやさいぷれいすは、 いつ、つぎのおやさいがはえてくるかもわからないような、けっかんぷれいすなのぜえええええええ! こんなおさについていくようじゃ、みのはめつはあきらかなのぜえええええ!」 ここぞとばかりに長れいむをこき下ろしはじめる幹部まりさ。 「でも、あんっしんするのぜえええええ! これからは、このまりささまが、むのうなれいむにかわって、このむれのおさになってやるのぜえええええ! まりささまがおさになれば、こんなちんけなものとはひかくにならないくらい、もっともっとすごいぷれいすでゆっくりできるのぜえええ!」 そしてついには自身の長宣言まで飛び出した。 これは事実上、現長であるれいむに対する宣戦布告であり、これを群れ中のゆっくりの前で宣言するということは、 もはや幹部まりさは冗談ではすまない領域へと踏み込んだことを意味する。 幹部まりさはこの機に乗じて本気で長の座を奪いにきたのだ。 「ゆあああああああああああ!なにいってるのおおおおおおおお! みんなだまされないでねえええええ! このばしょいじょうの、ゆっくりぷれいすなんて、あるはずないよおおおおおお! まりさがいってることはでたらめだよおおおおお!」 たまらず叫び返す長れいむ。 「でたらめなんかじゃないのぜええええええ! まりささまは、こんなちんけなおやさいぷれいすなんかじゃなく、もっともっとひろくて、 おやさいのかずなんてまったくきにしなくていいような、しんのおやさいぷれいすをてにいれてみせるのぜえええ!」 「なっ、なにいってるのまりさああああああああ! とうとうあたまがおかしくなっちゃったのおおおおおお? このやまに、ここいがいのおやさいぷれいすなんてあるわけないでしょおおおおお! ばかなこといわないでねええええええええ!」 「ゆっへっへっへっへ!これだから、れいむはむのうだというんだぜぇ! めさきのちいさなことばかりにとらわれて、ぜんたいがまるでみえてないんだぜぇ!」 長れいむを嘲笑しながら幹部まりさは群れのゆっくりたちに向き直り、そして大声で力説する。 「むのうのれいむにできることなんて、こんなやくたたずのちっこいおやさいぷれいすをてにいれるのがせいぜいなのぜ! だけどまりささまはちがうのぜえええええ! まりささまたちは、これからやまをおりて、くそにんげんどもの、おおやさいぷれいすをうばいにいくのぜええええ! さらに、そこにいるくそにんげんどもも、ねこそぎどれいにしてやるのぜえええええ! ひろいひろいとち!さらにおやさいがかってにはえてくるゆっくりぷれいす!そしてどれい! まりささまをおさとしてみとめ、したがうのならば、そのすべてがてにはいるのぜええええええ! さあ!まりささまといっしょに、みんなでやまをおりるのぜええええええええ!」 山を下り、人間の土地に侵略し、土地、野菜、奴隷の全てを手に入れる。 それが幹部まりさの提示した政策だった。 この政策は幹部まりさの内面が非常によく反映された考えだといえる。 長れいむは、お野菜が勝手に生えてくるぷれいすを手に入れたことで皆からの支持を集めた。 なればこそ幹部まりさは、それ以上の成果を上げることで長として認められなければ、自身の気がすまない。 長れいむに劣る成果など、幹部まりさのプライドが許さない。 その発想の結果が、この人間ぷれいすへの侵略計画なのである。 「ゆええええええええええ!なにいいだすのおおおおおお! このやまのしたは、にんげんさんたちのゆっくりぷれいすなんだよおおおおおお! しかも、そのばしょには、ぜったいにちかづいちゃいけないって、むかしからのおきててかたくきめられてるでしょおおおおおお! まりさはそのおきてをやぶるきなのおおおおおおおお!ばかなこといわないでねええええええ!」 長まりさの提示した政策に、珍しく正論で反論する長れいむ。 これは実際にその通りで、この掟は確かに実在し、今まで破られたことがない。 返しとしては至極まっとうな意見である。 だが、しかし……。 「はん!むれがほろびるかどうかってときに、そんなまりささまがうまれるずっといぜんからあるおきてのことなんざ、 しったこっちゃないのぜ! だいたいわるいのは、くそにんげんどものほうなのぜ! まりささまはしっているのぜ!このやまのふもとには、くそにんげんどもが、 たいりょうにあるおやさいぷれいすを、ひとりじめしてるってことを! そんなげすどもからぷれいすをうばって、どれいにしたところで、いったいなにがわるいっていうのかぜ!」 ゆっくりお得意のトンデモ思考で、自身の正当性を訴える幹部まりさ。 もはや何を言われたところで、民衆の面々で長宣言までしてしまった幹部まりさは後には引けないのだ。 ただただ猪のように突き進むのみである。 「さあ!このむのうなおさと、しみったれたぷれいすをすてて、えいこうをてにしたいゆっくりは、 まりささまのもとにあつまるのぜえええええ! そして、みんなでずっとゆっくりするのぜええええええ!」 ざわ…ざわ…。 幹部まりさの突然の勧誘に揺れる動く群れのゆっくりたち。 あまりの事態に皆動揺を隠せずにいた。 どのゆっくりも一様に、周囲をチラチラと盗み見て様子を窺っている。 だがやがて……。 「みょん!みょんはまりさについていくみょん! もうみょんは、おやさいのあじなしじゃやっていけないみょん! そのためには、こんなちんけなぷれいすじゃまんぞくできないみょん!」 「まりさも!まりさもいくよおおおおおお! こんなところで、のたれじぬのはごめんだよおおおお!」 「ありすもまりさについていくことにするわ! もうこんないなかぐらしはまっぴらよ!」 「れいむもおおおおおおお!こんなおやさいがすぐにはえてこないぷれいすなんかに、ようはないよ!」 「わかるよー!おさなんかよりも、まりさのほうがずっとたよりになるんだねー!」 次々と幹部まりさに賛同していく群れのゆっくりたち。 やはりすぐそこに迫った越冬の危機感と、もはやお野菜が僅かしか残っていない畑の視覚効果は大きいようだ。 次々に賛同者は増えていき、やがては群れの半分程のゆっくりたちが、幹部まりさとともに群れを降りる決断を下した。 この半分という割合は、突発的な提案にしては十分すぎる成果だと思われるが、幹部まりさとしては不満だった。 幹部まりさの当初の見込みでは、群れの八割ほどのゆっくりが自分にの味方になると考えていたからだ。 その目算は決して幹部まりさの思い上がりではなく、かなりの精度で正しいといえるものだった。 では何故半分程のゆっくりしか集まらなかったのか? その最大の原因は……。 「ありす!しょうきなのかぜ!こんなばしょにれいむとのこっても、ゆっくりはないのぜ! まりささまとくるのぜ!いまならひきつづきかんぶにしてやるのぜ!」 幹部ありすだった。 なんと幹部ありすと彼女を支持する取り巻きのゆっくりたちは、この場に留まるという選択をしたのだ。 てっきり幹部ありすも、自分と同じように長れいむに反目してると踏んでいた幹部まりさは、 幹部ありすたちのグループも、自分を支持すると計算に組み込んでいたのだ。 しかしここでまさかの幹部ありすの長れいむ擁護。 これにより幹部まりさの計算は狂い、賛同するゆっくりの数は半分程度に留まったというわけだ。 「ありす!いったいなにかんがえてるのぜ! いまらさられいむをしじして、いったいなんになるんだぜ!」 「べつにそういうわけじゃないけどね! ただ、ありすはまりさやれいむとちがって、おやさいぷれいすにそんなにしゅうちゃくがないだけよ! それに、すっきりするかちもないような、むのうでいなかものの、にんげんなんてどれいにしてもしょうがないしね!」 「ゆぐぐぐぐ!ふん!じゃあかってにするがいいのぜ! あとでなきついても、たすけてやらないのぜ! さあみんな!こんなやつらほっといて、さっさといくのぜ!あらたなる、まりささまのゆっくりぷれいすへ!」 そう捨て台詞を吐くと、幹部まりさはぞろぞろと群れのゆっくりたちを引きつれ、山を下りていく。 後に残されたのは長れいむ、幹部ありす、そして今ではその数を半分にまで減らした群れの面々であった。 「ゆっ、ゆゆうううう!あっ、ありがと、ありすううううううううう! ありすがれいむのみかたをしてくれるなんてえええええええ!」 幹部まりさが去った後、感極まった表情で幹部ありすに礼を言う長れいむ。 長れいむがいまだに長でいられるのは、幹部ありすがこの場に残っているおかげなのだ。 もし、幹部ありすが幹部まりさの誘いに乗り、群れを離れていたら、全体の八割以上のゆっくりが群れからいなくなることになり、 長れいむの群れは瓦解する。 そうなっていれば長れいむの命は恐らくなかった。 幹部まりさが生かしておかないからだ。 だが、今のように半分程度のゆっくりが残っている状況での長殺しは流石にまずい。 だからこそ、幹部まりさは長れいむに手を出さずに下界へと向かったというわけだ。 「ゆゆ!だいじょうぶだよありす!きっとなんとかなるからね! あんなくずまりさのことなんてわすれて、これからはにひきでがんばっていこうね!」 長れいむは幹部ありすが自分の味方と知って安心したのか、急にごまをするように擦り寄っていく。 「あら、かんちがいしないでほしいわね!」 だがそんな長れいむを、氷のように冷たい表情で見つめる幹部ありす。 「たしかにありすたちは、このばにのこるせんたくをしたけれど、れいむがむのうといういけんにかんしては、 ありすはまりさとおなじなのよ!」 「ゆっ、なっ!」 「そういうわけで、もうこんごいっさいありすたちは、れいむのしじにはしたがわない! あとはかってにやらせてもらうわ! それじゃいきましょみんな!」 「「「「ゆーーー!」」」」 言いたいことだけ言い終えると、ぞろぞろとその場を去っていく幹部ありすとその取り巻きたち。 その場にはポカンとした表情の長れいむと、どうしていいかわからずオロオロとうろたえるゆっくりたちが取り残された。 結果として群れの数はさらに減ることとなり、今ではもう全体の四分の一程度の数しかその場には残っていない。 最早ここまでくると群れとは呼べず、ただのゆっくり集団である。 「……えっと、あの……おさ…」 残ったゆっくりが、遠慮がちに長れいむへと話しかける。 が、憤怒の炎に身を焦がしている長れいむはまともに取りあおうとしない。 「ゆがあああああああああああ!だまってねええええええええええええええ! どいつもこいつも、だまってねええええええ!はえてくるよ! はえてくるんだ!もうすこし!もうしこしだけまてば!おやさいはかってにはえてくるんだよおおおおおおおおおお! だからだまれえええええええええええ!ちぎじょおおおおおおおおおおお! ふざげやがってええええええええ!このくそおやさいばたけがあああああああああ!」 体をブッルンブッルンと震わせながら、やけくそ気味に叫ぶ長れいむ。 そしてそのまま、僅かに残ったお野菜ところまでドスドスと跳ねていき、乱暴にお野菜にかぶりつく。 「むーじゃ!むーじゃ!じあばぜええええええええええええええええええ! はあああああ!こんなゆっぐりじだ、おやさいばたけをすてるなんて、どいつもこいつもおおばかだよおおおおおおおおおお! ちぎじょおおおおおおお!いまにみてろおおおおおおお!はえてくるにきまってるだろおおおおおお! そうなってからほえずらかくなよおおおおおお! ほらああああああ!ゆっくりしないで、さっさとはえでごいいいいいいいい! むれのおさである、れいむのめいれいがきけないのがああああああああ!」 叫びながらバン!バン!と地面を叩きつけるようにその場で飛び跳ねる。 誰がどう見てもまともな行動ではない。 お野菜が勝手に生えてくると信じること、それだけが長れいむのできる唯一のことだった。 だが、どれだけ叫ぼうと、どれだけ畑で飛び跳ねようと、ゆっくりの妄想に合わせて世界が動くことは決してないのだ。 こうしてこの日、長れいむの群れは大きく三つに分裂することになる。 新たなるぷれいすを求め、下界へと旅立った幹部まりさ。 お野菜が生えてくると信じ、ただただ畑で祈るだけの長れいむ。 そして、何が狙いか、不気味に沈黙する幹部ありす。 これらの三つの勢力である。 いや、正確には少し違った。 実はこれらのどこのグループにも属していない、少数の第四の集団が密かに存在していた。 その集団とは……。 「むきゅ!それで?あなたたちが、ぱちぇの群れに新しく入れて欲しいっていうゆっくりたちかしら?」 「そうだよ!まりさたちはもう、あんなおさや、かんぶたちにのおさめるむれにはついていけないよ! だからおねがいだよ!ぱちゅりーのむれにいれてね! ぜったいにめいわくはかけないよ!」 ところ変わってここは長ぱちゅりー群れ。 新たに広くなったぷれいすへと移住した長ぱちゅりーたちは、現在大混乱にある長れいむのたちの群れと違い、 順調に越冬の備えを終えつつあった。 特に大きな問題もなく、これならば無事計画通り上手くいきそうだと思っていた矢先、 突如として長れいむの群れに所属していた少数のゆっくりたちが長ぱちゅりーの下へとやってきたのだ。 何事かと身構える長ぱちゅりーだったが、やってきたゆっくりの口からは以外な言葉が飛び出した。 なんと、自分たちを長ぱちゅりーの群れに加えて欲しいというのだ。 「かんぶまりさはばかだよ!にんげんさんのぷれいすには、ぜったいにはいっちゃいけないって、むかしからおきてできまってるのは、 にんげんさんは、とってもつよくて、ゆっくりじゃぜったいにかてないのがりゆうなのに! にんげんさんのぷれいすをうばおうなんて、じさつこういだよ!」 「おさのれいむはおろかものよ! まだ、あのおやさいはたけにしゅうちゃくしているの! まえまえからおかしいとおもっていたけど、こんかいのけんでかくしんしたわ! たぶん、きっと、おやさいはかってにははえてくるものではないのよ!」 「あのかんぶありすはぶきみなのぜ! きっと、なにかよからぬことをかんがているのぜ! そしてそれはきっと、むれのゆっくりではなく、じぶんのゆっくのためなのだぜ! そんなかんぶはしんようできないのぜ!」 口々に長や幹部たちの不満を言うゆっくりたち。 だがそれらの不満は実に正鵠を得いていた。 「むきゅ!いいたことは分かったわ! でも多少不満があるとはいえ、群れを抜けるのは長に対する裏切りではなくて?」 「べつにうらぎったわけじゃないよ!むしろうらぎったのは、おさたちのほうだよ! まりさたちだって、いままで、おさやかんぶたちのむちゃくちゃに、さんざんがまんしてきたんだ! でもそのけっかが、おさたちとのしんじゅうだなんてじょうだんじゃないよ! まりさたちだって、べつにすきであのむれにうまれたわけじゃない! だいいち、むれをでていって、ほかのむれにはいっちゃいけないなんておきてはないからね! わるいことをしているつもりはないよ!」 「まっ、たしかにそれは道理かもね」 長ぱちゅりーは頷く。 「それにまりさたちだって、ただでむれににいれてもらおうなんておもってないよ! みんな!あれをだしてね!」 「「「「ゆゆ!」」」」 集まったゆくりたちが懐から何かゴソゴソと取り出す。 「あら!」 「みょん!あれは!」 「わかるよー!おやさいだよー!」 そう、集まったゆっくりたちが取り出したのは、かつて畑に生えていたお野菜だった。 「もしものときのために、たべずにとっておいたんだよ! このおやさいを、すべてわたすから、ぱちゅりーのむれにまりさたちをいれてね! そもそもまりさたちは、ぱちゅりーのむれにいれてもらったからといって、なにからなにまでせわになるきはないよ! えっとうのそなえぐらいかくじでちゃんとしている! ただ、このままあのむれにいるとゆっくりできなそうだから、ぱちゅりーのむれでほごしてもらいたいんだ!」 切実に訴えるゆっくりたち。 集まったゆっくりたちは、長れいむの群れにあっても、お野菜を食い散らかさずにきちんと越冬の備えをしていたごく少数のゆっくりたちだったのだ。 先見の明があったこれらのゆっくりたちは、これ以上あの群れに留まっているのは危険と考え(越冬の準備をしていないゆっくりたちに食料を力ずくで強奪される可能性が高い)、 長ぱちゅりーの群れへと移住を決意したのだ。 「むきゅ!なるほどね!ちゃんと考えあってのことらしいわね! わかったわ!あなたたちの、群れへの移住を許可します! ちぇん!みんなを群れに案内してあげて!」 「わかったよー!みんなこっちだよー!」 「「「「ゆっくりありがとね!」」」」 幹部ちぇんに連れられて、ぞろぞろと群れに入っていくゆっくりたち。 皆一安心といった表情で、笑顔だった。 「みょん!いいのかみょん? あんなにかんたんに、うけいれて? もしかしらた、れんちゅうはすぱいかもしれないみょん!」 幹部みょんが警戒するように言う。 「考えすぎ……とまでは言わないけれど、その可能性は限りなく低いわね。 越冬準備不足で混乱している長れいむたちの群れが、少数とはいえ越冬できるだけの食料を持たせてゆっくりを送り込んでくるなんて、 そんなこととても考えられない。 第一私たちの群れの一体何をスパイしようというの? 長れいむの様子を聞く限りじゃ、未だにはめられたことにすら気づいてないみたいじゃない?」 「みょん!そういわれてみればそうだみょん!」 納得したように頷く幹部みょん。 さて、今更あえて説明するまでのないことだが、一応ここでネタばらしをしておこう。 今、長れいむの群れを襲っている混乱。 その根源は長ぱちゅりーたちの策略によって引き起こされたものである。 かねてから奴隷か、戦争かの二択を迫っていた長れいむの無茶な要求に困り果てていた長ぱちゅりーたちは、 この現状を打破するためにある一計を案じた。 それこそがこの、土地のこうっかん作戦である。 そのやり方はこうだ、まずは今まで長い間群れの奥で隠しながら栽培していたお野菜の情報を大々的に流出させる。 この情報を早速耳にした長れいむたち幹部一同は、案の定お野菜畑にやってきて、物欲しそうな目をしだす。 そこで、長ぱちゅりーは長れいむに、この土地が欲しくないかと持ちかけるのだ。 ここで大切なことは、長れいむ一匹のみと交渉することである。 これには二つの意味がある。 その一つは、長れいむと幹部たちの不和を煽るため。 幹部ぱちゅりーは、風の噂で長れいむと幹部たちがあまり仲がよくないという話を知っていた。 また、定期的に開かれる群れの会議でも、幹部まりさ幹部ありすは長れいむに渋々従っているような節が見られていたのだ。 これを最大限利用するために、長れいむのみを交渉相手に指名し、幹部たちの嫉妬や功名心を煽ったのだ。 理由の二つ目は、やはり長れいむ一匹のほうが格段に交渉がやりやすいからである。 特に戦争の際に、長れいむだけを狙う等の話は、二匹だけの密談の間でないと話題に出しづらい。 仮に出しても、幹部二匹に押し切られてしまう可能性が高い。 ゆえに長ぱちゅりーとしては、長れいむと一対一で交渉することは重要な意味があったのだ。 そして最後の難関としては、実際に長れいむが土地の交換へと応じるかという問題があった。 この部分だけは本当に賭けだった。 もし長れいむが自身の犠牲をいとわずに、戦争を選択していたらと思うとゾッとする。 当然その可能性は0ではなかったのだから。 だが、何度かの会議で長れいむの性格をある程度熟知している長ぱちゅりーは、 かなり高い確率で長れいむが土地の交換へ応じると踏んでいた。 そもそもの前提として長れいむの側だって、戦争はなるべく避けたいのではないか? そう長ぱちゅりーは推測していたのだ。 もちろんそう考える根拠はある。 長れいむが提案した合併奴隷法を長ぱちゅりーが最初に断ってから、最終的に長れいむが戦争を宣言するまでに、 随分と間が開いているというのがその理由だ。 長れいむの短気で幼稚な性格を分析するに、もし戦争というカードが自由に使えるのならば早々に、 それこそ始めに長ぱちゅりーが始めに要求を断ったときに使っているのではないか? それをせずに、何度もまどろっこしく、ゆっくりできない交渉を長れいむにしては我慢強く続けたということは、 戦争は向こうにとっても都合がよろしくなく、なるべくなら避けたいものだということの証拠に他ならない。 以上の推論をもとに、長ぱちゅりーは強気の勝負にのぞんだ。 そして結果はごらんの通りである。 長ぱちゅりーと長れいむは、野菜畑と広大な土地とを交換した。 この交換は双方が満足いくものだったが、実際の価値はとても釣り合っているものとはいえない。 いくら野菜が生えているとはいえ、少量の土地と広大な土地ではとても同等ではないだろうことは明らかだ。 にもかかわらず長れいむが交換に応じたのは、この土地を『お野菜が勝手に生えてくるゆっくりぷれいす』と勘違いしているからだ。 一般的にはゆっくりに、お野菜は勝手に生えてこないという事実を認識させるのは難しいとされている。 過去には何度もゆっくりに、お野菜が勝手に生えてこないということを教えよう、という試みが話として伝えられ、 そのたびに結局は失敗に終わったり、あるいはこんな簡単なことを悟らせるのに、割に合わない苦労を強いられてしている。 この最大の原因は、ゆっくりたちがお野菜が勝手に生えてこないということを理解できないのではなく、理解しようとしないことにある。 ゆっくりがお野菜は勝手に生えてくると強く認識しているのは、そちらのほうがゆっくりにとって都合がいいからにほかならない。 だからゆっくりは口をそろえてそう主張するし、そう信じる。 どれだけ現実を見せ付けてもそう簡単に考えを変えようとしない。 そして長れいむの群れのゆっくりたちもその例にもれず、ほとんどが理解しようとしないゆっくりだった。 だから長ぱちゅりーはそこを逆手に取ったのだ。 今まで秘かに栽培していた野菜畑を、ある日突然生えてきたと偽り、まんまと長れいむたちの広大な土地と交換した。 予想通り長れいむたちはお野菜は勝手に生えてくると信じ込み、そろそろ冬が近いというのに越冬の準備を怠った。 そして必然的に畑の野菜が減っていくにつれ、長れいむは徐々に求心力を失い、 代わりに幹部まりさ、幹部ありすが台頭することにより群れは空中分解することとなる。 さらにに幹部まりさが群れの約半数のゆっくりを連れ、人間の領土に攻め込むとう暴挙に出たために、群れは大きく弱体化。 とどめとばかりに僅かに残ってた優秀なゆっくりたちも、全て長ぱちゅりーの群れへと亡命したことにより、現在長れいむの群れへと残っているのは、 駄ゆっくりばかりという状態だ。 正直ここまでの結果は長ぱちゅりーとて予想してなかった。 当初の予定では、越冬に失敗させ、長れいむの群れの国力を長ぱちゅりーの群れと同等程度まで削ぐ、くらいの腹積もりであった。 だが今や長れいむの群れは半壊滅状態にある。 仮に戦争となっても確実に勝利できるだろう。 いや、わざわざ手を下さなくても、春まで待ってれば勝手に越冬失敗して滅びるに違いない。 それもこれも全ては長ぱちゅりーが土地のこうっかんを促したからだ。 だが同情はしない。 もとはと言えば、長れいむが土地の合併奴隷法なんて馬鹿げた要求を迫ったからこんなことになったのだ。 要するに自業自得だ。 そして長れいむは今でも自分の過ちに気づかずに、畑の前でお野菜が勝手に生えてくると信じ込んでいるらしい。 まあ、そんなに勝手に生えてくると信じたいならば、勝手に信じていればいいのだ。 決して勝手に生えてくることのない畑の前で、延々と信じ続ければいい。 どれだけあからさまな真実を突き付けられても、いまだに生えてくると信じ、畑の前で祈っているという長れいむは、 愚か、いやむしろ憐れですらあった。 「むきゅ!れいむはどうやらもうだめね、まりさも人間さんのところに攻め込むなんてバカげたことをするわ」 「みょん!でもそんなことしてにんげんさんのいかりにふれないみょんか?」 最もな疑問をもらす幹部みょん。 「多分……大丈夫だと思う……一回くらいなら……。 山狩りは時間と手間がかかるから、めったなことではやらないと聞いたわ。 でもほとぼりが冷めるまでしばらくの間は、いかなる理由があろうとも山を下りないように群れのみんなに徹底しておく必要があるわね」 「りょうかいしたみょん!」 頷く幹部みょん。 実際今からでは手の打ちようがない。 人間がどう出るかについては運を天に任すしかないのだ。 「幹部まりさのことはもうしかたないとして、あと残っているのは幹部ありすね。 亡命してきたゆっくりたちの話だと、いまだに何かよからぬことを考えてるらしいから、要警戒しておかないと」 「みょん!どうせたいしたことじゃないみょん!」 「だといいんだけれど……」 若干不安気に言う長ぱちゅりー。 ゲスゆっくりというのは、時に正常な理屈からでは全く想像もつかないような行動を取ることがある。 ゆえにそれらの行動を予想するのは難しい。 たとえ大した脅威ではないとわかっていても、何が起こるかわからないというのは不安なものなのだ。 こうして一抹の不安を残しつつも、長ぱちゅりーの群れは順調に越冬の準備を進めるのであった。 そしてまた少し月日が流れ、いよいよ越冬が目前と迫りつつあった頃。 「はえてきてね……おねがいだよぉ! おやさいさん、ゆっくりしないではえてきて!れいむをたすけてね! なんでこんなにおねがいしてるのに、はえてきてくれないのぉ! いじわるしないでねぇ!どうして!どうしてなのぉ! れいむなにもわるいことしてないよぉ!いまならゆるしてあげるよぉ! だからはてえてきてねぇぇぇぇ!ゆっくりしないで、はえてきてぇぇぇぇぇ!」 今ではもうすっかりお野菜を食いつくしてしまい、ただの荒地となった畑にて、 ぶつぶつと念仏のように懇願を繰り返す長れいむの姿があった。 長れいむはすっかりやせ細り、薄汚れ、その目には生気というものがなかった。 最後のお野菜を食いつくしてからもうだいぶ日が経つ。 その間全く食事をしていないのだからこの衰弱は当然だ。 今までお野菜食い放題で贅沢三昧していた長れいむは、いまさら狩に行くような生活には戻れない。 できることといえばこうして畑で無駄な祈りを捧げることぐらいなのだ。 ところで、今この畑には長れいむの姿しか見られない。 他にいたゆっくりたちは今では長れいむを完全に見限り、幹部ありすについていったからだ。 つまりは事実上今の長れいむは一人ぼっちであり、もう長でも何でもないただの駄ゆっくりに成り下がったというわけだ。 ここまできてしまえば長れいむは群れのゆっくりたちに、こんな事態になったことに責任として制裁されてもおかしくない状況である。 だがそんなことにはならず、一匹畑に放置されたままでいるのは、今では群れの実権を完全に握っている幹部ありすによって、 長れいむに手を出せば自分らが容赦しないと宣言したからである。 本人は知る由もないが、この宣言によりかろうじて長れいむの命は繋がっている状況であった。 では何故幹部ありすはこんな宣言をしたのか? 長れいむの身を案じて? そんなわけがない。 全ては自分のためである。 幹部ありすは物陰から秘かに、ぶつぶつと畑に呟いている長れいむを覗き見る。 「ゆほほほほほ!ころあいねぇ! それじゃ、そろそろいこうかしら!」 じゅるりと舌なめずりをし、その場を離れる幹部ありす。 向かう先は長ぱちゅりーの群れ。 今まで不気味に沈黙していた幹部ありすが、ついに動くときがきた。 「おさーたいへんだよー!むこうのむれの、かんぶありすが、おさとかいだんをしたいって、やってきたよー! いま、いりぐちのところでまたせてるけれど、どうするのー!」 おうちでゆっくりしていた長ぱちゅりーのところに、幹部ちぇんの声が響き渡る。 「みょん!とうとうきたみょんか! しかしいったい、いまさらなんのようなのかみょん!」 その場に一緒にいた幹部みょんが疑問を口にする。 「さぁ? 単純に考えれば、越冬用の食料の援助要請かしらね? もしそうだとしたら、少しぐらいは援助してあげてもいいと思ってるわ、 あの群れの勢力を削ぐという当初の予定は十二分に達成されてるしね。 まあどんな話がくるにしろ、いまさらこちら側がピンチになるようなことはないとは思う。 でもこういう楽勝ムードのときこそ油断は禁物よ。 最後まで用心していかないとね」 「こころえたみょん!」 長ぱちゅりーと幹部みょんが気を引き締めていると、外からは何か揉めるようなけたたましい声が聞こえてきた。 「まっ、まってねー!まだおさはあうっていってないよー! かってにはいってこないでねー!」 「うるさいわね!このいなかもの!おまえみたいなしたっぱじゃ、はなしにならないっていってるでしょ! さっさとそこをとおしないさい!」 どうやら幹部ありすは、幹部ちぇんたちの静止を振り切り、勝手に群れ内に進入してきているようだ。 「やれやれ、何やってるのかしらまったく」 どういう状況になっているのか、嫌でも想像できてしまうような展開に溜息をつきながら、長ぱちゅりーおうちから出る。 するとそこには案の定、幹部ちぇんと群れのゆっくりたちに取り押さえられている幹部ありすの姿があった。 「おとなしくするんだよー!わかれよー!」 「さわらないで!けがらわしい!はなしなさいよしたっぱ!ありすをだれだとおもってるの! ありすはおさにはなしがあるのよ!それをとめるとはなにごとよ!これはじゅうようなもんだいなのよ!」 取り押さえられたままジタバタともがいている幹部ありす。 何があったかは聞かなくても大体分かる。 大方やってきた幹部ありすが、取り次ぐから待ってくれといったゆっくりの静止を聞かずに、 勝手に群れに入ろうとしたところを取り押さえられたのだろう。 バカバカしい話だ。 「ほら、ありす、お望みの通りやってきてあげたわよ! だから暴れるのをよしなさい! あなたたちも放してあげなさい」 「わかったよー!」 「ゆう!」 長ぱちゅりーがやってきたことにより、おとなしくなった幹部ありすを放すゆっくりたち。 「んぼぼぼぼぼ!ごきげんよう!ぱちゅりー!あえてうれしいわ! でもあなた、ぶかのしつけがなってないようね!いきなりこのありすをつかまるなんて、ぶれいにもほどがあるわよ! こんどからは、にどとこんなことがないように、よーくいいきかせておいてちょうだい!」 自由になった幹部ありすが頬を膨らませる。 「それはありすが勝手に群れをに入ろうとしたからでしょ。 まあ、そんなことはどうでもいいわ。 何かぱちぇに話があってきたんじゃないの? さっさとその話をしてちょうだい!」 「ゆほほほほ!きがはやいのね!これだからいなかものはゆっくりしてないというのよ! まっ、いいわ! きょうはぱちゅりーにとって、とってもみみよりなはなしをもってきたのよ!」 「耳寄りな話? いきなり胡散臭いわね。 今のありすたちが、ぱちぇたちの得になるような情報を持っているとは思えないのだけれど?」 訝しげな表情の長ぱちゅりー。 「ゆふふふふ!そんなことないわ! これはぱちゅりーにとって、とってもおいしいとりひきよ! ぜったいにきいてそんはしないわ!ほら!きょうみがでてきたでしょう!」 ニヤニヤと三流セールスマンの売り口上のようなセリフを述べる幹部ありす。 対して長ぱちゅりーは早くも呆れ気味である。 「ふぅ、まあいいわ。 どうせ言うまで帰る気はないんでしょう。 だったらとりあえず言うだけ言ってみなさいな。 「んほほほほほ!そんなふうに、むりしてきょうみのないふりしちゃって!つんでれなのね! でもいいわ!ありすはとかいはだからゆるしてあげる! それじゃさっそくほんだいだけど、ねぇぱちゅりー、あなたありすたちのむれのおさになるきはない?」 「!?」 長になる気はないか? 幹部ありすの突然の提案に、驚きの気配を隠せない長ぱちゅりー。 そんな長ぱちゅりーの様子に気をよくしたのか、嬉しそうに話を続ける幹部ありす。 「ゆふふふ!きょうみをもってくれたみたいね! とうぜんよね!だってもしありすたちのむれのおさになれたのなら、ぱちゅりーは自分のむれと、 ありすたちのむれの、ふたつのむれでおさになることになる! それはつまり、このやまぜんたいのおさになるということだものね! きょうみがないはずがないわ!」 相変わらずのニヤついた笑みを顔に張り付けながら、幹部ありすはさらに続ける。 「いまありすは、たちばしょう、いちおうはかんぶのちいにおさまっているわ! でもじっしつじょう、むれをおさめているのは、あのくずれいむじゃなくて、このありすなの! あのくずれいむのしたについているゆっくりは、もういっぴきとていないのよ! すべてのゆっくりは、ありすのしはいかにあるわ! このいみがわかる?つまりは、くずれいむのおさのしょうごうは、それこそ、ただのかざりものというわけ!」 淡々と己の群れの現状を説明する幹部ありす。 「んほほほほほ!あのむのうれいむは、いまでもおやさいはたけでいっぴき、ぶつぶつとやってるわ! だから、このありすがちょっとめいれをくだせば、いともかんたんにえいえんにゆっくりさせることができのよ! そして、そのあとにのこったしたいを、ぱちゅりーにさしだせばどうなるかしらぁ? むのうなおさはしに、そしてゆいいつのこったかんぶであるこのありすが、ぱちゅりーをつぎなるおさとみとめるならば、 だれのもんくもなく、ぱちゅりーがありすのむれのおさとなるのよ! どう?すばらしいはなしだとおもわない?」 「へー!ぱちぇのために、長であるれいむをありすがわざわざ始末してくれるってわけ? しかもその長の地位を、ぱちぇに譲るですって! そりゃ随分と至れり尽くせりな話じゃないの?」 「ゆほほほほ!かんちがいしちゃこまるわね!もちろんこのありすがここまでやるからには、かわりにじょうけんというものがあるわ!」 「ふん!でしょうね!」 長ぱちゅりーが鼻で笑う。 この幹部ありすが、誰かの得になるだけの行動をするわけがないのだ。 ゆえに何か条件をつけてくることなど容易に想像できていた。 「ありすは、おされいむのくびをさしだすじょうけんとして、このありすを、かんぶたいぐうで、ぱちゅりーのむれへとくわえることをようきゅうするわ! おうちは、たっくさんのゆっくりが、かいてきにすめるむれいちばんのおおきさのものをよういして! もちろんえっとうようの、しょくりょうもわすれずにね! それから、これがいちばんじゅうようなんだけど、このありすせんようの、どれいをよういしてちょうだい! かずはそうね……おおまけにまけて、じゅっぴきていどでいいわ!そのかわり、むれいちばんのびゆっくりをよこすのよ! まっ、とりあえずはそんなとこね! これがありすのようきゅうする、さいていげんのじょうけんよ!むれひとつてにいれるとしては、はかくのじょうけんでしょ!」 「…………」 「…………」 「…………」 幹部ありすの条件を聞いた幹部ちぇん、幹部みょん、それに周りのゆっくりたちはみな黙っていた。 言葉がない。 開いた口がふさがらない 二の句が告げない。 何を言っていいか、どうやってこの幹部ありすを罵っていいのか適切な言葉が瞬時にみつからないのだ。 「一つ聞きたいたいんだけど、あなたはその条件で満足かもしれないけど、残されたれいむの群れのゆっくりたちはどうなるわけ? そのあたりのことがまるで言及されてないんだけど?」 そんな中、全く表情を変えずに幹部ぱちゅりーは問う。 実はこれは、まるで意味のない質問だ。 聞かなくてもおおよそ答えはわかっているし、たとえどのような答えが返ってきたとしても、長ぱちゅりーがこれから下す決断はかわらないからだ。 だがそれでも聞かずにはいられなかった。 「あら、なにそれ?そんなのありすのしったこっちゃないわ! だいたいれいむをころして、ひきわたしたあとなら、もうありすはれいむのむれのかんぶじゃなくて、 ぱちゅりーのむれのかんぶになるんだから、もといたむれのゆっくりたちが、しのうが、えっとうしっぱいしようがなんのかんけいもないわ! あたらしく、むれのおさになったぱちゅりーが、せきにんをもって、えっとうようのしょくりょうをわたすなり、ほうちするなりするといい! それこそ、いちかんぶであるありすのかんよするところではないわ!」 「そう、わかったわ」 全てわかった。 要するに幹部ありすは、長れいむや、群れのゆっくりたちを見捨て、利用することで自分だけ甘い汁を吸おうというのだ。 もとよりそのためだけに、長れいむを生かしておき、群れのゆっくりたちのリーダーとなったのだ。 長れいむや、幹部まりさは、ゲスで愚かでどうしようもないゆっくりだったが、まだ多少は(ほんのちょびっとだけ)群れのことも考えていた。 だが幹部ありすは違う。 一から十まで本当に自分のことしか考えていない。 そもそも幹部ありすは長や幹部の地位、あるいはお野菜ぷれいすなどにはそれ程執着心がないのだ。 無論それらがあるに越したことはない、だが幹部ありす本当の目的は自分を中心としたすっきりはーれむを作り出すことなのである。 今までに幹部となり、さらには長の地位を狙っていたのは所詮そのための足がかりに過ぎない。 ゆえに、ゆっくり以外の人間を奴隷にしようとしていた、幹部まりさの誘いになど乗るはずもなく、 この山に残ったのは、群れのためでも人間を恐れたからでもなく、自分の目的のために群れを裏切る算段を思いついたからだ。 いや別に裏切ったわけではないか。 始めから幹部ありすは、群れのことなどこれっぽっちも考えていないのだから。 全ては自分が理想とする、はーれむぷれいすを作り出すため。 そのためならば他のゆっくりがどうなろうが、知ったことではないのだ。 「ゆほほほ!しつもんはそれだけかしら!それじゃけつだんをきこうかしらね! もっとも、かんがるまでもないはなしだとおもうけど!」 「そうね、考えるまでもないわ」 「あらあら、それはなかなかに、とかいはね! ぱちゅりーとはかんぶになってからも、うまくやっていけそうだわ! じゃあ、きくまでもないことだけど、みんなのまえではっきりとこたえをせんげんしてもらえるかしら! うたがうわけじゃないけど、れいむをしまつしたあとで、やっぱりそんなはなしなかった、なんていわれるとこまるからね!」 幹部ありすは左右を見回しながら言う。 今ここに集まっているゆっくりたちを、この話の証人にしようというわけだ。 「いいわよ別に。 じゃあ答えるけど、この取引はお断りよ! 到底受け入れられるものじゃないわ! さぁ、これで話はお終いでしょ。 さっさと帰りなさい。 そして二度とこの群れ来ないでちょうだい!」 「……ゆほ?」 キョトンとした目になる幹部ありす。 あまりにも自身が予想していた答と異なるために、理解が追いつかないのだ。 「みょん!いつまでそこでぼーっとしてるみょん!ようがすんだのならさっさとでていくみょん!」 「わかるよー!そんなところでつったってられると、じゃまなんだねー!」 いつまでも静止したままの幹部ありすに、幹部みょんと幹部ちぇんが帰るように促す。 周りにいたゆっくりたちもまた、そうだそうだと同調する。 「ちょ、ちょっとまちなさいよおおおおおおおおお! なんなのいったい! ことわるって、なによ! ちゃんとありすのいっていることのいみをりかいしているの! いまなら、ありすのようきゅうした、かんたんなじょうけんをのむだけで、おさになれるのよ! それをことわるなんて、しんじられないわ!もういちどしっかりかんがえなおしなさいよ!」 ようやく頭に理解が追いついたのか、納得いかないといった風にわめきたてる幹部ありす。 しかし長ぱちゅりーはとりあわない。 「はっきり言って、あなたたちみたいなゆっくりの群れの長をやれなんて、どんなに頼まれてもごめんなのよ。 それなのに幹部にしろ?おうちを用意しろ?奴隷をよこせ? バカじゃないの? まあ、実際バカなんだからこんなこと堂々とできるんでしょうけどね」 「ゆっ、ぐっ!なによ!そんなにこのじょうけんがきにくわないの! だったら、どれいはいっぴきへらして、きゅうひきでいいわよ!けちんぼね! ほら!これでもんくないでしょ!さっさとありすとのとりひきをうけいれるといいなさいよ!」 何を勘違いしたのか、要求を譲歩し出す幹部ありす。 そもそもそういう問題の話ではないということを、どうやら理解できていないらしい。 「恥ずかしいゆっくり!」 そしてそんなふざけた態度の幹部ありすを、幹部ぱちゅりーは怒気をはらんだ一言で切って捨てた。 「もう何も話すことはないわ。 これ以上ごねるようなら、力ずくで追い出すことになるわよ!」 「ゆっ、なっ、ゆぐぐぐぐぐぐぐ!」 悔しそうに唸る幹部ありす。 見れば先程から、幹部みょんと幹部ちぇんがじりじりと幹部ありすとの距離をつめてきている。 何か不審な動きをすれば、すぐさま取り押さえにくるだろう。 多勢に無勢、周りには他のゆっくりもいるし、今幹部ありすにできることはそう多くない。 「ちきしょおおおおおおおおおお!おぼえてなさいよおおおおおおおおおおお!こうかいさせてやるわああああああああ!」 そして幹部ありすは、許された数少ない選択肢である、おとなしく帰るという選択した。 その際に言い放った小悪党が言うような捨て台詞はもはやお約束である。 事実小悪党なんだからこれは仕方がない。 こうして、幹部ありすの愚かな企みは瓦解した。 それはつまり、長れいむの群れの脅威が完全に去ったことを意味する。 この瞬間、長ぱちゅりーたちはついに群れ始まって以来の危機を乗り切ったのであった。 つづく
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前 「れいむ、ちょっといいかしら?」 毎晩恒例の会議が終わり、それぞれ自分たちの部屋に帰ろうとする中、側近ぱちゅりーがれいむを呼び止めた。 「ゆ? どうしたのぱちゅりー?」 「むきゅ……ちょっと、お話があるの……まりさとありすは先に寝ててね」 「ゆっくりわかったんだぜ! おやすみみんな!」 「ふたりとも! ねぶそくはびようによくないからむりしないではやくねるのよ!」 そういって部屋に戻っていく二匹を見送ると、二匹はゆっくりと洞窟の外へ向かった。 「ゆぅ~、ぱちゅりーったらふたりがいるのにだいたんすぎるよ~」 洞窟の外に出て早々に、れいむの態度が豹変した。 猫なで声……とでもいうのだろうか、実に気持ち悪い声でぱちゅりーに甘えだした。 実はこの二匹、こっそりと付き合っていたのである。 番いにならずに付き合うという形をとっていたのはれいむに前夫のまりさの子供たちがいるためだったが、二十匹の子供たちと当のれいむは浮気をした挙 句すっきりのしすぎで死んでしまった父まりさなど等に見限り、すっかりぱちゅりーを慕っている。 すでにこっそりと言いながらも、群れ一番賢いぱちゅりーと群れ一番子だくさんでやさしいれいむの関係にドスを除くほとんどのゆっくりが気が付いてい た。 「むきゅ~、実はれいむに話しておきたいことがあるのよ……」 「ゆ? どうしたの?」 「実はにんっしんしてるまりさ達なんだけど……」 「ゆ! あのあかちゃんがすごくゆっくりしてるまりさたちだね! きょうもみにいったらまたおおきくなってたよ!」 ぱちゅりーとれいむが言っているのは、あのお兄さんが改造したゆっくり達と同じ出産室にいた動物型妊娠のゆっくり達のことである。 あのゆっくり達はぱちゅりーの見たところ植物型出産のゆっくり達と同じ日に出産を迎える見立てだったのだが、あの地獄の出産劇の後もそういった気配 はなく、むしろ今まで以上にゆっくりとし、今まで以上の食糧をむさぼり、わずか二日で二倍近くまで肥大化していたのだ。 「ぱちゅりーの経験からすると、あのまりさ達の赤ちゃんはもう生まれてなくちゃいけないはずなのよ! それがまだ生まれていない上にあんなにふとっ ちゃってるのは……」 「ふとっちゃってるのは?」 「想像にんっしんに違いないわ!」 「な、なにそれえええええええ!?」 「むきゅ! 前の群れにもいたんだけれど、赤ちゃんが本当はできていないのに出来てるって言って、ぶくぶくと太っちゃうことなのよ!」 ぱちゅりーの言っていることは本来の想像妊娠とは違っているが、ゆっくりが想像妊娠した場合の餌の大量摂取と肥満はセットのようなものなので、ゆっ くりにとってはあながち間違いではない。 「ゆ! それはほんとうなの!」 「むきゅう…にんっしんしてからもうお日さまが二十回以上昇ったわ。あのまりさ達には赤ちゃんは生まれないのよ」 「ゆー! それじゃあみんながっかりするよ! あかちゃんがうまれるのたのしみにしてたのに!」 れいむの言うとおり、二日前の惨劇以来この群れのゆっくり達は動物型で妊娠している十匹のゆっくり達が赤ちゃんを産むのを楽しみにしていた。 ゆっくりするという行為に赤ん坊を眺めることを含めるゆっくり達にとっては、やはり普通に生まれた赤ちゃんを見たいという思いが強いのだろう。 「むきゅ! だからね……れいむ……ぱ、ぱちゅりーとれいむで赤ちゃんを作ってみんなを喜ばせましょうよ!」 この言葉にはれいむも驚いたようで、はっと目を見開いた。 いきなり子作りをしようと言われたのだから無理もないが。 「も、もちろんだいさんせいだよぱちゅりー! ゆっくりあかちゃんがうまれればみんなげんきになるよ!」 だがぱちゅりーの言葉と同じくらい素早くれいむは返事をしていた。 どうやらぱちゅりーがこういうのをずっと待っていたらしい。 「む……むきゅー! れ、れいむー!」 先ほどお兄さんと妖怪兎が賢い賢いとほめちぎっていた二匹とは思えない様子で交尾を始める二匹。 もともと自分たちが敷いたすっきり制限でいろいろと溜まっていたのだろう。 ぺにぺにのない二匹はお互いのモチモチとやわらかい頬をやわらかく、それでいて激しくすり合わせる。 「すーり! すーり! ぱ、ぱちゅりーのほっぺたすごくふわふわでゆっくりできるよー♪」 「むきゅぅ♪ れいむのほっぺたももちもちであったかいよぉ♪ すーりすーり♪」 ヌメヌメとした液体を体から染み出し、洞窟の前で交尾にいそしむ二匹のゆっくり。 今まで群れの体面や何やらですっきりできなかったのだから無理もないが、群れの仲間の出産状況を理由にすっきりするとは、この二匹ゲスの一面があっ たのかもしれない。 「ぱぱぱぱ、ぱちゅりー! もうがまんできないよー!」 「むむむむむむきゅー! ぱちゅりーもだよおおおおお!」 だからなのか、群れでトップクラスに賢く、群れでいちばん狩りのうまい二匹は交尾に夢中でついに気がつかなかった。 「「すっきりー!!!」」 自分たちの背後にいる…… 「むきゅう♪ れいむううううううう、ゆっくりした赤ちゃんよぉ!♪」 「ふとくてしっかりしたくきだね! これならゆっくりしたこがうまれるよぉ♪」 「むきゅぅ♪ おちびちゃんたちにも妹ができるね!」 「れいむはすごくうれしいよ! ゆっくりしたこにそだっ」 ぶちい!!!! 「むぎゅ!」 「あ、ああああああああああ! あがぢゃんがああああああああああ!」 一人の鬼意惨に。 「い~~~~~~い実ゆっくりだなあああああ! ちょっと貰うぞ!」 「むびゅうううううううううううううううう! ぱちゅりーのあがぢゃんがああああああああああああ!」 「ゆっぐぢでぎばいにぶげんはじねええええええええええええええ!!!」 久しぶりのすっきり。愛おしい相手との初めてのすっきり。その末に授かった赤ちゃん。 その茎を勢いよく引きちぎ李、恍惚の表情を浮かべるお兄さん。 光学迷彩を解いたその姿は、久しぶりの直接的な虐待にヘブン状態なのか全裸だった。 「その叫び声最高だよ! さすがお兄さんの大好きなド饅頭!」 そう叫ぶが否や、二匹のゆっくりの口に手を突っ込んで舌をつかんで持ち上げる。 「「んんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!」」 「兎からお前らを始末する許可はもらっている! すでにお前らの餓鬼どもも確保済みだあああああああああああああああああ!」 『私を”鬼意惨”と見込んで依頼を下さったのならば、信頼していただきたい』 『わかったウサ。幹部たちを殺して直接群れに介入するあなたの計画、了承するウサ』 そう、お兄さんが妖怪兎に許可を求めたのはぱちゅりー達を殺し、飾りを用いてゆっくりになりすまして介入するという、群れ虐待における非常にオーソ ドックスかつ危険なものだったのだ。 通常飾りで個体を識別し、飾りさえついていれば人間でさえ仲間と認識してしまうゆっくりだが、ドスまりさなどの比較的頭のいい個体には見分けられて しまう。 だが、一週間以上この群れを監視したお兄さんは気が付いていた。 この群れのぱちゅりーに対する過剰ともいえる期待と信頼に。そしてドスまりさの馬鹿さに。 だからこそ、ドスと幹部ゆっくりによる軋轢が生まれる前に群れをコントロール出来るこの手法を提言したのだ。 そして直接的な虐待のお墨付きをもらったお兄さんはヘブン状態になり、全裸に光学迷彩スーツを着込むとぱちゅりーとその恋人である幹部れいむを虐待 するために洞窟に向かったのだ。 そして鬼意惨と化したお兄さんの頭の中にあるのは、一週間以上にわたる幸せなゆっくり達を見続けたことにより溜まりに溜まったフラストレーション、 それだけである。 「なーにが依頼じゃ! なーにがじっくりじゃ! あの兎が勝手なこと言いやがって! 俺はもっとシンプルな虐待がしたいんだよ!」 「ばべでえええええええええええええ!」 「じだがいだいいいいいいいいいいいいいいいい!」 「今夜に限っては依頼は関係ねええええええええええええ! ひゃああああああああああ! 虐待だあああああああああああああああ!」 深夜二時。 ゆっくりの群れを虐めるために作られた森の中に、お兄さんの奇声が響き渡った。 そしてこの夜、森の賢者(笑)と称えられたぱちゅりーとれいむの地獄が始まった。 「ほらよ、ついたぜ!」 「ぶぎゅべ! むぎゅうううううううう!」 「いだいよおおおおお! ゆゆゆ!! ばがな”じじいばれいぶだじをおうじにがえじでね”! ……ゆ!?」 全裸のお兄さんに捕まれ小屋についた二匹が最初に見たのは、床にある真っ黒な塊とそれに生い茂る緑色の茎だった。 普通のゆっくりなら気がつかなかったかもしれないが、頭のいい二匹はすぐに気がついたようだ。 「おじびじゃんだじがあああああああああああああああ!」 「どぼじでごんなごどにいいいいいいいいいいいいいいい!」 「そのとおおおおり!!! てめえらが気持ちわりい逢引ごっこで交尾してたんでなあ! 親切なお兄さんが餓鬼どももすっきりさせてやったんだよ!」 相変わらずのハイテンションで叫んだお兄さんは、れいむの子供たちのなれの果てから赤ゆっくりのなり始めがついたままの茎をブチブチと引きちぎると 、まな板の上に乗せた。 「む、むきゅう! ちびちゃん達の赤ちゃんがついた茎を千切らないでね! まだ茎を餡子にさせば大丈夫だからやめてね!」 ぱちゅりーはお兄さんの行為に即座に反応したが、れいむの方は「ちびちゃんちびちゃん」と呟きながら餡子の塊にくっついている。 強すぎる母性のせいで合理的判断が取れなくなるれいむ種の典型的行動だった。 「はーっはっはっは! だーれがやめるかゲスぱちゅりーが!」 「むきゅ! ぱちゅりーはゲスじゃないよ! ゆっくり訂正してね!」 「いーやゲスだね! 自分ですっきりを制限しておきながら仲間が出産しないのをいいことに自分達はすっきりしちまうような奴はゲスなんだよ!」 「むぎゅ!」 うろたえるぱちゅりー。どうやら自覚はあったようだ。 「で、でもそれはしょうがないのよ! 群れのみんなを励ますためにも赤ちゃんは必要だったのよ!」 「ぞうだよ”! ぞでなのにぱじゅりーをげずよばばりするじじいはじねえええええええ!」 立ち直ったのか一緒になってお兄さんに罵声を浴びせるれいむ。 群れのゆっくりと同様に、いやそれ以上に信頼し、尊敬しているぱちゅりーを馬鹿にされたのが許せないのだろう。 「うるせえ!」 だがお兄さんにはそんなことは関係ない。 素早くスプーンをつかむと、それでれいむの両目をくり抜いた。 「ぎゃああああああああああああああ! でいぶのがばいいいおべべがあああああああああああああ!!」 「む、むぎゅううううう! ぷぺ!」 愛しいれいむに起きた惨状に思わずクリームを吐き出そうとするぱちゅりー。 しかしお兄さんの素早い腕がぱちゅりーの口をホチキスでふさぎ、それを許さない。 「落ち着けぱちゅりーさんよお。群れのやつらなら明日生まれる赤ゆっくりのおかげでしっかりとゆっくりできるさ!」 「…!!!」 「どぼいうごどなのおおおおおお! そうぞうにんっしんじゃだいのおおおおお!」 「想像妊娠? んなわけあるか! あいつらの出産が遅いのは俺が出産を遅らせる薬をあいつらの餌に混ぜ込んだからだよ」 お兄さんの言葉に絶句する二匹。 「それだけじゃない! 二日前に生まれた赤ん坊どもをああいう風にしたのも俺だよ」 「!!!んー!!!! んんんー!」 「どぼじでぞんだごどずるのおおおおおおおお!」 「それはなあ……お前らを虐待するためだあああああああああああああ!」 「ぎゅべえええええええええええええええ!」 ネタばらしで二匹のリアクションをたっぷり楽しんだお兄さんは、本日のメイン虐待を始めた。 「さあ! ゆっくりクッキングの始まりだぜ!」 「やべでええええええ! だずげでぱちゅりいいいいいいい!」 「んんーーーーー!!!!」 「まずはゆっくりの皮を剥きまーす!」 「ぶぎゃあああああああ! でいぶのもじもじのおばだがああああああああ!」 れいむの体の表面を包丁で器用に向いていくお兄さん。 肌色だった表面みるみるうちに白い饅頭になっていく。 「そして虫なんかをさんざん食べて汚い口をえぐりとりまーす! リアクションがほしいので喉は残しまーす!」 「むがーーーーーーー!!!! がーーーーーーー!」 「そしてさっき子ゆっくり達を交尾させて作った実ゆっくり付きの茎を強火で炒めまーす!」 「はへへーーー! ははひふへはひほーーーーー!(やめてーーー! まだしんでないよーーーーー!)」 喉だけで器用に叫ぶれいむ。 薄情なことにぱちゅりーは目と口の部分に穴のあいただけの饅頭になったれいむを見て、気絶してしまっている。 「塩こしょうで味を調えて完成! ゆっくりの実ゆっくり付き茎炒め!」 「んはーーーーーーーーーーーーーーーー!」 「そしてリアクションに飽きたれいむは温い油に入れて二時間かけて揚げ殺しまーす♪」 「ひひゃああああああああああああああああああ!」 油の入った鍋に突っ込まれ、ふるえながらゆっくりと油鍋の下から伝わってくる熱に怯えるれいむ。 お兄さんの言うとおり、すべてを失った悲しみを抱えながらすさまじい恐怖と狂うに苛まれあげ饅頭になるのだろう。 「さあて……やっぱりただ直接やるだけだとすっきりはするけどあんまり達成感はないなあ……」 すっかり溜まっていたフラストレーションを吐き出して通常に戻ったお兄さん。 イライラ解消のためだけに計画変更を認めさせられた妖怪兎はとんだ迷惑だろう。 「なんだかんだ兎には文句言ったけど……やっぱりじっくり虐待っていいよなあ……」 呟きながら静かに気絶したぱちゅりーを手に取るお兄さん。 「というわけで安心してくれぱちゅりー。あの群れは俺がしっかりとゆっくりさせてやるよ」 ひどくやさしい声で囁きながら、ぱちゅりーの帽子を取り上げるお兄さん。 そんなお兄さんの言葉にも、命より大切な帽子を取られたことにも、濁りきったぱちゅりーの眼は何の反応も示さなかった。 (むきゅう……ここは?) 体中に感じるズキズキとした痛みでぱちゅりーは目を覚ました。 愛しいれいむがひどい目にあわされているのを見て、思わず気絶してしまったところまでは覚えているのだが、その後は…… (むきゅ! そ、そうだ! れいむ! れいむは!) れいむを探そうと慌てて辺りを見渡そうとするぱちゅりーだが、なぜだかあたりは真っ暗で、そのうえ声も出すことができない。 (ど、どういうことなのおおおおおお! れいむううううう! ドスうううううううう! みんなああああああああ!) 必死に声を張り上げ、飛び跳ねようとするが、体に全く力が入らず、それはおろか自分の体が物に触れている感覚すら感じることが出来ない。 (むきゅうううううう! どういうことなの!) 慌て、混乱するぱちゅりー。するとその時、懐かしい、そして今のパチュリーにとって救世主ともいえる声が聞こえてきた。 「ぱちゅりー! ゆっくりおはよう!」 ドスまりさの大らかでとてもゆっくりとした声だ。 ぱちゅりーはようやくこのゆっくり出来ない状態から解放されると思い、ドスに挨拶を返した。 (ゆっくりおは)「ゆっくりおはよう! ドスまりさ!」 だが、その耳に聞こえたのは自分の声ではなく、昨日れいむとちび達を殺した憎むべき人間の声だった。 (む、むきゅうううう! ど、どうしてあの人間がいるのおおおおお!) 「ゆ! ぱちゅりーどうしたの? なんかおおきくなったみたい!」 そのドスまりさの声でぱちゅりーは気がついた。 あの人間は帽子を取り上げて自分になり変っているのに違いないのだ。 (むきゅう! 騙されちゃだめよドス! あの人間が群れに行ったらみんなゆっくり出来なくなるわ!) 帽子でのごまかしが聞くのは概ね普通のゆっくりまで。 ドスともなれば大きさなどに違和感を感じてそれに気がつくことが出来るはずだ。 ぱちゅりーはドスまりさに一縷の希望を託したが……。 「実は夜の内にぱちゅりーには体が生えてきたんだよ。これでもっとみんなをゆっくりさせてあげられるよ!」 (ああああああ! だめよドス! だめよおおおおおおお!) だが、ぱちゅりーの願いは、 「すごいねぱちゅりー! どすはぱちゅりーみたいなゆっくりがそっきんでとってもうれしいよ!」 愚かなドスまりさには届かなかった。 (どすううううううううううううう!) 「ありがとうドスまりさ! これもドスまりさのおかげだよ! これはそのお礼だよ!」 「ゆ! なにそれ! しろくてまんまるでとってもゆっくりしてるよおお!」 (むきゅ!) しろくてまんまる。 ドスのその言葉にぱちゅりーはあることに気がついた。 自分がドスと自分になりすました人間の近くにいるのに、なぜドスは帽子がないとはいえ自分に全く反応しないのだろうか。 その時、最後に見たれいむの状態を思い出す。 目を抉られ、体中の皮を削られてまるでお饅頭のようになったれいむの姿を……。 (むきゅううう! まさか! まさかあああああああ!) 「これは森で見つけたお饅頭だよ。れいむ達が見つけてくれたんだ、ドスまりさにあげるよ。」 「ゆうううう! ぱちゅりーありがとうねええええ! 本当にぱちゅりーはゆっくりしたそっきんだよおおお!」 そう言って舌でお兄さんが抱える饅頭をからめ捕るドスまりさ。 その表情は甘い物が食べられる喜びでとてもゆっくりとしていた。 (むきゅううううううううう! ドス!やめてえええええええ! ドスうううううううううううう!) 「ゆーっくりいただきまーす! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 (いぎゃああああああああああああああ! ぶぎゅううううううううううううううう!) 少し間の抜けた、けれどもゆっくり達のことを第一に考えているドスまりさ。 前の群れでも、そして今の群れでも頑張っている、尊敬すべきドスまりさ。 (いぢゃいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! どすうぅぅうううううぅううううう……………) そのドスまりさに咀嚼されて、目と口と皮を失ったぱちゅりーは苦しみながら死んでいった。 「美味しかったドスまりさ?」 「とってもゆっくりできたよぱちゅりー!」 「それはよかった。さあ、朝礼を始めようドスまりさ」 「ゆっくりわかったよ! あれ、そういえばれいむとおちびちゃんたちはどうしたの?」 「ああ、れいむ達には新しい餌場を探しに行ってもらったんだよ。少し群れを留守にするから待っててあげようね」 「ちびちゃんたちとおとまりだね! ゆっくりわかったよ! さあ、みんなをおこすよお!」 成長したそっきんと働き者の幹部たち。 そしておいしいプレゼントにとてもゆっくりした気持ちで、ドスまりさは声を張り上げた。 「ゆっくりしていってね!!!」 ※どうも、えらい間のあいた割には虐待模写が少なくてすいません。 一応話の筋は考えてあるので、暇を見つけてじっくりと描き上げますので、もうしばらくお待ちください。 このSSに感想を付ける
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ゆめみるれいむときゃっしゅさん 39KB 自業自得 差別・格差 野良ゆ 赤子・子供 現代 内容の割に長いです 深夜。住宅街から外れた、とある道路脇。 「あ~、ヤバイ。これはヤバイわ・・・」 ブツブツの何かを呟きながらおぼつかない足取りで歩く男が一人。 どう見ても酔っ払いだ。 「う・・・う・・・お゛ええ゛ぇぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 そのうち、電柱に寄りかかって吐き出した。最悪だ。 しかし男は少しスッキリした様子で、足取りも気持ち軽く歩き出した。 そんな男の前に――― 「にんげんさん、どう?すこしよっていかな~い?」 「「ゆっくちきゃくひきしゅるよ!!!」」 妙な口調のれいむと、夜中にあるまじき大音声の赤れいむ二匹が、話しかけてきた。 「あ、ゆっくり?・・・そこのやつならくれてやってもいいぞ」 電柱の根元にある、己の吐瀉物を指差す男。何処までも最低だ。 「ゆ!!?いらないよ!なにかんがえてるの!? れいむたちは“しょーばい”しにきたんだよ!!」 「なんだ、物乞いじゃないのか…で、なんだ、商売か・・・何売んの?」 男は律儀に、親れいむの話に耳を傾ける。 最も話をちゃんと聞いているのかは怪しい物だが。 しかしそんなことはゆっくりには関係がない。かまわず話を続ける。 「れいむたちがうりたいのは・・・これだよ!!」 れいむが得意げに目線を寄越した先にあったのは 「はやきゅきちぇにぇ!ぐじゅはきりゃいだよ!!」 「あんまちしちゅこいちょしぇーしゃいしゅるよ!!」 「ゆ…ゆ……やめちぇ、ゆっくちあるきましゅから…」 「「ゆっくちちないでにぇ!!このぐじゅ!!!」」 「はい……」 二匹の赤れいむに、ぶつかられるように押されて出てきた一匹の赤ありすだった。 赤れいむと比べて身体は小さく、どう見ても元気がない。 そんなありすをゴミを見るような目で一瞥して、親れいむはこちらに向き直った。 「さあ、このやくたたずをすきなようにしてもいいよ! おれいはきゃっしゅさんでいいからね!!」 「「ちょーらいにぇ!!」」 「うぅ・・・おねがいしましゅ・・・」 そう言われても『はいそうですか』と言えるわけがない。 男は戸惑いながら、親れいむに聞く。 「なんで急に…?しかもそのありすは誰だ? 役立たずを好きなようにしていいって……」 「ゆふん!まぬけなにんげんさんにもわかるようにせつめいしてあげるよ!!それは(割愛します)」 例によってゆっくりの説明は長ったらしくて解りにくいので、訳した物で説明しよう。 「れいむはレイパーに襲われたシングルマザーだよ! れいむに似たおちびちゃんは可愛いけど、レイパー似のチビはいらないよ!! でもゆっくり殺しはできないから、せめて何とかして役に立ってもらうよ!れいむは頭が良いね!!」 以上である。 「そーですかー。・・・でもなんで俺なんだよ。ゆ虐趣味とか無いんだけど」 「にんげんさんのなかには、ちいさいこがすきなにんげんもいるってきいたよ! だからそういうにんげんだったらきっとうれるとおもったよ! にんげんさんはなんだかゆっくりしてそうだったからこえをかけただけだよ!!りかいできた?」 どうやら、酔っ払っていたので気分が良さそうに見えたから、というだけらしい。 「さあ、どうするの?ゆっくりできるちゃんすだよ!すきにしてね! ぼこぼこにしてもいいし、すっきりのどうぐにしてもいいよ!!」 「「しゃっしゃちょこのぐじゅでしゅっきりしちぇにぇ!!!」」 なお自慢げに聞いてくるれいむたち。 勿論答えは――― 「いや、いらんわ」 NOである。 「ど、ど、どぼじでぇぇぇ!!?」 「おかーしゃんにょかんぺきにゃしゃくしぇんにゃにょにぃぃぃ!!」 「ゆっくちしゃしぇちぇぇぇぇ!!」 「・・・ありしゅひどいこちょしゃれないにょ?」 騒ぐ饅頭三匹に、安堵する者が一。 男はかまわず疑問に答える。 「だから俺にゆ虐趣味は無いっての。 しかも小さい子が好きって・・・まあ否定はしないけど。 それでも赤ゆっくりはねーよ。第一俺は紳士だし。HENTAIな真似とかしないし」 「そんなぁ・・・じゃあどうすればいいの?」 「そう言われてもな。第一、そのありすを売るってのが駄目なんじゃないのか? しかも売る側のお前らがいらない役立たずって言ってたら感じ悪いだろ。もう少し考えろよ」 「じゃあほかには、かわいいれいむのおちびちゃんはだめだし・・・そうだ!」 親れいむが何かに気付いたように、急に俯いていた頭を上げた。 「そういうことだったんだね、にんげんさん・・・しかたないね。れいむがひとはだぬぐよ!!」 「はあ?」 話の流れがつかめない。男は首を傾げるばかりだ。 「ちびちゃん、おかーさんの“ゆうし”をちゃんとみておいてね!!」 「がんばっちぇ!おかーしゃん!!」 「にゃにしゅるかわかんにゃいけど、きっちょしゅごいこちょだよ!!」 「お、おかーしゃん。がんばっちぇ「おまえにはいってないよ!!」ゆん・・・」 「で、どうするんだ。一肌脱ぐってどうやって?」 「ゆっふっふっふ・・・あんなぐずよりもかわいいれいむのほうがいいにきまってるよね。わかるよー」 全く聞いてない。完全に自分の世界に陶酔している。 そろそろ放っておいて帰ろうかと思った頃に、れいむはやっとこちらに戻ってきたようだ。 そして気合を入れると、後ろを向いて体を前に倒して、こう叫んだ。 「ゆっくりれいむをみていってね!!!」 「・・・は?」 親れいむはこちらに汚い尻(?)を向けて、フリフリ振っている。 ハッキリ言って気持ち悪い。生理的に受け付けない。 男は、気味悪い、苛つく、ワケが分からない、といった具合で混乱気味だ。 そんな男に、れいむは子馬鹿にしたような目つきで言う。 「れいむがにんげんさんのすっきりーっをてつだってあげるっていってるんだよ!!」 「スッキリって…ああ、そういうことか。 ・・・って何で俺がやらなきゃいけねーんだよ!!しかもお前なんかで!!」 「さいしょかられいむがめあてだったんでしょ? それならあのくずありすにきょうみがないっていうのもなっとくだよ!」 どうやったらそこまで飛躍した発想になるのか教えて欲しいものだ。 「でもざんねんだけどれいむはにんげんさんとのすっきりはしたくないよ! だからかわりにかわいいれいむのまむまむをみせてあげるからそれでゆるしてね!! これでもかんがえられないほどのさーびすをしてるんだよ!!ありがたくおもってね!!」 好き勝手にのたまうれいむに、男はだんだん腹が立ってきた。 当たり前だろう。自分は何も言ってないのに、最初はロリコンのHENTAI。 次はゴミ袋に欲情して、一人でナニするろくでなしに勝手に仕立て上げられているのだから。 (さっきまでいい気分だったのに・・・俺がなにか悪いことをしたか?) 怒りは膨れ上がり、やがてやり場のないものに変わり――― 「さあ!しこってもいいのよ!!!」 ―――プツン れいむが得意げに尻についた妙な汚い穴を見せたとき、とうとう男の中で何かが切れた。 「うるせえぇぇぇぇぇ!!!死ねえぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「ゆっ、う゛ぎゅぼっ!!!?」 「「おきゃーしゃーーーん!!」」 「お・・・おかーしゃん!?」 男は怒りの全てを足に乗せ、れいむの汚い穴目掛けて思いっきり蹴飛ばした。 男の蹴りは巨大な重い饅頭であるれいむを浮かすほどのものであった。 れいむは数メートルほど転がり、無様に地に這いつくばる。 「ゆ゛ぅぅ゛ぅ゛・・・で、でいぶのめいきなまむまむさんがぁぁぁぁ!!!」 自慢の汚いまむまむがあった場所には、男の蹴りによって無残に大穴が開いていた。 「これじゃもうびゆっくりとすっきりできないよぉ・・・」 体中砂糖汁に塗れながらブツブツ呟くれいむ。 「・・・あ~、スッキリした~!!」 対して男はとても晴れやかな顔をしている。 先ほどの怒りと一緒に、日ごろのストレスも吐き出したらしい。 「おかーしゃんをいじめにゃいで・・・」 「うん?」 気分を良くした男に語りかけてきたのは、一匹だけの赤ありすだ。 他の二匹の赤れいむはというと、母親に寄りかかるでもなく黙って電柱の裏で震えている。薄情なものだ。 「いじめないでって・・・お前だって散々あいつらにひどい事されてきたんだろうに」 「ゆ~ん・・・しょれでもありしゅのかぞくだきゃら、ありしゅにとっちぇだいじにゃんだよ・・・」 なんともいじらしいではないか。あれだけの不遇に遭いながら、それでもかばおうとするとは。 隅で我関せずと目を逸らしながら震えている赤れいむたちとは大違いだ。 ゆっくりは徹底的な利己主義者ばかりだと思っていた男は、赤ありすの姿に心をうたれた様だ。 そして、思いつく。 「・・・なあれいむ。俺がこのありす貰っていいか?」 「いだいよぉ・・・ゆっ?どういうことなの・・・?」 「だからこのありすを、俺が引き取るのさ。いわゆる身請けってやつだ」 「ゆぅ゛・・・それは・・・」 確かに忌々しいレイパーの子が居なくなるのは、れいむにとって喜ばしいことだ。 しかしあいつは貴重な商売道具である。そう簡単に手放していいものか・・・ 「勿論タダとは言わない。これが代金だ」 男が財布から取り出して、れいむの前にハラリと差し出したのは・・・千円札だ。 「きゃ、きゃっしゅさん!!!」 「これはありすの身請け金と・・・まあお前を蹴ってスッキリした分だとでも思ってくれ」 「あ、ありがとうにんげんざん!!そんなくずさっさとつれていってね!!」 「言われなくてもそうするさ。じゃあ行こうか、ありす」 「ゆっ!?」 話から取り残された赤ありすは、何がなんだかといった様子だ。 「これからお前は俺の家で暮らすことになったんだ」 「ど、どうちて?ありしゅおかーしゃんたちといっちょにいちゃいよ・・・」 「お前がいると、あいつらはゆっくりできないんだと。 あいつらとお前が両方ゆっくりするには、これが一番いい方法なんだ」 「・・・しょうにゃにょ、おかーしゃん?」 ありすが問い質そうと振り向いた先には――― 「ゆわーい!!きゃっしゅしゃんだよ!! きゃっしゅしゃんがあればにゃんでもできりゅよ!!」 「きょれであみゃあみゃいっぴゃいにんげんかりゃもりゃえりゅにぇ!」 「そうだねおちびちゃんたち!これでにんげんをどれいにしてやろうね!!」 「あにょありしゅでもやきゅにたちゅんだにぇ!!」 「「「ゆっゆっゆっゆっゆ!!!」」」 集まって下卑たことを言いながら汚い身体を揺らすれいむたちがいた。 もう赤ありすのことなど殆ど頭には残ってないようだ。もちろん心配する素振りなど見せない。 「お、おかーしゃん・・・れーみゅ・・・」 「わかっただろ?お前はあいつらの幸せと引き換えにウチに来たんだ。 な?そういうことにしておこう。なに、ウチでの生活だってそう捨てたもんじゃないさ。 少なくとも今よりは数段豊かになるはずだ。不便な思いもさせないつもりだし」 「ゆぅ・・・じゃあにんげんしゃん。これきゃらゆっきゅりしゃしぇちぇもらいましゅ・・・」 結局赤ありすは折れたようだ。子供ながら、もうどうしようもないことを悟ったのだろう。 「きょうはおうちにかえってえんかいするよ!!」 「おいちいもにょたくしゃんたべれりゅにょ?」 「そうだよ!おうちにあるものぜんぶたべたらきゃっしゅさんであまあまもらいにいこうね!!」 「きゃっしゅしゃんにはにんげんもかにゃわにゃいんだよにぇ!!ゆっきゅりできりゅよ~♪」 能天気に騒ぐれいむたちとは逆の方向に、ありすを抱えて男は去って行った。 だが、もうれいむたちにはそんなことは関係ない。 この世の全てを手に入れたかのように、舞い上がっていたのだから。 ―――――――――― 『『『いらっしゃいませ!』』』 「いらっしゃいませ。ようこそ、ONNY・SUNへ。本日は季節のタルトが―――」 ここは、町内でも評判のお菓子屋『Patisserie ONNY・SUN』である。 全体的に白を基調とした店構えと、控えめの内装が静かで清潔感のある雰囲気を出している。 肝心の販売している洋菓子や飲み物の味も申し分なく、 値段も手頃なことから常に訪れる客が絶えない話題の店だ。 今日も多くの女性が、男性が、入れ替わるように店に押しかけている。 そんな中――― 「ついたよおちびちゃん!ここであまあまさんがもらえるんだよ!!」 「にんげんがいっぴゃいだにぇ!!」 「れーみゅたちはたくしゃんきゃっしゅしゃんをもっちぇりゅんだよ!! しゃっしゃちょどれいになっちぇあみゃあみゃよこしぇ!!」 店内の雰囲気に全くもってそぐわない、汚い饅頭が三匹やってきた。 ちなみに親と思われる一番大きいやつの口の下には大穴が開いていて、それが一層気味悪さを引き立たせている。 やつらは場の空気も読まずに大声で話している。周りの迷惑などお構い無しだ。 『やだ、あれ・・・』 『野良だろ?汚いな・・・』 『お店が汚れちゃうわ・・・』 『折角の良い気分が台無しよ・・・』 『うわっ、近寄るなよ。気持ち悪い!』 やがて店内の客も、大声で話す野良ゆっくりに気付いてそれぞれヒソヒソと話し出す。 出てくる話に好意的な内容のものなど一つも無いのだが、肝心の饅頭たちは当然そんな事には気付かない。 「ゆっ!?なんだかさわがしいね!」 「きっちょれーみゅたちがきゃっしゅしゃんもっちぇるかりゃおどろいちぇるんだよ!!」 「しゃしゅがきゃっしゅしゃんだにぇ!はやきゅあみゃあみゃもっちぇきょい!!」 周りの空気も意に介さず大声で鳴き続ける野良たちの前に、 黒と白の制服を着た店員らしき若い青年が立ち塞がった。どうやらこの店の制服みたいだ。 青年は表情を崩さず、あくまでも穏やかな顔でゴム手袋を嵌めた手を軽く構えている。 「なにぼーっとつったてるの?これがみえないの?」 そう言った親れいむが身体を震わせると、 リボンの辺りからクシャクシャになった千円札がころりと落ちた。 ついでに身体に付いたゴミや虫の死骸なんかまで床に落ちて、れいむの周辺を汚した。 それを見た客はまた一斉に眉をしかめ、目の前にいる店員の青年も一瞬ピクリと顔を歪ませる。 しかし全く気に留めない野良れいむたちはかまわず騒ぎ続ける。 「いくらばかなじじいでもわかるでしょ?これはきゃっしゅさんだよ!! わかったらはやくどれいになってね!!それであまあまちょうだいね!!」 「しゃっしゃちょあみゃあみゃもっちぇこい!!ぷきゅー!」 「きょにょきゃっしゅしゃんがみえにゃいにょ? きょれだきゃらばきゃにゃじじいはきょまりゅにぇ! あみゃあみゃももっちぇこれにゃいにゃんちぇばかにゃにょ?ちにゅにょ?やくたたじゅにゃにょ?」 「・・・お客様方、大変失礼致しました! 非情にご不快な思いをさせたことを心よりお詫び申し上げます! この野良ゆっくり達はこちらできちんと処理しますので、ご安心ください!」 「うる・・・いだい゛!ひっぱらないでぇ!!でいぶのがみぢぎれぢゃう!!」 「ゆんやぁぁ゛ぁ゛!!れーみゅにょきゅーちくりゅにゃかみしゃんがぁぁ!!」 「いちゃいよ!やめちぇにぇ!!きちゃにゃいちぇでれーみゅにしゃわりゃにゃいでにぇ!!」 「誠に申し訳御座いませんでした。それでは引き続き、ごゆっくり―――」 良く通る声で店内全体に告げた後、青年はれいむ達の髪やもみあげを掴んで店の奥へと引っ込む。 そしてその声を聞いた人々は多少訝しげにしながらも、それだけで店内は元の平穏な空気に戻った。 「「「ゆげんっ!!!」」」ブチッ 野良一家が放り出されたのは店の裏口。 駐車場からも離れていて人通りが少なく、多少の大声なら迷惑にならない。 そんな場所だ。 「ゆぴぃぃぃぃ!!れーみゅのきゃわいいもみあげしゃんがぁぁぁ!!」 「おぢびぢゃぁぁん!どぼじでごんなひどいごどずるのぉぉぉ!!」 「どりぇいにょくちぇにいもーちょにひどいこちょしゅるにゃぁぁぁ!!!」 赤れいむの片割れのもみあげが、投げ出された際の衝撃に耐え切れず放り出された拍子に千切れたようだ。 もっとも、青年が意図してやったことではない。ただ赤れいむのもみあげが脆すぎただけだ。 「れいむのおちびちゃんがかわいそうだよ!! これからどうやってぴこぴこすればいいの!!?」 「ぴこぴこしゃんはゆっくちできちゃにょにぃぃぃ!!」 「くしょどりぇいにょくしぇににゃまいきぢゃよ! にゃんちょかいっちゃりゃどうにゃにょ!?ぷきゅ~!!」 「・・・・・・」 ピーピーと鳴き喚く野良一家であったが、青年は何も言わずに、ただ見下ろしている。 その、どことなくゆっくりした様子に野良一家の怒りは更に深くなった。 「はやきゅにゃんちょきゃちりょ!くしょじじい!!」 青年は何も答えない。 「かわいいおちびちゃんにはやくあやまってね!!それといしゃりょうとしてあまあまうわのせしてね!!」 こちらをじっと見つめたまま、微動だにもしない。 「きゃっしゅしゃんでみょいいよ!!たくしゃんよこちてにぇ!! あちょきゃわいしょうにゃいもーちょにどげじゃしちぇあやまっちぇね!」 そのままゆっくりと足を上げる。 「「はやきゅきゃわいしょうにゃれーみゅ(いもーちょ)にあやまりぇ!!」」 「れいむはしんぐるまざーなんだよ!!どれいははやくやさしくしてね!!」 そして、まるでれいむ達の抗議(笑)を嘲笑するかのように、少し息を吐いた。 「「「ゆがあぁぁ!!むじずるなぁぁ゛ぁ゛!!!『ブチッ』「ぴっ!」」」 青年が足を踏み付ける様に下ろすと同時に、何かが潰れる音がした。 「ゆっ!?なんのお・・・お・・・おちび・・ちゃん・・・?」 親れいむが何事かと音のした方向に視線をよこすと、 そこには青年の足と、足の下には地面に広がった餡子の花。 この状況を見ればいくら間抜けで物分りの悪いれいむでも一瞬で理解できる。 あれは、もみあげをなくしてないていたおちびちゃんだ。 「おぢびぢゃぁぁぁ゛ぁ゛ん゛!!!」 「ゆわぁぁぁ!!!れーみゅ!!れーみゅぅぅぅ!!!」 あまりの惨たらしい光景に叫ぶ野良親子。 そして、それでも尚微動だにしない青年。青年は黙って野良一家を見下ろしている。 大事な家族が殺されて黙っている者はいないとばかりに、れいむたちは怒りを青年にぶつけようとした。 あまあまなんか関係ない。もう奴隷にもしてやらない。 きゃっしゅさんの力を使っておちびちゃんと同じようなめに遭わせてやる!! 「おちびちゃんをころしたくそじじいはきゃっしゅさん・・・で・・・・」 「よきゅもれーみゅにょいもーちょをころちたにゃ!しょんにゃく・・じゅ・・・・」 しかしその思いも一瞬で打ち砕かれてしまった。 「・・・・・・」 先ほどまで穏やかだった青年の表情は、全く正反対の物になっていた。 今の青年の眼はどこまでも無関心な物に対するもので、冷たかった。 どうということはない。 青年の眼を見た瞬間に、勇ましい怒りなど吹き飛んでしまったのだ。 「ゆっ・・ゆっ・・・ゆあぁ・・・」 「たしゅけちぇ・・・ころちゃにゃいでぇ・・・」 青年の眼は今までれいむ達が散々見てきた、決して関わってはいけない種類の人間の目。 ゆっくりを生き物どころか、ゴミでしかないと思っている人間のそれだった。 野良時代に散々逃げ回ってきた種類の人間が目の前にいるというだけで、 親れいむは。いや、赤れいむですらも反抗や復讐をする気など消え失せてしまった。 「ゆ・・ゆるじでぐだざい!もうじじいだなんでいいばぜんがら!!」 「にゃんでぇ!?れーみゅにはきゃっしゅしゃんがありゅにょにぃぃ!!」 できる事といえば、無駄だとわかっていての命乞いだけ。 徹底的に染み付いた負け犬根性を覆せるほど、この場においてきゃっしゅさんは頼りになる物ではなかった。 が、青年はそれすらも聞いていない。 ただ、ゆっくりとしゃがみこんで、れいむ達に顔を近づけて 「これでもう、あれこれ心配する必要無いだろ?」 言い放った。 れいむ達は、凍りついた。命乞いの言葉すら出なくなった。 れいむ達が固まったのを見て、青年は立ち上がる。表情は変えない。 そのまま十秒ほどして野良親子がガタガタと震え出すのと同時に、後ろの方から声がした。 「あれ。先輩、おはようございます。どうしたんッスか?こんなとこで。あ、饅頭」 声の主は、とても大きくガッチリとした体つきの青年。どうやら青年の同僚、後輩のようだ。 後輩の姿を確認した青年は一瞬で先ほどまでの穏やかな顔つきに戻った。 とは言っても、れいむ達を見るときの目だけは全く変わっていないのだが。 「ああ、おはよう。実はこいつらが店に入ってきてね。おかげで入り口付近がドロドロさ」 「あー。それは災難でしたね。で、どうするんですか?それ」 後輩に指を指されてれいむ達の身体がビクリと震える。もはや声も出ない。 「それなんだけど、こいつら捨ててきてくれない?」 「はい?・・・俺がッスか?」 「そうそう。近所の自然公園の近くに行って、投げ捨ててくれればそれでいいからさ。 僕がやってもいいんだけど・・・もしこの格好でゴミの投げ捨て見られちゃ、まずいでしょ?」 「まあ店の評判に関わりますね。そういう事なら別にいいッスよ。 投げ込んでもいいならそんなに時間も掛からないし、ここで潰して後片付けさせられるよりなんぼかマシです」 「悪いね。今の時間帯なら人も居ないから多分大丈夫だと思うよ。 でも一応場所は選んでね。もしそれで遅くなっても、事情は僕から言っておくから心配しないで。 ああ、小さい方はでかい方の口の中に突っ込んで、纏めてから投げた方がいいよ。 そうすれば着地の衝撃で潰れないから公園を汚さなくて済む。適度に弱らせられるし」 「ウッス。じゃ、やりますか」 あれよという間に話はまとまり、 青年のGOサインを貰った後輩はゴム手袋を嵌めて、気だるそうに野良親子に近寄る。 そして突如迫り来る後輩の姿を見て焦るのは野良れいむの親子だ。 「な、なに!?ちかよらないでね!!」 「ゆっくちできにゃいにんげんはきょっちきゅるにゃぁぁ!!」 先ほどまで恐怖で震えて青年達の話を何も聞いていなかった親子であったが、流石にこの妙な雰囲気には気付く。 そして後輩の姿を見て警戒するのも当然の事。 何故なら後輩の青年もまた、あの関わってはならない人間の眼をしていたから。 「きょにゃいでにぇ!!ゆ・・ゆ・・・くるにゃぁぁうぎゅ!?」 精一杯の抵抗もむなしく、赤れいむは後輩の青年に掴まれてしまう。 「おちびちゃんをはなしてね!!れいむおこるよ!ぷ『ボキャッ!!』ぎゅっ!!?」 そして大事な子供を取り返さんとなけなしの勇気を振り絞って精一杯の抵抗であるぷく~をしようとした所に、 思いっきり赤ゆを持った方の拳を突き入れられた。 「よ・・・っと。ほれ、吐き出すなよ。何度でも歯ぁヘシ折って突っ込むからな~」 「むぐぅぅぅ!!べいぶぼぶぶぐびいばぼがばびびぼびびびゃん゛ばぁ゛!!」 おそらく歯を折られたことを嘆いているのだと思われるが、口を閉じているせいで何を言っているのかは解らない。 閉じているというよりも、後輩の青年の手によって無理矢理閉じられていると言った方が正しいのだが。 「さっさと終わらせますか~っと。・・・あれ?なんだこれ。千円札?」 親れいむの髪に引っかかっていた紙切れを見て、後輩が呟いた。 「ん?ああ、持ってきてたのか。随分ちゃっかりしてるもんだねえ」 「金持ってるゆっくりってのも珍しいッスね。 それにしても・・・この千円札どうしましょうか?」 「後で僕が交番にでも届けておくよ。千円でもお金はお金だし。 どうせ落ちてたのをガメたんだろうし、もしかしたら持ち主が出てくるかも」 「わかりませんよ。もしかしたら“おうた”で稼いだものかも」 「あの公害並の騒音で?ハハッ、中々面白い冗談だね。 あんなもの、グリンピースがどうとか言ってる保護団体ですら金なんか払わないよ」 「でしょうねぇ。さーて、急ぎましょうか。これから掻き入れ時ですしね!」 「ああ。僕もさっさと潰れた饅頭片付けて、そろそろ戻らないと!」 こうして和やかに話した後、眼を白黒させながらもがくれいむを抱えて後輩は去っていった。 青年は早足で掃除道具を持ち出し、手早く饅頭の残骸を片付ける。 そして、あれが来るだけで随分余計な仕事が増えるなぁ。と、一人でぼやきながら店内に戻った。 向こうでは、今まさに汚れた饅頭が空を飛んでいるところだった。 ―――――――――― 「………ぃぃいいい!!!っゆぎぃ!!『ゅ…ぃ!!』げぺっ!!」 思いっきり地面とちゅっちゅしたれいむは、ピクリともせずにその場に転がった。 「うぅ゛・・・どぼじでぇ・・・」 れいむは皮が破れそうな痛みでロクに身体も動かせないまま考えていた。 「きゃっしゅさんがあればにんげんはでいぶのどれいに・・・」 そう。きゃっしゅさんがあれば、人間は言うことを聞くのではなかったのか。 そもそもれいむがきゃっしゅさんの存在を知ったのは、子ゆっくりの頃である。 野良であったれいむは父も居らず、唯一の親であった母れいむを見て育ってきた。 れいむの記憶に残る母は、いつもおうたを歌っていた。 赤ゆっくりの頃も最低限の食糧しか獲ろうとせず、その代わりにゆっくりできるおうたを聴かせてくれた。 そして、自分がゴミ漁りをできるようになると食糧集めは全て自分に任せて、 今度は自分に聴かせるのではなく、いつも人間が沢山いるところでおうたを歌った。 当時のれいむはよく聞いたものである。「どうしてそんなにおうたばっかりうたうの?」と。 それに対する親の答えは、いつも「にんげんさんはこうやってればきゃっしゅさんをくれるんだよ!」だった。 毎日毎日、母れいむはおうたを歌い続けた。 きゃっしゅさんとはそこまで苦労するほど良い物なのだろうか? その疑問に対して母れいむは 「きゃっしゅさんはすごくゆっくりできるんだよ。 あれがあればにんげんさんだってさからえないよ。 あまあまだってほしいだけたべれるよ!もうこんなくらしをしなくてすむんだよ!!」 ひたすらそう答え続けた。まるで自分に言い聞かせるように、いつだってそう言い続けた。 れいむはどれだけ母が頑張っているか、よくわかっていた。 でもこれっぽっちも。きゃっしゅさんどころかあまあまの一欠片でさえ、誰もくれなかった。 それどころか必死に歌う母れいむに誰も見向きもしなかった。 あんなにれいむが大好きなおうたをがんばっておかあさんは歌っているのに・・・ そして母が生きている間にれいむがキャッシュさんを見ることは、ついぞ無かった。 れいむにとってはとってもゆっくりできるお歌だったのに、 うるさいと言われて母れいむはあっさりと潰されてしまったから。 幸いというべきか、ご飯を集めながらいつも遠くで母の姿を見ていたれいむはそれに巻き込まれることは無かった。 そして、生き残ったれいむは一つの目標を立てることになる。 「なにをしてもきゃっしゅさんをてにいれてしあわせーっになる」と。 結局きゃっしゅさんがどういうものなのか、具体的にれいむが知らされることはなかった。 しかし愛する母がゆん生をかけて求めたものなのだ。きっとすばらしいものに違いない。 きゃっしゅさんを手に入れて幸せになることが、母への弔いになるように思えて仕方が無かった。 そして月日は流れ、いつしかれいむは成ゆっくりになっていた。 しかし、未だにきゃっしゅさんには巡り会えない。 れいむは、おうたを歌ってきゃっしゅさんをもらう事は考えなかった。 自分よりもゆっくりしたおうたを歌えた母が潰されたのに、自分が上手くいくとは思えなかったから。 だから何か別の方法で探そうと決めたのだ。 が、なにを思いつくわけでもなく時は過ぎていく。 そもそも今日を生きるだけで精一杯で、きゃっしゅさんを貰う案など考える暇が無いのだ。 そんなある日――― 「ゆっふっふ、れいむ!これをみるんだぜ!!」 「なに?まりさ。・・・なんなの?そのぺらぺらさん」 「なんだ。れいむしらないのかぜ?これはきゃっしゅさんなんだぜ!!」 「そ、それがきゃっしゅさんなの!?」 「そうだぜ!!このぺらぺらさんがいちばんゆっくりできるきゃっしゅさんなんだぜ!! さっきおちてたのをまりささまがひろってまりささまのものにしたんだぜ!!」 「ゆゆ~ん。うらやましいよぉ~・・・」 「ゆふん!まりささまはこれでにんげんをどれいにしてゆっくりするのぜ! じゃあうすぎたないれいむはこれからもがんばってなまごみさんでもあさってるんだぜ!!」 そう言って野良仲間のまりさは元気に跳ねていった。 その後ろ姿を羨ましげに見つめるれいむ。 しかし、 「見つけたぞ、この泥棒饅頭!!」 「ゆっ!?ゆぎぃ!!」 突然まりさは人間に潰された。 少し離れたところで、れいむが固まりながら見ていると 「ど、ど・・ぼ・・じで・・・」 「うるせぇ!人が落とした金勝手に拾いやがって! これだからてめぇら野良は見過ごせねぇんだ。とっととくたばれ、このゲスが!!」 「ゆ゛っゆ゛っ・・・も、もっどゆっぐりあ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!やべでっ……」 あっけなくまりさは、人間の手によって殺されてしまった。 この件でれいむはきゃっしゅさんの形と 「落ちてるきゃっしゅさんは拾っちゃいけない」ということを学んだ。 やはり母がやっていたように人間をゆっくりさせて、きゃっしゅさんを貰わなくちゃいけない。 今度こそれいむは何をすべきかを見定めたのだ。 そして紆余曲折を経て、ようやくあの目障りなチビと引き換えに念願のきゃっしゅさんを手に入れた。 誰かから殺して奪い取ったわけでもなく、本当の意味で手に入れたきゃっしゅさん。 これさえ人間に見せれば何でも叶うはずだった。 そのはずだった。なのに・・・ 「ぜんぜんゆっぐりでぎないよぉ・・・おがあざんのうぞづぎぃ・・・」 何故こんな目に会っているのだろう。おまけに大事なおちびちゃんまで失って。 ・・・そうだ、おちびちゃん!れいむのおくちのに入ってたおちびちゃんは!? 「ゆ・・ゆ・・ゆっ・・・くち・・・」 口の中にいたはずの赤れいむは、れいむのすぐ傍で倒れていた。 「おちびちゃん!!」 れいむは痛みや怪我で動かない体を必死に引きずって、赤れいむの下へと這いずっていく。 どうやられいむが地面にぶつかった時に口から吐き出されたらしい。 激突によるダメージは無いようだ。しかし・・・ 「い・・いちゃいよ・・・おかーしゃん・・・」 「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!・・・どぼじであんござんでてるのぉぉぉ!!?」 赤れいむは、あんよから餡子を漏らしていた。 出ている量は多くないが、ただでさえ小さな赤ゆが命の源を垂れ流しているのだ。 このまま放っておけばいつか致命的な量になるのは、誰から見ても明らかである。 「ぞんなぁ!でいぶのおぐぢはあんっぜんっだったはずなのにぃ!!」 れいむはそう言うが、事の真相は「れいむが着地の拍子に、子供の皮を噛み切った」というもの。 つまりはれいむのせいである。 しかし、れいむがそんなことを理解できるはずもない。 「ぺーろぺーろ!おちびちゃんゆっくりしないでなおってね!!ぺーろぺーろ!!」 ただ必死に傷口を舐めるだけだ。 しかし勿論舐めるだけで傷が治ったりはしない。 成ゆっくりならともかく、赤ゆっくりではなおさらだ。あくまでも一時的な凌ぎにしかならない。 「どうしよう!れいむのひとりしかのこってないおちびちゃんがしんじゃうよ!どうしよう!」 為す術もなく慌てるれいむ。 そんなれいむを、疎ましげな様子で覗き込む一つの影があった。 「あん?騒がしいな。また野良かよ・・・あらら、死に掛けてら」 「ゆっ!?にんげんが・・・お、おにいさん!!」 「へ?なんで俺のこと知ってんの?」 「まえにくらいときにあったでしょ?わすれちゃったの?」 「・・・ああ、あのときの一家か!」 そう。影は一昨日の夜に遭った、あのクズときゃっしゅさんを交換した人間だった。 そうと分かったれいむは、子供の事も忘れて怒りを男にぶつけた。 「どういうことなの!あのきゃっしゅさんみせてもにんげんがどれいにならなかったよ!」 それに対して男は飄々とした態度を崩さない。 「キャッシュさん?・・・ああ、やっぱり使えなかったか」 「やっぱりって、じゃああれはほんものじゃなかったんだね!!」 「いいや?あれは間違いなく本物だよ。俺に偽札持つ度胸なんてあるわけないじゃん」 「ゆ!?じゃ、じゃあなんで・・・」 「う~ん、理由は沢山あるけど・・・一番の理由はお前がゆっくりだから、かな」 その言葉を聴いた途端、れいむは凍りついた。 「お前、お金がどう使えばどうなるか、ちゃんと知ってるか?」 「ゆ・・きゃっしゅさんはみせればなんでも・・・」 「ほらわかってない。普通に考えて、見せれば何でも上手くいく道具なんてあるわけないだろ」 「じゃあなんで・・・」 「それを知っても意味がないんだよ。だってお金ってのはさ、 人間だけの、人間による、人間のための道具なんだから。 普通は人間とまともに商売するなんて事、できるわけないのに」 「でもおにいざんは・・・」 「俺?俺は、ほら、酔ってたとはいえお前の言う通りスッキリしちゃったんだからさ。 饅頭が相手でも取引成立したのを無視して―――って言うのも後味が悪いんだよ。よく律儀だって言われます」 「ぞんなぁ・・・じゃあでいぶのかんっぺきっなさくせんさんは・・・」 「完璧って、どこが?そりゃおまえらみたいな汚い饅頭がいきなり店に来て 『さっさとなんでもいうこときいてね!!』だなんて、千円札ごときを振り回して言えば追い出されるだろ。 いやー、まさか本当にやるとは。馬鹿な事したなぁ。チビも・・・あ、一匹いなくなってるじゃん。死んだ?」 人間の言葉を聴いて、またもやれいむは子供のことを思い出した。 「おちびちゃん!れいむのだいじなおちびちゃん!!」 「なんか大変そうだなあ。・・・じゃ、頑張って」 叫ぶれいむを一瞥して、去ろうとする男。 「まってよ!どこいくの!?れいむたちをおいてかないでね!!」 が、唯一助けを求められそうな存在をれいむが逃がす筈もない。 「え~?俺もこれから休日だからこそ、ありすと一緒にこのケーキ食べる仕事が待ってるんだけど」 「け、けーきさん!?これにはけーきさんがはいってるの?」 男が軽く掲げた箱に、れいむの目が釘付けになる。 「ああ。ここのケーキはここらへんでも評判でな。 必死に並んで―――って、お前らに行列の価値なんて分かる訳ないか」 ケーキさん。ゆっくりにとって最高のあまあまだ。 あのあまあまがあればれいむの怪我どころかおちびちゃんも助かるかもしれない。 「そのあまあまさんれいむたちにちょうだいね!ぜんぶちょうだいね!!」 「え、やだよ。なに言ってんの。今の話聞いてたか?常識的に考えてありえねえ」 「どぼじでぞんないじわ゛るいうのぉぉ゛ぉ゛!!?」 「だからこれはありすと俺の分なんだって。何故に貴様らなんぞにやらにゃならんのだ」 ありす・・・あのクズか!あんなクズよりも 「あんなくずよりもでいぶたちのほうがだいじでじょぉぉぉ!!?」 「俺にとっちゃ自分の子や姉妹をクズクズ平気で言うでいぶの方がよっぽどクズだよ」 「いいがらざっざどよごぜぇ゛ぇ゛!!ぐずにんげんん゛ん゛!!」 「へーへー、そうですよっと。俺ァ愚図だから賢いでいぶさんの言う事は解りませんわぁ。 そんじゃあ賢いゲスでいぶさん、お達者で~。これから楽しい楽しいティータイムがありますもんで」 れいむの言うことを受け流して去ろうとする男。 「ゆ゛っ!?ゆ゛っ!?ごべんなざい!みずでないでぐだざい! でいぶがわるがっだでず!おにいざんはぐずじゃないでずぅぅ゛ぅ゛!!」 これはいかんと、急いでれいむが謝った。反射的な鳴き声だとしても、たいしたものだ。 「えぇ~?もういいじゃん。俺が愚図でいいから帰らせてくれよ。そこら辺はどうでもいいからさ」 そもそも帰りたいならさっさと無視して去ればいいのだが、ちゃんと付き合う辺りこの男も中々律儀なものだ。 「でいぶだちそれがないどじんじゃうんでず。がわいぞうなんでず。 ぜめでおぢびぢゃんだげでも・・・」 必死に頼み込むれいむに対して何か感じ入ったのか、男は少し考え込んだ末に 「・・・別にいいよ、考えてやっても」 なんと、承諾した。これを聞いてれいむは大喜びだ。 「ほんとうに!?ありがとうおにいさん!おれいに―――」 「いや。御礼とかはいいから、金よこせ」 「・・・ゆ?」 「だから金だよ、金。人間に何かをしてもらうときにこそ、金が必要なわけ。 わかる?お金。money。キャッシュさん!」 「れ、れいむきゃっしゅさんなんて・・・」 「俺が昨日渡したやつあるだろ?あれ渡せばお前も助けてやるよ。それでも釣りが返ってくるし」 「だかられいむはもうきゃっしゅさんはもってないんだよ!にんげんにとりあげられちゃったよ!!」 「あ、やっぱりそっかー。それじゃあなおせないや。いやーざんねんだなあ」 棒読みの台詞でもわかるとおり、男は全く残念そうに見えない。大体は予測していたのだろう。 「どぼじでぇぇ!?ぞんないじわるいわないでだずげでよぉ!!」 「だって、お前らだって何かするときあまあまとか要求するだろ? なのに何でお前らだけタダで助けてやらなきゃなんねーのよ」 「でいぶはしんぐるまざーなんだよ!かわいそうなんだよ!! しかもおちびちゃんまでしにそうなんだよ!だから!」 「助けてねって?じゃあそんな可哀相なお前らに虐め倒された挙句、 はした金で捨てるように売られたありすはもっと可哀相だなあ。と、言う訳でこれはありすにあげよう。それじゃ」 またも踵を返そうとする男に対して、れいむは引き止める為の言葉を捜す。 しかし、そう何度も都合よく思いつくわけがない。それでもれいむは必死に考えた。 そして出た言葉が 「じゃあかわいいおちびちゃんをうるからそれでおちびちゃんとれいむをたすけてね!!」 これである。 なにをバカな、と思う無かれ。れいむはいたって真剣に、身を切るような想いで言っているのだから。 まあそれでも 「なにをバカな事を・・・」 言っちゃうものなのだろう。 「で・・・でいぶばかじゃないぃぃぃ!!」 「いやあ、十分馬鹿だって。お前さっき俺がなんて言ったか覚えてるか? お前らはクズだって言ったんだよ。 なんで商品価値ゼロのクズを助けるために、わざわざそれを買わなきゃいけないわけ?」 「でいぶもおぢびぢゃんもくずじゃ・・・だってくずのありすをかったのに!」 「・・・じゃあ、そこの死に掛けのチビは“おうた”を歌わず静かにしていられるか?」 「なんでぇ・・・?おうたはゆっぐりできるのにぃ・・・」 「それはお前の感性だろ?第一こっちは静かにしてもらわないと困るんだよ おまえだって、例えば・・・ゆっくりできないやつから隠れてるときにチビに騒がれちゃ困るだろ?」 「ぞれは・・・お、おぢびぢゃんはいつもげんきいっぱいだよ・・・」 「そうか。じゃあ駄目だな。 ちなみにありすは俺の言うことをきいてちゃんと静かにしているよ。都会派とも田舎物とも言わずにな」 それはそうだ。だってれいむ達が散々うるさいって虐めたんだから。 「それじゃ次。ちゃんと俺の言う通り、はしゃがずに大人しくしていられるか? 理由はこれも同じだよ。ゆっくりできないやつが(以下略」 「ゆぅ・・・おちびちゃんはできないよぉ」 「だろうなあ。ちなみにありすはどこでだって大人しくしていられるぞ。 コーディネイトとか言って部屋も散らかさない上に、お家宣言のおの字も出しやしない」 あたりまえだ。れいむ達がいつも隅に追いやっていたせいで、決まった場所から動かなくなっていたのだから。 「ならご飯を食べる時は……」 「ぼうやべでぇぇ・・・」 その後も男はずっと質問を繰り返した。 ありすに比べてそこのチビはどうだ?俺の言う事が聞けるか?お前にとって本当にゆっくりできる存在か? それに対するれいむの答えは、常にNO。 れいむの立場で例えを出された事で、 自分にそっくりなおちびちゃんがどれだけゆっくりしてないかをこの上なく理解させられる事になった。 しかしそれでも認めることができない。 れいむにとって、自分と同じ姿のおちびちゃんは世界一可愛いものだったのだから。 「まあそういうわけだ。お前も、お前の大事なおちびちゃんも、ありすに比べりゃクズ同然。 そんなクズを引き取った上になんで助けてやらなきゃならないんだって話だろ?」 「うぞ・・うぞだぁ・・・でいぶのかわいいおぢびぢゃんは・・ゆっぐりぃ・・・」 「まあ実際ありすはよくできたゆっくりさ。もしかしたらお前、名ブリーダーかもな。 あれだけの躾がされたゆっくりを店で買おうとしたら、七、八万は掛かるだろうなあ。 具体的には、お前にやったキャッシュさんと比べて(お前達には)数え切れないくらい沢山の価値だ」 それを聞いたれいむは、呆然としている。 男の言葉が理解できないのだろうか。それとも、理解したくないのだろうか。 「だからあの千円もそれに比べれば安いものだったんだよ。 それでもお前にとっちゃ、数万円に匹敵する価値があっただろうけど 肥溜めにでも落としたと思えば。いや、それ以上にどうとも思わなかったね。 まあ、俺はちゃんと代価を払わないと物を大事にできない性質の人間でさ。 やっぱりあれだけでも払っといて良かったと思うよ。おかげで今はありすのことが可愛くて仕方ない」 「でいぶのきゃっしゅさん・・・かわいいおちびちゃん・・・」 「でも問題もあってな・・・そうだ!れいむ、取引をしよう!!」 「・・・ゆ?」 「お前のものを貰う代わりに、金をやるよ。つまり商売だ」 「ほんとに?それなられいむたちたすかるの!?それならしょーばいするよ!!」 男の言葉で再び元気を取り戻すれいむ。 しかしそんなれいむの言う事には全く反応せずに、男はれいむの傍に近づいた。 そして――― 「じゃあ、これ貰っていくな」ブチッ 「ゆぎっ!!・・・ゆ・・ゆ・・・ゆあぁぁぁ!!でいぶのおりぼんざんがぁぁぁ゛ぁ゛!!!」 男に千切られたのは、れいむが命と同じくらいに大事にしているおかざりだった。 「それじゃ、これが代金だ。ほらよ」 そしてれいむの前に投げ出されたのは、小さな小さな薄っぺらい玉。 表面に1と描かれたそれは、この上ないほどに軽い音を立てて地面に落ちた。 「これがお前の薄汚いリボンの価値だ。まあ妥当な所だろう?」 「かえじでね!!それがないどゆっぐりでぎない!!がえじでよおおぉぉ!!!」 「何言ってるんだ。その一円玉があれば大事なチビを助けられるぞ。 ・・・まあ、それにはあと百枚ほど。数え切れないほどのそれが必要だけどな!!」 「どぼじで!?でいぶのおりぼんざんがどぼじで!?」 れいむは必死に訴えかけるが、もう男はそんなものは聞いていないようだった。 「ありすの奴、良い子なのはかまわないんだけど、ちょっと情が深すぎるんだよなあ。 早く忘れりゃいいのに、まだお前らの事心配してるみたいでさ。やたら心配するわけよ。 だからこれ使って適当な作り話でもでっち上げようかと思ってな。 『お前の家族は全員事故で無残に死んでたからせめてこれだけでもと思って持ち帰ってきた。 お前は運良くあいつらに最後に救われたんだと思って、精一杯幸せになれるように楽しく生きろ』ってさ。 後は俺がしつけを間違えなきゃ、そのまま完璧なありすの出来上がりだ。いやー、胸が躍るわ!じゃあな!」 大きな笑い声を上げながら今度こそ男は去って行った。 そして、ただ呆然とその後ろ姿を見送るれいむ。 れいむには何が残ったのだろう。 「でいぶはぎゃっじゅざんでゆっぐりじだがっだだけなのにぃ・・・」 ひたすら子供である自分の事も顧みずにきゃっしゅさんの為に歌い続けた母は、何一つ報われる事無く死んでいった。 偶然きゃっしゅさんを手に入れたまりさは、それを活かす機会すら与えられずに殺された。 そして自分は――― ただの思い込みにゆん生を捧げた挙句、大事なおかざりやおちびちゃんも奪われて、こうして傷だらけになっている。 きゃっしゅさんとはなんだったのだろうか。 本当にゆん生も何もかも懸けてまで求めるほど価値があるものだったのだろうか。 答えはもう出ている。今のれいむの姿が、その答えだ。 そこには人間が作った勝手なシステムに踊らされた結果である、哀れなゴミ饅頭が一匹いるだけだった。 「ゆ・・・ゆっくちぃ・・・」 「お、お・・・おちびちゃん!!まだいきてたんだね!!」 いや、一匹ではない。男とのやり取りですっかり忘れていたが、赤れいむがまだ生きていたのだ。 だがしかし、それでも油断できる状況ではない。相変わらず餡子が少しづつ漏れ出ているのだから。 むしろ先ほどよりも明らかに弱っている。もう目の前にいる者を認識すらできないほどに。 このままいけば、やがて餡子不足で息絶えるだろう。 が、たとえそうであっても 「このこだけはたすけるよ・・・もうれいむにはこのこしかのこってないよ!!」 れいむは諦めない。例えリボンが無くて母だと認められなくても、 この先自分がどれだけゆっくりできなくても、この子だけは守ってみせる。 何にも得られなかったれいむのゆん生に、せめてたった一つでも何かを残しておきたかったから。 「ゆっくりてあてするよ・・・ゆーしょ、ゆーしょ」 れいむは痛む身体を引きずって、公園の小さな雑木林の中へ子供を運んでいく。 お飾りが無いれいむが他のゆっくりや人間に見つからないようにする為だ。 「ゆひぃ・・・ゆひぃ・・・ゆっくりてあてするよ。 ぺーろぺーろ。おちびちゃんげんきになってね・・・ぺーろぺーろ」 「だ・・れきゃ・・・たしゅけ・・・ちぇ・・・」 そして自分の身体も省みず、少しでも傷を塞ぐべく一心不乱に傷口を舐め続けた。 あまあまも貰えず、他のゆっくりに助けも求められないれいむにはもうそれしかすることがなかった。 それでもれいむは助かると信じて舐め続ける。 今度こそ正真正銘、自分の全てを懸けて挑んでいるのだから。 「なおしてみせるよ・・・ぜったいにおちびちゃんだけはたすけてあげるからね!!」 「もっちょ・・ゆ・・・っくち・・・ちた・・・きゃ・・っちゃ・・よ・・・ぉ・・・・」 この救命作業は一時間後、れいむの疲労がピークに達して意識を手放してしまうまで続いた。 まあ結局、だからと言ってなにが変わるわけでもない。 動く饅頭一匹がどれだけ死に物狂いになろうとも それだけで奇跡が起こせるほど、この世界は優しく作られてはいなかった。 飾りも無く、生涯懸けてようやく得たお金(チャンス)も失い、まむまむに大穴が開いて他の部分も傷だらけ。 そんな満身創痍のれいむが翌朝一番最初に目にする物は、 餡子が全て抜けてシワシワに萎んで黒ずみ、苦悶の表情を貼り付けたまま息絶えている我が子の姿であった。 ・あとがき 言葉話せてお金持ってれば買い物できるの?そんな訳ないよね! 数百円程度で品位ゼロの、しかも饅頭にヘーコラするとか有りえないでしょう。 余談ではありますが、ゆっくりが自業自得で空回りして無残な目に遭う悲劇(笑)が大好きです。 賛同してくれる方募集中。 では、最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!! また今度! 小五ロリあき 挿絵 byM1 ・過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 412 僕と『あの子』とゴミ饅頭と ふたば系ゆっくりいじめ 446 俺とゲスと自業自得な餡子脳 ふたば系ゆっくりいじめ 460 弱虫まりさとほんとの勇気 ふたば系ゆっくりいじめ 484 ドスと理想と長の資格 前 ふたば系ゆっくりいじめ 494 ドスと理想と長の資格 後 ふたば系ゆっくりいじめ 514 僕とさくやとおぜうさま ふたば系ゆっくりいじめ 548 てんことれいむとフィーバーナイト 前編 ふたば系ゆっくりいじめ 559 てんことれいむとフィーバーナイト 後編 ふたば系ゆっくりいじめ 583 ゆっくりしたけりゃ余所へ行け ふたば系ゆっくりいじめ 599 はじめてのくじょ~少女奮闘中~ ふたば系ゆっくりいじめ 615 お兄さんは静かに暮らしたい ふたば系ゆっくりいじめ 659 よくあるお話 ふたば系ゆっくりいじめ 674 かわいいゆっくりが欲しいなら ふたば系ゆっくりいじめ 701 おうちは誰の物? 小五ロリあきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 結論 ゆっくりは所詮馬鹿である -- 2018-06-01 18 15 39 れいむがヤクルトスワローズと同じくらいしか価値がないことがわかった。 つまり、れいむがゆっくりしたりヤクルトが優勝したりすると誰も幸せになれない。 -- 2016-03-15 21 48 12 お兄さん得したね♪ -- 2016-01-27 13 34 07 数百円程度で品位ゼロの、しかも饅頭にヘーコラするとか有りえないでしょう。 ところが日本では害饅頭以下のゴミにもへーコラせねばならんのだが -- 2015-09-26 22 11 54 流石は餡子脳!肝心な所は抜かして都合良く覚える♪ 人間でも大金積んで奴隷に成れ!と言う奴は非難轟々だろ。 お兄さんは律儀だけど人望有りそうだ。友人に欲しいな。 アリスはきっと金バッジ級だね!末長くお幸せに♪ 余談ではありますが、ゆっくりが自業自得で空回りして無残な目に遭う悲劇(笑)が大好きです。 賛同してくれる方募集中。 激しく同意!歩く死亡フラグの王道と言っても良いね♪ では、最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!! また今度! -- 2015-09-11 00 21 04 たまらねえぜ! -- 2014-11-09 14 18 12 ってか、キャッシュさんってどこでおぼえたんだよー。わからないよー。 -- 2014-08-19 19 27 12 朝からいい気分だ。 -- 2014-03-13 09 12 13 絵が!絵が怖いよ! -- 2013-03-17 21 43 48 善良は幸せになるべき -- 2012-10-08 16 11 50 虐待された子はいい子に育てやすい。これ法則です しかし、れいぱぁが引き継がれなくて良かったよ -- 2012-09-25 14 25 11 でいぶを精神的に追い詰めるとは、、、こいつできる -- 2012-08-10 17 06 33 いままでのSSの中で1番面白いし良作だった!! いい感じ! -- 2012-07-25 17 52 11 千円札と一円玉の対比が効いてていいね 両親とは正反対なありすには幸せに過ごしてほしいものだ -- 2012-03-25 22 46 55 1円だけw -- 2011-12-12 19 09 01 さいこーーー -- 2011-10-02 00 31 39 ↓X7 日本は客も下手に出てるだろ 金を出して買うのに’ください’なんて言うのは日本人くらいじゃないか? 以前日本語がまだたどたどしい中国人が店番してるとこで’それください’って言ったら ぎょっとした顔をされた、すぐにピンときて買うって意味ですよと伝えたら分かってくれたが でもまあ確かに’ください’って変かもなとも思ったよ -- 2011-08-25 04 19 05 人間すら奴隷に出来る魔法のアイテムは 人間から恵んで貰わないと手に入らないって時点で矛盾してる事に気付かんのかね -- 2011-01-19 17 22 53 このお兄さんはいい人だな -- 2010-12-31 15 43 48 お兄さんと一緒にありすが出てきてもおもしろかたと思ったわ。乙 -- 2010-11-15 04 58 24
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『ゆっくり公民 ~カースト制~(中編)』 29KB いじめ 差別・格差 戦闘 群れ ゲス 希少種 自然界 人間なし 3作目 中篇 ゆっくり公民 ~カースト制~(前編)の続きになります 一匹のゆっくりが森の中を飛び跳ねている、そのゆっくりは奇妙なわっかを背負っている。 そのゆっくりが何事か呟くと、そのわっか横に、棒のような物が浮かび上がる、 「……オンバシラー」 ゆっくりの掛け声によって、その棒は上の方に飛んで行き、近くの木の枝にぶつかった。 ガサガサと言う音と共に、木の葉と木の実がいくつか落ちてくる、ゆっくりは満足そうにそれらを口に入れるとその場から去って行った。 ゆっくりかなこである、希少種の一種であるこのゆっくりはオンバシラと呼ばれるものを呼び出し、扱うことが出きるゆっくりで、その攻撃力はとても高く、多くの捕食種を撃退できるだけではなく、ドスまりさに痛打を与える事さえできるのである。 このかなこは、この森で一匹静かに暮らしていた、多くのゆっくりが生息し、いくつもの群れが存在する森だが、かなこの住んでいる辺りは群れが無く、いくつもの家族が自由気ままに暮らしている地域であった。もっとも群れがあってもこのかなこが入る事は無かっただろう、かなこは他のゆっくりを基本的に信用せず、一匹で自由に生きてきたゆっくりであった。 その日もかなこは、狩りを終えると家に戻り、一匹で自由気ままにゆっくりをする予定だった、季節は秋の終わり、他のゆっくり達は必死に越冬のための食料をかき集めている時期である。そんな中でもかなこはとてもゆっくりとしていた、すでにおうちの越冬準備は完了しているし、食料も優に成ゆっくり三匹が越冬できるほどに集められている、後は冬篭りに入るだけである。 しかし、かなこはまだ外を出歩いていた、かなこは秋が好きだった、既にかなこの最も好きな紅葉はほとんど無いが、秋から冬に移り変わる、その悲しい季節も好んでいた。 今日の夕食の分の食料を口に含み、おうちへの道を急ぐ、かなこは途中の木の根元でゆっくりの泣き声が聞こえるのに気がつき、好奇心からその木へと近寄った、そこに居たのは子ゆっくりだった、いや、大きさはほとんど赤ゆっくりのようだ、しかし、泣いているそのゆっくりの言葉から赤ちゃん言葉が抜けている事だけが、その小さなゆっくりが子ゆっくりで有ると教えていた。 思わずその子ゆっくりを見つめてしまうかなこ、普段であれば無視していただろう。 しかし、その子ゆっくりには何故かかなこへ強く訴えかけるものがあった、小さな、緑の髪の子ゆっくり、それはゆっくりさなえであった。 子さなえに声をかけるかなこ、しかし泣き続けるさなえとは話が通じない、寒さから日暮れが近いことを知ったかなこはその子さなえを口に入れ、自分のおうちへ連れ帰ってしまった。 おうちに着くと、かなこはまず子さなえに食事を摂らせた。 「むーしゃ、むしゃー、しあわせーです!」 満足に食事を摂っていなかったのか、すごい勢いで食べる子さなえを苦笑しながら見守るかなこ。 落ち着いた子さなえから事情を聞くと、子供の言葉のため分かりにくいが、子さなえが語ったのは次のようなことだった。 子さなえは母親であるれいむの元に生まれた。父親は永遠にゆっくりしてしまったのか、子さなえは会った事が無く、家族は母れいむとたくさんの姉れいむと姉まりさ達だった。生まれてからしばらくは、家族みんなでゆっくりしていたが、だんだん一匹だけ異なる子さなえが、れいむやまりさの姉達にいじめられるようになり、母れいむもそれを止めるどころか自分もそのいじめに加わりだした、最初は無視されたり、突き飛ばされることが多かったが、寒くなりだしたころから食料が少なくなり、一家の間にゆっくり出来ない空気が流れるようになった、子さなえは真っ先に食事を減らされずっと耐えていたが、とうとう昨日、耐えられなくなり母れいむに訴えたところ、罵られたあげく口の中に入れられ、おうちから遠いところに捨てられたそうだ。子さなえは母親を追いかけたが、子ゆっくり ――体はほとんど赤ゆっくりではほとんど歩けずあの場で泣いていたというのだ。 それを聞き終えたかなこは、何故自分がこのさなえに強く惹かれたのか分かった気がした。 この子さなえは似ているのだ、昔の自分と、かなこは親切なぱちゅりーに拾われたことにより命を永らえるが。 あの経験はかなこの中に、他のゆっくりへの大きな不信感を残してしまった。 かなこは思わず口にした、 「ねぇ、さなえ?だったら私の娘になるかい?」 それは昔の自分に似ているさなえへの同情だったのかも知れない、それとも、ゆっくりかなこという種がゆっくりさなえへ持つと言う親近感だったのかも知れない。 「は、はいかなこさま、ゆっくりしていってね……」 「ゆっくりしていってね……せめて、おかあさまとよびなよ」 こうして二匹は家族になった、その直後に冬篭りに入り、まだ小さい子さなえにとっては辛い越冬になったが、かなこが整備したおうちと蓄えてあった食料により越冬は成功する。春になり、おうちの外に出たかなことさなえ、厳しい冬を越しさなえは立派なゆっくりとなっていた。 「おかぁさま、これはなんですか?」 「あわてるんじゃ、ないよ、まったく」 初めてゆっくりと見る森に舞い上がるさなえ、体は子ゆっくりと成ゆっくりの中間くらいの大きさだが、心は完全に子供である。冬の間にかなこから様々な事を学んではいたが、実際に目の前にすると違う、ピョンピョンとあっちこっちを飛び回るさなえにかなこは目がはなせない。 「まったく、さなえはしょうがないね……」 しかし、そんなかなこはとてもゆっくりとしていた、かなこにとって初めての、他のゆっくりとのゆっくりだった。 春の香りに包まれた森で、かなこはさなえに森の知識と狩りの方法を教えることになる。 希少種とはいえ、かなこ種の様に特殊能力を持たないさなえだが、持ち前の素直さでかなこの狩りの知識を吸収する。 しばらくすると、さなえは自分のごはんくらいは自分で集められるまでに成長した。 そんなゆっくりとした生活を続けた二匹を、大きな事件が襲ったのはその年の夏、初夏も過ぎて日中の暑さが辛くなってきたころだった。 かなことさなえが住む森の一画は、居住ゆっくりの数が少なく、いくつかの家族が離れて暮らしており、群れなどの組織も無い所だった。 狩りでおうちの周りを活動するかなこは、さいきん周囲のゆっくりが増えてきているのを不審に思っていた。 さなえにも注意をしたかなこは、辺りを調べ、やはり地域のゆっりが増えていることに気がつくと近くのゆっくりと接触して事情を聞くことにした。 この地域にゆっくりが増えているのはどうも、この場所から見て山の見える方角にいたゆっくり達が移住してきているのが原因のようで、実際に移住してきたという家族に聞くと逃げてきたというのだ。 逃げてきたというゆっくり達の証言は、恐怖によるものか微妙に食い違いがあるものの、一貫しているのは、彼らの所属していた群れが別の群れの襲撃を受けたという点である。 ゲスやレイパーの襲撃というのは、森では偶に起きる事件である、しかし、一つの証言が知れ渡ると森のゆっくり達に動揺が広がった。 「襲撃を行っている群れには、ドスまりさが居る」 これは、ゆっくりにとっては大きな衝撃である、すべてのゆっくりをゆっくりさせてくれる存在――ドスまりさはゆっくりならば誰でも知っており、ドスまりさと襲撃という、ゆっくり出来ない行為が一致しなかったのだ。 ドスが居ると聞いて、喜び勇んで山の見える方へ向かったゆっくり達が戻ってくることは無かった、むしろ山の方角から逃げてくるゆっくりが増えてゆき、その一帯のゆん口は増加の一途をたどった。 かなこは、ドスが居ると聞きてもさすがに喜ぶことは無かった。 いや、むしろ警戒したと言ってもよい、既に森で数年生きたかなこはこの森に居たといドスの噂も聞いたことがある、しかしそのドスは群れを連れて何処かに移住したと聞いている。 そのドスがゆっくりの群れを襲っているのだろうか。ドゲスと言う存在は来たことが有るが、噂に聞いたドスはとてもゆっくりしたドスだったという、しかしもしドゲスが襲撃してくるとすると危険である、かなこのオンバシラなら普通のゆっくりは十数匹を相手にしてもなぎ払える、しかしドスはどうだろうか。傷を与える事なら出来るかもしれないが、勝利するのは難しいだろう、しかも今のかなこにはさなえが居るのだ、この事がかなこを迷わせた。 かなこが移住という名の逃亡を選択しようか迷っているころ、その地域のゆっくりに一つの動きがあった。 それまで元々住んでいたゆっくりが群れを持たなかったこともあり、自由に移住してきたゆっくり達だがその数が増え、群れの襲撃という危機感から、集まり群れを作ろうという流れが出来始めていた。 これには移住者を受け入れてしまったせいでゆん口が増加し、狩などの際トラブルが起き易くなった事からその解決のための方法が望まれたからである。 一度は他の土地への移住を考えたかなこだが、さなえが居る点と、この森の他の地域への無知を自覚したことから、この土地へ残ることを選択する。 かくして、ゆっくり達の間に誰ともなしに呼びかけられ開催にいたった、群れの集まりにかなことさなえの姿もあった。 集まったゆっくり達の話し合いは揉めに揉めることとなる、もともと群れが存在しなかった所に、元々いたゆっくりの数倍ものゆっくりがつめかけたのだ、さらに襲撃により壊滅した群れからの逃亡ゆっくりの中に、元の群れで長や参謀をやっていたゆっくりが複数居たことから、話はややこしくなる。 一匹が元の群れに有ったという掟や制度を提案すると、他の一匹が自分の元の群れの掟を持ち出してそれを批判する。 根拠の無いものを持ち出して主導権をとろうとするゆっくり、自分の力を見せ付けようとするゆっくり、まさに泥の中に饅頭を投げ込み、こねくり回した有様である。 結局、掟などは成立せず、襲撃の際は一丸となって闘うという点が合意に至ったのみであった。 結局、この群れもどきはいくつかの集団の寄り合い所帯となる。 かなこは、元々この地域に暮らしていたゆっくりとも仲が良いわけでは無かったが、希少種であることと狩などの腕では有名であり、いくつかの集団から勧誘を受けることとなる、それに対して言葉を濁していると、同じような目に遭っている一匹のゆっくりが目に付いた。 狐のような耳を覆うデザインのお帽子、九本のしっぽ、ゆっくりらんである。 らんの方でもかなこに気がついたのか、二匹は意気投合することとなった。 さなえも加えた三匹は、以後行動を共にするようになる、 「まったく災難でしたね、しかし同じ希少種の仲間が居て心強いですよ」 そんな風に語るらんは、元々とある群れに所属していたらしい、しかしその群れでもらんが希少種で有ることから特別扱いを受け、最終的にトラブルが起きてしまった――詳しくは語らなかったが、ちぇん種に絡むトラブルらしい。 そして、群れを出てからは一匹で暮らしてきたというのだ。 そんな三匹の元にはやはり親近感があるのか、集まったゆっくり達の中から、希少種と呼ばれるゆっくりが集まるようになる、ゆっくりすわこ、ゆっくりてんこ、ゆっくりえーりん、ゆっくりけーね、ゆっくりもこう、彼らはこの辺りの森に詳しいことからかなこをリーダーとして、数こそは少ないもののこの群れもどきの中で一つの勢力となっていった。 かなこ達、希少種のグループにあってさなえは非常にかわいがられることになる、最年少であることとその素直さで他の希少種たちに好かれたさなえはのために、仲間達はいろいろな事を考えた。 本来希少種のみでも行える狩を、他の通常種のゆっくりと協力して行うのもその一環だった。 ゆっくりけーねの提案により――この世界のほとんどのゆっくりは通常種であり、希少種のみと付き合うとさなえの教育に悪いというものだが――行われた取り組みで、かなこは失望することになる。 能力が低く、ほとんど成果は出せないのに、公平どころか理由をつけて大目の分配を要求する、れいむ種。 逆に能力はそれなりに高いのに、それを鼻にかけてまじめにやらない、まりさ種。 とかいはという謎の概念に囚われ、他のゆっくりの言葉を聞かない、ありす種。 素直で性格はいいのだが、のんきで単純、あまり深く考えない、ちぇん種。 他の種よりは知恵が回るが、それを理由に肉体労働を行おうとせず、他の種に寄生をしようとするぱちゅりー種。 戦闘能力は通常種では最大だが、その能力を闘い以外に使おうとしない、みょん種。 成ゆっくりになってから、これまであまり付き合ってこなかった通常種のゆっくり達の酷さに呆れ返るかなこ。 これはかえってさなえの教育に悪いのでは……そんな風に考え出したかなこにとって決定的ともいえる事件が起こった。 事件の始まりはある日の狩りであった、かなことさなえを含む希少種と数組の通常種の家族が協力をして狩りをする、そう決まっていた日の朝、待ち合わせの場所に一匹のれいむが着ていた、それだけならなんらおかしい事は無い。 なんと、そのれいむの周りには赤れいむ4匹に赤ありす4匹、合わせて8匹の赤ゆっくりが着いていたのだ。 当たり前だがこれから狩りに向かうところに赤ゆっくりが居ても役に立たない、邪魔になるだけでなく面倒をみるゆっくりが必要になるだろう。 「ゆ~♪おちびちゃん、おいしいごはんさんをもらうからね♪ゆっくりまっててね♪」 「「「「「「ゆっきゅりりきゃいしぃちゃよ!」」」」」」 周りのゆっくり達も呆れているのかそんなれいむを見つめている、そんなこととは露知らず周りの赤ゆっくりをぺーろぺーろとしているれいむ。 これは、このれいむの打算であった、このれいむは今まで希少種のグループとの共同での狩には参加したことが無い。 しかしそれに参加したゆっくり達から、希少種のゆっくりと一緒に狩りをすれば非常に多くの収穫が得られる事を聞き、さらに参加したゆっくりの数による公平な分配であることを聞いて、それならおちびちゃんをつれていけばいいね、と餡子脳で考えたのだ。 もちろん赤ゆっくりが狩りを出来ないのはれいむも分かっている、しかしれいむは、 「こんなかわいいおちびちゃんがいっしょにいたら、みんな、いつもよりかりをがんばっちゃうね!」 などと考えて赤ゆっくりを連れてくることになる。 周りがそんなれいむにあきれ返って居る中、このれいむを見て強いショックを受けたゆっくりがいた、さなえである。 「ゆ!……そ、そんなおかぁさま!」 実はこのれいむ、昨年の晩秋にさなえを捨てたれいむである、冬篭りの準備中に寒さから身を守るためにしたすーりすーりから、すっきりーをしてしまったれいむとまりさの番。れいむが植物性にんっしんをしてしまい、そのれいむに急かされたまりさは必死に狩りをすることになる。過労によってまりさが永遠にゆっくりしてしまうのは時間の問題であった。 一匹で出産を終えたれいむは蓄えた食糧を使い子育てを始めることになる、生まれた9匹の赤ゆっくりの中にチェンジリングとして居たのがさなえであった。自分に似た赤れいむと、番に似た赤まりさには、愛を感じたれいむだったが初めて見る赤さなえには何かゆっくりできないものを感じていた。出産により芽生えた「ぼせい」によって殺すことこそ無かったが他の赤ゆっくりとは区別して育てていくことになる。そんな母の態度は瞬く間に赤ゆっくりに伝染した、さなえはこうして姉妹達からのいじめを受けることになる。そこに冬を前にして貯めた食料が尽きるという事態が重なる、さなえの食事はどんどんと減らされてゆき、耐えられなったさなえにイライラの募っていたれいむは怒り、さなえはお家から離れた所に捨てられたのだった。 その後のれいむは、狩りを行うものの秋の終わりに食料がそんなに集まることも無く、冬が始まると早々に赤まりさを潰して食い、もうしばらくして食料の不足からゲス化した赤れいむを潰して食って越冬に成功することになった。 なんとか春まで生き延びたものの、食糧不足から弱りきっていたれいむは、おうちを出たところで倒れ、それを助けたありすと暮らすことになる、しばらくしてからすっきりーしてにんっしんするものの、夫のありすは梅雨の時期に狩りに出たことから永遠にゆっくりしてしまい、しんぐるまざーとなってしまう、ありすの蓄えて出産をした後は、この地域に多くのゆっくりが流れ込んできた時期であり、しんぐるまざーであることを理由に物乞いを続けて生きてきたのだ。 さなえを見たれいむは、すぐさまそのさなえが自分の捨てた――既に永遠にゆっくりしてしまったと思っていた――さなえだと気がつく。 「どうして、おまえがゆっくりしているんだ!」 「れいむのおちびちゃんがえいえんにゆっくりして、どうしてゆっくりしていないおまえが!!!」 自分の行いを棚に上げ、さなえに飛び掛るれいむ。 れいむの体当たりを受けたさなえは吹く飛ばされる、そこに飛び込んだ影、 「何をしている!やめなないか!」 ゆっくりらんであった、らんは9本の尻尾を大きく広げ、れいむを威嚇する。 「ゆ、なにするのらん!じゃましないでね、ゆっくりできないちびをせいっさいするだけだよ!」 突き飛ばされた衝撃で体を打ったさなえは、ゆっくりえーりんに手当てを受けている。 その頃になると、騒ぎに気がついた他のゆっくり達も集まってくる、希少種達は一様にさなえを気遣い、れいむに冷たい視線を向ける。 その中でもさなえの様子を見たかなこの怒りは特別な物であった。 「家のさなえに何をするんだ、れいむ!返答しだいでは決して許さないよ!」 「なにをいってるの、それはれいむのさなえだよ、れいむがなにしようとかってでしょ!」 れいむの返答にかなこは、このれいむの素性に気がつく。 間違いない、こいつがさなえを捨てたゆっくりだ、何てことだ、さなえを冬に捨てただけではなく、再び苦しめようと言うのか。 あまりの怒りに、かなこのオンバシラがエンクスパンデットしそうになる。 そんなかなこに、飛びつく小さな影、 「変な事を言わないでください、さっきのは間違いです、さなえのおかぁさまはかなこさまだけです!」 さなえだった、さなえの言葉に感動し怒りを解くかなこ、れいむはその言葉に反論しようとしたが、急にニヤリと変な表情を浮かべると「れいむはしらないよ」などといい子供の元に戻っていく。 そこへゆっくりけーねが現れる、けーねはこの騒ぎに気がついていたのだが、仲裁に入るタイミングが分からずに居た、ちょうどお開きになった時を見計らってやってきたのだ。 けーねの発言によって、ゆっくり達は集団で狩りを始める事になる。かなこは狩りの最中もさなえに気を配り、さなえも不安なのかかなこについて狩りを行っていた。 問題のれいむは子供たちをまとわり付かせて遊んでいるだけで、ほとんど狩りに参加せず他のゆっくりに注意を受けると、自分は「しんぐるまざー」だと叫びだし、面倒くさがったゆっくり達に放置されることになる。 その日の狩も成功した、夕方にはゆっくり達の前には収穫が山となっており、どのゆっくりもそれを見て満足そうな顔をしている。 かなこの指示で、らんとけーねが食料を狩りに参加したゆっくりに等分していく、数字に強いらんと知識のあるけーねは、このような作業にはうってつけだった。 例のれいむにも公平な分配がなされた、れいむの前に食料を置くとき、一瞬らんとけーねは嫌そうな顔をするが、これ以上このれいむに関わりたくないのか、れいむにもさっさと渡すと、次のゆっくりの元へ移動する。 れいむが騒ぎ出したのはその時だった、 「なんなのぉ、これは?れいむには、おちびちゃんがいっぱいいるんだよ、もっとたくさんちょうだいね!」 「そうじゃよ、れいみゅはいっぱいだべるんじゃよ!」 「はやくちょうだいにぇ!」 「こんなんじゃ、ちゃりにゃいよ!」 「いしょいでにぇ!」 「こんなすこしなんちぇ、ときゃいはじゃにゃいわにぇ!」 「まっちゃくゆっきゅりしちぇいにゃいわ!」 「いにゃかもにょよ!」 「ちゃきゃいはにゃでにゃーができにゃいは」 「おちびちゃんたちもいっているよ、れいむはたくさんのおちびちゃんをそだてるしんぐるまざーなんだよ!ははのかがみでごめんね!」 赤ゆっくりは狩りに参加していない事を説明するらん、周りのゆっくり達もれいむに白い目を向ける、しかしその中には同情的な視線も混じっていた。 「なにいってるのぉ、おちびちゃんをみてゆっくりしたから、かりがせいこうしたんでしょ、ばかなの、しぬの、りかいしてね?」 しかし、これまでしんぐるまざーである事と、子供を使って物乞いを続けてきたれいむにとって、子供を見たらゆっくりできるというのは常識である、ならばごはんを多くくれるのは当たり前ではないか。 「何をいってるんだい、子供だけじゃなく、あんたも狩りに参加してなかっただろ!」 見かねたかなこが声をかける、れいむは尚も騒ごうとしたが、かなこに気が付くとその場は矛を収め、不満げな赤ゆっくり達をなだめると、自分の分の分け前を口に入れておうちへ帰っていった。 かなこは問題が終わった事に胸を撫で下ろす、しかし、これは甘い考えだった。 何よりも、かなこは戻ってゆく直前のれいむの表情を見ていなかったのだから。 分配が終わった後、仲間の希少種とも分かれたかなことさなえは、狩りの成果を口に入れておうちへと戻っていた。食料をおうちの倉庫に置き、夕食まで二匹でゆっくりし始める、今日はあんな事件があったせいか、いつも以上に甘えてくるさなえにすーりすーりを返すかなこは、心の中にくすぶる怒りを抑えていた。 あのれいむ、なんてゆっくりしていないゆっくりだろう、もしさなえが止めていなければ、オンバシラを使ってしまったかも知れない。 そんな時、二匹のおうちの入り口から音がする、警戒するかなこに外から声がかけられる。 「ゆ、ここはかなこのおうちでしょ、ゆっくりなかにいれてね!」 それは先ほどの問題のれいむだった、結界を取り外して中に入ってくるれいむ、怯えるさなえを後ろに隠し、かなこはれいむに問いかける。 「れいむ、もうすぐ暗くなる時間にいったい何の用だい?」 れいむを睨み付けるかなこ、そんな表情に気が付かないのかれいむが続ける。 「ゆぅ、わかっているよ、さなえのことでしょ、さなえはかなこにあげるよ、だからあまあまちょうだいね!」 その言葉に固まってしまうかなこ、何だとこいつは何を言っているのだ、さなえをあげるだと、さなえを捨てたお前が? 「きいてるの、そのゆっくりしていないさなえはあげるっていってるんだよ、だからかわりにあまあまをちょうだいね!」 ゆっくりしていない……? 「れいむは、ゆっくりしたかわいいおちびちゃんをそだてなきゃいけないんだよ!ゆっくりしたおかあさんでごめんね!?」 自分がゆっくりしているだと……? かなこは無言でオンバシラをれいむに打ち付けた、狭いおうちの中、はじめからかなこの前に現れたオンバシラはれいむだけでなく入り口の結界の残りと土も巻き込み、れいむを吹き飛ばす。 「ゆびしっ……ゆぎぎぎぎぎぃ……」 外に吹き飛ばされたれいむは顔に凹みを作りうめいているものの、生きているようだ。 「さなえがゆっくりしていないだと!ゆっくりしていないゆっくりは、れいむ、お前だよ!」 かなこの怒りの声が浴びせかけられる、結界を直しおうちへと戻るかなこ。 れいむはしばらく喚いていたが、しばらくすると立ち去った。 おうちの中へと戻ったかなこは、かなこを気遣ってくるさなえをなだめながら考えていた。 なんてゆっくりしていないゆっくりなんだろう、本当にあれが、かなこやさなえ、らんやけーねといったゆっくりと同じゆっくりなのだろうか、れいむの愚かな主張はかなこにそんなことを思わせていた。 そういえば、一緒に狩りをしていた他のゆっくり達もそうだった、能力も無いくせに自分達に寄生してきて、貰うときは一人前、あのゆっくり達はゆっくりしていると言えるのだろうか。 それは再びかなこを襲った他のゆっくり――通常種に対する不信感だった。 そしてこの事件は、かなこの常識に大きな楔を穿った。 ゆっくり達の大前提、ゆっくりはゆっくりしているということへ楔を。 それからしばらくは、かなこは同じように自分のグループの希少種と通常種のゆっくりで協力して狩りを行った。 あのれいむは痛い目に遇ったのが効いたのか、かなこたちの狩りに顔を出さなくなり、さなえを安心させていた。 ある日のこと狩りをしていると、ゆっくりの叫び声が響き渡った、群れのある地域のはずれから聞こえた声は助けを求めるもの、慌てて駆けつけたかなこ達が見たものは暴力を持ってゆっくりを痛めつけ、子ゆっくりを攫おうとするゆっくりの集団だった。 そう、例の群れがとうとう攻撃をかけてきたのだ。 襲撃をかけてきたゆっくり達は奇妙な点があった、こちらに向かって突撃してくるゆっくりと、後ろに並び木の枝を咥えたゆっくりの二種類が居たのだ、さらに奇妙なことにこちらに突撃してくるゆっくり達はみなゆっくり出来ないゆっくり――お飾りの無いゆっくりだったのだ。 思わずドスの襲撃を警戒するかなこ、しかし、噂に聞いたドスが襲撃する群れには見つからず、ゆっくりの数もこの群れもどきのゆっくりからすれば半分にも満たないものである。 勝てる、そうかなこは確信した、懸念対象であったドスは居らず、戦闘能力の高い希少種も見当たらない、数もこの地域のゆっくりからすれば小勢である。 すぐにここには地域のゆっくりが集まるだろう、時間を稼ぎ数がそろった所で一気に包囲殲滅してやる。 そう決めたかなこは、自分のグループを率いると襲撃する群れの前に立ちはだかった。 オンバシラを呼び出すかなこ、炎を出すもこう、体色を変え角を生やすけーね、九尾を逆立てるらんの口には鋭い木の枝が咥えられている。さなえに目をやるとえーりんがさなえを連れて後方に下がっていた。 これでかなこの懸念は消えた、時間を稼ぐべく、かなこ達はゆっくりできないゆっくりに飛び掛った。 戦いの結果はあっけないものだった、突撃してくるゆっくり出来ないゆっくりは戦意が低く、攻撃を受けると簡単に逃げ出す――最も、その攻撃は希少種達による苛烈なものだったが。 後ろに下がったお飾りのあるゆっくり達もかなこ達の攻撃を見ると及び腰になり、しばらくすると撤退してしまった。 多数で少数を囲んでいるときは強かったが、一度崩れると弱い、それがかなこ達の襲撃してきた群れに対する感想であった。 何とか襲撃を跳ね返したかなこ達、かなこのグループには損害は無く、地域の中でも最初に襲撃された一部がやられたほかには大きな被害は無かった。 しかし、それまで話でしかなかった群れによる襲撃が行われたのは事実であり、襲撃側も問題のドスの不在やその数から本来の力を出しては居ないと考えられる。 さらに問題があった、この群れもどきが作られたときに決められ、かなこが来ると考えていた増援が来ていなかったのだ、ゆっくり達は襲撃の報を聞くと逃げ支度に入っており、迎撃に向かったゆっくりは居なかった、かなこ達が撃退したと聞いてから戻ってきたゆっくりさえいたのだ。 やはり、この寄り合い所帯は問題だ、かなこはそう考えた、これでは本格的な侵攻には耐えられない。 そして、気が付く、やはりゆっくりだからゆっくりしている訳ではない、ゆっくりの中でもゆっくりの度合いが異なるのだ。 そして、多くがゆっくりするためには、ゆっくりできる――優秀なゆっくりが周りを導かねばならない。 この後、地域のゆっくりで集まりが開かれた、他のゆっくり達も襲撃に対する危機感は持っていたのか集会は速やかに行われた。 その場では、次の襲撃にどのように対処するかが話し合われたが、話し合いは平行線をたどる。 前回の襲撃を追い返したゆっくりとして、注目の集まっていたかなこは、ここで自説を披露した。 ゆっくりは全てゆっくりしているのではない、その種によってゆっくりの度合いが異なり、ゆっくりするためには優秀な種の元に集まり行動しなくてはならない。 しかし、ゆっくりはゆっくりしている、それはゆっくり達の常識である、だからこそお飾りの無いゆっくりなど異端を嫌うのだ。 もちろんゆっくり達も種による差異は知っており、どの種が優秀かなどは分かっている、しかしそこはゆっくり特有のうぬぼれと、能力の低い種は数が多いことが考えを止める。 「なに、いってるの、ばかなの、れいむはとってもゆっくりしているよ!」 こういうゆっくりほど声が大きく、言ったもの勝ちに成り易いゆっくりにとっては、それが正義になってしまうのだ。 かなこの提案は一笑に付された、結局この集団は群れになることが出来ず、襲撃の際の協力を再び確認しただけで集会は終わってしまう。 しかし、この地域のゆっくり達は少しづつまとまるようになっていく、大きな集団を形成したのは他より体の大きなまりさであった。 しかし、かなこは諦めなかった、何より自分のゆっくりのためにも思想の実現が必要だったのだ。 かなこと、それに協力する希少種のグループは密かに行動を開始した。 かなこはその後も、通常種との共同の狩りを続けながら、彼らを観察し、一つの結論に至った、能力が低いと一まとめにしてきた通常種のゆっくりだが、やはり数はゆっくりの最大勢力である。 また、通常種の中でも能力には違いがあることも確かめられた、希少種に及ばないものの道具の扱いに長け、戦闘能力の高いみょん種、お帽子を持ち輸送能力が高く、身体能力も平均以上であるため狩りの長けるまりさ種。 かなこは、最初にこの二種に狙いを定めた。 まりさ達は、かなこの説に同意はしなかったが、その狩りの能力の高さをほめてやり、煽てると途端にいい気になってかなこのグループに加わるように成っていった。 天狗に成り過ぎるまりさも、狩りにおけるかなこ達希少種の能力を見ると、目つきが変わる。 まりさ種はゲスに成り易い反面、利益に聡く、それを理解する賢さも持ち合わせていた。 みょん達はもっと簡単だった、みょん種は自分の力に自信を持っている者が多い、しかし他のゆっくりの力に敗れたときそれを賞賛する素直さも持ち合わせていた。 みょんの中でも最強と謳われたみょんを、かなこが倒すと進んでかなこのグループに加入した。 こうしてかなこは、まりさとみょんの二種で周囲を固めるようになる。 かなこは、グループの中で狩りの組織化を行う、かなこ率いるみょんの集団を狩場の捜索にあて、発見した狩場はらん率いるまりさ達で一斉に採集を行う。まりさ、みょん達の番で別の種の者たちを雑用としてけーねとさなえの指揮の下、おうちの整備や子ゆっくりを一箇所に集めての教育を行った。 また、狩り以外の時間にはまりさとみょんに簡単な訓練を施し、集団行動を練習させる。 その効果はすぐに現れた、襲撃を警戒して遠出が出来ないゆっくりが多い中、みょんを率いるかなこの行動範囲は地域のゆっくり達の中で最大になり、まりさ種による一斉収穫は高い効果を上げた。 またこの時期、群れへの襲撃が前回以降行われ無かった事も大きな幸いとなった。 もちろん問題も起きた、この地域のゆっくりの中に大きな勢力を作り出していた、例のまりさである。 まりさ種とみょん種を集めているかなこに対して、露骨に悪意をぶつけてきたまりさだったが、かなこのグループの成功により同属のまりさ達がどんどん流出してしまい、とうとう堪忍袋の緒が切れたのであった。 「ゆぁ~なにをやってるのぜ?あんなうさんくさいやつじゃなくて、まりささまにしたがうのぜ!」 しかし、そんなまりさも希少種とみょん、まりさを纏め上げたかなこに手出しすることは出来なかった。 こうして地域での勢力は、かなこ:6、まりさ:4という具合で落ち着き着いたときには、季節は秋に差し掛かっていた。 かなこのグループの勢力は地域で最大ものとなったが、かなこに同意していないものも多かった。 かなこは以前の主張どうり、ゆっくりの種による階級制を取っていたため、希少種とその下に位置するとされたみょん種とまりさ種以外からは嫌われており、グループのみょん、まりさの番でもそれ以外の種はあまりよい顔をしていなかった。 こんなかなこのグループにそれ以外の種が入るの躊躇うのは当然の事だったし、みょんやまりさの中にも他種を番にしている事からかなこのグループに入ろうとしないゆっくりも存在した。 秋に入ると、かなこは冬に向けて、グループを引きいて精力的に食料の収集を行った、まりさ種だけでなくみょん種も狩りに割り振り。それ以外の種で新しいおうちを作り、臨時の食料庫として越冬用の食料を溜め込んだ。 そうして、着々と冬への準備を積み重ねるかなこ達を、二度目の襲撃が襲った。 その襲撃を伝えたのは一匹のちぇんだった、狩りに出ていた先で、大量のゆっくりが移動しているのに気がつき、その先頭がお飾りのないゆっくりである事に気がついたちぇんは、狩りの成果を放り出しても群れにそれを伝えた。 騒然となるゆっくり達、かなこはただ冷静にグループのゆっくり達に迎え撃つ準備を命じた。 かなこが迎え撃つ場所として選んだのは、森の中にいくつかある開けた場所である。 敵の群れも前回より力を入れているのか、数は前回の数倍におよび、かなこ達のグループよりも明らかに多い。 前回と同じく前に飾りの無いゆっくりを置き、後方に枝を加えたゆっくりが並んでいる。 奇妙な点は、前列の飾りの無いゆっくりに傷を負っているゆっくりが散見される点だろうか。 かなこはみょんを引き連れて迎え打った、かなこの横に木の枝を加えたみょんが体をくっつけて並び、敵に向けて木の枝を向ける、その後ろではみょんより数は少ないがらんに率いられたまりさが並んでいる。。 戦いは敵の群れの飾りの無いゆっくりの突撃から始まった、後方のゆっくりの命令を受け突撃してくるゆっくり達。 しかし、ズラリと並んだ木の枝に飛び込むことは出来ずみょんの列の前でたたらをふんでしまう、蛮勇をもって突撃したものはみょんの咥えた木の枝で顔を刺されると戦意を喪失する。 止まってしまった飾りの無いゆっくり達に、みょん達の列の後ろのまりさ達の口から吐き出された小石が当る、みょんを超えるように放たれた小石の威力は、ゆっくりに取って大したことは無いが、一方的に攻撃されることにより後退するゆっくりが出始める。 敵の後列のゆっくりが動いたのはその時だった、一向に進まない飾りの無いゆっくりに嫌気が差したのか、枝を構え前進するゆっくり達、その時、らんの合図により、まりさ達が石を放つのを止め、かなこがみょんに合図を出して突撃をかけた。 迎え撃とうとする飾りの無いゆっくり達も、かなこのオンバシラが数匹のゆっくりを一瞬で潰すと、逃げに移った。 後ろに逃げ出してしていく、飾りの無いゆっくりが前進してきたゆっくりと衝突する、大混乱におちいった敵の群れの後方に回っていた、もこう率いる残りのまりさが現れると、戦意を喪失したのか逃走していく。 後を追おうとする、みょんをかなこが止めていると、こちらも計画どうり追撃をせずにいたもこうが戻ってきた、逃げる敵の前に居たため、傷を負ったゆっくりも少なくないが永遠にゆっくりしてしまったものは居ない。 敵が完全に居なくなったのを確認すると、ゆっくり達の中から歓声が湧き上がった。 かなこ達はこうした襲撃者に完勝することになる。 ちなみに、かなこと敵対していたまりさは、この襲撃にあって、番のれいむと一緒に逃げ出そうとしたらしく、仲間たちからの信用を失ってしまったらしい。 逆に、かなこのグループはこの地域のゆん望を集めることとなる。 そして冬の初め頃、冬篭りの支度を整えたかなこ達のグループへ、それ以外のゆっくり達が泣きついて来る事になる。 彼らは、それぞればらばらに冬の準備を行っていたため、越冬に十分な量の食料を集められないものが多かった。 そうして、いやいやながらもかなこの、種によるゆっくりの違いを認める事でかなこのグループに入り食料を援助して貰おうと考えたのだ。 かなこはそんなゆっくり達に、自分に従うことを約束させると、気前よく食料を援助した、かなこのグループにはそれだけの備蓄が存在したのである。 こうしたかなこは、やっと自分の群れを作る事に成功したのである。 ゆっくり公民 ~カースト制~(後編)へ続く……
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*初投稿っていうかSS処女作なのぜ *だから、至らないところだらけだと思うけど、生温かく読んでくれれば幸いなのぜ 作・もっちもちあき 「今度の日曜、ゆっくりショップ行きたいんだけどつきあってくれるか?」 日曜 友人の愛であきに誘われ、今日はゆっくりショップに来ている。 俺自身はゆっくりにはそれほど興味がないのだが、友人がお前も飼ってみたらどうだというのでついてきた。 店内は、ゆっくりしていってね!という、ゆっくりの声で少しうるさい。 最近は、野良ゆも定期的に駆除されているらしく、昔ほどは見ない。 愛であきは、すでに金バッチのまりさを飼っている。 今日は番が欲しいとまりさが言うので、買いに来たらしい。 「お、これなんかいいかも」 ショーケースの中の金バッチありす。品も良さそうだ。 しかし、たかが”ゆっくり”ごときに10万はないだろう。 そう思ったのだが、愛であきは、なんとそいつを買うらしい。 (俺には考えられん…) 赤ゆお徳用パック5匹980円が目に留まる。 (成体ゆっくりは高いし、お試しでこれでいいか) 「おいおい。バッチ無しで、しかも赤ゆは初心者には飼いづらいぜ」 会計を終えた愛であきが来てそう言う。 「しかしなあ…。万単位はちょっとなあ…」 もともと、それほど興味があったわけでは無い。 「バッチ付きは教育済みだから、余計な手間とかいらないぞ?」 「しかし、バッチ付きは高いんだよな~」 「風俗我慢すれば買えるべ」 悩んでいると店員が 「それなら、このゆっくりはどうでしょう?」 と言って、1匹の銅バッチれいむを薦めてきた。 特価品3900円、サンキュー価格と書かれている。 「お、れいむ種は初心者に飼いやすいし、いいんじゃないか?」 「なんでこいつは特価品なんですか?」 俺は店員に聞いてみる。 「あー、一度野良レイパーありすにすっきりさせられちゃったんですよね。でも、すぐ助けたんで全然問題とかは無いんですけど、気にする人はしますんで、お値段がお求め安くなっているんですよ」 (ふ~ん。ま、これでいいか) 「じゃあ、これ下さい」 「ありがとうございます」 すると、右手のお徳用の袋の赤ゆが騒ぎ出した。 「おかーしゃん!おかーしゃん!」 「すみません。そのとき生まれた赤ゆが、ちょうどその袋に入ってたみたいですね」 少し、思案した後 「じゃあ、これもいいすか」 「え?いいんですか?どうもありがとうございます」 その様子を見ていた愛であきは 「赤ゆまで買ったのか?飼い難いぞ?」 そのとき、それまでずっと下を向いていたれいむが 「おにいさん、れいむのおちびちゃん達をたすけてくれてありがとう。おにいさんはゆっくりできるにんげんさんだね」 と言った。 家にれいむと赤ゆ5匹(れいむ3匹ありす2匹)を連れ帰る。 部屋を荒されないように、部屋の一角に柵を作り、そこにゆっくり達を入れる。 (ある程度の教育は受けてるんだよな) 「うんうんとしーしーはここでしろ。あと、飯は俺が持ってきてやるから。狭くてもしばらくは我慢してろ」 「ここがれいむたちのゆっくりぷれいすなんだね。ゆっくりりかいしたよ」 「おかーしゃん!さくしゃんあってしぇまいよう!」 「とかいはな、あまあましゃんほちいわ!」 「おちびちゃんたち。おおきくなったらおにいさんもだしてくれるから、ゆっくりおかあさんのいうことをきいてね」 とりあえず、赤ゆはぎゃあぎゃあウザいが、親れいむが躾けてくれているおかげか、 それほどひどい状況では無い。柵からは出てこないし、それほど手間はかかっていない。 まあ、愛であきみたいに抱っこして服着せて、みたいなことはやりたいとは思わないし。 ちょっと、仕事の愚痴を親れいむにするくらいでちょうど良かった。 3か月くらいたつと、赤ゆも子ゆになって、柵が狭くなってきた。 赤ゆの時は餌なんて大したことないのだが、最近は餌の減りが早い。 (俺の安月給じゃ、こいつら全部が成体ゆっくりになったら、飼うのは無理ぽ) しかし、あげるといっても、いくら親ゆに躾けられたとはいえ血統書も無い、バッチ無しなので貰い手もいまい。 さてどーすんべ。 思案にくれていると、愛であきが困った様子で話しかけてきた。 「なあ、うちのまりさとありすをちょっと預かってくれないか?」 輸出部にいる愛であきは、会社の出張で1ヶ月間、家を空けるのだという。 さすがに1ヶ月はゆっくりだけでは暮らせない。しかも、最近一粒種の赤ゆまりさも生まれたらしい。 (めんどくせ~…) 「うちの子はいい子だし、手間かかんないからさ」 「仕方ねえな。餌代置いてけよ」 というわけで金バッチのつがいとそのガキを預かる羽目になった。 愛であき自慢のゆっくり一家がやって来た。 「ゆっくりよろしくおねがいします」 金バッチだからか礼儀はいいみたいだ。 ゆっくりの餌代は、愛であきが置いていった分だけで9匹分でお釣りがくるくらいだった。 まあ、愛であきは好物どうの言っていたが覚えちゃいない。 うちの連中にやってる、ゆっくりフードをくれてやれば充分だ。 柵へ3匹を放り込む。 「ゆ?せまいよ、おにいさんゆっくりできないよ?」 「そちらのそふぁーさんにすわらせるのぜ」 居候のくせに厚かましい。礼儀正しいのは愛であきがいる時だけか。 飯の時間だ。いつものようにうちの連中は 「おにいさんにかんしゃしてきょうもごはんさんたべようね」 「ゆっくりいただきまーちゅ」 「む~ちゃむ~ちゃ…ちあわちぇ~~~~!」 いつもの光景だ。しかし… 「おかーしゃん!このごはんさんまじゅいよ!めであきおにーしゃんのぱしたさんたべちゃいよ!」 「ゆ!おちびちゃんはそだちざかりなんだぜ!たりないよ!それにごはんさんおいしくないのぜ!」 「はやくあまあまをもってきてね!おともだちのおにいさんはとかいはじゃないわね!」 ビキィ!!! うぜえ… 1週間くらい経ったある日の昼、鬼意山は会社に行っていていない。 れいむ一家は、不満タラタラでストレスがたまっている金バッチ一家になるべく近寄らないようにしていた。 鬼意山からも、客人だからケンカするなと言われている。 しかし、この日事件が起こった。 遊んでいた子れいむが、赤ゆまりさと衝突してしまい、赤ゆが怪我をした。 大した怪我では無いのだが、過保護に育てられた赤ゆは痛みで大泣きする。 「ゆんや”ぁぁ!!!いちゃい!!いちゃいよー!!おきゃーしゃーん!!おとーしゃーん!!」 「どうちよう…。ごめんにぇ…。」 大泣きする赤ゆの横で、おろおろする子れいむ。 「ゆ!ごめんなさいね!おちびちゃんもあやまってね!」 慌てて親れいむが駆けよろうとするが… 「ゆあああ!!まりさのかわいいおちびちゃんになにするのぜー!!!」 「とかいはなありすのおちびちゃんをいじめるなんて、このいなかものぉー!!!」 ドカッ!! 金まりさと金ありすの体当たりで、子れいむは吹っ飛ぶ。 金バッチ一家は、子れいむに体当たりした後、赤まりさをぺーろぺーろしていた。 吹っ飛ばされた子れいむは、結構大きな怪我を負ってしまった。 「おちびちゃん!」 必死に子れいむにぺーろぺーろする親れいむ。 「ゆ… ゆ…」 苦しそうな子れいむ。 「ゆわ”ぁーん!!おねーじゃん!ゆっぐりじでいっでね!」 泣きながら、姉を励ます他の子ゆ達。 そんな様子を見ていた金バッチ一家は 「ふん。うちのかわいいおちびちゃんにひどいことをしたからとうぜんなのぜ」 帰ってくると、子ゆ達が「ゆんやぁぁ」と泣きながら、俺を呼ぶ。 子れいむが怪我をしていたが、親れいむの”ぺーろぺーろ”のおかげで重症化することを防ぎ、 オレンジジュースをかけることにより回復へ向かっているようだった。 俺は、れいむの説明と金バッチ一家の横やりで、だいたいのことを把握した。 「おちびちゃんがぶじで、ほっとしたよ。おにいさん、ゆっくりありがとう」 れいむと子ゆ達が喜ぶ横で、金バッチ一家が口を挟んできた。 「こんな、いなかものといっしょにはくらせないわ」 「まりさたちは、めであきおにいさんのだいじな、かいゆっくりなのぜ。つまり、だいじなおきゃくさまなのぜ。こんなせまいところじゃなくてじゆうに、いえさんをつかわせるのぜ」 「ぷくー!おかーしゃんとおとーしゃんのゆうとうりにちてね」 ビキィ!!! 俺が黙っていると、更に調子にのってきた。 「こんな、どうばっぢさんの、むのうないなかもののげすれいむとは、ゆっくりできないっていってるのがわからないの!」 「まりささまたちは、ゆうしゅうなきんばっちさんなのぜ。だから、めでられてとうぜんなのぜ!」 「おとーしゃんとおかーしゃんの、ゆうこときかにゃいむにょうなぢぢいは、ゆっくちちね!」 ブチ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 何かが俺の中で切れる音がはっきりと聞こえた。 「ギルティ…」 俺は、ちねとかほざいた糞袋を掴み上げる。 「ゆ?おしょらをとんでるみちゃい!」 馬鹿な糞袋はのんきだが、金バッチ糞袋どもは、まがりなりにも金バッチ。 俺の発するただならぬ雰囲気に気がついたようだった。 「まりささまのおちびちゃんになにするのぜ!さっさとはなすのぜ!」 しかし、偉そうな態度に変化はない。 「ゆんやぁぁぁ!!いちゃい!はなしちぇね!はなしちぇね!」 ほんの少し、握る力をこめると、糞袋はケツをプリプリさせながら逃げようとする。 「じじい!ありすのとかいはなおちびちゃんになにするのぉー」 ありすは慌てるが、まりさは冷静だ。 「まりさたちはきんばっちさんなのぜ。じじいのげすれいむよりも、ずっとこうきゅうなのぜ。しかも、かいゆっくりなのぜ。だから、じじいはまりさたちにきがいは、くわえられないのぜ!」 なるほど、さすが糞袋とはいえ、教育を受けた金バッチ。無駄に頭がいい。だが… 「ぷっ!くっくっくっ…」 「じじい!なにがおかしいのぜ!」 「確かに、お前の言う通り、お前ら金バッチどもをどうこうするのは愛であきのこともあるし無理だ」 「ゆ?だったら、はやくおちびちゃんをおろして、おわびのあまあまももってくるのぜ!」 「だがな、生まれたばかりの”これ”には金バッチはないよな?」 「なにいってるのぉぉぉ!まりさとありすのおちびちゃんだから、だれよりもゆっくりしたとかいはなおちびちゃんなのよぉ!」 ありすも会話に入ってきた。 「そ、それにめであきおにいさんはおちびちゃんにも、きんばっちさんとらせるっていってたのぜ!」 金バッチ試験には、たいへんな労力とお金がいる。まあ、愛であきならやりかねんが。 もし、飼いゆの子供にバッチを取らせるなら、自力より、ゆっくりスクールに入れるのが現実的だ。 ただ、この話は”今は”関係ない。 「まあ、バッチが”今は”無い、このおちびちゃん(笑)とやらを俺が潰しても問題ないんだよ。弁償する必要も、罰せられることも無い」 それを聞いて、金バッチ糞袋どもが青ざめる。状況をゆっくり(笑)把握したようだ。 「ゆぁぁぁ!!!おにいさん、ごめんなさいなのぜ…、いや、ゆっくりごめんなさい!」 「おにいさん、よくみるとすごくとかいはね!すてきだわ!」 2匹は完璧に俺に媚び始めた。野良とはここら辺が違う。 だが、 「俺は、ギルティって言ったろ。ちねなんて言った糞袋は潰してやる」 「「ゆやぁぁぁぁぁ!!!やめでぐださい!!おぢびじゃんをゆっくりざぜであげでぐだざい!!!」」 金バッチ糞袋が泣き叫ぶ。糞袋を握る手に、じょじょに力を込める。 ぐにゅり… 「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!いちゃいよう”う”!!!!!」 赤糞袋も泣き叫ぶ。 「ゆっくりゆるしてあげてね!おにいさん!」 ん? 俺は思いもしない制止の声に驚いて、握る手を弱める。 「なんだ、れいむ。お前のガキを潰そうとした奴を庇うのか?」 俺は、れいむがなぜ止めたのかわからない。 「おにいさん…、そのきんばっちさんいっかは、れいむたちにゆっくりできないいじわるするし、あんまりすきじゃないのはたしかだよ」 じゃあ何故と言おうとする俺よりも早く、れいむは言葉を続けた。 「れいむはおにいさんがだいすきだよ。おちびちゃんもたすけてくれて、れいむといっしょにゆっくりさせてくれたよ」 それをきいていた子ゆ達が 「「「「「れいみゅたちもおにいしゃんが、だいちゅきだよ!!!」」」」」 「れいむはそんなゆっくりしたおにいさんが、ゆっくりのおちびちゃんをゆっくりできなくするのをみたくないよ…」 俺は、このれいむの発言にただただ驚いた。ゆっくりなんてものはもっと馬鹿だと思っていたからだ。 「ふぅ~」と俺はため息をつく。 正直、限界に近いストレスの”持って行き場”を途中で奪われたことで、なんともいえないドス黒いもやもやが胸をざわざわさせる。 さっきまでなら、握りつぶすだけでスッキリできたが、今は違う。 どうやら、俺のある部分に火がついてしまったようだ。何ともいえない初めての気分だ。 俺は赤ゆを持ったまま台所へ行き、コンロの火を点ける。 そうして、あんよを焼き始める。 「ゆぎゃぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!あちゅい!!あちゅいいい!!!」 あんよを焼いて歩けなくすると、今度はおろし金を取り出して、赤ゆの後頭部を削り始める。 「いぎゃぁぁぁ!!!!!!!!!!!」 おにいさんが赤ゆを”おしおき”しているようだ。凄まじい泣き声が聞こえてくる。 れいむは怯えるおちびちゃんたちに、すーりすーりしながら隣りをちらりと見る。 金バッチさん一家は、「おぢびじゃんをかえしてえええ」といい、涙を流して半狂乱だ。 れいむはあのゆっくりしたおにいさんが、こんなひどいことをする理由を考えていた。 (そうだ!れいむのおちびちゃんをきんばっちさんいっかがいじめたからだよ。おにいさんは、れいむたちのためにやっているんだよ) (れいむはとめたけど、おにいさんはれいむがだいじだから、ゆるせなかったんだよ) (おにいさんは、れいむたちのことを”あいして”いるからだよ。やっぱり、やさしいゆっくりしたおにいさんだよ) れいむはシングルマザーだ。といっても、望んでなったわけではない。 レイパーありすの強制すっきりで、シングルマザーになった。 飼いゆとしてペットショップで育ったれいむ。 生まれてから、番とゆっくりしたことはない。 そう、れいむは、はじめてゆっくりを与えてくれた、鬼意山を愛してしまっていたのだ。 俺は手を洗っていた。 おろし金である程度削って悲鳴をあげさせて楽しんだ後、 赤ゆを床に置き、金バッチ番の前まで戻ると、拳を固め赤ゆに鉄槌を落とした。赤ゆの、猛烈な断末魔が家に響いた。 ぐちゃっと潰すと、何とも言えない”ヒャッハー感”にすっかり満足する。 (ふ~、ゆっくりを潰したのは初めてだが、ゆ虐を楽しむ人の気持ちわかるわー) 「「ゆぎゃああああああ!!!!!おぢびぢゃああああああん!!!!!」」 泣き叫ぶ金バッチども。 「おまえなんか、めであきおにいさんにせいっさいしてもらうのぜ!!」 突然、金バッチまりさがそう叫ぶ。 「そうよ!とかいはなおちびちゃんを、かわいいがっていためであきおにいさんが、いなかもののじじいをせいっさいするわ!!」 ありすもそう叫ぶ。 俺は、しばし考える。確かに俺が罰せられることは無い。 だが、愛であきは怒るだろう。こんな、キモウザい糞袋を本気で可愛がっているからだ。 (めんどくせえことになるのは嫌だなあ…そうだ、いいことを思いついた!) 「じじい!なにうすわらいをうかべているのぜ!ゆるさないのぜ!」 俺は金バッチどもを無視すると、れいむへ向き直る。 「おい、れいむ、話がある」 いきなり呼ばれ、れいむはびっくりする。 「ゆ?おにいさん、どうしたの?」 「実はな、れいむ。俺の経済力では子供どもが成体ゆっくりになったら、全部は飼えないんだよ」 「ゆ?!」 これは事実だ。この問題と、現在の懸案事項を一気に片付けてしまおう。 「だからさ、間引こうと思うんだ。そうだな、レイパーどもの面影のある、ありす種の2匹がいいかな」 れいむは俺の言ってることがなかなか理解出来ないようだ。その餡子脳で必死に俺の言うことを理解しようとしている。 「ゆ?このこたちもれいむのかわいいおちびちゃんだよ?おにいさん」 おーおーさすが、ぼせい(笑)あふれるれいむ種だこと。 俺は、ありす種の子ゆ2匹を両方の手で1匹づつ持つ。 「「ゆ?おしょらをとんでるみちゃい!」」 「おにいさん!ゆっくりやめてあげてね!」 れいむがすがる様な目で俺を見る。 「いいか、れいむ。このままじゃ全員飢え死にだ。分かるな、だから、これは必要なことなんだ」 なーんてね(笑) れいむは、すごく悲しそうな顔で考え込んでいる。 「で、でもおちびちゃんがだいじだよ。れいむもかりをしておにいさんをたすけるよ」 「あのな、生粋の飼いゆのお前に出来んのか?無理だろう」 「でも…」 言葉を濁すれいむに、俺は提案する。いや、提案っつうか反応見て楽しむだけだけど。結果は決めてるし。 「お前に決めさせてやるよ、れいむ。2匹間引くか、一家全員で野良になるかだ」 れいむは考え込んでいる。そりゃそうだ。 いくら、おちびちゃんが大事でも、これから冬になるのに子ゆ連れて野良になんかなったら、あっという間に全滅だ。 その時、子れいむどもが 「れいみゅは、おにぇいちゃんたちがたちゅかるなら、のらになるよ」 「れいみゅも、ごはんしゃんゆっくちがまんしゅるよ」 その様子を涙目で見ていたれいむが 「おちびちゃんたち…。おにいさん、れいむがひとりでのらになるよ!」 「あのなあ、お前は銅バッチでガキどもの面倒を見てもらわなきゃ困るんだよ。さっき言った通り、どちらかを選べ」 れいむも分かっていた。 野良になんか、到底慣れないことを。 この、ゆっくりしたれいむのかわいいおちびちゃんたちを犠牲には出来ない。 でも、レイパーの面影があるとはいえ、あの子達も助けたい。 しかし、おにいさんの言葉から両方は選べそうにない。 そもそもなんで、愛にあふれているゆっくりした、れいむのおにいさんがこんな酷いことを言うのか。 (おにいさんは、れいむをあいしているからこそなんだよ) (おにいさんは、かちょうだから、いえさんをまもるひつようがあるんだよ) (しょうがないから、こころでないて、れいぱーのおもかげがあるこをまびいて、れいむのこころのきずをいやそうとしているんだよ) (おにいさんも、れいむをだいじにおもっているんだよ) 「ごめんね…、おちびちゃんたち…、ちからのたりないおかあさんをゆるしてね…」 れいむは、結論を出したようだ。 「ということだ。お前らはおかあさんにも見捨てられましたー。おお、みじめみじめ(笑)」 「「ゆんやああああああ!!!!!おかーしゃん、どぼぢでそんなこというのおおおおお!!!!!」」 1匹のあんよを焼いて、逃げられなくすると、もう1匹は金バッチどもの前に落とす。 「ゆ?」 それまで、ことのなりゆきを見ていた金バッチ達。 この2匹にとって、”自分の飼いゆを潰そうとする鬼意山”という目の前の光景が信じられなかった。 美ゆっくりとして生を受け、金バッチになるために大切に育てられ、飼い主に愛でられている2匹は、 他人ならともかく、飼い主が飼いゆを潰すなんて発想がなかった。 そのため、怒ることを忘れ、えもしれぬ恐怖感におそわれていた。 金まりさが鬼意山に抱えられる。 「な、なんなのぜ?」 そして、手を離す。その、真下には子ありすが…。 ぶちょりと、子ありすが潰れる。 「ゆ、ゆやあ”あ”あ”ぷべ…、もっと、ゆっくちちたかった…」 カスタードをぶちまけ、子ありすは金まりさの重みで絶命した。 親れいむは、子ゆ3匹と寄り添い、目を閉じ、震え、耐えていた カシャッ! 「決定的瞬間ゲットだぜ」 俺は、にやりと笑う。 「さて、金馬鹿まりさ。おまえはゆっくり殺しだなあ」 「まりさのせいじゃないのぜ!じじいのせいなのぜ!」 「知らねーよ。それより、見ろよこの写真。良く撮れてるぜ~、お前がうちの飼いゆっくりを潰した瞬間が」 「なにをいってるのぜ!」 「自分の飼いゆを潰されて、鬼意山カナピー。こりゃ、せいっさいとして赤ゆを潰してもしょうがねーなー」 「!!」 言葉に詰まるまりさ。ありすも、ゆんゆん泣いている。さすが、腐っても金バッチ。話が早い。 「めであきおにいさんは、まりさたちのことをしんじるのぜ!」 無駄な抵抗だっつうの。こっちは、証拠さんもあるんだっつーの。 「俺はな、めであきとは昔からのマブダチなんだよ。お前らなんか信じるかよ」 ふー、いいだろ。物分かりがいいようにしてやろう。 俺は、俯いてすすり泣く金ありすの背中の皮をむしった。 「ゆぎゃあああ!!!」 いきなりの痛みに金ありすが、じたばたする。 何か言う前に、金まりさの頭を掴んで、こちらを向かせると 「いいか、これ以上くだらねえことを言うなら、毎日痛めつけてやる。帰るときに愛であきには、そうだな…”鬼意山の子ゆ潰してごめんなさい”とでも言え」 返事は無い。 俺はまた、金ありすをむしる。 「ゆぎゃあああ!!!」 「どうなんだ?」 「ゆっ…く…り…りかい…したの…ぜ…」 それから、金バッチどもを愛であきが引き取りにくるまでの間、 あんよを焼いた子ありすを、針で刺したり、おべべ(笑)をえぐったり、 適度にオレンジジュースをかけつつ虐待した。 これは、俺がゆ虐に目覚めたからというのもあるが、金バッチどもへの警告の意味もあった。 ”わかっているよな” 毎日、子ありすを見せては、金バッチどもに、俺への恐怖心を植え付けた。 愛であきが帰ってくる前日、俺は子ありすを風呂場で、掴んだまま浴槽に沈め、限界になる直前に握りつぶした。 ん~、すっきりーできたよー。 そうしていると、愛であきが帰ってくる日となり、金バッチどもを連れ帰ることになった。 めであきに、赤ゆが潰れた事情を話す。(もちろん俺設定のね) 金バッチどもも、俺が恐くて本当の事は言えないようだ。感心感心。調教成功だね。 「そうか…。すまなかったな…。大事な子ゆを…。まりさも悪気があったわけじゃないんだと思う。許してくれ…」 「いいんだ、愛であき。俺の不注意だったんだよ。柵も狭いしな」 ふひひ。 愛であきたちは帰っていった。 「俺も飯でも買いにいくか」 愛であきは帰り道で、まりさとありすに話しかける。 「今日は、お前たちのために、たくさんあまあまとカルボさん用意してるからな」 「「ゆわ”ああん!!さみしかったよぉぉ、めであきおにいさぁぁん!おちびちゃん…、うう、ゆわ”あああーん!!!」」 「よしよし。ゆっくりしような」 「「ゆっくりしていってね!」」 俺は、俺の飯とゆっくりフードを買い、帰る道すがら、野良れいむ親子を見つけた。 親れいむと、子ゆ…、いや赤ゆ2匹と、番のまりさだ。 … 「おい、飯だぞ」 俺は親れいむと子れいむ3匹の前に、ゆっくりフードを入れた皿を置く。 親れいむが俺のことを見て、祈る様な目つきで問いかけてきた。 「おにいさんはれいむのこと、おちびちゃんたちのこと、かぞくだとおもってるの?」 最近、子ゆは俺のしていたことで怯え気味だ。 子ゆも、俺を直視してはいないが、祈る様な目つきだ。 「家族だと思ってるよ」 「ゆゆ!!おにいさん!!やっぱりおにいさんはれいむたちのことあいしてくれているんだね!!」 「「「よかっちゃよ!!おにいしゃん!!」」」 れいむはおにいさんをうたがったことが、はずかしかったよ。 れいむは、おにいさんを、ゆっくりあいしているし、 おにいさんはれいむを、ゆっくりあいしてくれているんだよ。 … 鬼意山の庭では、先ほどの野良一家が、 蹴られ、踏みつぶされ、ぐちゃぐちゃになって全滅していた。 前編終わり (なんか長くなりそうなので、きりのいい所で投稿してみます。続きも書く予定です)
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注意: 独自設定有り。 自己最長の容量なので、どこか変なところがあるかもしれないです。 それは、月のきれいな夜だった。 月の光は小高い丘にたたずむ二匹のゆっくりを照らしていた。 「とってもゆっくりしたおつきさまだね、まりさ」 「ゆ、ゆん・・・とってもゆっくりしてるんだぜ、れいむ」 二匹はその後しばらくの間、言葉を発することなく、ただ黙って月を見ていた。 だが、まりさが意を決した表情でれいむに話しかけた。 「ゆ、ゆぅ・・・れ、れいむ。・・・じつは、だいじなおはなしがあるんだぜ」 「・・・なぁに?まりさ。あらたまって・・・」 これからまりさが何を言おうとしているのか雰囲気で察したのだろう。 れいむは頬を赤らめていた。 「こ、これを、うけとってほしいんだぜ!」 まりさは帽子の中から一輪の黄色い花を取り出した。 そしてその花を、口を使って器用にれいむのリボンの横につけてあげた。 「ま、まりさ・・・・・・これって、その、つまり・・・・・・?」 意中のゆっくりに花を贈る。それは二匹のゆっくりが棲む群れの中では有名な求婚の儀式だった。 「れ、れいむ!ま、ま、まりさの・・・お、およめっさんに、なってほしいんだぜぇぇ!!」 まりさは目をつぶり顔を真っ赤にして、震えながらも精一杯の大きな声で自分の想いを打ち明けた。 二匹の間に再び沈黙が流れる。 返事が無いことに不安になり、まりさはゆっくりと目を開け、れいむの姿をみた。 そこには大粒の涙を流しているれいむの姿があった。 「ゆゆっ!?ど、どうしたのぜ、れいむ!?ひょっとして、まりさじゃ・・・いや、だった・・・のぜ?」 自分の想いは通じなかったのだろうかというまりさの不安を否定するように、れいむはブンブンと身体を振るった。 「ゆうん!ちがうんだよ!・・・・・・れいむ、とってもうれしいんだよ! ・・・・・・だって、まりさのおよめさんになるのは、ちっちゃなころからのゆめだったから!!」 「れ、れいむ!」 見つめ合う二匹のゆっくり。 その瞳に、もう月は映っていなかった。 なぜなら、二匹の瞳には互いの愛するゆっくりしか映っていなかったのだから。 ―――だから、気が付かなかった。 自分たちを照らす大きな月の真ん中にポツリと浮かんだ黒い影に。 その黒い影が自分たちに近づいていることに。 「れいむぅ・・・・・・」 「まりさぁ・・・・・・」 二匹の距離がゆっくりと近づいていく。 そして、二匹の唇が重なりあうかというその瞬間。 「うー!うー!」 突如、夜空に不気味な声が響き渡る。 「「ゆゆっ!?」」 二匹はその声の主を本能的に悟り、夜空を見上げた。 そこには、 「うー!うー!」 蝙蝠のような翼をもった笑顔のゆっくりが月夜の空に浮かんでいた。 憐れな獲物たちは畏怖の念を込めて、その名を叫ぶのだった。 「「れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」 『プラント』 二匹はれみりゃの姿を確認するや否や脱兎の如く逃げ出した。 流石に命に関わることではゆっくりなどできない。 「ゆひぃ!ゆひぃ!に、にげるんだぜぇぇぇ!!」 「ま、まってよぉぉ!まりさぁぁぁ!!」 まりさ種とれいむ種の性能の違いにより、逃げる二匹の距離は徐々に離れて行った。 だが、まりさはそれに気がつかない。 ちゃんとれいむが自分の後をついてきていると思っているからだ。 「ゆべしっ!」 れいむがつまづき、地面に倒れこんでしまう。 その隙を見逃すれみりゃではなかった。 倒れたれいむに覆い被さり、ガブリと鋭い牙を後頭部に突き立てる。 「ゆんやぁぁぁぁぁ!!ばでぃざぁぁぁ!!だずげでぇぇぇぇぇ!!!」 まりさはれいむの悲鳴に気づき後ろを振り向くと、れみりゃに捕らわれているれいむの姿が目に飛び込んできた。 「れ、れいむぅぅぅ!?」 れみりゃは恐ろしい相手だ。逃げなければ殺される。だがしかし、れいむを見殺しになどできない! なけなしの勇気を振り絞り、まりさは急いでUターンし、捕まったれいむを助けるべくれみりゃへと突進する。 だが一歩遅かった。 れみりゃはれいむを咥えたまま空へ舞い上がったため、まりさの突進は空振りに終わった。 「ゆわぁぁぁぁぁ!?おぞらをどんでるみだいぃぃぃぃぃ!?」 こんな時でもお決まりのセリフを吐いてしまうのはゆっくりの悲しいサガであった。 「れ、れいむをはなすんだぜぇ!」 当然だがそんな要求に従う訳もなく、れみりゃはまりさなど気にも留めず、れいむを連れて飛び去っていく。 「ま、まつんだぜぇぇぇ!」 だが、それで諦めるまりさではなかった。 愛しいれいむが連れ去られたのだ。なんとしでも助けねば! それだけの思いで、まりさはれみりゃの後を追って走り出した。 月明かりのおかげでなんとか見失うこともなく追跡することができたのは不幸中の幸いであった。 そしてまりさは、れみりゃが森の麓にある建物の中に入っていくのを確認した。 「ゆぅ!?あれは、にんげんさんのおうち?」 だとすると、あのれみりゃは人間の飼いゆっくりである可能性が高い。 ただでさえれみりゃは恐ろしい相手だというのに、そこに人間まで加わるとなるとほとんどお手上げ状態である。 まりさは人間がいかに恐ろしい存在であるかを充分理解していたのだ。 だから、どんなにあがいたところで自分ひとりの力だけではたかがしれている。 それでも、群れの仲間たちが力を貸してくれれば、あるいは何とかなるかもしれない。 「・・・れいむ、まっててね。すぐにたすけをよんでくるんだぜ!」 そんな希望を胸に、まりさは群れへと駆けて行った。 群れへと戻ったまりさは眠っていた仲間たちを叩き起こして事情を説明した。 「むきゅ、れいむが・・・」 「わかるよー、いちだいじなんだねー」 「たしかに、とかいはなじたいじゃないわね」 「ちーんぽ!」 群れの仲間たちは始め起こされたばかりの眠気眼であったが事の重大さに気付き始め次第に目が覚めていった。 「そうなんだぜ!だからみんなのちからをかしてほしいんだぜ!」 まりさは頭を下げて、れいむを助けてほしいと群れの仲間たちに訴えた。 だが・・・ 「むきゅ、まりさ・・・ざんねんだけど、れいむのことはあきらめるしかないわ」 「どぼじでそんなごどいうのぉぉぉぉぉぉ!?」 群れの長であるぱちゅりーの下した決断は冷酷なものであった。 「まりさ・・・たしかにとかいはなみんなのちからをあわせれば、れみりゃをたおせるかもしれないわ」 「むきゅ、そうね。・・・でも、そのれみりゃはにんげんさんにかわれているのよね?そうなってくると・・・」 「にんげんさんにはかないっこないんだねー、わかるよー」 「ぺにす!」 群れのゆっくりたちもまた、人間が最大の敵であることを理解していた。 「ゆ、ぐぅ・・・。で、でも・・・うまくれみりゃだけをたおせれば・・・!」 それでも食いさがるまりさに長ぱちゅりーは諭すように語りかける。 「かいゆっくりにてをだせば、かならずにんげんさんのほうっふくがまっているわ。 そうなればこのむれはこんどこそおしまいよ。まりさだっておぼえているでしょう? にんげんさんがどれほどおそろしいか」 「ゆぐ、ぐぐぐぐぐ・・・・・・」 かつてこの群れのゆっくりたちは人間の街に棲む野良ゆっくりだった。 だがある日、たった一人の人間によって街にすむ大量のゆっくりが殺されていった。 ある一匹のゆっくりが人間の飼っているゆっくりに手を出したのが原因だった。 激怒した人間は関係のないゆっくりも同じゆっくりであるというだけで虐殺していった。 そんな中、必死の思いで逃げ出し森へと生き延びた者たちがようやくたどり着いたのが今のゆっくりプレイスなのだ。 「だから、ぱちぇはむれのおさとして、みんなをきけんにさらすことはできないの。むちゅ、ゆっくりりかいしてね」 まりさは・・・・・・涙を流しながら下唇を噛むしかできなかった。 「むきゅ、みんな!れみりゃたいさくはあしたかんがえるとして、 きょうはとじまりをゆっくりしてもうやすみましょう。 ・・・・・・みょん、わるいけどまりさをおうちまでおくっていってあげてね」 「でかまら!」 うなだれたまま動こうとしないまりさを見かねたぱちゅりーは群れで一番腕の立つゆっくり、みょんに後をまかせた。 今のまりさを一人で家まで帰すのは不安だったからだ。 「ちーんこ!」 まりさはみょんにうながされ、ゆっくりと帰路についた。 「・・・・・・れいむ・・・・・・れいむぅぅぅぅ・・・・・・」 まりさは悲しかった。 群れの仲間が冷たかったからじゃない。 むしろ、こうなることはある程度予想できていたことだった。 何も出来ず、無力な自分が情けなくて、今こうしている間にもれいむがどんな目にあっているのかを思うと、 悲しくて涙があふれてきた。 「・・・・・・まーら」 付き添いのみょんはそんなまりさの様子を見かねたのか、まりさの前に立ち、少し強い口調で語り出した。 「やべのどりちんくらぶ!」 「ゆっ!?」 思いがけないみょんの言葉にまりさはハッっとなった。 「どりちん!どりちん!」 「・・・・・・そうだ、そうなんだぜ・・・・・・!」 みょんの熱い叱咤激励がまりさの心を揺さぶりかけた。 まりさの脳裏にれいむの笑顔が浮かぶ。 (れいむ、とってもうれしいんだよ!) 自分の想いに涙を流して喜んでくれたれいむ。 あの笑顔が忘れられない。もう一度、あの笑顔を見たい。 そのためだったら、自分は命を賭けることなど躊躇わない! 「ぎがどりるちんぽぶれいく!」 「ありがとうなんだぜ、みょん!おかげでかくごをきめたのぜ!」 自分の心に勇気が湧いてくるのを感じる。 そうだ、自分はこんなところで涙を流している暇はなかったんだ! 「くにをわかつふといいちもつ!」 「みょん、きもちはうれしいけど・・・・・・まりさはみんなにめいわくをかけるわけにはいかないんだぜ!」 「かりくび?」 「れいむをたすけにいくのは、まりさひとりでいくんだぜ!」 「いんけい・・・・・・ぜんりつせんまっさーじ!」 「ゆん!わかってるんだぜ!それじゃあ、いってくるんだぜ!」 れいむのいる場所へと駆けていくまりさ。その足取りに迷いは無かった。 「がいじんりきしのようなちーーんぽ!」 背後から聞こえたみょんの声援が心強かった。 まりさはれいむが連れていかれた建物にたどり着いた。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・やっとついたんだぜ。・・・・・・れいむ、まっててね。いまたすけにいくんだぜ」 まずは侵入口を探すため、この建物を観察する。 人間の家だとしても大きな部類だ。 だが外装は質素なものであり、馬小屋か何かと思う人もいるだろう。 少し高い場所に大きく開け放たれた窓を見つける。恐らくあそこかられみりゃが出入りしているのだろう。 「ゆぅ、あんなたかいところがあいてたって、おそらでもとべなきゃはいれないのぜ・・・・・・」 だからこそれみりゃには都合がいいのだろうが、こちらとらただの通常種だ。 空など飛べるわけでもなく、他の入り口を探すしかない。 「ゆゆ?なんだかはいれそうなスキマがあるのぜ!」 外壁をぐるりと回りながら入口を探していたまりさはほんの少し隙間のある壁を発見した。 「ゆぅ~!な、なんっとかはいれそうなのっぜ!ずーりずーり、ずーりずーり!・・・ゆはっ!はいれたのぜ!」 まりさはなんとか建物の中に侵入することに成功した。 早速れいむはどこかと辺りを探しはじめる。 「なんだかゆっくりできないかんじなのぜ・・・・・・」 天井には豆電球がいくつか吊るされており、明りがついていたので周りの様子を確認することができた。 そこは倉庫のような場所であり、いくつもの棚が所狭しと並んでいる。 その棚には透明な箱のようなものがズラリと並べられている。 「これはいったいなんなのぜ?」 まりさは身近な棚に置かれていた透明な箱の中を覗きこんだ。 中には黒い土のようなものが敷き詰められ、その周りには何か小さなものが蠢いている。 「・・・むーちゃ・・・むーちゃ・・・うー☆・・・うー☆」 「ゆひぃ!?れ、れみりゃ・・・っ!?」 ズササっと後ずさりながらも危うく叫びそうになる声を抑えた。 この箱の中ではれみりゃの赤ん坊ゆっくりが飼育されていたのだ。 他の箱の中を確認しても同じような中身だった。赤れみりゃが黒い土をむしゃむしゃと食べている。 「こ、このはこさんのなか、ぜんぶれみりゃなのぜ・・・?」 赤ん坊とはいえ、これほどの量のれみりゃが存在するなど、とてもではないがゆっくりなどできない。 こうなってくるとまりさはいてもたってもいられなくなり、人間やれみりゃに見つかることもお構いなしに 大声をあげ辺りを駆けずり回りながられいむを探し始めた。 「れいむー!どこなんだぜー!れいむー!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!・・・ゆばっ!?」 つい勢いあまって転んでしまう。 そのままコロコロと転がってゆき、一つの箱にぶつかることでようやく起き上がることができた。 「ゆたたた・・・い、いたいのぜ。でもまりさはくじけないのぜ!れいむをたすけるまでは・・・ゆあ?」 ふと、目の前の箱の中を見る。 そこには他の箱とは違い、赤れみりゃではなく一匹の成体ゆっくりが入れられていた。 といっても体中は傷だらけ、お飾りのリボンもボロボロの状態であり、とても無事な姿とは思えない。 ぐったりしているが死んではおらず、眠っているだけだと思われる。 「なんだかゆっくりしてないゆっくりなのぜ・・・」 思わずそうつぶやいてしまったが、すぐにその発言を後悔することとなる。 「ゆ?・・・ゆ、ゆっ!?そ、そのおはなさんは・・・!?ま、まさか、このゆっくりが・・・!?」 なぜなら、そのゆっくりのリボンにはまりさがれいむへプレゼントした黄色い花がつけられていたからである。 「れ、れいむぅぅぅぅ!!!」 すぐにでもれいむの傍に駆け寄りたかったが、透明な壁の存在がそれを許さなかった。 それでもまりさは諦められず、ベタっと箱に張り付きながら何度も何度もれいむへ呼びかけた。 「れいむ!れいむぅ!まりさなんだぜ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 まりさの声が届いたのか、れいむはゆっくりと目を覚ました。 「・・・・・・ゆぅ・・・だれ、なの?・・・・・・ひょっとして・・・まりさ?まりさなの!?」 「まりさはまりさだぜ!れいむ!ゆっくりたすけにきたのぜ!いっしょにおうちにかえるのぜ!」 絶望的だと思っていた助けがきた。 れいむの顔は一瞬パァっと明るくなったが、己の置かれた状況を思い出し、直ぐに沈んだ表情へと変化した。 「・・・ごめんね、まりさ。せっかくだけど、れいむは・・・ここからうごけないんだよ。 ・・・れみりゃにやられて・・・あんよさんがうごかないんだよ」 「それならまりさがおぶっていくのぜ!こうみえてもまりさはちからもちなんだぜ!」 「でも、とうめいなはこさんにいれられてるし・・・・・・」 「こんなはこさん、まりさがなんとかしてみせるのぜ! だからしんぱいすることはないんだぜ!ここからにげよう!そしていっしょにゆっくりしようね!」 れいむは自分を心配してここまで助けにきてくれたまりさの気持ちが嬉しかった。 だけど、その気持ちが強ければ強いほど、れいむは悲しくなった。自分はもう、まりさの想いに答えられないのだ。 「・・・やっぱり、だめだよ。れいむは・・・もうまりさとゆっくりできないよ」 「どぼじで!?」 ここまできたのに!今なら逃げられる!なのに、どうしてそんなことをいうの!? まりさには理解できなかった。だから、何度でも「いっしょにかえろう」とれいむに救いの手を差し伸べる。 だけど、れいむはその手を取らなかった。いや、取れなかったのだ。 できればこの真実をまりさには伝えたくない。 だけど、どれだけいってもまりさが引き下がらないのなら、この残酷な事実を伝えるしかなかった。 「・・・れいむのおなかのなかにね、れみりゃの・・・あかちゃんが、いるの・・・」 「・・・ゆぇ?・・・れ、れいむ?・・・それ、どういう・・・こと、なのぜ?」 言われてみれば、れいむのお腹がポッコリと膨らんでいるように見える。 れいむは、ポツリポツリと語り始めた。自分がここに連れてこられて、何をされて、どうなってしまったのかを。 まりさはその衝撃の事実に頭の中が真っ白になり、体中の餡子が凍りつくような感覚に陥った。 「う、うそだ・・・うそなんだぜ!どぼじで、どぼじでぇぇぇ!? ばでぃざは!でいぶをおよめざんにじで!ふぁーすとちゅっちゅさんじで!ずっぎりーいっぱいじで! あがしゃんいっぱいいっばいつぐっで!あがしゃんとまいにち、たのじく、ゆっくりあぞんで! じあわぜぇなゆんせいをおぐるはずだったのにぃぃぃ!それが、そでが、どぼじでぇぇぇぇぇ?!!」 「ごべんでぇぇぇ・・・ばでぃざぁぁぁ・・・ごべんでぇぇぇぇ!」 れいむはただ謝り、涙を流すしかなかった。 「でいぶぅ!れみりゃのあがじゃんなんて、どうでもいいでしょぉぉ!? そんなゆっくりできないあがしゃんなんてポイして、ばでぃざとゆっくりしたあがしゃんつくろぉぉぉ!」 「ゆぐ、ゆぐ、だめだよ、まりさ。 れみりゃのあかちゃんでも・・・・・・あかちゃんを、ポイなんて、れいむにはできない、よ。 「ぞ、ぞんなぁぁぁ!」 れいむ種は他のゆっくりと比べて母性が強いと言われている。 例えれいぽぅされてできた子供であっても愛情を持って育てることが多いという。 だから、れいむは群れに帰れない。れみりゃの子供など群れのゆっくりたちが認めるわけがないからだ。 「まりさ」 「・・・ゆ?れいむ?」 れいむは優しい声で愛しいまりさにゆっくりと語りかける。 「まりさは・・・れいむのことをわすれてね。 そしてほかのゆっくりとけっこんして、しあわせーなかていをきずいてね」 それは悲しい離別の言葉だった。 「どぼじでぞんだごどいうどぉぉぉ!?まりさ、れいむいがいのゆっくりとなんてけっこんしたぐないよぉぉ!」 「れいむね。いまはこのあかちゃんがうまれてくるのがたのしみなの」 「ゆ!?」 「あかちゃんはね、ゆっくりできるんだよ。それがまりさのあかちゃんじゃないのはざんねんだけど・・・ でも、うまれてくるあかちゃんはわるくないんだよ。 だから、あかちゃんにはゆっくりしてほしい。いっぱい、いっぱい、ゆっくりさせてあげたい。 れいむは、そうおもってるの・・・・・・」 その言葉をきいてまりさは思った。 ああ、やっぱりれいむは優しいな。こんな目にあってなお他ゆんを思いやれる気持ちがあるなんて。 これから先のれいむのゆん生は茨の道だ。 誰にも認められない子供を抱えて生きていくことがどれだけ大変なことか。 それほど苦渋に満ちたゆん生にまりさを巻き込みたくない。だから、自分を忘れて欲しいと言ったのだろう。 それに比べて自分はどうだ?自分のことばかり考えて、それでもれいむを愛しているなんていえるのか。 (どりちん!どりちん!) あの時のみょんの言葉を思い出す。そうだ、みょんの言うとおりだよ。 覚悟を決めていたつもりだったが、まだまだ覚悟が足りなかった。 真にれいむの幸せを願うなら何をするべきか。そんなことはわかりきったことじゃないか、まりさ! 「・・・・・・わかったんだぜ、れいむ。まりさもほんとうのかくごをきめたのぜ!」 「まりさ?」 「まりさもいっしょに、れいむのあかちゃんをそだてるんだぜ!」 それは、れいむにとって思ってもいない言葉だった。 「で、でも、れいむのあかちゃんはれみりゃなんだよ?」 「れいむのあかちゃんはまりさのあかちゃんなんだぜ!それいじょうでもそれいかでもないのぜ!」 「れいむは・・・けがされちゃったんだよ。・・・もう、じゅんっけつなゆっくりじゃ、ないんだよ?」 「そんなことないのぜ!れいむはきれいなのぜ!」 れいむの全てを受け入れよう。 世界の全てが敵になろうとも、自分だけはれいむの味方であろう。 それこそがまりさの真なる覚悟。 「れいむ、むれにかえれないならいっしょにあたらしいゆっくりぷれいすをさがすのぜ! そこで、まりさとれいむとあかちゃんでいっしょにゆっくりくらすのぜ!」 「ゆ、ゆぐ、ゆぐ・・・まりさ、まりさぁぁぁ!」 れいむは嬉しくて涙が止まらなかった。 拒絶されることはあっても、まさか受け入れられるなんてことがあるとは思わなかった。 れみりゃに攫われた時、自分はなんて不幸なゆっくりなんだろうと悲嘆した。 でも、今は違う。ああ、自分はなんて幸せなゆっくりなんだろう。まりさを好きになって本当に良かった。 れいむは心の底からそう思ったのだった。 (・・・ドクン) 「ゆゆっ!?いま、おなかのなかであかちゃんがうごいたよ!」 「きっとあかちゃんもよろこんでるのぜ!あかちゃん?ゆっくりしていってね!」 まりさは笑顔でれいむのお腹の中にいる赤ちゃんに話しかけた。 (・・・ドクン、ドクン) 「ゆっ!?」 (・・・・ドクン、ドクン、ドクン) 「ゆ、ゆ、ゆ・・・!」 「?どうしたのぜ?れいむ?・・・れいむ!?」 れいむは腹の中に違和感を感じていた。 お腹の中の赤ちゃんが動いている。だが動きが活発すぎる。 どうしてそんなにゆっくりしていないの?あかちゃん?ゆっくりしていってね? れいむがお腹の赤ちゃんに話しかけようとした瞬間、 「ゆがぁぁぁぁぁぁああああああああああ!?!?」 突如、腹部に激しい痛みを感じて苦しみの声をあげはじめた。 れいむの腹の中で何かが激しく蠢いているのだ。 「れ、れいむ!?しっかりするのぜっ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 まりさは赤ちゃんが生まれそうなのかと、最初は思った。 だが、妹が生まれるところを見た事があるまりさにとって母の出産と今のれいむでは、 あまりにも状況が違いすぎることがわかった。 「でいぶぅぅ!どぼじだのぉぉぉ!?ゆっくりじでねぇぇぇ!?」 何が起こっているのか全く分からないまりさはただうろたえるしかなかった。 ガラスの壁に遮られ、ぺーろぺーろもすーりすーりもしてあげられないのだ。 「あ、あ、あが、じゃん!やめ、てね・・・!やめて、ねぇぇぇ!!」 「ど、どおじだのぉぉ!?でいぶぅぅぅ!!」 「ゆ、ゆゆゆあ、ああああ!お、おかあさんの、あんこさん!・・・たべないでねぇぇぇ!!」 れいむの体が後ろに大きく仰け反り、腹が異常なまでに膨らみ始める。 「ゆ、ぎぎ、ぐぐぐうっぐぐうぐうううぁあぁぁあああああ!!!!」 限界を超えた膨張に腹の皮膚が耐えられなくなりミチミチと裂け始めた。 それはまるで腹の中から何かが溢れ出そうとしているようだった。 「でいぶぅぅぅぅ!?」 「ゆ、ぐっっっばあああああぁぁぁぁぁぁっ!!」 ついにれいむの腹は真っ二つに裂け、周囲のガラス壁に真っ黒な餡子をぶちまけた。 そして、れいむは餡子を撒き散らしながらゆっくりと倒れこんだ。 ビクンビクンと体を震わせている。辛うじてだが生きているのだろう。 だが、もはや死に体だった。 「ゆ、あああああ・・・なんなのぜ!?なんなのぜぇぇ!?」 もはやガラスの壁は餡子まみれとなり、まりさに中の様子を窺い知ることはできなかった。 「・・・うー☆うー☆」 何かの声が聞こえる。 「うー☆うー☆」 これは、さっきも聞いたことがる。赤れみりゃの声だ。 赤ちゃんが生まれたの?でも、れいむは? そんなことをまりさが考えていると、壁に付着していた餡子の一部がドロリと剥がれ落ちた。 まりさは、恐る恐るその隙間から中を覗き込んだ。そこには・・・ 「ゆわあああああああっ!!!?」 生まれたばかりの無数の赤れみりゃが、母であるはずのれいむの餡子をバリバリと貪り喰う姿であった。 「むーちゃ♪むーちゃ♪うー☆うー☆」 それは、先ほど見た他の箱の中と同じ光景。 あの箱に敷き詰められていた黒い土とは、ゆっくりの餡子だったのだ。 「・・・や、めて、ねぇ・・・あがじゃぁぁん・・・」 れいむがどんなに懇願しようとも、我が子の暴食を止めることはできなかった。 そして、次第にれいむの反応はなくなっていった。 れいむは・・・我が子に腹を喰い破られ・・・体を貪り喰われて・・・死んだ。 「・・・ゆ・・・・・・あ・・・・・・ああ・・・・・・!」 まりさは、ただ呆然とその光景を眺めるしかなかった。 「ジョワジョワジョワ~!なかなか面白い茶番劇だったぜぇ~」 突如、背後から聞こえてきた不気味な笑い声に驚き振り向くと、そこには灰色の作業服を着た一人の男が立っていた。 「に、にんげんさん!?どぼじでごごにぃぃ!?」 「そりゃあんだけ騒いでりゃ気付くっての」 男はれいむの餡子を貪る赤れみりゃの一匹を箱から取り出し、まりさの目の前に置いてやった。 「ほ~れ、れいむの赤ちゃんだぞ~。・・・どうした?可愛がってやれよ」 まりさはしばらくボーっとした顔で赤れみりゃを眺めていたが、 その能天気な笑顔と「うーうー」という鳴き声を聞いている内にピキィと顔を歪ませていった。 「ゆがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 「うぴっ!?」 まりさは怒号と共に赤れみりゃをグシャリと踏み潰した。 「じねぇぇ!でいぶをごろじだれみりゃは、ゆっぐりじだいでじねぇぇぇ!!」 何度も何度も踏み潰し、赤れみりゃは原型も留めぬほど潰されてしまった。 「ジョワジョワ!『れいむのあかちゃんはまりさのあかちゃん』じゃなかったのかねぇ?」 最愛の存在を殺されたのだ。まりさが激怒するのは無理もないことだろう。 だが、れいむとまりさのやりとりを見ていた男にとって、まりさの激情はとても滑稽なものだった。 「・・・どぼじで」 「ん?」 「どぼじでごんだごどすどぅどぉぁぁ!?ねぇぇぇ!どぼじでぇぇ!?どぼじでなのぉぉぉ!!?」 まりさは涙を流して、男の足にしがみつくように「どぼじで、どぼじで」と泣き叫んだ。 「どおして、ねぇ。・・・いいぜぇ。夜勤は割と暇だし、暇つぶしにゆっくりと説明してやろう」 ゆっくりの「どおして」なんてただの鳴き声だ。 説明してやったところで理解などできないだろうし納得することもないだろう。 だが、男は暇つぶしの一環として、このまりさと会話してみるのも一興だと考えた。 「ここはな、れみりゃやふらんといった捕食種と分類されるゆっくりの生産工場なのさ」 野生の捕食種は通常種ほど数多く存在している訳ではない。 その為、捕食種を求める加工所やペットショップに対して捕食種を生産する業者は重宝されているのだ。 「そして、その捕食種を生産する上で重要なのが餌。つまりお前らだ」 「ゆゆっ!?」 「捕食種の餌は生きのいいゆっくりが最適とされている。まさに野生のゆっくりは最高の生餌という訳だな」 ただ成長させるだけなら生きたゆっくりを与えずとも人工的に作られたゆっくりフードでも問題ない。 だが、それでは捕食能力が備わらず、対野良ゆっくり用の番犬ならぬ番ゆっくりとして機能できない。 また、食材にするにしてもあまり旨味のない食材になってしまう。魚のように天然ものと養殖ものでは味が 違うのと同じようなものだ。 飼うにしろ、食べるにしろ、捕食種の品質に必要なのは活きの良さだ。 その為、養殖といえど自然と同じような環境を用意してやれば高品質の捕食種が生産できるのだ。 「ま、ここで生まれた赤ゆの大半はそのまま加工所やペットショップに送られるんだけどな。 流石にこれだけの数を育ててたらここらの野生ゆっくりなんてあっという間に壊滅だし。 そこらへんの調整はちゃんと考えてるから安心しろ」 「ゆ、ゆぅぅぅ・・・!」 街で野良として生きていた頃に感じていた人間の脅威から逃れ、野生で自由に生きていけることに喜びと誇りを 感じていたまりさにとって、自分たちの生活が人間の手によって調整されていたという事実はショックだった。 「捕食種をどうやって生産しているか。れいむがあんなことになった事にも関係してくることだ。ジョワジョワ!」 「ゆぐぐ、い、いいからはやくおしえるのぜ・・・!」 「まあ、そうあせるなよ。ゆっくりしていってね?ジョワジョワ!」 捕食種の繁殖方法は通常種とは似て非なるものである。 「お前ら通常種は子供を作るにはどうする?」 「そ、それはゆっくりできるゆっくりとすっきりーするんだぜ。そんなのじょうっしきなのぜ・・・」 「そうだな。そこは捕食種も同じさ。他のゆっくりとすっきりーする。 だが、その『他のゆっくり』というのが通常種と意味合いが異なる」 「な、なにがちがうっていうのぜ!?」 「・・・ふむ。それを説明するのは言葉よりも身を持って体験した方が解り易いだろう」 男はまりさを掴みあげ、別の部屋へと移動しはじめた。 「や、やめるんだぜ!まりさになにするんだぜ!?」 「なにするって・・・そりゃあ『ナニ』するに決まってんだろぉ。ジョワジョワ!」 そういって男は連れてきた部屋の真ん中にまりさをポイっと放り投げた。 「ゆべっ!」 顔面を打ち付けながらも起き上がったまりさが目にしたものは、 「うーうー」「うーうー」「もげーもげー」 「ゆわぁぁぁぁぁ!?れ、れみりゃだぁぁぁぁぁ!ふらんだぁぁぁぁぁ!!」 れみりゃやふらんといった捕食種が格納されているケージの数々だった しかも先ほどのような赤ん坊などではなく、成体の捕食種たちである。 男はケージの一つを開け、中にいたふらんを取り出した。 「捕食種がすっきりーの相手として選ぶのは同じ捕食種のゆっくりじゃあない」 そのふらんを手に乗せてゆさゆさと揺さぶり出した。 ゆっくりは振動させることによって発情するのだ。 「捕食種が選ぶすっきりー相手とは・・・お前ら、通常種なのさ!」 「う、うほぉぉぉー!もげ!もげー!」 発情したふらんはその情欲を目の前にいるまりさにぶつけるべく襲いかかる。 「ゆわぁぁぁぁ!?く、くるなぁぁ!!」 ふらんはその鋭い牙で逃げ出そうとしたまりさの背面を切り裂いた。 「ゆがぁぁぁ!いだいぃぃぃ!ま、まりさのもちもちおはなだがぁぁぁ!!」 ふらんの攻撃はまだまだ続く。 「うー!もげー!」 「いだいぃぃぃ!もう、やめでえぇぇぇぇ!!」 肌も髪も帽子も、ふらんの鋭い牙によってズタズタに切り裂かれていく。 存分にまりさを痛めつけたふらんはまりさの体から流れ出ている餡子をぺロリと舐めとった。 一見、ゆっくり同士が行う愛情表現や治療行為のように見えるかもしれないが、 ふらんにとってのそれはただの『味見』でしかなかった。 「うーうー!うまうま!」 ゆっくりは痛めつけることで餡子の旨味が増すという性質がある。 捕食種が獲物をいたぶるのはそれを本能で知っているからだ。 「捕食種にとって通常種なんざただの餌だ。それはすっきりー相手であっても同じこと。 お前らみたいに愛(笑)だの恋(笑)だのなんていう感情は存在しないのさ」 「ゆぎぃ・・・もうやだぁぁぁ、おうちかえるぅぅぅ・・・!」 「おいおい、まりさ。これからが『本番』なんだぜ? おい、ふらん!そろそろ頃合だろ。もうまりさちゃんも辛抱たまらんって顔してるぜぇ」 「もげぇ!」 ふらんは自分のぺにぺにをまりさのまむまむへズブリと突き刺した。 「ゆぎぃぃぃぃ!ま、まりさの・・・ばーじんさん、がぁぁぁ!!」 「・・・雌雄同体の饅頭のくせにバージンとかいうなよ。まじでキモい」 「もげ!もげ!も、もげ!うーーー!」 びゅる!びゅるびゅる! ふらんのぺにぺにから発射された精子餡がまりさのまむまむの中へと放出される。 「ゆ、ゆぐぅ・・・ぎぼじわるいぃ~。ま、まりざ、にんっじん、じじゃうよぉぉぉ・・・」 「・・・うー・・・うー・・・」 「よぉし、ご苦労さん、ふらん。疲れただろうからゆっくり休んでくれ」 すっきりーして満足したふらんを男は元のケージの中に戻してやった。 「ちなみに。ふらん種はまりさ種を、れみりゃ種はれいむ種を好んですっきりーする傾向があるらしい。 なんでなのかはよくわかってはいないがね」 そして、無理矢理すっきりーさせられ、れいぽぅ目状態のまりさを持ち上げる。 にんっしんして、ぽっこり膨れた下腹がびろ~んと伸びている様は茄子かヘチマを連想させた。 「ジョワジョワ、にんっしんしちゃったゆっくりはどんどん閉まっちゃうからねぇ」 男はまりさを透明な箱の中に入れ、先ほどのれいむがいる部屋へと連れて行き、 れいむの箱の前にまりさの箱を置いてやる。 れいむは今もなお体を赤れみりゃに貪り喰われ続けている。 「さて、これが最後の講義だぜぇ、まりさ。最後に捕食種の赤ん坊について説明しよう、ジョワジョワ」 「ゆぅぅ・・・・・・」 もはやまりさは身も心もボロボロで男の話を聞いているのかわからない状態だった。 そんなことはお構いなしに男は話を進める。 「さっきも言ったが捕食種にとって通常種はただの餌だ。これはどんな状況においても絶対だ。 例えそれが親子の関係であってもな。目の前で子供に喰われているれいむがその良い例だろ?」 「・・・どぼじで・・・あかちゃんが、おかあさんを、たべるのぜ。れいむは、おかあさんなんだぜ。 あかちゃんをゆっくりさせてあげたいっていってた、とってもゆっくりしたおかあさんだったんだぜ。 それなのに、それなのに・・・どぼじで、あがじゃんは・・・」 「それりゃお前、生まれた瞬間、大好物の餡子に囲まれてるんだぜ?普通食べるだろ」 「まりさはそんなことしなかったぜ!おかあさんのおなかのなかでとってもゆっくりしてたんだぜ!」 「だからそれはお前ら通常種の話だろ。生まれつきのハンターである捕食種にとって母体の餡子なんて餌 でしかないんだよ。だから捕食種は同じ捕食種じゃなく、捕食対象である通常種に種を植え付けるんだ ろうな。つまり、苗床ってことだ」 すっきりーする前に相手をいたぶるのは相手の動きを封じるだけでなく、生まれてくる子供に上質な餡子 を食べさせてやるためでもあるのだ。 そういう意味で言えば、捕食種にも愛情というものは存在するのだ。ただし、同族に限る! 「そんなわけでまりさ。今お前の腹の中にはふらんの子供がいる。 そいつらが覚醒した時、お前は目の前のれいむと同じく、腹の中から餡子を喰われて死ぬんだよ。 そうだなぁ、あと一、二時間もすれば子供は目覚めるだろう。楽しみだなぁ、まりさよぉ。ジョワジョワ~」 「い、いやだよ!まりさ、まだしにたく、ないんだぜ・・・」 「だったら祈るんだなぁ。腹の中の子供がふらんじゃないことに」 「ゆ?」 「捕食種に種つけされると9割の確率で捕食種を孕む。だが1割の確率で母体と同じ通常種を孕むこともある。 そうなると普通のにんっしんと同じ。つまり子供に腹の中から喰われることはないって訳だ」 1割といっても生まれてくる子供が全て通常種になる確率ではない。 生まれてくる数匹の内の1匹程が通常種になる確率が1割程度なのだ。 「ゆぅぅ!!まりさのあかちゃん、うまれてねぇぇ!ふらんのあかちゃんはうまれないでねぇぇ!」 わずかな希望にすがり、まりさは懸命に祈り始める。 だが、1匹程度が通常種であっても残りが捕食種であれば結果は同じ。 全ての子供が通常種だったなどというケースは確認されたことはない。 それは奇跡でも起きない限り、どんなに祈ったところでまりさの運命はもう決まっているようなものだった。 「さて、そろそろ仕事に戻るとするか。じゃあな、まりさ。せいぜいゆっくりしていってくれや」 「まりさのあかちゃん!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 もはやまりさは男の声など聞こえていなかった。ただひたすら、無駄な祈りを続けているだけだ。 そんな必死のまりさを嘲笑いながら男は部屋から出ていった。 「ゆ、ゆっくり・・・ゆっぐりじでいっでねぇぇ!ばでぃざのあがじゃぁぁん!」 うー・・・うー お腹の中から赤ちゃんの声が聞こえた。 <了> 前作: anko2086_隠し味 挿絵:車田あき
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・作者リハビリ中 『とてもゆっくりしたおうち』 D.O ここは、とある山のふもとの農村地域。 森沿いに作られた舗装もされていない農道と、田んぼに水を供給している小川の他は、 木々の緑と田んぼの緑ばかりが延々と続く、のどかな光景が広がっている。 そんな、めったに人の通らない森沿いの、これまた舗装もされていない道路脇に、一軒の物置があった。 物置と言っても、中には床も張られず地面をならしただけ、 木板の壁とトタン屋根も古ぼけた、扉すら付いていない小さな農具入れだが。 物置の中を見てみても、壁に掛けられているカマやクワはすっかり錆つき、 中に置かれた木箱や土のう、コンクリートブロックなどにも土ぼこりが積もっている。 わずかに置かれたワラ束や、麻袋に入ったモミガラも、すっかり乾燥しきっていて、 何年前から置きっぱなしなのかわからないありさまだった。 「ゆ・・・てね」 「ぅ・・・くち・・・てね」 そこに、とあるゆっくりの一家が住みついたのは、いつの頃からだろうか・・・・・・ 「ゆ~ん。おちびちゃん、ゆっくりうまれてね!」 「れいむとまりさににて、とってもゆっくりしたおちびちゃんだよー。」 「まりしゃ、もうすぐおにぇーしゃんになるんだにぇ!」 「ゆゆぅーん。れいみゅたのちみー。」 物置の奥隅に、外からは自分達の暮らす様子が覗けないように、 入口の反対側の壁に向かって横倒しにされた木箱の中では、そのゆっくり一家が今日も仲好くゆっくりしていた。 家族構成は、バスケットボールサイズの大黒柱・父まりさと、現在にんっしん中の母れいむ。 母れいむの頭上にはツタにぶら下がった5匹のかわいい実ゆっくり。 そして、両親と一緒に期待いっぱいの視線で実ゆっくりを眺めているのは、ソフトボールサイズの子れいむと子まりさ。 皆肌ツヤもよく、清潔で、現在とても良い環境で暮らしていることがうかがえる。 それもそのはずである。 この物置のすぐ裏の森は、人間の住処に近いということもあり、 他の野生ゆっくりはめったなことでは近づかず、虫も花も木の実も、食料は全部独占状態。 また飲料用にも水浴び用にもなる豊富な水源として、道路沿いにわずか数メートル進んだところに小川がある。 そして何よりこの、風雨にも負けない、とてもゆっくりしたおうちを手に入れたことが大きかった。 「おちびちゃんたちも、こんなゆっくりしたおうちにうまれるんだから、とってもゆっくりできるね!」 「ゆっへん!まりさがみつけたおうちなんだから、あたりまえだよ!」 「「おとーしゃん、ゆっくちー!」」 一見増長しすぎにも見えるが、父まりさの眼にうっすらと光る涙は、 このおうちを手に入れるまでに積み重ねた苦労、別れの悲しみ、手にいれたときの喜びが凝縮されている。 そもそも、この子れいむと子まりさには同時に生まれた姉妹があと7匹もいたのだ。 しかし、以前所属していた群れのナワバリ内では十分な広さと強度を持ったおうちが無く、 木の洞に作ったおうちはいつも、強風や豪雨によって破損しては、雨漏りを起こしておちびちゃん達の命を奪っていった。 そしてたび重なる悲劇に耐えられず、一念発起した父まりさは、 群れのナワバリを離れてゆっくりしたおうちを手に入れるべく行動に出たのであった。 それから数日後。 初めてこの物置を発見した時、父まりさは身震いするような感動とともに、強い疑念も持った。 「こんなにゆっくりしたおうち・・・にんげんさんがつかってるかもだよ・・・」 ゆっくり駆除のための山狩りを経験したこともある父まりさは、人間の脅威を十分に理解していた。 この辺りは人間のナワバリ。ならば、このおうちも・・・。 とはいえ諦めきれなかった父まりさは、それから2週間以上もの間、狩りの途中に時間を見つけては、この物置を覗くことを続けた。 そして、この物置には人間の住む気配が全くないことに気づき、ついに一つの結論に達したのであった。 「ゆー!ここには、にんげんさんはすんでないよ!きっと、にんげんさんもみつけてない、『あなば』だったんだね!」 所詮は野生のゆっくりである。この物置自体が人間の手により作られた物ということには気づかなかった。 そして現在。 物置の中の、さらに奥に置かれた木箱の中には、ワラ束をほぐしたカーペットが敷かれている。 さらに中央にはワラとふわふわの枯れ草を使って編み上げた、鳥の巣のような物まで作られていた。 鳥の巣状のそれは、まもなく生まれおちてくる赤ゆっくり達を受け止めるためのクッションであり、 おうちの中を上手に跳ねまわることが出来るようになるまで、 赤ゆっくり達がゆっくりと寝て過ごすためのベッドにもなる。 「いもうとたち、ゆっくちできてりゅ?」 「ゆふふ、だいじょうぶだよ。おねーちゃんたちもゆっくりさせてあげてね。」 「ゆっ!れいみゅ、がんばりゅよ!」 ぶるっ!・・・ぶるるっ! そして、新たな命を受け入れるための、万全の環境が整えられたおうちの中で、 ついに待望の瞬間がやってきた。 「ゆっ!まりさ、おちびちゃんたち、うまれるよ!」 「ゆうぅ・・・ゆっくりうまれてね!ゆっくりね!」 ぶるっ・・・ぶちっ・・・・・・ぽとんっ! 「ゆぅ、ゆっく・・・ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!!」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってねぇぇええ!」 「ゆっくち!ゆっくちちちぇっちぇにぇ!」 「ゆわーい!れいみゅ、おねーしゃんになっちゃよー!」 「ゆっくち!ゆっくち!」 「ゆ~ん、ゆっくりしたおちびちゃんだよぉ。」 「おにぇーしゃん、しゅーりしゅーり!ちあわちぇー!」 「ゆっくちしてね!ゆぅん、すーべすーべしててきゃわいいよ~。」 にわかに賑やかさを増すおうちの中、家族の愛情と、自分を取り巻く世界の優しさを信じて疑わない、 キラキラとした表情を浮かべたおちびちゃんたち。 その姿に、一家は自分達家族の未来が暗示されているかのような思いがするのか、 ますます明るい笑顔になる。 「おきゃーしゃん、おにゃかしゅいちゃー。」 「ゆ!ゆっくりまってね!」 ぷちん。と、父まりさが、先ほどまで赤ゆっくり達のぶら下がっていたツタを母れいむの頭から千切り取り、 ポリポリと噛み砕いてから5匹のおちびちゃんの中央にペッと吐き出す。 「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!」×5 「ゆわ~。いもうとたち、ゆっくちしてるにぇ~。」 「むーちゃ、むーちゃ。・・・ゆ~ん、まりしゃ、もっちょむーちゃむーちゃしちゃいよぉ。」 「ゆゆっ?ゆふーん!おちびちゃんたち、くいしんぼうさんだね!」 もうすでに体型がなすび型になるほど食べているのに、まだ満足できないらしいおちびちゃん達。 その姿は元気そのもので、なんとも微笑ましい。 「ゆっ!れいみゅおねーしゃんが、いもむしさんをあげるにぇ!」 「まりしゃはおはなさんをあげりゅよ!」 「ゆわーい。むーちゃ、むーちゃ!ち、ち、ちあわちぇー!」 「ゆわーん、れいみゅもたべさせちぇー。」 そんなくいしん坊たちに、自分達も大好物であるはずの、いもむしさんやお花さんを惜しげもなく持ってくる子ゆっくり達。 まだベッドから這い出すことも、上手に食べることもできない妹達に、一口サイズに千切って口移しで食べさせてあげている。 その光景は、両親の心を、餡子の底から暖めてくれた。 「おちびちゃんたち、とってもゆっくりしてるね。」 「まりさは、こんなすてきなかぞくをもって、せかいいちしあわせなゆっくりだよぉ。」 「ゆふふ、なかないで。おちびちゃんたちがみてるよ。」 ・・・・・・こうして、生まれて間もなく存分に甘え、たっぷりと腹を満たした赤ゆっくり達は、 お口の周りをぺーろぺーろと綺麗にしてもらい、両親と姉の愛情たっぷりのすーりすーりを受けた後、 ベッドの中で、何の不安も恐れも存在しない、ゆっくりとした笑顔のまま初めての眠りについた。 子ゆっくり達もそれからまもなく、妹達のゆっくりと眠るベッドの周りにお布団(ワラ)を敷いて、 妹達の寝顔を見守るようにすーやすーやし始める。 安全なおうち、ゆっくりしたおふとん、奪い合う必要なんてない豊富な食糧。 ここには今、父まりさが追い求めた、本物のゆっくりプレイスの姿が存在していた。 そのゆっくりプレイスを温かく包みこむこの物置は、ゆっくり一家に約束された、明るい夢と未来の光にあふれていたのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 2匹の赤まりさと3匹の赤れいむが一家に新たに誕生した翌日。 父まりさは、今日も家族のために、朝から物置裏の森に入って狩りに励んでいる。 一方母れいむと子ゆっくり姉妹は、おちびちゃん達がベッドの中でお昼寝している間に、 物置から出てすぐの草地で日向ぼっこをしていた。 「おかーしゃん。いもうとたちもおそとでぽーかぽーかさせてあげちゃいね~。」 「ゆーん。そうだね。でも、まだおちびちゃんたちにはおそとはあぶないから、もうすこしまってね~。」 「ゆっくちりかいしたよ~。」 仰向けになって日にあたって、この上なくゆっくりしていた一家。 だが、その時突然、とてもゆっくり出来ない音があたりに響いた。 ガァーン!!!ガァーン!!!ガァーン!!!ガァーン!!! 「びっくりー!!!」 「ゆぁぁぁぁああああ!!!なんなのぉぉぉおお!」 まどろんでいた母れいむが音の先を振り向くと、その視線の先に驚くべき光景が映った・・・・・・ バリッ!バリッ! そこにいたのは、一人の人間さん。 人間さんは、母れいむ達の方など気にも留めず、作業を進めていた。 そう、れいむ達のゆっくりしたおうち、物置を解体する作業を。 「ゆふふ。きょうもたくさん、ごはんがとれたよ。おちびちゃんたち、よろこんでくれるね。」 その頃父まりさは、午前中の間に森の中を駆け回って、 お花や木の実、やわらかいイモムシなどを帽子いっぱいに集め、おうちへと戻ってきていた。 当然一日の収穫量としては十分な量ではあるが、午前中の間にこの量をかき集めるのは、 いかに手つかずの森であっても楽ではない。 これも父まりさが、少しでも早くおうちに帰って、おちびちゃん達とゆっくり過ごしたい、 その一心で一生懸命狩りに励んだ結果であった。 そうして父まりさが森から飛び出した時、その眼前では恐るべき光景が広がっていた。 「な・・・・な、な、なにやってるのぉ!れいむぅぅぅうううう!!!」 「れいむたちのおうちをこわさないでぇぇぇええ!」 ぽよんっ、ぽよんっ、と人間さんのあんよに体当たりをする母れいむ。 「おうちにひどいことしにゃいでね!ぷっきゅー!」 本気のぷくー!を人間さんに向けて行っている子れいむと子まりさ。 ・・・それは、父まりさの愛する家族が、人間さんに対して挑みかかるという、戦慄の光景であった。 「みんなやべでぇぇぇえええ!!」 父まりさは、お帽子の中の食べ物をバラバラとこぼしながら、全速力で人間さんと家族の間に割って入る。 その間も、釘抜きを片手に物置のトタン屋根をはがし続ける人間さんの手は、一切休まることが無い。 その人間さんの行動、母れいむ達の発言から、父まりさにもおおよその事情は掴むことができた。 「まりさぁぁぁああ!にんげんさんが、おうぢ・・・!おうぢぃぃいいい!!」 「おとーしゃんもゆっくりとめてね!ぷきゅー!」 だが、父まりさは家族の声には耳を貸すことなく、まずは人間さんに対して最善と思われる行動をとった。 「にんげんさん!ごべんなさいぃぃぃいいい!!」 「ゆゆっ!・・・おとーしゃん?」 人間で言えば、土下座。 額を地面にこすりつけ、ひたすら人間さんに許しを請う姿は、家族にどう映っているだろう。 しかし、父まりさには、自分のプライドなどとは天秤にかけられない、守るべき存在があった。 「にんげんさん!れいむたちがゆっくりできないことしたならあやまります! まりさのかぞくと、おうちだけはゆっくりさせてくださいぃぃぃいいいい!!!」 「まりさ・・・」 「「おとーしゃん・・・」」 父まりさは、母れいむ達が人間さんに何をやったのか、どうして人間さんがおうちを壊そうとするのか、 そのような事を確認するのは後回しでいいと考えた。 人間さんは強い。敵わない。 だから、もしも厳しい要求をされたとしても、全て譲ろう。 もしも、なにか気に障るようなことをしたのならば、必死で謝ろう。 ・・・ゆっくりした家族と、ようやく手に入れたおうち、それだけを守ることができるならば、他に何も・・・ やがてそれは、家族達にも伝わったのか、母れいむ、そして子ゆっくり達も、 父まりさと同様に、顔面を地面につけて土下座を始めた。 おうちを突然壊された怒りに我を忘れていたが、頭を冷やしてみれば、自分達の愚かな行為に後悔せずにはいられなかったのである。 しばらくの間、一家が地面に顔面をこすりつけ続けていたところ、 人間さんの近づいてくる音が聞こえてきた。 もしかしたら許してもらえず、ゆっくり出来ない目にあわされるのでは、 そう思うと父まりさは震えが止まらなかったが、人間さんの足音は父まりさの目前で止まり、そこで屈みこむ音が聞こえた。 もしかしたら噂に聞いたことのある、ゆっくりに優しい人間さんなのかもしれない、父まりさはわずかな希望を抱いた。 ・・・・・・。 だが、それから、人間さんは別に話しかけるわけでもなく、 相変わらず土下座を続ける父まりさの前に屈んだまま動く様子を見せなかった。 「?」 段々と、不安が再び大きくなってくる。 高まっていく緊張に耐えられなくなり、父まりさはそっと顔をあげ、 「ゆぅ?」 そして、目の前でコンクリートブロックを振りかぶっている人間さんの姿を見た。 ひゅっ・・・どむっ。 「ゆぷっ・・・!?」 ・・・・・・? 「ま、ま、ま・・・、まりさぁぁぁああああ!!!」 「おどーじゃん、ゆっぐぢぢでぇぇぇえええ!!!」 「・・・・・・ゆ゛!?・・・ぼ・・?」 異音に反応した母れいむと子ゆっくり達が目にしたのは、 父まりさが、コンクリートブロックを縦に脳天に投げおとされ、 Uの字に押しつぶされ変形している姿だった。 「おどーじゃん、ぺーろ、ぺーろ!」 「ゆっぐぢぢじぇぇぇええ!しゅーりしゅーりするからぁぁぁ!」 父まりさは栄養状態が良かったおかげで、皮膚が破れて餡子が漏れることはなかったが、 眼球は半ば飛び出し、ブロックにちょうど押しつぶされた形になる中枢餡は、 体内で真っ二つに引き裂かれていた。 生きてはいた。だが、残念ながら致命傷であり、意識こそまだあるものの、 もう二度としゃべったり、動くことが出来ない体になり果てていた。 「けがはないよ!おとーさんはつよいゆっくりだから、すぐによくなるからね!」 母れいむは、自分もそう信じていたので、子ゆっくり達にもそう言って安心させる。 一方、父まりさに非情の一撃を食らわした人間さんは、 子ゆっくり達が必死に父まりさを介抱している間に、 何事もなかったかのようにおうちの解体の続きを始めていた。 バリバリバリバリッ!! 「ゆぴぃぃぃいいいい!!!ゆっくちしちぇぇぇぇええ!!」 「おちょーしゃん、おきゃーしゃぁん!きょわいぃぃぃいいい!!」 「おにぇーちゃぁぁん!たちゅけちぇぇぇぇええ!」 そして、物置の壁が全てはがされ終えた頃、ついにそれまで壁に隠れていた木箱の中、 赤ゆっくり達のいる寝室が、太陽の光の下へとさらされた。 「おちびちゃんたち!にげてぇぇぇえええ!!!」 「いもうとたちにひどいことしないでにぇ!ぷっきゅー!!!」 だが、赤ゆっくり達は逃げられない。 「ゆぁーん、ゆっくちさせちぇー!」 「ゆっくちぃぃ!ゆっくちぃぃ!」 逃げ出せるはずがなかった。 そもそも生まれてまだ丸一日も経っていない赤ゆっくり達である。 満足に跳ねることもできず、その弱いあんよでは、這い進むのがやっと。 ベッドから出ることすら困難なほどなのだ。 しかも、先ほどからおうちを破壊する轟音にさらされていた赤ゆっくり達は、 恐怖が限界に達しており、5匹ともベッドの中央で身を寄せ合って震えることしか出来ない有様であった。 すっ・・・・・・。 「ゆぅぅぅぅぅ・・・。ゆぅ?」 「?・・・しゅーり、しゅーり。・・・ちあわちぇー。」 だが、母れいむ達の予想に反して、人間さんは赤ゆっくり達をベッドごと優しく持ち上げると、 人差し指でそっと赤ゆっくり達の頬をなで始めた。 「?・・・そ、そうだよ!おちびちゃんたちはとってもゆっくりできるんだよぉぉぉ!」 「しょーだにぇ!まりしゃのいもうとたちはとってもゆっくちできりゅんだよ!」 そうなのだ。 家族みんなでゆっくりしていた所に来て、酷いことをする人間さんだって、 なんの理由もなく酷いことをしている訳ではないはずなのだ。 穢れも知らない、誰にも迷惑をかけたわけではない、あんなにゆっくりしたおちびちゃんたちを、 いきなり酷い目に合わせるはずがない。 「ゆっ!ゆっくち!」 「ゆぁーん、れいみゅもしゅーりしゅーりしちぇー。」 人間さんもゆっくりしている。 きっと、可愛い可愛いおちびちゃん達の魅力が、あのゆっくり出来ていなかった人間さんをゆっくりさせてくれたのだ。 「おちびちゃんたち、・・・とってもゆっくりしてるよぉ。」 そして、人間さんは赤ゆっくり達を持ったまま物置を出ると、 そこから数歩離れた所にあった、深さ数cmほどの地面のくぼみに、ベッドをそっと下ろした。 そして、その上に、やわらかく土をかけた。 ばさっ。 「ゆぴっ!?やめち『ばさっ』・・・・!!」 ばさっ。ばさっ。 「・・・・ぴぅ・・!!・・・っ!!」 「・・・・・・お、おちびちゃんたちに、なにじでるのぉぉぉおおおおお!!!」 「ゆぁーん!いもうとたちがちんじゃうぅぅぅううう!」 止めさせようと叫び、駆け寄る母れいむ達。 だが、そんな言葉など聞こえていないかのように、人間さんは赤ゆっくり達の埋められた土山をポンポンッと軽く固めると、 その上にコンクリートブロックを3つ、蓋をするように積み上げた。 「ゆっくちいもうとをたすけりゅよ!ゆーしょ!ゆーしょ!」 「まりしゃもがんばりゅよ!ゆんせ!ゆんせ!」 ブロックは別にそれほど重いものでもないが、それでも3つ積み重なると、 ソフトボール程度のサイズしかない子ゆっくり2匹の手にはあまる。 だが、母れいむの体格ならば、それこそ怪我する覚悟があれば、体当たり一撃でどかすことができるはずだった。 その母れいむが、人間さんに頭を掴まれていなければ。 「やめてね!はなしてね!れいむはおちびちゃんをたすけるんだよ!」 だが、母れいむの懇願は無視され、頭を鷲掴みにされた母れいむは、先ほど重傷を負わされた父まりさの横へと置かれた。 そして、 「おちびちゃんが、おちびちゃんがぁぁああ!!」 人間さんは釘抜きを持った右手を軽く振りかぶると、 「はなしてぇ!れいむのおちび『ざしゅっ』ゆ゛・・・・・びぇ・・」 その右手を母れいむの顔面にめがけて、横一文字に振りぬいた。 母れいむの顔面はちょうど左目のまぶたから右目の脇まで引き裂かれた。 右目周辺の皮と餡子は荒っぽく引きちぎられて、周囲に飛び散った。 釘抜きの先には、母れいむの右目が突き刺さったまま残っていたが、 人間さんがびゅんと軽く釘抜きを振ると、地面にぺしょりと叩きつけられ、原型は残らなかった。 「・・ぼ・・・ぎゅ・・。」 この傷は深く、母れいむもまた父まりさ同様に中枢餡を傷つけられ、 意識はあっても、もはや話すことも、身動きを取ることも出来ない体になり果てたのであった。 一方、人間さんが母れいむを処理している間に、 そんなことなど全く気付いていない子ゆっくり達は必死にブロックをどかし続けている。 人間さんが戻ってきたころには、ブロックを3つともどかすことに成功していた。 「ゆぅ、ゆぅ、おもいいししゃんは、ぜんぶどかしちゃよ。」 「れいみゅ!まりしゃ!おへんじしちぇにぇ!」 すると、ブロックという重しから解放された地面が、もぞもぞと波打ち始める。 次の瞬間、ぴょろりと赤ゆっくり達の舌が地面から突き出し始め、声こそ苦しそうだが、 可愛くか細い呼吸音が5つ、無事に地面から響き始めたのだった。 「・・・っくち・・・。」 「ぁしゅけちぇ・・・ぁーしゃん・・・。」 「ゆー!まだみんなぶじだにぇ!・・・ゆーん、おそらとんでるみちゃーい!」 「ゆっくちたすけりゅよ!・・・ゆーん、おそらとんでるみちゃーい。」 そこに、人間さんが戻ってきた。 子れいむは右手に、子まりさは左手に、それぞれ掴まれ持ち上げられてしまう。 「ゆーん・・・ゆ!こんなことしてるばあいじゃにゃいよ!」 「にんげんしゃん、ゆっくちはなしちぇにぇ!」 だが、人間さんは子ゆっくり達を持ったまま、その場を離れてしまった。 「はなしちぇにぇ!ぷきゅーしゅるよ!ぷっきゅー!!」 「いうこときいてくれにゃいと、おとーしゃんとおきゃーしゃんにいいつけりゅよ!おこるととっちぇもこわいんだよ!」 その両親は、激痛と致命傷によって身動きが取れない中、必死で子ゆっくり達の方に視線を向けて、 絶望の中でほんの僅かに残された期待を、人間さんの背中に向けて、その流れる涙で訴えかけていた。 優しいが芯の強い長女れいむと、活発で思いやりあふれる6女まりさ。 9匹いた姉妹の中で2匹だけ残された、初めて授かった子供達。 とってもゆっくりした子供達、あのきれいな瞳を見れば、きっと人間さんも酷いことなんてできないはず。 子ゆっくり達のお願いが聞き届けられたのか、両親達の祈りが通じたのか、 人間さんはしばらく歩くと、腰をおろして子ゆっくりを持った両手を下ろした。 「ゆっくちりかいしたんだにぇ!」 「おねがいきいてくれちぇ、ありがちょー。」 だが、その両手の行き先は地面などではなく、 ・・・・・・ちゃぷん。 いつも一家が水浴びをする、小川の中であった。 じゃぶっ・・・ごぼぉごぼっ・・じゃぶじゃぶ・・ごぽっ・・・・じゃぶじゃぶじゃぶ。 しばらくして、顔と手を小川で洗った人間さんが戻ってきたとき、 その両手に子ゆっくりはおらず、また、あの朗らかな声はどこからも聞こえてくることはなかった。 父まりさも、母れいむも、意識が混濁していく中でなお、おそらくあの可愛い子れいむと子まりさとは、 2度と会うことが出来ないのであろうことを悟り、 「ぎゅ・・・・び・・・ぎゅぅ・・・・・」 「じゅ・・・ぎ・・・・・ごびゅ・・・・」 声にならない叫びをあげながら、もはや焦点の合わなくなった瞳から、涙を流し続けた。 「ぉにぇしゃ『どさっ』・・・」「・・・たしゅけ『のしっ』・・・」 「・・・・・・!!・・・!!」 そして人間さんは、地面から舌をピロピロ出していた赤ゆっくり達の上にブロックを優しく積みなおした後、 バリッ!バリッ!・・・・・・ガンッ!ガンッ!ガンッ! 両親の静かな叫びをかき消すように、 一家のゆっくりとしたおうちだった物置を、乱暴な音を鳴らしながらバラバラに解体していったのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− かつて、めったに人の通らない森沿いの、これまた舗装もされていない道路脇に、一軒の物置があった。 そこは、あるゆっくり一家の明るい夢と未来の光にあふれていた、とてもゆっくりしたおうちがあった場所。 しかし現在その場所には、草一本生えていない四角い地面と、なぜか無造作に積まれたコンクリートブロック以外、何も残っていない・・・ 餡小話掲載作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ ふたば系ゆっくりいじめ 409 町ゆっくりの食料事情 ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生 本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 冬-1. ふたば系ゆっくりいじめ 490 ゆっくりしたハロウィンさん 翌年 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ) 挿絵:キリライターあき 挿絵:じゃりあき 挿絵:キモあき 挿絵:バケツあき 挿絵:儚いあき 挿絵:車田あき 挿絵:余白あき