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ゲスゆ有 「ゆっくりしていってね!」 日課である朝の散歩中に突然足元から甲高い声が上ってきた。 なんだろうと思いながら……まぁ既に予想はついてるが……足元を見下ろしてみると、やはりというか なんというか、やたらとぷにぷにしてそうな生首がこっちを見上げてきていた。 「やっぱりゆっくりか」 「れいむはれいむだよ! ゆっくりしていってね!」 そう言ってれいむは誇らしげに胸を張る。 「はいはい、ゆっくりしていってねっと」 俺はいかにも気だるそうな感じを滲ませながらそう言って、せかせかとれいむの前を立ち去ろうとする。 が、そんな俺の様子を見てれいむは慌て、ゆっくりにあるまじきゆっくりしてなさを発揮して俺の前に 立ちはだかり、こう言った。 「まってね! にんげんさんはれいむにあまあまをおいていってね!」 それを聞いて俺はファッキューメーンと思った。いや別にゆっくりは男じゃないけれども、素直で可愛い ゆっくりが好きである俺をがっかりさせる言葉の一つだったからだ。 無視してやってもよかったのだが、ついてこられても迷惑だ。 なんとか口でやりこめて乗り切ろうと思い、下を向いてこう言った。 「何でさ」 「ゆ? わからないの?」 俺の言葉を受けたれいむは心底不思議そうに頭の上に疑問符を浮かべて小首を傾げる。 あまあま……要するに人間のお菓子の要求をする野良ゆっくりは多い。 ほぼ全てのゆっくりは甘い物が大好きである。加えてゆっくりは何事も自分の都合のいいように解釈する 悪癖があり、飼いゆっくりの飼い主がゆっくりにご飯をやっているのを見ただけで頭と性格の悪い野良などは 人間はゆっくりの奴隷であると勘違いするなどよくある話だ。 そうでなくても、『ゆっくりはゆっくりしていればみんなをゆっくりさせられる』という意味不明の信念を 持っていたりもするので、『ゆっくりした自分ならお菓子をくれるはずだ』という理屈から人間にあまあまを 要求する事などはざらにあるのだ。 俺を苛立たせない理由ならいい。ゆっくりにお菓子をやる物好きな爺さんがその辺にいて、人間はお菓子を くれるものだと思い込んでしまったとか、そういう俺にも納得しうる理由ならまぁいいや。俺はそう思い ながら、れいむの言葉を待った。 が、しかし。このれいむが語った『理由』は―― 「じゃあおしえてあげるね! れいむはしんぐるまざーなんだよ! すごくかわいそうなんだよ! だから やさしくしてあげないとだめなんだよ!」 俺の神経を卸し金で容赦なく削り取るような、吐き気を催すクソのようなものだった。 「お前のような奴がいるから戦争が無くならないんだ!(?)」 反射的に右の拳が足元のれいむに伸び、そのもち肌に突き刺さった。悲鳴を上げる暇すらなく、れいむは バウンドして空に舞い上がる。 おそらをとんでるみたい。シェイクされた頭でそんな事を考えているのであろうれいむの脳天を、追撃の ネリチャギが襲う。倒れている相手に頭の側から発動すればザコ即死がつく便利な技だ。 「ゆぶぇ?!」 衝撃で右の眼球を破裂させながら、れいむが叫び声を上げて地面に叩きつけられた。俺の足が頭の上に 乗っているので、今度はバウンドしない。 俺はそいつの頭から足をどけると、靴を脱いでそこにこびりついた餡子をそのへんの壁に擦り付けた。 餡子のついた靴でその辺を歩いたら虐待趣味の変態だと思われてしまうからだ。 と、そんな事をしている内に、既にずたぼろになっているれいむが起き上がる元気を取り戻していた。 もう相手にしないぞ、こんな薄汚いボロクズ。俺はそう心に決め、 「どぼじでごんなごどずるのぉぉぉ?! でいぶはじんぐるまざーなんだよぉ?! だがらゆっぐりざぜで あげないどだめなんだよぉぉぉぉぉ?!」 僅か二秒で決心した事実を闇に葬り去り、れいむの頭に鋭いチョップを浴びせた。 「ゆびぇ?! いだいぃぃぃぃぃ!! どぼじでごんなごぞずるのぉぉぉぉ?! がわいぞうなでいぶは ゆっぐりざぜであげなぎゃだめなんだよぉぉぉぉぉぉ?!」 悲鳴と共に、無くなった右目から涙と混じった液状の餡子がリズミカルに溢れ出す。 俺はそのれいむを掴みあげ、横っ面を思いっきり引っぱたいた。 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆぎぇ?!」 「お前みたいな!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆがぁ?!」 「自分ばっかりゆっくりしたいとか!」 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆぐぅ?!」 「そんな考えのゲスがいるから!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆげぇ?!」 「他の可愛いゆっくりまで!」 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆごぉ?!」 「害獣呼ばわりっ!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆぎゃぁ?!」 「されちまうんだ!」 左頬を打つ。頬からびしゃりと音が響く。 「ゆっぐ、えぐ……ゆんやぁぁぁぁぁぁ! もぉやだぁぁぁぁ! おうぢがえるぅぅぅぅぅぅ!!!」 「わかってんのか……よぉ! このゲスが!!」 そして、泣き喚くれいむを力いっぱい地面に叩きつけると、それっきりれいむは音を立てなくなった。 俺は餡子で汚れた右手をごしごしと手近な壁に擦り付けると、いそいそとその場を後にした。 おわり あとがき お題が終わらないのでつい 凄い手抜きだ byゆっくりのあねきィィ!の人? おまけ(むしろ本編?) ずりずりと、ずりずりと。まるで芋虫のようにゆっくりと。しかし必死に、れいむは這っていた。 身じろぎする度に全身に激痛が走る。風が頬を撫でるたびに激痛が走る。身体を虫が這う度に激痛が走る。 朝露が肌を濡らす度に激痛が走る。木の枝が肌に掠る度に激痛が走る。 狂ってしまいそうな痛みの中で、それでもれいむははっきりと意識を保ちながらずりずりと這っていた。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 早く行かなきゃ。 頭の中は、それでいっぱいだった。 れいむが男に暴行を受けた場所からここまで、たったの20メートル。そして、ここかられいむが向かおうと している場所までは、およそ30メートルほど。 普段なら鼻歌など歌いながらすぐに行ける道と距離でも、多量の餡子を失い、身体の所々が裂けてしまった 今のれいむにとっては苛烈な決死行であった。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 早く行かなきゃ。 れいむは足を速める。無理をすれば死期が近付くのは、頭ではわからなくとも感覚でわかっているはずだ。 死にたくない。 死にたくない。 でも早くしなきゃ。 早く行かなきゃ。 それでもやめない。やめられない。 れいむはゆっくりしたゆっくりだから。 しんぐるまざーのれいむはかわいそう。だから、ゆっくりしなきゃいけないんだから。 れいむは必死に這い続ける。 死にたくない。 そんな事より早くしなきゃ。 もっともっと急がなきゃ。 早く行かなきゃ。 既に半分以上の餡子を失い、意識は朦朧としている。にも関わらず、れいむの足は絶えず動き続けていた。 ただ一つの思いの為に。 ただ一つの信念の為に。 ただ一つのゆっくりの為に。 その、執念にも似た思いが通じたのかは定かではないが。 れいむはとうとう、目指していたその場所に辿りついた。 そこは、気の根っこの間にある大きな穴だった。丁度、成体のゆっくりよりも一回りだけ大きいくらいの。 「れ む ね」 傷だらけのれいむの小さく掠れた声が響く。本来ならば伝わらないであろうほどの、微かな声。しかし、 洞窟の中で反響した為か、その声はちゃんと、その穴の主へと届ける事が出来た。 ぼよん、ぼよんと何かが跳ねてくる音が響く。 そして、その主はどすんと音を立て、傷だらけのれいむの前に姿を現した。 「やっとかえってきたのこのうすのろれいむ! さっさとあまあまをだしてね! だしたらうすのろは ゆっくりしないでしんでね!」 「よこちぇー!」 「きゅじゅー!」 そこにいたのは。 れいむが言っていた、『かわいそうなしんぐるまざー』のれいむと、その子供達だった。 そう、れいむは全て、このしんぐるまざーのれいむ達の為にとあまあまを探しに出かけていたのだ。自分が ゆっくりするためではなく、可哀想なれいむをゆっくりさせてあげるために。必死に。必死で。れいむが 欲しがっているあまあまを人間に貰いにいっていたのだ。 しんぐるまざーれいむは、傷だらけのれいむの姿を見つけると、仰天し、涙を流して声を上げた。 「どぼじであまあまもっでないのぉぉぉ?! にんげんがらうばっでごいっでいっだでしょぉぉぉぉ?! ぞんなごどもでぎないのぉぉ?! まざがでいぶをゆっぐりざぜるぎがないのぉぉぉごのぐずぅぅぅ!!」 しかし、驚き、そして涙を流した理由は、傷だらけのれいむが、あまあまを持っていない事に対しての 物であった。 「ちが れ むは がんば ごめ ゆっ ちりょう ね」 掠れた声でしんぐるまざーれいむへの謝罪と、自己の治療を頼む傷だらけのれいむ。 しかし、しんぐるまざーれいむ達は。 「うるさいよ! やくたたずはゆっくりしんでね! しんだあとでおわびのあまあまをもってきてね!」 「ちにぇ! ちにぇ!」 「きょんにゃきゅじゅはころちちゃえびゃいいりょ!」 傷だらけのれいむへの怒りを露にして、殺してしまえ、とまで言った。 「ゆっ! それもそうだね! れいむのおちびちゃんはかしこいね! きっとおっきくなったらこんな ぐずとはちがうりっぱなれいむにそだつよ!」 「「ゆっへん! しょれほどでみょにゃいよ!」」 「じゃあさっさところすね! おちびちゃん! おかーさんのかっこいいところゆっくりみててね!」 「「ゆっきゅちみりゅよ!」」 傷だらけのれいむは、堂々と自分を殺す算段をつけている親子の会話を聞いていても全く動じなかった。 先刻から、身体の痛みも、聞こえる音も。どこか遠くの出来事のように感じてくるようになっていたから だった。 痛みが消えたわけじゃない。言葉が聞こえないわけじゃない。 ただ、それを理解する機能が失われかけているのだ。 ゆっせーのっ! ゆっ!! ゆゆ~ん! おきゃーしゃんのじゃんぴゅしゅっごくゆっきゅちちちぇるにぇ~! 仲の良さそうな親子の声が耳に滑り込んでくる。 しんぐるまざーれいむのあんよを、たった一つになってしまった目で見上げながら、れいむは思う。 あぁ、ゆっくりしてもらえなかった。 たよりなくてごめんなさい。 もっとゆっくりさせてあげたかったのに。 れいむは、しんぐるまざーだから。 かわいそうだから。 やさしくしてあげないとだめなんだよ。 かわいそうなれいむ。 やくにたてなくてごめんね。 れいむはもうしんじゃうけど。 れいむはきっと。 かわいいこどもたちといっしょに。 わらいあって、それでげんきに。 ゆっくりしていっ ぐしゃり、と。 しんぐるまざーれいむの足が、傷だらけのれいむの頭を踏み潰し、完全にれいむは息絶えた。 しんぐるまざーれいむは、子供達の前で誇らしげに胸を張る。が、次の瞬間。 「ゆ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?! でいぶのぶりでぃなあんよがいだいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」 顔色を変えて飛びあがり、家の中をごろごろと転がりまわった。 原因は、傷だらけのれいむの歯である。人間の打撃は、れいむの目と表皮をずたずたにし、上側の歯の ほとんどをへし折ったが、下顎にある歯は一本たりとも欠けさせることはなかったのだ。ゲスゆっくりを 嫌っていた人間の執念が、しんぐるまざーれいむに牙を剥いたのだろうか。 しんぐるまざーれいむは子供達にあんよを舐めさせながら涙を流した。 れいむは思う。 それもこれも、全部役立たずのれいむのせいだ! 役立たずに見つけさせたこの家も、ゆっくりした自分には狭すぎてちっとも相応しくない! そして、れいむは未だにずきずきと痛むあんよでふらふらと立ち上がりながら、大声で叫んだ。 「ごんなゆっぐりでぎないどごろにいられないよ! でいぶはもっどゆっぐりでぎるおうぢをざがずよ!」 その言葉が死亡フラグだからか。 あるいは、因果応報という奴か。 常識的に考えれば、こんな所で大声を上げたせいかもしれない。 「「「「「「「「「「「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」」 「「「「「「「「「「「うー! ゆっくりしね!!!!」」」」」」」」」」 突然、巣に大量のれいぱーありすとふらんが雪崩込んできたのだ。 れいむ一家はこの後、意気投合し結託したありすとふらんに犯され、子供を産まされ、子供を食べられ。 ちっともゆっくりできない数ヶ月を送った後に、朽ち果てて死んだ。 あとがき2 ゲスじゃないゆっくりにしんぐるまざー云々言わせてみる事を思いついたのでやってみた ゲスの始末は本題じゃないのであえて適当に このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/390.html
前 最初のうちは、傷のせいか味わった恐怖のためか、世話をされるゆっくり達は総じて大人しかった。 だが何もしなくても餌がもらえてゆっくりできるという状況に、だんだん調子に乗り始めてきた。 「まりさのごはんはやくもってきてね!」 「せなかがかゆいよ! はやくかいてね!」 などと、注文すらつけるゆっくりまで現れ始めた。 無論、充分に反省し、大人しいゆっくりもいたにはいたが、それもほんのわずかだ。 世話をするゆっくりの側もストレスが溜まり始めていた。 怪我をしたのは本人のせいなのに、まるで王様のように振る舞うゆっくり達を、表面では気遣う振りをしながらも陰では忌々しく思っていた。 加えて動けるゆっくりの数が減ったことで、群れ全体の食糧事情も芳しくなかった。 今はどうにか頑張って、依然とほぼ変わらぬ量の食物を用意できていたが、それもいつまで続くかわからない。 何より、全く働かないゆっくりと、危険を冒して餌を取ってきた自分達とが、同じ量しか食べられないというのは大いに不満であった。 それでも暴行に走ったり餌を抜いたりしなかったのは、同じ群れの仲間であるという意識がまだあったからだ。 何より、群れを取り仕切るリーダーれいむが、何も言わずにあのまりさの世話をしているのだから。 リーダーれいむに限らず、大人ゆっくりや良識あるゆっくりは、あのふてぶてしいまりさが嫌いだったのだ。 そのまりさを何より嫌っていたはずのれいむが、進んで世話をしているのだから、他のゆっくりは何も言えないでいた。 だが、一番ストレスを溜めていたのは、そのリーダーれいむ本人だった。 「……たべものをもってきたよ」 薄暗い木のうろに、れいむは取ってきた花や虫を運び込む。一人で住むにはやや広いここが、まりさの巣だった。 「ゆ! どこであぶらうってたんだぜ! おそいぜ!」 嘲りと苛立ちをないまぜにした笑い声に、れいむは唇を引き結んだ。 れいむがまりさの世話役を買って出たのは、同情や親愛といった気持ちからでは無論ない。 自分以外では、このまりさの相手をするのは耐えられないと判断したからだ。 他のゆっくりであればそのうち堪忍袋の尾が切れ、まりさを殺害するであろうことは容易に想像できた。 それは連鎖的に、他の動けないゆっくりを排斥していく運動に繋がるだろう。 そうなれば最早群れは崩壊するしかない。次はいつ自分が殺されるのか、という空気が仲間内に蔓延するだろう。 その事態だけはどうしても避けなければならなかった。 そしてまりさは、れいむのそんな思いを誰よりも理解していた。 「ふん! こんなりょうじゃまりささまはまんぞくできないんだぜ! もっとたくさんもってくるんだぜ!」 れいむの持ってきた餌を一瞥するなり、そう罵倒する。まるで動けないとは思えぬほどの厚かましさだった。 「みんなとおなじりょうのごはんだよ! ゆっくりがまんしてね!」 「いやだね!」 即答だった。 「どうして……どうしてそんなこというの!? けがしたのはまりさのせいでしょおおおお!?」 「けがにんはいたわるものだぜ! いたわれないれいむはひどいやつなんだぜ!」 「ゆっくりはんせいしないとごはんぬきだよ!」 「はいはいはんせいしてるはんせいしてる。だからさっさとえさもってくるんだぜ!」 ギリギリとれいむは歯噛みした。 どうして、どうしてそんなことを、平気な顔して言えるのか。お前のせいで、どれだけ自分が、仲間が苦労していると思っているのか。 れいむはまりさの驕りを理解できなかったし、したいとも思わない。 ただ許せない。そう思った。 「まりざがにんげんのところにいがなげれば、みんなけがじなかったのに……!」 れいむは搾り出すように叫んだ。 「まりざがにんげんのごはんをどっだりなんかじなければ……!」 「それはちがうぜ! まりささまがにんげんのところからたべものをうばったから、みんなゆっくりできてたんだぜ?」 「それはまりざとありずとれいむが、みんなのぶんまでごはんたべちゃうからでしょおおおお!?」 せせら笑うまりさに、れいむは激昂した。 「まりざがっ、みんなにぢゃんとごはんわけていればっ、みんないっじょにゆっぐりでぎだのにぃぃぃぃ!!!」 怒りに震えるれいむの顔は真っ赤だった。 だがそれをも、まりさは冷たくあしらう。 「ふふん、まりささまはそんじょそこらのまりさとはちがうんだぜ。たくさんごはんをたべるのはとうぜんのけんりなんだぜ! それに、まりさがいなかったら、れいむはむれをまとめられなかったはずなんだぜ!」 「……!」 確かに、その通りだった。 元々、この群れはれいむだけがリーダーをしていた。 当時は今の半分程度の群れであり、それでもれいむは群れをまとめるのに四苦八苦していた。 どんな集団にも問題児というものは現れる。そして、普通の者よりも世話が焼ける存在だ。 そこに現れたのがまりさだった。 元々人間に飼われていたというまりさは、しかし類稀な身体能力で、狩りにおいてはすぐに群れ一番の実力者になった。 一度など、単独でれみりゃを追い払ったほどである。 まだ若いゆっくり達は、そんな強いまりさに憧れ、自然と付き従うようになった。 それにより群れは活気に満ち溢れ、また外部からゆっくりを受け入れる余裕もでき、現在の大きさまで成長した。 時折素行の悪いゆっくりも入ってくるようになったが、そういった連中はまりさが元締めとなって仕切っていた。 現在取り巻きとなっているありすとれいむも、外からやってきてまりさについたゆっくりであった。 いつしか群れは、まりさを中心とする、若者や無謀なゆっくり達と、れいむを中心とする、年長や大人しいゆっくり達に二極化された。 この二つのグループが、ちょうどよい緊張感を保つことで、群れは現在まで成立してきたのだ。 その状態でまりさがいなくなっては、群れに大きな混乱が起きるのは確実だった。 それゆえに、れいむは今までまりさに強く口出しできなかったのだ。 「ゆっへっへ、りかいしたか? りかいしたらゆっくりはやく、ついかのえさをもってくるんだぜ! このまりささまになぁ!」 「このっ……!」 我慢できず、詰め寄ろうとしたれいむだったが、まりさは僅かに身を捻って身体全体で嘲弄した。 「いいのか? ここでまりさがこえをあげれば、どうなるかわかってるんだぜ? うごけないまりさといかりくるったれいむと……どっちがひがいしゃなのか、みんなにはんていしてもらうんだぜ」 「ゆぐぅぅぅぅぅぅぅぅ……ッ!!」 れいむは口惜しそうに呻くが、やがて自分を取り戻し、まりさに背を向けた。 「ごはんはみんなとおなじだからね! それいじょうはふえないよ!」 そして持ってきた餌をまりさの前に投げ出すと、去っていく。 「……チッ」 忌々しげにまりさは舌打ちした。 あのれいむのごうじょうにはまったくうんざりさせられるぜ。目の前の餌を貪りながらまりさは思った。 いっそのこと、まりさとしてはれいむが襲いかかってきても良かったのだ。 あのとき、巣の外から他のゆっくりがこちらを窺っていることは知っていた。恐らくれいむが心配だったのだろう。 その目の前で、れいむが自分に襲い掛かり、それを返り討ちにしてやれば、立派に正当防衛が成り立つ。 そうなれば、最早群れのリーダーはまりさのみだ。自分の邪魔をするものはいない。 返り討ちにできるだけの自信もあった。 足を焼かれ、頬を焼かれた今の状態でも、この群れのどのゆっくりが相手でも、負けないと自負していた。 群れの仲間は誰一人信じていないだろうが──まりさは、以前、人間を殺したことがあった。 殺したのは自分を飼っていた人間だった。 その男は自分に厳しい食事制限を設け、その上激しい運動までさせた。まりさは男が大嫌いだった。 だがそうやって躾けられているうちに、自分の力が見る見る伸びていくのが分かった。 そしてもう充分強くなったと判断したところで、背後から襲い掛かった。 男は倒れ、そして起き上がらなかった。 まりさは人間に勝ったのだ。 足を焼かれた今となっては、人間に勝つことは難しいだろうが、しかし同族程度に負ける気はしない。 れいむがいなくなっても、自分には頂点に返り咲けるだけの力がある。まりさはそう信じていた。 れいむが限界に達し、自分に襲い掛かるまで、そう長くはないだろう。 そのときこそ、自分が真に群れの主となるときなのだ。 「むきゅう、れいむ、だいじょうぶ?」 「へいきだよ、きにしなくていいよ、ぱちゅりー……」 仲間の気遣いに笑みを返すれいむだったが、自分でもちゃんと笑えているか自信がなかった。 明け方の広場には、動けないゆっくり達を除いた全てのゆっくりが集まっていた。 「みんなよくきいてね。……れいむは、にんげんのところにいってごはんをとってこようとおもうの」 「「「!!!!!!」」」 思いがけない言葉に、皆揃って驚愕した。 「れいむ! あなたなにいってるかわかってるの!? ばかなの!? にんげんのところになんかいったらころされちゃうわよ! それにそんなことしたら、まりさとおなじになっちゃうよ!」 ありすがぴょんぴょん飛び跳ねて抗議した。 ありすは、優しいれいむがそんなことを言うとは信じられなかったのだ。 「わかってるよ」 れいむは静かに答えた。強張った表情は、れいむが悩み、その上で決断したことを示していた。 れいむとて、あの腐れ饅頭と同じ立場に落ちるのは嫌だ。だが、そうしなければもはやこの群れは立ち行かない。 昨日でとうとう備蓄食料もなくなり、日の出ているうちに帰ってこれる範囲にある餌はあらかた取りつくしてしまった。 また、餌を取りにいったまま戻ってこなかったゆっくりが、今までに三匹出ている。 群れの崩壊も時間の問題であった。その前に、れいむは最後の賭けに出ようとしているのだ。 「……むきゅっ、しょうがないわね」 ぱちゅりーが一歩、れいむに歩み寄った。 「ひとりじゃごはんははこべないでしょ。わたしもついていくわ」 「ぱ、ぱちゅりーだけいいかっこしようったってそうはいかないわよ! ありすもいっしょにいくんだからね!」 ありすも名乗りを上げ、そして次々と仲間達も自分も行くと言い出した。 れいむは微笑んだ。久しぶりの、本当の笑顔だった。 「みんな、ありがとう! でもぜんぶはつれていけないよ! もしれいむたちがもどらなかったとき、むれをまもるひとをのこさなきゃいけないよ」 れいむは、自分と共に行くゆっくりをふるい分けた。 子供や母親は残され、年老いた者、子育てを終えた者、子を作れない者のみの七匹の決死隊が結成された。 「だめだよぉ! にんげんのところにいったらしぬっていったのれいむでしょおぉお!!??」 一匹だけ、強く反発する子ゆっくりがいた。群れの若いゆっくりの中で一番優しい子まりさだった。 「だいじょうぶだよ。ちゃんとかえってくるよ。 でも、もしれいむがかえってこれなかったら……まりさがみんなをささえてあげてね」 れいむは子まりさに、一度だけ優しく頬ずりをすると、仲間を伴って出立した。 そして最初のまりさ達と同じ罠にかかって捕まった。 「またか……」 慧音は憂鬱な溜息を漏らした。一応ついてきた妹紅などは、寝転がって干し芋を齧っている。 「はぁしかし、慧音様、それが今回はどうも事情が違っていて」 「ふむ、まぁ、確かに」 柵の中に入れられた七匹のゆっくりは、奇妙なほど大人しかった。 半分べそをかいているものもいるが、どれも待ち受ける運命を受け入れてしまっているように見える。 「お前達、自分が何をやっているのかわかっているのか?」 とりあえず、慧音はそう声をかけてみた。すると先頭にいたれいむが顔を上げる。 「ゆ、おねーさんがいちばんえらいひと?」 「……まぁ、この場ではそうなるが」 慧音は戸惑った。普通、ゆっくりは何か聞かれたら反射的に答えを返す。それをしないどころか、逆に問うてくるとは。 「ならおねがいがあるよ。れいむはどうなってもいいから、どうかみんなをたすけてあげてね!」 「! れいむ゛ぅぅぅぅ! どうじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!?!?」 「むっぎゅううん! だめよ、じこぎせいはただゆっくりとかなしみをひろげるだげなのおおおお!!!」 れいむの言葉をきっかけに、他のゆっくり達は一斉にわんわん泣き始めた。 「……一体全体、どうしたことだ」 今度こそ、慧音は頭を抱えたくなった。 れいむだけがただ静かに慧音を見上げていた。慧音はふと、訊いてみた。 「お前達は、この前ここにきたまりさ共の知り合いか?」 「ゆ? じゃあまりさたちのあしをやいたのもおねーさんなの?」 「……ああ、そうだ」 答えて、慧音は反応を待った。だがれいむは「そう」と答えただけで、激昂したりはしなかった。 「復讐しにきたものとでも思っていたが」 「しかたないよ。あれはまりさがわるかったよ。でも、まりさ、あやまらなかったでしょ?」 「ああ、最後までふてぶてしいやつだった」 「だったられいむがかわりにあやまるよ。ごめんなさい」 「連中はどうしてる?」 「みんなおうちでゆっくりしてるよ。れいむたちがごはんをとってきて、わけてあげてるよ」 「あんな連中、よく生かしておけるな。正直、私達が殺しておいたほうが良かったか?」 「ゆぅっ……でも、まりさはくそまんじゅうだけど、でも、それでもれいむたちのなかまだよ!」 最後の一言は自らに言い聞かすようではあったが、言葉に出来る程度には、その気持ちは確かにあるのだろう。 「……うぅむ」 慧音は悩んだ。農夫達も、こんなゆっくりは初めて見るのか、戸惑っている。 「しかし、お前達、私達の野菜を盗みにきたんだろう? こんなに徒党を組んでまで」 そう言うと、れいむははっとなって慧音のほうに近づいた。 「そうだよ! でもちがうよ! れいむがみんなをむりやりつれてきたの! いちばんわるいのはれいむだから、みんなはゆっくりにがしてあげてね!」 「ちがいまずぅぅぅぅぅ!!! ありずがわるいんでずっ!! ありずがれいぶをそそのかじだんでず!!」 「むっぎゅ! ぐろまぐはこのぱちゅりーさまなのよ! れいぶなんで、わたしのあやつ、あやづりにんぎょ……うあ゛あ゛ああああん!!」 またも始まる泣き声の大合唱。 耳を塞ぎながら、いよいよ慧音は対処に困った。 どうにも、このゆっくり達はゆっくりらしからぬ仲間思いの心の持ち主であるらしい。 いくらゆっくりとは言え、そのような者たちを無下に扱うのも気が引けた。 しかしどんな事情があろうと、野菜を盗みに来た以上、みすみす見逃すわけにも行かぬ。先日のまりさの仲間となれば尚更だ。 思い悩む慧音の肩に、ぽんと妹紅が手を置いた。 「どうした」 「うーん、この場、私に預けてくんないかなと思って」 妹紅の手には、先日も使った焼印があった。 慧音は少し悩み、 「ふむ、分かった。任せる」 「さんきゅー」 笑って答え、妹紅は手の平に炎を点し、それで焼印を炙っていく。 「ゆ!」 事態をいち早く察知したれいむが、皆を守るように前に出た。 「やめてね! みんなをいじめないでね! やるなられいむだけにして!」 「だめだ」 にべもなく妹紅は答えた。 「『悪いことをしたやつは痛い目にあう』。あのまりさ達を見たんなら、それは分かるだろう。 お前達は、悪いことをやろうとした。しかも悪いと分かっていた上でだ。 まぁ結果的には未遂だし、同情の余地もあるけど……それでも、けじめは必要だ。分かるか?」 「ゆっ……」 れいむは黙りこくった。妹紅の言い分を理解してしまったからだろう。 他のゆっくり達も、どこか神妙な雰囲気で、動きを止めた。恐怖から身を震わせてはいたが。 「じゃあ焼くぞ」 「ぶぎっ……!」 焼印が押し付けられ、れいむは迸りそうになった悲鳴を飲み込んだ。 ここで無様に助けを乞えば、自分達は本当にあのまりさ達と同じ、薄汚い泥棒になってしまうと思った。 他のゆっくりも、そんなれいむを見て、一言も漏らさずに耐え切った。 「んー、結構根性あるな」 全てのゆっくりに焼印を押し終えた妹紅は、焼印を置くと、れいむの前で身を屈めた。 「ゆ゛っ!」 れいむは恐怖から身を竦ませた。 あのまりさ達は、焼印と一緒に足も焼かれていた。自分達も同じ目に遭うのだ。 だが妹紅が口にした言葉は、ゆっくり達にとって思いがけないものだった。 「森の西側に岩場があるのを知っているか?」 「……ゆ?」 「お前達の住んでるところから、ちょうど太陽の沈む方向にある岩場だ。知ってるか?」 何故そんなことを今聞いてくるのか、れいむにはさっぱり分からなかったが、とりあえず答えた。 「ゆ! それならしってるよ! れみりゃがすんでてあぶないところだよ!」 「ああ、そうらしいな。まぁ私は近寄ったことないんだけど。 で、これも人から聞いた話でしかないんだが、その岩場を抜けたところに、また別の薄暗い森があるんだとさ。 日は当たらんしじめじめしてるが、食べ物は豊富だし、人も滅多に入ってこないし、危険な野生動物もいないんだって。 そこでなら、わざわざ人里を襲わなくても暮らしていけるんじゃないか?」 「ゆぅ……それ、ほんと?」 訝しげにれいむは妹紅を見た。妹紅は肩を竦めてみせる。 「さてね、私も行ったことはないからな。けどいい年した樵の話だし、そこそこ信憑性はあるだろ。 ま、お前達の足でも、朝早くから行けばれみりゃが目覚める前に岩場は抜けられるんじゃないか?」 「むっきゅ、でもわたしたちにはきずついたなかまが……」 「そんなことは知らんよ」 妹紅はゆっくりと立ち上がり、細めた目でれいむ達を見下ろした。 「お前達の、誰が旅立ち、誰が残り、誰を連れて行くのか。そんなことは、私の知ったことじゃあない。お前達が選ぶことだ」 そこまで言って、妹紅はひらひらと手を振った。 「さぁさぁ、もう帰りな。足は焼かないでおいてやるから。 ただ、次にその焼印つけたゆっくりを見かけたら殺すってところは変わらないからな。 もう里には来るな。それだけ理解したら、帰れ」 ゆっくり達はしばらく迷っていたようであったが、やがて一匹また一匹と、森のほうに跳ねていった。 最後にリーダーれいむが振り返り、何かを言った。聞き取れなかったが、その口の動きは「ありがとう」と言っているように見えた。 「見事な裁きであった」 慧音が嬉しそうに頷いた。妹紅は途端に気恥ずかしくなって、顔を赤くする。 「裁きだなんて、そんなこと軽々言ってたらあの閻魔様に怒られちまうよ。私はただやりたいようにやっただけだからさ」 「では良い判断だった、ということにしておこう。あのゆっくり達ならば、もう人里に来ることはあるまい。 ……それにしても、全てのゆっくりがああだったら、もっと私達もゆっくりできるのだがなぁ」 「いやまったく」 妹紅だけでなく、農夫達も一様に頷いた。 多分、全員の脳裏には、先日のあの憎たらしいまりさ達が浮かんでいることだろう。 「…………」 「けーね?」 「ん、いや、なんでもない。──それでは、撤収!」 その翌日から、森の中でゆっくりの姿を見かけることはなかった。 あとがき 長い。 前回(ゆっくり実験室・十面鬼編)があまりにもあれだったので、真面目に書こうとした結果がこれだよ! あと焼き土下座とか言いながら、焼いてるの最初だけだし。土下座してないし。 続きも早いうちに仕上げようと思います。長くなりすぎない程度に。 ゲスなまりさもきれいなまりさも、どれも良いものであります。 磨けば磨くほどに光る素材。それがまりさなのです、きっと。 今までに書いたもの ゆっくり実験室? ゆっくり実験室・十面鬼編 続く このSSに感想を付ける
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禍々しきもの-バイド 放棄された土星基地グリース内に棲みついたと思われるバイドの調査・破壊に向かう途中、艦隊の前方からバイド反応があった。 モニターに映し出されたバイドの群れを確認したが、本部から調査命令が出ているAクラスバイドではないようだ。 それにしても・・・私は、禍々しいバイドの姿を見て・・・ +特に何も思わなかった 特に何も思わなかった。奴らを攻撃し、撃破する。それだけだ。 +反射的にバイドを攻撃したくなった 反射的にバイドを攻撃したくなった。 この衝動は抑えることができないように思えた。 +思わず目をそむけた 思わず目をそむけた。 直視していると自分までもが忌まわしい存在のように感じた。 +バイドとは一体何だろうと考えた バイドとは一体何だろうと考えた。 しかし答えは出なかった。 超攻撃的な未知の生命体。 それ以上でもそれ以下でもなかった。 戦闘準備が整ったとの報告を受けた。 これよりバイドの群れに攻撃をしかける。 ⇒はじめる 土星周辺でバイドに敗北 バイドの群れに敗北した。 一旦退却し、態勢を立て直す。 敗北の原因を分析し、次に活かさねばならない。 ⇒帰還する 土星周辺でバイドを撃退 バイドの群れを撃退した。 この宙域からバイド反応が消えた。 土星基地グリーズ内に棲みついているAクラスバイドの調査・破壊に向かう。 私は徐々に近づく土星を見ながらバイドのことを考えていた。 +バイドに意思はあるのだろうか? バイドに意思はあるのだろうか? あるとすれば、なぜ群れたり、人類を襲うのだろう・・・? +バイドは感傷にひたるのだろうか? バイドは感傷にひたるのだろうか? 土星の衛星軌道上に浮かぶ 廃墟と化した施設の中で、 何を感じているのだろうか・・・? +バイドのことなど考えたくないな・・・ バイドのことなど考えたくないな・・・。 その存在自体を ずっと知らずにいたかった。 私はバイドについて考えた後、前回のミッション終了後から抱いているグランゼーラに対する疑問点を整理してみた。 要塞ゲイルロズを陥落させたことで、グランゼーラは中核となる軍事拠点を失った。 これで地球連合軍への抵抗の手段が弱体化したはずだが、休戦を持ちかける訳でもなさそうだ。 彼らは何を狙っているんだろうか? 私はグランゼーラについての思考をそこで打ち切り、次のミッションに集中することにした。 ⇒帰還する 前ミッション→No.12要塞ゲイルロズ攻略作戦(地)_航海日誌 次ミッション→No.14土星の生ける悪夢(地)_航海日誌
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直接的な虐待はありません 愛でられたゆっくりについてはまったく知りません ドスまりさが出ます ちょろっとあにゃる ここは加工所にあるゆっくり養殖場、ここでは名の通りゆっくりを養殖しそれを実験等に使っている。 ここで生まれてくるゆっくりは四種、れいむ、まりさ、ぱちゅにありす。どれも植物型にんっしんで生まれてくる 食用にされる事は無く、ドスのいる群れゆっくりとしてなるべく野生に近く育てられる。 必要に応じ赤ゆっくり、子ゆっくり、時には成体ゆっくりを繁殖飼育させていた。 そんなある日いつものようにゆっくり収穫作業をしていた加工所の職員は思った。 (ここで育つゆっくりや野性ゆっくりはほとんどがゆっくり出来ずに死んでいく。愛でられた飼いゆっくりは人の手でゆっくりさせられたものだし、野生に近い状態で最後の最後までゆっくりさせ続けたらどうなるのか?) 思い立ったが吉日、職員は上司に掛け合いまだ実の状態の赤れいむをそれはそれはゆっくりと育てる事にした。 「ゆっきゅりちていってね!」 「「ゆー!!この赤ちゃんれいむはとってもきれいおかざりをしてるよ!」」 この赤れいむは生まれた瞬間からとてもゆっくりしていた。 ここでは固体識別のため、実の状態からそれぞれの飾りにタグが付けられている。職員がれいむのそれを特別綺麗なものにしたので 大好きな母れいむと父まりさがこの特別なれいむの誕生を一番喜んでくれたのだ。 れいむは五匹姉妹の真ん中、姉も妹もとっても褒めてくれた。 赤れいむはとてもゆっくりしていた。 おかーさんは初めてのご飯のときれいむにだけ口移しでくれた。 おとーさんはれいむに一番長くすーりすーりしてくれた。 皆と一緒にドスにあいさつしに行ったときドスと補佐役のぱちゅりーは群れで生まれた赤ちゃんの中で一番気に入ってくれた。 この赤れいむが子れいむになるときにはとてもゆっくり出来る友達が出来た。 狩りが得意なまりさ、れいむもびっくりするほど綺麗で上品なありす、おとーさんおかーさんより物知りなぱちゅりー。 いっつも四匹で遊んでいた、時々群れの広場から離れて冒険したときは必ずあまあまさんを見つけた。 れいむに嫉妬しいじめるゆっくりは何故か次の日になると居なくなっていた。 れいむが成体近くになる頃、まりさとぱちゅは次のドスと補佐役と言われるほどになった。 友達がそれ程になるのはれいむにとっても嬉しかったし自慢になったけれど とっても綺麗で皆に優しいありすにけっこんしましょうと言われた事がれいむにとって一番だった。 おとーさんおかーさんが居なくなった時、群れの子供や赤ちゃんが突然消えたとき、ドスやぱちゅが引退すると言ったとき とても悲しかったけど、その都度ありすやドスとなったまりさ、たくさんの言葉で慰めてくれたぱちゅやありすと育てた子供達がいたおかげで立ち直れた。 それかられいむはとてもとてもゆっくりと過ごした・・・ そしてれいむにとって最後の日 その日は群れ総出でれいむの最後を見守った。 「ゆぅ…れいむはもうたくさんゆっくりできたよ…みんなのおかげだよ」 「でいぶうううう!ありずをおいてかないでええええ!!」 「おがーざあああんゆっぐりじでよおおおおお!!!」 「むきゅ…ありすにこどもたち、かなしんじゃだめ。れいむをみて、いまとってもゆっくりしているわ、これはゆー往生といってとくべつなものなのよ」 「ゆー往生?ぱちゅ!ドスにそれをおしえてね!」 「とてもゆっくりしたゆっくりだけがたどりつけるさいごのことよ、れいむもみんなもゆっくりできるの」 「でもれいむはゆっくりしてないよ!れいむ!ゆっくりして!」 「ゆ…こどもたち…ゆっくりしたおとなになってね。まりさにぱちゅ、これからも皆をゆっくりさせてね」 「ありす、れいむひとりになるのがこわいよ・・・さみしい・・・よ」 「「「「ゆううううう!!!れいむうううううう!!!!」」」 「ご、こどもだぢ!おがあざんにずーりずーりじまじょうね!!」 「おがあざん!ずーりずーり!だいずぎだよおおおお!!!」 ゆー往生って何だ、それより何も起きないのかとモニタ越しに見ていた職員が思ったその瞬間 「ありずはでいぶとずっといっいっいっんほおおおおおお!」 突然発情したかと思えばありすの目、口、あにゃるからカスタードがゆっくり目で見て致死量だと分かるほど漏れ出す。 「ゆ、ゆぎゃああああおどおざああああゆっぐ、ぐるじ・・・ゆっゆっあぶっゆ゙っ!」 ありすの異変に駆け寄ろうとした子供達はなんと爆裂してしまった 「ぱちゅ!こ、これはいったいどういうこと!?ありすとこどもたちががしんじゃったよ!」 「むきゅうううううん!わからないわ!なんでごっ!!ぶっ・・・ぶぎゅう!」 続いてぱちゅりーも、そしてまわりで見ていたゆっくりたちも 「ゆー!どうなっでぐっぐぅ・・・」 「おかーしゃんどうちたの?ゆっ!ゆううううう・・・」 「ゆうう・・・こわいのけどなんだかすっきっきっきゆ゙っゆ゙っ」 「ま、まりさはとにかくにげゆばっっ!!」 「ごんなのどがいばじゃなびっ!!」 「むきゅっきゅっゆっゆっゆっ」 「みっみんなゆっくりしてね!ぱちゅはおへんじしてね!ドスどうすればいいかわかんないよ!」 どういうことだ、ありすの死を皮切りにほとんどのゆっくりが死んでいく。 ゆー往生、今わの際にゆっくりが餡の底からゆっくり出来たと思って初めて起こる・・・だっけか。 うーん、恐らくそれを見てゆっくりしたら中身を漏らして昇天、ゆっくりできなかったら爆発。 多少取り乱したが常々冷静にと言われていたドスと無関心だったゆっくりだけ免れたのか こいつらはとことんゆっくりできない運命にあるんだな・・・ 地獄を見た後さっさと帰ってしまったゆっくり、オロオロしているドス、男の心配を他所に れいむはとてもとてもゆっくりしていた。
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『れいむに募金してまりさに募金しない話』 6KB 小ネタ 自業自得 誤解 飾り 日常模様 現代 25作目ましてこんにちは、キャンセルあきです ※特定団体を貶す意図はありません。貶したいのはゆっくりだけです。 れいむに募金してまりさに募金しない話 キャンセルあき 「お、おにいさん、れいむはれいむだよ、ゆっくりしていってね!」 お兄さんが道を歩いていると、足下に成体のれいむがすり寄ってきた。 いかにも野良らしく、青カビが生えるに任せたままの肌は油汚れに塗れ、ほつれた髪にはガムの包み紙が 付着しているが、栄養状態の悪い野良らしからぬ肥満体だ。 まりさ種の黒い三角帽子を口に咥えて引きずっている。 「はい、お兄さんはお兄さんです。ゆっくりしていって下さいね。 ところで、れいむがゆっくりできるゆっくりなら、私に向って"のーびのーび"を――」 「――ゆっくりしたおにいさん、れいむにゆっくり『ぼきん』をしてね!」 お兄さんの台詞を言わせなかったれいむは、物乞いであるらしい。 「れいむに……募金? 本当にそれで良いのですか?」 「ゆ……! それでいいんだよ! おにいさんはゆっくりしたおにいさんだね!」 「死臭の付いていないお帽子を何処から持って来たのかは、あえて聞かないことにしますが。 このお帽子を使って、れいむに対して、私が募金をすれば良いのでしょうか?」 「ゆん! そうだよ、ゆっくりしないで、きゃっしゅさんをたくさん『ぼきん』してね!」 物好きな愛で派がれいむにほだされたか、相手するのを煩わしく感じた人が小銭を入れたか、 あるいはれいむがドブをさらって拾い集めたか、或いは他ゆんから奪ったか。 恐らくはその全てと、れいむの話し相手に虐待鬼威惨が居なかった幸運は、 数百円程度の硬貨となって、黒く萎びた三角帽子に輝いている。 「一応聞いておきますが、人間に募金をしてもらう意味は、ちゃんと分かって言ってますよね? もしもそのあたりをはき違えていたら、残念ですがれいむは――」 お兄さんは、道の向こうのゴミ集積所を指さした。 「――あそこに入って貰わなければなりませんよ?」 指先は、野良ゆっくり用のゴミ箱を差して止まる。 多くの同胞が人間の手で放り込まれたのを知っているのか、れいむがびくりと体を震わせる。 「ゆ!? れいむ、とうぜん『ぼきん』のいみぐらいゆっくりりかいしてるよ、おにいさん! れいむは、ゆっくりしたにんげんさんと、はこをもったにんげんさんをみたんだよ!」 駅前でれいむは、ゆっくりした人間が、『困っている人間達のため』と言って、 箱の中にお金を入れているという、衝撃の光景を目撃したのだ。 「れいむは、だーりんのまりさがえいえんにゆっくりしちゃったんだよ! しんぐるまざーで、とーってもこまってるんだよ! だからおにいさんにぼきんしてほしいんだよ!」 「私がれいむに募金したら、れいむは必ず協力してくれるのですか?」 「しつこいよ、れいむはおにいさんに『ぼきん』をしてほしいんだよおおおぉぉぉ! もちろん、れいむはきょうりょくするにきまってるでしょおおおぉぉぉ!? あ、れいむいがいには、ぜったいにぼきんしちゃだめだよ、ゆっくりりかいしてね!」 「分かりました――」お兄さんは、一円玉と五円玉ばかりのお帽子を拾い上げ、 「――では、これにお金を入れて下さい? 良いですね、れいむ?」 と、れいむに三角帽子を向けた。 「――ゆ?」 「ゆ? ではありません。 私はれいむに募金しているので、れいむ、早く、これにキャッシュさんを入れて下さい」 「ゆ? ゆや? ゆゆ~? おっかしいよ、おにいさんが、と~ってもへんなことをいっているよ。 なんだか、ゆっくりしてないよ~?」 頭上に沢山のクエスチョン・マークを浮かべて、れいむは、お兄さんが大量のきゃっしゅさんを、 まりさのお帽子に入れ、れいむに手渡してくれるのを待っている。 叶わぬ願いを待っている。 「何もおかしな事は言っていませんよ。 このお帽子を使って、れいむ"だけ"に、募金を行って欲しかったのですよね?」 「募金とは――」お兄さんは、手にした帽子の中の小銭を見せて、れいむに言った。 「――"金(かね)を募(つのる)"と書くのです。"お金を集める"という意味なのです。 他人から誰かのためにお金……きゃっしゅさんを貰いたい時は、"募金して下さい"ではなく、 "寄付して下さい"と、言うのです」 「…………ゆ?」 「と、言うわけで、れいむ、私が貴方に"募金"するので、れいむは私に"寄付”して下さい」 「ゆ、うそだよ、れいむそんなこといっていないよ」 「私が募金をしたらなば、絶対に協力してくれるのですよね?」 「おにいさんがきゃっしゅさんをくれるんでしょ、"ぼきん"って、そういうゆっくりしたものでしょ?」 「ちなみに、れいむが協力してくれないのでしたら、先程聞いた通り――」 お兄さんは、ゴミ集積所のゆっくりゴミ箱を見た。 「――あそこに入って貰いますよ?」 「ゆ…………ゆわあああああぁあぁぁぁぁぁぁぁ!」 五分後、洗濯機のように荒れるゆっくりゴミ箱の蓋をそっと閉じたお兄さんは、その場で手の埃を払った。 「お、おにいさん、まりさはまりさなのぜ。ちょっとゆっくりきいてほしいのぜ?」 と、ゴミ袋の影から、アルミ鍋を被ったまりさが、お兄さんの手にしたお帽子を見上げている。 「む、むりはいわないのぜ? でも、そのまりさのおぼうしはとってもゆっくりしてるのぜ。 できれば――ほんとうにむりはいわないのぜ、できれば、まりさ、そのおぼうしをほしいなって……」 「お兄さんはお兄さんです、ゆっくりしていって下さいね。 ところでまりさがゆっくりできるゆっくりなら、私に向ってのーびのーびを、してくれますか?」 「ゆ? まりさはゆっくりしてるゆっくりだよ! のーびのーび――ゆ?」 お兄さんの胸元まで伸び上がったまりさの頭に、萎びた黒帽子が乗せられる。 アルミ鍋は、代わりにお兄さんの手の中だ。 「個人的には、アルミ鍋の方が役に立つと思いますよ?」 「ゆ、ゆ~ゆ~! まりさのおぼうし、ゆっくり、ゆっくりしてるよおおおお!」 「鍋と、お帽子の中のきゃっしゅさんは私が貰いますね。やっぱり、寄付より物々交換の方が好みです」 そう言って、お兄さんは喜ぶまりさを背に歩み去った。 歩いた調子で駅前にさしかかると、真っ白な募金箱を持ち、旗を掲げた数人の集団が、 助け合い運動と題した募金活動を行っている。 その集団のリーダー格らしき人物に向って、お兄さんは数枚の硬貨を握りしめたまま近づき、 募金箱の前で止まって口を開いた。 「貴方、ここらへんでは見ない顔ですね。○○の会という名前も聞いた事が無い。 この駅前広場は、利用するのに町役場の許可が必要だったはずですが、許可証はあるんですか? 集めた義援金は、何処の収納機関に納めて、何に使われ、報告は何処で見ることができるんでしょうか?」 ――募金集団は逃げ出した。 手持ちぶさたになったお兄さんは、近くの自販機で飲み物を買い、 「ゆ! そこのじじい! かわいいまりささまにそのあまあまを"きふ"するのぜ! "きふ"はとってもゆっくりできるのぜ!」 「ええ、どうぞ」 飛び出してきたまりさに、手の中の『"クソ苦い" コーヒー』をふりかけた。 「こ、こりぇどくはいっちぇりゅううううううううぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅ!」 おわり。 キャンセルあきの過去作品はwikiに収録されています http //www26.atwiki.jp/ankoss/pages/869.html 感想はこちらにどうぞ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1280375526/l50
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年がら年中ゆっくりを虐待している俺だが、たまには生産的なこともする。 「ゆっくりしていってね!」 目の前には、5匹の赤れいむ。 1週間前に、近所の森にいた茎を生やしたゆっくりから毟り取ってきたものだ。 親ゆっくりは引っこ抜くついでに生ゴミにしておいた。 「おう、お前ら行くぞ」 バスケットに5匹の赤れいむを入れて、俺は家を出た。 向かう先は近所の森。 そこにターゲットのゆっくりがいるのだ。 そのターゲットのためだけに、俺はこの赤れいむ5匹を育てた。 「ゆっくりー!」 見よ。このゆっくりした赤れいむを。 俺が必死こいて育て上げた、もとい調教した結果を。 ゆっくちなどと糞ガキ丸出しのセリフなど言わない。 ぷりぷりした体はやわらかく、弾力に富み、なめらかだ。 指で触れると、まるでパウダーでもまぶしているかのようにススーっと滑る。 瞳はキランキランに輝き、髪の毛は美しいキューティクルを・・・ と、まあ要するに超ゆっくりしてる。 近所のゆっくりパチュリーに見せたら、あまりのゆっくりっぷりに興奮したのか、クリームを吐き散らして死んだ。 エサは虫やら草なのだが、そこに各種サプリメントを振りかけまくったので舌が肥えることなくムッチリしたのだ。 「今日は、近所のおねーさんに会わせてやろう。社会見学ってヤツだな。いい子にするんだぞ?」 近所のおねーさんというのは、ターゲットであるゆっくり霊夢のこと。 成体で、6匹家族だ。 れいむと5匹の生後1週間の赤ゆっくり。 赤ゆっくりは全部まりさ種だ。 なぜなら今回のネタのために、俺が隙を見てれいむ種だけ皆殺しにした。 伴侶のまりさも邪魔だったので、狩りに出ていた時に生ゴミに出した。 そうこうしている間に、ターゲットの住む洞窟についた。 とりあえず定番のセリフでいこう。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ?ゆっくりしていってね!」 「ゆっきゅり!」 「ゆっくち!」 「ゆっくい!」 「ゆっくてぃ!」 「ゆっくぴ!」 1匹の親れいむと、5匹の糞カスみたいな赤まりさが返事に応えてくれた。 さっそく本題に入る。 「れいむよ、かくかくしかじかだ」 「ゆっくりりかいしたよ!」 1行で理解してくれて助かる。 3日ほど俺の赤れいむを預かってほしいという話である。 話の途中で嫌な顔をしたが、赤れいむを見せたらすぐに笑顔になった。 野生の親れいむにとって、俺の赤れいむは最高にゆっくりしている存在だ。 つい一緒にゆっくりしたくなったのだろう。 夏なので腐るほど虫がいるので食糧にも困るまい。 「そんじゃ、3日後に引き取りにくるから」 「ゆっくりさよならだよ」 俺は赤れいむ5匹を巣に入れてから、家に帰った。 「おにいさんのおチビちゃんたち、れいむのおうちでゆっくりしていってね」 「ゆっくちちていっちぇね!」 「まりしゃとあしょびたかったらクッキーちょうだいにぇ!」!」 「まりしゃたちとゆっくちちたかったらごはんちょーらいね!」 「まりしゃのほうがゆっくちちてるね!」 「にんげんしゃんのごはんをちょーらいね!」 小汚い洞窟に残された赤れいむに、家族が歓迎を示す。 洞窟同様、薄汚い家族に赤れいむは気分が悪くなったが、男の躾がよかったのでそれには触れなかった。 「ゆっくりするね!」 「れいむおねーさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりおせわになるよ!」 「いっしょにゆっくりしようね!」 「ゆっくりしていってね!」 その言葉に、親れいむは「ゆっ」と声を上げた。 「ゆゆ。おチビちゃんたちは、もうおとなのことばがしゃべれるんだね!すごくゆっくりしてるよ!」 自分の子供、赤まりさはお子様な言葉遣いだというのに。 なんてゆっくりした赤ちゃんなのだろう。 親れいむは感動した。 そして、3日の社会見学が始まった。 それは親れいむにとっては感動の連続であった。 朝。 いつもは赤まりさを無理やり起こしていた。 きっと赤れいむもそうなるのだろう。 そう思っていたが、なんと赤れいむは親れいむよりも早く起床していた。 「ゆっくりおきたよ!」 なんとハツラツな笑顔だろう。 親れいむが大切にしている朝一番のすりすりは、赤れいむと行った。 「れいむもかりにいくよ!」 「おねーさんといっしょにいくよ!」 朝食後、そんなことを赤れいむは言った。 赤ゆっくりが狩りをするなど聞いた事もなかった親れいむは驚く。 「ゆ・・・!?おチビちゃんたちは、もうかりができるの?」 赤れいむは、生まれたときから狩りをさせられていた。 男の躾は凄まじく、狩りに出ると親れいむよりも多くの食糧を集めた。 あまりの素晴らしさに、親れいむは赤れいむにたっぷりぺーろぺろをしてあげた。 ちなみに5匹の赤まりさは巣穴で呑気に寝ていた。 帰り道、川に差し掛かると赤れいむはそこで立ち止まった。 「ゆ?どうしたの、おチビちゃん?」 「れいむ、すっきりするよ」 「れいむも!」 「すっきりはゆっくりできるよ」 「まいにちすっきりするんだよ!」 「すっきりしたいよ!」 言うが早いか、川の水で体を洗い始める赤れいむ5匹。 互いに髪をなめ合ったり、すりすりをして皮の汚れを落としている。 「す、すごいよ!!おチビちゃんはすごくゆっくりしてるよ!!」 ゆっくりにとって水浴びは大切なのだ。 耐性があるとはいえ、あまりにも汚いとカビだらけになるから。 だが、水に弱いゆっくりにとって水浴びはあまり好きになれないもの。 赤まりさは水浴びが大嫌いだった。 それなのに赤れいむは、こんなにも身ぎれいにすることを喜んでいる。 親れいむは赤まりさの気分の悪くなるような体臭を思い出していた。 「むーちゃむちゃ!ちゃーわせー!」 「うっめ!むっちゃうみぇ!!」 「むちゃべっ!むぢゃっ!ゆひっ!!」 「むっちゃむちゃ!!」 「うみぇっ!!むっちゃうみゅえ!!!」 「しあわせー」 「とってもゆっくりできるごはんだね」 「ゆっくりしておいしいね」 「れいむもしあわせー」 「みんなでごはんをたべるとゆっくりできるね」 「・・・ゆぅ」 3日目の夜。 晩飯をたべながら、親れいむは深く息を吐いた。 赤まりさの食べ方の汚いこと汚いこと。 元飼いゆっくりの親れいむには見苦しいことこの上ない。 ついつい甘やかして育ててしまったので、自己責任といえばそれで終わりなのだが。 それに比べてどうだ。 赤れいむの実にゆっくりとしたご飯の食べ方は。 親れいむは頭を抱えた。全身が頭なのは気にしてはいけない。 「ゆ、おチビちゃん。おくちにあんよがついてるよ。ぺーろぺろ」 親れいむは赤れいむの口についた、コガネムシの足の切れはしを舐めとった。 それを見た赤まりさが、悔しそうな顔をして親れいむに顔を向ける。 「おかーしゃん!!まりしゃもいっぱいついちぇるよ!!ぺーろぺろちてね!!」 「ゆっ!まりしゃもだよ!!」 「まりしゃにもぺーりょぺりょちてね!!」 「れーみゅにだけぺーろぺろはじゅるいよ!」 「はやくぺーろぺろちてよ!」 中には、エサの中にわざと顔を突っ込むボケもいた。 「ゆぅ・・・」 明日、お兄さんに赤れいむを引き渡したらこのゴミクズと暮らすのか。 そう思うだけで親れいむは空しくなった。 数日前まで、あんなに可愛いと思っていた赤まりさが今ではただの不良債権に感じる。 それを赤まりさもなんとなく感じているようで、最近では親れいむに甘えることが多い。 もっとも、それがウザさを強調して親れいむは更に赤まりさが嫌いになっていたのだ。 「ゆぅ・・・れいむは、おチビちゃんたちとはなれたくないよ・・・」 こんなにゆっくりした赤ちゃんと離れたくない。 自分と同じ種の、こんなにゆっくりした赤ちゃんと離れたくない。 親れいむは切実にそう思っていた。 赤まりさとだけの生活に戻りたくなかった。 伴侶が死んで、だいぶ経つ。 もう赤まりさへの最後の未練、死んだ伴侶の思い出もほとんど消えていた。 哀れ餡子脳。 翌日。 赤れいむの引き渡しは滞りなく行われた。 早朝に現れた男は、親れいむの話を聞きもせず、さっさか赤れいむを回収していった。 この赤れいむ達は、これからも似たような系統のネタの仕込みに利用されることになる。 「ゆぅ・・・・」 巣に残った親れいむはため息をついていた。 「ゆっ♪」 「ゆゆー!こりぇでおかーしゃんはまりしゃたちだけのものだよ!」 「これでゆっくちできりゅね!」 「ちゃーわせー!」 「ゆ♪」 逆に、親を赤れいむから奪い返した気分の赤まりさはニコニコだ。 すぐにこの笑顔が曇ることになるのだが。 さらに翌日。 赤まりさは枝でぶっ叩かれて起こされた。 「ゆっくりおきてね!!もうあさなんだよ!!」 「ゆげっ!!」 「ゆぐっ!?」 「ゆぎゅっ!?」 「ゆぎゅぅ・・・」 「ゆぎゃっ!!」 赤まりさが起きると、そこにはプリプリと怒った親れいむが。 びくびくしながら、赤まりさは親れいむの次のセリフを待った。 「あのおチビちゃんたちはちゃんとおきてたよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 テキトーに返事をする赤まりさ達。 あんないなくなった奴なんかどうでもいい。 赤まりさはそう思っていた。 それよりも重要なものがある。 朝一番のすりすりだ。 これはとてもゆっくりできる。 一日を生きる活力となるすりすりなのだ。 「おかーしゃん、まりしゃはんしぇいしたから、すーりすりをしてね!」 「まりしゃにもおねが 「うるさいよっ!おねぼうをするゆっくりできないこにはすーりすりはなしだよっ!!」 そして体当たりをされた。 ある意味、頬のふれあいである。 さらに数時間後。 親れいむは狩りの準備を始めた。 あれから何かと赤れいむと比較されっぱだった赤まりさは、ようやくゆっくりできそうだと喜んでいた。 が。 「れいむのおチビちゃん。きょうからはいっしょにかりにいくよ!」 赤まりさは一瞬、真白になった。 何を言っているんだコイツは、的な感じで。 「どぼじでしょんにゃこちょいうのおぉお!?」 「まりしゃはゆっぐちぢだいよぉお!!」 「あかぢゃんはゆっぐりずるのがじごどでじょおおぉお!?」 「ゆっぐりざぜでよぉお!!」 「ごんなんじゃゆっぐぢできにゃいよぉおお!!」 「だまってね!あのゆっくりしたほうのおチビちゃんたちは、ちゃーんとかりができたよ!」 ゆっくりしてない方のおチビちゃん5匹は泣きながら抗議をした。 自分達はまだゆっくりしなくちゃいけないのだと。 だがそれに返ってきたのは言葉ではなく、体当たりと枝だった。 「ゆべ・・・」 「ゆぼ・・・わがだよ・・・」 「がりに・・・いぎまぢゅ・・・・」 「・・・」 「・・・」 「まったく、ぜんぜんごはんがとれなかったね。ほんとうにゆっくりしてないおチビちゃんだよ!」 初狩りで、しかも赤ゆっくりが取れる食糧などたかがしれている。 5匹で集めた食糧は、小指の先ほどの量だった。 「それがおまえたちのごはんだよ!ゆっくりりかいしてね!!」 「どぼじじぇ・・・」 「おがーじゃ・・・」 「もっど・・・ゆっぐぢ・・・」 「おにゃか・・・しゅいた・・・・」 「ごんなんじゃ・・・ゆっぐぢ・・・」 「ごはんのたべかたもきたないし、ちょうどよかったね!これでれいむはゆっくりできるよ!」 その後、赤まりさは無理やり水浴びをさせられた。 体力のなくなっていた3匹がそのまま川に流れていき、残り2匹はその後の体罰で死んだ。 「ゆゅー・・・」 親れいむは悩んでいた。 それは群れの赤ゆっくりが、全然ゆっくりしていないことだ。 バカ丸出しの言葉遣い、臭い体、狩りもできないタダメシ食らいのごく潰し、そんなダメなものばかり。 「こうなったら、みんなでしつけしようね!」 この前、赤れいむ5匹を群れのみんなに紹介したら、1匹残らず感動していた。 ならば、群れの子供達がゆっくりしていないことは簡単に理解できるだろう。 この群れをよりゆっくりした群れにするため・・・ れいむは固い意思と共に、リーダーの下へと跳ねて行った。 おわり。
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【花】 春。 あたたかな風が新たな生命の芽吹きを促す頃、れいむとまりさは恋に落ちた。 ――――― 群れ一番の美ゆっくりと謳われるれいむ。群れを統率する長の長男であるまりさ。二匹は、お互いの両親の勧めで見合いをした。 互いに見知らぬ仲ではなかったが、面と向かって話をしたことはない。 見合いの席には、淡い桃色の花びらで着飾ったれいむと、勇壮な毛皮の衣をまとったまりさが緊張の面持ちで現れた。 面をあげ、数瞬、互いに見つめ合う。 虹色に輝くときめきの花が、二匹の心に咲き誇った。夫婦の絆を手繰り込み、愛すべき者を見つけたのだった。 ――――― れいむは良い妻となり、まりさは良き夫となった。困難も苦悩も悲哀も、二匹の仲を割くに足りるものではなかった。睦み合い、やがてれいむは腹に児を宿した。 まりさは以前にも増して食料の調達に精を出し、れいむは生まれ来る我が子に教育するべき事柄を考えていた。まりさは、気の早いことだと苦笑しながら、溢れる幸福感に身をふるわせていた。 ――――― 夏が過ぎ、鳴り虫の合唱が秋の涼しげな風に乗って運ばれゆく頃、れいむは児を出産した。れいむによく似た美しく愛らしい赤れいむと、まりさに似た強悍で目つきの鋭い赤まりさ。両親は、大切な我が子の未来に幸運の光あれよと願った。 ――――― 花は、その盛りを永遠に保つことはできぬ。いわんや、か弱き小動物の終わらざる日常をば、長らえることも叶わず。 ――――― 積み上げるは難く、崩し去るは易く。歳老いたれいむを棄てたまりさは流れ者のありすと懇ろになり、二匹の子は食料の分配に因るいがみ合いの末に、群れを引き込んだ争いを起こし、その渦中にあって死んだ。 まりさはありすに家財を奪われ、前途に闇を見たれいむは川に身を投げた。 ――――― 冬が来た。 もはや寄り添うべき温もりはなく、庇護を求める手合いもいない。 思い返してみれば、なんと儚い花の夢。散るが悲しく美しくあらば、いっそ川面に波紋を立てん。 清くささやかに流れる水鏡の向こうに、いつか見た虹色の大輪が咲き誇る。 桃色に包まれた伴侶の、淋しげな笑顔が見えた気がした。 完
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※駄文、稚拙な表現注意。 ※俺設定注意 ※すさまじいまでの希少種優遇あり。 ※絵本あきリスペクト箇所あり。 ※東方キャラとよく似た人物が出ますが関係はありません。 ※メス豚という言葉がゲシュタルト崩壊しています。 ある山のふもとの繁華街の近く。青々とした雑草のしげる平原にその群れはありました。 ごくごく普通の巣穴に、ゆっくりが赤、子ゆっくりあわせても30匹程のこれまたごくごく普通な規模の群れ。 ただひとうだけ他の群れとは違うことがあります。 この群れに住んでいるのはゆっくりてんこのみ。この群れはドMてんこの群れなのです。 「餡子ンペ09」あるてんこの一生 メスブタの群れ 作、長月 ゆっくりてんこ。 一部を除き、超が付くほどドMな希少種で、他のゆっくりが嫌う雑草、虐待おにいさん、加工所、れいぱーをこよなく愛すゆっくり。 あまりに他のゆっくりと違う価値観に「ゆっくりできないやつ」として群れから追放されたり、飼いゆっくりとしても「ドMすぎて気 持ち悪い」と捨てられることも多い種でもあります。 そんなてんこ達が集まって作ったコミュニティ。それがこのてんこの群れなのです。 「てんこってばめすぶたね。」 「あらてんこのおぼうしこそすてきなめすぶただわ。」 意味不明な会話をするてんこ達。しかしこれがてんこ種にとっては当たり前の会話なのです。 てんこにとって、めすぶた、とはゆっくりできるものや肯定的にとらえられるもの全てに使われるもので、極めて汎用性の高い言葉。 ドMてんこのゆ伝子レベルで組み込まれている、ゆっくりありすにとってのとかいはに当たる言葉といえます。 しかしこれはてんこの特性の一部にすぎません。 ここは群れにあるてんこの巣。この巣には胎生にんっしんっをして出産間近なてんこがいます。 今ここで群れに新たな仲間が加わろうとしているのです。 「がんばってね、てんこ。がんばってめすぶたなあかちゃんをうんでね。」 「おさもきてくれたよ。げんきなこぶたちゃんをうんでね。」 励まし続ける長てんこと父てんこ。子供が生まれそうと聞いて長てんこも来てくれました。 「ハアハア、だいじょうぶよ。このていどのしゅつさんぷれい、たえてみせるわ。」 そう答える妊婦てんこ。陣痛で痛いはずなのにやけに嬉しそうなのはきっと我が子が産まれるのが楽しみだからでしょう。そういうことにしておきなさい。 「うまれるぅううう!!!うわれるわぁああああああ!!!!」 いきみ続ける妊婦てんこ。そしてついにその時が訪れました。 すぽーん。 音をたてて妊婦てんこのまむまむから飛び出す赤てんこ。放物線を描いた後見事に着地に成功しました。 「ゆっきゅりいじめちぇっちぇね。」 「ゆっくりいじめてってね!!」 てんこ種特有のごあいさつを両親にする赤てんこ。それに両親がこたえます。 「ゆゆーん。かわいいめすぶたなこぶたちゃんだよ。」 「ほんとうにめすぶたそのものだわ。」 大喜びの両親と長てんこ。すぐさま赤てんこに駆け寄ります。ゆっくりの親愛行動であるすーりすりをするのかと思いきや。 「ゆっくりいじめられてねっ!!」 体当たりで赤てんこをふっとばす両親てんこ。赤てんこは狭い巣の中でピンボール状態で飛んでいきました。 実はこれ、虐められる楽しさを子供に伝える為の行為で、てんこ種だけに見られる誕生後の通過儀礼なのです。 「ゆゆーん。もっちょお、もっとてんきょをいじめちぇにぇえええ!!」 大喜びでもっとして欲しいとおねだりする赤てんこ。すっかりドMの波動に目覚めたようです。 「もちろんよ、おちびちゃん。あんこのずいまでいたぶってあげるからね。」 「めすぶたなおちびちゃんは、ぼろぞうきんになるまでひゃっはーしてあげるわ。」 そういって赤てんこへ体当たりの波状攻撃をかける両親てんこたち。どう見てもDVなのに全員笑顔なのはちょっと異様な光景です。 ゆっくりてんこは死ぬ寸前まで虐められたあと復活すると大きく耐久力がアップするのですが、その本能がさせるのでしょうか。 どちらにしても異常なまでのタフネスと回復力をほこるてんこだからできる行為です。 幸せそうなてんこ一家の声を聞きながらそっと立ち去る長てんこ。家族の団欒の邪魔をしてはいけないと思ったのです。 その後てんこ一家の巣穴からは家族の笑い声と衝突音がずっと絶えませんでした。 巣穴から出た長てんこは群れを巡回し始めました。長の仕事は群れの中のパトロールも入っているからです。 この群れは長老てんこ、長てんこ、幹部てんこというシステムで成り立っていて、長てんこと幹部てんこ数匹が実質的に群れを取り仕 切り、長老てんこはなにか重大な用件があるときのみ登場するようになっています。 群れのある草原と隣にある幻想町公園で思い思いにゆっくりしているてんこ達。基本的に雑草を食べることを好むてんこ達は食事はそ の辺の雑草を食べればいいので狩りをする必要がほとんどありません。一日の大半をドMプレイに費やしています。 あるものはお互いに体当たりしあったり、あるものは枝で突っつきあったり、あるものはメスブタな歌を歌ったりしています。 そんなてんこ達の写真を取ったり、あまあまをあげたりする町の人達。てんこはこの公園の名物なのです。 そんななか公園の湖に浮かぶゆっくりが一匹。水上まりさならぬ水上てんこです。 てんこのおぼうしは、まりさのものと違い浮かぶのには適していないのですが「死と隣り合わせのこのスリルがたまらない。」と一部 のてんこたちに根強い人気があります。 この水上まりさプレイ、一歩間違えば死ぬことになりますが、てんこ達はまったく気にしていません。 ドMに産まれ、ドMに生き、ドMに死ぬことこそがてんこのさだめ。 メスブタに逃走はない。退かぬ、媚びぬ、省みぬ。それがてんこのドM道。 自分達の信念の為なら死すらいとわないその姿勢は感動すら覚えます。ある意味で。 「ゆゆーん。おさ。きょうもめすぶたね。」 「あら、おばちゃん。ゆっくりいじめてってね。」 長てんこに声を掛けたこのゆっくりはおばちゃんてんこ。群れでは長老の次に高齢なてんこでおばちゃんの愛称で親しまれています。 「ふふっ、あのちょうろうにひろわれてきたおちびちゃんがこんなにりっぱなめすぶたになるなんてねぇ。」 「ゆぅ。おばちゃんたら。てんこだっていつまでもこぶたちゃんのままじゃないわ。」 長てんこは赤ゆっくりだった頃、両親をなくしています。 なんでも二匹で水上まりさプレイをしていた途中、突如現れた謎のシャチに乗ったお兄さんが「このメスブタ達をさらえとガイアが俺に囁いている」とさらっていったそうです。 おかげで姉妹もいない長てんこは一人ぼっち。幸い食料は他の大人てんこたちがくれるので飢えることはありませんでしたが寂しくてゆっくりできないことには変わりありません。 世界中の全てに放置プレイされているような孤独。幼い長てんこはいつも親子づれを見て寂しい思いをしました。 そんな長てんこを見かねて長老てんこは養子にしてくれたのです。 長てんこは思います。長老がいたから、長老が自分を放置プレイしなかったからこそ今の自分はある。 その後、長老てんこに長としての教育を施された長てんこはめきめきとリーダーとしての頭角を現し、半年前、当時長をしていていた てんこに代わり長に就任。 現在も我が子同然に育ててもらった恩を返すべく長として職務を遂行する毎日を過ごしています。 「ところでいつもこのへんであそんでるおちびちゃんたちは?きょうはいちどもみてないんだけど。」 「そういえばみないわねぇ。おさもしらないの?」 「まさかまたあそこにいったんじゃ・・・ちょっとつれもどしにいってくるわ。」 ポインと跳ねる長てんこ。行く先はてんこたちの群れがある場所から100メートルほど西にいった場所にある建物。 加工所です。 「うぎゃあああああ!!!じにだぐなぃいいいいいいいい!!!」 「だれかぁああああ!!!までぃささまをたすけるんだぜぇええええ!!!」 今日もゆっくりたちの悲痛な叫びがこだましています。ここは加工所。捕まえたゆっくりたちを処分すべく職員達がトラックから檻に入っているゆっくりを加工所のなかに運び入れている最中です。 それを羨望のまなざしで見つめる二匹の子ゆっくりたち。てんこの群れからぬけだした子てんこたちです。 「ゆゆーん。いいなあ、てんこもはいりたいわ・・・」 「でもてんこたちはいれてくれないよ・・・」 「ゆぅ・・・・」 ため息をつく子てんこ達。基本的に通常種を駆除する為にある加工所へは、希少種であるてんこは入れないのです。 ただでさえ愛護団体の抗議が激しい昨今、何もしていない希少種を殺しでもしたらそれだけで大問題。 ましてや観光スポットになりつつあるこのてんこ群れのゆっくりを駆除したらてんこファン達が暴動を起こしかねません。 「こらっ!!あなたたち!!」 その時子てんこ達の背後から大きな声がしました。おそるおそる振り返ると怒った長てんこが仁王立ち(?)していました。 「ここへきてはだめって、いつもいってるでしょ!!まったく。」 「ゆぅ・・・」 怒られてしょんぼりとする子てんこ達。 「ほらかえるわよ。ここにいたらにんげんさんたちのじゃまになるわ。」 「ゆぅ・・・でも・・・」 子てんこ達は名残惜しそうに加工所のほうをチラチラと見ています。 てんこ達にとって死ぬまで虐めてもらえるという加工所は究極のゆっくりプレイスであり理想郷。 そう簡単にあきらめきれるものではありません。 しょうがないなとため息をつく長てんこ。こうなれば最後の手段です。 「いうこときかないわるいこはめでおにいさんにさらわれちゃうわよ。」 「ゆっ!!めでおにいさん!?」 「そうよ。めすぶたでないわるいてんこはみんな、めでおにいさんにさらわれちゃうのよ。」 明らかに顔色が変わった子てんこたち。顔面蒼白でガクガクと震えています。 「そしていっしょうあまあましかたべられず、いたいいたいこともされないで、ママやパパにもあえないわ。ほらあのしげみのうしろにめでおにいさんがみているわ。わるいおちびちゃんたちをさらいにきたのよ。」 怯える子てんこ達に畳み掛けるように話し続ける長てんこ。当然しげみに愛でお兄さんなんて嘘っぱち。 愛でお兄さんを怖がるてんこ達の習性を利用した子ゆっくりの躾法です。 実際、愛でお兄さんが何も知らずにドMてんこを飼った所、ストレスで死んでしまった例はいくつもあります。 虐められず延々と愛でられ続ける生活にドMなてんこは耐えられなかったのです。 「ほーら、おにいさん。このめすぶたでないおちびちゃんたちをつれていってね。このこたちはおとなのいうことをきかないとってもわるいこたちなんだから。」 「ゆわーん。ごめんなしゃいい!!」 「てんこ、めすぶたになりますぅうう!!だからつれてかないでぇえええ!!!」 恐怖のあまりわんわんと泣き出す子てんこ達。どうやら薬が効きすぎたようです。 「おちびちゃんたちが、いいこぶたちゃんになったから、めでおにいさんはどっかいっちゃったわ。さあかえりましょう。」 「ゆぅ・・・ぐすぅ。」 子てんこ達をなだめながら帰り始める長てんこ達。 長てんこも子ゆっくりの頃、加工所へ行きたいと駄々をこねては、長老てんこに同じことを言われて育ったのです。 歴史は繰り返すものですね。 「そこのくぞてんこどもぉおおおお!!!までぃささまをたすけろぉおおおお!!!」 「おねがいじまずぅううう、てんこさまぁあああ!!でいぶをここからだしてぇえええ!!!」 「はいはい。君達はここでゆっくりしてってね。遠慮しなくていいのよ。」 「「「どぼじでそんなこというのぉおおおおお!!!」」」 野良ゆっくり達の叫びが見事なハーモニーを奏でました。 子てんこ達を無事、両親に送り届けた長てんこ。少し休憩しようと川のほとりで休んでいると 「おさ!!こんなところいたの。さがしたわ。」 「どうしたのてんこ。そんなにあわてて?」 現れたのは群れの幹部てんこでした。なぜかとても慌てています。 「たいへんなのよ。げすまりさが・・・げすまりさたちがきたの!!」 「ゆっ!?ほんとうなの、それは?」 「みんなはさきにいってるわ!!おさもゆっくりしないで、はやく!!」 「わかったわ!!あなたは貯蔵庫からアレをもってきて。」 大急ぎで現場へ向かう長てんこ。幹部てんこたちも貯蔵庫へ向かいます。 「ゆゆーん、あまあましゃんもらったよー。」 そう言いながら飛び跳ねていく赤てんこが一匹。その口には人間から貰ったキャンディーがくわえられています。 雑草の苦味、辛味を一種のSMプレイとして捉えているてんこ種にとってあまあまは価値のないものですが、他のゆっくりとの通貨替わりに使うことができるので巣に貯蔵しておくのです。 「ゆっへっへ。まつんだぜ。そこのちび。」 そこに居たのは明らかに野良らしき数匹のまりさ達でした。赤てんこの持っているキャンディーを下卑た笑いを浮かべながら物欲しそうにしています。 「おまえのようなちびがあまあまをもってるなんてもったいないのぜ。まりささまがもらってやるからありがたくおもうんだぜ。」 リーダーらしきゲスまりさが言いました。それに手下達も続きます。 「いたいめみないうちにわたすんだぜ。」 「まりさたちはさいきょーのせいえいぶたいさんなんだぜ。さからうだけむだなんだぜ。」 「・・・・・・・」 「へっへっへっ。おそろしくてこえもでないんだぜ。」 ゲスまりさは何も言わない赤てんこを怖くて何もいえないと思いました。 しかし実際は違います。 赤てんこの顔に浮かんだのはゲスまりさへの恐怖でもあまあまを取られることへの怒りでもありません。 例えるなら新しいおもちゃを買ってもらったときの子供のような期待と興奮に満ちた表情。 「ゆゆーん。げすまりしゃが・・げすまりしゃがきてくれたよぉおおおお!!!」 「ゆっ!?げすまりさ!?」 「げすまりさ!?どこどこ!?」 それまでおもいおもいにどMプレイにふけっていたてんこ達が一斉に集まり始めました。 ゲスまりさを迎撃する為かと思いきや 「きゃー!!ほんとにげすまりさだわ!!みてみてあのうすぎたないごきぶりみたいなおぼうし!!」 「どぶがわのくさったようなおめめをしているわ!!」 頬を紅潮させながら興奮気味に話すてんこ達。珍獣を見つけた女子高生のノリです。 ちなみにてんこ達に悪気は一切ありません。ただあまりに素直すぎるだけです。 「まちなさい!!そのこをいじめるのならてんこをかわりにいじめなさいっ!!」 「てんこにばかりいいかっこはさせないわ!!やるならこのてんこをいじめてね!!」 「いや、あなたたちではむりよ。ここはこのてんこにまかせてね。」 「てんこをいじめてね。でないとあんたじごくにおちるわよ!!」 「がいあがささやいてるわ!!てんこをいじめろって。」 「てんきょをいじめてくりぇりぇばあまあましゃんをあげるよ!!」 「いまてんこをいじめればこのじゅうえんだまさんをきゃっしゅばっくちゅうよ!!」 どうやらゴキブリ以下のクソ袋に虐められるという行為がドMの琴線に触れたようです。 しかしこれに怒ったのがゲスまりさ達。まあ普通は怒りますよね。 「うがぁあああああ!!!なめるんじゃなんだぜぇえええ!!!」 怒り狂い猛然とてんこ達に襲い掛かるリーダーげすまりさ。手下まりさ達もそれに続きます。 「しぬんだぜっ!!」 「んほぉおお!!もっといじめてねぇえええ!!!」 激しい連続の体当たり攻撃。しかしてんこ達には効いていません。むしろ喜んでいます。 「へっ、いまのうちにほざいてるんだぜ!!あとでないてもしらないのぜ。」 一分後 「へっへっへっ!!そろそろないて、いのちごいをするんだぜ。まあしてもゆるさないのぜ。」 三分後 「ハァハァ、やせがまんはよすんだぜ!!いまならあやまればゆるしてやるんだぜ!!」 五分後 「ぜーぜー・・・いいかげんに・・するんだぜ・・・まいったって・・・いうんだぜ・・」 「もっと、もっとてんこをいじめてねぇええ!!!」 「どぼじでそんなこというのぉおおおお!!!まいったっていっでよぉおおお!!!」 涙目になりながら体当たりを繰り返すリーダーゲスまりさ。子分達はとっくの昔にあきらめているのですが、おそらくもう引っ込みがつかなくなったのでしょう。 ずっと体当たりをし続けたので体中あざだらけ。逆にてんこはつやつやしています。 所詮、子ゆっくりからあまあまをまきあげることしかできないヘタレゲスまりさの集まり。 生まれ持ったうたれ強さに加え、毎日のドMプレイによって耐久力をアップさせているてんこ達には傷ひとつ負わせることができないのです。 そんなボロボロのまりさ達に近づく影がひとつ。ゆっくりありすです。 「ちょっとまりさ、どうなってのよ!!」 眉間にしわを寄せリーダーゲスまりさに詰め寄ります。実はこのありす、リーダーゲスまりさのつがいで、今まで遠くで見ていたので すが、なにやら様子がおかしいので見に来たのです。 「いなかもののてんこをせいさいっしてあまあまをいただくんじゃなかったの?なにやってんのよ!!」 「いやこれはその・・・・だぜ。」 しどろもどろなまりさを罵倒するありす。そしてそれを興味津々で見つめるてんこ達。 「きゃあああああ!!!れいぱーありすよ!!」 「れいぽぅありす。てんこたちをれいぽぅするするつもりね!!」 「ち、ちょっと・・・ありすはれいぱーじゃないわ。とかいはよ!!」 必死に弁解するありす。ちなみにこのありすはれいぱーではなく唯のゲスです。 ですがてんこ達は聞いてません。ゲスありすイコールれいぱーと勘違いしています。 目をキラキラ光らせながらありすへ詰め寄ります。 「うそおっしゃい!!れいぱーはみんなそういうのよ。」 「むれのみんなにはてをださないで!!れいぽぅするならてんこにしてね!!ハァハァ。」 「あなたにはおちびちゃんがいるでしょう。ここはてんこにまかせなさい。だいじょうぶ!!きっといきてかえるから・・・」 「なにひとりでかっこつけてるのよ。てんこもつれていきなさい。しぬときはいっしょだわ。」 「いまてんこをれいぷっぷすればこのじゅうえんだまさんをきゃっしゅばっくちゅうよ!!」 「きゃあああああ!!!なんなのこいつらぁあああ!!!」 ジリジリと寄ってくるてんこ達のプレッシャーに耐えられず、一目散に逃げ出すありす。 それを見て同じく逃げ出す子分のゲスまりさ達。ボロボロのリーダーゲスまりさを置いて。 「まっでぇえええ!!!おいてかないでぇええええ!!!」 「やくにたたないりーだーはそこでしぬんだぜ!!」 「いなかもののまりさとはりこんよ!!」 そう言い残し、リーダーを見捨てわき目も振らずに逃げていきます。所詮ゲス同士の繋がりなどこんなものです。 「ここね。ゲスまりさがいるのは。」 そして長てんこも到着しました。遅れて幹部てんこ達も。てんこ達に囲まれリーダーゲスまりさ涙目です。 「ごべんなさぃいいいい!!!ゆるじでぇええええ!!!」 恥も外聞もなく土下座するまりさ。さっきまでの勢いはどこへいったのやら。 「あんしんして、まりさ。いまきずのてあてをしてあげるから。」 「ゆ!?」 思わぬ長てんこの言葉にまりさはきょとんとしました。 「ふーふー・・もうおってこないのぜ・・・」 「ハァハァ・・・まったくつかえないまりさだったわ。もっととかいはなだーりんをさがさなくちゃ。」 公園から逃げてきた子分ゲスまりさ達とゲスありす。なんとか逃げ切ったと安堵しています。 しかしゲスまりさ達は知りません。自分達が逃げている先は加工所であることに。 「主任、なんか加工所の前に居た野良ゆっくり捕まえたんですけど、どうします?さっきの奴らと一緒に運び入れときましょうか。」 「ああ。そうしておいてくれ。そのほうが俺達の成績にもなるしな。」 「「「だれかたづげでぇええええええ!!!」」」 ゲスまりさ達とゲスありすの叫びが見事なハーモニーを奏でました。 一方そのころてんこ達とリーダーゲスまりさは 「ゆっへっへ。それじゃあもらっていくのぜ。」 「ええ。うちのむれのてんこたちがたくさんいじめてもらったからそのおれいよ。ゆっくりうけとってね。」 ゲスまりさの帽子のなかにはたくさんのあまあまが入っています。先程、幹部てんこたちが貯蔵庫から持ってきたものです。 長てんこは始めから群れのみんながゲスまりさにどうこうされる心配など一切していませんでした。ドMてんこ達のタフネスは尋常で はなく、ドススパークを受けても平気なほど。せいぜい髪の毛がアフロでガングロになるだけです。ましてや普通のゲスまりさでは致 命傷を与えることなど夢のまた夢。 むしろゲスまりさ達が怪我をしないか心配で長てんこたちはやってきたのです。もし、ここの群れのてんこがゲスまりさに怪我をさせ たなんて噂が流れたらもう虐めてもらえなくなってしまいます。 幸いにもゲスまりさのキズは浅く、薬草を張り、あまあまを食べさせたらすぐ元気になりました。食べきれない分はおみあげです。 「またてんこたちをいじめにきてねぇえええ!!」 てんこ達に見送られながらゲスまりさは町のほうへ姿を消しました。 「ゆっへっへ。てんこたちからあまあまをぶんどってやったのぜ!!」 ニヤリと笑うゲスまりさ。全く敵として認識されず、てんこ達の好意でもらったはずがいつのまにやら実力で強奪したことになっています。土下座したことなどきれいさっぱり忘れて。 きっとてんこ達は自分に恐れをなしたからこのあまあまで許しをこうたに違いない。平気そうな顔していたが、内心やせ我慢していた のだ。そうだ。きっとそうなのだ。このまりさ様が最強なのだ。 ポインポインと町の大通りの方へ跳ねていくまりさ。このまりさの巣は山の中にあり、帰るとしたら逆なのですが。 「ゆふふっ、じじいどもをどれいにしてあまあまをたっぷりみつがせるのぜ。」 聞くところによるとてんこ達のあまあまは人間に貢がせているということ。ならば更に強いまりさなら人間どもを奴隷にできるはず。 もうあんな役立たずで薄情な子分やありすはいらない。じじいどもを子分にまりさ様にふさわしいゆっくりプレイスを築いてやろう。 さすが餡子脳。惚れ惚れするほどのバカっぷりです。 そうこう考えてるうちに大通りにでました。歩道を何人かの人間が歩いています。 「おいそこのババア!!!」 まりさ近くに居たは日傘を持った上品なババ・・お姉さんに声をかけました。 まりさは知りませんでした。この年がいもなくフリフリを着ているお姉さんにババアと言うことがどういうことなのかを。 一瞬ピキィと顔をしたババ・・お姉さん。しかし気をとりなおしたようにニコリと笑います。 「ねえババアって誰のことかしら。この若くて少女臭でピチピチなお姉さんに教えて。」 周りの空気がどんどん冷えていきます。しかしまりさは気づきません。 「はあ?ババアはババアなんだぜ。まったくババアだからみみでもとおいのかだぜ。ババアらしくぼけてないであまあま・・・ゆ?」 お姉さんから立ち上る陽炎のようなオーラにやっとまりさも気づきました。そのオーラの正体・・・それは殺気です。 「口のききかたを知らないクソ饅頭にはお仕置きが必要なようね・・・」 そこにはもう先程までの上品な婦人は居ません。般若のような顔をした女王様が立っていました。 ここにきてやっとまりさは悟りました。自分が絶対踏んではいけないトラの尾を踏んでしまったことに。 彼女の名前は八雲 紫。某スキマ妖怪と同じ名前ですが関係ありません。ここは幻想郷ではなく幻想町です。 株式会社ボーダー商事の女社長にして、この幻想町を表と裏で支配する女帝的存在で希代のドSクイーン。 彼女にババアと言って地獄を見なかった者は存在しません。 「ユカァ!!!」 「ゆべしッ!!!」 いきなり日傘で殴られ吹っ飛ぶまりさ。なおも紫社長の攻撃は続きます。 「ユカユカユカユカユカユカユカユカユカユカァ!!!」 「ゆげ・・・やめ・・・・ゆが・・・・・・」 華麗な空中コンボ。まりさにこれ以上ない痛みを与えつつ死なないような日傘のラッシュ。ドSクイーンだからこそできる芸当です。 この通称「ユカユカラッシュ」は全てのドMお兄さんを満足させる程度の能力を持っていると言われています。 もっともまりさはドMでないので死ぬほど痛いだけですが。 「ユカユカユカユカユカ、ユカァーリン(少女臭)よ!!キラッ!!」 コンボ終了でババァーんとジョジョ立ちする紫社長。まるでどこかのマンガの第5部キャラのようです。 なぜかそのあとキラッのポーズまでしています。もっと自分の年を考えるべきなのですが。 「・・・ずーりずり・・ゆ・・ゆっくりしないでにげるよ・・・・。」 紫社長がジョジョ立ちしている間に、ボロボロの体で尺取虫のように逃げようとするまりさでしたが 「ねぎぃ!!!!」 すぐに気づかれ、あにゃるに傘の先端をねじこまれました。 「なに勘違いしているのかしら。まだ私のお仕置きフェイズは終了してないわ。」 ずっとゆかりんのターン状態。もうこうなると止まりません。 「ふふっ。饅頭ごときが私に向かってババアだの、加齢臭だの、靴下が臭いだの、30にもなってフリフリ着るとかwwwだのよくも まあ言ってくれたわね。その代償高くつくわよ。」 後半はいっていないような気もしますが。 「だれが・・・だれがだづげで・・・」 「安心しなさい。殺しはしないわ。ただ少し無知無学なあなたに世間の常識ってものを教えてあげるだけよ。この紫お・ね・い・さ・ん、がね。」 「ゆべぇええええ!!!まりさのあんこさんかぎまわざないでぇえええ!!!」 傘をまりさのあにゃるに突き立てたまま、まりさを持ち帰る紫社長。 当然まりさの餡子は傘の先端でかき回されます。激痛のあまり悲鳴を上げ続けていますが紫社長は全くお構いなしです。 通行人もまったく気にしていません。ボーダー商事の奇行にいちいち驚いていたら幻想町では生きていけないのです。 ゲスまりさはこの後どうなってしまうのでしょうか。まあどうでもいいことですが。 そんなある日、群れの隣にある公園を散歩していた長てんこは一人のお兄さんに出会います。 モヒカン頭。裸革ジャン。無駄にヒャッハーと叫ぶそのさまは正に虐待お兄さん。 ズキゥウウウウウウウウン。 一目でてんこはそのお兄さんに恋をしてしまいました。 ゆほっ、いいお兄さん。思わずそう口にしてしまうほどです。 お兄さんもてんこが気に入ったらしく革ジャンをはだけながらこう言いました。 「ヒャハないか?」 ヒャハないか?それは虐待お兄さんがドMてんこを虐待に誘うときに使う言葉。 いじめられるのが大好きなてんこは思わずホイホイついていきます。 連れてこられた場所は公衆便所の男子トイレ。ここなら誰にも見られずにすみ邪魔も入りません。 「ヒャッハー!!!いいのかいッ?ホイホイついてきて。俺はノンケだって構わず虐待するようなやつなんだぜ。」 「こんなことはじめてだけど・・いいの。てんこ、おにいさんみたいなひとすきだから。」 「ウヒャッハー!!!うれしいこと言ってくれるじゃないのッ。それじゃあとことん喜ばせてやるからな。」 「お兄さん・・・」 「ヒャッハー!!てんこは虐待だッ!!!」 言葉どおりお兄さんは凄いテクニシャンでした。てんこは全身に与えられる激痛に身を震わせてもだえています。 この日以来長てんことお兄さんは良く会うようになりました。 そんなある日のこと、群れにある異変がおきました。 長てんこが自分の巣から出てこないのです。当然心配する群れのゆっくり達。 「おさ!!おねがいだからでてきてね。みんなしんぱいしてるわよ。」 「ゆっくりしないででてきてね。」 巣の前で長に出てくるよう呼びかけ続ける群れのてんこ達。しかし長てんこは一向に出てこようとしません。 中に入ろうにも枝や石を敷き詰めたバリケードがはってあって中に入れなくなっています。 「しょうがないわ!!ばりけーどさんをこわすわよ!!」 巣のバリケードにむかって体当たりし始めるてんこ達。数回体当たりするとバリケードが壊れ中に入れる程度の隙間ができました。 「おさ、だいじょうぶ・・・・ゆっ!?」 隙間から入る群れのてんこ達でしたが・・・・ 「どおしておさがにんしんっしてるのぉおおおお!!!」 そこにいたのは不自然にお腹の膨れた長てんこ。どうみても胎生にんっしんっしています。 「おさ、だれにすっきりーされたの!?」 「わかった、このまえきたれいぽぅありすね。なんてうらやましい・・・じゃなくてけしからんのかしら。」 「てんこがいってとっちめてくるわ!!そしててんこもれいぷっぷされてくる!!ハァハァ。」 「ちがう。ちがうのよ。わたしがにんっしんっしたのは・・・」 「ヒャッハー、話はすべて聞かせてもらった!!そこから先は俺が話そうッ。」 「ゆ!?おにいさん・・・」 長てんこは驚きました。そこにいたのはあのモヒカンお兄さんだったのです。 「ヒャッハー、それは俺の子なんだッ。そうだろ、てんこ。」 「・・・・・・・・」 「済まない、てんこ。俺が昨夜ムラムラして、下半身のオンバシラから出るケフィアをかけたばっかりに・・・まさかこんなことにな るとは思わなかったんだ・・・」 そうお兄さんとてんこは昨日の夜も会っていたのです。今日は仕事が休みなので昼間から来て今回の騒ぎにあったのです。まあ確かに 人間と不思議饅頭との間に子供ができるなんて普通思いもしませんが。 「・・・・・・・・」 「責任は取るつもりだ。たのむてんこ、俺と一緒になってくれ!!」 「だめよ、おにいさん・・・」 「ヒャハッ!?」 それまで黙っていたてんこが口にした拒絶の言葉にとまどうお兄さん。 「てんこはこのむれのおさなのよ・・・むれのみんなをおいてじぶんだけゆっくりはできないわ・・・」 「そ・・・そんな・・・」 ガクンと肩を落とすお兄さん。落胆のあまり、自慢のモヒカンもひしゃげ、真ん中わけのようになっています。 「どうしたらいいのかしら・・・」 「ゆう・・・」 困り果てる群れのてんこ達。ゆっくりと人間の子供はどちらも愛し合っていなければできない奇跡のはず。 愛し合う二人が引き裂かれることはゆっくりできないことです。 でも群れを大切に思う長てんこをむげにはできない。まさに板ばさみです。 「二人とも、ちょっとまってね!!」 その時群れの後方から大きな声がしました。 「ゆぅ、ちょっとみんなそこをどいてね。」 「ゆっ!!ちょうろう!!」 そこにいたのは長老てんこでした。慌てて道を開けるてんこ達。 もう10年以上生きているので、ゆっくりとしてはかなりの高齢ですが、体中のいたる所に傷痕、右ほほには銃創まであり、まるで死 線を何度も潜り抜けた歴戦の軍人のような顔つきです。 ゆっくりあっきゅんの群れに単身殴りこみをかけ3日3晩虐められたり 虐待お兄さんと100人組み手を行い、1週間ぶっとおしで虐待されたり ヤクザに虐められる為に事務所でおうち宣言して拳銃で撃たれたこともあるという、数々の武勇伝をもつ長老てんこ。 長てんこの育ての親でもあり、この群れの創始者でもあります。 「長・・・あなたは間違っているわ。そんな方法じゃ誰もゆっくりできないわ。」 「ちょうろう・・・てんこだっておにいさんとわかれるのはつらいわ・・・でもてんこにはできないわ。むれのみんなをほうちぷれいしてじぶんだけゆっくりしようなんて。」 放置プレイ、それはてんこ達にとって愛でお兄さんと同じくゆっくりできない言葉。 「そうね。確かにそれはゆっくりできないことだわ。でもあなたはもっと大切なものを放置プレイしようとしているのよ。」 「ゆ!?たいせつなもの?」 「それは貴方の・・・メスブタとしてのゆっくりよ。」 「メスブタとしての・・・ゆっくり・・・」 「貴方は今までのゆん生をすべて長の勉強とお仕事ですごしてきたわ。だからメスブタとしてのゆっくりを知らない。これは長老の責任でもあるわ。群れの長としてのゆっくり、それが貴方にとってゆっくりだとずっと信じてきた・・・」 遠くを見るような目をする長老てんこ。昔を思い出しているのでしょうか。 「でも今日お兄さんを見る貴方の目を見てそれが間違いだと気づいたわ。あなたはメスブタよ。どうしようもなく。ご主人様のお仕置きを物欲しそうに待つ卑しい卑しいメスブタなのよ。」 そう言うとスゥっと長老てんこは大きく息を吸いました。 「てんこ、お兄さんの所へ行きなさい。飛べないブタは只のブタなように、ご主人様のいないメスブタも只のブタなのよ。」 「でも・・・てんこはまだ・・・おんがえししてない・・・」 搾り出すように言う長てんこ。その顔は涙でグシャグシャです。 「バカ・・・親にとって一番の恩返しは貴方がゆっくりすることよ。」 ニッコリと笑う長老てんこ。その頬にも涙がつたっています。 「ありがとう、長老。ここから先は俺の仕事だ。」 いつの間にやらお兄さんがすぐ後に立っていました。モヒカンも雄雄しく復活しています。 「俺だけのメス豚になってくれ。てんこ。絶対におまえをヒャッハーしてみせる。」 静かに、だけどはっきり力強くプロポーズするお兄さん。 「はい・・・ごしゅじんさま・・・」 その熱い思いに長てんこもまた答えます。 「めすぶたよぉおおお!!!おさもちょうろうもさいこーにめすぶただわぁあああ!!」 「おにいさんもすてき!!さいこーにいかした、ぶたやろうだわ!!」 「おしゃがいにゃくにゃるなんてさびしいよ!!でもおしゃがめしゅぶたになるためにがまんするよ!!」 大興奮の群れてんこ達。みな感動のあまり泣いています。 「ヒャッハー!!おまえらだってメスブタだぜ!!!おまえらみんなメスブタだ!!ここはメスブタの群れだ!!」 「さあ、みんなであのおうたをうたうわよ。めすぶたなおさのために!!」 「ヒャッハーあの歌だな!!俺も歌うぜ!!」 おばちゃんてんこが音頭を取ります。てんこにとって歌とはひとつしかありません。 「なにをされていいわ。きもちがいいならー。」 長老てんこの歌声が 「かんじるいたみ、すべーてあまくはげしくー。」 おばちゃんてんこ達の歌声が 「きょうかいしにゃい。」 子てんこ達の歌声が 「反省もしない。ヒャハッ」 お兄さんの歌声が 「ようしゃない。おしおーきが、いますぐほーしい。」 長てんこの歌声が 「なぶられーたかまりゆく、きらめーく、うちょうてんへー」 みんなの歌声が一体となり見事なハーモニーを奏でました。 えっ?イオ●ス?有頂天マゾヒス●ィック? 何をいってるんですか?これはてんこの群れの歌ですよ。例え似たような歌があっても偶然です。 そして一週間後。 お兄さんの家で、てんことお兄さんの待望の赤ちゃんが誕生しました。 「ゆっきゅりいじめちぇちぇっね。」 一匹はてんこそっくりの赤てんこ。そしてもう一匹は・・・ 「ゆっきゅりひゃっはーしちぇっちぇね。」 「ゆっ・・・このこ・・・」 「ヒャハッ・・・・」 「ひゃっはーはひゃっはーだよ。ゆっきゅりひゃっはーしちぇっちぇね。ひゃは。」 あとから産まれた赤ゆっくりにてんこもお兄さんも目を丸くしました。 顔こそ普通のゆっくりですが髪の毛がお兄さんと同じモヒカンになっています。 ヒャッハーと無駄に吠えたりする所もお兄さんそっくり。 どうやらてんこのゆ伝子とお兄さんの遺伝子が混ざってこのようなゆっくりが産まれたようです。 自分のことをひゃっはーだと名乗ったのでゆっくりひゃっはーと名付けました。 「ひやっはー!!すぃーでばくそうだぁああ!!」 お兄さんに買ってもらったすぃーに乗ってご機嫌なひゃっはー。家の芝生をを爆走中です。。 ちなみにすぃーはお兄さんの手でハーレー型にカスタマイズされていて。 2匹が産まれてもう1ヶ月がすぎました。最初は慣れない飼いゆっくり生活にとまどった所もあるてんこでしたがいまではすっかり慣 れてお兄さんの家族との仲も良好です。 「ひやっはー!!おねいちゃんをぎゃくたいだぁああ!!」 「ハァハァ。もっとやってね。もっとすぴーどをあげてね。」 すぃーには姉てんこが糸で括り付けられおり、とても楽しそうに引きずられています。 仲睦まじい兄弟の光景です。いつまでも見ていたいものですが 「虐男、そろそろ出ないと会社に遅刻するわよ。」 現実に引き戻す母の声。今日は日曜ではなく平日なのです。 「こんなに可愛いてんこをてごめにするとはお前も隅に置けないなぁ。」 「お兄ちゃんのエッチー。」 ニヤニヤと笑いながら冷やかす父と妹の虐子。これで冷やかされるのは何度目でしょうか。 ちなみに家族全員お兄さんと同じモヒカンです。 「ヒャハッ。やめてくれよ父さんたち・・・」 「はっはっはっ。照れることはないぞ。父さんも昔はよく野生のきめぇまるをれいぷっぷしたものだ。おかげでついたあだ名が幻想町 のれいぱーありすだ。男はそれぐらいしなくちゃな。」 やたら誇らしげに話すお父さん。どう考えても威張ることではないのですが。 「もう父さんたら・・・会社にいくよ。」 照れくさくなってその場から退散するお兄さん。それをてんこが見送ります。 「おにいさん、ゆっくりいってらっしゃい。」 「ああ。いってきます。」 愛車のハーレーにまたがるお兄さん。てんこの見送りを背に会社にゴーです。 「ヒャッハー!!ハーレーで通勤だー!!!」 違法改造ハーレーで爆音をとどろかせながら会社に向かうお兄さん。ちなみにモヒカンが崩れないようノーヘルです。 どうみても道路交通法違反ですが関係ありません。ここ幻想町では常識や法律にとらわれてはいけないのです。 そう緑の腋巫女も言ってました。 「ヒャッハー!!到着だー!!!」 制限速度を100キロ程オーバーして5分ほどハーレーを走らせているとお兄さんの勤め先ボーダー商事に着きました。 モヒカンなのにサラリーマンなの?と思う人も多いかと思いますがボーダー商事は服装、髪型は完全に自由。 モヒカンだろうが罪と書かれた覆面をつけて仕事しようがフリーダム。副社長がクールビズと称して全裸で社内を歩き回っても誰も文 句を言いません。社の外にでても、ああ、またボーダー商事かと思われるだけです。 そもそも紫社長自身がいい年して少女趣味なフリフリのドレスを着て出社しているので文句を言える立場ではありません。 「ぶひぃー・・・」 「ヒャハ?ゴミ捨て場のほうから何か聞こえたような・・・気のせいか?」 何かゴミ捨て場から声がしたような気がしたのですが・・・ 「まあいいか。ヒャッハー、今日もお仕事だー!!!」 雄たけびをあげて気合をいれるお兄さん。今日も元気にお仕事です。 一方そのころゴミ捨て場では・・・ 「ぶひぃー・・・まりさはぶたです・・・いやしい、いやしいめすぶたです・・・」 其れはゴミ袋のなかでつぶやき続けます。まるで壊れたラジオのように。 「ぶひぃー・・・まりさはぶたです・・・ゆかりさまのめすぶたです・・・ゆかりさまはババァなどではありません・・・えいえんの じゅうななさいです・・・ゆかりさまは、かれいしゅうなどではありません・・・しょうじょしゅうです・・・あしもなっとうくさく などありません・・・じゃすみんのかおりです・・・ぶひぃー・・まりさはぶたです・・・いやしい、いやしいめすぶたです・・・」 この数ヶ月間、紫社長に教育と称してありとあらゆる苦痛を与えられた其れはもう完全に自我を失っていました。 焦点のあわない目をした其れは、いつまでもいつまでもそうつぶやき続けていました。 あとがき いつもご愛読ありがとうございます。長月です。 今回はてんこを主人公にした愛で系ギャグにしてみたのですがいかがだったでしょうか?コメントでご意見、ご感想いただければ幸いです。 追伸 絵本あき様ごめんなさい。 今まで書いた作品 ふたば系ゆっくりいじめ 176 ゆっくりちるのの生態(前編) ふたば系ゆっくりいじめ 185 選ばれしゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 196 新種ゆっくり誕生秘話 選ばれしゆっくり番外編 ふたば系ゆっくりいじめ 208 ゆっくり見ていってね ふたば系ゆっくりいじめ 218 またにてゐ う詐欺師てゐの日々 ふたば系ゆっくりいじめ 227 VS最強のゆっくり 史上最低の戦い ふたば系ゆっくりいじめ 247 夢と現実のはざまで ふたば系ゆっくりいじめ 264 あるまりさの一生 ふたば系ゆっくりいじめ 298 ゆっくりを拾ってきた ふたば系ゆっくりいじめ 336 ゆっくり Change the World(出題編) ふたば系ゆっくりいじめ 357 ゆっくり Change the World(出題編2) ふたば系ゆっくりいじめ 391 ゆっくり Change the World(解答編) ふたば系ゆっくりいじめ 400 あるゆっくりできない2匹の一生 ふたば系ゆっくりいじめ 441 てんこがゆっくりするSSさん ふたば系ゆっくりいじめ 457 あるドスまりさの一生 とてもゆっくりした群れ ふたば系ゆっくりいじめ 476 ゆっくりを愛でてみた ふたば系ゆっくりいじめ 511 れいむと幸せを呼ぶ金バッジ ふたば系ゆっくりいじめ 528 としあき博士のれいぱーありす矯正計画 挿絵:嘆きあき
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ゲスゆ有 「ゆっくりしていってね!」 日課である朝の散歩中に突然足元から甲高い声が上ってきた。 なんだろうと思いながら……まぁ既に予想はついてるが……足元を見下ろしてみると、やはりというか なんというか、やたらとぷにぷにしてそうな生首がこっちを見上げてきていた。 「やっぱりゆっくりか」 「れいむはれいむだよ! ゆっくりしていってね!」 そう言ってれいむは誇らしげに胸を張る。 「はいはい、ゆっくりしていってねっと」 俺はいかにも気だるそうな感じを滲ませながらそう言って、せかせかとれいむの前を立ち去ろうとする。 が、そんな俺の様子を見てれいむは慌て、ゆっくりにあるまじきゆっくりしてなさを発揮して俺の前に 立ちはだかり、こう言った。 「まってね! にんげんさんはれいむにあまあまをおいていってね!」 それを聞いて俺はファッキューメーンと思った。いや別にゆっくりは男じゃないけれども、素直で可愛い ゆっくりが好きである俺をがっかりさせる言葉の一つだったからだ。 無視してやってもよかったのだが、ついてこられても迷惑だ。 なんとか口でやりこめて乗り切ろうと思い、下を向いてこう言った。 「何でさ」 「ゆ? わからないの?」 俺の言葉を受けたれいむは心底不思議そうに頭の上に疑問符を浮かべて小首を傾げる。 あまあま……要するに人間のお菓子の要求をする野良ゆっくりは多い。 ほぼ全てのゆっくりは甘い物が大好きである。加えてゆっくりは何事も自分の都合のいいように解釈する 悪癖があり、飼いゆっくりの飼い主がゆっくりにご飯をやっているのを見ただけで頭と性格の悪い野良などは 人間はゆっくりの奴隷であると勘違いするなどよくある話だ。 そうでなくても、『ゆっくりはゆっくりしていればみんなをゆっくりさせられる』という意味不明の信念を 持っていたりもするので、『ゆっくりした自分ならお菓子をくれるはずだ』という理屈から人間にあまあまを 要求する事などはざらにあるのだ。 俺を苛立たせない理由ならいい。ゆっくりにお菓子をやる物好きな爺さんがその辺にいて、人間はお菓子を くれるものだと思い込んでしまったとか、そういう俺にも納得しうる理由ならまぁいいや。俺はそう思い ながら、れいむの言葉を待った。 が、しかし。このれいむが語った『理由』は―― 「じゃあおしえてあげるね! れいむはしんぐるまざーなんだよ! すごくかわいそうなんだよ! だから やさしくしてあげないとだめなんだよ!」 俺の神経を卸し金で容赦なく削り取るような、吐き気を催すクソのようなものだった。 「お前のような奴がいるから戦争が無くならないんだ!(?)」 反射的に右の拳が足元のれいむに伸び、そのもち肌に突き刺さった。悲鳴を上げる暇すらなく、れいむは バウンドして空に舞い上がる。 おそらをとんでるみたい。シェイクされた頭でそんな事を考えているのであろうれいむの脳天を、追撃の ネリチャギが襲う。倒れている相手に頭の側から発動すればザコ即死がつく便利な技だ。 「ゆぶぇ?!」 衝撃で右の眼球を破裂させながら、れいむが叫び声を上げて地面に叩きつけられた。俺の足が頭の上に 乗っているので、今度はバウンドしない。 俺はそいつの頭から足をどけると、靴を脱いでそこにこびりついた餡子をそのへんの壁に擦り付けた。 餡子のついた靴でその辺を歩いたら虐待趣味の変態だと思われてしまうからだ。 と、そんな事をしている内に、既にずたぼろになっているれいむが起き上がる元気を取り戻していた。 もう相手にしないぞ、こんな薄汚いボロクズ。俺はそう心に決め、 「どぼじでごんなごどずるのぉぉぉ?! でいぶはじんぐるまざーなんだよぉ?! だがらゆっぐりざぜで あげないどだめなんだよぉぉぉぉぉ?!」 僅か二秒で決心した事実を闇に葬り去り、れいむの頭に鋭いチョップを浴びせた。 「ゆびぇ?! いだいぃぃぃぃぃ!! どぼじでごんなごぞずるのぉぉぉぉ?! がわいぞうなでいぶは ゆっぐりざぜであげなぎゃだめなんだよぉぉぉぉぉぉ?!」 悲鳴と共に、無くなった右目から涙と混じった液状の餡子がリズミカルに溢れ出す。 俺はそのれいむを掴みあげ、横っ面を思いっきり引っぱたいた。 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆぎぇ?!」 「お前みたいな!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆがぁ?!」 「自分ばっかりゆっくりしたいとか!」 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆぐぅ?!」 「そんな考えのゲスがいるから!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆげぇ?!」 「他の可愛いゆっくりまで!」 左頬を打つ。頬からばしんと音が響く。 「ゆごぉ?!」 「害獣呼ばわりっ!」 右頬を打つ。右目からごぽりと泡立つ音が響く。 「ゆぎゃぁ?!」 「されちまうんだ!」 左頬を打つ。頬からびしゃりと音が響く。 「ゆっぐ、えぐ……ゆんやぁぁぁぁぁぁ! もぉやだぁぁぁぁ! おうぢがえるぅぅぅぅぅぅ!!!」 「わかってんのか……よぉ! このゲスが!!」 そして、泣き喚くれいむを力いっぱい地面に叩きつけると、それっきりれいむは音を立てなくなった。 俺は餡子で汚れた右手をごしごしと手近な壁に擦り付けると、いそいそとその場を後にした。 おわり あとがき お題が終わらないのでつい 凄い手抜きだ byゆっくりのあねきィィ!の人 おまけ(むしろ本編?) ずりずりと、ずりずりと。まるで芋虫のようにゆっくりと。しかし必死に、れいむは這っていた。 身じろぎする度に全身に激痛が走る。風が頬を撫でるたびに激痛が走る。身体を虫が這う度に激痛が走る。 朝露が肌を濡らす度に激痛が走る。木の枝が肌に掠る度に激痛が走る。 狂ってしまいそうな痛みの中で、それでもれいむははっきりと意識を保ちながらずりずりと這っていた。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 早く行かなきゃ。 頭の中は、それでいっぱいだった。 れいむが男に暴行を受けた場所からここまで、たったの20メートル。そして、ここかられいむが向かおうと している場所までは、およそ30メートルほど。 普段なら鼻歌など歌いながらすぐに行ける道と距離でも、多量の餡子を失い、身体の所々が裂けてしまった 今のれいむにとっては苛烈な決死行であった。 死にたくない。 死にたくない。 死にたくない。 早く行かなきゃ。 れいむは足を速める。無理をすれば死期が近付くのは、頭ではわからなくとも感覚でわかっているはずだ。 死にたくない。 死にたくない。 でも早くしなきゃ。 早く行かなきゃ。 それでもやめない。やめられない。 れいむはゆっくりしたゆっくりだから。 しんぐるまざーのれいむはかわいそう。だから、ゆっくりしなきゃいけないんだから。 れいむは必死に這い続ける。 死にたくない。 そんな事より早くしなきゃ。 もっともっと急がなきゃ。 早く行かなきゃ。 既に半分以上の餡子を失い、意識は朦朧としている。にも関わらず、れいむの足は絶えず動き続けていた。 ただ一つの思いの為に。 ただ一つの信念の為に。 ただ一つのゆっくりの為に。 その、執念にも似た思いが通じたのかは定かではないが。 れいむはとうとう、目指していたその場所に辿りついた。 そこは、気の根っこの間にある大きな穴だった。丁度、成体のゆっくりよりも一回りだけ大きいくらいの。 「れ む ね」 傷だらけのれいむの小さく掠れた声が響く。本来ならば伝わらないであろうほどの、微かな声。しかし、 洞窟の中で反響した為か、その声はちゃんと、その穴の主へと届ける事が出来た。 ぼよん、ぼよんと何かが跳ねてくる音が響く。 そして、その主はどすんと音を立て、傷だらけのれいむの前に姿を現した。 「やっとかえってきたのこのうすのろれいむ! さっさとあまあまをだしてね! だしたらうすのろは ゆっくりしないでしんでね!」 「よこちぇー!」 「きゅじゅー!」 そこにいたのは。 れいむが言っていた、『かわいそうなしんぐるまざー』のれいむと、その子供達だった。 そう、れいむは全て、このしんぐるまざーのれいむ達の為にとあまあまを探しに出かけていたのだ。自分が ゆっくりするためではなく、可哀想なれいむをゆっくりさせてあげるために。必死に。必死で。れいむが 欲しがっているあまあまを人間に貰いにいっていたのだ。 しんぐるまざーれいむは、傷だらけのれいむの姿を見つけると、仰天し、涙を流して声を上げた。 「どぼじであまあまもっでないのぉぉぉ?! にんげんがらうばっでごいっでいっだでしょぉぉぉぉ?! ぞんなごどもでぎないのぉぉ?! まざがでいぶをゆっぐりざぜるぎがないのぉぉぉごのぐずぅぅぅ!!」 しかし、驚き、そして涙を流した理由は、傷だらけのれいむが、あまあまを持っていない事に対しての 物であった。 「ちが れ むは がんば ごめ ゆっ ちりょう ね」 掠れた声でしんぐるまざーれいむへの謝罪と、自己の治療を頼む傷だらけのれいむ。 しかし、しんぐるまざーれいむ達は。 「うるさいよ! やくたたずはゆっくりしんでね! しんだあとでおわびのあまあまをもってきてね!」 「ちにぇ! ちにぇ!」 「きょんにゃきゅじゅはころちちゃえびゃいいりょ!」 傷だらけのれいむへの怒りを露にして、殺してしまえ、とまで言った。 「ゆっ! それもそうだね! れいむのおちびちゃんはかしこいね! きっとおっきくなったらこんな ぐずとはちがうりっぱなれいむにそだつよ!」 「「ゆっへん! しょれほどでみょにゃいよ!」」 「じゃあさっさところすね! おちびちゃん! おかーさんのかっこいいところゆっくりみててね!」 「「ゆっきゅちみりゅよ!」」 傷だらけのれいむは、堂々と自分を殺す算段をつけている親子の会話を聞いていても全く動じなかった。 先刻から、身体の痛みも、聞こえる音も。どこか遠くの出来事のように感じてくるようになっていたから だった。 痛みが消えたわけじゃない。言葉が聞こえないわけじゃない。 ただ、それを理解する機能が失われかけているのだ。 ゆっせーのっ! ゆっ!! ゆゆ~ん! おきゃーしゃんのじゃんぴゅしゅっごくゆっきゅちちちぇるにぇ~! 仲の良さそうな親子の声が耳に滑り込んでくる。 しんぐるまざーれいむのあんよを、たった一つになってしまった目で見上げながら、れいむは思う。 あぁ、ゆっくりしてもらえなかった。 たよりなくてごめんなさい。 もっとゆっくりさせてあげたかったのに。 れいむは、しんぐるまざーだから。 かわいそうだから。 やさしくしてあげないとだめなんだよ。 かわいそうなれいむ。 やくにたてなくてごめんね。 れいむはもうしんじゃうけど。 れいむはきっと。 かわいいこどもたちといっしょに。 わらいあって、それでげんきに。 ゆっくりしていっ ぐしゃり、と。 しんぐるまざーれいむの足が、傷だらけのれいむの頭を踏み潰し、完全にれいむは息絶えた。 しんぐるまざーれいむは、子供達の前で誇らしげに胸を張る。が、次の瞬間。 「ゆ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?! でいぶのぶりでぃなあんよがいだいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ?!」 顔色を変えて飛びあがり、家の中をごろごろと転がりまわった。 原因は、傷だらけのれいむの歯である。人間の打撃は、れいむの目と表皮をずたずたにし、上側の歯の ほとんどをへし折ったが、下顎にある歯は一本たりとも欠けさせることはなかったのだ。ゲスゆっくりを 嫌っていた人間の執念が、しんぐるまざーれいむに牙を剥いたのだろうか。 しんぐるまざーれいむは子供達にあんよを舐めさせながら涙を流した。 れいむは思う。 それもこれも、全部役立たずのれいむのせいだ! 役立たずに見つけさせたこの家も、ゆっくりした自分には狭すぎてちっとも相応しくない! そして、れいむは未だにずきずきと痛むあんよでふらふらと立ち上がりながら、大声で叫んだ。 「ごんなゆっぐりでぎないどごろにいられないよ! でいぶはもっどゆっぐりでぎるおうぢをざがずよ!」 その言葉が死亡フラグだからか。 あるいは、因果応報という奴か。 常識的に考えれば、こんな所で大声を上げたせいかもしれない。 「「「「「「「「「「「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」」 「「「「「「「「「「「うー! ゆっくりしね!!!!」」」」」」」」」」 突然、巣に大量のれいぱーありすとふらんが雪崩込んできたのだ。 れいむ一家はこの後、意気投合し結託したありすとふらんに犯され、子供を産まされ、子供を食べられ。 ちっともゆっくりできない数ヶ月を送った後に、朽ち果てて死んだ。 あとがき2 ゲスじゃないゆっくりにしんぐるまざー云々言わせてみる事を思いついたのでやってみた ゲスの始末は本題じゃないのであえて適当に このSSに感想をつける
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『れいむはすーぱーおかん:接触編』 30KB 愛で 観察 思いやり 愛情 仲違い 育児 飼いゆ 子ゆ 愛護人間 暇つぶしにどうぞ ・気が付いたら、れいむ愛で仕様になっていました。どぼじでこうなったのぉぉ!? れいむというだけビキィ! とくる鬼威惨は、他の作家さんのSSですっきりー! してね。 ・結局まとまりきらなくて二部に分かれてしまいました。接触編から始まり、発動編で完結です。 接触編は観察パート、発動編は虐待パートという仕様です。 愛でのみがいい、虐待のみがいい、という読者さんは、他の作家さんのSSで(ry ・どこかしら後味が残る話を目指しました。特に悪い方に。ひねくれ者でゴメンね! 特に発動編終盤は、自分以外の誰得仕様です。 ・その他ネタ被り、独自設定、意味不明な箇所など書き捨て御免ということで。 ・それでも読んでみる方は暇つぶしにどうぞ。話のネタにしてくれたら幸いです。 れいむはすーぱーおかん:接触編 軽率だった。 俺も、俺の金バッジ飼いゆのれいむも。 俺が気を抜いて戸締りをしっかりしなかった事も軽率ならば、 れいむが庭に現れた子連れの野良まりさに唆されたのも軽率だった。 最近は殆どの飼いゆが去勢されている。 家のれいむも小さいときに去勢処置をほどこしてあり、子供は生まれない。 しかしながら、「おちびちゃんはゆっくりできる」という本能的な衝動は、 いかに優秀な教育を経てきた金バッジゆっくりでも、完全に除き去ることはできないのだ。 俺は極力れいむから子供を想起させる事柄を遠ざけていたのだが、 時折見る寂しそうな寝顔と涙の跡に、やはりどうにかしてやろうかと考えていた、矢先の事。 初夏のよく晴れていた非番の日。無警戒に窓を開けて部屋の空気を入れ替えていた時だった。 その子連れのまりさは、無警戒に庭先で日向ぼっこをしていたれいむの前に現れたのだ。 「こんにちわだぜ、れいむ! ゆっくりしていってね!!!」 「「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」」」」 「ゆ……ゆっくりしていってね!」 れいむは野良まりさの小汚い様に警戒していたが、まりさが連れていた子ゆっくり達に注意を削がれた。 子まりさが2頭、子ありすが2頭。そこそこ汚れてはいるが損傷は無い子ゆっくり達であった。 「「「「ゆっ、ゆっ、ゆ~、ゆっくち~!」」」」 「ゆわぁぁ、とてもゆっくりしたおちびちゃんたちだよぉ!」 れいむは初めて間近で見る子ゆっくり達に、本能を大きく揺り動かされたのだ。 俺が気づいた時には、れいむは野良の子供達と一緒に遊んでいた。 「れいむ! 何してんだ、早くこっちに来い!」 「おにーさん、おちびちゃんだよ。とてもゆっくりしてるよぉ!」 「れいむはまりさのおちびちゃんのおかーさんになったのぜ。 だからおちびちゃんのおとーさんのまりさもかいゆっくりなのぜ! ゆっくりよろしくなのぜ!」 俺のバカ! バカバカッ! 不注意にも程がある! 近年野良どもが、自分の子供達がいかにゆっくりしてるかを去勢されてる飼いゆにアピールして、 取入って番いになろうとする小賢しいケースが増えているって、セミナー受けたばかりだろっ! この場合、抑制された「ぼせい」を解放された飼いゆっくりから子供を引き離しても、 飼い主の言う事を聞かなくなってブリーダーでも匙を投げるという。 「「「「「ゆゆゆのゆ~♪ ゆっくりのひ~♪ まったりのひ~♪」」」」」 庭を見れば、れいむは野良の子ゆっくり達と共に、呑気に歌を歌っている。 思えば、れいむのあんなにゆっくりした表情は見た事が無かった。 どうせダメモトだ。一計を案じてみても、いいかもしれない。 「ゆわーい! きれいきれいになったのじぇ!」 「おちびちゃ~ん! はやくふーきふーきしないと、ゆっくりできなくなるよぉぉ!」 身体を洗われた子ゆっくり達は、自分が生まれ変わったかと錯覚したようにはしゃいでいた。 れいむにもこんな頃があったっけなぁ。イカンイカン、しみじみしてる場合じゃない。 「れいむ、おチビちゃんはゆっくりできるか?」 「ゆっくりできるよぉ! おにいさん、おちびちゃんたちをかいゆっくりにしてくれてありがとぉ!」 「まだチビ達は飼いゆっくりじゃない。チビ達を飼いゆっくりにできるかどうかは、れいむ、お前次第だ」 「ゆ……?」 「れいむは母親として、おチビ達を飼いゆっくりに相応しい、ゆっくりできるゆっくりに育てるんだ。 ゆっくりできないゆっくりに育ったら、飼いゆっくりに相応しくないとして、俺が始末する」 「そ、それはひどいよ! みんなれいむのおちびちゃんなんだよ! ゆっくりしてるんだよ!!」 「チビ達を始末されたくなかったら、子育て頑張れよ。応援はするが手助けはしない」 「ゆ、ゆ、ゆぇぇぇん!!」 甘えん坊気質のれいむを突き放したのは初めてだ。泣き顔にちょっと心が痛む。 チビ達に嫉妬したんじゃないよ? ホントだよ? 「おきゃーしゃん、なかないぢぇ。ありしゅがぺーりょぺーりょしてあげりゅ」 「あ、ずりゅいのじぇ! まりしゃもぺーりょぺーりょすりゅのじぇ!」 「おきゃーしゃんをなきゃす、くしょじじいはかえりぇー!」 「ぺーりょ! ぺーりょ!」 何か腹が立つが仕方がない。とりあえずはれいむにチビ達を任せ、食事を用意する。 ここでも一工夫が必要だ。 「ほら、食事だ」 「ゆ……? おにーさん、おちびちゃんのごはんさんがないよ?」 れいむ専用の器に盛られたのはゆっくりフード他、いつものれいむの食事だ。 それだけだった。れいむが不思議がるのも無理は無い。 「おチビ達の食事はこっちだ。あまり部屋を汚すなよ」 「ゆげぇ!? おにーさん、それ、ごはんさんじゃないよぉぉ!」 俺は基本的に好き嫌いしないので、家の生ゴミの多くは料理の際にでる野菜等のクズだ。 それをチビ達の数だけ器に盛ってやった。 「おにーさん! おちびちゃんがかわいそうだよぉぉ! ごはんさんをあげてよぉぉ!」 「ダメだ。俺は飼いゆっくり分しか飼いゆっくりの為の食事を用意しない。 どうしてもと思うなら、れいむの食事をチビ達に分けてやるとか、自分で考えろ」 「おにーさん、ひどいよぉぉぉ!」 「ゆゆ~ん? おやしゃいしゃんだじぇ!? おいししょ~!!」 「ありしゅ、おなかしゅいた! おきゃーしゃん、たべていいにょ?」 子ゆっくり達は待ちきれないとばかりに涎をダラダラ垂らしている。 普段よっぽど恵まれない食事だったのだろう。不満の声は無い。 「そ、それじゃ、いただきましょうね。ゆっくりいt」 「「「「すーぴゃーむーちゃむーちゃたいみゅ、はじまりゅよ!!!」」」」 食前の挨拶を無視して、一斉に目の前の生ごみに飛びかかる子ゆっくり達。 れいむは唖然として、目の前の食事に口をつけることができないでいた。 尻をブルンブルン振いながら生ゴミを貪り喰らうその様に、俺は目を背けた。食欲が削がれる。 「「「「むーちゃ、むーちゃ、しあわしぇ~!!!」」」」 「俺はゆっくりできないんで、あっちでご飯食べるね」 「ゆ!? ま、まって、おにーさん!」 「まずは飼いゆっくりらしい食事の取り方からかな? 子育て、頑張ってね」 俺はれいむ放し飼い用の部屋から出ると、こっそりのぞき窓で様子を伺った。 れいむの傍にいると、どうしてもれいむは俺を当てにするから。 少しの間、れいむはチビ達と自分の食事を見比べていたが、ようやく考えがまとまったようだ。 「お、おちびちゃんたち! ごはんさんのたべかた、おかーさんがおしえるよ!」 「ゆ? まりしゃたち、ごはんさんたべてるのじぇ?」 「もっとゆっくりできるごはんさんのたべかただよ。おかーさんのごはんさんをわけるから、 ゆっくりまっててね!」 れいむは自分の食事のゆっくりフードを一粒ずつ咥えては、チビ達の器に運んで行った。 見た事も無い食事に、チビ達の好奇心がくすぐられる。 「ゆぅぅ? とってもときゃいはなかんじの、ごはんしゃんなのにぇ?」 「おいしそうにゃにおいぎゃ、ぷんぷんしゅるのぜぇ!」 「ぺーりょ、ぺーりょ。うっめ! これめっちゃうっめ!!!」 子まりさが舌を伸ばして味わったゆっくりフードは、生まれて初めての甘みだった。 すかさず目の前のフードを一口で食べてしまい、とてもゆっくりとした表情を浮かべる。 それを見た他のチビ達も、配りきられていないフードを一様に貪る。 「「「「うっめ! めっちゃうっめ!!!」」」」 「どぼじでごばんざん、がっでにだべぢゃうのぉぉぉ!?」 思惑があっさり外れ、身悶えするれいむ。 しかし、チビ達は初めての甘味に収まりがつかない。 「おきゃーしゃん、もっちょ、ちょーだいなのじぇ!」 「おきゃーしゃん、たべにゃいの? だったりゃ、ありしゅがたべてあげりゅ!」 「「「「たべてあげりゅ!! うっめ! めっちゃうっめ!!!」」」」 「れ、れいむのごはんさんがぁぁぁぁ! ゆわぁぁぁぁぁん!! ゆわぁぁぁぁぁん!!」 結局、れいむが呆然とする中、れいむの食事はチビ達に全部食べられてしまった。 あまりの事に母親である事も忘れ、れいむが大粒の涙を流す。 理想の母親像をいつも夢見ていたんだろうが、現実は夢のように都合良くは無い。 大声で泣き叫ぶれいむの姿に、チビ達の反応も様々だ。 「おきゃーしゃんはよわむしなのじぇ! ぺーりょぺーりょしちぇあげるのじぇ」 「おきゃーしゃんも、ごはんしゃんむーちゃむーちゃしゅればよかっちゃのに」 「ゆぅぅ、ゆっきゅりできにゃいのじぇ。まりしゃが、わるいのじぇ?」 「おきゃーしゃん! ありしゅ、もうおにゃかいっぱい! だかりゃ、ありしゅのごはんしゃん、おきゃーしゃんがむーちゃむーちゃしていいよ!」 子ありすがれいむの器に生ゴミの残りを運ぶのを見て、他のチビ達もそれに倣う。 れいむの器には、いつもの御馳走の代わりに、生ゴミが鎮座した。 思わず後ずさるれいむ。腐ってるのもあったからなぁ。まあ食べてもゆっくりなら害は無い。 「「「「おきゃーしゃん、もうなかにゃいで、むーちゃむーちゃしちぇね!!」」」」 「た、たべるまえには、ゆっくりいただきます、っていうんだよ。わかってね。 ゆ、ゆっくり、いただきます」 れいむはとてもゆっくりできていないだろう表情で、生ゴミを口に収める。 瞬間、目を向いて冷や汗をダラダラ流す。ゆっくり用の食事に慣れた舌には堪えるだろう。 「おきゃーしゃん、どうしちゃの? ゆっきゅりしてにゃいよ?」 「むーちゃむーちゃ、しにゃいのじぇ?」 れいむはチビ達の手前、吐き気を抑えて生ごみを黙って飲み下した。 俺はれいむに感心した。並みの飼いゆっくりなら吐いていただろうに。 「……ぜー、ぜー。か、かいゆっくりのごはんさんはね、たべてるときはしゃべらないんだよ。 ごはんさんがこぼれてきたないし、まわりのみんながゆっくりできなくなるからね」 「ゆえー? むーちゃむーちゃしにゃいで、ゆっきゅりできりゅにょぜ?」 「おかーしゃん、とっちぇもときゃいはだっちゃよ。ありしゅもやってみりゅね!」 子ありすはれいむの器から生ゴミのカケラを取り、黙って食べる。遊び半分なんだろう。 れいむに倣って、黙って飲み下す。 「ごっくん。それにゃりー。おかーしゃん、ありしゅときゃいはにできちゃ?」 「とってもよくできたよ。ありすちゃんは、とかいはなかいゆっくりになれるよ」 「やったーっ!! ときゃいはー!」 れいむと子ありすは、共にゆっくりした気持ちを表した。 それを見て、他のチビ達も先の子ありすに倣う。 「ま、まりしゃもやっちぇみるのじぇー!」 「ゆあー、ありしゅもときゃいはになりゅー!」 「むーちゃ……まりしゃなにもいっちぇないにょぜ?」 チビ達は生ゴミを平らげ、結局れいむは殆ど食事を取らなかった。 空腹なんだろうに、チビ達と肌を合わせて眠るれいむは、とてもゆっくりしていた。 俺は出勤の準備を済ませて、れいむ達の部屋に食事を運ぶ。 部屋は散らかり、チビ共の「うんうん」もそこら中に落ちていた。 れいむは好き好きに遊ぶチビ達に振り回されてる様で、1頭だけゆっくりしていなかった。 普段から部屋の片づけは徹底させていたので、言う事を聞かないチビ共に困惑してるんだろう。 「おはよう、れいむ。おチビちゃん達」 「ゆ!? ゆ、ゆっくりおはよう、おにーさん! たすけてぇ! へやがかたづかないよぉ!」 「にんげんしゃん、だれにゃのじぇ?」 「きっと、おかーしゃんのどれいなにょよ。ごはんしゃんもってきちゃのよ」 「しょーなのきゃだじぇ。おい、くしょどれい! はやきゅごはんしゃんよこしゅんだじぇ!」 「お、おにーさんはどれいじゃないよぉぉ! どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉ!?」 物忘れの激しいチビ達の笑顔と俺の怒り顔を見比べながら、慌てふためくれいむ。 俺は昨日と同じように飼いゆの食事と生ゴミを用意しながら言う。 「れいむ。食事はお前がやりたいようにしろ。平等に分けるも、独り占めしてもいいんだからな。 昼食の分もそうだ。朝のうちに全部食べさせてもいいが、俺は夕方まで帰ってこれないから」 「おにーさん……」 「困った顔をしてもダメだ。まだまだあるぞ。部屋の片づけとうんうんの躾。 俺が戻るまでには部屋に散らばったチビ共のうんうんも始末しておくんだぞ」 「おにーさ……」 「くしょどれいは、おきゃーしゃんを、いじめるにゃー!」 「いじめるにゃー! しにぇー!」 ガッ! ガシャンッッ!! 「「「「ゆぴぃぃぃっ!!」」」」 ついムカついて、怒りをれいむの玩具にぶつけてしまった。 俺に蹴られたゆっくり用の車「すぃー」の玩具は壁に当たると、大きな音を立ててバラバラに壊れた。 れいむは声も無く震え、チビ達はそろって「おそろしーしー」をたれ流している。 「食事以外の時は、チビ達に飼い主とは何かという事と、言葉使いを教えるんだ。 もう赤ゆ言葉でも無い大きさだろう。毎日しっかり教育するんだ」 「……」 「返事はどうした。もう母親ごっこは終わりか、れいむ?」 「ゆ、ゆっくりりかいしたよ! れいむはおちびちゃんたちを、りっぱなかいゆっくりにするよ!!」 「言葉だけじゃないのを期待してるよ、れいむ。それじゃ、食事おいてくからな。行ってきます」 「ゆっくりいってらっしゃい!!」 部屋から出た後、こっそりと覗き窓から中を覗く。 れいむがゆっくりと仕切る朝食を、チビ達は興味深く楽しんでいるのを確認して、俺は家を出た。 野良のチビ達がれいむの子供達になって10日も過ぎた頃。 「おにーさんにごあいさつだよ! おにーさん、ゆっくりおかえりなさい!!!」 「「「「おにーさん、ゆっくりおかえりなさい!!!」」」」 「ゆっくりただいま!!! よくできたね、おチビちゃん達」 チビ達は赤ゆ言葉も取れ、「飼い主」がどういう存在かって事も表面上は解っているように見えた。 トイレの躾も行き届いているし、部屋もそこそこ片付けてるようで、散らかりっぱなしではない。 黙ってる俺の前で、れいむはチビ達に食べ方を教え続け、今チビ達はそれほど食べ物を食い散らかさない。 れいむが均等に分けた飼いゆ用の食事と生ゴミを、特に不満を述べるでもなく食べている。 「本当に大丈夫なのか、れいむ? 無理なら遠慮するなよ。俺が全部始末をつけるから」 「だいじょーぶだよ、おにーさん。れいむは、おちびちゃんたちをりっぱにそだてるよ」 聞く度にこう言うが、れいむは慣れない子育てのおかげで殆どゆっくり出来ていなかった。 れいむは本当によくやっているが、実のところチビ達もあまりゆっくりしてないのが見て取れる。 野良ゆが飼いゆの形だけを真似ているだけなので、ゆっくりできるわけないのは当然だが。 ここで今日のイベントといこうか。俺は包みから買ったばかりの玩具を取り出す。 「じゃん! これ、何ーんだ」 「ゆわぁぁ! すぃーだぜぇ!」 「とってもとかいはな、きれいないろのすぃーだわ!」 俺が買ってきたのは、この間壊してしまった「すぃー」の玩具の代わり。 キズの無い新鮮な素材感が、チビ達の目を引く。 「このすぃーはおチビちゃん達に買ってきたんだよ。みんなで仲良く使ってね」 「おちびちゃんたち、おにーさんにありがとうしようね」 「「「「ゆっくりありがとー、おにーさん!!!」」」」 チビ達の喜びように、れいむも久しぶりにゆっくりとしていた。 でもね、いつまでゆっくりできるかな? 試すようだけどゴメンな。 「まりささまが、いちばんのりなのだぜぇ!」 「ゆあー! ずるいのぜぇ!」 「ありすたちものせなさいよ!」 子ゆっくり用の「すぃー」なので、チビ達は1頭しか乗る事が出来ない。 1台の「すぃー」で、4頭のチビ達がどうやってゆっくりするというのか。 俺はれいむにここを任せ、食事の用意に向かった。 「ゆんやぁぁぁ! おにいさん! おにいさん! たすけてぇぇ!!」 俺が食事を持って部屋に戻る頃には、チビ共は「すぃー」が元で大ゲンカをしていた。 荒事に慣れていないれいむは酷く狼狽しているが、目論見通りだ。 「ひとりじめは、げすのすることなんだぜぇ!!」 「まだまりさのばんはおわってなかったのぜ! ころばすなんてひどいのぜぇ!!」 「やめなさいよ! こんなのとかいはじゃないわぁ!!」 「ゆわーん! ゆわーん! ゆっくりできないよぉぉ!!」 れいむが助けを求め続けるが、俺は黙って食事を用意するだけだ。 いよいよ過熱してきたチビ共の取っ組み合いに、れいむが恐る恐る声をかける。 「お、おちびちゃん。けんかはだめだよ。ゆっくりしt」 「おかーさん、まりさがひどいのよ。すぃーにぶつかってたおすなんてとかいはじゃないわぁ!」 「なにをいうのぜ! ひとりじめするげすをからだをはってとめたのぜ!」 「まりさのばんはもうすぐおわりだったのぜ! まりさはよこどりされたのだぜ!」 「ひとりじめも、ぶつかるのも、おおごえも、ゆっくりできないよぉ! ゆわーん!」 れいむが制止しようとしても、チビ達は止まらない。 そうしているうち、早くも期待していた事が起こった。 びりりりっ! 「ゆんやぁぁぁぁっ!? まりさのおかざりさんがぁぁぁっ!!」 まりさの帽子のお飾りに噛みついたもう一方のまりさが、お飾りを引きちぎってしまったのだ。 お飾りはゆっくりにとって自分の片割れに等しく、お飾りの状態次第でゆっくり同士の見る目も変わる。 帽子のお飾りは半分近く裂けてしまっていた。慟哭するまりさにチビ達の反応は冷たい。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ばでぃざのぎらめぐおがざりざんがあ゛あ゛あ゛!!」 「いいきみなのぜ! ひとりじめしようとしたげすには、おにあいなのぜ!」 「おかざりをやぶるなんていなかものだわ! でもそのおかざりは、もっといなかものだわ!!」 「ゆわぁぁん! おかざりやぶれたぁ! ゆっくりできないよぉぉ!!」 れいむは俺の方をオロオロしながら見続ける。俺は黙って、れいむに頷いた。自分で決めろ、と。 俺の意を理解したのか、れいむは意を決した硬い表情で、チビ共の方に向かった。 「ゆっくりできないわるいおちびちゃんは、れいむがぷくーするよ! ぷくーっ!!」 「「「「ゆわぁぁぁっ!!」」」」 初めて見せるれいむの威圧に、チビ共は一斉に驚いて動きを止めた。 静かになったところで、れいむがまりさ達に怒鳴り声を浴びせる。 「ひとりじめも、よこどりも、けんかも、ぜんぜんゆっくりできないよ!! まりさはまりさに、まりさもまりさに、それからみんなにあやまってね! いますぐだよ!!」 「ま、まりしゃは、おかじゃりをやぶられたんだじぇぇぇ! なんであやまりゅのじぇぇぇ!?」 「まりさがひとりじめするからなんだじぇぇぇ!! まりさはわるくないんだじぇぇぇ!!」 「ぷくーーーっっ!!!」 「「ゆわぁぁぁぁんっ!! ご、ごべんなざいぃぃぃっ!! ごべんなざいぃぃぃっ!!」」 お互いのまりさが謝った事で、このケンカは決着となった。 だが、俺が見たいのはコレジャナイ。もっと、根の深い部分だ。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛ん゛! おがざりざん、なおっでぇ! なおっでぇ! ぺーろ、ぺーろ」 お飾りの破れたまりさは泣きながらお飾りを直そうと舌を這わすが、まるで効果が無い。 他のチビ達は遠巻きに悪態をつくばかり。そんなまりさに近づくれいむ。 「なかないでね。おかざりがやぶれても、おちびちゃんは、れいむのおちびちゃんだからね」 「お、おかーしゃ……ゆわぁぁぁぁぁん!!!」 スゲエ。何このゆっくりらしからぬ母性。本能によく耐えた。感動した。 れいむがチビまりさを避けるのも無理は無いだろう程度に考えていたが、予想以上の結果だ。 おお、泣きながら「すーりすーり」し合うれいむとチビまりさの、何とゆっくりしてることか。 そして、それを見つめる他のチビ共も、それぞれ違った反応を見せている。上出来だ。 「ケンカはゆっくりできなかったね。さあ、食事にしよう。みんなぽんぽん空いたろう」 れいむが母親の自覚を持って行動した事に満足した俺は、 これからの展開を色々と予想しながら、れいむ達との食事を楽しんだ。 2ケ月も経てば、テニスボール大だったチビ達も成長し、バレーボール程度にはなっていた。 ただ、性格についてはそれぞれ偏ってきたようだ。 以前ケンカに勝った方のまりさは、チビ共の中で一番成長していた。強まりさと呼称しようか。 その分増長も激しく、自分が姉妹の中で一番だと自画自賛する事も。 最近はれいむが躾けたことも守らず気ままにゆっくりしてる。実にゆっくりらしいゆっくりだ。 ケンカに負けてお飾りが破れたままのまりさは、弱まりさと呼んでおこう。 いつも強まりさの身勝手に抗議こそするが、力に訴える事はしなくなった。 逆に強まりさにケンカを仕掛けられても一方的にやられてる。苦手意識が芽生えたのか? 威勢のいいありすは何かと姉妹達に文句を言う。しかも一言多い。強ありすでいいかな。 まりさ同士のケンカを止めるのもこのありすだが、時にケンカの発端にもなったりもする。 姉妹一の「とかいは」を自認し、れいむの手伝いもこのありすが率先してたりする。 ありすの片方は泣き癖がついてしまい、何か不満があるとすぐ泣いてしまう。弱ありすでいいな。 普段はあまり喋らず、他ゆんと遊んだり手伝いはするものの、自分から他ゆんを誘うことは無い。 気が進まない場合は「とかいはじゃないから」と言い訳をして逃げることもある。 そして、れいむはチビ達全員を分け隔てなく「かわいいおちびちゃん」として溺愛していた。 最近では子育て上手を自慢する生意気さも見せ、心からゆっくりしている様子だ。 だが、盲目的なところが多々見られ危険な兆候なので、もう少し自覚を持ってもらいたい。 さて、これだけ長い事接していれば、ゆっくりの本音もチラチラ見え隠れするというもの。 ズルズルとこの生活を続けて行くのは誰の為にもならない。火を見るより明らかだ。 だが俺は裁定者になるわけにはいかない。そうならない事を願っている。 「う!? うぐ……」 れいむ達と過ごしていたある昼下がり。俺は胸の辺りに痛みを伴う違和感を感じ、その場に倒れ伏した。 「おにーさん? どーしたの、おにーさん!?」 「俺」からの返事は無い。何度呼びかけても反応が無い「俺」に、れいむは酷く狼狽する。 チビ達はれいむの後ろで黙って様子を伺っていた。 「お、おにいさんが、えいえんにゆっくりしちゃったよぉぉぉ!! ゆわぁぁぁん!!」 「「「「ゆぇぇぇえ!?」」」」 チビ達は、微動だにしない「俺」の身体の周囲に近づき、ゆっくりと観察する。 れいむはその場で泣き暮れるばかりだ。 「そうよ! こういうときはでんわさんをつかうのがとかいはよ! まりさ、おにーさんのおしりのでんわさんをとってちょうだい!」 「ゆ? これなのぜ?」 強ありすが示した、尻ポケットから頭を出していた携帯電話を、弱まりさが咥えて運ぶ。 とはいえ、いざ携帯電話を前にし、強ありすは使い方までは解らなかった。 「おかーさん、なかないで! でんわさんをつかっておにーさんをたすけるのよ!」 「ゆぐっ! で、でんわざん、ゆっぐりじないでおにーざんをだずげでね!」 「そうはさせないのぜぇ!!」 突然飛び跳ねてきた強まりさが、床に置かれた携帯電話を弾き飛ばした。 携帯電話はタンスと床の間に発生した薄い隙間に吸い込まれてしまう。 「おにーさんもしょせんこのていどなのぜ。つかえないくずどれいだったのぜぇ!!」 「ま、まりさ!? ど、どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉ!?」 「どういうつもりよ、このいなかもの!!」 「こんなときに、ふざけてるばあいじゃないのぜぇ!」 強まりさの行動と態度は、家族の非難を浴びた。しかし、強まりさは余裕の表情を崩さない。 勝ち誇るように「俺」の身体に乗ると、調子づいてピョンピョン飛び跳ねる。 「ゆっへっへ、ふざけちゃいないのぜ。なにがかいぬしなのぜ。せいっせい! したのぜぇ!!」 まりささまをかいゆっくりにするためのどうぐが、なまいきだったのぜぇ!!」 「あやまってね! れいむたちをゆっくりめんどうみてくれたおにーさんに、あやまってね!!」 「やなのぜ、くそばばあ! おまえもうるさくてほんとうにゆっくりできなかったのぜ! おまえもかいゆっくりになるためのどうぐなのぜ!」 「まりさぁ! おかーさんにあやまるのぜぇ!!」 「まりささまのちからなら、にんげんたちぜんぶくそどれいにして、もっとゆっくりできるのぜ! おまえらみんな、まりささまのこぶんにしてやってもいのぜ! ゆーっはっはっは!!」 「……こぶんになるつもりはないけど、ありすはまりさにさんせいよ」 「俺」の身体に弱ありすが飛び乗って、強まりさの横につく。 続けざまの、後先考えないチビ達の反逆に、れいむはうろたえるしか無かった。 「これはゆっくりんどりーむだわ! ありすはこんないなかくさいのはもうごめんだわ! これでありすは、もうなかなくていい! もっととかいはなゆっくりをてにいれるのよ!」 「ありすまでそんなことをかんがえていたのね! このいなかものども!!」 「どっちがいなかものよ! おにーさんもおかーさんもいちいちいなかくさいのよ! ありすたちがかいゆっくりになるための、ただのどうぐのくせにうるさいのよ! そんなおかーさんにべったりのありすもほこりをかぶって、とってもいなかくさいわ!」 「ど、どうぐ……! そんな、おちびちゃんたち! うそだよね! うそだよね! みんなであんなにゆっくりしてたのに、うそだよねぇぇぇっ!!」 れいむは裏切られた。れいむは信じられなかった。れいむの頬を涙が伝う。 しかし、「俺」の身体の上にいた強まりさは、そんなれいむに飛びかかった。 ぺちぃん! 「ゆぎゃぁぁんっ!!」 「「おかーさん!!」」 強まりさの体当りを受け、後ろに転がるれいむ。 弱まりさと強ありすが助け起こすが、れいむは目を回していた。 「まりささまにくちごたえはゆるさないのぜ! おそれいったら、どげざするのぜ!」 「まりさぁぁぁ!! もうゆるさないのぜぇぇぇっっ!!」 弱まりさは大声で叫ぶと、強まりさに飛びかかった。 横からの攻撃は強まりさにとって、不意を突かれた格好になり、直撃を受ける。 ぽよよよんっ!! 「ゆげぇぇぇっ!?」 体勢を崩し転がっていく強まりさに、すかさず弱まりさが追い打ちをしかける。 弱まりさは感極まったのか、優勢でありながら涙を流して攻撃を続けた。 「おがーざんは、おにーざんは、どっでもゆっぐりじでだんだぁぁっ!! おがざりがやぶれだまりざでも、やざじぐじでぐれだんだぁぁっ!! ぜっだいに、ゆるざないのぜぇぇっ!!」 「ゆげっ! ゆげぇっ! よわむしまりさが、ちょうしに、のるなだぜぇっっ!!」 強まりさと弱まりさは本格的に取っ組み合いを始めた。 もはやケンカと言えないほどの激しさで、強ありすは間に入る事ができないでいた。 「ゆげぇぇっっ!!」 「よわむしのぶんざいで、まりささまにかてるとおもったかなのぜぇ!?」 弱まりさの威勢が良かったのは序盤だけで、それ以降は体格に優れた強まりさが逆転した。 そして、体重の乗った強まりさの押しつぶしが決まり、弱まりさは口から餡子を吐きだす。 強まりさは止めとばかりに、弱まりさを潰そうと、ひと際高く跳んだ。 「まりささまのせいっさい! なのzゆぐぇぇぇぇっっ!!?」 強まりさは空中で吹っ飛ばされた。壁に叩きつけられ、あまりの痛みに悶絶する。 起き上がった強まりさは、自分を吹っ飛ばした相手の姿に、愕然とした。 「れいむは……ゆるさないよ! ぜったいにゆるさないよ!! おちびちゃんをきずつけるゆっくりできないゆっくりは、せいっさい! するよ!!」 「お、おかーしゃ……」 二の句を告げる間もなく、強まりさは怒りの化身と化したれいむに押しつぶされた。 そのまま、強まりさの上で体重を乗せて飛び跳ねる。 「おまえなんかにおかーさんとよばれたくないよ! このげすのらがっ!!」 「ゆぎゃぁぁっ!! ゆぎゃぁぁぁぁっ!! ゆぎゃぁぁぁぁぁっ!!」 「ゆわぁぁぁぁん! こんなの、ゆっくりできないわぁぁ!!」 弱ありすは形勢が逆転したのを見ると、いつものように泣いて逃避した。 昨日までだったら、れいむが親身になって慰めたものだが、もはや手遅れだった。 「おにーさんからおりろっ!! このげすのらっ!!」 「ゆんぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」 弱ありすもれいむに吹っ飛ばされた。 その身体はトイレをひっくり返し、うんうんとしーしーに塗れてしまう。 「ゆぎゃぁぁぁぁん!! くしゃい! くしゃいよぉぉぉっ!!」 「いなかもののありすにはおにあいよ! だいじょうぶ、まりさ!?」 「……どうにかなのぜ。やっぱりまりさたちのおかーさんはすごいのぜ」 「そうよ。ありすたちのおかーさんは、さいこうにとかいはだわ」 「お前達も最高の子供たちだよ。れいむを信じてくれて、ありがとうな」 「「ゆ!?」」 れいむの「せいっさい!」によって強まりさは半殺しの目に遭っていた。 怒りの収まらないれいむは正気を失ったようで、強まりさが必死に取り繕おうとしても無駄だった。 「ぜったいにゆるさないよ!! ぜったいにゆるさないよ!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」 「そこまでだ。れいむがあんよを汚す事は無い」 れいむは突然の「おそらをとんでるみたい!」な感覚に、思考が停止したようだ。 俺の腕の中でキョトンとした顔をしている。 「ゆ……? おにーさん? おにーさんなの?」 「面倒をかけたな、れいむ。この通り、大丈夫だよ」 「おにーさ……おにーさぁぁぁぁぁぁんっっ!!」 泣きじゃくるれいむを抱く俺の姿に、チビ達は揃ってキョトンとした顔をしていた。 俺は胸の辺りに痛みを伴う違和感を感じ、その場に倒れ伏した。フリをしただけだった。 三文芝居だが、ゆっくり達の本音を引き出す為には、どうしても必要だったからだ。 結局、欲深い本性を現したのは2頭。残りの2頭は最後までれいむの子供であった。 最悪の場合、増長したれいむを潰す事まで考えていた俺には、嬉しい結果だ。 だが、まだ終わっていない。俺は裁定者になるわけにはいかない。 「れいむ。お前を道具と罵ったまりさとありすはもう手遅れだ。 小さいときに自分だけゆっくりするのが目的となったゆっくりは、どうやっても直らない」 「おにーさん……」 「れいむが決めろ。チビ達の母親として、役目を果たせ。俺はれいむの判断に従う」 俺はれいむをそっと床に下ろした。 いや、正直、判断を任せるとかヒヤヒヤなんだけどさ。 まあ、れいむなら答えを出せるだろう。出せるかなぁ。俺、信じてるから。 「ゆひぃっ!!」 部屋の隅に追いやられた強まりさと弱ありすは、間近に迫ったれいむに悲鳴を上げる。 れいむは、大粒の涙を流して泣いていた。 「かぞくと、にんげんさんと、みんなでゆっくりできないゆっくりは、かいゆっくりになれないんだよ。 おまえたちは、れいむのおちびちゃんじゃないよ!!」 「お、おかーしゃん、ちがうのぜ! これはなにかのまちがいなのぜ!」 「ありすは、おかーしゃんのありすよ、そんなこといわないでぇぇ!」 「いまさらおまえたちにおかーさんなんてよばれたくないよ! かんっどう! だよぉぉっ!! ゆ、ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛っっ!!」 裁定は下った。俺は言い訳とその場だけの謝罪を繰り返す、強まりさと弱ありすの口をガムテープで塞ぐ。 そして2頭を抱え上げたまま、弱まりさと強ありすと向きあう。 「こいつらは飼いゆっくりになれなかった。れいむと親子になれなかったんだ。 もうこいつらはお前達と一緒に住めない。お別れだ。ひとこと言ってやれ」 「あばよ、なのぜ……」 「みんなでゆっくりしたかったわ……」 弱まりさと強ありすの目には涙が滲んでいた。 ブルンブルンと物言えぬ強まりさと弱ありすが身悶えするが、つねり上げて大人しくさせる。 「れいむを慰めてやってくれないか? お前達より、ずっとずっと悲しいんだろうから」 「まかせるのぜ! おかーさんには、まりさとありすがついてるのぜ!」 「とかいはなわたしたちが、おかーさんをいっぱいゆっくりさせるわ!」 そう言って、弱まりさと強ありすは号泣するれいむの元へ跳んで行った。 あれから間もなく、弱まりさと強ありすは金バッジ試験に合格した。強弱はもういいだろう。 野良から金バッジをとるなんて奇跡的だと秘訣を尋ねられたが、面倒なんでノーコメントで通した。 そもそも街野良の大半は元飼いゆの餡子を継いでいるという。2頭にはいい素養があったんだろう。 俺が大きめに直してやったまりさの帽子のお飾りは、今や大きく育ったまりさにピッタリだった。 それにしても何か体型がドスっぽくなったような。気のせいであってくれ。 口が悪かったありすは、すっかり落ち着いて、気配り上手になっていた。 ああ、でも隙あらば携帯電話を使おうとするのはやめてくれ。色々おっかない。 れいむは、相変わらずだ。未だに自分より大きくなったまりさやありすを子供扱いしている。 でも、まりさもありすも満更でもないらしい。餡子がつながって無くても本当の親子だった。 季節が巡り、新しい春が来た。俺と、れいむと、れいむの子供達はゆっくりと過ごしていた。 「ゆ~、おにーさん。れいむは、りっぱなおかーさんになれたかな~」 「立派すぎて俺のカーチャンと交換したいぐらいだ」 「れいむをおかーさんとよんでいいんだよ。おにーさん」 「調子に乗るな」 俺達は庭先で日向ぼっこしながらじゃれ合っていた。 まりさとありすはプランターから芽吹いた花の芽を見つけ、跳び上がって喜んでいる。 「おにーさん、おちびちゃんたちにおちびゃんはできないんだよね」 「ああ、バッジ取る時に去勢もしたからなぁ。また子育てがしたいのか?」 「れいむはもうじゅうぶんだよ。ただ、おちびちゃんたちにもおちびちゃんがいればいいのにね。 おちびちゃんたちなら、きっとゆっくりしたおちびちゃんをそだてられるからね」 「実はだな、あいつらの去勢した時、精子餡バンクに登録しといたんだ。高くついたが。 つまり、あいつらが望んだとき、選ばれた母体を介してあいつらのおちびちゃんが生まれるんだ」 「きいてないよぉぉぉ!! どぼじでおぢびぢゃんづぐらないのぉぉぉ!?」 「あいつらはきっと、まだれいむのおちびちゃんで有りたいんだろう。 案外れいむがおばーちゃんになっちゃうんで、気にかけてるのかもな」 「ゆ……おばーちゃん。れいむ、おばーちゃんになるのね」 「まあ深く考えるな。ほら、あいつらが呼んでるぞ」 れいむに決断を担わせたのは、結果として正解だった。 俺が全てを仕切っていたら、れいむはチビ達の信用を勝ち得ず、最悪全員ゲス化しただろう。 やっぱり親たるもの、子供に一目置かれて何ぼだからね。 「おにーさーん! おちびちゃんたちが、おにーさんのおちびちゃんいつできるのだって!」 「アーアーアー、聞こえない聞こえない」 軽率な俺とれいむの招いた不注意のおかげで、俺も、れいむも、れいむのおチビ達も、 結果的に以前よりゆっくりすることができた。 俺はれいむ達の飼い主として、家族の一員として、共にあり続けることができるように願った。 発動編に続く