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れいむよ永久に安らかに これは虐待の話だ。 僕が、ゆっくりれいむを虐待した件についての記録だ。 途中で、そうは思えなくなるかもしれない。だが、それは早とちりだ。 どうか最後まで読んでほしい。 僕は、自分の快感のためにゆっくりを虐待する人間だ。 たとえそう見えなくても、そうなんだ。 * * * * * 「ゆ゛……? ゆ゛……? ゆ゛……?」 ゆっくりれいむは自分の目に映っているものが理解できなかった。 狭い部屋、冷たい床、明らかにゆっくりできない熱そうな道具を持っている、青い服の人。 「ここはどこ? ゆっくりおしえてね! ――ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 返事の代わりに、れいむの頬に灼熱の焼印が押し付けられた。 * * * * * 以前、ゆっくりれいむは、お兄さんのところで暮らしていた。 れいむは加工所というところから出荷された冷蔵れいむで、お母さんや姉妹はいなかった。 でも、お兄さんがいた。おいしいごはんをくれて、暖かい部屋、ふわふわの寝床で飼ってくれた。 だから、とてもとてもゆっくりできた。最高のおうちだった。れいむはおにいさんが大好きだった。 ある日、お兄さんが、散歩に連れて行ってくれた。 高い空の下で、やわらかい草花の上で、れいむは元気に跳ねまわって夢中で遊んだ。 だが、知らないうちにお兄さんから離れすぎていた。気が付くと、知らない人に抱き上げられていた。 「ゆっくりはなしてね! れいむはおにいさんのれいむだよ!」 必死に頼んだが聞いてもらえなかった。泣きわめいて抵抗したが無駄な努力だった。 草原の向こうのベンチにお兄さんが座っているのが、袋に詰め込まれる直前に、見えた。 * * * * * そして今、れいむはどことも知れない、殺風景な部屋に放置されている。 周りには焼印の押されたゆっくりがたくさんいた。どの子もゆぐゆぐと泣いていた。 「ゆっくりしていってね!」懸命に声をかけると、似たような空元気の返事があった。 みんなさらわれた子だった。でもれいむは希望を抱いていた。 「だいじょうぶだよ! きっとたすかるよ! お兄さんがゆっくり来てくれるよ!」 最初の一週間は、れいむの生涯で二番目に不幸な週だった。 なぜなら、「棚」に押し込まれた週だったからだ。 焼印をつけられたあと、れいむたちは巨大な部屋に並ぶ棚に入れられた。 人間の靴箱のような狭い棚だ。一マスに一匹ずつ、何百何千ものゆっくりが詰め込まれた。まずい流動食が出た。 「ゆっくりだしてね!」「ここはせまいよ! おうちかえる!」「きっとしかえしするからね!」 みんなが文句を言った。だが、青い服の人間たちは誰ひとり返事をしてくれなかった。 二週目、れいむは自分たちの境遇を理解し始めた。 25センチ四方のマスの中。そこから出ることはできないのだ。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう信じていた。 「だいじょうぶだよ! きっとたすかるよ! お兄さんがゆっくり来てくれるよ!」 三週目、れいむはうんざりしてきた。食事がまずいのだ。 食事は棚の前の樋を流れていくおからのような流動食だ。一応ほんのりした甘味はある。 だがひどく単純な味で、お兄さん手製のごはんにはとても及ばなかった。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう信じていた。 「だいじょうぶ、きっとたすかるよ。お兄さんがゆっくり来てくれるよ」 四週目、れいむは体が痛くてたまらなかった。 ずっと体を動かしていないので、皮が堅くなってしまったのだ。 乾いた餅のようにほっぺたがコチコチになり、ひび割れた。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう信じていた。 「まだだいじょうぶだよ。お兄さんがもうすぐ来てくれるよ」 五週目から、青い服の人間たちがたまにやってきて、スプレーをかけてくれるようになった。 頬の乾きはそれで抑えられた。けれどもコチコチの代わりに、ベタベタするようになってしまった。 でもきっとお兄さんが助けに来てくれる。れいむはそう願っていた。 「お兄さんが来てくれるよ。れいむがまんできるよ」 六週目、突然、隣のマスとの仕切り板がガシャンと開いた。 「ゆゆっ?」「ゆーっ、まりさ!?」 隣にもゆっくりがいた。初日に会ったきり見なかったまりさだった。人恋しさから、思わずすりすりした。 すると、どういうわけか床がぶるぶると震え始めた。 「ゆゆゆゆゆ?」れいむは戸惑いつつも発情してしまった。 「れれれれれいむぅぅ!」「まままままりさぁぁ!」「「すっきりー!!」」 れいむは生まれてはじめてのすっきりをしてしまった。 「ゆぅ、ごめんなさい、おにいさん。れいむ、すっきりしちゃった……」 そのあと、れいむの頭には茎が生え、小さな赤ちゃんたちが実った。 隣のマスとの間にはガシャンと再び仕切りができたが、声は聞こえた。 「れいむ、ゆっくりしたあかちゃんをうむんだぜ!」「ゆん! ゆっくりがんばるよ!」 赤ん坊の成長を心から楽しみにして、れいむは一週間を過ごした。 「ゆっくりうまれてね……!」 七週目、赤ん坊が生まれてすりすりを始めた途端、人間がやってきてガシャンとレバーを引いた。 床板が目の荒い網になり、赤ん坊はみんなボトボトと落ちて、どこかへ転がっていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その後、れいむは悲しみながらも、赤ちゃんが戻ってこないかと一縷の希望を抱き続けた。 「あかちゃんたち、きっとゆっくりもどってくるよ……!」 八週目が来ても、赤ん坊は戻ってこなかった。 「あかちゃんだぢ、どごなのぉぉぉ……!」れいむは悔し涙を流していた。 ガシャンと仕切り板が開いて、まりさが現れた。 「ゆゆっ?」「ゆーっ、まりさ!?」 床がぶるぶると震え始めた。「れれれれれいむぅぅ!」「まままままりさぁぁ!」二匹はすっきりした。 九週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「れいむのあかぢゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!」 楽天的なれいむの心の中にも、ドロドロした黒い不安が生まれ始めていた。 「お兄さん、ここはぜんぜんゆっくりできないよ!」 十週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震え、二匹はすっきりした。 十一週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛、またれいむのあかぢゃんがぁぁぁぁぁぁ!!!」 十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震え、二匹はすっきりした。 十三週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛!! あがぢゃんどらないでねぇぇぇぇぇ!!!」 十四週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震えたが、れいむは拒んだ。 「まりさ、だめだよ! すっきりしないでね!」 「れれれれれいむ、すっきりさせでねえええええ!」 二匹はすっきりした。 十五週目、赤ん坊が生まれたが、二週間前と同じように生まれて十分で床下に落ちていった。 「ゆっきゅりさせちぇぇぇ!」「おかーしゃん、たちゅけてぇぇぇ!」 「ぎあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、まだまだあがぢゃんがあぁぁぁぁ!!!」 十六週目、 ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 床がぶるぶる震えたが、れいむは厳しく拒んだ。 「まりさ、だめだよ! あかちゃんがとられちゃうから、すっきりしないでね!」 「れれれれれいむ、すっきりさせでねえええええ!」 二匹はすっきりした。 十七週目、赤ん坊が生まれたが、れいむは口を大きく開けて、なんとか全員落下前に受け止めた。 「ゆー」「ゆっくち!」「ゆっくちちぇっちぇっ」「ゆっきゅう!」 「ゆああ……! あかちゃんたち、ゆっくりだよ! ゆっくりしていってね……!」 初めて助けることのできた子供たちを、涙を流して祝福したが、十分後に人間が来て持ち去った。 連続六回にわたって愛しの赤ん坊を奪われたれいむは、かなりダメージを受けていた。 うつろな目で宙を眺めて、「ゆあ゛あ゛……ゆあ゛あ゛……」とうめき、時おり「ひぐっ」と嗚咽した。 するとそこへ人間がやってきて、れいむをつついて我に返らせ、噛んで含めるように言った。 「子供を守ろうとしても無駄だ。ゆっくりの子供はすべてここの商品として出荷されるんだ」 「ゆぐっ……あかぢゃん、かえじでね……」 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 すでに四ヵ月、百二十日も狭い棚に閉じ込められていた。 死ぬまで、という言葉がリアルな重みを持ってずっしりとのしかかってきた。 「ゆがああああああああ!!」 れいむは狂的な怒りにかられて、人間に飛び掛ろうとした。 ガシャン、と棚の枠にさえぎられて跳ね返されただけだった。 「ゆがああああああ!! ゆがああああああああああ!!!」 ガシャンガシャンという音が何度も響いた。人間は去っていった。 十八週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 十九週目、赤ん坊が生まれた。 れいむは力なく声をかけて祝福したが、十分後には落下して転がっていった。 れいむの心の中のドロドロは、真っ黒に固まりつつあった。 「お兄さん、お兄さん、ここはいやだよ、はやくたすけてよ……」 二十週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十一週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄さん、お兄さん! はやくきて、れいむつらいよ!」 二十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十三週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざん、お兄ざんっ! れいむいやだよ! あかぢゃんかわいそうだよ!」 二十四週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十五週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざんお兄ざんお兄ざんはやくはやぐもうこんなとごろいやいやいや」 二十六週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十七週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざぁぁんお兄ざぁぁぁんたずげでねぇぇれいぶづらいよぉぉぉ!」 二十八週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 二十九週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「お兄ざぁぁぁぁぁぁぁん! れっれいっぶっも゛っも゛ヴっ、こわっこわ゛れぢゃぅぅぅぅ!」 三十週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十一週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 しかし、一匹だけが網目に噛みついて踏ん張った。 「ゆきゅっ!」「あかちゃん……!」 れいむの磨耗しかかっていた理性が蘇った。 母のしぶとさで、ビー玉ほどの赤ん坊を背後にかばい、自分と壁との間に隠した。 三十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 「まりさ……すっきりしていいよ」 「ゆっ? いいの、れいむ?」 連日れいむの悲鳴を聞かされているまりさも憔悴していたが、れいむの後ろの小さな影を見て、ハッと顔色を変えた。 「れいむ……!」 「まりさ……れいむはこのこのために、ほかのこをすてるよ!」 れいむは涙をこらえて言った。 「おねがい、ゆるしてね……!」 「ゆ、わかったよ、れいむ!」 まりさもれいむの悲壮な決意がわかったのか、強くうなずいた。 「れれれれれいむぅぅ!」「まままままりさぁぁ!」「「すっきりー!!」」 二匹はすっきりした。 三十三週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 れいむは叫んだが、それは演技だった。 背中の後ろにしっかりと、ピンポン玉ほどの赤ちゃんれいむをかばっていた。 「おかーしゃん、ゆっくち!」 「このこのためなら、れいむはおにになるよ……!」 野生動物のような警戒心で青い服の人間の目を交わしつつ、ひそかに流動食を食べさせて、れいむは子供を育てた。 三十四週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十五週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その陰で、テニスボールほどの子ゆっくりが涙していた。 「いもうちょたち、てんごくでゆっくちちてね……!」 三十六週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十七週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その陰で、りんごほどの子ゆっくりが涙していた。 「いもうとたち、てんごくでゆっくりちてね……!」 三十八週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 三十九週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 「れいむのあかぢゃん! あがぢゃあぁぁぁん!!!」 その陰では、グレープフルーツ大になった子ゆっくりが苦しんでいた。 「おかーさん……れいむ、そろそろせまいよ!」 「ゆっ!」 「ゆっくりたすけてね!」 れいむはヒヤリとしたものを感じた。いや、無視しようとしていたが、実はもう二週間も前から感じていたのだ。 このままではいずれ、子ゆっくりも、ゆっくりできなくなってしまうと。 「ゆ、ゆっくりかんがえるよ!」 そう答えつつ、心の中では藁にもすがる思いで願っていた。 (おにーさんおにーさんたすけて! いまならまにあうよ、いましかないよ! れいむのこどもをたすけてね……!!!) 四十週目、ガシャンと仕切りが開いてまりさが現れた拍子に、子れいむがコロンとれいむの前に出た。 まさにその瞬間、棚の前を青い服の人間が通りがかった。 「あれっ、子供いるじゃないか!」 れいむとまりさは、頭が真っ白になった。おたおたしているうちに人間が手を伸ばして子れいむを掴み取った。 「ゆっ、おかあさーん! ゆっくりたすけてねぇぇぇ!!」 「れいむぅぅぅ!!」 「うわぁ、でっかい! これだともう六……七週齢ぐらいか? よくもまあ育てたなあ」 人間はいったん子れいむを床に置き、母れいむをズボッとつかみ出して、奥を調べた。 「おっ、髪を敷いて巣を……すごいなあ、これは報告しなきゃ」 「おかーさん、おかーさぁぁぁん!!!」 「れいむ、にげてね! ゆっくりにげてね!」 子れいむはぴょんぴょんと跳びはねて泣きわめいた。母れいむは必死に子供だけで逃がそうとした。 人間は巣を取り除いてから、そんな母れいむを再び押し込め、ガッチリと枠を閉めた。 そして子れいむを取り上げ、ギュッと片手で握りしめた。 「ゆぶっ? ゆゆっくりやめっやっやべっ、おがぁしゃっゆブッ」 短い抵抗のあと、子ゆっくりはあっさりと潰された。人間はそれを隅の排水溝に捨てた。 れいむの頭の中で、最後の最後に子供が漏らした、おかあさん、という言葉がエコーしていた。 どういうわけか床がぶるぶると震え始めた。 「れれれれれいむぅぅ!」 れいむはデク人形のように無表情のまま、まりさに犯された。 四十一週目、赤ん坊が生まれ、十分後には落下して転がっていった。 れいむは子守唄ひとつ歌わず、それをぼんやりと見つめていた。 それから、さらに十週間、れいむは同じ毎日を過ごした。 まりさに犯され、子供を生み、またまりさに犯され、子供を生んだ。 五十一週目、れいむはまた子供を生んだ。十分後には落下して転がっていった。六匹の赤ん坊がいなくなった。 れいむは二十二回出産して、百五十七匹の赤ん坊を産み、百五十六匹を奪われ、一匹を殺された。 れいむはもう、お兄さんの名を呼んでいなかった。 いつから呼んでいないのかわからなかった。 なぜ呼んでいたのかもわからなかった。 今ではただひとつの言葉しか覚えていなかった。 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 「おまえは死ぬまでそこで赤ん坊を産み続けるんだ」 五十二週目、ガシャンと仕切りが開いて、まりさが現れた。 五十三週目、棚の枠を開けて、人間が手を差し込んできた。 れいむのぼやけて意味をなさない視覚に、顔が映った。 「れいむ、れいむか!? ああ、そのリボンの模様はれいむだな! 俺を覚えてるか?」 れいむは朦朧と眺めていた。そんな妄想はもう何千回も経験していた。 「わからないのか? もうダメになっちゃったのか? かわいそうに……」 ずるっと引き出されて抱かれた。頭の上の茎がゆさっと揺れた。 おにいさん、ゆっくりありがとうね、とれいむは思った。こういう夢は、たとえ夢でも、気が晴れるから好きだった。 「ええ、こいつです。間違いないんで……はい、はい。いえ、はい」 青い服の人間と話し合ったお兄さんが、れいむを運んでいく。 あれ、きょうのゆめはすごいよ。 おそとのけしきまでみえているよ。 ゆっくりできそうなけしきだよ……。 れいむはどんよりとした無表情で、加工所から家までの道のりを眺め続けた。 その目が、次第に明るくなってきた。 「さあ、うちだぞ」 ドアをくぐると、匂いがした。 人間の男の人の匂いだ。 なつかしい匂いだった。 それはまぎれもなく、現実の匂いだった。 れいむの周りを幾重にも覆っていたぼんやりとした膜が、急速に薄れていった。 「ゆ……ゆ……!?」 「おっ、れいむ!? 治ってきたのか?」 「ゆっ、ゆっ、ゆゆゆ……!」 ぽすっ、と座布団の上に置かれた。 そのふかふかの感触。 その甘い自分の匂い。 そこから見える室内。 すべてが、記憶のままだった。 「ゆっ! ……ゆ゛っっ!!! ……ゆ゛ぅっ!!!!!」 れいむはわなわな震えだした。目が見開かれ、大粒の涙がボロボロとこぼれだした。 錆付いてボロボロに朽ちていたはずの心が、再び動き出した。 「こ こ は……れい むの……おうち……」 「れいむ」 ハッと見上げた。カチャカチャと皿を出しながら、お兄さんがウインクしていた。 「ゆっくりしていってね」 「おにいざあああああああああああああん!!!!」 堰を切ったように感情があふれ出した。れいむはびょんびょんと激しくジャンプして、お兄さんに抱きつこうとした。 だが、それはかなわなかった。 足が萎えきっていて、跳ねるどころか這うこともままならなかったのと、近寄ったお兄さんに押さえられたからだ。 「無理しちゃだめだ。それに、赤ちゃんが落ちちゃうだろ」 「ゆっ!? あかちゃん?」 「そうだ。おまえ、あかちゃん大事だろう?」 れいむは愕然として頭上を見上げた。そこに、小さな子供の生った茎があった。 「ゆゆーっ!? れいむにあかちゃんがいるよ?」 「おいおい、気づいてなかったのか?」 笑ったお兄さんが、ふと顔を引き締めた。 「そうか……それほどつらかったんだな」 そう言って、皿に乗せたものをれいむの前に差し出した。 「食べな」 それはいちごを乗せた、白いショートケーキだった。 ガンッ! とれいむの嗅覚を何かが直撃した。 「!?」 戸惑って、目をぱちぱちさせながら、れいむはそれを確かめようとした。 それは甘味の、本物のスイーツの匂いだった。 おそるおそる舌を伸ばして、クリームをすくいとった。 とろぉり……と。 乳脂肪たっぷりの豊かな甘味が舌に乗り、れいむの口内に染み渡り、魂の底まで溶かしていった。 「ゆああああぁ……」 れいむは陶然となった。目が泳ぎ、頬がとろけた。 忘れきっていた、砂糖の香り、味、栄養。それらがれいむから、とうとうあの言葉を引き出した。 「ゆっくり……!」 「お、出たな」 「ゆっくり! ゆっくり、ゆっくり! ゆっくりー! ゆっくりぃぃぃぃぃ!!!」 叫べば叫ぶほど、乾ききっていた心が満たされていくようだった。 凄まじい勢いで本能がこみ上げ、れいむは行儀も何もかも忘れてケーキをむさぼり食った。 お兄さんは追加で三つものケーキを出してくれた。それらもすべて食べた。 食べている最中に、再び滝のように涙が流れ出し、とまらなくなった。 蘇った心に、あとからあとから温かい思いが湧き出していた。 「はっふはっふ! めっちゃ! うめっ! ゆまっ! ゆあい! ゆがっ! ゆあああ! ゆあぁーん! あああああん! あああああんあーんあーんあーああん!」 れいむは食べながら泣き出した。大声で心の限り泣いた。 泣きながらお兄さんに這いよって、ぐりぐりぐりぐりと頬を押し付けた。 「おかえり、れいむ」 あふれる感謝の思いをぶつけるため、れいむはいつまでも泣き叫び続けた。 翌日、赤ん坊が生まれ、十分後も二十分後も、れいむとゆっくりした。 声をかけあい、すりすりし、餌を与え、れいむは親身になって世話をした。 森にいるどんな親にも負けないほど立派な、親ぶりだった。 赤ん坊たちは、「おかーしゃん、すりすりしちゅぎだよ!」と文句を言ったが、れいむはやめなかった。 やめるつもりはなかった。自分の身がすり切れても、子育てに全力を尽くすつもりだった。 百五十七匹分のゆっくりを、与えてやらなければならないのだから。 二ヵ月後、ゆっくりれいむは、お兄さんに頼んで、家族ともども山へ連れていってもらった。 そよ風の吹く緑深い沢で、れいむは箱から出してもらい、草の上に座った。 「おかーしゃん……」 「ゆっくちできそうなところだよ……」 八匹の子供たちが、れいむに寄り添っていった。するとれいむがたしなめた。 「ちがうよ、れいむ、まりさ! ゆっくちじゃなくて、『ゆっくり』だよ!」 「ゆ!」 「わかったよ、ゆっくり!」 「ゆっくりー!」 ぴょん、ぽよん、と子供たちがはねた。 もうみんなトマトほどになり、立派に野山で生きていけそうだった。 それを見届けると、れいむはお兄さんを振り返って言った。 「おにいさん、いままでありがとうね」 「れいむ……」 「れいむはしあわせだったよ! ゆっくりかんしゃしているよ!」 「おかーさぁん……」 子供たちが並んで、ほろほろと涙をこぼした。そんな一座に、れいむはキッとした顔で言った。 「さあ、ゆっくりひとりだちしてね! のやまでゆっくりくらすんだよ!」 「おかーさん!」 「おかーさんはむかし、ゆっくりできなかったよ。こどもたちは、かこうじょのおとーさんや、おかーさんのぶんまでゆっくりしてね! それがおかーさんのねがいだよ!」 うるうると瞳を潤ませた子供たちが、サッと背を向けて駆け出した。 「ゆっくり、いくよ!」 「ゆっくりがんばるね!」 「おかーしゃん、ありがとう!」 「ゆっくり、ゆっくりー!」 ぴょんぴょんと跳ねた子供たちが、次々に草むらに飛び込んだ。 ザザザザザ! と風が渡ったあとには、もう何の痕跡もなかった。 子供たちと同じように涙しながら見つめていたれいむが、振り向いた。 「ゆう……これで、れいむのしごとはぜんぶおわったよ」 「本当によかったのか?」 「ゆっ。お兄さんひとりにまかせるには、おおすぎたからね!」 うなずいたれいむの髪には、あろうことか、白髪が混じっていた。 この二ヵ月、れいむはお兄さんのおかげで心底ゆっくりした。だが、その前の一年が悪かった。 身も心もボロボロにされた加工所の生活が、もともと長くもないゆっくりの寿命を、削り尽くしたのだった。 柔らかな草の上で、大好きなお兄さんに見守られながら、れいむは早くもうっすらとかすれ始めた声で、つぶやく。 「お兄さん、ありがとうね。ほんとにほんとにありがとうね! れいむ、すごくゆっくりできたよ!」 「そうか」 「だいすきだったよ、おにいさん……!」 そう言って、れいむは目を閉じた。このままこの場で、草木と風とともに、ゆっくりと消えていくつもりだった。 お兄さんが、れいむの正面に来て、何か言おうとした。 ……ゆ? れいむは目を開けて聞き返そうとした。 だが、すでにまぶたが開かなかった。 もう、お兄さん。さいごのことばなのに、ゆっくりしすぎだよ……。 ほんのちょっとの悔しさを覚えながら、れいむは死んだ。 * * * * * 加工所の記録などによれば、うちのれいむは、おおよそこんな一生を過ごしたらしい。 最後の二ヵ月は、他のどんなゆっくりよりも飼い主の僕になつき、感謝しながら暮らしていた。 これのどこが虐待だ、とおっしゃる方もいるかもしれない。 だが、これを聞いたらどう思われるだろう? ――つまり、誘拐を装ってれいむを加工所員に引き渡したのは、他ならぬ僕だという事実を。 僕はれいむの笑顔が見たかった。 最高の――比類なき最上の――感動が見たかった。 そのために、あの最低最悪の場所へ、一年にわたってれいむを放り込んだのだ。 そして、生還したれいむの心からの感謝を、体いっぱい受け止めたのだ。 人畜無害な愛護家のような顔で。 僕はすでに、加工所から冷蔵まりさを買ってきてある。 次の感動を得るためだ。一年越しの作戦。薄汚れたアニバーサリープレゼント。 どうだろう。 やってみたいと思わないか? アイアンマン これまでに書いた話 ゆっくりいじめ系1084 ゆっくり実験01 (まりさ解体) ゆっくりいじめ系1093 ゆっくりエレエレしてね! ゆっくりいじめ系1098 アストロン対策 ゆっくりいじめ系1235 少年 二人のお兄さんと干しゆっくり.txt このSSに感想を付ける
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※そもそもSSじゃないかもしれません。 ※実験作です。 ゆっくりたちの名言集 まりさはかりがとくいなんだぜ、でもほんとうにかりたかったれいむのこころはさいごまでかれなかったぜ まりさ、れいむのおそうしきにて かぞくをまもることがゲスならば、まりさはよろこんでゲスになるよ! 越冬中のありす一家を襲ったまりさ けーきさんをおなかいっぱいたべるよりも、みんなといもむしさんをわけあうほうがしあわせーっ!なんだよ 元山育ちの飼いまりさ ここはとかいじゃないよ、じごくだよ 自販機の裏でれいむを食べているまりさ かわがわたれてうらやましい?おちたらずっとゆっくりするんだよ? 目の前で母親が水没したまりさ しんぐるまざーだけど、なりたかったわけじゃないよ 愛するまりさを失ったれいむ あかちゃんがゆっくりできる?じょうだんじゃないよ レイパーの被害者れいむ あかちゃんはゆっくりできるよ、できるんだよ、だかられいむはがんばるよ レイパーの被害者れいむ2 あかちゃん?おいしかったよ? レイパーの被害者れいむ3 レイパーがありすだけだとおもってるなんて、にんげんさんはあんこのうだね! レイパーの加害者れいむ ありすがレイパーなんじゃないよ、レイパーがレイパーなんだよ まりさにレイプされたれいむ まりさみたいにかりがうまくないよ、ありすみたいにとかいはでもないよ、ぱちぇみたいにかしこくないよ、でもれいむはれいむ、しあわせーだよ! ある群れのれいむ とかいはをやめたらこんなにゆっくりできるなんて! 泥まみれで狩りをするありす よだれをたらす、ぺにぺにをだす、さしこむ、かんたんでしょ? 歴戦のレイパー んほっ、んほっ、んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! なんで収録したんだろう わたしは れいぱー じゃない 瀕死のありす よめなくてもよめるっていわないと、ぱちぇにはそれしかないから 群れのぱちゅりー たとえここでかすたーどをはきつくしてもとなりのむれにいくの、ぱちぇにしかできないしごとだもの! 野犬に襲われている群れのぱちゅりー みんながぱちぇをたすけてくれたわ、でもぱちぇのちしきはひとりじゃやくにたたないの 生き延びたぱちゅりー ゲスぱちゅりーってしってる?からだがよわいふりをしているぱちゅりーのことよ まりさを食べるぱちゅりー ぱちぇもおぼうしでかわをわたるべきだったわ、そうすればいまでもいっしょにいられるもの 水没したまりさの番 わかるよー! ちぇん わからないよー! ちぇん わかるけどわからないよー! 赤ゆっくりを食べられたちぇん わからないけどわかるといわないといけない、にんげんさんはむずかしいよー 飼いちぇん みんなのために散る仲間に対して、はじけなさいとはよく言ったものね、嫌な台詞だわ 核ぱちゅりー わたしはゆっくりですよ、だからあのよわっちいゆっくりがだいっきらいなのです きめぇまる ありすがレイパーあつかいされてないてました、きもちはわかります、わたしもゆっくりといっしょにゆっくりしたいです 洞窟に一人ぼっちのきめぇまる 「「「き・め・ぇ・ま・る!き・め・ぇ・ま・る!き・め・ぇ・ま・る!」」」 きめぇまるダンサーズ し ぬ が よ い きめらまる あとがき 勢いだけで作り出したら、最初のまりさだけで全然ネタが浮かんでこない、ボリューム少なくてごめんなさい。 そりゃ名言ってのは自然に出るもので、人為的に作るものじゃないからしょうがないかも。 あと明らかに笑わせようとしているのがあるのもちょっと悩みました、まともなものの合間の清涼剤…ってほど量もないし(笑) 搾り出せば他にもあったけど、SSと言う名の舞台の裏側のようなものが多いから止めておきました。 例:ぎゃくたいされるのはつらいけど、するほうもきっとつらいとおもうんだぜ? 舞台裏は裏でまた考えようかなと思いますが、そもそもこの手法が受け入れられるかどうか。 今までに書いたゆっくり ゆっくり信仰していってね! ゆっくり新技術を導入していってね! ゆっくり体調管理をしていってね! 虐待理由 協定 ゆっくりの能力を得たお兄さん ゆっくり並列宇宙の旅
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飼われいむはおちびちゃんが欲しい 27KB 虐待-普通 同族殺し 飼いゆ ぺにまむ 餡子ンペ09出展 ・餡子ンペ出展『改造/失敗作の末路』 ・ゴミ処理場ネタでテーマ『改造』やろうと思ったけど、間に合わないので別ネタ。 「飼われいむはおちびちゃんが欲しい」 D.O ぺにぺに(まむまむ)と言えば、それはゆっくりにとっての生殖器を意味する。 器官としては単純な構造をしていて、外観はただの穴、 ただしゆっくり自身の意思で、体外に男性器のように飛び出させることもできる構造となっている。 体外に飛び出した状態をぺにぺに、体内に収納して穴のままの状態ならまむまむ、と呼ぶ。 ゆっくりの生殖行為は、一方のぺにぺにをもう一方のまむまむに挿入することで成立する。 ぺにぺにを挿入した側が精子餡、と呼ばれる特殊な餡子をまむまむ側に注入し、 精子餡を受け取った側が胎生型、あるいは植物型にんっしんをするのだ。 というわけで、ゆっくりにとって『ぺにぺに』は、子供を作るのに必要不可欠な器官なのである。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「ゆっくちちちぇっちぇにぇ。」 「ああ、これからは俺が飼い主だ。ゆっくりしていけ。」 れいむは今日、ゆっくりショップから買われた飼いゆっくり。 まだまだ生まれて一週間足らずの赤ゆっくりだ。 その表情は純粋で希望に満ち、おリボンにつけられた飼いゆっくり証明の銀バッジも、キラキラと輝いている。 「ゆっくちー。」 れいむは、生まれて翌日には親離れを済ませられ、涙を流す姉妹たちとともに飼いゆっくりとしての教育を受けた。 人間に迷惑をかけないための最低常識、『飼い主さん』と仲良くするとゆっくりできるということ、などなどである。 商品価値の問題もあるので、教育は生後3日程の間にみっちり行われた。 無論ゆっくり的道徳から見れば理不尽な内容も多く、しかも無条件に愛を与えてくれるはずの両親から引き離され、 それが終われば狭く透明なケースの中で、人間さんの品定めする視線にさらされ続けるのである。 ゆっくりショップでの生活は、まったくゆっくりできない日々であった。 「(ゆっくちできにゃいよ・・・。でみょ、れーみゅはかいぬししゃんと、ゆっくちくらしゅよ。)」 その中で支えとなったのは、『飼い主さんと仲良くすると、ゆっくりできる』という教えであった。 愛を与えられない悲しみ、過酷な教育を受ける苦痛。 だが、飼いゆっくりになれば、飼い主さんに迷惑さえかけなければしあわせーな生活が待っているのだ。 れいむはショーケースの中で、ゆっくりした未来を思い描いていた。 温かく安全なおうち、ゆっくりしたじゅうたんやベッドさん、柔らかく甘いゆっくりしたごはん、 恵まれた環境の中でゆっくりと育ったれいむの前に、ある日、とてもゆっくりしたまりさがやってくる。 まりさと瞬く間に恋に落ちたれいむは、情熱的なすっきりーを存分に行うのだ。 れいむの頭上には6匹のゆっくりしたおちびちゃん、れいむとまりさが3匹ずつ。 その後も何不自由ない生活の中で、おちびちゃん達はすくすくと育ち、やがておとなになる。 かつてのおちびちゃん達は、それぞれがとてもゆっくりしたつがいを見つけ、おちびちゃん達を産むだろう。 れいむが生涯を終えるとき、その周囲を飼い主さんと、何千匹もの自分の餡子を継いだ子たちが囲むのだ。 なんてゆっくりしたゆん生だろう。 これでこそ、れいむがゆっくりとして生まれた意味があるというものだ・・・・・・ 「じゃあ、ぺにぺに切ろうか。」 「・・・・・・ゆっ?・・・どうしちぇしょんなこちょいうにょ?」 「どうしてって。子供が出来たら俺がゆっくりできないだろ。俺がゆっくりできないと、お前もゆっくりできなくなる。」 「ゆ・・・おちびちゃん?ゆぴぅ?」 れいむはまだ赤ゆっくり。 人間で言えば2次性徴よりだいぶ前である。 将来おちびちゃんが欲しいとは思っているが、子作りの方法はよくわかっていない。 「ああ、お前子供だからよくわかんねえか。ぺにぺにってのは、無くなると子供が出来なくなるんだ。 お前に子供は必要ないからな。今のうちにぺにぺにを切っとくんだよ。」 なんとなくだが、れいむもぺにぺにの持つ意味を理解できた。 だが、もうひとつ疑問が湧いてくる。 「ゆぅう・・・?おちびちゃんはゆっくちできりゅよ?おにーしゃんもゆっくちできりゅでしょ?」 「俺はできん。勝手に増やされると迷惑なんだよ。じゃあ切るぞ。」 「ゆぁーん!やめちぇぇぇええ!!」 お兄さんは、れいむを左手でつまみあげると、ぷるぷると30秒程度小刻みに揺らしてやる。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆふぅぅぅうううう?」 れいむの顔はすぐに紅潮し、あごの下辺りからつまようじの先程の小さなぺにぺにが飛び出してきた。 そこに爪切りがそっとあてがわれる。 「ゆっくちやめちぇぇぇ!きょわい『ぷちんっ』・・・・・・ゆぴぃぃぃぃぃい!いぢゃいぃぃぃいい!!ぴぅ、ぅ・・」 「あとはこうして生地で傷埋めて・・・と。終わりだ。じゃあ今後もゆっくりしていってくれ。」 「ゆびゅ・・・ぴぅ。れいみゅ・・・・おちびちゃ・・。」 れいむの夢見た未来は、こうしてあっさりと失われたのであった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「おーい、れいむー。公園いくぞ。」 「ゆっくりいくよ!ゆっゆーん!」 れいむは施術後、数日はお兄さんに厳しい目を向け、避けてはいたものの、月日を重ねるごとに従順になった。 そうして数ヵ月経って成体となった頃には、食事や遊びの時に、しあわせーできる普通の飼いゆっくりになっていた。 少なくとも表面上は。 れいむは、そこそこ優秀な飼いゆっくりだった。 それはれいむのリボンについた銀バッジからも確かであった。 バッジによる飼いゆっくり登録制度は、一応ガイドラインこそあれど、 事実上各自治体や企業で基準はバラバラと、かなり怪しい制度だ。 とはいえ、飼いゆっくりの質を把握すること、野良と区別すること等では役に立つので、採用され続けている。 ここ、虹浦市では以下のような基準となっている。 『銅バッジ』は、いわゆる飼いゆっくり証明証。 ただし躾等は行われていない。個体によっては優秀かも知れないので、マニアや慣れた調教師は好んで購入する。 『金バッジ』は、優良飼いゆっくり認定証。 人間に迷惑をかけない程度の常識を教育され、かつ人間との生活にストレスをあまり感じないという、 飼いゆっくり向きの性格だと認定された個体を示す。 人間の常識の中でゆっくりが生きると言うのは、野生に近い性格であるほど苦痛なものらしい。 では『銀バッジ』はと言うと、この2つの中間、人間に迷惑をかけない程度の常識を教育されたゆっくりである事を示す。 本来自分勝手で無条件に愛情が注がれることを望む赤ゆっくりが、生後数日で手にするには、 なかなかハードルの高いバッジなのであった。 「ゆーん!それじゃ、おにーさん。れいむはおともだちとあそんでくるよ!」 「あー、俺はココで寝てるから、好きに遊んでこい。」 「ゆっくりりかいしたよ!」 そんなわけで、れいむは飼いゆっくり生活のため、奪われた未来のことを忘れられないながらも、 人間と折り合いをつけて生きていくことを選んだのであった。 ・・・この日までは。 ここはデパート屋上に造られた、飼いゆっくり向けの施設が充実した室内公園。 公園では飼いゆっくり達が、いくつかのグループに分かれて各々ゆっくりと遊んでいた。 「こーりょこーりょしゅるよ!」 「わきゃるよー。」 「みゅほぉ!きゃわいいまりしゃにぇ!」 「れいぱーに、うんうんしゅるよ!しゅっきりー。」 「ゆぁーん。ありしゅ、ときゃいはにゃにょにー。」 赤ゆっくりや子ゆっくり達は、同世代の友達を作り、清潔な砂場の中で元気に跳ねまわっている。 「ゆゆーん。れいむのおちびちゃん、ゆっくりしてるよー。」 「ありすのおちびちゃんだって、とってもとかいはなのよ。」 「わかるよー。」 「みょん。」 子・赤ゆっくり達の中には、飼いゆっくりの両親から生まれたおちびちゃん達も多い。 そういった親ゆっくり達は、砂場の外でおちびちゃん達の遊ぶ姿を眺めながら、 子育ての苦労、自分のおちびちゃん達の可愛さ自慢などを楽しげに話している。 実は苦労しているのは飼い主の方なので、この親達はおままごとのような子育てを楽しんでいるだけなのだが。 他には少数のアスリートゆっくり達がぺにぺにやぺにぺに以外を鍛えているが、 大部分は先の2グループと、あと1つ、れいむを含めた去勢済みゆっくりのグループが占めていた。 「ゆぅ。おちびちゃんたち、たのしそうだね。」 「ゆっくりしてるわ。とかいはね。」 「うらやましいよー。」 遊ぶと言っても、おちびちゃんではないので飛んだり跳ねたりすることはない。 元々必要が無ければ運動もやりたがらないのがゆっくりなので、 子供もいない成体ゆっくり達が公園でやることと言えば、もっぱら井戸端会議となる。 未去勢のゆっくり達とは別グループ。 仲良くできるはずもない。 「ありすー、そろそろ帰るわよー。」 「ゆっくりわかったわ。おちびちゃん、もうかえりましょう。」 「ゆわーん。ありしゅ、もっとあしょびちゃいわ。」 「わがままいうのはとかいはじゃないわ。ぺーろぺーろ。」 「ゆゆーん、しゅっきりー。ありしゅ、ゆっくちりきゃいしちゃよ!」 「おちびちゃんは、とってもとかいはね!!すーりすーり、しあわせー!」 「しゅーりしゅーり、ちあわちぇー!」 「ほらほら。早く帰りましょ。今日はありすの好きなシュークリームよ。」 「「ゆっくりー!」」 自分達には得られない幸せを存分に味わうゆっくりを、恨めしそうにれいむ達去勢ゆっくりは眺めていた。 「ゆっくりしたおちびちゃん、ほしいねー。」 「むきゅん!ほうほうもなくはないわ。」 「ゆゆっ!?」×40 今日もそんな愚痴をこぼしていた所、これまた去勢済みのぱちゅりーが井戸端会議の輪に入ってきた。 「ゆぅー。またいなかものの、うそつきぱちゅりーがきたわ。」 「むきゅー!せめて『うわさずき』といってほしいわ!」 このぱちゅりーは、この辺りで飼われているゆっくり達の間では、『情報屋(自称)』として知られているけんじゃ(笑)。 噂から冗談、聞きかじりの知識など、あることないこと収集してはばら撒く、 井戸端会議では必須のキャラクターであった。 まあ、嘘つきぱちゅりーは言いすぎだが口が軽いので、秘密は絶対話せないタイプである。 だが、れいむはぱちゅりーの言葉に食いついた。 「そんなことより、れいむたちでもにんっしんするほうほうがあるの!?」 「わからないよー。」 「むきゅん。ぱちゅりーのじょうほうもうから、ゆっくりできないうわさがながれてきたのよ。まぎれもないじじつよ!」 「ゆっくりしないでおしえてね!」 「むきゅー。それじゃあ、このとっておきのじょうほうを、とくべつにおしえてあげるわ!」 「ゆっくりおしえてね!」×120 結局、みんな興味深々だった。 ・・・・・・。 それは、あまりにゆっくりできない方法であった。 多くのおちびちゃん達を生贄に捧げ、決められた手順に沿って儀式を行う。 幼く罪もない多くの命を犠牲にすることで、ぺにまむを失ったゆっくりでもにんっしんできる、というものである。 ただし、犠牲が多すぎること、手順に間違いがあると効果も失われることから、 これまでこの方法が成功した例は無い、という事らしい。 人間が聞けば矛盾だらけのぱちゅりーの話だったが、ゆっくり達は完全に信じた。 とはいえ、信じることと実行しようと考えることは別問題である。 「わ、わからないよー。」 「そ、そうね。よそのこでも、おちびちゃんはおちびちゃんよ。」 「そ、そんなの、ゆっくりできないみょん。」 ゆっくり殺しはゆっくりできない。 ましてそれがおちびちゃんであれば、なおさらであった。 それは、自分のにんっしんと引き換えにするとしても、高すぎる代償であった。 「むきゅーん。でも、このくらいしないと、ぱちゅりーたちはにんっしんできないわ。」 「もういいよー。ますますゆっくりできないよー。わかってねー。」 「むきゅ、そうね。じゃあ、つぎはとってもゆっくりした、ひとりすっきりーのほうほうをはなすわ!」 「ゆゆっ!!」×300 「むきゅー。まずはこんにゃくさんを・・・」 周囲のみんながぱちゅりーの性生活を垣間見ている頃、れいむはただ1匹、考え込むような表情のまま、 井戸端会議の輪から離れていったのであった。 「おちびちゃん・・・れいむのおちびちゃん・・・」 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− れいむの子作りへの執念の強さは、人間にも、他の去勢ゆっくりにも理解できないものであった。 それは、れいむ自身の生まれ持った性格もあるが、不幸な偶然の積み重ねも原因であった。 そもそも、れいむが育ったゆっくりショップのゆっくり達は、すっきりー禁止の教育は受けていない。 客の中にはすでに飼っているゆっくりのために、つがいとして買っていく人も多いからだ。 教育内容としては『飼い主さんに逆らわない』だけで、その後すっきりー禁止、あるいは去勢するのは飼い主の自由。 実はゆっくりショップでも去勢済み赤ゆっくりは販売しているが、値段は数割増しだ。 これは、ゆっくりの体だけでなく、心にも傷が残らないように施術する技術料である。 もっとも普及している去勢法は、ゆっくりにとって麻酔となるラムネに発情剤を混ぜて眠らせ、 ギンギンになっているぺにぺにを、眠っている間に切り取ってしまう方法だ。 施術は赤ゆっくりのうちに行う。 これは別に博愛主義的な理由ではなく、ぺにぺにを失ったことによる喪失感やショック(+人間への不信感)を、 極力減らすために行っている処置だ。 ぺにぺにの存在理由もよくわかっていないうちに、しかも気がつけば切除されている、というようにすることで、 別にそんなもの無くてもゆっくりできる、という程度の認識になる。 こうすると、成体になった頃自分に子供が出来ないことは理解しても、あきらめがつく程度のショックで済むのだ。 だが、お兄さんは、何も理解していなかった赤れいむに、わざわざぺにぺにの存在理由を教えてしまった。 しかも、自分の顔を見せないなどの対策もせず、飼い主自身の手でぺにぺにを切り取る瞬間を見せつけてしまったのである。 いっそ銅バッジのゆっくりだったら、露骨に嫌悪感を飼い主に見せただろうから、決着は早く着いたはずであったろう。 お兄さんが仕事に出た後、れいむは庭の生け垣の向こうにいる、一匹の野良まりさに声をかけた。 「ゆぅ、まりさ。てにいれてほしいものがあるよ。」 「ゆっへっへぇ。あまあまさえくれれば、しろいこなさんから、きれいなこいしさんまで、なんでもてにいれてやるのぜぇ。」 野良まりさは、ゆっくり的に言えば非合法な商品を扱う売人である。 白い粉=小麦粉はゆっくりの治療薬(外傷用)だが、吸引すれば麻薬にもなる。 まともな飼い主なら、ゆっくりの手の届かないところに管理する。 きれいな小石は、要するに河原の小石とかだが、これまためったに外に出ない飼いゆっくりだと手に入れにくい。 野良だってそれなりに入手ルートは必要だが、案外飼いゆっくりより自由にモノが仕入れられるのだ。 金バッジ認定されるようなゆっくりでなければ、飼いゆっくりにはストレスをため込む者も多い。 れいむも多くの飼いゆっくり同様、しばしばおやつのお菓子で小麦粉を購入しては憂さを晴らしてきていた。 「ゆぅぅ。きょうはちがうよ。・・・・・・のらのおちびちゃんを、たくさんもってきてほしいんだよ。」 「ゆ、ゆ?・・・ゆふぅ。れいむにもそんなしゅみがあるなんて、まりさもしらなかったのぜぇ。ゆへぇ。」 わずかに冷や汗をかきながら、口の端を釣り上げて、陰気な笑みを見せる野良まりさ。 本心からの笑みでは無いことは、さすがにれいむもわかる。 野良まりさは、れいむが野良のおちびちゃんを使って、れいむ自身の薄暗い欲望を満たすつもりなのだと考えたようだった。 実際、野良まりさの客にはそういう飼いゆっくりも多い。 「おちびちゃんで、なにするのぜぇ?じわじわころすのぜ?すっきりーするのぜ?かんしんしないのぜぇ。」 「ゆぅっ、ゆぅー!ちがうよ!なんでもいいから、はやくもってきてね!」 「・・・しゅるいはなんなのぜ?かみがくろいのぜ?それともきんいろなのぜ?かずもいうのぜ。」 野良まりさの声が機械的なモノに変わる。 完全に商談として、頭を切り替えたようだ。 「・・・・・・れいむのおちびちゃんだけ、うまれたてで、このふくろはんぶんくらいでいいよ。」 れいむは、コンビニの買い物袋をまりさに渡す。 「ゆ゛ぅ。ずいぶんはでにやるのぜ・・・。」 「なんでもいいよ。できるの?」 「・・・・・・・・・まかせるのぜ。あしたのおひるにはもってくるのぜ。おなじりょうのあまあまとこうかんなのぜ。」 「わかったよ。」 まりさはコンビニ袋を口にくわえ、路地裏に消えていった。 そして、れいむは自分が引き返せない道に進みつつあることを感じていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 翌日の昼には、生まれたてでつやつやぷにぷにな赤れいむ10数匹をコンビニ袋に詰めてやってきた。 「ゆぴぃ。ゆっくちできにゃいよぉ。」 「しぇまいよぉ。ゆっくちさせちぇー。」 「しゅーやしゅーや、ゆぴー、ゆぴー。」 どうやって手に入れてきたかは野良まりさも語らない。 れいむにとってもなんの興味もない事であった。 「・・・さいごまでよくかんがえるのぜ。いまならまにあうのぜ。」 「まりさにはかんけいないよ。」 「・・・・・・だからいってるのぜ。」 まりさは、結局お菓子を受け取ると、れいむの方を振り向くことすらなく路地裏に消えていった。 れいむは、その姿を見届けることもなく、儀式の準備に取り掛かる。 時刻は太陽さんがオレンジ色に輝き始める頃。 庭の真ん中に、自分の体より少し大きく、深さはあごが隠れるくらいの穴を掘る。 「ゆぴぇ!ゆぅーん、おにぇーしゃん、ゆっくちさせちぇにぇ!」 次に、袋の中でもしょもしょと這う赤れいむを1匹とりだす。 そして、先のとがった棒を咥え、 「ゆぅ、おにぇーしゃん、どうしちゃにょ『ぷすり』ゆぴゃぁぁぁあああ!!」 転がした時に横を向いていた可愛いあんよに棒を突きたてた。 「ゆぁーん。どうしちぇしょんなことしゅるにょ『ころころころ、ぽろり』ゆあぁぁあ、おちりゅぅぅぅ。」 あんよに穴を開けた後は、死なせてしまわないようにそっと転がして、穴の中に放り込む。 「やめちぇ『ぐさり』ゆぴぃぃー。」 「ゆっくちできにゃ『ぷすり』ゆんやぁー。」 1匹取り出してはあんよに穴を開け、穴に落とす。 処置した赤れいむが5匹を越えたあたりからは、袋の中の赤れいむ達も異常に気付いて逃げだそうとするが、 所詮はまだ生まれたてで這いずるくらいしかできない赤れいむ達。 逃げる方法もなく、れいむの届かない所に隠れようと、袋の奥へと逃げ固まり、もしょもしょと身を寄せ合って震えていた。 「はやくでてきてね!」 「ゆぴぁぁー。たしゅけちぇー。」 無論、袋の中でどれほど奥に隠れようと、れいむが舌を伸ばせば簡単に届く。 結局生まれて間もなく親元を離され、袋の中で震えていた赤れいむ達は、 1匹残らずあんよに穴を開けられ、庭の穴の中に敷き詰められた。 「ゆっくちたしゅけちぇー。」 「みゃみゃー。ぴゃぴゃー。」 「おにぇーしゃん、ぺーりょ、ぺーりょ。ゆっくちちちぇにぇ。」 「しゅーり、しゅーり。みんにゃ、ゆっくちちちぇー。」 ぷりぷりとした、可愛い可愛い赤れいむ達。 穴のふちで、息も絶え絶えながらいまだにお互いを気遣う赤れいむ達を眺めていたれいむだったが、 その健気な姿も、決意を揺るがせるには至らなかった。 「おちびちゃんたち!」 「ゆぴぃ。おにぇーしゃん、ゆっくちちちぇー。」 「れいむのおちびちゃんのために、ゆっくりしんでいってね!!」 「ゆ、ゆぴゃぁぁああああ!!」×16 そういうと、れいむは穴の中に、ゆっくりと飛び降りた。 「ゆぴゅ・・・おみょい『ぷちゅ』・・・」 「ゆっくち、ちちゃか『ぐちゃ』・・・」 「どうしちぇ、みゃみゃ『ぷちっ』・・・」 じわり、とれいむのあんよに生温かく水気の多い餡子の感触が広がる。 ぷちりぷちり、とれいむのあんよに赤れいむの潰れる感触が伝わる。 ・・・やがて、赤れいむの声が聞こえなくなり、庭に掘った穴は、新鮮な餡子で満たされた風呂になった。 これこそが、れいむがぱちゅりーから聞いた、儀式の全てであった。 「ゆ、ゆ、ゆぅ。これで、これでおちびちゃんが・・・。」 ぱちゅりーの話が正しく、儀式が成功していれば、 れいむは今夜すーやすーやすると、朝にはれいむのお腹の中に、新しい命が宿っているはずであった。 れいむは全てが終わった後、お兄さんにばれないように庭の穴を埋め、 全身を泥まみれにして餡子風呂の痕跡を隠し、 お兄さんの帰りを待った。 お兄さんはれいむの汚れ方に驚いたものの、 めったに元気よく遊ぶことのないれいむが、珍しくはしゃいでいる事にむしろ喜んでいた。 形ばかりは叱ったものの、お風呂にれいむを入れてやり、珍しくゆっくりフード以外のご飯も作ってあげた。 その日、庭でれいむが何をしたのか、全く疑うことなく。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 翌日、れいむは自分のお腹の中に、たった1つだけではあるが、確かに新しい命の存在を感じた。 ゆっくりの本来の生態から考えると、まったくありえないにんっしんであった。 全ては、思い込みが行動や能力に多大な影響を与える、ゆっくり特有の性質によるものであろう。 胡散臭く凄惨な儀式を、本当に効果があるものだと本気で信じたこと。 それ以上に、おちびちゃんが欲しいという想い。 れいむの良くも悪くも、純粋な願いが、れいむの体に限界を超えさせたのであった。 その日から数日、れいむの食欲は倍増し、瞬く間にサイズが増していったが、 お兄さんも、まさかれいむがにんっしんしているなどとは思わず、 「最近太ってるけど大丈夫か?」 などと言う程度だった。 胎生型にんっしんにしては大きく育っていないことも、ごまかすことが可能だった原因だったかもしれない。 多産なゆっくりは、植物型にんっしんで5~10匹、胎生型でも2~3匹は産む。 まして胎生型なら赤ゆっくり1匹のサイズもビリヤードのボール並になる。 通常のにんっしんであれば、さすがにお兄さんも気付いたであろう。 そしてにんっしんから4日後、通常のにんっしんよりかなり早く、れいむは産気づいた。 今は夕方だが、お兄さんはまだ仕事で家にいない。 出産のタイミングとしては今しかなく、れいむはお兄さんの枕をおちびちゃんの着地地点に置き、出産の体勢に入った。 「ゆ、ぎ、ぎ、ぎぃぃぃ!おちびちゃん!ゆっぐぢうまれでねぇぇぇぇえええ!!」 ぺにぺに、まむまむを失っているれいむは、普通の出産が出来ない。 そのためおちびちゃんは、メリメリとあにゃるから顔を出していた。 うんうんと同じ感覚で産もう、などと器用な事が出来るわけでもなく、れいむの表情は苦痛にゆがむ。 だが、この苦痛の先には明るい未来があるのだ。 そして、 しゅぽーん。ぺちょり。 「ゆ、ゆ、ゆぅぅ・・・」 「おちびちゃん!」 「ゆ、ゆっく、ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!」 「ゆぅぅぅううう!おちびちゃん、れいむのおちびちゃん!ゆっぐぢぢぢぇっぢぇにぇぇぇええ!!」 れいむから生まれた赤ゆっくりは、たった1匹だけ。 ゴルフボールより少し大きい程度の、胎生出産にしては小さすぎる赤れいむであった。 思い込みで乗り越えた限界も、この辺りが精一杯であったのであろう。 「しゅーりしゅーり、ちあわちぇー。」 「ゆぅぅぅううう!ずーり、ずーりぃ!!」 「ゆぁーん、おきゃーしゃん、いちゃいよぉ。」 「ゆふふふぅぅぅ!ごべんでぇぇぇぇええ!!」 だが、一度は完全に諦めていた、自分の体を痛めて産んだおちびちゃん。 大切に、大切に育てていこう、そうれいむは誓ったのであった。 お兄さんにばれたらおちびちゃんが酷い目に会うかもしれない。 自分みたいにぺにぺにを切らせるわけにはいかない。 おちびちゃんを隠すなら、めったに使ってない物置部屋の、机の下をおうちにしよう。 今日までずっといい場所を探していたんだ。 ご飯は、れいむが大食いになったふりして、いくらかお口の中に隠して持っていこう。 うんうん、しーしーはティッシュさんをおうちに持っていけばいい。 物置部屋は奥の部屋だから、夜でもなければ少しくらい声を出しても大丈夫。 大きくなったおちびちゃんには、ゆっくりしたお嫁さんを連れてこないと。 そうだ、公園で遊んでいたあのまりさはどうだろう。 とってもゆっくりした飼いまりさだった。 きっとれいむのおちびちゃんと、相性バッチリだ。 そしたら、おちびちゃんのおちびちゃんも・・・・・・ れいむは、これまで足りない頭で必死に子育て計画を練っていた。 それは、れいむがあの『儀式』を知るずっと前から。 いつか築き上げる、れいむのゆっくりした家族、 じぶんが赤ゆっくりだった頃に夢見た未来のために。 「おい。なんだその赤れいむは?」 まったく無駄だったが。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「だから、何なんだよ。この赤れいむは。」 お兄さんは、れいむが産気づいている間に家に帰って来ていた。 帰っても出迎えが無いのは珍しいので、何かあったのかと思って探してみればこの結果である。 ちなみに赤れいむは、ぴーぴーうるさいのでゆっくりフードにラムネを加えて食べさせ、すーやすーやしてもらっている。 れいむも赤れいむも、お兄さんの机の上に乗せられた。 特にれいむはデスクライトを真正面から向けられ、取り調べの様相となっている。 「しゅーや、しゅーや・・・ゆっくちー。」 「・・・れいむのおちびちゃんだよ。」 「ああ。さっきの見てたから、そこは理解した。でも、何でだ?まむまむは無いんだぞ?父親はだれだ?」 「ゆぅ・・・それは・・・」 ゆっくりは精子餡を体内に受け取るどころか、体に浴びるだけでも時にはにんっしんしてしまうほど、すっきりーの成功率は高い。 あにゃるでも口内すっきりーでもドンと来いである。 ただし、ぺにぺに(まむまむ)を切除されると、思い込み効果であろうが、 にんっしん能力を完全に失うはずなのであった。 「あり得ないだろ。お前の態度を見てると、どっかからチビを拾ってくるかもとは思ってたが。まさか産むとは・・・。」 れいむは、全てを話した。 儀式の話、全てを。 れいむは、自分が野良と接触していたこと、勝手ににんっしんした事を怒られると思っていた。 だが、詳しい話を聞くうち、困惑の中にも怒気を含んでいたお兄さんの表情は消え、 話が終わった頃には、無表情ながら、顔色が多少青ざめていた。 「れいむ。」 「ゆぅ。」 「今の話、全部本当か。」 「そうでず。だまっててごべんだざい。」 お兄さんとしても、さすがに全ては信じられなかったのか、話の途中で庭まで見てくる程だったが、 穴の痕跡を少し掘り返したところで見つけた、小さなリボンの残骸とコンビニ袋を見ると、 それ以上掘り返すまでもなく信じるしかなかった。 「れいむ・・・・・・お前はもう飼えないよ。」 「ゆっ!?ゆぅ、ゆっくりりかいしたよ。」 銀バッジ試験を受けた頃から教えられていたこと。 飼いゆっくりが勝手に子供を作ったら、捨てられたり、折檻を受けたり、 ゆっくりできない事になるということは、ずっと前から聞いていた。 「おにいさん、れいむは、おちびちゃんとゆっくりいきていくよ。・・・さようならだね。」 おちびちゃんは、今も机のど真ん中で、仰向けに寝転がって気持ちよさそうに寝息を立てている。 「ゆぴー、ゆぴー。もうたべられにゃいよぉ・・・」 このおちびちゃんが、野良として過酷な環境に生きていかなければならないのはつらいが、 もはやれいむにはどうしようもない事であった。 お兄さんは文房具立てに立ててあったはさみを手に取ると、 赤れいむの口のすぐ下とぺにぺにの位置に先端を押し付け、 しょきん 赤れいむの腹を縦に切り裂いた。 「ゆ・・・ぴゅ・・・」 赤れいむは相変わらず穏やかな表情のまま、2~3度ぷるぷるっ、と痙攣すると、 口の端から餡子を一滴たらし、そのまま動かなくなった。 「?・・・ゆぁぁっぁああああああー!ゆっぐぢぢでぇぇえええ!」 れいむは赤れいむの傷口をぺーろぺーろして癒そうとするが、 舌が赤れいむに触れるたびに、腹の傷口から水気の多い餡子がごぽっと流れ出す。 れいむの見ている前で、赤れいむは安らかな表情のまま餡子の水たまりを広げていき、 へにょへにょとしぼんでいった。 「ゆびぇぇぇぉえええええ!!なんでぇぇぇえ!なんでなのぉぉおお!おにいざぁぁあん!!」 「・・・子供に罪は無いからな。楽に済ませた。」 「なにいっでるのぉぉぉぉぉ!!」 「俺も、育て方失敗したな。」 「ゆぁぁぁあああああ!!おちびぢゃんがぎらいなら、ずでればいいでじょぉぉおお!どおぢで!どおじでぇぇえええ!!」 お兄さんは、飼えないと言った理由をれいむが誤解している事をわかっていたが、もはや訂正しなかった。 ゆっくりが嘘をついたり、ごまかしたり、わがままを言ったり、物を壊したりするのは、叱りはするが別に捨てる理由にはならないと。 たとえ野良の赤ゆっくりを拾って、隠れて育てていたとしても、それは変わらないこと。 ひょっとしたら、1匹くらいしょうがないと、れいむと一緒に飼ってあげたかも知れないこと。 しかし、今後もれいむを飼っていくには、今回の行いは余りにもおぞましすぎたのだ。 お兄さんもゆっくりの育て方を知らなすぎたと反省してはいたが、このれいむが特殊な部類であろうことは、さすがに理解できていた。 それにもうひとつ、れいむは誤解していた。 「ゆぎぃぃぃいいいい!!はなしでぇぇえええ!れいむをはなじでぇぇえええ!!」 お兄さんは先ほど穴から掘り出してきた、かつて野良赤れいむが詰められていたコンビニ袋にれいむを詰め込む。 赤れいむの遺体も一緒に。 「ゆぁぁあぁあああ!おちびじゃん!おぢびぢゃぁぁあああん!!」 そして、口をしっかりと結んでれいむを閉じ込めると、かかとをそっとれいむの頭の真ん中に乗せた。 「れいむは、れいむはのらになっで!もっどおぢびぢゃんをうむんだよぉぉおお!! たぐざんのおぢびじゃんど、おぢびぢゃんのおぢびぢゃんど、おぢびぢゃんのおぢびぢゃんのおぢびぢゃんど・・・」 れいむは誤解していた。飼いゆっくりを生きたまま捨てるのは、マナー違反だ。 「ゆあぁぁああああ!!れいむはおぢびじゃんとゆっぐりずるんだぁぁああ!!ゆひぃ!ゆひぃぃい!ゆっぐぢ」 お兄さんはそっと、全体重をかかとにかけた。 ・・・・・・ぶじゅり。 挿絵 by儚いあき 餡小話掲載作品 ふたば系ゆっくりいじめ 132 俺の嫁ゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 148 ここはみんなのおうち宣言 ふたば系ゆっくりいじめ 157 ぱちゅりおばさんの事件簿 ふたば系ゆっくりいじめ 305 ゆっくりちるのの生態 ふたば系ゆっくりいじめ 436 苦悩に満ちたゆん生 ふたば系ゆっくりいじめ 628 ゆきのなか ふたば系ゆっくりいじめ 662 野良ゆっくりがやってきた 本作品 『町れいむ一家の四季』シリーズ 前日談 ふたば系ゆっくりいじめ 522 とてもゆっくりしたおうち 『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど) 春-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 161 春の恵みさんでゆっくりするよ 春-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 154 竜巻さんでゆっくりしようね 春-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 165 お姉さんのまりさ飼育日記(おまけ) 春-2-3. ふたば系ゆっくりいじめ 178 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい(おまけのおまけ) 春-2-4. ふたば系ゆっくりいじめ 167 ちぇんの素晴らしきゆん生(おまけ) 春-2-5. ふたば系ゆっくりいじめ 206 町の赤ゆの生きる道 夏-1-1. ふたば系ゆっくりいじめ 137 真夏はゆっくりできるね 夏-1-2. ふたば系ゆっくりいじめ 139 ゆっくりのみるゆめ(おまけ) 夏-1-3. ふたば系ゆっくりいじめ 174 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ(おまけのおまけ) 夏-1-4. ふたば系ゆっくりいじめ 235 てんこのインモラルスタディ(おまけのおまけのおまけ) 夏-1-5. ふたば系ゆっくりいじめ 142 ゆうかりんのご奉仕授業(おまけ) 夏-2-1. ふたば系ゆっくりいじめ 146 雨さんはゆっくりしてるね 夏-2-2. ふたば系ゆっくりいじめ 205 末っ子れいむの帰還 秋-1. ふたば系ゆっくりいじめ 186 台風さんでゆっくりしたいよ 秋-2. ふたば系ゆっくりいじめ 271 都会の雨さんもゆっくりしてるね 冬-1. ふたば系ゆっくりいじめ 490 ゆっくりしたハロウィンさん 『町れいむ一家の四季』シリーズ 後日談 ふたば系ゆっくりいじめ 249 Yの閃光 ふたば系ゆっくりいじめ 333 銘菓湯栗饅頭 ふたば系ゆっくりいじめ 376 飼いゆっくりれいむ ふたば系ゆっくりいじめ 409 町ゆっくりの食料事情 ふたば系ゆっくりいじめ 224 レイパーズブレイド前篇(おまけ) D.Oの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓右に同じ -- 2016-09-01 21 32 39 やっぱバッジ付きでもバカはバカなんだよな。根本的な部分は、何一つ変わっちゃいない。 -- 2016-05-05 21 54 11 取り敢えずれいむは糞だな -- 2016-02-23 15 26 13 去勢のやり方さえ変えてればこうわならなかった -- 2014-04-18 14 27 33 半分以上は去勢の仕方に問題が有りすぎたお兄さんの責任でもあるな。 このれいむにエリザベート・バートリー級の狂気を感じた。 -- 2012-11-28 01 59 40 人間じゃなくてゆっくりに全ての虐め行為を代弁させている感じがして下衆だなぁ。 内容は面白いけど。 -- 2012-06-12 15 14 10 べつににんっしんしなくても、まりさに調達してもらった赤ゆを自分の赤ちゃんにすればよかったのに。 馬鹿なれいむだったね。 -- 2012-02-28 04 45 05 一生モノのトラウマだよ!お姉さん最悪!もっと下さい。 -- 2012-02-27 22 01 20 今回はお兄さんが悪いな。 銀バッジなんて買うから。やっぱり買うなら金にしないと。 安く銅とか銀とかかって殺すことになるなら、飼いやすい金と飼い方のマニュアルを用意するのがペットを買うということだろう。 -- 2011-10-22 09 05 34 お兄さんいかにやりすぎだ・・・。 俺ゆっくり飼ってみたい -- 2011-08-11 10 06 06 これは珍しいケースなんだから、学会発表モノじゃ無いのか? もったいない・・・。 -- 2011-07-12 22 42 47 商人まりさ凄ぇなw お兄さんはけじめが有って優しい人なんだねー。今度飼うゆっくりと幸せになる事を祈るよー -- 2010-10-24 21 51 51 楽に殺してあげるなんていいお兄さんだな 俺だったらヒャッハーしてるわ -- 2010-09-28 17 03 28 この商人まりさが未成ゆんででてくるゲスまりさか -- 2010-08-12 23 33 33 これめっちゃおもしろい!! 望まない去勢のせいで気が病んでしまったんだな けじめのあるお兄さんで良かった -- 2010-07-30 17 34 08 商人まりさは実は良いゆっくりだな -- 2010-07-29 00 57 05 面白かったです。 れいむが夢見てた、何千匹もの自分の餡子を継いだ 子供たちに囲まれて生涯を終えるってとこ。気持ち悪すぎて目眩がした。 -- 2010-07-20 16 54 25 流石にコレはゆっくりの生体を勉強してても予想できんだろ… 想像妊娠で出産まで出来るってなにごと… -- 2010-07-14 14 35 25 思い込みってすごいな・・・・。処分するのは当然の処置だな。 -- 2010-06-27 23 36 03 お兄さん、ペット飼う前には勉強しとけよ -- 2010-06-22 08 54 54
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年がら年中ゆっくりを虐待している俺だが、たまには生産的なこともする。 「ゆっくりしていってね!」 目の前には、5匹の赤れいむ。 1週間前に、近所の森にいた茎を生やしたゆっくりから毟り取ってきたものだ。 親ゆっくりは引っこ抜くついでに生ゴミにしておいた。 「おう、お前ら行くぞ」 バスケットに5匹の赤れいむを入れて、俺は家を出た。 向かう先は近所の森。 そこにターゲットのゆっくりがいるのだ。 そのターゲットのためだけに、俺はこの赤れいむ5匹を育てた。 「ゆっくりー!」 見よ。このゆっくりした赤れいむを。 俺が必死こいて育て上げた、もとい調教した結果を。 ゆっくちなどと糞ガキ丸出しのセリフなど言わない。 ぷりぷりした体はやわらかく、弾力に富み、なめらかだ。 指で触れると、まるでパウダーでもまぶしているかのようにススーっと滑る。 瞳はキランキランに輝き、髪の毛は美しいキューティクルを・・・ と、まあ要するに超ゆっくりしてる。 近所のゆっくりパチュリーに見せたら、あまりのゆっくりっぷりに興奮したのか、クリームを吐き散らして死んだ。 エサは虫やら草なのだが、そこに各種サプリメントを振りかけまくったので舌が肥えることなくムッチリしたのだ。 「今日は、近所のおねーさんに会わせてやろう。社会見学ってヤツだな。いい子にするんだぞ?」 近所のおねーさんというのは、ターゲットであるゆっくり霊夢のこと。 成体で、6匹家族だ。 れいむと5匹の生後1週間の赤ゆっくり。 赤ゆっくりは全部まりさ種だ。 なぜなら今回のネタのために、俺が隙を見てれいむ種だけ皆殺しにした。 伴侶のまりさも邪魔だったので、狩りに出ていた時に生ゴミに出した。 そうこうしている間に、ターゲットの住む洞窟についた。 とりあえず定番のセリフでいこう。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ?ゆっくりしていってね!」 「ゆっきゅり!」 「ゆっくち!」 「ゆっくい!」 「ゆっくてぃ!」 「ゆっくぴ!」 1匹の親れいむと、5匹の糞カスみたいな赤まりさが返事に応えてくれた。 さっそく本題に入る。 「れいむよ、かくかくしかじかだ」 「ゆっくりりかいしたよ!」 1行で理解してくれて助かる。 3日ほど俺の赤れいむを預かってほしいという話である。 話の途中で嫌な顔をしたが、赤れいむを見せたらすぐに笑顔になった。 野生の親れいむにとって、俺の赤れいむは最高にゆっくりしている存在だ。 つい一緒にゆっくりしたくなったのだろう。 夏なので腐るほど虫がいるので食糧にも困るまい。 「そんじゃ、3日後に引き取りにくるから」 「ゆっくりさよならだよ」 俺は赤れいむ5匹を巣に入れてから、家に帰った。 「おにいさんのおチビちゃんたち、れいむのおうちでゆっくりしていってね」 「ゆっくちちていっちぇね!」 「まりしゃとあしょびたかったらクッキーちょうだいにぇ!」!」 「まりしゃたちとゆっくちちたかったらごはんちょーらいね!」 「まりしゃのほうがゆっくちちてるね!」 「にんげんしゃんのごはんをちょーらいね!」 小汚い洞窟に残された赤れいむに、家族が歓迎を示す。 洞窟同様、薄汚い家族に赤れいむは気分が悪くなったが、男の躾がよかったのでそれには触れなかった。 「ゆっくりするね!」 「れいむおねーさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりおせわになるよ!」 「いっしょにゆっくりしようね!」 「ゆっくりしていってね!」 その言葉に、親れいむは「ゆっ」と声を上げた。 「ゆゆ。おチビちゃんたちは、もうおとなのことばがしゃべれるんだね!すごくゆっくりしてるよ!」 自分の子供、赤まりさはお子様な言葉遣いだというのに。 なんてゆっくりした赤ちゃんなのだろう。 親れいむは感動した。 そして、3日の社会見学が始まった。 それは親れいむにとっては感動の連続であった。 朝。 いつもは赤まりさを無理やり起こしていた。 きっと赤れいむもそうなるのだろう。 そう思っていたが、なんと赤れいむは親れいむよりも早く起床していた。 「ゆっくりおきたよ!」 なんとハツラツな笑顔だろう。 親れいむが大切にしている朝一番のすりすりは、赤れいむと行った。 「れいむもかりにいくよ!」 「おねーさんといっしょにいくよ!」 朝食後、そんなことを赤れいむは言った。 赤ゆっくりが狩りをするなど聞いた事もなかった親れいむは驚く。 「ゆ・・・!?おチビちゃんたちは、もうかりができるの?」 赤れいむは、生まれたときから狩りをさせられていた。 男の躾は凄まじく、狩りに出ると親れいむよりも多くの食糧を集めた。 あまりの素晴らしさに、親れいむは赤れいむにたっぷりぺーろぺろをしてあげた。 ちなみに5匹の赤まりさは巣穴で呑気に寝ていた。 帰り道、川に差し掛かると赤れいむはそこで立ち止まった。 「ゆ?どうしたの、おチビちゃん?」 「れいむ、すっきりするよ」 「れいむも!」 「すっきりはゆっくりできるよ」 「まいにちすっきりするんだよ!」 「すっきりしたいよ!」 言うが早いか、川の水で体を洗い始める赤れいむ5匹。 互いに髪をなめ合ったり、すりすりをして皮の汚れを落としている。 「す、すごいよ!!おチビちゃんはすごくゆっくりしてるよ!!」 ゆっくりにとって水浴びは大切なのだ。 耐性があるとはいえ、あまりにも汚いとカビだらけになるから。 だが、水に弱いゆっくりにとって水浴びはあまり好きになれないもの。 赤まりさは水浴びが大嫌いだった。 それなのに赤れいむは、こんなにも身ぎれいにすることを喜んでいる。 親れいむは赤まりさの気分の悪くなるような体臭を思い出していた。 「むーちゃむちゃ!ちゃーわせー!」 「うっめ!むっちゃうみぇ!!」 「むちゃべっ!むぢゃっ!ゆひっ!!」 「むっちゃむちゃ!!」 「うみぇっ!!むっちゃうみゅえ!!!」 「しあわせー」 「とってもゆっくりできるごはんだね」 「ゆっくりしておいしいね」 「れいむもしあわせー」 「みんなでごはんをたべるとゆっくりできるね」 「・・・ゆぅ」 3日目の夜。 晩飯をたべながら、親れいむは深く息を吐いた。 赤まりさの食べ方の汚いこと汚いこと。 元飼いゆっくりの親れいむには見苦しいことこの上ない。 ついつい甘やかして育ててしまったので、自己責任といえばそれで終わりなのだが。 それに比べてどうだ。 赤れいむの実にゆっくりとしたご飯の食べ方は。 親れいむは頭を抱えた。全身が頭なのは気にしてはいけない。 「ゆ、おチビちゃん。おくちにあんよがついてるよ。ぺーろぺろ」 親れいむは赤れいむの口についた、コガネムシの足の切れはしを舐めとった。 それを見た赤まりさが、悔しそうな顔をして親れいむに顔を向ける。 「おかーしゃん!!まりしゃもいっぱいついちぇるよ!!ぺーろぺろちてね!!」 「ゆっ!まりしゃもだよ!!」 「まりしゃにもぺーりょぺりょちてね!!」 「れーみゅにだけぺーろぺろはじゅるいよ!」 「はやくぺーろぺろちてよ!」 中には、エサの中にわざと顔を突っ込むボケもいた。 「ゆぅ・・・」 明日、お兄さんに赤れいむを引き渡したらこのゴミクズと暮らすのか。 そう思うだけで親れいむは空しくなった。 数日前まで、あんなに可愛いと思っていた赤まりさが今ではただの不良債権に感じる。 それを赤まりさもなんとなく感じているようで、最近では親れいむに甘えることが多い。 もっとも、それがウザさを強調して親れいむは更に赤まりさが嫌いになっていたのだ。 「ゆぅ・・・れいむは、おチビちゃんたちとはなれたくないよ・・・」 こんなにゆっくりした赤ちゃんと離れたくない。 自分と同じ種の、こんなにゆっくりした赤ちゃんと離れたくない。 親れいむは切実にそう思っていた。 赤まりさとだけの生活に戻りたくなかった。 伴侶が死んで、だいぶ経つ。 もう赤まりさへの最後の未練、死んだ伴侶の思い出もほとんど消えていた。 哀れ餡子脳。 翌日。 赤れいむの引き渡しは滞りなく行われた。 早朝に現れた男は、親れいむの話を聞きもせず、さっさか赤れいむを回収していった。 この赤れいむ達は、これからも似たような系統のネタの仕込みに利用されることになる。 「ゆぅ・・・・」 巣に残った親れいむはため息をついていた。 「ゆっ♪」 「ゆゆー!こりぇでおかーしゃんはまりしゃたちだけのものだよ!」 「これでゆっくちできりゅね!」 「ちゃーわせー!」 「ゆ♪」 逆に、親を赤れいむから奪い返した気分の赤まりさはニコニコだ。 すぐにこの笑顔が曇ることになるのだが。 さらに翌日。 赤まりさは枝でぶっ叩かれて起こされた。 「ゆっくりおきてね!!もうあさなんだよ!!」 「ゆげっ!!」 「ゆぐっ!?」 「ゆぎゅっ!?」 「ゆぎゅぅ・・・」 「ゆぎゃっ!!」 赤まりさが起きると、そこにはプリプリと怒った親れいむが。 びくびくしながら、赤まりさは親れいむの次のセリフを待った。 「あのおチビちゃんたちはちゃんとおきてたよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 テキトーに返事をする赤まりさ達。 あんないなくなった奴なんかどうでもいい。 赤まりさはそう思っていた。 それよりも重要なものがある。 朝一番のすりすりだ。 これはとてもゆっくりできる。 一日を生きる活力となるすりすりなのだ。 「おかーしゃん、まりしゃはんしぇいしたから、すーりすりをしてね!」 「まりしゃにもおねが 「うるさいよっ!おねぼうをするゆっくりできないこにはすーりすりはなしだよっ!!」 そして体当たりをされた。 ある意味、頬のふれあいである。 さらに数時間後。 親れいむは狩りの準備を始めた。 あれから何かと赤れいむと比較されっぱだった赤まりさは、ようやくゆっくりできそうだと喜んでいた。 が。 「れいむのおチビちゃん。きょうからはいっしょにかりにいくよ!」 赤まりさは一瞬、真白になった。 何を言っているんだコイツは、的な感じで。 「どぼじでしょんにゃこちょいうのおぉお!?」 「まりしゃはゆっぐちぢだいよぉお!!」 「あかぢゃんはゆっぐりずるのがじごどでじょおおぉお!?」 「ゆっぐりざぜでよぉお!!」 「ごんなんじゃゆっぐぢできにゃいよぉおお!!」 「だまってね!あのゆっくりしたほうのおチビちゃんたちは、ちゃーんとかりができたよ!」 ゆっくりしてない方のおチビちゃん5匹は泣きながら抗議をした。 自分達はまだゆっくりしなくちゃいけないのだと。 だがそれに返ってきたのは言葉ではなく、体当たりと枝だった。 「ゆべ・・・」 「ゆぼ・・・わがだよ・・・」 「がりに・・・いぎまぢゅ・・・・」 「・・・」 「・・・」 「まったく、ぜんぜんごはんがとれなかったね。ほんとうにゆっくりしてないおチビちゃんだよ!」 初狩りで、しかも赤ゆっくりが取れる食糧などたかがしれている。 5匹で集めた食糧は、小指の先ほどの量だった。 「それがおまえたちのごはんだよ!ゆっくりりかいしてね!!」 「どぼじじぇ・・・」 「おがーじゃ・・・」 「もっど・・・ゆっぐぢ・・・」 「おにゃか・・・しゅいた・・・・」 「ごんなんじゃ・・・ゆっぐぢ・・・」 「ごはんのたべかたもきたないし、ちょうどよかったね!これでれいむはゆっくりできるよ!」 その後、赤まりさは無理やり水浴びをさせられた。 体力のなくなっていた3匹がそのまま川に流れていき、残り2匹はその後の体罰で死んだ。 「ゆゅー・・・」 親れいむは悩んでいた。 それは群れの赤ゆっくりが、全然ゆっくりしていないことだ。 バカ丸出しの言葉遣い、臭い体、狩りもできないタダメシ食らいのごく潰し、そんなダメなものばかり。 「こうなったら、みんなでしつけしようね!」 この前、赤れいむ5匹を群れのみんなに紹介したら、1匹残らず感動していた。 ならば、群れの子供達がゆっくりしていないことは簡単に理解できるだろう。 この群れをよりゆっくりした群れにするため・・・ れいむは固い意思と共に、リーダーの下へと跳ねて行った。 おわり。
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年がら年中ゆっくりを虐待している俺だが、たまには生産的なこともする。 「ゆっくりしていってね!」 目の前には、5匹の赤れいむ。 1週間前に、近所の森にいた茎を生やしたゆっくりから毟り取ってきたものだ。 親ゆっくりは引っこ抜くついでに生ゴミにしておいた。 「おう、お前ら行くぞ」 バスケットに5匹の赤れいむを入れて、俺は家を出た。 向かう先は近所の森。 そこにターゲットのゆっくりがいるのだ。 そのターゲットのためだけに、俺はこの赤れいむ5匹を育てた。 「ゆっくりー!」 見よ。このゆっくりした赤れいむを。 俺が必死こいて育て上げた、もとい調教した結果を。 ゆっくちなどと糞ガキ丸出しのセリフなど言わない。 ぷりぷりした体はやわらかく、弾力に富み、なめらかだ。 指で触れると、まるでパウダーでもまぶしているかのようにススーっと滑る。 瞳はキランキランに輝き、髪の毛は美しいキューティクルを・・・ と、まあ要するに超ゆっくりしてる。 近所のゆっくりパチュリーに見せたら、あまりのゆっくりっぷりに興奮したのか、クリームを吐き散らして死んだ。 エサは虫やら草なのだが、そこに各種サプリメントを振りかけまくったので舌が肥えることなくムッチリしたのだ。 「今日は、近所のおねーさんに会わせてやろう。社会見学ってヤツだな。いい子にするんだぞ?」 近所のおねーさんというのは、ターゲットであるゆっくり霊夢のこと。 成体で、6匹家族だ。 れいむと5匹の生後1週間の赤ゆっくり。 赤ゆっくりは全部まりさ種だ。 なぜなら今回のネタのために、俺が隙を見てれいむ種だけ皆殺しにした。 伴侶のまりさも邪魔だったので、狩りに出ていた時に生ゴミに出した。 そうこうしている間に、ターゲットの住む洞窟についた。 とりあえず定番のセリフでいこう。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ?ゆっくりしていってね!」 「ゆっきゅり!」 「ゆっくち!」 「ゆっくい!」 「ゆっくてぃ!」 「ゆっくぴ!」 1匹の親れいむと、5匹の糞カスみたいな赤まりさが返事に応えてくれた。 さっそく本題に入る。 「れいむよ、かくかくしかじかだ」 「ゆっくりりかいしたよ!」 1行で理解してくれて助かる。 3日ほど俺の赤れいむを預かってほしいという話である。 話の途中で嫌な顔をしたが、赤れいむを見せたらすぐに笑顔になった。 野生の親れいむにとって、俺の赤れいむは最高にゆっくりしている存在だ。 つい一緒にゆっくりしたくなったのだろう。 夏なので腐るほど虫がいるので食糧にも困るまい。 「そんじゃ、3日後に引き取りにくるから」 「ゆっくりさよならだよ」 俺は赤れいむ5匹を巣に入れてから、家に帰った。 「おにいさんのおチビちゃんたち、れいむのおうちでゆっくりしていってね」 「ゆっくちちていっちぇね!」 「まりしゃとあしょびたかったらクッキーちょうだいにぇ!」!」 「まりしゃたちとゆっくちちたかったらごはんちょーらいね!」 「まりしゃのほうがゆっくちちてるね!」 「にんげんしゃんのごはんをちょーらいね!」 小汚い洞窟に残された赤れいむに、家族が歓迎を示す。 洞窟同様、薄汚い家族に赤れいむは気分が悪くなったが、男の躾がよかったのでそれには触れなかった。 「ゆっくりするね!」 「れいむおねーさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりおせわになるよ!」 「いっしょにゆっくりしようね!」 「ゆっくりしていってね!」 その言葉に、親れいむは「ゆっ」と声を上げた。 「ゆゆ。おチビちゃんたちは、もうおとなのことばがしゃべれるんだね!すごくゆっくりしてるよ!」 自分の子供、赤まりさはお子様な言葉遣いだというのに。 なんてゆっくりした赤ちゃんなのだろう。 親れいむは感動した。 そして、3日の社会見学が始まった。 それは親れいむにとっては感動の連続であった。 朝。 いつもは赤まりさを無理やり起こしていた。 きっと赤れいむもそうなるのだろう。 そう思っていたが、なんと赤れいむは親れいむよりも早く起床していた。 「ゆっくりおきたよ!」 なんとハツラツな笑顔だろう。 親れいむが大切にしている朝一番のすりすりは、赤れいむと行った。 「れいむもかりにいくよ!」 「おねーさんといっしょにいくよ!」 朝食後、そんなことを赤れいむは言った。 赤ゆっくりが狩りをするなど聞いた事もなかった親れいむは驚く。 「ゆ・・・!?おチビちゃんたちは、もうかりができるの?」 赤れいむは、生まれたときから狩りをさせられていた。 男の躾は凄まじく、狩りに出ると親れいむよりも多くの食糧を集めた。 あまりの素晴らしさに、親れいむは赤れいむにたっぷりぺーろぺろをしてあげた。 ちなみに5匹の赤まりさは巣穴で呑気に寝ていた。 帰り道、川に差し掛かると赤れいむはそこで立ち止まった。 「ゆ?どうしたの、おチビちゃん?」 「れいむ、すっきりするよ」 「れいむも!」 「すっきりはゆっくりできるよ」 「まいにちすっきりするんだよ!」 「すっきりしたいよ!」 言うが早いか、川の水で体を洗い始める赤れいむ5匹。 互いに髪をなめ合ったり、すりすりをして皮の汚れを落としている。 「す、すごいよ!!おチビちゃんはすごくゆっくりしてるよ!!」 ゆっくりにとって水浴びは大切なのだ。 耐性があるとはいえ、あまりにも汚いとカビだらけになるから。 だが、水に弱いゆっくりにとって水浴びはあまり好きになれないもの。 赤まりさは水浴びが大嫌いだった。 それなのに赤れいむは、こんなにも身ぎれいにすることを喜んでいる。 親れいむは赤まりさの気分の悪くなるような体臭を思い出していた。 「むーちゃむちゃ!ちゃーわせー!」 「うっめ!むっちゃうみぇ!!」 「むちゃべっ!むぢゃっ!ゆひっ!!」 「むっちゃむちゃ!!」 「うみぇっ!!むっちゃうみゅえ!!!」 「しあわせー」 「とってもゆっくりできるごはんだね」 「ゆっくりしておいしいね」 「れいむもしあわせー」 「みんなでごはんをたべるとゆっくりできるね」 「・・・ゆぅ」 3日目の夜。 晩飯をたべながら、親れいむは深く息を吐いた。 赤まりさの食べ方の汚いこと汚いこと。 元飼いゆっくりの親れいむには見苦しいことこの上ない。 ついつい甘やかして育ててしまったので、自己責任といえばそれで終わりなのだが。 それに比べてどうだ。 赤れいむの実にゆっくりとしたご飯の食べ方は。 親れいむは頭を抱えた。全身が頭なのは気にしてはいけない。 「ゆ、おチビちゃん。おくちにあんよがついてるよ。ぺーろぺろ」 親れいむは赤れいむの口についた、コガネムシの足の切れはしを舐めとった。 それを見た赤まりさが、悔しそうな顔をして親れいむに顔を向ける。 「おかーしゃん!!まりしゃもいっぱいついちぇるよ!!ぺーろぺろちてね!!」 「ゆっ!まりしゃもだよ!!」 「まりしゃにもぺーりょぺりょちてね!!」 「れーみゅにだけぺーろぺろはじゅるいよ!」 「はやくぺーろぺろちてよ!」 中には、エサの中にわざと顔を突っ込むボケもいた。 「ゆぅ・・・」 明日、お兄さんに赤れいむを引き渡したらこのゴミクズと暮らすのか。 そう思うだけで親れいむは空しくなった。 数日前まで、あんなに可愛いと思っていた赤まりさが今ではただの不良債権に感じる。 それを赤まりさもなんとなく感じているようで、最近では親れいむに甘えることが多い。 もっとも、それがウザさを強調して親れいむは更に赤まりさが嫌いになっていたのだ。 「ゆぅ・・・れいむは、おチビちゃんたちとはなれたくないよ・・・」 こんなにゆっくりした赤ちゃんと離れたくない。 自分と同じ種の、こんなにゆっくりした赤ちゃんと離れたくない。 親れいむは切実にそう思っていた。 赤まりさとだけの生活に戻りたくなかった。 伴侶が死んで、だいぶ経つ。 もう赤まりさへの最後の未練、死んだ伴侶の思い出もほとんど消えていた。 哀れ餡子脳。 翌日。 赤れいむの引き渡しは滞りなく行われた。 早朝に現れた男は、親れいむの話を聞きもせず、さっさか赤れいむを回収していった。 この赤れいむ達は、これからも似たような系統のネタの仕込みに利用されることになる。 「ゆぅ・・・・」 巣に残った親れいむはため息をついていた。 「ゆっ♪」 「ゆゆー!こりぇでおかーしゃんはまりしゃたちだけのものだよ!」 「これでゆっくちできりゅね!」 「ちゃーわせー!」 「ゆ♪」 逆に、親を赤れいむから奪い返した気分の赤まりさはニコニコだ。 すぐにこの笑顔が曇ることになるのだが。 さらに翌日。 赤まりさは枝でぶっ叩かれて起こされた。 「ゆっくりおきてね!!もうあさなんだよ!!」 「ゆげっ!!」 「ゆぐっ!?」 「ゆぎゅっ!?」 「ゆぎゅぅ・・・」 「ゆぎゃっ!!」 赤まりさが起きると、そこにはプリプリと怒った親れいむが。 びくびくしながら、赤まりさは親れいむの次のセリフを待った。 「あのおチビちゃんたちはちゃんとおきてたよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 テキトーに返事をする赤まりさ達。 あんないなくなった奴なんかどうでもいい。 赤まりさはそう思っていた。 それよりも重要なものがある。 朝一番のすりすりだ。 これはとてもゆっくりできる。 一日を生きる活力となるすりすりなのだ。 「おかーしゃん、まりしゃはんしぇいしたから、すーりすりをしてね!」 「まりしゃにもおねが 「うるさいよっ!おねぼうをするゆっくりできないこにはすーりすりはなしだよっ!!」 そして体当たりをされた。 ある意味、頬のふれあいである。 さらに数時間後。 親れいむは狩りの準備を始めた。 あれから何かと赤れいむと比較されっぱだった赤まりさは、ようやくゆっくりできそうだと喜んでいた。 が。 「れいむのおチビちゃん。きょうからはいっしょにかりにいくよ!」 赤まりさは一瞬、真白になった。 何を言っているんだコイツは、的な感じで。 「どぼじでしょんにゃこちょいうのおぉお!?」 「まりしゃはゆっぐちぢだいよぉお!!」 「あかぢゃんはゆっぐりずるのがじごどでじょおおぉお!?」 「ゆっぐりざぜでよぉお!!」 「ごんなんじゃゆっぐぢできにゃいよぉおお!!」 「だまってね!あのゆっくりしたほうのおチビちゃんたちは、ちゃーんとかりができたよ!」 ゆっくりしてない方のおチビちゃん5匹は泣きながら抗議をした。 自分達はまだゆっくりしなくちゃいけないのだと。 だがそれに返ってきたのは言葉ではなく、体当たりと枝だった。 「ゆべ・・・」 「ゆぼ・・・わがだよ・・・」 「がりに・・・いぎまぢゅ・・・・」 「・・・」 「・・・」 「まったく、ぜんぜんごはんがとれなかったね。ほんとうにゆっくりしてないおチビちゃんだよ!」 初狩りで、しかも赤ゆっくりが取れる食糧などたかがしれている。 5匹で集めた食糧は、小指の先ほどの量だった。 「それがおまえたちのごはんだよ!ゆっくりりかいしてね!!」 「どぼじじぇ・・・」 「おがーじゃ・・・」 「もっど・・・ゆっぐぢ・・・」 「おにゃか・・・しゅいた・・・・」 「ごんなんじゃ・・・ゆっぐぢ・・・」 「ごはんのたべかたもきたないし、ちょうどよかったね!これでれいむはゆっくりできるよ!」 その後、赤まりさは無理やり水浴びをさせられた。 体力のなくなっていた3匹がそのまま川に流れていき、残り2匹はその後の体罰で死んだ。 「ゆゅー・・・」 親れいむは悩んでいた。 それは群れの赤ゆっくりが、全然ゆっくりしていないことだ。 バカ丸出しの言葉遣い、臭い体、狩りもできないタダメシ食らいのごく潰し、そんなダメなものばかり。 「こうなったら、みんなでしつけしようね!」 この前、赤れいむ5匹を群れのみんなに紹介したら、1匹残らず感動していた。 ならば、群れの子供達がゆっくりしていないことは簡単に理解できるだろう。 この群れをよりゆっくりした群れにするため・・・ れいむは固い意思と共に、リーダーの下へと跳ねて行った。 おわり。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/2856.html
『黒い穴』 36KB 制裁 自業自得 群れ 6作目 制裁物にしたつもりですが…… ゆっくりの群れが暮らす林、その林に隣接する野原の片隅に大きな穴が開いていた。 いや、大きいと言うのはゆっくり視点である、人間なら腰まで無い深さだし、少し手間をかければ掘ることが出来るだろう。 しかし、バスケットボールサイズのゆっくりにとっては、落ちたら這い上がれない危険な穴であることは間違いない。 林に住むゆっくりの群れはこの野原で狩りをして生計を立てていたが、この穴がある野原の端には近寄ろうとするものが居なかった、この穴が有る場所から少し進むと大きな崖になっており、ゆっくりにとって危険であることも一因としてその辺りにはゆっくりの気配が無いのが普通であった。 そんな危険な穴のそばに、一匹のゆっくりが立っている、未だテニスボールくらいの大きさの子ゆっくりである。 その子ゆっくりは落ちたら致命的である穴も恐れず、さらに危険な崖のそばまで進むと、その先を見つめていた。 「ゆ~おいししょうなのじぇ!」 頭には黒いトンガリ帽子、輝く金髪――ゆっくりまりさの子ゆっくりである。 子まりさが見下ろす崖の下には、綺麗なお花さんが一列に並んでおり、その花びらや葉に水滴を輝かせている。 それを見つめる子まりさは、思わずよだれを飲み込む、今すぐそっちに行ってむーしゃむしゃしてやりたいが、子まりさの居る場所は崖の上であり、お花さんがあるのは崖の下である、距離以上に絶望的な高度差が開いていた。 「ゆ、まりさ、きょうもきていたのかぜ?」 そんな子まりさの後ろから声をかけてくる大きな影、こちらもまりさの様だが大きさが異なる、後ろから来たのは成体である。 「おねえしゃん!」 「ゆ、ゆ、ゆ、きょうもきているとは、おちびはみどころがあるのぜ!」 「しょうじゃよ、まりしゃはゆうきがあるんじゃよ!」 子まりさにこの場所を教えたのはこのまりさであった、大きな穴を迂回して子まりさの後ろまで来たまりさ。 「まったく、こんなあなとたかいところがこわいなんて、むれのおとなたちはこしぬけなのぜ!」 この場所は群れの住んでいる林からも近いし、この辺りは群れの狩場でもある、しかしこの崖とその手前に空いている穴だけは何故か群れのゆっくりに恐れられており、大人達は子供達に口をすっぱくしてこの場所に近づかないように言っていた。 まりさは体こそ成体と同じだが、最近に成ゆっくりになった若いまりさである、しかし同年代のほかのゆっくりより一回り大きな体をもっており。 若さゆえの無謀さというか、危険なことをしてみたい蛮勇というか、群れで恐れられるこの場所に好んで来ているのである。 子まりさはそんなまりさに憧れていた、アウトロー的なものに惹かれる年頃なのだろうか、群れの大人達には反抗するまりさの姿は子まりさには輝いて見えたのである。 まりさの方もそんな風に思われると悪い気はしない、子まりさを妹の様に思いこの場所を教えたのである。 「ゆぅ、おちびみるのぜ、あれがにんげんさんのおうちなのぜ!」 まりさが目で示す、お花さんの並んだ先、そこにはゆっくりから見れば白い山の様な物が聳え立っている。 この崖から先は人間のゆっくりプレイスである、群れのゆっくりはこの崖から先へは行かないように厳命されていた。 「ゆぅ、しゅごいね、ゆっくちしちぇるね!」 お花さんの並んだ場所だけでなく、とても大きなおうちにも惹かれる子まりさ。 「そうなのぜ、あのゆっくりしたおうちも、おはなさんいっぱいのゆっくりプレイスもぜんぶにんげんさんがひとりじめしているのぜ!」 「ゆ、ひとりじゅめ、ひとりじゅめはゆっくちできにゃいよ!」 「そうなのぜ、おちび、おちびでもわかるのに、おさたちはにんげんさんなんかをこわがって、あそこにいかないのぜ!」 にんげんさん、その生き物を子まりさは見たことが無い、しかしこれまで聞いた事からとてもゆっくりしていない生き物だと聞いている。 何故だろう、どうしてそんなゆっくりして居ない生き物に独り占めされているゆっくりプレイスを放置しているのだろうか。 子まりさの疑問に答えてまりさが言った。 「むれのゆっくりはこしぬけなのぜ、まりさがこんどいってあのゆっくりプレイスを、ゆっくりのものにしてやるのぜ!」 「しゅごい、おねえしゃん!そうしちゃら、まりしゃもいっちぇいい?」 「ゆ、ゆ、ゆ、もちろんなのぜ、おはなさんだけじゃなくて、あまあまもむーしゃむしゃするのぜ!」 「あのばしょだけじゃないのぜ、まりさはずっとさき、あのまちぜんぶをゆっくりのプレイスにするのぜ!」 あの大きなおうちの先には「まち」という場所があるらしい、以前に長であるぱちゅりーから聞いた話を思い出す。 以前そこで暮らしていたと言う長ぱちゅりー達はそこでとてもゆっくり出来なかったというのだ。 「ゆぅ、おねえしゃん、まりしゃもいつかまちにいくよ!」 「ゆふん、いいのぜ、まぁおちびがおおきくなるころには、まちはまりさのゆっくりプレイスになっているのぜ!」 そんな話で笑いあう二匹、そろそろ戻ろうかと言うときまりさが急に言った。 「そうなのぜ、おちび、いいことをおしえてやるのぜ、そこのあなさんをみてみるのぜ!」 「あなしゃん!」 落ちないようにそろそろと穴の淵に近づく子まりさ、覗き込むと吸い込まれるような暗闇が広がっている。 「ゆ、おちないようにするのぜ!そのあなさんはすごいのぜ、そのあなさんのまわりにはおはなさんがいっぱいさくし、くろいむしさんがたくさんとれるのぜ!」 「まさに"あなば"なのぜ!」 「ゆぅ、むししゃん?」 まりさも両親の取ってくる虫さんは好物である、しかし子ゆっくりであるまりさにとって自分で虫を取るなど難しい話で。 動きの遅い虫がすばらしい偶然から目の前に表れでもしない限りそんな事は出来なかった。 「まぁ、このむれではまりさくらいしかしらないのぜ、みんなそのあなさんをこわがるよわむしだし、まぁ、こんどさがしてみるのぜ!」 そう言って笑うとまりさは、子まりさに背を向けて林の方に戻って行った。 子まりさは吸い込まれるように真っ暗な穴の底を見つめていた。 あれからしばらくして、子まりさの姿は再びあの穴の横にあった。 何度もこの場所に来ようと思っていたのだが、他の子ゆっくりは親に怒られるこの場所に来るのを怖がるし、大人のゆっくりに見つかれば怒られてしまう。 最近、何故かあの穴の辺りに普段は居ないはずの大人のゆっくりがうろついている事が多く、子まりさがあの穴の横に行くことが出来たのは、まりさと話をしてから随分と時間が経ってからだった。 「ゆ、ここにくるのもひさしぶりじゃよ!」 丈のある草を押しのけて穴の横まで来た子まりさは、なんだか穴の方からとてもゆっくりした気配を感じた。 「ゆぃ、こりぇは、あみゃあみゃ!」 甘い臭いに必死になって周囲を見回す、しかし臭いはするもののあまあまの姿は見えなかった。 しばらくしてあの穴から甘い臭いが流れ出していることに気が付き、覗き込んでみる。 穴の中からは確かに甘い臭いが流れ出していた、思わず飛び込もうとするが真っ暗な穴と何かゆっくり出来ない臭いがそれを阻む。 「ゆぅ、あみゃあみゃほちいよ!」 下を向いて落ち込む子まりさは、自分の目の前に動くものが居るのに気が付く。 それは小さく黒い虫さんだった、その黒い虫さんが沢山列を作るように穴の中に進んでいる。 衝動的に舌で掬い取って口に運ぶ、口に入れれ噛み潰すとゆっくりとした甘さが広がった。 「むーちゃむちゃ、しあわしぇ~!」 必死になって掬い取る子まりさ、しかし黒い虫さんの列が途切れる事は無い、瞬く間にお腹が膨れてしまう。 「ぽんぽんいっぴゃいで、ゆっくちー、みょうちゃべりゃりぇにゃいよ!」 満腹感からまったりーしている子まりさ、しかし虫さんの列が途切れることは無い。 その時気が付いた、そうかこれがまりさお姉ちゃんの教えてくれた「あなば」なんだ。 ここなら虫さんがお腹いっぱい食べられるよ。 その日からまりさはこの「あなば」にこっそりと通う様になった、親達に見つかれば叱られることは分かりきっていたため、誰にも内緒で。 最もそれには横取りされたくないという思いもあったのだろう。 教えてくれたまりさとは、あれから会っていない。群れのゆっくりに聞いても言葉を濁されてしまう。 きっと「まち」へ行ったんだまりさは確信した。 あなばはいつでも虫さんが採れたわけでは無い、しばらくすると虫さんがあれほど採れる事は無くなってしまったが、群れのゆっくりが訪れることは少ない場所である、手付かずの草花が生い茂っており、夏になった事もあってむーしゃむしゃに困ることは無かった。 そうして他の子ゆっくりより多く食べる事になっていたまりさは、秋になり成ゆっくりに近づく頃には若ゆっくりの中では最強になっていた。 狩りに参加してもその恵まれた体から大人顔負けの戦果を稼いだまりさは、両親や群れのゆっくりに賞賛されることになる。 「ゆぅ~まりさはさいっきょうのゆっくりなのぜ!」 そんなわけで同じ世代のゆっくりの顔役になっていたまりさ、しかし今でもあの穴場については秘密にしていた。 大きくなり群れの大人ともよく話をするようになったまりさ達は、群れのゆっくりがあの穴をいかに恐れているか身をって感じていたのである。 (まったく、あんなところがこわいなんて、こしぬけだらけなのぜ) そう言って群れのゆっくりを軽蔑するまりさ、しかし群れからせいっさいされるのは避けたいため表面上はあの場所には行っていない事になっていた。 そして冬を越した翌年、完全に体が成長したまりさは、うぬぼれでは無く群れで最強のゆっくりと成っていた。 春になり恋の季節、番を探そうとする若いゆっくり達の中にあって、まりさほどモテるゆっくりは居なかった。 多くのゆっくりがまりさと番に成りたいと秋波を送ってきていたが、まりさは焦って番を決めるつもりは無かった。 このモテモテの状態は心地よいものだったし、しばらく続けたいなどと考えていたのだ。 しかし、そんなまりさにもある程度の本命がいた、今までの仲の良さや外見などで目星は付けていたのである。 一匹はまりさの幼馴染のれいむである、決して美形のゆっくりでは無いが昔から仲が良く気立ても良い。 「ゆぅ、まりさはとってもゆっくりしているね、つよいまりさとおさななじみなのは、れいむのほこりだよ!」 もう一匹は群れの若いゆっくりの中でも、最も美形のゆっくりであると噂されるありすである。 「ま、まりさ、ふん、どうしてもついてきてほしいなら、いってあげてもいいのよ!」 その二匹以外にも取り巻き引き連れて幸福の絶頂であるまりさ、そんなまりさは久しぶりにあの穴場を訪れていた。 その時は取り巻きも引き連れずたった一匹でである。 「ゆぅ、ここにくるのもひさしぶりなのぜ!」 穴をしばらく眺めてから、崖の上に立ったまりさ、久しぶりにここからの眺めを堪能する。 視線の先にはあの白くて大きい人間さんのおうち、その先には町が広がっている。 この場所を教えてくれたまりさを思い出す、あのまりさは結局群れに戻ってくることは無かった。 「ゆぅ、おねえちゃんはきっと、まちにいったのぜ、きっとすごいプレイスをつくってるのぜ!」 そう思って視線を下げると、崖の下人間のゆっくりプレイスには色とりどりの花が咲き誇っている。 春なのでは崖の上の原っぱにも花は咲く、しかしそれらとは段違いの花の密度と色鮮やかさである。 「ゆぅ、すごく、ゆっくりしているのぜ!ゆゅ!」 そう思って見つめていると、なんと人間のゆっくりプレイスに動いている者が居るのだ。 ゆっくりよりも大きな体を持つそれは間違えなく人間であった。灰色の体の人間はお花さんの所にしゃがみ込んで何かをしている。 「ゆ、なんなのぜ、ぜんぜんゆっくりしていないのぜ、それによわそうなのぜ!」 はじめて見る人間に慌てたまりさも、そのゆっくりしていない外見と弱そうな雰囲気を見て落ち着く。 「あんなのを、おさたちはこわがっているのかぜ?まりささまならしゅんっさつなのぜ!」 それを疑問に思っていたが、その時気が付く、体の大きくなった今なら崖の下に行っても大丈夫なのではないか、あのまりさもそこのにんげんのおうちとお花さんのいっぱいのプレイスには行かなかったようだ。 最強の自分が行って、にんげんを追い出しあのプレイスとおうちをゆっくりのものにすべきではないか。 まりさの頭の中にはあの白いおうちを手に入れて、れいむとありす、それ以外の取り巻きを侍らせた自分の姿、たくさんのおちびちゃんに囲まれながらお花をむーしゃむしゃしている自分の姿が思い浮かんだ。 「ゆゆゆ、とってもゆっくりしているのぜ!」 そうだ最強のまりさなら、そんなゆん生が相応しいのだ、この小さな群れで番を選ぶ必要なんて無い、先ずはあのプレイスを手に入れてその後はまちにもいってやる、きっとあのあまりさとも再会できるだろう! そうと決まるとまりさの行動は早かった、崖の下に降りられる道を探し――簡単に見つかった。 れいむやありすにもこっそり計画を話した。 「ゆぅ、ほんきなのまりさ、にんげんのプレイスにいくなんて!」 「そ、そうね、とかいはなのはいいわね、でも、だいじょうぶなの?」 「だいじょうぶなのぜ、まりさはむれさいっきょうのゆっくりなのぜ、にんげんもいちころなのぜ!」 「あのおおきなおうちをてにいれたら、れいむとありすをしょうたいするのぜ、あまあまやおはなさんもいっぱいなのぜ!」 「そのとき、まりさのずっといしょにゆっくりするあいてもきめるのぜ!」 「わ、わかったよ、まりさならあんしんだよ!」 「そうね、とかいはなおうちを、き、きたいしているわ!」 計画の実行の機会を崖の上で覗うまりさ、にんげんはゆっくりにとっておちびちゃんでも理解出来る「おうちせんげん」すら理解できない哀れな生き物だと言う。 それならば、にんげんが居るときにいって力ずくで叩きのめしあのおうちを奪うしかあるまい、まぁ、泣いて奴隷にしてくださいと懇願したら許してやろう。 そんなまりさの横には一匹の子れいむがつき従っていた、幼馴染れいむの妹である。 群れ最強のまりさが姉の幼馴染であると聞いて最近くっついて来るようになったのだ、最初はれいむへの義理から面倒を見ていたまりさだが、こうやって小さい子に慕われるのは取り巻きに賞賛されるのとは違ったゆっくりである。 何だかんだと面倒を見ていた、その子れいむはこの穴場まで着いてきていたのだ、親から言われているのか最初はここに来るのを怖がった子れいむだが、まりさが行くのを見ると着いてくるようになり、今では普通にここまで来れるようになった。 まりさは子れいむに崖の上で、自分の計画を聞かせる、子れいむの尊敬するような視線に気を良くしたまりさ、 「ゆぅ、れいむ、これはひみつなのぜ、そのあなさんをのぞいてみるのぜ!」 子れいむは素直に穴の淵まで進み中を覗いている。 「おちるんじゃないのぜ!ゆ、れいむそのあなんさんはあなばなのぜ、そのあなさんのよこではくささんがいっぱいむーしゃむしゃできるし、くろくてちいさなむしさんも、いっぱいとれるのぜ!」 子れいむに言ってから、もう一度崖に寄って下を見てみると、なんとお花さんの横にあの灰色のにんげんさんが居たのだ。 「ゆ、い、いまなのぜ!」 まりさは、崖の下に降りられる道へ急いだ。 崖から降りられる道は、固い石さんで作られており、段々になっている、その段差を一つ飛びで飛び降りるまりさ、初めて群れの掟破りである崖から先に行ったのに何の感慨も無かった。。 しかし、まりさは焦っていた、あのにんげんが逃げる前にお花さんの場所に行かなくてはならないのだ。 もっともこの場にゆっくりけーねでも居れば「ルビコンがわをこえる」ぐらいの話が出たかも知れない。 回り込む形であの崖の下の場所に走るまりさ、息が切れているが辿り着いたとき、あの人間はまだ花の横にしゃがんでいた。 まりさは息を整えると、目の前の人間に向き直り胸を張って宣言した。 「ここを、まりさのゆっくりプレイスにしてやるのぜ、かんしゃしてさっさとでていくのぜ!」 人間はまりさに気が付くが、何も言わずにジッと見つめている。 やはりにんげんはおうち宣言を理解できないようだ、しかしそれは想定の範囲内である。 「ゆ、おうちせんげんをりかいできないなんて、あわれなのぜ、まりさがちからでおしえてあげるのぜ!」 そうだ、元々力ずくで奪うつもりだったでは無いか、永遠にゆっくりさせないように気をつけなければ。 「ゆぅ、ないてあやまればどれいにしてやるのぜ!!!」 まりさはにんげんの向けて渾身の体当たりを放つ、自分の顔にも打撃の衝撃が響くがまりさは歯を食いしばってこれに耐える。 決まった、今は放ったのはまりさのゆん生の中でも特に切れの良い一撃だった、もしかしたら人間は永遠にゆっくりしてしまったかも知れない、罪なことをしたものだ、永遠にゆっくりさせるつもりは無かったのに。 衝撃で少し後ろに跳ね返ったまりさは、自分のダメージを顔を左右に振ることで追い出す。 そして人間を睨みつける、目の前には倒れ付した人間が…… 居なかった、人間はまりさが攻撃する前と同じ格好でこちらを見つめている。 「ゆがぁ、わるあがきするんじゃないのぜ、もういちどくらわせてやってもいいのぜ!」 激昂するまりさに、スックと立ち上がる人間、その顔がゆっくりより何倍も高いところに上がる。 まるで天から見下ろされているようである、弱そうに見えた人間が自分よりも遥かに高いところに居ることに驚くまりさ。 「な、なにかもんくがあるのぜ?いまあやまびゅ」 人間の顔に合わせて視線を上げていたまりさの顎に、信じられないような衝撃が襲う、回転する視界、痛みから閉じてしまった目を見開くと、視界には真っ青な空が広がっている。 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆぅ!?」 自分の状況が信じられないまりさ、蹴られたのである、そんな事とは知らないまりさだが全身から襲う痛みに動けないでいる。 なんだこれは、まりさは夢を見ているのか、にんげんはまりさの攻撃で永遠にゆっくりさせたはずじゃ無かったのか。 痛みと状況に混乱してしまう、その時まりさは頭に違和感を感じた、いや何かゆっくり出来ないのだ。 お帽子だ、まりさの素敵なお帽子さんが無いのだ。先ほどの衝撃で脱げてしまったらしい。 「ゆぐ、ま、まりざのすてぎなおぼうじさん、ゆっくりしないででてくるのぜ!」 痛む体を動かして周りを見回しお帽子を探す、あった、まりさからだいぶ遠いが、お花さんに引っかかっている。 「ゆ、おぼうしさんをとりにいくよ……」 まりさが体をずーりずーりと動かし始めたとき、影が差した。人間であるあの後何もしてこなかった人間が横に来ていたのである。 人間はまりさの髪を掴むと胸の高さまで持ち上げる。 「ゆぎぃ、はなすのぜ、はなすのぜ、まりさはおぼうしさんをとりにいくのぜ!」 無言の人間、しかしもう一方の手に何か細い物を持っている、カチィ、そんな音と共にその先端に炎が灯る。 「ゆぅ、なんなのぜ!?なんだかそれはゆっくりできないのぜ!」 その細いものがまりさの下に移動した。 「ゆ!ゆぎぃ、ゆぎぎぎぎ、いじゃいいじゃい、やめるのぜ、いぎぎぎぎ!」 人間は無表情に手を動かしている、まりさの足元で激痛が移動する、周囲に香ばしい香りが漂った。 「ゆひー、ゆひー、い、いじゃいのぜ、まりさになにするのぜ!」 グラリと周りの風景が移動する、まりさを掴み上げている人間が移動を始めたのだ。 掴まれているまりさは、見る方向を帰ることが出来ないが、人間が動いたことによって見える方向が変わった。 まりさの視界に自分のお帽子が映る。 「ゆぎ、ゆ、まりさのすてきなおぼうしさん!かえってきてね、かえってきてね!」 そんなまりさの声に答えるように、お帽子に近づいて行く。 「ゆぅ、まりさのおぼうしさん、おにいさんありがとう、はやくまりさをおろしてね!」 現状を忘れた様な発言をするまりさ、人間はそんなまりさに構わず、まりさを掴み上げている手とは逆の手でお帽子を掴み上げた。 「ゆ、おぼうしかえしてね、おぼうしがないとゆっくりできないよ!」 お飾りが無い状態が影響しているのか、言葉遣いも変わってしまったまりさが喚き続けるが、それを無視して人間はゆっくりと歩き始めた。 しばらく騒いでいたが、反応の無さに怯えたのか疲れきってしまったのか、静かになるまりさ。 人間のゆっくりとした歩みで、掴まれているまりさもゆっくりと空中を進んでいく。 ゆっくりお決まりのおそら~を言うことすら出来ずに黙り込むまりさ、しばらくすると進んでいるのが自分がもと来た道であると分かる。 先ほど一段飛ばしで降りてきた石の道さん、今度は上ることになり、視界がぐらぐらと揺れる、揺れが収まった時、周りを見てみるとそこはあの崖の上であった。 「ゆ、もりさんにかえしてくれるのかぜ……?」 自分の故郷ともいうべき場所に戻り、すこし落ち着くまりさ、都合のいい希望を口にするが、人間は相変わらず黙ったままである。 無言の人間はさらに進み、気が付けば着いた場所は、まりさが良く来ていたあの崖の上――穴場であった。 人間はあの大きな穴の横にまりさを置く、久しぶりの地面の安心感とあんよの痛みがまりさを襲う。 「ゆぎぃ、いぎぎ、ゆ、なんでぴょんぴょんできないのぜ!」 痛みと恐怖から逃げ出そうとしたまりさは、自分のあんよが動かせ無いことにやっと気が付く。 「どうしてなのぜ、まりさのしゅんっそくのあんよさん、うごくのぜ、さいっきょうのあんよさんならできるのぜ!」 騒ぐまりさを放置して林の方に立ち去る人間、安堵しかけたまりさも、その手に自分のお帽子があるのに気が付くと焦りだす。 「ゆ、まりさのおぼうしさんかえすのぜ、おぼうしさんかえしてね、おぼうしをかえせ!!!」 人間は立ち去り、崖の上にはまりさ一匹が残された、崖とは逆方向を向かされているせいで、まりさの視線の先には原っぱとその奥にある林が見える。 「ゆ、ゆ、まりさのおぼうしさん、どこにいったのぜ……」 ゆっくりにとって命でもあるお飾りを奪われ、意気消沈するまりさ、自慢のあんよも動かすことが出来ない。 しかし、まりさには希望があった、今いるの場所の背後にはあの「あなば」が有るはずである、ここで虫さんをむーしゃむしゃすればあんよさんも治るだろう、そうしたら林に戻って群れの仲間達を引き連れてあのにんげんに復讐してやれば良い。 そうだ、まりさがやられたのは油断していたからだ、そうでなければあんな弱そうなにんげんに負けるわけが無い。 報復を誓うまりさ、そうと決まればさっそく虫さんを探さなければ、痛むあんよに力を入れて周囲を見回す。 と、その時、林の方からあの人間がこちらに来るのが分かった、今は不味い、そう思ったまりさは人間の背後に沢山のゆっくりが、群れのゆっくり達が居るのに気が付き安堵する。 (ゆ、むれのみんながにんげんをせいっさいしてくれたのぜ、にんげんがあやまって、どれいになればかんだいにゆるしてやるのぜ!) 群れの仲間があのにんげんを倒してくれた、これで自分も助かる。まりさの心に灯った希望の火種が大きな炎になる。 そうだ、いままでが間違いだったのだ、最強のまりさがこんな所で終わるわけが無い、群れの仲間に助けられたのは業腹だが、まりさのために群れの仲間が動くのは当たり前である。さぁ、あのにんげんをどうやって制裁してやろうか。 目の前までやって来る人間、その背後には群れのゆっくり達……まりさの頭にお帽子が乗せられる。 「ゆ、じじい、やっとはんせいしたんだね、どれ……」 調子よく言葉を続けようとするが、背後のゆっくり達の視線に気が付いてしまう。 自分を助けに来てくれるはずだった、仲間のはずの群れのゆっくり達――子供たちこそ居ないが殆どがこの場に居る――からの視線は、冷たい敵意を含んだものだった。 「ゆ、み、みんな、なんなのぜ?」 後ろの後ずさろうとするが、足の痛みから失敗する、群れの仲間の視線からは怒り、悲しみ、失望様々な物が溢れている。 その視線に怯えるまりさの前に、二匹のゆっくりが進み出た。 「ゆ、おとうさん、おがあざん!」 まりさの両親であった、一人っ子のまりさをいつも優しく育ててくれた両親、かっこいい父まりさ、やさしい母れいむ、まりさが群れの若いゆっくりの中で最強になるととても喜んでくれて二人。 その二人が今は悲しそうな表情をでまりさを見つめている。 「ゆぅ、おとうさん、おかぁさん、たすけてほしいのぜ、まりさのあんよさんいたいいたいなのぜ!」 助けを求めるまりさ、父まりさはとても悲しそうな顔で、母れいむは涙を流している。口を開こうとした母れいむを、その後ろから、長ぱちゅりーが止めた。 「おとうさん、おかあさん!ゆぎゃああああああ!」 その二匹を……人間の足が踏み潰した。 「おどうざん、おがあざん、ゆがあああ、なにずるのぜぇ!!!」 怒りの声を上げるまりさ、まりさの脳裏には踏み潰される瞬間の両親の、悲しいような微笑んでいるような顔が焼きついていた。 「ゆがああぁ、みんななにじでるのぜ、ごのじじいをぜいっざいずるのぜ!」 まりさの怒鳴り声にも群れのゆっくりたちが動くことは無い、いや、多くは涙を流したり、悲しい目をしているが、まりさに向ってくるのは敵意だけである。 両親を踏み潰した人間は、その亡骸を乱暴にけり、まりさの後ろにやる。 「ゆがぁ、おどうさんとおがあさんになにをするんだぜ!」 やはり無言、まりさの前に戻った人間の後ろから、さらに二匹のゆっくりが現れた、いや彼女達は自分から出てきたわけではない、それぞれ背中を二匹の長の側近に抑えられ、連行されるようにまりさの前に連れてこられたのである。 それは、あの幼馴染れいむと美形ありすであった、どちらも涙を流している。 懐かしい顔に安堵するまりさ、 「ゆ、れいむ、ありす、よかったのぜたすけてほしいのぜ!」 助けを求めるまりさ、その時幼馴染れいむが目を見開いた。 「ふ、ふざけるなぁ!おまえの、おまえのせいで、れいむがこんなところにいるんだぞ、なにがさいっきょうだ、おまえのせいでれいむが、れいむが……」 大声でまりさを責める幼馴染れいむに圧倒される、 「い、いやよぉぉ、なんでありすが、こんないなかもののまりさなんてしらないわ、ありすはかんけいないわぁぁ!!!」 隣のありすが悲鳴を上げる、逃げ出そうと身をよじるがしっかりと押さえつけられているため、無駄な努力である。 「ゆ、れいむ、ありす、おちつくのぜ!」 「ふざげるな、おまえがえいえんにゆっぐりずればいいんだ、れいぶはかんけいないよ、あ、やめてねやめてね!」 「ありすはとかいはよぉ、こんないなかもののせいで、えいえんにゆっくりしていいわけないわぁ、いや、たすけて、おねがい!」 「れいむ、ありす、どうしたの……ゆあぁぁ!!!」 まりさの目の前で再び起きる惨劇、命乞いをする幼馴染れいむと美形ありすは再び無造作に足を振り下ろした人間に踏み潰される。 「ゆがぁぁぁ、れいむ!ありす!どうじでなのぜ、どうじでこんなごと、みんあどうじでだまっでるのぜ!」 まりさの叫び声に、群れのゆっくりからの敵意がいっそう厳しくなる。 二匹の遺体も、先ほどと同じ様にまりさの後ろに運ばれる。 長ぱちゅりーとなにやら話しをしている人間、そしてまりさの方にやってくる。 「ゆぎ!やめてね、まりさを、やめてね、やめてね!」 とうとう自分が永遠にゆっくりさせられるのか、恐怖に怯えるまりさ、人間はそんなまりさのお帽子を掴み取ると、まりさの背後に放り投げた。 「いやだよ、いやだよ、おとうさん、おかあさん、れいむ、ありす、たすけてね!」 既にお飾りを心配する余裕も無くなっている。 人間に掴み上げられるまりさ、再び視界が高くなる、最初から今まで無表情を崩さなかった人間は、今回も同じ様に無表情で手を離した。 一瞬の浮遊感、まりさの体は重力に引っ張られ落下する、その途中の群れのゆっくり達が見える、相変わらずの敵意に満ちた冷たい眼の者、かなしそうな者様々な視線がまりさに突き刺さる、まるで永遠のような群れのゆっくりの視線との邂逅、それが終わるとまりさは自分が穴の中に入ったのが分かった。 青い空がどんどん遠ざかり、青い円がどんどんと面積を狭める、逆にまりさの視界の中で勢力を伸ばすの闇である。 「ゆびぃ、ゆぐ……」 地面に叩き付けられ、その痛みにうめくまりさ、普通なら落とされれば永遠にゆっくりしてしまう高さも、何か背中に当たる柔らかいもののせいで無事であった。 「ゆぐ、ゆぐ、ここは?」 周囲を見回し、闇しか無いことに気がつくと、上を向くまりさ、わずかに見える青空が遠い。 失ってしまった明るい場所と青空を懐かしむように、まるで何かに祈るかの様に、ジッと上を見続けるまりさ。 人間は立ち去ったのか、その後音沙汰が無く、群れのゆっくり立ちの声も聞こえなくなった。 しばらくして、自分を取り戻したまりさ、 「ゆぐぐ、なんどがじで、なんどがじで、おそとにでないど!」 脱出の手段を考えるが、遥か遠くの空はとてもゆっくりの跳躍では脱出できないことを教えていた、傷付いた今のまりさのあんよでは言わずもがなである。 「ゆ……ゆゆゆ、なんだがあまあまのにおいがするよ!」 その時、自分を取り巻く甘い臭いに気が付く。 「あまあまさん、どこなのゆっくりしないででてきてね!」 動くことは出来ないが何とか体を捻る、すると後から漂う臭い。 「ゆぅ、ゆっくりできないにおいだよ、やめてね、くさいよ、はやくどこかにいってね!」 「ゆ!!!」 その時気が付いてしまう、自分の足元に有るものが何なのか、その下から臭いを出しているものがいったい何なのか。 「まりさのすてきなおぼうしさん、ゆぅ、よかったよ、でもくさいくさいはどこかにいって……ゆびぃ!!!」 足元で潰れている帽子の下から見えるもの、それはゆっくりの頭だった。潰れたゆっくりの頭の一部が見えている。 恐る恐るそれに目をやったまりさは、その正体に気が付いてしまう。 帽子の影からはみ出す赤いリボン、その横に飛び出すもみ上げ。もう一方には金髪が纏わり着いたカチューシャ。 「れ、れいぶぅ、あじす!」 穴に落とされた自分を受け止めてくれたもの、それの正体に気が付く、体を虫が這い回るような怖気がまりさを襲った。 そして気が付く、あの人間に潰され蹴飛ばされた幼馴染れいむと美形ありすがここに居たのだ、そうだ……つまり…… 「お、おどうざん、おがあざん!!!ゆ、ゆっぐりでぎないー!!!」 知らず知らずのうちに涙が溢れる。まりさはゆっくり出来ない地面から目を逸らす様に頭上を、遥か遠くの空を見た。 まりさの顔に影が差す、差し込む光と逆行でよく見えないが、ゆっくりのシルエットである。 「むきゅ……まりさ……」 「ゆ、おさ!」 その声でまりさは上に居る相手が分かった、この林の群れの長のぱちゅりーである。 「お、おさ、たすけてほしいのぜ!」 絶望の中に垂らされた蜘蛛の糸、そのか細い糸を逃すまいとまりさは噛り付いた。 「むきゅ……だめよ、まりさ。どうしてあんなことをしたの?」 「わからないのぜ、まりさはなんにもわるいことしてないのぜ、ぜんぶ、あのにんげんがわるいのぜ!」 「まりさ、どうして"おきて"をやぶったの……?」 ぱちゅりーの冷静な声が穴の中に響く、冷徹な様で一片の悲しみを含んだ声がまりさに染み込む。 「お、おきてなのぜ……?」 「そうよ、まりさ。"崖さんから降りてはいけない"おちびちゃんのころから教えたでしょ?」 「ゆ、ゆぐ……」 「悲しいことだけど、もうまりさは許されないは……れいむとありすの事もあるし……」 「そ、そうなのぜ、なんでれいむとありすが!?」 「ごめんなさいね、あれは私達の恥でもあるから、でも貴方達にも教えておくべきだったわ……後悔している」 「ゆ?」 「……!もう時間のようね、まりさこんな事を言えた義理じゃ無いかも知れないけど……出来るだけ早く永遠にゆっくりできるよう……祈ってるわ」 そう言って踵を返すぱちゅりー、再びまりさの居る穴の底まで光が差す。 「ぱ、ぱちゅりー……?」 ぱちゅりーの態度に疑問を抱くまりさ、そんなまりさを他所に新たなゆっくりが穴の上に現れた。 それは四匹のゆっくりだった、穴を四方向から覗き込んでいる、れいむ、まりさ、まりさ、ありす。 ごく一般的なゆっくりだが、まりさにはそのゆっくり達に見覚えがあった。 「ゆ、れいむとありすの……!」 幼馴染れいむと美形ありすの両親である。特に幼馴染れいむのおうちは、まりさのおうちの直ぐ近くであったため、まりさもその両親は見知っていたし、子ゆっくりの時はその母れいむに預けられた事もあった。 気が優しく、お歌の上手な母れいむだった、まりさは自分の母れいむと比べて怒られたこともある。 いつもニコニコと笑っていた、そんな母れいむの顔には、隠しようの無い怒りが張り付いていた。 いや母れいむだけでは無い、その番の父まりさも、アリスの両親のまりさとありすも、鋭い目つきでこちらを睨んでいる。 「どうして、どうしてれいむのおちびちゃんが、えいえんにゆっくりさせられるんだ!」 「おまえのせいで、まりさのかわいいおちびちゃんが!」 「ありすは、まりさのちびはむれでいちばんゆっくりしていなのぜ、おまえのせいで!」 「このいなかもの、おまえなんか、おまえなんかとつきあわせるんじゃなかった!」 穴の上から響き渡る罵声、音だけでは無い、明らかな悪意がまりさのところに届く。 「ゆ、ゆ、ゆ、な、なんなのぜ?まりさがなにをしたのぜ?」 見に覚えの無い悪意に、思わず疑問の声がまりさから上がった。 その言葉は親達の怒りに油を注ぐ。 「このろくでなし、おまえが、おまえがにんげんさんをおこらせるから!」 「おまえがおきてをやぶったから、まきぞえでおちびちゃんが、せいっさいされたのぜ!」 「がけからおりちゃだめなんて、おちびちゃんでもしってるのぜ!」 「このいなかもの、おまえのせいで!」 「ゆ?ま、まりさのせいなのぜ、まりさの……?」 「そうだよ、れいむのおちびちゃんも、ありすのおちびちゃんも、おまえのおとうさんとおかあさんも……」 「ぜんぶ、おまえがおきてをやぶって、にんげんさんのところへいったから、せいっさいされたんだよ!」 「それなのに、なんでおまえだけいきのこってるんだ!」 「ゆ!まりさのせいなのぜ?」 まりさは何かで殴られたかの様な衝撃を味わった。まりさのせいなのか……おとうさんもおかあさんも、れいむもありすも皆まりさのせいであんな目に遭ったのか? 呆然とするまりさ、そんなまりさに上から悪意が追い討ちをかける。 「さっさとえいえんにゆっくりしてね、すぐでいいよ!」 「ゆぐ!」 「ほうとうなら、まりさがじきじきにせいっさいしたいのぜ!」 「うぎぃ!」 「おまえがわめいても、ありすはもどってこないのぜ!」 「ゆぎ!」 「こんないなかもの、らくにえいえんにゆっくりさせてあげないわ!」 「ゆびぃ!」 悪意の篭った言葉だけでは無い、上の四匹は言葉と共に小さな石を投下したのだ。 落下して来た石がまりさの体に突き刺さる、まりさは悲鳴を上げることしか出来ない。 まりさは痛みの中で自問していた、まりさのせいなのか、まりさはただゆっくり出来るゆっくりプレイスを手に入れようとしただけなのに。 まりさが人間を追い出し、あのプレイスを手に入れれば、れいむもありすもおとうさんもおかあさんも皆ゆっくり出来るはずだったのに、なのにあのにんげんが…… しかし、現実としてそのゆっくりさせたかった皆は、まりさの下で永遠にゆっくりしている。 「まりさは……ゆぎぃ!」 まりさの頭に新しい石が刺さる、零れ出る餡子、体に響く激痛、まりさは永遠にゆっくりする事を覚悟した……しかし、その後に新しい石が降ってくることは無い。 恐る恐る上を見ると、れいむとありすの両親達は居なくなっており、青い空が広がるだけだった。 「ゆ、まりさ……ゆるされたの……?」 久々の真っ青な空と日の光の暖かさにゆっくりとするまりさ、しかし、その希望を裏切る様に新たな影が現れた。 「ゆ、こいつだみょん、こいつのせいでありすが!」 「ゆるせないよー、ぜったいこうかいさせてやるよー!」 「まりさたちのアイドルを……ゆるせないのぜ!」 群れの若いゆっくり達である、ありすに引かれていた者たちなのだろう、皆尖った石を口に咥えている。 「ゆ、ゆ、ゆ……ゆっくりできないー!!!」 あの穴が空いている場所から、林の自分のおうちに戻る道すがら、長ぱちゅりーはあのまりさの冥福を祈っていた。 あのまりさは同年代の中でも体が大きく、身体能力にも優れていたため、将来は長とは言わなくても群れの首脳部に迎え入れられるかもと期待していたのだが。 残念な結果になってしまった、毎年何故かあんなゆっくりが現れるのだ、やはり子ゆっくりの頃からあの"制裁"に参加させるべきかも知れない。 子ゆっくりには刺激が強すぎると、秘されているあの制裁を公開すべきかどうか、考えをめぐらせるぱちゅりー、しかしあれを無くす訳には行かない。 この群れがこの林で暮らすために、人間さんを怒らせる訳には行かないのだから。 ぱちゅりーは自分達がこの林に逃げ込んできた、もう随分と昔の事を思い出していた。 ぱちゅりー達、この群れの長老世代は皆町で暮らしていた野良ゆっくりである。 捨てられた飼いゆっくりなどでは無く、親も野良ゆっくりで生まれた時からの生粋の野良ゆっくり達にとって町とはゆっくり出来ない場所であった。 不安定な食料事情、いつ失われるかも分からないおうち、突如として襲ってくる一斉駆除、人間や大きなスィーによる襲撃。 様々な要因で、ゆっくり達は常に死の危険に曝されていた。ぱちゅりー達野良ゆっくりの中で姉妹と一緒に成ゆっくりまで成長できたものは一人も居ない。 親だって、生まれた時から片親が普通、自分が子ゆっくりの頃の死に別れるほうが多いくらいである。 そんな地獄に生きる町ゆっくりにとって、話に聞いた野生――森で暮らしているゆっくりはまさに天国で暮らすようなものだった。 もちろん身近には、もっとすばらしい生活を送っている飼いゆっくりが居る。しかしその座を得ることの難しさと、それを得ようとした者が人間にどんな目に合わされたか、数々の事例で学習した町ゆっくりにとっての希望、それが森のゆっくりである。 しかし、自分達の行動範囲に森など存在しない、そう考え諦めていたぱちゅりーの元に、狩りに出ていたちぇんから森を見つけたという報告がされたとき、仲間たちは歓喜した。 森、そこへ行けばゆっくりとした生活が送れると。 人間に悟られないように、仲間達をいくつかの組に分けてその場所に移動させるぱちゅりー、移動の過程でおよそ半分のゆっくりが永遠にゆっくりしたが、辿り着いた場所はまさに森であった、とても広い赤黒い土の大地、その先には石で出来た崖が有り、崖の先には木々が見える。 何とか上れる場所を見つけ上がった崖の上は、草花が咲き誇る野原と、その奥にある林というゆっくりの生存にもってこいの場所であった。 「むきゅ、みんな、ぱちゅたちはついにもりにたどりついたわ!」 そんなぱちゅりーの宣言で始まった林での生活は快適なものだった、林は野原から安定して採れる食事、何より恐怖の存在である人間さんが見当たらない事が最大の幸運であった。 しかしそんな幸せな生活にもひびが入る、しばらくすると崖の下、あの土しかなかった平らな場所に人間さんが出入りするようになったのだ。 人間を恐れて、こっそりと見守る林のゆっくり達、そんな彼女達にお構いなく人間や巨大なスィーが出入りし、次の春には白くて巨大な人間のプレイスが作られていた。 ゆっくり達は、人間に何かしようとは思わなかった。人間の恐ろしさは町で骨身に染みていたし。 人間が崖の上のゆっくりのプレイスに手を出すことは無かったからだ。 困ったことに成ったのはその後である。崖の下、人間のおうちの手前に人間達がお花を植えだしたのだ。 町で暮らしていたぱちゅりー達は、それが人間の作ったものであり、手を出せば危険だあると理解していた。 しかし林で生まれた子供達はそんな事が理解できない、数匹がお花さんに惹かれて崖を下りお花さんを採って来ると、ぱちゅりー達、群れの首脳部は恐怖に襲われた。 このパターンは何度も町で見ていたのだから、この次にあるのは人間さんの報復か一斉駆除である。 人間と戦うか?不可能である、逃げるか?この場所を失うわけには行かない、そんな選択肢を迫られたぱちゅりー達が決めたのは、無条件降伏であった。 ぱちゅりーとその側近数匹が永遠にゆっくりさせられる覚悟で人間さんの下を訪れたのだ。 幸い目の前に現れただけで永遠にゆっくりさせられる事も無く、話を聞いてもらう事が出来たので、ぱちゅりーは自分達の事情を全て話した。 元町の野良ゆっくりであった事、人間さんに逆らう気は少しも無いこと、出来ればあの場所で暮らさせて欲しいこと。 自分達の命を懸けて行った交渉は、何とか実を結んだ。崖の上の野原と林に限る形で生活する事を認められたのだ。 もちろんいくつかの条件をつけられた、その範囲から出ないこと、おちびちゃんは胎生妊娠で生むことなど様々だが。 その中でも最大のものが、あの「制裁」だった、崖の下に行かないことを群れの掟として徹底し、それに反したゆっくりに課される制裁。 罪を犯したゆっくりの親ゆっくりと妻や子を先に目の前で制裁し、犯ゆ自身は動けなくしてあの穴の中に落とす、恐るべき罰であった。 ぱちゅりーは帰るとき自分とすれ違った、れいむとありすの両親の顔を思い出す。 あのまりさには番が居なかったが、れいむとありすとはそれなりの関係はあった、何らかの形で人間にそれがバレ、もし匿ったとでも思われたら群れの最後である。 どちらか一方だけでも揉める事になっただろう、あの二人には申し訳ないが群れのためである。 人間の定めた制裁は、穴に落とした後の犯ゆについては決まっていない。しかしぱちゅりーにはあのまりさの末路が見えていた。 親達だけでは無く、ありすの方は群れの中でも美形で有名であり懸想していたゆっくりも多いことだろう。 ぱちゅりーは再度、まりさの冥福を祈り、出来るだけ早い雨の到来を願った。 あれから数日、まりさは未だ生きていた。いや、もはや日の当たる場所に出ても、誰もゆっくりまりさとは認識してくれないかも知れない。頭から顔にかけていくつのも石が刺さり潰れ、目を背けたくなる有様である。 しかし、まりさにとって幸運か不幸か、ゆっくりにとって致命的な水を運ぶ雨が降る事は未だ無く、まりさに止めを刺す存在は居なかった。 既に片目は潰れ、残った一方の目で周囲を見つめ自分を永遠にゆっくりさせてくれる存在を心待ちにするまりさ。 その心の中には、憎しみ、悲しみ、怒り、後悔、様々な感情が渦巻いていた。 穴の上から差し込む日の光、まりさには分からないが外は正午であり、丁度天頂に座する太陽から穴の中に最大の光がもたらされる。 光で明るくなった穴の中、その壁に一列に続く黒いもの――あの小さくて黒い虫さんを見つけたまりさは全てを理解した。 あぁ、そうなのだ、だからここは「あなば」だったのだ、まりさはこの時初めて、あれ以来再会していないあのまりさが何処へ行ったのか理解した。 「ゆ、おねえちゃん……×××……」 まりさの最後の言葉は、言葉の形をとっていなかった。もはや喋れないまりさに小さな死神が近づいていた。 ゆっくりの群れが暮らす林、その林に隣接する野原の片隅に大きな穴が開いていた。 いや、大きいと言うのはゆっくり視点である、人間なら腰まで無い深さだし、少し手間をかければ掘ることが出来るだろう。 しかし、バスケットボールサイズのゆっくりにとっては、落ちたら這い上がれない危険な穴であることは間違いない。 その穴に近づく小さな影、ゆっくりれいむの子ゆっくりである。 「ゆゆ~ん、れいみゅはこんにゃあにゃこわきゅにゃいよ!」 「まっちゃく、こんにゃあにゃぎゃきょわいにゃんちぇ、みんなよわむしじゃね!」 上機嫌な子れいむは穴の横まで来て、穴を覗き込もうとして何かに気が付く。 「ゆ、きょれはむししゃん、むーちゃむちゃ、しあわしぇー!」 「きょんにゃむししゃんが、たくしゃん、きょきょは"あなば"なんじゃね!」 後書き ここまで読んでいただき、有難うございました。 以前にお蔵入りにしたネタの再利用になります、ネタとしては「群れに制裁させる」です。 もしどなたかとネタが被っていたらごめんなさい。 楽しんでいただければ幸いです。 過去作品 anko2700 そして新記録 anko2703 ゆっくり公民 ~奴隷制~ anko2720 ゆっくり公民 ~カースト制~(前編) anko2721 ゆっくり公民 ~カースト制~(中編) anko2722 ゆっくり公民 ~カースト制~(後編) anko2764 ゆっくり公民 ~農奴制~(春) anko2765 ゆっくり公民 ~農奴制~(夏) anko2766 ゆっくり公民 ~農奴制~(秋) anko2767 ゆっくり公民 ~農奴制~(冬) anko2802 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(前編) anko2803 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(中編) anko2804 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(後編) 挿絵:○○あき
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前 最初のうちは、傷のせいか味わった恐怖のためか、世話をされるゆっくり達は総じて大人しかった。 だが何もしなくても餌がもらえてゆっくりできるという状況に、だんだん調子に乗り始めてきた。 「まりさのごはんはやくもってきてね!」 「せなかがかゆいよ! はやくかいてね!」 などと、注文すらつけるゆっくりまで現れ始めた。 無論、充分に反省し、大人しいゆっくりもいたにはいたが、それもほんのわずかだ。 世話をするゆっくりの側もストレスが溜まり始めていた。 怪我をしたのは本人のせいなのに、まるで王様のように振る舞うゆっくり達を、表面では気遣う振りをしながらも陰では忌々しく思っていた。 加えて動けるゆっくりの数が減ったことで、群れ全体の食糧事情も芳しくなかった。 今はどうにか頑張って、依然とほぼ変わらぬ量の食物を用意できていたが、それもいつまで続くかわからない。 何より、全く働かないゆっくりと、危険を冒して餌を取ってきた自分達とが、同じ量しか食べられないというのは大いに不満であった。 それでも暴行に走ったり餌を抜いたりしなかったのは、同じ群れの仲間であるという意識がまだあったからだ。 何より、群れを取り仕切るリーダーれいむが、何も言わずにあのまりさの世話をしているのだから。 リーダーれいむに限らず、大人ゆっくりや良識あるゆっくりは、あのふてぶてしいまりさが嫌いだったのだ。 そのまりさを何より嫌っていたはずのれいむが、進んで世話をしているのだから、他のゆっくりは何も言えないでいた。 だが、一番ストレスを溜めていたのは、そのリーダーれいむ本人だった。 「……たべものをもってきたよ」 薄暗い木のうろに、れいむは取ってきた花や虫を運び込む。一人で住むにはやや広いここが、まりさの巣だった。 「ゆ! どこであぶらうってたんだぜ! おそいぜ!」 嘲りと苛立ちをないまぜにした笑い声に、れいむは唇を引き結んだ。 れいむがまりさの世話役を買って出たのは、同情や親愛といった気持ちからでは無論ない。 自分以外では、このまりさの相手をするのは耐えられないと判断したからだ。 他のゆっくりであればそのうち堪忍袋の尾が切れ、まりさを殺害するであろうことは容易に想像できた。 それは連鎖的に、他の動けないゆっくりを排斥していく運動に繋がるだろう。 そうなれば最早群れは崩壊するしかない。次はいつ自分が殺されるのか、という空気が仲間内に蔓延するだろう。 その事態だけはどうしても避けなければならなかった。 そしてまりさは、れいむのそんな思いを誰よりも理解していた。 「ふん! こんなりょうじゃまりささまはまんぞくできないんだぜ! もっとたくさんもってくるんだぜ!」 れいむの持ってきた餌を一瞥するなり、そう罵倒する。まるで動けないとは思えぬほどの厚かましさだった。 「みんなとおなじりょうのごはんだよ! ゆっくりがまんしてね!」 「いやだね!」 即答だった。 「どうして……どうしてそんなこというの!? けがしたのはまりさのせいでしょおおおお!?」 「けがにんはいたわるものだぜ! いたわれないれいむはひどいやつなんだぜ!」 「ゆっくりはんせいしないとごはんぬきだよ!」 「はいはいはんせいしてるはんせいしてる。だからさっさとえさもってくるんだぜ!」 ギリギリとれいむは歯噛みした。 どうして、どうしてそんなことを、平気な顔して言えるのか。お前のせいで、どれだけ自分が、仲間が苦労していると思っているのか。 れいむはまりさの驕りを理解できなかったし、したいとも思わない。 ただ許せない。そう思った。 「まりざがにんげんのところにいがなげれば、みんなけがじなかったのに……!」 れいむは搾り出すように叫んだ。 「まりざがにんげんのごはんをどっだりなんかじなければ……!」 「それはちがうぜ! まりささまがにんげんのところからたべものをうばったから、みんなゆっくりできてたんだぜ?」 「それはまりざとありずとれいむが、みんなのぶんまでごはんたべちゃうからでしょおおおお!?」 せせら笑うまりさに、れいむは激昂した。 「まりざがっ、みんなにぢゃんとごはんわけていればっ、みんないっじょにゆっぐりでぎだのにぃぃぃぃ!!!」 怒りに震えるれいむの顔は真っ赤だった。 だがそれをも、まりさは冷たくあしらう。 「ふふん、まりささまはそんじょそこらのまりさとはちがうんだぜ。たくさんごはんをたべるのはとうぜんのけんりなんだぜ! それに、まりさがいなかったら、れいむはむれをまとめられなかったはずなんだぜ!」 「……!」 確かに、その通りだった。 元々、この群れはれいむだけがリーダーをしていた。 当時は今の半分程度の群れであり、それでもれいむは群れをまとめるのに四苦八苦していた。 どんな集団にも問題児というものは現れる。そして、普通の者よりも世話が焼ける存在だ。 そこに現れたのがまりさだった。 元々人間に飼われていたというまりさは、しかし類稀な身体能力で、狩りにおいてはすぐに群れ一番の実力者になった。 一度など、単独でれみりゃを追い払ったほどである。 まだ若いゆっくり達は、そんな強いまりさに憧れ、自然と付き従うようになった。 それにより群れは活気に満ち溢れ、また外部からゆっくりを受け入れる余裕もでき、現在の大きさまで成長した。 時折素行の悪いゆっくりも入ってくるようになったが、そういった連中はまりさが元締めとなって仕切っていた。 現在取り巻きとなっているありすとれいむも、外からやってきてまりさについたゆっくりであった。 いつしか群れは、まりさを中心とする、若者や無謀なゆっくり達と、れいむを中心とする、年長や大人しいゆっくり達に二極化された。 この二つのグループが、ちょうどよい緊張感を保つことで、群れは現在まで成立してきたのだ。 その状態でまりさがいなくなっては、群れに大きな混乱が起きるのは確実だった。 それゆえに、れいむは今までまりさに強く口出しできなかったのだ。 「ゆっへっへ、りかいしたか? りかいしたらゆっくりはやく、ついかのえさをもってくるんだぜ! このまりささまになぁ!」 「このっ……!」 我慢できず、詰め寄ろうとしたれいむだったが、まりさは僅かに身を捻って身体全体で嘲弄した。 「いいのか? ここでまりさがこえをあげれば、どうなるかわかってるんだぜ? うごけないまりさといかりくるったれいむと……どっちがひがいしゃなのか、みんなにはんていしてもらうんだぜ」 「ゆぐぅぅぅぅぅぅぅぅ……ッ!!」 れいむは口惜しそうに呻くが、やがて自分を取り戻し、まりさに背を向けた。 「ごはんはみんなとおなじだからね! それいじょうはふえないよ!」 そして持ってきた餌をまりさの前に投げ出すと、去っていく。 「……チッ」 忌々しげにまりさは舌打ちした。 あのれいむのごうじょうにはまったくうんざりさせられるぜ。目の前の餌を貪りながらまりさは思った。 いっそのこと、まりさとしてはれいむが襲いかかってきても良かったのだ。 あのとき、巣の外から他のゆっくりがこちらを窺っていることは知っていた。恐らくれいむが心配だったのだろう。 その目の前で、れいむが自分に襲い掛かり、それを返り討ちにしてやれば、立派に正当防衛が成り立つ。 そうなれば、最早群れのリーダーはまりさのみだ。自分の邪魔をするものはいない。 返り討ちにできるだけの自信もあった。 足を焼かれ、頬を焼かれた今の状態でも、この群れのどのゆっくりが相手でも、負けないと自負していた。 群れの仲間は誰一人信じていないだろうが──まりさは、以前、人間を殺したことがあった。 殺したのは自分を飼っていた人間だった。 その男は自分に厳しい食事制限を設け、その上激しい運動までさせた。まりさは男が大嫌いだった。 だがそうやって躾けられているうちに、自分の力が見る見る伸びていくのが分かった。 そしてもう充分強くなったと判断したところで、背後から襲い掛かった。 男は倒れ、そして起き上がらなかった。 まりさは人間に勝ったのだ。 足を焼かれた今となっては、人間に勝つことは難しいだろうが、しかし同族程度に負ける気はしない。 れいむがいなくなっても、自分には頂点に返り咲けるだけの力がある。まりさはそう信じていた。 れいむが限界に達し、自分に襲い掛かるまで、そう長くはないだろう。 そのときこそ、自分が真に群れの主となるときなのだ。 「むきゅう、れいむ、だいじょうぶ?」 「へいきだよ、きにしなくていいよ、ぱちゅりー……」 仲間の気遣いに笑みを返すれいむだったが、自分でもちゃんと笑えているか自信がなかった。 明け方の広場には、動けないゆっくり達を除いた全てのゆっくりが集まっていた。 「みんなよくきいてね。……れいむは、にんげんのところにいってごはんをとってこようとおもうの」 「「「!!!!!!」」」 思いがけない言葉に、皆揃って驚愕した。 「れいむ! あなたなにいってるかわかってるの!? ばかなの!? にんげんのところになんかいったらころされちゃうわよ! それにそんなことしたら、まりさとおなじになっちゃうよ!」 ありすがぴょんぴょん飛び跳ねて抗議した。 ありすは、優しいれいむがそんなことを言うとは信じられなかったのだ。 「わかってるよ」 れいむは静かに答えた。強張った表情は、れいむが悩み、その上で決断したことを示していた。 れいむとて、あの腐れ饅頭と同じ立場に落ちるのは嫌だ。だが、そうしなければもはやこの群れは立ち行かない。 昨日でとうとう備蓄食料もなくなり、日の出ているうちに帰ってこれる範囲にある餌はあらかた取りつくしてしまった。 また、餌を取りにいったまま戻ってこなかったゆっくりが、今までに三匹出ている。 群れの崩壊も時間の問題であった。その前に、れいむは最後の賭けに出ようとしているのだ。 「……むきゅっ、しょうがないわね」 ぱちゅりーが一歩、れいむに歩み寄った。 「ひとりじゃごはんははこべないでしょ。わたしもついていくわ」 「ぱ、ぱちゅりーだけいいかっこしようったってそうはいかないわよ! ありすもいっしょにいくんだからね!」 ありすも名乗りを上げ、そして次々と仲間達も自分も行くと言い出した。 れいむは微笑んだ。久しぶりの、本当の笑顔だった。 「みんな、ありがとう! でもぜんぶはつれていけないよ! もしれいむたちがもどらなかったとき、むれをまもるひとをのこさなきゃいけないよ」 れいむは、自分と共に行くゆっくりをふるい分けた。 子供や母親は残され、年老いた者、子育てを終えた者、子を作れない者のみの七匹の決死隊が結成された。 「だめだよぉ! にんげんのところにいったらしぬっていったのれいむでしょおぉお!!??」 一匹だけ、強く反発する子ゆっくりがいた。群れの若いゆっくりの中で一番優しい子まりさだった。 「だいじょうぶだよ。ちゃんとかえってくるよ。 でも、もしれいむがかえってこれなかったら……まりさがみんなをささえてあげてね」 れいむは子まりさに、一度だけ優しく頬ずりをすると、仲間を伴って出立した。 そして最初のまりさ達と同じ罠にかかって捕まった。 「またか……」 慧音は憂鬱な溜息を漏らした。一応ついてきた妹紅などは、寝転がって干し芋を齧っている。 「はぁしかし、慧音様、それが今回はどうも事情が違っていて」 「ふむ、まぁ、確かに」 柵の中に入れられた七匹のゆっくりは、奇妙なほど大人しかった。 半分べそをかいているものもいるが、どれも待ち受ける運命を受け入れてしまっているように見える。 「お前達、自分が何をやっているのかわかっているのか?」 とりあえず、慧音はそう声をかけてみた。すると先頭にいたれいむが顔を上げる。 「ゆ、おねーさんがいちばんえらいひと?」 「……まぁ、この場ではそうなるが」 慧音は戸惑った。普通、ゆっくりは何か聞かれたら反射的に答えを返す。それをしないどころか、逆に問うてくるとは。 「ならおねがいがあるよ。れいむはどうなってもいいから、どうかみんなをたすけてあげてね!」 「! れいむ゛ぅぅぅぅ! どうじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!?!?」 「むっぎゅううん! だめよ、じこぎせいはただゆっくりとかなしみをひろげるだげなのおおおお!!!」 れいむの言葉をきっかけに、他のゆっくり達は一斉にわんわん泣き始めた。 「……一体全体、どうしたことだ」 今度こそ、慧音は頭を抱えたくなった。 れいむだけがただ静かに慧音を見上げていた。慧音はふと、訊いてみた。 「お前達は、この前ここにきたまりさ共の知り合いか?」 「ゆ? じゃあまりさたちのあしをやいたのもおねーさんなの?」 「……ああ、そうだ」 答えて、慧音は反応を待った。だがれいむは「そう」と答えただけで、激昂したりはしなかった。 「復讐しにきたものとでも思っていたが」 「しかたないよ。あれはまりさがわるかったよ。でも、まりさ、あやまらなかったでしょ?」 「ああ、最後までふてぶてしいやつだった」 「だったられいむがかわりにあやまるよ。ごめんなさい」 「連中はどうしてる?」 「みんなおうちでゆっくりしてるよ。れいむたちがごはんをとってきて、わけてあげてるよ」 「あんな連中、よく生かしておけるな。正直、私達が殺しておいたほうが良かったか?」 「ゆぅっ……でも、まりさはくそまんじゅうだけど、でも、それでもれいむたちのなかまだよ!」 最後の一言は自らに言い聞かすようではあったが、言葉に出来る程度には、その気持ちは確かにあるのだろう。 「……うぅむ」 慧音は悩んだ。農夫達も、こんなゆっくりは初めて見るのか、戸惑っている。 「しかし、お前達、私達の野菜を盗みにきたんだろう? こんなに徒党を組んでまで」 そう言うと、れいむははっとなって慧音のほうに近づいた。 「そうだよ! でもちがうよ! れいむがみんなをむりやりつれてきたの! いちばんわるいのはれいむだから、みんなはゆっくりにがしてあげてね!」 「ちがいまずぅぅぅぅぅ!!! ありずがわるいんでずっ!! ありずがれいぶをそそのかじだんでず!!」 「むっぎゅ! ぐろまぐはこのぱちゅりーさまなのよ! れいぶなんで、わたしのあやつ、あやづりにんぎょ……うあ゛あ゛ああああん!!」 またも始まる泣き声の大合唱。 耳を塞ぎながら、いよいよ慧音は対処に困った。 どうにも、このゆっくり達はゆっくりらしからぬ仲間思いの心の持ち主であるらしい。 いくらゆっくりとは言え、そのような者たちを無下に扱うのも気が引けた。 しかしどんな事情があろうと、野菜を盗みに来た以上、みすみす見逃すわけにも行かぬ。先日のまりさの仲間となれば尚更だ。 思い悩む慧音の肩に、ぽんと妹紅が手を置いた。 「どうした」 「うーん、この場、私に預けてくんないかなと思って」 妹紅の手には、先日も使った焼印があった。 慧音は少し悩み、 「ふむ、分かった。任せる」 「さんきゅー」 笑って答え、妹紅は手の平に炎を点し、それで焼印を炙っていく。 「ゆ!」 事態をいち早く察知したれいむが、皆を守るように前に出た。 「やめてね! みんなをいじめないでね! やるなられいむだけにして!」 「だめだ」 にべもなく妹紅は答えた。 「『悪いことをしたやつは痛い目にあう』。あのまりさ達を見たんなら、それは分かるだろう。 お前達は、悪いことをやろうとした。しかも悪いと分かっていた上でだ。 まぁ結果的には未遂だし、同情の余地もあるけど……それでも、けじめは必要だ。分かるか?」 「ゆっ……」 れいむは黙りこくった。妹紅の言い分を理解してしまったからだろう。 他のゆっくり達も、どこか神妙な雰囲気で、動きを止めた。恐怖から身を震わせてはいたが。 「じゃあ焼くぞ」 「ぶぎっ……!」 焼印が押し付けられ、れいむは迸りそうになった悲鳴を飲み込んだ。 ここで無様に助けを乞えば、自分達は本当にあのまりさ達と同じ、薄汚い泥棒になってしまうと思った。 他のゆっくりも、そんなれいむを見て、一言も漏らさずに耐え切った。 「んー、結構根性あるな」 全てのゆっくりに焼印を押し終えた妹紅は、焼印を置くと、れいむの前で身を屈めた。 「ゆ゛っ!」 れいむは恐怖から身を竦ませた。 あのまりさ達は、焼印と一緒に足も焼かれていた。自分達も同じ目に遭うのだ。 だが妹紅が口にした言葉は、ゆっくり達にとって思いがけないものだった。 「森の西側に岩場があるのを知っているか?」 「……ゆ?」 「お前達の住んでるところから、ちょうど太陽の沈む方向にある岩場だ。知ってるか?」 何故そんなことを今聞いてくるのか、れいむにはさっぱり分からなかったが、とりあえず答えた。 「ゆ! それならしってるよ! れみりゃがすんでてあぶないところだよ!」 「ああ、そうらしいな。まぁ私は近寄ったことないんだけど。 で、これも人から聞いた話でしかないんだが、その岩場を抜けたところに、また別の薄暗い森があるんだとさ。 日は当たらんしじめじめしてるが、食べ物は豊富だし、人も滅多に入ってこないし、危険な野生動物もいないんだって。 そこでなら、わざわざ人里を襲わなくても暮らしていけるんじゃないか?」 「ゆぅ……それ、ほんと?」 訝しげにれいむは妹紅を見た。妹紅は肩を竦めてみせる。 「さてね、私も行ったことはないからな。けどいい年した樵の話だし、そこそこ信憑性はあるだろ。 ま、お前達の足でも、朝早くから行けばれみりゃが目覚める前に岩場は抜けられるんじゃないか?」 「むっきゅ、でもわたしたちにはきずついたなかまが……」 「そんなことは知らんよ」 妹紅はゆっくりと立ち上がり、細めた目でれいむ達を見下ろした。 「お前達の、誰が旅立ち、誰が残り、誰を連れて行くのか。そんなことは、私の知ったことじゃあない。お前達が選ぶことだ」 そこまで言って、妹紅はひらひらと手を振った。 「さぁさぁ、もう帰りな。足は焼かないでおいてやるから。 ただ、次にその焼印つけたゆっくりを見かけたら殺すってところは変わらないからな。 もう里には来るな。それだけ理解したら、帰れ」 ゆっくり達はしばらく迷っていたようであったが、やがて一匹また一匹と、森のほうに跳ねていった。 最後にリーダーれいむが振り返り、何かを言った。聞き取れなかったが、その口の動きは「ありがとう」と言っているように見えた。 「見事な裁きであった」 慧音が嬉しそうに頷いた。妹紅は途端に気恥ずかしくなって、顔を赤くする。 「裁きだなんて、そんなこと軽々言ってたらあの閻魔様に怒られちまうよ。私はただやりたいようにやっただけだからさ」 「では良い判断だった、ということにしておこう。あのゆっくり達ならば、もう人里に来ることはあるまい。 ……それにしても、全てのゆっくりがああだったら、もっと私達もゆっくりできるのだがなぁ」 「いやまったく」 妹紅だけでなく、農夫達も一様に頷いた。 多分、全員の脳裏には、先日のあの憎たらしいまりさ達が浮かんでいることだろう。 「…………」 「けーね?」 「ん、いや、なんでもない。──それでは、撤収!」 その翌日から、森の中でゆっくりの姿を見かけることはなかった。 あとがき 長い。 前回(ゆっくり実験室・十面鬼編)があまりにもあれだったので、真面目に書こうとした結果がこれだよ! あと焼き土下座とか言いながら、焼いてるの最初だけだし。土下座してないし。 続きも早いうちに仕上げようと思います。長くなりすぎない程度に。 ゲスなまりさもきれいなまりさも、どれも良いものであります。 磨けば磨くほどに光る素材。それがまりさなのです、きっと。 今までに書いたもの ゆっくり実験室? ゆっくり実験室・十面鬼編 続く このSSに感想を付ける
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前 最初のうちは、傷のせいか味わった恐怖のためか、世話をされるゆっくり達は総じて大人しかった。 だが何もしなくても餌がもらえてゆっくりできるという状況に、だんだん調子に乗り始めてきた。 「まりさのごはんはやくもってきてね!」 「せなかがかゆいよ! はやくかいてね!」 などと、注文すらつけるゆっくりまで現れ始めた。 無論、充分に反省し、大人しいゆっくりもいたにはいたが、それもほんのわずかだ。 世話をするゆっくりの側もストレスが溜まり始めていた。 怪我をしたのは本人のせいなのに、まるで王様のように振る舞うゆっくり達を、表面では気遣う振りをしながらも陰では忌々しく思っていた。 加えて動けるゆっくりの数が減ったことで、群れ全体の食糧事情も芳しくなかった。 今はどうにか頑張って、依然とほぼ変わらぬ量の食物を用意できていたが、それもいつまで続くかわからない。 何より、全く働かないゆっくりと、危険を冒して餌を取ってきた自分達とが、同じ量しか食べられないというのは大いに不満であった。 それでも暴行に走ったり餌を抜いたりしなかったのは、同じ群れの仲間であるという意識がまだあったからだ。 何より、群れを取り仕切るリーダーれいむが、何も言わずにあのまりさの世話をしているのだから。 リーダーれいむに限らず、大人ゆっくりや良識あるゆっくりは、あのふてぶてしいまりさが嫌いだったのだ。 そのまりさを何より嫌っていたはずのれいむが、進んで世話をしているのだから、他のゆっくりは何も言えないでいた。 だが、一番ストレスを溜めていたのは、そのリーダーれいむ本人だった。 「……たべものをもってきたよ」 薄暗い木のうろに、れいむは取ってきた花や虫を運び込む。一人で住むにはやや広いここが、まりさの巣だった。 「ゆ! どこであぶらうってたんだぜ! おそいぜ!」 嘲りと苛立ちをないまぜにした笑い声に、れいむは唇を引き結んだ。 れいむがまりさの世話役を買って出たのは、同情や親愛といった気持ちからでは無論ない。 自分以外では、このまりさの相手をするのは耐えられないと判断したからだ。 他のゆっくりであればそのうち堪忍袋の尾が切れ、まりさを殺害するであろうことは容易に想像できた。 それは連鎖的に、他の動けないゆっくりを排斥していく運動に繋がるだろう。 そうなれば最早群れは崩壊するしかない。次はいつ自分が殺されるのか、という空気が仲間内に蔓延するだろう。 その事態だけはどうしても避けなければならなかった。 そしてまりさは、れいむのそんな思いを誰よりも理解していた。 「ふん! こんなりょうじゃまりささまはまんぞくできないんだぜ! もっとたくさんもってくるんだぜ!」 れいむの持ってきた餌を一瞥するなり、そう罵倒する。まるで動けないとは思えぬほどの厚かましさだった。 「みんなとおなじりょうのごはんだよ! ゆっくりがまんしてね!」 「いやだね!」 即答だった。 「どうして……どうしてそんなこというの!? けがしたのはまりさのせいでしょおおおお!?」 「けがにんはいたわるものだぜ! いたわれないれいむはひどいやつなんだぜ!」 「ゆっくりはんせいしないとごはんぬきだよ!」 「はいはいはんせいしてるはんせいしてる。だからさっさとえさもってくるんだぜ!」 ギリギリとれいむは歯噛みした。 どうして、どうしてそんなことを、平気な顔して言えるのか。お前のせいで、どれだけ自分が、仲間が苦労していると思っているのか。 れいむはまりさの驕りを理解できなかったし、したいとも思わない。 ただ許せない。そう思った。 「まりざがにんげんのところにいがなげれば、みんなけがじなかったのに……!」 れいむは搾り出すように叫んだ。 「まりざがにんげんのごはんをどっだりなんかじなければ……!」 「それはちがうぜ! まりささまがにんげんのところからたべものをうばったから、みんなゆっくりできてたんだぜ?」 「それはまりざとありずとれいむが、みんなのぶんまでごはんたべちゃうからでしょおおおお!?」 せせら笑うまりさに、れいむは激昂した。 「まりざがっ、みんなにぢゃんとごはんわけていればっ、みんないっじょにゆっぐりでぎだのにぃぃぃぃ!!!」 怒りに震えるれいむの顔は真っ赤だった。 だがそれをも、まりさは冷たくあしらう。 「ふふん、まりささまはそんじょそこらのまりさとはちがうんだぜ。たくさんごはんをたべるのはとうぜんのけんりなんだぜ! それに、まりさがいなかったら、れいむはむれをまとめられなかったはずなんだぜ!」 「……!」 確かに、その通りだった。 元々、この群れはれいむだけがリーダーをしていた。 当時は今の半分程度の群れであり、それでもれいむは群れをまとめるのに四苦八苦していた。 どんな集団にも問題児というものは現れる。そして、普通の者よりも世話が焼ける存在だ。 そこに現れたのがまりさだった。 元々人間に飼われていたというまりさは、しかし類稀な身体能力で、狩りにおいてはすぐに群れ一番の実力者になった。 一度など、単独でれみりゃを追い払ったほどである。 まだ若いゆっくり達は、そんな強いまりさに憧れ、自然と付き従うようになった。 それにより群れは活気に満ち溢れ、また外部からゆっくりを受け入れる余裕もでき、現在の大きさまで成長した。 時折素行の悪いゆっくりも入ってくるようになったが、そういった連中はまりさが元締めとなって仕切っていた。 現在取り巻きとなっているありすとれいむも、外からやってきてまりさについたゆっくりであった。 いつしか群れは、まりさを中心とする、若者や無謀なゆっくり達と、れいむを中心とする、年長や大人しいゆっくり達に二極化された。 この二つのグループが、ちょうどよい緊張感を保つことで、群れは現在まで成立してきたのだ。 その状態でまりさがいなくなっては、群れに大きな混乱が起きるのは確実だった。 それゆえに、れいむは今までまりさに強く口出しできなかったのだ。 「ゆっへっへ、りかいしたか? りかいしたらゆっくりはやく、ついかのえさをもってくるんだぜ! このまりささまになぁ!」 「このっ……!」 我慢できず、詰め寄ろうとしたれいむだったが、まりさは僅かに身を捻って身体全体で嘲弄した。 「いいのか? ここでまりさがこえをあげれば、どうなるかわかってるんだぜ? うごけないまりさといかりくるったれいむと……どっちがひがいしゃなのか、みんなにはんていしてもらうんだぜ」 「ゆぐぅぅぅぅぅぅぅぅ……ッ!!」 れいむは口惜しそうに呻くが、やがて自分を取り戻し、まりさに背を向けた。 「ごはんはみんなとおなじだからね! それいじょうはふえないよ!」 そして持ってきた餌をまりさの前に投げ出すと、去っていく。 「……チッ」 忌々しげにまりさは舌打ちした。 あのれいむのごうじょうにはまったくうんざりさせられるぜ。目の前の餌を貪りながらまりさは思った。 いっそのこと、まりさとしてはれいむが襲いかかってきても良かったのだ。 あのとき、巣の外から他のゆっくりがこちらを窺っていることは知っていた。恐らくれいむが心配だったのだろう。 その目の前で、れいむが自分に襲い掛かり、それを返り討ちにしてやれば、立派に正当防衛が成り立つ。 そうなれば、最早群れのリーダーはまりさのみだ。自分の邪魔をするものはいない。 返り討ちにできるだけの自信もあった。 足を焼かれ、頬を焼かれた今の状態でも、この群れのどのゆっくりが相手でも、負けないと自負していた。 群れの仲間は誰一人信じていないだろうが──まりさは、以前、人間を殺したことがあった。 殺したのは自分を飼っていた人間だった。 その男は自分に厳しい食事制限を設け、その上激しい運動までさせた。まりさは男が大嫌いだった。 だがそうやって躾けられているうちに、自分の力が見る見る伸びていくのが分かった。 そしてもう充分強くなったと判断したところで、背後から襲い掛かった。 男は倒れ、そして起き上がらなかった。 まりさは人間に勝ったのだ。 足を焼かれた今となっては、人間に勝つことは難しいだろうが、しかし同族程度に負ける気はしない。 れいむがいなくなっても、自分には頂点に返り咲けるだけの力がある。まりさはそう信じていた。 れいむが限界に達し、自分に襲い掛かるまで、そう長くはないだろう。 そのときこそ、自分が真に群れの主となるときなのだ。 「むきゅう、れいむ、だいじょうぶ?」 「へいきだよ、きにしなくていいよ、ぱちゅりー……」 仲間の気遣いに笑みを返すれいむだったが、自分でもちゃんと笑えているか自信がなかった。 明け方の広場には、動けないゆっくり達を除いた全てのゆっくりが集まっていた。 「みんなよくきいてね。……れいむは、にんげんのところにいってごはんをとってこようとおもうの」 「「「!!!!!!」」」 思いがけない言葉に、皆揃って驚愕した。 「れいむ! あなたなにいってるかわかってるの!? ばかなの!? にんげんのところになんかいったらころされちゃうわよ! それにそんなことしたら、まりさとおなじになっちゃうよ!」 ありすがぴょんぴょん飛び跳ねて抗議した。 ありすは、優しいれいむがそんなことを言うとは信じられなかったのだ。 「わかってるよ」 れいむは静かに答えた。強張った表情は、れいむが悩み、その上で決断したことを示していた。 れいむとて、あの腐れ饅頭と同じ立場に落ちるのは嫌だ。だが、そうしなければもはやこの群れは立ち行かない。 昨日でとうとう備蓄食料もなくなり、日の出ているうちに帰ってこれる範囲にある餌はあらかた取りつくしてしまった。 また、餌を取りにいったまま戻ってこなかったゆっくりが、今までに三匹出ている。 群れの崩壊も時間の問題であった。その前に、れいむは最後の賭けに出ようとしているのだ。 「……むきゅっ、しょうがないわね」 ぱちゅりーが一歩、れいむに歩み寄った。 「ひとりじゃごはんははこべないでしょ。わたしもついていくわ」 「ぱ、ぱちゅりーだけいいかっこしようったってそうはいかないわよ! ありすもいっしょにいくんだからね!」 ありすも名乗りを上げ、そして次々と仲間達も自分も行くと言い出した。 れいむは微笑んだ。久しぶりの、本当の笑顔だった。 「みんな、ありがとう! でもぜんぶはつれていけないよ! もしれいむたちがもどらなかったとき、むれをまもるひとをのこさなきゃいけないよ」 れいむは、自分と共に行くゆっくりをふるい分けた。 子供や母親は残され、年老いた者、子育てを終えた者、子を作れない者のみの七匹の決死隊が結成された。 「だめだよぉ! にんげんのところにいったらしぬっていったのれいむでしょおぉお!!??」 一匹だけ、強く反発する子ゆっくりがいた。群れの若いゆっくりの中で一番優しい子まりさだった。 「だいじょうぶだよ。ちゃんとかえってくるよ。 でも、もしれいむがかえってこれなかったら……まりさがみんなをささえてあげてね」 れいむは子まりさに、一度だけ優しく頬ずりをすると、仲間を伴って出立した。 そして最初のまりさ達と同じ罠にかかって捕まった。 「またか……」 慧音は憂鬱な溜息を漏らした。一応ついてきた妹紅などは、寝転がって干し芋を齧っている。 「はぁしかし、慧音様、それが今回はどうも事情が違っていて」 「ふむ、まぁ、確かに」 柵の中に入れられた七匹のゆっくりは、奇妙なほど大人しかった。 半分べそをかいているものもいるが、どれも待ち受ける運命を受け入れてしまっているように見える。 「お前達、自分が何をやっているのかわかっているのか?」 とりあえず、慧音はそう声をかけてみた。すると先頭にいたれいむが顔を上げる。 「ゆ、おねーさんがいちばんえらいひと?」 「……まぁ、この場ではそうなるが」 慧音は戸惑った。普通、ゆっくりは何か聞かれたら反射的に答えを返す。それをしないどころか、逆に問うてくるとは。 「ならおねがいがあるよ。れいむはどうなってもいいから、どうかみんなをたすけてあげてね!」 「! れいむ゛ぅぅぅぅ! どうじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!?!?」 「むっぎゅううん! だめよ、じこぎせいはただゆっくりとかなしみをひろげるだげなのおおおお!!!」 れいむの言葉をきっかけに、他のゆっくり達は一斉にわんわん泣き始めた。 「……一体全体、どうしたことだ」 今度こそ、慧音は頭を抱えたくなった。 れいむだけがただ静かに慧音を見上げていた。慧音はふと、訊いてみた。 「お前達は、この前ここにきたまりさ共の知り合いか?」 「ゆ? じゃあまりさたちのあしをやいたのもおねーさんなの?」 「……ああ、そうだ」 答えて、慧音は反応を待った。だがれいむは「そう」と答えただけで、激昂したりはしなかった。 「復讐しにきたものとでも思っていたが」 「しかたないよ。あれはまりさがわるかったよ。でも、まりさ、あやまらなかったでしょ?」 「ああ、最後までふてぶてしいやつだった」 「だったられいむがかわりにあやまるよ。ごめんなさい」 「連中はどうしてる?」 「みんなおうちでゆっくりしてるよ。れいむたちがごはんをとってきて、わけてあげてるよ」 「あんな連中、よく生かしておけるな。正直、私達が殺しておいたほうが良かったか?」 「ゆぅっ……でも、まりさはくそまんじゅうだけど、でも、それでもれいむたちのなかまだよ!」 最後の一言は自らに言い聞かすようではあったが、言葉に出来る程度には、その気持ちは確かにあるのだろう。 「……うぅむ」 慧音は悩んだ。農夫達も、こんなゆっくりは初めて見るのか、戸惑っている。 「しかし、お前達、私達の野菜を盗みにきたんだろう? こんなに徒党を組んでまで」 そう言うと、れいむははっとなって慧音のほうに近づいた。 「そうだよ! でもちがうよ! れいむがみんなをむりやりつれてきたの! いちばんわるいのはれいむだから、みんなはゆっくりにがしてあげてね!」 「ちがいまずぅぅぅぅぅ!!! ありずがわるいんでずっ!! ありずがれいぶをそそのかじだんでず!!」 「むっぎゅ! ぐろまぐはこのぱちゅりーさまなのよ! れいぶなんで、わたしのあやつ、あやづりにんぎょ……うあ゛あ゛ああああん!!」 またも始まる泣き声の大合唱。 耳を塞ぎながら、いよいよ慧音は対処に困った。 どうにも、このゆっくり達はゆっくりらしからぬ仲間思いの心の持ち主であるらしい。 いくらゆっくりとは言え、そのような者たちを無下に扱うのも気が引けた。 しかしどんな事情があろうと、野菜を盗みに来た以上、みすみす見逃すわけにも行かぬ。先日のまりさの仲間となれば尚更だ。 思い悩む慧音の肩に、ぽんと妹紅が手を置いた。 「どうした」 「うーん、この場、私に預けてくんないかなと思って」 妹紅の手には、先日も使った焼印があった。 慧音は少し悩み、 「ふむ、分かった。任せる」 「さんきゅー」 笑って答え、妹紅は手の平に炎を点し、それで焼印を炙っていく。 「ゆ!」 事態をいち早く察知したれいむが、皆を守るように前に出た。 「やめてね! みんなをいじめないでね! やるなられいむだけにして!」 「だめだ」 にべもなく妹紅は答えた。 「『悪いことをしたやつは痛い目にあう』。あのまりさ達を見たんなら、それは分かるだろう。 お前達は、悪いことをやろうとした。しかも悪いと分かっていた上でだ。 まぁ結果的には未遂だし、同情の余地もあるけど……それでも、けじめは必要だ。分かるか?」 「ゆっ……」 れいむは黙りこくった。妹紅の言い分を理解してしまったからだろう。 他のゆっくり達も、どこか神妙な雰囲気で、動きを止めた。恐怖から身を震わせてはいたが。 「じゃあ焼くぞ」 「ぶぎっ……!」 焼印が押し付けられ、れいむは迸りそうになった悲鳴を飲み込んだ。 ここで無様に助けを乞えば、自分達は本当にあのまりさ達と同じ、薄汚い泥棒になってしまうと思った。 他のゆっくりも、そんなれいむを見て、一言も漏らさずに耐え切った。 「んー、結構根性あるな」 全てのゆっくりに焼印を押し終えた妹紅は、焼印を置くと、れいむの前で身を屈めた。 「ゆ゛っ!」 れいむは恐怖から身を竦ませた。 あのまりさ達は、焼印と一緒に足も焼かれていた。自分達も同じ目に遭うのだ。 だが妹紅が口にした言葉は、ゆっくり達にとって思いがけないものだった。 「森の西側に岩場があるのを知っているか?」 「……ゆ?」 「お前達の住んでるところから、ちょうど太陽の沈む方向にある岩場だ。知ってるか?」 何故そんなことを今聞いてくるのか、れいむにはさっぱり分からなかったが、とりあえず答えた。 「ゆ! それならしってるよ! れみりゃがすんでてあぶないところだよ!」 「ああ、そうらしいな。まぁ私は近寄ったことないんだけど。 で、これも人から聞いた話でしかないんだが、その岩場を抜けたところに、また別の薄暗い森があるんだとさ。 日は当たらんしじめじめしてるが、食べ物は豊富だし、人も滅多に入ってこないし、危険な野生動物もいないんだって。 そこでなら、わざわざ人里を襲わなくても暮らしていけるんじゃないか?」 「ゆぅ……それ、ほんと?」 訝しげにれいむは妹紅を見た。妹紅は肩を竦めてみせる。 「さてね、私も行ったことはないからな。けどいい年した樵の話だし、そこそこ信憑性はあるだろ。 ま、お前達の足でも、朝早くから行けばれみりゃが目覚める前に岩場は抜けられるんじゃないか?」 「むっきゅ、でもわたしたちにはきずついたなかまが……」 「そんなことは知らんよ」 妹紅はゆっくりと立ち上がり、細めた目でれいむ達を見下ろした。 「お前達の、誰が旅立ち、誰が残り、誰を連れて行くのか。そんなことは、私の知ったことじゃあない。お前達が選ぶことだ」 そこまで言って、妹紅はひらひらと手を振った。 「さぁさぁ、もう帰りな。足は焼かないでおいてやるから。 ただ、次にその焼印つけたゆっくりを見かけたら殺すってところは変わらないからな。 もう里には来るな。それだけ理解したら、帰れ」 ゆっくり達はしばらく迷っていたようであったが、やがて一匹また一匹と、森のほうに跳ねていった。 最後にリーダーれいむが振り返り、何かを言った。聞き取れなかったが、その口の動きは「ありがとう」と言っているように見えた。 「見事な裁きであった」 慧音が嬉しそうに頷いた。妹紅は途端に気恥ずかしくなって、顔を赤くする。 「裁きだなんて、そんなこと軽々言ってたらあの閻魔様に怒られちまうよ。私はただやりたいようにやっただけだからさ」 「では良い判断だった、ということにしておこう。あのゆっくり達ならば、もう人里に来ることはあるまい。 ……それにしても、全てのゆっくりがああだったら、もっと私達もゆっくりできるのだがなぁ」 「いやまったく」 妹紅だけでなく、農夫達も一様に頷いた。 多分、全員の脳裏には、先日のあの憎たらしいまりさ達が浮かんでいることだろう。 「…………」 「けーね?」 「ん、いや、なんでもない。──それでは、撤収!」 その翌日から、森の中でゆっくりの姿を見かけることはなかった。 あとがき 長い。 前回(ゆっくり実験室・十面鬼編)があまりにもあれだったので、真面目に書こうとした結果がこれだよ! あと焼き土下座とか言いながら、焼いてるの最初だけだし。土下座してないし。 続きも早いうちに仕上げようと思います。長くなりすぎない程度に。 ゲスなまりさもきれいなまりさも、どれも良いものであります。 磨けば磨くほどに光る素材。それがまりさなのです、きっと。 今までに書いたもの ゆっくり実験室? ゆっくり実験室・十面鬼編 続く このSSに感想を付ける
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前 最初のうちは、傷のせいか味わった恐怖のためか、世話をされるゆっくり達は総じて大人しかった。 だが何もしなくても餌がもらえてゆっくりできるという状況に、だんだん調子に乗り始めてきた。 「まりさのごはんはやくもってきてね!」 「せなかがかゆいよ! はやくかいてね!」 などと、注文すらつけるゆっくりまで現れ始めた。 無論、充分に反省し、大人しいゆっくりもいたにはいたが、それもほんのわずかだ。 世話をするゆっくりの側もストレスが溜まり始めていた。 怪我をしたのは本人のせいなのに、まるで王様のように振る舞うゆっくり達を、表面では気遣う振りをしながらも陰では忌々しく思っていた。 加えて動けるゆっくりの数が減ったことで、群れ全体の食糧事情も芳しくなかった。 今はどうにか頑張って、依然とほぼ変わらぬ量の食物を用意できていたが、それもいつまで続くかわからない。 何より、全く働かないゆっくりと、危険を冒して餌を取ってきた自分達とが、同じ量しか食べられないというのは大いに不満であった。 それでも暴行に走ったり餌を抜いたりしなかったのは、同じ群れの仲間であるという意識がまだあったからだ。 何より、群れを取り仕切るリーダーれいむが、何も言わずにあのまりさの世話をしているのだから。 リーダーれいむに限らず、大人ゆっくりや良識あるゆっくりは、あのふてぶてしいまりさが嫌いだったのだ。 そのまりさを何より嫌っていたはずのれいむが、進んで世話をしているのだから、他のゆっくりは何も言えないでいた。 だが、一番ストレスを溜めていたのは、そのリーダーれいむ本人だった。 「……たべものをもってきたよ」 薄暗い木のうろに、れいむは取ってきた花や虫を運び込む。一人で住むにはやや広いここが、まりさの巣だった。 「ゆ! どこであぶらうってたんだぜ! おそいぜ!」 嘲りと苛立ちをないまぜにした笑い声に、れいむは唇を引き結んだ。 れいむがまりさの世話役を買って出たのは、同情や親愛といった気持ちからでは無論ない。 自分以外では、このまりさの相手をするのは耐えられないと判断したからだ。 他のゆっくりであればそのうち堪忍袋の尾が切れ、まりさを殺害するであろうことは容易に想像できた。 それは連鎖的に、他の動けないゆっくりを排斥していく運動に繋がるだろう。 そうなれば最早群れは崩壊するしかない。次はいつ自分が殺されるのか、という空気が仲間内に蔓延するだろう。 その事態だけはどうしても避けなければならなかった。 そしてまりさは、れいむのそんな思いを誰よりも理解していた。 「ふん! こんなりょうじゃまりささまはまんぞくできないんだぜ! もっとたくさんもってくるんだぜ!」 れいむの持ってきた餌を一瞥するなり、そう罵倒する。まるで動けないとは思えぬほどの厚かましさだった。 「みんなとおなじりょうのごはんだよ! ゆっくりがまんしてね!」 「いやだね!」 即答だった。 「どうして……どうしてそんなこというの!? けがしたのはまりさのせいでしょおおおお!?」 「けがにんはいたわるものだぜ! いたわれないれいむはひどいやつなんだぜ!」 「ゆっくりはんせいしないとごはんぬきだよ!」 「はいはいはんせいしてるはんせいしてる。だからさっさとえさもってくるんだぜ!」 ギリギリとれいむは歯噛みした。 どうして、どうしてそんなことを、平気な顔して言えるのか。お前のせいで、どれだけ自分が、仲間が苦労していると思っているのか。 れいむはまりさの驕りを理解できなかったし、したいとも思わない。 ただ許せない。そう思った。 「まりざがにんげんのところにいがなげれば、みんなけがじなかったのに……!」 れいむは搾り出すように叫んだ。 「まりざがにんげんのごはんをどっだりなんかじなければ……!」 「それはちがうぜ! まりささまがにんげんのところからたべものをうばったから、みんなゆっくりできてたんだぜ?」 「それはまりざとありずとれいむが、みんなのぶんまでごはんたべちゃうからでしょおおおお!?」 せせら笑うまりさに、れいむは激昂した。 「まりざがっ、みんなにぢゃんとごはんわけていればっ、みんないっじょにゆっぐりでぎだのにぃぃぃぃ!!!」 怒りに震えるれいむの顔は真っ赤だった。 だがそれをも、まりさは冷たくあしらう。 「ふふん、まりささまはそんじょそこらのまりさとはちがうんだぜ。たくさんごはんをたべるのはとうぜんのけんりなんだぜ! それに、まりさがいなかったら、れいむはむれをまとめられなかったはずなんだぜ!」 「……!」 確かに、その通りだった。 元々、この群れはれいむだけがリーダーをしていた。 当時は今の半分程度の群れであり、それでもれいむは群れをまとめるのに四苦八苦していた。 どんな集団にも問題児というものは現れる。そして、普通の者よりも世話が焼ける存在だ。 そこに現れたのがまりさだった。 元々人間に飼われていたというまりさは、しかし類稀な身体能力で、狩りにおいてはすぐに群れ一番の実力者になった。 一度など、単独でれみりゃを追い払ったほどである。 まだ若いゆっくり達は、そんな強いまりさに憧れ、自然と付き従うようになった。 それにより群れは活気に満ち溢れ、また外部からゆっくりを受け入れる余裕もでき、現在の大きさまで成長した。 時折素行の悪いゆっくりも入ってくるようになったが、そういった連中はまりさが元締めとなって仕切っていた。 現在取り巻きとなっているありすとれいむも、外からやってきてまりさについたゆっくりであった。 いつしか群れは、まりさを中心とする、若者や無謀なゆっくり達と、れいむを中心とする、年長や大人しいゆっくり達に二極化された。 この二つのグループが、ちょうどよい緊張感を保つことで、群れは現在まで成立してきたのだ。 その状態でまりさがいなくなっては、群れに大きな混乱が起きるのは確実だった。 それゆえに、れいむは今までまりさに強く口出しできなかったのだ。 「ゆっへっへ、りかいしたか? りかいしたらゆっくりはやく、ついかのえさをもってくるんだぜ! このまりささまになぁ!」 「このっ……!」 我慢できず、詰め寄ろうとしたれいむだったが、まりさは僅かに身を捻って身体全体で嘲弄した。 「いいのか? ここでまりさがこえをあげれば、どうなるかわかってるんだぜ? うごけないまりさといかりくるったれいむと……どっちがひがいしゃなのか、みんなにはんていしてもらうんだぜ」 「ゆぐぅぅぅぅぅぅぅぅ……ッ!!」 れいむは口惜しそうに呻くが、やがて自分を取り戻し、まりさに背を向けた。 「ごはんはみんなとおなじだからね! それいじょうはふえないよ!」 そして持ってきた餌をまりさの前に投げ出すと、去っていく。 「……チッ」 忌々しげにまりさは舌打ちした。 あのれいむのごうじょうにはまったくうんざりさせられるぜ。目の前の餌を貪りながらまりさは思った。 いっそのこと、まりさとしてはれいむが襲いかかってきても良かったのだ。 あのとき、巣の外から他のゆっくりがこちらを窺っていることは知っていた。恐らくれいむが心配だったのだろう。 その目の前で、れいむが自分に襲い掛かり、それを返り討ちにしてやれば、立派に正当防衛が成り立つ。 そうなれば、最早群れのリーダーはまりさのみだ。自分の邪魔をするものはいない。 返り討ちにできるだけの自信もあった。 足を焼かれ、頬を焼かれた今の状態でも、この群れのどのゆっくりが相手でも、負けないと自負していた。 群れの仲間は誰一人信じていないだろうが──まりさは、以前、人間を殺したことがあった。 殺したのは自分を飼っていた人間だった。 その男は自分に厳しい食事制限を設け、その上激しい運動までさせた。まりさは男が大嫌いだった。 だがそうやって躾けられているうちに、自分の力が見る見る伸びていくのが分かった。 そしてもう充分強くなったと判断したところで、背後から襲い掛かった。 男は倒れ、そして起き上がらなかった。 まりさは人間に勝ったのだ。 足を焼かれた今となっては、人間に勝つことは難しいだろうが、しかし同族程度に負ける気はしない。 れいむがいなくなっても、自分には頂点に返り咲けるだけの力がある。まりさはそう信じていた。 れいむが限界に達し、自分に襲い掛かるまで、そう長くはないだろう。 そのときこそ、自分が真に群れの主となるときなのだ。 「むきゅう、れいむ、だいじょうぶ?」 「へいきだよ、きにしなくていいよ、ぱちゅりー……」 仲間の気遣いに笑みを返すれいむだったが、自分でもちゃんと笑えているか自信がなかった。 明け方の広場には、動けないゆっくり達を除いた全てのゆっくりが集まっていた。 「みんなよくきいてね。……れいむは、にんげんのところにいってごはんをとってこようとおもうの」 「「「!!!!!!」」」 思いがけない言葉に、皆揃って驚愕した。 「れいむ! あなたなにいってるかわかってるの!? ばかなの!? にんげんのところになんかいったらころされちゃうわよ! それにそんなことしたら、まりさとおなじになっちゃうよ!」 ありすがぴょんぴょん飛び跳ねて抗議した。 ありすは、優しいれいむがそんなことを言うとは信じられなかったのだ。 「わかってるよ」 れいむは静かに答えた。強張った表情は、れいむが悩み、その上で決断したことを示していた。 れいむとて、あの腐れ饅頭と同じ立場に落ちるのは嫌だ。だが、そうしなければもはやこの群れは立ち行かない。 昨日でとうとう備蓄食料もなくなり、日の出ているうちに帰ってこれる範囲にある餌はあらかた取りつくしてしまった。 また、餌を取りにいったまま戻ってこなかったゆっくりが、今までに三匹出ている。 群れの崩壊も時間の問題であった。その前に、れいむは最後の賭けに出ようとしているのだ。 「……むきゅっ、しょうがないわね」 ぱちゅりーが一歩、れいむに歩み寄った。 「ひとりじゃごはんははこべないでしょ。わたしもついていくわ」 「ぱ、ぱちゅりーだけいいかっこしようったってそうはいかないわよ! ありすもいっしょにいくんだからね!」 ありすも名乗りを上げ、そして次々と仲間達も自分も行くと言い出した。 れいむは微笑んだ。久しぶりの、本当の笑顔だった。 「みんな、ありがとう! でもぜんぶはつれていけないよ! もしれいむたちがもどらなかったとき、むれをまもるひとをのこさなきゃいけないよ」 れいむは、自分と共に行くゆっくりをふるい分けた。 子供や母親は残され、年老いた者、子育てを終えた者、子を作れない者のみの七匹の決死隊が結成された。 「だめだよぉ! にんげんのところにいったらしぬっていったのれいむでしょおぉお!!??」 一匹だけ、強く反発する子ゆっくりがいた。群れの若いゆっくりの中で一番優しい子まりさだった。 「だいじょうぶだよ。ちゃんとかえってくるよ。 でも、もしれいむがかえってこれなかったら……まりさがみんなをささえてあげてね」 れいむは子まりさに、一度だけ優しく頬ずりをすると、仲間を伴って出立した。 そして最初のまりさ達と同じ罠にかかって捕まった。 「またか……」 慧音は憂鬱な溜息を漏らした。一応ついてきた妹紅などは、寝転がって干し芋を齧っている。 「はぁしかし、慧音様、それが今回はどうも事情が違っていて」 「ふむ、まぁ、確かに」 柵の中に入れられた七匹のゆっくりは、奇妙なほど大人しかった。 半分べそをかいているものもいるが、どれも待ち受ける運命を受け入れてしまっているように見える。 「お前達、自分が何をやっているのかわかっているのか?」 とりあえず、慧音はそう声をかけてみた。すると先頭にいたれいむが顔を上げる。 「ゆ、おねーさんがいちばんえらいひと?」 「……まぁ、この場ではそうなるが」 慧音は戸惑った。普通、ゆっくりは何か聞かれたら反射的に答えを返す。それをしないどころか、逆に問うてくるとは。 「ならおねがいがあるよ。れいむはどうなってもいいから、どうかみんなをたすけてあげてね!」 「! れいむ゛ぅぅぅぅ! どうじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!?!?」 「むっぎゅううん! だめよ、じこぎせいはただゆっくりとかなしみをひろげるだげなのおおおお!!!」 れいむの言葉をきっかけに、他のゆっくり達は一斉にわんわん泣き始めた。 「……一体全体、どうしたことだ」 今度こそ、慧音は頭を抱えたくなった。 れいむだけがただ静かに慧音を見上げていた。慧音はふと、訊いてみた。 「お前達は、この前ここにきたまりさ共の知り合いか?」 「ゆ? じゃあまりさたちのあしをやいたのもおねーさんなの?」 「……ああ、そうだ」 答えて、慧音は反応を待った。だがれいむは「そう」と答えただけで、激昂したりはしなかった。 「復讐しにきたものとでも思っていたが」 「しかたないよ。あれはまりさがわるかったよ。でも、まりさ、あやまらなかったでしょ?」 「ああ、最後までふてぶてしいやつだった」 「だったられいむがかわりにあやまるよ。ごめんなさい」 「連中はどうしてる?」 「みんなおうちでゆっくりしてるよ。れいむたちがごはんをとってきて、わけてあげてるよ」 「あんな連中、よく生かしておけるな。正直、私達が殺しておいたほうが良かったか?」 「ゆぅっ……でも、まりさはくそまんじゅうだけど、でも、それでもれいむたちのなかまだよ!」 最後の一言は自らに言い聞かすようではあったが、言葉に出来る程度には、その気持ちは確かにあるのだろう。 「……うぅむ」 慧音は悩んだ。農夫達も、こんなゆっくりは初めて見るのか、戸惑っている。 「しかし、お前達、私達の野菜を盗みにきたんだろう? こんなに徒党を組んでまで」 そう言うと、れいむははっとなって慧音のほうに近づいた。 「そうだよ! でもちがうよ! れいむがみんなをむりやりつれてきたの! いちばんわるいのはれいむだから、みんなはゆっくりにがしてあげてね!」 「ちがいまずぅぅぅぅぅ!!! ありずがわるいんでずっ!! ありずがれいぶをそそのかじだんでず!!」 「むっぎゅ! ぐろまぐはこのぱちゅりーさまなのよ! れいぶなんで、わたしのあやつ、あやづりにんぎょ……うあ゛あ゛ああああん!!」 またも始まる泣き声の大合唱。 耳を塞ぎながら、いよいよ慧音は対処に困った。 どうにも、このゆっくり達はゆっくりらしからぬ仲間思いの心の持ち主であるらしい。 いくらゆっくりとは言え、そのような者たちを無下に扱うのも気が引けた。 しかしどんな事情があろうと、野菜を盗みに来た以上、みすみす見逃すわけにも行かぬ。先日のまりさの仲間となれば尚更だ。 思い悩む慧音の肩に、ぽんと妹紅が手を置いた。 「どうした」 「うーん、この場、私に預けてくんないかなと思って」 妹紅の手には、先日も使った焼印があった。 慧音は少し悩み、 「ふむ、分かった。任せる」 「さんきゅー」 笑って答え、妹紅は手の平に炎を点し、それで焼印を炙っていく。 「ゆ!」 事態をいち早く察知したれいむが、皆を守るように前に出た。 「やめてね! みんなをいじめないでね! やるなられいむだけにして!」 「だめだ」 にべもなく妹紅は答えた。 「『悪いことをしたやつは痛い目にあう』。あのまりさ達を見たんなら、それは分かるだろう。 お前達は、悪いことをやろうとした。しかも悪いと分かっていた上でだ。 まぁ結果的には未遂だし、同情の余地もあるけど……それでも、けじめは必要だ。分かるか?」 「ゆっ……」 れいむは黙りこくった。妹紅の言い分を理解してしまったからだろう。 他のゆっくり達も、どこか神妙な雰囲気で、動きを止めた。恐怖から身を震わせてはいたが。 「じゃあ焼くぞ」 「ぶぎっ……!」 焼印が押し付けられ、れいむは迸りそうになった悲鳴を飲み込んだ。 ここで無様に助けを乞えば、自分達は本当にあのまりさ達と同じ、薄汚い泥棒になってしまうと思った。 他のゆっくりも、そんなれいむを見て、一言も漏らさずに耐え切った。 「んー、結構根性あるな」 全てのゆっくりに焼印を押し終えた妹紅は、焼印を置くと、れいむの前で身を屈めた。 「ゆ゛っ!」 れいむは恐怖から身を竦ませた。 あのまりさ達は、焼印と一緒に足も焼かれていた。自分達も同じ目に遭うのだ。 だが妹紅が口にした言葉は、ゆっくり達にとって思いがけないものだった。 「森の西側に岩場があるのを知っているか?」 「……ゆ?」 「お前達の住んでるところから、ちょうど太陽の沈む方向にある岩場だ。知ってるか?」 何故そんなことを今聞いてくるのか、れいむにはさっぱり分からなかったが、とりあえず答えた。 「ゆ! それならしってるよ! れみりゃがすんでてあぶないところだよ!」 「ああ、そうらしいな。まぁ私は近寄ったことないんだけど。 で、これも人から聞いた話でしかないんだが、その岩場を抜けたところに、また別の薄暗い森があるんだとさ。 日は当たらんしじめじめしてるが、食べ物は豊富だし、人も滅多に入ってこないし、危険な野生動物もいないんだって。 そこでなら、わざわざ人里を襲わなくても暮らしていけるんじゃないか?」 「ゆぅ……それ、ほんと?」 訝しげにれいむは妹紅を見た。妹紅は肩を竦めてみせる。 「さてね、私も行ったことはないからな。けどいい年した樵の話だし、そこそこ信憑性はあるだろ。 ま、お前達の足でも、朝早くから行けばれみりゃが目覚める前に岩場は抜けられるんじゃないか?」 「むっきゅ、でもわたしたちにはきずついたなかまが……」 「そんなことは知らんよ」 妹紅はゆっくりと立ち上がり、細めた目でれいむ達を見下ろした。 「お前達の、誰が旅立ち、誰が残り、誰を連れて行くのか。そんなことは、私の知ったことじゃあない。お前達が選ぶことだ」 そこまで言って、妹紅はひらひらと手を振った。 「さぁさぁ、もう帰りな。足は焼かないでおいてやるから。 ただ、次にその焼印つけたゆっくりを見かけたら殺すってところは変わらないからな。 もう里には来るな。それだけ理解したら、帰れ」 ゆっくり達はしばらく迷っていたようであったが、やがて一匹また一匹と、森のほうに跳ねていった。 最後にリーダーれいむが振り返り、何かを言った。聞き取れなかったが、その口の動きは「ありがとう」と言っているように見えた。 「見事な裁きであった」 慧音が嬉しそうに頷いた。妹紅は途端に気恥ずかしくなって、顔を赤くする。 「裁きだなんて、そんなこと軽々言ってたらあの閻魔様に怒られちまうよ。私はただやりたいようにやっただけだからさ」 「では良い判断だった、ということにしておこう。あのゆっくり達ならば、もう人里に来ることはあるまい。 ……それにしても、全てのゆっくりがああだったら、もっと私達もゆっくりできるのだがなぁ」 「いやまったく」 妹紅だけでなく、農夫達も一様に頷いた。 多分、全員の脳裏には、先日のあの憎たらしいまりさ達が浮かんでいることだろう。 「…………」 「けーね?」 「ん、いや、なんでもない。──それでは、撤収!」 その翌日から、森の中でゆっくりの姿を見かけることはなかった。 あとがき 長い。 前回(ゆっくり実験室・十面鬼編)があまりにもあれだったので、真面目に書こうとした結果がこれだよ! あと焼き土下座とか言いながら、焼いてるの最初だけだし。土下座してないし。 続きも早いうちに仕上げようと思います。長くなりすぎない程度に。 ゲスなまりさもきれいなまりさも、どれも良いものであります。 磨けば磨くほどに光る素材。それがまりさなのです、きっと。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 続く このSSに感想を付ける
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『ゆんやーマスク』 10KB 自業自得 家族崩壊 番い 群れ 赤ゆ れいぱー 現代 愛護人間 自滅以外の何者でもない ゆ虐スレをふと覗いてみたら タイガーマスクネタ作品生えてこないかのぅ とありましたので書き上げてみました。 虐待パートだけ読みたい方は ☆ の部分からお読みください。 どうしてみんなあんなに可愛らしいゆっくりを虐待したりするんだろう? ゆっくりはこんなに可愛らしくて癒してくれるのに。 あ、捕食種はだめだよ、可愛いゆっくりを食べちゃうからね。 昨日は森にいるゆっくりの群れが虐待鬼畏惨に壊滅させられたと聞くし、 一昨日は川原の群れがダムの一斉放水で全部流されてしまったらしい。 ゆっくりにとって生きづらい世の中をなんとかしてあげようとしても、 農林水産省の出している指針によれば野生のゆっくりに 餌付けなどをしてしまうと人間との境界線が曖昧になり、 近隣の農家や子どもに迷惑がかかり、結果として一斉駆除が行われるため、 本当にゆっくりのことを好きならやめたほうがいいとのことらしく、 ゆっくりの群れに対して支援を行うこともままならない。 ところが、ある日テレビを見ていると良いニュースが流れていた。 なんでもプロレス漫画「ゆんやーマスク」の主人公「愛出直人」などを名乗り、 児童養護施設などにランドセルや文房具を匿名で寄贈するという 微笑ましい事件が起きているそうだ。 これに私はピンときた。 直接ゆっくりと関わって人間との境界線が曖昧になることがいけないならば、 こっそり群れに侵入して支援をしてあげればよかったのだ! こんな美味しいネタがあるのに行動に起こさねば愛でお兄さんの名がすたると思った僕は 最近近所の森に住み着いたぱちゅりーが長の群れにこっそりと支援を行うことにした。 「そろ~りそろ~り」 今僕は近所の森に住み着いた群れの近くまでやってきている。 そろ~りそろ~りと口に出しているのは、なんでもゆっくりたちは 此の様にしゃべりながら移動することでステルス作用が発生して、目に見えなくなるそうなんだ。 こないだ路地裏にいた野良まりさに教えてもらったからきっと間違いないんだろう。 現に今 けっかいっ のスキマからゆっくりの家族をのぞき見してるけど、 全く気づかれてないで眠りこけている。 どのおうちを覗いてみてもゆっくりたちは眠りこけているので、 今のうちに僕が考えた最強の支援を施してしまうことにした。 それは、ゆっくりが乗るとオレンジジュースが出てくる簡単な機械と、 同じく乗るとれみりゃとかふらんも逃げ出す唐辛子スプレーの原液を噴射する装置。 この二つを偽装して、いかにも自然の中にある道具に仕立て上げることなんだ。 バイト先で 「愛出先輩ってマジ手先器用っすねwwwwwww尊敬するっすよwwww」 って言われる僕なので、あっという間に作業は完了する。 パッと見ではどちらも樹の根元にあるだけにしか見えないが、 これも野良まりさに教えてもらったけっかいっの理論が応用されてるために、 ゆっくりからは自然にあるものにしか見えないはずだ! 群れのおさをするくらいのぱちゅりーなら、 きっとこの装置の使い方をすぐに理解できるに違いない!!! こうして一仕事終えた僕は心地よい疲労とともに帰路につき れいむ印のお布団を頭までかぶってひと眠りすることにした。 ☆ ここより自滅パート ここは愛でおにいさんがゆっくりレベルの偽装が施された装置が設置された群れ。 もっともゆっくりレベルであるという事はゆっくりにとっては見つけられないというわけなのだが。 ゆっくりにしては珍しく、太陽が真上にくる前に目覚めてきたゆっくり共が 広場として使われている部分に集合していた。 「むっきゅ、みんな、あさのじかんよ!!」 「ゆっくりおきるよ!!!おさ、ゆっくりしていってね!!!」 「むきゅ、きょうはれいむもはやおきね、 きのうけがしたおちびちゃんのぐあいはだいじょうぶなの?」 「ゆうん・・・それがあまりよくないんだよ、まりさもきのうがんばりすぎて きょうはうごけないっていってるし、だからきょうはまりさのかわりにはやおきして からだにいいものをあつめることにしたんだよ!!!」 「れいむはほんとうにぼせいがゆたかなゆっくりね、 むれのおさとしてむはながたかいわ!!」 「ゆゆーん//てれちゃうよ!!! じゃあれいむはゆっくりいそいでからだにいいものをさがしにいくよ!!!」 ド饅頭たちがドグされたママごとのような会話をがしながら、 今日の狩り(笑)に出発するらしい。しかしゆっくりは本来脆弱なド饅頭であり、 慣れないことをするとすぐに皮に傷が入ったりしてしまう。 「それじゃあれいむはいろんなものをさがしにいくよ!!! ぴょーんぴょーんぴょおおおおおおおぉおぉ!!!!!??」 脳みその腐りそうな会話をしていたバチがあたったのか、 最初の一歩でこのれいむは尖った石を踏んでしまったらしい。 「れいむのなまめかしいってまりさがほめてくれるすべすべのあんよさんがぁぁあああ!!!」 しかもゆっくりは痛みに弱い饅頭であり、少しの痛みで泣き叫び、 転げまわる習性を持っているため、その転げまわる過程において かわいいおちびちゃん(笑)を轢き潰してしまったり、 余計に傷を増やしてしまう愚かさを持っているのだ。 本当に動く被虐饅頭とはよく言ったものである。 「ゆべえええええ!!!いぢゃああいいいいい!!!あんよがいぢゃあああゆべら!?」 明らかにぴょんぴょんはねるより早い速さで転げまわっていたれいむは、 全身を擦り傷だらけにしながら近くの木にぶつかった。 「でいぶのほうせきのようにかがやくおがおがあああ!!! いぢゃあああああああああまあまさんのあじがするよ!!!」 その時このれいむにとって最初で最後の奇跡が起きた、 愛でお兄さんが無駄にステルスをしていたおかげで、このままでは 一生発見されなかったであろう装置があるところにれいむが直撃したのである。 「れいむ、うまれかわったみたい!!!かわいくってごめんねー☆」 「れいむっ!だいじょうぶなの!?あんよさんをけがしたみたいだけど・・」 「ゆゆっ、そういえばもうあんよさんいたくないよ!!! れいむがかわいすぎるからかみさまがあまあまをくれたんだね!!!」 「むきゅ、それはないとおもうけど、あまあまさんはここからでてきたのかしら?」 さすがはもりけんぱちゅりーなのか、 それともれいむがぶつかったことで偽装がすこしとけたのか、 ぱちゅりーは早速この仕組を解いたらしい。 「むきゅ!ここにけがをしたおちびちゃんをつれてくるのよ!!」 「さすがはもりのけんじゃぱちゅりーだね!!!さっそくおちびちゃんをつれてくるよ!!!」 しばし後おちびちゃんを帽子にのせたまりさと、さっきのれいむがもどってくる。 「ほんとうにこんなとこでおちびちゃんのけががなおるのぜ?」 「ほんとうだよ!!!さっきれいむもあんよをけがしちゃったんだけどいっしゅんでなおったんだよ!!!」 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・いじゃいよぉ・・・・」 「まりさ!おちびちゃんがいたがってるんだよ!!はやくそこにおいてあげてね!!!」 「せにはらはかえられないのぜ・・・ここでいいのかぜ?」 まりさはずりずりと移動し、樹の根元にたどり着いた。 そうすると、どこからともなくオレンジジュースが流れ出て、まりさにふりかかった 「ゆううう!!!とけるうう!!!!よぐもだまぢでぐれだのぜれいむうううう!!! あやまってもゆるしてあまあまのあじがするよ!!!」 「ゆっきゅちー!!!!」 「ゆゆっ?おちびがげんきになったのかだぜ!?」 「ゆわ~い!!!おちびちゃんのけががなおったよおおお!!」 こうしてれいむ一家のかわいいおちびちゃん(笑)は怪我が完治して事なきを得た。 このニュースはむれをかけめぐり、神様が贈り物をしてくれたのだという話になっていた。 こうしてゆっくりたちは致命的な怪我をしても瞬時にして回復することができるようになったのだ。 しかしゆっくりはどこまでいってもド饅頭である。 ものの1時間もたつと群れの中でもゲス基質のある饅頭たちが、装置の周りにたむろしだした 「ここはまりささまのゆっくりぷれいすなのぜ!!!せいめいのみずがほしければあまあまをもってくるんだぜ!!!」 まず自称群れでさいっきょうっのまりさがここでおうち宣言を行った。 最も生命の水ことオレンジジュースは個別のゆっくりだけではなく 群れとして必須の物なのであっというまにせいっさいっされたのだが。 「どぼぢでばりざざまがこんなめに・・・」 次に起きたのはしんぐるまざーによるぷれいすの占領である。 「れいむはしんぐるまざーなんだよ!!!だからここでおちびちゃんたちをそだてるんだよ!!!」 「「「おきゃあしゃんはちょっちぇもゆっきゅりしちぇりゅにぇ!!!」」」 余計なことには無駄に頭が回るのか、既に茄子型になっている赤ゆを 次から次へと入れ替えて生命の水(笑)を飲みまくっていった。 その結果あっという間に装置の中に入っていたオレンジジュースは尽きてしまい 群れ総出によるせいっさいっの結果しんぐるまざー一家の命運も尽きる結果となった。 「しんぐるまざーせんげんしたけっかがこれだよ!!!」 「「「もっちょゆっきゅりしちゃかっちゃ・・・」」」 一方最初に装置を発見したれいむは群れの英ゆんとなっていた。 実際のところ棚ぼた以外の何者でもないのだが、そこはさすがの餡子脳である。 最も、わりとこのれいむは餡子脳な事以外は善良な個体であったようで、 つけあがることなく、また神様からの贈り物がもらえないかと日々森の中を散策しているのだった。 「ゆゆ~ん、かみさまにみとめられたかわいいれいむはきょうもおくりものをさがしにいくよ!!!」 実際のところゆっくりに神様はいるのだろうか、少なくとも邪神はいるように思われる。 それをれいむが身を持って肯定する結果となった。 プシャアアアアア 「ゆっ・・・・・・・っぎゃあああああああああああああああ!!!! れいむのぷるぷるしたおべべがああああ!!!あぢゅいぢゃあああああ!!! きゃりゃいいい!!!!!これどくはいってるうううう!!!!!」 ゆっくり並の器用さを持つお兄さんは、オレンジジュースの装置と同じように下に来たゆっくりに対して 唐辛子スプレーが噴射されるように装置を偽装セッティングしていてしまったのだ。 「でいぶのおべべがああああ!!!なにもみえないいい!!!!!おはだがいだいいいい!!!」 その場で転げまわることによって全身にくまなく唐辛子スプレーを浴びてしまうれいむ そのままれいむはゆっくりにあるまじき速さで転げまわり、あたり一面に唐辛子を撒き散らし始めた ああどうしたことか、つい昨日までゆっくりの楽園だった森が 撒き散らされる唐辛子スプレーのおかげで大喜劇である。 「ゆっぺええぇぇえ!?おべべがいだいいいい!!!?」 「ゆんやあぁぁぁ!!!こっちこにゃいでえええ!!ちゅびゅれびゅべっ」 「ぱちゅりーのむれが・・・エレエレエレ」 「ゆっへっへっ、やっぱりあのれいむはくずなのぜ! まりささまはいまのうちにたべものをはいしゃくしてすたこらするのぜ」ぷりんっぷりんっ 「んほおおお!!!まりさったらさそってるのねえええ!!!」 「やべちぇえええええええ!?」 「らんしゃまああああ!?」 撒き散らされる唐辛子によって目が潰れてしまう親れいむ その転げまわる親に踏み潰される赤ゆ その参上を見てエレエレするぱちゅりー ここぞとばかりにれいむを見捨てて火事場泥棒をしようとする英ゆんれいむの夫のまりさ そのまりさの尻に欲情してレイパーになるありす 本能に従い叫び声を上げるだけのちぇん 虐待鬼畏惨がみたならば垂涎物の光景がそこにはあった。 英ゆん(笑)のれいむが「もっとゆっくりしたかった・・・」と力尽きる頃には 群れの中でまともに動くことの出来るゆっくりはほとんどいなくなっており、 残されたゆっくりはこの森をのろわれたちと呼び、長のぱちゅりー(生きてた)を置いて逃げ出した。 「むきゅ・・・どぼぢで・・・ごんなごどに・・・」 んー☆良く寝た そういえば先週に贈り物をした群れは元気でやってるかなぁ? でもまた行って見つかったら悲しいし、今度は別の群れに贈り物をしに行こう! きっとあの群れも今頃は幸せそうに暮らしているんだろうなぁ! 過去作など anko1811 ゆあつそうち anko1817 ゆっくりの甘さについて anko1865 ゆランス料理フルコース(前半) anko2701 ゆランス料理フルコース(後半) anko2805 こんにゃくなんとか anko2811 ゆんはん anko2818 とうしつ anko2839 石焼ゆっくり さくっと書こうとしていたのにどうしてこうなった。 悲しみのサイドチェストを行うしか無い。 汚あき