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効率良くゆっくり達の関係を悪くさせる方法はないだろうか? 効率良くゆっくりの駆除をする方法はないだろうか? 効率良くゆっくり達を服従させていく方法はないだろうか? これらのテーマを元に考え出されたのが「色仕掛けをするゆっくり」であった。 そもそも、人間ですらデート商法・接待などの異性を利用した人心操作が行われている。 ならば、人間よりも馬鹿で単純な生き物であるゆっくりにこれを応用することが考え出されたのは、必然と言えよう。 誰が言い出したかは分からないが、ゆっくりを色欲で操作するプロジェクトは加工所の中で密かに進められていた。 このような色事に縁の深いゆっくりといえば、そう、あいつしかいない! 「ばでぃざったら、ありずのでぐにめろめろね゛えええええぇぇ!」 「い゛やああああああああ!!」 「すっきりぃいいいいいいい!!!」 「すっきりぃ…もうありすとはゆっくりできないよ…」 「また駄目だったか…」 「やっぱり無理ですよ、こんなの。すっきり好きのありすとはいえ、れいぱーの行為はゆっくり達には忌み嫌われてるんですから…」 実験は難航していた。餌・生活環境を整え、美ありすを作り出すところまでは簡単だった。 お相手のいないゆっくりは高い確率でこのありすと生活を共にすることを望んだ。 しかし、既にお相手がいるゆっくりの仲を引き裂くほどの効力はなかった。 さらに、カップルになっても、いざすっきりする段になるとありすの本性を垣間見て 一気にありすへの愛が冷めていくゆっくりがほとんどだった。 「どうにか強制的にゆっくりさせるような方法があればいんですけどね…」 「!、それだ!」 連れてこられたのはドスまりさ。 ドスのゆっくりオーラは、どんな生き物でもゆっくりさせてしまう効果があるという。 問題は、どうやってありすにこの効果を持たせるかだ。 物は試しである。ドスまりさから抽出した餡子をありすに注入する。 入れられた瞬間はびくびくとして、「いなかものおおおおお!」等と叫んでいたありすだったが、しばらくすると大人しくなった。 外見は全く変化がない。 試しにちかくにゆっくりまりさとれいむのカップルを置いてみる。れいむは頭に茎が生えた出産間近のものだ。 そこに、ブルブルと振動を与えた実験体ありすを放つ。 「ばでぃざあああああああああああ!!!すっきりしよおおおお!!!」 「い゛やああああああああ!!」 やはり嫌がるまりさ。おろおろするれいむ。子供がいるからか、身の危険を感じてか、何もできずにいる。 肌をこすり合わせるうちに、すりすり型のすっきりの特徴である粘液がありすから分泌され始める。 それに乗じて、まりさも次第に顔に赤みを増していく。 すりすり… すりすり… 「まりさ!いっしょにすっきりしようねええええ!!」 「うん、ありす!すっきりしよう!」 「「すっきりー!」」 すっきりを終えた2匹。まりさの頭にはもちろん茎が生え始めている。 そこでようやく、今まで蚊帳の外だったれいむがまりさを連れ、ありすから逃げようとする。 「まりさ!ゆっくりできないありすだよ!いまのうちににげよおお!」 「ゆ…まりさにげないよ。ありすとずっとゆっくりしたいよ…」 「どぼじでぞんなごというのおおおおおおおお!!!!」 「れいむはひとりであかちゃんそだてていってね…」 「どぼじで(ry」 出来てしまった。かくして、ここに「色仕掛けありす」が誕生したのである。 その概略はこうだ。 ありすがすっきり行為をする時に分泌される液体にはどうやらドスの持つゆっくり成分が凝縮されて含まれているらしい。 この成分はすっきりのお相手であるゆっくりにのみ吸収されるので、人間への影響はない。 そして、その成分を含んだ液体や精子あんこを吸収したゆっくりは、このありすといればゆっくりできるという思いと、 またあのような最高のすっきりが出来る、という思いからありすについていこうとする。 さらに、研究を重ねることで、何回もすっきりを繰り返すことで段々とありすへの依存が強まり、 ありすの言いなりになってしまうことが分かった。 これを世に出せば、ありすを中心とした効率の良いゆっくりの統制が行えることだろう。 しかし、これを世に出す前にテストとして一般人に引き取ってもらう必要がある。 なるべく色々な使い方を模索してくれる人がいいのだが… ゆっくり関連製品購入者リストをめくっていく。 じゃあ…彼にしようか。 「お菓子の柚栗堂 店員 ○○○○」 ある晴れた休日のことだった。 「ピンポーン」 滅多にならないドアのチャイムが鳴った。 俺にアポなしの訪問などあるはずがない。どうせセールスか何かだろうと思った。 「ゆっくり加工所の物ですがー」 「はい?今開けます」 加工所?加工所には虐待用のゆっくりを買ったり、怪しげなマシーン等を買ったりしてお世話になっている。 しかし、わざわざ向こうから来るとは、いったいなんなのだろうか? 「いやー、ご在宅で良かった。今回貴方には新作ゆっくりのモニターを行っていただきたいのですが…」 かくかくしかじかと説明をする加工所職員。手には段ボール箱。 「それで、お今回の話、お受けしていただけますか?」 しばらく考えに耽っていた俺は、はっと気がついて、 「もちろんですよ!」と返した。 はやる気持ちで段ボール箱を開けた。 段ボール箱を開けると、そいつは普通のありすと変わらない姿・口調で、 「なかなかとかいはのおうちね!ここをありすのゆっくりぷれいすにしてあげてもいいわよ!」とほざいた。 それからの一週間の自由時間は全てこのありすの調教に当てた。 貴重なありすである。殺さないように、しかし体罰を与えることは厭わなかった。 そして、苦労の末、プライドの高いありすは俺の命令をきくようになっていた。 その時には既に、ありすの歯は全て無くなっていたが。もちろん、調教後に修復しておいたのは言うまでもない。 俺はまず、ありすの性能をテストすることにした。 「おにいさんありがとう。とかいはのらんちたいむだったわ」 「ありす、君にやってほしいことがあるんだ」 「なに?おにいさん」 「外からにんっしんっ!したまりさを一匹、家に連れてきてほしい。いいね?あと、その時にすっきりしちゃってもいいからね!」 「ゆっくりりかいしたわ」 二時間後、ありすは望み通り通常よりも膨らんだ胎生にんっしんっ!まりさを連れて来た。 思ったよりも早かった。きっとすっきりが自分の武器になることを熟知しているのだろう。 教育した甲斐もあって、必要最低限のすっきりしかしなかったようである。生えている茎は一本だけだった。 まあもう一つの仕掛けとして、れいぱー化しないよう、性欲を抑える薬を先ほどの食事に混ぜておいたのだが。 「ようこそ!、僕の家へ。歓迎するよ!」 「ゆっくりしていってねぇ…」 まりさは未だ夢見心地である。目がとろんとした状態のままありすの方ばかり見ている。 「ありす、ありす、ちょっと来て」 「ゆ?」 「このまりさ、誰とのこどもが中にいるの?」 「れいむよ!」 「ありすは自分の子供と、れいむの子供、どっちが欲しい?」 「もちろんありすのあかちゃんにきまってるじゃない」 「それじゃ、中の子供は殺しちゃおうか」 後は簡単であった。ありすに何回かすっきりをさせる。 回数を重ねる毎にまりさはありすへの愛を深めていく。 体力は残しておいてもらわないとこまるので、まりさに疲れの色が見え始めたところで中止するように言った。 すっきりが一通り終わったところで、ありすからこの家の主は俺であること、俺の命令は絶対であること そして、俺の命令に従わない場合はまりさを嫌いになる、という主旨のことを伝えさせる。 「やべでよぉお?ありすがいないど、ばでぃざゆっくりできないゆぅうう!!」 「じゃあ僕の言うことを聞いてね!」 「おにーさんのいふこときくよおおおお?ありすがすきだがらぎぐお!」 「ありすも僕も、君のお腹の中の子供…要らないと思うんだ! ゆっくりできないれいむとの子供だろ?そんな奴がいたらありすとゆっくりできなくなるぞお?」 「やべでねぇええ…ありす、きらいにならないでねえええ…ゆんしょ!ゆ゛ぅうううううううう!」 まりさが力み始めた。お腹の中の未成熟な子供を無理やり押し出して堕胎するつもりなんだろう。 「ゆ゛ううううううう!!!!ゆ゛うううううう!!!」 「頑張れ、まりさ!」 「がんばってね、まりさ!」 ありすの黄色い声援を受けて、一層力を込めるまりさ。 「ゆ゛っ!!!」 すぽっ! 少し拍子抜けするような音を出して、中から黒っぽい塊が飛び出してくる。 餡子の周りには薄く肌色の膜が纏わりついているが、形を保つには不十分なものだった。 髪ももみあげの部分しか生えておらず、リボンはその髪にかろうじて繋がっている。 見るからにひ弱、今すぐにでも命の灯が消えそうな赤れいむ。 「潰せよ」 特に躊躇いもせず、まりさはそれに飛び乗った。 ぐちゃっと潰れる際、それは「もっちょゆっきゅりしたきゃったよ…」とか言ったような言わなかったような。 「ありすのとかいはのおうちが、いなかもののれいむでけがれたわ!ゆっくりそうじしていってね!!」 「そうだね、後始末も頼んだよ。さあ、ありすはこっちに来てご飯の準備しようね!」 一人取り残されたまりさはありすのために我が子の残骸をひたすら舐め取るのだった。 次の日、まりさは随分とすっきりの疲労から回復して、元気になっていた。もちろん、お腹の子供が居なくなったのもその一因である。 元気に頭の茎をゆさゆさ揺らしながらありすに擦り寄る。 ありすもそれに答える。 朝から元気なことだ。 俺はただ一言、「殺すなよ」と言って、仕事に出かけた。 帰ってくると、まりさの頭の茎は三倍以上に増えていた。こうなるとどっちが本体か分からない。 一応、本体の方はかろうじて生きていた。既に虫の息だったが、それでも 「ありすぅううう…あかちゃんたくさんできてうれしいよぉ…」 とか言ってるのが微笑ましい。 ありすは俺がいない間、上手く調節してすっきりしてくれていたようだ。 そもそも、野生のありす種が見境のないれいぱー化しやすいのは、その性格による欲求不満からであり、 満足に相手とすっきりできる今となってはその欲求が暴発することもないのだろう。 あまり長引かせるのも何なので、食事後には始めるとするか。 まりさが外で雑草を食べている最中、俺はありすと食事をする。 「ありす、一日暮らしてみて、このまりさのこと、どう思う?」 「なかなかとかいはのまりさよ!それでもわたしのとかいはっぷりにはかなわないわね!」 ハハッ、違いねぇ。 「ありす、僕はこのまりさは君に合ってないと思うんだけれど…」 「そ、そんなことないわよ!まりさとゆっくりしたいわ!」 「ありす…歯がないとご飯もおいしいくないね?」 「ゆ…あれは…もう、やべで…そうね!まりさはゆっくりできないまりさよ!」 「じゃあポイしようか」 「そうよ!ポイ、よ!」 「そうだよな!ごちそうさま。ありすもこっちに来てね!」 ありすを呼ぶ。外で雑草掃除をしていたまりさも呼ぶ。 「いま話をしていたんだけど、ありすは君のことが嫌いになっちゃったらしいんだ。 もう君とはゆっくりできないんだって…」 「どぼじでええええええ!!??ありずがいない゛どまりさ、まりさは…」 「まりさはどうなるんだ?」 「いぎでいげないいいいいいい!!!!」 「じゃあ死ぬ?最後にありすに良いところみせて死ぬ気はない? ありすのために生きてきたんだろう?ありすのために死ぬ気はないかい?」 ありすが黙ったままなので、発言を促す。 「しんでね」 「ゆ゛」 「ありすのまえからきえてね!」 「ゆ゛ううううううううううう?????」 「と、いうことだ。サクッと、ね」 心身ともに疲弊したまりさでは自殺は難しいと考えたので、台所に持って行って、鍋に熱湯をはる。 「飛びこめば終わりなんだけど…そうだ、最後にいい思い出作りをしよう。ありす、すっきりしてあげてね!」 「ゆっ!?」 突然の事に動揺するありす。 しかし、逆らえばどうされるか分かっている。 相手ならまた作ればいい。自分はどんなゆっくりにも負けないくらい、とかいはなのだから… 「まりさ、すっきりしよおおおおお!」 「ありすううううううう!!!!!!」 「「すっきりするよおおおおおお!!!」」 激しく身をこすり合わせる2匹。まりさは限界に達しようとしているが、ありすは暗い表情のままである。 「すっきりー!」 「ゆっくりおゆにとびこんでね」 すっきり直後で酩酊するまりさ。ありすのためなら、ありすのためなら…もうゆっくりしてもいいよね? まりさはゆっくりと鍋に沈んでいった。 沸騰した湯だ。もう手遅れだろう。 ありすは泣いているのかよくわからない表情をしていた。 俺は性能を確認し終え、これからを期待してはっきりと笑っていた。 続け 【あとがき】 出来る限り続けたいです。もうちょっと無機質な虐待を目指して。 ターゲットにされるゆっくりは、精神的には幸せなので、精神的な虐待のがお好きな人はお気に召さなかったかもしれません。 そもそも虐待なのか? 登場する男は一応他の作品とリンクしてますが、特に読み進める上では問題ないかと思います。不快ならばご指摘ください。
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「むーちゃ、むーちゃ、ちゃーわせー」 赤ちゃんのゆっくりれいむはここで一人で暮らしている。 両親は随分前に実験で死亡した。親のゆっくりまりさの方は実験による破損が少なかったため最期に赤ちゃんに会うことができた。 とは言え、餡子の中に大量に異物を埋め込まれているため思考能力は低下し、 赤ちゃんに逃げろともなんとも伝えずに死んだけど、 「おねーしゃん、ゆっくりちていってね」 「そうさせてもらいますよー」 永琳様の言いつけで、赤ん坊の世話なんかしているが、 こんな奴が一体何になるんだろう。何も指示は受けていないし・・・。 適当といわれてるからテキトーでいいのかな。 香霖堂で買った外の世界のマッサージチェアにてゐは腰掛ける。 まさか、永琳様や鈴仙の古着があんな高値で買い取られるとは。 ただ、一番高値で売れたのが姫様の上等な着物じゃなく、寝巻きにしていたジャージだったのがあの店らしい。 「おねーしゃん、あそぼ」 「無理だねー、できないねー、お断りだねー」 「・・・じゃあ、れいみゅがおうたうたってあげる」 「迷惑だねー、独善的だねー、うるさいねー」 赤ちゃんのゆっくりれいむは困っていた。 遊びたい盛りなのに、誰も相手をしてくれる人がいないのだ。 いつも部屋にやってくるお姉さんは椅子に座ってゴロゴロしたり本を読んだりしてるだけだ。 何も楽しくない。ああ、思いっきり遊びたいな。ゆっくりれいむはいつもそう思っていた。 「おねーしゃん、おもちゃちょうらい」 「拒否だねー、嫌だねー、自分で作ってねー」 「・・・ボールちょうらい」 「断固拒否だねー、絶対嫌だねー、がんばって自分で作ってねー」 「・・・」 ゆっくりれいむが黙り込んだのに満足し、てゐは文々。新聞のマンガ欄を読み始めた。 ゆっくりれいむはつまらなかった。 誰も遊んでくれないから一人でゆっくりしていた。 食事も水もある。意外に美味しい。 つまらないながらも満ち足りた生活を送っていた。 しばらくして、赤ちゃんのゆっくりれいむはすっかり大人になった。 「はーい、残念ながらお前が死なずにゆっくりしてたから、イライラしてるお姉さんから仕方なく御褒美だよ」 てゐは本当にイライラしていた。 永琳はこのままこいつを群に戻すそうだ。 それも一番待遇の良い部屋にだ。このまま一人で死ぬんだと思っていたてゐは裏切られた気分だった。 「ゆっくりし」 「しねーよ!!」 「ゆ!!」 「他の仲間がいるところに連れて行くから、さっさとこのかごに入れよ!!」 「あそべる?」 「バカ知るかバカ、入れクズのろま、ゆっくりバカ、バカゆっくり。死なせるぞ、何百回も死なせるぞ」 てゐはキャラクターが崩れるほどイライラしていた。 ゆっくりれいむはそそくさとかごに乗り込む 「はーい、イライラ発、超イライラ行き特急がストレスマッハで発車です」 かごを持ち上げ部屋を出るてゐ。 「わー、おそらを」 「飛んでねぇよ!」 「わー、おそらを」 「絶対飛んでねぇよ!!」 「・・・」 ゆっくりれいむは目に涙をためて黙り込んだ。 「絶対に飛んでねぇからな!!」 その後、ゆっくりれいむが何か言うたびにてゐは聞こえるように舌打ちをした。 ゆっくりれいむは群に戻される。 はじめてみる子にみんな興味心身だ。 「ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていくね」 すぐに友達になる。 「永琳様、何の実験か、教えてプリーズ。さもないとあの群に飛び込んで餡子のプールを練成してくるよ」 「それは後日お願いするわ。見ていなさい。あのゆっくりれいむはもうダメよ」 永琳の言葉通りになる。 ゆっくりれいむは最初、みんなと遊びたがった。 しかし、自分と同じぐらいのゆっくりは子育てやら何やらで忙しい。 「ゆ?あそぶの?いそがしいからあとでね」 「あそぶ?れいむ、こそだては?」 「れいむ、まだあそびたいの?ゆっくりしてないでおとなになってね」 「れいむはまだこどもだね!!」 下の世代と遊ぼうとしても相手にされない。 ゆっくりれいむは群の中で孤立していった。 「じゃあ、てゐ、お願いするわ」 両手に斧を装備したてゐが部屋に入ってくる。 「私は遊びの神、皆の者遊んでいるか」 「ゆっくりしていってね」 「断る。遊べ」 「ゆ?あそぶひまなんてないよ、ばかなの?」 「馬鹿はお前だ。遊びの神の前で何たる暴言」 自称遊びの神はゆっくりまりさを斧でかち割った。 「おかーしゃん!!」 さきほど殺されたゆっくりまりさの子どもが死体に駆け寄る。 「なんだお前、死を悲しむ前にやる事があるだろ」 「ゆ?」 「ゆ?じゃねぇよ。遊べよ!!」 また一匹、自称遊びの神はゆっくりを殺した。 「あ、あそぶよ。あそべばいいんだね?」 群のリーダーのゆっくりまりさが言う。 「イエス、遊べ。まずは追いかけっこだ。」 みんな走り回った。追いかけているのが誰とも知らず。 遊びの神は何もせずただ見守っていた。 一時間も走り回っていると、体力のないゆっくりパチュリーなどは疲れて動けなくなってくる。 「どうした、遊べ」 「む、むきゅ・・・むり、ゆっくり・・・させてね」 「プレイorダイ!!」 ゆっくりパチュリーは斧で真っ二つにされた。 パートナーのゆっくりまりさが駆け寄る。 「パチュリー・・・なんでゆっくりさせてくれなかったの」 「遊べよ」 「いやだ。ゆっくりしたい!!」 「じゃあ、お前は死体」 ゆっくりまりさは殺され、群の中では脱落するものも増えてきた。 脱落すれば死ぬ。追いかけっこはまだまだ続いた。 「はーい、追いかけっこやめー」 急に自称遊びの神からのストップ宣言 「自己紹介してなかった。ここに最近来たゆっくりれいむいる?」 「ゆ?あのこだよ」 ゆっくり達は一斉に部屋の隅にいるゆっくりれいむの方を向く。 「あの子、遊びたがってただろ?」 「うん、おとななのにね」 うるせぇ!!と答えたゆっくりまりさに斧を投げつける。 「大人とかどうでもいいんだよ。遊びに子どもも大人も生きるも死ぬもねぇんだよ」 ゆっくり達は怖がって相槌も打てない。 「えー、そのゆっくりれいむが遊びたいと強く願ったから天界の方から来ました遊びの神です」 一斉に遊びたがっていたゆっくりれいむを睨む。 「何睨んでるんだよ!!遊ばない奴の方が悪なんだよ!!」 遊びの神は投げた斧を拾うついでに何匹もゆっくりを潰す。 「じゃあ、追いかけっこを再開します」 しばらくして、部屋にはゆっくりれいむ一匹だけが残った。 遊びたいといっていた子だ。自分の我が侭が引き起こした惨状に半分気が狂っている。 「みんな、あそぼうよ!!」 ピョンピョン跳ねて、もう死んでいる仲間を遊びに誘う。しかし返答はない。 仕方なく、遊びの神の所に行く。 「おねーさん、あそぼ」 「無理だねー、できないねー、お断りだねー」 そう言って遊びの神は部屋を出て行く。 「・・・ゆゆ?みんなどうしたの?あそぼ?」 ゆっくりれいむはその後、ずーっと一人で追いかけっこをしていた。 ~あとがき~ 次回はもう少しはっちゃけたてゐの活躍が見てみたいです てゐとかチルノにはえーりん実験室一部屋ぐらいぶっ壊して欲しいです by118
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※fuku2103の続き。人物オリジナル注意 前回のあらすじ ゆっくりできなくなっちゃった★ 第四話「憎しみの炎(笑)終幕」 少年の家の上空を三匹のうーパックが旋回していた。 中にはまりさが二匹、ぱちゅりーが一匹。 しばらくすると少年が庭に出てきた。 少年は箱の中からゆっくりれいむを取り出し、庭に放つ。 れいむの体は遠目から見てもボロボロだった。 皮は垂れ、リボンはあちこちがちぎれ、頭頂部には無数の釘が刺さり、底部は焼かれ、口には歯がなく、片目を失っていた。 うーパック内のぱちゅりー達はその惨状に涙した。 少年はムチのようなものを取り出し、れいむに叩きつける。 それを受けたれいむは必死に這って動いていた。無理矢理マラソンさせているのである。 その様子を見ていたゆっくり達はこう思った。 (れいむをあのにんげんからたすけよう!!!) (れいむをゆっくりさせてあげよう!!!) その決意を胸にうーパック達は森へ帰ろうと進路を向けた。が ただ一匹ぱちゅりーはもう少しだけ様子を見ようとしていた。 俺は昨日から朝早くにれいむを庭で無理矢理はいずり回らせている。 理由なくやらせているわけではない。でも今は秘密だ。 這うのをやめた瞬間俺はムチをれいむの体に走らせる。 「ゆぴゃっ!!!ひゃへへ!!!はひひはひゅうううううううう!!!」 歯がないのでわかりにくいが「やめて!!!はしりますうううううううう!!!」と言っているのだろう。 これくらいなら歯医者じゃなくともわかる。 「おにーちゃーん!」 隣のあの子の声だ。ラジオ体操の帰りなのだろう。 慌ててれいむを縁側の下に蹴っ飛ばす。 「おにーちゃん、なにしてるの?それなーに?」 やべ!ムチ持ったままだった… 「に…にしおかすみこのモノマネだよ!アーーーーーーーーーーーッ!!!」 「あーそっかあ!おにーちゃんじょうずー!」 我ながらナイスだ。 近所を通りかかった人達の視線が痛いが。 ~~~~~~~~さかのぼること二日前~~~~~~~~ まりさはズタボロの体を引きずり、ある場所へ向かっていた。 それは、独り立ちする前日、母まりさから教えられていた場所だった。 「いい!!!まりさ!!!もしもほんとうにゆっくりできないときがきたら、もりのどすまりさにあいにいくんだよ!!!」 「どすまりさ???」 「とってもとってもゆっくりしておおきいまりさだよ!!!どすまりさならどんなゆっくりでもゆっくりさせてくれるよ!!!」 「ゆ?ほんとう???」 「でもほんとうにゆっくりできないとおもったときだからね!!!ゆっくりできるときはたよっちゃだめだよ!!!」 「わかったよ!!!まりさはれいむとゆっくりするよ!!!」 まりさは母親のいいつけを守り、れいむとひたすらゆっくりした。 だがもう一つのいいつけを破り、人里に降りてしまった。 まりさとれいむはその人間をゆっくりさせてあげようとしたが、その人間はゆっくりできなかった。 狭い箱に閉じこめられ、家族は殺されおうちも失い、せっかく出来た子供達は皆殺しにされ、自分自身も酷い目に遭い、れいむはもっと酷い目に遭った上に人間に捕まった。 まりさはゆっくりできなくなった。 今まりさの中にあるのはれいむを助けたいこととあの人間に対する復讐心だけだった。 だからまりさはドスまりさに頼る道を選んだ。 まりさは自分がゆっくりできなくなったことをわかっていた。 だがドスまりさはどんなゆっくりでもゆっくりさせてくれる。その母親の言葉だけを信じ森を駆けるのであった。 しかし痛んだ体についに限界が訪れ、まりさは、森のど真ん中で気を失った。 「ゆ…………」 「ゆっ!!!まりさ!!!きがついたんだね!!!」 まりさが目を覚ますと、そこは見知らぬ洞窟の中だった。 目の前には、心配そうな、だが独特のふてぶてしい表情のれいむがそこにいた。 「れ、れいむっ!!!れいむううううう!!!」 「ゆっ!!!まりさ!!!まだうごいちゃだめだよ!!!ゆっくりおちついてね!!!」 まりさはれいむの姿を見るや飛びつこうとするが制止される。 やがて落ち着きを取り戻し、目の前のれいむが捕まったれいむと別ゆっくりであることに気付く。 「ゆ…れいむ、ここはどこなの…?」 「ここはどすまりさのかくれがだよ!!!まりさはもりのなかでたおれてたかられいむがはこんできたんだよ!!!」 「どすまりさの…」 まりさは倒れた時点で既にドスまりさのテリトリーに入っていたのだ。 そこで食料を集めていたれいむが偶然見つけ、今に至る。 「まりさ、ひどいけがしてるからいまはうごかないでね!!!でもみっかもすればもとどおりうごけるようになるってぱちぇがいってたからね!!! いまはゆっくりがまんして、ゆっくりげんきになってね!!!」 「うん…ゆっくりりかいしたよ…」 本音を言えばまりさはすぐにでも行動を起こしたかった。 だが今の痛みきった体のままでは復讐などとてもできたものではない。 まりさは素直にれいむの言う通り、自身の回復を待つことにした。 人間は「れいむは生かしておく」と言っていたし、何よりこのれいむにはあのれいむの面影があったからだ。 …この期に及んで人間の言うことを信じるあたりやはり餡子脳と言ったところか。 「ゆ…ううううぅぅうぅぅう……」 「いだいよぉおおおぉおぉおぉぉ………」 「ぐるじいよおおぉぉぉぉぉおぉお……」 「むぎゅううぅぅううぅぅうぅぅぅ………」 「ごのままじんじゃうんだね、わがるよ………」 「そんなこといっちゃだめだよ!!!きっとたすかるよ!!!ゆっくりがんばってね!!!」 よく周りを見渡してみると、そこには自分と同じ、もしくはそれ以上の大怪我を負ったゆっくりたちが呻き声を上げており、 それを必死に看護する元気なゆっくりたちの姿があった。 さながら戦時病棟のようである。 「むきゅ……も……だ…め…」 「ぱちぇ!!!ゆっくりがんばってね!!!がんばればきっとゆっくりできるよ!!!」 「ま……りさ……ごめ……むきゅー」 「ぱちぇえ゛え゛え゛ええ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇ゛ぇ゛え゛えぇ゛え゛ぇえ゛え!!!」 体の半分近くを失っていたぱちゅりーが今息を引き取った。 ぱちゅりーにしてはよく持った方であろう。それはひとえにゆっくりたちの必死の看護の賜物である。 「ゆ……れいむ……みんなどうしたの?なんだかゆっくりできてないよ……」 「あのみんなはね、にんげんにひどいめにあわされたかわいそうなゆっくりたちだよ!!!ここはそんなゆっくりをゆっくりさせてあげるためのへやなんだよ!!!」 まりさは激怒し、悲しんだ。 自分達と同じ境遇の持ち主がこんなにたくさんいたとは。やはり人間は忌むべき存在だと。 「にんげんはほんとにゆっくりできないいきものだね!!!みんなしねばいいとおもうよ!!!」 「ゆっ!!!まりさ!!!そんなこといっちゃだめだよ!!!」 「どうして!!!みんなにんげんのせいでゆっくりできないんだよ!!!ゆっくりできないにんげんはみんなころせばいいんだよ!!!」 「どう゛じでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛お゛お゛お゛ぉ゛お゛ぉぉ゛ぉ゛お゛おお゛!!!」 まりさとれいむはお互いの言うことが理解できなかった。 何故れいむはそこまで人間をかばうのか。 何故まりさはそこまで人間を殺そうとするのか。 全く理解できなかった。 二匹はお互いの事情を説明した。 まりさは自分たちが人間に受けた酷い仕打ちのこと。 れいむはゆっくりたちが人間に悪さをしたこと、その結果ゆっくりが迫害されたこと。 その他もろもろの事情をお互いに打ち明けた。 「だからしかたがないんだよ!!!これいじょうのひがいをださないためにもにんげんにてをだしちゃだめだよ!!! もしにんげんをころしちゃったりしたら、このさとがゆっくりできないってどすがいってたもん!!!」 「なにいってるの!!!にんげんはゆっくりできないやつなんだよ!!!おもいしらせてやらなくちゃだめなんだよ!!! しかえしされるのがいやならにんげんをみんなころしちゃえばいいんだよ!!!」 もはや「あの」まりさと同一人物とは思えぬ憎しみに満ちた発言。 平和的解決を望むれいむ達ドスサイドと人間達への制裁を望むまりさ。 まりさの不満が爆発し、れいむにこう言い放った。 「じゃあそのどすまりさにあわせてよ!!!したっぱれいむじゃはなしにならないよ!!! どすまりさににんげんがどれほどおそろしいかおしえればきっとわかってくれるよ!!!」 「ゆううぅうぅ……わかったよ!!!じゃあどすまりさにあわせてあげるよ!!! でもどすはきっとみんながゆっくりできないことにさんせいなんてしてくれないよ!!!」 簡単に折れたれいむはボロボロのまりさを丁重にドスまりさの間へと案内した。 ドスまりさは基本的にオープンなので、誰でも謁見できるのだ。 『ゆっ!!!まりさ!!!きがついたんだね!!!よかったね!!!これからはまりさのさとでゆっくりしていってね!!!』 「ゆ…ゆ…ゆっ……!!!」 まりさはドスまりさの大きさにただただ驚愕するしかなかった。あの人間より遙かに大きい。これなら人間に勝てるに違いない。 そう餡子が回ったまりさはすぐさまドスまりさに自分の事情を話した。 『ゆううう…!!!それはつらいめにあったんだね…!!!かわいそうに…!!!』 それを聞いたドスまりさは自分のことのように悲しみ、滝のような涙を流した。 「まりさはれいむをとりかえしてにんげんをころしてやりたいんだよ!!!ゆっくりちからをかしてね!!!」 『な゛に゛い゛っでる゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛おお゛ぉ゛ぉお゛ぉぉ゛ぉお゛おお゛ぉ゛ぉぉお゛お゛おお゛!!!』 ドスまりさは絶叫した。 このまりさは何を言っているのだ。「人間を殺す」? そんなことをすれば他の人間によって報復を受け、平和にゆっくりしていたゆっくりは皆殺しにされてしまうだろう。 ゆっくりたちが真にゆっくりできることを望むドスまりさにはそんな考えは理解できなかった。 『にんげんをころしちゃったらゆっくりできないよおおおおお!!!ゆっくりりかいしてね!!!』 「だったらしかえしされないようににんげんをみんなころせばいいんだよ!!!そっちこそゆっくりりかいしてね!!!」 「むきゅー。どす。このまりさはきっとくわしいじじょうをしらないのよ。ゆっくりせつめいしてあげればわかってくれるわ」 ドスまりさの脇からまりさより一回り程大きいぱちゅりーが呟いた。 このぱちゅりーは里の知恵袋としてドスまりさの片腕を担っている。 『そ、そうだね……まりさ、おねがいだからゆっくりきいてね!!!まりさたちがゆっくりできるためのだいじなおはなしだからね!!!』 「ゆ…わかったよ!!!ゆっくりきいてあげるね!!!でもまりさのかんがえはかわらないよ!!!」 「自分達がゆっくりするため」の話なのでまりさは仕方なく聞いてやることにした。 ドスまりさは自分達の事情を話した。 まずは、自身の強さだ。ドスまりさの戦闘力は人間よりも上である。まともにやり合えば人間だろうと簡単に殺してしまえる。 それを聞いたまりさは歓喜した。それならあの人間を殺すことができると。 その後、ドスまりさは何故それほどの力を持ちながら人間に手を出さないのかを説明した。 先程も言ったことだが、人間を殺せば当然その他の人間は黙っていない。 集団でこの一帯のゆっくりを皆殺しにするだろう。 まりさは人間に勝てるなら返り討ちにすればいいと言ったが 集団でかかられればドスと言えど勝ち目がないことを教えた。 以前に集団で襲いかかられ滅ぼされたドスの里があるということも教えた。このドスの里には、その里の生き残りのゆっくりが何匹かいるのだ。 その本人達の話も聞き、まりさは理解したようだった。 一通り話し終え、まりさは言葉を発した。 「ゆっくりりかいしたよ、でもまりさはれいむをたすけたいよ、あのにんげんもころしてやりたいよ。 それさえできればまりさはゆっくりできるよ」 『ゆううぅぅぅうぅぅうううぅ………』 まりさはドスまりさの話が理解できなかったわけではない。ただれいむを助けたい、あの人間を殺してやりたいだけなのだ。 それだけは絶対に譲れなかった。 「むきゅー。どす。ならばようすをみてみましょう。そのにんげんがほんとうにせいさいすべきかどうかたしかめるの。 そのあとどうするかきめればいいわ。それにもしかしたらすきをみてれいむをたすけてあげられるかもしれない」 悩むドスに助言を与えるぱちゅりー。この「制裁」とは「殺す」という意味が含まれているが 野蛮な言葉を嫌うぱちゅりーは「殺す」という単語を使いたくなかった。 『ゆ…!!!そうだね!!! まりさ!!!よくきいてね!!!いまからそのにんげんのおうちのちかくに「てーさつぶたい」をおくるよ!!! そのこたちにようすをみにいってもらうよ!!!そのにんげんをその…ころすかどうかはそのあときめてね!!! もしかしたられいむもたすけてあげられるかもしれないよ!!!』 「ゆ……!ほんとう!!!ゆっくりおねがいするよ!!!」 まりさはその意見に賛成した。「様子を見る」ことには不満があったが「れいむが助かるかもしれない」ことを聞き、期待することにした。 まりさはその人間と家の特徴を覚えている限り教えた。 それを聞いたドスとぱちゅりーは偵察部隊…別のぱちゅりーとまりさ二匹を呼び、すぐに発つよう伝えた。 移動には雇われうーパックに報酬を払う必要があったが、まりさに「うーパックが五匹殺された」ことを聞かされ、タダで乗せてくれることになった。 そして現在に至るのである。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (ここででていってもゆっくりところされちゃう!!!) 隙を見てれいむを助けだそうとしたぱちゅりー達だが、常に近くにはあの少年がいる。 隙など見あたらなかった。 「むきゅー。でもだいたいのじじょうははあくできたわ。どすのもとにかえりましょう」 「「「うー!!!うー!!!」」」 「「ゆっくりりかいしたよ!!!」」 他のゆっくりに帰還する旨を伝え、再び庭を見下ろすぱちゅりー。 その時だった。 「むきゅ!?」 庭で少女と話していた少年と目が合った……気がした。 (ど、どうして!?……いいえ、きっとぐうぜんだわ。むきゅー) 自問自答したぱちゅりーはうーパックに指示し、森へと帰って行った。 気づかれないように距離と高度にはちゃんと気を配っている。気づかれるはずがない…そう思った。 「おにーちゃん、どうしたの?おそらになにかあるの?」 「ううん。なんでもないよ。そろそろおうちに帰んな。姉ちゃんが朝飯用意して待ってるぞ」 「そうだね。じゃあまたね、おにーちゃん」 「……………………」 ドスの隠れ家に帰ったぱちゅりー達は少年の家で見たことを全て話した。 まりさはれいむを助けられなかったことに落胆したものの、れいむがまだ生きていたことに安堵した。 それを聞いたドスまりさは考え事をしながら、こう言った。 『ぱちゅりー、そのにんげんの「にんそうがき」をかいてね!!!そのにんげんがなにものかかくにんしたいよ!!!』 「むきゅー。わかりましたわ、どす」 ドスまりさは偵察ぱちゅりーに「人相書き」を描くように指示した。 事情を聞いて、それほどの酷い仕打ちをした人間が何者なのか確かめたかったからだ。それには理由がある。 「むきゅー。かけましたわ」 『どう?ぱちぇ』 「ぱちぇ」とは片腕のぱちゅりーのことである。「ぱちぇ」は最も親しいぱちゅりーに対する呼称なのだ。 「むきゅううううううん!!!まちがいないわ!!!「ひゆっくリスト」なんばー6!!!「ありすごろし」といっちしてるわ!!!」 「「「な、なんだってー!!!」」」 非ゆっくリスト― それは呼んで字の如く「ゆっくりできなくなる」人間のいわゆるブラックリストである。 人相書きはどいつもこいつも子供のラクガキ以下で人間には判別不可能だが、ゆっくりにはわかるようだ。 ドスまりさの里ではゆっくりがゆっくりできるために気を付けるべきの存在のリストを作る傾向がある。 非ゆっくリストのナンバーは危険度により序列されており、少年は6番目に危ない人間として認識されている。 「ありす殺し」というのは少年がゆっくりありすを中心に虐殺を行っていることから名付けられた。 ある時は道ばたでれいむとすっきりしていたありすを殺し、ついでにれいむも殺した。 ある時は集団でとかいは(笑)を気取っていたありすを虐待し、見せ物のごとく磔にされた。 ある時はまりさ一家を集団レイプしていたありすを焼き殺し、とばっちりを受けまりさ一家も全滅した。 ある時はぱちゅりーと本気で愛し合っていたありすをぱちゅりーの目の前でむごたらしく殺した。ぱちゅりーはむきゅむきゅうるさいので殺した。 気がついた時にはこの町一帯からありすが消えていた。 故に少年は「ありす殺し」として恐れられている。 もっと恐ろしいのはこの町にはその少年を上回る虐待派がまだ五人もいることである。 『ゆううぅうぅうう…やっぱり……』 ドスまりさは「そんな気がしていた」といった感じで溜息をついた。 「やっぱりあいつはゆっくりできないんだよ!!!ころしてやろうよ!!!」 ドスまりさはこれまで、「非ゆっくリスト」に乗っている危険人物達に自ら「交渉」していた。 「ゆっくりをゆっくりさせてあげてほしい。わるさをしたゆっくりはどうしてもいい。でもゆっくりしてるだけのゆっくりはゆっくりさせてあげてね」 そう言うと人間たちはみな首を縦に振った。目の前の巨大なドスまりさが怖かったからだ。 だが、リストの1番から10番までの人間たちは虐待派としての「格」が違った。 何人かと交渉してみたが全て破られてしまった。だからトップ10の人間には特に関わらないように注意していた。 ちなみにトップ10の中にはドスまりさを恐れている者も少なくはない。だからあちらからドスの里に直接手を出してくることはなかった。 ドスまりさは考えていた。「まりさとれいむをゆっくりさせてあげる方法」を。 そして、長い思考の後、一つの答えを導き出した。 『…わかったよ!!!そのにんげんに「せいさい」をくわえることをきょかするよ!!! でもあいてはとっぷ10だからね!!!ゆっくりさくせんをたててからじっこうしようね!!! ほかのにんげんにばれないようにきをつけることもかんがえようね!!!』 「ゆっくりりかいしてくれてありがとう!!!そのときにそなえてゆっくりからだをなおすね!!!」 そう言ってまりさは病室へと戻っていった。 「…いいの?どす。にんげんにたたかいをいどむなんて。いままでにきずいてきたすべてがパーになるかもしれないのよ」 『しかたないよ!!!そうでもしないとまりさとれいむがゆっくりできないよ!!!まりさはゆっくりみんなにゆっくりしてほしいだけだよ!!! だいじょうぶ!!!ばれないようにころせばやりかえされないよ!!!うまくいけばみんなもっとゆっくりできるよ!!!』 「むきゅー。そうね」 ドスまりさが人間に手を出さないのは「ゆっくりがゆっくりできなくなるから」だ。 その為に人間達と安定した関係を築いてきた。 真にゆっくりしたいゆっくりは人間に近づかず、悪さをするゆっくりは制裁を受けた。悪いゆっくりはドスから見ればゆっくりできていない。殺されても仕方がないのだ。 だがあのまりさは「悪いゆっくり」ではない。真にゆっくりした結果人間に酷い仕打ちを受けた可哀想なゆっくりだった。 ドスまりさはまりさをゆっくりさせてあげたかった。その為に人間を殺すことを選んだ。 反対する者はいなかった。みな同じ気持ちだったから。 (れいむをあのにんげんからたすけよう!!!) (まりさとれいむをゆっくりさせてあげよう!!!) ドスの里数千匹のゆっくりの心が今、一つになった。 ゆっくりたちはたった二匹の仲間をゆっくりさせてあげたい一心で、命を賭けて戦う決意をした。 戦いの準備をするために、偵察部隊は三日かけて少年を監視し、調査し続けた。 その甲斐あってか、少年は一日に一回決まった時間に人気の無い草原でれいむを枕にして昼寝をしていることがわかった。 その隙にれいむを取り返そうと考えていたが、たった六匹(うーパック含む)で向かっていってもすぐに察知され全滅させられてしまう恐れがあった。 その話を聞いたドスまりさと片腕ぱちゅりーら首脳陣は次の日の同じ時間に作戦を決行することを告げた。 その時ならば他の人間に見つからないし、何より少年が一番油断している時だと考えたからだ。 決行前夜、片腕ぱちゅりーから当日の作戦をゆっくりしっかり伝えられた。 それを全てゆっくり理解した里のゆっくりたちはいつもより多くの食料を用意し晩餐会を開いた。 明日の活力をつけるためと、あまりにも完璧すぎるぱちゅりーの作戦を聞いて勝利を確信し、気の早い祝勝会といったところだ。 「ねえ、おにーちゃん」 「何だい」 俺は隣の家の縁側で女の子と一緒にこの子の姉の切ったスイカを食べている。 お呼ばれされたから来たまでだ。そうじゃなかったらわざわざ夜に外に出たりしない。 「どうしてゆっくりはわるいことするのかな」 「いきなりどうしたんだよ。そんなこと聞いて」 「おねーちゃんとおかいものにいったときにみたんだよ。おさかなくわえたゆっくりがさかなやさんとおいかけっこしてたの」 「それはひどい」 「それだけじゃないよ。たくさんのゆっくりがやおやさんのおやさいみんなたべちゃったの」 「最低だな」 「まえのちぇんだってそうだよ。おうちにはいってきたゆっくりのせいでおほしさまになっちゃった」 …この子が今飼っているちぇんは二代目なのだ。 前のちぇんは留守中に進入した「ゆっくりずむ」なれいむとまりさに殺された。 その二匹は俺が裏でこれ以上ない程の苦しみを与え殺してやった。 そしてちぇんを失ったこの子の悲しみを紛らわすため当時虐待用として飼っていたちぇんを修理し、譲ってあげた。 ちなみにそのちぇんは中のチョコクリームを少し入れ替えたため、俺のことは忘れてしまっている。 「だからね、いつもおもうの。なんでゆっくりはわるいことするのかなって」 「ちぇんはどうなんだ?」 「ちぇんはいいこだよ」 今のも前のも元々ブリーダーに育てられていたヤツだ。当然だろう。 …だが、そうでないゆっくりはどうだ。 この子の大事なちぇんを殺し、他人の家に上がり込み食い物を要求、店の食べ物は平気で盗む、人間にゆっくりを強要する、騒音を出す、ウザい、キモい、ムカつく。 どう考えても害悪でしかない。世の中にはそれらを愛でる愛護団体などというものも存在する。はっきり言って頭がおかしいとしか思えない。 「それはゆっくりが自分のことしか考えてないからだよ」 「?」 「人間だってそうさ。自分のことしか考えてない奴は嫌われるんだ。他人に好かれたかったら、相手のことを理解してあげなくちゃいけない ゆっくりはそんな考えができないから、人間から見て悪いことをするんだよ。しかもそれを悪いこととは思っちゃいないんだ」 「でも、ちぇんみたいないいこもいるよ」 「それは人間が必死に教え込んだからだよ。それでもいい子にならないゆっくりの方がずっと多いんだ」 「そう、なんだ…」 「君はゆっくりが好きなんだね」 「いいこはすきだよ。でもわるいこはきらい。ちぇんをいじめたもん」 「そうだね、みんないい子だったらいいのにね」 本当にそうだよな…性格と、あのツラと、言葉遣いと、デカい声がなけりゃな… ゆっくりはゆっくりすることを求める饅頭だ。 他人がゆっくりできれば自分もゆっくりできる。そう考えている。 だから他人を「ゆっくりさせてあげる」のだ。 そう、全ては「自分がゆっくりするため」。 ゆっくり同士ならそれで「しあわせ~♪」になるが、人間からすれば煩わしいだけである。 故にゆっくりと人間は決して相容れない存在なのである 続く このSSに感想を付ける 選択肢 投票 しあわせー! (35) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (1) 名前 コメント すべてのコメントを見る 本家の霊夢と霧雨魔理沙の性格を組み込んだらもっとマシになるよ。 -- (名無し) 2016-11-24 22 22 56
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比較的街に近い、さほど高くもない山の中、一人の男が息を潜めて標的のゆっくりに近づいてゆく。 彼の視線の先にいるゆっくりはごく平凡なゆっくりれいむの子どもで、陽気に中てられたのか無防備な寝顔を晒していた。 「ゆぅ~・・・ゆぅ~・・・」 安らかな寝息を立てる子れいむと男の距離は10m程度。 彼はゆったりとした動作で手にした筒を口元に持って行き、思いきり息を吹きかけた。 瞬間、筒の中に収まっていた小さな矢が子れいむめがけて飛んでいき、下あごの辺りに刺さった。 「ゆびゅ!?」 痛みで目を覚ました子れいむだが、ゆっくりの体の構造上自力で深々と刺さった矢を抜くことは出来ない。 それでも、体を捩ったり、近くの石に矢をぶつけたりと試行錯誤するが、やはり徒労に終わってしまう。 それどころか体内で矢の先端が動き、餡子を引っ掻き回したために余計な痛みを味わう羽目になった。 「ゆぐ・・・いぢゃいぃ、いぢゃいよぉ・・・」 しかし、泣き声がゆっくりにしては妙に小さい。 本来なら小さな体を目いっぱい使って信じられない大声で泣きじゃくるはずなのに。 子れいむはすすり泣く、といった表現が相応しい控えめな声で泣いている。 「ゆえーん、ゆえー・・・ゆぎっ」 どうやら、泣くだけでも餡子や矢が動いてしまい激痛が走るらしい。 痛みを耐え切れずぽろぽろと涙を流すその表情が時々苦痛によって歪んでいた。 「ゆっぐ・・・もうやだ、おうちかえる」 しばらく泣きじゃくっていた子れいむはそう叫びながら巣に戻るために飛び跳ねた。 そして、着地した瞬間に衝撃で矢が動き、また苦痛に顔を歪めた。 もちろん、矢は刺さった後に飛び出す特殊な返しのおかげで抜けることなく刺さったまま。 「ゆ゛っ・・・ゆっぐちしたいよー・・・」 結局、子れいむは跳ねて移動することを諦め、ゆっくりと地べたを這いずって巣へと戻っていった。 「おかーしゃあん・・・いぢゃ、いぢゃいよぉ!」 「おちびちゃん!ゆっくりだよ、ゆっくりしてね!?」 「ゆっぎぢできないよぉ!とって!はやくとってー!」 数時間後、幸いにも日が暮れる前に巣に戻った子れいむは母れいむに矢を取ってもらおうとしていた。 しかし、母れいむが矢を少し動かすだけで激痛が走ってしまい、彼女は大泣きしてしまう。 そのせいで子どもに甘い母れいむは娘が痛がるのに無理に引き抜くことが出来ず、右往左往。 「おがーぢゃん!どっぢぇ!はやぎゅどっぢぇー!?」 「ゆぅ・・・おにぇーちゃん!ゆっくち、ゆっくちだよ!」 「ゆっくち!ゆっきゅちちていっちぇね!」 「ゆっくりぢでいっでね、ゆぎぃ!?」 泣きじゃくる子れいむの周りで母れいむと一緒に右往左往しているのは妹のれいむとまりさ。 当然、彼女達に何かが出来るはずもなく、子れいむにつられて泣き出してしまった。 「ゆぅ・・・わがらないよぉ!れいぶ、ゆっぐぢでぎないよおぉぉ!?」 そればかりか、とうとう母れいむまで泣き出してしまった。 慰めるものもおらず、ただひたすら泣きじゃくるれいむ一家。 一家の大黒柱のまりさが帰ってきたとき、彼女達はようやく泣き止んだ。 「ゆゆっ!ゆっくりりかいしたよ!まりさがぬいてあげるね!」 事情を聞いたまりさの動作は素早かった。 すぐさま子れいむに刺さった矢の露出している息を受ける部分を咥えると思いっきり引っ張った。 「ゆぎゅぅぅぅうぅううぅぅう・・・!?」 当然、返しに阻まれて簡単には抜けず、子れいむは尋常でない痛みのせいで悲鳴をあげることすら出来ない。 ただ歯を食いしばりながら大量の涙で水溜りを作るばかり。 しかし、そんな地獄の苦しみも永遠に続くはずがなく、数十秒後には解放された。 「ゆっ!」 「ゆ゛ぐぅ!?」 まりさが引き抜いた矢には返しが4つ、ちょうど十字に見えるように付いている。 それはつまり、それが子れいむの体から引き抜かれたことを意味していた。 「ゆ゛っ・・・!ゆ゛っゆ゛っ・・・!?」 大きな口を両断され、底部をべろんとめくられた子れいむはまるで口が3つあるように見える。 その傷はあまりに大きく、そしてあまりに深かった。成体ならまだしも、子どもにとっては確実に致命傷。 現に傷口から餡子を撒き散らした子れいむは白目を剥いて、割れた口から危険信号といわれる「ゆ゛っ」という嗚咽を漏らしていた。 「ゆゆっ!おちびぢゃん!ゆっぐぢ、ゆっぐぢぃー!」 「おにぇーちゃああん、ゆっきゅちー!ゆっきゅちー!」 「まりさのおぢびぢゃん!ゆっぐぢぢぢゃだべだよおおおお!ゆっぐぢー! 「もっぢょ・・・ゆっくちちたかったよ・・・」 異常に気付いた両親は必死に子れいむを励まして、傷口を舐めたが何の意味もなさず、子れいむは息絶えた。 「れ、れいぶのおぢびぢゃんがああああああああああ!?」 「ゆえええええん!おぢびぢゃあああああああああん!?」 悲嘆に暮れるれいむとまりさ。 しかし、彼女達にはゆっくり絶望する暇すら与えられない。 「ゆき゛ゅ!?」「い゛っ!?」 短く悲鳴を上げたのは姉を失い、母親同様に悲しんでいた赤れいむと赤まりさ。 赤れいむののこめかみと赤まりさの後頭部には先ほど子れいむの命を奪ったあの矢が突き刺さっていた。 ---あとがき--- ありそうであんまりなかった矢ゆっくり。 文字通り矢が刺さったままになっているゆっくりです。 動くと激痛、抜くと死ぬ、放っておくと狩りなんてまず出来ない。 こんな有様の赤ゆっくり2匹を抱えて生きていくこの一家の行く末は・・・ たいちょさんが書いてくれるらしいです( byゆっくりボールマン
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小腹の空いた俺は昼食を取ろうとファストフード店に立寄り Mサイズのコーラとハンバーガーを注文、 2Fへの階段を上って窓際の列の端に座った。 窓から見下ろせるものは交差点、横断する人、向かいの果物屋、その左隣の眼鏡屋。 ガラス窓の外の声は聞こえない。 聞こえるのは2つ離れた席でお喋りをする、奥樣方2名の楽しそうな会話だけだ。 俺はただただボーッっとハンバーガーの包みをカサカサと開きながら、窓の外に目をやった。 交差点の向こう、果物屋の左隣、眼鏡屋の前の歩道に居るものへ目をやった。 (ゆっくりしていってね!) ガラス窓の向こうで恐らくその様な事を言っているのであろう。 眼鏡屋の前に居るあの丸っこいのは"ゆっくり"という生き物。 黒い髪に紅いリボンを巻き、まん丸な輪郭を持つ、 まるで人間の顔をデフォルメしたかの様な生き物。 所謂"れいむ"だ。黒髪のゆっくりは大抵そう呼ばれる。 大きさはバスケットボールくらいだろう。 何処から来たのか知らないが、何処でもいい。どうせその内誰かが処分する。 期待外れなゆっくり達 作者:古緑 (ゆっくりしていってね!) ガラス窓の外の、ふてぶてしい笑顔を浮かべたゆっくりはきっとそう言いながら 果物屋に向かうのであろうエプロン姿の太ったオバさんに近づいて行った。 眼鏡屋の前の歩道は狭い。 だからオバさんは寄って来るゆっくりを避ける為に少し車道に出て、 迂回する様にしてゆっくりを振り切っていった。 (…ゆっくり?ゆっくりしていってね!) その背中に向かって不思議そうに叫ぶゆっくり。オバさんは振り返らない。 少なくともこの辺でのゆっくりに対する対応なんてあんなモノだ。 例え俺があのオバさんでも同じルートを取ってゆっくりを避ける。 どんなに暇だったとしてもゆっくりと一緒にゆっくりなんてしない。 (ゆっくりしていってね! れいむと一緒にゆっくりしていってね!) オバさんに無視された事で生来の自信に満ちた表情にも陰りが見える。 それでも健気に周りの人間に呼びかけるゆっくり。 次にゆっくりが向かっていったのはだらしない格好をした中年男性。 無論彼も通り過ぎて行くだけ。パチンコにでも行くんだろう。 (…ゆっくり…… …ゆっ!ゆっくりしていってね!) 寂しそうに男性を見送った後、また次の通行人に話しかけるゆっくり。 次は杖をつくお爺さんだったが 彼は避ける事もせずに真正面からゆっくりとゆっくりを突破して行った。 本気で気付いていなかったのかもしれない。 その背中を見送るゆっくりの、斜め45°に引かれていた眉はハの時に変わっていた。 ゆっくり。 彼等は俺がまだ子供だった頃、20年以上前だ。 彼等は突然どこからか現れ、世の話題を攫った。 或る人は宇宙人と、或る人は妖精と、悪魔と呼んだ者さえ居た。 なんせあの様にワケの分からない生き物だ。 餡子の詰まった饅頭なのに何故か動けて、人の言葉(日本語)を解し、更に喜怒哀楽の感情を持つ。 話題にならないわけが無い。 あの頃はテレビ、新聞、雑誌、様々なメディアを通して彼等の姿を見る事が出来た。 だがそれも現れてから数年間の間だけ。 俺が成人を迎える頃、世間はとっくにゆっくりに対する興味を失っていた。 研究員だの科学者だの、その辺の人にとっては興味の尽きない存在に違い無いだろう。 しかし俺みたいな好奇心の薄い人間にとって ゆっくりは次第に『ただ言葉を解し、中身が餡子の生き物』それだけの存在になっていった。 あれだけ不思議生物と騒がれていたのに何の事は無い。 超能力を使えるわけでもない。その体に何か重大な秘密を秘めているわけでもない。 ただ跳ねて叫ぶだけ。ゆっくりしていってね、と。 馬鹿にしてるとしか思えない。 テレビなんかはゆっくりの番組をしつこく流し続けていたが いい加減飽きられて姿を消すのに大して時間は掛からなかった。 横でお喋りしてる奥様方も、ゆっくりに対する興味なんてもう持ってないと思う。 ガラス窓の下の不思議生物よりも旦那のムカつくところを話してるんだから。 (ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!れいむと一緒にゆっくりしていってね!) 窓の下ではゆっくりが叫ぶ様に人々に呼びかけている。 俺のところにまで声が届くくらいに大きな声で呼びかけている。 その声を聞きつけ、眼鏡屋の中からカジュアルな格好をした店員が出て来た。 ここに居て聞こえるくらいなんだから、下でのあの声は営業の邪魔でしか無い。 (ゆっ!おじさん!れいむとゆっくりーー ーーーーーゆぶっ!) 店員はゆっくりのリボンを摘んで持ち上げ、反対側の歩道に放り投げた。 反対側の歩道には何の店も無く、工事中なのでスチール製の真っ白い壁がそびえ立っている。 気絶したのか、れいむはピクリとも動かない。顔から落ちたんだから無理も無いだろう。 ゆっくりは痛い目に遭ったら何処かに消え失せるのが通常だ。 だからあのれいむも起きたらきっと何処かへ行く。 そしてその先で何時か死ぬ。 別にここが駅前だから、ゆっくりの事が嫌いだからという理由から 人はあの様な冷たい態度を取るわけではない。 さっきも言った事だが、もう誰もゆっくりに対する特別な興味を持っていないのだ。 少し前は違った。 喋るペット、元気なペット、モチモチと柔らかい体をした、可愛いペット、 そんな魅力的な特徴に皆が惹かれ、ゆっくりがペットとして大流行した時代も有った。 しかし今じゃペットゆっくりの人気もガタ落ち。かつての大人気っぷりは見る影も無い。 その理由は"喋れる"ゆっくりに対して人々が期待を持ち過ぎた事に有った様に思える。 自分の言う事を理解してくれるから手が掛からない。暇な時は楽しくお喋り出来る。 初めゆっくりを飼った人はそんな風に都合良く考えていた者が多かったのだろう。 しかし逆だったのだ。 何故ならゆっくりは人間にとって都合のいい事ばかりを喋るぬいぐるみではなく、 人間と同じ様に聞き、感じ、思考して喋る生き物だったから。 しかも人間並みに、或いは人間以上に喜怒哀楽の激しい正直な生き物だったからだ。 そんな生き物と上の様な期待を抱いていた人間が一緒に暮らして食い違いが起こらない筈も無い。 飼えばゆっくりは無条件で自分に懐き、何の文句も言わないなんて事も有り得ない。 そして多くの飼い主を落胆させたのは 言葉が通じるのに中々ゆっくりが言う事を聞いてくれないだけでなく、 不平不満、そして要求している事を自分に分かる言葉で持ちかけてくる事。 これは飼い主にとって面倒臭い事この上無く、"時と場合"に応じて非常に不快なものにすらなる。 手がかからないと期待してた人達からすれば尚更の事だ。 手の掛かり具合は腕白盛りな人間の幼児と遜色無いものなのかもしれない。 そんな本当は手のかかるゆっくりを上手に躾けられた飼い主がどれだけ居たか。 それは現状が物語っている。 そして肝心のゆっくりとのお喋りも、多くの人が『思っていたより』楽しくないと言う。 理由は人とゆっくりの知能の程度には一定の開きが有る為、会話がし難い事。 そしてその知能の差故に各々が持つ関心も異なるからだ。 ゆっくりは美味しいご飯が好き、楽しい玩具が好き、『ゆっくり』の話が好きだ。 だが人間側のちょっと難しい話になるとあまり興味を示さず、嫌がってしまう。 よく分からないからだ。愚痴なんかは当然嫌い。 しかし多くの人が望んだのは後者の様な会話だったんじゃないだろうかと思う。 また当然の事ながら知識や語彙も少ない為、出来る会話の幅も広くない。 大抵の場合ペットゆっくりは家の中でお留守番だから知識も語彙も碌に増えないだろう。 飼い初めの頃はまだ良いだろうが、そのうち話す事も尽きて会話をしなくなるかもしれないな。 『ゆっくり』の話がしたくて飼ったワケでは無いのだろうから。 兎に角、人語を解するから飼ったという人は拍子抜け。 勝手な事だが人は喋るゆっくりの事を『期待外れ』と感じたのだ。 小さくて可愛いと考えてた人の期待も外れる。 人の元では平均寿命8年と長生き。最終的に体高だけで60cmを超えるのも珍しくない。 デカくなったゆっくりは俺から見てもあんまり可愛くない。というか怖い。 ちなみに食う量も増えてゴールデンレトリバー並に食費がかさむ。 デカくなったのは更に重くノロくなる為、家の中での様々な面において邪魔になる。 かと言って庭なんかで飼うと寂しがり、大きな体をしてゆんゆん泣く。 それでも外に放って置くと知らないうちに死んでたり いつの間にか恋仲になった他のゆっくりと子を成していたりもする。 これが悪夢ってヤツだろう。とてもじゃないが笑えない。 手が掛からないとの期待はこんなところでも裏切られる。 人々の勝手に抱いていたゆっくりへの多大な期待はことごとく裏切られ、 ペットとしてのゆっくりへ関心も次第に薄れていった。 その結果かなりの数のゆっくりが無責任にも街に捨てられ、未だに問題になっている。 捨てる主な理由は仲違いしたから。反抗されたから。二匹飼いしたら自分と話さなくなったから。 妊娠したから。意外とつまらなかったから。どれも最高に無責任なものだ。 今ではもう、そんな面倒なゆっくりを飼う人間は ゆっくりの事が本当に好きな僅かな人達だけになった。 そして俺はゆっくりが何の為に人間の前に現れたのかを心の底から理解出来ていない。 ゴチャゴチャ考えてるうちにハンバーガーはもう食い終わった。 あとは尽きるまでコカコーラをズルズルやるだけ。 兎に角ゆっくりはもうペットとしてさえ人の関心を惹かない。そもそもあまり向いてなかったのだ。 久しぶりに見たから気になったが、そろそろどうでもいい存在になってきた。 保健所の人間が来ないうちにとっとと消え失せる事をお勧めしておく。 (ゆっく…り…ゆっぐり”ぃ…) 永らくガラス窓の下でダウンしていたゆっくりだが ようやく起きたようで、泣きながら体を起こした。 泣いてるのはゆっくりしていって貰えないのが辛い為だろう。 (ゆっぐり”じでいっでね”!ゆっぐじじでいっでね”ぇ!!) 涙混じりのガラガラ声で叫び出すゆっくり。周りには誰も居ないのに。 あれだけ痛い目に遭わされたのに消え失せないとは。 何がそんなにあのゆっくりを駆り立てるのか? どうして人をゆっくりさせたがるのだろうか? 俺は彼等と"ゆっくり"した事が一度だけ有るが、それも未だ謎だ。 ゆっくりの『ゆっくり』と言えば俺は俺で期待を裏切られた事が有る。 随分前に駅前のベンチで本を読みながら友人を待ってたら ゆっくりが近寄って来た事が有ったのだ。 『ゆっくりしていってね!』とお決まりの言葉を言いながら。 俺はちょっと困ったが、当時はまだゆっくりに興味が残っていたので 読んでいた本をカバンに仕舞ってゆっくりと『ゆっくり』する事にした。 『ゆっくり』と名乗るくらいなんだからとんでもなくゆっくりしている筈だ、 もしかしたら他人をリラックスさせる力を秘めているのかもしれない、と期待しながら。 しかしなんの事は無い。ゆっくりは空いたベンチに乗って日向ぼっこをしてるだけ。 普通にゆっくりするだけだったのだ。 勝手に期待しておいてこんな事を言うのもなんだが、ガッカリした。 ゆっくりの『ゆっくり』なんてゆっくりじゃなくても出来るし 別に俺が居なくても出来る、ごく普通の事だったのだ。 期待外れもいいところだった。 その日を境にゆっくりは俺にとって完全に無価値な存在に変わった。 (お、おにいさん…れいむと、れいむと一緒にゆっくり…) 窓の下では汚れたれいむを避ける様に、また一人通り過ぎて行く。 彼はipodらしき物を弄りながら歩き去って行った。 どうでもいいのだ。ゆっくりとの『ゆっくり』なんて。 それこそ何十回も聞いていい加減飽き気味のポップス以上にどうでもいいのだろう。 「あれ、○○さん、あそこに居るのゆっくりじゃない?」 「あらホント、いまどき珍しいねぇ。 そう言えばね、この前○○さんが電話で話したことなんだけどーーー」 隣の奥様方が今更ゆっくりに気付いたように話題に上げる。 ずっと俺と同じ方向見ながら話していたのに(ガラス窓に反射して丸わかりだった) 会話のクッション程度のものにゆっくりを使ったのだ。 そんなモンだ。例えゆっくりが少しくらい泣いてたとしてもな。 (ゆっぐり”ぃ…… ゆ”っぐ りぃ” ぃ”い”ぃ”!!) コーラを飲み干して立ち上がると、 俯いて本格的に泣き崩れるゆっくりの姿が見えた。 あそこで泣いてる分にはまだ良いが、果物屋の店員がボソボソ何か喋っている。 もしも交差点を超えてアッチ側にいったら 動けなくなるくらい強く蹴られるかもしれないな。 俺等人間の中でも、彼等にとってゆっくりは特に邪魔なんだから。 もう休み時間は終わりだ。 俺は紙コップの底にヘバりつく氷を4、5個口に放ってガリガリ噛み砕きながら、 トレイの上のモノをゴミ箱に捨てて店を出た。 生暖かい風が頬を撫でる。近所に予備校があって高校生が良く通る所為だろうか この歩道は黒ずんだガムやらツバやらがこびり付いてて汚い。 こんな小汚い歩道でゆっくりとゆっくりするくらいなら 今みたいな店の中で一人でゆっくりしてた方がずっと良い。誰だってそう思う。 「ゆっ、ゆっくり!ゆっぐりしていっでね!」 交差点で信号を待つ間、左から嬉しそうな声が聞こえて来た。 左方向に視線をやるとあのゆっくりが居た。 頬を涙でベショベショに濡らしているが笑顔満面。嬉しそうだ。 立ち止まっている俺を見て勘違いしたのかもしれないな。 "ようやくゆっくりしていってくれる"って。 「ゆっくりしていってね!」 ビデオ屋に寄って帰ろう。 最近ずっと行ってなかったから新作テープの取れたのが沢山有る筈だ。 そんな事を考えながら、信号が青になったのと同時に俺は歩き出した。 口の中の氷はもう無くなっていた。 ーENDー
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ゆっくりは草食である。 「幻想郷甘味事情の救世主」「ストレス解消の的」などと呼ばれるゆっくりが 農家に害獣扱いされるのはこの時点で決まったようなものだった。 とはいえ実際のところ農民がゆっくりを毛嫌いしていると言う事実は無く、他の人間同様に 甘い物を安価に手に入れられて良かったと思っている者の方が多かった。 畑にわざわざ侵入して野菜を盗み食いするよりは、野原で昆虫をゆっくり追いかけるほうを好む ゆっくりの習性がどちらかというと無害である事をを人々に意識させたのだ。 その筈だった。 外から迷い込んで農業の真似事をしていた筈の私が、今ここでこうして畑を荒らすゆっくりたちの 進入を待ち伏せしているのは、連中が有害という事実を示していた。 事のそもそもの発端は一月前にさかのぼる。 ここへ迷い込んだ後、とにかく食料を得るため借りた貧相な畑でサツマイモがそろそろ収穫という時期だった。 その日の朝、畑へ行った私は、三匹のゆっくりが芋を掘り返してかじっているのを見た。 最初に思い浮かんだのが、手塩にかけて育てた芋を台無しにされた怒りよりも、 生で食べると腹(?)を壊すんじゃないかと言う心配だったのは我ながら間抜けであったと思う。 ともかく現在進行形でかじられてる芋は諦めるとして、これ以上被害を増やさないために私は考えた。 なまじ甘い態度を取るといつまでも居座るとはベテランの農夫の談、直ちに追い出さなければならない。 さらに、頭が妖精よりも弱いと評判のゆっくりは、生半可な恐ろしさで怒鳴って追い出しても 明日には忘れて再び現れるというのが考えられる。 これを満たす手段を考えていた私は、「外」に住んでいたとき農家がカラスの死骸をつるしていたのを思い出した。 (幻想郷では見られなかった。鴉天狗に血祭りにされかねないからだろう。) この手段を採用した私はゆっくりの死体を3つ生産すべくゆっくりと背後に近づき、 奇襲効果を得られるうちに攻撃するためクワを振りかぶった。 「ゆっくり?」 振りかぶった瞬間、ゆっくりが一斉にこちらを向いた。 ゆっくりが太陽とは逆を向いていたのを失念していたのである。 ここで止められる訳が無い、全力でクワを振り下ろした。 「ゆ゛っ!」などと断末魔をあげて真ん中の紅白饅頭が絶命する。 直ちに第二撃を繰り出すため、刺さった歯を抜き構える。 「や゛め゛て!ゆ゛っく゛りし゛ようよ!!」 もう一匹の紅白饅頭が命乞いのセリフを吐き出した。 黒大福は薄情なことに「ゆっくりしんでね!」などと言って逃走した。ひどい大福だ。 とりあえず死体は一つ手に入ったので、生きている方の紅白饅頭を捕縛して自宅に戻った。 紅白饅頭を押入れの布団の下に放り込んだあと必要な材料を持って畑へ行き、 近くの木の枝に死骸を入れた袋を「私は悪いゆっくりです」と書かれた板と一緒にぶら下げた。 黒大福を逃したのが心残りだったが、私は一仕事終えた充実感を胸に帰宅した。 それから1週間後、どうやったかは知らないが あの逃走した黒大福が仲間を大勢引き連れて(2ダースはいたと思う)畑を荒らしていた。 「おいしいね!」「ゆっくりたべようね!」 早すぎでも収穫すべきだったと後悔しつつ、私は鍬を振り上げ突進した。 「ゆっくりしていってね!!」「さっさとかえってね!」 などと腹の立つ言動をしながら大福と饅頭が向かってくる。 だが所詮ゆっくり、金属製の鍬を受けるとあっさり昏倒、あるいはバラバラになり、それをみた 他のゆっくりは蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。 結局、饅頭四個分の餡子と皮を生産し、捕虜(めんどくさいので木に吊るした)を2匹手に入れただけだった。 それからは毎日ゆっくりの襲撃を受けるようになった。 毎回毎回追い回すのも面倒なので、5回目の時点で進入方向を限定するための柵を設置した。 進入経路で待ち伏せて5回目は畑に入ることすら許さなかったが、6回目は大量に引き連れて数で突破された。 (後で適当な大福を尋問したところ、黒大福がこの畑に「メッチャうめえ」物があると吹いているようだった) ゆっくりどもにこちらの恐ろしさを教育してやるため、襲撃後ただちに里へ香霖堂へ装備の調達に走った。 陣地を構成する障害物は鉄条網・トゲつきの柵・斜めにつきたてた槍などがその後の何回かで増えた。 そして現在、21回目の襲撃後の畑は様変わりしすぎて畑と呼ぶことが難しくなりつつある。 時計からそろそろ襲撃時刻(午前6 00ごろに来る)になりつつあることを見た私は、 香霖堂で調達した双眼鏡を森の方へ構える。 木々の緑の中に紅白・黒の丸い物体がポツポツと見え始めた。 「総員戦闘配置!」 10回目頃から事態に気づき、加勢してくれたヒマな農夫や 天然のゆっくりがノコノコやってくるということで協力しに来た加工所職員へ 大声でゆっくりが来たことを伝える。 最近は畑よりも捕虜の救助が目的でゆっくりが襲撃してきているようなので、 紅白饅頭をガラスケースに閉じ込めたものを数個、進入経路に設置してある。 「いまだしてあげるね!」「いっしょにゆっくりしようね!」「がんばってこわすよ!」 案の定、その地点で群れが停止した。 そこまでを確認した私は、地面に斜めに突き立っている筒の所へ行き、その筒へ何物かを入れた。 その物体が筒の一番下まで到達すると、瓶の栓を抜いたような音があたりに響いた。 「5、4、3、2、だんちゃーく、今!」 言い終えると同時にガラスケースの所で爆発が起きる。宙を舞うゆっくりが確認できた。 下ろして欲しいという意図の悲鳴がここまで聞こえてきた。 その意図は直ちにかなえられ、地面にたたきつけられたゆっくりはずっとそこでゆっくりすることになった。 「毎回掛かるのはやはり脳が足りないんですかね?」 加工所職員に話をふると「そもそもあるのかどうか…」と気の抜けた返事が返ってきた、同感だ。 香霖堂で調達した迫撃砲は数に限りがあるので一発で射撃を終了する。 いつものようにゆっくりの群れがこちらに向かってきたが、前面の鉄条網で押しとどめられる。 「い゛た゛い゛!い゛た゛い゛ぃ゛ぃぃ゛!」「ゆ゛っく゛り゛おさ゛な゛いでぇ!」 鉄条網に引っかかった仲間の上を通るという共産軍さながらの方法で、第一線は通られた。 本来ならばさらに第二、第三と鉄条網を張るつもりであったが、流石の香霖堂でも鉄条網が そう簡単には手に入らず、第一線の後は射的タイムである。 おのおの、弓やボウガンや猟銃を構えて号令を待つ。 第一線を乗り越えたゆっくりは150匹であった。 最初の迫のダメージで7匹力尽き、そこへ最初の射撃が到達し12匹が倒れる。 この射撃音で怖気づいた22匹が逃走し、さらに第ニ射で16匹が倒れた。 「もうやだ!おうちかえる!」「おうちかえっぶげぇ!」 地面に刺しておいた槍の障害物で、遮二無二突進した9匹が串刺しになった。 柵と組み合わせたその障害物でまごまごしてるあいだに第三射が全弾命中し18匹が死体となった。 さらに15匹逃走して、残りが何とか射撃線へと到達する。 加工所職員が柵を乗り越え、慣れた手つきでゆっくりを8匹捕縛し、31匹逃走させた。 1ダースとなったあの黒大福を含むゆっくりの精鋭は農夫には目もくれず私のところへ突進してきた。 手近にあった陣地構築用の洋ノコをとっさに構え、まず飛び掛ってきた一匹を切り裂いた。 「ゆ゛っ゛く゛りぶぇ゛!?」 雑な切断面から餡を撒き散らしながら落ちる物体には目もくれず、二匹目を足で蹴り飛ばした。 蹴った瞬間破裂した物体は飛翔しながら餡と皮に分解していった。 さらに突進してきた三匹目は一番悲惨で、フルスイングされたノコの直撃を受けたあと、 バラバラになりつつ飛翔して障害物の槍に刺さった。 残りの9匹のうち4匹が農夫に捕縛され、散り散りになって逃げ出した最後の5匹は背中に射撃を受け 「もうゆるじで!!」「やめて!ゆ゛っく゛りし゛ようよ!!」 2匹にまで数を減らしつつ逃走に成功した。 この2匹が命からがら森へ入ったのが6 58であった。 以上が22回目の襲撃とそれまでの経過の概要である。 選択肢 投票 しあわせー! (25) それなりー (5) つぎにきたいするよ! (8) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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『野良ゆっくり根絶計画』 舞台は今より百年程先の未来。ゆっくりは愛でられ食べられ虐待され捕まえられ殺され……と色々な事があったが徐々に数を増やしていった。 出鱈目な生態に生き物とは思えない成長の早さ、そして後先考えずに交尾をするのがその原因である。ゆっくりが出現した当初はペットにされることもあった。 だがゆっくりによる被害…特に畑荒らしや器物損害などが横行したため段々と人々から疎まれるようになった。メカドスやメカゆっくり、メカうーぱっく などのロボットを作り共存と監視を試みたがコストの高さやゆっくりの学習能力の無さ、そして何よりもゆっくりの個体数の把握ができていなかったことにより ロボットによるゆっくり対策は打ち切られてしまった。徐々にゆっくりを絶滅させるべきであるとの意見が多くの人間や妖怪から寄せられるようになった。 それでもゆっくりは根絶されなかった。なぜならばゆっくりの"出鱈目さ"に研究者が目をつけていたからである。特に体の構造は魅力であった。 生ごみや腐った食べ物、果ては限度はあるが食べ物ではないものまで消化し餡子やカスタードに変えてしまうのだ。 このような体の構造に目をつけた研究者は多かった。加工所もこれに目をつけ研究者に多大な資金援助を行い解明を急がせた。 多くの研究者が取り組み長い年月をかけ、ついに謎を解明することに成功した。 ゆっくりの体にある消化酵素を特定しこれを作り出すことに成功したのだ。これにより生ごみから餡子やカスタード、チョコクリームなどを精製することが可能となった。 もはやゆっくりは……不要。山でひっそりと暮らし人里に降りて破壊活動をしなかったら…ちゃんとした知能を持ち人間や妖怪と共存できていたら…… ゆっくりは抹殺されることは無かったであろう。しかし今更ゆっくりを教育することはできない。そもそも3分もすれば全てを忘れる餡子脳では教育も意味が無い。 冬になり加工所、妖怪、人間によるゆっくり根絶が行われることとなった。駆除対象はれいむ種、まりさ種、ありす種、ぱちゅりー種、ちぇん種である。 ゆっくりにはまだ多数の種族が存在するがこれらの種による被害がゆっくり被害の8割を占めている。よってまずはこれらの種がターゲットとなる。 また全てのゆっくりを消滅させるわけではない。ゆっくりをペットにしたいという者もいれば虐待に使いたいと言う者もいる。 既にペットとしてパートナーとして人間と共存できている殊勝なゆっくりもいる。そこで野良ゆっくりを駆除することとなった。ペット用、虐待用などのゆっくりは以後 人工的に繁殖させ教育することで賄うこととした。野良でも見込みのあるゆっくりが繁殖用として駆除を免れることになっている…いやむしろ駆除されたほうがいいのかもしれない。 ちなみに駆除の費用は全てゆっくりを利用した胡散臭い団体の財産から賄われている。ゆっくりんピースをはじめとする環境団体…いつの時代にも偽善団体は存在する。 その実はゆっくりを保護することをアピールし少々お頭の弱い金持ちから寄付を受ける一方で裏では好き勝手やっていただけの連中である。 ゆっくりを利用した宗教団体というのも存在した。詐欺団体も存在した。こうした胡散臭い団体に一斉に捜査が入り財産は全て没収され駆除費用に充てられることとなった。 これからお送りするお話はゆっくり駆除の様子をまとめたものである。都市部編、農村部編、山間部編の3編をお楽しみください。 -都市部- 都市部では農村部や山間部ほどゆっくりは見当たらない。都市部にいるゆっくりといえばペットとして生きているゆっくりがほとんどだ。 しかしペットブームが下火になった今飼いゆっくりが捨てられ野良化しているゆっくりも多い。こうした元飼いゆっくりにはペットであることを証明するバッチが 付いたままであることがあるため駆除にあたり飼いゆっくりの判別が一新された。バッチ無し&旧バッチを付けたゆっくりが駆除の対象となるわけである。 誤解を免れるため飼いゆっくりは当分の間外に出ることが禁じられた。都市部でのゆっくり被害の多くはゴミ荒らし、家屋侵入、飼いゆっくり襲撃&レイプである。 最近では元飼いゆっくりが乞食をするようになってきた。歌を歌ってカンパを募る種も現れたが聞けたものではない。騒音といっていい。 都市部に住むゆっくりはどこに住んでいるのだろうか?一番多いのはゴミ箱の中である。外に比べれば暖かく食料の確保ができるからだ。 前々からゆっくり対策が取られてきていたがそれでもゴミ箱に住むゆっくりはいる。まずは都市部のゴミ箱が全て撤去された。コンビニや駅などからゴミ箱が消えた。 「おかしいよ…きょうはごみばこさんがどこにもなかったよ…。えささんがとれなかったよ…」 「おきゃーさん…さみゅいよ…」 このゆっくりは元飼いゆっくりの親れいむと赤まりさである。いつものように巣(ゴミ箱)から近くにあるコンビニのゴミ箱へ餌を取りに行ったがゴミ箱が無く その後も餌を求めてゴミ箱を探したのだがどこにも見当たらず巣に戻ってきたところだ。 「ごめんねえ…きょうはえささんがとれなくて…ゆううう…」 「まりしゃおにゃかへったよおおおお。さみゅいよおおお」 「おうちでゆっくりしようね…ゆ?ゆゆゆゆゆ!!!!!」 残念ながらもうおうちは無い。 「ない!ない!どうして?どぼじでおうぢがないのおおおおおお」 「さみゅいよおおおおお。うわあああああん」 その後この家族は巡回中の加工所職員によって袋に詰められ回収されていった。 「ここはあったかいね!」 「うん。ここならふゆさんをこせるね。」 「あかいおうちさんとってもとかいはだわああ」 このゆっくりは農村部から流れてきた親まりさ、子まりさ、子ありす家族である。都心部で二番目にゆっくりが住処とするところは自動販売機である。 特に自販機の裏は人気プレイスであった。なぜならとても暖かく住みやすかったからである。小型のゆっくりなら自販機の裏側に納まることができる。 裏だけではなく缶の取り出し口を寝床とするゆっくりも多かった。 都心から自販機を全て撤去する…これはいくらなんでも無理があった。そこで地道に自販機を調べゆっくりを捕獲するということになった。 「そろそろえささんをさがしにいこうね!」 「まださむいよ~。もうちょっとゆっくりした~い」 ポイッ 「ゆ!おちびちゃんあぶないからおくにかくれてね。なにかおちてきたよ」 投げられたのは煙幕である。ただの煙幕ではない。唐辛子やタマネギのエキスが混ざったものである。投げたのは駆除にやってきた加工所の職員だ。 「おがあしゃん!めがいたいよ!!」 「げほっ!げほっ!」 「げほっ!おぢびしゃんはやくごごがらででね…めがしみるよおおおお」 ゆっくり達が自販機から出てきた。 「おじざんなにずるのおお!!ここはまりざのゆっぐりぷれいすだよお!!」 「こんなごどするなんでとかいはじゃないわ!!!いしゃr…」 職員は何も答えずに黙々とゆっくりを袋に詰めていく。 「なにするの!!まりさのおちびちゃんをかえしてね!!!ゆっくりできないじじいはしね!」 親まりさが職員に体当たりをする。彼はやれやれといった顔をする。今日はこれで10回目。いい加減ストレスも溜まってくる。 「しね!しね!ゆっくりしないでしね!」 「死ぬのはてめえだ」 彼は思いっきり親まりさを蹴飛ばした。このまりさでストレスの発散をするつもりだろう。 「いたい!いだい!!やべでええええええ!!!!!!」 彼は何度も何度も親まりさを殴り続けた。餡子が口から漏れ出している。 「おでがいじまずうううう!!!!ばりざの…ばりざはどうなっでもいいでずがらおちびぢゃんだけはあ!!!!」 まりさ種に珍しく母性の強いゆっくりである。彼が今日相手したまりさ種は皆子供や姉妹をだしに逃げ出そうとしてたのに。 「ゆぎゃああああ!!!!!!」 職員はまりさを破き袋の中に入れた。だが自販機から追い出してもゆっくりはまた自販機を住処とする。いたちごっこであるがゆっくりが根絶するまでやるしかない。 「ゆゆ!からだがうごかないよ!!!どうじで!!だれがだずげでえええええ!!!」 各家庭や至る所でゴキブリホイホイならぬゆっくりホイホイが設置された。数日ごとに加工所職員が回収し新しいのを設置していった。 「ちょっとくさいけどここならあめさんにぬれないね!」 排水溝に住み着くゆっくりもいる。当然水に濡れればゆっくりは溶けてしまうが水量の少なかったり水が全く流れていない排水溝に住み着くのだ。 特に都市開発によって使われなくなった排水溝がそのまま残っているところでは多くのゆっくりが見付かった。勿論全て回収された。 念のために下水道や地下鉄の線路まで調べられた。そういったところにもゆっくりは住み着く。そこでずっとゆっくりできると信じて…。 しかし全て回収されてしまった。 「庭に穴が開いてるんですけど…ゆっくりの巣穴かしら?」 「すぐに駆除に向かいます」 「家の軒下から変な声がします」 「多分ゆっくりでしょう。駆除に向かいます」 「倉庫の中が怖くて開けられないのですが」 「至急向かいます。整理の手伝いもいたします」 戸建やマンションにもゆっくりはいる。庭や軒下、物置、車庫etc…。あるゆっくりは唐辛子入り煙幕で巣を追い出されたところを捕獲された。 あるゆっくりは巣穴にお湯をぶち込まれ巣穴から脱出する前に汁粉になった。あるゆっくりは巣穴に油を注がれたあと火を点けられ焼饅頭と化した。 「あじゅいよおおおおお!!!!おかあああさあああんん!!!!」 「だじでえええええ!!!!ごごからだじでくだざあいいいい!!!」 「ゆっぐりじだいよおおおおおお!!!!!!」 住宅街にゆっくりの叫び声が響いた。誰も助けてはくれない。駆除を始めて4日は叫び声が絶えなかった。その後はゆっくりの声を聞くことはできなくなった。 「いやだああ!!!!たすけてえええ!!!!!」 「こっちにこないでね!あっちいってね!!」 「まりさはにげるんだぜ!!!!れいむがかわりににんげんさんにつかまるといいんだぜ」 「どぼじでぞういうごどいうのおおお!!!」 「うるさいんだぜ。まりさはもtt…」 毎日毎日ゆっくりは捕獲されていった。休日ともなればボランティアも参加した。公園、川原、駅高架下…至る所で袋を持った人間がいた。 「やべでええええ!!!!れいむはゆっぐりじだいだけだよおおおお!!!!」 「あじずはわるいごどじでなああいいいい!!!!とかいはにいぎでるだけだよおおおお!!!」 原則ゆっくりは捕獲である。餡子を撒き散らされては掃除に手間がかかるからである。だが時には殺していく人もいる。 誰も何も喋ってくれなかった。たいしたことは言ってない、喋るだけ無駄。ゆっくりが何か言ったらムカムカするだけだ。その前に駆除してしまえ。 都市部に住むゆっくりは段々以前に増してゆっくりできないことに気付いていった。餡子脳でも自分達が何者かに狙われていることに気付いたのだ。 真昼間に行動するゆっくりは減っていった。駅前で下手の歌を歌ったり物乞いをするゆっくりは消えていった。 早朝、都市部のある産廃場に多くの職員と妖怪、さらに巨大な加工所特製の透明な箱を積んだ大型車が集まった。都市部で最も大掛かりな駆除は産廃場であった。 廃車にタイヤに冷蔵庫、TV…野良ゆっくりにとっては住処として充分であった。時々ゴミが崩れ落ち何組かの家族が死んでしまうこともあったが。 「ゆっくりおきるよ…きょうこそえささんをみつけるよ…」 元飼いゆっくりのれいむである。最近このれいむをはじめゆっくりは餌を見つけることが出来ない。ゴミ箱が撤収されゴミ回収が徹底されたからである。 人間に見付かれば有無を言わさず袋の中に入れられた。「ゆっくりしていってね!」と挨拶をする前に潰されるゆっくりもいた。 れいむは思う。何で最近こんなに怖くなったんだろう?何でご飯が食べられなくなったんだろう?もう5日もご飯を食べていない。何かに狙われてる気がする。 そういえば飼いゆっくりすら見なくなった。隣に住んでいたありす一家や冷蔵庫の中で暮らしていたちぇん一家が帰ってこないがきっともうゆっくりできなくなってしまったんだろう…。 「おなかすいたよ…むーしゃむーしゃしたいよ…」 れいむの足取りは重い。れいむだけではない。この産廃場にいるゆっくりはみな早朝から出かけ餌を探しに行く。しかしどのゆっくりも餌を見つけることは出来なかった。 「おなかすいたよお…」 「ぜんぜんゆっくりできないよ…ゆああああんん!!!」 産廃場からは悲しげな泣き声がする。 「ゆぅ…ゆぅ…ゆ!」 れいむは急に止まり近くにあったタイヤの中に隠れた。 「にんげんさんがいっぱいいるよ…」 この産廃場に人間がやって来るのは数年ぶりだった。れいむは思い出す…。人間さん…れいむのご主人様はお姉さんだった。 ペットショップでちゃんと躾けてもらったのにお姉さんが怒らないのをいいことに我侭ばかり言ってた。散々文句言ったっけ。 ご飯が不味いだのふかふかのベットで寝たいだの……。ある日起きたら臭い所にいた。周りはゴミだらけだった。それから散々な目に遭った。 リボンはもうボロボロだしご飯はなかなか食べられないし…こんなことになって初めて自分が間違っていたことに気付いた。 「おねえさん…れいむが…わるかったよ…」 れいむは泣いていた。 さて集まった人達はみな作業服だった。彼らはここのゴミとともにゆっくりを回収しに来たのだ。 「ゆっくりを見つけたらこちらの箱に入れてください」 「粗大ゴミはこっちのトラックに積んでください。小さ目なのはこっちのトラックです」 「ではよろしくお願いします」 彼らは作業に取り掛かった。 「ゆゆ!にんげんさん!!!ゆっくりs」 ヒョイッ 「おでがいじまずうううう。なにがたべるぼのぐd」 ヒョイッ 「にんげんさん!!あまあまty」 ヒョイッ 「はやくれいむにあまあまさんもってきてね!!ゆっくりしないではやくしてね!」 「ゆ!まりさのおちびぢゃんになにするの!!!」 「むきゅ、ばかなにんげんさんね。ぱちぇのいうことがわからないの?」 そんな声を無視し彼らは黙々と作業する。ある者はゆっくりを捕獲しある者は粗大ゴミを片付けた。 「むじじないでえええええ!!!!」 「それはちぇんのおうちだよおおおお!!!!!!わがらないよー!!!!」 「ばりざのおぢびぢゃんをがえぜええええ!!!!!!」 誰も何も喋ってくれない。数分後ようやく自分達がターゲットにされていることに気付いた。 「ゆっくりしないでここからにげるよ!!」 「りぇいみゅのおうぢがああ!」 「おうちはまたちがうところでみつけようね!!みんなおくちのなかにはいってね!」 「わからないよーわからないよー!!」 「れいむをもっていくといいんだぜ!まりさはにげるんだぜ!」 「ゆっくりしないでにげるよ!おちびちゃんのぶんまでゆっくりするよ!」 「むきゅ…ぱちぇをおいてがないでええ」 「ばりざあああ!!!!たすげでえええ!!!」 辺りはパニックになった。必死にみな逃げた。しかし産廃場の周りには網が仕掛けられており外に逃げることは出来なかった。 「だじでええええ!!!!!ごごがらだじでええ!!!」 「あじずはなんにもわるいごどじでないよおおおお!!」 「はごのながはいやああああああ!!!!!」 産廃場はゆっくりの悲鳴でいっぱいだった。中には既に諦めているゆっくりもいた。 「ゆっくりしないでころしてね…」 「いなくなっちゃったまりさのところにいかせてね…」 「おねえさん…ごめんなさい…」 あのれいむもその中の1匹であった。 数時間後産廃場は綺麗になった。ゴミも無い、ゆっくりもいない。ただの空き地になった。 袋に詰められたゆっくりは各地からゴミ焼却場に集められた。何にも利用されることは無い。焼却処分するだけである。 ゆっくりを確実に殺すことができ尚且つあまり手を汚さない方法だからだ。 「あじゅいよおおおおおおお!!!!!」 「でいぶなにもわるいごどじでないよおおおおお!!!」 「ゆっぐりできるおうだうだうがらゆるじでええええええ!!!!」 「ばりざのばがあああああ!!!!どがいにいげばだべぼのがいっばいあるっでいっだのにいいいいい!!!!!」 「らんじゃまあああ!!!!!!!」 「おにいいざあんんんん!!!!!たずげでえええ!!!!!」 「ぼうわがばばいばないがらごごがらだじでよおおおお!!!!」 焼却炉にはゆっくりの断末魔が響く。この様子を多くの人が眺めていた。 「こ…こわいよおおお」 「まりさ、ちゃんと目を開けて見るんだよ」 「でいぶ…じにだくなあいいい…」 「れいむはああはならないよ。ちゃんとしていればね」 「悪いことをしたらああなるんだよ。わかったね」 「わかりましたあああ!!!!」 「ぼうずぎぎらいじまぜん!!」 ある人は飼いゆっくりを連れ野良ゆっくりが焼かれるところを見せつけていた。 「とってもいい音色だなあ」 「録音とかしてないんすかね?」 「しかしこれで虐待が出来なくなると寂しいですね」 「ちょっとの間だけだよ。野良潰したってあの生態だ、養殖モノもすぐに発売されるさ」 「半年以内にまた虐待できるって聞いたぜ」 彼らは虐待鬼意山と呼ばれる人たちだ。ゆっくりの断末魔が延々と聞けると聞いてやって来たのだ。 焼いても焼いてもまたゆっくりが投下される。全てのゆっくりを焼却し終わるのに1週間かかった。焼却処分が終了したあと焼却場には 餡子の匂いが充満していた。とても重苦しい匂いだった。まるでゆっくりの怨念が漂っているかのように。 都市部の野良ゆっくりはほぼいなくなった。ほんの一部のゆっくりは危険を察知し農村へ逃げ出した。農村に逃げられたのはその中の一部だけだった。 だが農村でもゆっくり駆除が始まっていた。そのお話はまた次の機会に。 その後も加工所の職員やボランティアによって毎日見回りが行われ生き残ったゆっくりを回収していった。1日10匹も見付からない。 ある日突然加工所は野良ゆっくり1匹につき10万円で引き取ると発表した。人々はその高値に驚いた。しかし行動は早かった。 子供からお年寄りまで周辺を探し始めた。休日ともなるとほとんどの人がトレジャーハンターと化した。どこか探していないところは無いか? どこか穴は無いか?どこかに隙間はないか?運良く見つけたゆっくりを巡って喧嘩が起きることもあった。 ある者は空き家を見つけそこで10匹以上のゆっくりを捕獲することに成功し大儲けをした。なんだ、まだいるじゃないか。 飼いゆっくりはそんな状況をTVや噂で聞き更に人間に従順になった。捨てられたら人間に見付かった瞬間加工所行きだ。 もしかしたら飼い主がお金欲しさに自分を売ってしまうのではないか?いい子にしてなかったら加工所行きなのでは?文句を言ったら加工所行き? 朝起きたら加工所にいるのではないか?いや、もう朝が来ないのかもしれない……。 ストレスで死ぬ飼いゆっくりも現れた。飼いゆっくりはもう"ゆっくり"ではなかった。ただの喋るペットになった。 もはやゆっくりに居場所は無い。 農村部編へ続く by 虐待おにいちゃん あとがきやら加筆修正 皆様はじめまして。様々な意見や感想を頂きました。 ありがとうございます。 さて私のSSは全て同じ世界観を有しているつもりです。当初では幻想郷を舞台としてましたがその後のSSの内容や色々と矛盾が発生したことから幻想郷という設定を外しました。 といって現代社会でもありません。 ……現代社会でもなく幻想郷でもない…また別の世界です。 物凄く出鱈目で強引な設定ですがゆっくり自体が出鱈目な 生き物なので…これで許してください。 今後ともよろしくお願いします。
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「うー♪うー♪うま♪うま♪」 「ゆ゛っぐい゛、ざぜでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「お゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!!!」 今まさにゆっくり親子が、ゆっくり食種であるゆっくりれみりゃに食べられていた。 頭に食らいつき、口の周りを汚し周囲を散らかしながらそれは下品に貪り食われていた。 「おいちー♪」 「ゆ゛っ……ゆ゛っ……」 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛!!おがあ゛ざんをがえじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 食われて意識を失っていく母ゆっくりを、逃げる事すら考えられずにただ眺め続ける子ゆっくり。 そんな食物連鎖の場に、新たな闖入者が現れた。 食物連鎖のピラミッドにおいて、ゆっくりれみりゃの更に上に位置するゆっくり。 ゆっくりフランである。 「ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」 上空2メートルから急降下して、ゆっくりれみりゃに気付かれる間もなく、 ゆっくりれみりゃの手から食いかけの母ゆっくりれいむを手ごと奪い取り、近くの木に叩き付ける。 「う゛あ゛ー!い゛だい゛よ゛ー!!ざぐや゛ー!!ざぐや゛ー!!」 「ぎゃはははははははははははは!!ゆっくりしね♪ゆっくりしね♪」 手と食事を闖入者に奪われて、地面に足を投げ出して号泣するゆっくりれみりゃ。 ちなみに「ざぐや゛」とはゆっくりれみりゃが何か都合の悪い出来事に遭遇した際に上げる鳴き声である。 何かしら意味があると考える者も居るが、特に何の意味も無いとする意見が大半を占める。 先程までただ母親が食われる様子を眺めるだけだった子ゆっくりは、 「おかあさーん!!おねえちゃんたすけてくれてありがとう!!」 と、母親にトドメを刺した者に対して暢気に礼を言っていた。これにはゆっくりフランも苦笑い。 子ゆっくりれいむを優しく抱き上げ、目の前に掲げる。 「ゆっゆっ!だっこだっこー!!たかいよたかいよ!!ゆっくりできるよ!!」 もう既に母親は助かったものとして忘れているらしい。ゆっくりの中でも稀に見る愚鈍さである。 そんな愚鈍をとりあえず泣き喚くゆっくりれみりゃに向けて投げつけるゆっくりフラン。 「びゅっ!!」 「い゛だい゛よ゛ー!う゛ー!い゛じめ゛る゛ど、ざぐや゛に゛い゛い゛づげぢゃう゛ぞー!!」 べそをかきながらもたもた立ち上がって威嚇するゆっくりれみりゃ。 涙と涎で顔と胴体がべしゃべしゃなので、迫力は全く無い。一方子ゆっくりれいむは地面で泣き喚いていた。 「どお゛ぢでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛ね゛え゛ざん!!ゆ゛っぐい゛ざぜでぐえ゛る゛んでじょお゛お゛お゛お゛!!!」 どうやら子ゆっくりれいむのブレインは、ゆっくりフランは自分にとって都合のいい存在であると結論付けているらしい。 そんな子ゆっくりれいむを拾い上げ、再び大きく振りかぶって…… 「ゆっくりとんでけ!!」 ゆっくりれみりゃに向けて全力投ゆっくり。顔面にめり込ませた。 「ん゛ー!!ん゛ー!!」 「ゆっくりさせてええええええよおおおおおおおお!!!ここからだしでよおおおおおおおお!!!」 「ぎゃはははははははははははははははははははははははははははははは!!!」 偶々顔が外向きになった子ゆっくりれいむは物凄い声で泣き叫ぶ。 ゆっくりフランはそんな間抜けな二匹を見て腹を抱えて笑い転げている。 「ゆっくりしね♪!!」 いたぶるのも気が済んだのか、めり込んだ子ゆっくりごとゆっくりれみりゃの顔に噛り付くゆっくりフラン。 食われ所が悪かったのか、二匹とも声も出せずに絶命した。 後は特に何も起こらない。ただ時々笑い声を上げながら残骸を食らい尽くすゆっくりフランが居るだけだった。 ゆっくりれみりゃを食べつくして満腹になったゆっくりフランの元に、一人の少女が現れた。 どうやら夜の散歩の途中だったようだ。 「あら、これはゆっくりフラン…珍しいなぁこんな所にいるなんて」 少女に気付くいたゆっくりフランは、あろう事か牙をむき出しにして飛び掛った。狙いは少女の首! 「ゆっくりしねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ほっ」 一直線に首に向かって飛び掛ってきたゆっくりフランを事も無く叩き落す少女。 ゆっくりフランは地面にめり込んで伸びている。 「へぇ…ゆっくりフランってゆっくり以外にも襲い掛かるんだ。やっぱり根本的におバカなんだなぁ」 そんな感想を吐きながらゆっくりフランの羽を持って自宅へ持ち帰る少女。 「丁度先代のコキンが死んじゃった所だし……これを29代目コキンにしようっと」 チャイナ服の裾を靡かせて颯爽と紅魔館の宿舎に帰る門番・紅美鈴。 ちらりと見える生脚が月光を浴びて美しく輝き、世の男達の煩悩をこれでもかと刺激しまくっていた。 「ぐう…?ゆ、ゆっぐり!!?」 「ああ起きた?おはようコキン29世。よく眠れた?」 ゆっくりフランことコキン=トウ29世ことコキンが目を覚ましたのは、美鈴がコキンを自室に持ち帰ってすぐだった。 「ゆ、ゆっくりしね!!」 起きてすぐ美鈴に飛び掛るコキン。だが美鈴にゆっくりフランに過ぎないコキンが敵う筈も無く、 「えい」 あっさりと蹴り飛ばされた。蹴られる瞬間コキンは一瞬この世の至宝を視界に捉えたが、コキンにとってはどうでもいいものだった。 「ぐぐぐぐぐ……」 壁に打ち付けた後頭部を押さえて悶絶するコキン。よく見れば後頭部が平らになっているのが分かる。 「大丈夫よ。あんたたちゆっくりフランはその程度じゃ死にやしないから。すぐ直るよ」 「ぐー?」 美鈴を涙目のまま見上げて首を傾げるコキン。何故、自分を殺さないのか。そんな事を言いたげだ。 そんな涙目コキンにギュンギュンきている美鈴だったが、そんな事は顔の血色以外には表わす事も無く、 「あんたは私のペットになったのよ。あんたの名前は今日からコキン=トウ29世。通称コキン」 「ぐおー!!ゆっくりしね!!」 どうや某共和国国家主席から戴いた名は全くお気に召さなかったようである。 物凄い形相で美鈴に飛び掛った。今なら顔だけでどんな愚鈍なゆっくりでもショック死させられる。 「そうそうもっと刃向かってね」 言いながらコキンの両目に指を突き立てる美鈴。指が根元まで刺さってしまっている。 「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!め゛!!めがあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 指にぶら下がったままで狂ったように暴れまわすコキン。動けば動く程痛いという事にパニックで気付いていない。 「ほーれほれ。ここかーここがええのんかーなんちゃって」 「ぎい゛ぃい゛い゛ぃぃぃっぃい゛ぃぃぃぃっ!!!ごああぁあぁぁあぁあっぁぁあぁぁぁ!!!」 美鈴が指を曲げ伸ばしする度に、顔の中身を掻き回されて大暴れするコキン。 見えないままで美鈴の手を掴み、顔を引き抜こうとする。だが、 「あぁ駄目よ抜いちゃあ。まだまだお楽しみはこれからでしょう?」 ブツッ 「っっっっいぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 美鈴の手を掴んだ両手をむしり取られたコキン。 その間も美鈴の指はかのゴールドフィンガーばりに中を掻き回し、この世の物とは思えない絶叫を上げる。 「ふふふふ、元気で何より。あぁたまらん。どうせ見えてないし、今日はこのまましちゃおうかなっ」 「ぐっ!ぼぉえ゛っ!!ぉえ゛っ!!え゛っえ゛っ!!ごはっ!!」 あまりの苦痛に吐き気を催したのか、激しくえずくゆっくりフランを恍惚とした顔で眺めながら、 美鈴は左手をそっと動かし、 【これ以上は色々危険なので美鈴の描写はあえて行わない。想像力を逞しくすれば必ず見える筈である。】 刺している指を今度は左右交互にゆっくりと出し入れされるコキン。 指が抜けたスペース分はすぐさま回復し、再び指で抉られるという苦痛のループに耐え切れず失神してしまう。 が、気を操る美鈴にかかれば失神した者を起こす事など朝飯前である。 頭の中に直に電流を流されたかのような痛みに全身を痙攣させて起きる。 「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「そうそう。そうやっていい声でもっと私を愉しませてねっ……」 何としてもこの地獄から抜け出そうと、羽で全身のバランスをとって美鈴の右手を掴んで脱出を試みる。 が、だめっ……! 両脚を薬指と小指と親指で器用に掴まれ圧搾される。中の肉がうじゅうじゅと動く感触に身震いする美鈴。 「ッがあああああああああのおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!!」 再生してきた両手で懸命に両脚の拘束を解こうとするコキン。 その生えたてほやほやの両手は美鈴の足の指でがっちりホールドされ、今度は肩から引きちぎられた。 「~~~~~~ッッッ!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 傷口からぶしゅぶしゅと肉汁と餡をこぼしながら全身を激しく揺さぶるコキン。 その拍子に両脚も膝からちぎれてしまった。 「う゛ぇお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 ぼたぼたと床に染みが広がり、部屋中にすえた香りと肉の芳醇な香りが漂う。 残った膝までの脚と羽をこれでもかと暴れさせて苦しみ、もがき、泣き、叫ぶコキンの狂乱は、 見る者をこの上ない高みへと連れて行った。 「全くあんなに汚しちゃって。悪い子だね今度のコキンは」 「い゛っっっぎい゛ぃぃ!!」 部屋を掃除し終えてからぼやきつつコキンの両羽を根元からもぎ取る美鈴。 その、ゆっくりにしてはかなり硬質な羽を無造作にコキンの両手の平に突き刺す。 「がっあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!はっ!!はな゛ぜっえ゛っえ゛っえ゛え゛え゛!!」 直った両目にこの上ない憎悪を漲らせて美鈴を睨みつけるコキンを、 壁にかけられたコルクボードに串刺しにする。 無数にある餡や肉汁を拭き取った跡がコキンを恐怖させる。 磔刑にされたコキンは、両手を何とか引き剥がそうとするが、手が羽の軸をスライドしただけだった。 やがて背中の羽が再生し、再びそれを根元からもぎ、今度はそれを両脚の甲に刺して串刺す。 「ゆぐあ゛っ!!お゛、お゛ろ゛ぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「駄目よコキン。そこがコキンのお家なんだから。我が家に帰ってきたんだから、ゆっくりできるでしょう?」 どんな男も一撃で失明させられる程眩しい笑顔で言い放つ美鈴。 その言葉で、コキンの顔は完全に色を失った。それでも痛みは感じるらしく。 頬を千切って食べられた時には全身を激しく揺さぶってもがき叫んだ。真下の床には早くも大きな肉汁の染みができている。 「じゃ、私は明日も仕事があるから寝るわよ。ほら、今日の夕食。これ食べてあんたも寝なさい」 「や゛め゛でや゛め゛でや゛め゛で!!たべな゛い゛でよ゛お゛お゛お゛お゛!!!」 頬に開けられた穴からゆっくりまりさの子供が押し込められる。どうやら部屋で飼育しているものらしい。 痛みをこらえながらゆっくりと咀嚼するコキンの姿は、常の凶暴さを微塵も感じさせなかった。 しばらくの間部屋に食われる餌の絶叫だけが響く。 「ごちそうさまは?」 「ご、ごぢぞう……さま゛」 「よくできました。じゃおやすみなさいコキン」 「はい゛……おやずびなざい゛」 翌朝 美鈴が目を覚まして壁に目をやると、コルクボードに大きな肉汁の染みが広がっていた。 何事かと思い近付いて確認すると、コキンの首から上が完全に潰れており、既に絶命していた。 よく見ると両手と両足が羽軸の中ほどにまで移動している。 どうやら、痛みをこらえてここまで体を壁から離し、全力でコルクボードに頭突きして自害したものと思われる。 何度も何度も試したのか、コルクボードには百以上の窪みがある。 「そうかぁ……ゆっくりも自殺する事なんて、あるんだぁ……ふふ、ふふふふ」 美鈴はそれらの事実に気付くと、顔に満面の笑みを浮かべた。 「そっかそっか。私の攻めはそこまで良かったのかぁ……ふ、ふふふっ」 全身を笑いで揺すりながらコキンの死体を持って餌用ゆっくりの檻に放り込む。 ゆっくり達が普段以上に怯えた様子で美鈴を見ている。 「それにしても、まさか自殺するなんて……ゆっくりフランは初めてだったけど、まさかこんな事をするとは…… これは面白い事実ね。最も凶暴な捕食種が一晩いたぶられたら自殺。ふふっ何この皮肉。面白すぎるわ。ふふふふ」 檻の中のゆっくり達が美鈴の様子を伺いながら恐る恐る食事している間中、部屋に不気味な笑い声は響き続けた。 「んーっ、さてと!じゃあ今日もお仕事頑張りますか!」 掃除を終えて着替え終わる頃にはいつもの門番さんが出来上がっていた。 その豹変ぶりもまた、檻の中のゆっくり達の恐怖を煽っていた。 部屋を出る間際、おやつ用のゆっくりを無造作に胸元にしまい込む。 世の男性からすれば羨ましいが、そのゆっくりにしてみれば今日食われる事が確定した事になる。 「ゆ゛っぐい゛じだい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 「黙りなさい」 軽く胸を寄せ上げて中のゆっくりを圧迫しながら脅す。一言で黙るゆっくり。 と、そこに美鈴の上司が通りかかった。 「おはよう美鈴。何そのポーズは。新しい朝の挨拶かしら?」 「わわ!咲夜さん!お、おはようございます!!これは別にその、ちょっとした体操ですよ!」 「ふぅん?てっきり私に対する宣戦布告かと思ったけど」 「ちちちち違いますよそんな!咲夜さんに宣戦布告だなんてその……は、恥ずかしいです!!」 「……?貴女大丈夫?今日は別の者に仕事を代わって貰った方がいいんじゃない?」 「そんな事はありません、私はいつも元気です!!健康です!!」 「そう。ならいいわ。さっさと食事を済ませなさい。早くしないと……」 「わ、分かってます!分かってますからナイフはしまってくださーい!」 慌てて食堂に向かう美鈴。咲夜はどこか満足げに見送って、今日の仕事に取り掛かる。 今日も何事も無く紅魔館の一日が始まった。 SUICIDE END... 作:ミコスリ=ハン
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「おにいさん!れいむたちのおしごとのおてつだいをさせてね!」 「・・・・・・は?」 ある初夏の晴れた日のこと。 俺はいつも通り田吾作さんの畑のわりと近くにある自分の畑で仕事をしていた。 すると、人里のゆっくり対策の進んだ最近では珍しい山から下りてきたゆっくりの一家がやって来て、そんな事を言いやがった。 他所の地域では虫取りや他の害獣を追い払うのに役立てることもあるらしいが、ここではそんな習慣はない。 そもそも、人間の役に立とうという殊勝なゆっくり自体が極めてまれな存在だ。 「・・・農作業の手伝いって、お前らに何が出来るんだ?」 「れいむたちはむしさんやはっぱさんをむーしゃむーしゃできるよ!」 「野菜と雑草の区別はつくのか?」 「あたりまえなんだぜ!」 そう言って、ゆっくり一家の両親はゆへんと偉そうに胸(下あご?)を張った。 両親はれいむ種とまりさ種で子どもは親と同じ種族の赤ん坊サイズのものが2匹ずつ。 いわゆるオーソドックスファミリーだ。 「子どもが勝手に食ったりしないだろうな?」 「「「「しょんなことちなにゃいよ、ぴゅんぴゅん!」」」」 俺の言葉に反応した子ども達は反論の後、一斉に頬を膨らませた。 さて、どうしたものか・・・。 さっきの応答や言動・態度を見る限りにおいて、ゲスっぽい気配は無い。 それどころか家族揃ってゆっくりにしてはかなり聡明なようだ。 「ん~・・・」 「おにーさぁん・・・おねがいだよ!」 「・・・で、何が目当てなんだ?」 「ゆゆっ!・・・すごいぜ、れいむ!まりさたちのもくてきはばればれだぜ!」 「ほんとうだね!さすがにんげんさんだね!」 「「「「ゆっきゅちしゅごいよ!」」」」 珍しく殊勝な奴らだと思えばやっぱり見返り目当てだったが、それでも勝手に畑の野菜を食い漁るよりはずっと賢明だろう。 物珍しさにも後押しされ、俺は大根4本と交換で一家の申し出を受け入れることにしてみた。 野菜と雑草の区別が出来ていることを確認してから、柵の中に招き入れ、一家のためにそこそこの大きさの小屋と水飲み場を設置してやる。 こうして、俺とゆっくり一家の共同作業が始まった。 結論から言えばこの一家はいつも俺の予想をいい方向に裏切ってくれた。 ちゃんと雑草と野菜を区別して雑草だけを抜き取ってくれるし、虫の駆除もほぼ完璧。 流石にそれ以上のことは殆ど出来なかったが、虫害をどうにかしてくれるだけでも本当に助かる。 一度だけ子まりさが野菜に口をつけようとした事もあったが、その時には自分の子どもをちゃんと叱りつけていた。 なるほど、これだけ出来のよい個体であればゆっくりであってもそれなりに役に立つ。 それに・・・・・・ 「「ゆゆっ!おにーさん、ゆっくりしていってね!」」 「「「「ゆっくちちていってね!」」」」 「仕事があるからゆっくり出来ないっつーの」 「「じゃあゆっくりおしごとがんばってね!」」 「「「「ゆっくちがんばってね!」」」」 何より、間違ってもおうち宣言のようなこっちの神経を逆なでするようなことは言わなかった。 それどころか、仕事の合間の休憩時間の話し相手としても活躍してくれた。 柵では対処しきれない鳥類が作物を荒らそうとしたときには大声で俺を呼んだ。 とにかく、ゆっくり一家は十分すぎるほどに役に立ってくれた。 「れいむぅ・・・とってもゆっくりしてるね~」 「そうだね、まりさ」 「つぎのおにさんはれいむだよ!」 「「「ゆっくちにげるよ!」」」 また、柵と小屋に守られた畑で安全に食料を確保できるこの状況は一家にとって、とてもゆっくりできる環境だったらしい。 子ども達は赤ゆっくりから子ゆっくりへと成長し、餌を食べ終えた後に畑の周辺でよく鬼ごっこをしていた。 好奇心旺盛で俺に人間のことをあれこれ聞いてきたりもした。 「おにーしゃん!どうちでにんげんさんはむしさんをたべないの?」 「いや、食べられることは食べられるし、食べることもあるぞ」 「でも、おにーしゃんはたべないね!」 「虫はなぁ・・・人間には小さすぎるんだよ。あと、見た目がグロい」 「どうちて?おいちいのに?」 「人間の好みじゃないんだよ。さて、仕事に戻るからもう話しかけんなよ?」 「「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」」 と、まあ、こんな具合に鬱陶しくも愛嬌のある奴らだった。 たまに引っ掴んで持ち上げてやるだけで「おしょらをとんでりゅみたーい!」と大喜びするので、散歩いらずな分犬よりも手間がかからない。 「おにーしゃん!いもうとたちにもおしょらちてあげてね!」 「「れーみゅもおしょらとびちゃいよ!」」 「「まりしゃもぶれいじんぐしゅたーちちゃいよ!」」 そうそう、そういえば相当ゆっくり出来たせいか、夏の間に家族が4匹ほど増えていたりする。 れいむ種とまりさ種が2匹ずつ。まだ生まれて間もない赤ん坊だが、にんっしんっで産まれたので結構大きい。 1回のにんっしんっで産まれたのは2匹で両種が1匹ずつ。 まずはれいむが産み、その次にまりさが産んだ。 そんなわけでいつの間にかこの一家は両親2匹に子ども8匹と言うかなりの大家族になっていた。 勿論、新しく出来た家族も親や俺の言うことをきちんと守って、虫や雑草を駆除してくれた。 おかげさまで、今年はいつもよりもずっと収穫が多かった。 そして収穫を終えた日の夜。 翌朝には一家に約束の大根を渡し、野に返してやらねばならない。 俺は前々から読者にも伏線すら提示せずに考えていたある計画を実行に移した。 そろーりそろーりと連中の小屋に忍び込むと、夏に生まれた子どもを各種族1匹ずつ捕まえ、いったん自分の部屋へ戻った。 それから、今までは常時開放されていた小屋の出入り口に扉を取り付け、しっかりと施錠も出来るようにした。 仕上げに、残った家族をこいつらの本能に刻み込まれた言葉で叩き起こした。 「ゆっくりしていってね!」 「「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!」」 「「「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」」」 いとも容易く目を覚ました一家はしばらくのん気に「おにーさん、どうしたの?」などと言っていた。 が、やがて家族が減っていることに気づくと顔を真っ青にして右往左往し始めた。 「おにーさん!れいむのおちびちゃんがいないよおおおおお!?」 「そりゃそうだ。俺が預かったんだからな」 「どうしてそんなことするんだぜ!?」 「それはね!お前達との取引を無効にしたいからだよ!」 「「「「「「「「ゆゆっ!?」」」」」」」」 俺の突然の宣言に「びっくりー!」とでも言わんばかりに目を見開いて驚くゆっくり一家。 今までそれなりに仲良くしてきただけに、その信頼の全てを根底から覆す言葉が信じられないのだろう。 その証拠に、しばらく唖然していたれいむは我にかえるや否や、頬を膨らませてこう言った。 「おにーさん、じょうだんはやめてね!ゆっくりできないよ、ぷんぷん!」 初めて俺に出会った日から数えると、なんと100日以上もの付き合いがあるのだ。 流石に俺がそんなことをするとは思えない、或いは思いたくないらしい。 しかし、残念ながら全て事実であり、目をそらしても変わることの無い真実。 そのことをれいむ達に理解してもらうために、俺は近くにいた、親に連れられてここに来た1匹の子まりさを踏み潰してやった。 「「「「「・・・・・・ゆゆっ!?」」」」」 「これで分かっただろ?俺は本気だよ」 「ゆああああああああああああああああああああ!?」 「でいぶのおぢびぢゃんがあああああああああああああ!?」 「「「「「ばりぢゃあああああああああああああ!?」」」」」 家族が1匹踏み潰されたことでようやく事態の深刻さを認識した一家は恐怖と絶望に顔を歪め、彼女らの双眸からは涙が溢れ出している。 が、泣き止むまで待つのも億劫なので「ゆっくりしていってね!」を利用して半ば強引に泣き止ませると、即座に用件を伝えた。 「さっき言ったとおり大根はやらん。嫌なら全員殺す・・・理解したか?」 「「ゆぐっ・・・・・・ゆっくりりかいしたよ!」」 「「「ゆえーん!」」」 「おにーしゃんひどいよ!やくそくをやぶりゅなんてゆっくちしてないよ!」 「しょーだよ!ゆっくちできないよ!」 残り7匹のうち、5匹は自分の立場をしっかりと弁えてくれたようだが、2匹だけそうでないものがいた。 1匹は両親に連れられてきた子まりさで、もう一匹は夏に生まれた子まりさだった。 彼女らは「ゆっくりさせてね!」などとのたまいながら、成体一歩手前の体を思いっきり跳躍させて俺に体当たりを仕掛けてくる。 が、悲しいほどに痛くもかゆくもないのでしばらく黙ってその攻撃を喰らってやる。 最初はいい気になって「ゆっくりこうさんしてね!」などと言っていたが、やがて息が上がり、冷静になった頃には己の無力を理解した。 「「どほぢでじぇんじぇんぎがにゃいのおおおおおお!?」」 泣き叫ぶ2匹の呼吸は荒く、また体当たりを繰り返したせいでところどころ青あざが出来ていた。 ぼろぼろになりながら、己の無力をかみ締める姿は可哀想でどこか哀れみを誘うものがあるが、容赦することなくお仕置きを加えてやった。 「うりゃ!」 「―――――――――――――ッ!!?」 サミング、いわゆる目潰しを食らわして子まりさの目玉を両方とも抉り出すと、悲鳴にもならない金切り声が子多重に響き渡った。 両親はガタガタと震えながらも「やめてあげてね!いたがってるよ!」と俺に許しを請う。 その傍では素直に言う事を聞いた殊勝な子ども達が両親にへばりついて泣きながら、歯をガチガチと鳴らして震えている。 そして、当の子まりさは目のあった場所から餡子を漏らしながら床を転げまわっていた。 「ゆっくりにげりゅよ!そろーりそろーり・・・」 「ハイ残念、もう見つかった!」 「ゆゆっ!?やめてね!こっちこないでね!?」 子まりさの惨状を目の当たりにした子れいむもまた涙で頬をぬらしながら、必死に逃げ回っていた。 しかし、普段は開けっ放しの出入り口は閉まっており、この小屋には隠れられるような場所も無く、逃げ場所なんて何処にもなかった。 それでも子れいむは俺から逃げ続けた。俺がわざと泳がせていることにも気づかずに一心不乱に逃げ続けた。 そして、疲労が限界に達し、一歩も動くことが出来なくなった瞬間に彼女は俺によって光を奪われた。 俺は一家に食料の代わりに安全に越冬できる巣、以前から使用していたあの小屋を貸してやることにした。 ただし、扉はしっかりと施錠されているし、他の場所から外に出ることもできない。 勿論、食料をやるつもりは微塵も無いので、このままでは何も食べることは出来ず、飢え死にするのを待つだけである。 「そこで、赤ゆっくりのできる蔦やそれに成っている赤ゆっくりと大根を交換してやろうと思う。嫌なら飢えて死ね!」 「ゆゆっ!・・・お、おにーさんはあがぢゃんをあづめでどうずるの・・・?」 「いい質問だ。俺の家に連れて行ったお前らの子どもに食べさせる。ちなみにそれ以外の餌は与えない」 「「「そ、そんなひどいことちないでよ!?ゆっくちできないよ!」」」 自分たちの立場を理解しているとは言え、流石にこの提案ばかりは呑めないらしい。 必死の形相で抗議し、何とか俺から妥協を得ようと一生懸命媚びへつらったり、泣き落とそうとしたりしている。 が、やっぱり何の意味も無い。 「お仕置きされたいか?」 「「ゆゆっ!おしおきはやだよ!ゆっくりできないよ!?」」 「「「おしおきごわいよぉ~!」」」 「「ゆぎぃ!?お、おぢごぎいやあああああああああああああああああ!?」」 どんなに頑張ってもたった一言ですべてが消し飛んでしまう。 両親は子をかばい、子は両親にすがりつき、既にお仕置きを受けたものは気が狂ったかのように喚いていた。 そんなどうしようもなく無力な一家に向かって更に話を続ける。 「ちなみに家のほうの子どもの食事は君たちと交換した蔦や赤ちゃんだけだからね。ゆっくり理解しろよ?」 「「ゆぐっ・・・ゆ、ゆっくりりかいしたよ・・・」」 それから交換レートについても話し合い、蔦1本=大根の葉っぱ10g,赤ゆ1匹=大根の葉っぱ3gという相場に決定した。 ちなみに、うちで取れる大根1本の重さが1000gの可食部分が900g程度であるから蔦1本に赤ゆが5匹なると仮定して1本=25gである。 つまり、40本の蔦を手渡してようやく1kgの食料を得られるのだ。 一家はその分量を示されたときに少なすぎるとゴネたが、手近な成体間近の子れいむにお仕置きをしてやったら快く同意してくれた。 植物型であっても自分が生きたまま子どもを産めるだけの大きさに達しているのは両親と最初からいた4匹の計6匹。 ただし、子どものほうは蔦を3本も生やせば命に関わるだろうし、連続出産なんてとてもじゃないが出来ない。 勿論、いくら十分成熟している両親と言えど5本以上蔦を生やすと流石に危ないのは言うまでもない。 現在生き残っているゆっくりは7匹。 両親のれいむとまりさ、成体間近の子れいむが2匹と子まりさが1匹。 子ども達に関しては1匹のれいむを除いて全員お仕置きによって目を失ってしまっている。 そして、夏に生まれた子れいむと子まりさが1匹ずつ。 こちらは子まりさの方だけがお仕置きによって目を失ってしまっていた。 「ゆっぐ・・・ほどぢでごんなごどになっだのぉ・・・」 「ゆっぐぢでぎないよぉ~・・・」 「「ゆっぐちちだいよ~・・・」」 「くらいよ~・・・ゆっくちでいないよぉ・・・」 そんな絶望的な境遇の中で苦しみにあえぐ一家を眺めながら俺は小屋の出入り口へと向かっていく。 そして、たった一つだけ希望を与えて小屋を後にした。 「俺の部屋の子ども達は来年の農作業用だから餌以外は最高の環境でゆっくりしているぞ」 れいむとまりさは本当に賢い個体だった。 男の言葉を聞いて、意味するところを、男の意図をきわめて正確に把握していた。 また、ゆっくり特有の希望的観測をせずに自分たちの末路を理解した。 「れいむ・・・ごべんね。まりさがにんげんさんのおでつだいしようなんていったせいで・・・」 「ちがうよ、まりさ!れいむもさんせいしたんだよ!」 「「「ゆっくりできないよぉ~」」」 「もうやだ、おうちかえる!」 「おちびちゃんたち、ゆっくりがまんしてね!はるになったらおうちにかえれるよ!」 勿論、嘘だ。男は「部屋の子ども達は来年の農作業用」だと言っていた。 つまり、来年には子ども達がこの小屋で寝泊りをして虫や雑草の駆除に従事することになる。 その時、自分たちが生きていると余計なことを吹き込んでしまう恐れがある。 「きょうはゆっくりやすもうね!」 「あしたになったらきっとおにーさんもゆっくりできるようになってるよ!」 「「「「「ゆっくりりかいしたよ・・・」」」」」 しかし、その事実を伝えるのはあまりに酷だと判断した両親は何も言わず、ゆっくりすることを提案した。 両親の言うことを聞いて痛みや恐怖を堪えながら、そしてそれらから逃げるように子ども達は眠りについた。 彼女達はそれがこの世界で最後のゆっくりになることを知るはずがなかった。 「そろーりそろーり・・・れいむ、ゆっせーので、でいくよ?」 「ゆっくりりかいしたよ。ゆっせのーで」 あっという間に眠りについた子ども達を起こさないように静かに傍まで這いずって行った両親は掛け声と同時に子れいむに噛み付いた。 その子れいむは夏に生まれたばかりの子どもで、まだ小さく成体2匹にいきなり噛みつかれてはひとたまりも無い。 一瞬にして大量の餡子を失った子れいむは断末魔を残して終らないゆっくりへと旅立って行った。 「・・・もっと、ゆっくちちたかったよ・・・」 「「む~しゃむ~しゃ・・・ごべんねぇ・・・」」 そうして子れいむの亡骸を食べ終えた両親は次に両目を失った子まりさを食い殺した。 言うまでも無いことだが、出来ればこんなことはしたくないのだろう。 悲しみの色に染まった双眸からは涙が溢れ出し、水に弱い頬をふやけさせてしまっている。 夏に生まれた子まりさも同じように殺すと、その亡骸を両目を失った成体間近の子まりさ2匹の口にねじ込んだ。 舌を使って器用に口の奥へと運び、何とかこぼれ落ちないようにする。 その後、両親は我が子に頬をこすりつけていわゆるゆっくりにとっての交尾“すっきりー”をした。 途中で子どもが目を覚まし、「ゆっくりできないよー!」と泣いていたが、それでも無理矢理最後までやり遂げた。 「ごべんねぇ・・・」 「「も、もっと、ゆっくちしたかったよぉ・・・」」 「おぢびぢゃんだち・・・ごべんねぇ」 翌朝、唯一生き残った成体間近の子れいむが目を覚ましたとき、部屋には3本の蔦を頭に生やした両親しかいなかった。 それ以外のものは見慣れた壁と床と、わずかばかりの黒いかたまり、そして、10本の蔦を生やしている黒ずんだ大きな塊だけ。 朝早くにやってきた男は、以前のようにゆっくりしていることは無く、その蔦を全部引っこ抜くと足早に小屋を後にした。 「ねぇ、おかーさん・・・いもうとたちは?」 「れいむ、ゆっくりきいてね!」 「ゆっ・・・ゆっくりきくよ!」 神妙な面持ちの親れいむのただならぬ気配を察知した子れいむも真剣な表情になる。 「れいむのいもうとたちはね・・・・・・おかーさんたちがころしたんだよ!」 「ゆゆっ!?う、うそいわないでね!おこるよ、ぷんぷん!」 「ほんとうなんだぜ。いっぱいいてもごはんがへるだけだからころしたんだぜ!」 「ど、どほぢでぞんなごどずるのおおおおおおおおおお!?」 その残酷な言葉を聞かされた子れいむは泣きじゃくり、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら両親に怒りをぶつける。 が、両親は「しかたなかったんだぜ!」とか「れいむのためだよ!」などと言うばかりで、何一つ納得のいく言葉を口にしてくれない。 やがて我慢の限界に達した子れいむは親れいむに飛び掛るがあっさりと弾き飛ばされ、まりさに取り押さえられてしまった。 「おがーざんのばがああああああああ!?」 「しかたないんだよ!こうしないとゆっくりできなくなっちゃうんだよ!」 「ぞんなのぢらないよ゛!ゆっぐぢでぎないおがあざんなんでゆっぐぢぢね!!」 厳しい自然の中で仲間を失った経験の無いこの子れいむにとって、生存のためでも仲間を切り捨てるなんてことは考えられない。 だから、親の気持ちも知らずに泣きつかれて眠るまでただひたすら呪詛を吐き続けた。 「ゆっくりしね・・・だって」 「おお、こわいこわい」 本来ならふてぶてしい表情で言うはずのこの言葉を、今ばかりは悲しみに満ちた表情で口走る。 ここにいてもいつか殺されるだけなら、いつか脱走を試みなければならない。 そして、そのためにはまず生き延びなくてはならないし、脱走の際に足手まといにしかならないものを生かしても仕方が無い。 そんな個体はよしんば逃げ延びても冬の野原や森で生き残ることなどまず不可能なのだから。 ならばさっさと間引いて一番逃げ延びる可能性のあるれいむだけでも救いたい。 また、きちんと蔦を提供することで、男の部屋の子ども達も何とか生き延びることができるかもしれない。 それが子どもが決して知ることの無い両親の想いだった。 頬を涙でぬらしながらも安らかな表情で眠る我が子の傍で2匹は再び6度に渡ってすっきりを繰り返した。 それが終わるとタイミング良く男がやって来て、さっきの分の餌(大根の葉っぱ650g)を床に置き、再び蔦を引き抜いていった。 結論から言えば両親は、餌には一切手をつけずに命を削って20本近い蔦を提供したが、子どもを逃がす機会を手にすることは出来なかった。 子れいむは両親の本心を理解しせず、度重なるすっきりで疲弊しているところを彼女に襲われたのが両親の死因となった。 小屋に残されたのは世間知らずで、両親ほど賢くもなかった1匹の成体間近の子れいむとおよそ1000g分の大根。 3ヶ月ばかり続く長い冬の間、最初の数日は両親の教えに反発するように適量以上を食べ続け、その後数日は妙な臭いを発する両親の死体で飢えをしのいだ。 が、やがてそれも尽き、2,3週間かけて子れいむはゆっくりゆっくりと飢えて、やせ衰えて、死んでいった。 「もっと・・・ゆっくり、したかったよ・・・」 おわり 善良なゆっくりは心理的な抵抗とは別の次元でも虐待しにくい気がする。 ちなみに、男の部屋の子ゆっくりは男が餌を管理してくれたおかげで無事生き延びました。 で、畑仕事を手伝いながら、10匹の子ゆっくりを授かり、冬には(以下略 このSSに感想を付ける
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※これはfuku1783 ゆっくり腹話術(前)の続きになります 子れいむと親れいむを失い、残り四匹となったゆっくり一家の後を追う。 親れいむが人間に連れ去られたショックはあるものの、ゆっくり一家にあるのは悲壮感ばかりではなかった。 残ったものが死んでいったものたちの分までゆっくりしよう、という思いなのだろう。 「ゆぅ、おにゃかちゅいたね…………」 ポツリ、と子れいむが呟いた。 「「ゆぅ……」」 その言葉に賛同するように声を漏らす二匹の子まりさ達。 このゆっくり一家は食べ物を求めて人里にやってきたが、狙った食べ物にはことごとくありつけなかった上に死ぬかもしれない思いまでしている。 空腹は既にかなりのものになっていることだろう。 腹を空かせる我が子の姿を直視できないのか、なんでもいいから食べ物を探そうとしたのか、親まりさは視線をキョロキョロと辺りに飛ばす。 すると、 「お~い、ノブナガ~。メシだぞ~」 近くの民家から一人の老人が皿を持って外へ出てきた。 どうやら飼っている犬にエサを与えに来たようだ。 老人が犬小屋の前にエサを盛った皿を置くと、バネ仕掛けのおもちゃのように勢いよく一匹の柴犬が犬小屋から飛び出してきた。 ガツガツと勢いよく食べる飼い犬の姿を満足そうに眺めた後、老人は家の中へと戻っていった。 「「「……………」」」 視線をゆっくり達へ戻すと、案の定というか子ゆっくり達は羨ましそうに犬のエサを見つめ、口の端からはだら~、とよだれまで出ていた。 親まりさも私と同じくその姿を見たのか、 「ゆっ、まりさにまかせてね。いぬさんからごはんをもらってくるよ!」 そう子ゆっくり達に言い残してすぐさまその場を駆け(跳ね)だした。 本来は人里の美味しい食べ物を狙いにきたのだろうが、犬のエサまで狙うとは。 余程腹を空かせていたのだろう。 「ゆっ、おとうしゃんがんばっちぇね!」 「むのうなおかあしゃんとはちがうもんね!」 「いぬしゃんなんかぶったおちちゃえ!」 親まりさの背後からは子れいむや子まりさの声援。 その声援を受け親まりさは犬のもとへ向かう速度を更に加速させると、そのままの勢いで食事中の犬のどてっぱらに体当たりを仕掛けた。 「ゆぉぉぉぉぉぉ!!」 「キャウンッ!?」 突然のことに思わずよろめき、その場から退く犬。 それを自分の勝利と思ったのか、親まりさは子ゆっくり達に「みんな~、おいで~。ごはんだよ~」と呼びかけていた。 「やっちゃー、さすがおとうしゃん!」 「おなかちゅいたよ~」 すぐさま親まりさの元へ結集する子ゆっくり達。 そしてゆっくり一家は犬のエサが盛られた皿に一斉に殺到した。 「「「む~しゃむ~しゃ、ちあわせ~」」」 犬のエサといえど野生のゆっくりの常の食事に比べれば豪勢だ。 子ゆっくり達の幸せそうな顔を、子の幸せは我が子の幸せだという顔で見つめる親まりさだったが、自分も腹を満たさねばと皿のエサを食べようとするが 「バウッ!!」 犬の鳴き声に驚き飛び上がった。 「ゆっ、ゆっ!? び、びっくりさせないでね! これはまりさたちのごはんなんだからいぬさんはさっさと────い゛だい゛いいい!!!!」 親まりさは抗議の声をあげたが、犬に言葉が通じるわけもなく、頭の一部を噛み千切られていた。 噛み千切られ失った左半分の頭部からは餡子が漏れ出ている。 「ゆっ、おとうしゃん!?」 「おとうしゃんににゃにするのぉぉ!!」 「だめぇぇぇぇ!! にげてぇぇぇぇ!!」 親の仇だ、と犬に突進しようする子まりさ達を諌める親まりさの声に、この犬も人間同様敵わぬ相手と悟ったのか、すぐさま逃亡を図る子ゆっくり達。 親まりさも噛み付かれたが頭部は千切られていたため、すぐにその場を離れることができた。 だが、子れいむが一匹、逃げ遅れていた。 犬から一番遠い位置に居て、犬に突っかかろうともせずに逃走の体勢に入っていた子れいむ。 本来ならば真っ先に逃げられていたであろうが、子まりさが子れいむを踏みつけていったため逃げ遅れていたのだ。 「ゆっ~、まっちぇぇ!」 背後からは犬が外敵を排除せんと追ってきている。逃げ遅れている自分。 恐らく子れいむは最初に死んだ自分の姉妹のことを思い出していたことだろう。 しかし、ここで子れいむを殺してしまっては私の計画が狂ってしまう。 私は子れいむを踏みつけていった子まりさに狙いを定めると、『腹話術』を使用した。 「ゆっ!? 〝ガメラが飛ぶ時の回転数すごすぎぃぃぃぃぃ!!!〟」 『腹話術』をかけられた相手はその間気を失う。 つまり、気を失った子まりさの足は止まるということだ。 足の止まった子まりさを追い抜いていく子れいむ。 理由は分からないだろうが助かったので特に気にすることはないだろう。 「…………ゆっ!? なんでれいむがまえにいりゅ────ゆ゛ーーーーー!!!!!」 子まりさが気が付いた次の瞬間には、子まりさは犬に咥えられていた。 「いだいよ゛ぉぉぉぉ!!! おどうじゃんだずげでよ゛ぉぉぉ!!」 噛まれ、宙に浮く子まりさは泣き叫び親に助けを乞う。 しかし親まりさは無力である。ゆっくりが自分より体の大きいものに敵うはずもない。 「ゆっ、ゆっ……!」 犬は鎖に繋がれているため鎖の長さ以上の距離を逃げている親まりさ達は襲われることはない。 だが犬の行動範囲内に飛び込もうものなら今度こそ問答無用に殺されてしまうだろう。 子まりさを助けることは最早不可能だった。 「ゆ゛っ、ごべんね、ごべんねぇぇぇぇ!!」 親まりさは涙を流しながら子まりさを見捨てた。 残った子まりさと子れいむを連れて全速力でその場を逃げ出したのだ。 「ゆっ、おとうしゃん、まりさのいもうちょがぁぁぁぁ!!!」 「だめだよぉぉぉ!! みんなしんじゃうよぉぉぉ!!」 親まりさに咥えられた子まりさは犬に咥えられた子まりさを助けるよう求めるが、それは叶わぬ願い。 子れいむも子まりさを助けようとしたのかいくらか逡巡していたが、やがてどうやっても助けられぬと分かったのか去り行く父親達の後を追っていった。 「どぼぢでぇぇぇぇ!!! なんでまりしゃを……ゆがべぺ……ゆ゛っ!!」 助けられなかった子まりさは、身の程を弁えぬ所業と身内を蹴落とすという外道な行いの報いを受ける。 子まりさは少しずつ咀嚼されるという苦しみの中息絶えていった。 その死に顔は私の胸がすっ、とするほどの絶望と苦しみに彩られていた。 「…………くふっ」 思わず笑いが漏れる。 遂に半分にまで数の減ったゆっくりの一家はその歩を人里の中心に向けていた。 だが当人達は気づいてないだろう。ただ襲い来る脅威から逃げていただけにすぎない。 やつらは気づいていない。自分達から危険に近づいていることに。 「……ゆっ? おとうしゃん、いいにおいがするよっ!」 それまで俯いてしょこしょこと小さく跳ねていた子まりさがその場で嬉しさを表現するように跳びはねた。 言われ親まりさと子れいむもその場で立ち止まり鼻(?)をひくひくさせて臭いを嗅ぎ取ろうとする。 「ゆっ、ほんちょだ! おいちしょうなにおいがしゅるよ、おとうしゃん!」 「ゆゆっ、ほんとうだね! こっちからするよ! ゆっくりできるよ!」 それまで沈んでいた家族の間に笑顔が戻ってきた。 ゆっくり一家はその笑顔のまま臭いのする方へとぴょこぴょこと進んでいった。 だがゆっくり一家がその先で「しあわせ~」になることはないだろう。 ゆっくり達の向かった先、「いいにおい」の出所は、焼き鳥屋だった。 私もよく行く馴染みの店だ。 夜になると人間や妖怪達が一緒に酒を飲み騒いでいる。 今日も店の中からは様々な笑い声や上手そうな焼き鳥の匂いが漏れ出ている。 中の者だけではなく近くを通りかかった外の者まで陽気にさせる、私の好きないつもの雰囲気だった。 「ゆっ、ここからおいしそうなにおいがするよ」 「ゆっ♪ ゆっ♪ これでゆっくりできるね~♪」 パンドラの箱に残った希望を見つけた人間のような表情をしながら焼き鳥屋の方へと跳ねていくゆっくり一家。 焼き鳥屋の入り口は引き戸なのでゆっくりには開けられないかと思ったが、誰かが閉め忘れたのか若干開いており、そこに親まりさが自分の頬を突っ込んでむりやり戸をこじ開け入っていった。 私は店に入るか入るまいか若干迷ったが結局入ることにした。 「ゆ~♪ おいちちょ~♪」 中に入ると子ゆっくりが歓喜の声をあげていた。 店の者達は入ってきたゆっくりを気にもとめず(というか気づいていない)皆好き勝手に飲み騒いでいた。 まだ日が沈んでから一刻も経っていないというのに気の早い連中だ。 ぴょこぴょこと跳ねながらゆっくり一家はカウンター席の方へと向かっている。 私もゆっくりの後に続いてカウンター席へと向かう。 普通に歩いてはゆっくりを追い抜いてしまうから牛歩戦術だ。 ゆっくり一家はカウンター席の下まで辿り着くと、親まりさが空いている席の椅子へとジャンプした。 そして椅子からカウンターへと再びジャンプ。カウンターの上に乗った親まりさはカウンターの向こう側で焼き鳥を焼いている店主(私達は敬意と親しみを込めて〝マスター〟と呼んでいる)に向かってこう要求した。 「ゆ~、おじさん! まりさたちにもごはんちょうだいね!」 どうやらマスターが客に注文された酒や焼き鳥を渡すのを見て、マスターが食べ物をくれる人だと勘違いしたようだ。 「おぉう? なんだ、ゆっくりじゃねぇか」 親まりさにマスターよりも先にすぐ隣の席で酒を飲んでいた客が気づいた。 って、誰かと思えば飲み癖と悪食とロリコン趣味で有名なタケさんじゃないか。 流石に稗田家の当主はやめておいた方がいい、と今日こそ言うべきか? 「なんだ? 誰がゆっくり入れたのは」 タケさんが親戚のわんぱく坊主でも見るかのような反応を示したのに対し、マスターは明らかに不機嫌そうだった。無理もないか。 「いや、店の戸が半開きだったんですよ」 タケさんの隣の席に座り、誰かに濡れ衣が着せられる前に私がフォローに入った。 「おぉう、なんだ、お前がゆっくりを連れてきたのか? ……ゥィック」 「違いますよ」 やんわりと否定しておく。どっちかっていうとゆっくりが私を連れてきたようなものだ。 というかタケさんもう酔ってるんかい。 「ゆっ! ゆっくりむししないでね! さっさとまりさとまりさのこどもたちのためにごはんをよういしてね!」 見ると親まりさがその体を膨らませて怒っていることをアピールしていた。 それを見てタケさんがゲラゲラと笑い、マスターが更に不機嫌そうな顔になり、私の虐待エナジーが高まる。 「ちょうだちょうだ! さっさとまりしゃたちにごはんをよういしてね!」 カウンター席の下、タケさんの足元で子まりさも親に続き抗議の声をあげる。 タケさんがその声で子ゆっくりが居ることに気づき視線を下に向け 「おぉう、ちみっこもいるのか~」 と陽気に笑った。 …………決めた。 親まりさ、貴様を潰すのは後だ。 ここでは子まりさを潰す。 私は『腹話術』を、今度はゆっくりではなく、タケさんに向けて発動させた。 「〝おぉう、マスター! ちょいとこの子ゆっくり焼いてくれや!〟」 「「ゆっ!?」」 親まりさと子まりさが跳ね上がる。 私は『腹話術』をかけられ自分が注文したことを知らないタケさんに代わり、床にいる子ゆっくりを拾い上げた。 「ゆっ!? まりしゃをどうちゅるの! ゆっくりはなちてね!」 「はなちぇ~!!」 掴まれた子まりさがジタジタと身をよじり、側にいた子れいむがピタンと体当たりをしかけるが効果は無し。 なんの障害もなく子まりさは私からマスターへと手渡された。 「まったく、タケさんの悪食っぷりは相変わらずだねぇ」 マスターはそうぼやくだけで特に疑問ももたず子まりさの調理にかかった。マスターも馴れたものだ。 「まりさのごどもがえせぇぇぇぇぇ!!!」と私が子まりさを掴んだあたりから親まりさが騒いでいたが、タケさんが面白がって押さえつけていたので何もできていない。 マスターは子まりさを軽く水あらいして「ゆぐがぼべっ!!」、さっと振って水気を飛ばすと「ゆゆゆっ!?」、焼き鳥を焼く金網の上に子まりさを乗せた。 「あ゛ぁぁぁつ゛つづっっいいいぃいぃよおおぉぉ!!!」 ボロボロと涙を流す金網の上の子まりさ。零れ落ちた涙はすぐにジュッと蒸発する。 なんとか金網の上から逃れようとするもマスターが上から菜箸で押さえつけているため動けない。 「ゆぎゃ"ぁ"ぁぁ"!!!ま゛り゛ざのごどもがぁぁぁ!!いぎゃ"ぁ"ぁ"!! タケさんに押さえつけられている親まりさがカウンターで泣き叫ぶ。 ガハハハハハと笑いながらタケさんに押さえつけられている無力な親まりさは素晴らしい程に滑稽だった。 「ぶわっはっはっはっは」 とついつい私も笑ってしまう。 私のことを知らない他人が見ればどこの大根役者だと思うことだろうが。 「おどうじゃん、だずげでよぉぉぉ!!! いぎゃ"ぁ"ぁ"!! まりじゃのあぢがぁぁぁぁ!!」 金網の上で泣き喚く子まりさを、マスターは無慈悲に菜箸で転がす。 今度は顔面が金網のつく形になった。 「ゆ゙ーーっ゙!!! も゛う゛や゛め゛でえ゛えええ!!」 ハッキリ言って煩いが顔面を焼かれているためすぐに大人しくなるだろう。 もう一つのうるさい親まりさはと言うと 「グワッハッハッハ、なんだお前、頭ないじゃんぶわっはっはっは」 と欠けた頭部からタケさんに箸を突っ込まれ頭の中の餡子をグチャグチャにされていた。 「ゆ゛! ゆ゛! ゆ゛! ゆ゛…!」 なんだか白目を向いて痙攣していた。はっきり言って気持ち悪い。キモイじゃなくて気持ち悪い。 「へい、焼きゆっくり一丁!」 やがて子まりさが焼き上がり小皿に乗せられタケさんの前に置かれた。 「ま"り"ざのごどもがぢんじゃっだぁ"ぁ"ぁ"!!どぼじでごんなごとずるのぉ"ぉ"!!」 「あれ? 俺焼きゆっくりなんて頼んだっけ?」 「なんだい酔っ払いすぎだよタケさん」 「そうだよタケさん、酔いすぎだよ」 焼きゆっくりの注文は私が『腹話術』で頼んだためタケさんは覚えているはずがないのだが、マスターの言葉尻に乗って酔ったせいにしておく。 「んあ~、そう言われれば頼んだ気も…………でもいらねぇや」 タケさんはそう言って子まりさを掴むと床に叩きつけて草履の踵部分でグリグリとすり潰した。 その光景を子れいむは間近で見ることになったことに、私は気づいていた。 「あぁ、もう。やめてくれやタケさん、掃除するの俺なんだから」 「おっと、わりぃなマスター。代わりにもう一杯くれや」 「何が代わりなんだか」 「ゆぐ……ぐずっ……なんでごんなごどするのぉ……まりざのごどもがぁ……」 「なんだ、まだいたのかこのゆっくり」 「あ、私が外に出しておきますよ」 マスターの不機嫌が本気でヤバい段階にいきそうだったのでマスターに潰される前に私は親まりさを抱えて外に向かっていく。 もちろん子れいむも忘れずに足で外へと蹴飛ばしながらだ。 「飲みにきたんじゃないのか?」 「焼き鳥を家で食おうかな、と思っただけです。後でまたとりにきますから焼いといてください」 「あいよ」 成り行きで今晩の飯が決まった。 だが飯の前に、最後の仕上げだ。 ふっふっふっ、最後は私自ら手を下そうぞ。 どこのラスボスだよ。 私は親まりさを抱え子れいむを蹴りながら焼き鳥屋と隣の酒屋の間の狭い路地に入った。 その間親まりさを子れいむも子供のようにボロボロと涙を流し続けていた。 「さて、と」 子れいむを蹴飛ばすのをやめ、子れいむの脇に親まりさを置いた。 ゆっくりと視線を合わせようと、その場にしゃがみこむ。それでも私の方が視線が上だが。 「おいゆっくり。なんでこんなことになっているかわかるか?」 「ゆっ、ゆぐっ……まりざのごどもがぁぁぁ……」 「質問に答えろよクズ饅頭」 親まりさの口に拳を突っ込む。喉までだ。 そして体の奥底の餡子を一握り掴むと勢いよく引っ張り出した。 「ゆべぇぇぇぇぇ!!!」 叫び、咽る親まりさ。 その顔に親まりさの体から抜き出した餡子を叩き付け、もう一度問う。 「なんで、こんな、ことに、なって、いるか、わかるか?」 脳の足りないゆっくりにも分かりやすいように一語一語区切りながら。 それで流石に理解したのか親まりさは泣きながら答えた。 「ゆぶっ、にんげんだぢがまりざだぢのじゃまずるがらだよぉぉぉ!!」 「残念、不正解だ」 罰として今度は親まりさの歯を引っこ抜いてやる。 もちろん道具など使わない。素手だ。 左手で上顎を掴み、右手で前歯の一本(歯は飴だった)を情け容赦なく引っこ抜いてやった。 「ゆぼぉぉぉ!?」 「ゆゆっ、おとうしゃん!!」 それまで親まりさの後ろでガタガタ震えていただけの子れいむも恐怖を忘れて親まりさを心配する。 だが子れいむ。貴様は今は後回しだ。 「正解を教えてやるよ」 私はそう囁きかけながら引っこ抜いた歯を親まりさの右目にぐりぐりとおしつけてやる。 「ゆがっ、べぽ……ぜいがいっでな゛に゛ぃぃぃぃぃ!!!」 「お前らが身の程も弁えず人間の里に来たこと。それと家族を見捨てたことだ」 親まりさはその言葉でカッと目を見開く。何故知っているのかという顔だ。 だが今はそこを言及する場合ではないと分かっているのか、口にしたのは弁解だった。 「ゆっ、だっで、だっで、ごはんがもうないんだよっ! にんげんのごはんをもらわないといぎでいげないんだよっ!」 「それはお前等の怠慢だ」 罰として頬をちぎってやる。 「ゆ゙ーーっ゙!!! …………ぞ、ぞれに、みずでだわげじゃないんだよっ! あぁじないど、みんなゆっぐりでぎないがら、じがだがなかったんだよっ!」 「ほぉ、つまりお前は多数を助けるために少数を尊い犠牲としたと?」 「ゆ゛っ! そうだよ! まりさはかぞくをたすけるためにしかたなく────!」 私は親まりさの行動を思い返す。 確かに、親れいむほど悲しみに打ち震えていなかったが、子まりさほど死んだ者を罵倒してもいなかった。 子れいむの足を引っ張って死なせたのも子まりさだ。親まりさじゃない。 親のほうのまりさは、割といい親だったのかもしれない。 こいつの言い分を鵜呑みにするならば、必要以上に悲しみに暮れなかったのも、一家の大黒柱の責任故だったのかもしれない。 でもそんなの関係ねえ。 「でもな、まりさ?」 「ゆっ?」 「そのまりさが助けたようとした家族、子れいむ以外みーんな死んじゃってるけど?」 「ゆっ!? ゆゆゆゆっ……!」 私の言葉にガタガタを震える親まりさ。 気づいたのだ。多数を助けるために少数を犠牲と成すやり方で、助かったのは少数なのだと。 「で、でもっ! れいむはいぎで────」 「こんなクズな親のもとにいたられいむゆっくりできないから、この子は私がもらっていくね?」 「「ゆっ!?」」 それまで黙っていた子れいむまで驚愕する。 そんなゆっくりには構わず私は子れいむを掴むと着ていた服の懐に入れた。 くぐもった「ゆ゛っーーー!!」とした声がわずかに聞こえてくるが無視しておく。 「ゆ゛ぅぅぅぅ!! ゆっぐりやめてね!!! まりざのごどもがえじでね!!」 子供を取り返そうと飛び掛ってくる親まりさの顔面を掴んでやると私は立ち上がり、そのまま表まで歩いていった。 手の中で「ゆがぁぁぁぁ!! はなぜぇぇぇぇ!!」と親まりさが喚いている。 吐息が気持ち悪かった。 私は人里の中を親まりさを掴んだまましばらく歩く。 道行く人、妖怪が親まりさの叫びに気づいてこちらを見やるが、私がゆっくりを掴んで歩いているのを見ると「なんだ、ただの虐待お兄さんか」と視線を外した。 そして私は人里の中で、二つの通りが交差する場所まで来ると、親まりさを地面へと落とした。 「ゆべっ!?」 ずでん、と転がる親まりさを一回蹴った後、私は懐からさっきの子れいむを取り出した。 「ゆっ! れいみゅをかえちてくれりゅの?」 無視。 「さてまりさ。選ばせてやる」 「ゆっ、ゆっ、まりざのごどもをがえ────」 「黙れクズ饅頭。喋っているのは私だ」 まともに会話できそうにないので口元を踏みつけて黙らせた。 しばらく「ゆ゛ーーー!! ゆ゛ーーー!!」と身を捩じらせていたが私が足をどけないと分かると少し静かになった。 「さて、お前に選ばせてやる」 そういいながら手の中の子れいむを眼前に突き出してやる。 子れいむも煩いので指を口に突っ込ませて黙らせている。 「お前があくまでこいつを返して欲しい、と私に戦いを挑むのであれば、こいつは死ぬ」 「「────っ!?」」 ゆっくりの目が見開かれる。 「だが、お前がこいつの命を助けて欲しいと願うのであれば、私はこいつをゆっくりさせてやるし、お前も逃がしてやろう」 私はそこで足をどけてやる。 「ゆっ! おじさんほんと!?」 「おにいさんだクズ饅頭」 口に蹴りをぶち込み歯を二、三本折ってやる。 「あぎゃぁッああ!! …………ゆ゛っ、おにいさん、ほんどう? そのごゆっぐりざぜでぐれる?」 「ああ、もちろんだとも」 「このまままりざががえれば、そのごゆっぐりでぎるの?」 「その通りだ」 このやり取りの間、子れいむはずっと声も出せず泣いていた。 目の前で親が見るも無惨にやられている。 悔しいのか、悲しいのか。 私にとってはどちらでもどうでもいい。 ただ指にたれてきた涙の生暖かさが、こいつは〝私流〟にゆっくりさせてやろうと決意させただけだ。 私は親まりさの頭をつかむと後ろを向かせてやった。 「道が二つある。どちらでも好きな方へ行って帰れ」 そう言ってやると、親まりさはしばらくその場で悩んだ。 だが、答えはもう決まっているだろう。 「ゆ゛っ、わがっだよ。まりざはおうぢがえるよ。だから、まりざのごどもゆっぐりざぜてね?」 「ああ、約束だ」 「じゃあね…………バイバイ……」 そう呟く親まりさの語尾は尻すぼみに消えていった。 やがてとぼとぼと左右のうちの右の道から里の外へと向かっていく親まりさ。 私は子れいむの口を塞いでいる指を抜いてやった。 「ゆぐっ……! おとうしゃぁぁぁぁぁん!!」 親を呼ぶ子の声。 今生の分かれとなる親子の、最後の会話。 親まりさは子れいむの声に振り返ると、くしゃり、とその顔を涙で崩すと、精一杯の声で叫んだ。 「ゆっくりしていってね!!!」 それで最後。 親まりさは子れいむの反応も見ずに全力で駆け出した。我が家へと。 親まりさの選択は正しかった。 命あってのものだねだ。 最後は二匹になってしまったが、全滅はしていない。 あの親まりさも私が見逃してやったことによって、やがてまた新しい所帯を持つことだろう。 この悲劇を教訓に、次こそゆっくりとした生涯を送るであろう。 次こそ、そう次こそ────。 「見逃してあげても、よかったんだけどねぇ」 君が悪いんだよ、まりさ。 私は選ばせてやった。〝どちらの道で帰るか〟を。 なのに君はそっちを選んだ。 あぁあ、なんてこったいまりさ。 君が逆の道を選んでいれば、幸せになれたかもしれないのに。 君が、いけないんだよ。 君がそっちの道を選ぶから 「君は、彼女へのプレゼントだ」 親まりさが選んだ道。 そこにはある伝統の家系の家がある。 幻想郷を見続けてきた、幻想郷縁起を編纂してきた名家。 稗田家が、ある。 全力で駆けるまりさが、稗田家の前に来た瞬間、私はまりさに『腹話術』をかけた。 「〝あっきゅうちゃ~~~ん。あっそびましょ~~~う〟」 おわり 子ゆっくりの運命は…… ───────── あとがきのようなもの コミックス版「魔王」最新刊五巻を読み終わった勢いで書いてしまいました。 そのため文体が安定していないかもしれません、申し訳ありません。 他に書いたもの:ゆっくり合戦、ゆッカー、ゆっくり求聞史紀、ゆっくり腹話術(前) このSSに感想を付ける