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美鈴のゆっくりお昼ご飯 「みーんみーん」 蝉の声が響き渡る。夏、真っ盛り。 ここ、幻想郷にも夏が来た。氷精がどっかで溶けてたりしそうなくらい熱い夏。 タライに水張って足を突っ込みながら将棋、としゃれ込みたいほどうだる暑さの中、門番は立っていた。 「暑い…」 流れる汗を手で拭う、人民服に紅い髪のスリットグラマー、その名はちゅうg「紅 美鈴!!!」 もとい。華人小娘、紅 美鈴である。紅魔館の門番にして武術の達人。 その名は、強さと親しみやすさから幻想郷の人間と妖怪に知れ渡っていた。中国として。 「なんだか失礼なことを言われたような気が…」 呟きながら、もう一度汗を拭う。ただいま時刻は午後二時。最も暑い時間帯である。 そんな時間に日影はないわ湖の照り返しがきっついわ館の紅が目に悪いわするところにいたら汗もかく。 「暑い暑い暑い暑い……」 武術の達人は汗を流れる量をコントロールできると言う。暑さ寒さもへっちゃらだともいう。 しかし、美鈴は武術の達人ではあっても、今はむっちゃだれていた。 ぶっちゃけていうとやる気があんまりなかった。 理由は二つ。暑くてシエスタもできないから。お腹すいたから。 普段住み暮らしているめーりんハウス(真紅のテント)は、この時間だと中は地獄のような暑さになっているだろう。 昼寝なんてしたらメイド長に刺し殺されるか、妖怪に寝首を掻かれる前に干からびる。 そこいらで寝るのもダメだった。一度夏に横になって寝たら、身体の右側だけに日焼けの後がばっちりついて恥ずかしい思いをしたからだ。 日焼け跡は、秋になるまで消えなかった。 そして、もう二時を回ろうか、と言うのに、お昼ごはんを食べていない。 普段はメイド長がじきじきに持ってきてくださる。シエスタしていないかの監視の意味も含めて。 しかし、今日はメイド長はいない。ここ紅魔館の主、レミリアのお供をして博麗神社に行っているのだ。 そういうことはよくある。そして、メイド長がいない時は妖精メイドが美鈴の食事の用意をしてくれるはずなのだが…。 気まぐれで、美鈴以上にやる気のない妖精メイドにそんなもの期待しても無駄、というものだ。 咲夜がいないときは、美鈴は常にすきっ腹を抱えることになる。 「おなかすいたー…」 何度目かの虚しい呟きを繰り返す。気を紛らわそうにも、一人○×も一人しりとりも、もう飽き飽きしていた。 暇つぶしに大図書館の本を借り出そうとしたこともあったが 「夏は本が日焼けするからダメ」 という、図書館の主の一言によってあっさり拒絶された。 太極拳もお腹がすいた時にはやりたくない。 そう、美鈴は暇だった。 「だれか襲撃でもこないかなー…黒いのでもいいから…」 しかし、美鈴の物騒な希望はかなえられない。黒いのこと普通の魔法使いは客として既に図書館にいりびたっているからだ。 風もまったく吹かない、じめっとした幻想郷の夏の午後。 暇なときは、門番はひたすら暇だった。 見飽きた光景をなんか面白いものないかな、と半ば諦めの境地で見やったとき、珍しいものを見かけた。 「ゆっ!ゆっ!」 ゆっくり霊夢の家族だ。 ここ紅魔館の周りにはゆっくりれみりゃやゆっくりフランなど、ゆっくりの捕食者たちが数多く生息している。 普通の、よわっちいゆっくりはとっくに食い尽くされたものだと思っていたのだが… 「珍しいこともあったもんだ」 と、ぼそりと呟くと、先頭のゆっくり霊夢がその声を聞きつけたらしい。 「ゆっくりしていってね!!」 お決まりの台詞を叫ぶ。 「はいはい、ゆっくりしてますよー」 よい暇つぶしが出来た、と笑顔で近づく美鈴。その答えを聞いて、ゆっくり霊夢たちが嬉しそうに叫び返す。 「「「おねえさん、ゆっくりしてるひと?!」」」 「そうだよ、ゆっくりしてるよ。」 こいつら、もっと静かにしゃべれないのかなー、とか考えながら答えてやる。 「じゃあ、いっしょにゆっくりしよう!」「あのおうちはれいむたちのおうちなの!」「ゆっくりできるよ!!」 超☆喜んでいる。単純なもんだ。ぴょんぴょん飛び跳ねている…ん?おのおうち? 「ねえ、あなたたち。お家ってどこにあるの?」 「そこだよ!」 と一番ちいさなゆっくりが紅魔館を見ながら飛び跳ねる。 ああ、やっぱり。 こんなのが襲撃者か…と内心ため息を吐きながら説得を試みる。 「あのね、あなたたち…」 「おねえさんはゆっくりできるひと!!」「いっしょにゆっくりさせてあげるよ!!」「れいむたちのおうちでゆっくりしよう!!」 「だから、あそこはレミリアさm」 「きっとたくさんおいしいものがあるよ!!」「ゆっくりできるよ!!」「ゆっくりさてやるからありがたくおもってね!!」 「あそこはあなたたちのいえじゃないと…」 「「「ゆっくりできるよーーーー!!!」」」 美鈴の言葉はゆっくりたちの叫びの前に完全にかき消された。 「ゆっくり!!」「ゆっくりぽいんとだー!!」「れいむがいちばんゆっくりできんだーーー!!」 などと口々に勝手なことをほざきながら紅魔館に向かって行進し始める。 その瞬間、美鈴の怒りは簡単に有頂天に達した。暑くて空腹で堪忍袋の緒はゆるゆるだったのだ。 丹田に気を込め、一気に発声!! 「やかましいっっっっっっ!!!!!」 この一声でゆくっりたちはすべて目を回した。夜雀を声だけで叩き落した美鈴の複式発声法、伊達ではない。 「はあ、結局暇つぶしにもならなかった…」 スカートの前側を持ち上げて、そこにゆっくりを乗せていく。素晴らしき哉、脚線美。 「大声だしたから余計お腹が…」 そこではたと気付く。こいつら食えるじゃん、と。美鈴は、さっきと打って変わった軽い足取りでめーりんハウスへと向かった。 「フンフン♪」 地獄のように熱く真紅に染まっためーりんハウスの中で、なにやらごそごそ探している。 「どこかの巫女じゃないけど、やっぱり饅頭にはお茶がないと…」 どうやらここでお茶を入れたりもしているようだ。不憫。 外に出て、お茶が沸くまで正座で待つことしばし。 ちょっと補強したみかん箱の上にゆっくりをならべ、いただきます。 ゆっくりどもはまだ気絶している。気絶したまま食われたほうが幸せなのかも知れないが。 美鈴は行儀悪く、どれから食べようか迷ったあと、一番小さなゆっくりを掴んで、一口で食べた。 口の中でかすかな悲鳴が聞こえたような気もする。 「うーん、甘くておいしい…」 あまり甘いものが好きではないが、空腹は最高のスパイスだ。そして久々の甘味。おいしくないほうがどうかしている。 次のちびドマンジュウも一口。口の中に広がる甘さ、出涸らしの番茶とあいまって、美鈴を至福の時への誘った。 そしてもう一つ。一口で食べるには大きかったので、かじる。 「ゆ゛っ?!」 あ、起きた。寝てたほうが幸せなのに、と思ったが、構わず食べ続ける。 「いだいいいいいい?!!」 「あ、こら、手の中であばれるんじゃない…あ。」 ぽとり。あんまり暴れるので手からこぼれて地面に落ちる食いかけのゆっくり。 露出していた餡子が衝撃ですべて飛び出る。それがトドメになったらしく「ぎっ?!」と叫んで動きが止まる。 「あーあ、もったいない…」 さすがに落ちたものを食べる気にはなれない。蟻に寄付しようと思い直して次に取り掛かる。 どいつもこいつも、一口食われた瞬間に目覚めていきなり叫びだす。 「妹様なら断末魔もお喜びになるんだろけど、私にはそんな趣味はなー…」 ぼやきながらも次々に平らげていく。同族が食われて悲鳴を上げているというのに、他のゆっくりどもは目を回したままだ。 薄情なのか美鈴の声がそれほどすごかったのか、どちらなのか。 そしてちびゆっくりをすべて食べ終えたとき、美鈴はぽつりと呟いた。 「…飽きた…」 いくら久しぶりの甘味とはいえ、饅頭を腹いっぱい食べれるものではない。基本的に美鈴は辛党なのだ。 しかし空腹はまだ収まらない。さりとてこれ以上ドマンジュウを食べる気にはならない。 のこったれいむをどうしたものか、と思案していると、 「うー!うー!」 よたよたとこちらに寄ってくる影が一つ。 紅魔館の主、レミリア…にそっくりなゆっくりだ。 顔だけのときは日光で死んでしまうが、胴体が生えると日光の中でも活動できるようになる。 というより胴体の生える種類はゆっくりれみりゃとゆっくりフランしかいない。生命の神秘である。 だが美鈴の頭の中にあったのは、生命の神秘への遥かなる探究心ではなかった。 「こいち、確か中身肉まんだったよね?」 という食欲100パーセントな考えだった。 甘ったるいドマンジュウの口直しにはちょうど良い。確か家の中に醤があったはずだ。それで味付けして食べてしまおう。 そう考えるとよだれが出そうだった。 「うー!うー!」 どうやら美鈴が捕まえたゆっくりれいむ目当てに出てきたらしい。 調理道具を持ち出す時間稼ぎのため、母ゆっくりれいむを投げつけてやる。 「ゆ?」 その衝撃で意識を取り戻すれいむ。目の前にはれみりゃがいた。 「ゆぎゃあああああああ?!」 目を血走らせ歯茎をむき出しにした顔で叫ぶれいむ。必死で命乞いをする。 「れいむをたべてもおいしくないよ!!ゆっくりできなくなるよ!!」 捕食主のれみりゃがそんなもの聞くわけがない。 「うー!うー!」 右手で髪を掴み持ち上げ、空いた左手で頬を思いっきり引っ張る。 「ゆーーー?!い゛や゛だぁぁぁぁぁぁ!?いだいいいいいい?!」 痛みに泣き叫ぶれいむと、その反応を楽しむように徐々に力を込めるれみりゃ。 ぶち。 「ゆ゛ーーーー?!」 引きちぎった皮を食べ、露出した餡子に喰らいつき、餡子をゆっくりと吸い出していく。 「うま^^!うま^^!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ!?」 餡子を吸い出され、痙攣する。生きながら脳を吸い取られるようなものだ。 れいむの目がぐりんと白目を向く。 餡子を2割程―れいむが死なないギリギリのラインだ―吸い取ったところで、今度は一気にかぶりつく。 「ゆぐぎゃああああっ?!」 痛みに意識を無理やり引き戻される。 「うー!うー!」 れみりゃはれいむの反応を楽しんでいるようだ。なるべく残酷に、なるべく苦しむように捕食している。 「うはー、レミリアさまと同じでどSなんだな、ゆっくりも…」 中華鍋を火にかけ、準備完了した美鈴があきれたように呟く。ちなみに火は気を掌に集中、発熱させて木を燃やして起こした。 「ゆ゛………っぐ…り゛……」 れいむはからだの半分ほどを食べられたところで息絶えた。 「うーーー!!」 死んだことに気がついたれみりゃは、子供が飽きたおもちゃを捨てるように投げ捨て、 「ぎゃおーーーー!たべちゃうぞーーー!!」 残ったゆっくりれいむのほうによたよた歩み寄ってきた。 「食べ残すなんてゆっくりの分際でぜいたくな…」 自分がれいむを食べ残したことを棚に上げて憤る、が気を取り直して、 「れみりゃー?れいむりおいしくてゆっくり出来る食べ物があるんだけど?」 慣れない猫なで声で呼び寄せる。 「うーー?おかし?くっきーー?!」 妖精メイドたちが甘やかしてお菓子で餌付けしたりするもんだから、口が肥えている。生意気、と美鈴はさらに苛立つ。 「もっとおいしいものよ?」 私にとってはね、と口の中で付け足す。美鈴が手に持っているものは醤。豆板醤の瓶だ。 「おかしーーーーー!うー!うー!」 みょうちきりんな踊りを踊りながらもたもた近づいてくる。 残っていた何匹かのゆっくりれいむは既に逃げ出していたが、美鈴もれみりゃも気にしていなかった。もっとおいしそうなものが目の前にあるのだから。 「おかしーーーー…?」 美鈴の持った瓶を見たれみりゃの顔が曇る。当然ながらクッキーやケーキには見えない。 「うーーー!!」 美鈴の手から瓶を叩き落とす。 「やだやだやだやだ!!!くっきーじゃなきゃだめーーー!!くっきーたべうーー!うー!」 地面に寝そべって駄々をこね始める。この甘えた根性は妖精メイドたちが甘やかしたせいらしい。 美鈴は慌てず騒がず瓶を拾い上げ、れみりゃの顎を掴み、瓶の中身を口の中に流し込んだ。 「う゛ゆ゛ーーーーー?!」 れみりゃは顔を真っ赤にして暴れる…暴れようとするが美鈴ががっちり顎と間接をホールドしているので、身動きすらも出来ない。 「うー?!う゛ーーーー?!」 「はいはい、おとなしくしてねー」 抑えるのも面倒になったので、浸透剄を叩き込んで無理やり黙らせる。 もう一発。さらにもう一発。とどめにもう一発。これで醤と肉まんがうまく混ざり合ったはず。 「さ、本日のメインディッシュと参りましょうか!!」 中華鍋が充分熱されているのを確認する。それから、逃げられないように羽、手足を引きちぎる。 気絶したれみりゃの身体が痛みに反応して痙攣するが目は覚まさない。 ちぎった羽と手足はもちろん捨てたりはしない。これは後から素材そのままの味でいただくのだ。 「えいっ!」 手足と羽をもがれて達磨みたくなったれみりゃを鍋に放り込む。油がはねる。熱さに起きた達磨がのた打ち回る。 「うーーー!!ううーーーー!!あづーーーい!!」 「まずは表皮をこんがりと…!!」 悲鳴を無視して料理に集中する。半年振りの肉なのだ。気合が入るのも当然と言えよう。 れみりゃは必死で身体を動かして鍋から逃げ出そうとする。しかし油ですべってうまく動けないうえに、端に来たと思ったら鍋を振られて中央に戻されてしまう。 さっきまでおいしいれいむを食べていたのに、何故こんな目に遭うのか分からなかった。 身体の外が熱い。身体の中が熱い。身体の中をかき回されたように痛い、生えてくるはずの手足が生えてこない。 「うーーー!!うーーーー!!ゆ゛っぐり゛じだいいいいいいい!!」 もう、ゆっくりできないのだろう。何が起こったかはわからなかったが、それだけは分かった。 れみりゃは、絶望のなかで焼け死んだ。 そんなれみりゃの絶望なんか知ったこっちゃない美鈴は、久々の中華の火力にハイになっていた。 「料理は愛情、中華は火力!!まだまだ火力がたりなぁい!!」 手に気を集中、鍋にダイレクトに熱を伝える。一気に火力が上がる。肉がはぜる音が激しくなっていく。 「燃えてる燃えてるハラショーー!!アイヤーー!!」 テンションが上がりすぎてお国言葉が出だした。 吹き出る汗、張り付くチャイナ。大変艶かしい。 最後の仕上げとばかりにもう一振り醤を加え、馴染ませるために鍋を思いっきり振る。 「あれ?」 突然手が軽くなる。赤熱して引きちぎれた鍋の取っ手しか手元にはない。 何が起こったか瞬時に理解する。が、どうしようもない。 「あ、ああああ?!」 美鈴のくびきから逃れた鍋は慣性の法則に則り、放物線を描いて…紅魔館の少ない窓の一つにジャストミートした。 その日の夜。もちろん美鈴は晩ご飯抜きだった。れみりゃの残りすらも取り上げられ、すきっ腹で門番を続けている。 ゆっくりを食べようとした結果がこれだよ!!
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※虐めじゃないかも 俺はゆっくりが嫌いだ 作者:古緑 俺はゆっくりが嫌いだ 俺にゆっくりする気なんて無い 朝から晩まで仕事で忙しい身だ でも別に殴ったり蹴ったりしたいわけじゃない 嫌いなだけだ 餡子嫌いだから食うのも嫌いだ 「ゆっくりしていってね!」 この台詞も好きじゃない どんなゆっくりも同じことを言う 俺の趣味はバスケットボールだし ゆっくりしたものはあまり好きじゃない 「こわいかおしてないでゆっくりしてけばいいのに」 こいつはどっから入ってきてんだよ ゆっくりれいむだか何だか知らねぇが そこは俺んちの庭だ お前の『ゆっくりプレイス』じゃないんだよ 何も無い庭だけどお前みたいなのがいると鬱陶しい 出て行け 「ゆっ?ゆっくりしていってよー!」 ほら!出て行け!まったく ああいうのが『ゆっくりの押し付け』ってヤツか ゆっくりしてる暇なんてないんだよ 今日はとっとと寝たいんだ 「おじさんをゆっくりさせるよ!」 …また入ってきたのか 門はしっかり閉めた筈なんだがな どうでもいいが俺はまだお兄さんって歳なんだよ いいや、こんなのに構ってる暇は無い 「ゆっくりしていってね!」 もう放っておく どうせ雨戸を閉めちまうんだ しつこいゆっくりセールスに付き合う気はねーよ じゃあな押し付け販売員 「おふとんでゆっくりしていってね!」 デカイ声だ 春が近いとはいえまだ朝は少し冷えるな 古い鉄の雨戸は冷たくて指が凍えそうだ 「ゆっくりしていってね!」 …何のつもりなんだおめーは 今都市部で話題の乞食ゆっくりか? だったらここに来たのは間違いだ 家には碌に飯なんて無いんだよ わざわざ乞食にやる気もないからヨソあたんな 「おじさんはよゆうがないね!」 家出るときついでに摘み出しとくか 鬱陶しい生物だ それにしても本当に余裕ないな 朝飯は駅前のコンビニでランチパックかな 「ゆっ?ゆっくりはなしてね!」 おい二度と家の門くぐんじゃねーぞ 帰ってきた時またそのツラ見せたらブン殴ってやる 「ゆっくりしていってよ…」 やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ 変なのに構ってたせいでいつもより遅れてるじゃねぇか 急がないと 「なかなかとかいはなまりさね!す…す…すっきりしましょほおぉおお!」 「やべろおおぉおお!!れいばーあでぃずはゆっくりじねえぇえぇ!!」 あの野良ゆっくりありす まだ生きてたのかよ 散歩中の飼いゆっくりに襲いかかってやがる 「ばでぃぶっ!」 あ蹴られた 本当に見苦しい生き物だな あんなのまでいるからゆっくりは嫌いだ うあぁ疲れた 帰って柿ピービールが平日の唯一の楽しみです 「ゆっくりおかえりなさい!ゆっくりしていってね!」 「むししないでね!」 てめーどっから湧いてきてんだ不思議生物の特権か ブン殴るって言ったの忘れたのか 「おぉこわいこわい」 『プシュ』あぁイイ音 ん?やらねーからとっとと失せろ 家ん中には入れねーぞ 一歩でも入り込んだら蹴りくれてやる 「つんつんしないでゆっくりすればいいのに」 舐めてんのか?二度とここまで来れねーように 今度は車で 「おじさんをゆっくりさせるよ!」 …だいたいそのゆっくりって何なんだよ? それに俺をゆっくりさせるって昨日も言ってたな? 「ゆっくりはゆっくりだよ! おじさんはあさからばんまでぜんぜんゆっくりしてないね! たまにはゆっくりしなきゃいつかゆっくりできなくなっちゃうよ!」 お前がいると駄目だわ ビールが全然旨くねぇ 明日の朝一で町外れの山まで車で捨ててきてやる それがヤなら今夜中に失せるんだな 「ゆっくりよるをあかしていってね!」 やらねーと思ってんのか ナメやがって やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ ぽつぽつと大きくなる屋根を叩く音でふと目が覚めた まだ午前二時だ 明日の朝は雨かな もうザーザー音がするぐらい強い雨に変わってる まぁどうせ車で行く気だしどうでもいいや あのウザイ饅頭生物載っけてかなきゃだし そんな事を寝ぼけた頭で考えてると あのウザイ顔が困ってるような気がした 『ゆっくりは水に弱く雨に当り続けると死んでしまいます』 そんなどこかで聞いたような言葉が頭の中に浮かぶと 俺は布団から飛び起き 一階の雨戸まで急いで駆け下りていった 「オイ!」 「ゆっくりしてないねおじさん れいむはゆっくりできてるよ」 困った顔はさっき頭に浮かべた顔そのままだった 雨戸の外に雨を避ける場所は無く ゆっくりれいむの釣り上がっていた眉はハの字に曲がり リボンはびしょびしょになって濡れた髪に垂れていた 「………」 「ゆっ?」 俺はゆっくりが嫌いだ だけどその命そのものが嫌いなんじゃない 死にかけた命が目の届くところにいたら 手を貸してやりたいと思う事はきっと悪い事じゃない その命を助ける事で誰かが困る事もあるのかも知れない だけど命を救いたいと思う事自体はきっと悪い事なんかじゃないはずだ コイツの場合だったら玄関先を貸してやる事ぐらいいいだろう 起きたら雨は上がっていた 時計は7:35を示している あのウザイ生き物に関わっていたせいか 早起き出来なくなってる気がする こっから車で外れの山なんて行ってたら完全に遅刻だ 「ゆっくりしていってね!」 はいはいゆっくりゆっくり そりゃ挨拶なのかお前等の場合 なに我がモノ面で家の中跳ねてんだよ 昨晩拭いといて良かったわ 雨が上がったんならとっとと出て行きな 「おそとでゆっくりしていくよ!」 さてそろそろ行かなきゃな お日様も出てるし、たまにはバスなんか使わず駅まで歩いてくか まだまだ間に合うだろ 「ちょっとはゆっくりできるようになったみたいだけどまだまだだね!」 なんか満足そうだなお前 コイツどうしよう? まぁそのうちどっか行くだろ ゆっくり考えてきゃいいや それにしても生意気なヤツだ やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ 寒いから帰りはバスにした 柿ピーとビールの補充は忘れない 明日は休みだしアイツに影響されたワケじゃないが たまには家でゆっくり過ごすのも悪くないだろう 「ゆっくりしていってね! おじさん!あしたはゆっくりするんでしょ?」 すっかり庭に居着いてるなお前 ゆっくりの事は嫌いだし追い出してやろうと思ってたが こいつの騒音で文句言うヤツはこんな田舎にはいないし 家に帰った時誰かが声をかけてくれるのは悪くない ペットなんてつもりは更々ないが ただっ広いだけの庭に勝手に生かしておくぐらいいいだろ 疲れてっからもう雨戸締めて寝るぜ 「あまどさんこんばんわ!ゆっくりしていってね!」 馬鹿だなアイツは AM 10:00 完全に影響されてるな でも悪い気はしない どうせ今日はゆっくりしようと決めてるんだ 飯でも買いにいくか 「ゆっくりしていってね!」 はいはいゆっくりゆっくり …そういえばこいつと時間を気にせず顔を合わせるのは初めてだな 俺はゆっくりが嫌いだが話をするのが嫌いなワケじゃない ちょうどいい機会だし色々聞いてみるか お前さ、何で俺につきまとうんだ? 「なんどもいわせないでよね! おじさんをゆっくりさせるためだよ!」 それについては癪な事だが成功したようだな 本当に変なゆっくりだな 人をゆっくりさせようとするゆっくりなんて 古過ぎるゆっくりはもう化石レベルだぞ なんでそんなに人をゆっくりさせたがる? 「だれかをゆっくりさせるとれいむもゆっくりできるよ …それにこのせかいのみんなはゆっくりしてないよ」 この世界?お前はどこから来たっていうんだ? 「れいむはやまでゆっくりしてたら いつのまにかここにいたよ」 何言ってんだお前 ゆっくり語は理解出来ないね じゃあお前、どうしてこんな何も無い庭に住み着いてんだ? 何も食うもんないだろ? 「くささんもむしさんもたくさんいるよ?」 あぁ…手入れしてないからな そんなモンでいいのかよ 都市部の奴等で草なんて食うヤツはもういないのに お前好きなモノとかあるのか? 「ゆ?れいむはゆっくりするのがすきだよ!」 そうじゃねぇよ 食べ物ってことだ 今まで食ってきた中で一番旨いかったものとか、 あるだろ? 「だったらたいやきさんだね! でもかんたんにはてにはいるものじゃないよ! さとまでいかないともらえないものだからね!」 あっそ ちょっと出かけてくるわ 「おじさん!」 なんだよれいむ 「いっしょにゆっくりしようね!」 別にアイツが好きって言ったから 鯛焼きを買ってきてやるワケじゃない 俺は餡子の詰まった鯛焼きが大好きだからな 一つぐらい買って分けてやるぐらいならいいだろ それにしてもところどころワケの分からないヤツだ やっぱり俺はゆっくりが嫌いだ でも悪くない あんなに自然体のまま誰かと話すなんて 母が死んで以来かもしれない 鯛焼きなんて買うのは産まれて初めてだ スーパーの先に屋台があるからついでにそこで買ってくか ゆっくり歩いていこう それがさっきまでの事 今俺の目の前には頭から蔦を生やし 真っ黒になったゆっくりれいむがガラス窓の前で横たわっている かつての笑顔は苦悶の表情に変わり全く動かない ガラス窓の前で死んでいたのは家を守ろうとしてくれたのか? 抱き上げるともちもちと弾力のあった体は端の方からポロポロと崩れ落ちていった 呆然としたまま庭を見ると叢の陰に隠れた木製の塀に ゆっくりれいむぐらいの小さな穴がある ずっと庭なんて見てなかったから忘れてたが 俺が子供の頃に蹴って開けた穴だ いくら追い出しても入ってくるワケはこれだったんだ 『これ』をやったヤツもここから入ってきたんだ どうしてゆっくりれいむがこうなったのかは分かってる ゆっくりれいむの頭に成った黒い実の中に ゆっくりありすの実があるからだ この辺の野良ゆっくりありすなんて一匹しかいない さっきすれ違ったのがそいつだ 俺はゆっくりが嫌いだ 命を気紛れに奪う事は悪い事だと思っている しかし今から俺がやる事は間違っていないと思う 友を殺した仇を討つ事はきっと間違っていない 震える拳を握りしめ 仇の住処の公園に向かいながら俺はそう真剣に考えていた
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2852.html
ゆっくりずれないでね あるところにゆっくり一家がいた。 このあたりは餌が豊富にあるのだが、父まりさがものすごくおいしいものを 見つけたというので山から降りてきたのである。 「「む〜ちゃむ〜ちゃちあわしぇ〜」」 果物をむしゃむしゃと食べるゆっくり一家、 親ゆっくり達は子ゆっくりの満足そうな顔を見て幸せそうである。 「まりさ、おちびちゃんたちおいしそうにたべてるね」 「すごくあまくておいしいね、れいむ」 おいしいのはあたりまえである。 ゆっくり一家が食べているのは品種改良に改良を加えた結果、村の特産品になるほど 美味しくなったイチゴである。 農家の人がどれだけ苦労したか等わからないゆっくり一家はつぎつぎとイチゴを平らげていく。 「ゆ〜れいむおなかいっぱいだよ〜」 「まりさもだよ〜」 「「ちわわしぇ〜」」 ゆっくり一家は満足し巣に持ってかえる分のイチゴを口に 含むとほくほくと幸せそうな顔で巣に戻っていった。 途中農家の人に追い掛けられたが距離が充分だったので問題なく逃げることが出来た。 「ゆぅ・・・こわいおじさんがでたからしばらくはちかづかないほうがいいね」 一家はイチゴを諦めたわけではないが、農家のおじさんが怖いので しばらくは普通に狩りをしようと決めた。 最後ちょっと怖かったが巣に帰ってからはとてもゆっくりできて みなゆっくりしながら幸せな眠りについた。 その幸せそうなゆっくり一家に忍び寄る人間が一人、彼の名は虐待鬼意さん 今日もゆっくりの駆除を兼ねて虐待するために森に来たのである。 「ゆ〜ゆ〜」 「幸せそうに眠りやがって・・・」 彼はゆっくり達を起こさないように一匹づつ、取り出し、頭に何かをかけていく。 彼がゆっくりにかけている物はゆっくり駆除剤を薄めた物である。 ゆっくり駆除剤は霧状にして適当にばらまけば ゆっくりのみを死滅することができる優れものである。 ドスなどの大きな固体にも効き、ヘリなどを使えば山全体の ゆっくりを死滅させることも簡単にできる。 今回、鬼意さんはゆっくりを駆除しに来たのではない、それならばわざわざ ゆっくり駆除剤を薄めたりしない。 彼の目的はゆっくり達の髪の毛を殲滅することである。 「これで全部だ・・・」 彼はゆっくり一家を起こさず全てのゆっくりの頭にゆっくり駆除剤を振りかけることに成功した。 全員起こさずに成功したのはこれが初めてで、ゆっくりが起きた場合は騒がれると 面倒なので声を上げる前に潰してやった。 今回の虐待はゆっくりに気付かれないことが最も重要なのである。 「ゆっ・・・ゆっ・・・」 「そろそろ効いてくるな」 先ほどまで幸せそうな顔をしていたゆっくり一家の表情が曇り始める。 そして徐々に髪の毛が抜け始め、5分もするとゆっくり達の髪の毛は全て 抜け落ちてつるっぱげ一家が完成した。 (次も慎重にやらないとな・・・) 鬼意さんはあらかじめ別のゆっくり家族から生きたまま頭皮を引きはがして作った カツラをゆっくり達に被せていく (これで最後か・・・) 鬼意さんは最後の一匹である母れいむの頭にカツラを被せようとしたが 髪の毛が抜けて寒くなったため、ブルブルっとふるえて目を覚ます。 「ゆ〜・・・ゆっ!にんげんだ〜!」 れいむは人間に驚き声を上げる。 その声に驚いたゆっくり一家も目を覚ます。 「ゆ〜ここはれいむたちのおうちだよ!にんげんはでていってね」 鬼意さんは咄嗟の判断でれいむの頭にすばやくカツラをのせる。 そしてれいむが巣の外で眠っていたので戻してあげようとしたと適当に嘘をつき 巣に戻してやる。 「れいむだいじょうぶだった?」 「だいじょうぶだよれいむはなんともないよ!」 そう言って自分が元気であることをアピールしようと巣の中で軽く飛び跳ねる。 その瞬間・・・ フワッ れいむ頭が一瞬涼しくなる。 れいむは少し違和感を覚えたが気付いてはいない。 まりさや子ゆっくり達は一瞬れいむの髪の毛がフワっとなった気がしたが半分寝ぼけていたので 気付かなかった。 その様子を巣の外で見てしまった鬼意さんはふきだしそうになる。 (今あたまがフワッとした!フワッとした!) 鬼意さんはゆっくりの巣の入り口を塞いでやり、そのまま山を下りていった。 「ゆ〜まだおきるのにははやすぎるからゆっくりねむろうね」 ゆっくり一家は再び眠りについた。 翌朝、ゆっくり一家はいつも通りの朝を迎える。 親れいむが一番始めに目を覚まし他のゆっくり達を起こしていく、 しばらくゆっくりしたあとに朝食を済ませ父まりさは狩りに出かけていく。 「ゆっくりかりにでかけてくるよ!」 「がんばってねまりさ!」 「「おとーしゃんがんばっちぇにぇ!」」 れいむと子ゆっくり達の見送りで元気一杯になったまりさは元気よく跳ねて狩りに向かっていった。 「さて、おちびちゃんたちきょうはてんきがいいからひなたぼっこにいこうね」 「「ゆ〜」」 ここ最近とても寒くて子ゆっくり達は外で遊ぶことが出来なかった。 しかし今日は暖かいので表で日向ぼっこをすればとてもゆっくりできると思い外に出てにいった。 れいむ達は目的地まではゆっくりと這っていったのでカツラがずれることはなかった。 しかし、野原について子ゆっくり達が遊び始めるとそうはいかない。 「ゆーこっちだよまりしゃ」 「まっちぇ〜おね〜しゃ〜ん」 仲良く追い掛けっこをしてあそぶ子ゆっくり達、 末っ子のまりさは姉ゆっくり達を追い掛けるがからだが小さいのでなかなか追いつくことができない。 末っ子まりさはなんとかして追いつこうと懸命に飛び跳ねる。 「ゆびぃっ!・・・いちゃいよ〜!」 石にぶつかってしまい末っ子まりさは少し餡子を漏らして倒れる。 泣き声に気がついた姉ゆっくり達が集まってくる。 末っ子まりさは泣いていれば姉たちが優しくしてくれると思っていた しかし・・・ 「ゆっ!なんかへんにゃこがいるよ」 「ほんとうだにぇ!かざりもつけてないしゆっきゅりできにゃいゆっくりだね!」 「ゆっきゅりできないゆっきゅりはどこかいっちぇね!」 末っ子まりさは石にぶつかった時にカツラをおとしてしまったのである。 姉ゆっくり達は体当たりをし始める。 末っ子まりさは姉ゆっくり達が何故自分を攻撃するのか解らなかった。 「ゆぶっ!やめちぇ!やめちぇ〜おね〜しゃ〜ん!」 「おまえみたいなゆっくりできにゃいこはれいみゅのいもうとにいないよ!」 「まりしゃのいもうとはもっちょかわいいよ!」 必死で姉ゆっくりにすがり寄ろうとする末っ子まりさだがそのたびに体当たりを されて突き飛ばされる。 「お・・・ね〜・・・しゃん」 「おまえみちゃいなへんなこはいもうとじゃないよ!ゆっくりできないゆっくりはしにぇっ!」 最後の力を振り絞り長女れいむに助けを請うが長女れいむは大きく 跳ねて末っ子まりさを踏みつぶす。 その際に姉れいむの頭がフワッと浮いた気がするがそれに気付いたゆっくりはいなかった。 母れいむはちょっと離れたところでしーしーをしていたが末っ子まりさの泣き声や 姉ゆっくり達の騒ぐ声を聞き、急いで跳ね寄ってきた。 「どおしたのおちびちゃんたち?」 「ゆっおかーしゃんれいみゅたちしゅごいんだよ! ゆっきゅりできないこをやっちゅけたんだよ!」 「「やっちゅけたんだよ」」 子ゆっくり達は母れいむにゆっくりできない子を倒したと自慢げに話す。 母れいむが子ゆっくり達が倒したと言う餡子をまき散らしつぶれた饅頭を見つめる。 末っ子まりさに髪の毛がついていれば子ゆっくり達がとんでもないことを してしまったことに気付いたかもしれない。 しかし、母れいむは 「ゆっくりがんばったね、まだちいさいのにかりができるなんてすごいよ! すこしはやいけどおちびちゃんたちはおひるごはんにしようね」 母れいむは末っ子まりさだったものを子ゆっくり達が初めて狩りに成功した餌として食べるように言った。 子ゆっくり達もむ〜しゃむ〜しゃちあわせ〜といって餡子を平らげてしまった。 「そろそろかえろうね、おかーさんおなかすいちゃったよ」 「まりしゃももっとたべちゃいよ〜」 「れいみゅも〜」 お腹を空かせたれいむ達はゆっくりと巣に帰って行く 一方狩りに出かけた父まりさは 「まってねまりさのためにゆっくりしてね!」 まりさはごちそうであるちょうちょを追いかけ回し、ぴょんぴょん跳ねていた。 このあたりはたくさんごはんが採れるので多くのゆっくり達が集まる狩り場であった。 しかしゆっくり達は普段なら他のゆっくりのことなど気にせず狩りに勤しむのだが今日は様子が違った。 まりさの頭が変なのである。 「まってね!ちょうちょさんまってね!」 まりさがぴょんぴょんはねるたびに少しづつカツラが帽子と共にずれていくのである。 「あのまりさぜったいあたまおかしいよ・・・」 「むきゅあきらかにずれてるわね」 「・・・あれはとかいは?・・・とはいえないわね・・・」 「わからないよ・・・あのあたまはわからないよ・・・」 狩り場にいたゆっくり達はまりさの頭が気になって仕方なかった。 しかし本人が気付いてるのか気付いていないのかわからないので 声をかけずらかったのである。 「どうする?・・・おしえてあげる?」 「たしかにいってあげたほうがいいともうけど・・・」 「すごくずれてる・・・げんかいよ・・・」 「そうとうびっくりするんだねーわかるよー」 まりさに頭のズレはすでに限界に達しており、いつ落ちてもおかしくない状態である。 そしてまりさがちょうちょを花にとまっているところを捕まえようと飛びかかった瞬間! 「「「まりさあたまいかれてんぞ!!!」」」 限界に達したゆっくり達が一斉にまりさに声をかけ始める。 まりさはまだ自分の頭の異変に気付いていないらしく、 自分の頭をいかれてると言いつめるゆっくり達、まりさはおかしくないよと怒りぷくぅと膨れる。 「きもいよ!わからないよ!」 「こんなのとかいはじゃないわ!」 「どぼじでそんなごどいうの〜?」 「むきゅっ!みんなおちついて!」 このままではケンカになってしまうと判断したぱちゅりーは 言い争うまりさとその他のゆっくりの間に割ってはいる。 そしてまりさを見つめゆっくりと話し始める。 「まりさ・・・あなたあたまがさむくない?」 「ゆぅ?・・・そういえばあたまがすーすーするよ」 まりさは頭に違和感を持ち始める。 続けてぱりゅりーは話続ける。 「まりさ・・・はっきりいうわ、あなたあたまはげてるわよ・・・」 「ゆっ!まりさはげてないよ!」 まりさは自分は禿げてないと怒るが、ぱりゅりーは落ちた帽子とカツラの方を見るように言う。 「あれはまりさのぼうし!ぱちゅりーありがとう!」 帽子といっしょにカツラも落ちているのにまりさはまだ気付かない。 まりさはカツラごと帽子をかぶる。 カツラを適当にかぶったためにあたまがこんもりして違和感が増大する。 「「「まりさあたまいかれてんぞ!」」」 ふたたびまりさ意外の全ゆっくりに頭をツッこまれてしまう。 そんなゆっくり達にまりさは再びぷくぅと膨れるが、ぱちゅりーは まりさに説明するため湖に連れて行った。 「まりさみずにうつってるまりさをのぞいてごらん」 「なんで?そんなことしてもかわいいまりさがうつるだけだよ?」 そう言ってまりさは湖をのぞき込む 「ゆぅ?あたまがへんだよ」 まりさは髪型がおかしいので帽子を外そうと頭を下げた瞬間・・・ バサッ まりさの髪の毛が地面に落ちて再び頭がすーすーする。 「まりさのあたまをなおす・・・・よ?」 まりさは水に映る自分の姿をみて絶句する。 そこには髪の毛が一本も生えていないゆっくりできない自分がいたのである。 「・・・!ばりざのがみのげがー!!!」 「おちついてまりさ!いったいなにがあったの?」 ぱちゅりーは泣き騒ぐまりさに問いかけるがわからないとしか答えない。 しかたないのでまりさの髪の毛と帽子を戻してやりまりさに注意をしておく。 「いいことまりさこれからはぼうしをふかくかぶってなるべくあたまがづれにくく なるようにしなさい、もしぼうしをおとしたりかみのけをおとしたりしたらゆっくり できなくなるわよ」 ぱちゅりーに言われまりさは深く帽子を被ることになった。 そして殆ど獲物も採れないままいったん巣に戻ることにした。 そして場所は再びれいむ一家の巣 「おちびちゃんたちとてもゆっくりねむっているよ」 幸せそうな子ゆっくり達を見てれいむもうとうとし始める。 昨日鬼意さんに起こされて、余り眠れなかったのだ。 れいむは少しの間だけ、お昼寝をすることにした。 れいむが本格的な眠りにはいってからしばらく・・・ 「ゆ〜ゆ〜・・・ゆっ」 一匹の子まりさが目を覚ました。 あたりを見わたすとみんな眠っており再び自分も眠ろうとするがあるものを 見つけたため一気に目が覚める。 「ゆぅ!あれはゆっきゅりできないゆっくりだよ!」 子ゆっくり達が眠っている間、寝相が悪く寝返りをした子れいむのカツラが地面に落ちてしまい、 子まりさはそれをゆっくりできないゆっくりだと判断したのだ。 「ゆ〜またごはんをとっちぇおきゃ〜しゃんにほめてもらうよ!」 子まりさはしょろーりしょろーりと子れいむに近づいていく、 そしてぷっくりとしたほっぺたに一気に噛みつく 「ゆびっ!」 子れいむは幸せな夢の中から一気に現実に引き戻される。 自分の体に何が起こったのかわからない子れいむは大きく息を吸い込み悲鳴を上げようとしたが 立て続けにくちびる付近を喰いちぎられたためにひゅーひゅーとしか鳴けなくなってしまった。 そしてさらに数カ所を噛みちぎられる。 「ひゅひぃ・・・いひゃい・・・おひゃ〜ひゃん(ゆびぃ・・・いちゃい・・・おきゃーしゃん)」 「とどめだよ!はやきゅしんでにぇ!」 子まりさは穴だらけになった子れいむを踏みつぶす。 同じような体格のために一回の踏みつぶしではなかなか死なない。 子まりさは何回も子れいむの上で飛び跳ね、そのたびに穴の開いた所から餡子が吹き出る。 「もっひょ・・・ゆっひゅひ・・・ひひゃはっひゃ(もっちょ・・・ゆっきゅり・・・しちゃかった)」 「ゆ〜まりしゃはつおいよ!」 餡子を失い皮だけになってしまった子れいむの上で子まりさは得意気にする。 さっそく母れいむに褒めてもらおうとして起こそうするが、 母れいむはかなり疲れていたために一向に起きる気配がない。 しかたないので長女れいむを起こそうとして体をゆする。 「ゆ〜ゆ〜・・・どうしたの?・・・っ!」 「おねーしゃん、きいちぇきいちぇ」 子まりさは目を輝かせて長女れいむに話しかける。 すごいねまりさは強いんだねと言って欲しくてたまらなかった。 「ゆっくりできないこはおうちはいってこないで!」 子まりさは長女れいむの体当たりを受けて突き飛ばされてしまう。 子まりさはコロコロと転げて壁にぶつかる。 「・・・??・・・」 あまりにも予想できない行動に子まりさは痛みすら忘れて思考停止する。 子まりさが攻撃された理由はさきほど暴れ回った際にカツラを落としてしまったからなのだが、 そんなことはわからない、何故自分が攻撃されたのかが全く解らなかった。 そして徐々に痛みを感じ泣こうとした瞬間、 長女まりさが子まりさの顔面を踏みつぶす。 「ゆっ!・・やめっ!・・おえっ!」 「ゆっくりできないゆっくりしないでしんでね」 子まりさは悲鳴を上げようとするたびに顔面を踏みつけられそのたびに襲いかかる鈍い痛みに 悲鳴をあげることもできないまま徐々に死に近づいていった。 「もっちょ「さっさとしね!」ぶびぃー!」 長女れいむの子ゆっくりにしては強力な踏みつぶしで子まりさは顔面を潰されて 口から餡子を勢いよく吐いて絶命した。 「「ゆ〜どうしちゃの〜?」」 騒ぎに気付いた子ゆっくりの何匹かが目を覚ます。 長女れいむは安心させるために目覚めた妹ゆっくり達に近づいていくが 様子がおかしい、まるで敵を見るような目で長女れいむを見ている。 先ほどの騒ぎで長女れいむのカツラも取れてしまったのである。 「ゆーもうゆっくりできないこはたおしたからあんしんしていいよ?」 「ゆっくりできないできないゆっくりはでてってね!」 妹ゆっくり達が長女れいむに襲いかかる。 長女れいむと妹ゆっくりの体格差はそこそこあったので 体当たりを仕掛けた妹ゆっくりが跳ね返されてコロコロ転がっていく。 「ゆー、もうおこったよ!ゆっきゅりしね!」 妹ゆっくり達のカツラが転がった拍子に取れてしまう。 目の前で起きた奇妙な現象に長女れいむは混乱する。 「ゆっ!いもうとたちがゆっくりできないゆっくりになっちゃったよ!?」 「ゆっくりしちね!」 長女れいむが混乱している間にも妹ゆっくりの攻撃は続く。 そして、ゆっくりの攻撃の中で最大の殺傷力を持つ噛みつきを長女れいむのほっぺたに仕掛ける。 「ゆがっ!いたいよ!」 長女れいむはたまらず体を思いっきり回転させて、噛みついてきた子れいむを引き離す。 そのさい少し頬が破れたが致命傷にはほど遠い。 逆に放り投げられた子れいむは巣の中に落ちている前々からどけようと思っていたが めんどくさくて放置しておいたとがった石に顔から突っ込んだ。 「・・・ぶぅっ!」 子れいむの口のなかにとがった石が入り込み歯を砕き喉の奥を引き裂く、 子れいむはゆっくりと口から石を引き抜く、その瞬間大量の餡子が口から流れでる。 「ごぼっ・・・たひゅけ・・・」 子れいむが突き飛ばされたところから一番近くで眠っていた子まりさに助けを請う。 しかし、子まりさは起きた瞬間に悲鳴をあげる。 「ゆぎゃ〜!ゆっきゅりできないゆっきゅりだ〜!」 この声を境に眠っていた子ゆっくり達は全て目をさます。 母れいむはまだ起きない。 「きもちわるいゆっくりはしねっ!」 「ゆひぃっ!」 石に顔をぶつけた子れいむは姉妹ゆっくりの輪の中に突き飛ばされる。 次々と踏みつぶしや噛みつきなどをされて、顔をぶつけた子れいむは ぐちゃぐちゃに潰されて絶命した。 その際に飛び跳ねた何匹かはカツラが取れてしまう。 いきなり横に現れたゆっくりできないゆっくりに子ゆっくり達は混乱するが すぐに攻撃を仕掛け始める。 「ゆっきゅりできないゆっきゅりは!ゆぎぃっ!かみつかないで〜」 「まりしゃのおうちにかっちぇにはいってこなっ!いじゃ〜い!」 「もうやめちぇ〜!いちゃいよ〜!」 「にゃんでゆっくりできないゆっくりがいきなりよこにいるの〜?」 カツラのとれた子に攻撃すると自分のカツラがとれてしまい他のゆっくりに攻撃されてしまう。 「ゆびゅっ!やめちぇっ!たしゅっ・・・ゆびゅっ!」 「いじゃいぃぃかみちゅかにゃいで〜」 「まりしゃのおかおが〜」 「ゆぎゃ〜っ!めがみえにゃいよ〜」 ほとんどの子ゆっくりのカツラは取れてしまい巣の中はバトルロイヤル状態である。 あるものは踏みつぶされて中身が飛び出しそうになり、あるものは顔を噛みちぎられ、 むき出しになった歯をガチガチとならし、またあるものは目が飛び出してブラブラと 垂れ下がった目玉は昔流行ったオモチャのようである。。 「やめてね!みんなやめてね!」 長女れいむは何回かカツラを落とす所を見て何が起こっているのかを理解した。 何匹かが自分にも攻撃してくるが軽く突き飛ばして、地面に落ちている自分のカツラをかぶる。 そして母親に事態をなんとかしてもらおうと必死になって起こす。 「はやくおきてね!ゆっくりしないでね!」 「ゆ〜どうしたのおちびちゃん」 母れいむがのんきに目を覚まし長女れいむを見つめる。 「ゆっ!おちびちゃんどうしたの!?」 「おかーしゃんいもうとたちをとめてあげて!」 長女れいむの言葉を聞いて母れいむは騒ぎのする方を見る。 「ゆっくりできないゆっくりがいっぱいいるよ!」 「おかーしゃんあれはいもう」 長女れいむはあれは妹達だと言おうとしたが母れいむはその言葉を聞かずに さっさと子ゆっくり達を潰しにかかった。 「おかーしゃ・・・たしゅけっびゅびぃ!」 「いちゃいよ・・・おか・・・ぶちゅっ!」 「おきゃーしゃんまりしゃをたしゅけてくれちぇありがっちょびっつ!」 「れいみゅのおきゃーしゃんはつよいんだよびこぅ!」 母れいむは次々と子ゆっくり達を潰していく、母れいむの攻撃は 強力で怪我していたものはもちろん長女れいむに襲いかかっていた比較的怪我の少ない 子ゆっくり達も一瞬のうちにつぶれた饅頭になって死んでいった。 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・ゆっくりできないゆっくりはみんないなくなったよ これでゆっくりできるよおちびちゃんたち・・・おちびちゃんたちは?」 母れいむが部屋を見わたすといるのは長女れいむだけである。 長女れいむは歯を食いしばり涙を流しながら母れいむを見つめている。 「おちびちゃんたちどこにいったの〜?」 「おかーさんがいまぜんぶころしちゃったんだよ!」 長女れいむの言った言葉を母れいむはそんなことしていないと否定する。 長女れいむは泣きながら今殺したのはカツラのとれた妹達だと説明するが、 そんなこと言う子はゆっくりできないよと怒るだけである。 「だきゃらあれはかみのけがとれたいもうとたちなの〜!」 「かみのけがとれるわけないでしょ!おかあさんもうおこったよ!」 母れいむは自分の言葉を全く聞かない長女れいむに体当たりをした。 母れいむは軽くやったつもりだが実際には結構強くやってしまい、 長女れいむは勢いよく飛ばされてしまう。 長女れいむは壁に後頭部をぶつけカツラが少しずれて涙目になる。 母れいむの怒りはおさまっておらず追撃が来ると覚悟を決めたその時 「ただいま・・・なにこれ〜!」 父まりさが巣に帰ってきて部屋の惨状に驚く、 「おかーしゃんがいもうとたちをころしちゃったの〜!」 長女れいむは痛みをこらえて父まりさに事情を説明する。 もし父まりさが髪の毛が取れることを知らなかったら母れいむと同じように怒ったであろう。 しかし父まりさは一度カツラがづれて仲間から酷いことを言われているので長女れいむの言葉を理解した。 「れいむもうおこったよ!そんなこというこはもうおいだすよ!」 「でていくのはれいむだよ!」 母れいむが長女れいむを追い出そうと体当たりをしようとするが逆に父まりさの 体当たりを受けて転げていく。 「ゆぶぅ・・・まりさなにするの〜!」 母れいむは涙目になって父まりさに問いつめる。 「こどもたちをころしたれいむはしねっ!」 「れいむこどもたちをころしてないよ!」 2匹は大喧嘩になりボヨンボヨンと跳ねてお互いぶつかり合う。 ゆっくり同志の喧嘩なので他の動物からみたら何を遊んでいるんだとしか見えないが、 本人達はいたって本気である。 やがて喧嘩は激しくなりついにお互いの体を噛みつきあう殺し合いにまで発展してしまった。 2匹は噛みつき合いながら巣の外に転げていった。 「まりさにがみずくな〜れいむはじね〜」 「まりざごそじんでね!れいむはわるぐないよ!」 2匹は喧嘩に必死になりすぎて普段は危なくて近づかない崖の付近にまで 転がっていることに気がつかなかった。 やがて2匹は足を踏み外す。 「ゆぎゃあああだじゅげで〜〜〜!」 「いじゃー!」 2匹は何度も絶壁に体をぶつけ、そのたびに皮がやぶれてぼろぼろになっていく。 しかし運悪く2匹は谷底に落ちても死ぬことができずに、ズタズタに引き裂かれた 体で必死に助けを求める。 「いじゃ・・い・・・じにだぐ・・・ない」 「どぼじで・・・ごんな・・・ごどに・・・」 しかし助けに来るものはだれもおらず、それどころかカラスが寄ってくる始末である。 2匹は生きながらカラスについばまれて死んでいった。 「おかーさんたちどうしてかえってこないの?」 巣に残された長女れいむはケンカになって出ていった親ゆっくり達を待ち続けた。 しかし、親ゆっくり達が二度と帰ってくることはなかった。 やがて長女れいむは空腹になり、妹たちの体を食べてしばらく過ごしたが、 それもなくなり仕方なく外に狩りに出かける。 「ゆ〜かりにいくよ!」 長女れいむは初めての狩りに緊張気味だが、幸いこの付近には餌が豊富にあったので 簡単に餌を見つけることができた。 れいむはホクホク顔で巣に戻ろうとしたとき、強い風が吹いた。 「ゆうっ!かぜさんゆっくりふいてね」 長女れいむは風が吹くとカツラがずれてゆっくりすることが出来ないことを理解していた。 しかし手もないゆっくりはカツラを抑えることが出来ず、カツラは風に乗ってどこかに飛ばされてしまう。 「ゆ〜!かみのけさんまってねとんでいかないでね!」 長女れいむは必死になって追い掛けるがカツラはどんどん飛ばされて行きついに見えなくなってしまった。 その後、ゆっくり駆除剤がヘリによって散布されゆっくりは絶滅した。 やまには大量のハゲ饅頭の死骸が転がり、長女れいむもその中の一匹として虫や動物や細菌によって 土に返されていった。
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ゆっくりの掃き溜め。 そこは奇形ゆっくりや人間に虐待され五体(?)満足でなくなったゆっくり達が唯一生きられる場所。 もともとはとあるゆっくりの群れが住んでいたのだが餌となるものを採り尽くしてしまったため群れが別の場所に移ったのだ。 ろくな食料も無く近場に水場も無い。 しかもここは外敵となる獣や大型の鳥が多く生息する。 そんな場所のため普通のゆっくりは近づこうともしない。 迫害されたゆっくり達が暮らしていける場所はそんな所しかなかったのだ。 幸い巣穴は元の持ち主であったゆっくりの群れたちが大量に掘っていたため多数存在した。 自らの巣穴を掘る力すらない彼女達が何とか生きて…そして数日、数十日のうちに死んでいく環境が存在していた。 「ゆぅ!ゆぅ!」 いつものように複数人分の餌を採りに行っていき集落へ帰って来たれいむ。 彼女はただ飾りを失っただけというこの集落ではもっともましな状態だった。 しかし彼女は食事すらできず苦しむ仲間の姿を我慢できなかったのだ。 気づけば動けぬ仲間達のために餌を採ってきていた。 だが自分に可能な限界の量の食料を採ってなお足りなかった。 朝、日が昇ってすぐに餌を採りに行き、日が暮れてようやく巣に帰り着く。 そんな生活が一月ほど続いていた。 しかしもともと餌は少なく外敵も多い場所。 ゆっくりには採れない大型の果実が多くありそれを餌とする獣が多くいる場所なのだ。 獣に襲われ逃げ帰ることもしばしばだった。 実際同じ志を持った仲間達はその多くが命を落とし、多くが罪悪感を持ちながらも諦め自分の分の餌だけを探していった。 (こんなところではおわれないよ…!しんでいったみんなのぶんまでがんばるよ!) そんな決意を持ってこのれいむは今日も狩を続けていた。 「む、こんなところにゆっくりが?」 そこに突然現れたのは全身を白い服に包んだ人間の青年だった。 「ゆ?おじいさんだあれ?」 れいむのいうとおり青年と言うにはその人間はあまりにも疲弊していた。 頬は痩せこけ髪は白くその表情からはあまりにも生気が無い。 まさしくその外見は老人のそれに近かった。 「私は旅の者だよ。ここは君達の集落かい?見たところ皆あまりゆっくりしていないようだが…」 「ゆぅ…みんなびょうきやけがをおってるの」 れいむはこの青年にこの集落の事情を話した。 どの群れも自分たちを受け入れてくれないこと。 ここがそんなゆっくり達が集まった場所であること。 採れる食料が限界に来ていること。 青年は黙ってそれを聞いていたがやがて口を開いた。 「よし、私に任せなさい。」 そして奇跡が始まった。 青年が足の焼けて動けないゆっくりに触れればそのゆっくりは元気に跳ね回り始めた。 生まれつき目が見えないゆっくりに触れればその目が開いた。 また、青年は時折集落を離れるとゆっくり達が取れない果物を大量に採ってきた。 まさに奇跡がそこにあった。 いつしかこの集落は「奇跡のゆっくりプレイス」と呼ばれゆっくり達に広まった。 そのうわさを聞きつけ多くの迫害されていたゆっくり達が集まった。 集落を襲おうとするゲスなゆっくり達もいたが人間でもとりわけ体の強い青年の力には到底及ばず撃退された。 迫害されていたゆっくり達の奇跡がそこにあった。 彼女たちの本物のゆっくりプレイスが確かにそこにあったのだ。 ある、暑い日。 いつものようにその集落のうわさを聞きつけたとあるゆっくりまりさが青年の前に寝かされていた。 「ゆ!まりさはあしがわるいんだよ!さっさとなおしてね!びょうにんはいたわるものだよ!」 「ふむふむ、そうか」 青年はゆっくりのふざけた態度にまったく不快感を示さずにその言葉を受け入れた。 目の前のゆっくりは確かに足が悪いが少しすりむいた程度のものだ。 正直青年が手を出すまでも無い。しかし、 「わかった、俺が直してやろう!」 「ゆ!ものわかりがいいじじはゆっくりしていいよ!ゆっくりしないでさっさとなおしてね!」 「まあそう焦るな、この足を直すゆっくり秘孔は確かここだ!」 ドス! 「ゆがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!いだい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!!!!!!!!」 「ん?間違ったかな?」 「ゆ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っあ゛っあ゛ゆ゛びでば!!!!!!」 ボン!!! 盛大な音を立ててまりさは爆発した。 「ふむ、ここも違ったか。だがここはここで面白い。」 そうメモを取りながら青年はつぶやいたのだ。 「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!ゆ゛っぐりでぎな゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!!」 「や゛べでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!い゛た゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 「ゆ゛べがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぶびら゛!!!」 ゆっくり達の地獄がそこにあった。 青年が一度ゆっくりに触れればそのゆっくりは苦しみながら死んでいった。 あるものは一日中死ぬような痛みに泣き続け干からびた。 あるものは餡子を自分の意思とは関係なく死ぬまではき続けた。 あるものは交尾もしていないのににんっしんっし無数の茎を生やし絶命した。 あるものは全身から液状化した餡子を激痛と共に噴出し続け死んだ。 「おにいさん!これはどういうことなの!?」 青年が集落に来て最初に会ったれいむが彼に詰め寄った。 今の集落の異変は間違いなく彼によるものだ。 いつの間にかおじいさんからおにいさん呼び名を変えた彼に事情を話してもらわなくてはならない。 彼女の集落内の饅頭にしては賢い頭は誰から見ても明らかな犯人をゆっくりでは唯一突き止めていた。 「おお!お前か!探していたんだぞ!」 そんなれいむの疑問を一切無視し青年はれいむを抱きかかえた。 「飾りこそ無いが肉体はゆっくり一倍健康かつ強靭!お前は最高の木偶になる!」 「な、なにいってるのおにいさん!ゆっくりしないでせつめいしてね!」 そんなれいむの叫びを一切無視し彼女を診察台の上におくと、彼はいきなり指を突き入れた。 ドス! 「ゆぎっ゛!!!」 いきなりの激痛に短く声が漏れる。 れいむは抗議の声を上げようと再び口を開いた、しかし 「っ!!!!!!っ!!!!!」 口から声が出なかったのだ。 それを見た青年は満足げに言った。 「やはり今のゆっくり秘孔は声を上げられなくなる秘孔だったのか!感謝するぞ! お前のおかげで俺様の研究はまた一歩完成に近づいた!」 れいむには分からない。 なぜ自分がしゃべれないのか、この青年が自分に何をしたのか、なぜやさしいこの青年が集落をあんなことにしたのか。 ゆっくりの頭ではとても理解できない。 「さて、お前はもう用済みだな。この前発見した花火のように全身の餡子が爆発するゆっくり秘孔で葬ってやろう。 なあに、怖がることは無い。痛みを感じる暇すら無く一瞬で死ねる。」 ドス! 「!!!!!!」 診察室という名の研究室に爆音が響いた。 健康的な黒い髪を持つ青年の手の中でれいむはその派手にその生涯を閉じた。 かつて「奇跡のゆっくりプレイス」と呼ばれた集落はもうそこには無い。 そこにあるのはただ大量の、本当に大量のゆっくりの死骸のみ。 「ふう、時間はかかったが有意義な実験ができた。」 そう満足そうな顔でつぶやくのはこの集落に奇跡と地獄をもたらしたあの青年だ。 彼は元は加工所の研究者だった。 しかしゆっくり秘孔、ゆっくりの体に無数に存在する特殊な現象を引き起こす箇所の存在を発見し彼は変わった。 ゆっくり秘孔の実験と開発を繰り返すうちにそれに見入られ次々と、研究体以外の商品となるようなゆっくりをも殺した。 それが原因で彼は加工所をおわれたのだ。 職を失い研究環境を失った彼は浮浪者のように行く当ても無く森の中を彷徨った。 研究できないストレスで髪は白くなり栄養失中で頬がやせた。 そんな時発見したのがあのゆっくりの集落だった。 最初は治療の研究だけにしておこうと思っていた。 しかし彼のあふれる研究心は耐えられなかった、耐える気も無かった。 そうして生み出されたのが目の前の光景だ。 大量の餡子を前に、彼らに送る最後の言葉を彼はつぶやいた。 「俺の求めるゆっくり神拳はまだ遠い。」 彼は今日もどこかで自らが求める研究と拳法の完成めざしゆっくり達を付き続けている、かもしれない。 このSSに感想を付ける
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そのちびれいむは、ずっと妹が欲しかった。 親れいむが病弱であり、植物的出産でありながら自分一人しか茎から生えなかったため、仲のいい姉妹が欲しかったのだ。 他のゆっくり家族に可愛いちびゆっくりがいるのを、いつもうらやましそうに眺めていた。 だから、親れいむがもう一匹の赤ちゃんを茎で生やしたとき、とても嬉しかった。 これで自分にも妹ができる。たくさんかわいがって、たくさんゆっくりさせてあげたい。 そう思って、毎日赤ちゃんに声をかけ、ほっぺをすりすりしてあげていたのだ。 だが、その希望は呆気なく潰えてしまった。 早すぎた出産。まだ妹れいむが生れ落ちる準備もできていないのに、親の体調が急変し、未熟なまま妹れいむはこの世に産み落とされた。 地面を力強く蹴って元気に跳ねるための体は、表皮がしっかり作られていないので立つことはおろか動くことすらできず、ただぶよぶよと体を揺らすだけ。 輝きを湛え、姉としての自分の姿を映してくれる筈だった瞳は、どこにも焦点を合わせることなく虚空を彷徨っている。 おねえちゃん、と甘えた声を出してくれるのを期待していた口からは、「ゆっくりしていってね!」も聞くことが出来ず、 イビツで壊れた鳴き声しか聞こえてこない。 自分の思い描いていたそれとあまりにかけ離れた妹の姿を見ながら、れいむはゆっくりと理解した。 この子は、ゆっくりできない子なんだと。そして、元気に自分の後をついてくることはこの先ずっとできやしないのだと。 エサをれいむから口移しで食べさせられるまま、壊れたレコード盤のように変わらない鳴き声を繰り返すだけの妹に、 ちびれいむは今日もひっそりと涙するのである。 挿絵:【未熟児ゆっくり.jpg】 ちびゆっくりの人です。 そろそろ自分のHNも決めていい頃かなと思ったり(`・ω・´) とりあえず『クラムボン』でお願いしますー。 クラムボンの著作物一覧 ゆっくり一家と俺の冬 上下 ゆっくりゃたまねぎ責め あとちびゆっくりシリーズもろもろ このSSに感想を付ける
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小腹の空いた俺は昼食を取ろうとファストフード店に立寄り Mサイズのコーラとハンバーガーを注文、 2Fへの階段を上って窓際の列の端に座った。 窓から見下ろせるものは交差点、横断する人、向かいの果物屋、その左隣の眼鏡屋。 ガラス窓の外の声は聞こえない。 聞こえるのは2つ離れた席でお喋りをする、奥樣方2名の楽しそうな会話だけだ。 俺はただただボーッっとハンバーガーの包みをカサカサと開きながら、窓の外に目をやった。 交差点の向こう、果物屋の左隣、眼鏡屋の前の歩道に居るものへ目をやった。 (ゆっくりしていってね!) ガラス窓の向こうで恐らくその様な事を言っているのであろう。 眼鏡屋の前に居るあの丸っこいのは"ゆっくり"という生き物。 黒い髪に紅いリボンを巻き、まん丸な輪郭を持つ、 まるで人間の顔をデフォルメしたかの様な生き物。 所謂"れいむ"だ。黒髪のゆっくりは大抵そう呼ばれる。 大きさはバスケットボールくらいだろう。 何処から来たのか知らないが、何処でもいい。どうせその内誰かが処分する。 期待外れなゆっくり達 作者:古緑 (ゆっくりしていってね!) ガラス窓の外の、ふてぶてしい笑顔を浮かべたゆっくりはきっとそう言いながら 果物屋に向かうのであろうエプロン姿の太ったオバさんに近づいて行った。 眼鏡屋の前の歩道は狭い。 だからオバさんは寄って来るゆっくりを避ける為に少し車道に出て、 迂回する様にしてゆっくりを振り切っていった。 (…ゆっくり?ゆっくりしていってね!) その背中に向かって不思議そうに叫ぶゆっくり。オバさんは振り返らない。 少なくともこの辺でのゆっくりに対する対応なんてあんなモノだ。 例え俺があのオバさんでも同じルートを取ってゆっくりを避ける。 どんなに暇だったとしてもゆっくりと一緒にゆっくりなんてしない。 (ゆっくりしていってね! れいむと一緒にゆっくりしていってね!) オバさんに無視された事で生来の自信に満ちた表情にも陰りが見える。 それでも健気に周りの人間に呼びかけるゆっくり。 次にゆっくりが向かっていったのはだらしない格好をした中年男性。 無論彼も通り過ぎて行くだけ。パチンコにでも行くんだろう。 (…ゆっくり…… …ゆっ!ゆっくりしていってね!) 寂しそうに男性を見送った後、また次の通行人に話しかけるゆっくり。 次は杖をつくお爺さんだったが 彼は避ける事もせずに真正面からゆっくりとゆっくりを突破して行った。 本気で気付いていなかったのかもしれない。 その背中を見送るゆっくりの、斜め45°に引かれていた眉はハの時に変わっていた。 ゆっくり。 彼等は俺がまだ子供だった頃、20年以上前だ。 彼等は突然どこからか現れ、世の話題を攫った。 或る人は宇宙人と、或る人は妖精と、悪魔と呼んだ者さえ居た。 なんせあの様にワケの分からない生き物だ。 餡子の詰まった饅頭なのに何故か動けて、人の言葉(日本語)を解し、更に喜怒哀楽の感情を持つ。 話題にならないわけが無い。 あの頃はテレビ、新聞、雑誌、様々なメディアを通して彼等の姿を見る事が出来た。 だがそれも現れてから数年間の間だけ。 俺が成人を迎える頃、世間はとっくにゆっくりに対する興味を失っていた。 研究員だの科学者だの、その辺の人にとっては興味の尽きない存在に違い無いだろう。 しかし俺みたいな好奇心の薄い人間にとって ゆっくりは次第に『ただ言葉を解し、中身が餡子の生き物』それだけの存在になっていった。 あれだけ不思議生物と騒がれていたのに何の事は無い。 超能力を使えるわけでもない。その体に何か重大な秘密を秘めているわけでもない。 ただ跳ねて叫ぶだけ。ゆっくりしていってね、と。 馬鹿にしてるとしか思えない。 テレビなんかはゆっくりの番組をしつこく流し続けていたが いい加減飽きられて姿を消すのに大して時間は掛からなかった。 横でお喋りしてる奥様方も、ゆっくりに対する興味なんてもう持ってないと思う。 ガラス窓の下の不思議生物よりも旦那のムカつくところを話してるんだから。 (ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!れいむと一緒にゆっくりしていってね!) 窓の下ではゆっくりが叫ぶ様に人々に呼びかけている。 俺のところにまで声が届くくらいに大きな声で呼びかけている。 その声を聞きつけ、眼鏡屋の中からカジュアルな格好をした店員が出て来た。 ここに居て聞こえるくらいなんだから、下でのあの声は営業の邪魔でしか無い。 (ゆっ!おじさん!れいむとゆっくりーー ーーーーーゆぶっ!) 店員はゆっくりのリボンを摘んで持ち上げ、反対側の歩道に放り投げた。 反対側の歩道には何の店も無く、工事中なのでスチール製の真っ白い壁がそびえ立っている。 気絶したのか、れいむはピクリとも動かない。顔から落ちたんだから無理も無いだろう。 ゆっくりは痛い目に遭ったら何処かに消え失せるのが通常だ。 だからあのれいむも起きたらきっと何処かへ行く。 そしてその先で何時か死ぬ。 別にここが駅前だから、ゆっくりの事が嫌いだからという理由から 人はあの様な冷たい態度を取るわけではない。 さっきも言った事だが、もう誰もゆっくりに対する特別な興味を持っていないのだ。 少し前は違った。 喋るペット、元気なペット、モチモチと柔らかい体をした、可愛いペット、 そんな魅力的な特徴に皆が惹かれ、ゆっくりがペットとして大流行した時代も有った。 しかし今じゃペットゆっくりの人気もガタ落ち。かつての大人気っぷりは見る影も無い。 その理由は"喋れる"ゆっくりに対して人々が期待を持ち過ぎた事に有った様に思える。 自分の言う事を理解してくれるから手が掛からない。暇な時は楽しくお喋り出来る。 初めゆっくりを飼った人はそんな風に都合良く考えていた者が多かったのだろう。 しかし逆だったのだ。 何故ならゆっくりは人間にとって都合のいい事ばかりを喋るぬいぐるみではなく、 人間と同じ様に聞き、感じ、思考して喋る生き物だったから。 しかも人間並みに、或いは人間以上に喜怒哀楽の激しい正直な生き物だったからだ。 そんな生き物と上の様な期待を抱いていた人間が一緒に暮らして食い違いが起こらない筈も無い。 飼えばゆっくりは無条件で自分に懐き、何の文句も言わないなんて事も有り得ない。 そして多くの飼い主を落胆させたのは 言葉が通じるのに中々ゆっくりが言う事を聞いてくれないだけでなく、 不平不満、そして要求している事を自分に分かる言葉で持ちかけてくる事。 これは飼い主にとって面倒臭い事この上無く、"時と場合"に応じて非常に不快なものにすらなる。 手がかからないと期待してた人達からすれば尚更の事だ。 手の掛かり具合は腕白盛りな人間の幼児と遜色無いものなのかもしれない。 そんな本当は手のかかるゆっくりを上手に躾けられた飼い主がどれだけ居たか。 それは現状が物語っている。 そして肝心のゆっくりとのお喋りも、多くの人が『思っていたより』楽しくないと言う。 理由は人とゆっくりの知能の程度には一定の開きが有る為、会話がし難い事。 そしてその知能の差故に各々が持つ関心も異なるからだ。 ゆっくりは美味しいご飯が好き、楽しい玩具が好き、『ゆっくり』の話が好きだ。 だが人間側のちょっと難しい話になるとあまり興味を示さず、嫌がってしまう。 よく分からないからだ。愚痴なんかは当然嫌い。 しかし多くの人が望んだのは後者の様な会話だったんじゃないだろうかと思う。 また当然の事ながら知識や語彙も少ない為、出来る会話の幅も広くない。 大抵の場合ペットゆっくりは家の中でお留守番だから知識も語彙も碌に増えないだろう。 飼い初めの頃はまだ良いだろうが、そのうち話す事も尽きて会話をしなくなるかもしれないな。 『ゆっくり』の話がしたくて飼ったワケでは無いのだろうから。 兎に角、人語を解するから飼ったという人は拍子抜け。 勝手な事だが人は喋るゆっくりの事を『期待外れ』と感じたのだ。 小さくて可愛いと考えてた人の期待も外れる。 人の元では平均寿命8年と長生き。最終的に体高だけで60cmを超えるのも珍しくない。 デカくなったゆっくりは俺から見てもあんまり可愛くない。というか怖い。 ちなみに食う量も増えてゴールデンレトリバー並に食費がかさむ。 デカくなったのは更に重くノロくなる為、家の中での様々な面において邪魔になる。 かと言って庭なんかで飼うと寂しがり、大きな体をしてゆんゆん泣く。 それでも外に放って置くと知らないうちに死んでたり いつの間にか恋仲になった他のゆっくりと子を成していたりもする。 これが悪夢ってヤツだろう。とてもじゃないが笑えない。 手が掛からないとの期待はこんなところでも裏切られる。 人々の勝手に抱いていたゆっくりへの多大な期待はことごとく裏切られ、 ペットとしてのゆっくりへ関心も次第に薄れていった。 その結果かなりの数のゆっくりが無責任にも街に捨てられ、未だに問題になっている。 捨てる主な理由は仲違いしたから。反抗されたから。二匹飼いしたら自分と話さなくなったから。 妊娠したから。意外とつまらなかったから。どれも最高に無責任なものだ。 今ではもう、そんな面倒なゆっくりを飼う人間は ゆっくりの事が本当に好きな僅かな人達だけになった。 そして俺はゆっくりが何の為に人間の前に現れたのかを心の底から理解出来ていない。 ゴチャゴチャ考えてるうちにハンバーガーはもう食い終わった。 あとは尽きるまでコカコーラをズルズルやるだけ。 兎に角ゆっくりはもうペットとしてさえ人の関心を惹かない。そもそもあまり向いてなかったのだ。 久しぶりに見たから気になったが、そろそろどうでもいい存在になってきた。 保健所の人間が来ないうちにとっとと消え失せる事をお勧めしておく。 (ゆっく…り…ゆっぐり”ぃ…) 永らくガラス窓の下でダウンしていたゆっくりだが ようやく起きたようで、泣きながら体を起こした。 泣いてるのはゆっくりしていって貰えないのが辛い為だろう。 (ゆっぐり”じでいっでね”!ゆっぐじじでいっでね”ぇ!!) 涙混じりのガラガラ声で叫び出すゆっくり。周りには誰も居ないのに。 あれだけ痛い目に遭わされたのに消え失せないとは。 何がそんなにあのゆっくりを駆り立てるのか? どうして人をゆっくりさせたがるのだろうか? 俺は彼等と"ゆっくり"した事が一度だけ有るが、それも未だ謎だ。 ゆっくりの『ゆっくり』と言えば俺は俺で期待を裏切られた事が有る。 随分前に駅前のベンチで本を読みながら友人を待ってたら ゆっくりが近寄って来た事が有ったのだ。 『ゆっくりしていってね!』とお決まりの言葉を言いながら。 俺はちょっと困ったが、当時はまだゆっくりに興味が残っていたので 読んでいた本をカバンに仕舞ってゆっくりと『ゆっくり』する事にした。 『ゆっくり』と名乗るくらいなんだからとんでもなくゆっくりしている筈だ、 もしかしたら他人をリラックスさせる力を秘めているのかもしれない、と期待しながら。 しかしなんの事は無い。ゆっくりは空いたベンチに乗って日向ぼっこをしてるだけ。 普通にゆっくりするだけだったのだ。 勝手に期待しておいてこんな事を言うのもなんだが、ガッカリした。 ゆっくりの『ゆっくり』なんてゆっくりじゃなくても出来るし 別に俺が居なくても出来る、ごく普通の事だったのだ。 期待外れもいいところだった。 その日を境にゆっくりは俺にとって完全に無価値な存在に変わった。 (お、おにいさん…れいむと、れいむと一緒にゆっくり…) 窓の下では汚れたれいむを避ける様に、また一人通り過ぎて行く。 彼はipodらしき物を弄りながら歩き去って行った。 どうでもいいのだ。ゆっくりとの『ゆっくり』なんて。 それこそ何十回も聞いていい加減飽き気味のポップス以上にどうでもいいのだろう。 「あれ、○○さん、あそこに居るのゆっくりじゃない?」 「あらホント、いまどき珍しいねぇ。 そう言えばね、この前○○さんが電話で話したことなんだけどーーー」 隣の奥様方が今更ゆっくりに気付いたように話題に上げる。 ずっと俺と同じ方向見ながら話していたのに(ガラス窓に反射して丸わかりだった) 会話のクッション程度のものにゆっくりを使ったのだ。 そんなモンだ。例えゆっくりが少しくらい泣いてたとしてもな。 (ゆっぐり”ぃ…… ゆ”っぐ りぃ” ぃ”い”ぃ”!!) コーラを飲み干して立ち上がると、 俯いて本格的に泣き崩れるゆっくりの姿が見えた。 あそこで泣いてる分にはまだ良いが、果物屋の店員がボソボソ何か喋っている。 もしも交差点を超えてアッチ側にいったら 動けなくなるくらい強く蹴られるかもしれないな。 俺等人間の中でも、彼等にとってゆっくりは特に邪魔なんだから。 もう休み時間は終わりだ。 俺は紙コップの底にヘバりつく氷を4、5個口に放ってガリガリ噛み砕きながら、 トレイの上のモノをゴミ箱に捨てて店を出た。 生暖かい風が頬を撫でる。近所に予備校があって高校生が良く通る所為だろうか この歩道は黒ずんだガムやらツバやらがこびり付いてて汚い。 こんな小汚い歩道でゆっくりとゆっくりするくらいなら 今みたいな店の中で一人でゆっくりしてた方がずっと良い。誰だってそう思う。 「ゆっ、ゆっくり!ゆっぐりしていっでね!」 交差点で信号を待つ間、左から嬉しそうな声が聞こえて来た。 左方向に視線をやるとあのゆっくりが居た。 頬を涙でベショベショに濡らしているが笑顔満面。嬉しそうだ。 立ち止まっている俺を見て勘違いしたのかもしれないな。 "ようやくゆっくりしていってくれる"って。 「ゆっくりしていってね!」 ビデオ屋に寄って帰ろう。 最近ずっと行ってなかったから新作テープの取れたのが沢山有る筈だ。 そんな事を考えながら、信号が青になったのと同時に俺は歩き出した。 口の中の氷はもう無くなっていた。 ーENDー
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ゆっくり射的 今日はお祭りの日。 いろいろな出店がある。ゆっくりにちなんだ店も今では珍しくなくなった。 ゆっくり焼きや冷やしゆっくり、水上まりさ釣りやカラーゆっくりなどもある。 もちろん普通の店もある。微妙に高い焼きそばとビールを買って花火でも見たいな、と思ったがそうもいかない。 俺も店を出してるからだ。その名も『ゆっくり射的』。 類似店がないからか、そこそこ盛況だ。ほら、また少年がやってきた。 「お兄さん!あの写真本物?どうやったらもらえるの!?」 写真とは射的の景品のことだ。あるスジから譲ってもらったり買ったりした。盗撮なんかじゃないヨ? 「おうともよ!あの写真は正真正銘の本物だ。むこうにゆっくりがいるだろ? アレを撃って、当たったら1点だ。点数に応じて写真をあげよう。簡単だろ、やってくかい?」 人里では妖怪に憧れる者も少なくはない。時に恐怖の象徴ともなるが、惚れこんでしまうものもいるという。 滅多に姿を見れない大妖怪ともなると、一部ではものすごい人気だという。 そういう人気の高い妖怪や、なかなか写真に撮られない(要するに写真自体が少ない)妖怪は高得点を出さないともらえない。 逆に人気があっても写真の枚数が多い妖怪などは簡単にもらえるようになっている。そのへんはお客の頑張り次第ということで… 「やるやる!いくらなの?」 「1回100円で弾は10発。 赤ゆっくりに当たるとどこでも1点。親ゆっくりは目と口に限り1点だ。それ以外は点数にならないぞ」 そう、この射的、的となるのはただのゆっくりではない。植物型にんっしんっ!をしたゆっくりなのだ。 頭に赤ゆっくりを生やした親を剣山で固定する。それを少し離れた所から狙い撃つというものだった。 ルールを説明するとお兄さんは少年にライフルを渡す。もちろん本物ではない。 「じゃあ撃っちゃってよ!」 「よーし、狙い撃つぞー!」 第一射。親ゆっくりに命中! 「いだいぃぃぃぃぃぃっぃい!どぼぢでごんなごどずるのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 「「「おがぁしゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」 「お、なかなかやるな。でも親のほっぺただから点数にはならないぞ」 「くっそー、ところでお兄さん、レミリアの写真は何点でもらえるの?」 「レミリアか、えっと、5点だな。あと9発ある。がんばれよ」 実はこの射的、そこそこ難しい。親が少しでも痛みから逃れようと動く。頭上の赤ゆっくりも動く。 ただでさえ小さい的が動くのだ、10発全部はずれということもよくあることだ。 「次は当てるよ!」 第2射。はずれてしまった。 しかしゆっくりからするとはずれははずれで怖いものだ。何せ自分の近くを弾が飛んでいくのだから。 ゆっくりにとってはどちらにせよ地獄だった。 その後少年は6発はずしてしまった。 「お兄さん!難しいよこれ!」 「んー?じゃあちょっとサービスな」 そう言ってお兄さんは親ゆっくりを剣山に深く差しこむ。 「ゆぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!でいぶのあんよがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「これで親は動かない。がんばれよ」 「ありがとうお兄さん!」 第9射。サービスのおかげか赤ゆっくりの眉間(?)に命中し、それを吹き飛ばした。 「でいぶのあがぢゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「「おにぇえちゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」 「もっちょ、ゆっきゅりしちゃかっちゃ…」 「どぼぢでごんなごどずるの!?でいぶのあがぢゃんがえじでね!!」 「うるせーなー。少年、次は親の口に当てちゃってよ。黙らせたら特別に4点あげるよ」 「えっ!?本当にいいんですか、やっちゃいますよ!」 「ゆっぐりじでないででいぶのあがぢゃんなおじでね!!ぞれどだべものももっでぎでね!!」 本当にうるさい饅頭だ。当然今自分が置かれている状況なんざ理解してないんだろうな。 そして第10射。口には当たらなかったが。 「でいぶのづぶらなおべべがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 「「みょうやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!おうぢぎゃえりゅぅぅぅぅぅぅぅ!!」」 まだ生まれてすらいないのにどこに帰るってんだ。それはともかく。 「お、目か。特別に2点だ!おめでとう!じゃあ写真はこのなかから選んでね」 合計3点。なかなかいいスコアだ。写真も中堅妖怪ならあらかたそろっている。 「うーん…」 「いいのがなかったのかい?それならもう1回やって、2点以上とれたらレミリアってのはどうだい?」 「いいの?じゃあもう1回やるよ!」 「あいよ、また10発な」 「あ、お兄さん、僕もやる!」 「俺も俺も!」 「私も!」 ゆっくりの悲鳴が集客効果も果たしてくれたようだ。 「よしよし、みんなルールはわかってるな?しっかり狙えよ!」 「やべるんだぜぇぇぇぇぇぇぇ!!ばりざのがわいいあがぢゃゆべっ!?」 「まりざ?どうじだの?みえないよ!?」 「まとなんだねーわかるよー」 「ごんなごどずるなんでいながもの、の?ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 「サービスしといたぞ。動かないうちに当てろよー」 「むきゅ…むきゅ…」 「あ、あのぱちゅりー弱ってる!」 「むぎゅぅぅぅぅぅぅ!やべでっ!あがぢゃんじんじゃうぅぅぅぅぅ!」 お客さんも俺も、そしてゆっくりも楽しい時間を過ごせましたとさ。 舞台裏ならぬ屋台裏 「このまりさはもう駄目だな」 赤ちゃんも全部落ちたし、目も口もぐちゃぐちゃだ。 「こんなのでよかったら食べるかい?」 子供たちはくれるものなら、と喜んで食べてくれる。さぞや甘かろう。 おっと、こいつの分を補充しないとな。店の裏手にいる手伝いの虐待お姉さんに声をかける。 「新しいゆっくり用意してー!」 頼まれたお姉さんは大きな箱の中から適当にゆっくりを取り出す。 「今回はれいむか、それと…」 今度は『繁殖用』と書かれた箱の中からありすを取り出す。 「はいありすちゃん、このれいむとすっきりー!しようね」 「はぁはぁ、おねえさん、とかいはのありすはもうすっきりー!したくないよ…」 なんだって繁殖用にレイパーありすを使わなかったんだろと思いつつ、注射器を手に取る。 当然ありすの言うことなんかにいちいち耳をかさない。 「あんたは黙って私の前で汚らしく交尾してればいいのよ」 媚薬をありすに注入する。だんだんと息遣いが荒くなってきた。 手から離したとたんにれいむにとびつくありす。 「れいむかわいいよおおおおおおおおおおおおありすがあいしてあげるからねええええええええええええ!!」 「おねーさんたすけて!れいむゆっくりできなくなっちゃううううううううううう!」 「何事も経験だ、GO!」 「ああああああああああああああああああああ、ずっぎりー!」 「とかいはのありすはいっかいじゃまんぞくできないわ!もっとあいしあいましょれいむうううううう」 「お前はもうおわりね。また出番が来たら出したげるからまってなさい」 「ありすまだすっきりしてないのにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」 ありすを箱に詰めなおした頃にはもうれいむの頭から赤ゆっくりが生えていた。 そういう薬を使ってるからね。おお、ご都合主義ご都合主義。 「ゆ!?もうあかちゃんできたよ!ゆっくりしてないね!でもかわいいよ!」 「亜阿相界、今のうちによーくかわいがってやりなよ。もうすぐゆっくりなんてしてられなくなるから」 「おねーさんなにいってるの?これかられいむたちはとってもゆっくりするんだよ?ばかなの?しぬの?」 「へいへい、そりゃーゆっくりした話ですこと」 適当に流しながらそのれいむを店の表へ持っていく。 「ゆゆ~♪おそらをとんでるみたい~♪」 「はい着地ー!どーん!」 「どぼじでごんなごとずるのおおおおおおおおおおおおお!でいぶのあんよがああああああああ!ゆっぐりでぎないいいいいいいい!」 剣山に突き刺されるれいむ。まあ動かないという意味ではとてもゆっくりしてるよ、うん。 「あ、このぱちゅりーももう駄目ですね。新しいの持ってきますね」 そういってお姉さんはまた店の裏に戻って行った。 あとがき ゆっくりんピース?なにそれおいしいの? 俺も射的したい。チルノの写真欲しい。 byまふ
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厳しい冬が終わりを告げ、春めいた陽気の日々が続くようになると、山の竹林では一斉にたけのこが生え始める。 この竹林の周辺を住処とするゆっくり達にとっては最高のご馳走であり、冬を生き延びた自分たちへの山からのご褒美とも思えるものだ。 「ゆっゆっゆー ゆっくりしていってね!!!」 「ここに、おいしそうなたけのこさんがあるんだぜ! まりさがとってあげるんだぜ!」 「「「おとーしゃん、ゆっくちがんばっちぇね!!」」」 ここにも、6匹でなかよくたけのこ掘りに興じているゆっくりの家族がいた。 成体の「れいむ」に「まりさ」とれいむ2まりさ2の赤ゆっくり達。 たけのこは、土の中のまだ葉が開いていない物が美味とされるが、ゆっくり達はカサカサと音を鳴らし地を這うようにして動きまわり、器用にたけのこを見つけていく。 ゆっくり達の身体的な特徴は、真にたけのこを探し当てるのに適していた。 「ゆぅぅ〜 ゆぅうううーー・・・!!」 「おとーしゃん がんばっちぇね! おいしいたけのこしゃんたべさせてね!」 「あ! たけのこしゃんのおちりがみえてきたよ!あとちょっとやよ!」 「おかーしゃんすごいね! おとーしゃんすごいね!」 「ふたりちゃりとも ちぇからもちですごいね!」 かわいいわが子達の声援を受けて、両親の作業にも熱が入っていき、見事に土の中からたけのこを取り出すことに成功した。 「ゆぅぅぅうう・・・・・!!!」 「「すっぽりーー!!」」 間の抜けた、掛け声とともにたけのこを抱えたまま二匹は力を入れた方向に転がっていく。 たけのこと一緒にコロコロと2,3回転がった程度で回転は止まり、心配して跳ね寄る子供達に2匹はニッコリと微笑んだ。 「やったぜ! たけのこさんが掘れたぜ!」 「まりさとれいむにかかれば たけのこさんもいちころなんだよ!」 「ゆゆー おとーしゃんやったね!」 「これで たけのこしゃんむーしゃむーしゃできるね!」 「おかーしゃん だいじょうぶ? いちゃくなかった?」 「ゆぅぅ〜 とっちぇも ゆっくりできちょうな たけのこしゃんだねぇー!」 キャッキャッとはしゃぐゆっくりの家族達は完全に、たけのこに気をとられて浮かれていたため、周囲に対する警戒が薄くなっていた。 この時期、たけのこを狙ってイノシシなども竹林によく姿を現すし、ゆっくりにとって「ゆっくりできない」存在である人間なども竹林に入ってくる。 周囲への警戒はしすぎるということがないくらいに、厳にするべきであったのだが、この家族は取ったたけのこをその場で食べ初めてしまった。 「むーしゃ むーしゃ しししししぃーしあわせぇぇーー!!!」 「「「「ちあわしゃへーーーー!!」」」」 「うっめ! これうっめ!」 しかし、この無警戒には理由があった。 この家族がたけのこを取っている場所は、山の竹林の中でもかなり奥まっているし、やや急な斜面をびっしりと成長した竹が覆っている、竹の密集地帯だった。 そもそも、良いたけのこはある程度、竹林を伐採してたけのこの出てくる余地を作ってやって、初めて生えてくるものである。 効率を重視する人間達は、最初から目をつけた竹林に手を入れて、良質な物を手に入れようとする為、竹林の奥までわざわざ入ってくることは稀であることを、この家族は学習できていた。 野良にしては、優秀なゆっくりと言える部類であり、この家族の未来は真にゆっくりしていると言えた。 しかし、そう上手くいかないのが人生・・ もといゆん生である。 この家族の破滅の足音は、頭上50メートル付近で轟音を轟かせた。 バチバチチチッッ パァーーン ビチチチッ!! 「「ゆゆっ!!?」」 ゆっくりとしあわせーを交互に繰り返し、緩みきっていたゆっくり達の下膨れの頬が一気に緊張する。 彼女達からは目視できない、はるか頭上で鳴ったその音は親達ですら生まれてこの方耳にした事が無い音であり、赤ゆっくり達はたちまちパニックを起こしてしまっていた。 「「ゆぅーー このおちょなにぃー??!」」 「「ゆっぐじでぎにゃいよお”お”お”お”お”お”!!!」」 「おちびちゃん達! 落ち着いてね! お母さんにゆっくりついてきてね!」 「まりさが付いてるから安心するんだぜ! おかあさんにゆっくりついていくんだぜ!」 親れいむが子供達を先導し、親まりさはその場にしばらく留まって周囲を警戒した。 緊急時の役割分担すら完璧であり、自分達も初めて遭遇する事態であるにも拘らず、迅速に巣へ引き返し始めた。 先導する親れいむと親まりさにはさまれるようにして、4匹の子供達が安全に巣へ誘導された。 あたりには焦げ臭い匂いが立ち込めていたが、目に見える範囲での明確な出火は確認できず、事態を把握しきれない事に、親まりさは言いようの無い不安を覚えていた。 {何が起きたかはわからないけど、みんなのゆっくりはまりさが守ってみせる!} 心の中で、そう決意しながら家族とともに安全な巣へ引き返していくゆっくり達。 彼女達は知る由も無いことだが、餌場たる竹林の上空には高圧送電線が通っており、伸びきった竹が接触することによって、短絡(たんらく)が発生していたのだった。 そしてこの事象が、今まで人間の進入を拒んできていた竹林に人間を呼び込む原因となることを、勇敢な親まりさは知りようも無いのだった。 ==翌日== 「あーーーあぁ めんどくせぇなぁ」 そんな風に悪態をつきながら、長柄鎌とのこぎりを装備して5人の仲間と一緒に山の斜面をノロノロと登っていく一人青年の姿があった 年の頃は25、6といったところだろうか? ひたすらダルそうにしながら山の斜面を登っていく。 昨日の送電線の短絡事象は、変電所などの関連した設備にはたいした影響は及ぼさなかったが、 再発防止のため、彼らを含む複数のグループが送電線の巡回検査を行う為に山に入り込んでいた。 この青年、いつもはデスクワークなどを専門とし、現場作業にあっては下請け等をこき使う為、周囲からは白眼視されていたが、本人はそんなことは大して気にする様子も無くオフィスで砂糖のたっぷり入ったコーヒーをすすり続けており、入社以来使い続けた椅子はその重量を支えることが難しくなっていた。 シュボ スパスパ フゥーーーー あろうことか、火気厳禁の山林でタバコを吸うこの男は、他の仲間からどんどん距離を開けられていき、目的の竹林近くに到着した頃には、すでに竹の伐採が始まっていた。 「じゃあ、私達は鉄塔のところまでこのまま竹を切りながら向かいますんで、すいませんがこの辺りの竹をお願いしてもいいですかね?」 連れてきた下請け業者の責任者が、そのように申し出ると青年は何も言わずに黙ってタバコを咥えたまま、2,3度頷いた。 他の五人はそのまま、上空の送電線を確認しながら、送電鉄塔を目指して進んでいった。 青年は適当に、腰の辺りまで伸びているたけのこを鎌でつつきながら、2本目に火をつけた。 吸い切った一本目のタバコを、腰を屈めて地面にこすり付けていると、視界にふと、ところどころ齧られた跡のあるたけのこを見つけた。 大きな齧り口もあれば、小さなものもある。 イノシシかなにかとも思ったが、それにしては齧り方が控えめな様な気がした。 もっともこの青年は、イノシシの齧ったたけのこなど見たことが無いので、そんな気がしただけであり、そのうちにそんなたけのこには興味を失ってしまい、ささやかな自分の義務を遂行するために、ゆっくりと立ち上がった。 「もうちっと、””ゆっくりしても””いいかも知んないけどさ〜」などと呟きながら・・・・・・・・。 昨日の不意に起きた、破裂音を警戒して、ゆっくり達はいつもとは違い十分に警戒しながら、餌場に向かっていた。 彼女達の巣は、倒木などで出来た天然の屋根に守られており、夏は涼しく、冬は少しの工夫で寒風を凌ぐことが出来た。 入り口を塞ぐ葉っぱを取り除き、親まりさが周囲を警戒しながらでてくる。 その後に、子供達が続いて親れいむが葉っぱの上にさらにカモフラージュを施せば、出発の準備は完了である。 親達の緊張が伝わったのか、子供達も今日は口数が少ない。 しかし 昨日おなかいっぱいになり損ねた分、今日こそはいっぱいたけのこさんをむしゃむしゃしてやろうと、心は踊っていた。 親達はゆっくり餌場に移動しながら、昨日のことを話し合っていた。 「ねぇ まりさ 本当に大丈夫かしら? 昨日の事もあるし・・・ 今日は他の餌場でもいいんじゃないかな?」 「ゆぅ〜〜ん・・・ 」 「「おとーしゃん れいみゅはたけのこさんたべたいー」」 「「おかーしゃん まりしゃもたけのこしゃんむーしゃむーしゃしたいんだぜ!」」 「「ゆぅぅーーん・・」」 二匹の親ゆっくりは困ったような顔をしながらも、子供達の期待に満ち溢れた、キラキラした目に押される形で、昨日の竹林付近にまで歩みを進めていた。 そしてそこで、腰を屈めて、昨日彼女達が掘り出したたけのこを観察する人間に出くわしたのだった。 すぐさま、木の根元に身を隠した親まりさは、目配せで他のゆっくり達に静止をかけると、親れいむはすぐさま子供達の注意を舌で喚起し、近くの藪に誘導した。 臭い煙を吐きながら、たけのこをまじまじと見つめる姿を、藪の中からじっと見つめる子れいむと子まりさ達。 {しょれは おかーしゃんとおとーしゃんががんびゃってとってくれた とってもゆっくちできるたけのこしゃんなんだよ! ゆっくちかえしちぇね!!} そんな風に、ちいさいながらも憤りを覚えていた。 故に、その後に耳を打った本能を刺激する言葉に素直に、そして大きな声で反応してしまった。 「「「「ゆぅ? ゆっくちちちぇいっちぇね!!」」」」 「あぁ?」 その声に振り返る青年。 その目の前に、成体のゆっくりまりさが飛び出してきた。 「ゆっくりしていってね!!人間のおにいさん!」 この時のまりさは、半分以上死を覚悟している。 とにかく、人間の注意をそらすことのみに、考えを集中させていた、後ろにいる最愛の家族のために、ほんの少しでいい、注意を逸らす事が出来れば・・・! しかし、そんなまりさの想いを無視するかのように、青年は下衆な笑顔を浮かべて、まりさの背後の藪を長柄鎌で横なぎに払った。 間一髪で親れいむが子供達を体当たりで弾き飛ばしたおかげで、子供達は鎌の刃にかかる事は無かったが、れいむ自身は自慢の赤いリボンを巻き込みながら後頭部にザックリと鎌の刃の進入を許してしまっていた。 「ゆ”う”う”っう”−−!!」 「い”や”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ッッッ れ”い”ぶの”か”わ”い”い”お”り”ぼん”がぁぁぁ!!!」 「ははーッ ゆっくりじゃねえかよ こんな所で見つけるなんてツイてるぜ!」 青年はれいむが刺さったままの長柄鎌を手元に戻すと、ドンッと柄の部分の先端で地面を叩いた。 衝撃でれいむがゆっくりと鎌の刃からすべり落ちるように落下する。 と、地面に落ちる寸前で青年が軽くれいむに前蹴りを食らわせようとしたが、むなしく空を蹴った。 「れ” れ”い”む”ぅ”ぅ”ぅ” し”っ”か”り”し”て”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”」 大粒の涙をこぼしながら、まりさは一目散にれいむの元に跳ね寄り、傷口を舌で労わりはじめる。 子供達は体をぶるぶると震わしながら、呆然と眼前の光景を見やることしか出来なかった。 空振りの前蹴りでたたらを踏んだ青年は、悪態を付くと長柄鎌を少し持ち上げて、柄の先端を再び地面に向かって突き込んだ。 無防備にさらけ出されたれいむの後頭部に追撃の一撃を加えるつもりだ。 ジュブゥゥッ!! 最初の一撃で出来た傷口付近に叩きこまれた一撃は、空気を含んだようないやな音を立てて、れいむの後頭部にめり込んで行き、なおも力が加えられたため、完全に地面まで貫通してしまった。 青年はさらにひねりを加えながら、ゆっくりと柄に貫かれたれいむを持ち上げて、藪の近くで震える子供達の前に突き出した。 「で? これお父さん? お母さん?」 「や”べ”ろ”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”!!! れ”い”む”を”は”な”せ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”!!!!」 まりさは子供達の方に跳ねていき、庇う様に青年に向き直ると、れいむを柄からなんとか引き抜こうと、奮闘し始めた。 「ねえ どっちなの? 答えてよ?」 「「ゆ”ぅ”ぅ” お”か”ぁ”し”ゃ”ぁ”ぁ”ぁ”ん” や”め”ち”ぇ”ぇ”ぇ” 」」 「こ”ん”な”の” ゆ”っ”く”し”で”き”な”い”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”」 「に”ん”げ”ん”し”ゃ”ん” ひ”し”ょ”い”こ”ち”ょ”し”な”い”で”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”」 「ああ そう お母さんかー ありがとね 教えてくれて」 そう言いながら、青年は両の手で長柄鎌を持ち直して、ひどいことをしないでと懇願した赤れいむをそのまま突き刺した。 「し”ゅ”う”!?」 母親が刺さったままの鎌の柄に、ちょうど眉間の辺りを突き刺された赤れいむは、その勢いのまま腐葉土の地面に半ばめり込んだ。 青年が慎重に引き抜くと、親子れいむはちょうど向かい合う形で串刺しになっており、その姿をみた青年は「よかったね お母さんにキスしてもらえたよー」などとおどけた調子で言い放った。 「ゆ”ぅ”ぅ”ぅ” も”う”い”や”し”ゃ”ぁ”ぁ”ぁ”」 「た”し”ゅ”け”て”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ” お”と”ーし”ゃ”ぁ”ぁ”ぁ”ん”」 「お”か”ぁ”し”ゃ”ん”と”れ”い”む”を”た”し”ゅけ”て”あ”け”て”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”」 その場で絶望を表明するもの、父親に助けを請うもの、なおも他の家族を気遣うもの。 三者三様の反応であったが、共通しているのは、一匹もその場から動こうとしなかった事だ。 なまじ親が優秀すぎ、子供達が幼すぎたのが不運であったようで、三匹は恐怖のあまりその場から動けずにいたのだ。 このような時、とにかく分散して逃げてしまえば、この図体ばかり大きい愚鈍な人間からなら生きて逃げ延びる事が出来たかもしれないが、そのような判断が出来るほど成長してもおらず、危機的な状況に陥ったことが極端に少ない幸せだった赤ゆっくり達は、ただひたすらに恐怖を訴え、救いの手が頼れる父親から差し伸べられるのを待つしか出来なかった。 「お”ち”ひ”ち”ゃ”ん”た”ち”に”て”を”た”す”な”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!」 涙でぐちゃぐちゃになった顔面に光る二つの目には、未だ闘志が灯っていたまりさは、猛然と怒りに任せて青年の膝辺りにまで飛び上がって体当たりを敢行した。 通常のゆっくりには考えられないほどの大ジャンプであるが、地形の高低差を利用した、この優秀なまりさならではの、ひねりの効いた一撃だった。 山登りで足に疲労がたまっていた青年には、一定の効果が在り、無様にもヒザカックンの要領で、青年はバランスを崩してしまった。 「がッ! くそったれ! この腐れ饅頭がッ!!」 「おちびちゃんたち!今だぜ! ゆっくり逃げるんだぜ!!」 その一声で、我に返った赤ゆっくり達は、一斉に後ろの藪に飛び込み、そこから2方向に別れて別々に逃げようとした。 ーーーーーーが、藪と赤ゆっくり達の間に、母と姉妹の体を貫いた長柄鎌そのものが降って来た。 その衝撃に足踏みした赤ゆっくり達に、まず青年の右足が踏み込まれた。 踏み込まれた右足は、なおも地面を擦り上げ下敷きになった赤まりさをすり潰す。 次に振るわれたのはノコギリで、赤れいむの顔面をザックリと裂きながらめり込んで行き、彼女に与えた苦痛の量は、意識を失わせるのには十分なものだった。 最後に残った一匹を、青年は抱え上げると、木の枝に串刺しにし、親まりさに向き直った。 「クソッ 舐めた真似してくれたもんだな?」 青年はなおも右足を地面に擦りつけながら言うと、タバコに火を点けてこう言った。 「お前が俺に体当たりなんかしちゃうからだよ 全員殺しちゃう気なんかなかったんだぜ?」 まりさは答えない。 ただ目の前の光景が信じられなかった。 ついさっきまで生きていた最愛の家族の変わり果てた姿は、まりさから戦意を奪うには十分だった。 「ゆっ ゆ・・・」 その声は、青年のすぐ傍にある木から聞こえてきた。 弱弱しいながらも、生存を主張するその声の方向に向かって、まりさはフラフラと進みだす。 「おちびちゃん ゆっくり待っててね いま まりさが・・・・」 スコンッ! まりさの目の前で、枝に突き刺さった赤ゆっくりの体が両断された。 それから数十分後、伐採を終えたメンバーと合流した青年は何事も無かったように山を降りていった。 あのゆっくりの家族が暮らした竹林には、いま6体のゆっくりの死骸がある。 顔面から背面向けて大きな穴の開いた、物が2つ 顔面にノコギリの刃を受けた後、息があった為に、丁寧な輪切にされた物 木の枝に体を突き刺されたまま体を両断され、奇跡的に皮一枚で枝からぶら下がっている物 地面に黒いシミとしてしか名残を残さない物 そして、家族を守ろうとしてついに果たせずに終わり、その心が折れた物。 4本ほどのタバコの吸殻を体にめり込ませたまま、まりさはただただ焦点の合わない目で見続けた。 今は無い、幸せだった頃の家族の姿を。 このSSに感想を付ける
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※俺設定全開です ※虐待の直接表現はあまりないです タイトル「ゆっくり訪問」 アパートに下宿している大学生である青年は、夜食の準備をしていた。 準備といっても、カップラーメンに入れるお湯を沸かすために、電気ポットに水を入れていただけだが。 磁石式コンセントをポットに接続したところで、ドアをノックする音が聞こえた。 「はいはーい」 気のない返事をしながら、宅配便でも来たのかと、不用意にドアを開ける。 誰もいない。 舌打ちしてドアを閉めようとしたところ、足下から声が聞こえてきた。 「むきゅ、ゆっくりしていってね!」 「ゆっくちちていっちぇね!」 声の方に目をやると、そこにはゆっくりの成体ぱちゅりーと赤ありすがいた。 「なんだよゆっくりか…」 一時期、ペットとして飼育するのが流行った不思議生物ゆっくり。 当初は人語を解するので、犬猫なんかより躾けやすいだろうと考えられていた。 しかし、少しでも甘やかすとまるで自分が主人だと言わんばかりにつけあがる。 おまけに人語で罵詈雑言を浴びせてくるので、飼い主のストレスがマッハとなり、捨てられるゆっくりが後を絶たず、社会問題化した。 喋れないからこそ犬猫は可愛いのだと再認識させられ、ゆっくりブームはあっさり収束した。 青年の眼前にいるゆっくりも、おそらく捨てられたペットなのだろう。 そんな考えを巡らせていると、ぱちゅりーが話しかけてきた。 「むきゅ、おにいさんは ゆっくりできてる?」 いきなり質問されたため、青年は反射的に応えてしまった 「できてねーよ、今からレポートだよ」 ぱちゅりーは「予想通りッ!」といった表情を浮かべて言った 「そうよね、ゆっくりできていないわよね!」 「できちぇないね!」 わざわざ赤ありすが復唱する。 青年は、これからレポートという現実から無意識のうちに逃避したい願望に捕らわれ、このゆっくり遊技につき合ってしまっていた。 「そんなおにいさんに ろうほうよ!」 「りょうぽうにょ!」 「この ゆっくりする ほうほうが かかれた ごほんをよめば、ゆっくりできるわ!」 「ゆっくちできりゅよ!」 「いまなら ごはんと こうかんしてあげるわ!」 「あみゃあみゃ ちょーらいね!」 今度は青年が「予想通り」といった表情を浮かべる番だった 「なんだよ、やっぱり集りか」 片手でシッシと追い払う動作をしながら言った 「ゆっくりに餌やるのは条例違反なんだよ。なつかれても迷惑だしな。帰れ帰れ」 「むきゅ!なにいってるのよ!これは きちょうな ごほんなのよ!」 ぱちゅりーはもみあげに器用に挟んだ小さなチラシのようなものを盛んに振り回す 「とくべつに ごはんと こうかんしてあげるって いってるのよ!」 「あみゃあみゃ、ちょーらいね!」 「いらねー、つってんだろーが、ボケが」 青年は騒ぎ立てるぱちゅりーと赤ありすを蹴飛ばした。 クリームやカスタードをまき散らされては叶わないので、思いっきり手加減して。 コロコロと転がって、フェンスに激突する2匹のゆっくり。 「もう来るんじゃねーぞ」 青年はダメージに震えながら立ち上がる(?)2匹を一瞥すると、ドアノブに手を掛ける。 体が弱いとされるぱちゅりーとは思えない回復力で立ち直ると、青年に向かって叫んだ 「まっでぐだざいぃぃ〜!ぱちゅは ごのごを ぞだでなぐちゃ いげないんでずぅ〜!」 「みゃみゃ〜!」 今度は泣き落としかよ。 呆れる青年だが、先ほど同様レポートからの逃避行動を取ってしまう。 腕組みして足でドアの開放状態をキープしつつ、ぱちゅりーの話を聞いてみることにした。 「ぱちゅと ありすは すっきりして あかちゃん うんだけど、ありすは しんじゃったの!」 ぱちゅりーは目から洪水のように涙を流しながら青年に訴える 「ぱちゅは かりが へただから、あかちゃんに ごはんを ちゃんとたべさせられないの! だから、ゆっくりできる ごほんと ごはんを にんげんさんに こうかんしてもらってるの! だって、ぱちゅには そうめいな ずのうしか ないから!」 「みゃみゃ〜!」 赤ありすがぱちゅりーに泣きながら頬ずりしている。 シングルマザーか… 青年はちょっと情に絆され、ささっと周囲を見渡した。 誰もいない。 丁度、さっき友人とファミレスに行った際にガメてきたスティックシュガーがあった。 この程度の袋なら、ゆっくりでも噛みきれるであろう。 青年はそれを泣き喚くぱちゅりーの帽子に差し込みながら言った 「ほら、コレやるから、さっさと巣に帰れ」 「むきゅ!むきゅ〜ん、おにいさん ありがとう!」 「ありがちょー!」 「この ゆっくりできる ごほんと こうかんね!」 もみあげに挟んであったチラシのようなものを、器用に口にくわえ直し青年に差し出した。 青年は流れで思わずそのチラシのようなものを受け取る。 さて、そこに書かれているという、ゆっくりできる方法とは… 『美白乳天使ホワイトエンジェル 95分10000円 チェンジ可…』 「…これは『ゆっくりできる方法』じゃなくて『すっきりできる方法』じゃあ、ボケェッッ!!!」 青年は今度はインサイドキックでゆっくり親子を、潰さないよう配慮しつつ、アパートの出口方向に蹴飛ばした。 「「ゆべぇっ!!!」」 道路に着地し、そのままコロコロ側道まで転がってゆく。 「ゆぅっ!ぱちゅ!おちびちゃん!」 アパートの出口あたりから、転がるぱちゅりーと赤ありすを追いかけるようにありすが飛び出した。 「むきゅ〜うぅぅん…」 「ゅぎゅうぅぅ…」 目を回しているぱちゅりーと赤ありすを舐めるありす 「ぺーろぺーろ、いたいのいたいの、とんでけー!」 どうやら先程ぱちゅりーが話していた、死んだはずのありすのようだ。 興醒めした青年は、ドアを閉め鍵をかけたのであった。 青年は友人に先程の出来事を報告するため、電話をかけた。 同じくレポート作成作業中のはずだから、怒鳴られるかと思ったが、電話せずにはいられなかった。 はたして、電話に出た友人からは、意外な声が発せられた。 「おう、今 俺ンとこにゆっくりがきたぞ!」 青年の友人もアパート暮らしだ。 友人がレポートに取りかかろうとノートPCに電源を入れたタイミングで、玄関をノックする音が聞こえた。 「はいはーい」 宅急便かな、何か頼んだかな?と不用意にドアを開けてしまった。 「こんにちわ、おにいさん!れいむだよ!」 でかい声が足下から響いてきた 「おにいさん、れいむに ごはんを ちょーだいね!」 バスケットボールサイズのゆっくりれいむは畳み込む 「れいむが『しあわせー♪』すると、おひかりさんが でるんだよ!」 ぽよんぽよんと跳ねながら、ヒートアップしてゆく 「おひかりさんを にんげんさんが あびると ゆっくりできるんだよ!」 れいむはそこで一区切りして俯いた。 そして、はち切れんばかりの笑顔を友人に向けながら言った 「だから おにいさん!れいむに ごはんを ちょーだいね!!!」 「うるせぇ、ボケが」 冷淡に言い放つと、れいむの顔面につま先をめり込ませた 「わけわかんねー事、叫んでンじゃねーよ」 フェンスまで吹き飛んだれいむは「ゆぎゅっ!!!」と呻き、蹲って震えている。 閉まるドアに、ゆっくりとは思えないスピードで入り込むと、友人に叫んだ 「まってね おにいさん!れいむの おひかりさんを あびたくないの!?」 友人は足で見事なストッピングを決め、そのままれいむを踏みつけながら言った 「…なんじゃい、その『おひかりさん』つーのは?」 とりあえず、青年と同じくレポートからの逃避行動として、れいむの話につき合うことにした。 「ゆゆっ!ばかな おにいさんに もういちど せつめいしてあげるね!」 友人の足にれいむが跳ねようとしている力が伝わってくる。 ウネウネして気持ち悪い。 「れいむが おいしいごはんをたべて 『しあわせー♪』すると、れいむから おひかりさんが でるんだよ!」 足から伝達するウネウネのテンポが上がってきた 「たいようさんのような おひかりさんは とてもゆっくりできるよ! おにいさんの あんこさんも きれいになるんだよ!」 友人はれいむの話を整理してみた。 1.れいむが餌を食べると体が光る 2.れいむから放たれた光を浴びると、人間はゆっくりできる 3.れいむから放たれた光を浴びると、餡子(血液?)が綺麗になる 「…訳が分からん」 そもそも、ゆっくりが餌を食べて「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」した時に光ったのを見たことがない。 もしかして、新種のゆっくりか!? 餌をやることは条例違反だが、周囲に誰もいないし、学生として学術的好奇心を満たさずにはいられない。 友人は先程青年と一緒に行ったファミレスからガメてきたスティックシュガーを与えることにした。 「オラ饅頭、あまあまやるぞ」 「ゆっ!あまあま!ゆっくりしないで はやくちょうだいね!」 足をどけてやると、上を向いて大きく口を開ける。 玄関のすぐ横がキッチン、手の届くところに調味料入れがあり、そこにスティックシュガーを入れていたので、すぐに取り出せた。 大きな口を開けて待機しているれいむの口の中に砂糖を流し込む。 れいむは涙を流しながら 「あまあま、あまあま、しあわせー♪」 とびきりの笑顔になったが、「おひかりさん」とやらは友人には確認できなかった。 「おい、れいむ。『おひかりさん』はどうした?」 「ゆゆっ?いま おひかりさんが でたでしょ?わからないの?ばかなの?しぬの?」 れいむが嘘をついているのでなければ、「おひかりさん」は出たのだろう。 ただしそれは、人間には見えない。 そして、健康になったりゆっくりしたりしていない現実があった。 「意味ねー」 友人はアパートの出口に向かって、れいむを蹴り出した。 あとにはれいむの絶叫と、友人が閉めたドアの音だけが残った。 「とゆー訳だ」 「条例違反じゃねーか」 友人の話に、青年はつっこんだ。 しかし、友人は反論する 「ちげーよ、盛り砂糖しようとしたらゆっくりが勝手に食べたんだよ。俺は被害者だよ」 「しかし、お前んとこのアパートと結構離れてんのに、似たような事件がおこるとはな…」 「多分、どこででも発生してると思うぜ」 二人で今回あった事件について考察してみた。 ゆっくりは、採餌やペット化など、成功体験が個体群間においてものすごい速度で伝播する。 メカニズムは不明だが、会話によるもの、繁殖時の餡子記憶伝達によるものが考えられる。 今回のドアをノックする方法も、石を銜えて頭突き(?)するという行動は従来見られなかったものだが、青年と友人のケースで共通していることから、伝播したものだと推測できる。 「つまり、どこかのゆっくりがピンクチラシを渡したら餌を貰えたのを、誰かが見たか他ゆっくりに話したか」 「ピンクチラシをポストに投函すると逮捕されちゃうから、もしかしたら、業者がゆっくりにやらせてんのかもな」 友人は人間の関与を疑っている 「ゆっくりに『このチラシを人間にあげれば、ご飯貰えるよ』とか言って」 「ゆっくりが『人間さんに言われたんですぅ』ってゲロして、チラシから業者たどればバレバレじゃん」 「そんなもん、チラシは盗まれましたって言やすむだろ。それに奴らが人間に餌をたかるのは日常茶飯事」 「おひかりさん、はなんなんだろうな」 「プリクラの撮影風景でも見たんじゃない?大体みんな笑顔になるから、それ見て『人間は光を浴びるとゆっくりする』と思いこんだか…」 「血液はなんだよ」 「アレだろ」 「アレか…」 次の日、大学に行ってみると、他の学生のアパートや自宅でも似たような出来事があったらしい。 実際にゆっくりが訪問してきた日付は各々でかなり違うのだが、人間の記憶などいい加減なもので、話題になったときが事件のあったときと錯覚する。 なので、市民はゆっくりが一斉に家庭訪問したかのような印象を受けた。 ゆっくりが餌をたかること自体は珍しくない。 問題なのは、その方法であった。 石を銜えて頭突きでノックするものだから、ドアに傷が付く。 アパートなどでは、全てのドアに大体高さ30センチくらいの所に傷やへこみができていた所もあった。 また、都市に住むゆっくりは車と住居の区別ができず、「人間さんが出てくるから、ここ(車)もおうちだね」 という勘違いをして、車のドアに傷・へこみをつけた。 アパートやマンションの管理組合や管理会社、車のオーナーなど市民、そして自治体を巻き込んで大論争がおこった。 管理組合や市民は自治体がゆっくり害の危険性を見過ごしていたと損害賠償を請求し、自治体は自然災害と突っぱねる。 それまで大して話題にならなかった、野良ゆっくりの「おうち宣言」や「物乞い」、繁殖しすぎて道路に飛び出しスリップ事故の原因になる事例までがクローズアップされ始めた。 怒りの矛先は、ゆっくりショップや愛好家にまで向かう。 ショップや愛好家が飼えなくなったゆっくりを捨てているのではないかという風評まで流れた。 犬や猫と違って、明らかに損害をもたらすゆっくりを排斥するという運びとなるのに、時間はかからなかった。 都市からゆっくりの姿が消えた。 あとがき 読んでいただいた方、ありがとうございます。 家のポストにチラシが放り込まれているのを見て思いつきました。 あれって、ゴミになるからいやなんですよね。 これまで書いた作品 ゆっくり爆弾 ゆっくりの光
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現代モノです。子供が遊びの為に何の悪意も無くゆっくりをポイポイと使い捨てていく話です。 ====================================================================== ゆっくりドラッグ 最近男子小学生の間で注射器を使ったゆっくりドラッグが大流行している。 ゆっくりドラッグのもたらす快楽にとりつかれた男子小学生たちはみな注射器を持ち歩きゆっくりの捕獲に熱中した。 最初は誰もゆっくりがこんな快楽をもたらすとは考えてもいなかった。ゆっくりにはこんな使い道もあったのだ。 大人たちもこの大流行は知っていた。母親たちの一部にはこれを由々しき事態ととらえて禁止を訴えるものも居た。 しかし大抵は父親たちがそれをなだめて男子小学生たちのゆっくりドラッグを認めさせていた。父親達は口々に擁護する。 「男の子っていうのはこういう遊びを通じて大人になるんだよ」 「俺らが小さい頃はゆっくりは居なかったが似たような遊びはしてた」 「スリリングだし頭も使うしこれは教育にいい遊びだな」 「とにかくスカッとするよ。お前も一緒にどうだ?」 何がそんなに男たちを惹きつけるのだろうか?それは男子小学生達がゆっくりドラッグをやる様子を見れば一目瞭然である。 ここ湯栗市立南小学校でもゆっくりドラッグは大流行中だ。彼らがゆっくりドラッグをやる様子をちょっと観察してみよう。 「お~い、ゆっくりドラッグやろうぜ!いいの捕まえたんだよ」 『ゆっ!まりささまをどうするきなんだぜ』ぴょんっ ぴょんっ 「お~、イキも良いしジャンプ力あるなぁ。これ胴回りいくつ?」 「45センチだからライト・ミディアム級だな。お前持ってる?」 「いや~50センチだからギリギリでミディアムだわ」 「俺はいいぜ?このまりさならミディアムよりキテる」 「あぁ?俺のれいむなめてんのか?負けたらシッペだかんな!」 「お前が負けてもシッペだぞ!わかってんだろな!」 「おっしゃー!じゃあやるぞ!」 ひとしきり何やらバトルらしきものの前の煽りあいを済ませると少年達はニヤニヤしながらゆっくりを地面に置いて頭を押さえつけた。 『ゆっ!ゆぐっ!やめるんだぜ!』 『ゆっくりはなしてね!ゆっくりはなしてね!』 ゆっくりの文句には耳も貸さず彼らは集中力を高めて前方を見つめていた。 「あの木でいいな?」 「ちょっと遠くねえか?こっちの電信柱にしようよ」 「別に良いよ。じゃあ電信柱までな」 そして二人は左手でゆっくりを押さえつけ、右手に注射器を持ってカウントダウンを始めた 「3!2!1!・・・」 ゆっくりの尻に注射器が刺され、一気にラー油が注入された。 『『ゆぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!!!!!!』』 ゆっくりが子供達の左手の下で凄まじい痙攣を起こしている。彼らがホイールスピンと呼んでいる現象だ。 「「ゼロ!」」 二人が左手を離すとゆっくりはとてもゆっくりとは思えない凄まじいスピードで電信柱に向かって突進した。 『ゆぎゃぎゃぎゃ!・・・ぎゃぎゃ!・・・ぎゃ!・・・・ごふっ!!!!!!』ゴロゴロゴロ・・・ 『ゆぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!!!!!!』ぐしゃっ! 最初にリードしたのはれいむだったが突然失速し電信柱の1メートルほど手前で餡子を吐いて絶命してしまった。 絶命したままそこまでの勢いで少し転がったがゴール手前ギリギリ10センチ程で停止。 まりさは物凄い勢いで一気に電信柱に激突しその勢いで破裂して死んでしまった。まりさの勝ちである。 「イェーイ!勝った勝ったー!シッペな。お前シッペ!」 「くそ~、ぜってー勝てると思ったんだけどなぁ・・・」 負けた少年は悔しそうな顔をして腕を出すと勝者からのシッペを受けた。 そう、ゆっくりドラッグとはゆっくりを使ったドラッグレースの事である。 この「ゆぎゃぎゃぎゃぎゃ!」という変わった悲鳴と凄まじい痙攣、そして断末魔の急加速はこの殺し方でないと得られない。 そしてそのスピード感と豪快さが子供達の心を魅了し一気に全国にブームが広がって行った。 子供達はそれぞれの地域ごとに独自のルールを作り、その中でレースを楽しんでいた。 そして子供から大人まで男というものは「高速化のためのカスタマイズ」というものが大好きだ。 この遊びも当然例外ではなくさまざまな工夫がされていた。 「しかしお前のれいむ速かったなぁ。ゴールまで生きてたら俺負けてたぜ。何か改造してるの?」 「してるよ。でも教えてやんない」 「教えてよ~。いやまじあの加速は尊敬した。お前改造の天才だな。」 「ん~?ん~・・・んふふ」 「俺のまりさも速かっただろ?あれ級のジャンプ力ある奴が多い場所見つけたんだよ。そこ教えてやるからさぁ」 「じゃ、じゃあ誰にも言うなよ。俺とお前しか知らないスペシャルカスタムだからな。」 「おう、ぜってーいわねえ!」 口止めの約束を取り付けた少年はポケットから秘密兵器を取り出した。 「これだよ。」 「ね、ねりワサビ・・・?」 「そう。これをラー油に溶かし込むとすげー加速力が増すんだよ。俺はニトロって呼んでる。」 「そっか!考えてみりゃワサビの方がツーンとくるからゆっくりにとっては痛みが強いんだな!」 「多分そうだろね。だから早く死んじゃうんだよ。今回もゴール前に死んじゃったし。」 「あ~、だから最初ゴールを遠い木にしようって言ったのに近い電信柱に変えたのか」 「そう。まだニトロをどれだけ混ぜるのかとか距離によってデータ集めが必要だね」 「んじゃ今からさっき約束した俺の秘密の狩り場でゆっくり沢山捕まえて実験しね?」 「いいね!ただこれチューブもう空っぽだから途中でスーパー寄ってこ。」 「オッケー。じゃあ出発!」 二人は自転車にまたがるとスーパーに向かった。 「調味料売り場・・・調味料売り場っと・・・あ、あった!ここだここだ」 「ハウスとS Bがあるね。どっちがいいんだろ?」 「ん~俺ハウスしか使った事ないな。ニトロのブランドによって加速力違うのかな?」 「ていうかよ、これ!ちょっと気にならね?」 「ハバ・・ネロ?・・・」 「これって確か世界で一番辛い唐辛子だってテレビで言って奴だよ」 「何か凄そうだな。でもこれ粉だから溶けにくくね?」 「良く振れば溶けるでしょ。ワサビとどっちがニトロ効果高いのかなぁ」 「両方とも買ってみてどっちが速いか調べてみようぜ」 「ハウスとS Bはどっちが速いんだろ?」 「ハバネロとワサビ比べてワサビの方が速かったらそれも調べよっか」 「いいね!最強のニトロラー油作ろうぜ!」 「おう!俺たち最強のレーシングチームだぜ!」 「負けねえ!最強!俺ら超はええ!」 「ぎゃはははは!」 男の子の会話というのは子供も大人も大差無いものである。 所変わってここは隣の北小学校の学区。 先ほどの彼らの通う南小学校は公団なども多く比較的低所得なエリアを学区にしてるのに対し、高台の北小学校には裕福な子が多い。 そしてここでもゆっくりドラッグは大流行していた。しかしやはりそこは金持ちの子。レースへのアプローチもかなり違う。 捕まえてきたほぼ同サイズの10数匹のゆっくりがひしめく箱を抱えた子供が帰宅した。 「ただいま~」 『ゆー!おうちかえる!もうおうちかえる!』 『だしてね!ここからゆっくりだしてね!』 『ゆえ~ん、せまいよ~、くるしいよ~』 『ゆっくりできないよ!ゆっくりさせて!』 少年は椅子に登るとアクリル板で囲いを作ったランニングマシーンの上でその箱をさかさまにし、囲いの中にゆっくりを落とした。 『ゆ~!いちゃい!』 そして少年は二つのスイッチを入れた。徐々に動き出すランニングマシーン。 『ゆゆ?ゆかがうごいてるよ』 『ゆっくりできないよ!ゆっくりさせて!』 『ふん!もうつかれたからねるんだぜ』 動き出す床を気にせずフテ寝しようとしたまりさが後ろに達したときバチバチッと閃光が走り一瞬にして丸焦げになってしまった。 『ゆぎゃああああ!!』 『ゆゆゆー!?なにがおこったの!?』 『ゆえ~ん!こわいよ~!』 「見て分かんねえのか?後ろの板には高圧電流が流れてるんだよ。ゆっくりしてたら死ぬぞ」 『ゆぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!』 『だずげでぇぇぇぇ!!!じにだぐないぃぃぃぃぃ!!!』 のろのろと這っていたゆっくりたちは力の限りぴょんぴょんと跳ねだした。それを見て少年はマシンの速度を上げた。 『どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉぉ!!!!!』 『づがれだああぁぁぁぁ!!!ゆっぐりじだいぃぃぃぃ!!!』 『おうぢがえるぅぅぅ!!!おうぢがえるぅぅぅ!!!』 『も・・・もう・・ハァハァ・・・づがれだ・・・づがれ・・・ゆぎゃあああ!』バチバチッ 『ゆっぐり・・・ざぜで・・・ゆっぐり・・・・ハァハァ・・じだ・・ゆぎゃあああああ!!!』バチバチバチッ 基礎体力の無いものは最初の10分の定速運動で振り落とされた。ランニングマシンの後端にススがカサカサと動いている。 ここからがセレクションの本番である。ドラッグレースに必要なのは何よりもスピード。少年はグイグイ速度を上げていった。 『もう・・・はしれ・・・ない・・・・ゆぎゃあああああ!!!!』バチバチッ 『ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・じにだぐ・・・・な・・ゆぎゃあああ!!!!』バチバチバチッ 最後の3匹になった。今日のセレクションはこれで終了である。少年は速度を緩めた。 『おにいさん!きかいをとめてね!』 『これじゃゆっくりできないよ!』 「何言ってんだよ。鍛えなきゃ速くなれねえだろ。一晩中走ってろ馬鹿」 『ゆゆゆー!!!』 さすが金持ちである。カスタマイズにも金が掛かってる。 続く このSSに感想を付ける