約 3,643,412 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1241.html
紅魔館の主、レミリア・スカーレット。 彼女が、ある日突然、幼女のような物体に変わってしまった。 新月の夜の幼女化などではない。 以前のような知性も無く、「うー」やら「うあうあ」と言っているだけの状態が幾日も続いていた。 何かの異変かと思い神社を訪ねたが、巫女はうるさい奴が来なくなってよかったわ、と言って関り合いになろうとしなかった。 そして、お嬢様付きのメイドである咲夜は、これからどうしたら良いかと散々迷った末、この状態のレミリアも甲斐甲斐しくお世話しようと試みた。 しかし、素の状態のレミリアの世話をする事とはずいぶん勝手が違った。 曰く 「お嬢様、おはようございます」 「……すぅー、すぅー」 「起きて下さい、お嬢様」 「う~? ま~だねる~」 と言って寝続ける。 咲夜が起こす前に起きている時といえば、ベッドから落ちてそのまま泣いていた時だけである。 曰く 「お嬢様、食事の用意が出来ました」 「うっ♪ う~、あうあう♪」 「お嬢様、食事の時間です」 食事に連れて行こうと、遊んでいるレミリアを抱きかかえるとまた泣き出す。 「ゆっくり遊ぼうね。グスッ。ゆっくり遊ぶのー!」 泣いているレミリアに、何とか食事をさせようとするがまったく食べない。 好物だった肉を口に運ぶと、好き嫌いする子供のように必死で口を結ぶ。 それならばと、デザートにと作っておいたケーキを出したところ、ピタリと泣き止み笑顔のまま完食した。 咲夜がこの数日お世話をして分かったことといえば、見た目通り中身も幼くなった事と、以前の記憶はまったく無くなっていた事くらいだろう。 その後、図書館へ来ていたアリスの人形達に目を輝かせていたのを見た咲夜が、パーティー用のきぐるみを着てみたところ何とか簡単な言うことは聞いてくれるようになった。 タンバリンやカスタネットを使えば更に効果が上がる、と咲夜は付け加えた。 その時パチェリーに、アリスの家はゆっくり達が集まってきて住んでいるから、根城が変わるまで暫くは図書館に住まわせる、と聞かされた。 二つ返事で了解し、椅子に突っ伏して眠っているアリスの為に、急いで小悪魔と一緒に残っていた司書室の掃除を始める咲夜。 紅魔館の中といっても、既にここはパチェリーの領域とかしている。 しかも当の主がこの状態では許可を求めてもどうしようもないだろう。 After half a year レミリアが変わってから半年ほどが経った。 以前はきちんととれていた統率が、半年の間に綻び始めていた。 原因は、今のレミリアにはまったく統率力が無い事、加えて今の彼女の言動が屋敷の庭でよく見かける二匹のそれにそっくりだという事。 この話題が咲夜の耳に入ると、直ぐに庭に居た二匹を捕獲した。 「「う~。 うっ~。お菓子うま~」」 もともと紅魔館の従者達には懐いていた二匹は、お菓子を持っていくと警戒することもなく近寄ってきた。 直ぐにでも殺してしまいたかったが、高く買い取ってくれますよ、と美鈴が話したことで、どうせならゆっくりと恐怖を味あわせてやった方がコイツららしいと思い、業者に売り飛ばす事にした。 二匹に後を着いてこさせ加工場まで連れてきた。 「れみりゃ種は十分成熟してますから、直ぐに発送用に加工できますよ」 と聞いた咲夜はその様子を見学させてもらった。 好奇心旺盛なれみりゃは、知らない職員に抱きかかえられていてもご機嫌だった。 「う~、う~。さんぽっ あうあう」 以前、従者が散歩に連れて行ったのだろう、今回も散歩だと思っているようだ。 「う~?」 今まで見たことの無い一室に連れてこられたれみりゃ、瞳はキラキラと輝いている。 「ご存知の通り、れみりゃ種は他と違ってそのまま食すことの出来る種類です。しかし、食べることのできない部分も有りますのでここで出荷前にその部分を処理しているんです」 咲夜への説明が終わると、職員達は備え付けの台の上にゆっくりを固定していく。 「う~♪ う~? うーーー!!!」 懸命に、固定を外そうとするゆっくりれみりゃ。 元々わがままなゆっくりの、他の種類よりわがままな性格の上、紅魔館の庭で何一つ苦労せずにもてはやされていたのだ、突然拘束されるなどとは思わなかったのだろう。 「まずは帽子をとります」 おそらく加工担当のものだろう全身を真っ白な白衣で覆った職員が帽子を取る。 「うー! れみりゃのぼうし!! かえして!!! かえして!!!」 「この帽子は、現在飼育中のゆっくり達の予備の他に、ペットとして飼われているゆっくり達用に、加工して販売もされています」 そう言って、男はアレンジされた帽子を咲夜に見せた。 確かに可愛らしい帽子だと、咲夜は思った。 「次は、羽です」 羽、と聞いてそれまで強気だったれみりゃの体がビクっと震えた。 更に激しく暴れるが、拘束が解ける様子はまったくない。 「ざくや!!! わるいひどがらだずげでよー。これをはずじでよー」 根元から羽が切り落とされると、まるでそこにスタミナが有ったかのようにぐったりとするれみりゃ。 「最後は歯です。目も食べることは出来ませんが、長年の研究で目を落とすと鮮度と味が格段に落ちるんですよ」 ぐったりとしているれみりゃ、すでに抵抗する気も無いのだろう。 なすがままに、職員達が慣れた手つきで歯を抜いていく。 その後、表面の皮を汚れをゆっくりお湯で体を洗われ、最後に別のお湯につけてかすを流して木箱に詰められる。 内側に特殊な加工がしてあり、中でれみりゃが動けないようになっているらしい。 「あとはこのまま商店に発送されます。手間がかかりますので一週間に十五匹程度になってしまいますが」 味は最高です。と自信を豪語する男に相槌を打ちながら木箱をみる。 ある程度回復したらしく、出して、としきりに騒いでいるようだ。 「あの声が大きいかどうかで値段が変わるんですよ、この大きさですと結構な高値がつきますよ」 もとからそんな事に興味が無い咲夜は適当に相槌をうち、代金を貰って帰路を急いだ。 ちなみに、ゆっくりフランも、既に出荷できる状態だった。 咲夜と一緒に、最初はげらげらと、れみりゃの様子を笑いながら見ていたが、自分が拘束されると、同じように泣き始めていた。 紅魔館に戻ってきた咲夜は、珍しくきちんと門番をしていた美鈴に、紅魔館からすれば二束三文しかない代金を渡して中に入る。 出て行くときよりも晴れやかな顔つきだ。 少なくとも、これでゆっくりと同一視されることはない、確かな確証がその顔から見て取れた。 そんな気持ちで玄関をくぐった咲夜が見たのは、壁一面に施された落書きだった。 ホール全体を、赤や黄色ので埋め尽くした落書き、どうやらクレヨンで描かれたようだ。 おそらくは今朝、家を出る前に遊んでもらいたそうにじゃれ付いてきたレミリアに、与えたクレヨンだろう。 ちょうど近くを通りかかったメイドに聞くと、予想通りの返答が返ってきた。 「だったら、なんで直ぐ消さないの」 「そ、それが、消そうとするとアイt、いっ、いえレミリア様が怒り出して……」 とりあえず掃除用具を持ってこさせ、後は私が消すからと言ってメイドと別れる。 最初は廊下からと、いざ落書きを消そうとモップに力を込めた時。 「ぎゃお~、たべちゃうぞ~♪」 パーティー用のきぐるみを着たレミリアだった。 最近は帽子だけでも言うことは聞くようになったのだが、本人はいたくあのきぐるみを気に入ったらしい。 ことあるごとに、着ているのをよく見かける。 もっとも、それを脱がすのは咲夜の仕事なのだが。 「お嬢様。申し訳ありませんが、お遊びは掃除が終わるまで待ってもらえませんか?」 そう言って、再度モップに力を込める。 「うー!!! 消しちゃダメ~」 そう言って咲夜の足にしがみ付くが、力が弱いの上に、きぐるみを着ている所為で、簡単に振りほどかれてしまう。 「だめです。いいですかお嬢様、クレヨンで描いていいのは紙の上だけですよ、壁や廊下に描いてはいけません」 「だめーー!!! たべちゃうぞ!!!」 なんども足にしがみ付いてくる。 どうやらお説教を聞く気はまったく無いらしい。 「お嬢様、ですからクレヨンは、……」 「だーめー!!!」 体重をかけてのタックル、不意をつかれてバランスを崩した咲夜は、そのまま前方に倒れてしまう。 目の前には水がたっぷりと入ったバケツが有った……。 バッシャーン 「……」 「うっう~♪」 全身水だらけで、頭にバケツの帽子をかぶる咲夜。 そして、その姿が面白いのか、楽しそうに笑うレミリア。 「っ」 服が濡れた事など気にせず、どこかに走り去ってしまう咲夜。 「う~♪ う~。がぁお~、た~べちゃうぞ~!!」 残されたレミリアは、自分の描いた落書きを守れて嬉しいのか、たどたどしいながらも、一人で踊り始めた。 「うっ、う~♪ うあうあ」 「う~、あうあう♪ う~う~」 「あうあう♪ う~♪ う~♪」 本人的に、その踊りが一段と盛り上がってきたの時、突然、轟音とともに扉が砕け散った。 勢いで尻餅をつくレミリア。 「ごきげんよう。お・ね・え・さ・ま! ……どうしたの、びっくりした顔しちゃって?」 唖然とレミリアの顔に微笑を向けながら、彼女の妹、フランドール・スカーレットが尋ねる。 「う~? がぁお~! た~べちゃ! う~!?」 他の従者と同じように、驚かそうと両手をあげたレミリア。 だが、気が付いた時には襟元を掴まれ、空中に浮かび上がっていた。 今の状態になってから、レミリアは、せいぜい2m程度しか飛べなくなっていた。 それも、二秒ほどで力尽きる。 「まさか、半年も屋敷内にさえ出られないと思ってたら、お姉様がこんな事になっているなんて思わなかったわ。でも、ダメじゃないお姉様、こんなに悪戯したら」 フランが余っている左手でレミリアの頬を軽く叩く。 その瞳は、どこか狂気じみていた。 一方、何が起こったのか、分からなかったレミリアだが、一呼吸の間を置いてようやく泣き始めた。 「う~、う~」 殆ど痛みは無かったが、今までは、泣けば咲夜が助けに来てくれた。 ためか、涙は流していても、どうにもワザとらしい、大げさな泣き方だ。 「お嬢様、どうかなさいましたか」 「ぶ~!ぶ~」 予想通りに来た咲夜を見て、フランドールを指差すレミリア。 既に涙は止まっていた。 口を窄めて、フランを非難するような顔を、咲夜に向けている。 「咲夜? お姉さまが悪戯してたからしかっただけだよ。……コレ、うるさいから部屋に連れてって頂戴」 「畏まりました」 「さぁ、お部屋にお連れいたします。レミリア様」 咲夜に抱きかかえられたレミリアは、しきりに声を上げてフランを指差すが、その訴えは聞き届けられずに部屋まで連れて行かれた。 「では、私はお嬢様の所に戻りますので、着替えは自分でなさって下さい」 お休みなさいませ、といいながら扉に鍵を閉める。 彼女のベッドに彼女のタンス、彼女の部屋のもの全てが有る。 無いものは壁だった。 時間を止めたのであろう咲夜は、短時間でレミリアの部屋とフランドールの部屋を入れ替えてしまったようだ。 こんな重労働を意とも簡単にこなすあたり、さすがは紅魔館のメイド長という所だろうか。 もっとも、今回ばかりは彼女でも根を上げた。 というよりもレミリアが変わった日から、彼女は殆ど惰性で世話をし続けていただけである。 それも、先ほどの出来事で終わりを告げた、それだけの事だ。 さて、部屋に取り残されたレミリア。 以前でさえ、自分で着替えなど殆どしたことが無いのだ。 まして、今の状態では、当然着替えは無理だろう。 「うー! ぇぐ。 うー!」 やはり、着替えるどころか、泣きながらドアを叩きまくるレミリア。 その顔は先ほどまでの余裕のある泣き顔ではなく、まさに必死の形相だった。 どの位そうしていたのだろうか。そのまま、レミリアは泣きつかれて眠ってしまった。 舞台を、元レミリアの部屋に移す。 「ここが私の新しい部屋ね。……でも、本当に良かったの咲夜? 私はまだ感情が上手くコントロールできないかもしれないし、世間の事も余り知らないのに……」 「いいえそれは違います、フランドールお嬢様。今、レミリアさまのままでは、紅魔館全体が危機に瀕する事は明確でした。それに、最近のお嬢様は以前とは比べても、随分と落ち着いていらっしゃいます。その証拠に、メイドの間では、今は自ら進んでお食事を運びたいと言うものも多いんですよ。もし、暴れたら私とパチュリーさまが止めればいいだけですから」 「……そっか。うん、ありがとう咲夜。そしてこれからもよろしくね」 そして、紅魔館は劇的に変わった。 主が変わっただけであるが。 それでも、それは、紅魔館の雰囲気を変えるのには十分だった。 今の紅魔館は、以前よりも穏やかだった。 フランは、主となってからは、従者に無理難題を吹っかけるような事はしなかった。 最近は、勉強がてら、図書館でよく小悪魔と楽しく話している。 周りから見れば歳の離れた姉妹のようだ。 地下での、監禁生活が長かったフランだ、自然と本を読む事が多かったのだろう。 来てはお茶を飲むばかりのレミリアと違って、図書館というものをよく利用している。 おかげで図書館の予算も随分増えたらしい。 一方のレミリアは、主の座から外れたばかりか、今や紅魔館での地位も最底辺に位置し、今話題に出る時の呼ばれ方といえば、『ゆっくり』か『れみりゃ』のどちらかだった。 初めは、紅魔館の恥だから監禁しろ、という激しい意見もあったが、パチュリーと小悪魔が自分達がきちんと面倒をみると名乗り出てそれは回避された。 何よりも、フラン自身がその辛さを判っていたためだ。 地下に移ってから二日後、二人が初めてゆっくりれみりの部屋を訪れた時のことだ。 さんざん暴れたのか、モノが散乱する部屋のベッドで、れみりゃはきぐるみを着たまま泣いていた。 汗を吸って、着心地が悪くなった服とシャツを乱雑に脱ぎ捨て、ドロワーズだけでも蒸れるきぐるみを着ていた。 ほぼ、裸に直接気ぐるみを着ていたため、肌は擦り剥いた様に赤く傷つき、所々汗疹が出来ていた。 こういう事になれていないパチュリーは、荒れたままだと衛生的ではないと思い、まずは暖かいお風呂に入れてやった。 「うぎゃー! いだいー!! でるー! だじでー」 絶叫しながら風呂から出ようとするれみりゃを、魔法で拘束してじっくりと湯に浸からせる。 「い゛だい゛ー!!! い゛だい゛よ゛ーざぐや゛ー!! だずげて゛ざく゛や゛ー!!!」 一人でいたのが余程寂しかった様で、しきりに(皆と)居たいと叫んでいるれみりゃに、パチェリーは涙を浮かべる。 近くで石鹸などを準備していた小悪魔は、パチェリーの行動におかしなところがあるのか、はたまたその勘違いに気付いているのか、ニコニコと微笑んでいた。 いったん浴槽から出して、小悪魔がゴッシゴッシと力をいっぱいに込めてれみりゃを洗い、またお湯に浸からせる。 今度は、湯冷めしないように暖かくしてたっぷり浸からせた。 れみりゃは、嗚咽混じりになってなお、絶叫し続けていた。 「これは、肌を清潔にしていないと聞かないの。だからさっきはちょっとだけ痛くしちゃったの」 ごめんね。 とうそか本当か知らない理由をれみりゃに聞かせ、回復魔法をかける。 ちなみに、れみりゃは肌が回復すると、あっさり信じた。 服を着せ、食事を与えた。 もちろん食事はお菓子の類だが。 着たがっていたので代えのきぐるみを着せ、外はまだ日が照っているので図書館に連れてきた。 「はい、お菓子ですよー。それじゃあ、今からこのご本を読みますね」 れみりゃの世話をする小悪魔。 こういうことが苦手なパチュリーには、汚れた服を洗濯室に持っていって貰っている 図書館に入ると、すぐ本に興味心身で悪戯しようとしていたが、すかさず出されたお菓子と絵本で、すっかりその気もなくした様であった。 「あっ、お帰りなさい。パチュリーさm」 小悪魔が持っていた絵本が床に落ちる。 れみりゃは自分で拾い上げて、絵だけを追っていた。 「パチュリーさま、それ……」 「……気にしないで、ちょっとふらふらしてメイドとぶつかっただけよ」 「だって……」 「大丈夫だから」 ちょっと着替えてくるわ、レミィをお願いね。 と言い残して自分の部屋の方へ消えていった、後には、どう考えてもカップ一杯の紅茶をかぶったとは思えないほど、濡れている床が残っていた。 「う~!!! 読みおわった~!!!」 笑顔で小悪魔に話しかけるれみりゃ。 「……ぁ、はい。ぇと、それじゃあ、こっちの絵本はどうですか?」 ちょうど、休憩にでてきたアリスとかち合ったらしく、なにやら騒ぐ声が聞こえる、暫くすると、着替えを手伝うといって部屋に入っていった。 小悪魔に、心当たりが無いわけではない。 元々、レミリアの無理難題にメイド達は困っていた、だからこそ監禁しろ等という意見が大っぴらに出てきたのだ。 それが叶わなかった事が、特に反抗心の強いメイド達には気に入らなかったのだろう。 せっかく監禁されると思っていたれみりゃがまだ館内を自由に歩いているのだから。 先ほど、地下から図書館に来る際にもそうだった。 「がぁお~♪た~べちゃうぞ~♪」 以前の調子に戻って、メイドたちに悪戯をしていた。 フランに叩かれたことに懲りていないのか、、メイドにだったら良いとまだ思っているのか。 その中でも、タックルの拍子に運んでいた紅茶をこぼしてしまったメイドがいた。 その、反抗心が強いメイドが、休憩がてら仲間と愚痴ろうと思って運んでいた紅茶だった。 パチェリーと小悪魔は直ぐに謝ったが、れみりゃは笑ったままだった。 すぐに、騒ぎを聞きつけたフランに叩かれて、泣きながら謝った。 ついでに、今は紅魔館で一番下の身分にいることも教えてみたが、どうやらそれはいまいち理解できなかったようだ。 小悪魔に用意させた紅茶を、受け取って仲間のもとへ急いだ彼女は、直ぐに仲間と相談した。 そこで出された結論は、 あの二人さえ諦めれば監禁されるのではないか? 二人が辛い目にあえば見かねたフランドール様が監禁してくれるのではないか? というものだった。 それが先ほどのパチュリーである。 ちなみに、ぶつかったのではなく、上からかけられたが正解である。 いくら力の有る魔女でも、魔力のまったく出ない方法では、避けることはできないらしい。 次の日の標的は、小悪魔だった。 図書館の給湯室に有る茶葉が無くなったので、厨房に貰いに行った帰り、中から不審な音がする缶を開けてみたら、大量のコックローチが入っていた。 思わず缶を落としてしまった拍子に、それが床にわらわらと這い出てきた。 「害虫は退治しないとね」 たまたま居合わせたメイドが、そう言いながら、小悪魔もろとも消毒液をかけてきた。 「小悪魔さん、害虫のお掃除はお願いしますね」 びしょびしょになりながら呆然とする小悪魔に向かって、そう言うと笑いながら行ってしまった。 大量のコックローチの死骸を、事務的に片付ける小悪魔の顔は、泣いてはいなかった。 それはもう、楽しそうに笑っていた。 日に日に、二人へのイジメは激しさを増していった。 食事の中に大量の虫が入っていたり、服が絵の具でべったりになっていたりもした。 それでも、二人は甲斐甲斐しく、れみりゃの世話を続けた。 「レミィは友達だもの、だから、あたしが面倒をみるわ。それと、フランや咲夜にも知らせないでいいわ、余計な心配をかけさせたくないから」 メイド達が心配になって声をかけても、そう言って世話を止めようとはしなかった。 しかし、それから数ヵ月後。 ちょうどアリスが来て一年ほどたったある日、とうとう二人に対してのイジメのことがフランの耳に入った。 直ぐに、フランはイジメの主犯格のメイドを捕まえこの場で消滅させようとした。 しかし、泣きながらパチュリーに止められた。 「……もう、レミィの記憶は無いのかも知れない、私の事も覚えていないのかもしれない。でも、それでもレミィの事は放っておけないの。」 小悪魔の胸に顔を埋めて泣きじゃくるパチェリー。 「……ねぇ、パチェリー。お姉さま……、ううん、これがゆっくりれみりゃと同じ様な生き物なら、自然に帰してあげない。勿論、すぐ適応するのは無理だろうけど、最初のうちは食事を持っていっても良いし、森にはゆっくり達も大勢いるし、……ふっ、服が汚れたらもって言っても……」 重苦しい空気の中、フランが口を開く。 次第に涙で、その声が擦れていく。 「だって、パチェリーや小悪魔がこんな事になってるなんて。お姉さまが私を閉じ込めてた時も、気が触れているって言われてた時も、二人は優しく接してくれたのに、何で……」 再び訪れた無言の時。 そのまま時間が、とまった様に過ぎていく。 「……そうね、フラン。私も、吸血鬼としてのレミィとしか考えて無かったわ。思えば、ゆっくりになったのなら、それに合った生活をさせてあげるべきよね」 「じゃ、じゃあ」 「ただし、最初は本当に仲が合うかどうか、確かめてからにして。レミィが一人ぼっちになるのは見ていて辛いから……」 「う、うん。わかったパチェリー。咲夜、何か良い方法はない?」 「それでしたら、以前訪ねたゆっくり加工場で、ゆっくりペットの預かりサービスを始めたそうです。そこへ数日預けてみてはどうですか?」 主の問いに直ぐに答える、まさに完璧な従者である。 「さすが、咲夜ね。……でパチェリー達もこれで同かしら?」 「ええ、判ったわ。レミィは私達が連れて行くから。それでいいかしら? 」 誰も異論はなかった。 今、紅魔館でれみりゃが一番懐いているのはこの二人だ。他の者にも人懐っこくじゃれつくが、いざ一緒に行くとなると言うことはきかないだろう。 「じゃあ明日、連れて行ってみるわ。そのついでにアリスの家の様子も見てくるから。彼女、人形の修理大体終わったから。それと……」 彼女達に、厳しい罰は与えないで、と言い残して扉の奥に消えていった二人。明日の準備をするのだろう。 「……さてと、ああ言ってたしね。とりあえず、あなた達は全員クビよ、それ以外の懲罰はしない。少ないけど退職金も払ってあげる」 咲夜、後はよろしく。と言い残して部屋を去るフラン。 この数ヶ月で随分と主らしくなってきたようだ。 翌日はどんよりとした曇り空だった。 どうやら近いうちに嵐が来るようだ。 お気に入りのきぐるみを、背負っているリュックに入れたおかげで、よたよたしているれみりゃ。 その手を引いたパチェリーは、一応日傘をもった、小悪魔にそんな事を呟きながら屋敷を出た。 やはり、以前は天敵だった日光の中でも平気なれみりゃは、もう吸血鬼ではないのだろう。 ゆっくりれみりゃ種も、日光には耐性が合った。 しかし、長時間当たると酷い日焼けが起こる、とも聞く。 外に出たれみりゃは、辺りを駆け回ろうとしたが、直ぐにパチェリーに手を引かれ戻された。 れみりゃを小悪魔に抱えさせて空を飛んでいく。 当の本人は、空を飛んでいるのが嬉しいようで、ずいぶんご機嫌だった。 加工場に着くと、連絡してあった通りすぐに職員の年配の男に会えた。 「こちらの空き部屋を準備いたしました。片側に檻が四つ、利用は二つとの事でしたが生憎二つの部屋は今、繁殖に使って空きがないんですよ」 「それなら仕方がないですね、パチュリーさま」 抱きかかえていたれみりゃを、檻の中にを入れながらパチュリーに訪ねる小悪魔。 ついでに、一人で取れないようだったリュックも外してやる。 れみりゃは始めてみる場所に興奮していた。 中でも、二メートル程の高さにあるはめ込み式の採光窓に興味深々のようだ。 少しくらいなら飛べる彼女は、外枠まで飛んでそこを手で掴んで外を見ていた。 「そうね」 ガチャン。遅れてきた別の職員がと鍵をかける音にかぶって聞こえるパチュリーの声。 音に気が着いて首を捻る。 何の音なのか分からない、れみりゃだったが、さらに一人、知らない人がいるのを見つけると、床に戻ってリュックを開け始めた。 中から出した気ぐるみを、四苦八苦しながらなんとか着て。 「ぎゃお~、た~べちゃうぞ~!!!」 お決まりの文句を、叫ぶれみりゃ。 「でも、ここでいいんですか? わが社の系列のペットホテルなら、村をはさんで反対側に有りますが」 「いいえ、ここで大丈夫です。それより以前の契約のことでお話が……」 「あぁ、それでしたらこちらの部屋で」 何の反応も示さない職員とパチェリー達。 れみりゃを残し、部屋を去ろうとしている。 「う~♪ ぅう? う~?」 後を着いて行こうと、檻を開けようとしたが開かない。 既にパチュリー達は、出口にまでさしかかっていた。 「うー。 まっで~!まっで~!!!」 必死に泣き叫んだのが効いたのか、小悪魔が小走りでこちらに向かってくる。 「ごめんなさい、レミリア様。すっかり忘れてました」 てへっ、と小悪魔っぽく笑う。 つられて、れみりゃも涙顔で笑う。 「ぶ~。わすれると、た~べちゃうぞ~!!!」 そう言って、抱っこをねだる様に両手を差し出す。 「はい。どーぞ」 笑顔の小悪魔から渡されたのは、大きなペロペロキャンディー。 お菓子を渡されみりゃは、嬉しそうに両手で掴んで舐め始める。 「う~♪ キャンデ~おいちぃ」 「それじゃあレミリア様、また後日お会いしましょう」 手を振って、小走りで駆けて行く小悪魔、他の人は既に部屋からでていた。 バタン。 小悪魔が部屋から出ると同時に扉が閉められた。 部屋の廊下の電気も消された。 「う~? !!!」 檻を激しく揺らす。 それでも、お菓子が大事なのか。片方の手でお菓子、もう片方の手で檻を揺らす、という格好だ。 もちろん、見た目相応の力しかないれみりゃでは、檻はビクともしない。 そのうち、キャンディーを放り投げ両手で試すが、結果は同じだった。 「うー。も゛どっでぎでー。う゛ー、う゛ー」 激しい泣き声、だがこの工場では、日ごろからよく耳にする声だった。 その頃、アリス宅を訪れたパチェリー達は、寝ている三人を起こさないように魔法をかけ、家の中に入っていった。 予定通り、入るのは自由だが出ることは出来ない、簡単な捕獲魔法をかけた。 その後、眠っている三匹を加工場まで運び、れみりゃがいる部屋の一番奥の檻に入れ、その日は仮眠室で睡眠をとった。 ちなみに、れみりゃは既に泣きつかれて眠っていた。 泣きながら、きぐるみを抱きしめてそのまま眠ったらしい。 まるで、以前までその気ぐるみを着ている人に抱きつくように。 翌日、小悪魔は別な仕事があると言って出かけてしまった。 なので、今朝はパチェリー一人で、仕事に取り掛かった。 ゆっくり魔理沙の友達に、明日から嵐だから皆を誘って、ゆっくり魔理沙達の家の避難したほうがいい、と言って回った。 アリスの家に着き、姿を消して様子を見ると、ゆっくり魔理沙に味方をした様々なゆっくり達が、食べ物や酒や氷、時には薬を持ち寄ってアリスの家に入っていった。 入る前から、何かを食べているようなゆっくりも何匹かいた。 それを暫く眺めた後、その場所を後にしたパチュリーは、紅魔館に戻る前もう一度れみりゃの元を訪れた。 パチェリーを見たれみりゃは、泣き顔を無理やり笑顔にして、帰る帰ると喜んでいた。 いそいで、きぐるみを着始めるみりゃ。 「いい子にしてたら迎えに来るわ、それと食べ物はちゃんと食べること」 それだけ言って、その場を後にした。 きぐるみを着終えて、必死にリュックを背負おうとしていたれみりゃの顔は、また泣き顔になった。 紅魔館に戻り、一緒に紅茶を飲んでいたフランとアリスに、れみりゃを預けてきた事を伝え、ついでに、ゆっくり達も殆どいなくなってた、と伝えると。 「そう、人形も直ったしちょうどいいわ」 今までありがとう、と咲夜に言ってから図書館へ戻った。 蓬莱と、修復された上海人形が付いて行く。 小悪魔が、それじゃあ明後日お別れパーティーをしましょうと提案すると、フランも咲夜も二つ返事で賛成した。 原因には、ここ一年間、パーティーらしいパーティーをしていなかったことも有るだろう。 図書館に戻る際、小悪魔は思い出したように、フランにお金の入った袋を渡した。 お金の料は先日クビにした分全員の退職金と同額。 「最近、蟲に襲われたモノがいるらしいですよ」 と咲夜。 「熱湯を被って、死んだモノもいたわ」 去り際に、パチュリーが呟いた。 所変わって加工場。 「う~~♪」 着ぐるみ正面に付けられた大きなポケットから、紅魔館特製のパイ、丸ごと一個を取り出すれみりゃ。 出かける前、咲夜が渡してくれたパイだ。 「う~、しゃくやのぱ~い」 少しつぶれてはいるが、つぶれていてもおいしそうなパイ。 パチュリーが出て行ってずっと、泣いていてから、お腹が減ったれみりゃ。 まわりに、散らばっているお菓子はここで与えられた食事だが、どれも一口食べて投げ捨ててしまった。 つまり、昨日から殆ど何も食べてない。 自分の顔ほどもある大きなパイを両手で持って一かじりしようとした時。 「おや、お嬢ちゃんおいしそうなの食べているね」 朝食にキャンディーを持ってきた若い男だった。 「う~う~!!!」 手を後ろに回し、パイを隠す。 「大丈夫、とらないよ。そんなに美味しいのかいそれ?」 「う~♪ う~♪ しゃくやのぱい、おいし~」 勢いよく首を縦に振る、首を倒すたびに、ぶかぶかのきぐるみにの頭部が顔まですっぽりかぶさるのも気にしないで。 「そうかい。……その前、ちょっと一緒においで。預けられた時に、他のゆっくりを紹介して欲しいって、頼まれてたの忘れてたよ」 鍵を開けて、きぐるみを脱がせてから抱きかかえる。 「う~。 おでかけおでかけ~」 トイレ以外で、出されるのが初めてなれみりゃは、空腹を一時忘れて、始終はしゃいでいた。 到着した扉の先には、たくさんのゆっくりたちが檻に入っていた。 「お友達?お友達?ゆっくりしていってね!!!」 ここで繁殖したものなのだろう、檻に閉じ込められていても殆ど気にしていない。 「う~?」 「君と同じゆっくりだよ。お前さんもこいつらと同じ仲間だ。」 「う~!ゆっくり、ゆっくり♪」 檻の前まで行って、一緒にゆっくりと叫びながら踊るれみりゃ。 張り切りすぎて何度か顔から転んだが、ゆっくり達に励まされて泣きもせずに踊っていた。 自分と同じ仲間と話せたのが、よほど嬉しかったのだろう。 「そろそろ戻ろうか」 「また、ゆっくりしようね!!!」 「う~♪ ゆっくりするする!!!」 元気よく挨拶して部屋をでる。 自分の檻に着いた時。 きぐるみの上に置いてあったパイを見て、食べる直前に連れて行かれたことを思い出した。 「しゃくやのぱ~い、はやくあけて、あけて」 急かされながら檻を空ける職員。 そして、中に入ってれみりゃを降ろすと、彼女より先にパイをとって帰っていこうとした。 しかし、返して、お腹減ったと、れみりゃが必死にしがみ付いてきたので、イチゴしか食べていないショートケーキを放り込んで。 「ここでは、勝手に自分の物を食べちゃダメだよ」 そう言って、頬を動かし水飲ませて、れみりゃに無理やり食べさせて、帰っていった。 咲夜のパイを取られたれみりゃは、また大声で泣いた。 となりから、ゆっくり、と楽しそうな声が聞こえて、さびしくなって更に泣いた。 しかし、今度はお腹が膨れた事も手伝って、割と早く寝てしまった。 また、きぐるみを抱いて。 翌日は、トイレに連れて行かれる以外何も無かった。 お気に入りのきぐるみを着ても、元気が出なかった。 夕方になって、お腹がすいたので、散らばっている中から、小悪魔からもらった、ペロペロキャンディーを見つけてなめる。 お腹は殆ど膨れなかった気を、紛らわせるように、今日はきぐるみを着て眠った。 翌日、れみりゃより早く起きたパチュリー達は、アリス家の補修を手伝うついでに泊まってくる、と言って、三人で紅魔館を出発した。 「そういえば、フランも言っていたけど、昨日のパーティーで出たお肉、すごく美味しかったわ。小悪魔が、準備して調理したって聞いたんだけど?」 「はい、色々をお世話になったので、美味しく調理して差し上げようと思いまして。特に下ごしらえが大変でした」 ニコリと笑う小悪魔。 よほど、褒められたのが嬉しかったのだろう。パチュリーに対しての悪戯が、成功した時のような満面の笑みを浮かべていた。 アリスの家に行く前に、加工場に立ち寄る。 手筈通り、一旦小悪魔に屋敷に戻らせる。 「う! う~!う~!」 パチュリーを見つけたれみりゃが、必死で声をかける。 しかし、それを素通りして、すぐアリスと見に行ったのは、奥の檻だった。 「そうね」 とだけ口にして、パチュリーと小悪魔は直ぐに別の檻、れみりゃが入っている檻の前に立つ。 「う~♪ う~♪」 迎えに来た、と思ったれみりゃは急いで、きぐるみを着て檻の前に近づく。 リュックを片手で持ち、もう片方の手で勢いよく檻をゆらす。 希望通り、直ぐに鍵が開いた。 勢いよく、パチェリーに抱きついた。 「れみ☆りゃ☆う~♪」 そして、あのふてぶてしい笑顔で喋るれみりゃ。 「だめじゃないレミィ、食べ物をこんなに散らかして。それにこんなに残して」 悪い子ね、と耳元で呟くパチュリー。 ふと、隣を見ると、アリスがゆっくり達の卸し価格を話していた、どうやらかなり高額で取引されたようだ。 「あぅ、あぅ。……れみりゃゆっくりじでだよ! いいごにじでだよ!!!」 また檻に入れられる。 そう思ったのか、目に大量の涙を浮かべながら、必死に説明するれみりゃ。 「大丈夫よ、またここに入れたりはしないわ」 優しく、パチュリーは言う。 れみりゃ、もこれで安堵したようだ。 「まぁ、今まで屋敷で食べていたお菓子に比べたら味は落ちるでしょうけど、これからはこれで我慢しなくちゃいけないのよ。……レミィ」 ぽつりと独り言の様に言うパチェリー、それに反論するアリス、言われた意味が分かっていないれみりゃ、がそこに居た。 一方、紅魔館。 「フランドール様」 「あっ、小悪魔。加工場から戻ってきたの?」 「はい」 「それで、あのゆっくりれみりゃはどうだった?」 「はい♪ 他のゆっくりたちと仲良く遊んでおりました。ですので、寂しくて辛いですが、森に放す事にしました♪」 今回の一番の張本人がそこにいた。 please wait next story
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/465.html
前 8匹のゆっくりが生れてから1週間が経った。 巣穴には1匹の親まりさ、1匹の子パチュリー、そして7匹の赤ゆっくりがいた。 「むっきゅ!きょうのごはんはケムシさんね!ゆっくりしてておいしそう!!」 次々と口から確保したエサを吐き出す親まりさに子パチュリーは目を輝かせた。 毛虫といえば滅多に食べることができないご馳走だ。 「ゆゅー・・・、おかあさん・・・ありすもケムシたべたいよ」 「まりさもゆっくちしたいよ・・」 巣穴の隅に集まった7匹の赤ゆっくり達は、蚊の消え入るような声を上げた。 生まれて1週間が経った今も、この7匹はプチトマトサイズのまま変わっていない。 「うるさいよ!!これはパチュリーのご飯だよ!みんなはいつもみたいにゆっくりしててね!」 後頭部を向けたまま、親まりさは恫喝する。 暗かった顔をさらに暗くし、7匹の赤ゆっくりは巣穴を出た。 「ゆ・・・どうちてありすたちは ごはんをもらえないのかしら・・」 「まりさもゆっくちちたいよお・・」 「まりさ なかないでね!きっといつかゆっくちできるよ!」 「そうだよ!パチュはからだがよわいんだからがまんだよ!」 「おねーさんだからがまんしようね!!」 巣穴を出ると、小さな穴がある。 蟻の巣だ。 「ゆ・・!アリさんゆっくちちてね!まりさとゆっくちだよ!」 巣から出てきた小さな蟻に舌を伸ばす。 粘着性のある舌に捕らわれた蟻は、そのまま赤まりさの口の中に納まった。 生まれてから1週間、7匹の赤ゆっくりが食べたものは蟻と草だけだった。 巣穴の周りの草は、赤ゆっくりの旺盛な食欲のため2日でなくなってしまった。 ほんの少し離れれば、草は無限に広がっていたが、赤ゆっくりにとって巣穴から離れることは恐怖である。 親まりさから離れたら危険、そう思うと草を食べることができなかった。 育児など一度もしてくれなかった親まりさであるが、いざとなったら守ってくれると赤ゆっくりは思っていた。 「ぜんぜんおなかいっぱいにならないよ・・ゆっくちちたいよ・・・」 食欲旺盛な赤ゆっくりのお腹が膨れることはない。 思い出すのは親まりさが取ってきた、あの毛虫。 ふさふさでカラフルな毛と、はち切れんばかりに丸々とした体、とても美味しいそうだった。 「ありすもケムシたべたいよ・・」 ふとこぼれる独り言。 それを聞いた6匹の赤ゆっくりは何も返事をしなかった。 一度も親まりさからご飯をもらえたことはない。 いつだって親まりさの持ってくるエサは子パチュリーのものだった。 一度、赤まりさが子パチュリーのエサに飛びついたことがあった。 「ゆゆっ!おねーちゃんも食べちゃうよ!いっしょにゆっくちちようね!」 赤まりさはおちゃめのつもりだった。 親まりさは笑って許してくれる、そう信じていた。 周りの赤ゆっくり達も、それに便乗する形でエサに飛びついた。 そうだ、きっと許してくれる。だって自分達のお母さんだもの。 子パチュリーは病弱だから、ご飯を優先してるだけだ。 だから別に自分達は嫌われてるんじゃない、本当にお腹がすいたことが分かれば食べさせてくれるはずだ。 子パチュリーがかつてやってもらったように、きっと1匹ずつ咀嚼したご飯を口移しで食べさせてくれる。 赤ゆっくり達は無条件に親まりさを信頼していた。 しかし、親まりさにとってはもはや7匹は、最愛の子パチュリーからエサを奪おうとする敵にしか映らなかった。 結果、7匹は親まりさに巣穴からつまみ出された挙句、罵詈雑言を浴びせかけられ、死なない程度に体当たりをされた。 だが、それでも赤ゆっくり達は親まりさのことを信頼していた。 おそらく今日は機嫌が悪かったのだろう、だから次は大丈夫だ。 餡子脳と親への愛が入り混じり、現実味の無い答えが導かれる日々であった。 7匹が巣穴に戻ると、ワラのベッドの上で親まりさが飛び跳ねていた。 「ゆゆっ!パチュリーこうだよ!!ゆっくり飛び跳ねてね!!」 ワラのベッドには子パチュリーもいた。 同じように飛び跳ねる子パチュリーであるが、赤ゆっくりの身長ほどの跳躍しかなかった。 「むっきゅ!むっきゅう!!ぜんぜんとべないよ!!どうしてなの!」 子パチュリーの大きさは、すでにソフトボールほど。 未熟児だったが、もう正常に生まれるはずだった大きさまで成長できた。 「ゆっ!?どうして!?パチュリーがんばってね!!!ゆっくり跳ねてね!!」 お手本なのか、それとも勇気付けるためか、親まりさが跳ね続ける。 その高さは1メートルほどにもなる。 「むきゅっ!むきゅー!!」 何度繰り返しても子パチュリーは、自身の身長の半分ほどしか跳躍はできなかった。 この大きさのゆっくりならば、30センチメートルをゆうに越える跳躍をするはずだ。 周りで眺めている赤ゆっくり達も、子パチュリーに飛び乗るくらいは跳ねることができる。 「パチュリー、ゆっくちとびはねてね!!」 「こうだよ!ゆっくちはねようね!!」 応援するように一緒になって飛び跳ねる赤ゆっくりを見て、親まりさは気が付いた。 7匹が栄養を吸ったせいで、子パチュリーに先天的な障害が生まれてしまったことに。 「むきゅ!ありがとう!ゆっくりはねるね!!!」 7匹に笑みを向ける子パチュリーに、親まりさは顔を苦くする。 子パチュリーが今苦しんでいるのは、全てこの7匹が原因なのだ。 白々しい応援などするんじゃない、親まりさの体が怒りで震えた。 「ゆっ!赤ちゃん達、ゆっくり外について来てね!!パチュリーはゆっくり練習しててね!!」 親まりさの言葉に7匹の赤ゆっくりは目を輝かせた。 今まで親まりさから話しかけてくれることなど、一度もなかったのだ。 もしかしたら美味しいご飯を食べさせてくれるかもしれない。 「ゆ!ゆっくちついていくよ!!」 「ごめんねパチュリー!おねーちゃんはゆっくちしてくるよ!」 「ゆっくちできる!?」 「むきゅん!ゆっくりしていってね!!」 子パチュリーは満面の笑みで親まりさと7匹の赤ゆっくりを見送った。 子パチュリーは親まりさのことは大好きだったが、7匹に対する接し方は理解できなかった。 同じ姉妹なのに、餡子の繋がる8人姉妹なのに、どうして親まりさは7匹を毛嫌いするのだろうか。 そんな疑問を子パチュリーはずっと抱えていた。 ご飯を7匹にも食べさせてと言っても、親まりさは外で食べさせているといって聞かなかった。 7匹がご飯を食べさせてもらえず、最近では蟻ばかり食べていることは知っていた。 「むっきゅん・・。みんなでゆっくりしたいよ・・・」 巣穴に子パチュリーの跳ねる練習の音が響いた。 「パチュリーがゆっくりできないのは、お前達のせいだよ!ゆっくり反省してね!!」 巣穴から出た途端、7匹の赤ゆっくり達は親まりさの体当たりを受けることになった。 「ゆきゅっ!どうちて!?」 「いたいよ!!おかあさんやめて!!」 「ゆっくちできないよ!!」 「まりさはわるくないよ!!」 口々に抗議を始める赤ゆっくりであったが、そんな言葉に親まりさは耳を貸さない。 「黙ってね!!生まれただけで悪いんだよ!!ゆっくり理解してね!!!」 バスケットボールほどもある親まりさの体当たりは、プチトマトサイズの赤ゆっくりには脅威だった。 弾き飛ばされた赤ありすの中には、餡子を吐き出しているものもいる。 「ゆゆ!ゆっくちやめて!!」 「あやまるからゆるしてね!!ゆっくちゆるしてね!!」 「ごめんだよ!!ゆっくちさせてね!!」 餡子を吐き出した赤ありすの周りを6匹の赤ゆっくりが囲む。 どれも吹き飛ばされた衝撃で皮は擦り傷だらけになり、目には涙が浮かんでいる。 まとめて踏み潰す、そう思ったが親まりさはその考えを押し込めた。 ここは巣の外。 どこで群れの仲間が見ているかも分からない。 もし子供を殺していることが見つかれば、群れを追われるどころか制裁で殺されてしまう。 それだけは避けなければならなかった。 「ゆっ!わかったよ!ゆっくりやめてあげるよ!ゆっくり反省してね!!」 そういい残し、親まりさはそそくさと巣穴に戻っていった。 「ゆっ?いたがじゃまではいれないよ!」 赤まりさの餡子流出が止まったのを確認して巣穴に戻ってくると、入り口に板が挟まっていた。 7匹が協力して板を動かそうとするものの所詮はプチトマトサイズ。 全く動かない。 「うわぁああああん!!!おうちいれてええええええぇぇぇぇ!!!!」 最初に泣き出したのは赤まりさ。 それはすぐに伝染し、7匹の赤ゆっくり達は一斉に泣き始めた。 「ふんっ!そのままゆっくり死ね!」 巣の中、親まりさはかすかに聞こえる板の向こうの泣き声を聞くと、奥へと入っていった。 中ではまだ子パチュリーが跳ねる練習をしていた。 もともとが病弱なのだ、あまり練習をさせては喘息で死んでしまうかもしれない。 親まりさは子パチュリーに近づくと頬を擦りあわせた。 「ゆゆっ!今日の練習はここまででゆっくりしようね!!頑張ったご褒美にご飯だよ!!ゆっくり食べようね!」 子パチュリーは一緒に出て行った赤ゆっくり達が気になった。 「おねーちゃんたちはどうしたの?」 親まりさの顔が歪む。 「ゆっ・・・赤ちゃん達はお外でご馳走を食べているよ!だからパチュリーもゆっくりご馳走を食べようね!!」 その答えを子パチュリーは受け入れた。 きっと自分の今までのお願いを聞いてくれたのだと信じて。 「おいしい蛾だよ!!!一緒にゆっくり食べようね!!!」 食料置き場から親まりさが引っ張ってきたのは、子パチュリーほどもある大きな蛾だった。 全体的に茶色く、ところどころに見られる毒々しい模様が美しい。 運んできた親まりさの顔は、そのリンプンで包まれている。 「むきゅーっ!!ゆっくりできそう!!!」 「お腹のおいしい部分はパチュリーが食べてね!!」 羽を千切り、蛾の膨らんだ胴体部分を親まりさは差し出した。 子パチュリーが胴体を噛むと、飛び出した緑色の体液が口内に広がる。 「むっきゅうーん!!おいしい!すごくゆっくりしてるね!!」 顔をリンプンだらけにしながら羽を貪る親まりさも満足げな顔だ。 一方、外に締め出された赤ゆっくり達は途方に暮れていた。 「ゆっ・・・からだがいたいよ・・・」 「うぅううう・・・どうちたらいいのおおおお・・・!!」 「ゆっくちしたいよおお!!!」 季節は秋。 凍死するほどではないが、秋の風は容赦なく体当たりで傷つけられた赤ゆっくり達の体力を奪っていく。 「ゆっ!みんなであつまろうね!そのほうがゆっくちできるよ!」 赤ありすの指示で7匹が一箇所に集まる。 風を遮るものが何もない、平野のど真ん中に位置する巣。 巣から少し離れたところには草もあるし、風を遮る大きな石もある。 だが、そこまで行くことは恐怖でしかなかった。 「ゆっ・・・!きっとおかあさんがあけてくれるよ!ゆっくちまとうね!!」 板の前で7匹は身を寄せ合い震え続けた。 「ゆっ、まだ生きてたの?」 親まりさが巣穴から出てきたのは数時間後のことだった。 いつまで経っても戻ってこない赤ゆっくりを心配に思った子パチュリーが騒いだため、仕方なく板を外した。 巣穴の入り口で7匹は一塊になって熟睡している。 「ゆぅ・・・ゆゅ・・・」 いびきのような、寝息のような声を立てて眠っている7匹に殺意が芽生えた。 しかし親まりさは思いとどまる。 「早く起きてね!ゆっくり中に入ってね!!」 砂利を口に含んだ親まりさが、寝ている7匹に向かって勢いよく吐き出す。 飛んだ砂利が赤ゆっくり達の体を容赦なく叩きつける。 「いちゃいっ!!!」 「ゆきゅああっ!!」 「いっちゃいよぉぉおっ!!」 傷口から砂利が内部に入り込んだ赤ゆっくりもいるようで、尋常でない叫び声をあげるものもいる。 「言わなくても分かってるよ!早く中に入ってね!今度は開けないよ!!!」 「ゆっ!いちゃいけどゆっくちはいるよ!」 「すぐはいるよ!しめないでね!!」 「ゆきゅっ・・・!!いちゃいよっ・・・・」 傷が浅いものは飛び跳ねて、砂利が内部に入った赤ゆっくりは転がりながら巣穴へと入っていった。 それからまた1週間が過ぎた。 赤ゆっくり達はまだ赤ゆっくりであった。 食料は一切もらえず、最近では蟻の巣も壊滅状態で餓死寸前であった。 子パチュリーから見えない位置に体当たりで追いやられ、7匹は身を寄せ合い生きていた。 「ゆっくち・・・ゆっくちできないよ・・・・」 土を食べていた赤ありすがたまらず吐き出した。 やはりここには食べるものなど何もない。 「どうちてありすたちは ゆっくちさせてもらえないの・・・?」 「ゆっくちしたいよ・・」 弾力のない皮をすり合わせる7匹。 すると、決心したのか1匹の赤ありすが言った。 「おかあさんが ごはんをとりにいってるうちに あるものをたべてゆっくちしよう・・・!」 親まりさはいつも、子パチュリーがいつお腹を空かせてもいいように食料を溜め込んでいた。 赤ありすはそれを食べてしまおうと提案したのだ。 「ゆっ・・・ゆっくちできなくなるくらいなら、おこられたほうがいいね・・・」 「そうだね・・・みんなでたべようね・・・」 のろのろと食料を保管してある場所へと向かう。 自分達が隔離されていた場所からはそう遠くない。 ゆっくりと、確実に進む。 「ゆっ!あれだよ!ゆっくちできるよ・・・!」 枯葉で隠してある食料保管庫だ。 すぐさま7匹が駆け寄り、中身を確認する。 蛾、ムカデ、ダンゴムシ、アゲハチョウにタンポポ。 御馳走だらけだ。 「ゆっく!もうがまんできないよっ・・!」 赤まりさが飛びついたのを皮切りに、一斉に食料を貪り始める。 「ゆっ!!めっちゃうめ!!」 「ゆっくちできるぅー♪」 「しあわせー♪」 「ゆっゆっゆ!!!ゆぅあああーー!!」 単純な体のためか、あっというまにプクプクに膨れ上がる7匹。 保管庫に溜めてあった食料はあっという間に無くなった。 「ゆー♪」 「おいちかったね!」 「ゆっくちできたよー♪」 「ぷくぷくだね!!」 「でっぷりちていってね!!」 お互いに、膨れ上がった体を見て笑い始める。 久々の満腹でテンションは最高潮だった。 「でもおかあさんになんていうの?」 「ぜんぶたべちゃったね・・」 もうすぐエサ取りを終えた親まりさが帰ってくることを思うと、赤ゆっくりの中に不安が芽生える。 「だいじょうぶだよ!こんなにぷっくりしたありすたちをみれば、きっとよろこんでくれるよ!!」 「そうだよ!げんきなまりさたちをみれば きっとゆるしてくれるよ!!」 餓死寸前に追いやられてなお、赤ゆっくり達は親まりさを信頼していた。 日々体当たりをされ、罵倒され、食事を与えられず、しかしそれでも赤ゆっくりは親まりさが好きだった。 「だって、ありすたちのおかあさんだもん!!」 ただそれだけが唯一、この7匹を支えるものだった。 「ゆっくり死ね」 帰宅した親まりさは、丸々と太った7匹とカラッポの食料庫を見て言った。 顔は般若のごとく変貌し、怒りで体は小刻みに震えている。 「どうじでぇええ!!?まりさだち、ごんなにがわいいのにいぃぃぃ!!!」 「ありず、ごんなにぷりぷりじてるんだよぉお!?」 見当違いの弁解に、親まりさは何も答えない。 親まりさの頭の中は、どうやって7匹を殺そうかという考えだけだ。 「おがあざん!!ゆるじでええ!!だっで、ありずだちはおがあざんのこどもでじょ!!!??」 大粒の涙を流して許しを乞う赤ありすの一言に、親まりさの顔がさらに歪んだ。 ありすたちはおかあさんのこどもでしょ? アリスたちはおかあさんのこどもでしょ? アリス達はお母さんの子供でしょ? リンゴのように赤くなった親まりさは唾を撒き散らしながら怒鳴りつけた。 「お前達は悪魔の子供だよっ!!!ま゙り゙さはお゙前らな゙んか一度だっで子供だと思ったこどはな゙いよ゙ぉっ!!」 一瞬、巣穴が静寂に包まれる。 赤ありすの眼は焦点が定まらなくなる。 自分は親まりさの子供だ、それだけを頼りに今日まで必死で耐えてきたのだ。 それなのに悪魔の子だと言われ、大好きなお母さんは鬼のような顔で自分をにらみつけている。 受け入れられるわけなかった。 信じたくなかった。 「お゙前らな゙んか誰に゙も望ま゙れずに生まれてきたんだよ゙っ!!!わかったらゆっくり死ねっ!!!」 親まりさの手前にいた赤ありすが、手加減のない強烈な体当たりを受けて弾け飛んだ。 「ゆっ・・・!?」 いつも一緒だった、7匹の赤ゆっくり。 その大切な1匹が、餡子を撒き散らしながら死んでいた。 満足にゆっくりできることもないままに。 「ゆぁ゙あ゙あ゙あ゙っ!!!な゙んでごどずる゙の゙っぉぉぉぉお゙っ!!!!」 潰れた餡子に跳ねよるが、もはや皮はバラバラで蘇生はどう見ても不可能だ。 だとすればどうすればいいのだろう、赤ありすは必死で少ない餡子を回転させる。 「ゆっ!!みんなにげるよっ!!!」 赤ありすは巣を離れる決心をした。 ここにいては危険だ。 親への愛を、間近に迫る脅威が上回った。 「ゆっ!わかったよ!!」 「ゆっくちしないでにげるよ!」 6匹がいっせいに巣穴から飛び出した。 それを追うのは狂乱状態の親まりさ。 もはや親まりさは怒りで我を忘れている。 赤ゆっくり達は、初めて巣穴から遠く離れたことに全く恐怖は感じなかった。 それよりもすぐ後ろまで迫ってくる親まりさから、いかに逃げ延びるかが重要だ。 草むらに飛び込み、大きな石を越え、森へと逃げ込んだ。 森は身を隠すのに適したものがいくつでもあった。 赤ゆっくり達6匹は大きな石の裏に隠れ、親まりさをやりすごすことにした。 「ゆっ・・・どうじでぇ・・どうじでなのぉ・・・」 こぼれる涙と、理不尽な運命への怨みつらみ。 親まりさの怒号が遠くになっていくのを感じ、6匹は森の中をふらふらと当てもなくさまよった。 「ゆっ!?こんなところに赤ちゃんがいるわよ!どうしたの!?」 森をさまようこと数時間。 目の前には自分たちよりも遥かに大きい、バレーボールほどのゆっくりアリスがいた。 始めてみる成体ゆっくりに、6匹は警戒する。 「ゆんゆん、そんなに構えなくても大丈夫よ!とかいはのありすは優しいのよ!!」 6匹は不思議な感じがした。 なぜだか、このゆっくりアリスは信頼できるような気がする。 気が付くと、6匹はまるで警戒心がなくなっていた。 「とかいはのお姉さんに、ちょっとお話をしてみるといいわよ!」 赤ゆっくり達はいままでの経緯を簡単に成ありすに説明した。 生まれたときから相手にされなかったこと、ご飯を貰えず大きくなれなかったこと、追い出されたこと。 そして、これからどうするかを決めていないことも。 成ありすは、赤ゆっくりの話をちゃんと聞いてくれた。 生まれてから、成体ゆっくりと一度も会話らしい会話などしたことがなかった赤ゆっくりにとって、それはとても新鮮であった。 赤まりさ2匹は、成ありすにすぐに懐いた。 自身と同じ魔理沙種の親まりさが、あんな酷い親だったのだ。 アリス種の姉妹は優しい、そして目の前の成ありすもそうだ。 赤まりさの目には、アリス種はとても素敵な種族に映った。 それになんだか、成ありすも赤まりさのことを気に入っているようで、赤ありすに対してよりも長く頬擦りをしていた。 赤まりさは生まれて始めての成体との頬ずりに感動し、親まりさに追われていることも忘れてはしゃいだ。 「ゆっ!おねーさんはすごくゆっくちできるよ!」 「まりさ、おねーさんとゆっくちしたいよ!」 その言葉が嬉しかったのか、成ありすはヨダレを垂らしながら微笑を返した。 誰かに悩みを聞いてもらうことは、自身の心の整理に繋がる。 成ありすとしばらく話をしていると、だんだん赤ゆっくりも落ち着きを取り戻していた。 「ゆ、みんなそろそろ落ち着いたみたいね!これからどうするのか、ゆっくり考えてね!!」 成ありすの一言に、6匹は円陣を組むように集まった。 親まりさの元に帰るという結論を出したのは、赤ありす4匹であった。 「ちゃんとあやまったら ゆるしてくれるよ!」 「そうだよ!ありす、あくまのこじゃないよ!おかあさんのこどもだもん!きっとゆるしてくれるね!!」 「おかあさんとはなれたくないよ!」 「おかあさんといっしょじゃないと ゆっくちできないよ!!」 赤ゆっくりは生存能力の無さから、親に頼らざるを得ない。 その本能が、またしても赤ありすから正常な判断を奪ってしまった。 さっきはいきなりだったから怒ってしまったんだ。 ちゃんと謝れば許してくれる。 いつもと同じ考えだった。 対して、親まりさの元には戻らず、成ありすと行動を共にすることを選んだのは赤まりさ2匹だ。 「あんなのおやじゃないよ!」 「おねーさんといっしょのほうがゆっくちできるよ!!」 親に対する愛情よりも、生きるためならすぐ裏切る魔理沙種の本能が強く現れたのだろう。 成ありすが一緒に暮らすことを提案したとき、すぐに赤まりさは賛成した。 姉妹は一緒に行動を共にしたかったが、結局どちらも折れることはなく、ここで別れることになった。 森の入り口の近くまで、成ありすに赤ゆっくり達は連れてこられた。 「ゆっ!じゃあここでお別れをしようね!ちっちゃいありす達もゆっくりしていってね!!」 成ありすの声に、赤ありす達が振り向いた。 「ゆっ!きっとまたあえるよ!まりさもゆっくちしててね!!」 「はなれてても しまいだからね!!ゆっくちしていってね!!」 「おねーさん!!まりさをゆっくちさせてあげてね!!」 「ありすたちもゆっくちするからねー!!!」 その顔に迷いはなかった。 赤まりさ達も、飛び跳ねながら返事をしている。 「まりさはゆっくちするよ!みんなもゆっくちしていってね!!」 「ゆっくちするよ!!みんなもゆっくちだよ!!」 離れていく4匹の赤ありすの後頭部を3匹は見送った。 「それじゃあ、とかいはのありすのおウチへ案内するわよ!」 「ゆ!ゆっくちしようね!おねーさん!!!」 「ゆゆっ!これからいっしょにゆっくちだよ!」 成ありすの笑った口元からは、とめどなくヨダレ、そして赤まりさが見たこともない粘着質のある体液が溢れている。 きっと、家族が増えて嬉しいんだろう。 赤まりさ達は自分を歓迎してくれる成ありすのことが大好きだった。 森を抜けると、見慣れた巣穴が少し遠くに見えた。 「ゆゆっ!あのおねーさんはすごいね!!!」 「ほんとだ!おうちがあるよ!!」 成ありすには巣穴の場所は教えていない。 やっぱり大人のゆっくりアリスは凄いんだね、赤ありす達は深く考えずに納得した。 「ゆ!はやくかえろうね!!」 「おかあさんにゆっくちあやまろうね!!!」 森を抜け、石を飛び越え、巣穴の前の草むらに飛び込んだときだった。 「ゆぴゅぼあっ!!!」 気が付くと、4匹いた赤ありすが3匹になっていた。 空に舞う黒い影は、かつて赤ありすだったものだ。 「ゆっくり死ねっ!!!」 草むらに潜んでいた親まりさが飛び出してきた。 3匹は殺された1匹を諦め、すぐに謝罪を始める。 「ゆっ!ありすはんせいしたよ!!ごはんをたべてごめんなさい!!」 「おかあさんゆるちて!!ゆっくちはんせいしたよ!!」 「ゆっくちさせてよ!!」 「うるさいよ!!ゆっくり死んでね!!それが反省だよ!!」 飛び跳ねた親まりさが、まとめて2匹の赤ありすを踏み潰す。 完全に下敷きになった赤ありすは、悲鳴をあげる間もなく絶命した。 「ゆっぐっ!!ゆ゙っ!!!おがあ゙さん゙ん゙ん゙!!ありずいいごにずるがらあああああ!!!ゆるじでえええ!!!」 ひどくゆっくりした動作で近寄ってくる親まりさ。 次の瞬間、信じられないようなほど空高く親まりさは飛び上がった。 ああ、お母さんはあんなにジャンプができるんだね。 凄い。 ありすもお母さんの子供だもん、大きくなったらあんな風に跳べるかな? 視界が黒に染まるまで、赤ありすはそんなことを考えていた。 「まりさ、まりさはゆっくりできないんだね。自分の赤ちゃんを殺すようなまりさはゆっくり死んでね」 餡子にまみれた親まりさが振り返ると、そこには1匹のゆっくり霊夢がいた。 体の大きさは親まりさと同じくらい。 ご近所に住むゆっくり霊夢だ。 親まりさは何度かエサ取りで一緒に協力したことがあった。 『自分の赤ちゃん』 親まりさは、ゆっくり霊夢の言ったことに苛立ちを隠せない。 「ゆ!あんなのはまりさの子供じゃないよっ!!れいむはゆっくり理解してねっ!!!」 れいむになぜあんな子供のことを言われなければならないのだろう。 親まりさはれいむに背を向けた。 こんなバカは放っておいて、さっさと巣に帰ろう、親まりさはそう思ったのだ。 「ゆっ!?」 しかし、そこには10匹近くの成体ゆっくり、そして1匹の大きなゆっくり霊夢がいた。 バランスボールほどあるゆっくり霊夢は群れの長だ。 「ゆっ。まりさは赤ちゃんを殺したね、ゆっくりあの世で反省しようね!それがこの群れの掟だよ」 長れいむが言うと、成体ゆっくりが親まりさをとり囲む。 四面楚歌。 成体ゆっくりの大きさは全てが親まりさと同じか、それ以上だ。 それに長まででてきては、勝ち目はなかった。 「ゔるざい゙よ゙ぉ゙っ!!な゙に゙も知らな゙いバカなヤツら゙はゆ゙っぐり゙死ね゙っ!!!ゆっぐり゙死ねぇ゙え゙ええ゙っ!!!!」 平原に親まりさの呪詛の言葉が響いた。 「むきゅう・・・おかあさん、まだかな・・・」 一人巣穴に残っていた子パチュリー。 食料保管庫を赤ゆっくりに荒らされ激怒した親まりさは、子パチュリーが止める間もなく出て行ってしまった。 子パチュリーは親まりさが帰ってきたら、ゆっくりと話し合うつもりであった。 赤ゆっくりを目の敵にするのは理由があるのだろう、だが子パチュリーはそれでも赤ゆっくりを平等に扱って欲しかった。 なぜなら、自分達は姉妹なのだ。 餡子の繋がった、かけがえのない姉妹。 自分の見えない位置に追いやられ、餓死しそうになっていた赤ゆっくりを子パチュリーは眺めることしかできなかった。 悔しくて悲しくて、ワラを涙で濡らすこともあった。 親まりさに直訴しても、苦笑いをするばかり。 でも、それも今日までにするつもりだったのだ。 帰ってきた親まりさと話し合いをし、折れてもらわなければ巣を離れる決意までした。 「おねーちゃんたちと、ゆっくりしたいもんね!むきゅっ」 自分より遥かに小さなお姉さん。 いつも満足に跳ねることができない自分に、お手本を見せてくれた優しいお姉さん。 子パチュリーは赤ゆっくりのことが大好きだった。 「おかあさんがもどってきたら、ぱちゅががんばるからね。きっと、みんないっしょにゆっくりできるよ・・」 幸せな日々を夢見つつ、ワラの上の子パチュリーは親まりさを待ち続けた。 作:アルコールランプ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1589.html
前 ~ゆっくりレティの生涯(後編)~ -冬- 冬、それは一年でもっとも気温が下がり、様々な生物が活動を休止する季節である。 ゆっくりは冬眠することができないので、巣穴の中でゆっくりとした時間を過ごしている。 『ゆぅゆぅ・・・z z z z z 。』 エネルギー消費を抑える為、ゆっくりレティは気持ちよさそうに眠っている。 巣穴の中はゆっくりレティが移動できる程広いため、通常種達は飛び跳ね遊びまわっているが、閉ざされた巣穴の中 で出来る事など限られているため、すぐに飽きてしかたなく落ち葉の上に戻り眠りにつく。 しかし、ゆっくりパチュリーを除けば所詮皆餡子脳、一晩眠れば深く印象に残っていない昨日遊んだ事など忘れてし まう。 窮屈な巣穴の中でも毎日楽しく過ごすことができるのは、ある意味ゆっくりの特権である。 ゆっくりパチュリーによる食糧の配分も順調であり、群れのゆっくりは皆春を迎えたら何をしようか思いを馳せなが らゆっくりと過ごしていた。 しかし、越冬を開始して1ヶ月半が経とうとする日、事件が起こった。 「むっきゅー!これはどういうこと!?まりさせつめいして!」 「ゆ!・・・・・ゆぅ。」 問い詰められているゆっくり魔理沙の横では、通常の2倍近くに膨れ上がったゆっくり霊夢が涙を流していた。 ゆっくり霊夢は「にんっしん」していた。 2匹はまたしても理性に負け「すっきり」してしまったのだ。 ただ、以前と違うのは胎内妊娠型で「にんっしん」しているという事である。 そして、ゆっくり霊夢は夏起こった出来事が記憶に深く刻み込まれているため、これから起こる事に恐怖し涙を流し ている。 身動きのできないゆっくり霊夢は通常種に押され、ゆっくりレティの前に運ばれた。 『ゆっくりー!』 群れの掟をまたしても破った2匹に対し、ゆっくりレティはご立腹である。 「むきゅ、おおきなあかちゃんがうまれたらしょくりょうがたりなくなるわ! ここからでていくにしてもそとはさむくてでていったらしんじゃうわよ。 かわいそうだけどしにたくないならみんなでれいむにのってなかのこどもをつぶすしかないわよ!」 ゆっくりパチュリーの宣告を聞き、ゆっくり霊夢の顔はみるみる青ざめていく。 「い、いやあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !もうあかちゃんはしなせなくないよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 「むきゅぅ・・・、れいむはいやみたいだけどまりさはどうするの?」 我を失って泣き叫んでいるゆっくり霊夢には正常な判断ができないと判断したゆっくりパチュリーは、事の決定を父 親役であるゆっくり魔理沙に委ねる事にした。 「ゆ・・・・・。」 ゆっくり魔理沙は押し黙り、その貧弱な餡子脳で必死にどうしたらいいのか考える。 1分考えた後、ある結論に達した・・・。 「あかちゃんはまたつくればいいよ!れいむがしなないようにあかちゃんをつぶすよ!」 「どおじでぞんなごどいうのお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 ゆっくり魔理沙の導き出した答えを聞き、ゆっくり霊夢は泣き叫びながら抵抗しようとその重い体を必死に動かそう とする。 しかし、「にんっしん」しているゆっくりが抵抗できる筈もなく、ゆっくり霊夢はゆっくりレティの舌に巻きつけら れ、まったく身動きが取れなくなってしまった。 「むきゅ、みんな!れいむのためよ。」 ゆっくりパチュリーが先陣を切り、ゆっくりレティの舌をうまく伝ってゆっくり霊夢の上に飛び乗る。 その後を無言でゆっくり魔理沙、ちぇん、みょんが続いていく。 「いやだあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!れいむの、でいぶのあがぢゃんがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」 「むきゅ!みんないっせいにとぶのよ!おもいっきりとぶことがれいむのためよ!」 一瞬の沈黙の後・・・。 「いくわよ、せーの!」 「ごめね ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !れいむう ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ !」 「ゆるしてねー!ゆるしてねー!」 「すまないみょ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ん!」 「やめでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 ぶちゅっ! ゆっくり霊夢の胎内から何かが潰れた音がし、産道と思われる場所からは潰れた皮と餡子混じり流れ出ていた。 「あ、あ、あかちゃんが・・・れ、れいむ・あか・ん・・・・・。」 ショックのあまりゆっくり霊夢は気を失ってしまった。 「むきゅ~・・・。みんな、れいむをべっどにはこぶわよ。」 体が縮んだゆっくり霊夢を4匹の通常種達が協力し寝床まで運び、ゆっくり魔理沙を残し皆無言でその場から離れた。 次の日、ゆっくり霊夢は目を覚ましたが、呆然としたまま丸一日が過ぎてしまった。 そして一週間後、ゆっくり魔理沙の懸命な看病のおかげでゆっくり霊夢はなんとか元気を取り戻すことができた。 「れいむごめんね・・・まりさきめたよ!はるになったらここをはなれていっしょにくらそうね!」 「ま、まりさ!こんどはたくさんあかちゃんといっしょにゆっくりしようね!」 子供を潰され苦しんだ元凶はゆっくり魔理沙であるが、その懸命な看病を餡子脳で都合の良い方向に理解したゆっく り霊夢は、ゆっくり魔理沙の申し出をあっさり受け入れた。。 2匹は幸せな生活を想像しながら春になるのを今か今かと待つのであった。 -晩冬- いよいよ冬も大詰め、一年で最も雪が降る季節。 順調に越冬を迎えたゆっくり達もこの時期になると所々の巣で騒がしくなる。 とある仲の良い一家の巣では・・・。 「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !やめちぇおかあしゃあ ぁ ぁぁ ぁ ぁ ん!」 「いちゃいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !おとおしゃんやめちぇえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 巣穴の中はまさに地獄絵図、越冬中に子育てをしようとしたゆっくり霊夢と魔理沙であったが、食糧が足りなくなり 自分の生んだ子供達を次々と貪っていた。 「ごめんね、ごめんね。いきておちびちゃんたちのぶんもゆっくりするよ。」 「うっめ、めっちゃうっめ♪」 泣きながらプチ達を食べるお母さん霊夢に対し、お父さん魔理沙は食事を楽しむようにプチ達を貪っていた。 プチ達を食べたところでまだまだ続く冬を乗り切れる筈もない。 子供を食べようと考えた時点でこの一家の運命は既に決まっていた。 春を迎える頃、この巣穴には1匹の餓死したゆっくり魔理沙の死体が転がっているのであった。 一方ゆっくりレティの群れでは・・・。 ※ NatureEND(人間の介入無し)→★ AQNEND (某着物の少女が登場)→☆ ★ NatureEND 「ゆゆ?ぱちゅりーなんだかへんなおとがするよ?」 「まりさ、こわいよぉ。」 「いりぐちのほうからへんなおとがするみょん。みてくるみょん。」 「ひとりじゃきけんだよー、ちぇんもいくよー。」 「むきゅ、たしかにへんなおとが・・・。」 パラパラパラ・・・ドサ・・・ズザザザザザザザザザザ!!! 「てぃむぽー!」 「わからないよー!」 突如巣穴が崩落し、様子を見に行ったゆっくりちぇんとみょんは巻き込まれて下敷きになってしまった。 「「「ちぇーん!みょーん!」」」 崩落は止まることなく残った3匹目掛けて迫ってくる。 「むきゅ!れてぃのところまでにげるわよ!」 「「ゆっくりしないでりかいしたよ!」」 3匹は必死に飛び跳ね、ゆっくりレティのいる奥の部屋へ向かう。 しかし、崩落はどんどん迫り・・・。 「むっきゅう ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ !」 体が弱く、体力の少ないゆっくりパチュリーがついに土砂の下敷きになってしまった。 ゆっくりパチュリーの悲鳴は2匹にも届いていたが、今足を止めると自分達もゆっくりできなくなると貧弱な餡子脳 でもさすがに理解していたため、ひたすら前へ進み続けた。 そして一番頑丈に作ったゆっくりレティの部屋に入った時、ようやく崩落が止まった。 「「ゆぅ、ゆぅ、ゆぅ、やっとゆっくりできるよ。」」 この冬、幻想郷には大寒波が到来し、例年以上の雪をもたらした。 通常種達には到底作ることができない程頑丈な巣穴を作ったが、所詮はゆっくりの作るもの、雪の重みでついに巣穴 が崩落してしまったのだ。 ちなみに、ゆっくりレティの群れの巣穴が崩落する数日前には周辺の巣穴のほとんどは既に崩落し、中のゆっくりは あの世へ旅立っている。 「れてぃ、みんなゆっくりできなくなっちゃたよぉ・・・。」 「れてぃ、これからどうしよう?」 いつも寝てばかりいるゆっくりレティもさすがにこの緊急事態に直面し、膨大な餡子脳をフル回転して助かる方法を 考えている。 そしてある結論にたどり着いたゆっくりレティは、静かに2匹に背を向け壁を掘り始めた。 「ゆゆ?れてぃ、でぐちはそっちじゃないよ!」 「れてぃ、まりさのいうとおりだよ!」 2匹を無視してゆっくりレティは必死に壁を掘り続ける。 ゆっくりレティの導き出した結論はこうだ。 崩落した場所は土が軟らかくなっているため、掘り進んでも再び崩落の危険がある。 当然天井を掘るなど自殺行為で、唯一希望があるのは崩落の反対側を掘り進むというものだ。 崩落から三日が経った。 ゆっくり霊夢と魔理沙は空腹で元気が無く、ゆっくりレティも体を動かしているため体力の消耗が激しく、頬に貯め た食糧の消費ペースが上がり、ついに底を尽いてしまっていた。 「おなかへったよぉまりさぁ。」 「まりさもおなかぺこぺこだよれいむぅ。」 2匹がぼやいているとゆっくりレティは動きをピタっと止め、2匹の方へ擦り寄って行く。 「ゆゆ?どうしたのれてぃ?」 「たべものくれるの?」 『ゆっくりくろまく~!』 「「どどどどど!どうじでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!」」 素早く(ゆっくり比)舌を巻きつけられた2匹はそのまま口の中へ消えていった。 「いだいよお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!でいぶをだべないでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!」 「まりざはおいじぐないよお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!でいぶをだべでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!」 3分後、ゆっくりレティは何事も無かったかのように壁を掘り続けていた。 ゆっくりレティは分類上は捕食種に位置し、群れを作るのは食糧を集めさせて自分自身がゆっくりするためである。 しかし、群れを作るもう1つの理由があった。・・・それは非常食である。 そう、食べられた2匹はまさに非常食として今日まで生かされていたのだ。 さらに3日が経過した。 ゆっくりレティの体力は既に限界であり、その頭の良さからもう助からないのではないかと脳裏によぎるようになっ ていた。 しかしその時! パラッ・・・ はがれ落ちた壁の小さな穴からは一筋の月明かりが差し込んでいた。 『ゆゆ!?』 嬉しさのあまりゆっくりレティ体当たりで壁を壊して月明かりの中へ飛び込んだ。 『ゆ!ゆっくりいぃぃぃぃぃ・・・い?』 ゆっくりレティは確かに外へ出ることに成功した。 ただその場所は・・・・・。 『ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』 ゆっくりレティはものすごい勢いで自由落下を開始した。 壁を掘って貫通した先は崖の中腹であり、当然足場など無かった。 「う~♪きょうはたいりょうだどぉ~♪」 1匹のゆっくりれみりゃ希少種(体付き)が月夜の空を食べかけのゆっくり魔理沙を持って飛んでいた。 春になり浮かれて巣穴を開けっ放しにしたまま寝ていたゆっくり一家を一網打尽にした帰りである。 『ゅぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!』 「う~?なんのおとだどぉ~?」 突然訳のわからない音が聞こえたゆっくりれみりゃは空中で静止し、辺りを見回した。 「なにもないどぉ~?」 しかし音はだんだん大きくなっていき、上からだと気づき見上げた時だった。 『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』 「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 気づいた時には既に手遅れ、ものすごい勢いでゆっくりれみりゃを巻き込みゆっくりレティは落ちていった。 ブッチャッーン! ゆっくりれみりゃは物言わぬ肉まんに、ゆっくりレティも物言わぬ巨大な饅頭となった。 こうして捕食種ゆっくりレティの生涯は閉じたのであった。 ☆ AQNEND 「むきゅ~♪このままならぶじはるをむかえられそうよ♪」 ゆっくりパチュリーの発言を聞き、通常種達は歓喜する。 「みょーん・・・でもはるになったられいむとまりさとはおわかれみょん・・・。」 「わかるよーさみしいんだねー。」 「むきゅぅ、しかたないわ、ふたりのきめたことだもの。そうべつかいはせいだいにやりましょうね!」 ゆっくり霊夢と魔理沙は春になったら群れから出て行くことを皆に伝えており、ゆっくりレティの承諾も受けていた。 「さみしいけどたくさんあかちゃをうんでゆっくりしようってきめたんだよ!」 「ゆぅ、れいむといっしょにさいこうのゆっくりぷれいすをみつけてゆっくりするよ!」 通常種達は長い時間を過ごした仲間との別れは寂しいが、ゆっくりできる春を待つのであった。 -春- 「むきゅ~♪そろそろそとにでてもいいころよ。れてぃをよびにいきましょう♪」 「「「「「ゆ~ゆっゆっゆ~♪」」」」」 5匹は歌を口ずさみながらゆっくりレティの部屋へ向かった。 『ゆっくり~♪』 ゆっくりレティは足早に入り口に向かい、舌を使って器用に塞いだ入り口を掘っていく。 ビューーー 通常種が通れる程の穴が開き、春の心地よい風が吹き込んできた。 「むきゅー♪みんな、れいむとまりさのそうべつかいのためのおいしいたべものをさがしにいきましょう♪」 先陣を切ったのは意外にもゆっくり霊夢であった。 越冬中に亡くした子供達への思いが強く残り、ゆっくり一倍この春の待ち望んでいたのだ。 ゆっくり霊夢は光の中へ飛び込んだ。 「ゆっく・・・。」 「春一ゆっくりみーつけた!」 グチャッ! 希望に胸を膨らませて巣穴から飛び出したゆっくり霊夢はほんの数秒で物言わぬ饅頭と化した。 ゆっくり霊夢のすぐ後ろについていたゆっくり魔理沙は目の前で起こった出来事が理解できずに呆然としていた。 「いいわ~その顔!希望に満ち溢れ巣穴から飛び出したゆっくりを潰す快感!たまらない!たまらないわ~!」 「れいむ?なにねてるの?いっぱいゆっくりしようってやくそくしたよ!ねぇおきてよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の亡骸の傍で必死に叫び続けていた。 「あらあら、つがいだったのね。大丈夫よ、あなたもすぐに同じ場所へ行くのだから。」 ゆっくり霊夢を潰した少女の右手には玄翁(げんのう)が握られていた。 「よくも、よくもれいむをころしたなあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !ゆっくりしねえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 ゆっくり魔理沙はゆっくりらしからぬ物凄い剣幕で少女に飛び掛った。 「あぁ、その我を忘れて飛び掛ってくる顔もいいわ~。・・・潰しがいがあってね!!!」 グチャッ! 飛び掛るゆっくり魔理沙を少女は玄翁で横から思い切り殴った。 ゆっくり魔理沙は物凄い勢いで木に激突し、少女の宣言通りゆっくり霊夢と同じ様に物言わぬ饅頭と化した。 ゆっくり魔理沙に続いて巣穴から飛び出した3匹の通常種達は・・・。 「わからない!わからないよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 ゆっくりちぇんはもう何が起こったのか理解できず、泣きわめいている。 「みょ、みょみょみょみょみょ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ん!」 ゆっくりみょんは体力も有り、力の強い(ゆっくり比)ゆっくり魔理沙が一瞬にして潰されてしまったのを見て動揺 している。 「むきゅ!むきゅきゅきゅきゅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ん!・・・・おぇぇぇ。」 ゆっくりパチュリーは、目の前で起こった惨劇に絶えられず嘔吐してしまっている。 「あらあら、春先からこんなにたくさんのゆっくりを見つけられるなんて、あぁ!し・あ・わ・せ!」 玄翁を握る少女の手に力が込められた次の瞬間! グチャッ!グチャッ!・・・ブチャッ! 断末魔さえ残す事さえ許さず3匹は物言わぬ饅頭と化した。 「うふ、うふふふふふふふふふふ!はぁ・・・はぁ・・・たまらないわ~!饅頭を潰すこの快感!1匹潰すたびに快感 が私の体を駆け巡るわ~。」 少女は全身はあま~い匂いで覆われ、饅頭を潰した快感に酔いしれっていた。 『ゆ!ゆっくり!?』 巣穴の入り口を開け終ったゆっくりレティが巣穴から出ると、目の前には惨状が広がり、その中心には1人の少女が 立っていた。 「まあ!巣穴が大きいからひょっとしたらと思っていたけど、まさか初めて見るこんな大きなゆっくりがいるなんて! あぁ、この幸運に感謝するわ。」 ただならぬ少女の気配を感じ取ったゆっくりレティは、この惨劇の主犯がこの少女であると確信する。 そして、見るからにひ弱そうな少女になら勝てると結論を出した。 『ゆっくりくろくお・・・お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 ゆっくりレティは今だ嘗てない大声で悲鳴を上げた。 少女の動きを封じようと伸ばした舌が巨大な杭で地面に固定されていた。 杭を打ち込んだのは当然少女であり、その激痛は今まで痛みという痛みを感じたことがないゆっくりレティにとって すさまじいものであった。 「ふふふ、普通のゆっくりと違って潰しがいがありそうね♪」 少女はにっこりと笑い、ゆっくりとゆっくりレティに近づいていく。 ゆっくりレティは初めて恐怖というものを味わっていた。 そして、この少女には敵わないと判断し、舌を無理やり引き千切ってでも逃げようと結論を出した。 『ゆっぐりー!』 杭を引き抜くためにゆっくりレティは力いっぱい上へ飛んだ。 「に・が・さ・な・い・わ・よ!!!」 シュン! 一瞬風を切る音がしたと思った次の瞬間! 『うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 とてもふとましい悲鳴を上げ、ゆっくりレティは杭を引き抜くことができず地面へ落下した。 しかし、まだ体力の残っているゆっくりレティは再び杭を引き抜こうと飛・・・べなかった。 『ゆ゛!ゆっくり!?』 「まさか、護身用の折りたたみ式薙刀がこんなところで役に立つとは思わなかったわ。」 少女の両手には薙刀が握られ、近くには大きな饅頭の皮が落ちていた。 先ほどの風を切る音、それは体が空中に浮かんだ一瞬のうちにゆっくいレティの「足」が切り落とされた音であった。 舌も固定され、「足」も切り落とされたゆっくりレティにはもはや抵抗手段は残されていなかった。 「うふふふふふ、あなたは初めて見るゆっくりだから特別にゆっくりと殺してあげるわ。」 『やめでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!』 その後はまさに地獄絵図であった。 髪を剃られ、帽子は八つ裂きにされ、片目に薙刀を突き刺され、全身の皮はゆっくりと剃り落とされていった。 30分後、そこには薄皮を残した巨大な饅頭が片目から黒い涙を流している姿があった。 「ウフフフフ、気に入ってもらえたかしら?私がこんなにもゆっくりとゆっくりを痛めつける事は滅多にないのだから 光栄に思いなさい。」 『も・ゆる・て・・・・・。』 「あらあら、私に攻撃しようとした時の威勢はどこにいったのかしら?まぁいいわ、そろそろ他のゆっくりも潰したい し。」 少女は薙刀をしまい、玄翁に持ち替えた。 「楽しませたくれたし特別に教えてあげるわ、私の名前は稗田阿求。さようなら。」 グチャッ! 薄皮一枚で繋がっている体の頬の部分に阿求は玄翁で力いっぱい殴りつけ、体内の餡子を支えていた力のバランスが 崩れたゆっくりレティは一瞬でその形を崩し、物言わぬ巨大な饅頭と化した。 こうして捕食種ゆっくりレティの生涯は閉じたのであった。 ※補足 Q:ゆっくりレティはあまり通常種と食べていないようですがどうして? A:通常種ばかり食べていると当然群れの通常種も良く思いません、自然とゆっくりレティに近づく通常種が減って しまい、結果的に食糧をすべて自分で集めなくてはならなくなってしまうからです。 End 作成者:ロウ 後書き 最後まで読んでくださった方々にまずはお礼を申し上げます。 ゆっくり達の生涯シリーズ第10弾『ゆっくりレティの生涯』はいかがだったでしょうか? ゆっくりの一年という設定や漫画が投下され、これは面白いと思いゆっくりレティを中心とした1年のSSを書かせ ていただきました。 また、突如雨が降り出してゆっくり魔理沙がプチ魔理沙を帽子の下に避難させ、最終的には溶けてしまうという漫画 を参考に、一部SSに組み込ませていただきました。 私の設定ではゆっくりレティの群れにいれば、通常種達は安全である(一部例外あり)という設定だったので、赤ち ゃんを簡単に見放したゆっくり霊夢と魔理沙に苛立った方もいたと思うのですが、なかなか潰すことができませんで した。 また、ゆっくりレティの群れのみのSSではゆっくり虐めが少なくなってしまうため、季節ごとに他の通常種との比 較を行い、いかにゆっくりレティの群れが安全であるかというSSにさせていただきました。 ゆっくりレティの虐めが最後のAQNENDだけになってしまって申し訳ありません。 あの巨体を自然の中で虐めるのは私には無理でした・・・orz 次回のSSは、たぶんまだ語られていないゆっくりれみりゃが希少種へ進化するSSを書きたいと思っています。 しかし、忙しいとはいえこのSSを書くスピードは遅すぎるよね・・・。 おまけ(という名のゆっくりの考察報告書2) ※注意 考察という名のもとに私の中での設定を書きまくっています。 ○○年○○月○○日 2ちゃんねる ゆっくり虐待スレ 虐待お兄さん 様 2ちゃんねる ゆっくり虐待スレ ロウ ゆっくりレティの考察(報告) なかなか姿を見せない保捕食種ゆっくりレティですが、この度ある程度の研究報告が上がったので、まとめ報告書を 作製いたしました。 1.特徴 (1)大きさ 生まれたばかりの赤ちゃんでも通常種の成体ほどの大きさであり、成体になると2m近くにまで成長する。 体が大きく動くスピードは遅いが、一歩が大きいため通常種よりも早く移動できる。 (2)舌 自分の身長の2倍近くまで伸びると言われ、そのしなやかさを利用し、食料確保から巣穴の作製まで幅広く使われる。 (3)ふとましい声 他のゆっくりとは異なり声がとてもふとましい。SSでは『』が使われる。 他の生物(ゆっくり含む)に攻撃する時のみ『ゆっくりくろまく』という言葉を発する。 (4)主食 ゆっくりを主食とするゆっくりれみりゃやフランとは違い、非常に雑食性が強い種である。 (5)中身 スタンダードな粒餡 2.習性 (1)群れの作成 捕食種に位置するゆっくりでは非常に珍しく、群れを作って生活する。 群れには必ずゆっくりパチュリーがおり、あまり話すのが得意ではないゆっくりレティに代わり群れを取り仕切る。 群れを作るのは安全を保障する代わりに食糧を集めさせるためであり、ドスと呼ばれる種と違い通常種を利用して いるに過ぎない。 そのため、群れでは手間のかかる子供を生むことを禁止させられ、ひどく規律を乱すものは容赦なく食べられてし まう。 ゆっくりがゆっくりを殺すことを禁忌としているがそれは通常種だけであり、ゆっくりレティが他の通常種を食べ ても咎めるものは現れない。 ただし、利用しているとはいえ貴重な食糧供給源であるため、危険が迫った時は口の中へ避難させたりして全力で 通常種達を守る。 例外として、何らかの原因で食糧事情が厳しくなった際は群れの一員でも容赦なく食べられてしまう。 通常種達は非常食としての役割も担っている。 一見群れの一員となってもゆっくりできないように思われるが、群れの周囲に住むゆっくりはゆっくりレティを恐 れ、新たなゆっくりプレイスを探しに旅立つことが多い。 そのため、自然と群れの周囲からは他のゆっくりが消え、辺りの食糧を実質独占した事になり、ゆっくりレティに 食糧を渡しても十分に自分が満足できる量の食糧を得ることができるのである。 ゆっくりパチュリーを群れに迎え入れた後は群れの内政をほぼ任せるため、群れの一員の選定も任せる事になる。 そのため、ゆっくりパチュリーと仲の良かったものが群れに入る事が多い。 自分の口に避難させられるだけのゆっくりしか群れに迎え入れないため、ドス種とは違い大規模な群れになること はない。 また、通常種達は反抗すれば当然食べられてしまうため、群れ内で反乱が起きることはない。 ちなみに、成長に合わせて年に1、2回群れへ通常種を迎え入れる。 (2)普段の生活 基本的に体を動かすことを嫌い、舌で出来る事はすべて舌で行おうとする。 よっぽどの事がない限り眠っており、通常種達の持ってくる食糧を食べて生活している。 分厚い皮は耐水性が高く、多少の雨では皮が溶け出すことはなく、雨の中呑気に眠っている事さえある。 逆に暑さに弱く、夏場は極端に動くことを嫌う。 越冬前になると準備のためそれなりに活動するようになる。 (3)食糧の確保 空腹時には他のゆっくりを襲うものの、基本的には木の実や草花を食べて過ごしている。 長い舌を使う事により、通常種達では取ることのできない位置にある新鮮な食糧を得ることができる。 余った食糧は頬に蓄える習性を持ち、頬に蓄えられた食糧は長期の保存が効くようになり、越冬前には頬に大量の 食糧を蓄える。 3.繁殖方法 繁殖方法は、他の通常種、捕食種とは大きく異なっている。 レティ種はレティ種同士でしか「すっきり」せず(したくても他の種が小さすぎて押し潰してしまうのではと考え られている)、胎内妊娠型で1度に1匹しか子供を産まない。 子供を産むのは決まって越冬の直前であり、自分の巣穴とは別の出産用の巣穴を用意し、大量の食糧を蓄えた後に 出産する。 ここで驚きなのが、子供が生まれるとすぐに子供を巣に残して入り口を塞ぎ、自分は越冬用の巣穴に戻ってしまう という事、つまり親が子供の世話をまったくしないのである。 あまりに無謀と思うかも知れないが、きちんと考えた上での行動である事が明らかとなっている。 胎内妊娠型で1匹しか生まないため生まれてくる子供は親から多くの餡子を受け継ぎ、大きさも通常種の成体程で 生まれる。 そのため、生まれた直後からかなりの知識を持っており、親が食糧の準備を怠らなければ無事春を迎えることがで きるのである。 また、成体サイズでは他の外敵に襲われてしまう恐れがあるが、越冬中に体調1m程まで成長するため、生まれた 子供の生存率は極めた高い。 1年に1回しか出産せず、さらには1匹しか生まないというのが、ゆっくりレティの数が少ない原因であると考え られている。 4.今後の方針 多くの職人様によりさまざまなゆっくりの研究(虐め、虐待)が行われる事に期待していきたいと思います。 おまけの後書き 以上のおまけがゆっくりレティについて私が考えている設定です。 これらの設定を基に今回のSSを書かせていただきました。 あくまで私の考えている設定であるため、他の職人様に押し付けようなどという気は毛頭ありません。 SS職人様の何かの参考になれば幸いです。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/3034.html
※注意 現代ゆっくりモノ。でも舞台は山奥。 オリジナル設定あり。 歯の無いゆっくり設定です。 まりさの中身が黒ゴマのタレになってますが俺設定です。 秋。 山々は鮮やかに色付き、実り多きこの季節。 気候も穏やかで食べ物もおいしい、過ごしやすい時期ですね。 しかし、動物たちにとっては危急存亡の秋。 来たるべき冬に備えて、食べ物をこれでもかと集めなければいけません。 秋は動物たちの戦いの季節なのです。 世界の動物たちの生活苦をお茶の間にお届けするドキュメンタリー、 『地球・高みの見物』 本日のテーマはこちら。 「ゆっくりしていってね!」 そう、珍妙不可思議摩訶不思議和菓子、『ゆっくり』です。 日本の豊かな山々には今でも、多くのゆっくりが生息しているのです。 今日は皆さんとともに、ゆっくりたちの冬ごもりの様子を観察してみましょう。 ※ ここは日本のとある山、――その中腹。 登山道から離れた、人の手の入っていない山林です。 11月に入るとすっかり肌寒くなって、虫たちは一足先に姿を消しました。 紅葉も盛りを過ぎ、今は落葉の時期。羽のように舞い散る落ち葉が地面に降り積むと、 カサ……カサ……という囁き声があちこちから聴こえてくるではありませんか。 そんな絵葉書のような秋景色のなか、 斜面にぽっかりと開いた巣穴がありました。 ゆっくりの巣です。 その巣穴から今、一匹のゆっくりまりさが飛び出してきましたよ? 「ゆーーーーっ!」 まだ小さいまりさは、秋晴れの空を見上げて気持ちよさそうに伸びをすると、 くりくりしたおめめでお空にあいさつをします。 「ゆっくりしていってね! ――ゆ゛っ!?」 なんということでしょう。 横合いから滑り込んできた小鳥が、まりさをくわえて飛び去ってしまいました。 「ゆ゛ぅぅぅぅ! おりょしてぇぇ!!」 ぴちぴちとお尻をふって逃れようとするまりさ。 しかし小鳥はくちばしの先にまりさをぶら下げたまますっ飛んでいきます。 どこへ行こうというのでしょう。 厨性能リモコンカメラで追ってみましょう。 小鳥が目指したのは、少し離れた場所にある一本の木でした。 羽ばたきながら空中に留まり、なにやら枝を捜していますよ? 暴れていたまりさは、すでに危機感を忘れてお散歩気分です。 「ゆっ? ゆっ? おしょらをとんでるみた――い"っ…!?」 なんということでしょう。 電光石火の早業によってまりさは枝に串刺されてしまいました。 「ゆげぇっ! いぎぃ! いぢゃいよ!! おろじで! もうおうちかえりゅうぅぅぅぅ!!!!!」 激痛のあまり悶絶するまりさ。 なんとか逃れようと暴れますが枝が上下に揺れるばかり。 「ゆぎゅううういぢゃいぃ! うごがにゃいでしんじゃううううううぅぅぅ!!!」 枝の揺れによって傷口は広がり、ゆっくりまりさの命ともいえる黒ゴマのタレが撥ね滴ります。 そのことを理解したのか、それとも動けないほどに弱ったのか。 たっぷり5分ほど苦しんだ後、まりさはようやく身動きを止めました。 枝の動きが徐々に弱まって、やがて止まるまでにさらに30秒かかりました。 そこには……。 「ゆ゛……、ゆ゛……」 すでに虫の息。 砂糖水の涙とゴマダレの血にまみれ、苦痛に悶える表情は赤黒く、 ただただ中身を吐いてしまわないよう堪えることしかできない饅頭がそこにいました。 元凶である小鳥は、そんなまりさを散々つつきまわした後、 食べもせずに飛び去ってしまいました。 どうやら、モズだったようです。 モズには『はやにえ』と呼ばれる、餌を木の枝などに串刺して保管する習性があります。 よくよく見渡してみれば、この辺りの枝々には何頭ものゆっくりが刺さって居ました。 木の葉の降り積む音にかき消されてしまいそうな弱々しいうめき声が、 そこかしこから聴こえてくるのがお分かりでしょうか? このまりさは助からないでしょう。 我々にできることといえば、記憶力の悪さに定評のあるモズが、 早贄にしたまりさの位置を忘れてしまわないよう、祈る事だけです。 ※ ゆっくりの巣に戻ってみましょう。 巣の前にはゆっくりの家族が出揃っていました。 1番大きな1頭は親まりさ。 子まりさが2頭、子れいむが2頭。 さきほどの子まりさも合わせれば、計6頭のゆっくり家族です。 「いーち、にーぃ、たくさん……。 ゆ! みんなそろってるね! これからごはんをあつめにいくよ!」 親まりさは子供たちの顔を見回して、満足そうに頷きました。 子どもゆっくりが、その場で跳びはねながら騒ぎ立てます。 「ゆー! おにゃかすいたね!」 「れいむがいっぱいたべるよ!」 「まりさがさきだよ! おなかがすいたからみんなのぶんもむーしゃむーしゃするね!」 「ゆ! おかあしゃんはさっさとごはんをよういしてね!」 どうやら、頭の足りないゆっくりたちは1頭足りないことに気づかなかったようです。 親まりさを先頭に、今日の狩場へと向かいます。 たどり着いたのは、巣から15メートルほど離れた林の中。 木々に囲まれ、落ち葉の敷き詰められたそこは、ちょっとしたお庭のよう。 ぱっと見ではわかりませんが、木の実もキノコも豊富にありそうです。 落ち葉や木陰に隠れて、ゆっくりたちに探し出されるのを今か今かと待ち構えています。 「ゆっ! きょうはここでかりをするぜ! ごはんをここにあつめるんだぜ!」 なれた様子で指示を出す親まりさ。 子ゆっくりたちは飛び跳ねながら返事をします。 「「「ゆー! いっぱいたべるよ!」」」 ゆーゆー喜びに沸く子ゆっくりたち。 しかし親まりさは頬を膨らませると子どもたちを叱りつけます。 「まだたべちゃだめだぜ!! まずはふゆごもりのじゅんびがさきなんだぜ! かってにたべるわるいこにはおしおきだよ!」 「「「ゆー……。ゆっくり、りかいしたよ……」」」 子供たちは不満そうな顔。 しかしこの家族は親まりさの力が強く、表立って逆らうような子はいませんでした。 ※ 数時間後、受け皿にと敷かれた大きな葉の上には山の幸がひしめいていました。 艶めくドングリや肉厚の茸を中心に、クルミやマタタビ、アケビ、サルナシ、ケンポナシ……。 見ているだけでうきうきしてしまう御馳走の数々です。 元気よく跳ねていった子れいむが、どんぐりをくわえて戻ってきます。 子まりさがころころと胡桃を押し転がしてきます。 「ゆーー! おかあさんすごいよ!」 子ゆっくりが騒ぎ出しました。 親まりさがくわえてきたのは、柿ですね。 根っからのスイーツであるゆっくり達にとって、 あまあまの果実はこの上ないご馳走になります。 「「「やったね! きょうはごちそうだね!」」」 「もちろんだよ! かきさんはきょうじゅうにたべちゃうんだぜ! だからみんなもがんばってごはんをあつめるんだぜ!!」 士気の上がった子ゆっくりたちは、おうたをゆんゆん歌いながら食料集めに精をだします。 おや……? 1頭だけ騒ぎに参加していない子まりさがいましたよ。 木陰に隠れるようにして何やら怪しいそぶり。 近づいてみましょう。 「そろーり、そろ~り……」 地面に体を押し付け、高く上げたおしりをふりふり、はいずるようにして進む先には……。 キノコがありました。 赤くてイボイボしたキノコはそれなりに食いでがありそうです。 「これはまりさのなんだぜ……! だれにもわたさないよ!」 つぶらな瞳をきらきらさせながら、独り占めをもくろんでいます。 「ごはんはみんなまりさのだぜ! まりさをゆっくりさせられないおかあさんはゆっくりはんせいしてね! むーしゃむーしゃ!」 ためらいなくキノコにかぶりつきました。 その途端、あまりの美味しさにほろりこぼれる涙。 感動に打ち震えながら、子まりさは一心不乱にキノコを咀嚼します。 「ゆゅ~ん! しあわせ~! おいしいよ! このきのこすごくゆっくりしてる! これはきっとまつたけだね!」 ベニテングダケです。 有名なこの毒キノコは、意外にも強烈な旨み成分を含んでいます。 しかし、旨み成分の正体は毒素の一つイボテン酸。 食べれば急性アルコール中毒にも似た症状を引き起こします。 まりさにも、さっそく効果が現れたようです。 「む~しゃ……、ふぅ、む~しゃ……、ゆぅ……」 まりさはキノコを食べながら、よだれを垂れ流していました。 目からは涙がとめどなく溢れ、体の表面からは汗らしき砂糖水が噴き出しました。 とてもダルそうです。 「おいしくないんだぜ……。 これが『ひとりでたべるごはんはおいしくない』ってことなのぜ……? やっぱり、みんなといっしょにごはんにすればよかったね……」 子まりさは食べかけのキノコを放置して、家族の下に戻ろうとしました。 するとどうでしょう。 横倒しに地に転がり、そのまま動けなくなってしまいます。 「ゆ? ゆ……? どういうことなの……? めまいがするぜ……はきけもだぜ……この、まりさが、きぶんがわるいのぜ……?」 混乱するまりさ。そこにお姉さんれいむが通りかかります。 「まりさー! どうしてねてるの! おかあさんにおこられるよ! ぷんぷん!」 「ゆんゆんゆんゆんゆんゆんゆんゆんゆんゆん」 「まり、さ……?」 子まりさは横に転がったまま、細かく痙攣していました。 半開きの口からゆるゆると唾液を垂れ流しています。 目は虚ろ。力ない微笑みを浮かべる表情には生気が感じられません。 完全な前後不覚です。 「ゆー! おかーしゃーん!! まりさが……」 あわてて呼んだ子れいむのもとに、親まりさと子供達が駆けつけます。 痙攣する子まりさを見下ろすなり、親まりさは言いました。 「どくきのこをたべたね! もうたすからないよ!」 「どぼじでぞんなごどいうの! たすけてね! いもうちょまりさをだずげで!」 「おかあさんはたすけないよ!」 「「「ゆうぅ!! どぼじで!??」」」 とりみだす子ゆっくりをよそに、親まりさは冷酷なまでに冷静でした。 中毒を起こして横たわる子まりさを、無表情に見下ろします。 「このこは、だまってつまみぐいをしたんだぜ。 いいつけをまもっていれば、おうちでゆっくりたべられたのに……。 みんなよくみておいてね。わるいこはくるしんでしぬのぜ」 子ゆっくりたちは息を呑み、身を寄せ合いました。 家族に取り囲まれたまま、つまみぐいした子まりさは痙攣を繰り返します。 「おがあひゃんたしゅけれ、みふれないれね……」 ろれつの回らない声で助けを求めては、 しゃっくりのような痙攣を繰り返し続け、 後から後から湧いて出るガムシロップの汗に塗れながら、 子まりさはゆっくりと衰弱していきました。 「このぐず! きのこにゆっくりできなくされるなんて、ばかなこだね!」 「ゆぅ……! どぼじで、ぞんなごどいうのほ……」 「おまえが! ゆっくりできないわるいこだからだよ!」 「ゆ、ぅ……。ごべんだたい……。もう、……しにゃいきゃら……」 親まりさは死に行く子まりさに罵倒を続け、 子まりさは絶望と苦悶に抱かれたまま、 最後は『ぱぴぷぺぽ』と繰り返すだけの生物に成り果てました。 「……ほかのこどもたちは、あつめたごはんをおうちまではこんでね」 「「「ゆっ……! ゆっくり、りかいしたよ……」」」 子供たちは言いつけを守り、餌を口に含んで巣へと運び始めます。 子ゆっくり達がいなくなると、親まりさは枯葉を集めて、 壊れた子まりさの上に被せていきました。 ※ 集めた餌を口に入れて運ぶ方法はとても効率が悪く、 親まりさが帽子に入れて運べる分を合わせても、 何往復もしなければなりませんでした。 ゆ! ゆ! と鳴きながら巣穴に飛び込んだゆっくりは、 部屋の奥にある食料広場に餌を吐きためていきます。 しかし……。 「どうしたのぜ? はやくたべものをはきだすんだぜ!」 「ゆ……、ゆぅ~~! でてこないよ!」 子れいむの1頭が、運んでくる最中に食べ物をむーしゃしてしまった様です。 跳ねて動くゆっくりが口の中に物を入れて運べば、そういうこともあるでしょう。 まさかのミスに涙目になる子れいむを、親まりさは許しませんでした。 「ずるをしたね! ゆっくりしないで、もどってごはんをさがしてくるんだぜ!」 「ゆ゛!? わかったよ! おがあざんもてづだってね!」 「いやだね! ひとりでやるんだよ! できないのならでていってね!」 ぐずる子れいむを突き飛ばして巣の外に放り出しました。 あわてて巣に戻ろうとするれいむですが、 ふくらんで入り口をふさぐ親まりさに阻まれて入れません。 しばらくするとあきらめて、泣く泣く森の奥へと消えていきました。 親まりさは、わが子の後ろ姿が見えなくなるまで見送ると、 巣の中へと引き返していきました。 ※ 自然は非情の世界です。 その自然界に生きる野生動物は、子供といえど甘えは許されません。 最弱の名をほしいままにするゆっくりともなれば、尚更です。 知恵のあるゆっくりは、冬篭りの時期になると子供たちを間引きます。 賢く従順なゆっくりを生かし、ぐずで反抗的なゆっくりを切り捨てます。 そうして群れを縮小し、生存の確率を高めるのです。 一見残酷なようですが、未熟な子どもたちを越冬させるのは至難の業。 それができるのは、このような厳しさを持った親ゆっくりなのです。 ※ 「ゆ……。おかしいよ……」 親まりさはおひるね中の子ども達を数えて、気づいてしまいました。 今日1頭死んで、1頭追い出し、 巣に残っているのは、たったの2頭……。 本当はもっとたくさんいたのです。 つがいの親れいむが筍を踏んで貫かれ、 手をこまねいているうちに青竹となった筍に乗って天に召されて以来、 親まりさはまりさ手一つで子ども達を育てました。 いち、に、たくさん……。たくさんのたくさん。 にぎやかなほどのたくさんの子ども達がいたはずなのです。 春が過ぎ、夏が来て、秋となり、冬を前にして たった2頭。 気づかぬうちにごっそりと居なくなっていたことに、親まりさは愕然としました。 「ゆぅ……」 気丈に振舞ってきた親まりさでしたが、ゆっくり限界が近づいていたのです。 「おがあじゃんんん」 残された子まりさと子れいむが擦り寄ってきます。 「どうしたの? ゆっくりねてていいからね!」 「しゃむいよおおおお」 「ゆ? どういうこと……!?」 寒さを訴える子ども達。確かに、巣の中は冷え切っていました。 感じる寒さをたどって、巣の入り口から外をのぞいてみると……。 「……どういう、ことなの……?」 雪が降っていました。 まだ11月だというのに、一足早い初雪が山に訪れたのです。 それも重く大ぶりなボタ雪が、風景を塗りつぶさんばかりに降りしきる有様。 これでは今日中に巣穴を閉ざさなければいけなくなるでしょう。 親まりさは巣の入り口から外を眺めていました。 自ら追いやった、あの子れいむが気がかりなのでしょう。 そしてついに、親まりさは判断を誤ります。 「みんな、おかあさんはそとにでてくるよ! どこにもいかないでまっててね!」 親まりさは吹雪く山野に臆することなく飛び出していきました。 ※ 厳しい親ゆっくりがいなくなった事で、巣にはだらけたムードが漂いました。 親まりさの厳しさによって統率していた群れです。 その頭がいなくなれば、気が緩むのも当然のこと。 「そろ~り……、そろ~り……」 まだ赤ゆっくりに近い子れいむが、地面を這うようにして進んでいます。 目指す先は当然、食料の山です。 「あんにゃにごはんをあつめたのに、あれしかたべしゃせてくれないなんちぇ、 おかあさんはけちだね! ゆっくりできないよ! れいみゅはしょだちざかりなんだよ……、あれっぽちじゃたりにゃいよ……!」 「きのうも、そのまえも、ごはんがすくなかったのぜ! これじゃまりさたちが『あじみ』してしまうのもむりがないことなんだぜ!」 子れいむの後ろから、止めるべき立場の姉まりさまでついていきます。 「そろーり! そろーり!」 「そろーり! そろーり!」 2頭は匍匐前進のかっこうで食料庫へと忍び寄っていきました。 ……食事量が少なかったのは、親まりさの知恵でした。 冬ごもり中の節約生活に向けて、体を慣らすためにした事だったのです。 そんな考えは露知らず、子ゆっくりたちは本能のままに行動します。 ついさっき追い出されたれいむや、命令無視で死んだまりさのことなど、 すでに餡子脳には記憶されていないのでしょう。 かくして餌山の麓にたどり着いたゆっくりたち。 よだれは止め処なく、瞳はゆっくりしたごはんの姿にきらめいていました。 バリ……、コリコリコリコリ……。 「ゆ?」 ゴリ、コリ、……サクサクサクサク。 餌の山の向こうから物音が聴こえてきました。 「ゆ!? むこうがわで、だれかがごはんをたべるおとがするよ!?」 「きっとまりさかれいむだね! ずるしたゆっくりにはおしおきだぜ!」 2頭のゆっくりは義憤にほほを膨らませ、いそいで不届き物の元へと跳ね向かいました。 そこには――。 ※ ところで話は変わりますが、 ゆっくりに『歯』は無い。という話をご存知でしょうか? 大根などをたやすく噛み砕く映像から、強力な顎を持っていると思われてきたゆっくり。 しかし解剖実験をおこなっても、歯にあたる部分は発見されませんでした。 これは、ゆっくりが噛み切る際に使うのが歯ではなく、 人間で言うところの唇にあたる部分だからです。 ゆっくりが口内で分泌する溶解液は、人体や動物にとっては害の無いものですが、 野菜や昆虫などに対しては強力な効果を発揮します。 この溶解液の力を借りて、野菜などを唇で挟み、溶かし切っていたのです。 野菜や虫を主食とするゆっくりには便利な能力ですが、問題が一つ。 ゆっくりは水に弱いという性質上、雨をやり過ごすための巣が必要不可欠です。 成体ゆっくりが出入りできるほど大きく、入り口が下向きで水が流れ込んでこないような。 歯もなく、爪もないゆっくりに、 そんなゆっくりプレイスを構築することが果たしてできるでしょうか? 当然、不可能です。 そのため、ゆっくりは他の動物の巣穴をたびたびのっとります。 あるじが居ない間に上がりこみ、帰ってきた巣の主を威嚇して追い返し、奪ってしまうのです。 ゆっくりが人に対して見せる『おうち宣言』は、 巣が必要不可欠でありながら自作できないゆっくりの、必死の行動だったのです。 ――これに目をつけた動物が『オオヤムジナ』です。 オオヤムジナはアナグマの一種で、鋭い爪を駆使して穴を掘り、そこを巣とします。 それだけならば普通の動物に過ぎませんが、オオヤムジナには特筆すべき習性があります。 ゆっくりに巣を貸すのです。 オオヤムジナはその穴掘り能力を使い、ゆっくりが住み着けるような巣をいくつも作ります。 入り口が下を向いていて雨水が入り込まず、広々としている快適な巣穴をです。 そしてそれらの巣と、オオヤムジナの巣は壁一枚を挟んで隣り合っているのです。 冬が始まり、ゆっくりたちが餌を集めて入り口を閉じ、冬ごもりに入ると…… オオヤムジナは奥から壁を崩して乱入します。 自ら逃げ道をふさいだゆっくりたちに逃れるすべはありません。 ゆっくりを先に捕食して、集めてあった食料は後の備えにします。 作った貸し巣穴にゆっくりが入居すればするほど、かれらの食料庫は充実していきます。 この習性が、アパートを貸す大家さんの家賃取立てに見えることから、 オオヤムジナの名前がつきました。 つまり、2頭の子ゆっくりが目撃したのは――。 ※ 2頭の子ゆっくりが目撃したのは、 冬ごもり前の食事量の少なさに不満を感じ、 親の居ぬ間に冬用の食料に手をつけていた、 『オオヤムジナ』の子どもだったのです――。 2頭の子ゆっくりは驚きました。 「ゆぅ! どうしておうちのなかにいるのぉぉぉぉ!!」 「さっさとでていってね! ここはまりささまのゆっくりぷれいすだぜ! あとかってにごはんをたべないでね! それはまりさのだよ!」 食って掛かったのは姉まりさです。飛び跳ねてムジナの足に体当たりをしかけ、 跳ね返されるやいなや、ほほを膨らませて威嚇を始めます。 ぎょろりと、 ムジナの子は首を振り向けてまりさを見下ろしました。 同じ子供といえど、ムジナの体長は30センチほど。 あんまんサイズの子ゆっくりなど食いでのある獲物に過ぎません。 しかし、生き物の顔の部分しか認識できないゆっくりは、 ムジナの顔の大きさだけを見て、格下と判断しました。 「ゆっゆっゆ! おまえなんてまりささまがけちょんけちょんにしてやるぜ!」 「ゆ~。おねいちゃんすごいよ! やっちゅけちゃえ~!」 雄々しい姉まりさの後に隠れて、子れいむは余裕の声援を送りました。 しかし、一陣の風が吹き抜け、 姉まりさの姿は空間ごと削り取られたかのように消え去りました。 「……? ゆ?」 事態を把握し切れず呆然とするれいむ。 その目の前に、湿った音響とともにかつての姉が跳ね返ってきました。 なんということでしょう。 斜めに入ったムジナの爪が下腹部と口とを深々と抉り抜き、 ぽっかりと開いた大穴から、ゴマダレが仰向けに倒れたまりさの顔面を流れ滴って、 頭の下敷きになっているおぼうしの中へと、とぷとぷ注ぎこまれているではありませんか。 「……ゆ、……ゆ゛んや゛ぁ~~~~!!!」 泡を食って逃げ出すれいむ。餌山の横を抜け、巣穴の出口へと跳ねていきます。 その間にも背後では暴力的な物音が聴こえ続け、 出口の前にたどり着いたれいむが足を止めて振り返ると、 見上げるようだった餌山の中腹を突き破って上半身をあらわしたムジナが、 口にくわえた瀕死の姉まりさを無惨にも噛み砕くところでした。 「ゆぎぃぃぃぃ!! たぁすげでねぇぇぇぇぇ!!!」 子れいむは狂乱状態で巣穴から飛び出しました。 外は一面銀世界。すでに冬といっていい状態です。 「おがぁぢゃあああああでいぶはあんなふうになりだぐないでずぅぅぅ!!!」 恐怖のあまり目から口からシロップを垂れ流して跳ねるれいむです。 あわてて跳ねると危ないですよ、 といっているうちに、雪に足をとられて転んでしまいます。 「ゆぅぅぅ! なにごれぇぇぇぇぇ!!」 冬を知らないれいむは、うかつにも坂道で転んでしまいました。 ころころころころ……、転がるうちに雪を集めていき、 斜面が終わって回転がとまるころには、サッカーボール大の雪玉になっていました。 厨性能カメラで中を透視して見ましょう。 「ゆぅぅぅ!? どういうことなの!?」 雪玉の中心で、逆さまのまま止まってしまったれいむが見えますでしょうか? 一心不乱に動きまわり、なんとか脱出しようとしています。 しかし、ゆっくりの能力では一度こうなってしまうと自力では逃げ出せないのです。 「ゆ? なんだか、つめたいよ! おみずさんが!?」 なんということでしょう。 ゆっくりのわずかな体熱によって、周囲の雪が溶けていくではありませんか。 「だずげでぇぇぇぇ!! どげじゃうよおおおおがあぢゃああああ!!!」 限られたスペースの中でぴこぴこ動いているのが確認できます。 ゆっくりが冬を苦手とする理由がこれです。 雪が積もっているということは、雨が降っているのと同じぐらい危険なのです。 この子れいむは助からないでしょう。 こうして、誰に供されるわけでもない氷きんときが、雪原にぽつりとあらわれるのです。 ※ 親まりさがもどってきたのは、そのすぐ後のことでした。 追い出されいむを探し出せないまま、落胆して戻ったまりさは、 巣の中で食事中のムジナと鉢合わせしました。 「ゆ!? ここはまりさたちのゆっくりぷれいす…… ゆううぅぅぅぅぅ!? こどもたちをどこにやったのおおおお!!!」 親まりさの威嚇はあろうことか功を奏し、子ムジナは逃げ去っていきました。 しかし、巣の中には無惨な子ゆっくりの残骸が散らばっており、 親まりさは子供たちの全滅を悟りました。 「ゆ……、ゆ……ゆううぅーーー……ゆううぅぅぅぅーー……。 あんまりだぜぇぇぇぇぇぇ…………」 まりさはさめざめと泣きました。 巣を空けてしまった後悔、非情な襲撃者への怒り。 今は無きつがいとの愛の結晶を、むざむざ全滅させてしまったという事実は、 まりさに暴れ狂うことすら許しませんでした。 ただ空っぽの巣のなか、さめざめと泣き続けるばかり……。 「ゆ! おかあさん?」 「……ゆ? ……――ゆ!?」 なんということでしょう。 親まりさが顔を上げるとそこには、 追い出したはずの子れいむがいたのです! あちこち汚れてふやけてひどい有様でしたが、 子れいむは雪の中を生きて戻ってきたのです。 「ごはんとってきたよ! ゆっくりごめんしてね!」 口の中の木の実を吐き出したれいむ。 何も知らないその顔は、達成感で輝いていました。 「でいぶううううううううぅぅぅぅぅ!!!」 たまらず駆け寄った親まりさが、れいむにすーりすーりします。 「ごべんねぇ! おがあぢゃんがわるがっだよ! もうどごにもいかないでね!」 「ゆ゛ぅう!? くすぐったいよ! あとおなかすいたよ! ごはんをさきにしてね!」 とまどう子れいむ相手に、親まりさは泣きながら擦り寄りました。 親の威厳もかなぐりすてて、ゆぅゆぅ、ゆぅゆぅと、 いつまでもいつまでもすりすりしていました。 ※ いかがだったでしょうか。 過酷な冬を乗り越えるための戦い。 海千山千の野生動物たちのなかで翻弄されながらも、 懸命に生きるゆっくりたちの姿をお楽しみいただけたのではないでしょうか。 親ひとり子ひとりとなったこのゆっくり家族はこの後、 互いに助け合い、協力しあって、 巣を代え、冬ごもりの備蓄をやり直しました。 なんとか冬を越すことができそうです。 家族を喪った哀しみは消えません。 それでもゆっくりできなかった家族の分まで、 ゆっくりたちはゆっくりするでしょう。 やがて冬が過ぎ、 野山に春が満ちた時、 ゆっくりは薄暗い巣穴のなかから、 陽光きらめく野山へと飛び出していくのです。 そして暖かな春が、いつまでもいつまでも続くようにと、願うのでしょう。 ――ゆっくりしていってね、と。 <地球高みの見物 完> (以下 未放送シーン) 「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってよ!」 2月。 春を前にして、最後の大雪が山を襲いました。 夜の山を吹き荒れる、闇夜を塗りつぶさんばかりの白銀の猛吹雪。 スタッフは、以前取材したあのゆっくり親子の巣穴をたずねてみました。 「ゆっくりしてね!! れいむ、がんばってね!! もうすぐはるさんがくるからね……!!」 悲痛な叫びをあげているのは、厳しかった親まりさです。 頬は痩せこけ、目元には隈が、おぼうしもヨレヨレで、 ひどく疲れているのがわかります。 「ぐるぢいょぉ……。いだいぃぃぃ……。 おがっちゃ……だじゅげでねぇ……」 弱々しい声で苦痛を訴えるのは、生き残りの子れいむでした。 こんもりと盛られた枯葉のベッドに、ころり横たわっています。 虚ろで淡い微笑みを浮かべ、細かい痙攣をくりかえしています。 異常なのは体中に浮き出た『血管』。 そして、つむじのあたりから生えた植物の双葉……。 未発達な子どものゆっくりが木の実などを食べた際、 うまく消化できないまま種子を取り込んでしまい、 体内で温められ、発芽してしまうケースがあるのです。 子れいむの下腹部あたりに、痛々しく浮き出た血管のようなもの。 これは植物の根です。 餡子と皮の間に根が張り巡らされているのです。 「だいじょうぶだよ! ゆっくりねていれば、すぐによくなるからね! さあ、これをたべてげんきになってね!」 子れいむを不安にさせまいと、親まりさは無理に微笑んでいます。 残りわずかな餌山の中からどんぐりを選び、口移しで食べさせようとしましたが、 ぽろり、と子れいむの口から転げ落ちてしまいました。 「……もっちょ、ゆっぐり、じだがっだ、よっ……!」 この子れいむが春を迎えることは無いでしょう。 春が近づいて暖かくなればなるほど、 育つ根に餡子をこねくり回され、養分を吸い上げられ、 みるみるうちに太っていく根によって、 やがては内側から引き裂かれてしまうのです。 救いであったはずの季節は死神となって、 子れいむを迎えに来るのです。 「おぢびじゃんんんんんんんんんんんんんん!! はるさんがくればゆっくりできるよ! だからそれまでがまんしてね! はるさんはゆっくりしないではやくきてね!」 家族を喪った哀しみは消えません。 それでもゆっくりできなかった家族の分まで、 親まりさはゆっくりするでしょう。 「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってよ……!」 やがて冬が過ぎ、 野山に春が満ちた時、 親まりさは薄暗い巣穴のなかから陽光きらめく…………。 <ゆっくり高みの見物 完>
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/366.html
ゆっくりちぇんの中身が餡子じゃありません 「さて、どうしたものかな」 目の前にある見栄えの悪いイチゴを前に考える俺。 俺はイチゴ農家をやっている。今年も収穫を終え無事出荷したのだが農作物の宿命というかどうしても見栄えが悪いのだとか味が悪いのができてしまう。 毎年色々と料理して食べているんだが、今年はどうしたものだろうか。 とここで妙案を思い付く。 「確かここに…」 稗田家が新しく刊行した「ゆっくり辞典」を引っ張り出す。ゆっくりの中身や生態が書いてある優れものだ。 「やっぱりそうか!」そうときまったら善は急げだ。さっそく市場へと買い物へ向かう。 「さて、こんなもんでいいかな。」買ってきたのはフランスパン、マシュマロ、生クリームである。 それを置いて籠と賞味期限切れのお菓子を取り出す。 できれば天然物をとらえたいが、いざとなれば下取りで養殖物を買えばいい。 森を少し奥に入るとさっそくゆっくりれいむの家族を発見した。 「ゆっゆっゆ~♪」相変わらず気持ち悪い歌を歌いながら行進している。全部で8匹だな。 「やあ、君たち少しゆっくりさせてもらえるかな?」 「ゆっくりしていってね!」「おじさんゆっくりできる?!」「ゆっゆっ!」 ああテンプレ会話乙であります。今回はこれが目的じゃないんだ。 いつものようにお菓子でつって籠の中へ。そのまま加工所へレッツゴー! 「「「「ゆっくりした結果がこれだよ!!」」」」とか聞こえてくるが気にしない。 「毎度ありがとうございます。今回はどうしますか?」 ゆっくりハントは農閑期の農民の副業としてよく行われていた。当然俺もやっており加工所の職員とも顔なじみである。 「今回は下取りにしてほしいですが。」 「下取りですか、珍しいですね。で何をお求めですか?」 「バレーボールぐらいの大きさのゆっくりちぇんを一匹、それと残った分でプチゆっくりのありすとぱちゅりーを同数お願いできますか?」 「ええと、この量だと…じゃプチゆっくりのありすとぱちゅりーを2匹ずつ、ゆっくりちぇん中サイズを1匹でよろしいですか?」 「ああ、それで十分です。この籠の中にそのままお願いします。」 「では少々お待ちを…」 10分ほどたって籠の中にゆっくりたちを入れて職員が戻ってきた。 「ではご注文の品です。今後ともよろしくお願いします。」 「こちらこそよろしくお願いします。ではこれで。」 目的の品を手にいれ意気揚々と自宅へ向かう。 家へ帰ってさっそく準備をする。 囲炉裏に火を起こし台所へ。フランスパンは一口大に切りイチゴとマシュマロといっしょに皿の上へ。フォークを取り出し、ゆっくりたちを取り出す。 ゆっくり達は出荷前にあらわれておりそのまま食べても問題ない。早速ゆっくりちぇんを取り出して起こす。 「ゆっくり起きたよーわかるよー」何がわかるんだろうか? 早速手元のナイフで頭を切り落とす。 「ゆっ!!いだいよーわがらな”い”よー!!」まあ、だろうな。 そのまま囲炉裏の上につるしてある四又の金具に皮を突き刺す。さっきから喚いているが喚いているのは元気な証拠だ。大丈夫だろう。 食べれない尻尾を切り落とし、中身をかきまぜる。 ゆっくりちぇんの中身はチョコクリームである。俺はそれでチョコフォンデュをしようとしているのだ。 「んー少し硬いかな緩めるか」生クリームを少し加える。 自分の体の中に冷たいものが入ってくる感触に驚いたのか「つめたいよーきもちわるいよー」と暴れる。 そりゃそうだろう。俺だって自分の脳の中に生クリーム入れられたら気持ち悪い。でも、これはゆっくり。ゆっくりにかける情など持っておりません。 いい感じにゆるくなってきたので早速食べるとしよう。もともとゆるい脳がさらにゆるくなったちぇんはすでに「わか…ゆっ…さ…」とか呻くだけの存在になっている。 早速イチゴにフォークを突き刺しゆっくりの中へ。なかでかきまぜるたび「ゆっ…ゆっ…」と呻く。あれだ、ポッ○ルみたいな状況だな。 「うん!うまい!」少しすっぱ過ぎるため出せなかったがちぇんフォンデュには丁度いい。逆に少しマシュマロは甘すぎたな。 皿に盛った材料を粗方食べつくすとさっそく今日のメインデッシュである。 一般にゆっくりは大きくなるにつれ甘さが増すという。プチゆっくりはあまり甘くないため人気は無いが今回のこの料理にはぴったりだ。 先にカスタードのありすにしようと思い、寝ているプチゆっくりにフォークを突き刺す。 「いだいいいいいぃぃ!!」さすがに鈍感なゆっくりでも目が覚めたらしい。ただ、あまり太くないフォークのためまだ元気のようだ。 「ゆっくり抜いてね!!ありすはとかいはなんだからね!!」食材の分際で口答えとは生意気な。まあいい、せめて痛みを知らず安らかに死ぬがよい。 「ごめんごめん。お詫びに今都会派の最先端のチョコ風呂に入れてあげようか」 「ゆっ!!都会派!?い入れてくれるっていうんだったら入ってあげないこともないわ!!ありすは都会派だもの!!」 「そうかそうか~。じゃ、おぼれないようのこのまま入れてあげよう」 「ゆっくり入れてね!!」 ゆっくりちぇんに気づかないか心配だったがすでにほとんど反応しない状態だったため気がつかなかったようだ。 「ゆっ!ゆっ!ちょこおふろ~とかいは~♪」既にしてご機嫌である。 「ほ~らチョコ風呂だぞ~」とそのままゆっくりをチョコに突っ込む。 「ゆっ!チョコおふっゆっしずめぶっ!ゆっぐりいれ”っ」 そのまま沈めて中でかきまぜる。時々口が外にでてくると「だじっ!!」「ゆ”ぐっ!」と聞こえてくる。 「もういいかな?」チョコから取り出してそのまま口へ 「ゆっぐりはなじで!!ありすばとがい”はなの!!」とか聞こえてくるが気にしない。 うーん甘すぎないクリームと甘いチョコレートが抜群。皮ももちもちしておりとてもおいしい。 口の中からは「ゆ”ぐっ!や”め”っがまな”い”で!!」とか聞こえてきたが思いきり噛むと何も聞こえなくなった。 そのまま残りのゆっくりも食べつくす。 「少し食べ過ぎたかな…」最近メタボ気味なのに心配だ。 散歩がてらまたゆっくりを捕まえてこよう。そう思いながら焦げたゆっくりちぇんをゴミ箱に捨てた。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 世紀末もハンターも筆が進まないのでぱっと思いついたネタで軽く一本 だれをチョコにするか迷ったんですが餡子のままではつまらないと思っていたちぇんにしました
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/192.html
あれは今年5回目の雪が降る日の事だったと思う。 その時、里の北東に位置する防御陣地には私一人しか居なかった。 襲撃を掛けていたゆっくりの群れは殲滅した上に、そもそもゆっくりは冬眠の時期であったので畑をまじめに防御する必要は無くなっていたから、晩秋まであれほどいた加工所職員や農夫はみな自分が居るべき場所に帰っていた。 我々はゆっくりがどういう生物か失念していたのだ。 あの生物の習性は年が変わるごとに変化していき、その度に人間が対応を迫られていることをすっかり忘れており、今年の冬もゆっくりは来ないだろうから防御の必要は無い、そう思っていた。 古来より慢心は身を滅ぼしてきた。それは幻想郷でも同じことだ。 「あ~寒い。暖冬に慣れた身には厳しいな…。」 陣地に居住スペースを作り、里の家から移り住んだ私はこの頃幻想郷の寒さに参っており、陣地を放棄して里の家に逃げ帰ろうかと本気で考えるようになっていた。 薪を燃焼させる調理暖房兼用のストーブが置いてあるのだが、空調による暖房に慣れた身には如何とも頼りなかった。要するに寒い。 ホットコーヒーでも飲んで暖まるか。うん、そうしよう。外側から温められないなら内側からだ。 粗末な椅子から立ち上がり、戸棚をあけて大量のインスタント・コーヒーの瓶のうち中身が半分ほどになっている物を取り出す。入れっぱなしのスプーンで一さじすくい、外から持ち込んだ数少ない自分の持ち物であるマグカップに入れ、ストーブの上で湯気を噴出しているケトルを手に取る。湯を注ぐとホットコーヒーの完成だ。 戸棚に1ダースも工業製品たるインスタント・コーヒーが入っているのには理由がある。 里には喫茶店が何軒か有り、そこでは中々美味いコーヒーが供されている為に味が劣るインスタントのそれは酷く人気が無く、それ故に香霖堂で廃棄寸前だったのを運良く二束三文で購入できたのだ。 コーヒー通ならおそらく我慢ならないんだろうが自分としては一応コーヒーであれば良い、などと考えつつ粉っぽい液体をすすっていると、前線方向の彼方に何か見えることに気がついた。 陣地最前面の鉄条網、そのさらに向こう側で黒い塊がうごめいているようだ。 晴れた日でもなく吹雪の日でもない今日この時間帯だからこそ見つかったのかも知れないと思いながら双眼鏡を取り出す。 視界の中央に拡大されたのは金髪に黒いとんがり帽子のゆっくり、まりさ種らしい。 必死の形相で這いずりながら此方へと向かってくる。 ゆっくりまりさが何でこんな冬に?冬眠してるはずじゃないのか? そのまま力尽きて凍え死ぬのを見ていても良かったが、状況から何かただ事ではないと判断した私はコートを引っつかみ、外に出た。 真新しい雪を踏みつける音が心地よい。生憎と気温はそうでもなかったが。 雪で埋まりかけた壕に足を取られないよう気をつけて跨ぎ、確認が難しくなりつつある鉄条網を記憶を頼りに乗り越え、殆ど動かなくなったゆっくりまりさへと近づく。 最後の鉄条網を乗り越えたところでゆっくりはこちらに気づき、震えながら顔をあげてきた。 畜生、そんな顔をされたら助けない訳にはいかないじゃないか。 先ほどまでゆっくりと降っていた雪が吹雪きはじめた。 このままここでゆっくりしていると一人と一匹そろって凍えてしまいかねないので、ゆっくりまりさが動かなくなった事により彼女に付着し始めた雪を払おうと姿勢を下げた。 視界の端に違和感を感じる。 視線が低くなったことにより森の奥まで見渡せるようになったが、その奥にいたのはふくれた表情でこちらにやって来る巨大なゆっくりだった。 このゆっくりまりさを追いかけて来たらしい。 助けに来たのだろうかと思ったが、それにしては表情がおかしい。 これではまるで、このゆっくりまりさを始末に来たような──。 「おにいさん!そのこをゆっくりこっちにわたしてね!そうすればおにいさんみのがしてあげるよ!!」 何を言ってるんだこいつは。 おそらく渡したらこのゆっくりまりさは始末される。今の発言でその可能性は強化された。 ゆっくりまりさが死んでしまったら、いや、そもそもこのまりさを起こして話を聞かなければ一体何が起こっているか分からない。 わざわざ巨大ゆっくりが来るという事は、まず間違いなく何かが起きている。 ともかく、ゆっくりまりさは渡せない。 「断る!このゆっくりは俺が先に見つけたんだ!お前にはあげられないよ!」 「おにいさん!れいむにかてるとおもってるの!ゆっくりあきらめてね!」 ますます体を大きく膨らませる巨大ゆっくり。 聞く耳持たずか。あの巨体に相当自信があるんだろう、こちらに勝つ気でいる。 ならば、それ相応のおもてなしをしてやらなきゃな。 「きいてるの!おにいさん!それともりかいできないばかなの!」 無視して背負っていた小銃を構え、膝立ちして攻撃体勢に持っていく。 発言に返答がないことで巨大ゆっくりはもうこれ以上はというほど膨れ、顔を赤くしている。 こんな寒いのに頭から湯気を上げるほど体温を上げて大丈夫なのだろうか。 「もういいよ!ふたりともころすからあのよでゆっくりこうかいしてね!」 巨大ゆっくりがこちらを踏み潰すための助走体勢に入った。 その巨体ゆえに一回で最大跳躍できない巨大ゆっくりはホップ、ステップ、ジャンプのプロセスを踏んで敵を踏み潰す。 目の前の巨大ゆっくりはホップを終え、ステップに入ったところだ。 完全に勝ち誇っているニヤついた顔。 すぐに恐怖に染まるんだけどな。 ヤツがステップを終えて着地をする前に引き金を引く。 空中で下半身に銃弾を食らった巨大ゆっくりは物理の法則に従い前傾方向に回転する。 結果、いわゆる「足」の部分で受け止めるはずだった運動エネルギーを、顔面をしこたま打ち付ける事により吸収することとなった。 「ゆ゛っ!ゆ゛ぅう゛う゛ぅぅ~!!」 よほど痛かったのか、降り積もった雪を振動で舞い散らせるほどの叫び声があがる。 巨大ゆっくりは通常のゆっくりに比してかなり耐久力が高いと聞いたことがあったので、攻撃の手は緩めない。 ボルトを操作して排莢、次の銃弾を装填する。 再び引き金を引いて発射。 二発目の銃弾は巨大ゆっくりの頭頂部から餡子へと音速で進入し、中核部分の餡子を切り裂いたのちに「足」の皮を衝撃波で破り、ついでにかなりの量の餡子を引き連れて森へと飛んで行った。 痛みを堪えて起き上がった巨大ゆっくりが睨みつけてくる。 「ゆ゛ーーっ!もうおこった!おにいさんはく゛るし゛んて゛し゛んて゛ね!!!」 滝みたいに涙を流しやがって、そんな顔で言われても説得力ねえよ。 構わず三発目を発射、貫通した瞬間に巨大ゆっくりの後頭部で何かが飛び散った。 こいつの後頭部だった物が銃弾の衝撃で吹き飛んだらしい。 巨大ゆっくりは涙を流す表情のまま前に倒れ、二度と動かなくなった。 まだ暖かい餡子が露出して美味しそうな香りをまとった湯気が上がっている。 岩のように凍りついたゆっくりまりさを拾い上げ、掛けた部分はないか確認。問題なし。 「帝国の逆襲」ならここでゆっくりまりさを巨大ゆっくりだった物の中へ入れてやる所だろうが、帰るべき場所はすぐそこなのでそのような事はしない。 小銃を背負い、冷凍ゆっくりを持ってその場を後にした。 本格的になり始めた吹雪にコートの襟を立てる事で対処しつつ、居住スペースへと戻った。 空調でなくとも暖房を掛けている部屋は外に比べれば天国のような暖かさ、ストーブを頼りないと思った事を反省する。 流石にテーブルの上に置いたマグカップはすっかり冷めていたが。 ゆっくりまりさを解凍するため、鍋を取り出しケトルから熱湯を入れる。 流石にそのままでは氷ごと饅頭ボディまで溶け出しかねないので、外から雪を持ってきてその中に溶かした。 風呂よりも熱いかなという位になったところで冷凍ゆっくりを鍋に放り込む。 放置していればそのうち解凍されるだろう。 冷めてしまったインスタント・コーヒーの酷さを再確認していると、鍋の中のゆっくりがわずかに震え始めた。 餡子が解けて生命活動を再開、融解を加速するために自らも震えて熱を発生させようとしている。 その段階からさらに10分経過してようやくゆっくりまりさは口がきける様になった。 ジャバジャバ音を立てて鍋の水をかき乱しながら左右を見回すゆっくり。 今すぐ叩き潰してやりたいが、何があったかを聞き出すまでは我慢我慢。 「やあやあお目覚めかな?ゆっくりしていってね!」 「ゆっ!?ゆっくりしていってね!」 お馴染みの挨拶をすると、すばやくこちらを向いて反応。起きたばかりだというのに流石ゆっくり。 「単刀直入に聞こうか。何があったんだ?なんで仲間に追われてたんだ?」 「ゆ…なかま…?……ゆっ!!ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛ぅ゛わ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛!れ゛いむ゛ー!は゛ち゛ゅりー!なんでえぇー!」 「オイオイ、どうした。何かあったんだな?」 巨大ゆっくりに追われていた事を教えてやると泣き出してしまった。 仲間の名を叫んでいると言う事はその名の仲間はもう生きていないのだろう。 おそらく、そいつらが死んだ理由に巨大ゆっくりが関わっている筈だ。 「ゆっくりを養殖する巨大ゆっくりか、聞いたような話だな…。」 今は泣き疲れて眠っているゆっくりまりさ曰く、巨大ゆっくりの養殖場から命からがら逃げてきたらしい。 生まれたときから仲良くしていた友達が食い殺されるのを見て脱走を決心したという話だ。 まりさは眠る直前に、「おにいさん、あいつらにんげんをおそうつもりだよ。かえりうちにしてやってよ…。」と言っていた。 あんな大きさのゆっくりが里を襲うのか。 巨大ゆっくり、ゆっくりを養殖、里を襲撃…やはり聞き覚えがある。一体何の話だったかな… 里長なら何か知っていると思い、机に置かれた電話から受話器を取った。 「交換さん?里長のところに繋いでくれ。防御陣地からだ。」 交換手が接続するまでのこの空白時間は何時までたっても慣れない。大体交換手が必要なほど電話普及してるのかと。 しばらくして交換手が繋がった事を伝えてきた。里長の声それに続く。 里長は、それは今年の春に隣の里が巨大ゆっくりに襲われた話じゃないかと言っていた。 確かにそれだ。隣の里が急ごしらえの防御線で何とか殲滅したとかいう話だ。 その時の群れは人間の手により消滅した上にそもそも歴史ごと抹消されている、故に今ここにいるゆっくりまりさが逃げてきたのは別の群れだろう。 とにかく対策を検討しなければならない。 今のところ里が襲われる可能性を示唆しているのはこのゆっくりまりさの証言だけなので、流石に防衛体制を引き上げる訳には行かない。 せいぜい春の話の資料を手に入れて対策を練るぐらいか。 明日、里長のとこまで行って資料を貰わなきゃな。 眠ってしまったまりさは結局起きなかった。命からがら逃げてきたんだろう、全身かすり傷だらけで疲労が溜まっている様で、泥のように眠るという表現が相応しかった。 その日の夕食は窓の外に見える気味の悪いオブジェ──粉砕された巨大ゆっくりを見ながら袋麺を啜るというひどい物になった。 里長が言うには隣の里の勝利においては情報収集と初動の早さが大きな役割を果たしたらしい。 定期的なものではない為に人の少ない寄合所でそんな話が出始めた頃から嫌な予感がしていた。 頼むから偵察に行けとか言わないで下さい、せめて行かせるなら他の人にどうかお願いします、などと祈ってはいたもののその祈りは全くの無駄に終わった。 隣の里の巨大ゆっくりとの戦いの資料に、「巨大ユックリノ営巣地ヲ偵察スルトキハ、自衛ガ可能ナ者ガ望マシイ。」等と書かれており、現状で巨大ゆっくりを屠ったのは私だけだったから斥候として指名されたのは当然だろう。納得できないが。 「自衛ガ可能ナ者トハ、身体頑健デ何ラカノ格闘技ヲ修メタ者。」とか書かれており、自分は明らかに不健康で貧弱であると出来る限り抵抗してみたものの、「巨大ユックリトノ戦闘経験者ガ最モ適ス。」という記述を引っ張り出された挙句に、銃器で戦闘能力は補えると言われては両手を挙げざるを得なかった。 分かったよ。行けばいいんだろう? 皆、幸運を祈るだとか防寒対策に気をつけろよとか言いたい放題言いながらこっちを見送っていた。 畜生。このクソ寒い季節に森へ入れというのか。 ボヤいても問題は解決しない為、ヤツらの巣を探ろうとその場所を知っていそうな者、すなわちあのゆっくりまりさを取りに陣地へと取って返した。 怖いから行きたくないよとか泣き叫んでゴネるゆっくりまりさを「説得」し、準備万端整えて陣地を出たときにはもう昼飯の時間が終わる頃だった。 せっかくの昼飯を台無しにしてくれた巨大ゆっくりには必ずお礼をしてやると決意を新たにし、ゆっくりまりさの先導に従って森へと入る。 森の外は照りつける太陽光線を反射する雪が火傷するほど眩しいが、ありがたい事に森の中は薄暗かった。 光量の急激な変化についていけない目を瞬かせながら前を飛び跳ねていくまりさを注視する。 目的地に着いたのは陣地を出てから30分後だった。 斜面にぽっかりと空いた明らかに人の手で造られた穴に巨大ゆっくりが出入りしているのが見える。連中は鉱山跡を巣として利用しているようだ。 普通のゆっくりと違って連中の巨体じゃ巣を探すのに一苦労しただろう。 あの鉱山の大きさならまさにベスト・ゆっくり・プレイス。もうじきそうじゃなくなるんだがな。 双眼鏡をぐるりと巡らせて入り口の陣容を眺める。 入り口の右側に巨大ゆっくりがおり、そいつが出入りする仲間を監視していた。 あれで守らせているつもりらしい。あの巨体なら存在するだけで十分威圧感があるからだろう。 入り口を中心として半径10メートルの円状に柵が設置されているのも見える。 柵の形状から推測するに、内部で養殖しているという通常ゆっくりの脱走防止用かな。 あの大きさになると生意気にも知恵を付けるようだ。これでは中まで偵察するのは不可能かもしれない。 さて、困った。これでは連中の規模が分かりゃしない。 通常の生物なら廃棄物なりが出てくるだろうからそこから概算する方法があるが、ゆっくりという生物はコトに食物の摂取に関しては有得ないほどの効率を誇り、廃棄物を殆ど出さない事からこの手段は使えない。 歩哨の巨大ゆっくりを狙撃して強襲しようかと思ったが、流石に一人じゃ袋叩きだろうし、射撃音で気づかれたらアウトだ。 どうしようか?と話しかけようとゆっくりまりさの方を向くと、先に話しかけるまりさ。 「おにいさん。まりさのともだちをたすけてほしいよ…。」 「そうは言ってもね。あの見張りが邪魔なんだ。どうにかできないか?」 何と言うべきか、まりさは元気の無い顔からますます生気を失い、この世の終わりを表現した絵画の登場人物のような様子を見せた。 どうしたもんかな。いっそコイツを放り込んでから突入しようか?いや、せめて囮でもいいか。 できるかどうか聞いてみる価値はあるな。何せこいつは追撃から一回逃走に成功している。 「まりさ。この森の中だったらあの巨大ゆっくりから逃げきれるか?」 「ゆっ。たぶんできるよ…。おにいさん、あそこにはいってくれるの?」 「あの見張りが居なくなればな。どうだ?できるか?」 「やってみるよ。まりさがしんじゃってもなかまをたすけてね。」 囮になって欲しいと伝えると、まりさの顔に僅かながら生気が戻ってきた。 まりさ種は仲間思いのゆっくりになりやすいとは事実らしい。 こういうゆっくりは死ぬべきではないな。生き残って他のゆっくりのリーダーとなるべきだ。 黒々とした空間を見せる鉱山入り口にさらに近づいた。 こちらの姿を見張りゆっくりの視線から遮るものは子供の背丈ほどの藪しかない。 『…よし、行け!絶対に捕まるなよ!』 『おにいさん!がんばってね!』 出入りする巨大ゆっくりの姿が途絶えたところで作戦を実行に移す。 藪から全速力で駆け出すゆっくりまりさ。 「おおきいゆっくりはきもちわるいよ!ゆっくりしないでね!」 「ゆっ!?れいむのことばかにするの?ゆっくりしんでね!」 早速挑発の言葉を投げかけるまりさ。見張りゆっくりはまんまと釣られ、まりさを踏み潰そうと跳ねだした。 「ゆっくりおいかけてね!」 「ころしてあげるからゆっくりまってね!」 まりさは一瞬こちらを見た後、森の彼方、里の方向へと逃走に移る。 見張りゆっくりはその巨体が生み出す歩幅(?)によりあっという間に追いつくかと思えたが、まりさは倒木や木立の間をたくみに抜け、巨大ゆっくりを引き離しすらしている。 巨大ゆっくりは体重で障害物を踏み潰しながら追いかけるが、時々木に挟まってはマヌケな声を上げている。 これで良し。あいつが逃げている間に侵入しよう。 雪で反射された太陽光を浴びる銃剣が「白兵戦」の語源が何であったかを見せ付けるようにきらめく。 巨大ゆっくり相手では気休めにしかならない着剣した小銃を構えて突入した。 鉱山跡は不気味なほど静まり返っている。地中の適度に保温された空気が心地よい。連中は留守のようだった。 分岐が出て来るたびにその先を調べ、行き止まりであるのを確認する事5回。 6つ目の分岐先で巨大赤ちゃんゆっくりの部屋を発見した。 うん、資料にあるとおり、デカイな。普通の成体ゆっくりとほぼ同じとは…。 全員寝ているようだ。「ゅ…ゅゅゅ…」「ゅぅー…ゅぅー…」という寝息が聞こえてくる。 その幸せそうな寝顔と相まって直ちに殺戮する衝動に駆られるが、騒ぎになって親が戻るとまずい。 騒ぎになる前に始末できるような物─テルミット手榴弾は持ってきていない。 名残惜しいが赤ちゃんゆっくりの量を数えてその場を後にした。 こいつらを始末するのは後だ。 さらに奥へと進んで行き、10回目の巨大ゆっくりが掘り進んだと思わしき分岐をうんざりしながら通る。 その先の通路は巨大ゆっくり一匹分しかない。すれ違うときどうするのだろうと疑問に思いながら歩いていくと、100メートルほど進んだ辺りで急に道が広くなった。部屋に出たらしい。 部屋を見回すと、壁に掘られた幾つもの標準ゆっくりサイズの穴とそれを塞ぐ格子がある事に気が付いた。 どうやらここが養殖場らしい。 それにしては静かだな…。まさか全部食われたとは思えない、何せ『養殖場』だから。 だいいち、穴を覗き込んでみたが最近ゆっくりが形跡などは影も形も無い。 ここにゆっくりが閉じ込められていたのは昨日今日の話ではなさそうだ。 じゃあ、あのゆっくりまりさは一体…。 「おにいさん!ゆっくりのいうことをしんじるなんてばかなの?」 入り口からゆっくりが話しかけてきた。巨大ゆっくりの低い声ではない。通常サイズの声だ。 そこにいたのはさっき別れたゆっくりまりさ。なぜここに…。 「まだわからないの!?ほんとうにばかだね!おにいさんはまりさにだまされたんだよ!」 ゆっくりまりさが話し掛けてきてから3分経過した。 ゆっくりとしては驚異的なことにまだ話し続けている。曰く、まりさがどれだけ賢いかとか、巨大ゆっくりは自分の仲間だとか、人間を人質にして里から食料を奪うつもりだとか、本当に色々ベラベラ喋っている。 おしゃべりな悪党は死に易いんだがな。 「ちょっとおしゃべりしすぎちゃった!それじゃ、おにいさんはゆっくりしばられてね!ていこうはむいみだよ!」 やっと話が終わったまりさが得意げな顔で私を拘束しようと近づいてくる。 いつのまにか現れた巨大ゆっくりれいむがその後ろに続いており、口にはロープのような物をくわえていた。 通常サイズのゆっくりでは人間に力で勝つのは到底無理だから、仲間の巨大れいむに拘束させるのだろう。 さて…どうしたものか。小銃弾では3発以上命中させねばこの巨大れいむは無力化できない。 距離から言って、2発目を放つ余裕は無いだろう。1発目を当てた時点で飛び掛られて哀れ私は潰される。 悪役っぽくて嫌だが、この手しかないか。畜生。 「君はゆっくりれいむかい?とても大きいね!」 「ゆっ!れいむおおきいでしょ!」 私が話しかけると、胸を張って返事をする巨大れいむ。 ゆっくりまりさはそれが気に入らない様子だ。 「れいむ!にんげんとおはなししちゃだめだよ!はやくこいつをしばってね!」 「ごめんなさい!まりさ!いまやるね!」 まりさが叱り付けると巨大れいむは酷く怯えた顔で謝りだした。彼女の群れでの地位はそうとうのものらしい。これじゃ仲間というより手下じゃないか。 しかし、叱り付けられた巨大れいむは不満を覚えた素振りを見せず私に近づいてきた。 行動に移るなら今しかない。 「れいむ!僕を助けてくれたら美味しい物を食べさせてあげるよ!」 「おにいさんほんとうにひっしだね! れいむ!いうことをきいちゃだめだよ!このおにいさんはどうせあとでれいむをころすつもりだよ!」 「ゆっ!にんげんってばかだね!れいむがだまされるわけないじゃん!」 当然の反応だな。この程度で私を騙してここまで誘導するようなゆっくりまりさとその手下が騙される訳は無い。 なので、再び口を開く。 「れいむ!僕が君を殺すだって!?れいむみたいな大きいゆっくりにはとても勝てないからね!殺すなんてできないよ!」 巨大れいむはこの言葉を聞いて酷く動揺した。彼女にとってこの言葉は納得のできる物だからだ。 「れいむ!!にんげんはうそつきだよ!きかないではやくこいつをしばってね!」 まりさが動揺する巨大れいむをなだめようとするが、彼女の言葉を聞いても巨大れいむは動揺したままだった。 「れいむっ!!!にんげんはつよいんだよ!こいつがそのぼうでおおきいゆっくりをころすところをみたよ!!!」 「れいむ。騙されちゃダメだよ!僕がこんな棒切れでおおきいゆっくりに勝てる訳無いじゃん!」 相反する言葉を聞いて動揺の度合いを深める巨大れいむ。 暫くの間、ふらつきながらどうすべきか考えた後、彼女はどちらの味方をするか決めた。 巨大れいむが私のほうに向かっていくところを見たまりさは勝利を確信したような笑顔になったが、巨大れいむが私の横を通り過ぎ、その巨体を180度反転させてまりさのほうを睨み付けた時、彼女の笑顔は崩れた。 「おにいさんのいうとおりだよ!うそつきなのはまりさだよ!うそつきゆっくりはゆっくりしねぇ!」 「な゛んて゛ええ゛ぇぇぇえ゛ええ!ま゛り゛さ゛うそ゛つ゛い゛て゛な゛いよ゛お゛お゛ぉぉお゛ぉお゛!!!」 巨大れいむが頼もしさすら感じさせる身体を跳躍させ、まりさに飛びかかる。 勝負はあっという間についた。 まりさは踏み潰された後もしばらく叫びながら抵抗していたが、すぐに声が聞こえなくなった。 流石巨大ゆっくりだ。 「おにいさん!たすけてあげたからおいしいものはやくちょうだい!」 「そうだな。取り出すからちょっとゆっくりしててね!」 「ゆっくりまつよ!」 身体が大きくなると余裕が出てくるらしい。巨大れいむは私の言うことを素直に聞き、身体を重力に任せる楽な姿勢をとった。 ビニールの包装を施された一口サイズの羊羹を取り出し、れいむの方を向く。 「お待たせ!今あげるから口を大きく開けて舌を出してね!そこに乗せるよ!」 れいむは口をあーんと開け、おいしい食べ物を今かと待ち構える。 ビニールをやぶき、中の羊羹を舌に直接乗せてやった。 「れいむ!ゆっくり味わってね!」 「むーしゃ…むーしゃ…。」 私に言われた通り、口で何度も咀嚼するれいむ。口を動かすたびに目が垂れ下がり、頬が赤く染まっていく。 そんなにおいしく食べてもらえるなんて幸せだよお兄さん。 「しあわせー!」 食べ終わったようだ。発情してるんじゃないかという程に赤くなった表情で声を上げるれいむ。 余韻を味わった後、私のほうを向いてきた。 「おにいさん!もっとほしいよ!」 「ああ、ちょっと待ってな。」 欲の皮の突っ張ったヤツだ、予想はしていたが。 欲求に答えてやる為、再び荷物を開けた。 先ほどの羊羹とは別のところから紙で包まれた一本の羊羹に見えなくも無い直方体を取り出す。 巨大れいむはそれを見て再びあーんと口を開け、早く頂戴と視線で要求してくる。 「これも美味しいからね!ゆっくり味わってね!」 包装を解いて舌に乗せてやると、あっという間に口の中に入れたれいむはよく味わおうとなめまわし始めた。 口からはみ出した紐が何とも珍妙な雰囲気を醸す。 「ふぉにいふぁん!ふぁんふぁりふぉいひくはいよ!(おにいさん!あんまりおいしくないよ!)」 「そういうのは大人の味って言うんだ。れいむは大きいからもちろん分かるよね!」 「ひゅ、ふぉうふぁね!ふぉいひいよ!(ゆ、そうだね!おいしいよ!)」 アホか。それは食い物ですらねえよ。 それにしても口から紐が出てて食いにくくないだろうか? 「ふぉにいふぁん!ふぉっふぉひふぉふぁひゃひゃふぁお!(おにいさん!ちょっとひもがじゃまだよ!)」 「自然に生えている羊羹だからね、蔓が付いたまんまなんだよ。」 「ふぉうふぁふぉ?(そうなの?)」 巨大とは言え所詮ゆっくりか、この程度の知能らしい。 れいむが思い込みにより再び幸せそうな顔になってきたところで、紐の一端を持って伸ばしながら部屋の外へと出て行く。 部屋の中が完全に見えなくなったところで荷物からドロップ缶の上に取っ手が付いたような物体を取り出し、紐と接続。 部屋から微かに聞こえる声で、巨大れいむが未だにお楽しみ中であることを確認し、取っ手を掴んだ。 おにいさんのこと、まりさはうそつきだっていってたけど、おいしいものくれたしゆっくりできるひとだね! ようかんってあまくておいしくてしあわせー! 巨大れいむはそう思いながら渡された物体をしゃぶり、味を楽しんでいた。 最初こそ変な味だと思った彼女だが、大人の味だと指摘されるとだんだんと甘く感じるようになり、今では十分美味しいと感じるようになっている。 さいしょもらったやつはすぐにたべちゃったから、こんどはゆっくりあじあわなきゃ! れいむは噛む事すら躊躇しながら物体を舌で転がす。 最初に食べた物体があまりにも美味しかった為に思ったよりゆっくり味わえなかった後悔がある彼女は、今度こそ楽しむという不退転の決意で居た。 彼女はそれをくれた人物が部屋から消えたことに最後まで気が付かなかった。 取っ手を捻った瞬間、先ほどの部屋から猛烈な爆発音が発生、殆ど同時に部屋の入り口から黒や茶の飛沫が散弾銃のごとく噴出した。 セムテックスが巨大れいむの口内で起爆したことにより、彼女は発生した膨大な量のガスによって瞬時に膨張、次の瞬間当然の結果として破裂し、その身体の破片をあたり一面に飛び散らせた結果だった。 部屋に戻ったとき目にしたのは、壁や床、そして天井に存在する餡子をブチまけたような(実際そうなのだが)抽象芸術だった。 あまりにも斬新過ぎる芸術に目を奪われた私は、部屋をよく見回さなかったことを後で後悔する。 部屋の隅、かつて巨大れいむの一部だった餡子の山が呻きながらわずかに動いていた事に、私は気が付かなかった。 続く 書いているうちにタイトルと内容が剥離してきた。次で何とかする。したい。 by sdkfz251 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/15.html
森の中で元気よく跳ね回る二匹のゆっくり。 ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙だ。 今日は朝から二人でお出かけ、お母さんたちと朝ごはんを食べた後にお隣の魔理沙と一緒に別行動。 他の家族はお隣さんとお散歩、今日は天気がいいので川の方へ行くらしい。 「まりさ、ゆっくりはしってね!!」 ピョンピョンと勢いよく進んでいく魔理沙を懸命に追いかけていたが、やっぱり疲れる。 抗議するでもなく、何時もの口調で話しかける。 「ゆっ! ごめんね、れいむといっしょにゆっくりあるくよ」 てへへ、と申し訳なさそうに笑いながら霊夢の側に駆け寄る魔理沙。 今日は久しぶりのお出かけ。 久しぶりに二人だけで、舞い上がるのも頷ける。 「「ゆっくりさせてね!!!」」 森の中心の辺り、鬱蒼と木が生い茂り緑色の空が何処までも続く場所。 薄暗いここは、普通のゆっくりなら近づかない。 そんな場所にある一つの空洞。 斜面と木の根と岩が生み出したその空洞内は、木の根のおかげで光が入り、岩のおかげで夏は涼しく、斜面に生えたコケのおかげで冬は暖い。 そんな空洞に向かって言葉を発する二匹。 「ゆっくりちてってね!」 直ぐに返事が返ってきた。 どうやら、ここにゆっくりが住んでいるらしい。 「ぱちゅりー! きょうはゆっくりあそびにきたよ♪」 「れいむもきたよ。ゆっくりしようね!!」 「うん。ゆっくりちていってね!!」 賑やかに挨拶をして、奥へと進んでいく。 そこにはもう一匹のゆっくりの姿。 「おそいよふたりとも! とかいはのありすは、じかんにるーずなゆっくりはきらいだよ」 既に来ていたアリスは、笑顔で二匹に向かってしゃべる。 その目の前には、パチュリーが集めている本が開かれていた。 パチュリーは本を集めて自分の家に蓄えている。 中心部のこの辺りには、何故か時々本が落ちている。 落ちているのは聖書や哲学書、稀に漫画なども落ちてはいるが、殆どが人が読むにも苦労する代物だ。 だが、ぱちゅりーはそんな事は関係ない。 勿論ある程度文字はよめる。 ただ、本を読む、事がしたいのだ。 だから内容は二の次三の次だ。 「ごめんね!! れいむたちでみんなそろったね」 「きょうはみんなでゆっくりあそぼうね!!!」 魔理沙が高らかに宣言する。 体が弱く本を読みたいパチュリーは、あまり遠出できないため、時々皆でここに集まる。 そして泊りがけでゆっくりするのだ。 「きょうはなにをしてゆっくりしようか?」 「ぱちぇりーもゆっくりできるようにしようね」 「むきゅ~、みんなとゆっくりするよ!」 「ありす、おもしろいあそびしってるよ!!」 その一声で、興味津々になった三匹に説明しながらある物を見せる。 どうやら風船らしいそれはアリスが頭で押すと、ふわっと浮き上がりゆっくりと落ちていく。 「すごーい!! ふわふわのもふもふだぁ!!」 「ありすはすごいね!! まりさもやりたい!!!」 「むっきゅ~!! すごい! すごい!」 「いいよ! せっかくだから、みんなでゆっくりするのにかしてあげるよ!!!」 霊夢が高くあげる、負けじと魔理沙がもっと高くあげる、パチュリーも頑張って上げる。 空洞内では高さが足りなくなって、外に出る。 制限が無くなった風船はもっともっと高く上がる。 「れいむのほうがたかくあげられるよ!!!」 「まりさだってたかくあげられるよ!!!」 「ふーせんくらいでおとなげないよ。 とかいはのありすはこんなのみあきたもん」 しれっと答えるアリス。 しかし、しっかりと視線で高く上がる風船を追い続ける。 「むっきゅー! ふたりともしゅっごーい!!」 対するパチュリーも見る事に専念している、高く上がる風船を見て喜んでいるようだ。 「そうだ!! ふたりであげたらもっとたかくあがるよ!!!」 霊夢が魔理沙に提案する。 いっぱい飛び跳ねた所為か、少し息があがっている。 「れいむあったまいい!! そうしようそうしよう!!」 風船を軽く上げて、二匹はタイミングを合わせる。 「「せーーの!! ……ゆっくり~~!!!」」 二匹の期待通り、風船は高く高く上がる。 フワフワ上がって、緑の空に届きそうなくらいまで上がったその時。 パァン。 と乾いた音と共に破裂した風船。 そうやら枝にでも刺さったようだ。 突然の音にびっくりする一同。 しばらく固まっていたが、均衡を破ったのはアリスの泣き声だった。 「うわーーん。ありずのふうせんがーー!!!」 ペナペナになった風船に駆け寄って号泣するアリス。 「ふーせんでみんなどゆっぐりしたがったのに。ふーせんがあればみんなどゆっぐりできるとおもっだのに」 初めて見た風船で、皆とゆっくり遊びたい。 そう思ってアリスは意気揚々と持ってきていたのだ。 心配そうに駆け寄る三匹。 それぞれが、思い思いに励ます。 「ありすごめんね。でもふーぜんがなくてもみんなでゆっくりできるよ」 「ごめんねありす。でもまりさたちはふぃーせんでゆっくりできたよ」 「むきゅ~、たのしかったよ。ありすありがとうね!」 「ぐすっ、……ほんとぉ?」 「「「うん、ゆっくりできたよ!! ありがとうありす!!!」」」 「……うん、ありすもうなかない! みんなよろこんでくれてありすもうれしいよ♪」 その後はゆっくりとパチュリーのお家へ戻って、皆でゆっくりとお話しする。 性格は女性なのだろうか、三匹ならず四匹集まれば随分と姦しい。 一匹が自分の話をして他の三匹が聞く。 いつの間にか、そんなスタイルで話が始まっていた。 霊夢がお母さんに叱られた事をはなせば、皆が励まし。 魔理沙が何処そこに冒険に行った事を話せば、ハラハラしながら聞き入り。 パチュリーが何とか読めた本の内容を話せば、時に笑い時に泣いて終いには感動した。 アリスが都会の話をすれば、スゴーイと言う歓声が沸き起こった。 あっという間に夕日が沈み、月明かりが辺りを照らし始めた。 「ゆゆ! もうゆうがただよ。ごはんをたべようね!!!」 「ゆっくりたべようね!!」 「むきゅ~! ごはんじゅんびしたよ! みんなでたべようね!!」 パチュリーが昨日一日かけて集めたご馳走を見せる。 美味しそうな木の実や果物、そしていい香りの舞茸。 どれもこれもゆっくり達にとって、ご馳走と呼ぶに相応しいものが並んでいた。 「ゆゆ!! すごい!! ありがとうぱちゅりー!!!」 「みんなでゆっくりたべようね!!」 「すごい、みつぼしほてるのでぃなーみたい!!!」 「「「「ゆっくりいただきます!!!!」」」」 そう言って仲良く食べ始める。 家族で食べる時も楽しいが、やっぱり友達同士で食べるのはもっと美味しい。 「ぱちゅりー。これおいしいよ、じゅんびしてくれたおれいにあげるよ!」 「こっちもおいしいよ、ぱちゅりーもたべてね」 「これもおいしい、でもありすはきらいだからぱちゅりーにあげる」 「むっきゅ!! おいしい!! おいしい!!」 三匹は、より美味しいもの、栄養の有るものをさり気無くパチュリーに食べさせる。 美味しそうに食べるパチュリーを見ながら、ニコニコと食事の時間を満喫した。 「「「「ゆっくりごちそうさま!!!」」」」 夜。 ふかふかの苔の上で、お互い向かい合うように横になる。 三匹は、自分達のお家にはない苔に興味津々のようだ。 「ふかふかだね!!」 「まりさのおうちにもほしいね! こんどおかあさんにはなしてみるよ!!!」 「かぁぺっとみたいね」 「むきゅ~、きょうはつかれたけどたのちかった!! みんなありがとうね!!」 三匹を見ながら、興奮気味に話すパチュリー。 今日は、普段は自分以外誰も居ないこの家が賑わったもが随分と嬉しい事。 なにより、こんな所まで遊びに来てくれた皆が嬉しかった事。 その気持ちを全てひっくるめてありがとうの言葉を出した。 一瞬ぽかーんとした表情を浮かべたいた三匹も、直ぐに口を開いて。 「ぱちゅりーはともだちだもの!! れいむもたのしかったよ!!!」 「ぱちゅりーがゆっくりできてよかったよ!! またゆっくりしようね!!」 「ぱちゅりーが、こっちまでくるときゅうにたおれると、こっちがわるいみたいだから、きてあげただけだよ。べつに、ぱちゅりーのからだをしんぱいしているわけじゃ、ないんだから!!」 三者三様の答えだが、皆が自分を大切にしてくれていることが伝わったパチュリーは涙をこぼした。 ちょうど月が隠れて漆黒が訪れたおかげで、その顔は三匹に見られなかった。 「また、ぱちゅりーのおうちでゆっくりしていってね」 「「「うん、ゆっくりするよ!!!」」」 そう言った四匹は、月が隠れたの合図に目を閉じた。 夢の中では未だ四匹で楽しくゆっくりしていることだろう。 Fin ゆっくりした時間をありがとう。 -- 名無し (2009-03-27 02 01 40) これは癒されるゆっくり達♪ こんな風にゆっくりしたいもんですねぇ -- 名無しさん (2009-03-31 01 55 37) こういうゆっくり同士で和気あいあいという話は大好きです -- 名無しさん (2009-09-11 19 37 21) なんていいゆっくりなんだろうか -- 名無しさん (2010-06-07 18 27 44) ゆっくりはかあいいな -- 名無しさん (2010-11-27 13 09 39) ゆっくりしていってね!! -- カマキリちゃん (2011-07-28 12 28 16) 風船を持って森に行く俺、プライスレス。 -- 名無しさん (2012-08-10 22 12 07) ツンデレってるとこもずでぎだばあああ -- 名無しさん (2012-08-11 10 17 40) 超イイネ!! -- 名無しさん (2012-12-02 11 51 51) あらかわいい -- 名無しさん (2013-01-29 01 45 40) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1291.html
博麗神社にお参りに行った帰り、林道を歩いていると妙な祠を発見した。 太い木の枝や葉っぱを組み合わせて作った小屋に、ゆっくりれいむが一匹収まっている。 そしてその前には、格子状の蓋のついた木箱。 ゆっくりに複雑な工作など出来るわけないから、人間の作り損じでも拾ってきたのだろうか。 手前には枝を組んで作られた小さな鳥居?があり、ゆっくりがくぐれる程度の大きさだ。 祠に収まっているれいむと目が合うと、得意げな笑みを浮かべながら話しかけてきた。 「おにいさん!!とってもありがたいゆっくりじんじゃだよ!! ゆっくりしていってね!!おさいせんをゆっくりちょうだいね!!」 こんなことを言い出す。神社の巫女さんを模したゆっくりであることは解っていたが、 本物の真似事まで始めるとは。しかしゆっくりを崇めてもありがたいどころか、運気を吸われそうな気がするぞ。 でもまあ、ゆっくりがこんなことをしているのは何だか珍しかったので、 少しぐらいお賽銭をやっても良いだろう。人間に奪われそうな気もするが。 狭い鳥居をくぐろうとすると体がぶつかり、固定の甘かった鳥居はあっさり崩れてしまった。 れいむは「なにするの!!」と言って少し悲しそうな顔をしたが、それほど怒った様子も無いので気にしないでおいた。 そしてお賽銭箱に面白半分に木箱に小銭を入れてやる。さっき本物の博麗神社に投じた額の1/10ほどだが。 「ゆゆ~!!おにいさんありがとう!!おねがいごとをしてね!!」 うるさい巫女だな……いや、神主なのか? よく解らない。でもお参りは静かにさせてほしい。 作法に則り、手を叩いて願い事を念じる。それが済んで立ち去ろうとすると、 れいむは膨れっ面でこっちをにらんでいた。 「おにいさん!!おねがいごとをゆっくりいってね!!だまってちゃわからないよ!!」 え~……そういうもんなの? というか、お前が願い事を知ったところでどうする。 まあもう少し付き合ってやるか。 「今度資格試験を受けるんだよね。それで仕事がもらえるかどうか決まる大事なやつでさ。 もちろん勉強も頑張ってるけど、一応ゲンかつぎに神頼みもしとこうかな~ってことで。 勉強がうまくいって、試験に合格できますよーに!」 もう一度手を合わせて祈る格好をする。ゆっくりに祈るのも何かムカつくけど、まあごっこ遊びだし。 「ゆっ!ゆっくりききとどけたよ!!おにいさんはきっとごうかくできるよ!!」 お前が聞き届けるのかよ。こいつは神主兼巫女兼神様なのか? しかしたとえゆっくり相手と言えど、励ましの言葉をもらえるのは悪いものではない。 俺は少しだけ機嫌を良くすると、れいむに手を振って帰路についた。 その夜。寝る前に机に向かって勉強をしていると、窓をドンドンと叩くものがあった。 何だろうと思って開けてみると、そこには一匹のゆっくりぱちゅりーが。 「むきゅ~!!おにいさんがべんきょうのことでこまっていそうなけはいがしたから、おしえにきてあげたわ」 ……何だこいつ。あ、もしかしてゆっくり神社の差し金か? 学問成就を願った俺のところにゆっくりの中では頭の良いぱちゅりーを派遣し、勉強を手伝わせる。 それによって願いを叶えさせ、ご利益の評判を高めてお賽銭をもっと集める……と。 「お前、ゆっくり神社から来たのか?」 「むきゅ!?な、なんのことかしら?ぱちゅりーはそんなれいむ、ぜんぜんしらないわね!」 れいむなんて一言も言ってないのに……まあこれで間違い無さそうだ。 しかし人を助けて対価を貰おうというのは、ゆっくりにしてはなんとも殊勝な考えだ。 「むきゅ!とってもかしこいぱちゅりーがばかなおにいさんをかしこくしてあげるわ!ゆっくりなんでもきいてね!」 しかしもうちょっと口の悪くない奴を派遣出来なかったものか…… ぱちゅりーは文房具に混じって、机の上に鎮座している。気が散って邪魔だ。 ぱちゅりーの頭が実のところそんなに良くないことは知っているので、追い返しても良い。 しかし受験勉強でストレスの溜まっていた俺は、ちょっとだけ悪戯をしてみた。 「ふーん、じゃあここの問題がちょっと解らないんだけど。答え教えてくれないかな?」 「むきゅ!ぱちゅにおまかせよ!」 俺は使っていた問題集の中で一番簡単な問題をぱちゅりーに見せてみた。 五秒後 「むっきゅー!!むじゅむじゅーー!!」 何か変な声を出し始めた。それでも問題集にかじりつくように向き合うぱちゅりー。 しかし人間様の問題をゆっくりに解けというのは難儀な話だ。 「むっきゅーー!!むじゅむじゅーーー!!」 ぱちゅりーはそのまま溶けていった。知恵熱でも起こしたんだろうか。 机の一角に広がったぱちゅりー液を指ですくって舐める。甘い。 これは勉強で疲れた頭を癒すには良いかも知れない。少しは役に立ったな。 ◇ 後日、試験に無事合格した俺は、息抜きに林道を散歩していた。 博麗神社に学問成就のお礼をしにいったのだが、ゆっくりの方にもついでに寄ってやることにする。 ゆっくり神社にさしかかると、おばあさんがお賽銭を入れていた。遠くから様子を見てみる。 「おばあさん!!おねがいごとをいってね!!」 「そうねぇ……うちの畑が今年も豊作で、おいしい野菜が沢山売れますように」 「ゆっくりききとどけたよ!!おばあさんはおいしいおやさいをいっぱいとれるよ!!」 「あらあら、嬉しいねぇ」 おばあさんは朗らかに微笑みながら、れいむに手を振ってゆっくり神社を後にする。 ゆっくりは子供っぽいところがあるから、ああいうのは年寄りに受けが良いのかもな。 おばあさんの姿が見えなくなると、れいむの仲間らしきゆっくりが数匹周りから飛び出て来た。 「みんなおばあさんのおねがいきいた?」 「はたけをてつだうんだねー!!わかるよー!!」 「きっとちからしごとだからまりさがてきにんね!」 「ゆっ!ゆっくりまかせるんだぜ!!」 「ちーんぽ!!」 この件を一任されたまりさは、おばあさんの帰っていった方角に向けて走っていった。 ああやって参拝者の住居を特定してるんだな。 その仕事ぶりを見るため、俺はまりさに二重尾行を仕掛ける。 やがて林を抜け、まりさはおばあさんの家に着いた。おじいさんと二人暮らしをしているらしい。 二人とも家の中にいるのを確認すると、まりさはさっそく畑に侵入する。青々と茂った根菜はもう収穫寸前らしい。 しばらくゆーゆー言いながら物色するまりさ。農作業のやり方なんて知ってるのだろうか。 そう思ってみていると、突然大根を掘り返して食べ始めた。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!」 何してんだ、あいつは……初めからこれが目的だったのか? いや、おそらく神社のれいむの目的は、こらしめられるリスクを負わずに人間の食べ物を手に入れること。 お賽銭を使って経済に参加することで、人間に疎外されない社会性を獲得しようとしたのだ。 まあ、現実的に可能かどうかは別として。 しかしアホのまりさには、そんな(ゆっくり的に)遠大な計画は理解出来ないし、面倒臭い。 それより目の前に広がるごちそうの山を目の前にして、今すぐしあわせになることを選んだのだろう。 「ゆっゆっ!これめっちゃうめ!さいしょからこうすればてっとりばやいんだぜ!!れいむはばかだぜ!!」 バカがどちらかは一目瞭然だが。 俺は畑の被害が大きくならない内に現場に踏み込み、まりさを取り押さえた。 「ゆっ!?おにいさんなんなんだぜ!?ゆっくりはなすんだぜ!!」 「人の野菜を食う悪いゆっくりを見過ごすわけにはいかないな」 「ゆべえぇっ!しらないんだぜ!ここはまりさがみつけたからおやさいはまりさのなんだぜ!!」 ぎゅうぎゅうと両手で地面に押さえつける。 跳ねようとするまりさの力が伝わって来るが、人間の腕力からすれば大したものではない。 餡子を口からぶりぶりと吐き出し、悲鳴を上げながらしなびていく。 あんまりまりさがうるさかったからか、住居からおじいさんが出てきた。 「コラーッ、わしの畑で何の騒ぎだ!?」 「あ、すいません。害獣が畑を荒らしていたものですから、咄嗟に……」 「ああ、ゆっくりか。すまんね兄ちゃん、うちも畑の周りに柵を作らないといかんのぉ。 そのゆっくりはうちが引き取るから置いていってくれ。良い肥料になるんじゃよ」 ほう、それは知らなかった。最近の農家はゆっくりを肥料にしているのか。 潰れて動けなくなったまりさをおじいさんに引渡し、俺は林道へと引き返す。 まりさの餡子によって畑の土壌は更に充実し、立派な野菜が収穫されることだろう。 ◇ 引き返した俺は、再びゆっくり神社へと赴く。 れいむが「ゆっくりしていってね!!」と言うので、「はいはいゆっくりゆっくり」と返す。 「ゆっ!!このあいだのおにいさん!!」 「やあ。おかげさまで試験にも合格出来たよ」 「よかったね!おともだちにもゆっくりじんじゃをしょうかいしていいよ!! ところでおにいさん、とってもかしこいぱちゅりーをみかけなかった?」 「ん? いや、見てないな。見てたとしても、見ただけじゃ賢いかどうかなんて解らないよ」 「ゆー、そうなの・・・」 まさかぱちゅりーは家で死にましたとも言えまい。余計な誤解と揉め事が起きそうだ。 しかしれいむもこっそりと仲間を派遣している手前、大っぴらに「お前の家に行ったはず」などとは聞けないらしい。 ご利益要員が欠けたのは痛いだろうが、またどっかから補充すれば良いだろう。ゆっくりなんて幾らでも沸いて出る。 「おにいさんきょうもおさいせんちょうだいね!!」 「いや、今日は良いよ。特に願い事も無いし」 「そんなことないでしょ!!なにかあるはずだよ!!おさいせんいれてね!!」 「醜い神社だなぁ……ん?」 傷付いた顔の子供がとぼとぼと歩いてきた。俺は道を開けてやる。 れいむが子供に「ゆっくりじんじゃだよ!!ゆっくりしていってね!!」と声をかける。 子供は賽銭箱に小銭を投げ入れ、手を叩いて願い事を言った。 「村のいじめっこがぶっ倒れますよーに!!」 どうやら虐められて怪我をしてるらしい。身体も大きくないし喧嘩では勝てないんだろう。 賽銭入れて祈るなら博麗神社の方が……と思ったが、確かに博麗神社までの道のりは少し険しくて子供の足では辛い。 とはいえゆっくりにも縋る気持ちなのだろうか。 「ゆっくりききとどけたよ!!あくはせいぎにやっつけられるうんめいなんだよ!!」 「うん……ありがとう……」 れいむの言葉を気休めと受け取って力なく笑うと、少年はトボトボと村に帰っていった。 助けてやりたい気もするが、子供の喧嘩に大人が出て行くってのもね。 周囲の茂みがガサガサと揺れた。仲間ゆっくり登場かと思ったが、出てこない。俺がいるからか。 「おにいさん!!ようがないならさっさとどっかいってね!!」 れいむが体を膨らませて怒鳴ってくる。俺ははいはいと答えてれいむの視界から消え、近くの茂みに隠れて様子を見る。 俺の姿が見えなくなったのを確認すると、何匹かのゆっくりが茂みから出てきた。 「こんかいはわるものたいじだよ!!」 「わかるよー!みょんとちぇんがいくんだねー!」 「ちーんぽ!ちーんぽ!」 「ふたりにかかればにんげんなんていちころね!!」 「ゆっくりいってらっしゃい!!」 子供の帰っていった方に走っていくみょんとちぇん。 俺も気付かれないようにその後ろをこっそりついていく。暇な奴だな、俺も。 結構歩いて村に辿り着く。こそこそと住人の様子を見て回っているゆっくり二匹。 やがて、いかにもいじめっ子ですといった風貌の、体格の大きな子供を見つける。 「あいつなんだねー!わかるよー!」 「ちーんぽ!」 「ちぇんがうしろからきしゅうするから、みょんがとどめだよ!」 「でかまら!」 気合の掛け声だろうか。 打ち合わせをするやいなや、ボサっと道を歩いていたいじめっ子の後頭部に向けてちぇんが苛烈な体当たり。 「いだっ」と呻いたいじめっ子は軽い脳震盪でも起こしたのか、その場に手をついてしまう。 そしてみょんが追撃。背中の上でぼふぼふ跳ね始める。 「ちーんぽ!ちーんぽ!」 「痛いっ、痛い! な、何なんだお前ら!?」 「ゆっくりしぬんだねー!わかるよー!!」 ゆっくり達の猛攻は続く……が、最初の一撃以外はあんまり効いてるとは思えない。 肩甲骨の間あたりで飛び跳ね攻撃を繰り返していたちぇんが、しっぽを掴まれて地面に叩きつけられる。 「ゆべっ!!なにずるのー!!ゆっくりやめてよー!!」 「はぁ? お前らが先に喧嘩売ってきたんだろうが。何やったってセイトーボーエイだぜ」 「ち、ちーんぽ!?」 みょんを払いのけ、立ち上がる少年。その瞳には苛立ちと、面白いおもちゃを手に入れたという好奇の光が輝いている。 ちぇんはしっぽを掴まれたまま、「ぎにゃあああああああ!!」と叫びながら振り回されている。 目からあふれ出る涙が周囲に飛散する。隠れているこっちにも飛んで来たので、顔についたのを指で取って舐める。甘い。 その勢いでびたーんびたーんと地面に叩きつけられるちぇん。その度に餡子を吐き出し、地面に放射状の餡痕が残る。 少年は鞭のようにちぇんを振ると、近くでおろおろしていたみょんを横に薙ぎ払った。 「ぺにずっ!?」 「ぎゃはははは! 弱っちいゆっくりごときがおれさまに勝とうなんて、百年早いんだよ!」 「やめでねー!!たずげでねー!!わからないよーー!!!」 吹っ飛ばされたみょんが、俺の隠れている近くの茂みに突っ込む。ギクッとしたが、何とかばれなかったようだ。 ちぇんは餡子を吐き出して少し軽くなり、速度を増して引き続きひゅんひゅんと振り回されている。 「やめてねええええーーー!!わからないよぉぉぉぉーーー!!!」 「あははは、これ面白いな。そうだ、お前うちの飼い猫の遊び相手にしてやろうか。 何か見た目も猫っぽいことだし、あいつもきっと喜ぶぞ。楽しみだな!」 「ゆぅぅぅうーーー!ちぇんおうちかえりたいよーーー!!!」 言葉とは裏腹に残酷そうに笑う少年の顔を見て、飼い猫もきっと彼に似て大きくて乱暴なんだろうなと思った。 その時、茂みに埋まっていたみょんが颯爽と飛び出す。その口には折れた枝がくわえられている。 ちぇんを振り回して遊ぶ少年の足元に、あっという間に駆けていき……そのまま枝の尖った折れ口で、少年の足を突き刺した。 「ちぃーーーーんぽ!!」 「い゛っ……痛っでえぇぇぇぇぇーー!!」 「みょーん!たすけてくれたんだね!!わかるよーー!!」 「ちんぽちんぽちーんぽ!」 足の痛みに、思わずちぇんを離してしまう少年。地面に落ちたちぇんは、嬉しそうにみょんの元に擦り寄る。 少年の足を見てみると、結構傷が深いみたいで血がどくどく溢れ出ている。あれは跡が残りそうだな。 ……っていうか、ちょっと洒落にならなくなってないか? 見てていいんだろうか? 血まみれの枝をくわえてなおも戦闘態勢のみょんを、泣きそうな顔で見ている少年。 やがて足を引きずりつつも、全速力で泣きながら逃げていく。 「いでぇ、いでぇよぉぉぉぉーーー!! お父ちゃーーーん!!」 「やったねーー!!ちぇんたちがかったんだよ!!わかるよーーー!!」 「ちーんぽ!!」 手負いの二匹はぴょんぴょん跳ねて勝ち鬨を上げている。 確かにあの怪我では、いじめっ子もしばらくは他の子供達に乱暴など出来ないだろう。 だがしばらくもしない内に、先ほどのいじめっ子など比べるべくもない屈強な男が現れる。 「てめえらか、うちの坊主に怪我させたゆっくりは!!」 「ちんぽ?」 「またわるものとうじょうなんだねー!わかるよー!でもちぇんとみょんならまけないんだよーー!!」 いじめっ子を撃退して自信をつけたのか、勢いよく突進していく二匹。 しかし大人の男に勝てるはずもなく、木の枝を突き刺す前に順々に蹴り飛ばされてしまう。 「ぢんっ!?」 「ゆびゅっ!なんでえええーーー!わからないよぉーーー!!」 「饅頭ふぜいが、人間様を傷付けやがって……あの世で後悔しやがれ!!」 男は少年のように甚振ることなどなく、躊躇せず二匹のゆっくりを確実に踏み潰していく。 始末を終えた男は、村の広場に大人たちを集め、何やら話し合いをしていた。 「ゆっくりが人間を襲っただって? 信じられないなあ」 「しかし現に、うちの坊主が木の枝で足を刺されてるんだ。あれじゃ当分は田んぼにも入れねえ」 「うーん、確かに子供や年寄りなら怪我をさせられることもあるかもな」 「どうする? 人間に勝てると思い込んだゆっくりが人を襲い始めたら……」 「そんな危険な饅頭がいたんじゃ、弱い者はおちおち村を出歩けもしない!」 「仕方ない、このあたりのゆっくり一斉駆除しよう。決行は明日の午後、子供や老人には外出を控えさせよう」 さあ、大事になってまいりました。まあ当然の成り行きですけどね。 ゆっくり神社のおかげで大量のゆっくりが死ぬことになってしまった。 まあ神社自体はこの村から離れた所にあるから、そこまで駆除の手が及ぶことはないだろうが。 しかし酷い話だ。俺は家に帰った。 ◇ 数日後。ゆっくり神社は人員の欠損と補充を繰り返しながら、 俺のような珍しいもの好きの人間相手にそこそこ繁盛してるみたいだった。 何度か様子を伺ってみたが、神社の運営を担当するれいむに、周囲の仲間がごはんを運んでくるらしい。 その見返りに、お賽銭が溜まった暁にはれいむがおいしいお菓子を振る舞うという筋書きだろう。 そしてついに、充分なお賽銭が溜まったとれいむが判断したらしい。 れいむは達成感に満ちた笑顔で、お堂から出てきて賽銭箱にすりすりしている。 「おかしをかいにいくよ!!ゆっくりはこをあけるよ!!」 ゆっゆっと言いながら、箱の周りを何週かするれいむ。何をやっているのか。 「どうやっであげるのおぉぉぉおおおぉぉぉぉ!?」 考えてなかったんかい。神社の巫女さんがやってるんだから何とかなるだろうぐらいの気持ちだったんだろうな。 引っ繰り返そうと体当たりをするが、元々が高さがなく横に広い形状であった上、 皮肉にも小銭が溜まって重量を増した箱はそう簡単に倒れない。 ゆぐゆぐと泣いているれいむ。開けてやろうかしらと思い始めた頃、性悪そうな一人の青年が参拝にやってきた。 れいむを無視して賽銭箱に小銭を投げ入れると、ぱんぱんと手を叩く。 「もっといっぱい虐待できますよーに!!」 「ゆ!?おにいざん!このはこをあげでね!!!」 巫女としての務めも忘れ、泣き声で参拝客に懇願するれいむ。 青年はにっこりとれいむに微笑みかける。 「いいよ、お安い御用さ。でもタダでは引き受けられないなあ」 「ゆ゛!?」 「お願い事をする時は何が必要なんだっけ?」 「ゆ・・・おさいせん・・・でもおさいせんはそのなかだよ」 「じゃあ僕が箱を開けたら、僕にお賽銭をくれるのかい?」 「いいよ゛!!はやぐゆっぐりあげでねぇ!!!」 箱を開けることしか考えていないれいむ。青年は手に力を込め、固く閉められていた箱の蓋を外す。 れいむは感激の涙を流す。 「ゆぅ~~!!おにいさんありがとう!!」 「じゃあ約束どおり、お賽銭はもらっていくね」 「ゆ?」 持参した袋に箱の中身の小銭をじゃらじゃら流し込んでいく青年。 感激の表情のまま、呆然と眺めているれいむ。 「じゃあね!」 「ゆ゛う゛ぅぅぅぅぅ!!おにいざんなにずるの゛おおぉぉぉぉぉ!!! れいぶのあづめだおざいぜんがああぁぁぁぁぁ!!」 「大丈夫、これはちゃんと里の自然保護基金に寄付しておくよ。 買い物しようなんてらしくないこと考えず、森の中でゆっくりしていってね!」 疾風のように去っていく青年を、れいむは追いかけることも出来ない。 俺が捕まえるべき? いや、別にれいむの肩持つ気無いし。 それにあの青年は、本当に森のためにお金を使うことだろう。私利私欲のためではなく、 ただゆっくりを絶望に突き落とすことだけを目的に行動する人種のようだから。 まあ自然保護活動にとっちゃ、微々たるものだろうけどね。あんなはした金。 「ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・なんでぇ・・・れいぶのおさいせん・・・」 ゆっくり神社の境内でれいむが泣いていると、周囲から仲間のゆっくりが怒った表情で飛び出して来た。 れいむだけのお賽銭じゃないんだよね。 「ちょっと!どういうことなのれいむ!!」 「はこをあけるためにおさいせんをあげちゃうなんてばかなの?しぬの?」 「ゆ゛っ!?ちがうよ、れいむは・・・」 「ちがわないんだねー!わかるよー!」 「にんげんのたべものをいっぱいくれるってやくそくはうそだったんだね!!」 「いままでまりさたちをだましてごはんをはこばせてたんだぜ!!ゆるせないんだぜ!!」 「にんげんのおねがいにつきあわされてゆっくりできなかったわ!」 「れいむはぜんぜんゆっくりできないゆっくりだね!!」 「このうすぎたないばかゆっくり!!いきてるかちないよ!!」 「「「「「「ゆっくりしね!!!」」」」」 「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!」 何匹ものゆっくりから袋叩きに遭うれいむ。 参拝客に気に入ってもらうために綺麗にしていた髪や肌もボロボロになっていく。 暴行に参加していないゆっくりは、れいむの収まっていた手作り小屋に体当たりして破壊し、 屋根に使われていた葉っぱや草をむーしゃむーしゃとやっている。 やめでぇぇぇというれいむの声も、罵声と悲鳴の中に掻き消える。 十数分に渡る暴行が続いた後、完全に神社を破壊しつくしたゆっくり達は、それぞれ周囲に散っていった。 残ったのはゆっくり神社本堂のわずかな建材(食べられない部分)と空っぽの賽銭箱、 ボロ雑巾のようになった虫の息のれいむだけだった。 リボンも解けていてかわいそうだったので、俺は出て行って結んでやった。めんどくさいから固結びだけど。 「ゆ・・・・おにいさん・・・・・・」 「やあれいむ。お賽銭いるかい?」 「いらないよ・・・・・もうおかねはいやだよ・・・・・」 「あ、そう」 清貧ってやつかな。本物の方の巫女にも見せてやりたいぜ。 俺はれいむの前に立って、手をパンパンと叩く。 「早いとこ給料上がりますよーに!」 そして一礼すると、ゆっくり神社跡に背を向け、家に帰る。 饅頭には神も仏もいないよね。 おしまい このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5135.html
※以下、お食事中の人は注意して欲しい。好き嫌いが分かれるので、一般の食材と一緒にしないで欲しいことと、実物を見たことが無い人は、検索して実物を見るのを推奨。 やあ。俺は、普通の鬼意山の1人です。今日は、幻想境の外れでオープンした俺の屋台について話そうと思う。俺は、昔…外の世界で見たある食べ物が頭からこびりついて離れないんだ。おぞましい…つーーーんと鼻に付く臭い、屋台の前を通ろうものなら…100メートル先からでも確認できる…そんな食べ物だ。 形は普通は四角く、色は茶色かったり、黒かったり…様々だが、何個かを串に刺して揚げてから辛いソースや辛い味噌なんかの調味料を付けてとにかく味を誤魔化して食べる。 一般にはゲテモノ扱いされるところだが、とある…大陸では…老若男女問わず人気のあるファーストフードらしい。聞いたことあるだろうか?名を「臭豆腐」という。 名は体を表すと言うが、そりゃあもう…目の前で見ているだけでも肉の腐ったような臭いが辺りに充満して、口に含むなんて考えただけでおぞましい一品で、…揚げてあるのが幸いしてか…辛うじて味覚障害のある奴らに食われているだけのような気がする。 事実…俺は某所の屋台の10メートル先で鼻をつまみながら一目散に逃げたね。 おっと脱線してしまった。そんな臭い豆腐だが、いざ作るとなればコストが安くて儲かるとあって、俺も作り方を屋台のおっさんにいくつか伝授してもらったので、「臭豆腐屋」をはじめる事にしたんだ。 さて、1週間前から仕込みをした甲斐もあり、なかなか自分的には良くできたと思う。桶の中の臭豆腐が、黒々として良い具合に異臭を放ってるぞ?!そろそろ太陽も真上に上がって、ちょうどメシ時になったから屋台をオープンさせようかな……とと……、忘れてた。笛でも吹いて、呼び込みをするか…。 ぷおーーーーーーーぷおーーーーーー…臭豆腐…はいらんかね〜!! 案の定、あんまり人は来ないなあ…。俺は鼻栓をしているから無事だが、この臭いに惹かれてくるなんて、金バエならともかく普通の人間ではないだろうな。しかし…ここで俺の脳裏には閃くものがあった!!…もしや?あいつらなら……!仕方ない最後の手段だ ぷおーーーーーー…ゆっくり臭豆腐を食べていってね〜!!! 俺の期待通りの事は起こった。ガサガサッと茂みが動いたかと思うと、丸い玉のようなものがコロコロと転がって来たのだった。そこには、50cmはあるかという大きなゆっくり饅頭がゆっくりとした表情でいつもの言葉を返してきた。 「ゆっ☆ゆっくりたべるわよ☆…それをこっちによこしなさいよ…!」 涎をたらし、道を水浸しにしながら、紅魔館のサボり魔門番ことゆっくり美鈴が、小さなバットを頬にかかる三つ編みで振り回しながらゆっくりと近づいてくる!!!俺ぴーんち(?!) 「あああああああああ…たまんないいいい!☆」 左右に素振りしてるのが正直うざいと思う。俺は実のところ美鈴のバットなんて怖くもなんともないのだが、最大限の演技力を振り絞り怖がっているかのように振舞った。 「うわああ〜。こわいよ〜。…いくつ食うんだ?(棒)」 「ゆゆっ…そ…そうね。しゅーっ・どーっ・ふ!3こもらおうかしら☆…ゆぅ☆…ごまかしちゃだめよ…おおきいのにしてよ!☆」 ゆっくりは、頭が極端に悪い生き物なので、数も片手レベルしか数えられないと聞いた。3個も食うのかよ?この糞饅頭…と思いながらも、俺は平然と臭豆腐にかじりつく美鈴の馬鹿顔が見たくて、仕込み済みの臭豆腐に黒い謎の粉(笑)を振りかけ、黒いゲル状の臭豆腐液にたっぷりと浸してから、高温の油鍋にぶち込んだ。 じゅわあああああああああああ…… 擬音に騙された奴は残念です…美味しそう…な臭いなんてするわけなく、黒灰色の煙と弾ける泡が屋台を暗黒サウナのごとく覆っていった。やべ…これ、ゴーグルしてても眼に染みる(爆)。こんなの食う奴の気が知れない。まあ、目の前の饅頭は屋台の前で、精一杯ぴょんぴょんと跳ねて、油鍋を覗こうと一生懸命なんだが…。 「ゆ〜☆もうそろそろたべたいのよ〜☆おそい〜☆はやくしろ〜☆」 ゆっくり美鈴は緑色の人民帽を上下させながら、涎をあたりに振りまきつつ俺に命令してくる。ゆっくり饅頭はこれだから困る。数分なんだから、少しは我慢して見ていられないのか??俺の串を持つ手が無意識に怒りで震えてくる…串の悲鳴が聞こえてきそうだ…はっ…いかんいかん。今日は「普通の(笑)臭豆腐屋さん」になりきるんじゃなかったのか?俺、ガマンだ。もう少しで揚げあがるから。 「ちゃらりらん♪上手に揚げましたー!!!」 どこかで、音楽が鳴った気がする。見事!としか形容できない俺のスーパー臭豆腐! 第一号の客がゆっくり饅頭でなければ…それなりに嬉しいんだが、まあ良いとしよう。 さあ、食うが良い。俺は、満を持して串を美鈴の前に掲げた。 「ゆゆ☆おいしそうねーーーーいただきまーーーーっゆゆゆ????☆」 「おっと待った!」 「こらあ!☆なにするのよおおおお☆ぷんっ」 「はは…?何言ってるんだ。まさか、お前はこれをタダで食べようとしているのか?屋台で食べるのには、当然…お金がいるだろう?まさか…持ってないんじゃないだろうな?!」 ゆっくり美鈴は、ゆっくり食べようと思ってぽかーーんと大口を開けている状態のまま、俺の言ったことを反芻している。さっきまでの威勢はどうした?糞饅頭?? 「…ゆゆ☆たべさせないと…このばっとでほーむらんにしてやるわ☆」 「ええ??!何だって?…紅魔館の門番は、そんなに貧乏なのか?……メイド長に俺が言ってやろうか?美鈴が買い食いしたくても、『紅魔館は貧乏だから無理☆』だとぼやいてた…って!」 「ゆゆゆうっゆうう…めいどちょう!!!☆それはこまるんだわ…☆」 へへへ…焦ってる焦ってる…。俺は内心ほくそえんでいた。さっきからお預けをくらって、美鈴の涎の量が半端ない!それに脅しが効いて、目を白黒させながら、俺の前で右往左往しているのが面白くて仕方ないからだ。よし、そろそろ譲歩してやるか…? 「しかたないなあ…ソレで良いよ。ソレで!」 「ゆゆゆ?☆」 俺は、美鈴の小汚いバットを指差して、交渉に入った。相当大事にしているものらしく、最初は嫌がっていた美鈴だが、串を近づけられると肉の腐ったようなつーーんという臭いに負けて、ついには俺にバットを差し出した。おお!俺のゆっくりコレクションボックスがまた一つ埋まったな。美鈴は半分涙目になりながら、3本の臭豆腐串を受け取った。すると…とたんに満面の笑みに変わる。 「ゆゆううう☆うーーまい☆ばくばくばくばくばく☆」 美鈴は一気に3本を口に入れてあっという間に飲み込んでしまった。う…げろげろげろおげろおおお…改めて食ってる所を見ると吐き気が催す。俺は、ゆっくり饅頭が大嫌いだ。こいつらに嫌がらせをする意味で、この屋台をはじめたわけなんだが、コレほどまでに喜ばれるとは思わなかった。ある意味「こんな生ゴミのような臭いの食事は胃が受け付けない」…とか言ってくれるゆっくりの方が、食わせ甲斐があるのになあ…などと少し残念に思う。…しかし、まあ、いくら好きでも、そろそろ気づくかな? 「……おい…おまえ☆しゅーっ・どーっ・ふ!…のあじがおかしいわよ……??」 期待通りの美鈴の反応に、俺は平静を装って答えた。 「…え?そうかい…???」 「ゆゆゆう…あまくて……からくて…ふしぎなかんじ…?☆」 「でも、美味しいだろ?俺の自家製ブレンドなんだ!色々入ってるからそう感じるんじゃないかな?!」 「ゆゆうっ…☆したがやけるみたいにいいいい…あついぃのおおおおおおうぅ☆」 「ははは。何だろう?唐辛子とアンモニアかなあ??」 「へえんなのううううぅ…いぎゃああぅ…へへへへぇ…がらいがらいいいいぃ…いいつもたべてるのは…こんなああんじゃなああいいいいいいいいがらいいいい☆」 ゆっくり美鈴は涙を滝のように零しながら、地面を転げまわっている。そうか〜そんなに旨かったか?涙を流して喜んでくれるなんて嬉しいなあ。すると、美鈴の口から未消化の臭豆腐が甘い胃液とともに吐き出された。まだ固形の物も混ざっている。表面の油皮が剥げて、内面がむき出しになっているものもある。意地汚いゆっくり美鈴は吐き出したものをまた口に入れなおそうとして吐しゃ物を覗き込んで声を詰まらせた。 「ぎゅううううううううあああああああぁ☆おおおおおぜううううううさぁまあああああああぁぁぁ?????☆」 そこには、あの首だけの饅頭に羽が生えた醜悪な生き物ゆっくりれみりあ(頭)とゆっくりぱちゅりーの細切れの残骸が広がっていた。ぐちゃぐちゃになってるが、辛うじて肉まんとクリームと髪の毛やリボンと一緒に顔の皮膚が繋がって見えている。俺の考案した臭豆腐の隠し味が効いてるね。大変だったんだぜ?1週間の間にゆっくりれみりあ(頭)と引きこもりゆちゅりーを捕まえて、ミキサーにかけて潰した豆腐と一緒に固形になるまで蒸し上げるのは。 しかし、美鈴は他のゆっくりと違って偉いなあ。一応、主人の見分けはつくらしいしな。これがゆっくり霊夢や魔理沙なら、無視して食いまくるのがオチだもんな。 「ゆゆゆゆぎゅ☆うぎゅう☆…おみずちょーだいびょおううぅ☆」 こんどはお水が欲しいってか。 「ほい、お水」 俺は、近くにあった水を差し出した。 「ゆゆゆゆ”…うべえええええ…ごぼごぼおおおおお!!ゆっく”うぅりでぎなああああいじゃないいいいい☆」 美鈴は俺の渡した水を盛大に吐き出した…!黒い噴水が空に吹き上がる。 ん…?俺特性ブレンド水が何か??? 水を飲みたいって言ったから、せっかくサービスしてやったのに吐き出すとは失礼なゆっくりめ!!!ちょっと黒いかもしれないけど、本場のレシピどおり、貝の腐汁、唐辛子や屑野菜の腐汁、ウジの湧いた肉の腐汁、黒石灰粉、それと臭みが足りなければ、肥溜めの中の物を少々…いや沢山混ぜる…どっからどうみても正にパーーーーフェクトゥ!!!!な臭豆腐汁。※良い子の鬼意山諸君は真似しないように。 完成度の高い証拠に、ゆっくり美鈴は汁を吐いたまま…悶絶して白目を剥き、息も絶え絶え…口の周りにハエが沢山寄ってきている有様だ。旨さのあまり気絶とは…可愛いやつめ。このまま、こいつは怒り狂ったメイド長に処分してもらうとして…さて、他のゆっくりにも味あわせてやるとするか。 **************************** 次の日。俺は屋台ではなく首から紐をかけて、お腹の辺りに箱を固定した簡易売り子の格好で、目をつけていたゆっくりの沢山いる集落に入ってみた。 ぷおーーーーーー…ゆっくり臭豆腐を食べていってね〜!!! 昨日のとおり、掛け声をかける。今日は、昨日と違って寄ってくるかな?…お!あそこに見えるのは、ゆっくりれいむ一家だな!雑草と花が生い茂る原っぱのあたりに野良ゆっくりの家族がゆっくり食事に来ていたのだ。 「やあ!こんにちは!ゆっくり臭豆腐を食べていってね〜!!!」 「「「ゆゆゆ!ゆっくりしていって…ゆゆゆ?なんか…すこしくさい?」」」 「臭くなんかないよ」 このゆっくりれいむの一家は、昨日の美鈴よりも小ぶりのお母さんれいむと、野球ボール大の子れいむ3匹、子まりさ2匹、プチトマト大の赤れいむ2匹、赤まりさ1匹の計9匹だった。 「ゆゆっ…おにいさんはすごくくさいから…ゆっくりできないひとだね…」 「ほんとうだね」 「ゆうぅ…ほんちょーだあぁ…くしゃいよ…」 「おお…くさいくさい…」 「くさいおにいさんは…まりさがおっぱらってやるよ!」 これだけ集中的に「臭い臭い」いわれていると、予想以上にムカつくなこの糞饅頭どもめ!!…いや、俺が臭いわけじゃない。この豆腐が悪い……うん…饅頭憎んで豆腐憎まず…おっと…本音がでちまった。 「まあまあ、待ってくれよ?君たち。お腹は減っていないかい?」 「ゆゆ!?なに?れいむたちになにかくれるのぉ?」 「ゆーーー?おなかはすいてるけど…」 「おにいさん…たべものちょーだい」 「おにゃかすいちゃったよー」 「ゆっ!まちなさい。おちびちゃんたち…!!おかーさんがどくみしてからだよー?おにいさん、れいむにまずたべものをちょうだいね?ゆっくりしないではやくしてね?!」 いやしさでは他のどのゆっくりにも負けていない、ゆっくり母れいむが名乗りを上げた。これは好都合!とばかりに、俺は箱から揚げたての臭豆腐串を取り出した。 「そうだね。れいむが味見をしたほうがいいね。とっても美味しいから、ゆっくり沢山食べていってね?」 「ゆっくりたべるよーーむーーーしゃむしゃ…ゆゆゆゆ!!」 「「「ゆゆゆ????おかーしゃん?」」」 赤ゆっくりが心配そうに母れいむに駆け寄っていくと、母れいむはすごくすっきりした顔で、「うまうまー!」とか叫んでいる。 「ゆ!?おいちいの?おかーちゃん」 「ゆゆ!れいむもたべりゅう〜!」 「ゆ−!にゃにこれ??くりょくてへんにゃの!」 「はふはふはふ…!おいちいねーおねえちゃんもたべにゃよー」 黒い串に刺さった臭豆腐は見る間に無くなっていく。赤れいむたちが食べているのを見て、子れいむと子まりさも俺に豆腐をねだりだした。俺は箱にある串を何本か地面に置いてやり、れいむ一家が食い漁る様を見てニヤリと笑った。 「おい、しゅーっ・どーっ・ふ!は旨かったか?」 「ゆゆぅ!おいしかったよーおにーさん!」 「うまうまーー!しゅーっ・どーっ・ふ!ってゆーの?」 「ちょっとくさいけどーおいしかったよ」 「おにいさんーー!もっとちょーだいーー」 「そうだよーひとりじめはよくにゃいよーー?」 俺のかけた声に口々に言葉を返すゆっくり饅頭。 「じゃあ、ゆっくりできたんだね?」 「ゆゆゆ!ゆっくりできたよー」 「ゆっくりできてーしあわせーーー!」 「おにゃかいっぱい…ゆぅっ…おにいさんもゆっくりしていってね」 「ゆっ…ゆっきゅりしていってにぇー」 れいむ一家は満面の笑顔で、ゆっくりぷれいすを満喫しているようだった。 「うん。そうするよ。………………………そういえば………君たちのお父さんが見当たらないけど……何処にいったの?………狩りにでも行ったのかい?」 「「「「「ゆっ!!」」」」」 そう、このれいむ一家は明らかにまりさがつがいでいる家族構成なのだ。子供にまりさ種がいる以上、当然親はまりさでなくてはいけない。子供たちの顔が明らかに暗くなっていく。そんな子供を見回して、母れいむが心配そうにつぶやいた。 「ゆっ…まりさが1しゅうかんまえからかえってないの…おにいさん…」 「おかーさんといっしょにみんなでさがしたのにみつからないんだよーー!」 「どこいっちゃったんだろーー?おとーちゃん…」 「そーーか…居なくなっちゃったのかーー。それは残念だね。この臭豆腐、食べさせてあげたかったのに………もし帰ってきたらこれをまりさにあげると良いよ…」 俺は最後の1串を母れいむの前に置いて、れいむ一家に別れを告げてその場を後にした。母れいむ達は、父まりさのためにその1串を食べないで残しておこうと決め、巣穴に持ち帰った。しかし数日後、母れいむが餌取りで居ないときに子供達はすっかりお腹を減らし、臭豆腐を食べてしまおうと画策したのだった。 「ゆっ!…すこしならつまみぐいしてもへいきだよね?」 「おとーちゃんがかえってこにゃいのがわりゅいんだよー!」 「「「ゆゆゆゆ!いただきまーーーちゅ」」」 おもむろに、子供達は臭豆腐にいっせいに喰らい付いた。 「むちゃむちゃむちゃ…ぐげえええええええええええ!!!!」 「ゆゆゆゆ”う”う”う”ぎゅ”ゆゆ”びゅうううう”っぐりでぎゅにゃあいいいい”ぃ!」 「げろおおおおおおおおおぎゅううう”ぅ!」 口から腐液を撒き散らし、ショックでのたうち回る子れいむと子まりさ達。対照的にすっかり動かなくなっている、赤れいむと赤まりさ…。 「だいじょうぶ?あかちゃんたち”いいいい???」 「ちゃんとはきだすんだずえ?…げぼっぼうう」 「ゆ……!しんでりゅうううう!!あかちゃんがああ!しんでりゅよ?!まりざああああ!!!?」 赤れいむと赤まりさたちはショック死してしまったようだ。何にそんなに驚いたのかって…?小さいから顔を近づけて見すぎたんだな?きっと…。 表面の油皮を割ると、腐臭と共に中からドロリと腐った餡子汁まみれになって灰茶色の血走った目玉が出てきた。よく見ると、他にも腐餡子に混じり金色の髪の毛もちらほらと。 「ゆぎゅううう!!!ゆゆめだまあああああああ!!!」 「おおおおとおととお”!!ざんっ!のがみのげえええええ!!」 「おがーーーーーじゃんんは”やぐうううがえってきでえええええええ!!!!」 早く食わないから、美味しい時期を逃してしまうんだよ?臭豆腐なんて旨いと思ってる奴の気が知れないなあ…と、俺は漠然と考えながら、さっき捕まえた母れいむをどんな臭豆腐にしようかとミキサーにかけるのであった。 おしまい。書き人三 ※SS書きなれてないので読みづらくてすみません。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5392.html
いじめシーン少ないので注意。 ここは、ある男の家。 この家の庭には、ゆっくり捕獲装置が置いてある。 「ゆん♪ゆん♪ゆーん♪」 「おちびちゃん!おさんぽたのしいね!」 「ゆ?いいにおいがちゅる!」 「ゆっくりいこうね!」 このゆっくり一家は、散歩の最中。 「ゆぎいぃぃ!」 「おちびちゃ・・・ゆぎいぃぃ!」 「みゃみゃ・・・ゆぎいぃぃ!」 「「「「ゆぎいぃぃ!」」」」 「だずげでえぇぇ!」 悲鳴を聞きつけた男が駆けつける。 「大きいのが二匹に小さいのが五匹か。大漁だ!」 「おじさんなにいっでるのぉぉ!ばやぐでいぶをだずげでえぇぇ!」 「おちびちゃんはころしていいから、ばりざをだずげるんだぜぇぇ!」 「みゃみゃひどいぃぃ!」 「助けてやってもいいんだが、条件がある。俺の家の中にある回し車を回し続けろ。明日の朝まで回していられたら全員逃がしてやる。」 「ゆっくりわかったよ!」 「ゆっくりわかったんだぜ!」 男はゆっくり一家を捕獲装置から取り外し、かごの中に入れた。 そしてそのかごをテーブルの上に置き、親ゆっくり二匹をそれぞれ回し車に入れた。 そして、蓋を閉じゆっくりが脱走できないようにする。 「ああ。言い忘れたことがあった。その回し車、五秒間回さないと電気ショックが流れるようになっている。」 「そういうごどははやぐいっでよぉぉ!」 「ゆびびびびび」 「ばりざぁぁ!」 「いだがっだんだぜぇぇ!はやくだずげでぐなんだぜぇぇ!」 「へーっ。そう言う事言うんだ。じゃあ小さいのもお前らも全員助からないな。」 「それはもっどいやなんだぜぇぇ!」 「嫌なら黙って走れ!」 「「ゆうぅぅ・・・」」 男がなぜこのようなことをするのか。 それは発電のためだ。 捕獲装置で捕まえたゆっくりに回し車を回させ、それで発電した電気を生活に使っている。 回し車は河童製の回し車で、大量の電気を発電できる。 ちなみに赤ゆっくりや子ゆっくりはすぐに力尽きてしまうので、回し車は回させない。 なので、赤・子ゆっくりには加工所製栄養剤入り成長促進剤を与え、成ゆっくりと同じ大きさまで育てる。 (A)人工的に発情させ、子供を作らせ、その子供を食べる。 (B)ゆっくりに栄養剤を与える。 (C)回し車を回させる。 (D)虐待お兄さんに売る。 そして、Aをしばらく繰り返し、弱ってきたらBをする。 それを繰り返し、子供が作れない状態まで弱ってきたら、CまたはDをする。 余った電気は電力会社に送り、お金をもらう。 男はこうして生活しているのだ。 ちなみに、先ほどの親れいむと親まりさは・・・ 「ゆう・・・ゆ・・・」 親まりさだけ生き残っていた。 「驚いたな。まさか朝まで耐えるとは・・・」 「まりさはがんばったのだぜ・・・だからおちびちゃんをかえしてくれだぜ・・・」 「断る。」 「なんでぇぇ!じじいのうそつきぃぃ!」 「こいつは虐待お兄さんにでもやろうかな・・・」 「ゆうぅぅぅぅ!!!」 END