約 3,643,301 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4732.html
「・・・ゆ・・・ゆゆ~ん・・・・・ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」 まず一匹の赤れいむが目を覚まし、声を上げた。 「ゆぅ・・・ゆっ!ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」 「ゆっきゅり おきちゃよ!ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」 「おきゃあしゃん!おちょうしゃん!ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」 他の赤ゆっくり達もその声につられて順に目を覚ます。 「ゆ~ゆっ・・くり・・・していってね・・・」 寝ぼけ眼で、それでも本能の命じるままに挨拶を返す親れいむ。 親まりさも目を覚ました。 「ゆぅ・・・ゆっ!?なんだかいいにおいがするのぜ!まりさのごはんなのだぜ! ゆっ・・?ごはんどこなのぜ?」 自分の周りに漂っていた香しい匂いに一気に覚醒する。 散々餡子を喰らっていたにも関わらずまだ食おうと言うのか。 「「ゆっくりしていってね!」」 「「「「「ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」」」」」 皆が揃ったところで、改めておはようのゆっくり挨拶。 「ゆ?きょきょどきょ?」 そこで一匹の赤ゆっくりがようやく異変に気づく。 「ゆゆ~?」 「ゆ!?いつものゆっくりぷれいすじゃないんだぜ!」 キョロキョロと自分達の周りを見渡すゆっくり達。 そこは先程までゆっくり家族がいた森の中ではなく、 俺の家の敷地にある土蔵の中だった。 土蔵と言っても、俺は商いや農業を営んでいるわけでもなく、 それほど物も持っていないので、倉庫としては使っていない。 せいぜいがゆっくりで遊ぶときに使うくらいだ。 だから目に入るものと言えば、空の棚が幾つかと、外からの光が差し込む入り口、 土蔵には不釣り合いな大きく拡張した明かり取りの窓くらい。 あとは地面と壁と天井だけだ。 だが、それ故に普段草木が生い茂る森で暮らしているゆっくり達にとっては、 その広さが新鮮だったのだろう。 「ゆっ!ここはひろくてゆっくりできそうだよ!」 「まりしゃも ゆっきゅりちゅる~!」 「じめんしゃんが しゅじゅちくて きみょちぇいよ!」 「きょうからここをまりさたちのゆっくりぷれいすにするんだぜ!」 今の状況になんら危機感を抱くこともなく、餡子脳天気にゆっくりするゆっくり達。 その様子の一部始終を土蔵の入り口の影から見守っていた俺がやおら姿を現し、 ゆっくり達に声をかける。 「おはよう!ゆっくりしていってね!」 「「ゆ!ゆっくりしていってね!」」 「「「「「ゆっきゅりしちぇっちぇにぇ!」」」」」 ゆっくり達が挨拶を返す。 「ゆゆっ?さっきのおにいさん?どうしてれいむたちのゆっくりぷれいすにいるの?」 親れいむが小首(?)を傾げて問いかける。 疑問に思うべきは何故俺がここにいるかではなく、何故お前らがここにいるか、なのだが。 まあ完全に眠りこけている間に俺に運び込まれたのだから、 餡子脳では"連れてこられた"という可能性を考えられないのも無理はない。 「あれ?忘れちゃったの? ここに来ればもっと美味しいご飯とあまあまをあげられるよって話をしたら 君達が行きたいって言ったから連れてきてあげたのに。」 勿論、そんな事は一言も言ってないわけだが。 「ゆっ!ゆっくりおもいだしたんだぜ! おじさんはさっさとおいしいごはんとあまあまをよこすんだぜ!」 「ごはんしゃんよこちぇ~!」 「あみゃあみゃちゃべちゃ~い!」 だから言ってねぇ。微塵も疑い無しかよ。 食べ物を貰えると思ってぴょんこぴょんこと跳ね寄ってくる赤ゆっくり達。 俺はゴクリと生唾を飲む。 思わず踏みつぶしそうになるのを必死に堪える。 赤ゆっくり達に続いて自分達も食べ物にありつこうと親ゆっくり達が跳ね寄ってくる。 ・・・・・・跳ね寄ってこようとする。そこで異常に気づく。 「ゆっ・・・?ゆゆっ!?」 「ゆぎぎ・・・うごげないんだぜぇ!?」 親まりさが目を覚ました時に嗅いだ香ばしい匂いの正体。 それは焼かれた饅頭の皮の匂いだったのだ。 麻酔が効いて眠っている間に親ゆっくり達の底面の皮はじっくり丹念に焼き焦がしてある。 こいつらはもう二度と元気に飛び跳ねることはおろか、 ずりずりと地べたを這うことすらできないのだ。 「ん?どうしたんだい?」 ニコニコと微笑みながら白々しく問いかける。 「[れいぶ][ばりざ]のあじが動がない゛よぉぉぉぉ!?どぉぉじでぇぇぇ!?」 親ゆっくり達が泣き喚く。 「どぉぢぢぇぇぇぇ!?」 「ゆ゛えーん!ゆ゛えーん!!」 「やぢゃー!おちょうしゃーん!おきゃあしゃーん!」 親達の泣き声が伝染したかのように赤ゆっくりも泣き出す。 「な、なんだってー(棒」 俺は驚きの叫びを上げながら親ゆっくりに近づくと、 底面が他のゆっくりから見えないようにしながら、 ひょいと親まりさを持ち上げてそのまま裏返す。 「うーん・・・」 唸り声を上げながらまりさの底面を睨むように見続ける。 そんな事をしなくても、原因が消し炭のように真っ黒に焼け焦げた底面の皮にあることは 一目瞭然なのだが。 「おにぃざぁぁん!!ばりざのあじ、どうなっでるのぉぉぉぉ!?」 涙やらよくわからない粘液やらを撒き散らしながら、 親まりさが必死の形相で俺に問いかける。 「なーんだ!何ともないよ!」 「「「「「ゆ?」」」」」 ゆっくり達が揃って不思議そうな声を上げる。 「じぇもぉぉぉ!あじが!ばりざのあじがうごがないんだぜぇぇぇ!?」 流石に何ともないと言われても、現に足が動かなくなった張本ゆっくりとしては、 なんだそうでしたか、とは納得できないのでろう。 ゆっくゆっくとしゃくりあげながら首?をブンブン振るまりさ。 「ハハハ、足は何ともなってないよ。 さっきあまあまを食べ過ぎちゃったせいでお腹一杯で動けないんだね。 少しゆっくりしてれば、すぐに動けるようになるよ!」 にこやかな顔で嘘八百を教える俺。 「ゆゅ・・・?そう・・・なの・・・?」 実際のところはそこまで腹一杯でもないだろうに、 自分に都合よく物事を解釈する餡子脳故に俺の言葉を信じ込み、 ホッとしたような表情を見せる親ゆっくり達。 「なんぢょもな゛ぎゃっぢゃよ゛ぉぉぉぉ!!」 「ゆ゛えーん!ゆ゛えーん!!」 「よきゃっちゃよー!おちょうしゃーん!おきゃあしゃーん!」 これには赤ゆっくり達も嬉し泣きだ。 嘘なのにな。 「動けなくなるまであまあま食べちゃうなんて、 赤ちゃん達のお父さんとお母さんは、とてもゆっくりした食いしん坊さんだね!」 俺は赤ゆっくり達にそう言って笑いかける。 「「「「「くいちんびょうちゃんぢゃね!!」」」」」 今さっきまでゆんゆん泣いていた赤ゆっくり達も一緒になって笑う。 大好きなお父さんお母さんが無事だった(笑)とわかって安堵しきっているのだろう。 「ゆっへへ・・・」 それを聞いて照れ笑いをする親ゆっくり達。 「よーし!じゃあ赤ちゃん達もお父さんとお母さんに負けないくらい 美味しいご飯とあまあまを一杯食べようか!?」 「ゆゆっ!?ちゃべゆ~!」 「りぇいみゅも いっぱいちゃべゆよ!!」 「まぃちゃも くいちんびょうにゃんぢゃじぇ!」 ご飯とあまあまの事を思い出し、その場でぴょんぴょん飛び跳ねながら喜びの声を上げる。 危機が去ったと思いこんで安心した親ゆっくり達も微笑みながらその様子を眺めている。 「でもその前に、お兄さんからお願いがあるんだ。」 「ゆ?」 「おにぇぎゃい?」 「やぢゃやぢゃ!ごはんしゃん!あみゃあみゃしゃん!」 早速駄々をこねている堪え性のない赤ゆっくりもいるが無視。 親ゆっくり達も何事かとこちらの様子を伺っている。 「うん・・・実はね・・・・・・お兄さん可愛い赤ちゃんとすーりすーりしたいんだ!」 念のため断っておくが、この場合のすりすりはゆっくり達が子作りのときにする すりすりの方ではなく、親子や姉妹で親愛の情を示す時のすりすりの方だ。 断じて俺は変態お兄さんではないので誤解しないで欲しい。 「ゆ?しゅーりしゅーり?」 「うん、すーりすーり。お母さん達もいいかな? 赤ちゃんとすーりすーりさせてもらっても?」 と親ゆっくりに向かって尋ねる。 一瞬親ゆっくりは戸惑う。 人間とすーりすーりするなど今までに経験が無い。 そこまでゆっくり信用できる相手なのだろうか? が、この人間は自分達を今のところゆっくりさせてくれているという誤った認識と これから美味しい食事を貰えるという期待から気が緩んでいた親ゆっくりは すーりすーりをさせても害はないと判断した。 「ゆっ!とくべつだよ!そのかわりにおいしいごはんをいっぱいちょうだいね!」 「おいしいあまあまもなんだぜ!」 「ハハハ、勿論だよ!お兄さんとすーりすーりしてくれた赤ちゃんには 一番美味しいご飯を上げるよ!さあ、どの子がすーりすーりしてくれるのかな?」 「「「「「ゆゆぅ~~!!」」」」」 "一番美味しいご飯"という言葉に期待に瞳をキラキラ輝かせる赤ゆっくり達。 我先にと飛び跳ねながら俺に近づいてくる。 そして一番に辿り着いたのは、さっき俺のお願いを聞きもしないうちから 「やぢゃやぢゃ」とか言って断った赤ちゃん、赤まりさだった。 「しゅ~り しゅ~り♪おにぃしゃんちょ、しゅ~り しゅ~り♪」 俺の靴にほっぺを押しつけすーりすーりをする。 靴越しなんで全然感触は伝わらない。 「ゆぇぇぇん!!!まりしゃ じゅるいよ~!!」 「りぇいみゅが おにぃしゃんと しゅーりしゅーりしゅりゅのにぃぇぇぇ!!」 遅れを取った他の赤ゆっくり達は泣き出してしまう。 当然ながら一番美味しいご飯にありつけなくなってしまった事を嘆いてるわけなのだが、 その理由とは別の理由で、この赤ゆっくり達は遅れを取ったことを嘆く権利がある。 何故なら今俺にすーりすーりしている赤まりさが一番の幸せ者だからだ。 楽に終われるという点で。 「しゅーりしゅーり♪」 「すーりすーり♪」 姉妹達が羨ましそうに妬ましそうに見つめる中、 赤まりさと一緒になって楽しそうに声をあげる俺。 姉妹達の心情を知ってか知らずか、 赤まりさと俺の楽しそうな様子に親ゆっくり達も嬉しそうな表情をしている。 ひゃあっ!ノッてきたぞぉ! 「よーし!お兄さんも赤ちゃんにすーりすーり♪しちゃうぞ!」 高らかにそう宣言すると俺はすーりすーりされている方の足を持ち上げた。 「ゆっ??」 突然すーりすーりの対象を失った赤まりさが困惑の声を上げる。 俺の足を探して周りを見回し・・・それから真上を仰ぎ見て"ソレ"を見つけた。 「ゆゅ・・・?ゆぺぇっ!?」 「すーりすーり♪すーりすーり♪赤ちゃんとすーりすーり♪」 楽しそうな俺の声に合わせて、すーりすーりを繰り返す俺の靴と、地面。 実際の擬音は『すーりすーり』よりは『ずしゃりずしゃり』 とでも表現した方が正しいかもしれない。 「「「「「「ゆ・・・・?」」」」」」 他の赤ゆっくり達と親ゆっくり達はその一語だけ発すると、 先程までの恨めしそうな表情や、嬉しそうな表情を 凍りついたように貼り付けたまま固まっている。 まるで目の前で起こっている事の意味がわからない、とでも言うかのように。 「すーりすーり♪すーりすーり♪し!しあわせぇ~っ!!」 歓喜の声をあげる俺。最後の「しあわせぇ」は芝居抜きのガチのしあわせコールだ。 「しあわせぇ~!しあわせぇぇぇぇぇ!!」 土蔵の地面の固い土を掘り起こさんとするかのように 靴をガシュガシュと激しく擦りつける。 その靴の脇から黒い餡子が徐々にはみ出して来た。 「ゆ・・・ゆ・・・ゆ゛ぎゃあ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!!!!」 最初に口を開いたのは一匹の赤れいむだった。 「ゆぎゃあぁぁぁ!!!ばりざのがわいぃあがぢゃんがぁぁぁぁぁ!!!!」 「ぉぼっ!・・・どぼっ!どぼぉじでごんなごどずるのぉぉぉぉぉっ!?!?」 「れいびゅの いみょうちょがぁぁぁぁ!!!」 それを皮切りに次々と絶叫するゆっくり一家。 「おや?どうしたんだい?」 俺はその絶叫を柳に風と受け流し、涼しい顔で尋ねる。 「お゛に゛ぃざんが、れいぶのがわいいあがぢゃんをづぶぢだんでじょぉぉぉ!?!?」 「じねぇぇぇ!!!!ゆっぐりでぎないぐぞじじいはじねぇぇぇぇぇ!!!」 「ぢぢぃは ぢねぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆげ・・・・ゆげぇ・・・・・」 俺に向かってゆっくり達の罵声が飛ぶ。 一匹の赤ゆっくりはショックで少し餡子を吐いている。 足下に視線と落とし、ひょいと赤まりさを踏みつぶしていた足を持ち上げる。 その下にあったのは、散乱する餡子とただのボロ布と化した黒い帽子の残骸、 そして散々に地面さんと仲良くすーりすーりさせられて、 かつての3倍くらいの面積にビローンと広がった赤まりさの饅頭皮。 あちこち破れてはいるがまだ目と口の形を残したそれは、 想像を絶する苦悶に歪んだ、赤まりさのデスマスクそのものであった。 はぁぁぁぁぁん!この顔堪んねぇぇぇ!! 「ゆっぐぅぅぅ!!ゆっぐじじないでざっざとじ スウと息を吸って 「どおじであがぢゃんがじんでるのおおおおお(棒」 親まりさの罵声を遮るように、今度は俺が大声を張り上げた。 「「「ゆっ?!」」」 予想だにしなかった俺の台詞に事態を飲み込めず一瞬ゆっくり達の追及が止む。 「おにいざんはーあがぢゃんにずーりずーりじだだげなのにいい(棒」 その隙にまた大声を上げる。 うん。大丈夫。ハタから見なくても気色悪いというのはわかってるから。 心配しないで欲しい。大丈夫。俺は大丈夫。 「ゆっぎぃぃぃ!! おっぎなにんげんざんのあじで ずーりずーりじだら、 あがぢゃん づぶでぢゃうにぎまっでるでじょぉぉぉ!? ぞんなごどもわがらないのぉぉ!? ばがなのぉぉぉ!?じぬのぉぉぉ!?」 故意の犯行ではない、そんな戯言を信じでもしたのか 親れいむが俺にわざわざ説明してくれながら非難の声を向ける。 「ごべんね゛えええ、あ゛がぢゃんごべんね゛えええ(棒」 「おにいざん、あがぢゃんのがらだがごんなによわいなんてじらながったんだよおお(棒」 「ゆるじでええええ。あがぢゃんゆるじでええええ。(棒」 「おどうざんとおがあざんもゆるじでええええ。(棒」 「おねえぢゃんだぢもゆるじでねええええ(棒」 両手で顔を覆い、泣き真似をしながら、 寺子屋時代の学芸会で 「森の木々の躍動感を演じさせたらお前の右に出るものはいない」 と先生に熱弁させしめた俺の迫真の演技が続く。 「ちらにゃかっちゃで ちゅみゅきゃ~ !!」 「ぢね!ぢね!ゆっぎゅりじぇぎにゃい ぢぢぃはぢね!」 「まぃちゃの いもうちょを ぎゃえぜぇ!!」 「ゆりゅちゃにゃい!ぜっちゃいにぢゃぁ!」 おっと今度は赤ゆっくりからの集中砲火だ。 びょんびょん飛び跳ねたり、ぷくぅと膨れたりして怒りを表現している。 「や゛っばりゆるじでもらべない゛よおおおお(棒」 「あがぢゃんだぢにぎらわれぢゃっだよおおおお(棒」 「ずっごぐおいじいあまあま、たべでもらおうどおぼっでだのにぃ、 ごれじゃもうだべでもらえないよおお(棒」 最後の台詞をひときわ大きな声で感情たっぷりに読み上げた後、 顔を覆った両手をずらしてゆっくり達をチラッ、と見る。 「「「「ゆ!?」」」」 案の定、"凄く美味しいあまあま"という言葉に反応して動きが止まっている赤ゆっくり達。 「ずっごぐゆっぐりでぎるざいごうぎゅうのあまあまだっだのにぃぃ(棒」 「おにいざんぎらわれぢゃっだがらだべでもらえないよおおおお(棒」 更にダメ押しをする。 「ゆ・・・ゆゆぅ・・・ちらにゃかっちゃんにゃら ちょうがにやいよにぇ!」 「ゆりゅちてあげりゅきゃら、おにぃしゃんも ゆっきゅりちようにぇ!」 「まぃちゃの いもうちょにょ びゅんまで、ゆっきゅりちゅるよ!」 「りぇいみゅは おにいしゃんにょきょと だいしゅきだよ?」 何、この逆転判決。 食い意地張りすぎだろお前ら。 「ありがとう赤ちゃん達・・・でもだめだよ・・・ お父さんとお母さんが許してくれないよ・・・ お兄さんが赤ちゃん達に近づいたらお父さんとお母さんが怒るよ・・・」 俺は顔を手で覆ったまま途切れ途切れに答える。 正直笑い声を抑えるのがしんどい。 「ゆっ!おきゃあしゃん!ゆっきゅり おにぃしゃんを ゆるちちぇあげちぇね!」 「ふきょうな じきょだっちゃんぢゃよ!」 「にくちみは、にゃにみょ うみゃないんぢゃよ!」 「おちょうしゃぁん!おにぃしゃんを おこっちゃやぢゃぁぁ!!」 一転して弁護側に回った赤ちゃん達に戸惑う親ゆっくり。 だが流石に親ゆっくり達は事故とは言え大事な赤ちゃんの命を奪った人間に対して 不信感を拭いきれないようだ。 「ゆ!このおにいさんとはゆっくりできないよ!あかちゃんたちゆっくりりかいしてね!」 と赤ゆっくりを嗜めようとするが、あまあまに目が眩んでいる赤ゆっくり達は そんな親の言葉を聞こうともせず駄々をこね続ける。 「そうだ!お兄さんゆっくりの体を凄く丈夫にする方法を知ってるんだ! お詫びに他の赤ちゃんの体を丈夫にして、 お兄さんが死なせちゃった赤ちゃんの分までゆっくりできるようにしてあげるよ!」 「ゆ!?あかちゃんをじょうぶに!?」 「それってゆっくりできるの!?」 「そうだよ!れみりゃにだって食べられないくらいに丈夫になれるよ!」 「「ゆゆ~!?」」 親ゆっくり達は相当にびっくりしているようだ。 れみりゃと言えば、人間の恐ろしさは理解していないバカ饅頭共ですら 自分達の天敵として畏れる捕食種のかりすま(笑)だ。 そのれみりゃですら危害が加えられなくなるのだとしたらもはや無敵、 いつまでもずっとゆっくりできるではないか。 餡子脳ならそう理解したとしても不思議ではない。 ようやく俺の提案を前向きに検討しようと考えた親ゆっくりは相談を始める。 「ゆゆぅ・・・どうするまりさ?」 「きまってるんだぜ! あかちゃんたちをじょうぶにさせたら、このばかなにんげんをおどして、 まりさたちのどれいにしてやるんだぜ! れみりゃでもたべられないくらいにつよいあかちゃんなら みんなでかかったら、にんげんなんていちころなんだぜ!」 「ゆっ!さすがまりさだね!」 本人達はひそひそと話をしているつもりらしいが、 普段より声がわずかに小さいくらいなので俺からは丸聞こえなんですが。 「ゆ!おにいさんがころした れいむたちのおちびちゃんのことは、 ほかのあかちゃんにめんじて みずにながしてあげるよ!」 「だからおにいさんは、ゆっくりまりさたちのあかちゃんをじょうぶにするんだぜ! あとまりさたちにも、すっごくおいしいあまあまさんをよこすんだぜ!」 憎ったらしい笑いを口の端に浮かべながら俺に赦しを施す親ゆっくり。 ちゃっかり自分達にもあまあまを要求することも忘れない。 「ありがとう!ありがとう!じゃあすぐに準備するからちょっと待っててね!」 そう言いながら俺は土蔵を飛び出した。 -------------------------------- 三分ほどしてから、俺は予め母屋に用意しておいた虐待道具一式が入った木箱を抱えて 土蔵に戻ってきた。 「おそいんだぜ!ゆっくりまちくたびれたんだぜ!」 親まりさに責められた。 あんまり早く戻ってくると初めから準備しておいた事がバレてしまうと思い、 はやる気持ちを抑えて時間を潰してから来たわけだが、 饅頭に知性がある可能性を考慮した俺がバカだったようだ。 「ごめんごめん!すぐ始めるからね!」 木箱を床に置くとそこからブリキ缶を二個取り出して蓋を開ける。 両方共に透明な液体がたっぷりと入っている。 「さあ、どの赤ちゃんから始めようか?」 「「「「ゆ・・・」」」」 赤ゆっくり達が互いに顔を見合わせる。 先程真っ先に名乗りを上げた赤まりさが不幸な事故とは言え、 あんな結果になってしまったことがトラウマになっているのであろう。 暫く逡巡していたが一匹の赤れいむが名乗りを上げた。 「ゆっ!れいみゅは おねいちゃんぢゃから れいみゅが いちぇばんぢゃよ!」 どうやらこいつが長女れいむらしい。 「よーし、じゃあれいむちゃんからだ!」 差し出した俺の手にぴょん!と飛び乗る赤れいむ。 「ちょっとだけチクッとするよー。」 「ゆゆっ!?いちゃいのやぢゃあぁぁぁ!」 まだ何もされていないのに泣き出して俺の掌の上でジタジタと暴れ出す赤れいむ。 構わずに赤れいむを指で軽く摘むと、素早く木箱から竹串を取り出して 赤れいむの底部に突き刺し、頭頂部まで一気に貫通させた。 その様はまるで串団子のようだ。 「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」 「「あがぢゃああぁぁぁぁん!!!!!」」 「「「いやぢゃぁぁぁ!!!おねいぢゃんが ぢんぢゃうぅぅ!!!」」」 心地よいゆっくり一家の絶叫を聞きながら、 赤れいむを刺した竹串を一方のブリキ缶にドポッと浸けると 当の赤れいむの絶叫だけ聞こえなくなる。 そのまま竹串を液体の中で何回かクルクルと回してから竹串を引き上げた。 赤れいむの全身は水飴のようなドロリとした透明な液体に包まれていた。 いまだ絶叫をあげ続ける赤れいむの大きく開いた口にも、 液体がたっぷりとまとわりついている。 赤れいむの顔が上側を向くように竹串を持っているため、 赤れいむが悲鳴を上げても粘性の強い液体は零れ落ちることもなく、 赤れいむの口を塞いだままだった。 その液体の正体はゴム系の成形剤だった。 そして残るブリキ缶の中の液体、こちらは水のようにさらさらとした液体、 そちらに赤れいむの刺さった竹串をボチャンと浸ける。 今度はすぐに竹串を引き揚げる。 こちらは成形剤とセットで使用する硬化剤だった。 しかも瞬時に反応して数秒で硬化する優れものだ。 あっという間に赤れいむを覆っていた厚さ5ミリ程のゴム層は中まで硬化した。 最後に、竹串を引き抜き開いた穴の部分に瞬間接着剤を詰めて完全に密封して・・・ 完成だ! そこにあったのは、一言で言い表すなら 赤ゆっくりを封入した透明なスーパーボール、だった。 透明度の高いゴムは、先程竹串を刺された痛みに涙を浮かべたままの赤れいむの表情も はっきりと見てとれる程だ。 「ゆぅぅぅ・・・いちゃいよぉ・・・・」 完全に封入してしまうと、赤ゆっくりの声が聞こえなくなるかもしれないと 危惧していたのだが、小声でややくぐもってはいるが、何とか聞き取れるレベルだ。 もともとゆっくり共は声が大きいから、それも幸いしているのだろう。 まったく隙間なくゴムで覆ってしまっているため、外部からの酸素供給はできない。 ゆっくりと言えども酸素無しでは生きられないのだが、 奴らは呼吸できない環境下に置かれても数時間~半日程度は生存していることが 各所での実験で判明している。 最近の研究でわかったことだが、どうも外部から酸素を摂取できない場合には、 自分の餡子の成分から酸素を抽出して摂取可能らしいのだ。 そのため、餡子内の酸素を使い切るまでの間は生存が可能という仕組みらしい。 体が小さく餡子量の少ない赤ゆっくりであっても、その分酸素消費量も少ないため、 生存期間は成体ゆっくりの場合と大差ない。 さきほど餡子を腹一杯食べさせて中の餡子も充実しているであろうし、 この赤ゆっくりも十分生き続けてくれることだろう。 少なくとも俺が直接手を下すまでの間は。 「おにいさん!れいむのあかちゃんをかえしてね! ゆっくりしないでいそいでかえしてね!」 俺が赤れいむを串刺しにしたことを怒ったのか、 泣きながらぷくぅと膨れた親れいむが抗議する。 「痛くしちゃってごめんねぇ、赤ちゃん。 でもこれは赤ちゃんの体を丈夫にするために必要なことなんだ。 ゆっくり我慢したから後で美味しいあまあまさんをたくさんあげようね!」 「・・・ゆ・・・ゆぅ・・・・・」 まだ涙目のままだが、あまあまという言葉にようやく泣きやむ赤れいむ。 それを見て、ブルブルと震えていた他の赤ゆっくり達もようやく落ち着きを取り戻す。 「よーしいい子だね! さあこれでれいむちゃんはれみりゃにも負けない丈夫なゆっくりになったよ! どれくらい丈夫になったか見せてあげるね!」 そう言って俺は赤れいむボールを持ったまま、親まりさの前で座り込むと、 親まりさの帽子を持ち上げた。 大事な帽子を奪われたと思った親まりさが涙目になる。 「ゆゆっ!?まりさのおぼうし!かえ 『バチンッ!!』 ゆぎゃっ!!」 いきなりデコピンを喰らわされ、悲鳴をあげる親まりさ。 「いだいんだじぇぇぇぇ!!ばりざのあだまがぁぁ!!!あだまがわ゛でだぁぁぁ!!」 幾らゆっくりが脆弱とは言え、デコピン一発程度で皮が破れたりはしないのだが、 親まりさは致命傷を喰らったかのような勢いで泣き叫ぶ。 今まで散々デカい態度を取っていたくせに、どんだけ打たれ弱いんだコイツ。 「ゆぅぅぅ!!れいむもうおこったよ!! もうあやまってもゆるさないよ!!れいむのまりさのあたまを・・・ ・・・ゆゆ・・・?まりさのあたまわれてないよ・・・?」 愛するパートナーに振るわれた非道に、怒りを露わにした親れいむだが、 そこでようやくまりさの頭が少しへこんでいる程度でそれ以上の外傷がないことに気づく。 「ゆゆっ!?・・・ゆ・・・つよいまりさだから、なんとかたえられたのぜ・・・? ふつうのゆっくりだったら、かくじつにしんでるのぜ・・・ ・・・ゆっ!でもいたかったんだぜ! じじぃはばつとしてまりさにあまあまをもってくるんだぜ!」 大げさに泣き叫んだ恥ずかしさに強がりを言って誤魔化そうとする親まりさ。 「そうかい、痛かったかい?」 「ゆっ!とってもいたかったんだぜ!! まりさじゃなかったら、いまごろいたみにのたうちまわってるんだぜ!」 お前だって足焼いてなかったらのたうち回ってたろうに。 「じゃあ、この赤ちゃんにも同じ事をしちゃおっかなー?」 そう言って、赤れいむボールの目の前でデコピン発射態勢に入る。 「ゆぁーー!?やめちぇぇぇぇぇ!!!」 赤れいむボールが恐怖に引きつり泣き喚く。 「れいぶのあがぢゃんにひどいごどじないでぇぇぇぇぇ!!!」 「や゛べろぉぉぉ!ぐぞじじぃぃぃぃ!!!」 「おねぃちゃんをはなちぇぇぇぇ!!」 「だーめ♪」 バチィンッ!!! 親まりさへのデコピン以上に激しい音がゆっくり達の悲鳴を掻き消すように鳴り響く。 成体のゆっくりならともかく、皮の薄い赤ゆっくりでは、 例えデコピンでも致命打になりかねない。 ゆっくり一家は惨劇の予感に言葉を失って静まりかえった。 が、 「・・・・ゆ・・・・?・・・いちゃく・・・にゃいよ・・・?」 赤れいむボールが不思議そうな声を上げた。 「あかちゃん?!だいじょうぶ?!けがしてない?!」 自分の赤ちゃんが無事であることに驚きながらも、 親れいむが心配そうに矢継ぎ早に声をかける。 「ゆ・・・!りゃいじょうびゅぢゃよ!れいみゅ、じぇんじぇん いちゃくないよ!!」 それに元気な声で答える赤れいむボール。 赤れいむを包んだこのゴムは、通常のゴムよりも弾力性に富む性質を持っており、 厚さ5ミリ程度でも相当の衝撃吸収力を発揮する。 デコピンの衝撃などは完全に吸収してしまい、 恐らく中の赤れいむは撫でられた程にも感じていなかったであろう。 むしろ俺の指の方が痛い。 「ゆゅ~・・・ほんとう・・・? ゆっ!すごいよ!れいむのあかちゃんはすごいがんじょうだね! これならとってもゆっくりできるね!!」 親れいむは安堵の声を漏らし、それに続いて、 自分の赤ちゃんがとても強くてゆっくりできる子になった事に喜びの声を漏らす。 「見たかい!?強いまりさお父さんですら泣いてしまった、 お兄さんのスペシャル痛い攻撃を喰らっても、 れいむちゃんは痛くも痒くもないんだよ! れいむちゃんは強いまりさお父さんなんかより全然強くなっちゃったよ!!」 「「「ゆゆ~!!おねいちゃんしゅご~い!!」」」 赤れいむボールに羨望と尊敬の眼差しを向ける他の赤ゆっくり達。 「ゆぅ~♪」 親れいむも嬉しそうだ。 「・・ゅ・・・」 父親の沽券丸潰れとなった親まりさ一人が複雑な表情をしている。 「ゆっ!!まぃちゃも!おにいしゃん!まぃちゃも ちゅよくにゃりちゃい!!」 「りぇいみゅがちゃき~!!」 「ちゅよくちちぇ!ちゅよくちちぇ!」 残る赤ゆっくり達は、自分達もお姉さんれいむと同じように 強くしてもらえるのだと思い出し、大喜びで俺に向かって飛び跳ねてくる。 「ちょっと待ってね。ちゃんと皆丈夫にしてあげるからね~」 そう。まだ実験が済んでない。 ゴムの厚さはこの程度で問題ないか、強度実験をしなければならない。 どの程度までなら耐えられて、そして、どの程度を越えたら耐えられないか、を。 俺は赤れいむボールを握るとスッと立ち上がり、その手を頭上に大きく振りかぶる。 「ゆゆっ!?れいみゅ おちょらを ちょんでるみちゃ~い♪」 キャッキャッと嬉しそうに喚く赤れいむボール。 左足を上げ、赤れいむボールを握った右腕を後ろに反らす。 そして次の瞬間、左足を一歩前に踏み込むと同時、 後ろに反らした右腕を正面に向かって一気に振り抜いた。 「ゆ~!とりしゃ--- ゆびゅっ!!!」 土蔵の壁に向かって思いっきり投げつけられた赤れいむボールが 鳥さんみたいなどと暢気に喜んだのも束の間、次の瞬間には悲鳴を上げる。 デコピン程度の衝撃ならともかく、固い壁に思い切り叩きつけられた場合、 インパクトの瞬間にゴムのボールは大きくたわむ事になる。 それはつまり、中にいる赤ゆっくりがその分押し潰されるということだ。 「びゅっ!!」 「ゆびっ!!」 「ゆげっ!!」 弾力性に富んだゴムでできた赤れいむボールは、 中身の大半は脆い饅頭であるにも関わらず、スーパーボール並の反発力を発揮し、 壁に当たった後もまだ勢いを失い切ることなくバウンドする。 土蔵の柱やら壁やらをいったりきたりし、その度に中の赤れいむの悲鳴が漏れる。 コロコロコロ・・・ 何度かのバウンドを繰り返した後で、 ようやく勢いを落として地面を転がってきた赤れいむボールを拾い上げる。 ドキドキしながら、その中の赤れいむの様子を観察する。 「ゆびっ・・・!・・いちゃ・・・い・・・いちゃ・・・い・・ょ・・ゆっ・・・!」 衝撃にたわんだゴムごと体を何度も押し潰され、 痛みにピクピクと痙攣しながら涙を流す赤れいむ。 可愛い・・・・ なんて可愛らしいんだろう・・・ それほどのダメージを受けたにも関わらず、赤れいむの脆い皮は少しも破れてはいない。 何カ所か皮が薄くなって黒い餡子が僅かに透けて見えているところがある程度だ。 体を潰される程の外圧を受ければ、反動で圧力を受けた方向と別方向に内圧がかかる。 口などが塞がれた状態のゆっくりの場合、その内圧を皮で受け止める羽目になり、 その箇所の強度を超えれば、そこから破れて餡子を噴出してしまう。 だが、全身をゴムで包まれたこの赤れいむは口や目はおろか、 全身の皮すらもすっぽり外側から押さえ込まれた状態になっているため、 内圧に耐えることができるのだ! なんと素晴らしいことだ! これが人間や普通の動物であればそうはいかない。 例え外皮がダメージを受けなくても、体がたわむくらいの外圧が加われば、 その時点で内蔵や骨などに重大な損傷を受け致命傷となる。 しかし、中に餡子しか詰まっておらず、大量の餡子を喪失するか、 餡子が過熱や酸素不足などで"変質"して、ゆっくりの生命維持機能を失わない限り 基本的に死ぬことのないゆっくりにとっては致命傷とはならない。 無論、苦しいか苦しくないかは別の話。 つまりこの赤ゆっくりは俺の大好きな"踏み潰し"から命"だけ"を守る強靱な鎧を備え、 なおかつ存分に"踏み潰し"て痛みを与える事が可能な、 正に俺の夢の体現と言うべき『スーパー赤ゆっくりボール』となったのだ! つづきます
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5111.html
多分既出ネタです、すみません それに加えて色々と俺設定が入ってます。 俺はゆっくりの虐待が好きだ 三度の飯よりも虐待が好きだ しかし、本当に虐待ばかりでは、生計を立てられない そこで、俺は考え付いた 趣味と実益を兼ねるのだ 「ゆっくり菓子職人」 今日も俺のゆっくり菓子製作が始まる。 ゆっくりはそもそもお菓子じゃないか、と思いの貴方、それは間違いである。 ゆっくりが恐怖・絶望を与えると甘くなるのは周知の事実でしょう。 これを利用することによって、至高のお菓子を作り上げることが俺の使命。 さあ思う存分虐待を…いや、菓子作りを始めることとしましょうか。 まず用意するゆっくり。これは野生のなるべく元気なゆっくりを選びましょう。 頭がお幸せで、世界は自分を中心に回っていると思っているような奴を。 早速、1匹のゆっくりれいむを捕まえてきました。 おお、頭にゆっくりが生っています!これは貴重な料理素材です。 赤ゆっくりは味に変化を持たせることができるので、とても重宝します。 しかし、親子でないと味が反発しあうことがあるんですねー。 今回捕まえたゆっくりはちょうど出産直前ですので、最適なわけです。料理のし甲斐がありますね! とりあえず、生まれてきた赤ゆっくりには、発情させたゆっくりありすの出す透明な粘液を塗って放置しておきます。 こうすることで、表皮が柔らかくしておくのです。 さて、親のゆっくりれいむですが、今の状態では髪の毛やリボンが邪魔です。 そこで、まずリボンを取り外しておきます。このリボンは後で使うので取っておきます。 髪は雑味の原因となるので、火で炙って、全て燃やしてしまいます。 こうして見事にハゲゆっくりが出来上がります。 あ、そうでした。今後の調理がしやすいように、あんよもしっかりと焼いておきます。 こうしておけば調理中にゆっくりがテーブルから落ちて潰れる心配がありませんね。 こうしてゆっくりを安定させたら、ゆっくりありすを取り出します。 もちろん発情した状態のありすです。 これを置いておくと、勝手に行為を始めてくれるので、しばらく待ちます。 おっとすっきりしてしまいそうでした。危ない危ない。 すっきりしてしまうと台無しです。ありすはもう使わないので捨てておきましょう。あ、食べますか? 適度にホクホクになったハゲゆっくり。 つぎはいよいよ赤ゆっくりを使います。 赤ゆっくりは丹念に潰していきます。これには力の調節が必要です。ゆっくりと、握るように潰していきます。 一気に力を入れると形が崩れてしまうので、力を徐々に入れていき、餡子をひねり出すのです。 握りつぶした餡子をハゲゆっくりに塗ります。丁寧に、目と口の周りにも、擦りこむように塗っていきます。 餡子は少し残しておいてください。これも後で使います。 完全に塗り終わったら、上から小麦粉を練って作った生地を被せて、形を整えます。これで元通り。 さらに、れいむの髪型を、赤ゆっくりの餡子を使って再現します。そして、取っておいたリボンをつけます。 これでとりあえず出来上がりました。 しかし、まだお出しするわけにはいかないんです。 最後の仕上げ、今回調理したれいむのお相手のまりさです。 こちらはあんよを焼いてあるだけなので、割と正常です。 これらを一緒に二つセットで皿に乗せて完成! 最後に一つ。 お召し上がりになる際は、れいむのリボンを解き、髪の毛(の形をした餡子)からお食べください。 これには理由があります。 ゆっくりは、主に装飾品や外見で仲間を認識します。 よって、禿げゆっくりになったれいむは、もうまりさに相手にされません。 これによって、食べられる最期までお互いを支え合っていた2匹の関係は一瞬にして無くなります。 自分の子供を失い、パートナーも失った、絶望の渦中のゆっくりはさぞかし美味しく頂けるようになっていると思われます。 では、ごゆっくりお楽しみください。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/399.html
物心が付いたときからまりさはずっと箱の中に居た。 本当に、箱の外の記憶は無かった。 広さはそれほどではないがそれなり歩き回れる程度の大きさはあった。 普通のゆっくりの巣に比べれば天井は大分高めだろうが広さだけとればそこまで大差は無い。 箱の中には何も無く、ただ定期的に餌が与えられるだけ。 まりさが思うに、生まれてからずっと箱の中に居たような気がする。 一度か二度だけ箱を引っ越したような覚えもある、しかし定かではなかった。 ひょっとしたら産まれてすぐに箱にでも入れられて ペットショップでバラ売りでもされていたのかもしれないが まりさにはそんなことはわかるはずもなかった。 わかるのはまりさが一人ぼっちだということだけである。 そしてまりさは一度も「ゆっくり」と言った覚えさえなかった。 生まれた時くらいは言ったのかもしれない。 だが記憶のある間では一度たりとも「ゆっくり」と言った経験はなかった。 そもそも何か喋ること自体が無かった。 言葉が喋れないわけではない。 ゆっくりは喋る力だけは生まれつき持っている。 だが話す相手が居ないのでは喋っても仕方が無いのだ。 箱の中はまりさの出す音以外物音一つしない。 ただただ静かなだけである。 それも気が狂いそうなほどにだ。 まりさはまだ若いゆっくりだが孤独に心を蝕まれて若々しい覇気とも無縁で暗くさび付いていた。 確かに箱の中にはゆっくりが生きるために必要なものは全て与えられていた。 しかし唯一つ、そこにはゆっくりだけがなかった。 ある時、いつもの時間に餌が与えられずに数時間まりさは放置された。 しかしまりさは別になんとも思わなかった。 そもそも時間の感覚が殆ど無く、ただ空腹を訴える体を不思議に感じていた。 そのままぼーっと空を眺めながらこのままこの感覚に飲み込まれて消えてしまいたいとまりさが思った時 ぶぅん、という不思議な音が耳をくすぐった。 「!?」 まりさは驚いたが、声は出なかった。 余りに長い間聞いたことの無い自分以外の出した音に、喋ることさえ忘れていた。 音のする方を振り向くと緑色をした細身の何かが居た。 逆三角形の頭の二つの角にギョロリとした大きな目が付いていてそれでまりさのことをじっと見つめていた。 胴体からはさらに細い棒が延びていて、一番上から伸びた太めの二つの棒は折れ曲がり 鋭く、何個も何個も棘が並んでいた。 ゆっくりしていない形だと直感的にまりさは思った。 動きもそうだ、二本の棒を擦り合せてくりくりと盛んに首を動かしながらも、目だけは絶対にこちらから視線をそらさない。 そのゆっくりしてなさが恐ろしかった。 「ゆ、ゆっく…ゆっくりして、いっ」 まりさは恐る恐る、その珍客に向かって挨拶をしようとした。 この言葉にどんな意味があるのか 使うべき機会も使ったことも無いまりさにはわかるわけも無い。 だがそれでもゆっくりの本能がそういえと言っていた。 まりさは頬が引き攣りながらも愛想笑いを浮かべようとした。 まりさの口許がぴくりと痙攣した瞬間、緑色のソレは動いた。 「ゆひいいいいいいいいいいいいい!?」 まりさは産まれてから一番大きな悲鳴を上げた。 緑色のソレは背中の薄い板を広げたかと思うと一瞬でまりさの頭の上に乗っかり、肩から伸びた棒をまりさに添え力を入れた。 棒から伸びる鋭い棘が突き刺さり、触れた部分をズタズタにしていく。 初めて感じる痛みにまりさは狂乱し、体を揺すって振り払おうとしたが 強い力で押さえつけられその棒がしっかり皮に食い込んでまるで外れない。 だが皮に噛み付かれて切り裂かれる音を聞きながら、それが恐ろしくて仕方ないのに どこかどうでもいいと感じる自分もいるのをまりさは感じた。 このまま食べられて死んでしまうんだというのを受け入れているまりさがまりさの中に居た。 このまま消えてしまおう、とまりさは思った。 こんな時、他のゆっくりならこういうんだろう。 「もっとゆっくりしたかったよ」 と だがまりさはこう呟いた。 「ゆっくりしてみたかったよ…」 心の底から漏れた呟きだった。 まりさは目を瞑り力を抜いて緑色の何かに身を委ねようとした。 「がんばれ!!」 その時、頭にくっついた虫よりもさらに上の方から声がした。 まりさははっと目を見開いて天井を見上げる。 さっきのような音ではなく、確かに意味を持った声だった。 「ゆ…!?ゆ…!?」 まりさは必死に声の主を探した。 箱の天井の向うに、見たことの無い何かが居るのをまりさは確かに見つけた。 「がんばれ!いくのよ!」 言葉の意味はなんとなくわかった。 それは確か相手を応援するための言葉だった。 呆然とそれを見つめているまりさに それまで忘れていた饅頭皮を棘の並ぶ棒で切り裂かれる痛みが現実感を伴って蘇った。 「ゆ、ゆがああああああああああ!!!!!!!!」 まりさは体を無我夢中で動かして箱の中を暴れまわった。 このまま死んでしまいたくなかった。 声の主と話をしたかった。 まりさは産まれて初めて必死になった。 体を打ち付けすぎて逆に傷口から餡子が漏れるほど激しく箱の中を転がった。 気付いた時、緑のソレはバラバラになって潰れていた。 体の一部は体液を垂れ流してまりさにべったりとへばり付いたままだった。 「あ…あ…!ゆ、ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 はっと我に返ってまりさは慌てて天井を見上げてゆっくりしていってね!と繰り返した。 まりさが初めて心の底からゆっくりしていってね!といえたのがその時だった。 しかしまりさが箱の上を見てもどこにもさっきの人影は見当たらなかった。 まりさはがっくりと肩を落として愕然と壁にもたれかかってぜぇぜぇと息を吐いた。 全身が疲れきっていたが瞳だけは未だに興奮冷めやらずに見開かれていた。 それから、まりさはずっと待っていても餌がいつもの様に与えられないので 空腹で空腹で、耐えかねて遂に恐る恐るバラバラに潰れた緑のソレに舌を這わせてみた。 ぺろり、と舐めるとそれまでの餌とはまるで違う、えぐみや苦味の強い感覚が舌を刺激した。 「はっ…ふっ…」 まりさはそれに怯えながらも、耐え難い渇きを感じついに緑のソレの残骸を口に放り込んだ。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~~♪♪♪」 うまかった。 胸のの奥深くからしあわせという言葉が湧き出して口からこぼれた。 無我夢中でバリバリグチャグチャと音を立てながらひとかけらも残さずに緑のソレを食べつくした。 まりさは興奮覚めやらぬまま、ぼーっと天井を見つめた。 ひょっとしたらあの時の人影がまた現れるかもしれないからだ。 まりさは自分と世界が確かに変わっていく感覚に、夜も眠れなかった。 次の日、また餌の時間には箱の中に珍客が現れた。 昨日と同じ、緑色のソレである。 まりさが警戒を怠らないように、ちらりと上を見ると確かに昨日の人影が見えた。 箱はすりガラスのようにざらざらした素材で出来ていて向うを完全に見ることは出来ないが 確かに誰かが箱の壁の向うに存在した。 まりさは今相対する緑のソレ以上にその存在に対して興奮した。 「ゆ、ゆっくりしてい」 「ぼーっとしてないで行った行った!」 まりさの言葉をさえぎってその人影から発せられた声に一瞬考えこんだ後はっとしてまりさは目の前を見た。 緑色のソレが羽を広げ、視界一杯にその逆三角形の顔を突きつけていた。 「ゆぎゃっ!?」 鋭い棒がまりさのおでこの両側を捕らえ、逆三角形の頭から生える牙が蠢きながら眉間に齧りついた。 「ゆぎぎぎぎぎ…!」 皮を切り裂かれる痛みにまりさはうめき声をあげたが、その実内心冷静だった。 そう慌てることは無い。 昨日と同じように壁に叩きつければ勝てるのだ。 まりさは痛みを堪えて、壁に向かって突進した。 「危ない!」 上方から悲鳴にも似た甲高い声が飛び出す。 ドンっ、と壁に頭をぶつけてふらふらとしながらもまりさは上に居る人影に笑みを返して安心させようとした。 その時、ブスリと何かがまりさの背中に突き刺さった。 「ゆびゃっ!?」 予想だにしない痛みにまりさは驚き、後ろを振りかえった。 しかし後ろに居るはずの何かはまりさに何かを突き刺しまりさを捕らえたままで後ろについて動いた。 「ゆぐっ、ぐうううう!」 まりさは今度こそと思って背中から壁に突っ込んだ。 ドシン、と音がすると同時に今とさっき、何が起こったのかを悟る。 頭上でぶうんと音がすると同時にまりさの目の前に緑色のソレは降り立った。 目を丸くするまりさに対して振り返り、鋭いその棒を振り下ろして頬を並んだ棘が裂いた。 「ゆぎっ…!」 餡子こそ出ないものの、斬られて数瞬してからゆっくり、かつ鋭くやってくる痛みにまりさは顔を歪めた。 まりさが驚きでじっとして居ると次々と鋭い棒が振り下ろされる。 再びあの棒で捕らえられるのを恐れまりさは後ろへと飛び跳ねるが緑のソレはそれ以上のスピードでまりさに襲い掛かる。 まりさのやわらかい饅頭皮はその棒が掠るだけで容易に、惨たらしくその表面を切り裂かれていった。 「恐ろしいまでの切れ味の鎌ね!」 ああ、この鋭い棒は鎌というのか… そんなことを思いながらまりさは彼女の声を聞いて昨日、初めてゆっくりしていってね!と言った時のことを思い出した。 思えば、あの時の自分のゆっくりしていってね!、はちゃんと彼女に届いたのだろうか。 声を発した時には、既に彼女の姿は無かった。 きっと届いていない。 ならあの「ゆっくりしていってね!」は独り言のようなものだ。 それで本当にゆっくりしたと言えるのだろうか。 きっと違う、とまりさは思った。 「ま゛だま゛り゛さ゛は゛ゆ゛っく゛り゛し゛て゛な゛い゛のおおおおおおおおおおおおおお!!!」 腹の底から、本当に心を込めた雄たけびが箱の中に響き渡った。 ずっと一人でゆっくりせずに居た自分が、彼女と言葉を通わせて初めてゆっくりすることの片鱗を見たのだ。 あと少しでゆっくりできるに違いないという確信がまりさの中にあった。 彼女と一緒ならきっとゆっくりできる。 彼女に自分のゆっくりを聞いて欲しい。 まりさもゆっくりしてみたい。 だからここで死ぬのは絶対に嫌だった。 ここで死んでしまったらゆっくりには届かず孤独なまま死ぬのだ。 そして傷だらけの体でまりさは飛び上がった。 実際にはそれほど大きなジャンプでもなかったがまりさにとっては空を飛ぶかのように大きな意味を持ったジャンプだった。 緑色のソレは羽を広げ飛翔し、それまでと同じように回避しようとする。 が、飛び上がった瞬間まりさの足にぶつかり、そのまま踏み潰された。 べちゃりという深いな感覚を足に感じまりさははっとしてあたりを見回す。 緑のソレはどこにもおらず、確かにこの下で潰れていることがわかった。 安全を確認し慌ててまりさは天井を見上げて彼女に向かって叫んだ。 「おねえさん!ゆっくりしていってね!!」 彼女は既に背を向けて立ち去ろうとしていたが、今度こそ確かに彼女に伝わったはずとまりさは思った。 鎌で惨たらしく切り裂かれズタボロになった顔で、まりさは最高の笑顔を浮かべた。 その日、まりさは顔が痛くて仕方ないにも関わらずに最高にゆっくりした気持ちで眠りについた。 朝起きて、まず上を見上げた。 あの人影は無かった。 しかし餌の時間に必ず姿を現すことを信じてまりさはわくわくしながら待っていた。 餌との戦いは命がけだが二戦連続で物にして相手を喰らったことがまりさに自信をつけていた。 傷もまだ治りきらず、動けば痛みが走るが負ける気はしなかった。 そして、衝撃で傷口から餡子が噴出してしまうほど何度もジャンプして緑のソレを踏み潰すことに成功した。 途中、餡子が噴出す痛みにくじけそうになったが例の人影から「その調子!」との声援を受けてなんとか自分の戦法を信じて頑張ることが出来た。 彼女の声援が無ければきっとまりさはくじけて自分を信じられなくなり負けてしまっていただろう。 まりさはこれまでの感謝の思いを込めて彼女に「ゆっくりしていってね!」と言った。 それから一週間ほど経った。 まりさは毎日ゆっくり眠って体を休め、朝起きるとすぐに天井を見上げて彼女の姿を探すのが日課になっていた。 初めてゆっくりしていってね!と言ったときから、彼女の存在はまりさにとって生きる支えとなった。 彼女と接して初めてゆっくりするということを学んだまりさにはもはや彼女無しの生活は考えられないようになったのだ。 彼女という存在があって、初めてまりさはそれまで重く圧し掛かっていた孤独というゆっくりしていない事象から開放された。 まりさのゆっくりは彼女による、彼女のためのゆっくりとなった。 まりさは彼女のことが好きで好きで仕方が無かった。 だから、毎日のように行われる戦いも、彼女の声援を受けられるのならば恐ろしくない むしろ楽しみなくらいだった。 彼女が戦いの際、声援を送ってくれるなら必ずそれに応えようとまりさは奮闘した。 彼女ともっと親しくなり、ゆっくりしたい。 彼女と心を通わせ、ゆっくりしたい。 そのために、生きて生きて彼女にゆっくりしていってね!と呼びかけ続けること。 それがまりさの今の生きる目標だった。 戦い、彼女の声援に応え勝利を手に彼女に「ゆっくりしていってね!」と 声をかける時に、まりさに最高のゆっくりを感じていた。 これこそ生きる、ゆっくりするということだとまりさは思った。 今日も、まりさの箱に珍客が放り込まれた。 それを見てまりさは緊迫して相手を凝視した。 それまでの緑の相手とは違い今度は黒く、短く、そして太かった。 その黒さにまりさは目を奪われた。 自分が身にまとっている大切な帽子と同じ色なのに 何故か禍々しさと恐怖を感じ、その存在感に威圧されてごくりと唾を飲んだ。 その顔つきの恐ろしさのためかもしれない。 まるで地獄の住人のような険しい表情を黒いソレはしていた。 相手の出方を伺い睨み合うこと数瞬。 黒いソレの恐ろしい表情を浮かべる顔から伸びる細い糸が ふわりと揺れたかと思うとキリッキリッ、と鋭い音がまりさの耳を劈いた。 びくりと体を震わせ一瞬視界から黒いソレが消えたかと思うとさっきと同じ鳴き声と そして何かを齧る音だけが箱の中に響き渡った。 「ゆ…ゆ…!?」 まりさは辺りを見回すが、箱の中はまるで何事も無かったかのように黒いソレが来る前となんら変わらない姿をしていた。 違うのはただあの黒い奴が発する鳴き声と何かを齧る音がまりさの耳に聞こえ続けている点のみである。 「ど、どおぢでなにもいないのにおとがきこえるのおおおおおおお!?」 箱中を見渡したが確かにさっきのは居ない。 しかし音だけは止まない。 齧る音が聞こえてもまりさに痛みは無かったがその止まない音の恐怖がまりさの心を蝕んだ。 「ゆうううう!ゆうううううううう!?」 恐怖にかられたまりさは箱の中を転がりまわった。 ごろごろと意味も無く箱の中を廻っている内に黒い黒いまりさのぽてんと帽子が落ちた。 流石にまりさも慌てて帽子を拾いなおそうとして、見つけた。 黒いソレはまりさの帽子をギチギチと顎を動かして齧っていた。 既に、小指が一本通る程度の小さな穴が開いていた。 「ま、ま゛り゛さ゛のだいじなぼう゛しにな゛に゛お゛ずる゛のおおおおおおおお!?」 まりさはこんな小手先で自分を騙していたことと大事な帽子に穴を開けられたことに激昂し それまでの恐怖も忘れて飛び上がって黒いソレを踏み潰そうとした。 その時、まりさは見た 黒いソレが自分より遥かに高く飛び上がる瞬間を。 「ゆぅ!?」 その跳躍の余りの高さにまりさは驚き、彼女の人影を探す以外の理由で初めて天を仰いだ。 黒いソレは帽子の上に突っ込んでしりもちをついているまりさの鼻先にどん、と飛び降りると ギチギチと顎を開いて鼻の頭に齧りついた。 「ゆぎぃ!!ゆぎゅぁああああああ!!」 慌ててまりさは転がって黒いソレを潰そうとするがそれよりも早く跳躍してまりさの間合いの外へと逃げ出した。 再びまりさが向き合うや否や、黒いソレの太く節くれだった足が爆ぜてて跳躍しまりさに飛び乗る。 そうしてまた同じようにまりさが振り払おうとすると傷を負うより早く黒いソレは飛び跳ねてまりさの手からするりと逃れた。 「も゛う゛や゛べでえ゛えええええ!だずげでぐだざいいいいいい!!」 完全なヒットアンドアウェイの前にまりさは何も出来ずに体中を齧られていく恐怖と痛みでぼろぼろと涙を流して命乞いをした。 「いいわよ!じっくりいきなさい!」 その時、天井の方からあの声がした。 それはまりさにとって天啓だった。 その声を聞くだけで、恐怖はすっと引いて行き、まりさは落ち着きを取り戻した。 痛みに歯を食いしばりながら 今、自分は相手の策に完全にはまっていることを認めて その突破口を探すために冷静に辺りを見回す。 とにかく突破口を見つけるまではじっくりといくしかないのだ。 「………ゆ!」 じっと黒いソレの攻撃に耐えながら、まりさははたとひらめき 帽子に向かって転がり走った。 黒いソレもまりさを追って跳躍する。 「ゆううううううううううん!!」 その瞬間をまりさは待っていた。 帽子を口に咥え、へこみの方を空高く跳ぶ相手に向かって突きつけた。 黒いソレはすっぽりと帽子の中にはまった。 「ゆっぎゅりゃあああああああ!」 確かな感触を感じてまりさはさっと帽子を地面に置いて黒いソレを捕らえた。 黒いソレが跳躍して、帽子にぶつかりぼとりと地面に跳ね返される音が中から聞こえてきた。 「そこでずっとゆっくりしていってね!」 まりさは力いっぱい優越感と憎しみを込めてそう言うと帽子に飛び乗った。 中に閉じ込められていた相手がぐちゃり、と潰れるのを帽子越しに感じて まりさは箱の向うの彼女を見て感謝の限りを込めていった 「ありがとうおねえさん!ゆっくりしていってね!!」 彼女はそう言い放つまりさを見つめて、背を向けてまたどこかへと去っていった。 それから一月ほどが経った。 その間まりさは毎日戦い、苦境に陥っても彼女の助言を頼りに勝ち続けた。 彼女の言葉を信じて戦うまりさは迷いが無く、実力を遥かに上回る力を発揮し続けた。 体の傷も増えて、その姿はまるで歴戦の勇士のようだった。 そしてまりさの彼女への想いも高まっていき、それはもはや信仰に近いものがあった。 あれからも彼女とまりさがまともに言葉を交わすことは無いが それでも戦いの間の彼女の声援と、去っていく彼女にかける「ゆっくりしていってね!」 を通してまりさは彼女と自分の心は通じ合っていると信じられた。 まりさはそのことが確かだと感じるだけでとてもゆっくりした。 まりさは彼女の存在があるおかげでこの生活が始まる以前の ただ箱の中にある餌を食べていただけのまるで生ける屍のような生活とはまるで違う 確かな彼女とのゆっくりを感じながら今を生きていた。 そんな幸せな日が変わることなく続いていったある日。 まりさの箱に緑色の例の相手が現れた。 「ゆふん」 まりさはそれを見て鼻で笑った。 ソレは最初に戦い、それからもう何度も打ち倒してきた相手と同じ種類のものだった。 多少、今までより体が大きいがなんら問題ない。 まりさは一刻も早くこの敵を打ち倒し彼女に「ゆっくりしていってね!」と言いたかった。 最初はまず睨み合い、緑のソレのギョロリとした目玉はもはやまりさに恐怖を感じさせるものではなくなっていた。 まりさはじりじりと必殺の跳び踏み潰しの間合いに緑のソレを入れようとにじり寄る。 緑のソレは野生の勘で危険を感じたのかそうはいくまいと後ずさるが、やがて箱の隅に追い詰められた。 「ゆっくり…しねぇ!」 まりさは緑のソレを完全に追い詰めると必勝を期して跳び踏み潰しを繰り出した。 勝利を確信してニヤリと笑った時、ブウンと激しい羽音が聞こえ、まりさの足元を涼やかな風が通り過ぎた。 「ゆ!?ゆっく…!」 ジャンプした隙に足元を通って後ろに廻られたまりさは慌てて後ろを振り向こうとした。 そと同じか否や、緑のソレがまりさの帽子に突っ込んだ。 「!?ゆっくらしてい」 緑のソレの体当たりで落ちた帽子がまりさの顔面に引っかかって視界をさえぎり、目の前が真っ暗になった。 必死に光を探して、帽子の中に差し込む小さな光に目をやっている最中まりさはギョロリと光るあの目と目が合った。 もはやまりさに恐怖を感じさせないはずの目は暗闇で薄く光り、それに見つめられてまりさは悲鳴を上げた。 度重なる戦いでまりさの帽子はところどころ穴だらけになり 緑のソレはその穴から体を入れて暗闇で唯一動いているのが見えたまりさの左目に喰らい付いた。 「ゆっびゃあああああああああああああああ!?!?!?」 まぶたは鎌に引っ掛けられて用を成さなくなり直接目玉にキバを立てられて穴が開いたまりさの目玉から中を満たしていた餡汁がどろりと垂れた。 「ゆひいい!ゆっぴいいいいいいいいい!!」 まりさは頭をぶんぶんと横に振り帽子を振り払った。 緑のソレも深追いをせずに鎌をはずして距離を取った。 「ま゛ぢざの゛お゛べべ…お゛べべがああ!!!」 まりさは左目からぬるりと流れ出る餡汁が頬を伝う悪寒に身をよじった。 目玉の中の体液と涙が交じり合って地面にこぼれた。 それを踏んだ感触でまりさはさらに混乱を酷くした。 それまでまりさの目に見えていた世界の半分に暗闇が満ちる。 勝利によりこれまで培ってきた自信は瞬く間に失われ、心の奥底からまりさは恐怖に支配された。 「ゆひっ…ゆひっ…」 まりさは狭くなった視界から緑のソレを逃すまいと必死に残った右目を動かすが 羽を持って飛びかうソレはまりさの視界から消えては現れ消えては現れた。 「ゆ…ゆっ…!」 まりさはすがるように天を仰いだ。 そこには彼女が固唾を呑んで見守っていた。 「ゆふぅー…ゆふぅー…」 彼女と緑のソレを交互に見ながらまりさは呼吸を落ち着けていった。 助言も、声援もなかった。 だがまりさにはわかった、彼女の期待が。 物言わぬその姿から確かに強い強い彼女の想いを感じ取ったのだ。 まりさはゆっくりと相手を見つめ、精神を集中した。 膠着状態の中じっと緑のソレと見詰め合った。 また恐怖は感じなくなっていた。 十秒か、一分か、五分か 二匹にとってとても長くて短い時間が流れ、ついに膠着が解かれた。 先に動いたのは緑のソレだった。 まりさはその飛ぶ勢い、方向を見て勝利を確信した。 「ゆっ!」 それを着地地点をそこから予測してそれ以上の高さでまりさは緑のソレの着地地点と思しき場所にとんだ。 箱の中のこの狭さでは一度跳んでしまえば殆ど方向転換する余地は無い。 落ちる速度を考えればもう一度ジャンプするより早くまりさの体が緑のソレを押しつぶすのは必定。 相手の後の先を突くまりさの完璧な勝利への作戦がそこにあった。 「ゆっくりつぶれてね!」 勝利を確信して飛んだ先にあったのは漆黒の三角形。 「ゆ!?」 さっき落としたまりさの帽子がその先にあった。 緑のソレはその頂点に足をつけると間髪居れずに方向転換して別の場所へと滑空していった。 足場さえあれば方向転換は容易である。 体の軽い緑のソレにとって帽子のとんがりは足場にするのに充分な強度を持っていた。 その時点で踏み潰すには若干まりさは高く跳びすぎていた。 まりさは再び自分の宝物である帽子に裏切られて泣きそうに顔を歪めながら呻いた。 「そ、そんな」 そして緑のソレを超える高さで限界まで飛び上がったまりさが着地した先にあったもの、それは 「ゆびゅぇええええええ!?」 着地の衝撃に耐え切れず傷つけられ抑えるものの無くなった眼窩から噴出す餡子と目玉だった。 「ゆぎいいいいいいいい!!!」 痛みと勝利の確信を打ち砕かれたことで狂いそうになりながらまりさは目を押さえようとした。 しかしまぶたはもはや用を成さないほどボロボロで余計に痛み、狂ったように身をよじるだけである。 「ゆっ?!どこにいったの!?」 痛みに狂いながらもはっとまりさは緑のソレが完全に視界から消えたことに気がついた。 「ゆっ!?ゆっ!?ゆっ!?ゆっ!?」 必死に相手を視界に捕捉しようとまりは辺りを見回した。 特に失った左の視界を補うよう右目を必死に左へ、左へと向けながら。 だから、右から襲い掛かる緑の鎌にギリギリまで気がつくことは無かった。 「……ぁ」 ぎょろりとした瞳、逆三角形の緑の頭 それがまりさがこの世で見た最後のものになった。 「や゛びゅぉお゛おお゛お゛お゛お゛おお゛お゛おおおお゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああ゛ああ゛あ!?」 痛みと悪寒と恐怖と暗闇に襲われてまりさは喉がはちきれそうになるほど悲鳴をあげた。 「や、べえ!ゆっぐ!ゆっぐぢぢでぇ!」 まりさの命乞いなど意にも介さずに、緑のソレは黙々とまりさの命を奪う作業を継続した。 まりさがいくら抵抗しようとも視界を完全に奪われたまりさに勝ち目はなかった。 次々と食い千切られ中の餡子を垂れ流す皮、引きちぎられ咀嚼される髪、頭を突っ込まれて中身を舐められていく眼窩 まりさを狂い死にそうになるくらい痛めつけるには充分すぎる蹂躙行為であった。 「ぁ…ぁ…ァ…ゅ…ゅっく…ぃ…」 そんな痛みと恐怖に苛まれた暗闇の中で、死を恐怖しながらもどこかまりさは晴れやかであった。 最初に緑のソレに殺されかけた時とはまったく別の感情がまりさの中に芽生えていた。 「ぉね…ぇさ…」 まりさは暗闇の中で彼女のことを想っていた。 自分をゆっくりさせてくれた彼女のことを。 彼女と出会えて、ゆっくりできたことを考えれば思っていたよりもずっと悔いは無かった。 彼女の期待に応えられなかったことだけが残念だったが、それでも自分は全力を尽くした。 そのことにまりさは悔いは無かった。 まりさをゆっくりさせてくれた彼女の期待を受けて戦えた一生にまりさは満足していた。 「やった…やった…!やったぁ!やったよ!あはは!やった!」 『ゆ…?や…った…?』 その時、暗闇の中のまりさに確かに彼女の声が聞こえてきた。 まりさはその言葉の意味を理解するのに長い時間を要した。 彼女が発する言葉はきっとまりさが負けたことによる悲しみか、失望か、怒りか そのいずれかの言葉を発するものだと信じきっていたからだ。 だから何故彼女がやった、と歓声をあげるのかまりさにはわからなかった。 「遂にやったよ!勝った!一対一でゆっくりに蟷螂が勝ったんだ!」 喜び勇むその声を聞くまりさにそっと彼女と思しき手が触れた。 そして彼女は蟷螂と呼ばれた緑のソレをそっとまりさから引き離した。 『ゆ・・・?あ、ありがとうおねえさん!ゆっくりしていってね!』 まりさはそれまでの彼女の言葉はひとまず忘れて助けてもらえたことを喋る余力が無いので心の中で感謝した。 「この美しさの欠片も無い憎たらしい饅頭頭に私の可愛い蟲達が負けてなんど苦渋を舐めたことかわからない」 『!? どおぢでぞんなごどいうのおおおおおお!?ま゛り゛ざはがわいいよおおおおお! ぞれにま゛り゛ざはお゛ね゛えざんのだめ゛にがんばっだん゛だよ゛お゛おおおお!?』 まりさは暗闇の中で突然自分を罵倒する彼女の言葉を、信じられないと悲鳴を上げた。 「でもそんな苦労も遂に報われるのよ あなたの子孫がどんどん増えて、この幻想郷を覆えばゆっくりより強い蟷螂が幻想郷の蟷螂になる! そんな蟲たちがもっと増えればゆっくりに怯えて暮らす必要も この幻想郷で、生態系の中で下に付くことも無い! 私の可愛い蟲達こそがゆっくりの捕食者となるのよ!」 しかし彼女の言葉はただひたすらにまりさを倒した蟷螂に対して向けられた。 『なにを…なにをいってるの…!?』 まりさには彼女が何故そんな恐ろしいことを言っているのかわからなかった。 彼女はまりさの勝利を願ってあの恐ろしい者達と戦わせ、応援していたはずなのだ。 なのに何故相手の勝利を喜び、笑い声を上げているのかわからなかった。 「ここでゆっくりを相手にした淘汰と 生き残った蟲同士での交配を繰り返して 私の可愛い蟲達はどんどん強くなってきてる この調子で行けばそのうち他の蟲達の中にもゆっくりより強い蟲が現れてくる! そしてその子達が繁殖すれば ぽっと出の新参の癖に幻想郷の中で私達より大きな顔してる あのゆっくり達より強くなれる!」 「そりゃあ世の中弱肉強食なんだから、私達蟲が弱いならゆっくりに食べられても仕方ない だったらゆっくりより強くなってやる! そう思って、みんなとここまで頑張ってきたのが遂に報われる!」 彼女が力強く放った言葉がまりさの耳に木霊する。 「ずっとこの日が来ると信じてたよ、私の可愛いあなた達 妖怪の私が手を出したら意味が無いから、一生懸命応援してたけどその甲斐があったわ!」 繰り返される蟲達への賛辞。 『あ…あ…』 ここまで話されればもうまりさにも理解できた。 彼女の気持ちは、一片たりともまりさになど向いていなかったのだ。 事情はよくわからない、だが少なくともまりさは彼女達がゆっくりに勝つための訓練道具でしかなかった。 戦いの最中で、彼女から降り注いでいると確かに感じたあの強い視線、声、想いは 全てまりさの相手の蟲達に注がれていた。 ならば、まりさの感じたゆっくりとはなんだったのか。 まりさは孤独に苛まれ続けてゆっくりできずに生きてきて 彼女と心を通わせることで初めてゆっくりできたと思った。 ならば本当は彼女と心が通じていなかったのなら まりさの想いがすべて独りよがりで、未だに孤独の中にいたのならば ゆっくりしたと思ってきたものは全て嘘のゆっくりだったのだ。 少なくともまりさはそう確信した。 例えそれまで感じたゆっくりが本当だったとしても 今ではそのゆっくりは嘘偽りとしかまりさにしか映らない。 まりさはゆっくりするということを誰からも学べなかったのだから。 彼女を中心に形作られていたまりさのアイデンティティは今この時崩壊した。 「今日は祝賀会ね、みんなを集めてあのゆっくりをたべるわよ!」 『や、やめてね…いや…いや…』 まりさの願いも空しく、何十、何百という羽音がまりさの耳に飛び込んだ。 『やべでええええええええ!』 ギチギチという音で蟲達が顎を蠢かせて獲物を見て舌なめずりをしているのがわかった。 『いやいやいやいやいやいやいやいやいやあああああああああああああああ! ま゛り゛さ゛は゛まだいちどもゆ゛っぐぢぢでな゛いの゛お゛お゛おおお!! ゆ゛っぐりぢないでぢぬ゛の゛なん゛て゛い゛や゛ああああああああああああああ!!! や゛べぅ゛う゛ぁ゛あ゛あ゛あ!!ごないで!ごないでむ゛じざんだぢ!!ごないでえええ!! お゛ね゛えざん!お゛ね゛えざんだずげで!いっじょにゆっぎりぢでええええええ! ゆ゛っぐりぃ!ゆ゛っぐりぃ!!どぼぢでま゛り゛ざはゆ゛っぐりでぎないのおおおお!? ほ゛ん゛と゛のゆ゛っぐりっでな゛んだの!?ゆ゛っぐり!ゆ゛っぐりじでいっでね! ゆ゛っぐりじでいっでね!?ゆ゛っぐりっでな゛に゛!?ゆ゛っぐりっでどん゛な゛ごどなの?! だれ゛でぼい゛いがらま゛り゛ざにゆっぐり゛を゛おぢえでよ!ゆ゛っぐり゛!ゆ゛っぐり゛ぃ! ゆ゛っく゛り゛ち゛た゛い゛!ゆ゛っく゛り゛ち゛た゛い゛ゆ゛っぐりぃ!ゆ゛っぐり゛ぃぃい゛!?』 まりさの心に瞬く間に後悔の念があふれ出した。 あと少しで触れられると思った、触れられたと信じたゆっくりを全て否定され ゆっくりを求めるまりさの想いはぐちゃぐちゃになって暴走し、生きてゆっくりしたいという強い渇望となった。 だがもはや喋ることのできないまりさの想いが誰かに届くことは無い。 無常にもまりさの体に蟲達が一斉に群がった。 『ま゛り゛さ゛も゛ゆ゛っ く゛り゛し゛て゛み゛た゛か゛っ た゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛』 ――――――……・・・ ある時から、ゆっくりの間でこんな噂が広まった。 『魔法の森の奥深くに おいしい花が美しく咲き乱れ 太陽は燦燦と降り注ぎ 小川はその光を照り返してやさしくせせらぐ 緑に溢れ夜もやさしい空気が安らかな眠りに誘う そこには争う者はおらず誰であろうともゆっくりできる そんなゆっくりプレイスがあるという その場所の名は 何度夜が来てもずっとゆっくりしていられる という意味を込めて 永夜緩居(えいやゆるい) と呼ばれていた』 この物語は永夜緩居を目指したゆっくりと蟲達の物語である。 永夜緩居― 第四話[ゆっくり]
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1481.html
2008年9月27日 作者により一部修正 前 一方、村役場の会議室。 「何てことをしてくれたんだ!!条約違反が知れたら、ゆっくりごときに食料を奪われるんだぞ!?」 「す、すまない…俺は条約なんて知らなかったんだよ!!」 何気なく子ゆっくりを食した事が、こんな一大事に発展するなんて。 男は周りの村人から責め立てられて、自分が仕出かした事を初めて理解した。 「今、この村の食料事情は決して余裕があるわけじゃない。もしあいつらに群れを補う分の食料を与えるとなったら…!!」 「はっきり言う。村が滅びるぞ!!」 この男を除いて、村人は皆条約の内容を十分理解していた。その条約を結びにきたドスまりさの恐ろしさも知っていた。 そして、条約違反があった場合に違反金―――食料をゆっくりの群れに支払う必要があることも。 「うっぐ……畜生!!どうしてこんなことに!!」 「お待たせした。状況を詳しく教えてくれ」 ちょうどその時、会議室に村長が入ってきた。4人の側近も引き連れている。 「村長!聞いてください!!こいつが群れの子ゆっくりを食っちまったんですよ!!」 「もう条約違反は向こうにも知れているはずだ!!きっと今日中に食料を取りに来る!!」 「どれもこれも、こいつが掲示板を確認しないで適当なことをやったからだ!!」 我慢の限界を超えたのか、男に殴りかかろうとする村人。 しかし、それを遮ったのは……他でもない村長だった。 「なっ…どうして止めるんですか!?こいつは取り返しのつかないことを!!」 「まず、皆に知らせておきたい事がある。実は……昨日掲示された条文は、まったくもって不完全だった。 この場を借りて、皆にお詫び申し上げたい」 深々と頭を下げる村長。その突然の行動に、まわりの村人は何も言えなかった。 「そ、それはともかく…食料はどうするんですか!?あいつらに持っていかれたら俺達は…!!」 「いいのだ」 頭を上げた村長は、コホンと咳払いすると話を続けた。 「何を…何を言ってるんですか?」 「だから、それでいいのだ、と言っている」 揺ぎ無い自信が、村長の目にこもっていた。一方、男を責め立てていた村人達は訳が分からぬという表情だ。 「それとも何か?君たちはゆっくりごとき下等生物との条約を律儀に守って、ご丁寧に食料をくれてやろうとでもいうのかね?」 「そ、それは…俺達だって嫌ですよ!!でも条約が――― 「そんなにドスまりさが怖いかね?君には……人間としてのプライドはないのかね?」 村人全員に言い聞かせるように、そして…まるでこの村以外の全ての人里に向けて問うように…村長は言い放った。 「だが、どうか安心して欲しい。“条約”は我々に味方する」 「どういうことですか?条約は……俺達が認識しているのとは、内容が違うんですか?」 「まさにその通り。『ゆっくりを殺してはならない』なんて条文は……どこにも一切記載されていないのだ!! 偽りの条文が掲示されてしまった不手際については、先ほども言ったとおり。重ねて謝罪する」 その言葉が、村人を安心させた。ゆっくりを殺しても問題なかったのだ。 しかし、それだけでは説明がつかないことがある。ゆっくりはその偽りの条文を条約だと認識している、という点だ。 それについても、村長は最適な解決策を提示する。“人間”にとって、最適な解決策だ。 「だが…残念なことにゆっくりどもは勘違いしている。人間が条約違反を犯したと思い込み、食料を奪いにくるだろう。 さあ皆の者!!大切なお客様が、大挙して押し寄せてくるぞ!!準備をしろ!!槍を持て!!さぁ早く!!早く!! ただし手は出すな!!大切なお客様だ!!大切なお客様には、自らの過ちを存分に理解していただき、その上でお引取りいただく!!」 「「「お……おおおおおおっぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」 村人は歓喜した。条約なんてくそ食らえ!!ゆっくりは搾取されるだけの存在!!そんなゆっくりが人間と平等な条約を結ぶなど、笑止千万!! 我先にと会議室を飛び出し、武器を手にとって村と森の境界線へと向かう村人達。 それを、村長率いる5人の男はゆっくりと追う。 「やはり、ドスまりさにも“条約違反”は伝わっているのでしょうか?」 「そうだろうな。子ゆっくり一匹を食ったのなら、残りの家族はそれをドスまりさに伝えに戻るはずだ。 まったく……あまりに予定通り事が進むと、逆に恐ろしくなるぞ」 村長は苦笑しながらも、自信は失っていなかった。 そして30分後、人間とゆっくりは村と森の境界で再び対峙する事になる。 『ぷくぅ~!!』 村と森の境界。 槍をもって横一列に並ぶ人間を前に、ドスまりさは大きく膨らんで威嚇のポーズをとる。 後方に控えている数千のゆっくりも同様のポーズをとった。 村人の中には怯むものもいたが、今のところ最高にテンションがあがっている彼らにとって、そのポーズは笑いを誘うものでしかなかった。 『ゆっ!!まりさはとてもおこってるよ!!はやく村長さんをよんできてね!!』 「私をお呼びかな?」 『ゆゆっ!?』 あまりにも早い村長の登場に、ドスまりさは戸惑いを隠せなかった。 だが、やることは変わらない。人間達の非をネタにして食料を掻っ攫おうという作戦は、変更する必要はないのだ。 村長は煙草を口に咥えたまま、村人達より一歩前に出る。 そのままどんどん歩んでいって、一匹の赤ちゃんゆっくりの前で立ち止まった。 「ゆっ!!おじさんはゆっくりあっちにいってね!!どすまりさのはなしのとちゅうだよ!!」 「ゆっくちぃ~?おじしゃんもゆっきゅりしゅる!?」 親ゆっくりは危機感を露わにしたが、当の赤ちゃんゆっくりはまったくの無防備である。 「ほぅ……人間でもゆっくりでも、赤ん坊はやはり愛らしいものだな」 「ゆっ!!そうだよ!!れいむのあかちゃんはとてもゆっくりしたかわいいこだよ!!」 「ゆっくちぃ~?れいみゅはかわいいよぉ!!」 「……はぁ。やはりゆっくりは理解しがたい生き物だな」 あっさり警戒を解くゆっくりに対して、村長はすっかり呆れてしまった。 ぴょんぴょん跳ねて足元にすり寄ってくる赤ちゃんゆっくり。村長は、そんな赤ん坊に煙草の火を押し付けた。 ジュウ!! 「ゆっ?ゆっぎゃいあおああおあいおりあおえろいあおえりおあおいろ!!???」 「あがぢゃあああああああん!!!どぼぢでぞんなごどずるのおおおおおおぉ!!!?」 「じょうやくいはんだよ!!ゆっくりたべものをだしてね!!さもないとゆっくりできなくするよ!!」 「にんげんのぶんざいでそんなことするなんて!!どすのこわさをおもいしってね!!」 騒ぎ立てるゆっくりには目もくれず、ドスまりさの目の前に仁王立ちする村長。 ドスまりさは、怒りのこもった目つきで村長を見下ろした。 『残念だよ!!でも条約できめたことだよ!!だから村長さんは早く――― 「実に残念だ。まさか条約締結から1日も経たずに、そちらが違反をしてしまうとは……」 『ゆ!?何を言ってるの!?条約違反をしたのはそっちでしょ!?ゆっくり食べ物をもってきてね!!』 ドスまりさは、村長が何を言っているのか理解できなかった。 こちらが違反した?何を言ってるんだ!人間が子ゆっくりを食べたのに、どうしてこっちが違反したことになるんだ!! 憤りを隠せないドスまりさは、怒りに顔を歪めた。仲間を殺した人間が許せないのだ。 「では、その条約とやらを確認しようか。君、あれを出してくれ」 指示を受けた男が、大きな紙を取り出した。それは昨日締結された条約の条文である。 左側にはゆっくりが理解できるようひらがなで。右側には人間が理解できるよう漢字も交えて、条文が記述されている。 そして、村長はその右側に……内容をひらがなで書き直した条文を、ぺたりと貼り付けた。 「これが、君の読めない漢字をすべてひらがなにしたものだ。さぁ、これで理解できるだろう? 君たちの過ち。君の過ち。自分が何をしでかし、何を敵に回したのか。存分に理解できるだろう? 理解できないか?それでは読んでやろう。一字一句漏らさず、君が締結した“条約”とやらをここに公開しようではないか!!」 以下が、右側に書かれていた条文の一部である。 左側に記述されている条文は、なんら効力を持たない。 人間はゆっくりの群れに自由に立ち入る事が出来る。 ゆっくりは人間の許可なく村に立ち入ってはいけない。 人間の生活・生命を脅かしたゆっくりは、人間が裁く。 ゆっくりの生活・生命を脅かした人間は、なんら罪に問われない。 ゆっくりの生命・生活を脅かしたゆっくりは、人間が裁く。 ゆっくりは、労働力として100匹のゆっくりを村に送らなければならない。 ゆっくりの群れは、各々の家族が毎日子作りをして子供を産まなければならない。 群れ全体で1日に1000匹以上の子供を産まなければならない。 生まれた子供は、その9割を人間に提供しなければならない。 群れのゆっくりの数の増減を把握するため、随時必要な人数の人間がゆっくりの群れに滞在する。 その人間に何らかの危害を加えた場合、群れ全員は人間に殺される。 これ以外にも、数多の条文が記載されていた。全てひらがなと漢字を交えて。 そして、その内容を……ドスまりさは今、把握した。 「どれもこれも、殆ど守られていないではないか!!貴様ッ、条約を舐めているのか!!」 村長は激怒していた。条約は、守るべきものである。 条約とは、国家と国家、集団と集団の約束事。それを破られては困るのだ。 『ゆっ!!でもそんなのまりさは知らないよ!!まりさはその条文をよまなかったよ!!』 「そうだろうな。だが書いてあったんだ。すべて!!余すことなく!!一字一句漏らさず!! 君は条文全てに目を通す権利があり、義務があった。内容を理解する義務があった。理解できなければ申し出る義務があった! そしてそれに署名をしたということは、その権利と義務を果たしたという宣言なのだ。故に条約は成立する。 なのに貴様は、今更条約を反故にしろと言う……君は、約束を破ろうとしているのだよ?」 『ゆっ、ゆぐぐぐぐ!!!どぼぢでえ゛ええ゛え゛えええ゛え゛え゛ぇぇえ゛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ゛ぇえ゛!!??』 条文全ての内容を理解したドスまりさは、その苛烈な内容に絶望した。その叫びが地を震わし、他のゆっくりにも伝わる。 一字一句漏らさず読み聞かされた他のゆっくりも、その中身がどんなに酷いものかを知って恐怖した。 「ひどいよ!!そんなゆっくりできないようにするなんて!!」 「にんげんだけゆっくりするなんてずるい!!まりさたちもゆっくりさせてね!!」 「あかちゃんをあげるなんてできないよおおおおおおおぉぉおぉぉ!!!」 「どうじでぞんなごどずるのお゛おおお゛お゛おお゛お゛!!??」 だが、ドスまりさは思い出したように反論した。村長は意外そうな顔をしてそれに応じる。 『ゆぐぐぐ!!でもまりさは言ったよ!!“右側の文章がわからない”っていったよ!!』 「あぁ、よぉく覚えているよ。で、私は言ったな。“人間にわかるように書いてある”と」 『そうだよ!!だから村長さんがだましたんだよ!!条約はむこうだよ!!』 「騙した?誤解しないでくれたまえ。あの時私が言った言葉を繰り返そう」 ―――人間はひらがなだけだと逆に文章を理解できないんだ。だから右側には人間が理解できる文章で書いてある。 条約締結のためには不可欠な措置だ。ゆっくり理解してくれたまえ。 「なぁ、私はいつ……右と左の文章の内容が同じだと言ったのだ?」 『ゆっ!?そ、それは!!』 「君は“右側の文章が分からない”と言った。それでは我々も“はい、そうですか”としか答えようがない。 もし“右側の内容を読み上げろ”と君が要求すれば、我々はそれに応えたというのに…… 君は本当に条約を理解しようとしたのか?君にとって、この条約はお遊びだったのかね?」 『ゆっ!!ゆうぐぐぐぐぐぐぐぐ!!!そんなああぁぁぁああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!』 条約を無効に持ち込むための一撃も、あっさりと村長にかわされた。 もはや、ドスまりさに打つ手はなかった。 「なぁ、ドスまりさ?君は……我々と対等なつもりでいたのかな?」 『ゆっぐ…ゆっぐぐ!!』 「ところが違うんだ。我々は強者。君たちは弱者。強者が弱者と条約を結んだところで、何のメリットもない。 そんな利点ゼロの条約を、我々が結ぶと思っていたかね?思ってたんだろうな、きっと。君はバカだから」 『ッがああぁぁぁあっぁあぁあぁぁぁぁ!!!』 言葉のナイフで、ドスまりさの心を抉る村長。 ドスまりさは悲鳴を上げるが、暴れまわることはしない。 心の隅で認めているのだ。自分達の過ちを……自分達の落ち度を。 「いいか?後学のためによく聞きたまえ。条約というのは、強者と強者、弱者と弱者の間にのみ成立する。 ということは、我々と君たちとの間にあったのは条約ではない別のもの、ということになる。それが何かわかるか?」 『ゆっぎぎぎぎぎ!!!わがらないっ!!わがらないよっ!!』 「……搾取だよ。強者による、弱者からの一方的な搾取だ。我々は最初からそのつもりだった。 弱者から“条約を結ぼう”という提案があったので、我々は嬉々として受け入れたよ。鴨が葱を背負ってやってきたようなものだからな。 繰り返す。我々と君たちとの間に結ばれたのは、“条約ではない”。文書によって、我々による君らからの搾取が正当化されたに過ぎないのだよ」 「ひどい!!どうしてれいむたちをゆっくりさせてくれないの!!」 「そうだよ!!まりさたちもゆっくりしたいよ!!」 「そんなじょうやくだめだよ!!どすまりさ!!じょうやくなんていらないよ!!にんげんたちをこらしめようよ!!」 「そうだそうだ!!じょうやくなんてむこうだよ!!どすまりさがいれば、にんげんなんてかんたんにころせるよ!!」 『そんなごどいっだらだめえ゛え゛え゛え゛ええ゛ぇぇぇ゛ぇ゛ぇえ゛え゛!!!』 ドスまりさは恐れていた。ここはひとまず条約を受け入れて、引き下がらなければ! さもないと、周りのゆっくりが余計なことを言って付け入る隙を与えることになる。 その考えに至ったまではよかった。だが、残念なことに手遅れだった。 「ほぅ、君たちは我々に攻撃する意思があるのか。後方の5千を越えるゆっくりは、皆我々の生命を脅かすための兵士ということか」 『ちがいまずううううぅぅううぅぅぅ!!!までぃざだじはだべぼのをもらいに――― 「いや、それはない。何故なら条約違反をしたのは君たちなのだ。そんな君たちが食料を受け取りにくるとは考え難い。だろう?」 暴論だった。姑息な手段で集団をおびき寄せておいて、それを“生命を脅かす兵士”だと言い出すなんて! だが、反論する力も権利もドスまりさにはなかった。こんな滅茶苦茶な条約を結んだのは、他でもない自分なのだから。 「我々は、君の後方に控える5千のゆっくりを、“人間の生命を脅かしうる存在”と認識する。これは重大な条約違反だ。 よって条約に基づき、違反金の支払い、そしてこの場にいる全てのゆっくりを我々人間が裁くものとする!!」 『どうじで……まりざだぢはゆっぐりじだいだけなのに……!!』 「反抗したければすればいい。結果は変わらぬ。この場にいるゆっくりが全滅するだけだ。 ……そうだ、君は条約締結時に我々をドススパークで脅したな。あれも条約違反ということにしよう……やれ!」 極悪非道。人間対人間であれば、そんな言葉が当てはまるだろう。 しかし、相手はゆっくり。そんな非道がまかり通るのが、この世界だ。 村長の指示に従い、槍を持った人間がゆっくりたちの周囲を取り囲んでいく。 「ゆっくりしね!!ゆっくりできないにんげんはしね!!」 「にんげんのくせに!!ゆっくりのじゃましないでね!!」 果敢にも人間に飛び掛っていくゆっくりだが、あっさりと槍につき抜かれて息絶えていく。 その惨状はいつまで続くのか。ドスまりさは分かっていた。自分が、条約違反を認めればいい。 自分が謝れば、この場のゆっくりが全滅することは避けられるのだ。 『もうやべで!!わがりまぢだ!!まりざだちがわるがっだでず!!ごべんなざいいいいぃぃ!!!』 ドスまりさは、正式に謝罪した。その瞬間、人間によるゆっくりへの攻撃が止む。 自分一匹ならドススパークで逃れられたかもしれない。しかし、後方には5千のゆっくりがいるのだ。 ドススパークで2,3人の人間を殺したところで、残った人間は他のゆっくりを綺麗に殺しつくしてしまうだろう。 「どうじで!!どうじであやまるの!!まりさたちはわるくないよ!!」 「れいむもわるくないよ!!ゆっくりぢでだだげなのにいいいぃぃいぃぃ!!」 「どずのばがああぁあぁぁぁぁぁ!!どうじでにんげんをごろざないのおおおおおおおぉぉぉおぉぉ!!??」 後ろのゆっくりたちは、ドスまりさがどうして人間に対抗しないのか、ドススパークを打たないのか、などと文句を言ってくる。 ドスまりさは苦しかった。人間には不当な条約を押し付けられ、仲間からは罵られる。 全ては仲間のために。仲間がゆっくりするために頑張ってきたことなのに。その仲間は無能で、理解力不足。 ドスまりさは、全てを諦めた。全てを後悔した。人間を欺いたりせず、自分達だけでゆっくりすればよかった、と。 報われないリーダーは……敵を欺こうとして逆に欺かれた無能なリーダーは、すべてを新たな支配者に委ねた。 半年後。 「ゆぅ……」 「ゆっくりしたいよぅ…」 森を往来するゆっくりたちの表情に、かつての元気はない。 一方的な搾取。一方的な蹂躙。果てに待つのは破滅。その行く末が、見えているからだ。 「ん……んほおおぉぉ……!!」 「ずっぎりー!!ゆぅ………れいむのあかちゃん、みじかいあいだだけどいっしょにゆっくりしようね」 頭に生えた蔓。子供の形を成している実に向かって、れいむは子供が連れ去られるまで共にゆっくりしようと決めた。 毎日子作りを強制され、10匹以上の子供を作る事が条約で取り決められている。 生まれた子供を逃がそうとしても、駐在する人間に発見されて一家根絶やしになる可能性もある。 だから、ゆっくりの家族は今日も子作りに励むのだ。 「おらおらァ!!きりきり働けぇ!!」 「いぎゃああぁぁぁぁあゆっぐりいいぃぃいいぃぃ!!!」 「いだいのいやあぁぁあぁぁ!!ゆっぐじじだいいいぃぃぃいっぃ!!」 工事現場で悲鳴を上げるのは、強制労働を課せられているゆっくりだ。鞭に打たれて、大粒の涙を流している。 この強制労働も条約に記載されている。人間に対して労働力を提供する事が、取り決められている。 だから、ゆっくりは今日もせっせと働くのだ。 「よし!!誰がたくさん殺せるか勝負だ!!」 「負けないぞ!!」「俺だって!!」 ゆっくりの群れが住む森で、ゆっくりを殺した数を競うという残酷な遊びを始める子供達。 そんな彼らを止める権利を、ゆっくりたちは有していない。 ただ殺されるままに、殺されなければならない。それが条約の取り決めである。 運がよければ、森に駐在する大人によって止められることはあるかもしれない。 だが、人間による群れのゆっくりの増減予想を逸脱しないかぎり、大人の人間による助けなど期待できなかった。 「どぼぢでごろずのお゛お゛おおお゛ぉぉぉぉぉ!!??」 「れいぶだぢはゆっぐじじでだだげなのにいい゛い゛い゛いいい゛い゛!!」 「どずまりざだじゅげでえ゛え゛ええぇぇ゛え゛え゛ぇえぇえぇぇ!!!」 「どぼぢえむじじゅるのおお゛おお゛お゛お゛お゛おぉぉぉぉ!!??」 「どずのばがあ゛あ゛ああ゛あ゛ぁぁぁ゛ぁ゛あ゛ああ゛ぁぁぁあ!!!」 子供を産まなかった親ゆっくりは殺された。 働かなかったゆっくりは殺された。 人間の子供の遊び相手になったゆっくりは、笑いながら殺された。 群れのゆっくりが増えすぎたときは、たくさん殺された。 人間が必要だと判断したときは、とにかく殺された。 すべては条約があるから。条約の取り決めに従って、人とゆっくりは“共存”している。 だが、群れのゆっくりには希望があった。 最後の条文には、こう記されている。 この条約の有効期間は、一年間である。 ゆっくりたちは、その一年後が訪れるその日まで、人間の酷い仕打ちに耐え続ける。 一年経てば自分達は解放される!!自由になれる!!―――そう信じて。 『ゆっぐぐぐぐ………みんな……あと半年……がんばっでね………』 大木に縛り付けられているのは、ドスまりさである。 条約の取り決めに従い、人間の生命を脅かしたドスまりさは人間に“裁かれている”のだ。 身動きの取れないドスまりさは、一日一食、駐在している人間から食料を与えられている。 目の前を往来するゆっくりが、ドスまりさの顔を見上げる。 皆口には出さないが、心の中はドスまりさを罵りたい気持ちでいっぱいだった。 だが、そんなことをする体力的余裕がないのだ。そんな力が余っていれば、一匹でも多く子を産んで人間に献上しなければならない。 『がんばっで……ゆっぐ……うっぐ…ううぅぅぅぅ……がんばっでねぇ……』 ドスまりさの記憶が正しければ、約束の期日まであと半年。 その日が来れば、自分達は解放される。そしたら復讐なんて考えず、この森から逃げよう。ここは全然ゆっくりできない。 今まではゆっくりさせてあげられなかったけど、解放されたらここから遠い別の場所でゆっくりしよう!! みんなでゆっくりすれば、自分も幸せになれる。自分を罵ったゆっくりも、きっと許してくれるはずだ。 群れのゆっくりにとって、その“半年後”こそが生きる希望だった。 半年後の自分がゆっくりする姿を思い浮かべて… 今日も子を作り、働き、搾取される。 だが、とても残念なことに。 人間側としては、半年後までゆっくりを生かしておく予定はまったくなかった。 (終) あとがき ゆっくりレイパー氏の『ある愚者の孤独な復讐』を読んで、結構溜まったんですよ。すっきりできなかった。 この糞ったれ村長はカリスマ村長の外交手腕を見習ってね!!という具合に書きなぐりました。5時間で。 次はちゃんとした虐待を書くから許してね!! 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2052.html
木の根元に作られた巣の中で、ゆっくりの子供達が遊んでいる。 4匹居るれいむはゆーゆーと音程を無視した歌を歌い、 2匹居るまりさはそう広くない巣の中でぐるぐると追いかけっこをしている。 前を跳ねるまりさが息を上げて速度を落とすと、追いかけて来たまりさが後頭部にのしかかる。 逃げようとする動きと押さえつけようとする動きが、次第にすりすりへと変わって行き じきに満足したまりさ達は走り混んだ疲れからぽてっと座ると、空腹を訴え始めた。 「ゆぅ、おなかちゅいたよ!」 「ごはんたべちゃい!」 子供達はまだ赤ちゃんゆっくりより少し大きいくらいのサイズで、 体内に栄養を多く溜め込んで置くことが出来ない。 加減を知らず遊びたいだけ遊んだまりさ達の体力は、 既に放っておけば命にかかわる所まで消費されていた。 「ゆゆ…でもごはんがにゃいよ?」 「おかあしゃんがごはんをとってくりゅよ、がまんしちぇね」 「がみゃんできにゃいよ! ゆあ゛ぁぁぁぁん!」 体力を温存しようとせずに騒がしく泣き出すまりさに、つられてれいむ達の目にも涙がこみ上げてくる。 この巣には食料の備蓄が無く、小さい子供は外に生える草の存在を教えられていない上 危ないので巣から出ないよう親から強く言われている。 何の打開策も持たない子供達は、ただ泣くことしか出来ない。 子供達の泣き声の合唱が巣の外にも漏れて聞こえ始めると、程なくして1匹のゆっくりが飛び込んできた。 「ゆっ! ゆっくりかえってきたよ! ゆっくりなきやんでね!」 「ゆうっ! おかあしゃんおかえりなしゃい!」 「ゆあぁぁん! おにゃかしゅいたよ!」 「ゆっくりごはんたべさしぇてにぇ!」 「ゆ! ゆっくりたべてね!」 帰ってきたゆっくりを見るなり子供達は泣き止み、すぐにごはんの催促を始める。 催促を受けた母親、成体のゆっくりれいむが膨らんだ頬からゆべぇ、と食料を吐き出すと 子供達が群がり見る見るうちに平らげていく。 「がつがつ、むっちゃむっちゃ! がつがつ、むっちゃむっちゃ!」 「ゆっ! まりしゃばっかりじゅるいよ! れーみゅのぶんものこしちぇね!」 「「むっちゃむっちゃ、むっちゃむっちゃ!」」 走り回って体力を消費していたまりさ達は一心不乱にがつがつと食い漁り、 取り分がなくなっては困るとれいむ達も競うように掻き込む。 まりさ種と比べ狩りが得意ではなく、物を運ぶ手段も口に含むしかないれいむが持ち帰った食料は 6匹の子供に食べさせるにはまったく足りていなかった。 「ゆゆっ、もっとたべちゃいよ! ごはんちょいだいね!」 「おかーしゃんごはんちょうだい!」 「じぇんじぇんたりにゃいよ!」 「ゆっ、す、すぐとってくるからゆっくりまっててね!」 次々と不満を漏らす子供達に、親れいむはまた狩りに出かけて食料を取ってくると伝え 全然ゆっくりすること無く巣から飛び出して行く。 この家族は片親だった。数日前巣にやって来た人間が親まりさを連れ去ってしまい、 それまで親まりさが担当していた食料集めを親れいむがしなくてはいけなくなった。 その結果、親れいむが狩りに出ている間に子供達を見る者がいなくなると、 体力の温存を考えられない子供達は疲れきるまで遊び、 親が残していた備蓄を2日もせずに食い尽くしてしまう。 親れいむは巣と狩場を1日に何往復もし、夜が来たら泥のように眠る生活を続けていたのだった。 親れいむが再び狩りに出かけ、残された子供達が少しだけ回復した体力を また遊びで消耗しようとし始めた時、巣の入り口の偽装ががさがさと外され 人間がぬっと顔を覗かせた。 「ゆゆっ?」 「やあ、ゆっくりしていってね」 「「ゆっくりしていっちぇね!」」 子供達が本能からの挨拶を返すと、人間は入り口の前に ゆっくりの入った透明な箱を移動させ子供達に見せる。 「ゆゆっ! おとーしゃん!?」 「ゆっ! ゆっくりあいたかったよ!」 箱の中に入っていたのはこの家族の父親役であるゆっくりまりさだった。 この箱を持ってきたのは数日前に親まりさをさらって行った人間なのだが、 その時巣の奥に隠れていた子供達は人間の姿も見ておらず、声すらも覚えていない。 「それじゃあお父さんを中に入れるよ」 「あぶないからゆっくりはなれてね!」 「「ゆゆっ」」 人間が箱を巣の中に押し込み、まりさの顔が巣の外側を向くように回転させると、 箱を巣の中の壁に少し寄せて手を離した。箱に轢かれないよう離れていた子供達も、 箱が止まったと見るやわらわらと集まり親まりさとの再会に顔を輝かせる。 「ゆっ! おうちにかえしてくれてありがとう!」 「「ありがちょう!」」 「ああ、良かったな」 親まりさが人間にお礼を言うと、子供達も揃ってお礼を言ってくる。 ほほえましい光景に人間が満足げに微笑んでいると、 1匹の子れいむが箱に入ったままの親まりさに疑問の声を上げた。 「ゆ? にゃんでおとうしゃん、そこからでちぇこにゃいの?」 「ゆゆっ?」 「ゆ、まりしゃおとーしゃんとすりすりしちゃいよ!」 「だ、だめだよ、すりすりはしたいけど、はこからでたらゆっくりできないよ」 スキンシップを望む子まりさからの要求に、箱から出ることを即座に拒む親まりさ。 ゆっくりから見ても異常な姿に、子供達の間に動揺が広がる。 「ゆっ? …でもおとうしゃん、うごきにくそうだよ?」 「だいじょうぶだよ、このはこのなかはすごくゆっくりできるよ」 「ゆゆっ?」 親まりさの入っている箱は前後の幅と高さに若干の余裕があるが、 左右の幅が成体ゆっくりの幅よりも若干短い。 親まりさは左右の壁から挟まれて若干変形し、中での方向転換すら 出来なさそうであるが、それでもゆっくり出来ると言う。 ゆっくり出来ると言う言葉に、子供達は目をキラキラさせながら箱の回りを跳ねて 入り口を探すが、四方の壁に子ゆっくりが入れるような穴は無い。 親まりさの背面の壁に蝶番と取っ手があり、引けば開くようになっているが 子ゆっくりの高さでは取っ手を掴む事が出来ず、また使い方もわからないようだ。 「おとーしゃんばっかりじゅるいよ、まりしゃもゆっくりしたいよ!」 「れーみゅもゆっくちちたい! にゃかにいれてにぇ!」 「ゆゆっ、このはこのなかはまりさでいっぱいだよ!」 子供達が揃って、ぷくっと頬を膨らませた所で、 ずっと様子を眺めていた人間がここぞとばかりに声を掛ける。 「ゆっくり出来る箱に入りたいのかな? 箱ならいっぱいあるよ」 「ゆっ! はこしゃんちょうだいね」 「まりしゃもほしいよ!」 「よし、それじゃ入れてあげるから、ゆっくり並んでね」 「ゆっきゅりならぶよ!」 並ぶよ!と言いながら我先にと一気に跳ねてくる子供達をひょいひょいと摘み上げると、 天井の板が無い子ゆっくりサイズの箱に次々と入れて行く。 この箱は親まりさの物とは違い、背面に蝶番で開くドアが無いが 前後、左右共に若干の余裕がある広さで方向転換くらいなら可能である。 「ゆゆっ、ひんやりしちぇきもちいいよ」 「ゆっきゅりできりゅね!」 6匹の子供達全員を箱に入れると、開いた天井にぴったりなサイズの透明な板を乗せて行き、 手のひらでしっかりとはめ込み蓋をして巣の中に戻してやる。 全員を横一列に並べて、親まりさと同じように巣の外側を前面にしてあげると、 最初はひんやりとした壁に頬をつけて楽しんでいた子供達も圧迫感を訴え始めた。 広さに若干の余裕があるとは言え、飛び跳ねれば天井に頭をぶつける程度には狭いのだ。 「ゆゆ、せまいよ、おしょとにだしてにぇ!」 「ゆっくりできにゃいよ!」 「そう言ってるがまりさ、箱の外に出たいか?」 「ゆっ! でたくないよ、はこのなかのほうがゆっくりできるよ!」 「「ゆゆっ!?」」 自分達の箱よりも窮屈そうで、左右の壁に若干潰されているのに 平然とゆっくり出来ると言い放つ親まりさに、驚きの声を上げる子供達。 「お父さんはこんなにゆっくり出来てるのに、これくらいでゆっくり出来ないなんて 君達はゆっくり出来ないゆっくりなのかな?」 「ゆゆ、そ、そんにゃことにゃいよ!」 「れーみゅはゆっくりちてるよ!」 「そうだよ、はこのなかはとってもゆっくりできるよ、ゆっくりりかいしてね」 「ゆ、ゆっくりできりゅ…?」 「ゆっくりりかいしゅるよ…」 子供達は人間と親まりさ両方から否定されて困惑してしまう。 「いやー、まりさは本当にゆっくりしてるね」 「ゆっ、このなかでゆっくりできないなんておかしいよ!」 「本当に素晴らしいゆっくりだ、ゆっくりゆっくり」 「ゆっ! まりしゃもゆっくりしてりゅよ!」 「れーみゅだってゆっきゅりしちぇるもん」 目の前で繰り広げられる、箱の中はゆっくり出来ると言う胡散臭い会話に 子供達もゆっくり出来ると思い込んで行く。 その様子を見た人間は、「それじゃ、ゆっくりしてってね!」と言い残すと そそくさと立ち去って行った。 突然の行動に後に残された子供達は呆然とするが、親まりさが目を細めて ゆっくりしているのを見ると、自分達もゆっくりして母親の帰りを待つ事にした。 * この親まりさが箱の中でゆっくり出来ているのは、数日前に連れ去られた 人間の家での生活に起因している。 家族の元に返せと喚くまりさを連れ帰るや否や、背面にドアの開いた透明な箱に押し込むと、 まりさは窮屈な箱の中でずりずりと後退し、背中でドアを押し開けて箱から出ようとする。 「ゆぐぐ…ひどいよ! ゆっくりあやまっべぇっ!!?」 まりさが箱の外に出たら、木製のパドルで頬を叩く。 薄く平べったい板状のパドルは、叩いた力が広く分散する為皮も破れず 致命傷にはならないが、大きな打撃音と皮の表面に残る痛みがまりさに恐怖を植えつける。 「ゆびゅ、やめべっ、やめでべぇっ!」 パアンパアンと数回頬を叩いてから箱の中に押し込んでやると、 しばらくはパドルを恐れて箱の中で震えているが、まりさの視界に入らない位置に移動すると 「そろーり、そろーり」と声を上げながら脱出を試みる。 そうして箱から出る度にパドルで頬を叩いては箱に押し戻し続けると、 箱の外ではゆっくり出来ない、と言うトラウマがまりさの餡子に刻み込まれる。 それと同時に、箱の中ならゆっくり出来る、と言う記憶も植えつけてやる。 箱の前面の下側、まりさの口の前には横にスライド出来る小さな窓があり、 内側にだけ取っ手が付いている。舌を使って窓を開ければご飯が食べられる事を教え、 実際にくず野菜を与えてやる事で、野生では味わえない食事にまりさは涙する。 「むーしゃ、むーしゃ…しあわせー!!」 箱の外に出れば痛い板で叩かれる、と言う恐怖とのギャップから、 おいしい食事を食べられる箱の中がゆっくりぷれいすであると、まりさの餡子に強く印象付けられた。 元居た巣では備蓄した食糧が無くなり、親れいむが餌集めに奔走している間、 まりさは安全な箱の中でゆっくりした生活を満喫していたのである。 * 「ゆっくりおかえりなさい!」 「「ゆっくりおかえりなしゃい!」」 「ど、どうなってるの…?」 くたくたになりながら餌集めから帰ってきたれいむは、目の前の状況に困惑していた。 元々いい加減だった入り口の偽装は取り外され、巣の中では居なくなったはずのまりさと、 6匹の子供達が1列に並んで皆一様に透明な箱に入っている。 「ゆ! まりさ、どうしたの!?」 「ゆっくりかえってきたよ!」 「ゆゆ! どうしてみんな、はこにはいってるの!?」 「ゆっくりできるからいれてもらったんだよ!」 「「ゆっくりしちぇるよ!」」 「ゆ、ゆううっ!?」 一番端の箱に入っている親まりさに跳ね寄り、何があったのか聞くが ゆっくりに正確な説明を求めても、まずまともな返事は返って来ない。 つがいのまりさが帰って来たことは嬉しいが、あまりにも異常な事態は 親れいむの限りなく狭い理解の範疇を大きく逸脱していた。 「ゆゆっ、まりしゃおなかがしゅいたよ」 「ゆっきゅりごはんちょうだいね!」 「ゆ! まりさもごはんがほしいよ!」 満足のいく食事を取れていなかった子供達は、母親が持ち帰った食事の催促を始め、 親まりさもなんとなくで一緒に食事を求める。 母れいむも狩りに出た目的を思い出し、その場にゆべぇ、と餌を吐き出すと 子供達は餌に飛びつこうと跳ねるが揃って天井に頭をぶつけてしまう。 「ゆびぇっ! でりゃれにゃいよぉぉ!?」 「どうちたらいいのぉぉぉ!?」 「ゆっ! だいじょうぶだよ!」 親まりさの上げた声に子供達がそちらを見ると、まりさは箱の前面にずりずりと近づき 板の下方にある小さな取っ手に舌を引っ掛け、食事用の窓をスライドさせて開ける。 「こうすればごはんをたべられるよ、ゆっくりあけてね!」 「ゆっ、ゆっくりりかいしちゃよ!」 見れば子供達の箱の前面にも、親まりさの箱と同様に小さな窓があり、 内側に付いた取っ手で開けられるようになっていた。 親まりさは子供達が窓を開けたのを確認すると、 「ゆ! れいむ、ゆっくりごはんをもってきてね!」 と親れいむに声を掛ける。れいむも状況を理解しそれぞれの箱の窓の前に食事を運びだした。 食事用の窓が開くとは言え、箱自体を動かせない為近くまで食事を運ばないと食べられないのだ。 「「むっちゃ、むっちゃ、ちあわちぇ!」」 「むーしゃ、むーしゃ…」 子供達は遊んで体力を消耗する前に箱に詰められた為それなりに満足し、 親まりさもくず野菜と比べると味は落ちるがそこまで空腹でもなかった為、 眉をひそめながらも苦情は言わない。 人間の家での生活で、餌を持ってくる相手に苦情を言うと お仕置きをされると理解していたからである。 親れいむは子供達が問題なく食事を取れる事に少し安心し、また親まりさの帰還に胸を撫で下ろした。 狩りの上手なまりさが帰って来たので、後は箱から出せば前の生活に戻れる。 箱が絶対に開かない可能性など、れいむの餡子には浮かんで来なかった。 「ゆっ、まりさがかえってきてよかったよ」 「ゆ、まりさもかえってこれてうれしいよ!」 「それじゃ、つぎからはまりさがかりにいってね!」 「ゆゆっ!? はこのそとはゆっくりできないよ!」 「なにいってるの? ゆっくりしないではこからでてね!」 連日の狩りの疲れからストレスの溜まっていたれいむは、理解出来ないことを言い出す 親まりさにぷくぅと頬を膨らませ、出口が無いかと箱の回りを調べ出す。 広くは無い巣穴に一列に並んでいる為、箱と箱の間には成体が通り抜けられる程の幅がなく、 親まりさの箱の隣に居た子れいむの箱を押しのけながら親れいむは後ろに回り込んだ。 「ゆゆうっ!? お、おかーしゃんにゃにしゅるの…?」 「ゆ゛…ゆ゛え゛えぇぇぇぇん」 「うるさいよ! ゆっくりだまっててね!!」 「「ゆ゛っっ!?」」 「れ、れいむ、ゆっくりおちついてね?」 箱ごと押しのけられた子れいむは大きな揺れに怯え、 他の子供達も親れいむが発する険悪ムードに耐え切れず泣き出すが、 ストレスの溜まっていた親れいむは強く怒鳴りつけてしまう。 「ゆっ、はやくでてきてね!」 「ゆゆっ、あけないでね! ゆっくりできないよ!」 親まりさの箱の背面にドアを見つけた親れいむが、取っ手に舌を絡めてドアを開けると 背中に空気の流れを感じたまりさは落ち着けない様子で怯えだす。 一向に出てこようとしないまりさの様子にれいむは痺れを切らせ、 まりさの長い髪に噛み付いて引っ張り出した。 「ゆ゛っ、ぐり、ででぎで、ねっ!?」 「やめでぇぇぇ! いだいのやだぁぁぁぁぁ!」 木の板で叩かれる恐怖が蘇った親まりさは、ただでさえ狭い左右の壁に 突っ張るように体を変形させ、箱から引っ張り出されないよう抵抗する。 「いだい! いだい! ひっぱらないでねぇぇ!?」 「いだいなら、ででぎでねぇっ!?」 親まりさも親れいむも、どちらも全く引かず力比べを続けていると、 まりさの頭部がめりめりと音を立てはじめる。 「ゆ゛っ!? や゛めでね? や゛め゛ぎゃぁぁぁぁぁっ!!!」 「ゆべっ! ゆゆ…ま、まりざぁぁ!?」 引っ張られる力に耐え切られずに、親まりさの後頭部がびりっと音を立てて裂けると、 急に抵抗が無くなった為親れいむは後ろに勢い良く倒れる。 痛がりながら起き上がった親れいむが見たものは、まりさの後頭部に出来た大きな裂け目と そこからぼとぼととこぼれる餡子であった。 子供達も絶句し、目と口を一杯に広げてぶるぶると震えている。 「ど、どぼ、じ、で…」 「まっ、まりざ、まりざ!」 裂け目から勢い良く餡子を漏らし、まりさは痙攣しながらぱくぱくと口を開閉させる。 親れいむは慌ててまりさに近寄るものの、おろおろするばかりで何も出来ないまま、 まりさは動かなくなってしまった。 一部始終を見ていた子供達も、目の前で繰り広げられた親同士のゆっくり殺しに 盛大に泣き出してしまう。 「おとーしゃぁぁぁぁん!」 「ゆ゛あ゛ぁぁぁぁん!!」 「おきゃあしゃんのばきゃぁぁぁぁぁ!」 「おかーしゃんにゃんておかーしゃんじゃないよぉぉぉ!」 「ゆ……ゆ……」 自分でつがいのまりさを殺してしまったれいむは、辛い狩りから開放される喜びから一気に突き落とされ、 子供からの罵倒に反論することも出来ず、白目を向いて気を失う。 散々泣いた子供達も次第に泣き疲れて眠り、騒がしかった巣からは寝息だけが聞こえるようになった。 数日が経過したが、巣の中は散々なものだった。 一際大きな箱には後頭部の裂けたまりさの死体が放置されており、 6匹居る子供は全て、ほとんど空間に余裕の無い箱に閉じ込められている。 「ゆっくりいってくるよ」 「……」 既に偽装が外しっぱなしになっている入り口から、親れいむがとぼとぼと出て行く。 子供達は目の前で親まりさを殺した親れいむに一切口を効いてくれなくなり、 代わりにじっとりと恨みのこもった視線を返して来るのみである。 食事だけは窓を開けてもくもくと平らげるが、しあわせー!の一言も無い。 元々母性の強いれいむは、パートナーを失った上で子供まで捨てることが出来ず、 前以上に疲れを感じる狩りの連続に体力だけでなく、希望もすり減らして行く。 幸い子供達は無駄に体力を消耗する遊びすらも出来ない為、 狩りが上手ではないれいむでも食糧難に陥る事は無くなったが、 順調に成長して行く子供達の体は、もう狭い箱の中で余裕が無くなっている。 このままでは子供達がゆっくり出来なくなる。 餡子の中に何か恐ろしい考えがよぎるが、ゆっくりの頭では どのようにして子供がゆっくり出来なくなるのか具体的な想像が出来ず、 れいむは餡子内に広がる焦りを払うようにぶるぶるっと震える。 「ゆ…ゆっくりかえるよ!」 頬に食料を溜めたれいむは、何かに追われるように家路を急ぐのだった。 おわり。 その他の作品。 ゆっくりいじめ系791 ゆっくりと瓶 (fuku2335.txt) ゆっくりいじめ系813 赤ちゃんのお帽子 (fuku2368.txt) ゆっくりいじめ系822 ドスの中身 (fuku2386.txt) ゆっくりいじめ系851 どちらかのお帽子 (fuku2437.txt) ゆっくりいじめ系873 べたべたのお肌 (fuku2467.txt) ゆっくりいじめ系940 三角の頭巾 (fuku2628.txt) ゆっくりいじめ系1026 ゆっくり宅に挨拶 (fuku2789.txt) ゆっくりいじめ系1027 ゆっくりの救急車 (fuku2790.txt) ゆっくりいじめ系1062 甘い言葉 (fuku2852.txt) ゆっくりいじめ小ネタ151 みょん語体 (fuku2670.txt) お帽子の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/514.html
春先。 ゆっくり達にとっては、長く苦しい越冬が終わりを迎え、食料が不足する季節。 何とか食料を確保しようと、森を駆け巡り、畑に侵入し、民家にまで忍び込む。 あるゆっくり一家も、その例に漏れず人間の畑へ忍び込んでいた。 「ゆっくりできるくらい、おやさいさんがいっぱいだよ!!」 「ゆっくりたべようね!!」 「ゆゆ!! これまだちいさいね!!」 「でもおいしーよ!!」 「ここにいっぱいたべものがあってよかったね!!!」 自分達で見つけた食料を、美味しそうに頬張る一家。 畑の真ん中で、ささやかに行われている一家団欒。 無理も無い、冬の間厳しい食事制限があったのだから。 そのためか、荒々しく音を立てながらやってくる人間がいても気付く事はなかった。 「おい貴様ら!! なにやってるんだ!!!」 すなわち、直ぐに人間に見つかったのだ。 それでも、一家は食べる事をやめずに、未だ畑に居座り続けていた。 「ゆゆ!! ここはれいむたちがさきにみつけたんだよ!!! おじさんもゆくりしていってね!!」 「そうだよ!! このゆっくりすぽっとは、まりさたちが……」 「うるせーー!! ここは俺の畑だ!! おまいらが行かなきゃならねぇのは加工場だろうが!!」 ゆっくりなりの理屈を並べ立てる一家だったが、人間に通じる訳も無く、男はお構いなしに一匹のゆっくり魔理沙を踏み潰した。 「ぶぎゃら!!!」 少しだけ甲高い悲鳴を上げて朽ち果てた魔理沙。 その一匹の姉魔理沙が潰されたことが引き金になり、一家は蜘蛛の子を散らすように逃げ去ってゆく。 「ゆ!! ゆっぐりしないでにげるよ!!」 本当ならまだまだ宴会が続くかと思われた時間。 その漆黒の闇の中を、命からがら逃げてきた一家が歩いていた。 「れーむのーー!! れーむのあがじゃんがーーー!!!」 「まりざのあがじゃんがーーー!!!」 この、ゆっくり霊夢と魔理沙夫婦は三十匹もの子供達がいた。 だが、それも先ほどまで。 我先に逃げていった子供魔理沙が一番に捕らえられ、その後は助けようとした姉たちがズルズルと捕まっていった。 「ゆーー!! おねーーじゃーーん!!!」 「もっどゆっくりしちゃかっちゃー!!!」 今残っているのは、つい最近生まれたばかりの赤ちゃんが六匹のみ。 半数の魔理沙に、半数の霊夢。 それと両親を合わせて八匹の家族。 全員が、薄暗い洞穴の中へ入って行く。 そこは、ゆっくり一家のお家だった。 しかし、昨日までは三倍・四倍近くいたゆっくり達の楽しそうな笑い声はもう聞こえない。 シーンと静まり返った音だけが、ゆっくりの家という場違いな場所で響いている。 「ゆーーーーーー……」 お母さん霊夢が声を漏らす。 大抵のゆっくりは直ぐに忘れてしまうが、いきなり大量の子供を失ったこの親はそうはいかなかった。 自分達が見つけた食べ物を人間に略奪されて、その上子供達まで持っていかれた。 しかし、力の無いゆっくりではどうすることも出来ない。 自分達は、人間とは比べ物にならないほど無力な存在だから。 「おかーさんゆっくりげんきだしてね!!!」 「れーむたちがいっぱいゆっくりするからね!!!」 「まりさもゆっくりするよ!!!」 お母さん魔理沙と子供達が一生懸命励ましてくる。 すると、次第にお母さん霊夢の顔も緩んできた。 「うん!! のこっためんなでゆっくりしようね!!!」 「「「「「うん!!! ゆっくりしようね!!!!」」」」」 その晩。 残った一家は何時もより近寄って眠った。 翌朝、まだ朝露が残っているうちから一家は人里に下りていった。 目的は、以前聞いたことのあるゆっくりブリーダーの話。 自分達が人間と一緒にゆっくり出来るように、色々なことを教えてくれる人がいるところ。 ゆっくり達のおぼろげな記憶だが、これだけはしっかり覚えていた。 「れいむたちもゆっくりできるね!!!」 「あそこでいっぱいごはんがたべれるね!!!」 昨日は、暗い気持ちで通ったゆっくり道。 しかし、今日は希望を持って進んでいる。 「ゆ!! れいむ!!! どこかにおでかけ?」 「むっきゅ~?」 ゆっくり道を抜けたとき、目の前に顔見知りのゆっくりアリスとゆっくりパチュリーが近寄ってきた。 どうやら、体の弱いパチュリーが出来るだけ平坦な所に家を移していたらしい。 「うん!! あのね!! あのね!!」 霊夢と魔理沙が、まるで漫才の掛け合いのように二匹に説明する。 昨日、忍び込んだ所で人間に追い掛け回された事、家族を沢山失った事。 そして、ゆっくりブリーダーの事。 全てを話し終わると、真剣に聞いていた二匹が自分たちも付いて行くと言い放った。 「とかいはのありすは、もっときょうようをみにつけたいよ!!!」 「むっきゅ~♪ ぱちゅりーももっといろんなことをしりたいよ!!!」 人間に襲われないように、と言う本来の趣旨とは外れているが、この二匹もそれぞれ思う所があったようだ。 「うん!! ありすもぱちゅりーもゆっくりしようね!!!」 「まりさと、れいむとこどもたちといっしょにぶりーだーのところにいこうね!!」 仲間が増えて、喜ぶ一家。 昨日減った分には及ばないが、馬鹿煩いアリスと、馬鹿へ理屈をかますパチュリーが加わった事で一家の笑顔も柔らかくなっていった。 「それじゃあ!! みんなでゆっくりぶーりだーのおうちにいこうね!!!」 「「「ゆっくりいこうね!!!」」」 出発するその集団を見つめていた大きな花。 まさに、その集団の賑やかさを象徴するような花だった。 だが生憎と、その花はポッキリと折れてしまっていたが…… ―― 言葉どおり、ゆっくりブリーダーの家へ到着したのは、お昼を回ろうかとした時であった。 「ゆっくりついたよ!!!」 「ここでれーみゅたちゆっくりできるんだね!!!」 「うん!! まりさについてきてね!!!」 そういうや否や、隙間を見つけ勢いよく中へと飛び込んでゆく魔理沙。 残されたゆっくり達も、一呼吸おいて中へ入ってゆく。 「ゆゆ!! ひろいおうちだね!!!」 「うわさどおりだね!! ここならゆっくりできるね!!!」 「「「ゆっくりできるね!!!」」」 「おや。どこからはいってきたのかな?」 ゆっくり達の背後。 家の中から優しそうな声が響いた。 ゆっくり達が顔を向けると、そこにはニコニコとこちらに微笑んでいる一人の男。 「ゆゆ!! れーむたちねぶりーだーのひとにあいにきたの!!!」 「まりさたちゆっくりしたいからここにきたの!!!」 「「「おじしゃん!! ゆっくりしゃせてね!!!」」」 「ああ。そうか。うん、ここで過ごしたゆっくりは皆ゆっくりしてるよ」 帰ってきたのは、希望通りの返事。 それを聞いて一団の顔がニッコリ緩む。 「でも、君達は少し勘違いしてるみたいだね」 「ゆ~? かんちがい?」 この人間はきちんとゆっくり出来ると言ってくれたのに、何処に間違いがあるのだろうか。 どのゆっくりもそんな顔をしていた。 それに気付いたのか、男はゆっくりとした口調で説明し始める。 「そう。ここはね、ゆっくりたちが人間達に襲われないようにするために、色々と教えているところなんだよ」 「ゆゆ!! じゃあ、さっさとまりさたちにおしえてね!!!」 「とかいはのありすがわざわざきたんだから、さっさとおしえてね!!!」 「むっきゅー!!! ぱちゅりーはすぐにおしえてほしいの!!!」 三匹のゆっくりが男を急かす。 しかし、男は一瞬苦笑を浮かべると、直ぐに元の笑顔に戻って話を続けた。 「そんなに直ぐには教えられないよ。前のゆっくり達も数ヶ月掛かってゆっくりできる様になったんだから」 「そんなことないよ!!! きっとそのゆっくりたちはばかだったんだよ!! まりさたちはすぐにおぼえられるよ!!!」 「そうだよ!! れーむたちにかかればすぐだよ!!!」 聞く人が聞いたら一瞬で美味しい餡ペーストが完成しそうな台詞だが、男は慣れているようで微笑みながら話を続ける。 「じゃあね。 1.人間のお家に勝手に入らない。 2.もし、人間のお家に入りたかったらきちんと挨拶をする。 3.言葉遣いにも気をつける。 4.中に入っても人のお家を荒らさない。 5.勝手に自分の家と言ったりしない。 6.食べ物を貰った時はきちんとお礼を言う。 7.決して横柄な態度で催促はしない。 8.ここで言う言葉遣いは、丁寧語、謙譲語、尊敬語をきちんと使い分け、なお且つその場において適切な言葉遣いを話す。 9.人間の作った畑と自然に群生している野菜との区別をつける。 10.その際、人間の作っている畑だったら勝手に食べない。 11.もし、食べたかったら頼んでみるなり、お手伝いするなりして分けてもらう。 12.その場合も言葉遣いに気をつける。 13.モノを食べる時は綺麗に行儀よく食べる。 14.にんげんのお家に住めるようになったからといって勝手に子供は作らない。 15.人間の話も、他のゆっくりの話も最後までキチンと聞いて理解する、間違っても自分の勝手な考えを押し付けない。 と、簡単な所はこれくらいだね」 「ゆ? れーむたちはじぶんのおーちしかはいってないよ?」 「とかいはのありすはことばづかいもきれいだし、しょくじのまなーもただしいよ?」 「ここまでは分かったみたいだね。じゃあ今からきちんと覚えたかどうかテストをするから、覚えていなかったらゆっくりできないよ! まずは……きみから」 男は、ワザと一番頭の良さそうなゆっくりパチュリーを指名する。 指名されたパチュリーは、暫く考えた後に、何か閃いたように元気よく答えた。 「むっきゅー!! む~、もし……人間の横柄な態度の催促だったら勝手に行儀よくたべる!!」 「残念。全然違うよ。このままじゃゆっくりできないね。ここから出たら直ぐに人間に捕まって加工場に連れて行かれるか、その場で食べられちゃうよ?」 予想通り、といった感じで、男はつらつらと文句を並べていく。 「ゆ!!」 まさに、青菜に塩、馬鹿に加工場。 一瞬で自信満々だったパチュリーの顔が青ざめり。 頭がいいことで通っているパチュリーが間違えた事で、周りのゆっくり達も動揺を隠しきれない。 「かごーじょーはいやだよ!!! ゆっくりできないよ!!!」 「まりざもいやーー!!! おじざんたづげてーーー!!!!」 「あれあれ? 君達はさっきこんなの簡単だよって言ってなかったけ?」 ワザとらしく、先ほどとは違う種類の笑みを浮かべながら、ゆっくり達に聞き返す。 「とかいはのありすでもおぼえられないよーー!!!」 「むっきゅ~~~~~~……」 「それじゃあ、ここできちんとゆっくりできるように頑張るかい?」 飴と鞭を巧みに使い分け、ゆっくり達をコントロールする。 その手際の良さは、流石ブリーダーといった所だろう。 「取り合えず。お昼は何も食べてないだろ? ご飯にしよう」 「!!! うん!! ゆっくりたべるよ!!!!」 「おじさん!! はやくまりさと、みんなのぶんもってきてね!!!」 「はいはい。っとそうだ、君達は何処から入って来たのかな?」 室内に向けた体を外に戻して、ゆっくり達に尋ねる。 対するゆっくり達はご飯を急かす。 「ゆゆ!! そんなことよりごはんをはやくもってきてね!!!」 「だめだよ! きちんと説明しないと。それとも、お外でゆっくりしようか?」 「ゆ!! おじさん!! おそとはだめだよ!! ゆっくりできないよ!!」 「じゃあ、どうやって入ってきたかおじさんに教えてくれるかな?」 「かんたんだよ!! あのすきまからはいってきたんだよ!!!」 胸を張って魔理沙が答える。 このゆっくり魔理沙は、早速人のご機嫌を取ろうとしているようだ。 「そうか。じゃあ君はご飯は半分だけだね」 「ゆ!! どーして? まりさはきちんとなかにはいれたよ!!!」 「うん。でもね、人間のお家に入るときは玄関で、今日はって言わないといけないんだよ。君達もお友達のお家に入るときに挨拶するだろ?」 「うん!! ありすのおーちはとってもおおきくてとかいはのおーちだし、ぱちゅりーは……」 「うん。わかった、わかったよ。ともかく、人間のお家でも挨拶をしないとだめなんだ。しかも、勝手に他の場所から入る事もいけないんだよ。わかったかい?」 「ゆ~~~。うん、げんかんでごあいさつすればいいんだね!!!」 「そう、挨拶の仕方は後で教えるよ。……それじゃあ、きちんと理解できたからご飯は一人前食べさせてあげるよ」 「ゆゆ!! おじさんありがとう!!!」 既に太陽は西に動いていたが、ゆっくり達はようやく昼食を取ることができた。 「よし! じゃあこれからゆっくりできる様に君達に教えていくよ!!」 舐めたように綺麗にした食器を見て、男はゆっくり達に声をかける。 何匹か、ゆっくりお昼寝するといったゆっくりがいたが、お外に連れて行くと言うときちんとおじさんの元へついてきた。 そしてその日は、基本的なことをゆっくり達に教えていった。 人間のお家に勝手に入る事、畑、仕草その他もろもろ。 勿論、一日で覚えることができたら苦労はしない。 インコに言葉を教えるように、何日も何日も同じ説明を繰り返す。 ゆっくり達も覚えるペースは遅いが、キチンと一個一個覚えていく。 畑の事を覚えた時、ゆっくり霊夢と魔理沙は自分達のやった事を理解して号泣した。 子供達が泣きながら励ましたが、それでもなかなか泣き止まない。 やがてもらい泣きした男が、泣き出しながら二匹を抱きしめた所で二匹の後悔のメロディーは止んだ。 そんな事が多々あったが、田植えが始まる頃になると、個人差はあるが最低限の事は理解できるようになった。 「きょうからはすこし外にでてみよう」 これ位なら外に出しても大丈夫。 男は長年の経験から判断して、野外学習に切り替えた。 「ゆゆ!! おじさんれいむたちおそとにでてもだいじょうぶ?」 「みんにゃでゆっくりできるにょ?」 知識が付くにつれ、ゆっくり達も自分達がどのように見られているのか理解できた。 そんな自分達が人間の多い所をうろついて大丈夫なのだろうか? 「大丈夫! おじさんといっしょだし。 君達はそこら辺のゆっくりよりはきちんとしているから」 背中を押してやる。 元々好奇心旺盛なゆっくりは、暫く迷っていたがおじさんと一緒なら安心だと言うことで外に出ることにした。 「ゆゆ!! おそとひさしぶり!!!」 「おかーさん、こっちでゆっくりしようね!!!」 「ゆゆ!! はなれちゃだめだよ!! まりさについてきてね!!!」 久々の外の世界を見たゆっくり達は、出る前の不安な気持ちを一気に脱ぎしててはしゃぎ出す。 「おーい! こっちこっち。さぁついておいで」 「ゆゆ!! ぴくにっくだね!! とかいてきだね!!」 「むっきゅ~♪ これくらいならぱちゅりーもついていけるよ!!!」 パチュリーのペースに合わせる様に男が向かったのは自分の田んぼ。 田植えを終えたばかりのその田園はどこと無く、奇妙な違和感がある。 「ゆ? おじしゃんこれなに?」 「これなーに?」 一番に好奇心旺盛な子供達が尋ねる。 「これはお米の子供だよ。ここから大きく育つと、おいしいごはんがとれるんだ」 「ゆ!! おこめ!! おじさん!! これみんなおこめになるの!!!」 「むっきゅ!! むきゅきゅ!!!」 一番の食欲の霊夢とパチュリーが興奮気味に尋ねる。 「そうさ。そこで、君達にお仕事がある」 「ゆ? おしごと? まりさたちに?」 「ゆゆ!! アリスはとかいはだからおしごとがんばるよ」 残った金髪饅頭組みが答える。 「ああ。この田んぼの中に、虫がいると育たないから虫を食べて欲しいんだ」 「ゆ? おむしさんがいるとだめなの?」 「ああ。むしは稲にとって害虫なんだよ。害虫はこの前教えたよね?」 「むきゅ!! お野菜とかをダメにするむしさんだよ!!」 パチュリーが勢いよく答える。 以前、全く覚えられなかったのを悔やんで沢山勉強していたのだ。 「そう。それで、君たちがキチンと働いてお米が取れれば、他の人間も君達をゆっくりさせてくれるよ」 「うん!! かんたんだよ!! れーむたちはむしさんもごちそうだもん!!」 「がいちゅーさんのむしさんは、まりさたちにまかせてね!!!」 そう言いながら、皆次々に田んぼの中へ飛び込んでゆく。 ためらうかと思ったアリスもすんなり入っていった。 「ゆゆ!! どろはとってもせいけつなんだよ!! とかいはのありすはにんげんともゆっくりしたいよ!!!」 唯の孤独感と虚栄心に裏打ちされた結果だった。 しかし、都会派都会派煩いアリスが、こうして自ら汚れてまで他の人の為にするというのはなかなかの進歩である。 粗方虫を飛べつくすと、男の合図でこの日の野外学習は終わった。 「みんなキチンと働いて偉いよ!! 収穫の時まで頑張ろうね。そうすれば、皆も人間とゆっくりできるよ!!!」 「「「「!!!!」」」」 ゆっくりできる。 遠いが、確実に見えたその目標はゆっくり達にとって大きかった。 人間達とゆっくりできるようになれる。 もう、掴まって食べられたりすることも無くなる。 ゆっくり達はおじさんから、ブリーダーに育てられたゆっくりは街のかなでお手伝いをしながら住んでいる、中には人間に飼われているゆっくりもいる、と言う話をよく聞かされた。 今までは、半ば絵空事の様に聞いていたが今では確実な目標として存在している。 その事が、ゆっくり達には嬉しかったのだ。 「それじゃあ、かえって体を洗ったらまたお勉強だよ」 「「「「うん!!!! ゆっくりできるようにおべんきょうするよ!!!」」」」 ―― 稲もよく育ち、見慣れた田んぼが現れ始め、夏がやってきた。 この頃には、男が熱心に教えた甲斐があり、多少たどたどしいがそれなりに挨拶ができるようになっていた。 「こんにちは。ゆっくりさせてくださーね!!」 「いらしゃい!! おじさんのおーちによこそ!!」 近頃は、お互いのお家に来たという設定でゆっくり自ら勉強している。 普段は飽きっぽい性格だが、自らがずっとゆっくりできる為に必死になっているのだ。 しかし、その晩ちょっとした事件が起こった。 みんなで食事を取っている時に、ゆっくりアリスの大群が押し寄せてきたのだ。 「まままままりざーーー!!!!」 「れーーーむうーーーーーー!!!!」 「ありすはみんなだいすきだよーーーー!!!!!」 集団はそう言って、一番身近にいたゆっくりパチュリーに襲い掛かる。 「むきゅーーー!!! だずげてーーー!!!」 「ぱちゅりーー!!! ありすやめてね!! みんなをはなしてね!!!」 「れいむ!!! まりさ!!! ありすもいるーーー!!!」 「みんなだいすきだよーーー!!!!!」」」」」 涎をダラダラ出しながら、一気に迫ってゆく洋菓子軍団。 しかし、今は食事中であった。 なので当然、男もここにいた。 「おい洋菓子饅頭!!」 「すすす、すっきr――んびゃ!!」 近くに来たアリスを一匹捕まえて、籠に放り込む。 その後も、必死になって交尾をしようとするアリス達を片っ端から籠に突っ込んでゆく。 時間にして僅か15秒、捕まえたゆっくりアリスは15匹。 「ゆゆ!! おじさん!! とかいはのありすたちをどーするつもり!!」 「はやくそのこたちのこどもをつくらせてね!!!」 散々わめき散らすアリス達をそのまま外に連れて行く男。 「君達はここでは教育できないね。明日になったら、加工場よりもゆっくりできる所に連れて行ってあげるからね!!」 「!! かこーじょーわやだよ!! とかいはのありすたちはいいゆっくりだよ!!!」 「おじさんたすけてね!! いまならみんなおじさんのるーむめーとになってあげるよ!!!」 叫び声は一段と大きくなったが、男は気にせず家の中へ戻っていった。 翌日から、そのアリス達はクレープ作りに従事することとなった。 「ぱちゅりー!! ゆっくりできる? ゆっくりしてね!!!」 中では、一番酷くやられたパチュリーを囲むように他のゆっくりが心配そうに眺めていた。 「むっきゅ、ゆっくり、できるよ!」 息は荒いが、心配はない。 男がそう伝えると、お祭りのように騒ぎ出すゆっくり達。 その中の、お母さん魔理沙を見つけた男は頭を撫でながら声をかけた。 「えらいな! 真っ先にパチュリーの元へ駆けつけて!」 「ゆゆ!! とうぜんだよ!! おともだちがゆっくりできてなかったもん!!! まりさはもうにげないよ!! こどもたちもおともだちもまもるよ!!!」 さも当然、と言うように魔理沙は言ってのけた。 直後に霊夢が魔理沙を呼んだので、直ぐにそっちに行ってしまったが、大抵我先に逃げる魔理沙が自分から向かって行ったのだ。 これは、ブリーダーだったならば、誰しも涙を流して喜ぶ瞬間だった筈だ。 男も、急いで台所へと足を運ぶ。 「よし! きょうはパチュリーが元気になるお祝いにしよう!!」 台所から、沢山のお菓子を持ってきた男が宣言すると、ゆっくり達も元気よく賛成した。 「「「「うん!!! ぱちゅりーはやくげんきになってね!!!」」」」 「むきゅ~♪ げんきになるよ!!!」 蒸し暑い、よどんだ空気も吹き飛ばすくらい、賑やかで晴れやかな夜となった。 ―― 稲が黄金色に輝き、水田の水も抜けきった。 この頃には小さかった赤ちゃんゆっくりも、体はまだ小さいが赤ちゃん口調は抜けてきた。 この日、ゆっくり達は男に連れられて近所の家へ出かけた。 ゆっくりできるかテストだよ。 男にそう言われたゆっくり達は日頃の成果を存分に発揮した。 「こんにちは!! ゆっくりさせてもらえますか!!!」 これはお家に入るときの挨拶。 「おじゃまします!!」 中に入れてもらえるときの挨拶。 「いただきます!!」 モノを貰って食べるときの挨拶。 「むしゃむしゃ」 食べるときは、食べ溢さずにキチンと口の中に入れる。 「おいしかったです!!」 食べ終わった後に言う台詞。 「さようなら!! またゆっくりさせてください!!」 お家を出て行くときの挨拶。 それを終えると、男と、その家の家族から拍手が送られた。 「うん。合格。後は明日収穫予定の米のでき次第だよ!!」 「いやー。一家全員で楽しみにして待ってるよ! ゆっくりがんばってね!!!」 「「「ゆっくりがんばるよ!!!」」」 おじさんだけではなく、始めて会った人間からも褒められたことがゆっくり達には嬉しかった。 そして、合格と言ってくれた事も。 その日、ゆっくり達は興奮してなかなか寝付けなかったが、明日の為に随分早い時間から床に入ったので、結果的に睡眠は十分取れた。 そして、今日は待ちに待った収穫の日。 この日の為に毎日泥だらけになりながらもキチンと仕事を続けたゆっくり達には特別な日である。 「ほら、良い稲だ!! この束をあっちにはこんでくれ!」 「うん!! いっぱいなってるね!! ゆっくりすぐにはこぶよ!!!」 自分達がキチンと働いた田んぼからちゃんとお米が取れれば、人間達とゆっくりできる。 「んーしょ! んーしょ!! ふう~」 言われた場所に稲を運び終わったゆっくり霊夢は、他のゆっくりに聞こえるような声で叫んだ。 「みんなみて!!! れいむたちがおてつだいしたおこめがちゃんとできてるよ!!!」 「ゆ!! ほんとうだ!!!」 「やったねおかーさん!!!」 「これでみんなゆっくりできるね!!!」 大きく育った子供達も、パチュリーもアリスも、その成功が意味する事を知っている。 だからこそここまで嬉しくなるのだ。 今まで苦労して、人間とゆっくりするためにこの日まで頑張ってきたのだ。 「おーい!! よろこぶのもいいけど、こっちもてつだってくれ!!」 沢山の稲を抱えて佇む男。 その元へ慌てて皆で駆け寄っていくゆっくり達。 その顔はいつか見た花のように燦々と輝いていた。 「「「「おじさん!! いまゆっくりいくよ!!!!」」」」 その夜。 昇り始めた月には、はっきりとウサギの陰が映っているが、この家の住人だけはそんな事は関係なかった。 「ゆっゆ♪ まりさおいしようだね!!!」 目の前には、 「ゆ~♪ れいむもがんばったもんね!!!」 このひまで、 「「「おかーさんがんばったよ」」」 泥だらけになりながら、 「「「れーむたちもがんばったもんね♪」」」 がんばってお手伝いした、 「やっぱり、とかいはのありすはしんまいがにあってるね!!!」 田んぼの新米が、 「むっきゅ~~~♪」 大きなたらい入って湯気を立てていた。 まさに銀シャリと言うに相応しいその米の輝きは、ゆっくり達がゆっくりできるように頑張った苦労を称えているかのようであった。 「おめでとう。君達は随分礼儀正しくなったよ!! これならもうだいじょうぶ!! 明日からは、このお家を出て、この街でゆっくりくらせるよ!!!」 そう言う男の目に涙が流れている。 余程この日が待ち遠しかったのだろう、嗚咽交じりになりながらゆっくり一匹一匹に声をかけていく。 「おじさん!! なかないでね!! 時々遊びにくるから!!」 「うん!! げんかんからこんにちはしてはいってくるよ!!」 「とかいはのありすは、おてつだいしてもらったたべものをもってくるよ!!!」 「むっきゅ~!! ぱちゅりーもおはなしいっぱいおぼえてあそびにくるよ!!!」 一匹一匹、男の事を心から心配して、時々遊びに来ると口々に男に話す。 まるで、小さい頃から育て上げた娘が嫁いでゆく時のようだ。 おそらく、以前のゆっくり達を育てたときもこのようなやり取りがあったのだろう。 「……ああ。いつでもおいで!! ゆっくりまってるよ!!!」 「「「ゆっくりまっててね!!!」」」 その後に訪れる笑い声。 長く過ごした、ゆっくりと男だけが知っている笑いだった。 「よし、ごはんが冷めるからさっさと準備しようか?」 「うん!! じゅんびてつだうよ!!!」 「よしよし。でもその前に、苦労して作ったご飯をちょっとつまんでみな!」 そう言って、たらいのご飯を少量紙皿に移した男はゆっくりの前にそれをおいた。 口の周りに付かないように注意しながら食べて言うゆっくり。 「おいしい!! おじさんこれすっごくおいしいよ!!」 「そりゃあ、君たちが苦労してお手伝いした田んぼだもんな!」 「むしゃむしゃ……。おいしーね!!」 「ねーー!!」 どうやら、今年の米も上々のようだ。 つまむ程度なので、決して多い量では無いがゆっくり達は文句も言わず笑顔で食べ終えた。 少々もち米が混ざっているようで少しべたつきがある。 これも、今夜のメニューに必要なものなのだろう。 「おいしかったよ!! はやくおりょうりつくろうね!!」 そう、今は料理の途中だったのだ。 以前は食欲だけが先走っていた霊夢もキチンと我慢することができるようになっていた。 今日の献立は聞かされていない、しかしきっと最後の食事は豪華なものになるのだろう。 「うん。ところで皆前に話した害虫のお話は覚えてる?」 「むっきゅ!! かってに野菜とかを食べちゃうむしさんのことだよ!!!」 パチュリーが元気よく答えると、周りからも似たような答えが返ってきた。 「うん。きちんと覚えていたね! それじゃあお料理を初めようか?」 それだけ言って、男は今晩の夕食作りに取り掛かる。 「とかいはのありすはしってるよ!! こういうときはでなーっていうんだよ!!」 「ありすはものしりだね!! ……ゆ?!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!!!」 突然、この家からは聞こえるはずの無い声が響いた。 それは、よく加工場や紅魔館から聞こえる声。 「れ!! れいむのこどもがーーー!!!」 そう、つまりはゆっくりの叫び声。 対象は子供霊夢だった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー!! お、おじさん!!!! どうじてーーー!!!!」 既に瀕死の重症を負った子供霊夢は、残った力を振り絞って男に尋ねる。 きっと、何かわけがあるはずだと考えて。 「だって………………から」 「ゆ! ゆっくりじだがっだーーー!!!!!! ……」 そして、何時も通り男から何か理由をを聞かされると、そのまま息絶えた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!! れーむのこどもがーーーーー!!!」 「まりざのこどもがーーー!! おじさん!! どうしてこんなごとするの゛ーーー!!!」 二匹目のゆっくり、子供魔理沙を引きちぎっている男に詰め寄る二匹。 「どうじだの!!! わるいものでもたべたの?!!!」 「それども、そのごだじはゆっくりできないの?!!!」 生き残った自分の子供達を失ったことで親はかなリ動転している。 「そんなこと無いよ。この子は皆と同じだよ!」 子供魔理沙の餡子をたらいの中へ移した後に、ゆっくり達に向き直って男は微笑んだ。 「だったらなんで!! なんでれーむのあがじゃんを……」 「なんで? だって君達は害虫だよ。勝手に畑を荒らすし、人の家も荒らす。唯の害虫の方がまだましだよ。生憎と、 害虫はキチンと教育しても害虫だからね。キチンと処分しないとね」 場が凍った。 湯気を上げ続けるたらいだけが、この異常な場から抜け出している。 「ゆ? おじさん!! れーむたちはぶりーだーのおじさんのところでがんばったよ!! ゆっくりできるんでしょ!!!」 「そうだよ!! まりさたちはがんばったよ!! おじさん、これもおべんきょうなんでしょ!! こどもたちもほかのばしょにいるんでしょ?」 「……」 その問いかけに答えずに男は四匹の子供ゆっくりを掴んで。 「ゆゆ!! おじさん! ゆっくりさせてよ!!」 「ゆっくりできるんだよね!!」 「……」 「「「「ゆっびちゃ!!!! ……」」」」 力を込めて、凍った場を一気に溶かす。 溶かすと言うよりも砕くといったほうが良いのかもしれないが……。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……れーむのこどもが……」 「まりさの……まりさのかわいいこどもが……」 呆然と桶の中を眺める二匹。 その横では、パチュリーが引きちぎられようとしているが、この二匹は助ける元気が残されていなかった。 ただ、呆然と見つめているだけだ。 「むっきゅ!! おじさんはさいしゅうしんさをしてるんだよね?!! ぱちゅりーはゆっくりしたいよ!!!」 「良いとも。いったろ? ここで過ごしたゆっくりは皆ゆっくりしてるよって。君もずっとゆっくりできるよ。ほら、今処分してあげるから」 「いだ!! いだいよーーー!!! ゆっぐりざぜてーーー!!!!」 暫く力いっぱい千切ろうとしたが、子供のようにはいかないようで包丁を取り出して頭の上を切りとる。 「はぁはぁ……!! むきゅ? ぼーじ!!! ぼーじがえして!! あ!! あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー!!!」 間髪いれず、しゃもじで中の餡子を掻き出していく。 「むっきゅ!! ごめんなざい!! おじさん!! ゆる!! じで!!! ……」 男は、大量の餡子を桶の中へ移し、饅頭の皮はゴミ箱に捨てた。 「さてと、次はこっちを先に料理するか」 男が向かったのは、呆然としている二匹ではなく、ゆっくりアリスだった。 「ゆゆ!! おにーさん!! ありすはとかいはだからきちんとゆっくりできるよ!!! だからもうさよならするよ!!!」 慌てながら、出口に向かっていこうとするアリス。 それを逃がすはずも無く、男は捕まえたそれをまな板の上へと運んだ。 「お、おじさん!! ありすはとかいだがr……」 「関係ないよ。君達は害虫だって言ったろ? 特にお前は、はつかねずみ以上に性質が悪い害虫だよ。かってに害虫の数を増やしちゃうしね」 「ゆ? ちがうよーーー!! ありずはがいじゅうじゃないよーーー!!!」 沸騰したお湯の中へ袋ごとカスタードを入れる、そのままだと固まっているので調理し辛いのだ。 「あづいーー!!! おじざんあづいよーー!!! だじでーーー!!!」 全体に熱が伝わるように、時々かき混ぜる。 袋の開口部を下にすると、騒音も気にならない。 「ぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!!!」 暫く経ったらお湯の中から取り出す。 「おじざん!! ありずはどがいはじゃないですーー!!! しゅーだんしゅーしょくでじだんでずーーー!!!!!」 額に大きな穴を開け絞り出す、このとき中のカスタードは熱いので注意が必要である。 「あがっががあああああーーーー!!!!!!」 取り出し終えた袋をゴミ箱へ捨てる。 どうやら、これはクレープに使うようだ。 「よし、こっちも仕上げだ」 「……ゆ~?」 「……おじ……さん?」 未だ呆然としている二匹の前に近づく男。 それを見て二匹はここ数ヶ月のことを思い出した。 勝手に人間の畑を荒らして子供達が沢山いなくなった。 そして、残った家族でゆっくりしようとブリーダーのお家へ向かった。 初めは大変だったけど、一緒に来たアリスやパチュリーと一緒に頑張った。 色々覚えた頃、初めてお外に行った。 そこで、人間の田んぼを手伝った。 これが上手くいけばゆっくりできると思ったから一生懸命頑張った。 アリスが大勢着たときも、逃げずにパチュリーを守った。 以前の子供たちのように失いたくなかったから。 テストもキチンとできた。 その後、キチンとご飯ができた。 それを、おじさんが食べれるようにしてくれた。 がんばったご飯は美味しかった。 これでおじさんのお家から、街へ出てゆっくりできる。 その筈だった。 「いいかい? よーくきいてね!!」 男は、今までゆっくり達にモノを教えているときと同じ口調で話し始める。 「おじさんはゆっくりブリーダーです。でもキチンと勉強したゆっくりを、おじさんはお外に出しません。田んぼを手伝って美味しいご飯ができたら お外に行けると言ったのも本当です。でもおじさんはお外には出しません。それは、キチンと自分の事を理解した害虫が、最後に害虫として死んでゆ く時の絶望した顔を見るのが好きだからです。そして、私はまだ二十台なのでおにーさんです」 「ゆー。れーむはゆっくりできるの? ちゃんとごはんもできたよ?」 「まりさも、ちゃんとごはんつくるのてつだえたよ。にんげんとゆっくりしたいよ!」 幾分、表情が元に戻ってきた二匹は、再度男に尋ねた。 今まで、頑張ってこれたのは人間とゆっくりしたかったから。 「できません。君達は害虫だから。害虫は害虫らしくゆっくり死んでね!!!」 ゆっくり達の答えも聞かず、餡子の袋の上部を切ってゆく。 「ゆーー!!! いだいよ!! おじざんれいむだぢをゆっぐりざぜてーー!!!!」 「まりざたちはゆっぐりじたいよーー!!!」 そのまま、餡子の袋から餡子を取り出す。 「あっががあああ!! やめでぇーー!!! れーむのながみだざないでーーー!!!!!」 「まりざのあんごがーーー!!! おじざん!! もどしで!!! もどしでね!!!」 そういっている間にも、ドンドン餡子の量は減ってゆく。 「「…………ゆ!!」」 絶望し途切れそうになる意識の中で、二匹は自分達を呼んでいる声を聞いた。 「おかーーしゃーーん」 「ゆっくりしよーーね!!」 「「……こどもたちだ……」」 それは、失った子供達の姿。 「むっきゅーー!!」 「とかいはのありすはじかんにるーずなの!!!」 「「ありす……ぱちゅりー……」」 そして、今まで苦楽を共にした友人だった。 「「っ!!!」」 まっていまいくよ!! そこ言葉を、まさに発しようとした時だった。 「畜生に神はいないよ♪」 「「……ゆっぐりぎだがった!!!」」 忽然と、周りからゆっくり達の姿は消えた。 そして、最後の最後で完全に絶望した餡子袋も、ゴミ箱に捨てられた。 今日の男の食事はおはぎとクレープ。 しかし、一つだけ違うことがある。 それは、おはぎを多く作った事。 理由は簡単だ。 米を無事収穫できたお祝いに、近所の人へおはぎを配るためだ。 月が綺麗に夜空に舞う頃、おはぎを配り終えた男は、何時ものように一人だけの食事を取って床についた。 ―― 一面、白い雪化粧で覆われる冬。 田んぼは子供達の格好の遊び場になる。 食事を支えるこの土地は、この間は子供が笑顔で過ごせるように、沢山の雪を蓄えた。 ―― それが、土に帰る春。 村では野菜や稲の準備が始まる。 それは、同時に男の仕事始めでもある。 「おや? 君達は何処から入ってきたのかな?」 その日も男はペット一匹居ない家で一人で食事を取る。 田んぼはまだ何もない。 ただ、これからお世話をするであろうモノ、その餡子の様に黒い土に覆われているだけだ。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4907.html
※前作 ゆっくりが実る木 の続きです ※前作を読まなかった人でもわかるよう前回のあらすじっぽいのが置いてあります ※お兄さんが悪夢にうなされます ※変態ネタがあります。 ※何度も似たような夢を見ます ※パロディがあります 「ゆっくりから生えるゆっくりが実る木 夢編」 男は長い夢を見ていた。 それはゆっくりが実る木の種をもらい。 軽い気持ちで育てたら成長が異常なほどに早く、実としてゆっくりがはえてきた。 そしてたくさんゆっくりが集まったところで友達に売り飛ばす自分の姿も確認できた。 しかし木の実を見ているとゆゆこやらんなどの希少種も生えてきたが きめぇ丸が生まれると同時に木が朽ちるというものだった。 その夢を見てから同じような夢しか見なくなった。 「ハッ・・・また同じ夢を見るようになっちまった。」 『また』だ。 あの日以来。(あの日は夢オチだったけど) ゆっくり関連の夢しか見てない。 「あの木以外の夢なんて見れるか? ゆっくり関連の夢しか見てないんだ。 いけると思う。」 やってみる価値は十分ある。 とりあえず目をつぶりあの木以外のことを思いながら眠りにつく。 あたりの景色が真っ白だ。 うまくいったか? そう思いあたりを見渡すと 何か変な物体を見つけた。 すると俺を見るなりその物体は 「くろまくー」 としゃべり俺に乗りかかった! (がばっ) 「あぎゃあああああああああああああああっ!! はー・・・はー」 やっぱりゆっくり関係だったがあの木以外の夢はどうやらBAD ENDな方向にで進んでいたようだ。 「あやうくれてぃに殺されるところだった・・・」 もう1時、早く寝ないと明日に響きそうなので眠ることにする。 寝てみるとまたあたり景色が真っ白になった。 またかよ。と思いあたりを見渡す。 俺はさぁ、れてぃでも何でもこい!そう思ったお兄さんが見たのは肌色のぷにぷにしたもの 上を見てみると 「こーぼーねー」と叫ぶ巨大ゆゆこがいた。 そしてゆゆこは口を大きく開け、吸い込みを始める! (がばっ) 「ふぎゃあああああああああああああああああ!!ま、またかよ!」 なんだかんだ言ってあの夢以外は最終的に俺が死ぬということはよくわかった。 「てか、ゆゆこに殺されるなら本望だけどね!」 と変態じみたような言葉を発するとまた眠りについた。 また景色が真っ白に(ry で目の前にいたのは発情したでかいありす。 「にんげんさんにもありすたちのあいをあげるわあ・・・」 とあごの下から出てきたのは・・・そう、ぺにぺにだ。 「しこってもいいのよぉぉぉ・・・」 といいぺにぺにをを少しずつ俺に近づけ・・・ 「すっきりしましょぉぉぉぉぉぉぉ・・・」 「アッー」 (がばっ) 「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!! 何だよこれ!次は変態ネタかよ!」 変態はこいつなのだがついにレイパーの夢まで見るようになってしまった。 まずゆっくりできない夢から開放されるために 何も考えずに寝てみよう!そう考えた俺は 「なぜこんな単純なことに気づかなかったんだ?」と思い眠りについた。 また景色が(ry 「・・・え?」 何でこうなるのおおおおおおおおと思う俺の目の前に現れたのは 超巨大なドス そしてドスは口からエネルギーをため、俺にドススパークを発射した! それをもろに受けた俺は跡形も無く消滅した。 「ふぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!! って・・・なにこれ・・・」 時計を見ると2時をさしていた。 「こ・・・これで一時間か!?」 おちつけ、これも夢かもしれない。 なら寝る以外、手段は無い 顔をひっぱたいて夢じゃないと判断すれば眠りにくくなる。 だから寝るしかない。明日に備え。 しかし、夢は容赦なく男を襲った。 あるときは巨大ちるのが現れ くしゃみをして俺を凍らし。 またあるときは巨大らんが現れ 米鉄砲を俺に向けて撃つということも またあるときは巨大れみりゃが現れ 俺の血を吸ってゆき。 またあるときは巨大ふらんが現れ 俺をひたすら殴りまくり。 またあるときは巨大なうどんげが現れ 俺をあざ笑う。 またあるときは巨大おりんが現れ その僕であるゆっくりゾンビが俺に襲い掛かる。 ぶっ倒れる俺。 そしてそこに浮かぶ文字が 「You Are ○○○○」 (がばっ) 「ってバイ○かよ! というより何突っ込んでんだ?俺 あ、そうだ。時計時計・・・」 拾い上げ時計を見ると7時をさしていた。 「ええええええ!?」 「あ、そうか今日日曜だったな・・・」 ほっと一息つきまた眠りにつこうとする。 すると枕に何か違和感を感じた。 「なにかぽこんとしてるな・・・」 と思い枕を持ち上げてみると・・・! 続く! あとがき ゆっくりが実る木の続きでした。 悪夢にうなされるお兄さん これってありじゃね!?
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1436.html
流れを読まずゆっくり阿求。 途中まで見たら、大体オチがわかる仕様になっております。 ここは永遠亭。机をはさみ、向かい合う永琳と阿求。心なしか、永琳の目には疲れが見える。 「私は考えた。どうすればAQN症候群を治せるのか・・・・。 ゆっちゅりーを育てさせれば、AQN症候群ゆっちゅりーを生み出すし、 東風谷早苗に相談したら、トラウマを植えつけられて神様が怒鳴り込んで来るし、 上白沢慧音に至っては、廃人になりかけて入院中。 そこで永遠亭の総力を結集して作ったのがこれ!」 机の上におかれたのは、1匹のゆっくり。 「あきゅー!」 「これを育てることが、今の貴方にできる善行y」 フォン、グシャ。 皆まで聞かず、阿求はゆっくり阿求にげんのうを振り下ろしていた。 「別に、自分のゆっくりだからといって、いいえ、自分のゆっくりだからこそ、殺し甲斐があると思いませんか?」 断じる阿求。 対するは笑みを浮かべる永琳。 「ふふふ・・・かかったわね」 げんのうの下で、むくむくと蠢く、ゆっくり阿求だった餡子の塊。 それが見る見るうちに、形作り、元のゆっくり阿求となった。 「あやー!」 「これは・・・!」 フォン、ボヨン。 再度げんのうを振り下ろす阿求・・・しかし、げんのうに伝わるのは、先ほどとは全く違う感触だった。 「これぞ、ゆっくり阿求の特性・・『⑨の試練』 ゆっくり阿求は9回殺さなければならない上に、一度食らった攻撃は二度と通じないのよ! ふふ、確認されている限り、鈍器による撲殺、針による刺殺、素手による殴殺・・・それぐらいかしら? 特殊な戦闘能力を持たない貴方には、これ以上ゆっくり阿求を殺し切ることは出来ないわ!!」 勝ち誇る永琳。 それを聞き、阿求は一言だけ呟いた。 「稗田家なめんな」 打潰す饅頭『ナインライブズゲンノウワークス』 背中を見せる程引き絞った特異な構え・・・それより繰り出される一閃九打の絶技によって、ゆっくり阿求はあっさり9回殺された。オーバーキルである。 あまりのショックに永琳は9日間寝込んだ。 月廚?ふぁて?なんのことです? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/271.html
灰色に染まった壁と、鉄格子で区切られた窓。 冷たく、硬い地面。 無機質に区切られた小さな部屋で、1匹のゆっくり霊夢が途方に暮れていた。 「ゆっくりさせて!」 大きさはバスケットボールほどにもなる。 そして頭には、一本の茎が生えていた。 「あかちゃんもゆっくりできないよ!」 心配そうに見上げた茎には、9匹の赤ちゃんゆっくりが実っている。 れいむ種が5匹、まりさ種が4匹。 どれもプチトマトより一回り小さいが、あと数時間もすればぷっくりと実って生れ落ちるだろう。 「まりさ!どこにいるのぉお!?」 何も置かれていない、8畳ほどの部屋。 その部屋の中心でれいむは叫んだ。 茎に実った赤ちゃんに気をつけながら周囲を見渡すが、最愛のゆっくり魔理沙はどこにもいない。 「まりざあ・・・まりざぁ・・・」 赤ちゃんを身ごもっているゆっくりは、パートナーへの依存度が高い。 このれいむも例外でなく、姿の見えない伴侶を求めて身重の体を引きずり這いずり回っていた。 「まりさ・・・にんげんにいじわるされてるのかな・・・まりさ・・・あいたいよ・・・いっしょにゆっくりしたいよ・・・」 れいむはこの部屋に連れてこられた時のことを思い出していた。 それは昨日のこと。 れいむとまりさは森の入り口で日光浴をしていた。 春先とはいえ、まだ寒さの残る日が多い。 あたたかいお日様にあたって赤ちゃんにゆっくりしてほしい、まりさが提案したことだ。 最初、れいむは反対した。 自身の両親は日光浴の最中に人間に捕まったからだ。 それも、茎に命を宿しているときに。 人間達は両親に宿った、妹となるはずの赤ちゃんを皆殺しにした。 巣穴を襲撃され、茎を同じくした姉妹が次々と殺され、一家は崩壊した。 れいむが助かったのは、親のまりさが最後まで諦めずに守ってくれたからだ。 だが結局親まりさは力尽き、残ったのはれいむ1匹となってしまった。 れいむは住み慣れた土地を逃げ出した。 ただ怖かった。 川を越え、野原を越え、山を越え、皮がぼろぼろになりながらもれいむは生き延びた。 時は流れ、あのときの親ゆっくりと同じくらいの大きさにまで成長できた。 だが人間への恐怖心がなくなることはなかった。 かつての両親の姿が頭によぎり、外に出る気が起きなかったのだ。 しかし、赤ちゃんに日光浴をさせてあげたい気持ちもあった。 いつもおいしいご飯を取ってきて、自分をゆっくりさせてくれた親まりさ。 幼い自分を必死で守ってくれた親まりさ。 そんな親まりさを、れいむはずっと尊敬していた。 自分も赤ちゃんだけは何があっても守る、ゆっくりさせてあげると決めていたのだ。 パートナーのまりさは言った。 れいむとあかちゃんはまりさがぜったいにまもるよ、と。 だかられいむはその言葉に甘えることにした。 「ゆっくりしたけっかがこれだよ・・・ゆぅぅぅぅ・・・」 結局、親と同じように人間に捕まってしまった。 まりさは懸命に戦ってくれたが無駄だったのだ。 れいむの前に一人の男が現れた。 右手はまりさの底部を掴み、逆さ吊りにしている。 「ゆっ!おにいさん、まりさをかえしてね!!」 れいむは餡子脳ながらも、その男を覚えていた。 自分とまりさを誘拐した男だということを。 「ほらよ」 ふわりと宙を舞い、まりさは硬い床に落とされた。 「ゆべへっ!」 顔面から落下したまりさに、れいむは擦り寄った。 幸い、餡子は吐いていない。 死ぬことはないだろう。 「まりさ、まりさっ!ゆっくりしよう!ゆっくりしていってね!!」 なかなか顔を上げないまりさ。 れいむは不思議に思い、まりさの体を見回した。 「ゆっ・・・!?」 丸々とした、美しい曲線を描いていたまりさの輪郭は、どこにもなかった。 あちこちが歪み、ところどころ陥没や隆起を繰り返している。 何度も殴られたであろう皮は、餡子の色がうっすらと滲み、黒いアザを作っていた。 逆さ吊りにされて帽子が落下しなかったのは、ぼこぼこになった頭部がうまいこと引っかかっていたためだ。 「ど・・・どうして!?まりさ!!あのにんげんにやられたの!?」 れいむは男に振り返り、威嚇をしようと息を吸い込んだ。 だが、途中で膨れるのをやめた。 膨れて不用意に茎を動すと赤ちゃんに悪影響があるかもしれない、れいむはそう判断したのだ。 「おにいさん!れいむはゆっくりおこったよ!!まりさにひどいことをしないでね!!」 精一杯の抗議。 しかし男はれいむの言うことなど気にもせず、籠から道具を取り出し吟味していた。 ハンコほどの太さがある鉄の棒と、ハエ叩き、アルコールランプ。 れいむには、何に使う道具なのか理解できなかった。 「れ、れいぶぅ・・・・」 背後から聞こえてきたまりさの声に、れいむは振り返った。 「ま!まりざぁああ!!?」 まりさの顔面は真っ黒に腫れ上がり、不気味な色をしていた。 暴力に耐え切れなかった内部の餡子が行き場を失い、皮の下で蠢いているのが見て取れる。 皮に傷らしきものはなかった。 人間で言うと、内出血に近い状態かもしれない。 「ごべんねぇ・・・まりざあ・・・・ごべんねえ・・・」 痛みを少しでも和らげてあげたい。 そんな思いから、れいむはまりさに頬擦りをした。 「ゆべぇっ!!いぎゃぁっ!!いぢゃいいい!!」 膨れた傷に力強く押し付けられたれいむの頬は、まりさに激痛をもたらした。 「やめでぇ!いだいよぉ!!!」 予期せぬ悲鳴に、れいむは思わず体を引いた。 そしてその言葉の意味をゆっくり理解する。 「ご、ごめんねまりさ!もうすりすりはやめるよ」 まりさは触れられた頬が痛いのか、目から涙をこぼした。 「ごべんねれいぶ・・・まりざ、れいむをまもっであげられながった・・・!それに・・・ありざのがわぃいかおがぁ・・・!」 「ゆっ!?ちがうよ!まりさはわるくないよ!!ぜんぶあのおにいさんがわるいんだよ!!」 元はといえば、いきなり自分たちを誘拐したあの人間が悪いのだ。 頬をあわせることはできないが、れいむはまりさに寄り添う。 そしてまりさの分の怒りも込めて、れいむは男を睨み付けた。 男はそのやりとりを冷めた目で見ていた。 この2匹を捕まえてから、男はまりさだけを隔離し暴行を加えた。 男にとって、まりさは重要ではなかった。 れいむの茎に実る赤ちゃんが大きくなるのを待つ間の退屈しのぎに利用されただけだ。 捕獲の際、邪魔をしたことに対する制裁の意味もあったが。 暴行に使われたのはハエ叩き。 竹製のごく一般的なものである。 スナップをきかせて延々と叩いた結果が、あのボコボコ饅頭である。 ハエ叩きは当たる部分の面積が大きいため、皮を破ることなく衝撃だけを伝える。 右頬、左頬、底部に頭頂部、後頭部。 全身余すところなく叩かれたまりさは、動くことすら苦痛なはずである。 念入りに叩かれた顔面は、見るも無残なほどに黒あざだらけだ。 『やめて!もういたいのいやだよ!』 『いだいよぉ!まりざのおかおがぁ!』 『きぼちわるいよ!なかがきもちわりゅいぃ!』 そんな叫びの声を掻き消すように、男はハエ叩きを振り続けた。 最後の頃になると、その場にいないれいむにまで助けを求めていた。 れいむを守るために戦っていたというのに、そのれいむに助けを求めるとはなんとも情けない話だ。 そして今、れいむの茎に実る赤ちゃんはプチトマトよりも一回り小さいくらいに成長していた。 捕獲した時点ではビー玉ほどであったから、だいぶ大きくなったといえる。 もうまりさに用はない。 男はハエ叩きを手に取った。 「ゆっ?おにいさんなんなの!?ゆっくりこないでね!!」 男に振り返り、れいむは警戒態勢をとる。 まりさは男の手に握られたハエ叩きを見て、黒あざだらけの顔を青くした。 「やぁああ!!!いだいのいやだよぉおっ!!!もうたたがないでえええぇぇ!!!」 ひゅんひゅんと、風を切る音を立てて男は素振りをした。 まりさの様子を見て、れいむはとっさに男の前に立ちはだかったが、横を難なく素通りされてしまった。 「さあ、続きをやろうか」 「ゆぅああ!!ゆるじでね!!もうゆるじでねえ!!」 壁に追い詰められたまりさに、容赦なくハエ叩きが飛ぶ。 鼓膜を突き抜けるような、乾いた音が部屋に響いた。 「ゆべえ!!いだいよぉお!!やめでええ!!」 倒れようとするまりさ。 そうはさせまいと、まりさの顔面に向かってハエ叩きがアッパーをする。 「びっぶぅ!!ゆぅぐぅ!!」 仰向けに倒れたところで、男は右頬と左頬に往復ビンタのごとく連続して攻撃をする。 手首のスナップが重要な技である。 「おにいさんやめてね!!まりさがいたがってるよ!!ゆっくりしないでやめてね!!」 ずりずりと近寄ってくるれいむに向かって、男はハエ叩きを突きつけた。 「赤ちゃんを叩き落としてやろうか?」 その言葉に先に反応したのはまりさであった。 「やべてね!まりざとれいむのあがぢゃんをいじめないでねっ!!」 「まりさ・・・!」 「れいむぅ、れいむは離れててね・・・!まりさならだいじょうぶだよ!」 必死で体を起こすまりさ。 それを見たれいむは無言でうつむくと、男から離れた。 「まりさぁ・・・」 「ゆっくりしていってね!!あかちゃんといっしょにゆっくりしていってね!!」 れいむに笑顔を見せたまりさだが、すぐにその表情は崩された。 やむことのないハエ叩きの嵐。 皮が破れないから餡子も漏れない。 いつまでもまりさの苦痛は続いた。 「まりさ・・・!まりさ・・・!」 れいむはただ、愛するものの名前を呼ぶことしかできなかった。 10分もすると、まりさは声すら上げなくなった。 男がハエ叩きを振り上げたまま、動作を止めた。 ドラ焼きのように平べったくなったまりさは僅かに痙攣しているものの、動く様子は見られない。 「まりざぁああ・・・・!!」 近寄ろうとするれいむに、男はハエ叩きを向けて牽制した。 「そろそろいいか。じゃあな、まりさ」 そう言うと男は立ち上がり、まりさを見下ろした。 一瞬、れいむに視線を移したがすぐに戻す。 「なにをするのぉぉ!?まりざをいじめないで!!」 れいむが言い終えるのを確認し、男は右足でまりさの体を蹴り飛ばした。 「ゆ゙っ!」 それだけ言い残し、饅頭もといドラ焼きがはじけ散る。 飛び散った餡子が壁にこびり付いた。 「い゙ゆあぁあ゙ああ゙ああ゙ああぁぁ!!!!!まりざああ゙あぁああぁあ゙ああ゙あ!!!!」 形が歪んだ帽子を前に、れいむは泣き崩れた。 最後まで赤ちゃんと自分を守ってくれたまりさ。 ありし日の親まりさと姿が重なり、れいむは赤ちゃんのことも忘れて泣き叫んだ。 「静かにしろ」 れいむの頬に、強烈な衝撃が走る。 「ゆびぃっ!?」 ひりひりと頬が痛む。 男の手に握られたハエ叩きを見て、れいむはその痛みの正体を知った。 まりさはこんなに痛いことをされていたんだ、れいむは身の危険よりも先にまりさへの感謝を覚えた。 「やべでえ!!れいむにはあがぢゃんがいるんだよ!!やべでねえっ!!」 「だったら黙っていろ。それなら叩かない」 普通だったら構わず泣き叫ぶところであったが、頬の痛みが冷静な考えを生み出した。 いま泣き叫んではまりさが守ってくれた赤ちゃんが危険にさらされる、と。 「ゆっ・・・・!ゆ・・・・!」 れいむはこぼれそうになる嗚咽をどうにか喉の奥に押し込め、代わりに涙を垂れ流した。 「そうだ。そうやって黙っていれば叩かない。赤ちゃんもちゃんと産める」 ハエ叩きを無造作に床に投げ捨て、男はアルコールランプに火をともした。 「ゆっ・・・!」 燃え上がる炎に、れいむは餡子が冷える思いをする。 それは本能からくる反応でもあったし、経験からくる反応でもあった。 れいむは以前、足(底部)を人間に焼かれ、動くことができなくなったゆっくり魔理沙の話を聞いたことがあったのだ。 あのゆっくり魔理沙も、人間に捕まった伴侶や子供を殺されて開放されたのだという。 男は右手に持った鉄の棒を火にかざしていた。 長さも太さも、ハンコほどだ。 熱で火傷をしないため、手ぬぐいのようなものを間に挟んで棒を持っている。 「さっきお前を叩いた道具、それで生まれたばかりの赤ちゃんを叩いたらどうなると思う?」 れいむに目線を移すことなく、男は言った。 声を出していいものかれいむは迷ったが、これはきっと大丈夫だろうと判断した。 「ゆっ・・・」 声に出すのも恐ろしい、れいむは返答に困る。 だが黙っていては、また叩かれてしまうだろう。 れいむは意を決して答えを告げた。 「・・・つぶれちゃうよ。・・・やめてね!おねがいだよ!」 餡子脳でも簡単に導き出せる結論だ。 あの叩く部分は赤ちゃんゆっくりの体よりもはるかに大きい。 さきほどの力で叩かれれば、簡単に潰れてしまうだろう。 「よくわかってるな。じゃあ俺の言うことを守れば赤ちゃんは潰さない」 「ゆっ!はやくおしえてね!!ぜったいにまもるよ!!」 火にかざした鉄の棒を見ていた男の目が、れいむを捉える。 「目を閉じて、俺がいいというまで黙っていろ。そうしないと・・・」 「ゆっくりとじるよ!だからあかちゃんをいじめないでね!!」 言い終える前にれいむは目を閉じた。 理解の早いゆっくりに、男は関心した。 「いいって言うまでだぞ。途中で目を開けたら、赤ちゃんがまりさみたいになるぞ」 「ゆぎっ・・・!ぜったいにあけないよ!!」 まりさみたいに、という表現にれいむは苦虫を噛み潰したような顔をしたが、目は閉じたままであった。 それを確認すると、男は熱した鉄の棒を火の上かられいむの頭上に移動させた。 そこにいるのは丸々と実ったれいむの赤ちゃんだ。 どれも順調に育っているが、まだ生れ落ちるほどではない大きさ。 男は一番手前にいた赤まりさに目をつけた。 左手に持ったピンセットで、ぴっちりと閉ざされた赤まりさの口を開ける。 目を閉じたままの赤まりさが表情に疑問符をつけるが、そんなものはどうでもいい。 赤まりさの口は、成長段階だけあってあまり大きくなかった。 ハンコの太さがぴったり合うくらいだろう。 喉も小さく、綺麗に研いだ鉛筆で穴を開けたくらいの大きさだ。 声は出るのかわからない。 男は熱した鉄の棒を躊躇うことなく、赤まりさの口内に押し込んだ。 予想通り、太さはぴったりであった。 「ゅ゙っ!?」 蚊の消え入るような、小さな悲鳴が男にだけ届いた。 れいむは赤ちゃんの危機も知らずに、目を閉じたまま待っている。 高温の鉄の棒は赤まりさの口内を焼き付けていく。 何度か鉄の棒を火に当て直しながら、男は鉄の棒で赤まりさの口内をこねくりまわした。 赤まりさはどうにか苦痛から逃れようと体を揺するが、男相手では無意味であった。 男が棒を抜くと、口をあけたままの赤まりさがいた。 口内はコゲで硬くなり、閉じることもできない。 喉も完全に焼き潰れたため、声を発することも、ものを食べることもできないだろう。 口としての機能はなく、ただ窪んでいるだけ。 そのことをわかっているのかいないのか、赤まりさは今にも死にそうな顔をしていた。 閉じた瞳から今にも涙があふれそうである。 男は思わず顔がにやけた。 時間がかかったが、男は同じように全ての赤ゆっくりの口を丸コゲにした。 赤ちゃん達から「くち」がなくなってから10時間ほど経った頃。 「ゆっ!あかちゃんうまれるよっ!」 ようやく出産のときがやってきた。 口を開けたままの赤ゆっくりが揺れ始めている。 男は読んでいた本を床に置き、その光景を楽しそうに眺めた。 一段と揺れが大きくなったかと思うと、ぽとりと1匹の赤ちゃんが床に落ちた。 長女となったのは赤れいむだ。 「ゆっ・・・!」 声をかけようとして親れいむは口を閉じた。 赤ちゃんの第一声を待とうと思ったからだ。 だが、いくら待っても赤れいむは声を上げない。 口を大きく開いているが、そこから出てくるものはなかった。 「ゆっ・・・?がんばってね!!」 生れ落ちた感動に喜んでいた赤れいむの顔は、徐々に暗く落ち込んでいく。 懸命に体を揺すったり飛び跳ねている様子から、声を出そうと努力していることが見て取れる。 静かな部屋に、赤れいむの跳ねる音だけが空しく響いた。 「おちびちゃん!ゆっくりがんばってね!!がんばってね!!」 「・・・」 飛び跳ねるのを止め、親れいむを見上げる赤れいむ。 その目には、涙が溜まっていた。 「お゙ねがいだよぉおぉおおっ!! おかあざんとお゙しゃべりしよゔよぉお゙おお゙ぉぉ゙ぉぉ!!!」 涙のダムは、その言葉をきっかけに崩壊した。 何本もの涙の線が、赤れいむの顔に浮かぶ。 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってねっ!!!ゆっぐりじでいっでねええぇえっ!!!」 「・・・」 お手本を聞かせようと、親れいむは定番のセリフを壊れたカセットテープのように繰り返す。 親の期待にこたえたいのか、再び赤れいむは体をねじったり、飛び跳ねたりを繰り返した。 そのやり取りを見ていた男は笑みを浮かべていた。 ゆっくり達のアイデンティティーともいえるセリフ「ゆっくりしていってね」は、男によって赤れいむから永遠に奪われているのだ。 それも知らずに無駄な努力を続ける親子を見ていると、笑いがとまらない。 「ゆっ!?またうまれるよ!こんどはげんきなあかちゃんがほしいよっ!」 「・・・」 茎に違和感を覚えたのか、親れいむは茎を見上げた。 間接的にではあるが「元気でない赤ちゃん」の烙印を押された赤れいむは、恨めしい顔をして親れいむを見ていた。 ふらふらと揺れる赤まりさ。 それは最初に口を潰された赤ちゃんであった。 「ゆゆぅ!がんばってね!!ゆっくりうまれてね!!!」 赤まりさはゆっくりするはずもなく、すぐに茎から離れた。 赤れいむのすぐ横に落ちた赤まりさ。 まだ目も開けていなかったが、親れいむは待ちきれないとばかりに声を荒げる。 「ゆっくりしていってね!あかちゃんっ!!ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってねっ!!」 今度の赤ちゃんは、ちゃんとおしゃべりができるはず。 親れいむの願いが声のボリュームを引き上げる。 「ゆっくり!!ゆっ!!!ゆっぐりじでねっ!!!ゆっぐりいいいいい!!!!」 とても赤ちゃんを迎える表情ではなかった。 赤まりさが最初に見た親の顔は、般若のごとく歪んだ表情であった。 「・・・」 驚いたが、声は出なかった。 口内はウェルダンを通り越して丸コゲなのだ。 赤まりさは体を起こし、声を出そうと体をひねった。 「ゆっ・・・!?こっちのおちびちゃんもなのぉおお!?」 その動きに、長女の赤れいむと同じものを感じる親れいむ。 しばらくすると、赤まりさは飛び跳ね始め、そして泣き出してしまった。 やっぱりこの子もおしゃべりができない子なんだ、親れいむはその事実を認めざるを得なかった。 「で、でもつぎのあかちゃんはきっとゆっくりできるよ!!」 茎を見上げる親れいむの目は、希望と不安が入り混じった色をしていた。 焼かれた時点でこの結果は決まっていた。 結局、生まれ落ちた赤ちゃんゆっくり9匹は、1匹として第一声をあげることがなかった。 「どぼじでぇ・・・・どぼじでなのぉお・・・!?」 9匹の赤ちゃんを前に、オロオロと対処に困っている親れいむ。 それを黙って見つめる9匹の赤ゆっくりも神妙な面持ちだ。 「ゆっくちさせて」「ゆっくちちたいよ!」「おかーしゃんとすりすりしたい!」などと一部の人間が聞いたら有頂天になるようなフレーズを言うものはいない。 中には涙を流している赤ゆっくりもいるが、口が笑っている状態のため、あまり可哀想に見えない。 「ゆっ・・・!」 親れいむは思う。 喋れなくても、自分とまりさの大切な赤ちゃんなのだと。 少し生活に困るかもしれないが、自分が守ってあげればきっと元気な、ゆっくりした子に育ってくれるはずだ。 この子達にとって、ただ一人のお母さんなのは自分。 亡きまりさが守ってくれた赤ちゃん。 自分を守ってくれた親まりさのようになるんだ。 親れいむは赤ちゃん達を正面から受け止める決心をした。 「みんな、ゆっくりしていってね!!!」 力強さを感じる親れいむの「ゆっくりしていってね」。 赤ゆっくりから不安が消えた。 このお母さんならゆっくりさせてくれる、そう感じるほど頼りがいのある声であった。 「それじゃあゆっくりごはんをたべようね!」 まずは赤ちゃんの旺盛な食欲を満たそうと考えたのだろう。 親れいむは水に濡れた犬のように体を揺すり、頭に生えた茎を落とした。 「ゆっくりたべてね!」 満面の笑みで親れいむは子供達を見守る。 赤ゆっくりの目も笑っていた。 幸せな家族のワンシーン、そうなるはずだった。 「ゆ・・・?ゆっくりたべてね?」 茎の周りに9匹の赤ゆっくりが群がっているのだが、1匹として食べる気配がなかった。 顔を近づけ、口に含むような動きをするが、それから先へは続かない。 口内は硬くて動かない、そして喉もないので飲み込めない。 男だけが赤ゆっくりの不思議な行動の理由を知っていた。 「ゆっ!わかったよ!」 何を思いついたのか、親れいむは赤ゆっくり達の間に押し入り、茎にかじりついた。 むーしゃむーしゃと言いながら、茎を咀嚼する親れいむ。 横取りされるのではないかと、不安な表情で9匹が見守っている。 「まずはおちびちゃんからだよ!」 一番近くにいた赤れいむに、親れいむは口を近づける。 そして、開きっぱなしの赤れいむの口に、噛み砕いて唾液まみれになった茎を流し込んだ。 「かたくてたべられなかったんだね!!でもゆっくりりかいしたよ!!」 記憶をたどり、自分が赤ちゃんであったときのことを親れいむは思い出していたのだ。 ご飯が食べられなかった自分におかあさんが、噛み砕いたご飯を食べさせてくれたことを。 口移しを終え、親れいむは達成感にあふれる顔になった。 「ゆっくりたべてね!むーしゃむーしゃだよ!」 だが赤れいむはそれに答えず、固まっていた。 開いた口には噛み砕かれた茎がそのまま残っている。 「むーしゃむーしゃだよ!!!ゆっくりりかいしてね!!むーしゃむーしゃだよっ!!!」 自分はできたこと。 それなのに、なぜ自分の赤ちゃんはできないのだろう。 親れいむの中に不安が広がり、声が荒くなっていく。 それを敏感に察知した赤れいむは、必死で飲み込もうと努力をした。 だが、開いてない喉にご飯は通せない。 しばらくすると、動くことをやめて親れいむを見つめ始めた。 助けてくれると信じて。 「・・・」 「どうじでぇ・・・?ごはんをたべないとゆっぐり゙できないのにぃいい・・・・」 他の赤ゆっくりにご飯を食べさせようとしたが、結果は変わらなかった。 途方に暮れた親れいむは、男に頼ることにした。 「おにいざん・・・・あかちゃんにごはんをたべさせてあげて・・・」 親れいむの顔はどことなく歪んで見えた。 涙で皮がふやけたのかもしれない。 「無理だな。赤ちゃんの世話はお母さんのお前が一番上手に決まってる」 「ゆぅ・・・そうだよね・・・ごめんね・・・」 「そんなお前が赤ちゃんにご飯を食べさせられないなんて」 「ゆゆ・・・」 「お前が無能なせいで赤ちゃん達はゆっくりできないんだよ。ダメな親を持って残念だったね、そこの赤ちゃん達」 男が言い終えると、赤ゆっくり達はうつむいていた顔を上げた。 その顔に涙は無い。 あるのは怒りの表情。 口は笑っているが、その目は鋭く、眉は45度を保っていた。 「ゆっ・・・?どうしたのおちびちゃんたち・・・?」 最初に飛び掛ったのは赤まりさだ。 プチトマトほどの赤まりさが、バスケットボールほどもある親れいむの頬にタックルを仕掛ける。 「ゆ!?」 特に反撃をしたわけでもない。 体格差から、親れいむは赤まりさを弾き飛ばしていた。 「どうしたの!?ゆっくりやめてね!!」 その赤まりさを引き金に、次々と赤ゆっくり達が親れいむに体当たりを始める。 無言で飛んでくる弾丸プチトマト。 顔には怒りと憎しみだけが写し出されていた。 「やめてねっ!!おかあさんだよ!?ゆっくりやめてね!!」 親れいむはケガをするどころか、痛みすら感じなかった。 質量も速度もない赤ちゃんゆっくりの体当たりには、攻撃のコの字すら感じられない。 しかし、親れいむはその衝撃を通じて赤ゆっくり達の声を聞いた。 『おまえのせいでゆっくりできない』『やくたたず』『それでもおやか』『ゆっくりしね』 『ゆっくりさせろ』『まりさがくるしいのはおまえのせいだ』『れいむはゆっくりしたいのに』 『おねがいだからゆっくりさせてよ』『もっとゆっくりできるおかあさんがほしかった』 無論、それは親れいむの餡子内で勝手に想像した言葉にすぎない。 だが赤ゆっくり達が訴えたい内容としては、正しいものだろう。 本来であれば、そっちの人たちが天にも昇るようなセリフで親を罵っているはず。 一言も喋ることなく体当たりを繰り返す赤ゆっくり達の姿は、実に新鮮だ。 先ほど弾かれた赤まりさは、ころころと床で数回転がると、すぐに立ち直った。 そして再び眉を引き締め、親れいむの元へ跳ね寄る。 今度は顎のあたりを目掛けて体当たりを繰り出し、また弾き飛ばされた。 赤まりさは言葉を発することなく、延々と同じような動作を繰り返した。 その異常な光景に、男は声を立てて笑い始めた。 親れいむが男を一瞬だけ睨んだが、すぐに赤ゆっくり達に向き直る。 「もうやべでえええ!!!ゆっぐりじでよぉおおおっ!!!」 壁に追いやられた親れいむが叫んだ。 相手は弱っている、と勘違いした赤ゆっくり達がさらに体当たりを加え始める。 赤ゆっくり達の体には、かすり傷ができていた。 親れいむにぶつかった時や、床を転がるときにできたのだ。 体当たりをする度に増え、見ていて痛々しいのだがそれでも懸命に赤ゆっくり達は立ち上がる。 それを見て、親れいむの心が痛む。 傷だらけになってまで自分を殺そうとする赤ゆっくり達に、体は痛まないが心が痛む。 ゆっくりさせてあげると誓った赤ゆっくりが、ゆっくりすることなく自分に立ち向かう。 なぜこんなことになってしまったのだろう。 親れいむは嗚咽をこぼし、涙を流す。 それが赤ゆっくりを調子付けているとも知らずに。 「赤ちゃん達、ちょっといいかな」 猛攻を止めたのは、暢気に鑑賞していた男。 何かを期待しているのか、赤ゆっくり達の目が輝いている。 「君達、ご飯食べられないんだよね」 9匹が目線を床に移した。 親れいむだけは男の目を見たままだ。 「あんまり運動すると、おなかすいて死んじゃうよ」 「ゆっ!!」 親れいむは思わず声を漏らしてしまった。 ご飯を食べないと餓死してしまう。 そんなことにまで頭が回っていなかったのだ。 「ちびちゃんたち!うごいちゃだめだよ!!おなかがすいてしんじゃうよっ!」 その言葉に、赤ゆっくり達は顔を青くした。 もうすでに空腹感があるのだろう、迫りくる死をゆっくり理解したようだ。 「ゆぅぅううぁぁああ!!!どうじだらいいのぉおぉ!!??」 慌てふためく親れいむとは裏腹に、赤ゆっくり達は静かに瞳から雫をこぼした。 「泣いてると、喉が渇いて死んじゃうよ」 そもそも、喉が渇くどころかコゲている。 男の言うことがわかるのか、赤ゆっくり達は顔に力を入れて涙を止めようとした。 「はやくじないどあかちゃんがゆっぐりでぎなくなっぢゃうよぉおぉ!!!」 生まれたときからゆっくりしていない、男はそんな感想を持った。 8時間が経った。 男はその間、一切口を挟むことはなかった。 死のゴールが見えているゆっくり達をいじる、そんな無粋なマネはしない。 最期の時まで生暖かく、助かる道を探す親れいむを見守るのだ。 そんな道など存在はしないが。 「ああぁぁ・・・おちびちゃん・・・ごめんねぇええ・・・・」 今、1匹の赤ゆっくりが目を閉じた。 通算8匹目。れいむ種では最後の1匹となる。 あれから、赤ゆっくり達は何もしなかった。 忍び寄る餓死の足音におびえながら、目の前にいる親れいむを恨む事でなんとか正気を保っていたのだ。 憎しみに染まった8の瞳が、親れいむをずっと捉えていた。 赤ゆっくりは総じて体力が少ない。 小さな体では、体力となる餡子があまり確保できないからだ。 旺盛な食欲は、生きるための本能である。 親れいむへの攻撃と、それによって負った傷は予想以上に赤ゆっくりから体力を奪っていた。 7時間を越えた辺りで最初の1匹、赤まりさが永遠にゆっくりした。 それから先は早く、赤ゆっくりは次々と瞳を閉じた。 動かなくなった赤ゆっくりは、ほとんど皮だけの状態になっていた。 最後まで親れいむを睨み続けていた目の周囲や眉間に、深いシワが残っている。 「がわいいれいむがぁあ・・・!おめめをあげでねぇえ!!れいむ゙をにら゙んでもい゙いがらぁ・・・おね゙がいだよお・・・・」 れいむれいむと泣き叫ぶ親れいむを、最後に残った赤まりさが真っ赤になった目で睨みつける。 赤まりさの体はほとんど皮だけになっており、あちこちにシワが走っていた。 もう長くないはずだ。 そう思っていた男、そして親れいむも赤まりさの次の行動に驚く。 「・・・・ゆ゙っ!?」 たるんだ皮を引きずり、赤まりさは親れいむに近寄っていく。 その目に光はない。 幼くして死を受け入れた目。だが、その奥には黒く歪んだ感情が潜んでいた。 「まりざぁ・・・!ゆっぐりしようねっ!おがあじゃんがすりすりじであげるがらねっ!!」 隠された激情に気がつかない親れいむ。 最期の時を親である自分と過ごそうと思っている、そう勘違いした。 「ゆ゙!おがざんと・・・いっじょにゆっぐりじようねっ!!」 だから、親れいむは笑顔を作った。 赤まりさをゆっくりさせてあげたい。 切なる願いだった。 「・・・・ゆ?」 体に感じた、小さな衝撃。 それは、赤まりさの最期の体当たりだった。 「ゆ゙ぁあ゙ああ゙あぁ゙ぁあ゙っ!!!!」 弾けとんだ赤まりさは、床に落ちて絶命した。 仰向けに倒れたままだ。 「あ゙りざあぁあぁぁあ゙あ!!!どぼじでえ゙ええ゙ええ゙っ!?!?!?」 他の赤ゆっくりと違い、赤まりさの目は開いたままだった。 完全に光を失いながらも、その瞳は親れいむを睨みつけていた。 「あ゙ぁああ゙ああ゙ぁあああ゙ああ゙あ゙あ!!!!!!ごべんねええ゙ぇえ゙ええ゙っ!!!ごべんねぇええ゙え゙!!!おがあ゙ざんをみらいでえぇえ゙え!!!」 狂ったように嘆き叫ぶ親れいむを置いて、男は部屋を後にした。 「ぁあ゙あ゙・・・・あ゙ああ゙あぁ゙あ゙あ゙ぁぁ・・・」 外へ通じる扉を開け放したまま。 しばらくして男が部屋に戻ると、そこに親れいむの姿は無かった。 床には赤ちゃんゆっくりの死骸も見当たらない。 食べたのか持ち帰ったのか、男にはもう興味のないことであった。 それから数日後、農家の男性が1匹のゆっくり霊夢を発見した。 どうやら洞窟の中で赤ちゃんを育てているようだった。 男性は、そのれいむがエサを探しに行っている間に赤ちゃんを捕獲ようと、洞窟に入った。 だが中にいたのは、真っ黒になって腐っていた9匹の赤ちゃんゆっくりであった。 帽子やリボンがあったので、かろうじて赤ゆっくりだと判断できた。 不気味に思い、洞窟を離れたところで親のれいむが帰ってきた。 様子を伺っていると、洞窟の中かられいむの歌が聞こえたり、赤ちゃんにご飯を食べるよう促す声が聞こえてくる。 男性は気味が悪くなり、その場から逃げたのであった。 それからさらに数日後。 男は書斎で、一冊の本を手に取った。 「お、また来てる」 文庫本ほどの大きさ。 今もこの世界や別の世界で、ゆっくり達が虐待されている。 その様子を自動で小説に変換し、ページを増やす、魔法の本。 男はこの本に影響されて、ゆっくり霊夢を虐待することに決めたのだ。 本に登場する赤ちゃんゆっくりは、大抵我侭で口が悪く、生意気で浅ましい。 男の経験でもそれは正しかった。 親を親とも思わないものばかりだ。 そんな物語を読んでいた男は、赤ゆっくりをゆっくりさせることなくその命を散らせてやろうと思ったのだ。 まったく関係のない親れいむにとってはいい迷惑である。 「・・・これ、俺じゃん」 新しいページには、赤ちゃんゆっくりの口を焼く男の話が載っていた。 どう読んでも自分のことである。 「あー、新作まだかなー」 男は本を棚に戻すと、たまった鬱憤を晴らすため、今日も森へと足を運んだ。 作:アルコールランプ? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/843.html
流れすべて無視、俺設定俺仕様(ぁ エレエレ表現をみて使いたくなった、それだけ。 初投駄文御免。 ~~~~ ゆっくりごときに家を荒らされた、それだけなら怒ったりはしない。だかあいつは3日間寝ないで作った1/100紅魔館モデルを餡子まみれにした。ゆっくりれいむ、てめーは私を怒らせた。 とりあえず修理パーツの品物到着は3日後といわれたのでそれまでゆっくりでもエレエレさせてやるか。 初日。 「・・・ゆ?ここどこ?ゆっくりだしてね!」 お目覚め。とりあえずこいつが寝ている間に発掘したヤバい感じに醗酵してる酒やなりかけてるものを集めて飲ませる準備は完了。ゆっくり拘束透明Boxは便利でいいね!カスタマイズ万歳。 「ゆ?おねーさん、ひとりごとこわいよ!ゆっくりはやくあけてね!」 さて、独り言が酷くならないうちにゆっくりと飲み比べでもするか。 「さて問題です。ゆっくりしたければ私より酒が強いことを証明しなさい。」 「へいきだもん。れーむはおさけにつよいよ!」 「ほぉー。んじゃ軽く50%ぐらいからいくか。」 当然経過を見るために私は水、ゆっくりには似た度数を混ぜたものを飲ませる。ずっと私のターン。 「・・・ゆ?なにこのにおい。れーむのめないよ!」 「あぁ?強いんじゃないのかよ。飲めないなら無理やり飲ませるだけ出し安心しな。」 「ふざけないでね!もっとじょうsふぉwふぃえw;あj」 あー五月蝿い。飲まないなら直接注ぎ込んでやらぁ。汚物は消毒だー。 「からだがスースーするよ!ぽかぽかするよ!ゆっくりできるよ!」 流石50%。半分は伊達じゃない。ぽかぽかするのは下で地味に温めているからだ、痴れモノめっ。 80%までを体半分までつかるようにして放置。なんかギャーギャー五月蝿い。蓋したら静か。流石万能Box だるいから適当に食べ物を入れておく、ウイスキーチョコだけどな。ふひひ。 二日目。 「ゆ゙~~~ゆ゙~~~」 おー水分も飛んでる。かあさん、赤くなったゆっくりれいむが3倍ほどゆっくりしてます。すごく・・・ゆっくりです・・・ 「お゙ね゙ーざん゙、ゆ゙っ゙ぐり゙で゙ぎる゙よ゙~♪」 できあがっとるできあがっとる。まだ仕上げじゃないのにこれは凄いわ。 「ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙ゆ゙」 何か急に震えだすゆれいむ(名前長いねん。)試しにぷにぷにしてみる 「も゙ゔじ゙ま゙ぜん゙が゙ら゙ゆ゙る゙じ゙で゙~~!!」 トラウマにHitしたっぽい。やさしくなでてみる。なでなでなでなでなで・・・・ 「ゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っゆ゙っ」 ちょ、違う赤みを帯びてきた。発情しましたか。かるく蔓が延びてるんですけど。手を止めてみる。あ、しぼんだ。さようなら新しい命。ゆれいむがモノ欲しそうな顔をしている。さらになでますか?→ぜってぇしねぇ。 少し堪能したから目的をするか。ててれてってれー。アルコール99%~まぁ消毒液なんですけどね。殆ど。どぼどぼどぼど・・・ お、飲んでる。おー・・・全部飲むのかよ。どぼどぼどb・・・うぇ。飲むのはえーよ。 三日目 あれから2リットルぐらい飲んだ。ヤバめの酒全部なくなって助かりました。一方Boxのゆれいむ。 「ゆ゙~~~~~~~~~~~~っぐり゙でぎな゙~~~~~~い゙!」 頭に響くのか控えめに強調。水分は飛ばしてあるっつーか殆どなかったけど飛ばしたので皮崩れ無し。透明な袋(○○都指定とかそんな大きさの。)に入れる。そしてにとり様特性ぐるぐるマシーンにセット。 「ゆ゙?」 さぁお楽しみの時間です。 ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるみんぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる ~しばらくお待ちください~ 赤かった顔が青になりゆかりんになり土色になったところで止めて袋から取り出す。何かを必死に絶えてます。 やさしい私は背中(つっても後頭部)を優しく愛撫するようにすりすりすりすり・・・ 「や゙め゙え゙え゙え゙え゙え゙で゙え゙え゙え゙ぇ゙ぇ゙え゙え゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙えぇうぇ」 エレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレ おーでるでる。撫でるたびに出るのが楽しい。このとき死なないように砂糖酒かける俺最強。まぁこの吐餡子から作るんだけどな。 「ゆ゙っ゙ぐり゙で゙ぎな゙い゙よ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぉ゙ぅ゙ぇ゙」 エレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレ こんなやりとりを3時間続けてたらパーツが届いた。ひゃっほ~ 殆ど黙ったゆれいむの返事がない、ただの屍のようだ。 10秒ほどオレンジジュースにつける。 「すっきりー!」 うわ、はや。なにこれ。むかつくから砂糖酒につける、とりだす。 エレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレ ポカー・・・見事に酒豪の仲間入りねっ☆ 「じだぐな゙い゙い゙い゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙ぅ゙ぇ゙っ゙」 エレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレエレ あ、餡子全部でた。 Fin このSSに感想を付ける