約 3,643,268 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/267.html
前 「ん、あの目潰しれいむはどうしたの?」 ショーに遅れて登場したのはタケだ。 手にはタケの顔より一回り大きい壺がある。 「子供が食べちゃったんだよ」 「すげー勢いで食ってたぞ。もっと早く戻ってくれば見られたのに」 同属食いというものは、少年達の好奇心を刺激するものだ。 そこら辺の虫、トンボやカエルでは見ることができない。 それを見逃したタケは、酷く残念そうな顔をした。 「見たかったなあ・・・」 しかし、少年の好奇心が留まることはない。 タケの頭の中には次の興味が芽生えていた。 「次は俺がやるからな!」 ゆっくりの数には限りがあるため、好き勝手に殺すことは許されない。 しかし、共食いを見られなかったタケを哀れに思った2人はタケの行動を許容した。 「一度やって見たかったんだよねー」 タケはそう言って、農道に6匹の赤まりさを置いた。 さきほど親れいむからこっそり抜き取っておいた6匹だ。 「ゆっ!?れいむの赤ちゃんがみんな生まれてるよ!?」 今頃になって親れいむは残った赤ゆっくりが無事誕生していたことに気が付いた。 それに気が付いた子ゆっくり7匹も、食い殺した赤れいむのことなど忘れて近寄ってくる。 「ゆー!ゆっくち!おかあさん、おねーちゃん、ゆっくちしていってね!」 「ゆっくちだよ!ゆっくちー!」 「いつもおはなしをきかせてくれたおねーちゃん、ゆっくちありがとう!」 「これからいっしょにゆっくちしようね!!」 もう目も開き、言葉も喋っていた。 第一声は聞けなかったものの、無事誕生したことに2匹の親ゆっくりと7匹の子ゆっくりは満足だった。 「「「「「「「「「みんなでゆっくりしようね!!!」」」」」」」」」 嬉しくなった1匹の赤まりさが、親れいむに飛び跳ねようとした。 しかしそれは空中で掴まれて邪魔される。 タケの手だった。 「ゆ!?なにするの!?ゆっくちやめてね!!おかーさんとすりすりするんだよ!!!」 掴まれた赤まりさは、そのまま6匹の赤まりさの元に戻された。 そして急に6匹の周りが暗くなる。 「ゆっ?」 声を上げたときには、既に赤まりさ達を暗闇が包んでいた。 まだ暗くなるはずはない、生まれたばかりの赤まりさでもその異常性に気が付いた。 「ゆ!くらいよ!!こわいよ!」 「まっくらだよ!!なにも見えないよ!!!」 「おにいさん!まりさたちのいもうとをはやくだしてあげてね!!」 「いまならゆっくりゆるしてあげるよ!!」 「れいむたちのいもうとがこわがってるよ!!はやくだしてね!!」 外にいた親ゆっくりと子ゆっくりには状況がすぐに理解できる。 6匹の赤まりさは、逆さにした壺の中に閉じ込められてしまったのだ。 その壺を椅子のようにしてタケが座っている。 騒ぐゆっくりの声など、タケには虫の鳴き声程度にしか感じていない。 「そしてコイツの出番だ!」 道具袋から出てきたのは、マッチとカラフルな箱。 この箱は寺子屋近くの駄菓子屋で売っている爆竹の箱だ。 「子供だけで花火やったらダメだよ」 「タケちゃん、マッチ持ってるんだ。不良だなあー」 「みんなには内緒な!コウちゃんとシンちゃんはゆっくりが壺に近寄らないように押さえてて」 壺に必死に体当たりをする親れいむと7匹の子ゆっくりを蹴飛ばしたり投げ飛ばしたりして遠ざける。 親まりさは相変わらず激しい達磨運動をしていた。 その間にタケは爆竹の導火線を全て絡ませ、一本の太い導火線にした。 「何をするの!!?赤ちゃん達を早くゆっくりさせてあげてね!!!」 顔に泥をつけながら、親れいむが訴える。 「そろそろ火をつけるから、邪魔が入らないように頼んだよ」 タケが2人に合図すると、マッチに火をつけた。 「ゆっ!!!」 小さな棒に燃え上がる炎。 火を見て一気に危機感が増したのだろう、親れいむが物凄い勢いで壺に向かって突進を始めた。 子ゆっくりは火を見ておびえている。 「あらよっと」 シンが飛び込んでくる親れいむを見事に蹴り飛ばした。 相当な衝撃だったようで、親れいむがうめき声を上げながらのた打ち回る。 そうこうしている間に、ついにマッチの火は導火線へと領土を広げた。 「いくよっ!」 タケは壺を少しだけ持ち上げ、中に火のついた爆竹を放り込み、すぐに壺を閉じた。 「ゆっ!おかあさ」 親れいむは一瞬だけ持ち上げられた壺の中に、困惑する12の瞳を見た。 「あかちゃ・・・」 声を掛け終わらないうちに、壺の中からくぐもった炸裂音が響き始めた。 それと同時に、赤まりさの絹を裂くような悲鳴も。 「ゆきぃぃぃっ!!!」 「いちゃいいいいぃぃぃぃっ!!!!」 「みえないよっ!!!くらいよっ!!!いたいよおおお!!!!」 しかしそんな悲鳴も3秒もしないうちに消えてなくなった。 残ったのは無情に響き続ける炸裂音。 箱一つ分の爆竹は案外多かったようで、30秒近くも鳴り響いた。 「お、爆竹終了だな」 また壺の上に座っていたタケが、音のしなくなった壺から降りた。 壺の周りには親れいむと7匹の子ゆっくりも集まっている。 しかし、1匹として体当たりで壺を倒そうとはしなかった。 怖かったのだ。中を見ることが。 「じゃあ、見てみよう!」 「はやく開けてよ!」 興味津々、目に星を入れたコウとシンがタケをせかす。 「ではごらんくださーい!」 タケは壺を真上に持ち上げた。 白く薄い煙が溢れ、地面に爆竹の残骸が見える。 しかし、赤まりさは1匹もいなかった。 「あれ・・?」 「いなくなってるよ?」 「そんなばかな」 親れいむは、爆竹を放り込んだときに素早く逃げたのでは、との淡い期待を寄せた。 子ゆっくりも同じことを考えた。 「おおおおおおっ!!!!」 タケがいきなりあげた声に、ゆっくりのみならず他の少年も驚いた。 「どうした!?」 「びっくりさせるなあ」 壺の中を見ているタケは、驚愕の表情を2人に向けた。 「これ見てみ!爆竹すげええ!!」 タケは壺の中を2人に向けた。 「おおおおっ!!!!」 「爆竹強えええええっ!!!!」 壺の中は、バラバラになった皮、飛び散った餡子、吹き飛んだ帽子がこびりついていた。 ところどころ原型をとどめている部分があり、赤まりさが死んだことと、爆竹の威力がよく分かる。 「爆竹って意外と威力あるもんなんだね!」 ゆっくりの頭上で壺を見せているため、親れいむ達には見えない。 自分のあずかり知らぬところで大切な赤ちゃんがどうなっているのか、親れいむは気が気でない。 「壺の中をれいむにも見せてね!!ゆっくり見せてね!!!」 タケは壺を正常な置き方、クチを上にした状態で地面に置いた。 これではゆっくり達に見えない。 「見せたら面白そうじゃん」 言うが早いか、シンが集まっていた子ゆっくりを掴み、壺の中へと放り込んだ。 最初に壺に入ったのは子れいむ。 なんだか甘い臭いのする壺だ、そんなノンキなことを子れいむは最初思った。 しかし、自分の足元にある皮を見た瞬間に血の気が引く。 それはさっきまで、自分を姉と慕ってくれた赤まりさの目が付いた皮だったのだ。 「ゆっぎゅあああああああ!!!!!!まりざがぁああっ!!!げいぶのいぼおどがぁああああ!!!!」 壺の中から聞こえる姉妹の声に、警戒を強める子ゆっくり。 親れいむは赤まりさがどうなったのかそれで全てを理解した。 だとすれば自分にできることは。 「こどもたち!!はやく逃げてねっ!!!捕まらないように逃げてね!!!!」 これ以上子供を死なせてはならない。 親れいむは少年達を食い止めようと必死で体当たりを再開する。 しかし多勢に無勢。1匹の親れいむと3人の少年ではどちらが勝つかなど明らかだ。 次々に摘み上げられ、子ゆっくり達は壺の中へと捨てられる。 「ゆっ!まりさはたすけて!!こっちのれいむをつかまえてねっ!!」 壺の外に残った子ゆっくりは2匹。 自身への危害が及ぶことを恐れた子まりさは子れいむに体当たりをし、少年たちのほうへと突き出した。 「どぼじでえええ!!!??まりざああああ!!!」 「どうじでうらぎるのおおおお!?!?」 「ゆっ!うるさいよ!かわいいまりさはにげるよ!」 子れいむと親れいむの嘆きをあざ笑うかのように、子まりさはゆっくりらしからぬ速度で乾いた田んぼを跳ねていく。 「あれ、誰が当てられるか勝負しよう」 最後の子れいむを壺に捨てたコウが、田んぼに転がる拳ほどの大きさの、乾いた土の塊を手にとって言う。 子まりさとの距離は10メートルほど。 シンとタケも同じように土の塊を手に取った。 「ゆゆっ!ゆっくりできない かぞくとは さよならだよ!まりさはゆっくりするよ!ゆっくりしんでね!」 この子まりさは一度、一人で外を出歩いていたときに人間を見たことがあった。 そのとき捕まっていたゆっくり霊夢の家族は、草むらに隠れた子まりさの前で目を背けたくなるような虐待を受けたあと1匹残らず殺された。 それを救出しようと10匹近くの成体ゆっくりが人間に襲い掛かったが、まるで歯が立たなかった。 たった1人の人間に、その群れは壊滅状態に追いやられてしまったのだ。 子まりさはあの3人の少年達が巣穴に来たとき、一番警戒していた。 しかし少年達はあの虐待をしていたお兄さんより小さかったし、なにより美味しいお菓子があると聞いては黙っていられなかった。 だがその判断は誤りだった。 やはり人間は危険だ。 それは年齢に関わるものではない。 子まりさはこの経験を深く餡子に刻んだ。 もうあの家族は助からない、ならば全てを捨ててでも逃げることが一番だ。 この田んぼを抜けたところにある川の先には、ゆっくりアリスの群れがいる。 そこまで逃げれば、きっと受け入れてくれる。 親友のゆっくりアリスもそこにいるから、きっとゆっくりできるはず。 そんな幸せ回路が蠢く子まりさの上空を、大きな塊が飛んでいた。 「ゆっ!?」 目の前に落下した土の塊は、子まりさの体ほどもある。 「くっそ!はずした!」 子まりさが振り返ると、そこには残念そうな顔をするコウがいた。 続けて少年2人が子まりさ目掛けて土の塊を投げつける。 「ゆ!やめて!まりさをいじめないでちかくにいるやつをいじめてね!!」 足場の悪い乾いた田んぼを必死で逃げる子まりさ、その横で飛んできた土の塊が砕ける。 それはまるで戦場のようだ。 少年大砲の照準をずらすため左右に跳ねながら逃げる子まりさに、少年達は苦戦する。 「ちょこまか動いてて当たんねー!!」 「ぜってー当ててやる!!」 少年達は逃げる子まりさに向かって走り始めた。 あまり遠くに逃げられると、投げた土の塊が届かなくなるからだ。 次々と飛んでくる土の塊、そして近づいてくる少年達に、子まりさは餡子が冷えるような思いだ。 これが当たったら間違いなく皮は破れるだろう。 「ひゅっ!!!ひゅっ!!!ひゅっ!!!ふひゅううううぅっぅう!!!こわいよおぉぉおっ!!」 あと少しで田んぼから抜け出せる。 そこまで逃げれば他に遊ぶゆっくりがいるのだから、自分のことなど追いかけてこないはずだ。 子まりさはそれだけを頼りに、皮が破れそうなくらい力強く大地を蹴る。 「ゆっ!あとすこしだよっ!!」 あと数跳ねといったところで、子まりさの右半身を強い衝撃が駆け抜けた。 「ゆぐうぃぃいっ!!!」 子まりさの目は近づいてくる地面だけを捉えていた。 倒れている。 あと少しで逃げられるのに。 「おっしゃ!右側に当たったぞ!!」 シンが飛び跳ねて喜んでいる。 動けなくなった左半分の子まりさに少年達が近づく。 「お、まだ生きてる」 「そりゃそうだよ。トンボだって頭吹き飛ばしても少しは生きてるじゃん」 「なるへそ」 少年達は、まるで野グソをつつくかのように飛び出した子まりさの餡子を枝でつついた。 つつかれるたびに子まりさには激痛が伝わり、声にならない悲鳴をあげる。 右半分がなくなった饅頭は、息も絶え絶えでいつ死んでもおかしくないようだったが、それでもまだ生きる望みを捨ててはいなかった。 「おぉっおお、おにいざんぁ・・・!!あ、ありざがわいいよぉ・?だ・・だっだ・・だだがらだずげでぐだざい・・・」 まりさ種は生への執着が尋常でない、と近所のお兄さんに教えてもらったことがあった。 この状況を見て、3人の少年はそのことを思い出す。 餡子をこぼさないよう気をつけて、コウは子まりさを持ち上げた。 「ん?コウちゃん、どうするのそれ?さっさと潰しちゃえば?」 「何にするの?」 「びっぶぉ・・!だ、だずげでぐれでありがどう・・・!」 何を勘違いしたのか、お礼を言い始めた左半分まりさを壺の置かれた場所に運ぶ。 コウは壺を覗いた。 「ゆっぎゅうう!!せまいよっ!!!つぶれちゃうよ!!!」 大きな壺でも6匹も子ゆっくりが入っていては窮屈だ。 最初のほうに入れられた子ゆっくりは、後から入れられた子ゆっくりに踏みつけられる形になっており、ドラ焼きのような形になっていた。 その中の一番上にいた子れいむをコウは取り出した。 「おまえ、さっきコイツに体当たりされたヤツか?」 コイツ、といって指を刺した先には左半分しかない子まりさがいる。 普通だったら姉妹の無残な姿に泣き叫ぶところだが、自分を裏切った上に罵倒までしたヤツだったため怒りしか湧かない。 「そうだよ!こいつがれいむをうらぎったんだよ!!ぷんぷん!!」 コウの手の上で、頭から湯気がのぼりそうなほど怒る子れいむ。 「ぞ・・・ぞんばごどいばないで・・・かぞくだのに・・・」 その家族を犠牲にして逃げたのはどこの誰だったのか。 コウは憤慨する子れいむを、子まりさの隣にそっと置いた。 「うらぎりものは かぞくじゃないよ!!ゆっくりしね!!」 「やめてね!れいむもまりさもれいむの子供だよ!!家族だよっ!」 親れいむが言い終える前に、子まりさは子れいむに踏み潰された。 子れいむの下で餡子を飛び散らせた子まりさがかすかに痙攣していた。 だが痙攣も、だんだんとゆっくりしていき、動かなくなる。 「ゆやあぁあああああ!!!!れいぶのごどもがあああああああっ!!!!」 親れいむが駆け寄るが、そこには甘い香りが漂うだけ。 「ゆっ!うらぎりものはしんだよ!これでゆっくりできるね!!」 もう死んでいる子まりさを何度も踏みつける子れいむは、とてもすっきりした顔をしていた。 子れいむが跳ねるたびに子まりさの餡子が飛び散る。 「どぼじでまりざをおおおおお!!!!!」 すっかり存在を忘れられていた親まりさも、なんとか方向修正を終えたようで、子れいむの方を向いていた。 だがシンに、正反対の方向を向けられてしまう。 「同属殺しはお仕置きだ!」 タケが子れいむを掴み、柔らかい土の上に移動する。 「や!やめてね!!!はなしてね!!!」 子れいむは、お仕置きという言葉に顔を恐怖で染めた。 親ゆっくりも同様だ。 また子供が殺されてしまうことを恐れている。 タケは足で土をえぐり、子ゆっくり2匹分の深さの穴を作った。 「ゆっくりの冬眠だ!」 その穴に子ゆっくりを押し込み、素早く土を被せる。 「ゆびっ!やべで!」 「やめてね!!れいむたちは冬眠はしないよ!!!」 「まりさたちは冬はゆっくりすごすんだよ!!クマさんみたいにはねむらないよ!!!」 親の願いも虚しく、子れいむは生き埋めにされた。 埋まった部分からは、かすかにゆーゆーという声が聞こえる。 「ゆっ!!!まっててね!!!ゆっくり助けるよ!!!」 親れいむが土を掘ろうと近づくが、タケに捕まり、親まりさのように底部縄縛りをされてしまった。 「黙ってみててね」 子れいむの埋まった場所のすぐ横に親れいむを置く。 土に入れられてから1分。 5分。 10分。 土の中から聞こえる子れいむの声は、ゆっくりと小さくなっていった。 「れいむのごどもをだじであげでえええええ!!!!」 親れいむの大声とは対照的に、もう土の中から子れいむの声は聞こえなくなった。 「死んだか?ちょっと出してみよう」 コウが土を掘り返すと、汚いリボンをつけた子れいむが出てきた。 枝でつつくが、反応はない。 「死んだか」 シンがそういった次の瞬間だった。 「ゆ!ゆげっ!!ゆげ!!!ゆっ、ゆっくりするよ!!!」 口から土を吐き出し、子れいむが蘇生した。 「よかったよ!れいむのこどもは元気だよ!!!」 穴から急いで逃げようとする子れいむをタケがつまみ、また穴に戻して土をかけ始める。 「ゆぎっ!もうやだ!!くらいのやだよっ!!!」 「やめてね!!!もう許してあげてね!!」 「すげーな。まだ生きてたよ。どんくらい埋めたら死ぬのかやってみよう」 再び暗い土の中に幽閉された子れいむの声が、地表に届く。 「ゆー!ゆー!」 しかし、今度は誰もその声を聞いていなかった。 生き埋めに飽きたシンが、次の子れいむと子まりさを手に取っていたのだ。 「ゆっ、ゆっくりしようねっ?おにいさん、ゆっくりしてね!」 「ま、まりさはかわいいよ!いっしょにゆっくりしようね!」 人間の力に勝つ術はないと判断したのか、必死で媚を売り始めた2匹。 親ゆっくりよりも状況判断はできるようだ。 「シンちゃん、何する気?」 「まあ見てろって」 シンの左手に子れいむ、右手に子まりさが乗っている。 「おい、おまえこのれいむのこと好きか?」 右手の子まりさにシンが尋ねた。 「ゆっ!れいむはかぞくだよ!だいすきだよ!」 その答えを確認し、今度は左手の子れいむに同じ質問をする。 「おまえ、こっちのまりさは好きか?」 「ゆゆっ!まりさはかぞくだから すきだよ!!ゆっくりしたかぞくだよ!!」 にやりと顔を歪ませたシンはそのまま両手を近づけ、子れいむの頬と子まりさの頬を押し付けた。 「ゆぎっ!」 「ゆぎゅっ!つぶれちゃうよ!!」 「そんなに仲良しなら、もっと仲良くなれや」 タワシを擦るように、子ゆっくり同士の頬をすり始めるシン。 「ゆべべべべべっ!!!」 「いたい!ほっぺがきれちゃう!!!」 まだ頬が乾いているせいか、2匹は激痛に襲われた。 親愛の証の頬擦りが、今はただの苦痛となっている。 しかし30秒もすると、2匹の頬には粘着性のある体液が溢れ、それが潤滑油となり痛みはなくなった。 「ゆふっ!もういたくないよ!」 「ゆほぅっ!それになんだかすごくゆっくりできるよ!」 子ゆっくりはこれが交尾なのだと気が付いていないようだ。 「だめだよ!!すっきりしたらゆっくりできなくなるよっ!!!」 子ゆっくりはまだ成体ではない。 このまますっきりすると黒く朽ちて死んでしまうことを親れいむは知っていた。 「ゆっふぅ~ん?ゆっゆっゆっ。れーむはゆっくりしてるよぉ~?」 「ゆひぃゆひっ!すごくゆっくりだよぉ!」 焦点の定まらない目で親れいむに答える子ゆっくり。 それを見て、シンはこするスピードを上げる。 「ゆっ!なんだか!すごく!ゆっくり!?」 「ゆゆっ!!すっきり!?すっきりしそうだよ!!!」 「ばめだよおおおおぉぉぉっ!!!!ずっぎりじぢゃだめえええぇぇぇ!!!!」 シンがここぞとばかりにすり合わせる速度を上げると、2匹はビクンと大きく震えた。 その様子を見てシンは手の動きを止めた。 「す、すっきりー!!!」 「すっきりー!!!」 2匹は生まれて始めてのすっきりにいたく感動しているようだ。 「ゆ゙ぐぅうううっ・・・!ぞ、ぞんな゙ぁあああああぁぁぁああ・・・」 「ゆぐっ!?」 「ゆぎっ!?」 親れいむの嘆きに答えるかのように始まる変化。 子れいむ、子まりさともに黒ずみ、頭から小さな茎が生え始めた。 「あれ?なんか2匹とも生えて来たんだけど」 「本当だ。なんでだろ?」 成体ゆっくりを何度も交尾させて遊んだ少年達だが、これは始めてみる現象であった。 いつもはどちらか片方が茎を生やしていた。 両方とも生えることなど見たこともなかったし、聞いたこともなかった。 「あとでお兄さんに聞いてみようぜ」 「そうだね、あのお兄さんは何でも知ってるもんね」 「お土産に何匹か持っていってあげようよ」 ゆっくりに関しては近所のお兄さんに聞くのが一番だ。 茎を生やした子ゆっくりは、2匹とも実をつけることなく朽ち果てていた。 「あ゙ぁ゙あ゙ぁ゙あ゙っ!!!こどもがああああああっ!!!!」 黒ずみ壊れた饅頭に頬を摺り寄せようと懸命に体を起こすが、底部が使い物にならないゆっくりが動けるわけもなかった。 「あと何匹残ってる?」 言いながら、タケは壺の中を数える。 狭い壺の中で子れいむ3匹、子まりさ2匹が静かに震えていた。 「も゙、もうやべでぐだざいい!!!ゆるじでぐだざいいい!!!」 存在感が空気レベルまで低下していた親まりさが必死に謝罪を繰り返す。 一体何に謝罪をしているのか、少年達はもとより親まりさ自身も分からなかった。 「ゆっくりの帽子って何でできてるんだろ」 タケは2匹いた子まりさの内、小さいほうの帽子を取った。 「ゆっ!やめて!まりさのきれいなぼうしかえして!!!」 帽子を見てみるが、別段変わったところはない。 ゆっくりサイズだけあって小さいが、普通の帽子と同じに見える。 では、れいむのリボンはどうだろう。 タケは子れいむを手に取った。 「ゆゆゆゆっくりしようねおにいひゃんっ!」 くるりと後頭部を向ける。 リボンはきっちりと結ばれており、ほどくのは骨が折れそうだ。 「めんどいからしゃーない」 ひらひらしている部分を右手で掴み、子れいむの頬を左手で握る。 そしてそのまま勢いよく右手を引いた。 「ぴきいぃぃぃっっっ!!!!!」 リボンごと、髪の毛どころか頭皮まではがれた。 剥がれた頭頂部から中身の餡子がよく見える。 「がっぱっ!!ゆぎはぁああっ!!」 餡子が漏れないせいか、苦悶の表情を浮かべるものの、死ぬ気配はなかった。 「じゃあ餡子でも食うか」 「やべでええ!!!れいむだぢはだべものじゃないよおおおっ!!!」 指スプーンで子れいむの餡子をかき回し、子ゆっくり特有のねっとりとした上質の餡子を取り出す。 ほんのりと甘く、しつこくない後味。 年増のゆっくりのようにパサつくでもなく、ゆっくりしすぎたゆっくりのように歯が解けるほど甘くない。 「おいひー!」 「やっぱ子ゆっくりはおいしーね」 「うんめー」 ソフトボールほどの大きさの子れいむにはたっぷり餡子が入っていたが、育ち盛りの少年3人を前にみるみる減っていった。 餡子の残りが1/5ほどになった所で、コウがストップをかける。 「これ以上食うと、遊ぶ前に死ぬぞ」 「もう殺していいんじゃね?」 「まだこれ使う?」 使うとも、そういうとコウは比較的柔らかい土を手に取った。 「これ、頭に入れたら面白そうじゃん!」 餡子が残ってれば大抵死なない、といわれるゆっくりだ。 元の餡子が入っていれば、他に不純物が入っていても死なないのではないか。 コウはそう思ったのだ。 「おー、いいねそれ!」 「僕が抑えておくから、入れてみ」 シンがぷるぷる痙攣する子れいむを押さえる。 コウとタケが、食べた餡子を埋めるように、茶色い土を詰め込んでいく。 「きいぃぃきっきぃぃ!!!ゆぎぎぎいいいいいいいああああ!!!!!!」 ヨダレが溢れ、地面を黒く染める。 親れいむと親まりさが騒いでいるが、虫の鳴き声となんら変わりない。 少年達は気にせず土を詰め続けた。 「ゆぎゅううあああ!?!?!?いだいいいおおおおお!!!いだいいいいぃぃい!!!!」 土が詰め終わり、開いた頭頂部にさきほど引きちぎった頭部を貼り付ける。 応急処置だ。 内部に入った土が相当に痛いようで、いつまで経っても悲鳴がおさまらない。 親れいむの側に放置してあげても、逃げるどころか親れいむの言葉にすら応じない。 子れいむの頭は内部の土の痛みのことしか考えることができなかった。 「ま!まりさのぼうし!かえしてっ!!」 姉妹を踏み台にしたのだろう、いつの間にか帽子のない子まりさが壺から出ていた。 せっかく作った土れいむを殺されてはたまらない、コウは子まりさをつまみあげる。 「まりさのぼうし!!まりさのぼうし!!ぼうしかえしてっ!!」 両頬を中指と親指で挟まれている子まりさは、いくら声を荒げようとまったく動くことができなかった。 頬に力を入れてもまるでコウの指は動じない。 底部は宙を浮いているので跳ね上がることもできない。 「タケちゃん、とりもちか何か持ってない?」 得意げにタケは笑うと、道具袋から小さな壺をとりだし、コウに差し出した。 「じーちゃんに教えてもらった特製とりもち。指にくっつくとお風呂でよく洗わないと取れないからね」 コウは壺の蓋をとり、そこに30センチメートルほどの枝を突っ込んだ。 枝の先端、8センチメートルほどにとりもちがコーティングされる。 「そしてこれをこうだ」 そのままとりもちがついた方を、子まりさのおでこの上あたりに突き刺した。 「ゆぎっ!いだいっ!!!」 そして今度は子まりさの帽子にとりもちをたっぷりと塗る。 そのときは、専用のハケを渡されたのでそれをコウは使った。 「やめて!まりさのぼうしにへんなのをぬらないでね!!!」 とりもちを塗り終わった帽子を、ささった枝の先端に引っ掛ける。 ニンジンが吊るされた馬のような状態だ。 「ゆ!まりさのぼうし!」 目の前に帽子がある、それだけで子まりさは痛みも忘れてしまったようだ。 決して届くことのない帽子目掛けて前へ前へと跳ねる。 「どぼじで!?どぼじでどどがないのおおおおおおお!!?」 そのまま子まりさは森の奥へと消えていった。 きっと死ぬまで帽子を追いかけ続けるだろう。 「そろそろ帰るかー」 そういったのはシンだ。 残る2人も、そろそろ家に帰ろうと思っていたのか、賛成した。 「ほい、おつかれ」 シンは親まりさ、コウは親れいむの縄を開放した。 底部に縄の跡が生々しく残っているが、跳ねることには何の問題もないようで、すぐに壺に跳ね寄った。 「はやくれいむのこどもに会わせてね!!!」 「まりさのこどもを早く出してあげてね!!!」 少年達は親ゆっくりには興味を失っていた。 死んでも構わない、という気持ちのこもった蹴りが親ゆっくりを襲う。 「ゆべっ!!」 「ゆぎゆあっ!!!」 蹴飛ばされた2匹が田んぼへと落ちる。 3人の少年達は壺を覗き込みながら相談をしていた。 壺に残っているのは子れいむ2匹、子まりさ1匹だ。 「コウちゃん、どれ持ってく?」 「僕は土入りが欲しいんだけど」 「それはコウちゃんが作ったんだから、これとは別にコウちゃんに上げるよ」 ありがとう、と一言。コウはまだ苦しみの声を上げる土れいむを手に取った。 「じゃあ早いもん勝ちね!僕はこの大きいまりさ貰うよ」 タケが取ったのは、最後の1匹となった子まりさ。 この子まりさは長女だった。 隣にいる2匹の子れいむより、若干大きい。 「あっ、それ狙ってたのに・・。残りはどっちもれいむか。じゃあどっちでもいいや。はい、コウちゃん」 残った子れいむ2匹のうち、1匹をシンが抱え、1匹をコウが受取る。 「2匹ともれいむかぁ」 少し残念そうに、コウは左手に握った土れいむと右手に握った子れいむを見た。 「あげないよ!!その子達はれいむとまりさの子供だよ!!!」 「はやく離してね!!!ゆっくりできないお兄さんはゆっくり死ね!!!」 懸命に足に体当たりを繰り返すが、そんなもの人間にはマッサージにしかならない。 興味の湧かない親ゆっくりをまた蹴飛ばし、3人の少年は帰路についた。 続き このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/292.html
「ユックリシテイッテネ!!!」 夕飯の買い物から途中、そんな声を上げる物体を見かけた。 普通のゆっくりによく似ているが、体が赤くて通常のゆっくりと比べると随分早口で甲高い声だ。 「ユックリシテイッテネユックリシテイッテネ!!!」 またとんでもない早口で喋ると、こちらに向かって飛んできた。ギリギリで避けられたが、物凄い速さだ。 「な、何だお前?く、食い物が欲しいのか?」 「ユックリチョウダイ!!!ユックリタベサセテネ!!!」 何だか気味が悪いので大根の葉を少しちぎって投げてみる。 普通のゆっくりなら地面に落ちた後で「食べていいの!?」などと喚きながら食べるだろう。 だが、こいつは地面に落ちるどころか手を離すとほぼ同時に飛び上がって食いついてきた。 何て意地汚い奴だ。目にも留まらぬとはこの事か。 何だかちょっと面白くなってきたので試しにキャベツを一枚剥がして投げてみる。 また飛び上がって食いつく。今度は流石に一口では食いきれないようだが、これまた尋常じゃない速さで食い尽くす。 「何なんだぁお前は?随分ゆっくりしてないゆっくりだが」 「レイムハレイムダヨ!!ツウジョウノサンバイユックリシテルサンバイレイムダヨ!!」 「早口で喋るのはやめてくれ聞き取りづらい。そうか三倍れいむか……そんなのもいるんだな」 「オジサンユックリデキルヒトダネ!!オウチニツレテイッテヨ!!」 「あ?やだよ。お前大食いっぽいんだもん」 「ダイジョウブダヨ!!レイムジブンデゴハントッテコレルヨ!!ツレテイッテヨ!!!」 「…ならいいが。言っておくが家の中を少しでも荒らしたりしたら潰して食うからな」 「ワカッタヨ!!ユックリシテイクヨ!!ユックリツレテイッテネ!!!」 「お前に言われると物凄く説得力が無いんだけどな。まあいいや付いて来い」 「ユックリー!ユックリシテイッテネー!!」 上機嫌そうに付いてくる三倍れいむ。自分でエサを取るなんて、珍しい事を言うゆっくりだな。 それに赤いし、早口だし、全然ゆっくりしてないし。時々普通に歩いてる俺を追い越して待ってる事まである。 「ハヤクハヤク!!ユックリカケアシシテネ!!!」 「無茶言うな。何だってお前はそんなにすばしっこいんだ」 とにかく変わったゆっくりだ。こいつを増やせば高く売れるかもしれんな…… そんな思惑と共に帰宅。 「そら着いた。ここが俺の家だ。言っておくが、お前の家じゃないぞ」 「ワカッテルヨ!!オジサンノオウチダヨ!!セマクテウスギタナクテクサイケドイイトコロダネ!!ユックリシテイクヨ!!!」 「死にたいか?」 「ゴベンダザイ!ヒログデギレエデイイニオイガジマズゥ!!ユッグリザゼデグダサイ!!」 まだ何もしてないのに泣き叫ぶ三倍。変わった奴だな本当に。 「まあいいがな。しかしお前なんだって俺の家に来たがったんだ?エサは自分で取るとか言うし、メリット無いだろ」 「サビシイノハイヤナンダヨ!!ダレカトユックリシタインダヨ!!!ユックリサセテネ!!!」 「寂しいってお前、友達とか居ないのか?」 「レイムトモダチイナイノ!!ミンナレイムノコトイヤガルノ!!オジサンモレイムキライナノ!!?」 「いや別に。まだ何もしてないからなお前は。……ふうん。お前変な奴だからなぁ。それで嫌われてんのか」 狼等の動物も怪我や病気等で他とは違うような奴は爪弾きにされるという。ゆっくりもそうだったのか。 「ま、どうでもいいや。さっきも言ったが、自分でエサを取って、家の中を荒らしたりしないなら家に置いてやる」 「ヤクソクスルヨ!!ゴハンハジブンデトッテコレルヨ!!オウチノナカモコワシタリシナイヨ!!オジサンアリガトウ!!ユックリシテイッテネ!!」 凄く嬉しそうにその場で跳ねまくる。あまりに素早いので表情がよく見えない。声もステレオで面白い。 さて、そうして三倍ゆっくりれいむとの奇妙な同居生活が始まった訳だが。 確かにエサは自分で取ってくるし、家の中でもなるべく大人しくしようとしている。 一ヶ月経ってもその様子に変化は無く、ゆっくりの割に約束事を守れる非常に珍しいゆっくりだ。 あまりに早口なので集中しないと言葉を聞き取れないのが難点だが、それは何度言っても直らなかった。 まあ、それが原因で他のゆっくりから迫害されたのだからもう矯正は無理なんだろうな。 下手に弄って普通のゆっくりと同じになられてもそれはそれで困るし。実害が出てしまう。 そういえば、試しに眠っている隙にこっそり千切って食ったら辛かった。味まで変わってるとは。 その後飛び起きて「ユックリアヤマッテネ!!ユックリアヤマッテネ!!」と泣き叫ぶ三倍を宥めるのに苦労した。 結局傷口を塞いで抱いて寝てやったらとても喜んでいた。普通のゆっくりと違って手間も少ないし、可愛いかもしれない。 そんなある日、そろそろ季節が変わろうかという頃。 普通のゆっくりれいむとゆっくりまりさのつがいが家の庭に這入り込んでいた。 「おじさんだあれ!?」 「ここはまりさたちがみつけたおうちだよ!!!ゆっくりでていって!!」 見つけたも何も、俺は始めから家の中に居たんだが。と、その声を聞きつけたのか三倍が猛スピードでやってきた。 「ユックリデテイッテネ!!!ココハレイムトオジサンノオウチダヨ!!!サキニミツケタノハオジサンダヨ!!」 「ゆっく!?へんなひとがいるよ!!」 「ぴょんぴょんはねてぜんぜんゆっくりできてない!!」 三倍を見てゲラゲラと笑い出した二匹。なるほどこんな感じで迫害されてたのか。 見れば三倍は跳ねるのをやめ、プルプルと震えている。物凄い勢いで。顔がブレて表情が見えん。 「ウルサイウルサイウルサイ!!!ユックリデテイッテネ!!ユックリデテイッテネ!!」 「うるさいうるさい、だってさ」 「おお、こわいこわい」 そう言って再びゲラゲラ笑い出すゆっくり二匹。うーむ。やっぱり普通のゆっくりの方が腹立つな。 三倍なら何を言ってるのかいまいち聞き取りづらいし、動きも異様に速いから逆に笑えるんだが。 「ゆっくりできないひとたちはれいむたちのおうちからでていってね!!!」 「ゆっくりでていってね!!ゆっくりしんでね!!!」 一通り笑ってから飛び掛ってくるノーマルゆっくり二匹。手で弾こうと思った瞬間、二匹とも凄い勢いで横に飛んでいった。 「オジサンニナニスルノ!!ユックリデテイッテネ!!」 どうやら三倍が突き飛ばしたらしい。三倍どころかこいつらの十倍以上の速度はあったと思う。 突き飛ばされた二匹は何が起こったのか分からないような顔をしていた。 「ユックリデテイッテネ!!ユックリデテイッテネ!!」 威嚇しつつ叫ぶ三倍を見て漸く自分達がこいつに突き飛ばされたのだと理解したのか、 顔を真っ赤にして焼いた餅の様に全身を膨らませて三倍に向かっていく。 だが、異常なまでのスピードで跳ね回る三倍には手も足も出ず、一方的に四方八方から突き飛ばされて転がるだけだった。 「ユックリシネ!ユックリシネ!!レイムヲユックリサセナイヒトハユックリシネ!!」 「や゛べでよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 「どう゛じでゆ゛っぐり゛ざぜでぐれ゛な゛い゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 はいパターン入った。この台詞が出る頃には大抵戦意などどこかへ行ってしまっているのだ。 それでも攻撃の手を緩めない三倍。今日のように迫害された日々の記憶でも甦ったのだろうか。 「ユックリシネ!!ユックリシネ!!…ウメェ!!メガッサウメェ!!ハフハフ!!」 「ぎゅっ!!い゛だい゛!!や゛べで!れ゛い゛む゛をだべだい゛で!!」 「ま゛り゛ざはお゛い゛じぐだい゛よ゛!!れ゛い゛む゛だげだべでよ゛お゛お゛!!」 飛び跳ね、突き飛ばしながら少しずつ皮を食いちぎっていく三倍。見る見るうちに餡子が露出していく。 「びゅぐっ……ゆ゛っゆ゛っ……ゆ゛っぐ、り゛……じだい゛……」 「びくびくっ……ぼっど……ゆ゛っぐり゛……じだ……が……」 「ユックリウメェ!!タマンネェ!!ハム!ハフハフ、ハフ!!」 完全に二匹とも動かなくなった後もぐるぐる周囲を回って餡子を食い続ける三倍。結局十分程度で二匹とも食い尽くしてしまった。 「お前、同類でも構わないで食っちまうゆっくりなんだな」 「アンナノナカマジャナイヨ!!ユックリサセテクレナイモン!!」 「ふうん。じゃあお前一人ぼっちなんじゃないのか?」 「ヒトリジャナイヨ!!レイムハヒトリジャナイヨ!!オジサンガイテクレルモン!!ユックリデキテルヨ!!」 ゆっくりの割に殊勝な所もある三倍ゆっくり。あのスピードにこの性格。 ひょっとしたら加工場に持っていけば対ゆっくり用ゆっくりとして高く売れるかも知れない。 それにはまずこいつの数を増やさないとな。可愛いくて忠実なだけじゃ生き残れないんだぜ三倍。 翌日、早速三倍ゆっくりを連れて加工場へ向かう。幸いこいつは加工場がどういう所か知らないらしく、散歩だと言えば喜んで着いてきた。 受付で事情を話すと、奥の部屋へ連れて行かれた。手に持っている三倍がウズウズしているのが分かる。 「中に入ったら大人しくしていろ」という言いつけを守ってくれるのは正直ありがたい。普通のゆっくりは絶対に聞かないからな。 「お待たせいたしました。それが三倍ゆっくりですか?」 部屋で少しの間待つと、この工場の偉い人が来た。何でも繁殖・飼育全般の責任者兼副工場長なのだとか。 「ええそうです。普通のゆっくりと違って赤いでしょう?それに早口で、動きも素早いです」 「ふぅむ…ちょっと部屋の中を走らせてもらっていいですか?」 「はい。おい三倍。この部屋の中を一周だけ走ってみろ。絶対に物を壊したりするなよ」 「ワカッタヨオジサン!!ユックリハシルヨ!!」 ゆっくり、と言いつつその速度は全然ゆっくりしてない。 いつもの超スピードで部屋を一周すると、凄い勢いで膝の上に戻ってくる。タマちゃんが痛い。 「ど、どうですか。こんなに速く動くゆっくりなんて珍しいでしょう」 「そうですねえ。ゆっくりフランの飛行速度よりも随分と速いようです。 番ゆっくり、でしたか。貴方の言う事もよく聞いてるようだし、確かにいけるかも知れないですね」 「そうですか。それでは繁殖の件は……」 「試してみる価値はありそうですね。ただ、失敗すればこの子が死ぬかも知れないですが本当によろしいのですね?」 「ええ、構いません。どうせ拾い物ですし」 「そうですか。それでは早速用意しましょう。着いて来て下さい」 「ユックリデキル!?ユックリデキルヨネオジサン!!」 「ああゆっくりさせてやるよ。だから安心しろ」 不安がってこちらを見て震える三倍。だからブレて表情が見えないってば。怖がってるのは分かるけどさ。 案内された部屋には、数匹の発情したゆっくりれいむが居た。 「ゆっくりれいむは受けになる事が多いですから。では三倍も発情させましょう」 ゆっくり業師とかいう人に三倍を手渡す。業師は慣れた手つきで三倍の体を撫で回し、揺すった。 「ユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユックリシテイッテネェェ」 目がとろんとして動きが少しだけ緩慢になった三倍。ちゃんと表情を見れたのなんて久しぶりだ。 すかさず発情れいむが入っている檻に入れられる三倍。 自身と同じく発情した相手を見つけるやいなや猛スピードですり寄って行く。速すぎて気持ち悪い。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆっくりいぃぃぃぃん!!」 「ユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユックリイッテネ!!ユックリイッテネ!!」 凄まじい勢いで発情れいむに擦り寄りまくる三倍。見る見るうちに発情れいむの息が荒くなっていく。 「ゆっく……ゆっくりいくよ!!ゆっくりいくよ!!ゆぅん……んほおおおおおおおおっ!!」 「ユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユユックリシテイッテネ!!!!!」 例の雄叫びを上げ、ぶるりと大きく震えて動きを止める二匹。しばらくすると三倍の方は元気良く動き回る。 「スッキリー!!」 一方ノーマルれいむの頭からは赤い蔓が伸びている。やがて蔓には三倍と同じ赤い実がいくつも実り、目を覚まして騒ぎ出した。 「ユックイチテイッテネ!!!」「ユックリオハヨウ!!!」「オジサンタチユックイデキユヒト!!?」 「どうやら上手くいったようですね。貴方も三倍も、本当にありがとうございます」 「いえいえ、私は何も。では私はこれで。三倍、帰るぞ」 「ユックリシテイクヨ!!!レイムハココデユックリスルヨ!!!」 「何言ってるんだ。お前の家は……」 「レイムノアカチャンガイルモン!!レイムガソダテルヨ!!オジサンダケカエッテネ!!!」 「…せっかくだからこいつも引き取ってもらえますか?」 「ええ、喜んで。では後でお礼をお渡ししますので先程の部屋でお待ち下さい」 その後、わざわざ工場長までやって来て、普通のゆっくりよりも随分沢山の代金を受け取った。 せっかくなので赤ん坊の三倍を売って貰えないだろうか、と尋ねると無料で一匹貰えた。 これから番ゆっくりが商品化すれば、売り上げ次第でまた配当がもらえるらしい。ラッキーだ。 今はすやすやと高速で寝息を立てているちび三倍を持って家に帰ると、そこには普通のゆっくりが我が物顔で居座っていた。 早速餌が手に入ってありがたい事だ。 大金を貰って機嫌のいい俺は大声で呼びかける。 「おおいゆっくり達。美味しいお菓子があるからおいで!!」 「ゆっ!おかし!!おかし!!おじさんはやくたべさせてね!!」 「さっさとちょうだいね!!くれないならかえってね!!」 上機嫌な俺にそんな口撃は通用しない。さらばゆっくり。 足元に群がってきたゆっくりを一匹残らず踏み潰す。 「ゆ゛びゅぷっ!!」「ぐぇあ」「びゅぷるぷっ!!」「ぱっびっぶっぺっぽおっ!」「い゛だい゛よ゛ぶっぷ!!」 悲鳴でちび三倍が目を覚ます。体は小さいがスピードは成体と変わらないようで、素早く地面に飛び降りて残骸を食い始める。 「ハァハァ、ウッメ!!オジサンオイシイヨコレ!!オジサンモタベレバイイヨ!!ユックリタベヨウネ!!ハム!ハフハフ、ハフ!!」 「俺はいらん。好きなだけ食べな」 こいつも普通のゆっくりとは性格が少し違うようだ。ちゃんと躾ければ番ゆっくりとして役に立つかもしれない。 YUKKURI THE RED COMET END 作:ミコスリ=ハン
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/204.html
※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。(十回超の予定) ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※最初の数回は読者様のストレスをマッハにすることに腐心しています。虐待は次回から。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※今回は人間が悲惨な目に会う描写があり、気分を深く害される恐れがあります。 一応、今回だけ読み飛ばしてもいいように書いていく予定です。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』4 ずっと俺には疑問だった。 突如として現実世界に現れた不可解な存在、ゆっくり。 こいつらは一体なんなんだ。 中身に詰まっているのは餡子のみ。 他のどの生態系にも類を見ない不可思議な機構で動いている。 小麦粉と甘味でほとんどが構成されたその肉体はひどくもろく、衝撃や苦痛でたやすく餡子を漏らして死ぬ。 なにより不可解なのはその知能だ。 言語を話す、という時点で他の動物とは比較にならないほど知能は高い。 ところがその行動は単細胞生物のそれで、 思考力や学習能力にひどく乏しく、目先のゆっくりしか目に入らず、 野生動物なら最低限あってしかるべきはずの危機管理能力が決定的に欠けている。 おそろしく弱いくせに自信に満ち溢れ、無謀なことばかり繰り返す。 こんな生物は、生態系としては下の下で、 とっくの昔に絶滅していておかしくないはずなのだが、 並はずれた性欲に支えられた繁殖力、ただそれだけを武器に、 ゴキブリ以上のしぶとさで地球にしがみついている。 俺にはわからなかった。 大学で少々生物学をかじった身として、 ゆっくりの生物としての整合性が理解できなかったのだ。 性欲以外のほぼすべての特徴が、生物としてマイナス要素しかない。 なぜ、そんな生き物が生まれてきたのだろうか。 生物に意味などあるはずはない。 しかしどの生物も、進化の過程を経て、 思わず感心してしまうほどの適合力を見せて、自らの生活圏とぴったりと結合している。 しかし、ゆっくりは見たところ、どの生活圏にも結合していない。 森に繁殖すれば、たちまちそこの食物を食べつくしてしまう。 町に住めば、人間どもに追われ、迫害されている。 こいつらはなんのために生きているのだろう。 どんなゆっくりプレイスも、例外なく破綻する。 生まれては死に、繁殖しては滅び、流れるようにあちらこちらをさまよう。 こいつらが生物としてぴったりとはまり、安定していられるのはどういう環境なのだろうか。 「何か月かね?」 「は、はい……三ヶ月ちょっとらしいです」 長浜氏はソファに身を沈めたまま、険しい表情をしていた。 「ゆぅ~ん、おじいちゃんどうしたの?なんだかこわいよ?」 「なんでもないよ。あっちへ行っていなさい」 「ゆっくりりかいしたよ!」 絨毯の上を跳ねながら、開け放したドアを出ていくゆっくりれいむ。 長浜氏の邸宅。 広い居間でテーブルをはさんで向かい合い、俺は恐縮しきっていた。 俺の隣には由美。 向かい合ったソファの正面には由美の祖父長浜氏が座り、 その隣に由美の両親が座っていた。 俺の返答を聞いたあと、長浜氏は黙ってこちらを見つめていた。 俺はうつむいて冷や汗をたらしながら、つけ慣れないネクタイの位置を直した。 由美の妊娠を知らされたときには、すでに受胎してから二か月半ばを経過していた。 毎日俺の部屋に通っていたはずの由美が、ある時を境に数日間来なくなった。 心配になった俺は電話で連絡した。 すると、由美は震える声で、産婦人科に行ってきたことを告げてきた。 妊娠を知らされ、俺の喉がひりついた。 ゆっくりの世話に追われてこのところすっかりご無沙汰だったが、 ゆっくりをここに迎える直前、すでにご懐妊なさっていたらしい。 どうする。 俺はしばらく悩み、時間をかけて由美と相談し、結論を出した。 「こういう事柄に関しては、君には忍耐力がなかったようだね」 やっとのことで、長浜氏が仏頂面で言った。 俺は恐縮して頭を下げるしかない。 「大切な孫娘なんだよ。たったひとりの……つい先日、成人式を挙げたばかりだ」 「は。はい」 「君はまだ働いていない学生の身分だろう」 「……はい」 「とんだことをしてくれたよね」 「は」 「嫁入り前の、人の娘に……娘というのは君、宝だよ」 「……」 「おじいちゃん」 「黙っていなさい!」 由美が口を挟もうとしたが、長浜氏がぴしゃりと遮った。 これほど険を含んだ長浜氏は初めてだった。 あの礼儀正しい老紳士が、静かに怒っている。 耐えがたい、重苦しい沈黙。 「どうするのかね」 やがて、ぽつりと長浜氏が聞いてきた。 震える手で膝を握りながら、俺は声を絞り出した。 「……由美さんを、僕にください」 「……今、なんと言ったのかね?」 「僕に由美さんをください!必ず幸せに、幸せにしてみせます!!」 俺は叫びながら顔をあげた。 長浜氏は、顔中をくしゃくしゃにして笑っていた。 「いやいやいやいや、さあさあどうぞどうぞ」 「いや、あの、僕は車なんで」 「いやいやいいじゃないか。帰りは送らせるよ、まあどうぞ」 俺の手に持ったグラスに、高そうな酒がどぼどぼと注がれる。 「いやあうん、懐かしいな。私もそうだったんだよ。 圭一くん、私も君といっしょでね、深窓の令嬢を結婚前に孕ませてしまった。 相手方のオヤジさんにはぶん殴られたよ」 「そうでしたか」 長浜氏は浮かれまくっている。 由美の両親はそれほど浮かれる気にはなれないようだったが、ともかく笑顔を作っていた。 「もしも君が逃げ出すようだったら、ただではおかなかったよ、うん。 しかし、これで全て丸く収まりそうだ。君なら大丈夫だろう、うん、ね。 困ったことがあるならいつでも言ってきたまえよ、我々は家族になるんだからね」 「ありがとうございます!」 「本当に、頼んだからね。由美、いい人を見つけたね」 「うん!」 涙を浮かべ、由美が頷いた。 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくり!!ゆっくり!!」 場の雰囲気を察知し、長浜氏の飼っているゆっくり共が嬉しげに絨毯の上で飛び跳ねている。 この時ばかりはゆっくりが可愛く見えた。 しかし多いな。大小さまざま、何十匹いるんだ。 「由美から聞いているよ」 「え?」 「例の、ゆっくりの事だよ。君の家で飼っている」 「あ、はい……」 声のトーンがわずかに沈んだ。思い出すことさえ不快だ。 「ものすごく大変らしいね。床のうんうんを舐めたんだって?」 「あ、いや、まあ……」 そんなことまで耳に届いていたとは。 あの姿だけは見られたくなかったなあ。 「君は今、ゆっくりが好きかね?」 「…………」 「嫌いだろうね。無理もないよ」 「はい……」 長浜氏の声は穏やかだった。 彼は由美に向きなおって言った。 「なあ、由美。もういいだろ。解放してあげなさい」 「……うん。圭一、今まで本当にごめんね」 「圭一君。そもそもは私までがぐるになって君に頼んだことだったが、 これまで本当に、よく由美に付き合ってくれたね。心から感謝しているんだよ。ありがとう」 ストレートに「試していた」と言ってくるわけじゃないが、 やはりあの計画で、俺が試されていたのは確かのようだ。 夫として由美と向き合っていく忍耐力を、俺は証明したのだ。 「ともかく、君たちは近いうちに夫婦になるのだろ?」 「はい、そのつもりです。準備は大変だと思いますけど……」 「もちろん手伝うよ。それでだ、そういう準備もあるし、 もうゆっくりに一日中かかずらっているわけにはいくまい」 「は……そうですね」 「あのゆっくりはこちらで引き取ろう。 もちろん最低限の躾は必要だろうが、責任をもってできるかぎりゆっくりさせるよ」 「あの、私が面倒見るから!」 「どうするつもりだい、由美。これまで通り自由奔放にゆっくりさせるのかい?」 「できれば、そうしたいんだけど」 長浜氏はしかしかぶりを振った。 「もうよしなさい。結果は出ているだろう」 「結果……」 「圭一君。君たちはゆっくり達の言うことをすべて聞いてきた。 すべてゆっくり達の思うままにさせた。そうだね?」 「はい」 「では改めて聞くが、あのゆっくり達は、 他のゆっくりに比べてゆっくりできていたと思うかね?」 俺は少し考え、答えた。 「いいえ」 「子供を殺したんだって?」 「えっ」 自分のことを言われてるのかと思い、一瞬どきりとした。 「れいむとありすがいがみ合い、互いに子供を殺し合ったそうじゃないか」 「あ、はい」 「そして結局、増えすぎた子供たちは間引かれていった」 「……はい」 「まりさ達は他のゆっくりを虐げた。 甘味を与えるたびに、その甘味を家族で奪い合った。 互いに憎み合い、相手の隙を窺い、強者の存在に怯え、強者は反発に苛立つ。 いつ子供たちが殺されるか虐められるかわからず、戦々恐々とする生活。 由美。そんなゆっくり達が、ゆっくりしていると思うのかい?」 由美は眼を伏せた。 「ゆっくりしていなかっただろう?」 「……うん」 「今回のことはいい経験だったな、由美。 ゆっくりという生物は、自分にとって一番いい選択をする判断力が足りていないんだ。 ただ目先の欲求だけで行動し、結局はそのつけが回ってきて面倒事を増やし、苦しむことになる。 ………もしかしたらそれは人間も同じことかもしれないね。程度は大きく違うが」 俺は頷いた。 まあ、ゆっくりと一緒にされたくはないが。 「お前の計画は、ここで終わりにしよう。 今回のことを糧に、改めてゆっくりが本当にゆっくりできる為にはどうすればいいか考え直してみればいい。 あのゆっくり達はこちらで引き取るよ。 もちろん一旦味をしめさせた責任はあるから、できるかぎりは贅沢をさせてやる。 他のゆっくりに悪影響が出るだろうから、個室で飼おう」 「うん。わかった」 由美は頷いた。 「でも、あたしも面倒見てもいいよね」 「うん。好きにしなさい」 好々爺の笑みで、長浜氏は頷いた。 すべて終わった。 運転手のハイヤーに乗せられて長浜氏の邸宅をあとにした今、俺はようやく肩の荷が下りた。 いや、これから結婚や求職もろもろで本当に忙しくなるのだが、 そんなものはあのゆっくり共の相手をすることに比べれば些細なことに思えた。 本当に大変だった。 しかしそれは報われた。 長浜氏は俺を認めてくれ、俺は由美と結婚できることになった。 こうして結果が出てみれば、自分でも驚いたことに、 あのゆっくり達に感謝の念さえ湧きあがってきた。 なにはともあれ、やつらは俺にチャンスをくれたのだ。 「今まで本当にごめんね。大変だったよね」 隣に座る由美が改めて詫びてきた。 「うん。大変だった。すごく」 強がってみせる余裕もなく、俺は正直に苦笑した。 「あんなゲスゆっくりが、本当に可愛いのか?」 俺はここで初めてゲスという言葉を使ったが、由美は否定しなかった。 「うん。おかしいよね」 「どこが可愛いの、あんなの」 「それは、ええと、ゆっくりと人間と同一視してるから可愛くないんだと思う」 「え?」 いつになく真面目な顔をして、由美は言った。 「礼儀とか思いやりとかは、人間のルールだよね。 そういうのがない人は、私も嫌い。 でも、ゆっくりは、人間とは違うルールで生きてる。 ふつうの人間にとっては不愉快かもしれないけど、私は人間とは別物だと思ってるから、腹が立たない。 私ってゆっくりオタクだから、人間の手垢がついてない純粋な子ほど可愛いと思っちゃうんだね」 「そんなもんか」 共感はできなかったが、素直に受け止めることができた。 「でも、今回の失敗でまたわからなくなっちゃった。 ゆっくりのルールって一体なんだろうね。 人間のルールを押しつけたほうが幸せになれるのかな? ゆっくりって、ゆっくりするために生きてるんじゃないの? どうしてなかなか、自分たちでゆっくりできないのかなあ……」 毎日ものすごい数が生まれ、そのほとんどが死んでいくゆっくり。 わざわざ人里に下りてきて、家や畑を荒らしては潰されるゆっくり。 ゲスやレイパーや共食い、同族で殺し合うゆっくり。 ゆっくりとは、一体なんのために生きているのだろうか。 「ゆっ、おそいよ!!ごみくず!!」 由美と一緒に家に戻れば、甲高い挨拶が飛んでくる。 「ぐずぐずしないであまあまをもってきてね!!」 「そのめはなんなの?ばかなの?たちばわかってるの?ばぁーか!!」 「まま、かちくがもどってきたわよ」 「あらそう、どこをほっつきあるいてたのかしら。 そろそろしつけなおしたほうがいいかもしれないわね」 「ゆっくりしないでしね!!げらげらげら!!」 「とっととうんうんをなめるんだぜ!!たっぷりためといてやったんだぜ!!」 子ゆっくり共は成体サイズになり、滑舌もまともになっていた。 改めて眺めると、よくもこんな連中と付き合ってきたものだと思う。 しかし終りが見えた今は、そんな声も耐えて受け流すことができた。 ゆっくり共の罵声を無視し、鞄を放り出して横になる。 無視できることがこんなに有難いとは。 「ゆっ!?ごみくず!!なにゆっくりしてるのぉ!?さっさとおきてせいざしてね!!」 「あまあま!!あまあま!!きいてるのかだぜ!?ゆっくりするんじゃないのぜぇ!!」 「くちをあけるんだぜ!!うんうんをじかにたべさせてやるんだぜ!!」 無視無視。 よじ登ろうとしてきたゆっくり共を適当にあしらって追いやる。 潰してやりたいところだが、こいつらは長浜氏の家に飼われるのだからそうもいかない。 「ぎいでるのがああああああああゆっぐりごろじいいいいいいいいい!!!?」 その言葉にはさすがにどきりとした。 一緒に来ている由美のほうを見る。 しかし由美はそれには触れず、かがみ込んでゆっくり達に言った。 「れいむちゃん、まりさちゃん、ありすちゃん。みんな聞いて。 明日、みんなでお引越ししましょうね」 「ゆっ!?」 「ここではもうゆっくりできないの。 もっとゆっくりできるゆっくりプレイスに連れていってあげる」 ゆっくり共は一瞬きょとんとしてから顔を見合わせ、その後げらげらと笑い合った。 「げらげらげらげら!!ばかがなにかいってるのぜぇ!?」 「ゆっくりプレイスはここなんだぜ!!まりささまがきめたんだぜ!!」 「いいのよ、おねえさん。かちくがむりにあたまをつかわなくてもいいの。 かんがえることはとかいはなありすたちにまかせておきなさいね」 「むのう!!のろま!!ばぁーか!!ろどん!!」 予想できていた反応に、由美は困ったように笑った。 「ね、これからは人間さんの話を聞いて。 今度のゆっくりプレイスでは、人間さんがみんなをゆっくりさせてくれるわ。 でも、人間さんの言うことを聞かなくちゃだめよ」 ぼひゅっ、という音が響く。 ゆっくり共が吹き出したらしい。冗談じゃないという驚き、ちゃんちゃらおかしいという嘲笑の両方だろう。 「ばかなの?しぬの?あたまつかってる? そんなところでゆっくりできるわけないでしょぉぉ!!」 「いーい?にんげんさんはごみくずでのろまな、かとうなせいぶつなの。 ゆっくりがみちびいてあげなきゃいけないの。いうことをきくのはにんげんさんのほう。 わかるかしら?もういちどいってあげましょうか?」 「かわいがってやっていればつけあがるなだぜ!! にんげんのいうことをきくぐらいならゆっくりするんだぜぇ!!」 最後の発言は意味がおかしい。 「勝手よね、私たち。今更しつけようなんて」 「そうだな」 由美に頷いてやる。 虐められているうちは、叩き潰してやりたいと渇望していたものだが、 このゆっくり共もある意味では被害者、もとい被害ゆっくりなのだ。 そう思うとなんだかどうでもよくなった。 ただし、あくまで「ある意味で」という前置きつきでの穿った見方だ。 ガラスを割って侵入してきたこのゲス、追い払ったところで別の人間に潰されるか、 群れの中で孤立して自滅するかだろう。 まあifの仮定なんかしたって無意味だが、こいつらが不幸だなどとは言わせない。 最低限のルールは課されることになるが、これから行くところだって、 死ぬまで存分にゆっくりできる夢のようなゆっくりプレイスだ。 とにかく、明日の昼には迎えが来て、 こいつらは長浜氏の邸宅に移されることになる。 その旨を伝えると、ゆっくり共は俄然騒ぎ出した。 「なにいってるのぉおお!?ばかなのぉぉぉぉ!!!」 「まりささまはここにすむんだぜぇぇぇ!!しねぇ!!!しぬんだぜぇぇぇ!!!」 「このかちくはもうだめね! そこのおすにほかのつがいをさがさせましょう」 「おい、なにゆっくりしてるんだぜぇ!! このばかをなんとかするんだぜ!!あのことをいわれてもいいんだぜぇ!!?」 「あのことって?」 由美が聞いてきた。 「全部話すよ。それより、もう出よう。 もう一晩だってこいつらといたくないよ」 俺は由美を近くのファミレスへと誘った。 「おいぃ!!にげるなだぜぇ!!ごみくず!!もどれぇぇ!!」 「ゆっくりごろし!!ゆっくりごろし!!あかちゃんごろしいいいい!!」 結局、俺は子殺しに加担した全てを、ショックを与えないように細部は省いて話した。 俺がゆっくり愛好派ではないことはもともと承知の上だし、 計画が失敗に終わったという結論が出た今、取り繕うこともなかった。 由美は悲しんだが、結局は許してくれたようだ。 「全部、私のせいよね」 「よせよ。みんな悪かったんだ、俺もお前もおじいさんも、もちろんゆっくりも。 後悔したって始まらない。みんなでやり直そうぜ」 「そうね」 あのゲスどもに関しては、俺はもう関わらないけど。 その日は、由美を送り返したあと近くのビジネスホテルに泊まった。 問題は山積みだが、それでもあのゲスのいない生活を考えるだけで心は浮き立った。 翌日から、俺はそれまでの鬱憤を晴らすかのように勉学に打ち込んだ。 もともと勉強好きな俺は、遅れを取り戻すべく、大学でも自宅でも猛烈に並び、 一時落ちていた成績を再び大学トップクラスにまで戻した。 同時に、就職活動も行った。 有名大学で優秀な成績を収める俺にとって、そう難しいことではなかった。 だが、結局は長浜氏の強い勧めで、長浜グループ関連の建築会社に内定が決まった。 コネを使うことになってしまったが、実力的にも不足はない。 在学中に結婚までしてしまった。 長浜氏の願いで、俺が婿養子として迎えられることになった。 由美は一人っ子だし、家柄を考えれば無理もないか。 順風満帆だった。 我ながらなんというシンデレラボーイ。 あの地獄に堪えた報酬は、十分見合ったものだった。 だが、そんな地位や収入などよりも、 俺は何より、由美との結婚生活が楽しみだった。 愛する妻、子供、ピクニックやキャッチボール。 陳腐だが愛にあふれた家庭生活を想像するだけで、俺はすでに幸福の絶頂にいた。 俺は長浜氏の邸宅に一時的に住んでいた。 就職するまでは、という長浜氏の強い勧めだった。 あの人はなんだかんだで、いろいろと強引に勧めてくる。 一人ではしゃいでいる祖父に比べ、 由美の両親のほうは少々ぎこちなかったが、おいおい打ち解けていけるだろう。 「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 「ごはんのじかんになったらあまあまをおねがいね!!」 長浜氏の邸宅には、ゆっくりが大量にいた。 れいむ種、まりさ種、ありす種、ぱちゅりー種、ちぇん種やみょん種などレアなものも。 正直うざったかったが、あのゲスどもに比べれば天地の差。 これだけしつけが行き届いていれば問題なく付き合っていけそうだ。 問題のゲス共は、ひどいものだった。 ここに連れてこられてすぐに個室に移されたが、 しつけをしようとしても全く言うことを聞かない。 人間は自分たちの奴隷だ、黙って言うことを聞け、あまあまをもってこいの一点張りで、 そればかりか嬉々として嫌がらせをしてくる。 少々強く言うと、ものすごい剣幕で火がついたように暴れまわった。 長浜氏の知人である有名ゆっくりブリーダーに見てもらったが、これはダメだろうとのことだった。 「ここまでつけ上がったゆっくりは、多分もう無理だと思います。 人間をなめているばかりか、明確な悪意を向けてきている。 しつけるにしても、ものすごく強烈なやり方でないと。 もしかしたら死んでしまうかもしれませんよ」 さすがにそこまですることもない、という長浜氏や由美の意見で、 結局このゆっくり共は、郊外に外出する時以外は個室から出さずに寿命まで勝手にやらせることにした。 といっても、こいつらは外出することはあまりないが。 「しかし、よくもまあここまでつけ上がらせましたね。びっくりしました。 ここまでの個体は初めて見たかもしれません。 逆にゆっくりブリーダー向きかもしれませんよ、あなた」 俺はそう言われたが、勘弁してくださいと首を振った。 そんなゲスどもを、由美は相変わらず面倒を見ている。 長浜邸では、家族だけでなく使用人も大勢のゆっくり共の面倒を見ているが、 あのゲスは使用人でさえ関わりたがらず、結果としてほとんど由美が面倒を見ることになった。 結局相変わらず甘やかしているようだ。 「おねえさんはゆっくりしないでおうたをうたってね!!」 「きたないうたなんだぜ!!ゆっくりできないからとっととやめるんだぜぇ!!」 「げらげらげらげら!!」 しかし、ついに別れのときがやってきた。 俺が就職し、なかなか広いアパートに住むことも決まった。 子供が生まれたら、最初は自分たちの家に迎えたい。 そういう俺の希望で、出産の前に引越しの手続きを済ませることになった。 一応、出産前後は由美の母がアパートに通っていろいろ手伝ってくれる。 由美のお腹の子は五か月になっていた。 お腹の膨らみもはっきりとわかる。 俺の宝だ。 引っ越し前日の夜になって、 由美はあのゲス共に別れの挨拶をしてくると言った。 俺は挨拶などする気も起らず、寝室で由美を見送った。 俺はずっと疑問だった。 身体能力や耐久性はあまりに弱いゆっくり。 しかし、その自意識は身の丈をはるかに超え、 危険な場所やより強大な敵に、自分から飛びこんでいく。 その構造は一体なんなのだろう。 生物として、全く理にかなっていない。 何度考えても、生物学的にまったく説明がつかなかった。 ゆっくりとは一体なんなのか? 由美はいつまでも帰ってこなかった。 十二時時を過ぎて深夜になっても、由美は二人の寝室に戻ってこなかった。 由美がゲス共に会いに行ってからすでに三時間。 いくらなんでも別れを惜しみすぎではないのか。 俺は立ち上がり、ゲス共の部屋に向かった。 「由美。俺だ。いるのか?」 ドアをノックしたが、返答はなかった。 しかし気配はあった。 中でわめき声が聞こえている。ゆっくり共が騒いでいるのだ。 いつもの事だった。 しかし、その声に俺はどこかいつもと違う空気を感じた。 なんだ? 俺はドアを開けた。 「ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!」 「んほぉおおおおおおおおすっきりいいーーーーーーーーーっ!!!」 「ゆっくりするなだぜぇ!!さっさとおきるんだぜぇ!!!」 由美と娘はそこにいた。 「ゆっ!!ごみくずがやってきたんだぜ!!」 「ゆゆっ!?いまごろきてもおそいよ!!げらげらげらげら!!」 「んっほぉぉぉぉおおお!!!きもちいいわああああああ!!!」 俺は膝をついた。 言葉が出なかった。 脳が思考を放棄し、体が震えて動かなかった。 「ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!」 執拗に飛び跳ね、踏みつけていたれいむは、 俺を認めると、そこに乗ったままで罵ってきた。 「くそじじいのあかちゃんはしんだよ!! れいむだっておちびちゃんをころされたんだからね!! ゆっくりりかいしてくるしんでね!!ざまぁ!!」 まりさ共が、由美の体に体当たりを繰り返している。 「まりささまのゆっくりベッドでゆっくりするんじゃないんだぜぇ!! くそどれいにそのふかふかはもったいないのぜ!!おきるんだぜえぇ!!」 由美は動かなかった。 頭をまりさ用の天蓋つきベッドに突っ込んだまま、ぴくりともしなかった。 天蓋は一部の骨組が折れ、由美の頭の下に敷かれている。 「あかちゃんのおはだすべすべよぉぉぉぉぉ!! なんかいでもいけるわあああああんほおおおぉぉぉすっきりいいいいいーーーーっ!!!」 ありす共が粘液にまみれながら絶叫している。 親子五匹のありす共が、それにまとわりついて蠢いていた。 地獄。 無間地獄。 こいつらは。 俺は泣きながら這いずっていった。 震える喉からやっとのことで絞り出したのは、次の問いかけだった。 「どうして」 それは、このゲス共に向けた質問ではなかった。 俺は何に向かって問いかけたのだろうか。 「ゆっ!!ごみくずはばかすぎてあきれるんだぜぇ!! ごみくずのたくらみなんてまりささまはすべておみとおしなんだぜ!? おきのどくなんだぜぇ!!げらげらげらげら!!ふっきんほうかい!!」 まりさが笑っている。 「ゆふぅ~……とかいはなせれぶのありすには、 いなかもののかんがえることなんておみとおしよ」 「ままはおみとおしよ!あてがはずれたわね!!んほっ、んほほぉぉ!!」 「どうしてわかったかおしえてあげましょうか? ありすがまえにすんであげていたゆっくりぷれいすのにんげんは、 はじめはありすにぞっこんで、かいがいしくありすにほうししていたわ。 ありすがいえば、すっきりようのゆっくりをつぎつぎともってきた。 にんげんがあれこれやってくれというから、 やさしいありすはおのぞみのぷれいをみせてあげもしたわ」 このありすの飼い主が、あの技術を教えたのか。 「でも、そのにんげんは、あれほどかわいがってもらったおんもわすれて、 このありすをうらぎった。 にんっしんっしたのよ。 にんっしんっしてこどもがうまれたたとたんに、 そのにんげんはありすをゆっくりぷれいすからほうりだした。 じぶんのこどもにかまけて、 ほんらいのしごと、ありすのどれいのせきむからにげだしたのよ!」 「んほっ、まったくにんげんはいなかもののかとうどうぶつよね! ちゃんとみてないとすぐににげだすんだから!!」 「このおねえさんがにんっしんっしたときから、 ありすにはこうなることはわかっていたわ。 あなたたちにんげんは、こどもができると、まわりがみえなくなる……」 「だからまりささまがまびいてやったんだぜ!!」 まりさが引き継いだ。 「こどもをみてしこうていしするまえに、 まりささまがまよいのたねをつみとってやったんだぜ! ごみくずどもはいままでどおり、つよくてかっこいいまりささまにしんすいして、 まりささまだけにつかえていればいいんだぜ!!」 「あらりょうじだったけど、れいせいになってよくかんがえなさい。 おちついてかんがえればこれがただしいとわかるはずよ。 いなかもののかとうせいぶつでもね!!」 「れいむはおまえにこどもをころされたんだよ!! こどもをころされるくるしみがわかった!?もっとくるしんでね!!げらげら!!」 ゆっくり共は、悪意の塊のような表情を浮かべてせせら笑っていた。 それはひどく醜く、どれほど憎んでも足りなかった。 「こどもはありすにおかされてしんだよ!! くやしい?くやしい?ねぇねぇ、いまどんなきぶん?どんなきぶん?ゆっゆっゆ~♪」 震えて泣きながら、俺はゆっくりと疑問が氷解していくのを感じていた。 「ざまぁ!!ざっまぁぁぁぁ!!くやちぃくやちぃ~~~~~♪」 ああ。 「げらげらげら!!そしてこのかお!!ないてるときがいちばんばかみたいなんだぜぇ!!」 そうか。 「ごみくずはむせびなき~♪れいむたちはいいきぶん~♪ゆっゆ~~ゆゆゆ~♪」 お前たちは。 「このおねえさんひっどいかおよねぇ、みっともないったらありゃしない! とかいはにこーでぃねーとしてあげるわ!んほおおぉぉすっきりいいーーーーーー!!!」 苦しむために生まれてきたんだな。 由美は死んではいなかった。 しかし、病院で医師に宣せられたことは死と同義だった。 頚椎骨折。 あの部屋で倒れたとき、首の部分がちょうどまりさの天蓋つきベッドを下敷きにして、 その骨組をなしていた木材にぶつかり、頚椎を折っていた。 脊髄を損傷して由美は全身不随となり、意識も失ったまま戻らなかった。 病院のベッドで点滴を受け、なにも映さない目で天井を見つめるだけの生活になった。 子供は女の子だった。 発見したときにはすでに手遅れになっており、 その亡骸は、長浜家の墓に埋葬された。 俺が決めてあった名前が、その墓には彫られた。 長浜氏と俺の意向を受け、 その事件は日本中に大々的に報道された。 その主犯であるあのゲス共は事情聴取を受け、 警察やテレビの取材班に喜々として自分の所業を語り、 その様子は日本中に放映された。 「まずまりささまがあしにまりさしゃいにんぐあたっくをくらわしたんだぜ!!」 「そしたらおねえさんがぶざまにたおれたんだぜ!!おとうさんはつよいんだぜ!!」 「たおれたところにれいむがおなかのうえでぴょんぴょんしたんだよ!! ごみくずのあかちゃんはすぐにでてきたよ!!にんげんさんはもろいね!ぷげら!!」 「あかちゃんのおはだはとってもすべすべもちもちしていてとかいはだったわ。 またもってくるならすっきりしてあげてもいいのよ?」 「おなかすいたあああ!!れいむおうちかえるうううう!!」 それは飼いゆっくりによって人間が殺された日本史上初の事件だった。 日本中がその事実に震撼し、愛護派の多くが認識を改め、虐待派がさらなる気炎をあげた。 その日から、日本中で捨てゆっくりの数が増大し、 同時にむごたらしく殺されたゆっくりの死骸が町に散乱し、市民はその処理に追われた。 だが、殺されるゆっくりに同情する者はいなかった。 日本の法律では、ゆっくりを罰する法は制定されていない。 人を殺し、全身不随に追いやったそのゆっくり共を憎み、処刑を望む声は高かったが、 俺はそのゲス共を手元にとどめた。 長浜氏は憔悴しきってうなだれていた。 俺はあの居間でテーブルをはさんで向かい合い、黙っていた。 居間にゆっくりの姿はない。 長浜氏の邸宅から、ゆっくりの姿は一掃されていた。 すべて加工所に送られていた。 もはやゆっくりの姿を見るのも嫌なのだろう。 先日は、道端で出会った野良ゆっくりにあまあまを要求され、 長浜氏らしからぬ激昂を見せて踵で一息に踏みつぶしていた。 いまではゆっくり愛護会の会長も退いている。 重苦しい沈黙が流れたが、 やがて長浜氏が言った。 「すべて私のせいだ」 孫と同じ事を言う老人が悲しかった。 「ただ一度だけ、一度だけ叱りつけてやればよかった。 強くたしなめれば、あの素直な孫は言うことを聞いてくれ、あんなことはやめたろう。 私がそれをせず甘やかしたために、たった一人の孫娘とひ孫を、君の妻と娘を死なせてしまった」 「お祖父さん」 「私を恨んでくれ」 震える老人はひどく小さく見えた。 「それは僕の言う事です……あなたの孫娘を守れなかったこと、深くお詫びします。 このことは、一生をかけて償うつもりです」 「圭一君」 俺は長浜氏に向かって、毅然として言い放った。 「僕は誰も恨んでいません。 僕の恨みは、あのゲスゆっくり共に全て向けられています」 「君の注文どおり、やつらは元の個室でのうのうと贅沢三昧の日々を送っておるよ」 「そのようですね。ありがとうございます」 「どうするつもりかね?」 「どう、とは」 「やつらをどうするのかね」 「質問で返すことをお許しください。 お祖父さんはどのようにしたいとお思いですか?」 「殺してやりたい!」 テーブルに拳を叩きつけて長浜氏は叫んだ。 「この手で引き裂いてやりたい、踏みつぶしてやりたい!! やつらは、やつらは……私は今まで………今ごろになって………」 すべては遅すぎた。 長浜氏は自分を責めていた。 あの日から眠れた日がどれだけあったろうか。 「僕に任せてくださいませんか」 「……どうするのかね」 「一息に殺したところで、この恨みは晴れるものではないでしょう」 俺はノートを取り出し、長浜氏の前に置いて言った。 「僕は人をやめます。どうぞ軽蔑してください」 俺の顔を見てから、長浜氏はゆっくりとページをめくった。 彼は眼を見開いた。 ノート一冊分にびっしりと書き込まれたそれは、俺の計画書だった。 「これは……」 「あの日から書き続けていました。まだ未完成ですが」 眉をひそめてそのノートを食い入るように見つめていた長浜氏は、 自分の頬を掴みながら呻いて言った。 「……わたしはかまわない。 しかし君は……それでいいのか」 「はい」 「君にはまだまだ先の人生が残っている。 こんなことに……こんなことで……人間を捨てることはない」 「僕はこれから先の人生を、あのゆっくり共に捧げるつもりです」 「私がやる。これは私がやろう。しかし君は」 「これから先、同じ犠牲者を生まないためです。 そしてこれは、ゆっくり達のためでもあります」 「こんなことが?」 俺は頷いた。 狂人と思われようとかまわなかった。 「ゆっくりは苦しむために生まれてきたんですから」 「……それは」 「あの生物がどういう生き物なのか、ようやくわかったんです。 あいつらは弱い。痛みに弱く、耐久性もなく、ひどく簡単に苦しみ、壊れる。 そのくせ悪意や闘争心が強く、強い外敵に向かって無謀な喧嘩を売り、執拗に挑発する。 どこにも根付くことができないくせに、どこにでも入り込む。 そんなゆっくり共が生物として安定している状態は何か、ずっと考えていました。 そしてそれは、苦しんでいる状態でした」 「それは、君……いくらなんでも」 「そう考えれば、すべてにつじつまがあいました。 やつらの行動はすべて、苦しむというただそのことに向けられている。 生まれては死に続け、憎まれ虐げられつづけるゆっくり共は、 そのことですでに生物としての目的を達しているんですよ」 「………」 「僕は残りの一生を、やつらのために捧げます。 今こそ僕は、苦しむために生まれてきたやつらの奴隷になりましょう。 人間のために、ゆっくりのために、お互いの種の安定を目指そうと思います」 「圭一君」 力なくうなだれ、長浜氏は言った。 「君は変わったな」 「変わりました」 俺は答えた。 計画は実行されることになった。 計画には長浜氏が全面的に尽力してくれることになり、 さらに二か月間が準備期間にあてられた。 都心からそう遠くない、しかし奥まった山奥の廃墟が選ばれ、 目的のために改築された。 その間、ゲスどもはあの個室で贅を尽くしていた。 長浜氏や俺の指示に従い、使用人たちは毎日やつらの面倒を見ていた。 実行の日。 今、俺は改築された建物の中で、 大きなテーブルの前に立っている。 テーブルの上には、睡眠薬を食事にまぜられた十三匹のゆっくりが眠っている。 「ゆぴぃ……ゆぴぃ……ゆぴぃ……ゆぴぃ……」 あの日、俺の部屋に侵入してきたまりさとれいむ。 まりさが外から連れ込んできたありす。 それぞれが50cmのバランスボール大だった。 そしてその子供、子れいむが三匹、子まりさが三匹、子ありすが四匹。 十匹とも30cm大のバスケットボール大。 テーブルを囲むのは、計画の実行に関わる人々。 長浜邸の使用人やゆっくりの研究者たち。 計画のリーダーは俺だ。 俺の計画を、これからこの手で実地に行うことになる。 こいつらのために、持てるすべてを捧げよう。 涎を垂らしながら泥のように眠りこむゆっくり共に向かって、 俺は静かに声をかけてやった。 「ゆっくりしていってね」 続く 選択肢 投票 しあわせー! (0) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (0) 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2762.html
ゆっくりは饅頭の妖怪みたいな奴だと俺は思う。 動物と違って本当に体の作りは饅頭としか言えないのに、動いて人間と喋るからだ。 そんな近年現れた動く饅頭、ゆっくりはペットとして飼われるようになった。 よくもまぁ得たいの知れんものを飼う気になるとは思ったが、どんどん飼う人間は増えているようだ。 何故そんな事を言うのか、今目の前で飼われているゆっくりとその飼い主の人間が目の前に居るからさ。 「やめるんだぜ!! ゆっくりやめるんだぜ!!」 「野良の癖にゴールドバッチのれいむに命令するの? 馬鹿なの? 死ぬの?」 「れいむ、こいつは野良で馬鹿なゆっくりだかられいむがゴールドバッチって事が分からないんだよ」 「そうなの? 本当に野良のゆっくりは馬鹿ばかりなんだね!!」 「あぁ、だから僕らはこうやって野良のゆっくりを駆除しているんだよ」 「まりさは何もしてないんだぜ!! 痛いことはやめるんだぜ!!」 「うるさいまりさだね!! 少しは黙っててね!!」 「こら、れいむ。噛んじゃ駄目だろ? れいむの口が汚くなるじゃないか」 「ゆゅっ、お兄さんごめんなさい!!」 「謝らなくてもいいさ。さ、じっくりゆっくり駆除しようか」 「ゆっくりわかったよ!! まりさはゆっくり死んでね!!」 目の前の光景を、俺はベンチに座って紙パックの珈琲牛乳をストローで啜りながら眺めていた。 楽しそうに笑うれいむとその飼い主。そして、飼い主に踏まれ飼いれいむに体当たりをされているまりさ。 あのまりさは野良のゆっくりだ。そして、野良のゆっくりがこんな目に遭うのは別に珍しい訳ではない。 「はなしてじでくだざい!! まりざはなんにもじでないんでず!! おねがいじまずうぅぅぅ!!」 「お兄さん、野良の癖にお願いとか言ってきたよ?」 「聞く必要があると思うかい? こいつは今僕らの遊び道具なんだから、れいむは楽しめばいいんだよ」 「だね!! まりさはそのまま泣いててね!!」 ゆっくりはその独特な外見である一部の人間から絶対的な人気を得た為に、飼われるゆっくりが増え結果今のバッジシステムが誕生した。 ゴールド、シルバー、ブロンズの3つに分かれているバッチは、その種類によってゆっくりがいかに優秀か表したものだ。 最高峰のゴールドを付けたゆっくり、あのれいむはゆっくりの中でも特別に選ばれた存在とも言えるだろう。 ま、選ばれたって言ってもそれはつまりどれだけ飼い易いかって事なんだが。 「ゆぅ…… ゆぅ……」 「泣かないとか馬鹿なの? もっとれいむたちを楽しませてね!!」 「れいむが頑張りすぎたからだよ。ちょっと待ってな、そこの自販機でオレンジジュース買ってくるから」 「お兄さんありがとう!! れいむ、次はもっと頑張ってお兄さんを楽しませてあげるからね!!」 「あぁ、期待してるからな」 そして、飼われているゆっくりとは別に野良のゆっくりもある一部の人間からある人気を得た。 それが今目の前で起きている虐待だ。 ゆっくりは喋れる事で、人間と同じように苦痛を訴え、助けを請い、無様に死んでいく。 その姿を見て目の前にいるような人間は楽しいらしい。 「今度はじっくり苦しめてあげるからね!! まりさはれいむに感謝してね!!」 「いやだあああああああああああああああああ!!!! はなじでええええええええええええええええええええええええ!!!!」 「れいむ、こいつはしっかり押さえてるから頑張れよ」 「任せてね!!」 また、飼われているゆっくりは野良のゆっくりを同種・仲間とは認めなくなった。 野良のゆっくりであれば、仲間を痛めつけろと言われた所で断られる。仲間意識という奴だ。 だが、飼いゆっくりは野良のゆっくりに対してそんな意識は働かない。自分達にはバッジがあるのに、野良にはバッチが無い。だから仲間じゃない。 そういう風に飼いゆっくりは認識するらしい。 「あれ? お兄さん、まりさ動かないよ?」 「う~ん…… きっとれいむが強くなったから、れいむの体当たりに耐えられなかったんだな」 「そっかぁ……」 「仕方ない、今日は帰ろうか」 「うん、ゆっくり家に帰るよ」 そう言ってれいむの飼い主は足で踏んづけていたまりさを踏み潰すと、れいむと一緒に公園から出て行った。 人間や飼いゆっくりが野良のゆっくりを虐めて殺すようになってからは、こんなのは日常的な光景なのだ。 俺はベンチから立ち上がり、持っていた珈琲牛乳の紙パックをクズ籠にいれてまりさの残骸に近づく。 踏み潰された饅頭がそこにはあった。 「で、今日はやけにあっさり死んだフリするんだな」 俺は潰れている饅頭に声を掛ける。 傍から見てれば危ない人間にしか思えないだろうが、幸い人は俺以外居ない。 そして、潰れた饅頭からはにゅっと二本の腕が生え始めた。 「相変わらず腕からなんだな、気持ち悪いぞ」 「アイデンティティーって奴なんだぜ」 潰れている饅頭こと、ゆっくりまりさは答える。 「饅頭がアイデンティティーねぇ、よく言うぜ」 「脆弱な存在ってだけで弄って殺す野蛮な人間さんには言われたくないんだぜ」 まぁ、兄さんは違うけどなと言いながら潰れたまりさの体は徐々に元の形になっていく。 やがて潰される前の元通りの姿のまりさがそこにはいた。違う点は二本の腕が生えているだけだ。 「完全復活なんだぜ」 「よくやるわなぁ、毎日毎日」 こいつらは毎日このように殺されて、誰もいなくなってからひっそり復活してるらしい。 元々饅頭が動いてる不思議でいい加減な生物なのだ。不死身と知った時も、へぇ… くらいにしか思えなかった。 「じゃあな、兄さん。アディオスだぜ」 「ああ、またな」 そういってまりさは跳ねて行く。行く先は知らない。 野良のゆっくりは不思議な生き物だ。 普段は人間のイメージを演じ、人間を安心させ、誰もいなくなった後に本来の姿に戻る。 馬鹿で、単純で、すぐに仲間割れを起こし、人間から物を奪い、怖いもの知らずで、脆弱で、簡単に倒せる饅頭。 そんな人間のイメージ通り動いて、殺される。 それでも人間を恨まず、殺されてまで人間をゆっくりさせようとするのは何故なのか…… 本当にゆっくりは不思議な生き物だ。 もしかしたら貴方の虐待して殺したゆっくりも、貴方が居なくなった後にこっそり復活しているかもしれない。 作者当てシリーズ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4086.html
※俺設定注意 ちょっとしたキャッキャウフフ状態注意 緋想天の対戦中、友人がこんなことを言ってきた。 「なぁ、ゆっくりの再調教してみる気ない?」 「ゆっくりの再調教?」 「俺の知り合いにさ、ゆっくりまりさを飼っている一家がいるんだが、そこのまりさが・・・」 「どうしようもなくクズに育ったと」 「そうなんだよ」 「お前が何とかしろよ面倒くさい。何で俺がやらなきゃいけないんだ」 「いや、今月は忙しくて。その点、お前は時間あるだろ?」 「誰がニートだ。自営業だよ、俺は」 「そんな事言ってねぇよ。でだ、引き受けてくれるか?」 「えー。そういうことは飼い主がきちんと責任を持って・・・」 「増長しきっててろくに言うことを聞かないらしい」 「それこそぶっ殺して買い換えればいいじゃん」 「いや、娘さんがどうしてもこのまりさがいいって言うらしいから買い換えられないんだと」 「ちょっと待て。今なんて言った」 「買い換えられないって・・・」 「その前だよその前。誰が、何を言ったって?」 「娘さんが、どうしても・・・」 「その娘さんは何歳だ」 「確か今年で10歳くらいになるんじゃなかったかな」 「引き受けましょう」 「うわ、ロリコンだ」 「ちっ、違うよ!ロリコンじゃないよ!ただそんなに小さいんじゃ躾も難しいんじゃないかなって・・・」 「いやもう解ったから。何もそんなにムキにならなくても」 「むっ、ムキになんかなってないよ!ただ俺はその一家に平穏と躾を施されたゆっくりを提供しようとだな・・・」 「はいはい。ああ、ちなみにどうしようもない場合は殺しても構わないそうだ」 「え、そうなの?」 「両親の許可は取ってある。どうせばれないだろうし、いざとなったら同じまりさ種をすり替えておけばいいってさ」 「わかった。そんでいつまりさを持ってくるんだ?」 「今度の日曜日にどうだ?」 「OK」 「どれくらい調教に時間かかりそうかわかるか?」 「短くて1週間、長くて1~2ヶ月だな」 「お兄さんたち、お茶がはいったわよ」 「あ、ありがとうゆうかちゃーん。今日も可愛いねー。うちの子にならない?」 「おいゴルァ!!うちのゆうかに色目使ってんじゃねぇ!!!」 そんな調子で。 今度の日曜日にまりさを再調教することになった。 ゆっくり再調教 そして日曜日。 地下に作られた調教部屋に、俺とまりさは居た。同居しているてんこも居る。何故だ。 「ゆっへっへ!ごみくずのじじいがまりささまになんのようなんだぜ?」 「・・・・・・・・・」 久々にここまで増長しているゆっくりまりさを見た。 最近は野良ゆっくりとか問答無用でぶっ殺してきたからなぁ。 別に今ここでぶっ殺してもいいのだが調教する前に殺してしまうのは負けの気がする。殺すのは最後の手段。 「もしかしてまりささまのどれいになりたいのかだぜ?だったらいますぐまりささまのうんうんをたべるんだぜ!」 「・・・・・・・・・」 それにしても酷い。 この態度、この言葉遣い。何をとっても野良並みの屑だ。唯一違うところは清潔であるところ。 一体こいつを飼っていた家ではどんな教育が施されていたのであろうか。 きっと躾なんて無かったのだろう。 まりさの我侭の通りに世話をして、まりさの食べたいものを食べさせる。 ゆっくりをよく知らない人が陥りやすい問題だ。 そんな事をすればゆっくりはすぐにゲス化し、飼い主を奴隷のように思いはじめる。 まりさはバッジをつけていない。おそらくは今までずっと室内飼いだったため。 金どころか銀バッジの取得も無理だろう。外に出せば潰される。 「こいつがむのうなのはかくていてきにあきらか」とてんこが呟いた。 「なにをだまってるんだぜ!このおうちもまりささまのものにしてあげるからじじいはとっととあまあまもってくるんだぜ!」 「・・・・・・・・・」 今俺の右手にはゆっくり調教棒が握られている。 ゆっくり調教棒。 良くしなる謎の素材でできた、2メートルほどの棒。 個人的に透明な箱に次ぐ虐待フェイバリットアイテムだったのだが、製造元が潰れてしまったらしい。非常に残念。 「きた!ぼうきた!めいんちょうきょうぼうきた!これでかつる!」とてんこが興奮気味に繰り返している。 「いいかげんにするのぜこのくそじじい!まりささまのこえがきこえないの?ばかなの?くずなの?しぬの?」 「・・・・・・・・・」 そろそろまりさを黙らせよう。 いい加減にしておかないとまりさを殺してしまう。 ストレスを溜め込むのはよくない。 「ひんじゃくいっぱんゆっくりがいっきゅうにーとのお兄さんにたいしてなめたことばつかうことで お兄さんのいかりがうちょうてんになった」とてんこが囁いてくる。 いや俺ニートじゃないから。自営業だから。 「ゆ゛あああああああああ!!!!なにをだまっているんだぜ!!じじい!!はやくまりささまにあまあま・・・」 「黙れ」 ゆっくりと言葉を紡ぐ。 さぁ、調教開始だ。 「これからお前を調教する。俺が黙れといったらお前は黙らなくてはならない」 「ゆっ!!?なにをいってるんだぜじじい!!!そんなことはどうでもいいからまりささまにあまあまを・・・」 「さもないと―――」 調教棒を振り上げる。 狙うはまりさの眉間。 勢いをつけて、振り下ろす。 「ぶぎゅぇ!!!!!!!!」 「痛い目を見ることになる」 狙い通りに、調教棒はまりさの眉間にめり込む。 本来ならばゆっくりの体など両断できるほどの威力。だがまりさは死なない。傷ひとつ負うことも無い。 調教棒によって、まりさの皮が破れることはない。 ゆっくりと、まりさから調教棒を引き抜いてゆく。 「ゆぎゅえええええええええええええあああああああああああああああああ!!!!!!!!」 まりさはみっともないくらいにわめく。 そりゃそうだ。調教棒はまりさを殺さないだけで、本来死ぬほどの痛みはまりさに伝わっているのだから。 生まれてこのかた痛みとは無縁だったろうまりさにとって、この激痛はどれほどのものか。 てんこが羨ましそうに俺の方を見てくるが、今のところ無視。 「ゆあああああっがああああああああああああ!!!!ぎいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!!!」 情けないくらいにごろごろと床を転げまわるまりさ。 本気に程遠いあの程度の一撃で、ここまで痛がるとは。 この根性なしめ。 「いぎいいいいい・・・・・・ゆっ、ゆっぐぐぐぐ・・・・・・」 落ち着いてきたのか、まりさは止まる。体が震えているのは恐怖のためか、怒りのためか。 さて、どうなるか。 この後の反応で調教のし易さが変わってくるのだが。 「ゆっがあああああああああああ!!!じねえええええぇぇぇぇぇ!!!!」 そう言うやいなや俺に飛び掛ってくるまりさ。 ああ、駄目だな。 このまりさはかなり低脳な個体らしい。痛みを与えられ、逆上し、襲い掛かってきた。 根性は無いくせに、プライドだけは饅一倍あるらしい。 謝りだすような弱気な個体ならばもっと早く調教が済むのだが。 目の前にはまりさが馬鹿面を晒している。 勿論迎撃する。 調教棒でまりさを叩き落す。 「ぶべぇぇぇ!!!!!!」 地面との熱い抱擁を交わすまりさ。 また襲い掛かってくることは無いだろう。 まりさが回復するまで見守る。 てんこの息が荒くなってきている。無視。 「まりさ、お前は俺の言うことを聞かなくてはならない。まずは黙れ」 「なに゛いっでるんだぜ!!まりざざまは―――」 まりさの側面に調教棒を叩き込む。 まりさは体をくの字に曲げ、壁へと吹っ飛・・・ばない。 調教棒の運動エネルギーはまりさに余さず痛みとなって伝わったのだ。 「ゆぐええええ゛ええ!!!ゆぐっ・・・ゆげぶげらっ!!!」 中身を吐き出しそうになる前に叩く。 これはあくまで調教であって、まりさを殺す気はない。傷もつかない。ただ死ぬほどの痛みだけが襲ってくる。 まりさには死ぬより辛い目にあってもらう、だけ。 「もう一度言う。黙れ」 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ・・・ぶぎぃっ!!!!」 声を出せば調教棒を振る。 別に言葉でなくても良い。悲鳴だろうが、呻き声だろうが、黙らなければ調教棒を振るのみ。 調教棒を振る。調教棒を振る。調教棒を振る。調教棒を振る。調教棒を振る。 「何度でも言おう。黙れ、まりさ」 「・・・・・・ぎっ!!!・・・・・・ぶっ!!・・・・・・ゆ゛っ!!・・・・・・げっ!!・・・・・・べっ!!」 とりあえず初日はこうやって滅多打ちにし、こいつに恐怖心を植え付ける。 逆らえばどうなるか。それを餡の髄まで刻み付けるのだ。 と、ここでてんこが我慢の限界を迎えたらしい。 「ゆああああああああああ!!!お兄さん!!てんこにも、てんこにもそれちょうだいねぇぇぇぇぇ!!!」 「ぶべらっ!!!」 まりさを蹴り飛ばしながら、てんこは調教棒をねだる。 すっ飛び、壁に激突するまりさ。意外なことに傷はついていない。ドMのなせる業か。 「こんなひんじゃくいっぱんゆっくりよりいっきゅうゆっくりのてんこをぶってね!!」 「ぶびっ!ぶびっ!ぶびっ!ぶびっ!ぶびっ!ぶびっ!ぶびっ!ぶびっ!ぶびっ!」 「・・・・・・あの、これまりさの調教なんだけど」 「もうしょうぶついてるから!!どうしてもっていうなら、まりさといっしょにてんこをぶってね!!!」 「お前それで良いのか?」 瀕死のまりさを踏みつけながら懸命におねだりするてんこ。 言動はドMだが行動だけ見るならば立派なドSだ。 仕方が無いのでてんこに向かって棒を振る。 まずは胴。顔はやめな、ボディーにしな!と誰かに言われた気がした。 「ぐっふぅ!!・・・・・・はああああああぁぁぁぁぁぁ!!!いいよ!もっと!!もっとぶってねえええぇぇぇぇ!!!!!」 「ぶぐっ!」 恍惚に身を震わせるてんこ。 火がついてしまったのか、おねだりは激しくなっている。 てんこを殴ったとき、まりさは何故か蹴られていた。 「もっとおおおおおおぉぉぉ!!!もっともっとてんこをぶってねえええええええええぇぇぇぇぇ!!!!!」 「・・・・・・・・・こんなもんだろ」 「おいィ!?もうおわりなの!?もっとてんこをぶってね!!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 疲れた。 何が疲れたっててんこに疲れた。 どれだけぶたれてもてんこは満足せず、もっともっととねだってくるのだ。 おかげで最後の方は殆どてんこだけをぶっていた。 いまだに元気なてんこの体力を疑う。 まりさは喋らない。 別に死んでいるわけではない。ただちょっと体力の限界を超えて殴られ続けただけだ。 白目をむいて倒れているまりさ。おそらく意識はバラバラに裂けている。 この程度なら明日には回復しているだろう。 「さ、てんこ。もうぶつのは終わり。上に戻ろうか」 「おいィ!?ここでもっとてんこをぶつべきとかんじてしまっているやつはほんのうてきにちょうじゅたいぷ!」 「はいはいそうだねー。じゃあ一緒に上に戻ろうなー」 てんこを抱きかかえる。 てんこの髪から桃の香りが鼻をくすぐる。 ゆっくりフードを一匹分置いておく。気がつけば勝手に食うだろう。 右手に調教棒、左手にてんこを抱きかかえながら、俺は調教部屋を後にした。 2日目。 調教部屋へと向かう。てんこが当然だと言うかのように俺についてくる。何故だ。 あのまりさはどうなっているだろうか。 気絶から目覚め、暗い調教部屋の中一匹でゆっくりフードを食べる。あの恐ろしい時間を思い出しながら。 きっと俺のことを恐れるだろう。歯向かう気力すら無くすだろう。 それでいい。そうなるためにお前をそんな目に遭わせたんだ。 恐怖に縛られるまりさを幻視しながら、調教部屋のドアを開く。 「やぁまりさ。楽しい調教の時間だぞー」 部屋の中央に一匹ぽつりと佇む後頭部。 まりさはこちらを振り向き、言った。 「ゆっへっへ!ごみくずのじじいがまりささまになんのようなんだぜ?」 「・・・・・・・・・」 マジかよ。 低脳だとは思っていたが、まさかここまでとは。 昨日の事を覚えていないらしい。 あるいは夢だとでも思っているのか。 「もしかしてまりささまのどれいになりたいのかだぜ?だったらいますぐまりささまのうんうんをたべるんだぜ!」 「・・・・・・・・・」 これは時間がかかるかもしれない。 ここまで物覚えの悪い個体には久々にお目にかかる。 少し調教のペースを上げなければ。 「なにをだまってるんだぜ!このおうちもまりささまのものにしてあげるからじじいはとっととあまあまもってくるんだぜ!」 「・・・・・・・・・」 今日も昨日と同じように、いやそれ以上にまりさを締め上げよう。 どんなに頭の悪い個体でも、トラウマを刻み付けていけば徐々に効果は上がっていく。 「いいかげんにするのぜこのくそじじい!まりささまのこえがきこえないの?ばかなの?くずなの?しぬの?」 「・・・・・・・・・」 動物の調教に過度な体罰はよくないとされる。 だがゆっくりは違う。体罰無くして、ゆっくりの調教などできないのだ。 特にこんなゲスでアホの場合は。 「ゆ゛あああああああああ!!!!なにをだまっているんだぜ!!じじい!!はやくまりささまにあまあま・・・」 「黙れ」 そうだ。 徹底的に。 調教の記憶以外が残らないくらいに。 俺がお前を教育してやるよ、まりさ。 まりさの調教の日々は続いた。 勝手に喋れば殴る。勝手に動けば殴る。気に入らないことをすれば殴る。 まりさに少しずつトラウマを刻み付けてゆく。 まりさの平穏な記憶は徐々に調教の恐怖へとすり替わっていく。 日を重ねるごとに、増長はなりを潜め、まりさの目には俺への恐怖の色が増していった。 ちなみにてんこは5日目にゆうかに見つかった。 「てんこがどうやってお兄さんのじゃまをしたってしょうこだよ!!」とてんこは言い訳をしていたが、 ゆうかのアイアンクローと原爆固めによって連行されていった。 一ヵ月後。 「まりさ。ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていってね!!!」 まりさは笑顔を貼り付けて返事をする。 「まりさ。まりさの好きな食べ物はなんだ?」 「まりさはゆっくりふーどがすきだよ!!!」 こう言わなければどうなるか解っているのだろう。 まりさの目は俺への恐怖で染まっている。 「まりさ。人間さんとまりさの関係は?」 「にんげんさんはえらいんだよ!!!まりさはにんげんさんにしたがうよ!!!」 俺への恐怖は人間そのものへの恐怖に拡散した。 今やまりさは人間であれば誰の命令であっても聞くだろう。 「・・・よし。大丈夫みたいだな」 最早まりさは恐怖の虜だ。 まりさを透明な箱にしまい、友人に手渡す。 友人はまりさを助手席に置き、車を出していった。 「・・・・・・だいじょうぶかしら、あのまりさ」 「ん?あー、多分大丈夫だろ」 ゆうかの心配そうな声に、俺はそう返事をする。 またまりさがゲスるのではないかと心配しているのだろう。 あれだけのことをしてやったんだ。そう簡単にまりさのトラウマは拭えない。 あのまりさの記憶にかつての飼い主の記憶は無い。 もともと少ない記憶容量の全ては、全て調教の記憶で埋まっている。 まりさは飼い主を奴隷ではなく、服従すべき恐ろしい人間として見る。 まあ、でも。 もしまたゲスるようなことがあれば。 今度はこんなもんでは済まさない。 加工所の再調教施設に放り込もう。半年くらい。 なにせあのてんこが1日で泣いて帰ってきたくらいだ。 この一ヶ月なんて天国みたいに思えるんだろう。 だから、まりさ。 お前にその地獄を見せてやりたいから、まりさ。 できるだけ、戻ってこいよ、まりさ。 おわり ――――― まりさを叩いて叩いて叩きまくるお話だったはずなのにいつの間にかてんこが登場して全てを台無しにしていった。 ついカッとなって書いた。反省している。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2844.html
別冊 ゆっくり駆除の手引き 実例集1 この実例集では「ゆっくり駆除の手引き」に記載された方法で、実際にどのようにゆっくりを駆除するかを紹介します。 ゆっくり駆除を実施するときのイメージの参考にしていただけると幸いです。 また、駆除の方法は今回あげた例が全てでは有りませんので、各自で色々と応用してゆっくり駆除をしてください。 1.毒餌 ゆっくり団子 初春の草原をぽよんぽよんと跳ねながら、ゆっくりの家族が人里に向かっていた。 バスケットボールほどの親まりさと親れいむの後ろをソフトボール程度の子ゆっくりが跳ねている。 子ゆっくりはまりさ種とれいむ種の二匹ずつで、親ゆっくりとあわせて合計6匹のゆっくり家族だった。 「ゆっ! ゆっ! ゆっくりぷれいすまでもう少しなんだぜ!」 と跳ねながら、親まりさが後に続く子供達に言った。 「ゆっ、おとーさん、ゆっくりぷれいすってどんなところ?」 「おいしいおおやさいが、いっぱいあるんだぜ!」 「ゆーん、たのしみだね!」 楽しそうに会話をしながら跳ねて行くと、草むらが途切れて前方に柵が見えてきた。 「ゆゆっ、おとーさん、これじゃさきにすすめないよ?」 子まりさの一人が柵の下でぴょんぴょんと跳ねる。 それに続いて他の子供達も柵を飛び越えようと跳ね始めた。 「ゆーん、かべさんじゃまだからどいてね!!」 「れいむおこるよ! はやくどいてね!」 「ゆゆーっ! とびこえるよ! ぴょーん!!」 と飛び上がった子れいむの一匹が、柵にぶつかって墜落した。 「ゆべっ!! いぢゃぃよーー!! どぼぢでとびごえられないのぉーーーーー!!!」 「ゆゆっ、おちびちゃんだいじょうぶ!? す~り、す~り」 あわてて駆け寄った親れいむが、泣き声を上げてる子れいむにすりすりをして慰める。 「あわてないんだぜ、かべさんにあながあいてるところがあるんだぜ。そこからはいれるからそっちにいくぜ!」 親まりさの先導で柵に沿ってしばらく跳ねていくと、柵の下に穴が開いているところに到着した。 「ここから入れるぜ!」 この穴は、親まりさが少し前に他のゆっくりたちとえさ探しに出かけたときに掘った穴だった。 その時に人里の畑に侵入して、野菜の味を覚えたのである。 「ゆっくりついてくるんだぜ!」 そう言って穴に潜ろうと近づいた親まりさは、穴の淵に何か丸いものが落ちているのに気が付いた。 「ゆゆっ?」 「まりさ、どうしたの?」 穴の前で立ち止まった親まりさに親れいむが声をかける。 「れいむ、なにかおちてるんだぜ?」 「ゆぅ……なんだろうね?」 「でも、なんかおいしそうなんだぜ!」 穴の横には大きさが三センチほどの玉が10個ほど転がっていた。玉自身は白いのだが、周りに黒っぽい何かがまぶしてあった。 「ゆ、ちょっとなめてみるよ!」 親れいむが玉のひとつに舌を這わせる。 「ぺ~ろぺ~ろ! しあわせ~♪」 「ゆっ、まりさもなめるぜ! ぺ~ろぺ~ろ! しあわせ~♪」 穴の横に置いてあったのは、人里の人間が仕掛けたゆっくり団子だった。 畑が荒らされていることに気が付いた畑の持ち主は、近くの柵の下に穴が開いていることを見つけてその内側だけ埋めて踏み固めた。そして、外側の穴はそのままにしてゆっくり団子を仕掛けたのである。 このゆっくり団子にはゆっくりの餡子がまぶしてあるのだが、自らの体から餡子が出たときはそれが自分の中の物だと認識できるのに、このように餡子だけが置いてあるとゆっくりの中身だと気が付かないのは甚だ不思議である。 「ゆゆっ、おかーさんずるいよ!」 「おとーさん、まりさにもちょーだい!」 親たちの様子を見た子ゆっくりたちが騒ぎ出す。 「おちびたち、これはあまあまなんだぜ!」 「いっぱいあるから、みんなでたべようね!」 そういって親れいむが子供達の前に一個ずつ団子を置く。親が二個、子どもが一個ずつ食べるようだ。 ゲス種や、ふつうのゆっくりだと目先のことが優先されるために、餡子をなめた時点で「うっめ、これまじぱね! む~しゃ、む~うげぇええええええ!!!」となるのだが、このゆっくりは家族で分けて食べることができるぐらいはまともなようだ。 「ゆーん、おいしそうだよ!」 「それじゃたべようね!!」 そういって皆でいっせいに団子を頬張るのだが、 「む~しゃ、む~しゃ、しぁげうぇええええええええ!!!!」 「む~しゃ、む~げべぇええええええええ!!」 「ゆげぇええ!! からいんだぜ! これはあまあまじゃないんぜ!!」 と団子に仕込まれたからしの所為で、いっせいに餡子を吐き出し始めた。 「ゆ゛っ……、ゆ゛っ……」 子ゆっくりはすでに致死量の餡子を吐き出して瀕死の状態である。 「どぼじでがらいのぉおおおお!! おぢびぢゃんあんごはいぢゃだめでじょおおおおおお!!」 「がらいんだぜええ!! でいぶがちゃんとあじみしなかっだからだぜ!!」 「どぼじでそういうこというのぉおおおおお!!!」 親ゆっくりは即死するほどのダメージは受けなかったようだが、それでもかなりの量の餡子を吐き出して衰弱している。 「どぐをぐわせたでいぶはじねぇええええええ!!」 「ばりざだってあ゛まあ゛まっでいっだでじょぉおお!!!」 既に小さく痙攣するだけの物体となった子どもたちの横で、親まりさと親れいむは責任の擦り付け合いをはじめた。 「そんなこどいうばりざはぢねぇええええ――ぶばっ!!」 と、親まりさに噛み付こうとした親れいむが、なにかに叩き潰されて餡子をぶちまけた。 「なんででいぶがあんごだしでるのぉおお!!! ――のぶぅ!!」 続けて親まりさも叩き潰されて餡子を撒き散らす。 親ゆっくりを叩き潰したのは、ゆっくり団子を仕掛けた人間だった。 畑仕事中にゆっくりの声が聞こえたので確認に来たら、団子をしかけたところでゆっくりが罵り合っていたのである。 二匹のゆっくりの傍らに、一回り小さいかたまりが四つほど転がっているのを見てゆっくり団子の成果に満足すると、生き残った親ゆっくり二匹を叩き潰したのだ。 このように、ゆっくり団子は成体のゆっくりの場合は致死量に足りない場合も有るが、たいていは餡子を吐き出して動けない程度の損傷を与えることが可能である。 また、からしの辛さに大声で泣き叫ぶので、近くにいるときなどはゆっくりが掛かったことに気が付きやすいのも利点である。 2.罠 槍の罠(ゆっくりした地面) ゆっくりの家族が秋の草原を跳ねていた。 これから訪れる冬に備えて、冬篭りの為の食料を確保するために家族総出で狩に出かけたのである。 一匹の親まりさの後に続いて、テニスボールよりやや大きい程度の子ゆっくりが二匹跳ねている。幼ゆっくり以上、子ゆっくり未満といったところだろうか。 親まりさのつがいのれいむは、少し前に人間が落としていったお団子を食べたら餡子を吐いて死んでしまった。 残された二人の子供をしっかりと育てようと、親まりさは必死だった。 親まりさの後についてくる子供たちは、狩りにつれてくるにはまだ若かった。 しかし、れいむが死んでしまったため、親まりさだけでは冬の蓄えを十分に集められそうに無いので仕方なく連れて来たのだ。 若いうちから狩りを覚えてくれれば、もし自分に何かがあっても子供たちだけで生きていけるだろうとの親心もあった。 今ゆっくりたちが向かっている先は、去年親まりさが自分の親に連れていってもらった美味しいおいもさんが埋まっているゆっくりプレイスだ。 成体のゆっくりにとってはそれほど遠出にはならない距離でも、子ゆっくりに取っては一旅行である。 朝早くにおうちを出たまりさたちは、途中で何度か休憩しながらゆっくりと跳ね進み、お日様が頭の上に来たころに目的の場所にたどり着いた。 「ゆっ、おちびちゃんたち、やっとついたよ!!」 と、立ち止まった親まりさの先には、今まで跳ねてきた草原とは違い、草が生えてなく土がむき出しの地面が広がっていた。 周囲より少し高くなった柔らかそうな土の少し先には、さつま芋の葉が青々と茂っている。 「ゆぅ、ゆっくりちゅかれたよ」 とまだ赤ちゃん言葉が抜けていない子れいむがへたり込む。 「おかあさん、ここがゆっくりぷれいすなの?」 と子れいむより少し大きい子まりさが親まりさに聞いた。 「ゆっ、そうだよ。このゆっくりぷれいすはおかあさんのおかあさんにおしえてもらったんだよ」 「ゆっ、それならとってもゆっくりできるね!!」 「ゆぅ~、はやきゅゆっくちしたいよ!!」 子ゆっくりたちは早くゆっくりしたくでうずうずとしている。 「それじゃ、ゆっくりするまえにおべんきょうだよ!!」 「ゆっ、おべんきょう?」 「なんにゃの?」 親まりさは、自分たちが今まで跳ねてきた草原と、先に広がる柔らかそうな土の地面を交互に見て子ゆっくりたちに言った。 「よくみてね、ここまでとおってきたじめんさんとこっちのじめんさんはちがうよね?」 「ゆっ、こっちのじめんさんはやわらかそうだよ!!」 「にがにがのくささんがはえてにゃいよ!!」 「そうだね。こっちのくささんがはえていないゆっくりしたじめんさんは、おやさいがはえてくるじめんさんなんだよ」 「ゆゆ、ちゅごい!!」 「ゆぅ~、すごいゆっくりしたじめんさんだね!!」 きゃっきゃと跳ねる子供たちに、親まりさは真剣な表情をして言った。 「でもね、きをつけなくちゃいけないことがあるんだよ」 「ゆぅ、なんなの?」 「れいむわきゃらないよ?」 「おやさいさんのはえるゆっくりぷれいすにはね、にんげんさんがいることがあるんだよ」 「ゆぅ? にんげんさん?」 「ゆっくちできるの?」 子ゆっくりたちはまだ人間を見たことが無いので、人間の怖さを知らなかった。 「にんげんさんはゆっくりできないんだよ」 「ゆ~っ、ゆっくちしゃせてね!!」 「ゆゆっ、ゆっくりできないにんげんさんはどっかいってね!!」 「だからね、ゆっくりぷれいすをみつけたら、まずにんげんさんがいるかどうかちゃんとかくにんしないとだめだよ!」 「ゆっ、ゆっくりりかいしたよ!」 「りかいしちゃよ!」 親まりさは、素直に言うことを聞く子供たちに満足そうに微笑みかけた。 「それじゃ、いまにんげんさんはいるかな?」 親まりさが訊くと、子ゆっくりたちは遠くまで見ようと跳ねながら辺りを見回した。 「ゆん! だれもいにゃいにぇ!!」 「ゆっ! にんげんさんはいないよ!!」 「ゆっ、にんげんさんはいないね! それじゃおやさいをとりにいこうね!」 自分でも人間がいないことを確認した親まりさは、子ゆっくりたちに言った。 「ゆゆっ、まりさがいちばんのりだよ!」 「ゆ~ん、おねぇしゃんまっちぇーー!!」 子まりさが飛び出すと、それに続いて子れいむもゆっくりした地面の上に飛び乗った。 「ゆゆっ!?」 「ゆ~っ!?」 柔らかく耕された地面はふかふかしており、まるでクッションのように子ゆっくりたちをうけとめた。 「ゆ~ん!! つちしゃんとってもゆっくちしてるよ!!」 「ゆふぅ!! ふわふわだね!!」 子ゆっくりたちはきゃらきゃらとわらいながら転がって遊び始めた。 「ゆ~ん!! おきゃーしゃんもゆっくちしよう!!」 「おかあさん、このつちさんとってもゆっくりしてるよ!!」 「ゆっくりするのはおやさいをとったあとにしようね!! はやくしないとにんげんさんがきちゃうよ!!」 「ゆっ! ゆっくりりかいしたよ。おいしいおやさいさんをとろうね!!」 「ゆぅ……れいむはもうちょっとあしょびたいよ……」 「まりさのおちびちゃんはちゃんということきけるよね? それじゃおやさいとりにいこうね」 親まりさは子ゆっくりたちを諭すと、ゆっくりした地面の端に飛び乗った。 「ゆっ、れいむきょうそうだよ!」 「ゆゆっ、おねぇしゃんにはまけないよ!!」 さつま芋に向けて跳ねていく子ゆっくりを追って、親まりさもぴょんと飛び跳ねた。 「--―ゆ゛!? ゆべぇえええええええ!!」 親まりさが、地面に着地するとあんよになにか変な感じがした。 一瞬後、それが何かを悟ると親まりさは悲鳴を上げた。 「ゆ゛ぅううううう!! ばりざのあんよがいだぃいいいいい!!!」 親まりさのからだは、やわららかくてゆっくりした地面に半分ほど埋まっていた。 体重が軽い子ゆっくりたちは地面にそれほど沈み込まなかったのだが、跳ねて勢いのついた親まりさの体重を柔らかい地面は受け止め切れなかったようだ。 その親まりさのあんよが、土の中に埋まっていた何かとがったものを踏み抜いてしまったのだ。 「ゆゆっ!! おかぁさんどうしたの!!」 「ゆっ!! おきゃーしゃんどうしてないてるのぉおおお!!」 突然の悲鳴に驚いた子ゆっくりたちが戻ってきて、心配そうに親まりさ周りを跳ね回っている。 「ゆ゛ぅううう、まりさのあじがうごかなぃいいいいいい!! ――ゆげぇ!!」 親まりさは必死に体を揺らしているが、土にめり込んだ体はまったく動こうとしてくれなかった。 無理に力を入れたために、あんよがさらに激痛を発して白目をむきそうになっている。 「ゆぅーっ!! おかあさんゆっくりしてね!!」 「おきゃーしゃん、ゆっくち、ゆっくちしようにぇ!!」 子ゆっくりたちが泣きながら親まりさにす~りす~りするが、親まりさにはそれを感じる余裕すらもう無いようだった。 「あっがっがが!! あっがっがががが!!」 「ゆぇ~ん、ゆぇ~ん。れいむのおかぁしゃんがぁああ!!」 「ゆぅうううう!! まりさはどうすればいいのぉおおお!!」 ゆっくりした地面の上に、ゆっくりできなくなったゆっくりたちの声が響き渡っていた。 やがてその声も、昼の休憩を終えた農家の人が作業に戻ってくると聞こえなくなった。 さて、このゆっくりの家族が言うところの、”ゆっくりした地面”とは、もちろん人里の畑のことである。 この畑ではゆっくりの被害を減らすために、畑の周りに槍の罠を仕込んだダミーの畑を作成していたのである。 この罠がどのような罠かというと、まず畑の外周、またはゆっくりがやってくる方向に幅一メートルから二メートル程度の畝を作る。 この畝は掘り下げる深さはさほどいらないが、できるだけ地面がやわらかくなるようにふんわりと土を盛っていく必要がある。 そして、この畝の中に先端を尖らせた木の棒や竹などを埋め込む。 この上をゆっくりが跳ねると、その自重で柔らかく盛った土が沈み込んで、仕掛けてある槍がゆっくりの底面に突き刺さるのである。 罠の構造上、土を柔らかく保つためのメンテナンスが必要であり、幼ゆっくり程度の体重だと土が沈み込む量が少なくて槍まで届かないという欠点がある。 しかし、通常ゆっくりは幼ゆっくりを遠くへの狩りには連れて行かないため、後者に関してはそれほど問題視する必要は無いと思われる。 今回の例に挙げたのゆっくり家族では、子ゆっくりがまだ幼ゆっくりより少し大きい程度だったので罠が作動しなかった。 しかし、親ゆっくりを失った幼ゆっくりが生き延びる可能性は非常に小さいため、特に気にする必要は無いだろう。 最後に注意点を挙げると、この罠は人間が踏んでも怪我をする恐れがあるので、罠を仕掛けた場所は人が立ち入らないように印などをつけておくことを強く推奨する。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1065.html
昔々、ある所にお婆さんゆっくりれいむとお婆さんゆっくりまりさが住んでいました。 お婆さんゆっくりれいむは山へエサ取りに、お婆さんゆっくりまりさは川へ帽子の洗濯に行きました。 お婆さんゆっくりまりさが帽子を洗っていると、川上の方から大きな桃が「ゆっくらこ、ゆっくらこ」と流れてきました。 「おおきいももだ!!もってかえればゆっくりたべられるね!!」 そう叫ぶとお婆さんゆっくりまりさはどうにかこうにか桃を岸に上げ、必死こいて家まで持って帰りました。 帽子は桃の代わりに川に流されました。 「ただいまれいむ!!ゆっくりしていってね!!!」 「おかえりまりさ!!ゆっくりしていっt……ゆゆ!ももだあ!!おっきなももだ!!!」 「おみやげだよ!!ゆっくりたべようね!!!」 「はんぶんこしようね!!!ゆっくりわけるよ!!!」 お婆さんゆっくりれいむはそう叫ぶと、目を閉じて精神を集中し始めました。 数分後、カッ!という擬音がぴったりな勢いで目を開けると、 「岩山!両斬波ぁ!!」 婆れいむがいかつい成人男性のような声でそう叫び頭につけたリボンを振り回すと、桃は綺麗に真っ二つに分かれていました。 「ゆっくりわかれたよ!!!」 「ゆっくりわけられたね!!」 「おい、やめろ馬鹿。このSSは早くも終了ですね」 早速桃に噛り付こうとしていた二匹でしたが、謎の声が聞こえると同時に固まってしまいました。 よく見ると、割れた桃の中にはゆっくりが入っているではありませんか。 「お前ら勝手に食われそうになってる奴の気持ち考えたことありますか?」 そんな事を呟きながら桃の中から這い出てくるゆっくり。頭に小さな桃を二つ付けているのが特徴的です。 「ゆゆ!あなただあれ!?ここはれいむとまりさのおうちだよ!!!」 「そのももはまりさとれいむのなんだよ!!!かえして!!はやくかえしてね!!!」 別に桃を横取りされた訳ではないのですが、ゆっくりにはそんな事は関係ないようです。 「なんだおまえら?ズタズタに引き裂いてやってもいいんだぞ。 あまり調子こくとリアルで痛い目を見て工場で蒸かし小豆を食べる事になる」 「ゆ、ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりやめてね!!!ももをわったのはれいむだよ!!!」 ゆっくりにしては珍しい流暢(?)な言葉に妙な迫力を感じたのか、二匹の先程までの勢いが消えて怯え始めました。 このまま名無しでは不便なので、桃から出てきたゆっくりは仮に『ゆっくりてんこ』と呼ぶ事にします。 そのゆっくりてんこは二匹をじろじろと睨み付けた後、何処か満足気に自分が入っていた桃を食べ始めました。 このままでは大事なご飯が食べられてしまいます!焦った二匹は勇気を出してゆっくりてんこに体当たりを仕掛けました。 「ゆっくりたべないでね!!それはれいむとまりさのごはんだから!!」 「ゆっくりできないならでていってね!!ここはまりさとれいむのおうちなんだから!!」 殴られながらもゆっくりてんこは冷静に、しかし怒りを隠せない様子で 「お前らは一級饅頭のわたしの足元にも及ばない貧弱一般饅頭。 その一般饅頭どもが一級饅頭のわたしに対してナメタ言葉を使うことでわたしの怒りが有頂天になった。この怒りはしばらくおさまる事を知らない」 そう宣言しました。これがアニメなら間違いなく名シーンとして人気が出るのは確定的に明らかです。 しかし殴られた事より『ナメタ言葉』を使われた事に怒る辺り、このゆっくりてんこは中々プライドが高いようです。 その漲る自信と正体不明の迫力に押されたのか、二匹は先程のように萎縮して部屋の隅の方へ移動しました。 再び桃を食べ始めるゆっくりてんこ。こうして、三匹の謎の共同生活がスタートしたのです。 それからというもの、婆れいむと婆まりさはいちいち横柄なゆっくりてんこに事あるごとに喧嘩を仕掛けますが、 その度にあの妙に迫力のある言葉遣いで黙らされてしまうのでした。 とは言っても別にゆっくりてんこは二匹に直接危害を加える事はありませんし、自分でエサを取らずに怠けるなんて事もありません。 自分で取ってきたエサは全て自分だけで食べ、時々二匹のエサを横取りする事はありましたが概ね平和に暮らしていたのでした。 そんな日々が数週間も続いた頃、近所に住むゆっくりぱちゅりーが傷だらけになって三匹の家に飛び込んできました。 「ゆゆぅ!どうしたのぱちゅりー!!ゆっくりできる!!?」 「ヘァ゛ッ……へァ゛ッ……れ゛、れ゛み゛り゛ゃがあ゛あ゛ぁ゛ぁ゛……」 「れ、れみりゃ!!?れみりゃはゆっくりできないよ!!!ゆっくりたべられちゃうよ!!!」 「む゛……む゛ぎゅう゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ん゛ん゛……」 ゆっくりぱちゅりーは深く深く息を吐くと、そのまま二度と動く事はありませんでした。 婆れいむと婆まりさは焦った様子で相談します。 「どどど、どうしようまりさ!!れみりゃがきたらたたた、たべられちゃうよぉ!!!」 「にに、にげようよれいむ!!てんこをおいていけばれみりゃからおそわれたりもしないよ!!!」 サラっと酷い事を提案する婆まりさ。それに対してゆっくりてんこは特に何も言いません。が、 「これやったの絶対れみりゃだろ……汚いなさすがれみりゃ汚い」 今言われたばかりの事なのですが、それは気にしてはいけません。ゆっくりてんこ独特の言い回しなのです。 要するに、このゆっくりてんこはれみりゃに対して怒りを抱いているのです。 「そそそそうだけど、どうするの!!!れみりゃはゆっくりたべちゃうんだよ!!れいむたちもたべられちゃうんだよ!!!」 「わたしパンチングマシンで100とか普通に出すし」 「ゆゆ!そんなにだせるの!!だったられみりゃをやっつけられるね!!ゆっくりいってきてね!!!」 どうやらゆっくりてんこがれみりゃをやっつけに行く事に決まったようです。 一体いつパンチングマシン等やったのかは謎です。突っ込んではいけません。 「これはおみやげだよ!!!ゆっくりがんばってね!!!」 「ゆっくりいってらっしゃい!!!」 「⑨個でいい」 ゆっくりてんこは虫やら雑草やらを丸めて作ったお団子を持たされ、家を出発しました。 何処にれみりゃが居るのか知っているのかはともかく頼もしい感じです。 適当に歩いていると、ゆっくりちぇんに会いました。 「にゃにゃ!わかるわかるよー」 「それほどでもない」 これらのやり取りを分かりやすく説明すると、 『ああ、貴女はあの恐ろしいゆっくりれみりゃを退治しに行こうとする勇敢なお方ですね』 『いやいやそんな勇敢だなんて事はありませんよ。単に両親に恩返ししたいだけです』 という事です。ゆっくり語は奥が深過ぎですね。 「わかりたいよわかりたいよー」 「同じ時代を生きただけのことはあるなー」 どうやら虫団子をゆっくりちぇんにあげる代わりに、ゆっくりちぇんがれみりゃ退治を手伝う事になったようです。 もうはっきり言ってこんな会話やってられないのでちょっと割愛します。 こんな調子でゆっくりてんこは仲間を増やしていきました。 どこからともなくモフモフしたゆっくりらんしゃまを呼び出すゆっくりちぇん。 「うんうんわかるわかるよー」 素早さと体の何処かに隠し持っているドスが武器のゆっくりみょん。 「ちーんぽっ!」 ゆっくり随一の凶暴性と戦闘力を誇るゆっくりフラン。 「ゆっくりしね!!!」 こんな頼もしい仲間と共に、ゆっくりてんこはれみりゃヶ島に渡りました。 れみりゃヶ島は紅い霧に包まれており、ありとあらゆるものが紅く染まった不気味な島です。 ゆっくりフランは妙に生き生きとしていますが、他の二匹の仲間は緊張しているようです。 ちなみにゆっくりてんこはそんな些細な事は全く気にならないようです。 「うー!うー!」 島のどこからかそんな声が聞こえてきます。この島にゆっくりれみりゃがいるのは間違いありません。 ZUNZUN島の奥へと進んでいくと、居ました。ゆっくりれみりゃです。それも凄い数です。数十匹は居ます。 ゆっくりフラン以外の三匹はいっせーのせ、で襲い掛かろうとしますが、ゆっくりフランは構わず突っ込みました。 「ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」 「う゛あ゛ー!う゛あ゛ー!!」 三匹はポカンとしています。無理もありません。 あの恐ろしいゆっくりれみりゃの群れが、たった一匹のゆっくりフランによって蹂躙されているのですから。 見る見るうちにゆっくりれみりゃはおぞましい悲鳴と共にその数を減らしていきます。もう他の三匹は帰ってもいいんじゃないでしょうか。 いや、そんな事はありません。勇敢なゆっくりれみりゃが三匹、ゆっくりフランの背後から一斉に飛び掛りました。 「ゆっくりしねぇ!!ゆっくりしねぇぇぇ!!」 「たべちゃうぞー!!」「ぎゃーおー!!」「うー!!うああー!!」 それに乗じて残りのゆっくりれみりゃが一斉にゆっくりフランに飛び掛ります。 ボケっとしていた三匹はゆっくりフランを助けに突撃します。 「お前らどうやらボコボコにされたいらしいなさっきも言ったがわたしはリアル天人属性だから手加減できないし最悪の場合永遠亭に行くことになる」 「わかって!わかってよぉー!!」 「ちちちちーんぽっぽ!!」 ゆっくりフランに気を取られて気付かなかったのか、ゆっくりれみりゃ達は乱入してきた三匹によって激しく混乱に陥りました。 体勢を立て直したゆっくりフランは再びその猛威を振るいます。ゆっくりれみりゃ虐殺ショー、ラウンド2です。 数分間この世の地獄が再現された後、ゆっくりれみりゃの群れは全滅しました。ほぼゆっくりフランの一人勝ちです。 ちなみにスコアはゆっくりフランが三十二匹、ゆっくりちぇんとゆっくりみょんが協力して二匹、ゆっくりてんこが無しです。 これだとゆっくりてんこは働いてないじゃないか、と思われるかも知れませんがそんな事はありません。 ゆっくりてんこは四六時中あの自信ありげで大胆な発言を繰り返す事でゆっくりれみりゃの恐怖と混乱を煽っていたのです。 何はともあれゆっくりれみりゃは退治され、島を多う霧も晴れました。もうゆっくり達が襲われる事も無いでしょう。 勇者なゆっくり一行は一人一匹ずつ、半死半生で生き残っているゆっくりれみりゃを持ってそれぞれの家路へつきました。 家を出て一週間後、ゆっくりれみりゃを退治したゆっくりてんこが家に帰ってきました。 あの婆ゆっくりれいむと婆ゆっくりまりさが出迎えてくれるかと思っていたゆっくりてんこでしたが、そんな事はありませんでした。 二匹は、家の中で頭から蔓を伸ばして黒ずみ朽ち果てていました。 蔓には、まだ目覚めぬ小さな小さなゆっくり達が実っています。 ゆっくりてんこがとりあえず持ち帰ったゆっくりれみりゃ(上半身しか無い)を床に放り投げると、ちびゆっくり達が目を覚ましました。 「ゆっくりちていってね!!」「おねえちゃんだあれ!!?」「ゆっくいちようね!!」 そんな風に思い思いの事を元気よく叫ぶちびゆっくり達。そんな様子を眺めていたゆっくりてんこは突然、 「想像を絶する悲しみがゆっくりてんこを襲った!お前らにゆっくりてんこの悲しみの何がわかるってんだよ!!」 生まれて初めて、涙を流しながら大声を張り上げました。 驚いて黙るちびゆっくり達。ただただ涙を流し続けるゆっくりてんこ。 その小さな家の中に、いつまでもいつまでもゆっくりてんこの啜り泣きが木霊していました。 Buront END ゆっくりてんこがゆっくりれみりゃ退治から帰って三日が経ちました。 ちびゆっくり達は見る見る大きく育っていき、子育てに励むゆっくりてんこは毎日忙しそうです。 そんな賑やか家族の住む家に三人組の人間が近付いていました。 三人とも薄い水色の作業服を着ており、それぞれ手には籠と細長く、先端に輪の付いた棒を持っています。 彼らはゆっくりてんこら一家の喧騒を聞きながら、気付かれないようゆっくりと家の前まで近付いていきます。 その数週間後、人間達の里で商売する大手和菓子屋が「ゆっくり天子饅頭」なる新製品を発売しました。 桃色で桃風味のこしあんと皮が新鮮だとして、人々に大層喜ばれたそうです。 めでたしめでたし
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1867.html
種付けゆっくり・前編 ある山のふもとに大きな村があった。その村の人々は主に農業により生計を立てていた。 しかし近年山のゆっくりが増え、村の畑を荒らしに来ることが多くなった。 村の人々はあらゆる手段を用いたが、ゆっくり達の数が多いために思うように行かなかった。 今日も村恒例のゆっくり対策会議が行われた。 畑を荒らしに来るゆっくりの対策を練るのであるが、今回は少し普段と違う。 最近村に越してきた虐殺お兄さんも会議に加わっているのである。 「今までこの村では様々な手段を講じてきたが、どれも良い成果はでなかった。 畑に罠を仕掛けるのは当然として、ゆっくりを駆除する山狩り等も行った。 それでも奴らは減らない。今の時期はともかく冬前までには駆除したい。何か良い方法はないものだろうか?」 村長はそう尋ねた。 「この村は森に囲まれていて、地の利はゆっくり達にあります。普通に罠を仕掛ける等ではうまくは行きません。 山狩りを行うにしても、ゆっくり達が散らばって逃げてしまえばそれまでです。」 村の人々も分かってはいたが、そこを指摘されて皆渋い表情をしていた。 「しかし」 お兄さんは続けた。 「手が無い訳ではありません。」 皆がどよめいた。 「この辺りのゆっくりを普通に駆除するのは非常に厳しいです。全滅させるとなると不可能です。」 村の人々は 「ではどうすれば良いんだ?このまま放っておけとでも言うのか!?」 お兄さんはさらに続けた。 「減らせないなら逆に増やせば良いんです。つまりゆっくり達を繁殖させるんです。」 その場に居た全員が顔を顰めた。 お兄さんは気にせず話を続けた。 「例えば成体ゆっくりが100匹いたとしましょう。100匹がそれぞれつがいになった場合 にんっしんするゆっくりは50匹になります。 残りの半分はにんっしんしたゆっくりの世話を行います。それがゆっくりの繁殖の基本です。 では残りの50匹もにんっしんしたらどうでしょう?」 皆ははっとした。 「世話役のゆっくりが居なくなるので子供が無事生まれる確率が極端に下がりますし、 にんっしんしたゆっくりも無事に過ごせる確率が下がります。」 「理論上はそうなるだろうが、どうやって全てのゆっくりをにんっしんさせるんだ? ゆっくりありすを使えば出来なくは無いだろうが、この辺りには殆ど生息してないぞ。」 「それについては良い方法があります。適当なゆっくりが3匹も居れば十分です。 あとは加工所に協力をしてもらえば大丈夫です。」 「ではどんな手を使うのだ?」 「ゆっくりを改造して野に放つだけです。 ゆっくりは敵意のないほかのゆっくりに対して、頬を擦り合うという習性があります。人間で言う握手の様なものです。 改造ゆっくりはその際に相手のゆっくりに精子餡を染み込ませます。 交尾とは違い精子餡が体内に到達するのに2日弱掛かりますが、確実ににんっしんさせます。 また、改造ゆっくりと頬擦りしたゆっくりも、改造ゆっくりと同じ性質を持つようになります。 ちなみにこの性質に変化する時間は、頬擦り後5~10秒程度ですので、群れ全てに広がるのには時間は掛かりません。 また、にんっしんまでの時間は2日弱ですが、にんっしんさえしてしまえばその後は早いです。 加工所仕様のゆっくりの様に、子供の量も孵化までのスピードも通常の3倍以上となります。 植物型であれば20匹程度、動物型であれば8匹程度の子供が急速に成長します。 大半が子供の成長に母体が耐えられずに死んでしまいます。 仮に耐えられて子供が孵化できても、孵化直後に改造ゆっくり化した親ゆっくりに触れてしまう為、 1~2日後に蔦を生やして黒ずんで死にます。そのショックで親ゆっくりも死んでしまうかにんっしん不能になります。 大体1週間もあれば山のゆっくりの大半が死滅します。」 村の人々は信じられないと言う顔をしているが、他に良い案もない為お兄さんの案を採用した。 「ではその案で行こう。今すぐにでも取り掛かれるのかね?」 「加工所にはこれから私が出向いて必要な機材を借りてきます。ゆっくりの調達はゆっくり達が寝静まった頃に行いましょう。 ゆっくりが寝ている内に処置をして、夜の内に巣に戻しますのでその時は協力お願いします。」 具体的な内容も全て決まった為、ゆっくり対策会議はそれで終了した。 その後お兄さんは加工所に行き必要な機材を用意した。 そしてその日の夜に村人2人を連れてゆっくりの生息地へと向かった。 生息地に着いた3人は早速ゆっくり達の巣を探した。 巣は程なく見つかった。その中でつがいになっていないものを探した。 つがいでないゆっくりの方が、他のゆっくりと接する機会が多い為である。 最終的にまりさ種とれいむ種の成体ゆっくりを2匹ずつと、それぞれ別の巣の子ゆっくり2匹の計6匹を持ち帰る事にした。 それらのゆっくりに麻酔を打ち、絶対に起きない状態にしてお兄さんの家に持ち帰った。 お兄さんは早速処置に取り掛かった。また、手伝いの2人も処置を手伝う事になった。 処置自体は割と簡単な作業だった。3種類の妙な色の液体を注射した後、機械でゆっくりを1分間振動させ、 薬液に2分程浸し、ゆっくり用乾燥機で乾かした後に小麦粉と薬を混ぜた粉をつけて傷付けない様に揉む。 10分程して表面がほん少しだけ湿ってくれば完了である。 処置が終わったゆっくりを巣に戻しに行く。時々ゆっ、ゆっ、と声が漏れるが、麻酔の為起きる様子は無い。 巣にゆっくりを戻し、巣のカモフラージュ等も元通りにした後、村に戻り、それぞれ家に帰る。 あとは数日後に出る結果を待つだけである。お兄さんは今から楽しみでしょうがない。 「「「「全滅まで何日掛かるかワクワクするぜぇえぇぇ!!今からテンションあがってきたぁああぁぁぁああ!!! フォォォォオォォォ!!!!!」」」」 お兄さんの夜はまだ長い・・・。 続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2753.html
「おにいさん!れいむたちのおしごとのおてつだいをさせてね!」 「・・・・・・は?」 ある初夏の晴れた日のこと。 俺はいつも通り田吾作さんの畑のわりと近くにある自分の畑で仕事をしていた。 すると、人里のゆっくり対策の進んだ最近では珍しい山から下りてきたゆっくりの一家がやって来て、そんな事を言いやがった。 他所の地域では虫取りや他の害獣を追い払うのに役立てることもあるらしいが、ここではそんな習慣はない。 そもそも、人間の役に立とうという殊勝なゆっくり自体が極めてまれな存在だ。 「・・・農作業の手伝いって、お前らに何が出来るんだ?」 「れいむたちはむしさんやはっぱさんをむーしゃむーしゃできるよ!」 「野菜と雑草の区別はつくのか?」 「あたりまえなんだぜ!」 そう言って、ゆっくり一家の両親はゆへんと偉そうに胸(下あご?)を張った。 両親はれいむ種とまりさ種で子どもは親と同じ種族の赤ん坊サイズのものが2匹ずつ。 いわゆるオーソドックスファミリーだ。 「子どもが勝手に食ったりしないだろうな?」 「「「「しょんなことちなにゃいよ、ぴゅんぴゅん!」」」」 俺の言葉に反応した子ども達は反論の後、一斉に頬を膨らませた。 さて、どうしたものか・・・。 さっきの応答や言動・態度を見る限りにおいて、ゲスっぽい気配は無い。 それどころか家族揃ってゆっくりにしてはかなり聡明なようだ。 「ん~・・・」 「おにーさぁん・・・おねがいだよ!」 「・・・で、何が目当てなんだ?」 「ゆゆっ!・・・すごいぜ、れいむ!まりさたちのもくてきはばればれだぜ!」 「ほんとうだね!さすがにんげんさんだね!」 「「「「ゆっきゅちしゅごいよ!」」」」 珍しく殊勝な奴らだと思えばやっぱり見返り目当てだったが、それでも勝手に畑の野菜を食い漁るよりはずっと賢明だろう。 物珍しさにも後押しされ、俺は大根4本と交換で一家の申し出を受け入れることにしてみた。 野菜と雑草の区別が出来ていることを確認してから、柵の中に招き入れ、一家のためにそこそこの大きさの小屋と水飲み場を設置してやる。 こうして、俺とゆっくり一家の共同作業が始まった。 結論から言えばこの一家はいつも俺の予想をいい方向に裏切ってくれた。 ちゃんと雑草と野菜を区別して雑草だけを抜き取ってくれるし、虫の駆除もほぼ完璧。 流石にそれ以上のことは殆ど出来なかったが、虫害をどうにかしてくれるだけでも本当に助かる。 一度だけ子まりさが野菜に口をつけようとした事もあったが、その時には自分の子どもをちゃんと叱りつけていた。 なるほど、これだけ出来のよい個体であればゆっくりであってもそれなりに役に立つ。 それに・・・・・・ 「「ゆゆっ!おにーさん、ゆっくりしていってね!」」 「「「「ゆっくちちていってね!」」」」 「仕事があるからゆっくり出来ないっつーの」 「「じゃあゆっくりおしごとがんばってね!」」 「「「「ゆっくちがんばってね!」」」」 何より、間違ってもおうち宣言のようなこっちの神経を逆なでするようなことは言わなかった。 それどころか、仕事の合間の休憩時間の話し相手としても活躍してくれた。 柵では対処しきれない鳥類が作物を荒らそうとしたときには大声で俺を呼んだ。 とにかく、ゆっくり一家は十分すぎるほどに役に立ってくれた。 「れいむぅ・・・とってもゆっくりしてるね~」 「そうだね、まりさ」 「つぎのおにさんはれいむだよ!」 「「「ゆっくちにげるよ!」」」 また、柵と小屋に守られた畑で安全に食料を確保できるこの状況は一家にとって、とてもゆっくりできる環境だったらしい。 子ども達は赤ゆっくりから子ゆっくりへと成長し、餌を食べ終えた後に畑の周辺でよく鬼ごっこをしていた。 好奇心旺盛で俺に人間のことをあれこれ聞いてきたりもした。 「おにーしゃん!どうちでにんげんさんはむしさんをたべないの?」 「いや、食べられることは食べられるし、食べることもあるぞ」 「でも、おにーしゃんはたべないね!」 「虫はなぁ・・・人間には小さすぎるんだよ。あと、見た目がグロい」 「どうちて?おいちいのに?」 「人間の好みじゃないんだよ。さて、仕事に戻るからもう話しかけんなよ?」 「「「「ゆっくちりかいちたよ!」」」」 と、まあ、こんな具合に鬱陶しくも愛嬌のある奴らだった。 たまに引っ掴んで持ち上げてやるだけで「おしょらをとんでりゅみたーい!」と大喜びするので、散歩いらずな分犬よりも手間がかからない。 「おにーしゃん!いもうとたちにもおしょらちてあげてね!」 「「れーみゅもおしょらとびちゃいよ!」」 「「まりしゃもぶれいじんぐしゅたーちちゃいよ!」」 そうそう、そういえば相当ゆっくり出来たせいか、夏の間に家族が4匹ほど増えていたりする。 れいむ種とまりさ種が2匹ずつ。まだ生まれて間もない赤ん坊だが、にんっしんっで産まれたので結構大きい。 1回のにんっしんっで産まれたのは2匹で両種が1匹ずつ。 まずはれいむが産み、その次にまりさが産んだ。 そんなわけでいつの間にかこの一家は両親2匹に子ども8匹と言うかなりの大家族になっていた。 勿論、新しく出来た家族も親や俺の言うことをきちんと守って、虫や雑草を駆除してくれた。 おかげさまで、今年はいつもよりもずっと収穫が多かった。 そして収穫を終えた日の夜。 翌朝には一家に約束の大根を渡し、野に返してやらねばならない。 俺は前々から読者にも伏線すら提示せずに考えていたある計画を実行に移した。 そろーりそろーりと連中の小屋に忍び込むと、夏に生まれた子どもを各種族1匹ずつ捕まえ、いったん自分の部屋へ戻った。 それから、今までは常時開放されていた小屋の出入り口に扉を取り付け、しっかりと施錠も出来るようにした。 仕上げに、残った家族をこいつらの本能に刻み込まれた言葉で叩き起こした。 「ゆっくりしていってね!」 「「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!」」 「「「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」」」 いとも容易く目を覚ました一家はしばらくのん気に「おにーさん、どうしたの?」などと言っていた。 が、やがて家族が減っていることに気づくと顔を真っ青にして右往左往し始めた。 「おにーさん!れいむのおちびちゃんがいないよおおおおお!?」 「そりゃそうだ。俺が預かったんだからな」 「どうしてそんなことするんだぜ!?」 「それはね!お前達との取引を無効にしたいからだよ!」 「「「「「「「「ゆゆっ!?」」」」」」」」 俺の突然の宣言に「びっくりー!」とでも言わんばかりに目を見開いて驚くゆっくり一家。 今までそれなりに仲良くしてきただけに、その信頼の全てを根底から覆す言葉が信じられないのだろう。 その証拠に、しばらく唖然していたれいむは我にかえるや否や、頬を膨らませてこう言った。 「おにーさん、じょうだんはやめてね!ゆっくりできないよ、ぷんぷん!」 初めて俺に出会った日から数えると、なんと100日以上もの付き合いがあるのだ。 流石に俺がそんなことをするとは思えない、或いは思いたくないらしい。 しかし、残念ながら全て事実であり、目をそらしても変わることの無い真実。 そのことをれいむ達に理解してもらうために、俺は近くにいた、親に連れられてここに来た1匹の子まりさを踏み潰してやった。 「「「「「・・・・・・ゆゆっ!?」」」」」 「これで分かっただろ?俺は本気だよ」 「ゆああああああああああああああああああああ!?」 「でいぶのおぢびぢゃんがあああああああああああああ!?」 「「「「「ばりぢゃあああああああああああああ!?」」」」」 家族が1匹踏み潰されたことでようやく事態の深刻さを認識した一家は恐怖と絶望に顔を歪め、彼女らの双眸からは涙が溢れ出している。 が、泣き止むまで待つのも億劫なので「ゆっくりしていってね!」を利用して半ば強引に泣き止ませると、即座に用件を伝えた。 「さっき言ったとおり大根はやらん。嫌なら全員殺す・・・理解したか?」 「「ゆぐっ・・・・・・ゆっくりりかいしたよ!」」 「「「ゆえーん!」」」 「おにーしゃんひどいよ!やくそくをやぶりゅなんてゆっくちしてないよ!」 「しょーだよ!ゆっくちできないよ!」 残り7匹のうち、5匹は自分の立場をしっかりと弁えてくれたようだが、2匹だけそうでないものがいた。 1匹は両親に連れられてきた子まりさで、もう一匹は夏に生まれた子まりさだった。 彼女らは「ゆっくりさせてね!」などとのたまいながら、成体一歩手前の体を思いっきり跳躍させて俺に体当たりを仕掛けてくる。 が、悲しいほどに痛くもかゆくもないのでしばらく黙ってその攻撃を喰らってやる。 最初はいい気になって「ゆっくりこうさんしてね!」などと言っていたが、やがて息が上がり、冷静になった頃には己の無力を理解した。 「「どほぢでじぇんじぇんぎがにゃいのおおおおおお!?」」 泣き叫ぶ2匹の呼吸は荒く、また体当たりを繰り返したせいでところどころ青あざが出来ていた。 ぼろぼろになりながら、己の無力をかみ締める姿は可哀想でどこか哀れみを誘うものがあるが、容赦することなくお仕置きを加えてやった。 「うりゃ!」 「―――――――――――――ッ!!?」 サミング、いわゆる目潰しを食らわして子まりさの目玉を両方とも抉り出すと、悲鳴にもならない金切り声が子多重に響き渡った。 両親はガタガタと震えながらも「やめてあげてね!いたがってるよ!」と俺に許しを請う。 その傍では素直に言う事を聞いた殊勝な子ども達が両親にへばりついて泣きながら、歯をガチガチと鳴らして震えている。 そして、当の子まりさは目のあった場所から餡子を漏らしながら床を転げまわっていた。 「ゆっくりにげりゅよ!そろーりそろーり・・・」 「ハイ残念、もう見つかった!」 「ゆゆっ!?やめてね!こっちこないでね!?」 子まりさの惨状を目の当たりにした子れいむもまた涙で頬をぬらしながら、必死に逃げ回っていた。 しかし、普段は開けっ放しの出入り口は閉まっており、この小屋には隠れられるような場所も無く、逃げ場所なんて何処にもなかった。 それでも子れいむは俺から逃げ続けた。俺がわざと泳がせていることにも気づかずに一心不乱に逃げ続けた。 そして、疲労が限界に達し、一歩も動くことが出来なくなった瞬間に彼女は俺によって光を奪われた。 俺は一家に食料の代わりに安全に越冬できる巣、以前から使用していたあの小屋を貸してやることにした。 ただし、扉はしっかりと施錠されているし、他の場所から外に出ることもできない。 勿論、食料をやるつもりは微塵も無いので、このままでは何も食べることは出来ず、飢え死にするのを待つだけである。 「そこで、赤ゆっくりのできる蔦やそれに成っている赤ゆっくりと大根を交換してやろうと思う。嫌なら飢えて死ね!」 「ゆゆっ!・・・お、おにーさんはあがぢゃんをあづめでどうずるの・・・?」 「いい質問だ。俺の家に連れて行ったお前らの子どもに食べさせる。ちなみにそれ以外の餌は与えない」 「「「そ、そんなひどいことちないでよ!?ゆっくちできないよ!」」」 自分たちの立場を理解しているとは言え、流石にこの提案ばかりは呑めないらしい。 必死の形相で抗議し、何とか俺から妥協を得ようと一生懸命媚びへつらったり、泣き落とそうとしたりしている。 が、やっぱり何の意味も無い。 「お仕置きされたいか?」 「「ゆゆっ!おしおきはやだよ!ゆっくりできないよ!?」」 「「「おしおきごわいよぉ~!」」」 「「ゆぎぃ!?お、おぢごぎいやあああああああああああああああああ!?」」 どんなに頑張ってもたった一言ですべてが消し飛んでしまう。 両親は子をかばい、子は両親にすがりつき、既にお仕置きを受けたものは気が狂ったかのように喚いていた。 そんなどうしようもなく無力な一家に向かって更に話を続ける。 「ちなみに家のほうの子どもの食事は君たちと交換した蔦や赤ちゃんだけだからね。ゆっくり理解しろよ?」 「「ゆぐっ・・・ゆ、ゆっくりりかいしたよ・・・」」 それから交換レートについても話し合い、蔦1本=大根の葉っぱ10g,赤ゆ1匹=大根の葉っぱ3gという相場に決定した。 ちなみに、うちで取れる大根1本の重さが1000gの可食部分が900g程度であるから蔦1本に赤ゆが5匹なると仮定して1本=25gである。 つまり、40本の蔦を手渡してようやく1kgの食料を得られるのだ。 一家はその分量を示されたときに少なすぎるとゴネたが、手近な成体間近の子れいむにお仕置きをしてやったら快く同意してくれた。 植物型であっても自分が生きたまま子どもを産めるだけの大きさに達しているのは両親と最初からいた4匹の計6匹。 ただし、子どものほうは蔦を3本も生やせば命に関わるだろうし、連続出産なんてとてもじゃないが出来ない。 勿論、いくら十分成熟している両親と言えど5本以上蔦を生やすと流石に危ないのは言うまでもない。 現在生き残っているゆっくりは7匹。 両親のれいむとまりさ、成体間近の子れいむが2匹と子まりさが1匹。 子ども達に関しては1匹のれいむを除いて全員お仕置きによって目を失ってしまっている。 そして、夏に生まれた子れいむと子まりさが1匹ずつ。 こちらは子まりさの方だけがお仕置きによって目を失ってしまっていた。 「ゆっぐ・・・ほどぢでごんなごどになっだのぉ・・・」 「ゆっぐぢでぎないよぉ~・・・」 「「ゆっぐちちだいよ~・・・」」 「くらいよ~・・・ゆっくちでいないよぉ・・・」 そんな絶望的な境遇の中で苦しみにあえぐ一家を眺めながら俺は小屋の出入り口へと向かっていく。 そして、たった一つだけ希望を与えて小屋を後にした。 「俺の部屋の子ども達は来年の農作業用だから餌以外は最高の環境でゆっくりしているぞ」 れいむとまりさは本当に賢い個体だった。 男の言葉を聞いて、意味するところを、男の意図をきわめて正確に把握していた。 また、ゆっくり特有の希望的観測をせずに自分たちの末路を理解した。 「れいむ・・・ごべんね。まりさがにんげんさんのおでつだいしようなんていったせいで・・・」 「ちがうよ、まりさ!れいむもさんせいしたんだよ!」 「「「ゆっくりできないよぉ~」」」 「もうやだ、おうちかえる!」 「おちびちゃんたち、ゆっくりがまんしてね!はるになったらおうちにかえれるよ!」 勿論、嘘だ。男は「部屋の子ども達は来年の農作業用」だと言っていた。 つまり、来年には子ども達がこの小屋で寝泊りをして虫や雑草の駆除に従事することになる。 その時、自分たちが生きていると余計なことを吹き込んでしまう恐れがある。 「きょうはゆっくりやすもうね!」 「あしたになったらきっとおにーさんもゆっくりできるようになってるよ!」 「「「「「ゆっくりりかいしたよ・・・」」」」」 しかし、その事実を伝えるのはあまりに酷だと判断した両親は何も言わず、ゆっくりすることを提案した。 両親の言うことを聞いて痛みや恐怖を堪えながら、そしてそれらから逃げるように子ども達は眠りについた。 彼女達はそれがこの世界で最後のゆっくりになることを知るはずがなかった。 「そろーりそろーり・・・れいむ、ゆっせーので、でいくよ?」 「ゆっくりりかいしたよ。ゆっせのーで」 あっという間に眠りについた子ども達を起こさないように静かに傍まで這いずって行った両親は掛け声と同時に子れいむに噛み付いた。 その子れいむは夏に生まれたばかりの子どもで、まだ小さく成体2匹にいきなり噛みつかれてはひとたまりも無い。 一瞬にして大量の餡子を失った子れいむは断末魔を残して終らないゆっくりへと旅立って行った。 「・・・もっと、ゆっくちちたかったよ・・・」 「「む~しゃむ~しゃ・・・ごべんねぇ・・・」」 そうして子れいむの亡骸を食べ終えた両親は次に両目を失った子まりさを食い殺した。 言うまでも無いことだが、出来ればこんなことはしたくないのだろう。 悲しみの色に染まった双眸からは涙が溢れ出し、水に弱い頬をふやけさせてしまっている。 夏に生まれた子まりさも同じように殺すと、その亡骸を両目を失った成体間近の子まりさ2匹の口にねじ込んだ。 舌を使って器用に口の奥へと運び、何とかこぼれ落ちないようにする。 その後、両親は我が子に頬をこすりつけていわゆるゆっくりにとっての交尾“すっきりー”をした。 途中で子どもが目を覚まし、「ゆっくりできないよー!」と泣いていたが、それでも無理矢理最後までやり遂げた。 「ごべんねぇ・・・」 「「も、もっと、ゆっくちしたかったよぉ・・・」」 「おぢびぢゃんだち・・・ごべんねぇ」 翌朝、唯一生き残った成体間近の子れいむが目を覚ましたとき、部屋には3本の蔦を頭に生やした両親しかいなかった。 それ以外のものは見慣れた壁と床と、わずかばかりの黒いかたまり、そして、10本の蔦を生やしている黒ずんだ大きな塊だけ。 朝早くにやってきた男は、以前のようにゆっくりしていることは無く、その蔦を全部引っこ抜くと足早に小屋を後にした。 「ねぇ、おかーさん・・・いもうとたちは?」 「れいむ、ゆっくりきいてね!」 「ゆっ・・・ゆっくりきくよ!」 神妙な面持ちの親れいむのただならぬ気配を察知した子れいむも真剣な表情になる。 「れいむのいもうとたちはね・・・・・・おかーさんたちがころしたんだよ!」 「ゆゆっ!?う、うそいわないでね!おこるよ、ぷんぷん!」 「ほんとうなんだぜ。いっぱいいてもごはんがへるだけだからころしたんだぜ!」 「ど、どほぢでぞんなごどずるのおおおおおおおおおお!?」 その残酷な言葉を聞かされた子れいむは泣きじゃくり、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら両親に怒りをぶつける。 が、両親は「しかたなかったんだぜ!」とか「れいむのためだよ!」などと言うばかりで、何一つ納得のいく言葉を口にしてくれない。 やがて我慢の限界に達した子れいむは親れいむに飛び掛るがあっさりと弾き飛ばされ、まりさに取り押さえられてしまった。 「おがーざんのばがああああああああ!?」 「しかたないんだよ!こうしないとゆっくりできなくなっちゃうんだよ!」 「ぞんなのぢらないよ゛!ゆっぐぢでぎないおがあざんなんでゆっぐぢぢね!!」 厳しい自然の中で仲間を失った経験の無いこの子れいむにとって、生存のためでも仲間を切り捨てるなんてことは考えられない。 だから、親の気持ちも知らずに泣きつかれて眠るまでただひたすら呪詛を吐き続けた。 「ゆっくりしね・・・だって」 「おお、こわいこわい」 本来ならふてぶてしい表情で言うはずのこの言葉を、今ばかりは悲しみに満ちた表情で口走る。 ここにいてもいつか殺されるだけなら、いつか脱走を試みなければならない。 そして、そのためにはまず生き延びなくてはならないし、脱走の際に足手まといにしかならないものを生かしても仕方が無い。 そんな個体はよしんば逃げ延びても冬の野原や森で生き残ることなどまず不可能なのだから。 ならばさっさと間引いて一番逃げ延びる可能性のあるれいむだけでも救いたい。 また、きちんと蔦を提供することで、男の部屋の子ども達も何とか生き延びることができるかもしれない。 それが子どもが決して知ることの無い両親の想いだった。 頬を涙でぬらしながらも安らかな表情で眠る我が子の傍で2匹は再び6度に渡ってすっきりを繰り返した。 それが終わるとタイミング良く男がやって来て、さっきの分の餌(大根の葉っぱ650g)を床に置き、再び蔦を引き抜いていった。 結論から言えば両親は、餌には一切手をつけずに命を削って20本近い蔦を提供したが、子どもを逃がす機会を手にすることは出来なかった。 子れいむは両親の本心を理解しせず、度重なるすっきりで疲弊しているところを彼女に襲われたのが両親の死因となった。 小屋に残されたのは世間知らずで、両親ほど賢くもなかった1匹の成体間近の子れいむとおよそ1000g分の大根。 3ヶ月ばかり続く長い冬の間、最初の数日は両親の教えに反発するように適量以上を食べ続け、その後数日は妙な臭いを発する両親の死体で飢えをしのいだ。 が、やがてそれも尽き、2,3週間かけて子れいむはゆっくりゆっくりと飢えて、やせ衰えて、死んでいった。 「もっと・・・ゆっくり、したかったよ・・・」 おわり 善良なゆっくりは心理的な抵抗とは別の次元でも虐待しにくい気がする。 ちなみに、男の部屋の子ゆっくりは男が餌を管理してくれたおかげで無事生き延びました。 で、畑仕事を手伝いながら、10匹の子ゆっくりを授かり、冬には(以下略 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1290.html
ゆっくりゃととある栽培者 ある日のことだ。僕が市場での買い物を終えて、我が家に帰ってきた時だった。 「うっうー♪ ぷっでぃーん♪ぷっでぃーんがたべたいどぉ~♪」 自分の家の庭が騒がしかったので、何事かと思い庭に向かう。しかしそこで見たのは、目を疑うような光景だった。 まず目に飛び込んできたのは、小さいなりに僕が丹精込めて作った家庭菜園が無惨に荒らされていた光景と、 そこら中に散らばった野菜の変わり果てた姿だった。そして、ぐちゃぐちゃに荒らされた畑の上で、体つきゆっくりれみりゃ、 通称ゆっくりゃが僕の育てた野菜を引っこ抜き、傍らに投げ捨てていた。 「おやさいきらい!まじゅいのぽい!!すてちゃ、うー☆」 ゆっくりゃは、舌足らずな言葉で何言か嬉しそうに喋っている。そして僕の目の前で、まだ畑に埋もれている野菜を、 手に持った傘で掘り起こしていた。野菜を掘り起こして見つけるたびに、ゆっくりゃの円らな目がぱっと輝く。その瞬間だけは、 宝物を見つけ出したような子供のような微笑ましい表情に見えただろう。そのあと野菜を嬉しそうに投げ捨てていることに目をつぶれば。 見かけはいくら可愛らしく、子供らしい純真な姿でも、やっていることは全くの間逆な邪悪な行為である。 人様の敷地に勝手に入り込んで、さらに畑や家を荒らしたとなれば立派な犯罪行為であるのに、このゆっくりゃの豆腐よりも 柔らかそうな構造の脳細胞では理解することができないのだろうか。 この光景をしばらく呆然と見ていた僕。ふと我に返った時には、僕の好物であり、家庭菜園の中で特に手塩にかけていた愛しいプティトメィトゥーが ババ臭い服を着た悪魔の手で毟り取られる寸前であった。 やめろッ!その泥と肉汁で穢れた薄汚い手で僕の神聖なプティトメイトゥーに触るんじゃあないッ! 「おい貴様ッ!何をしてるッ!!」 咄嗟に出したにしては自分でも驚くような大声が口をついて出ていた。その声に一瞬硬直するゆっくりゃ。 自分の知らない人間からいきなり怒鳴られ、当然の反応だろう。しかし、次の瞬間にはさっきのふてぶてしい笑顔が復活し、 こっちに向かってもたもたと近づいてきたではないか。 「う~☆おながすいだ~♪ぷっでぃんたべどぅ~☆」 そういって何かを期待するように僕を見つめ始めた。 僕が、奴のあまりの図々しさにしばらく動けないでいると、奴は地団駄を踏み、その下膨れの顔をさらに膨れさせて僕に向かって言った。 「う゛~~!!どっどどぷっでぃんかっでくどぅどぉ~!!ざぐやにいいつけぢゃうどぉ~!!」 やたらと濁音の多いセリフだ。どうにか解読してみると、どうやら僕に『ぷっでぃん』なるものを買って来いと命令しているようだ。 解読に成功した途端、僕の理性がプッツンしそうになった。 僕よりも明らかに年下の風貌のくせして、こいつは僕に命令しようとしているのだ。あろうことか僕の大切な家庭菜園を 再起不能にしたあとで。 どうにかして断裂寸前だった理性を繋ぎ止めると、僕はゆっくりゃに向かって静かに、しかし威厳を込めた声で言い放った。 「ここはおまえのような饅頭が入ってきていい場所じゃあないんだ。とっとと僕の目の届かない所へ消えうせてくれ。」 しかしゆっくりゃは僕の最後通告すら無視した。 「う゛-!!いいからかっでぐるどぉ~!がってごないどた~べちゃ~うぞ~!」 ……ほう、そういうことを言うのかこのクサレ肉まんは。そういう態度を取るのかこのド低脳は。 いいだろう、お前がそこまでの決意を持っているなら僕も決意をみせてやる。『絶対にタダでは済まさん』という決意をだッ! 「わかった……『ぷっでぃん』が欲しいんだな…?家の中で待っていろ…。」 「うっう~☆ぷっでぃ~ん♪」 そういってゆっくりゃはもたもたと僕の家の戸口に向かう。その隙に、急いで壊滅寸前の家庭菜園に近づく。さっきから気が気では無かったのだ。 あの時、まだ奴は手を付けていなかったハズ………やった!無事だッ! 思わず顔を綻ばせ、足取り軽く玄関に向かう僕の腕の中には、大切なプティトメイトゥーちゃん達の姿があった。 家庭菜園は再起不能になっちゃったけど、この子達だけでも助かったのは不幸中の幸いだったな! そんなことを思いながら玄関に戻ると、ゆっくりゃが泣きながら、玄関の引き戸を手前に引っ張っていた。 どうやら引き戸の開け方がわかっていないらしい。よくもまぁ今まで生きてこられたものだ。僕は思わず溜息を漏らした。 家の中に入ると、ゆっくりゃは辺りに置いてある物に興味津々の様子で、なかなか前に進もうとしない。 僕はそんなゆっくりゃの尻を突っついて急かし、奥に向かわせた。途中何かゆっくりゃが講義するような目で僕を睨んでいた気がしたが、 無視することにした。 そんな幼児体系に色気も恥じらいもあったものではないだろう。恋や懸想をするならもっと大人びた、優しいカンジの女性がいいと思います。守ってあげたいと思う…。 「う~?ぷっでぃんどこぉ~?」 しばし物思いに耽っていた僕の心は、耳障りなゆっくりゃの言葉で現実に引き戻された。いけないいけない、僕としたことが…、剣呑剣呑。 ゆっくりゃはというと、部屋の中に勝手に入って辺りをきょろきょろと見回している。一人暮らしをしているにしては、 僕の部屋はかなり片付いている方だと思う。食料やら何やら大事なものはそこらへんに置いたりせず、きちんと整理しているからだ。 そんな僕の部屋を見て、ゆっくりゃはあまり面白くなさそうな顔をしていた。 確かにゆっくり達からしてみれば、(ゆっくり達には)遊ぶものも食べるものも何も無いこの部屋は、さぞかしゆっくりできない、 つまらない場所だろう。もちろん、そう易々と侵入させるつもりもないが。 僕はゆっくりゃをその部屋に放置すると、急いで腕の中のプティトメイトゥー達を、野菜を入れている籠の中に非難させた。 「ほら、危ないからそこに隠れていてね。怖い怪獣に食べられちゃうからね。じっとしているんだよ?」 僕は籠から離れながら、プティトメイトゥーちゃん達に話し掛ける。プティトメイトゥーはいい。他人にも親にも理解されない僕の孤独と心を癒してくれる、大切な友人兼、話し相手だ。 もちろんプティトメイトゥーちゃん達は話すことはできない。僕が一方的に喋るだけだ。でも、そんなことは関係ない。 言葉がなくったって、気持ちはきっと通じるハズさ。だって、芽を出してこの世に生を受ける前からずっと僕が優しい言葉をかけつづけてあげていたんだから。いい子になってね、美味しくなってねって。きっと彼らも僕に食べられることを望んでいるはずさ。 そうに決まっている。あぁ、早く食べてあげたいなぁ……。グフッ、グフフフフフ……。 再び自分の世界に軽くトリップしつつ、ゆっくりゃの所へと戻る。奴は部屋の中央にペタリと座り込んで何やらみょんな歌を歌っていた。 「うっううー♪うーうー、うっうーうあうあ♪」 まったく、自分の境遇も知らないで、暢気なものだな。 僕は奴に多少の哀れみを感じながら、テーブルと椅子を持ってきて適当に座らせ、部屋の中を暴れ回られないように足を縛って固定すると、台所に向かった。 僕の可愛い子供達が助かって機嫌がいいとはいえ、僕は制裁をやめるつもりは無かった。 このゆっくりゃには、食べ物の大切さを教え込んでやらなければならない。二度と食べ物を粗末にしたりしないように。 プティトメイトゥーを食べずに捨てるなどという間違いを犯さないために。 さぁ、お仕置きの時間だよ、ベイビー。 とは言っても、僕は殴ったり体を切り裂いたりするような残虐な真似はしない。そんなことをしても、奴らが覚えるのは『痛み』と『恐怖』だけだ。肝心な事については、ほとんど理解してはいないだろう。そうならないために、僕は彼らに自発的に覚えさせるのだ。 食べ物を嗤った者は、食べ物に泣くということを…。 「ほら、お待ちかねの『ぷっでぃん』ができたぞ」 「うっう~!ぷっでぃ~~ん♪♪」 『ぷっでぃん』が何かわからないので適当なことを言いつつ、ゆっくりゃの前に皿を出す。 「うっう……う~?」 出された物を見て首をかしげるゆっくりゃ。それもそのはず、目の前の皿に乗ったコレは、皮の剥かれたただのタマネギであり、 ゆっくりゃが所望した『ぷっでぃん』とはまるで違うものだからだ。 「う゛う゛~~!!ぷっでぃんたべどぅの!!ぷっでぃんがいいの゛ぉ~~!!」 だだをこねて泣き叫ぶゆっくりゃ。ここで僕に一つ悪戯心が湧いた。 「それは見た目は変だけど、食べると『ぷっでぃん』の味がするんだよ」 それを聞いたゆっくりゃの泣き顔が一瞬消える。だがしばらくして、思い出したように再び喚き出した。 「ぢがうも゛ん゛!!ぷっでぃんはごんなにぐさぐな゛いも゛ん゛!!あま~~ぐでぷるっどじでるんだも゛~ん゛!!!」 さすがにコレはごまかされないか。でも僕は見たぞ。一瞬考え込んで嘘の言葉に流されそうになったのを…。 やはり所詮はゆっくりブレイン、たかがしれている。 「う゛~!!ごんなのいらにゃい!!ぽい!ぽいするもん!!」 そういってゆっくりゃは皮を剥いたタマネギを『素手で掴んで』投げ捨てた。ふん、やはり予想通りの行動に出たな。 後でお前は後悔することになる。今の自分のした行動を…。 僕はテーブルに腰掛け、皮を剥く際に手についた玉葱の汁をタオルでふき取りながら、ゆっくりゃの行動を観察することにした。 その後、ゆっくりゃはぷでぃん、ぷでぃんとだだをこねていたが、しばらくして目をしばしばと瞬かせ始めた。 玉葱の強烈な匂いの成分が、ゆっくりゃの目にちくちくと刺激を与えているらしい。やがて本格的に痛み出したのか、 ゆっくりゃは大声で泣き叫びはじめた。 「う゛あ゛ーーーー!!めぎゃいだいい゛い゛い゛い゛い゛!!ざぐや゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!」 滝のような涙を流そうが、大声で助けを乞おうが、一度目にしみた玉葱の痛みはそう簡単に消え去らない。 そのうちゆっくりゃは、目に付いた玉葱の成分を何とか拭おうと手で目元を擦った。 あろうことか、大量に玉葱の汁が付着したその手で。 「びゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 当然の悲鳴。目を蝕む激痛に体を仰け反らせるゆっくりゃ。体を激しく動かして暴れるものの、固定された椅子からは逃れられない。 玉葱を侮ってうっかり素手で触ったのが運の尽きだったな。お前が今まで捨ててきた野菜の怖さを、玉葱を通してじっくりと思い知るがいい。 「ぎゃいいいい!!う゛あ゛あ゛あ゛~~!!」 もうすでに激痛でまともに思考ができないのであろうか、ゆっくりゃは激痛が走る目を無意識的に手で擦り、 「ぎゃお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 爆発したように泣き叫ぶ。今ここに地獄のゆっくりゃループが完成した。 「しょうがないな、ほら、これで顔を拭けばいい。」 そう言ってゆっくりゃに持っていたタオルを投げ渡す。そう、さっき僕が持っていたあのタオルだ。 「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う」 タオルを渡されたゆっくりゃは、タオルに顔を埋めると頭だけを左右に振って顔を拭い、 「……………!………………!!!!」 そして仰け反る。もはや痛すぎて声も出ないらしい。 さて、一体いつそのループから抜け出せるかな?おっと、もうこんな時間か。プティトメイトゥーちゃんたちの話し相手をしてやらなきゃな。 僕は悶え苦しんでいるゆっくりゃを見て悶え喜びながら、その部屋を後にした。 それから僕は、時間を忘れてプティトメイトゥーちゃん達と最後になるであろう会話を楽しんでいた。 「今までよく頑張って育ってくれたね。おにいさんは嬉しいよ…。みんなとても美味しそうだね!食べるのが楽しみさ!」 おぉっと、すっかりあの部屋に放置していたゆっくりゃのことを忘れていた!楽しい時間はすぐに過ぎ去るということは 本当だったんだな…。 「それじゃみんな、あいつがゆっくり反省しているのを見ながら締めくくろうか!」 プティトメイトゥーちゃん達を入れた籠を小脇に抱え、ゆっくりゃのいる部屋に戻る僕。そこで部屋に足を踏み入れた僕は、 ゆっくりゃが愉快な状態、もとい悲惨な状態になっているのを見て呆然としてしまった。 「う゛う゛う゛う゛う゛!!」 ゆっくりゃは両手をピンとまっすぐ下に伸ばしたまま、プルプルしながら真後ろにエビ反りになるというなんだかすごい姿勢で硬直していた。 硬く瞑った目と、必死に食いしばった口元、そして全身を緊張させたその姿からは、目を襲う激しい痛みに耐えている様子がありありと見て取れた。 手を下に伸ばしているのは、なるべく腕を顔から遠い位置に固定し、玉葱の汁のついた手で無闇に目を触らないようにするという、ゆっくりゃなりの知恵だろうか。 見た瞬間、思わず噴出してしまった。 しかし、自分に困難な姿勢を強いて何かにひたすら耐えているという光景は、何処かの修行僧を彷彿とさせるな。 そう考えると、迂闊に邪魔はできなくなってきたので、しばらく放置する。 「う゛う゛う゛…!ごべん゛だざい゛…ゆ゛る゛ぢで…!」 どうやら玉葱責めは思いのほか効果を発揮したらしい。ゆっくりゃは真っ赤に泣きはらした目で僕を見て、嘆願してきた。 これほどの目に合わされたゆっくりゃは、もう二度と野菜を捨てたりしなくなるだろう。 僕の制裁はしっかりとゆっくりゃの心に刻まれたのだ。僕は自分の仕事に満足する。 しばらく見ていると、さすがに長時間のこの姿勢はかわいそうだと思い始めたので、椅子から拘束を外してやることにした。 急に固定が外れ、無理な体勢が崩れたためゆっくりゃは頭から床に落ちた。 「ぶぎゅっ」 カエルの潰れたような声でゆっくりゃがうめく。僕は床に這いつくばったゆっくりゃに問いかけた。 「もう食べ物を粗末に扱ったり捨てたりしないか!?」 「…もうじまぜん…」 「そうか…もし再び人様の畑を荒らすような真似をしたら、また罰を与えるぞ…こんな風な罰をな…。」 僕は今度こそ清潔なタオルで顔を拭いてやり、外に開放してやった。 別に殺すのが目的ではないのだ。しっかりと野菜に対する敬意を覚えてくれればそれで何も言うことはない。 地獄の責め苦から開放されたゆっくりゃは目が真っ赤な上に虚ろというなんだかすごい状態だったが、家の壁にぶつかったり 茂みに突っ込んだりしながらなんとか帰っていった。 ようやく、僕の家に静寂が訪れた。籠の中から一つプティトメイトゥーを摘み、口元に運ぶ。悶えているゆっくりゃを横目に、 プティトメイトゥーを食べるということは果たせなかったが、別に今となってはどうでもいい。 プティトメィトゥーが守られ、ちゃんとこうして僕の口の中にいる、それでいいじゃあないか。そういえば…アイツの言ってた『ぷっでぃん』が結局なんだったかわからなかったなぁ…。 そんなことをつらつらと考えつつ、僕は舌の上でプティトメイトゥーを転がしながら午後の優雅なひと時を過ごすのだった…。 「レロレロレロレロレロ、 レロレロレロレロレロ…」 END