約 3,643,268 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/955.html
農作業を終えた青年が、自宅に向かって、ゆっくりと歩いていた 不思議な事に、青年の後ろを二匹のゆっくりが、跳ねながら追いかけている その二匹は、ゆっくりまりさと、ゆっくりれいむなのだが、それぞれ帽子とリボンがない 「まつんだぜ!まりさのぼうしをかえすんだぜ!」 「ゆー!れいむのりぼんをかえしてね!」 二匹の飾りは、青年が左手に持っていた 青年の耳には、二匹のゆっくりの叫び声が、はっきりと聞こえているはずだが、青年はそれに答えず、一定の速度で歩いていく 「ゆー!まりさのぼうしをかえすんだぜ!」 「ゆ!ゆ!れいむのりぼんをかえしてね!」 いくらゆっくりが叫ぼうとも、青年はひたすらに無視を続ける ゆっくり達は、なぜ自慢の髪飾りを奪われ、無視されるのか分からなかった 二匹は、滅多に人の近付かない、森の奥深くで、豊富な昆虫や木の実などを食べて、ゆっくりと生活していたのだが ゆっくりぱちゅりーに、人間という生き物が、畑という場所で、美味しいゆっくりできる食べ物を作っている、という話を聞いたため 周囲のゆっくり達が止めるのも聞かず、一度、人間の食べ物を食べに行こうと、人里まで降りてきたのだった 二匹は人里まで降りると、いつも暮らしている森と、全く違う景色に、大喜びではしゃぎまわった 「なんだかすごいばしょなんだぜ!」 「もりにとじこもっててそんしたね!」 そんな会話をしている二匹は、棒を持った、二本足で歩いている生物、すなわち人間を発見した 「ゆゆ!なんかへんなのがいるよまりさ!」 「ゆ!あれがぱちゅりがいってたにんげんだとおもうんだぜ!さっそくごはんをもらうんだぜ!」 ゆっくり二匹は、ぱちゅりーから得た、人間の情報を自分の都合のよいように、歪曲、修正して解釈したため 人間は、美味しい食べ物をゆっくりにくれる生き物、と考えていた 二匹は、青年の前に飛び出すと、元気にあいさつをした、自分達に、美味しいものをくれる相手には、元気よく挨拶してやろうと思ったからだ 「「ゆっくりしていってね!!」」 「さっそくだけどはたけのごはんがほしいんだぜ!」 「おいしいごはんをちょうだいね!」 二匹は、すぐにこの男が美味しいものをくれるだろうと、思っていた しかし、青年は、二匹から飾りを素早く奪い取ると、そのまま歩きだした そして、現在にいたる、れいむとまりさの訴えは、すべて無視され続けている れいむも、まりさも、すぐにでも森に帰りたかったが、髪飾りを奪われている以上、そのまま帰ることはできない 「ゆっくりしてないおじさん!ぼうしをかえすんだぜ!」 「ゆっくりなおにいさん!はやくりぼんをかえしてね!」 悪口を言っても、褒めても男は無視を続ける ゆっくりが喋る、男は何の反応も示さず歩き続ける、そんな状況が十分は続いただろうか、自宅に着いた男は家の中に消えていった ゆっくりは、飾りを奪われたことも忘れて、初めて目にした、人間の家に驚き、感激していた 「でっかいおうちなんだぜ!とってもでっかいんだぜ!」 「ゆゆゆゆ!ここならとってもゆっくりできそうだね!」 そんな会話をしていると、家の中から出てきた人間に髪の毛を掴まれ、強引に家の中へ引きづり込まれた 「いいたいんだぜ!ひっぱらないでほしいんだぜ!」 「ゆぅぅぅ!いたいよ!ゆっくりやめてね!」 若者は、れいむを玄関に落とすと、殺さない程度に踏みつけた 「ぎゅびゅ!!!」 「れいむ!おじさんやめるんだぜ!れいむをいびゅ!!」 まりさが最後まで言わないうちに、男はその頬を平手で打っていた 「い…いたいんだぜ!やめう゛ぅ!」 男は再び、先ほどより少し力をこめて、まりさの頬を平手で打つ 男はそのまま、まりさの頬を叩き続ける、見ようによっては愛嬌のある顔は、平手打ちを喰らうたびに左右に揺れる 「いだい!びゅごめゆ゛っごめんなびゅびゅ!!!」 必死に許しを乞うまりさを無視して、男はまりさの頬を叩き続ける 「うぅぅ!!うぅ!!!!!!」 一方、男の足元ではれいむが、まりさとは比べ物にならない、苦痛を味わっていた 男はゆっくりと、しかし、確実に足に掛ける力を強め続けている 「うぅ…う…ぅぅ」 男から逃れようと、もがけばもがくほど、男から受ける圧力は高まっている 「ゆ!びゅ!!…ぅう…う!!!!」 自分の皮が伸びていく、体内の餡子が押しつぶされていく、抗い様のない苦痛 非力な、れいむの出来ることは、顔を真赤にして、耐えようのない痛みを受けながら、うめき声をあげることだけだった 男は、実に五分間の間、二匹のゆっくりを叩き、踏みつけ続けた 男は、顔を真っ赤にはらしたまりさと、頭が少々へこんだれいむを竹でできた、虫籠ならぬ、自家製のゆっくりかごに入れると、家の中に入って行った 男は食事に風呂を済ませると、二匹のゆっくりの前に、彼らの髪飾りをもって現れた 「ゆ!ぼうしをかえしてだぜ!」 「れいむのりぼんをかえしてね!」 男は、籠の中で騒ぐ彼らの前で、帽子とリボンを玄関に落とすと、それらを思い切り、踏みにじった 「やややめるんだぜ!!!はやくやめるんだぜ!!!!!」 「れいむのりぼんをふまないでね!!!!ゆっくりせずにやめてね!!! しかし、男の感情のない、冷たい瞳で見つめられると、眼の前で大事な帽子を踏みつけられているにもかかわらず、ゆっくり達は、なにも言えなくなった 自分達の、目の前にいる生物が、決してゆっくりの力では、敵わない事は、さすがのゆっくりブレインでも、理解できた 二匹は、震えながら、自分達の髪飾りが、蹂躙されるのを見ているしかなかった 男は、そんなゆっくり達に見せつけるように、何度も何度も飾りを踏みつける 男が足を退かす頃には、二匹にとって大事な、大切な髪飾りはボロボロになっていった 「れいむのれいむのりぼん…」 「いやなんだぜ…かえりたいんだぜ」 男は、滅茶苦茶に踏みつけた髪飾りをそのままに、自分の部屋に戻って行った 二匹は、しばらくの間、己の不幸を呪い、汚され、傷つけられた髪飾りに、涙を流し、人間にすさまじい恐怖を覚えた 二匹は、また男が来るのではないかと、びくびくしながら過ごした 「ゆ…もしももりにかえれたらにどとひとざとにはおりないんだぜ…」 「ゆぅ…にんげんはゆっくりゃよりつよくて…ゆふらんよりもいじわるだよもりにかえりたいよ」 二匹はそのうち眠ってしまった、極度の疲労と恐怖、髪飾りを滅茶苦茶にされた、精神的なショック、空腹などが、彼らを眠りの世界にいざなった れいむは夢を見ていた、子供のころ、姉妹たちと楽しく遊んでいた頃の夢だった 鬼ごっこや、かけっこ、かくれんぼなどをみんなと一緒に、やっている夢 「いたい!いたいよ!!!」 れいむは、髪を引っ張られる痛みで、目を覚ました 男の目線まで釣りあげられると、昨日のまりさが受けていた平手打ちを食らった 「いだ!やびゅ!ゆびゅ!いだいいだいぃぃ!!!!」 何度となく、男に平手打ちを喰らう、下では昨日のれいむの様に、まりさが男に踏みつけられている 「っづう〜…うぅう!!」 まりさの、綺麗な金髪を男の足が踏みにじっている、まりさも、昨日の自分の様に、皮の伸びる痛みと、餡子を押しつぶされる激痛を味わっているのだろう 男は、昨日のより多めに十分間ゆっくり達を痛めつけた ボロボロになったゆっくりを籠に入れると、男はゆっくりの入った籠を持って、昨日二匹に出会った場所に連れて行った 二匹を籠から放り出すと、昨日自分の手で滅茶苦茶にした、二匹の髪飾りを投げ渡した 二匹は、それぞれの髪飾りを咥えると、跳ねることはせず、地べたを這いずりながら、森へ向かって逃げて行った 二匹は、男に背を向けていたため気付かなかったが、男は去っていく二匹をまるで、卒業生を送り出す、担任教師の様な目で、見つめていた 「ふー、彼等もこれに懲りて、二度と人里に下りて来る事は、危険だということを学んだでしょう」 そんなことを言うと、青年は首にかけていた手拭いで、目からあふれ出る、心の汗を拭いとった 彼は自称、愛のゆっくり熱血教師、通称、ゆっくり体罰教師と呼ばれていた ゆっくりに口で言っても駄目だ、彼らに物を教える、最も効果的な方法は肉体言語だ、というのが彼の考え方だった 殴って、蹴って、人間がどれほど恐ろしいか教えてやれば、彼らは金輪際、人里へは下りてこない これで、人間の恐ろしさを知ったゆっくり達は、虐待お兄さんに捕まって虐待されたり、畑のトラップで死ぬ事もなくなる 教育の力で、あの可愛い生徒達は、大自然の中、のびのびと暮らしていく事ができるのだ 「可愛いゆっくりの未来を守るためには、体と体、心と心の、ぶつかり合いが大切なのです」 晴れ渡った青空に向かって、そう呟くと、男は家に帰っていった ちなみに、男から愛のこもった教育を受けた、生徒達はというと、結果的には男の言うとおり、二度と、人里には近づかなかった しかし、大自然の中、のびのびとは暮らしていくことはできなかった れいむは、長く頬を張られ続けたせいで、頬の皮が、柔らかく、破けやすくなっていた ゆっくり体罰教師に、地面に投げつけられたせいで、右頬には大きな穴があき、這いずるたびに、餡子が漏れ出した れいむは自分の体から、命の元が、徐々に流れ出ていくのを感じながら、二度と覚めることのない眠りについた まりさは、柔らかい饅頭の体で、人ひとり分の体重を長い間、かけ続けられたせいか、跳ねることができない体になってしまっていた ミミズのような遅さで、這いまわることしかできない身体では、敵から逃げることも、獲物を追う事も出来ない そんなゆっくりが、厳しい自然界で、生き延びることができるはずがなかった その日のうちに、まりさはれみりゃに食い殺されてしまったそうだ 作:ゆっくりな人 以前書いた虐待 ゆっくりカーニバル 臭い付きゆっくり(上) 臭い付きゆっくり(下) ゆっくり移植 きらーうーぱっく このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3444.html
※虐待スレアンチ的な要素が多分に含まれる気がしますのでご注意ください 一匹のゆっくりまりさが、野道をぴょんぴょん跳ねている。 娘である赤ちゃんれいむと一緒にハイキングに行った帰り道だ。胎生型出産で、一匹だけ生まれてきた赤ちゃんだ。 番のれいむは現在第二子をにんっしんっ中であり、おうちでお留守番をしている。 念願の妹の誕生を前に赤れいむは、「りっぱなおねえちゃんになゆよ!」と毎日一生懸命ごはんを食べている。 今日も綺麗なおはなさんや美味しいきのみさんを沢山食べて、また少し大きくなれた。 きっと見る見るうちに、お母さんれいむに似たとてもかわいくてしっかりした成ゆっくりに育つのだろう。 妹から尊敬されるお姉ちゃんになろうと美味しいごはんを食べる赤れいむを見て、まりさはとてもゆっくり出来ていた。 こんなにゆっくりした赤ちゃんを持っているのは、きっと世界で自分だけだ。まりさの自慢の赤ちゃんだ。 帰ったら早速れいむに、赤ちゃんが今日どんなにゆっくりしていたかを話してあげよう。 そして夫婦で両側から赤ちゃんに頬ずりをして、家族みんなでゆっくりしよう。 自然と速まる家路への歩み。人間で言えばスキップでもするようなリズム。 そんなまりさに、突然聞いたことのない声が掛けられた。 「あれー? ゆっくりだ」 「これゆっくりまりさじゃん! 可愛い~!」 「ゆゆ?」 声のした方向をまりさが見上げた先にいたのは、若い男女二人組の人間たち。 この辺りは綺麗な花畑のあるゆっくりプレイスなので、人間が遊びに来ることも珍しくはなかった。 まりさは人間さんという他種族にはあまり関わらないようにしていたが、 目の前の二人はゆっくり出来そうな人たちに見えたので、普段仲間にそうするように笑顔で挨拶することにした。 「ゆっくりしていってね!!」 「わ、ゆっくりしていってねだって!」 「初めて聞いたー! ゆっくりしていってね、まりさ!!」 人間さんたちは腰を屈めて、まりさに満面の笑みを向けてくれる。 良かった、やっぱりゆっくり出来る人たちだった。ゆっくり出来るならみんなお友達だ。 まりさは「ゆゆ~!」と身体を縦に伸ばし、新たな友人への親愛の情を表現していた。 すると、まりさの頭に載った帽子がもぞもぞと動き、中からちっちゃな赤ちゃんれいむが顔を出した。 「ゆ・・・ゆっくいしていっちぇね!」 「ゆ、まりさのあかちゃん!」 遊びつかれて、お帽子の中でお昼寝していた赤れいむ。まりさは『おこしちゃったかな?』と内心苦笑する。 (跳ねているまりさの帽子の中はかなり揺れるが、お母さんのおつむの上、お帽子の中というだけでとてもゆっくりできるのだ) 『ゆっくりしていってね』という言葉の魅惑的な響きに、いても立ってもいられなかったのだろう。 特に生まれて間もない赤ちゃんゆっくりにとって『ゆっくりしていってね』の挨拶は、 言うだけで気持ちがあったかくなる、とても楽しくてゆっくり出来るものだ。みんないつも言いたくてたまらない。 だから挨拶を聞いた赤ちゃんが這い出てきてしまうのも無理はないことである。 それにまりさのとってもかわいい赤ちゃんを見て、人間さんたちもますますゆっくり出来るだろう。 もしかしたらそのお礼として、お菓子がもらえるかも知れない。 「ゆゆ、にんげんさん!まりさのあかちゃんとってもかわいいでしょ!じまんのむすめだよ!!」 そんな期待を込めて、得意げに上を向いたまりさの瞳はしかし、忌々しげに細められた冷酷な視線によって射竦められた。 人間さんたちはもはや中腰にはなっておらず、まりさを遥か高みから威圧するように見下して来ている。 「あ? 何だこいつ……虐待用ゆっくりかよ」 「マジキモイんですけど、そういうの」 「ゆ・・・?」 まりさの満点の笑顔が不安に引きつる。 あんなにゆっくりしていた人間さんが、突然ゆっくり出来なくなったのだ。その理由が解らない。 もしも最初から冷たくされていたなら、まりさもさっさとその場を離れていたことだろう。 しかし一度ゆっくり出来る仲間だと思った相手から見放されるのは、ゆっくりにとってとても辛いことなのだ。 だからまりさは必死に考える。自分が何かまずいことをしたのだろうか。 もしかしたら、もっとよく赤ちゃんを見たいのかも知れない。 そう思ったまりさは、頭上の赤ちゃんをゆっくりと地面に下ろしてやり、 首を傾げる赤ちゃんに「いっしょににんげんさんをゆっくりさせてあげようね」と声をかける。 そして精一杯笑顔を作り、赤ちゃんと一緒に「にんげんさん、ゆっくりしていってね!!」と再び挨拶を繰り返す。 しかし人間さん達はこれ見よがしに、ますます表情を醜く歪めた。 「はあ? 何媚びてんのこいつら。キモすぎ」 「変てこ生物のくせに何で子供とか産んでんの? 動物みたいで気持ち悪いよ、マジ」 「ゆゆ?だれでもあかちゃんはうむよ!おにいさんもおねえさんもむかしはあかちゃんだったんだよ!」 「だーからー、人間と一緒にすんなっつうの。生々しいっつーか、発想が安直なんだよ」 「そうそう、ゆっくりは単純な動物とは違う不思議さが良いんじゃん。赤ちゃん産むとかゆっくりっぽくないし」 『ゆっくりっぽくない』……何を言っているのだろう、この人たちは。自分達を措いてゆっくりなどいない。 まりさには人間さんの言っていることが少しも理解出来なかったし、彼らも思ったことを言っているだけで、 全くまりさに解らせようとは思っていない。しかし、とてもゆっくり出来ないことを言われている事だけは解った。 二人の冷たい視線に晒された赤ちゃんは、くりりとした瞳を涙で満たし、戸惑いがちに視線を彷徨わせている。 「や、やめてね!まりさたちはとってもゆっくりしたゆっくりなんだよ! ゆっくりはみんなあかちゃんをうんでそだてるんだよ!かわいいあかちゃんといっしょだとゆっくりできるんだよ!!」 「かわいいあかちゃん(笑)そんな事言ってるの虐待お兄さん(笑)だけだし」 「普通の人は赤ちゃんゆっくりを見たら気持ち悪い汚物だと感じる。普通は避けて通る」 「に、にんげんしゃん、ゆっくいしちぇね!れ、れいみゅはきもちわゆくにゃいよ!ゆっくいできゆよ!」 おぼろげながら自分のことを否定されているのだと気づいた赤れいむが、必死に抗議の声を上げる。 しかしその縋るような声も人間達の一笑に付されてしまう。 「これだよこれ、このわざとらしい赤ちゃん言葉」 「そういうのが媚び媚びで気持ち悪いっつーんだよ、マジでゆっくり界の癌だな」 「にんげんさんたちやめてね!あかちゃんがないちゃうよ! だれだってはじめはうまくしゃべれないよ!にんげんさんたちだってそうだったんだよ!!」 人間さんはたまたまゆっくりと同じ言葉を使うから、これは良く解ってくれるはず、とまりさは思った。 特にまりさは昔、ハイキングに来ている人間の幼児を遠目に見ていたことがあった。 その様子を見た限りでは、人間は幼少期、満足に親と会話すらできないはず。 だとすれば、たどたどしくてもお母さんといっぱいお話が出来るゆっくりの赤ちゃんは、 人間さんの赤ちゃんよりもずっとゆっくりした存在なのではないだろうか。 羨ましがられることはあっても、気持ち悪がられるなどまりさの理解の範疇を超えている。 「ってゆーか赤ん坊のくせに最初から喋れるというのがおかしいし」 「ま、会話が成り立たないと話術で泣かせたり、絶望に突き落とせないからね。それもご都合ってことでしょ」 「そうだな。親を裏切らせたり、生きることに絶望させたり、無垢な赤ゆにならやりたい放題、 全く汚らしい。それをやらせるために生まれてくる赤ゆ共もな」 返って来た言葉は、まりさには予想不可能な角度からの切り口だった。 言っていることの一つ一つは良く解らなかったが、赤ちゃんがお話出来るのはゆっくり出来なくなるためということらしい。 何なのだ、それは。確かにゆっくりの話す言葉には、相手をゆっくり出来なくさせる危険なものもある。 しかし言葉はその為にあるわけでは決して無いし、そんなものを赤ちゃんに向けることは絶対にない。 これには、お母さんからたっぷりゆっくりさせて貰っている赤れいむも怒り出してしまった。 「にゃにいっちぇゆの!れいみゅはおかーしゃんとゆっくいおはなししゅるためにしゃべれゆんだよ!」 「そうだよ!おはなしできるとすごくゆっくりできるんだよ! あかちゃんをかなしませたりしないよ!みんなあかちゃんのこととってもかわいがってるよ!!」 「れいみゅはおかーしゃんにゆっくいさせちぇもらってゆよ! おこりゃれゆこともありゅけど、しゃいごにはじぇっっったいにれいみゅをゆっくいしゃせてくれゆんだよ!!」 怒りに頬を膨らませ、ぷるぷると身体を震わせながら熱弁するまりさと赤れいむ。 自分達はゆっくりするために生まれて来て、ゆっくりするために生きている。 自らの存在の正当性を懸命に主張する二個の脆弱な饅頭を見て、人間達はプッと吹き出した。 「ね、ねえ、そもそも何でゆっくりが赤ちゃん産むようになったのか解ってる?」 「ゆ・・・?だからかわいいあかちゃんとゆっくりするためだよ!!」 「れいみゅもおおきくなっちゃらあかちゃんをうみゅよ!しょれでいっちょにゆっくいしゅるの!!」 「プッ、意味わかんねー。あのさあまりさ、自分の赤ちゃん可愛い?」 「ゆゆ?あたりまえでしょ!とっっっっっってもかわいいよ!!すごーーーくゆっくりできるんだよ!!」 「おかーしゃんだいしゅき♪」 すりすりと頬を擦り付けてくる赤れいむ。その微かな圧迫感がまりさには心地よい。 寄りかかる重みは自分のしあわせ、頬の柔らかさはゆっくりそのものだ。 「じゃあ赤ちゃんいなくなったら悲しい?」 「ゆゆ・・・かなしいよ!あかちゃんがいないとゆっくりできないよ!」 「おかーしゃんとはにゃれたくにゃいよ~~!!」 「ま、そういうことよ。つまり赤ちゃんを失う悲しみを味わうためにゆっくりは赤ちゃんを産むわけ」 「赤ゆっくりってマジで薄汚い悪意の塊だからな。平然と人前に出さないで欲しいわ」 まりさの笑顔が凍り付き、赤れいむの頬を上下させる動きも停まる。 確かに赤ちゃんを事故などで失って悲しみに暮れるゆっくりは沢山いるし、 そういう親ゆっくりが人間の子供などに笑われている光景も見たことがある。 だが全く理解出来ない論理展開だ。人間が悲劇を見て喜ぶことと、自分達の存在に何の関係がある? 「な・・・なにいっでるの!!まりざはぜっっっっっったいにあかちゃんをなくさないよ!! ずっといっしょにいてみまもっでであげるんだからね!!ゆっぐりでぎないことをいわないでね!!」 「ほら~、そういうリアクションが虐待厨どもを喜ばせるんだろ?」 「ゆっくりだったら『おお、こわいこわい』とか言って受け流す場面じゃん。もうゆっくりじゃないよこいつ」 「ゆー、だから・・・」 「にんげんしゃん、も、もうやめちぇね・・・! おか、おかーしゃんは・・・とってもゆっくいしたゆっくい・・・ゆ・・・ゆわあああああぁぁぁあん!!」 「あ、あ、あ゛がぢゃあぁぁぁん!!」 とうとう大声で泣き出してしまった赤れいむ。ゆっくり出来ない人間さん達の前に晒され続けた恐怖と緊張が溢れ出したのだ。 まりさは必死にすりすりをして赤ちゃんを宥めながら、キッと精一杯の怖い顔で人間さん達を睨み付ける。 しかしそれも彼らの失笑を買うだけだった。 「おいおい、何泣き出してんだよアンド怒って見せてんだよ」 「感情表現が豊かになると何か違っちゃうよね。ゆっくりって書割看板みたいな笑顔が魅力じゃん?」 「あとー、何『バカにされるお母さんのために泣いた』みたいな美しい雰囲気出そうとしてんの? 非ゆっくり筆頭はてめーだっつってんだろ、赤ゆっくり。矛先逸らそうとすんなよ」 「ぷくううぅぅぅ!!もうそれいじょういわないでね!!にんげんさんたちはぜんぜんゆっくりしてないよ!! まりさはとっっっっってもおこってるんだからね!!」 そう、まりさは怒っていた。 初めは、ゆっくりしていない人間さん達にゆっくりしてもらおうと思って話を続けていた。 しかしこうまで言われて、赤ちゃんまで泣かされて、そんな風に友好的に考えることは最早不可能だった。 かわいいあかちゃんを守るためにたたかう。それがまりさの新たなる決心だった。 「だから怒ってるとかウゼーから」 「何でゆっくりなのにそんなに泣いたり怒ったりすんの? 全然ゆっくりしてないじゃん。 マジ虐待厨のキチガイどもはゆっくりに何求めてんだって話」 「うるさいよ!!ゆっくりだっていきてるんだよ!!わらったりよろこんだり、ないたりおこったりするよ!! にんげんさんたちだってそうでしょ!!なにもかわらないよ!!」 「だーかーらー、何で人間に近づけるんだって言ってんだよぉ。ただの人間とかとは違うシュールさ? っつーかある種の超越性っつーか? そういう独自の魅力が完全にスポイルされてるじゃん」 「むずかしいことばをつかわないでね!!そんなふうにまりさからにげようとしないでね!!」 「おやおや、ちょっと突っ込んだ話をすると衒学厨の荒らし扱い、便利なシステムですね」 「餡子脳には難しかったでちゅか~(笑)」 「ゆゆ~、まりざはどってもかしこいんだよ!!おがあざんやれいむにほめられたこともあるんだよ!! わざとわからないいいかたをするにんげんさんたちがおがじいんだよ!!」 「おい、その餡子脳っての虐厨用語だから……」 「おっと、失敬失敬」 「さっきからなにいっでるの!!まりざのおはなじをぎいてね!!!」 極度のストレスに駆られ、ぽいんぽいんと乱暴に飛び跳ねてがなり立てるまりさ。 まりさがどんな決意をしようと、それは何者の足下にも及ぶものではなかった。 決定的な温度差があるのだ。まりさが何を素晴らしいと思っていても、それは他者にとっては唾棄すべきものであるのだから。 人間達はウンザリした風に、はあ、とため息を吐く。そして二人組のお姉さんの方が中腰になり、まりさに優しく視線を合わせた。 ようやく話をする気になったか、とまりさも昂ぶっていた感情を抑える。 「もうだいじょうぶだからね、なかないでね」と、ゆぐゆぐと泣く赤ちゃんに舌戦での勝利を約束しながら、正面に向き直った。 「あのさあ、赤ちゃんはどんな風に可愛いの?」 「ゆ・・・?とっっっっっても・・・」 「そういう抽象的なのは良いから。じゃあどんな風に可愛がってんの」 「ゆぅ・・・すりすりをしたり、ごはんをあげたり、おうたをうたってあげるよ」 「それだけじゃ赤ちゃんは大きく育たないでしょ」 「ゆぐぅぅ、あと、あと・・・ゆゆっ、ゆっくりできないものからあかちゃんをまもってあげるよ!!」 「へぇ~。どんなゆっくり出来ないものがあるの?」 「ゆっ、ゆっくりできないものはいっぱいあるんだよ」 ゆっくり達の知能ではろくに数を数えられないことを差し引いても、ゆっくり出来ない事物はあまりに多かった。 それを聞いて後ろの男が、「その時点で既にゆっくり生きられねえじゃん、矛盾だらけ」と呟いたが、まりさには聞こえなかった。 「たとえば雨が降ったら?」 「あめさんにぬれるととけちゃうよ・・・でもまりさがおぼうしのなかにいれてあげるよ!」 「川に落ちたら?」 「あめさんといっしょだよ!おみずさんはゆっくりできないんだよ!でもまりさがおぼうしにのってたすけにいくよ」 「寒くなったら?」 「ゆ、さむいさむいだとあんこがかたまって、ゆっくりできなくなるよ・・・でもまりさがあっためてあげるよ!」 「虫の大群に集られたら?」 「ゆゆ、むしさんは・・・あんこがみんなたべられちゃうよ。でもわるいむしさんはまりさがみーーーんなたべちゃうよ!」 「転んで石にぶつかったら?」 「あかちゃんはとってもやわらかいから、おおけがをしちゃうよ。でもまりさがぺーろぺーろするからだいじょうぶだよ」 「高い所から落ちたら?」 「すごくいたいいたいになっちゃうし、おけがもするよ・・・でもまりさがついてるからだいじょうぶだよ」 「尖った石を踏んだら? 尖った葉っぱや木の枝に引っ掛かったら?」 「ゆっ、か、かわがやぶけちゃうよ・・・でもねまりさが」 「悪いゆっくりに狙われたら?」 「そんなゆっくりはまりさがやっつけるよ!でもゆっくりごろしはいけないことだから、いっぱいおこってはんせいさせるよ」 「犬とか狐とか、他の獣に狙われたら?」 「ゆぐぐ・・・まりさのおくちにいれていっしょににげるよ!でもにげきれないときは、ま、まりさが・・・」 「じゃあ人間に狙われたら?」 「ゆぐぅぅう、まりさが、まりさが・・・どうしてぞんなごどきくのおぉぉぉ!?」 お姉さんはこの他にも、次々に『ゆっくりできないこと』を列挙していった。 その大半は、他の多くの生物であれば何とも無かったり、楽に回避出来るような問題だ。 後ろで「おかーしゃんがんばっちぇね!」と応援を送っていた赤れいむの顔色が、段々と青褪めてくる。 その中のどれか、またはいくつかに遭遇しかけた経験があるのだろう。 「もういいでしょ!ゆっくりできないことはいっぱいあるんだよ!! だからおかあさんがいっしょにいてまもってあげるんだよ!!そしたらゆっくりできるんだよ!!」 「ふぅん、で……そのどれにも遭遇しないで生き延びれる可能性ってどんだけあるわけ?」 「ゆぐっ・・・・」 まりさは『いくらでもあるよ!』とは答えられなかった。 何せ自分自身の姉妹が、生まれた時の1/3以下までその数を減らしていたからだ。 姉妹の数を正確にカウントすることなどまりさには出来るはずもなかったが、 日が経つごとにおうちの中が寂しくなっていくという実感だけが強く印象に残った。 一度に10匹以上が産まれ、数ヶ月の後、最終的に巣立つことが出来たのは2、3匹…… 多くの姉妹が絶望と苦痛の中で死んでいった。自分が生き残れたことは奇跡としか言い様が無い。 まりさはその奇跡のような生に感謝して日々を過ごしていたのだ。 きっと同じ奇跡が自分の赤ちゃんにも起こるに違いない、と頑なに信じて。 根拠ならある。奇跡の子供である自分の赤ちゃんにも、奇跡が起きないわけがない。 だがそんなものは、まりさが我が子を設ける事を正当化するための思い込みであり、他の誰にも知ったことではなかった。 「増殖力が頼みの生物って、痛覚が無かったり赤ん坊が自生出来たりするだろ。 それが生物としては最弱レベルで、発達したのは家族をいとおしむ情ばかりって、歪んでるとしか言い様がねーよ」 「つまり赤ちゃんは惨たらしく死んで親を泣かせるために産まれて来るようなもんじゃん。 はっきり言ってコンセプトが醜すぎ。こんなグロテスクな背景持ってるヤツ可愛いなんて思うわけないよ」 「ひひ、ひどいごどいわないでね!!ぜんぶおおうそだよ!!にんげんさんはうぞづきだね!! みんなゆっくりするためにうまれてくるんだよ!!あかちゃんはゆっぐりじで・・・ゆっぐりっ・・・・」 まりさは嗚咽に言葉を詰まらせるが、そんなことに興味が無い人間達は容赦なく追い打ちの言葉を浴びせる。 「だから、その気持ち自体が打ち砕かれるためにあるんだってーの!!」 「お前らがいくらゆっくりしたがっても、お前らの世界は絶対にゆっくりさせてくれない。 だって明らかに世界に適応してないもん。動物っぽいリアリティを持ちながら、まるで理に適ってないじゃん。 ゆっくり出来なくなるためにカスタマイズされたお前らをゆっくりと認める奴は誰もいないよ」 「ゆぐ・・・ゆあ・・・・ゆあぁぁぁ・・・・・」 赤ちゃんれいむがその小さな身体を預け、いつかは自分もと憧れた、まりさの大きな大きなほっぺた。 その頬に涙が幾筋も伝い、次々に冷えて乾いていく様を、赤れいむは呆然と眺めていた。 まりさは混乱していた。何故なのだろう。何故こんな訳の解らないやり取りで、自分の心は追い詰められているのだろう。 でも言われてみれば、確かに不公平なのだ。この世界はゆっくりにだけ優しくない気がしてくる。 どうして自分は、今までゆっくり達がずっとゆっくりできると信じて生きて来れたのだろうか。 まりさの餡子がフル回転し、その疑問に対する一つの答えを引っ張り出してきた。 それは、紛れも無い今の現実だ。 ゆっくり達が家族を成し、群れを成し、色んな辛いことや悲しいことに巻き込まれながらも、日々を一生懸命暮らしている。 自分は毎日それを眺めて、その中に身を置いて、『ゆっくり』というものをたくさんたくさん実感してきた。 これこそが『ゆっくりがゆっくり生きられる可能性』の、何よりの証拠ではないか。 この正解こそは反撃の剣だ。人間達の妄言をばっさりと切って捨てることが出来る、まりさの正義だ。 顔をぶるぶると左右に振り、白玉の目から溢れ続ける涙を払うと、まりさは唇に忍ばせた反撃の刃を、人間さん達に向けた。 「ゆっ・・・・にっ・・・にんげんざんだぢはおばがだね!! ばりざだちはいまもいきてるよ!でいぶもありずもばちゅりーも、たぐさんのゆっくりが、い、いっじょにゆっぐりじてるよ!! あがぢゃんがゆっぐりでぎるから、むれがうばれるんだよ!!ぞしたらまたあがぢゃんがうばれで、むれがでぎるよ!! ごれでわがっだでしょ!!ばりざだぢはゆっぐりでぎるゆっくりなんだがらね!!!」 まりさのご高説に、後ろで聞いていた赤れいむは感動の涙を流し、 人間さん達は耳の穴をかっぽじりながら無表情という表情を浮かべた。 「ふーん。なるほどねー」 「ゆっくりりがいでぎた!?そしたらまりざとあがちゃんにあやまっ・・・」 「じゃ、最初のゆっくりはどこで生まれたんだよ」 「ゆっ?」 何を今更、下らない質問をしているんだろう。まりさの言葉が鋭すぎて頭がおかしくなったのかな? 勿論最初のゆっくりも、お母さんから生まれてきたに決まっている。みんな最初は赤ちゃんだったのだ。 ……あれ? じゃあそのお母さんは、一体どうやって生まれたんだろう。そのお母さんは? そのまたお母さんは? どこまで行っても最初に辿り着けない。 ゆっくりは動く饅頭であるから、自然界の進化の中でどこかから分岐してくるわけもない。 無論そのような理屈めいたことまで、まりさの知識も思考も及ぶはずはなかったが。 「・・・ゆ?ゆゆゆ?ゆゆゆゆ!?」 「ゆゆゆじゃねーよ汚物が。可愛いつもりかその鳴き声」 「これで解ったよね、まりさ? 今生きてるゆっくりの出自なんか誰も興味無いから。 最初のゆっくりは、どっかから適当に沸いて来たんだよ。これ以上の設定は無いの。 お前ら『繁殖力が強い』だけで誤魔化せないぐらい弱いじゃん。絶対先細りになるに決まってる。 だから絶滅しかかると、またどっかから忽然と沸いて来るの。この繰り返し」 「まったくいい加減というか、ゆっくりの不思議さを逆手にとって卑怯だよな、リアリズムを突き詰められないからって」 「ま、ちょっとでも自然界で生き延びられる力を与えちゃうと、ゆっくりされちゃうからでしょ? 虐キチはそういうの絶対許さないからねー、ほんと陰湿っていうかキモイ」 「ゆ・・・・・?・・・・ゆ?・・・・・・?」 「だからね、ゆっくりが勝手に生えてくる限りは、お前らがゆっくりできる必然性は何も無いってことだよ。虐厨にとっては」 ゆっくりはかってにはえてくる。 そういえば、数も数えられないし、見た目もみんな仲良くそっくりだからあまりはっきりとは解らないけど、 時々、見かけないゆっくりが群れのお友達に混ざっていることがあるような……。 しかしそんな時でも、まりさはお友達が増えたと素直に喜んでいた。 それは大抵、いつものお友達が減っていって、寂しくなって来た時に現れるからだ。 番のれいむも、ある日突然森の中で見かけ、まりさが一目惚れしたのが結婚するきっかけだった。 人間さん達は彼女達が、勝手に惨たらしく死んでいくゆっくり達の補充に過ぎないのだという。 出会いを歓び、ゆっくりを共にした伴侶や友達が、実は自分達がゆっくり出来なくなるための装置だという。 そして彼女達もまた、惨たらしく死んでいくために発生するのだという。 「そ・・・ぞんなのうぞだよ・・・だっで・・・だってね・・・・」 「嘘も何も、単なる帰納じゃねーか。解りきった見たまんまを言っただけだよ」 「結論を出せもしない設定論議には躍起になるくせに、そういう現実からは目を背けるんだよね。だらしないね」 「やべで・・・やべでね・・・・やべでね・・・・・まっ・・・まりざをなかせないでね・・・・・・ あかちゃんが・・・・あがぢゃんがみでるんだよぉぉ・・・・!」 度重なるゆっくりの否定を受け、まりさの精神はもう限界に来ていた。 冷たく突き放すような喋り方を、今までまりさは受けたことが無かった。 ゆっくり同士はとても馴れ馴れしく図々しく、よく言えば親しみを込めて話すことがほとんどだからだ。 そんなまりさがここまでの緊張に耐えられたのも、ひとえに「まりさはおかあさんだよ」という信念に支えられてのこと。 しかしその小豆のように固い信念も、既に打ち砕かれる寸前だ。 それも、自分が守ると誓った赤ちゃんの目の前で。 このまま見っとも無く泣き出してしまう所を赤ちゃんに見られてしまえば、きっと自分は立ち直れなくなる。 だからあふれ出す悲しみと闘いながら、顔中を引き攣らせながらも懇願する。 もう自分達をいじめないようにと。赤ちゃんや自分をゆっくりさせてほしいのだと。 だが人間さん達は取り合わず、心底嫌そうな表情でまりさを見下す。 「うわ、また泣きそうになってるし。しかも必死に堪えてるのがまたキモイ」 「泣くにしたって、バーっと泣き喚いてケロリとするのがゆっくりでしょ。例えて言うならエシディシみたいな? こういう葛藤とか情とかで思い詰めてるのはさすがに勘弁。人間の出来損ないじゃん」 「そうそう、全くゆっくりしてないよね。人間になれなかったからゆっくりです、みたいな。 害悪としか言い様がないな、こんなの」 「ゆぐ・・・・ゆぐうぅぅぅぅぅぅ!!ゆぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 もうだめだ。まりさは人間さん達に泣かされてしまうんだ。 わんわん泣き喚くまりさを見て、きっと赤ちゃんはがっかりするだろう。ゆっくりできないお母さんだと嫌いになるだろう。 そしてまりさが言い負かされてしまったら、赤ちゃんは生まれてきたこと自体が嫌になってしまうかも知れない。 そんなのいやだ。まりさは赤ちゃんに嫌われたくない。赤ちゃんをずっとゆっくりさせてあげたい。 しかし、そうした恐れの感情はより大きな悲しみを呼ぶだけだ。まりさの涙腺は既に決壊しかかっていた。 もう堪えきれない。まりさの絶望が最高潮に達しようとしたその時。 まりさはその頬に、とても軽く、とても小さな、しかし確固とした暖かみを感じた。 「おかーしゃん、ゆっくいしていっちぇね?」 「ゆっ・・・・・?」 横を向いたまりさが見たのは、両目いっぱいに涙を浮かべ、微かに全身を震わせながら、 しかし一生懸命自分に頬をすり寄せてくる、自分の愛娘の姿だった。 「ゆっくいしちぇね、おかーしゃん!ゆっくいできないことはいっぱいあゆよ! でもれいみゅは、れいみゅはおかーしゃんといりゅだけでしゅっごーーくゆっくいできゆんだよ!! だからおかーしゃんはれいみゅがゆっくいさせちぇあげりゅからね!!なかにゃいでね!!」 「ゆあ・・・あかちゃん・・・ばりざのあがぢゃあああああああん・・・・・・・」 まりさと赤れいむの涙が混じりあい、すりすりをする中で互いの表皮がベタベタになっていく。 そのペタペタとくっつく感触すら、まりさには愛おしかった。 何故、最後まで信じられなかったのだろう。 自分の子が奇跡の子だということを。世界で一番ゆっくりできる赤ちゃんだということを。 人間さん達が何を言おうと、それはただの机上の話。まりさにとって見えない恐怖でしかない。 今、自分とすりすりしている赤ちゃんの体重、体温、心のぬくもりこそが現実だ。 その絶対の現実は、想像の暗闇に沈もうとしていたまりさの心を、しっかりと支えてくれたのだ。 (そうだよ!!あかちゃんがいればゆっくりできるんだよ!! あかちゃんはかわいいよ!!いつかつらいめにあうかもしれないけど、あかちゃんはすごくゆっくりできるよ!! まりさはいますごくしあわせなんだよ!!だからなんにもこわくないよ!!!) まりさは世界中の全てに向けて、大声でそう主張したかった。 しかし感極まったまりさの口は上手く回らず、うぅ、とか、うぁぁ、という呻き声にしかならなかった。 涙で滲む視界をぎゅっと閉じ、すりすりに応える儚く柔らかな感触に全神経を集中する。 まりさは一人じゃない。まりさには家族がいるんだ。ゆっくり出来なくなっても、お互いに助け合える。だから何も怖くない。 しかしその家族の感触は、数秒後に失われた。 後編へと続く
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/242.html
「ゆっくりしずかにはいろうね!!!」 「うん、しずかにはいろうね!!!」 近くにゆっくり達が住む森がある農村。 対策はしているが、やはりゆっくりは進入してくる。 この日も、五・六匹のゆっくり魔理沙が人間の家に侵入しようとしていた。 「ホワッツ! お前達ナニシテルンデスカー!!!」 直ぐに人間に見つかった。 ここで、大抵のゆっくりなら直ぐに人間の癇に障ることを言うのだが、今回のゆっくり達は違った。 「ゆゆ!! おかーーさんがあかちゃんをうんだから、たべものをさがしにきだんですーー!!」 「あがじゃんにえいようづけないとしんじゃうからーー!!」 なるほど。 よくよく見ると、確かにその集団には、小さい赤ん坊はもとより、お母さん魔理沙らしき存在もいない。 このゆっくり達の言うとおり、巣の中ではお母さん霊夢と赤ちゃん達がお腹をすかせて待っているのだろう。 「なるほど。なら、今回だけだぞ。ほら、これ位ならくれてやる」 それならば、と男は幾つかの野菜とお菓子を渡してやった。 「ゆゆ!! おじさんありがとうね!!」 「おじさんはやさしいから、きっとゆっくりできるね!!!」 思い思いの感想を残し、ゆっくり達は男の家を去っていった。 ―― 「ゆゆ!! おかーさん!! きょうはこんなにあつまったよ!!」 「ゆゆ!!! すごいね!! さすがだね!!!」 「すご~い!!」 「いっぱいたべれりゅね!!」 戻った巣の中には、お母さん魔理沙と赤ちゃん達。 それに沢山の食べ物。 野菜や果物から、果てにはお菓子まで。 およそゆっくりには準備できないような代物まで、沢山の食べ物が山積みされていた。 「むっしゃ!! おいし~~ね!!」 「うまくいってるね!!」 「あたりまえだよ!! まりさたちゆっくりは、みんなとってもかわいいんだもの!!」 手当たり次第に食べ物を口に運んでいる一家は、昨日の事を思い出していた。 この森のゆっくり達がドンドン人間に殺されている。 理由は人間の家に入ったり、畑の食べ物を勝手に食べたりしているからだ。 しかし、森の中にゆっくり全員を賄える程の食料はない。 そこで、一家の母親達が集まり、相談していた時に、この森には珍しいゆっくりアリスとパチュリーの夫婦がこう進言したのだ。 「むきゅ!! おかあさんとあかちゃんをいえにおいて、こどもたちだけでにんげんのいえにはいればいいの!!」 沸き起こる反論を抑えながら、パチュリーは大まかに次の事を説明した。 曰く、もし掴まったらお母さんが赤ちゃんを産んだといえば良い。 曰く、そういえば美味しい食べ物をもらえる可能性が高い。 曰く、誰かが巣に残っていればよそ者に巣を取られないで済む。 そして、最後にアリスが言った言葉が引き金となり、森のゆっくり達はこの作戦を行う事に決めたのだ。 「だいじょうぶ!! ありすたちはみんなとってもかわいくてうつくしいから、にんげんたちにはどれもかわいくうつるの!!!」 最後の問題、人間達が同じ顔のゆっくりを見て怪しまないのか、それをこの言葉で封じたアリス。 会議は直ぐに終わり、パチュリーと寄り添って巣に帰っていった。 それが数日前の事だ。 そして、次の日から実践をし、今ではどの巣もこのように大量の食べ物を蓄える事ができた。 「ゆっゆ~~~♪ よかったね!!」 「あしたはみんなでゆっくりしようね!!!」 「「「「ゆっくりしようねーーーー!!!!!」」」」 これだけの食料を何時でも手に入れることが出切る様になった以上、毎日せっせと集める必要はなくなった。 必要な時に集め、必要な時に食べる。 ゆうに一ヶ月程度の蓄えは出来た、当分は大丈夫。 森のゆっくりは、全員そのような考えだった。 一度上手くいったら大丈夫。 もう相談の必要はない。 それがゆっくり達の心情だった。 ―― 「むきゅ? そういえばありす?」 「なぁ~に?」 「ぱちゅりーがこどもをうんだときも、にんげんにもらったの?」 「!! そうだよ!! ありすがはくしんのえんぎでもうじまぜんがらーー!! っていったらたべものをたくさんくれたの!! ありすのえんぎはとってもさいこうだったの!! えんぎは!!」 「むきゅ」 ―― そして、先の霊夢が男の元を過ぎ去った後、人間たちもそのからくりに気付いた。 時間にして数日。 この数日間で、なんか匹ものゆっくりが同じ台詞を話せば、奇妙に感じるのは当然。 あっという間にそのからくりがバレタのだ。 そして、人間はゆっくり達にある方法で復讐する事にした。 ―― 「ゆゆ!! おがーざんがあがじゃんをうんだがらたべものをあづめでだのーー!!!」 数日後、再びあの魔理沙一団が男の下へやってきた。 そうやら、単純で涙もろいオジサンにカテゴライズされたらしい。 口調こそはしっかりしてるが、表情は泣き顔と笑顔の混ざった奇妙な顔を作っていた。 「そうだったのかい。それじゃあこれをもっていきな」 前回同様、大量の食べ物を渡してやる。 しかし、今回は殆どがくず野菜だが。 「そうだ。未だ食べ物がいっぱい有るから、それを置いたらまたおいで」 賑やかに去っていく魔理沙達に、男は大声で伝える。 「ゆゆ!! わかったよ!! ゆっくりいくよ!!!」 それに笑顔で答え、森へ続く道へと消えていった。 「やったね!! こんかいもせいこうだね!!」 「おじさんは、きづいてなかったね!!!」 「まりさたちがかわいいからだね!!」 「「「ゆっくり~~~~♪」」」 沢山の戦利品を運びながらの道中、その魔理沙達は最後の帰路に着いた。 ―― 「またいっぱいもらってくるからね!!!」 「おかあさんもあかちゃんもゆっくりまっててね!!」 「ゆっくりがんばってきてね!!!」 「ゆっきゅりまってるりょ!!!」 一家は最後の挨拶を交わして、交わる事のない岐路に進んでいった。 ―― 「ゆっくり~していってね~~~♪」 「こんどはぁ~なにを~もらえるのかな~~♪」 「「「「おっじさぁ~ん!! まりさたちがきたよ~~~♪」」」」 「やぁ、良く来てくれたね」 「「「「やだなぁ~おじさんは。まりさたちにたべものをくれるんでしょ!!!」」」」 「そうだったね」 そこで待っててね、と言い残して一旦中に消えた。 歌を歌いながら待つこと数分、大きな袋を携えて男が戻ってきた。 「この袋の中に入ってるよ。遠慮しないで沢山持っていってね」 「えんりょなんかしないよ!! ぜんぶまりさたちのだよ!! みんなもっていくよ!!!」 男に適当な返事をしながら、我先に袋の中に入り込んでいく。 全員が入った事を確認し、男は何食わぬ動作で袋を閉じる。 そして歩き出す。 「ゆゆ!! おじさん!! からっぽだよ!!」 「ここからだしてね!! はやくたべものもってきてね!!!」 「ゆっくりさせてあげないよ!!!」 「ダメだよ。お母さん達はもう居ないんだから。それに昨日の分の食事代も貰ってないしね」 淡々と袋越しに話しかけていく。 「だから、加工場に持って行ってお金に換えてもらうんだ」 その言葉を話し終えると、中のゆっくりも理解したようで、大声で騒ぎ始める。 「いやだーーー!! ゆっぐりさぜでーーー!!!」 「ゆぐりじだいよーーー!!」 「どうじでーーー!!!」 帽子が取れようが、髪がボサボサになろうが関係なく暴れまわる。 「だまれ!!」 「ゆびゃ!!」 「あああ!!!!」 必要なのは中身なので外見は関係ないのだ。 中が黙った事を確認すると、そのまま加工場へと足を進めた。 ―― 子供達が出て行って直ぐに、お母さん魔理沙の所に男がやって来た。 「こんにちは」 「ゆ? おにーさんはゆっくりできるひと?」 お母さんと赤ちゃん魔理沙が、大きなクリクリした目で男を見つめてくる。 「ううん。できないひとだよ」 「ゆ?」 「子供達は皆処分したから、最後に君達を処分しに来たんだよ」 言うが早いか、むんずとあかちゃん達を取り出し、物凄い勢いで入り口を塞いでいく男。 「それじゃあ、君はそこでゆっくりしんでね!!」 あっという間に打ち付けた男は、中に居るお母さん魔理沙に呟くと、赤ちゃん達を残してそのままもと来た道を戻っていった。 「あああーーーー!! まりざのこどもたちがーーー!!! どうじでーーー!!!」 「ゆ?」 「ゆ?」 中では、自分の子供達の末路を知った母親の声。 外では、自分達に何が起こったのか理解できていない赤ちゃん達の声。 「あああーーー!! !! ぞうだ!! あがじゃん!! あがじゃんはぞごにいるの!!!」 「ゆ? いりゅよ!!」 「ゆっくりいりゅよ!!」 「おがあさんはここからでられないの!!! ぱちゅりーーをよんできてね!!」 「ゆ!! わかっちゃ~♪」 「ゆっきゅりまってちぇね!!」 これで助かった。 お母さん魔理沙はそう思った。 パチュリーがきてくれればここから出られる。 そうすれば残った赤ちゃん達で子供達の敵が討てる。 そう思うと、気が楽になってきたお母さん魔理沙は、乱雑に積み上げられていた食べ物に駆け寄って咀嚼し始めた。 「う~むっしゃむっしゃ♪」 赤ちゃん霊夢がパチュリーの所から帰ってくるまで数日かかるかもしれない。 でも、こんなに食べ物があるなら大丈夫。 「むっしゃ。これうめぇ!! しあわせ~~~♪」 食べ物の中に埋もれて、お母さん魔理沙は至福の時間を味わっていた。 ―― 「ゆっくりいこーにぇ!!」 「ゆ~~~♪」 「あちゅいね~~」 「ゆ~~!! あそこのきのしたはしゅずしようだよ!!」 「ゆ!! ほんとうだ!!」 「ここをまりしゃたちのお~ちにしようね!!」 「まりしゃたいなにしてちゃんだっけ?」 「しりゃない♪」 「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」 ―― 「むきゅ!! こどもたちおそいねー」 「ゆ!! きっとかわいいありすとぱちゅりーのこどもたちだから、あちこちからひっぱりだこなのよ!!!」 ここはパチュリーとアリスの家。 同じように、子供達に狩りをさせていたのだが帰ってこない。 「こんにちは、ゆっくりしているかい?」 「「!!!」」 代わりに入ってきたのは人間の男。 先ほどの言葉とは裏腹に、当然のように二匹は男を警戒し始める。 「むきゅ!! おじさんなにかよう?」 「ここはぱちゅりーとまりさのおーちだよ!! なにかようなの?」 「そんなに警戒するなよ。おじさんはお菓子を持ってきただけだよ」 「うそだよ!! にんげんはうそをつくんだよ!!」 「むっきゅーーー!!! むぎゅ? ぎゅーーーー!!!」 「そうかい。残念だよ」 パチュリーを勢い良く踏み潰す。 「ああああ!! ぱじゅりーー!! おじざん!! なんでごんなごとするのーー!!!」 「だって、人間を疑るような悪いゆっくりは駆除しないとね」 そう言って、残っている足でアリスも踏みつける。 「ぶじゃ!! あああ!!!」 「ああそうだ、子供達も皆加工場に持って行ったよ。数が多かったから、潰して押し込めて運んでいったけど、さすが饅頭だね!!」 「む……ぎゅーー!!」 「どうじでーー!! ありずのごどもだじ……が!!」 「ああそうだ、最近ゆっくりの子供達に食べ物を物乞いさせる行為が流行ってたけど、それって君たちが考えたの? 正直に答えてね」 喋りやすいように一旦足の力を弱める。 「むじゅ!! ぞうです!! ぱちゅりーたちがかんがえましたーー!!」 「しょうじきにいいましたーー!! だからゆるじでーー!!」 「ご苦労さん。じゃあ死んでね♪」 「なんでーーー!!」 「むっじゅーーーー!!!」 それが、この森に住むお母さん達の最初の断末魔だった。 それから数日後、例の魔理沙の巣の中でも同様の叫び声が被疑機わたっていた。 「ゆーー!! ぐざいーー!!」 最後に男が持たせた中に、生きの悪い魚が入っていた。 沢山の野菜くずで見えなかったのだが、今になって漸くお目見えしたのだ。 奇しくも夏真っ盛りのこの時期、全ての食べ物を巻き込み、オドロオドロしい匂いを撒き散らせながら、魔理沙を餓死へと追いやっていく。 「うぐーーどうじでーー!! なんでーーー!! だべものはどごにいっじゃっだのーー!!!」 これから数日間、この中で空腹に耐えながら、やがて自分もこの中に仲間入りする事だろう。 「あがじゃんーー!! はやぐもどっでぎでーーー!!!!!!」 ―― 人々が、共同で仕返しをした後の事。 その後の生活は今まで通りだった。 既に森には、赤ちゃんゆっくりしかいない。 「ゆっゆ~~♪」 「ゆ!! おやさいがいっぱいあるりょ!!」 「ゆ? はいりゃにゃいよ!!」 「「「「ゆっぐりじだがっだーーーー!!!!!」」」」 先代が残したシステムを覚えているゆっくりなど居るはずもなく、そうで出掛かり駆除され、巣を知られて駆除させ、他のゆっくりに巣を乗っ取られる。 そこの森にでもある光景がそこにも有った。 やがて、赤ちゃん達が育てば、今まで通りのゆっくり一家が沢山できることだろう。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4817.html
※俺設定注意 「ゆっくりしようね、れいむ!!!」 「ゆっくりしようね、まりさ!!!」 今、僕の家の中で嬉しそうに頬を摺り寄せるのは2匹のゆっくり。 れいむとまりさだ。 彼女たちは、「お菓子をあげる」という僕の誘いに乗ってここまでやって来た。 基本的に僕はゆっくりが好きだ。 人間の生首をデフォルメしたような容姿、なんとも言いがたい微妙な表情。それらが僕の関心を惹いて離さない。 一般的には愛でお兄さんと言われる部類の人間ではないだろうか。 でも、そんな僕が最近気にかかっている事がある。 ゆっくり全体、その繁栄の基盤を揺るがすような重大な事だ。 恐らくだが、このまま誰もが放っておいたらゆっくりは遠からず未来で絶滅してしまうだろう。 それは嫌だ。「僕の好きなゆっくり」には、この先もずっと生き残って欲しい。 だから僕はこの二匹を家へと呼んだ。 この部屋はこれと言った家具が無い。もし彼女たちが暴れても、何一つこちらも、あちらも損害を被る事は無い。 それに今からやる事は彼女たちにとっても良い事のはずだ。最初は悲しみこそすれど、後に僕に感謝するようになるだろう。 少なくともその事だけは確信している。 さぁれいむ、まりさ。 今から僕が、君たちの決定的な矛盾点を取り除いてあげよう。そうすれば君たちは生物としてより強くなれるはずだ。 そうすれば絶滅なんかしない。ずっと僕の好きなゆっくりで居られ続ける。 始めようじゃないか。 あかちゃんはとってもゆっくりできるんだよ! 「ゆ~ゆゆ~ゆ~♪」 「ゆっゆ~♪」 ふにふにと、頬を摺り合いながられいむとまりさは間抜けな歌声を晒している。 この二匹は、今現在「とてもゆっくりしている」状態にあった。 事の起こりは数十分ほど前。 いつもの様に日向ぼっこをしていた二匹の前に、男が現れてこう言ったのだ。 「美味しいお菓子をあげるから、うちに来ないかい?」と。 深く物事を考え(られ)ないゆっくり二匹。二秒と考えずに、男の誘いを快諾した。 彼に連れて来られたのは、ゆっくりの常識に当てはめるなら途轍もなく広いおうちだった。 そこの一室に通される二匹。勿論そこも、ゆっくりからして見れば異様なほど大きいおうちだ。 そしてそこに降って湧いた沢山のお菓子と男の「ここをれいむ達のお家にしていいよ」という言葉。 労せずしてれいむとまりさは誰もが羨むおうちを手に入れたという訳だ。 菓子を平らげ、そのままそこでゆっくりしだす二匹。 ゆーゆー歌を歌ったり、昼寝をしていたりするがゆっくりは基本娯楽に乏しい生活を送っている。 しかもつい先程巨大な住処を手に入れた二匹の取る行動と言えば、最終的にはたった一つ。 「ゆほおおおおお!!!れっ、れいむううううぅぅぅぅ!!!」 「まりさあああああああぁぁぁ!!!ゆうううぅぅぅん!!!」 交尾だ。 食・住が満たされれば即交尾に繋がる。他にやることが無いから。これは田舎の人間とかにも当てはまることだ。 今かなり(人間に対して)失礼な説明をしたが、とにかくこの二匹は生殖を選択した。 「ゆううううぅぅぅぅ・・・・・・すっきりー!!」 「んほおおおおおおおおお!すっきりー!!」 ほぼ同時に達する二匹。それに伴い、母親役のれいむからにょきにょきと生えてくる茎。 年中発情期のゆっくりは、交尾すればすぐさま子供が生まれる。 一部では例外があるものの、このれいむ達はその中には含まれなかったようだ。 異常ともいえるスピードで成長する茎。 まるで実が成るが如く、赤ん坊のゆっくりが茎の先に実っていく。 中々にこの全世界の生物にとって反常識的・冒涜的・嘲笑的な産まれ方だと言えよう。 「ゆううぅぅぅ~!!!あかちゃんがうまれるよおおおぉぉ~!!!」 「ゆっ!!」 「ゆっくち!!」 「ゆんっ!!」 「まりさのあかちゃん、とってもゆっくりしてるよぉ~!!!」 茎の先に実ってから生まれ落ちるまでたったの五分。 そのサイズに比べて余りにも早いスピードで赤ゆっくり達は生を受けた。 感動の涙を流す親ゆっくり。 命の尊厳を感じさせるには少々軽すぎる雰囲気だ。 「ああ、おめでとう。可愛い赤ちゃんだね」 「「ゆゆっ!!」」 赤ん坊に囲まれ、幸せの絶頂にいる二匹に声がかけられる。 この部屋をれいむ達に与えた男。れいむ達にとっては、優しいお兄さんだ。 「ゆっ!!おにいさんがれいむたちにりっぱなおうちをくれたから、かわいいあかちゃんがうめたよ!!」 「ありがとう、おにいさん!!あかちゃんたち、こっちにでてきてね!!」 「「「ゆぅ~?」」」 赤ゆっくり達を呼び寄せるまりさ。 男に赤ちゃん達を見せて、ゆっくりして貰おうというのだ。 可愛らしい赤ん坊達を、前に並ばせる。 「あかちゃんたち、かわいいでしょ!!ゆっくりしていってね!!!」 「おにいさんにはとくべつに、かわいいかわいいあかちゃんみせてあげるね!!!」 「「「ゆっ!!きゃわいくてごめんしゃい!!!」」」 こんなに赤ちゃんは可愛いんだから、きっとお兄さんもゆっくりできる。 そんな考えの下、れいむとまりさは誇らしげに胸を張った。 各々の赤ゆっくりも、それぞれ最も自分が可愛く見えるポーズをとっている。 「ああ、可愛いね。とってもゆっくり出来るよ」 笑顔を浮かべながら赤ゆっくりの前にしゃがみ込む男。 その笑顔を見て、お兄さんがゆっくりしていると思って嬉しくなるゆっくり一同。 とてもゆっくり出来る笑顔を浮かべたまま、男は右手を赤ゆっくり達の方に差し出して――― ―――そして、そのまま押し潰してしまった。 れいむとまりさの、動きが止まる。 にっこりと笑顔を貼り付けたまま、石膏の象のように動かなくなる。 二匹の視線は、億劫そうに手を振り、餡子をはらうお兄さんへ。 「「・・・・・・な゛に゛じでる゛の゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!?」」 クワッと眼を見開き、ぶるぶると震えながら叫ぶ二匹。 今しがたのお兄さんの行動が理解出来ない。いや、そんなことよりも。 赤ちゃんが。とってもゆっくりした赤ちゃんが。赤ちゃんが死んでしまった。 「・・・え?何って赤ゆを潰したんだけど?」 さも当然、蚊が居たから叩き潰しました、とでも言うように答えるお兄さん。 何の感慨も無い。後悔の欠片すら見受けられない。 二匹はついさっきまで信頼に値していた筈の人間に対して、疑問をぶつける。 「どぼじであがぢゃんをごろじぢゃっだのおおおぉぉぉ!!!」 「あがぢゃんはどっでもゆっぐりでぎるのにいいいぃぃぃ!!!」 涙を流し、身を振りかぶりながら悲しみをアピールする二匹。 どうしてこんなに可愛い赤ちゃんを。赤ちゃん達ももっとゆっくりしたかった筈なのに。 悲しみに胸(無いけど)が引き裂かれそうだ。何故、何故こんなことを。 「ああ、それそれ。それだよ、それ」 そんな二匹の態度こそ、彼が懸念しているものだった。 ピタリと動きを止める二匹。一体何の事だろう。もしかして、なにかお兄さんがゆっくりできない事だったのかも――― ―――いや、そんな事はもうどうでもいい。どうしてこんな事したの。今はただ、赤ちゃんのために謝って欲しい――― 二匹の願いをよそに、彼は素気無く言い放つ。 「君達さぁ、野生動物でしょ?もうちょっとそれらしく生きたら?」 「君達ゆっくりは弱い。そりゃもう弱い。人に負け、犬に負け、鼠に負け、下手したら蟻にも負ける。 いや別にそれが悪いって事は無いよ。君達は『そういう風に』出来てると考えたら何もおかしい事は無い。 とてつもなく弱くて、ちょっとしたことですぐに死ぬ。だから沢山子を産まなきゃならない」 れいむとまりさは呆然としている。 お兄さんは、一体何を言っている?理解できない。いや、したくない。 「で、君達は所謂多産多死の生物なわけじゃないか。それは、問題ないんだ。 でもさぁ、そこからがおかしいんだよ。多産多死型の生物ってのは、基本的に親の助けを借りずに成長するんだよ。 マンボウとかさ、三億個も卵産むらしいけど親は一切面倒を見ないわけ。そんで自生して、成長するんだ。 他にも身近な所だと蟷螂とか、鮭とか・・・哺乳類は多分鼠辺りが該当するんじゃないかな?まぁ君達は哺乳類じゃないからどうでもいいけど」 まんぼうさん、かまきりさん、さけさん。ねずみさん。 それがどうした?それがれいむ達と、何の関係がある・・・・・・? 「いいかい、君達は、沢山産んで、沢山死ぬ。 なんで他の動物を見習わないんだい?子供なんかいくらでも産めるだろう? 一昔前は『あかちゃんしんじゃったから、またたくさんつくろうね!!!』とか言ってたじゃないか。 それが今では、人間並みに母性だの、愛情だの、そんな所だけ発達して・・・誰かが言ってたけど、それ、歪んでるとしか言いようが無いよ」 知らない。知らない。知らない。 昔なんて知らない。昔のゆっくりがそんな事を言ってたとしても、れいむ達には何の関係も無い。 歪んでる・・・誰がそんな事を決めた?れいむ達が、赤ちゃんを愛することがそんなに悪いのか? 「ぶっちゃけさ、君達にとって赤ちゃんなんてデコイ兼餌扱いくらいでいいと思うんだよ。 普段は産み捨てて、手元に置くなら外敵に対して囮にするか非常食として食べる。それくらいでいい。 レイパー・・・だっけ?そっちの方がまだ自然だとすら思うね、僕は」 赤ちゃんをそんな風に扱うなんて信じられない。 このお兄さんは、赤ちゃんの事を一体何だと思っているのか。 それに、レイパーだと。あんなゆっくりできないレイパーが・・・自然? 「このままだと、遠からぬ未来に君達は絶滅しちゃうと思うんだ、僕は。 そんなの嫌だ。僕はゆっくりが大好きでね。君たちの居ないこの世の中なんて、想像出来ない。 昔のようになれば、きっと君達は生き延びられる。だから僕は身近な所から手を打つことにしたんだ。 安心して、れいむ、まりさ。僕が君たちを、きっと立派に世界に『適応』させてみせる。矯正だよ」 そう言って、彼はにこりと微笑んだ。 れいむとまりさは何も言えない。言う気にすらならない。端的に言えば、絶望していた。 これから何が待ち受けているのかが凡その所、理解してしまった。『野生動物』に相応しい振る舞いをする矯正・・・それがどういうものなのか。 彼の指導の下、『矯正』日々が今、始まる。 大体は二匹の予想の通りだった。 毎日毎日子供を強制的に産まされ、そして色々なシチュエーションの下、殺していく。 ただ産み捨てる場合、雨の日の場合、寒い日の場合、虫や獣、人間に襲われた場合―――。 赤ちゃんたちの悲鳴が、れいむの心を壊していく。赤ちゃんたちの助けを呼ぶ声が、まりさの精神を磨り減らしていく。 徐々に、徐々に二匹の価値観は壊され、そして新しい価値観を刷り込まれていった。 そして、現在。 「おかーしゃん・・・・・・どうちて・・・・・・」 「ふん、うるさいよ!!!れいむはすっきりー♪できればいいんだよ!!!あかちゃんはひとりでかってにいきてね!!!」 「あんまりやかましくするなら、まりささまがたべちゃうのぜ!!!おまえらちびどもは、とってもおいしいのぜ!!!」 一匹で力無く震える赤ゆに、容赦ない罵倒を浴びせる親ゆ二匹。 言うまでもなく、かつてのれいむとまりさだ。 その表情は醜く歪み、赤子を赤子とも思っていないと言わんばかり。 赤ゆ・・・赤れいむは、多数の姉妹と一緒に産み捨てられた(お兄さんの家の庭に)。 親に会いたい一心でなんとかお兄さんの家に姉妹達と一緒に潜り込んだが、そこで待っていたのが親であるはずの二匹からのこの待遇。 既に半分以上の赤ゆ達は叩き出され、残りは食われた。今両親の前に立つのは、この赤れいむただ一匹のみ。 「おかーしゃん・・・おとーしゃん・・・すりすりしてね・・・」 「んほおおおおおおお!!!まりっざあああああああああ!!!」 「れいぶうううううう!!!れいぶのもぢはだはあいがわらずざいごうなんだぜええええええ!!!!」 泣きかける我が子を全く意に介さず、ネチョネチョと粘液を飛ばしながら交尾に耽る二匹。 今となっては二匹にとってこれが当然の事となっていた。 赤ちゃんは産み捨てる。運がよければ勝手に育つ。だから自分たちはひたすら子を作る。 産んだ後の事などは関知する必要などないのだ。だから目の前のガキもどうでもいい。 「すっきりー!!!・・・・・・ふぅ、おなかすいたね」 「それならあかちゃんをたべればいいのぜ!!ぶちっ!!むーしゃむーしゃ!!」 「お、おとーしゃんなにやっちぇるのおおぉぉぉ!!!?」 れいむの頭に生えた妹達を引き千切り、咀嚼する両親に対して赤れいむは恐怖さえ覚えた。 こんなに赤ちゃん作っているんだから、たまにはこうやって茎の状態からでも食べてもいい。自然界ではよくある事。 もはや二匹の価値観は完全に通常とは逸脱していた。いや、これこそが正しい姿なのか。 「まりさ、いまのあかちゃんたちだけじゃすくないよ!!!このあかちゃんもたべようよ!!!」 「ゆっ!!!いいかんがえなのぜ、れいむ!!!」 「ゆっ・・・ゆあああぁぁぁ!!!おとーしゃんおかーしゃんやべちぇええぇぇl!!!」 言うや否や赤れいむに襲い掛かるれいむとまりさ。 抵抗も出来ずに、噛まれ、潰され、絶命する赤れいむ。 二匹は幸せ。だってこんなに美味しい餌が食べられたんだから。たとえそれが、我が子の餡子だったとしても。 「んほおおおおおおおおおう!!!まりざあああああああああ!!!!」 「れいぶっれいぶうううううううううううううう!!!ゆっほおおおおおおおおおおお!!!」 一息つく間もなく、またネチョネチョと交尾を始める二匹。 惨殺した子供のことなど頭の片隅にも留めてはいない。 だってそれが自然なのだから。お兄さんが言ってた、本来のゆっくりなのだから。 最早理性と呼べるものがあるのかどうかも疑わしい饅頭二匹。 部屋の隅に佇んでいた彼はそんな二匹をじっと見つめている。 そして、ポツリと一言、こう呟いた。 「・・・うーん。これってゲスゆっくりだよなぁ。いかん、矯正しなきゃ」 おわり ――――― 書き溜めです。 要約するとゆっくりにリアリティを持たせたらゲスゆっくりになりました、とこんな感じ。 お兄さんはゲスも嫌いなら不自然すぎるゆっくりも嫌いな頭の可哀想な人です。 ゆっくりが絶滅だって。ゆぷぷ。ゆっくりは勝手に生えてくるのにね!!げらげら!!! このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3425.html
注意書き 特に悪いことをしていないゆっくりが死にます。 ゆっくりがかなりゲスです。 多少ぺにまむ描写があります。 ゆっくり達のバザール ここはとあるゆっくりの群れ。 それはいたって普通のゆっくりの群れであったが最近ちょっと違うところができた。 「ゆ~!さあれいむのおみせのきのみさんはどこよりもあまあまさんだよ~!」 「ゆ!まりさのおみせのきのこさんはとってもゆっくりできるんだぜ!!みんな買っていくんだぜ!」 「ありすのとかいはなこものさんをもてばあなたもきょうからとかいはよ~!!」 「むきゅ!このくささんはいたいいたいがなおるのよ!!かっていってね!むきゅ~!!」 そうこの群れはお店を開いていた。 元飼いゆっくりであったれいむが群れの長である老ぱちゅりーに飼い主から教えてもらったお店というものを やってみようという試みによってこれは実現した。 ただれいむの話はかなり曖昧な上、お店にあった綺麗な物やおいしいお菓子の話ばかりするのでなかなか実現は難しかった。 ともかく、いろんな物をお金という金属や紙と交換するのだという概念はわかったようだ。 とはいえゆっくりに通貨という概念はないのでその時々で物々交換を店主と交渉するのがこの群れのお店の形態であった。 はじめはほとんどのゆっくりがぱちゅりーのいうことを理解することができなかった。 しかし何匹かはぱちゅりーに同調してお店をはじめた。 もともと物々交換という概念はゆっくりの中にもあった。 たとえば友ゆっくりのおうちにおじゃましたときにこれがほしいからうちのこれと交換してという感じだ。 ただしそういった行為はかなり仲のいい個体同士でなければ行われない。 それがもっと簡単におこなえることゆっくり同士に広まると皆もこぞって店を出すようになった。 店といっても広場の地面に木の葉を敷き詰め売り物を適当に並べただけの粗末なものだ。 それはともかく広場はにぎわっていた。 木の実を集めるのが得意なれいむは木の実や途中で拾った綺麗な石を店に並べていた。 狩りやきのこを集めるのが得意なまりさはおいしいきのこや虫を店にならべていた。 とかいはでおしゃれだと評判のありすははっぱや石を加工して作った敷物や小物を店に並べた。 物知りのぱちゅりーは薬になる草や実を用途に分けて店に並べた。 「ゆぅ~♪れいむ、とってもおいしそうなきのみさんだね!まりさのおいしいきのこさんとこうかんしてほしいよ!」 「ゆゆ、いいよまりさ!それじゃあきのこさんときのみさんをこうかんだね!」 「ありす、このはっぱさんはな~に?」 「それはありすがつくったとってもとかいはなてーぶるくろすよ!とかいはなありすにしかつくれないとかいはなしなよ!」 「ゆぅ~すごいよ!とってもゆっくりできそうだね!このきれいないしさんとこうかんしてね!」 「ゆゆ!このいしさんもとかいはだわ!こうしょうせいりつよ!」 「ぱちゅりー、おなかのいたいいたいがなおるはっぱさんをちょうだいね!」 「むきゅ、それならこのくささんね!!きのみさんじゅっこでいいわよ!」 「ゆ~・・・ごめんねぱちゅりー、いまきのみさんはごこしかもってないんだよ・・・。 でもれいむのおちびちゃんのおなかがいたいいたいなんだよ!だからこれでわけてほしいよ、れいむのおねがいだよ!」 「むきゅ~・・・それならしかたないわね。でもこんどはれいむがおまけしてね!」 「ゆ!もちろんだよぱちゅりー!ありがとうね!」 この様子を見ていた老ぱちゅりーは満足していた。 れいむからきいたにんげんさんのお店がまさかこんなにうまくいくとはおもってもみなかった。 お店のおかげでみんなよく働くようになったし生活もよくなってきている。 このままいけばこの群れはもっと発展していくだろう。そういつか人間さんの村のように・・・ 「ゆ、ゆぅ~まりさそれじゃちょっとすくないよ!ゆっくりりかいしてね!」 「ゆー!いいでしょれいむ!まりさのむしさんはほかのゆっくりのむしさんよりもおいしいんだよ!れいむこそゆっくりりかいしてね! ぷんぷん!!」 「むきゅ!そこまでよ!れいむ、まりさ!」 最近こういう争いが増えてきた。ぱちゅりーも頭が痛いところである。 通常こういった市場ができると付随して増えるものがある。 犯罪だ。 小さいものではスリ、酷いものでは強盗等。 本来ならぱちゅりーはそういったものを取り仕切るために組合やら自警団などを組織するべきであった。 まあ、いくら賢いといっても所詮ゆっくりであるぱちゅりーにそんな頭はないだろうが。 そんなこんなで犯罪はどんどん増加していった。 「ゆっへっへ♪おらおら、まりささまのおとおりなんだぜ!みちをあけるんだぜ!」 このまりさは群の嫌われ者のゲスまりさ。しかし一部の若ゆっくりなどには人気があり、今も子分のゆっくり何匹か連れている。 「ん~?おいしそうなきのみさんなんだぜ、まりささまがたべてあげるんだぜ!かんしゃするんだぜ!む~しゃ、む~しゃ・・・しあわせ~♪」 「ゆ、まりさそれはうりものなんだよ!かわりのものをちょうだいね!」 「なにいってるんだぜ!!ここはもともとまりささまのゆっくりプレイスなんだぜ!それをつかわせてやってるんだからこれくらいとうぜんなんだぜ!!」 もちろん言いがかりである。ここはもともと群れのゆっくり共有の広場であり。 そこを勝手にこのゲスまりさが自分のゆっくりプレイスだと主張していたにすぎない。 「なにいっでるの!!ごごはみんなのゆっぐりブレイズでじょ!!はやくおだいをぢょうだいね!」 「うるさいんだぜ!そんなれいむのきのみさんはこうなんだぜ!!」 そう言うと飛び上がってれいむのお店のきのみを踏み潰しぐりぐりと潰した。 「ゆあああああ!!でいぶのぎのみざんがぁぁぁああああ!!」 「ゆっへっへ!いいきみなんだぜ!ものわかりのわるいれいむはとっととしね!!」 「ゆぎゃ!」 そういうとゲスまりさはれいむに体当たりをかまして去っていってしまった。 後日これを聞きつけた老ぱちゅりーはまりさをきつく叱ったが 「うるさいんだぜ!あそこはまりささまのゆっくりぷれいすなんだぜ!だからあそこにおちているものはぜんぶまりささまのものなんだぜ!」 といって全く反省しない。 ここまで来ると状況は加速度的に悪くなっていった。 「おちびちゃんたち、ごはんだよ!ゆっくりあつまってきてね!」 「「「ゆっくりわかったよ!!!」」」 「さぁまりさのかわいいおちびちゃんたち、きょうのごはんだよ。」 そういって差し出したのは草や虫であった。 「ゆっ!またこれにゃにょ・・・。」 「もうまりしゃくささんもむしさんもやだよ!おいしいきのみさんをちょうだいね!」 「きょんなにょじゃじぇんじぇんゆっくちできにゃいよ!ぴゅんぴゅん!!」 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 このまりさは普段キノコや虫をお店で売っていたが最近キノコも木の実も取れる量が少なくなりまりさも売りに出せるほどの 蓄えがなくなってしまいしかたなく昔どおりの食事を赤ゆっくりに出していた。 ちなみに片親で番のれいむは死んでおり子供はすべてまりさ種である。 しかしお店のおかげでおいしい木の実の食事に慣れていた子ゆっくり達がぐずっているのだ。 それはあちこちでおこっており、れいむのいえでは逆に「おいしいきのこがたべたい」と親れいむに赤れいむがぐずっていた。 しかしキノコや木の実のある場所はそのゆっくりしかしらない秘密のゆっくりスポットであり、 たとえ友達だろうとその場所を教えることは無い。 故にまりさは木の実のある場所を知らないし、れいむはキノコのある場所をしらない。 「おきゃーしゃん!まりしゃはきにょみしゃんがちゃべちゃいよ!はやくとちぇきちぇね!」 「そんなものはないんだよ!ゆっくりりかいしてね!」 「いやぢゃ、いやぢゃぁぁぁぁぁ!!まりちゃきにょみしゃんがちゃべちゃいにょぉぉぉぉ!ゆびぇぇぇぇぇぇぇん!!」 「にゃんできにょみしゃんにゃいにょぉぉぉぉぉ!!まりちゃがゆっくちできにゃいでしょぉぉぉぉぉ!!」 「ゆびぇぇぇぇぇん!きっちょおきゃーしゃんがまりちゃのきにょみしゃんたべちゃったんだぁぁぁ!ゆびぇぇぇぇん!!」 「ななな、なにいってるのおちびちゃん!ないものはないんだよ!ゆっくりりかいしてね!くささんもむしさんもおいしいよ!」 「きょんにゃのおいちくにゃいぃぃぃぃぃ!!やっぴゃりおきゃーしゃんがまりちゃのきにょみしゃんとっちゃんだぁぁぁぁぁ!!」 「しょれでもおやなにょぉぉぉぉぉぉぉ!!ちね!まりしゃをゆっくちさしぇにゃいおきゃーしゃんはちねぇぇぇぇ!!」 「きょにょぐじゅ!にょりょま!きょんにゃゆっくちできにゃいおやからうまれちゃにゃんちぇまりちゃはじゅかちいよ!!」 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ・・・!!!」 ここのところ親まりさは食事ごとに子供達から文句を言われ続けていた。 そしてついにそのストレスは爆発した。 「そんなゆっくりできないことをいうおちびちゃんはまりさのこじゃないよ!!ゆっくりしねっ!!!」 「「「ゆびゅぇぁっ!!」」」 怒った親まりさは容赦なく赤まりさ達を壁にたたきつける。 なんてゆっくりできない子供達なんだ!こんなのはかわいいれいむとまりさの子供じゃない。 だがこのまま殺してしまえば他のゆっくりにゆっくりできないゆっくりとして制裁されてしまう。 どうすれば・・・ まりさはたっぷりゆっくり一時間ほどかけて名案を思いついた!! 「ゆっくらめいたよ!」 「ゆぎぎぎ・・・おかーしゃん・・・いちゃいよぉぉぉ・・・」 「たしゅけちぇ・・・ちんじゃうよぉぉぉ・・・」 「ごみぇんにゃしゃいおきゃーしゃん・・・もうゆるちてぇぇ・・・」 「ゆ、おきゃーしゃんまりちゃのぼうちどうちゅ・・・ゆぎゃあああああああああ!!まりしゃのぼうちがぁああああああ!!」 「やめちぇぇぇぇぇぇぇ!!ゆっくちできにゃいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「まりしゃのかみしゃんひっぱりゃないでぇぇぇぇぇ!!」 「いだぃぃぃぃぃぃぃぃ!!まりしゃのかみがぬけちゃうぅぅぅぅぅ!!」 「ゆぁぁぁ・・・まりしゃのかみが・・・ゆびぃぃ!にゃにしゅるのおきゃーしゃん!まりしゃをひっくりかえしゃにゃいでぇぇぇ!!」 「いぢゃい!!いぢゃいよぉぉぉ!!まりさのあんよがぁぁぁぁ!!ありゅけにゃくにゃっちゃうよぉぉぉぉぉぉ!!」 「「「ゆぎゃぁぁぁぁあああああああああ・・・!!」」」 次の日、まりさは広場でお店を出していた。 「ゆー!さぁ、まりさがとってきたおまんじゅうさんだよぉ~!!とってもあまあまでゆっくりできるよぉぉ!!」 「おきゃーしゃん!!なにゃにいっちぇるにょぉぉぉぉ!!」 「まりちゃあまあましゃんじゃにゃいよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「たしゅけちぇぇぇぇぇ!!からだじゅうがいちゃいよぉぉぉぉ!!」 「ゆぅ~?まりさ、このおまんじゅうさんなにかうるさいよ。ゆっくりしてないね!」 「そうだね、しゃべるおまんじゅうさんなんてきもちわるいよ、なんとかしてね!」 「ゆ、ごめんね!いましずかにさせるよ!」 「ゆぎっ!!やめちぇぇぇぇ!!ふがががががが・・・ゆびぃっ!」 ぶちっ! 「ゆふぅ~・・・これでしずかになったよ!さあ!おいしいあまあまさんだよ!!かっていってね!」 「ゆ~ん・・・せっかくのあまあまさんなのにあまりうれなかったよ・・・。」 「ゆ・・・ゆががが・・・」 「それもこれもおまえのせいだよ!もっとおいしそうにしてね!!ぷんぷん!・・・ゆ?れいむ!ゆっくりしていってね!!」 「ゆ!まりさ、ゆっくりしていってね!!・・・ゆ?まりさ、そのあまあまさんどうしたの?」 「ゆ~・・・きょうのうれのこりだよ・・・」 「まりさもうれのこったの!れいむもあまあまさんがうれのこっちゃったんだよ・・・。」 「ゆゆぅ・・・そうなの・・・ゆ!そうだ!れいむのあまあまさんとまりさのあまあまさんをこうかんしようよ!」 「ゆ!で、でもこのあまあまさんは・・・れいむの・・・」 「ゆぅ~?だめなの?じゃあしかたないね・・・またあしたひろばでうるよ・・・」 「・・・、わかったよまりさ。じゃあれいむのあまあまさんとまりさのあまあまさんをこうかんしようね!!」 「ゆ!やったよ!これできょうはかんばいだよ!!それにあまあまさんでゆっくりできるよ!!はい、れいむ。あまあまさんだよ!」 「ゆががががががが・・・」 「そ、そうだね!ゆっくりできるね!!はい、まりさ!れいむのあ・・・あまあまさんだよ。」 「ゆが・・・お・・・ゆ・・・」 「じゃあね、れいむ!ゆっくりしていってね!!」 「う、うんまりさ、ゆっくりしていってね。」 この日をさかいに赤ゆっくりの姿がだんだん少なくなっていった。 また行方不明の赤ゆっくりが増えた。 「♪ゆっくり~のひ~、まったり~のひ~・・・♪」 「「「「ゆっゆゆっゆ~♪・・・ゆゆっ!?」」」」 「ゆ?れいむのおちびちゃんたち?どうしたの・・・?ゆゆっ!おちびちゃんたち!!どこにいったの!?かくれてないででてきてね!!」 「ゆっぐ・・・ゆっぐ・・・でいぶのおぢびじゃんだぢ・・・どごなのぉ・・・」 「ゆ!れいむどうしたの!」 「ばりざあああああ!!れ、れいむのおぢびじゃんだぢがみづがらないのぉぉぉぉ!!」 「ゆ!?そ、そうなの?それはたいへんだね!」 「ぞうなのぉぉぉばりざもでいぶのあがじゃんいっじょにさがじでぇぇ・・・」 「ご、ごめんね!いままりさはおみせばんしてるんだよ・・・もうすこしまっててね。」 「ゆ、ぞうなの・・・?なにをうっでるの?」 「ななな、なんでもないよ!ちょっとまっててね!すぐにうっちゃうからね!」 「さぁ、あまあまさんだよぉ~とってもゆっくりできるよぉ~!!」 「「「「ゆぐぐぐぐぐぐぐぐぐーーーーーー!!!!」」」」 さらに貧富の差も発生した。 「ゆっふぉっふぉ・・・まったく、みんなびんぼうくさいみせばっかりなんだぜ・・・」 こいつは成金まりさ。 運よく人間から貰ったたくさんのお菓子から財をなし、今では大量のあまあまと美ゆっくりたちをはべらせゆーれむを築いた。 今も用心棒のゆっくりみょん二匹と美れいむを連れて広場を練り歩いていた。 「ゆ!まりさ!れいむのおちびちゃんはとってもゆっくりしているでしょ!!それにかじもうまいし巣作りもできるんだよ!!」 「ゆ~♪まりさおねーしゃ~んれいむまりしゃおねーしゃんのところでゆっくりしたいよぉ~♪ゆゆ~ん♪」 「ゆー!そんなきたないれいむなんてきにしないでね!うちのまりさのほうがゆっくりしてるんだよ!!」 「「どぼじでぞんなごというのぉぉぉぉ!!」」 この頃すでに出所不明のあまあまは普通に出回り、酷い所ではゆっくりの身売りまで起きていた。 みなせめていい暮らしをさせてやろうとこの成金まりさに媚びてゆ~れむに入れてもらおうと必死だ。 しかし、 「ゆっふぉっふぉ!!なんなんだぜおまえら?そんなうすぎたないかっこうでまりささまにはなしかけるんじゃないんだぜ! それにそのれいむもまりさもぜんぜんゆっくりしてないんだぜ~♪ でもどうしてもというならまりささまのうんうんとうばんにしてやってもいいんだぜ・・・?ゆ~っへっへ!!」 「「「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉ!!エレエレエレエレ!!」」」 もうどうしようもない状況であった。 老ぱちゅりーはかなり前から心労がたたって長いことふせっていたが他のゆっくりたちから何とかして欲しいとの声が抑えられないほど きていたのでだるい体を引きずりながら広場についてみるとそこは地獄であった。 他のゆっくりにはわからないが長く生きてきた老ぱちゅりーにはわかってしまった。 ゆっくり達があまあま、もしくはまんじゅうと称してゆっくりを売買している。 しかも飾りを奪われ、髪を引き抜かれ他のゆっくりにはそれとわからないようにしてお店に並べてある。 それもそこらじゅうで。 そしてそれを口汚く罵り合いなんとか値切ろうとするゆっくり達・・・ 地獄だ・・・この世の地獄だ・・・そしてその元凶は・・・ 「むぎゅぇっ・・・!!」 「ゆぎゃあああああああ!!おさぁぁぁぁぁああああ!!」 この後この群れはさらなる地獄につき進んでいった。 あまりに赤ゆっくりが減りどこも赤ゆっくり不足になった。 もうこのころになると通常の草や虫ではゆっくり達は満足できない。しかし赤ゆっくりもいない・・・。 いや、ならば作ればいい。多くのゆっくりがこう考えむやみなすっきり~、そしてにんっしん!を繰り返した。 それに耐えられず黒ずんで死んでいくゆっくり、またれいぱーと化して他のゆっくりをにんっしん!させる個体もでた。 「でいぶぅぅぅぅぅぅ!!またあまあまがたべたいよぉぉぉぉぉ!!またすっきりー!してにんっしん!してねぇぇぇぇ!!」 「だめだよばりざぁぁぁぁ!!ごれいじょうはもうでいぶじんじゃうよぉぉぉぉぉぉ!!」 「いいからはやくばりさをすっきりー!ざぜでねぇぇぇぇぇ!!んほぉぉぉぉぉぉぉ!!すっきりー!」 「すっきりー!・・・ああ、だめだよぉぉぉぉぉ!でいぶのあんごが!!あがぢゃ・・・ずわれ・・・ゆべぁ・・・」 「ああああ!!ごべんねぇっぇぇぇ!!でいぶぅぅぅぅぅ!!で、でもごれであまあまざんががえるよぉぉぉ・・・」 「んほぉぉぉぉぉぉぉ!!ばりざぁぁぁぁぁぁ!!ありずがとがいはのれいぶをおじえであげるわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「ゆげぇっ!!ああああああありずぅぅぅぅぅ!!やべでぇぇぇぇぇぇ!!ばりざ、これいじょうずっぎりじだらじんじゃぅぅぅぅぅぅ!!」 「「すっきりー!」」 また一攫千金を夢見て人間の村に出て行くゆっくりも増えた。 「ゆうー!さいきんまりささまのゆっくりプレイスのゆっくりどもがはんこうてきなんだぜ・・・ こうなったらさいきょうのまりささまがにんげんさんのまちにいってあまあまをいただくんだぜ!!おまえらついてくるんだぜ!!」 「「「「「えい!えい!ゆーーーー!!!」」」」」 当然全て潰された。 暴動も起きた。 ここはあの成金まりさのおうちの洞窟・・・ そこにあった頑丈なバリケードは壊され、多数のゆっくりが出入りを繰り返していた。 「やべでぇぇぇぇぇぇ!!まりさのあまあまもっでいかないでぇぇぇぇぇ!!」 「うるさいよ!まりさはあまあまさんをたくさんもってるのにぜんぜんわけてくれないのがわるいんだよ! ゆっくりりかいしてね!!りかいしたらさっさとしんでね!!」 「ばりざぁぁぁぁぁぁぁぁぁだずげでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「あああああ!!でいぶぅぅぅぅぅ!!でいぶをはなぜぇぇぇぇぇぇ!!」 「んほぉぉぉぉ!!なんてびれいむなのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!とかいはなありすにぴったりねぇぇぇぇぇ!!」 「やべでぇぇぇぇぇ!!ばりざのゆ~れむがぁぁぁぁぁぁ!!でいぶがぁぁぁぁぁぁ!!・・・ゆ?」 「まりざもどっでもずでぎよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!とかいはのすっきりをさせてあげるわぁぁぁぁぁ!!んほぉぉぉぉぉ!!」 「ゆぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」 数時間後・・・ 破壊しつくされた成金まりさのゆ~れむにはいくつものリボンと帽子が散乱していた。 しかしそんな地獄にも終わりは訪れる。 冬だ。 餌を蓄えることも無く、ただすっきりー!を繰り返しあまあまを貪り食う生活を繰り返したこの群に越冬はほぼ不可能である。 しかし冬まではいまだ日にちがある。 それまでゆっくり達の狂ったお店は止まらない。いや、止まれない。 あとがき おかしい・・・書き始めていた長編の息抜きに書いていたはずがなぜかこんな長さに。そしてまた話が重い。 そして書いていた長編がどうでもよくなってきた・・・。なんてこったい。 人が出ないのを書いてみようと思い書いてみました。 難しい・・・。精進します。 甘党 今まで書いたもの ゆっくりコールドスリープ ゆっくりを効率的に全滅させるには。 ユマンジュゥ きれいなゆっくりの作り方
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1711.html
「ゆっくり育児放棄」(前編) 後編に“ちーちー”の描写が薄っすらと含まれてるよ!! 「んほおおおおおおあおおあおあおあお!!!すっきりするううぅぅぅうっぅうぅぅぅぅ!!!!」 「れいむううううっぅぅぅぅぅう!!!すっぎりじでえええええぇえぇえぇぇ!!!」 飛び散る、汁、汁、汁。 木の根元に掘られた巣穴の奥。誰も入り込まない2人の愛の巣。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさは、生まれてはじめての“すっきり”をした。 「「んほほほほほあおあおおあおあおあおあおあおあ!!!すっきりいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!!!」」 血走る目、大きく開かれた口。そこからばら撒かれる唾液と、その他のいろいろな粘液。 子供なら泣いて逃げ出してしまうだろう、バケモノのような風貌で2匹は同時に達した。 外は暗黒。れみりゃすら出歩かない真夜中。 2匹は、存分に余韻に浸っていた。 「んひゅうううぅぅぅ……すっきりしたよぉ…」 「まりさもぉ……すっきりぃー……」 ―――2匹がそれぞれの親元から離れ、共に新たなゆっくりプレイスを探す旅に出たのは、半年前ことだ。 それまで親の庇護の元、何不自由なくゆっくりしてきた2匹にとって、その旅は苦労の連続だった。 『ゆーん……おなかすいたよぉ……』 『がんばってね!!もうすぐおはなさんをたくさんたべられるからね!!』 度重なる野宿。3食満足な食事がとれる保証はなかった。 『ゆゆ!!あめさん!!ゆっくりやんでね!!』 『ゆっくりしすぎだよ!!まりさたちがゆっくりできないよ!!』 雨が3日間連続して降ったときは、このまま雨が二度と止まないのではないかと不安になった。 容赦ない雨に打たれ、溶けて死んでいったゆっくりを見て、2匹は恐ろしさに震えが止まらなかった。 『うー!!たーべちゃーうぞー♪』 『うわあああああああぁぁぁあぁぁぁ!!!れみりゃだああああぁぁああぁぁぁ!!!!』 『だべないでえぇぇえぇぇえっぇぇ!!!まりざはおいじぐないよおおおおおおぉぉぉ!!!』 寝床を見つけられないまま夜になってしまい、れみりゃと遭遇したときは死を覚悟した。 それでも運よく、れみりゃの入れない小さな洞穴を見つける事が出来、2匹揃って生き延びる事が出来た。 何度も何度も、命の危機を乗り越え……やっと見つけたゆっくりプレイス。 そこはゆっくりがみんな仲良くゆっくりしている最高の楽園。 れいむとまりさは、これ以上のゆっくりプレイスはないと確信し、定住を決意した。 『まりさ!!ここならずっとゆっくりできるよ!!』 『そうだね!!これからもいっしょにゆっくりしようね!!』 半年の旅を経て、2匹の愛は更に深まっていた。 共に危険を乗り越えてきた2匹。その愛を断ち切ることは、誰にも出来ない。 『れいむはまりさのあかちゃんがほしいよ!!とてもゆっくりしたあかちゃんがほしいよ!!』 『まりさもだよ!!れいむのゆっくりとしたあかちゃん!!ふたりでゆっくりつくろうね!!』 そして、今。 2匹は母ゆっくりから教わっていた方法で、記念すべき最初のすっきりをしたのだ。 「ゆー!!とてもゆっくりしたあかちゃんだよ!!」 「そうだね!!かわいいあかちゃんだね!!うまれたらみんなでゆっくりしようね!!」 れいむの頭の上に生えた、3本の蔓。 合計20個の実が、そこには実っていた。 2匹はなんとなく、こうなるだろうと思っていた。きっとれいむが子を実らせるだろう、と。 なんとなく、である。その方がゆっくり出来る気がした、それだけのことだ。 「ゆっくりうまれてきてね!!ゆっくりでいいからね!!」 「うまれてきたらいっしょにたくさんゆっくりしようね!!」 蔓に実った20匹のゆっくりに、微笑みながら話しかける2匹。 まだ目は開いておらず、口も閉じたまま。帽子もリボンも無いので、両親のどちらと同じ形で生まれるかもわからない。 でも、すでに耳は機能しているようで、両親の言葉を聞いてぴくりと身を震わす赤ん坊もいた。 「ゆぅぅぅぅ!!!ゆっくりきこえたんだね!!れいむはうれしいよおおおおおお!!!」 「これならうまれてからもゆっくりできるよおおおおお!!!」 2匹は嬉しさのあまり、大粒の涙を流した。 半年間の旅の苦労。至ることのできた最高のゆっくりプレイス。そして、これから生まれるであろうかわいい子供。 れいむとまりさが思い描く未来は、とても明るかった。ずっとずっとゆっくりできる。根拠はないけど、確信していた。 「「ゆっくりしていってね!!」」 そんな、夜。2匹が輝かしい未来に思いを馳せている、その瞬間。 それほど遠くない場所で、悲劇は起こっていた。 「いや……どぼぢで…ごんなごどにいいぃぃ………」 暗い巣穴。全身ボロボロの状態で、目に涙を浮かべながら外を見つめるのは、ゆっくりまりさだ。 その視線の先には、背を向けて満足げに去っていくゆっくりありす。 「ひどいよ……ぜんぜんゆっぐじでぎないよおおおおおお………」 まりさの頭上には3本の蔓が生えていた。原因は、ありすによるレイプだ。 昼間に草原で出会ったありすに一目惚れし、自分のおうちに連れてきてしまった結果がこれである。 まりさは、今になってかつての母親の教えを思い出した。 『ありすとふたりきりになったら、ゆっくりできなくなるよ!!』 間違っても、ありすをおうちに連れ込んで2人きりになってはいけなかったのだ。 しかし、それを思い出したところで、今更遅い。まりさはありすとの子を実らせてしまった事実は、取り消せない。 まりさの頭上には、合計20匹の赤ちゃんゆっくりが実っていた。 「ゆぐうううぅぅぅぅ!!!どうすればいいのおおおおおおおお!!??こんなこどもいやだよおおおおおおお!!!」 レイプ魔ありすの子供なんて、生みたくないし育てたくもない。 だからといって殺すわけにもいかなかった。もし子供を殺している現場が他のゆっくりに見つかれば、集団リンチものである。 この群れに処刑という概念はないが、ゆっくりを殺してはいけないという最低限の倫理観は存在していた。 「……このままじゃゆっぐじでぎなぐなるよおおおおおおお!!!」 自分は、まだまだゆっくりしたい。望んでもいない子供の世話なんてまっぴらだ。 成体になったとはいえ、まだまだ遊び盛りのまりさにとって、子育て……それもレイプされて生まれた子供を育てるという行為は、苦痛でしかなかった。 可能ならば、子供は生みたくない。生まれたとしても、絶対に育てたくない。 そんなまりさの思いとは裏腹に、蔓に実った子供は順調に形を成していく。 うっすら閉じた目。きゅっと結んだ口。髪飾りはまだないので、親のどちらに似て生まれるかはわからない。 それでも、確実にゆっくりとしての形は形成していた。おそらく、数時間後……日の出直後には生まれてしまうだろう。 「ゆぅ……ゆっくりしたいよぉ……こんなあかちゃんいやだよおぉ………どうすればいいのぉ!?」 その時だった。そう遠くない、離れた巣から2匹のゆっくりの声がかすかに聞こえたのは。 「ゆっくりうまれてきてね!!ゆっくりでいいからね!!」 「うまれてきたらいっしょにたくさんゆっくりしようね!!」 赤ん坊が実ったことを祝福する、ゆっくりれいむとゆっくりまりさの声だ。 2匹の明るい声色から、まりさは理解した。これから向こうで生まれる赤ん坊達は、みんな望まれて出来た、祝福されるべき赤ん坊なのだ。 まりさは、うらやましかった。存分に愛し合う2匹が。その結果生まれる、愛されることを約束された赤ん坊が。 それにくらべて、自分はどうだ。一目惚れしたありすに裏切られ、20匹もの赤ん坊を孕まされて独りぼっち。 もし、このまま赤ん坊が生まれれば、自分だけでその世話をしなければならない。 「ゆっぐ……ずるいよぉ………どうしてまりさだけ…ゆっくりさせてくれないのぉ……?」 まりさは、羨ましさを通り越して、2匹が憎くなった。 自分がこんな目にあっているのに、どうしてあいつらは幸せなんだ。ずるい。ずるい。こんなの不公平だ。 心の中で毒づくまりさ。自分の不幸を嘆き、そしてその不幸に対して何も出来ない、無力なまりさ。 その時、まりさは“ある事”を思いついた。 「ゆっ?………ゆゆゆゆゆゆゆゆっ!!」 まりさの表情が、一気に晴れた。自分の身に降りかかった不幸を払いのける、最良の方法を思いついたのだ。 自分で子供を殺す必要はなく、それでいて自分で子供を育てる必要もない……そんな最高の方法。 簡単なことだ。子供を育てるのが“自分”である必要はない。 「ゆふふ!!いいことおもいついたよ!!これでゆっくりできるよ!!」 まりさは、暗闇の向こうの……例の2匹の巣がある方向へ、視線を向けた。 早朝。 眠ることなく赤ん坊の誕生を今か今かと待っていた、れいむとまりさ。 かつて母ゆっくりに教わった事が本当なら、そろそろ生まれてもいい頃だ。 「ゆーん……あかちゃんたち、とてもゆっくりしてるね!!」 「そうだね!!でもまりさはそろそろうまれてきてほしいよ!!」 ゆっくり生まれてきて欲しいと望んではいるが、早く生まれた赤ちゃん達とゆっくりしたい。その気持ちも本物だ。 でも、無理やり蔓から切り離したら、赤ちゃん達がゆっくりできなくなる。 まりさはもどかしさに身悶えながら、誕生のときを待ち続けた。 そして。 「……ゆゆっ!?なんだかへんなかんじがするよ!!」 「れいむ!!あかちゃんがゆっくりうごいてるよ!!もうすぐゆっくりうまれるんだよ!!」 違和感を感じたれいむ。まりさはれいむの頭上を見上げた。 かすかに目を開き、もごもごと口を動かしている赤ちゃんゆっくり。出産のときが近いのだ。 その違和感の正体を知ったれいむは、その場にじっと留まって視線を上に向ける。 「ゆゆゆ!!うまれるよ!!ゆっくりうまれるよおおおおおお!!」 「がんばってね!!あかちゃんはゆっくりがんばってね!!」 ゆらゆらと、自分の力で実を揺らす赤ちゃんゆっくり。 母ゆっくりが手伝う必要はない。じっと待っていれば、そのうち自力で蔓から切り離れる。 赤ちゃんゆっくりは目をぎゅっと閉じ、力を振り絞って身体を揺らしている。 ぶち…ぶちぶち… 赤ちゃんゆっくりの頭と蔓とのつなぎ目が、少しずつ千切れていく。そして… ぶちっ!! ぽとん!! 最初の赤ちゃんゆっくりが、ぼよんと軽やかに弾みながら生れ落ちた。 「ゆっ…ゆゆ……ゆっくちしちぇいってね!!」 「ゆっくりしていってね!!れいむがおかーさんだよ!!」 「まりさもおかーさんだよ!!いっしょにゆっくりしようね!!」 これ以上ない幸福感だった。自分を生んだお母さんも、こんな思いだったのだろうか。 そんなことを考えながら、2匹の母親は最大級の歓迎でもって赤ちゃんゆっくりの誕生を祝福した。 「ゆっくちうまれりゅよー!!」「ゆっくちぃ~!!」 次々に生まれてくる、赤ちゃんゆっくりたち。 そのどれもがとてもゆっくりした、かけがえの無い子供たちだ。 10分ほどで、蔓に実っていた赤ちゃんゆっくり20匹全員が、無事に生まれ落ちた。 れいむ種が10匹、まりさ種が10匹、ちょうど半分ずつ。最適なバランスだった。 「ゆ~!!いっぱいうまれたね!!みんなとてもゆっくりしてるよぉ!!」 「そうだね!!これからはみんなでゆっくりするよ!!」 「「ゆっくりしていってね!!!!」」 「「「「「ゆっきゅちしていってにぇ!!」」」」」 「ずっとみんなでゆっくりしようね!!」 「おかーさんたちがゆっくりさせてあげるからね!!」 「「「「「ゆっくちそだててね!!!」」」」」 明るい声。明るい笑顔。誰もが幸せを感じ、それが永遠に続くと信じて疑わない。 たくさんの子供に囲まれて、れいむとまりさは幸せの絶頂に達していた。 そんな明るい笑い声が絶えない、木の根元の横穴。 すぐ近くの草陰に隠れているのは、頭上に3本の蔓を生やしたゆっくりまりさだ。 「ゆゆゆ!!まりさもゆっくりうまれそうだよ!!」 奇しくも、その蔓に実っているのは巣の中の赤ちゃんゆっくりと同じ、20匹。 だがまりさにとっては、赤ん坊の数などどうでもいいことだった。 とにかく、一刻も早く頭上の赤ちゃんを何とかしたい、それだけしか考えていない。 「ゆーん!!もうすこしでゆっくりできるよ!!!」 まりさは、“その時”が来るのをゆっくりと待ち続けた。 朝。 赤ちゃんが生まれてから1時間半後。 赤ちゃんゆっくりたちは、れいむの頭から切り離した蔓を食べた後、仲良く眠りについた。 あれほど賑やかだったおうちの中も、赤ん坊が眠ってしまうと元通りの静けさを取り戻す。 「ゆー…ゆっくりねむってるね!!」 「れいむ!!いまのうちにたべものをとりにいこうよ!!」 「ゆゆ!!それはめいあんだね!!」 れいむとまりさは、赤ちゃん達のために食べ物を取りに行くことにした。 親が2匹とも健在ならば、片方は赤ちゃんを見守るために残るべきなのだが、2匹はそうしなかった。 この2匹の巣は、れみりゃにも発情ありすにも見つからない完璧なカムフラージュが施されている。 雨の日に雨宿りにやってくるゆっくりすらいないぐらいだ。 食べ物を取りに行っている間も誰も来ないだろうし、赤ちゃんが目覚める前に帰ってくる自信もあった。 だから、2匹は眠っている赤ちゃんを置いて、食べ物を取りに行くことにしたのだ。 「ゆっくりしないでとってこようね!!」 「そうだね!!あかちゃんがおきるまえにゆっくりかえってこようね!!」 若干食い違っているような会話を交えながら、れいむとまりさは巣の外へと飛び出していく。 協力して食べ物をたくさん集めて、子供たちを喜ばせてあげよう。 そう心に決めて、草原の彼方へと跳ねていった。 「ゆへへ!!やっとでてきたよ!!」 まりさは、その時を待っていた。 巣の中の幸せそうな2匹が、赤ん坊を置き去りにしておうちから離れる、その時を。 2匹が巣穴から飛び出してくるのをその目で確認し、完全に姿が見えなくなるのを待ってから、まりさはその巣穴へと飛び込んだ。 「ゆー……たくさんゆっくりしてるよ」 一箇所に固まって眠っている赤ちゃんゆっくりを見て、まりさは独り言をこぼした。 目の前に並ぶのは、これからゆっくりさせてもらうことが確定しているであろう、幸せな赤ちゃん達。 そんな赤ちゃん達の穏やかな寝顔を見て、まりさは可愛く思ったが同時に憎くも感じた。 可愛い赤ん坊の寝顔。幸せそうな夫婦の笑顔。そして、それを取り巻く愛情。すべてが憎かった。 「……どうしておまえたちだけゆっくりできるの?まりさだってゆっくりしたいんだよ!?」 その憎しみは、本来ならレイプ魔ありすにぶつけるべきものだ。 だが、その相手は昨夜に逃亡して行方知れず。怒りが湧き起こっても、それをぶつける相手はもういないのだ。 「ゆぐぐ!!さっさとうまれてね!!ゆっくりしないでうまれてね!!」 まりさは、自分がここへ来た目的を思い出し、頭上の蔓をゆっさゆっさと揺らし始めた。 ここには長居すべきではない。れいむとまりさの夫婦が帰ってこない間に、そして赤ん坊達が眠っている間に、出産を終えなければならない。 頭上の赤ちゃん達のことを考えれば、蔓を揺らして無理やり赤ちゃんを産み落とすのはよくないことだ。 しかし、望まない赤ちゃんと一刻も早く縁を切りたいまりさにとって、赤ん坊の生まれた後のことなどどうでもよかった。 「うぐぐぐっぐ!!!さっさとしてね!!はやくうまれないとおこるよ!!」 母親の怒声に覚醒した頭上の赤ちゃん達が、慌てて身を揺すり始める。 やっと生まれる気になったのか、悪魔の子供め。 まりさは半分呆れ顔で、蔓を揺らし続けた。 「ゆっくち!!ゆっくちゆらしゃないでね!!まりしゃはゆっきゅちうまれりゅよ!!」 「ありしゅもゆっきゅちうまれちゃいよ!!ゆらしゃないでね!!」 無理やり蔓を揺らされるのは、赤ん坊にとっては気分のいいものではない。 場合によっては乗り物酔いと同じような状態になり、中身を吐き出してしまうこともあるのだ。 「うるさいよ!!さっさとうまれないとゆるさないよ!!ゆっくりしないでうまれてね!!」 赤ん坊に対する言葉とは思えないぐらい、まりさはその声に怒気を込めている。 母の頭上で眠っているとき、誕生を祝福されることを夢見ていた赤ちゃん達にとって、その言葉は心にどう響くだろうか。 「ゆきゅぅ……わかっちゃよ!!ゆっくちしないでうまれるにぇ!!」 「ゆん!!おきゃーさんもてちゅだってね!!」 「いわれなくてもわかってるよ!!ゆっくりしないでうまれてね!!さっさとうまれてね!!」 さっきから怒ってばかりの母親を見て、赤ちゃん達は悲しげな表情を浮かべながら身体を揺らし続ける。 まりさの揺れと、赤ちゃん達の揺れ。その2つの揺れで、赤ちゃん達と蔓との繋ぎ目が千切れていく。 そして……ぶちん!ぶちぶちぶちん!!ぶちぶちん!! 「ゆっきゅちうまりぇたよ!!」「ゆっくし!!」「ゆっくりぃ~!!」 ほぼ同時に、20匹の赤ちゃんが生まれ落ちた。まりさ種が10匹、ありす種が10匹だ。 目の前にいる大きなゆっくりまりさを母親と認識し、揃ってまりさの方を向く。 そして小さな目をうるうると輝かせながら、赤ちゃん達は生まれてはじめて“挨拶”をした。 「「「「「ゆっきゅちしちぇいってね!!」」」」」 「うるさいよ!!ゆっくりだまってね!!」 赤ちゃん達は唖然としてしまった。元気な挨拶が返ってくると思っていたのに、母の口から飛び出した言葉は全然違うものだった。 その意味は正確には理解できなかったが、なんとなく……怒られたのだという事だけはわかった。 「ゆ……どおちておこるの?」 「まりしゃたちわりゅいことしちゃの?」 「ゆっくちおこりゃないでね!!ありしゅたちはおかーしゃんのかわいいこどもだよ!!」 「ゆっくりしゃべらないでね!!ゆっくりできなくするよ!!」 「「「ゆん……」」」 それっきり、赤ちゃんゆっくりたちは黙り込んでしまった。 赤ちゃん達は、自分が望まれないで生まれたということを知らない。 母まりさがこんなにも自分達につらくあたる理由が、まったくわからないのだ。 「おかーしゃん……まりしゃおなかすいたよ…」 「ありしゅも!!ありしゅもおなかすいた!!」 「まりさも!!」「ありすも!!」「おなかしゅいたー!!」 生まれたての赤ちゃんは、基本的に空腹である。 普通なら母ゆっくりに、蔓を噛み砕いたものを食べさせてもらうのだが、まりさはそれをしなかった。 「ゆぐぐぐぐぐ!!!そんなにおなかがすいたなら、そこらへんのものをたべればいいよ!!」 と、言い切ったところで……まりさの視界にあるものが入った。 それは、れいむとまりさの夫婦が生んだ、赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさである。 まりさはゆっくり考えた。 最初はこのまま赤ん坊達を置き去りにして、帰ってきたれいむとまりさに育てさせる予定だった。 でも、これだけ赤ちゃんが増えればさすがに気づかれてしまうだろう。そうしたら計画は水泡に帰してしまう。 だから、赤ちゃんの数を最初と同じ程度まで減らす必要がある。 そのためにはどうすればいい? ゆっくり殺しは、見つかればリンチものだ。こんなクソガキのために痛い目に遭いたくない。 どうすれば……どうすれば、子供の数を減らせる? 自分で殺さず、子供を減らす方法…… 「ゆっ!!ゆゆゆゆゆ!!!!」 その時、まりさの餡子脳に電撃が走った。 思いついたのだ。子供の数を減らす最良の方法を。自分の手を汚さず、子供を減らす方法だ。 簡単なことだ。子供を殺すのが“自分”である必要はない。 「みんな!!ゆっくりきいてね!!そこにころがってる“まんじゅう”をみてね!!」 「ゆっ?まんじゅう?」「ゆっくちできりゅの?」「おなかしゅいたよ!!」 “饅頭”という言葉を知らない赤ちゃん達は、それがゆっくりできるものなのか、腹を満たせるものなのか、そうでないのかわからない。 だが、その言葉が示しているのが目の前で眠っている赤ちゃんゆっくりだと分かると、赤ちゃん達は困ったように口々に呟いた。 「おかーしゃん!!それはまんじゅうじゃないよ!!れいみゅだよ!!」 「そうだお!!このまりしゃはまんじゅうじゃないお!!」 目の前のこれは、れいむとまりさである。だから饅頭ではない。そんな思考である。 それでもまりさは怒らず、大きな声でゆっくりと言い聞かせた。 「ゆ!!おまえたちにはそうみえるんだね!!でもこいつらはね、れいむとまりさによくにた“まんじゅう”なんだよ!!」 「「「ゆゆゆ!?そうにゃの!?」」」 饅頭がどんなものなのかは分からないが、目の前のれいむとまりさが、れいむとまりさに良く似た別のものだということは理解した。 そして、肝心の饅頭とはいったいどんなものなのか。赤ちゃん達は、母まりさの説明を待った。 「ゆっくりきいてね!!まんじゅうはとてもゆっくりできる“たべもの”だよ!!」 「ゆゆっ!!たべものなの!!ゆっくちたべたいよ!!」 「ゆっくりたべてね!!めをさましたらあばれるかもしれないけど、まけちゃだめだよ!!」 お膳立てはそれで十分だった。 生まれたての赤ちゃん達は、空腹にとても弱い。 目の前の“ゆっくりに似たもの”が食べ物だと教えられれば、もう迷うことはない。 赤ちゃんゆっくりは、眠っている赤ちゃん達に飛び掛って大きく口を開いた。 生まれてはじめての“食事”である。 「ゆっくち!!ゆっくちたべりゅよ!!」 「ありしゅもたべりゅよ!!おなかすいたもん!!」 「いびゃっ!?なに!?だれなにょ!?」 「やめでね!!まりしゃはたべものじゃないよ!!」 まりさが生んだ赤ちゃん達に食いつかれ、目を覚ますれいむとまりさたち。 だが、反撃することはできなかった。一度でも身体の一部分を食いちぎられれば、パワーで相手を押しのけることはできない。 体格が殆ど変わらない赤ちゃんゆっくりにとって、先攻を取ることは普通のゆっくり以上に重要なのだ。 「やめっで…たべぼのじゃ……ない…」 「うそつかないでね!!おかーさんがいってたよ!!おまえたちはたべものなんだよ!!」 「たべものはまりしゃたちにゆっくちたべられてね!!」 「いだいいだいいだいいだい!!もっど!!もっどゆっぎじじだいのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 「おがーじゃんだじゅげでええええぇぇええぇぇ!!!!」 「もっどぉおおおお…ゆっぐじいいいぃぃ……しだが……った…」 あっという間だった。 突然起こされた赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさは、まともに反撃することもかなわず……一匹残らず食い殺された。 空腹だった赤ちゃん達によって欠片残さず飲み込まれ、周囲には小さなリボンと帽子だけが残されている。 生まれてから一時間も経たずして、赤ちゃんれいむと赤ちゃんまりさはこの世を去った。 「ゆー!!おなかいっぱい!!」「ゆっきゅりできゆよ!!」 これだけ赤ちゃんを減らせば、れいむとまりさの夫婦にも気づかれないだろう。 赤ちゃん達が満腹感に浸っている隙に、まりさはこっそりと巣穴から抜け出した。 「ゆへへ!!これでゆっくりできるよ!!ひとりでゆっくりできるよ!!」 身軽になったまりさは、ゆっくりするために草原へと跳びはねていった。 母親に捨てられてしまったことを、巣の中の赤ちゃん達はまだ知らない…… (続く) 作:避妊ありすの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/932.html
~投薬一日目~ 特に大きな変化はない。 周りのゆっくりたちとも普通に遊んでいる。 食欲も旺盛でいたって健康。 ~投薬二日目~ ゆっくりパチュリーに何か教えてもらっていたらしいが、 あまり話をよく聞けていない。集中力が散漫になりつつある。 食欲や運動能力にはまだ影響がないみたいだ。 <メモ> ゆっくりれいむと遊ぶ約束をした ~投薬三日目~ 二日目の約束をすっぽかす。どうやら寝起きが悪いようだ。 心配したゆっくりれいむが巣まで見に来るが、涎までたらして寝ているのを見ると、 怒って帰ってしまう。10分ほど起こそうと声をかけたりゆすったりしていたが、効果なし。 昼過ぎに起きたため、食事の回数は三回から二回に。食欲減退などの症状は無い。 今日は巣の中でぼけーっとしていたので運動能力の減退は不明。 ゆっくりれいむとの約束は結局思い出さなかった。 ~投薬四日目~ 食欲に大きな減退が見られる。いつもの半分しか食べずに食事を終了する。 ゆっくりれいむに約束を破った事を注意され謝罪する。 ゆっくりパチュリーが果物をおすそわけに来たが、食欲がないと断る。 飛び跳ねる高さが若干だが低くなっているようだが、誤差かもしれない。 <追記> 資料と見比べた所、やはり若干跳ねる高さが低くなっている。 これによりゆっくりれいむと同じぐらいの足の速さになる。 ~投薬五日目~ 記憶に著しい障害が発生、友人であるゆっくりれいむやゆっくりパチュリーの事を忘れる。 身体能力も大きく減退。跳ねる事ができなくなる。 食欲も大きく減退し、今日は朝から何も食べていない。 ゆっくりパチュリーが数種類の薬草を食べさせるも症状は回復せず。 ~投薬六日目~ まったく動けなくなり、記憶や言葉をほとんど失う。 「ゆっくりしていってね」としか喋れなくなり、思い出したかのよう「ゆっくりしていってね」と言っている。 ゆっくりれいむから野菜を貰うが、それが何なのか分からないみたいだ。 「たべて」と言われても食べるという行為が分からないようで「ゆっくりしていってね」と返事するだけだ。 ~投薬七日目~ 昼過ぎに死亡を確認。 それまで痛がるような様子もなく六日目と同じ症状だった。 「ご期待に添えましたでしょうか?」 永琳は数枚の写真と報告書、それに何粒かの錠剤を人間に渡す。 「ええ・・・よかった。これでゆっくりたちも苦しまずに済みます」 「すぐに動きを封じる即効性の強いものもありますけど」 永琳が出してきた別の錠剤に人間は嫌な顔をする。 「そんなものを使ってはゆっくりが可哀想です」 「・・・そうですか、それでは私はこれで」 「ええ、ありがとうございました」 永琳が村の外れの畑まで来る。 「こら、お前ら、また人の畑を!!」 「ゆ?ここのやさいはれいむたちがさきにみつけたんだよ」 「忌々しいな、この野郎」 男が鍬を振り上げる。 「やめなさい、この馬鹿者が!!」 しかし、その鍬は振り下ろされる事はなく、さっき大声を出した男に取り上げられる。 「ゆっくりは人間の約束事が分からんのだ。そうイチイチ腹を立てるな!」 大声を出した男はゆっくりれいむ達に優しい言葉をかけ、森に帰させる。 「竹林の女医様にゆっくりが苦しまず死ぬ薬を作ってもらった。今後、酷いゆっくりにはそれを使う。お前もイチイチ目くじらを立てるな」 「俺ががんばって耕した畑の野菜を勝手に取っていって、それは酷くないのかよ!!」 「大根の一本や二本だろ。それぐらい我慢せい。ゆっくり達だって生きているんだ。そう簡単に殺しては可哀想だろ」 村の外で待っていたてゐは物陰からクスクスと笑っている。 永琳はてゐと合流し、迷い竹林を目指す。 「あの村、絶対にゆっくりを殺す気ないね」 「そうかしら?」 「だって、可哀想とか言ってるんだもん」 「でも、あの薬があれば・・・変わるかもしれないわ」 「えー、でも、アレってゆっくりが可哀想だから遅効性になってるんだよね?」 「いいえ、アレは即効性の毒薬よ。実際、二日目の段階で記憶に著しいダメージを与えてるのよ。痛がらないのは『痛い』って事を忘れてるだけ」 「エグーい」 「使用者が納得して効能が同じであればどんな道筋で効く薬でも良いのよ」 しばらくして、この村の近辺のゆっくりはほとんど死滅した。 「可哀想だけど、この薬なら苦しむ事はないからな」 そう言って薬を使い続けた。苦しくないから、苦しくないから、と言って。 by118 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/810.html
ゆっくり世紀末 人里に程近い森の奥。 雲雀の囀りと春風にざわめく木々の音に混じって、賑やかな住民の声が聞こえてきた。 「ゆっくりついてきてね、おちびちゃんたち!」 「ゆっきゅりついていくよ!」 仲睦まじい声をかけあって巣穴から出てきたのは、ゆっくりたち。 先頭に立って進むまりさと、最後方から家族を見守るれいむ。そして、両親に守られるかのように挟まれた、二匹の赤ちゃんゆっくり。 それぞれ、まりさとれいむの組み合わせだ。 一般的なゆっくり家族に比べ、まりさたちの授かった二匹という赤ちゃんの数は少ない。 だが、だからこそゆっくり夫婦は有り余るだけの愛情を赤ちゃんに注ぐ。 夫婦の願いは、本当にゆっくりと子供たちが生きてくれること。 そのために、まりさとれいむが熱中したのは教育だった。 巣穴の中で外を歩き回れる大きさになるまで、まりさとれいむは交代で赤ちゃんたちに自分たちの知識を伝えた。 ごはんのとり方、巣の作り方を始めとする、生きていくための知識を。 特に口をすっぱくしていったのは、獣や捕食種の危険性と、それ以上に関係に気をつけなければいけない人間についてだった。 森の外、ずっと野原を進むと人の暮らしているところがあるから、その周辺には絶対近づかないこと。もし間違って迷い込んだとしたら、 例えそんなにゆっくりできそうなものがあっても、すぐに出て行くこと。 何度も繰り返す両親の顔がよっぽど真剣だったのだろう。 「わかったよ!」 赤ちゃんたちは、疑問をはさむこともなく頷く。 れいむはそんな赤ちゃんたちの素直さが嬉しかった。親の贔屓目ながらも、あかちゃんはまりさのように賢くて、れいむのように素直だと 感じていた。 「ゆゆーん♪ ゆっゆーん♪」 ついつい、ゆっくりした気持ちのままに歌がこぼれる。 その暢気な歌声に一番に反応したのは、あかちゃんれいむ。 「ゆ!? れいみゅもおうた、うたうよ~♪」 途端に、れいむの歌声に包まれる一家。 あかちゃんまりさはこの上なくしあわせな気持ちになりながら、先頭を行く親まりさの隣に歩を進めた。 「きょうはどこでゆっくりしゅるの?」 あかちゃんまりさは、好奇心が強く輝く瞳で親まりさをのぞきこむ。 親まりさは、自分に似て行動的な子供の様子に目を細めながら、今日の目的を教えてあげた。 「あかちゃんたち、今日はゆっくりするだけじゃないよ。ごはんのとり方をべんきょうするよ!」 いつもは巣穴に持ち込まれ、親ゆっくりが食べやすく噛み砕いて食べさせるごはん。 それが森ではどんな形で、どんなところにあるのか、まりさは今後のためにも子供たちに教えたかった。 自分たちに何かあったとしても生きていけるようになってほしかったのだ。 が、一家の頭上に突然影が差した。 同時に幾重にも空気を切る羽ばたきの音。 見上げれば、一斉に飛び立った野鳥の群れだった。忙しない囀りが何か危険を呼びかけあっているようだとまりさが感じたとき、 それはやってきた。 まず、地面がびりびりと震えるような炸裂音。 森の向こうから規則的に響くその地鳴りは、どんどんと近づいてくる。 まりさとれいむは視線を合わせる。 よくわからないけど、ゆっくりできそうもない嫌な音だ。 「ゆっくりしないでかえろうね!」 まりさが呼びかけるなり、一家はわき目も振らず、ひたすらに来た道を戻りだす。 巣穴まで、そう離れていない。 一目散に対比すれば間に合うはず。 そう判断してのことだったが、爆音の主はまりさたちの予想をはるかに超えてゆっくりしていない存在だった。 さっきまで遠くに聞こえていたはずの音が、めきめきという藪を踏みにじる音とともに鮮明になっていく。 弾むように草むらをはねる一家へ、確実に近づく音。 それはもはや森の静寂を切り裂く化物の咆哮に思えた。 「ゆっきゅりっ! ゆっきゅりでぎないいいっ!」 れいむの上に飛び乗って、恐怖に震える赤ちゃんたちの悲鳴。 「ゆっぐりづかまっでねええええ!」 れいむは、赤ちゃんにひきの命を預かって必死だった。 一方、まりさは最後尾に下がる。 もしものときは、自分が時間稼ぎをするために。 まりさは冷静だった。 だから、気がついてしまった。 咆哮を放つ化物が一体ではないことに。 音の主は、少なくみても三つ以上。だから、さっきからまったく咆哮が途絶えてくれない。 それどころか、空気を震わせながら、どんどん近づいてくる。 音の重みが、すでにまりさの真後ろまで迫ってきた。 今にも、まりさの無防備な背中に食いつきそうなほどに。 「ゆっ、ゆっくりしていってね!」 ひきつる声をこらえながらちらりと振り返るまりさ。 まりさは、目前に爆音の正体を見た。 それは、人間と奇妙な機械の群れだった。 機械は二つの前後する車輪が地面に接し、その車輪には覆いかぶさるように金属の管や板が張り付いて、上に座る人間の体を支えていた。 管の一部は後ろへとのびて、先端から黒みがった煙を吐き出しては、ぶるんぶるんと震えながら咆哮を繰り返す。 さらに機械の前方の部分は上へ上へとのび、二股に分かれて人間の手に握られ、一番前に突き出しているのは目を焼くような光を放つ丸い鏡。 それが、人間たちの使うバイクという乗り物であることをまりさたちは知らない。 ただ、まったくもってゆっくりしてないスピードで迫りる何台にも連なる化物と人間の群れに、まりさたちは絶望するだけだった。 「れいむいそいでえええっ! おいづがれるううううう!!!」 「ゆっつぐううう、もうむりいいいいい! ぐるじいいのおお!!」 れいむの涙と鼻水でぐずぐずの顔が、どんどん蒼白になっていく。 一方、バイクはまりさの後方5mまで一息に駆けてくる。 「ごないでぐだざいいい!!!」 まりさの懇願は爆音にかきけされて、まったくもって無駄だった。 先頭を行くバイクはあっという間に追いつき、一瞬だけゆっくりと併走し、次の瞬間には一家の目前に後輪を滑らせて立ちはだかる。 「ゆーっ!!!」 あまりの早業に、ようやくゆっくり一家が反応したとき、すでにバイクの人間たちは次の行動を起こしていた。 ゆっくり一家を中心に、円をかくように輪になって走り出す十台ほどのバイク。 追走につらべてゆっくりとした動きだが、ゆっくり一家にとってそのスピードは目が回る。 だからといって、逃げ出せばバイクの囲いにつかまってぺちゃんこだろう。 進退窮まって、ゆっくり一家は子供を守るように小さく固まるしかなかった。 全員が震えていた。 ゆっくりを見て、ニヤニヤ笑いを張り付かせる人間たちが、たまらなく怖かった。 人間たちは、ゆっくりを囲んだまま無言だった。 誰かが口を開けば崩れてしまいそうな沈黙の均衡。 あかちゃんたちも薄々察したのか、泣き出しもせずぎゅっと両親に体を押し付けて堪える。 だが、震える一家の姿を舐めるように見つめていた男が不意に沈黙を破った。 「ヒャッハー! たまんねえええ!!」 甲高い、愉悦に満ちた声。 その男の姿は人間から見ても異様だった。 筋骨隆々とした体に、直に身につけたトゲの突き出した鋲打ちの皮ベスト。そりあがった頭の中央には見事なモヒカン。 それに続く男たちの風貌も似たり寄ったり。仮面をつけたり、刺青まみれのスキンヘッドだったりとカスタマイズはされている程度の 違いしかなかった。 ゆっくりには男たちが、普通の人間からどれだけ乖離した存在かはわからない。 ただ、暴力的な雰囲気をかもし出す男のたちに、まりさは思わず立ち尽くす。 だから、れいむの動きに気がつかなかった。 「おにーざんだち! あかちゃんは、あかちゃんだけはみのがじでぐだざい!!!」 一歩前に進み出るれいむは、続いて涙にぐちゃぐちゃの顔を地面にこすりつける。 「まりざもどうなっでもいいがら、あかちゃんだけはおねがいしますううう!!!」 れいむだけを犠牲にできなかった。 慌ててれいむに並んで頭をこすりつけると、それが功を奏したのか、もっとも体格のいい男がバイクを降りた。 そのまま、無言で近づいてく男。 「どうするんだい、アニキ?」 「決まっているじゃねえか」 どうやらリーダーらしき男は、地面で頭をつけて震えるゆっくり夫婦の目前で膝をつく。 そして、にいと口の端を歪めて笑った。 「みんな、まとめて可愛がってやりなあっ!!!」 「っ!!! どうじでぞんなごどいうのおおおおおおおおっ!?」 「ヒャッハーっ!!!」 夫婦の絶望に満ちた絶叫は、男たちが次々に上げる歓声に瞬く間にかき消されていく。 「がまんできねえっ、イクぜえええええ!!!」 次々と乗り捨てるようにバイクを飛び降りて、一家の元へ殺到していく男たちの群れ。 その獣のような動きに、まりさたちの体はショックで硬直していた。なんで、ごんなことするの、まりざだちはなにもしてないのに。 その言葉も、憤りと悲しさに胸が塞がれて声にならない。 不意に、まりさをとらえた浮遊感。 自失の間に、まりさは、男たちのリーダーに持ち上げられていた。 「ゆううう! あかちゃあああああん!!」 離れていく子供たちの体温。先ほど震えながらまりさに勇気をくれた子供たちの温もりは、もうまりさの傍にはない。 まりさを包み込むのは、まるで岩を砕いて手の形にしたような男の手の感触だけ。 視界の端ではれいむが、あかちゃんれいむが、あかちゃんまりさが、相次いで男たちの手に奪われていくのが見えた。 だが、男の手首は強靭そのものでまりさは身じろぎすらできない。 「おねがいいいい、たいせつな、たいせつなまりざのあがちゃんなんでずううう!!!」 「わかっているって、念入りにやってやるぜえ!」 「ぞんなごど、だのんでないいいいいゆぐっ!!!」 まりさの絶叫は唐突に遮られた。 まりさを持ち上げていたリーダーが、いきなりまりさをぎゅうと自らの胸と腕で締め上げだしたのだ。 ふっくらさのかけらもない鉄板のような胸部の圧迫に、まりさは悲鳴すら上げられなかった。 「だが、まずはてめえら親たちからだぜ?」 リーダーの言葉は、まりさにとって死刑を意味した。 なんで、こんなことになったんだろう。まりさの頬を涙がこぼれる。人間と関わらず、境界を守ってゆっくり暮らしたかっただけなのに。 だが、まりさの運命を握る男たちは着々と準備を進めていく。 「用意はできましたぜ、アニキぃ!」 男の一人がバイクの荷台から降ろしたのは大きな金だらい。 だが、まりさの目を引いたのは、たらいからほくほくと立ち上る湯気だった。 「あ゛あ゛あ゛あっ、あづいの、あづいのいやあああああ!!!」 「ヒャッハー! はじめるぜえ!!!」 まりさの絶叫は男たちの行動を止めることとはまったく逆方向に突き動かした。 「ゆっ、ゆぐうううううう!?」 男の手で、湯気が立ちのぼるたらいに押し付けられるまりさ。 予想した痛みに、思わずこわばるまりさの体。 が、焼け付く痛みはまりさの体を襲うことはなかった。 予想外に、そこは少し肌がちりちりする程度の熱湯。ただ、お湯はゆっくりの体を水よりも早く溶かす。 きっと、そっちが目的なのだとまりさは瞬時に理解した。 が、まりさの心に芽生えた危機感は、次の男たちの行動で瞬く間に吹き飛ぶ。 「きたねえ帽子は消毒だア!!!」 頭が軽くなる感覚。 間違えようがなかった。まりさにとって、一番大切な帽子が取り上げられる、おぞましい感覚だった。 「がえっ……ごぼっ、ごぼおっ!!!」 もがこうとして、お湯を飲み込んでむせるまりさ。 もう、男たちの手にわたった帽子がどんな運命をたどるか、見届けることもできない。 だが、男たちはそれで終わらせようとはしなかった。 微動だにしないリーダーの男の腕に変わり、たくさんの手がまりさへとのびる。 「ゆびゃあああ!?」 そのうち、一つの手から感じたぬるりとした粘着質の感触に、まりさの悲鳴がほとばしっていた。 なに、なに、まりさのからだ、なにをぬられたのおお!? 不安と嫌悪に戸惑うまりさの疑問は、次の男たちの行動でパニックに変わった。 まりさに添えられた男たちの手が、まりさの肌をちぎるとるように一斉に蠢き、執拗に揉みまくられていた。 「むぎゅっ、むぎゅっ、むぎゅうう! や、やべで、むぎゅうう!!!」 激しく掴みあげられ、時には小刻みに動き、まりさの肌を存分に蹂躙していく。 「ぞっ、ぞこはらめだよおおおっ!!!」 「ん!? まちがったかなア?」 ついにはまりさの一番恥かしいところまで進入する男たちの指。すでに余すとこなく、まりさをぬるぬるとした感触が覆い尽くしていた。 「やべでぐだざいいい!!!」 「俺たちはまだまだギンギンだぜ! YOUはショック!!!」 「な゛に゛を、い゛って゛るのかっ、わ゛か゛んないいいいいっ!!!」 そのおぞましさに、まるで赤ちゃんのように泣き叫ぶまりさ。 帽子を奪われ、体の自由を奪われ、子供も妻も奪われて、まりさは親として振舞うことすらできなくなっていた。 が、その狂乱のときもようやく最後を迎える。 「てめら! そろそろこいつをシメてやりな!」 「待ってたぜええ!! ひゃっはー!!」 男たちの掛け声に合わせて、まりさに次々と叩きつけるようにお湯がかけられはじめる。 まりさはその間髪入れないしぶきに、もう悲鳴も上げられなかった。 全身のぬめぬめがとれていくことだけが、唯一の救いだった。 お湯の襲撃がようやく終わる頃、すでにまりさは全身に力が入らなくなっていた。 ひどく疲れて、眠ってしまいたい。 自分をも持ち上げる男の手から逃れる気力を失い、されるがままに草の上に運ばれる。 まりさの朦朧とした意識は、いつしかまるで初夏の陽だまりのような、ぽかぽかの空気に包まれていた。 なんだろう、このゆっくりできる暖かさは。 うっすらと目を開くまりさの前に、屹立する黒い三角錐。見間違えるはずもなかった。それは、まりさの大切な帽子。 「おぼうしさんっ!」 駆け寄るまりさ。 夢ではないかと目を凝らすが、やはり奪われたはずの帽子に間違いない。 傷やほつれだって一つもない。むしろ、奪われたときよりも綺麗になっているほどだ。 ……どうして、きれいなっているの? いぶかしみながらも、まりさはあわてて帽子を被り、思い出す。 そういえば、人間たちは? まりさの大切なあかちゃんとれいむは? 気がつけば、森は静寂に包まれている。 バイクの轟音も、人間たちの高笑いも、子供たちの悲鳴も聞こえない。 何もかも夢だったのだろうかと、まりさが困惑しきったときだった。 「まりさ!!!」 背後から、不意をつくような大声。 振り向くと、愛しのれいむがいた。 いつもと変わらぬ姿、人間たちに切り刻まれた様子もなく駆け寄る姿に、まりさの心に薄く安堵が広がっていく。 「れいむ、ぶじだったんね! ……ゆ?」 駆け寄ろうとして、まりさは違和感に固まった。 いや、違和感の正体はまりさははっきり認識している。 れいむが、びっくりするぐらいに美しくなっていたことだ。 狩りと洞窟での生活で茶色く汚れ、べたべただった髪の毛が、まるで鴉の濡れた羽のように艶やかになっていた。 りぼんも本来の鮮烈な紅色を取り戻し、髪に崩れることなく結び付けられてまるでセット仕立てのようだった。 また、その肌も土汚れ一つない美白。 いつも顔を合わせていたはずなのに、その輝くほどの美れいむぶりにまりさの心はトキメキを隠せない。 「れ、れいむ、なんでそんなにきれいなの? すごくゆっくりしているよ!?」 「ゆ、ゆふう……ありがとう、まりさ。でも、まりさもすごくゆっくりしているよ!」 れいむが照れ隠しに返した言葉の通りだった。 まりさもまた、その軽くウエーブのかかった蜂蜜の色の髪の毛は輝きを放つほどに毛先までふわふわで、汚れ一つない帽子の黒と 見事な対比となっている。 「ゆううう、恥かしいよれいむう……ゆ! そうだ、あかちゃんたちはっ!?」 ストレートな謝意にテレながら、まりさはようやく一番大切な宝物のことに気づく。 「安心して、まりさ! みんな無事だよ!」 れいむが視線を向けた先、そこにはこんもりとした何かの小山の傍らで仲良く寄り添うあかちゃん二匹。 まん丸の体はまりさたち同様、洗い立てのすっきりした佇まい。 「よがっだあああ、あかちゃんんんっ!」 だが、そんなことよりもなによりも、まりさはあかちゃんの無事が嬉しくてたまらない。 子供たちの傍へ声も上げる暇も惜しんでかけよると、あかちゃんたちは自分たちに差した大きな影に気づき、振り返る。 「おかーさんだっ!」 「おかーさんも、ゆっくりしているね!!」 口々に喜びの声をあげるあかちゃんまりさたち。 しかし、まりさは喜ぶよりも早く、二匹の周囲を取り囲む小山の正体に気づいていた。 「おちびちゃんたち、どうしたの? これは、人間さんのお菓子だよ?」 はるか昔口にしたことがある、とびっきりおいしくてその味がずっと忘れられなかった人間のお菓子。様々な種類のお菓子が、 カラフルな山肌を見せていた。 それが、親ゆっくりほどの体積ほどもうず高く積まれている。 「おかーさん、あのね、このごはん、とってもゆっくりできるんだよ」 お菓子の小山を切り崩しながら食べる子供たちの姿はしあわせそのもの。 だが、まりさは不安をかんじずにはいられなかった。 「人間さんのたべものとったら、怒られちゃうよ! 早くかえしてこようね!」 まりさの焦り気味の声色に、あかちゃんれいむたちはまるで動じなかった。 「大丈夫だよ、人間さんがれいみゅたちにくれたんだよ!」 「そうだよ、すっごくゆっくりできるにんげんさんだったよ!」 「ゆゆっ!?」 あかちゃんれいむとまりさの立て続けの言葉に、まりさは困惑のうめきをもらす。 どういうことなのか、つがいのれいむと子供たちを見わたすまりさ。 だが、すっかりきれいになったれいむたちは満面の笑顔をまりさに返すだけだった。 同時刻、森を抜けて町へと向かうバイク集団があった。 まりさたちを追い回した、ジード軍的な彼らだった。 「ヒャッハー! あいつら、さいこうにぷりちーだったぜええ!!」 疾走するバイクのうち、一台から猛々しい声が上がる。 続けて、ヒャッハー、ヒャッハーと応えるバイクの男たち。 先頭を行くリーダーの男も合わせて叫ぶ。 「ヒャッハー! たまんねえ、ゆっくりは愛でだっ!!」 その言葉に、にやりと精悍な笑いを浮かべる男たち。 男たちは、典型的な「愛でおにーさん」だった。 こうして休日ともなる仲間うちで野生のゆっくりを愛でにいくのが通例の、善良な市民たちである。 「今日は久しぶりに心が高ぶったわ!」 先頭を行くリーダーは呟く。 リーダーの心を満たしているのは、汚れたゆっくり一家を綺麗にしてあげた上に、スキンシップまでとれたことへの充足感。 なぜなら、リーダーの吉村さんは市役所社会福祉部の生活保護課という、心労の溜まる業務をこなしている。 心が疲れると、今日のように無垢なゆっくりとの触れ合いをたまらなく求めてしまうのだ。 しかし、なぜ彼はつれそって十年目の奥さんではなく、ゆっくりに癒しを求めるのか。 吉村さんは近頃、顔を会わせて話すことも少なくなった奥さんのことを思う。 そういえば、昨日うちに届いた実に覚えのない保険の掛け金の請求書はなんだったのだろう。 愛ゆえに人は苦しまねばならぬ。 愛ゆえに人は悲しまねばならぬ。 世紀末は悪魔が微笑む時代なのだ。 「きょうはむしさんのとり方、おしえるよ!」 巣穴に、元気な声がまりさの響く。 色々あったけど、気を取り直して教育を再開しようと呼びかけるまりさ。 「ゆう、それよりもゆっくりしようよ」 「むしさんなんて、いらないよ。おかしさん、たべようね!」 だが、反応は薄い。 赤ちゃんたちは魅入られたように持ち帰ったお菓子の小山に張り付き、まりさの方を振り向こうともしない。 「だめだよ、おチビちゃんたち! むしさんと、くささんを食べようね」 そうしないと、冬ごもりで確実に死んでしまう。 何とか、説得しようと懸命のまりさの笑顔。 しかし、あかちゃんたちはお菓子の甘みに心の髄まで冒されていた。 「そんなの、たべものじゃないよ」 「そんなものを食べさせようとするおかーさんは、ぜんぜんゆっくりしてないね」 「ど、どぼじでぞんなごどいうのおおお!? おがーさんは、ゆっぐりじでるよおおおお!!!」 取り付く島も無い態度と侮蔑に戸惑うまりさ。涙ながらに訴えかけるが、返事はあかちゃんまりさたちの冷笑だった。 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 かつて無垢だったあかちゃんたち。 だが先日、人間たちの蝶よ華よとひたすらに可愛がられてから、あかちゃんたちは変わってしまった。 何より人間は親よりはるかに甘やかしてくれる上に、力持ちであまいものを沢山くれる。 この親とは大違いだと、子供たちの心に焼き付いてしまった。 「れ、れいむ。どうしよう……」 その急変振りに、まりさは溜まらずつがいの名前を呼んで助けを求めていた。 「まりさがなんとかしてね! れいむはでかけてくるよ!」 それなのに、愛しのれいむのそっけない返事を残して巣穴から出て行こうとする。 「また、でかけるのお!? れいむも、手伝ってよおおお!」 まりさの顔が悲しみに歪むが、れいむは返事もせずに巣穴から飛び出していった。 れいむもまた人間と接触して変わってしまった。 人間の手が加えられ、この森でも有数の美れいむとなったれいむは、一変してこの森の人気者となっていた。 「まりさよりもずっと素敵なゆっくりたちが、れいむのことを好きだっていってくれるんだよ!」 昨日の舞いあがったれいむの言葉が、まりさの心に突き刺さる楔となって今もじくじくとまりさを痛めつける。 どうして、こんなことになったんだろう。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 呆然とするまりさの耳朶を打つ、あかちゃんたちの至福の声。 あかちゃんたちはしあわせだという。 れいむも今が最高にたのしくてゆっくりできるという。 人間たちには驚かされたけで、すごく親切だったという。 なのに、なんでまりさはこんなに悲しいの。 まりさが、おかしいの? わからないよ。まりさも、しあわせになりたいよ…… まりさは悄然とした足取りでお菓子の小山に向かう。 「おかーさん、これはまりさの……ゆべっ!」 「ど、どぼじでごんな……ぶぎっ!!」 まとわりつく子供たちを跳ね除け、その色とりどりのお菓子を口に含む。 甘い。 心が蕩けそうに甘い。 もう、このことしか考えられないほどに。 まりさは、傍らであんこを噴出す子供たちを顧みることなく、お菓子の小山に頭をつっこんでいた。 すると、そこは甘さだけの世界。 苦しみも悲しみもない世界。 まりさは幼子のように微笑む。 ああ、しあわせってこんなにゆっくりできて、からっぽなんだね。 まりさは、ゆっくりとしあわせの世界に沈みこむ。 そうして、二度と戻ってくることはなかった。 (終わり) (あとがき) どうも、小山田です。 ふと、脳みそをあまり使わないで何か書いてみたくなりました。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1290.html
ゆっくりゃととある栽培者 ある日のことだ。僕が市場での買い物を終えて、我が家に帰ってきた時だった。 「うっうー♪ ぷっでぃーん♪ぷっでぃーんがたべたいどぉ~♪」 自分の家の庭が騒がしかったので、何事かと思い庭に向かう。しかしそこで見たのは、目を疑うような光景だった。 まず目に飛び込んできたのは、小さいなりに僕が丹精込めて作った家庭菜園が無惨に荒らされていた光景と、 そこら中に散らばった野菜の変わり果てた姿だった。そして、ぐちゃぐちゃに荒らされた畑の上で、体つきゆっくりれみりゃ、 通称ゆっくりゃが僕の育てた野菜を引っこ抜き、傍らに投げ捨てていた。 「おやさいきらい!まじゅいのぽい!!すてちゃ、うー☆」 ゆっくりゃは、舌足らずな言葉で何言か嬉しそうに喋っている。そして僕の目の前で、まだ畑に埋もれている野菜を、 手に持った傘で掘り起こしていた。野菜を掘り起こして見つけるたびに、ゆっくりゃの円らな目がぱっと輝く。その瞬間だけは、 宝物を見つけ出したような子供のような微笑ましい表情に見えただろう。そのあと野菜を嬉しそうに投げ捨てていることに目をつぶれば。 見かけはいくら可愛らしく、子供らしい純真な姿でも、やっていることは全くの間逆な邪悪な行為である。 人様の敷地に勝手に入り込んで、さらに畑や家を荒らしたとなれば立派な犯罪行為であるのに、このゆっくりゃの豆腐よりも 柔らかそうな構造の脳細胞では理解することができないのだろうか。 この光景をしばらく呆然と見ていた僕。ふと我に返った時には、僕の好物であり、家庭菜園の中で特に手塩にかけていた愛しいプティトメィトゥーが ババ臭い服を着た悪魔の手で毟り取られる寸前であった。 やめろッ!その泥と肉汁で穢れた薄汚い手で僕の神聖なプティトメイトゥーに触るんじゃあないッ! 「おい貴様ッ!何をしてるッ!!」 咄嗟に出したにしては自分でも驚くような大声が口をついて出ていた。その声に一瞬硬直するゆっくりゃ。 自分の知らない人間からいきなり怒鳴られ、当然の反応だろう。しかし、次の瞬間にはさっきのふてぶてしい笑顔が復活し、 こっちに向かってもたもたと近づいてきたではないか。 「う~☆おながすいだ~♪ぷっでぃんたべどぅ~☆」 そういって何かを期待するように僕を見つめ始めた。 僕が、奴のあまりの図々しさにしばらく動けないでいると、奴は地団駄を踏み、その下膨れの顔をさらに膨れさせて僕に向かって言った。 「う゛~~!!どっどどぷっでぃんかっでくどぅどぉ~!!ざぐやにいいつけぢゃうどぉ~!!」 やたらと濁音の多いセリフだ。どうにか解読してみると、どうやら僕に『ぷっでぃん』なるものを買って来いと命令しているようだ。 解読に成功した途端、僕の理性がプッツンしそうになった。 僕よりも明らかに年下の風貌のくせして、こいつは僕に命令しようとしているのだ。あろうことか僕の大切な家庭菜園を 再起不能にしたあとで。 どうにかして断裂寸前だった理性を繋ぎ止めると、僕はゆっくりゃに向かって静かに、しかし威厳を込めた声で言い放った。 「ここはおまえのような饅頭が入ってきていい場所じゃあないんだ。とっとと僕の目の届かない所へ消えうせてくれ。」 しかしゆっくりゃは僕の最後通告すら無視した。 「う゛-!!いいからかっでぐるどぉ~!がってごないどた~べちゃ~うぞ~!」 ……ほう、そういうことを言うのかこのクサレ肉まんは。そういう態度を取るのかこのド低脳は。 いいだろう、お前がそこまでの決意を持っているなら僕も決意をみせてやる。『絶対にタダでは済まさん』という決意をだッ! 「わかった……『ぷっでぃん』が欲しいんだな…?家の中で待っていろ…。」 「うっう~☆ぷっでぃ~ん♪」 そういってゆっくりゃはもたもたと僕の家の戸口に向かう。その隙に、急いで壊滅寸前の家庭菜園に近づく。さっきから気が気では無かったのだ。 あの時、まだ奴は手を付けていなかったハズ………やった!無事だッ! 思わず顔を綻ばせ、足取り軽く玄関に向かう僕の腕の中には、大切なプティトメイトゥーちゃん達の姿があった。 家庭菜園は再起不能になっちゃったけど、この子達だけでも助かったのは不幸中の幸いだったな! そんなことを思いながら玄関に戻ると、ゆっくりゃが泣きながら、玄関の引き戸を手前に引っ張っていた。 どうやら引き戸の開け方がわかっていないらしい。よくもまぁ今まで生きてこられたものだ。僕は思わず溜息を漏らした。 家の中に入ると、ゆっくりゃは辺りに置いてある物に興味津々の様子で、なかなか前に進もうとしない。 僕はそんなゆっくりゃの尻を突っついて急かし、奥に向かわせた。途中何かゆっくりゃが講義するような目で僕を睨んでいた気がしたが、 無視することにした。 そんな幼児体系に色気も恥じらいもあったものではないだろう。恋や懸想をするならもっと大人びた、優しいカンジの女性がいいと思います。守ってあげたいと思う…。 「う~?ぷっでぃんどこぉ~?」 しばし物思いに耽っていた僕の心は、耳障りなゆっくりゃの言葉で現実に引き戻された。いけないいけない、僕としたことが…、剣呑剣呑。 ゆっくりゃはというと、部屋の中に勝手に入って辺りをきょろきょろと見回している。一人暮らしをしているにしては、 僕の部屋はかなり片付いている方だと思う。食料やら何やら大事なものはそこらへんに置いたりせず、きちんと整理しているからだ。 そんな僕の部屋を見て、ゆっくりゃはあまり面白くなさそうな顔をしていた。 確かにゆっくり達からしてみれば、(ゆっくり達には)遊ぶものも食べるものも何も無いこの部屋は、さぞかしゆっくりできない、 つまらない場所だろう。もちろん、そう易々と侵入させるつもりもないが。 僕はゆっくりゃをその部屋に放置すると、急いで腕の中のプティトメイトゥー達を、野菜を入れている籠の中に非難させた。 「ほら、危ないからそこに隠れていてね。怖い怪獣に食べられちゃうからね。じっとしているんだよ?」 僕は籠から離れながら、プティトメイトゥーちゃん達に話し掛ける。プティトメイトゥーはいい。他人にも親にも理解されない僕の孤独と心を癒してくれる、大切な友人兼、話し相手だ。 もちろんプティトメイトゥーちゃん達は話すことはできない。僕が一方的に喋るだけだ。でも、そんなことは関係ない。 言葉がなくったって、気持ちはきっと通じるハズさ。だって、芽を出してこの世に生を受ける前からずっと僕が優しい言葉をかけつづけてあげていたんだから。いい子になってね、美味しくなってねって。きっと彼らも僕に食べられることを望んでいるはずさ。 そうに決まっている。あぁ、早く食べてあげたいなぁ……。グフッ、グフフフフフ……。 再び自分の世界に軽くトリップしつつ、ゆっくりゃの所へと戻る。奴は部屋の中央にペタリと座り込んで何やらみょんな歌を歌っていた。 「うっううー♪うーうー、うっうーうあうあ♪」 まったく、自分の境遇も知らないで、暢気なものだな。 僕は奴に多少の哀れみを感じながら、テーブルと椅子を持ってきて適当に座らせ、部屋の中を暴れ回られないように足を縛って固定すると、台所に向かった。 僕の可愛い子供達が助かって機嫌がいいとはいえ、僕は制裁をやめるつもりは無かった。 このゆっくりゃには、食べ物の大切さを教え込んでやらなければならない。二度と食べ物を粗末にしたりしないように。 プティトメイトゥーを食べずに捨てるなどという間違いを犯さないために。 さぁ、お仕置きの時間だよ、ベイビー。 とは言っても、僕は殴ったり体を切り裂いたりするような残虐な真似はしない。そんなことをしても、奴らが覚えるのは『痛み』と『恐怖』だけだ。肝心な事については、ほとんど理解してはいないだろう。そうならないために、僕は彼らに自発的に覚えさせるのだ。 食べ物を嗤った者は、食べ物に泣くということを…。 「ほら、お待ちかねの『ぷっでぃん』ができたぞ」 「うっう~!ぷっでぃ~~ん♪♪」 『ぷっでぃん』が何かわからないので適当なことを言いつつ、ゆっくりゃの前に皿を出す。 「うっう……う~?」 出された物を見て首をかしげるゆっくりゃ。それもそのはず、目の前の皿に乗ったコレは、皮の剥かれたただのタマネギであり、 ゆっくりゃが所望した『ぷっでぃん』とはまるで違うものだからだ。 「う゛う゛~~!!ぷっでぃんたべどぅの!!ぷっでぃんがいいの゛ぉ~~!!」 だだをこねて泣き叫ぶゆっくりゃ。ここで僕に一つ悪戯心が湧いた。 「それは見た目は変だけど、食べると『ぷっでぃん』の味がするんだよ」 それを聞いたゆっくりゃの泣き顔が一瞬消える。だがしばらくして、思い出したように再び喚き出した。 「ぢがうも゛ん゛!!ぷっでぃんはごんなにぐさぐな゛いも゛ん゛!!あま~~ぐでぷるっどじでるんだも゛~ん゛!!!」 さすがにコレはごまかされないか。でも僕は見たぞ。一瞬考え込んで嘘の言葉に流されそうになったのを…。 やはり所詮はゆっくりブレイン、たかがしれている。 「う゛~!!ごんなのいらにゃい!!ぽい!ぽいするもん!!」 そういってゆっくりゃは皮を剥いたタマネギを『素手で掴んで』投げ捨てた。ふん、やはり予想通りの行動に出たな。 後でお前は後悔することになる。今の自分のした行動を…。 僕はテーブルに腰掛け、皮を剥く際に手についた玉葱の汁をタオルでふき取りながら、ゆっくりゃの行動を観察することにした。 その後、ゆっくりゃはぷでぃん、ぷでぃんとだだをこねていたが、しばらくして目をしばしばと瞬かせ始めた。 玉葱の強烈な匂いの成分が、ゆっくりゃの目にちくちくと刺激を与えているらしい。やがて本格的に痛み出したのか、 ゆっくりゃは大声で泣き叫びはじめた。 「う゛あ゛ーーーー!!めぎゃいだいい゛い゛い゛い゛い゛!!ざぐや゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!」 滝のような涙を流そうが、大声で助けを乞おうが、一度目にしみた玉葱の痛みはそう簡単に消え去らない。 そのうちゆっくりゃは、目に付いた玉葱の成分を何とか拭おうと手で目元を擦った。 あろうことか、大量に玉葱の汁が付着したその手で。 「びゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 当然の悲鳴。目を蝕む激痛に体を仰け反らせるゆっくりゃ。体を激しく動かして暴れるものの、固定された椅子からは逃れられない。 玉葱を侮ってうっかり素手で触ったのが運の尽きだったな。お前が今まで捨ててきた野菜の怖さを、玉葱を通してじっくりと思い知るがいい。 「ぎゃいいいい!!う゛あ゛あ゛あ゛~~!!」 もうすでに激痛でまともに思考ができないのであろうか、ゆっくりゃは激痛が走る目を無意識的に手で擦り、 「ぎゃお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 爆発したように泣き叫ぶ。今ここに地獄のゆっくりゃループが完成した。 「しょうがないな、ほら、これで顔を拭けばいい。」 そう言ってゆっくりゃに持っていたタオルを投げ渡す。そう、さっき僕が持っていたあのタオルだ。 「う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う」 タオルを渡されたゆっくりゃは、タオルに顔を埋めると頭だけを左右に振って顔を拭い、 「……………!………………!!!!」 そして仰け反る。もはや痛すぎて声も出ないらしい。 さて、一体いつそのループから抜け出せるかな?おっと、もうこんな時間か。プティトメイトゥーちゃんたちの話し相手をしてやらなきゃな。 僕は悶え苦しんでいるゆっくりゃを見て悶え喜びながら、その部屋を後にした。 それから僕は、時間を忘れてプティトメイトゥーちゃん達と最後になるであろう会話を楽しんでいた。 「今までよく頑張って育ってくれたね。おにいさんは嬉しいよ…。みんなとても美味しそうだね!食べるのが楽しみさ!」 おぉっと、すっかりあの部屋に放置していたゆっくりゃのことを忘れていた!楽しい時間はすぐに過ぎ去るということは 本当だったんだな…。 「それじゃみんな、あいつがゆっくり反省しているのを見ながら締めくくろうか!」 プティトメイトゥーちゃん達を入れた籠を小脇に抱え、ゆっくりゃのいる部屋に戻る僕。そこで部屋に足を踏み入れた僕は、 ゆっくりゃが愉快な状態、もとい悲惨な状態になっているのを見て呆然としてしまった。 「う゛う゛う゛う゛う゛!!」 ゆっくりゃは両手をピンとまっすぐ下に伸ばしたまま、プルプルしながら真後ろにエビ反りになるというなんだかすごい姿勢で硬直していた。 硬く瞑った目と、必死に食いしばった口元、そして全身を緊張させたその姿からは、目を襲う激しい痛みに耐えている様子がありありと見て取れた。 手を下に伸ばしているのは、なるべく腕を顔から遠い位置に固定し、玉葱の汁のついた手で無闇に目を触らないようにするという、ゆっくりゃなりの知恵だろうか。 見た瞬間、思わず噴出してしまった。 しかし、自分に困難な姿勢を強いて何かにひたすら耐えているという光景は、何処かの修行僧を彷彿とさせるな。 そう考えると、迂闊に邪魔はできなくなってきたので、しばらく放置する。 「う゛う゛う゛…!ごべん゛だざい゛…ゆ゛る゛ぢで…!」 どうやら玉葱責めは思いのほか効果を発揮したらしい。ゆっくりゃは真っ赤に泣きはらした目で僕を見て、嘆願してきた。 これほどの目に合わされたゆっくりゃは、もう二度と野菜を捨てたりしなくなるだろう。 僕の制裁はしっかりとゆっくりゃの心に刻まれたのだ。僕は自分の仕事に満足する。 しばらく見ていると、さすがに長時間のこの姿勢はかわいそうだと思い始めたので、椅子から拘束を外してやることにした。 急に固定が外れ、無理な体勢が崩れたためゆっくりゃは頭から床に落ちた。 「ぶぎゅっ」 カエルの潰れたような声でゆっくりゃがうめく。僕は床に這いつくばったゆっくりゃに問いかけた。 「もう食べ物を粗末に扱ったり捨てたりしないか!?」 「…もうじまぜん…」 「そうか…もし再び人様の畑を荒らすような真似をしたら、また罰を与えるぞ…こんな風な罰をな…。」 僕は今度こそ清潔なタオルで顔を拭いてやり、外に開放してやった。 別に殺すのが目的ではないのだ。しっかりと野菜に対する敬意を覚えてくれればそれで何も言うことはない。 地獄の責め苦から開放されたゆっくりゃは目が真っ赤な上に虚ろというなんだかすごい状態だったが、家の壁にぶつかったり 茂みに突っ込んだりしながらなんとか帰っていった。 ようやく、僕の家に静寂が訪れた。籠の中から一つプティトメイトゥーを摘み、口元に運ぶ。悶えているゆっくりゃを横目に、 プティトメイトゥーを食べるということは果たせなかったが、別に今となってはどうでもいい。 プティトメィトゥーが守られ、ちゃんとこうして僕の口の中にいる、それでいいじゃあないか。そういえば…アイツの言ってた『ぷっでぃん』が結局なんだったかわからなかったなぁ…。 そんなことをつらつらと考えつつ、僕は舌の上でプティトメイトゥーを転がしながら午後の優雅なひと時を過ごすのだった…。 「レロレロレロレロレロ、 レロレロレロレロレロ…」 END
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1065.html
昔々、ある所にお婆さんゆっくりれいむとお婆さんゆっくりまりさが住んでいました。 お婆さんゆっくりれいむは山へエサ取りに、お婆さんゆっくりまりさは川へ帽子の洗濯に行きました。 お婆さんゆっくりまりさが帽子を洗っていると、川上の方から大きな桃が「ゆっくらこ、ゆっくらこ」と流れてきました。 「おおきいももだ!!もってかえればゆっくりたべられるね!!」 そう叫ぶとお婆さんゆっくりまりさはどうにかこうにか桃を岸に上げ、必死こいて家まで持って帰りました。 帽子は桃の代わりに川に流されました。 「ただいまれいむ!!ゆっくりしていってね!!!」 「おかえりまりさ!!ゆっくりしていっt……ゆゆ!ももだあ!!おっきなももだ!!!」 「おみやげだよ!!ゆっくりたべようね!!!」 「はんぶんこしようね!!!ゆっくりわけるよ!!!」 お婆さんゆっくりれいむはそう叫ぶと、目を閉じて精神を集中し始めました。 数分後、カッ!という擬音がぴったりな勢いで目を開けると、 「岩山!両斬波ぁ!!」 婆れいむがいかつい成人男性のような声でそう叫び頭につけたリボンを振り回すと、桃は綺麗に真っ二つに分かれていました。 「ゆっくりわかれたよ!!!」 「ゆっくりわけられたね!!」 「おい、やめろ馬鹿。このSSは早くも終了ですね」 早速桃に噛り付こうとしていた二匹でしたが、謎の声が聞こえると同時に固まってしまいました。 よく見ると、割れた桃の中にはゆっくりが入っているではありませんか。 「お前ら勝手に食われそうになってる奴の気持ち考えたことありますか?」 そんな事を呟きながら桃の中から這い出てくるゆっくり。頭に小さな桃を二つ付けているのが特徴的です。 「ゆゆ!あなただあれ!?ここはれいむとまりさのおうちだよ!!!」 「そのももはまりさとれいむのなんだよ!!!かえして!!はやくかえしてね!!!」 別に桃を横取りされた訳ではないのですが、ゆっくりにはそんな事は関係ないようです。 「なんだおまえら?ズタズタに引き裂いてやってもいいんだぞ。 あまり調子こくとリアルで痛い目を見て工場で蒸かし小豆を食べる事になる」 「ゆ、ゆっくりしていってね!!!ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりやめてね!!!ももをわったのはれいむだよ!!!」 ゆっくりにしては珍しい流暢(?)な言葉に妙な迫力を感じたのか、二匹の先程までの勢いが消えて怯え始めました。 このまま名無しでは不便なので、桃から出てきたゆっくりは仮に『ゆっくりてんこ』と呼ぶ事にします。 そのゆっくりてんこは二匹をじろじろと睨み付けた後、何処か満足気に自分が入っていた桃を食べ始めました。 このままでは大事なご飯が食べられてしまいます!焦った二匹は勇気を出してゆっくりてんこに体当たりを仕掛けました。 「ゆっくりたべないでね!!それはれいむとまりさのごはんだから!!」 「ゆっくりできないならでていってね!!ここはまりさとれいむのおうちなんだから!!」 殴られながらもゆっくりてんこは冷静に、しかし怒りを隠せない様子で 「お前らは一級饅頭のわたしの足元にも及ばない貧弱一般饅頭。 その一般饅頭どもが一級饅頭のわたしに対してナメタ言葉を使うことでわたしの怒りが有頂天になった。この怒りはしばらくおさまる事を知らない」 そう宣言しました。これがアニメなら間違いなく名シーンとして人気が出るのは確定的に明らかです。 しかし殴られた事より『ナメタ言葉』を使われた事に怒る辺り、このゆっくりてんこは中々プライドが高いようです。 その漲る自信と正体不明の迫力に押されたのか、二匹は先程のように萎縮して部屋の隅の方へ移動しました。 再び桃を食べ始めるゆっくりてんこ。こうして、三匹の謎の共同生活がスタートしたのです。 それからというもの、婆れいむと婆まりさはいちいち横柄なゆっくりてんこに事あるごとに喧嘩を仕掛けますが、 その度にあの妙に迫力のある言葉遣いで黙らされてしまうのでした。 とは言っても別にゆっくりてんこは二匹に直接危害を加える事はありませんし、自分でエサを取らずに怠けるなんて事もありません。 自分で取ってきたエサは全て自分だけで食べ、時々二匹のエサを横取りする事はありましたが概ね平和に暮らしていたのでした。 そんな日々が数週間も続いた頃、近所に住むゆっくりぱちゅりーが傷だらけになって三匹の家に飛び込んできました。 「ゆゆぅ!どうしたのぱちゅりー!!ゆっくりできる!!?」 「ヘァ゛ッ……へァ゛ッ……れ゛、れ゛み゛り゛ゃがあ゛あ゛ぁ゛ぁ゛……」 「れ、れみりゃ!!?れみりゃはゆっくりできないよ!!!ゆっくりたべられちゃうよ!!!」 「む゛……む゛ぎゅう゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ん゛ん゛……」 ゆっくりぱちゅりーは深く深く息を吐くと、そのまま二度と動く事はありませんでした。 婆れいむと婆まりさは焦った様子で相談します。 「どどど、どうしようまりさ!!れみりゃがきたらたたた、たべられちゃうよぉ!!!」 「にに、にげようよれいむ!!てんこをおいていけばれみりゃからおそわれたりもしないよ!!!」 サラっと酷い事を提案する婆まりさ。それに対してゆっくりてんこは特に何も言いません。が、 「これやったの絶対れみりゃだろ……汚いなさすがれみりゃ汚い」 今言われたばかりの事なのですが、それは気にしてはいけません。ゆっくりてんこ独特の言い回しなのです。 要するに、このゆっくりてんこはれみりゃに対して怒りを抱いているのです。 「そそそそうだけど、どうするの!!!れみりゃはゆっくりたべちゃうんだよ!!れいむたちもたべられちゃうんだよ!!!」 「わたしパンチングマシンで100とか普通に出すし」 「ゆゆ!そんなにだせるの!!だったられみりゃをやっつけられるね!!ゆっくりいってきてね!!!」 どうやらゆっくりてんこがれみりゃをやっつけに行く事に決まったようです。 一体いつパンチングマシン等やったのかは謎です。突っ込んではいけません。 「これはおみやげだよ!!!ゆっくりがんばってね!!!」 「ゆっくりいってらっしゃい!!!」 「⑨個でいい」 ゆっくりてんこは虫やら雑草やらを丸めて作ったお団子を持たされ、家を出発しました。 何処にれみりゃが居るのか知っているのかはともかく頼もしい感じです。 適当に歩いていると、ゆっくりちぇんに会いました。 「にゃにゃ!わかるわかるよー」 「それほどでもない」 これらのやり取りを分かりやすく説明すると、 『ああ、貴女はあの恐ろしいゆっくりれみりゃを退治しに行こうとする勇敢なお方ですね』 『いやいやそんな勇敢だなんて事はありませんよ。単に両親に恩返ししたいだけです』 という事です。ゆっくり語は奥が深過ぎですね。 「わかりたいよわかりたいよー」 「同じ時代を生きただけのことはあるなー」 どうやら虫団子をゆっくりちぇんにあげる代わりに、ゆっくりちぇんがれみりゃ退治を手伝う事になったようです。 もうはっきり言ってこんな会話やってられないのでちょっと割愛します。 こんな調子でゆっくりてんこは仲間を増やしていきました。 どこからともなくモフモフしたゆっくりらんしゃまを呼び出すゆっくりちぇん。 「うんうんわかるわかるよー」 素早さと体の何処かに隠し持っているドスが武器のゆっくりみょん。 「ちーんぽっ!」 ゆっくり随一の凶暴性と戦闘力を誇るゆっくりフラン。 「ゆっくりしね!!!」 こんな頼もしい仲間と共に、ゆっくりてんこはれみりゃヶ島に渡りました。 れみりゃヶ島は紅い霧に包まれており、ありとあらゆるものが紅く染まった不気味な島です。 ゆっくりフランは妙に生き生きとしていますが、他の二匹の仲間は緊張しているようです。 ちなみにゆっくりてんこはそんな些細な事は全く気にならないようです。 「うー!うー!」 島のどこからかそんな声が聞こえてきます。この島にゆっくりれみりゃがいるのは間違いありません。 ZUNZUN島の奥へと進んでいくと、居ました。ゆっくりれみりゃです。それも凄い数です。数十匹は居ます。 ゆっくりフラン以外の三匹はいっせーのせ、で襲い掛かろうとしますが、ゆっくりフランは構わず突っ込みました。 「ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!」 「う゛あ゛ー!う゛あ゛ー!!」 三匹はポカンとしています。無理もありません。 あの恐ろしいゆっくりれみりゃの群れが、たった一匹のゆっくりフランによって蹂躙されているのですから。 見る見るうちにゆっくりれみりゃはおぞましい悲鳴と共にその数を減らしていきます。もう他の三匹は帰ってもいいんじゃないでしょうか。 いや、そんな事はありません。勇敢なゆっくりれみりゃが三匹、ゆっくりフランの背後から一斉に飛び掛りました。 「ゆっくりしねぇ!!ゆっくりしねぇぇぇ!!」 「たべちゃうぞー!!」「ぎゃーおー!!」「うー!!うああー!!」 それに乗じて残りのゆっくりれみりゃが一斉にゆっくりフランに飛び掛ります。 ボケっとしていた三匹はゆっくりフランを助けに突撃します。 「お前らどうやらボコボコにされたいらしいなさっきも言ったがわたしはリアル天人属性だから手加減できないし最悪の場合永遠亭に行くことになる」 「わかって!わかってよぉー!!」 「ちちちちーんぽっぽ!!」 ゆっくりフランに気を取られて気付かなかったのか、ゆっくりれみりゃ達は乱入してきた三匹によって激しく混乱に陥りました。 体勢を立て直したゆっくりフランは再びその猛威を振るいます。ゆっくりれみりゃ虐殺ショー、ラウンド2です。 数分間この世の地獄が再現された後、ゆっくりれみりゃの群れは全滅しました。ほぼゆっくりフランの一人勝ちです。 ちなみにスコアはゆっくりフランが三十二匹、ゆっくりちぇんとゆっくりみょんが協力して二匹、ゆっくりてんこが無しです。 これだとゆっくりてんこは働いてないじゃないか、と思われるかも知れませんがそんな事はありません。 ゆっくりてんこは四六時中あの自信ありげで大胆な発言を繰り返す事でゆっくりれみりゃの恐怖と混乱を煽っていたのです。 何はともあれゆっくりれみりゃは退治され、島を多う霧も晴れました。もうゆっくり達が襲われる事も無いでしょう。 勇者なゆっくり一行は一人一匹ずつ、半死半生で生き残っているゆっくりれみりゃを持ってそれぞれの家路へつきました。 家を出て一週間後、ゆっくりれみりゃを退治したゆっくりてんこが家に帰ってきました。 あの婆ゆっくりれいむと婆ゆっくりまりさが出迎えてくれるかと思っていたゆっくりてんこでしたが、そんな事はありませんでした。 二匹は、家の中で頭から蔓を伸ばして黒ずみ朽ち果てていました。 蔓には、まだ目覚めぬ小さな小さなゆっくり達が実っています。 ゆっくりてんこがとりあえず持ち帰ったゆっくりれみりゃ(上半身しか無い)を床に放り投げると、ちびゆっくり達が目を覚ましました。 「ゆっくりちていってね!!」「おねえちゃんだあれ!!?」「ゆっくいちようね!!」 そんな風に思い思いの事を元気よく叫ぶちびゆっくり達。そんな様子を眺めていたゆっくりてんこは突然、 「想像を絶する悲しみがゆっくりてんこを襲った!お前らにゆっくりてんこの悲しみの何がわかるってんだよ!!」 生まれて初めて、涙を流しながら大声を張り上げました。 驚いて黙るちびゆっくり達。ただただ涙を流し続けるゆっくりてんこ。 その小さな家の中に、いつまでもいつまでもゆっくりてんこの啜り泣きが木霊していました。 Buront END ゆっくりてんこがゆっくりれみりゃ退治から帰って三日が経ちました。 ちびゆっくり達は見る見る大きく育っていき、子育てに励むゆっくりてんこは毎日忙しそうです。 そんな賑やか家族の住む家に三人組の人間が近付いていました。 三人とも薄い水色の作業服を着ており、それぞれ手には籠と細長く、先端に輪の付いた棒を持っています。 彼らはゆっくりてんこら一家の喧騒を聞きながら、気付かれないようゆっくりと家の前まで近付いていきます。 その数週間後、人間達の里で商売する大手和菓子屋が「ゆっくり天子饅頭」なる新製品を発売しました。 桃色で桃風味のこしあんと皮が新鮮だとして、人々に大層喜ばれたそうです。 めでたしめでたし