約 3,642,949 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2390.html
ゆっくり罠地獄その1 畑を荒らすゆっくりどもの対策には無視できないほどの労力と金が必要だった。 村人総出で群れを潰すのが手っ取り早いのだが残念なことにこの村のほとんどは老人だった。 年寄りがゆっくり狩りなどは危険すぎた。 ある農家では紫外線耐性をつけたれみりゃを加工場から買い、逃げ出さないように畑全体をカバーできる程度の紐を くくりつけ用心棒にした。 罠を仕掛けた当初は効果てきめんだった。 だが数日もすると悪知恵を働かせたまりさが紐のレンジ外から石を吹き付けて殺してしまった。 高い授業料となった。 ある農家では潰したまりさやれいむの帽子やリボンを柵にぶらさげて寄せ付けないようにした。 これも当初はその死臭を恐れたゆっくりどもを寄せ付けなかったが、これまた数日もすると風雨に晒されたせいか 臭いが薄れてしまったようで何の効果も発揮しなくなった。 つぶれたゆっくりは掃いて捨てるほどいるので見つける度に補充はしたのだが、どうも夜中にゆっくりれみりゃが その臭いに寄せ付けられて持っていってしまうらしい。これでは意味が無い。 ある農家では柵の手前にわざと野菜を置きその中に大量の唐辛子を混ぜ込んでおいた。 初回にやってきたゆっくりどもはうまいこと食いつき、その辛さにもんどりうって餡子を吐き出し死んだが、 ゆっくりどもは無数にいる。その都度トラップ野菜を仕掛けるのでは経済的によろしくない。 更には唐辛子入り野菜を川まで運び洗って食うゆっくりも出現しだした。どうやらゆっくりぱちゅりーの入れ知恵らしい。 ある農家では落とし穴を掘り毒液を満たしておいた。 このトラップにひっかかるのはいいのだが、狂ったように暴れるゆっくりがその勢いで穴を飛び出し畑の中で派手に踊るらしく、 野菜にも毒液が付着しとても食えたものじゃない。 そんなこんなで男に白羽の矢が立ったというわけだ。 村の中では一番若く、昔とった杵柄で工作や土木工事が得意だからというのも理由だろう。 罠なんてこれまで一度も作ったことがないがやるしかない。 単純なトラップではすぐに効果が無いことはこれまでの経験で分かっていたので、どうしたものかとかなり悩んだ。 それほど労力もかからず、なおかつ効果的で、それでいてゆっくりに大していつまでも有効。 そんなトラップあるのだろうか? 夜遅くまで図面とにらめっこした結果、一つの作品、といってもいいだろう。 対ゆっくり用罠1号が完成した。 仕組みはこうだ。 50cm x 100cmぐらいの長方形の穴を掘り、そこをゆっくりがやってくる側の唯一の柵の切れ目に仕掛けておく。 深さは70cm程度だ。次に奥行き100cmを50cmずつ2エリアに区切るように立板を差し込む。 その2エリアにはそれぞれ5cm間隔で先を尖らせておいた木の棒を突き刺しておく。 ふたは2枚にし、それぞれ50cmずつをカバーするように上からかぶせる。手前のふたはゆっくりの重みで外れる程度のものだ。 そして奥のふたは手前のふたより重さに耐えられるようにしておく。 つまり落とし穴をダブルで設置することになる。一発目のトラップにひっかかりつがいのうち一匹は死ぬだろう。 そこで恐れをなして戻ればいいのだが、おそらく残った親がトラップが無いことを確認するために石か何かを奥に投げて 確認するだろう。だが2枚目はそれくらいじゃ外れない。石を投げても穴は無いと勘違いする、 そして立板があるから奥の杭も見えない。もうトラップは無いと勘違いして引き続き落とし穴をジャンプで越えて進入を試みる だが助走をつけて飛び込んだ親の重みには耐えられない。 そのまま飛び跳ねて2匹目もドカンだ。 よしいける!男は一人ほくそ笑んだ。 早速夜が明けてすぐ作業を開始した。土木工事の経験がある男にとっては難なく完成させることができた。 ご丁寧にトラップの横の柵には虐待され餡子が飛び出したまりさとれいむの絵を書いた看板を設置しておいた。 わざとらしい方がかえって奴らの注意をひくだろう。 そして翌日の早朝 男は早く起きだし納屋の中に隠れ窓の隙間から様子を伺っていた。しかけた罠のすぐ横に建ててあるので 罠もはっきりと確認できる。 そろそろゆっくりどもが野菜を荒らしに来る時間だ。 「そろーり、そろーり」 程なくして男の予想通り間抜けな声が聞こえてきた。馬鹿共ご一行様の到着だ。 親まりさと親れいむ、小ゆっくりが二匹。 「おちびちゃんたち、おとをたてないでね。これからおいしいおやさいたくさんたべられるからね!」 おまえが一番うるさいだろうと思ったが男はじっと見つめていた。 「ゆっ!おかーちゃん!おとーちゃん!あぞごにごわいのがあるよぉぉぉぉっ!」 ズタボロになったまりさとれいむの絵を見つけてブルブルと震える小れいむと小まりさ。効果があったか? 「おちびちゃんたち!だいじょうぶだよ!あれはばかなにんげんがかいたえだよ!だまされちゃいけないよ!」 「ゆぅ・・?だいじょうぶなの?いたくないの?」 まだ少し涙を流しながら小刻みに震える小ゆっくり達。 「まかせておくんだよ!こんなのこわくもなんともないよ!」 そう言って看板にドンドンと体当たりをする親まりさ。そのまりさを見てうっとりする親れいむ。 おいおい、静かにしろと言い聞かせておいてどんだけお祭り騒ぎだ。 看板に無意味な攻撃をして満足したのか親まりさは入り口の方を向き直り直進する。よし、いいぞ。 ズボッ! 「ぎゃぶばびゅっ!!!」 親れいむと小れいむの前でまりさが消え気色悪い声が聞こえてきた。 突然のことに目を見開き硬直する親まりさと小ゆっくり達。 「ぐげぇ・・・・ぐぞおおおお!!・・・・ぢぐじょう・・・にんげんべ・・・・!!」 納屋の窓から穴を覗き込むと体のあちこちから杭を突き出しあんこをゲロゲロと漏らしている親まりさが見えた。 (ヒット!) 男は心の中で叫んだ。 「ゆがあああ??!!!ばでぃさぁぁあああああ?!どぼぢでええええ!!!???」 穴の中を見て半狂乱になる親れいむ。うっしっし。 「でいぶ・・・おぢびぢゃんだぢ・・・・だのんだよ・・・ばでぃざはもう・・・びゅぶぶぶっぶっ」 事切れたようだ。 「ウがああああああああああああ!!!!!!!!!ばでぃざ!!!!!」 ぬらぬらとした体液を目や口から垂れ流して親れいむが絶叫する。小ゆっくり達は白目をむいて気絶している。 嗚呼美しき夫婦愛家族愛哉。 「ゆぐぐぐぐぐ!ばでぃざのしはむだにじないよ!!!」 目を吊り上げて怒りを露にする親れいむ。おお、こわいこわい。 親れいむは目から汚い汁を垂らしながらも野菜をゲットする気満々だ。そうこうなくちゃな。 数歩後ろに下がった親れいむ。おや、怒りのあまり罠を確認しようとはしないのだろうか。 まぁ別にそれは構わないのだが。 「おがあぢゃん!もうがえろうよぉ!!!!」 泣き叫ぶ小ゆっくり達。 「あんだだぢはだまっでなざい!!!ごごでひぎざがっだらばでぃさがなぐよ!!!ばでぃざのぶんまで やざいをたべるんだよ!!!」 親れいむに鬼の形相でにらまれた小ゆっくり達はビクッとして黙る。 そして1mほど後ろに下がり既に開いている第一の罠をジャンプして飛び越す。 しまった!ゆっくりのジャンプの距離を間違えたか?! 男がそう思うくらい親まりさは必死になって飛び跳ねていた。 ガシッ 第二の罠を超えたあたりに着地成功・・・ッ・・・・か? いや違う、ふたと地面の丁度境目あたりに親れいむは着地した。 「おかあちゃんかんばれ!がんばれ!」 必死に応援する小ゆっくり達 れいむは思っていた。 (あいするまりさのしをむだにしてはいけない。のこされたおちびちゃんのためにもやさいをてにいれるひつようがあるんだ。 おちびちゃんたち、みてなさい、おちびちゃんたちもこうやって・・・・えっ?) ガタン 第二のふたが着地の衝撃で内側に開く。 「ゆ"っ・・・・?!ゆがっっ?!!」 れいむの体はゆっくりらしくとてもとてもゆっくりと後ろに傾いていた。 「ゆぐべらっ!ゆびびゅぶぶぶべらっ!!!!」 鋭利な杭の先がれいむを突き刺す。目を貫通していた杭もあった。一瞬たくさんの針で頭の中身を刺されたような 痛みがれいむに走る。何かを喋ろうとすると口から餡子が噴出してきた。 もはやこの親れいむは長くは無いだろう。 「ゆがっ・・・・がっ・・・・」 その様子を目の前にし、小れいむは大量の餡子を吐いて皮だけになって動かなくなっていた。 小まりさは白目のまま硬直していた。 「イェーイ!!」 男は納屋の戸をバンと開けると浮かれた声を上げながら飛び出してきた。 その勢いはBGMにサンバの調べが聞こえてくる気がするぐらいに。 「おちびちゃんはこの畑100匹目のゆっくりでーす!おめでとうございまーす!嘘だけど!」 男は嬉しさのあまり馬鹿丸出しの声をあげ小躍りしている。 小まりさはまだ白目をむいて小刻みに痙攣したままだ。 「98匹目と99匹目のおとうさんおかあさんは残念でしたー!残念賞をあげまーす!」 男はそう言いジッパーを下ろすと串刺しになっている親まりさと親れいむに じょぼじょぼと放尿を始めた。 まだ生きている親れいむは男の放尿を受けて 「ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・」と唸っている。口にも杭が刺さっておりまともに会話はもうできない。 目からはぬらぬらとした液体が溢れていた。そして動かなくなった。 穴の下に向かって放出されていた尿が徐々に角度を上げて行き当たりに飛び散るようになる。 穴のふちにいたため男の放尿をまともにくらった小まりさは気絶から覚醒し「ぐぎゃあああああ!!!」 と叫びながら森の方へと逃げていった。 快感に包まれていた男はそれを潰すことをすっかり忘れていた。 「あ、しまった、逃がしちゃった」 我に返った男は穴の中で死んでいるゆっくり二匹を棒で取り出し川に放り投げる。 小れいむの死体は適当に足ですりつぶしておいた。 「よし、とりあえずこの罠は成功だな、明日も別のゆっくりどもが来るかもしれんし元に戻しておくか」 男は尿の臭いを消すために水を撒き臭いの強い野菜くずを適当に穴の底に撒いておき、ふたの仕掛けも 元に戻しておいた。 「小便なんかしなきゃ良かった。ああめんどくさい」 そしてその晩は安心して朝までぐっすり眠った。 翌朝 「どうしてだ・・・・」 目の前に広がる畑は見事に荒らされていた。 全ての野菜がほじくり出され、残っていたのは硬い芯や破片だけだった。 男は罠の方に走っていった。そして思わず「あっ」と叫んだ。 ダブルの罠にはどちらにも成体まりさとれいむが詰まっており髪の毛が見えている。 合計四匹。底の方には深く杭が突き刺さり餡子を飛び散らせているれいむ二匹。その上には貫通はしてないものの 深く刺さったまりさが二匹ひっかかってた。よく見ると上に重なっているまりさのうち一匹はまだかろうじて生きている。 「おい、何があった、どうして四匹も穴に落ちてるんだ!」 男はそういい生きているまりさに問いただす。 「ゆぐ・・・・ばでぃざはなにぼじでないのに・・・・どぼじで・・・・びどい・・・・」 男はまりさを穴から引き上げた。足の方には下で死んでいるれいむを貫通した杭が刺さった穴がいくつも開いている。 この傷で放置されたのだからもう助からないだろう。 「ばでぃざは・・・おぼうじなぐじだの・・・・だがら・・・ごのあなに・・・ぶでぃやり・・・・」 そう言うとまりさは餡子をぶりっと吐いて死んだ。 おそらく昨日逃がした小まりさが別の家族にここの罠のことを知らせたのだろう。 そしてこの罠の仕組みを知ったそのまりさ一家が帽子やリボンをなくしていじめられていたゆっくりを 無理やり連れてきてこの中に叩き落し、杭が露出しないことを確認してその上を悠々と渡り畑を荒らしたようだ。 ゆっくりをみくびっていた。男はがっくりと膝をついた。 噂には聞いたことがあるが、ゲスまりさというゆっくりはこういった悪知恵も働くらしい。 「しまった・・・俺の完敗だ・・・・」 男は昨日の自分の浮かれようを思い出し、そしてただ悔しさに土を拳で何度も叩いた。 しかし数分後、男はすくっと立ち上がる。既に落胆の表情は無い。 いやむしろ不適な笑みさえ浮かべている。 そしてぼそっと呟いた。 「次は戦争だ」 ~続く~ =====あとがき====== 2作目の虐待SSです。 トラップネタを書きたいなぁと漠然と思ってるところにfuku3373.txtが投下されたので触発されました。 この話を思いつく前からかなり長い話を書いてるのですが、ちょっと内容に行き詰っているので 気分転換に短い話を書いてみました。しかし続編アリになってしまった・・・ また勃起してますね。 これまで描いた話 【うんうんの報い】 by ゆっくりジェントルマン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1406.html
前 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていくね」 子供らしい素直さで男を迎える子まりさだが、持ち抱えられるときょとんとした顔で男を見る。 「ゆー? おじさん、なにするの?」 「ごめんね。お母さんはまだ赤ちゃんを産まなくちゃいけないんだ。だから、おじさんとゆっくりしようね」 「ゆっくりするね!」 またしても、男は母れいむの前に座ると子まりさに床に落ちているものを拾って、目の前に差し出す。 「ほ~ら、おいしい食べ物だよ。餡子って言うんだ」 二度目のやりとりを繰り返す。今度の場合は餡子の外側の部分が違うだけである。先ほどの子れいむの中身を食べさせているのだ。 子まりさ側からは餡子しか見えないが、母れいむ側からでは死んだ子れいむの顔がよく見えることだろう。 子まりさはそんなこととは露知らず、「おいしーい!」などと言いながら、姉の中身を食べ尽くそうとしている。 「ぎい゛ぃぃぃぃ!!?? だべな゛いでぇ! だべぢゃだべぇぇっ!!」 「ゆゆ? どーしたの!? ゆっくりなかないでね!?」 「お母さんはね、君だけおいしいものを食べているのが許せないのさ。全部、自分にくれって言いたいんだ」 「ゆーっ!? だめだよ! このおいしいあんこはまりさのものなんだから! プンプン!」 母れいむがいくら制止しようとしても、子まりさは止まらない。 逆に止めようとしているからこそ、『おかーさんにあんこをとられる』と思って、さらに食べようとしているのかもしれない。 やがて最後は吸うようにして、子まりさは餡子を食べ終えた。 「ごっくん! しあわせー! ……ゆ?」 餡子が乗せてあったものに三つほど穴が開いている気がつく子まりさ。 男はそれを察して、無言で皮を裏返した。 子まりさは一度「ゆ゛!?」と鳴き、必死で目の前のものが何なのか理解しようとする。 しかし、頭が餡子では思考が現実に追いつかない。いや、現実を否定しようとする。そうでなければいけない。 解ってはいけない。何故なら、それは自分の仲間であるからだ。 突然、皮がべちょりと子まりさの顔に張り付いた。男が手で押したのだ。 「い゛、い゛や゛あ あああ! やべでやべでぇっ! ぐっづがないでぇ!! はな゛……ぎっ!?」 男がここぞとばかりに噛み付く。右手で皮ごと子まりさを抱え込みながら、咀嚼を繰り返す。 子れいむと比べると、種類のせいなのか状況のせいなのか子まりさの餡子はいくらか違う。 子まりさの餡子はさっぱりとして口の中に甘さが残らず、何度でも食べられるような甘味だった。 「あ゛がぢゃあ゛あ゛あん! だべる゛の゛やべでぇぇぇっ!! い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃっ゛っ!!!」 母れいむが叫びながら、激しく震え始める。歯を食いしばりながら、涙もぼたぼたと流れていた。 まさか、と男は驚愕した。これほどの短時間で次の子供を生もうとするとは見上げた精神力である。 おそらく、男が子まりさを食べている間に次の子供を生んで、その子だけはどこかへ逃がそうという魂胆だろう。 顎の穴が徐々に広がり始めたのを見て、男はある決断をする。 「見えるかい? お母さんは君を見捨てて、次の子供を生もうとしている。君は食べられちゃってもいいんだってさ」 「お゛があ゛ざん!? だずげで! ま゛り゛ざをだじゅ!? ぱぴぃ! ぺぽぉ! ぱぴぺてぽぉ!!」 助けを呼ぼうとする合間にも食べられているため、言語がおかしくなってきている。 最早、子まりさ何を言おうとしているのかは誰にも分からない。その意図は伝わっていたとしてもだ。 母れいむは半狂乱の装いを見せながらも、、必死で最後の子供を生もうとしていた。 既に母れいむの中では、子まりさは死んだものとして扱われている。 「ゆっぐりうまれでね!? はやぐうまれでね!?」 自らの身体を揺さぶりながら、矛盾する言葉を吐く母れいむ。 その振動で中にいる子ゆっくりは幾らかの恐怖を感じたが、母の胎内にいる限りは大丈夫だ、という根拠の無い自信があった。 やがて、めりめりと出てくる子ゆっくり。れいむ種である。 男はそれを確認すると、食いかけの子まりさを手に持ったまま、母れいむへと近づいていく。 「ゆっ!? ゆっぐりごないでね! ゆっぐりあがぢゃんをたべででね!?」 「ゆっくり……していってね!」 「ゆ゛っ、ぶぐぉ!?」 顎の穴に目掛けて思い切り、子まりさを捻じり込む。中の子れいむと手の子まりさの顔が触れ合うような形で押し込む。 中からはくぐもった悲鳴が聞こえたような気がするが、男はまったく気にしない。 「いい゛いい゛いい゛い!!?? な゛に゛ずるのぉ!? う゛、う゛まざぜで! あがぢゃんだざぜでぇっ!」 母れいむは出産を中断させられた痛みで絶叫する。口からは泡のようなよだれを振りまいていた。 男は持ってきていた籠の中から、縄を取り出して母れいむの周りを囲むように置く。 次に母れいむの頬の皮を寄せてあげるようにして、顎の穴を無理やり塞ぐ。 「あがっ!? やべで! あがぢゃんでるどご、うめないべぇ!?」 「よいしょっと」 当然、このままでは元に戻ってしまうので、先ほどの縄で母れいむを思い切り縛り上げた。 皮に食い込むほどに力を入れているが、縄が皮を破ることはなかった。男の熟練した技の賜物である。 中から子れいむが出ようとする圧力と、外から縛り上げられる力で母れいむの身体からぎちぎちという音が鳴る。 子供が生めない、子供が死んでしまう、縄が擦れて痛い、人間が怖い、まりさがいない。 それら様々な感情が母れいむの中で渦巻く。やがて、ぷつん、と何かの糸が切れてしまった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ま゛り゛じゃぁぁぁっ!! だずげでま゛り゛じゃ゛ぁ゛ぁぁぁっ!!」 狂ったようにゆっくりまりさの名を呼ぶ母れいむ。本当に狂ってしまったのかもしれない。 男はそん母れいむの様子を見て尋ねた。 「そんなに、ゆっくりまりさに会いたいかい?」 「あ゛い゛だい゛! ま゛り゛じゃに゛あばぜでぇ゛ぇ゛ぇっ!!」 その言葉を聞くと男はよし、と頷いて、持ってきた籠の中に手を入れる。 その中から何かを取り出して母れいむに見せてやる。 「ま゛り゛じゃ゛ああ゛あ゛あ゛ぁぁぁっ!!?? な゛ん゛で、そ゛ん゛な゛どごろ゛にい゛るの゛ぉぉぉぉっ!!??」 それは餡子が抜けて、半分潰れたような状態になっているゆっくりまりさであった。 ゆっくり魔理沙は傷ついていた。体中に穴が開いており、そこから餡子がはみ出していた。 なんでこんなことになったのだろう、とぼやけた頭で振り返る。 今日はゆっくり霊夢が子供を生みそうなので、簡単に食べ物を探してすぐに帰ろうと思っていた。 子供が生まれる時は一緒にいてあげたいからだ。 その途中で、いつも食べ物をくれるおじさんに出会った。 「おじさん、こんにちは! あのね、そろそろあかちゃんがうまれそうなんだよ! だから、たべものちょうだい!」 ゆっくり魔理沙は嬉しいのと、いつものお礼の気持ちを込めて子供のことを話していた。 おじさんならゆっくりできいてくれて、たべものもくれる、と思っていたのだろう。 そもそも、このゆっくり魔理沙は一度、この男の家に食べ物を探しに入って捕まったことがあるのだ。 その時、ゆっくり魔理沙は泣きながら事情を話した。 「れ゛いむ゛がぁ! あ゛かぢゃんうむがら、い゛っばい゛だべものがぼじがっだんでずぅ!」 そうすると、男は納得して助けてくれた。そしてこんなことを言ったのだ。 「いいかい? もう、人間の家に入っちゃ駄目だよ。食べ物なら私があげるからね」 そう言われて、最初は疑っていたがちゃんと食べ物をもらえたので、ゆっくりできるひとだ、と安心できた。 これ以降、男は基本的には野菜の葉っぱや皮だったが、毎日食べ物をくれた。 そんな食べ物でも、ゆっくり霊夢とずっと一緒にいたいゆっくり魔理沙には、食べ物を探す時間を減らせるのでとてもありがたかった。 そして、たまに貰える餡子が一番楽しみだった。自分一人で食べてしまいたい誘惑を堪えるのに必死なぐらいである。 ゆっくり霊夢も餡子が大好きで、二匹でいつもおいしく食べていた。 出産のためには住む場所を変えた方がいい、と教えてくれたのも男であった。 ゆっくり霊夢には内緒だったが、住むのに適した場所を見つけ、穴を掘るように指示と手伝いもしてくれた。 新しい家にゆっくり霊夢を招待した時は、見栄を張って自分一人で掘った、と言ってしまっている。 それを悪いことだ、と思っていたゆっくり魔理沙は恩返しと罪滅ぼしの意味を込めて、子供のことを話していた。 男はそれは良かった、と頷くと、持っていた籠のようなものを地面に下ろした。 「赤ちゃんが生まれるなら、お祝いをしてあげないとね」 「ゆっゆっ! おいわい! なにをしてくれるの!?」 男が籠の中から何かを取り出そうとしているのを、興奮気味に見ているゆっくり魔理沙。 またおいしいあんこをもらえるかもしれない、などということを思っていた。 「はい、お祝いだよ」 「ゆ、ぐりぃ!?」 勢いよく取り出されたバールのようなものが、ゆっくり魔理沙に振り下ろされた。 どずん! という鈍い音を立てて、ゆっくり魔理沙の穴が開けられる。 「ぎぃい゛いい゛い゛いっ!!?? い゛だい゛ぃ! な゛に゛ずる゛の゛ぉ!?」 突然の凶行に泣き叫ぶゆっくり魔理沙。男はさらに凶器を振るう。 「ほら、ほら、ほら、ほら、お祝いだよ」 「ゆぶっ!? ゆげ!? ゆぎゅ!? ゆあ!? ぶぎ!?」 言葉を発する度に凶器は振るわれる。それは的確にゆっくり魔理沙の身体に穴を穿ち、そこから命の源である餡子が漏れていく。 しかし、完全に死ぬ所まではいかない。男がそう調整しているのだ。 身体にいくつもの穴が開き、餡子が流れ出して段々と平らになっていくゆっくり魔理沙。 これ以上餡子が出ると死んでしまう、という所でようやく暴力は止められた。 「ふう……君たちみたいに言うと、すっきりー! という所かな?」 「どぼっ……じでぇ……なんで、ごんなごどずるのぉ……」 「なんでどうして、ときたか。月並みな言葉だけどね、君たちはもう少し他人を疑った方がいいよ」 心にも無い言葉をかけながら、背負った籠のようなものにゆっくり魔理沙を入れる。 それ以上、餡子が出ないように薄皮一枚分の手当てだけはしたが、そんなものはすぐにでも破れてしまいそうだった。 動けない身体だけどゆっくりしていればだいじょうぶ、と真っ暗な中で耐えるしかなかった。 しかし、それでも自分が長くはないことを、悪い人間に捕まってしまったことも悟っていた。 おじさんが何故こんなことをしたのか、ゆっくりまりさには分からない。 暗闇の中でただひたすらに、れいむがげんきなあかちゃんをうめますように、とまりさは願っていた。 どのくらい経ったのだろうか。ゆっくりまりさには判断がつかなかったが、何度か上の方が明るくなったりしていた。 ゆっくりれいむの声が聞こえたような気もしたが、ゆっくりまりさにはよく分からない。 周りにあるものが色々と上の方に持っていかれていたが、それを追う気力も体力も無かった。 そうやってじっとしていると、ようやくとでも言うべきだろうか、ゆっくりまりさの身体が持ち上げられていた。 急に暗い所から出されたため、眩しくて目を細めていると、聞き覚えのある懐かしい声が聞こえた。 「まりじゃあぁぁぁっ!! あいだがっだよ! まりじゃぁぁぁぁ!!」 母れいむは大好きなゆっくりまりさを見て、歓喜の声をあげる。その言葉だけ聞くと、ほとんどゆっくりありすのようでもある。 ゆっくりまりさの方は餡子が抜けてしまっているため、大きな反応は出来なかったが、それでも力無く笑ってみせていた。 それは、消えかけの蝋燭が最後に精一杯燃え上がろうとしている様に似ていなくもなかった。 「ようやく、お友達に会えて嬉しいかい?」 「ゆ゛っ! まりざからてをはなしてね! ごごはれいむとまりざのおうぢだよ! ゆっくりでていってね!!」 いくらか持ち直したのか、言葉から濁りが少なくなる母れいむ。ゆっくりまりさと出会えたことで色々と記憶が吹っ飛んだのだろう。 もちろん、子供のことすら半分以上忘れてしまっている。 今、母れいむが考えているのはまりさとゆっくりしたいということだけだった。 身重の体を無理やり動かしてでも、ゆっくりまりさに近寄ろうとしている。 男はそれを見て、母れいむの前にゆっくりまりさを置き、それと同時に手早く母れいむの縄も解いておく。 「ゆゆ? おじさんもようやくわかってきたね。さっさとれいむたちのまえからゆっくりきえてね!」 母れいむはケタケタと身を揺らして笑っている。男の行動から、自分が優位に立っていると感じているのだろう。 男は何も言わずにただ笑顔でいる。母れいむの言葉にも怒りを表さず、何かを楽しみに待っているようだ。 母れいむが忘れている存在を、男は覚えているのだ。 「まりさ、はやくふたりでゆっくりしようね! ふたりでゆ゛っ! ぐ、り……!?」 母れいむが大きく震える。震えは止まらず、「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ!?」という声と一緒にめりめりという音が聞こえてくる。 縄で閉じられていた顎の穴が再び開き始めているのだ。 ゆっくりまりさは何が起こっているのかよく分かっていない。既に理解できる程度の理性も失いかけている。 「い゛だいいぃぃぃ! ひぎぃ! なに゛!? な゛に゛がでる゛ぅぅぅっ!!??」 「なにって、決まってるだろう? 君の子供さ」 男が親切に説明してあげる。母れいむはその言葉で目を見開きながら絶句する。この瞬間まで、子供の存在は忘却の彼方にあったのだ。 楽しいことは覚えていても嫌なことや痛いことはすぐに忘れてしまうという、ゆっくりの独自の脳構造故だろうか。 一方、ゆっくりまりさは子供と聞いて、弱った身体にわずかばかりの力が戻った。 「ゆっ……? あかちゃん、まりさたちのあかちゃん……」 最早、目も虚ろでかなり弱っていたが子供のことは覚えていた。 母れいむと違って、子供によって痛い目にあっていないからである。 「あかちゃんあかちゃん……」と呟きながら、母れいむの方へ這いずって行く。 ちょうど、顎の穴に向かって進んでいっている 「い゛ぎぃ! い゛だい゛い゛だい゛! はやぐお゛わ゛っでぇっ! ゆ゛う゛っ!!!」 ぐちゃ、っと顎の穴から餡子の塊が吐き出される。男が突っ込んだ子まりさの死骸であった。 その死骸は穴の近くにいたゆっくりまりさに当たった。 「ゅぎゅ! ぶえぇっ!」 子まりさは既に半分以上が食べられており、ゆっくりまりさと比べても四分の一程度の大きさしかなかった。 しかし、その程度であっても勢い良く吐き出されると、ゆっくりまりさには耐えられない衝撃だった。 顔の正面に当たった結果、身体の各所から餡子がはみ出る。 ゆっくりまりさはわずかに呻く程度で、もうその場から動こうとはしない。動けないのだ。 母れいむはその様子を見て、子供を生むとどうなるかを思い知る。 あのぐらいの大きさでもゆっくりまりさが動けなくなってしまうのであれば、子供が当たったらどうなるのか。 「どいで! まりじゃ、そごどいでぇ! ゆぎぎぎぎぃ!! でぢゃう゛! あがざんでぢゃう゛!」 自分が動こうとしても、出産の痛みで動くことができない。無理に動けば、身体が裂けてしまうかもしれない。 完全に行き詰っている。この状態で何とか出来るものがいるとすれば、一人しかいなかった。 「おじざん! たずげで! まりじゃどがぢで! はやぐぅ! ゆっぐぅ!」 出産の痛みに必死で耐えながら、現在助けを求められる唯一の相手に何度も助けを請う。 それでも、男は動こうとせずに見守っている。 「出て行って欲しいんじゃないのかな? 消えて欲しいんじゃないのかな?」 笑いながら、母れいむの言葉を繰り返す。勿論、ゆっくりの頭ではそんなことは覚えていない。 「なんでもじまずぅぅぅ!! なんじぇもじまずがら! ま゛り゛じゃをどがじであげでぇぇっ!!」 「一生のお願いっていうのなら、どかしてあげてもいいよ」 「いっじょうのおねがいでずぅ! いっじょうのおねがいだぎゃりゃ!? ゆぉほう! なががらでりゅ!?」 そこまで言った所で顎の穴から再びめりめりという音が鳴る。 奥の方から徐々に顔をみせつつある子れいむ。母れいむからしてみたら、それは死の予兆以外の何者でもない。 母れいむの思考は「ゆっくりまりさ>あかちゃん」という図式であった。優先するべきはゆっくりまりさである。 あと一人生めばこの痛みから解放される、という抗いがたい誘惑に負けそうになりながらも必死の形相で耐える。 「んほおおおおおお!? お゛ね゛がい゛ぃぃ!? じま゛じゅうぅぅ!! ま゛り゛じゃを゛おごおぉぉ!?」 間断無く襲い来る傷みに耐えながら、出来うる限りの懇願を繰り返す。 本来ならば、ゆっくりは母性によって出産の痛みに耐えるのだが、既に母れいむは子供に対する愛情がなくなっていた。 そうなると、痛みもただ辛いだけのものに過ぎない。 「一生のお願いなら仕方ないね。よいしょっと」 母れいむの必死さと比べると、はるかに軽い様子で男が動く。 ゆっくりまりさの所まで行き、両手で持ち上げる。 「あ゛り゛がどぅ゛! ゆ゛っぐりどがじでぐれで、あ゛り゛がどね゛え゛えぇぇぇ!?」 礼を言おうとした母れいむの顔が一気に引き攣る。男はゆっくりまりさを母れいむの前に置いただけだった。 それも顎の穴の真正面、子れいむが出てくる場所に向かって置き直しただけである。 「あぎいいいいい!! な゛、ん゛、で!? ど、い゛、で! ぞご、ど、が、じ、で!!!」 「このゆっくりまりさを『どかして』あげただろう? 『どこ』かまでは言われなかったから、君の目の前に置いてみたよ」 男は笑顔で言う。母れいむは一度気を抜いてしまったせいか、完全に限界が来ていた。 言葉を喋ることが困難になってきている。呼吸すらも難しくなっているだろう。 やがて、それは決壊した。 「ゆ゛ぶっ!! う゛びゅ!! でりゅ……! ぎぶう゛う゛う゛ううう゛ぅ゛ぅぅっ!!!」 ぽーん、と子れいむが排出される。子れいむには穴の奥から外の状況は見えていた。 見えていたが、皆が何を言っているのかはよく分かっていない。 きっと、どうやってゆっくりするのかきめているんだ、などと夢想していた。 めのまえににいるゆっくりまりさはきっとおとーさんで、れいむがうまれるところをみててくれているんだ、と勘違いもしている。 だから、真っ直ぐに親の胸へ飛び込むように、ゆっくりまりさの所へ向かっていった。 「だべえ゛え゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇぇぇっ!!! 母れいむは一瞬だけ歓喜の表情を浮かべていたが、すぐにそれも消え去って、思い切り叫ぶ。 だが、その叫びを聞いても子れいむは止まらないし、止まれない。 そして、ゆっくりまりさも目の前に迫り来る自分の子供に対して、回避する手段を持たなかった。 状況もろくに判断出来ていないが、その顔は生まれてくる子供を祝福するように微笑んでいる。 ゆっくりまりさの顔に子れいむが直撃する。何か言葉を出すことすらなく、餡子が辺りに飛び散った。 「………………」 「ゆゆゆ……ゆっくりしていってね!」 母れいむは呆然としていた。愛しいゆっくりまりさがいれば、他には何もいらなかったのに。 出産に伴う痛みも無くなったため、母れいむは何も感じなくなっていた。 逆に子れいむは初めて外の世界に出れて、思う存分ゆっくりしていた。 先ほどぶつかった「おとーさん」がなんだか平べったくなっているのが気になったが、大丈夫だろうと思っていた。 「ゆっゆっ♪ おかーさん。おかーさん♪ ゆっくりしようね!」 ニコニコしながら、母れいむに身体をすり寄せる子れいむ。母れいむは呆然としたまま、そちらを見る。 子まりさとゆっくりまりさから、餡子を浴びたゆっくりがそこにはいた。 「!? あっぢにいっでね! まりじゃのあんこをたべぢゃっだわるいこはじね゛!!」 身体を思い切り揺らして、子れいむを引き剥がす。 事実はそうではないが、母れいむにはゆっくりまりさを食べてしまったようにしか思えなかった。 もしくは、子れいむがいたからゆっくりまりさは死んでしまったとまで感じている。 「ゆにっ!? どーしたの、おかーさん? ねぇねぇ、どうしたの?」 「ゆっぐりぃ!!」 再び寄って来る子れいむを思い切り吹き飛ばす。 餡子まみれになりながら、純真とすら言える笑顔で迫ってくる様子は母れいむにとって恐怖以外の何者でもなかった。 吹き飛ばされた子れいむは、まさかそんなことをされるとはまるで思っていなかったらしく、びぃびぃと泣き始める。 「おがーざーん!! どうぢでこんなことするのぉ! いっじょにゆっくりしようよぅ!」 母れいむの周りを飛び跳ねながら訴える。その姿は愛らしくもないのかもしれない。 それに対して、怒号をもって母れいむは応えた。 「あっぢにいげぇ!! まりじゃをごろじだやづは、ゆっぐりじね!!」 「ゆっっぶ! ゆぐぅ……」 弾き飛ばされた子れいむが家の内壁に当たった。そのまま、気絶してしまったようである。 母れいむはそれを見て、泡を吹きながら喜ぶ。 「ふへっ、ゆへへへへへへへ! まりぴゃのかちきはとったよ~。みんな、み~んなやっつけてやったじょう!」 「今、吹き飛ばしたのって君の子供、赤ちゃんだよ」 間髪入れずに男が口出しをする。狂ってしまった母れいむにも分かるよう、赤ちゃんという言葉を使う。 「ゆぎっ? こんなのれーむのあかちゃんじゃ、ないよー? なに、いってるんだろーね、おかしーよ」 母れいむは呂律が回らないという状態ですらなく、言葉の発し方が不自然になっていく。 それほどに可笑しいのか、身体全体を激しく震わせるようにして耳障りな音を発しながら笑っている。 「その赤ちゃんを生んだのは君で、生んだせいで君のお友達のゆっくりまりさも死んじゃったんだよ」 「ゆぴきききき! ぞんな、ごど、あるわげないびょ? ゆふぇふぇふぇ!」 最早、笑い声なのかどうかすら良く分からなくなっている。それでも、男はさらに続ける。 「君のせいで、ゆっくりまりさは、死んじゃった」 「ゆ゛いいいぃぃぃい゛っぃぃい゛い!! うるざい! も゛う゛い゛い゛! ざっざどでべっでね゛!」 「駄目だ……完全に壊れちゃったか。ま、しょうがないかな」 やりすぎたなぁ、と独り言を呟きながら、母れいむの口に大きい針のようなもので穴を開ける。 「ぶぎっ! な゛に゛ずるびゅ!」 痛みを訴えるが、無視してその穴に縄を通していく。勿論、煩いので喋らせないようにするためである。 「餡子の量も減ってるみたいだし、これなら持って帰れるかな……」 軽く持ち上げたりして、重さを量る。無理だったら引きずればいいだけのことでもある。 これだけ成熟したゆっくりならば、胎内出産にも蔦出産にも耐えられるだろう、と男は判断している。 先ほど食べた餡子の味を再び味わうためにも、この母れいむを持ち帰る気なのだ。 気が狂っていても餡子を生むことは出来る。このまま、男専用の饅頭生産機にする気であった。 「おっと、こっちも忘れないように……」 壁にぶつかって気絶している子れいむも籠の中に放り込んでおく。 明日、食べるために取っておくか、それとも種馬として躾けてもいいかもしれない。 親と子供を交配させるとどうなるのだろう、と素朴な疑問を試すのも手である。 「それじゃ、ゆっくり一緒に帰ろうか」 「…ゅ……ゅっ! ……ゅ……っ!」 何か喋ろうとしているがよく分からない。狂ってしまった者の言葉など聞いても意味がないだろう。 男が話しかけたとしても、それはほとんど独り言に近い。一方的に用件を伝えているだけだった。 これからはおいしい餡子が食べられる、と思うと男の足取りは自然と軽いものになっていた。 狂った母れいむは何がどうなったのか、良く分かっていない。分かろうともしない。 男の家に連れてこられても、鎖で繋がれても、どこにいようと意味が無かった。 母れいむはゆっくりまりさがいる幸せな幻想の中で、いつまでも過ごしていたからだ。 子供を生んでも、子供に交尾されても、幻想の中でゆっくりしていた。 子供が生めなくなったために捨てられても、ずっとずっと変わらずにゆっくりしている。 口の縄を外されたので、喋れるようにはなっているが、それもまったく意味が無い。 捨てられた場所はゴミが集められている所で、とても汚くて臭いが、それも母れいむに変化をもたらすことはない。 「ゆび……ゆぎいひひひ……まりじゃ、まりじゃぁ……」 今日も今日とて、母れいむは汚濁の中で『幸せ』に浸っているのであった。 餡子が尽きるその日まで。 めでたし、めでたし 後書き AAの「出産しているゆっくり」があまりにもウザかったので書いてみました。 けっこうすっきりできたよ! 後半、というかオチの付け方にはかなり迷った結果、完成にかなり時間がかかったなぁ…… そして、色々な出産系のSSが多くて投下するタイミングを見失ってました。 というか、書こうとしてたことがAAでも再現されてたのはビックリ。職人すげえ。 一応、書いたSSをまとめておきます。 ゆっくりいじめ系110 「髪飾り」 ゆっくりいじめ系136 「働きゆっくり?」 ゆっくりいじめ系137 「ゆっくりまんじゅう」 ゆっくりいじめ系153 「ゆっくり調教師 前編 」 ゆっくりいじめ系154 「ゆっくり調教師 後編」 名前はゆっくりまんじゅうの人でお願いします。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1864.html
何だかんだでゆっくりれいむ一家と漫才をすることになった 「じゃあ赤れいむ、ツッコミの練習をしてみようじゃないか!」 「ゆ!れいみゅがんばりゅよ!!」 「がんばってねちびちゃん!!」 「いもうとのつっこみはすごいよ!おにいさんゆっくりかくごしてね!」 「「「ちてね!!!」」」 「HAHAHA、赤れいむ、今日もまたべりぃぷりちー(笑)じゃないか!」 「ゅゅぅ!てれりゅよおにいちゃん!」 「うんうん、その太陽よりも眩しい笑顔!素敵だなぁ!しかしそれよりもいいのは・・・」 「いいにょは?ゆっくちおちえてにぇ!!」 「君のこの・・・帽子さ」 「にゃんぢぇやにぇん!!」 ぽよん 「ゆ!!とてもいきおいのあるつっこみだね!さすがちびちゃん!!」 「ゆへひぇ☆すーりすーり♪」 「あまーーーーーーーーーーーーーい!!」 「ゅ?なにがあまいの?おかし?ゆっくりおかしちょうだい!!」 「「「「ちょうだいにぇ!!」」」」 「違う、ツッコミだよツッコミ!今のじゃあ観客の皆さんは笑いもしない!お笑いをなめるな!」 「「「「「ゅ・・・」」」」」 「よしっ、じゃあゆっくりお笑いコンテスト地区予選ベスト8のお兄さんが直々に伝授してやろう!」 「ゅ!ゆっくちはやくおしえちぇにぇ!!」 「じゃあ交代だ」 「ゆひゃは、おにいちゃん!きょうみょまちゃべりぃかっちょいいにぇ!!」 「HAHAHA、照れるよ赤れいむ。そんなに言われちゃうと僕もっと輝いちゃう!キランキラン!」 「ゅんゅん、そにょえぎゃお、ゆっくちちてるにぇ!!でもちょれよりもゆっくちちてるにょわ・・・」 「ん~?なんだい?さっさと教えなよ!」 「おにいちゃんの・・・りぼんだょ!!」 「ヒャッハァ!我慢できねぇ!!ツッコミだぁ!!!!」 パシャァアアン 「れ”い”む”の”あ”か”ち”ゃ”ん”か”ぁ”ぁ”あ”あ”!!!!」 「い”も”う”と”か”ぁぁああぁ!!!どおじでごんあごとするのおお”お”お”お”お”!!!」 ドッ(笑) 「おに”い”さ”んと”はゆ”っく”ち”できないよ”!!!お”し”さんた”ち”た”づけ”て”ね”!!!!」 ドドッ(笑) 「れいむ!それおじさんやない!!ぴっちぴちの20歳後半や!!」 ベチャァアアン 「や”め”て”ぇええぇええ!!!れ”い”む”のこ”どもころさ”ないでぇえええぇえ!!!」 「お”ねえ”ち”ゃ”あぁ”あ”あんんん!!!!」 「いい加減にそぉいっ!!!」 ブチャビチャビシャァアアン 「あぁあああぁ”こ”ども”た”ち”があぁあああぁあああああ!!!!!」 ドドドッ(爆笑) 「どうも、ありがとうございましたー」 パチパチパチパチ・・・ パチパチパチパチ・・・ 「なお、この親れいむは後でスタッフが美味しくいただきます」 「どお”し”て”そ”んな”ごと”い”う”の”お”お”お”お”!!!!??」 ワッ(大爆笑) 『以上、ゼッケン七番「ゆっくりとのまんざいとっくん(笑)」でした~』 今回は優勝を狙えそうだ と思ったらゼッケン13番の「ゆ戯王デゆエルもんすたぁず」にあっさり取られた そしてスタッフの人が半ば強制的に親れいむを食べてしまった 今日も夕食は野良ゆっくりです 完 ______________________________________________________ あとがき 急に赤ゆっくり相手にツッコミしたくなって書いた 反省はしていない しかも殆どセリフだけっていうのも難しいし分かりづらいですね 自分お笑いとか漫才とか一切分からないので面白くはないと思う。 ちなみにゆっくりのツッコミ方法は体を捻って体当たりです。 今までに書いたり作ったりしたやつ ゆっくり大福(作った) ゆっくり漫才(書いた・新) ゆっくりとりひき1~2(書いた、続) ゆっくりとりひきのこと完全に忘れてたから今度うpします このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2171.html
冬が近づいてきていた。 ゆっくりできない季節の到来を前にして、ゆっくり達は巣作りに腐心する。 「ゆっ!おかーさん!れいむむしさんとったよ!」 「たべちゃだめだよおちびちゃん!ゆっくりすへとはこんでね!」 褒めて貰えると思った子れいむは膨れっ面になる。 「ゆ〜……」 「がまんしてね、おかーさんとゆっくりえさとりしようね」 ゆっくりとふかふか by ”ゆ虐の友”従業員 ある日、れいむのおうちにお隣のおうちのまりさがやってきた。 「れいむ!これをみるんだぜ!」 「ゆゆっ?どうしたのまりさ?」 まりさは後背部から頬のあたりまでを、何やらふかふかしたもので覆っている。 見るからに暖かそうな、とてもゆっくりしたふかふかだった。 「ゆっ!」 ためしにすーりすーりしてみた。とても暖かい。 なめらかな肌触りに、れいむはすぐにふかふかの虜になった。 「すっごくゆっくりしてるよぉぉぉぉぉ!!」 「ゆっへん!」 「どこでひろったの?れいむもほしいよ!ゆっくりおしえてね!」 自分もふかふかが欲しいと、れいむはまりさに詰め寄る。 しかしまりさは拒否した。 「それはいえないんだぜ」 「どうじてそんないじわるいうのぉぉぉ!!??」 「だめだぜ!ひっぱるなだぜ! これはまりさにぴったりの、とってもゆっくりしたふかふかなんだぜ! れいむみたいなゆっくりできないゆっくりのじゃないのぜ!」 結局、ふかふかを見せびらかすだけ見せびらかして、まりさは自分のおうちへ帰っていった。 「ゆぅ……れいむもふかふかほしいよ……」 あんなにゆっくりしたふかふかがあれば、この冬を越すのもとても楽になるに違いないのだ。 その日れいむはずっとふかふかのことを考えて過ごした。 * * * * 背中に当たる風で、れいむは朝の目覚めを迎える。 ここ最近はずっとこうだ。本格的な冬が始まれば、子供達を狩りに伴わせることさえできなくなる。 「ちべたい……かぜさんゆっくりしていってね……」 れいむは岩の隙間に家を持っていた。 これはこれでかなりの”すてーたす”なのだが、 吹き込んでくる木枯らしの寒さ、岩肌のゆっくりできない冷たさを感じるたび不満は募るばかりだ。 思い出すのは、昨日の出来事。 「ゆゆーん……れいむもあのふかふかがほしいよ……」 二匹の子供が目を醒ました。 「おかーしゃん?」 「ゆっくちちていってね!!」 「おはよう、おちびちゃん。ゆっくりしていってね!!」 狩りに行きたくない。 「………」 ふかふかも無しにゆっくりできないおそとに出て行きたくない。 おそとは今日も、寒風荒れる吹きさらし。 どうしていままで、こんなゆっくりできないおそとに出て行くことが出来たのだろう。 「れいむさむいのやだよ……」 ふかふかでゆっくりするまりさを見てしまったことが、れいむの餡子に深い影を落としていた。 「おかーしゃん!おなかすいたよ!」 「ゆっくちごはんとってきてね!!」 「ゆ……いってくるよ……」 れいむは足取りも重く家を出た。 森の広場に着く。この辺りのゆっくりが集まる餌場だ。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 周りのゆっくりと挨拶しながら、餌を探す。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていっ……」 その時、れいむの目は一匹のぱちゅりぃに釘付けになった。 「むっきゅ、ゆっくりしていってね」 「ぱちゅりぃ!?ぱちゅりぃもふかふかもってるの!? れいむもふかふかほしいよ!ふかふかのあるところおしえてね!」 しかし、ぱちゅりぃもまた、れいむの頼みを却下する。 「むきゅん、だめよ」 「どぼじでぇぇぇぇぇぇ!!??れいむもあったかふかふかしたいよぉぉぉぉぉぉ!!!!」 おうちに帰ると、子れいむが言う。 「ゆっ!ゆっ!おかーさん!れいむもふかふかほしいよ!」 「れいむにも!れいむにもふかふかちょうだい!!」 きっとお隣のまりさを見たか、または聞いたのだろう。 「おかーしゃん、どうしておうちにはふかふかないの?」 「さむくてゆっくりできないよ!ばかなの?しぬの?」 「そん……………っ!」 ”そんなこというのはうちのこじゃないよ!ゆっくりでていってね!!”という言葉を すんでのところで言いとどまる親れいむ。 ぴちっ。 「いだっ!!??」 ゆっくりにとってはかなりの我慢をしたために、側頭部が裂けて餡子がはみ出てしまった。 「ゆゆゆっ!」 「おかーしゃん、あんこがでてるよぉぉぉ!!!」 「だ、だいじょうぶだよおちびちゃん……ふかふかあげられなくてごめんね…… かわりにおかーさんとすーりすーりしようね」 「ごめんねおかーしゃん……」 「あんこぺーろぺーろしてあげゆよ……」 親子は身を寄せ合って、隙間風からお互いをかばうのだった。 * * * * ゆゆ?れいむもふかふかひろったよ? 「ゆゆっ!これでれいむもゆっくりできるね!ゆっくりあったかいよ!」 かぜさんはゆっくりしてないけど、これさえあればれいむはゆっくりできるよ! 「ゆっ!ゆっ!あったかいよ!!」 おそとをはねまわってふゆごもりのえさをとるのはつらいけど、 れいむにぴったりのこのふかふかがあればぜんぜんへいきだよ! 「ふーか♪ふーか♪しあわしぇぇぇぇ〜〜♪」 「…………」 幸せな気分で目を覚ますと、もちろんふかふかは無かった。 「やっぱりちべたいよ……」 今日も気乗りしないままに餌場へ向かう。 「ゆ?ゆゆゆ!!??」 餌場に着いたれいむは驚愕した。 まりさ、ぱちゅりぃだけでなく、他の全てのゆっくりがあの”ふかふか”を付けて、 暖かそうに餌を漁っているではないか。 「どぼじでぇぇぇぇぇぇ!!??」 あまりの理不尽。れいむは感情の赴くままに暴れまわる。 「どぼじでれいむだけふかふかないのぉぉぉぉぉ!!!??? まりざ!!」 「いやだぜ!これはまりさのだぜ!!」 「ばぢゅりぃ!!」 「むきゅん!!ひっぱったってとれないわよ!!」 「ちぇぇぇぇんん!!」 「これはちぇんのなんだねー、わかるよー」 「ゆぅ……ゆぅ……どぼじで……?」 息を切らせてその場に倒れるれいむ。 それを遠巻きに見るゆっくり達からは哀れみの視線が突き刺さる。 「れいむ……ことしはあったかいから、そんなにゆっくりできなくないんだぜ?」 「むきゅ、そうよ。しんとうめっきゃくすればひもまたすずしいのよ」 「ゆぅ……」 「れいむがふかふかなくたって、なかまはずれにしたりはしないであげるのぜ」 「そうよ。それにれいむにはりっぱなおうちがあるんだからだいじょうぶだわ」 「ゆゆゆ……」 聞こえはいいが、それらはすべて親身な言葉ではなかった。 周囲のゆっくりの視線が、言葉が、まったく別なものを語っているようにれいむは感じた。 (おお、みじめみじめ) (ぱちゅりぃがあんなめにあわなくてよかったわ!) (かわいそうなんだね、わかるよー) 「ゆ……ゆ……ゆぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」 れいむはその場から逃げ出した。 「ゆぐっ、ゆぐっ……どぼじで!?どぼじで!? どぼじででいぶだけぇぇぇぇぇ!!??」 跳ねれば跳ねるほど、風は冷たくれいむを打つ。 「ゆっぐりでぎないよぉぉぉぉぉ!!!」 * * * * もちろん、この小さな異変の仕掛け人は虐待お兄さんである。 ゆっくりの集落を調べ、獲物と定めた家族以外すべてのゆっくりに、暖かな”ふかふか”を与えたのだ。 その際、「れいむには決してなにも知らせないこと」との条件を与える。 どうしても口を割りそうな愚かなゆっくりは潰した。 「れいむったらいいきみだぜ!ちょっとりっぱなおうちにすんでるからって、 おたかくとまってゆっくりできなかったんだぜ!」 「むきゅん!おにーさんのおかげで、ことしはゆっくりあたたかいわ!」 「れいむだけなかまはずれなんだねー、ちぇんはだいじょうぶなんだねー、わかるよー」 「今年の冬は暖かいからな……」 お兄さんは呟いた。 たとえ自然が慈悲を恵もうとも、俺はお前達をゆっくりさせはしない。 一匹たりともだ。 「とはいえ、あれだけの数の”ふかふか”はちょっと高価かったな…… 俺まで冬を越せなくならなきゃいいが」 お兄さんは、ちょっと馬鹿なのだ。 * * * * 「ぷんぷん!おかーしゃん!さむいよ!」 「こんなつめたいおうちじゃゆっくちできにゃいよ!」 「どぼじでぞんなこというのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! きっとおまえだぢがわるいこだから、みんながふかふかのことをおしえてくれないんだよ!! ゆっくりりかいしてね!!」 「そんなことないよ!れいむはいいこだよ!!おかーしゃんがぐずでのろまなのがわるいんだよ!!!」 「ゆっくちちたいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 「うるさいよ!ゆっくりだまってね!!」 仲間はずれにされたれいむ一家は、毎日いがみ合ってばかりいる。 お兄さんは時たまその様子を覗き見てはほくそ笑む。 「ゆぅ……ゆぅ……さむいよ……ゆっくりできないよ……」 嫌々ながら外へ狩りに出ても、れいむの動きは鈍い。 「ゆっ!ゆっ!ゆっ!」 「むっきゅ、むきゅ」 「むしさんゆっくりつかまってねー」 周囲の暖かそうな様子を見て、実際の寒さ以上に身も心も凍えているのだろう。 「みんなずるいよ……」 「ゆっゆー!」 「むっきゅん!」 「わかるよぉーー!」 「れいむもゆっくりじだい……」 れいむは信じて待ち続けた。 「ちびちゃんたちはどうだかしらないけど、れいむはとってもかわいくてゆっくりしたゆっくりだよ… きっとすぐにれいむにぴったりのふかふかみつかるよ…」 実際には、このれいむがふかふかを身につけるのはずっとずっと後のことだ。 * * * * 「むきゅ!おにいさん!このまえはありがとうね!」 ぱちゅりぃは男を見覚えているようで、男が姿を現すと向こうから擦り寄ってきた。 「みて!おにいさんにもらったりっぱなふかふか、ちゃんと……」 「ああ、それなんだがね、返して貰うことにした」 男はぱちゅりぃの背中に付けた”ふかふか”を留めていた帯を外した。 ふかふかはするりと抜け、地面に落ちる。 「む、むっぎゅん!やめてね!ぱっちぇはからだがよわいのよ!だいじなふかふか、ゆっくりかえしてね!」 一度ふかふかに慣れた体には、冬の風は余計に冷たく感じる。 しかも、ぱちゅりぃはこれからもっともっと寒さが厳しくなることを知っているのだ。 柄にも無く、緩慢ながらも必死な動作で男にとびかかる。 「ふかふかはどうだった?あったかかったかい?」 男は問いかけた。 「むきゅ!さいこうだったわ! あったかくて、ふかふかしてて、よるもぐっすりねむれたわ! だからおねがい、ぱっちぇにもういちどふかふかつけてね!」 「と言うことは」 男は確認の言葉を投げかける。 「もうこれからは、最高じゃなくなるわけだな。あったかくもなく、ふかふかもしてなく、 夜は寒さにおびえて仕方なく眠るんだな? それでいい、ゆっくりってのはそういうものだぜ」 「どうじでぞんなこというのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 男は地面に落ちたふかふかを拾い上げる。ぱちゅりぃはそれに追いすがる。 「ぱちゅりぃのふかふか!」 ひょい。男はふかふかを急に持ち上げ、くわえて奪い取ろうとするぱちゅりぃの試みは失敗に終わる。 「かえして!」 ひょい。 「むきゅぅぅぅん!!」 ひょい。 「ぱっちぇのぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 ひとしきり遊んだあとで、男はふかふかを回収して立ち去った。 後には、疲れ切り、寒さに震えるぱちゅりぃだけが残された。 ぱちゅりぃだけに時間をかけるわけにはいかない。これから、まりさからもちぇんからも、 ありすからもれみりゃからもふかふかを剥ぎ取らなくてはならないのだから。 「むっきゅぅぅぅぅん!!ざむいわぁぁぁぁぁ!!!ふかふかがえじてぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「ゆっくり冬を越していってね!」 その晩のうちに、すべてのふかふかゆっくりはふかふかを剥がれてゆっくりできなくなった。 「ざむいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」 「ゆっぐりでぎないぃぃぃぃぃ!!!!」 「こーまがんがざむいどぉーーー!!!ざぐやぁぁぁ!ざぐやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 森にはゆっくりの悲鳴がこだまする。 「これだと相対的にれいむが幸せになってしまうな。よし、バールのようなもので……」 「でいぶのおうぢがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! でいぶほーむれすはいやだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 エピローグ -それからずっと後- 「やあ、れいむ」 「ゆゆ?おにーさんはゆっくりできるひと?」 「その通りさ。れいむが前に欲しがってたものをあげよう」 「ゆゆ?よくわかんないけど、ありがとうおにーさん!!」 男はれいむにふかふかを取り付ける。 「ゆゆ!やめてね!ゆっくりできないよ!」 「またまた。れいむはこれが欲しくて冬じゅう泣いてたんじゃないか。 せっかく持って来てあげたんだから、ゆっくり付けて行ってね!」 「あづいよぉぉぉぉぉ!!!!むしむしするよぉぉぉぉぉ!!! ふかふかさん!!ゆっくりれいむからはなれてね!」 れいむはゆっくりできないふかふかから逃れようと身をよじる。 しかし、帯で体に巻かれたふかふかはれいむの体に密着し、決して離れようとはしない。 「どぼじではなれてくれないのぉぉぉぉぉぉ!!??ばがなの!?じぬの!? あづいよ!あづいのいやだよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」 跳ね回るれいむを、通りすがりの親子がいぶかしんだ。 「おかーしゃん?へんなゆっくちがいるよ?ゆっくちちてないよ?」 「みちゃいけないよ!あれはばかなゆっくりにちがいないよ!」 「みてないでだすげてよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」 跳ねれば暑く、動かずに居ても蒸し暑い。その上水浴びをすることもできない。 れいむの長い夏は、始まったばかりだった。 おしまい。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2345.html
虐待ゆっくり上の続編です。 やぁ、俺は元虐待爺さん、つい先日老衰で大往生を果たした虐待命の老人だ。 俺はあの世で巨乳の船頭さんの船に乗せてもらって、対岸にある裁判所で死後の裁きを受けることになった。 俺は当然の様に天国でまたゆっくり達を楽しく虐待できるものと思っていた。 だがしかし、絶壁の様な胸の四季映姫・ヤマザナドゥ(ヤマザナドゥは役職名らしい)という名前の閻魔様に、ゆっくりに三回転生した後地獄行きという非常に厳しい判決を貰った、現実は非情である。 流石の俺もあの時は耳を疑ったね、年のせいかと思って何度聞きなおしてもゆっくりに三回転生した後地獄行き、断固控訴すると言ったのだがあの世の裁判に控訴は無いらしい。 弁護士も呼べないまま俺はゆっくりに転生させられた。 しかし転生してゆっくりになっても、俺の胸に燃えたぎる虐待魂が冷めることはなかった。 ゆっくりに転生した一度目の生は、餡子の繋がった姉妹を食い殺し親の前で二つに割れてありすに食われるという、人間だったころはやった事のない特殊な虐待をやった。 こんな変わった趣向の虐待ができるのならゆっくりになってみるのも悪くない、そう思っていた俺だったが二回目の転生でその考えは間違いだったことが分かった。 何故かというと今俺自身が虐待を受けているからだ。 「おぅ!!ゆっくりせずに早く歩けよ!!親の分までじっくり苦しめよ!!」 「ゆぅ!!ちゅかれたよ!!ゆっくちさせてね!!」 「はぁ、はぁ、糞…俺がこんな目にあうとは…」 野良ゆっくりの身で家に侵入した愚かな母れいむは、パンチパーマの家主に見つかり頭にドスを突き立てられ絶命した。 不幸にもその母れいむに実っていた俺たち姉妹は母体の死の数分後、元気に産声を上げてしまった。 母れいむを殺しただけではイライラの収まらなかったパンチパーマお兄さんに俺達は虐待を受けている。 俺と姉妹のゆっくり達はランニングマシーンに乗せられて、仲良く無制限ランニングをさせられている。 マシーンは非常にゆっくり動いているが、俺達ゆっくりからすれば常に早歩きを強要される速さだ、生まれたばかりの俺達には非常に苦しい運動なのだ。 しかし、歩みを止めてこのマシーンから落ちるとパンチパーマのお兄さんの拳の一撃で叩き潰されてしまう。 最初は十匹以上いた俺達ゆっくり姉妹も、今じゃ俺を含めてたったの六匹しか残っていない。 「れいみゅちゅかれたよ!!ゆっくちちたいよ!!」 「ゆっくちちちゃだめだよ!!おじさんにいびゅ!!!ゆぁぁあ!!!!!ぶぎゅっ!!!!」 妹を励ましていた姉まりさはお兄さんの拳で餡子をぶちまけた。 「おぃ!!!こらぁ!!!俺はお兄さんじゃ!!おじさんじゃないんだよぉ!!!」 ゆっくりを虐待して死ぬのは良い、死を覚悟し肯定したその先にこそ俺の求める虐待道はあると俺は思っている。 そうじゃなきゃドス級ゆっくりやゆっくりめでぃすん、ゆっくりうつほ等の人を殺せる可能性のある危険種は虐待出来ない。 とは言えだ、ゆっくり虐待もできずに死んでいくのは無駄死にだ、俺もやはり死ぬならゆっくりの餡子の海で死にたい。 この際自分の手で皮を切り裂き生温かい餡子をその身に浴びることが出来ずとも、俺をきっかけにゆっくりが苦しむところを見られれば良い。 「ゆっくりしていってね!!」 ランニングマシーンの上で俺は叫ぶ。 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 俺のゆっくりしていってね!!に反応して返事を返す姉妹たち。 しかし俺のゆっくりしていってね!!は終わらない、真の覚悟はこれからだ!! 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「「「「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」」」」 俺の全力のゆっくりしていってね!!連呼に姉妹たちも疲れ切った体で返してくる。 ふはははははは!!!無限マラソンで体力を消耗している所に俺のゆっくりしていってね連呼!!、さぁわずかに残った体力をどんどん消耗してパンチパーマに叩きつぶされるが良い。 「おらぁ!!!」 「ゆぎゃ!!!!!」 突如体に炸裂した激痛、ぐしゃりと体が潰れて辺りに餡子が飛び散る、自分の吐いたものだと理解するのに数秒を要した。 「おい!!コラァ!!ゆっくりゆっくりうるさいんだよ!!静かに死ねよ!!」 パンチパーマの怒声と共に自分に向って振ってくる大きな握り拳、死ぬ前に潰れていない方の目で見た最後の光景がそれだった。 結局虐待らしい虐待も出来ずに俺の第二のゆっくりとしての生は終わってしまった。 目を覚ますと、そこは光のない真っ暗な場所だった、しかし不思議と俺は不安を感じ無かった。 ゆっくりとしての本能で自分が何処にいるのかが良く分かるからだ、ここはゆっくりの体内だ。 「ゆぅ~♪ゆっくりおおきくなってね!!」 俺の母親のゆっくりの声が響いてくる、喋り方からしてまたしても俺はゆふらんやきめぇ丸にまたしてもなり損ねたらしい。 はぁ~、また面白みもなくゆっくりれいむやゆっくりまりさなんだろうな、せめてゆっくりみょんに生まれたならば女学生の部屋に乱入して淫語を連発したり楽しみようがあるのだがな。 「ゆぅ~♪ゆっゆ~♪とかいはなあかちゃんになってね!!」 都会派…俺はゆっくりありすの子供なのか、ありすを虐待するのは嫌いではない好きなゆっくりを思いっきり虐待できる思うと良い気分だ。 「ゆ~♪おかえりなさいまりさ!!」 「ゆっくりただいま~!!ありすごはんをもってきたよ!!」 どやら俺のもう一匹の母親の方はゆっくりまりさのようだ、珍しくもない組み合わせのカップルだな。 「む~しゃむ~しゃ!!しあわせ~♪まりさこのむしさんすごくゆっくりしてておいしいわ!!」 「ゆぅ!!くろうしてつかまえてきたかいがあったよ!!ゆっくりたべてかわいいあかちゃんをうんでね!!」 随分と仲の良い番いの様だな、最後の転生でとびっきり虐待し甲斐のあるゆっくりに出会えて俺は幸せだ。 ゆっくりとしての最後の虐待、盛大に楽しもうじゃないか。 カスタードの海の中で声こそ出せないものの、俺はプルプル体を震わせながら笑った。 「ゆゆ!!!まりさおなかのなかであかちゃんがうごいたわ!!!」 「ゆぅ!!!!ほんとう!!ありす!!」 「ほんとだよ!!とってもゆっくりうごいてるよ!!」 ありすは自分のお腹の中に息づく、小さなしかし確かな命の鼓動に母として感激し涙を流す。 「ゆぅ~ぅ‥」 「ありすどうしたの?ゆっくりなかないでねまりさがついてるよ!!すーりすーり」 「ゆぅ‥ありすはだいじゅうぶよ!!まりさがいてこれからあかちゃんもできるんだなーてっおもったらしあわせーってなみだがでてきたんだよ‥」 「ゆゆ?しあわせーなのにないちゃうなんてへんだよ!でもありすがしあわせーでまりさもしあわせーだよ!!」 この時、ありすは優しい夫に頬擦りされながらこの世の幸せをかみしめていた。 優しくて格好良いまりさとお腹の中にいる可愛い赤ちゃんとで幸せで都会派な家庭を築くという幼い頃に見た夢、それがもうすぐ叶うと思うと嬉しくてたまらなかった。 ありすはまだ胎内で育っているの赤ちゃんの中に、生前数多のゆっくりを嬲り殺しにしてきた生粋の虐待師の生まれ変わりがいることは知らない。 ありすはまりさとこれから生まれてくる赤ちゃんのことについて仲良く話し合った。 「まりさ!!あかちゃんがうまれたらたくさんすーりすーりしてあげようね!!」 「ゆゆぅ~♪あかちゃんがうまれるのがとってもたのしみだね!!」 そんな風に楽しく赤ちゃんが生まれた後の計画をまりさと話していると、ありすはまたお腹の中で赤ちゃんがゆっくりゆっくりと動くのを感じた。 「ゆゆゆ!!まりさ!!あかちゃんがまたうごいたよ!!」 「ゆぅ!!げんきですごくゆっくりしたあかちゃんだね!!」 ありすの体内で動いたゆっくりは虐待ゆっくりだった。 彼は暖かくてしっとりとした、とても居心地の良いゆっくりできるカスタードの中を苦虫を噛み潰したような顔で泳いでいた。 さっきから何なんだこの馬鹿ップルは、楽しそうにゆっくりしやがって会話を聞いてるだけで腹が立つ。 幸せそうな二匹の声、なにより幸せそうにゆっくりしているゆっくりの体内に居ることで俺のストレスがマッハだ、精神衛生上すぐにでもこいつ等を苦しめてやりたい。 俺は暫くの間カスタードの海を泳いでいたが、他の部分より柔らかく暖かい場所を見つけた。 お目当ての場所、姉妹の寝ている場所を見つけて俺は思わず微笑んだ。 本当に今すぐにでもこの二匹の泣き声、叫び声を聞きたいが今虐待するのはタイミングが悪い。 俺は目を瞑って過去に行ってきた虐待を思い出しながら気持ちを落ち着けた。 瞼の裏では数多くのゆっくりが悲鳴を上げている、やはり虐待は人間型の身体の方がやりやすい道具を使ったりできるからな、普通種に生まれたのは実に残念だ。 「ゆぅ~まりさだんだんおそとがくらくなってきたね!!そろそろおやすみなさいしようね!!」 「ゆっくりわかったよ!!ありすとあかちゃんたち!!あしたもゆっくりしようね!!すーりすーり!!」 「まりさもおやすみなさい!!すーりすーり!!」 ありすとまりさのすーりすーりは実に二分ほど続いた。 精々楽しんでおけお前達は明日地獄を見る事になる、俺はそんなことを考えながら両親同様に眠りに落ちた。 翌日、母ありすが起きると傍らに寝ていたはずのまりさがいなくなっていた。 葉っぱの上に木の実や柔らかい草そしてありすの好物の蝶が置いてある、恐らく狩りに出かけて行ったまりさが用意しておいてくれたんだろう。 「ゆぅ~まりさったらおこしてくれたらありすがいってらっしゃいのちゅっちゅあげたのに!!」 ありすはまりさの優しい気遣いに思わず頬が緩む。 「ゆっくりいただきます!!!む~しゃむ~しゃ!!しあわせー!!」 ありすはまりさに感謝しながら目の前のご飯をゆっくり食べ始めた。 虐待ゆっくりは親ありすが食事を終えるのを待っていた俺のすぐ隣では姉妹が体を揺らしながらゆっくりしている。 「ゆゆ~♪あかちゃんもゆっくりたべてね!!む~しゃむ~しゃ!!」 ありすはお腹の中でゆっくりと体を揺らす我が子に優しく語りかけながら、慌てず急がず時間をかけてゆっくりと食事をとる勿論十回噛んでから飲み込むのも忘れない。 近くに住んでいる元飼いゆっくりのぱちゅりーが、ご飯をゆっくり食べるとその分赤ちゃんがたくさんゆっくりできると教えてくれたからだ。 ありすはお腹の中で確かに息づいている三つの命が本当に愛しくてたまらなかった。 「ゆ~っぷ!ゆっくりごちそうさま!!とってもゆっくりできたわ!!」 親ありすが満腹になったせいかありすの中のカスタードはほんわりと温かくなって、お腹の中の赤ちゃん達がとてもゆっくりできる状態になっていた。 ありすのお腹の中の赤ちゃんはゆっくりと運動を始めた、ぷるぷると震えたり少しの距離を泳いだりし始めた。 「ゆゆぅ~あかちゃんたちとってもげんきだね!!」 ありすはにっこり笑って目を閉じて、お腹の中の赤ちゃんの様子をゆっくりと感じ始めた。 ゆっくりとお昼寝を始めた子、プルプル震えている子その隣でゆっくりしている子、お腹の中の赤ちゃんがゆっくりできてありすはとっても良い気分だった。 しかし残念ながらその子供たちのうち一匹だけゆっくりしていないゆっくりがいた。 彼はぷるぷると体を震えさせながらイライラしていた、そう虐待ゆっくりだ。 さっきから親ありすの食料を咀嚼する音、とりわけ美味しいものを食べて幸せそうに叫んでいる声が体の中で響いていて俺は非常に不愉快な気分だった、 しかしこの幸せにしている母ありすに、俺が直々に絶望と恐怖をゆっくり味わわせてやれると思うと笑みを抑える事が出来ない。 ふいに右頬に柔らかくてすべすべの何かが優しくこすりつけられた、恐らくは餡子の繋がった俺の姉妹だろう、俺はその姉妹に向かってに向かって思い切り体当たりを仕掛ける。 姉妹は俺の体当たりを食らって飛んでいく、体当たりをした時に体に帽子が当たらなかったので多分ありすだろう、そいつを俺は追いかけていく。 「ゆゆっ!!なんでそんなことするの!!」 ありすはお腹の中で起きた姉妹同士の喧嘩にありすは仰天した。 お腹の中の赤ちゃんは隣にいた赤ちゃんに挨拶をしただけなのにいきなり体当たりをされたのだ、自分のお腹の中で起こった予想外の出来事にありすはパニックに陥る。 「あかちゃんたちゆっくりしなきゃだめだよ!!ゆっくりなかよくしてね!!」 ありすはオロオロしながらお腹の中の赤ちゃんに懸命に語りかけ、忙しなく辺りを這いまわる。 ありすのお腹の中にいた虐待ゆっくりは湧き上がる歓喜を抑えることもせず、喜色満面でさっき自分が弾き飛ばしたまりさを追ってカスタードの中を泳いだ。 カスタードの温度が下がって居心地こそ悪くなったが、今はそんな不快な感触さえも母ありすの苦しみの表れと思えば虐待ゆっくりにとっては甘露に思えた。 ありすの体の中にいるおかげで、今ありすの感じている困惑や恐怖が体に直に染み渡ってくる、普通のゆっくりなら不快に感じるものだが虐待ゆっくりはその感覚に何とも言えない幸せを感じていた。 俺の突き飛ばしたありすは少し離れたところで体を震わせていた、俺が近付いてくることに気づいて必死に逃げようとするが痛みと恐怖で体が引きつっているのだろう、ほとんど前に勧めていない。 俺はさっき突き飛ばしたアリスに近寄ると再び体当たりを喰らわせた、体重を乗せたタックルはまたしてもありすを吹き飛ばした。 生まれる前の声も出せないゆっくり、痛めつけても悲鳴や苦痛の叫びをあげてくれないのは残念だが、その分親ありすが大声で泣き叫んでくれるので虐待ゆっくりはとても良い気分になれた。 「ゆぅ!!けんかしちゃぷくぅぅ!!だよ!!おねがいだからゆっくりしてね!!」 母ありすは体中に汗を浮かべて体を揺らしながら子供たちに語りかけた。 不意に、ぱちゅりーがお腹の中に赤ちゃんがいる時に急に動いたり、ゆっくりしないでいると赤ちゃんがゆっくりできなくなるという言葉を思い出した。 ありすは慌てて動きを止めると、目を閉じてお腹の中の赤ちゃんのために今までの幸せなゆっくりした生活を思い出そうとした。 しかしいくら楽しい思い出を思い出しても、お腹の中の赤ちゃんは小さな妹を虐めようと追いかけている。 「ゆゆぅぅ!!あかちゃんたちゆっくりしてね!!ゆぅ~ゆっくりしてね!!」 母ありすの声を聞きながら虐待ゆっくりは姉妹を追い続けた、震えながら怯えているありすに圧し掛かるとその体の上で何度も飛び跳ねる。 「ゆ!!だめだよ!!どうじでぇぞんなこどずるのぉ!!!!!」 俺に暴行を加えられているうちに口からカスタードでも吐いてしまったのだろう、ついさっきまで暖かかったありすの体はすっかり冷えきりいくら体当たりをしても微動だにしない屍になった。 「ゆぅあぁぁぁああ!!!!!ありじゅのあがじゃんがぁ!!!!ゆべぇぇえぇえ!!」 母ありすはお腹の中の我が子が姉妹を虐め殺すという異常事態にショックを受けて、口からカスタードを吐き出しているようだ。 おかげで周りのカスタードが冷たくなってゆっくりできない、もう少し中にいる可愛い赤ちゃんのことを考えて行動したらどうだ? 「ゆぅぅ…なんで‥なんでありしゅのあがじゃんがぁ…」 母ありすはカスタードを吐きながら虚ろな目で自分に降りかかった理不屈な出来事を誰ともなしに問いかける。 まぁ、恨み事はあの閻魔さんにでも言うんだな、俺を君の腹の中に転生させた彼女にね。 俺は腹の中にもう一匹いる筈の姉妹を殺そうとカスタードの中を泳ぐ。 「ゆぐぅ!!ゆっぐりやめでぇ!!」 母ありすは身重の体で巣の中の木の根に体当たりをする。 姉妹を殺した俺を殺す気の様だ、おお怖い怖い。 しかしお前の腹の中にはもう一匹子供がいるだろ?そいつまで殺してしまうぜ。 俺は未だ種類さえ分からない姉妹を殺すのは次の機会にすることにした、今殺してやって自分の腹の中に姉妹を皆殺しにした悪魔が一匹いる恐怖を味わわせてやるのも良い。 しかしそれではあまりに地味だどうせ最後の虐待になるんだ、最後の一匹を殺すのならばもっと相応しい時期に派手に嬲り殺しにしてやりたい。 「ゆぅ‥なんでどぉじでありじゅのあがじゃんがぢんじゃうのぉ!!!!」 カスタードを口から流しながらありすは泣き喚く。 食料集めから母まりさが帰ってくるまでありすは泣き続けた。 「ゆっくりただいま!!ありすげんきにしてた?」 「ゆぅ‥まりさぁ…あがちゃんが」 「どうしたのあかちゃんになにかあったの?ゆっくりせつめいしてね!!」 母ありすは母まりさに自分の体内で起こった出来事を話した、しかしお腹の中の赤ちゃんが姉妹を殺すなんて話は信じられるはずがない。 「ありすなにいってるの!!じょうだんでもまりさおこるよ!!」 「ゆぅ~!!ちがうわじょうだんじゃないわ!!!とかいはのありすはうそはつかないわ!」 「まりさのあかちゃんはそんなゆっくりしないこじゃないよ!!!おかしなことをいうありすはゆっくりしてないよ!!!あかちゃんのためにもゆっくりしてね!!!」 母まりさは質の悪い冗談に付き合わされたと頬を膨らませて怒りだした。 「ゆぅ‥でもあかちゃ」 「うるさいよ!!!まりさのあかちゃんはゆっくりしたいいこだよ!!!へんなことばっかりいってありすはあかちゃんがかわいくないの!?」 「ゆぅ‥とってもかわいいよ‥」 「それならばかなこといわないでね!!ありすのおなかのなかにはあかちゃんがいるんだよ!!へんなことばっかりいってあかちゃんがないてるよ!!!」 まりさは顔を真っ赤にして頭から湯気を出しながらありすを睨みつける、怯えるありすを見るとまりさはいくらか表情を和らげて語りかける。 「ゆ!ありすがゆっくりできないとあかちゃんがゆっくりできないよ!ともかくごはんをたべてゆっくりしてね!!」 「ゆぅ‥わかったわ!ゆっくりいただきますするわ!」 「ゆぅ~♪きょうはきのみとやくそうさんをとってきたよ!あかちゃんもありすもゆっくりできるとってもゆっくりしたごはんだよ!!ゆっくりたべてね!!」 ありすは強張った笑みでゆっくりと口の中に食事を放り込んでいく。 「む~しゃ‥む~しゃ‥しあわせ~」 「ゆっくりたべてね!む~しゃむ~しゃ!しあわせ~♪」 ありすの隣で嬉しそうにご飯を食べてゆっくりするまりさとは対照的に、ありすの表情は沈んだものでしあわせ~と口には出したがありすは全くゆっくりできないでいた。 (ありすのおなかのなかはおかしいよ‥あかちゃんがゆっくりしてくれなくてくるしいよ‥あかちゃんがあかちゃんをころしちゃったよ‥まりさがしんじてくれないよ!) 体の中心のカスタードはぎりぎりと痛みありすを苦しめる、突如として湧き上がった吐き気に脂汗をかく。 「ゆぅ‥うぅぅ‥」 「む~しゃ!ゆゆ?どうしたのありす?ゆっくりできてないよ!!」 「だいじょうぶだよ‥ありすはだいじょうぶだよ!」 「だいじょうぶなんだね!まりさびっくりしたよ!ゆっくりたべようね!」 ありすの番いのまりさは優しくて狩りが上手なゆっくりだったが、少々短気でかなり頭の悪いゆっくりだった。 まりさに相談してもなんの解決も望めない、ありすは頼りないまりさに小さなため息を一つつくと黙々と食事を続けた。 「すーり♪すーり♪ありすあかちゃんのちょうしはどう?いつうまれるの?」 「ゆぅ~もうすぐよ‥」 「ゆっゆ!!いまからとってもたのしみだよ!!」 頬擦りをしながら嬉しそうにお腹の中の赤ん坊のことを聞いてくるまりさにありすは上の空の生返事をしながら時間が過ぎた。 「ゆぅ~そろそろおねむのじかんだね!!ゆっくりおやすみなさいしようね!」 「わかったわ!ゆっくりおやすみなさい‥」 「ゆぴー‥ゆぴー」 「……」 狩りに出て体が疲れたのかすぐに寝息を立て始めたまりさ、自分と赤ちゃんのために頑張ってくれているのは分かる、しかし自分のことを信じてくれなかったのがとても残念だ。 自分が寝ている間にまた赤ちゃんが赤ちゃんに殺されるかもしれないと思うと怖くてたまらない。 「ゆぅぅ‥ゆぅぅ‥」 泣き声を噛み殺しながらありすは震えていた、ありすは眠りに落ちた後も体内の赤ちゃんが今まで見た事のない恐ろしい何かに虐待される夢にうなされた。 「ゆぅ~ん…ゆっくりねてすっきりだよ!おはようありす!!」 「ゆぅ~…」 翌朝まりさと一緒にありすは目を覚ました、まりさはにこにこと本当に幸せそうに笑っている、対照的にありすは顔色が悪く髪の艶も良くない相当精神的に参っているようだ。 「ゆゆ?げんきがないよだいじょうぶ?」 「だいじょうぶよ‥まりさはゆっくりごはんをとってきてね」 「ゆぅ~…」 ありすの只ならぬ様子に気づいたまりさは今日は一日そばに付いていてやることにした、ありすに優しく微笑みながら気晴らしを提案してみる。 「ゆゆ!!きょうはきのうのごはんがまだあるからごはんはとってこないよ!!それよりまりさはありすといっしょにおそとでひなたぼっこがしたいよ!!」 前日から様子のおかしかったありすを気遣っての判断だ、一度外の風に当ててやれば気も晴れるだろうとまりさは考えた。 「ゆぅぅ‥それどころじゃないわ‥」 小さく呟いたありすだが、まりさの言うように一度外でぽかぽかのお日様を浴びてゆっくりしたくなってきた。 ゆっくりは基本的に自分がゆっくりすることを求める生き物だ、お腹の中の心配をして苦しくなるより何も考えず楽しくゆっくりしたいと考える生き物なのだ。 ゆっくりの中でも賢いありす種の彼女でもカスタードに刻み込まれた本能に逆らうことはできなかった。 「ゆぅ…まりさがどうしてもっていうならいってあげてもいいわ!」 「ゆゆ!!きまりだね!!きょうはまりさとありすとあかちゃんでゆっくりすごそうね!!!」 ありすは大きく重くなった体を揺らしながらゆっくりゆっくり巣の外に出て行った。 暫くぶりに頬を外の風が優しく撫でる、ありすは体を伸ばしたり頭を振って外の空気を吸い込む。 後ろから今日のお弁当を帽子に詰めたまりさが跳ねてくる。 「ゆぅ~とってもいいおてんきだね!!」 「ひさしぶりのおそとはとってもきもちがいいわ!!」 二匹は嬉しそうにお喋りをしながら巣の近くにある空き地に向かって這いずっていく。 二匹は空き地にある切り株の傍でゆっくりし始めた。 ありすは暫くぶりの外での日光浴にとてもゆっくりとした表情でまりさと一緒にゆっくりする。 昨日自分がひどく苦しんだ何かが頭の中からすっと消えていく心地よい感触を楽しみながらありすはまりさと談笑を続ける。 「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー♪」 「とってもとかいはなあじだわ!!おなかのなかのあかちゃんもしあわせー♪だよ!!」 午前中一杯ゆっくり遊んでお昼のお弁当を食べる頃にはありすの悩み、体内の赤ん坊の異常行動はすっかりカスタード製の脳から締め出され記憶の片隅に埋もれてしまっていた。 「そろそろおうちにかえろうね!!」 「うん!おうちにかえったらゆっくりしようねまりさ!!」 それから三日間の間はありすの体には何の異常もなく体内の子供達はすくすくと成長していった。 ありすは巣の中でゆっくりくつろぎながらお腹の中の赤ちゃんに話しかけたり子守歌を歌ったりしてゆっくり過ごした。 その体内に残虐な餡子に飢えた殺戮者が息をしている事も忘れて、母ありすは普通の妊娠をしたゆっくりとしての生活を送った。 四日目の夜、ありすはまりさとの会話の最中にお腹がむずむずし始めた。 「ゆゆ!!おなかがむずむずするわ!!」 「ゆぅ!!ほんと?あかちゃんがうまれるんだね!!」 「ゆうぅ!!おなかがへんだよ…だんだんあかちゃんがでてくるよ!!」 でっぷりと肥え太った母ありすの顎下の穴からは元気な赤ちゃんが顔を出している。 「ゆゆ!!あかちゃんのおかおがみえてるよ!!」 「ゆぅ…まりさもうすぐあかちゃんがうまれるよ!!ゆっくりうけとめてね!!」 「わかったよ!ありすはあんしんしてあかちゃんをうんでね!!」 母まりさは生まれてくる赤ちゃんのクッションになろうとありすの真正面に陣取る、ありすのお腹の中のゆっくりはとっても気持ちよさそうな顔をしている。 「ゆぅ!!だだめよ!!あかちゃんもうすこしまって!!」 突如母ありすの挙げた悲鳴にまりさが反応する、母ありすは先までの苦しそうではあるが同時に気持ちよさそうだった表情を困惑と焦りで染め上げている。 「どうしたのありす!?だいじょうぶ?」 「あかちゃんが…うう…これじゃうめないよ!!!」 「ゆゆ?あかちゃんはあたままででてるよ!!もうすこしだからがんばってね!!!」 「あかちゃんがふたりでそうになってるんだよ!!!」 「ゆ?」 母ありすの必死の訴えに母まりさは不思議そうに首をかしげる、赤ちゃんが二人一緒に出てくるなら二倍ゆっくりできるのに何をそんなに焦って怯えているのかと。 母ありすの慌てる理由はたった一つしかない産道に一匹目がまだ生まれていないのにも関わらずもう一匹の赤ちゃんが入ってきたことだ。 体内妊娠型のゆっくりは赤ちゃんを産む時、産道を全力で窄めて産道から顔まで出ている子供を射出する。 もしもその際二匹のゆっくりが産道の中にいる場合、顔が出ている先頭の赤ゆっくりを生む為に産道を窄めた場合中の赤ゆっくりは潰れて死んでしまうのだ。 「あかちゃんがふたりどうじにうまれるんだね!!まりさはしっかりうけとめるからあんしんしてね!!」 「そうじゃないわ!!!うぅぅ!!うごかないでね!!」 「ゆっくりわかったよ!まりさはうごかないよ!!」 「まりさにいってないよ!!!ありすはあかちゃんにいってるの!!!!!」 さてまだ姉が生まれていないのに産道に潜り込んできたせっかちな赤ゆっくりは虐待ゆっくりだった。 真っ暗な光の無い産道を体を圧迫されながらも虐待ゆっくりは前に前に進んでいく、産道の中はとても温かく眠気を誘うものがあるが虐待ゆっくりは眠気を振り払ってひたすらに産道を進む。 目指すは目前で無防備な姿をさらしている姉ゆっくりの背中だ、脳裏に一度目の転生で味わった姉妹の餡子の味が蘇る。 あの蕩ける様な柔らかい甘さ…生まれる前の姉の柔らかくてすべすべの皮、噛み破ったその先にある至福の味に虐待ゆっくりは涎を垂らす。 虐待ゆっくりは母ありすと母まりさのコントの様な掛け合いを楽しみながらゆっくり産道を進んでいき柔らかい壁にぶつかった。 壁はとても温かくてすべすべでときおりプルプルと震えている、ついに姉ゆっくりに虐待ゆっくりは到達した姉の柔らかい皮を一嘗めするとまだ小さい歯を姉に突き立てる。 「ゆぅ~!!まりさじゃはなしにならないわ!!ちかくのぱちゅをつれてきてね!!」 「ゆゆ?どうしてまりさはあかちゃんがうまれるところみたいよ!!あかちゃんをうけとめたいよ!!」 「あかちゃんがたいへんなの!!!まりさがかえってくるまでがまんするからはやくいってきて!!!!!!」 母ありすの剣幕に押され渋々巣から出ようとした瞬間、母ありす正確には母ありすの産道でゆっくりしているはずの我が子の様子に目を見張る。 「あかちゃんがいたそうにしてるよ!!!!!!へんだよ!!へんだよ!!!」 「ゆぅ!?なにいってるのまりさあかちゃんがいたそうなかおしてるってほんと!!?」 「ほんとだよとってもくるしそうなかおしてるよ!!!」 母まりさの緊迫した血の気の引いた真っ青な表情に母ありすは自分の体に数日前に起こった異常事態、我が子の子殺しを思い出す。 「ゆあぁぁぁっあぁぁあ!!!!!」 「ありすどうしたのおちついてね!!!」 「だずげであがじゃんがあがじゃんをいじめるどっ!!!ゆっぐぢだずっげて!!!!!」 半狂乱になって騒ぎ立てる母ありすに母まりさはすり寄っていく。 「ゆっくりおちついてね!!!」 「ゆがあおあぁぁぁぁぁぁああっぁ!!!!!!!だずげでぇえぇ!!!だずげでぇいえ!!!!!!」 「ゆばっ!!うぅ…」 出産中のゆっくりとは思えない馬鹿力でまりさを跳ね飛ばすありす、床に叩きつけられた母まりさは二つの愛する顔を改めて見てみる。 恐怖と混乱で暴れまくる母ありすの怯えきった顔、ありすから生まれようとしているにもかかわらず顔を苦痛を歪ませて口から少量の餡子を垂らしながら涙を流す我が子。 群れの中でも餡子の足りていない事で有名なまりさも、この状態が自分達の力ではどうにもならない異常事態だということが分かった。 「いいますぐぱちゅをよんでくるよ!!ゆっくりまっていてね!!!」 愛しい妻と我が子に背を向けると母まりさは巣から出て行く、焦りと恐怖で縺れる底部を叱りつけながらまりさは草原を駆ける。 一方巣の中に一匹になったありすは大声で叫びながら両目から涙をあふれさせていた。 赤ちゃんが苦しんでいる赤ちゃんが産めない赤ちゃんを助けられない、この三つがありすの頭の中をぐるぐる回って正常な思考を根こそぎ奪っていた。 「なんでぇ!!!なんでぇえぇええ!!!!!!」 ありすは大声で何かに向かって問いかけながら口から液状のカスタードを流す。 血走った眼で大声で泣き叫び声をあげ続ける母ありすとその体から顔を出し苦痛に呻き声をあげる赤ゆっくり、数分前までの幸せなゆっくりプレイスは地獄の様相を呈していた。 そしてその地獄には苦しむ亡者や罪人だけがいる場所ではない哀れな犠牲者をを責め嬲り苦しめる悪魔、虐待ゆっくりがいた。 虐待ゆっくりは母ありすの絶叫を楽しみながら姉の餡子を口にしていた。 歯で噛み裂いた傷口から尖らせた舌で餡子を掬いとっては口にする、餡子を食べるごとに体中に広がる異様な幸福感に虐待ゆっくりは戸惑っていた、生まれる前のゆっくりがまさかこんなに甘く味わい深いとは。 壊れかかった母ゆっくりのなんともいえない耳触りの良い悲鳴、抵抗することもかなわず徐々に体を削られていく赤ゆっくりの体の震えや温度の変化、俺は今最高の気分だ。 そんな虐待ゆっくりの視界が不意に歪み体中に激痛が走る、体がまるで動かず口からなにか温かいものが出て行く。 地獄に行く前にもう一口と虐待ゆっくりが伸ばした舌が赤ゆっくりに届く事はなくそのまま母ありすの体内で餡子をまき散らすことになった。 「やめでぇぇぇええ!!!!」 母ありすは絶叫しながら虐待ありすに体を齧られていた赤まりさを射出した、これ以上は赤ちゃんの体が持たないと判断してだ。 産道にいたまりさの妹がグチャと音を立てて潰れる音がする、勢いよく産道から飛び出た赤まりさは背中から餡子を流しながらもがいている。 「ゆびゅ!!ゆぁ…ぁぁ」 赤ちゃんをみんな元気に産みたかった赤ちゃんをまりさに受け止めてほしかった、赤ちゃんの舌ったらずなゆっくりしていってね!!に元気にゆっくりしていってね!!を返してあげたかった。 それなのに母ありすはたった一人で怖くて苦しい思いをして大けがをした赤ちゃんを産むためにもう一人の命を奪ってしまった。 そうして産んだ赤ちゃんも背中からぼたぼた餡子を流しながら呻いている、あれじゃもう助からない。 「ゆぁあぁが!!!!!うぅゆぇえあぁぁあああああ!!!!」 母ありすは口からカスタードとともに魂の断末魔を上げる。 体の中心に焼けるような痛みと絶望を感じながら母ありすは壊れた。 「ゆぁ…ゆぅ…」 赤まりさは背中に感じる焼き鏝を押し当てられたような灼熱の痛みを感じながら口から餡子を吐き出す。 産道から外の世界に出て行こうとするとき感じた背中の痛み、徐々に無くなっていく自分の大切な何かに苦しみながらもなんとか生まれる事が出来た。 もう一人の母の柔らかくて温かい体に受け止めてもらえると信じ硬い地面に体を叩きつけられる激痛を味わい、自分をお腹の中で育ててくれた母の嘆きと苦悩に満ちた叫び声を耳にしながら赤まりさは思う。 どうして喜んでくれないのと、体中に感じる苦しさに体を痙攣させながら赤まりさは口をぶるぶると震わせる、背中の焼けるような痛みとは対照的に赤まりさの体は冷えはじめていた。 「ゆぅ…ぅ」 最後に生まれる前にお母さん達に言ってすーりすーりしてもらおうと思っていた言葉を喋ろうとする。 「う…ゆぅ…」 思い出せない‥まりさはおかあさんになんて言いたかったんだろう? 赤まりさは急激に重くなってきた瞼を閉じるその瞬間までそのことを考えていた。 BYゆっくりな人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/259.html
夏の日差しも強くなってきたある日、俺の家の縁の下に2匹のゆっくりが住み着いた。 ゆっくり。 低い知能と生首のような体が特徴の生きる饅頭。 畑荒らしから騒音被害まで、幅広く手がける害獣だ。 そんなゆっくりであるが、住み着いたゆっくりは他に比べて知能があるようで、俺のテリトリーを犯すことはなかった。 「おにいさん!れいむ達をゆっくりさせてね!」 「おにいさんのおうちをちょっとだけ貸してね!!めいわくはかけないよ!!」 初日には、玄関の前で待っていたゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が丁寧に挨拶をしにきた。 エサは自分で取るから、子供を産むまでの間すこしだけ家を貸して欲しいという。 猛暑が続く中、この若いカップルは手ごろな巣を見つけられなかったのだという。 「うるさくしないなら、縁の下でゆっくりしてていいよ」 その答えに納得し、2匹のゆっくりは生活を始めた。 約束を守っているのだろう、普段から何も騒音は聞こえてこなかった。 朝日が昇ったときの「ゆっくりしていってね!!!」という一言、ニワトリのような習性が気になったくらいだ。 また、交尾はうるさいだろうと覚悟してはいたが全く問題は無かった。 後で聞いた話だが、2匹は近所の森で交尾をしていたらしい。 ゆっくりプレイスである縁の下を離れ、いつ外敵に襲われるのかもわからないところで青姦とは、健気なゆっくり達である。 そんな生活も1週間が経った今日、ゆっくり霊夢は妊娠をした。 縁の下をたまたま覗くと、そこには頭に茎を生やしたゆっくり霊夢が昼寝をしていたのだ。 昨日までは2匹でエサを取りに行ったり、外を遊んだりしていたので、昨日のうちに受精(受粉?)したのだろう。 「お、れいむ。赤ちゃんができたんだね」 声を掛けるとぴくっと反応し、目を覚ました。 すぐさま身を引き、警戒態勢を見せる。 「ゆっ・・・!おにいさん、れいむたちは静かにしてるよ!」 そういいつつ周囲を見渡す。 身軽なゆっくり魔理沙はエサでも集めに行っているのだろう、そこにはゆっくり霊夢しかいない。 「安心してよ。おにいさんはれいむをいじめないよ」 そう、俺はゆっくりを虐待などしない。 生き物を暴行したり、ましてや殺害するなど俺の趣味ではない。 「ゆ、おにいさん。れいむは赤ちゃんがいるからあまり動きたくないよ」 ヘタに動くと茎が上部にぶつかって折れてしまうかもしれない。 それに赤ちゃんが実った大事な時期だ。力の強い人間にはあまり関わりたくないこともあるだろう。 「そうだね。そこでゆっくりしててね。それと、赤ちゃんが生まれても少しの間ならゆっくりしててもいいから安心してね」 「ゆっ!」 「騒がないなら、ずっとゆっくりしててもいいからね」 「ゆゆ!おにいさんありがとう!」 「どういたしまして」 「でも、森におうちを作ったから、もうすぐしたら出て行くね。赤ちゃんは元気にゆっくりさせてあげたいよ!」 エサ集めだけでなく、ちゃんと巣も作っていたようだ。 目先のことだけでなく、後のこともしっかり考えているあたり知能の高さが伺える。 「そうか。じゃあお兄さんは家に戻るよ。もし敵が来たら騒いで教えてね。お兄さんが助けてあげるよ」 「ありがとうおにいさん!おにいさんのおかげでゆっくりした赤ちゃんになりそうだよ!」 茎に気をつけながら顔を地面に近づけるゆっくり霊夢。 一瞬、何をしているのかと思ったが、お辞儀をしているのだと理解した。 もともとは飼いゆっくりだったのかもな、と思ったがどうでもよいことだった。 夕方、エサ取りから戻ってきたゆっくり魔理沙が丁寧にお礼を言いに来た。 感謝の気持ちということでエサのムカデを置いていこうとしたが、俺はそんなものを食べないので遠慮しておいた。 そんな賢いゆっくりに感動し、俺はお菓子を恵んであげた。 「れいむとゆっくり食べるよ!」 ゆっくり魔理沙は喜んで持ち帰ってくれた。 瞬く間に1週間が経った。 ゆっくり霊夢の茎に実った赤ちゃんれいむはプチトマトほどのサイズになり、いまにも生れ落ちそうである。 「ゆ~♪ゆっくり~♪」 「ゆっくりした赤ちゃん~♪ゆ♪ゆ♪ゆ♪ゆっくりした子になってね~♪」 庭に出た2匹が燃えるような炎天下の中、楽しそうに歌を歌っていた。 一晩で実り落ちることもあると話には聞いていたのに、1週間もかかるとは。 歌詞の通り、ゆっくりした赤ちゃんだ。 目もまだ開いていないが、親ゆっくり達の声が聞こえるのか、にこやかな笑顔をしている。 「ゆっ!!!?」 突然、歌うのをやめるゆっくり霊夢。 それと同時に2匹は茎の上の赤ちゃんを見上げる。 ゆらゆらと動き始める赤ちゃんゆっくり。それは霊夢種であった。 ついに出産(?)の時が来たようだ。 俺は縁側でその様子をのんびりと眺める。 ゆらゆらと動いていた赤ちゃんれいむは、どんどんとゆれを強くし、ついに地面にぽとりと落下した。 ぴっちりと閉ざされていた目がゆっくりと開いていく。 親ゆっくり達は赤れいむに真剣な顔をにじり寄せ、一言も喋らない。 赤れいむは親の姿をゆっくりと確認すると 「ゆっくちちていってね!!!」 と第一声をあげた。 ぱあっと笑顔になる2匹の親れいむ。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 お決まりの文句を返しながら、赤れいむと頬と頬をすり合わせる。 幸せそうな光景だ。 「ゆっくりしようね!!!ずっとゆっくりしようね!!!」 「れいむに似てすごくゆっくりした赤ちゃんだね!!!」 ぽろぽろと涙を流す親れいむに顔を摺り寄せる親まりさ。 1匹が生れ落ちると、その後は早かった。 次々に生れ落ち始め、10分もすると茎には赤ちゃんがほとんど無くなった。 そして今、ついに最後の一匹が揺れ動いている。 ゆっくり魔理沙だ。 「最後までゆっくりした赤ちゃんが落ちそうだよ!まりさ!」 「ゆっくりうまれていいんだよ!」 親まりさの言うことなどお構い無しに、早く生まれたいという欲求を感じる揺れ動き方であった。 すぐに生れ落ち、他の姉妹のようにお決まりのフレーズの第一声をあげた。 「ゆゆうう!!!れいむの可愛い赤ちゃん、すごくゆっくりしてるよ!!」 「こっちの子はまりさにそっくりでとってもゆっくりした子だよ!」 互いに子供をパートナーに似て可愛いと言うあたり、人間の出産後のようだ。 生まれたのは計10匹。赤れいむが6匹と赤まりさが4匹。 「ゆっくち!おかあさんおなかすいたよ!ゆっくちしたいよ!」 「まりさもゆっくち!」 「ゆっくちさせて!」 お腹を空かせた赤ゆっくりに気がついた親れいむ。 縁の下のエサでも取りに行くのかと思ったら、いきなり親まりさが親れいむの頭に乗りかかった。 もう交尾をするのかと思っていると、親まりさは親れいむの茎を根本から噛み切った。 ばさりと音を立てて倒れる茎に困惑する赤ゆっくり。 「それが最初のごはんだよ!!みんなでゆっくり食べようね!!」 親れいむの茎はどうなるのかと思ったが、ちゃんと再利用されるようだ。 案外おいしいようで、赤ゆっくり達は必死で貪り始める。 「ゆ!おいちいよ!!」 「ゆっくちできるう!」 そんな様子を眺めていると、親まりさが俺の方に跳ねてきた。 「おにいさん、お話があるんだよ!」 「ん、なんだい?」 「まだ赤ちゃん達が小さいから、もう少し大きくなるまでここでゆっくりさせてほしいよ!」 詳しく話しを聞くと、森の中の巣はかなり奥のほうにあるらしく、そこまで赤ゆっくりを連れて行くのは大変だと判断したとのこと。 「すこしうるさくなっちゃうかもしれないけど、ゆっくりさせてほしいよ!」 「れいむもおねがいするよ!!できる限り静かにさせるよ!!」 いつの間にか親まりさに寄ってきていた親れいむまで懇願する。 そして2匹が顔を地面に近づけた。これは土下座の意味かもしれない。 「うるさくしないんだったらいいよ。でも早いうちに出て行ってね」 赤ゆっくりは相当うるさいので、きっとムリだろう。 だが俺は赤ゆっくりを可愛がりたいとも思っていたので丁度よかった。 「ゆ!できるかぎりがんばるよ!!!おにいさんありがとう!!」 「お兄さんはゆっくりできるいい人だね!!ありがとう!!」 親ゆっくりが喜んでいることに、赤ゆっくり達も意味は分からないが嬉しいようだ。 きゃっきゃとはしゃいで俺に寄ってきた。 夕方、玄関のところでフラフラしている親まりさに会った。 なんでも、出産の後、体力回復のために親れいむに全ての備蓄を食べさせてあげたとかでエサがないという。 今からエサを取りにいっては、生後、茎しか食べていない赤ゆっくりには酷であろう。 俺は出産祝いということで、お菓子を親まりさに譲ってあげた。 その日の夜。 なにやら騒がしいので外に出ると、縁の下をゆっくりレミリアが襲撃していた。 「ゆ!おにいさん助けて!まりさが死んじゃうよ!!」 跳ね寄ってきたのは親れいむと赤ゆっくり10匹。 どうやら親まりさが囮になって、俺に助けを求めにきたようだ。 急いで縁の下を覗くと、半分くらいになった親まりさが俺を見つめていた。 胴体つきのゆっくりレミリアは縁の下に入りにくいようで、中々食べられないでいる。 「こら、人の家で何をしているんだ」 ゆっくりレミリアの足を掴み、思い切り地面に叩き付けた。 「うあ!!ぶびっ!!!」 顔面から突撃したゆっくりレミリアが妙な声を上げ、気絶した。 ゆっくり霊夢達にとっては凶悪な捕食者であっても、人間から見ればゆっくり霊夢と対して変わらない。 「ま゛りざあああ!!!」 ゆっくりレミリアが気絶しているのを確認すると、親れいむが物凄い勢いで縁の下に飛び込んだ。 しかしそこにいたのは半分に千切れた親まりさ。 「まりざああ!!!ゆっくりしようよ!!!!赤ちゃんとずっとゆっくりするんだよ!!!」 親れいむが引きずり出してきた親まりさを見ると、息も絶え絶えでいつ死んでもおかしくない様子だった。 「れいむ・・・まりさはもうだめだよ・・・ぶぴっ!」 ごぽりと餡子を吐き出す親まりさ。 その姿にぷるぷると震える赤ゆっくり。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!!ゆ゛っぐりして、ま゛りさ!!!まりさが死んじゃゆっくりできないよ!!!」 「ゆっ・・・れいむには赤ちゃんがいっぱいいるよ・・・ゆっくりできるよ・・」 「やだよ!!まりさがいないとゆっくりできない!!まりざああああ!!!」 必死で頬をすり合わせるが、反応を示さない親まりさ。 もう死が間近に迫っているのだろう。 「れいむと一緒でまりさはゆっくりできたよ・・・ありがとうれいむ・・・」 「ゆっ!!!??やだよ!!もっとゆっくりしたいよ!!!!」 親れいむが傷口を舐めても、もはや餡子は止まらない。 「あかちゃんと、まりさのぶんも・・ゆっくりしていってねぇ・・・」 そういうとまぶたをゆっくりと閉じ、もう親まりさは目を覚ますことはなかった。 「ゆうううううう!!!!!」 生まれたばかりの赤ゆっくり達も、親れいむの様子から何かを察したのだろう。 ぽろぽろと涙を流している。 空気が重かった。 俺はゆっくりレミリアを縄で厳重に縛ると部屋に戻った。 次の日、玄関で待っていたのは目を真っ赤にした親れいむであった。 「おにいさん、まりさがいなくなったけど、れいむは頑張るよ。きのうは助けてくれてありがとう」 いつものような元気が無かったが、赤ちゃんのために頑張らなければならない。 そんな気迫を感じた。 それにあの赤ゆっくりは親まりさが遺した唯一のものだ。 なんとしても育てなければならないのだろう。 「またレミリアが襲ってきたら、すぐに助けを求めてきていいんだからな」 「ゆっくり理解したよ。れいむは今からご飯を取りにいくから、もし何かあったら助けてね」 熱い日差しの中、燃えるような地面を親れいむは跳ねていった。 ゆっくりの巣の前にくると、縄とゆっくりレミリアの服が落ちていた。 特に気にもせずに、赤ゆっくりを呼ぶ。 「ゆっくち!?」 「おにさんはゆっくちできる!?」 ぞろぞろと縁の下から湧いて出てくる赤ゆっくり。 昨日、ゆっくりレミリアを撃退したのを見ていたからだろう、まるで警戒などしていない。 親が食われたというのに、昨日よりぷっくりとしている。 縁の下を見ると、アイスの棒が突き刺さったお墓が見えた。 親れいむが作ったお墓だろう。小さなたんぽぽが供えられ、綺麗なつくりをしている。 「おにいさん!まりさおなかすいたよ!!」 「まりさ!そんなこといっちゃだめだよ!!」 まだ赤ちゃんだというのに、妙に行儀が良い。 親の教育が良いからだろうか。 きっともう、この家の主が俺だと教えたのだろう。 「れいむは頭がいいね、ご褒美にお兄さんがおいしいものをあげるね!」 俺は用意していたホールのショートケーキを赤れいむ達の前に置いた。 「ゆ!?いいにおいだよ!!」 「ゆっくちできそう!!」 「おにいさん、ほんとうにたべてもいいの!?」 すぐに飛びつくかと思ったら、全然飛びつかない。 何度も俺に食べていいか確認してくる。 「いんだよ。これはまりさやれいむ達のために用意したんだよ」 もしかしたら、親れいむに人間からエサを貰うことを禁止されているのかもしれない。 里の人間の中には、ゆっくり虐待が趣味の人間が多数存在する。 彼らは大抵、おいしいお菓子や、ゆっくりプレイスの提供でゆっくりを連れて行き虐待する。 あの賢い親れいむはそれを知っていて、人間は恐ろしいものだと教えたのかもしれない。 「お母さんれいむには内緒にしておいてあげるよ!だからみんなも秘密にしようね!!」 内緒ならいいだろう。 赤ちゃんゆっくりはお菓子が大好きなのは知っている。 俺はいじめたりなんかしないし、親れいむの教育はしっかりしているから大丈夫なはずだ。 ただ、親れいむが怒るかもしれないので釘は刺しておく。 「みんな、絶対にお母さんれいむには内緒だよ!それと、他の人間から食べ物を貰っちゃダメだよ! それが分かったら、ゆっくり食べてね!!」 そう言ってもしばらくそわそわとしていたが、赤まりさがかぶりついたのをきっかけに、一斉にケーキを食べ始めた。 「ゆっくち!!!おいちい!!!」 「うっめ!!めっちゃうめ!!!」 「ハムッ!!ハフハフ!!ハフッ!!」 「ゆっくちぃー!!!」 「ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪」 赤ゆっくりの食欲は恐ろしいもので、あっというまに巨大なケーキを食べつくしてしまった。 俺は近所でお菓子を買ってきて、お腹がいっぱいになるまで食べさせてあげた。 「みんな、約束は覚えてるかい?」 満腹でゆっくりしていた赤ゆっくりに質問する 「ゆっ!おかあさんにはないしょだよ!!」 「ぜったいにいわないよ!!」 「だからおにいさん、もっとゆっくりしようね!!!」 「いわないよー!!!」 さすが、あの親れいむと親まりさの子供だ。 ちゃんと覚えていた。 俺はその答えに満足すると、部屋へと戻った。 もう日も暮れ始めている。 そろそろ親れいむも戻ってくるはずだろう。 親れいむはエサを確保し、帰路についていた。 昨晩はゆっくりレミリアに最愛のパートナーを食べられてしまい、気分はどん底であった。 しかし、自分には最愛の赤ちゃん達が残っていた。 それだけが親れいむの希望だった。 その赤ちゃん達のためなら、どんな気分でもエサを取りにいける。 口には大量のご馳走が入っている。 これを見た赤ちゃん達の喜ぶ声が楽しみだ。 歌いだしたいのをこらえ、里の真ん中を通って帰る。 家を出るときに、あの優しい人間がリボンにバッヂをつけてくれた。 飼いゆっくりにつけられるバッヂで、これがあれば人間はイジワルをしてこない。 安心してエサを取ってきなさい、人間は優しく撫でてくれた。 外敵の心配のない人の作った道を堂々と通れることは、親れいむにとって幸せなことだった。 片親であの大所帯を養えるか不安であったが、しばらくは何とかなりそうだ。 「ゆっくり帰ったよ!!ゆっくりしてた!?」 「ゆ!おかあさんだ!!」 「ゆっくちおかえりなさい!!」 縁の下に入ると、帰りを待ちわびていた赤ゆっくり達が寄ってきた。 嬉しくて涙が出そうになるのを必死でこらえる。 子育ては初めてだが、あの賢いパートナーとの子なのだ。 自分の知識を全て教え、賢くゆっくりできる子にしてみせる。 昨晩は、「人間は危険だから絶対に油断してはならない」ということだけを教えてあげた。 ゆっくりレミリアを一撃でしとめたあの人間を見て、人間の強さはすぐに理解してくれた。 「みんな!おいしいご飯だよ!ゆっくり食べようね!!!」 「ゆっ!ごはん♪ごはん♪」 「ゆっくちたべたい!」 寄ってきた赤ゆっくりの前に、口の中からエサを吐き出した。 ムカデ、ダンゴムシ、たんぽぽの葉にモンシロチョウ。 ご馳走の山だ。 「ゆっ・・・!?」 「ゆ!なにこれ!?」 「ゆっくち!?」 そのご馳走を見た赤ゆっくり達が、困った顔をしてこちらを見ている。 ゆっくり種が日ごろ食べるものを食べるのは、今日が始めてなのだ。 これまでの食事は、茎と、親まりさが持ってきたお菓子だ。 親まりさは特に何も言わなかったが、あれはきっとあの優しい人間が分けてくれたのだろう。 それに昨晩は、おいしい肉まんもあった。 「これがれいむ達のいつものご飯だよ!おいしく食べていってね!!」 食べそうにない赤ゆっくり達に食事を促す。 そして、一匹の赤まりさがダンゴムシに口をつけた。が、 「ゆ!おいちくない!こんなの食べられないよ!!」 ぺっ、とダンゴムシを吐き出す赤まりさ。 他の赤ゆっくりも違うものに手を出すが、結果は同じであった。 「まじゅい!!ゆっくちできない!!」 「こんなのいらないよ!!!」 「ぜんぜんごちそうじゃないよ!!」 次々にご馳走を吐き出す赤ゆっくり達。 「そんなことないよ!!!おいしいよ!!ゆっくり食べてね!!」 お手本を見せようと、ムカデを食べてみせる。 「ゆ!そんなきもちわるいのいらない!」 「おかあさんだけたべていってね!!」 ぷいっと奥に行ってしまう赤ゆっくり。 「ゆ!ちょっと待ってね!!ご飯を食べないとゆっくりできないよ!!」 そんな声も無視され、ぽつんと1匹、親れいむは取り残された。 孤独感が襲ってくる。 「ゆっ・・・。せっかくご馳走を用意したのに・・・」 ダンゴムシはこんなにおいしいのに。ムカデはあまり手に入らない御馳走なのに。 たんぽぽの葉は自己流の調理をした自信作なのに。 目の前に刺さったアイスの棒を前に、ひっそりと親れいむは涙をこぼした。 次の日、俺が縁の下を覗くと赤ゆっくり達が跳ねて来た。 「ゆ!おにいさん!まってたよ!!」 「おにいさんれいむおなかすいたよ!!」 「きのうのをまたたべたいよ!!」 親れいむはエサでも取りに行っているのだろう。出てくる気配はなかった。 「みんな、お母さんれいむには内緒にしてくれたかな?」 「ゆ!ちゃんとれいむないしょにしたよ!!」 「まりさちゃんとだまってたよ!ゆっくちできるよ!」 ちゃんと約束を守っている。やはり親に似ているんだな。 「よーし、お兄さんは今日はもっとおいしいものを用意してあげるよ!」 ゆー!と歓声が上がった。 俺は用意していた完熟マンゴーを取りに部屋へと戻った。 夕方、傷だらけの親れいむはエサ取りを終え、家に向かっていた。 昨日はいきなり虫や草を用意してしまったからビックリしたのだろう。 今日はちゃんと食べられるよう、危険を冒しながらも木苺を取りにいった。 なんとか木苺を取ったものの、帰る途中に野良犬に襲われあと一歩で食べられてしまうところだった。 生き残れたのは子供を守らなければという強い母性があったからだ。 遠出をしても大丈夫なよう、おうちには昨日のムカデやダンゴムシを置いてきた。 空腹に我慢できなくなったら食べてくれるはずだ。 口内の木苺を飲み込まないよう注意して跳ねながら、喜ぶ赤ちゃんの顔を思い浮かべた。 「すっぱい!こんなのいらないよ!」 そう言ったのは赤れいむであった。 それを皮切りに、他の赤ゆっくりも続ける。 「こんなの食べられない!もっと甘いのを用意してね!!」 「おかあさんもっとゆっくちさせてね!!」 次々に木苺を吐き出す。 あまりのショックに、傷だらけの体が痛んだ。 「どうじでぞんなごと言うのおお!!おがあざんががんばっでどっでぎだんだよ!!!」 自分のしつけが悪いのだろうか。 地面に吐き出された木苺を見ていると、胸が締め付けられる想いだ。 「いっしょうけんめいとってきてもおいちくないよ!!」 「そうだよ!ゆっくちできない!」 心まで傷つけられる親れいむ。 自分は何のために頑張って木苺を取ってきたのだろう。 ふと、昨日のご飯を置いた場所を見ると、何もなくなっていた。 「ゆ!みんな、昨日のご飯を食べたんだね!だからお腹いっぱいなんだよね!!」 そうであって欲しい。 切なる願いだった。 しかし、そんなことを知らない赤ゆっくりはこともなげに答える。 「ゆ?あんなきもちわるいのすてちゃったよ!!」 「あんなのがここにあるとゆっくちできないよ!!」 「おかあさんはゆっくちできない!!!」 あれほど必死になって集めた御馳走が捨てられた。 無意識に涙がこぼれた。 パートナーをなくしてから、いったい自分はどれだけ涙を流せばいいのだろう。 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛・・・・」 それに、あの優しい人間との約束だ。大きな声で泣くこともできない。 そんな親れいむの姿を疎ましく思ったのか、赤ゆっくり達は奥へと姿を消した。 また1匹になった親れいむは、丁寧に木苺を集めて昨日と同じ場所に置いておいた。 もし自分がいないときにお腹を空かせては、ゆっくりした親まりさに申し訳が立たない。 アイスの棒の前で今日も一人、親れいむは眠りについた。 それから1週間、赤ゆっくり達は親れいむのエサに一切手をつけることはなかった。 それなのに日々、どんどんと成長し、今ではソフトボールほどになり子ゆっくりといえるほどになった。 なぜお腹が空かないのかと尋ねたが、 「ゆっくちできないおかあさんにはおしえない!」 と一蹴された。 しかし、どんな形であれ子供が大きくなることは嬉しいこと。 親まりさもきっと喜んでくれるはずだ。 毎日、きっと今日こそはご飯を食べてくれる、と信じてエサを取り、全て捨てられた。 最近では見ただけで口もつけてくれなくなったが、それでも親れいむは懸命にエサを運び続けた。 今日のエサはハチミツとハチノコだ。 全身を毒針で刺されながら確保した。 甘いハチミツならきっと口をつけてくれる。そう信じたから頑張ることができた。 しかし、夕方に散々、メイプルシロップたっぷりのホットケーキを食べた子ゆっくり達はハチミツだけで我慢ができるワケがなかった。 ハチノコを地面に吐き捨てながら、言う。 「ハチミツしかおいしくないよ!!!」 「もっとハチミツをとってきてね!」 ぴくぴくと動くハチノコを見ながら、親れいむはまた胸が締め付けられる。 ハチノコにハチミツをかけたものは、親まりさの大好物だった。 いままでに2回しか食べたことがない。 飼いゆっくりであった親れいむと、同じく飼いゆっくりであった親まりさが出会ったのは、蜂の巣を狩ろうと木の下で作戦を練っていたときだ。 2匹で協力して蜂に刺されまくりながらもなんとか確保したとき、親愛の情が芽生えた。 子供を作ろうと誓い合ったあの日も、蜂の巣を狩り、2匹で祝いあった。 いわば、これは親ゆっくりの絆の食べ物なのだ。 それなのに、子ゆっくりは食べてくれない。 「ゆ!おかあさんのもってくるものは、ぜんぜんゆっくりできない!」 「しんじゃったおかあさんのほうが、おいしいものもってきてくれた!」 出産後、初めてエサとして食べたものは親まりさが持ってきた、人間から貰ったであろうお菓子。 子ゆっくりの中では親まりさは狩りの達人という位置づけになっていた。 「おかあさんがたべられればよかったのに!!!」 「ゆっくちできないおかあさんより、しんじゃったおかあさんのほうが、まりさたちはゆっくりできたよ!!」 ぼろぼろとこぼれる涙。 どうして自分はここまで嫌われてしまったのだろう。 一生懸命エサを運んだのに。 ただ、子供達を喜ばせたかっただけなのに。 「まりさ・・・」 もういないパートナーを呼ぶ。 しかしそれに答える声はない。 また始まったよ、とばかりに子ゆっくり達は離れていった。 それからさらに1週間が過ぎた。 さすがにゆっくりも大きくなり、うるさくなってきたので親れいむを呼んだ。 「なあ、れいむ。もうそろそろ森の巣に移動してくれないか?子供達も大きくなったろう」 しばらく見ない内に、妙に親れいむはやつれていた。 「ゆ・・・、分かったよ。すぐに移動するね」 そういうと、縁の下に跳ねていった。 「みんな、ここからお引越しをするよ!」 縁の下から親れいむの気丈な声が聞こえる。 そして子ゆっくり達のブーイングも聞こえた。 「やだよ!」 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!おにいさんはやさしいからここにおいてくれるんだよ!」 「おにいさんとはなれたくないよ!!」 もはや、親れいむよりも人間に懐いてしまっている。 「引越し先はここよりもゆっくりできるよ!」 「うそだよ!おかあさんはいままでいっかいもゆっくりさせてくれなかったよ!」 「しんじないよ!」 「ここがゆっくりできるよ!!」 随分しつけがなっていないようだ。 俺と遊んでいるときはちゃんとしているのに。 なめられっぱなしだ。 「みんなお母さんの言うことはちゃんと聞こうね!森の巣は死んじゃった魔理沙が作った巣だよ!ゆっくりできるよ!」 俺は助け舟を出した。 少し、親れいむが可哀想すぎる。 しつけはできているのに、なぜなめられているのだろう。立派な親ゆっくりだというのに。 「ゆ!?しんじゃったおかあさんがつくったの!?」 「それならゆっくりできるね!」 「ゆっくりできそうだね!」 子ゆっくりの中では、親まりさは狩りの達人だ。 そんな達人が作った巣ならここよりもゆっくりできるのではないか、単純な考えであった。 それに前に子ゆっくりは聞いたことがある。 この場所は親れいむが最初に見つけたのだと。 子ゆっくりは思う。 無能な親が見つけた巣と、有能な親が作った巣。どちらがゆっくりできるかといえば後者だろう。 「みんな、早く引越しの準備をしてね!」 苦い顔をする親れいむを尻目に、そそくさと引越しの準備を始める子ゆっくり達。 もともと持っていくものなどたかが知れている。10分もしないうちに引越しの準備は終わった。 「じゃあみんな、お兄さんにさよならの挨拶をしてね!」 「ゆ!おにいさんいままでありがとう!!」 「またゆっくりしにきてもいい?」 「おにいさんだいすきだよ!」 「おにいさんはゆっくりできるひとだったよ!」 決して自分には向けられない笑顔を見て、親れいむの胸が苦しくなる。 しかし、この人間は優しい。 それを一番知っているのはきっと自分だろうと親れいむは思う。 「お兄さん、いままでありがとう。これからは森でゆっくりするね」 「おう、また何かあったらいつでも来てくれてかまわないからな」 そして、親れいむと子ゆっくり達は森の中へと消えていった。 森を進むのは困難を極めた。 ゆっくりと平和に育った子ゆっくり達は足場の悪い森の道に、不満を爆発させた。 それを必死でなだめ、ゆっくりできるから、と道なき道を進んだ。 移動途中、どんなにエサを持っていっても決して食べてはくれなかった。 長い道のりだから体力が必要だというのに。 子ゆっくり達は思っていた。 親まりさの巣には、いままで以上の御馳走が用意されていると。 だから、こんな親れいむが取ってくるような虫などとても食えたものではない、と。 親まりさが作った巣についたのはそれから2日も経ってからであった。 苔がこびりついた洞窟を見た瞬間、子ゆっくり達はかつてないほどの不満を爆発させた。 「ゆ!なにこのきたないところは!?ゆっくりできないよ!!」 「ぜんぜんゆっくりプレイスじゃないよ!!!」 「おかあさんのうそつき!!!」 最愛のパートナーが作った愛の巣。 ボロボロになりながらも、ようやく他のゆっくりが住んでいない洞窟を見つけ、2匹で頑張って綺麗にした。 やわらかい苔を泥だらけにながら集め、子供達のベッドを作った。 当然、人間の家と比べれば汚いし、みすぼらしい。 しかし、言葉では言い表せないほどの思い出がつまった巣だ。 それをゴミのように罵倒する子ゆっくり達に、親れいむは我慢がならない。 「ゆ!なにこのきたないの!!すてちゃえ!!!」 先に洞窟に入った子れいむが、小さい木のカケラを投げ捨てた。 「ゆっ・・・!」 それは親れいむと親まりさが生涯を誓い合ったとき、記念に作った木の人形であった。 不恰好だが、2匹にとっては愛の証拠であったのだ。 それがメチャメチャに破壊され、子れいむに捨てられた。 「ゆゆっ!なにこれ!こんなのいらないからおいしいごはんをよういしてね!」 「きたないごみだね!はやくすてようね!」 その瞬間、親れいむの母性は、怒りに押しつぶされた。 どうして、なぜ、自分はここまでゆっくりできなくなったのか。 全てこいつらのせいではないのか。 まりさがいてくれれば幸せだったのだ。 今にして思えば、こいつらが騒いだからゆっくりレミリアが声をききつけて襲ってきたのかもしれない。 許せない。 もう許す必要なんてない。 こんなゆっくりできない子は自分の子供ではない。 「ゆ?なにをしてるの?はやくごはんをよういしてね!」 「ごはんがあるなら、きたないとこでもがまんしてあげるよ!」 怒りを爆発させ、信じられないほどの跳躍をみせる親れいむ。 落下すると、ぶちゅりと餡子をはじける子まりさがいた。 「お゛ね゛え゛ぢゃん゛があああああ!!!」 「ゆ・・・!?なにをするの!?ゆっくりあやまってね!」 「ゆ゛っくり死ね!もうれいむの子供じゃないよ゛!!!死ね゛え゛え゛え゛!!」 かつて、誕生を喜んだ子供達に襲い掛かる親れいむ。 その目に浮かんだ涙は、誰のためのものなのか。 最愛のパートナーとの繋がりは、親れいむにとって許せないものへと成長してしまった。 許せないのは子供達なのか、満足に育てることができなかった自分なのか。 そんな問いを全て押しつぶし、子供を次々と押しつぶす。 つらい思い出を全て押しつぶしたい、親れいむは止まらない。 「ゆ!おねえちゃん!にげるよ!!」 「わかったよ!みんなまりさについてきてね!!!」 必死で逃げ始める子ゆっくり達。 この森で満足に虫も食べられないゆっくりがどう生きていくのか。 ふふふ、とゆっくりらしからぬ笑い声を上げる親れいむ。 もう追いかける気もしない。 死んでしまえ。 自分達の愚かさを呪いながらゆっくりと死ね。 静寂な森に、いつまでも親れいむの笑い声が響いた。 逃げ切った子ゆっくりは5匹であった。 子れいむ2匹と子まりさ3匹。10匹姉妹は半分になってしまったが、希望はまだ捨てていない。 「あんなバカなおやは、ゆっくりしねばいいのにね!」 「そうだよ!ゆっくりしね!」 見えなくなった親れいむへの怒りをあらわにする子ゆっくり達。 「はやくおにいさんのところにもどってゆっくりしようね!」 「そうだね!だいすきなおにいさんにはやくあいたいね!」 「おなかすいたよ!はやくあいにいこうね!」 子ゆっくりだけで抜け出せるほど、自然の森は易しくない。 同じところをぐるぐると回っていることに気がつくものは、1匹もいなかった。 雨が降っていた。 どんどん、と何かを叩く音が聞こえ、俺は扉を開けた。 そこにいたのは1匹のゆっくり霊夢であった。 「ん?お前、こないだのれいむか?」 ゆっくり一家が出て行ってから、1ヶ月が過ぎていた。 目の前にいるのはあの時の親れいむだろうか。酷くやつれて、皮は傷だらけだ。 雨に濡れたせいか、全体的にぶよぶよとしている。 「大丈夫か?いまご飯を食べさせてあげるから、ゆっくりあげれ!」 何も返事をしないゆっくり霊夢を部屋にあげ、あまいお菓子を用意した。 「どうしたんだ?子供たちは?」 ふるふると体を左右に揺らす。それ以上は答えない。 きっと外敵にでも襲われて逃げてきたのだろう、俺はそう結論付けた。 そっと頭を撫でてやると、ぶわっと涙を出した。 「つらかったな。ゆっくりしていっていいんだよ」 「ゆ゛う゛う゛う゛!!!れいむ、もういやだよお゛お゛お゛!!!ま゛りざあ゛あ゛あ゛!!!!」 泣き出したゆっくり霊夢を抱きしめ、傷口に水で溶かした小麦粉を塗る。 餡子もあまり漏れていないし、しばらくすれば元気になるはずだ。 「れいむ、お前さえよければここでずっとゆっくりしていっていんだよ。まりさもここに眠ってる」 子供達を失った悲しさを少しでも和らげてあげたい。俺は純粋にそう思った。 「ゆっ・・・ゆっ・・・」 顔を俺に向ける。 その顔は涙が溢れているものの、明るい笑顔だ。 「お前の笑顔、なんだか久しぶりだなあ」 そういえば、出産の時以来久しく見なかった。 なぜだろう。 あんなに可愛い赤ちゃんゆっくりがいたのに。 まあ、きっと晩御飯のときや寝るときは親子仲良くゆっくりしていたのだろうから、偶然だろうな。 「ゆっくりしていくね!!」 雨が屋根を叩く中、ゆっくり霊夢の声が部屋に響いた。 作:アルコールランプ? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2193.html
※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1〜 ※注意事項 ゆっくりの形じゃ最初のひと跳ねもできないだろとか突っ込み禁止。 お日様昇って天高く、ぽかぽか大地を照らしてる。 風はびゅうびゅうまだまだ寒く、北から元気に吹いて来る。 睦月一月、春まだ遠い。とある冬の小春日和。 ここ数日続いていた陽気に誘われて、うっかりおうちの外に出かけてしまったれいむ一家は困っていた。 「ゆううぅぅ……」 「「「「「みゅぅぅぅ……」」」」」 人里近い川べりに、しょんぼり屯する一家、母れいむと六匹の赤れいむの総勢七匹。 水面に困り顔の影を落としても、事態が改善するわけもなし。 「水さん、ゆっくりしていってね!」 「みじゅしゃん、ゅっきゅりちていっちぇにぇ!」 もちろん川の流れに呼びかけたところで、急流がゆっくりしてくれるはずもなし。 さらさらと音を立てて流れる小川に恨みがましい目を向けて、「はぁ」と溜息と共に愚痴を吐くのが関の山だ。 「これじゃかえれないよ……」 「みゃみゃ、ひゃやくおうちにきゃえりちゃいよ……」 そう、れいむ一家のおうちはこの小川の向こうにある。 川幅おおよそ十尋にして、深さはおおよそ一尺ほどもあるだろうか。 この小川、一昨日れいむたちが渡った時には幅も深さも半分ほどでしかなかった。ゆっくりでも這って渡れる浅瀬もあった。 それが急に大きくなったのは、れいむたちを外に誘い出した小春日和に原因がある。 大本を辿れば妖怪の山にたどり着くこの小川に、この数日の陽気で生まれた雪解け水が一気に流れ込んだのだ。 妖怪の山から霧の湖へ、霧の湖からこの小川へ。 本格的な春が訪れた訳ではないから、流出した水の量もまだ微々たるもの。 だが、その微々たる量が、今はこうしてれいむたちの帰宅を断固として拒んでいた。 「ゆぅ……どうしよう。こまちのわたしぶねはここからだととおいし……」 この小川を遡っていけば、上流にゆっくりこまちが営む渡し舟の里がある。 だが、そこまで行こうと思えば、ゆっくりの足では丸一日。赤ちゃん連れでは二日を見ないと難しい。 今の一時的な増水が収まるまで待つのとどちらが早いか、れいむの餡子脳では判断しにくいところだった。 というよりも、餡子脳では考えても無駄なことであった、というべきか。 「あ。ゆっくりだ」 「ほんとだ。親子だ」 「ゆ?」 親子揃って無益な思索にどれほどの時間を費やしたことだろう。 状況の変化は、結局れいむが起こすのではなく外部からやってきた。 「ゆゆっ。ゆっくりしていってね!」 「ゆぅ〜、にんげんしゃんだ!」 「ゆっくちー!」 「ゆきゅちちちぇいっちぇにぇ!」 くるり、とれいむ一家が振り向いた先には数人の人間の少年がいた。 口々に挨拶するゆっくり一家に、人間に対する不審はない。 もともと魔法の森の奥に住むこの一家のこと、人間に出会うことも稀なために先入観というものがないのだ。 「にんげんさんは、ゆっくりできるひと?」 だから、とりあえず親れいむは聞いてみた。 相手のことをれいむは何も知らないのだから、本人に聞いてみるのが一番だ。 人間さんはとてもゆっくりできると、れいむの餡子脳の中に伝わる一族の記憶が伝えている。 きっと快く答えてくれるだろうと、根拠なく想った。 「ん? 俺たちはゆっくりしてるぞ」 「ゆっ。よかった、ゆっくりしようね!」 「「「「「ゆっきゅちちようね!」」」」」 返ってきたのは期待通りの返事で、れいむたちは今の状況も忘れてすっかり嬉しくなり、ぴょこんぽこんとその場で飛び跳ねた。 一方の人間の少年たちといえば、もちろんその場で飛び跳ねるような事もなく、ふいっと視線を水かさの増した川へと遊ばせる。 「……川を、渡りたいんだ?」 「ゆっ! そうだよ、れいむたちのおうちはこのかわさんのむこうにあるんだよ!」 ぴょこん、少年の問いかけにもう一度れいむはその場で飛び跳ねた。 人間さんと会えた喜びでゆっくり忘れてしまっていたが、今はそれが一番大事なことのはずなのだ。 川の流れは激しくて、れいむ家族は愛するれいむ(同種のつがいらしい)が待つおうちに帰れない。 「ふぅん……」 「でも……ねぇ、れいむ?」 そう窮地を必死に訴えるれいむにも、少年たちの視線は相変わらず川のどこかに向けられていた。 人間さんがどこを見ているのか、れいむは不思議に思って高い場所にあるお顔がどこを見ているのか必死に追いかける――と、 少し上流の川の中ほどをゆっくり進むそれを発見して納得がいった。 「まりさたちは川を渡ってるよ?」 れいむが見つけたそれ、人間さんが指摘したそれは、別の群れのまりさの家族が川を向こう岸に帰っていく光景だ。 親まりさ一匹に、赤まりさ六匹の計七匹。 川岸で侘しく佇むれいむ一家と同じ数。でも彼女たちはおうちに帰ることが出来て、れいむたちには同じことはできない。 「ゆぅ……まりさはおぼうしでかわをわたれるんだよ。れいむにはできないんだよ……」 「ゅー。まりしゃのおぼうち……いいにゃぁ……」 「うらやまちいにぇ……」 だって、それが生まれついてさだめられたゆっくりの種としての特徴だから。 まりさは帽子を舟代わりにして水辺を過ごすことができて、れいむは川を渡ることが出来なきない。 親一匹と赤ゆっくり六匹、羨ましそうにまりさたちの後姿を見送ることしか出来ないのだ。 れいむたちだって、おうちにかえりたいのに。 おうちにかえって、もう一匹の親れいむと何日かぶりにすりすりしたいのに。 ちょっとしたお散歩と餌集めのつもりが、陽気に誘われて随分遠出してしまった。 さぞかし、お留守番の家族は心配しているに違いない。早く、顔を見せてゆっくり安心させてあげないと。 思えば、最初から留守番れいむは遠出に反対していたのだ。 ここまで連れて来た六匹の赤ちゃんたちは、れいむとれいむの初めての子供だった。 秋口にれいむ達はつがいになって、冬篭りに入る直前に初めてのすっきりでこの子達を作った。 たっぷり食料を蓄えた巣穴で、安全に大きくなるまで育てる為に。 春の目覚めを十分に成長した子ゆっくりとして迎え、危険の少ない状態で外界での生活をスタートさせるために。 ああ、だから赤ちゃんたちを連れてくるべきではなかった。 今はちょっとゆっくりできそうだからって、お外の世界を見せてあげようなんて思うんじゃなかった。 れいむの反対を聞いておくべきだったのだ。何がおきるかわからないよ、ってれいむはちゃんと注意してくれていたのに。 川の流れに逆らって、ゆっくり遠ざかるまりさの姿を見送りながら、お出かけれいむの焦りは募る。 かなわない願いだけれど。 今は、ほんとうに、早く、帰りたい。 「ふぅん……じゃ、渡れるようにしてやろうか」 ――その、見送ることしか出来ないはずのものを、人間さんがこともなさげに聞いてきた。 びっくりして、れいむ一家はお互いに顔を見合わせた。 与えられた衝撃と、それによって生じた困惑と、そこに芽生えた期待の大きさは、みんな同じだった。 この川を渡るなんて、れいむたちにはとてもじゃないけれどできないこと。 だけどれいむたちより大きくて、とてもゆっくりしているはずの人間さんの言うことなのだ。 人間さんが口にすることならば、それはとってもゆっくりできることのはず。疑うことなんて何もない。 そして、お出かけれいむだけではなく、赤ゆっくりの心も一つ。 おうちに早く帰りたい。 れいむ一家は「ゆっ」と一つ頷きあって、それから一斉に人間さんへと顔を向けた。 「ゅんっ、ほんちょ?」 「にんげんしゃんはゆっくちできるね!」 「ゆっ、ありがとうにんげんさん! れいむ、とってもうれしいよ!」 そして顔の次に向けるのは、感謝感激雨あられ。 なんて人間さんは凄いんだろう。 れいむたちに出来ないことを簡単にやってのけるのだ。 「んじゃ、と……おい」 れいむたちが提案を受けれたことに、少年たちも満足そうにお互い笑いあった。 ただし、全員ではない。幾人かは、どこか不満そうな顔で仲間たちの行動を少し離れたところから見守っていた。 何か言いたげなその連中を一瞥して黙らせ、れいむを助けてやると請け負った少年たちはさっそくれいむ親子の周りに集まる。 ひょい、と男の子の一人がれいむを顔の両側から抱え込むようにして手を差し込んでくる。 少しびっくりしたけれど、れいむはそれに逆らわない。きっと、これからゆっくりできることをしてくれるはずだ。 次の瞬間、地面が、すぐ側にいた赤ちゃんが、目の前にどこまでも広がるように見えた川面さえも一気に遠ざかり、 視界が大きく広く拡大する。 その絶景、まるで鳥さんになったよう。 「ゆ? ゆーん、おそらをとんでるみたい♪」 「おしょらをとんじぇるみちゃい!」 気が付けば、赤ちゃんたちもいつの間にか少年たちの手にそれぞれつかまれている。 今まで目にした事がないような光景に出会っているのは、赤ちゃんたちも同じこと。 きゃっきゃと賑やかに声を交わすその様子は、とってもゆっくりできているようだった。 でも、『人間さん』の中には『ゆっくりできていない人間さん』もいたようだった。 「おい、やめなよ。いじめはよくないってけーね先生もいってただろ?」 「ゆぅ、いじめはゆっくりできないよ?」 少年たちの一人――仲間たちから先ほど距離を置いた少数派の少年たちの一人が、少し震える様子で上げた制止の声を聞いて、 れいむは思わず自分を抱える少年の顔を見上げて言った。 不満を洩らした人間さんは、れいむのかわいい赤ちゃんを持っていない。れいむたちより人間さんの方が数が多かったらしい。 「ゆー?」 「ゆゆっ?」 れいむのかわいい赤ちゃんたちも、きょとんとした顔を自分を手にした人間さんの顔へと向けていた。 それは、不満顔の人間さんが怒るのも当然だとれいむは思う。 こんなにもかわいらしい赤ちゃんを、手の上に載せて挙げられないというのはあまりにも不公平というものだろう。 独り占めなんていじめっこのすることだ。ゆっくりの世界では一番しちゃいけないことのひとつなのに。 「バーカ、いじめじゃないよ。儀式だ儀式」 「こないだ先生に習ったろ? 蜀の国の諸葛孔明は荒れた川を治めるのに人間の顔に似たお菓子を川の中に投げ込んだって」 「それが饅頭のはじまりだってね。だから、これが饅頭の正しい使い方だろ?」 「そうだけど、そうじゃないだろ。先生にバレたら怒られるぞ」 「ゆ……ゆゆー?」 人間さんたちのお話の内容は、れいむには難しくてわからない。 なんでケンカしているのかも、いまいちはっきりとはわかっていなかった。 わからないけれど、人間さんたちが普通にれいむたちを運んで川を渡してくれるわけではないことだけはわかった。 それはそうだろう。川はいつもより深くて急だ。 れいむたちに渡れないんだから、きっと人間さんにも危ないんじゃないだろうか。 だから、れいむたちにも渡れるように、逆に川さんにゆっくりしてもらうんだろう。 「ゆゆっ? ゆっくりりかいしたよ! かわさんにゆっくりしてもらうほうほうがあるんだね!」 「ゆー! ゆっくちできにゃいかわさんが、ゆっくちできりゅかわしゃんになるんだね!」 「ゆう、にんげんしゃんはすぎょいんだにぇ!」 赤ちゃんたちがいうように、人間さんは、やっぱりすごい。 川さんにゆっくりしてもらえる手段なんて、れいむどころかドスもぱちゅりーも知らないはずだ。 れいむは人間さんの会話を素直に受け取り、とても素直に感動する。 「実はそうなんだよ、れいむ。だから一緒にがんばろうな」 「あのなぁ……」 「ゆゆっ。よくわからないけど、れいむがんばるね!」 人間さんの一人がえっへんと胸を反らせて答え、別の一人が、「はぁ」と疲れたような吐息を吐いた。 ため息をついた一人はぶすっとした仏頂面で胸張る一人をにらみつけ、 「俺たち知らないからな」 「バラさなきゃ、先生だってわかんねえよ。っつーか先生に気づかれたらお前ら殴るからな」 逆に凄まれて「わ、わかったよ」と怯む。 やっぱり、れいむのあかちゃんを持ちたいのに、独り占めされてるから怒ってるんだ。 れいむはそう理解して、頭上の少年にわが子を宥めるような優しい声を掛ける。 「ゆぅ。にんげんさん、けんかはよくないよ?」 「よしよし、待たせたな。じゃあ行くぞれいむ」 少年は、れいむのいさめには答えない。変わりに笑って川のほうを見るようれいむに促した。 いよいよ、この川を渡れるようにしてくれるらしい。 れいむは先ほどの人間同士のやりとりなど忘れ、満面の笑みがパァっとれいむの顔に咲く。 「ゆーん。これからかわさんにゆっくりしてもらうおねがいをするんだね! ゆっくりがんばってねにんげんさん!」 「お前も頑張るって今言ってたじゃん……」 それは、期待通りの話題変更ではあったけど。 れいむの能天気な受け答えを聞いた少年と、彼の仲間たちの顔にいつしか強い嘲りと愉悦の色が浮かんでいた。 だが、近づく帰宅への期待に胸膨らませるれいむ一家は、頭上はるかな人間達の表情の変化に気が付かない。 気付けといっても、顔を直接見あげることの出来ない位置に固定されたれいむたちには無理な話ではあったが。 「……ゆゅっ」 れいむ一家が微妙な空気の変化に、なにも気が付くことのないままに。 一人の少年が赤れいむを掴んだ右腕をすっと身体の後ろに引いた。 唐突な動きに赤れいむはほんの少し驚いたようだったが、怯えの色は微塵もない。 人間さんはゆっくりできる存在で、ことにこの人間さんたちはれいむたちを助けてくれる特別ゆっくりな存在なのだ。 なんで恐がる必要があるというのだろう。 「おねえちゃん、りぇいみゅおしょらをふわふわすぃーってとんじぇりゅよー」 「きゃっきゃっ♪」 「ゆっくりできてるねおちびちゃん!」 「うまくやれよー、弥平次」 「任せとけって」 赤ゆっくりたちの歓声、それを見守る親れいむのゆっくりした声、はやし立てる周囲の少年たち、 そんな彼らに向けて空いた側の手でガッツポーズを作って応える少年。 何が起きようとしているかわかっている者と、何もわかってはいない者。 今だけは、お互いの感情は一致している。 「できればまりさにぶつけたいな」 「あ、それ面白そう。ぶつけたヤツが一等賞だ」 「ゆゆーん、もうすぐおうちにかえれるね!」 「おうちにきゃえったらおきゃーしゃんとゆっきゅちちようにぇ!」 即ち、これから起きること、その先に待つことへの期待と喜悦。 「んじゃ、第一球――」 「ゆっゆぅ、たきゃいたきゃい〜♪」 一瞬先には、その明暗はくっきり分かれてしまうのだが。 「――投げましたぁっ!」 「ゅ……ゅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!?」 一瞬の静止から、サイドスローで少年がれいむを掴んだ腕を振りぬいた。 突然身体に掛かった強烈な加速感に、掴まれた赤れいむの歓喜の声が驚愕の叫びに変じたその瞬間、 すっかりゆっくりしていたれいむ一家の目には、わが子が、姉が、妹が、マジックのように消えうせたように見えた。 だから、川面の方から聞こえてくる同属の声を、すぐには誰のものか認知しない。 「ぁぁぁぁっ、いぢゃいっ! あびゃいっ!? えべべ……えびょっ」 ぱしっ! たしっ! じゅぶっ……じゃぼん。 ぎゅるぎゅるっ、と横回転を加えられた赤れいむは、確かに二回水の上を跳ね、三回目で勢いを失い、 それからつんのめるようにな軌跡を描いて、その次の着水であっさり流れの中に飲み込まれていった。 それは、いわゆる石切り遊びと呼ばれる遊びと同じものだった。 というよりも、石切り遊びそのものだ。使うのが、平たい小石ではなく、れいむ――ゆっくりであるということが違うだけで。 横投げで、投擲するものに強い回転を掛け、浅い角度で水面で跳ねさせてどこまで遠く、何回跳躍するかを競う。 投擲物は飛び去るうちに空気の抵抗を受けて回転数を減じ、着水時の抵抗力を失って最後には水中に没することになる。 たった今、赤れいむがあっという間に水没したように。 「……おちび、ちゃん……?」 「おねーしゃん……いにゃいいにゃいしゅりゅの?」 「いみょうと……れいみゅのいみょうと、きゃくれんびょしてりゅの……?」 ゆっくりたちが、ゆっくりと異変に気づいたころには、すでに川へ向かって投げられた赤れいむの姿はどこにもなかった。 音を立てて流れる清流の中に、一瞬餡子の黒が浮かんだが――それも一瞬のこと。 強い流れの中に溶けて消えうせ、投じられた生き饅頭の残滓は綺麗に何も残らない。 だから、れいむたちにはわからない。 なぜ、人間さんが先ほどまで手にしていたはずの家族がいないのか気が付かない。 順番にその身を襲うだろう、命の危機に気が付かない。 もっとも、それに気が付いたところで、文字通り生死を握られた状況ではなんら益するところはなかっただろうが。 「んあー、おしいっ!」 「どこがおしいのさ? まりさ、気付いてもないよ」 「次はせめて、まりさに水音が聞こえるぐらいに近づけろよな」 混乱するれいむたちの頭上で、少年たちが賑やかに言葉を交わしている。 だがきょときょとと家族の姿を探す一家に、その声は聞こえていても内容を理解することはできなかった。 理解できぬままに、次の危機は無情にもやってくる。 「っせえなあ。じゃあ助左、お前やってみろよ」 「任せろよ」 周囲のブーイングにすっかり拗ねた顔をする弥平次と呼ばれた少年に、助左と呼ばれた少年は不敵な笑いを浮かべて応じ、 彼と同じく赤れいむを掴んだ腕をすっと身体の横へと引いていた。 「……ゆ? おにーしゃん、あしょんでくりぇりゅの?」 「おう、遊ぶぞ。れいむで遊んでやる」 視線が急に水平に動いたことに驚いたらしく、掌中の赤れいむがずれた問いを発する。 そのずれた問いに返す少年の返答も、また少しばかり言葉をずらしたものだった。もちろん、こちらは意図的にずらしているのだが。 「ゆゆ……? りぇいみゅであしょぶにょ?」 姿の見えぬ姉妹を探すうちに心に浮かんだ一抹の不安が、幼い赤れいむにその問いを思い至らせたのだろうか。 微妙な言い回しに気が付いて鸚鵡返しに聞き返す声は、ほんの少し不安に揺れていた。 横目で親の方を見れば、やはり心の中に広がりつつある形容しがたい不安に瞳の光を揺らがせる、親れいむの視線と目が合った。 あるいは、腕を引いた少年のしぐさが先の赤れいむの消失のサインだったと思い至ったのかもしれない。 その未だ人間の善性を信じつつ、それでも禁じえないだろう不安の様子が、芽生え始めた人間への恐怖が、 少年に心地よい快楽を与えることを赤れいむはついにその死までしることはなかった。 「そうだ。おねえちゃんのあとに、つづけぇっ!」 「ゆあっ、ゆぅぁぁぁぁぁっ!?」 少年の威勢のいい掛け声と、赤れいむの恐怖と驚愕が相半ばした悲鳴が川原に響く。 今度ははっきりと、親れいむたちは家族が消滅するプロセスを順序だてて目にすることが出来た。 「れっ、れいむのおちびちゃああああんっ!!!」 「……ゅぁ?」 「おっ、おねえちゃあああぁぁぁん!!」 家族の絶叫がとどろく中、六尋ほど先の川面から小さな水音がじゃぽんと聞こえた。 今度のれいむは短い跳躍を五回繰り返し、異常を感知して漕ぐ速度を上げたまりさ一家にほんの少し近づいて、死んだ。 最初の赤れいむと同じく、この世に生きた証を何も残すことはなく、親に最後の言葉を遺すことすらなく、跡形なく溶け崩れて死んだ。 「なっ……れいぶのおぢびぢゃんだぢがっ……。にんげんざん、ごればどういうごどおおぉぉっ!!」 れいむは信じたくなかった。 これが現実だと信じたくはなかった。 娘がいきなり川の中に投げ込まれ、あっけなく死を迎えたことが現実の世界に起きたことだとは信じたくはなかった。 先ほどと変わらない笑顔をれいむに向けて見下ろしている人間さんが、こんな非道を唐突に行う存在だと信じたくはなかった。 「儀式するって言ったじゃん」 その祈るようなれいむの願いを、少年たちは笑顔のままあっさりと折り砕いた。 「饅頭を川に投げ込むって言ったろ。聞いてなかったのか、お前?」 「おまえら饅頭なんだからさぁ。その時点で気づけよ」 馬鹿だなぁ、と笑う少年たちの口元には、れいむにもわかるほどくっきりと嘲りが浮かび上がっていた。 それを見てれいむは、生まれてはじめて憎しみというものを知った。 生まれてはじめて絶望というものを知った。 生まれてはじめて悪意というものが存在することを知った。 それらは全て、ゆっくりできるはずの人間という存在から与えられた。 つい先ほどまで、共にゆっくりしていたはずの、人間さんから。 「でいぶのあがぢゃんはまんじゅうじゃないいぃぃっ!」 「饅頭だよ、キモチ悪いしゃべる饅頭。ほら、その証拠に」 「……っ!!」 「ぃぎゃあああぁぁぁぁっ!!?」 「ほぉら、餡子入りの饅頭だ」 一瞬の躊躇もなくれいむの右頬を毟り取った少年は、身を襲う激痛に泣き喚くれいむの鼻先にそれを突きつけてけたけたと笑う。 やがて苦痛に身を捩るばかりで突きつけられた事実に反応を見せないれいむに飽いたのか、千切ったその部分を川の中に投げ捨てる。 「おきゃーしゃーん!?」 お楽しみは、まだまだあるのだ。 このゲスしかいない屑饅頭の分際でクソ生意気にも、親を案じるようなミニ饅頭を筆頭にして。 「おきゃーしゃーん、じゃねぇよ。ほらさっさと飛べ」 「ぉきゃーしゃんをいじめりゅ……にゃぁああぁぁぁ、おねーちゃんがぁぁぁぁぁっ!!?」 「ゅぁぁっ、れいみゅしにちゃくにゃ……ゃぁぁぁぁぁっ!!!」 頬を大きく千切り捨てられて、身を絶えず苛む激痛にほとんど麻痺していた親れいむの精神がようやく我を取り戻したのは、 愛するわが子の怒りや悲しみに満ちた絶叫が次から次へと飛ぶように遠ざかるという恐るべき事態に直面してからだった。 「ぉあ、あああああっ! おぢびじゃあああああああん!!」 我に返ったところで、もう遅い。 我に返ったところで、何も出来はしない。 親れいむにできることは、命に代えても惜しくはない愛するわが子達が、 次から次へと決して対岸に届くことない死への跳躍に駆り立てられる姿を見送ることだけ。 いや、そもそも描かれる軌跡は対岸へと向けられてすらいない。 すべて、川の中ほどまで進んだ他所の群れのまりさの家族へと向けて投げられているのだから。 「沈め、沈め!」 「あーっ、当たらねぇーっ!?」 「丸すぎてちゃんと飛ばないんだよ。やっぱ何に使ってもだめだな、ゆっくりって」 少年たちが楽しげに笑い、天を仰いで嘆くたび、 「ゅびゃぁぁぁぁぁっ、ゆびぇっ、ぃゃだっ、たじゅけぶびゃ!?」 「ゅぎゃっ! ゅぐぅっ、おぎゃーじゃばばっ!!」 「やだやだれいみゅおちょらとびちゃくにゃ……ぶぎゃぅ……」 赤れいむの声が遠く、彼方へ遠ざかっていく。 二度と親れいむの肌が触れ合えない彼方へと。 投じられた赤れいむの誰一匹、対岸にたどり着くことはなかった。 親れいむと一緒にお散歩に出かけた誰一匹、二度とおうちに帰り着くことはなかった。 六匹全てが、親れいむの目の前で川のせせらぎの中に没して溶けて崩れて死んだ。 親れいむは叫び続けた。全てが終わるまでずっと叫んでいた。 よほど強く投げられたのだろう、最後の一匹は最初の着水の衝撃に耐え切れずに弾けて死んだ。絶鳴すらなかった。 吹き飛んだ餡子が川の中に沈み、リボンが流れに乗って視界から消え去る頃には両の目から流れ出る涙も、 悲鳴を上げるべき喉も枯れ果て、乾き切っていた。 「あ゛……ゅあ゛あ゛……」 頬に痛々しく開いた傷口の痛みすら、もう欠片も感じない。 後に残ったものは、れいむの中を満たすものは、全てを失った絶望だけ。 少年の腕に抱かれて、れいむは生きながらにして死んでいた。 「もぉ、やだぁ……おうち……かえれない……」 あるいは、自分が殺される順番を待ちわびていたのかもしれない。 もう、おうちで待つ伴侶のれいむに会わせる顔などあろうはずもなかった。 生気のないうつろな眼差しを対岸にあるおうちの方角へ向け、在りし日の幸せな生活を、去りし日の安らぎに満ちた家族を想った。 それを壊したのは他の誰でもない、自分だ。 自分が子供たちに早く外の世界を見せてあげたいなどと思わなければ、 きちんと理由立てて反対してくれた伴侶れいむの言葉に耳を傾けていれば、 外の世界に出たとしても、調子に乗ってこんな遠くまで遊び歩かなければ。 「れいむが……れいむがばかだから……みんな、みんな……」 幾つものif全てで、れいむは死に繋がる選択ばかりを選んできた。 今考えれば、れいむにも如何に愚かな試みだったかが嫌というほどによくわかる。 だって、こんな最悪の結果を迎えてしまったんだから。 だから、れいむにはもうゆっくりできない人間たちをうらむ心はなかった。 ここで彼らに会わなかったとしても、きっとどこかで自分たちは死んでいただろう。だって、れいむはとびきりのばかだったから。 生きていることが罪になるほどの、誰もゆっくりさせてあげられない、自分の子供さえゆっくりさせられないゆっくりだから。 今からこのゆっくりできない人間さんたちから与えられるだろう死は、れいむにとって当然の罰なのだと思えた。 「れいむ……ばかでごめんね。れいむをおいてっちゃうことになるけど……せめて、おちびちゃんはあっちでりっぱにそだてるよ……」 だから、れいむはこっちでゆっくりしてね。 心のそこからそう願い、れいむはゆっくりと目を閉じる。 次にくるのはお空を飛ぶ感覚か、れいむの身体を何かが破壊する激痛か。どちらでもよかった。 全てを受け入れる心は出来ていた。与えられるものが死であるなら、どんな苦痛を伴うものでも構わない。 「おーい、何言ってんだよ」 「ゆぅ……?」 与えられるものが、死であるなら。 「お前はおうちに帰るんだよ」 「……ゆ゛!?」 誰が、生など望むものか……! 「お前をおうちに帰すために、ガキども川に投げ込んでやったんじゃないか。お前が帰んなきゃどうすんだよ」 だというのに。少年の笑顔が、れいむの心を痛烈に一打ちして蘇生させた。 ま、水が収まるまでゆっくりしろよ。少年はにやにやと嫌な笑いを浮かべてそう告げた。 れいむの願いと対極をなす、あまりにも残酷な言葉をそんな笑顔で淀みなく告げた。 「……あっ、あがぢゃんみんなじんじゃっで、ごろされぢゃっでがえれるわげないでじょおぉぉ!?」 だがそれに驚き、叫ぶれいむは本質を理解していない。 自分を抱えたままの少年が、いったいれいむに何を望んでいるのかを。 当然、ことの本質を理解しようともしていないれいむの抗議になど、少年はまるで取り合わない。 そうやって、れいむの身体ではない、心を苦しめ、痛めつけることが目的なのに、この饅頭はまるでわかっていないのだから。 楽しげに笑う少年の意図を、れいむはまったく理解しない。 理解しないままに、少年が望むままに苦しみ、悶え、のた打ち回る。 「ごろじでっ! あがぢゃんだぢどおなじみだいに、ごろじで! すぐごろじで! れいぶをごろじでっ!!」 「あっそう。じゃあ好きにしろよ。とりあえず傷は直しておいてやるから」 「ゆびゅっ!?」 なおも殺してくれと喚きたてるれいむに、少年は肩から提げた布地の鞄から竹筒の水筒を取り出した。 そこから頭に振りかけらた液体が目に染みて、思わずれいむは悲鳴と共に目を閉じる。 一瞬、ゆっくりが死ぬことのできる毒か何かと期待したが、もちろんそんなものではなかった。 それどころか、引き裂かれた頬の傷口があっという間に痛みを失っていくのがわかる。 恐る恐る、髪を伝って口元に一筋の流れを形作ったその粘度の高い液体を舐めてみる――とても、甘い。 傷つき、死をひたすら望むほどに疲弊した心すら、油断すると癒してしまいかねないほどにその液体は甘かった。 それが水あめというあまあまなたべものであるとまでは、まったく野生で育ってきたれいむは知らない。 「じゃーな」 別れを告げるその言葉に我を取り戻した時には、頬の痛みはまったくなくなっていた。 頭に注がれる液体も、いつのころからか途絶えている。慌てて目を開けたれいむの 先のれいむの懇願など気にも留めず、いっそ丁寧なぐらいゆっくりと、安定した岩の上にれいむを置いて手を振っていた。 岩場から飛び降り、れいむがその背中を追う頃にはすでに少年たちの姿はずいぶん先にある。 「まっ、まって! おいでがないでっ!」 「礼はいらないぞー」 「あと一日も待ってりゃ水は引くと想うぞ。よかったな、赤ちゃん死なせた代わりに家に帰れるぞ」 まあ、多分ちびが死ぬのと水が引くのは関係ないけどな。 そう言って、少年たちはどっと愉快そうに笑いあっていた。 「でいぶをごろじで! ごろじでよぉ!」 「やーだよ。死にたきゃ勝手に死ねば?」 れいむが泣けば泣くほど、叫べば叫ぶほど、少年たちは楽しそうに肩を震わせて笑った。 顔がキモい、声がキモい。ガキ殺したぐらいで必死なのがキモい。 理由を挙げ、せせら笑い、だが川原を離れる歩みは止めずに、れいむからどんどんその姿が離れていく。 「おでがいじばず! でいぶをごろじでぐだざいっ! れいぶを、でいぶをあがぢゃんのどごろにいがぜでぐだざい! おねがいじばず、おでがいじばぶっ!!」 れいむは泣き喚きながら、追いかけた。 精一杯、尖った石が親れいむの底面を抉り、切り裂く痛みなど気にもならなかった。 致命傷には至らない痛みなどどうでもよかった。 ひたすらに、自分の命を少年達が摘み取ってくれることを希った。 彼らがれいむ自身の命よりもはるかに重い、赤ちゃんたちの命を遊びのために全て流し去ってしまったように。 だが子供達は無情にも、れいむの願いなど一顧だにせず嘲り笑いながら走り去っていく。 どんなに跳ねても、どんなに飛んでも、その背中にれいむが追いつくことは決してなくて。 「どぼじで! どぼじでごろじでぐれないのおぉぉぉ!!」 ただ、痛々しい親れいむの絶叫だけが、誰もいなくなった川原に轟いた後。 しばらくして、大きな水音がひとつ新たにバシャンと響き、川原は元の静けさを取り戻した。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3509.html
涼やかな風が、赤色に染まった木々の間を吹き抜けた。 全てを焼き尽くすかのような太陽の熱も鳴りを潜め、夜と月の時間が復活を遂げる。 外の世界も、幻想郷も、四季の移り変わりに変化は無いのだ。 暑かった夏が終わり、季節は秋。 紅葉が風に乗って舞い散る様は、この季節独特の風情を感じさせる。 芸術の秋。 運動の秋。 食欲の秋。 夏の暑さに体力を奪われた者たちも復活し、活動を再開させた。 そしてそれは、人間に限った話ではない。 木陰でじっとしていた動物たちも、秋に生る果実目当てにその姿を見せた。 狐や狸、他にも愛くるしい小動物たちが人々の目に触れる。 同じように、野生に住まうゆっくりたちも、気温の下降と共に元気を取り戻すのだった。 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 澄み渡る秋空に、ゆっくりたちの声が重なり合う。 夏の間は少数だったその声も、秋の始まりと共にその数を少しずつ増やし始め、今では見事なまでの唱和となった。 夏は暑い。 それは人間も妖怪も動物も、そしてゆっくりも基本的に変わらない。 あまりに暑い太陽の日差しは動き回る元気を減少させ、水分の損失を防ぐために日陰でじっとしていることが多くなる。 だがゆっくりはその名前と違って動き回ることが大好きであり(大人になるとじっとしてゆっくりするのも好ましくなるが)、フラストレーションが溜まってしまう。 だから夏が終わり、秋になって涼しくなると、今までの積もり積もったストレスやら何やらを吹き飛ばす勢いではしゃぎまわるのだった。 「むきゅー! みんなたのしそうでいいわね!」 ここにいるゆっくりぱちゅりーも、そんな陽気に誘われたゆっくりの一匹だった。 ぱちゅりー種は知っての通り、ゆっくりという種族の中で身体が極端に弱い。 激しい運動は当たり前として、ちょっとした衝撃や、吃驚するような事態に遭遇しただけでも気分が悪くなったり、疲れて息が切れたり、吐いてしまうことすらある。 そんなぱちゅりーではあるが、動くのが嫌いというわけではなく、むしろ好きである(ゆっくりなのだから当たり前の話ではあるが)。 軽い運動程度ならこなせるので、跳ねることは出来ないがずりずりと歩き回ったり、他のゆっくりたちが元気良くはしゃぎまわっているのを見るだけで、とても幸せな気分になれた。 彼女たち風に言うのなら、とてもゆっくりしている、ということだろう。 夏の暑さに特に参っていたぱちゅりーは、開放感に満ち溢れていた。 「ぱちゅりー! いっしょにどんぐりさがそうよ!」 「ぱちゅりーがいてくれれば、ひゃくにんりきだね!」 と、そこにぱちゅりーの友人である二匹のゆっくりが、ぴょんぴょん飛び跳ねてやって来た。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさである。 二匹はぱちゅりーを間に挟んで、親しげに頬を摺り寄せた。 ゆっくり種特有の行動である、親愛の表現だ。ぱちゅりーは嬉しくなって「むきゅー!」と鳴いた。 前述のようにぱちゅりー種は体力が極端に低く、地面に落ちている木の実などを拾ってくることすら辛い作業であり、狩りをするなど論外の域にまで達するほどだ。 だが、ぱちゅりー種が役立たずとして爪弾きにされないのには、理由がある。 ぱちゅりー種は先天的に知能に優れているのである(ただし、ゆっくりとしては、だが)。 ゆっくりは基本的に愚者であるため、餌を効率的に採取する方法や罠の作り方、外敵である捕食種や人間たちからの逃走方法に明るいぱちゅりー種をとても尊敬していた。 だからゆっくりたち――特にまだ若いゆっくりは狩りに出かけるとき、こうしてぱちゅりーを誘うことが多いのだった。 「このきせつなら、どんぐりだけじゃなくておいしいおやさいもたべれるわ!」 「ほんとう!?」 「ゆゆーん♪ やっぱりぱちゅりーをさそってよかったよ!」 嬉しそうな顔を浮かべるれいむとまりさ。既に自分たちが大量の収穫をした後のような気分になっているのだろう。 ぱちゅりーも、二人がそんな顔を見せるのはとても幸せなことだった。 これからも、ずっと一緒にゆっくりしたい…… ぱちゅりーは幸福に満たされながら、そろそろ出発しようと声をかけようとした。 「むきゅ! そろそ」 「ゆ……? なにかきこえない……?」 「ゆゆ……ほんとだ、へんなおとがきこえるね」 「……むきゅ?」 だが、れいむとまりさが不思議そうな顔で周囲を見渡したのに遮られた。 つられて、パチュリーも耳を澄ませてみる。 肉体こそ脆弱だが、感覚器官は他のゆっくりに劣っているわけではない。 程なくぱちゅりーも、地響きのような振動音を感じ取った。 「ぱちゅりー、なんなのこれ?」 「わ、わからないわ……」 分からないが、何だかとても嫌な予感がした。 自分の餡子に眠る、ゆっくりという種族の遺伝子が警告しているような…… 見ればぱちゅりーたちだけではなく、周囲にいた他のゆっくりたちも不安気な様子で騒然としていた。 「ゆゆっ、なんだろうね?」 「これじゃゆっくりできないよ……」 「ゆえーん! おかあしゃーん!」 中には事情も分からぬまま、異様な雰囲気に飲み込まれて泣き出してしまった赤ゆっくりもいた。 比較的落ち着いている年齢を重ねたゆっくりが慌ててあやしているが、その光景はゆっくりたちの不安を増幅させただけだった。 何が起きているのか、分からない。 分からないが、何故かこのままだといけないような気がする。 「ゆっ!? なにかくるよ!?」 と、その時、一匹のゆっくりれいむがある一方を見て叫んだ。 その場にいた全てのゆっくりが、その視線の先に瞳を向ける。 ぱちゅりーは木々の奥に、何かゆらゆらと揺らめく黒い靄のような影を見た。 「むきゅ……? なにかしら、あれ……」 その正体を確かめようと、じっと目を凝らす。 すると。 ほどなく、その影の正体が、判明した。 「いだわっ、がわいいゆっぐりだぢよ゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ!!!」 「どがいはのあ゛り゛ずだぢがかわいがってあ゛げる゛わ゛あ゛あ゛あぁ゛ぁぁぁ!!!」 「んほぉぉぉおおぉおぉぉおおぉぉ!!! いっじょにぎもぢよぐなりまじょうね゛え゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!!」 それは。 ゆっくりと呼ぶには、あまりにも汚く、醜く、荒々しい。 透き通るような金髪をかき乱し、蝶よ花よと詠われる顔を欲情で真っ赤にさせ。 目を血走らせ、涎を垂らすままに、鬼気迫る表情で歓喜に打ち震えながら疾走する。 発情した、五十匹を超すゆっくりありすの集団だった。 ゆっくりの繁殖は主に春と秋の初めに行われ、冬はもとより夏にもあまり行われない。 その理由は簡単、繁殖のための交尾の後、ゆっくりは酷く水分を消耗するのだ。 人間と同じようにゆっくりたちも生きるために水分を必要とする。 水分がなければ干乾びてしまい、やがて死に至るからだ。 夏の気温はゆっくりたちを消耗させ、汗をかかせる。 その上更に交尾して水分を失ってしまったら、新しい命を紡ぐどころか自らの生命が終わってしまう。 種の存続のため、ゆっくりたちは余程の愚者でもない限り夏の繁殖は避ける傾向にあった。 だが、その為に過度の精神的不可を溜め込んでしまうゆっくりがいた。 ゆっくりありすである。 普段はゆっくりぱちゅりーに次ぐ理知的な存在であり、その美貌で数多のゆっくりの好意を一身に集めるゆっくりありす。 だが、そんなゆっくりありすには呪いとも呼ぶべき恐ろしい本能があった。 性欲である。 一度発情したゆっくりありすは、普段の都会派っぷりはどこへやら、化け物と見紛う恐ろしい形相で誰彼構わずゆっくりに襲い掛かり、強引に繁殖を迫る。 その際、本当にゆっくりなのかと疑いたくなるような身体能力を発揮し、一度捕まってしまったら脱出を許されず、死ぬまで犯されるはめになる。 発情したゆっくりありすの通った後には、茎を大量に生やして黒く朽ち果てたゆっくりの死体と、生まれた瞬間から犯されて死んだ赤ちゃんゆっくりの死体しか残らないとさえ言われているほどだ。 そのため、ゆっくりたちの中にはありす種を徹底的に排除する集落まで存在する。 善良なゆっくりありすにとって迷惑極まりないことではあるが、それほどまでに発情したありすは恐ろしいのだ。 しかしそんなありすも夏の間は自らの発情を抑える傾向にある。 当然だ。いくら何匹のゆっくりでも相手出来る性欲魔人とはいえ、真夏の炎天下で交尾を続けていたら全ての水分を失って干乾びてしまう。 例外こそいくつかあれど、自らの命を守ろうとする本能が、夏の間だけありすの性欲を抑えているのだろう。 しかし夏を過ぎれば、溜まりに溜まった性欲が爆発する。 それが一匹だけならば被害も最小で済むのかもしれないが、何故かゆっくりアリスはこのような状況になった場合、徒党を組む傾向が見られた。 一匹だけでも恐ろしい存在が、無数に襲い掛かる。 ゆっくりたちは恐れ、戸惑い、一気にパニックへと陥った。 「ありすだぁぁぁぁ!!!」 「にげてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆっくりできなくなるよぉぉぉぉぉぉ!!!」 各自、滅茶苦茶な方向へ逃げ惑う。 懸命にぴょんぴょん飛び跳ねるその姿は、常にゆっくりすることをを是とするゆっくりとは思えないほど必死な表情。 ある意味、ゆっくりれみりゃなどの捕食種と相対したときよりも危機感を感じているのかもしれない。 「おいがげっごなんでじないで、わだしだぢどあいじあいまじょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ、ゆーっ!? どうじでごんなにはやいの゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉぉぉ!!?」 だがゆっくりありすは、そんなゆっくりの速度を亀の歩みと言わんばかりの脅威的なスピードを発揮し、回り込んだ。 突然視界にドアップで映る、発情したゆっくりありすの醜い顔。 あまりの恐怖にゆっくりたちは一瞬動きを止めてしまい、その硬直した隙をゆっくりありすは見逃さなかった。 もっとも、発情したゆっくりありすの身体能力ならば、どちらでも結果は同じであっただろうが。 「んほぉぉ゛ぉ゛ぉぉ゛ぉ!!! ありずのあいをうげどっでぇぇぇぇぇぇ!!!」 「ゆ、ゆぎゃぁぁぁ!!? のっかからないでぇぇぇぇぇぇ!!!」 一匹のゆっくりれいむが、ゆっくりありすに圧し掛かられた。 体格は同程度。だが、れいむがどれだけじたばたしても振りほどくことが出来ない。 限界まで餅のように身体を伸ばして逃れようとするが、追いすがるゆっくりありすも同じように身体を伸ばして密着させてきた。 「はぁはぁ、ぞんなにあわでなぐでもちゃんとずっぎりざぜであげるがらぁぁぁぁぁぁ!!!」 「やべでぇぇぇぇぇぇ、ぎもぢわるいぃぃぃぃ!!!」 ゆっくりが交尾の際に分泌される特殊な粘液を背中に感じ、れいむは悲鳴を上げた。 激しく身体を擦られる感触が気持ち悪い。 交尾の経験がないれいむは未知の感覚にひたすら恐怖し、一刻も早くこの状況を打破しようと必死にもがいた。 このれいむは一週間前、ようやく親元から巣立ったばかりのゆっくりだった。 母や妹たちが見送る中、涙を呑んで家族に別れを告げ、少し離れた木の根元に居を構えた。 それから必死に巣の内部を拡張し、食料や生活に必要なもの、綺麗な石などを溜め込み、巣としての体裁が整ったのが三日前。 立派な家持ちのゆっくりとなり、やがて可愛いお嫁さんを見つけて子供を作り、ゆっくりとした幸せな家庭を築くはずだった。 そう信じて疑わなかった。 だが現実は、そんな小さな幸せをも奪った。 「い゛い゛っ、いいわ゛ぁぁぁ!!! はぁはぁはぁ、こども、だぐざんづくりまじょうねぇぇぇぇぇ!!!」 「やだぁぁぁぁ!!! ゆっぐりでぎなぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 涙を諾々と流し、襲い掛かる暴力に抵抗しようとするれいむ。 だが身体はぴくりとも動かず、なすがままにありすの性交を受けてしまっている。 粘液の影響か、感じたくないのに段々と昂ぶっていく自分の心が嫌だった。 体内の水分が表皮に浮かび上がり、足元に水溜りを作る。 自分の身体がふやけ、それに反比例するかのように餡子が干乾びていくのが分かった。 「いいのね、ごごがいいのねっ!!?」 「やべでぇぇぇぇ!!! もうはなれでよぉぉぉぉぉ!!!」 「ぞ、ぞろぞろいぐっ、いぐわっ!!!」 「ゆぎぃぃぃぃぃ!!! だめぇぇぇぇぇぇ!!! ずっぎりじないでぇぇぇぇぇ!!!」 ありすの律動が早まる。そろそろすっきりするという合図だ。 れいむは本能的にそれを悟り、今まで以上に必死の形相で暴れだした。 だが、押さえつけるゆっくりアリスはびくともしない。 快感で見る者の生理的嫌悪感を催すような表情を浮かべながら、独り善がりの快楽を求めて振動を強めた。 「いぎまじょっ、いっじょにいぎまじょう!!!」 「い゛や゛ぁぁぁぁあ゛ああぁ゛ぁあ゛あぁぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁ!!!」 「んほおおおおおおおおおおおおおお!!! すっきりいいいぃぃいいいぃぃぃいぃいいぃぃぃぃ!!!」 「ずっぎりい゛や゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁ!!! ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅう゛うぅ゛ぅぅぅ!!!」 同時に絶叫。 ありすはこの世全ての幸福を手にしたような極上の笑顔で。 れいむは最大の苦痛と快楽を同時に受け、涙や涎でぐちゃぐちゃになった絶望の表情で。 凍り付いたように動きを止めるれいむ、やがてその額から、凄まじい速度で植物の蔦のようなものが生え始めた。 同時に黒澄むれいむの身体。 まだ若いれいむは、子供を生んで無事でいられる身体を持っていなかったのだ。 栄養の全てを蔦に獲られ、れいむは突然の運命を呪いながら、朽ち果てて絶命した。 「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!」 「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!」 蔦に生った三匹の赤ちゃんゆっくりたちが、声を上げて地面に落下した。 本来はもう少し大きな身体になるまで蔦から離れず、親の栄養を吸収する赤ちゃんゆっくりであるが、親が死んでしまった瞬間、蔦から生まれ出ずる。 既に親が死んでしまっているので栄養の供給が出来ず、少しでも早く餌を食べられるようにしようという生存本能なのだろう。 兎にも角にも、ありすのレイプによって生まれた赤ちゃんゆっくり――全てれいむ種――は、自分たちの親に挨拶しようと周囲を見渡し。 そして、未だ性欲覚めやらないゆっくりありすを視界に納めた。 「ゆっ、おきゃあしゃん?」 「ゆー♪ ゆっきゅりしちぇ」 「ありずのあがぢゃぁぁぁぁぁん!!! いっじょにぎもぢよぐなりまじょうねぇぇぇ!!!」 ゆっくりありすが飛び掛る。 生まれたばかりの赤ちゃんゆっくりたちは、ゆっくりすることを知らないまま、苦しんで死んだ。 「やべでぇぇぇぇ!!! まりざのごどもにひどいごどじないでぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 別の場所では、割と大きな体躯のゆっくりまりさが、数匹のゆっくりありすに圧し掛かられながら滂沱の涙を流していた。 まりさの眼前では、彼女の子供のちびまりさやれいむたちが、同じように子供のゆっくりありすに犯されている。 その傍には、大量の蔦を生やして呻く、ボロボロの身体のゆっくりれいむ。 まりさの番であるれいむは、まだかろうじて生きてはいたものの、瀕死の重傷であった。 「だいじょうびゅよ、ありしゅにまかしぇちぇ♪」 「きょうやっちぇしゅりしゅりしゅると、とっちぇもきみょちいいにょよ♪」 「や、やめちぇにぇ! まりしゃたちをはにゃしちぇにぇ!」 「ゆえーん! おきゃあしゃーん!! たしゅけちぇぇぇぇぇ!!!」 赤ちゃんゆっくりありすに圧し掛かられ、振動を加えられている赤ちゃんゆっくりまりさたち。 皆、一様に悲鳴を上げ、母に助けを求めていた。 ゆっくりまりさはその悲鳴が耳に届くたび、何も出来ない自分の身を呪い、悔しさに心をすり減らす。 今すぐにでも、子供の下に駆けつけたい。 だが、自分を囲んで律動する三匹のゆっくりありすが、それを許すはずもなく。 「まりざぁぁぁぁぁ!!! ありずだぢのてぐにっぐでめろめろにじであげるわぁぁぁぁ!!!」 「はぁはぁ、まりざがわいいぃぃぃぃぃぃ!!! いっじょにずっぎりじまじょうねぇぇぇぇぇぇ!!!」 「さんにんどうじなんで、まりざっだらなんでづみぶがいゆっぐりなのかしらぁぁぁぁぁ!!?」 「やべでぇぇぇ!!! からだすりつけないでぇぇぇ!!!」 左右と後方からの振動に、ただ耐える。 既に何度かすっきりされたのか、額にはいくつかの蔦を生やしていた。 蔦には小さなまりさ種、そして自分を犯したありす種が、すやすやと気持ち良さそうに眠っている。 どうして、こんなことに…… ゆっくりまりさは朦朧とした意識で、過去を思い返す。 まりさとれいむは一ヶ月ほど前、餌を探しに出た森の中で出会った。 まりさが見たのは艶やかな黒髪を持つ美しいゆっくり、れいむが見たのは狩りが上手なかっこいいゆっくり。 二人はすぐに恋に落ち、一緒に暮らし始めた。 すぐにでも交尾したかったが季節は夏、炎天下でのすっきりは死の危険性が付き纏う。 だからまりさは誘惑を我慢し、れいむに手を出すことはしなかった。 そして先日、気温が下がり、秋が近付いたと確信した二匹は、ようやく子作りすることが出来たのだった。 蔦に生えた、愛の結晶。 小さなれいむとまりさが、生まれる日を夢見てゆっくりと眠っている。 れいむは家でおうたを歌ってあげ、まりさは子供の栄養も必要になったれいむのためにいっそう狩りに勤しむこととなった。 大変だったが、幸せに満ちた時間。 ついにその日がやって来て、生まれた子供が自分たちに向かって拙い声で「ゆっくりしていってね!」と言った瞬間、二人は感激の涙を流した。 あの時、二人は確かにゆっくりの絶頂にいたのだった。 「はぁはぁ、みょみょみょ、みょうしゅぐしゅっきりしゅるよ!」 「しゅっきりしゅると、とっちぇもきみょちいいにょよ♪」 「やぁぁぁぁ!!! やだぁぁぁぁぁ!!! しゅっきりちたくにゃいぃぃぃ!!!」 「みゃみゃー! たしゅけちぇ、みゃみゃー!!!」 「どうちてたしゅけちぇくれにゃいのぉぉぉ!!? おきゃあしゃんのばかぁぁぁ!!!」 子供たちの悲鳴が聞こえる。 助けてくれない自分をなじる声がする。 ごめんね、れいむ、まりさ。 まりさの意識は、闇の中へと溶けていった。 ぱちゅりーは、迫り来る暴力から必死に逃げようとしていた。 しかし、ぱちゅりー種は元来体力の低いゆっくり。 跳ねることが出来ず、這いずることしか出来ない速度では、やがて追いつかれてしまうだろう。 「ぱちゅりー、がんばってね!」 「ゆっしょ、ゆっしょ! ここをぬければきっとたすかるよ!」 それを支えるのは、友人のれいむとまりさだった。 二匹は両脇から挟みこむように陣取り、ぱちゅりーの背中を押している。 自分たちの命がかかっている中、このような行動を取るのは、なにも友達想いだからというだけではない。 二匹はぱちゅりーのことが好きだった。 いつか、どちらかを番に選んでもらおうと思っていた。 だからこうして、愛するぱちゅりーを見捨てず、背中を押しているのだった。 「む、むっきゅぅ……ふたりとも、ぱちゅりーをおいてにげて……」 そんな二匹に押されているぱちゅりーは、息も絶え絶えだった。 援護があるとはいえ、普段では到底出すことの出来ないスピードで走っているのだ。 脆弱な肉体は悲鳴を上げ、餡子を吐き出しそうになるのを必死に堪えている。 ありすに捕まりたくは無い。 だが、これ以上肉体に負荷がかかるのも耐えられない。 このままでは、れいむとまりさまで捕まってしまう。 自分が貧弱なぱちゅりー種であることを、ここまで恨んだことはなかった。 「なにいってるの! みんなでいっしょににげるんだよ!」 「そうだよ! がんばってにげて、いっしょにゆっくりしようね!」 だが二匹は元気付けるように微笑んだ。 ぱちゅりーは感極まり、嬉し涙を流す。 れいむとまりさはそれに気付き、そっと舌で涙を舐めとった。 「むきゅー……ありがとう、れいむ、まりさ……」 「さぁ、もうちょっとだよ、がんばろうね!」 「もうそろそろ、ありすたちも」 「いだわぁぁぁぁ!!! ごぉぉぉんなにがわいいゆっぐりだぢがざんびぎもぉぉぉぉ!!!♪」 と。 無情にも、ゆっくりありすが四匹、左手側の草むらから飛び出してきた。 三匹は恐慌し――だがれいむとまりさはすぐにぱちゅりーを庇う位置に立ち、ぷくぅーと威嚇するように頬を膨らませた。 「ぱちゅりー、にげて!」 「む、むきゅー! そんなことできないわ!」 「いいから、はやく!!!」 ありすたちはだれがどのゆっくりを担当するか、相談しているようだ。 その爛々と狂気に満ちた瞳。ゆっくりぱちゅりーの本能的な部分が警鐘を鳴らす。 友達を見捨てたくはなかった。 だけどそれ以上に、ありすに犯し殺されるのは嫌だった。 「ごめんなさい……!」 ぱちゅりーはれいむとまりさに背を向け、必死に這いずって逃げ出した。 後方で、れいむとまりさの悲鳴が上がる。 残酷な運命に、ぱちゅりーは先程とは違う種類の涙を流した。 「ゆっゆっゆー♪ ゆっくりのお歌はどんなもんだーい、と……」 太陽が沈み、月と星々が煌く夜空の下、俺はほろ酔い気分であぜ道を歩いていた。 本日は外界の話を本に纏めたいとかいうことで、俺を含めた村に住む外界の人間が阿求ちゃんの家に集められたのだった。 外界から幻想郷にやってきた人間は大抵妖怪の餌となってしまうが、無事村に辿り着いたものは外の世界へ戻るか、この幻想郷に残るかの選択肢を得られる。 俺たちは戻るのを拒否し、ここで新たな生活を手に入れた組。外の世界のことを知らない村人たちに話をせがまれたりすることもある。 年齢層は様々で、上は三十年も幻想郷で暮らしているというじいちゃん、下はなんと十二歳の子供までいる。 俺が五年前、幻想郷に誘われたのは十五歳のときだった。月日は経つものだなぁ、と少々感慨にふけってみたり。 とにかく、久しぶりに外の世界を懐かしんで話が出来たので、ついつい時間が長引いてしまった。 家で待ってるれいむも、お腹を空かせてしまっていることだろう。 急いで帰って晩御飯を作ってあげないとな。 「――――!」 「ん?」 今なんか、ゆっくりの悲鳴が聞こえたような。 足を止めて、きょろきょろと辺りを見渡す。 電灯のない、月明かりだけの暗闇と、静謐な雰囲気。 気のせいだったのかな? ついゆっくり関係に敏感になってしまう自分に苦笑しながら、耳を澄ませた。 「……こっちの方向か?」 林の中から、確かにゆっくりの声らしきものが聞こえた。 近いとは言えないが、それほど遠いというわけでもない距離のようだ。 うーん。 まぁいいや、見に行こう。 俺は酒の勢いもあり、お気楽気分で林の中へと足を踏み入れた。 「はぁはぁはぁ、い゛いでじょ!? ぎもぢいいでじょぉぉぉ!!?」 「むっぎゅぅぅぅ!!! だずげでぇぇぇぇぇ!!!」 なんか凄い光景が広がっていた。 れいぱーありすに、ゆっくりぱちゅりーが犯されている。 ありすの発情した顔は尋常なものではない。なんであのゆっくりの中でも特に可愛い顔がここまで変化するんだろう、って感じ。 あれだ、言うなれば……ヤマンバ。 一方ぱちゅりーのほうは、苦しそうに呻きながら、逃げ出そうともがいている。 涙を流し、必死な表情のゆっくり…… あ、やべぇ、興奮してきた。 「むぎゅ!? お、おにいざん!!! ぱぢゅりーをだずげでぐだざぃぃぃぃ!!!」 俺の気配に気付いたのか、ぱちゅりーが涙目、いや涙顔で俺に嘆願してくる。 んー。 んんー…… …… 助けてやるか。 俺、実は発情したありすって胴体付きれみりゃの次くらいに嫌いなんだよね。 ゆっくりをいじめる小道具としては好きなんだけど。 これでも俺はゆっくり愛で派なわけで、制裁は好きだけど虐待は嫌いなんだ。 人様に迷惑をかけない、悪いことをしていないゆっくりは、幸福に暮らすべきだと考えている。 だって可愛いもん、ゆっくり。 いやまぁ、このぱちゅりーがゲスではないなんて言い切れないんだけどさ。 とはいえ、今はゆっくりを捕獲出来そうなアイテムを所持していない。 仕方無い、気分悪くなるけどやるしかないのか。 「そら、よっ!」 「んほぉぉぉぉぉぉ!!! すっき……ゆげぇぇぇ!!?」 地面に落ちていた木の枝を広い、至福の顔ですっきりしようとしていたありすの頭を突き刺した。 激痛が走ったのだろう、ありすは悶え苦しみ、突き刺された穴の端からカスタードが少し零れ出る。 んあー、やっぱり肉体を直接攻撃するのは嫌いだなー、俺。 やっぱり攻めるなら精神のほうでしょ。 「むぎゅっ、むぎゅっ……」 ゆっくりぱちゅりーはありすの動きが止まったのを理解すると、なんとかありすの下から這い出した。 だが肉体的に極限状態だったらしく、えれえれと餡子を吐き出してしまう。 うわっ、きったねー。 俺はゆっくりありすの馬鹿力で枝が抜けないよう、もう一本渾身の力を込めて枝をありすに突き刺すと、ぱちゅりーが落ち着くのを待った。 やがてふらふらながらもなんとかしゃべるくらいの元気を取り戻したぱちゅりーが、俺に事情を説明する。 「ふーん、発情ありすの群れがねぇ」 話には聞いていたが、実際そんなことが起こるもんなんだなぁ。 じゃあ、集落一つ分のゆっくりたちが泣いて逃げ惑ったわけで……おっと、想像だけでなんかムラムラしてきた。 極力顔に出さないよう努めながら、俺はぱちゅりーを抱き抱えた。 「じゃあ、すぐ助けに行こうか。もしかしたら友達も救えるかもしれない」 「むきゅ、おねがいするわ……ごほっ、ごほっ!」 「ああほら、無茶すんな。静かに運んでやるから、な?」 「だ、だめよ、いそいで……れいむとまりさが……」 どうやら、友達思いのぱちゅりーらしい。ゲスじゃなくて良かった。 俺は体力を極端に失ったぱちゅりーを疲れさせないよう神経を使いながら、より深く林の奥へと進んでいった。 結論から言うと、生き残ったゆっくりは一匹たりとていなかった。 どのゆっくりも大量の蔦を生やし、黒ずんで朽ち果てていた。 「酷い有様だな、これは……」 あまりの惨状に、ごくりと唾を飲み込む。 こっちのれいむは犯し殺されたあげく、生まれた子供まで犯されたらしい。 あちらのまりさは、目の前で子供が犯される姿を見せ付けられたようだ。 どいつもこいつも、性交後のすっきりとした顔ではなく、怨嗟と憎悪に塗れた悲痛な表情をしている。 それほどまでに、恐ろしい体験をしたのだろう。 人間だろうが妖怪だろうがゆっくりだろうが、『死』というものを嫌悪する俺は眉をしかめた。 ゆっくりありすたちの姿は影も形も見当たらない。 存分にすっきりしたので、新たに生まれた赤ちゃんゆっくりありすを連れてどこかへ去っていったのだろう。 ……もしかしたら、未だ快感が足らず、他の獲物を求めに行ったのかもしれないが。 そうなると、また何処かの集落が同じように襲われ、ここと同じ惨状になるのだろうか。 想像したら気分が悪くなってきた。 「れ、れいむ……まりさぁ……」 ぱちゅりーの友人のれいむとまりさは、少し離れた場所で見つかった。 他のゆっくりと同じように、額から何本もの蔦を生やし、生まれ犯され死んだ子供たちに囲まれて朽ち果てていた。 黒ずんだ顔に光る涙の跡。 見るだけで苦しみが伝わってくるほど、酷い体験だったのだろう。 ぱちゅりーは呆然とした表情でそれを眺めている。 今まで暮らしてきたコミュニティの全滅、そして友達の喪失。 しかもそれはあらかじめ来ると予想されていたものではなく、ある日唐突にやってきた暴力。 ぱちゅりーはぶるぶる震えている。 だがすぐに、体力の限界となったのか、白目を剥いて気絶してしまった。 「あ、おい!?」 慌てて気を確かめようと揺らそうとし、思い留まる。 ぱちゅりー種は体力がない 子供を作ることだけは回避出来たとはいえ、精神的な疲労もあって瀕死状態なのだろう。 このままでは、本当に死んでしまう。 「仕方無い、乗りかかった船だ。家に連れ帰って介抱してやるか……」 万全の状態に回復出来るなんて断言出来ないが、出来る限りのことはしてやろう。 愛で派ですから。 ゆっくりの泣き顔を見るのも好きだけど、ゆっくりしているところを見るのも好きなんです。 「とはいえ、少しくらい役得があってもいいよな?」 俺はぱちゅりーを襲っていたゆっくりありすのところに戻った。 ありすはなんとか突き刺された棒から抜け出そうともがいている。 その度に激痛が襲い掛かるだろうに、大した奴だ。 俺に気付いたのか、ありすは血走った目で叫んだ。 「ぞのぱぢゅりーをよごずのよっ!!! まだあいじだりないわぁぁぁあぁああぁぁぁ!!!」 「……」 開口一番それかよ。 ゆっくりありすの精力、恐るべし! なんか嫌な気配を感じたのか、抱き抱えたぱちゅりーがぶるぶる震えだすし。 はぁ。 まぁいいか。 これから、また楽しくなりそうだ。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5272.html
「ゆっくり美容師」 1 とある晴れた日の午後、学校帰りの二人の少女達が土手を歩いていた。昨日までの梅雨空が嘘のように、今日は太陽の光がさんさんと二人にふりそそぐ。あたりにはとてもゆったりした時間が流れていた。 「うぅ~、アンケート何かいた?」 「わたし、わたし美容師って書いた。」 「えっ、もうやりたいこと決まってんの、すげぇ。おとなじゃん!」 「なにがすごいかはしらないけどさ…。でも明日ださなきゃならないんでしょ。 あきもなんでもいいから早く書けば?」 あきは困ったように口をとがらせる。 「そういうもんでもないと思うどなぁ…。やっぱ大事なことだし。 でもさ、やりたいことがもうきまってるなんて、としえちゃんはやっぱなんかすごいや。」 「だから、ほんとそんなことないけどね。なりたいってだけで特別なんかやってるわけじゃないし。」 少し照れたように、髪をいじりながらとしえが答える。 「あっ、でも昨日おとーとの髪ちょっと切ってやったらお母さんにすんごい怒られた。」 「そうだよねぇ、美容師の練習なんてできないようねぇ実際。マネキンなんかないしねぇ。」 「人でやったらすごい怒られるし。」 そのまま土手沿いを少し歩いたところで、何かをみつけたあきがあっ、と声を出した。 「そうだよ!人だからダメなんだよ!」 「なにが?」としえがあきの大きな声に少し驚く。 「美容師だよ、美容師の練習!人間がダメなら…、あれがいるじゃん!」 あきの指差す方向をとしえが見ると、そこにはまりさとれいむのゆっくり家族がいた。 2 「たしゅぇぇてぇえぇぇぇ、おかぁしゃん、まりさをはやくたしゅぇてね」 「きゃわいいれいむになにしゅりゅのぉぉぉ、はなせぇぇえ」 「はなせぇぇぇぇえ。まりさの可愛いにおちびちゃんたちにさわるなぁぁぁっぁぁ。」 「まっててねぇぇ、いまおかあさんがたすけてあげるからぁぁっぁっぁ。」 親まりさと親れいむの絶叫があたりに響き渡る。しかし人間につかまってしまった子まりさと子れいむを助けようとするが自分達もその体を押さえつけられ動くことができない。 ほんの少し前まで親まりさと親れいむ、そして子まりさと子れいむ家族が一家そろってひなたぼっこをしていた。とてもあたたかい光の中でゆっくりした幸福な時間のなかに家族はいた。しかし、その幸せは突然の闖入者によってあっというまに壊されてしまった。 「そっかぁ、ゆっくりで練習すればいいのか。」 としえはなるほどといったようにうなずく。 「確かに、髪の毛生えてるし、人間のみたいだし。いい考えじゃん!あき!」 「そうでしょ!私もたまにはやるでしょ!」 としえに褒められたのがよっぽどうれしかったのか、子まりさと子れいむを持つ手に力がはいってしまった。 「「ゆげぇええぇ」」といううめき声とともに子まりさと子れいむの口から餡子が漏れる。 「げっ、あんこでた。どうしよう。」 「あぁ、別にいいよ。こどもは。小っちゃくて練習になんないし。」 「わかった。じゃあ潰すね。」 あきは子ゆっくりを持った手を振り上げると、そのまま一気に地面に投げ付けた。子ゆっくり達はゆぎゅぇっという短い悲鳴をあげると同時に、地面に叩き付けられた衝撃でその小さな体から餡子がはじけだし絶命した。お空をというあのセリフすらいうことないあっけない最後だった。 「きったな。まっ、短いゆん生ご愁傷様でした。」ふざけた調子であきは自分が殺した子ゆっくりの死骸に向けて手を合わせた。 自分たちの理解を超える出来事を呆けたように見ていた親ゆっくり達がようやく我に返り、叫び声をあげながら拘束から抜け出そうと体を激しくうごかす。 「ゆがぁぁぁぁぁ、まりさのおちびちゃんがぁぁぁぁ。ころしてやるぅううう。」 「うるさい。」ゆっくりの反抗もあきの軽い平手打ちで終わってしまう。 「邪魔なこどもも殺したし、どっちからやる?」 「そうだなぁぁ、じゃあれいむからにしようかな。黒髪だし。」 「おっけー。じゃ、まりさはこっちで預かっとくわ。」 「よし、じゃあはじめましょうか。お客さん!」はさみをもったとしえがにっこりと笑う。 「なにいってるのぉぉぉ。れいむのかわいいおちびちゃんたちをころしたくそにんげんが ぁぁぁぁぁ。」そう言って、当然のことだかれいむは自分の大切な子どもをえいえんにゆっ くりさせた人間に攻撃しようとする。これでは髪など切ることはできない。 「……、あきぃー、なんとかしてぇぇー」 「もぉー、しょーがないなぁー。」 あきはそう言いながらも、頼られることにまんざらでもない様子であたりを見回し、道に落ちている看板に目を向けた。そして「これでいいんじゃない?」とれいむの頭にその看板を突きたてた。」 「ゆんげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」という絶叫とともに体をびくびくと痙攣させる。 「れいむぅぅぅぅぅぅ」そのれいむの姿を見て、まりさも叫びをあげるが、どうすることもできないで、ただうめき声をあげ目から滝のような悔し涙を流す。 「真ん中のちゅうすうあん?ってとこははずしてるから死んではないと思うよ。それにゆっくりって意外とじょーぶだからこれくらいじゃ死なないし。」 「さんきゅー、じゃあこんどこそ。」 としえは手に持ったはさみをれいむに近づける。 「ゆっ、ゆゆぅ。やめてねぇ、れいむになにするの。やめろっ、やめろぉぉぉ。」 頭に杭を突き立てられ、弱弱しいながらも拒絶の意思をれいむはあらわにする。 「まずはその重たいもみあげからね。ばっさりいきましょうか。」れいむの拒絶にかまうことなくじょきん、ととしえはれいむの左右のもみあげにはさみをいれる。 「ゆんやぁぁぁぁ、れいむのきれいなおかみがぁぁぁぁ。」 「あっ、ちょっと切りすぎた。」としえはぼそりとつぶやいた。しかしためらうことなく、 最後にバランスが取れればいいとどんどんはさみをいれていく。ちょきちょき、じょきじ ょきとゆっくりにとって聞きなれない、ゆっくりできない音がたてられる。 「ゆぅぅぅ、どぼちてこんなことするのぉぉぉぉ。」 「ゆやぁぁぁ、れいむのきれいなおかみがぁぁぁぁぁ」 そんなゆっくりたちの悲鳴を聞きながらとしえが髪を切りつづけて、何分か過ぎたころ、 「ああっ、だめっ、失敗しちゃった!」 「ああ、こりゃたしかにね。」 わるいと思いながらもあきは苦笑してしまった。そこにいたのはあたまに穴の開いた7虎刈りのまんじゅう。あのわさわさとしたもみあげはいまやみるかげもない。前髪もすきばさみを入れようとしたのか、それも失敗してところどころに虫食いのような禿ができている。後ろ髪も切りそろえられることなくがたがただ。 「やっぱむずかしいわ。髪切るのって。」 としえは手についた髪を払い、ため息をつく。 「はじめてだししょうがないよ。」 ふたりのそんなやりとりをよそにまりさは「れいむぅぅぅぅぅ、れいむぅのきれいな かみがぁぁぁ。」とさっきから同じような叫びをあげる。れいむは「ゆぅ、まりさぁぁぁ、 れいむどうなちゃったのぉ。」と不安げな声で答える。 「お客さんの要望もあるし、どうなってるか見せてあげれば。」 「そうだねぇ、はいどうぞ」 としえはカバンから手鏡を取り出すと、れいむに見せてやった。 「ゆぅぅぅ?まりさぁ、おかみのへんなゆっくりがいるよぉ。」 髪を切られたことはわかっているだろう。しかし、その姿、髪を切られた自分だとは 想像できないばかりにそんな間抜けなことをいったのだろう。 「れいむぅ、そのれいむがれいむなんだよぉぉぉ。くそにんげんにゆくっりさせられなく なっちゃんただよぉぉぉ。」 まりさの言葉を聞き、首をかしげるようなしぐさをした後、れいむは叫びだした。 「うそだぁぁぁ、こんなのれいむじゃないよぉぉぉぉぉ。こんなゆっくりできないゆっく りはれいむじゃないぃぃぃぃ。」 ゆっくりにとっては髪の毛はおかざりの次に大事なもの。一度大人ゆっくりになり髪の 毛が生えそろうとその後ゆっくりの髪は生えたり、伸びたりすることがない。 「うわぁっ、ちょー不評。わかっているけど、なんかゆっくりに言われるとむかつくわぁ。」 「きいてるのぉぉぉぉ。むしするなぁぁぁぁぁ。はやくれいむのかみをもとにもどせぇ。」 「いや、むりだよ。」 「ゆゆゆぅぅぅぅ!おまえがやったんだろぉぉぉぉ。おまえがやったんだからおまえがな おせぇぇぇぇぇ。」 「……うるせぇなぁ。」 「ゆぅぅぅ。」としえのドスの利いた声にびくっと虎刈りれいむ体を震わせる。 「こんのぉ、だぼが。がたがたうるせんだよ。だったらなぁ。」 としえはれいむの不揃いの髪を引っ掴んだ。 「だったら、気になんないようにしてやるよ。」 じょきじょきじょきじょきとれいむの髪を根元から乱暴に切っていく。 「ごめんなさぃぃぃぃぃ、れいむがわるかったですからもうやべてくださぃぃぃぃ。」 「やめろぉぉぉぉぉぉ、もうまりさのれいむにひどいことするなぁぁぁぁぁ。」 「だからうるせぇってんだろ。……ほらっ、坊主まんじゅうのできあがり!」 としえはれいむに刺さっていた杭を引っこ抜きあきが押さえつけているまりさの前まで蹴り飛ばした。 「ゆぎゃぁぉぉ。うぅっ、まりさぁぁ。れいむどうなっちゃたのぉぉぉぉ。」 「れいむ、れいむ、れいむぅぅぅぅ。」まりさはれいむに必死になって近づこうとするが、あきの押さえつけは緩まることはない。 「うわぁっ、坊主頭のくせにでっかいリボンなんかつけてるから、なんかキモい。ほらっ、いまあんたこんな感じだよ。」 あきは手鏡でれいむにその姿を見せてやる。そこに映るのはあきの言葉通り、髪の毛の長さが不均等でへたくそな坊主頭のゆっくりだった。 「にんげんさん。…れいむ、れいむはね。」そんな自身の姿を鏡で見ると、れいむは先ほどと異なり泣き叫ぶこともなく、ぼそぼそとなにごとかをつぶやき始めた。 「おかあさんにも、おとうさんにも、まりさにもとってもきれいなかみをしてるねっていわれたんだよ…。れいむのじまんだったんだよぉ。おうたもかりもあんまりうまくなかったけど、このかみさんだけはみんなほめてくれたんだよ。」 「うんうん、それで?」つい合いの手いれるあき。小声であほとツッコむとしえ。 「それをそれをおまえがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」 それこそ命もつきんとばかりにれいむは叫び声をあげ、としえに向かっていく。もちろんゆっくりが人間にかなうわけなどない。れいむの命をかけた突進も簡単に止められてしまう。 「確かに、ちょっとキレちゃってやりすぎたかも。それはあやまるわ。髪の毛きりすぎちゃってごめんねぇー。はいはいこれでいい?」 「ビッグダディじゃないんだから。」へたくそなモノマネなのにあきは満面の笑顔を浮かべた。 「でもさ、なに急にメンヘラみたいな自分語りしちゃってるわけ?」 「てゆーか、髪の毛しか自慢がないってイタイよ。こいつ。髪の毛がきれいってだけでゆっくりになにができるの?どうせすっきりーしかできないスケベゆっくりでしょ。」 「切ってて思ったけど、べっつにそんなきれいな髪でもなかったよ。油っぽくてなんかべたべたして汚れてたし。せめて髪だけでも褒めてなぐさめてたんでしょ。むのーなれいむちゃん。」 「そうだね。そんなゆっくりはさ、もう死んだほうがいいか」 あきはぴょんと坊主れいむに飛び乗った。 「ゆげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。」 あきに飛び乗られた衝撃に、れいむは断末魔の叫びをあげる。一瞬で苦しみが頂点に達したかのようにゆがんだ顔、口からだらりとその舌がとび出しその痛みを表しているかのようだった。 「れいむ、れいむぅぅぅ。れいむがぁ、ずっとゆっくりさせられちゃったよぉぉぉ。」 無駄とはわかっているだろうが、れいむの体をまりさがぺーろぺーろと一心不乱に舐めている。としえやあきをせいっさいしようとしないところをみると、このまりさはもう人間に悪態をついたり、はむかう気力もなくなっているようだ。自分がかなわないことはっきりわかっているのだ。 そんなゆっくり達の悲劇的様子をしり目に二人は 「すんげー潰れかたしたよ。ウケるんですけど。ていうか、あきさ、ちょっと太ったんじゃね?」 「もうー、としちゃんちょー失礼なんですけど!」 「ごめんごめん、でもいいはじけっぷりだねぇ。」 「体が大きいぶん子ゆっくりよりばぁーんてなるね。」 などと楽しげにじゃれあっている。 「れいむがいなくなってすっきりしたことだし。」 としえはまりさににっこりと笑みをむける。 「今度はまりさね。」 「ゆっ、ゆんやぁぁぁぁぁぁぁ。」 まりさはまるで死刑を宣告されたかのような悲鳴をあげた。 3 「でっ、まりさのほうはどうするの?」 「うん、れいむが失敗しちゃったのはビジョンがなかったからさ、まりさのほうはさっ、こうしよう。」 言うが早いか、としえはまりさの帽子を取りあげると、先ほどれいむと同じように頭に看板をさし、動けなくなるようにすると、その金色の頭髪にまたもやざっくりと深くはさみを入れた。 「ゆげぇぇぇぇ。いたいよぉぉ。いたいよぉぉぉ。まりさのかっこいいおぼうしがぁぁぁ。まりさのさらさらなかみのけさんがぁぁぁ。」 「えぇー、また坊主にしちゃうの。」 「ちがいまーす。まりさって金髪でしょ。だからなんか外人って感じじゃん。」 「うん、そいで。」 「だからパンク風にしようと思って。」 「あぁー、なるほどっ、なのかなぁ?」としえの言葉にあきは首を少し傾ける。 「そう、テレビで見たみたいにさ、アナーキーでロックにしてやるのよ。」 喋りながらもはさみを止めることはない。思い切りよくまりさの頭頂部にのみ髪が残るように切っていく。 「やめて、やめてねぇ、ゆやぁぁぁぁ、まりさのゆっくりした三つ編みさんがぁぁぁ。」 「だいじょーぶ、だいじょーぶ。こんどはうまくいくと思うよ?」 「疑問形ってさ。頑張ってー、お客さんちょー不安そうだから。」 「まかせてまかせて。あともうちょっとだから。……はい、カットできあがりー!」 「うわっ、へんなのー。」と髪を切られたまりさの姿を見てあきは吹き出してしまった。今やまりさに先ほどまでの面影はなく、頭頂部直径7、8センチほど円形にだけ髪が残ったハゲまんじゅうだ。 「けっこーうまくいってない?さっきよりはきれいに切れたと思うんですけど。でもさ、まだ終わってないからね。ここからセットの段階に入りまーす。」 そう言うとまりさの頭に残る毛をはらい、工作道具が入った巾着袋のなかから液体のりを取り出した。 「ヘアワックスとかスプレーなんかはまんじゅうにはもったいないしね、てか持ってないし。あんたらにはこれくらいで十分でしょ。うわぁ、でも手ぇべったべった。 「ゆっ、つめたいよ。やめてくださぃぃぃ、もうまりさにひどいことしないでくださいぃぃぃぃ。」 「ひどいことなんてしてないんですけどぉー、むしろかっこよくしてやってるから感謝してほしんくらいんなんですけどぉー、お客さん。」としえはわざとらしく不満げな声をあげながらもまりさの残った髪の毛をのりで固めてたてる作業をやめない。 「そんじゃあわたしもまりさがかっこよくなるのに協力しちゃおうかなぁ。」 あきはまりさの髪を切るためにうっちゃておいた帽子を手に取り、こちらもはさみで切り刻み始めた。もちろんまりさはその様子をみて「まりさのおぼうしがぁぁぁ」とお決まりのセリフをあげたが、あきはそんなまりさを気にすることなく帽子を傷つけていく。 「あきは何やってんの?」 「へへぇー、こいつの帽子もパンクっぽくしてやんの。」 「りょーかい、りょーかい。あぁ、それならいいもんあるよ。わたしのカバン開けてみ?安全ピンはいってるからさぁ、それでかっこよくしてあげないよ。」 「おっけー。」まりさの帽子のつばのところにいくつも安全ピンをつけていく。 「いいかんじじゃーん、あき。こっちもよくなってきたよ。」 「うわぁ、イケてんじゃん。まりさちゃん。」にやにや笑いであきは答える。 「だしょ、三つ編みよりはずっといいでしょぉ、ほらお前も自分のことみてみ。」 そう言われまりさは鏡の中の自分の姿を見たが、変わり果てた自分の姿にショックを受け叫びだしたりするような反応を起こさなかった。 「ありゃ、無反応?生きてますかー、殺しちゃってないよねぇ、わたし。」 「かんどーしすぎちゃって、声もでないんじゃない。こんなにパンクなまりさなんて他にいないもん。」 「たぶんもてもてだよ、新しいすっきり相手見つけて、こどもつくれるよ。やったねまりさ!家族が増えるよっ!」 二人の自分には理解できないやり取りをぼんやりと聞きながら、まりさは考えていた。こんなにゆっくりできない姿になってしまいこれからどうしたらいいのか。あたらしいつがいなんて見つかるわけがない。お飾りはぼろぼろ、髪の毛はおかしい。こんなゆっくりをゆっくりさせてくれるゆっくりになんて絶対にいない。むしろ、ゆっくりできないゆっくりとして、こっちがえいえんにゆっくりさせらてしまうかもしれない。 さっきれいむが人間にはむかいえいえんにゆっくりさせれたことを考えると、人間にせいっさいすることはできないし、自分の髪やお飾りも元にもどしてもらえることもないだろう。 じゃあ、いったいこれから自分はどうすればいいのか。どうしようもない。そのことを思うと、自然と不安と、恐怖、今まで経験したことのないような感情がその体に襲い掛かった。 「こんどは急に震えだしたよ。髪の毛切ったから、風邪でもひいたのかな。」 「ばかまんじゅうが風邪なんかひくわけないっしょ。」 「でもまっ、今日はいい経験できたよっ、あきのおかげ、ありがとねっ」 「どういたしまして、って、なんかあらためていわれるとすんごいてれるなぁ。」 「こんどはどのゆっくりでやろうか。」 「ありすなんかいいんじゃない、とかいはの。」 「ああっ、自称とかいはの」馬鹿にしたような笑いをとしえはたてる。 ゆっ、ゆっと震えるまりさを残し、一仕事終えた達成感につつまれふたりは帰っていく。50メートルほど離れたところで、としえはまりさのほうを振り返り、思い出したかのように「おかねはいらないからねぇー」と大声をあげた。 選択肢 投票 しあわせー! (79) それなりー (18) つぎにきたいするよ! (120)
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/3029.html
注意点 ゆっくりエンザの人の『ゆっくりいじめ系2051 みんなの幸福まりさの不幸?』からの設定を一部拝借しています 「4232132」 「…423、2132。次」 「3221121」 「…322、1121っと。次」 「3331212」 「…333、1212。次」 少し薄暗くて狭い空間に男二人が沢山のゆっくり達がつまった段ボールに座って作業をしている。 明るい照明と内装のゆっくりショップの店内から一枚壁を隔てた奧の部屋で男達は奇妙な数字を言い交わしていた。 厳密に言えば一方の男が数字を言い、それをもう一方の男が復唱しながら機械にその数字を打ち込んでいるようだった。 先に数字を言う側の男は次から次に段ボールからゆっくりを取り出しては数字をそらんじているようだ。 段ボールから出されたゆっくりは重なり合っていて狭苦しい場所から解放された喜びと独特の浮揚感に頬を綻ばしていたが男達は反応しない。 自分がとてもゆっくりできているのにどうしてゆっくりしないのかととすぐに機嫌を害していたようだが、 すぐさま隣の段ボールに移されまた狭苦しい環境に逆戻りしてあっという間に境遇を嘆いていた。 いちいち感情をころころ変えるゆっくり達に反応していてはこの仕事はやっていけないのだ。 もはや慣れた手つきの流れ作業で男はゆっくりを掴みだし、ある個別の数字を読み上げ、そして別の箱に移す。 客の少ない間にブリーダーから店側に卸されたゆっくり達の選別作業と情報登録を済まさなければならないこともあり、一連の作業は素早く行われていた。 「ふー、ようやく終わったか」 「お疲れ様。今回はちょっとハズレが多かったすね」 「もう今度からあのブリーダーへの発注は止めとこうな」 「当たりも[きれい好き]れいむと[物知り]まりさだけじゃなあ」 「野生でも野良でもそれくらいいるってーの。話にならん」 休憩がてら店の裏手で生まれたての赤ゆをつまみつつお茶を飲みながら愚痴りあう男達。 ゆっくりを見て数字をそらんじていた男は今回入荷したゆっくりのリストを渋い顔をしながら眺めていた。 飼いゆとしてはぎりぎりの水準のレベルであるゆっくり達ばかりでこれからどう販売していくかを考えると頭が痛かった。 男がそらんじた数字、それはゆっくり達のステータスをある基準で数値化したものだった。 数字はそれぞれ[人格Lv]、[身体能力Lv]、[しつけLv]、[耐水性Lv]、[歌唱技能Lv](まりさ種なら[渡水技能Lv]等)、[絶食耐性Lv]、[知能Lv]である この男はゆっくりを触ればそのゆっくりのステータスが分かる程度の能力を保有しているのだ。 ゆっくりがこの世に出てくるまではまったく意味をなさなかったその能力は今こうしてゆっくりの状況を把握するうえで大活躍している。 人語を話す癖にコミュニケーションはほとんどまともにとれない不思議生物に対して、 直感的にその様子を手に取るように分かるのは便利以外の何者でもない。 男達が行っていた選別作業は店に出すのもそうだが販売するゆっくりのデータベースを作る役割も兼ねていた。 それまでゆっくりを飼いたいと思う客に対して曖昧な販売基準と適当な価格設定だったものが、この男の手により確固たる販売形態へと生まれ変わったのだ。 客側からしてみてもそのゆっくりの性格やら特徴などはっきり分かるので安心して購入できるというものだ。 男は睨んでいたリストから顔を上げると隣の男に告げた。 「とりあえずステータス下位層のゆっくりは入り口正面のケージで投げ売りにしよう。 そうでもなきゃ加工所に持って行ったほうが早い」 男は今回は利益無視の特価での販売を決め込んだ。お得意様の一部には喜ばれるに違いない。 それが次回以降の利益に繋がればいいのだ。 「今回は実験は行わないんです?」隣の男は一応とばかりに尋ねる。 「特にしたいこともないし、今はうちのゆっくりで忙しいからな」 「そういやようやく生まれたんでしたっけ? ゆっくりてるよの子供が」 「ほんとようやくって感じだな。これがまた親に似て可愛いのよ」 その姿を思い浮かべるだけで男の表情は緩んでしまう。 「店のゆっくり共に見せたいぐらいの馬鹿顔になってますよ……」 「あいつらは正直駄ゆっくりだ。商品じゃなきゃ無視してるレベルだよ」隣の男の台詞に再び渋い表情に戻った。 「まったくその落差はひどいもんっすね。もちろんてるよの子供は店には出さないんですよね?」 「当たり前だ。相場の十倍積まれても手放す気はないぞ」 「十倍っててるよってだけで何十万クラスじゃないっすか……。俺なら売っちゃうなー」 「そもそもお前じゃ飼えないだろうが」 「まあそれもそうっすけど」 そう言う苦笑いする隣の男はさっさとゆっくりとお茶を胃に流し込んで店内に戻っていった。 これ以上話を続けていたら飼いゆっくり自慢を長々とされることを経験上理解していたからだ。 話相手もいなくなったゆっくりのステータスを手に取るように分かる男は、 家で待つ飼いゆっくりの様子を思い浮かべながら一人不気味ににやけていた。 そして最後に残った赤ゆを一口に飲み込んでは店に戻っていった。 やはり最後のゆっくりは格段の美味しさを誇った。 その男の稀有な能力は店でゆっくりを売るときはもちろん、家でゆっくりを飼うときも存分に役立っていた。 特にゆっくりてるよ相手にはこれでもかというほど役立つ能力である。 通常ゆっくりてるよは人に懐かない。 それは人間側に問題があるからだ。 てるよは他種のゆっくりと比較すると驚くほど言葉数が少ないことがわかる。 あのとげとげしく耳に触るほどの大声で喋らないどころか必要なことまで「めどい」の一言で飼い主に伝えないのだ。 お腹が減った。遊んで欲しい。お風呂に入りたい。あれがほしいこれがほしい……。 そんなてるよの要求に飼い主は応えないため、てるよが愛想を尽かし出て行ってしまう。 どんな人間でもまずそれを止める事は出来ない。 なぜなら満月の夜に月の明かりに照らされ壁や扉をすり抜けて野生へと戻ってしまうからだ。 そんなてるよですら男は手なずける事に成功した。 それもこの男が持つ能力のおかげである。そしてついには繁殖まで成功してしまったのだ。 男は定時に仕事を済ますと挨拶もそこそこに寄り道もせずに家に向かった。 あまりの可愛さに一時も飼いゆ達と離れたくないのだが働かないと暮らしていけないのも事実なのでやむなく離ればなれになっている。 その為仕事が終われば一目散に帰宅するのがここ最近の日課となっていた。 幸い男が勤める店から家までは歩いても10分と近距離にあるため仕事以外の時間はゆっくり達といることができた。 それでも家を離れる間は飼いゆっくり達だけとなり不安である。 家屋への野生ゆっくりの侵入は後を絶たないし、自宅のガラス窓のすべてを強化ガラスにまだし終えていないからだ。 そしてこの日男の不安は見事的中する事になる。 「ただいまー」 男が自宅に戻ると帰宅の挨拶をする。 いつもならここで飼いゆっくりの一匹であるちぇんが出てくるはずだが一向にその姿を見せない。 静まりかえった室内からくるどこか騒がしい物音を聞き分けると男は異変を感じ取った。 やられた、男がそう思ったのはリビングの窓が破られてガラスが四散しているのを発見したときだ。 荒らされた家具とある方向に向かって伸びている泥の跡をみて胸が締め付けられる。 急に跳ね上がる心拍数は男が大事にしている飼いゆ達の安否が気になったからだ。 外からの侵入者のことはこれっぽっちも気にも留めてなかった。 ひとまずあいつらが無事でいてくれたらそれだけでいい、男の心はそれだけでいっぱいだった。 男は侵入者の足跡を辿りながら、リビングから離れた位置にあるゆっくり達が普段くつろいでいる部屋に静かにその足を進めた。 下部にゆっくり用の入り口が開けられているドアのノブをゆっくり回すとそこには見慣れぬゆっくりがぞろぞろといた。 その部屋に男が入ってきた事に気が付かないでいて、部屋に鎮座している和風ゆっくりハウスDX(家族用)に向かって何やら叫んだり体当たりを繰り返している。 「ゆっくりしてないでこのいえからでていってね!!」 「「「でていってね!!」」」 ゆっくりハウスの前で大声を張っていたのは成体サイズのれいむとその子供と思われる子ゆっくりサイズのれいむ二匹とまりさ一匹だ。 そして男の飼いゆっくり達はどうやらあのハウスの中に逃げ込んでいるようだった。 それでもまだ本人達の姿を見るまでは安心できない。 男はれいむ一家を無視してゆっくりハウスの元に向かった。 「ゆゆっ!! おじさんどこからきたの? れいむたちのゆっくりぷれいすからでていってね」 「「でていってね!!」」 「まりさにあまあまちょうだいね!!」 男がゆっくりハウスの側に立ったとき、ようやくれいむ達は男の存在に気が付いたようだった。 それほどこのハウスに意識を集中させていたようだ。どうもこのゆっくりハウスにはゆっくり達を熱中させて止まない何かがあるらしい。 そんなれいむ達を完全に無視して男はゆっくりハウスの屋根を大胆にも取り外した。 その様子を見てハウスを壊されたと誤解してか、れいむ達はゆがーんと固まってしまった。 「てるよ、ちぇん無事か!?」 「わかるよー、みんなぶじなんだねー」 「それは良かった。ちゃんと言いつけは守ったんだな」 「みんなでここににげたんだよー」 突如開いた天井を不安そうに見上げていたてるよとちぇんは男の顔を見てホッとした表情を見せた。 それでもてるよとその側にいる子供達二匹は震えが止まらない様子だ。 「みんなには心配をかけてすまなかった。でももう大丈夫だからな」 「あんしんなんだねーわかるよー」 てるよも声には出さないが「よかった」と言っているようだ。 念のための確認で飼いゆ一匹一匹を持ち上げて状況を確認する。 「[腹ぺこ][いらいら]か、お腹が空いてるんだな。あとでゆっくりごはんにしような」 まずはてるよの基本的なステータスを確認した。満腹度の低下とストレスの上昇が見られるがあとはいつも通りくらいだ。 男は一応てるよの他のステータスを確認する。 「[令嬢][跳ねない][賢者][美肌][不感症][喋らない][常時睡眠][親愛]」無事普段のステータスだった。 もしゆっくりショップの誰かがこのステータスの羅列を聞いていたら卒倒するだろう。 [てるよ種]という稀少さに加えてこれだけ多くのプラスステータスが加わればとんでもない値段になるからだ。 「ちぇんも確認しておこう。おいで」そういって男はちぇんを目の前まで持ち上げる。 「[一般常識持ち][狩りが得意][偏差値50][タチ][四六時中大声][飾りは飾り][親愛]。ちぇんも問題なしだな」 「わかる、わかるよー」 ちぇんもてるよには劣るがそこそこのステータス持ちである。 好感度ステータスの[親愛]からは男の飼いゆへの溺愛っぷりが見て取れる。 一方その頃男の足下で固まっていたれいむ親子がようやくショックから立ち直り動き始めた。 「どうじでおいえこわじだのおおお」 「「ゆっぐりやべでね!!」 「ゆっぐりでぎないじじいはじね!!」 まったく野生のゆっくり共は一旦動き始めたら騒々しくて堪らない。 男は優しそうな表情から一転、虫でも見るような眼差しでれいむ達を見下ろした。 「なんだまだいたのか。さっさと出て行ってよ。ここは俺とてるよ達の家だからさ」 「なにいっでるの゛!? ごごはれいむ゛だぢのゆっぐりぶれいずっていっだでしょ!!」 「はぁ、あっそう」 男はれいむのあまりの野生のゆっくりっぷりに溜め息をつく。 こういうゆっくりは相手をするだけ無駄というのは重々承知しているのでそうそうに家から出て行って貰う事にする。 「今なら許してやるから出てけ」 そう言って親れいむを持ち上げて部屋の窓を開ける。 するとこの瞬間男の表情が歪む。 男の能力の面倒なところは別にその気は無くても触るだけでそのゆっくりのステータスが分かってしまうところだ。 自分でコントロール出来ないためれいむに触れた時点でれいむの状況がわかってしまう。 「もうほんと絶望的なステータスだな。[わがまま][のんびり屋][餡子脳][四六時中大声][飾りに傷][かすり傷]か」 このステータスのゆっくりではゆっくりショップに来たら間違いなく即加工所送りである。 別に知りたくもないれいむのステータスを知ってしまい男はますます気が滅入る。 「まったく、こんな駄ゆっくりは投げてしまいたいなあ!!」 「おじざんやべでね!! れいむをなげないでね!!」 「おかーさんずるい!!」 「れいむもれいむも」 足下では子れいむ達が母親が人間に遊んで貰っていると勘違いしてこれまたうるさい。 そして子まりさに至っては何故か男に怒っていた。 「ばでぃざをむしずるじじいはごうじでやる!!」そういって効果のない体当たりをかましてきた。 まりさが男の足に体当たりをするとまりさと男は触れたと同義であり、男はこれまた知りたくもないまりさのステータスを知らされる事になる。 「もう勘弁してくれよ。[ゲス][暴れん坊][餡子脳][四六時中大声]……、[他ゆの飾り]?」 なんだこれと男は一旦親れいむを床に置き子まりさを持ち上げる。すると今度は親れいむが男に体当たりをし始めた。 男はそれを無視してまりさのステータスを確認するとやはりおかしなステータスが一つ存在した。 「おいれいむ、このまりさはお前の子供か?」 「ぞうだよ!! ばでぃざをゆっくりおろじでね!!」 親れいむはこのまりさを自分の子供だと言った。だが飾りステータスが[他ゆの飾り]なのだ。 「おいまりさ、この帽子どうした」 男はつまみ上げていたまりさのその帽子を指さしながら言った。 すると男の手の中で暴れていたまりさはあからさまにギクッと驚いてみせた。 「し、しらないんだぜ。まりさはなにもしてないぜ」 まりさは急に態度を変え大人しくなった。それは誰がどうみてもまりさは嘘をついている姿に他ならない。 野生種ならではの狡猾さが見て取れ、男は頭を抱えながらさらにまりさに問うた。 「なら質問を変えよう。お前の前の帽子はどうして無くなった?」 「おねーちゃんのありすとあそんでいるときえださんにひっかかってぼろぼろになったんだぜ。どうしてじじいはなくなったことしってるんだぜ?」 まりさは帽子を無くしてしまったのをなぜ男が知っているのか心底疑問に感じたようだが、それを男は無視して続けた。 「そしたらまりさ、どうしてその帽子が新品なんだ?」 「ゆゆっ、それは……」 子まりさが返答に困ったとき男が思いついた事実であろう推測をこのまりさにぶつけてみる。 「それは本当の持ち主から奪ったんだろ」 「ゆ゛ゆ゛っ、どういうことなのまりさ!!」 「ち、ちがうんだぜ。でたらめだぜ」 「お前はいつからそこのれいむの子まりさとすり替わったんだよ」 「おじざんっ、まりざはまりざじゃないの!?」 「ああ、お前達は気付いていなかったようだが中身が変わってるよ」 「ゆがーん」 「「まりざおねーちゃんはどこいっだの!!」」 れいむ達の衝撃は大きい。いつの間にか自分達の家族であったまりさが中身が変わっていたのだ。 それに気が付かず生活をしていた自分達もそうだが、のうのうと暮らしていた知らないまりさにもショックを受けた。 子れいむの一匹はあまりの出来事に餡子を嘔吐して痙攣しはじめた。 「大方元の持ち主のまりさを殺して奪ったんだろお前のステータスをみりゃ見当が付く。 それにありすおねーちゃんってお前の親はまりさとありすって言ってるのと同じだよな。 やっぱりこのれいむの子供じゃないんだろ」 「ゆがあああああ!! どぼじでぜんぶいっぢゃうのおおおおお!!」 「やっぱりしらないまりさっだったのおおお!! うちのまりさをがえじでええええ!!」 「れいむおねーちゃんしっかりしてええええ」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 もはや阿鼻叫喚地獄絵図である。 これ以上叫ばれたり部屋を汚されるのは勘弁してほしいので四匹には窓から退場してもらった。 当然言っても聞かないので男が家の外へと放り投げる形ではあったが。 男が窓を閉め切る寸前には親れいむの罵声と餡子の飛び散る音がした。 ようやく一騒動が片付き、男は飼いゆっくり達に目を向ける。 警戒しながらハウスの扉を開けて、ちぇんが先導しながらてるよと子供達が部屋に出てきていた。 「しずかになったんだねー、わかるよー」 ゆっくりショップで購入できるゆっくりハウスの扉は、当たり前だが内から外に開く形になっている。 これは外から押しても扉は開かないことを意味し、頑丈な作りにしておけば頭の悪いゆっくりには一生開けられない屈強な壁となる。 この安心設計のハウスはとてもゆっくりできると巣を持たない飼いゆっくり達には好評で、 その中で寝るとストレスや体力の回復が早まる効果もあることを男は確認している。 「……おなかへった」 「そうだったな、さっそくご飯にしようリビングにおいで」 野生のゆっくりの侵入を許してしまい、そのせいでみんなのご飯の時間が遅れてしまった。 男本人も空腹を覚えていたため、てるよとその子供達を両手に抱えてゆっくりの為の部屋をあとにした。 あとがき どうもゆっくりっち製作者です。 ゲーム内の人間はこんな能力を持っているのよって訳でSSを書いてみました。 べ、別にゲーム製作に行き詰まったとかじゃないんだからね!! 最後になりましたが勝手にSS内の設定を拝借してしまって、ゆっくりエンザの方すいません。