約 3,642,952 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/815.html
「ほぅら、れいむ今日の朝ごはんだぞ~」 「ゆゆっおいしそ~ うまっうまっ」 彼は一人幻想郷のある森の中に一軒家を建て暮らしている。 そして、突如出現し増殖したゆっくりと呼ばれる動く饅頭を虐待する趣味を持っていた。 わがままで自己中心的なゆっくりが人間に駆除されたり、危害を加えられるのは日常的な風景だ。 だが今、彼は一匹の直径40センチほどになる成体ゆっくりを丁重に扱っている。それはなぜか。 すべては彼による後のお楽しみのためにあった。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~!」 「旨かったか、そうかそうか、良かった」 「・・・」 「ん?どうした?」 食事を済ませ、急に何か言いたそうにそわそわし始めるゆっくりれいむ。 「あ、あのね・・・ れいむ、いままでおにーさんにおせわしてもらって すごいしあわせなの」 「なんだ、そんなことか。もちろん俺も幸せだよ」 「だからね・・・その・・・ ・・・れいむをたべてほしいの!」 「・・・えっ?」 突然、自らを食べてほしいと懇願し始めたれいむ。 これまでの幻想郷の住人によるゆっくり研究では、ゆっくり、特にれいむ種は愛情を持って育てると 恩返しのような感情が働くのか、このような行動を起こす個体が少なからず存在するらしい。 そして彼もそのようなゆっくりれいむの習性を熟知していた。 「(・・・思った通りだな。さて、これまでのフラストレーションを発散させるとするか・・・)」 「・・・おにーさん、すこしでいいかられいむのあんこをたべてもらいたいの おねがい」 「・・・ああ、わかったよ、れいむ・・・」 それまでゆっくりを散々虐待し、生ごみにしてきた彼がなぜゆっくりを飼い、愛でていたか。 全てはこの時のためであった。時間をかけ、自分の中の欲望を高め一気に発散させる。 そんな虐待もたまにはいいだろう、そう考えた末の計画だった。 「・・・ちょっとまっていなさい、れいむ」 「ゆゆっ わかったよ! ゆっくりまってるね!」 さっそく家の外で薪をくべ鉄板をひき、火を付け温める。 「れいむ、外に来なさい」 「ゆっゆっゆっ! ・・・ゆっ?何で火が付いてるの?れーむこわいよ」 「大丈夫だよ・・・ よっ」 れいむの両脇を抱え持ち上げる。 そして、熱く焼けた鉄板の上へとおもむろに乗せる。 「ゆぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙づい゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙!!!!!!」 「8・・・9・・・10・・・もういいかな」 10秒ほど経った後、焼けた鉄板の上で泣き叫ぶれいむをまた抱え、地面に降ろしてやる。 「ゆ゙っ゙ゆ゙っ゙ゆ゙っ゙!!」 涙目になりながら体を震わせるれいむ。その目がキッと彼を向く。 「どーじでごん゙な゙ごどずる゙の゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!!!???」 「どうしてって、ただ食べたんじゃおいしくないだろ」 「ごん゙な゙ごどじなぐでも゙お゙い゙じい゙よ゙お゙お゙お゙お゙!!!!!」 「いや、お前たちゆっくりはな、恐怖や絶望、痛みを味わった方がおいしくなるんだとさ」 「ぞん゙な゙の゙ゔぞだよ゙お゙お゙お゙お゙お゙!!!!!」 「あー、うるさい」 いま底部を焼いたのは痛みと恐怖を与える他に、これからのメインディッシュに向けて 無理に暴れ出さないように配慮した上でのことだ。感謝されこそすれ恨まれる覚えはない。 そして動きを奪った後は、そのうるさい口だ。饅頭が喋る必要はない。 外に用意していた工具箱もといゆっくり虐待道具箱からナイフを取り出す。 「おとなしくしてろよー、じゃないともっと痛いぞー」 「や゙べでえ゙え゙え゙え゙え゙!!!れ゙い゙む゙に゙や゙ざじがっ゙だの゙に゙い゙い゙い゙い゙!!!!!」 「・・そんなもん演技に決まってるだろ。そういえばお前を飼ってたのは1ヶ月くらいか。 ちょっと手間をかけ過ぎたな」 「ぞん゙な゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」 「さて、お喋りはお終いだ」 ゆっくりの口内に手を突っ込み、舌を掴み、もう片方の手に持ったナイフで根元から切り取る。 「げえ゙え゙え゙え゙え゙え゙!!!!!!!!!あ゙ぎゃ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!!!」 声にもならない声を上げ、もがき苦しむれいむ。そんなれいむに思わず口元が綻ぶ。 そのまま、今度はれいむの口を外周に沿ってえぐり取る。 「~~~!!!!~~~!!!」 何か言いたそうだが、もはや空気を吐き出すばかりで音が出ない。 餡子が流れ出る前に、用意した別のゆっくりの餡子を、口だった空洞に詰め込む。 間髪入れず、同じく用意した手製の饅頭皮を水でふやかして張り付ける。 数々のゆっくり実験話が確かなら、しばらくすれば完全に癒着し一体化するだろう。 「ふうっ やっと饅頭らしくなってきたぞお、良かったなあ、れいむ!」 「・・・・!!」 「何だ、そんなに涙を流したら体の水分がなくなってパサパサの餡子になるぞ」 動きを封じられ、声を失ったれいむができることはただ目で訴えることくらいであった。 しかし彼の手はその目に伸びた。 「・・・・・・!!!!!」 れいむの片目が無慈悲にもぎ取られる。 れいむは残った目と、ぽっかり空いたもう片方の空洞から水分を流し、震えるしかなかった。 「どれ、ちょっと味見・・・」 もぎ取った眼球を一口かじる。 透明な薄皮が破れると中から濃厚なシロップのようなものが流れ出る。 「甘っ! とてもこれだけじゃ食えないな・・・ 潰して紅茶にでも入れればちょうどいいか」 「・・・!!!」 「・・バランスが悪いからもう片方も取ってしまおうか」 「・・・!!!!!」 もう片方の眼球も摘出され、これはその場で踏み潰された。 そしていまだ砂糖水が流れる傷跡に、餡子を詰め、皮を張る。 のっぺらぼうのゆっくりだ。 「これでお前は動くことも、見ることも、喋ることもできない。 まさに饅頭の理想的な姿に近づいたわけだ。だが当然まだ足りない 次は・・・ 髪だ」 れいむの頭を押さえつけ、カミソリで髪を剃る。 リボンごとれいむの黒髪がばさばさと地面へと落ちる。 五厘刈りほどにしたところで、今度は生え変わらないよう皮むき器で薄く皮を削り取ってやる。 「・・・・・・!!!」 「おい、動くなよ。手元が狂っちまうぞ」 削り終わった後は水で溶いた小麦粉を塗ってやる。こうすればもう髪が生えてくることもない。 これまた幻想郷各所のゆっくり実験結果によって立証されている。 「・・・よし!完成だ!!」 そこにいるのはまぎれもない巨大な饅頭そのものであった。 小刻みに震えてはいるが。 「おっとすぐ死なれても困るからな、栄養をくれてやる」 砂糖水を詰めた大きな注射器をおもむろに頭頂部に刺し注入してやる。 「ははっちょっと飲ませすぎたか。パンパンだぞ」 「・・・!!!」 「聞こえてるんだろ?おまえらは皮で空気の振動を感じ音として聞いているらしいからな」 仕事を終え満足げな彼は、こうなる以前のれいむの願いをすっかり忘れていた。 「おおっと、忘れてた。お前、俺に食われてほしかったんだよな。 でもな、あいにく俺は饅頭嫌いなんだよ」 「・・・・・・!!!!!」 ビクッと体を震わせるれいむ。するとそのままフルフルと顎を見せた。 その顎からは小さな穴が見える。 過度の水分の注入によって体がふやけかかっていたため、水分の排出を 産道より試みようとしていた。これもゆっくりの一般的な生態の一つである。 ジョオオオオ・・・・ 音を立て、尿のように水分を体外に排出しているれいむ。 その様子を彼はじっと見ていた。 「そうだ、その穴があったんだよな。見落とす所だった・・・」 排尿を終えたれいむに近づき、産道に手を突っ込む。 「・・・・・・・!!!!!!!」 激しく体を震わせ抵抗するれいむ。だが片手で押さえつけられ、もう片方を手首まで 産道に突っ込まれ内部をかき混ぜられる。その痛みからか、ひときわ大きく震えた後 ピクッピクッと痙攣を始めた。 「んっ?、もう失神したか。じゃあさっそくこれも取ってしまおう」 産道も口の要領でくり抜き餡子を詰め、皮で蓋をする。 こうして完全な饅頭が出来上がった。 だが時折痙攣しており、見る者にとっては非常におぞましい姿だ。 「・・・終わったか さて、こいつをどうするかな・・・」 彼はその饅頭に対する興味を急速に失っていた。 「やっぱりゆっくりは動いて喋って、こっちを憎悪の目で見てくれないと やり甲斐ってものがないな・・・」 いまだビクッビクッと痙攣するれいむだった饅頭を持ち上げ、最初に焼いた鉄板に 全体をまんべんなく押しつけ焼き上げる。これで焼き饅頭の出来上がりだ。 そして、こんがりと焼けたそれを草むらの奥に投げ込む。 「まあ、そこで虫か動物か、それとも同族にでも食われるがいいさ、ハハハッ」 「・・・それで終いか? ゆっくりは食べないのか」 「俺はゆっくりを食う趣味はないんでな。ただの自己満足さ。 今日はくだらないことに付きあわせてしまったな。 俺を理解してくれるのは村では君くらいのもんだ じゃあ、また今度な」 一部始終を見学させてもらった私と立ち話が終わると、彼は家の中へと戻っていった。 そして去り際のどこか寂しげな背中を見届け、私も帰路へとついた。 終 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4087.html
※俺設定注意 ドスまりさの目の前でゆっくり達は全滅した。 泣き喚くもの、状況を理解せずに脅しつけるもの、命乞いをするもの。 人間はそんなゆっくり達を差別しない。 全て平等に、踏み潰し、切り裂き、引き千切り、殺す。 親ゆっくりも子ゆっくりも赤ゆっくりも老ゆっくりもすべてみんな殺されてゆく。 もちろん、ドスまりさもその殺戮の範疇にいた。 体は切り裂かれ、脳天に杭を打ち込まれているドスまりさの意識はない。 やがて処刑は終わる。 里の広場という処刑場にあるのは餡子。餡子。餡子の海。 気付けば日も暮れ始め、人間達はそれぞれの家に帰る。満身創痍のドスまりさを置いて。 だが、ここで奇跡が起こる。 ドスまりさの意識が目覚める。 本来ならば有り得えない。いくらドスとて、これほどの傷を負えばそのまま死ぬはずだった。 やがてドスまりさは地面にうち捨てられた帽子を拾い、ゆっくりと這い出す。 まただ。また、やってしまった。 ドスまりさはゆっくりと這う。おうちへと帰るのだ。 今回で何度目だ?一体、いくら死なせれば気が済むのだ? ドスまりさの胸中に浮かぶものは後悔。 ドスまりさは今まで何度も群れの全滅を見てきた。 ある時は突然の大雨。ある時はれみりゃの大群。そして、今回は人間の里に手を出してしまった。 他にも例をあげればきりが無い。 それほどまでにゆっくりは死にやすい。 今度こそ。今度こそこの群れは、立派にゆっくりさせてみせる。 そんな想いを何度も抱き、何度も打ち砕かれた。 この世はゆっくりできないものが多すぎる。そうだ。そうなのだ。 人間もれみりゃもふらんも山犬も雨も風も自然も何もかも、すべてがゆっくりできない。 もう解った。ゆっくりできないものには近づかない。近づきたくない。 だから次の群れは。次の群れこそはゆっくりさせてみせる。 ドスまりさは傷を庇うようにゆっくり這っていく。 その脳天には、いまだに杭が打ち込まれたままになっていた。 人間が立ち入ろうともしないような森の奥。 ここはゆっくりの理想郷。 ここのゆっくりは皆ゆっくりと、しあわせに暮らしている。 ゆっくりできないものなど無い。すべてがゆっくりしている。 ドスまりさは全てのゆっくりがしあわせー!になれるように、この理想郷を「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」と名づけた。 ゆっくりぱらのいあ 日の光が射しこむ朝。木の下に掘ったおうちの中で、まりさはゆっくり目覚める。 遂にこの日がやってきてしまった。 朝日の下、憂鬱な気分を紛らわすように溜息を吐く。 まりさの属する群れには、あるひとつの掟があった。 成人を迎えたゆっくりは、定期的に”お仕事”に就かねばならない。 まりさはこの春大人の仲間入りをした。今日初めて”お仕事”に就く。 これが普通の狩りや家事ならば、喜んでやろう。 まりさは本来そういう仕事に憧れていたし、その能力もあった。 だが違う。これからやる”お仕事”はどう考えても喜べるものではない。 ”お仕事”を放棄することは出来ない。 そんなことをすれば群れの長が黙っては居ない。 良くて追放、悪ければ・・・・・・まりさは考えるのを止める。 こんなことを考えても仕方が無い。 今日”お仕事”を済ませれば、当分の間は大丈夫。この群れに大人のゆっくりは数多くいる。 ゆっくり特有の前向き思考で、まりさは現状の問題を棚上げする。 こんな時はお兄さんと遊んだときのことを思い出そう。 まりさの話を聞いてくれて、まりさにいろんなことを教えてくれたとってもいい人。 今度はいつ会えるのだろう?また会って遊んでほしい。 楽しいことを思い浮かべるけれどもやっぱり憂鬱。 まりさはそんな気分で、森の広場へと向かっていった。 森の広場。 そこだけ木が切り取られたような広い空間に、巨大な饅頭が鎮座している。 この群れの長、ドスまりさだ。 「まりさ。まりさはゆっくりしてる?」 「もちろんだよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』だよ」 嘘だ。本当はゆっくりなどしていない。 だが嘘をつく。そうでなければ殺されてしまうから。 このドスまりさは狂っていた。 ドスまりさはこの群れ、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」をゆっくりにとっての理想郷だと信じ込んでいる。 ドスまりさは森の外は、ゆっくりできないものがうようよしていると信じている。 彼らは「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」の破壊を目的にしているのだ。 そのためドスまりさは、こんな森の奥に引っ込み、手出しができないようにした。 さらにドスまりさは、群れのゆっくりの中にも反逆者が混じっている、と信じている。 彼らはゆっくりできないもの、例えば人間と通じており、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」の破壊を目論んでいる。 彼らは忠実な群れのゆっくりに化けている。探し出し、処刑しなくてはならない。 ここのゆっくりは、皆ゆっくりしている。何故ならば、ドスが皆にゆっくりを提供しているから。 ドスはみんなの友達であり、ドスはみんなのことを常に考えている、ドスまりさは自分でそう信じている。 従って、群れのゆっくりは皆ゆっくりとしていなければならない。 もしゆっくりとしていないならば、それこそ反逆者である証拠だ。 「れいむ。れいむはゆっくりしてる?」 「もちろんだよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』だよ」 「ありす。ありすはゆっくりしてる?」 「もちろんよドス。ゆっくりしてるのはとかいはの『ぎむ』だわ」 「ぱちゅりー。ぱちゅりーはゆっくりしてる?」 「むきゅ、もちろんよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』よ」 「ちぇん。ちぇんはゆっくりしてる?」 「もちろんだよー。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』なんだねー」 今日集められたゆっくりは5匹。 れいむ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、そしてまりさ。 この中で”お仕事”が初めてなのはまりさとぱちゅりー。 2匹は幼馴染みだった。 「今日はあつまってくれてありがとう。さっそく”お仕事”の説明をするよ」 一通り挨拶し終えたドスは話を切り出す。 「この前、ゆっくりできないれみりゃを見かけたという報告があったよ」 「れみりゃはゆっくりできない。ゆっくりできないものはこの森にいてはいけない」 「ドスはそう考えたよ。だからみんなに集まってもらった」 「みんなの”お仕事”は、そのれみりゃを永遠にゆっくりさせること」 「もちろん、反逆者がいたら報告してね。場合によってはその場で処刑してもいいよ」 きた。これだ。まったくゆっくりできない。 両親から聞いた話の通り過ぎて、まりさはさらに憂鬱になる。 「全てのれみりゃ・ふらん・その他捕食種はゆっくりできないよ」 「この森に住むゆっくりたちは全てゆっくりしており、この「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」は そうした完璧なゆっくりのみに許されたゆーとぴあだよ」 「ゆっくりしていない外見、中身、その他もろもろを持ったゆっくりは見つけ出され、根絶しなければならないよ」 知っている。 この森には飾りを無くしたゆっくりなんて者は居ない。 この森にはドスに逆らうゆっくりなんて居ない。 なぜなら飾りを無くせばドスに殺されるから。ドスに歯向かえば殺されるから。 最低のディストピアだ。 「ドスに内緒のお話・行動をしているゆっくりは反逆者だよ」 「ドスが知らない、認めていない組織に参加しているゆっくり。ドスが知らないということはその組織は秘密組織であり、 それに参加する者はドスや、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」に危害を加えようとしているものと判断するよ」 「そんな反逆者は、狩りだして処刑されねばならないよ」 それも知っている。 秘密の狩りに出かけたもの。隠れてすっきりをしたもの。 彼らは全てドスに殺された。 この群れには密告というルールがある。 不穏な行動を取るゆっくりをドスに密告し、その報酬として安全を約束される。 自分の保身のために他のゆっくりを売る。 お陰でこの森から逃げる算段をつけることすらも難しい。 「ドスは君達の力量を考え、十分な装備を提供し、適切な任務を与えるよ」 「つまり、君達の任務成功率は100%だとドスは確信しているよ」 嘘だ。 ただのゆっくりがたった五人で、れみりゃに敵うと思っているのか。 それにこの森にれみりゃなんて居ない。 とっくの昔にドスまりさが狩りつくしてしまった。 報告というのもどうせ誰かの口から出任せ。 居ないものをどうやって捜せというのか。 つまり、まりさ達の任務成功率は0%だ。 ドスまりさの傍からゆっくりにとりが顔を出す。 このにとりも狂っていた。 まりさ達に手渡されるのは複雑に変形した棒のような何か。 おそらくはドスまりさの話を聞いて作った何かの模造品。これが「十分な装備」とは、恐れ入る。 「もし任務が失敗してしまうようならば、ドスはそれを反逆者の陰謀だと判断するよ」 まりさ達は任務の失敗を言い繕うために、反逆者を捜し出す。 別に反逆者である必要はない。誰かをそう仕立て上げれば良いだけのこと。 これからまりさたちが行うのは、自分達の命をかけた騙し合いだった。 「それからもう一つ!もし人間さんを見つけたら、必ず報告してね!」 「人間さんはゆっくりできないよ!人間さんはゆっくりできないよ!人間さんはゆっくりできないよ!」 壊れたようにドスまりさは繰り返す。 過去に何かあっただろう。それほどまでにドスまりさは人間を恐れている。 だがまりさは報告しない。 そんなことをすれば殺されてしまう。 ドスからすれば人間と会っているゆっくり=反逆者だからだ。 馬鹿正直に話をして、ドスまりさに反逆者と思われたら元も子もない。 「それじゃあみんな、頑張ってきてね!ドスはここで皆のことを応援してるよ!」 まりさ達5匹は、れみりゃが居たと報告された場所へ向かって歩き出す。 これから居もしないれみりゃを捜し出して、5匹の中の誰かを反逆者にするのだ。 まったくもって非生産的な”お仕事”。 楽しすぎて涙が出る。 そういえば、まりさは本当に反逆者なんだっけ。 ドスに内緒で人間さんと出会い、遊んだ。殺されるには十分な理由。 それだけのことで死んでたまるか。誰を犠牲にしてでも、絶対に生き延びてやる。 まりさはそう決意し、森の中を跳ねていった。 広場から遠く離れた森の何処か。 今まりさはひとり、森の中をぶらついていた。 当然のように、れみりゃはいなかった。 報告があったという洞穴。どこを探そうとれみりゃの影も形も見当たらない。 それでも一応、どこかに居るかもしれないという理由でまりさ達は分散して捜索を続けることにした。 死体は自分の無実を証明できない。 だから、まず先に殺してから相手に罪を被せることのほうが楽だ。 五人全員一緒に居ていつ誰から襲われるともわからない状況より、ひとりの方が気が楽だった。 このままでは任務は失敗に終わる。 その前に誰かに反逆者になってもらわねば。誰がいいだろうか?れいむあたりがいいかもしれない。 当然、相手も同じ事を考えている。殺るか殺られるか。 そう考えながら、まりさは周囲を捜索する振りを続ける。 突如。 目の前の茂みから、がさがさと音が鳴る。 まりさは驚愕する。 誰だ。れいむかありすかちぇんか。誰がまりさを殺しに来た。 いや、まさか。もしかしたられみりゃかもしれない。 もし本当にれみりゃが居たとしたら、今まりさはひとり。殺される。 あらゆる可能性が頭の中を駆け抜け、まりさを青褪めさせる。 しまった。いくら危険でも、全員で固まっていた方が良かったのかもしれない。 ここでまりさは殺され、後の4匹はまりさを反逆者ということにして生き延びる。 嫌だ。絶対に嫌だ。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない…… もうまりさが何を後悔しても遅い。茂みをかき分け、出てきたのは――― 「お、いたいた。まりさ、ゆっくりしていってね」 まりさの不安は外れた。茂みから出てきたのは、人間さん。 そう、まりさと一緒に遊んでくれたお兄さんだ。 安心とともに地面にふにゃりとへたれ込むまりさ。 「ゆ、ゆぅぅ……。びっくりさせないでね、おにいさん」 「?」 お兄さんが首をかしげている。一体何のことかわからないのだろう。 お兄さんに説明してあげなきゃ。まりさはゆっくりと、今の状況を説明し始めた。 「ふーん……成る程ね。難儀だな、お前も」 「ゆぅ……ゆっくりりかいしてくれて、うれしいよ……」 大体の説明を終え、お兄さんはまりさを励ましている。 こんな異常な話に理解を示してくれたお兄さんに、まりさはさらに好感を持った。 「お前んとこの長が狂ってて、今お前は誰に殺されるかわからない状況だと……すごい話だな」 「ゆ……そうなんだよ」 普通ならばこんな話は信じられない。少なくとも、まりさは信じない。 でもお兄さんは信じてくれている。人間さんはとってもゆっくりできるとまりさは思った。 「俺にはどうすることも出来ないけど……とりあえずこれ、食べるか?」 「ゆゆっ?それ、なぁに?」 懐から真っ赤な丸いものを取り出すお兄さん。 初めて見るそれに、まりさは疑問を呈する。 「見たこと無いのか?トマトっていうんだ。美味しいぞ」 「ゆっ……?」 日の光を浴びて輝くトマト。言われてみればとても美味しそうに見える。 まりさはふらふらとお兄さんに近寄り、トマトを一口かじる。 「おっ……おいしぃ~!!しあわせぇ~!!!」 思わず涙が出てしまう。 それくらいに美味しい。ほんのりとした酸味と甘さのコラボレーション。まるで太陽の味。 まりさは脇目も振らず、トマトを平らげる。 「おにいさん!ありがとう!おいしかったよ!」 「どういたしまして。傷物でよかったらまだまだあるよ」 更に懐からトマトを取り出すお兄さん。まりさはトマトにかぶりつく。 ああ、こんなに美味しいものをくれるだなんて。やっぱりお兄さんは良い人だ。人間さんはゆっくりできる。 ドスは何であそこまで人間さんを恐れるのだろう?こんなに人間さんはゆっくりできるのに。 赤い果実を食みながら、まりさはそんなことを思った。 もう日が高く昇っている。 お兄さんと別れ、まりさは歩き出す。 トマトのお陰でおなかは満腹。気力も充実。 今ならば誰にも負ける気がしない。生き残るには最高のコンディションだ。 そろそろ洞穴の前に戻るべきか。 このまま一人で居続けたならば、いつの間にか反逆者に仕立て上げられ、逃亡したということになりかねない。 そうなればドスまりさの山狩りが始まる。逃げ切れるとは思えない。 まりさは急いで元来た道へと引き返す。 「ゆっくり!ゆっくりいそぐよ!……ゆっ!?」 何か声がする。 ゆっくりしていない罵声。何か争うような音。洞穴の前で誰かが戦っている。 まりさは木の陰に隠れ、様子を伺う。 「まっででねおぢびぢゃん!!今がらままがおぢびぢゃんのがだぎをうづがらね!!」 「ゆあ゛っ、ぐるな゛、ぐるな゛ああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」 ゆっくりありすとゆっくりれいむ。 恐怖を顔に貼り付けながら逃げるれいむを、修羅もかくやという表情のありすが追っている。 「までっ、までえええええぇぇぇぁぁぁああああ!!!!おぢびぢゃんのがだぎいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!」 「ゆひいいいぃぃぃぃ!!!!ごなっ、ごないでえええぇぇぇぇぇぇぁぁぁああ!!!!」 すでに両者はぼろぼろだ。まりさが到着する前からふたりは戦っていたのだろう。 「じねえええええええええええええぇぇぇぇえええ!!!!!」 「ゆびゅぇっ!!!」 ありすの体当たりが炸裂する。吹っ飛ぶれいむ。 「じねっ!じね、じねえええええぇぇぇ!!!」 「ゆびゅっ!!!ぶっ、ぼぉっ!!!」 すかさずれいむに圧し掛かるありす。 そのままれいむを踏みつけだした。 「おまえのっ、ぜいでっ!!まりざがっ、おぢびぢゃんがっ、じんだっ、んだっ!!」 「げびゅっ!!ぶびょっ!!びょぶっ!!ぼびっ!!ぶぽっ!!」 ありすの踏みつけは終わらない。 どんどん餡子を吐き出し小さくなっていくれいむ。 「おばえざえっ、おばえざえいながっだら、ありずはっ!!」 「びょっ!ぶっ!ぼぇっ!」 おそらく、ありすの家族はれいむの密告によって反逆者として処刑された。 偶然にもれいむと”お仕事”をすることになったありすは、仇を討とうとしたのだ。 こんな光景は珍しくない。密告によって家族を失うゆっくりは大勢いた。 「までぃざどっ!!!おぢびぢゃんどっ!!!いっじょにっ!!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ありすは止まらない。 れいむが皮だけになっても、まだ跳ね続けている。 「ありずは・・・・・・じあわぜに・・・・・・」 ようやくありすは止まる。 れいむだった饅頭皮に顔をうずめ、泣き始めた。 まりさは隠れるのをやめた。 そっとありすの傍に近寄る。 「ありす・・・・・・」 「ゆ・・・・・・?ま、まりさ・・・・・・?」 ありすは顔を上げる。涙と泥と餡子でぐちゃぐちゃの顔。 「まりさだ・・・・・・まりさ・・・・・・まりさ・・・・・・」 何度もまりさの名前を呼ぶありす。様子がおかしい。 「ゆふ、ゆふふ・・・・・・!あのれいむをやっつけたから、まりさがかえってきた!」 何を言ってる・・・・・・そう言おうとして、まりさはやめた。 このありすは狂った。長年の仇を討ち、復讐という精神の拠り所を失ったのだ。 「まりさが、まりさがかえってきた!」 れいむを殺しても、まりさとおちびちゃんは帰ってこない。 わかっていたはずの現実から逃避し、ありすは楽しい夢の世界へといった。 「あれ?まりさはかえってきたけど、おちびちゃんがいないわね?」 きょろきょろと周囲を振り返るありす。 その瞳に正気の色は無い。 「おちびちゃんったらいったいどこにいったのかしら・・・・・・まりさ、しってる?」 まりさに子供の居場所を尋ねるありす。 まりさは首を振り、わからないと言った。 まりさにあの世の場所などわかるはずも無い。 「もう、おちびちゃんったら!ままにこんなしんぱいさせて、いけないこね!」 言葉では怒りつつも、その顔は満面の笑顔で満たされている。 きっとおちびちゃんがいた頃のありすはこんな感じだったのだろう。 慈愛に満ちた、優しいママ。 「まりさはそこにいてね!ありすはおちびちゃんをさがしてくるわ!」 まりさを洞穴に残し、ふらふらとありすは歩いていく。 見つかるはずの無いおちびちゃんを捜しに行くのだ。 「おちびちゃん~♪かくれてないででておいで~♪」 少しずつありすの姿は遠く、小さくなっていく。 おちびちゃんを呼ぶ声は、本当に楽しそうだった。 やがて、ありすの姿は見えなくなった。 でも、あの声は。 楽しそうにおちびちゃんを呼ぶ声はいつまでも消えずに、まりさに届いていた。 それからすぐに、ちぇんとぱちゅりーは戻ってきた。 まりさはれいむが反逆者であったこと、自分がそれを倒したことを伝えた。 ありすはれいむに食われたことにした。 生きていると知られるよりも、死んでいると思われたほうがあのありすにとって幸せだと思えたのだ。 結局、任務は失敗に終わった。 邪悪なる反逆者・れいむがその命を以ってまりさたちを阻んだのだ、ということにした。 森の広場で、ドスまりさに報告を行う。 「―――というわけで、にんむはしっぱいしちゃったよ、ドス」 「ゆうう!!反逆者がいたなら、仕方ないね!!」 まりさの言い訳に納得するドス。 任務は失敗だが、反逆者を見つけたことで満足したようだ。 「それじゃあ皆、お疲れ様。今回の任務はおしまい―――」 任務の終了を言い渡そうとするドス。 れいむという犠牲を払って生き延びられたというまりさの安心を――― 「まってねドス!はんぎゃくしゃはまだこのなかにいるんだよ!わかってねー!」 ―――ちぇんの叫びが、阻んだ。 「ゆ?どういうこと、ちぇん?」 「わかるよー!まりさははんぎゃくしゃだったんだよー!」 まりさの息が詰まる。 一体どういうことだ。このまま行けば任務は完了するはずだったのに。 「ちぇんはみたんだよー!まりさがにんげんさんといっしょにいるところを! まりさはにんげんさんからなにかあかいたべものをもらっていたよー! たのしそうにおしゃべりしてたよー!きっとまえからにんげんさんをしっていたんだねー!」 ちぇんは見ていたのだ。まりさが人間さんと出会った一部始終を。 それだけならばまだ良かったかもしれない。その後ちぇんはまりさを見失った。 そして洞穴に戻ってみればまりさと、れいむの死体があった。 きっとまりさは人間さんの手下として、れいむを殺したに違いない。 ありすがれいむに喰われたというのも嘘だ。きっとまりさがありすを殺して、食ったんだ。 なにも知らぬちぇんが、そう思ったのも不思議ではない。 本当の反逆者を告発するのに一片の躊躇もない。 「まりさのいってたことはうそだよー!きっとれいむとありすはまりさにころされたんだよー!」 「・・・・・・本当なの?まりさ」 能面のような無表情でドスまりさが問う。 やばい。やばいやばいやばい。殺される。何とかしてこの場を切り抜けなければ―――! 「ちっ、ちがうよ!ドス!そのちぇんのいってることはうそだよ!」 咄嗟にそんな言葉が口から出る。 こうなったら、ちぇんを反逆者にしてしまおう。そうでなければ、自分がそうなる。 まりさは覚悟を決め、嘘を並べる。 「まりさはそんなことしらないよ!きっとちぇんがにんげんさんのてしたなんだよ! まりさをはんぎゃくしゃにして、ころそうとしているにちがないよ! どす!だまされちゃだめだよ!このちぇんのほうこそはんぎゃくしゃだよ!」 「ちがうよー!まりさがはんぎゃくしゃだよー!わかってねー!」 「・・・・・・ゆうううぅぅぅぅ・・・・・・」 ドスまりさは悩む。 両者の言っていることは正反対。どちらかが反逆者だという明らかな証拠が無い。 はたして本当のことを言っているのはちぇんか。まりさか。 「まりさはしょうにんがいるよ!まりさはぱちゅりーといっしょにいたよ!」 「むきゅっ!?」 突然話を振られ、うろたえるぱちゅりー。 ドスまりさがパチュリーの方を向き、訊ねる。 「本当なの、ぱちゅりー?」 「む、むきゅううううううう・・・・・・」 おろおろしているぱちゅりーを見ながら、ちぇんは哂う。 何を言っているんだ、あのまりさは。 あの時まりさはひとりで、ぱちゅりーなどいなかった。まりさは自分の首を絞めたようなものだ。 虚偽の告発は、それも反逆だ。あの反逆者まりさは、処刑されるのだ。 「・・・・・・ほ、ほんとうよ。ぱちゅはまりさとずっといっしょにいたわ!」 「にゃあ!?」 ぱちゅりーの言葉に驚くちぇん。 そんな。どうして。何故そんな嘘を。 ちぇんはぱちゅりーの言っていることがわからない。 「ぱちゅはまりさといっしょにいたけど、にんげんさんなんてみなかったわ!ちぇんのいってることはうそよ! きっとちぇんがにんげんさんにあって、まりさをはんぎゃくしゃにするよういわれたにちがいないわ!」 ちぇんは知らなかった。 このぱちゅりーはまりさの幼馴染みだということを。 日々互いが密告をする群れの中で、2匹は信頼しあっていたということを。 ぱちゅりーは何も知らない。 まりさが人間さんと出会っていたことなど知らない。 まりさの言っていたことは嘘だということも知らない。 ただ、まりさのため。そのためだけに今こうして口裏を合わせている。 「いだいなちせいをもったドスならわかるでしょう!ちぇんははんぎゃくしゃよ!」 「ちっちがうよおおおおおおおお!!!わがっでねえええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 今度はちぇんがうろたえる番だった。 まりさは反逆者だったはずなのに、いつのまにか自分が反逆者ということになっている。 しかも相手には証人が居る。2対1。絶体絶命。 「・・・・・・ドスは判断したよ」 ゆっくりと口を開くドスまりさ。 「ドスはちぇんを反逆者だと判断し、これを処刑するよ!」 「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あああ!!!ぢがうよおおおおお!!!ドズぅ、わがっでよおおおおおお!!!!」 泣きながら自身の潔白を訴えるちぇん。 だが無駄だ。もうドスまりさはちぇんを反逆者と決めている。反逆者の言うことなど聞かない。 ゆっくりと開かれる口。 そこにはちぇんを消し去るための光が満ちる。ドススパークだ。 「反逆者はゆっくりしないで死んでね!!」 閃光。 まりさは見た。ドスの口から放たれる、灼熱の焔を。 小さく引き絞られた口径により、威力を高められた光の槍がちぇんを穿つ。 スパークと言うよりはまるでレーザーのよう。 ドスまりさは少なくとも勤勉だった。 己の身を守るため、群れを人間やれみりゃから救うために研鑽し続けた。 その結果がこのレーザー。このドスまりさだけが編み出した、新たなる武器。 ちぇんの額に穴が開く。 びくびくと痙攣し、白目を剥くちぇん。穴は深く、ちぇんの後頭部まで貫通している。 だがドスまりさはまだ止めない。 二度三度、レーザーを撃つ。次々にちぇんの穴が増えていく。 発射時間を抑え、その代わりに連射を可能にしたこのレーザーに隙は無い。 危なかった。まりさはそう思う。 一歩間違えば、自分がこうなっていたのだ。ドスの恐ろしさを改めて再認識する。 ドスまりさは止まらない。 ドスまりさがレーザーを撃つたび、森にレーザーの発射音が木霊する。 最早ちぇんが蜂の巣と見分けが付かなくなった頃。 ようやくドスまりさはちぇんを撃つのをやめた。 「―――ふぅ。反逆者はゆっくり死んだよ!」 元ちぇんだった穴だらけの何かの前で、ドスまりさは笑顔でそう言った。 最初の一発で死んでいたのに、何故ここまでやる必要があるのか。 やはりドスまりさは狂っているのだ。どうしようもない偏執狂。 「ごめんね、まりさ。ドスはまりさのことを疑ってしまうところだったよ」 まりさに謝るドスまりさ。 疑ってしまうところだった?思い切り疑っていたではないか。今は謝罪より、さっさと開放してくれ。 まりさは心の中で毒突く。 「さぁ、まりさ、ぱちゅりー、ご苦労だったね!"お仕事"は終了だよ!」 今度こそ任務の完了を告げるドス。 ようやく終わった。まりさは安堵する。 このふざけた茶番も終わり。次の"お仕事"がいつかは解らないが、とりあえずそれまではゆっくりできる・・・・・・。 「まりさとぱちゅりーにはご褒美をあげなくっちゃね!」 突然、ドスまりさがそんなことを言い出した。 ご褒美?なんだそれは? 両親の話にも出てこなかったご褒美とやらに、まりさは興味を持つ。 もしかしてまりさ達が優秀だったからご褒美をくれるのかもしれない。 5人の内、2人も反逆者がいたのだ。普通だったら全滅していてもおかしくはない。 生き残った2人は、それだけ優秀だった。ならば一体どんなご褒美が出るのだろう。 もしかして綺麗なたからものかもしれない。 ドスまりさが持っていると言われていたキラキラと輝く石。 そんなものがあれば、まりさは一生他のゆっくりに自慢ができるだろう。 もしかして沢山の食べ物かもしれない。 ドスまりさは群れの食料を管理している。そこからご褒美としてまりさに融通してくれるのでは。 自分の身体が埋まるほどの量の食べ物。一体どれほど幸せだろう。 もしかして。もしかして。もしかして。 まりさの期待は際限なく高まる。 「まりさたちには・・・・・・あの・・・・・・えーと・・・・・・なんだっけ・・・・・・ あの赤くて丸い、とってもおいしいもの。あのほっぺが落ちそうになるあれの名前は・・・・・・」 ああ。それはトマトだ。赤くて丸くて美味しいもの。 あの太陽のような輝きを持った食べ物は、まりさの心の中に刻まれていた。 「ゆっ!ドス、それはとまとさんだよ!」 まりさは指摘する。ドスのご褒美はトマトだったのか。 トマトならばご褒美として申し分ない。さぁ。早くトマトを。トマトをくれ。 まりさがドスに向かってそう言おうとした時。 「・・・・・・まりさ、トマトさんって一体何?トマトさんは人間さんの食べ物だよ」 冷たく重い、ドスまりさの言葉が返ってきた。 「まりさ、まりさは人間さんのことをよく知らないはずなのに、なんでトマトさんのことを知っているの?」 まりさは凍りつく。 やばい。しまった。迂闊だった。何とかしなければ―――。 「まりさは人間さんと出会ったことがないんでしょ?それなのになんでトマトさんのことを知ってるの? 人間さんを知らないのに、トマトさんは知ってる。 もしかして、まりさは人間さんと出会ってるんじゃないの?」 ドスまりさはまりさを騙したのだ。 ちぇんを処刑したとき、ドスまりさはまりさのことも疑っていた。ちぇんの証言は具体的過ぎる。 赤い食べ物とは一体何か。恐らくだが、トマトのことか、苺のことだろう。 ドスまりさはまりさにカマをかけてみたのだ。知らないならば良し、もし知っているならば反逆者。 「まりさはドスに嘘をつき、人間さんと出会っていた。これは立派な反逆行為となるよ! よってドスはまりさを反逆者と見なし、これを処刑するよ!」 まりさの目の前が真っ暗になる。もう駄目だ。まりさは死ぬ。 絶望の涙を流すまりさ。 「それからぱちゅりー!ぱちゅりーはドスに嘘をついていたね! ぱちゅりーはまりさと一緒にいたと言ったけど、それなら人間さんと出会っていることになるよ!」 「む、むきゅ!ドス、じつは、ぱちゅりーは・・・・・・」 「もしぱちゅりーがまりさと一緒じゃなかったなら、それもドスに嘘をついたことになるよ! ぱちゅりーはドスに嘘をついた!これは立派な反逆行為であり、ドスはぱちゅりーを反逆者だと判断するよ!」 「む゛、む゛ぎゅううううううううううう!!!」 ぱちゅりーも反逆者となった。 もうまりさたちに逃げる手段はない。 「ドスはまりさ、ぱちゅりーの両名を反逆者として認め、刑の執行を開始するよ!」 またも口を開くドス。その中には滅びの光。 今度その照準が向けられるのはちぇんではない。狙うのは、まりさ達。 最早まりさたちに希望はない。絶望し、涙を流しながら寄り添う二匹。 一体何のために生まれてきたのか。 自分達はゆっくりするために生まれ、生きてきたはずだ。それが何故、こんなことに。何故こんなことで死ななければならない。 もっとゆっくりしたかった。まりさ達はそう叫ぼうとして。 その叫びは光の中に呑み込まれていった。 「・・・・・・ゆぅ。まさか全員死んでしまうとは思わなかったよ」 「でも次のまりさ達なら。今度のゆっくり達なら、もっとうまくやってくれるよね」 「―――もしもし、○○さんですか?ええ、はい。私です。いつもお世話になってます」 今俺は電話をかけていた。相手は少し離れた里の重役さん。 「はい。いました。きめえ丸が巡回中に見つけたんです。 ・・・・・・ええ、うちのゆっくり園の中に逃げ込んでました。もう群れを作っていますね」 少し前、とあるドスまりさが群れを率いて里にちょっかいを出したらしい。 勿論その群れは潰され、ドスも殺されたはず・・・・・・だった。 「ええ、いえ、いいんですよ。別にうちの商品の価値が下がるというわけでもないし。 こちらとしても貴重なドスがゆっくり園にいるというのは好ましいことですから」 ところがそのドスは満身創痍ながらも逃げ仰せ、今は俺が所有する食用ゆっくりの繁殖地―――「ゆっくり園」に逃げ込んだ。 ここと向こうの里ではかなりの距離があるというのに、大した奴だと思う。 「はい。それに、結構面白い個体ですよ、奴は。どうもそちらでお灸を据え過ぎたようでしてね。 どうやら人間を恐れているようなんです。それも異常なくらいに」 今のドスまりさはとても変わったルールというか、指導方法を群れに課している。 いや、指導方法とは言い方が悪かった。あれではまるで粛清と、独裁だ。本当に変わっている。 「それに他にも面白いところがありまして。"ドススパーク"ってご存知でしょう? あれが少し変わってましてね。まるでレーザーみたいに連射してるんですよ」 毎日毎日誰かを疑っては、殺す。その日々をドスまりさは送っている。 きっとあのレーザーはそんな中で生み出されたものかも。実に興味深い。 「ああ、大丈夫です。連射が効くといっても、相手は人間を恐れているし、危険はありませんよ。 それに、あのレーザー程度じゃ問題にはなりません。駆除しようと思えばいつでもできます」 それに何より面白いのは、ドスがそんな暴君だというのに意外と群れの安定は保たれているということだ。 心優しい名君より、狂った無慈悲な暴君。そっちの方がゆっくりには合っているのかもしれない。 「しばらくは様子を見ようと思っています。あのドスが一体どういう群れを作っていくのかが興味あるので。 ・・・・・・ええ、どうも。ありがとうございます。それでは、また」 受話器を置く。傍らにはゆうかと、きめえ丸が立っていた。 「よし、きめえ丸。お前はもう一度監視に言ってこい」 「おお、了解了解。まったくゆっくり使いの荒いことで」 「ゆうかは俺についてこい。ちょっとあの群れのゆっくりに接触するぞ」 「わかったわ、お兄さん」 はてさてドス。お前は一体、その狂った頭でどんな理想郷を作ろうとしているんだ。 人間が立ち入ろうともしないような森の奥。 いや、正確にはここは私有地。だから誰も立ち入ろうとしない。 ここはゆっくりの理想郷。 ここのゆっくりは皆ゆっくりと、しあわせに暮らしている。 ゆっくりできないものなど無い。すべてがゆっくりしている。 それは嘘だ。全てはドスの妄想。ただドスがそう思っているだけ。 ドスまりさの頭にはいまだ杭が刺さっている。その杭のせいか、はたまたこの世の現実か。そのどちらかが、ドスまりさの心を狂わせた。 ここには幸せなゆっくりなど一匹もいない。ドスまりさは繰り返し滑稽な茶番を行う。 ドスまりさは全てのゆっくりがしあわせー!になれるように、この地獄を「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」と名づけた。 ――――ゆっくり、あなたはゆっくりしてる? ――――ZAP! ――――ZAP! ――――ZAP! おわり ――――― 元ネタはボードゲームの「パラノイア」です。 閉ざされたディストピア。狂った管理者。敵はモンスターではなく、他のプレイヤー。 いかに生き延びるか、あるいは滑稽に死ぬか。 そんな設定に心惹かれました。 といっても元ネタの設定の良さの10分の1すら伝わってないとおもうんだねー、わかるよー! て言うかボードゲームやったことないくせにこんなSS書くなんて身の程知らずだったんだね、わかるよー!! このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/940.html
今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 ※注意事項 東方キャラが登場します。オリキャラいうな。 登場するゆっくりは全滅しません 虐待っていうか……なんだろう。 _______________________________________________ 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 安心して欲しい、これは『すっきり』の光景ではない。 ここは人里の畑に間近い、とある森の中の巣穴。 決して広いとはいえないその空間に、まだ成体になったばかりのまりさとありすのつがいが幸せそうな顔でその身を寄せ合わせていた。 それは子作りのためのすりすりではなく、単純な愛情表現としてのすりすりだ。 二匹は幼馴染同士くっついて、群れを出たばかりの新婚夫婦だった。 一通り生きる為の知恵は身につけて、同胞の数が増えゆっくりできなくなりつつあったゆっくりプレイスから移住してきてから最初の冬篭りなのだった。 「はるになったら、いっぱいこどもつくるんだぜ」 「ええ、りっぱなとかいはれでぃにそだてなくちゃね」 幸い、近場には「かってにおやさいがはえてくるゆっくりプレイス」がある。食料には困らないだろう。 問題は「おやさいをひとりじめするばかなにんげんさん」が山ほどいることだが……まあ、まりささまが本気出せば何とかなるはずだ。 本当の考えはどうあれ口ではまりさはそういっていたし、ありすはそんな「とかいはのまりさ」を全面的に信用していたから疑う理由はこれっぽっちもない。 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 「しゅーりしゅーり、しあわせー♪」 お互い気持ちが高まってしまわない程度に身体をすり合わせ、一緒になれた今の幸せを確かめあう。 幸い、このありすにレイパーの傾向はなく、やや大言壮語の気があるまりさにもゲスというほどの極端な性向はなかった。 そもそも、口でいうほどには人間の恐ろしさも畑の仕組みも軽んじて考えているわけではない。迂闊に畑を狙って殺された同族の例は、嫌というほど見てきている。 春になったらとりあえず畑の様子を窺いつつ、危険が伴うようならさっさとより人里からもう少し離れた場所に移住するつもりだった。 さいわい、つがいのありすもまりさと同じく判断力がゆっくりにしては高い。多分、二匹とも理性が本能を抑圧できるタイプなのだ。 きっと、まりさの状況判断を聞き分けてくれると楽観することができた。 二者二様、夫婦の夢を語らいながら、ゆっくりとまどろみに落ちていく。 二匹が望むのは、幸せな家族と安全な暮らし。ありすはこれに「とかいはのくらし」を付け加えるのだが、この二匹なら高望みさえしなければ天寿をまっとうする事もできるだろう。 あるいは、二匹の判断力を超越するようなよっぽどのことがないかぎり。 ……そう、よっぽどのことがない限り。 ぽんっ、となんだか軽い音がした。 頭がなんだかむず痒い。はて、一体なんだろう? 二匹は不思議そうに揃って頭上へと目を向けて、 「「…………」」 そこにあるモノを眼にして数瞬、言葉と思考と身体の自由とを失った。 「…………っ!!」 「…………っ!?」 ……最初、自由になるのはぱくぱく意味もなく開閉する口元だけ。 ようやく身体の自由は戻ったけど、互いに驚愕の表情で固まった顔を見合わせる二匹になかなかおつむと言葉の自由は戻らなくって。 一頻り、自分はパニックに陥ってますよー、ってアピールを続けた二匹の喉奥から、ようやく言葉が競りあがってくるまでにまたしばらく。 「「ゆげえええええええええぇぇぇぇぇっ!?」」 ……うん、声は出せてもまだうまく言葉にできなかったみたいだけれど。 「「ど、どぼぢでえええぇぇぇぇぇっ!!?」」 「「「「「「「「「「……うみゅ、うるしゃいょ……しゅーや、しゅーや♪」」」」」」」」」」 その代わり、主語も述語もない絶叫に混じって仲良く声を揃えた寝言の合唱が聞こえたりしたりする。 ……二匹のつがいゆっくりだけしかいない巣の中のはずなのに。 うん、二匹はこう思ったんだ。 自分たちは軽くしゅーりしゅーりしただけなのに。 「「どぼぢでごんなにいっばいいるのおおおぉぉぉぉぉぉっ!!?」」 なんで頭に茎が生えて、かわいいあかちゃんがこんなに実っちゃったのって。 * * * ところ変わってここは妖怪の山、そのどこかにあるうらぶれたお社の中のこと。 「……んげぁっ」 「……どうしたの、穣子。幾ら冬だからって欝だ死のうは止めてね、止めるのも億劫だから」 夏過ぎて、秋も去り、冬となれども神は在り。 神生に疲れ果てた老婆のような声を床間から投げてくる姉神に、奇妙な叫び声を上げた妹神はそれに負けず劣らずどんより曇った陰鬱な目線を向けた。 「欝だ死のう……って言わないわよそんなの。っていうよりも姉さんも人のこと言えないじゃない」 「そんなこと……ない、とはいえないけど……」 自覚症状は、もう嫌って程に備わっている。そりゃまあ何百年何千年と付き合ってきているサイクルなので。 だからって慣れるもんであるはずもなく、姉妹二人して明るさの欠片もない風貌を無理にゆがめて笑いあった。自嘲というヤツだ。 秋静葉と秋穣子。 幻想郷の秋を司る二人の姉妹神にとって、冬は言わずと知れた鬼門の季節である。 秋にはそれぞれが司る豊穣と紅葉の神徳を互いに誇りあって過ごす二人だが、紅葉の最後の一枚も散り果てて冬場ともなれば二人仲良く 春まで鬱病に掛かって過ごすというのは知る人ぞ知るところ。 それが家の中、姉妹相手とは言えど、この時期這い出して活動しているなんてのは珍しい話ではあるのだ。 「それよりもさ」 「……なぁに、穣子ちゃん」 ことに穣子は幻想郷の地図など持ち出して何やら難しい顔をしている。 その地図から目を離さないまま、自分に向けられた妹の言葉に姉はなにやら面倒ごとが迫っているのを察知し、少し難しい顔をした。 別に妹が何をしているのか、気になったわけじゃない。変な声を上げるから、気になっただけで――でもこれは、どうも巻き込まれるのを避けるのは無理っぽい。 そして案の定、ルナサ要らずの重苦しい溜息と共に、穣子が地図の一点を指差して地霊殿から聞こえてくるような声を搾り出した。 「……ごめん、ちょっと間違えちゃって。お願いがあるんだけど、聞いてくれない……?」 * * * またまた場面は切り替わり、ここは先刻のゆっくり家族とはまた別の家族の――ちょうど畑を挟んで向こう側の林にある巣穴のお話。 「ゆっ!」 「あかちゃんがふるえてるよ!」 薄暗い巣穴の奥も奥、干しわらを敷き詰められたその部屋には赤ちゃんが実る茎を生やしたれいむとまりさが、未だ固く眼を閉じた十匹の我が子が突然身震いを始めたことに戸惑いと喜びが混ぜ合わさった表情を見せている。 こちらは先刻の家族とは異なり、待ち望まれたにんっしんっと出産を迎えるつがいである。 一見すると冬に出産など正気の沙汰ではないように見えるが、この群れはその問題を解決する為に人間と『協定』を結んでいた。 この群れの『協定』は、畑の雑草取りや害虫駆除をゆっくりが請け負う代わりに冬場に一定量の食料を人が提供するというギヴアンドテイクのものだ。 まあ作物に手を出して人間や仲間のゆっくりに即決処刑されるゲスも絶えないが、今のところ順調に機能しているケースといえるだろう。 春先の野外で子供を育てるよりは、冬場に安全な巣穴の中で子育てをしようというのが、この群れのリーダーを務めるドスまりさの方針らしい。 「ゆう……もう、うまれるのかな」 「ゆゆっ。もううまれるんだね」 どのようなにんっしんっ形態であれ、ゆっくりはお産の瞬間に見るものをゆっくりさせる至福の表情を浮かべるという。 「「……ゆっくりうまれてきてね!」」 ひょっとして、そのささやかな呼び掛けが赤ゆっくりに届いたのかもしれない。 直後に赤ゆっくり達の身震いが、一斉に止まった。 息を呑む二匹。茎から垂れ下がったまま静止する赤ゆっくりたち。 永劫とも思えるひと時のあと――寸分のずれもなく、閉ざされたままだった十対の愛らしい瞳が一斉にぱちくりと見開かれる! 「「ゆっくりうまれてね!!」」 両目から流れ落ちる滂沱の涙と、一匹も欠けない無事なる生誕を寿ぐ言葉とどちらが先立ったか分からない。 親ゆっくりにとって、それは待ちわびた瞬間だった。 愛する我が子にゆっくりと呼びかける。そして、次には還ってくるはずだ。愛する我が子のゆっくりとした幸せな呼び掛けが。 はたしてまだ母親から伸びる茎に連なったまま、揃って目を覚ました赤ゆっくりたちは素敵な笑顔と共にそろって産声となるはじめての挨拶を叫ぶ。 「「「「「ゆっきゅちうまれちゃきゃったよ……ゆぎぇぅっ!?」」」」」 その愛らしい、舌ったらずな声を聞いて親ゆっくりは思わず……いや、待て。はて、何故に過去形なのか。 しかも、えらい苦しそうな声を出すし。 ぱああっ、と輝く笑顔を浮かべる両親も、さすがにゆっくりと疑問を感じざるを得ない。 まじまじと今にも零れ落ちてきそうなの赤ちゃんたちを見詰める――と、同時にがくんと顎が落ちた。 小さい我が子の顔色をよくよく見れば、何故かすでに全員真っ黒だったり。 満面の笑顔が十個並んで大空にキメとか、すごい、シュールです。いやここ洞穴の中だけど。 「「っ!!!!!!??????」」 それと気が付いた直後、両親の絶叫が巣穴という巣穴に轟いたことはいうまでもない。 * * * 「……ふう。穣子ちゃん、終わったわよ」 「ありがと、姉さん」 再度再三とところを変えて、またしてもここは秋姉妹のお社である。 あいも変わらず疲れた顔×二人分……なのだが、どうも静葉が先ほどよりさらにお疲れのご様子だった。 地図を広げたままのおこたに入り込み、お礼の言葉と共に妹が差し出した番茶をずずーっと啜る。ああ、ちょっと人心地ついた。 「……それにしても、最近の人間は冬場でも収穫できる作物を作るのね」 感慨深げに呟きながら、お茶請けに手を伸ばすのは大福餅だ。 まったく、ゆっくりが増えてからというも幻想郷に餡子が不足することだけはなくなったのは良いことだと思った。 「……外の世界の豊穣の神はもっと大変みたいだけどね」 自分の湯飲みにお茶を注ぎつつ、穣子はうんざりした様子で姉に応えた。 秋に種を撒き、夏に収穫する冬小麦や冬場に収穫する冬キャベツなどなど。 外界からスキマ経由で入って来た種を含め、冬場に収穫や生育の重要な時期を迎える作物も今の時代は多いのだ。 穣子が毎年恒例の来賓として招かれる収穫祭は秋の収穫には間に合わないけど、逆に冬や春収穫の作物の豊穣を願われればそれに応えなければならない道理なのだ。 なにせ、冬の神に豊穣の神様はいないから。 ……秋の神様に冬の豊穣なんかやらせるから、加護を与える場所を間違えたりするんだととりあえず穣子は呪ってみた。 一応立場的に神を呪う訳にもいかないから、とりあえず運命のダークサイド方面を。 「外の世界は、ねぇ……」 神無月、八百万の神様が出雲大社に集まる日。 秋姉妹もその例外でなく、出雲への道中目にした外界の光景――まるで季節感のない外界人の生活に思わず二人揃って重苦しい溜息を吐いてしまう。 いやほんと、自分たちが秋を司る場所が幻想郷でよかった。 ここは何時までも古き良き昔のままだ。 外界の信仰が絶え果てても、地上人が月にまで攻め入って月人と覇権を争っても、ここだけは変わることはない。 まあ、しょっちゅう異変なんてものに襲われて、妖怪や人が右往左往したりもするけど。 そんなものは ……うん。 そんな異変に比べたら、ちょーっと穣子に頼まれた場所と反対方向の森の実りを枯れ果てさせてしまったこととか、 面倒だからってやり直しはパスしちゃったことぐらいたいした事はないだろう。 ないはずだ。 ないんじゃないかな。 「ま、ちょっと覚悟はしておけ」 「……何を?」 「ううん、なんでもないわ」 胡散臭げにこちらを見る妹に、とりあえず静葉は穏やかに笑ってごまかした。 うん、我ながら最高に穏やかな笑みだったと思う。 どうやら自分にとっては本当に、この件は「なんでもない」ことのようだ。 だからこれにてこの案件は終了なのである。 * * * 一方そのころ、件の畑を取り巻く森や林の中では。 「あがぢゃんがうばれだら、じょぐりょうがだりないよおおおぉぉぉ!!」 「ゆがあああああっ、ぶゆざんをごぜないよおおおぉぉぉっ!!」 「どぼぢであがぢゃんみんなじんじゃっだのおおおぉぉぉ!!」 「いっじょにゆっぐりじだがっだのにいいぃぃぃ!!」 まあ、ゆっくりにとってはなんでもないこととか、大したことってレベルじゃねえぞって話なんですけどね。 神様の庇護からゆっくりがまるっと外れてるのは、恐らく幻想郷の仕様。 今日も神なきゆっくり達には大声で泣き喚き餡を吐き玉の緒を絶え果てる仕事が待っているのだ。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1613.html
※虐め成分はかなり薄くなってしまいました、人間のおっさんメインです ゆっくり和三盆 数年前、ここ幻想郷にゆっくりなるしゃべる饅頭のようなものが現れた。 動物か植物か、あるいは生物かすら怪しいそんな奇妙な存在。 人間はそんな彼女達を最初は疑問に、あるいは恐怖に感じていたが今ではそんなこともなくなってしまった。 あるものは農業や日々の作業を手伝い、人間と友好的な関係を築いた。 あるものは人間の家や田畑を襲撃し、そのため人間に駆逐されるような敵対関係を築いた。 あるものは食料や労働力を目的とし捕獲され、一方的な搾取を行われる支配関係を築いた。 その形は様々であるがゆっくり達は人間社会に浸透してゆき、その結果人々の生活は概ね豊かになっていった。 これは、そんな彼らと正面から向き合うある真摯な1人の男の物語である・・・ 「実録、ゆっくりにみる! ~ある伝統工芸者の挑戦~」 砂糖職人の朝は早い・・・ まだ日も上がらぬ暗いうちから男は床を立つ。 彼は砂糖職人「鬼井 三郎さん」54歳である。 砂糖職人とはその名の通り、日々砂糖を作ることを生業にしている。 だが勘違いしないで欲しい。砂糖を作ると言ってもその仕事は多種多様で実に複雑である。 中でもこの鬼井さんは特に技術を必要とされる和菓子専用の高級砂糖、「和三盆」の作り手なのだ。 それでは実際にその作業を見ていこう。 「おはよう、ゆっくりしていってね!」 「ゆゆ!ここからゆっくりだしてね!」 「はやくださないとひどいんだぜ!いまならゆるしてやるんだぜ!」 作業場に着いた鬼井さんは籠に閉じ込められているゆっくり達に挨拶をする。 籠に入れられているゆっくりはれいむ種とまりさ種、この2種の餡子が砂糖の精製に最も適しているらしい。 「まずは朝の挨拶からはじめるんです、これでゆっくり達の健康状態を確認するんです。」 「素材のゆっくりが元気でないと、砂糖も元気になりませんからね。」 そう言って鬼井さんは微笑む。 そうして次に数匹のゆっくり掴み出し、おもむろに彼女達の装飾品を外し始めた。 「ゆぅ!? れいむのおりぼんとらないでね!??」 「じじぃ!! まりさのぼうしとっととかえすんだぜぇぇぇ!!!」 この際ゆっくり達から容赦なく暴言が降りかかる。だが鬼井さんは涼しい顔で作業を進める。 「いつ何時も平常心、心の乱れは砂糖にも現れますか。」 そう語る鬼井さんの顔はにこやかだ、だがその目は鋭く研ぎ澄まされさながら業物の日本刀の様である。 そうして飾りを外したゆっくりを片手で固定しつつ、開いた手にナイフのようなものを用意する。 その外観はやや肉厚な剃刀と言ったところか、長い付き合いなのか年季を感じるがその刃は美しく輝いている。 「こいつが気になりますか? 私達はナガタって呼んでます。長い付き合いですから、道具というより腕の一部ですね。」 そう語ると静かにゆっくりの頭にナガタを走らせる。 音も無く刃が過ぎるたびにゆっくりが不思議そうな顔をする。 そして、鬼井さんが手を止めナガタの柄で軽くゆっくりをこずく。 「ゆ”!?」 その瞬間、さながら滝の様にゆっくりの頭から髪の毛が流れ落ちた。 剃られたまりさは目を見開き固まってしまっている、だがそれも仕方無いだろう。 何せ取材陣ですらその光景が理解出来なかったのだ。 そして、もしその光景を一言で述べるなら只美しいとしか言えない。 流れ落ちる髪は、さながらイチョウ舞う晩秋の滝と言ったところか。 穢れを知らない清流を、美しくイチョウが飾りそして滝壺へと還っていく。そんな情景を思い浮かべて欲しい。 飾りを取られた他のゆっくり達も静まり帰っている。無論恐怖からではなく純粋に魅入っているのだ。 鬼井さんに頼んで剃られたまりさを見せて頂いたところ、毛はもちろん毛根まで溶かし尽くしたような美しさであった。 撫でてみたところ、まるでもとから何も無いような、もちもち且つスベスベな肌触りであった。 その後、残りのゆっくりも全て髪を剃り落としたところで作業は次の工程に入る。 髪の無くなったハゲゆっくり、それらを詰めた籠を持って来たのは大きな水槽である。 そして、数匹ずつハゲゆっくりを麻袋に詰め込みそれをおもむろに水に沈めた。 「ゆぎぃぃぃ!! つめたいいぃぃぃ!!!」 「あぶぶぶ、とけぢゃうぅぅぅ!!?」 袋からは叫びが聞こえていたが完全に水に漬かるとそれも無くなった。 「ここでゆっくりに水を含ませ、糖分を分離させやすくするんですね。」 「この水は山から引いた湧水です。手間はかかりましたが良い水を使わないと雑味が入りますから。」 そういって水を一杯差し出した。コレを頂いてみたところ、まるで山が体に広がってゆくような感覚を覚えた。 「飲んでもおいしいでしょ? 私も作業の傍ら飲むんです。これがこの仕事の楽しみの1つでもありますね。」 「それに湧水は年間通して温度が一定なんです。夏は冷たく冬暖かく、これも砂糖作りの秘訣ですかね。」 このゆっくり達は午後の休憩明けまで漬からせておくらしい。 その間別の作業を行うというので、私達はつかの間の休憩を終え移動を開始した。 そうして来たのは何やら重石の積み重なる部屋であった。 そこで鬼井さんが重石をどかすと、そこから麻袋が現れた。 そして袋に手を突っ込んで何やら黒いものを取り出した。 「これが2日目のものです。」 2日目? 何のことかと私達が疑問を顔にすると 「ああすいません、実はこれゆっくりなんですよ。」 と鬼井さんは笑いながら説明してくれた。 作業工程が前後してしまうから解りにくくて申し訳ないが・・・そう鬼井さんは話はじめた。 「水に漬けたゆっくりに、これから行う作業をするとこのようになるんですよ。」 そういいながらその黒いゆっくり流水に晒す。 そうするとベロベロに伸びきったゆっくりが顔を現した。 そしてこれを盆と呼ばれる大きな台座に乗せておもむろにこねはじめたのだ。 「これがいわゆる『こね』と呼ばれる作業です、これを3度盆の上で行うことから和三盆の名が来ているんですよ。」 いいながら鬼井さんは全身の体重をかけて、ゆっくりをほぐしてゆく。 「中の餡子が均等になるよう丁寧にこねます、ただこの時皮が破れないよう注意が必要です。」 ゆっくりの皮はとても破れやすい、私達がコツは何かと訪ねたところ『こればかりは経験です』ど笑っていた。 そんな作業を見つめる中、私達はあることに気付いた。 なんとゆっくりが生きているのだ!! これだけこねられて潰されても生きている!! 一体どういうことなのだ!? 「ゆっくりは餡子が無くならない限り死なないですからね、上手く扱ってやればこれくらいは平気です。」 「それにゆっくりの餡子は恐怖や痛みを感じるほどに旨さがますんです、よって最後の仕上げまでは心も体も殺しません。」 何でも無い事と鬼井さんは語るが、そこには熟練した神業が伺える。 私達がこれを行うならものの数秒でダメにしてしまうだろう、これが匠の技なのか。 よくよく注意してみると全てのゆっくりが微かに震え、また声を発しているのがわかる。 「やべ・・・・で・・・・」 「ころ・・・・・せ・・・」 どうやら精神においても正気を保っているようだ、流石としか言いようがない。 全てをこね終えた鬼井さんはこれを麻袋へ戻す。 そしてこれを来た時と同じように台座にセットし、その上に重石を乗せた。 「ゆべぇっ・・・」 微かに声が聞こえた。 それを聞いた鬼井さんは満足そうだ。 「こうしてこの作業を5回、つまり5日かけて行うんです。」 「本来トウキビから作る場合は3度でも充分ですが、何分ゆっくりは餡子ですから雑味が多くてね。」 そして鬼井さんは昔の話をしてくれた・・・ 私もゆっくりが現れる数年前までは、トウキビから砂糖を作っていたんですよ。 だがゆっくりが現れた翌年、トウキビ畑がゆっくりの襲撃を受けてしまいまして大不作になってしまったんですよ。 あの時は砂糖が作れなくなって本当に困ってしまいましたよ、ええ。 何が困ったって私の生活もそうですが、皆が菓子を食べられなくなってしまったんです。 私はこの仕事に誇りを持っています、皆が嬉しそうにお菓子を食べている顔を見るのが堪らなく好きなのです。 そこで、わたしはゆっくりを用いた砂糖づくりの研究を重ねたのです。 そして半年後、試行錯誤を繰り返し今の形に至ったわけです。 もっとも、その時は落ち着いたらゆっくりからトウキビでの砂糖作りに戻るつもりでしたがね。 ゆっくりの出現によって甘味が増えたため、トウキビを作る農家さんが減っちゃってね。今ではこっちがメインですよ。 あっはっはと豪快に笑う鬼井さん。 ゆっくりは恨んでいません、むしろ感謝していますよ、彼らのおかげで高価だった甘味が庶民的なものになりましたから。 多くの人々が喜んでくれる、それだけで私は幸せですよ。自分で言ってなんですが、臭い話ですけどね。 私は加工所が出来た頃、この砂糖の精製方を持ち込んだんです。これでより多くの人が手に入れやすくなると。 ただ、加工所ほど大きなところでは作業効率を重視されており、機械化されている部分も多いんです。 それは決して悪いことではありません、しかし和菓子に使うような繊細な砂糖はどうしても出来なかったんですよ。 そこで私は三度、和三盆作りに戻ることになったんですね。 砂糖について語る鬼井さんは実に生き生きとしている。 作業中の鋭い目も、この時ばかりは夢を語る無邪気な少年のようだ。 そうして加工所における上白糖や三温糖、私達のような小規模な工房での専門糖作りに分類されるシステムが出来上がったんです。 おや、長々と話してしまいましたね。年を取るとどうもね。いやいやすみません。 苦笑しながら謝罪する鬼井さんに、こちらこそ貴重な話を有難うございますと営業抜きの純粋な笑みを返した。 ここで、いい時間ですからと一旦昼休憩を取ることにした。 昼休憩の後、作業は再開された。 まずは朝漬け込んだゆっくりに「こね」を行ってゆく。朝見た2日目のものより元気があり、また形もゆっくりらしい。 それが終わると3~4日後のものまで、同じ工程を繰り返した。 3日目のものに取り掛かる際あることに気付き鬼井さんに尋ねてみる。 「いいところに気付きましたね、ゆっくり達が白くなっているでしょう?」 そうなのだ、心なしかゆっくりが白くなっているのだ。 「さっき重石をかけた時、袋が黒くなっていたのを覚えてますか?」 「餡子を均等に伸ばした後、重石をかける事により雑味を含んだ余分な糖分を搾り出すんです。」 なるほど、そのためゆっくり達が白くなっているのか。 ちなみに絞られた糖蜜(黒い汁)は、飼料用として加工所が回収に来るらしい。実に無駄のないことである。 作業を繰り返すこと数時間、今日の仕事もついに最終工程へと入った。 最後に手をつけるのは5日目のゆっくり、最終日とあってその肌はかなり白い。 このゆっくりを濯いだあと盆にのせる。ここまでは変わりないのだが、盆に上げてから何やら今までと違うのだ。 こねてはいるのだが此処までの工程と若干手つきが違う。 今までは均等に餡子を伸ばしていたのだが、今回はまるで中央に集めているような・・・。 そんなことを考えていると、鬼井さんは突如ゆっくりを掴みあげ傍らの器にゆっくりを向けたではないか。 「せいやっ!!」 「ゆかっ!?」 そして鬼井さんはゆっくりの背を人差し指と中指で押した。 すると次の瞬間ゆっくりは口から何やら吐き出し、完全に動かなくなってしまった。 ここにおいてようやく絶命したらしい。 「・・・ふぅ、これで完成です。」 器の中を見せてもらうと、中には少量の雪のように白い粉が入っていた。 「これが『ゆっくり和三盆』です、よろしければ味見してみますか?」 私達は鬼井さんの行為に甘えさせていただき、ゆっくり和三盆を口にした。 それはもはや砂糖ではなかった。口に入れてすぐは、正直甘さを感じず物足りないとさえ思った。 だが次の瞬間、舌の上から突如として和三盆が消えたのだ! 溶けたのではなく消えた、生まれて始めての経験であった。 そして同時に口内全体に広がる優しく暖かな甘み。何とも淡く上品である。 それは口から鼻、喉、腹へとサァーっと広がってゆき、そしてスゥっと消えていった。 言われなければとても砂糖だと気付かないだろう。 「和三盆は癖がなく甘さも控えめなので、そのままでも充分食べられるでしょう?」 ふと鬼井さんの声で我に帰る、思わず放心してしまったらしい。 「和三盆は粉末での販売もしていますが、型に入れて押し固めた固形の物も作っているんです。いわゆる落雁(らくがん)ですね。」 いかんいかんと気を取り直す。しかし驚いた、まさか砂糖で放心する日が来るとは思っていなかったのだ。 それほどまでに和三盆の味は衝撃的であった。 そうして、ひとしきり説明してくれた鬼井さんは残りのゆっくりから和三盆を取り出していった。 「これで今日の仕事は終いです、出来上がった和三盆や糖蜜、残った皮なんかは5時ごろに業者が取りにくるんですよ。」 そう言う傍から業者がやってきた、どうやら大型のちぇん種を用いた『ゆっくり車』により運搬を行っているようだ。 「さて、一日の仕事を見ていただいていかがだったでしょうか。記事になるに値すればいいんですがね。」 私達は心からのお礼を述べた。 「ははは、有難うございます。そう言って頂けると疲労も報われます。」 「何せ私も年ですから、結構きついんですよ。」 笑う鬼井さんの姿は疲れなど感じさせないが、体力を使う仕事のため実際いつまで続けられるものか難しいのだろう。 「私には2人せがれがおりまして、1人は菓子職人を、もう1人は加工所職員をやっているんです。」 「家内が早くに亡くなりましてね、男手一つで育てのは良かったんですが、どうも多少ひねくれたようでして。」 鬼井さんはやや自傷気味に笑う。私が何と答えようか言葉を選んでいると 「だが最近は私の仕事に興味を持ち始めてくれましてね、加工所の方のせがれが近々帰ってくることになったんですよ。」 「菓子屋のほうのも、流通や経営、あるいは現場の声なんかを聞かせてくれるんでかなり助けられています。」 一転して笑顔を見せてくれた。 私達も思わず笑顔が溢れた、この一家がいる限りこれからも砂糖業界は安泰だろう。 「最後にいいですか?もしこの記事をみて砂糖に興味を持たれた方が居ましたら内へいらしてください。」 「どんなに些細なことでも構いません、修行をしたいという方も歓迎します。」 「砂糖は身近な物ですし、甘いものが嫌いな方も多いでしょう。ですがこの機会に深く考えてみてください。」 鬼井さんはそれを伝えると頷いた、そして私も頷き返した。 私は改めて鬼井さんと握手した、だが今度は温もりだけでなく、職人としての力強さも感じとれた。 鬼井さんは今日も暗いうちから床を出て砂糖作りに励む。 目的は多くの人に甘味の幸せを感じ、ゆっくりして欲しいから。 砂糖職人の朝は早い。 終われ 作・ムクドリの人 これまでのSS ゆっくりディグダグ ゆっくりディグダグⅡ みかん キャベツ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1638.html
農業を営む自分にとって、収穫を終えると暇になる。 中には来春まで内職をしているところもあるようだが、生憎とそんな事をしなくても十分暮らせるだけの蓄えは出来た。 年配者が寄り付かなかった、河童の新型農作具の使用。 それに、永遠亭の農薬。 それらは自然の摂理のように若い自分達が使用することになり、結果は大成功。 知り合いの若い奴らも温泉や文々。新聞の定期購読に充てている。 しかし、自分は生憎そういう趣味は無く、お金の一部を使って寺子屋に若干の備品を寄付しただけである。 それだけで十分。 その後、春まで悠々自適に過ごそうとしていた矢先、件の河童が家を訪ねてきた。 「厄神様と温泉に言ってくるから、この実験を行って欲しい。もちろん報酬は出す」 との事で、実験の目的は分からなかったが、頭のいい河童のする事と割り切り、特にする当ても無かった自分は 快くその提案を受け入れた。 内容は、あの河童から受けたこともあり、予想通りゆっくり関係だった。 大きなダンボールに入った数個の道具。 その操作を一週間ほどかけて理解していたら、早々に実験を開始する事になってしまった。 何せ、時間が無いから。 最初にすることは、人里近くの平地の真ん中に、特製のゆっくりハウスを設置した。 このハウス、表面は岩の素材で偽装してあり、ゆっくりなら絶対に見分けることは出来ないだろう。 いや、人間の家も見抜けないのだから、考えるだけ無駄かもしれないが……。 物陰から観察することしばし。 「ゆゆ!! こんなところにおあつらえむきのどーくつがあるよ!!」 「ほんとだ!! ここのどーくつさんは、ゆっくりできるかな!!?」 「こんにちは!! ゆっくりしていってね!!!」 予想通り、こんなところに洞穴が存在することを不思議に思わないゆっくり一家が掛かった。 ……なんというか、やはり霊夢一家だった。 「ゆっゆ♪ ここはだれもいないみたいだから、れいむたちのおーちにしようね!!」 遠慮もなしに中へ入り、ひとしきり物色したのに、自分達の家にすることに決めたようだ。 なんだか、入るときから自分の家と決め付けていたようなきもしたが。 「いまのおーちよりひろいから、ゆっくりできそうだね!!」 最近生んだのだろう沢山の赤ちゃんゆっくりと一緒に、サイズだけ大きくなった母ゆっくりのようだ。 越冬生活が迫ったこの時期に、ただ単に散歩そしていただけのことはある。 「たべものと、ゆっくりぐっつをもってこようね!!」 そんな事を話しながら、いったん帰っていった能天気一家。 暫くして、わいわい騒ぎながら戻ってきた戻ってきた。 「ゆ~~♪ ゆゆゆゆゆ~~~~~♪」 「ゆっくり~~~♪ してぇ~~~~~♪ っ!! いってねぇ~~~~~~~~♪」 「いってね~~~~~~~~♪」 「ちぇね~~~♪」 随分ご機嫌な様子で、一家でコーラスのような会話をしながら戻ってきた。 楽しんで話しているのだろうが、こうしてみると物凄く頭が弱そうに見える。 「ゆしょ!! それじゃあ、ゆっくりひっこしするよ!!」 運んできたのは食べ物、それと宝物であろうモノ、そして大きな葉っぱと蔓で縛られた枝。 おそらく、それらがゆっくりセットなのだろう。 「ゆ!! てーぶるはここにおいてね!! いすはこっちだよ!!」 「ゆっくりりかいしたよ!!」 母親の号令で、ゆっくりにしてはテキパキと巣の中を整理していく。 奥に食べ物を置き、一番広い空間にテーブルと呼んでいた葉っぱと枝のオブジェ。 その一角に、イスと呼ばれた枝と蔓のオブジェを置いて完成らしい。 全てが終わるのに、時計の短針は必要はなかった。 「ゆ♪ それじゃあきょうはここまでにして、あしたからはいりぐちをうめよ~~ね♪」 「ゆっくりりかいしたよ♪」 今日は出てくる雰囲気がなかったので、俺はこの場を後にした。 「~~~~♪ っ!! ゆっくりぃ~~~♪」 「~~~♪」 「~~♪」 巣の中からは、楽しそうな会話が響いていた。 数日後の事である。 「ゆっくり~~♪ ゆっゆゆゆ!!! していってね~~~♪」 「ゆ~~~♪ ゆっきゅりきゅり~~~~♪」 工事現場よろしく、騒音が入り混じる中着々と入り口を塞ぐ作業を終え、いよいよ越冬の準備に入った一家。 流石に一介の人間に透視能力はないので、中に設置した監視カメラと言うものの映像に切り替える。 「ゆ~~♪ ひろいね!!」 「たのしくえっとーできそうだね!!」 中では、越冬するだけとなった一家が楽しそうにくつろいでいた。 母親の周りに集まった子供達が、わいわいと話している。 「ゆっゆ♪ えっとうさんが~~~♪ たのしくなったらど~~しよ♪」 「ど~しよ♪」 …… 「ゆぴ~~~♪ ゆぴ~~♪ し☆あ☆わ☆せ☆~♪」 「ゆ~~♪ ゆ~~♪」 「ゆっきゅ~~~♪」 暫く監視していたところ、一家仲良く寝入ってしまったので、後は録画に任せ、自分も家に戻ることにした。 「ゆ~~~♪ おはぎおいち~~~~~♪ むにゃ……」 雪が降り始め、既に一面の銀世界となった頃。 「ゆっくりしようね!!」 「きょうはゆりすますのひだよ!!」 巣の中では、なにやら賑やかだった。 「ゆ!! しってるりょ!! いいゆっくりのこどものとこりゃに、うーぱっくがゆっきゅりできりゅもにょを、おい ていっちぇくれりゅんだよ!!」 「ゆ!! さすがれいむのこだけあってよくしってるね!! それじゃあ、きょうははやくゆっくりねないとね!!」 「ゆ~~♪ ゆっきゅりねるねりゅ!!!」 会話を聞くと、どうやら今日はゆっくりにとって何かのお祭りごとらしい。 二日間で食いきれなかった鳥のモモ肉をかじりながら、一家をさらに観察する。 その後に始まった食事は、あの葉っぱの上に食べ物をのせがっつく一家と、赤ちゃん以外が乗ったら壊れるであろう イスのオブジェに座った赤ちゃんの音頭で歌を歌ったところで、終了した。 今日はこれで帰ろうかと思ってきたが、先ほどの会話が気になったので暫く残ってみることにした。 「う~~~♪ うっう~~♪ うあうあ~~♪」 夜遅くまで張り込みをしてみたところ、本当にうーぱっくが何かを運んできた。 「うっぎゃーーー!! うあーーーー!!!!」 れみりゃ種特有のカワイガリたくなる様な笑顔を浮かべまっすぐこちらに飛んでくる。 余りにもまっすぐ飛んでくるので、捕まえて中身を確認してみた。 「うあーー!! それはちがうーー!! ちがうーーーー!!!!」 何てことはない、ただの綺麗な石ころだった。 おそらくはこれが子供達へのお届けモノのようだが、ただの石なので雪原の中に捨てる。 「うあーー!! おとどけものがーーーー!!!」 泣き顔になったうーぱっくが雪の中に顔を突っ込み、必死で石ころを探そうとしている。 しかし、新雪に沈んだ石ころが見つかるはずも無く、雪が張り付いた顔が涙でグシャグシャになっただけだ。 「うあーーー!! ないーー!! おとどけものがないーーー!!!!」 その光景を見ていたら、十分厚着をしている自分も、心なしか寒くなったのでこのダンボールで暖をとる事にした。 「う!! はなぜ!! おとどけものーー!! さがすのーー!!!」 一端を破いて火をつける。 「うーーー!!! うぎゃーーーー!!!!」 ある程度水気を弾くのか、すんなりと火が移り、次第に全体へ燃え広がっていく。 大抵のダンボールよりもはるかに長い時間燃焼し、燃え尽きる頃には体の心まで温まることが出来た。 ほんのりと、汗が出てきた。 「……う、ぁー……。おとどけもの……がー……。かぞくの、ごはんがー……」 体が温まったところで、冷えないうちに家に戻ることにした。 ※REC 「ゆ~~……。う~~ぱっくおそいね」 「しっ♪ し~~ね♪ しずかにね、いもうとたちがおきちゃうよ!!」 「ゆゆ!! ごめんね!!! ……でも、ことしはこないのかな?」 「きっとあたらしくひっこしてきたから、きづかなかったんだね!!」 「なら、じゅんびしてたたべものも、れいむたちのしょくりょうにまわそうね!!!」 「そうだね!! そのまえに、もっとしっかりいりぐちをとじるよ!!!」 今日は大寒、外は大雪。 いよいよ、撮影も大詰めになった。 「ゆ~~♪ ことしはたべものがいっぱいあるね!!」 「しかも、あったかいよ!!」 「これなら、らくにふゆをこせるね」 「し☆あ☆わ☆せ☆~♪」 断熱材入りのこの巣の中の一家は随分と幸せそうだ。 一家全体での、しあわせコールを聞き、ここらが頃合だと判断して最後の準備に取り掛かる。 「ゆきがとけたら、れいみゅはいっぴゃいはちるよ!!」 「れいむは、まりさともっといっしょにいるよ!!」 「ゆゆ♪ ふぁーすとちゅっちゅもちかそうだね!!」 「んっもう♪ おか~さんはうるさいよ♪」 良いなぁ、いかにも一家団欒と言う風景だ。 それじゃあ、スイッチ入れますか。 Pi ♪ あらかじめ準備しておいたスイッチを押すと、この巣は様変わりする。 どのように変わるかと言うと、四方の壁が外側に倒れる。 大まかに三角錐の形状をしているので、天井まですっきりなくなるのだ。 うまくいくか不安だったが、結果はご覧の通り。 「……ゆ?」 「ゆっきゅり?」 まさに目が点になるとはこのことであろう。 先ほどまで暖かい巣の中に居た一家は、猛烈な吹雪が吹き付ける極寒の雪原に放り出されたのだから。 未だ健在の監視カメラが、テントの中のこちらまでしっかりと鮮明な映像を送ってくれる。 「ゆゆゆ!! ざむいよ!! なにがあったの!!」 「ゆっくりりかいできないよ!!」 「ゆーー!! しゃむいよ!! しゃむいよーー!!」 突然のこの事態に、まるでただの饅頭のように固まるゆっくり達。 そんな中で、一番初めに行動を起こしたのは、母親ゆっくりだった。 「ゆ!! おちびちゃんたちは、おかーさんのおくちのなかに、はいってね!!」 赤ちゃん達を口に中へ入れ、改めて姉達と一緒に状況を確認する。 確認することも無いだろう、四つの壁が綺麗に外側に倒れ、どんどん雪に埋まっているだけだ。 「ゆ!! おうちがこわれたんだよ!!」 それに気付くまでに、かなりの時間を要したが、どうやらキチンと理解できたようだ。 「そんな!! と゛う゛し゛て゛ーーー!!!」 猛烈な風で体を震わせながらの母親の絶叫。 口の中に子供達を入れているためか、いまいち迫力がない。 「ゆーー!! どうするの!! どうするの!!!」 「ゆ~~……。もとのおうちにもどるか、にんげんのおーちにこっそりはいるかだよ!!」 「ゆっくりきめてね!! はやくきめてね!!!」 ゆっくり経験の少ない姉妹達は大慌てで母親を急かす。 しかし、餡子脳のゆっくりに同等のものを選ぶことは難しいらしく、なかなか決まらない。 「ゆー……。れいみゅいいこになりゅから、ゆっくりちちゃいよ……」 待つこと十数分。 ついに赤ちゃんたちは弱ってきたらしい。 口の中といっても、冷気を完全に遮断できるわけでは無い。 まして、相談の為に、何度も口を開いていたらさらに効果は薄いだろう。 ここまでくれば後は良い。 下の巣がある方向は風上、しかも食べ物やご自慢のゆっくりセットは既に雪の中。 それに、この辺りの民家は、外界の技術が取り入れられ、二重戸の一軒屋で蔵などはもうない。 どちらにせよ同じ結末になるものを見るほど俺は暇ではない。 それに、実験の概要もここで終了となっている。 機材をまとめ、自分はこの場を後にした。 すでに一家はどこかに移動したらしく歩いた跡と思われるコブが数箇所に出来ているだけであった。 その春、約束どおり河童は新しい農作用具を貸してくれた。 トラクタというこの機械、今まで時間の掛かっていた畑の掘り起しが、のさばっているゆっくりごと出来るすばらしい機械だった。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2887.html
※ あるマンガに出てくる道具あり このSSのキモなんで「ちょwwwwwなんでこれが幻想入りwwwwww」ってなツッコミは無しの方向で一つたのんます 男は香霖堂への道を歩いていた。 無論、香霖堂へ行くためであり、何をしに行くのかと言えば、言うまでもなく買い物のためである。 とはいっても、生活用品を買うためではない。 こんなことを言ってはなんだが、あの店はそういった日用品を買うには、幻想郷一不向きな店である。 男も何か特別必要な物があって香霖堂に行くわけではない。 男の趣味はゆっくり虐待である。 初めのころは、毎日のようにゆっくりを虐待しては一人悦に入り、ゆっくりが死ねば新しいのを補充することを繰り返していたが、最近虐待もマンネリ化してきて、いまいち面白さに欠けてきた。 そこで新機軸を打ち出すためにも、外界の珍しい品物を扱う香霖堂に行くことにしたというわけである。 「ふう、ようやく着いた」 男は小さな店の前でホッと一息ついた。 店も風変りなら、店主もそれに比肩しておかしな人物である。 ここの店主は、自分の気に入ったものは、どんなに金を積まれても売らないことで有名だった。 だったら、客の目に付くところに置いておかずに、倉にしまっておけと言いたい。 それに、まっとうな商売人なら、こんな人通りの無い場所に店を構えるようなことはしないだろう。 誰の目から見ても、変人なことは明らかだ。 まあ、それで売り上げが上がろうが下がろうが、男にはどうでもいいことだ。 面白い品物が格安で手に入りますようにと願掛けをして、ドアを開き中に入った。 「いらっしゃい」 男は、可愛い女の子の声に迎えられた。 「ゆっ!?」 れいむは目を覚ました。 目を覚ました第一感想は、ここはどこだ? というものであった。 れいむのすぐ目の前には、木で出来た壁がそびえている。 一切のゆがみもなく、真っ直ぐなそれは、決して自然界には在り得ないものであった。それがれいむの四方を隙間なく固めていた。 訳が分からず自身の足元を見ると、これまた目の前の壁のように真っ直ぐな木が敷かれている。れいむはその上に座っていた。 これで上も木の壁で覆われていたら、れいむは完全に狭い木の壁の中に閉じ込められてしまう。 恐る恐る上空に目を向けて、ホッと一息つくれいむ。 運がいいと言っていいのか分からないが、上空には木の壁がなかった。 しかし唯一視界の利く上空を見て、れいむは一層自分がどこにいるのか理解できなかった。 そこにはいつも見ていた空や洞窟の天井はなく、やはり見たことのない物体で埋め尽くされていた。 飼いゆっくりならそれが人間の家の天井であることが分かるだろうが、生憎と森から一度も出たことのないれいむには、それが摩訶不思議な物体としか認識できなかった。 れいむは己の理解が及ばないながらも、まずここから出ることを試みることにした。 ゆっくりは広々とした空間を好む傾向がある。 この訳の分からない状況に不安を感じたこともあるが、それ以上にこんな息の詰まりそうな狭い場所に長居はしたくない。 目の前の木の壁は、れいむの身長の二倍の高さと言ったところである。ジャンプすればギリギリ跳び越えられる高さだ。 れいむは足に力を貯え、一気に解放すると、目の前の木の壁を無事に跳び越えることに成功した。 勢いあまって、着地と同時に地面を転がるれいむ。 壁に当たってようやく止まると、れいむはクラクラする頭を振って、周りを見渡した。 そこにあるのは、今までれいむが見たこともない物ばかりだった。 四方八方自然界にはあり得ない真っ直ぐ均一のとれた物体が囲んでおり、出口らしいところは見受けられなかった。 いや、出口はあったのだが、れいむにはそれが“扉”であるということが分からなかったのだ。 すぐ目の前にはれいむを閉じ込めていた四角い木の物体がある。 木箱だ。それがこの空間に3つも存在していた。 見る物触る物すべてが、れいむの常識から外れた物ばかり。 もしかしたら自分はどこか知らない世界にでも迷い込んでしまったのだろうか? れいむは記憶を辿って、思い出せる限り最近の自分の記憶を振り返った。 先日、れいむは晴れて成体の仲間入りを果たし、今まで慣れ親しんだ家から離れ独立することになった。 愛する両親に別れを告げ、新たなゆっくりスポットに適した場所を一匹探し求めた。 三日後、れいむの頑張りもあって、まだ誰の手も付いていない大きな木を見つけると、一目でそこが気に入り、根元に穴を掘り巣を作り始めた。 ようやく工程の半分ほどを終え、ゆっくり一休みしていると、一人の人間がれいむの前にやってきた。 れいむは今まで人間に出会ったことがない。 親であるぱちゅりーからは、人間は粗暴でゆっくり出来ないと耳タコが出来るほど聞かされていた。 それでいて、決して不用意な真似をしてはいけないとも言われていた。 人間はゆっくりより強い。 いきなり暴言を吐いたり、逃げたりしようものなら、不信を買ってあっという間に捕まってしまい、死より苦しい目に遇わされてしまう。 人間に出会ったら、どんな事があろうと殊勝な態度で接しなければならない。決して刃向ってはならない。 家を出る直前まで言われていたことだった。 そんなこともあって、れいむは男を刺激しないように、「ゆっくりしていってね!!」と、元気よく笑顔で声をかけた。 人間もそれに対して返事を返してくれた。 「おや、巣作りかい?」 「そうだよ!! れいむはおとなになったんだよ!! だからおうちをつくってるんだよ!!」 「ほう、それはめでたいな!! それじゃあ、一人前になったお祝いに、お兄さんが美味しい物をあげよう」 「ゆゆっ!! おいしいもの!!」 「ほら、ビスケットだ。ゆっくりお食べ」 「ありがとう、おにいさん!!」 男は、ポケットからビスケットを取り出すと、れいむの前に差し出してくれた。 親であるぱちゅりーなら、ただでゆっくりさせてくれる男の行動に疑問を抱いたであろう。 しかしながら、親ぱちゅりーの言葉に反して、自分をゆっくりさせてくれるこの男は、きっと優しい人なのだろうとれいむは考えた。 決して、目の前に置かれたビスケットの香ばしい匂いに釣られた訳ではない。 ぱちゅりーの助言もむなしく、疑いもなくビスケットに食らいつく。 「むーしゃむーしゃ!! しあわせ〜〜〜〜♪♪」 丁度、巣作りでお腹が空いていたこともあり、ボリボリと溢しながらビスケットを口に入れる。 かつて味わったことのないその味にすっかり心を奪われたれいむは、男にもっといっぱい頂戴と要求した。 図々しい物言いだが、れいむに悪気は全くない。ゆっくりとは、そういう生き物なのである。 やさしい男は、そんなれいむの態度を特に気にするでもなく、更に何枚かのビスケットを取り出すと、れいむの前に置いてくれた。 れいむは、再びビスケットに食らい付く。 しばし至福の一時を過ごすれいむ。 しかし、初めのうちはおやつタイムを存分に満喫していたれいむだが、そのうち急な眠気に襲われた。 「ゆっ? なんかれいむ……ねむくなってきたよ」 「きっと一生懸命頑張ったから疲れたんだね。でも、巣はまだ入れるほど大きくないし、外で寝るのは危険だな。よし、お兄さんがゆっくり寝られる所に運んであげるよ」 「ありがと…う……お…にい……さ………」 最後まで口にすることなく、れいむは睡魔の急襲にあい、意識を失った。 その後の記憶はない。 そして、再覚醒したのが、ついさっきというわけである。 「あのおにいさんが、れいむをここにつれてきたんだね!!」 考えに考えた末、れいむはあの男が連れてきたことにようやく気が付いた。 確かに周りは見たことのないものばかりだが、ここなら冷たい夜風に吹かれることもないし、急な雨もへっちゃらだろう。 何より天敵ともいえるれみりゃやふらん、大型の野生生物がいないため、ゆっくり安心して睡眠を取ることが出来る。 れいむがあの狭い木箱の中に入っていたのは、きっと男が安全策として念には念を押していたのだろう。 男の気配りに、れいむは心の中で感謝した。 しかし、いつまでもこんな場所には居られない。 季節は秋。 この時期、ゆっくりは食料を巣に溜め込み、冬ごもりに向けて餌を溜めこむ重要な時期だ。 言うまでもなく森の資源には限りがある。 餌取りは早い者勝ちであり、怠け者、体が弱い者、要領の悪い者は、満足な量の餌を溜めこむことができず、大自然の驚異の前に次々と地に帰っていく。 れいむは一匹での越冬ということもあって、自分の分の餌を溜めこむだけで済むため、家族持ちのゆっくりほど切羽詰まってはいないが、代わりに住む家が出来ていないというハンデを抱えている。 いつまでもここに長居をすれば、れいむも帰らぬゆっくりの仲間入りを果たすのは目に見えている。 そんなことは死んでもごめんである。 「おにいさ〜〜ん!! れいむ、おきたよ〜〜!! ゆっくりしないでかえるから、ここからだしてね〜〜〜!!!」 れいむは、この出口のない奇妙な空間から抜け出すべく、大声でお菓子をくれた男を呼んだ。 男がどこにいるのかは分からないが、れいむは男がすぐに来てくれるだろうと楽観していた。 元々疑うということを知らないれいむである。美味しいお菓子をくれた人間を完全に信用していたのだ。 しかし、すぐに来てくれるだろうという安直な考えとは裏腹に、男からの反応は全くなかった。 呑気なれいむは、「そっか!! きこえなかったんだね!!」と、ポジティブシンキングを発揮し、特に気にせず再度大声を張り上げた。 腹(?)の底から捻り出すような声量。 これで男が来てくれるだろうと、れいむは自信満々でいたが、れいむの声に対し、思いがけないところから反応が返ってきた。 「ゆ〜〜……まだねむいよ……ゆっくりおおごえをださないでね」 その声はれいむをここに連れてきた人間とは明らかに違っていた。 しかも明らかに自分のすぐそばから発せられたのである。 れいむは周りを見渡した。しかし、声の主らしき者は、れいむの見える範囲には存在しなかった。 「だれなの? かくれんぼなの? ゆっくりこたえてね!!」 声の主に呼び掛けるれいむ。 すると、れいむの呼び掛けに再び返事が返ってきた。 「ゆっ? そっちこそだれなの? ゆっくりせつめいしてね!!」 声の返ってきた方を向くと、そこには木箱が置いてあった。 れいむの入っていた木箱の隣にあった物だ。 れいむはその木箱に近づいていくと、その中にいるであろう者に向かって声をかける。 「れいむはれいむだよ!! このなかにいるんでしょ? だれなの? ゆっくりおしえてね!!」 訳の分からない自己紹介をするれいむ。 例えるなら、「私の名前はれいむです」と言ったところなのだろう。 人間が聞いたら、なんのこっちゃと思うような紹介だが、箱の中の者にはそれで充分だったらしい。 「まりさはまりさだよ!!」 れいむと同じ自己紹介を返すまりさ。 どうやらこれがゆっくりの自己紹介のスタンダードなようだ。 「れいむ!! どうしてまりさのまわりにきのかべがあるの? れいむがやったの?」 木箱の中にいるまりさは、先程のれいむ同様、状況に戸惑っているようだ。 まあ誰だって突然周りを塞がれてしまえば、困惑するのも無理はない。 「まりさ!! うえがあいているよ!! ゆっくりじゃんぷして、きのかべをとびこえてね!!」 「ゆっ? ほんとうだ!! うえにはかべがないよ!! ゆっくりじゃんぷするよ!!」 まりさは、「ゆっゆっゆー!!」の掛け声とともにジャンプすると、木箱の中から跳び出してきた。 ギリギリの高さで飛び越えることが出来たれいむとは対称に、まりさは余裕を持って木箱を跳び越える。 さすがは身体能力に富んだまりさ種である。 無事にれいむの隣に落ちると、れいむのように転がることなくその場に「しゅた!!」と、華麗に着地する。 実に優雅な物腰だ。 箱から出てくるや、まりさはれいむの方に向き直った。 そしてその顔を一目見たれいむは、一瞬で放心にとらわれる。 な、なんて素敵なまりさなのだろう!! それはれいむが今まで生きてきた中で、見たこともないような美ゆっくりであった。 端正な顔立ち、瑞々しくもっちり張りのある皮、艶のある髪、仄かに香る甘い匂い、一切の無駄な皺のないゆっくりとした帽子…… どれをとっても野生のゆっくりではお目にかかれないほどの物であった。 それは人間に飼われているゆっくりでもあり得ないだろうというレベルのものである。 「ゆっ? れいむ、どうしたの? まりさのおかおになにかついてるの?」 そんなれいむの態度が気になったのか、まりさが首を捻って質問してくる。 れいむはそのまりさの言葉でようやく我にかえった。 そして、まりさに見とれていた自分を顧みて、「な、なんでもないよ!!」と精一杯自分の態度を誤魔化した。 独り立ちしたとはいえ、れいむはようやく成体になったばかり。 ゆっくりでいう成体とは、スッキリして子供が作れるようになった個体を指す言葉であり、人間の年齢で例えるなら、12〜14歳という微妙なお年頃である。 要は思春期であり、体は大人でも精神はまだまだ幼稚さの抜け切らない子供なのである。 余談ながら、ゆっくりが成体かそうでないかを見分けるには、ゆーりが来たかそうでないかで判断される。 ゆーりとは、成長したゆっくりなら誰でも体験するものである。 ある日突然、体全体から甘く粘着質な液体が分泌されることで、次代を作る態勢が整えられる。 知識を持たない当事者は、突然自分の体から変な物が出ることに慌てふためくが、同じく経験してきた親や周りの大人たちが、それが危険でないことを説明してくれる。 それは大人になった証であり、子供を作れるようになった証であると。 そしてその日は大抵ご馳走になることが慣例となっている。 ちなみにれいむの居た群れは、成体になってから三か月以内、要は次の季節に移るまでに、生まれ育った巣から出ていくことが習わしである。 理由は、自立心を養わせることと、手狭になった巣を広くするためである。 これは冬場や、余程の切迫した問題がない限り、誰しもが行っている。 とは言え、所詮はまだまだ未熟なゆっくりたちだ。 狩りが不得手であったり、まだまだ子供気分が抜けない者が多く、巣から出るといっても、すぐそばに新たな巣を構える者が大半である。 れいむのように、遠く親元を離れて生活するというゆっくりのほうが稀なのである。 閑話休題 れいむは純朴である。口悪く言えば田舎娘とも言いかえられる。 森で一緒に駆け回っていた友人達は、皆伸び伸びと元気なゆっくりであったが、反面泥臭くスマートさに欠けるゆっくり達でもあった。 最近ようやく色を知り始めたれいむが、優雅で大人びた、見ただけで気品に満ち溢れたまりさを見て、一目惚れしてしまうのも無理のない話であった。 自分を見てモジモジしているれいむを見ても、まりさにはそんなれいむの機微など分からないらしく、自分が何か不味いことでもしてしまったのではないかと、心配そうな顔をしていた。 傍に寄って行って、れいむの顔を覗き込む。 「れいむ!! ぽんぽんでもいたいの? だいじょうぶ?」 そんな美まりさに近寄られて一層心拍数(?)の上がるれいむ。 近寄られて嬉しい反面、こういうことに慣れていないれいむは、自分からまりさとの距離を取った。 「ゆゆゆっ!! だだだだいじょうぶだよ!! どどどこもいたくないよ!!」 「ほんとうなの?」 「ほ、ほんとうだよ!!! ゆっくりしんじてね!!」 「わかったよ!! ゆっくりしんじるよ!! でもなにかあったら、すぐにまりさにいってね!! まりさがたすけてあげるからね!!」 「ゆぅぅ……あ、ありがとう!! まりさ!!」 初めて会ったばかりのれいむに優しく声をかけるまりさ。 余程れいむの態度が気になっていたのか、何でもないと分かるや、ホッと息をもらす。 容姿もさることながら、優しく思い遣りまであるとあって、れいむのまりさに対する親愛度は急上昇していった。 出来ることなら、いつまでもこの時間が続いてほしい。いや、一生このまりさと一緒にゆっくりしていきたい。 乙女心全開のれいむは、まりさとの幸せな家庭を妄想する。 朝起きると隣ではまりさと子供たちが寝ており、れいむがゆっくりと起こしてあげる。 起きたら全員一緒に「ゆっくりしていってね!!」という掛け声とともに、楽しい一日が始まるのだ。 朝ごはんを食べたら、みんなで小川にピクニック。 まりさと寄り添って、子供たちの遊ぶ様子を見守り、お昼はその場でお花や虫さんを食すのだ。 お腹がいっぱいになった昼下がりには、明るい日差しの下でお昼寝タイム。 気の済むまで寝入り、太陽が山に差し掛かる頃起きて、お歌を歌いながら帰るのだ。 帰ったらまりさは狩りに行き、その間れいむは子供たちの面倒を見て、まりさが帰ってきたら全員そろっていただきます。 危険な夜はお家の中で家族団欒の時間を過ごし、子供たちが寝入ったら、今度はまりさと二匹だけの時間。長い夜の始まりだ。 そして疲れた二人は寄り添い合って、静かに目を閉じていく。 いつまでもいつまでも、ゆっくりとした時間が永遠に続いていくのだ。 涎を垂らしながら、妄想を繰り広げるれいむ。 目の前ではまりさが、やっぱり体の調子が悪いんじゃと言った顔をしてても何のその、妄想はどこまでも続いていく。 まりさの好物は何かな? 子供は何匹がいいだろう? お家は大きい方がいいよね!! 場所は小川の近くが…… とここにきて、れいむはハッと現実に戻っていった。 お家。そう、お家だ。 れいむは未だ自分の住むべきお家を作り終えていないのだ。 お家を早く作るためにも、れいむはお兄さんを呼んでいた最中だったのだ。 まりさの美貌に見とれて、肝心なことをすっかり忘れていた。 一旦現実に戻るや、何を馬鹿な妄想を繰り広げていたのだろうと、れいむは自己嫌悪に陥った。 そもそも現実的に考えて、こんな美ゆっくりであるまりさが、自分如きを好きになってくれるはずないではないか。 事実、れいむの体や髪の毛、自慢であるリボンは、巣作りの途中だったせいもあり、汚れに汚れている。 まりさと比べて、あまりにもみすぼらしい格好だ。 しかも自分はようやく成体になったばかり。反してまりさはすでに立派な成体。自分などまだ乳臭い子供でしかないだろう。 欲望や願望に忠実なゆっくりは、明るい未来だけを想像し、暗く辛く苦しいことをすぐに忘れ去る傾向にあるが、親ぱちゅりーから熱心な教育を施されたれいむは、ゆっくりの中では、比較的珍しい現実主義者であった。 妄想は妄想。現実にあり得るはずはない。 「はー……」と盛大に溜息をついて、俯くれいむ。 しかし、落ち込んでいても始まらない。切り替えの早さもれいむの持ち味だ。 夢を見る時間はここまでにして、ここから出るべくまりさと情報交換を始めることにした。 「まりさ!! まりさはどうしてここにいるの? まりさもおにいさんにつれてこられたの?」 「ゆっ!! きゅうにれいむがふつうにもどったよ……」 まりさはと言えば、自分を見て赤くなったり、間抜けな顔で涎を垂らしたり、急に欝になったりするれいむを不思議そうな様子で見守っていた。 いや、この言葉からして若干引いていたらしい。 しかしそこは大人だからか、それ以上れいむの傷を広げようとはせず、質問に答えてくれた。 「そうだよ!! まりさはおにいさんにつれてこられたんだよ!!」 「まりさも?」 「ゆー!! おにいさんはやさしいひとだよ!! まりさにおかしをくれたよ!! いっぱいおかしをたべたら、まりさ、ねむくなってきちゃったんだよ!!」 「ゆゆっ!! れいむとおんなじだよ!! れいむもおいしいものをたべたら、ゆっくりねちゃったんだよ!! そして、おにいさんがつれてきてくれたんだよ!!」 「ゆっ!? れいむもなの!! ゆっくりおそろいだね!!」 「ゆ、ゆっくりそうだね……」 お菓子をもらい、共に食べている最中眠り連れてこられたということもあって、まりさはれいむにシンパシーを感じたようだ。 嬉しそうに、「あのおかし、おいしかったね!!」と、顔をほころばせる。 れいむもれいむで、美ゆっくりのまりさとの共通点を発見し、再度なんとも言えない気分になった。 恋をしている者にとっては、こんな些細な共通点にすら接点を見出すものである。 なぜお菓子を食べて突然睡魔に襲われたのかという重要な疑問は、今の二匹にはどうでもいい事らしい。 「それじゃあ、いっしょにかえろうね!! よるになると、れみりゃがでるかもしれないからきけんだよ!! まりさがゆっくりおうちまでおくってあげるよ!!」 「ゆゆっ!! いいの!?」 「もちろんだよ!! それにいっしょにかえったほうが、ゆっくりたのしいよ!!」 「ありがとう、まりさ!!」 優しい言葉をかけられ、今日何度目になるか分らない温かい気分になるれいむ。 気を抜けばこのまま妄想の世界に再度行ってしまいそうなところを、僅かばかりの理性を持って制御する。 まりさは親切心で言ってくれているだけなのだ。決して自分に気があったり、下心があって言ってる訳ではない。 その言葉通り、成体になったばかりのれいむ一匹では危ないし、二匹でお喋りしながら帰った方が楽しいというだけだ。 頬を染めながらも、れいむは冷静にまりさと話を続ける。 「それじゃあ、さっそくかえろうね!!」 「ゆっ? まりさはどうやってここからかえるかわかるの?」 「わからないけど、おにいさんがつれてきてくれたんだから、おにいさんをよべばいいんだよ!!」 「れいむもさっきおにいさんをよんだけど、きてくれなかったよ!! かわりにまりさがおきたよ!!」 「きっとれいむのこえがちいさかったから、おにいさんがきがつかなかったんだよ!!」 「そうだね!! きっとこえがちいさかったんだね!!」 「そうだよ!! いっしょにおおきなこえでおにいさんをよぼうね!!」 「ゆっ!! ゆっくりりかいしたよ!!」 まりさの「ゆっせいの…」の後に続けて、二匹は大声を張り上げた。 「「おに〜〜さ〜〜〜〜〜ん!!!!」」 二匹は今にもお隣さんが苦情に来そうなほどの声量を発する。 しかし、待ってみたものの、お兄さんはやって来なかった。 再度挑戦する。それでも結果は変わらない。 「ゆぅ……おにいさん、こないね」 「そうだね」 二匹とも喉(?)が破れるのではというくらい声を張り上げているので、声が小さいということはあり得ない。 もしかしたらお兄さんは近くに居ないのかもしれないという結論にようやくたどり着いた二匹は、未練が残りながらも男を呼ぶのを諦めた。 と言っても、ここから出ることを諦めたわけではない。 まりさは兎も角、れいむにはあまりのんびりしている時間はないのだ。 まりさと一緒に居られるこの時間は貴重であるが、いつ来てくれるか分からないお兄さんを愚直に待っていることは、そのまま死につながる危険性がある。 「まりさ!! ここからでるほうほうをかんがえようね!!」 「わかったよ、れいむ!!」 二匹は部屋の中を探索し始める。 出られる隙間はないか? 食べるものは落ちていないか? 使える道具はないか? 注意深く隅々まで視線を落としていく。 “扉”を知らない二匹は、目の前にあるそれを、周りと色の違う壁という認識しか示さない。 もっとも、人間の使う扉が非力なゆっくりに開けられるはずもなく、その存在を知りつつ如何しようも出来ないという敗北感を味わうよりは、ある意味幸運と言えるのかもしれないが。 二匹は注意深く探し回ったが、所詮は狭い部屋。どこにも出口がないことを確認したにすぎなかった。 唯一この部屋にある物は、れいむたちが寝ていた木箱だけ。中に何もないことは、すでに本人たちが確認済みだ。 しかし、ここでお忘れになっていないだろうか? この部屋にある木箱は計三つ。れいむとまりさは二匹。 となると、残り一つに何かが入っている可能性がある。 「まりさ、このきのなかには、なにがはいっているのかな?」 「きっとここからでるためのなにかだよ!!」 「そうだね!! ようやくここからでられるね!!」 「まりさがなかにはいってゆっくりたしかめてくるよ!!」 「がんばってね、まりさ!!」 「ゆっ!!」 既にれいむは、箱の中に役立つ道具が入っていると信じ切っている。 餡子脳とは、実に幸せである。 まりさは盛大にジャンプし、最後の箱に飛び込んでいった。 すると、まりさの着地と同時に、「ゆぎゃあぁぁぁぁ―――――!!!」という声が聞こえてきた。 それはまりさの悲鳴ではなかった。 「ど、どうしたの!? なにがあったの!?」 突然出てきた第三者の悲鳴に、驚き確認を取るれいむ。 その問いに対して、まりさと第三者の問答が答えをくれた。 「い、いきなり、ねていたありすをふみつけるなんて、とかいはのすることじゃないわ!!」 「ゆ、ゆっくりごめんね!! ありすがいるなんて、しらなかったんだよ!!」 「ごめんですんだら、どすはいらないわ!!」 「ゆぅ……」 二匹の言葉を聞く限りでは、木箱の中にはありすがいたらしい。 寝ていたありすを、まりさが思いっきり踏みつけた格好だ。ありすでなくても、怒るのは無理もない。 その後、まりさが何度も謝罪し、どうにかありすの許しを貰うと、二匹は連れだって箱の中から飛び出してきた。 まりさ同様、ありすも上手に着地する。れいむよりも、幾分か運動神経に富んでいるらしい。 れいむは二匹の会話で、木箱の中に誰がいるかは分かっていたが、出てきたありすを見て少しばかり身構えた。 都会派を自称し、一旦タガが外れると問答無用で襲いかかってくるレイプ魔。それが、れいむのありす種に持っているイメージだったからだ。 イメージというのは、実際に見たわけではなく、伝聞によるものだったからである。 れいむの生まれ育った群れには、ありす種は生息していなかった。 しかしながら、知識の塊である親ぱちゅりーは、いつありす種に会っても対処できるようにと、ありす種について様々なことを教えてくれた。 ありす種はぱちゅりー種と並んで頭の良い個体が多く、ぱちゅりー種と違い体も丈夫なため、あらゆる場面で活躍できる多才派だ。 都会派と気取ることが多いが、それ自体は他のゆっくりに迷惑をかけることではないので、気にしなければどうということはないらしい。 しかし、それだけならマルチに活躍できる最高のゆっくりなのだが、ありす種特有の欠点も耳ダコが出来るほど聞かされた。 それが、色情魔、レイプ魔というもう一つの顔である。 ありすは非常に性欲が強く、一度レイプ魔になると、手が付けられなくなるらしい。 普段は、全力を出すのは都会派らしくないという認識で力を抑えているそうだが、レイプ魔となるとその枷が外れ、最強のゆっくりへと変貌する。 それは、場合によっては捕食種であるれみりゃにすら対抗できるほどであるといえば、どれだけ強いか分かるというものだろう。 とは言え、すべてのありすがレイプ魔という訳ではない。 むしろ、レイプ魔のありすなど少数派であり、殆どは多少性欲の強いだけの普通の個体である。 しかしながら親としては、ありすの利点より危険性を重点的に教え込むことは、子供の安全面を考えれば仕方のないことである。 その結果、実物のありすを見たことがないことも併せて、れいむの頭の中では、ありすがレイプ魔であるというイメージが強くなってしまったのである。 「あら、はじめてみるれいむね!! ゆっくりしていってね!!」 「……ゆ、ゆっくりしていってね」 木箱から出てきたありすが、れいむに気付き、声をかけてくる。 ちなみにこの場合の「ゆっくりしていってね!!」は、ここでゆっくりしようねという意味ではなく、「はじめまして」の意味である。 対して多少戸惑いながらも、れいむもありすに返事を返した。 いくらありすに苦手意識を持っていても、このありすがレイパーであるとは限らない。 それに挨拶を返さない子はゆっくり出来ないと、親ぱちゅりーから厳しく躾けられていたからでもあった。 ありすはそんなれいむの葛藤など気付きもせず、部屋の中を興味深げに見まわした。 そして一通り確認を済ませると、れいむとまりさに向き直る。 「まりさ、れいむ!! ここはどこなのかしら? とかいはのありすにおしえてくれてもいいわよ!!」 「ゆっ!? ありすもここがどこかわからないの?」 まりさは驚き聞き返す。 口には出さずとも、れいむも同じ心境だった。 少々疎ましく思いながらも、このありすならきっと出口を知っているに違いない。特に意味もなく、安直にもそんな考えでいたれいむは、大いに落胆した。 それと同時に、元々低かったありす株も一気にがた落ちしてしまう。 ありすにとっては、勝手に思い込まれて、勝手に落胆されただけなので、実にいい迷惑である。 れいむほどではないが、まりさも同じ気持ちだったらしく、若干渋い表情をしていた。 しかし、出口を知らないのであれば、それはそれで仕方がない。 情報交換をすべく、まりさがありすに問いかける。 「ありすはどうやってここにきたの?」 「ゆっ? そ、そうね、ちょっとまってね!! いまおもいだすから!! とかいはをあせられるものじゃないわ!!」 なぜか知らないが、自分が失望されているということは二匹の表情から分かったようで、ありすは失点(?)を取り返すべく、必死でここに来た経緯を思い出す。 「ゆぅぅ!! たぶんだけど、にんげんのおにいさんにつれてきてもらったんじゃないかしら?」 「にんげんのおにいさん? もしかして、おかしをくれたおにいさんのこと?」 「よくわかったわね!! なかなかとかいはなにんげんだったわ!! もりでおかしをたべてたら、きゅうにねむくなってきちゃって、きがついたらここでねむっていたの!!」 「ゆゆっ!! まりさたちとおんなじだよ!! まりさたちも、おにいさんにおかしをもらって、ここにつれてきてもらったんだよ!!」 「そうだったのね!!」 「それじゃあ、ありすもまりさたちといっしょにかえろうね!!」 「しかたないわね!! ゆっくりとかいはのありすをえすこーとさせてあげるわ!!」 ありすも同じ境遇であると知り、それならみんなでここから帰ろうという結論に達したまりさ。 しかし、それが面白くないのはれいむだ。 せっかくまりさと二人きりで帰れると思っていたのに、余計なお邪魔虫が付いてしまった。 とは言え、まりさとありすはすでに一緒に帰る気でいるし、「ありすとは一緒に帰りたくないよ!!」なんて言えるはずもない。 れいむは気落ちしながら、どうやってここから出るかという作戦会議に混ざった。 その2へ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2816.html
#現代設定 ゆっくりとオートバイ 先日、夏の間から延々と引きずっていた仕事が終わったため、男はやっと取りそびれていた夏休みを取ることができた。 夏休みと言っても名ばかりで、山は既に紅葉で赤く色付き朝晩は冷え込んでかなり寒い。 しかし、せっかく取れた休みなので、男は久し振りに趣味のバイクでツーリングに行くことにした。 男はまだ日の昇る前に寝床から這い出して、昨日の内に用意しておいた装備を身に着けると、ヘルメットと荷物を抱えて玄関へと向かった。 サイドジップの革ブーツを履いてジッパーを上げ、靴棚の上に置かれた時計を確認する。 時計の時刻はまだ六時前だったので、今から出発すれば通勤渋滞を避けることができるはずだ。 「それじゃ、いってきます」 見送りなどいないが、一声かけてから玄関の鍵を閉めて駐車場へと向かった。 駐車場は自動車二台ほどのスペースがあり、乗用車と自転車が二台ほど停めてある。 男は駐車場の隅のブルーシートで覆われた一角へと向かった。 男の家の駐車場は屋根が無いため、バイクはバイクカバーをかけた上にブルーシートを被せて保管してある。 バイク用のシェルターなども売ってはいるが、少々値が張るため行楽時の敷物から建築現場の養生と、万能振りを発揮するブルーシートを使用することにしたのだ。 「あれ、ほどけてるな。結び忘れたか?」 ブルーシートは風で飛ばされないように紐で結んで杭に固定していたのだが、一箇所紐が緩んでシートに隙間ができていた。 昨日バッテリーとエンジンの調子を確認したときに結び忘れたらしい。 男が結んである紐をほどいてブルーシートを外すと、その下からなにやらバレーボール大の物体が姿を現した。 「……ゆっくりかよ」 ゆっくりは二匹いて、片方が帽子をかぶったゆっくりまりさ、もう片方がリボンのついたゆっくりれいむだった。 男は以前に、ブルーシートの中で猫にマーキングされて酷い目に会ったことがあるため、バイクの周りに猫避けシートを敷き詰めていた。 その猫避けシートの上に、まりさが見事に鎮座していた。 れいむは猫避けシートには乗らなかったらしく、まりさの後ろに寄り添っていた 動けないまりさを見捨てなかったということは、この二匹はもしかしたらつがいかもしれない。 どちらのゆっくりにも飼いゆっくりの証であるバッジが無いことを確認し、とりあえず現状を把握することにした。 「あー、こりゃみごとに刺さってるな」 猫よけシートは、網目状のプラスチックの上に棘のような突起が生えているシートである。 男はその一辺三十センチ程の正方形のシートを連結して、バイクの周りに敷き詰めていた。 猫は足の裏の肉球が敏感なため、猫避けシートの棘の上は痛くて歩くことができない。 ゆっくりは体の底面の”あんよ”が傷つくことを極端に恐れるため、この猫避けシートはゆっくり避けとしても効果があった。 そのシートの上にまりさが乗っかっており、底面に長さが3センチはある棘が根元まで突き刺さっていた。 二匹はどちらも眠っているようで、まりさが苦しそうに「ゆ゛っ、ゆ゛っ」と呻いているのに対して、れいむは「ゆー、ゆー」と気持ちよさそうな寝息を立てている。 風を通さないブルーシートの中が快適だったのだろう。 とりあえずシートを引きずり、バイクの方を向いていたまりさの向きを変えて顔が見えるようにする。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ」と呻いているが起きる気配がまったくない。 れいむの方もまりさの隣に移動してやるが、こちらも熟睡しているようだ。 この二匹をどうにかしないといけないのだが、眺めていても仕方がないので二匹を起こすことにした。 「ゆっくりしていってね!!」 二匹の真上で声をかけてやると、 「「ゆっくりしていってね!!」」 と声を上げて二匹とも目を覚ました。 ゆっくりは、”ゆっくりしていってね”と声をかけてやれば余程のことが無い限り返事をする習性をもっている。 「ゆっ、おやねがなくなっちゃたよ!?」 「ゆっ? どうしたんだぜ、なんかあんよがいたいんだぜ?」 どうやられいむは、ブルーシートが無くなったことに困惑しているようだ。 まりさは足の違和感に首を――首は無いが――かしげている。 れいむが目の前に立った男に気が付き声をかけてきた。 「ゆっ、おにいさんはゆっくりできるひと?」 それに続けてまりさが言った。 「ここはまりさのおうちだぜ!! おじさんはまりさにたべものをもってくるんだぜ!!」 れいむの挨拶はゆっくりとしては一般的なのだが、まりさはなんとなくゲスっぽい感じがした。 おうち宣言をしたということは、昨夜の内にブルーシートの隙間から入り込んで住み着こうとしたのだろう。 そこで、最初に入ったまりさが猫避けシートの上に飛び乗って身動きできなくなり、れいむは動けないまりさに寄り添っていたが、二匹とも疲れて眠ってしまったというところだろうか。 男は無駄だとは思ったが、一応ゆっくりたちと話をすることにした。 「ちがうよ、ここはお兄さんのおうちだよ。ゆっくり理解してね!」 と男は二匹に言った。 「なにいってるの? ここはれいむとまりさのおうちだよ!!」 「ゆ゛っ!! ここはまりさのおうちだっていってるんだぜ!! おじさんはゆっくりでていってね!!」 この二匹は住宅街の野良なのに、人間の怖さをまだ学習して無いらしい。 男は二匹の周りを見回して言ってやった。 「おうち? どこにおうちがあるのかな、どこにも無いんだけど?」 「ゆっ?」 れいむが自分の周りを見ると、寝る前までは青くて暖かいおうちの中にいたはずなのに、いつのまにか外に出てしまっていた。 「どぼじでおうちがないのぉおおおおおおおお!!」 「ゆっ、どういうことなんだぜ!?」 とまりさも周りを見ようとして、 「ゆぎぃいい!! あ゛んよがいだいんだぜ!!!!」 と悲鳴を上げた。 「ゆゆっ!? まりさ、どうしたの!?」 痛がるまりさをみてれいむがおろおろとしている。 「ゆ゛っ!! おかしいんだぜ、まりさのあんよがうごかないんだぜ!!」 「ゆっ! どうしてなのぉおおお!!」 まりさはやっと自分が動けないことに気が付いたようだ。 「で、おうちは無いみたいだね?」 と男が言うと。 「ゆぎぃいい!! きっとこのじじいがまりさのおうちをとったんだぜ!!」 と、まりさがあんよの痛みをこらえながら言ってきた。 ブルーシートを外したのは男なので、ある意味間違ってはいない。 「ゆっ、そうなの!? まりさ、おうちをとりかえしてね!!!!」 「あんしんするんだぜれいむ、このまりさがあんなじじいすぐにころしてやるんだぜ!!」 概ね予想通りの展開に男はため息を吐いた。 「まりさはどうやってお兄さんを殺すのかな?」 「ゆふ~ん、おじけづいたのかだぜ? まりさのたいあたりはゆっくりでいちばんなんだぜ! れみりゃにもかてるんだぜ!!」 とまりさが自慢げに踏ん反り返る。 どうやらあんよが動かないことは忘れたらしい。 「そりゃすごい、早くやってみろよ。ほら、お兄さんは避けないからさ」 「ゆぐっ! まりさをばかにしてるのかだぜ? あとであやまってもゆるざないぜ!!」 と言うと、まりさは男に飛び掛かるために踏ん張ろうして、 「ゆぎぎぃいいいいい!! あ゛んよがいだぃいいいいいいいい!!!!」 と叫び声を上げた。 痛いはずである。底面一面に棘が刺さって固定されているのだから。 先ほど自分であんよが動かないと言っていたはずなのだが、さすが餡子脳といったところだろうか。 まりさはあまりの痛さにのた打ち回ろうとするが、底面を猫避けシートがガッチリと固定しているためにその場から動けずにいる。 「ゆゆっ!? まりさ、どうしたのぉおおおお!?」 その横で、痛がるまりさにれいむがあわててすりすりしている。 「どぼじであ゛んよがうごがないの゛ぉおおおおお!!」 「まったく、まりさは馬鹿なの? アホなの? 死ぬの?」 「ゆがぁああああ!! ばでぃざはばがじゃないぃいいいいい!!! ゆぎぃいいいい!!」 まりさは男の挑発に飛び掛ろうとして、再度痛みに悲鳴を上げた。 「お前なぁ、あんよにそんなものが刺さっているのに動けるつもりなのか?」 「ゆ゛っ!! おぼいだしだぁああ!! ぎのういきなりこのとげとげがざざっだんだぜえええ!!」 「ゆっ、そうだったよ! おうちをみつけたとおもったらまりさがうごけなくなっちゃったんだよ!!」 「おじざぁあああん!! ばりざをだずげでほじいんだぜぇええええええ!!」 このまりさは、先ほどまで自分が何を言っていたか覚えていないらしい。 媚びているつもりなのか、じじい呼ばわりしていた呼称がおじさんに戻っていた。 「あー、はいはい。で、ここはだれのおうちなの?」 「ゆっ? ここはれいむとまりさのおうちだよ!!」 「なにいっでるんだぜ!! ごこはばでぃざのおうぢだっていっでるんだぜ!! ばかなのかだぜ!!」 予想はしていたが、れいむとまりさは考えるぞぶりも見せずに言い切ってくれた。 「おうちなんかないよ?」 「ゆーーっ!! おにいさんがとったんでしょぉおおお!!!」 「おじざん、はやぐばりざをだずけるんだぜぇえええ!!」 「まぁ、助けてもいいけどさ、君たちが二度とここに来ないって約束したら助けてあげるよ」 「なに゛いっでるんだぜぇええええ!! ここはばりざのおうぢだっていっでるんだぜぇええええ!!」 「ゆーっ! はやくまりさをたすけてね!! おうちもかえしてね!! れいむおこるよ!!」 ぷくーっ! とれいむが膨らんで威嚇する。 「おお、きもいきもい」 久しぶりのツーリングなのに出発する前から可愛くも無いゆっくりの相手をさせられて、男はかなり苛付いてきた。 つんつんと、軽く足でシートの端を突付いてやる。 「ゆがぁあああああ!! なにずるんだぜぇええええ!!」 「ゆっ!? どぼじでそういうごとするのぉおおおおおお!!」 「おまえらさ、いい加減邪魔なんだわ」 と男は動けないまりさから帽子を奪い取った。 「ゆ゛っ!! ばりざのすできなおぼうしがえすんだぜぇえええ!!」 「で、ここはだれのおうちなんだ?」 「ばでぃざのおうぢだって――ゆぎゃっ!!」 またシートを突付いてやる。 「やめてね、まりさをいじめないでね!! まりさをたすけたらゆっくりしんでね!!」 と、まりさの横でれいむが飛び跳ねている。 「それじゃ、おまえがこの帽子を取ることができたら助けてやるよ」 れいむにそう言うと、男は手にした帽子を50センチほどの高さにぶら下げてやった。 ただしその場所は猫避けシートの真上だったが…… 「でいぶぅううう!! ばりざのおぼうしをとりかえしてほしいんだぜぇええ!!」 「ゆーっ、ゆっくりがんばるよ!! おじさんはれいむがとれないとでもおもったの? ばかなの?」 れいむは「ゆーーっ!」と力むと、「ぴょーん!!」 と擬音を口にして跳ね上がった。 跳ね上がったれいむは、帽子の鍔を咥えて見事に男の手から帽子を奪い取った。 しかし、跳ね上がったら次は下に落ちるのが世の定めである。 れいむはそのまま見事に着地した――猫避けシートの真上に。 「ゆびゃぁああああああ!!! でいぶのきれいなあんよがぁああああああ!!!」 叫び声を上げたれいむの口から、まりさの帽子がこぼれ落ちる。 「ゆ゛ぅうううううう!! はやぐばりざのおぼうしをよこすんだぜ!!」 まりさはれいむよりも自分の帽子の方が心配らしい。 「まぁ、やくそくしたからコレは返してやろう」 男は帽子を拾い上げると、まりさの頭に被せてやった。 「ゆっ、まりさのおぼうしもうどこにもいかないでね!!」 まりさは帽子が戻ったことに安心したらしく、ゆ~ゆ~言い出した。 どうやら足の事やいまの状況は忘れてしまったらしい。 とりあえず二匹とも動けなくなったので、男は猫避けシートを脇に避けるとバイクからバイクカバーを剥がしてブルーシートと一緒に杭に縛り付けた。 まりさとれいむがなにやら叫んでいたが、とりあえず無視する。 ゆっくりの相手はいい加減にして、さっさと出発しないと通勤車の渋滞に巻き込まれてしまう。 男はバイクにトップケースとタンクバッグをつけると、ウエストにつけたポーチから取り出したキーをバイクに差し込んで捻った。 続けて、チョークを引いてセルスイッチを押し込み、セルの回る音を聞きながら軽くアクセルをあおってやると、排気音を響かせてエンジンが掛かった。 「ゆ゛ーーっ、ゆっぐりでぎないおどがする!!!!」」 「おじさんやめるんだぜぇええ!! ばりざのあんよにひびぐんだぜええええ!! 心地よい重低音が響いているのだが、この二匹にとっては不快らしい。 男はアイドリングが安定したことを確認すると、エンジンの暖気をしている間にゆっくりを捨ててくることにした。 猫避けシートからまりさとれいむの乗っかった部分を取り外し、二匹の頭を掴んで持ち上げる。 バレーボール程度とはいえ餡子の詰まったゆっくりは結構重い。 「ゆっ、おそらをとんでるみたい~♪」 「ゆっ、おそらをとんでるみたいだぜ~♪」 男は二匹をぶら下げたまま、駐車場から出ると、近所の公園へと向った。 別にこのまま叩き潰してゴミ収集所のダストボックスに放り込んでもいいのだが、ツーリング前に殺生を犯して――饅頭相手に殺生になるかは分からないが――けちを付けたくなかった。 男はゆっくり愛護派でも虐待派でも無いので、よほどの実害が無い限りゆっくりにも寛大だった。 「ゆ~、れいむをどこにつれていくの!?」 「おじさん、まりさをはなすんだぜ!!」 近所の公園に着くと、男は芝生に覆われた広場の中心へと向った。 「まぁ、ここら辺でいいだろう」 れいむを足元に落とす。 「ゆぎゃぁあああああ!! あんよがいだぃいいい!!」 次に男はまりさを裏返すと、底面から猫よけシートを一気に剥ぎ取った。 「そぉい!!」 「ゆぎぃいいいいい!! あんよがぁあああああ!!」 ぐにぐにと動くまりさを押さえつけて底面を見ると、棘の刺さった痕が規則的に並んでいた。 そこから餡子汁が滲み出しているが餡子は漏れておらず、傷口は皮の圧力で締まっているのでしばらく安静にしていれば治るだろう。 「ほれ」 「ゆぎゃぁあああああああ!!! あんよがぁああ!! ――ぐぶぇえ!!」 男がまりさを地面に落とすと、まりさは絶叫を上げてあまりの激痛のためか餡子を少し吐き出した。 「じじぃ……ゆ゛っぐりじねぇ……」 「おまえなぁ、親切で助けてやったのにそういう態度かよ」 そのまりさの様子を見て、れいむが目を見開いている。 「ゆっ、ゆっぐりやめでね! れいむはおうちにかえるよ!!」 男はれいむを持ち上げると同様にシートを剥ぎ取ってやった。 「ゆびぇえええええ!! でいぶのあんよがぁああああああ!!」 れいむは落とさずに、ゆっくりと芝生の上に降ろしてやった。 「ゆ゛う゛ぅう!! あんよがじくじくするよ!! はっぱさんでいぶのあんよをじくじくしないでぇえええ!!」 どうやら、芝生が傷口に刺さって痛いらしい。 「それじゃ、おまえらそこでゆっくりしてろ。動かなければそのうち治るだろ」 男は足元でもだえているまりさとれいむに告げると公園から立ち去った。 背後からなにやら恨み言が聞こえてきたが気にしなかった。 駐車場に戻った男がバイクの油温計に付いた時計を確認すると、すでに時刻は6時半を過ぎていた。三十分以上ゆっくりの相手をしていたことになる。 早朝のこの時間に、ゆっくりの罵声はかなり近所迷惑だったのではないだろうかと不安になる。 せっかくのツーリングなのに、出発前のアクシデントでいきなりテンションが下がってしまった。 男はヘルメットをかぶってあご紐を止めるとバイクに跨った。 近所迷惑にならないように、ゆっくりとアクセルを開けて道路へと出て行く。 男はふと、ゆっくりを置いてきた公園が猫の集会所になっていたことを思い出した。 「猫ってゆっくり食べるのか?」 とりあえず、帰ってきたら公園に確認しに行こうと思いながら、男は久しぶりのツーリングへと出発した。 #おまけーね 男が立ち去った後、公園にはれいむとまりさが取り残された。 二匹は何度も跳ねることができないか試してみたが、あんよに力を入れるたびに激痛がするため、まったく跳ねることができなかった。 それならば、そろ~りそろ~りと這ってみようとしたが、少しでも動こうとすると傷口に芝生が突き刺さり再び激痛に泣き叫ぶことになった。 「ゆぅうう、あんよがじくじくするよぉ」 「はっぱさんがいだいんだぜ……」 二匹は移動することは諦めたらしく、、なんとかして芝生からあんよを離そうともがいている。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ――ゆびゃぁああ!!」 れいむが体を後ろに傾けてあんよを芝生から浮かそうとするが、力んだために傷口が圧迫されて体内から餡子汁が滲み出してしまう。 やがて、無理な体勢に限界が来て力を抜いてしまうと、芝生が激しく傷口に突き刺さるのだった。 そのような無駄な足掻きを繰り返しているために、二匹の傷口は治るどころか悪化してしまっていた。 安静にしていればゆっくりの理不尽な再生力により、数時間で這うことができるぐらいまでは回復可能なはずだったのだが。 「ゆ゛っ!! まりさはよいことおもいついたぜ!!」 まりさは舌を延ばし、自分のかぶっている帽子を目の前に逆さに落とすと、 「ゆ゛ぐぅうう! ぞろ~り゛、ぞろ~りぃいい!!」 と、痛むあんよを無理やり動かして帽子の上に移動した。 「ゆふぅ~、これであんよがいたくないんだぜ!! ゆっくりー!!」 芝生があんよに触れなくなり痛く無くなったまりさは、「ゆふん!」とふんぞり返った。 「ゆゆっ、すごいよまりさ! れいむもゆっくりおぼうしにのらせてね!!」 そう言ってれいむがまりさの帽子に乗せてもらおうとするが、 「ゆっ? まりさのおぼうしはひとりようだぜ!! れいむはゆっくりがまんしてね!!」 とまりさはそれを拒否した。 「どぼじでそういうごどいうのぉおおおおおおお!! れいむはまりさのはにーでしょぉおおおお!!」 「そんなこといっても、おぼうしにはひとりしかのれないんだぜ!!」 などと言い合いをしているうちに、日の出の時間になり公園に朝日が射してきた。 「ゆ? おひさまがでてきたよ!!」 「ゆふぅ、おひさまがあたるとぽかぽかだぜ!! ゆっくり~♪」 「ゆぅうう……、あんよがゆっくりできないけど、おひさまはゆっくりだよぉ~」 朝日に当って暖かくなってきたためか、先ほどまでの言い争いも忘れて二匹はゆっくりし始めた。 れいむはあんよが痛いようだが、日射しに当って暖かくなってきたためか幾分か痛みが和らいでいるようだ。 やがて日が完全に昇ると、公園の広場にどこからともなく近所の猫たちが集まり始めた。 一匹、二匹とやって来ては芝生の上に寝そべって日向ぼっこを始める。 猫たちは、自分たちの集会所にゆっくりがいるとこをいぶかしんでいたが、とくに気にせずに思い思いの場所にねころんでいた。 「ゆふぅ~、ねこさんたちもゆっくりだよ」 「ゆ~、ここはまりさのゆっくりぷれいすだぜ」 れいむとまりさも最初は猫たちを警戒していたが、ゆっくりした猫たちをみて安心してゆっくりしはじめた。 だが、しばらくすると好奇心の強い若い猫たちが二匹に興味を持ち始めた。 いつも耳障りな雑音を発して跳ね回っているこいつらが、なぜ自分たちの集会所に居座っているのだろうか? と一匹の黒猫がれいむとまりさの前に歩み出た。 「ゆ? ねこさんゆっくりしていってね!!」 「ゆふ~、ねこさんもゆっくりするんだぜ!」 普段ならば自分が近寄るとはねて逃げるか飛び掛ってくるこいつらが、なぜかその場から動こうとしないのだろう? と黒猫は疑問に思った。 「ゆっ、なにかようなの? れいむはゆっくりしてるからあっちいってね!!」 「ゆふぅ、まりさのゆっくりぷれいすからでていくんだぜ!!」 なにやら言っているようだが、この人間の顔のような物体をみていると無性に腹立たしくなる。 黒猫は、おもわず前足をれいむに向けて繰り出していた。 「ゆぐっ!! あんよがいたいぃいいい!!」 それほど力をいれなかったのだが、目の前の物体が悲鳴を上げる。 黒猫はそれが面白くなってもう一度、こんどは力を込めて猫パンチを繰り出した。 「ゆ゛ーーっ!! どぼじでそういうごどずるのぉおおお!!」 「ゆっ、ねこさんやめるんだぜ!! ゆっくりしてないぜ!!」 黒猫が攻撃しても、目の前の物体は叫び声を上げるだけで動こうとしなかった。どうやら動けないらしい。 楽しくなってきたので、もう一度と黒猫は身構えたが、もう片方の黒い奴の背後から顔見知りの茶トラの猫が近づいているのに気が付いた。 まりさに後ろから忍び寄った茶トラが右前足を振り上げる。 「ゆべっ!!」 と茶トラの振り下ろした前足に後頭部を強打されたまりさが、叫び声を上げる。 「ゆぐぁあああ!! あんよにひびぐぅううう!!」 「ゆ゛ーーっ!! やめてね、ねこさんあっちいってね!!」 それを見たれいむががふるふると震えている。 黒猫は今度は爪を出し、れいむの頬目掛けて前足を振り抜いた。 「ゆあ゛ぁ!! でいぶのかわぃいぽっべがぁあああ!!」 黒猫の爪はれいむの頬に、三本の傷跡を刻んだ。 「ゆうぅううう、やべるんだぜ!! これいじょうしたらおこるんだぜ!! ぶひゅ~~!!」 まりさが膨らんで威嚇するが、後ろから叩かれて息を吐き出してしまう。 二匹の猫を見ていた他の猫たちが、なにやら面白そうなことをしていると集まりだした。 先ほどから眺めていて、れいむとまりさが動けないことがわかったので、まだ他の猫たちより一回り小さい子猫まで寄ってきていた。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、やめてね! やめてね!」 「ゆ゛ーーっ、やめるんだぜ!! いまならゆるしてやるんだぜ!!」 数匹の子猫たちがペシペシとれいむに攻撃を加える。 一匹の子猫が、れいむの頭上でヒラヒラと揺れるリボンに気が付き、れいむの頭の上に飛び乗った。 そのままカリカリとリボンに爪を立てる。 「でいぶのすできなおりぼんにさわらないでぇえええええ!!」 一方、まりさのほうは成体の猫たちに袋叩きにあっていた。 「ゆびぇ!! ――ゆぎゅ!! ――やべでぇえええ!!」 と、猫たちが交互にまりさを突き飛ばしている。 まりさがひときわ大きな猫に体当たりされて帽子の上から転がり落ちると、別の一匹が帽子を加えて振り回しはじめた。 「ゆ゛ぅううう!! ばりざのおぼうじかえすんだぜぇえええええ!!」 ヒラヒラと振られる帽子に、狩猟本能を刺激された猫たちが踊りかる。 やがて数匹の猫に爪を立てられ、噛み付かれて、まりさの帽子はずたぼろになってしまった。 「ゆぎぁああああ!!! ばりざのぼうじがぁあああああ!!!」 「ゆぐぅううううう!!!! ぺしぺししないでぇえええええ!!」 早朝の公園に、猫たちの楽しそうな鳴き声と二匹のゆっくりの悲鳴が鳴り響いていた。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/5089.html
GSPOー幻想郷総合警邏機関。 それは博霊の巫女の鶴の一声によって作られた 幻想郷の小さな事件や異変を解決する警察みたいな組織である! 【登場人物】 ジャック GSPOゆっくり課の隊員。人間、男性、20代。 性格の悪いゆっくりは嫌いだが素直なゆっくりは好き。 標準装備はGSPO隊員に支給される拳銃。早撃ちが得意。 会う度に嫌みを言うレフィが嫌い。 レフィ GSPOゆっくり課の隊員。妖怪、女性、年齢不明。 何かにつけてジャックに絡んでくる。 ゆっくりは愛でる派だがすっきりするゆっくりは嫌い。 ドスまりさ ジャックによってゆっくりから解放されGSPOに入ったが、 上層部に気に入られGSPOのマスコットになってしまった。(第一話参照) __________________________ 「はじめまして。私の名前はYdmtⅩです。コンゴトモヨロシク。」 目の前で合体した悪魔のような自己紹介をしたこいつは 本日よりGSPOゆっくり課隊員となる新人だ。 正確には新“人”ではないが。 下膨れた顔のようなボディ。シャキンと伸びた黒い三角帽子。 一見するとゆっくりまりさに分類される姿だがその体は鋼鉄製。 一般にロボットとかメカとか言われるものである。 なんでも河童の技術を享受し続ける流れに反対したとある田舎の人間が作り出したとかで、 性能テストも兼ねてGSPOに所属することになったのだという。 「かわいー!よろしくね。ワイディー…えーっと。」 「YdmtⅩです。」 「そうね、ワイディーエムワイテン!」 「YdmtⅩです。」 早速ウマがあったのかYdmtⅩと漫才を始めるレフィ。 俺的にはこんな無骨なメカよりも先輩先輩と駆け寄ってくれる 人間の女の子の方がよかったんだがなぁ。 まあゆっくりの形というのはゆっくり課の仕事の役に立つだろうから良しとする。 そう思いながら銃の手入れをしていると電話が鳴り響いた。 通報のようだ。 「はい、こちらGSPOゆっくり課。はい、はい。 わかりました。すぐに伺います。おい、出動だ。 ある村と共存関係にある群のゆっくりの様子がおかしいらしい。」 「私パス。YdmtⅩ行ってきてよ。」 「わかりました。」 レフィはゆっくりを退治する系の仕事以外にはあまり積極的に参加しない。 悪いゆっくりが酷い目に遭うのはいいらしいが 良いゆっくりのそんな姿は見たくないらしい。 昔は善悪問わずゆっくりは殺すなと言っていたが、 ゆっくり課に入っていくつか事件を経験して成長したらしい。 選り好みするほど余裕がないのだがあんまり言うとまた嫌みをネチネチと言われそうなので黙ってる。 まあ、長年一人でやってきた俺としては別にいいんだけどな。 「よく来てくれました。さあ、立ち話もなんですしあがってください。」 丁寧に俺達2人(?)を出迎えてくれた村長が詳しい事柄を説明する。 「私たちの村は昔から付近の森に住むゆっくりの群と共生してきました。 ゆっくりが人を手伝い、人がゆっくりと助ける。 そんな関係でしたが、一週間くらい前からその群のゆっくりが昏睡状態になるということが起こりましてですな。 一匹二匹ならいいんですが、群の半分以上のゆっくりが、リーダーのドスを含めて そのような症状に見舞われているのです。」 「おねがい!れいむのぱちゅりーをたすけて!」 村長の陰に隠れていたれいむが悲しそうな顔で俺達に訴える。 「このゆっくりは?」 「ああ、このれいむはその群のゆっくりです。 彼女が私たちに群の異常を伝えに来てくれたおかげで 現状を知ることができたのです。」 なるほどね。 「感染症の疑いがあります。村の人には群に近づかないように伝えてください。」 あ、YdmtⅩの野郎。それは俺の台詞だっつーに。 畜生横取りしやがって。ああ言うことを言うときが一番GSPOやってるって気分になるってのに。 仕置きのつもりで軽く小突いたら手が痛い。 そういやこいつ鉄の塊だったな。 れいむに連れられ群にたどり着いた俺達。 俺は感染症予防のためマスクをしている。 早速その昏睡状態のゆっくりってのを見せてもらったが酷いものだった。 まるで悪夢でも見続けているかのような苦しい顔つきで 常に冷や汗を垂れ流しにしている。 その上白目むき出しで時折ビクンと震える姿は痛ましかった。 レフィが来なくてよかったぜ。こんな光景見たら気絶してしまうだろう。 とりあえずゆっくり用の薬を昏睡ゆっくりに注射する。 効果があるなら数日したら効き目が現れるだろう。 日が暮れそうになったので今日はここまでにして一端村へ戻ることに。 もう群の位置はわかったので予防のためこのれいむにも 群へ行かないように言っておく。 翌日、再び群を訪れる。 群の中央に位置する大木の根本に掘られた大きな穴。 群の長のドスの元へと行ってみた。 ドスも昏睡状態だということで、ちょっと引っかかったのだ。 普通のゆっくりが感染するようなゆっくり風邪やユンフルなどは 普通ドスなど巨大なゆっくりには感染しないからだ。 ドスの周りにはドスの子供だろうか。小さなゆっくりが苦しい顔で眠り続けているドスにくっついてゆっくりしていた。 「君たち、ここは離れた方がいい。ここにいたら君たちもゆっくりできなくなってしまうよ。」 「いやだあ!まりさはおとーさんといっしょにいるんだ!」 「ここからぜったいはなれにゃいよ!」 「ゆーゆー!」 だめだ。全然話を聞いてくれない。 しょうがないので昨日注射したゆっくりたちの様子を見る。 まだ効き目が現れないのか相変わらず苦しそうな顔で眠り続けている。 進展がないので今日はここまで。 この事件、思ったより長くかかりそうだ。 夜になり、事件の解決に長くかかることをレフィに伝える。 「そう…。あまり無理しないでね。 少し前にゆっくりに感染したウィルスからゆっくりインフルエンザっていうのが出来て、 ゆっくりだけじゃなく人間に何人も死人がでたって話よ。」 「そうなのか。気をつけとく。」 ついでに、一つ気になったことを聞いておこう。 「なあ、ゆっくりが病気にかかったとして死に至るまでどれくらいかかるんだ?」 「えーっと…。ちょっと待ってね。確かここら変に資料が…あった! えーっと最も軽い症状のゆっくり風邪で三日持てばいい方だって。」 「何だって!?」 確か俺達が訪れたときは村長が…。 「わかった、ありがとう。じゃ、またな!」 「え?ちょっと待ってy…。」 「おいYdmtⅩ!俺達が訪れたときに村長はどれくらい前から症状が出てたって言った!?」 「確か一週間前と言っていましたね。…まさか。」 どうして気づかなかったんだ。 あんなに重い症状なら普通は死人もとい死ゆが出ていてもおかしくはない。 だが俺達が行ったときに死ゆはいなかったし村長も犠牲ゆが出たとは言っていなかった! それじゃなくても只のゆっくりが飲まず食わずで一週間以上も生きていられるはずがない! 「YdmtⅩ!群へ急ぐぞ!」 「了解しました。」 俺達は泊めてもらっている村の宿を飛び出した。 「ゆぎゃああああああああ!!!」 群につくとドスにくっついていたゆっくりたちが叫びながら俺に向かってきた。 「どうした、何があったんだ!?」 「ねてたらね、こえがきこえたからだれかおきたのかとおもってすにはいったら…ゆゆゆゆゆゆ!!!」 一番年長らしいまりさはそう言って泣き崩れてしまった。 俺はYdmtⅩにゆっくりたちを任せ、まりさが出てきた巣の中へ入った。 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎががががががが。」 眠っていたはずのぱちゅりーから悲鳴とも何かの裂けるような音ともとれる声がする。 「おい、大丈夫か…!!!!!!」 「ゆびょべば!!!」 そう叫びながらぱちゅりーの体を破って何か出てきた。 それはギチギチ音をあげながら俺に向かってくる。 体長五十センチほどの…シロアリだー! アリは俺に向かって液体を飛ばしてくる。 とっさにかわすと液体のかかった石が水飴みたいにデロデロになりやがった。 こいつはまずい。素早くホルスターから銃を抜き、アリに連射する。 ビギィという音をあげアリはバラバラになった。 いやな予感がした俺は外へ飛び出す。 昏睡していたゆっくりがいた巣穴からわき出てくるアリ、アリ、アリ。 しかもご丁寧に宿主のゆっくりの皮をぶら下げてやがる。 YdmtⅩは耳の部分からバルカン砲を出し、 ゆっくりたちを庇いながらアリを撃退している。 「大丈夫か!?」 「私は大丈夫です!それよりもこのアリ、迂闊に近づかないでください。 このアリは『バンノウキセイアリ』と呼ばれる種で 動物ゆっくり関係なく寄生して増える妖怪昆虫です。 絶滅したと思われていたのですが、 たとえ幼生でも迂闊に噛まれれば卵の因子をつけられて終わりですよ!」 おいおい、こんな化け物アリが相手だとわかってたら妖怪課の連中に仕事をパスしておくべきだったぜ。 今となっちゃあそんな余裕も時間もない。 こいつらを一匹でも逃がせば下手すれば幻想郷が滅んじまう。 幸い奴らは全員まっすぐに俺達へ向かってくるため逃げられる心配はなさそうだが。 「どこかにマザーとなる存在がいるはずです。 マザーと子は一心同体、マザーを倒せば何とかなるかもしれません。」 なるほど、元を叩けばいいのか。 子でこの大きさだ。それのマザーってことはかなりの大きさがあるだろう。 そして、そんな大きさのものがある場所はここら変にただ一つ。 俺は収納スペースにゆっくりたちを避難させたYdmtⅩを抱えて走り出した。 無数のアリが襲いかかるがYdmtⅩのバルカン砲がそれをはね飛ばす。 アリにくっついてるゆっくりの皮が凄く痛々しい表情をしている。 そしてアリがダメージを受ける度に 「ゆぎゃあああああ!!」 「いだいよおおおおおおおお!!」 「ぴぎぃいいいいいいい!!!」 と悲痛な叫びを響かせる。 まさかまだこれらの寄生されたゆっくりたちは生きているのかよ。 どこまで残酷なアリなんだ。 やっとのことでドスのいる穴に潜り込む。アリに邪魔されないように穴に蓋をする。 マザーに寄生されたドスはもはやドスではなかった。 まるでヤドカリの貝のように口から巨大なアリの頭部をのぞかせている。 目やら何や等の穴からは無数の触手。 普段からグロデスクなものに慣れていないと吐いてしまいそうだ。 「やべでええええ!いだいよおおおお! うぎゃああああああ!!!!ごろじでえええええ!!」 ドスが叫ぶ。 やはりまだ生きている、いや、生かされているのだろう。 グオオオオォォォ、とまるで獣のような雄叫びをあげるマザー。 マザーが触手の先から妖怪液をばらまいてくる。 それらをかわしながら俺は銃撃を浴びせるが、頑丈な甲殻のためかまるで応えていないようだ。 触手が動く度に痛むのか、ドスは 「うぎゃああああああ!!!」と叫んでいる。 その悲痛さはたとえ虐待愛好家でも裸足で逃げ出してしまうほどだ。 「伏せて下さい!」 YdmtⅩが叫んだ。 俺がとっさに伏せるとYdmtⅩの背中からミサイル砲がジャキンと飛び出し、 マザーに向けてミサイルを発射した。 マザーの頭部に着弾したミサイルは致命傷を与えるには至らなかったものの頑丈な甲殻に深い傷を与えたようだ。 すかさず傷めがけ弾丸をありったけ連射する。 傷から体液っぽいのが漏れ出す。よし、効いてるぞ! 「ひぎいいいいいふぐううううううううううう!!!!」 ドスが吠える。待ってろ、もうすぐ楽にしてやるからな。 俺はコストがかかるため普段は使わない火薬入りの弾丸をマガジンにセットする。 万が一妖怪に襲われた時のためのとっておきだ。 素早くマガジンを交換し、マザーに向けて全弾放つ。 一瞬の静寂、そして爆発。 さすがのマザーも体内での爆発には耐えきれなかったらしく、砕けた甲殻をぶちまけながら死んでいった。 「これで…ゆっくり…でき…る…よ…。」 ようやくマザーから解放されたドスは普通とは全く逆の辞世の句を述べ果てていった。 同時に騒がしかった外が静かになる。 どうやらマザーを倒したことで子であるアリたちが全滅したようだ。 巣穴から外に出ると、ちょうど太陽が昇るところだった。 このあと、異常を知らせたれいむやドスの子供たち生き残ったゆっくりたちは 群と多くの仲間を失ったことを悲しんだが、 村の人たちが彼女らをしばらく保護するということになって気を取り戻した。 成体に育ったら、また群を作らせ、前と同じ関係を続けていくそうだ。 後日届いた手紙によると、ドスの子供のまりさがドス化し始めたらしい。 あのゆっくりたちは安泰だな。 そして俺達は帰るなり、上層部にアリのことは騒ぎになるのを防ぐため口外しないようにと言われた。 後に、妖怪課の連中が今回の事件を受けてアリの巣を捜索し、 発見することになるのだがそれはまた別のお話。 その後俺たちの活躍が認められ、俺は昇格&賞与として多額のお金をもらった。 まあお金の方は火薬弾を買い戻すのでほとんどなくなってしまったが。 YdmtⅩは初日での大活躍により幻想郷の名誉住民として賞状と住民票が送られた。 さぞかし製作者の人間も大喜びだろうな。 「アリ事件、大変だったわね。」 「普段からドスなんかを相手にしていてよかったぜ。 じゃなきゃ今頃俺は透けてたかもしれない。」 オフィスでレフィと会話をする。 昇格したことでレフィと同じ階級になったためか若干話しやすい気がする。 気のせいだろうけど。 「ねえ、今夜暇?」 「ん?ああ、今日は事件もないし別に何もないが。」 「じゃあ、よかったら一緒に食j」 「ジャックさん、事件ですよ!ゲスまりさの群が村を占領したらしいです!」 「レフィ、悪いな話は今度にしてくれ。」 「もうっ!YdmtⅩ、空気くらい読みなさいよ!!」 「え?私はただ忠実に職務を全うしているだけですが。」 「これだから基本的な選択肢でしか行動を判断できないプログラム野郎は嫌いなのよ!」 「プログラム野郎ですって!?今のはさすがの私でも傷つきましたよ!」 「あら、メカのくせに傷つくんだ! じゃあこっちの心の傷も察しなさいよ!」 レフィはどうやら嫌みを言う相手を俺からYdmtⅩに切り替えたようだ。 どうりで話しやすくなったわけだ。納得。 俺は現場に向かうため未だレフィとYdmtⅩの怒号の響くオフィスを逃げるように後にした。 ロビーでマスコットのドスまりさが話しかけてくる。 「おにいさん、さいきんすごくげんきそうだね!」 「え?俺は昔から元気ハツラツだったが。」 「そうじゃないの。なにか、いきいきしてる!」 「多分レフィが俺に嫌みを言わなくなったからだな。」 「ちがうとおもうけど…。」 「違わない!俺は忙しいんだ。もう行くからな!」 「ゆっくりいってらっしゃい!」 外に出ると、ゆっくりの親子が歌を歌いながら散歩をしていた。 たまにはこういうのどかなのも良いものだと思ったら 「うっうーあまあまがあるどびびゃ!!」 邪魔すんな肉まんめ。興が削がれたじゃないか、まったく。 「でびりゃのからだがー…。」 崩れ落ちるれみりゃ。カッとなって撃った。反省はしない。 俺は煙を噴く銃をホルスターへ戻し、現場の村へ歩き始めた。 ~後書き~ 毎度アサシンの人です。 思ったより長くなってしまった。 ゆっくり虐待って感じじゃないけどいいよね? 初期に比べると文章がうまくなったと思う。 虐待描写はまだまだだが。 ちなみにユンフル≠ゆっくりインフルエンザ ユンフルはゆっくりがかかるインフルエンザで ゆっくりインフルエンザは豚インフルエンザのゆっくり版 過去作品 「ゆっくり兵」 「ゆっくり焼き串」 「アサシンゆっくり2 お兄さん虐め編」 「ゆっくり護身術」 「ゆっくりになった男1」 「ゆっくりになった男2」 「ドスのいる村」 「食ゆ植物」 「ゆっくりミキサー車」 「GSPOゆっくり課」 「GSPOゆっくり課2」 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1696.html
注意書き fuku2297の続きです そっちを見ないとわけがわからなくなります! かなり性能のいい改造ゆっくりが出ます! 虐待お兄さんが遊ばれます! ゆっくり虐待は次回からです 以上を踏まえ読みたくない人は回れ右してください ―――――――――――――――――――――――――――― 男とゆっくりアサシンたちは何もせず帰ってきた。 討伐依頼の目標のドスまりさのいるゆっくりの里に行く途中で 急に大雪が降り積もり、里の発見が困難になったからだ。 ゆっくりに対して鼻の利く人間がいれば・・・。 男はそう思いつつ、里の端っこにあるゆっくりのと思われる悲鳴が 聞こえる家をじっと見つめていた。 やあ!僕は虐待お兄さん! 今日も寒くてイライラするからとっておいたゆっくりを 虐待して発散するよ! と思ってたんだけどちょっとハッスルしすぎちゃったのか 手持ちの虐待用ゆっくりが全部餡子の塊になっちゃった! 虐待欲の治まらない僕は大雪の日だけど 外で生意気な野良ゆっくりを捕まえようと思ったんだ! たまに群れからはぐれた奴とかが畑にいたり・・・おお! そこの道を寒そうな顔でゆっくりれいむが一人ではねてるじゃないか! 「ゆっくりしていっいってね!」 僕は叫ぶ。 「ゆっくりしていってね・・」 寒さのせいなのかあまり乗り気な声じゃないな。 とりあえず暖かいお家とおいしいお菓子を餌に家に上がらせる。 暖房の効いた家の中でくつろぎだすれいむ。 う~んいい顔してるねえ。 虐待したくなってくるよ! 今日の僕はいつもより早く苦しむ顔が見たいから 早速虐待開始! じゃーん!取り出したるはお菓子の袋! え?虐待するんじゃないのかって? このお菓子はただのお菓子じゃない その名も「暴君ハバネロ」 あまりの辛さに人間でもひいひい言うくらいだ! 辛い味が毒なゆっくりはどんな顔するかな? 早速おやつだとれいむを呼んで ハバネロを皿に盛って差し出す。 おー何の疑いもなく食べてる食べてる・・・。 あれ? そのまま食べきったがれいむは表情一つ変えていない。 辛くなかったのかな? 一つ食べてみる やっぱり辛い。 このれいむ、味覚がないのか? 面白くないので次の虐待に移る。 僕は別の部屋へ行きゆっくりありすを持ってくる。 こいつは僕が飼っているありすで 虐待用ゆっくりにレイプさせて遊ぶのさ。 持ってくる途中で存分に振動させたから れいむの所に着く頃には完全に発情モードになっていた。 真っ赤で獲物を探す顔はかわいいねえ。 それ!れいむに飛んでけ! ありすを離す。 「れ゛い゛ぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛あり゛ずどずっぎり゛じばじょお゛お゛お゛!!」 そう叫びつつゆっくりらしからぬ速度でれいむに突進するありす。 発情したありすの身体能力は並のゆっくりをはるかに上回るのだ! 次の瞬間!ありすがれいむにぶつかったと思ったられいむがありすの後に立ち、 れいむがありすに体当たりをしてありすはそのままぶっ飛び 壁にぶつかり少量のクリームを吐いて倒れる。 白め向いて気絶してら。 いやいやそっちじゃない。 なんだこのれいむは! ありすも十分早かったがこのれいむの動きは目で追えなかったぞ!? ただでさえイライラが募っている上虐待がこう失敗続きでは頭に血が上る。 実力行使とばかりに後かられいむに蹴りを放つ。 消えた!?そう思ったときすでにれいむは僕の後ろにいた。 このれいむ・・・化け物か!? それから蹴りを放ったり棒を振り回したりしたけど いっこうに当たる気配はない。 どうなってるんだ? そう思ったとき電話の音が鳴り響く。 こんなときに!! と思ったら自分の電話は鳴ってない。 あれ?じゃあこの音は? 「はい ・・・・・・すいません 少し遊びすぎました」 何でゆっくりが無線電話持ってるんだ? しかもその電話持つというより 顔の側面の穴から出た餡子で絡み付けてるって感じだ。 いったいなんなんだこいつは? ―――――――――二時間後――――――――――――― 雪の降り積もる中ゆっくりの里に向けて足を運ぶ男とゆっくりアサシン、そして虐待お兄さん。 あのあとこの男が家に訪ねてきてお兄さんに種明かしをした。 このれいむはアサシンのリーダー的存在であること。 アサシンのターバンのような帽子は裏返すと改造前の姿に変わるカツラとなること。 アサシンは改造の過程で髪の毛は全て落ちてしまっていること。 お兄さんに接近したのは虐待お兄さんはゆっくりに対して鼻が利くから(捕獲的な意味で)。 適当にあしらって説明するつもりが絶え間ない虐待行為でタイミングをつかみ損ねたこと。 報酬として討伐先のゆっくりの群れのゆっくりを捕獲してもいいということ。 「まだ一つわからないことがあるんだけど」 お兄さんが男にアサシンのリーダーを指差しながら聞く。 「何でこいつ辛いもの平気なんだ?」 「脳改造の時のトッピングがタバスコと塩だったからじゃないかな?」 男が答える。 なんじゃそら。 お兄さんは首をかしげる。 途中からお兄さんが持ち前の勘で男たちを案内する。 そして次々とゆっくりの巣を見つけていくお兄さん。 そうしている内にどすのいると思われる洞窟を発見した。 視界があまり利かない状況でやすやすと見つけられるなんてすごいな。 男がお兄さんを褒めるとよせやいと笑顔で返される。 お兄さんはその後越冬中の弱ったゆっくりを次々と捕まえては持参したかごに入れていく。 その顔は家に帰ってからの虐待プランを練っているのか おもちゃを手にした子供のようだった。 その間にどすを倒すために男とアサシンは洞窟に入ったが すでにどすは事切れていた。 たくわえの多さに調子に乗ったのがどうか知らないが餓死していた。 側近と思われるゆっくりの残骸もあるあたり 共食いも起こったのだろう。 男は釈然としない顔で。 お兄さんは笑顔で里へと帰っていく。 ―――――――――二時間後――――――――――――― 里に帰り着きお兄さんを見送った男は報酬を受け取るため 里長の家に向かっていた。 一方アサシンたちは男の宿へと向かっていた。 改造の恩恵で寒さに強いものの無駄に寒い外に出ておく理由はない。 なんとかアサシンたちは帰り着く。 誰もいないはずの部屋の中から声が聞こえる。 帽子を裏返し普通のゆっくりの姿になったアサシンたちは 部屋に急いで入る。 「ゆっくりしていってね!」 「ここはまりさのうちだぜ!はやくたべものをもってくるんだぜ!」 「「「「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!」」」」」」 そこにいたのは20匹ほどの野良ゆっくりたち。 家族なのだろう、構成は成体まりさとれいむとあとは赤ちゃんだった。 窓ガラスを破って中に入ったらしい。 雪の振る中よく来れたもんだと感心しながら 餡子をフル回転させていた。 アサシンは改造されているためゆっくりするということをしない。 そのおかげで知能が人間並みに発達した。 しかし最近仕事ばかりで少しずつイライラしていた。 そしてそのイライラを解消するためのおもちゃが目の前にある。 アサシンのリーダーのれいむは 目の前にいる遊び道具の扱いを決めた。 リーダーはにやりとした表情を浮かべた後、 仲間と何をするかを説明し、 ふてぶてしく部屋に鎮座する野良ゆっくりたちに叫ぶ 「「「ゆっくりしていってね!」」」 ゆっくりによるゆっくりの虐待が今静かに始まった。 ―――――――――――――――――――――――――――― 続く ―――――――――――――――――――――――――――― またもなんじゃこりゃ こんなの呼んでくれる人いるのだろうか。 お兄さんいじめてどうするんだ俺 虐待表現むずかしいなあ いつかこのお兄さんが主役のゆっくり虐待書いてもいいかも。 次回で普通のゆっくりを虐待するつもりです。 ゆっくりがですが・・・ By、アサシンの人
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2390.html
ゆっくり罠地獄その1 畑を荒らすゆっくりどもの対策には無視できないほどの労力と金が必要だった。 村人総出で群れを潰すのが手っ取り早いのだが残念なことにこの村のほとんどは老人だった。 年寄りがゆっくり狩りなどは危険すぎた。 ある農家では紫外線耐性をつけたれみりゃを加工場から買い、逃げ出さないように畑全体をカバーできる程度の紐を くくりつけ用心棒にした。 罠を仕掛けた当初は効果てきめんだった。 だが数日もすると悪知恵を働かせたまりさが紐のレンジ外から石を吹き付けて殺してしまった。 高い授業料となった。 ある農家では潰したまりさやれいむの帽子やリボンを柵にぶらさげて寄せ付けないようにした。 これも当初はその死臭を恐れたゆっくりどもを寄せ付けなかったが、これまた数日もすると風雨に晒されたせいか 臭いが薄れてしまったようで何の効果も発揮しなくなった。 つぶれたゆっくりは掃いて捨てるほどいるので見つける度に補充はしたのだが、どうも夜中にゆっくりれみりゃが その臭いに寄せ付けられて持っていってしまうらしい。これでは意味が無い。 ある農家では柵の手前にわざと野菜を置きその中に大量の唐辛子を混ぜ込んでおいた。 初回にやってきたゆっくりどもはうまいこと食いつき、その辛さにもんどりうって餡子を吐き出し死んだが、 ゆっくりどもは無数にいる。その都度トラップ野菜を仕掛けるのでは経済的によろしくない。 更には唐辛子入り野菜を川まで運び洗って食うゆっくりも出現しだした。どうやらゆっくりぱちゅりーの入れ知恵らしい。 ある農家では落とし穴を掘り毒液を満たしておいた。 このトラップにひっかかるのはいいのだが、狂ったように暴れるゆっくりがその勢いで穴を飛び出し畑の中で派手に踊るらしく、 野菜にも毒液が付着しとても食えたものじゃない。 そんなこんなで男に白羽の矢が立ったというわけだ。 村の中では一番若く、昔とった杵柄で工作や土木工事が得意だからというのも理由だろう。 罠なんてこれまで一度も作ったことがないがやるしかない。 単純なトラップではすぐに効果が無いことはこれまでの経験で分かっていたので、どうしたものかとかなり悩んだ。 それほど労力もかからず、なおかつ効果的で、それでいてゆっくりに大していつまでも有効。 そんなトラップあるのだろうか? 夜遅くまで図面とにらめっこした結果、一つの作品、といってもいいだろう。 対ゆっくり用罠1号が完成した。 仕組みはこうだ。 50cm x 100cmぐらいの長方形の穴を掘り、そこをゆっくりがやってくる側の唯一の柵の切れ目に仕掛けておく。 深さは70cm程度だ。次に奥行き100cmを50cmずつ2エリアに区切るように立板を差し込む。 その2エリアにはそれぞれ5cm間隔で先を尖らせておいた木の棒を突き刺しておく。 ふたは2枚にし、それぞれ50cmずつをカバーするように上からかぶせる。手前のふたはゆっくりの重みで外れる程度のものだ。 そして奥のふたは手前のふたより重さに耐えられるようにしておく。 つまり落とし穴をダブルで設置することになる。一発目のトラップにひっかかりつがいのうち一匹は死ぬだろう。 そこで恐れをなして戻ればいいのだが、おそらく残った親がトラップが無いことを確認するために石か何かを奥に投げて 確認するだろう。だが2枚目はそれくらいじゃ外れない。石を投げても穴は無いと勘違いする、 そして立板があるから奥の杭も見えない。もうトラップは無いと勘違いして引き続き落とし穴をジャンプで越えて進入を試みる だが助走をつけて飛び込んだ親の重みには耐えられない。 そのまま飛び跳ねて2匹目もドカンだ。 よしいける!男は一人ほくそ笑んだ。 早速夜が明けてすぐ作業を開始した。土木工事の経験がある男にとっては難なく完成させることができた。 ご丁寧にトラップの横の柵には虐待され餡子が飛び出したまりさとれいむの絵を書いた看板を設置しておいた。 わざとらしい方がかえって奴らの注意をひくだろう。 そして翌日の早朝 男は早く起きだし納屋の中に隠れ窓の隙間から様子を伺っていた。しかけた罠のすぐ横に建ててあるので 罠もはっきりと確認できる。 そろそろゆっくりどもが野菜を荒らしに来る時間だ。 「そろーり、そろーり」 程なくして男の予想通り間抜けな声が聞こえてきた。馬鹿共ご一行様の到着だ。 親まりさと親れいむ、小ゆっくりが二匹。 「おちびちゃんたち、おとをたてないでね。これからおいしいおやさいたくさんたべられるからね!」 おまえが一番うるさいだろうと思ったが男はじっと見つめていた。 「ゆっ!おかーちゃん!おとーちゃん!あぞごにごわいのがあるよぉぉぉぉっ!」 ズタボロになったまりさとれいむの絵を見つけてブルブルと震える小れいむと小まりさ。効果があったか? 「おちびちゃんたち!だいじょうぶだよ!あれはばかなにんげんがかいたえだよ!だまされちゃいけないよ!」 「ゆぅ・・?だいじょうぶなの?いたくないの?」 まだ少し涙を流しながら小刻みに震える小ゆっくり達。 「まかせておくんだよ!こんなのこわくもなんともないよ!」 そう言って看板にドンドンと体当たりをする親まりさ。そのまりさを見てうっとりする親れいむ。 おいおい、静かにしろと言い聞かせておいてどんだけお祭り騒ぎだ。 看板に無意味な攻撃をして満足したのか親まりさは入り口の方を向き直り直進する。よし、いいぞ。 ズボッ! 「ぎゃぶばびゅっ!!!」 親れいむと小れいむの前でまりさが消え気色悪い声が聞こえてきた。 突然のことに目を見開き硬直する親まりさと小ゆっくり達。 「ぐげぇ・・・・ぐぞおおおお!!・・・・ぢぐじょう・・・にんげんべ・・・・!!」 納屋の窓から穴を覗き込むと体のあちこちから杭を突き出しあんこをゲロゲロと漏らしている親まりさが見えた。 (ヒット!) 男は心の中で叫んだ。 「ゆがあああ??!!!ばでぃさぁぁあああああ?!どぼぢでええええ!!!???」 穴の中を見て半狂乱になる親れいむ。うっしっし。 「でいぶ・・・おぢびぢゃんだぢ・・・・だのんだよ・・・ばでぃざはもう・・・びゅぶぶぶっぶっ」 事切れたようだ。 「ウがああああああああああああ!!!!!!!!!ばでぃざ!!!!!」 ぬらぬらとした体液を目や口から垂れ流して親れいむが絶叫する。小ゆっくり達は白目をむいて気絶している。 嗚呼美しき夫婦愛家族愛哉。 「ゆぐぐぐぐぐ!ばでぃざのしはむだにじないよ!!!」 目を吊り上げて怒りを露にする親れいむ。おお、こわいこわい。 親れいむは目から汚い汁を垂らしながらも野菜をゲットする気満々だ。そうこうなくちゃな。 数歩後ろに下がった親れいむ。おや、怒りのあまり罠を確認しようとはしないのだろうか。 まぁ別にそれは構わないのだが。 「おがあぢゃん!もうがえろうよぉ!!!!」 泣き叫ぶ小ゆっくり達。 「あんだだぢはだまっでなざい!!!ごごでひぎざがっだらばでぃさがなぐよ!!!ばでぃざのぶんまで やざいをたべるんだよ!!!」 親れいむに鬼の形相でにらまれた小ゆっくり達はビクッとして黙る。 そして1mほど後ろに下がり既に開いている第一の罠をジャンプして飛び越す。 しまった!ゆっくりのジャンプの距離を間違えたか?! 男がそう思うくらい親まりさは必死になって飛び跳ねていた。 ガシッ 第二の罠を超えたあたりに着地成功・・・ッ・・・・か? いや違う、ふたと地面の丁度境目あたりに親れいむは着地した。 「おかあちゃんかんばれ!がんばれ!」 必死に応援する小ゆっくり達 れいむは思っていた。 (あいするまりさのしをむだにしてはいけない。のこされたおちびちゃんのためにもやさいをてにいれるひつようがあるんだ。 おちびちゃんたち、みてなさい、おちびちゃんたちもこうやって・・・・えっ?) ガタン 第二のふたが着地の衝撃で内側に開く。 「ゆ"っ・・・・?!ゆがっっ?!!」 れいむの体はゆっくりらしくとてもとてもゆっくりと後ろに傾いていた。 「ゆぐべらっ!ゆびびゅぶぶぶべらっ!!!!」 鋭利な杭の先がれいむを突き刺す。目を貫通していた杭もあった。一瞬たくさんの針で頭の中身を刺されたような 痛みがれいむに走る。何かを喋ろうとすると口から餡子が噴出してきた。 もはやこの親れいむは長くは無いだろう。 「ゆがっ・・・・がっ・・・・」 その様子を目の前にし、小れいむは大量の餡子を吐いて皮だけになって動かなくなっていた。 小まりさは白目のまま硬直していた。 「イェーイ!!」 男は納屋の戸をバンと開けると浮かれた声を上げながら飛び出してきた。 その勢いはBGMにサンバの調べが聞こえてくる気がするぐらいに。 「おちびちゃんはこの畑100匹目のゆっくりでーす!おめでとうございまーす!嘘だけど!」 男は嬉しさのあまり馬鹿丸出しの声をあげ小躍りしている。 小まりさはまだ白目をむいて小刻みに痙攣したままだ。 「98匹目と99匹目のおとうさんおかあさんは残念でしたー!残念賞をあげまーす!」 男はそう言いジッパーを下ろすと串刺しになっている親まりさと親れいむに じょぼじょぼと放尿を始めた。 まだ生きている親れいむは男の放尿を受けて 「ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・」と唸っている。口にも杭が刺さっておりまともに会話はもうできない。 目からはぬらぬらとした液体が溢れていた。そして動かなくなった。 穴の下に向かって放出されていた尿が徐々に角度を上げて行き当たりに飛び散るようになる。 穴のふちにいたため男の放尿をまともにくらった小まりさは気絶から覚醒し「ぐぎゃあああああ!!!」 と叫びながら森の方へと逃げていった。 快感に包まれていた男はそれを潰すことをすっかり忘れていた。 「あ、しまった、逃がしちゃった」 我に返った男は穴の中で死んでいるゆっくり二匹を棒で取り出し川に放り投げる。 小れいむの死体は適当に足ですりつぶしておいた。 「よし、とりあえずこの罠は成功だな、明日も別のゆっくりどもが来るかもしれんし元に戻しておくか」 男は尿の臭いを消すために水を撒き臭いの強い野菜くずを適当に穴の底に撒いておき、ふたの仕掛けも 元に戻しておいた。 「小便なんかしなきゃ良かった。ああめんどくさい」 そしてその晩は安心して朝までぐっすり眠った。 翌朝 「どうしてだ・・・・」 目の前に広がる畑は見事に荒らされていた。 全ての野菜がほじくり出され、残っていたのは硬い芯や破片だけだった。 男は罠の方に走っていった。そして思わず「あっ」と叫んだ。 ダブルの罠にはどちらにも成体まりさとれいむが詰まっており髪の毛が見えている。 合計四匹。底の方には深く杭が突き刺さり餡子を飛び散らせているれいむ二匹。その上には貫通はしてないものの 深く刺さったまりさが二匹ひっかかってた。よく見ると上に重なっているまりさのうち一匹はまだかろうじて生きている。 「おい、何があった、どうして四匹も穴に落ちてるんだ!」 男はそういい生きているまりさに問いただす。 「ゆぐ・・・・ばでぃざはなにぼじでないのに・・・・どぼじで・・・・びどい・・・・」 男はまりさを穴から引き上げた。足の方には下で死んでいるれいむを貫通した杭が刺さった穴がいくつも開いている。 この傷で放置されたのだからもう助からないだろう。 「ばでぃざは・・・おぼうじなぐじだの・・・・だがら・・・ごのあなに・・・ぶでぃやり・・・・」 そう言うとまりさは餡子をぶりっと吐いて死んだ。 おそらく昨日逃がした小まりさが別の家族にここの罠のことを知らせたのだろう。 そしてこの罠の仕組みを知ったそのまりさ一家が帽子やリボンをなくしていじめられていたゆっくりを 無理やり連れてきてこの中に叩き落し、杭が露出しないことを確認してその上を悠々と渡り畑を荒らしたようだ。 ゆっくりをみくびっていた。男はがっくりと膝をついた。 噂には聞いたことがあるが、ゲスまりさというゆっくりはこういった悪知恵も働くらしい。 「しまった・・・俺の完敗だ・・・・」 男は昨日の自分の浮かれようを思い出し、そしてただ悔しさに土を拳で何度も叩いた。 しかし数分後、男はすくっと立ち上がる。既に落胆の表情は無い。 いやむしろ不適な笑みさえ浮かべている。 そしてぼそっと呟いた。 「次は戦争だ」 ~続く~ =====あとがき====== 2作目の虐待SSです。 トラップネタを書きたいなぁと漠然と思ってるところにfuku3373.txtが投下されたので触発されました。 この話を思いつく前からかなり長い話を書いてるのですが、ちょっと内容に行き詰っているので 気分転換に短い話を書いてみました。しかし続編アリになってしまった・・・ また勃起してますね。 これまで描いた話 【うんうんの報い】 by ゆっくりジェントルマン このSSに感想を付ける