約 3,642,813 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1942.html
※東方キャラ出現注意 ※性格の悪いゆっくり出現注意 よく晴れたコバルトブルーの空を鴉天狗の少女が忙しそうに飛んでいた。 「号外~号外だよ~幻想郷一早くて正確な『文々。新聞』だよ~」 名前は射命丸文。 彼女は『文々。新聞』という新聞の発行を行っている。 とは言ってもこの新聞の発行は不定期で多くても月五回ほどしかなく、ほとんど趣味のようなものである。 「お~い、文ちゃ~ん」 文を見つけた老人が縁側から手を振る。 それに気付き文はゆっくりと速度を落とし庭先に降りる。 「こんにちわ、田中のお爺さん。はい、『文々。新聞』です」 「いつもすまないねぇ。歳をとると出掛けるのも億劫でな。文ちゃんの持ってきてくれる新聞は数少ない楽しみの一つなんじゃよ」 「あやや、ありがとうございます」 老人の嬉しそうな顔に思わず営業スマイルも崩れ、素の笑みが浮かぶ。 どちらかというと『文々。新聞』は内容を叩かれる事が多い(主に記事にされた人間や妖怪から)。 しかし里の人間には人知を超えた熱く華麗な弾幕ファイト、そして稀に特集される美少女たちを目当てになかなかの人気を博している。 お世辞にも娯楽が盛んだとは言えない幻想郷においてこの老人のように文の発行する新聞を楽しみにする人間は珍しくないのだ。 「おおぅ、そうじゃ。これを持って行きなせぇ。あのわんちゃんと一緒に食べてくれ」 「あややや! これはおいしそうなおはぎですね。ありがとうございます」 「それでは今後とも『文々。新聞』をご贔屓に」 「おう、気ぃつけてなぁ~」 その様子を縁の下から見ていた一匹のゆっくりがいた。 * 所変わって同日の夕方、人間の里付近のゆっくり集落にて。 「ゆゆっ? しんぶんをつくるの?」 「そうだよ! しんぶんをつくってにんげんからたべものをもらうんだよ!」 文の新聞配達を老人宅で見ていたゆっくりまりさは集落に帰るとゆっくり会議でみんなにその出来事を伝えた。 この会議では冬篭りのための食料収集が芳しくない状況をどう打破するかを話し合っていた。 昨年までは人間の家から盗んできた食べ物で賄っていたが人間たちがゆっくり対策を始めたせいで容易には侵入できなくなった。 そして会議と言っても所詮は餡の集合体でしかないのでいつも碌な案が出ずにお開きになっていた。 そんな状況の中、まりさから得られた情報はこの集落のゆっくりたちが春まで生き延びるための最後の望みになった。 だが一匹のゆっくりがまりさに疑問をぶつける。 「でもしんぶんってなにをかけばいいの?」 「ゆっ!? う~ん……」 まりさは新聞というものを人間にあげれば食料を貰えるということを知っているだけで新聞自体がなんであるかは知らなかったのだ。 せっかく見えてきた希望がまた遠ざかろうとしている。 困り果てていたみんなのところへ集落一の知識者であるゆっくりぱちゅりーが現れた。 「むきゅ! ごめんなさい! ばんごはんをゆっくりたべていておそくなったわ!」 「ゆゆっ! ぱちゅりー! ちょうどいいところにきたよ! 」 「ねぇぱちゅりー! しんぶんってなにがかいてあるかしらない?」 「ちんぽー?」 打ってつけのゆっくりの登場にみんながぱちゅりーに質問する。 その辺にいる見せ掛けだけのぱちゅりー種とは違い、まともに知識を持つこのぱちゅりーは冷静に答えを導き出した。 「しんぶんはおこったできごとやいろいろなじょうほうをみんなにつたえるためのものよ! でもそれがどうしたの?」 「ゆゆっ! まりさたちでしんぶんをつくるんだよ!」 「そしてたべものをもらうんだよー! わかるよー!」 取らぬ狸のなんとやらと言う言葉がお似合いのように、ゆっくりたちはまだ見ぬ食べ物を思い浮かべ涎を垂らしている。 新聞を作るという話を聞いたぱちゅりーはみんなとは対照的に浮かない表情をしている。 「むきゅう……でもしんぶんはつくるのがむずかしいわ! そんなことよりじみちにたべものをあつめたほうが……」 「そんなこというならぱちゅりーはひとりでたべものをあつめてね!」 「れいむたちはしんぶんをつくってらくしてたべものをあつめるからね!」 「わけてあげないよー!」 「おお、みじめみじめ」 ぱちゅりーの意見はもう食べ物が手に入った気でいるゆっくりたちの耳には届かなかった。 こうしてぱちゅりーも渋々新聞作りをやらざるを得なくなったのだ。 翌日。 ゆっくりたちは食料集めもせず朝から新聞制作を開始した。 紙はその辺の民家から盗んでいた和紙、筆記具は同じく盗んできたクレヨンと鉛筆だ。 大量に作らないといけないためゆっくりは家族ごとや気の合う仲間に分かれて作業をする。 「ゆゆっ! みんなおえかきしちぇるよ!」 「れいみゅもかかしぇちぇね!」 作業を見た赤ちゃんゆっくりが勝手に新聞に絵を描きだす。 「ゆゆっ! これはあそびじゃ……」 「まってよれいむ! あかちゃんたちのえをみてごらん!」 「ゆゆ?……うわあ! すっごくかわいいね!」 「でしょ? きっとにんげんもこのえをみてゆっくりできるよ!」 「そうだね! れいむたちのあかちゃんはてんさいだね!」 また別の場所では、 「まりさたちでれみりゃをたおしたことをかくんだぜ!」 「ゆゆっ! しんぶんにかいてみんなにつよさをしらしめるんだぜ!」 自身の武勇伝を書くものや、 「とかいはのありすはしんぶんにすっきりすとをかくわ!」 「やっぱりいちばんはまりさね! あのふわふわのかみとすてきなぼうしをみるとおもわずすっきりしたくなっちゃうわ!」 どのゆっくりが一番すっきりできるかを書くものや、 「きのうはばんごはんにおさかなをたべたよー!」 「それをしんぶんにかくんだねー! わかるよー!」 昨日食べた晩御飯を書くものや、 「ちんぽー!」 「ちんぽー!」 ひたすら卑猥な言葉を書くものがいた。 そして丸一日かかって新聞を作り次の日の早朝、ゆっくり新聞の配達の日がきた。 * 「ゆっくりおきてね! ゆっくりしんぶんだよ!」 「ゆっくちちんぶんだよ!」 民家の前で家族揃って大声で叫ぶゆっくり。 程なくして住民が現れた。 「朝っぱらからうっせぇぞ! 饅頭共が何の用事だ!」 非常に機嫌の悪い男が出てきた。 早朝から不快な声で起こされ玄関に並ぶ気味悪い大小の饅頭家族が目に入ったのだ。 これで機嫌を悪くしないほうがどうかしてる。 しかしこのゆっくりの一家は全く空気が読めなかった。 「ゆゆっ! おじさん! まりさたちしんぶんをもってきたよ!」 「だからゆっくりたべものをちょうだいね!」 「ちょうらいね!」 まりさは頭の上に乗せた新聞と思われるものを男の前に差し出す。 子供たちはれいむに輪唱する形で食べ物を要求する。 「次大声出したらぶっ飛ばすぞ!」 男はゆっくりを無視しさっさと玄関を閉めてしまった。 「ゆゆぅ! どおしてうけとってくれないのおぉ!? れいむのあかちゃんもいっしょうけんめいかいたのにぃぃ!」 「きっとまりさたちのげいじゅつがわからなかったんだよ!」 「ゆゆっ! そうだね! おじさんはばかだからわからなかったんだね!」 「つぎのおうちでゆっくりたべものをもらおうね!」 今度はその隣の家の前に整列した。 「ゆっくりおきてね! ゆっくりしんぶんだよ!」 「ゆっくちちんぶんだよ!」 しばらくして中年の男が出てくる。 扉を半開きにしてゆっくりの様子を窺っているようだ。 「ゆっくりしんぶんだよ! ゆっくりよんでね!」 「よんだらたべものをちょうだいね! おかねでもいいよ!」 「おきゃねでもいいよ!」 まりさが玄関の男の前まで行き口で新聞を差し出す。 やっとこのゆっくりたちが何をしているのかを把握した男は無言でまりさを蹴り抜いた。 「ゆぶぅぅ!!」 「ま、まりざあああぁぁぁ!」 「おとおしゃぁぁん!」 まりさは木に強く叩きつけられ持ってた新聞は宙を舞った。 餡子を吐き出しながらビクビク痙攣している。 幸いにも命に別状は無いようだ。 「ゆぐぐうぅぅ! どぼぢでこんなごとずるのおおぉぉ!?」 「ゆっくちおとうしゃんにあやまっちぇね!」 「あやまれー!」 れいむと子供たちが男の入っていった家に抗議の声を上げる。 だがそれがいけなかった。 「うるせえっつたろうがこのクソ饅頭が!」 さっきの家の男である。 隣でも大声を出しているのを聞いてとんできたのだ。 男は手に持っている爆竹の束をゆっくりに投げつけた。 快音を立ててゆっくりの近くで爆竹が破裂する。 「あちゅいよ! ゆっくちやめちぇね!」 「ゆぎいいぃぃ!」 「いだい! ゆっくちできない!」 爆竹は殺傷力の低いものだったが貧弱なゆっくりには大ダメージだった。 「次はねぇぞ! いいな!」 男は爆竹でところどころ焦げたゆっくりを見ると再び家に帰っていった。 新聞は蹴られた時に遠くへ飛んだので幸いにも引火する事だけはなかった。 「ゆゆぅぅ……ここはゆっくりできないよ!」 「ほかのところでゆっくりしんぶんをくばろうね!」 「ゆゆっ! きっとこんどはたべものもらえるよ!」 まりさたちは体に負った火傷も気にせず、食べ物が貰えると信じてまた配達を始めた。 しかしその希望も空しくどこの家でも追い返されてしまった。 このままではいけないと作戦を練ったまりさたちは一旦子供たちだけで新聞を配達させる事にした。 「「「ゆっくちおきちぇね! ゆっくちちんぶんだよ!」」」 「あかちゃんたちだけならきっとうけとってくれるよ!」 「ゆゆっ! れいむのあかちゃんたちかわいいもんね! これならきっとせいこうするよ!」 子供だけならかわいさのあまり受け取ってくれるかもしれない。 自分たちなら絶対引っかかってしまうすばらしい作戦だ。 まりさとれいむは近くの木の陰に隠れて子供たちの様子を見ていた。 玄関では男と子供たちが会話しているようだ。 今まで会話すら出来なかったのだから大きな進歩だ。 やはり作戦に間違いは無かったのだと両親は思った。 「……これは何が書いてあるのかな?」 ゆっくりたちが書き殴った文字のような絵。 当然人間に読めるわけが無い。 新聞を配達し始めて初めて話を聞いてくれる人間の登場に子供たちが饒舌に説明しだす。 「これはにぇ、かっこいいおとおしゃん!」 「こっちはおかあしゃんでふたりはらぶらぶなんだよ!」 「それでにぇ、こっちはかわいいれいみゅたち!」 説明を聞いたが絵はさっぱり分からない。 果たしてこれを新聞と言ってもいいものなのか。 聞いた限りだとこれはただの絵だ。 興味本位で見てみたがどうみてもただの紙ゴミにしか見えない。 断ろうと思っていた男に驚くべき言葉が聞こえてきた。 「よんだらゆっくちたべものをちょうらいね!」 「おきゃねでもいいよ!」 「いちまんえんでもいいよ!」 どうやら新聞と引き換えに食べ物を貰おうという魂胆らしい。 しかも向こうの影でこっちの様子を窺っているゆっくりがいる。あれはこの子の両親だろう。 男はゆっくりが赤ちゃんをだしに食料を集めている事を把握した。 そしてその腐った根性に腹を立てた。 赤ちゃんを隠れる両親にも分かるように高々と摘み上げる。 「ゆゆっ!おしょらをとんでいるみたい♪」 「ああ、今飛ばしてやるよ」 そのままの体勢から赤ちゃんを傍にあった井戸に投げる。 両親が止めに行こう駆け出した時には既に遅く、赤ちゃんが発した着水音だけが響いてた。 「ま゛、まりざのあがぢゃんがあああぁぁ!!」 「れいむ゛のあがぢゃんがえじでええぇぇ!!」 「まりしゃのおねえちゃんがあああぁぁぁ!!」 「あの子みたいになりたくなかったら二度と来るなよ!」 男は音を立てて玄関の扉を閉めた。 まりさとれいむは急いで子供の落ちた井戸に駆け寄る。 井戸の縁に登って中を見ると蟻のように小さい子供が見えた。 「ぶぐぶぐ……しじゅんじゃうよ! ゆっくちたしゅけてね!」 子供は両親を信じて必死に助けを求めていた。 「おとおしゃんたしゅけてね!はやくたしゅけてね!」 しかし人間の作った井戸はゆっくりにとっては深く、降りたら最後だ。 「ごぼっどぼじてえぇぇ! なんでみんなみてるだけなおおぉぉごぼごぼ!」 普段なら助けてあげてと騒ぐゆっくりの姉妹もこの深さに黙り込んでしまった。 「もっどゆっぐぢ……しだがっだよ……」 子供の最後を見届け、れいむとまりさは悲しみに暮れながらその家を後にした。 そして悲しみに暮れたゆっくりは変貌した。 「れいむ! まりさいいことかんがえたよ!」 「どおしたのまりさ?」 「にんげんがしんぶんにきをひかれているうちにやっつければいいんだよ!」 「そうだね! れいむたちのしんぶんをりかいできないにんげんがわるいよね!」 「そーだ! そーだ!」 「まりしゃはちゅよいもんね!」 ただの強盗に成り下がっていた。 だがこのゆっくりたちは非常に運が悪かった。 普通の人間に当たっても結末は変わらないのによりによって一番当たってはいけない人間に当たってしまった。 「ゆっくりしんぶんだよ! ゆっくりよんでね!」 「よんじぇね!」 まりさたちは他の家よりも少し大きくて豪華な屋敷の前にいた。 どうせ狙うのならお金持ちの家がいいと判断した結果だ。 しばらくすると家の中から女の子がでてきた。 頭に飾った綺麗な花と黄緑と黄色と赤のカラフルな着物が印象的なかわいい女の子だ。 (「ゆゆっ! よわそうなにんげんだよ!」) (「これなららくしょうだね!」) まりさとれいむは目を合わせニヤリと笑う。 「まあ、こんな朝早くから何の御用かしら?」 女の子は他の人間とは違い早朝に押しかけたゆっくりに対してとても礼儀正しかった。 まりさは新聞を口で差し出す。 「ゆっくりしんぶんだよ!」 「へぇ! 新聞を書いたんですか? どれどれ……」 そして女の子が新聞を手に取った瞬間、 「ゆっくりしね!」 隣にいたれいむが女の子に襲いかかる……がその言葉がれいむの最後の言葉になってしまった。 襲い掛かったれいむに女の子の手が貫通していた。 れいむは口をぱくぱくさせるがそれはもはや声にならなかった。 想定外の事に残ったゆっくりも悲鳴を上げるだけだった。 「れいむがあああぁぁぁ!!」 「おかあしゃああん!!」 「へんじしてええぇ!!」 騒ぐゆっくりをよそに女の子はれいむから腕を引き抜くと瞬く間に子供たちを捕らえた。 今、彼女の広げられた左右の手の指と指の間には子供たちが全員、合計で八匹挟まれている。 その一連の動きは非常に洗練されていて、とても普通の少女が成せる動きとは思えなかった。 「ゆゆっ! ゆっくちはなしちぇね!」 「くるしいよぉぉ!」 「おとうおしゃぁぁん!」 「ふふっ、早起きは三文の得と言いますけれどもまさか本当に得になるとは……私も驚きです」 女の子は指に挟まれた赤ちゃんゆっくりを観察する。 「あら? よく見たらところどころ焦げてるわね……なかなかのセンスね」 火傷を見て何かを把握したかのように女の子は頷いていた。 まりさはあの手馴れた赤ちゃんゆっくりの捕獲を見て思った。勝てる相手ではないと。 こうなるとその後の行動は早かった。 「ゆゆっ! ずらかるんだぜ!」 「どぼじでみずでるのおおぉぉ!?」 「おとおしゃんだずげでええぇぇ!」 「うらぎりも゛のおおぉぉぉぉぉ!」 まりさは子供たちの助けを無視し逃走してしまった。 「あらら……ここに玄翁があれば始末できたのに残念……まいっか、今日はこの赤ちゃんで楽しみましょう♪」 「ゆゆぅぅぅ! たしゅけてぇぇぇ!」 「いやあぁぁぁ! だれかあぁぁぁ!」 女の子は「稗田」と書かれた表札の付いた屋敷の中へ戻った。 連れて行かれた赤ちゃんゆっくりがどうなったかは誰も知らない。 * その日の夕方。 朝出発してなかなか戻ってこないゆっくりたちに留守番していたぱちゅりーは不安になっていた。 秋の天気は崩れやすく黒い雲が空を覆い、強い風が周りの木をギリギリと軋ませている。 「むっきゅ~ん……みんなどうしたのかしら?」 そこへ瞳を涙でぬらしたありすが帰ってきた。 ただならぬ事態にぱちゅりーが動揺する。 「むきゅう! ありすどうしたの? なんでないてるの?」 「かわいいあかちゃんがみんないけにしずめられちゃったああぁぁ! ありすはとかいはのしんぶんをくばっていただけなのにいいぃぃ!」 ありすを宥めていると続々とぼろぼろになったゆっくりたちが帰ってきた。 それぞれ配達先でひどいことをされたというのが見てわかる。 ぱちゅりーは他のゆっくりたちにも話を聞いた。 そして冬篭りの食料を集めるどころか多くの仲間を失う結果となったことを知った。 子供たちを見捨てたまりさもようやく帰ってきた。 「……た、ただいまなんだぜ」 「まりさ! あなたのかぞくはどうしたの?」 「まりさはすきをついてにげたけどれいむとあかちゃんは……」 「それいじょういわなくてもいいわ! つらかったわね……」 「ううっ、ぱちゅりーはやさしいんだぜ……」 ぱちゅりーに頬を擦り付けられるまりさ。 家族を失った悲しさなどここに帰ってくるまでにどうでもよくなっていたがぱちゅりーの肌が心地よくて悲しんだ振りをしていた。 そしてれいむがいなくなった代わりにぱちゅりーと結婚しようとなどと考えていた。 ぱちゅりーの肌を堪能していたまりさだがその帰宅に気付いたゆっくりたちがぞろぞろと詰め寄ってきた。 「もとはといえばまりさがしんぶんをつくろうっていったのがいけなかったのよ!」 「そうだねー! まりさのせいだよー!」 「おかあさんをかえせ!」 「ちんぽー! ちんぽー!」 ゆっくりたちが怒りの表情でまりさを責める。 まりさ種に優しいありす種でさえ怒っている。 雲行きのよくない状況を見たぱちゅりーが間に割って入る。 「むきゅー! まりさもかぞくをうしなってかなしんでるのよ! せめるなんてひどいわよ!」 「そうだぜ! まりさはひがいしゃなんだぜ! やさしくしてほしいんだぜ!」 まりさもいつも通り自分は悪くないと言い張る。 そんな陳腐な言い訳も今のゆっくりには火に油を注ぐだけだった。 「ぜんぶまりさのせいよ! まりさのせいでありすのかわいいあかちゃんはしんだのよ!」 「ぱちゅりー! どくんだよー! まりさはここにいちゃいけないゆっくりなんだよー!」 「おかあさんのかたきいぃぃ!」 「ちんぽー!」 ぱちゅりーの必死の静止も聞かず大人から赤ちゃんまでみんなでまりさに襲い掛かる。 「やめるんだぜ! いだいんだぜ! はなずんだぜ!」 「ゆっぐりじね! ゆっぐりじね!」 「わかるよー! まりさのようなやつがいるからせんそうがおわらないんだよー!」 「くるしんでしね!」 「ちんぽー!」 運動神経が高いまりさ種だがこの人数差ではなす術もなかった。 自慢の帽子は破れ、頬も食い破られ餡子が漏れ出している。 それでもゆっくりたちはまりさを攻撃するのをやめない。 「だれかああぁ! けんかをとめてぇぇ! まりさがしんじゃうううぅぅ!」 ぱちゅりーの叫びが巣の中を木霊する。 願いが届いたのか一人の少女が巣の前に現れた。 「あやや、やっと見つけましたよ! 貴方たちが新聞を配ってたゆっくりですね? 取材を伺いに来ました射命丸文です。どうぞよろしく」 いつもの営業スマイルをゆっくりにも向ける文。 ゆっくりたちもまりさへの攻撃を止め視線を射命丸へと移す。 ぼろ布になったまりさにもその姿が目に映る。 あの時縁の下で見た光景が、みんなで楽しく新聞を作る光景がまりさの頭の中にフラッシュバックする。 「お……おまえさえいなければ……まりさは……」 まりさがずるずると這いながら文に近づく。 「あやや!? どうしたんですか? このゆっくりボロボロじゃないですか?」 「おまえさえ……いなければっ!」 自分の方を激しい憎悪を込めた瞳で睨むまりさに文は疑問符を浮かべる。 面識の無い他のゆっくりはまりさが何故文を睨んでいるのかがわからない。 「あの……私、何か粗相をしましたでしょうか?」 「まりさはわるくない! おまえのせいでこうなったんだ! ゆっくりしね!」 まりさは質問に答えず文の足首に噛み付いた。しかし相手が人間ならいざ知らず、人間を遥かに越える鴉天狗である。 渾身の力を込めた噛み付きも文の白く細い足に傷一つ負わせる事ができなかった。 「……椛」 「はい、先輩!」 文の合図に草むらに隠れていた椛が写真機のシャッターを切る。 「今の光景を写真に撮りました。今度の新聞にあなた方が非常に危険で排除するべき存在であることを写真付きで掲載させて頂きます。取材ご協力ありがとうございました」 まりさに噛み付かれながらも笑顔を崩すことなくゆっくりにお辞儀をする文。 その笑顔に見る見るうちにゆっくりたちの顔が青ざめていく。 「むきゅううぅぅぅ! それだけはやめてぇぇぇ!」 「やめてよー! ゆっくりできなくなるよー!」 「おねえさんおねがいいぃぃ!」 「私のモットーは『清く、正しく』ですのでありのままをみなさんに伝えるだけです。それでは」 文は飛び立とうとしてまだ足に噛み付いているまりさに気がついた。 「……そしてこれは正当防衛です」 腰に挿していた団扇を一振りすると目の前に巨大な竜巻が現れた。 竜巻はその場にいた全てのゆっくりを巻き込み、巣を削り壊し、草を刈り取り、木をなぎ倒し、岩を跳ね飛ばした。 「せんぱーい、少しやりすぎじゃないですか?」 先を飛ぶ文に山から伸びる一本の竜巻を見ながら椛が問う。 「新聞記者に危害を加えてきたんだから当然です……あ、田中のお爺さんからおはぎを貰ってるんで夕飯後に一緒に頂きましょう♪」 「……はーい♪」 椛はこの人だけは敵にまわさないでおこうと決心するのであった。 * まりさは水滴の滴りで意識を取り戻した。 正確には雨が降り出していた。 ボロボロになった体を起こし周りを見渡す。 そこにはまりさの家も草も木も岩もなく、小石と抉れた大地だけが広がっていた。 「ゆうううぅぅ!? みんなどこ? おうちは? ぱちゅりーは!?」 まりさは体を引きずりながら仲間を探す。 帽子を失い、頭に雨が降ってくるのも構わなかった。 しばらくして折れた木の前に髪飾りが集められている場所を見つけた。 そしてそこにぱちゅりーがいた。 「ゆゆぅ! ぱちゅりー! いきてたんだね!」 「……」 「みんなしんだかとおもったよ! でもよかったよぱちゅりーだけでもいきてて!」 「……」 「ねぇ、ぱちゅりー! いきなりだけどまりさとけっこんしてほしいんだぜ!」 「……」 「みんなしんじゃったけどまりさといっぱいすっきりしてあかちゃんつくってまたたのしくやっていこうだぜ!」 「……」 「ぱちゅりーきいてる?」 呼びかけても反応の無いのでまりさが覗き込もうとした瞬間ぱちゅりーは振り返った。 ぱちゅりーの口には尖った枝が咥えられていた。 とっさの出来事に避ける事ができず腹を貫かれる。 まりさは目の前の現実が信じられないといった顔でぱちゅりーを見た。 「ゆ゛ぐっ……どぼじで……」 「まりさの……まりさのせいでれいむもありすもちぇんもみょんも……みんなしんだのよ! なんでまりさだけいきてるのよ!」 枝が引き抜かれそしてもう一度まりさに刺さる。 「ゆ゛っ……ぱ、ぱちゅり……や゛めで……」 「きやすくなまえをよぶな!しねっ! ゆっくりしねっ! このやくびょうがみ! ごみくず!」 もう一度まりさに刺さる。 「ゆ゛っ……ゆ゛ぶっ……」 もう一度。 「ゆ゛っ……」 ぱちゅりーは自分の体が雨で溶けて動かなくなるまで何度もまりさを刺し続けた。 後日、『文々。新聞』にゆっくりが非常に危険な生物であると書かれ、人々がゆっくりを殲滅していくことになるのだがそれはまた別のお話。 ―ゆっくり新聞―おしまい <あとがき> かぶってしもた上にかなり遅れた/(^o^)\ナンテコッタイ 『文々。新聞』って幻想郷の人里の人間から見ればすごく面白いものだと思うんだけどどうなんだろ? 求聞史紀見てもカフェーで人気程度しか書いてなくてわかんね。 あとこんなかわいい子が配達してくれるなら文自身にもかなりファンが多いと思う。 そんなことを妄想しながら書いた。 (積み重なる黒歴史) ゆっくりフルフォース お兄さんの歪んだ愛 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2604.html
「う~、さむ。もうすっかり冬だなぁ」 秋が過ぎ、冬の寒さが本格的になり始めた。 畑の収穫も終わり、忙しさも一段落する頃だ。 ふと外を見ると、冬の目印が空から降って来た。初雪である。 「おー、雪かー。そりゃ寒いわ」 こたつで暖まりながら雪の降る庭を見る。実に風流だ。 ここで何か茶菓子でもあれば最高なのだが、生憎と切らしている。 「今日も平和だねー」 のんびりとした日常を満喫する。 畑仕事もないのでゆっくり相手に運動することもない。 そんな感じで暇を持て余していたその時。 ――ゴトッ 俺以外には誰もいない筈の我が家から物音がした。 突然の事にビクッと体が反射的に震える。 「…今なにか音したよな…?」 そのまましばらく無言で様子をうかがうが、何も聞こえない。 どうやらさっきの音は気のせいのようだ。 そう安心しかけたその時。 ――ゴトゴトッ 再び聞こえる怪音。流石に今度は気のせいではない。 ねずみでも入り込んだのかと思い、家の中を調査することにした。 まず部屋今いた部屋を探すが、何も変わったところはない。 べつのへやからかな、と思い廊下に出る。すると。 「……ゆっ……あつ………ね…」 「…これ…ゆっく……でき…」 怪音の次は声の様なものが聞こえてきた。 なんなんだ、我が家には幽霊でもいるのか? 段々怖くなってきたぞ。俺の心に恐怖心というやつだ。 何とか恐怖に耐えながらも声が聞こえてくる方向へ移動する。 そうすると、家の一角にある部屋へと辿り着いた。 「…ここか?」 部屋の中で耳を澄ますと、確かにさっきまでより声が大きく聞こえる。 どうやらここが怪奇現象の発生地らしい。 「さて、一体何が起きているのやら」 原因を探すため、部屋を物色し始める。 するとどうやら声は床下から聞こえているようだという事がわかった。 「ここからか…」 畳を外し、床下を確認する。 そこでは三つの丸い物体が動いていた。 「ゆ! にんげんさんだよ! ゆっくりしていってね!」 「ここはまりさたちのゆっくりぷれいすなんだぜ!」 「おにいさんはゆっくりでていってね!」 そこにいたのは三匹のゆっくり。 成体のれいむとまりさに、子供サイズのれいむだ。恐らく親子だろう。 一体どこから入り込んだんだ。野生動物が入り込まないように、家の周囲はきちんと囲っているはずなのに。 そう思った俺は、床下へ頭を潜らせて穴がないか確認する。 「あ、あそこか」 この部屋の床下の端。そこには小さな隙間があった。 人間は勿論、小さな野犬等も通ることは不可能なほどの小さな細いスキマ。 だが軟体のゆっくりならば体を滑り込ませることが出来るだろう。 あちゃー、もっとちゃんと確認しておけば良かったな。 他にもスキマが無いか別の方向も見る。 が、すぐに見なきゃよかったと後悔した。 「うへぁ、勘弁してくれよ」 床下の少し奥の部分、そこには大量の虫の死骸やよくわからないキノコ等々が貯蓄されていた。 恐らくこの家族が集めたものだろう。 どうやらここで越冬する気だったようだ。 「ゆっ! はやくでていってね!」 「ゆっくりしたければあまいおかしをもってくるんだぜ!」 「おかしおかしー!」 こんな調子でさらに虫の死骸やら何やらを集められてはたまらない。 そういうわけでさっさとお引き取り願う事にした。 一旦部屋から離れ、箒とチリトリを持って戻ってくる。 俺が今から何をするのかわかっていないのだろう、ゆっくり達は不思議そうにこちらを見つめている。 「まったく、余計な手間かけさせてくれるよ」 そう言って箒でゆっくり達の集めた餌、つまりゴミをチリトリへと集めていく。 ここにきてようやく気づいたのか、三匹は猛烈な剣幕で抗議してきた。 「そればれいぶだちのあつめたごはんだよぉぉぉぉ!!」 「まりさたちのごはんになにしてるんだぜえぇぇぇぇぇぇ!?」 「も゛っでいがないでえぇぇぇぇぇぇぇ!!」 親れいむが箒に体当たりしてきたので、さっと撃退する。 バチンといい音が鳴って、親れいむは元いた場所へと転がった。 その口からは少量の餡子が漏れている。ちょっと強すぎたかな? 「ゆえ゛っ…いだい゛よ゛おぉぉぉぉ!!!」 「おかあさんになにずるの゛おおぉぉぉぉ!!」 「ゆっぐりできないおにいざんははやぐどこがにいぐんだぜえぇぇぇ!!」 涙を流して怒鳴る子れいむと親まりさを無視して掃除を続ける。 その間にも、やべでぇぇぇぇと言う声が聞こえるが無視だ無視。 「ふう、こんなものかな」 ゴミをチリトリに集め終わった後、床下を覗きこんで確認する。うん、綺麗だ。 さて…問題はこいつらをどうするかだけど、と三匹のゆっくりを見ながら考える。 あ、そうだ、いいこと思いついた。 「ゆっくりできないおにい゛さんばどっかいっでよおぉぉぉぉ!!」 泣き叫ぶ子れいむを掴み、持ち上げる。 「ゆゆっ! おそらをとんでるみたいー♪」 つい今までの剣幕はどこへやら、楽しそうに笑顔を浮かべる子れいむ。 相変わらずすごい切り替えの早さだな、おい。 そのまま子れいむを近くにあった透明な箱に入れた。 「ゆっ!? でれないよ!」 成体用サイズの箱の中で、子れいむは四方八方へと移動する。 たがそこは箱の中。当然一定以上は進めない。 「どぼじででれない゛の゛おぉぉぉぉぉ!!?」 脱出不可能な事を知り、再び泣き始める子れいむ。 周囲が見えているのに、見えない壁に阻まれて進めない。よく考えたら結構怖いな、これ。 子れいむの鳴き声を聞いて、親れいむを介抱していた親まりさが勢いよくこちらに向かってきた。 「ばりざのごどもをがえずんだぜえぇぇぇぇぇ!!」 顔は涙でぐしょぐしょだ。そのうち水分で溶けるんじゃなかろうか。 俺はそんな親まりさの口に両手を入れ、その口の上下を掴んだ。 「ん゛があぁぁぁぁ!! あ゛にあ゛あ゛ん゛あ゛え゛え゛ぇぇぇぇぇ!!(なにするんだぜぇぇぇぇぇ!!)」 そのまま勢いよく口を上下に引き裂く。 ビリビリッという威勢のいい音と共に親まりさの口が裂けた。 限界以上に口を開いたゆっくり。パッと見何かわからない物体になってしまった。 「あ゛がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」 引き裂かれた激痛に親まりさの両目からは大量の涙が溢れ出ている。 俺はそんな彼女の中へ、チリトリ内のゴミを流しこんだ。これぞ、ゆっくりゴミ箱。 まあゆっくりにとっては餌らしいし、別にいいよね。 「おごっ……あがっ……!!」 親まりさの苦しそうな呻き声も気にせず、次々と詰め込んでいく。 チリトリが空になるときには、どうみても許容量を超えた状態だった。 おお、親まりさの口内にゴミの山が出来ておる。 「ゆ゛っ……ががっ…!」 「おーおー、苦しそうだねぇ」 「おどうざぁぁぁぁぁん!!!」 子れいむは箱の中で泣き叫ぶ以外出来ない。 俺は痙攣している親まりさの後頭部にそっと手を添えた。 もちろん、介抱するわけではない。 ここからは時間との勝負だ。 「よいしょっ!」 「ゆばぶぶぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!??」 添えた手を一気にこちら側へと引っ張る。裂けた口を元の位置に戻すのだ。 「ゆ゛べべべべべべぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」 元の2倍ほどに膨れたまりさの体。 少しでも衝撃を与えると破裂するんじゃないかというほど、ぱんぱんに張り詰めている。 すぐさま俺は用意していたガムテープでまりさの口を塞いでゆく。 元々の口にくわえて、裂けた部分も当然封をしていく。 「ん゛ん゛……ん゛……」 「ふぅ、間に合ったか」 何とかゴミを吐かれる前に密封に成功した。 親まりさの口周辺には隙間なくビッチリとガムテープが貼られている。 よほど苦しいのか、少し経つと親まりさは白目を剥いて気絶してしまった。 まあゆっくりにとっては食料だし、死にはしないだろう。 「さてさて、床下も綺麗になったし、あとは…」 まだダメージが残っているらしい親れいむと気絶している親まりさを袋に入れる。 おかあさんたちになにするのおぉぉぉぉぉ、という子れいむの声が聞こえるが放置だ。 「やべでね! ここからだしでね!」 親れいむがまだ少し濁った声で言ってきた。 うるさいので袋越しに弱めの蹴りをくれてやる。 「ゆ゛べらっ!?」 少しは大人しくなったようで、ゆ゛ぅゆ゛ぅとしか鳴かなくなった。 親二匹の入った袋を担いで家の外に出る。 「おがぁぁぁぁぁぁぁぁざぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!! おどぉぉぉぉぉぉざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」 誰も居なくなった部屋から子れいむの絶叫が声聞こえてきた。 「う~、寒いね」 外は雪がしんしんと降り続けており、さっきまでよりも寒さが増したような気がする。 「いいか、もう二度と来るんじゃねぇぞ」 そう言って勢いよく袋を近くの森の方角へ放り投げた。 普段ならそれなりの飛距離は出るのだが、流石にまりさが重いせいかいつもより距離は短めになった。 まあそれでも森までは届いたし、よしとしよう。運が良ければ助かるだろう。 「寒い寒い。さっさと済ませてこたつで暖まろう。おやつもあるし」 ゆっくり達が侵入してきたスキマを頑丈に塞ぎ、家の中へと戻った。 これでもうゆっくりが床下に来る事はあるまい。 残った子れいむはきちんと洗ったあと、お茶と一緒においしく頂きました。 適度に恐怖と悲しみを味わわせたおかげか、とても美味しかったです。 一方、森へと飛ばされた二匹のゆっくり達は何とか生きていた。 運よく木々がクッションになり、落下時の勢いが弱まっていたのである。 とはいえ全くの無事、というわけではない。 体中に擦り傷が出来ていたし、地面に激突した衝撃でれいむも気絶してしまっていた。 そして先に気が付いたのもれいむだった。 「ゆぅ……ここどこ?」 彼女が目覚め、最初に目にしたのは見たこともない風景だった。 一体どうして自分はこんなところにいるのだろう、とれいむは思った。 しばらく考えたが、落下時の衝撃で記憶が消えたのか、ただ単に餡子脳だからか、全く思い出せなかった。 「ゆっ! かんがえてもしかたないね! みんなでここでゆっくりしようね!」 と、れいむは夫と子れいむの姿を探した。 そして彼女は自分の後ろにあるものを見て――全てを思い出した。 目に入ったのは体が膨れ上がり、口を封じられた伴侶の姿。まりさはまだ気絶していた。 そうだ、自分達は見つけたおうちでゆっくりしていたらあの人間が後からやってきて…。 「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!! ま゛り゛ざ! だいじょぉぉぉぶぅぅぅ!?」 れいむの必死の呼びかけで、まりさの意識も覚醒した。 が、体は重いし喋ることが出来ない。それに可愛い子れいむはどこへ行ったんだろう、とまりさは思った。 「んーんーんー!」 「だいじょうぶだよ! いまとってあげるからね!」 ちゃんと喋ることが出来ないまりさに向かってれいむは言い、ガムテープを剥がそうとする。 しかし、手を持たないゆっくりでは、何重にも貼られたガムテープを剥がすのは不可能だ。 なんど挑戦しても、れいむは一枚もはがす事が出来ずにいた。 「どぼじてとれな゛いの゛ぉぉぉぉぉ!?」 無力な自分に絶望するれいむ。そんな彼女を容赦ない寒気が襲った。 雪は未だやむ気配がなく降り続け、二匹の体力をじわじわと奪っていく。 「ゆゆっ! とりあえずおうちにもどろうよ! そこでゆっくりとろうね!」 「んんー!」 まりさの言っている言葉はわからないが、表情からすると賛成であることはれいむにもわかった。 暖かいおうちに戻って、可愛い我が子を助け出してまた三人でゆっくりしよう、とれいむは意気込んだ。 そうして二匹はしばらく森の中を進む。 が、ここが知らない場所だということは、お兄さんの家までの道など当然知っている筈なく。 「どう゛じだらおうぢにいげる゛の゛おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」 いつまでたっても目的地に辿りつかず、その場で泣き出すれいむ。 これでは可愛い我が子を助け出す事が出来ない。 まあ仮にお兄さんの家に辿りついたとしても、既に子れいむはお兄さんのお腹の中なのだが。 再び歩き始める二匹だが、やはりどれだけ進んでもお兄さんの家どころか見覚えのある場所にも辿りつかない。 とうとうれいむの心は折れてしまった。 「れ゛いぶのかわいい゛れいむ゛ぅぅぅごべんねぇぇぇぇ!!」 もう二度と子供と会う事は出来ない。 そう思うとれいむの両目から涙が溢れ出てきた。 一方、そのれいむの様子を見たまりさは、子供があの人間に捕まったのだという事を理解した。 とても悲しかったが、今はゆっくりできる新しいおうちを探す事が先決だ。 そう考えたまりさは何とかれいむを慰めて、新しいおうちを見つけ出す事を身振りで提案した。 れいむも気を取り直し、次は新しいおうちを見つけるために三度進み始めた。 「ゆっ! あそこにおうちがあるよ!」 「んーんん!」 そして二匹は小さい巣穴を見つけた。 おそらく以前別のゆっくりが使っていたのだろう、ところどころに生活の跡が見られる。 家族が増えて狭くなったのか、それとも捕食種や人間に襲われたのかはわからなかったが、今は誰も使っていないようだった。 れいむとまりさもここを新しいおうちにしようと考えた。 が、ここで問題が発生する。 「ゆっ! さ、さむいよ! ゆっくりできないよ!」 そう、この巣は隙間が多く、そこから寒気が入り込んでくるのだ。 これでは越冬など出来そうにない。 そう思い、落胆していたれいむの頬に何か暖かい物が触れた。 「んーんー!」 「まりさ…!」 それはまりさの頬だった。まりさは笑顔でれいむの頬に自分のそれをくっつける。 れいむもお返しとばかりに頬をすりすりした。 それはとても暖かく、寒さなんて気にならないほどだ。 こうしていれば冬も過ごせるかもしれない。 「ゆっ! じゃあここでゆっくりしようね!」 「んーんんんんんん!」 それかられいむはまりさの口周辺に張り付いているガムテープをはがそうと何度も挑戦したが、やはりはがす事は出来なかった。 「どぼじよぉぉぉ! これじやあま゛りさがごはんたべれないよ゛ぉぉぉぉぉ!!」 だがまりさはそれに落胆せず、逆にれいむを元気づけた。 考えてみれば自分の体内には越冬用に貯めた沢山のごはんがあるのだ。そう簡単には死にはしないだろう。 必死にジェスチャーをしたところ、れいむにもその事が伝わったようだ。 「ゆっ! それじゃあここでいっしょにゆっくりしていようね!」 寒さは二人で寄り添い、すりすりすれば問題ない。餌も自分一人分ならなんとかなるだろう。そうれいむは考えた。 しかし、そう上手くはいかない。 ただでさえ冬でゆっくりが食べることが出来るものは数少ない。 それに加え、この家族は今までまりさが狩りをしていた。その為れいむは餌集めが苦手だったのだ。 しかも外はゆっくりできない寒さで、体を満足に動かすことも出来ない。 そんな状況の中、餌を集めることなど出来る筈もなく、れいむは日に日に弱っていった。 ある朝の事、ついにれいむは空腹と寒さで動けなくなってしまった。 まりさが寄り添り、頑張って体をすりすりさせるが意味は無かった。 「ゆ……まりざ…れい゛む……もっどゆっぐり…したかっ…たよ……」 「んーーんーんーんー!」 それがれいむの最後の言葉になった。その日、まりさは一日中涙を流していた。 それからまりさも命が終わるのはそう遠くは無かった。 伴侶という心の支えをなくし、ろくに寒気も防ぐことが出来ない巣にいては当然だろう。 「ん…んー……」 冷気に晒され続けながら一匹で過ごすというストレスによって、まりさの餡子は急速に劣化していった。 れいむが死んでから数日後、まりさも伴侶の死骸に寄り添いながらその生を終えた。 春になるころには、その巣穴の中には大量の虫と何重にも重ねられたガムテープの塊だけが存在していた。 終 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4251.html
山の中腹には捨てられた集落があった。そこには人が住まなくなって数年を経た荒ら屋が 数軒、小川の流れに沿うように点在していた。 集落へと続く道も人が通らなくなってからは草や木の侵食を受け、今となっては道筋を辿 ることは元居た住人でも難しいだろう。この地に住み着くのは、人が出てゆく時に置き去 りにされた猫たちの子孫くらい。 まして夕刻にそんな元集落へやってくるのは鳥か獣かあやかしか、 「ゆっ!」 はたまた『ゆっくり』と言う名の饅頭くらいなものであった。 * 「ゆぅ~…? ここってにんげんさんの群?」 茂みを揺らして藪から飛び出したのは黒髪に赤いリボンを飾るゆっくりれいむ。廃墟と なった集落を物珍しそうにキョロキョロと見回すその後ろから、ぞろぞろと続いて藪から でてきたのもまた同じゆっくりれいむたち。 後から続いて出てきたのはみんな2~3センチほどのまだ幼い個体だったが、一番最初 に飛び出したれいむだけは他の三倍近くの大きさの成体であった。 彼らは先日、片親が行方不明になったために餌の豊富な場所に移り住もうと移住を決め たゆっくりの親子だった。幸い蓄えは豊富にあったし、半月前に生まれた子供達も巣の外 で遊び回れるくらいに元気に育っていた。家族総出のかれこれ二日の長旅でも一匹の脱落 者を出すことなくこの地に辿り着くことができた。 子供達から離れることなく、しかし頻りに周囲の様子を窺う親のれいむ。 ピョンピョン飛び跳ねたり背が高くて邪魔な草は容赦なくへし折って廻る行動は慎重と いう二文字からはほど遠いが、それでもこの親のれいむはれいむなりに、できうる限りの 警戒をしていた。 その場から見える限りを見渡したれいむは、暢気に昼寝を楽しむ野良猫以外に生き物の 姿がなかったことに安堵すると声を大にして宣言した。 「…けど、にんげんさんは居ないね! だったらここはれいむのゆっくりプレイスにする よ!!」 真剣な表情であっちこっちを見回していた親のれいむが一転して緩んだ笑みを浮かべた ことで、親につられて緊張していた子供達も一気に弛緩した。 「おかーさん、れいむつかれたよ!」 「おなかすいたー! ごはんにしようよー!」 「ゆぅ、のどがかわいたよ…」 「ゆっ!? ちょっ、ちょっと待ってね! ごはんもお水も、まずはお家を見つけてから だよ。お家がないとゆっくりできないんだよ!」 「ゆぅ…」×子 母親をつついたり、転げ回ったり、引きずって持ってきた備蓄の食糧を母親の目の前ま で持ってきてアピールしたりと、総出で食事と休憩を訴える子供たち。 だがゆっくりにしては警戒心の高いれいむは『お家』を確保しなければ安心して食事を 取ることも考えられない。探し求めていたゆっくりプレイスを見つけたからには、これか ら暮らしてゆくための『お家』をまず確保しなければならないとれいむは考えた。 むくれられようと泣かれようとも子供のため。そう心を鬼にしてお家探しに踏み出す親 のれいむ。 しかしれいむの心労は思ったよりも早く解消した。 れいむたちが飛び出した藪のすぐ側にあった荒ら屋に、土壁の一角が崩れてゆっくりが 通れるだけの穴が空いていたのである。 * 土壁を潜り抜けた先は土間になっており、そこはゆっくりの住処としては十二分の広さ があった。 「ゆ! ここはれいむとおちびちゃんたちのお家だよ!!」 「れいむたちのおうちだよ!!」×子 全身を目一杯反らして声高におうち宣言をしたれいむ一家。 しばらくはそれなりに引き締まった表情で自分たちの声の余韻に耳を澄ませていたが、 誰も異議の声を上げなかったことで満面の笑みを浮かべた。 誰も文句を言わなければ、それは自分たちの言い分が通ったことになるのがゆっくりの 不文律。 この瞬間から、この荒ら屋はれいむたちの『おうち』になったのである。 「ゆ~♪ お家なら安心してごはんが食べれるよ! みんな、おべんとうを全部だしてね! 今日はごちそうだよ~♪」 「ゆわ~い! ごちそう~♪」×子 人の手で造られた大きくて広いお家の中は風の音さえ遠くに感じられ、それまで暮らし ていた木の虚とは住み心地に雲泥の差がある。 お家の周りは人の手が離れたことで荒れ放題の草地となっていて、ゆっくりにとっては 絶好の『狩場』であった。 お家と、その近くに広がるれいむ一家だけでは食べきれないほど一杯生えている草。 多少は大きくなったとは言ってもまだまだ手の掛かる幼い子供達を独りで育てられるだ けの環境がここには揃っていた。 番であったれいむが行方不明になってからこの方、一時もゆっくり出来ずに子供の行く 末を案じ続けてきた親のれいむはここにきて漸く心底ゆっくりできた。 「草さんを食べるよ!」 「木の実さんもあるよ!」 「それじゃ、みんなでむ~しゃむ~しゃ! しようね!!」 「ゆっくりいただきま~す!」×総れいむ一家 子供の無邪気な顔を見ながら食べる食事を美味しいと思うことさえ数日ぶり。 「む~しゃむ~しゃ…」 「むーしゃむーしゃ、しあわせ~♪ …ゆ? おかーさん、どうして泣いてるの?」 「ゆゆっ! どうしたの? どこか痛いの?」 「ゆっ? な、なんでもないよ! とってもしあわせ~♪ だったからつい泣いちゃった だけだよ!」 口一杯に食べ物を頬張りながらも、親の目に光る物を見つけて気にかけてくれる優しい 子供たち。 (ああ、この子たちはなんてゆっくりいているんだろう…) 「しあわせ~♪」 「ゆぅ? おかーさん、いま何か食べたの?」 「ゆふふ…。そうだね、れいむはもうむねいっぱいだよ!」 何も口にしていないのに「しあわせ~♪」と告げるれいむに、不思議そうに訊ねる子供 達。そんな様子すら愛おしくて、れいむは心の底から暖かい気持ちがじんわりと広がって ゆくのを感じていた。 …それはそれとして長旅で疲れた身体は空腹を訴えてきたので、あとは子供と笑いなが ら食事についた。 元居た巣から持ち出したのは保存の利く干し草や木の実。 あと二日は一家が食いつなげるだけの量が残っていた保存食をれいむ一家は瞬く間に平 らげていってしまう。 家の廻りに生えている青々とした草も美味しいであろうが、水気を失って萎れた草もゆ っくり噛んでいくと美味しさが染み出してくる。 パサパサの干し草を美味しくなるまで噛んでから食べてゆくゆっくりれいむたち。 どのれいむも幸せそうな笑顔であった。だが、突如として一匹のれいむが目を見開いて 驚愕の表情を浮かべた。 「む~しゃむ~しゃ…む~しゃ…ゆっ!? そう言えばれいむはのどがかわいてたよ!」 「ゆゆっ!? れいむものどがかわいてきたよ!?」×他の子供達 一匹が喉の渇きを訴えたことで、途端に自らの渇きを自覚するゆっくりたち。 同じく喉が乾いていた親のれいむは少々困った表情で周囲を見回した。 何処をどう見ても、見える範囲に水がないのである。それにこの家に来るまでの道程で も水辺は見ていない。実のところゆっくりが飛び跳ねても数分の近距離に緩やかな小川が 流れていたのだが、全長十センチ足らずの親れいむは生い茂る雑草に遮られて見つけるこ とができなかったのであった。 (すぐにお水を探さないと…けど、もうお外がくらいよ。夜にお家の外にでるのはゆっく りできないよ) 夜に出歩く危険性を経験から認識しているれいむは外に水を求めることを少し考えただ けで取りやめた。 暗闇に閉ざされた出入り口から一転して振り仰いだのは、れいむが全力で飛び跳ねたと しても届かない高みにある板の間とその先に広がる未知の空間。板の間は一跳びではどう 足掻いてもたどり着けない高みにあったが、その手前にある平たい石からならばよじ登っ ていけそうであった。 平たい石に近寄って確認すれば、自分が持ち上げてやれば子供も上に上がれそうである。 親のれいむは石にぴっとりと張り付くと、振り返って子供達に呼びかけた。 「おちびちゃんたち! お家のおくへお水を探しに行くよ!」 * 板の間には襖や障子といった仕切が一切無く、柱が等間隔に並び立つ他は平屋の隅々ま で見渡せる造りになっていた。 それでも視点が床すれすれにあるゆっくりの事。敷居などのわずかな段差があるだけで 見通しは悪かった。 床板は所々に剥がれた箇所や白蟻に蝕まれて脆く崩れ去った箇所があり、餡子の詰まっ たゆっくりたちの行進も自然と慎重になっていた。先導する親を追い抜いて飛びだした長 女のれいむが脆くなっていた床板を踏み抜いて、危うく真っ暗な床下に落ちそうになった のはたった十分前の出来事なので忘れっぽいゆっくりもさすがに慎重になる。 「お水さんでてきてね! れいむたちはのどがかわいてるんだよ?」 「お水さん、おねがいだからでてきてねー?」 そろそろと身体を這わせて、念入りに足下を確かめてから進むという行程はゆっくりに とっても非常に遅く感じるものであった。 その上、喉は刻一刻と渇きを訴えてくる。 「お水さぁーん! 早くでてきてごーくごーくされてよぉっ!」 「のどかわいたよおぉぉっ!」 「おがあざんおみずぢょおだいよおぉぉぉっ!」 「ゆぅ…。これだけさがしてもないなんて、もしかしてお家にお水さんはいないのぉ…?」 ぽすっぽすっと八つ当たり気味に体当たりをしてくる子供達を受け止めながら、親のれ いむは困り果てていた。 ゆっくりの噂では『にんげんさんのおうちにはあまあまさんがたくさんあって、とって もゆっくりできるんだよ』と伝え聞いていたのでてっきりお水もあるものだと思いこんで いたのだった。噂の中に水の文字が見当たらないことにれいむは気付いていない。 お家の中に水がないのなら、日の落ちた外で水を捜さなければならなくなる。だがそれ は夜行性の獣や捕食種の存在を考えるとありえない。 ここは涙を呑んで、子供たちには今夜だけ喉の渇きを我慢して貰おう。 そう決心して、しかし泣き叫ぶ子供達の姿が痛ましくてほんの少し視線を上へと反らせ た。 思えば不安定な足場に気を取られていて、上を見たのはこれが初めてだった。 「………ゆ?」 剥き出しの梁が支える天井の、その中央。 そこに四角い穴が空いていた。まるで夜空を切りとって張り付けたかのような天井には、 中天に差し掛かる三日月が浮かんで見えた。 締め切られたお家なのにそれほど暗いと思わなかったのは、そこから月や星の明かりが 差し込んでいたのだと親のれいむは知った。 真っ暗であるはずの家屋に差し込む月明かりは光の柱のようにも見え、れいむはほんの 一瞬だけ喉の渇きを忘れるほどに見とれた。 「ゆあぁぁあぁあんっ!!」×子 「ゆあ!?」 喉の渇きのついでに体当たりをし続けていた子供達の存在を失念していた。 意識の外からの衝撃に思わずよろめくれいむ。その時、揺れる視界の中に月光を照り返 す輝きを見つけたのは本当に偶然だった。 「おちびちゃんたち、ちょっとどいてね!」 「ゆーっ!?」×子 飛びかかってくる子供達を弾き飛ばす勢いで姿勢を戻したれいむは、弾かれてころころ と転がっていく子供に目もくれず身体を伸ばしたり飛び上がったりして輝きの正体を見定 めようと試みた。 「いたいよぉっ!」 「おかーさん何するのおぉぉっ!?」 「ごめんねおちびちゃん。ちょっと待ってね!」 「ゆ?」 「ゆー…ゆっ! 間違いないよ! あそこに水さんがあるよっ!」 「ゆぅっ! ほんとにっ!?」 「れいむが一番のりするよ!」 「ぬけがけしないでね! れいむはのどがカラカラなんだよっ!?」 直前まで全身を膨らませて親に対して怒りを主張していた子供達も、「水がある」の言 葉の前に一瞬で憤りを忘れた。 即座に親の見ている方向へと飛び出す子供達は憤りとともに足場の悪さも忘れていたら しい。 「おがあざんだずげでえぇぇぇぇっ!!」×子供達 白蟻に食い荒らされてすかすかになった床板を踏み抜いて、サクッと板に填ってしまっ た子供達は親のれいむが助けに来るまで残り少ない水分を絞り出すかのように泣きわめい た。 * ゆっくり慎重に進み、誰一人として欠けることなく親のれいむが見つけた水の前までれ いむ一家は辿り着いた。 そこは四角く切りとられた天井の真下。直情から降り注ぐ月光を受けて、水面は白く輝 いて見えた。 「…ゆぅ、困ったよ…」 念願の水を前にしているにも関わらず、れいむ一家は喉を潤すことが出来ないでいた。 「ゆっくり届かないよ…」 天井同様、四角く切り抜かれた空間。その中央に据え付けられた水瓶に、水はなみなみ と湛えられていたのであった。 親のれいむが床板の端から跳んで水瓶の縁に着けるかどうかは微妙なところであり、小 さい子供達にはとても跳べる距離ではない。水瓶の口までの高さはれいむたちの居る床と 同じくらいなので下から跳び上がることもできない。土間にはあった石の段もないので落 ちたら二度とその空間から出ることは敵わないだろう。 その上、水瓶の細い縁に巧く着地できなければ水の中に落ちてしまうことになる。 求めて止まなかった水がすぐそこにあるのに飲むことが出来ない。 先ほどまでの元気は何処へやら、れいむ一家は表情の無い貌でただじっと月光を照り返 す水面を見つめる置物と化した。 「ゆー…どうしよう…」 「おかーさん…」 「おみずさん…」 「…ゆっ! そうだ!」 ただただじとーっと水を見つめるれいむたちの中で、不意に一匹の子供が声を上げた。 急速に生気を取り戻した貌には笑みすら浮かんでいる。 唐突に叫んだ子供にのろのろと目を向ける親のれいむを余所に、子供のれいむは急に来 た道を戻り始めた。 何だろうと思って目で追いかけると、子供のれいむは親のれいむが踏んだら浮き上がっ た床板にかじり付いていた。あの木さんは乗ったらゆっくり出来ないよ、と迂回したその 板に子供のれいむは力一杯噛みついた。 「ゆーしょっ! ゆーしょっ! ゆーしょっ…」 じたじたとお尻を揺らして暴れている子供のれいむ。 「ゆーしょっ! ゆーっ!! ゆーっ!! ゆうぅ…、おかーさん手伝ってーっ!」 「…ゆぅ? …ゆっ!? 待ってね、すぐ行くからねっ!」 真っ赤になって床板にかじり付いている我が子の姿をしばらくぼんやり見ていた親のれ いむだったが、助けを求められたことで漸く我に返った。同時に、その子が何をしようと していたのかも気付くことが出来た。 子供のれいむが幾ら頑張ってもほんの少ししか動かせなかった板を、親のれいむはグイ グイと引っ張ってゆく。 正直、途中で何度も休憩したくなったが未だに放心したままの子供達の姿や真っ先に板 のことを思い出して行動し、今もせめてもの助けにと引っ張る板を後ろから押してくれる 子供のれいむ。 彼女らのことを思うだけで、疲れも苦しみも無かった。 そして子供達が呆けている床の端まで辿り着くと、 「おちびちゃんたち、危ないからゆっくりはなれてね!」 「ゆぅ…?」 のろのろとその場から距離を取る子供達に一度微笑みかけ、一転して運んできた板に向 き合ったれいむは仁王もかくやという形相で板に食らい付き、渾身の力を以て板を振り回 した。 「ゆっがああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!!」 れいむの全力と遠心力で浮き上がる板。 180°の回転をしたところで水瓶に叩きつける要領で制動を掛けた。横から下への急 な動きはれいむの歯と歯茎に強烈な負荷と痛みを与えたが、折角水瓶の口に届いた板が弾 かれてはここまで苦労した意味がない。勢いよく叩きつける形となってしまっただけに勢 いよく跳ね返ろうとする板を全身で以て押さえ込んだ。 その甲斐あって板は思い描いたとおりの位置に落ち着いていた。 「ゆふー…ゆへぇー…ゆふー……。さあ! おちびちゃんたち、おかあさんが作った『は し』をわたってお水さんをのみに行ってね!」 唐突に現れた諦めていた『お水』へと続く架け橋の存在が理解しきれずにしばらくは呆 然としていた子供達。 だがじわじわと理解が広がってゆくと、枯れ果てた表情に満面の笑みが咲いた。 「おかーさんありがとーっ!」 「ゆわーい!」 「ごーくごーくできるの!? ごーくごーくするよ!!」 「おみずさん! おみずさん! れいむが今いくからねぇ~♪」 「ゆわーん! れいむをおいてかないでぇー!」 一目散に板を渡っていく子供達。親の手伝いをしていた子供だけは疲れもあって出遅れ てしまっていたが、まったくゆっくりしない勢いで飛び跳ねる姉妹を目にして慌てて後を 追った。 その様子を親のれいむは微笑ましく見守っていた。 「そんなにあわてなくってもお水さんは逃げたりしないよ」 そんな声を掛けたが散々焦がれていたお水を前にした子供達は我先に水面を目指した。 疲れ切ってじりじりと這うことしか出来なくなっていた子供が板の端に漸く辿り着いた時 には、反対側の板の端では姉妹達が押し合いへし合いしながら念願のお水へと口を伸ばし ていた。 水瓶の水は溢れんばかりに湛えられているとはいえ、板の上からでは少々高低差があっ た。 それでも子供のれいむたちは舌を伸ばしたり身を乗り出したりしながら水に口を付けよ うと奮戦していた。 「いぢわるしないでねっ!」 「はやくごーくごーくされてねっ!」 「もう少し前に出るよ! そろーり…」 「ゆうううううううう…」 早く水を飲みたい。 そんな子供のれいむたちの思いが天に通じたのか、見る見るうちに水面が近づいてきた。 歓声を上げて、口を開いて迫ってくる水を迎える子供のれいむたち。 「ゆ~♪」 もちろん、ゆっくりの思いに応えるほど天は暇ではないし安くもない。 これは単に、板の端に寄りすぎたれいむたちの重量で板が傾いただけの話。 そんなことはつゆ知らぬれいむたちは、傾いだ板と共に笑顔のまま水瓶の中へと落ちて いった。 そして一匹だけ乗り遅れたれいむは、板の反対側が急に沈み込んだために勢いよく跳ね 上げられていた。 ぽ~んと宙に舞い上がる浮遊感に思わず歓声が込み上げてきた。 「ゆ~っ! おそらをとんでるみたーい♪」 そのまま山形の放物線を描いて空を飛ぶれいむが目にしたのは、急転直下の事態に理解 が追いつかず目を丸くして子供の消えた水面を眺めている母親の姿。 水の浮力に弾かれた板が、カツンと乾いた音を響かせて元の位置に戻る。 水に濡れたその先に、愛しい我が子の姿は残っていなかった。事態を理解してゆくにつ れて貌は愕然とした表情へと変わってゆく。 子供の消えた板の先端に視点が固定されてしまった親のれいむ。 そこに上から笑顔の子供が振ってきて、 「おかーさん! ゆっく 」 トプン、と音だけを残して、子供の最後の一匹もまた水瓶の底へと沈んでいった。 **************** ゆっくり水の底 **************** 『ゆぅ…ゆっくりいたかったよ…』 落下の衝撃で目を回していた三女のれいむが気付くと、広々とした新しい『お家』とは かけ離れた薄暗くて狭い空間に閉じこめられていた。 見知らぬ場所に不安げに周囲を見回すと、そこには姉妹達が無言で右往左往していた。 『だしてねっ! ここからだしてねっ!』 長女のれいむは壁に向かって何度も体当たりを繰り返していた。 次女と四女のれいむは、なんと宙に浮いた状態で伸びたり縮んだりをしていた。 『ゆっくりだっしゅつするよ!!』 『もうやだ! おうちかえる!』 ゆっくりしないで動き続ける姉妹とは対照的に、末っ子のれいむは一カ所に留まったま ま、くしゃくしゃの泣き顔を浮かべて口を大きく広げていた。 『ゆあぁぁぁぁんっ!! ゆあぁぁぁぁんっ!! おかあさんたすけてえぇぇぇぇっ!!』 母親の姿がないことに不安を覚えたが周りには仲のいい姉妹たちがいる。 三女のれいむは、ともかくすぐ側にいた泣き顔の末っ子を落ち着かせようと笑顔で声を かけた。 『ゆっくりしていってね!』 『ゆあぁぁぁぁんっ! もうわがまま言わないから! おてつだいだってするからぁっ! おねがいだからたすけてぇぇぇぇぇっ!!』 『ゆ? 何でお返事してくれないの? そんなお顔はゆっくりしてないよ! ゆっくりし ていってね!』 『おかあさあぁぁぁぁん! なんでれいむをたすけてくれないのぉぉぉぉっ!?』 『ゆぅ…妹がゆっくりしてないよ…』 ゆっくりならば返事を返さずにはいられない「ゆっくりしていってね!」という台詞に すら反応を示さず、泣き顔で口を戦慄かせてばかり居る末っ子に悲しげな一瞥を残して三 女のれいむは長女の元へと向かった。 『おねーちゃん、ゆっくりしていってね!』 『かべさんはいじわるしないでねっ! ゆっくりいそいでここからだしてねっ!!』 『ゆぅ~ん…なんでおねーちゃんもごあいさつしてくれないのぉっ!?』 『お水さんはもういらないんだよっ! このままじゃゆっくりできなくなっちゃうんだよ っ!』 『おねーちゃん、ここはどこなの? なんでそんなにゆっくりしてないの?』 『れいむたちはまだずっとゆっくりはしたくないんだよっ! れいむたちをゆっくりここ からだしてぇっ!!』 『…れいむのおはなしきいてよぉ…』 すぐ横にまで行って笑顔を向けたのに見向きもされず、長女のれいむは壁に向かって体 当たりを続けていた。 壁に向けて跳んでゆく速度はとてもゆっくりしたものであったが、長女の形相はとても 必死なものでゆっくりできない。 どれだけ語りかけても黙ったままで見向きもされないことに悲しくなった三女のれいむ は、次女と四女のところに向かった。 『ゆぎゅぅ~…ゆうっ!! ゆぎゅぅ~…ゆうっ!!』 『ゆーっんしょっ! ゆーっんしょっ!』 『ゆ~♪ すごいねっ! おそらをとんでるみたい!』 平たく潰れては勢いよく縦に伸び、またすぐに平たく潰れる。そんな動きを繰り返す次 女と四女は、三女のれいむがいうように空を飛んでいるようにも見えた。実際、じわじわ とではあるが彼女たちの身体は上へ上へと進んでいた。 だがそれも一息入れては即座に台無しになってしまう程度のものではあったが、 『ここじゃゆっくりできないよっ! おみずさんからでたらゆっくりするよっ!』 『おねーちゃんまってねっ! れいむをおいてかないでねっ!』 休むことなく動き続ける二匹の姿は三女のれいむからは大きくなったり小さくなったり を繰り返す、足相当の底辺しか見ることは出来ない。 ゆっくりしていってね、の挨拶だけは顔を見て告げたいれいむは、どうにか二匹の顔が 見えないかと躯を反らせて上を見上げた。 そして、姉妹の顔よりも気になるものに気付いてしまう。 キラキラ光り、ユラユラ揺れるそれは、つい先ほどまで家族総出で追い求めていたもの ではなかったか。 『なんで…? おそらにおみずさんがあるよ…?』 そうではないと気付きながら、三女のれいむは的外れの疑問を口にする。 だが気付かない振りを続けられるほどれいむは愚鈍ではなかった。 『なんで…どおしてれいむがお水さんの中にいるのぉぉぉぉぉっ!?』 ここにきて漸く自分が姉妹共々水の底に沈んでいることを認識することができた三女の れいむ。 ゆっくりにとって、水は喉を潤す程度であればゆっくりできるものであるが、躯に染み 込むほどの多量の水ともなればゆっくりできなくなるものに変わってしまう。 水に沈んでいるために声が出せないとは流石に理解が及ばなかったが、姉妹がみんなゆ っくりできず三女を気に掛ける余裕もなかった理由は理解できた。 彼女らに終わりが訪れたのは、三女が現状を受け入れたすぐ後であった。 壁を打ち破り、できることなら妹たちとここから抜け出そうと奮戦を続けていた長女の れいむ。 水の抵抗もあってその体当たりに大した速度はなかった。 『だせえぇっ!! れいむたちをここからだじぇぶ―』 それでも長女のれいむの躯は確かな推進力を以て、文字通り全身全霊を壁に叩きつけた。 水に浸されて緩んだ外皮と中身が堅い壁と自分の生んだ推進力に挟まれた結果、長女の れいむの躯はまるで壁に沈み込んでゆくかのように潰れていった。 その光景を三女と末っ子のれいむは見届けてしまった。 『ゆっ…ゆっ…ゆっ…』 『うわあああああああああああっ!! うわああああああああああああっ!!』 薄紫の水煙となってしまった長女の姿に、三女は硬直し末っ子は目を剥いて叫んだ。涙 も流れているはずだが、水の中では解らない。 その見えない涙と共に、末っ子の両目がポロリとこぼれ落ちた。 急に視界を失った恐怖が加わって、末っ子の叫びが激しさを増した。 『れいむのおめめがあああああっ!? くらいよおおおおおおおおおおっ!! こわいよ おおおおおおおおおっ!! おかあさあああああああん!! おねえちゃあああああああ あん!! だれてもいいかられいむをたすけてええええええェぼオぉう!?』 誰の耳にも届かない叫びと共に末っ子のれいむの口から中身の餡子が迸った。 生存に呼吸を必要としないゆっくりはただ喋るために空気を吸い込んで吐き出す。だが 水の底に落ちてからは声がでていないことにも気付かず、水を吸い込んでは吐き出してい た。 火のついたような末っ子れいむの叫びは、噴火の如き奔流となって中身を吐き尽くして 途絶えた。 勢いで裏返った末っ子れいむの外皮は、自らが巻き起こした水流に乗ってしばらくの間 水瓶の中をたゆたった。 『もうっ! すぐっ! あと! ちょっ! とっ! だよっ!』 『ゆぅっ! ゆぅっ! ゆぅっ!』 全身を伸縮させることで懸命に水面を目指していた次女と四女は、水面まで後わずかの ところまで上り詰めていた。 後少しで水の中から抜け出せる。 水面近くまで昇ってきていたために水底で起こった惨劇を知らない二匹のれいむは、目 前の希望に向かって疲れ切った躯からなけなしの力を振り絞る。 『ゆぎゅぅ~…ゆぅっ! ゆぎゅぅ~…ゆぅっ! ゆぎゅぅ~…ゆぅっ! …ゆ?』 不意に水を蹴る感触が消えたことに、次女のれいむは内心で小首を傾げた。 しかも何故だか伸びた躯を引き戻すことが出来ない。 そろりと下に向けた次女の目に飛び込んだのは、水を蹴った勢いもそのままに水底へと 沈んでゆく自分の足とそれを追いかけて流れ出す自分の中身。 『れいむのあんよが!? れいむのあんこさんがあぁぁぁぁぁっ!?』 流れて落ちてゆく餡子とは反対に次女の躯は水面へと上がってゆく。 だが、水面に辿り着く頃には中身は空になっていることだろう。 自身の最後を悟り、ただ一目だけでも外にいる母親の姿を目に焼き付けて逝こうと決意 する次女のれいむ。 だがそんな彼女のささやかな決意は、突如巻き起こった横殴りの奔流によって遮られて しまう。 『ぼ…ぢょ…ゆ…ぐ…たか……』 それは次女と共に水面を目指していた四女の変わり果てた姿。 次女とは違い、目一杯縮んでいるときに限界を迎えた四女は、頭の天辺と底辺の足を残 して放射状に飛び散っていた。 呆然とした表情を浮かべて流れてゆく妹の顔を横目に見ながら、次女のれいむは薄れゆ く意識に身を委ねて目を閉じた。 『…れいむも、もっとゆっくりしたかったよ…』 * 残ったのは長女の散り様に思考停止状態に陥ってしまった三女のれいむ、ただ一匹。 れいむは壁に立ち向かおうとは思わない。 れいむは助けを求めて叫ぼうとは思わない。 れいむは出口を求めて動き回ろうとは思わない。 姉妹達のようにずっとゆっくりはしたくないから身動ぎ一つせずにじっと待っていた。 (おかあさんが…) ただ一つの希望を胸に、瞼を閉ざしてゆっくりと待った。 (おかあさんがたすけにきてくれるまでゆっくりまつよ…) とっても頼りになる母親の姿を瞼の裏に投影しながら、れいむはその時をただひたすら に待ち続けた。 しばらくしてその時は訪れる。 水瓶に消えた子供を救おうと、母親のれいむはやってきた。 水瓶を割って中の子供を救おうと体当たりをしたが効果はなく、 水瓶を倒してしまおうと押しても半ば地中に埋められた水瓶は微動だにせず、 助けを求めようとも周囲に人はおろかゆっくり一匹いなかった。 目がこぼれ落ちないように瞼を閉じていたれいむは最後まで母親のれいむが自分を助け てくれるのだと信じていた。 万策尽きた親のれいむが、子供達と永遠にゆっくりするために水瓶に飛び込んできたな どとは知る由もなく。三女のれいむは頭上に落ちてきた親に押し潰されてしまった。 水が染み渡ったその躯は、風に吹かれた砂のように儚く散っていった。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1011.html
澄み切った秋空のもと、一人の男が、手に持った、三つのクラブで、ジャグリングしている 男の足元には、親ゆっくりれいむに連れられた、子ゆっくりれいむ三匹が、男の芸を見て歓声を上げている 「ゆ~!おじさんとってもすごいよ!」 「ゆぅ!すごい!!すごい!!!」 「とってもゆっくりしたわざだよ!」 「おじさんとってもかっこいいよ!」 男は、ゆっくり達の反応に、気を良くすると、クラブを四つに増やして、再びジャグリングし始める 「ゆ!ひとつふえたよ!」 「ゆっゆ!さっきよりすごいよ!」 「たくさんしろいのがとんでるよ!!」 「すごい!すごいよ!」 男がジャグリングを止めると、れいむ親子は、飛び跳ねながら、凄い、凄いと、男を褒め称える 男は、れいむ親子に向かって、笑いかけると、小さな観客達の、柔らかい頭を優しく、人差し指と、中指で撫でてやる 「ゆぅ~♪とってもきもちがいいよ!」 「おじさんはやさしくてゆっくりしてるね!」 「ゆっゆ!くすぐったいよ~♪」 「おじさんならここでゆっくりしていっていいよ!」 男に優しくされて、満足げなゆっくり達は、にこにこと笑っている 男も、ゆっくり達に向かって笑いかけているが、その笑みは、ついさっきまでの、自分の芸を楽しんでくれた、観客に向ける類のものではなく 子供が、新しいおもちゃの、楽しい遊び方を思いついた時に浮かべる、純粋で、故に残酷な笑みだった 男は、子供たちを怖がらせないように、左手で、そっと子れいむを摘み上げては、優しく右手に落としていく 子供達は、摘み上げられている時は「ゆゆ!おそらをとんでるみたいだよ!」と喜んでくれたし 親ゆっくりも、男を信頼して、子供達の嬉しそうなはしゃぎ声を聞いて、ゆっくりしている 男は、全ての子ゆっくりを手にすると、立ち上がる 「ゆぅ!!とってもたかいよ!!!」 「ゆゆ!!!とおくまでたくさんみれるよ!!!」 「ゆゆゆ!!!!ちょっとびっくりしたけどゆっくりできるね!!!」 子供達の、楽しそうな声に、親れいむはとても嬉しそうにしている 「おじさんはおかしもってないけどすっごくゆっくりしたひとだね!!!」 「おじさんのおててはとってもあったかくてすごくゆっくりできるよ!!!」 「そうだよ!ごつごつしててとってもあったかいよ!!」 「ゆ~♪おじさんのおててがあったかいからしばらくおひるねするよ…」 男は、おもむろに、寝そうになっている、子ゆっくりを左手に移すと、高く放り上げる、右手に乗っている子ゆっくりを一匹、左手に投げる そう、男は、子ゆっくりでジャグリングを始めたのだ 「おそらをとびゅ!!!!」 「ゆ!ひゅ!!!!」 「ゆぎゅっ!」 子れいむ達は、高く放り上げられ、ごつごつした掌に叩きつけられると、もう片方の手に投げられる そしてまた、放り上げられる、顔面を掌に叩きつけられる痛みに、子ゆっくりは悲鳴を挙げる 「ゆゆ!!おじさんれいむのこどもがいたがってるよ!!!ゆっくりやめてね!!!!!」 親れいむは、子供たちの叫びに、ぴょんぴょん飛び跳ねながら、騒ぐが、男はジャグリングを止めない 子れいむ達は、その間も、男の掌の上を舞いながら、徐々に、しかし確実に、命を摩耗させていた 掌に叩きつけられる、もう片方の手に、子れいむ達は素早く投げつけられる、そして、高く放り投げられ 滞空時間が過ぎると、激痛とともに、男の掌という大地に、再び叩きつけられる、これのくり返し 子れいむ達には、所々に打ち身の痣ができ、真っ白い皮には黒く餡子が滲んでいる 叩きつけられる度に、体の中の餡子が潰れていく 最初は、痛みに悲鳴を上げて苦しんでいた、子れいむ達だったが、今では、弱弱しく呻き声を上げることしかできない 親れいむは、しばらくは、ぴょんぴょん飛び跳ねながら男に抗議をしていたが 子供達の悲鳴が徐々に小さくなってくると、泣きながら体を膨らませて、体当たりをしてきた 「ゆっくりやめてね!!ゆっくりやめてね!!!!」 男は、素早く、親れいむの体当たりを避けると、親ゆっくりの口に蹴りを入れる 「ゆっくりやびゅゆっ゛!!!!!!!」 親れいむは、口から、白い歯と、餡子を吐き出しながら、痛みにのた打ち回る 男は障害を排除すると、先ほどよりペースを速めて、子れいむ達をジャグリングする 男は、手のひらに感じる、子れいむ達のジャグリングされる前と、後の感触の違いを楽しんだ 子れいむ達は、さっき、頭を撫でてやった時より、総じて皮がたるみ、中の餡子が柔らかくなっている それに、子れいむ達は、ジャグリングされる前より、ずっと暖かくなっていた、皮もしっとりと湿って、汗をかいているかのようだ 叫び声も、最初に比べて小さくなり、意味のある罵倒や、謝罪から、意味をなさない呻き声に変わっている 「ひゅ…ひゅひゃひぇひゃめてふぇ(ゆっくりやめてね!!)!!」 ふと気がつくと、親れいむが、こっちに向かって、跳ねてくる 男に、口に蹴りをいれられたせいで、歯は折れ、口は大きく横に裂け、正常な発音が出来なくなっている、そして傷口から餡子が漏れ出しているが、親れいむは止まらない 親れいむからすれば、自身の傷より、男の掌で苦しめられている、我が子を助ける方が、大事なようだ そんな、親れいむの子供への、ひたむきな愛情に感動した男は、ジャグリングを止めると、子れいむ達を親れいむの傍に、ゆっくりと置いてやる 親れいむは、子供たちに「ひょうだいひょうふだよ!!(もうだいじょうぶだよ!!)」などと言っている、…果たして本当にそうだろうか? 男のジャグリングから解放された、子れいむ達は、顔を真っ赤にして、頬を膨らませて、、痙攣しながら、何かに耐えている 親れいむが心配そうに、一番小さな子れいむの身体に頬擦りした瞬間、その小さな子れいむの我慢は、限界に達した 「ぅ…ゆぅべぇぇ!!!!!うぇっゆうぇぇぇ!!!!!!」 「ひゅ!!!だひぇだよ!!!ひゅひゅりひゃめてね!!!!(ゆっ!!!だめだよ!!!ゆっくりやめてね!!!!)」 盛大に、口から餡子をリバースする子れいむ、小さな生首饅頭が、口から餡子を吐き出しているというのは、傍目から見れば非常に滑稽な画だ しかし、当のゆっくりからすれば、命にかかわる一大事だ、ゆっくりにとって、体の中の餡子は、血であり、骨であり、内臓であり、脳である そんな大事な餡子をまだ小さな、子ゆっくりが大量に吐き出すことは、即ち、死を意味する 妹の盛大な嘔吐につられて、姉たちも自分達ゆっくりを形作るうえで、最も重要な部分を口から吐き出していく 「ぅぅ…!!!うびゅえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 「ゆぅぅ!!!!う…ゆぅひぇぇぇぇぇぇ!!!!!」 「ひゃめひゃよ!!!ひゃんこをひゃふゅとふゅっくりひぇきなひゅなるひょ!!!!!(だめだよ!!!あんこをはくとゆっくりできなくなるよ!!!!!)」 子れいむ達は、餡子の嘔吐を止めようとするが、体の奥からせり上がってくる吐き気に勝てない、自分の意思に反して、餡子を吐き続ける 餡子を吐くうちに、子れいむ達の意識は朦朧としていく、親れいむの泣き声も、姉妹の呻き声も、意識から遮断されていく ただただ、苦しい、吐くたびに体が失われていく損失感、ついさっきまで、熱を持っていた身体が急速に冷えていく 途中まで聞こえていた、安心できる何かはふいに聞こえなくなり、視界もだんだんぼやけていき、最後には真っ暗になった 三匹は、其々、音のない闇の中で、寒さと苦しさに体を蝕まれ、傍に親が、姉妹がいながら、孤独に死んでいった 親ゆっくりは、泣きながら子供たちに頬擦りをしている 「ゆぅぅ!!!!おひょて!!!ゆひゅふぇしひょうよ!!!!(ゆぅぅ!!!おきて!!!ゆっくりしようよ!!!!)」 親ゆっくりを哀れに感じた男は、履いていた革靴で、親れいむを思い切り踏みつける 「びゅひゅ!!!!」 口の傷口がさらに広がり、そこから餡子が溢れ出す、親れいむはぴくぴくと痙攣をしながら、呻き声をあげている その場で、親ゆっくりを何度も踏みつけて、完全に息の根を止める 一仕事終えた男が、腕時計を見ると、9時を十分ほど過ぎた所だった、男は、次のサーカスの公演は、剣とかチェンソーじゃなくて、ゆっくりをジャグリングしたいな 失敗しても怪我をしないし、ジャグリングの終わった後の、ゆっくりの嘔吐シーンは、十分笑いがとれるものだ、一度団長に相談してみよう、と思いながら帰宅した 男の後ろでは、物言わぬ四つのゆっくりだったものが、早速、蟻にたかられていた 作:ゆっくりな人 以前書いた虐待 ゆっくりカーニバル 臭い付きゆっくり(上) 臭い付きゆっくり(下) ゆっくり移植 きらーうーぱっく 教育!田舎ゆっくり このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1360.html
ゆっくりれみりゃが空き家に住んでいた。 空き家でもそれなりに丈夫な外観、そしてまだ綺麗な状態のベッド。 自称紅魔館のお嬢様を自負するれみりゃのぷっでぃん脳では、随分と豪華なお屋敷に映っている事だろう。 「う~♪ さくや~だっご~♪」 起き掛け、一人空き家でそんな事を言うれみりゃ。 れみりゃは取り合えず朝はこう言って起きる、たとえ咲夜が居なくても。 しかし、このれみりゃは違った、きちんと咲夜がいたのだ。 「おぜうさま!! さくやがまいりましたぁ!!!」 勢いよく寝室に入ってきたのは、一匹の饅頭。 青紫の髪の毛にカチューシャ、そして青い瞳。 ニコニコとれみりゃに話している顔。 その外見的特長からゆっくり咲夜と呼ばれている。 「う~♪ しゃくや♪ だっご~♪」 そう言って手を伸ばすれみりゃ、しかしどう考えても体の大きいれみりゃを饅頭の咲夜が持ち上げられるはずも無く、渋々ベッドから降りるれみりゃ。 「おぜうさま!!! おきがえのじかんです!!!!」 笑顔のまま、そう言ってれみりゃに着替えを促す。 勿論、紅魔館でご寵愛を受けて無残に食べられるれみりゃは代えの服は有るのかも知れないが、唯の空き家に住んでいるぷっでぃん脳しか持たないれみりゃに代えの服が有るはずも無く、一度服を脱いでまたその服を着る、という作業をするだけである。 「う~♪ れみりゃはひどりでおきがえできるぉ~♪」 前が見えなくなり十六回ほどあちこちにぶつかりながら上着を脱ぐ。 足がもつれ、十六回ほどあちこちにぶつかりながらスカートを脱ぐ。 裏返しになりながらシャツを脱ぎ、一回頭をぶつけてドロワーズを脱ぐ。 それを逆に繰り返せばお着替えは終了である。 「はぁはぁ!! おぜうさま!! おうつくしい!!!」 その様子をじっと見ていた咲夜はそんな台詞を呟きながら、何故かある鼻から蕨餅を滴らせていた。 「しゃくや~♪ れみりゃおぎがえおわっだどぉ~♪」 俗に言うれみりゃスマイルと言う破壊力抜群の笑顔で咲夜に報告する、自分でパチパチと拍手までしている。 「おぜうさま!! さすがです!!! ……そろそろちょーしょくです!!」 「う~♪ しゃくやおがじたべどぅ~♪」 二つの食べ物は仲良く一階に移動する。 奥の部屋、そのぽっかり空いた床は二メートルほどの穴が開いていた。 穴を見ればゆっくり霊夢一家。 「ゆ!! おかーさんおなかへったよ!!!」 「ゆっくりできないよ!!!」 「がんばってここからでようね!!!」 どうやらここに落ちたらしい、しきりにジャンプして上がろうとする一家。 それが叶わないとピラミッドを組んで上がる。 しかし、重みと人数が足らずそれも無理。 するとさっきの事は忘れてまたジャンプ。 その繰り返し。 一日三回ピラミッド中に潰れた子供を食べるので、ドンドン人数が減っていく一家。 そうやら霊夢の中でもオツムが極端に弱いらしい。 「う~♪ おまんじゅ~おまんじゅ~♪」 言うが早いか穴に飛び込むれみりゃ、勿論今日の朝ごはんだ。 「ゆゆ!! こんにちは!! れいむたちゆっくりできないの!! ゆっくりたすけてね!!!」 「「「ゆっくりしようね!!!」」」 「う~♪ た~べちゃ~うぞ~♪」 大きい母親霊夢から食べ始める。 「ゆ!!! なにずるのーー!!!」 必死に抵抗するが、今まで散々意味の無い運動を続けていたゆっくり達は殆ど抵抗できない。 「ゆゆ!! ゆっぐりやめでね!! れいむはだめののじゃないよ!!!」 「「「やめてね!!! おかあさんをゆっくりはなしてね!!!」」」 「う~♪」 子供たちの抵抗なんて何のその、ゆっくり半数の饅頭を食べ終えたれみりゃはお腹を擦りながらご機嫌な様子で穴から出てくる。 「ゆっ! ゆっくり、……ゆっくりしてたけっかがこれだよーーー!!!」 「おがーざーん」 「どうじでおがあざんをたべだのぉー!!!」 今度はそのゆっくりが掴まれた、感動の親子再開である。 「う~♪ おいじがっだどぉ~♪」 「おぜうさま!!! それはよかったですね!!!!」 それを聞いて、ゆっくり独特の笑顔で返答する咲夜。 この穴に一家が入ったのは偶然ではない、このゆっくり咲夜がやったのだ。 「ゆっくりしていってね!!!」 と屋敷の周りで言えば。 「ゆっくりっするよ!!!」 とゆっくりが駆け寄ってくる。 「なかでもっとゆっくりできましゅよ!!!」 そういってすんなりと中へ招き入れる。 「ほんとだ!!」 「おかーさん!! ここれいむたちのおうちよりおおきいね!!!」 「ここならもっとゆっくりできるよ!!!」 「そうだね!! ゆっくりみんなではなしあったけっか、ここはれいむたちのおうちになったよ!!!」 「ゆっくりできないゆっくりは、でていってね!!!」 れみりゃスマイルと同程度の破壊力を持った発言。 それを聞いてもゆっくり咲夜は顔色一つ変えないで言い放つ。 「いいですよ!! でもこのおくに、もっとゆっくりできるばしょがありましゅよ!!!」 「ゆ!! さっさとはやくあんないしてね!!!」 つまりはこういう訳である。 これで食事に事欠かなくて済むれみりゃ。 咲夜の自身は他のゆっくりと同様の食事で困らないので、これは全てれみりゃのご飯になる。 れみりゃが足りないと我侭を言っても、直ぐに咲夜が調達してくる。 やはり、れみりゃは何処でも我侭なのだ。 そのご飯に今までゆっくりアリスが入っていなかった事を付け加えておく。 「う~♪ おでかけするぉ~♪」 「おぜうさま!!! ごいっしょいたしますわ!!!」 安っぽい、一部剥がれたビニール傘をさしながらお屋敷を出る。 特に目的は無い、ただ周りを見て回るだけだ。 「う~♪ おはないっぱいだどぉ~♪ !!! じょうじょだどぉ~♪ までー♪」 「おぜうさま!!! おまちになってください!!!」 とてとて歩くれみりゃの後ろをピョンピョン付いていく、れみりゃは目の前の蝶を追いかけるので精一杯だ。 「う~? じょうじょどご~? どご~?」 蝶が目の前から居なくなり、漸く周りの景色に目を向ける。 「おぜうさま!!!」 「う~♪ おっきなおやしぎ~♪」 目の前に映る屋敷に目を奪われているれみりゃ。 追いついた咲夜も目を奪われる。 それは正真正銘の紅魔館。 当然、れみりゃは大きなそのお屋敷に吸い込まれるように近づいていく。 「う~♪ れみりゃのおやしきだどぉ~♪」 辺りをぐるっと回って正面へ、勿論門番が立っていた。 のだが先ほどの魔理沙との先頭で気絶中。 「う~♪ ばぁ~か♪」 その横を得意げに通って行くれみりゃ、勿論傘で叩くのも忘れない。 「う~~~~~♪」 目の前には綺麗な庭、そして大きなお屋敷。 そして…… 「「「「う~♪」」」」 数匹のゆっくりれみりゃ、みな一様にれみりゃスマイルでヒゲダンス。 「う~♪ れみりゃもずるどぉ~♪」 当然ものれみりゃも参加する。 口をニヘラァと開けて笑顔を作る、両手を腰にあてお決まりの言葉を発すれば、そこには楽しそうに踊っているれみりゃの姿を見ることが出来る。 「うっう~♪ あうあう♪」 本人達は楽しそうに踊っていたその頃、ゆっくり咲夜は未だばてている門番の所に居た。 「も~しょうがないわね!!!」 がぶり。 普通のゆっくりより遥かに鋭いその歯で門番の腕に噛み付く。 「!!! ちゅ~~~~ごっく!!!」 鋭いとはいえゆっくりの歯、妖怪やましてや人間の皮膚を傷つけるには居たら無いが、門番を起こすことは出来るようだ。 意味不明な叫び声をあげて飛び起きる、必死に咲夜の姿を探すが近くにはその顔をしたゆっくり咲夜だけ。 「??? 咲夜さん……?」 完全に覚醒しきれていない門番は何が起きたのか理解できない。 「もう! はやくゆっくりしごとにもどってね!!!」 それだけ言って屋敷の中へ消えていく咲夜の頭。 「?」 取り合えず、言われたとおり仕事に戻った門番だった。 「うっう~♪ れみりゃう~♪」 その頃庭では踊りも終盤、全員が肉汁だらだら出しながら満面の笑みで踊っていた。 「う~、……! れみ☆りゃ☆う~☆ ニパ~」 極上の笑顔を残し、肉まん集団御遊戯会は終了した。 それを待っていたかのように、屋敷から一人の人影が近寄ってくる。 「れみりゃ様。すばらしいダンスでしたよ!! さぁさぁ疲れてでしょう? プリンをお持ちしました」 本物の十六夜咲夜だ。 差し出されたプリン丁度全員分、ご丁寧にスプーンまで用意されている。 「う~♪ ぷっでぃん♪ ぷっでぃんだべどぅ~♪」 「ぷっでぃ~~~んちょ~だい~♪」 一目散に咲夜に駆け寄ってプリンを奪い取っていくれみりゃ達。 「う~? う~♪」 勿論、あのれみりゃも例外ではない。 少し不思議がってはいたが、一目見るとあっという間に上機嫌。 「うっう~♪ おいち~♪」 他のれみりゃと同じように、スプーンをグーで持って食べ始める。 たくさんのれみりゃがニコニコしながらプリンを食べている。 「「「「「ん~♪ おいちいどぅ~♪ れみ☆りゃ☆う~☆ 」」」」」 それをニコニコしながら見つめる咲夜。 と。 「さくやさ~ん? どこですか~♪」 自分を呼ぶ小悪魔の声、仕方が無いがその場を後にする咲夜。 なに、これだけ人数が増えてのだ、また明日見ることが出来るだろう。 「どうしたの小悪魔?」 「はい。ぱちゅりー様が御用時があるそうです」 「そう」 連れだって図書館へ赴く。 この時、小悪魔が後ろを振り向いてプリンを貪るれみりゃ達に笑みを浮かべたことは、咲夜は死んでも知らない。 「うっう~♪ ぷっでぃ~んおいしいどぉ~♪」 「うーー!! もっどぷでぃんだべたいどぅ~♪」 「「「「「「「ぷっでぃ~んたべたいどぅ~♪」」」」」」」 「おぜうさま!!!」 ゆっくり咲夜が着いた時には、既にプリンは食べ終えられ高級なカップが地面に転がっていた。 「う~♪ ざぐや~♪」 ゆっくり咲夜のもとへ、あのれみりゃが近づいてゆく。 「しゃくや? しゃくやどご~♪」 「どご~、ざぐや~♪」 その一声に、他のれみりゃも近づいてくる。 「う~ざぁぐや~♪」 「おぜうさま!!! なんでしょう!!!!」 腰を屈めて、両手を自分の胸の前に持ってくる。 所謂ぶりっ子の仕草をする、このれみりゃがゆっくり咲夜に我侭を言う時のポーズである。 周りを見ると、他のれみりゃも大分近寄ってきた。 ぷっでぃん脳でも人間ではなくゆっくりだと理解できるらしい。 始めてみるゆっくり咲夜だが、生得的なものか、これが自分に対してどういう存在か知っているようだ。 「れみりゃね~、おがしだべだいの~♪」 代表して言うのは勿論あのれみりゃ、ここぞとばかりにれみりゃスマイルを浮かべて話を続ける。 「おぜうさま!!! おがしですね!!!! れいむですか?まりさですか?」 「ん~ん♪ れみりゃ、ぷっでぃ~んがたべたいのぉ~♪」 にぱーっと笑顔を浮かべてゆっくり咲夜にお願いするれみりゃ。 外野でもぷっでぃ~んコールが沸き起こる。 「ぷっでぃ~ん? ぷっでぃ~ん。……ぷっでぃ~ん!!!!!」 「う~♪ ぷっでぃ~ん♪ ぷっでぃ~ん♪」 咲夜が連呼したぷっでぃ~んに合わせて自分も叫ぶ。 咲夜の目が真っ赤になっているとも知らないで。 「しょくりょーが!!!」 そのまま声を張り上げ目の前のれみりゃへ。 勢いよく跳躍し、自慢の歯でれみりゃの両腕を噛み千切る。 「ほんじゃぎゃーーーーーーー!!!!!!」 今まで自分の我侭を聞いていたゆっくり咲夜の突然の行動と腕の痛みに、涙を流しながら転がり悶えるれみりゃ。 「こんなのおぜうさまじゃないわーーーーー!!!!!!!」 そう言って、引きちぎった両腕を貪る咲夜。 「うがぁ!! れみりゃの! ……それはたべものじゃなぐでれみりゃのー!……」 そんな声はお構いなしにそのまま全身を貪っていく咲夜。 「う~!! ♪ えい! えい♪ うっう~れみりゃはつよいどぉ~♪」 咄嗟に、回復した右腕でビニール傘を使い反撃にでる。 しかし、お世辞にも早いとは言えないその攻撃を食らうほどゆっくり咲夜は馬鹿ではない。 「むっしゃむっしゃ!!!」 あっけなく再生したての右腕を再び口ちぎられ、その牙はれみりゃの頭に向けられる。 「おぜうさまとはちてもにつかないわ!!!」 「んぎゃーーー!!! うっ、う゛わ゛ーーー!!!」 頬を食いちぎる、そのまま顔面を恐ろしいスピードで飲み込んでいく。 周りのゆっくりは逃げもせずただおろおろするばかりである。 「う~!! う~~~~!!!!」 「ばっ、ばぁ~か!! ざぐやにいいづげでやどぅ~!!!」 「ざぐや!!! ざぐやーーー!!!! どごーーーーー!!!!」 通常自分たちが食すゆっくり饅頭。 それが攻撃してくると、れみりゃは唯おろおろしてなすがままにされるしかない。 それは、アリスに襲われた時、自らの子孫を残すためでもあるのだ。 それだけを遺して息絶えるれみりゃ。 間髪居れず次の肉まんへ狙いを定めるゆっくり咲夜。 「こんなにぐまん!!!! しょぶんじますーーーー!!!!!」 次の肉まんも圧倒的だった。 足を食いちぎりそのままお腹へ。 たくさんの肉まんの具を掻き出しながら飲み込んでいく。 「ざぐやーーー!!! ごわいひどが!!! ごわいひどがいるどぉーー!!!」 それを言い終わる頃には既に残すは首から上のみ。 「ざぐやーー!! だずげでーーー!!! それがらぷっでぃ~ん!!!」 それが最後の言葉になった。 次の肉まんは珍しく、飛んで逃げようとした。 「う~♪ れみりゃはどべるんだぞぉ~♪」 しかし、見せびらかすようにゆっくり咲夜の目の前で浮かんでいたため即座に羽が食べられる。 そして落下する体。 「んびょん!! ……!! う~!!」 勢いよく地面にぶつかったこのれみりゃはそこで抵抗を諦めたようだ。 それ故、一番早い時間で完食された。 「ふー……。!!!」 まだ残っているれみりゃ達の方へ向き直るゆっくり咲夜。 「う……。う~♪」 「う~♪ う~♪」 「うっう~あうあう♪」 一致団結してご機嫌をとる、それを白けた顔で眺める咲夜。 「う~~♪」 「「「うっ~♪」」」 れみりゃ達も、その様子を見てほっと一安心、もう食べる気は無いと判断したのであろう。 「れみ☆ry、うーーーー!!!」 咲夜のもとへ近づいてきた一匹に狙いを定めて食事を再開する咲夜。 御遊戯の雰囲気から一変、再びそこは地獄絵図と化した。 「おぜうさまのにせものめ!!!」 「う゛わ゛ーーーー!!! ざぐや゛ーーーーーー!!!!!」 今まさに食べられている一匹が発した言葉、それが咲夜に届くことは無かった。 そして、ゆっくり咲夜に耳にも届くことは無かった。 ……。 「それではこれで失礼します」 「ご苦労様」 「おう、ありがとさん」 「お二人とも、プリン食べたくないですか?」 パチュリーと魔理沙に紅茶をだして図書館を後にする咲夜。 「今日は安心して普通の紅茶を飲みたい」 そう言われて小悪魔に変わって紅茶を淹れた。 時間を止め、出来る限り最速で淹れ終えたのだが、時間を戻した時に運悪く躓いていた小悪魔とぶつかって淹れなおし&後始末。 おかげで大分時間が掛かってしまった。 そうだ、何時も一つで不満げだったからたまにはもう一つ作ってあげよう。 それで機嫌がよくなれば、もう一度可愛い可愛い御遊戯会が鑑賞できる。 先ほどよりも、本気を出してプリンを作っていく咲夜。 おいしければおいしい程御遊戯会を見れるチャンスが増すのだ、そう考えれば一段と気合が入る。 「できた」 何時ものプリンの上にさくらんぼと生クリーム。 その懇親の一品をお盆に載せる。 そうだ、と思い立ち以前ご機嫌を取るのに使ったきぐるみの帽子も被る。 準備万端、いざ庭へ。 「れみりゃさまー!! ぷっでぃ~~んをお持ちしましたよ!!! ……」 元気よく先ほどまでれみりゃが居た場所に向かった咲夜。 そこにはパラパラと散らばっている肉まんの具と人数分のれみりゃの服と帽子。 そのうち一枚は何故かシャツが裏返っていた。 呆然と立ち尽くす咲夜。 ゆっくりフランなら唯の悪戯だけだし、門番はきつく言い聞かせているから食べない。 ……? 全く原因が分からず呆然としている咲夜、一点を見つめたまま辛うじてお盆を支えている。 そこに近づく一人の人影。 「さくやさん。おいしそうなぷりんですね♪ もらってもいいですか?」 「…………」 無言で首を縦に振る咲夜。 「えへへ、有難うございます♪」 そう言って彼女は、もと来た道を戻っていった。 その頃、ゆっくり咲夜は紅魔館の中へ入り込んでいた。 「ゆ! そこ、ちゃんとしごとしなしゃい!!!」 「そこはみょういいわ!! こっちのおしょうじをよろしくね!!!!」 そんな事を言いながらまるで本物のメイド長のような態度で屋敷をうろついて行く。 「咲夜~? 紅茶を入れて欲しいんだけど」 「ゆっ!」 昼間、博麗神社へ行っていたため起きていたこの屋敷の真の主、レミリア・スカーレット。 従者に紅茶を入れて貰おうと、掴まらない咲夜を探していた所だった。 それと丁度かち合ったゆっくり咲夜。 ゆっくり咲夜の顔に笑みがこぼれる。 「おおおお!!!! おぜうさまー!!!!! ほんもののおぜうさまーーー!!!」 鼻から蕨餅をダラダラ垂らし、まるで発情したゆっくりアリスの様にピョンピョンと近寄っていく。 勿論、今のコイツは素面である。 対するレミリアは特に驚かず、一瞥の後に。 「何、コイツ?」 「はぁはぁ、おぜうs……んびゃお!!!」 一発の弾幕で中の餡子を飛び散らせて朽ち果てるゆっくり咲夜。 勿論意識は一瞬で途切れた。 「? まぁ良いわ。さくやー! ……庭かしら?」 …… 「このプリンとても美味しいわね。小悪魔が作ったの?」 「いえ、咲夜さんが作りすぎたようなので、貰ってきたんです」 「こいつはうめぇぜ! 流石メイド長だけはあるぜ!」 「はい、(元に)戻ったら伝えておきますね♪」 …… 「ゆっくりたすけてねーーー!!! おかーさーん」 「ゆー!!! ゆっくりたすけてねーー!!!」 「おなかへったねー!!!」 「はやくおうちにかえって、おかあさんたちとゆっくりたべようね!!」 「ゆー、おにゃかへったー」 「……。!!! まんじゅう!! いっぱい!!!」 「ゆゆ!! れいむはまんじゅうじゃないよ!!! ぷりてーなかわいいれいむだよ!!!」 「むっしゃ!! これめっちゃいめぇ!!!!」 True End
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3265.html
作者:ムラッけ木槌 ※オリ設定があります。 ※れいぱーネタ含みます。 ※出来る限り具体的表現は避けているかもしれません。 れいぱーになるには訳がある れいむ種・まりさ種・ぱちゅりー種・ありす種をそれぞれ300匹程用意する。 違う種が触れ合わないよう場所を分け、ゆっくりできる環境内で1ヶ月程生活させた。 脱走などしないように頑丈な柵を使うが、それ以外は野生並のゆっくりを送らせる。 さぁ実験はここからだ。 「ぎゃおー!」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「れ゛み゛り゛ゃ゛だー!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」 れみりゃのお面を被った有志の人たちに、ありす種以外のゆっくりを一気に10匹前後になる位までに潰してもらった。 ありすはせめて代替わりが必要だろうから更に1年位放置しておく。 さて、恐怖と共に一気に数が激減した各ゆっくり種。 3以上が数えられないとか言われる存在だ、さぞかし地獄のような体験だっただろう。 突然の環境変化と死に近い恐怖はさぞかし恐ろしかっただろう。 「れみりゃはもういなくなったよ…」 「れいむとてもこわかったよ、でももうだいじょうぶだね」 「みんなのぶんまでゆっくりするよ」 れいむ種同士ですーりすーりする。 お互いを慰めるかのようにそうしていく内、何匹かのれいむに一つの思いが走る。 (もうはなれたくないよ、もっとすりすりしたいよ) すりすり。 すりすり。すりすり。 すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。 すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。 すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。 すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり。すりすり… 「んほぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」 「どうじだのれいぶぅぅぅぅぅ!?」 身体の奥から燃え上がる衝動に突き動かされ、れいむは発情してしまった。 「れいむすっきりしちゃうよ!もうはなれないでね!もっとすりすりするよ!!!」 「でいむぅぅぅぅぅなんでぇぇぇぇぇぇ!!!???」 ゆっくりには色々な種類がいる。 その中でもありすは世間ではれいぱーと呼ばれるが、実はそんな事は無い。 ゆっくり種の中で一時期ありすの数が激減してしまい、その反動で子孫を多く増やす必要があったからなのだ。 その原因は子供達がカスタードを食べたいが為に起こった事であるが、ここでは割愛する。 数が一気に減り、また地獄のような苦しみを味わうとき、生けとし生ける者は本能として子を増やしやすくなる。 そのせいでれいぱーが生まれる。また個体数が落ち着かなかったためにありすは元々の数まで戻ろうとしていただけなのだ。 数が落ち着けばれいぱーの影の無い、元々の「とかいは」の意味も分かるかもしれない。 「「「「むきゅぉぉぉぉ!!!」」」」 「どうしたのよみんなぁぁぁ!?」 どうやら種ごとにやり方が違うようだ。 もとより身体が弱いぱちゅりー種は集団でまず生クリームを相手に浴びせてから互いを震わせている。 「まりさきもちいいんだぜ!」 「とうぜんだぜ!まりさのはごくじょうなんだぜ!」 まりさ種はもうそれぞれがノリノリである。 …もしかしたら既にまりさ種は数が少なくなり始めていたのかもしれない。 ともあれ、折角なのでこのぱちゅりー4匹を野に放ってみる。 「ゆっくりしていってね!」 「「「「むきゅ、ゆっくりしていってね」」」」 ほどなくして1匹のれいむと遭遇する4匹。 「ぱちゅりーたちはどうしていっしょにいるの?」 「まえはみんなでくらしてたんだけど、れみりゃがきてゆっくりできなくなってたの」 「ゆゆ、それはたいへんだったね…」 「だかられいむ、れいむのところですこしゆっくりさせてもらえない?」 「ゆっくりわかったよ!」 ここまですりすりが始まる気配はない。 これは失敗だったのだろうか? 「ついたよ、ここがれいむのおうちだよ!」 「むきゅ、すてきなおうちね」 「ゆっへん、すごいでしょ!」 「れいむはとてもちてきね」 褒められていい気になるれいむ。 「ね、ねぇれいむ」 「ゆ?どうしたの?」 「その…すてきなれいむにすりすりしていい?」 「もちろんだよ!」 4匹の内の1匹がれいむにすりすりをはじめる。 「ぱちゅりーずるい…れいむにすりすりするよ」 「ゆゆ、くすぐったいよ」 「むきゅ、すりすりしたいわ」 「ゆっくりなかまにいれてね」 「みんなゆっくりかわいいれいむにすりすりしてね!」 あれよあれよとぱちゅりー4匹全員がれいむを囲みすりすりを始める。 「むきゅ、れいむはとてもすてきなゆっくりね」 「れいむはとてもしんせつなゆっくりね」 「むきゅぅん、れいむはとてもいいゆっくりね」 「れいむはとてもかわいいゆっくりね」 どんどんとすりすりのスピードが上がってくる。 並びたてられた美辞麗句にれいむの自意識も自然と高まる。 れいむがまだ気付かないこの瞬間。 びちゃ。 びちゃびちゃびちゃ。 れいむに降り注ぐ生クリーム。 「「「「むきょぉぉぉぉ!!!!」」」」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛!?」 その生クリームを刷り込むように、4方から身体を震わせるぱちゅりー達。 子供を作るために加え身体を震わせるための潤滑液の役割もしているようである。 「「「「「すっきりー!!!」」」」」 5匹がすっきりし、れいむからは8本の蔓が伸び始めている。 そのれいむの口に、”おうち”にあった食料を投げ込むぱちゅりー達。 「どぼぢで…むぐむぐ」 「ぱちゅりーたちはかずがすくないの、だからいっぱいあかちゃんをそだてなきゃいけないの」 「むきゅ、このぱちゅりーのちえをあかちゃんにさずけてりっぱなゆっくりにするのよ」 「まずはあかちゃんたちがちゃんとそだつまでめんどうみなきゃね」 「ゆうしゅうなこになってほしいわね」 期間こそ短かった割には、れいぱー化に成功しているようである。 ただ集団で仕掛け、子供を放置しないという点はぱちゅりー種らしい選択と感じた。 しかも即座に食べ物を与える事で死ぬ事も防いでいる。 「むきゅぅん、さすがはれいむ、ぱちゅりーのきゅうせいしゅね!」 「れいむはぱちゅりーにえらばれたさいこうにゆっくりしたゆっくりね」 「むきゅ、あかちゃんがゆっくりしているのもれいむがすごくゆっくりしてりからよ」 「ほんとうにすばらしいわ、れいむはとってもゆっくりできるのね、そんなれいむといっしょにいたいわ」 「ゆ、そんなにほめたらはずかしいよ」 べた褒めにされて有頂天になるれいむ。 しかし傍から見たらぱちゅりーにいいようにされているようにしか見えなかった。 その茎という茎から小さいゆっくりが実り始める。 その数れいむ8匹にぱちゅりー24匹。 これだけ増えてもぱちゅりー種はすぐ数が減ってしまうのではないか? 数日後。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ゆっくちおいしかったよ!!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 「「「「「「「「ゆっくりおなかすいたよ…」」」」」」」」 お腹が膨れ満足した24匹のぱちゅりー。 食べ足りずうなだれる8匹のれいむ。 「おちびちゃんがおなかをすかしてるよ!もっとごはんをあげてね!」 「なにいってるの?みんなにはおなじりょうをあげたのよ」 「それにほとんどのおちびちゃんはまんぞくしてるし」 「むきゅ、まったくもんだいはないわね」 「れいむもゆっくりりかいするのよ」 元より少食のため、ぱちゅりー種は親子共々満ち足りていた。 一方のれいむしゅはその量では足りず、空腹の状態だった。 抗議の声を上げようにも多数決で黙殺される。 力任せに追い払おうにも、いくらぱちゅりー種が弱いとはいえ4対1、ひいては28対9では勝ち目が無い。 「あかちゃんのためにおうたをうたうよ!」 せめて空腹を紛らわそうと歌を歌おうとする。 「これからみんながかしこくなるためにおべんきょうをするのよ」 「そうよ、かしこくなかったらみんなゆっくりできなくなるのよ」 「いっぱいまなんで、りっぱなゆっくりにならないとね」 「だかられいむはしずかにしててね?」 「ゆ゛ぐぅ…」 そのつど、4匹のぱちゅりーがれいむに圧力をかける。 食事も満足に出来ず、行動もぐっと制限され、怒ろうとしても美辞麗句にいい気にさせられる。 完全にれいむはぱちゅりーの支配下に置かれていたのだ。 「むきゅ、みんな、おかーさんたちがすりすりしてあげるわ」 「おかーさん、すりすりしてー」 子ぱちゅりー達にすりすりするぱちゅりー達。 「むきゅ?なんだかむずむずしてきたわ」 「それはおとなになるしるしなのよ」 子供達にれいぱーの因子が発生してきたのを見計らい、親ぱちゅりー達は4人で行動する事を教え始めた。 そして子れいむをそれぞれ4人で囲ませ、すりすりさせる。 勿論親ぱちゅりー達4人も親れいむを囲む。 そして、それぞれの気持ちが高ぶり… 「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」 「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」 「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」 「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」 「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」 「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」「むきょぉぉぉぉぉ!!!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」 「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「すっきりー!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 「「「「おかーさん、いってくるわ!」」」」 「「「「ちてきでかしこいゆっくりになるのよ」」」」 巣立ちの時が来た。 4匹1組になり、親元から離れるようだ。 「「「「ゆっくりきをつけるのよ!」」」」 「「「「むきゅ、がんばるよ!」」」」 6組の子ぱちゅりーが立派な姿を見てほろりと涙を溢す4匹。 「こどもっていいわね」 「むきゅ、こんどはまりさのこどももよくないかしら」 「すだちしたてのまりさならかわいくていいかもしれないわね」 「そしてそのこからうまれたあかちゃん…とってもゆっくりできそうね」 予想よりも大分違う方向となってしまったが、実験は大成功に終わったようだ。 この調子で生存本能を刺激していけば、殆どのゆっくりがれいぱー化するだろう。 さて、ありす種が長い月日を掛け大量に繁殖させてれいぱー化が解けるのが先か、他の種のれいぱー化が進み4種のれいぱーが氾濫するのが先か。 また、れいぱー化の解けたありす種をれいぱーと化した他の種の所に投げ込んでみた場合どうなるか。 ゆー物学はまだ、始まったばかりである。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あとがき 偶にはありす以外のれいぱーものを…と思っていたらなんだか方向性が変わってしまったような。 今まで書いたもの 博麗神社にて。 炎のゆっくり ゆっくりを育てたら。 ありす育ての名まりさ 長生きドスの群 メガゆっくり ゆっくり畑 益ゆっくりと害ゆっくり ゲスの行き着く先 つかれたまりさ 噂・ゲスの宿命 ゆっくりすること 決断 くっつくよ!!! ゆっくり勝負
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4671.html
「ゆっくりひな」 ~~3ヶ月前~~ ゆっくりひなを飼いたかった私は、川原に来ていた。 川原に来た理由は特に無い。ここにいなければ、次は、森に行く予定だった。 ゆっくりは水に弱いせいか、川原にはゆっくりの姿が見えない。 「くるくるー」 あきらめて帰ろうとすると妙な声が聞こえた。 声が聞こえたほうは葦だと思われる草に囲まれるあたりだ。 葦だと思う植物を掻き分けて進むと、ゆっくりがいた。 緑色の髪と特徴的なリボンと宙に浮きながらくるくる回っていることから、そのゆっくりはゆっくりひなだと思う。 確信が持てないのは、珍しく胴付きであること、それと大きさがやけに小さいからだ。A4サイズの単行本くらいの大きさだ。 普通の胴付きはその倍くらいの大きさはある。 じろじろ見ていると、こちらに気づいたそのゆっくりが声をかけてきた。 「どーしたのおにーしゃん?厄をすってほしいの?」 どこか、舌ったらずな感じで、そう言った。 その台詞でこのゆっくりがひなだと確信した。 ゆっくりひなには、とある特徴がある。 厄 (ゆっくりできないもの、環境ホルモン等の汚染物質、他人の不幸など) を集めて自身の中に溜めることができるのだ。 溜めた厄は川に流したり、地面に穴を掘って埋めたりしているらしい。 厄を集めると言うことは、周りのゆっくりにとっては、ゆっくりできるはずだが、 たいていの場合は、他のゆっくりは、ゆっくりひなに近寄ろうとしない。 ―――ゆっくりひなに触ると厄が移るのだ。 そのため、ゆっくりひなのほとんどは、孤独に生活している。 私は、ゆっくりひなに手を伸ばした。 「やめて!!さわらにゃいで!!」 いきなり拒絶された。・・・が無視して近づく、 「これいじょうちかよったら、おにーしゃんにも、厄がうつっちゃう!!」 無視して近づいて、ゆっくりひなの頭をなでてみる。 「ごめんにゃさい、おにーしゃんに厄がうつっちゃった。・・・でもうれしい。こんなにやさしくされたのはじめて・・・」 頭をなで続けてみた。 「ひな、もうだみぇ、おにーしゃんがいないとゆっくりできない」 「私の家に来ないか」 私は、そう提案してみた。 「いいのおにーしゃん、ひな、おにーしゃんといてもいいの?」 「私は構わないさ」 「ありがとう、いっしょにゆっくりしましょう!」 ひなは大粒の涙を浮かべながらそういった。 こうして、私は、ゆっくりひなと生活することになった。 ちなみに、このときゆっくりひなが集めていたのは、漆らしく、 手がかぶれたのは、ひなには内緒だ。 ~~現在~~ ゆっくりひなは、実にかわいい。 くるくるまわっている姿は、かわいい。 クッキーを両手でつかんで食べてる姿も、かわいい。 ひなの全てがかわいい。 だから、これからする行動もきっとかわいいはずだ、見なくてはならない。 数分前、ひなは、 「厄をながしてくりゅのー」 と言って、トイレに入っていった。 話は変わるが、ひなの厄で手がかぶれた私は、ひなに厄を集める事を禁止している。 ひなは、 「厄をあつめにゃいと、おにーしゃんがゆっくりできにゃいの」 と言っていたが、 ひなのあごを小指で軽く持ち上げながら、 「ひなに厄を集めさせる為に一緒になった訳じゃない」 と説得したら、顔を真っ赤にしながら、納得してくれた。これでひなに触っても大丈夫。 とは言えひなの厄を集める能力は、本人の意識外でも少し働いてるらしく、 1、2ヶ月に一度無意識に集めた厄をトイレに流している。 私は一度、どうやって厄をながしているのか、見せてほしい是非といったが、 顔を真っ赤にしながら 「はずかしいかりゃ、それだけはだめー」 と言われた。 むりやり見るという選択肢もあるが、無理やりはよくない。 事は、エレガントに紳士的に行うのが、私のモットーだ。 そんなわけで、私は、ひなの入っているトイレのドアに耳をくっつけて中の音を聞いている。 時折「くるくるー」と聞こえるが、それだけで中で何をしているかはわからない。それが逆に私の想像を掻き立てる。 (くそっ、どうしてトイレにドアがついているんだ!!) ご丁寧にトイレの鍵までかけている。 (教えたわけでもないのに、鍵をかけられるなんてひなは賢いな) トイレのドアの鍵を「うんしょ!、うんしょ!」とかけているひなを幻視していると、・・・思い出した。 (そうだ!!こんなこともあろうかと盗撮用のビデオカメラを買ったんだった。) 私は、しまってあるはずの押入れの中をがさごそと漁って目的のものを見つけた。 (電池は?・・・ある!) 私は、トイレの前まで移動した。 (トイレの下にビデオカメラを差し込む隙間は?・・・ある!!ある!!) 私は、運命の神様に感謝した。感謝だけでは足りなかったので運命の神様がいそうな方向に3度ほど土下座した。 そうして、いざ事に及ぼうとした私は、ある事を思い出した。 (確かこのビデオカメラには録画用のアタッチメントもあったはずだ。) あまりに事がうまく行き過ぎていたのでそのことを忘れていた。 (ひなのかわいい姿を一度見ただけで満足できるか?・・・否!!録画していつもなんどでも楽しむべきだ!) 私は、急いで押入れに戻り、アタッチメントを探し始めた。がこういうときに限って見つからない。 時計を見ると、ひながトイレに入ってから5分ほど経過していた。 もうすぐ、ひなの厄流しが終わってしまう。 「どこだ!どこだ!どこだ!どこにやった!!」 アタッチメントさえあれば、ひなのかわいい(はずの)厄流しを永遠に楽しめるのに。 「おにーしゃん、なにさがしてるのー」 「ひなのかわいい姿を録画できるビデオカメラさ」 「ビデオカメラならこっちにありゅよー」 「ああ、そっちにあったか」 いつの間にか、ひなの厄流しが終わっていた。 私は、トイレに入って号泣した。泣いたというか、むしろ鳴いた。 生まれて初めて男泣きした。 ~~翌日~~ 夢の中でも、昨日の失敗を悔やんでたらしく、目元には、涙のあとがあった。 時刻は6:55分目覚ましの鳴る5分前だ。 微妙すぎる時間に起きた私は、まだ寝ているであろう、ひなの寝顔を見に行った。 かわいい、実にかわいい。 ひなはくーくーとかわいい寝息を立てている。 ひなは私が作った、簡易ベットで寝ている。中身を限界まで入れたティッシュの箱を布で覆ったものだ。 布団は、厚手のハンカチをそのまま利用している。 このまま時間が止まればいいのに。と私が本気で思っていると、目覚ましのアラームが鳴った。 俺には、時を止める事はできないようだ。 「ん~、あさ~」 ひなが目をこすりながら、起きた。 ちなみに、この時すでに私は、台所に行き、朝食を作りはじめている。 ひなの寝起きは、実に興味深いが、私がじっと眺めているところをひなに知られるといい気持ちはしないだろう。 だから、私は眺めていなかったかのように振舞う。 朝食も終わり、着替え等、朝のしたくも終わると、家を出るまでの間は、 ひなか、テレビを見て過ごす。 今日は、ひなを見ることにする。 「くるくるー、くるくるー」 ひなは、そう言いながら宙に浮きながら、くるくる回っている。 ところで、ゆっくりふらんや、れみりあなんかが、空を飛ぶのは羽があるからと言う理由でなっとくできるが、 羽も無いひなはなぜ宙に浮けるのだろうか、 本人に聞いてみた。 「うかんでにゃいと、くるくるーってできにゃいからだよ」 と答えてくれた。理由になってない。かわいいから許す。 くるくる回っているひなを見ている私は、ある事を思いついた。 早速実行する。 くるくる回っているひなの体を両手で優しく包んで回るのをやめさせる。 「?どーしたの、おにーしゃん」 「なんでもない」 と言って、手を離す。 「へんにゃ、おにーしゃん?」 そう言って、ひなはくるくる回りだす。 しばらくしたら、また、両手で優しく包んで回るのをやめさせる。 それを、何度も繰り返す。 何度も繰り返す。 繰り返す。 「もう!おにーしゃんやめてね!!ぷくー」 そう言って、ひなは、ほほを膨らませた。 私を、途方も無い悲しみを襲ったが、ひなかわいいよ。 「わかった、もう邪魔しない」 私は、そう言うと腹ばいになって腕を胸の下に持ってきた。猫の箱座りみたいに。 「これでもう、邪魔できないよ」 それを聞いてひなは、すぐには、邪魔できないことを確認してから、 またくるくる回りだした。 「くるくるー、くるくるー」 少し、警戒していたがすぐに、楽しそうに回りだした。 計画通りだ。ひなは、いまこちらに注意を払っていない。 もう、くるくるを止められないと思っているからだ。 しかし、私の目的は、くるくるを止めることではない。 現在、私のだいたい70cmほど前方 高さはだいたい40cmの辺りにひなはいる。 そう、この位置ならひなのスカートの中が良く見えるのだ。 「くるくるー、くるくるー」 ひなのかわいい笑顔が見える。 「くるくるー、くるくるー」 回った拍子にスカートがめくれ上がり、すらっと白くてきれいな足が見える。 (あと・・・あともう少しだ!) 「くるくるー、くるくるー」 ふっくらとしたきれいな太ももが見える。 (あともう少しで、ひなの聖少女領域が拝める!) しかし、太ももから上を拝むことはできない。 見えそうだが重力にしたがって降りてくるスカートがいいところで邪魔をする。 (私のプランには、間違いはなかった。・・・間違っているのは世界のほうだ!!) 私が、世界と世界を作った神に頭の中で文句を言っていると、 「くるくるー、くるく・・・おにーしゃんそろそろじかんじゃない」 ひなはくるくる回るのをやめて、床に下りながらそういった。 「なんてこった!!ちくしょうめ!!」 私は、あきらめて、荷物を持って玄関に向かう。 「おにーしゃんいってらっしゃーい」 ひなが私を見送っている。 「・・・ああ、行って来る」 「あっ、おにーしゃん」 そう言って、ひなは、私のほほの辺りに浮いてきた。 「どうしたんだ」 ひなは、私の疑問に答えずに、 私のほほに 「ちゅ」 キスをした。 (!?!!??!!!っな!!) 「えへへー、いってらっしゃいおにーしゃん」 「うむ」 内心の動揺を悟られないようにこれだけ返事をした。 私は、駅までの道をスキップしていた。 周囲の目など気にならない。 私は、大声で叫んでいた。 「ヒャッハー!!幸せだー!!」 ~ あ ~ と ~ が ~ き ~ 主人公はたっぷり変態なことしてるけど、 ばれてないからいじめじゃないのかもしれない いじめと言うのは、 いじめる側と、いじめられる側のどちらかが認識して初めていじめになるのだと 書いてて思った。 さんきゅ~ふぉ~り~でぃんぐ このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2885.html
※台詞のみで構成されます ※虐待分は薄めです 「やあ、れいむにまりさにおちびちゃんたち。 ゆっくりしていってね・・・」 「「ゆっくりしていってね!」」 「「「「「ゆっきゅりちていってね!」」」」」 「ゆゆっ! おにいさんはゆっくりできるひと?」 「・・・分からない」 「ゆぅ? どうしてわからないんだぜ?」 「なら、君たちは今ゆっくりしているかい?」 「あたりまえだよ! れいむたちはすごくゆっくりしてるよ!」 「そうか。 でも、私には君達の言うゆっくりが何なのか分からないんだよ」 「ゆぅ? ゆっくりはゆっくりだよ! ゆっくりりかいしてね!」 「それじゃ答えになっていないよ・・・。 そうだ、君に質問してもいいかな?」 「ゆっくりこたえるよ!」 「ありがとう。 なら、ご飯がいっぱいあればゆっくりできるかい?」 「あたりまえだぜ! とってもゆっくりできるんだぜ!」 「そうか。 なら、君の子ども達を全員殺す代わりにたくさんの食べ物をあげると言ったらゆっくり出来るかい?」 「ゆゆっ!れいむのおちびちゃんたちにひどいことしないでね!?」 「そんなつもりじゃないんだ。 もし、そう言ったらどうするか、と聞きたいだけなんだよ」 「そんなのおことわりなんだぜ! みんなでいないとゆっくりできないんだぜ!」 「でも、君たちはさっき食べ物がたくさんあればゆっくり出来ると言っていたよね?」 「ゆっ!? でも、やっぱりおちびちゃんがいないとゆっくりできないよ!」 「じゃあ、おちびちゃん達がいれば食べ物がなくてもゆっくり出来るのかい?」 「そんなわけないんだぜ! ぽんぽんがぺこぺこだとゆっくりできないんだぜ!」 「おかしいな。 食べ物がいっぱいあればゆっくり出来る。 家族がいればゆっくり出来る」 「「「「「にゃにがおかちいの?」」」」」 「だって、家族が少なければ一人当たりの取り分が増えるだろう?」 「そうだね!・・・・・・ゆゆっ!?」 「じゃあ、なんで食べ物が少なくなる原因である家族が一緒にいないとゆっくり出来ないんだ?」 「でもまりさたちはゆっくりしてるんだぜ!?」 「ああ、それは知ってる。 じゃあ、なんでゆっくり出来るんだ?」 「それは・・・」 「だって、そうだろ? ご飯がいっぱいあればゆっくり出来るんなら子どもがいないほうがもっとゆっくり出来るはずじゃないか?」 「そんなことないよ!」 「でも、食べ物がいっぱいあればゆっくり出来るんだろ?」 「あたりまえなんだぜ!」 「でも、君たちは家族がいないとゆっくり出来ない」 「あたりまえだよ!」 「なら、冬になって食べ物が少なくなっても君たちはゆっくり出来るのかい?」 「「「「「ぽんぽんがぺきょぺきょだちょゆっくちできにゃいよ!」」」」」 「でも、家族がいればゆっくり出来るんだろ?」 「「「「「しょーだよ!」」」」」 「しかし、ご飯がないと家族が死んでしまうよ?」 「そうならないようにあきになったらいっぱいごはんをあつめるんだよ!」 「そうだね。でもその間他の動物も越冬の準備をしているよね?」 「ゆぅ?それがどうしたんだぜ?」 「ご飯を集めに行っている間に子ども達が食べられてしまうかもしれない」 「「「「「ゆえーん! どうちてしょんなこちょいうにょおおおおお!?」」」」」 「だったらまりさがおうちでおちびちゃんたちをまもるんだぜ!」 「ご飯集めはどうするんだい?」 「れいむががんばるよ!」 「それじゃあ、その間れいむは全然ゆっくり出来ないじゃないか?」 「そのぶんふゆにゆっくりすればいいんだよ!」 「頑張って集まるなら苦労しないだろ? ご飯が集まらなくて子ども達を死なせたらまりさがおうちに残った意味がないじゃないか」 「ゆゆっ! ちがうよ! まりさがまもってくれないとふゆのまえにしんじゃうんだよ!」 「大体、まりさがいたところで熊や人間に襲われたらひとたまりもないじゃないだろう。 勝てると思うか?」 「それでもまりさはおちびちゃんをまもりたいんだぜ!」 「で、れいむ一人を残して死ぬのかい? それじゃれいむがゆっくり出来ないだろう?」 「ゆぐっ・・・・・・じゃあ、どうすればいいんだぜ?」 「君がおうちに残れば虫からは子どもを守れる。 でも、強い生き物と出会ったられいむを一人にさせてしまうし、ご飯も集まらない」 「ゆぅ・・・」 「君がれいむと一緒にご飯を集めに行けばご飯がたくさん集まるけど、子ども達は小さな虫に殺されるかも知れない」 「「「「「みょーわからにゃいよー!」」」」」 「それだけじゃないぞ」 「ゆゆっ! まだなにかあるの!?」 「一緒に外に行くとれみりゃに襲われたりした時に子ども達を育てるものがいなくなってしまう」 「ゆぅ・・・みつからなければいいんだぜ!」 「そうだな。 でも、れみりゃ達だって冬を越えるために必死なんだ。 そう簡単にいくと思うかい?」 「ゆ・・・それは・・・」 「だったられみりゃがはいってこれないおうちにすればいいんだぜ!」 「「「「「ゆゆっ!しゃしゅがおかーしゃん!」」」」」 「答えになっていないし、それじゃあ狭いぞ?」 「でも、あんぜんだよ!」 「だったら、どうして今お前達は広いおうちに住んでいるんだ?」 「ゆっくりできるからだぜ!」 「じゃあ、狭いおうちでゆっくり出来るのかい?」 「おちびちゃんたちがあんぜんならゆっくりできるよ!」 「だが、さっき広いおうちはゆっくり出来るといっていたじゃないか?」 「おちびちゃんたちのあんぜんがいちばんだよ!」 「それに・・・狭いおうちはそんなにも安全なのか?」 「「「「「ゆぅ?」」」」」 「もし、蛇や大ムカデが来たらどうするんだ?」 「れいむたちがやっつけるよ!」 「しかし、狭いとお前達は這いずることしかできないだろう? そもそも勝てるかも怪しいな」 「じゃあ、ひろいおうちのほうが・・・」 「広いおうちに住むとその分大きくて強い敵に襲われるぞ」 「「ゆゆっ!?」」 「じゃあ、ちょっとだけせまいおうちにするよ!」 「中途半端が一番危ない。 人間が腕を突っ込めればそれでおしまいだよ」 「「ゆーーーーーっ!?」」 「そもそも、人間が腕を突っ込めない大きさの巣じゃ親の君たちが中に入れない」 「「だっだらどほずればいいの!?」」 「分からないな。 それに、まだ問題がある」 「まだあるの!?」 「ああ。 狭いおうちだと殆ど身動きが取れないかもしれないだろう?」 「「「れーみゅたちはおきゃーしゃんがいれぇばゆっくちできりゅよ!」」」 「「まりしゃもだよ!」」 「お前達は大丈夫だろう。でも親の君たちはどうなんだい?」 「まりさたちはおちびちゃんがいればゆっくりできるんだぜ!」 「れいむもだよ!」 「そうか。でも、ずっと動かないでいると春になったときに殆ど動けないぞ?」 「「「「しょんにゃのかんけーにゃいよ!」」」」」 「いや、関係あるんだ。 春になったときにどうやって餌を集める?どうやってれみりゃから逃げる?」 「ゆ、ゆっくりがんばるよ!」 「頑張ってどうにかなるなら苦労しない」 「ゆゆっ!でも、おちびちゃんがぶじならそれでじゅうぶんだぜ!」 「お前はそうかもしれないが、子ども達は悲しい思いをするぞ? 餌集めだって自分でしなきゃならなくなる」 「「「「「おきゃーしゃんがいにゃいとゆっくちできにゃいよ!」」」」」 「分かるだろう?こいつらはお前達がいないとゆっくり出来ないんだ」 「ゆぅ・・・なられいむたちがんばってゆっくりするよ!」 「どうやればゆっくり出来るんだ?」 「がんばっておちびちゃんたちをゆっくりさせてあげるんだよ!」 「頑張る、じゃあどうにもならないって言ってるだろう?」 「じゃあ、ひろいおうちでふゆのあいだゆっくりするよ!」 「広いおうちだと人間に襲われるぞ?」 「じゃ、じゃあせまいおうちでゆっくりするんだぜ!」 「運動能力が低下して春先にゆっくり出来なくなるぞ?」 「「ゆううううううううううううう!?」」 「それに・・・・・」 「「まだあるのおおおおおおおおお!?」」 「どんなに頑張っても子ども達を守れなかったらどうするんだ?」 「ゆゆっ!? がんばってまもるよ!」 「頑張って守ろうとしたせいで全員が死ぬことになるかもしれないんだぞ?」 「「「「「ゆゆっ!?」」」」」 「それなら1匹2匹は諦めて逃げたほうがゆっくり出来るんじゃないか?」 「ゆぅ・・・でもぉ・・・」 「それだって問題がある。 君たちは家族全員一緒じゃないとゆっくり出来ないんだよな?」 「そうだよ! みんななかよしさんなんだよ!」 「じゃあ、1匹でも死んだらゆっくり出来なくなるんじゃないか?」 「ゆ゛ぐっ!?」 「でも、下手に守れば全員が死んでしまう。 君たちは子ども達が死んでも平気かい?」 「ぞんなわげないでぢょおおおおおおお!?」 「じゃあ、守れない子は見捨てて逃げるのかい? 大事な家族なのに」 「ゆぎぃ・・・!?」 「子ども達だっていつかあっさり捨てられるかもしれないのにゆっくり出来るのかい?」 「「「「「ゆゆっ!?」」」」」 「お、おかしいんだぜ・・・なにをしてもゆっくりできないんだぜ!?」 「そうだろう。 だから私は分からないと言っているんだ・・・」 「ゆ、ゆっくりって・・・なんなんだぜ?」 「それも分からない。子どもを守る苦しみを味わうくらいなら子どもなんて居ない方が良いのかもしれない」 「そ、そんなわげない・・・よっ!?」 「「「「「しょーだよ!へんにゃこちょいわにゃいでね!?」」」」」 「しかし、子どもが居なければ子どもに関係するゆっくり出来ないことが解消するぞ?」 「で、でも・・・おちびちゃんたちといるとゆっくりできるんだぜ?」 「そうか。 でも、ゆっくりできるもののためにゆっくり出来ないなんておかしいと思わないか?」 「ゆ・・・ゆゆ・・・ゆっくりってなんなんだぜ!?」 「分からない。 分からない・・・。 家族といるとゆっくり出来るが、家族のためにゆっくり出来ない。 広いおうちは危なくて、狭いおうちは動けない」 「やべでよ! もうぎぎだぐないよ! ゆっぐぢでぎないよ!?」 「子どもを見捨てるとゆっくり出来ないけど、助けようとするとゆっくりさせてあげられない。子どもがいるからゆっくり出来る。 でもいるからこその悩みでゆっくり出来ない」 「「「「「やめちぇえええええええええええええ!」」」」」 「分からない・・・私には君達にとってのゆっくりが何なのか全く分からないんだ・・・」 「まりさも・・・わからないんだぜ・・・。 ゆっくりって・・・いったいなんなんだぜーーーーっ!!?」 ‐‐‐あとがき‐‐‐ 俺は寧ろこのお兄さんに何があったのかを知りたいよ byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2863.html
餡子(チェンジ)!げったーゆっくり ゆっくりプレイス最後の日! 突如として謎のゆっくり線を浴びてしまったゆっくりまりさ、ちぇん、みょん 彼女たちはゆっくり線の力により三匹で合体することが可能になった! 「ゆっくりがったいするよ!」 「わかるよー、ゆっくりわんだね」 「みょん!」 まりさの合図でみょんの頭に上にちぇんが上り更にその上にまりさが乗る 端から見るとまるでトーテムポールだ 「ちぇんじ!ゆっくりわん!」 まりさの掛け声で三匹のゆっくりが融合合体していく まりさが頭部、ちぇんが胴体、そしてみょんが脚部となる まりさの帽子を被り金色の髪をしている が、ちぇん種の尻尾が生えており脚もみょん種の特徴が出ている 「ゆ!ゆっくりぃぃぃぃぶーめらん!」 帽子から箒を取り出すまりさ 箒を咥えブーメランのように敵であるふらんに投げつける しかし、胴無しふらんは箒を回避するとゆっくりわんに向かって突進してくる 「ゆ!おーぷんゆっくり!」 掛け声と共にゆっくりわんが元の三匹にもどる まりさがジャンプでふらんを飛び越え、ちぇんが右から回り込み、みょんが下からふらんをくぐる 「わかるよーはやさでしょうぶだねー」 「みょん!」 「ゆ!」 次に一番上になるのはちぇん、真ん中がみょん、一番下がまりさの順合体する 「ちぇんじゆっくりつー!」 ゆっくりつーはちぇんの帽子を被っている最大の特徴は尻尾が長くなりまるで手足の如く武器となることだ 更に一番素早くふらんを圧倒する 「うー!ゆっくりしろ!」 あまりの速さに追いつけないふらん その背後からゆっくりつーが尻尾を使い連続攻撃を掛ける 「おーぷんゆっくり!」 ふらんが振り向いた瞬間合体を解除し離脱する そのまま勢いを利用し今度はみょんが一番上になりまりさ、ちぇんの順で合体する 「ちぇんじゆっくりすりー!」 「うー!しね!」 ふらんの体当たりを真っ向から受け止めるゆっくりすりー 一番パワーのあるゆっくりすりーがふらんを押し返していく 「うー!うー!」 ふらんを跳ね飛ばし、三匹はゆっくりわんに戻る 「とどめだよ!ゆっくりぃぃぃさあぁぁんしゃぁぁいん!」 ゆっくりわんが空気を大量に吸い込みはき出す だが、はき出されたのは空気ではない これぞ必殺ゆっくりさんしゃいん! ドススパークに匹敵するゆっくりろぼの必殺技だ! 「うああああ!!」 こうしてゆっくりチームは勝利した だが、戦いはまだ始まったばかりだ! by お題の人 電波を受信しました 続ける場合配役が変わる恐れがあります そして何か良い名前は無いものかw
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/787.html
虐待分と言えるようなものはないかもしれません 虐待お兄さんと愛でお兄さんが出ますが虐待したり愛でたりすることはありません というかそもそも、どんなジャンルに分類されるかもわかりません ↓では、ドウゾ 「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」 畑仕事を終えた帰り道、聞きなれた声が森に唱和する。 ふと目を向ければ、そこにいるのは当然、ゆっくりだ。 れいむとまりさのつがいが二組、道行く途中で出会って挨拶を交わしたようである。 なんでもない日常的な風景だ。俺は無視して歩き出した。 ここで近所の虐待お兄さんなら「ヒャッハー!」と有無を言わさず捕獲にかかるのだろうが、俺はそんなことしない。 あんな饅頭虐めて何が楽しいんだろうかと思う。うるさいだけじゃないか。 かといって、俺はゆっくりを愛でる趣味もない。ゆっくりに関わるといえば、畑を荒らしたやつを駆除するときくらいなものだ。 なのだが、ちょっと今回は事情が違った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆっくりしてるよ! れいむとまりさはどこからきたゆっくりなの?」 「このへんじゃみなおかおだね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆゆっ! ゆっくりしてるよ! だからどこからきたのかおしえてね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆぅ~! だからゆっくりしてるってば!」 「いいかげんにしてね! おはなしきいてね!」 何やら言い争いになっている。 どうも、新参のゆっくりに前からいた古参のゆっくりが怒っているようだが、どうしたんだ? ゆっくりにとって、「ゆっくりしていってね!」という言葉は挨拶以上のものを持つものだと聞いている。 人間風に言えば、スローガンというかポリシーというか信念というか。 ゆっくりは、ゆっくりできないこと、を何よりも嫌う。その顕れである言葉ではないのか? それを繰り返されるのがそんなに嫌なのだろうか。 とうとう、古参まりさは顔を真っ赤にして飛び跳ね始めた。 「ゆぅぅぅぅ!! れいむたちとはゆっくりできないよ!!」 「「ゆ?」」 そこで初めて、新参ゆっくり達は首、もとい頭を傾げた。 「「ゆっくりできないの?」」 「ゆっ……!! ゆっくりできないわけないよ!! まりさはゆっくりしてるよ!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「ゆゆぅぅぅぅぅ~!!!!」」 何故か悔しげに地団太(?)を踏む古参ゆっくり達。 ……ワケが分からん。 あの二匹はただ「ゆっくりしていってね!!」と言っているだけなのに、何をそんなに怒っているのか。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「うるざいよぉぉぉぉ!! れいむたちはもうどっかいってね!!」 「「ゆゆーっ!!」」 とうとう古参達が体当たりをし始めた。新参達は反撃するでもなくされるがままだ。 「「ゆっくりしていってよー!! ゆっくりー!!」」 「うるさいよ!! ゆっくりしてるよ!!」 「ゆっくりできないのはれいむたちのほうだよ!!」 攻撃が段々苛烈になっていく。 ……うーむ。 ゆっくり同士の喧嘩など、普段は珍しくもないのだが、なんだか今回は事情が違う気がする。 ちょっと興味が湧いてきたのだ。俺は事情を聞いてみることにした。 とりあえず声をかけてみよう。 「まぁちょっと待てお前ら」 「「「「ゆゆゆゆっ!!!!」」」」 びっくりした反応は全部一緒だった。 だがその後が違う。 「ゆゆっ! にんげんだよっ! にげるよれいむ!」 「ゆっくりできないよー!」 これは古参ゆっくり。 「ゆっ! おにいさんはゆっくりできるひと?」 「ゆっくりしていってね!」 これは新参ゆっくりだ。 古参は人間である俺を恐れているが、新参はそんな様子は微塵もない。よほど人里離れた場所からやってきたのだろうか。 「いや別に取って食いやしねーよ。お前達が喧嘩してたみたいだから、気になったんだ。一体全体、どうしたって言うんだい」 身を屈めて視線を低くしてやりながら、俺は訊いた。 口を開いたのは古参ゆっくりだった。 「ゆゆっ! あのこたちうるさいんだよ! ゆっくりしていってねってなんどもいうの!」 「れいむたちはゆっくりしてるのに!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 ゆっくり、という言葉に反応したのか、新参達が声を上げる。 「「だからうるさいよぉぉぉ!!」」 もう我慢できないのか激昂する古参達だが、その姿はどう見てもゆっくりしていない。 「お前ら、ゆっくりできてないじゃないか」 「ゆゆっ!? そんなことないよ」 「なんでそんなこというのぉぉぉ!?」 「だって、ほれ」 すぐさま突っかかってきた二匹を、新参ゆっくりのほうに見せてやる。 「「ゆ??」」 いきなり注目を浴びた二匹は、可愛らしく首をかしげるばかりで、どうして自分が見られているのか全然分かっていない様子だ。 知恵のついてない子供みたいな反応だが、それだけにむしろ泰然としたものまで感じさせる。 「ほら、あんなにゆっくりしてるだろ」 「「ゆううううううう……!?」」 反論が出ないあたり、この二匹も新参ゆっくりのゆっくりっぷりを感じ取ったのだろう。 「な? だからゆっくりできないのはお前らなんだって」 「ゆぅっ! ちがうよ! まりさはゆっくりできるゆっくりだよ!」 「そうだよ! あれはどんかんっていうんだよ! あんなにゆっくりしてちゃれみりゃにたべられちゃうよ!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「だからうるざいよぉぉぉぉぉ!!」」 できてねーよ。ゆっくりできてねーよ。 どうも、古参達は自分達こそがゆっくりできるゆっくりだと思っているのだが、しかしあの新参ゆっくりの真のゆっくりの前に、自信喪失寸前のようだ。 余裕のない態度がその表れであろう。 「まぁ、大体事情は分かった」 とりあえず俺の手に負えないってことは。 「とりあえず、俺の家にでも来るか。飯くらいは食わせてやる」 このまま放置しても良かったが、そうすると新参二匹がまた襲われてしまいそうだ。 ゆっくりなどどうでもいいことに変わりはないのだが、この二匹のことをもうちょっと知りたくなった。 あまりのゆっくりっぷりに癒されつつあったことも、まぁ認めよう。 「ゆ! ごはん! おにーさんのいえにつれてってね!」 「ゆっくりはやくね! ごはんー!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 古参二匹のふてぶてしさは正にゆっくりらしい。新参二匹も、どことなく声のトーンが上がっている。 俺は四匹を腕に抱きかかえると、家路についた。 その途中、談笑している虐待お兄さんと愛でお兄さんに遭遇する。 ……趣味が相反していそうな二人が、やたら仲が良さそうなのに驚く人もいるだろうが、別におかしなことではない。 他はどうだか知らないが、この愛でお兄さんは自分の飼っているゆっくりだけに愛情を注いでいるのだ。 それを偏愛だの差別だのという奴はまさかいないだろう。人間とて、飼い犬と野犬に注ぐ愛情には天と地ほどの差があろう。 犬とゆっくりの立場が置き換わっただけだ。だから愛でお兄さんも、実際はただのゆっくりを飼っているだけの人と言えよう。 もっとも、十数匹も飼って育てている時点で、既に普通ではないが。 「やぁ、どうも」 「これはこれは、とうとうあなたもこの道に……」 「違いますやりませんあんたと一緒にしないでください」 きめぇ丸もかくやという顔で擦り寄ってきた虐待お兄さんを遠ざける。 ちなみにこの虐待お兄さんは、何の変哲もない普通の虐待お兄さんである。 「そうですか。残念です。しかしそれならば何故ゆっくりを?」 「ええ、実はかくかくしかじか」 「まるまるうしうしということですね。なるほど」 日本語って便利だ。 「というわけで思わずこうして連れてきてしまったんですが、どうしたもんでしょうか。 このまま離してもこっちがこっちを虐めちゃいそうで、なんか後味悪いんですよね」 ふむふむとお兄さんズは頷きあったあと、「ならばこうしてみると良いでしょう」と提案してきた。 俺は二人に礼を述べると、再び家路についた。 十分も歩けば我が家だ。 「ただいまー!」 一人暮らしなので迎えてくれる人は誰もいないが、一応言う。 「「ゆっくりしていってね!!」」 今度先に反応したのは新参ゆっくりのほうだ。『おかえり』のニュアンスでも含んでいるのだろうか。 「ゆゆ! とってもきれいなおうちだよ!」 「ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにしようね!」 当然、こちらは古参ゆっくりである。別に気にすることはない。これがゆっくりという生き物だ。 俺は足の泥を払って、四匹を空き部屋に放り込んだ。壊されるようなものも特にない。 「それじゃあゆっくり待ってろよ。今メシ作ってきてやるからな」 「ゆっくりはやくね! まりさはおなかがすいたよ!」 「おいしいものたべさせてね!」 「「ゆっくりつくっていってね!!」」 最早どちらがどちらだとわざわざ説明する必要もあるまい。 俺は台所で余り物の野菜と冷えたご飯を適当に炒めてやった。まあ、野生のゆっくりにはそこそこ美味い飯になるだろう。 大皿二つに分けて持っていってやると、そこでは案の定の光景が繰り広げられていた。 古参二匹は、そこら中を跳ね廻っている。キャッキャと実に楽しそうだ。 新参二匹はというと、縁側のほうで寄り添いあって日向ぼっこをしている。猫か老人を思い浮かべる。 「ほら、飯だぞ」 部屋の真ん中に皿を置いてやると、古参ゆっくり達は早速飛びついてきた。 「ガツガツガツガツッ!!」 「うめっ! めっちゃうっめ!」 よほど飢えているのか、凄まじい食いっぷりだ。 ものの数分ですっかり皿は空になってしまった。 「ゆぅ~ん、おなかいっぱいだよー!」 「おしかったよ! ありがとうおにいさん!」 そう感謝されては、こちらも少しは嬉しい気分になる。 「はいはい、おそまつさま。それにしてももうちょっとゆっくり味わって食えよ」 「ゆっ! だっておいしかったんだもん!」 「まぁそれならいいが……」 言いながら、もう一つの皿のほうに目を向ける。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 新参二匹は、実にゆっくりと食事を楽しんでいる。 「どうだ。美味いか」 「ゆっくりおいしいよ! ゆっくりたべるよ!」 「そうか、まぁゆっくり味わってくれ」 「ゆっくりあじわうよ! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 見るものが幸せになってくるような、和やかな食事風景である。 ふと見れば今食事を終えたはずの二匹まで、また涎を垂らしているではないか。 「もっとゆっくり食えば良かったのにな」 「「ゆぅぅぅぅぅ~~~~~~~……!!」」 二匹は心底悔しそうであった。 食後も、二組の違いは明確に分かれていた。 古参は、食べてすぐだというのにまた遊び始めている。元気なことだ。まぁそのくらいじゃないと野生では生きていけんのかもしれん。 新参のほうは、部屋の隅のほうで寄り添いあって眠っている。牛になるぞ。 「ほら、次は水浴びさせてやる。こっち来い」 俺は古参を呼び寄せ、新参を起こしてやると、裏の水場に連れていった。 二つの大きめな桶に水を張り、それぞれの組を入れてやる。 「ゆっゆー! ぷしゅー♪ ぷしゅー♪」 「ゆーん! つべたいよれいむー! おかえしー♪」 古参は実に楽しそうに遊んでいる。 「ゆ~……ごくらく~」 「ゆっくりできるよー」 対してこちらは、まるで湯治場のジジイである。お前らほんとにゆっくりか……いやゆっくりだな。ゆっくりしてるし。 まるで子供と老人を見ているかのようである。 水遊びのあと、俺は元の部屋に戻り、四匹を前にして座った。 「どうだ。折角だし、今日は泊まっていくか」 四匹はいっせいに色めきたった。宿の心配はやはりあったのだろう。 「ゆっくりとまっていくよ!」 「ゆっくりしていくね! おにいさんもいっしょにゆっくりしてね!」 新参達は素直に喜びを表現している。 対して古参達は、 「とまっていくよ! でもそのこたちとはへやをべつにしてね!」 「そのこたちとはゆっくりできないよ! ゆっくりおねがいだよ!」 と言った。 「「ゆゆぅ!」」 新参達は傷ついたような顔をする。それはそうだろう。こいつらはただ一緒にゆっくりしたいだけなのだ。 「おいおい、酷いこと言うなよ。同じゆっくりだろ」 「ゆ! だってゆっくりゆっくりうるさいんだもん! そんなんじゃゆっくりできないよ!」 「ゆっくりすることが、お前達ゆっくりにとって一番大事なことだろ?」 「そうだけど……でもずっとゆっくりしてても、ごはんはとれないし、れみりゃからもにげられないよ!」 「ゆっくりするにも限度があるってことか?」 「ゆ! そのとおりだよ! ゆっくりしてばかりじゃゆっくりできないんだよ!」 日本語として何かおかしい気もするが、なるほど、実にもっともだ。 明日のゆっくりのために、今日のゆっくりを敢えて捨てる。捨てなければならない。悲しいけど、これ、現実なのよね。 ゆっくりだけでなく、人間にも通じる考え方であろう。 だが。 だがしかし、だ。 「それで、お前達は本当にゆっくりしていると言えるのか?」 「「ゆっ!?」」 俺は言った。目の前の二匹が、あまりにも哀れに思えたからだ。そしてそれが、自分や他の人間と重なったからかもしれない。 「ご飯を食べられればしあわせー♪だろうし、寝床にありつけばゆっくりできるだろう。 でもそれだけで、本当にゆっくりしているって言えるのか?」 「「どういうことぉぉぉぉ!?」」 「例えばの話、もしお前達が人間に捕まって、たくさんご飯をもらえたとするだろう。ゆっくりできるか!」 「ゆ! それはうれしいことだよ! ゆっくりできるよ!」 「目の前でたくさんの仲間達が、ご飯をもらえずにゆっくりしていても?」 「「ゆぅっ!?」」 その光景を想像したのだろう、二匹の顔が蒼白に染まった。 野生というだけあって、飢えの苦しみも知っているだろうから、まざまざと想像できたに違いない。 「掴まって狭い檻に入れられて、ゆっくりできるか? 確かにれみりゃからは襲われないし、安全だろうけど」 「ゆ、ゆぅ……」 「逆に、だ」 一拍置く。 「もし食べ物が足りなくても、もし安全な寝床がなくて……となりに大切な友達がいれば、ゆっくりできるんじゃないか?」 「「ゆゆっ……!!」」 二匹はお互いの顔を見合わせた。やはり、そんな経験があるのだろう。 苦しいときも支えあい、生き延びてきた、そんな経験が。 「そう、ゆっくりできるかどうかは、食べ物や寝床のあるなしじゃない。安全かどうかでもない。 一緒にゆっくりしたい誰かがいるか、そして何より『ゆっくりできている』と心から思えているか……そうなんじゃないか!?」 「「ゆ゛ーーーーーーーーー!!!!!!」」 ガァ────z______ン!!!という書き文字を頭から浮かべて、二匹は硬直した。 「お前達の今日の姿を見ていて、俺は思ったよ。 お前達はゆっくりできていなかった。それは、自然で生き抜くために、必要な在り方だっ。だから仕方ないとは思う。 だがな、見ろ」 俺は二匹を、新参ゆっくりのほうに向けてやる。 二匹はまたも注目を浴びて戸惑っていたが、やがて言った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 まるで太陽のような明るい笑顔で。 「心にゆとりのある生き物……なんと素晴らしいことか! いつもどんなときも、自分がゆっくりできているからこそ、あの二匹はあんなことが言えるんだ。 自分がゆっくりするだけでなく、他の人もゆっくりさせてあげたいがためにな」 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆぅぅぅぅぅう!!!」 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 とうとう、二匹は泣き出してしまった。 新参達を見て、在りし日の姿を思い浮かべてしまったのだろう。 無邪気に遊べていた子供時代、何も心配することも恐れることもなかったあの懐かしき日々。 ああ、それを一体どこに置いてきてしまったのか……とか、そういうことを。 「ゆっ、ゆっくりしていってね!」 「なかないでね! いっしょにゆっくりしていってね!」 慌てたのは新参二匹だ。まるで自分が泣かせてしまったかのように思っているのだろう。 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 しかし古参二匹はさらに泣き叫ぶばかりだ。ああ、そろそろうるさくなってきたぞ。 「いや、やってますな」 「やぁ、こんばんわ」 そんな折、虐待お兄さんと愛でお兄さんがやってきた。 「どうなりましたか? まぁ、これを見れば大体分かりますが」 「ええ、言ったとおりでしたよ」 愛でお兄さんと言葉を交わす。 お兄さんズは俺にこう言ったのだ。『どちらがゆっくりできているか観察し、そしてそのことをちゃんと言ってやればいい』。 その結果、古参は自分達がゆっくりできていなかったことを悟り、こうして泣き叫んでいる。 こうしてやれば、もはや古参達は新参達を虐めることはできまい。自ら敗北を認めてしまったのだから。 だがよく考えてみれば、根本的解決にはなっていない気がする。 新参ゆっくり達を野に放てば、どうせ他のゆっくりに虐められるに違いないからだ。 などと考えていると、虐待お兄さんが泣き叫んでいる二匹に近づいていった。ああ、また始まった。 「やぁ君達! ゆっくりしたいのかい?」 「ゆっぐりじだいでずぅぅぅぅぅぅ!!」 「ゆっくりさせてあげようか?」 「ゆっぐりざぜでぐだざいぃぃぃぃ!!」 虐待お兄さんはにんまりと笑う。 「そうかそうか! ではお兄さんの家でゆっくりさせてあげよう! まずはこの中に入りなさい」 と、二匹を麻袋の中に招き入れた。既に中で何かが蠢いていることについては突っ込むまい。 「ちょろいもんだぜ」 と唇の端をゆがめるお兄さんはどう見ても悪人である。 「ヒャア! 我慢できねぇ! 虐待だ!」 そしてそう言って、挨拶もなしに俺の家を飛び出していった。 「あーあ」 「行ってしまいましたね」 やれやれ、と愛でお兄さんと苦笑する。あの二匹は、もう永遠にゆっくりできないことであろう。死ぬまで。 「あれ? こっちは残していったんですね」 新参ゆっくりは、まるで旋風のように去っていった虐待お兄さんに目を丸くしている。 「ああ、彼はそのゆっくりには興味ないんですよ」 「というと?」 「真にゆっくりできているゆっくりは、虐めても良い反応を返しませんからね。レスポンスがないとつまらないと、そういうことでしょう」 「ふぅむ」 虐待お兄さんにも虐待できないものがあったとは。いや、というか、単にサドいだけか。 「「ゆゆっ!! ゆっくりしていってね!!」」 こちらの視線に気づいて、二匹がいつもの声を上げた。すると愛でお兄さんが近づき、二匹を抱き上げる。 「うん、ゆっくりしていくよ」 「「ゆっくりしていってね!!」」 優しく抱かれて、二匹とも嬉しそうである。 「飼うんですか?」 「ええ。このゆっくりは珍しいですからね。うちのゆっくりの、遊び相手にさせたいと思います」 珍しいねぇ。そんなに特殊なゆっくりなんだろうか。 「そんなに珍しいものなんですか? これ。見た目は普通のゆっくりと変わらないように見えますが」 「まぁ、ゆっくりであることに変わりはないんですが、ここまでゆっくりできているゆっくりとなると、中々いませんね。 今のゆっくりは、人や動物に襲われ続けて、警戒心が強くなってますから」 「つまり、昔はこのようなゆっくりが主流だったわけですか」 「ええ。ゆっくりたちは、生き残るために、ゆっくりすることを敢えて捨てて、今のようになったのです。世知辛い話ですね」 生き残るために、ゆっくりはゆっくりすることをやめた。 それでも『ゆっくりしていってね!』と言われて思わず立ち止まってしまうのは、種として誕生したときからの本能なのだろう。 そう考えると、ゆっくり達が少しだけかわいそうに思えてきた。 ゆっくりも、人間達と同じなのだ。生きるために働き、心のゆとりを喪っていく。 俺は目の前の二匹に、何か大切なことを教えられた気がした。 次の日から、俺はゆっくりに少しだけ優しくなった。 道端で声をかけられたら、ちゃんと『ゆっくりしていってね!』と返すようにしている。 ゆっくり達もまた、現代社会の犠牲者なのだ。それを無闇に蹴り飛ばすこともないだろう。そう思った。 ゆっくりにも、できるだけゆっくりしてもらいたいと、俺はほんの少し思うのだ。 ──ま。 だからって悪事を働いていい理由にはならないので、俺の畑を荒らしたやつは例外なくブチ殺すようにしているがね。 あとがき 虐待スレも、思えば遠くへ来たもんだ。 初期作品を読んでいたら、こんな話が出来上がっていました。 純粋なのも、ふてぶてしいのも、憎たらしいのもいいじゃない。ゆっくりだもの。 あと、いい加減自分に名前をつけることにしました。 好評を博して頂いている『焼き土下座』から名前を取り、これからは土下座衛門と名乗らせていただきます。 今後ともよろしくお願いいたします。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 このSSに感想を付ける