約 3,642,696 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2021.html
※ほのぼの、人によっては愛でかもしれんので注意 餡子見ねえと気がすまねぇって人ごめんなさい ヒゲ 「あにゃん!!」 「んあ?」 軒先でぼーっとしているとゆっくりちぇんに声をかけられた。どっかから入り込んだのだろうか。 そんなことをボンヤリ考えていると、ちぇんはこちらに近づき更に言葉をかけてきた。 「ねぇおにいさん、ここはすごくゆっくりできるんだねー!! すこしだけここでゆっくりしていってもいーい?」 「んー、荒らさないんだったら別にいいぞー。」 「わかるよー!! しずかにゆっくりすればいいんだねー!!」 そう言うと足元でくにゃりと垂れ始めるちぇん、なにやらゴロゴロと音をさせて中々にゆっくりしているらしい。 中々可愛いじゃないか、そう思うと男は指先でグリグリとちぇんを撫で始めた。 「あにゃぁぁぁ、わかるー、わかるよー・・・」 ちぇんはにょにょにょと鳴きながら目を細めると、甘えるように男の手や足に体を擦りつけ始める。 (あ、まじで可愛いなこいつ。どれここはひとつ・・・) 男はちぇんを抱き上げると膝の上に乗せ、手櫛で髪の毛を梳き始めた。 初めこそやや戸惑っていたちぇんも、数回されるうちに目を閉じてされるがままになっていた。 途中で手を止めてやると、上目遣いにこっちを見つめてくる。もっと撫でろと言う事だろうか。 だが決して口に出すことはなく、あくまでもこちらを見つめるだけ。あとは時折耳をピクピクと動かすくらいである。 控えめなのか、あるいは自分の可愛らしさを知っているのかは解らない。だがとにかく、その愛らしさは鼻血ものである。 (ちぇんかわいいよちぇん・・・いかん、もう辛抱堪らんぜよ!!!) 「ちぇえええええええええええええええん!!!!!」 次の瞬間、男はガバっとちぇんを抱き上げると、すーりすーりと頬ずりを始めた。 「にょにょにょにょにょ!! くすぐったいんだねー!! でもうれしいんだねー!! わかるよー!!」 「あぁもう、まじでお前可愛いな!! もふもふじゃあ!! もふもふ秋のちぇん祭りじゃあああああああ!!!」 すーりすーり・・・男の頬ずりは続く。 ちぇんも自分に優しくしてくれる男に対し快くおもっており、もはやされるがままであった。 だがそんな折、ちぇんはとあることに気付いた。 「にょにょにょ・・・・にょ? なんだかちくちくするんだねー。」 どうも男とすりすりする場所がチクチクするではないか。 どういうことかと男の顔に目を細めてみる。 「あにゃー・・・なんだろーねー。わかんないよー、わかんない・・・よ?」 よーく目を凝らすとチクチクの原因が男のヒゲである事がわかった。そうしてここでちぇんの顔は一気に青ざめた。 「あにゃあああああああああ!!!?? ばっちいんだねー!!!?? すりすりやめてねえええええぇぇぇぇぇ!!!!!」 「はぁ・・・はぁ・・・ちぇん・・・ちぇえええええええええええん!!!!!」 ちぇんは必死に頬ずりをやめるよう叫ぶが、男の耳には入らない。 今や春度が有頂天の男には、もはや一切の音も映像も入らない。祭りあるのみである。 しかし何故急にちぇんは男とのスキンシップを拒みだしたのか?その原因はヒゲである。 人間にとっての頭部にあたる部分がゆっくりにとっての全身である。 これを当てはめると顎周りはゆっくりにとって下半身にあたる。そしてそこから生える顎ヒゲはいわゆるギャランドゥである。 いくら打ち解けたとはいえ初対面の男の素敵毛を擦り付けられるというのは、ちぇんにとってはこの上ない陵辱である。 「やべでえええええええ!!! およめにいげなくなっちゃうよおおおおおおおおお!!!」 「お嫁に来たい!? お前って奴は・・・お前って奴はああああああああああああ!!!!!!」 すりりりりりりりりりりりりりりりりりりり!!!!! 「あにゃああああああ!!!?? よごれぢゃう!! ちぇんよごれぢゃうよおお!! あがぢゃんでぎぢゃううううう!!!」 「赤ちゃん欲しい!!??? あああああああああ、堪らん!! ヘヴン状態!!!」 「らんしゃまあああああああ!!! たすけてらんしゃまああああああああああ!!!」 こうして頬ずりはみっちり3時間続いたのだった。 「あにゃあああああああああああ・・・・・!!!」 終わり 作者・ムクドリの人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/852.html
山へと続く道を、一目で無頼と知れる男が歩いている。 細い一本道を散歩のようにぶらりぶらりと歩いていると、呼び止める声が傍らから聞こえてきた。 「そこいくお客様!どうかゆっくりしていっておくんなまし!」 目をやると、汚いダンボール箱が草むらに転がっていた。幾枚かを張り合わせ、2m弱の大きさに拡張されている。ゆっくりが作ったにしては悪くないものだ。雨が心配になるが。 道に向けられた面の一部をくり抜き、その上にこれまたきったねー字で「ちゃみせ」と大きくのたくったように書いてあった。 「お客様!こちらはちゃみせでごぜぇます!どうかゆっくり茶などのんで休んでいってくだせぇ!」 そうのたまうのは一匹のゆっくり。れいむ種である。 男は顎を一捻り、愉快そうな顔でれいむに近寄った。 れいむが茶店と呼ぶダンボールの傍には、藁を敷いたり新聞紙が盛ってあったりしてどうやら座るところも作ってあるらしい。 男はとりあえず切り株に腰掛けて煙管をとりだした。 「茶店といったな。なら茶を一杯もらおうか。あと菓子もな。」 「かしこまりやした!おい!」 嬉しそうに跳ね、れいむはダンボールの中に声をかける。 中から「承知しやした!」と声がしてなにやらごとごと揺れだした。 「女将、あの中はなんだいね?」 煙管を箱に向けるれ男が尋ねる。 「へぇ、『ちゅうぼう』でして。うちのやどろくが今、茶とまんじゅうをよういしております。」 そう答えるれいむ。 ほぉ。これは面白い。男は煙管をくゆらせて立ち上がると、箱の入り口から中を覗いて見た。 箱の奥では、ゆーゆーとか細い声で鳴く小さなゆっくりと大きなゆっくりが、種別問わず大量にビニール袋に詰められている。 どうやら叫ばないように口をふさいで処理しているようだ。 れいむが宿六と呼んだのは、袋詰めのゆっくりとポットの間を行き来しているまりさの事だろう。 特徴のとんがり帽子に白い布が巻いてあるのは前掛けのつもりか? まりさはポットから湯呑みに茶を注ぎいれ、袋の中からまだ赤ん坊らしき小さなゆっくりを二匹咥えこんで盆の上に置いた。 それを器用に頭の上に載せてゆっくり零さぬように運んでくる。 男は切り株に戻り、まりさとれいむの給仕をうけた。 湯飲みはちゃんと洗ってあり、饅頭もぷるぷる震えているが暴れはしない。裏返してみると無数の切り傷がある。 虐待の作法として底部を火で焙ると歩けなくなる、とは聞いていたがここでは切り刻んで痛みで動きを止める方法を取っているらしい。 茶をすすり、饅頭をぽいぽいと口に放り込んで一息ついた。 「なかなか美味かった。しかし不思議なのは、お前たちは仲間を人に食わせて平気なのかね?」 客の様子を見守っていたれいむ。まりさは既に厨房に引っ込んでいたので、れいむが男の問いにこう答えた。 「へぇ。ゆっくりちゅうもんにも色々ございまして。れいむたちはここの森のおくにすんどります、ドスまりさにやしなってもらってるんですがね。 このところたべものが不作でして、そうなるとわるいやつは人間さまのはたけに手ぇ出すんですわ。 うちらもよけいなさわぎは好みませんので。そういうわるいゆっくりは処刑するんですが、ただ殺してもなんですので、いっそ商売にしたらどうかと。 きもんげ、ちゅうゆっくりに教えてもろうたんですわ。」 なるほど。ゆっくりが饅頭であることを利用して甘味を提供しようというわけか。それなら加工場にでも売りつければいいのに。 「かこうじょうには、ほかの森のれんちゅうがいっとりますけん。」 縄張りというか、ゆっくりにも商売敵がいるのか。 このゆっくり達は人間と共存しようと考え、色々な方法を試したらしい。町で歌を歌ったり、新聞を書いて売り歩いたり、そうした商売の一環として 茶店をはじめたのだとか。ポットはごみ捨て場から拾ってきたのを使い、ダンボールを集めて屋台を作り、今日が初の店開きだったという。 面白い試みだ。茶葉は森から毟ってきて饅頭は罪ゆっくりを使えばいいし、元手はかからない。 なまじ人間に干渉するより安全だし。 しみじみと男とは茶を飲み干した。 「ご馳走さん。それじゃぁまた寄ることがあったら贔屓にしよう。」 「ありがとうございやす!またゆっくり寄っていってくだせぇ!」 れいむと、厨房からでてきたまりさが男にお辞儀し、気持ちよく男は茶店を去った。 しばらくお辞儀したまま客を見送ったれいむだが、5分ほどしてふと気づいた。 「ゆ!お会計を忘れてるよ!」 急いでれいむは男を追いかけた。 「おきゃくさま!おきゃくさま!」 追いついたまりさに男が振り返った。 「なにか用か?」 「おきゃくさま。お会計がまだでございます。」 「おぉ、忘れておったわ。」 男の手が懐に伸び、抜き出されると弧を描いてれいむの頭に振り下ろされた。 れいむの頭がひしゃげ、目玉が片方飛び出た。 男が支払ったのは鉄扇であった。 この男は町でもそれと知られる「虐待お兄さん」。たまたまゆっくりを捕獲しにゆく途中で思いもかけぬ体験にうっかり虐待を忘れるところであった。 ゆっくり一匹無礼討ちしたところで咎められぬ。男はそう嘯いた。 事実そうであった。 おはようからこんばんはまで貴方を見守るVXの人です。 どこからこんな電波を受信したんでしょうね? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2537.html
感染拡大 直接の虐待描写は皆無 恐らく俺設定あり とある男が風邪をひき、町の医者に診てもらおうと道を歩いていた。 「・・・あー、今年もひいちまったなぁ・・・ゴホンゴホン・・・」 男は咳が止まらないようだった。 何度も咳をしていると、その時食べていた煎餅に痰が掛かってしまった。 「あー、汚ねぇなぁ、これはもう捨てるか・・・」 と捨てようと思っていた時にゆっくりの親子が目の前に現れた。 大きいのが1匹と小さいのが3匹、全てれいむ種だろうがそんなことはどうでもいい。 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 お馴染みの台詞を吐くが男は風邪で喋るのがめんどくさかったので、 「はいはい、ゆっくりゆっくりっと・・・」 と適当に流していた。 「ゆ?おじさんゆっくりできるひと?ゆっくりできるなられいむたちにごはんちょーだいね!」 「「ちょーらいにぇ!!」」 親子揃って初対面の相手に傍若無人なことを言う。 「生憎食える物は持ってないよ、帰った帰った。」 と男が追い払おうとすると、ゆっくりは男の持っていた煎餅に目をつけ 「ゆっ?おじさんおせんべいさんもってるよ!どうしてうそつくの?ばかなの?しぬの?」 と実に腹立たしいことを平然と抜かすが、男は相手にしたくなかったので、 「あー、これか?こんなもんでいいんならやるからさっさとかえってくれ。」 と痰を拭き取ってゆっくりに食わせてやった。 親と思われるれいむはそれに齧り付き子供もそれに倣った。 「「「むーしゃむーしゃむーしゃ、しあわせー!!」」」 男はゆっくりが煎餅にご執心の間にそそくさとその場を立ち去った。 「ちょっとからいけどゆっくりあまくておいしいよ!おじさん、もっとちょうだいね!!」 甘辛な砂糖醤油はゆっくりの口に合ったようで予想通りおかわりを要求してくるが男は既にその場にいなかった。 「ゆぅー?おじさんどこいったの?やくたたずなじじいはさっさとしんでね!!」 だが男はいない。早足なのでもうゆっくりの視界から離れていたのだ。 しばらく男を罵倒し続けたゆっくりもやがて無駄を悟ると森へ帰って行った。 巣に帰った親子はいつもどおりゆっくりとし、日が暮れると昼に狩った虫を食べて眠りに就いた。 次の日、親子はいつもどおり目覚めた。 「ゆぅーん、たいようさん、きょうもゆっくりしてるね!!」 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 家族で挨拶しあうと今日の朝食のためにゆっくり巣を出た。 狩りの途中、出会うゆっくり達に親愛の情を示すすりすりをし、やがて狩りを終え、ゆっくり朝食を終えた。 これは全ていつもどおりである。 昼になると森の開けた場所で他のゆっくり達と一緒にゆっくりし、日が沈むと互いに巣に帰りまた眠りに就いた。 また次の日、親のれいむが目覚め、 「ゆっくりしていってね!!」 と言い、子供達を起こしたが、子供たちの異変に気づいた。 「ゆぅー・・・おかーしゃん、れいみゅなんでゃかしゃむいよ・・・」 「ゆっくりできにゃいよ・・・ゆっくりすーりすーり♪してにぇ・・・」 皆元気がないのである。 「ゆ?おちびちゃんたち、どうしたの?ちゃんとゆっくりしないとだめだよ?」 だが親のれいむにはわけがわからず子供たちにゆっくりするように言う。 だが子供たちは相変わらず体を震わせてゆっくりできていない。 困り果てたれいむは朝食を早く済ますと、群れで一番の物知りであるぱちゅりーを訪ねることにした。 「むきゅーん・・・これはきっと“かぜ”だわ・・・!」 物知りのぱちゅりーは言う。 だがれいむには“かぜ”が何の事だか分らない。 「ゆ?ぱちゅりー、“かぜ”ってなぁに?それってゆっくりできないの?」 「“かぜ”っていうのはにんげんがよくひくびょうきよ、ひいたらしばらくはゆっくりできないけど、 なおったらいままでどおりゆっくりできるからあんしんしてもいいわよ、むきゅん!」 「ゆっくりあんしんしたよ!よかったね、おちびちゃん!!」 「ゆぅー・・・かぜしゃんゆっくりにゃおってにぇ・・・」 子供たちは少し安心したようだ。 「でもしばらくはあったかくしてはやくねたほうがゆっくりはやくなおるわよ」 とぱちゅりーが助言を言うので、れいむは子供たちの家に帰り寝かしつけてやった。 次の日、れいむが目覚めると子れいむ達はきのうよりも苦しそうだった。 しかもれいむ自身も疲れているのか少しだるい。 「ゆー・・・なんだかだるいよ・・・つかれてるのかな、ゆゆっ!?おちびちゃんたち、ゆっくりだいじょうぶ?」 「ゆふ、ゆふ・・・おかーしゃん、しぇきしゃんがとまりゃにゃいよ・・・」 「どぼじでゆ゛っぐりなおっでぐれないのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!???」 まだ一日しか経っていないのに、親れいむは子供がよくなっていないことを嘆いた。 仕方なく朝食を取るために1匹で狩りに出たが、何か様子がおかしいことに気づいた。 いつもならばもっと多くのゆっくり達が狩りをしていたり、ゆっくりしているはずなのに、今日は殆ど見かけないのだ。 何とか餌を見つけ巣に帰ってみると子供達はますます苦しそうだった。 「れいむのおちびちゃんたち!ゆっくりたべてはやくげんきになってね!!」 何とか餌を食べさせようとするが子供たちはすぐに吐き出してしまう。 ついに咳をする度に餡子を吐きはじめた。 「ゆふ、ゆふ、ゆびぇえええ・・・!」 「ゆ゛!?おちびちゃん!あんこはかないでね!ゆっぐりできなぐなるよ゛!!!」 だが子供たちの咳は止まらず餡子も止まらない。 その間にれいむ自身も咳が出始めたのだが、子供をすりすりしていたので気づいていなかった。 「ゆほん、ゆほん・・、おぢびぢゃん・・・ゆっぐりよぐなっでね゛・・・すーりすーり♪・・・」 「ゆふ、もっど・・・ゆふ、ゆっぐ・・ゆっぐぢちだがっだよ゛・・・」 遂に1匹が息絶えると親れいむは絶叫した。 「ゆほん・・・、おぢび、おぢびぢゃぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!」 1匹が息絶え、親れいむがすりすりをやめその子れいむに駆け寄ると他の子れいむ達も相次いで息絶えて逝った。 「ぐるじいよおおおお・・・」 「もっどゆっぐ・・・ゆぎゅい・・・!」 「どぼじで・・・ゆ゛ほん、どぼじでごお゛な゛るのお゛お゛お゛お゛お゛!!??」 そのうち親れいむも餡子を吐きはじめて衰弱していった。 「ゆ・・・もっどゆっぐりじだがっだよ゛・・・」 その頃この森の周辺に棲む他のゆっくり達の巣でも同じような光景が広がっていた。 どの巣でも体の小さいゆっくりから症状が出始め、やがて死に至るという具合である。 症状は程度の差こそあれ、恐らく全て風邪であろう。 男の風邪の原因である、ウイルスや細菌のこびり付いた煎餅を食べたゆっくり親子が感染源であり、 それが潜伏期間のうちに、他の個体にすりすりしたため、それが広がりまたそれが感染源となって広がっていく。 更に、人間では重篤状態に陥ることは稀な風邪だが、ゆっくりでは体の構造が単純かつ、脆弱であるため、 感染すると治る前に咳をした拍子に餡子を吐きだして死んでしまうのだ。 一部の体の大きい個体や感染を免れた個体を除いて、この流行によって全滅してしまったといっても過言ではないだろう。 fin ゆっくりが風邪をひいたらどうなるかというレスを見て書いてみました。 熱はないけど、咳が辛い・・・皆さんも風邪には気をつけて下さい。 過去作品 男と一家 きめぇ丸の恩返し 丙・丁 ゆっくりハザード 永遠亭の怪 楽園の崩壊 by同志ゆっくり小町 次があればこの名前で書きますんで その時はよろしくお願いします。 いずれはゆっくりこまちで書いてみたいっすねw このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2426.html
「むきゅ、えらいゆっくりはおしろにすむものなのよ」 ある時ぱちゅりーはドスまりさにこう言った。 なんでも人間の中で地位の高い者は城という巨大な家に住み、殿様と呼ばれ、それはそれはゆっくりしているというのだ。 ドスには珍しく権力を笠に着る傾向が強かったこのドスまりさはその案をいたく気に入り、早速城の建築に取りかかった。 「むきゅ、りっぱなおしろにするにはじょうぶなどだいがひつようなのよ。 そしてそのどだいはゆっくりばしらをたてることでよりけんこになるのよ」 建材を用意し、さぁ始めるぞという段になって、またもぱちゅりーがドスまりさにこう進言した。 ドスまりさは躊躇った。ゆっくり柱とはゆっくりを生きたまま土台に埋め込むことだという。 それはまさしく同族殺しであり、ゆっくりできない行為に他ならなかった。 だが、ぱちゅりーの説得にドスまりさは渋々ゆっくり柱を立てることにした。 曰く、「おしろがあればてきにおそわれない」 曰く、「どすがゆっくりすることでむれみんながゆっくりできる」 などと群れにとって城を持つことが如何に利益のあることかを散々説かれたからであった。 しかし、一体誰を……。 群れの皆は額を集めて相談したものの、当然のごとくゆっくり柱になろうと名乗りを上げるゆっくりはいなかった。 そうこうするうち、ぱちゅりーが明朝一番に群れの近くを通ったゆっくりを捕らえてはどうかと発言した。 それはいい、群れでないゆっくりならば問題ない、とこの案は満場一致で採用された。 そして次の朝、運悪くやって来たのは、一匹のゆっくりみょんだった。 何も知らないみょんは、 「ちーんぽ!」 と声をはりあげながら、駆けていた。 群れのゆっくりたちは無言でこのみょんを捕らえると、ゆっくり柱としてそのまま土台の下に埋めてしまった。 それからというもの、土台付近では毎夜、 「ぺにす、ぺにす」 という哀れな声がどこからともなく聞こえるようになったという。 ドスには珍しく嗜虐的であったこのドスまりさはこれに味をしめ、その後も通りがかったゆっくりを数匹地中に埋めた。 この頃には群れから同族殺しに対する嫌悪は大分薄まっていた。 次に、ドスたちは石垣に取りかかった。 しかし、この石垣には卓越した石積みの技能が必要で、誰しもができることではなかった。 そこで群れで一番石積みを得意としていたゆっくりちぇんが、石垣の担当として選ばれた。 そしてひと月かけ、見事な高石垣を仕上げた。 これを見たドスが、 「このいしがきをこえられるのはとりさんいがいにいないね!」 とちぇんを褒めたところ、 「こんなのかんたんなんだよー」 と返答し、本当に易々と登ってしまった。 自らの能力を披露したつもりのちぇんであったが、ちぇんの裏切りを恐れたドスは、 ちぇんに飛び乗り、その場で潰してしまった。 その死体から漏れ出す餡を見てぱちゅりーは閃いた。 「むきゅ!これをもくざいともくざいのすきまにつめればもっとおしろはがんじょうになるわ!」 ぱちゅりーの考え通り、ちぇんの餡を詰めると木材同士の接合部のガタつきは解消された。 それを見たドスまりさの脳裏にはある考えが浮かんでいた。 (もっとゆっくりをおしろにつかえばおしろはもっとゆっくりできるようになるね……) その後も何かと理由をつけてゆっくりは殺され、皮までもが壁に使われた。 通りがかりのゆっくりを捕まえることも絶えることはなかった。 捧げるゆっくりがいなければ自分たちがやられると、群れのゆっくりたちは理解していた。 こうして城は完成した。 多くのゆっくりたちがかり出されて出来上がったこの城の陰には、多くのゆっくりの命が捧げられた。 「むきゅ!おしろができたらぱーてぃーをするものなのよ!」 群れのゆっくりは全て城内に移り、城の落成式が盛大に行われた。 群れのゆっくりたちは城の完成までに生き残れたことを喜びあい、死んだ仲間を悼んだ。 ドスとぱちゅりーはふんぞり返って城の出来に満足していた。 その晩、城は豪雨に見舞われた。死んだゆっくりたちの怨嗟を飲みこんだかのようにどす黒い雲は雨を降らせ続けた。 大量の水分が城に入り込んでしまい、ゆっくりで作られた部分から城は崩壊した。 群れは全て建材で押し潰され、貫かれ、引き裂かれた。 ぱちゅりーもご多分に漏れず、落ちてきた欄間に分断され死んだ。 ドスは崩壊後もその巨体のせいかまだ生きていた。 しかし、体の至る所は破れ、餡子の損失は著しかった。 その上この雨である。日が昇る頃にはドスのいた場所には黒い水たまりしか残っていなかった。 一部丸亀城の説話から抜粋。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3010.html
ゆっくり人面瘡2/2 ■■■再発■■■ 切除手術を受けた次の日。 またもやうーうーうーと、うなるような音でおにいさんは目が覚めます。 左腕に何かが動く感覚があります。 しかも自分の腕からその音が聞こえてくるではありませんか! 布団から跳ね起きて袖をまくります。 包帯のしたでうねうねと何かがうごいています。 そのうごきに合わせて「うあーー」「ゆーー」とくぐもった声を出しているのです。 おにいさんは恐る恐る包帯を外します。 腕になにかがついています。 「ぷはー♪」 呼吸しています。 「ゆー♪」 しゃべりました。 わけのわからないもの。 おにいさんは昨日とは異なるおどろきのあまり声が出ませんでした。 なにをしていいのかわかりませんでした。 そこには前日の午前中までは寄生し、午後には永遠亭での手術により除去されたものが、あの憎たらしいゆっくりがいたのです。 大きさは、小ぶりのあんまん位でしょうか。 目玉があり、口もあり、金髪の髪、とんがり帽子の様なものまでくっついています。どうみても再びまりさ種です。ほんとうにあry 初めてExtraステージのボス戦で瞬殺されたように惚けていると、そのゆっくりの目が動きおにいさんと目が合います。 「ゆっくりしていってね♪」 「っっっっっっっっっっっっ!??」 驚きはしましたが、それよりも先に何故?どうして?という疑問符?しか出てきませんでした。 「どうして、また……!?昨日切除したはずだ!?」 「ここはまりさのゆっくりプレイスにしたよ♪ゆっくりできないおにいさんははやくえさをもってきてね♪」 いつもの冷静さを忘れ、ただ不快感が感情を支配します。 「うがぁあああぁああっっ!!」 部屋の柱に自らの腕をブチ当てます。 ばんっ!と大きな音と共に「ゆげぇぇっ!」と声がし、家全体が軋みます。 普通のゆっくりならこれほどの衝撃に耐えきれずつぶれてしまうはずです。 しかし 「どおじでごんなごとずるのぉぉぉぉ!!」 生きています。 まりさの顔全体が赤くなっていますが餡子が飛び出る様な様子はありません。 「このくそまんじゅうがぁあああああっっ!!」 再度、そして何度も柱に裏拳を叩き付けます。 「うげぇ!」「あばぁ!」「いげぇ!」などとうめき声が聞こえる意外は、木人形を相手に訓練するジャッキーチェンの様です。 「はぁ、はぁ、はぁ…わけがわからない……」 自身の裏拳によって、まりさだけでなくおにいさんの腕全体が打撲により腫れ上がっています。 まりさはというと白目を剥いて気絶していました。 おにいさんは自らを傷つけた痛みで冷静さをとり戻してきたようです。 「とにかくまた永遠亭に行ってみよう。」 ■■幕間03■■ ゆっくりに苛ついたのが原因とはいえ、感覚を共有していたことを忘れていたのは誤算だったようです。 打撲傷特有の時間差のあるゆっくりとした痛みがやってきます。 ましてやおにいさんはゆっくりを潰すために手加減なしで柱を打っていますから、もしかすると骨折しているかもしれません。 痛みが自身の冷静を欠いた行動をけなしているようで、お兄さんはモーレツに反省します。 冷水で冷やしつつ、朝食をとりながら、ここまでの事を再考しています。 山で野生のゆっくりと出会い、その時不甲斐無くもかすり傷を負わされる。 次の日には傷はほとんど塞がっていたが、傷周辺がかぶれていた。 その次の日の朝、お面の様なゆっくりまりさが腕に寄生していた。しかも感覚まで共有し、加えて糖尿病という合併症のおまけつきだ。 永遠亭で切除手術をうけて(その時は完全に無くなっていた!)、その日の夜には気分爽快で床につき 朝には気分爽快な目覚めが待っている、はずだった。 だが今日になって、昨日の就寝間際の爽快さは颯爽と無くなり、この奇病の再発という気分最悪な朝になってしまった。 怒りに任せて自らを傷つけ、冷静さを欠いた行動を思い出しますが、その度にゆっくりに苛つき、ムカつき、 自分の未熟な行動が自尊心を傷つけます。 獲物を目前にしたあの時のように、感情や感傷を表にださず、落ち着き、冷静に思考し行動する。 もっと落ち着いているべきだった。そう、このゆっくりのように。 「ゆー」 どうやら寄生したまりさが気絶から目を覚ました様です。 「おなかいっぱいになったよっ!まりさしあわっぜえぇええおおぼぼぼぼぼぽぉぉぉ」 食事も終わったので打撲の冷却もかねて水瓶に腕をつっこみます。 ふとそのまま溺死させる方法も考えましたが、 栄養をお兄さんと共有している事からおそらくそう簡単には無理だろうと判断します。 そして最悪の場合を思いつきます。 俺が死んだらこいつも死ぬだろう。ならこいつが死んだら…!? 恐ろしくなり、考えを打ち消します。 死ぬのか生きられるのかで悩むより、生きたまま専門家に引き渡す方が懸命ではないかと判断し 当初予定通り、永遠亭へ再度向かいます。 その足取りは心持ち昨日より重くゆっくりしていました。 ■■■再度永遠亭■■■ 「来ると思っていたわ。またゆっくりが腕に現れたのでしょう?」 会うなり永琳はそう伝えます。 「不思議な顔をしないで、あれからちょっと調べたのよ。でもその腕の治療が先ね」 永琳は湿布を貼りながら説明していきます。 「骨には異常無いみたいだから冷やして安静にすることね。 さて本題のこのゆっくりだけど…… ゆっくりが人間に寄生するなんて聞いた事ないからね。 だけど図書館の魔女が教えてくれたわ。 人面瘡と呼ばれる奇病に酷似していると。」 「じんめんそう?」 「人の面の瘡と書くのね。 奇病とも、それ自体が妖怪だとも言われている。 原因には妖怪や生霊が取り憑いた呪い、宿主自体の精神疾患からくる肌荒れの特殊な症状とも言われ、はっきりしていないみたいね。 中には高等妖怪が作り出したアイテムって話もあるそうよ。 共通していることは、人の身体のどこかに人の顔の様な傷ができ、話をし、食事もする。 めんどくさい事に直接宿主を殺したりはしない、というかできない。 迷惑をかける。醜い顔が、煩わしい口調で、理不尽な要求をしてくる。それだけしかできないから妖怪のレベルとしては低俗よ。 しかし、宿主に大してのそういった精神攻撃は恐ろしいわね。最弱故に最強ってとこかしら。」 「ち治療法、というか駆除法はあるんですか?」 「昨日手術したように切除する方法では、再度発症するという場合が報告されているらしいからまた来ると思ったのよ。 それに、あなたから切り取った方のゆっくりの最後の言葉ね。曰く『おうぢにがえるぅぅぅ』」 「おれはっ!おれはこいつらのうちじゃないっ!」 「まったくその通りね。文献によれば薬や毒で消えたそうだから試してみましょう」 「…そう、してください……」 「薬は今イチ原因がハッキリしないから、毒で試しましょうか。 気負わなくて良いわ。ゆっくりには毒で人間には毒でないもので試せばいいのよ」 「というと……?」 「目には目を、歯には歯を、毒を制するには毒を。ゆっくりにはゆっくりよ」 ■■幕間04■■ おにいさんは替えの湿布や薬と共に、ゆっくり加工場への地図をもらいました。 永遠亭からの帰宅途中に寄生したゆっくり対処用の薬となるものを受け取りにいくためです。 永琳曰く 「加工場には連絡を入れておくわ。あとは言った通り治療なさい。」 加工場向けにゆっくりを捕まえた事もありましたが、工場に来るのは初めてでした。 広い敷地内に立派な工場が建っており、ほのかに甘い香りが漂ってきます。 受付で訪ねた目的と永遠亭の名を出すとすんなり話が進みます。 しばらくすると大きめの箱を抱えたおじさんがやってきました。 「じゃこれ。永遠亭からのお願いだから良質なのを選んでおいたよ。あ、ここにサインだけ頂戴ね。」 おにいさんは受領書にサインし受け取ります。 箱の中身はもちろんゆっくりです。 かつて誰かが言いました。 「悪魔は人の身に宿る」 永琳は言いました。 「あなたが考えているように、この寄生したゆっくりの生死があなたと繋がっている可能性を否定できない以上、 私は医者として駆除剤を調合する事はできないわ、できるのは糖尿病に対処する薬の調合だけ」 「医学的な所見は共存の道が一番良いわ」 「それを許さないならあなたは自分の力でなんとかするしかない。協力はしましょう」 おにいさんは考えます。 「ゆっくりとの共存?」 「確かにペットといて飼い成らす人もいると聞く、適度に可愛く、癒しを与えてくれるならそれもいいだろう」 「だが、俺に寄生しているこいつはどうだ?」 「何もせず、ただゆっくりし、理不尽にもエサを要求しつつ俺のエネルギーの一部を奪い、俺はこの若さで糖尿病だ」 「共存など誰がするものか!!」 「俺は俺だ!俺一人だ!俺以外の他人が!しかもこんなまんじゅうと一緒になんてなれるか!!」 ■■■治療/宴の支度■■■ 家に戻り、部屋が暖まってきたところで加工場からもらってきたゆっくりを部屋に放ちます。 今まで狭い箱に収められ、初冬の冷たい風に凍みていた数十匹のゆっくりは、その開放感から歓喜の叫びをあげます。 「ここはとてもあったかいよ♪」 「ゆっくりー♪」 「この部屋がしばらくお前らの家だ。おれはお前らの飼い主、そしてこいつがお前らのルームメイトだ。仲良くしろ」 そう言うと巻いていた包帯を外します。 「ゆゆ♪ここはまりさのゆっくりぷれいすだぜ♪みんなゆっくりしていってね♪」 「「ゆっくりしていってね♪」」 他のゆっくりとはまったく異なる外見の寄生したまりさですが、 顔のパーツだけで判断しているのか、ほかのゆっくりたちにも仲間として認められた様です。 試しに、一匹のれいむを腕によせると、習性なのか頬ですーりすーりをはじめました。 「すーり♪すーり♪あなたは変わったゆっくりだね♪でもおおきなからだですてきだよ♪」 「すーり♪すーり♪ゆぅー♪気持ちいいよー♪ゆっくりしていってね♪」 「……」 寄生したゆっくりのお家宣言にも、このムカつく挨拶にも以前ならイラっときていたでしょう。 ですが、ここは我慢してニコニコと作り笑いをします。 そして戸棚からお菓子を持ってき、自ら食べはじめます。 「うほほぉ!これめっちゃうめぇ!むしゃ♪むしゃ♪むしゃ♪しあわせー!」 「ゆぅー。れいむたちもゆっくりほしいよ!」 「そうよ、みんなにエサを与えないなんてとはいはじゃないわ!」 「むきゅー。あかちゃんたちにもわけてあげてね」 「おにゃかへっちゃーー!!」 「まぁ、落ち着け。俺はお前らの飼い主、つまりボスだ。 俺の言う事を聞けば、お前らにたべものをやろう。」 「ゆゆぅー?」 「わかったよ!ボス!だからおかしをちょうだいね!」 「おにゃかへっちゃーー!!」 「よしまずは跳ねろ。その場でジャンプっ!!」 「「ゆっ!ゆっ!」」 一部のゆっくりは状況を飲み込んでいませんでしたが、言う事をきいて、全員ジャンプしています。 流石加工場で良質と言われたゆっくりだからか飲み込みが早いです。 「はい、やめー。」 そういって、クッキーを適当に砕いて皿に載せると、ゆっくりはまるで蟻の様に群がり。 「「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせー♪」」 と言う時には既に無くなっていました。 「よし、次は二匹ずつ組になって整列!」 既に腹を膨らませてくれた安心感からか、あっと言う間に整列します。 「よし、お前どれか好きな組選べ」 「ゆ?」 腕に寄生したゆっくりに声をかけます。 「じゃ、このゆっくりでいいよ!」 「よし選ばれた二人組、どっちかにこの角砂糖をやろう」 と言って、自ら食すと 「ゆゆーー♪これめっちゃあまあまだぜぇ♪しあわせぇー♪」 と腕がうずきます。 それを見て残ったゆっくりたちも「ゆぅおー♪」と歓声をあげます。 「わたしにちょうだいね!」 「とかいはなわたしにもちょうだいねぇ!!」 ちなみに選ばれたゆっくりはれいむとありすの成体です。 「ふたりにはやらん、どちらか一方だけだ。はやくきめろ」 「ゆー、わたしたちふたりにちょうだいねぇっ!?」 「そうだぜ、ふたりにもわけてげてねぇ…あめぇ…しあわせぇー♪」 仲間意識をみせる寄生したまりさですが、途中でおにいさんがつまんだ角砂糖に反応してしまい説得力がありません。 「ほれ、食べたいだろぉー?あまいぞぉー?どちらか一方にはあげるからゆっくり決めてね!」 「とかいはなわたしがたべるから、いなかくさいれいむはどっかいってね」 「ゆっくりしてないありすのほうこそゆっくりどっかいってね!あのあまあまはれいむがたべるよ!」 「…めんどくせえ、お前が決めろ」 めんどくさくなったおにいさんは腕の寄生まりさに問います。 「ゆわ、ゆ、ゆぅー」 「まりさぁぁぁぁーわたしよね!とかいはなありすをえらんでねぇ!」 「れいむにきまってるよ!さっきいっしょにすーりすーりしたでしょぉー!!」 どうやらこのれいむはさっき適当に選んだれいむだったようです。 それが効いたのか 「さっきすーりすーりしたれいむにするよ♪」 「よし決定!」 ガッシ!ボカッ! 「スイーツ(笑)」 おにいさんは、寄生まりさが選ばなかったありすを掴み、一口で平らげました。 流石加工場産のゆっくりです、ただほんとりとした甘みとカスタードの風味が口いっぱいに広がります。 「このまりさに選ばれたれいむには約束通り角砂糖を進呈」 「「ゆぁ?あっ?どおしでえぇええ!なんでぇぇぇぇぇ!ゆばぁあああああ!」」 寄生したまりさと選ばれたれいむが泣きわめきます。 先ほどまで自らの欲望忠実に仲間と対峙いていましたが、まさか食われるとは思っていなかったのでしょう。 「どぼじでえぇぇぇ!!!ありずぅぅぅぅぅぅ!」 「お前が選ばなかったからだ。さて、次にこの角砂糖がほしいゆっくりはいるか?」 流石に、いきなり仲間を食われた衝撃があるのか我先にとはいきません。 「もうまりざはえらばないんだぜぇぇぇぇ!!うばあぁぁぁ!」 「うん、もうおまえはいいや。次は俺が決める。おいそこのゆっくり組」 「ゆぅぅ?やめちゃね。れいむたべにゃいでねぇ。」 「そうよ、あかちゃんいじめないでぇええ!!たべるなられいむにじでぇぇぇ!」 「お、おかあしゃんを、みんにゃを、い、い、いじめにゃいでねぇ!!!」 勇敢にも娘であろう、赤れいむが向かってきます。 「おぉ家族愛。家族愛。お前に決めた!」 「いやあああぁぁぁぁ!!!れいむのあがじゃぁぁんん!!」 おにいさんはつまむと口へ持っていきます。 しかし、今度は食べる事はしませんでした。 ぼそぼそと赤れいむにつぶやくと、頭の上にのせました。 「わーふきゃふきゃー♪」 「ほれ、角砂糖をお食べ。」 「むーちゃ♪むーちゃ♪あみゃーーい!しあわちぇー♪」 食われると思っていた他のゆっくりたちが何が起きたのか混乱していましたが、 おにいさんの頭上に乗った赤れいむが高らかに宣言します。 「ここはれいみゅのゆっくりぷれいちゅになったよ!みんなゆっくりしちぇってね!!」 「さてれいむさん、今回ありすが食べられてしまいましたが誰が悪いんでしょうか?」 「このまりさがわりゅいよ!」 ゆっくりたちの視線が一同に寄生したまりさに集まります。 「このまりさがわりゅいよ!」 「そうだね、このまりさが一方を選んだから悪いよねぇ」 「そ、そうだよあのまりさがわるいよ!」 「そうよ、わたしのあかちゃんはうそなんかつかないのよ!」 「あのまりさはとかいはじゃないよ!」 「「あのまりさはゆっくりできないよ!!」」 「ゆあ?あ、あ、あ…?」 急に仲間達から一斉に罵声をあびます。 先ほどありすと組んでいたれいむの側に腕を持っていくと、すーりすーりした仲なぞ忘れて体当たりしてきました。 「ありすをかえしてねぇぇぇぇ!!」 ポコンと当たりますが、もちろん全然痛くありません。ですが、寄生したまりさには精神的に効いた様です。 「な、なんでぇ…まりざわわるぐないのにぃ…なかまでしょぉ…」 「なかまをころしたゆっくりはなかまじゃないよ!」 「そうよ!なかまじゃないよ!」 「ここわ、ゆっくりぷれいすよ!ゆっくりできないまりさはしんでね!」 「なんでぇ…なんでぇ…!」 訳がわからないといった表情で寄生まりさは混乱しています。 おにいさんは、あたまの赤ゆっくりにちょんちょんと合図を送ります。 「みんにゃ!ごはんにすりゅよ!ゆっくりたべていってね!」 「ほらみんなエサだぞぉ。」 おにいさんはその合図に従って、お菓子や野菜を大皿に盛りました。 「「ゆへふぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」 と飛びついてきますが、皿を持ち上げてそれを一旦阻止します。 「まぁまてお前ら。一番箸は一番偉いリーダーと相場が決まっている。リーダーは誰だ?」 「「そんなの決まってるよ!」」 おにいさんは頭に載せていた赤れいむと皿をゆっくり下ろします。 「わー♪おそりゃをとんでるみちゃーい♪」 目の前に大量のエサを目の前にしてますが、 みんな静かに待っていることを不思議がっているようです。 「ゆ?ゆ?おきゃーさーん?どこー?」 ときょろきょろしているところに、その親であろう成体のゆっくりが近付きます。 「さぁ、れいむ。ゆっくりたべていいのよ」 おそるおそる 「むーちゃ♪むーちゃ♪しあわちぇー♪」 と言った側から 「「そのれいむがりーだーだよ!」」 「「このれいむがわたしたちのりーだーよ!」」 と言いながら押し寄せます。 「れ、れいみゅがりーだーだよ♪えしゃをよういしたからみんにゃでたべてね!ゆっへん♪」 ■■■治療■■■ おにいさんも腹が空いていましたが、我慢して一旦その場から離れ、煙草をふかします。 皿の周りでは群れの新しいリーダーが決まった事でお祭りの様です。 そして匂いに釣られたのか、寄生したまりさも冷めてきます。 「あ、ああ、なんでぇ…?」 「………」 「おなかへったぁ……」 「さっき食ったじゃん」 「?」 「はは。忘れたのかその餡子脳は?お前はありすを食っただろうがっ!!」 最後の文節をワザと大きな声で言いました。 騒いでいたゆっくりも気づきます。 「お前が!選んだありすはっ!俺が食って!お前の栄養にしただろうがっ!!」 「!」 その一言が再び群れに怒りを込み上げさせます。 「そうなんだぜ!まりさはありすをたべたなかまころしなんだぜ!」 「なかまをたべたゆっくりはゆっくりじゃないよ!!」 「ゆっくりどこかいってね!!!」 再び再開する罵倒の嵐、おにいさんが近付くと罵声はさらに大きくなります。 「…まりさは……ここはまりさのぉぉ……ありすぅ……」 潮時を感じておにいさんは先ほど傀儡と化した赤ゆっくりを呼びます。 「…おいリーダー!」 「ゆ?」 赤ゆっくりは再びおにいさんの頭にのせられます。 「さぁ、教えてあげて下さいよ。ここはどこですか?」 「ここは、れいみゅのゆっくりぷれいすだよっ!!」 「加えて、おまえはありすを食った」 「なかまをたべちゃゆっくりはゆっくりじゃにゃいよ!」 「……うぅぉぉぉおおお………お、お……」 「そろそろしめるか…」 おにいさんは一匹の成体れいむをつかみ上げます。 「ゆゆー♪そらをとんでるみたーい♪」 「ゆ♪おきゃーしゃーーん♪」 どうやらこのリーダーとなった赤ゆっくりの母親のようです。見分けがまったくつきません。 「お前、腹減ってるんだったな?」 腕に寄生したゆっくりに一声かけてから、母ゆっくりにかじりつきました。 「ぎゃぅばぁあぁぁぁぁぁ!!??」 「うばあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」 「うむ。うまい」 またしても、ゆっくりたちの目の前で起きた仲間の悲劇を目の前にしてまさしく阿鼻叫喚。 「「なんでぇえええええええええええええ!!!!!!!!!!!」」 「「どぼじでぇええええええええええええ!!!!!!!!!!!」」 「おがぁぁぁぁぁぁぁじゃぁぁあん!」 「わりぃわりぃ、こいつが食えって言ったから」 「ごのありずぅがぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 「なんでたべたのぉぉ!!!わだじじゃないぃぃぃぃぃ!!!」 「お前だよ。ほれ、これからまた食べる」 おにいさんは、半分だけ食べ残したれいむを寄生したまりさの口に放り込みます。 「あわぁぉぉお!お!!おぉ!!!」 「おがぁあじゃぁああああん!!」 「れいむううううううううう!!!!」 リーダーとなった赤ゆっくり。他のゆっくりも含めて、ただ叫び声しか聞こえてきません。 「お仲間の味はうまいか?」 寄生まりさに残りのまんじゅうを押し込んで聴きます。 「おいじぐなんがないぃ!!ゆっぐりできなぁいいいいい!!ばびぶべぼおおおぉぉぉぉ!!」 ぶ ず り ぃ ょ ぉ ……びっ!ちゃぁ!! と生ゴミを捨てた様な擬音を発しながら、腕からずり堕ちました。 「仲間を食し、加えて仲間に裏切られる気分はどうだ?何もわるくないのにね」 「ゆっくりできないまりじゃはみんなでちゅぶしてねぇえええ!!!!」 「よぐもあぉぉぉぉりずををををををををっれいむををををを!!!!」 「なかまをかえじでぇえええええええじねえええええええええ!!!!」 「おがぁじゃぁあん!おかぁじゃぁああん!!おかぁじゃぁああん!!」 堕ちたまりさは、他のゆっくりたちに踏みつぶされて形が無くなっていきます。 「うぶぁぉ!ゆぅっ!げぇっ!!!びゃぁ!!!!………」 「永琳は毒を持って制しろと言った。お前らは毒だ。毒蟲め」 まるで魔女裁判の様にゆっくり達の集団ヒステリーのなか、おにいさんは、腕をさすりながら部屋を出て行きます。 傷跡もなく、元の状態に戻ったようです。 「ああ……」 と何処となくため息をついて更なる宴の準備をします。 ■■■治療/宴の始末■■■ 持ってきたのは大きな風呂敷でした。 ゴミが散乱した部屋では一部は残り物をあさり、一部はまだ虐殺を続けています。 「リーダー!」 と呼ぶと赤ゆっくりが頭の上に登ってきます。 「もっとゆっくりできる所につれていきますよ。みんなこの風呂敷の上に載せて下さい」 「ゆゆ♪わかっちゃよ!みんにゃ♪ここにゆっきゅりあつまってね♪」 子供でもリーダーとなればなかなかの統率力です。 残りのゆっくりはぞろぞろと広げた大風呂敷に乗っていきます。 そのまま引きずって行くなど、やさしいことはせずにそのまま包み込みます。 「ゆげぇ、せまいよぉお?!」 「つびゅれりゅーうううう!」 「おにいしゃん、みんにゃくるしがっちぇるよ。やめてあげてね!」 などと聞こえますが、無視して持っていきます。 ぎゃぁぎゃぁと騒ぐ風呂敷を担ぐ姿はサンタクロースのようです。 ですがまさしく、プレゼントとしておにいさんは出かけていました。 いつも収穫を卸している問屋に付くと準備はできていました。 「やぁ!待っていたよ!」 「遅れてしまいましたか?」 「大丈夫大丈夫!あっちに用意できてるから」 そこには大きな釜が用意され、既に薪で火が焚かれ水が茹でられていました。 釜は人間が風呂に出来るくらいの大釜です。 直ぐ側では問屋の若い衆が餅をついています。 「じゃぁこれが僕からのプレゼントです!」 と言いうと担いでいた風呂敷を渡します。 渡されたゆっくり達は次々に鍋に投げ込まれました。 「ゆー♪やっとついたのえええええええええええええ!!!」 「わー♪お空をとんびゃあああああああああああああ!!!」 「あじゅびいいいいい!!!どけるぅどげびゅううう!!!」 「ごごどごぉぉぉぉ!!どげじゃぶぅぅぅ!あづびぃ!!!」 「いやぁ、よかったよかったデザートが足りなかったからねぇ、連絡があってすぐ準備したよ」 「でも、クリスマスパーティーにお汁粉なんてよかったですか?」 「寒いしいいと思うよ?でもよく思いついたねぇ、ゆっくりでお汁粉だなんて」 「ええ、前にそういう事をした話をした文献を読みましてね」 「ま、酒でも飲みながらわいわいやろう!」 クリスマスの宴はこれからのようです。 ■■■終章■■■ 問屋さん達とのクリスマスパーティー翌日。 またもやうーうーうーと、うなるような音でおにいさんは目が覚めます。 昨日の酒が残っているのでしょうか? しかし髪の毛の仲で何かが動く感覚があります。 しかも自分の頭からその音が聞こえてくるではありませんか! 布団から跳ね起きてそっと触れます。 何かがうごいています。 「ゆぅーー」とくぐもった声を出しているのです。 おにいさんは恐る恐る鏡の前で髪をかき分けます。 頭になにかがついていました。 「ふぁぁぁ……」 涙を流しながら呼吸しています。 「ゆぅぅぅぅ……」 しゃべっています。 昨日忘れていた赤れいむ。おにいさんの頭でおうち宣言をし寄生まりさから奪った赤れいむのリーダーです。 おにいさんは昨日とは異なるおどろきのあまり声が出ませんでした。 頭皮と一体化しているそいつは、眠っており第五部ボスのスタンドのようです。 おにいさんはなにをしていいのかわかりませんでした。 了 あとがき 初めて書いたものです。人面瘡の人とでも名乗っておきます。 ゆっくりが人間に取り憑く話を思いついて、そのままドス化する話を思いついたのですが、ただの人面瘡のホラーになってしまいました。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3148.html
翌日、まりさはずっと目を失った子ゆっくり達のそばにいた。 怯えて不安がる子ゆっくりにそっとすりすりをし、顔を優しく舐めてあげた。 本当は抉られた目の部分を舐めてあげたかったが、この傷の深さでは逆に痛みを与えてしまうので我慢した。 時刻はもうとっくに午後を回っていた。 「おぎゃあざん・・・・・・ごわいよおおお・・・ぐらいよおお・・・みえないよおおおぉぉぉ・・・」 「ありす、おかあさんはここにいるからなね・・・こわくない、こわくないよ。いっしょにゆっくりしようね。」 深い闇と恐怖に中にいる子ありすを元気付ける。 「なんじぇ・・・なんじぇ・・・・・・ごんなべに・・・・・・まりざ、なにぼわづいごどぢでないのにぃぃ・・・・・・」 「まりさ・・・まりさはわるくないよ。おかあさんは、まりさがかわいいことわかってるからね・・・・・・」 理不尽な不幸に怯える子まりさを慰める。 ずっとずっと子供達の側で慰め続けた。 まりさはふと、この子達は生まれた時から何も食べてすらいないことを思い出した。 しかし、食事について、まだ子ゆっくり達は何も言わない。腹が減っているはずなのだが、今はそれどころではないのだろう。 まりさは一生光を失った子供達にこれからはそれを補って余りあるほどの楽しいこと、ゆっくり出来ることをさせてやろうと思った。 だから今は耐えるしかなかった。いつか一緒に暮らしてた女性が助けに来てくれる時まで。 お姉さんが助けにきてくれたら、あかちゃんたちをゆっくりさせてもらえるように一生懸命頼もう。 そうすれば赤ちゃんたちはゆっくり出来る。まりさは唯一の希望を信じて待ち続けようと思った。 「じゃまするよ~。バリボリバリボリ。」 そして今日もその時がやってきた。 昨日、自分に地獄を見せた男が部屋の中にやってきたのだ。手には何か袋みたいなのを持ってて、そこから取り出したものを食べてる。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 まりさは男に対して何も言えなかった。 昨日は耐え難い憤怒の念にかられて、散々男を罵倒してしまったのだが 後から冷静になると、下手したら自分だけでなく子供達まで危険に晒しかねなった行為だとわかったからだ。 冷静になればなるほど、自分には男に抗う術など何もないことも理解できた。 今、自分に出来ることは不安と恐怖の中でおとなしく耐えることのみであった。 「そういや昨日はごはん置いていってなかったね。ごめんなぁ~。まりさも赤ちゃん達もお腹すいてるだろう?」 いつものように男が食事の是非を問う。出されるのは生ゴミかクズ野菜だろうが今はこれで我慢するしかない。 いつか女性の家でゆっくり出来るご馳走をたらふく食べるときのために。 しかし、いつもろくなものを食わせてもらえなかった食事だが今日は少し様子が違った。 男は自分の持っている袋から何かを取り出した。良く見るとそれは一枚のクッキーだった。 クッキーはまりさは女性の家でよく食べさせてもらったものなので良く知っていた。とってもあまあまでゆっくり出来るものである。 男はクッキーの入ってた袋を置くと、両手でそのクッキーを握り締めて粉々にする。 「ほ~ら、赤ちゃん達~、いまからあまあまあげるから口空けて上向きな~。」 男がそう言ったが子ゆっくり達は戸惑ってる。昨日自分の目を抉った男の言うことを警戒しているのだろう。 「まりさ、お前だったら別にこれが悪いものじゃないことわかるだろ?」 「ゆ・・・・・・・・・うん・・・あかちゃんたち、あれはくっきーっていって とってもゆっくりできるあまあまだよ。おくちあけてうえむいてね。」 その言葉で子ゆっくり達は恐る恐る上をむいて口を開けた。開いた口にクッキーのクズがパラパラと落とされる。 「「ゆ・・・・・!?・・・・・・ゆゆっ!!?ゆ~~~~~!うっめ、めっちゃうめ~!!」」 「「「むちゃ!むちゃ!むちゃ・・・!!ち~あわちぇ~!!!」」」 子ゆっくり達は生まれて初めて味わうクッキーの甘みを一粒一粒まで精一杯堪能しながら、歓喜の声を上げた。 それは生まれてすぐに光を失い、全然ゆっくり出来なった子ゆっくり達にとっては天にも昇る味だった。 「「ゆゆっ!もっとちょーらい!!ぜんぜんたりにゃいよ!!!!」」 「「「あまあまのくっきー、もっとちょーらいよ!!!!」」」 一枚のクッキーを粉々にしたものを五等分では当然満腹になりえるわけもなく、子ゆっくり達はクッキーのおかわりを催促する。 しかし男は子ゆっくり達の催促に応じず、子ゆっくり達に話しかけた。 「まぁまぁ、あわてるな。あわてるな。クッキーはまだたくさんあるんだから落ち着け。 それより・・・世の中にはクッキー以外にも美味しくてゆっくり出来るものがあるって知ってたか?」 「「「「「ゆゆー!?くっきーのほかにもおいちーものがありゅのー!?」」」」」 先ほど食べたクッキーをこの世で究極のご馳走と思ってた子ゆっくり達は、男の予想にもしなかった言葉に驚いた。 「ああ、そうだよ。例えばケーキだ。ケーキはとってもゆっくり出来るぞ~!!」 「「「「「ゆうぅぅぅ!!!!、けーきぃぃっ!!!!?」」」」」 「ああ。そう、ケーキ!なぁ、お母さんのまりさ、ケーキはとっても美味しいよなぁ?」 「ゆっ!?」 「ん?どうした?そうだろ?ケーキはとっても美味しいよな?」 突然話を振られて固まったまりさだったが、すぐに男の言葉を肯定した。 「うん・・・けーきは・・・とってもゆっくりできるよ・・・・・」 「どんなとこが?」 「ゆ~・・・しろくてふわふわあまいものに・・・くだものさんがいっぱいのってて・・・ いちごさんがね、しろくてふわふわといっしょにたべるととってもおいしくなるんだよ。」 女性の家で食べた時の記憶を思い出しながら言葉を紡ぐ。自分で言ってる言葉で自然と口の中に唾がたまる。 子ゆっくり達を見ると自分の話を聞いて笑みを浮かべながら涎をこぼしていた。 行儀が悪かったが今日は咎める気はなかった。まだ生まれたばかりの子供だ。女性の家に行く前にきっちり自分が教育すればすむことだ。 生まれてからまともに笑ったこともなかった子ゆっくりの笑顔はまりさに希望を与えた。 「じゃあ、次にゆっくり出来るもの・・・アップルパイはどうだ~?まりさ、多べたことある?」 「ゆっ!あっぷるぱいもとってもゆっくりできるよ。 そとがさくさくでね、なかのりんごさんがしゃきしゃきしてて、とってもおいしいんだよ!」 「「「「「ゆうううううぅぅぅぅ!!!!!」」」」」 子ゆっくり達が悶えた。 「じゃあ、つぎ・・・チョコレートォォォォォ!!!!!!」 「ゆ~!ちょこれーとはね、かたくてぱりぱりとしてるんだけど────────」 まりさは男が次々と挙げる食べ物を、記憶を頼りに拙い表現力で説明していった。 まりさの説明を、子ゆっくり達は食い入るように聞いていた。今も目があったらきっとその目は輝きで満ちていただろう。 子ゆっくりの頭の中は未だ知りえぬ未知の美味しい食べ物とそれを食べる自分の姿でいっぱいだった。 話せば話すほどに喜ぶ子ゆっくり達の笑顔が嬉しくてまりさも解説に熱が入っていった。 それから30分、男の挙げたお菓子、果物、一品料理について まりさが説明し終えたところで食べ物に関する話は終わった。 「食べ物については・・・これくらいでいいか。よっと。」 男はまりさをヒョイと掴むと一匹用の小さな箱に移した。 「ゆうぅ!!!?」 まりさが突然の男の行為にそんな間抜けな声を上げる。 それから男は子ゆっくり達の入ってる箱を掴むと、両手で振動をブルブルと与える。 振動を与え続けるうちに、子ゆっくり達の顔が赤みを帯び始めた。 子ゆっくり達の顔に、発情時特有の赤みが増したところで、 男は振動を止め、子ゆっくり達をお互いが触れ合うように密着させた。 互いに感じあう姉妹の感触と自分の中から湧き上がってくる胸の高まりから、子ゆっくり達が本能的に求める行動は一つのみである。 子ゆっくり達は互いに自分の体を姉妹達にすり合わせ始めた。 その行動は間違いなくすっきり以外の何物でも無い。 互いに体をこすり合わせる子ゆっくりの体からすっきり特有の液体が分泌される。 「ゆふぅ・・・・・・ゆふぅ・・・おねえちゃん・・・なんだかまりしゃ・・・いいきもちだよ。」 「むふぅ・・・ありちゅも・・・きもちいいわぁ・・・・・・」 「まりしゃ・・・まりしゃ・・・もっちょうごいて・・・ありしゅも、もっとがんばりゅから・・・・・・」 「まりさおねえちゃんの・・・こえ・・・かわいい・・・・・・もっとありしゅのこと・・・よんで・・・・・・」 欲望のまま互いの体をこすり合わせる子ゆっくり達。 このままでは先に絶頂に達した個体と接触している子ゆっくりはにんっしんしてしまうだろう。 子ゆっくりの身でにんっしんすれば命は無い。 当然まりさがそんな光景を黙って見ているはずもなかった。 「だべえ゛え゛え゛え゛!!!!!!あがぢゃんが、にんっしんしたらゆっぐりでぎないよおおお!!!!!!」 必死で叫ぶもその言葉を聞いて、動きを止めるものは誰もいなかった。 しかも自分は小さな箱の中にいるので、無理やり引き離そうにもそれも無理であった。 「おねーしゃん、おねーしゃん、まりしゃおかちくなっちゃうよ・・・」 「まりしゃ、まりしゃ、もっちょ、もっちょ、はげちくうごいてぇ・・・」 「ありしゅうううううう、おねえちゃんのあいをうけとってぇ・・・・・・」 「ゆちょおおおおおおぉぉぉぉ・・・・・・もう、がみゃんできな────」 「はい、そこまで~。ストーップ。」 男はそういうと互いに密着し、体をこすり合わせてた子ゆっくり達を引き離す。 「ゆ・・・?」 「ゆぅ・・・おねーしゃん?」 「ありしゅぅぅぅぅ!?どごいりゅのおぉぉぉぉ!!!」 引き離された子ゆっくり達は先ほどまで肌を重ねてた姉妹を求めるが、互いの位置がわからないためそれは叶わなかった。 二、三分もすると子ゆっくりの顔の赤みがおさまり、言動も落ち着きを取り戻した。まりさはそれを見てほっとした。 「やぁ、子ゆっくり達。さっきの気分はどうだった?とても変だったろ?」 落ち着きを取り戻した子ゆっくり達に男が声をかける。 「ゆっ!しょーだね、ちょてもへんだったよ。でも、ちょてもきもちよかったよ。」 「もっちょ、やりちゃいよ、おにーしゃん、どーちてとめちゃったにょ!」 「もっちょやりちゃいよ!おねーしゃんと、まりしゃたちを、そばにちゅれてきてよ!」 先ほどの快楽を思い出し、子ゆっくり達は次々に中断されたすっきりの続きを要求する。 しかし男はそんな子ゆっくり達を諭す。 「続きやっちゃったら、ゆっくり出来なくなっちゃうぞ。」 「「「「「ゆうっ!!!!?」」」」」 男の言葉に子ゆっくり達が慄く。 しかし次の言葉で子ゆっくり達の顔が再び輝きを取り戻した。 「今、君達がやろうとしてたのは『すっきり』と言ってな、赤ちゃんを作るために行為だよ。」 「「「「「ゆぅっ!?あかちゃんっ!!!?」」」」」 男は話を続ける。 「そうだ。キミたちが大人になって、大好きなお嫁さんを見つけて・・・・・・ その大好きなお嫁さんと自分の子供・・・自分達の赤ちゃんがほしくなったときにすることだよ。」 「「「「「ゆうぅぅぅ・・・およめさん~・・・・・・あかちゃん~・・・・・・」」」」」 未来の自分のつがいと自分の赤ちゃんを想像して、子ゆっくり達が顔を緩ませる。 「でもね・・・子供のときにやっちゃうと、下手したら死んじゃうかも知れないんだ。だからとめたんだよ。」 「「「「「ゆうううう・・・・・・しぬのはゆっくちできないよ・・・・・・」」」」」 「大丈夫!大人になってやればいいのさ。それにね、すっきりは最後までやるとすっごく気持ちよくなるんだよ。 さっき、お姉ちゃんや妹達と肌を擦り合わせてて、とても気持ちよかったろ?それよりも、もっと気持ちいいんだ。 そして、かわいい赤ちゃんも生まれる。どうだい?今から大人になるのが楽しみならないか?」 「ゆっ!まりしゃ、はやきゅ、おとにゃになりちゃいよ♪」 「ありしゅも、しゅてきなおよめさんといっちょにゆっくちちたいわ♪」 「あかちゃん、たくしゃんちゅくって、ちあわせになるーっ♪」 「まりちゃ、およめさんとしゅっきりしゅるよー♪」 「たくしゃんしゅっきりして、たくしゃんあかちゃんちゅくるー♪」 子ゆっくり達が頭の中に幸せな未来像を描き、はしゃぎだす。 まりさは先ほどまでずっと怯えてた子ゆっくり達の顔に、希望が宿ったのを見て涙がこぼれた。 「美味しい食べ物・・・大好きなおよめさん・・・かわいい赤ちゃん・・・ この世界にはね、たとえお目目が見えなくても楽しいことがた~くさんあるんだよ。」 男の言葉で子ゆっくり達のテンションが絶頂に達する。もう目を失ったことなど忘れたかのように。 ぴょんぴょん跳ねて希望を体で表現していた。 まりさもそんな子ゆっくり達を見て一緒に飛び跳ねたい気持ちになった。 「ですが・・・キミ達はそのどれもすることが出来ません。 何故なら今からとても痛くて苦しい目にあって死んでしまうからです。 とっても痛いです。とっても苦しいです。そして死にます。 美味しいモノも食べれません。代わりにとても痛い目にあって死にます。 かわいいお嫁さんも見つけることは出来ません。代わりにとても痛い目にあって死にます。 もちろん赤ちゃんなんて作ることは出来ません。代わりにとても痛い目にあって死にます。 苦しんで苦しんで死ぬ。それが今からキミ達に待っている未来なのです。」 だからこそ男の次の言葉を、その場の誰も理解出来きなかった。 当然だろう。今、まりさと子ゆっくりの頭の中にあること、ついさっきまで男自身が自分の口で言ってたこと、 それと全く正反対のことを言われたのだから。 男がその言葉を発してから誰も何も言わなかった。ゆっくり達には男が別の言語を喋ってるようにすら思えた。 そんなゆっくり達を見て男が口を開く。 「ん?わからないかな?だったら昨日、キミ達のお目目を見えなくしたのが誰だか思い出してみるといい。 そんな俺がキミたちをゆっくりさせてあげるわけないだろ? いいかい?キミ達は美味しいものも、かわいいお嫁さんも、赤ちゃんも手に入れることは出来ないんだ。 それどころか痛くて苦しい思いをして死ぬ。それがキミ達に待っている未来なんだよ。 あと少しでキミ達にたっぷりと痛くて苦しい思いをさせて殺してあげるんで今のうちにゆっくりと理解してね。」 しばらくして・・・・・・子ゆっくり達は沈黙を破った。 「「「「「・・・ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!?な゛に゛ち゛ょ゛れ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!!」」」」」 子ゆっくり達は事態を理解し、次々に泣き叫んだ。 「ぢにだぐないいぃぃぃぃぃ!!!!!!いぢゃいのやだあああぁぁぁぁぁ!!」 「あまあまだべだいいい!!!げーぎはぁぁ!?ぢょごれーどはぁぁ!?おみがんはぁ!?おぶらいずはぁぁぁ!!?」 「どぼじでえええええええぇぇぇぇぇ!!!!ありじゅ、おどなになっで、がわいいおよべざんどゆっぐりずるのにぃぃ!!!」 「ぢぬのやああぁぁぁぁぁぁ!!!!!まりじゃ、おどなになっで、いっびゃいあがぢゃんづぐるんだよぉぉぉぉ!!!!!」 「だずげでぇぇぇぇ!!!!ずっぎりじで、あがぢゃん、じゅぐりだいいいいいいぃぃぃぃぃ!!!」 「キミ達が今言ってること、ぜ~~~~んっぶ無理!!!!!出来ません!!!!!何故なら今から死ぬから!!!! それじゃ最初の一匹目いこっか~~~~~~~!!!!!!!」 「「「「「いやああああああああ!!!!!!だじゅげでええ 子供達に逃げるように指示した。 しかし、狭い箱の中逃げられるわけもなく、まず最初に一匹数の多いまりさ種の子ゆっくりが捕まった。 男は子まりさを顔の側まで持ってきて言った。 「 ぁぁぁ♪ じゃ、美味しいものも食べれず、かわいいお嫁さんとも会えず、すっきりも出来ず、赤ちゃんも作れずに 痛くって痛くってく~るしいぃぃ~思いして死のっかぁぁぁぁぁ~♪ うひょひょひょひょひょ、今どんな気分でちゅかぁ~~~~~~♪」 「ひゅびぃぃぃぃぃ・・・・・・ゆびぃぃぃぃぃ・・・・・・やべぢぇ・・・やべでぇ・・・やべぢぇよぉぉぉぉぉ・・・・・・ぢにだくないよぉぉぉ・・・・・・」 「無理、無理♪キミは・死・ぬ・の♪今から痛くて痛くて苦しい目にあって死んじゃうんだよぉ~♪」 男の手の中で怯えながら子まりさは命乞いをしたが、男は更に子まりさの恐怖を煽る。 体はプルプルと震え、目からはポロポロと涙を流し、腹からはしーしーのための穴が開きチョロチョロと失禁していた。 男は診察中の医者が聴診器を患者の体に当てるみたいに、 手に持ったピンセットをちょこん、ちょこんと子まりさの体に当てていった。 「ゆびぃっ・・・!!!ゆぼっ・・・!!!!ゆびゃああぁ・・・!!!!ゆびびぃ・・・!!!!!!」」 ピンセットが子まりさの体に当たる度に、子まりさは悲鳴を上げた。 光の無い子まりさにとって異物が体に当たる感触だけで恐怖であり、もはや満足に呂律も回らなくなっていた。 「えいっ♪」 男が陽気な掛け声と共に子まりさの皮をつまみピンセットで引き裂いた。 ブチッと小さな音と立てて、子まりさの体から肉片が分離された。 「いぃぃぎいぃいいやああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」 甲高い絶叫が部屋中に響いた。 「いぢゃいぃぃぃぃぃ!!いぎゃいぃぃ!!いぢゃぁぁぁ!!!!」 脳髄の真から引き裂かれるような激痛に、子まりさはかつて目玉の収まっていた両の眼窩から涙をポロポロとこぼしながら叫んだ。 男はそれを聞きながら子まりさの叫びが止むのを待っていた。 そして子まりさの痛みが、自分の言葉を聞けるようになるまで治まったと判断すると、子まりさに話しかけた。 「ケーキ。甘くて!フワフワのクリームが!苺さんと一緒にとっても美味しいモノ!!」 「ゆぅ・・・・・・ゆぅ・・・・・いじゃい・・・よ・・・だじゅげ・・・でぇ・・・・・・」 「ですが!!キミはそれを食べることは出来ません!!何故なら痛くて苦しい思いをして死ぬからです!!!!」 そう言って、もう一度子まりさの皮膚を引き裂く。 ブチブチブチィィッ!!! 「いぎぃぃぃやああああぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!」 子まりさの絶叫が再び響いた。 男は再び子まりさの叫び声が止むのを待った。 そして先ほどと同じように子まりさの痛みが、自分の言葉を聞けるようになるまで治まったと判断すると、子まりさに話しかけた。 「シュークリーム!サクッとした皮と中のとろーりクリームが美味しいお菓子。」 「ゆ・・・ゅ・・・・・・ゅゅ・・・・・・・もぅ・・・やべ・・・・・・・・」 「ですがキミはそれを──────────────────────」 (挿絵16~22) それから子まりさは17分間に渡って、一撃ごとにこの世の楽しみを聞かされながら、 皮膚を剥がされ、髪を引き抜かれ、歯を抜かれ、舌を切断され、体内の餡子を抉られ、 底辺を炙られ、頭を炙られ、全身を炙れ・・・・・・・・・ 悲鳴をあげるために必要な口内以外にこの世のありとあらゆる地獄を味わって、この世を去った。 生まれたばかりの尊い命は、わずか一日足らずでその生涯を閉じ、子まりさの魂は天へと召されていった。 子まりさは信じていた。生まれたばかりの自分がこんなに目にあって死ぬなんて許されるわけはないことだ。だから絶対助けが来ると。 お母さんでも自分でも姉妹でもないけど、とにかく自分に助けが来ると。 だが助けは来なかった。 子まりさは信じられなかった。生まれたばかりで何もしていない自分がこんな目にあわなければいけない現実を。 だからこれはきっと何かの間違いだと思った。次の瞬間何事もなかったかのように間違いが訂正されて優しい家族の元でゆっくりしてると。 だが間違いが正されることはなかった。 子まりさは怒っていた。生まれたばかりの自分がこんなに目に合うことがまかり通ってしまうこの世界に。 だから怒り続けた。そうすれば怒ってる自分を見て悪いことをしたと気づいたこの世界が謝って正しい姿になると思ったから。 だがこの世界は謝りもしないし、子まりさにとって正しい世界にはならなかった。 死ぬ寸前まで子まりさは自分が死んでしまうことを信じなかった。諦めなかった。 だが、死ぬ直前に自分の意識が急激に暗く沈んでいったとき、自分が本当に死ぬことを悟った。 自分の死を悟った子まりさは何十倍、何百倍も死を恐れた。 自分がこれから体験するはずだった明るい未来を奪って行ってしまう死を恐れた。 そしてそのまま子まりさの意識は闇へと沈んでいき、何も感じなくなった。 生と死の境目ギリギリでも子まりさの死への恐怖が安らぐことは少しもなかった。 「ほい、お~しまいっと。」 男は無残な死体となった子まりさを箱の中に投げ捨てた。 「さ~て、次はどの子にしようかな~~~~。」 そして次の犠牲者を物色する。 「あがぢゃああああああああん!!!!!まりざのあがぢゃんがああああああああ!!!!! 愛する我が子の変わり果てた姿を見て、まりさが泣き叫ぶ。 母のこの言葉で子ゆっくり達は姉妹である子まりさの最期をこの見で見ることは出来なくとも、その死を悟った。 残された子ゆっくり達はもう動くことも出来ずに、一言も発することすら出来ずに、カチカチと歯を鳴らし、震えていた。 これ以上の水分の放出は命に関わると、涙も流れていなければ、しーしーもとっくに止まっていた。 姉妹の壮絶な断末魔を聞いて、彼女達の恐怖は想像を絶する域に達していた。 普通のゆっくりならとっくに気絶しているか、精神崩壊起こしてるだろうが彼女達にもそれは無理なことだった。 このまま正気と意識を、死ぬその時まで保ち続けるのである。 こう考えると最初に死んだ子まりさはまだマシかも知れない。彼女は姉妹の断末魔を聞かずに死ねたのだから。 残された姉妹達は後になればなるほど、先に逝った姉妹の断末魔を聞いて、更なる恐怖を抱いて拷問されて死ぬのだから。 「よ~し、き~めた、次はキミにしよ~♪」 男が次に殺す子ゆっくりを掴んだ。 それから一時間と十数分で子ゆっくり達は全滅した。 残りの姉妹も最初の子まりさと同じような目にあって死んだ。 この世への羨望と憧れを抱きながら、この世の地獄を味わい、自分から未来を奪ってしまう死を恐れ、絶望の底で死んだ。 只一つ違うことは、子まりさが本当に死んだのを知っていた残りの姉妹達は、自分が助かる可能性など微塵も信じていなかったことだ。 ある子ありすは拷問されズタズタに引き裂かれた体で母であるまりさに言った。 「おがあぁぁ・・・・・・じゃん・・・どびょじで・・・・・・ありじゅ・・・・・・を・・・・・・うん・・・だの・・・?・・・・・・」 「ゆぅ・・・?・・・・・・あり・・・・・・す・・・・・・?」 まりさは子ありすの意図のわからない問いかけに戸惑った。 まりさの口調から、母が自分の真意をわかっていないのを理解した子ありすは 苛立ちをぶつけるかのごとく最後の力を振り絞って泣き叫んだ。 「うばれぢぇがらっ・・・・・・!!!だのじいごどっ・・・!!うれじいごどっ・・・!!・・・ぢっども・・・ないっ・・・!!!!!! いぢゃいのぉぉぉ・・・!!!ごわいのぉぉぉ・・・!!!! ぐ る゛じ い゛い゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォ゛! ! ! じぇんじぇんゆっぐぢぃ・・・でぎないぃぃぃぃ・・・!!! ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごんな・・・ごどなら・・・うばれなげればよがっだっ・・・・・・ お゛が あ゛ざ ん゛が゛あ゛ぁ゛ぁ゛っ゛っ゛・・・あ゛り゛ず を゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛・・・・・・ う゛ば な゛げ れ゛ ば よ゛が っ゛だ の゛に゛い゛い゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ ! ! !」 自分が腹を痛めて産んだ子から投げつけられる生まれたことを否定する言葉。 「ゆっ・・・ゆ゛、ゆ゛ぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!!!!!」 それはまりさの心を深く傷つけるには十分であり、まりさはショックの余り声にならない声をあげた。 「あっはははははははははははははははは!!! あ~あ、かわいそ~。くくっ・・・生まれる親を・・・はははっ・・・選べないってのは悲劇だね~。 幸せな・・・くくっ、飼いゆっくりの親から生まれれば・・・・・・はぁはぁ・・・・・・・・・・・・・ひひっ・・・ 同じように・・・・・・幸せになれただろうに・・・・・・くくくくっ・・・あはははははははっ!!」 子ありすの最後の叫びを滑稽なものと捉えた男が大笑いしながら、まりさとまだ死んでない子ゆっくり達にそう言った。 子ありすは、この後も男の手の中で散々嬲られ、「ゆびっ!」「ぎっ!」「ゆぎぎぃっ!!」と反射的な短い悲鳴を 延々と上げながらこの世を去った。最後の最後まで生まれたことを呪い、後悔しながら。 生まれさえしなけば生きることに羨望を抱きながら、嬲り殺しにされるような酷い最期を遂げることはなかったのだから。 箱の中に戻されたまりさの目の前には、 ほんの二時間前まで肌をすり合わせて慰めていた愛しい子ゆっくり達の、見るも無残な姿が横たわっていた。 男はそんなまりさと子ゆっくり達の残骸を、己の視界いっぱいに収まる距離を保ちながらニヤニヤと見下ろしていた。 まりさは何も言えずに固まっていた。 目が見えない分、それを補って余りあるほどの楽しいこと、ゆっくり出来ることをさせてやろうと思ったまりさの思いは ズタズタに引き裂かれた。 一体ここに来て、まりさは何を得たのだろうか。 連れて来られてすぐに針で滅多刺しにされた。 苦しむ自分に男は、まりさが何も悪いことしてないけど苦しめたと事も無げに伝えた。 次の日は汚い発情ありすに無理やりすっきりさせられた。 ありすとの間に生まれた赤ちゃん達の愛しさに気づき、共にゆっくりしていこうと思った直後に赤ゆっくり全員の目を抉られた。 その後も何度もありすにすっきりさせられ、そのたびに生まれる子は目を抉られ、 それは自分のせいだと男が扇動したせいで愛する赤ゆっくり達に蔑まれて罵倒された。 腹を痛めて生んだ子ゆっくりの目の代わりに愛する赤ちゃん達を自分の手で皆殺しにした。その死体は自分で食わされた。 そして結局子ゆっくり達もみんな両目を抉られた。 挙句この世の楽しいことを母である自分の口から聞かされて、生きることへの羨望と希望を抱いた後に拷問されて殺された。 自分はその間ずっと子ゆっくり達の絶叫を聞かされ続けた。ある子ありすは生まれてきたことを後悔すらしていた。 「ゆびgekokoaaげえげげg・・・・・・」 当然、まりさの口から奇妙な音が聞こえ出した。 「おっ!ついにきたかっ!?」 それを聞いて男が身を乗り出した。 「ゆぼぼぼrajasjefsfos・・・・・・!ゆばばfafaserfaadahkjyrおぼげaafaraa!!」 次第に大きくなる奇妙な声と共に、まりさの体がビクビクッ、ビクンッというリズムで痙攣し始めた。 「ゆぎゃぎゃぎゃぎゃoaufhgshapgisaおびゃびゃびゃびゃgsafoaeoaokoaeota!!!! ゆぼぼgsiaiaseoasぎゃっぎゃっぎゃっ!ゆぎゃっ!!ゆぎゃっ!!ゆぎゃっ!!!! あぎひゃひゃはやはyはやはやっはやjふぇあいあyはやあややっや!!!!!!」 そしてまりさは白目を向きながら、ビクビクッ、ビクンッと痙攣しながら大声で奇声を上げだした。 「よっしゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!」 男が満面の笑みを浮かべガッツポーズを取った。 これが今、男の一番見たかったものである。 前出の通り、このまりさは気絶もしなければ精神崩壊も起こさないタイプのゆっくりなので、 文字通り気絶もしなければ精神崩壊も起こさない。 しかし、ゆっくりという生き物が精神崩壊を起こしていたころの名残であろうか。 『気絶や精神崩壊を起こすタイプのゆっくり』が『精神崩壊に達するのと同等の苦痛』を 『気絶も精神崩壊も起こさないタイプのゆっくり』が受けた場合に、このような現象が起こる。 このタイプのゆっくりのこのような現象は個体によって反応が様々だが、普段と違う反応をするので容易に確認が出来る。 これは永遠亭の薬師による実験でも証明されているし、虐待仲間内でもやった同様の実験でも確認が取れている。 ほとんど同じ家庭環境であり、気絶や精神崩壊を起こすタイプか、起こさないタイプかのみが違うゆっくり二匹で実験した。 目の前でお互いの家族を嬲って殺したところ、同時に片方は精神崩壊を起こし、片方が普段見せないような反応で似たような現象を起こした。 今のところ、この現象の名称は決まってない。 虐待仲間同士でも幾度も話し合ったが、「ぽっくり」だの「どっきり」だの「びっくり」だのろくな案がなかった。 永遠亭の薬師も名称をつけあぐねてるみたいである。 一度「単純に発狂でいいんじゃないか?」との案も出たが紛らわしいし、しばらくしたら(ゆっくりが)元に戻るので、 それは似つかわしくないだろうと却下された。 ちなみに成体になってないゆっくりでは、例えこのタイプにゆっくりだったとしても、この反応は起こらない。 なので子供のゆっくりでは気絶レベルか、精神崩壊レベルかはわからない。 何はともあれ、男は肩の荷が下りた気分になった。 気絶も発狂もしないゆっくりを虐待してて「この反応」にまで達せずに殺してしまったら そんなゆっくりを虐待してる意味がないからだ。 更に自分の扱ってるこのまりさの事情を考えれば、それは余りにもったいないだろう。 不気味な声をあげ、ビクビクッビクンと痙攣し続けるまりさを後にして、男は部屋を出た。 「良い夢みろよ♪」 男はそう言って扉を閉めた。 これから数時間はこのままなので何をやっても無駄である。 まりさにとってはこれが唯一苦痛によって意識を切り離せる時間でもあるのだ。 だが、この時、精神崩壊を起こせなかったことは、精神崩壊を起こせるゆっくりとして生まれてこなかったことは まりさにとって何よりも不幸である。 何故なら彼女が今まで受けた苦痛は、これから彼女の生涯で受ける苦痛の十分の一にも満たないのだから。 男は今日のゆっくり虐待はこれで終わりにしようと思ったが、一応様子見に例のれいむ一家の部屋に立ち寄った。 そこで男はれいむが精神崩壊を起こしているのを見た。 不気味な声で不気味な笑顔を浮かべ、目玉がパチンコ玉になったみたいに不規則にあっちこっち移動してる。 どうみても、もう駄目である。 「・・・・・・・・・いやいやいやいやいや、キミは弱すぎでしょ・・・・・・」 午前中、必死で食べ物をお願いするれいむの上の金網から、子ありすと子れいむたちはうんうんとしーしーを垂れ流した。 どうしてもごはん食べたいならこれを食べろってことだろう。食い物の恨みは恐ろしいものだ。 親れいむは空腹のあまり、それを食べることを選んだ。 その後、子ゆっくり達は腹もたいして減ってないだろうにお菓子を食べては母親の上で、 親れいむのごはんとなるうんうんとしーしーを繰り返してたが・・・・・・あれから数時間も経たない内にこれか。 どんだけ憎い発情ありすとの間に生まれた子ゆっくり達のうんうんとしーしーが嫌だったんだよ。 もっとも、ここに連れて来られるまで愛するつがいと、そのつがいとの間に生まれたかわいい子供達と幸せに暮らしていたのだ。 そこに達するまで生きていけるゆっくりがどれだけいるだろうか。半分近くのゆっくりはそこに達することなく命を落とす。 このれいむもそんな姉妹や同胞を散々見てきただろう。それが野生というものだ。 故にかつて手にしていた幸せな日々は野生の厳しい環境を生き抜いてやっと得られた幸福だったはず。 そのことを考えると今の有り様もわからなくもないが。 男は狂った親れいむを掴むと、発情ありすのいる生ゴミ用ゴミ箱に放り込んだ。 餌にするか、これでもすっきりするかはありす次第だ。 そして、親れいむの子である子ありすと子れいむ達も同じところに送り込んだ。 この結末でこいつらには十分満足したし、最高のおもちゃがある今となっては親れいむがこうなった以上もう虐待の余地はない。 子供達もたくさんお菓子いっぱい食べれて、母への復讐も出来て、十分に幸せな一生を送っただろう。 ゴミ箱の中から、ありすの歓喜の声と子ゆっくり達の悲鳴が聞こえたが、気にすることなく部屋を出た。 さ~て、明日はどうやってあのまりさを甚振ってやろうか。男の頭の中はそれでいっぱいだった。 【中編】 終わり 【後編へ続きます】 後編予告 真相×改造×再会 【後書き】 なげぇwwww中編だけで総容量105kって一体wwwwwwww とりあえず長い長い中編が終わって良かったです。 ※おまけ 没シーン 赤まりさの小さい体は、母であるまりさの体当たりで壁に叩きつけられた。 「・・・・・・ゆっ・・・・・・ぎ・・・・・・おが・・あ・・・しゃ・・・?・・・・・・ど・・・・・・ぼ・・・・・・ぢ・・・・・・・・・・・・で・・・」 赤まりさは箱の底に落ち、体中の裂け目から餡子を垂れ流しながら小さく痙攣していた。 体は運動能力を完全に失い、もはや口の形を成してない口から僅かに呻き声が聞こえるのみである。 だがその呻き声もすぐに聞こえなくなった。 「ん・・・?死んだか?」 男がそんなことを口にする。まだ赤まりさの体は小さくであるが震えていたからだ。 死んだのならあの震えも完全に止まるはず。何故呻き声だけ聞こえなくなったのか。 声だけが先に止まるという初めてのパターンに男は何も言わずに震え続ける赤まりさをじっと観察した。 そして、 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あがぢゃんごろじゅくじゅおやはゆっぎゅぢぢね」 小さい声であるがはっきりとそう言い残して赤まりさは完全に動かなくなった。 なんということではない。最期に言いたいことを言う力を溜めるために黙っていただけの話だ。 瀕死の身にはいささか長い台詞であったろうがどうしても言いたかったのであろう。 生まれたばかりの赤ちゃんゆっくりであるにも関わらず、 自分の望みを叶えるための最善の方法を誰にも教えられることなく自ら考え出し、結果目的を達成した。 自身の能力を超える思考力を引き出させた母への憎しみと怨嗟の念がどれほどのものだったか。 赤まりさが息を引き取った今知るすべは無い。第三者に出来ることは推し量ることのみである。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/700.html
※このSSはゆっくりが酷い目に合います。なお虐待描写は薄めになっております 『ゆっくり競泳』 夏 日差し 暑い この条件から導きだされる田舎暮らしの考えは只一つ。川に涼みに行く とりあえず準備でもするかな おおあついあつい。そんな声が聞こえるあぜ道を虫取り少年のような格好で歩く。ちなみに俺は青年だ あの森の中央には平野があり目的地の清流の川が流れている。あともう少しというところだろう 実は涼みのついでにもう一つ目的がある。あの川では苔も良く育つため鮎が住み着いているのだ この時期なら塩焼きも良いが天ぷらにも出来る。そのために俺はわざわざ重たいテンプラセットを担いで行く そう思うと気持ちがはやる。俺は木漏れ日の中で足どりを速めた 川について俺は軽くため息をついた どうやら俺以外に人の姿は見当たらない。さっそく川岸に腰を下ろし鮎釣りの準備をする しかし鮎の影が少ない気がする。まぁこんな年もあるのだろうと特に気にも留めず釣りを始めた 釣果はまぁまぁといった所だ。これだけ有れば十分だろう そして一度川から離れて荷物置き場へ行くと後ろからけたたましい叫び声が響いてきた 「ゆぐう゛っ!お゛お゛れ゛る゛う゛う゛う゛う゛!!!!!!」 「まり゛ざがあ゛あ゛あ゛あ゛!だれ゛か゛だす゛けでえ゛え゛え゛!!!」 なんだこいつらは?見れば一匹のゆっくりまりさが帽子を船代わりにして川に浮かんでいる。だたし岩に引っ掛っており動けないらしい その岩には俺が捕まえた鮎を入れたバケツが繋がってる。ははあんなるほど。コイツら俺の鮎を横取りしようとしたのか 更に見たところまりさの帽子は半分沈みかけている。岩にぶつかった所為で帽子が曲がりそこから水が流れ込んでいる ちなみに連れとみえるれいむはただ見てるだけだ。枝でも使えば届く距離だろうに とにかく俺はバケツへと近づいていく 「ゆ゛!?おじさん!はや゛くま゛り゛さ゛をたす゛けて゛あ゛げてね゛!!!」 「ありがとうおじさん!かわいいまりさをたすけてくれるんだね!ゆっくりはやくするんだぜ!!!」 「おいれいむ。なぜまりさは川にはいったんだ?」 「ゆ?そんなのいいからはやくまりさをたすけてね!ぷんぷん!!!」 「ブブー!残念なお知らせがあります。お兄さんはれいむが答えてくれないのでまりさを助けてあげられません」 すると間をいれずにまりさが答えた 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛!?おにいさん!まりさはみずあびにきたんだぜ!」 「俺はれいむに聞いてるんだ。おいれいむ、まりさが死んでもいいのか?ちなみに嘘だったらお前も川にいれるからな」 「ゆ゛う゛う゛う゛………。ま、まりさはみずあびにきたんだよ!うそじゃないよ!おさかなさんなんてしらない!!!」 誰も魚なんて言ってないがな。まぁ最初から分かってたのでとりあえずまりさの髪飾りに釣り針をつける そして川にダイブ!!!……の一歩手前で釣り竿を固定する 「ゆ~!おそらをとんでるみた……ゆ゛!?おじさん!すいめんにちかづけないでね!」 「なんでだよ?お前らは川に水浴び来たんだろう?だったら水に触れたって大丈夫だろ」 「っ!?」 ゆっくりまりさとれいむは所詮饅頭だ。皮だってメリケン粉を練った物だし水をかければすぐにふやける この前子供達が水鉄砲でゆっくりを追いかけまわしていたからその事は良く知ってる さぁどうするかな? するとしばらくしてまりさが口を開いた 「おにいさん!まりさはやめようっていったんだぜ!でもれいむがまりさをおどしてさかなをとりにいかせたんだぜ!!!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛???どお゛じでそ゛んなごどいう゛の゛!!!」 「なるほど。ではまりさは悪くなくてこの糞饅頭のれいむが諸悪の根源なんだね?」 「ゆっ!そうだよ!こんなくそれいむはまりさのともだちなんかじゃないんだぜ!おにいさんはやくまりさをたすけてね!」 もはやれいむはあまりのショックに餡子が追いつかず黙って震えている。何でこんな奴が野生で生きれるんだか不思議君もびっくりだ 俺はまりさを陸に揚げながらそう思った。案の定まりさはニヤけた顔でれいむを罵倒している 「じゃあまりさはおうちにかえるかられいむはそこでゆっくりしんでね!」 「……ま、人間様を舐めるなよってね」と呟く俺はまりさを抱えた 「ゆっ?おにいさん!まりさはおうちにかえるんだよ!はやくはなしてね!」 「何言ってるんだい。まりさの大事な帽子がビチャビチャじゃないか。それだと腐ってしまうぞ。どうだい、お兄さんのおうちでゆっくりしないか?」 「ゆゆゆ!そうだね、おにいさんのおうちでゆっくりしてあげるね!」 「じゃあこのわるいれいむはどうしようか?」 「くそまんじゅうのびっちれいむはいっしょうそこでゆっくりしていってね!」 「そうだな。それじゃあいっしょに帰るか!まりさ!」 そうして俺は自宅へと向うことにした。その間まりさはずっとニヤニヤしてれいむの事を罵倒し俺は適当に相槌を打っていた 俺の背中のバッグは歪に膨れて震えていたがまりさはそんなこと気にも留めなかった (そういや結局テンプラセット使わなかったなぁ。まぁ家で塩焼きにするか) おおゆうやけゆうやけ。そんな声を聞きながら俺は帰途についた ドアを開けて家に入ると……なぜかゆっくりの声が聞こえた。家の中からだ 抱えているまりさをソファーに置いて待たせておくと台所へ向う。それはもう床が泥と何かでドロドロだった 「ゆっ、おじさん!ここはまりさのおうちだぜぇ!にんげんははやくでていくんだぜぇ!」 無言で捕獲and透明箱行き。そのまま居間に戻った 「おにいさん!そのまりさはなんなんだぜ?」 「これはね、悪いまりさなんだ。だからお兄さんがこうやって閉じ込めてるんだ。まりさはそんな悪いゆっくりじゃないよね!」 「ゆっ!そうだぜ!あんなくそれいむとはちがうんだぜ!」 (以下、川で会ったまりさはまりさA、この家に入ったまりさはまりさBと表記する) 「よしまりさA、お兄さんと晩飯にしようか!」 「そうだね!はやくゆっくりとごはんもってきてね!」 「おじさん!まりさBにもごはんたべさせるんだぜ!あとはこからゆっくりだすんだぜ!」 雑音は気にせず俺の晩飯と適当なおにぎりを作ってやる。そういや後で掃除しないとな 「よしまりさA、晩飯だぞ」 「ゆっ!おにいさんありがとう!」 「どお゛じでまりざBには゛ない゛のお゛お゛お゛!!!!!はや゛くし゛な゛い゛とゆっ゛く゛り゛ゆる゛さ゛な゛い゛がらね゛え゛え゛え゛!!!!! 「おお許さないだってさ、怖い怖い。飯は美味い美味い」 「そうだねおにいさん、こわいこわい」 「ゆぐう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!???」 「ゆっくりできないまりさBはそこでくやしがってるといいよ!ハフハフッ、めっちゃうめぇ!」 「ゆぬydfじおdfんvgdffgfニコウザdfくぁw★!?’&・1」 まりさBは箱を涎か汗か涙でグチャグチャに汚して何か叫んでいる。もちろん内側だけ汚れているので無駄なのだが そうやって俺とまりさAはまりさBを肴にしてれいむの事などを話しながら晩飯を終え、その日を終えた これが最後にゆっくりできる夜だとも知らずに…… 翌日、俺は起床すると玄関の棚を開けて食べ物をほり込んでやった そしてまりさA、Bを起こして朝食を開始する。やはり昨晩のようにまりさBを肴に(ry 「おなかいっぱいだなまりさA!じゃあお兄さんといっしょに遊びにいくか!」 「ゆ?まりさAはゆっくりするよ!しばらくまりさのおうちでゆっくりするね!」 一晩でおうち宣言である。しかし此処はなんとしても川に連れていかねばならない こっそりとまりさAに耳打ちする (あのわるいまりさBを処刑するんだよ!まりさAもいっしょに見たくないかい?) 「ゆゆっ!?おじさんあたまいいね!まりさもいっしょにつれていってね!」 大声で返事するまりさA。もはや昨日の礼など覚えてないようである。相変わらずニヤニヤしやがって フン、それももうすぐお終いだ おおいなかいなか、という声を聞きながら俺は川へと向う 昨日と違うのはまりさA,Bの同行と背中に入っている中身である 結局まりさAはまりさBとれいむの悪口ばかりを得意げに言いながら満足げに顔を反らせていた どうしてここまでブチ殺したくなるんだろう。稗田さんはその道のプロらしいが体が弱いとも聞く。不思議なものだ 今度たずねてみようか。土産は赤ちゃんゆっくりでいいだろう おっと川が見えてきたな。俺は腰を下ろして準備にかかった まず川の向こう岸とこちらの岸に平行になるように3本ずつ杭を打つ。同じ岸の杭の幅は一定にする そして向こう岸に対応する杭同士を縄で結ぶ。これで川の流れと真横に分割されたコースが二つ出来た つまりは水が横に流れる競泳プールの様なものだ。ちなみに距離は7~8mぐらいでバサロマークは無い 「よしまりさA、B。今からお前らに競争してもらう」 「ゆ?まりさAはまりさBのしょけいをみにきたんだぜ!そんなことしたくないぜ!」 「あぁルールを言ってなかったな。ルールは簡単!早く向こう岸に着いたゆっくりの勝ち。負けたゆっくりは処刑だ」 「「っ!!!!!!」」 まりさAは驚きを隠せないようだ。一方のまりさBは急な話だが、それでも少し希望が出てきたので目に光が戻った 「おじさん!まりさAはそんなことにつきあってられないよ!ゆっくりおうちにかえるね!」 「おいおいまりさA、お前が負ける訳ないだろ?相手は昨日からロクにメシをくってないんだぜ?楽勝だよ それにもしお前が勝ったらお菓子も沢山あげるよ」 「ゆっ!?そうだね!らくしょうだね!あとでおかしちょうだいね!」 「おうおう、頑張ってくれよ」 『此処で選手の確認をしましょう。こんにちは、実況のスイミング喜多です。 まずは1コースのまりさA選手。かなり余裕の表情です。確かにお肌のコンディングはばっちしでしょう。 一方の2コース、まりさB選手。体力に不安がありますが命が掛かった勝負、負ける訳にはいかない!そんな熱い心が伝わります。 さぁもうすぐ始まります第一回ユックリピックin幻想郷、水泳の部。勝利の栄光は誰の手に! それではここで審判長からの言葉です』 「えー今回のユックリピック競艇の部は全幻想郷水泳連盟の規則に乗っ取って行ないます。 今大会ではフォルススタートは即失格となりますので十分に注意するようにしてください。なお応援について(ry」 「いみわかんないよ!さっさとはじめてね!」 「そうだよ!はやくはじめてね!ぷんぷん!」 「そうだな。俺も一人じゃ疲れてきたよ。じゃあ準備はいいか?よぅい、セイッ!」←掛け声 ザァッ!スタートダッシュで先陣をきったのはまりさA、帽子を少し前に傾けて必死に枝で漕いでいる まりさBはやや遅れ気味ながらもまりさAの後ろにしがみ付いており両者の距離は縮まらない しかしまりさAが横に流されて進行方向が斜めになってしまった。その隙を逃さずまりさBは涎と汗と涙でグチャグチャになりながら漕ぐ だが急に力んだまりさBは相当体力を消耗したのかペースが落ちてきた。もう残り4分の3だが顔が半分死んでいる その間にもまりさAは進んで行く。やった、まりさAのかちだ。あのまりさBはゆっくりしんでね。そう確信して向こう岸へタッt―――― 「まりさ!ゆっぐりじでいってね!」 「ゆっくりしていってね!」 まりさAは向こう岸から聞こえたゆっくりの声に反応し、口を開けてしまった 口から落ちた枝は横に流れてゆき、まりさも横に流されるが体が縄に引っ掛りゴール前10cmで静止する 悲しいかな、枝は川に浮いてはいるが縄は水面よりも高い位置に張ってあるためそのまま下流へ流れて行く そして進む手段の無いまりさAを尻目にまりさBはゴールしてしまった そのとき見えた向こう岸には、あのれいむが居た。昨日死んだはずの、糞れいむが見えた 「どお゛じであ゛ん゛な゛ごどいう゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!ぐぞれ゛い゛ぶの゛ぐぜに゛い゛い゛い゛!!!!!!!!」 「はいまりさAの負けー。ざんねんでしたー処刑執行ー」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛な゛ん゛でな゛ん゛でえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!!」 「なんでってお前負けたじゃん。ちなみに応援はOKだからなんの違反もないしな」 「あんなひどいこといったまりさAはさっさとくるしんでゆっくりしんでね!おにいさんがゆっくりたすけてくれたよ!」 そうなのだ。実は昨日れいむをこっそりカバンにつめて持って帰ったのである 帰宅後に玄関の下駄箱に入れてエサをやりながら待たせていた。もちろんその間にまりさAの罵倒は丸聞こえである 当然まりさAへの怒りは溜まり今にも襲い掛かりそうだったのを見て俺が提案したのである まりさAを負けさせるためにゴール直前でまりさAにだけ聞こえるように「ゆっくりしていってね!」と言ってくれと ゆっくりした結果がこれだよ! 「そうか、れいむは苦しませてゆっくり殺したいのか。よし、こうしよう」 俺は未だに浮いているまりさAの帽子に縄をくくりつけて川の岩に固定し、放置した そしてまりさB、れいむの二匹を連れて帰宅した。そのときに後ろから声が聞こえたが気にしなかった あれから一週間して俺はまりさBとれいむで子供を作らせて生まれると同時にかっぱらい、親二匹は畑の肥やしにした その赤ゆっくりを手土産として、俺は稗田のお嬢さんの家にたずねに行くのだ どんな反応をしてくれるのだろうか。少し期待しながら俺は相変わらずのあぜ道を歩くのである (終) 初投稿の喜多です。本名じゃないです SSどうだったでしょうか?虐待の面で弱いかな 次はもうちょっと読みやすい文章にしたい そういえば、実は競泳じゃなくて競艇なんだよね オマケ~まりさAのその後~ まりさA「だれ゛がだす゛け゛でよお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!か゛わ゛はこ゛わい゛よお゛お゛お゛お゛!!!!!!!」 れみりゃ「れみ★りあ☆うー♪たべちゃうどぉ~。うーうーッ!?うぎゃあああ!!!ざくや゛ー!ざぐグボッ!!!」 まりさA「コイツ……体付きの癖に川で溺れやがったぞっ!?ゆっくり襲った結果がこれだよ!」 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1240.html
第二章 脱出口である光の元に辿りつくため、様々なルートを試行錯誤しながら、機械室の上部へ向かうゆっくりれいむ、ゆっ くりまりさ、ゆっくりみょん。 あっちこっち行くたびに、3匹の体力は確実に奪われていった。それでも、互いに励まし 合い希望を忘れない。 「ゆっくりいこうね!」 「ゆっくりがんばって!」 「ちーんぽっ!」 3匹は助け合いながら、ゆっくりだが、確実に外への穴に近づく。途中、ゆっくりが足場にするにはやや細いパイプの 上を進むことになった。やや危険だが、ここを通れば、出口へとぐっと近づく。 「ゆっくりすすんでね!」 「ゆっくりしていってね!」 ゆっくりれいむ、ゆっくりまりさは細いパイプの上を何とか、這うように前方へ向かう。 しかし、ゆっくりみょんの様子がおかしい。 「ゆっくりゆっくりちーんぽっ!ゆっくりゆっくりちーんぽっ!」 独特の鳴き声を、オマジナイのようにして発しながら歩くが、今にも落ちそうなほど、左右に大きく体をゆらしながら 進んでいる。理由は、カチューシャの飾りだろう。そのせいで、ゆっくりみょんは重心がややズレているのだ。 また、今のゆっくりみょんは、ここまで来るのに体力を消耗していることも原因だ。 「ゆっくりとぶよ!」 ゆっくりれいむとゆっくりまりさが、パイプから、安定した人間の作業員用の足場へ跳び移る。 「すこしゆっくりできるね!」 安堵するゆっくりれいむ、ゆっくりまりさ。 しかし、その後ろで、 つるんっ 「ちんぽーーーっ!!」 とうとうゆっくりみょんが落下した。パイプの上の水滴に体を滑らせてしまったのだ。 べしゃ そのまま床へと落下するゆっくりみょん 「ゆっくりだいじょうぶ!?」 心配するゆっくりれいむとまりさ。 「ゆっ…ゆっ…。」 よろよろと体を立てるゆっくりみょん。なんとか大丈夫そうだ。 元々ゆっくりはある程度の弾力があることもあり、今回程度の高さからの落下なら、傷は負っても死ぬことはないだろ う。 「すこしやすんでね!!」 「ゆっくりのぼってきてね!!」 落ちてしまったゆっくりみょんに気をつかう2匹。 「ゆっくりしてからいくよ!」 二匹の呼びかけに応じるゆっくりみょん。どうやら大きなダメージは負っていない。 しかし… チュウ……チュウ…。 ゆっくりみょんの耳に、機械室の機械音以外の“何か”が聞こえてきた。 チュウ!チュウ!チュウ!チュウ! その何かとは、…鼠だ。 本来、食品加工工場であるゆっくり加工所は、清潔さが保たれているはずだが、この機械室は掃除も難しいこともあり、 非常に不衛生な状態になっている。そのため、床下にはゆっくり加工所内のゆっくりを狙った鼠が住み着いてしまったの だ。 今になって鼠が集まってきたのには理由がある。無機質な鉄のニオイしかしない機械室のなかで、ゆっくりちぇん が破裂したため、甘い匂いが広がってしまったのだ。 鼠達がゆっくりみょんに雪崩のように襲いかかる。 「ゆゆゆゆゆっ!?」 体力を消耗したゆっくりみょんは逃げることもままならない。 チュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウ チュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウ チュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウチュウッ! あっというまにゆっくりみょんの表面を埋めつくす鼠の群れ。その数は、ゆっくりみょんに直接ひっついていないもの も含めるとざっと200はいるだろうか?そして、鼠達はゆっくりみょんにいっせいにカジりつく。 「ち、ちんぽーっ!!」 グチュグチュグチュグチュグチュグチュ 全身を襲う痛みに、ゆっくりみょんが声をあげる。 しかし、それが更なる地獄をゆっくりみょんに味あわせる。 なんと鼠達は、同時に食すことができる面積が広がったと言わんばかりにゆっくりみょんの口の中へと雪崩れ込む。 「ゆぐぎぎぎがばばば…っ!!」 痛い、苦しい。ゆっくりみょんはもはや、息をするのもままならない。 「ゆぐりぎがおごごげげがっ!!!」 外から、中から皮と餡子を食い破られていくゆっくりみょん。 体外、体内から激痛が襲う。 「はやくやめてね!!!」 「ゆっくりさせてね!!!」 上から、その地獄絵図を目の当たりにする二匹のゆっくり。 しかし、助けに行くことはできない。行けば自分達も同じ目に会うことは明らかだからだ。 ゆっくりみょんを中身とした、表面がうごめく球状の鼠の集合体がゴロン!ゴロン!とあちこちへ転がる。 「ぢんんんぼおおおおっ!!!」 ゆっくりみょんが、必死の抵抗をしているのだ。 「ゆっくりがんばってね!!!」 ゆっくり達のエール。 しかし、その鼠の集合体は少しずつ……少しずつ……小さくなっていく。 「ゆっぐりいいいいっ!!!」 泣き叫ぶゆっくりれいむとゆっくりまりさ。 それが小さくなっていくことが何を意味するのか、知能の低いゆっくりでもわかるようだ。 やがて、その集合体は動くことすらなくなった。表面のみが、激しくうごめいたまま。 第三章 数分がたった。 あれほど激しく床でうごめいていた鼠の群れの鳴き声はもうなく。また機械の音だけが部屋に響く。 床には、そう、何も無くなっていた。 ねずみも、ゆっくりみょんも。 「ゆっぐ…」 そのはるか上の足場を、涙を流しながら進むゆっくりれいむとゆっくりまりさ。 あと少しで出口だ。しかし、どこか足取りは重い。この短時間で、二匹も“おともだち”を失ったのだから。 しかし、悲しみで立ち止まっているわけにはいかない。また鼠の大群が現れ、今度は上まで登ってくるかもしれない。 それに、モタモタしていれば人間達がこの機械室に入ってくるだろう。 「あとすこしでゆっくりできるよ!」 「はやくゆっくりしたいよ!」 そして、ゆっくりれいむとゆっくりまりさは、ここから跳べば、光が差し込む穴まで直接続く足場へと行けるところま で来ていた。 最後の足場までの距離…それは今のゆっくりれいむとゆっくりまりさの跳躍力で何とか届くかもしれない距離だ。ちょ うど、ゆっくりちぇんが死んだパイプまでの距離とほぼ同じだろう。 「こんどはゆっくりとべるかな?」 不安そうな顔をするゆっくりれいむ。もし落ちれば、もう一度ここまで登る気力は二匹には無い。 「ゆっくりとぶよ!」 後ろから強い口調で言葉を発するゆっくりまりさ。まるで、あの時のゆっくりちぇんのようだ。 「ゆっくりがんばって!」 応援するゆっくりれいむ、そしてゆっくりまりさが助走をつけるために後ろへ下がる。 かつてのゆっくりまりさなら、怖じけついていたかもしれない。しかし、今は違う。ゆっくりちぇんが前へ進む勇気を くれたのだ。 駆け出すゆっくりまりさ、そして。 ぴょん! ぷにん、と着地するゆっくりまりさ。見事、ゆっくりまりさは最後の足場へ到着した。 「ゆっくりーっ!」 歓喜の雄叫びをあげるゆっくりまりさ。 次はゆっくりれいむの番だ。意を決して助走するゆっくりれいむ。 ぴょん! 届く…かに見えた。 「ゆーーっ!!」 ほんの少し、届かない。無情にも、落下するゆっくりれいむ。 しかし、 ガクンっ! ゆっくりまりさがギリギリのところで、ゆっくりれいむの髪の毛を口で掴んだのだ。 「ゆっくりはなさないでね!!!」 叫ぶゆっくりれいむ。 重い…。疲れきったゆっくりまりさには、今のゆっくりれいむの体重は重すぎる。 「ゆゆゆゆっ…!」 しかし諦めない、鼠の群れに襲われながら、食われながらも抵抗したゆっくりみょんの姿が、ゆっくりまりさに諦めな い心を与えたのだ。 「ゆっく…りーーーーっ!!!」 まりさは渾身の力で、ゆっくりれいむを引き上げた。勢いで、後方に転がるゆっくりまりさとゆっくりれいむ。 ごろんごろん…。 「ゆっゆっゆ……ゆっくりーっ!!!」 二匹は、跳びはねて喜びを分かち合う。そう、2匹はついに光の下へ辿り着いたのだ。 「ゆっくりできるね!!!」 「おそとにでれるね!!!」 あとは、穴から外に出るだけだ。その穴の入口はゆっくりが入るには十分の直径だった。 まずは、ゆっくりれいむか ら光の穴へと入っていく、続いて、ゆっくりまりさが後へ続く。 二匹は、懐かしい外の景色を思い浮かべていた。これからの幸せに心を膨らませながら…。 しかし、ある程度進んだところで、2匹は異変に気づく。風が強い、それも、追い風だ。 「ゆっ?」 しかも、それは前に進むたびに強くなっていく。 そして、 「ゆうううううーーーーっ!!!」 急激に前へと引き寄せられる、ゆっくりれいむ。 そう、その穴は機械室の換気口だったのだ。追い風は、換気扇により中から外へ換気される空気によるものだった。換 気扇が高速で回転していたことと、太陽の光のまぶしさで、ゆっくりには非常に見づらかったのだ。 「ゆっくりとまってね!!!ゆっくりしていってね!!!」 前へと飛ばされるゆっくりれいむの後ろから、叫ぶゆっくりまりさ。 「ゆっ、ゆっ、ゆーーーー!!!」 絶叫するゆっくりれいむ、その瞳には、高速で回転する換気扇がはっきりと映っていた。 それはどんどん近づいてく る、いや、正確にはゆっくりれいむが近づいているのだが。 破滅は一瞬だった。 高速回転により換気扇のプロペラは、ゆっくりれいむの顔の部分の表面を皮と餡子ごと切り裂く。 「ゆっぐ!!!ゆっぐりだずげでええええ!!!」 顔の無いゆっくりれいむが泣き叫ぶ。 そのまま換気扇に巻き込まれ、あっというまにゆっくりれいむは餡子のミンチとなり、外へ吐き出された。 「れ゛い゛む゛う゛う゛う゛うううう!!!」 その光景を目の当たりにしたゆっくりまりさ。光の穴は、天国ではなく、地獄への扉だったのだ。 急いで、その穴か ら出るゆっくりまりさ。ゆっくりまりさのいる地点はまだゆっくりを引き寄せるだけの吸引力無かったのが不幸中の幸い だったか。 「ひっぐ!えっぐ!…ゆっぐり…でぎないよ!」 むせび泣くゆっくりまりさ。これからどうすればいいのか、もうわからない。 下に戻り、機械室から出て別の脱出ルートを探すのか?いや、それはあまりにも非現実的だ。機械室の外にはそれこそ、 作業員や警備員が徘徊している。 いや、それ以前に下へ戻る気力も起きない。 その時、換気口から音がした。 ブルン、ブルルン…プスプス……。 何事かと、ゆっくりまりさは穴を覗く。すると、何やら様子がおかしい、意を決し、再び中へ入る。今度は急に引き寄 せられることのないように慎重に、慎重に奥へ進む。しかし、わずかに追い風があるくらいで、一向に引き寄せられる気 配がない。ゆっくりまりさは更に進む、すると、換気扇が壊れて止まっているではないか、そのうえ、プロペラ部分は大 半がバラバラになり、残った部分もヒビ割れている。 「ゆっくり?」 換気扇へ近づくゆっくりまりさ。恐る恐る、換気扇にふれると、音を立てて崩れ落ちた。 そう、換気扇は、ゆっくりれいむを巻き込んだことで、故障し破損したのだ。 結果的にゆっくりれいむは、ゆっくりまりさのために道を開いたのである。 ゆっくりまりさは、呆然としながら、換気扇の向こうへ進む、光はすぐそこだ。 ついにゆっくりまりさは換気口の出口に立つ。空はすっかりと夕焼けに赤く染まっていた。 突然…ゆっくりまりさの頬を涙が伝う。それは止まることなく、流れ続ける。 その涙は、これまでの悲しみによる涙ではない。ゆっくりまりさが生まれて初めて流した、喜びの涙であった。 ゆっくり加工所の最上部に近いとこから望む草原と森の、かつてない光景を目にしゆっくりまりさは感激の涙を流した のである。 「……………。」 言葉にはならなかった、ゆっくりまりさは、かつてないほど、深く、深くゆっくりしたのである。 それは、時間にして30分くらいだろうか。 野生のゆっくりのごく一部には、高い所から飛び降りる術を知っている。正確には、壁を転がるのだ。 ゆっくりまりさは、目から歓喜の涙が枯れた後、換気口の出口から垂直の壁を転がった。そして、地面が近づくと、壁 を体の底で蹴り、衝撃を逃しながら今度は地面を転がった。 ゆっくりの球状に近い体型と、弾力性を利用した技である。猫は、7階の高さから飛び降りても無傷の場合があるとい う。が、このゆっくりの技はそれ以上のものだろう。 「ゆっくりしていってね!!!」 ぴょん!と体を起こしたそのゆっくりまりさは、住み慣れた森へと帰っていった。 終章 それから三日が経った。森の中に、主を無くした、ゆっくりまりさの帽子が落ちていた。 ほんの三日程前の夜、ゆっくりフランに襲われ、残虐の限りを尽くされ死んだゆっくりまりさの帽子だ。 そう、そのゆっくりまりさとは、あのゆっくり加工所から脱出したゆっくりまりさだ。 もし加工所から抜け出さず。檻の中にいたままなら、もう少し長生きできたかもしれない。 しかし、あのまま檻の中にいることは、ゆっくりまりさにとって、生きていることにはならなかった。 なぜなら、ゆっくりできなかったのだから。 あの、夕焼けの草原と森の光景の前に佇み、草原を駆け抜けてゆっくりしたゆっくりまりさは、最後の生を受けたので ある。最後に足掻くことで、ゆっくりまりさは生きることができたのである。 今日も、捕らえられた野生のゆっくり達がゆっくり加工所へ連れて行かれる。 おわり
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2448.html
※俺設定注意 厨ゆっくり注意 「ゆっくりの強化薬?」 「そう、ゆっくりの強化薬。ひとたび使えばその身体は強靭になり、被捕食種が捕食種を倒すことも容易になる夢の薬さ。 今までの硬化薬やトレーニングに依ることなく、それ単体で効果を発揮する。身体能力、知能向上。防水性の強化。その他諸々。 野良被害に悩まされていた飼いゆっくり達を救うにはうってつけの手段だと思わないかい?」 「それは素晴らしい話だな。ただし、副作用が無ければの話だが。そこん所は一体どうなんだ?」 「あるよ、もちろん。 まず被検体の性格に影響が出た。 非常に凶暴になり、同属の共食いに躊躇しなくなった個体もいる。廃ゆっくりも出た。 薬物の副作用に似ているね」 「駄目じゃねぇか」 「いや、それはあんまり問題が無かったんだ。 やろうと思えばそれに対抗するような鎮静剤みたいなものも作れるしね。ゆっくりだし。 それより厄介なことがあったんだ」 「それより厄介なこと?」 「変質だよ。 精神面でもそうだけど、肉体面でも変化が起こるんだ。 脱毛、変色、膨張は当たり前。 器官の増殖、新生なんてのもあった。 あるれいむは腕が生えて口と目が五つずつになってたよ」 「なんだそりゃ」 「そのれいむはふらん4匹をあっという間に解体したんだけどねぇ。 いかんせん僕達は『変えさせる』事はできても『直す』事はできない。 キミ、キミは自分の飼いゆっくりにそんな薬を与えたいかい?」 「いいや、御免だね。流石に彼女達をバケモノにする趣味は無い」 「そう!かくしてこの強化薬は廃棄、僕たちのプランも白紙になったわけさ! 永遠亭の協力もパァ!今までの苦労も水の泡! 当たり前ながら誰も愛するペットを恐ろしい化け物にする気はないって事だよ!」 「そりゃ、そうだろう。あ、でも虐待用の薬とかとしてなら許可が下りるんじゃないのか?」 「いや、それはもういいんだよ。 僕が作りたかったのは強化薬であって、そういうものじゃない。 まぁ大丈夫さ。次はうまくやるよ。 ・・・ところでさ、その強化薬の件なんだけど・・・・・・」 「何かあるのか?」 「実を言うとね、今ここにその強化薬のサンプルがあるんだ。 廃棄を免れたごく少量の、だけどね。 もし良かったらこれを使って報告をしてくれると嬉しい」 「嫌だよそんなもん。言ったろ、俺は彼女達をバケモノにする気はない」 「いや、そうじゃない。キミの愛するゆっくり達でなくても良いんだ。 キミはゆっくり農園とやらを経営してるだろ?他にもゆっくり養殖場とか。 そういうので良いんだ。適当なゆっくりを捕まえて、適当にサンプルを打ち込んでくれればいい」 「そいつが凶暴になってどんな被害を出すかわからないのに?」 「ああ、そうだ。でもキミなら大丈夫だろう。そう僕は確信している。 いくら凶暴になっても、ゆっくりはゆっくり。人間や、ましてやキミが遅れをとるとは思えない。 ゆっくりの扱いは心得ているだろう?それこそドスであろうと」 「確かにゆっくりの扱いは心得ているが、何故そんなことをしなければならないんだ」 「そりゃあ、次のためさ。 新しい製品を作るには多くのデータがいる。多くのデータを取るには大量のサンプルが要る。サンプルは多ければ多いほど良い。 とりあえずこの強化薬は失敗したが、それを無駄にはしたくない。できれば何故変質したのかを解明したいしね。 万事は試行錯誤。実験の積み重ねだよ」 「・・・・・・仮にその実験に付き合ったとして、その見返りは何だ?」 「特に何も。 ただ、そんなお願いを聞いてくれた優しいキミへ僕・・・いえ、私からの心ばかりのお礼があるだけだ・・・・・・わよ」 「急に女らしくなったりするな気持ち悪い。 ・・・・・・解った。いいぜ、その話乗ってやるよ」 「あぁ、ありがとう。やっぱりキミは良い人だね。頼んだ甲斐があったよ」 「こら、手を握るな。・・・・・・俺も少しは興味があるしな、その薬。適当なので良いんだろう?」 「ああ、勿論。ただし報告は忘れずにしてくれたまえよ。その方がぼ、私も嬉しいしね」 「だからその口調止めろ。何を意識してるんだよ」 「・・・・・・だって『お礼』って言ったら急に引き受けてくれたから。こういうの嫌い?」 「いや、嫌い・・・ではないが。なんか違和感ある」 「ところでお礼は何が良い?やっぱり・・・デ、デート、とか?」 「お前は何を言っているんだ」 ゆっくり鉄輪 ありすは幸せだ。 ありすは生まれついての飼いゆっくりだった。ブリーダーである男の元で生まれ、教育を施され、金バッジを取得した。 男の生活は変わっており、彼はゆっくり農園というものを営んでいた。 それはゆっくりのみで管理された大農園。ありすはそこで働いていた。 先輩であるゆうかや他のゆっくりの助言を頼りに、頑張って畑を耕し、水を遣る。 ありすの生活は充実していた。 そう、ありすの生活は充実していた。 頼りになる先輩達。優しい仲間。そして、最愛の夫。 ありすには伴侶がいる。優しいまりさが。 ありすが成体になって間もなく、散歩の途中、小川に架かる橋の上でそのまりさを見かけたことが始まりだった。 まりさの帽子には飼いゆっくりであると言う証明のバッジがついていない。 それは、このまりさが野生のゆっくりであると言う証拠だった。 ありすは飼いゆっくりだ。もちろん、人間たちの常識、ルールは叩き込まれている。 飼いゆっくりは野生や野良のゆっくりと仲良くするべきではない。そういう風にありすは教育されてきた。 野生と飼いでは常識が違う。飼いが悪とすることでも、野生のゆっくりにとっては正義となることがある。 だからお互いが悪影響となりかねないのだ。 だがありすは、そんなことに頓着することは出来なかった。 そのまりさをはじめて見たその瞬間、ありすに電流が走ったのだ。 少々汚れながらも精悍なその顔。芯の強さがにじみ出てくるその瞳。優しげに微笑むその唇。 ありすの一目惚れだった。 何も考えることが出来なくなり、思わず反射的に声をかけてしまった。 「ゆっくりしていってね!!!」と、その直後に後悔に襲われるありす。 ああ、やってしまった。野生のゆっくりに声をかけるべきではないのに、なにをやってるの、ありすは。 そんな思いに囚われるありす。挨拶すべきではなかったという後悔の念は―――。 「ゆっくりしていってね!!!」 その明るく、優しい声に吹き飛ばされた。 少し話してみると、このまりさがとても優しいゆっくりであることがわかった。 もじもじと恥ずかしがってばかりのありすに、まりさはいつまでも付き合ってくれたのだ。 「ねぇ、ありすはどこからきたの?」 「ありすはとってもきれいだね!」 「ありすはかいゆっくりなの?すごいんだね!」 楽しい時間はすぐに過ぎていった。 まりさがありすに質問し、ありすが答える。そんなぎこちない会話でも、ありすは幸せだった。 「ゆっ!もうおひさまがしずみそうだよ!たのしいじかんはすぐにすぎちゃうね!」 夕暮れになったときに、まりさはそう言った。 ありすもよ。ありすも、とっても楽しかったわ。 そう言おうとしても、満足に口を動かせないありす。 「それじゃあまりさはもうかえるね!ありす、またあしたもゆっくりできる?」 そんなありすに、まりさはまた会おうと言ってくれた。 言葉にならない感動に、ぶんぶんと首を振るありす。 「ゆぅ!よかった!それじゃありす、まりさはあっちのほうにおうちがあるから、もうばいばいだよ!」 そう言いながら森の方へと身体を向けるまりさ。 夕焼けに照らされたその笑顔は、とても温かい。 「あ・・・あの!まりさ!ありす、ありす、とっても、とっても・・・・・・」 別れ際に言おうとするその言葉も、ろくに出てこない。 言わなきゃ。とっても楽しかったって。何でこの口は動かないの。都会派ならちゃんとはっきり言わなくちゃ。 そう思っても身体はまるで金縛りにあったように動かない。ありすは自分に腹立たしくなる。 「まりさもとってもたのしかったよ!ありす、またあしたね!」 まりさは満面の笑顔でそう言ってくれた。 良かった。伝わった。ちゃんとわかってくれた。 まりさに自分の気持ちが伝わったことにありすの胸が熱くなる。 赤く照らされた森にぽよぽよとまりさは跳ねていく。 明日もまた会おう。ありすのカスタードにそのことが深く刻まれる。 ありすはまりさが見えなくなるまで、ずっとその背中を見続けていた。 それからありすとまりさは毎日橋の上で会い、遊んだ。 最初の数日間はぎこちなかったありすも慣れて、照れずにまりさと向き合えるようになった。 やはり数日間一緒に遊んでわかった。 このまりさは優しい。それだけでなく、機知に富み、勇気に溢れていた。 飼いゆっくりを妬む野良や野生のゆっくりは少なくない。 自分の境遇と比べて幸せである飼いゆっくりを嫉み、襲い掛かるゆっくりは後を絶たないのだ。 だがまりさはそんな事とは無縁だった。 飼いゆっくりと野生のゆっくりに隔たりなんか無いとばかりに、ありすに接してくれた。 初めて森の中に入ったありすに、まりさは綺麗な花をプレゼントしてくれた。 甘い香りを放つそれは、まりさが頑張ってとってきたものだと言う。 少し自慢そうに微笑むまりさに、ありすはどんどん惹かれていった。 ありすは飼い主である男にまりさを飼ってくれるよう頼み込んだ。 実際、男は性格の良いゆっくりならスカウトのように農園に迎え入れていたので、ありすには勝算があった。 頼りになる先輩ゆっくりの中にも、野生出身の者は少なくない。 「おねがいします!まりさをかってあげてください!」 「・・・・・・」 男はあまり良い顔をしなかった。 それはそうだろう。いつの間にか野生のゆっくりと親密になり、そして農園に入れてやってくれと頼み込まれたのだから。 元々彼は放任主義だったが、今回は少し頭を悩めた。 「まりさはいいゆっくりなんです!きっとおにいさんもきにいりますから!」 「・・・・・・そのまりさはここに居ないようだが?」 ありすはとりあえず飼い主の了解を得ることから先に始めた。 とにかくお兄さんの了解を得ないことには始まらない。先にまりさを連れてきてお兄さんを怒らせたらことだ。 ゆっくりにしてはそこそこ頭を働かせてありすはこの計画を立てたのだ。 「おにいさんがゆるしてくれたらつれてきます!だからおにいさん、おねがいします!」 「・・・・・・珍しいな、ありすがそこまで強情になるなんて」 男にとっては意外だった。 普段はおしとやかと言っても差し支えないほどに大人しいありすが、ここまで強情になるだなんて。 今まで彼に逆らったことなど数えるしかないありすがここまで入れ込むまりさに、興味をもったのも事実だった。 「・・・・・・そこまで言うんならしょうがない。いいよ、ありす」 「ゆっ!?ほんとう!?」 反対する理由などあまり無いのも確かだ。 本当に善良なまりさならありすの眼に狂いは無かったと言うことになるし、違うのならば潰せばよいことだ。 そんな軽い気持ちで男はありすに許可を出した。 「おにいさん、ありがとう!ありす、まりさをせっとくしてきます!」 言うや否や、ありすは森へと跳ねていった。 もしまりさがうんと言ってくれたなら、ありすとまりさは同じゆ舎の中で暮らすことになるだろう。 そうすれば、もしかしたら、ありすと一緒に・・・・・・結婚・・・・・・。 湧き上がるその思いを抑えきれずに、ありすは真っ赤になりながら森へと向かっていく。 「まりさ!まりさ、あ、あの、その・・・・・・」 「ゆ?なぁに、ありす?」 いつもの待ち合わせ場所である橋の上で、ありすはそう切り出した。 また口が満足に開かない。どうなっているんだ。 ありすは最初にまりさに出会った頃を思い出しながらも必死に続ける。 「あの、その、えっとね!お、おにいさんに、きょかをもらってきたの・・・・・・」 「ゆ?」 その突飛な申し出にまりさは思わず首をひねる。 いきなりこれでは訳が分からないでしょ、この田舎者。 そう自分に毒づきつつ、しどろもどろになりながらも必死に言葉を紡ぐありす。 「え、えっと、まりさ!まりさはかいゆっくりになりたくない?」 「ゆっ!?かいゆっくり!?」 きらきらと目を輝かせるまりさ。 当然だろう。飼いゆっくりになれば少なくとも野生よりは安全に生きられる。できる事ならそうなりたいのも確かだ。 まりさにとってもその魅力は大きかったようだ。 「もしかして、まりさはかいゆっくりになれるの!?」 「そ、そうよ!まりさはかいゆっくりになるのよ!」 問いかけるまりさに、答えるありす。 やった。確かな手応えに、ありすは歓喜する。 これで、まりさと一緒に暮らせる。 「ゆっ・・・・・・ゆわーい!!!やったー!!!」 よほど嬉しかったのだろう。飛び跳ねるまりさ。 その姿を見てありすもまた嬉しくなる。 こんなに喜んでくれるだなんて。本当によかった。 そう思うと、胸の奥からこみ上げてくるものがある。 「まっ・・・・・・まりさ!!」 「ゆ!?なぁに、ありす!?」 飛び跳ねるまりさに、思わす声をかける。 言ってしまおう。この想いをぶちまけてしまおう。 今なら恐れずに言える、そんな気がする。 「あ、ありすは!!ありすはまりさのことがすき!!すきなの!!だいすき!!! だ、だから、いっしょに、いっしょにずっとゆっくりしてほしいの!!」 真っ赤になりながら一気にまくし立てるありす。 言ってしまった。もう後戻りは出来ない。 このプロポーズをまりさは受けてくれるか、どうか。 「ありす・・・・・・まりさは・・・・・・」 はたと立ち止まり、ありすに向かってポツリと呟くまりさ。 まりさの答えを待ち望み、まりさを見つめるありす。 「まりさも、ありすのことがだいすきだよ!!いっしょにゆっくりしようね!!!」 最初に出会ったときのような満面の笑顔で、まりさはそう言ってくれた。 嬉しい。 思わずありすの頬に、一筋の涙が伝う。 「ま、まりさっ!」 「ありす!」 お互いに駆け寄り、身体を擦りつけあう。 それは友情ではなく、夫婦となったゆっくりに許される愛情のすりすり。 今ここに2匹は番となった。 それからありすはまりさをゆっくり農園に連れて帰った。 夫となったまりさを皆に紹介する。帰ってきたのは驚きの声と、祝福だった。 まさかありすがこんなに早くお相手を見つけてくるとは思わなかった。 そのまりさは野生のゆっくり?ありす、大人しいと思ってたのに大胆だねぇ。 そうだ、ありすのけっこん祝いになにかしてあげられないかな。 それはいいね。何がいいだろう。 おめでとう、ありす。 そんな皆の優しい祝福に、またありすは泣いてしまう。 どうしかたのかとおろおろし始める周囲に、ありすは微笑みながらも言った。 「ちがうの。ありす、とってもしあわせで、うれしくて、それでないちゃったの」 それから、ほんのちょっとだけありすの生活は変化した。 いくらスカウトされた善良なゆっくりと言えど、人間たちの常識に慣れるには時間が必要だ。 いきなり最初から農場で働かせるわけにもいかない。そのまま遊ばせておくなど論外である。 だから、男はそんなゆっくりのためにもう一つ農場を用意していた。 いや、正確に言うならそうではない。ただ単にあぶれ者の収容所というだけだ。 野外農場。 それだけならば聞こえは良いが実際は単なる奴隷農園だった。 人里に侵入を図った野生のゆっくりなどを捕まえ、そこで働かせる。 言うことを聞かなければ鞭が飛び、逃げようとすれば監督官であるふらんたちに食われる。 スカウトされたゆっくりとて少々大目には見るものの基本的に扱いは変わらない。 ありすはそんな野外農場で働くことになった。 夫のまりさがそこに行くのだ。付いて行かない理由などどこにも無い。 今まで培ったお野菜の栽培法を活かせば、恐ろしいことなんて何一つ無いはずである。 実際、ありすはそこで上手くやった。 言われるままに動くしかない他のゆっくりと違って、ありすには知識がある。ヘマをするようなことは無かった。 事情を知っているふらんたちも、わざわざ金バッジであるありすに目くじらを立てることは無かった。 ありすの夫であるまりさも同様に見逃されていたようである。 昼は悲鳴を上げる奴隷ゆっくりを他所にまりさに農耕を教え、夜には寄り添いあいながら眠る。 まりさもありすの教えを良く飲み込み、早くも農場で頭角を現し始めている。 逆恨みしてくる他の奴隷ゆっくりからは、ふらんたちが守ってくれた。 時々視察に来た先輩ゆっくりたちも、ありすに優しくしてくれる。 そう、ありすの生活は充実していた。 少し場所は変わったが、やる事に何一つ変わりは無い。 頼りになる先輩達。優しいふらんたち。そして、最愛の夫。 ありすには伴侶がいる。優しいまりさが。 そして。 そして―――子供が出来た。 ありすとまりさの愛の結晶。 今このお腹の中に、その命の息吹を感じ取れる。 ありすは胎生にんっしんっをしていた。 男の見立てによると、約一ヶ月で生まれてくるそうだ。 ゆっくりの妊娠期間は千差万別だ。 早ければ数分から、遅ければそれこそ人間とほぼ同じ時間ほどかかる個体もいる。 ありす自身も胎生にんっしんっで生まれたゆっくりだった。 そのときにかかった期間が一ヶ月。ならば今回もそれとほぼ同じ時間がかかるだろう。 それが男の考えだった。 わずかに膨らんだように見えるお腹を見て微笑む二匹。 どんな子が産まれるのだろう? ありすに似た子かな?それともまりさだろうか。 二人の愛に包まれて、この子は祝福されながら産まれてくるのだろう。ありすは思わず頬が緩んでしまう。 ゆっくりとして生きられるうちの最高の幸せ。 それを受けていると言ってもいいほどにありすは幸せだった。 これからはどんな困難もふたりで、いや、おちびちゃんとも一緒に超えていけるだろう。 そう、だからありすは幸せだ。 「ありす、まりさはありすのえいようのためにおいしいものをとってくるよ!」 「ゆ?まりさ?」 ありすがにんっしんっして一週間後、唐突にまりさはありすにそう言った。 身重となったありすは農場で働けなくなった。 その代わりとでも言うように、まりさはありすの分まで頑張っているとふらんから聞かされている。 更にまりさはありすの栄養のために、わざわざ森へ行って食べ物を持ってきてあげると言い出したのだ。 嬉しい。 迷惑をかけているのに、そんなことも気にせずにまりさはありすのことを案じてくれている。 この心遣いがとても嬉しい。でも――― 「ゆっ、いいわよ、まりさ。そんなにがんばらなくても」 申し訳なく、思う。 もうこれ以上の負担を負う必要はない。そんなに頑張らなくても誰もまりさを責めたりしないのに。 「だいじょうぶだよ!まりさはありすのためならへっちゃらだよ!」 そう笑うまりさの顔には、確かに疲れがにじみ出ている。 ありすの分も連日働き続け、まりさが疲労しているのは明らかだ。 それでもまりさはありすのために何かしたいのだと言う。 やっぱりまりさは優しいな。 ありすの胸が熱くなる。 「でも、まりさ・・・。まりさ、つかれてるじゃない。いいからきょうはやすんで・・・・・・」 「ありすはがんばってあかちゃんをうもうとしているときに、まりさだけやすめないよ!」 二匹の主張は平行線。 延々とお互いのことを案じ、助けようとしている。 「ゆぅっ!ありすはもっとゆっくりしてね!まりさはありすのためにごはんをとってくるんだよ!!」 「わ、わかったわよ、まりさ・・・・・・」 結局、ありすが折れた。 元々ありすは大人しく折れやすかったのだが、それに加えてまりさがここまで強情になるのも初めてだった。 こんなにありすのことを案じてくれているだなんて。 まりさの優しさに胸を打たれる。 「まっててね、ありす!まりさ、のいちごさんとか、はちみつさんとかたくさんとってきてあげるからね!」 「う・・・うん!まりさ、きたいしてまってるわね!」 ここまで意気込んでくれているのだ。もう応援して送り出してしまおう。その方がきっとまりさも嬉しい。 ありすはそう考え、まりさに満面の笑顔を向ける。 「じゃあ、いってくるね!・・・と、そのまえに・・・・・・」 「ゆ?・・・ゆゆ・・・♪」 まりさがありすに寄り添い、ほっぺたをくっつける。 すりすりと柔らかい感触。二匹の愛情に満ちたすりすり。 いってらっしゃいのキスと言わんばかりに、二匹は愛情をこめてお互いに擦り寄る。 「それじゃあ、こんどこそいってきます、ありす!」 「わかったわ、まりさ!がんばってね!」 お互いに満面の笑み。 行ってきますと森に向かうまりさに、行ってらっしゃいと見送るありす。 心なしかお腹の赤ちゃんも嬉しそうに震えているような気がする。 まだ一週間目だが、それでももう赤ちゃんの形くらいは出来ているはずだ。 きっと愛情たっぷりな夫婦のやり取りを感じて嬉しくなったのだろう。 お腹の中の赤ちゃんの感触と、まりさの優しさにありすは微笑む。 あと3週間ほどで、ありすたちは親子になるんだ。その光景を思い描くたびに頬が緩む。 こんなに幸せでいいんだろうか。ありすはそう思うほどに幸福だった。 森に向かうまりさのその姿が見えなくなるまで、ありすはずっとまりさを見送っていた。 しかし、その後ありすの元にまりさが帰ってくることは無かった。 ありすは泣いた。 泣いて、泣いて、泣き続けた。 一体まりさの身に何が起こった? もしかしたら、れみりゃに襲われて死んでしまったのかもしれない。 もしかしたら、何か事故にあって死んでしまったのかもしれない。 もしかしたら、もしかしたら・・・・・・ ありすの頭の中にあらゆる可能性が駆け巡り、それがまたありすを悲しみに突き落とす。 もうまりさはこの世にはいないのかもしれない。でも、それでも。 それでも、まりさが死んでしまったなどとありすは信じたくは無かった。 きっと生きているはずだ。今もどこかで、きっとありすの元に帰ろうとしているはず。 可能性は低い。だけどその可能性に縋り続けたかった。 今、ふらんや他の空を飛べるゆっくりがまりさの捜索に当たってくれている。 身重のありすにはそれを眺め、待つことしかできなかった。 ありすにはそれが悔しい。 にんっしんっさえしていなかったら、ありすは真っ先にまりさを探し出すだろう。 赤ちゃんが悪いと言うわけではないが、それでも・・・・・・歯がゆく感じてしまう。 赤ちゃんが動いた。 まるで母親を慰めるように。 それに気付いたありすは、赤ちゃんに小さく謝った。 ごめんね。 赤ちゃんのせいなんかじゃないんだもんね。 大丈夫よ。 あなたは安心して、生まれてくることだけを考えればいいのよ。 ねぇ、まりさ。 早く帰ってきて。お願いだから。 今、農場はあなたを探すために大変なの。 みんなが一生懸命まりさの事を探してくれているの。 栄養の付く食べ物なんていらないから。 ありすにはまりさが、あなただけがいればそれでいいの。 お腹の中の赤ちゃんもまりさのことを待っているの。 ねぇ、お願い。 早く帰ってきて。今すぐ帰ってきて。 そうじゃないと・・・・・・悲しくて、悲しくて、泣いてしまうから。 ねぇ、まりさ。 ありすは待った。 泣いて、泣いて、それでも待ち続けたのだ。まりさの帰りを。 あるはずの無い、夫の帰りを。 胎内の赤ちゃんは、少しずつ、大きくなり始めていた。 それから一週間後。 まりさが見つかった。 正確には、まりさを見つけたとふらんが報告してくれたのだ。 まりさは森の中にいる、とだけふらんは教えてくれた。 その言葉を聴いた途端、ありすは走り出していた。 目指すはまりさのいる森の中。 既にお腹は大きく膨れ、移動することすらおぼつかない有様だ。 だがそれでもありすは一生懸命跳ね、森へと向かっていく。 まりさに会いたい。その一心でありすは跳ね続けている。 沢山待った。とても長い間、ひたすら待ったのだ。 まりさの居ない朝ををすごし、一緒にとるはずだった昼食をひとりで食べ、夜は寂しく眠る。 そんな生活を、一週間も続けていた。 ゆっくりにとって一週間とは、短い時間ではない。 妊娠しているありすにとって、この一週間は何年、いや、それ以上の長さに感じたことだろう。 今はお腹の赤ちゃんのことも頭に無く、ひたすら身体を動かし、跳ねる。 まりさは既に死んでしまっているかもしれないと思ったこともあった。 でも、生きていた。生きていてくれたのだ。これほど嬉しいことがあろうか。 待っててまりさ。 今、ありすが行くからね。だからちょっと待ってて。 ほら、こんなにお腹も大きくなったんだよ。まりさとの赤ちゃんだよ。もうすぐ生まれそうだよ。 ありすは跳ねていく。 その瞳に愛しのまりさを映しだそうと森の中へと入ってゆく。 失くしかけた幸せ。失いかけた夫。それを取り戻さんと、ありすは森を駆けていった。 「ゆっくりかえったんだぜ、れいむ!」 「ゆぅ~ん!おかえり、まりさ!」 ありすは立ち尽くす。 木の陰に隠れ、遠く離れた2匹の饅頭をひたすらに見続ける。 「おまたせなんだぜれいむ!きょうのごはんはこんなにあるんだぜ!」 「ゆうぅ!すごいよぉまりさぁ!」 帽子を脱ぎそこに溜め込まれた木の実や虫を取り出していくまりさ。 そしてそれを見て感動するれいむ。 ありすは今何が起こっているのか理解できなかった。 今、ありすが見つめ続けているのは確かに自分の夫であるはずのまりさだ。それはわかる。 あのお帽子、あのきれいな髪。ありすがまりさを見間違えるはずは無い。 じゃあ、まりさの傍にいるあのれいむは一体何者だ? 見ればれいむの額には茎が生え、そこには5つの赤ん坊が眠りながら繋がれている。 れいむが3に、まりさが2。もうすぐ生まれ落ちそうなほどに良く育っている。 いや、そんなことはどうでもいい。一体何故、そのれいむにまりさの赤ちゃんが実っているのだ。 「やっぱりまりさはすごいね!れいむはこんなにたくさんのごはんみたことないよ!」 「ふん!こんなのかんたんなのぜ!まりささまはもっとつらいところにいたからこんなのらくしょうなのぜ!」 れいむの賞賛に、胸を張りながら答えるまりさ。 ありすにはまりさたちの会話が理解できない。目を開き、見つめ続けるだけだ。 「まりささまはむかしにんげんにつかまって、そこでじごくのようなろうどうをさせられていたのぜ!」 「ゆぅ!こわいよぉまりさぁ!」 まりさは軽薄な笑みを浮かべ、そう話し始めた。 ありすの知るまりさとはかけ離れた表情。少なくとも、ありすはこんなまりさを知らない。 「そこではまいにちまいにちつちをほったりみずをばらまいたりして、おやさいをつくらされていたんだぜ!」 「ゆぅ!?なにそれぇ!?」 「まったくだぜ!!おやさいはかってにはえてくるのに、まったくむだなろうどうだったんだぜ!!」 一体何を言っているのだ? お野菜さんは沢山世話をして、それでようやく収穫できるものだ。勝手に生えるなどありはしない。 まりさにそう教えたときはわかったと言ってくれたはずなのに。 「あるときまりささまはいやになってそこをとびだし、にげだしたんだぜ!!」 「ゆっ!だいじょうぶだったのまりさぁ!?」 「おそいかかるふらんやれみりゃをあいてに、なんとかまりさはこのもりまでにげのびてきたのぜ!!」 「ゆーっ!!すごーい!!」 違う。違う違う違う。 まりさはありすのために。栄養のある食べ物をとってきてくれるって。そう言ってくれたはずなのに。 そうやって、ありすがまりさを見送ったはずなのに。 「そこでまりささまはもりいちばんのきれいなれいむにであい、そしてふうふとなったってわけなんだぜ!!」 「ゆぅ・・・!はずかしいよぉまりさぁ・・・!」 思い返せば、まりさのことを教えてくれたふらんの表情は暗かった。 きっとこの事を知って、迷いに迷ったうえでありすに告げることを選んだのだろう。 何故ふらんの態度を疑問に思わなかったのか?それはありすがまりさのことだけを考えていたからだ。 こんなことが待ち構えているとは思いもしないで。 このまりさは飼いゆっくりになりたかった。 危険の無い生活。十分な量の食事。夜れみりゃにおびえる事も、突然の雨も心配することは無い。 同じ群れに暮らしていたぱちゅりーの話は、まりさの記憶の奥底に深く刻まれた。 そしてそんな夢を見ながら暮らしていたある日、ありすと出会った。 清潔な髪の毛。栄養をたっぷりとっていそうな肌。見るからに飼いゆっくりであるとわかった。 そこでまりさは、ある考えを思いつく。 このありすと夫婦になって、飼いゆっくりになってしまおう。 そうと決まれば話は早かった。 まりさはありすにモーションをかけ続け、ありすに惚れさせることに成功した。 もともと初心な飼いゆっくりのありすには、プレイボーイであるまりさにめろめろになるのも時間の問題だった。 そうしてまりさはありすと結婚し、飼いゆっくりとなるはずだった。 ところがどうだ。待っていたのはゆっくりとした生活ではなく、地獄のような労働の日々。 まりさにとっては寝耳に水どころではない。 聞いていた筈の生活などどこにも無く、毎日毎日意味の無い労働ばかり。 それがまりさを幻滅させるのにそう時間はかからなかった。 いや、むしろ一週間以上も良く持ったほうだということか。 そうとなればこんな場所に用は無かった。妻であるありすのことも最早どうでもいい。 すっきりしようと思えばいくらでも相手はいるし、この生活のお陰で身体も鍛えられた。 そしてある日まりさはありすのために食べ物をとってくると嘘をつき、農場を後にした。 まりさの演技力は抜群で、誰もが妻のために奔走する姿にしか見えなかっただろう。 勿論まりさはそんな気など毛頭ない。ただ森へと逃げ帰る事しか頭に無かった。 結局は、ありすはまりさに体よく利用されただけに過ぎなかった。 飼いゆっくりに憧れて幸運にもありすを孕まし、そして理想と違ったから逃げ出した。 ただそれだけに過ぎない。 だがそんなことをありすは知らない。 ただ何故と呟き、その場からあとずさるだけだ。 気付けばその双眸からは涙がとめどなくあふれ出てきている。 「ゆぅ~ん、れいむ、なんだかおそらがくらくなってきたのぜ」 「ゆっ!そうだねまりさ!もうすぐあめさんがふってくるかもしれないから、おうちにかえろうね!」 そうして2匹は巣の中へと戻っていく。 頭の先についた赤子をかばうようにそっと動くれいむを、まりさは支えている。 その姿はお互いを愛し合う夫婦のようだった。 嘘だ。 まりさはありすの夫で、そこにいるれいむの夫なんかじゃあない。 理解しきれない現実。理解したくない事実からありすは必死に目をそらそうとする。 だができない。ありすの視線は2匹を中心に収めたまま動かない。 開かれた瞳からは、更に涙があふれ出ている。 嘘だ。 あのまりさは本当のまりさじゃない。きっと偽者。そうだ。別の誰かがまりさの帽子を被っているんだ―――違う。 見間違えるはずも無い。あの顔、あの瞳、あの声、あの仕草。全てがまりさのものだ。帽子なんかは関係無く、判る。 つまりはあのまりさはありすが愛したまりさと同一人物。その事実がありすを一層苛む。 既に涙で視界はぼやけ、2匹が巣に入る瞬間は見えなかった。 嘘だ。 一体何が嘘なんだ?今見た光景がか?まりさと夫婦になったと言う事実か?それとも―――いま生きている、この世界のことか? 全ては現実。ありすが見たものも、ありすが今までにしてきたことも、ありすを取り巻く全ては現実のものだ。 それが耐えられない。それを理解したくない。ありすは声にならない絶叫をあげる。 嘘だったのだ。 まりさがありすを愛していたことは。ありすが思い描いていた幸せの日々は。 まるで足場が崩れ落ちるような感覚をありすは味わっていた。 この落下感にも似た感覚を、人は絶望と呼ぶ。 もうここにいたくない。 壊れかけた心がそう叫ぶ。もう一分一秒とて、この場所にいたくない。 もつれるように背を向け、ここから走り出す。少しずつ離れていく光景。 涙で濡れたその顔に、また一滴雫が落ちる。 それは、空から降ってきたものだった。 雨が、降り始めていた。 ―――ゆっくり鉄輪・後?へ このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2267.html
前 真っ暗な闇の中。幾つかの美しい光が点滅している。私も隣の男も一言も言葉を交わすことは無い。 薄暗い研究室の中では新型のゆっくりの研究が行われていた。現在はその成果と成る試験体の稼動実験をモニターしている最中だ。 暫くして観察が終了し、室内に明かりが灯ると共に一息つく。伸びをする者や溜め息をつく者、張り詰めていた空気が和らいでいくのを感じて私も体をほぐす。 「うぐぐ・・・体が硬い。こっちがゆっくりに成っちまいそうだぜ」 世の中には協定を結んで人間と上手く共存しているゆっくりもいる。 必要なのは「優秀なリーダー」なのだ。 大抵の場合はドスが無能であるか、ドゲスの群である為に協定は瓦解してしまう。 そこで考え出されたのが、新しい強化種を開発する事であった。優秀なドスに変わる存在を人工的に作り出し、それを野生に撒くのである。 「思い通りには行かんもんだな」 既存の成体ゆっくりを教育していたのでは時間も手間も掛かる。しかも、群のリーダーにするには相応の戦闘力が無ければ不可能だ。 人間に従順・頭が良い・人間のルールを理解できて・群を統率可能……しかも低コストで量産可能である必要がある。 生まれた時点で本能として生体餡子脳に「群を統率し人間に迷惑を掛けない」事を刻まれた、既存の種よりも強力な戦闘力を有する新型ゆっくり。 自然繁殖出来ない様に生殖機能を持たず、生まれた時から成体並みの体と知能を与え、人間が一切関わる事の無い状態で自立稼動可能な固体。 「お~い、コッチ来い。反省会はじめっぞー」 反省会と言われたのは、今さっきの実験結果の分析と今後の対応策についての協議の事で、各部門の責任者が集まっている。残りは昼飯に出かけた。羨ましい。 <<CASE-2894:人間の畑を荒らしたゆっくりに対する対処>> 「放置した挙句にニンゲンを攻撃するとは驚きましたね」 「まさかココまで無能だとは………」 実験結果が思わしくない為か、皆の顔にも疲労の色が濃く滲んでいる。まるで朝飯以降なにも口にして居ないかの様な空腹感溢れる顔である。中には耐え切れずに腹を鳴らす者まで居て、事態の深刻さを物語っている。 「えー前回の報告どおり、生まれた直後の状態で森に放置しても、自身の生存に問題ないだけのサバイバリティーの獲得には成功しております」 「野生のレミリア種やフラン種との交戦記録でも勝率98%を記録しており、戦闘力・生存能力に関してはほぼ完成と言って差し支えないかと思われます」 報告をする男の視線は中を彷徨い焦点を結んでいない様に思われる。はやくなにかたべないとしんでしまうぞ。 「群の形成に関しても申し分有りません。移植したドス餡が十分に生かされているものかと」 ただ強いゆっくりと言うだけでは意味が無い。森に暮らすゆっくりを統率し、管理し、人間に危害を加えない様に教育する必要がある。 「一応群では人間に近づくな的なおきては有ったみたいですが……」 「残念ながら掟を破る質の低いゆっくりを教育する所までには至らなかった……か」 言う事を聞く優良な固体のみを群に残し、人間の畑を荒らす掟を守れないゲスゆっくりはふるいに掛けて放置する。 通常のドスの群ではソレでよい。しかし我々が開発している新種は、人間へ危害を加えない様に森のゆっくりを集めて管理する目的で作られている。 ゆっくりがゆっくりする為であれば、バカな固体が自滅するのは構わないだろうが、バカな固体が自滅する事自体が人間には迷惑なのだ。 ダメなゆっくりはしっかり教育するか、畑にお出掛けして自滅する前に群で駆除して貰う必要がある。 「今回のメインであった畑荒らし役のレイムに対する対応ですが、成功とは言いがたい内容です」 「だが畑荒らしの悪事は認識していた。失敗と言うほど悲観する内容でも無かったのではないか?」 「人間が先に見つけて虐待した為に、制裁を任せたと言う見方も出来る」 「だがその後の行動は、これは如何説明する?人間に襲い掛かっている様にも見えるが」 「しかし、擬体とは言えニンゲンが負けるとは予想外でしたね。もう少しニンゲンの知能、上げられませんか?幾らなんでも対応がお粗末だったと思うんですがね」 「無理言うな、幾ら記憶を上書きしているとは言ってもベースはレミリア種だぞ。そう簡単に知能が上がったら開発だって苦労しないっつーの」 戦闘力に関しては申し分ない。ゆっくりゃやゆふらんを上回り、尚且つ群を統率する所までは来ている。後は論理思考のパターンの調整なのだが…… 「破壊されたニンゲンは破棄ですよね!食っていいですか!?」 「落ち着け…ゆっくりの食い残しなんか食う気か。もうこれで終わるから昼食にしよう」 「とにかく、この行動の理由について早急に分析を行い、本能プログラムの改修案を検討する必要があるな。残りは午後だ、解散!」 回収した黒ゆっくりは専用の台座に固定されて何本ものメンテナンスケーブルが繋がれている。 餡子脳を記憶再生機に繋いで行動や思考を分析し、問題点を調査して次回への改良とするのだ。 何故そんな事をしたのか?どうして適切な行動を取らなかったのかを問いただして行く。目も口も動かさずに独白めいた音声が蓄音機へ記録され、再生用の箱から流れてくる。正直キモイ。 「それにしてもこいつ……自伝でも出版するつもりなんですかね?」 黒ゆっくりの独特の語り口調に失笑を堪えながら若い研究員が言ったが、私は少しも面白くは無かった。 これだけお膳立てしてやってるのに、目標の数値には程遠い統率力と稼働時間。今回も早々に問題を起こして実験終了だ。 アレが現実なら破壊されるか、よしんば人間を倒せてもその後に村人総出で山狩りになって壊滅するのは眼に見えている。 そもそも、畑に被害を出した時点で我々の要求仕様としては失格なのだ。少なくとも、発見した時点で即座にレイムを殺すべきだった。 「てっきりレイムに味方して人間と戦うのかと思ったんですがね」 今までのケースでは畑荒らしを目論んだゆっくりが人間に発見された場合、目の前の人間とゆっくりを比較して本能が勝ってしまい、ゆっくりを助けようと人間に襲い掛かった例もある。 今回の黒ゆっくりは虐待前に発見したにも関わらず行動を観察していた。畑荒らしを抑えるでもなく、レイムを助けるでもなく、虐待を止めるでもなく。 「うむ、おそらくだが、本能としてインプットした論理思考に影響を受けているのだろう」 本能でゆっくりを助けたり、人間に襲い掛かったりする事を防ぐ為に、今回のバージョンでは調整を加えていた。 種としての本能的な行動よりも、論理的に正しい事を優先して行動するように、行動原理と成る部分を強化したのだ。 「あぁ、それで正義の味方みたいな事をやりたがるんですかね?」 群を作って統率したりするのはドス種の本能部分を移植したので、ゆっくり的な思考が強く出てしまう傾向がある。 それを抑える為に、論理思考回路を組み込んで自身が正しいと判断した行為を優先する様にし、常に正しい存在であり続ける事を最優先とするのだ。 「自分からは先に手を出さなかったり、口上を述べたのも自分が悪の存在になる事を本能的に回避しての行動だと思われるな」 元々、人間のルールを破ったりしないようにする為に、自身の損得より優先的に守るように組み込まれた物なのだが。 手段と目的とが入れ替わって完全に偽善の言い訳に成ってしまっている。 「コイツの中では悪いのはレイムなのだろう。せかっく教えたルールを理解しない無能なヤツが悪いのだ」 無能なヤツを管理出来なかった時点で人間から見れば同罪なのだが、コイツにはそこら辺がまだ理解できてないらしい。自分さえ正しければ良いと言う自己中心的な思想が抜けきっていない。 「他者に対する正義の徹底、群のゆっくりの行動に関しての連帯責任の意識の欠如ですか」 「元々リーダーとしての責任感が薄い感はあるな」 移植したドスの本能で群を作っているが、本来ドスは沢山のゆっくりをゆっくりさせたい為に群を作るのだ。 しかし、群を管理して人間への危害を与えなくする為に、様々な本能を多数上書きして混ぜ加えた結果、ゆっくりさせるの部分を弱める事には成功したが、群のリーダーとしての責任感が薄まった可能性もある。 今の状態では群を作るのは殆ど自己満足のために近い。 だが、元々ドスに責任感があるかは疑問であるし、群を形成する習性だけ残れば良いのだ。教育や管理は論理的な思考を上書きする事で実現するしかない。 「まぁ今回のレイムは我々が実験の為に仕向けたのだからソレは良しとしよう」 「群の長として責任感全然感じてない所は良く無いっすけどね」 「むしろ重要なのは、レイム回収時に人間に危害を加えようとした所だ」 人間の里へ降りて来て、住居不法侵入しておいて正当防衛が主張できる理屈はない。仮に正当な理由があっても、人間を攻撃する様では困るのだが。 正当な理由を正常に判断出来ないのでは、幾ら道徳と倫理感の強化を施しても改善の見込みが無い。 「あくまで自分が悪者には成りたくないと言う心理は働いてるみたいですね」 「だがその為に理屈は殆ど詭弁のレベルだ。知能が低いのではなく自己正当化して満足してしまっている」 自分が正しい事、これから行う事が既に決まっており、その為に都合の良い正義設定を組み立てている。普通逆だ。 同属に対する復讐と言いながら、助ける事無く虐待を見ていた。 捕食についても、虐待を観察してた理由には成らないし、親のニンゲンに話しかけた事とも矛盾する。 「コイツ本当に自分はニンゲンよりマシだと思ってるんですかね?」 復讐・虐待の傍観・捕食の何れをとっても明らかに劣る。 「自分で説明してるだろ“自分の卑小さを紛らす為”だと」 「ソコまで自虐されると作った俺らに失礼ってもんですよ」 確かに、そうだ。コイツを素直に蔑む事が出来ないのは、本能レベルで組み込まれた思考プログラムの開発を我々が担当している事が関係している。 実験でコイツがアホな行動や、理解不能な臭い台詞を吐く度に、研究チームの痛い視線を感じる気がする。実際はそんな事も無いのだろうが、耐えられずに胃が痛くなる。 行動パターンは何も我々が担当したコア部分の論理回路のみだけではなく、予備知識として引き継ぐ餡子知能や、思考に使用される新型餡子の配合などの様々な要素の影響を受ける。 故に、我々のチームのみがココまで責任を感じる必要は無いのだろうが、正直もう耐えられそうにない。 「今回のポエム聞きました?もう爆笑でしたよ」 この男の能天気さが羨ましい。 「それより、好戦的な性格も問題だと思うが……どう見る?」 最終的にニンゲンに攻撃を行った直接的原因は、ニンゲンからの攻撃であったのだが。ソコに至る過程は明らかに誘導が見えた。 「レイムを取り戻すなら傍観していた理由は無いですよね?」 やはり、最初から攻撃が目的で接触したとしか思えない。 「ニンゲンにレイムの虐待を任せようとした線は?」 「いや、一思いに殺せとも言ってるし、その後の発言からもそれは考えられない」 助ける為でも殺すためでもない。レイムのことは如何でも良かったとしか思えない。 「やはり捕食?しかし人肉を求めるような設計では無い筈ですが」 「一応野犬対策とか、どんな環境でも生きられる様に雑食性にはしているがな」 群のゆっくりには人里へ降りるなと伝えてあるし、普段は餌を求めて組織的に里を襲う傾向も無い。 そもそも捕食目的であれば、もっと頻繁に人を襲う必要が有る。 普段は他の野生動物を狩っている可能性もあるが、その様な場面は報告されていない。見付からないだけなのか? それでも人間と敵対するリスクを犯して、あえて捕食対象とする理由も分から無い。 仮にニンゲンを餌として襲うとしても、もっと上手い手段は幾らでもあった。 自分から声を掛けたり、虐待を黙って見ていた行動の理由も、会話の目的も一切不明である。 そう考えると今回のケースが特殊で、正当防衛や捕食と言うのは単なる思い付きで口にしたに過ぎないと言う事なのか。 とりあえず人間が如何行動するか観察した後に、人間を排除し、レイムを回収する寸法だったのだろう。 群のゆっくりへの見せしめとして持ち帰るつもりだったと考えれば、虐待後に回収に動いた行動も考えられなくは無い。 「頭が痛いな……」 人間に歯向かうなど論外だ。が問題はソコではない。 「もういっその事戦闘力下げます?」 安全性を考えるならソレが一番だろう。 「いや、その必要は無いだろう」 今の時点でニンゲンには勝てても、本物の人間を殺傷できるスペックは無い。 子供や、大人でも油断して不意打ちを受ければ危険かも知れないが、それは通常のドスや巨大ゆっくりでも変わらない。 ソコまで安全性を優先して戦闘力を削っては、群を統率する力さえ無くなってしまう。それでは意味が無い。 「それに、問題の本質はソコじゃないだろ」 畑荒らしのゆっくりを止めなかった事。強さよりもコッチの方が深刻なのだ。 規則を破ったゆっくりへの裁きよりも、同種である群のゆっくりの救出よりも、詭弁を並べてニンゲンに攻撃する事を優先した思考回路が問題だ。 人間に迷惑を掛けずに群のゆっくりを管理すると言う目的の為に与えた、人間の価値観と道徳心。 規則を遵守し、善悪を正しく判断する為に与えた知識と知能が、何故正常に働かないのかを調査して修正しなければ成らない。 「これは根気の要る作業になりそうだな……」 今回の実験の分析で分かる範囲の調整は行うが、もうしばらくは実験と調整の繰り返しに成るだろう。 「しかしなんで子供から優先的に殺したんでしょうかね?」 親の方には色々理屈を並べて時間を掛けた割に不自然だった。レイムを助ける為にニンゲンの親と接触した事は一応理解できるが、子供を攻撃した理由は何だろうか。 行動に関して、特にニンゲンへの攻撃の際や自身の正当性・正義に拘っていたと言うのに、子供を殺す時点の行動は動機的にも不可解な点が多かった。 子ゆっくりは助けようともしなかったし、これは見せしめは親レイム一匹で十分と考えた為かもしれないが。子供への攻撃理由には謎が多かった。 今までの実験ケースでも、子供への予期しない攻撃が行われた事も少なくなく、今回もやはり懸念されていた習性が現れてしまった形となった。 「自分の生い立ちに対するコンプレックス的なモノを抱えているのかも知れないな……」 実験に使ったレイム家族は片親だった。実験をやり易くする為に我々が選んだのだが、片親が何らかのキーワードとして働いているのかも知れない。 いや……偶然の一致か? 親と子の繋がり。今回用意したニンゲンも片親だった。通常とは異なる環境下でも親が子を見捨てる事無く育てている様を見る事で、自身の親の不在を拠り強く意識する可能性もある。 自分が孤独で生まれた事が、愛される子供への憎しみ、親と言う存在の行動に対して格別の興味を抱かせるのかもしれない。 この点に関しては次回以降も入念に観察する必要が有りそうだ。自身の出生に対する疑問や、不自然に高い知能と生まれ持って与えられた知識が、己のルーツへのより強い執着を生んでいるのだろう。 その辺に関する予備知識を加えてやれば、少しは行動に落ち着きが出るかもしれないと考えて、コンソールを叩き潜在意識へのインプリントを行う。 「おーい、何時までも無駄話してるんじゃない。次のセッティング終わったぞ。非献体を入れろ」 「まってくれ!ここまでやってから実働データを取りたいんだ…………よしっ回してくれ」 「黒ゆっくり、餡子脳セットアップ。メモリー初期化完了。起動準備出来ました。各部モニター正常!オールグリーンです。何時でもいけます!」 <<CASE-3225:虐待する人間が森に来た場合の対応>> 「黒ゆっくり………起動!!」 黒ゆっくり3 このSSに感想を付ける