約 3,642,546 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/246.html
「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 もう日にちをまたぎかけている時間になってようやく自分の家に帰り着いた俺を迎えたのは聞きなれない声だった。 視線を落とすとそこには饅頭にも大福にも見える奇妙な生き物(?)がいた。 知っている…こいつらは最近幻想郷で大量発生し、田畑はおろか、民家に押し入って食料を勝手に食い漁る害悪生物だ。 友人も被害に遭い、散々な目にあったと愚痴っていた。 誰が初めに呼んだかは知らないが、「ゆっくり」という呼称で知られている。 いや、そんなことはいい。 何故俺の家にこいつらがいるのか、それが問題だ。 疑問はすぐに解ける。ベランダの窓が開きっぱなしだ。朝洗濯物を干したとき、うっかり鍵を閉め忘れていたようだ。そこから進入したのであろう。 「ゆ?」「おにいさんだれ?」「ゆっくりしようよ!!」等とゆっくりどもは口々にしゃべり出す。 見たところ親子連れなのか、母親らしき霊夢種が1匹いるほかは、魔理沙種も混じった子供が12匹ほどいた。 魔理沙種が混じっているのはおそらくつがいの魔理沙種がいたのだろう。いない理由はれみりゃ種にでも襲われたと言うところか。 まあいい、とっとと追い出すか、と思った矢先、俺は見てしまった。 俺の机の上には、たくさんの思い出の品があった。亡き母が生前使っていた手鏡、父が買ってくれた玩具、寺子屋の先生がくれたそろばん、 子供の頃、向日葵畑の怖いけど優しかったお姉さんがくれた押し花。 手鏡は投げて遊んだのか、壁に当たって粉々になっていた。 玩具も同様だ。もう原型が残っていないほど滅茶苦茶になっていた。 そろばんは今も子ゆっくり魔理沙たちが振り回している。振り回しすぎて折れたのか、珠がボロボロ落ちている。 押し花は餌になったのだろう、今も子ゆっくりがむしゃむしゃむさぼっている…。 「うっめ!めっちゃうっめ!ハフハフ!!!」 呆然と立ち尽くす俺の前に、母ゆっくりと残りの子ゆっくりが図々しくもやってきてこう言った。 「お兄さん、おなかがすいたよ!!ゆっくりごはんをもってきてね!!」 「ここはみんなのいえだよ!ごはんをもってこないお兄さんはでていってね!」 そのとき、俺の中で何かが切れた。 俺は怒りに任せ、母親ゆっくりを思い切り踏みつけてやった。 「ゆ”」短いうめき声が聞こえた。しかし俺は容赦する気はない。 何度も!「ゆ”」何度も!「ゆ”」踏みつけてやる!「ゆ”~~~!!!」 「も”う”や”め”て”ぇ”ぇ”ぇ”ぇ”」母ゆっくりがくぐもった声で悲鳴をあげる。最高の気分だ。 「お”か”あ”さ”ぁ”ぁ”ん”」「と”う”し”て”こ”ん”な”こ”と”す”る”の”ぉ”ぉ”」子ゆっくり共が泣き叫びながら訴える。 しかしそんなことは知ったことではない。思い出を無惨にも壊された俺の怒りはまだ収まらない。 子ゆっくりは母ゆっくりを助けるためのか、懸命に体当たりをしてくる。 「ゆっくりやめていってね!」「おじさんやめて!」「ゆっくりやめて!」 蚊ほども効かないがな。 その後も母ゆっくりを踏みつけたりしたが、そろそろ飽きてくる。それでもまだ収まらない。 その間も子ゆっくり達は母親を救おうと、体当たりを何度もしてきた。しかし魔理沙種はあろうことか、体当たりに飽きたのか 母親の危機なのにふてぶてしくも眠っている。なんてやつだ。 「ゆ、おかあさんたいへんなんだよ!!」「おきてよぉおお!!」と霊夢種が起こそうとしても「しつこいんだぜ!!」と取り合わない。 魔理沙種は生き残るためなら家族、親友でも見捨てるほどとは聞いたが、これは見ていて腹立だしいものだ。 母親を踏みつけたり叩きつけたりするのも飽きたし、俺はこの憎憎しい子ゆっくりの方も責めることにした。 もちろん、さっきから何度も体当たりをしてうっとおしい子ゆっくり霊夢の方も一緒に。 どうやって責めようかと考えたとき、あるものが目に映った。 それは以前、とある河童の発明家が製作して売っていた加熱装置だ。 左右に電熱線があり、中に食べ物を入れるとこんがりと焼いてくれるというものだ。 しかも中にはスライド板がある。これは温度調整のためにあるとか言っていたが、邪魔だったので普段は取り外していた。 しかしそれを見て俺に妙案がひらめく。ゆっくりどもを地獄に叩き落す妙案が…。 まず俺は母親ゆっくりをすぐそばにあったダンボールの中に閉じ込める。 「お兄さん、うごけないよ、ここからだして!!!」という声は無視だ。 さらに子ゆっくりを捕まえ、黒い袋の中に閉じ込める。霊夢種と魔理沙種は分けておく。 「くらいよー」「ゆっくりさせてよぉ!」「うごけないよ、ゆっくりできないよ!!」と騒ぐのも気にしない。 そしてその間に加熱装置のスライド板を取り付けることにする。 思ったより取り付けるのに時間がかかり、取り付けが終わったときにはゆっくりどもの騒ぎ声は聞こえず、寝息が聞こえる。 のんきなものだ…と思いながらも、寝ている今なら手間がかからないので、仕上げにかかる…。 翌朝。 「ゆ…」「ゆ、ゆっくりうごけるよ!」 6匹ゆっくり霊夢たちは目を覚ました。そこは昨日の暗くて狭い空間ではない。 狭いけどそこは立派な空間だ。十分余裕のあるところ。 母親や兄妹であるまりさがいないのはすこし気になったが、所詮は饅頭。今自分達があの恐ろしい人間の手を逃れたのだと思い、 その喜びを分かち合い、そして新しい自分達の家があることが嬉しかった。 「きょうからここがれいむたちのいえだね!」「みんなでゆっくりしよう!」 しかし、4面ある壁の一つ、ガラスの壁を見て、それはすぐに絶望に変わった…。 ガラスの壁の外、そこにはガラスケースに閉じ込められ、苦しそうにしている母ゆっくりの姿があったのだ…。 「お、おかあさーん!」「どうしてーー!!」「そんなんじゃゆっくりできないよーーー!!」 「おお、起きたかクソ饅頭ども」 その声を聞いたゆっくり霊夢たちは恐怖に震える…。そう、昨日母親を恐ろしい目に合わせた、あの人間の声だった。 そしてやっと気づく。この空間には出口がないということに。自分達はこの人間によって閉じ込められたということに。 「た”し”て”! た”し”て”よ”ー!!」「お”う”ち”か”え”る”ー!!」 霊夢たちは必死だった。必死で訴えた。懇願した。 「うるさい!!!」人間が大声で叫び、大きな衝撃を与えてきた。霊夢たちは恐怖で震え、何もいえなくなった…。 と、壁の向こうから何か聞こえてくる… 「ゆ……」「ゆ、ゆっくりうごけるんだぜ!!」 それは兄妹であるまりさの声だ。壁の向こうにいるのか、壁に向かって叫ぶ。 「ま、まりさーー!!」「そこにいるのー!?」 「れ、れーむ!?」「ここはどこ!?」「わたしたちたすかったの!?」「よがっだね! よがっだね!」 間違いない、壁の向こうにはまりさがいる。安堵するゆっくり霊夢。 「まりさも起きたか…ちょうどいい」人間の声がしてビクッ!と反応する。 「お、おかあさーん!」「た”し”て”! た”し”て”よ”ー!!」「お”う”ち”か”え”る”ー!!」 ガラスの外の光景に気づいたのか、まりさ側からも恐慌の声が聞こえてきた。 そしてまた衝撃を与えられ、静かになる。これから何が起こるのか、恐怖が蘇り、震えだす…。 「いいかお前ら、俺は優しいからどちらかだけおうちに帰してやる。」 その声を聴いた瞬間、まりさ側から大きな声が上がる 「ま、まりさだけをたすけてくれだぜ!!」「れいむなんかたすけなくていいよ!!」「まりさだけゆっくりさせてね!!」 信じられないという顔をする霊夢たち、そう、霊夢たちは知らなかったのだ。 まりさは生き残るためなら家族でも見捨てると。 「や”、や”た”ーーーーー!!」「た”し”て”! れ”い”む”た”ち”を”た”し”て”よ”ー!!」 たちまち恐慌に陥る子ゆっくりたち。醜く言い争うその姿は、とても家族には見えなかった…。 と、とたんに部屋が暖かくなってきた。 「ゆ?あったかくなってきたよ!ゆっくりできるよ!」と先ほどの恐慌を忘れてのんきにはしゃぐゆっくりたち、 しかしそれも2分もすると… 「ゆ?あっあついよ!!」「あつい、あついよーーー!!」「あついぜあついぜ、あつくてしぬぜ!!」 部屋の温度が急上昇し、とても耐えられる温度ではなくなったのだ。 逃げ場をなくすゆっくりたちに、外から人間の声が聞こえる。 「いいかゆっくりども、俺は焼き饅頭が食べたいんだ。どっちか片方だけを焼いて食べることにした。 さっきも言ったが片方だけは助けてやる。その壁を押せば相手を焼いて自分は助かるぞ。さあ、頑張ることだな」 その声を聞いたとたん、まりさたちはいっせいに壁を押し始める。 「れいむはゆっくりしね!」「まりさたちはゆっくりさせてもらうんだぜ!!」「ゆっく、さっさとしね!!」 そして壁を押され、熱源に近づいてしまった霊夢たちはその身を焼かれることとなる。 「あ”ち”ゅ”い”よ”お”お”お”お”お”お”お”!!!」「た”す”け”て”え”え”え”え”え”え”!!!」 「や”へ”て”え”え”え”え”え”え”!!!」 まりさはその声を聞いて勝ち誇り、壁から離れる。 すると今度は反撃とばかりに、霊夢たちが壁を押し始める。 「ひっく、まりさはゆっくりしね!!」「まりさなんてゆっくりやかれてね!!」「れいむたちをゆっくりさせてね!!!」 そして今度はまりさたちがその身を焼かれる。 「い”や”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」「た”し”け”て”え”え”え”え”え”!!!!」 霊夢は仕返しが終わったと思い満足し、壁から離れる。 すると今度はまりさのほうが反撃とばかりに壁を押し始めるのだ。 まりさが壁を押して離れ、れいむが壁を押して離れ、そしてまりさが、れいむが…… この争いはいつまで続くのだろう…… 「くくく…うまくいってるな……」 俺は醜い争いを続ける子ゆっくりどもをみて笑う。なんとも楽しい気分だった。 昨日の夜のうちに、俺は加熱装置の中に子ゆっくりどもを閉じ込めた。 もちろん、今起きているように霊夢とまりさは分けて。魔理沙種は生き残るためなら(ryので、この状況のために分ける必要があったのだ。 平然と霊夢を見捨て、壁を押し出すまりさ。それに触発、あるいは必死で生き残ろうと壁を押し返す霊夢。 何もかも完璧だ。家族といいながらもそれを見捨て、醜い争いを演じる饅頭どもを見て俺は気分が晴れていた。 そして俺の傍らには、ガラスケースがある。 そう、中には母親ゆっくりが閉じ込めてある。朝のうちに用意したのだ。 母親ゆっくりは涙を流している。わが子を助けてあげたいのだろう。だが口も昨日の内にホチキスで止めてあり、くぐもった声しか出せず、 俺に助けを請うこともできない。身動きの取れない状態で、わが子が醜くも殺しあう光景を見せ付けられるしかないのだ。 俺はさっき、片方だけ助けるといったがもちろんそんな約束守る気などない。 生き残った方も焼き饅頭にしてやるのだ。それも母親の目の前で。 俺はわずかな希望をも打ち砕かれたとき、母親ゆっくりがどんな顔をするかを想像し、なんともいえない快感を感じた… FIN
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1671.html
※ニコニコ カオス ガチムチ 森の妖精2 ゆっくり達の住む森の中、ここに一軒の家が建っている。 ここはゆっくり専用の病院、そこでは日夜男達が傷ついたゆっくりを癒している。 人は彼らに敬意を込めて『森の妖精』と呼ぶ。 ドンドンドン!! 「ゆっくりあけてえぇぇ!!」 「だずげでえぇぇぇぇぇ!!」 激しいノックにより静寂は破られた、ただ事ではないその悲鳴に扉を開ける。 「何の問題ですか?」 彼はビリー、ここゆっくり病院で主治医をしている。人は彼を親しみと尊敬を込め兄貴と呼ぶ。 扉の前には涙でグジョグジョにふやけた2匹のまりさがいた、人間の姿はない。 彼は普段から野生のゆっくりの面倒も見ており、困ったことがあればここへ来るよう言い聞かせていた。 誰に対しても平等に慈悲を与える彼は、仕方ないねの一言で全てを包み込む包容力の持ち主なのだ。 「わるいありすにおわれてるのおぉぉぉ!!!」 「おねがいでずうぅぅぅ!!ずっぎりじだぐないいいぃぃぃ!!!」 「おーけーヤス。カモン、レッツゴー!!」 そういって2匹を招き入れようとする兄貴を制する声がする。 「みつけたわよまりさああぁぁぁぁ!!!にげるなんてツンデレすぎいいぃぃぃ!!!」 「でもそんなまりさもかわいいよおおぉぉぉぉ!!!」 「すぐにきもちよくなるからねええぇぇぇぇぇ!!!」 「「「すっきりしましょおおおおぉぉぉぉ!!!」」」 ドロドロに発情しきったありすが5匹、その目は血走り口からはだらしなく涎をたらしている。 まりさ達は、そんなありす達に輪姦されそうになり逃げていたのだ。 「最強☆トンガリコーン!!」 「「「ゆっばああぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」」 兄貴はそう叫ぶとありす達の中に華麗に飛び込み受身を決める。 不意打ちをくらったありす達はボーリングのピンのように吹っ飛んだ。 「身勝手なすっきりなんてだらしねぇな!!ああもうだらしねぇ!!」 そう言って兄貴はありす達を睨み付ける。これには発情したありすも怯み、都会派じゃないと捨て台詞をはいて森へと帰っていった。 「ゆうう!さっすがあにき!!やっぱりあにきはさいきょうなんだぜ!!」 「あにきのきんにく、とってもゆっくりしてるよ!!」 「いやぁ、サーセーン!!」 そう言って兄貴はまりさ達にウィンクを飛ばした。 数分後、落ち着いたまりさ達から兄貴は話を聞いていた。 なんでもこの森に数週間前からゲスなありすの群れがてやってきて、赤さんも真っ青、もとい真っ赤な外道行為を行っているのだそうだ。以前ありすに襲われた飼いゆっくりの手術をしたが、あれも関係あったのかもしれない。しかし、この森に住むゆっくりが結束すれば、 例え発情ありすの集団であれど撃退できそうなものなのだが 「どういうことなの・・・?」 「ゆー・・・ありすたちのばっくには くいーんありすがついてるんだよ・・・。」 「くいーんありすはおおきくて、とてもまりさたちじゃかなわないよ・・・。」 何でもありすの群れにはクイーンありすなる巨大な個体がいるそうなのだ。 悲観にくれる2匹の姿を見て、兄貴はある決心をした。 「だらしねぇな!!おしぎぼ君Now!!」 そう言って2匹を抱きしめた。 その後、心配そうな顔をする2匹を見送ると、兄貴は助手にこう告げた。 「カズヤ!!明日9時に弁当食べたぁい。」 「あぁん?なんで?」 「クイーンありす、Fuck You!!」 「おお、激しい。」 そうしてその夜、兄貴はいつもより早く床に就いた。 森の中、兄貴は足元のそれに目をやる。 かつて兄貴はゆっくりハンターであった。 ゆっくりハンターとは田畑や家屋を荒らしたり、家畜や飼いゆっくりを襲う、いわゆる悪いゆっくりの討伐を行う者のことである。 兄貴は鍛え抜かれた肉体一つで日夜野山を駆け巡った。彼が通り過ぎた後には潰れた饅頭しか残らなかった。 いつしかユニフォームのレザーパンツが餡子を吸い過ぎ真っ黒になったころ、いつものように討伐を終えた兄貴に声をかける者がいた。 「なんでこんなことするの!!?」 「あぁん?何の問題ですか?」 そこには潰れたゆっくりの側で泣き叫ぶ子ぱちゅりーがいた。親子であろうか。 兄貴はせめて一思いにと手を伸ばす。それでも怯まずぱちゅりーは話し続ける。 「ぱちゅりーたちはなんにもじてないのにいぃぃ!!」 「人のお家に入ったやろ!!」 「にんげんのおうちにはいったのはわるいゆっくりだけだよおぉ!!」 「・・・・・どういう意味?」 「はたけのおやさいぬすむのも いちぶのゆっくりだけだよ!!それだってしかたがないんだもん!!」 「こっちも盗まれたら困るんだね、仕方ないね。」 「でもここは もともと わたしたちのすんでいたもりよ!!あとからきたのはそっちでしょう!?」 「・・・・・・・・・・」 兄貴は言いよどんでしまった。事実この森付近の田畑は、最近人間が切り開き作ったものであった。 平和に暮らしていたゆっくり達を追い出し、人間はどんどん森を切り開いていった。 そうした事柄がゆっくり達を圧迫し、結果、人里を襲わざるを得ない事態を作り上げたのだ。 「わたしたちだって、にんげんに かかわらず ゆっくりしたかった!!でもそれを させなかったのは あなたたちでしょう!?」 ポツ、ポツ、、、ザアァァァァァァ、、、、、 まるでゆっくりのために泣かんとばかりに雨が降り出した。冷たい雨は兄貴の興奮をゆっくりと冷ましていく。 兄貴はぱちゅりーを殺すことは無かった。だがぱちゅりーは逃げることもなく、その雨に身を任せていた。 長い長い雨が明ける頃、そこには1つの帽子と1人の男だけが残された。 そうして兄貴はレザーパンツを脱いだ。 「もう朝やぁ・・・」 窓から差し込む朝日に顔をしかめる。懐かしい夢を見た。兄貴は顔を洗った。 「餡かけチャーハン?」 「ホイホイ☆チャーハン!」 「ナイスでーす!!」 「巻いて食えやぷーさん!!」 並べられたチャーハンをレタスで巻いて食べる。そんな兄貴を皆は心配そうな顔で見る。 何の問題ですか?心配不用とばかりに、兄貴は笑った。 そうして食事を終えた兄貴は1人ガレージへ向かうと、今では使われてないクローゼットからかつての相棒を取り出す。 漆黒に染まりどこか妖しく光るレザーパンツ。 「また着けるんだね・・・仕方ないね・・・」 そう言った兄貴の横顔はどこか寂しそうであった。 「きょうもいっぱい まりさたちを すっきりさせてあげましょうね!!」 「とかいはのテクでめろめろよ!!」 ここは外道なありすの群れ、ここでは朝からありす達が猥談に花を咲かせていた。 今日はどれだけのゆっくりをすっきりさせられるか、そう話すありす達は実に幸せそうだ。 だがそんな平穏を切り裂くように、森に爆音が響きわたった。 ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・ 「ゆ、ゆゆゆ!?なんなのいったい!?」 「なにこのおと!!ぜんぜんとかいはじゃないわよぉ!!!」 一体何事かと視線を集める 「ちぃ~んぽ~♪朝勃ち~♪」 「「「ゆっぎゃああああぁああぁぁぁあぁぁぁぁ!!!??」」」 凄まじい砂煙を巻き上げ物凄い速さでバイクに跨る半裸のマッチョ。 真っ黒なレザーパンツが尻の割れ目に食い込んで、何とも扇情的な格好である。男はありす達の前でバイクを降りた。 「お相撲!?無理やりすっきりなんてエロいか!!あぁん?卑猥か!?」 「いきなりあらわれて なにいいだすのよ!!」 「わたしたちには まりさたちをすっきりさせるって とかいはなぎむがあるのよ!!」 いきなり現れた闖入者もとい珍入者、その言葉にありす達は抗議の声をあげる。 「ゆ!!あなたきのうのにんげんね!!」 「わたしたちにけんかをうろうなんてばかなの?しぬの?」 「わたしたちにはくいーんがついてるのよ!!」 クイーンに守られているいるという余裕か、あるいは数が多いことからの慢心か。 ありす達はプギャーm9(^Д^)ゲラゲラと兄貴を笑い飛ばした。 「マルチ☆ゲイ☆ペェェンツ!!!」 「「「ゆぼおおおぉぉぉぉ」」」 そりゃこうなるよね。まるで成長してないんだね。仕方ないね。 兄貴のネイティブな発声と同時に吹っ飛ぶありす、流石に分が悪いと判断したのか群れの奥へと逃げ出した。 「おっくせんまん・・・おっくせんまん・・・」 兄貴はその後をセクシーについていった。 「くいーん!!ゆっくりできない にんげんがきたよ!!」 「とかいはじゃない いなかものなの!!はやくやっつけてね!!」 『あら、私のカワイイありす達がお世話になったようね。たっぷりお礼してあげないとね!!』 クイーンありすは全長3メートルはあろうかと言う巨漢であった。なるほど、これでは普通のゆっくりでは敵うまい。 「この森から出ていけぇ!!」 兄貴にはまだ迷いがあった。出来ることなら平和的に解決したい。最大限の誠意を持って兄貴は語りかけた。 だがそんなおり、ある物に気付いた。クイーンの髪にはれいむやまりさ種のリボン、ぱちゅりー種の月型の留め金など様々なゆっくりの 装飾が着いていた。本来ならば、ドスが群れのゆっくりから信頼の証として渡されるものだが、この群れのゆっくりはありす種のみであ る。これが意味することは一つ 『うふふ、素敵でしょう?これは私達がすっきりさせてあげたお礼に貰ってあげてるの。私達にすっきりさせられるなんて幸せに比べれば 些細なものだけどね。なんならあなたのパンツも加えてあげましょうか?』 「おま、人のものを・・・・・!!!」 ありす達はレイプしただけでは飽き足らず、あまつさえゆっくりの命とも言える装飾品を奪っていたのだ!! 流石の兄貴もこれには怒りが有頂天だ。もはやこのクイーンにかける温情はない。 「ナウい♂息子!!!」 兄貴の筋肉が激しく唸る!心も筋肉もキレている!! その様をガッチリムッチリ見せ付けら硬直する取り巻き達、中には気迫にあてられ泣き出すものまでいた。 「あれか!?見せかけで超ビビってるな!?」 『上等じゃない・・・行くわよ!!』 「カマン、レッツゴー!!」 こうして始まったビリー兄貴vsクイーンありすの無制限一本勝負。 普通の人間が巨体のゆっくりと力比べをしたら、一瞬で潰されてしまうことだろう。 眼前の人間に至っては武器どころか身を守る鎧すら身に着けていない。馬鹿め!!クイーンは兄貴に飛びかかった。 プチッ 「さすがくいーんね!!」 「ばかないなかものはしぬべきなのよ!!」 周りのありす達が騒ぎ出す。飛びかかったクイーンをよけることなく、兄貴は一瞬でその下敷きになった。 『まったく、馬鹿な人間はこれだから。それじゃあ皆、今日もまりさを探し、に・・・?』 「どうしたの、クイーン?」 突如クイーンが言葉をとめ、ブルブルと震えだしたではないか。 何事かとクイーンのまわりにありす達が駆け寄ったその時 「ゲイバーーーーーーーー!!!!!」 『ゆ”っがあ”あ”あああああああああああああ!!!??』 「「「ぶっぎゃあああべべべべべ!!!!??」」」 突如として吹っ飛ぶクイーン、その巨体に巻き込まれて数匹のありすが無残にもミンチと化した。 そこから現れたのは兄貴、傷一つなくピンピンしているではないか。 「ぱっちゅりー、うっ!!」 『ぐぐぐぐぐぐ!!!ゆ”る”ざな”い”い”いいいいいいい・・・・・!!!!!』 ダブルバイセップス・フロントからサイドチェスとを決めながら、ムニムニと乳首を上下させる兄貴。 その挑発的な態度にクイーンありすもぶちぎれた。 『死ねええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』 ゆっくりらしからぬ勢いで飛び掛るクイーン、だが怒りに我を失った大振りな攻撃は兄貴に容易くよけられる。 次々に繰り出される突進をホイホイと軽やかなステップ(カズヤダンス)でかわしてゆく、だが 「「「そこまでよ!!!」」」 「あぁん、ひどぅい!!!」 なんと取り巻きのありす達が足に絡み付いてきたのだ。不意に足止めをくらった兄貴にクイーンがせまる。 「いかん!!いかんいかんいかん!!あぶないあぶないあぶないあぶな米倉でぇすっ!!!!!」 ドゴォッッ!!! 「ああもう最悪・・・」 取り巻きごと派手に吹っ飛ぶ、流石の兄貴もこれは効いたようで思わず弱音もこぼれる。 クイーンだけなら何てことはないのだが、これだけの取り巻きに不意打ちを食らうとなると厄介である。 おそらくは最初のポージングでビビって逃げ出すだろうと思っていたのだが、まったくの予想外だ。 これだけの群れを纏め上げるとは敵ながらナイスでーす・・・ブスリッ 「アッー!!」 その時兄貴のケツ穴に何かが刺さった。思わず叫んでそれを抜き取る。それは取り巻きの着けていたカチューシャであった。 「・・・・・!!! 全てはチャンス!!!よく育ったナスビね!!!」 それを見て何かを閃いた兄貴はクイーンに向き直ると突進した。 「いかせないわよ!!」 「ゆっくりとまりなさい!!」 「バー!!!ロー!!!」 纏わり着く取り巻きを蹴散らしクイーンに詰め寄る。その姿やまさに人間機関車である。 『ゆぐうぅ!?何のつもり!?』 体に取り付かれたクイーンが身をよじって振り外そうとするも、兄貴はがっちり食らい着いて離れない。 そして手を大きく振りかざし 「アップリケ!!!」 『ゆぎゅうぃ!!?』 手にしたそれを深々と突き立てた。その瞬間兄貴は弾かれ吹っ飛んだ。 『残念だったわね!!ちょっと驚いたけれどちっとも痛くないわよ!!感じないわよ!!そろそろ観念しなさい!!』 そう言って取り巻きに動きを封じるよう命じる。だが取り巻きのとった行動は 「「「ゆっくりできないやつはしねえええぇぇぇぇぇ!!!」」」 『ちょ、ちょっと!!? あなた達何してるの!!?人間はあっちよ!!!』 「「「うるざいいいいぃぃぃ!!!なかまごろじはじね”えええぇぇぇぇぇ!!!」」」 『ゆうううぅぅぅ!!!???』 クイーンは狼狽した。まさか群れのために戦う自分がいきなり攻撃されるとは思わなかったのだ。 必死に振り払おうとするも、親の敵でも相手にするかのように取り巻き立ちはとまらない。 『い、一体どうなってるの!!?人間、あなた何したのよ!!!』 「なったお!!そうなったお!!」 兄貴はウィンクしながらクイーンの頬に指を向ける。そこには死んだ取り巻きのカチューシャが突き刺さっていた。 『!!!!!何てことするのよおおおおぉぉぉぉ!!!!!!!』 「Fuck You !!どうでもいいわ!!」 叫ぶクイーンに一言返すと、兄貴は手を出さずに傍観を決め込む。 そうする間にも取り巻きの攻撃は激しさをまし、ついにクイーンのからだからカスタードが漏れ始めた。 『ゆぐ・・・!!やめろおおおおぉぉぉ!!!』 「「「ゆべえええぇぇぇぇぇぇ!!?」」」 とうとうクイーンは耐え切れず取り巻きを攻撃しはじめた。クイーンが体を打ち付けるたびに無数の饅頭が宙を待った。 『はー・・・はー・・・』 「結構すぐバテるんだね。」 数分後、すべての取り巻きを潰し終えたクイーンは荒い息をつきながら兄貴を睨み付けた。 対し兄貴は舌舐めずりしながら腰を振り、立てた中指をクイクイと曲げて挑発している。 『ゆっがあああああぁぁぁぁぁあああああ!!???』 「キワミってなに!?」 ガシィ!! 兄貴は突っ込んできたクイーンを正面から受け止めた。いくら疲れているとは言え予想外のことにクイーンは奇妙な声をあげる。 「あぁん!?スポーツ的にはハードワーク!!?」 そう叫んで兄貴はクイーンを担ぎあげる、かつて多くのゆっくりを葬って来た必殺技『フェアリーリフト』である。 そしてクイーンの体が完全に担ぎあがったことを確認すると、兄貴は激しく回転しはじめた。 「ぶうううううううううううう!!!!!」 『ゆぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!!!??』 「勢いあまって・・・・新☆日暮里!!!」 『ゆぼおおおおおおおおお!!!!!』 ビターン!!! 回転の勢いを利用しての叩きつけにより、物凄い音を立ててクイーンは地面と強烈なキスをする。 「蟹になりたい!蟹になりたいね!!」 兄貴はそんなクイーンに足を乗せると誰に見せるわけでもないが、勝利のガッツポーズを決めた。 『ゆ・・・ぐぐぐ・・・』 「ああん?何気に強いですね・・・」 足の下が鈍く震える、クイーンはまだ死んでいなかった。 『ご、ごべんなざい”いいいぃぃぃぃ!!ありす達が悪かったでずううううぅぅぅ!!!』 「あぁん?反省したやろ!!」 『反省しましたああぁぁ!!この森から出て行きまずがら許じでぐだざいいいいぃぃ!!!』 「どうしようかな・・・?」 口では兄貴は悩む素振りをみせる、だが心の中では決まっている。 このありすは余りに多くのゆっくりを犯し、殺しすぎた。今は反省していても傷が癒えれば、また同じような過ちを犯すだろう。 「ふるもっふ!!!」 『ゆべっ!!?』 兄貴は足払いを放ちクイーンを仰向けに倒すとその下腹部にスパンキングをはじめた パパパパパパパパパパパン!! 「イケメ~ンwww? イケメ~ンwww?」 『ゆああああああ!?や、やべでえええぇぇぇぇ!!?』 クイーンは身をよじって逃れようとするが、兄貴はそれを許さない。 「えぇか!?えぇのか!?エッチめ!!言え!!」 『ゆ・・・!!?気、気持ちよくなんか・・・!!!!』 リズミカルな刺激に昂ぶって行くクイーン、気持ちとは裏腹にその身は快楽に溺れて行く。 「ほっそいチンチンねぇーwwwwww」 『ゆぐううぅぅぅ!!?そんなこと言わないでえええぇぇぇ!!!!!!』 堪らず顔を出すぺにぺにを見て告げる兄貴にクイーンは沸騰寸前だ。 「ダブル☆ゆきぽ!!!」 『ゆあああああああああああ!!??ら、らめえええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!??』 突如兄貴はそれを両手で握ると激しくこすりはじめた。 「超スピードゥ!!!」 『あっぱぱぱぱぱぱぱ!!!!!』 最後の仕上げと言わんばかりに速さをましてゆく神速の手コキ。ついにはクイーンは絶頂へ達しようとして 「ふぐりっ!!!」 『ま”り”あ”り”!!!???』 一気にペニペニを力の限りむしり取る。快楽から苦痛への一変をくっらたクイーンは目を白黒させる。 だが、兄貴は止まらない。 「ちんこぶすり☆」 『アッー!!!!!』 何と両手をぺにぺにがもげて出来た穴につっこんだのだ!! 「あぁん?入ったやろ!!でらべっぴん!?でらべっぴん!?」 『あぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ!!!??』 人間で言うと尿道からて手を突っ込まれて睾丸を内から直に握られているようなものである。 想像を絶する痛みに、クイーンは気がふれんばかりであった。 『殺して!!!もう殺してくだざい”い”いいいいいいいいい!!!!!』 「デビルレイクバーマ!!もぅこれで終わりだぁ!!!」 『びおらんてっ!!?』 そう叫んでクイーンは股間から真っ二つに切り裂かれた。 「なんばパークス・・・」 こうして森の平和は守られた。だが兄貴の戦いの日々は終わらない。 ゆっくりが傷つき癒しを求め続けるかぎり、兄貴は今日も戦うのだ。 人は彼を『森の妖精』と呼ぶ。 「いい目してんね、サボテンね~♪」 ブオオオオオオオオオ・・・・・ 終われ 作者・ムクドリ( ゚д゚ )の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1013.html
※注意 現代ゆっくりモノ。 オリジナル設定あり。 ゆっくりまりさの中味が黒蜜になっていますが、俺設定です。 SS初挑戦です。 ブザーが鳴り響いた。 ゆっくりたちが目を覚ますと、そこは箱のなかだった。 「……ゆ!」 箱は天井低く、狭く、暗かった。そこに饅頭サイズの子ゆっくりばかりが8匹ほど入れられていた。 箱は横広の長方形だが、壁の一方が外に繋がっている。そこから見える景色は陽光きらめく新緑の森。 外に気づいたゆっくりたちが跳ね寄るが、箱と外界は鉄格子によって隔てられていた。 箱はゆっくりの牢屋だった。 「ここはどこ? せまくてゆっくりできないよ!」 「おそとはゆっくりできそうだよ! ゆっくりだしてね! おそとにだしてね!」 がちゃり、と音がして、鉄格子が自動的に外へと開いた。 「!? ――ゆ!」 「ゆ!?」 顔を見合わせるゆっくりたち。しかし警戒することはなく、自分達の行動が結果に繋がったのだと 結論付け、われ先にと光り輝く草原の中へと飛び出していった。 自分達の背後、先ほどまで入っていた箱牢が、静かに地面に沈みこんだ事に気づかないまま。 ※ 『さあ始まりました全国高校ロボットバトル・準決勝、第一試合です』 『バトルフィールドは森。舗装されていない草原と木立のステージです。二足歩行とローラーダッシュ が移動手段の西日暮里高校には若干不利な状況です』 屋内に作られた人工の森林。天井には青空が映し出され、太陽代わりの照明が森を明るく照らして いる。森のあちこちには状況を確認するための隠しカメラが設置されており、そのうちの数台が森の 地面から浮き上がったゆっくり牢から、ゆっくりの群れが飛び出すのを映し出した。 『各地点でゆっくりがリリースされました。数は合計で31体。れいむ種とまりさ種です。全て同じ親から生まれた姉妹となっております』 『子ゆっくりしかいないのにはなにか理由があるんですか?』 『親ゆっくりですとバレーボールほどにもなりますから、体当たりでロボットが破損してしまう可能性 があるわけですね。それは競技目的からすると望ましくない』 『なるほど。事故による不戦勝は好ましくないと』 『そういうことです。では解説席にお越しいただいている、親ゆっくりまりさ・れいむ両氏にコメントをいただきましょう』 解説の男はそういうと、足元から透明な箱に収まった二匹の親ゆっくり持ち上げ、解説席の上に置いた。 『やべでねぇぇっぇぇぇ!!』 『ゆっぐりじないでね! みんなにげで!』 だくだくと涙を流し、鼻を赤くして自らの子供らを案じている。 『おっほ! これは……』 『キモイですね~。では試合を見てみましょう。最初に群れを捉えるのはどちらになるのでしょうか!?』 ※ 「ゆっゆ~♪」 「ゆっ、ゆ~♪」 子ゆっくりの群れが楽しそうに移動している。 いずれもまりさ種で、心地よい自然のなかをきょろきょろしたり蝶を捕らえたり三つ葉をくわえたりしながら跳ねていた。 『おっとー。鼻歌を歌っている。のんきに鼻歌を歌っているのは? 6番グループのまりさ群ですか?』 『ひーふーみーよー・・・・・・10体? これは多いです』 『よくみると8番グループのまりさもいます。2グループ、2グループいます』 『これは大漁ですね。全体で31匹ですから、三分の一がここに集まっていることになります』 まりさの群れが移動しているのは茂みと茂みの間に不自然にあいた道だ。 獣道でもないのに歩きやすく道が出来ていることに何の疑問も感じないまま、群れは目的もなく進む。 やがてゆっくりたちは開けた草原に出た。 人間にしてみれば狭い、しかしゆっくりにとっては大草原ともいえる空間だ。しかもその中央、木漏れ日の直下には畑がある。 『6番8番がたどり着いたのは、畑。ゆっくりが好む野菜をゆっくりが好んで荒らす畑を模して配置しています』 『状況を把握しているわけがないですから、これは間違いなく喰いつ――、!? あぁっと、これは!!』 嬉々として畑に駆け寄るまりさの群れ。しかし、その畑の作物の間から見える赤白のリボン。 『ゆっくりれいむです! これは2番グループ総勢・・・6匹!』 『これは……』 畑で食事中のれいむ群が、来客に気づく。跳ね寄っていたまりさ達も先客の存在に気づき、歩みを遅めた。 畑のそばに揃って、まりさ種が言った。 「「「おじゃまかな!?」」」 れいむ種は畑を見回し、れいむ種同士で頷きあった。 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 にこやかな挨拶が取り交わされ、まりさ種は畑に入ることを許された。 大根を掘り出し、薩摩芋にかじりつき、白菜に包まりながら、暴食の宴が繰り広げられる。 「うっめ! めっちゃうっめ!」 「むーしゃむーしゃ」 「んっがぐっぐ」 「「「しあわせー!」」」 ゆっくりたちはこの世の春を謳歌した。畑の中央にある立て看板「にんげんのはたけ ゆっくりしたらしぬ」には見向きもしない。 『これは思ってもみない展開。この畑に過半数のゆっくりが集合してしまいました』 『総ゆっくり数31体ですからね。この16体が一つのチームに一網打尽にされると、その時点で逆転が不可能になります』 『そしてこの畑はF大付属のスタート地点近く――』 突然、畑近くの茂みが大きく動いた。 その音と動きにゆっくりたちが1匹また1匹と食事を止め、ついには全員が注目しだした。 茂みはなおも揺れ動き、その音を大きくする。まるで何かが隠れているかのよう。 ゆっくりたちは一向に姿を現さない何者かに痺れを切らし、茂みを囲むようにして待ち受ける。 その顔には友好的な笑みがうかんでいる。何かを示し合わせるように互いに視線で合図する。 ついに一匹のゆっくりが茂みから跳び出した。 「「「ゆっくり――・・・・・・」」」 サプライズをねらった子ゆっくりたちが、その闖入者を見上げた。 それは親ゆっくりよりも大きい、バランスボールほどもあろうかという・・・・・・ゆっくりゆゆこだった。 「「「――していかないでねええええぇぇぇ!!!」」」 瞬間、ゆっくりの春は終わりを告げた。 『キターーーー!!』 『F大付属工業高校のメカゆゆこがここで登場です! おおきい! でかい! いたしかたない!』 『下馬評ではゆっくりの警戒心を煽りすぎるとしてベスト16にも残れないと酷評されたメカゆゆこ! しかしふたを開けてみればどうでしょう! 並み居る強豪を押しのけての準決勝進出! ストイックなまでに削減された機能とこだわりぬいたゆっくりゆゆこへの偏愛! 幾重にも織り重ねられた狂気という名の錦が、この準決勝の舞台にも飾られてしまうのか!!?』 『にげでえぇぇぇあがじゃんんんんんんんん!!』 『だずげであげでよ"尾"お"お"おおおぉぉぉぉぉぉおぉ!!』 蜘蛛の子を散らしたよう――――。メカゆゆこを前にした子ゆっくり達の様は、そう表現すべきものだった。 統率もなく、策もなく、ただ泣き叫び散り散りに逃げ出すゆっくり。しかし1匹のれいむが取り残されていた。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆ・・・」 地面に仰向けに倒れ、笑顔のままひきつけを起こしている。 その目に光る涙の粒が流れ落ち、土に吸い込まれるかと思われた刹那、メカゆゆこの開きっぱなしの口から 飛び出した銀色の触手が逃げ遅れいむを貫き上げた。 逃げながら後方を窺っていたゆっくり達、あまりの光景に立ち止まる。 触手の先でいまだ痙攣するれいむ。その涙をにじませた微笑みが――、瞬きのうちにメカゆゆこの口内に消えた。 咀嚼の動作を行い、嚥下したような震え。 1匹を飲み込んだ機械仕掛けのゆゆこは、舌なめずるように銀色の触手を口から出した。 見せ付けるように突き出した触手の、餡子にまみれた先端が今、ゆっくりと三股に分かれる――。 「ひぎいいいいいいいいいいいいいいい!」 「い"やべでええぇえぇぇぇっぇぇぇぇぇぇ!!!」 「どうじでぞんなごどずるのおおおおおおおおおお!!」 『これは酷い! ノリノリの精神攻撃! あぁーと! メカゆゆこ動いた。回転しながら高速で移動し、 ゆっくりたちを取り囲む軌道! 徐々に輪を縮めてゆっくりの群れをひとつ所に集めてゆく!! ゆっくりは恐慌状態です!!』 『メカゆゆこの触手ですが、医療用のロボットアームを改造したもので自在に動きます。 現在メカゆゆこが見せている武装はこの触手1本。あとは転がりによる体当たり攻撃のみです。美しいまでのシンプルさ!』 『なんでごんだごどずるのおおおおおおおおおお!!! ・・・・・・まりざだずげであげでっ!』 『ゆっぐううううううううううううううううっ!!』 透明箱の中、おもいっきり膨らんで箱を破ろうとする親まりさ。息を止め顔を赤くし、箱の中で体をほぼ四角形にしながらがんばる。 しかし解説役ふたりが動じることなく実況を続けている事が、箱の信頼性をあらわしていた。 メカゆゆこの包囲旋回によって逃げ場を失ったゆっくりたち。身を寄せ合うようにしてかたまり、 恐怖に身を震わせながら泣き喚いている。その目の前で、メカゆゆこが止まった。土に汚れた顔面は、 ゆっくりたちには目元に影が浮かんだ凶悪な表情に映る。 「ひいいいぃぃぃぃっぃいいい!!」 円陣を組むように集まったゆっくりの群れから、数匹が先んじて離れた。 「まりさはおいしくないんだぜ!」 「そこのれんちゅうとよろしくやってるといいんだぜ!!」 「ゆっくりしね!」 仲間を見捨てたのはいずれもまりさ種。珍しくもない行動だ。 しかしメカゆゆこは見逃さない。閃光となって駆け抜けた触手が、逃げ出そうとした3匹のまりさを滑らかに襲った。 「けぺっ!」「ぉぶろっ!」「ゆっぐ……! やめえええぇぇぇ!」 細身の触手はゆっくりの形状を保ったまま貫いた。 触手はそのまま地面に先端を突き刺し、ずぶずぶとめり込んでいく。 触手のまちまちな位置に刺さっていたまりさたちは地面に押され、一列に並んだ。 そうしてから触手を抜いたメカゆゆこ。まりさ3体を並べるようにして口にくわえると、一気に触手を引き抜いた。 「だずっ、だずげっ・・・ぺええぇ!!」 「おがじゃ! おがぢゃあああぁぁぁぁん!」 「やめえぇ! かえりゅ! かえりゅぅぅぅぅぅぅ!!!」 べそをかき、絶望に塗れ、裏切った仲間達に命乞いをしながら、傷口から黒蜜を垂れ流すまりさ。 そのまりさたちが、ゆっくりとひしゃげてゆく。苦悶、懺悔、後悔。中身と共に流れ出すさまざまな感情。 その全てを絞り抜かれ、まりさたちは絶命した。触手の先が残骸を口内に招きいれ、念入りな咀嚼が始まる。 それが終わると、そこには口元を黒蜜で濡らしたメカゆゆこが残った。 「…………」 子ゆっくりたちは声もない。 あるものは髪と瞳を白く変色させて放心し、 またあるものは涙にまみれた顔をこれ以上ないほどゆがめたまま自身の舌を喉に詰まらせて窒息しつつある。 諦観にくすんだ微笑でその場の草を食む者や、 なぜかヘブン状態に至った者。 違いはあれど、皆逃走への意志を失っていた。 それを確認すると、メカゆゆこは一際おおきく口を開けた。 そのときである。 鉄のかたまりが、横合いからメカゆゆこを突き飛ばした。 『こ、これはーーーー!!』 『これ以上ないタイミングで! そして瀬戸際のタイミングで! かけつけました西日暮里高校、間に合ったーっ!』 鉄塊。 それは無骨なロボットだった。左手にドリル、右手にはサブマシンガン。 足短く、横広で頭部がない。骨格をむき出しにしたような外観はお世辞にもスマートとは言い難い。 その機体の上半身が、ゆっくりと子ゆっくり達の群れを向く。 ほぼむき出しのコックピット。 そこに鎮座しているのは一匹の子ゆっくりれいむだった。 「ゆっくりあんしんしてね!!」 その力強い言葉に、ゆっくり達の瞳に希望が点った。 ゆっくりをのせた機体『テイクイットEZ8』は向き直る。 いましがた突き飛ばした敵、メカゆゆこへ。 いまだ転がり続けている球体は木にぶつかって止まった。逆さまのメカゆゆこ。その両眼が鈍い輝きをもってEZ8を捉えた――。 後編に続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/190.html
前書き このお話は現実世界にゆっくりが出現したような世界観で書かれています。 ゆっくりを飼い始めて1ヶ月ぐらいだろうか。 留守中にどこからか入り込り込んだゆっくりが布団で寝ていたときは驚いたが、 急いで台所を確認するがあらされた様子はない。 インスタント食品ばかりでゆっくりが食べられるようなものが無かったのが幸いした。 帰ってきた俺の気配に気づいたゆっくりが目を覚ます? 「・・ゆ?おじさんだーれ?ゆっくりできるひと?」 お決まりの台詞だ。 「ちらかってるし、ごはんもないけど、ゆっくりしていってね!」 確かに散らかっているが、お前が言う事じゃない。 起きたゆっくりがおもむろに動き出す。 「ゆ!」 ドーンと体当たりすると積んでいた漫画や雑誌の山が崩れだす。 ゆっくりはあたりをキョロキョロと何かを探しているようだった。 「ゆー、やっぱりごはんがないよ。」 「おじさん、ここはあんまりゆっくりできないところだから、 べつのところでゆっくりしたほうがいいよ!」 そう言うと今度は脱ぎっぱなしの洋服をくわえブンブンと振り回し始める。。 「おい!やめろ!」 あせって、ゆっくりを掴み取る。 「ゆ、ゆっくりはなしてね!れいむはおなかがすいたの!ごはんがないとゆっくりできないよ!」 「お前、お腹すいているのか?」 「すいてるよ!ゆっくりなにかたべさせてね!」 「あ、ああ、なにか食べさせてやるよ」 先に言われてしまったが、とりあえず何か食べさせてみよう。 冷蔵庫をあけ探してみるが、自炊などしないのでろくな物が無い。 「ああ、これなんていいかな。」 手にした食べ物をゆっくりに差し出す。 「ゆっくりたべさせてね!」 そう言ってゆっくりは口を大きく広げる。 こいつのあごの間接はどうなっているんだろうか。 「・・・・・・」 しらばらくそのままにしてみると、ゆっくりのまん丸な目がこちらを向く。 その目が徐々に早くしろよと言いたげなふてぶてしい物になる。 いいかげんに口に入れてやると、むしゃむしゃと幸せそうに味わいだす。 「うまいか?」 俺の問いかけに無言で口をあける。 「うまいか?」 もう一度聞くとさっきと同じような目をこちらに向ける。 俺が用意したご飯を食べ終えたゆっくりは窓際の日光がさしている所まで行き昼寝を始めた。 満足したのだろう。カビの沸いた蜜柑でもおいしいようだ。 それから今日までゆっくりは俺の生ごみ処理機として暮らしてきた。 もっとも、与えるのはカップメンの残り汁やまずくて食べられなかったコンビニの新商品ぐらいだった。 おなかがすいたと不満を漏らす事もあったが、目をつぶらせオレンジジュースと偽り水を流し込めばそれで満足していた。 さすがにおにぎりの包み紙や弁当の容器は食べられないようだが、小さいものであれば無理矢理の飲ませることもできる。 使用済みの丸めたティッシュやお菓子用の小さい包装紙はゴミとして出す必要がなくなった。 ゆっくりを飼ってから最初の冬を迎える。 家にはエアコンやファンヒーターといった都会派な暖房器具は無い。 暖をとるには一人用のコタツしかない。 昼間、日光がさしている時はそうでもないが夜になるとコタツ無しではいられない。 今夜もいつもの様に冷えてきた。 「さむいよ!ゆっくりさせてね!」 そういってコタツに入ろうとするゆっくり、 しかし、一人用のコタツは俺の足だけでいっぱいでゆっくりが入るスペースは無かった。 コタツ布団をもぐるだけでならスペースはあるが、 ゆっくりは真ん中のヒーターの下に移動しようとグイグイと押してくる。 かかとを落とすと静かになるのでそのまま蹴り出す。 そうすると静かになるので、そのまま蹴り出す。 ある日、帰ってくるとゆっくりの姿が見当たらない。 寒い外から帰って来た俺にはそんな事よりコタツが先だった。 カバンを置いてイソイソとコタツにもぐりこむ。 ああ、暖かい。ここが俺の桃源郷、体が温まるまでここでしばらくゆっくりしよう。 だが、待てよ。小さい一人用のコタツでもこんなに早く暖かくなるだろうか。 スイッチを切り忘れたか?いや、出かける前に切った記憶はある。 それに、なんだろう?このあったかいぷにぷにした物体は・・・。 コタツの中をみるとゆっくりがいた。 まさか、こいつが勝手にスイッチを入れたのだろうか・・・。 「ゆ?おじさん、おかえり!おなかすいたよ!ごはんまだ?」 「うるさい!おまえは出ろ!」 「ゆぐ!」 ゆっくりをコタツからけり出すと、ピョンピョン跳ねながら怒りをあらわにした。 「そこはれいむのゆっくりぽいんとだよ!おじさんはでてってね!」 「そんなにゆっくりしたいなら、おそとでゆっくりするよいいよ!」 「ゆっくりできないひととはいっしょにいられないよ!とっととでてってね!」 「そうか、おまえあったかい所でゆっくりしたいんだな・・・。」 「そうだよ!だからおじさんはでてってね!」 「ゆっくりするならもっといいところがあるよ。」 「ゆ?いいところ?だったらはやくあんないしてね!」 俺はコンロに鍋を置きその中にゆっくりを入れ蓋をしめる。 「ゆ!くらいよ!ここどこ!」 「おのれ謀ったなゆかり!だがこれで勝ったと思うな!」 「人の世に闇がある限り私は何度でも蘇る!」 「せいぜいその時まで・・・」 「ゆっくりしていってね!!!」 途中から訳のわからないことを喚きだすが、無視して火をつける。 火をつけて3分・・・・ 「ゆ?あったかくなってきたよ!ゆっくりできるよ!」 火をつけて5分・・・・ 「ゆふーzzZ・・・ゆふーzzZ・・・」 火をつけて10分・・・・ 「ゆ?あっあつよ!!ここどこ!ゆっくりだしてね!!!」 火をつけて15分・・・・ 「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!あ”つ”い”-!!た”し”て”ー!!こ”こ”か”ら”た”し”て”ー!!!!」 「お”し”さ”ん”た”す”け”て”ー!!あ”つ”い”よ”ーー!!!!」 助けを求めてきたところで蓋をあける。 暑さに震えているゆっくりだが、俺の顔を見るといくらか安堵した顔をみせる。 「あ”あ”あ”・・・、お”し”さ”ん”た”す”け”て”・・・」 俺は鍋一杯になるまで水を入れてやる。鍋の温度は下がり水はぬるま湯になった。 ゆっくりはぬるま湯につかって気持ちよさそうにしていた。 「出してやろうか?」 「ゆ?もうちょっとここでゆっくりするよ!あとでだしてね!!」 「そうか、じゃあここでゆっくりしね」 「うん!ゆっくりしてるよ!!」 鍋に再び蓋をする。ゆっくりがまた何か言っているが気にせず蓋に重しを乗せておく。 10分ぐらい足っただろうか。 「おじさん!だして!そろそろだしてね!」 「はやくだして!ださないとゆっくりさせてあげないよ!」 「ゆ!ゆぐ!からだがとけるよ!はやぐたすけで!!」 いつの間にか静かになっていた。 時計を見ると水を入れてから30分ぐらいだ。 俺が静かになった鍋の蓋をあけるとそこには・・・・ Fin 後書き どうみてもお汁粉です。本当にありがとうございました。 設定として必要ないのですが、登場したゆっくりは一応霊夢です。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/586.html
「よし、無事完成。あとは野に放つだけだ!」 誇らしげな表情の俺の目の前にあるのは直径1.5mくらいの球体。中は空洞で、一応入ることが出来る造りだ。 こいつの名前はゆっくりボール チャリオットバージョン。 その巨躯は今までのゆっくりボールの中でも最高の強度を誇り、下級の妖怪にさえ破壊することは出来ない。 しかも、外側には無数の透明な刃(刃渡り5mm前後)が無数についていて、触れれたものを捕らえて離さない。 ゆっくりを保護するという一点においてこのボールほど強力なものはないだろう。 などとどこかの誰かさんに解説している間にも1匹の母まりさと3日分くらいの食料と水を中にいれて、村の入り口へと解き放った。 「さあ、まりさ。ゆっくり君の里に帰って良いよ」 「ゆ!かえっていいの?!」 このゆっくりまりさは野生種だが、それにしては珍しくかなりの規模の集落に所属しているらしい。 “らしい”というのは餌を取りに出かけていたこいつを保護し、まりさ自身からその話を聞かされただけに過ぎず、実物を見ていないからだ。 「それじゃおじさん、さようなら。ゆっくりしんでね!」 善意の保護を捕獲と勘違いして、俺に敵愾心を抱いているらしい。去り際に酷い捨て台詞を吐かれちゃったぜ! よし、決めた!追いかけていってあいつの仲間も全員保護しちゃうぞ~♪ 「ぎゃお~、たべちゃうど~♪」 というわけで、まりさinゆっくりチャリオットを追いかけること13分と28秒。 絶好のタイミングでゆっくりれみりゃが現れてくれた。しかも母1匹に子ども4匹というゴキゲンな組み合わせだ。 「ゆ・・・ゆぅぅぅぅぅうう・・・」 ゆっくりにはチャリオットの強さなんて簡単には理解できない。まりさは本来なら遭遇しないように立ち回るしかない脅威を前にただひたすら怯えるばかり。 そもそもこのボールシリーズ全部透明だから、馬鹿なゆっくりだと自分がそれに入れられていることさえ忘れるんだよな。 「ぎゃお~♪」 「「「「だべぢゃうど~♪」」」」 と、お約束の聖者は磔にされましたを彷彿とさせなくもないポーズで五方から迫るゆっくりゃ。 格下のゆっくりまりさ相手に5匹で包囲して退路をふさいでから襲い掛かるのか。ゆっくりゃにしては珍しく、なかなか統率の取れた集団のようだ。 「ゆ、ゆっくりあっちいってね!」 そんなまりさの叫びも虚しく、鋭利な爪の生えた腕を振りかざした母ゆっくりゃは獰猛な四足獣の如き勢いでまりさに飛び掛る・・・ッ! もはや命運尽きたといわんばかりの絶望的な表情で全身をこわばらせるまりさ。 「れみりゃがいちばんだくさんたべるど~」「いちばんはいちばんぷりぢーなれみりゃだど~」などなど、好き勝手にはしゃぐ子ゆっくりゃ。 哀れなゆっくりまりさの短い生涯はここで幕を閉じる! 「・・・あぎゃ!?」 と、本来ならなるはずなのだが、透明なチャリオットの存在に気付かなかった母ゆっくりゃは目測を誤り、小さな刃の並ぶチャリオットの壁に激突した。 小さな刃であったため中の具がはみ出ることはなかったが、チャリオットに抱きつくような格好で激突したため、上半身のいたるところに満遍なく刃による刺し傷が残っている。 「・・・う!?」 予想外の事態に困惑する子ゆっくりゃ。 「う゛あ゛ーーーーーー!!!いだい゛ーーーーーー!!!ざぐやーーーーーーーーー!!!!」 獲物に届かない理不尽と驚きと、そして何より痛みのせいで我を忘れ、両腕で自分を抱きかかえるような格好でひっくり返ってのたうち回る母ゆっくりゃ。 「ゆ?・・・ゆ!」 一瞬、状況が飲み込めずゆっくりゃ同様に困惑顔になるも、俺の家にいたときに何度かボールに入った経験のあるまりさはすぐに自分の身の安全を理解する。 「おが~じゃ~ん?」 「だいぢょーぶだどぅ~?」 「「いだいの、いだいのどんでげー、だどぅ~♪」」 そんなまりさにわき目も振らず、負傷した母ゆっくりゃのもとへ駆け寄る子どもたち。 う~ん、やっぱり統率取れてるなぁ~。あれか、これが噂のかりすまって奴なのか。 特に手当てをするわけでもないが、心配そうに親の様子を伺っている。 もちろん、格下で、自分達にとっては餌に過ぎないまりさに背を向けて。 「ゆっくりしね!!!」 瞬間、まりさがゆっくりらしからぬ速度でチャリオットを操り、母を気遣う子どもの一群に突撃した。 叫び声に反応して回避しようとするものもいたが、目に見えないチャリオットをかわしきれず、母同様に全身を小さな刃で傷つけられる。 「いぎゃーーーー!!!」 「いだいどぉ----!!!」 「ざぐやーーーー!!!!」 「だずげでーーー!!!」 ものの見事に一撃で4匹全員戦闘不能。汚らしい絶叫を撒き散らしながら地べたを跳ね回るゆっくりゃたちからは先ほどまでの余裕など微塵も感じられない。 理解不能な状況への困惑と全身の痛みで逃げることすらままならない5匹。 しかし現実は無慈悲にして残酷。これはチャンスとばかりにまりさは拙いなりにもチャリオット駆り、何度も何度も執拗にゆっくりゃたちに襲い掛かる。 二回目の攻撃で1匹の子ゆっくりゃは完全に頭部を粉砕され、中身を撒き散らし、そのまま微動だにしなくなった。 「あ゛ーーーーー!!れびりゃのあがぢゃんーーーー!!!」 運よく攻撃が当たらなかったものの、わが子を殺された母ゆっくりゃは大量のしわを作り、涙で顔をぐしょぐしょに濡らして元々見苦しい膨れっ面を更に気持ち悪いものへと変えてゆく。 「いだい゛!!いだいーーー!!」 「おてでが!!おでてがーーーっ!!!」 「うぅ~~~~☆ にぱぁ~~~~~~♪」 あるものは右腕をすりつぶされ、またあるものは左足をねじ切られ、またあるものは顔の1/3と精神を粉々に砕かれていた。 これが人間だったら目を背けたくなるような阿鼻叫喚の地獄絵図であっただろう。 そして少し間をおいての三回目の攻撃は親の両足を瞬く間にすりつぶした。 「ギャおおおオおぉおぉぉォオオおおお!!!!!!?」 上半身は刺し傷だらけ。下半身はもはやない。全身傷だらけで、具の半分近くを持っていかれた母ゆっくりゃは半ば虫の息だ。 立て続けの四回目の攻撃。幸運なのかそれとも不運なのか、母ゆっくりゃを粉砕しようとしたチャリオットは石に躓き宙を舞う。 結果、母ゆっくりゃは死を免れた。しかし、チャリオットは顔を1/3そぎ落とされた子ゆっくりゃへと落下し、その胴体を粉砕、大量の具を撒き散らした。 「うぎょあ!?!」 悲鳴とも呼べない奇声を発し、顔だけになってしまった子ゆっくりゃは・・・ 「れび☆ぢあ・・・う゛ー」 あまりにも場違いな言葉を口にすると同時に満面の笑みを浮かべた。その表情はゆっくりゃにあるまじき可愛らしさだ。 「ぷでぃ、ぷでぃん、ぷでぃ・・・」 しばらく痙攣しながらも笑顔で意味不明な言葉を発し続け、最期にはやはり笑顔のまま息絶えた。 もはや誰がこの場を掌握しているのかは明白。チャリオットの中のまりさは口の両端を吊り上げ陰惨とした笑みを浮かべている。 「ぅあう・・・」 痛がっている場合じゃない。母ゆっくりゃはまだ生きている子どもたちに目もくれず腕の力だけで這って逃げようとする。 「おが~ぢゃ~ん!?」 「うぎゃ!?れびりゃをだづけどぅーーー!!!」 見捨てられた子ゆっくりゃはこの世の終わりでも到来したかのような表情で母の背中を見つめる。 だが、全てをかなぐり捨てた必死の逃走には何の意味もなかった。 「ゆっくりさせないよ!」 もはやゆっくりとさえ呼べないような速さで這いずるしか出来ない母ゆっくりゃの正面を取ったまりさは潰さないように加減した突撃を当てる。 「うぎゃ・・・!?」 短い悲鳴とともに弾き飛ばされた母ゆっくりゃは新たな刺し傷と失った両足から餡子を垂れ流しながら子どもたちのすぐ傍へと弾き飛ばされた。 「いや゛ぁぁぁぁああああ!!!あ、あああ、あがぢゃん!?あああ、あう!?」 落下の際の衝撃で左腕も使い物にならなくなってしまったらしい。唯一自由に動かせる右腕で先ほど息絶えたの笑顔の子どもの生首を引っつかむとそれをまりさのほうに差し出す。 つまり、子どもはやるから見逃してくれということだろう。かりすまは何処へやら。全く酷い親だ。 「お゛がーぢゃーん!?」 「うあ゛ーーーー!!」 その行動は生き残っている2匹の子どもたちを更なる絶望のどん底へと叩き落した。 それを見た瞬間のまりさの笑顔のエグいことエグいこと。 「こゆっくりゃ!!」 エグい笑みを浮かべつつ、偉そうに子ゆっくりゃを呼びつける。 「は、はい゛ーーーーーー!!」 「あ゛ーーーーーー!!!」 痛みと恐怖と絶望からか、思った以上に従順な態度を示す子どもたち。 「そのゆっくりゃをゆっくりたべてね!」 あ~あ、こりゃ母ゆっくりゃ死んだな。自分が先に子どもを差し出そうとした以上、子どもも待ってはくれないぞ。 で、14分と23秒後。 そこには母ゆっくりゃのおべべだけが残っていた。 「「う゛ー!!ぜんぶだべだどぅーー!!」」 2匹の子ゆっくりゃは場違いなほど嬉しそうな笑みを浮かべながら、そのおべべを指差す。 「ぜんぶだべだから、ぷっでぃ~ん・・・ぷぎゃ!?」 何かを言い切る前にまりさのチャリオットアタックで右腕のもげた子ゆっくりゃが圧殺された。 正中線をなぞるように踏み潰されてぺちゃんこになっており、チャリオットの破壊力を100%受けきったらどうなるのかを見事に体現していた。 きっと「ぜんぶ食べたからプリン頂戴」と言おうとしたんだな。 こーまかんのおぜうさまにとって言うことを聞けば報酬があるのが当然なんだろう。だからあんなに嬉しそうだったのか。でも、こいつら野生種っぽいような? 「・・・う?」 唯一生き残った左足のない子ゆっくりゃもまた言うことを聞けばプリンを貰えるものだと思っていたので、何故か仲間が殺されたその状況と意味が理解できず呆然とする。 「ぷっでぃ~んは?」 と、小首をかしげているところに容赦なく、まりさが襲い掛かってきた。 「ギャおああああああああアああああああ!!!ブッでぃいいいいぃぃっぃgsねwgん、srgbんcぢkwsdcうぇr!!!」 その一撃で体の左半分を粉砕され、大量の具を撒き散らした子ゆっくりゃはもはや何を言っているのか全く聞き取れない絶叫を残して、動かなくなった。 「ゆっくりしていってね!」 まりさはもはや1匹たりとも動くもののいないゆっくりゃの群れに向かって今まで以上にえげつない笑みを浮かべたまま、お決まりの文句をはき捨てると、その場を後にした。 そんなこんなで18時間と26分19秒後。 あるときはゆっくりゃを上回る能力のゆフランをもたやすくなぶり殺した。 またあるときは発情したアリスの群れを全く寄せ付けることなく轢き潰した。 更にまたあるときは3頭の蛇をまるでそんなものいなかったかの如く蹂躙した。 挙句の果てには人間でさえも敵わない野犬12頭の群れをいとも容易く一蹴した。 そうして、ゆっくりまりさはようやくゆっくりできる自分の故郷へとたどり着いたのだ。 「あ、おかーしゃんだ!」 真っ先に母の存在に気付いたのは6匹いる子どもたちの末っ子のゆっくりれいむだった。 「おかーしゃ~ん!!」 「れいむーーー!!」 実に涙ぐましい感動の再開。でも、何か大事なことを忘れちゃいないか? と、俺が思案にふけっていたそのとき・・・。 「ゆぎゃ!?」 という悲鳴とともに幼いれいむが空中で何かに激突し、更にそのまま轢き潰され、中身の餡子を撒き散らした。 あ~、そうかそうかそうか。外敵だけじゃなくて、家族や仲間も粉砕してしまうのか。こりゃうっかりしていたぜ☆ などと、俺が一人納得していると村中のゆっくりがわらわらと集まってきた。 「まりさ・・・こどもをころすなんて・・・しばらくみないあいだにゆっくりできなくなったんだね」 そういってまりさを攻めるのはすでに母にはなっているであろう大きさのゆっくりれいむ。 「ゆ!?ちがうよ、したくてしたんじゃないよ!!」 「むきゅ・・・そんなの、かんけいない。おきてはおきて・・・」 まりさの反論をぼそぼそと却下するのはこれまた成人サイズのゆっくりぱちゅりー。 更にどんどん集まってくるゆっくりたち。最前列に大きなゆっくりが立ち並び、その後ろで子供や赤ちゃんが様子を伺っている。 「おかーしゃんはそんなことしないよ!」 そんなゆっくりの群衆の中をかき分けて飛び出してきたのは5匹の子ゆっくり。2匹がれいむ種で3匹がっまりさ種だった。 まりさの感涙に咽ぶ表情から察するにあのまりさの子供だろう。小さい鳴りに必死で母を守ろうとしている。 「み゛、みんな゛ぁぁぁぁあああああ!!」 あくまで自分を信じようとしてくれる子供たちに頬ずりしようとするまりさ。 あ、そんな事したら・・・ みちっ、ぶちゃ、むりゅ、ぐじょ・・・めりめりめりめり・・・! あ~あ、やっぱり。またやっちゃったよ。散々そのボールに頼ってここまで帰ってきたくせにどうして肝心なときにそれの存在を忘れるかね? 叫ぶ暇すら与えられずに押しつぶされた子どもたち。あたり一面に飛び散る餡子。呆然とする母まりさ。そして・・・ 「ゆっくりできないまりさはゆっくりしね!」 誰かの合図をきっかけに子殺しの罪ゆっくりに制裁を加えるべく飛び掛るゆっくりたち。 もちろん、ボールなんて見えていないし、何故触れてもいないのに子どもたちが潰れたのかなんて考えようともしない。 「やめでええええええええええええ!!!」 しかし、誰も罪ゆっくりの言葉など聞くはずもない。飛び掛ったものはことごとく刃によって傷つけられた。 誰も傷つけまいと必死で逃げるまりさ。だが不運にも逃げている最中にアリス種の赤ちゃんゆっくり3匹を踏み潰してしまった。 「ああ゛ああ゛あああ゛あ゛!!アリズのあがぢゃんがあああああああああああ!!!」 「まりさをころせえええええええええええええええええ!!!」 「ゆっくりしね!!」 「だべええええええええええ!!来たらさざっぢゃうううううう!!!!」 怒声とともに飛び掛るゆっくりたち。しかし、チャリオット相手に敵うはずがない。 「おがーーーーーざあああん!!!いだいよおお!!!!」 ある子どもは親にほめられたいがためにまりさに突撃して、またある子どもは逃げるまりさに轢かれて、またある子どもは大人たちに下敷きにされて潰れる。 「あのれいむも子どもをころしたよ!!!」 とめどなくあふれる罵詈雑言。子を、親を呼ぶ悲鳴。怒りが引き起こす数々の惨劇。 繰り返される惨劇の連鎖はとどまることを知らない。 「ばじゅりぃぃぃいいいいいい!!!しんじゃだべえええええええ!!!」 「ゆ、ゆっゆっゆっゆっゆ・・・・ゆぅ?うっめ!めっちゃうめぇ!!」 その子どもは気が触れてしまったらしい。純真無垢な笑顔で母親の死肉を食い漁っていた。 「ゆゆ!!このこ、ははおやをたべてるよ!!ゆっくりおしおきしなぎゅおああああああああああああああああああああ!!!」 「みんなが!!みんながぁ!!わるいんだぜ・・・!!ゆっくりしてればいいのに!!ゆっくりできないならまりさがゆっくりさせてあげるよ!!」 そして狂気がゆっくりの里を飲み込んでいった・・・。 そんな地獄絵図を背に、俺は人里へと引き返した。 この悲劇はゆっくりだからこそ起きた間抜けな喜劇などではない。 これは教訓なのだ。寓話なのだ。 身を守るための道具であっても使い方を誤れば、その恐ろしさを失念すれば自らを傷つけることになる。 そして時には自分の大事な人々を傷つけることになる。 胸に手を当てて考えてみてほしい。人間だって似たような悲劇を何度も経験しているだろう? などと、一人格好良くナレーションをしながらゆっくり歩を進める俺だったが、ある重要な事実を思い出して駆け足になる。 「そういえば・・・紅魔館から依頼されたゆっくりボール・エレガント・ウォーカー~これで君も社交界の鼻~の納品日って明々後日だったな」 さて、ゆっくり急いで仕上げるか!! -----あとがき?----- 書き込めるってシアワセ・・・。 気がつけばゆっくりボールも4作目。 いつも突貫で仕上げるので誤字脱字が酷いぜ。 珍しく虐待分多め?でも、終盤のゆっくりは最早ゆっくりじゃねえ。 ゆっくりボール1号 理想 押さえつけることで成長抑制。しかもボールの中は安全だよ 現実 安全云々以前にボールの中で終わらない苦痛を味わい続ける ゆっくりボール2号 理想 これでゆっくりも人間と一緒にスポーツが楽しめるよ 現実 ボール代わりにされた挙句、発情してもイけない地獄 ゆっくりボール3号 理想 押さえつけることで子どもがあまり成長させずに小さいサイズで産ませる 現実 押さえつけられた影響で母が多大なストレスを受け、奇形の未熟児になる ゆっくりボール4号 理想 絶対防御。これならどんな外敵も安心だ 現実 無差別虐殺装置。しかも食料も取れない これらを製造しているゆっくり愛好家は間違いなくゆっくり脳。 彼は本当にゆっくり好きなんですが、ゆっくり脳なので作るものが全て裏目に出ているだけ。 しかも、ゆっくり脳で自分の都合の良いように解釈するので全く自重しない。 byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/3019.html
特に悪さをしていないゆっくりが酷い目にあいます 舞台は現代です 冬の夜は寒い。残業を終え、家に帰る途中に公園の自販機であったかいコーヒーを買って飲むことにした。 自販機から落ちてきた缶コーヒーを取り出す。どうでもいいけどあったかいどころじゃなくて熱すぎるなこれ。 火傷しそうなほどの熱を帯びた缶を手で転がし、近くのベンチに座る。そういやちと小腹も空いたなぁ。 寒空の下、クソ熱いコーヒーで一息ついていると、背後から人の声のような音が聞こえた。 「ゆ゛ぅぅ!おかーさん、さむいよぉぉ!」 「ゆっくりがまんしようね! ほら、すりすりすればあったかいよ!」 一体何事かと振り返るが誰もいない。おかしいなと思いつつふと視線を下に向けると、そこにはゆっくりの親子がいた。 大きさの違う二匹が頬を擦り合わせている。どちらもれいむ種だ。小さい方の大きさは野球のボールぐらい。 親と思われるサッカーボール大のゆっくりれいむの頭からは蔦が伸びており、そこには5匹の実ゆっくりが生っている。 どうやらにんっしんっ中らしい。実ゆっくりの形状からするとまりさ種だと思われるもう一匹の親は見当たらない。 少し興味がわいた俺はゆっくりの親子に尋ねてみることにした。 「ようれいむ、ゆっくりしていってね!」 「ゆゅっ!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 この言葉を言えばゆっくりは本能的に反応せざるをえなくなる。 寒さに震えていた子れいむも目を輝かせてこっちを向いて返事してきた。 「ゆっ!おにいさんはゆっくりできるひと?」 「どうだろうな、多分できるだろう。ところで、お前のつがいのまりさはどこにいるんだ?」 「ゆゆっ!?おにいさんどうしてれいむのだーりんがまりさだってわかったの!?」 「んー、まあ…そうね、超能力だ」 説明するのも面倒だ自分で考えやがれと思いながら親れいむを適当にあしらう。 それで納得したのか、親れいむはすごーい!と言ったあと急に暗い顔になった。 相変わらず感情の変化が激しいナマモノですこと。 「ゆぅ…まりさは…きのういなくなっちゃったんだよ…」 子れいむも顔を俯かせて沈んでいる。 話を聞くと、どうやら昨日家族で移動中、まりさは車に轢かれて死んだらしい。 目の前で親がグチャグチャに潰れたのを思い出したのか、子れいむは泣きだしてしまった。 親れいむはそんな子れいむをすーりすーりとあやす。 「なるほど、それは残念だったな」 「ゆぅ…しかたないよ」 伴侶を亡くして自分も辛いだろうに、子供に心配は駆けさせないようにと笑顔を見せる親れいむ。 そんな彼女達を見て、あることが思いついた。 「なぁれいむ、俺の家に来ないか?」 「ゆゅっ!?おにいさんのおうちに!?いいの!?」 「ああ、俺も丁度お前達のようなゆっくりが欲しかったところなんだ」 二匹を連れて帰宅。出迎えてくれる人もいない一人暮らしなので部屋の中は外と同じぐらい冷えている。 ストーブをつけて次第に部屋が暖かくなってくると、寒さで震えていたゆっくり親子は生き生きとし始めた。 「ゆっ!あったかいよ!ここをれいむたちのゆっくりぷれいすにしようね!」 と子れいむははしゃぐ。親れいむもそんな元気な我が子の姿を見てうれしいのかにこにこと微笑んでいる。 とりあえず部屋着に着替え、子れいむを流し台の蛇口の下に置いた。 何するの、という顔をした子れいむを水で洗う。 最初は驚いていた子れいむだったが、冷たい水が気持ちいいのか次第にとてもゆっくりした顔つきになっていった。 「ゆぅ!すっきりー!」 「ゆ!よかったね!おにいさん、ありがとう!」 見違えるほど綺麗になった子れいむの姿を見て、親れいむは俺にお礼を言ってきた。 そんな親れいむを蔦が傷つかないよう慎重に持ち上げ、にんっしんっゆっくり用の天井部分が開いているタイプの透明なケースに入れた。 にんっしんっ中のゆっくりは勢いよく跳び跳ねたりすることはないのでこれで十分なのだ。 「ゆゆっ!?うごけないよ!おにいさん、れいむをここからだしてね!」 「その中でゆっくりしていれば、赤ちゃん達が無事に生まれてくるんだよ」 「ゆっ!そうだったの!じゃあれいむはここでゆっくりするね!」 完全に俺を信頼しているのか、そんな適当な言葉にも親れいむはいとも簡単に騙された。 そう、俺は別にこいつらを飼おうなんて思っちゃいない。ただ単に小腹がすいていたから食べようと思って連れて帰ってきたのだ。 台所の引き出しからトングを取り出し、それで子れいむを掴んで持ち上げる。 「ゆー!おそらをとんでるみたーい!」 目をキラキラと輝かせながら呑気な事を言う子れいむ。これから何が起こるかわかっていないんだろうな。 右手でトングを持ったまま、左手でガスコンロのスイッチを捻る。ボッという音と共に青い火がコンロから噴き出した。 「ゆぅっ!?なにもないところからひさんがでたよ!」 悲惨? …あぁ、火さんか。何事かと思った。 今まで見たことがないのだろう、ガスコンロを上空から眺める子れいむはキラキラと目を輝かせている。 そんな子れいむの底面の皮をガスコンロの火に直接あてた。いわゆる直火焼きと言うやつである。 「ゆゆ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅ!?あじゅいよ゛おぉぉぉおぉおぉぉぉおおおぉぉぉぉぉ!!?」 一転して天国から地獄へ。つい先程まではとてもゆっくりした表情だったのが今は激痛に歪んでいる。 突然身に降りかかった出来事に、子れいむは困惑と苦痛が入り混じった顔をしている。 子れいむはもとより親れいむも何が起こったか理解できていないようだ。目をぱちくりさせている。 「ゆ゛あ゛ぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁ!!だすげでおがーーざぁぁぁぁぁぁん!!」 その声でようやく我に返ったのか、親れいむは目を見開いて大きく口を開けた。 「お゛に゛いざんな゛に゛じでるの゛おおぉぉぉおぉぉぉおおお!?」 「何って、見ての通りだよ。子れいむを焼いてるんだ」 「どぼじでぞんなごどずるの゛っ!!」 唾(っぽい砂糖水)をクリアケースにベタベタと振りかけるほどの勢いで親れいむは声を上げた。汚いなぁ。 何とか脱出しようとしているが、左右には身動きが取れず、身重のため飛び跳ねることが出来ないようだ。 それでも少しは体は動くらしく、ぐねぐねと体をひねろうとしたりしている。 が、その度に蔦に生っている実ゆっくり達がわさわさと揺れているのには気付いていないようだ。 「おいおい、あんまり動くと赤ちゃん達が落ちちゃうぞ」 子れいむの皮を焼きながら親れいむに言うと、ゆ゛っという声と共に体を動かすのをやめた。 自分が助けなければ可愛い子供が焼かれてしまう。かといって動けば可愛い赤ちゃん達が未熟なまま落ちて死んでしまう。 といったところだろうか、親れいむは何とも複雑な顔でオロオロしている。 その間にも俺は子れいむの皮をどんどんと焼いていく。 焼き過ぎず丁寧にこんがりと底面を焼き終わったら、次はその他の部分も次々と焦がしていく。 「ゆ゛あ゛あぁああああぁぁぁぁぁぁ!!お゛がぁぁざんどぼじでだすげでくれ゛ないの゛おおぉぉぉぉぉぉぉ!?」 流石にこの音量は近所迷惑になりそうだな。 というわけで次は口の部分を焼くことにした。子れいむの顔面を火に近づける。 「やべでっ、ゆ゛っぐりじでいっでよっ…ゆ゛びいぃぃぃいぃいぃぃぃいぃぃぃぃ!!?」 口を火で炙り、接着する。これでもう大きな声を出されることは無くなった。 続けて両目を焼き、そして全身を余すところなく焦がす。 完全には口が塞がっていないようで、時々ぷひゅ、ぷひゅ、という音が子れいむから聞こえてくる。 喋ろうとしているんだろうが、僅かに空いた口の隙間から空気が漏れているだけのようだ。 ゆっくりゆっくりと時間をかけて子れいむを炙る。 「やべでぇぇぇぇぇ!!れいぶのこどもをいじめないでええぇぇぇえぇぇぇえ!!」 その様子を見ていた親れいむが箱の中から懇願してきた。天井が開いてるから防音出来ないのがこのタイプの透明箱の難点だな。 当然無視して子れいむを焼き続ける。そうこうしているうちに子れいむが完全に焼きあがった。 もちもちとしていた白い肌は、こんがり美味しそうな褐色に変わっている。上手に焼けましたー! ピクピクと痙攣しているところをみると、まだ死んではいない。まあそうなるように調節したんだけどね。 とはいえ口はないから喋れないし、目もないから何も見えない、底面どころか体全てが焼かれているので全く動くことも出来ない。 そんな焼き子れいむを皿に乗せ、親れいむの入っている透明な箱の前に置く。これで一品完成だ。 「あ゛あ゛あぁあぁあぁぁぁぁ!!?でいぶのがわい゛い゛ごどもがああぁぁあぁぁぁぁ!!」 変わり果てたわが子の姿を見て、ダボダボと滝のように涙(っぽい砂糖水)を流す親れいむ。 近付くと、彼女は鬼のような形相でこちらを睨みつけてきた。おお、こわいこわい。 「れ゛いぶをがえじでっ!お゛に゛いざんはゆっぐりできない゛よっ!」 「ははは、かもな」 蔦に触れないよう、両手を親れいむの頭に乗せ、そして一気に体重を乗せた。 丁度親れいむを上から押し潰すような感じである。 「ゆ゛ぎぎぎいぃぃぃぃいぃぃぃぃぃいいいぃ!?」 突然の圧迫に親れいむは体をへこませて苦しそうにうめく。 すると、蔦に生っている実ゆっくり達が物凄い勢いで成長し始めた。みるみるうちに体が大きくなり、張りが出てくる。 親ゆっくりの体を押さえつけることによって強制的に餡子を蔦へと供給し、実ゆっくりを急成長させることができるのだ。 野生でも植物型にんっしんっ中の親ゆっくりが大きな石に押し潰された時などに見られる現象である。 やがて一匹、また一匹と大きくなった実ゆっくりは次々と地面に落ちて赤ゆっくりとなっていった。 「「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」」 5匹の健康な赤ゆっくり達は母親に向かって生まれて最初のあいさつをした。 きっと最高のゆっくりしていってね!を返してくれるに違いないとでも思っているのだろう、赤ゆっくり達の顔は期待に満ちている。 「ゆ゛っ…おぢひちゃんたち…はや゛く…ここからにげ……て…」 体内の餡子が急激に減った親れいむは、息も絶え絶えに生まれてきた赤ちゃん達にここから逃げろと伝える。 母から帰ってきた言葉は彼女達の思いもよらない物だったらしく、赤ゆっくり達はショックを受けた顔になった。 「どうちてしょんにゃこちょいうのぉぉぉ!?」 「まりしゃ、おきゃーしゃんとしゅりしゅりしちゃいよー!」 Д<←こんな顔して透明な箱にまとわりつく赤ゆっくり達。中には泣いてるやつもいるな。 そんな赤ゆっくり達をボウルに入れ、その上から白ゴマをまぶす。 「ゆっ!なにきゃおちてきちゃよ!」 「ゆっくちたべりゅよ!むーちゃむーちゃ、しあわしぇー!」 「とっちぇもおいちいね!」 おいおい、できればゴマは食べないでくれよ。赤ゆっくり達が食べるだろうことも考えて少々多めにゴマを振りかける。 生まれたばかりの赤ゆっくり達の餅肌にゴマがべったりとくっついた。これで下準備は完成。 ボウルを持ち上げ、菜箸を使って一匹の赤まりさを熱しておいた油の中へと入れる。 「ゆー!おしょりゃを…ゆびゅゅぅぅうぅうぅぅぅぅぅ!?」 ジュウっという小気味良い音と共に物言わぬ上げ饅頭となる赤まりさ。その様子を見た親れいむは白目を剥いて気絶してしまった。 残りの4匹は何が起こったのかわからないのか、どうしたんだろうという顔をしている。 次はたっぷりゴマのついた赤れいむを投入した。 「ゆっ!れいみゅおしょりゃ…あ゛じゅい゛いぃいぃいぃぃぃぃぃいいぃぃぃぃ!!?」 姉妹の悲鳴を聞き、漸く身の危険を感じたらしい。残った3匹はガタガタと震え始めた。 「ゆ゛え゛ーーーん!!きょわいよ゛おぉぉぉぉぉぉぉ!!」 「やめちぇにぇ!こっちにこにゃいでにぇ!」 「たしゅけちぇおきゃーーしゃぁぁぁぁぁん!」 勿論手を止めるつもりはない。一匹、また一匹と次々油の中へ投下していく。 5匹全部を入れた後、しばらく低温で揚げ続けてキツネ色になったぐらいで取り出し、焼き子れいむを乗せた皿に盛り付けた。 二品目、ゴマ赤ゆっくり団子だ。美味しそうに出来た。早速食べる事にしよう。 テーブルに座り、まずは焼き子れいむをいただく。 野球ボールほどのサイズのそれの左右を掴み、真中から二つに割る。 出来てから少し時間がたってしまっているが、中身はまだあつあつで湯気が出てきそうなほどだ。 これはまだ子れいむが生きていたから、時間を置いていても熱を保っていたのだ。さすがに真っ二つに裂けた今は死んでいるが。 断面からまずは一口、口に含んだ。刹那、口の中に広がる餡子の甘味と皮の旨み。 カリッと香ばしい皮の表面と、それにその下にある皮のもちもちっとした触感、さらに適度な苦痛によって洗練された餡子が見事に調和している。 そして柔らかい食感の中でも一部分だけひときわもっちりしたものがある。これはゆっくりの目、白玉だ。 これもまた餡子との相性は抜群である。 「これは美味い!やっぱりゆっくりは最高だ!」 続けてゴマ赤ゆっくり団子を一つ、一口で食べた。 サクッとした触感と、油の染みた赤ゆっくり独特の柔らかくも弾力性のある皮。それを噛むたびにゴマの香りが口の中に充満する。 そして何といってもやはり生まれたての天然赤ゆっくりの餡子は素晴らしい。しっとりとしていてかつ鮮度がいい。 こちらも文句なしの出来だ。濃過ぎず薄過ぎずの味で何個でも食べられそうだ。 うおォン、俺はまるで人間火力発電所だ!とでもいうように次々と調理されたゆっくり達を口に含んでいく。 焼き子れいむも全て食べ終え、残るゴマ団子もあと一つとなってしまった。流石に結構な量があったので腹も膨れたな。 と思っていると、何やらキッチンの方から声が聞こえてきた。 「ゆ゛ぅ…でいぶの…がわい…いっ……」 っと、そういえば忘れていたな。どうやら親れいむが目を覚ましたらしい。 成体ゆっくり、特に親ほどにもなると餡子が劣化しているせいかそれほど美味しくはない。 そもそももうお腹も膨れたので今は親れいむを食べる気はない。 ならどうするか。決まっている。 「生ゴミは処分しないとな」 俺は虚ろな目をしている親れいむを箱から取り出し、スーパーのビニール袋に入れて固く口を縛った。 そしてそのまま何度も踏みつける。袋越しに弾力が伝わって来てこれがなかなか気持ちいい。 しばらく踏み続けていると、抵抗力が無くなって皮が破れ、餡子も漏れ始めたようだ。袋が内側から黒く染まってきた。 「も゛っど……ゆっぐりした…かっ…た……」 ピクリとも動かなくなった黒い餡子まみれのビニール袋をゴミ箱に捨てる。 親れいむを処分し終えた俺は、残っている最後の1個のゴマ団子を一口で食べた。 サクッという音と共に再び口内にゴマの風味と餡子の甘味が広がった。 うーん、デリシャス。これなら毎日でも食べたいね。 甘いもの食べて少しは疲れが取れたような気もするし、明日も頑張ろう。 終わり
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/3052.html
※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ありすを洗浄してみた。 ゆっくり石切 ありすとまりさの仲直り 赤ゆっくりとらっぴんぐ ゆねくどーと ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1~ ※注意事項 まず、上掲の作成物リストを見てください。 見渡す限り地雷原ですね。 なので、必然的にこのSSも地雷です。 では、地雷原に踏み込んで謙虚ゲージを溜めたい人のみこの先へどうぞ。 _______________________________________________ 弥生、三月。 朗らかな陽射しが大地にあまねく生命を祝福する、緑の季節がまた巡り来た。 「春ですよー!」 高らかに歌声を響かせる春告精が誘うのは、西からの柔らかい風と、その風が伝える優しく力強い春の息吹。 野山を鎖す白い雪は足早にどこかへと消え去って、大地はモノトーンから草花の鮮やかな彩へとその装いを変えている。 その多様な彩の合間に目を配れば、冬の厳しい環境を潜り抜けて春の恵みにありつくことが出来た多くの命の歓喜の様子と、 余裕を得た彼らが新たに生み出した真新しい命を見つけることもできただろう。 「むーしゃむーしゃ!」 「むーしゃむーしゃ!」 遠く妖怪の山にまで連なる広大な山地の一角、杉林の斜面。 ここにも一組、生まれて始めての冬をなんとかやり過ごした一組の生命が早速がつがつと集めてきた昆虫や草花を頬張っていた。 草木は枯れ果て、昆虫も姿を消す冬場はゆっくりにとって忍耐に次ぐ忍耐の季節だ。備蓄食料の在庫管理を怠って、敢え無く おうちの中での餓死を迎える家族の存在もそう珍しいことではない。 だから、そうした食事制限の一切から解放される春の訪れはとても幸せであるもののはずだった。 「むーしゃむーしゃ、へっくちょん!」 「むーしゃむーしゃ、はっくちょん!」 だが、斜面に掘り抜かれたおうちの奥底で備蓄の残余を食い尽くす勢いで食料に向かう二匹には何か、ゆっくりがゆっくりで あるために重要不可欠なものが足りない。 足りないだけでなく、語尾に余分なものがついていた。 「ゆゆっ。おかしいよれいむ! しあわせー!なごはんさんなのに、おあじがぜんぜんしないよ! へっくちょん!」 「ゆゆっ!? おかしいねまりさ! しあわせー!なごはんさんなのに、れいむもおあじがしないよ! はっくちょん!」 口に含んだご飯のかけらを飛ばしながら、ぎゃあぎゃあ騒々しく言い交わす二匹。実にゆっくりできていない。 そう、二匹に足りないのは「しあわせー!」だ。 腹いっぱい、おいしいごはんを食べているはずなのに、何故かしあわせー!を感じない。 むーしゃむーしゃをいくらしても、しあわせー!の代わりに出てくるのはゆっくりできないくしゃみばかりなのだ。 「「これじゃむーしゃむーしゃしあわせー!できないよ! ぷんぷん、ぷく……へっくちょん!!」」 誰が悪いのか、なんでくしゃみが止まらないのか。 ここにいるのはれいむとまりさの二匹だけなのだから、向ける相手は勿論どこにもいない。 とにかくやり場のないゆっくりできない気持ちを表現しようと二匹は「ぷんぷん、ぷくー!」としてみようとしたが、 頬を揃ってぷっくり膨らませたところでくしゃみが止まるわけでもなく。 吸い込んだ空気を残らず吐き出し、二匹は少し困った顔をお互い相手に向け合った。 「れいむ! まりさはかぜさんかもしれないよ! へっくちょん!」 「まりさ! れいむもかぜさんかもしれないね! はっくちょん!」 馬鹿は風邪を引かないというけれど、ゆっくりだって風邪を引くものらしい。 そういえば、あんまり気にしていなかったけれどどちらも少し涙っぽい目をしているようだ。 実にゆっくりとした感覚でようやく自分と相手の身体の異常を感知し、二匹は「ゆんっ!」と揃って頷いた。 「「おねつをたしかめようね! すーり、すーり!」」 わざわざそう宣言して、二匹はお互いぴったりすりすりと身体を寄せ合う。 といっても、親愛の表現や繁殖行為と違って、すり合わせるのはおでことおでこ。 難しい顔をつき合わせて「ゆゆゆ……」と唸り、額を突きあわせること数秒間。 「おねつはないみたいだね! へっくちょん!」 「じゃあかぜさんじゃないね! はっくちょん!」 すっと身を離した二匹は一瞬ぱぁっと笑顔を咲かせ、でも流石に直後のくしゃみに何にも問題が解決していないことに気付いたらしい。 すぐに顔を曇らせて、「ゆぅぅん」と慰めあうように身をすり合わせた。 『はーりゅでーしゅよー♪』 本当なら嬉しいはずの、春の訪れを告げるそんな声も今日のところはちっとも心が躍らない。 ごはんはおあじがしなくて、だからいっぱいたべてもおいしくなくて、おなかがいっぱいになるだけではあんまりゆっくりできなくて。 風邪なら、おなかいっぱい食べていたらその内治ってしまうけれど、風邪でないなら治し方だってわからない。 さっきの呼び声も、なんだかちょっとゆっくりできない感じがした。 空を飛んでいるはるさんは一人だけのはずなのに変に重なって聞こえたし……おみみも少し、おかしくなっているのかもしれない。 おうちの外に見える世界はとーっても蒼く晴れ渡っているけれど、二匹の心の中はどんより分厚い雲で覆われて、しあわせのおひさま なんてほんの少しだって目にすることはできなさそうだった。 というかそろそろ、二匹の心の雨雲からおめめを抜けて大粒の雨が降り出しそうな。 「ゆう、こういうときは……」 涙目まりさはどうしたらいいか考える。 これが何なのか、どうしたらいいか、まりさとれいむにはわからない。でも、物知りのぱちゅりーなら知っているかもしれない。 そうだ、物知りのぱちゅりーは色々まりさやれいむが知らないことを知っている。この間だって言っていた。 はるさんはとってもゆっくりできるけど、ゆっくりできないこともあるって。 『はーりゅでーしゅよー♪』 ゆっくりできなくなったのは、春さんが来てからすぐじゃなくて、このお声が重なって聞こえるようになってからのことで…… あ、ちょっと待て。このお話はなにか関係あるような気がしてきた。 ……ええと、それはなんだっけ? 「……そうだ! ぱちゅりーが、はるさんのあいだはかふんしょうさんになることがあるかもしれないっていってたよ!」 「ゆゆっ。かふんしょうさん?」 思い出した! まりさが狭いおうちの中でぴょこんと飛び上がって喜ぶと、れいむがびっくりした顔でずるずるっと反対側の壁までずり下がった。 まりさはぱちゅりーのお話を知っていて、れいむはそのお話を全然知らない。 何故って、冬篭りを終えて無事春を迎えた群れのみんなが初めて広場に集まった時、年長さんのぱちゅりーがまりさたちみたいな 初めて春を迎えるゆっくりたちに色々春の過ごし方を教えてくれたのに、れいむは陽気に中てられてゆぅゆぅ寝息を立てていたもの。 「ゆゆっ。そっか! れいむあのときすーやすーやしてたもんね! へっくちょん!」 「あのときっていつかわからないよ。ゆっくりせつめいしてね! はっくちょん!」 少し、得意げな顔でふんぞり返ったまりさにれいむは気分を害したらしい。 ぷくー、と膨れる番の姿にまりさは楽しそうにくすくすと笑って、でもそれ以上は意地悪せずに素直に教えてあげることにした。 「ぱちゅりーはおはなさんがとってもゆっくりできているときに、かふんさんがいっぱいとびだすと、ゆっくりかふんしょうになるって いってたよ!」 花粉症になると、匂いがわからなくなったり、味がわからなくなったり、くしゃみが出たり、涙が出たりするらしい。 それって風邪さんとどう違うの?って質問も当然出たけれど、そこはぱちゅりーも上手く説明はしきらない様子で。 『むきゅ、それはほんとうにかふんしょうさんになっちゃったらわかるわ。とにかく――しちゃだめよ』 なんて誤魔化していたのも、まりさはついでに思い出した。 「……ゆぅ。そういえば、ほかのせつめいもそんなかんじでおわっちゃったようなきがするよ……っくちゅん!」 ぱちゅりーは確かに物知りだけど、あまりその知識は役に立たないような。 そんなことに思い至って、まりさは小さめの溜息を吐いた。うん、ぱちゅりーを頼りにするのは少しだけ考え直したほうがよさそうだ。 もっとも、その場にいたけど全く話を聞いてなかったれいむは全く違う感想を抱いたらしい。 「じゃあ、いまはおはなさんはゆっくりできてるんだね! それはとってもゆっくりしてるよ!」 ゆっくりしているのは、いいことだ。 それがおはなさんだって、まりさやれいむに食べられるむしさんだって、ゆっくりしている時は邪魔しちゃいけない。 それでまりさやれいむたちが少しゆっくりを我慢しなくちゃいけないとしても、他人のゆっくりを台無しにするのはとっても ゆっくりできないことだった。 そんな純粋なれいむの喜びには、まりさとしても少しも異論はない。 ――とてもたいせつな何かを忘れてしまっているような気が、ほんの少しだけしたけれど。 でも、そんなの、思い出せないならどうでもいいことなんじゃないだろうか。 「「おはなさん、かふんさん、はるさん、ゆっくりしていってね……へっくちょん!」」 だから、まりさはそれ以上考えなかった。れいむはもとより知らないのだから、何かを思うこともなかった。 とにかく自分のゆっくりは、後回しだ。かふんさんが思う存分ゆっくりしたら、自分もその後でゆっくりできるはずだから。 『はーりゅでーしゅよー♪』 まりさとれいむが春と野山の草花に向けて投げかけた心からの祝福に応えるように、またおうちの外からそんな声がやっぱり 幾重にも重なりあって聞こえた。 二匹はそれを春からの返事なのだろうと、漠然と信じた。 もちろん春という季節が、なにがしかの言葉を紡ぐことなんてありえないのだけれど。 「れいむ。はるさん、とってもゆっくりしてるよ!」 「まりさ。はるさんにもういっかいごあいさつしようね!」 しかし、信じたれいむとまりさは何とかして春の顔を見たくなった。 見て、きちんと笑顔で挨拶に答えてあげたくなった。 だからいそいそとおうちの玄関まで這い出して、もう一度、お花さんにも負けない満面の笑みを咲かせてお決まりの挨拶を投げ返す。 「「ゆっくりしていって……ゆげぇ!?」」 ……投げ返す、つもりだったのだけど。 その挨拶半ばにして、お外を眺め渡した二匹の顔が奇妙な声と共に歪んだ。それはもう、傍から見ていてこっけいなほどに。 どう見てもゆっくりできていない顔立ちを見せて、二匹はその場で凍り付いてしまった。 『ゆーっきゅり、しちぇいっちぇねーー!』 おうちをぐるりと取り巻く『春』は、愕然としたままのれいむとまりさに向けて確かに言葉を返した。 驚愕に揺れる二匹の目にもそれらは確かにとってもゆっくりとした笑顔で咲き乱れていた。 ……ただ、その『春』たちが咲き乱れている場所が、失望だったり絶望だったり諦観だったり逃避だったり、とかくゆっくりには 程遠い顔をした群れのゆっくりたちの頭に生えた茎の上だったりするのだが。 『はーりゅでーしゅよー!』 みんなの頭に鈴生りに生る『春』は、眼下の親の悲歎なんか気付きもしない様子で愛らしい声を揃えて春を謳う。 その頭に被るのは、一様におそろいの三角帽子。親の種類なんてまるで関係ない。 それは形も違えば色も違う。赤ちゃんたちのお帽子は、つばのない白い三角帽子に大きな赤いリボンが付いている。 (『かふんしょうさんにかかったら、はるですよー、っておこえがきこえてるあいだはおうちをとじまりしておそとにでちゃだめよ』) ……そういえば。 目にしたものの衝撃から立ち直らないままのまりさは、ようやくのことであの日ぱちぇりーが教えてくれたことの続きがどんなもの だったかを思い出していた。 (『そうしないと、からだにたまったかふんさんのせいではるさんのあかちゃんができちゃうから、きをつけてね』) そうだ。ぱちゅりーは『はるさんのあかちゃん』ができるといっていたんだ。 教えをぼんやりと思い出すうちに、頭頂部のむずむずとした痒みと、身体からどんどん餡子が抜けていく感覚が同時にまりさを襲った。 ここまで来たらさすがに、まりさの頭でも深く考えなくたって分かる。 「どおじでごんなごどになっでるの……?」 それでも自分の頭を確認するのが怖くて、ほんのわずかばかりの期待を込めてまりさは隣のれいむの方をちらりと見た。 「「……ゆげげっ」」 ちらりと見て、やっぱりこっちを縋るような目で見ているれいむと視線が衝突して、そのままお互いの頭の上へと視界を移動させて、 それから同時に小さな悲鳴と少量の餡子を口から吐き出した。 二匹の期待も空しく、真っ白な雲が漂うお空を背景にしてすらりと伸びた緑の茎。 そこに鈴生りに生るのはれいむともまりさとも形も違えば色も違う小さな赤ちゃん、三匹ずつ。 未だ目覚めぬその小さな赤ちゃんたちのお帽子は、つばのない白い三角帽子に大きな赤いリボンが付いている。 つまり、群れのみんなが浮かない表情で見上げている赤ちゃんたちと全く同じ種類の、ゆっくりの赤ちゃん。 極めつけは、この子達の背に生えた昆虫のような羽だ。こんなもの、この群れのゆっくりには一匹だって生えていないのに。 どうしてこんな事にと聞いても応えてくれそうな相手はいない。 よく見ると、今のこのことお外に出ていたのは自分と同じで春を迎えたのは生まれて始めての若いゆっくりしかいないようだったから。 つまり、大人のいうことをきちんと聞いていなかったお子様ばかりだったということで――まりさはこれからはきちんと、年を取った ゆっくりの言うことは聞いておこうと心に決めた。 ……それは今この場の問題を解決するには遅すぎる決意だったけれど、これからのゆん生にはとても大切なことではあるはずだ。 特に、そう。たとえば望まずして出来てしまった子の育児とかのために。 「ゅっ……」 「……ゅきゅっ……」 せっかくの陽気だというのに、『これから』を想像してげっそり疲れきってしまったまりさとれいむが見上げる先。 普通のにんっしんっならありえない速さでゆっくりとしての形を成してゆく赤ちゃんたちが、早くもごにょごにょと意味を成さない 音の羅列を口から漏らし始めている。 実際に茎から生れ落ちるのはまだ先のことだろうけど、この分なら目を見開き元気な挨拶を『両親』に向けて放つのは遠くない。 「……れいむ。ふゆごもりようのごはん、まだのこってたっけ」 「うん、まだのこってるよ……」 感情の篭らないぼそぼそとしたまりさの問いかけに、応えるれいむの声も似たようなもの。 それを耳にしたまりさは「そう、よかった」と呟いて、別に今更残っていなくても大丈夫かと思いなおした。 かふんしょうさんで赤ちゃんが出来てしまった以上は、今更お外に出る制限なんてないのだから。 お外にさえ出てよいのなら、ごはんは幾らでも集められる。季節はもう、寒くて野山にごはんの乏しい冬ではないのだし。 「「「「「「ゅきゅ……ゅきゅっ。ゆゆっ!?」」」」」」 そう。それはとても忌々しいことではあるのだけれど。 陰鬱な想いを消せないままに、まりさは頭上にその声を聞いた。 「「「「「「おきゃーしゃん? おきゃーしゃん、ゆっきゅりしちぇいってにぇ!」」」」」」 そう。忌々しいことに、春はまだ、目覚めたばっかりなのだ。 * * * 「おお、子宝子宝。おつむの中身同様、春めいたことで実に結構な騒ぎですね」 春だというのに暗雲たちこめるゆっくりプレイスを見下ろす木の枝で、一匹のきめぇ丸が嘲笑とも苦笑ともつかない笑いを 右往左往するゆっくり達に向けている。 いや、ひょっとするとそれは憐憫、もしくは共感に類する笑みだったのだろうか。 覇気のない笑顔を浮かべるきめぇ丸の頭の上には、ごたぶんにもれず白い帽子を被った赤ちゃんを実らせた茎が伸びていたのだから。 「「「ゆーゆゆー♪」」」 きめぇ丸は知っている。 今頭の上で楽しげに歌声を合わせているこの子達は、春の終わりには前触れもなく風に誘われるようにしていなくなってしまうことを。 人里や多くのゆっくりの間では、初春に突然大量発生し、初夏までにいっせいにどこかに姿を消してしまうと思われている準希少種、 ゆっくりりりー。 それがこの赤ちゃんたちの名前だった。 彼女たちは背中に生えた透き通った翅に五月の風をいっぱいに受けて、どこか根付くべき土地を求めて旅立ってしまうのだ。 そしていつかどこかの大地にたどり着き、そこに根を下ろし、雨にも溶けず鳥獣や昆虫にも食われずに済んだ一握りの子供だけが、 ゆ木となって森を作るという。 そうしてゆ木となったりりーほわいとたちは、歌うことなく、しゃべることすらなく春までひたすらに静かに過ごす。 実は付けないがゆっくりの好む味の葉を多く大地に落とす森として、多くのゆっくりを惹きつける。 「おお……おろかおろか」 「「「ゆっ♪ ゆっ♪」」」 やはりこの年に成体になったばかりの若いゆっくりとして、うかつにもその罠に引っかかってしまったきめぇ丸は頭上のわが子を リズミカルに揺らしながら、今度ははっきりとした自嘲の笑いを口元に浮かべた。 そう、あまあまな落ち葉こそがりりーのゆ木が集まるこの森の罠だ。 春に枝いっぱいの白百合に似た花を咲かせ、多くの花粉を飛ばし――落ち葉の味に惹かれてやってきたゆっくり達に、わが子を 数多宿らせるための。 きめぇ丸は同族に教わった知識をなぞって軽いため息をつき、湿度の高い視線を背後に聳える木の幹へと向けた。 上空から見れば枝葉にすっぽり覆い隠されたその部分の樹皮に、顔のような凹凸が隠されていることにどうしていま少しばかり 早く気づくことができなかったのだろう 「はーるでーすよー♪ ゆっくり、していってね♪」 「おお、拒絶拒絶。子供を育てるということまで含めて、悉く拒絶させていただきます」 その顔のような凹凸――ゆ木となったりりーの成体の歌声に、きめぇ丸は酷く嫌そうな口ぶりで応じた。 そして、なんの躊躇もなく茎を赤ちゃんごと幹、りりーの顔のある部分のすぐ傍へと叩き付ける。 声もなく弾ける、三匹の赤ちゃんゆっくり。飛散した微量の餡子が、りりーの顔をわずかに汚した。 りりーはわが子の無残な末路に一瞬不満そうに目を細めて――しかしすぐに、何事もなかったかのように花のような笑みを咲かす。 「はーるでーすよー♪」 「おお、非情非情。まああれだけ実が生っていれば十分なのでしょうかね……」 不本意に生まれた子だ。育てず、異物として排除するゆっくりはこのきめぇ丸に限ったことではない。 だからこそ、膨大な花粉を飛ばし、数多の子供を作らせる。 別に気にする必要も感じないのだろう、無邪気なゆ木りりーの歌声にきめぇ丸こそ呆れた、いささか非難を含む目を声の主へと向けた。 地上から聞こえるのは、多くの嘆きと幾らかの怒り、そしてたくさんの幼過ぎる歌声と、末期の言葉。 理不尽な子宝を得て育てようと決意するもの、間引くことに決したもの、つがいや姉妹間で意見が纏まらず争いとなったもの、 春から若ゆっくりの間に――多くはこの森に対する無知、油断による――不幸が齎されたゆっくりプレイスはいつも以上に賑やかだ。 そんなゆっくりプレイスの喧騒と、ゆ木りりーの歌声とを聞きながら、きめぇ丸はふわりと空へと飛び上がる。 花粉の季節そのものは、もうじき一応の収まりを見せるはずだ。収まったら、またここに来よう。 きっとその頃には、ある程度育った子供とその若い親を中心にもっと素敵で、悲劇的な光景が幾つも繰り広げられているだろうから。 地上を一瞥したきめぇ丸は、最後に心底からの笑いを見せた。 春が、赤ちゃんが、通常のゆっくりが言うようにひたすらゆっくりできる存在だというならば。 「おお、祝福祝福。赤ちゃんといっしょに、ゆっくりしていってね!」 地上で失意に打ちのめされる若いゆっくりたちに、それができないはずがないのだから。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/382.html
「おにーさんの赤ちゃん美味しかったよ! また食べさせてね!」 ……は? 朝けだるい目を擦りながら体を起こすと、目の前に突如いたゆっくりから訳のわからな いことを言われた。 いやそもそも飼った覚えのないゆっくりがいるのは置いておいて。 「オギャーッ! オギャーッ!」 その出っ張った腹の中にいるのはなんだ。 「……なんなんだお前?」 「ゆっ? れいむはれいむだよ! おにーさん赤ちゃんありがとう!」 ……。 「俺に子供なんていないんだが」 「ゆゆっ? でも赤ちゃんはいたよ? 美味しかったよ」 居たって言われてもなぁ……。 取りあえずゆっくりの口の中に手を突っ込んで大きく上に持ち上げた。 「あげぇあがっ!?」 えーと……。 「お、おにいじざんんんんんっ、ぐるじいよおおおっ!!」 んー……。 よく見えないので、さらに口を大きく開かせる。 「へぶう゛ぁっ!?」 口の角度が90度になったような気もするが、気にしないでおこう。 「オギャーッ! オギャーッ!」 おー……本当に赤ん坊がいるじゃないか……っていうかあんこが半分ぐらいになってる のは気のせいか? 消化出来ないもの飲み込んだから減ったんじゃないのか? 「オギャーッ! オギャーッ!」 赤ん坊はあんこの部屋で元気よく泣いている。 うーん……このバカどこから持ってきたんだろうか。 「あがぐげぇおごげがぼっ!!」 声にならないのに何かを喚いている饅頭。そもそも肺もないくせにどこから息出してい るんだ? 喋ろうとして舌がベロベロ動くのが鬱陶しいので、空いていた手で思いっきり引っ張っ てやった。 「げひっ!?」 あー静かになったなった。 「オギャーッ! オギャーッ!」 うーん泣き止まないな……。 俺は口から手を離す。開いた口は開きすぎて戻らなくなっていたが、それは後に置いて おこう。 「あぐ……がっ……」 ぷるぷるとゆっくりの体が震えている。それをさらに揺らしてみた。 ほーれ、落ち着いて落ち着いて。 「オギャーッ! オギャーっ……」 お、ちょっとマシになったか。 しばらくしていると、落ち着いてきたのか、ゆっくりの中から寝息が聞こえてきた。 あー焦った。これでおむつとかお腹が減っただったら俺にはどうしようもないからなぁ。 「ゆ、ゆくっ……」 ん? 聞こえた声にゆっくりを見ると、口がどうにか元通りになっていた。まだ完全に治って はいないのか、声はかなり擦れている。というか治るんだ、すげぇな。 「おに……なに……」 何するのって、そりゃ赤ちゃんの顔見てたんだよ。 「お前、この子どこから連れてきたんだよ」 「れいっ……おぼ……」 ち、使えないゆっくりブレインめ。 やっぱり警察に行くしかないなぁ、面倒なんだが。 「……ううっ……ぐずっ」 ん? ちょっとぐずりそうか? よいしょっと。 「ぴぎゃがっ!?」 あ、開きすぎたな。 口の角度は130度ぐらいになっている。さすがにもう戻らないだろう。 「……ぅぅ……」 ああよかった、収まった。 これはもう俺の手には負えないな、早く連れて行かないと。 もはや赤ちゃんのかごになったゆっくりを、俺は持ち上げようと……。 ……。 重いよっ! ゆっくりの体を大きくつねった。 「ひぃッ!」 口の中で空気の鳴る音がするも、気にしないで俺は運送方法を考えることにした。 もちろん取り出してそのまま警察に行くのもいいんだが……それだと俺が盗んだように も取れるだろうし。どうせなら「こんなゆっくりがいたんで連れてきました」的な方向で いきたい。 うーん……どうしようかなぁ……。 ……おっ。 俺の目に、部屋の隅に置いておいたパーツが目に入った。 そういえば暇つぶしにこんなの買ってたな。 ……よし、こうしよう。 俺はどうにかゆっくりを持ち上げると、そのままパーツの上に乗せた。 「ひぅっ!?」 また空気が鳴るも、今度は特に痛くない筈だ。 「お前ちょっと歩いてみろ」 そう声を掛けると、しばらくしてゆっくりは静かに前へと移動した。飛び跳ねず、地面 より平行に移動している。理屈はしらないが、これでゆっくりは思い描けばその通りに動 ける筈だ。 取り付けたパーツは、ゆっくりカー用のパーツだった。 ゆっくり乳母車の完成である。 「俺の言うとおりに動け、変な所に行こうとしたらもっと酷い目に遭わせるからな」 「……っ」 俺の言う事に答えるかのようにその場を小刻みに動くれいむ。 ……まぁ、どうせ。 警察行ったら処分されるだろうけどな。 飲み込んだ心の声は2度と思い出さず、俺はれいむを連れて、家を後にした。 後に、これがきっかけで自動で動くゆっくり乳母車の研究がどこかで進められたらしい けれど。 どうしても自由気ままに動くため、そのまま頓挫したらしい。 そのために何匹のゆっくりが破棄されたのかは、知られていない。 End スレで話題になっていたのでやってみた。 しかし即興だと駄目だね、ごめん。 それにしても口を130度ぐらいに無理矢理開かれているゆっくりって可愛くない? 目 を見開いて、ぷるぷる震えてて。 by 762 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1016.html
※俺設定注意 この世に飼いゆっくりという概念が誕生して暫くになる。 嘗てはただのお饅頭の代用品、くらいの扱いだったゆっくりは今や一ペットとしてある程度の需要を満たす存在となっている。 もちろん、それ以上にウザイ害獣、ムカつく街を歩く生ゴミといった捉え方をされているのも事実だが。 皆さんはペットショップに並ぶゆっくり達がどういう経緯を辿ってそこに居るのか不思議に思った事は無いだろうか? ああ、ちなみにここで例にするのは十個500円とかで投売りされている粗悪品ではなく、きちんとした飼いゆっくりの事だ。 彼女たちは生まれてから今まで、どのような教育を施されたのか気になる人もいるはずだ。 今回紹介するのは、そんな飼いゆっくりの教育法だ。とはいってもあくまで自己流。あんまり人にお勧めは出来ない。 とにかく普段俺がやっているような、飼いゆっくりを輩出できる方法を教えよう。 既にゆっくりを飼っていて、躾が難しいと感じている人にも良いかもしれない。 そうそう、言い忘れていたが『良い飼いゆっくり』を作り出すのにはそれなりの努力と犠牲が必要だ。 つまりペットショップに並ぶゆっくりの影ではそれになれなかったゆっくりが山ほど居るというのをお忘れ無きようお願いしたい。 ぶっちゃけた話、躾けの過程で死ぬゆっくりが大量に出るって言うことだ。 ゆっくりブリーディング さて、まずは躾を施す赤ゆっくりの、その仕入先を明かさねばなるまい。 巷で一般に言われているが、ゆっくりは親の餡子を元に子ゆっくりを成す。 つまり親の餡子=性質、性格、その他諸々を引き継ぐのだ。これをゆっくりの血統、即ち餡統と呼ぶ。 良い子の親からは良い子の赤ゆっくりが生まれ、ゲスからはゲスしか生まれない―――というのが、一般の通説である、らしい。 ブリーダーはそうやってより優良なゆっくりのみを引き継がせていく。 だが、これはあくまでゆっくりの質をより高めようとする場合に限る。 いくら多産なゆっくりとは言え、あまりにもポコスカ産ませると母体の影響もあるし、何より子供も粗雑なものしか生まれない。 優良餡統を引き継がせるゆっくりは、それこそコンクールにでも出すつもりでなければ滅多に作られないのだ。 早い話が、飼いゆっくりはそこら辺の野良の子供でも十分になりえる。 というわけで、俺はもっぱら赤ゆっくりの『仕入先』は近くの山や森を回るようにしている。 原価は0円なので非常に楽である。別に街の野良ゆを捕まえても良いのだが、少々性格が擦れすぎていて子供にも影響が出るのだ。 出来るならば人間の事を良く知らない山や森の奥深くに居るゆっくりがモアベターだ。 彼女たちは野良ゆに比べて、とにかく純真で無垢である。余計な混じりっ気がないぶん、子供も躾けやすい個体が多い。 「ゆゆゆ~♪ゆゆっゆゆ~♪」 基本的にゆっくりは日向ぼっこを好む。特に植物性にんっしんっをしている親ゆは、子供のためにも外に出たがる。 植物に似ている形態故なのだろうか、一部のゆっくりのように光合成をしているのではないかという一説もある。 まぁそんな事はさておき、往々にして森の中を探索するとこうやって外をうろついてるにんっしんっしたゆっくりに出合えるのだ。 「ゆっくりしていってね」 「ゆゆ!!ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!おにーさん、まりさたちになんのごよう?」 額に茎をぶら下げたれいむの隣には、その番であろうまりさが暢気に用事を聞いてくる。 この緊張感とか、警戒心の無さが野良ゆとは違う、野生のゆっくりの性質である。 思わず爪先を顔面にぶち込みたくなるが、そこは我慢。これから似たような番たちをまだまだ探し回らなくてはならないのだ。 体力は温存しておくに限る。 「ほい」 ブチッ 「ゆ?」 「ゆゆ?」 無造作に歩み寄り、れいむの茎を掴んで、引き千切る。この間実に2秒の出来事である。 この二匹はもう用済みだ。ぶち殺したい衝動に駆られるが、今日はそんな用事で森まで来たのではない。自重する。 くるっと振り返り、さっさと二匹から離れる。手に持った茎は、背中に背負った籠の中に放り込んでおいた。 「・・・・・・ゆっ、ゆゆ~~~~~~!!?」 「ま、まりざとれいぶのあがぢゃんどこ~~~~!!?」 後ろではようやく気付いたのか、間抜けな絶叫を上げる二匹の声が聞こえてきた。 いちいち子ゆっくりを失った程度で喧しいことだ。ちょっとすりすりすれば生まれるだろこんなもん。 まぁ明日くらいになればケロッと忘れてまた番二匹で盛っているのだ。何も問題は無い。 このような調子で、とにかくゆっくりの番を探し回っていく。 茎が生えていればそれをもぎり、生えていなければすりすりさせた後生えさせてもぎる。 単独で行動するゆっくりは珍しいので無駄足を踏むということ自体が少ない。あっという間に茎が集まっていく。 一組の番から何度も茎を採取しようとすると品質の劣化が起こるので、このような面倒な事をしているのだ。 「ゆああああぁぁ!!?れいむだぢのあがぢゃんがあああぁぁ!!!?」 「まっでね゛ー!?あがぢゃんだぢをもっでがないでねー!?わがらないよぉー!!?」 「やべでえええぇぇぇ!!!ありずだちのかわいいあがぢゃんがあああぁぁぁー!!!」 ・・・・・・・・・。 一つの茎からは少なくとも実ゆっくりが5つ、多ければ20以上も期待できる。今回は豊作だ。 一時間で採取した茎の数は20本、実ゆっくりの数は役300程度といった所か。 この程度の数を揃えなければ飼いゆっくりを出荷するなど土台無理な話だ。体力的にはこれが一番疲れる作業である。 さて、採取してきた茎及びそれに付いた実ゆっくりだが、これを育成しなければならない。 具体的に言えば砂糖水を入れた花瓶に茎を差し、栄養(?)を補給させるのだ。 ・・・・・・しかし、その前にやることが一つある。 実ゆっくりの時点で残留している、親ゆっくりの記憶除去である。 ゆっくりは親の餡子=記憶で作られているために、ある程度の記憶を引き継ぐことがある。 これが先述の餡統なのだが、それは良い意味で使われるとは限らない。 野生のゆっくりから生まれた子はある程度野生の常識を持ったまま生まれてしまうのである。 矯正は簡単だが、それよりかは記憶そのものが無い方が良い。 記憶除去に使う道具はただ一つ、塩水である。 濃度は低く抑え、0,5%から1%の塩水を使う。これ以上濃度が高いとただの虐殺になってしまうからだ。 方法は簡単なもので、砂糖水の変わりに塩水を吸わせる。これだけ。 例えばこの茎の一本は、ほんの少し前から塩水に差している。実ゆっくりはれいむ5、まりさ5だ。 茎の吸引力はそれなりのもので、2~3分もすればすぐに効果が現れてくる。 この茎ももうすぐ2分が経過しようとしている・・・・・・と思った矢先に、根元の子れいむが反応を始めた。 「ゆっきぃ!」 びくんと身体を震わせ、目から口から涎や涙を垂れ流している。 実はこの涙、塩水だ。実ゆっくりと言えどある程度の防御策は身につけているらしい。 そうこうしている内に、徐々に根元から先端まで塩水が行き渡っていく。 「ゆぴぃ!」 「ゆ゛ゆ゛っ」 「ゆっくぢ」 「ぐげぇ」 10匹が10匹、苦悶の表情を浮かべながら必死に身を捩っている。 そんなことをしても体の中を流れる塩水は止まらないけどね。 ゆっくりには刺激物は毒物として反応される。代表的なものは辛味である。 飼い始めたばかりの赤ゆっくりが間違えて唐辛子等を食べた結果、そのまま中身を吐きつくして死ぬというケースが毎年何百件か報告されている。 塩=塩辛いという刺激も、辛味ほどではないが立派に効果を発揮するのだ。 先ず実ゆっくりの体内に入った塩水は、循環し、隅々まで行き渡る。 この時点で先のように実ゆっくり達は泣くなどの防御行為で塩水を排出するが、それだけでは十分な量を排出する事は出来ない。 結果としてこのように、実ゆっくり達は謎の毒物=塩分に苦しめられることになるのだ。 塩分は餡子を蹂躙、その体構造を破壊する役割を持つ。 ここで一番の被害を受けるのが中枢餡――即ち、記憶を司る部位である。 実ゆっくりにしては過剰と言わざるを得ない塩分は、実ゆっくり達の少ない情報を破壊し尽くしていく。 つまり、親から受け継いだ大切な記憶の事だ。 「~~を~~せねばならない」と言った常識は勿論、もっと根幹の記憶等も破壊される。 例えば、当然の如く知っている筈の親の事が分からなくなる。 咀嚼中の「むしゃむしゃしあわせ」等の習性も無くなる(ただし、「ゆっくりしていってね」という挨拶だけは流石に抜けないが)。 それどころか同じ茎に実った他のゆっくり達を姉妹とすら認識できなるなるのだ。 これで何故か運動野とかはまるで無事なものなのだから不思議なものである。 まぁ便利だから活用させてもらっているが。 言ってみれば、ゆっくりの記憶のクリーニング作業だ。受け継がれてきた記憶を完全にリセットし、真っ白な状態にする。 こうなれば親が良餡統だろうと悪餡統だろうと関係ない。彼女たちは俺の命令以外の判断基準を持たなくなるのだ。 余談ではあるが、加工所で販売されている「未刷り込みゆっくり」も、これとほぼ同じ工程で製造されている。 と、根元から4番目に実った実れいむが急に黒ずみ出した。 これは単純に塩水に耐え切れなかった脆弱な個体なだけだ。50匹に一匹程度の確立で、偶にそういうものがいる。 良くある事だ、助けようとは考えない。 それに助けても、そういう個体は往々にして頭が悪く育てる価値が無いような悪辣な個体になる傾向にある。 ある意味これも選定作業なのだ。 他の茎も同じように塩水に差していく。 記憶の除去は大体10分もすれば完全に終わるので・・・・・・ここは念入りに一時間ほど苦しめよう。どうせ死にゃしないしね。 やがて塩水を吸ってビクビクと痙攣し始める実ゆっくり達。 時折発する悲鳴がいい感じにコーラスしている。癒されるなぁ。 たっぷり一時間経った後は、普通の砂糖水に移し変えてやる。 苦悶の表情から一転、すやすやと安らかに眠り始める実ゆっくり達。 虐待の時に見せる表情もいいけど、こういうのも悪くない、と思う。 今回塩水につけた段階で死んだのは、7匹。 先ほどの実れいむに、別の茎の実まりさ3、実れいむ3である。 今育成中の実ゆっくり達は他の種類も結構居るのだが、なぜかこの2種だけしか死ななかった。なぜだろう。 やっぱり生まれる数が多いと割合として良く死ぬのだろうか。 まぁこれから躾の過程にもこの二種には最も多く死んでもらうことになりそうだが。 さて、内約。 7匹数は減ったが、やはりまだ300程度。最終的には50ほどに絞ろうかと考えている。 最も多い種から、れいむ3割、まりさ3割、ありす2割、ぱちゅりー1割、その他(ちぇん、みょん等)が残りの一割か。 一般に希少種と言われているゆっくりは・・・・・・無し。 もし居たら躾にも気合が入っていたのだけどなぁ。残念。 それから三日後。 砂糖水の中に混ぜておいた成長促進及び抑制剤の効果によって実ゆっくり達はすくすくと成長を続けていた。ただし生まれ落ちない。 成長はするけど生まれ落ちる期間を指定出来ると言うのがこの薬品の強みである。 お陰で付きっ切りで見ゆっくりの世話を焼かなくても良いようになった。実にありがたい。 これを開発してくれた加工所研究部勤務の友人に感謝である。 今の内に茎を全て地下の育成部屋へと運び込む。部屋と言っても無茶苦茶広いが。 これから少なくとも亜成体となるまでの期間、実ゆっくり達には基本的にここで生活してもらう事となる。 一応床は芝生を植えつけ、溜め池、植木も完備、空調も自然のものを模しているのでそれほど窮屈には感じないはずだ。 普通のブリーダーはこんな部屋は使わずに独房みたいな部屋に監禁まがいの事をするのだが、そこは俺の趣味だ。 芝生の上に置かれた花瓶、そこに連なる300ものピンポン玉大の赤ゆっくり達。 なかなか壮観と言える。 薬の効果は今日中に切れるように調整しておいた。 つまり今日中に300匹の赤ゆが誕生することになるはずなのだが・・・・・・っと。 言い切らぬうちに、一匹の実ゆがプルプルと震え出した。 誕生の瞬間である。 プチッと微かな音を立てて、地面へと落下していく実まりさ、いや、赤まりさ。 着地の瞬間、ぷにゅりと身体を大きく変形させて衝撃を和らげる。 閉じていた目をゆっくりと開いて、生まれてはじめての産声を響かせるために大きく息を吸う。 「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」 はい、誕生おめでとう。300匹最初の赤ゆっくりは健康な赤まりさだ。 赤まりさの声が発破となったかのごとく、どんどん震え始める実ゆっくり。 一斉にゆっくりが落ちていく様は、早送りで木の実が落ちる風にどことなく似ている。 「ゆっくち!」 「ゆっくりしちぇいってね!!!」 「ゆぅ~!」 「ゆっきゅぃ、ゆっきゅぃ!」 「ゆっくちちていってね!!!」 「ゆっくりしていっちぇね!!!」 「ゆっくぃ!!ゆっくぃぃ!!!」 「ゆゆぅ~!」 「ゆっきゅちちちぇいっちぇにぇ!!!」 「ごゆるりと・・・・・・」 生まれた拍子に最初の挨拶をし、それを聞いた別固体が反応して挨拶をし返す。 そのような事がどんどん起こり、あっという間に部屋の中は騒がしくなった。 赤ゆっくりが2~3匹程度でゆんゆん言っているのは許容出来るが、流石にこれ程だと少々イラッとくる。 赤ゆっくりを踏み潰さないように、足で赤ゆを優しく退かしながら部屋の中を歩き回る。 そうして一匹一匹赤ゆの状態をチェックするのだ。 健康状態はどうか、欠損している部分は無いか、どのような性格をしているか・・・・・・ あまり厳しくチェックする必要はない。上から見下ろせば、問題があるような奴はむしろ目立つからだ。 そう、例えば今俺の目の前、二メートル前方の床にいる赤ゆっくりの一群。 その中の3匹の赤まりさが、1匹の赤れいむを囲んで突っ突き回している。 他の赤ゆっくりは気付かないのか怖いのか、その三匹を止める事は無いようだ。 突付き回されている赤れいむは涙を零して逃げ回っている。 「ゆっくち!ゆっくち!」 「ゆっゆゆぅ~♪」 「ゆっ!まりちゃはちゅよいんだよ!」 「ゆぴいいいいぃぃぃ!!!ゆうううぅぅぅぅ!!!」 いくら記憶をクリーニングしたところで、そのゆっくりが生来持っている気質は変えようが無い。 他者をゆっくりさせようと言う穏やかな気性を持ったゆっくりも居れば、どこまでも貪欲に己のゆっくりのみを追い求める者も居る。 これは良餡統・悪餡統に関わり無く、完全に不確定な要素でもって生まれてくるのだ。 エリートの子がどうしようもないボンクラだったり、野良の子が意外に良い性格だったりするのもこれが原因である。 「ゆっ?」 「ゆゆっ?」 「ゆっ!おちょらをとんでるみちゃい!」 「ゆぴいぃ!!ゆぴいいいいぃぃぃ・・・・・・・ゆぅ?」 赤まりさ三匹を摘み上げる。悪いがここで赤まりさ達のゆん生は終了だ。 生まれて早々いじめ紛いの事をするゆっくりはこれからどう育っても良い子にはならない。 そのまま赤まりさ達をポケットに入れる。少々騒いでいるが気にしない。こいつらにはまだ役に立ってもらう事がある。 追いかけられていた赤れいむは、不思議そうに周囲をキョロキョロと振り返っていた。 赤まりさ達以外にも、不自然な勢いですりすりを繰り返している赤ありす、他のゆっくりの飾りを奪い取ろうとしていた赤れいむ、 圧し掛かって相手をボロボロにしていた赤みょんなどを拾い上げる。 大体ここでは10匹程度がポケットに入ることになる。残りは290匹だ。 ・・・・・・と、ここで何か不自然な音を耳にした。 パン、パン、と、なにやらかんしゃく玉のような音が聞こえてくるのだ。 音のする方向へ振り向く。 「・・・・・・あれ?」 よくよく目を凝らしてみると、部屋の隅っこになにやら爆発している小さい玉っころが見えた。 それは黒い長髪を元気に揺らし、未成熟な羽を必死にパタつかせ・・・・・・って羽? もしや。俺の見間違いでなければ、このゆっくりは。 「うにゅ!うにゅ!」 うっくりうつほだった。通称ゆくう。 中身がイエローケーキだとか、ヌカ○ーラ・クアンタムとかで構成されていると専らの評判のゆっくり。 内容に相応しくその行動・性質も過激で、個体によっては巨大なキノコ雲を作り出すことも可能とか言われている厨ゆっくりだ。 何でそんな危なっかしいゆっくりがこんな所に・・・? もしかして、実ゆっくりのチェックをするときに見過ごしたのだろうか。 確かにれいむ種と似た黒い髪だし、リボンの色とか殆ど見ていなかったような気がする。 羽も丁度隠れるような角度で見ていたのかもしれない。 しまった。うっかりしていた。 茎を集めていた時はそれほど珍しいゆっくりには出会わなかった筈。 おそらくはチェンジリングの類だろう。 数万分の一以下の確立で、親のゆっくりとは異なった種のゆっくりが生まれることがある。 ゆっくりに存在するのかは分からないが、遺伝子の影響やらが関係しているらしい。隔世遺伝というやつか。 それにしても珍しい。ただのチェンジリングでさえ相当希少なのに、それもゆくうのチェンジリングだ。 俺自身はあまり信じていないが、チェンジリングの子は幸運を齎してくれるとか――こいつを育てる価値は、十分にある。 「おい」 「うにゅ?」 呼びかける。振り向くゆくう。 まだ充分に羽を使って飛べないらしく、ぴょーんぴょーんと緩慢かつふわふわした跳ね方でこちらにやってくる。 生まれたばかりだと言うのにやたらめったら元気な奴だ。ゆくうと視線を合わせるためにしゃがみ込む。 手を差し伸べて、ゆくうが手の平に乗っかれるようにしてやる。 普通の赤ゆっくりなら、こういう動作をされれば一も二も無く喜んで飛び乗ってくる筈――― 「うにゅーーーーっ!!!」 ぽこん。 ―――ゆくうは俺の手の平に体当たりを仕掛けてきた。 全く以って痛くないが、その感触がある事を思い出させてくれた。 ああ。コイツ、普通の赤ゆっくりじゃないんだっけ。 ゆくう種は体力面では通常のゆっくりを大きく上回るが、おつむの方はそれほどよろしくない。 それどころか、かなりの⑨なのだ。それこそちるの種級である。 コイツはきっちり躾をしなくてはならないな。少なくとも物忘れが激しい分、じっくりと教え込んでいかねばなるまい。 そう決意して、ゆくうの前で人差し指と親指を使って円を作る。 「うにゅ?・・・・・・ふーj」 べちんっ 「う゛に゛ゅっ!!?」 何やら言いかけたゆくうの顔面に、デコピンがヒットする。 顔面を陥没させて転げまわるゆくう。ふむ、結構丈夫だな。赤ゆの割には強めに打ったんだが。 今の状態のゆくうは三歩歩けば何もかもを忘れそうなので問題ない。痛みに転げまわっている間に離れるとしよう。 一通り部屋の中を歩き回ったが、それほど問題のある奴は見つけられなかった。 問題のある10匹の赤ゆっくりは俺のポケットの中でいつの間にか眠っている。 よし、準備完了。そろそろ始めるか。 部屋の中央に移動し、赤ゆっくり達の注目を集められるようにしてから、少し息を吸って・・・・・・。 「ゆっくりしていってね!!!」 特大の音量で挨拶する。 赤ゆっくりの声量など目じゃない大音声は、この部屋の中に居る全ての赤ゆっくりに聞こえたはずだ。 すると即座に俺の方に向き直る赤ゆっくり達。 先程まで好き好きに行動していたのに、一斉にピタリと動きを止めてこちらに挨拶を返そうとしているのだ。 常々思うが、「ゆっくりしていってね」の効力は凄まじい。 「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」」」 赤ゆっくり達の大斉唱が響き渡る。 元気があって大変よろしい。 赤ゆっくり達は何やら期待の眼差しでこちらを見つめてきている。 これから何かが始まると予感しているのだろうか。 「よし、お前ら。俺の言葉が分かるか?分かる奴はその場で跳ねろ」 「「「「「「「「「「ゆーっ!!」」」」」」」」」」 言う通りにピョンピョン跳ね始める赤ゆっくり達。 大体全ての個体が俺の言葉を理解できているようだ。 偶にではあるが、塩水の影響で言語機能に異常を持つものも居る。 そういう個体もまた不適格として処分する。 ゆっくりの特長はヒトの会話を理解できる所にあるのだから、それが出来ない不良品は要らない。 「全員理解してるな。俺の事は『先生』と呼べ。これからお前達を育て、教育する者だ」 お父さんや、お母さんではなく、先生。 両親の記憶が無い赤ゆっくり達に迂闊に親を連想させるような言葉は使わない。 親だと思い込まれると、甘ったれる者が出てくるためだ。 「ゆっ・・・しぇんしぇい?」 「ちぇんちぇい!ちぇんちぇい!」 「しぇんしぇい!ゆっくりしちぇいっちぇね!!!」 「ゆぅ~っ!ちぇんちぇい!!!」 「そうだ、先生だ。『しゃんしぇい』では無く『ちぇんちぇい』でも無いがそれはゆっくり直していけば良い」 本来なら親に向けるであろう全幅の信頼を置いた目で俺を見てくる赤ゆっくり達。 普通の赤ゆっくりではこうはいかない。例え一度も見たことが無くとも赤ゆっくりは親ゆっくりを知っていて、求めてくるのだ。 だがこの赤ゆっくり達はその記憶が無い。よってこのような刷り込みめいた事ができる。 これも塩水による記憶クリーニングの効果の一つだ。 とりあえず赤ゆっくりに懐かれる事には成功した。 だがそれだけではゆっくりの躾けに何の意味も無い。 ゆっくりを手懐けるコツは愛情だけではなく、恐怖で縛り上げることも必要なのだ。 所謂、飴と鞭。今は飴を与えた。 次は鞭の番だ。 「ゆぴぃ~~~・・・・・・」 「ゆぅ~ん・・・・・・」 「ゆぅ・・・・・・ゆぅ・・・・・・」 ポケットの中で暢気に寝ていた問題児達を取り出す。 足元の赤ゆっくり達は「ゆぅー!!」とか「れいみゅもたきゃいたきゃいしちゃいー!」とか羨ましがっている。 今までこいつらを生かしておいたのはこの時のためだ。 「よし、聞け。お前たちはこれから俺の言う事を良く聞いて、良い子になる勉強をするんだ」 空いた片方の手で問題児の中の一匹・・・・・・赤まりさの頬を摘みあげる。 少々痛かったのか、赤まりさは「ゆっ!?」と声を上げて目を覚ました。 足元の赤ゆっくり達は素直に「ゆっきゅりりかいしちゃよ!!」等と言っている。 「良い子になれば、自分も他の人もゆっくり出来る。俺の言う事を良く聞けば、必ず良い子になれる」 己の体重を頬だけで吊り支えると言うのは相当辛いのだろう。 赤まりさは「いぢゃいいいいいぃぃ!!!」と涙を流しながら暴れている。 暴れたりなんかしたらもっと痛くなるぞ、と思うが特に口には出さない。 この赤まりさがどれほど痛みに咽び泣こうとも、どうでも良いからだ 赤ゆっくり達は赤まりさには気付かずに俺の言葉を聞いている。 「逆を言えば、俺の言う事を聞けないゆっくりと言うのは悪い子だ。悪い子は誰もがゆっくり出来なくなる」 プラプラと赤まりさを振り回しながら赤ゆっくりに言い含めていく。 遠心力によって更に皮が引き伸ばされ、「ぎょえ゛え゛ぇ゛ぇ゛!!」と赤まりさは凄まじい形相を浮かべながら絶叫している。 ここでようやく赤ゆっくり達は赤まりさの声を聞き取った。 赤まりさの声を聞いた赤ゆっくり達の表情は疑念・不安といった所だ。 何故赤まりさがゆっくり出来なくなっているのかが分からないのだろう。 「悪い子は要らない。こいつは弱いもの苛めをした悪い子だ」 赤ゆっくり達に赤まりさを見せ付ける。 そのゆっくり出来ない苦悶の表情に赤ゆっくり達は揃ってショックを受けたようだった。 「ゆゆ・・・」だの「ゆっくちぃ・・・」だのプルプル震えて涙を堪えている。 「良く見ておけ。ゆっくり出来ない悪い子は・・・・・・こうなる」 人差し指と親指を離す。 それだけで赤まりさは俺の拘束から逃れ、重力に身を任せて落下していった。 赤ゆっくり達が息を呑む。 少なくとも一メートル以上の高みから落とされる衝撃は、赤ゆっくりにとって一体どんなものなのだろうか。 「ぎゅえ゛っ!!!」 顔面から激突した。起き上がる気配が無い。 地面には芝生が植えられているのである程度の衝撃は緩和されたが、それでも相当の痛みの筈だ。 良く見れば後頭部がピクピクと痙攣している。 赤ゆっくり達は不安そうに赤まりさを眺めている。 そうして赤まりさを助け起こそうと数匹の赤ゆっくりが動き出したところで・・・俺も赤まりさを踏み潰した。 「ぢゅぶっ」 ぶちゅり。足裏に泥を踏んだ時のような形容しがたい感覚が広がる。 それを赤ゆっくり達は、一瞬も漏らさず全て見届けてしまった。 赤ゆっくり達の視点からだと赤まりさが潰れる姿も見てしまったのではないだろうか。 部屋がシンと静まり返る。赤ゆっくり達は硬直したように動かない。 そんな赤ゆっくり達に向けて、残りの問題児達を持っている手を差し出した。 「お前達、よく餡子に刻み付けとけ。言う事を聞かない悪い子は、死ぬ」 「ぎゅ゛っ゛」 「ぐげっ」 ぶちゅり。そのまま手を握って一気に潰し殺した。 指の間から黒かったり白かったりする中身が漏れ出てくる。 そしてその音と俺の手に付いた餡子を見た赤ゆっくり達は、揃って悲鳴を上げた。 「「「「「「「「「「ゆぎゃあああああああああああああああああああ!!!!」」」」」」」」」」 続く?
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/321.html
ゆっくりCUBE ※人間は直接的には殺さないです。罪の無いゆっくり達がどんどん死んでいくよ! まぁゆっくりは生きているだけで罪なんだけどね! こんにちわ、上白沢慧音です。 なぜ、こんなところで私が出てくるかと言うと、今回の「ゆっくりCUBE」についてのご説明をさせていただくからです。 皆様は、「CUBE」という映画を見たことはありますでしょうか。 箱状の部屋の中に閉じ込められた何人もの男女が、脱出しようと奮闘するのですが、行く先々には残忍な罠が仕掛けられており、一人また一人と命を落としていってしまうという映画です。 しかし、今回の「ゆっくりCUBE」は閉じ込めるのを人間ではなくゆっくり達になっています。 とても血なまぐさい描写になることは避けておりますのでご安心を。 あと、映画の中の罠は実用性が無いものが多い事から、それは別の映画「SOW」からアイデアを頂戴しました。 それと、この「ゆっくりCUBE」の製作者、nitori社の河城にとりさんのアイデアも採用されております。 ですので、映画を見たことが無い、という方でも存分にお楽しみいただけることを約束します。 ……そろそろ哀れなゆっくり達が目を覚ます頃でしょう。 では、皆さんまた。 「ゆ……ゆ?」 まだ意識が霞む中、ゆっくりれいむが目を覚ます。 辺りを見回してみると、全面鏡張りでできた奇妙な部屋だった。 自分はなにをしていたのだっけ。 頭の餡子を回転させて思い出す。 たしか、見慣れぬ家の中に入ってそこに餡子があったから食べた。 そしたら急に眠くなって……。 そこから先は覚えていない。 「う、ゆっ」 れいむの背後からうめき声が聞こえる。 吃驚して飛び上がり、振り返った。 そこには、同じように眠りから覚めたゆっくりまりさがいた。 どうやらこのまりさは子持ちのようで、隣に三匹のちいさな子ありすと子まりさがいた。 「ゆ~ん……ありすはとかいは……」 その奥では、まりさの妻であろうゆっくりありす、そしてその隣にゆっくりぱちゅりーがいた。 珍しく、ゆっくり種で代表的なものがそろっている。 「まりさ! ありす! ぱちゅりー! おきて! ゆっくりおきてね!」 体でこつんと皆の体を叩く。 起きた皆は、不思議そうにまわりを見回していた。 「ゆ? ここどこ?」 「わからないよ! でもゆっくりできるよ!」 れいむはここを落ち着ける空間と把握したようだ。 「「ゆっくりしていってね!」」 二人は唱和して、仲間である事の確認を取る。 さらに、まりさは妻のありすに擦り寄っていった。 ぱちゅりーは相変わらず周りを見渡している。 「こんにちわ! ぱちゅりー! ゆっくりしていってね!」 「むきゅ、ゆっくりしていくわ」 少々大人びた様子で、ぱちゅりーは答えた。 しばらくして子ゆっくりたちも目を覚まして、一室はゆっくりハーレムの状態だった。 「これでみんなでゆっくりできるよ!」 「そうだね! でもおなかすいたよ!」 「すいたよ!」 まりさ一家が声をあげる。 確かに、れいむも腹が減っていたし、ぱちゅりーも同じだった。 「じゃあたべものさがしにいくよ!」 「わかったよ! みんなついてきてね!」 「ゅー!」 れいむは辺りを見渡し、出口を見つけるとそこに皆で突っ込んでいく。 その中に混じって部屋を出ようとしたまりさは何かを忘れているような気がして一瞬振り返って部屋を見たが、頭をかしげて後を付いていった。 細い通路を抜けてやがて広い部屋に出る。 さっきと同じ形でできた部屋だった。 ただ、違うのは壁に五本の縦線の飾りがついていることである。 「ゆー……、ここにはごはんがないみたいだからほかにいくよ!」 ぴょんぴょん跳ねてまりさは進んでいく。 そのときだった。 ぴしゅん、と風を切るような音が部屋に響き渡る。 ゆっくり達は一瞬なにがおきたのかわからなかった。 しかし、まりさの帽子が半分欠けて、なにがおきたのかを把握した。 「むきゅ! なんだかあぶないよまりさ!」 ぱちゅりーは異変を感じて叫ぶが、まりさは大丈夫だとまた跳ねてみせる。 その時。 「ぎゅげえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 突然の悲鳴にまりさ達は声の主を探す。 悲鳴の主はゆっくりありすだった。 恐怖に怯えた顔で停止している。 「ゆ? ありす……?」 れいむが近づく。 すると、その振動でありすが倒れた。 顔の半分だけ。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! あ゛り゛ずがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「おがーしゃーあああああああん!!」 溢れるようにクリームが流れ出る。 れいむの足元一面にクリームが広がる。 「ゆっ! ここはあぶないよ! はやくでようよ!」 まりさの言葉に我に帰り、れいむはまりさの後を追う。 ぱちゅりーはそれを引き止めた。 「むっきゅ! もどろうよ! もどればあんしんでしょ!?」 「だめだよ! またここにくることになるよ!」 一時的な安心より、脱出を考えたれいむ。 今回のれいむはよく餡子が回るようだ。 「むきゅ……わかったよ」 ぱちゅりーは自分の考えを否定されて少しだけしょんぼりとしていた。 だが、自分の命には変えられない。 音の正体はワイヤーだった。 あの、縦線の飾りは、自動的に対象を狙って風の如く切り抜ける。 見れば、飾りの数が増えており、反対側は減っていた。 今のまりさは、運良く前に進んでいたので、帽子だけで助かったのだ。 「あかちゃんたちはくちにはいってね! ここならあんぜんだよ!」 まりさは口を開いて子供を入れる。 次のワイヤーが来ないうちに、れいむたちは次の部屋へ向かった。 「う゛っ、う゛っ……あ゛り゛ずぅ゛……」 危機を逃れてから、まりさは亡き妻を思って涙を流していた。 口から出た子供達もわんわん泣いている。 「お゛がーざんのぶんぼゆっぐりじようでぇ……!」 「ゆっぐりずるよ゛ぉ……!」 れいむも悲しい気持ちになってくる。 助けようと思えば助けられたはずだ。 ワイヤーに気づき、一番近かったれいむがありすを突き飛ばすかすれば、被害は起きなかったはずなのだ。 「ゆぅぅ~……」 れいむも悔しくて涙を零す。 しかし、このこれは『ゆっくりCUBE』。 ゆっくりたちを休ませる暇など与えない。 「むきゅ! あれはなに?」 ぱちゅりーが見た先には小さなギアの着いた鉄の塊だった。 球体状で、その周りには内側に針のついた殻のようなものが着いている。 その中には餡子が入っている。 「ゆ! ごはんりゃろ!」 子ありすがそれに突っ込もうとする。 だが、まりさはそれを制止した。 「だめだよ! あぶないからはなれてね!」 「おがーざんおなかへったよ! ごはんちょーらい!」 文句を言う子供たち。 たしかに、自分達も腹が減っている。 だが、こんな所にいたらまたゆっくりできなくなってしまう。 「だめ! ゆっくりできなくなっちゃう!」 「もうやだ! おがーざんなんがちんじゃえ!」 「どぼじでぞんだごどい゛う゛の゛お゛お゛!? わだじはごどもだぢのだめにいっでるんだよお゛!?」 一匹の子ありすが鉄の塊の中に入る。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 おいしそうに食べる子ありすを見て、まわりの子供達も文句を言い始める。 「おかーしゃん! ありすだけじゅるいよ! まりさもたべさせてね!」 「あたしも! とかいはのありすにもだよ!」 文句を言っているうちに、子ありすは食べ終えてしまった。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! ごはんがあ゛あ゛あ゛あ゛!!」 「ゆっくりちね! ゆっくりちね!」 非難を浴びる子ありす。 だが、とかいはだから当然とばかしに胸をはる。 「いなかもののありすとまりさはたべられなくてとうぜんね! ――ゆっ!?」 塊から出ようとしたありすは驚きの表情を浮かべる。 さっき入れた場所の鉄の扉が、開かない。 何度体当たりしてもびくともしない。 その時、どこからか声が聞こえた。 それは、聞きなれない声。 「皆さん、ゆっくりしていますか?」 声の主は稗田阿求。 病弱で、とても可愛らしい風をしているが、とても変わった趣味を持っている。 ゆっくりを潰して遊ぶ事だ。 破壊衝動に見舞われたときは、親に内緒でかなづちでそこら辺を歩いているゆっくりを潰して遊んでいる。 ある意味妖怪より怖い。 「ゆっくりできないよ! ありすをたすけてね!」 「くすくすくす、助けられますよ。 この部屋のどこかに鍵を設置しました。しかし、もうすぐそれは壊されてしまいます。あと3分以内に助けなければ、その間抜けなありすは死んでしまうでしょう」 まりさは怒りに膨れる。 「どうしてこんなことするの!?」 悲鳴ではない、確かに怒りを込めた声。 れいむたちは初めてまりさが本気で怒ったのを見た。 だが、人間にしてみればそれはただの威嚇だ。 「どうして? くすくすくす」 壁の向こうで顔をゆがめて溢れる笑いを必死に堪えようとする阿求。 その顔からは狂気が見えた。 「楽しいからに決まってるじゃあないですか? もちろん皆さんが死んだ後は皆で餡子をおすそ分けしますけどね」 「ひどいよ! なんでまりさをころそうとするの!?」 「馬鹿ですねぇ、あなた達は何を食べて生きていますか?」 その質問に、れいむが返す。 「むしさんとくだものさん!」 「そうでしょう? そして私達がゆっくりを食べる。私達が死んで土に帰り、植物や虫を育てる、それをあなた達が食べる、それを私達が食べる。立派な食物連鎖ってやつですよ、理に叶ってると思いますが」 「そんなのかんけいないよ! まりさたちをたすけてね!」 「助けて欲しかったら自分の手で何とかしろぉ! あぁ!? あと一分しかねーぞ、おい?」 いきなり怒声を浴びせられ、まりさたちは飛び上がる。 そして、ありすの事を思い出して必死に部屋の中を探した。 やがて、小さな箱を見つける。 「これだね! いまからあけるよ!」 その小さな箱を口で開けようとするが、開かない。 その上に乗ってジャンプしても、開かない。 口に入れてから放り出して壁に叩きつけても、あかない。 「どおじであがないの゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!?!?!?!?!」 再び笑い声が響き渡る。 「ばぁーか、箱を開けるにはさらに鍵が必要なんだよ! あと三十秒!」 子ありすの死へのカウントダウンを告げる阿求。 まりさは必死になって鍵を探した。 そして、見つけたのは部屋の隅のシュレッターの中に今にも飲み込まれそうな鍵。 しかし、まりさはためらう。 ここで今鍵を取りに行ったら、自分の体も飲み込まれてしまうかもしれない。 「おかーしゃん! たすけてねぇ! おねがいいいいい!!」 塊から悲鳴が聞こえる。 そうだ、あれは自分とありすの子だ。 親は子を守る義務があるのだ。 そう考え、意を決して飛び込む。 鍵を咥えて取る事に成功はしたが、問題は着地だ。 部屋の隅にあると言う事は、必ず前方と横一面には壁がある。 失敗すれば自分はシュレッターの中に飲み込まれてしまう。 「ゆうううううううっ!」 まりさは、壁を蹴ってボールのように飛び跳ねた。 着地したとき、体を刃が削ったが、気にならない。 れいむはまりさを応援した。 「すごいよまりさ! がんばってね!」 「むきゅ! すごい、すごいよ!」 急いで箱の中に鍵を入れて中から扉を開ける鍵を見つける。 そして急いで子ありすの元へ走った。 「はい時間切れー」 阿求のその言葉とともにバチン、とばねの力で勢いよく殻が閉じる。 内側の針が、子ありすの全身を貫いた。 「ゆぎゅぎゅぐぐぐぇえええええええええええっ!!」 そんな悲鳴を上げて、子ありすは息絶えた。 まりさは鍵を取り落とし呆然としている。 れいむも、何が起きたかわからないという顔をしていた。 「あっはははは! 残念、子ありすは助かりませんでしたー」 閉じた殻の隙間からこぼれる餡子。 それを見てまりさは絶叫した。 「なんでよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!! かぎどっだのにい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 「鍵なんて入れて回さなきゃ鍵じゃないでしょーが」 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 れいむも悲鳴を上げていた。 せっかく助かると思っていたのに。 少しでも犠牲少なく助けられると思っていたのに。 ぱちゅりーは泣いていた。 知識しかない無力な自分を悔いた。 結局、阿求に笑われながら開いたドアをくぐり、新しい部屋に入った。 今度はマス目が書かれた、奇妙な部屋。 五匹は慎重に、マスの上に乗る。 すると、何かの機械が作動したような音がした。 「ゆっ、こどもたちはこのなかにはいってね!」 慌ててまりさは子供達を口の中に入れる。 れいむとぱちゅりーも寄り添って、何が起こるかと震えていた。 その時、ズルンっ何かが滑り落ちる音がした。 見ると、マスが一個かけている。 再び、同じ音が鳴る。 また、マスが消えた。 「いそいでおくにいくよ!」 危険を察知したれいむが走り出す。 後を慌てて二匹が追う。 だが、だんだんとマスが欠けるスピードが速くなっていく。 そして。 「むきゅうっ!?」 ぱちゅりーの足元のマスが落ちていく。 れいむが振り返ってぱちゅりーの髪を掴んだ。 「ゆっぐぐぐぐ……!!」 ぱちゅりーを落とすまいとするれいむ。 その時、ちらりと下を見た。 そこには、毒々しい緑色の液体。 落ちたマスがその液体に漬かると、一瞬で溶けてなくなった。 「さんだぁあああああああああああああっ!!」 ぱちゅりーは悲鳴をあげる。 れいむは限界までひっぱり、ぱちゅりーに上がってくるように言う。 だが、ぱちゅりーは元々病弱で、体力はないに等しい。 「ゆっぐ、むっきゅ……!」 がんばろうとするが、途中で疲れてしまう。 そうしている間に、れいむの周りのマスも落ち始めていた。 その時。 「ゆっ!?」 れいむは突き飛ばされ、思わず口を開く。 今までの支えがなくなり、ぱちゅりーは落ちていった。 「むっきゅうううううううううううううう!!! どうじでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!? ぎゅおぎぃごごぎごががぎぎごあいが!!」 悲鳴を上げながら落ち、酸の中に飛び込むぱちゅりー。 意味不明な叫び声をあげて、溶けて消えた。 「どおじでごんだごどずるのま゛り゛ざぁ!?」 「もうだずがらないがらだよ! あのままじゃれいぶもじんじゃうよ!」 涙ながらに叫ぶれいむに涙ながらに返すまりさ。 確かに、あのままの状態が続けばいずれれいむのマスも落ちて二匹は死んでいた。 だが、まりさは犠牲を少なくするために、れいむを助けたのだった。 「まりざのゆっぐりごろじ! じねっ!」 「うるざいよ! まりざだっでじだぐながっだよ!」 二匹は涙ながらににらみ合う。 しかし、周りのマスが落ちていくのを見て、まず自分の命を最優先にしようとして二匹は部屋を出た。 そして、新たな部屋。 今度は黒い床だった。 まりさとれいむの体から汗がにじみ出る。 部屋はとてつもなく暑かった。 舌を出して息をしても、焼け付くような空気が体の中に入ってくるだけだ。 「いくよ、れいむ……」 「さしずしないでね……ゆっくりごろしのまりさのいうことなんてきかないよ」 れいむは反発しながらも進む。 今この場でいがみ合っても死が四匹を待っているだけだ。 黒い床の上に乗ると、二人は苦悶の表情を浮かべる。 「あじゅ、ゆ゛っぐりでぎだい……!!」 黒い床の正体は鉄板だった。 下では木を何百本もくべて、火を焚いている。 部屋の奥までまだ遠い。 「あ゛づい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 まりさが限界を感じて口を開いた。 その時。 「あちゅい! ゆっくりできないよおおお!!」 子まりさが一匹、口から飛び出してしまった。 口の中はサウナと同じ様な状態で、もう一匹の子まりさも熱さで衰弱していた。 子まりさが鉄板に体を乗せたとき、厚さに叫び声をあげる。 「ゆじゅじゅじゅじゅじぃ! おがーざんだずげべべべべべ!!」 まりさは急いで子まりさをひっぱる。 だが、取れない。 「どおじでえええええええええええ!?!?」 子まりさの足が鉄板に焼きついてしまったのだ。 成体のれいむやまりさは多少皮膚が固くなっているので焼け付く事はなかったが、脆い子ゆっくりが鉄板の上に乗ればひとたまりもなかった。 「あじゅっ! ゆっ! ぐぇっ! じぇでぇ!」 そのまま黒焦げになり、子まりさは動かなくなった。 「あ゛がじゃん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!!!」 「い゛ぐよ゛まりざぁ……ごごがらでだいどみんだじんじゃうよ゛ぉ……!!」 れいむは無理矢理まりさを引っ張る。 まりさは残った子供の為にも泣く泣く部屋を後にした。 次の部屋は、さっきとまでは違うつくりになっていた。 殺風景で坂があり、その頂点に、光る扉があった。 体はもうボロボロで、精神もぼろぼろだった。 ぴしゅん。 「ゆ?」 何かが飛ぶような音。 ぴしゅん。 また聞こえる。 ぴしゅん、どすっ。 「ゆぎぇえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 何かががれいむに当たる。 まりさが見たとき、それは矢だった。 れいむの頬がやぶけ、餡子があふれ出る。 「ゆぶっ!?」 まりさも、同じ物を頬に食らった。 貫通して、頬を通り抜ける。 「ぎ、ぎぎぎ……」 痛みを堪えているとき、ふと口の中にいる子供達を思い出した。 今、矢は自分の口の中を通り抜けていった。 だとすれば。 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!! ま゛り゛ざのあがじゃんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 口の中に入った矢は、一匹の子ゆっくりの命を容赦なく奪った。 悲鳴は聞こえなかった。 口からこぼれる我が子の餡子。 「あ、ああ……」 もう、守るものもいない。 あるのは、絶望のみ。 後ろには、さっきから何の役にも立っていないれいむ。 「うふ、うふふふふふふふっ」 まりさは、れいむを抱きかかえた。 「ゆっ!? まりさ、はこんでくれるの!?」 れいむは、驚いていた。 まりさが自分を助けてくれる。 ただそれだけが嬉しかった。 再び、矢が飛んでくる。 れいむは、まりさが助けてくれるだろうと思った。 「ぷぎゅげっ!?」 れいむの体を再び矢が突き抜ける。 「い゛だいよ゛まりざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 「しらないよ、やくたたずのれいむはまりさのたてになってね」 落ち着いた様子でれいむを抱きかかえるまりさ。 そして坂を登りきったときには。 「ゆ……ゆぇ……」 息も絶え絶えの矢が何本も刺さっているれいむ。 頬に傷があるだけのまりさがいた。 「さよなられいむ、えいえんにゆっくりしていってね!」 そう言って、れいむを投げ捨てた。 その顔は、どうして、と訴えかけるような目をしていた。 まりさはそれを無視して扉の前に立つ。 「まりさだよ! ゆっくりだしてね!」 その言葉にがちゃりと扉は開く。 まりさは、出られると思いそこから嬉々として飛び込んでいった。 だが、あったのはまた鏡張りの部屋。 「ゆ? なんで? どうして?」 戸惑うまりさ。 そこに、慧音が現れる。 「やはり、お前が残ったか。まりさ」 「ゆっ! おねーさんここからだしてね!」 「ああ、出してやるとも。じゃあ鍵を出してくれ。」 鍵? 何の事だ? ありすを助けるときに使った鍵か? いや、あれは鉄の扉を開けるための鍵だ。 「なんだ? 一番最初の部屋においておいたのに気づかなかったのか?」 一番最初の部屋? まりさは思いだす。 そうだ、あの時一瞬振り返ったのは鍵のためだったのだ。 だが、そうとは分からずに進んでしまった。 「残念だな、また戻るしかないぞ」 戻る? あの矢と鉄板と酸とワイヤーの中を? 「そんなのできるわけないよ!」 「じゃあここで餓死するんだな」 そう言って慧音はボタンを押して人間用の出入り口を開ける。 そこに入ろうとまりさも突進するが、慧音に蹴られてしまい、扉は閉じてしまった。 「う、う、う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!」 幻想郷で一番醜い悲鳴が、CUBEの中に響いていた。 ■■■ 「はーい、残念ながら生き残ったゆっくりはいませんでしたー」 残念、というばかりに手を上げる阿求。 周りの観客は落ち込んだり怒声を上げながら自分の手にある券を投げた。 「これ生き残る奴いるのかよー」 「ああ、ゆっくりふらんとかなら助かるらしいぞ、人気高いけど」 里の者達は愚痴を吐きながらとぼとぼと帰っていく。 「いやぁ、今日も大盛況でしたねにとりさん」 阿求は札束をもってにんまりと笑う。 にとりも、悪代官のような顔をする。 「いいでしょう、マジックミラーでゆっくり達には分からずとも私達からは丸見え。どのゆっくりが生き残るか賭けて勝負する『ゆっくりCUBE』。誰もこんなの考え付きませんよ、ねぇ慧音さん?」 「ん、ああ」 慧音は恥ずかしそうに頬を掻く。 「どうしたんですか?」 「いや、さっきの演技ちょっと恥ずかしくて……ああいうの苦手なんだ」 「そんな! 迫真の演技でしたよ! 今回の山分けは慧音さんに奮発します!」 にとりは慧音を褒めちぎった。 慧音はまんざらでもないような顔で笑う。 そして、今回の賭け金を山分けした。 「これで、子供達の教育費もまかなえるな」 「慧音さん熱心ですねぇ」 「あたりまえだ、子供の未来のためならゆっくりなぞいくらでも犠牲にできるぞ」 「じゃあ今日は私のおごりです! 近くにおいしい店があるのでにとりさんも慧音さんもいらしてください!」 こうして、三人は『ゆっくりCUBE』を後にする。 里の奥にできた巨大施設。 里の人間がゆっくりを使い誰が生き残るかを予想するギャンブル。 18歳以上の方なら券をご購入いただけます。 毎週日曜日に行っているので、ぜひいらしてくださいね。 あとがき 構造的にCUBEにしただけで罠はSOWとオリジナルにしました。 SOWの罠はヘッドギアとワイヤーが張り巡らされた部屋をモチーフにしています。 このアホが作った作品。 霊夢の怒らせ方 ゆっくりデッドライジング1~3 霊夢のバイト 慧音先生とゆっくり 書いたジグソウ:神社バイト このSSに感想を付ける