約 3,642,280 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3609.html
出勤前にモーニングコーヒーと洒落込むべく、今日は早めに家を出た。 会社最寄り駅近くの喫茶店は出勤者向けに早くからやっている。 そこでトーストにスクランブルエッグで軽く朝食を取って、それからブラックをゆっくり味わおう。 しょせんは大したものではないが、こういうのは気分が大事なのだ。その程度の事で優雅さを味わえるのだから、素直に味わった方が利口だ。 時間は十分にある。 今日は随分と暖かく晴れていて良い気分である。俺と同じように駅に向かう出勤者も何となしに起源良さそうに見える。 橋に差し掛かると対岸の道路に何やら人だかりが出来ているが見えた。 あれは何だろうか。電柱の周りで、十四五人ばかり各々その先の方を見上げている。 よく見ると電柱のてっぺんには一匹のゆっくりがおり、「わからないよー!わからないよー!」と泣き叫んでいた。 本当に分からない。 猫が登って降りられなくなるというのは良く聞く話だが、何で饅頭生命体があんな所に登る事が出来るのだ? しかし……俺は考え直した。そもそもゆっくりなのだ。饅頭が動き、言語を解するのだ。 それを思えば電柱に登るなど大した事でないのかもしれない。 マンションだろうと這い上がってくる奴らだ。 それにしても、馬鹿は高い所が好きと言うが、わざわざ表現してみせる事もないだろう。 橋を渡り、人だかりに近付くと、その輪の中、電柱の根本にはもう一匹のゆっくりが泣き叫んでいた。 「ちぇえええん!ちぇえええええんッ!」 何やら尻尾のようなものを沢山生やらかしたゆっくりが、電柱を見上げてひたすら叫んでいる。 その顔は傷だらけで、帽子は薄汚れ所々すり切れた後が見える。そして近くにこいつのものと思しき尻尾が二本ほど転がっていた。 俺は不思議に思い足を止めた。そうして人だかりに加わってしまった。 なぜこのゆっくりは傷だらけなのだろう。二匹はどういう間柄なのだろう。 一方の疑問は直ぐに解消された。 真下で泣いていたゆっくりは突然泣き止むと、その場を後ろに下がり、勢いを付けて電柱に突進したのだ。 助走を付けてジャンプし、ゆっくりらしからぬ見事な跳躍を見せ、そのまま電柱に激突した。 傷だらけになるわけだ。 「らんしゃまあああ!」 電柱の上から「ちぇえん」と呼ばれたゆっくりの泣き声が聞こえる。 「らんしゃま」と呼ばれたゆっくりは痛みにぐるぐる回っていたが、そのうち止まってまた泣き出した。 俺は素早く見物人の顔を見回した。 饅頭とはいえ、他者の不幸を見て機嫌良くなる奴というのは気持ちの良いものではない。 まあ俺もよくゆっくりを不幸にしているのだが、それとて仕方なしに投げ込んでいるのだ。 だが皆の顔は真剣そのものだった。老若男女、一様に真面目な顔をしている。 沿線の私立の制服を着た小学生達など、「頑張れ!」と声を掛けている。 世の中捨てたものではないらしい。 まあここの住民はよくゆっくりを不幸にしているのだが。 「らんしゃま」は再び電柱に距離を取った。 小学生のうち一人が電柱に向かって飛び、一歩二歩駆け上がる動作をしてみせる。登り方を教えているらしい。 ゆっくりは再度助走を付けた。 「ちぇええええん!」 今度は角度も良く飛び付く事が出来た。その勢いで電柱を駆け上がる。 そして二メートル程登ったところで勢いが尽きてそのままずり落ちてきた。 頭を地面に打ってひたすら回り続けるゆっくり。今度はさっきより回る時間が長い。 その傍らには新たにもげた尻尾が落ちている。 上の方からは相変わらず「わからないよー!」と泣き声が聞こえてきた。 三回目。 今度は電柱との距離を倍にとって勢いを稼ぐつもりのようだ。 相当早いスピードで電柱に飛び付く。角度も上々。 「らんしゃま」は、これならてっぺんまで上れるだろうという勢いで、電柱に刺さっている足場の鉄棒に激突した。 尻尾が何本かバラバラ降ってくる。 そのうちの一本が、登り方を教えていたのとは別の小学生の頭に落ちてきた。 その子供は帽子の上にのっかった尻尾を手に取りまじまじと見つめ、「おいなりさんだ。」と言って食ってしまった。 「おいしい。」 そんなもの食って大丈夫なのか。 それはともかくとして、苦痛から立ち直った「らんしゃま」はまじまじと電柱を見やっている。 障害物の位置を確認しているらしい。 段々上達しているし、こいつはそれなりに学習能力があるようだ。 見物人は一人として立ち去る者もなく成り行きを見守っている。 会社とか学校とか大丈夫なのか。 四回目。 既に満身創痍な「らんしゃま」だったが、尻尾が減ったせいか俊敏になった気がする。 今度は更に早いスピードで飛び上がって、螺旋を描くようにして電柱を駆け上がっていった。 鉄棒も見事にかわしてゆく。 三メートル、四メートル、どんどん登ってゆく。 そして電線や変圧器などの構造物も難なくかわした。 見事としか言い様がない。 だが回避行動よって勢いが無くなってきた。 九割がた登ったところでほとんど止まってしまった。 「らんしゃまあああッ!」 見物人は、俺も含め固唾をのんで見守っている。ここから落ちたら助からないのではないか? 「もう一息だ」と、全員の心が一つになったような気がした。 「ちぇええええんッ!」 「らんしゃま」は叫ぶと最後の力を振り絞って蹴り出した。 そうして残りの一割を一気に飛び越え、とうとう頂上に辿り着いた。 「らんしゃまあ!」 「ちぇえん!」 周りからは拍手喝采が沸き起こっている。 増えて二十人になった見物人達は、良くやった、頑張った、と皆満足そうだ。 だが全員すぐに不安顔になった。見るとゆっくりは不安定にゆらゆらゆれている。 「わからないよ!わからないよー!」 「わからないよー!」 あー。 あいつも降りるときの事考えてなかったんだな。 電柱の頂点に二匹は狭すぎたようだ。 ゆっくりはしばらくゆれていたが、そのうち耐えきれなくなって、ふっ、と落下してきた。 「わ゛がら゛な゛い゛よ゛!」 「ヴュッ」という生々しい断末魔と共にゆっくりは揃って地上に還ってきた。 「あーあ」と、全員の心が一つになったような気がした。 「ちぇえん」は「らんしゃま」の下敷きになってしまった。 「らんしゃま」は下敷きからころんと転がって、仰向けで「ゆっ……!ゆっ……!」と呻いている。 「ちぇえん」は俯せになって身じろぎもしない。 しばらくすると「らんしゃま」は横目で「ちぇえん」を見つめ、何か語りかけだした。 しかし素人目に分かるが即死である。どうも惨い結果になってしまったようだ。 「行こっか。」 ばつの悪い顔で即死と瀕死の二匹を眺めていた見物人は、小学生を先頭に早々と立ち去っていった。 ここの住民はドライだなあ。 現場には俺と二匹だけが取り残されてしまった。 歩行者が何人かこちらを見たりもするが、特に関心も示さず通り過ぎてゆく。 「ちぇ……えええん……」 「らんしゃま」はひたすら語りかけているが、当然のように反応は無い。 なんだか見るに忍びない姿だ。仕方ない。 死体をひっくり返せば一目瞭然なのだろうが、さすがにそれは酷な気がする。 俺は傍にしゃがみ込んで、既に分かっている事だが、改めて死体を確認してから瀕死のゆっくりに向かって首を振って見せた。 「ちぇえん……」 どうやら理解出来たらしい。手間が省けて助かる。 こいつも尻尾を全部失った上に、頬や額が裂けていて助かる見込みは無いだろう。 俺は立ち上がって右足を上げた。武士の情けとか仏心とか、そんなところだ。 俺を眺めていた「らんしゃま」は怯える事もなく、むしろ急かすように目を閉じた。 間抜けな割に妙に理解の良い奴だ。 止めを刺した後、あの世で仲良くやってくれと思いつつ二匹を川に投げ込んだ。 潰れた死体はすぐさま水に溶けてゆく。 そして俺は駅とは反対の、家に向かって歩き出した。 革靴が随分と汚れてしまったのだ。 こんな格好では会社に行けない。家に帰って靴を磨き直さなければならない。 モーニングコーヒーなどしている時間はもう無いだろう。 俺は陰鬱な気分で家に向かった。 By GTO
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/912.html
*注意* うんうん注意 ゆっくりの影が薄いです(特に後半) 以上の事に注意してください ~ゆっくり友達~ 「ゆっふん♪」 今、目の前の机でまりさがふんぞり返っている これから一週間先の事を考えると胃が痛い 事の発端は半月前の求人情報誌がきっかけだった 『ゆっくりのトレーナーさん大募集! ゆっくりが好きな方待ってます! また・・・』 それはとても小さな記事だった 『ゆっくりのトレーナー』とは最近になって認知され始めた職業だ ゆっくりが愛玩動物として広まってから久しいが、表に出てくる職業ではなかった しかし犬・猫と同じ様に躾がいるので、新たに資格を設けて広く募集し始めたのが始まりである 早速、書いてある連絡先に電話を入れる 『では来週の・・・』 と、ここまでは順調だった この後筆記試験は合格し一次試験は通ったのだが 、まだ二次試験の実技が残っていた 今ここで悩んでいた 『一週間、時間をあげますので自分なりにゆっくりを躾てください』 というのが二次試験の課題である 「ゆっふん♪ おにーさん!!お腹すいたよ!!!」 「ふぅ・・・さっき食べただろ・・・」 むにゅむにゅとほっぺを揉みながら答える 「そうだったね!!!でもまりさはお腹すいたよ!!!」 「いっぱい食うからそんなでっかくなるんだぞ?」 「でっかくないよ! まだ10lbしかないよ!」 会社から貸し出されたまりさが今回のパートナーである しかしなかなかどうして我儘な奴だ 俺の家に連れてくるなり早速の「お家宣言」である 「おにーさんのお家は、今まりさのお家になったよ!!!」 とりあえずデコピンをお見舞いする 「ゆびっ!? しっとはやめてね!!」 「いや、つい・・・」 「でもまりさのお家でゆっくりしていっていいよ!!」 一応躾をする以上お互いの立場ははっきりさせておいた方が良いよな 「じゃあそうさせてもらうよ。ところでまりさはあまあまは好きかな?」 「ゆゆ~♪あまあまさんはだいすきだよ♪」 「そうかそうか♪じゃあクッキーをあげよう」 「むーしゃ♪むーしゃ♪あまあま~♪」 しめしめ、掴みは完璧だな。ここからが本番だ 「はいもう一枚あげよう。あーん」 「はむっ♪むーしゃ?むーしゃ?」 まりさの口に入る直前でひょいと上にあげる 「クッキーさんちょうだいね!9まいでいいよ!」 「そんなに欲しいか?でも条件があるぞ?」 「なんでもいいよ!クッキーさんはまりさのものだよ!」 「俺との勝負に勝ったら良いぞ!」 「ゆふん!いいどきょうだよ!けちょんけちょんにしてあげるよ!」 そしていきなり体当たりを仕掛けてきた 自分で10ポンドあると言っていた通り生身には堪える衝撃だった 「いたた・・・でも捕まえたぞ! こうして、こうしてやる!」 帽子を取り上げ、底面の方を持ち、逆さ釣りにする 「ゆゆっ!お空を・・・ゆぁぁぁ!!おろじでぇぇぇぇ!!まいりまじだぁぁぁ!!」 ちょっと薬が聞きすぎた様なので帽子も返して降ろしてやる 「ゆゆん♪裸にしてさかさづりなんて、まにあっくなぷれいだね!」 全然懲りていないようなので顔の方をむんずと掴む 「う、うそだよ!ちょっとしたおちゃめだよ・・・」 「ほれ、あめちゃんだ。一個やるよ」 「ゆゆ?まりさはまけたんだよ?」 「俺もやり過ぎたしな。正直に敗けを認めた潔さに免じてだ」 「ありがとう!!おにーさん!!ぺーろ♪ぺーろ♪しあわせ~♪」 その日からが戦いの始まりだった 「ゆっくりうんうんするよ!!」 「そこはトイレじゃないぞ!ちゃんと教えたでしょ!?」 「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~♪」 「ご飯を散らかして食べるなよ!片付けが大変なんだよ!」 「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆっくり~♪」 「おにーざんはねでるんだよぉぉぉ!!しずがにじでねぇぇぇ!!!」 そんなこんなで試験日も明後日に迫った「さいきんおにーさんはゆっくりしてないね!!!」 「まりささんのお陰ですよ・・・」 「でもまりさは楽しいよ!!おにーさんとはゆっくり友達だよ!!」 「ゆっくり友達?」 何でもまりさが言うには自分がゆっくりしたいときに傍に居ること ゆっくりしてるときに邪魔をしないこと 面白くて一緒に居るだけでゆっくりできる者の事をそう呼ぶそうだ 「だから、おにーさんはまりさのゆっくり友達だよ」 友達ですか・・・悪い気はしないけど飼い主としては失格だよなぁ・・・ 「だから、つぎはまりさがおにーさんをゆっくりさせてあげるよ!!!」 「後日しかないんだぞ?ゆっくりしてる暇なんか・・・」 「3日しかないんだよ!!まりさはおばかでよくわからないけど、あと3日なんだよ!!」 「まりさ・・・お前」 「おにーさんとおわかれしたくないよ!!でもおにーさんをおうえんしたいよ!!!」 まりさがこんな真剣に物事を喋るのは多分始めてだろう 俺気づかないところでこんなに思い詰めていたなんて 「でぼっ!でぼっ!おにーさんにおじごどがんばっでほじいがらっ・・・」 「そんなに泣くなよ。俺が仕事を始めても一緒に居てやるよ」 「おにーざぁぁぁん !!ありがどぉぉぉ!!!」 「ほらほら、クッキーさんだぞぉ♪今日は9枚用意したからな、一緒に食べよう」 「ゆん゛っ!ゆん゛っ!・・・ゆう、経験がいきたね!!」 「「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~♪」」 「がんばろうね!おにーさん!」 「そうだな、がんばんないとな!」 まりさを枕にしながらそんな言葉を交わす 少し重いがまりさを抱えほっぺをすりすりする もちもちして気持ちが良い 「おにーさんどうしたの?あまりの美肌に頭がわいちゃったの? あとおにーさんのほっぺはじょりじょりしてゆっくりできないよ・・・」 頭は沸いてないぞ、失礼な そんなこと言うと・・・もう一回やっちゃうぞ!! 「そんなことないぞ!!ほら、すーり♪すーり♪しあわせ~♪」 「いやぁぁぁ!!!やっぱりじょりじょりだよぉぉぉぉ!!!」 そして試験日の朝が来た なれないスーツを着てまりさを連れ試験会場に入る 同じ日に受ける人は俺を入れて4人いて、俺の受験番号は4番だった 実技試験は二人一組で、お互い課題は一つずつ。なので失敗はできない *まりさの課題「ご飯」* 「良いって言うまで食べちゃダメだぞ!」 「ゆっくりまつよ!!ゆ~♪ゆゆ~♪」 おいィ・・・歌を歌いながら待ってるのうちだけじゃん 「よし、もう良いぞ」 「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~♪」 うち以外は黙々と食べてるなぁ ちょっと心配になってきたぞ *俺の課題「面接」* 『貴方にとってそのまりさはなんですか?』 「友達みたいなものですかね?」 『友達ですか・・・』 「こいつは我儘で、飯はすごい食べるし、でかいですけど、一緒に居ると楽しいですから」 そして試験終了後の控え室 「絶対無理だぁ・・・ 落ちたよぉ・・・」 「まりさはかんぺきだったよ!!だから クッキーさんちょうだいね!!」 「ほれ・・・粕をこぼすなよ、怒られるから」 「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~♪」 おっ、試験官が入ってきたもう発表するのかな? 「受験番号4番の方のみ退室してください。お疲れさまでした」 え?退室?お疲れさまでしたって・・・落ちたのか・・・ とぼとぼ廊下に出るとさっきの試験官に声をかけられた 「4番の方ですね?こちらにどうぞ」 「あっ・・・はい」 通された部屋の中の机には書類が何枚か置いてあった 誓約書・・・引き取り申請書・・・? 「あの~、これは?」 「我々は貴方を採用 したく、ここにお呼びしました」 あれ?俺落ちてないの?動揺する俺を尻目にまりさは足元で跳ね回って喜んでいる 「え・・・でも」 「書類にご署名いただけませんか?」 「あっ・・・いえ、落ちたとばかり思っていたものですから・・・」 俺が納得できないのを感じ取ったのだろう 「貴方は他の三人のゆっくりを見てどう思いましたか?」 「完璧でした。聞き分けが良くて、従順で大人しくてペットとしては非の打ち所がなかったです」 「我々もそう思います。しかし、あれではペットではなくて機械です」 「機械ですか?」 試験官はまりさを膝の上に乗せ、話を続けた 「我々は彼女のように人間の友達となりうるゆっくりを世に送り出したいのです」 頭を撫でられたまりさはすごく上機嫌のようだ 最後に試験官が言った言葉が忘れられない 「私達は機械を相手にしているのではありません。生きているゆっくりが相手なのです」 おわり どうも携帯からの人です! 名前までつけてくださってありがとうございます PCが治ったら「携帯からの人」ではなく、本当の名前で投稿したいと思います すごく考えさせられる話でしたね。 人間の言葉を話すゆっくりの場合、ほかのペットとは違った奥の深い躾の 形がよく出ていました。 -- 名無しさん (2009-03-22 03 17 31) ゆっくりはもっとしっかり躾けないと他人に迷惑かける気がする。 知能が高い分、なおさらに。 -- 名無しさん (2009-04-24 21 37 22) 個人的には他の三人のトレーナーとそのゆっくりが可哀想に思ったな。 試験の日のためにトレーナーと力を合わせて共に努力していただろうに、 「機械」と言われるほどまで必死になったその頑張りが否定されたことになるのだから。 -- 名無しさん (2009-04-24 21 48 04) ↑ 確かに しかし、逆に考えると、そこまで共に必死に努力していた間柄なら、試験には落ちたが まあその後良い感じの試験管の言う「友達」にはなれたんじゃないかと思う 実際有能だったんだろうから多分この先も… -- 名無しさん (2009-04-25 00 26 31) 公共の場では「まるで機械のように」静かにすることも必要だよな。 テーマが「躾」なんだし試験でなけりゃ残り3匹も生き生きしてんじゃないの? 野生児マンセー☆彡は後味悪い。 -- 名無しさん (2009-07-12 15 23 36) 躾けって難しいですね。 そんな描写を細かく描いていて、個人的にはGJでした♪ -- 名無しさん (2009-07-13 13 15 38) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1246.html
「ゆっくりしていってねーゆっくりしていってねー」 別にゆっくりが言っているわけではない、ここはゆっくり加工所 牛や馬の厩舎のようなつくりの中で、ここ幻想郷で現れた謎のイキモノ ゆっくり種を加工するところだ ゆっくりたちは驚くことに「生きている饅頭」とでもいうもので 食事や生殖を行い、しかしその体はあんまん肉まんクリームまんなどの饅頭である 「「ゆっくりしていってね!」」 多重音声で答えるゆっくりたちに野菜クズや草などを与える ここはゆっくり霊夢、魔理沙、アリスなどを混成で育てるという場である 広さは10畳程度、地面は土でところどころに鶏を育てるような小屋がある 屋根と網で囲いがしてあるのは内部の逃走を防ぐ役割の他空から迫る捕食種のゆっくりレミリアに対する処置である 数人の男たちがそういういかにも動物の餌を振り撒きつつ、口にする言葉は 「ゆっくりしていってねーーゆっくりしていってねー」 念仏を唱えるように続けるとゆっくりたちがそれに続いて 「ゆっくりしていってね!」とつづけながら撒かれる餌に飛びつく 「うわっ」 そのうちのある男が足元に当たったものを見つけて飛びのく 金色の髪のゆっくりが地面に突っ伏している 「これはゆっくりアリスか、死んでるぞ」 持ち上げると、その顔は強張っており口からぼろぼろと土がこぼれる 「おおこわいこわい」 側に居たゆっくり霊夢と魔理沙が目を細め、体を寄せ合うと なんともうさんくさい表情でそんな言葉を吐く 「こいつどうしたんだ?」 普通、動物を飼ってる厩舎などでは死んだ動物の死因を突き止めるのは人間の仕事だが ゆっくり種の場合は他のゆっくりに聞けば返ってくる、その点は楽だ 「とかいはだから、ほどこしはうけないんだってー」 「あんたたちよくそんなのたべれるわね、とかいってたぜ」 「都会派?なんだそりゃ」 くだんのゆっくりアリスを持ち上げ見てみれば随分とほおがくぼんで髪などの色艶も悪い するとふたたび「おおこわいこわい」をはじめた2匹をぽんぽーんと蹴り飛ばし 年かさの男が近づいてきた。 2匹は「ぷんぷん」と怒ったが少し遠くに餌を投げるとすぐ忘れたように追っていった。 「ゆっくりは死んだやつあざけるのが腹がたつがやー」 少し年かさの男は訛っている 「アリズは外で知恵をづけっど、それにとらわれるんだなや、餌のえりごのみしやる」 「そうなんですか」 「動物のながには鳥とかのう、野性のもんをかおーとすっと、出される餌くわんとしんでしまうやつもおるけどのお、なんかそゆのとはちがうみたいやの」 訛りは幻想入りした日本語のため、分かりにくい部分もあるが 彼は元猟師、要するに習性か、プライドとでも言おうか、ゆっくりアリスは他のゆっくりたちより自分が特別でないと気が済まないという種であるらしい それでも孤立して暮らしていくには種として脆弱過ぎるため群れなどを利用するわけだが ある程度バラバラの群れを渡るようにして暮らせる野生ならともかく、いや野性でもそうなのかもしれないが 自分を精神的上位に置くという、そんなことを気取ってみても少なくともこの場では餌も居場所も一律のものが与えられている、群れはこの厩舎内のすべてのゆっくりでひとつで野性でもゆっくり種にどれだけの格差をつくりだせるものか、その結果現状を否定しつづけるうちに衰弱して死んでしまうようだ 「こいつら全部ココ生まれだぞ?どこから都会派なんて概念を知ったんだ?」 「つっても親は野性のもんやろ?親が教えたんかもしれん、そうでなくてもカラスはカーとなくげんどもな、ハハハ」 他方に餌をやりに行っていた、比較的がっちりした体型の男がゆっくりアリスを抱えて脇に挟んでと合計3匹ほど抱えて来る 「ありすはとかいはだもの、とくべつあつかいはなれてるわ、えすこーとはまかせるわ」 ゆっくりアリスはなんだか口々に若干甲高い声で喋っているが 解せず男は言う、ゆっくりは言葉は通じるが考えが狭く自分勝手で会話は疲れる 「どうします?アリス種はまた数を減らしてるみたいですよ、餌を食わない以外にどうも喧嘩を売って殺されたり、発情時の危険を知ってるらしい成体にやられるようですが」 「うーん、ここは自然から獲ってくるのではなく、できるだけ自然に近い味のゆっくりを人の手で育てられないかということでやってる厩舎だからなあ、だから種別もばらばらでやってるわけだし」 いわゆる地鶏ならぬ地ゆっくり(じゆっくり?)だろうか ふとゆっくりアリスを踏んだ男が見やると 用意した障害物の切り株や小屋の影に数匹の金色の影が隠れたのが見える ああ、と何か理解してがっちりした体型の男に抱えたアリスらを離すように目線を送り 答えてその持って来られたゆっくりアリスが放たれる 他のゆっくりが「うめ!めっちゃうめ!」などと餌に夢中なのに対して 「まあ、わたしはべつにどうでもいいんだけど、わたしのどこにそんなみりょくがあったのかしら、まったくわからないわ、ふふふ」 と誰ともなく自慢?をしているようだ もちろん食べるのに夢中で相手にしているゆっくりは居ない その3匹以外のゆっくりアリス以外は・・・ 餌も食べずじっとりとその3匹を見てる。苦渋の表情を浮かべたのは人間である 「同士打ちもするようだな、こりゃ」 「すみません」 がっちりした体型の男はその身を縮めてしまう ゆっくりアリスを踏んだ男はいいよと返しながらそのがっちりした男に向かって述懐する 「野性でもあの旺盛な繁殖能力でゆっくりアリスの数が少ないはずだ、ゆっくりアリスの群れの外からの視点が、いわゆる群れの思考の凝固を防いでいるようなところもあるんだろうが 脆弱なゆっくりなのにこんなに群れに馴染まない性質をもつとは頭が痛いな ゆっくりパチュリーなんざこんな実験段階の厩舎にまわってこないし こりゃあ、発情で全部ゆっくりアリスになるとかの状況の前にゆっくりアリスが死滅してしまうぞ・・・ゆっくりアリスだけ餌を特別にやるとか何か考えないと」 「さすが元学者さんはゆっくりに詳しいですね」 がっちりした体型の男が賞賛の言葉をかける、元学者という男は頬を掻くが じっとゆっくりアリスを観察しながら年かさの猟師の男が言う 「いや、それはあかんやろ」 「そうですか?」 「いくらゆっくりでも特別扱いしたら不満に思う、フリだけで本当は皆と同じものしか食わさないとしてもなあ 牛や鶏でもそうなんだから、ゆっくりがそうでないという保障もねえや そういうことばっかりめざいといような生ぎもんだしな あとゆっぐりありすはどうもこうやって飼ってる以上は増えないようだど?」 元学者の男は目を見張ってゆっくりアリスを見やる ちょうどまださっきの特別扱いされたと思っている3匹のゆっくりアリスが 誰にも聞かれてない自慢を、ほぼ涙目になりながら続けているおかげでほかのゆっくり種はともかく、ゆっくりアリスは全部動かずにじっとり目線を送り続けている、すばやく数を数える 「本当だ、減ってるけど増えてない、ゆっくりアリスは繁殖すると子が全部ゆっくりアリスになるとか5分5分じゃなくて半分以上の子がゆっくりアリスになるというけど」 「普通は動物っていったら取れる餌が多くなって増えすぎるもんだが ゆっぐりありすはどうも取れる餌が少なくなると、群れを圧倒するために増えるよだな なんともはや」 どうもゆっくりアリスは、自分のためだか意図せずか、自分で自分で命綱のはずの群れの生態バランスを崩しにかかりすらするらしい 元学者という男があきれたようにゆっくりアリスを見やる そろそろ、三匹のゆっくりアリスたちは無視を続けるほかのゆっくり種に偶然をよそおって体当たりし注目を向けさせようとしているようだ、返り打ちにあって踏みつけられた。 「なんでこいつら野性で生きていけるんだ」 思わずこぼした言葉にがっちりした男が身を縮めながら答える またゆっくりアリスが減らないかと気が気でないようだ 「たぶん人間の顔と言葉を持つからだと思います。熊とかでも歌いながら歩くと襲われないといいますし、で妖精や妖怪が避けるのは・・・」 男は大柄な体をさらに縮めて言葉を続ける 「たぶんその人間のなかでも特別な顔に似てるからではないかと・・・」 学者の男は肩をすくめる たいてい妖怪同士が繰り広げる弾幕勝負は死と隣り合わせの幻想郷の神秘、娯楽だが それに参加できる数少ない人間、その人間の顔をぎゅっと潰して中途半端に膨らませるとゆっくりたちの顔になる、どうも本人たちは不本意のようで口にするのも失礼なようだが それでゆっくりたちが生き残ってるというなら、毒蛙のふりをする無害な蛙や毒蛇のふりをする無害な蛇のようなものだろうか 「わしも猟師の仕事があがったりじゃけん、でかせぎにきとるんよ たいていの動物は人間の声で逃げるでの」 思考の海に沈みかけた元学者の男に別方向から声がかかる 「おーいまたやってるぞー」 男が瞬間で思考から戻り、顔を上げ声の元にいく 「ここはれいむのおうちだよ、じゃましないでね!」 「またやったか」 厩舎の端に餌やりの全員、総員6名がそろっている それほどの事件とは 「おまえら言っただろ、それはダメだって」 「あそこはダメになったからここにしたんだよ?ゆっくりでていってね」 主張によると場所を変えたからいいだろうということらしい そこには通称十分育ったお母さんゆっくりこと、ゆうに1m以上の大きさのゆっくり霊夢が半分ほど土に埋まって鎮座していた。 絵面はどうもユーモラスだが、またやらかしたこととはその掘った穴のことだ 「ここでは穴を掘るのはやめてくれと言っただろう」 「しらないよ!ぷんぷん、あかちゃんたちがゆっくりするためにひつようなんだよ、れい むのうちだよ!ゆっくりさせてね!」 「お前が産んだ子は加工されて居ないよ、それは未熟だから代理母を頼んだだけなのに」 「ゆ?わかんない、ここはれいむとあかちゃんたちのいえだよ!」 「ていうか3日前に来たやつだろコイツ、まあ大した母性本能だな」 話は平行線である 元学者の男だけが無言でその様子をみていた。 なんとそのゆっくり霊夢は今も土を食べて穴を掘っているのだ 「はぐはぐはぐ、むーしゃむーしゃ」 「掘るんじゃねえ!」 職員の全力の蹴りが飛ぶ そういえば食事をえり好みするくせに排泄をしないゆっくり種は、代わりにありえないほどの回復能力を持ち、形態としては単細胞生物や植物に近いと永遠亭の研究結果があるが 「ていうか、こいつら餌って土でもいいんじゃねーの?」 「いや、まあ一応は食料となるもの以外を食わせると回復力も味も落ちる一方なんだがな、そもそも普通は口にしようとしない」 さっきまで餌やりをしていた立場からすれば土などを食われてもということだ 土を穴を作るほど食うなどミミズのようである 「どうも子供が居ると一定の場所、巣を求める性質のようです。」 「熊とかといっしょだなや、しっかしそんなしょっちゅう穴も掘っとれんだろに」 「大きい固体ですからね、ココ育ちで経験は無いはずですが・・・本能でしょうか」 一人の男がボロ布を手に巻いて無造作に穴掘りを続けるゆっくり霊夢の下に手を突っ込む 「ゆっくりさせてねッ!!がじ!」 「あーこれだけ大きいと流石に噛まれると痛いねー」 そんなことを言いつつ何事も無く、口を取っ手か何かのように基点にして担ぎ上げると穴から出す。皆心得たもので数人で踏みつけて穴に戻るのを阻止する 「れ゛い゛む゛のおうちーーー!あかちゃんたちがーー!」 「「ままー」」 「あーはいはい、とりあえずもう穴はやめろよ何度やっても無駄だ」 足蹴だ、蹴飛ばすように足で穴からちび霊夢たちを蹴り出す。 「ぷんぷん、おにいさんはゆっくりできないよ、ゆるさないよ」 「あーはいはい、その頭で明日まで覚えてられるなら憶えてろよ、俺は今日はこれで上が りだ、メンバーかわんねえのに誰の顔も覚えたことなんてねえだろ」 「ひどいごとされると顔憶えるが恩義はすぐに忘れるみてーだなや、犬猫と逆や」 「回復能力が高く雑食だから恩義で懐くより利用に頭が向いてるんだろ」 ボロ布を巻いた男に声がかかる 「噛まれて平気なんですか?」 「あーどこまで大きくなってもこいつら噛む力は人間並みだから、普通そんなに噛む力が 強い動物は口がアゴから出てて噛むのを得意とする形状してるだろ、犬とかな こいつらは人間の言葉を話せる代わりにそのへんが弱いのよ、だから餌も食い散らかす 本来は虫とかの一口大の大きさのものを丸ごと食べるか、柔らかい草木をむしりとるよ うに食うんだ、それしか出来ないというのだろうがな」 「だが餌をいちいち一口大に切り刻んでというのは手間がかかる」 「動物が硬い獲物をぐうときは首をこっ、こうやって捻ってちぎるんだども、こいつら首ねえしなあ、顔が地面にめりごんじまう、ハハハ」 「ゆっくりが信条だから食事も楽しむようだしな、むーしゃむーしゃしあわせーってか」 「鼻がないから噛んでも長時間保てないとかも聞きます」 「とりあえず食事のことはいい、この穴だ」 皆はしげしげと穴を眺めた。 太い穴には小さな横穴が掘ってあって、そこに小さなゆっくりがおさまっていた。 小さなゆっくり霊夢が食べて掘ったらしい、このおうちとやらは完成すれば、入り口から直径一メートルの穴が続き奥で小さな分岐がいくつかある、キツネなど巣のようになったはずだ、聞くところに寄ればそういう動物の巣などを怒鳴って追い出し占有するとも聞く 動物だけじゃなく人間の家すらそれをするらしい とりあえずゆっくりを全部巣穴から放り出し、目の前の問題としてはこのゆっくりの巣穴は埋め戻しが困難なことだ、掘った土が無い 「野性だと口に含んで吐き出して掘るそうですが、それをしないのは餌が十分あるからでしょうね、捕食種も居ないから体力が落ちても襲われる心配がないというのもあるでしょう、どうしますか」 「あーあのへんな道具屋の一輪車とやらを買えばよかったー」 「結構手間ですよ、もう何回目でしょう・・・」 「やれやれ・・・」 ほおっておけば厩舎が崩れかねない、穴に落ちてごく小さな種が潰れて死んでも困る そもそも一定のテリトリーなどを許せば、排除行動も行うだろう 前提とした厩舎のつくりになってないという人間側のミスの問題もあるだろうが・・・ ずーんと暗い空気のなる人間をよそ目に一匹のゆっくり魔理沙が巣穴に飛び込んだ 「ここはまりさのおうちだよ!でていってね!」 「ちがう!れいむの!」 相撲取りが太ってると強いという論理でゆっくりの大きな個体は強い 体全体の押しつぶしや体当たりは、その個体より小さな個体はほぼ圧倒する その分大きくなるほど動きは鈍くなる、高く跳ねることはできないし小回りも効かない 足が無いからふんばりが効かず動物や人間などを押し倒すことなど不可能だ、よほど地面に伏せている、寝てるなどと身を低くしているところに押しつぶしを食らえばそれなりにダメージはあるだろうが しかしどこまで行っても体は饅頭で攻撃法もそれ以外無い、飛び跳ねる足音?も相当響く野性では動物はそれで存在自体を避けるようだ つまり、どんなに大きくてもやっぱり人間に足蹴にされて簡単に排除されてしまうわけだ 「いたいよ!せっかくまりさのおうちになったのに」 「あーおら!貴様自分で掘るのはダメでも他人の掘ったのを奪えばいいって腹だな」 「おにいさんがんばってね!れいむのおうちをまもって!」 「あー!!守らねーよ!ここは埋める!誰の家にもしねえ!」 「小屋もあるけど体が入らないのか、もっと大きな小屋が要るのかなあ」 「これ以上おっぎな家となるとぉ、牛が飼えるようになるぞハハハ」 「この場所では無理ですね、この大きさのゆっくり霊夢はまだ3匹くらい居る、元は交配用の処分物を幼児種の育成にもってきたのにどんどん大きくなって」 「餌がいいのかねえ、それとも運動が足りないのか」 「こいつら成長はしても肥え太るというのは聞きませんけどね」 ふと会話は止まり、視線はずっと無言の元学者の男に集まった。 彼はここの責任者だった。 「・・・」 元学者の男は考え、そして端的に言った。 「ここの育成は問題があるから最初からやり直す」 他の五人からはため息とともに嘆息の声が漏れた。 「そして自然のままに育てるという目的は果たされていないため、全部商品にならない 品質のため全処理を行う、撤収」 巣穴はなんと手近な小屋をひっくりかえして突っ込むというぞんざいな方法で埋められ 「れいむのおうちがー!」「まりさたちのおうちがー」などという被害の声を無視し 人間は全員が厩舎から出て行く 「ゆっくりしていってね!」 ゆっくりはさようならもそんな言葉だ 人間皆が哀れみの表情を浮かべているのに気づかない 夜はほどなくして訪れた。 厩舎の明り取りに程度しか開かないはずの天窓部分が全開に開き 人間の声がさっきの地ゆっくりたちの厩舎の天井からする 「はい、う゛っう゛ーはい、う゛っう゛ー」 薄い天井を歩き回る人間の足音にいぶかしげに天井をみやるゆっくりも居るが 大抵は睡眠欲のほうが勝って眠りに入る、すっかり警戒心を失っているのだ それに人間でない子供のような舌足らずの声が返る 「う゛っう゛ー♪」 ここで俯瞰してゆっくり加工場全体を見てみよう 加工場は広く、その施設の中でも鉄の骨組みに編んだツタなどの網で数本の木を丸ごと包んだ、巨大な鳥かごのような施設がある その鳥かごは四方八方に腕のようにトンネルが厩舎の格施設の天井に繋がっているようだ。これが現代ならそのようなものを空調の配管などと答えるところだが空調などではない、そのトンネルは直径一メートルを越えた太さで金属の網製だからだ 「「う゛っう゛ー♪う゛っう゛ー♪」」 処理が開始される 捕食種ゆっくりレミリアが食べるのは他のゆっくり種 加工場では加工に回されないゆっくりをトンネルをつたってその厩舎に行って食べる 要するによほど特別に育てられてる種でないかぎり他ゆっくりの処分に使われてた。 これは工場部の逃走したゆっくりの駆除などにも使われているシステムだ やっと地ゆっくりたちが天井からやってくる天敵に気づく 「まりさはみないこだね?ゆっくりしていってね」 「なあにーれいむねむいー」 「とかいはのありすはりゅうこうにびんかんよ、と・ともだちになってあげてもいいわ」 「「ぎゃお~たべちゃうぞ~♪」」「「う゛っう゛~♪」」 ゆっくりたちは夜目が利かないらしく気づかないようだ もう天井を埋め尽くすほどゆっくりレミリアの大群が存在するのに よたよたぽとんと、とても他の鳥と比較するには無様な様子でゆっくりレミリアが降りる そこにゆっくり魔理沙が近づいた。 「しんがおか?ここはうまくはないがたべものもあるし、ゆっくりしていってね!」 「がぁお~♪う゛っう゛~♪いただきまーす」 「えさはにんげんがもってくるんだぜ?」 会話は成立せず、ゆっくり魔理沙のもちもちのほっぺは半分欠けた。 「むーしゃむーしゃ、う゛ーでりしゃーす♪」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛な゛なんでこんなことするのお゛ーーーー!?」 「おいっしーよ、まりさおいしー♪」 ここに至っても双方にコミニケーションは無かった。 再び牙か八重歯だかの見える口でゆっくりレミリアがゆっくり魔理沙の頬にかぶりつく 「や゛め゛でぇぇぇぇたべないでーーー!ゆっくりできないよお゛ーーー!」 振りほどくようにゆっくり魔理沙がその場で身を翻すと、伸びたほっぺがぶちんと切れた。 「まりざのほっべち゛ぎれ"たあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 ぽろぽろとみずみずしく光る餡子が落ち、すかさずゆっくりレミリアが舌で舐め取る 「もーぐもーぐ、しあわせー!う゛っう゛ー♪」 「まりさしあわせじゃないー!ゆっくり゛できない゛ーーーーーー!」 目の幅涙を流しながら訴えるゆっくり魔理沙の声は無視されて今度は帽子が奪われる ゆっくりレミリアには、いわゆるゆっくり種の特徴、飾りを食べ残す種も居るが 「むーしゃむーしゃ、おつなあじーう゛っう゛~♪」 このゆっくりレミリアは好き嫌いが無いらしい 「やめ゛て、やめ゛て、やめ゛て、やめ゛て」 その後も会話は成立しなかった。 頭が欠け、目が片方欠け、口が半分になるころには声も出なくなり ゆっくり魔理沙はすべてゆっくりレミリアの食事となってゆっくりと腹?に収まった。 そんなことが厩舎の全域で起こっていた。 巨大なゆっくり霊夢は数匹のゆっくりレミリアにたかられ、バラバラ千切られ 逃げ回っていた小柄なゆっくり魔理沙はちょうどジャンプの頂点で噛みちぎられ落ち 口八丁でゆっくりレミリアに取り入ろうとしたゆっくりアリスは会話を解されず 「とかいはのありすにはあ゛りえないよー」などとのたうちまわりながら食われ 小屋に逃げ込んでも、小屋はこの処理を前提にして壁が丸ごとない構造 そもそもゆっくりが入れる小屋にゆっくりレミリアが入れない道理もなく 小屋に逃げたゆっくりは小屋で二人きりゆっくりと捕食されることになった。 厩舎の乱痴気騒ぎはそれだけでなく、必死で背中に子供を隠そうとするあまり押しつぶし殺してしまう母親や、危機に瀕して本能が目覚め、自滅必至の幼生種に交配を強要するゆっくりアリスや「うふうふふ」などと友か親かの死滅に現実逃避し笑い続けるゆっくり魔理沙など ゆっくり朝日が昇るころには全ての種が、文字通りゆっくり消えてなくなった。 「はい、う゛っう゛ーはい、う゛っう゛ー」 天井が叩かれるとゆっくりレミリアはよたよたと飛んで鳥かごの自身の厩舎に戻る 大抵のゆっくりレミリアは夜行性、太陽で消えてなくなるなどという種も居るが太陽は苦手で共通している、が苦手とするわりに遮光の程度は木陰に居る程度でかまわなかったり日傘があれば大丈夫だったりもするのでそのへんはゆっくりらしくぞんざいな作りである 「う゛っう゛~おなかいっぱーい♪」 「はいはい、おじょーさま巣に帰ってね、おねむの時間だよー」 ゆっくりレミリアの飼育員が処理に使った個体全ての帰還を数で確認し天井を閉じた 厩舎には大量の食べかけの饅頭のかけら、そして帽子やリボンなどの飾りが落ちている 朝出勤した別の職員が熊手などでそれもかき集め、他の捕食種ゆっくりゆゆこやゆっくりレティなどの食料とするのだ、そしてしばらくの時間が流れる 「ここがれいむのおうちなんだね」 「そうだよ、ここが新しいおうちだよ、ゆっくりしていってね」 「うんゆっくりしゅるよ、ゆっくりちていってね」 小さなゆっくり霊夢は手のひらからぴょんと飛び、その場所がひとめで気に入った。 母親が居ないという異常事態が依然存在するはずだがゆっくりブレインは忘却を選択 板張りの床に遊具、彼女にぴったりの大きさの小さなおうちに水のみ場 そこに同じくらいの大きさの黒い帽子のゆっくりが近づいてきた。 「ままーままーまりさのままはどこー」 「ゆゆ!あなたはゆっくりできるちと?」 どうも同じく幼いまま親から離されたゆっくり魔理沙のようだ 「ゆ?れいむいがいのゆっくり?ゆっくりちていってね!」 「ゆ?だれ?あ!ゆっくりちていってね!」 本能に刻み込まれたゆっくりしていってねは舌足らずでも通じあいきゃっきゃと騒ぐ 幼くストッパーの親も居ないゆっくりブレインには危機感の三文字は遠いことだ 「名づけるならば幼稚園方式、またの名を紅魔館方式」 腕組みしてつぶやく職員の横から次々に厩舎に放たれるゆっくり種は全部幼生体のみ 処分に対しては上の許可が下りたが厩舎は拡張が効かなかった。 そこで敵が居ない、餌が豊富という厩舎の状況を逆手に取って厩舎を広くできないならば小さなゆっくりたちを飼えばいいという考えである この第一陣以外に同じような幼生体ゆっくりを継ぎ足し継ぎ足し追加し成体になった個体からじゅんぐりに加工に回すという育成計画である 「ありしゅはありしゅだよ、ゆっくりしようね」 「いいよれいむとゆっくりしようね」 職員の一人がふとつぶやく 「これが牛とかならこんな簡単に処分というのは無いでしょうね」 「ゆっくりのサイクルの早さがあればこそだな、抱えるほどの大きさとなるとそれなりに 時間がかかるものだが茎式の出産では即座に喋れる個体が出来る」 「どうだか、外では狩りもせんと肉を食えるていうからのぉ・・・」 ふとある個体が彼女らにとってはとてもとても広い厩舎の端に、板の下に違和感を感じた。 「おにーしゃーんおにーしゃん、れいむのおうちのここへん」 「ここって?どう変なんだい?」 期せずしてその職員は数ヶ月前に同じ厩舎でゆっくりアリスを踏んだ元学者の男だった。 「おこえがしゅるのーへんだよーきょわくてゆっくりできないよー」 「はいはい、おい食事を与えて集めろ前に穴があった所だ、埋めたぞ?・・・それに声?」 さあ食事だよーと餌が撒かれる、餌やりの文句は 「ゆっくりしていってねーーゆっくりしていってねー」 「ここか」 数人の職員がその厩舎の端の板に集まり、がっちりした体型の一人が板に耳を当てる 「しますね、なんか声します。」 「あー?なんだなんだ一体、こりゃ恐怖物語の一説か?」 手早く板が外されると円形にそこだけ色の違う土が見える その色の違う土の一部がなんだかもこもこと動いてる 「ぷは!おそとだーすっきりー」 「すっきりー」 ゆっくりのあらゆる状態を見てきて慣れている職員でもぎょっとしたのはその土から出てきたゆっくり霊夢?が輪をかけて異常な姿をしていたかだ 「おじさんたちはごはんをもってきてくれるひとだね、れいむはおなかすいたよごはんもってきてね、れいむはゆっくりできないよ」 「れいむもこんなのばっかりたべてたからべつのものがたべたいよ、れいむのぶんもはやくもってきてね」 「泥団子だ」 職員のつぶやきが正解である、そこには赤いリボンを付けた黒髪の・・・ゆっくり霊夢型の泥団子が鎮座してゆっくり霊夢のように喋っていた。 「ぷんぷん、れいむはどろだんごじゃないよ、しつれいしちゃう」 「ゆ?」 片方の個体が片方の個体を太陽の下でしげしげと見やる、泥団子である 「よごれてるよ?れいむがきれいにしてあげるねぺーろぺーろ」 「あは、くすぐったいよ」 「あーなんだ汚れてる・・・だけだ・・・よな?」 舌まで砂色の片方のゆっくり霊夢が、もう片方のゆっくり霊夢を舐める さらさらと舐められたゆっくり霊夢からは砂が落ちて下からはもちもちの真っ白な饅頭皮ほっぺが・・・出てこなかった。舐めても舐めても泥の塊 「おおおおおかしいよ、れいむのかおおかしいよ?」 「ななななんんなのれいむのかおなんなの?」 「ちょ、ちょっと穴を見てください、あ?うあ!」 穴を覗き込むと相当深い、別の職員が底に手を突っ込むと肩まで入っている 最後のあ!はあちこちに支道があるようでそれを踏み抜いて職員がつまづいた声 そして掘った土は無い 「君たちいったいどうしたんだい?」 分からなければ本人?に聞いてみればいい、ゆっくり飼育の基本である そして聞いたところによると 夜に眠っているとう゛っう゛ーと唸るへんなのが来てお母さんがおうちで塞がっていたおうちに押し込んで土を食べて食べてといわれたので食べまくっているとそのうち静かになった。 どうやらあの処分の前の日に穴を掘った一メートル越えのゆっくり霊夢の子だったらしい ゆっくりレミリアから守って親が土の中に生かしたようだ 「余計なことを・・・」 「れいむたちどうなったの?」 「俺が聞きたいよ」 時間的にはその処分から1ヶ月が経っている 次の計画の実行のために厩舎には板が張られといろいろやってるうちにどうやら土の中という環境に馴染んだ固体になったようだ、話からすると土だけじゃなくミミズなども食べていたということらしいが子供の個体というのが環境の適応能力の柔軟性を持たせたのか これがホントの地(面の下で生きられる)ゆっくり 「まあ要らないな」 「れいむいらないこじゃないよ?!」 どっかの3姉妹の定型句か 「2匹居るのは好都合だ永遠亭行きだな」 「えいえんていってなあに?」 「ゆっくりできるところだよ、ああゆっくりできるだろうさ、死なない人間が相手だ」 「ここじゃないところでゆっくりできるんだね?ゆっくりしていってね」 無邪気に笑う、名づけるとすれば泥団子霊夢2匹は早々に退出される 「穴は板を張れば全然大丈夫です」 「なら予定通りに育成が始められるな」 加工場の本当の地ゆっくり育成はこれからである 泥団子霊夢が永遠亭でどうなるのかそれはまた別の話 byアンバランス このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/127.html
ゆっくりという種族が幻想郷に突如蔓延して、どのくらい経っただろうか。 畑を荒らす害獣として駆除されたり、加工所というところでお菓子にされたりするくらいには、既に浸透していると思う。 中には俺のように、ペットして飼うものも少なからず存在していた。 「今帰ったぞ~」 「ゆっ!」 仕事が終わり、帰宅して扉を空けると、部屋の真ん中に鎮座していた生首が声を上げて駆け寄ってきた。 赤いリボンが特徴的な、ゆっくり種の中でも一番数が多いとされるゆっくり霊夢だ。 博麗の巫女によく似た顔で(と言うと、霊夢さんは怒るかもしれないが)、性格は基本的に温和で純粋無垢。 それ故にトラブルを起こすことも多々あるのだが……まぁ、その話はもうちょっと後で。 「ゆっくりしていってね!」 仕事で疲れてる俺に対する労いの言葉――ではなく、単にこいつらの口癖なのだが、兎にも角にも癒される。 可愛いなぁ、くそ。 俺の友人たちはよくこいつを買って食べているが、正直薄目に見れば人の顔そのものであるこいつらによく噛み付けるものだ。 しかも食う時に痛々しい叫び声上げるんだぜ? 悲痛すぎて言葉が出ない。 友人曰く、「お前もその内分かるようになる」らしいんだが……そういう日が来ないことを願う。 「待ってな、今晩飯作るから」 「ゆっくり待ってるね!」 ぴょんぴょん飛び跳ねて晩飯を心待ちにしていることをアピールするゆっくり霊夢。 うぅん、ぷりちー。 気持ち悪がる人もいるが、俺にとっては可愛いペットだ。 晩飯を食べ終わると、読書タイムとなる。 最近友人になったパチュリーさんから借りた本を読みながら、まったりとした時間を過ごす。 ゆっくり霊夢は何をするでもなくぼーっと、たまにぴょんぴょん部屋を飛び跳ねて、「ゆっくりしてるね!」と言っていた。 ゆっくりの声には癒し効果でもあるのか、意識を阻害されることなく読書に集中出来る。 やがて切りのいいところで本を片付け、ゆっくり霊夢と遊ぶことにした。 「ほら、取って来い!」 「ゆ! ゆ!」 フリスビーを家の壁に穴を開けない程度に軽く投げ、ゆっくり霊夢に取って来させる。 ゆっくり種はその口癖と名前から勘違いされがちだが、飛び跳ねたり、野原を駆け回ったりと意外とアクティブな存在だ。 だから運動不足にならないよう、こうして遊んであげる必要がある。 俺が仕事に行ってる間に外に出してもいいんだが、もし野生のゆっくりアリスやゆっくりれみりゃと遭遇したときのことを考えると……駄目だ、放し飼いは認められない。 「取ってきたよ!」 口にフリスビーを加えたゆっくり霊夢が戻ってくる。 「おう、偉い偉い」 ゆっくり霊夢の頭を撫でてやると、ゆっくり霊夢は嬉しそうな顔をした。 その顔を見ていると、こっちの頬まで緩んでくる。 ……それと同時に、ある感覚が心の内より現れた。 「っ……」 「?」 不思議そうにこっちを見つめるゆっくり霊夢になんでもない、と首を振り、もう一度フリスビーを投げる。 せっせと追いかけるゆっくり霊夢を見つめながら、湧き上がる感情に戸惑いを覚える。 ――ゆっくり霊夢をいじめたい。 別に虐待をしたいわけではない。可愛いペットにそんな真似をしたくはない。 しかし、こう、なんというか……ううん、説明出来ない。 「ゆっくり取ってきたよ!」 再び戻って来るゆっくり霊夢。 俺は心のもやもやを打ち払うようにゆっくり霊夢の頭を撫で、そして振動させた。 「ゆっ!?」 小刻みにバイブレーション。 最初は驚いて逃げようとしたゆっくり霊夢の顔が、少しずつ赤らんでくる。 「ゆゆゆ、ゆー!! ゆー!!!」 甲高い声。時間の経過と共に、ゆっくり霊夢はどんどん発情していく。 荒んだ心を癒してくれる礼として、こうしてゆっくり霊夢に快感を与えてあげることは毎日の日課だった。 「……」 だが、今日の俺はなんとなく、手を止めてしまった。 中途半端なところで快感をストップされたゆっくり霊夢は慌てたように俺の手に擦り寄って、 「ゆ、ゆっくりして! もっとゆっくりしていって!」 潤んだ瞳で俺を見上げるゆっくり霊夢。 その視線を浴びて、 「……!」 何故か身体がゾクゾクする。 もっと見たい。 もっとこの目で見つめられたい。 「ゆー!!! ゆー!!! ゆー!!!」 だが、それと同時に可哀想だという感情も浮かび上がってくる。 俺は手をもう一度律動させ、ゆっくり霊夢を絶頂へと導いてやった。 未知の感覚に戸惑いながら、一週間が経過した。 臨時教師として慧音さんの手伝いをした俺は彼女と彼女の友人である妹紅さんと一緒にまったりとお茶を飲みながら歓談し、上機嫌だった。 「おーう、今帰ったぞー!」 扉を開ける。 ――瞬間、先程までの高揚した気分が嘘のように蒸発した。 俺はゆっくり霊夢に、家の中はどこをうろついてもいいから絶対に机の上には乗るなと言い聞かせてあった。 机の上には俺の大事なものがたくさん置いてある。 ゆっくり霊夢はそのことを理解したかどうかは知らないが、厳しく言っておいたので飼い始めてから三ヶ月、ずっと机の上に乗ることはなかった。 だが。 帰宅した俺を待ち受けていたのは机の上に鎮座してゆっくりと眠っているゆっくり霊夢の姿だった。 「……」 俺は机に近寄って、その惨状を目撃した。 綺麗に整頓されていた机の上は見事に荒らされ、物体のほとんどが破壊されていた。 アリスさんがくれた人形も、 妖夢ちゃんが作ってくれた剣神像も、 てゐから珍しく受け取った四葉のクローバーも、 幽香さんから頂戴した花も、 にとりさんと協力して発明したトランシーバーの試作機も、 みんなみんな、見るも無残に破壊され尽くされていた。 「……」 俺はどろどろとした心のまま、ゆっくり霊夢を起こした。 「ゆ……?」 とろんとした目を開け、俺が目の前に立っているのを認識するや否や、 「ゆっくりお帰りなさい!」 いつもの挨拶。 だが、俺の心はいつものように癒されはしない。 「なぁ、ゆっくり霊夢」 「どうしたの?」 「お前、なんで、机の上に乗ってるんだ……?」 「……ゆ!?」 俺の怒りのオーラを感じ取り、ようやく約束を思い出したのか、ゆっくり霊夢は慌てたように頭を下げた。 「ご、ご、ごめんなさいだよ!」 「謝るのは後でいい、理由を説明しろ」 「あのね、蝶々がね……」 ゆっくり霊夢が言うことには昼頃、窓の隙間から現れた蝶々を捕まえようと四苦八苦し、ようやく机の上で捕まえて食べ、そのまま眠ってしまったらしい。 あまりにも夢中で、俺との約束など「うっかり」忘れてしまっていたようだった。 うっかり。 それだけの理由で、俺の大切なものは破壊され、二度と元には戻らない。 俺はゆっくり霊夢を叩こうと腕を振り上げ、 「ゆーっ!!!」 目を閉じ、ぶるぶると震える姿を見て、静かに下ろした。 とんでもないことをしたとはいえ、三ヶ月間ずっと一緒に暮らしてきたペットだ。 暴力を振るうことは、俺には出来ない。 溜息をつき、ゆっくり霊夢を持ち上げ、そっと床に降ろした。 「ゆ……?」 「晩御飯にしようか」 ぱぁ、とゆっくり霊夢の顔が明るくなった。 「ゆっくり用意してね!」 先程の殊勝さが嘘のように、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを露にする。 「ふぅ……」 甘いな。 まったく甘い。 俺は、許してやるなんて一言も言ってない。 その日から、俺は帰りにある場所へ寄るようになった。 必然的に帰りは遅くなり、ゆっくり霊夢と遊ぶ時間はなくなる。 更に意識して朝飯と晩飯の量を減らしたので、ゆっくり霊夢は少しずつ文句を言うようになった。 「早く帰ってきてね!」 「たくさん遊んでね!」 「もっと食べたい!」 だが、俺はその声を悉く無視した。 少し胸は痛んだが、それでもこいつにはやったことの重大さを分からせてやらねばならない。 でないと、俺の怒りが収まらない。 俺のただならぬ様子を見かねた鈴仙さんから貰った精神鎮静剤を飲みながら、俺は準備が整うのを待った。 そして――三日後。 全ての準備は整ったのだった。 ゆっくり霊夢はまどろみの中にいた。 最近は自分の主人があまりゆっくりしてくれなくなり、寂しい思いをしていた。 だが昨日の夜、寝る前に彼は言ってくれたのだ。 「ここのところ、遊んでやれなくてすまなかったな」 「一週間の休暇を取ってきたから、ずっとゆっくり過ごそう」 「ご飯も今まで少なかったけど、豪華にするぞ」 「さ、今日は一緒の布団で寝ようか」 感激したゆっくり霊夢は、わくわくした気持ちのまま眠りに付いた。 一週間も、優しい主人とゆっくり出来る! だから、早く起きないと。 ゆっくり霊夢は寝返りを打とうとして――打てない。 「……?」 身体が動かない。 自分は今だ夢の中にいるのだろうか? なんだか息苦しい…… ゆっくり霊夢は静かに目を開いた。 「……!?」 そして映った光景に飛び上が――ることが出来ず、身体を震わせた。 自分の身体は、四角い箱の中に閉じ込められていた。 『んん゛っん゛ん゛ん゛ん゛……んん゛!?』 ゆっくりしていってね! 種族反射的にそう言おうとして、言えなかった。 自分の口に猿轡が噛まされており、更にその上からガムテープを貼られている。 周りは暗い。しかし自分の視点の場所だけ小さく四角い穴が開けられており、そこから外の様子が映し出されている。 そこには―― 「すぅ……すぅ……」 「ゆ……ゆっく……」 布団で眠っている、見慣れた主人と、ゆっくり霊夢の姿があった。 『ゆ!? ゆゆゆ!!?」』 混乱して喚くゆっくり霊夢、突然の事態に理解が追いつかない。 何故自分はこんなところにいる? 主人と一緒に眠っているゆっくり霊夢は何者だ? 「うぅん……」 と、その時。 主人が眠りから目を覚まし、起き上がった。 目をこすり、横で一緒に眠っていたゆっくり霊夢を見て―― ――惚れ惚れするような太陽の笑顔で、 「ほら、起きろゆっくり霊夢、いい朝だぞ」 『ちがうよ! そいつは偽者だよ!!!』 叫びたい。 しかし、その声は届かない。 やがて偽者のゆっくり霊夢が目を開き、開口一番、 「ゆっくりしていってね!」 「おう、ゆっくり朝飯にするか。昨日の約束通り豪華にいくぞ」 「ゆっくり作ってね!」 『待って! 気付いて!!!』 ゆっくり霊夢は泣きながら、自分と偽者が入れ替わっていることに気付いてくれと願う。 だが無情にも、主人はふんふんと鼻息を歌いながら台所に向かっていった。 『あ゛あ゛っあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!』 絶望が心を支配する。 だが、気付いていないのはゆっくり霊夢のほうだった。 これはまだ、始まりにすぎないのだと。 (見ているか、ゆっくり霊夢?) 俺は料理を作りながら、心の中でほくそ笑んだ。 一緒にいたのが偽者だということくらい、先刻承知している。 何故なら二人のゆっくり霊夢を入れ替えたのも、本物のゆっくり霊夢を閉じ込めたのも、全部俺だからだ。 (それがお前への制裁だ。ゆっくり楽しんでくれ) ぞくぞくするような背徳感を感じながら、意識して本物のゆっくり霊夢が閉じ込められている箱を見ないように努める。 ゆっくり霊夢は現在、透明の四角い箱に入れられ、更にその四方と天井をダンボールの壁で一枚一枚覆っている。 そんな面倒なことしなくてもそのままダンボールを被せればいいじゃないか、と思う奴もいるかもしれないが、まぁこれにはちゃんとした理由がある。 その理由は後ほど語るとして、偽者のほうを説明しておこう。 こっちのゆっくり霊夢は三日前、ゆっくり加工所に行って手に入れたゆっくりだ。 所員に事情を説明し、余っている預かり部屋を利用して仲良くなった。 こいつには一週間、俺の家で一緒に暮らせると伝えてある。 何か変なことを言い出さないかだけ少し心配だったが、流石ゆっくり、あまり深くは考えない性質のようだ。 俺は今から、この偽者ゆっくり霊夢を最大限にもてなす。 そしてその様子を、本物のゆっくり霊夢に見せ付けるのだ。 本来なら自分が得られたはずの待遇が、突然現れた自分の偽者に奪われる。 しかもその様子をまざまざと見せ付けられ、自分は食べることも、遊ぶことも許されない。 お仕置きとして、これ以上のものはそうそうないだろう。 さぁ、ゆっくり霊夢。 お前がどれだけのことをしでかしたのか、分かってくれよ? 『う゛わ゛あ゛あああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』 ゆっくり霊夢は絶望の淵にいた。 どれだけ暴れても、どれだけ祈っても、自分の置かれている状況はこれっぽっちも変化しない。 朝食は豪華な豚カツだった。自分は何も食べていない。 昼飯までの間、二人はゆっくり過ごしていた。自分はきつい箱の中で息苦しかった。 昼飯は二人でどこかに出かけていた。孤独感が自分を押し潰すようだった。 夕食まで、二人はずっと遊んでいた。自分はただ身体が痒いのを我慢しているだけだった。 夕食は今まで食べてきた中で一番美味しかったお寿司だった。でも、やはり自分は食べられなかった。 そして、 「ゆー……ゆゆゆゆゆ……」 偽者のゆっくり霊夢は現在、主人の手によって振動を与えられていた。 「どうだ? ゆっくりしてるか?」 「ゆ……ゆっくりぃ……してるよぉ……♪」 『ゆっくりしてない!!! れいむは全然ゆっくりしてないよぉ!!!』 ゆっくり霊夢は快感を与えられている偽者の姿を滝の涙を流して見ていた。 滂沱のごとく流れ出る溢れ出る涙。何故、自分がこんな仕打ちを受けないといけないのか? ゆっくり霊夢の頭の中に、既に約束を破ったことは残っていない。 「んほおおおおおおおおおお!」 偽者ゆっくり霊夢が絶頂を迎えた嬌声を聞きながら、本物ゆっくり霊夢はこれがいつまで続くのだろうと考えていた。 それから太陽が昇り、また沈み、そして再び昇った三日目の朝。 空腹で朦朧とした意識を抱えながら、ゆっくり霊夢をうっすらと目を開いた。 映る光景は変わらず、静かに眠る主人と、そして主人の腕を枕に眠る偽者。 ようやく暴れたり叫んだりして体力を消費することが愚かだと気付いたゆっくり霊夢は、呆とした意識のまま、事態が変わることを待っていた。 がさ……がさ…… (……?) ふと気付く。壁の右側から何か音がする。 一体何だろうか? 確かめようにも、壁があって何も見えない。 やがて偽者ゆっくり霊夢が起き出し、ぴょんぴょん飛び跳ねて主人を起こす。 「ゆっくり起きてね!」 「む……もう朝か……」 ふわぁ、と欠伸をする主人。まだ眠り足りないようだった。 「ゆっくりご飯作ってね!」 「おう……だけどその前に」 「ゆ?」 「待ってる間暇だろ? いい遊び道具があるんだ」 そう言って。 主人はゆっくりと、自分の方向へ近寄ってきた。 『!!!』 これは千載一遇のチャンスかもしれない。 ゆっくり霊夢はありったけの力で出来る限り身体を震わせ、自分がここにいることをアピールする。 『れいむはここだよ! ゆっくり探してね!』 やがて映るのは主人の足のドアップ。そして、頭上から声。 「えーと、これだこれだ」 得心したような声。 同時に、ゆっくり霊夢の右側の闇が、突如として払われた。 『……!?』 どうやら、右側の壁が取っ払られたらしい。 もしかしたら脱出の糸口になるかもと、ゆっくり霊夢は明るくなった右側を、 見た。 「――――――ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!?」 声にならない悲鳴。 閉じ込められたときよりも大きい、今までで一番の驚愕。 「ほら、蛙さんの人形だぞ」「ゆっくり楽しむね!」という主人たちの声も聞こえない。 何故なら。 そこにいたのは。 『うー♪』 『だずけ゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』 自分と同じく箱詰めにされ、自分と同じゆっくり霊夢を食べている途中の、ゆっくりれみりゃの姿だった。 (気付いたかな……) 俺は朝食の準備に取り掛かりながら、昨夜のことを思い出していた。 ゆっくり霊夢の起床・睡眠時間は、永淋さんに頼んで作ってもらった気体状睡眠薬で周到に設定してある。 それをゆっくり霊夢の死角から呼吸用に空けておいた穴に流し込んで、眠気を調節するのだ。 だからゆっくり霊夢が起きる前に俺は起床し、加工所で買ったゆっくりれみりゃを入れた透明の箱を隣にセット。 同じく加工所で購入したゆっくり霊夢を中に入れ、準備は万端というわけだ。 箱の大きさはゆっくり霊夢に使った二倍、ちゃんと食べられるスペースはある。 ちなみに都合上ゆっくりれみりゃの口は防げないので、こちらの箱は少し値段の張る防音処理だ。 更にその上に右側――いや、ゆっくりれみりゃから見れば左側か、そこだけ空けた箱を被せてある。 偽者のゆっくり霊夢がゆっくりれみりゃに気付いて怯えたりしたら計画が台無しだからな。 そして全てを終えた俺は先程まで眠っていたフリをしていたわけだ。 自分の天敵がすぐ傍にいる恐怖。更にそいつは自分と同じ顔のゆっくりを目の前で食べているのだ。それも、毎日。 それがどれだけの恐怖か、俺には分からない。 俺の都合上、ゆっくりれみりゃは一日一匹のゆっくり霊夢しか食べられないので、かりかりして目の前のゆっくり霊夢をどうにかして食べようと躍起になるだろう。 それが更に、ゆっくり霊夢を襲う辛苦となる。 ゆっくり霊夢はどうするだろうか。 怯えてぶるぶる震えるだろうか。 我を忘れて泣き叫ぶだろうか。 それを想像するだけで、俺は――たまらない高揚感を得る。 あれから何日経過しただろうか。 ゆっくり霊夢には、もう時間の感覚が存在していなかった。 毎日毎日、自分が過ごすはずだった幸福の日々を目の前で見せ付けられる苦痛。 自分を食べようと、いらいらした様子で飛び回っているゆっくりれみりゃの恐怖。 それが何も口にしていない空腹と身動きが取れないことの不快感とごちゃ混ぜになり、混沌と化していた。 『ゆっくり……したい……』 考えることはもはやそれだけ。 些事を考える余裕など、今のゆっくり霊夢にあるはずもなかった。 「美味しかったなぁ、ゆっくり霊夢!」 「ゆっくり美味しかったね!」 ゆっくり霊夢が食べたことのない、ブ厚いステーキを食べ終わって、主人と偽者ゆっくり霊夢は満足した様子だった。 ステーキ。幾度となく食べたいと主人に言い、その度にあしらわれて食べる機会のなかったステーキ。 本来なら自分が食べていたはずの、ステーキ。 ゆっくり霊夢の中に偽者への憎悪が込み上げ、だがすぐに虚脱感に襲われ萎んでしまう。 もう、何をする気にもなれなかった。 右側には未だにゆっくりれみりゃが自分を食べようと、ぱたぱた飛び回っている。 壁がある限り襲ってこないとは分かっていても、本能的な恐怖は拭い去れない。 もう、ゆっくり霊夢の精神はボロボロだった。 「さて、遊ぶか」 「ゆっくり遊んでいってね!」 「そうだ、今日は面白い玩具があるぞ」 「本当!?」 「おう。ちょっと目隠しするぞ、楽しみにしておけ」 「ゆっくりわくわくするね!」 食事の片付けが終わった主人は、偽者ゆっくり霊夢に目を布で縛っていた。 そして、本物ゆっくり霊夢の方向に歩み寄る。 『……!』 主人が自分の方に近付くのは、どれだけ久しいことか。 ゆっくり霊夢の中に、淡い希望が芽生えた。 もう身体を震わせる体力は残っていない。 ただ、主人が自分を見つけてくれることを祈るだけだ。 「えーと、何処だったかな……」 しかし、主人は期待も空しく、ゆっくり霊夢の死角へと移動してしまった。 希望が潰える。しかし、落胆する体力すらない。 自分の左側からがそごそという音。 結構時間がかかっている。 「お、あったぞ!」 ようやく主人が喜びの声を上げた。 と、同時。 いつかのときと同じく、ゆっくり霊夢の左側の壁が取っ払わらわれた。 反射的に、視線がそちらへ泳ぐ。 そして。 また、いた。 『れ、れれ゛い゛むぅぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛ううぅ゛ぅ゛!!!』 『ゆ゛! ゆ、ゆゆゆゆ゛っく゛り゛し゛て゛ぇぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!』 発情し、顔は真っ赤にして目を血走らせたゆっくりアリスと。 そのアリスに襲われ、世にも恐ろしい顔で絶叫を上げる同種のゆっくり霊夢の姿があった。 『…………!!!』 世にも恐ろしい光景に、悲鳴を上げることも出来ず、咄嗟に目を逸らすゆっくり霊夢。 だが逸らした先には、 『うー!!!』 空腹で般若の表情をしたゆっくりれみりゃが、自分を食べようと壁をかりかり引っ掻いている。 『……!! …………!!!』 まさに前門の虎、後門の狼。 ゆっくり霊夢はただ、この状況をなんとかしてくれと願いしかない。 やがてゆっくりアリスが交尾を終えると、ゆっくり霊夢は黒く朽ち果てるのと同時に蔦を伸ばし、子供を生む。 ゆっくりれみりゃの箱より更に四倍は大きい箱の中で、小さな赤ちゃんゆっくり霊夢がぽんぽんと生まれた。 『ゆっくりしていってね!』 『ゆっくりしていってね!』 『れ、れいむ……れ゛い゛む゛ぅぅぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!』 だが、その瞬間。 発情が収まらないゆっくりアリスが、なんと赤ちゃんゆっくり霊夢に襲い掛かった。 『ゆ゛!? ゆ゛ゆ゛っ!?』 赤ちゃんゆっくり霊夢は突然の出来事に暴れるが、成人したゆっくりアリスに力で適うはずもなく。 他の赤ちゃんゆっくり霊夢たちは、怯えて隅に固まる。 そして交尾は終わるが、赤ちゃんゆっくりは黒ずんだだけで、子供を生むことはなかった。 ゆっくりアリスはその様子はじっと見つめた後、 ぎらり、とその視線を他の赤ちゃんゆっくりたちに移した。 その顔は、未だ発情したまま留まっており。 始まる、地獄絵図。 ゆっくり霊夢が覚えているのは、ここまでだった。 ついにゆっくり霊夢は意識を失い、失神してしまった。 冷たい、空気。 ゆっくり霊夢が目を開くと、そこは今まで暮らしていた部屋の中だった。 「……ゆっく!?」 吃驚して声を上げる。 声が、出る。 ゆっくり霊夢はもう猿轡をしておらず、狭い箱の中にも閉じ込められていなかった。 何が起こっているのか。 周囲を見渡すが、左右にゆっくりれみりゃやゆっくりアリスの姿は見当たらない。 あるのは、激しい空腹感だけ。 「ゆ、ゆっくりー!!!」 とにかく、理由は分からないが助かったことだけは分かり、ゆっくり霊夢は歓喜の声を上げた。 と、そこに、 「おう、起きたか?」 台所で朝食の支度をしていた主人が、ゆっくり霊夢の方を振り向いた。 「ゆっ……」 その顔を見た瞬間、今までの監禁生活で押さえ込んでいた様々な感情が溢れ出し。 ゆっくり霊夢は号泣しながら、主人の足元に飛びついた。 「う゛わ゛あ゛あああ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ゛ん゛!!!」 「おいおい、どうしたんだよ?」 主人は優しくゆっくり霊夢の身体を抱きかかえ、その涙を拭ってやる。 「ゆ、ゆ゛っく゛りて゛きる″! ゆっくりできるよぉぉぉ!!!」 「あぁん、お前何言ってるんだ……?」 わけが分からん、といった具合に主人は首を捻った。 だがその顔が笑いを堪えていることに、果たしてゆっくり霊夢は気付いているのだろうか? 「まぁいいや、朝食にするぞ」 「ゆ! 朝ごはん!?」 とにかくお腹が空いていた。寿司、ステーキ、自分が食べられなかった数々の豪華な食事を思い出し、思わず涎がこぼれそうになる。 激しい期待を込めて、調理中の料理を覗き込むゆっくり霊夢。 「……ゆ?」 だが、そこにあったのは、人参、椎茸などの普通の野菜ばかり。 しかもその量はかなり少なく、この空腹を満足させられる代物だとは到底思えなかった。 「も、もっといっぱい欲しいよ!」 「あー、悪い。今まで一週間贅沢したツケでな。今日から一ヶ月くらいこれで我慢してくれ」 「ゆっくり!?」 嘘だ、とばかりにゆっくり霊夢は絶叫を上げた。 「やだ! 食べたい!! れいむもステーキとかゆっくり食べたい!!!」 「お前、あんだけ食べてまだ足りないのか? 少しは限度ってもんがあるだろ」 「食べてない! れいむは食べてないよ!!」 「嘘をつくなよ!」 主人の厳しい叱責。びくりとゆっくり霊夢の身体が震える。 主人にとって、あの偽者が本物だったのだ。 あまりの理不尽に、ゆっくり霊夢は涙を流して訴える。 「違うの! 今までのれいむは偽者だったんだよ!! だかられいむは食べてないの!!!」 「いい加減にしろ!」 主人はがっしりとゆっくり霊夢の頬を掴み、言い聞かせるように耳元に囁いた。 「これ以上文句を言うなら、『ゆっくり出来ないようにする』ぞ」 「――!!!」 ゆっくり、できないように、する。 その一言は、ゆっくり霊夢のトラウマを蘇らせた。 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 絶叫。涙の奔流が止め処なく溢れ出る。 「ごめ゛ん“な゛ざいぃ゛、ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃぃ!!! わがまま言わないからゆ゛る゛し゛て゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 「ごめ゛ん“な゛ざいぃ゛、ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃぃ!!! わがまま言わないからゆ゛る゛し゛て゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 その言葉を聞いた瞬間、俺は今までの人生で味わったことのない幸福感に包まれていた。 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、謝罪の言葉を口にするゆっくり霊夢。 その哀れな表情が……この上なく、俺の快感となる。 「じゃあ、文句は言わないな?」 「うん……」 「よーし、いい子だ。早苗さんから貰った野菜だぞ、ゆっくり味わって食べろよ?」 「ゆっくり食べるよ……」 消沈した様子のゆっくり霊夢。 それを見て、愛しさが込み上げてきた。 「ああもぅ、可愛いなぁお前は!」 ゆっくり霊夢を抱きしめて頬ずりする。 やっぱりこいつは最高のペットだ! 酷いことしたと思うって? でもそれって俺の愛なんだ! 愛ならしょうがないよね!!
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/868.html
※舞台は何故かゆっくりが当然のように存在している外界です。 ※オリ設定満載です。 数年前に突如現れ、急速に社会に浸透していった(ような気のする)ゆっくりと呼ばれる謎の生物。 人間の生首が膨張したような容姿のそいつらは饅頭のクセに生きていたり、どこから来たのは全く不明だったりとあまりに謎が多すぎるゆっくり達。 が、目新しいものや珍しいものを好む人々はその「ゆっくりしていってね!」とか「ゆーっ!」などと珍妙な鳴き声をあげる未知の存在をあっさりと受け入れた。 そして俺はそんな不思議に満ちた生命体の研究や飼育用の商品の開発に携わっている“ゆっくりカンパニー”のしがない一社員だ。 今日はある町の住民の知らせを受けて町の近くの山に分け入って、野生のゆっくりの駆除に向かった。 もっとも、厳密に言うと駆除というよりも間引きに近いのかもしれないが。 装備は標準的な登山グッズとゆっくりに取り付ける発信機兼集音マイクが5つ。 加えてゆっくりを眠らせるための睡眠薬入りの飴玉が50個ほど。それとちょいと大きめの饅頭がゴミ袋の中に入れられている。 「先ぱぁい、なんでこんなクソ暑い中、野生のゆっくり探しなんて・・・「仕事だからだ!」 「あと、男が「ぱぁい」とか使うな、気持ち悪い!それが許されるのは可愛らしい女の子と我らが紫社長だけだ」 不勉強な後輩の研修も兼ねて、男2人でゆっくりが住んでいると言われる山を登っていく。 もっとも、ゆっくり学はまだ始まったばかりの学問で認知度は低いし、ゆっくりカンパニーの社員の8割は美人社長目当てなので野生種の保護の必要性が理解できなくても仕方ない。 だから不勉強を咎めるつもりはないが、近隣住民から集めた目撃情報をもとにゆっくり達の出没箇所をマークした地図と睨めっこしながら俺はため息をついた。 咎めるつもりはなくてもいちいち説明するのを煩わしいと思ってしまうのはどうしようもない。 「はあ、仕方ない・・・ゆっくりはな一定数以上になると何故か突然増長するんだよ。で、人間の町に下りて来る」 「で、ゆっくりによる被害がでるんですね?」 「そうだ、ゆっくりの死体が転がって町が汚れる。だからこういう知らせを受けたときにはゆっくりを保護するんだよ」 「保護?ゆっくりンピースにでも預けるんですか?」 「馬鹿言え。餡子が新鮮な赤ゆっくりは持ち帰る。にんっしんゆっくりも研究用に持ち帰る。特殊な個体は持ち帰る。他の連中は必要なら速殺す」 「速殺す?」 「・・・お前、ちょっとは自分で勉強しろよな。・・・・・・っと、ゆっくり発見」 その言葉を合図に、俺と後輩は身を低くして草むらの中に隠れた。 俺達の前を通り過ぎるゆっくりの一団の数は4匹。内訳はまりさ、れいむ、ありす、ぱちゅりーとなっている。 全員が比較的多量の食料を咥えており、またみんな満面の笑みを浮かべていた。 「ねえ、まりさ!むれもだいぶおおきくなったね!」 「むきゅ!これもまりさのかりすまのおかげよ!」 「ゆ!あたりまえだぜ!」 「でも、そろそろあのおうちじゃせまくなってきたわよ!もっととかいはなおうちをみつけないと!」 赤ん坊はピンポン玉、子どもは野球のボール、成体はバレーボールサイズが一般的だ。この4匹は全員バレーボールサイズ、つまり成体である。 その一団が目の前を通り過ぎていったのを確認すると、木陰に隠れながら追跡を開始した。 「追うぞ」 「りょーかい。しかしあの饅頭鈍くさいっすねぇ・・・」 「まあ、時速900mだからな・・・」 大抵の生き物の歩行は一歩目のエネルギーの何割かを二歩目に利用するが、ゆっくりの場合一部の種を除いてそれを一切しない。 そのせいで恐ろしく無駄と負担が多いのだ。余談だが、這って移動する場合は時速200mというカタツムリ級の鈍足だ。いや、体の大きさを考えるとそれ以下か。 が、そんなことを愚痴っても仕方がないので、それ以上は何も言わずに淡々と4匹を追いかけていった。 その4匹を追いかけていった先にはゆっくりの集落があった。 さっきの4匹を除くと、目に付く限りでは赤ん坊が9匹、子どもが10匹、成体が11匹の計30匹。 そして、成体のうち4匹が植物型のにんっしんをしていた。 植物型出産はにんっしんから僅か3日で出産を向かえ、生まれる子どもの数は1回につき大体10匹前後。 あれら全てが生まれればこの群れの人口は50匹を軽く超える。そうなれば変な自信をつけて人里に下りてくる可能性が十分にあった。 「先輩、あいつら集まって何してるんですかね?」 「聞いてりゃ分かる。少し静かにしてろ」 出来の悪い後輩を睨みながらも、俺はゆっくり達の言葉に耳を傾ける。 群れの中心にいるのはさっきの4匹。その中でもリーダーはまりさのようだ。 「むきゅ、みんなゆっくりはなしをきいてね!」 4匹を取り囲んで、がやがやと騒がしくしていた群れのメンバーがぱちゅりーの鶴の一声で静まり返った。 そして、その静寂の中、まりさが(ゆっくりにしては)重々しく口を開く。 「みんな!いまにんっしんしているこがうまれたらここではたべものをあつめきれなくなっちゃうよ!」 いまいちことの深刻さを理解できていない赤ゆっくりは「ゆぅ?」と首をかしげているが、他のゆっくりたちは固唾を呑んでまりさを見つめる。 「だから、あかちゃんたちがうまれたらにんげんのまちをゆっくりぷれいすにするよ!」 「「「みんなふあんかもしれないけど、これだけのなかまがいればだいじょうぶだよ!」」」 「「「「「「「にんげんのまちならもっとゆっくりできるね!!!」」」」」」 恐るべき集団心理。もしくは無知の幸福とでも言うべきか? まりさの宣言を聞いたゆっくりたちはにわかに活気付き、口々に人間の町を手に入れた後のことを話し始めた。 「あんな事言ってますよ?」 「仕方ないさ。野生のゆっくりには人間もいちいち干渉しないし、不味いから他の生き物に食われることも少ない」 「ああ、要するに怖いもの知らずなんですね」 まりさたちの言葉に苦笑する俺と後輩。しかし、この群れが人里に出ようと考える規模になっているならさっさと用事を済ませなければならない。 俺は段取りを考えてから、リュックに入れておいた睡眠薬入りの飴玉を取り出し、後輩にも目配せで自分に続くように促した。 「そういうことだ。それよりも・・・さっさと済ませるぞ」 「りょーかい」 指示と同時に、円陣を組んでいる群れの中に50個の飴玉を景気良くいっぺんに放り投げた。 「ゆ!なにこれ!?」 「いだい!いだいよ!」 「ゆっきゅりーーー!!」 「いったいなんなんだぜ!?」 「むきゅうーーー!!」 突然の飴の雨に群れは瞬く間に混乱に陥った。 ゆっくりの脆い体にとって飴は相当の硬さを誇るもの。 それらが50個もいっせいに降り注げば当たって怪我するものだっているし、考えなしに飛び跳ねて踏んで転ぶものもいるだろう。 が、群れの中に1匹だけ飴を知っているものが居たらしい。 「ゆゆっ!これはあめだわ!あまくておいしいとかいはなものよ!」 その一言で場の混乱が恐怖から食欲によるものにすり替わった。 「あまいのはぜんぶまりさのものだぜ!」 「ゆー!ゆー!」 「でいぶもあばいのほぢいよおおお!!」 「むきゅー!あまいものはかしこいぱちゅりーのものよ!」 全員の頭数より飴のほうが多いにもかかわらず群れは言い争いを始めてしまった。 さっきまでの結束力は一体なんだったんだか。 「ゆ!ゆっくりしていってね!!!!」 「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!!!」」」」」」」」」」」 そんな混乱のさなかに響き渡ったのはリーダーまりさの怒声。 本能に刷り込まれたその言葉は一瞬ながらも間違いなく全員の興奮と熱狂を鎮めた。 「みんな!いまはけんかしてるばあいじゃないでしょ!」 「「「そうだよ!まりさのいうとおりだよ!」」」 まりさと、それに続く参謀格のゆっくり達の叱責。 実は混乱の火付け役になったのは参謀格のありすだったりするのだが、そんな事は誰も気にしていない。 「みんな、あめはひとりひとつずつだよ!わかったね!」 有無を言わさぬリーダーまりさの剣幕によって、ゆっくりたちは完全に冷静さを取り戻した。 ・・・しかし、誰も飴が降ってきたことに疑問を持たないのはさすが餡子脳と言ったところ。 「む~しゃむ~しゃ、しあわ・・・ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 「早っ!?」 「突っ込むな。起きたらどうするんだよ?」 睡眠薬入りの飴を食べたゆっくりたちはあっという間に眠りについた。 しかも、まりさが音頭をとっていっせいに食べたためものの見事に全員が一斉に。 「で、先輩。結局何を回収するんですか?」 「ゆっくりの頭の茎とにんっしんゆっくり。それと・・・リーダーまりさもだ。それが済んだら参謀3匹と適当な大人に発信機をつける」 「りょーかい」 後輩はポケットからナイフを取り出すと、茎を生やしている1匹のれいむに近づき、少しだけ茎の根元の皮を抉った。 茎にはようやく種族の区別がつくようになってきた赤ちゃんが12匹ほど成っている。どうやらパートナーはぱちゅりーだったらしい。 まだ成体になり立てと思しき若い母は幸せそうに「あかちゃ~ん」などと寝言で呟いている。 その言葉にしかめっ面をしながらも後輩は茎をきれいに引き抜くと、ゴミ袋の中の饅頭にそれを突っ込んだ。 「あんまり気分の良い仕事じゃないっすね・・・」 「仕方ないさ。本当はもっと頭数を減らしたいところなんだが、それをしないのが俺たちが出来る最大限の譲歩だろ?」 そう言いながら、俺はゆっくり達も気付いていない初期段階にんっしんのゆっくりを3匹ほどゴミ袋の中に放り込んだ。 「ん~、先輩って案外ドライなんですね」 「仕事だからな」 後輩の無駄話に付き合いながらもリーダーまりさを回収する。って、こいつも何気ににんっしんしてるじゃないか。 「ふ~ん・・・でも、先輩ゆっくり飼ってませんでしたっけ?」 「こいつらは俺のペットじゃないし、そもそもそれとこれとは話が別だろ?」 それから、参謀格の3匹と、比較的大きな成体の頭の飾りに発信機を装着した。 「よし、作業完了。ちょっと様子を見てからずらかるぞ」 「・・・ずらかるって、なんか悪党みたいっすよ?」 律儀に突っ込んできた後輩にローキックを入れつつ、ゴミ袋に放り込んだゆっくりの口に散乱していた飴を放り込んでから再びさっきの木陰に隠れた。 「ゆ!みんな、おはよう!ゆっくりしていってね!」 一番最初に目を覚ましたのは参謀格のれいむ。 「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!!」」」」」」」 その言葉に反応して他のゆっくり達もいっせいに目を覚ました。 「「ゆゆっ!まりさがいないよ!」」 「「「ゆっきゅち~・・・!」」」 「ゆぅうううう~・・・おか~しゃん、どこ~?!」 「おねーちゃん!あかちゃんたちが!?」 「ゆ?ゆゆゆっ!?でいぶのあがぢゃんがあああああああああ!!」 目を覚ましたゆっくり達を待ち受けていたのはリーダーや仲間と可愛い赤ちゃん達の失踪だった。 そして、その場にいる全員が好き勝手に各々の大事なものを探し始める。 全くの無秩序。ぱちゅりーが必死に「むきゅ!みんな、まずはだれがいないかかくにんよ!」と真っ当なことを言っているが、誰の耳にも届いていない。 しかも、他の参謀格2匹さえも他のゆっくりに混ざって必死にまりさを探している始末だ。 「まりさああああ!どごなのおおおお!」 「おがーぢゃあああああああああん!」 「「「「ゆっきゅち~!」」」」 「まりざのあがっぢゃんがあああああああああああ!!」 群れが混乱しきっている様子を見届けると、俺たちは足早にその場を後にした。 上司に報告を済ませた俺はさっさと自分の担当する実験に取り掛かる。 今回の実験は植物型と胎生型の出産に関するもので、ゆっくりにとって有害なものを検証するために行われるそうだ。 実験方法は至って簡単。茎を挿した饅頭に無駄に強力な農薬を大量に混入したり、栄養が届きにくいように茎を傷つけたり、水分や糖分を異様に多くしたりする。 もしくは母体に定期的に肉体的または精神的苦痛を与えてストレスを加えたり、毒も同然のものを食べさせたり、栄養を過剰摂取させたりする。 今回の実験に使用するゆっくりは先ほど回収した茎4本とにんっしんゆっくり4匹だ。それぞれにA~Dのアルファベットをつける。 茎Aは非常に整った環境で、非常にバランスの良い栄養配分の饅頭に挿した。 そして、この茎からは当然のように非常に健康的な赤ちゃんが生まれた。 れいむ種6匹とぱちゅりー種5匹。不運にもぱちゅりー種が1匹だけ死産してしまったが、それ以外はみんな非常に元気な、ゆっくり風に言うならばゆっくりした赤ちゃんだ。 俺がその赤ちゃんの入っているケージの蓋を開いて様子を伺うと、その気配に気付いた1匹のれいむが満面の笑みを浮かべた。 「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」 「「「「「「「「「「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」」」」」」」」」」 「ああ、ゆっくりしていくよ」 そんな赤ん坊達のケージの中にゆっくりカンパニー製ベビー用ゆっくりフードを入れてから蓋を閉じた。 「11匹か。それだけいりゃ次の実験の経費が節約できるな」 俺の傍らで、同僚がそんなことを呟くのが聞こえたが、無視して、中の赤ん坊達の様子を伺う。 「ゆ~・・・」 「ゆゆゆ~」 「ゆぅ!」 体の弱いぱちゅりーはみんな大人しくしていた。 ひとりお昼寝をするものもいれば、仲間同士で話しをするものもいた。 「「ゆっきゅちー!」」 「ゆっ!ゆっ!」 一方のれいむ達は元気に跳ね回りあるものは仲間とじゃれあい、あるものは仲良く歌を歌っている。 仲間と一緒にいることが当然になる前に別のケージに移すのが実験用ゆっくりの扱いのセオリーだ。 しかし、孤独にどう向き合うかを研究するのなら、こいつらはもう少しだけみんなで一緒に居させても良いんじゃないだろうか? 茎Bは一部を抉ってから包帯で固定して再生しないようにした状態で饅頭に挿した。 この茎からは意外なことに面白い結果が出た。 健康な個体は3匹で、その内訳はまりさ2匹にありすが1匹。未熟児が4匹は双方が2匹ずつ。そして個体識別不可能なものが2匹。 ここまでは予想通りの結果だった。全員の栄養が不足するのか、栄養が一部の個体に偏るのか・・・予想されていた結果通りのものだったといえる。 未熟児は殆ど喋らないし動かない。個体識別不能なものはすぐに死んだ。しかし、面白いのは健康な個体の行動だ。 ケージの蓋を開けて餌をばら撒いてやると、未熟児として産まれたもののために餌を噛み千切って口移しで与えてやっていた。 「ゆ、ゆっきゅちー!」 「ゅぅ・・・ゅぅ・・・」 未熟児サイズのゆっくりは非常に小さくビー玉ほどの大きさしかないため、ベビー用のゆっくりフードでさえ食べられないのだ。 しかし、生まれたてのゆっくりに自分より弱い個体を助けるなんて概念があるとは思わなかった。 とは言え、餌を与える側も所詮は赤ん坊。しかも、未熟児よりも頭数が少ないのだ。 やがてまりさ種の1匹が未熟児のために餌を千切ってあげるのを放棄し、もう1匹のまりさもそれに追従した。 「ゆ!ゆぅぅ~・・・」 「「ゅぅ・・・」」 「「ゅ・・・ゅゅ・・・」」 それでもしばらくはありす種が1匹で世話を続けていたが、やがて弱っている個体を切り捨て、最後にはありすも未熟児の世話を放棄した。 茎Cは大量の農薬を混入した饅頭に挿した。 子供が産まれたその日、ケージの中は魔境と化していた。そこに居たのは9匹の異形。 あるれいむは足が半透明のゲル上になってしまっていた。これでは歩くこともままならない。 あるまりさは目が顔の中心に1つしかなかった。そして、その目は何も映さなかった。 あるまりさは口がなかった。成長を見守るためにチューブをつないで生きながらえさせたが、野生ならばすでに死んでいただろう。 あるまりさは「ゆっくり」と言うことができなかった。口を開けば「qs、dんぢmgy、、wddg」と聞き取ることの出来ない訳の分からない音声を発するだけだった。 あるれいむは目が顔の横についていた。正面から見ればのっぺらぼうのその子は正面を視野に納めることが出来ないのでまっすぐ歩くことが出来なかった。 あるれいむは背中にも顔がついていた。だからと言って何があるわけでもないが実に不気味だった。 あるまりさは体が柔らか過ぎて大福としての形を保てなかった。まるで子供のころに作ったスライムのようだ。 あるれいむは体が異様に硬かった。そのせいで歩くことはおろか体を上下させることもままならず、口も殆ど動かなかった。 あるれいむは口が異常に大きかった。そして口以外のものがなかった。口だけの饅頭が狂ったように「ゆっくり」を連呼していた。 目の見えるものは他の姉妹の姿に怯えていた。でも、自分も似たようなものだと言うことには気付こうとしない。 「ゆ!ゆっきゅちー!ゆー!」 「ゆっきゅり!ゆっきゅり!ゆっきゅり!ゆっきゅり!」 顔2つの赤れいむが狂ったように口だけのれいむに体当たりをしている。 きっと、その化け物を追い払おうとしているのだろう。でも、傍目にはどっちも化け物だった。 どれもまともに育つ可能性があるとは思えないが、奇形の生存可能性を検証するのも研究になるだろうか、と思った。 茎Dは塩分を過剰に投入した饅頭に挿した。 産まれた子どもの大半は形はまともだった。そして、死産したのは4匹だけ。 10匹中6匹が何とか誕生したというこの結果には俺以外の研究員も驚きを隠せなかった。 もっとも、まともだったのは形だけだが。 まずゆっくりの形をした6つの饅頭は言語中枢が完全に狂ってしまっていたいた。 口を開けば聞こえてくるのは薄気味悪いノイズ。 「「「、。jsbん。、fdghrdmじdsんmdms」」」 「xcんm、。zx、smyんfjwめ、」 「「えgkdtcjrcldtr、いcvf」」 そして、1匹たりともゆっくりらしい心を持ったものが居なかった。 あるありすは生まれたてであるにも関わらず日長一日壁に体をこすり付けて自慰行為にふけっていた。 あるぱちゅりーは眠ることをせず、食事の時さえもずっと言葉にならない何かを発し続けていた。 あるありすはいつも何かに怯えてがたがたと震えていた。そして、近づいた姉妹を片っ端から攻撃していた。 あるぱちゅりーは何かにつけて姉妹を食べようと後ろから襲い掛かっては追い払われて、「むきゅ!」と悲鳴を上げていた。 あるありすは突然泣いたり、怒ったように頬を膨らましたり、酷く情緒不安定だった。 あるありすは自分のことをぱちゅりーだと信じ込んでいた。こんな狂った家族の中では誰も間違いを指摘してくれなかった。 俺は今度は糖分や水分だとどういう結果が得られのかも検証する必要があるな、と酷く覚めた目でその様子を眺めていた。 母体Aは広い部屋の中で普通の餌を食べながら生活してもらった。 産まれた3匹の子どもはどれもちゃんと子供サイズ近くまで大きくなっていて、みんな非常に元気だった。 「ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりちていってね!」」」 俺がケージを覗くと、母れいむは満面の笑みを浮かべて話しかけてきた。 「ねえ!みてよ、おにーさん!れいむのあかちゃんだよ!とってもゆっくりしたこだよ!」 「ああ、そうだな。ゆっくりしていってね!」 「「「ゆっくりちていってね!」」」 あの日、回収したゆっくり達は「野犬に襲われているのを助けた。見つけたときには君だけだった」と言ったらそれを簡単に信じて、俺になついた。 「よし、それじゃあ、赤ちゃんたちにお兄さんから美味しいお菓子をあげよう!」 「ゆ!ほんとうに!」 「ああ、本当だよ。でも、ここじゃ食べられないから、ちょっとケージから出てもらうよ」 「「「ゆ~!ゆっくちたべるよ!」」」 そういって俺が赤ちゃんを連れて行くのを、母れいむはニコニコと微笑みながら見守っていた。 そして、このれいむが赤ちゃんと会うことは二度となかった。 母体Bは口の部分だけ開いている透明な箱の中で普通の餌を食べながら生活してもらった。 この母ぱちゅりーの子どもは1匹しか生まれなかったが2匹生まれたとも言える状態だった。 いわゆるシャム双生児のようなものだろうか。その赤ちゃんは体と口の横幅が異様に大きく、目が3つあった。 そして、髪の毛は真ん中の目を境に右側がまりさ種のもので左側がぱちゅりー種のものになっていた。 「「ゆっくりしていってね!」」 2つの種の声が同時に聞こえてくる。声帯も少しおかしなことになっているのだろう。 それは、箱によって圧迫され、赤ちゃんがそれ以上大きくなる余地が残されていなかったために起きたものだった。 「やあ、ぱちゅりー。赤ちゃんはどうしたんだい?」 出産時には箱から出さねばならないので、当然俺は出産に立ち会っている。 「むきゅ、おにーさん!ぱちぇのあかちゃんはまだぽんぽんのなかよ!」 そして、中にこれ以上赤ちゃんが居ないこともしっかり確認している。 しかし、ぱちゅりーは中にまだ赤ちゃんが居ると思っている。 それは体も心も弱いぱちゅりーにとって独りっきりになってしまった上に普通の赤ちゃんを産めなかった絶望から身を守るための手段だった。 そう、この奇形の赤ん坊は母親に見捨てられてしまったのだ。 ケージを閉じたところで、後輩が「そいつ、最近箱から出せって言いませんね?」と尋ねてきた。 「箱から出たら気味の悪い赤ちゃんに触られるかもしれないからだろ?」 とりあえず、苦笑交じりにそう返しておいた。 母体Cは遠隔発火のライターを内蔵し、定期的に痛い目にあってもらった。 唐突の訪れる痛みにいつも怯え続けて眠ることもままならなかった元リーダーまりさも子どもは、全員異様に小さかった。 「「「ゆっきゅりちちぇっちぇね!」」」 「ゆっくりしていってね!」 茎から生まれるタイプと大差ない大きさながら元気いっぱいに鳴く赤ちゃんたちに疲れきった表情で微笑むまりさ。 とは言え、全員これと言った異常もなく出産できたことを考えるとゆっくりはストレスに強いと見てよさそうだ。 多分、餡子脳だからだろう。 「ゆ~!」 「ゆっ!ゆっ!」 「ゆ~ゆ~ゆ~♪」 ケージの蓋を開けて、子どもたちが遊んでいる姿を眺めているまりさに話しかける。 「やあ、まりさ」 「ゆ!おにーさん!」 「とってもゆっくりした子だね!」 俺のその言葉を聞くと、まりさは少しだけ踏ん反りかえって、嬉しそうに笑う。 「まりさ、がんばったよ!」 「そうか。お疲れ様」 「おにーさん、ありがとう!」 その言葉に少し良心が痛んだが、すぐに思考を仕事優先に切り替える。 「まりさの子どもに美味しいお菓子をあげたいんだけど、ここじゃ食べられないんだ。だから少しだけ連れて行って良いかな?」 「ゆ!おにーさんならいいよ!でも、すぐにつれてかえってきてね!」 「分かってるよ。さ、おちびちゃんたち?おにーさんと一緒にゆっくりお菓子を食べに行こうか」 母親同様に俺のことを信頼しきっている赤ん坊たちは、何の疑いもなく手の上に乗ってきた。 「悪いけどまりさの分はないから、ここでゆっくり待っててくれ?」 「ゆゆっ!わかったよ!ゆっくりまってるよ!」 そうして、この元リーダーまりさは永遠にゆっくりと赤ちゃんの帰還を待ち続けた。 母体Dは廃油や産廃同然のものを餌にして生活してもらった。 しかし、茎Cと全く変わらない結果にうんざりさせられるだけだった。 予想通りの上に、頭数が少なく新鮮味もないこの結果を記録する気にもなれなかった。 ---あとがき--- スレに書き込めねえよ、ちくせう。 奇形を産ませておいてつまらない結果にうんざりってのは虐待お兄さん以上にアレだと思う。 普段は基本的に優しくても仕事のときは一片の慈悲もなし。まさに、冷徹お兄さんですよ。 そんなこんなで、現代ゆっくりシリーズの3作目です。 野良ゆっくりとその末路の一部を書いたつもりですが・・・あー、文章力が欲しいorz byゆっくりボールマン このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/futabayukkuriss/pages/485.html
ゆっくりスクール【ゲス更正編】 12KB ※メカあき様の「ゆっくりスクール」よりインスパイアされています。 ※「ゆっくりスクール」が本当に大好きで書いてしまいました。 メカあき様ごめんなさい。 ※原作レイプ注意。 ※独自設定垂れ流し。 ※俺設定 SUGEEEEE!の中二病駄文です。ダメな人は回れ右。 ※ネーミングセンスがゼロのため、命名がヘタクソです。ダメな(ry。 ※ほとんど設定の説明ばかりになってしまいました。ダ(ry。 ゆっくりスクール 【ゲス更正編】 必殺引篭り人 ゆっくりスクールはゆっくり教育の名門。飼い主の手に負えなくなったゆっくり達を 徹底的に教育する場所だ。 単純に飼い主を見下したり言うことを聞かない、という軽度からゲス化した重度の ゆっくりまで幅広く教育をしている。 ここでは重度のゲスを更生させるコースの内容を見てみよう。 基本、ゲスは『がんがん』と通称されるおしおきでその多くが矯正される。 金属の箱をかぶせ、大きなハンマーで叩いて中のゆっくりに大音響をきかせるこの 手法なら、外傷を負わせることなく人間への服従心を植えつけられる。 しかし重度のゲスの場合、『がんがん』だけでは人間への服従心のみで、他ゆっくり への協調性までを教え込めないことがほとんどである。 ゆっくりスクールは部屋ごとに連帯責任を持たされる。普通のゆっくりであれば 仲間に迷惑を掛けることを嫌って自然と協調性を身に着ける。 しかしゲスはこれを無視して自分勝手な行動をとり、他ゆっくりに迷惑をかける。 このような場合、子供のいる家庭では親にのみ服従し、親よりも下に位置する 子供には逆らうこともあり危険だ。 なにより他のゆっくりへ危害を及ぼすことが多いのでやっかいである。 このような場合、ゆっくり達の習性を利用した矯正を行う。使う習性は 『すりすり』だ。 ゆっくりは社会性生物である。身体の脆弱な彼らは社会を築くことで外部の危険から 身を守る。群を作るのはその最たる例である。 社会性生物には協調性が求められる。その際に利用されるのが『すりすり』なのだ。 協調した行動を取った場合、つまり群という社会から認められる行為をした場合に、 その報酬として『すりすり』をしてもらう、これがゆっくり達の行動原理だ (人間においては『ありがとう』等の感謝の言葉がこれに相当する)。 言葉をしゃべるゆっくり達であるが、物覚えが悪い彼らにとって言葉の重要度は人間 に比べてだいぶ低い。より本能的な行動である『すりすり』が、社会に受け入れられたい という欲求、つまり承認欲求への報酬授与行動なのだ。 ゲスといえど『すりすりされたい』という承認欲求は当然ながら存在する。通常、 ゲスの取り巻き達がゲスを称えてすりすりをする。ゲスといえど、承認欲求が 満たされないと不安定になるのだ。 ゆっくりスクールでは『すりすり』は原則禁止とされている。厳格な生活を守る上で、 『すっきり』に発展しやすい『すりすり』は危険なためである。 『すっきり』に発展しないよう、『すりすり』したときに発生する皮どうしが こすれる周波数を検知するセンサーが各部屋に取り付けられているほどである。 ゆっくり達は飼い主から預かっている大切なお客様。間違いは決して起こさせない。 しかし社会性生物であるゆっくり達にとって『すりすり』できないのはかなりの ストレスとなってしまう。 ストレスの緩和を目的として、『ぺろぺろ』はある程度認められているものの、 本来の承認への報酬としての効果が薄い上に、唾液によって皮がふやけることも あり、完全な代替とはならない。 そこで、ゆっくりスクールでは一日の終わりに『すりすりタイム』を用意し、 ストレスを発散させている。この『すりすりタイム』を上手く利用することで ゲス更生を実現させるのだ。 10号室はゲスのまりさ40号がいる部屋である。 「10号室!本日の『ありがとうございます』をしなさい!」 監督係のお兄さんが指示する。 「りーだー、きょうもみんなをまとめてくれてありがとう!」 れいむ32号が代表でお礼を言う。 「ありがとう!」 ありす29号がそれに続く。 「…ありがとうなんだぜ。」 まりさ40号は不満げに唱和する。 そして3匹が順番にリーダーであるまりさ25号にすりすりを行う。 「「すーりすーり!」」 れいむ32号とありす29号は感謝の気持ちをしっかりこめてすりすりをしている。 しかしまりさ40号はあまりそうは見えない。 「…すりすり。」 すりすりも不十分だ。 まりさ25号からはすりすりしない。お礼を言われる側は、すりすりしないのが 規則だ。 みんなから感謝のすりすりをされ、まりさ25号は満足そうに笑っている。 「きょうはれいむがしっかりとあさのしょくじのごあいさつをしてくれたよ! みんなかんしゃしようね!」 「ありがとう、れいむ!とってもとかいはだったわ!」 「ふんっ…、ありがとうだぜ…。」 やはりまりさ40号は不満げだ。 「「すーりすーり!」」 「すーり…、すーり…。」 「ありすはおへやのおそうじ、しっかりやってくれたね!ありがとう!」 リーダーのまりさ25号にほめられ、3匹からすりすりをされてありす29号は とてもうれしそうに微笑んでいる。 残るはゲスのまりさ40号だが…。 「…ざんねんだけど、きょうもまりさはだんたいこうどうをみだしたよ。 おひるごはんのとき、にんげんさんへのかんしゃをつたえるまえにたべちゃったし、 じゅぎょうちゅうもうるさくしていたよ。だから、すりすりはなしだよ。 あしたはみんなとなかよくして、まりさたちにすーりすーりさせてね!」 リーダーとして合格点の発言だ。何をしたかはしっかり監督係のお兄さんに報告する ものの、決してそれによって責めるような発言をしない。逆に、協調して欲しい、 すりすりをしたいんだよ、と誘うことでみんなと仲良く過ごすよう促している。 また、群の一員として迎え入れたいというニュアンスを出すことで、 自発的にゲス行動をやめたいという気持ちを強めている。 みんなは『すりすり』をしてもらえるのに、自分だけはしてもらえない。それは 社会性生物にとって社会に受け入れてもらえない、つまり死の危険が高いことを示す。 当然、まりさ40号も非常に不安を感じている。 軽度のゲス資質であれば、このようなことを数週間繰り返すだけで自発的に協調行動を 取るようになる。お預けにされていた『すりすり』をしてもらえ、また協調行動を すればするほどほめられ、『感謝のすりすり』をしてもらえることを知ることで 安全にゲス資質を更生していくことが可能だ。 しかしこのまりさ40号はかなりのゲスだったようだ。1ヶ月が経過しても更生には 至らなかった。 自尊心が異常に強い場合、『すりすり』の欲求だけでは更生に至らない。 このような場合、より強力な更生手段として用いられるのが『びでおかんしょう』である。 『びでおかんしょう』に使われるのは視聴覚室と透明箱、それと訓練を受けたゆっくり達 を30匹ほど。そして何より大切なのはゲスゆっくりの失敗を記録した映像である。 ゲス個体は勉強を怠ることが多いので撮影は簡単である。まれに授業について来る個体 もいるが、部屋ごとの共同作業では当然ながら協調行動をしないので失敗する。 ゲス個体が失敗するところだけを抜き出して、部屋全体ではなくあたかも ゲス個体だけが失敗しているように編集しておけば準備完了。 まりさ40号は透明箱に入れられ、スクリーン前の教壇に置かれている。 「これから特別授業を始める。ビデオが流れるのでそれをみて正直な感想を言って欲しい。」 監督官がそう宣言すると、スクリーンにまりさ40号の映像が流れはじめた。 まりさ40号は授業をサボることも多く、失敗映像には事欠かなかった。 スクールに通うゆっくりであれば1ヶ月でマスターするような基本的なことを失敗している。 ビデオを見ているゆっくり達からクスクスと笑い声が漏れはじめた。 厳格な規則がしかれているスクールである。通常ならお叱りの言葉をもらうところであるが 『びでおかんしょう』においてはこれは許されている行為である。 笑い声が聞こえるたび、まりさ40号はピクリと反応してそちらをジロリとにらむ。 しかし透明箱に入っている以上、何もできないし声をあげても意味がない。 映像は続く。だんだんと笑いを堪えきれなくなったゆっくりが増えてくる。 するとつられて他のゆっくりが笑う。笑いが笑いを呼び、連鎖反応で一気に大爆笑へと かわっていった。 「ゆっ…!ゆっがぁぁぁー!!わらうんじゃないんだぜー!!!!」 まりさ40号がそうわめいても、爆笑は収まらない。映像でまりさ40号が簡単な 失敗を繰り返すたび、嘲笑が飛ぶ。 「ぶ、ぶぶぶぶざげるんじゃないんだぜぇぇ!!おばえだぢだっでじっばいじでだぐぜにー!!!」 そう言ってなんとか自尊心を保とうとするまりさ40号。しかしこんな失敗、1ヶ月で 卒業するゆっくりが大半なのだ。 「ゆっははは!こんなかんたんなことができないの!?」 他のまりさにバカにされる。 「と、とかいはじゃないわねー!あははは!いなかものすぎてなみだがでちゃう!」 ありすに田舎者呼ばわりされる。 「むきゅーっきゅっきゅっ!おなじゆっくりとしてはずかしいわ!」 ぱちゅりーに蔑まれる。 「れいむだって2しゅうかんでできたよ!ゆふふふふっ!ばかゆっくりはゆっくりできないね!」 れいむに見下される。 「わかるよー!まりさはばかなんだねー!かんたんなこともできないんだねー!」 ちぇんにコケにされる。 その言葉のひとつひとつがまりさ40号の自尊心に突き刺さり、ヒビを入れていく。 笑い声がヒビをこじ開け、まりさ40号の自尊心はついに折れてしまった。 自尊心にささえられていた心も同時に折れる。 「ゆっ、…ゆわぁぁぁん!ぼうやだ!おうぢがえる!ゆああああん!」 他のゆっくりから笑われること、それは承認欲求を充足できないこと。つまり社会に受け入れて もらえないということ。社会性生物にとってそれは命に関わることである。 いくらゲス資質があろうと、どれだけ強い自尊心があろうと欲求という、より基本的 な部分を越えることはできない。まりさ40号は社会から受け入れられないという 不安から泣き出しているのだ。 完全に心が砕けてしまうまでこの『びでおかんしょう』は続けられる。号泣したり、 ひどいものだと狂ったように笑い出すゆっくりもいる。 十分にまりさ40号を打ち砕いたことを確認した管理官は手を叩いて合図する。 手を叩く音が視聴覚室に響き渡ると、笑っていたゆっくり達が一斉に黙った。 静寂の中、まりさ40号が透明箱から取り出される。まりさ40号は既に泣き止んではいたが ぼうっとしていて反応を示さない。 そこに3匹のゆっくりがまりさ40号に寄り添った。同じ部屋の同級ゆっくり達だ。 まりさ40号を嘲笑していたゆっくり達が視聴覚室の真ん中までの道を開ける。 そこにはばらばらに置かれたゆっくり用遊具と空箱があった。 これはゆっくりスクールの最初に学ぶ教科、『おかたづけ』だ。 飼いゆっくりとして自分の遊具は自分で片付けるのが当然である。それを学ぶのが 『おかたづけ』だ。 もちろん、この程度は教えてもらわなくてもできるゆっくりがいるほどの低難度の教科である。 リーダーのまりさ25号がまりさ40号を促す。ありす29号とれいむ32号が両脇から まりさ40号をゆっくりと押していく。 散らかった遊具のところまでくると、『おかたづけ』をはじめる。まりさ40号も3匹に 促されのろのろと『おかたづけ』を手伝い始めた。 ひとつ遊具を片付けた。するとれいむ32号が「てつだってくれてありがとう!」と まりさ40号に感謝のすりすりをした。まりさ40号の瞳に少し生気が戻る。 さらにひとつ片付ける。今度はありす29号が「おてつだい、ありがとうね!」と 感謝のすりすりをする。 まりさ40号は涙を流し始めた。以前とは違う、嬉し泣きだ。 泣きながらまりさ40号は片付ける。そのたび、同室の3匹から感謝のすりすりを してもらった。 『おかたづけ』が完了した。3匹はまりさ40号に 「「「いっしょにやるとすぐおわるしたのしいね! いっしょにおかたづけしてくれてありがとう!すーりすーり!」」」 特大の感謝のすりすりをした。ぶわっと、まりさ40号の目から涙があふれた。 「おめでとう!」 「よくできたね!」 「これでゆっくりできるね!」 「ゆっくりしていってね!」 今まで自分を嘲笑していた30匹のゆっくり達が、口々にまりさ40号を褒め称える。 最後には「ゆっくりしていってね!!」の大合唱になった。 「ありがとうだぜ!みんな、ほんとうにありがとうだぜ! まりさはまちがっていたのぜ!ほんとうはみんなとなかよくしたかったのぜ! これからはいいゆっくりになるのぜ!ぜったいなるのぜ!」 まりさ40号は心のそこからみんなに感謝していた。仲間として暖かく迎えてくれた 全員に感謝していた。 まりさ40号はもうゲスではなかった。仲間達と協調する喜びを知ったまりさは 良い飼いゆっくりへの大きな一歩を踏み出したのだ。 実はこの『びでおかんしょう』、人間向けの人格改造セミナーや自己啓発セミナー などで使われる手法のひとつが元になっている。周りの人間から徹底的に否定された 後、都合のよい人格の部分だけをほめて肥大化させる、というのが本来の形だ。 それをゆっくりに適応するよう改変してある。 その効果は絶大だ。これで矯正できないゆっくりは居ない。居るとすれば、 精神を病んでいたり餡子遺伝子に大きな異常があるようなゆっくりだけである。 そのようなゆっくりはゆっくりスクールの対象外であるため、実質ゲス更生率は 100% を誇っている。 まりさ40号も例外ではない。『びでおかんしょう』の後、見違えるほど まりさ40号はおとなしくなった。部屋のみんなとも仲良く作業を行うようになり、 『感謝のすりすり』をしてもらえるようになった。 さらに授業もしっかり聞くようになり、どんどん成績も上がっていった。 成績が伸びたゆっくりがいる部屋は表彰される。部屋のみんなのために表彰されよう として授業に身が入っているらしい。 おそらく近いうちにまりさ40号はスクールのパンフレットに載ることだろう。 ゆっくりスクールでのゲス更生、成績向上の実例として。 パンフレットからまりさ40号の部分を以下に抜き出す。 「ゆっくりスクールではとっても大切なことを学んだのぜ! 初めはまりさはとっても反抗的だったのぜ。でもゆっくりスクールの仲間達は 反抗的だったまりさを優しく受け入れてくれたのぜ! いっぱいお勉強できて、とってもすてきな仲間達と出会えて、本当に飼い主の お兄さんには感謝しているのぜ! ゆっくりスクールに通えて、本当に幸せだぜ!」 メカあき様のゆっくりスクール、大変楽しく読ませていただいております。 特に2,3ページ目には衝撃を受けました。ゾクゾクしました。 ただ、部屋ごとに連帯責任を取らされる、という部分については、仲間思いの ゆっくりであればいいのですがゲス個体だと上手く行かないのでは?と 思って考えたのがこの SS です。 過去作品 ふたば系ゆっくりいじめ 111 効率化の道 ふたば系ゆっくりいじめ 147 陰口 ふたば系ゆっくりいじめ 177 人間の畑だと説得してみよう ふたば系ゆっくりいじめ 182 どすすぱーくをうつよ! ふたば系ゆっくりいじめ 216 子まりさの反乱 元ネタ絵 byメカあき トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る いや奥さん、それだけではないっス 愛護、観察、研究(生体実験)、食用、ETC。 あと下部(学校の酷いセンセイ)酷い。 俺も昔こんなことあった ながったらしくてすいませんが 戸塚ヨットスクールに一体何があった -- 2015-01-01 12 48 11 ↓↓↓↓↓何言ってだこいつ -- 2014-06-29 11 43 24 ゆっくりは虐める為に生きてるんでしょ? -- 2014-04-21 02 17 49 ↓じゃあ見るなwww -- 2014-01-02 21 41 08 ゆっくりをいじめるなーーー! ゆっくりをいじめたやっはしねーーー!!!! -- 2013-07-17 21 51 44 なんだこれ?自衛隊みたいだな、実際にゆっくりが居たら自分で躾てみたいな、我慢出来ずに潰すんだろうけどなハッハー -- 2012-12-19 12 07 29 あくまで書いてもらってる立場なのに、文句言う奴はゲスまりさ以下。 -- 2012-10-18 21 52 45 一言言おう、ゆっくりに教える事はない ゆっくりは死ぬべきだ殺すべきだそれがクソ共の生存理由だからさ 人間はゆっくりに狂気を出してころせばいい ただそれだけ -- 2012-05-26 23 31 20 ↓↓↓世間が表だけで言っているだけで中では何もしないのが原因かも たとえばいじめはやめようだなんて学校や全国に流されてもまったく変化がない。 その理由は簡単なことで中では何もしていないことだったりする いじめの対策はできていても子供や一人の考えなどを考えもしないから自殺や永遠に苦しむ人が出る 下の件も同じでほとんどの学校では『喧嘩はどっちが原因だろうと両方悪い』と言う偽善者発言が ある。本当は一方的だったりしても両方が悪いとなったらやられたほうは根に持ったり、また喧嘩になる 中途半端な感じだからあんな事件が起きたのかも あと教師が生徒に暴力は禁止(ここ重要 マジレスしてごめんなさい -- 2012-03-17 12 51 36 ↓↓教師が二回首になってるw -- 2011-12-06 21 39 02 ↓どう考えてもあなたが悪いですね 喧嘩の仲裁を甘く見るな!と言いたい、まあ本人も身に染みたでしょうが 喧嘩の仲裁とはとても難しいもので下手に割って入れば怒りの矛先が自分向くのは当然です 小学生の餡子脳では喧嘩している二人が悪くて止める自分が正しいと思うのでしょうが 結局は下手に止めに入った子供も一緒になって喧嘩するなんてよくある話 殴られたからと言って殴り返した時点であなたも迷惑な喧嘩をしている当事者になったんです またクラスの殆どの子が下手な止め方してるなぁ、馬鹿だなぁと思ってあなたを見ていたでしょうね その後あなたが笑われるようになったのは自業自得というやつです まあその件で喧嘩の仲裁の難しさが分かったでしょうから教訓にすればいいと思いますよ -- 2011-11-03 11 01 53 この話のビデオを見て馬鹿にするところであることを思い出してしまった。 関係ないことを書くが、すぐにどこかに吐き出さないと気持ち悪いために、申し訳ないがここに書かせてもらう。 けして作者様やこの作品を悪く言うつもりはないので、許してもらいたい。 小学校のころにクラスの男女で喧嘩があった。 理由は覚えていないが、喧嘩をしている二人とも悪く、クラスに迷惑が出ていた。 俺はそれを止めに入ったんだが、二人から殴られてしまった。騒ぎを聞きつけた教師がちょうど俺が男に殴り返すところを見た。 そして俺は教師に壁に頭をたたきつけられ、その後授業1時間分、おれへの説教と俺の今までの失敗や恥ずかしかったことをクラス一人一人に発表させていった。 しかし喧嘩をしていた二人はいっさいのおとがめもなく、俺の言い分はすべて嘘、俺をかばう奴は優しいから俺が可愛そうなんだろうと言ってすべて聞き入れられなかった。 その教師はその後、俺と子供からその話を聞いた親達が学校に文句を言って緊急の保護者会が開かれ、その教師は首になったようだ。 その後、校長と教頭、喧嘩した二人のそれぞれの親が家に謝りに来た。教師は首になったらしい。 一見問題は収縮したが、俺はその後の2年間と中学に上がってからもクラスメイトだけでなく、同級のほとんどに笑われて過ごし、虐めに発展していった。 高校になって別の地域の高校に入学したため全てが終わった。 関係ないことを長々と書いてしまい感想板を汚してしまい申し訳ない。 しかし、どこかに吐き出さなければ気持ちが悪かったため、そのまま書かさせてもらった。 作者様やほかの読者には本当に申し訳ないが、許してくれ。 -- 2011-11-02 22 46 51 ゆっくりはいいよな簡単で。人間はなかなか更生しない -- 2010-09-06 19 55 14 餃子の王将の研修や戸塚ヨットスクールみたいにもっと過激な暴力や制裁が待ってるのかと思った -- 2010-08-06 21 51 37
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3261.html
※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1〜 ※注意事項 ゆっくりの形じゃ最初のひと跳ねもできないだろとか突っ込み禁止。 お日様昇って天高く、ぽかぽか大地を照らしてる。 風はびゅうびゅうまだまだ寒く、北から元気に吹いて来る。 睦月一月、春まだ遠い。とある冬の小春日和。 ここ数日続いていた陽気に誘われて、うっかりおうちの外に出かけてしまったれいむ一家は困っていた。 「ゆううぅぅ……」 「「「「「みゅぅぅぅ……」」」」」 人里近い川べりに、しょんぼり屯する一家、母れいむと六匹の赤れいむの総勢七匹。 水面に困り顔の影を落としても、事態が改善するわけもなし。 「水さん、ゆっくりしていってね!」 「みじゅしゃん、ゅっきゅりちていっちぇにぇ!」 もちろん川の流れに呼びかけたところで、急流がゆっくりしてくれるはずもなし。 さらさらと音を立てて流れる小川に恨みがましい目を向けて、「はぁ」と溜息と共に愚痴を吐くのが関の山だ。 「これじゃかえれないよ……」 「みゃみゃ、ひゃやくおうちにきゃえりちゃいよ……」 そう、れいむ一家のおうちはこの小川の向こうにある。 川幅おおよそ十尋にして、深さはおおよそ一尺ほどもあるだろうか。 この小川、一昨日れいむたちが渡った時には幅も深さも半分ほどでしかなかった。ゆっくりでも這って渡れる浅瀬もあった。 それが急に大きくなったのは、れいむたちを外に誘い出した小春日和に原因がある。 大本を辿れば妖怪の山にたどり着くこの小川に、この数日の陽気で生まれた雪解け水が一気に流れ込んだのだ。 妖怪の山から霧の湖へ、霧の湖からこの小川へ。 本格的な春が訪れた訳ではないから、流出した水の量もまだ微々たるもの。 だが、その微々たる量が、今はこうしてれいむたちの帰宅を断固として拒んでいた。 「ゆぅ……どうしよう。こまちのわたしぶねはここからだととおいし……」 この小川を遡っていけば、上流にゆっくりこまちが営む渡し舟の里がある。 だが、そこまで行こうと思えば、ゆっくりの足では丸一日。赤ちゃん連れでは二日を見ないと難しい。 今の一時的な増水が収まるまで待つのとどちらが早いか、れいむの餡子脳では判断しにくいところだった。 というよりも、餡子脳では考えても無駄なことであった、というべきか。 「あ。ゆっくりだ」 「ほんとだ。親子だ」 「ゆ?」 親子揃って無益な思索にどれほどの時間を費やしたことだろう。 状況の変化は、結局れいむが起こすのではなく外部からやってきた。 「ゆゆっ。ゆっくりしていってね!」 「ゆぅ〜、にんげんしゃんだ!」 「ゆっくちー!」 「ゆきゅちちちぇいっちぇにぇ!」 くるり、とれいむ一家が振り向いた先には数人の人間の少年がいた。 口々に挨拶するゆっくり一家に、人間に対する不審はない。 もともと魔法の森の奥に住むこの一家のこと、人間に出会うことも稀なために先入観というものがないのだ。 「にんげんさんは、ゆっくりできるひと?」 だから、とりあえず親れいむは聞いてみた。 相手のことをれいむは何も知らないのだから、本人に聞いてみるのが一番だ。 人間さんはとてもゆっくりできると、れいむの餡子脳の中に伝わる一族の記憶が伝えている。 きっと快く答えてくれるだろうと、根拠なく想った。 「ん? 俺たちはゆっくりしてるぞ」 「ゆっ。よかった、ゆっくりしようね!」 「「「「「ゆっきゅちちようね!」」」」」 返ってきたのは期待通りの返事で、れいむたちは今の状況も忘れてすっかり嬉しくなり、ぴょこんぽこんとその場で飛び跳ねた。 一方の人間の少年たちといえば、もちろんその場で飛び跳ねるような事もなく、ふいっと視線を水かさの増した川へと遊ばせる。 「……川を、渡りたいんだ?」 「ゆっ! そうだよ、れいむたちのおうちはこのかわさんのむこうにあるんだよ!」 ぴょこん、少年の問いかけにもう一度れいむはその場で飛び跳ねた。 人間さんと会えた喜びでゆっくり忘れてしまっていたが、今はそれが一番大事なことのはずなのだ。 川の流れは激しくて、れいむ家族は愛するれいむ(同種のつがいらしい)が待つおうちに帰れない。 「ふぅん……」 「でも……ねぇ、れいむ?」 そう窮地を必死に訴えるれいむにも、少年たちの視線は相変わらず川のどこかに向けられていた。 人間さんがどこを見ているのか、れいむは不思議に思って高い場所にあるお顔がどこを見ているのか必死に追いかける――と、 少し上流の川の中ほどをゆっくり進むそれを発見して納得がいった。 「まりさたちは川を渡ってるよ?」 れいむが見つけたそれ、人間さんが指摘したそれは、別の群れのまりさの家族が川を向こう岸に帰っていく光景だ。 親まりさ一匹に、赤まりさ六匹の計七匹。 川岸で侘しく佇むれいむ一家と同じ数。でも彼女たちはおうちに帰ることが出来て、れいむたちには同じことはできない。 「ゆぅ……まりさはおぼうしでかわをわたれるんだよ。れいむにはできないんだよ……」 「ゅー。まりしゃのおぼうち……いいにゃぁ……」 「うらやまちいにぇ……」 だって、それが生まれついてさだめられたゆっくりの種としての特徴だから。 まりさは帽子を舟代わりにして水辺を過ごすことができて、れいむは川を渡ることが出来なきない。 親一匹と赤ゆっくり六匹、羨ましそうにまりさたちの後姿を見送ることしか出来ないのだ。 れいむたちだって、おうちにかえりたいのに。 おうちにかえって、もう一匹の親れいむと何日かぶりにすりすりしたいのに。 ちょっとしたお散歩と餌集めのつもりが、陽気に誘われて随分遠出してしまった。 さぞかし、お留守番の家族は心配しているに違いない。早く、顔を見せてゆっくり安心させてあげないと。 思えば、最初から留守番れいむは遠出に反対していたのだ。 ここまで連れて来た六匹の赤ちゃんたちは、れいむとれいむの初めての子供だった。 秋口にれいむ達はつがいになって、冬篭りに入る直前に初めてのすっきりでこの子達を作った。 たっぷり食料を蓄えた巣穴で、安全に大きくなるまで育てる為に。 春の目覚めを十分に成長した子ゆっくりとして迎え、危険の少ない状態で外界での生活をスタートさせるために。 ああ、だから赤ちゃんたちを連れてくるべきではなかった。 今はちょっとゆっくりできそうだからって、お外の世界を見せてあげようなんて思うんじゃなかった。 れいむの反対を聞いておくべきだったのだ。何がおきるかわからないよ、ってれいむはちゃんと注意してくれていたのに。 川の流れに逆らって、ゆっくり遠ざかるまりさの姿を見送りながら、お出かけれいむの焦りは募る。 かなわない願いだけれど。 今は、ほんとうに、早く、帰りたい。 「ふぅん……じゃ、渡れるようにしてやろうか」 ――その、見送ることしか出来ないはずのものを、人間さんがこともなさげに聞いてきた。 びっくりして、れいむ一家はお互いに顔を見合わせた。 与えられた衝撃と、それによって生じた困惑と、そこに芽生えた期待の大きさは、みんな同じだった。 この川を渡るなんて、れいむたちにはとてもじゃないけれどできないこと。 だけどれいむたちより大きくて、とてもゆっくりしているはずの人間さんの言うことなのだ。 人間さんが口にすることならば、それはとってもゆっくりできることのはず。疑うことなんて何もない。 そして、お出かけれいむだけではなく、赤ゆっくりの心も一つ。 おうちに早く帰りたい。 れいむ一家は「ゆっ」と一つ頷きあって、それから一斉に人間さんへと顔を向けた。 「ゅんっ、ほんちょ?」 「にんげんしゃんはゆっくちできるね!」 「ゆっ、ありがとうにんげんさん! れいむ、とってもうれしいよ!」 そして顔の次に向けるのは、感謝感激雨あられ。 なんて人間さんは凄いんだろう。 れいむたちに出来ないことを簡単にやってのけるのだ。 「んじゃ、と……おい」 れいむたちが提案を受けれたことに、少年たちも満足そうにお互い笑いあった。 ただし、全員ではない。幾人かは、どこか不満そうな顔で仲間たちの行動を少し離れたところから見守っていた。 何か言いたげなその連中を一瞥して黙らせ、れいむを助けてやると請け負った少年たちはさっそくれいむ親子の周りに集まる。 ひょい、と男の子の一人がれいむを顔の両側から抱え込むようにして手を差し込んでくる。 少しびっくりしたけれど、れいむはそれに逆らわない。きっと、これからゆっくりできることをしてくれるはずだ。 次の瞬間、地面が、すぐ側にいた赤ちゃんが、目の前にどこまでも広がるように見えた川面さえも一気に遠ざかり、 視界が大きく広く拡大する。 その絶景、まるで鳥さんになったよう。 「ゆ? ゆーん、おそらをとんでるみたい♪」 「おしょらをとんじぇるみちゃい!」 気が付けば、赤ちゃんたちもいつの間にか少年たちの手にそれぞれつかまれている。 今まで目にした事がないような光景に出会っているのは、赤ちゃんたちも同じこと。 きゃっきゃと賑やかに声を交わすその様子は、とってもゆっくりできているようだった。 でも、『人間さん』の中には『ゆっくりできていない人間さん』もいたようだった。 「おい、やめなよ。いじめはよくないってけーね先生もいってただろ?」 「ゆぅ、いじめはゆっくりできないよ?」 少年たちの一人――仲間たちから先ほど距離を置いた少数派の少年たちの一人が、少し震える様子で上げた制止の声を聞いて、 れいむは思わず自分を抱える少年の顔を見上げて言った。 不満を洩らした人間さんは、れいむのかわいい赤ちゃんを持っていない。れいむたちより人間さんの方が数が多かったらしい。 「ゆー?」 「ゆゆっ?」 れいむのかわいい赤ちゃんたちも、きょとんとした顔を自分を手にした人間さんの顔へと向けていた。 それは、不満顔の人間さんが怒るのも当然だとれいむは思う。 こんなにもかわいらしい赤ちゃんを、手の上に載せて挙げられないというのはあまりにも不公平というものだろう。 独り占めなんていじめっこのすることだ。ゆっくりの世界では一番しちゃいけないことのひとつなのに。 「バーカ、いじめじゃないよ。儀式だ儀式」 「こないだ先生に習ったろ? 蜀の国の諸葛孔明は荒れた川を治めるのに人間の顔に似たお菓子を川の中に投げ込んだって」 「それが饅頭のはじまりだってね。だから、これが饅頭の正しい使い方だろ?」 「そうだけど、そうじゃないだろ。先生にバレたら怒られるぞ」 「ゆ……ゆゆー?」 人間さんたちのお話の内容は、れいむには難しくてわからない。 なんでケンカしているのかも、いまいちはっきりとはわかっていなかった。 わからないけれど、人間さんたちが普通にれいむたちを運んで川を渡してくれるわけではないことだけはわかった。 それはそうだろう。川はいつもより深くて急だ。 れいむたちに渡れないんだから、きっと人間さんにも危ないんじゃないだろうか。 だから、れいむたちにも渡れるように、逆に川さんにゆっくりしてもらうんだろう。 「ゆゆっ? ゆっくりりかいしたよ! かわさんにゆっくりしてもらうほうほうがあるんだね!」 「ゆー! ゆっくちできにゃいかわさんが、ゆっくちできりゅかわしゃんになるんだね!」 「ゆう、にんげんしゃんはすぎょいんだにぇ!」 赤ちゃんたちがいうように、人間さんは、やっぱりすごい。 川さんにゆっくりしてもらえる手段なんて、れいむどころかドスもぱちゅりーも知らないはずだ。 れいむは人間さんの会話を素直に受け取り、とても素直に感動する。 「実はそうなんだよ、れいむ。だから一緒にがんばろうな」 「あのなぁ……」 「ゆゆっ。よくわからないけど、れいむがんばるね!」 人間さんの一人がえっへんと胸を反らせて答え、別の一人が、「はぁ」と疲れたような吐息を吐いた。 ため息をついた一人はぶすっとした仏頂面で胸張る一人をにらみつけ、 「俺たち知らないからな」 「バラさなきゃ、先生だってわかんねえよ。っつーか先生に気づかれたらお前ら殴るからな」 逆に凄まれて「わ、わかったよ」と怯む。 やっぱり、れいむのあかちゃんを持ちたいのに、独り占めされてるから怒ってるんだ。 れいむはそう理解して、頭上の少年にわが子を宥めるような優しい声を掛ける。 「ゆぅ。にんげんさん、けんかはよくないよ?」 「よしよし、待たせたな。じゃあ行くぞれいむ」 少年は、れいむのいさめには答えない。変わりに笑って川のほうを見るようれいむに促した。 いよいよ、この川を渡れるようにしてくれるらしい。 れいむは先ほどの人間同士のやりとりなど忘れ、満面の笑みがパァっとれいむの顔に咲く。 「ゆーん。これからかわさんにゆっくりしてもらうおねがいをするんだね! ゆっくりがんばってねにんげんさん!」 「お前も頑張るって今言ってたじゃん……」 それは、期待通りの話題変更ではあったけど。 れいむの能天気な受け答えを聞いた少年と、彼の仲間たちの顔にいつしか強い嘲りと愉悦の色が浮かんでいた。 だが、近づく帰宅への期待に胸膨らませるれいむ一家は、頭上はるかな人間達の表情の変化に気が付かない。 気付けといっても、顔を直接見あげることの出来ない位置に固定されたれいむたちには無理な話ではあったが。 「……ゆゅっ」 れいむ一家が微妙な空気の変化に、なにも気が付くことのないままに。 一人の少年が赤れいむを掴んだ右腕をすっと身体の後ろに引いた。 唐突な動きに赤れいむはほんの少し驚いたようだったが、怯えの色は微塵もない。 人間さんはゆっくりできる存在で、ことにこの人間さんたちはれいむたちを助けてくれる特別ゆっくりな存在なのだ。 なんで恐がる必要があるというのだろう。 「おねえちゃん、りぇいみゅおしょらをふわふわすぃーってとんじぇりゅよー」 「きゃっきゃっ♪」 「ゆっくりできてるねおちびちゃん!」 「うまくやれよー、弥平次」 「任せとけって」 赤ゆっくりたちの歓声、それを見守る親れいむのゆっくりした声、はやし立てる周囲の少年たち、 そんな彼らに向けて空いた側の手でガッツポーズを作って応える少年。 何が起きようとしているかわかっている者と、何もわかってはいない者。 今だけは、お互いの感情は一致している。 「できればまりさにぶつけたいな」 「あ、それ面白そう。ぶつけたヤツが一等賞だ」 「ゆゆーん、もうすぐおうちにかえれるね!」 「おうちにきゃえったらおきゃーしゃんとゆっきゅちちようにぇ!」 即ち、これから起きること、その先に待つことへの期待と喜悦。 「んじゃ、第一球――」 「ゆっゆぅ、たきゃいたきゃい〜♪」 一瞬先には、その明暗はくっきり分かれてしまうのだが。 「――投げましたぁっ!」 「ゅ……ゅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!?」 一瞬の静止から、サイドスローで少年がれいむを掴んだ腕を振りぬいた。 突然身体に掛かった強烈な加速感に、掴まれた赤れいむの歓喜の声が驚愕の叫びに変じたその瞬間、 すっかりゆっくりしていたれいむ一家の目には、わが子が、姉が、妹が、マジックのように消えうせたように見えた。 だから、川面の方から聞こえてくる同属の声を、すぐには誰のものか認知しない。 「ぁぁぁぁっ、いぢゃいっ! あびゃいっ!? えべべ……えびょっ」 ぱしっ! たしっ! じゅぶっ……じゃぼん。 ぎゅるぎゅるっ、と横回転を加えられた赤れいむは、確かに二回水の上を跳ね、三回目で勢いを失い、 それからつんのめるようにな軌跡を描いて、その次の着水であっさり流れの中に飲み込まれていった。 それは、いわゆる石切り遊びと呼ばれる遊びと同じものだった。 というよりも、石切り遊びそのものだ。使うのが、平たい小石ではなく、れいむ――ゆっくりであるということが違うだけで。 横投げで、投擲するものに強い回転を掛け、浅い角度で水面で跳ねさせてどこまで遠く、何回跳躍するかを競う。 投擲物は飛び去るうちに空気の抵抗を受けて回転数を減じ、着水時の抵抗力を失って最後には水中に没することになる。 たった今、赤れいむがあっという間に水没したように。 「……おちび、ちゃん……?」 「おねーしゃん……いにゃいいにゃいしゅりゅの?」 「いみょうと……れいみゅのいみょうと、きゃくれんびょしてりゅの……?」 ゆっくりたちが、ゆっくりと異変に気づいたころには、すでに川へ向かって投げられた赤れいむの姿はどこにもなかった。 音を立てて流れる清流の中に、一瞬餡子の黒が浮かんだが――それも一瞬のこと。 強い流れの中に溶けて消えうせ、投じられた生き饅頭の残滓は綺麗に何も残らない。 だから、れいむたちにはわからない。 なぜ、人間さんが先ほどまで手にしていたはずの家族がいないのか気が付かない。 順番にその身を襲うだろう、命の危機に気が付かない。 もっとも、それに気が付いたところで、文字通り生死を握られた状況ではなんら益するところはなかっただろうが。 「んあー、おしいっ!」 「どこがおしいのさ? まりさ、気付いてもないよ」 「次はせめて、まりさに水音が聞こえるぐらいに近づけろよな」 混乱するれいむたちの頭上で、少年たちが賑やかに言葉を交わしている。 だがきょときょとと家族の姿を探す一家に、その声は聞こえていても内容を理解することはできなかった。 理解できぬままに、次の危機は無情にもやってくる。 「っせえなあ。じゃあ助左、お前やってみろよ」 「任せろよ」 周囲のブーイングにすっかり拗ねた顔をする弥平次と呼ばれた少年に、助左と呼ばれた少年は不敵な笑いを浮かべて応じ、 彼と同じく赤れいむを掴んだ腕をすっと身体の横へと引いていた。 「……ゆ? おにーしゃん、あしょんでくりぇりゅの?」 「おう、遊ぶぞ。れいむで遊んでやる」 視線が急に水平に動いたことに驚いたらしく、掌中の赤れいむがずれた問いを発する。 そのずれた問いに返す少年の返答も、また少しばかり言葉をずらしたものだった。もちろん、こちらは意図的にずらしているのだが。 「ゆゆ……? りぇいみゅであしょぶにょ?」 姿の見えぬ姉妹を探すうちに心に浮かんだ一抹の不安が、幼い赤れいむにその問いを思い至らせたのだろうか。 微妙な言い回しに気が付いて鸚鵡返しに聞き返す声は、ほんの少し不安に揺れていた。 横目で親の方を見れば、やはり心の中に広がりつつある形容しがたい不安に瞳の光を揺らがせる、親れいむの視線と目が合った。 あるいは、腕を引いた少年のしぐさが先の赤れいむの消失のサインだったと思い至ったのかもしれない。 その未だ人間の善性を信じつつ、それでも禁じえないだろう不安の様子が、芽生え始めた人間への恐怖が、 少年に心地よい快楽を与えることを赤れいむはついにその死までしることはなかった。 「そうだ。おねえちゃんのあとに、つづけぇっ!」 「ゆあっ、ゆぅぁぁぁぁぁっ!?」 少年の威勢のいい掛け声と、赤れいむの恐怖と驚愕が相半ばした悲鳴が川原に響く。 今度ははっきりと、親れいむたちは家族が消滅するプロセスを順序だてて目にすることが出来た。 「れっ、れいむのおちびちゃああああんっ!!!」 「……ゅぁ?」 「おっ、おねえちゃあああぁぁぁん!!」 家族の絶叫がとどろく中、六尋ほど先の川面から小さな水音がじゃぽんと聞こえた。 今度のれいむは短い跳躍を五回繰り返し、異常を感知して漕ぐ速度を上げたまりさ一家にほんの少し近づいて、死んだ。 最初の赤れいむと同じく、この世に生きた証を何も残すことはなく、親に最後の言葉を遺すことすらなく、跡形なく溶け崩れて死んだ。 「なっ……れいぶのおぢびぢゃんだぢがっ……。にんげんざん、ごればどういうごどおおぉぉっ!!」 れいむは信じたくなかった。 これが現実だと信じたくはなかった。 娘がいきなり川の中に投げ込まれ、あっけなく死を迎えたことが現実の世界に起きたことだとは信じたくはなかった。 先ほどと変わらない笑顔をれいむに向けて見下ろしている人間さんが、こんな非道を唐突に行う存在だと信じたくはなかった。 「儀式するって言ったじゃん」 その祈るようなれいむの願いを、少年たちは笑顔のままあっさりと折り砕いた。 「饅頭を川に投げ込むって言ったろ。聞いてなかったのか、お前?」 「おまえら饅頭なんだからさぁ。その時点で気づけよ」 馬鹿だなぁ、と笑う少年たちの口元には、れいむにもわかるほどくっきりと嘲りが浮かび上がっていた。 それを見てれいむは、生まれてはじめて憎しみというものを知った。 生まれてはじめて絶望というものを知った。 生まれてはじめて悪意というものが存在することを知った。 それらは全て、ゆっくりできるはずの人間という存在から与えられた。 つい先ほどまで、共にゆっくりしていたはずの、人間さんから。 「でいぶのあがぢゃんはまんじゅうじゃないいぃぃっ!」 「饅頭だよ、キモチ悪いしゃべる饅頭。ほら、その証拠に」 「……っ!!」 「ぃぎゃあああぁぁぁぁっ!!?」 「ほぉら、餡子入りの饅頭だ」 一瞬の躊躇もなくれいむの右頬を毟り取った少年は、身を襲う激痛に泣き喚くれいむの鼻先にそれを突きつけてけたけたと笑う。 やがて苦痛に身を捩るばかりで突きつけられた事実に反応を見せないれいむに飽いたのか、千切ったその部分を川の中に投げ捨てる。 「おきゃーしゃーん!?」 お楽しみは、まだまだあるのだ。 このゲスしかいない屑饅頭の分際でクソ生意気にも、親を案じるようなミニ饅頭を筆頭にして。 「おきゃーしゃーん、じゃねぇよ。ほらさっさと飛べ」 「ぉきゃーしゃんをいじめりゅ……にゃぁああぁぁぁ、おねーちゃんがぁぁぁぁぁっ!!?」 「ゅぁぁっ、れいみゅしにちゃくにゃ……ゃぁぁぁぁぁっ!!!」 頬を大きく千切り捨てられて、身を絶えず苛む激痛にほとんど麻痺していた親れいむの精神がようやく我を取り戻したのは、 愛するわが子の怒りや悲しみに満ちた絶叫が次から次へと飛ぶように遠ざかるという恐るべき事態に直面してからだった。 「ぉあ、あああああっ! おぢびじゃあああああああん!!」 我に返ったところで、もう遅い。 我に返ったところで、何も出来はしない。 親れいむにできることは、命に代えても惜しくはない愛するわが子達が、 次から次へと決して対岸に届くことない死への跳躍に駆り立てられる姿を見送ることだけ。 いや、そもそも描かれる軌跡は対岸へと向けられてすらいない。 すべて、川の中ほどまで進んだ他所の群れのまりさの家族へと向けて投げられているのだから。 「沈め、沈め!」 「あーっ、当たらねぇーっ!?」 「丸すぎてちゃんと飛ばないんだよ。やっぱ何に使ってもだめだな、ゆっくりって」 少年たちが楽しげに笑い、天を仰いで嘆くたび、 「ゅびゃぁぁぁぁぁっ、ゆびぇっ、ぃゃだっ、たじゅけぶびゃ!?」 「ゅぎゃっ! ゅぐぅっ、おぎゃーじゃばばっ!!」 「やだやだれいみゅおちょらとびちゃくにゃ……ぶぎゃぅ……」 赤れいむの声が遠く、彼方へ遠ざかっていく。 二度と親れいむの肌が触れ合えない彼方へと。 投じられた赤れいむの誰一匹、対岸にたどり着くことはなかった。 親れいむと一緒にお散歩に出かけた誰一匹、二度とおうちに帰り着くことはなかった。 六匹全てが、親れいむの目の前で川のせせらぎの中に没して溶けて崩れて死んだ。 親れいむは叫び続けた。全てが終わるまでずっと叫んでいた。 よほど強く投げられたのだろう、最後の一匹は最初の着水の衝撃に耐え切れずに弾けて死んだ。絶鳴すらなかった。 吹き飛んだ餡子が川の中に沈み、リボンが流れに乗って視界から消え去る頃には両の目から流れ出る涙も、 悲鳴を上げるべき喉も枯れ果て、乾き切っていた。 「あ゛……ゅあ゛あ゛……」 頬に痛々しく開いた傷口の痛みすら、もう欠片も感じない。 後に残ったものは、れいむの中を満たすものは、全てを失った絶望だけ。 少年の腕に抱かれて、れいむは生きながらにして死んでいた。 「もぉ、やだぁ……おうち……かえれない……」 あるいは、自分が殺される順番を待ちわびていたのかもしれない。 もう、おうちで待つ伴侶のれいむに会わせる顔などあろうはずもなかった。 生気のないうつろな眼差しを対岸にあるおうちの方角へ向け、在りし日の幸せな生活を、去りし日の安らぎに満ちた家族を想った。 それを壊したのは他の誰でもない、自分だ。 自分が子供たちに早く外の世界を見せてあげたいなどと思わなければ、 きちんと理由立てて反対してくれた伴侶れいむの言葉に耳を傾けていれば、 外の世界に出たとしても、調子に乗ってこんな遠くまで遊び歩かなければ。 「れいむが……れいむがばかだから……みんな、みんな……」 幾つものif全てで、れいむは死に繋がる選択ばかりを選んできた。 今考えれば、れいむにも如何に愚かな試みだったかが嫌というほどによくわかる。 だって、こんな最悪の結果を迎えてしまったんだから。 だから、れいむにはもうゆっくりできない人間たちをうらむ心はなかった。 ここで彼らに会わなかったとしても、きっとどこかで自分たちは死んでいただろう。だって、れいむはとびきりのばかだったから。 生きていることが罪になるほどの、誰もゆっくりさせてあげられない、自分の子供さえゆっくりさせられないゆっくりだから。 今からこのゆっくりできない人間さんたちから与えられるだろう死は、れいむにとって当然の罰なのだと思えた。 「れいむ……ばかでごめんね。れいむをおいてっちゃうことになるけど……せめて、おちびちゃんはあっちでりっぱにそだてるよ……」 だから、れいむはこっちでゆっくりしてね。 心のそこからそう願い、れいむはゆっくりと目を閉じる。 次にくるのはお空を飛ぶ感覚か、れいむの身体を何かが破壊する激痛か。どちらでもよかった。 全てを受け入れる心は出来ていた。与えられるものが死であるなら、どんな苦痛を伴うものでも構わない。 「おーい、何言ってんだよ」 「ゆぅ……?」 与えられるものが、死であるなら。 「お前はおうちに帰るんだよ」 「……ゆ゛!?」 誰が、生など望むものか……! 「お前をおうちに帰すために、ガキども川に投げ込んでやったんじゃないか。お前が帰んなきゃどうすんだよ」 だというのに。少年の笑顔が、れいむの心を痛烈に一打ちして蘇生させた。 ま、水が収まるまでゆっくりしろよ。少年はにやにやと嫌な笑いを浮かべてそう告げた。 れいむの願いと対極をなす、あまりにも残酷な言葉をそんな笑顔で淀みなく告げた。 「……あっ、あがぢゃんみんなじんじゃっで、ごろされぢゃっでがえれるわげないでじょおぉぉ!?」 だがそれに驚き、叫ぶれいむは本質を理解していない。 自分を抱えたままの少年が、いったいれいむに何を望んでいるのかを。 当然、ことの本質を理解しようともしていないれいむの抗議になど、少年はまるで取り合わない。 そうやって、れいむの身体ではない、心を苦しめ、痛めつけることが目的なのに、この饅頭はまるでわかっていないのだから。 楽しげに笑う少年の意図を、れいむはまったく理解しない。 理解しないままに、少年が望むままに苦しみ、悶え、のた打ち回る。 「ごろじでっ! あがぢゃんだぢどおなじみだいに、ごろじで! すぐごろじで! れいぶをごろじでっ!!」 「あっそう。じゃあ好きにしろよ。とりあえず傷は直しておいてやるから」 「ゆびゅっ!?」 なおも殺してくれと喚きたてるれいむに、少年は肩から提げた布地の鞄から竹筒の水筒を取り出した。 そこから頭に振りかけらた液体が目に染みて、思わずれいむは悲鳴と共に目を閉じる。 一瞬、ゆっくりが死ぬことのできる毒か何かと期待したが、もちろんそんなものではなかった。 それどころか、引き裂かれた頬の傷口があっという間に痛みを失っていくのがわかる。 恐る恐る、髪を伝って口元に一筋の流れを形作ったその粘度の高い液体を舐めてみる――とても、甘い。 傷つき、死をひたすら望むほどに疲弊した心すら、油断すると癒してしまいかねないほどにその液体は甘かった。 それが水あめというあまあまなたべものであるとまでは、まったく野生で育ってきたれいむは知らない。 「じゃーな」 別れを告げるその言葉に我を取り戻した時には、頬の痛みはまったくなくなっていた。 頭に注がれる液体も、いつのころからか途絶えている。慌てて目を開けたれいむの 先のれいむの懇願など気にも留めず、いっそ丁寧なぐらいゆっくりと、安定した岩の上にれいむを置いて手を振っていた。 岩場から飛び降り、れいむがその背中を追う頃にはすでに少年たちの姿はずいぶん先にある。 「まっ、まって! おいでがないでっ!」 「礼はいらないぞー」 「あと一日も待ってりゃ水は引くと想うぞ。よかったな、赤ちゃん死なせた代わりに家に帰れるぞ」 まあ、多分ちびが死ぬのと水が引くのは関係ないけどな。 そう言って、少年たちはどっと愉快そうに笑いあっていた。 「でいぶをごろじで! ごろじでよぉ!」 「やーだよ。死にたきゃ勝手に死ねば?」 れいむが泣けば泣くほど、叫べば叫ぶほど、少年たちは楽しそうに肩を震わせて笑った。 顔がキモい、声がキモい。ガキ殺したぐらいで必死なのがキモい。 理由を挙げ、せせら笑い、だが川原を離れる歩みは止めずに、れいむからどんどんその姿が離れていく。 「おでがいじばず! でいぶをごろじでぐだざいっ! れいぶを、でいぶをあがぢゃんのどごろにいがぜでぐだざい! おねがいじばず、おでがいじばぶっ!!」 れいむは泣き喚きながら、追いかけた。 精一杯、尖った石が親れいむの底面を抉り、切り裂く痛みなど気にもならなかった。 致命傷には至らない痛みなどどうでもよかった。 ひたすらに、自分の命を少年達が摘み取ってくれることを希った。 彼らがれいむ自身の命よりもはるかに重い、赤ちゃんたちの命を遊びのために全て流し去ってしまったように。 だが子供達は無情にも、れいむの願いなど一顧だにせず嘲り笑いながら走り去っていく。 どんなに跳ねても、どんなに飛んでも、その背中にれいむが追いつくことは決してなくて。 「どぼじで! どぼじでごろじでぐれないのおぉぉぉ!!」 ただ、痛々しい親れいむの絶叫だけが、誰もいなくなった川原に轟いた後。 しばらくして、大きな水音がひとつ新たにバシャンと響き、川原は元の静けさを取り戻した。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4589.html
色々設定借りてます。 文章をほとんど書いたことないので注意。 「ちょうちょさん!まりさにゆっくりつかまってね!」 多くのゆっくり達がそこそこ平和に暮らしている森。 その一角でゆっくりまりさは蝶を追いかけ、ぽいんぽいんと跳ね回っていた。 遊んでいるのではない。家族のために必死でご飯集めをしているところだ。 綺麗な蝶を持ち帰りれいむと子供達を喜ばせたいと、何度捕まえるのに失敗してもへこたれずに頑張っていた。 「おーいまりさ、ゆっくりしていってね」 「ゆっくりしていってね!ゆあ!ちょうちょさんが…」 そんなまりさに誰かが近づいて声を掛けてきた。 まりさが反射的に挨拶を返している間に蝶はひらひらと遠くへ飛んで行てしまう。 「ゆゆ!……まりさになにかごようなの!?」 「ごめんね。ちょっと見て欲しいものがあるんだ」 少し腹立たしさを覚えて振り向くと相手は高い所に顔があった。人間だ。 人間は美味しいご飯を独り占めにしたりゆっくりプレイスから追い出したり、ゆっくりさせないと聞いたことがある。 まりさは許せないと、膨れて強さを見せ付けようとした。だが思い直す。 人間はゆっくり流の挨拶をしてきたのだから、もしかしてゆっくりさせてくれるかもしれないと。 それに何かゆっくり出来ない事をして来るなら自慢の体当たりで追い返せばいいのだ。 まりさは悠然と構え、人間の相手をしてあげることにした。 まりさに声を掛けたのは若い青年だ。 青年は落ち着いたまりさを見て、かぶっていたまりさの物と良く似た黒い帽子を脱ぎ、 まりさの目の前に持っていき中を見せたり、逆さまにして軽く叩いたりし始める。 「ゆ?ゆ?おぼうしがどうかしたの?」 「この通り帽子には何もないよね?でも今から魔法でこの帽子の中からあまあまさんを出してみせます」 「ゆ!あまあまさんはゆっくりできるんだよ!どこにあるの!?」 まりさはあまあまという言葉を聞いて不機嫌さが吹き飛んだ。 仲間からあまあまは森の中にあるどんなご飯よりゆっくり出来る物だと聞いた事があるのだ。 嬉しくなってもうどうにも抑えきれずに、ぴょんぴょんと跳ね回って人間の足に頭をぶつけてしまうほどだ。 青年はドタバタ騒ぎ出したまりさを手で制し落ち着くまで待ってから、白いハンカチを取り出し ヒラヒラさせてから帽子の上にかぶせた。 「それでは…チチンプイプイ!あまあまさん出て来い!」 ドサドサ! 「ゆゆゆ!?」 青年が何事かを唱えてハンカチを取り帽子を逆さまにすると甘い匂いがする物がたくさんまりさの目の前に落ちてきた。 何も無かったはずなのにどうして? まりさは目をパチクリさせてぽかーんと口を開けることしか出来なかった。 青年は飴玉の包みを取って呆けているまりさの口に運ぶ。 「ゆ!ゆゆーん!ぺ~ろぺ~ろ、し、しあわせ~!!!」 何とゆっくりした味なんだろう。ほっぺがどうにかなってしまいそう。 今まで味わった事が無い甘さにまりさは左右に体をくねらせて夢見心地だ。 「おにいさんこれめっちゃうめーよ!ぜんぶまりさにちょうだいね!」 「だーめ、一つだけね。そーれ…チチンプイプイ!」 「ゆゆ!?ないよ!?きえちゃったよ!?」 まりさが我に返って人間の方に注意を向けた時、飴玉の最後の一個が帽子に入っていく所だった。 青年は何事かを唱えて帽子を逆さまにする。 何も落ちて来ない。帽子に入ったはずの飴玉が消えてしまったのだ。 まりさは帽子の中を穴の開くほど見つめるが欠片一つも見つからない。 不思議すぎて、奥が見えているのに中に入ろうとしてしまうほどだ。 青年はそんなまりさをまた手で制して、帽子マジックを何度も繰り返す。 「びっくりー!どうなってるの!?ゆめじゃないよね! にんげんさんのおぼうしからあまあまさんがでてくるなんてしらなかったよ!! にんげんさんのおぼうしってすごいね!!もういっかいやってみてね!!」 飴玉が現れたり消えたり、何度見てもすごくて目が離せない。 驚きのあまり言葉が止められない。 とても興奮してぴょんぴょんと跳ねずにもいられない。 青年はそんなまりさの様子を口元を手で隠し眉間にしわを寄せながら見つめていた。 「にんげんさんがうらやましいよ!おぼうしからあまあまさんがでるな…ゆゆ!? まりさのおぼうしからもあまあまさんがでる…の?そういえばためしたことなかったよ! にんげんさん、どうなの!?」 「んー、もしかしたらいっぱい頑張れば出るかもな」 「ゆゆーん!!!」 まりさは素敵な事に気が付き、お墨付きももらって有頂天だ。 目の色を変えて、もう待って入られないとばかりに体を乱暴に揺らして帽子を地面に落とすと、 口にくわえて上下に振り始める。 「まりさのすてきなおぼうしさん!あまあまさんをだしてね!ゆ!ゆ!」 もうまりさの頭の中ではあまあまが出ることが確定していた。 ゆっくり出来る素晴らしい一生が保証されたようなものだ。 キノコや芋虫等より美味しいあまあまを家族にもいっぱい出してあげたい。 食卓で家族に褒めちぎられている場面を想像して「ゆへへ!」と笑い出して帽子を落としたりしながら、 もう青年が眼中にないくらい夢中で、あまあまが出てくれることを願い帽子を振り続ける。 青年はまりさをしばらくじっと見つめた後、そっとその場を離れて行った。 「くくくっ…可愛い奴だ…」 その後まりさはお帽子からあまあまを出そうとご飯集めも忘れて奮闘したが、出てくるのは草の破片や砂ばかり。 はっと気が付いた時にはもう辺りは暗くなりつつあった。 れみりゃに食べられてはたまらないとあわててお家に飛んで帰る。 待っていたのはご飯を持ってこなかったまりさへの非難の嵐。 素直に謝っておけば良かったのだが、まりさが言い訳や反論をしたため犬も食わない夫婦喧嘩が勃発した。 やがて喧嘩は治ったが、まりさと親れいむは体当たりバトルで所々皮が破れてボロボロだ。 れいむは作り笑いをしながら、隅で固まり恐怖に身をすくめていた子供達を呼んだ。 不本意ながら少ない予備の食料での夕食タイム。 もちろん変な言い訳をして子供達にいらぬ期待を持たせたまりさだけはご飯抜きだったが。 「おぼうしさんからあまあまさんがでてくるはずなのおおお!!!」 お天気が良いので家族総出でピクニックに出発したまりさとありすの一家。 みんなで歌を歌いながら、競争したりしながらの楽しいゆっくりウォーク。 そんな一家の元にも帽子マジックをする青年は現れた。 青年はまず、子ゆっくりでも丸ごと頬張れる程度の小さな飴玉を差し出した。 「あまあまだよ。ゆっくりしていってね」 「ぴゅるるるー!ゆっくりしていってね!おにいさんはゆっくりできそうね!」 プクーと膨らんで子供達を体の後ろに隠し警戒感を露にしていた親ゆっくり達だったが、 飴玉を見せるとあっさり警戒を解き態度を軟化させた。 人間がゆっくりに何かをしてきた時は碌な事にならない事が多いのに…。 「……!……ゆっきゅりー!!」 「おいちー!!なにきょれー!!」 「しゃわしぇー!!!にゃんてときゃいはにゃあじにゃのー!!!」 あまりの美味しさに感動して喜びを抑えきれずころころと転がり始める子ゆっくり達。 親ゆっくり達はそんな子供達を嬉しそうな、愛おしそうな表情で見つめる。 しかし、しばらくすると青年の方に物欲しそうな視線を送り始める。 飴玉は子ゆっくり達の分しか渡されなかったからだ。 そこで青年は頃合い良しと帽子マジックを始めた。 帽子から飴玉が出たり消えたり不思議なイベントにゆっくり一家はしばらく目を丸くして 固まっていたが、やがて感嘆の声をあげ始める。 「どうなってるんだぜ!?」 「なんてふしぎなの!?」 「ゆわ!?ゆわわー!?」 「にんげんしゃんのおぼうちしゅごーい!!」 「ゆっゆっ!!もういっきゃいやっちぇねー!!」 青年は最後に普通サイズの飴玉を二つだけ残して帽子をかぶり、手でどうぞと促す。 親まりさはすぐに飛び付いて飴玉にむしゃぶりついた。 だが親ありすは子供達の物欲しそうな視線に気が付いて困り顔だ。 「ゆ!ままはいらないからちびちゃんたちがたべてもいいのよ!」 「ゆっきゅりー!!」 「ほんちょー!?」 「みゃみゃ、ありがちょー!」 待ってましたとばかりに涎を垂らして飴玉に飛びつく子ゆっくり達。 飴玉を中心にぷにぷにの柔らかほっぺが潰れてしまうのではと思うほどくっつけあって舐め始める。 「「「ぺーろぺーろ♪しゃわしぇー♪」」」 親ありすはもうそれだけで、お腹いっぱい胸いっぱいという表情だ。 そんなありすに青年は帽子の中から飴玉をもう一個プレゼント。 それからはもちろん家族一同でさらに大音量になったしあわせー!の大合唱。 そんな一家を見つめながら青年は何かに耐えるように体を震わせていた。 そして「ゆっくりしていってね」と言いながらその場を後にする。 「くっ…くくっ…いつまでも仲良くな…」 ゆっくり達が集い、日向ぼっこや追いかけっこなど思い思いにゆっくりしている森の広場でも。 「チチンプイプイ!あまあまさん出て来い」 ドサッドサッドサッ! 「「ぺーろぺーろ、しあわせー!!」」 「おちびちゃんのぶんもほしいよ!もっとちょうだいね!」 「ぱねぇ!にんげんさんのおぼうしめっちゃぱねぇ!」 「あまあまさんをだせるなんてとてもとかいはなおぼうしだわ!」 「むきゅー!ぱちゅにもどうやるのかおしえてね!」 「わからないよー!でもすごいんだよー!」 青年の手品は以前よりさらに流れるような動作や見せ方になっていた。 不思議な出来事と美味しい飴玉に沸き返るゆっくり達。 誰も彼もが目を輝かせ満面の笑みを浮かべている。 すべて本当のことだと信じきり、疑うことを知らないゆっくり達。 「ゆー!みんなどうしたんだぜー?」 「たのしそうだね!なかまにいれてね!」 「むきゅー!なにがあったの?」 「にんげんさんのおぼうしからあまあまさんがでてくるんだよ!」 楽しそうな歓声を聞いて遠くにいたゆっくり達も集まってくる。 青年の周りはいつのまにか押し合いへし合いしているゆっくりだかりの山になっていた。 「やあまりさ、楽しい事をするから帽子を貸してくれないか?」 青年はニヤリ笑うとまりさ達に声を掛けた。 だが渋るまりさばかりで帽子を貸してくれるものは中々現れない。 それもそのはず、ゆっくりの飾り、まりさでいうと帽子がそれであり、無くしたりすると ゆっくり出来なくなったり、仲間と認識されずいじめられたりするからだ。 しかし、しばらくすると一匹のまりさが説得や応援を受けて帽子を貸してくれる事になった。 「だいじにしてね!ぜったいだよ!」 「もちろんだよ。では、このまりさの素敵な帽子から飴玉を出してみるよ」 ざわ…ざわ… 騒音公害と言えるほど騒がしかった辺り一体が静まり返る。 そんなこと有り得るのだろうか?いやでも、もしかしたら。 皆が青年の手にあるまりさの帽子に釘付けになり固唾を呑んで見守っている。 「チチンプイプイ!……うーんまりさの帽子だと難しいなあ」 青年がいくらまりさの帽子を振ってもあまあまは出ない。 やはり駄目なのかという失望の雰囲気がゆっくり達を包み込み、あちらこちらからため息も聞こえてくる。 だがそれは割れんばかりの歓声に変わった。 「えいや!チチンプイプイ!」 トサッ! 「「「ゆゆー!!!!!?」」」 まりさの帽子から飴玉が二つ落ちて来たのを目の当たりにしたのだ。 さっき手品を見ていたものは歓声を上げ、見ていなかったものは驚きの声を上げた。 青年が帽子を貸してくれたまりさの口に飴玉を入れてやると、あっという間に幸せ顔になって舐め始めた。 もう一つの飴玉を目の前に置くと「まりさのおぼうしからでてきたんだからまりさのだよ!」と 得意そうな顔をして体の下にしまい込んだ。 みんながまりさの帽子を代わる代わる覗き込んだり、振ったりしてみるが何も出てこない。 「どうしてなのー!?」 「ふしぎだねー!?」 「ゆ!まりさのおぼうしからあまあまさんがでるなんてしらなかったんだぜ!」 「そういえばためしてみたことなかったよ!」 「ゆ!ゆ!ゆん!!どうしてでないんだぜ!?」 「まりさ!もっとがんばりなさいよ!」 「ちょっとかすんだみょん!じゅもんをとなえないとだめなんだみょん!ちんちんぽいぽい!」 「ちぇんのおぼうしじゃだめなのかなー?わからないよー!」 「れいむにもかしてね!れいむはやさしいからあまあまさんがでてもはんぶんだけでいいよ!」 「むきゅー!ぱちゅにもみせてー!」 「かえすんだぜ!おぼうしはまりさのものなんだぜ!」 「そうだよ!そんなにひっぱったりしたらやぶけちゃうよ!かえしてね!」 不思議な事を再現しようとゆっくり達はまりさ達を取り囲んでお祭り騒ぎ。 まりさ達は口では迷惑そうにしているが、みんなから注目されて自慢顔だ。 青年は盛り上がるゆっくり達を見渡し、ニヤリと笑みを浮かべながら何度か頷くと広場を後にした。 「くっくっ…くっ…無邪気な奴らだ…」 青年は森のいたる所に現れ、ゆっくり達に帽子マジックを披露していった。 その噂は急速に広がり、最近のゆっくり達の話題と言えばその事ばかり。 だが森は広い。青年に会ったことのないゆっくりの方が圧倒的多数だ。 ゆっくり達は青年に遭遇する幸運を祈った。 だが…はたしてそれは幸運な事なのだろうか。 あるまりさは帽子からあまあまが出ると家族に信じてもらえず、おうちを飛び出してしまった。 そして自分だけ入れそうなゆっくりプレイスを見つけると、大きな石ころを使って厳重に封を施す。 誰かに見られたらあまあまを盗られてしまうかもしれないと思ったからだ。 「ゆふふふ!まりさはあまあまをだすまでがんばるよ!あまあまがでてもれいむなんかにあげないよ!」 まりさは頑張った。薄暗い場所で何も食べずに頑張った。あまあまでお腹いっぱいになりたかったから。 少しだけ眠った時には山積みになったあまあまの中を泳ぐ夢を見た。 周りではありすやぱちゅりーがまりさを褒め称え、うっとりとした表情で熱い視線を投げかけてきた。 れいむは遠くで恨めしそうに見ているだけだった。 しかしあまあまを出せないまま腹減りの限界一歩手前を迎えた。 気合を入れて帽子を振ったりするのは意外と体力を使い、お腹が減ってしまうのだ。 さすがにご飯を食べなければまずいと、入り口を少し崩してみるが外は暗くて、さらに雨も降っていた。 外に出られないと落ち込んだが、すぐに元気を取り戻す。 あまあまさえ出せれば問題はないと思ったから。 まりさはへこたれずに再度頑張った。頑張りすぎた。入り口の石ころをどかす体力が無くなるまで。 「ゆ゛…ゆ゛…ゆ゛…ゆっくりしたけっかが…これだよ…」 数日後、まりさの念願だったあまあまが一つ出来上がった。 「そんなこといわないでたべてねえええ!!いもむしさんだいすきだったでしょおおお!!」 「まじゅいむししゃんにゃんちぇちゃべりゃれにゃいよ!」 「はやきゅあまあましゃんをもっちぇきちぇね!」 「あみゃあみゃしゃんもだしぇないやきゅたたじゅはゆっくちどっきゃいっちぇね!」 「「おお!やきゅたたじゅやきゅたたじゅ!」」 まりさが一生懸命頑張って集めてきたご飯に不満爆発な子ゆっくり達。 まりさとありすの一家は青年の手品を見て飴玉を貰ったことがあった。 さらにまりさがご飯集めに奔走している間、散歩していたありすとその子供達は森の広場で 他のまりさの帽子から飴玉が出るところも見ていたのだ。 飴玉を食べた体験は不思議な出来事とセットで最高にゆっくりした物と子ゆっくり達の脳裏に強烈に焼きついてしまった。 それよりランクが大幅に下がる森のご飯ではもう満足することは無いのだ。 どうして自分の親はあんなにゆっくり出来るご飯を持ってきてくれないのか。 どうして帽子からあまあまを出せないのか。 子ゆっくり達はこれから毎日、ゆっくりさせてくれない親まりさを見下し罵倒するだろう。 「どぼじでぞんなごどいうのおおおおお!!!まりさはあまあまなんてだせないよおおお!! ありすもなんとかいってあげてねえええ!!」 「ゆー…ありすもあまあまさんをだせるとかいはなまりさがよかったわ…」 「ぞんだごどいえっでいっでないでじょおおお!?ゆわあああーん!!ゆっぐりでぎだいいいいい!!!」 「むきゅーり、むきゅーり!ちいさいまりさだけのようね!」 「ゆゆ!きょきょはまりしゃたちのゆっきゅりぷれいしゅだじぇ!」 「しりゃにゃいぱちゅりーはでちぇいきゅんだじぇ!」 あるぱちゅりーは不思議な出来事の真偽を確めたくて他のゆっくりのおうちに忍び込んだ。 まりさがどうしても帽子を貸してくれなかったからだ。 親まりさが狩りに出発する時、見送りは子まりさだけだったのを物陰からこっそり見ていたのである。 「むっきゅきゅー!おはなしでちいさいものをえらんだほうがいいときいたことがあるわ!」 「やめちぇー!まりしゃのおぼうちもっちぇいきゃないじぇー!!!」 「まりしゃのおぼうちかえしゅのじぇー!!!」 意味不明なセリフを言いながら子まりさの帽子を盗んでいくぱちゅりー。 成体まりさには敵わないので子まりさを狙っただけである。 子まりさ達は大した抵抗も出来ず帽子を奪われた。 この後子まりさ達は帽子が無いために子供と認識されず、帰ってきた親まりさに追い出された。 「さいきんおぼうしがないまりさをよくみかけるんだぜ!ところでまりさのちびたちはどこなんだぜ!?」 青年はある時、ぷっつりとその姿を消した。 だが数日経っても森の全域に広がった噂は消える事がなかった。 物忘れが激しいゆっくりだが自分に都合のいい事、利益のある事はいつまでも覚えているのだ。 そして…。 「まりさはあまあまをひとりじめにしてるんだよ!にげないでゆっくりつかまってね!」 「どぼじでえええ!!!まりざのおぼうじがらあまあまざんなんでででごながっだよおおお!!!」 「うそつきのまりさはおぼうしをわたしてからゆっくりしんでね!」 「やべでええええええ!!!」 まりさの帽子からあまあまが出るところを見たゆっくり達は集団でまりさの帽子狩りを始めた。 まりさがあまあまを独り占めにして、自分だけゆっくりしているという噂が広がっていたのだ。 いくらまりさ達が否定しても聞く耳を持ってくれなかった。 他のゆっくりからすればまりさが否定すればするほど怪しく思えてくるのだ。 奪ったまりさの帽子からは当然あまあまが出る事は無かったが、出ない帽子もあるだろうと 勝手に連想して次から次へと奪っていく。 他の奴に先を越されまいと、競争でもしているかのように奪っていく。 集団は徐々に増えていった。 ゆっくりの通常種の中では力が強いと言われるまりさだが突然集団で襲われては成すすべも無い。 大切な帽子を奪われまいとすればするほど、ひどい反撃が返ってきた。 涙を流しながらの懇願も無視された。 追いかけて取り戻そうとすると動けなくなるまで底部を痛めつけられて放置された。 集まって対抗しようとするまりさ達もいたが、目の色を変えて奪いに来るゆっくり達に苦戦し追い込まれてしまう。 すると自分だけ助かろうと裏切り行為をする者が現れ、あっという間にその場しのぎのグループは崩壊してしまうのだ。 また、愛する家族に帽子を奪われるまりさもいた。 まりさにはもう信用できる者なんていなかった。 「まりさのぼうしをにんげんさんにわたすとあまあまをくれるんだよ!」 又聞きを繰り返して変容した噂を真実と決め込み、人里に行き人間に纏わり付いて困惑させるゆっくりも出始めた。 挙句の果てに「どおしてあまあまくれないのおおお!!ゆっくりしね!!」と体当たりを繰り返し始める。 「あまあまさんをだせるのはにんげんさんのおぼうしなんだよ!」 帽子をかぶっている人間に体当たりをして帽子を奪おうとする奴も現れる始末。 ゆっくりがいくら束になろうと人間に敵うはずも無い。結果は言わずもがな。 「まりさをおいかけるおまつりなんてすごくとかいてきね! ありすもさんかしたいわ!んほおおおおおおお!!!」 騒ぎに便乗して欲を満たそうとする奴もいたが、別にいつもと変わらなかった。 「どおじでばりざがごんだべにあうんだぜ…」 「まりしゃの…まりしゃのおぼうち…」 「ゆ…ゆぐっ…ゆっぐり…」 「おぼうじがないどゆっぐりでぎないんだぜ…」 「これからどうしたらいいのおおおおお!!!」 この森の辺り一帯は帽子の無いまりさとその嘆きの声で溢れかえっていた。 帽子の無いまりさ達は自分の帽子を探しに行くも、そう都合よく見つかるわけが無い。 仕方なくあまあまが出ない役立たず、と踏みつけられボロボロにされた、サイズの合う他のまりさの帽子をかぶる事にした。 自分の物ではないという違和感のために常にゆっくり出来ないのだが、無いよりはマシなのだ。 「あまあまがでないできそこないのおぼうしさんだね!こんなのおみずさんにながしちゃうよ!」 「うー…またはずれなんだどぉー!こんなのびーりびーりしちゃうんだどぉー♪ れみ☆りゃ☆うー♪にぱー♪」 こんな奴らもいるので、他のまりさの帽子にもあぶれた方が多い。 帽子無し同士は攻撃し合ったりしないが他のゆっくりには攻撃されてしまう。 帽子無しまりさ達はこそこそと集まり、互いの不幸を慰め合った。 ゆっくりしたいと滂沱の涙を流し、帽子があるまりさ達を羨んだ。 このまま日陰を歩んでひっそりと惨めに暮らしていけばいいのだろうか? 否だ。帽子が無いのは永遠にゆっくり出来ない、死んだも同然のことなのだから。 そして…。 「おぼうしをよこせえええええ!!!」 どんよりと眼を曇らせた帽子無しまりさ達が徒党を組み、帽子有りまりさを襲い始めた。 目に付いた帽子有りまりさを見つけると、まるで生者の肉を求めるゾンビのように群がった。 帽子有りまりさも奪われまいと必死で迎え撃つために、もはや戦争状態。 闇討ち、抜け駆け、見殺し。そんな事を繰り返しついに帽子を勝ち取ることが出来たまりさ。 だがその瞬間から襲われる側に回るのだ。 さらに帽子からあまあまが出ると信じている奴らはまだいる。 奪い奪われの空しい無限ループ。 もはやまりさ達にゆっくりプレイスなんて存在しなかった。 「ふふ…くっくっくっ…」 ゆっくり達にとって元凶となった青年は、自室でくつろぎながら満足そうな表情で気分良く笑っていた。 ゆっくり達に手品を見せた時の様子を思い出して、今頃どうしているだろうと想像して。 「ゆっくりはいいよなー」 思わず独り言も飛び出してしまう程に。 あまりにもゆっくり達の反応が楽しく、久々の長い休日を丸ごと帽子マジックに費やしてしまった。 お徳用の飴玉袋を一体どのくらい消費したのだろう。 近所の子供に披露した事があったが反応はいまひとつだった。 飴玉をあげようとしても「知らない人から貰っちゃ駄目なんだ」と言われたりする始末。 怪しい人とでも思われているんだろうか? 確かに友人から怪しいと言われたことはあるが…。 それに比べてゆっくりは簡単な手品なのに素直に驚いてくれる。 中でも子ゆっくりの反応は小躍りしてしまいそうになるくらい可愛い。 手品初心者なので何度かとちったりしたのだが、ゆっくり達は気づかないのも良かった。 ゆっくりまりさに他愛の無いイタズラをしたが、ゆっくりは物覚えが良くないらしいので、 しばらく経った今はそんなこと忘れて平穏な毎日を過ごしていることだろう。 観客がゆっくりとはいえ見られて練習が出来たので、手品の腕も上達したような気がする。 もっと楽しい手品を覚えてゆっくりにも、子供達にも喜んでもらおう! 青年はみんなが喜んでくれる顔を想像して、また「くっくっ…」と忍び笑いを漏らし始めた。 「ゆ!へんなゆっくりがいるよ!」 「いなかもののにおいがぷんぷんするわ!」 「むきゅー!みるからにあたまがわるそうね!」 「…………」 草を食べていた帽子無しまりさを見つけ、わざわざ遠くから寄ってきて難癖をつける三匹のゆっくり達。 しかしまりさは何の反応も見せずに草を食む動作を続けるだけ。 「むしするなんてなまいきだね!ゆっくりできなくさせるよ!」 ゆっくりできない飾りの無い奴を攻撃するのは当然の事。咎める者はいない。 れいむが体当たりすると、同じような体格なのにまりさは拍子抜けするほど簡単に吹き飛び、 ごろごろと転がった。 三匹は泣き叫んで命乞いをしてくるだろうと笑いながら注視する。 だがまりさは何事も無かったように起き上がり、ニタリと歪めた笑みを浮かべていた。 「みんなもまりさをいじめるんだね……」 「こいつわらってるよ!きもちわるいね!」 「いなかものはゆっくりしないできえなさいよ!」 「むきゅー!あたまのねじがはずれてるのよ!」 今度は永遠にゆっくりさせてやろうと、まりさを包囲する三匹。 ニタリ、ニタリ、ニタリ、ニタリ、ニタリ。 体当たりされたまりさと同じ種類の笑みを浮かべた大勢の帽子無しまりさ達が、後ろから静かに 近づいている事に三匹のゆっくりはまだ気が付いていなかった。 森の随所で帽子無しまりさ達の復讐の幕が上がっていた。 殺しはしない、飾りを奪うだけ。 どんなに悲しいのか、どれだけ惨めなのか分からせてやりたいから。 反撃や追跡してこようものなら動けなくなるまで痛めつける。 泣きながらの懇願にも「おあいこだね!」と笑顔で答えて奪い去る。 他のゆっくり達が集団になって守ろうとしても、どす黒い感情で強く結ばれたまりさ達に追い込まれ、 その場しのぎのグループは裏切り等で崩壊した。 子ゆっくりは許されたが、親が戻ってこなかったり、知らないゆっくりが「おかあさんだよ!」と おうちに入ってきたりするのでゆっくり出来なくなった。 この森の辺り一体は飾りの無いゆっくり達と嘆きの声で溢れかえっていった。 ゆっくり達が平和に暮らしていた面影はもうなかった。 あとがき 読んでくれてありがとうございます。 最初は帽子無しまりさが泣いているところで終わりだったのですが、付け足したら何だか暗い話に。 青年が森のあちこちに現れてたのは、マウンテンバイクで走り回っていたという事で。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1806.html
冬の足音が聞こえてきた秋の昼時、枯れ木の根元に出来た穴から小さな影が4つ現れました。 「きょうはなにちてあしょぼーか!」 「おいかけっこ!」 「ゆ~それじゃゆっくちできないよ!」 「じゃあかくれんぼ!」 仲良く遊び始めたのはゆっくりれいむと呼ばれる最近になってあらわれたナマモノです。 ゆっくりれいむは紅いリボンと黒髪がトレードマークのもっとも多くいるゆっくりでした。 遊んでいるれいむたちは人間で言う子供で大きさは野球ボールぐらいでした。 まだ生まれて1年も経ってない4匹は仲良くかくれんぼを始めます。 最初ということで一番大きいおねーちゃんれいむがオニになりました。 残りの3匹は思い思いに隠れ場所を探しに行きます。 「も~い~かい!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ~・・・いーち!にー!さーん!だー!らーぶ!・・・」 「ゆゆっ、ここはれいむがかくれちぇるよ!べつのところにいってね!」 「ゆ!わかっちゃよ!」 「れいみゅはこっちにいくよ!」 「じゃあれーむはむこうにいくね!」 一匹のれいむは石の影にかくれました。 もう一匹は枯葉の下に。 「もーいーかい!」 「ゆっくりできたよ!」 「じゃあいくよー!」 石に隠れたれいむも枯葉にかくれたれいむはすぐに見つかってしまいます。 「次はれいみゅのばんだよ!」 「ゆゆ・・・まだれぃむがのこっちぇるよ!」 「みゅ~さっさとみちゅけるよ!」 しかし、残り一匹はなかなか見つかりません。 それもそのはず、最後の一匹はかくれる場所を探して今も移動していたのです。 「ゆ~、なかなかみちゅからない・・・」 この子れいむは遊びということも忘れてゆっくり出来そうな場所を探していました。 やがて、今まで来たこともない遠い場所に来てしまいます。 「ゆー・・・ゆっ!ここどきょ!」 れいむは知らない場所でいることに不安を感じます。 「おねーちゃああああ!れぃむはここだよおおおおおお!」 しかし、叫んでも叫んでも返事は返ってきません。 姉れいむとは子れいむが思っていたよりも離れていました。 子れいむはもときた道を思い出して戻ろうとします。 しかし、隠れ場所を探しながら来たのでどこを通ったか覚えていませんでした。 もう少し大きくなっていれば巣に戻るための方法を親れいむから教えてもらっていたはずでした。 もう少ししたら、きっとお姉ちゃん達が来てくれる。 そう信じて子れいむは木の近くで姉達をじっと待つことにしました。 子れいむが木に寄り添うようにゆっくりし始めると、美味しそうな匂いがどこからか漂ってきます。 「ゆゆ!おいしそうなにおひ!」 子れいむは匂いに引き寄せられます。 匂いの元はある木の根元に生えているたくさんのキノコでした。 「ゆ~!おいしそうなきにょこ!」 子れいむはキノコに飛び込んでいきました。 姉れいむたちは探しても探しても見つからないれぃむを心配になり、巣にいた母れいむを呼びに戻りました。 子の訴えを聞いた母れいむはすぐに巣の周りを探し始めました。 姉れいむ達は危ないからと巣でお留守番です。 母れいむは危険そうな場所を一つずつ調べていきます。 しかし、れぃむはどこにもいません。 母れいむはあきらめずに探し回りました。 やがて、普段は来ない森の奥に足を踏み入れます。 「れいむのかわいいれぃむー!どこにいるのー!」 母れいむは懸命に叫びました。 「ゆっ?」 子れいむがお腹を膨らませてゆっくりしていたころ、どこからか母親の声が聞こえました。 「おかーしゃああああああああん!」 先ほどまでキノコを食べることに夢中で自分が迷っていることを忘れていたれぃむは母親の声で自分のおかれている状況を思い出しました。 そして、母親に見つけてもらおうと声を張り上げます。 先ほど食べたキノコのおかげで大分大きな声が出せました。 大きな声は森に響き、とうとう母親の耳に入ります。 「ゆゆ!れぃむのこえだよ!」 「おかああさああああぁぁぁぁあぁん・・・」 「いまいくよ!そこでゆっくりしててね!」 母れいむは子れいむの声に耳を澄まして位置を探ります。 森の中では声が反射し場所がわかりにくかったですが、子への愛なのか母れいむは迷わずに足を進めていきました。 やがて、一つの木の下で泣き叫んでいる子れいむを見つけました。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていっちぇね!・・・おかーしゃん!」 「だいじょうぶだった?けがしてない?」 「れぃむはごたいまんぞくだよ!」 母れいむは子れいむの声を聞き、自分の目で確かめて子の無事を確認します。 「だいじょうぶそうだね!」 「おかーしゃんごわがっだよおおおおおおおお!」 「もうひとりでこんなとおくまできちゃだめだよ!」 「ゆぅうううう、おかーしゃんごめんなさい・・・」 「わかればいいよ!もうくらくなるからはやくかえろうね!」 「ゆっ!そうだ!おかーしゃん!れいむきのこみちゅけたよ!」 「ゆゆっ!きのこ!?」 「しょーだよ!このうらにいっぱいはえちぇるよ!」 子れいむはそういって木の裏へと跳ねていきます。母れいむは道に迷わないように確認してから子れいむの後を追いました。 「このさきにきのこあるよ!!」 「ゆっゆ!・・・しゅご~い!」 「いっぱいあるからおねーちゃんたちにもあげりぇるよ!」 「そうだね!ぜんぶもってかえろうね!」 いそいそと口にキノコを含んでいく母れいむ。 子れいむはどんどん口に入っていくキノコを見て目をきらきらと輝かせました。 「おかーしゃんのいぶくろはうちゅうだね!」 「ゆふん!」 子れいむの声援に答えるように母れいむはキノコを口に含みます。 やがていっぱいになると母れいむは子れいむと共に巣に戻りました。 巣では帰りの遅い母れいむを残った子れいむが心配していました。 「おかーしゃんおかえりなさい!」 「ゆゆっ!おかーしゃんおおきくなっちぇる!」 子れいむが驚いていると母れいむは口から大量のキノコを吐き出しました。 「ゆゆゆ!おいしそう!」 「おかーしゃんどうしたの!」 「れぃむがみちゅけたんだよ!」 そういって母れいむの腋から現れた妹れいむに子供達はさらに驚きます。 「さすがれーむのいもうとだね!」 「でもしんぱいしたんだよ!」 「そうだよ!おかーさんがいないのにとおくにいかないでね!」 「うん、もうひちょりでそとにはいかにゃいよ!」 「れーむたちもきをつけるよ!」 母親と一番上の姉れいむに注意され、もう二度と勝手に遠くに行かないと子れいむ達は誓いました。 そんな子供達への説教が終わると、眼の前のキノコに話が移ります。 「これならしばらくだいじょうぶだね!」 「おかーしゃんがとりにいかなくてもへいきだね!」 「ゆ!そうだね!しばらくは巣でいっしょにゆっくりできるよ!」 「やっちゃね!」 「れぃむといっちょにいようね!」 突然降って湧いた幸運にれいむ達はうれしくてたまりませんでした。 それからしばらく、このれいむ家族は一度も巣から出ることなく、巣の中でゆっくりとしていました。 食べ物が無くなったらまたキノコを採りに行けば良い。母れいむは久しぶりにゆっくり出来たので上機嫌です。 子供達もそんな母親の様子を見てうれしくなり、母親に擦り寄って遊びました。 れいむ家族はずっとゆっくり出来ると思っていました。 しかし、四季の変わり目はもうすぐそこまで来ています。 巣からあまり出なくなったれいむ家族にはそれが分かりませんでした。 「まったく、れいむたちはなにをやってるのかしら!」 風が冷たく感じ始めたころ、一匹のゆっくりありすがれいむの巣に向かっていました。 このゆっくりありすは母れいむの友達で冬篭りの準備が出来てもやってこない母れいむに痺れを切らしてやってきたのでした。 巣の前までやってくるとありすは中にいるであろうれいむ達に声をかけます。 「ゆっくりしていってね!」 しかし、待てども待てども返事が返ってきません。 このまま待っていても埒が明かないので、ありすは巣に入りました。 中ではれいむ達がキノコを食べてとてもゆっくりしていました。 「ゆっ!おいしそうなきのこね!」 「ゆゆっ!ありす!」 いきなり現れたありすに子供達は母れいむの後ろにかくれました。 「こわがらなくていいよ!このありすはれいむのともだちだよ!」 「そうよ!さっきからよんだのにへんじがなかったわ!だからとかいてきじゃないけどあがらせてもらったわ!」 「ゆ~ありすごめんね!」 ありすの声に気付かずゆっくりしていたれいむはありすに申し訳無さそうに謝りました。 ありすはそれで少しだけ悪かった機嫌を直して笑顔を見せます。 「ありすはきにしてないわよ!・・・ってそうじゃないわ!」 「ゆゆっ、どうしたのありす!」 「れいむたちがふゆごもりにこないからよびにきたのよ!」 「ふゆごもり?」 聞いたことのない単語に子れいむが不思議がります。 母れいむは子れいむに教えようとしましたが、時間がないのかありすが急かしました。 「いまはじかんがないわ!すぐにじゅんびしてゆっくりすぽっとにむかってね!」 「ゆ!わかったよ!」 「じゃあありすはもういくわ!れいむもゆっくりしないでね!」 ありすは言いたいことを言うとすぐにれいむの巣を離れました。 れいむ達が住む地域は冬にはかなり冷え込み、ゆっくり家族だけでは越冬できませんでした。 なので、ゆっくりスポットと呼ばれる大きな洞窟などに集まって身を寄せ合って眠り春を待つようになっていました。 ゆっくりスポットにはゆっくり制限があり、主にぱちゅりーの判断で入れるゆっくりの数を制限していました。 ありすが急いでいたのはゆっくり制限で入れなくなってしまうのを恐れたからです。 母れいむも一度ゆっくりスポットで越冬を経験していたのですぐに準備を始めようとします。 「おかーしゃんふゆごもりってなーに?」 「ゆーっとね、もうすぐここじゃゆっくりできなくなるんだよ」 「ゆゆゆゆ!?」 「だから、みんなのいるばしょにあつまらないといけないの!」 「そーなのかー!」 「れーむたちもじゅんびしてね!すぐここをでるよ!」 母れいむはすぐにゆっくりスポットに行く準備を始めました。 母れいむは子れいむもすぐに準備してくれると思っていました。 なので、れぃむが反対したのに驚きました。 「やだ!れぃむはまだうごきたきゅないよ!」 「どおおおしてええええ!はやくうごかないとゆっくりできなくなるよ!」 「でもきのこしゃんまだいっぱいあるよ!」 「ゆゆゆ・・・」 冬篭りには食料は必要ありません。 だから巣に残っている食料はすべて捨てる必要がありました。 れぃむは自分が見つけた食べ物を残していくことが不満だったのです。 「まだあっちゃかいよ!きのこたべてからでもまにあうよ!」 「ゆゆゆ・・・」 れぃむの発言に母れいむは困ってしまいます。 これを見た他の子れいむは相談してれぃむの方に回ります。 この子れいむ達もキノコに不思議な魅力を感じていたのでした。 「きのこちゃべちぇからいこうよ!」 「そうだよ!」 「もっちょゆっくりしちゃいよ!」 「ゆっくち!ゆっくちぇ!ゆっくりょ!」 母れいむは子れいむの反論に去年の冬篭りの記憶を思い出そうとしました。 母れいむが入ったゆっくりスポットはまだ時期が早かったので洞窟の中はすかすかでした。 母れいむは仲間が集まる間スポットの周りの食べ物を食べたり、他のゆっくりと話したりして冬眠まで過ごしたのを思い出します。 今回もまだまだ空きがあるだろう。母れいむはそう結論付けました。 「わかったよ!きのこがなくなるまでここでゆっくりしようね!」 「おかーしゃんだいちゅきー!」 「ゆっくりしようね!」 母れいむが賛成してくれて子供達は大喜びです。 そんな姿を見て母れいむも反対しなければ良かったと思いました。 こうして、ありすの忠告も無視して母れいむは巣でゆっくりし続けました。 今は友達よりも子供達のほうが大事でした。 母れいむはしばらく巣から出てないことも忘れて、巣で子供達と仲良くゆっくりとしていました。 「ゆ~、とうとうさいごのきのこだね!」 「これをたべたらゆっくりすぽっとにむかおうね!」 「とうみんたのちみ!」 「しゅっごいゆっくりできそうだよ!」 「ゆっくちできりゅといいね!」 あれからもキノコを食べ続けて3日後、とうとうキノコがなくなりました。 キノコ以外の食べ物も残っていたので残さず食べました。 もう巣には食べ物は残っていません。 れいむ達は巣を枯葉と枝で上手に隠して外に出ました。 「ゆ~、しゃ、しゃぶいいいいいいいい!」 「ゆっくりできないいいいいいいい!」 「ゆぐぐぐぐぐぐう!」 「ぐるじお・・・」 保温効果のあった土の中からみて外の世界は極寒です。 震えてる子れいむに母れいむは用意していた白いもこもことした綿を被せました。 「これでさむくないよ!」 「ゆ・・・ほんちょだ!さみゅくないよ!」 「ぽかぽかー!」 「これならゆっくりできるよ!」 「ゆぅ~ん」 母れいむの用意していた綿は子れいむ達をすっぽり覆いました。 上手に穴を開けているので動きを妨げることもありません。 元気になった子供達を連れて母れいむは記憶の中で一番近いぱちゅりーの巣に向かいました。 ゆっくりスポットはぱちゅりーが管理してることがほとんどです。 ぱちゅりーの巣の近くには必ずと言っていいほどゆっくりスポットがありました。 れいむ達がゆっくりスポットにつくと、スポットは冬眠のために入り口を閉じている最中でした。 れいむ達は急いで中に入れてもらおうと指揮をとっているパチュリーのところに向かいます。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ぱちゅりー!れいむたちもなかにいれてね!」 「「「「いれちぇね!」」」」 れいむ達はすぐに中に入れてもらえると思い巣の入り口に向かいました。 しかし、ぱちゅりーが行く手を塞ぎます。 「ゆゆっ、ぱちゅりーじゃましないでね!」 「れいみゅたちはさむさでこごえしょうだよ!」 「はやくいれちぇね!」 母れいむの抗議に子れいむも声を重ねます。 それでもぱちゅりーは動きません。 ぱちゅりーは言い聞かせるようにれいむ達に話しました。 「ざんねんだけどもうゆっくりせいげんよ」 「ゆ!?」 母れいむは驚きます。 「そんなわけないよ!まだいっぱいあきがあるはずだよ!」 「あなたたちはくるのがおそすぎたのよ!こんなじきじゃあいてるわけないわ!」 「ゆぐぐぐぐ・・・」 何とか入ろうと穴の辺りを見ましたがこちらをまりさとみょんが見ていました。 ぱちゅりーだけならどうにでもできましたが、まりさとみょんが一緒では勝てません。 「もういいよ!いじわるなぱちゅりーのとこなんかいかないよ!やさしいぱちゅりーをさがすよ!」 「いじわるー!」 「ゆっくりちね!ゆっくりちね!」 れいむ達は別のゆっくりスポットに向かいます。 罵声を受けたぱちゅりーは怒るわけでもなく、どうしようもなかったのだと自分に言い聞かせ、スポットの入り口を防ぎに戻りました。 「どおしてどこもあいてないのおおおおおおおお!」 「「「「ゆわああああああああん!」」」」 あれからいくつかのゆっくりスポットを巡りましたがどこも入れてもらえませんでした。 思いつく限りの場所に向かいますが、制限になっていたり、もう既に冬眠していたりしていました。 最初は強気であったれいむ達も辺りが暗くなるころにはこのまま入れないのではないかと不安げな表情を隠せなくなっていました。 「おかーしゃん・・・」 「ゆっ、だいじょうぶだよ!きっとはいれるところがあるよ!」 「しょ、しょうだね!」 「ゆうううう・・・」 子れいむの不安を母れいむは必死に宥めます。 そんな中キノコを見つけたれぃむがみんなに向かいました。 目には涙が溜まっています。 「おかーしゃん、おねーしゃんごめんにゃさい!」 「ゆゆゆ、どーしたの!?」 「れぃむのせいでこんなことになっちゃから・・・」 「れぃむ・・・」 子れいむは自分のせいだと責任を感じていました。 母れいむも姉れいむも何も言えません。キノコのとき一緒に賛成したことを忘れていませんでした。 母れいむはそんな子れいむににっこりと微笑みました。 「つぎのすぽっとはぜったいあいてるからだいじょうぶだよ!」 「おかーさんほんとう?」 「ほんとうだよ!あそこはいちばんおおきいからね!」 母れいむの自身に満ちた顔に子れいむは涙を止めました。 他の子れいむにも元気が戻ります。 母れいむは嘘を付いていました。 しかし、今は元気であってほしいと母れいむはばれない様に懸命に演技しました。 次のスポットが母れいむの知る最後のスポットです。 ここに入れなかったられいむ達は死ぬしかありませんでした。 「ゆゆっ、ここだよ!」 「ゆ~、おおきいね!」 れいむ達は大きそうに見える洞窟の前にいました。 幸い、入り口にぱちゅりーが見えました。 まだ冬眠してはいないようです。 れいむは今度こそと自分に気合をいれ、ぱちゅりーに向かいました。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「れいむたちをいれてください!」 頭を下げてぱちゅりーに頼み込みます。 子れいむはその様子を心配そうに見つめていました。 「ゆぅ・・・もういっぱいだったかしら・・・」 「だいじょうぶだよ!れいむたちはいれるよ!」 制限に来ているか考えるぱちゅりーをみてれいむは入れてもらおうと必死に食らい尽きます。 ぱちゅりーが難しい顔をしているとれいむ達のしった顔が現れました。 「あら!れいむたちじゃないの!?」 「ありす!」 友達の顔を見てれいむは笑顔を取り戻します。 「あなたたちどこもはいれなかったの!?」 「ゆぅ・・・」 「だからゆっくりしないでっていったのよ・・・」 ありすでも制限はどうしようもありません。 れいむが再び不安な顔になろうとした時、奥から二匹のゆっくりが現れました。 「わかるよー、はいりたいんだねー」 「そこのおおきいれいむだけならはいれるんだぜ!」 奥からやってきたのはゆっくりちぇんとゆっくりまりさでした。 ちぇんが入り口の騒ぎに気付き、まりさと一緒に数を調べてくれていたのです。 やっと掴んだ一匹の空き。しかし、れいむ達は4匹。 「おかーしゃんれーむたちははいりぇないの?」 「おかーしゃん・・・」 「ゆぐぅ・・・」 母れいむに置いていかれるのではないかと子れいむは急に不安になりました。 母れいむよりそって離れたくないと頬をむにゅっと引っ付けます。 困った母れいむにまりさは提案しました。 「いっぴきぶんのあきだけどちびたちなら4ひきいけるんだぜ!」 「かなしいのはわかるよー、でもどっちかしかはいれないよー」 「れいむ・・・」 母れいむは決断を迫られました。 答えはもう決まっていましたが。 「じゃあこどもたちをおねがいするよ!」 「わかるよー、かなしいけつだんだねー」 「わかったんだぜ!こどもたちはまりさがかならずせわするぜ!」 「れいむ、ほかにあてはあるの? れいむの決断にちぇんが同情し、まりさが子供を置いていくれいむに心配させないように話しかけ、ありすはれいむの心配をしました。 「だいじょうぶだよ!まだすぽっとはあるよ!」 「そう、ならいいわ!いそいでむかったほうがいいわよ!」 れいむの自信満々な顔にありすも納得し、れいむに激励を送りました。 「むきゅー。きまったようね」 「こどもたちをおねがいね!」 「わかったわ。じゃあここもしめるわね。」 母れいむを置いてゆっくりスポットの入り口が閉まりだします。 子れいむは徐々に見えなくなる母れいむに向かって飛び跳ねていきます。 母れいむは心配そうな子れいむを安心させるように微笑みました。 「ニヤ・・・」 「ユッ!?」 その母れいむの表情は子れいむ達の動きを止めました。 とうとう入り口が完全に閉まってしまいます。 もう子れいむではどうすることも出来ませんでした。 「おかーしゃん・・・」 「だいじょうぶだぜ!ほかのばしょにきっといけるんだぜ!」 「そうよ!それよりはるにおかーさんにあえるようにとうみんするのよ!」 子れいむ達はスポットの奥に向かいます。 初めて入ったゆっくりスポットには様々なゆっくりが犇めいていました。 「ゆ~、なんだかあかるいね!」 「ほんちょだ!おうちはこんにゃにあかるくなかっちゃよ!」 「どこかあいてるのかな?」 「ゆぅぅうん・・・」 子れいむ達はみょんに明るいスポットを不思議そうに思い、辺りを見回します。 やがて空中に浮いている白い物体を見つけました。 「あれだよ!あれがあかりゅいんだよ!」 「あれなんだろ?」 れいむの質問にまりさが答えます。 「あれはみょんのはんれいってやつだぜ!」 「はんれい?」 「よくわからないんだぜ!でもだいじなものらしいぜ!」 「ゆゆっ!」 だいじなものと聞いてれいむは自分のリボンを思い浮かべます。 「あいつがみょんだぜ!」 「ちーんぽ!」 「ゆっくりしていってね!」 初めて会ったみょんは変な泣き声でしたが子れいむ達は不思議と挨拶していました。 他にも様々なゆっくりと会った後、まりさの言っていた空きにつきました。 「ここだぜ!ちょっとまわりにうごいてもらってありすとちぇんもはいれるようにしたんだぜ!」 「さすがまりさね!」 そこには藁が敷かれていました。 これなら暖かそうです。 「わかるよー、ちょっとすくないよねー」 「さすがちぇんだぜ!」 いつの間にかいなくなっていたちぇんが戻ってきました。 子れいむ達からはまりさに隠れて見えませんでしたが、すぐに口に藁を咥えたちぇんが見えました。 「きみたちはそれじゃたりないよー」 ちぇんはそういい、子れいむ達の周りに藁を積んでいきます。 「ぽかぽか~」 「ちあわちぇ~」 子れいむは母れいむとちぇんの用意してくれた藁と綿でぬくぬくです。 しかし、まりさたちの顔はまだ晴れていませんでした。 「ゆぅぅ、これじゃたりないんだぜ・・・」 「こまったわ・・・」 「もうわらはなかったよー・・・」 悩んだ結果、まりさが防止を脱ぎだしました。 「まりさどうしたの!?」 「このぼうしをかぶせばあったかくなるんだぜ!」 「わかるよー!それならじゅうぶんだよー!」 まりさは子れいむの上に帽子を置きます。 「ゆ~、なんだかねみゅくなっちぇきた・・・」 「れーむも・・・」 「ゆぅ・・・ゆぅ・・・」 「ゆゆゆゆ・・・」 子れいむ達は冬眠のための眠気で船を漕いでいました。 「もうだいじょうぶだぜ、まりさたちもいっしょにねるんだぜ」 「またはるにあいましょうね」 「わかるよー、ぜったいだよー」 既に眠っている子れいむを見ながら3匹はゆっくりと眠りにつきました。 「ざ、ざぶいいいいいいいいいい!」 木枯らし吹き荒れる森に母れいむの悲鳴が響きます。 母れいむは必死にスポットを探しました。 しかし、開いている場所を見つけれず、辺りは暗くなっていました。 さらに追い討ちをかける物が空から降り始めます。 「ゆゆっ!?ゆきだあああああああ!」 母れいむには死の雪でした。 たまらずれいむは近くにあった木の根元の穴に逃げ込みます。 雪は降り止む気配を見せませんでした。 「ゆ~、もうつかれたからあしたさがすよ!」 れいむは独り言を呟いて眠り始めました。 一日中飛び跳ねていたれいむはぐっすりと眠ってしまいます。 雪はれいむのことなど気付かないかのように世界を白く変えていきました・・・ 「ゆゆっ・・・すっきりー!」 母れいむは十分な睡眠を取り、元気に目を覚ましました。 そして穴から外に元気よく飛び跳ねます。 そんなれいむの飛込みを白い地面はしっかりと受け止めました。 「ゆ?ゆゆゆゆううううう!」 森は姿を変えていました。 白くなった地面はれいむのとんだあとを綺麗に残していました。 れいむは気付いてしまいました。 もう開いているゆっくりスポットはないのだと。 それでもれいむは探すしかありませんでした。 ちっぽけなれいむなど白い世界では唯の点です。 「ゆーしょ!ゆーしょ!」 「ゆ~、しろくてどこかわがらないいいいいいいい!」 「ゆぅ、なんだかちからがはいらないよ・・・」 「れいむのあかちゃんたちだいじょうぶかな・・・」 「ゆっ、れいむもがんばりゃないt・・・」 ちっぽけな点はやがて見えなくなってしまいました。 「おきるんだぜ!はるがきたんだぜ!」 まりさがまわりのゆっくりを起こし始めます。 その声で周りのゆっくりが目を覚まし始めました。 あれからなにも起きず、スポットの住人は無事春を迎えることが出来ました。 「「「「ゆ~、しゅっきりー!」」」」 子れいむ達4匹も初めての越冬を無事乗り越えれたようでした。 「まりしゃおねーちゃんありがと!」 「しゅっごいあたたかかっちゃよ!」 「それはよかったんだぜ!まりさもうれしいぜ!」 まりさは帽子を被りなおしました。 そこに入り口を開けにいっていたありすとちぇんが戻ってきます。 「いりぐちがあいたわよ!」 「そとははるだよー」 「わかったんだぜ!」 三匹は子れいむに向かい問いかけます。 「れいむたちはどうするんだぜ?」 「れいむはまだきてないみたいね・・・」 「わかるよー、まだおきてないんだよー」 子れいむの返事は決まっていました。 「「「「おうちでゆっくりまちゅよ!」」」」 「わかったよー!ならこれもっていってねー」 「それがあればしばらくもつんだぜ!」 「れいむがもどったらもっとおいしいものをもらいなさい!」 三匹が渡したのは巣の近くで取った植物や虫をまとめたものでした。 「ありがちょー!」 「おいししょー!」 「ちょっとたべちゃいよ!」 「だめだよ!おかーしゃんがかえるまでゆっくちたべるよ!」 それぞれ食べ物を抱えたれいむ達は3匹とぱちゅりーに見送られてこれまで暮らしていた巣に戻りました。 「ひしゃしぶり~!」 「やっぱりここはゆっくちできるね!」 「おねーちゃんゆっくちちていっちぇね!」 「れぃむもゆっくちしていってね!」 巣には食べるものは何もありませんでしたが、それ以外は何も代わりがありませんでした 貰った食べ物を置き、4匹の子れいむは母れいむの帰ってくるのを待ちました。 いつまでもいつまでも待ちました。 それでも母れいむは帰ってきません。 もう貰った食べ物は食べ尽くしてしまいました。 「おねーしゃん、おにゃかすいた・・・」 「もうすぐおかーしゃんがもどってくるからゆっくちまとうね・・・」 子れいむ達はもう食べ物をとりにいく元気は残っていませんでした。 話しているのも二匹だけで、もう二匹は既にうつろな目で上を見つめています。 それでも子れいむ達は母れいむの帰りを信じていました。 子れいむ達の巣の外では、冬を乗り越えた生き物が元気よく動き回っていました。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1075.html
「ゆっくり~~♪ していってね~~~♪」 「「「ゆっくり~~♪ していってね~~~~♪」」」 「きょうもにこにこひゃっくてんだよ!!!」 ここに一つのゆっくり霊夢一家がいる。 親である霊夢と子供が十数匹の標準的な家族である。 その親霊夢を先頭に、向かっているのは人間の里。 「ゆっゆ♪ ゆゆゆ♪」 ご機嫌な様子で歩いていくお母さん霊夢。 何がそんなにうれしいのか、その答えは今しばらくすればわかるのであろう。 「ゆっゆ♪ ちゅいたよ♪」 「それじゃあ!! ゆっきゅりしようにぇ!!」 「「「「ゆっきゅりしゅるよぉ~~~~~!!!!」」」」 あるモノは廊下を走り回り、またあるモノは畳の上でごろごろと転がる。 ゆっくりにしてみれば、ゆっくり遊んでいるのであろうが、ここは人間の家である。 人間の家はゆっくり出来るものが沢山ある。 それは『この一家ならずも知っていること。 そして、この一家はゆっくりするためにここに入り込んだのだ。 そして、珍しいことに一家は、何一つ家の備品に触れてはいない。 ただ転がって遊んでいるだけなのである。 「お前ら!! ここで何をしてるんだ!!!」 仕事から帰ってきた男は、無人のはずの我が家から聞こえてきた声に驚いた。 しかし、すぐにその声の正体が分かると、怒りに身を任せて家の中に入り込んでいった。 「ゆゆ!! おにーーさんおかえりなさい!!」 「「「おっかえりなっしゃ~~~~~い♪」」」 男の緊迫した声とは対照的に、一家はのほほんとした口調で男を出迎えた。 「おい!! ここが誰の家だか分かってるのか!!」 「ここはおにーさんのいえだよ!!」 「……分かってるのか?」 自分の予想が外れた男は、呆気にとられ一度怒りを忘れたようだ。 「ゆっゆ!! れいむはあたまのいいゆっくりだから、きちんとわかってるよ!!」 「れーみゅたち、おにーさんのおうちのものさわってないよ!!」 「たべものもたべてにゃいよ!!」 「ちかきゅのきゃわで、かりゃだをありゃってきたから、きれいだよ!!」 「ゆっゆ♪ れいむたちはなにもわるいことしてないよ!!! だから、おこらないでね♪ おにーーさん!!」 「ほー……。そうか、それは偉いなぁ~~」 感心したように、うんうんと首を振りながら一家に語りかける。 「ゆっゆ♪ えらいでしょ♪ ごほーーびにすこしたべものちょ~~だい♪」 「んなわけあるかーーーーーー!!!!!」 ごぶ。 と鈍い音と共にお母さん霊夢に鉄拳が振り下ろされる。 「と゛う゛し゛て゛ーーー!!! れいむたちなにもわるいごとしてないよぉーー!!!」 「「「おがーーしゃーーん!!!」」」 口から餡子を吐き出しながらも、男に向かって非難ともとれるような言葉を投げかける。 「おかーしゃんだいじょーぶ?」 「あたみゃいたいいたいにょ?」 「れーみゅが、いちゃいのいちゃいのとんできぇーー!! してあげりゅりょ!!」 重症を負った母親のもとへ集まった子供達が、文字通り男の事を忘れ必死に手当てをしようとする。 「こらこら。無視はよくないぞ♪」 「ゆゆ!! ゆっくりはなしちぇね!!」 「ゆ!! いもーとをはなしてね!!」 一転、母親もろとも男のほうへ振り向き、声を上げて男とその手にもたれた赤ちゃんに呼びかける。 「はい!! ここで問題です!!」 小さい子を黙らせるように、大きな声で言い放った男は、手にしたゆっくりを握りながら、さらに説明を続けた。 「今から、お兄さんが君達に質問をします。その質問の中で、『悪いこと・うそ』があったらこの赤ちゃんは朝食に嬉しい、おいしいおいしい餡ペーストになってしまいます!!!」 「ゆ!! ゆ~~~~♪」 何だ、そんなことか、とでも言いたげな一家。 何しろ、自分達は頭の良い、良いゆっくりなのだ。 きっと、馬鹿なゆっくり達はここで間違ったことを言って殺されてしまったのだろう。 これをきちんと答えれば、この人間もきちんと分かってくれる。 もしかしたら、お家で飼ってくれるかもしれない。 一度みた、あの金ぴかに輝くバッジを自分達も付けて歩けるかもしれない。 「ゆっゆ♪」 「ゆきゅ~~~♪」 周りを見ると、子供達も母親と同じ事を考えているようで、なんとも緊張感のない表情をしている。 「ゆっくりきっちりりかいしたよ!! おにーさんはやくもんだいをだしてね!!」 「「「「だちちぇねーーー!!!」」」」 すでに勝った気でいる一家、その一家に男はゆっくりと問題を発表した。 「第一問!! 勝手に人のおうちに入るのは良いことかな?」 「「「こたえは、のーだよ!!」」」 「正解!! では第二問!! 君達は何で人のおうちに勝手に入ってきたのかな?」 「「「ゆっゆ♪ れいむたちはわるいことしてないよ♪」」」 「ダウト!!」 「んじゃらっぺいぽんち!!!」 ニコニコしている一家に、握った右手を近づけて一気に握り潰す。 くぐもった悲鳴が聞こえた後、どろっとした餡子が流れ落ちていく。 「ゆ!! れいむのあ゛か゛ぢゃ゛ん゛がーー!! どーーじでこんなごとするのーー!!」 「あかちゃんが、いたいいたいになっちゃったー!!」 「ゆぐぅーーー!!!!!!」 騒然となる一家。 そんなことはお構いなしに、男は二匹目の赤ちゃんを掴み、問題を再開する。 「第三問!! 君達は勝手に人間の家に入った?」 「ゆー……。あがじゃんがーー!! いだいいだいになっじゃったー!!」 「ゆっぐり、かわいいあかちゃんが……」 「……西村因みに、答えなくてもおいしー朝食餡ペーストになります」 「「「ゆっぐりかってにはいったよ!!!!」」」 「正解!! では第四問!! 勝手に家に入るのは悪いゆっくり、間違いないね!!」 「「「ゆっくりまちがいないよ!!」」」 「正解!! ではでは、最終問題!!!」 「ゆ……」 緊張していた一家からため息が漏れる。 後一問、それだけで自分達は解放される。 もう人間の里に近づくのはよそう。 良い事をしたのに、こんな目に合わせる人間とはゆっくりできない。 森に帰ったら、ゆっくりと暮らそう。 「じゃじゃん!!」 その前に、この問題をさっさと片付けよう。 「悪いゆっくりは一匹残らず駆除する!!!」 「ゆ?」 「「「ゆゆゆ!!!」」」 一家の表情が曇る。 確かに、悪いゆっくりはそうしても良い。 でも、確かさっき自分達は、かってに家に入るゆっくりは悪いゆっくりだ、と言った気がする。 つまり、自分達は悪いゆっくりになる。 だったら、自分達も駆除させる。 「どうしたの? この子、朝食に出してもいいの? 食物繊維たっぷりのおいしー餡ペーストになるよ」 「ゆぐぐ……」 「「「ゆーーーー……」」」 残された一家は答えられなかった。 答えたら、自分達は多分死ぬ。 おそらく、ちょーしょくにあんぺーすととして出されるのだろう。 しかし、黙っているか、うそを言えば、死ぬのは今男に握られている赤ちゃんゆっくりだけだ。 そうだ!! うそを言えば良いんだ。 悪いのは、人間に捕まったあの赤ちゃんだけだ。 よし、うそを言おう。 「……」 「「「ゆ!!」」」 無言の母親の視線でも、こういう場合の考えは一緒なのだろう。 全員が全員、こくりと頷き男のほうに向き直る。 「だ「しょうだよ!! わりゅいゆっきゅりはいっぴきのこりゃずくじょすりゅんだよ!!」 ゆゆ!!」 だめだよ!! と言おうとした一家より、一瞬誰かが答えた。 答えた主を探そうとする一家だが、全員首を横に振り、関係ないという意思を表示する。 となると、残された選択肢は一つ。 「おかーーしゃんがいちゅもいっちぇたもにょ!! わるいゆっきゅりはみんなしんでいいって!!!」 「「「「と゛う゛し゛て゛ぞんなごというのーーー!!!!!」」」」 全員が、男の、その手のひらに乗せられている赤ちゃんに向かって声を荒げる。 「ゆ? じゃって、おかーしゃんたちなかなきゃこたえないかりゃ、れいむいたいいたいしたくなきゃったもん!!」 プクーと頬を膨らませて、一家を見下ろしながら答える赤ちゃん霊夢。 「そうそう。えらいな~~♪ ちゃんと分かってるじゃないか」 「ゆっゆ♪」 そうして、その霊夢の頭をなでながら優しく語りかえる男。 この位置からでは赤ちゃんには見えないが、一家には男の顔が見えた。 まさに、一家にどのような処罰を与えようか考えている顔であった。 ~~~~~ ここは加工場の一室。 毎日限定生産される家族饅頭セットの備蓄室である。 「ゆっくり……」 この一室の新たな主は一つの霊夢一家。 普通なら、暴れまわるこの一家だが、一匹を除きその様な気は起きないらしい。 「ゆっきゅりだちてにぇ!!」 必死に騒いでいるのは赤ちゃん霊夢だった。 あっちの壁に体当たりしたかと思えば、こちらの扉に体当たり。 「……」 大きな個体が生気を失ったように佇むなか、赤ちゃんが行うその行為は、まさに奇妙なものだ。 「ゆ!! れーみゅたちはわりゅいことしちぇないよ!!」 「…………」 「おかーーしゃん!! れーみゅたちわりゅいことしちぇないんだかりゃ、はやくここきゃらでて、おうちかえりょーね!!!」 「……ゆっくり……そうだね……」 「ゆっきゅりだちてにぇ!! れーみゅたいはいいゆっきゅりだよ!! おかーーしゃん、いちゃいいちゃいだかりゃ、はやくかえらしぇちぇね!!!」 「「「…………」」」 いよいよ出荷されるその日、その赤ちゃん霊夢は最後の最後で自身の罪を知り、どの家族よりも絶望して逝ったという。 まるでアクセントのように、一部に強力な甘さの餡子を残して。 ~おまけ~ 「うーー!! れ☆み☆りゃ☆はこうまかんのおぜーーさまなんだぞーーー!!!」 そう叫ぶゆっくりれみりゃがいるのは間違いなく紅魔館の玄関であった。 庭に住んでいるものがまた勝手に入ってきたのだろう。 「う~~!!!! う~~~!!!」 調度品を見て、奇声をあげるその姿は、お嬢様らしからぬモノであるが。 「う~~~!! れみりゃはおなかがすいたーーー!! さくやーー!! さくやぁ~~~?」 一転、笑顔になったれみりゃが声を張り上げ食事を要求するが、ゆっくりに食べ物を与える輩はここにはいない。 「うーーー。うーー!! うう!!」 スカートの裾をぎゅ♪ っと掴んで涙を浮かべていたれみりゃだったが、何を思ったかスッと近くの部屋から怪獣の気ぐるみを持って戻ってきた。 「うっう~~♪」 お気に入りの気ぐるみを貸してあげるから、早く出て来い!! と言うことらしいが、あいにく酔っ払いでもしない限りそんな趣味の悪いものなんて着たくない。 痺れを切らしたれみりゃは、テコテコと自分の足で食べ物を探し始める。 「うぎゃ!! うーー!! うーーー!!」 途中何も無い所で転び、目に涙を浮かべ口を結び、まさに今にも泣き出しそうな事もあった。 「うーーー……、おなかへっだーーー……」 が、泣くのを堪えて再びよろよろと館内の捜索に戻った。 それから、幾分の時間が過ぎ、ある大きな入り口の前を通りかかった時、れみりゃはそこから大勢の声と、食べ物の匂いを感じる事が出来た。 「うーー!! ごはんたべりゅーーー!! おかしもってきてぇーーー!!」 既に疲れきったれみりゃは、近くにいた女性に声をかけると、うんちょ♪ と台の上に飛び、木製のベッドに横になり目を瞑った。 「う~~~……う~~~~……」 直ぐにうとうとし始める、幸せそうに口元から涎を垂らして。 「……あら、今日の夕ご飯はれみりゃだったかしら?」 「う~~……!! うあーー!! うあーーーー!!!」 疑問系で、しかもいまいち確証が無いにも拘らずテキパキとれみりゃを捌いていく。 「やめでーーー!! れみりゃなのーー!! れみりゃーーー!! はやくやめるのーーー!!!」 「……そーらのかなたに♪ みーちるひーぃかり♪」 れみりゃの言葉は一切聞かずに、鼻歌を歌いながら調理を進めていく。 「うぎゃーー!! れみりゃのあしがーー!! さぐやーー!! だすげでーー!!」 「まじかる♪・さく「んじゃーーー!! ああーーーーー!!! うあーーーー!!!」」 ……。 「今日は少しおかずが多いんじゃないかしら?」 「そうですか? でも食べ切れますよね?」 「それは、そうだけれども……」 「なら問題ないですね」 「はぁ……」 このSSに感想を付ける