約 1,759,731 件
https://w.atwiki.jp/kairakunoza/pages/2279.html
初夏、或いは晩春。 桜はとうに散り終わり、梅雨の足音もまだ遠い、そんな季節。 だいぶ長持ちするようになった太陽が、それでも傾き始めている夕刻。 私立陵桜学園校門前のバス停のベンチに、私、高良みゆきは一人腰を下ろしていました。 「すっかり遅くなってしまいましたね……」 独り言がこぼれます。 委員会の仕事が予想以上に長引いてしまいました。 本当はもっと早く終わるはずだったのですが、そう思って他の方たちを先に帰したところ、折り悪く 先生から追加の仕事を頼まれてしまったのです。 ちらりと腕時計に目を落とし、時間を確認します。 ……普通に帰っても、お夕飯の時間にぎりぎり間に合うかどうか、といったところですか。 風邪でお休みになっているかがみさんのお見舞いに寄りたかったのですが、断念せざるを得ませんね。 こんな時間ではご家族の皆さんにも迷惑になるでしょうし。 「はぁ……」 ため息がこぼれます。 学級委員長という役職やその仕事に不満があるわけではありません。 むしろ普段は誇りと遣り甲斐を感じています。 しかしながら、このように間が悪いとどうにも遣り切れなさを覚えてしまいます。 やはり格好などつけずに皆さんにも残っていただくべきでした。 ……かがみさんなら、自分から残ると言ってくださったでしょうね。責任感の強い方ですから。 そして彼女の申し出になら、私のほうも比較的素直に頷けたかも知れません。 そうすればもっと早くに仕事が終えられて、かがみさんのお見舞いに伺う時間も……って。 何を言っているのでしょう、私は。そのかがみさんが来ていれば、という仮定の上での話じゃないですか。 「……駄目ですね、もっとしっかりしないと」 思わずもれる苦笑いと独り言。そこに、 「――何が?」 声。 応える形で声がありました。なんとなく、どこかで聞いた憶えのある声です。 「えっ?」 振り返ると、いつの間に現れたのか、一人の女生徒がベンチのすぐ脇に佇んでいました。 通学カバンの他に大きめのスポーツバッグを肩から下げています。 健康的に日に焼けた手足はすらりと引き締まり、肩に届く長さの髪はお風呂上りのように湿っています。 恐らくは実際にシャワーを浴びたばかりなのでしょう。見るからに運動部所属といった立ち姿から、 そのように想像できます。 そして、その顔には、声と同様、やはり見覚えがありました。 「あ……確か、あなたは――」 ええと…… 「ん? あ、なんだ。ちびっ子んトコの委員長じゃん」 あと一歩のところで途切れていた記憶の糸が、相手のその一言で繋がりました。 「――あ、はい。ええと……」 そう。確か隣の三年C組の、かがみさんのクラスメイトだったはず。 ご一緒してらっしゃるところを何度かお見かけしたことがあります。名前は―― 「――峰岸さん、でしたっけ」 「ちげーよ」 「え? あ、あら?」 ぶっつん。 一瞬で不機嫌なものに切り替わってしまったその表情に、繋がったはずの糸が再び切れる音が はっきりと聞こえた気がしました。 「日下部だよ。日下部みさお」 「すみませんでした。本当に……」 バスの中ほどの席に隣り合って座り、改めて名前を間違えた件を日下部さんにお詫びします。 日下部、みさおさん。 憶えました。もう間違えません。 「あー、もーいーって別に。……けどまさかあやのと間違われるとはなー」 「すみません……」 「だからいーって。こっちだって高良の名前覚えてなかったし。考えてみたらあたしらだいたいいつも 一緒にいるし。そーいやあたしも品川庄司のどっちがどっちだかよく知んないし」 「はぁ……」 品川さんと、庄司さん? C組の方でしょうか? いえ、それよりも今のは、フォローをしてくださったのですよね。 気付かずに間抜けな声を挙げてしまいました。 「……すみません。ありがとうございます」 「ほえ? 何が?」 不思議そうに首を傾げられてしまいました。 あ、あれ? 「いえ、その……なんとなく、です」 「ふーん? まーいーや。どういたしまして」 そして浮かべた疑問符もそのままに、小さく頭を下げてくださいます。 なんといいますか……不思議な方ですね。 ともかく、名前の件はもう本当に気にしていらっしゃらないようですし、なにより日下部さんご自身が いいと仰ってくれているのですから、この話はもう終わりにしたほうがよさそうです。 「ところで……日下部さんは、どうしてこんな時間まで残ってらしたんですか」 「ん? うん、部活だよ。陸上部」 話題転換ついでに気になっていたことを尋ねると、概ね想像していた通りの答えが返ってきました。 ですが、 「お一人でですか? 他の部員の方たちは……」 他の、例えば球技などとは違い、陸上競技はほとんどが個人競技になるはずですから、一人でも 練習ができないということはないでしょう。しかし学校のクラブ活動であるという点を考えれば やはり不自然さを覚えてしまいます。 「あー、もちろんみんないたけど……」 私の質問に返事をしかけた日下部さんでしたが、途中で言葉を切ると、大きくため息をつきました。 「みんなヤル気ねーんだよなぁ~」 「……はぁ」 「物足りないからもーちょっと走りたいって言ったらさ、『じゃ、後片付けヨロシク。がんばって♪』って」 言葉の、他の部員の方が仰ったと思しきところで声音が変化したのは、口真似なのでしょうか。 生憎とどなたなのか存じませんので、似ているかどうかの判断はつきません。 ともかく、事情は理解しました。 「そうでしたか」 「そーそー。……別にいーんだけどさぁ。今年は新入部員が不作、ってゆーか一人しかいないし」 突然話が飛びました。 が、一瞬考えて、どうにか関連性に気付きます。 「――通例なら、後片付けなどの雑用は新入部員の方たちの仕事なのですね?」 「そー。そいつ一人に毎日やらせるわけにいかねーから、月水金はじゃんけんで決めてんの。だから 残りたいって言い出したあたしがやるってのもある意味で当然な話だとは思うんだけど、さぁ……」 どうやら当たっていたようです。 そしてまたため息をつく日下部さん。 「そのせいもあんのかなー。士気っての? 低いってゆーか、タンパクってゆーか……」 「……大変なんですね。お疲れ様です」 「ホントにな。最後の夏も近いってのにさー。あーあ……」 私の相槌に頷くと、日下部さんはもう一つため息をつきつつ両手を頭の後ろで組む形に動かします。 こちらの頭に肘がぶつかりそうになって、少し驚きました。 「っと、ゴメンゴメン。あぶねーよな」 すると、思わず肩をすくめた私に気付いたのか、日下部さんは気まずそうに腕を下ろしました。 「いえ、平気です」 「あー、あとゴメンな。なんかあたしばっか喋って。それもグチばっか」 「そんなことありませんよ? 楽しいです」 さらにばつの悪そうな顔をする日下部さんに、微笑んで返します。 もちろん本心です。 確かに、ほぼ初対面ということで多少の戸惑いを覚えたりもしていますが、その分だけ新鮮な 気持ちになれてもいるわけですから。それにクラブ活動に関するお話というのも、普段耳にする 機会がないことだけに、興味深いです。 「そーなの?」 「はい」 「ふーん……」 不思議そうに首をかしげる日下部さん。 あまり良い言葉ではないことは百も承知で、男勝り、といってしまえる言動が目立つ彼女ですが、 こうした細かな仕草をすると「女の子らしさ」が顔を覗かせ、失礼ながら可愛らしく思います。 それに比べて私は、どうなのでしょうね。 女性らしさという点では、まぁそれなりにないこともないと自負していますが、そこに可愛げがあるかと いう話になると、どうにも自信が持てません。 固すぎる、といいますか。分かってはいるのですが、長年の癖はなかなか変えられないものです。 クラスメイトでお友だちの泉こなたさんは「萌える」といって褒めてくださいますが、 「なんか、変わってるよな、高良って」 「そうかも知れませんね。たまに言われます」 よくは分かりませんが、恐らくはそういった意味も含まれているのでしょう。 「ヒーラギとかだったら絶対怒ってるところだよな」 日下部さんが前へと向き直り、独り言のように仰いました。 「柊……かがみさんですか?」 「え? ――ああ、うん。姉のほう」 「なるほど……かがみさんなら、そうかも知れませんね」 陰口のようで少し気がとがめますが。 責任感と思いやりの強い方ですから、容易に頭に浮かんでしまいます。 時に人に厳しくできる、ただ甘いだけとは違う彼女の優しさには、憧れます。 「……やっぱ、名前で呼ぶんだな」 と? 「え?」 トーンの落ちた声に向き直ると、日下部さんは前を眺めたまま、どこか浮かない面持ちに。 「ま、そりゃーそーだよな。妹さんがいるもんな、そっちには。区別する必要あるよな」 「は、はぁ……」 訳が分からず、中途半端な返事しかできません。 仰るとおり、かがみさんの双子の妹である柊つかささんとも親しくさせていただいでいますから、 紛らわしくないようお二人のことは下の名前でお呼びしているのですが…… 「――あぁいや、あたしら妹さんのほうとはあんま交流ないからさ」 声の調子が戻りました。 「だから未だに名字で呼び合ってんだよ。長い付き合いだってのに。まぁ今さら変えるのも変だし、 別に不都合もないから別にいーんだけどな。はは」 言って、日下部さんはにっこりと笑います。 ……気のせいだったのでしょうか。今見えたような気がした、蔭りのようなものは。 「ってゆーか――そーいやさ、高良も一人だよな」 「はい?」 そして急に話題が飛びました。 「委員会だったんだろ? 他のメンツはどーしたんだ?」 「あ、はい。それはですね――」 なんとなく引っ掛かりましたが、さておき、質問されたのですから答えるのが先でしょう。 ということで、この時間まで一人で残っていた事情をかいつまんで日下部さんに説明します。 「――そういった次第で、要するに日下部さんと似たような感じです」 「ふぅん……なんかぜんぜんちげぇ気もするけど……」 話を聞き終えた日下部さんは感心したようなため息をついて、そして訝しげな声をもらします。 「けどよくやるよなー。めんどくさくねぇ? 委員会の仕事なんて」 「いいえ? 確かに時間や手間のかかることもありますけど、楽しいですし、遣り甲斐もありますよ?」 「ふぅ~ん?」 感心、を通り越して呆れたような声。 そのままバスの窓枠に肘を乗せて頬杖を衝き、日下部さんは仰いました。 「たいしたモンだな。ヒーラギなんかしょっちゅうグチってるけど」 ……え? 「かがみさんが、ですか?」 「うん。誰かがすぐサボるとか、モンクばっか言うとか、字が汚いとか」 「……そうですか」 知りませんでした。 日下部さんの言葉は淀みなく、いかにも聞きなれたことを話しているといった様子です。 確かに、委員会活動中のかがみさんは、例えば泉さんやつかささんたちと一緒にいるときのように 楽しげに振舞うことありませんが、それでも他の一部の方たちのように「イヤイヤながら」といった 様子もなく、やる気をもって臨んでいるように見えましたし、またそう思っていました。 しかし、それが私の勘違いだったとしたら…… 「負担……になっているのでしょうか……」 だとしたら。 にもかかわらず、ことあるごとに彼女に頼ってしまっている私もまた、ということになります。 現に先程も、かがみさんがいてくれれば、などと。 「ん~……まぁ、フツーはそーなんじゃね?」 よくわかんねぇけど、と、日下部さんも頷きます。 やはり、そうなのでしょう。 「でしたら……今日、お休みになったのも……」 「へ?」 そういった無理が祟って、と続けようとしたところ、日下部さんが驚いたような声を挙げました。 「それは関係ないんじゃねぇの?」 「……と、仰いますと?」 「ん、あいつって春先になると風邪引くんだよ、昔っから。……っていってもあたしは五年前からしか 知んねぇけど、自分で言ってた」 「そうなんですか?」 「ホントだって。去年も休んでただろ?」 そういえば……言われてみれば、確かに。去年の今ごろ……よりももう少し早い時期でしたか。 風邪でお休みになったかがみさんのお見舞いに行った憶えがあります。 しかし、だからといって、彼女に負担をかけていることには変わりはありませんよね。 「てかさ、『みゆき』ってあんたのことだよな?」 「えっ?」 物思いに沈みかけた思考が、日下部さんの唐突な問いかけに引き上げられました。 「あ、はい。私の名前です」 頷くと、日下部さんも「うん」と頷き返し、そして口を開きます。 「ヒーラギさ、いつも言ってるぜ? 『みゆきがいてくれて助かる』って」 「え……」 思いもかけない言葉に、思わず日下部さんの顔を凝視してしまいます。日下部さんは、そんな 私の視線を平然と受け止めながら、軽い調子で、しかしはっきりと頷きました。 「ホントだって。言われたことねーの?」 「い、いいえ。ないです……」 何かを手伝ったときなどにお礼を言われたことぐらいならありますが、そのような「普段から」 といったニュアンスの言葉は、少なくとも憶えている限りではいただいたことはありません。 「そっか」 前に向き直る日下部さん。 「まぁ確かに、ヒーラギって面と向かって人を褒めたりはしないヤツだよな」 「……それは、確かにありますけど……」 「だろ? でもホントだから。――だからさ、高良がそんな顔する必要は、たぶんねーよ」 そしてまたこちらを振り返り、少し困ったように、笑いました。 「顔、ですか?」 「うん。なんてゆーか……『ごめんなさい』みたいな顔してたぜ?」 「あ……」 とっさに、隠すように頬の辺りを手で覆ってしまいます。 「す、すみません」 「だから、謝んなくていーって」 「はい……」 そうですね。 ここは――今度こそは、謝罪ではなく。 「ありがとうございます、日下部さん」 「どーいたしまして」 にっこりと、歯茎を見せて笑う日下部さんの笑顔は、それはそれは素敵な笑顔で。 夕陽を背負って逆光になっていてなお、輝いて見えるほどでした。 「そーいやさ」 バスから降りて、糟日部駅の改札までの短い道のりを歩く途中、日下部さんが思い出したように 口を開きます。 「高良って委員会やってんだよな? てコトは下級生にも知り合いいるだろ?」 「え? ええ」 「だったらさー、訊いてみてくんないかなー? 特に一年に、陸上部入ってくれそうな知り合いとか いないかどーか」 ああ……そういえば、仰ってましたね。 今年の陸上部には新入部員が一人しかいないと。 「ええ、構いませんよ。私でよければ、協力させてください」 親しいといえるほどの人は多くはありませんが、その程度のことを聞けるぐらいの知り合いなら、 何人か心当たりがあります。 「そっか! ありがと!」 「いえ。私などでお役に立てるのなら、喜んで」 頷くと、早くも肩の荷が降りたとばかりに、日下部さんもニコニコ顔で頷き返してくださいました。 そのまま二人、並んで改札をくぐります。 とりあえず誰から当たってみましょうか。 と、考えながらプラットホームに至る階段を昇りきったところで、 「……あ」 ふ、と。 一人の人物の顔が脳裏に浮かびました。 そうです。 委員会の方たちに伺うまでもなく。 「ん? なに?」 「あ、はい。一人、心当たりがありました」 「え、いんの? 入ってくれそーなヤツ」 「はい。はっきりそうとは言えませんが、私の小さい頃からの知り合いで、ちょうど今年、陵桜に入った ばかりの一年生がいるんです。名前は――」 ☆ みゆきさんの様子がなんだかおかしい。 朝から妙にそわそわと落ち着かない感じで、休み時間になるたびにどこかに姿を消してしまう。 どうしたのかと思って尋ねてみたけど返ってくるのは曖昧な言葉ばかりで、どうにも要領を得ない。 別にはぐらかしてるとかじゃなく、どこから話せばいいのか分からないって感じ。 ふだんあんなにも落ち着いてて理路整然としてるのに、少し慌てるととたんにアホの子みたいに なるよね、みゆきさんって。 分かってるからそれは別にいいんだけど。 ってゆーかむしろそこがいいんだけど。 ともかく。 そんなこんなでつかさと一緒に首を捻りながら迎えた昼休み。 事態はさらなる混迷を極めることとなるのであった。 「……おっす」 チャイムが鳴って少しして、いつものように、けどいつもより若干テンション低めにかがみがやってきた。 昨日風邪で休んでたけど、まだ体調悪いのかな。 でも朝一緒に登校したときはもうすっかり治ったって言ってたし、普通に元気そうだったよね。 ――思っていると、 「妹ちゃん、泉ちゃん。こんにちわ」 かがみの後ろから、長い栗色の髪をカチューシャでまとめたおっとり系のお姉さんが姿を現した。 かがみのクラスメイトで、確か――峰岸さん、だったか。 隣に遊びに行ったときや体育なんかの合同授業で、私もつかさも何度か顔を合わせたり軽く話したり したこともあるから、とりあえず顔と名前ぐらいはお互いに一致する。 けど、かがみと一緒にこっちにくるなんて――いや、そもそも向こうから寄ってくること自体初めてだ。 ひとまず挨拶に応えながらそんなことを考えていると。 その後ろから、さらに二人。 「……え?」 思わず疑問符がもれる。 例によってどこかに行っていたみゆきさんと、かがみのもう一人の友だちの……確か、日下部さん。 まぁ、分かる。 みゆきさんは、むしろ戻ってこないほうがおかしいし、日下部さんも、峰岸さんとセットって印象が強い から片一方だけしか来ないっていうのもこれまた逆に不自然だ。 うん。 分かるよ? そこまでは分かる。――だけど。 なんで二人が寄り添ってるの? どちらかと言えば快活なはずの日下部さんが見るからに落ち込んでいるのは、どうして? みゆきさんがその肩に手を添えて励ましているふうなのも、どうして? 「えっと……かがみ?」 「お姉ちゃん?」 つかさと声が重なった。 それを受けて、かがみは眉根を寄せる。困ったような苦笑いだ。 「いや、まぁ……本人たちに訊いて」 ――で。 言われたとおりに訊いてみたところによると。 みゆきさんと日下部さんは昨日、たまたま帰りが一緒になったらしい。 そしてせっかくだからと駅までご一緒することになって、色々と世間話なんかをしていた中で、 所属している陸上部の人材不足を嘆いた日下部さんに、みゆきさんが知り合いの一年生を 紹介したのだという。 そして今日、日下部さんが午前の休み時間をフルに利用してその相手を口説きにかかった結果、 「断られちゃった、と」 聞くまでもないし言うまでもないことだけどね、この様子じゃ。 全身全霊で『敗北いたしました』って感じ。 「はい」 答えたのはみゆきさん。 「……実は昨日のうちに電話で本人に話を通しておいたんですけど、その時点で断られてしまいまして」 「だったらそう言ってくれよぉ~」 「申しわけありません……」 「いや、アンタいなかっただろ。みゆきはちゃんと言いにきてくれてたのに。私の話も聞こうとしなかったし」 恨みがましく呻く日下部さんにみゆきさんがすまなそうに頭を下げて、そこにかがみがツッコミを入れる。 そっか。みゆきさん、それを伝えに行ってたのか。 「でも、高良ちゃん」 「あ、はい。なんでしょう」 「だったら、その一年生の子のクラスまで行けばよかったんじゃないかしら」 「……」 峰岸さんの言葉に、みゆきさんが静止した。 そしてうつむいて顔を赤らめて、ひとこと。 「……思いつきませんでした」 「天然だ……」 「どんだけぇ~……」 また声が被る。 今日はなんかつかさとシンクロ率高いね。ってか峰岸さんももっと早く言ってあげればいいのに。 「うぅ、そっか……ごめんな、高良」 「いえ、お気になさらず」 「いや、気にしなさい。人の話を聞くクセをつけなさい、アンタは」 「まぁまぁ、柊ちゃん」 「峰岸……アンタがそうやって甘やかすから……」 なんだか忙しそうだね、かがみ。 ふむ、さすがのツインテールキャノンもやわらか戦車の挟み撃ちには手こずるわけか。 「……こなた、なんか失礼なこと考えてない?」 「イエ、ゼンゼン?」 しかしその分レーダーの感度が上がってる模様。要警戒、要警戒。 ってゆーか、なんか賑やかだねぇ。二人増えただけでこんなにも違うものなのかな。 「……なんかさー、保健委員の仕事があるから部活は無理とかでさー。一緒にいた……なんかすっげー 小っさいヤツも勧めてくれたんだけど。なんてーの? ナシノツブテ?」 うん? 保健委員? 小っさいヤツ? 「ちょっと待って。えっと……みゆきさん、その子って何組?」 「一年D組ですけど、どうかしましたか?」 D組。 ゆーちゃんのクラスだ。ということは…… 「ひょっとして、岩崎みなみちゃん?」 「え? ええ、そうですが……」 「こなた、知ってるの?」 知ってるもなにも。 「ゆーちゃんの友だちだよっ。ほら、いつか話したでしょ? ゆーちゃんを助けてくれた人。入試のとき」 「あぁ……そうなの?」 「覚えてるよー。ハンカチの人だよね? ……え?」 私とかがみ、そして一拍遅れて、つかさ。 三人で揃ってみゆきさんのほうを向く。 「え? では、みなみさんがよく仰っている、『小早川さん』というのは……」 「そう! 小早川ゆーちゃん! 私のイトコ!」 「まぁ……そうだったんですか」 目と口をまん丸にするみゆきさん。 日下部さんと峰岸さんが話についていけないって顔しちゃってるけど、そっちはかがみに任せよう。 「みたいだね。――いやぁ、こんな偶然てあるんだねぇ」 「本当、奇遇ですね」 うんうん、ホントホント。 いったいどのぐらいの確率なんだろう。前につかさも言ってたけど、私たちがこうして出会えて 仲良くなれたってだけでも十分に奇跡的なのに。 まさに奇跡と奇跡の合わせ技……三次元も捨てたもんじゃないってことかもね。 「あ、じゃあ私、その人知ってるかも」 お? さらにつかさまでそんなことを言い出した。 「そなの?」 「うん。先々週ぐらいかな? 廊下でゆたかちゃんと仲良さそうにしてるの見たよ」 「ふーん……」 「メガネをかけた、髪の長い人だよね?」 うん? 「いや……それたぶん違うよ。田村さんって人じゃないかな、そっちは」 「あれっ? そ、そうなの?」 「うん」 メガネでロングでゆーちゃんと仲がいいって条件なら、たぶんそうだろう。どっちにしても関係ない。 つかさらしいっちゃらしいけどね。 「みなみちゃんはショートだよ。で、背が高いの。――こんくらい」 手首を直角に折り曲げた腕をいっぱいまで掲げて高さを示す。 すると今度はかがみが頷いた。 「見たことあるかも。なんかクールって感じの子だったけど」 「ソレだ! たぶん」 「ええ、その方だと思います」 「そっか。……うん、確かにやたらと背の高い子だったわね」 三人で頷きあう。 つかさが、なんか寂しそうってゆーか悲しそうってゆーか、になってるけど。 うむ。 悪いとは思いつつ、萌える。 「なんかよくわかんねぇけど……」 と、そこに日下部さん。 「そんな言うほど高かったか? あたしとおんなじぐらいだったぞ?」 「ええっ、嘘? 5センチぐらい違わない?」 かがみが驚いて、首を捻る。 「ねーって」 「私もそんなには違わないと思うよ。ゆーちゃんと一緒のところを見たからじゃない?」 「……なるほど」 一瞬考えて、頷くかがみ。 それを受けて、日下部さんはニッカリと笑った。 「だろ?」 「うん……いや、なんかアンタってあんま大きいってイメージなくて」 「……どーゆーイミだよ」 「まぁまぁ。――でも、私も同感かな」 「えぇー? あやのまでそんなコトゆーのかよ」 「だってみさちゃんて可愛くて元気だから、そっちが目立って背の高さにはあまり目が行かないのよ。 あと、小学校ぐらいまでは私のほうが高かったっていうのもし」 「むぅ……」 「ごめんね? 怒った?」 「いや、いーけどよ……ってか身長っていや、そーいやなんかガイジンがいたぜ。背だけじゃなくて あっちこっちでっかいの」 「変なジェスチャーすんなっ」 「ああ、それはきっと、パトリシア=マーティンさんですね」 「ん? 高良、知ってんの?」 「ええ。みなみさんから聞きました。アメリカからの交換留学生がクラスにいると」 「ほぉー、アレがリューガクセーか。初めて見た」 「あっ! それなら私も知ってるよっ。こなちゃんと同じお店でバイトしてる子だよね?」 「うん。パティだね」 「へぇ? あんなのまで知り合いなのかよ。お前って意外と顔広いんだな」 「まぁねー」 「うん。泉ちゃんって、どんな人とでも仲良くなれそうな感じよね。でも、どっちかっていうと、アルバイト してるってほうが意外かな。どんなお店なの?」 「ん? コスプレ喫茶だけど」 「こす……ぷれ?」 「気にしないで、峰岸。――アンタもそういう単語を堂々と出すな!」 「なんだ? まさかアヤシイ店なのか?」 「シツレイな。ちゃんとした普通の喫茶店だよ」 「アレのどこが普通だ」 「でも楽しかったよ。こなちゃんもかわいかったし。ね?」 「ええ。――喫茶店というよりは、ラウンジといったほうが近いかも知れません。それで、店員の方たちが 漫画などのキャラクターを模した仮装をしているんです。……あ」 「さすがみゆきさん、上手い説明だね。……って、どしたの?」 「いえ、その……ということは、あのときの、あの方が、パトリシアさんだったのですね……」 「? そだよ?」 「まさか、みゆき……その岩崎って子と同じクラスの子だって、気付いてなかったの?」 「……はい。校内では一度もお会いしたことがありませんし、その……」 「そう……まぁ、そういう思い違いって、あるわよね?」 「あるあるっ。でも、ゆきちゃんでもそんなことあるんだ」 「お恥ずかしい限りで……」 「いやいや、むしろみゆきさんならでは、だよ」 「かもなー。高良って知識先行って感じだし、なおさらだよな」 「みさちゃん、それフォローになってないわ」 「あれ? そなの?」 「フォローのつもりだったのかよ」 ――賑やかだ。 悪くないね。 ほんのちょっと違和感みたいなのがあるけど。 あと、みゆきさんを取られたみたいな気が、最初ちょっとだけしちゃったけど。 それでも、悪くない。 いつもより少し――いや、かなり賑やかなお昼休み。 うん、悪くない。 そして、もしかしたら。 明日からは、これが新しい『いつもどおり』になるのかも知れない。 そんな予感を覚えているのは、 「なにニヤニヤしてんのよ、こなた」 「別に? かがみだって笑ってんじゃん」 「……。鼻にチョコ、ついてるわよ」 「え? わっ」 どうやら、私だけじゃないらしい。 コメントフォーム 名前 コメント いつもながら、それ程多くない文章量で沢山のキャラを綺麗に回されてます。 凄いし和むし良い感じ。 -- 名無しさん (2008-08-27 20 47 36) この作品好きです。なんだか新鮮でほのぼのしますね。 敢えてつっこむなら、何故もっと早くこなたの鼻のチョコを 教えない…。 -- 無っ垢 (2008-08-22 08 02 50)
https://w.atwiki.jp/arinsu/pages/5.html
男子校、夕暮れの小さな空き教室での事。 『ナナフシ、これ変じゃない?』 鏡に向かっていた少年が振り向く。 あざみがスパイとして潜入するため、この日初めてあざみは女子用の制服に袖を通していた。 誰が言い出したのかは知らないがこんな事を言い出した奴はあざみをスパイとして送り込む目的以外にも何か含むところがあったのではないか。 普段から他の生徒の間ではあざみのその容姿が普通の高校生男子とはかけ離れて可愛い事がよく話に上がっていた。 ナナフシも例外ではなく、今、目の前にいるどこからどう見ても女の子ねあざみに目を奪われていた。 プリーツの短いスカートからは程よく筋肉のついたスラリと細い足が伸びている。 あざみはその食い入るような目線に気付く。『何?やっぱ変?』 『…いや…』 ナナフシは後ろからその細い腰に手を伸ばす。 するりと上着に手を差し込むと、そのまま隆起があるはずのない薄い胸へと指を滑らせた。 あざみは何も警戒心を抱いてないのかキョトンとした顔でナナフシを見上げる。 『ここには何も詰めてないのか?』 『うん、この制服生地が厚いし少々発育が悪いってことにしておけば大丈夫でしょ。私の情報によれば、この年の女の子はペタンコの子も結構いるらしいからきっと怪しまれない。』 『…そうか…』 短く答えたナナフシは指先に感じる微かな引っ掛かりをきつく押し付けた。 『ちょ…ちょっと、ナナフシ、痛いって』 さすがに変だと感じたあざみは体をよじって逃げようとする。 だがナナフシはそれを上回る力であざみを押さえ付け壁際に追い詰めた。 『こういうのも若気の至りっていうんだろな。』 ナナフシは独り言のようにごちると、勢いよくあざみの下着を下ろし先ほどの刺激で僅かばかり反応しているそれをしごき始めた。 『ぅわっ!ナナフシっ!お前今自分が何やってるか分かってるか!?』 ナナフシは無言で刺激を続ける。 こうやって流してしまえば男同士、一度火がついた体は最後まで到達しない限り熱が収まらないことは良く分かっていた。 『ぅうっ!…はぁ…っ』 あざみが熱にくぐもった声を上げ始める。 左に高く結んだ髪が細かく震えていた。そのうちに汗が首筋をなまめかしく濡らしはじめ、涎と共に床に滴り落ちる。 『ふ…ぁあっ…!あああっ!』 そのハスキーな声は少年の物にしては余りに艶を含んでいてまるでストイックな少女の様でもあった。 高まる喘えぎを聞き、ナナフシは更にその手の力を強める。 『ああっ…!あっ!!』 すると一瞬あざみの体がビクリと揺れ、ナナフシの掌に生暖かい感触を広がらせた。 それと同時に服を脱いでもいないナナフシの背筋にも戦慄が走る。 それほどまでにあざみの熱に浮かされた姿は淫情を誘うものだった。 涙目になっていたあざみはそばにあったハンカチで体を拭うと、ノロノロと起き上がる。 『ナナフシ…どうしてこんな…』 『正直スマンかった。お前の女装が可愛すぎたかjgtjg.a@nj0gptoふじこjgtg/:.a111111』 終劇
https://w.atwiki.jp/arinsu/pages/8.html
「はぁ……」 しきみは悩んでいた。 温泉での一件以来、あざみの顔がまともに見れず、会話もままならなくなってしまったからだ。 自分の馬鹿な勘違いが元なので素直に謝りたいと思ってはいるが、あざみの顔を見ると、どうしてもあの時の感触と表情が脳裏をよぎり、何も言えなくなってしまっていた。 「悩んでいてもしょうがないか……」 考えるだけでは何も変わりはしない。自分が照れを捨てればいいだけの話で、そうすれば、あざみならいつものように接してくれる。それは理解している。 (でも……そんな簡単に意識を変えられるものなら、最初から悩みなんてしない。ナナフシの時だってそうだ) ともかく考え込んでいても気が滅入るだけなので、しきみは自室を出て、山へと向かった。 こういう時は学園でじっとしているよりも、外で何かをしていた方が、余計なことを考えないで済むと思ったからだ。 学園周辺の山々は、しきみにとって勝手知ったる、いわば庭のようなものなので、何処がどんな薬草の生育条件を満たしているのかは、概ね熟知している。 だから手持ちの薬草が切れそうになれば、何処に行けば何が補充できるのかは分かっているし、貴重な薬草が生えていそうな場所も把握していて、今回は後者を目的とした。 自室にある薬草等のストック管理は、普段から怠っていないので、特に補充が必要なものはないが、貴重な薬草やキノコなら、いくらあっても困ることはない。 そういったものは、意図的にストック量を操作することが難しいということもあるが、何より薬師としての探究心が欲しているのだ。 しきみは、貴重な薬草が生えている可能性のあるエリアを、次々とあたっていく。だが、まるで収穫がない。 特別に期待をしていた訳ではないので、それで落胆するようなことはないが、何も無いと流れ作業的になりがちで、気が抜けてつい余計な思考が顔を出し初めてしまう。 それでは山に出た意味がない。余計な思考を振り切り集中しようと、散策に精を出す。そして気がつけば、見覚えのある景色に囲まれていた。 見覚えのある場所なんてここに限った話ではないが、この場所にしきみは、単なる既視感とは違った感覚を覚えていた。 そこは岩壁に挟まれた、所々に岩石の転がる渓谷で、奥には緑も見受けられる。かつて星屑草を見つけ、ナナフシと初めて出逢った、しきみにとって特別な場所だ。 星屑草を見つけた場所だけあって、しきみはあれ以来もここに何度か足を運んでいた。 いつも収穫など何も無かったが、ここに来ると心が温まるような、何か不思議な感覚になれるのが心地よく、何も無いと分かっていながらも、つい何度も訪れてしまっていたのだ。 その所為で習慣化してしまっていたのか、無意識の内に足が向いていたようだ。 やはり今回も星屑草は生えていないだろうが、折角来たのだからと、しきみは奥へと進む。 奥へ行くに従って通路が拡がり、幾つかでこぼことした岩が点在している。その隙間や表面からは逞しく緑が育っており、薬草として使えるものも多少見受けられた。 ナナフシの居た縦穴付近まで到達すると、しきみの脳裏にあの時の記憶が鮮明に蘇えり、胸の奥が熱くなって、顔が火照っていくのが感じられた。 (ここに来る度にいつもこんな気持ちになって……未練がましいったら無い……) そう思いながらも、穴の前で立ち止まり中を覗くしきみ。深さ4メートル程度。当たり前だがナナフシの姿などない。 (馬鹿馬鹿しい……。何やってんだろ、私……) ひょいと穴を飛び越え、薬草狩りを再開しようとする。だが着地した瞬間、足場が崩れ、しきみの身体は後方の穴へと投げ出されてしまう。 (なっ!?) 気を抜きすぎていたのか、穴の淵、しかもヒビの入ったところへ着地してしまったようで、虚を衝かれる形となったしきみは、反応できずに背中から落下していく。 それでも滞空中に何とかしようと、鉤縄を近くの岩石へと絡ませる。しかし天はしきみに味方せず。岩石は脆くも崩れ落ち、しきみの身体を一瞬繋ぎ止めるだけに終る。 「くッ……!」 さほど深い穴ではないので、もう落下中に体勢を立て直す余裕などない。衝突に備えて受身を構える。 「――!」 途中、鉤縄がワンクッションになったとは言え、背中から落ちて、何ともないような高さではない。 しかも、衝突のタイミングが思っていたよりも早かったために、受身のタイミングも逸してしまった。 にも拘らず、痛みはなかった。 (いったいどうなっ……) そう思いしきみは、いつの間にか瞑っていた目を開ける。 「大丈夫か?」 そこには、先程まで思い浮かべていた顔があった。 「な、ナナフシ……!」 驚いて目を見開くしきみ。 「どうして……?」 「それは拙者のほうが聞きたいくらいだ。お前らしくないのではないか?」 落下したことを言っているのだろう。いつものしきみならば、このようなヘマはまずしない。それは本人も十分に理解している。 だが今のしきみには、そんなことはどうでも良かった。 「私にだって、こんな時もあるわ……。それよりなぜここに?」 ナナフシが目の前に居ることが信じられないしきみは、改めて訪ねる。 「たまたま通りかかったのだ。そしたらお前の姿が見えてな……。いきなり落下したから驚いたぞ」 「そう……。ごめんなさい……」 微笑を浮かべながらナナフシが答えると、迷惑を掛けたと思い、しきみが俯いて謝る。 「謝る必要などない。お前は何も悪くはない」 冷静な口調の中にも優しさの篭った声で、ナナフシが諭す。 「……ありがとう」 しきみは俯いたまま視線を逸らし、照れながら一言、感謝の意を述べた。 「折角こうして逢えたのだ。少し話でもしないか? この中なら、まず人目につかないだろう」 確かにこの縦穴の中を窺うには、淵に立って覗くしかなく、余程の術者でもない限り、他に覗く術はなさそうであった。 そんなことが出来る術者が、こんな穴をわざわざ覗く理由もないだろうということで、しきみはナナフシの提案を受けることにした。 「そうね。それじゃあまずは、降ろしてくれない?」 ナナフシは衝突寸前のしきみを抱き止めた。だからしきみは、いわゆるお姫様抱っこされている状態になっていた。 好きな相手に抱かれて嬉しくない訳はないが、久しぶりに会ったせいか、気恥ずかしさのほうが大きく、しきみは降ろすように催促してしまう。 「ああ」 ナナフシがしきみを腕から降ろす。そしておもむろに地面へ腰掛けた。 しきみも地面に腰を下ろし、岩壁を背もたれにして、ナナフシの右隣に座る。 「元気にしていたか?」 ナナフシが先に口を開いた。 「ええ、まあ。貴方は?」 本当は体調を崩したこともあったし、今も悩み事はあるが、心配を掛けさせまいと、しきみは曖昧な返事を返した。 「見ての通りだ。そういえば、お前の方こそどうしてここに?」 ナナフシは、しきみが以前体調を崩していたことを、あざみから聞いて知っていた。 本心としては、なんとか聴き出したいところではあるが、しきみの気持ちも解るし、あざみの正体がバレてはいけない。 そう考えたナナフシは、あえて話題を変えた。 「多分、貴方と同じよ。星屑草があった場所だもの。来てみたくもなるわ」 先程ナナフシは「たまたま」と答えてはいたが、同じ趣味を持つしきみには、ナナフシがここに来た理由など、本当は聞かずとも解っていた。 「俺は……それだけの理由ではないのだがな」 「? どういう……?」 「……こういうことだ」 不意にナナフシがしきみを抱き締める。 「え、ナナフシ?」 (え? ええ?! いったい何が?! え? どうして?!) ナナフシの突然の行動に、しきみの思考は激しく混乱する。 「俺は、しきみに逢いたかった。またお前の顔が見たかった、声が聞きたかった。……だからここに来た。また逢えるのではと思ったから」 絞り出すように、囁くようにして、しきみの耳元で、ナナフシがその想いを吐き出した。 ナナフシにこのような感情を、初めて直接的な行動と台詞でぶつけられたしきみは、胸が締め付けられるような感覚に囚われる。 「実は……私も……」 しきみはナナフシの背中に腕を回し、自分も同じ気持ちであったことを、行動で示す。 「……しきみ……」 ナナフシがしきみから身体を少し離し、その瞳をじっと見つめる。しきみもまた、視線を泳がせながらも、なんとか見つめ返していた。 ゆっくりとナナフシの、その整った顔を近づく。 意図を察したしきみは、戸惑いながらも瞼を閉じる。次第に互いの吐息が感じられる距離にまで達し、ナナフシも瞼を閉じた。 ―― 初めての接吻。どうしたらよいのか分からないしきみは、唇を固く閉じ、緊張の余り少し震えていた。 それは互いの唇を重ね合うだけの、文字通りの"口付け"であったが、気持ちを確認しあうには十分過ぎるほどの温もりが篭っていた。 唇を離し、再び見つめ合う二人。しきみは相変わらず、気恥ずかしさから、真っ直ぐには相手の目を見られない。 そんな仕草を微笑ましく感じながら、ナナフシは両手でしきみの右手を取った。そして、自らの胸、心臓の辺りにその手を当てる。 「聞こえるか? 俺の心音が……。お前に再会できたことで、速まっている鼓動が……」 そう言われてしきみは、手先に伝わる僅かな振動に集中する。確かに、トクトクと短いリズムで、脈打つ鼓動が聴こえる。 「ええ、聴こえるわ。見かけによらず、緊張でもしているのかしら?」 自分も緊張しているにも拘らず、ワザとらしく皮肉っぽい口調で尋ねる。 「ああ。こういう経験は乏しいからな。お前と同じで」 対してナナフシもまた、やや皮肉っぽく、からかうようにして答えた。 「私はっ、こういうことに、興味がなかったからっ……!」 別に隠していた訳ではないが、しっかりと見抜かれていたことが妙に恥ずかしく感じ、しきみは必死に言い訳をしようとする。 「とは言え、お前よりは知識を持っているつもりだ。俺がリードをしなくてはな」 「り、リードって……」 何の? と聞きたいところだが、聞くまでもない。それに聞いたら恥ずかしさの余り、余計に動揺してしまうだけだと分かっていた。 「……」 ナナフシが手を放し、瞳を見つめたまま、右手をしきみの腰へと回す。そして左手を右頬に添えた。 しきみは顔を紅潮させ、潤んだ瞳で、今度はしっかりと見つめ返し、やがて目を瞑る。 ナナフシはしきみの腰を引き寄せ、覆いかぶさるようにして、再び口付ける。 「……ん……」 しかし今度は先程のものとは違う。 緊張が解けてきたのか、緩んだしきみの唇を押し分け、ナナフシが舌を挿入する。 「……ン、んん……」 口内に入り込んだ異物の存在に戸惑いながらも、しきみは何とかしようと、稚拙に舌を動かす。 しかし、先程の言葉とは裏腹に、ナナフシは巧みに舌を動かし、しきみに自由を与えない。 うねうねと舌に絡みつき、口内で蠢く軟体に快感を覚えたしきみは、夢中でしゃぶりつき始める。 「ん、ん、ンン……ん、んはぁ……ン……」 狭い空洞に湿った音を響かせながら、口の端から雫が零れるのも気にせず、互いの唇を、舌を求め合った。 「ん……んん……ン……?!」 もはやキスだけでは飽き足らなくなったナナフシは、唇を交わらせたまま、左手をしきみの胸に当てた。 「あ……ン……」 そして軽く指を動かす。しきみの乳房はすっぽりと掌に収まるサイズで、薄い下着を着けているのか、弾力がはっきりと伝わってきた。 その触感に心地よさを覚え、段々と指を動かすペースを上げていく。 「ン……ああ……はぁ……はぁ……」 乳房を揉まれ、しきみの呼吸が次第に荒くなる。 しきみの装束についたぼんぼりが邪魔になったのか、ナナフシはキスを止め、装束を脱がせようとする。 「しきみ……もっとお前の温もりを感じたい……」 「……」 無言で頷くと、しきみは上着を脱ぎ捨てた。忍具が入っているため、地に着くと、ドサリと重量感のある音を立てる。 しきみは抹茶色をした上着の下に薄い白装束を着用しており、ナナフシに弄られたせいで少しはだけ、白い鎖骨が顔を見せていた。 ナナフシはしきみを押し倒し、その鎖骨に軽く口付ける。そして徐々に首筋を上がっていく。 「あ……」 焦らされるような感覚に、しきみが身体を震わせる。 耳元まで到達すると唇を離し、三度ナナフシが、しきみの唇を奪う。 「ン! んんん……!」 今までよりも強引なキスに、しきみは驚きを禁じえなかったが、すぐに先程同様ナナフシの舌を求めだした。 ナナフシは改めてしきみの乳房に手をやった。より直接的になった弾力に夢中になって指を動かし、掌でこねる。 すると掌に、上着越しでは感じられなかった感触を覚えた。 その部分に掌を押し当て、円を描くようにして撫で回す。 「ア……! ん……あ、あっ……!」 そこが徐々に膨らみ、硬さを増していく。 「……あぁ……はぁ……はぁ……ひぁ!」 耳まで真っ赤にして息を荒げるしきみを尻目に、ナナフシはそこを人差し指の先で軽く転がした。その刺激に思わずしきみが声を上げる。 「どうした……?」 キスを止め、目を見ながらナナフシが声を掛ける。 「そ……そこ……だ……ダメ……」 息も絶え絶えにしきみが答える。しかし、 「そうか……ここがいいんだな」 「……え? ん……! ああああァっ!」 ナナフシは指先を素早く動かし、断続的に刺激を与えた。 「だ、ダメだって……ハァ……言ってるのに……」 涙目になるしきみの顔を悪戯っぽい表情で見つめながら、言葉を無視してナナフシは白装束に手を掛け、ぐいと肩まで脱がす。 露わになったのは歳相応の下着ではなく、古風な晒し木綿であった。小振りだがふっくらとした膨らみの中に一部分、小さな突起が見える。 あまりきつく巻いていなかったようで、少し緩んでしまっている。ならばと、ナナフシは晒しを上から下へとずらした。 しきみの白くて形の良い美しい乳房と、薄い桃色をした先端部が剥き出しとなる。 「……ぁ……」 しきみは恥ずかしさあまり声が出ない。 構わずナナフシは乳房を掴み、その先端を口に含んだ。 「……はぅんッ!」 舌先を回転させながら、乳首を弄ぶ。両手で両の乳房を揉みほぐすことも忘れない。 「……はぁ……う……ンン……!」 そして、片方では先端に口をつけながらも、もう一方は、指先で乳輪の淵をなぞりつつ先端を転がす。 「ん……く……ふぅん……あぁ……」 次にナナフシは、左手をしきみの股間へと運ぶ。 「!? な、ナナフシ……そこはっ……!」 しきみはまだそこまでの覚悟が出来ておらず、触れる寸前でナナフシの左腕を掴んだ。 胸から口を離し、ナナフシが目を見て言う。 「大丈夫だ。俺だって、何もこんな場所で最後までしようなどとは思わない。ただ触るだけだ」 「で、でも……!」 ナナフシの言葉を疑っている訳ではないが、恥ずかしさもあってしきみは抵抗しようとする。 「俺を信じてくれ。こんなことを言うのも何だが……俺はお前の身体に触れたいんだ」 「……分かったわ……。また会えるとも限らないものね……」 今回はたまたま遭遇したが、毎回そう都合良く会えるものではないだろうし、誰かに見つかれば、今度こそ重い罰が待っているであろう。 ならば今この時に、相手が望むことをさせてあげるべきだ。しきみはそう考えた。 しきみがナナフシの左腕から手を放す。 「ありがとう、しきみ」 「こ、こんなことで礼を言わないでっ」 照れるしきみをよそに、ナナフシは改めてしきみの股座に手を触れた。 そこは既に、触れているだけで手を湿らせそうなほどに熱を持っていた。 しきみの秘部があると思しき箇所に人差し指を押し当て、上下に擦る。 「あっ! ん……! ん、んんん……んはぁ……!」 胸だけでも相当感じていたのであろう。徐々に湿り気を帯びてきていた。 しかし、やや厚手のズボンに阻まれているため、さすがに愛液が染み出ることはなさそうである。 ナナフシは下も脱がしたいという衝動に駆られながらも、そこまですると歯止めが利かなくなってしまうため、それを何とか静める。 しきみの身体を弄ることで、自らの快楽を満たそうと考えた。 ナナフシは、右の乳首に喰らいついて、右手で左の乳房を揉みしだきながら、左手で股間をまさぐる。 「……そ、そんな……いっぺんにされたらっ……!」 一度に三箇所を攻められて、しきみが激しく悶えた。 ナナフシは更なる快感を与えるために、人差し指と中指でスリットをなぞりながら、親指の先でクリトリスを刺激する。 「ふぁ……! そ、ソコ……! ダメっ……! か、カラダがっ……へ、ヘンに……なるッ……!」 しきみの身体に電気のようなものが走り、無意識の内に腰が浮いてしまう。 それでもナナフシは指を止めようとしない。それどころか不規則に速度と圧力を変化させて、反応を愉しんでいた。 「……あ、あふ……ダメ……! わたしっ……ほんとうに……!」 ナナフシがトドメとばかりに親指の先で、しきみの陰核を一掻きする。 「ひぁんッ!!」 しきみの腰が大きく浮き上がり、小刻みに痙攣を起こす。 ―― 「……ん……はぁ……はぁ……はぁ……」 初めての愛撫であるにも拘らず、しきみは果てた。 ぐったりと、意識を朦朧とさせて、短く熱い息を吐き、余韻に浸っていた。 ある程度回復して服を着直したしきみは、ナナフシの肩に寄りかかっていた。 「晒しがないと、何だか変な感じだわ」 晒しだけは巻き直すのが面倒なので、折り畳んで懐にしまっていた。 「お前らしいな、今時晒しとは」 笑いながらナナフシが言う。 「い、いいじゃない! この方がしっくり来るんだからっ!」 顔を赤らめながら、しきみが小さく怒鳴る。 「いや、しきみらしくていいなと思ったんだ」 ナナフシは、思ったとおりの反応を見せるしきみを愛おしく感じながら、可笑しそうに返す。 「う……」 そのように言われると、なんて返してよいか分からない。 「と、ところで、恋愛経験がないと言っていた割に随分と手馴れていたように思えるのだけど?」 しきみは誤魔化すために、自分に考え得る最大限の皮肉を言ってみた。 「"ない"とは言っていない。"乏しい"と言ったのだ。それに知識によるところが大きかった」 「そ、それって……ほ、他にも……」 ナナフシの言葉に対し、自分が疑問に思ったことを口にしようとしてやめる。 ナナフシが自分よりも遥かに冷静であることを考えれば、聞かずとも分かることであるし、出来れば知りたくない。 しかし、しきみのそんな思いとは裏腹に、ナナフシは答えを返した。 「確かにお前が最初ではない。だが、女ではお前が初めてだ」 「くちゅんっ!」 その頃あざみはクシャミをしていた……。
https://w.atwiki.jp/mayshared/pages/1291.html
ラノで読む(改行の都合上推奨) 外を見ると、音がしないぐらい静かに雨が降り続いている。 「めんどくせーな……傘どこ置いた? 間違えられてたら面倒だぞ」 「下駄箱よ。あんだけ大きい傘、持っていかれる訳ないじゃない」 一組の男女が、教室を出てきた。二人とも心持ち急ぎ足であり、女のほうは追いつくのに少し苦労しているようだ。それでも、二人は同じ速度を維持している。 「でも居るぞ? あれぐらいの傘使う奴」 「あんな傘がゴロゴロある訳じゃなし、自分の傘の柄ぐらい覚えてるでしょ」 「そりゃそうだ」 ときどき、二人とすれ違った人物が振り向く。近くのクラスでなら二人の関係はある程度知られているが、そこから離れるにつれ知られなくなる。よって、周りからの『バカップルか……』といった視線は、一気に強くなる。 「そんな事より急ぐわよ、五時からのタイムセールに間に合わないじゃない」 「わーってるよ、つーかお前が急げ」 二人の手、具体的には男の左手と女の右手が、しっかりと握られ、その上からバンダナのような布で結えられている。傍から見ればお暑いにも程がある光景だが、当人達……具体的に言えば男のほう……にとっては、命がけである。文字通り『離れたら、死ぬ』のだ。僅かなプライベート時間を除けば、四六時中ベッタリである。 有馬雨流《ありま うりゅう》と鞠備沙希《きくび さき》、この二人がこんな生活を始めてはや一月。今は、秋の長雨と言われる時期である。 しばし時間が経って。 商店街回りを終えた二人は、かなりの荷物を持って寮代わりであるマンションへと帰路についていた。なお、荷物の七割は雨流が抱えており。その上傘も持っているので不安定極まりない。 「ちょっと、もう少しこっちに傾けてくれないと濡れちゃうでしょ」 「これ以上そっちに傾けたら荷物が濡れるぞ、どっちにすんだ」 「う……じゃ、そのままでいいわ」 相合傘だというのに、色気のかけらも無い。まだ一月しか経ってないとはいえ、四六時中一緒に居るのだ。そう簡単なことで動揺したりはしない。 「いつも思うんだが……そんなに節約して、どーすんだ」 「……えーと、ほら、いざって時、多分あるでしょ? というか絶対あるわよ、きっと。その時ちゃんとお金を貯めてれば……」 「てめー絶対考えてなかっただろ。目的と手段がごっちゃになってる典型だな」 「いいじゃない節約が趣味でも! 悪い事してないでしょ!?」 くだらない内容で、二人のボルテージがたちまちヒートアップするのもよくある事だ。この時もそうなるところ……だったのだが、雨流が沙希に付き合わず、視線を道の反対側へとやっていた。 「なにシカトして……って、ネコ?」 釣られて同じ方向に視線を向けた沙希も、それに気づく。中くらいの大きさの猫が一匹に、まだ仔猫らしい小さな猫が数匹、皆黒い毛並みをしている。猫の親子が、どこかへ移動中だったようだ。そのうち親猫と仔猫一匹が、雨流の方へ視線をやっている。 双葉区は、ごくごく一部の人間の間では『猫の楽園』とまで言われているほど野良猫が多い。保健所が動いていない理由は不明だが、特に衛生面で問題になっている、といった事も聞かれない。 「……三年の恩を三日で忘れるって言うけど、どーなんだろうな」 その言葉に反応したのか、二匹の猫が、まるで雨流にお辞儀をするように首を動かす。それを最後に、猫の一団は行ってしまった。 「もしかしてあの親子ネコ、あの時の?」 しばらく猫を目で追っていた雨流に、沙希が問いかけた。それは、およそ四ヶ月前……ちょうど梅雨に入った頃、今と同じように音も無く雨が降っていたときの話である。 星と王子様 えぴそーど小数点 犬とおまわりさん (まったく、雨の日は面倒くさいのよね……) その六月某日、沙希は一人で買い物袋を抱えながら帰路についていた。両手にエコバッグを持ちながら、さらに傘まで抱える不安定な体勢である。 沙希と雨流があんな状態になったのは九月の出来事であり、その当時はまだ二人は単なるクラスメート……互いにまったく会話をしないので、それ以下と言ってもいい……の関係だった。無論住んでいる場所も、生活サイクルも違う。外で顔をあわせることは、基本的に無い、のだが。 (……あれ? あいつって……誰だっけ?) それでも、偶然見かけるということはある。商店街から住宅地への境目、微妙な空白地にある空き地……恐らく家を建てる予定で土が敷き詰められているが、今は建造物の影も見当たらない……に、一人で傘を差している、男の姿を見つけた。 「……」 無言で俯いているだけで、何かをしている様子は無い。ただ、下を見ながら立っているだけだ。その目つきは険しい。 (ああ、そうだ。うちのクラスの……でも、何してんのよ一体。あんなところで……まさか、ケンカ、とか?) いつの間にか、沙希は物陰……とは言っても、身を隠せそうなのが電信柱なので、その陰であるが……に隠れて、雨流の様子を伺っていた。完全な興味本位である。 (もしかしたら因縁つけられてるだけかもしれないし、誰か呼んだ方がいいかな……) そう考えながら、通信機能付きの学生証を握っている。彼女の懸念は他のクラスメイトとそれほど変わるものではない。その目つきと態度の悪さで、一部の想像力逞しい同窓からは『何か物騒な事やってるんだろうな』的な目を向けられている。そこまでは行かないが、何かあるのではと沙希も考えていた。 (それとも、巻き添え喰らわないうちに逃げたほうがいいかな……) そのような沙希の思考は、しかし一瞬で崩れ去ることとなった。 『なーん』 (……なーん? なに、アイツあんな声出せたの……?) これまで想像していた場面とはまったく違う声に、思わず滑って転びそうになった沙希だが、なんとか体勢を整えて声の主を探る……そして、それはすぐに見つかった。 「だからなぁ、そんな声出されても困るんだっつーの」 雨流が、自らの足元にそう声を掛けている……そう、先ほどの泣き声は彼の足元から聞こえてきたのだ。 「なーん」 声の主は、真っ黒い毛並みを持ち、雨流をその大きな金色の瞳で見上げていた。少し消耗しているのか、あまり元気があるようには見えない。 (……ネコ、ね。って、不良とネコって……) あまりにありきたりすぎる組み合わせに、笑うより前に呆れた表情を浮かべる沙希。それに気づかない雨流は、自分を見上げてくる相手に対して苦戦していた。 「俺の住んでるところにお前は連れ込めねーし、つーかお前、親どうしたんだよ?」 「なーん」 「……さっぱり分からねえ……」 (分かる訳ないでしょ……) 沙希が心の中で突っ込みを入れているのには無論気づかない雨流。何かしら考え事をしているようだが、沙希の場所からその表情は見えない。 「……わーった、ちょっと待ってろ」 しばらく考え込んでいた雨流は、そう言って立ち上がる。弱弱しい雨が降り続く空を鬱陶しそうに見上げてから、傘を足元に置いた。ちょうど、傘が足元の猫に覆いかぶさるような位置だ。 (え? あのネコ置いて……って早っ!! あれ、異能!?) 次の瞬間、雨流は猛然と走り出し、あっという間に見えなくなってしまった。その速度は常人のものでは……否、人間が普通出せるような速さではない。沙希が隠れている電信柱とは反対の方向へ去っていったが、間近を通った彼を、彼女はまるでオートバイが走り去った後のような感覚で見送っていた。 「……何やるのかしら、あいつ」 完全に雨流が見えなくなってから、沙希は声を出してため息をついた。少し空き地を覗いてみると、猫は傘の内側で大人しくしている。先ほどまでは雨に打たれていたのだろう、よく見ると、元気が無いのは第一印象であっただけで、そこまで消耗はしていないようだ。 「迷子の迷子の仔猫ちゃん、あなたのおうちはどこですか……だっけ」 昔聞いた童謡を思い出す。あの猫がヒロインの猫なら、雨流はさしずめ主役の、犬のおまわりさんだろう。 猫は、鳴きもせずにじっと待っている。物陰から覗いている沙希の事は分かっているのか、いないのか。猫の表情を読む術を知らない沙希には、判断がつかない。 そのままの体勢で、五分が過ぎた。雨流は一体何をやっているのだろうか。もしかしたら、傘だけ差して帰ってしまったのではないだろうか。 「……ちょっとだけ、見てこようかな」 遠くで見ているのに痺れを切らしたのか。沙希は、猫をもっとよく見ようと顔を乗り出してみた。見たからといって何が出来るわけでもなく、何を考えているかも分からないのだが。 彼女も、猫を連れて帰って飼うようなことはできない。寮の問題もある上、懐具合……実家からの仕送りがあまり無いのだ。今以上に普段の生活で節約すれば後者の問題はクリア可能かもしれないが…… そこまで考えたところで、何処からかの足音が聞こえた。コンクリートの地面を素早く叩くようなそれは普通の足音ではない。だが、駆け出していったときの速度を考えれば、普通の足音ではない音がしても不思議ではないだろう。 (わわ、戻ってくるのも早っ!!) 沙希が慌てて電柱の影に隠れたのと同時に、雨流が戻ってきた。手に何か持っている様子はない。 「ったく、テメーに傘貸したせいで持ってくるの面倒だったんだからな……ほら、少し大人しくしてろ」 猫に話しかけながら、雨流が懐からバスタオル……新品ではなく、何度も使われ、洗濯されている物のようだ……を取り出し、猫をゴシゴシと拭き始めた。 「もうちょっと待ってろよ、少ししたらお前の親見つけてやるかな……けど、何なんだアイツ。顔を見りゃ分かるって」 気持ち良さそうに拭われている猫を見ながら雨流が呟く。そして沙希は、それを見ながら今更ながらの疑問を覚えていた。 (なんでワタシ、隠れてるんだろ?) 明らかに不良らしいクラスメイトが、猫に優しくしている。確かにベタベタなシチュエーションだが、めったに見られるものではない。それを覗き見しているのはただの興味本位か、それとも別の何か。彼女の頭はそれを整理し切れていなかった。 (ど、どうしよう……今更顔を出すのも何だし、でもこの場は気になるし……) 「で、そろそろ出てきたらどうだ?」 (バレてるー!?) 雨流が放った突然の言葉に、沙希の背筋に悪寒が走った。こっそり見ていたのに、どんな言い訳をしようか。そんな事ばかりが頭に浮かぶ。考えるのに夢中で、雨流が自分の方を『向いていない』のにも気づいていない。 「出てこねえなら……」 大きく脚を振り上げる雨流を見て、金縛りにあったかのように沙希は動けなくなった。頭の中では色々な事が渦巻いているというのに。 (何やる気!? あんだけ早く走れるってことは、やっぱり脚力が強いんだろうし、あの脚から衝撃波とか出ちゃったりする!? まるで格闘ゲームよねそれ!!) 混乱した沙希の視線の先に、雨流の脚が振り下ろされる。あたり一面が揺れるような錯覚、流石に地震と錯覚するほどの衝撃ではないが、それでもその一撃は周囲の人間(と、すぐ近くに居る猫)をビックリさせるのには十分の音を立てた。 そして、驚いたのは猫と人だけではなかった。 (……え、何? あれ) 沙希は見た。雨流の……実際には猫の……周りの地面で、何か透明なものが跳ねたのを。その透明な何かは、うねうねとうねりながら一人と一匹を取り囲んでいる。色がつけば、さながらRPGに出てくる粘体生物のように見えるだろう。 「ったく、なんでこの島はラルヴァ多いんだろうな。授業で言ってた結界って、全然機能してねーんじゃねーのか?」 透明なそれは、怪物《ラルヴァ》であった。雨の日によく発生すると言われているそれは、弱い生物や、弱っている生物にまとわりついて生命力を吸い尽くす。もっとも、抵抗力のまったく無い赤子や病人、また免疫能力が無い一部の植物相手しか狙えないので脅威度は極端に低い。もっとも、軟体ゆえに単純な破壊力ではとどめを刺せず(魂源力《アツィルト》を乗せた攻撃か、直接熱で炙ったりする必要がある。また、太陽の光で蒸発する)、鬱陶しいことこの上ない。たとえラルヴァを知らなくても、勘のいい人間なら『死相』として見えることがあるという。 (な、なにあれ、ラルヴァなの!?) 相変わらず覗き見しながら混乱している沙希をよそに、雨流は地面でうねうねするソレを睨みつけ、当惑していた仔猫を抱き上げた。 「こいつら、獲物見つけたらしぶといんだよなぁ……まだやる気でいやがる。面倒くせ」 獲物を逃がすまいと雨流の足元にまとわりつくラルヴァは、げしげしと蹴り続けても怯む気配はまったく無い。靴にへばり付くモノもいるが、そういう時はまるで泥をそぎ落とすように地面へこすり付けて取り除く。 (逃げちまおうかな、でもさっきの奴、『ここに来る』って言ってたしな……) 面倒くさそうに考え事をしている雨流とは対照的に、沙希はテンパッていた。 (何よアイツ、呑気そうにしてるけどヤバいんじゃないの!? 見た感じあのラルヴァエレメントっぽいし、このままじゃやられちゃうわよ!!) 厳密に言うと足元のソレはエレメント分類ではなくビースト分類(アメーバー状だから、らしい)であり、健康な人間程度の体力があれば文字通り手も脚も出ないので、放置しておいても『気持ち悪い』より深刻な問題にはならない。だが、そんな事情を知らない彼女は困惑するだけだ。 (そ、それならワタシが……!) 物陰で、ぎゅ、と握りこぶしを作った。 沙希の異能は、ちゃんと使えればかなりの威力を持つ。少なくとも、目の前に居る程度のラルヴァならば楽に倒せるだろう。 そう、ちゃんと使えれば。 当時の彼女の異能には『マトモに制御できず、学園に入ってからは成功したことがない』という致命的な問題が存在する。これについて、彼女の異能調査の任に就いている研究者が、学内で異能に関する講義を開いている教師に質問をした事があるが、 「一般論で言えばだが、成長、環境の変化、精神状態の変化。異能に影響を与える要因は多く存在する。特に思春期であれば尚更だ。何か分かりやすい兆候があれば別だが、その要因を特定するのは難しいだろう」 という、芳しくない返答しかもらえていない。 そんな事は百も承知ではあるが、そんな現状は無視して腹を決めた。 (そうよ、これはあのネコを助けるためにやるのよ、同じクラスでもよく知らないアイツのことはどうでもいいんだから!) 自分自身に訳の分からない言い訳をしながら、エコバッグと傘を、なるたけ水溜りの無い電信柱の影に置く。 目の前の雨流は怖い顔をして何か考え事をしているし、猫は猫で男の胸の中で不審そうな顔をしているだけだ。 (とにかく、ワタシがやらなきゃ……!!) 静かに目を瞑り、イメージする。とにかくイメージが大事だと研究者の人は言っていた事もあり、ひとまずそれでやってみるしかないのだ。 (でも、昔はなんにも考えないでできた、よね……?) 浮かんだ疑問を、頭を振って振り払う。余計な考えは失敗の元、らしい。 (とにかく、集中、集中……!) 意識を一点に集めると、そこに向かって何か力のようなものが発生しているのが分かる。それは少しずつ高まっていき…… なんの前触れもなく、爆発した。 「……? なんだ?」 雨流の横顔を、一瞬だけ光が照らす。ぽん、というシャンパンの栓を抜いたような間抜けな音と、カメラのフラッシュのような閃光が一度に発生して、そして消えていった。 (ちょ、やっぱりー!?) 慌てて物陰に隠れた沙希の髪は、強風で煽られたかのように散らばっている。使おうとした異能が暴発してしまった結果だ。 そして、異能が暴発した結果はそれだけに留まらない。 「えーと、どういうこった、こりゃ?」 慌てて光源を探そうとした雨流が目にしたのは、さっきまで周囲を取り巻いていたラルヴァのうち半数ほど……光源の方向に居たアメーバー状の怪物が、カラカラに干からびている事だった。 「今の光の結果、だよな……けど、何なんだ?」 沙希の異能が暴発した結果、その時に放出された魂源力でラルヴァにダメージを与えたのだ……ただ、その威力が低すぎるせいで、人間はおろか仔猫にすら怪我はない。それに雨流の影になっていた怪物にも影響は無い。ついでに言えば、今干からびているラルヴァも、雨に打たれて水分を補給すればまた動けるようになるだろう。 「何だ、つーか誰だ? こっちが光ったみたいだが……」 (今度こそバレる!?) ラルヴァを放置して、沙希の方へ近づく足音。このまま行けば必ず見つかるだろう。そんな思いが沙希の頭をよぎった。 (いやけど、何でバレちゃダメなんだっけ……) そこに思考が戻ってきたとき。まさに『猫の手も借りたい』状況で、猫の手がやってきた、と言った様子で、何かの声が聞こえた。 「んなーお、んなーお」 わりあい近くから、猫の鳴き声が聞こえた。それを聞いたせいか、雨流の胸の中に居る猫も、それに返事をするように鳴き声を返す。 「なー、なー」 「ん、おい、どうした?」 胸の中でもがく仔猫を降ろしてやると、猫は一目散に道路の方へと歩いていった。 「んなーお」 「ああ、やっぱりあの子だったんだね。最近子どもを産んだのはこの子ぐらいだから、そうだとは思ってたんだけど」 道路のほうからやってきたのは、双葉学園の制服を着た眼鏡の男子学生と、仔猫と同じ毛並みを持った、すこし大きい猫の一人と一匹。そちらに……具体的には猫の方に仔猫が駆け寄っていった。 「もしかしてそいつ、親猫か?」 「うん、この子は好奇心が強いから、きっと勝手に出歩いちゃったんだろうね」 「……よく分かったな」 「まあ、普通じゃないかな」 「ぜってー違う……」 雨流とその男子が話している間に、ラルヴァはどこかへ逃げ去ってしまった。親猫の鳴き声を聞きつけて危険を感じたのだろう、本当にその程度の力しかないのだ。 そして、二人が話している隙を見計らって沙希もこっそり逃げ出していた。猫はもう無事だと分かったし、なんとなく、覗き見していたのを見られたくなかったのだ。 「そうだ、さっきこの辺りが光っただろ? あれお前がやったのか?」 「え? いいや、僕じゃないよ。僕にそんな異能は無いし、光を出す道具も持ってない」 「……何だったんだ、一体……」 「あ、でもさっきそこに女の子が居たから、その子かもしれないね」 「……女子?」 雨は相変わらず、降っているのかいないのか分からない程度の勢いで振り続けていた。 ******************* そして、話は十月の雨の日へ戻る。 「……まさかてめー、あん時見てたのか!?」 雨流の静かな怒気の含まれた声に、沙希が露骨に『しまった』という表情を浮かべ、反論する。 「み、見てたらどうなのよ? 別にアンタ悪いことした訳じゃないでしょ」 「誰にも言ったりしてねえよな?」 「……へ?」 明らかにトーンの落ちた雨流の声に、拍子抜けしてしまった。それは、明らかに何かを……恐らく、他の人間にその評判が知られるのを怖がっているのだろう。『雨の日に仔猫を庇う不良』など、シチュエーションがベタすぎてギャグにしかならないだろうし、それを当人も気づいているのだ。それに気づいた沙希は、心の中でこっそりベロを出した。そしてそんな様子をおくびにも出さずに返事をする。 「へぇ、言ってたら、どうするのかしら?」 タダでさえ、彼の生殺与奪権を握っているのは沙希なのだ。その上弱みを握っていれば……という考えだった。が、それは脆くも瓦解する。 「テメーの成績バラすぞ」 沙希の背筋が、凍りついた。 それは、彼女が周りに必死で隠していることの一つ。その立ち振る舞いから、周りから『勉強が出来ない訳じゃないだろう』と見られているが、実際のところ、『まったく出来ない』。それはいつも隣に居る雨流にはモロバレであり、時折授業でフォローしてもらう事もある。 「……そ、そーね。話してるわけ無いじゃない、プライバシーだもんね」 「ならいいんだが……分かってんな?」 その後雨の季節が終わるまで、二人は互いに牽制し合い、結果、これまでクラス内に響き渡っていた罵り合いがストップしたのを、他のクラスメイトは奇異の目で見ることとなる。 トップに戻る 作品保管庫に戻る
https://w.atwiki.jp/imasss/pages/1009.html
千早「私、みんなに○○を付けたいのだけれど」シリーズ シリーズの概要を必要に応じてお書きください。 1作目:千早「私、みんなにニックネームを付けたいのだけれど」 執筆開始日時 2012/04/22 元スレURL http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1335093322/ 概要 春香「千早ちゃん、突然どうしたの?」 千早「私、本当はみんなともっと打ち解けたいのだけれど、社交性が無くて…」 真「そんなこと無いと思うけどなぁ」 千早「いえ。自分で良く分かっているの」 律子「それでニックネームを?」 千早「ええ。亜美や真美のようにみんなを可愛いニックネームで呼べば、もっと仲良くなれるんじゃないかって」 亜美「亜美たちが呼んでるのと同じじゃダメなの?"はるるん"とか"まこちん"って」 千早「真似はしたくないから」 真美「なるほどね→」 タグ ^如月千早 ^オールキャラ まとめサイト SSだもんげ! エレファント速報 プロデューサーさんっ!SSですよ、SS! 2作目:千早「私、みんなにキャッチコピーも付けたいのだけれど」 執筆開始日時 2012/04/28 元スレURL http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1335614915/ 概要 春香「こ、今度は何、千早ちゃん?」 千早「私、今回はみんなに素敵なキャッチコピーを付けたいの」 律子「キャッチコピーねぇ…」 響「でもさ、それってプロデューサーの仕事なんじゃないの?」 千早「ええ。だけど私、みんなともっともっと仲良くなりたいから…」 伊織「動機は可愛らしいのよね」 千早「ダメ…かしら?」 真「そういうわけじゃないけど…」 タグ ^如月千早 ^オールキャラ まとめサイト SSだもんげ! SSちゃんねる エレファント速報 プロデューサーさんっ!SSですよ、SS! 3作目:千早「私、テーマソングのタイトルも付けたいのだけれど」 執筆開始日時 2012/05/03 元スレURL http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1335974319/ 概要 律子「もう勘弁して…」 伊織「今度は何よ?」 千早「ええ。私ね、そろそろ新しいテーマソングを作るべきだと思うの。各自のね」 春香「そ、それで?」 千早「そのタイトルを考えたいの」 響「それもプロデューサーの仕事じゃ…」 千早「もっともっとみんなと仲良く…」 真「わ、分かった分かった!」 雪歩「それを言われちゃうと断れないよね…」 タグ ^如月千早 ^オールキャラ まとめサイト SSだもんげ! SSちゃんねる エレファント速報 プロデューサーさんっ!SSですよ、SS! 4作目:千早「私、みんなの自伝のタイトルも付けたいのだけれど」 執筆開始日時 2012/10/15 元スレURL http //hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1350227286/ 概要 律子「……え?」 春香「ち、千早ちゃん?」 千早「何かしら、すってんリボン?」 響「じ、自伝って、えっと…出版するの?」 千早「そうよアニ丸。アスキー・メディアワークスには話を通してあるわ」 伊織「なんでそこなのよ……」 千早「駄目…だったかしら?私、もっともっともっと、みんなと仲良く……」 雪歩「だ、駄目じゃないよ!ねっ、真ちゃん!」 真「う、うん!駄目じゃないよ!」 千早「ふふ…ありがとう白子ちゃん、凛太郎」 タグ ^如月千早 ^オールキャラ まとめサイト SSちゃんねる エレファント速報 プロデューサーさんっ!SSですよ、SS! 5作目:千早「私、みんなに戒名も付けたいのだけれど」 執筆開始日時 2015/08/12 元スレURL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1439369931/ 概要 真「…へ?」 響「この感じは…嫌な感じだぞ……」 春香「ち、千早ちゃん?戒名ってあの……」 雪歩「亡くなった後に付けるものですぅ……」 千早「ええ、本来はね。だけど私、みんなと永遠に仲良くなりたいから……」 伊織「重いわよ……」 千早「ダメ…かしら?」ジーッ 亜美「出たよ…ちょーひさびさのジーッ……」 春香「ダ、ダメじゃないよ!ね、みんな?ね?ねっ?」 真美「あの目で見られたらやっぱりなんも言えないよ……」 やよい「かいみょう…ってよく分からないけど、お願いしますーっ!」 千早「ふふ…任せておいて。永遠(とわ)に安らげる戒名を考えるから」 律子「永遠に安らいで欲しいならそっとしといてほしいわ……」 タグ ^如月千早 ^オールキャラ まとめサイト えすます! エレファント速報 プロデューサーさんっ!SSですよ、SS! 6作目:【ミリマス】千早「私、後輩たちにもニックネームを付けたいのだけれど」 執筆開始日時 2017/04/09 元スレURL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1491733634/ 概要 雪歩「えっ……」 真「いま、なんか……」 響「聞こえちゃいけない声が聞こえた気がするぞ……」 春香「ち、千早ちゃん、えっと…い、いまなんて言ったのかな?」 千早「増えたのよ、後輩が。たくさん」 やよい「はい!みなさん、とーってもステキな人たちですー!」 千早「ええそうね、高つ…もやしちゃん」 伊織「自分で付けといて忘れかけてんじゃないわよ」 貴音「して、その後輩たちに……」 千早「素敵なニックネームを付けたいんです。後輩のみんなと…もっともっと、仲良くなるために!!!」 真美「あぁ、ついにこの日が……」ヒソヒソ 亜美「きちゃったねぇ……」ヒソヒソ タグ ^如月千早 ^AS組 ^徳川まつり ^ジュリア ^天空橋朋花 ^馬場このみ ^中谷育 ^矢吹可奈 ^野々原茜 ^北沢志保 ^周防桃子 ^木下ひなた ^北上麗花 ^高山紗代子 まとめサイト あやめ2nd アムネジアss大全 えすえすゲー速報 えすえすログ えすえすMode エレファント速報 おかしくねーしSSまとめ だる速 プロデューサーさんっ!SSですよ、SS! ポチッとSS!! SSまとめ SSでレッツゴー! SSびより SSまとめプラス YomiCom wiki内他頁検索用 AS組 アイドルマスター コメディ ミリオンライブ 作者◆P0PQJbH.us氏 如月千早
https://w.atwiki.jp/himahimadan/
三国志 泰山 ひまひま団秘密基地へようこそ 蜀の馬超様部曲【ひまひま団】では、新規団員を常時募集しています! ひまだー遊んでくれ~って方も、ひまがないけど遊びたいーって方も ひまひま団にはいって、三國志を一緒に楽しみませんか? 団員が多い時間帯は、20時~24時くらい 人数がそろえばPDに行ったり、PTを組んで格上狩りを楽しんでます 軍略・クエ等お手伝いも喜んで!わいわいやれば楽しいよ~ 合戦では、他の部曲さんと連合を組んでいますが、偵察・採集希望もOK!! 生産はもりもりやってる団員、ちょっぴりやってる団員いろいろです 自分にあった楽しみ方ができますよ! o(≧▽≦)o 新しく 部曲砦:ひまひま団秘密基地 も作りました! 屋敷にこるもよしっ! 畑仕事に精を出すもよしっ!(My畑も持てますよ~) 興味があるかたは、秘密基地に遊びにきてください 団員として、挨拶ができる方・ひまひま団規約がまもれる方 ぜひぜひ、お気軽にHPの掲示板に書込み、または団員に対話くださいねっ♪ 雰囲気をもっとしりたい方はHPの掲示板をのぞいてみてくださいな~ ★メニュー内容の紹介★ ひまひま団員名簿・・・現在所属活動しているメンバーの名簿です(各自更新してね) ひまひま団規約・・・覚えるまで読むのだ! ひまひま団客将・・・ひまひま団に来てくれた客将様の活躍の記録 部曲砦:ひまひま団秘密基地・・・秘密基地のルールなど 戦術指南(公開用)・・・一般的な合戦などでの知識 戦術指南(団員用)・・・所属連合での決まり?・反省会内容など 生産指南・・・生産で使用する素材の情報 宝飾指南(公開用)・・・装飾の種類・霊玉の情報 宝飾指南(団員用)・・・メンバーが預けてる元素と霊珠の数 マクロ集・・・くわしく知りたい人は、公式みるのだ(知りたいマクロ・便利マクロ情報待ってます) 涼州関係・・・あたらしいマップの情報です(未完成にもほどがあるっ) ウィキは登録された団員のみ編集できます。 ひまひま団員は、なるべく登録してね! 登録していない団員は、編集依頼で内容を更新することができます。 メールで送られてきたパスワードを用いてログインすることで、各種変更(サイト名、トップページ、メンバー管理、サイドページ、デザイン、ページ管理、等)することができます バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、メールでお問い合わせください。
https://w.atwiki.jp/duelvideo/pages/1933.html
【投稿者】すこんぶ 【メンバー】すこんぶ、リュウガ、偽キング 【動画の特徴】 デッキ ネタ 編集 ライフ、効果説明、マンゾクPOINT テンション 高い 形式 デュエル 【part1へのリンク】 リュウガ『ザ・カリキュレーター』 vsすこんぶ『ディープアイズ・ホワイト・ドラゴン』 【マイリスト・チャンネルへのリンク】遊戯王デュエル動画 【備考】 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/wikidesukedo/pages/16.html
新みんチャ常連 中学生部屋 喧嘩師もたまに来るにぎやかな部屋。 炎竟 俺です。叩き合いもします。 * 自称真のGuest いい奴。叩き合いはすることはなく、中学生部屋によく来ている。 * まゆゆ 煽りがやばいでも喧嘩しないそんな奴みんなからうざいなどの評価がありまくる りゅう 低脳。 姉貴 会話能力がそこそこあって喧嘩はしない。 * (桜´・ω・)っ こんなこと言ってた→ハイッ!(_´Д`)みんなにアイーン (10/28-08 31 10)←何だコイツwww とってもいい人だけど最近こないよ * 虎凋 中学生部屋の喧嘩師ではトップレベルかな?www 俺には当然勝ててないけどね^^; * 荒らし(偽 タイピング速いし話しやすいしいい奴。喧嘩はしないらしい。 結構前から来てるらしい シルバー とっても面白い人だよ!喧嘩もするんだって! 村人A 悪い奴ではない。ギャグのセンスがない。 生徒会長 とにかく面白い。会話能力はトップレベル。初心者にもやさしい会話もできるほか、喧嘩もできるすぐれた人。 * なつき なんかいろいろ面白い。 しろちゃん 白い(笑) 桃子 俺のことをなぜか恨んでるやつ。初めて会ったときに死ねとか馬鹿とか罵倒してきたキチガイ。 * もも・▽・`) 桃子と勘違いしてひどいこと言ってごめんね 依亞 おかわり君曹のことをいろいろと教えてくれたwww実はおかわり君曹ってエロいんだって!www。おかわり君曹のリア友。 武士 ただのゴミでいつも喧嘩腰。俺と喧嘩したが俺は10分でこいつを潰した。 まこと 最近来た変な奴w喧嘩したけど俺に負けた雑魚。 だる男。 叩き合いもするが俺に潰されたゴミでなんか自分の個人情報ペラペラ普通に公開してるからある意味こえええええええええって感じた。 おかわり君曹 よくわからないが馬鹿らしい。最近エロイことが明確になった。 あ うんこ大好きうんこ丸が大好きなんだとよwww 高校生部屋 最強の喧嘩師おでんがいる部屋ですごく楽しい部屋 おでん とても話しやすく喧嘩もみんチャで一番強い * もちもち もちもちしてるらしい。いい奴。 ドラゴンインフェルノ こいつはいつも喧嘩してるイメージ。俺と1回喧嘩した。超強かった。でも結果は俺の勝ちだった。こいつに勝つには結構な経験が必要とされる。ドラゴンインフェルノのすきな食べ物→http //thestyle.img.jugem.jp/20090228_808959.jpg 赤犬 まとも。 * ゲー部屋 最近人が来てないけどとっても面白い部屋。 * 三浦 ギャグがとっても面白くていい人。 タコ 話したことないけどよくいるので書いておいた(・∀・) * フレイムX 喧嘩はそれなりにできるらしい。 * 呪ってやろうか?君 何かこいつはいつでも現れる。平日だと昼間からいる。ニートの臭いがするぞwwwwてかどんなHNだよこれwwwきめえwwww * 金的フォイ 旧ミンチャからいる。旧ミンチャでは金玉フォイって言われてたらしいよ!。弟子は50人いるんだって!キモイね! 壁 最近見ない。喧嘩では根拠攻めしかしないカス。 * ↑ * 他の部屋も書きますこれから。
https://w.atwiki.jp/fushimi_eroparo/pages/160.html
http //yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1266820218/35-40 俺の幼馴染がこんなに不人気なわけがない 俺はやっとの思いで家へと帰宅した。 家まで帰る道中は身体が鉛のように重たく感じて、まっすぐ歩くことすらままならなかった。 ときおり壁に手をついて身体を休めなければ家にたどり着くこともできなかったかもしれない。 玄関の扉に手をかけて開けるという日常の当たり前の動作にすら気だるさを感じつつ、ゆったりと家の中へと入る。 するとまるで計ったかのようなタイミングで桐乃とはちあわせになった。ちょうど階段から降りてきていたであろう桐乃は俺の姿を確認するなり何かを言おうと口を開いたが、すぐに俺の異変に気付き驚いたように口元を手で覆ってみせた。 手で隠れる前に見えた口の形から、きっと「おかえり」の四文字を言おうとしていたのだろう。少し前なら桐乃の口からは到底聞くことが出来ないであろう貴重な四文字であったが、 あいにく今の俺にはそれの返答である「ただいま」という四文字を言う気力も残っていないため、途中で桐乃の口が止まってくれたのはありがたかった。 そして俺は、顔をうつむき加減にしてゆっくりと桐乃から視線を外す。 「ちょっ……! えっ、えぇっ!?」 俺は何も言わずに桐乃の横を通り抜けていく。 一度飲み込んだ言葉のせいで二の句がつげないでいるのか、桐乃は口元をおさえ狼狽したまま言葉にならない言葉をこぼしている。 俺はそんな桐乃の様子を気に止めることもなく……もとい気に止める余裕も無く、階段を上ってゆく。家の扉を開ける動作ですら気だるさを感じた俺にとって、 階段を上るという作業は偉い修行僧に科された厳格な試練に匹敵するほどの苦行であった。しかしさすがに、この俺の精神的に疲れ果てた身体を何のプライバシーも無いリビングで癒すことはできそうにない。 ひとまず誰にも聞かれることなく誰の視線も届かない場所で、ため息を一つぐらい吐かせてもらいたい。 「……ちょっと、あんた。と、とっ……止まりなさいよ!」 それでも妹様は何とか言葉を紡いできて、アメリカから帰ってきても昔と変わらぬ高圧的な命令口調で俺を呼び止める。アメリカで説得したときに似たような罵声を食らったが、日本で喰らったのは数ヶ月ぶりだった。 どことなく歯切れが悪いのは俺と同じ帰国疲れのせいか、俺の様子がおかしいことに気付いた戸惑いか、はたまたその両方からか。 俺は階段の途中で足を止めたが、決して振り返らない。一歩でも振り返ればバランスを崩して階段から転げ落ちてしまう予感がするほど、自分が心の底からガタガタになっていることがわかっていたからだ。 「……なんか用か?」 覇気の無い声色だった。一瞬これは本当に自分の声なのかと、自分自身でも疑ってしまうほどに生気がない。 「いやっ、用っていうか……。ど、どうしたのよ?」 俺の覇気の無さが乗り移ったのだろうか。主語の無い、それでいて歯切れの悪い質問が階段すら上るのに億劫となっている俺の足にまとわりつく。 これがいつもの桐乃の勢いに任せた態度だったなら何の後腐れも無く足を進めていただろう。 「…………」 それでも今の俺に桐乃と長く会話をする自信は無かったので、ひとまず無言のままゆったりと階段を上りきる。その間、桐乃はずっと黙って待っていた。 そうしてから俺は身体を半分だけ階段下の桐乃に向けて一瞥する。何かを問いたげな瞳がライトブラウンの前髪の奥からじっと俺を捉えている。 「……疲れた」 「えっ?」 唐突に俺の口からこぼれた言葉に、桐乃は一瞬呆気に取られた表情をする。 「カバンを持ってくのも面倒なくらい、疲れてんだよ。だから……カバンここに置いとくから、後で部屋に持ってきてくれ」 俺はそう言いながら無造作に、それでも勢い余って階段から桐乃が居る下へと落ちないよう心配りをしながらカバンを自分の足元近くに放り捨てる。 まぁなんだ、さっきの俺の一文の中に含まれた、『疲れてるから、話はひとまず後で俺の部屋で』という意図ぐらいは桐乃なら読み取ってくれるだろう。 俺はカバンを置くとすぐに自分の部屋へと歩き出す。それでもまだ階段の下の方から桐乃が俺を制止しようとする声が聞こえたてきたが、決して立ち止まったりも振り返ったりもしない。 もう本当にそんな余裕は今の俺に無いのだ。俺は自分の部屋の前にたどり着くと、素早い動作で部屋に入りトビラをしっかり閉めて、あたかもそれで最後の力を使い果たしたかのようにすぐさま力無くベッドへと突っ伏したのだった。 空白の時間とはまさしくこのこと。いろいろな意味で衝撃の連続であった今日、俺の頭は今までの反省だとかこれからどうするだとか考える余裕はなく、ひとまず何も考えない時間を欲していた。 意識はあったので眠っていたわけではないと思うが、部屋に入ってからの俺は何も言葉を発せず考えず、ただベッドの上で静寂を保っていた。 そんな半ば夢心地の俺を現実へと引き返したのは、コンコンッという最近では聞きなれぬ木を叩くどこか小気味良い音。それは扉をノックする音であった。 「…………」 俺は無言でベッドから体を起こす。へとへとだった体力も幾分か回復している。 「誰だ?」 扉の外にいる人物はおそらく桐乃であろうと半分確信しながら、俺は部屋の外にいる人物にそう話しかけた。お袋はノックなどしないし、親父に至ってはまだ帰ってきてもないだろうから、桐乃以外の人物が俺の部屋の前にいるなどありえない。 それでも、奇跡を期待して良いのなら。ひょっとしたら――― 「あたしよ。入るからね」 聞きなれた、それでもアメリカから帰ってきたばかりで少し懐かしさも感じる強気な声色。それはまごうことなき俺の妹の声だ。 そうして俺の扉がガチャリと開いて、片手に俺の学生カバンを持ち、もう片方の腕に何かを乗せたお盆を持った桐乃が部屋に入ってきたのを目で確認する。ベッドに座る俺に微妙な視線を向けつつも、桐乃は俺が先ほど預けたカバンを無造作に床へ置き捨てた。 予想通りの展開に驚くことはせず、それでも俺は一瞬だけ残念だと思ってしまう。 ひょっとしたら、俺の心配をしてくれた麻奈実が―――、という展開を、無意識で期待してしまっていたのだ。 現実を知ってからだと、これほど馬鹿みたいな妄想もない。くだらなすぎて、心の中で嘲笑すら出来ないレベルの冗談だ。 「はぁ」 「チッ。ため息つきたいのはこっちだっての」 辛気臭い顔を浮かべていた俺が気に食わないのか、桐乃は舌打ちまじりに毒づく。昨夜の晩餐で見た桐乃の姿は今やあとかたもなく、ある意味で本当の俺の妹が戻ってきたでも言うべきだろうか。 「……で、何があったのよ?」 そう言いながら桐乃はベッド上で項垂れている俺に視線を合わせてきた。それと同時に桐乃から手渡されるコップ一杯の水。どうやら先ほど片手に持っていたお盆にはこれを乗せていたらしい。 「……何もねぇよ」 「そんなに声嗄らしといてよく言うわ。……良いから話しなさいよ」 麻奈実の家を出る辺りからずっと涙を流していたからだろう、俺の声は確かに嗄れて掠れた声になっている。 発声するたびに喉のいがらっぽさが自分でも気になるし、こんな声で何もないなどと言っても説得力は皆無。ずっと涙が流れつづけていた顔の方はもっと酷いことになっているかもしれない。 「…………」 だからこそ俺は無言を決め込んだ。冷静に考えたら桐乃は俺がつい先日アメリカから連れ戻してきたばっかでまだまだ不安定だし、なにより今回の一件には麻奈実が深く絡んでいる。 どうしてかさっぱりわかんねぇが、とにかく桐乃は麻奈実のことを大が付くほど嫌っている。もしもいま俺が麻奈実のことで泣くほど悩んでいるなんて知ったら、不機嫌を軽く通り越して憤慨し、そのままの勢いで再びアメリカに行ってしまうかもしれない。 さすがに本気でアメリカへ戻るなどとは考えにくいが、ひとまず桐乃のためを考えたらここは今日の田村家での出来事は黙っておくべきだ。 「ねぇ、何か言いなさいよ」 桐乃の翡翠色の瞳が真っ直ぐに俺の両眼を捉えてくる。留学前より伸びたライトブラウンの前髪の隙間からのぞくそれに映る俺は、一体どんな顔をして対峙しているのだろうか。 少なくとも兄としての威厳がある姿ではないだろう。 目の前に差し出されたままのコップに映る自分の顔が歪んで見えるのは決して動揺のせいではないと、まるで強がりのように俺は桐乃の手からコップを奪い取り飲み干してみせる。 キンッと冷えた水が喉を一瞬で潤し、またしても限界ギリギリまで削れていた俺の体力を僅かにだが回復させてくれる。 「桐乃、お前には関係ねえことだ。まぁいろいろあったわけだが……お前が気にすることじゃない」 ゲームで言うなら瀕死状態から肉眼で確認できるまで回復した体力ゲージだけを頼りに、俺は桐乃の追及に一切答えないという強行策に打って出た。 喉が潤ったことで、声色も普段とあまり変わらないぐらいに戻った気がする。顔の崩れっぷりは確認できないのでどうかわからないが、麻奈実に殴られて未だヒリヒリとしている顔の痛みが今じゃ気付け薬となっているのは不幸中の幸いか。 とにもかくにも、俺はアメリカから帰ってきてまだまだ不安定で無茶をさせられない桐乃に、今日の出来事を何一つとして漏らすつもりはなかった。 「…………あっそ、そういう態度とるんだ」 その一方で桐乃はというと、俺の言葉を聞いてからたっぷりと間を置いてから、目にも止まらぬ速さで空になった俺の手中のコップを奪いさる。 それは桐乃の怒りの意思表示だったのか、しかし俺がその一瞬で垣間見た桐乃の顔には、どこか悲しげな色が浮かんでいた気がした。 「わかった、もういいわ。でも一つだけ答えなさい。これだけは答えてくれないと、あたしこの部屋から出ないから」 俺がそんなことを感じていたのも束の間に、桐乃は俺が数か月前まで見慣れていた高圧的で眉を吊り上げた不機嫌そうな表情に戻っていた。 しかしこのとき、俺は桐乃の言葉に内心ホッとした。自分の納得できないことはとことん追求する桐乃のことだから、 俺がいくらはぐらかしても言うことを聞かず長期戦になることを心のどこかで覚悟していた。ところが桐乃は意外にもあっさりと手を引いてくれるらしい。 さすがにここまでへこんでいる俺の姿に情が移ってでもくれたのか、何はともあれ助かった。ひとまずこの桐乃の一つだけ答えろという質問を乗り切れば、今の所は万事オーケーだ。 まだまだ休みたりていない俺の身体と精神が、早くもう一度一人で何もすることのない安らぎの時間を求めている。 それでも百里を行く者は九十里をなんとやら。次の瞬間、神妙な顔つきの桐乃が問いかけてきた質問に、俺は平静を保つことなど出来ず驚いてしまった。 「その殴られた顔は、一体誰にやられたのよ……?」 心の底から俺を心配しているような、そんな優しげな声色。それと共に向けられてくる憂いを込めた視線にほだされてしまう。何となく、それは卑怯だろうと言いたくなる。 そんな顔をされたら、兄として平静を保てやしない。……というか、ちょっと待てよ!? 「なっ! なにを急に……ていうか、なんでおまえ俺が殴られたって知ってんだよ!?」 俺の身体が酷くボロボロと言っても、何か特別目立った外傷があるわけではなく、それはあくまで精神的ショックで俺がそう感じているだけに過ぎない。 それじゃなんで桐乃は、俺が麻奈実に顔を殴られたことを知っているんだ? 俺が突然の自体に目を丸くしていると、桐乃はなんてことはないといった様子で返事を紡ぐ。 「あっそう。ひょっとして転んだだけかとも思ったけど、やっぱり殴られたんだ。その青アザ」 さっき俺が聞いた優しげな桐乃の声はやはり空耳だったのであろうか。今では飄々とした口調で、俺の口からあっさりともれた自白内容をなぞっている。 「っ!? き、汚ぇぞ桐乃!」 かまかけてやがったなこいつ! ていうか、青アザ出来てたのかよ。桐乃に言われるまで全く気付かなかった。 麻奈実の家に帰るまでに鏡張りのショーウィンドウなんておしゃれなものがある店は近所にないし、家に帰っても一直線に俺は部屋に入ったから、洗面台の鏡も見ていない。気付いてなくて当然といえば当然だ。 桐乃に指摘されたアザが出来ている頬をさすっていると、いつの間にか俺に視線を合わせることを止めて、腰に手を当てながらまるで貧乏人を見る成金のように俺を見下ろしていた。 「汚いのはどっちよ、このバカ兄貴」 そうして放たれた、いわれのない罵倒。 何を突然言い出すんだこいつは? 俺がいつ汚いことをしたと言うのか? はっきり何か言い返そうかと思考を巡らすが、桐乃の二の句の方が早かった。 「……あたしはね、前も言ったけどあんたに、その……け、けっこうどころじゃなくて……かなり感謝してるの。 私のオタク趣味がお父さんとかあやせにばれたときとか……今回のアメリカの件だって、あっちじゃ強がってたけど……日本に帰ってこれて、本当に良かったと思ってる」 声色はいたって普通。でもどこか顔色は赤みがかっていて、その普通の声が必死に照れ隠しをしているようにも思える。 罵倒から一転して桐乃の突然の感謝に、俺は内心とまどった。 「それもこれも、全部あんたの……兄貴のおかげだから」 ゆっくりと告げられる言葉に、少しずつ、ほんの少しずつなのだが。傷ついた俺の何かがいろいろと癒されていくのを感じる。 「だからあたしは、何ていうか……恩返しがしたいのよ。あたしに出来ることがあるのなら、何でも言って欲しい。あんたほどうまくできるかわからないけど、話を聞くことぐらいは、……人生相談にのってあげることぐらいなら出来るし」 あの桐乃の口から出た言葉に俺は正直耳を疑ったね。いろいろ精神的に参ってたところもあるし、最初は俺の生み出した幻影が話す幻聴かとも思った。でも俺のことを見下ろしながらそう言ってくれる人影は、確かに俺の妹の桐乃であった。 わざわざアメリカにまで迎えに行ったんだ、見間違えるはずがない。 「それなのにあんたってば、自分が困っててもあたしに全然相談しないし。それどころか、あたしには何も関係ない。これは自分の問題だ。とかなんとか言っちゃってさ、あたしに何も話そうとしないじゃない。……それって、卑怯とか思わないワケ?」 「いや、卑怯って言われても……。俺はお前の兄貴だから、助けるのは当然っていうか、俺が助けたかったから助けただけで」 「それが卑怯って言ってるの。あたし、ずっとあんたに助けれっぱなしで、いい加減に借りの一つや二つぐらい返したいの。だからね、あたしにもあんたが何で悩んでるかぐらい話しなさいよ。 ……あたしは、あたしはね。あたしがあんたを助けたいから、助けるだけなんだから」 おぉっ、おぉぅ……。何ということだ。俺は今、心の内から湧き上がる感動の涙が止まらない。さっき桐乃から貰ったコップの水が全て涙に変わり、心の中で滝となって壮大に流れているビジョンが俺の瞼の裏には映っている。 桐乃の口から俺のためになどという言葉を聞けて、それだけでも今までこいつのために使ってきた体力が全てカムバックしてきそうだ。 その気持ちだけで十分だと言いたかったが、せっかく桐乃の法からここまで言ってくれてるんだ。例え兄貴だろうと、たまにはその厚意にあずかっても良いだろう。 「じ、実はだな…………麻奈実と」 「ハァ? その怪我、ひょっとしてあの地味子との痴話喧嘩が原因なワケ? ……………………やっぱなし。さっきの相談がどうのこうのっての、全部無し。ていうか、ウザッ」 頭の中で劇的ビフォーアフターのBGMが流れたような気がした。まぁなんということでしょう。 麻奈実の名を聞いた途端、俺の妹の顔は滅多に見れない優しげな表情からいつもの無愛想で侮蔑するような視線の顔色に、天使の歌声のような声色はたちまち不機嫌な声色に。 前言撤回だ。さっき流した心の涙を返してくれ。人間の涙ってのは血液から出来てるんだぞ。ただでさえ精神と肉体がボロボロの上に貧血まで起こさせる気かよ。 というか、あいかわらずお前はどんだけ麻奈実のこと嫌いなんだよ。いやもうこれは嫌いとかいうレベルじゃないね。もうお前末代まで麻奈実のこと祟るつもりだろうよ? 「つうかさぁ、さっきその顔殴られたって自白してたケド、まさか地味子に殴られたワケ? あの超お人好しに殴られるって、逆に何すれば殴られるのよって聞きたいわ。まっ、多分あんたが十割悪いんだろうケドさ」 あぁそうだよ。ついさっき俺の相談を聞くと言っておきながら、今やお前は俺が一番気にしているデリケートゾーンをハイヒールで踏み躙ってきたよ。元々似てない兄妹なんだから、無理矢理そんなところ似せてこなくて良いって。 麻奈実のことをずっと傷つけていて、今日もまた傷つけて、そして殴られた。もう二度と普通に話せなくなったであろう幼馴染の姿が、今や涙も干ばつした瞼裏に浮かび途端に身体中を寒気が走った。 俺はもう桐乃と話す気力を完全に失い、寝返りを打って桐乃に背を向けた。 「…………チッ。なんか言いなさいよ。ウザッ」 すると桐乃は俺が何の反応もしないのが気に食わないのか、それだけ言い残して桐乃はドタドタと音を立て部屋から出て行った。 怒りにまかせてドアを思い切り閉めたバタンッという音が、アザが残る頬に小さく響いた。 「ほんと、ウザすぎっ。なんで悩み事となるといつも全部アイツの事なのワケ? ……助けたいのに、助けたくなくなるじゃん。バカ兄貴」 ドアを挟んでもなお俺を罵倒する桐乃の声がする。後半部分は何やら口ごもっていたのでよく聞こえなかったが、きっとろくでもない罵倒の一部であろう。 そんなものを聞取るために体力を使う気など俺にはさらさらなく、再び目を閉じて思考も完全停止させることで、ひとまずの体力回復をはかるのだった、
https://w.atwiki.jp/kami-morita/pages/17.html
5月15日のみんなへ一言! もう少しでPSN復旧しますね♪ そこで、復旧してから二日目の夜の8時ぐらいからイベントをやろうと思います!! イベントの内容はツーリングです!!しかも4チームで仲良くツーリングします!! 参加チームはGTAレジェンドレッドスター、L・C MIDNIGHT STORM、Eternal curiosity、BES(ブラックエンジェルス)です!! あと、動画を撮ってもらうために、俺の昔からのフレンドのジャベリンさんも参加します!!(俺も撮影します) レッドスターの参加者はだいたい、俺も合わせて4人ぐらいです!! ちょっと少ないかもしれませんがしょうがないです。 乗り物は基本的にフリーですが、ヘリなどはやめてくださいねw 他のチームもいますのでマナー良くお願いします。 本当に楽しみです!! 質問などがあれば、コメントよろしくお願いします 5月2日のみんなへ一言! GTA4日本ヘリ同好会(GTA第4帝国日本ヘリ同好会総統親衛軍)を 潰すことをやめることにしました。 tuyosiの方も友好的にいきたいと言う事なので 協力してくださっていたチームまたは人々すいません これからはみんな、友好的にいきましょう!! 4月25日のみんなへ一言! PSN復旧のには時間かかるみたい・・・・ あ~~~~早くオンラインやりてーーー!!! でも、しかたないから会長はドリフトの練習とミッション進めてるよ。 みんなは今、はなにしてる? 4月24日のみんなへ一言! PSNまだ復旧しないね~ まだ時間かかりそうだ・・・ 最悪だwwww 早くみんなとオンラインしたいよ~ 復旧したら即行オン入ってね よろしくね 4月23日のみんなへ一言! 近日、レッドスターの紹介動画撮るからよろしく!! サインインできるようになってからね なるべくみんな来てね!!!!!! 4月22日のみんなへ一言! 日本ヘリ同好会からGTA第4帝国日本ヘリ同好会総統親衛軍になったみたいだよ 連絡しとく、tuyosi723またはAIR-WANTED_FIREと出会ったらまず攻撃しないで俺にメールしてくれ。 俺がいなかったらみんなにメールして来てもらい、みんなで集団攻撃してね。 勝ったらあいつに「カスだな」とメールしてくれ よろしく 4月21日のみんなへ一言! サインインできねぇーーー! なんでやねん!!! 今日はPV第二弾を撮影しようと思ったのに・・・ まあ詳しくはhttp //www.jp.playstation.com/psn/state.htmlへどうぞ パソコンが壊れてPS3でやってるから出来ないゴメンナサイ! -- (ryuto1032) 2011-05-25 21 49 08 りゅうとさん、psn復帰後お話があります。深刻な話ですので、AVチャットにご参加下さい。どうぞ、よろしくおねがいします。 BYねねかい -- (nenekai) 2011-05-26 22 11 12 お久しぶりでーす。会長さん。もう少しでPSN復旧しそうですね。ところで、サミットとやらに僕自身出席したいのですが、よろしいですか? -- (クロヒゲ) 2011-05-27 23 34 02 ねねかいさんに聞いてみますね -- (レッドスター会長) 2011-05-28 01 17 48 GTA4日本ヘリ同好会とは、PS3ゲームソフトのGTA4の日本人ヘリチームである。 -- (名無しさん) 2011-06-21 23 29 09 今つよしにメールして喧嘩売ってるんやけど、コイツ糞イモリですわ。さよならさよならさよならとかなめたメールしてくるは、お望みどうりボイスチャットするとか言っといてメールぶちるは、なめてますわ、そろそろ俺もつよしにイライラしてるんでぶちぎれるとおもいまーす。あと会長にフレンド登録送りましたので、おねがいしま~す^^ -- (REGGAEMAN7) 2011-06-27 20 27 03 あと、REGGAEMAN7=暴走族です^^ -- (REGGAEMAN7) 2011-06-27 20 28 19 このチームどうなったの?ワラ 活動してないの?やってないならサイト消したら?中途半端にしてんじゃねえよ あ? -- (えっw) 2011-09-04 00 09 30 ここのチーム終わったん?もうぬけるわ。けっこうつまんなかったw -- (うん) 2011-09-12 18 56 21 そろそろ2チャンネルに投稿してもらってもいいかと -- (暴走族とかほざいてる奴ですけど) 2011-11-29 18 13 54 名前 コメント すべてのコメントを見る