約 977,218 件
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3569.html
『まりさの楽園 中編』 36KB いじめ 制裁 自業自得 引越し 群れ ゲス 希少種 自然界 独自設定 ナナシ作 *前回のあらすじ 長ぱちゅりーはまりさたちが新しく作った群れに向かった。 「ゆっくり!ゆっくりー!」 「すーや!すーや!」 「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!」 「ゆっくちー!」 ここは山の外れに位置するまりさたちが新しく作った群れの広場。 そこにいるまりさたちは、みな思い思いの方法でとってもゆっくりしている。 あるまりさは、他の家族や他のまりさたちとじゃれあい、またあるまりさは、ひなたぼっこをしながらうたた寝をしている。 そしてまたあるまりさは、自分が採ってきた食料を口一杯にほおばっていた。 それらの行為は、みな元の群れにそのままいたら到底できなかったことだ。 ここではれいぱーにおびえることもなく、でいぶに罵られ四六時中狩りに繰り出されることもなく、 もりけんに顎でこき使われることもない。 食料は自分と連れて来たおちびちゃんたちの取り分だけ狩ってくればそれでこと足りるし、 余った時間は誰に邪魔されることもなくゆっくりし放題だ。 もとよりこの群れのにいるまりさは、皆今までつがいであったでいぶやありす、ぱちゅりーの無茶な要求にも耐えてこれたような優秀な個体が集まっているのだ。 ただ生きて、暮らしていくだけならば何の問題ない。 唯一の不満と言うか不便は、この群れにはまりさ種しかいないため、つがいとおちびちゃんをつくることができないことだ。 だがしかし、それはもういい。 いまさらつがいを持とう、などと考えるまりさはこの群れにはもはや誰もいなかった。 おちびちゃんなら、いまいるだけで十分だ。 今あるゆっくりをただ享受して、ただ生きていければそれでいい。 一度は心を殺したまりさたちの、それはある種の悟りといってもいい心理であった。 この群れに逃れてきたまりさたちは、みな今の現状に満足しており、今あるゆっくりで充分と感じていたのだ。 しかし、そんな穏やかな時間が流れている群れの広場に、突然一匹のまりさが慌てた様子で飛び込んでくる。 「ゆあああああああああああ!みんなたいへんだよおおおおおおお! まりさいがいの、ほかのゆっくりが、こっちにむかってきてるよおおおおおおおお! まえのむれの、おさぱちゅりーに、かんぶありす、かんぶれいむもいるよおおおおおおおおお!」 ざわわ!? 広場で各々ゆっくりしていたまりさたちは、そのセリフを聞くや否や一転、騒然となる。 その飛び込んできた見張り役のまりさの話しでは、なんと元いた群れの長ぱちゅりーと幹部れいむ、幹部ありすが、こちらの方向に向かって進んできているというのだ。 そのゆっくり出来ない報告により混乱状態となるまりさたち。 群れの長が?いったい何のために?どうして!せっかく忘れていたのに!何しにきやがった!怖いよ!もう前の生活はゴメンだ! なんで放っておいてくれないの!顔もみたくない!逃げないと!ゆっくりできない! 様々なゆっくりできない憶測があたりを飛び交い、まりさたちはおろおろと動揺しただ広場を右往左往するばかり。 と、そこへ、 「みんなおちつくんだぜぇ!」 慌てふためくまりさたちに対して鋭い一喝が広場に響いた。 「みんなじたばたするんじゃないんだぜ!なにもおそれるひつようはないんだぜえ! もとのむれのおさだか、かんぶだかがやってきたところで、どうってことないし、やつらにしたがうひつようもないんだぜえ! もうまりさたちは、じゆうなんだぜええええええ!」 慌てふためくまりさたちに向かって、この群れのリーダー格のまりさが吼える。 「しんぱいしなくてもだいじょうぶなんだぜえ! ここはもう、どくりつした、まりさたちのむれなんだぜ! ぶがいしゃのすきかってにはさせないんだぜええええ!」 「「「ゆっ、ゆおおおおおおおおおおお!」」」 リーダーまりさの言葉により、我に帰る群れのまりさたち。 そうだ、そうだった。 もう自分たちはあの群れを出て行ったのだ。 だからあの群れのルールに従う必要もないし、長ぱちゅりーや幹部れいむ、幹部ありすにへこへこする必要もない。 何の用でこっちに向かってるか知らないが、奴らが来たところで何てことはないんだ! 「そうだね!そうだよ!」 「りーだーのいうとおりだよ!」 「ここはまりさたちのむれだよ!ぱちゅりーたちなんかのすきにはさせないよ!」 互いに団結し、落ち着きを取り戻していくまりさたち。 ここはまりさの楽園、まりさだけの群れ。 他のゆっくりの指図は受けない! そう群れのまりさたちは、強く意志を固めるのであった。 「むっきゅー!まだつかないのかしら、ぱちぇはもうつかれたわ!」 「ゆーん、うわさにきいたはなしだと、ここらへんのはずなんだけど……」 「まったく、これだからいなかはいやなのよ!」 誰にともなくぶつくさと文句を言いながら、のろのろと森を移動しているゆっくりたちがいる。 それは例の長ぱちゅりー、幹部れいむ、幹部ありすの三匹だ。 三匹は意気揚々と群れを飛び出したのはいいものの、目的地のまりさの群れの位置がよくわからず森をさ迷い歩いていた。 しかも、ただでさえ日々の身の回りの生活の一切をまりさにやらせて身体がなまっている三匹にとって、この道中は非常にしんどいものらしく、 三匹はもうヘトヘトな様子である。 そして疲れ切った長ぱちゅりーは、当然の如く不満だらけだった。 まったく何だって自分たちがこんな辛い目に遭わなければならないのか? 何故まりさの群れのにいる連中は、長や幹部である自分たちがこうしてやってきているのに、迎えの一つもよこさないのか? まったくふざけてる。 やはりわざわざこのぱちぇ自ら群れに乗り込むなんてことはせず、適当に使いでも寄越して、 向こうからこっちの群れに土下座させにこさせるべきだっか? とにかく疲れた、何だってこのぱちぇが、本来ならば下等なまりさ種がやるべき肉体労働をしなければならなのか……。 自分から群れに行くと言い出したことを棚に上げ、 そんなことを長ぱちゅりーが考えていると、突然幹部れいむが声を上げた。 「ゆゆ!みてみて!あそこにまりさがいるよ!」 「あら、ほんとだわ!ゆぷぷぷ!いなかものまるだしのつらねぇ!」 幹部れいむの言った方向に視線を向けると、その言葉が示す通り少し進んだ場所に一匹のまりさがいた。 そのまりさは何をするでもなく、じっと長ぱちゅりーたちの様子を窺っているようである。 「むっきゅー!ようやくでむかえがきたの!まったくおそすぎるわね! ちょっとそこのまりさ!ばかみたいにぼさっとしてないで、ぱちぇたちをさっさとおまえらのむれにあんないしなさい! これはめいれいよ!はやくしなさい!」 前方にいるまりさにむかって、高圧的に話しかける長ぱちゅりー。 しかし、 「……………」 そこにいたまりさは無言でクルリと踵を返すと、そのままどこかへと跳ねて行ってしまった。 「なっ!」 「ゆええ!」 「ちょっと!」 そんなまりさがとった予想外の行動に驚く三匹。 自分は確かに群れに案内しろと命令したはずだ。 この至近距離で、まさかそれが聞こえなかったなどということはあるまい。 だというのにその命令を無視し、あまつさえ長や幹部である自分たちに背を向けてどこかへ去るなどとは一体何事だろうか! 「なっ、なんなのよ!いまのたいどは!いくらなんでもふざけすぎよ!」 「ゆああああああ!あのまりさ、なまいきだよおおおおおおおおお!まりさのくせにいいい!」 「むぎゅぎゅぎゅ!こっ、このぱちぇをむしするなんて!なんてぶれいなゆっくりなの!」 三匹は呆然とするのもつかの間、すぐに我に返って怒りをあらわにする。 「あのまりさを、おうわよふたりとも!こんなあくは、けっしてみのがしちゃいけないわ!」 「「ゆっくりりかいしたよ!」」 言うが早いか、まりさが去った方角へと跳ね出す三匹。 怒りで疲れが吹き飛んだのか、長ぱちゅりーを先頭にして今までにないスピード(それでもかなり遅い)で突き進んでいく。 そして、その勢いのまま一直線に森を進んだ三匹はやがて木々を抜け、やや開けた場所へと出る。 そこには……。 「「「ゆゆ!?」」」 その場所で三匹は 我が目を疑う光景を目にした。 目の前に広がる広場。 そこにはまりさだ、まりさたちがいる! いや、そのことはいいのだ。 自分たちは、そもそもまりさの群れを目指してやってきたのだから。 まりさがいること事態は問題ではない。 問題はそのまりさたちの様子だ。 なんと、そこにいるまりさたちは、信じられないことに、誰も彼もがとんでもなくゆっくりしていた。 長ぱちゅりーたちは、こんなにゆっくりしているまりさは、いやそもそもこんなにゆっくりているゆっくりを見るのははじめてだった。 「……これは、どういうことなの」 ポカンとアホみたいに口を開けたまま思わず呟く長ぱちゅりー。 何故これほどまでも、まりさたちはゆっくりできているのであろうか? 『ぼせい』溢れるれいむ種が、『とかいは』なありす種が、そしてなにより『けんっじゃ』であるこの自分、ぱちゅりー種がこの群れにはいないというのに! 一体なぜ?どうしてゆっくりできるというのだ! と、そこへ、 「いったいこのむれに、なにようなのかぜ?」 困惑している長ぱちゅりーたちへ声がかけられる。 「むっ、むきゅ」 声をかけられた方向へ目を向けると、いつの間にやらそこには他のまりさより一回り大きいリーダーまりさを中心に、 数匹のまりさたちが集まっており、長ぱちゅりーを睨み付けていた。 「もういちど、いうのぜ! いったい、このむれになんのようできたのかと、きいているんだぜぇ!」 急な事態にやや放心気味の長ぱちゅりーたちに対して、咎める様に言うリーダーまりさ。 リーダーまりさの周りにいるまりさたちも、みな一様に険しい表情をしている。 その口調や態度から、歓迎されてないことは明らかだ。 「ゆーん!なんだかゆっくりできないふんいきだよ!」 「とかいはじゃないわね…」 流石に能天気な幹部れいむと幹部ありすも、その緊迫した雰囲気に気づいたのかやや不安げな様子である。 「ちょっとあなたたち!さっきからなんなのそのたいどは! おさであるこのぱちぇが、わざわざきてあげたのに!こんなぶれいがゆるされるとおもって! ふかいだわ!しゃざいしなさい! それから、ぱちぇたちをかんげいするぱーてぃはどうしたの!」 しかし、そんな中にあっても長ぱちゅりーは、毅然とした態度を崩さなかった。 ただ単に空気が読めてなかっただけとも言うが…。 「はぁああああん!いったいなにをわけのわからないことをいってるんだぜ? ようがないならさっさとかえるんだぜえ! ここは、おまえらがくるようなばしょじゃないんだぜぇ!」 長ぱちゅりーの態度に対し、小バカにしたように言い返すリーダーまりさ。 そしてさらに、 「ゆゆ!ぱちゅりーだ!もりけんのぱちゅりーがいるよ!」 「でいぶだ!となりにでいぶもいるよ!」 「れいぱーありすもいっしょみたいだね! ゆぷぷぷ!もといたむれの、くずしゅさんびきが、みはりのほうこくどおり、がんくびそろえてあつまってきてるよ!」 ざわ…ざわ…。 長ぱちゅりーとリーダーまりさの会話により注目を浴びたのか、今まで広場で思い思いにゆっくりしていたまりさたちまで わらわらと長ぱちゅりーたちの側に集まってくる。 そして、そうこうしているうちに、いつの間にか長ぱちゅりーたち三匹はこの群れにいる沢山のまりさたちに周囲をすっかり囲まれてしまっていた。 「ゆぴいいい!きょわいよおおおおおおお!」 「とっ、とかいはじゃないわああああああ!」 「……………くっ!」 周囲をまりさたちに囲まれ、その恐怖からみっともなく震えだす幹部れいむと幹部ありす。 それは今にも泣き出し、恐ろしーしを辺りにぶちまけんばかりの有様である。 そして長ぱちゅりーもまた、一見かろうじて平静を保っているように見えたがその顔面は真っ青だった。 「ゆふん、いったいなんのようで、このむれまでやってきたんだかしらないけど、 みてのとおり、おまえらはまねかれざるきゃくなんだぜえ! さっさとおかえりねがうんだぜ!いまならみのがしてやるんだぜえ!」 汚物でも見るかのような目で、吐き捨てるように言うリーダーまりさ。 また取り巻きのまりさたちも敵意をむき出しにしており、まさに一触即発の状態である。 うかつな言動をすれば、そのままふくろ叩きにされかねない状況だ。 長ぱちゅりーたちにとってはここはまさにアウェー。敵地なのである。 そもそもそんな場所に、幹部三匹で乗り込むこと事態が愚行であるといえるのだが、 能天気な長ぱちゅりーたちはこんなことになるなんて全く予見してなかったし、今さら何を騒いだところで後の祭りだ。 もうこういう状況になってしまった以上、最善の行動は変にまりさたちを刺激せずに大人しく帰るのが正解だろう。 というかそれ以外に手はない。 「ゆゆ、ぱちゅりー、ここはいったんひきあげたほうが……」 「そっ、そうよぱちゅりー!こんないなかにいつまでもいることないわ!」 「…………むきゅ」 危険なレベルでゆっくり出来ない気配を感じ取ったのか、長ぱちゅりーにそれとなく退却を進める幹部れいむと幹部ありす。 当初の予想だった、まりさたちが進んで群れに戻ってくるという希望的予測はもう完全に否定されている。 となれば、こんなところに長居は無用で、さっさと撤退するのが吉だ。 幹部れいむと幹部ありすには既に群れを出た当初の陽気さ楽観さはなく、その心を占めるのはこの場をさっさと離れたい一心だけだった。 そして、今この場はゆっくり出来ないという意見は長ぱちゅりーとてまた同様であった。 確かに幹部れいむたちが言うように、こんなふざけた場所からは一刻も早くおさらばしたい。 が、しかしである。 長ぱちゅりーは思う。 このままここでなにもせず、すごすごと引き下がる、などということがあってよいのだろうか? 長たる自分がまりさごときの言う事に従い、屈することが許されてよいのだろうか? いいや、それは断じて認められない! そんなのけんっじゃとしてのプライドが許さない! 大体悪いのはこいつらの方じゃないか、自分という正義がここで崩れる道理があろうはずがないのだ! 長ぱちゅりーの心の内から何か得体の知れないものがむずむずと這い上がってくる。 それはまりさたちによってもたらされた、おそらく生まれてこのかた初めて体験するゆっくり出来ないストレスが、 捌け口を求めて長ぱちゅりーの身体の中で暴れまわっているのだ。 人生において他人にムカつくことを言われ、何か言い返したいが、言い返してはいけない場面というのは存在する。 例えば今がその時だ。 こちらは三匹しかいないのに対して、あちらは多数のまりさ、それもこちらに明らかに敵意を持っている状況。 こんなときは、例え不本意でも口を噤んでおくべきである。 だがしかし、我慢などと言うものとは無縁の生活を送ってきた長ぱちゅりーは、それを耐える術をしらない。 そしてとうとう堪えきれなくなった長ぱちゅりーは、口火を切ったのであった。 「いっ、いいかげんにしなさい! かえれですって、よくもそんなくちがきけたものね! あなたたち、いったいだれにたいして、ものをいっているのかわかってるの! ぱちぇは、むれのおさなのよ!えらいのよ!けんっじゃなのよ! それをおまえら、まりさごときがこのぱちぇにいけんなんて、みのほどをしりなさい!」 あくまで見下した態度で、どこまでも不遜に長ぱちゅりーは喋り続ける。 「なんのようできたかですって?あなたたちばかまりさは、いちいちいわれないとそんなこともわからないの! おまえらくずどもを、むれにつれもどしにきたのよ! おまえらが、すきかってして、むれをでたおかげでめいわくしているゆっくりがたくさんいるの! こんなあくじを、むれのおさとして、ほうっておけるはずないでしょう! いい、いちどしかいわないわよ!ここにいるまりさたちは、そっこくむれにもどって、ぱちぇのどれいになりさい! これは、おさとしてのめいれいよ!わかったら、さっさとこうどうしなさい、このくずども!」 体内に溜まったものを吐き出すように、一気にまくし立てる長ぱちゅりー。 自分は何ら間違ってなどいない。 そうとも、間違ってるのはこいつらなのだ。 自分は正しいことをしている! 従え!このゲスども!ぱちぇは群れの長なんだぞ! 「……………はぁ?」 長ぱちゅりーの物言いに、リーダーまりさはただただ困惑気味に顔をしかめた。 また、周囲を囲んでいるまりさたちも同様に、呆けたような表情をしている。 言ってる事が分からない…イカれてるのか?この状況で。 ひょっとしてこいつらは、なぜ自分たちが群れを出て行ったのかまるで理解していないのではないだろうか? 今の長ぱちゅりーの言動から推測するには、そうとしか考えられないのだ。 仮にもしそうだったとしたら、コイツは一体どれ程愚かで無能なのだろうか。 そしてそんなヤツに今までこき使われてきた自分たちは……。 「むっきいいいい!なにぼさっとしてるの! さっさとこうどうしろといったでしょこのぐ……」 「だまるんだぜええぇぇえ!!!」 「ひっ!」 まだ何か言おうとした長ぱちゅりーの言葉を、リーダーまりさの咆哮が遮る。 リーダーまりさは悟ったのだ、長ぱちゅりーとまともに会話をするのが時間の無駄だということに。 「いいかげんにするのはおまえらのほうなのぜ! だいたい、いつまでおさきどりでいるんだぜえ!わらわせるんじゃないのぜ! ここはまりさたちのむれなんだぜ!ここではおまえらなんか、ただのむのうな、もりけんなんだぜぇ! ごちゃごちゃいうようなら、ちからずくでおいかえすまでだぜぇ!」 ドン! 「むっきょろばああああああああ!」 リーダーまりさが軽く長ぱちゅりーに体当たりすると、長ぱちゅりーは悲鳴を上げながらコロコロと転がっていく。 「ここからでていけ!そしてにどとこのばしょにくるんじゃないんだぜ!」 「そうだ!そうだ!」 「でていけ!このむれからでていけ、このげすども!」 「かえれ!かえれぇ!」 「しんでね!しんでね!はやくしてね!」 「くずが!にどとそのきたないつらを、まりさにみせにこないでね!」 リーダーまりさが手を出したことをきっかけとして、四方八方から感情を押さえきれなくまりさたちのヤジが飛ぶ。 いや違う、これはヤジなどという生易しい代物ではない。 長ぱちゅりーたちをはじめとした、過去に自分たちをこき使った群れのゆっくりたちに対する、 明確な敵意、殺気をこめた憎悪の言葉の数々であった。 「ゆぴいいい!もうやだああああ!おうじがえるううううう!」 「ひいいいい!どがいはあああああ!どがいばあああああ!」 ジョロジョロジョロ~。 そんなあまりにもゆっくりできない状態についに耐えられなくなったのか、 とうとう泣き出し、おそろしーしを漏らす幹部れいむと幹部ありす。 「うわ!きたなっ!もらしたよ!でいぶとれいぱーが、しーしをもらしたよおおおお!」 「あっちいってね、けがわらしい!」 「ゆゆ!これでもくらえ!」 ピュッ! 周りを囲んでいたまりさのうち一匹が、口に小さな石を咥え噴き出した。 そしてその石ころは放物線をえがき、見事れいむの頬に命中した。 「ゆびいいいいい!いだいいいいいい!どうしてこんなことするのおおおお! でいぶなにもわるいことしてないのにいいいい!」 「うるさい!このげすども!みんなやっちゃえ!」 「ゆゆ!くちでいってわからないげすを、むれからおいだすよ!」 はじめに石を拾ったまりさに倣って、次々に小石を口に咥え、撃ちだすまりさたち。 それは石つぶてとなり、幹部れいむと幹部ありす、そしてやや離れたところに転がっている長ぱちゅりーを襲った。 「ゆっぴぎゃああああああ!やべでえええええええええ!」 「ぎょへえええ!ちょかいは~!ちょかいはなのおおおおおおお!」 「むっげっへぼ!えれえれえれ!」 幹部れいむと幹部ありすは自分で漏らしたしーしにまみれながら、長ぱちゅりーは自身の中身を少し吐き出しながら、 たまらず群れの出口へ向かって逃げ出す。 もう長のプライドとかそんなこと言ってる場合じゃない。 このままここにいたら命が危ない!流石にそのぐらいのことはもりけんでも理解できたようだ。 「ゆふん!こんかいはこれぐらいにしておいてやるんだぜ! ただし、つぎまたやってきたら、そのときはいのちはないとおもうんだぜぇ!」 必死の形相で逃げ出す長ぱちゅりーたちに、そんなリーダーまりさの最後の声が届いた。 そして数日後。 ここは長ぱちゅりーが所属する群れ内。 「なんなの、あのいなかものまるだしのたいどは!ふざけるのもいいかげんにしてほしいわ!」 「ゆうううう!れいむにひどいことするなんて、とんでもないげすなまりさだよおおおおお! 「むっきゅううううう!よくも!よくもぱちぇをばかにしてえええええ! ゆるさない!ぜったいにゆるさないわあああああああああ!」 いつもの長ぱちゅりーのおうちで、まりさの群れから命からがら何とか帰還した三匹が、がん首そろって文句を垂れている。 彼女らのまりさたちへの感情は、憤りから明確な怒りへとシフトしていた。 とは言え、実際には口であーだこーだと文句を言うだけで、実際にまりさたちの群れへと報復行動へ移るようなことはしない。 というかできないのだ。 何故ならあれだけの数のまりさたちに対抗するには、こちらにもそれ相応の数のゆっくりがいる。 しかし肝心の群れにいる他のぱちゅりー、れいむ、ありすはたちは、自らまりさの群れに乗り込んで行いき、戦い、 そして、まりさをどうこうすることに積極的ではなかった。 いや、もちろんまりさたちに戻ってきてほしいと思っているのだ、そうでないと自分たちが困るのだから。 しかし、そのために労力を使うのゴメンだったのだ。 要するに彼女らがしたいのはケンカではなくイジメなのである。 殴りつけても文句を言わない生きたサンドバックが、おうちに食料をはこんでくるだけの機械が、 自らの手足となる奴隷が欲しいだけなのである。 それもなるべく自分たちの手は汚さないで。 そんな連中が、わざわざ苦しい思いをしてまでまりさの群れに赴くはずもなく、 ましてや、長たちの個人的復讐のために動くはずもない。 そもそもまりさたちを全員せいっさいしてしまったら、奴隷が手に入らないではないか。 ゆえに、群れのれいむ、ありす、ぱちゅりー全員でまりさの群れの攻め立てるという選択肢は使えないのだった。 「それで、どうするのぱちゅりー!まさかこのままじゃおわらないよねぇ!」 「そうよ!そうよ!このままでいいはずがないわ!というか、むしろありすたちのたちばがあやういわ!」 長ぱちゅりーに迫る幹部れいむと幹部ありす。 出て行ったまりさたちを連れ帰り、奴隷にするという計画は失敗に終わってしまった。 しかし今の長ぱちゅりーたちは、失敗しました残念でした、ではすまされない状態と立場にある。 何故ならばこの群れの運営は、まりさがいなくなってしまったことにより、想像以上の危機的状況に陥っていたからだ。 いままでまりさたちを劣っているとして、奴隷のように扱い、やりたい放題してきた群れのれいむ、ありす、ぱちゅりー。 しかしいざそのまりさたちがいなくなってしまうと、なにも出来ずに餓死や衰弱死してしまうゆっくりが続出しはじめたのだ。 寄生主のいなくなった寄生虫の末路など、所詮こんなものということだろう。 そんなわけで、長ぱちゅりーたちの所には日々、群れのれいむ、ありす、ぱちゅりーたちが、この事態を何とかしろと毎日のように苦情を言いにくるのであった。 その様子はかつて離婚禁止法を掟として決めたときに、群れのまりさがこぞってぱちゅりーの下を訪れた現象とそっくりである。 ただし、抗議にくるゆっくりがまりさではなく、れいむ、ありす、ぱちゅりーだという違いはあったが。 そもそも困ってるなら自分たちで何とかしろよ、と思わなくもないが、先ほども言ったように彼女らはなるべく自分たちの労力は使いたくないのだ。 一昔前なら、まりさとつがいになるだけで手頃に奴隷が手に入った。 しかし現在はどうだ、群れにまりさがほとんどいなくなってしまったではないか。 これはゆっくりできない、だからなんとかしろと皆長ぱちゅりーのところに次々と文句を言いにくるのだ。 長ぱちゅりーは、相手がまりさならば偉そうに突っぱねることが出来たが、しかしその対象が、れいむ、ありす、ぱちゅりー、 となるとそうもいかない。 自分ら長や幹部と同じ種族ならば、無下にすることはできないというわけだ。 今までは何とかする、大丈夫だから落ち着いて待っていろと、やってくるゆっくりをなだめてきたがそれもそろそろ限界だろう。 もしこのまま何の打開策もなしに、ズルズルとこの状況が続くようであれば、長ぱちゅりーたちは無能のレッテルを貼られ、 長や幹部を辞めさせられるばかりか、群れを衰退させた責任としてせいっさいの対象になる可能性すらある。 それは長ぱちゅりーたちが最も怖れることであった。 そうならないためには、なんとしてもあのクソまりさたちをこの群れに連れ戻す必要がある。 それも早急にだ。 「むきゅ!だいじょうぶよ!もうつぎのてはかんがえてあるわ!」 不安に駆られ迫ってくる幹部れいむと幹部ありすに、安心するように言う長ぱちゅりー。 「ゆゆ!ほんと!」 「さっすがぱちゅりーはとかいはね!」 「むっきょきょきょきょ!このけんっじゃのぱちぇに、まかせておけばいいのよ!むっきょきょきょきょ!」 不適に笑う長ぱちゅりー。 はたしてけんっじゃの次なる策とは!? 「と、いうわけで、あなたたちに、むらをでていったまりさたちを、どれいとしてつれもどすやくめをあたえるわ! これはほんらいならば、なまけもののあなたたちには、すぎたしごとよ!ありがたくおもいなさい!」 ニヤニヤと笑いを浮かべながら尊大な態度でそう言い放つ長ぱちゅりーの目の前には、二匹のゆっくりがいた。 ちぇんとみょんだ。 ここは群れ内のやや外れたところにに位置する巣穴。 主にちぇん種とみょん種が固まって生活しているテリトリーである。 今、長ぱちゅりーが話しているみょんとちぇんは、この辺り一体のリーダー格のゆっくりであった。 さて誤解しないように言っておくと、このちぇんとみょんはリーダー格と言ったが、別に群れの幹部とかそういうわけではない。 そもそもこの群れに所属しているみょんとちぇんたちはやや特殊で、群れに属していながらもあまり積極的に他のゆっくりとはかかわろうとはせず、 独自の領域に引きこもっており、群れの一部にあってなお独自の組織体質を持ってるゆっくりたちの集まりだった。 無論だからといって、別に群れの方針や掟に逆らったりしているわけではない。 あくまで群れ内に存在する一派閥のようなものであり、そこにはみょんやちぇんの他にもそのつがいとして、 まりさやれいむなどのゆっくりもきちんと生息している。 何を隠そう今この群れに僅かに残っているまりさ種は全てこのテリトリーにいるまりさたちであった。 そんな連中のまとめ役が、今長ぱちゅりーと話しているこのちぇんとみょんというわけだ。 「いっておくけど、これはじゅうようなやくめよ!しっぱいはゆるされないわ! もし、しくじるようなことがあれば、もちろんせいっさいよ! そこのところをよーく、きもにめいじておくことね!」 そして、そんな彼女らに長ぱちゅりーはまりさたちを連れ戻す役目を押し付けたのだ。 群れの、れいむ、ありす、ぱちゅりーが動かないというのならば、かわりにちぇんとみょんたちを動かせばいい。 自分らの手を一切汚すことなく、手に負えないことは他人に丸投げというわけである。 これで成功すればそれでよし、よしんばもし失敗したとしても、失敗の責任の制裁ということでみょんやちぇんたちを、 文句を言ってくる連中に対して奴隷として宛がえば不満が出ることはないだろう。要はまりさたちの身代わりである。 これでめでたく長ぱちゅりーたちの地位は安泰というわけだ。 「むきゅ!おさのめいれいはいじょうよ!もちろんこのやくめ、ひきうけるわよね!」 当然だろ?といった様子でリーダーちぇんとリーダーみょんに同意を求める長ぱちゅりー。 しかし二匹の答えは、 「おことわりだみょん!」 「そんなしごとは、ごめんなんだねー!」 「むぎゃ!なんですって!」 明確な拒否であった。 「どういうつもりなの!ふざけないで!あなたたち、むれのそういに、さからうきなの! そんなことが、ゆるされるとでもおもっているの!いいかげんにしなさい!」 怒りで顔を真っ赤にし、喰らいつくように二匹に詰め寄る長ぱちゅりー。 「べつにむれのそういにさからうなんて、そんなことだれもいってないみょん! ただ、むれのそういというのなら、きっちりてじゅんをふんで、きめてほしいってことだみょん!」 「わかるよー!むれのおきてにはしたがうけど、それはぱちゅりーのめいれいにしたがうってことじゃないんだねー!」 怒り心頭の長ぱちゅりーに対し、冷静に正論を返すリーダーちぇんとリーダーみょん。 そもそも長ぱちゅりーはことあるごとに命令だ命令だといっているが、 本来この群れの長には、他ゆんを勝手にどうこうできるような強力な権力など存在しない。 あくまで群れ全体を舵取りするための方針を決める際に、みなの中心となって行動する役割を持つというだけだ。 つまり群れの長のぱちゅりーの命令だからといって、群れのゆっくりは絶対服従しなければならないということではないのだ。 この群れでゆっくりに対して唯一無二の強制力を持つのは群れで定められた掟のみである。 この掟で決められたことだけは、いかなるゆっくりでも逆らうことはできず、逆らえば即制裁の対象となる。 そして、新しく掟を作るためには、群れの集会で賛成の数が反対の数を大きく上回らなければならないのだ。 例えば、以前掟で定められた離婚禁止法。 これは集会に参加していたれいむ、ぱちゅりー、ありすの全員が賛成し、直接当事者ではないみょんとちぇんは角が立つことを警戒して、 全員賛成でも反対でもない棄権をし、まりさたちはほとんどその場にいなかったため、賛成多数となり成立したという経緯があった。 「とにかくそのめいれいはおことわりだみょん! どうしてもやらせたいなら、きちんとしゅうかいをひらいて、そこできめてほしいみょん!」 「わかるよー!でもどうせしゅうかいをひらいても、ちぇんとみょんたちはみんなはんたいするからむだだけどねー!」 リーダーちぇんの言うように、この命令を実行させるための掟を作るために集会を開いたところで無駄に終わることだろう。 前回の離婚禁止法と違って、今回はちぇんとみょんたち全員が反対に回るであろうことは明らかだからだ。 また、流石に前使った手のように、全てのちぇんとみょんに悟られることなく極秘で集会を開くというのも不可能だろう。 つまりは、またもや長ぱちゅりーの策は失敗したということである。 「そもそもどうして、まりさたちをつれもどすひつようがあるみょん?」 「わかるよー!べつにでていきたいやつはかってにでていかせればいいんだねー!」 こんどは逆に長ぱちゅりーに質問するリーダーちぇんとリーダーみょん。 基本的にはゆっくりの群れのゆん口が増えて困ることがあっても、減って困ることはそうはない。 長ぱちゅりーはさも群れの一大事みたいに言っているが、普通の群れならこの程度のことで群れは崩壊のピンチになったりはしない。 まあ、この群れは普通じゃないので現に大ピンチなわけだが、 キチンと生活しているちぇんやみょんたちからすれば当然の疑問かもしれなかった。 「そ、それはその、ほら、のこされたつがいがかわいそうでしょ! そんなめちゃくちゃを、ゆるせるわけないじゃない!」 ややしどろもどろになりながら答える長ぱちゅりー。 まさかこのままじゃ自分の立場が危ういから、とは口が裂けても言えない。 みょんとちぇんなんかの前で本音を晒し、恥をかくなどそんなのは長ぱちゅりーのプライドが許さない。 「いちどでていったようなれんちゅうを、むりやりつれもどしたところで、どうせまたでていくだけだみょん! まりさのつがいたちも、そんなゆっくりとはわかれて、せいかいだったみょん!」 「わかるよー!またあたらしいつがいをみつければいいだけのはなしなんだねー!」 「むぎゅうううう!」 リーダーちぇんとリーダーみょんの正論の数々に唸る長ぱちゅりー。 くそっ!だめだ!だめだ! このバカどもはなにもわかっちゃいないんだ。 ああ言えばこう言う、ごちゃごちゃと屁理屈ばかりこねやがって。 まったくこの怠け者のちぇんとみょんは、無能のくせに昔っからこんなふうに仕事をサボる言い訳ばかり達者なのだ。 だいたいこいつらは根暗なんだ、こんな群れの端に引きこもっていつもこそこそしてやがる。 これならまだ黙って言う事をきいていたまりさたちのほうが、幾分かましだっていうものだ。 「さて、もうようはすんだみょんか?だったらおかえりねがうみょん!」 「わかるよー!ちぇんたちはこれからおしごとなんだねー!」 もう話しは済んだとばかりにひきあげはじめるリーダーちぇんとリーダーみょん。 すでに長ぱちゅりーのことなど眼中にないかのようだった。 「ぐぐぐぐ!むっきゅー!あなたたち!おぼえてなさい!こんなことして、きっとこうかいするわよ!」 そして長ぱちゅりーは小悪党が放つような最低レベルの捨て台詞を残し、すごすごとその場を退散したのであった。 「……みょん、ついにおそれていたときがきてしまったようだみょん」 長ぱちゅりーが去ったあと、リーダーみょんはやれやれといった様子で呟く。 「わかるよー!あのおさにもこまったものだねー!」 そしてそれに同意するように頷くリーダーちぇん。 「まったくだみょん!せんだいのおさは、たしょうしゅぞくひいきがあったくらいで、ほかはまともなのうりょくだとおもってたけど、 どうやらこそだてのじつりょくは、でいぶいかだったみたいだみょん! しょうじき、あそこまでこどもがむのうだとはおもわなかったみょん! こんなことなら、たしょうあれるのをかくごで、おさしゅうにんのしゅうかいのときにはんたいしておけばよかったみょん!」 フゥと溜息をつきながら昔を思い出すリーダーみょん。 かつてこの群れを治めていた長ぱちゅりーは、リーダーみょんの言うとおり長としては無難な実力を持っていた。 だがしかし、親バカだった。 一般に優れた人物が同時に優れた親であるとは限らないように、その先代長ぱちゅりーの子育てはでいぶ以下だったらしい。 その結果、実力はないのにプライドだけはやたら高い増長しきったバカが一匹生まれた。 その他の幹部にしても似たようなものだろう。 そんな長ぱちゅりーが長になれたのは、親である前長の強烈な後押の推薦があったからなのだが、リーダーみょんはその時の集会にて、 反対をしなかったことを今では酷く後悔していた。結局のところ今の問題はそれが全ての原因だからだ。 『むっきゅー!それじゃいまから、つぎのおさをきめるための、けつぎをするわよー! つぎのおさになるのは、このおさであるぱちぇの、かわいいかわいいおちびちゃんよー! このおちびちゃんにまかせておけば、むれはあんっしんだわ! みんな、さんせいよろしくねー!』 『むっきょきょきょ!このぱちぇがおさになったあかつきには、このむれをもっともっとゆっくりできるようにするとやくそくするわ! そう!えらばれたしんのゆっくりのみが、とってもゆっくりできるむれにね!むっきょきょきょ!』 あの当時、先代の長に紹介され、堂々とした態度で群れの皆の前に姿を現した長ぱちゅりーの自信に満ちた態度は、 群れの多くのゆっくりの目に、とってもゆっくりしていると映ったことだろう。 しかリーダーみょんは、そのときどうにもいやーな予感がしたのだ。 あの無駄に自信に満ちた態度は、今まで何不自由なく育ってきた、わがままゆっくり特有の笑みではないか? 自分以外は全て劣ったものとして認識し、周囲が自分のために働き、その命令を聞くのを当然のことだと思い込んでいる。 そんな典型的なダメゆの気配を、リーダーみょんはあの長ぱちゅりーから感じ取っていた。 そしてその予感は的中し、前長の死後、暴走した長ぱちゅりーは特定の種族だけが異常に優遇される政策を徐々にとっていくことになる。 その挙げ句が現在のようなまりさ種の大量離脱、そしてまりさに依存していたゆっくりの大量死だ。 いち早く危機を察したリーダーみょんは、自分たちとそれに比較的仲がよかったちぇん種と固まることにより、 被害を最小限に抑えたが、その分迫害の標的がまりさ種に集中してしまい現在の状態をはやめたとも言える。 そして、まりさたちが群れを出た影響で行き場をなくした醜い欲求が、ついに隠れていたみょん種とちぇん種に向かい始めることとなった。 このままじっとしていれば、まりさたちの二の舞になることは確実だろう。 さっき長ぱちゅりーが自分たちのところへやって来たのがそのいい証拠だ。 大方こんどは自分たちをまりさたちの変わりにこき使う算段なのだろう。 そうでもしないと、一度贅沢を覚えた今のれいむ、ありす、ぱちゅりーは満足に生きてはいけまい。 長ぱちゅりーはまりさを連れ戻す理由を、つがいが可哀相だからだとか、正義のためだとかゴチャゴチャ言っていたが、 結局のところさっさとこの事態を収めないと、自分の身が危ないから焦っているだけなのだろう。 今回は群れのルールを盾にとって無難にお帰り願ったが、そのうち首がまわらなくなってくれば、きっと無茶苦茶を言い出すに決まっている。 その前に何か対策を考えておかなければ……。 「それでどうするのー!いっそのことまりさたちのみかたをして、むれをのっとっちゃうー?」 考え込むリーダーみょんに、リーダーちぇんが過激な提案をしてくる。 それは、まりさたちと強力しての群れの乗っ取り計画……。 確かに今群れを牛耳ってる連中は弱い。 口だけはやかましいが、自分ひとりではなにも出来ないような連中ばかりだ。 自分たちと、それに群れを出て行ったまりさたちとが上手く連係することができれば、 力づくでこの群れを乗っ取ってしまうことも容易であろう。 しかし、 「いや、それはまだできないみょん!」 「ゆゆ?わからないよー!どうしてなのー! このままじっとしてたら、またぱちゅりーたちが、むちゃをいってくるかもよー! そうならないうちに、いっそのこと、こっちからしかけたほうがいいんじゃないかなー!」 「たしかにちぇんのいうとおり、あのぱちゅりーや、かんぶたちはどうってことないそんざいだみょん! でもそのこととはべつに、もっともっとおおきなちからがそんざいするみょん! そのちからがどちらにむかうのか、みきわめないうちは、うかつにこうどうをおこすのはきけんだみょん! いまはまだふほんいでも、まりさのがわと、ぱちゅりーのがわのどちらにでもつけるようにふるまっておくひつようがあるみょん!」 リーダーみょんは思う。 今はまだ行動を起こすべきときではない。 誤った選択肢を選べば、それが即自分たちの全滅に繋がる可能性がある。 今はまだ静観しておかなければ……。 「むっきゅ!むっきゃ!むっぎいいいいいいいい!」 その頃、長ぱちゅりーはおうちでギリギリと歯を食いしばりながら顔を真っ赤にして怒り心頭の様子だった。 度重なるゆっくりできないストレスにより、長ぱちゅりーの怒りは頂点へと達していたのである。 「むぎゃあああああああ!どいつもこいつも、このけんっじゃのめいれいにさからいやがってえええええええええ! なにさまのつもりだああああああああああ!だれのおかげで、このむれでいきていけるとおもってるんだあああああああ! ふざけるなああああああああああ!」 大声でのどがはち切れんばかりに絶叫する長ぱちゅりー。 彼女がこんなにゆっくりできないのは生まれてこのかた初めての経験だった。 「だいたいほかのれんちゅうだってそうだよおおおおおお! そもそも、じぶんたちがうっかりしてたから、まりさににげられたんでしょうがあああああああ! それをぱちぇたちにおしつけやがってええええええええ! しねええええ!むのうなゆっくりはみんなしねえええええええ!」 「ゆゆ…その、ぱちゅりー、すこしおちついたほうが…」 「そっ、そうよ!とかいはじゃないわよ……。それに、あんまりなかまをばかにするはつげんは、よしたほうが……」 長ぱちゅりーの尋常ではない様子に、恐る恐るといった感じでたしなめる幹部れいむと幹部ありす。 それは普段長ぱちゅりーと一緒にやりたい放題やっている二匹がフォローに回るという滅多に見れない光景。 つまりはそれ程までに彼女らは追い詰められているということだ。 今、長ぱちゅりーを取り巻くゆっくりたちの関係はかなり悪い。 明確に敵対行動をとっているまりさたちの勢力は言わずもがな、敵ではないものの、決して味方でもないみょんやちぇんたちの勢力。 そして唯一の味方であるはずの群れのぱちゅりー、れいむ、ありすたちの勢力もあまり協力的とは言えない状況だ。 間違ってうかつな発言をして、彼女らの心証を悪くするわけにはいかない。 「ぱちゅりー、ここはやっぱり、その、むれのみんなにおねがいして、 まりさをつれもどすのにきょうりょくしてもらったほうが……」 「そっ、そうよね!ほら、その、ここは、みょんたちにも、めいれいとかじゃなくて、ちゃんとあたまをさげて、 おねがいするべきよね……。うん、そう、これはしかかたないわ……」 興奮状態の長ぱちゅりーに変わり、わりかし現実的な案を提案する二匹。 確かに今ならまだ長ぱちゅりーが下手に出ることによって、この群れ内のゆっくり全てが団結することができれば、 挽回の機会は充分にある。 しかし、 「はあああああああああああああ!ふざけるなああああああああああああああああ このけんっじゃに、むれのゆっくりたちにあたまをさげろっていうのおおおおおおお! そんなことできるわけないでしょおおおおおおおおおおお! ばかなの!しぬのおおおおおおおおお!」 そんなみっともない提案(別に他人に頭を下げてお願いして回るのはみっともなくない)を長ぱちゅりーが受け入れるはずもなかった。 「だいたい、おまえらみたいな、むのうにごちゃごちゃいわれなくっても、ちゃんとつぎのてはかんがえてあるんだよおおおおおお! むっげっげっげ!ぱちぇにはきりふだがあるんだよおおおおおお! くそにんげんをりようするというきりふだがねえええええええ!」 「「!?」」 その言葉を聞いて、驚愕の表情をする幹部れいむと幹部ありす。 人間を利用するだって?そんなことできるはずが! いや、しかしまてよ、確かもう人間が群れにやってくる時期だったはず。 そこで、長ぱちゅりーが群れの長という地位を上手く利用すればあるいは……。 「むっきょきょきょ!このむれのばかどもに、くそにんげんをりようして、 おさにさからうとどうなるか、めにものみせてやるわあああああああああ! ゆぎゃっはっはっはっはっはっはっ!むぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょおおおお!」 長ぱちゅりーのおうち内にて、狂ったような笑い声がいつまでも響いていた。 つづく
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3542.html
『まりさの楽園 前編その1』 17KB いじめ 制裁 自業自得 引越し 群れ ゲス 希少種 自然界 独自設定 ナナシ作 *注意 ・過去作品の登場人物が出ますが読んでなくても問題ありません。 「ゆぴい!ゆぴい!ゆっくちできにゃいよぉ!おなかちゅいたよぉ!もういやだあああああ!」 「ゆゆ!おちびちゃんがんばってね!もうすこしだからね!しんぼうしてね!」 ここはどこにでもあるような森の中。 そんな何の変哲もない森の中を、必死な様子でずりずりと這いずりながら動いている二つの物体がある。 親まりさと子まりさの二匹のゆっくりだ。 さて、この二匹のゆっくりは何があったのか、二匹ともボロボロの様子である。 親まりさは全身汚れと擦り傷だらけで顔色も悪く、日々必要以上に過酷な労働をしていただろう後がうかがえるし、 子まりさの方はガリッガリに痩せて頬がこけている。明らかにろくに食料を補給してない栄養不足のそれである。 とはいえここは森の中。 特に何の変哲もない森とはいえ、生物として身体能力の低いゆっくりにとってそれは苛酷な環境であるといえる。 実力のないゆっくりが、野垂れ死ぬことなどそれこそ日常茶飯事の光景だろう。 つまり今のこの二匹の惨めな有様は、親まりさの生活能力が低く、ろくに狩りで食料が確保できていない結果ということだろうか。 いいや、実は違う。 この親まりさはゆっくりの中にしてはそこそこ高い能力を持っており、自分はおろか、つがいや数匹の子ゆっくりを養うだけの 狩りの腕を有していたし、実際に毎日それだけの食料を確保していた。 では何故このまりさ親子はこんなにもボロボロで飢えた様子で森を這いずっているのか? 「おとうしゃん、もうまりちゃあるけにゃいよおおお!」 いい加減歩き疲れ、疲労が限界にきたのか子まりさがぐずり出す。 無理もない、ただでさえ栄養不足の気があるのに、もうさっきから動き通しなのだ。 むしろゆっくりにしてはここまでよく持ったと賞賛すべきか。 「がんばってねおちびちゃん!もうすこし!もうすこしのはずなんだよ! たしかにこっちのほうがくにあるって、むかしともだちのまりさがいってたんだよ!だからがんばってね! それとも、あのむれにもどったほうがいの?」 そんな子まりさに対して親まりさは、励ますように訴える。 親まりさとて、辛いのはわかっている。 しかしここで引き返すわけにはいかない。 もう自分たちはあの群れには絶対に戻らない、戻りたくない。 そのためには進むしかないのだ。 「ゆぴいいいいいい!いやだあああああああ! もうぜったいにもどりたくないいいいい! あのおうちは、ゆっくちできないよおおおおおお!」 親まりさの言葉を聞いて、今までいた群れでの仕打ちを思い出したのか、 疲れた自分の体にムチ打って、必死に這いずりはじめる子まりさ。 とにかくあの群れから離れたい一心での必死の行動だった。 先へ先へ、本当にあるかどうかもわからないゆっくりプレイスを目指しただただ前へ突き進む二匹。 そんなそんな決死の覚悟の親子を天は見放さなかったのか、やがて二匹は森のやや奥まった場所で他のまりさと遭遇する。 「ゆゆ!どうしたのまりさ!そんなぼろぼろのようすで! まさか、まりさたちもあのむれから……」 二匹と遭遇したまりさが、親まりさに話しかけてくる。 「ゆゆーん!そうなんだよおおおお!まりさたちもあのむれをぬけだして、なんとかここまでやってきたんだよおおおお! ここにゆっくりぷれいすがあるってはなしをしんじて、ひっしですすんできたんだよおおおお!」 同族と会った事で気がゆるんだのか、感極まったようすで訴える親まりさ。 実際もう限界だった。 「そうだったの!あんしんしてね!ゆっくりぷれいすはすぐそこだよ! そこまでいけば、もうだいじょうぶだよ!ついてきてね!」 言うが速いが移動をはじめるまりさ。 「ああっ!まってね!」 「まっちぇね!」 慌てて追いかける親まりさと子まりさ。 しばらく跳ねていくと、やがて開けた場所へと出る。 目的の場所へとついたのだ。 そこはプレイスの居住区だろうか、その場所のいたる所におうちとおぼしき穴が開いており、 広場には沢山のゆっくりたちが徘徊している。 何より目を引くのは、そこにいるゆっくりたちの種類がまりさ、まりさ、まりさ! どこを見渡してもまりさ種しかいないことだ。 「「ゆわぁああ!!」」 思わず感嘆の声を上げるまりさ親子。 それも当然だ、ここでは前の群れでの悪夢なような出来事は起こりえないのだから。 何故ならこの場には、もりけんも、れいぱーも、そしてでいぶも存在しない。 決してまりさが虐げられることがない天国。 そう!ここはまりさ種だけのゆっくりプレイス。 さてここで時間を遡る。 それは親まりさが生まれたばかりのころの話。 親まりさの両親は、とある群れのちぇんとまりさのつがいだった。 出産の方法は胎生出産で、多産が基本であるゆっくりとしては珍しい事に一匹だけの誕生であった。 ゆえに親まりさに姉妹はいない。 知っての通り、生物は基本的に弱く知能が低いものほど大量に子孫を生み、強く賢いものほど一度に生む子孫の数は少ない傾向がある。 この原則に従えば、親まりさの両親であったちぇんとまりさの番はそこそこに優秀なゆっくりだったのかもしれない。 まあ、それはさておき幼い親まりさは日々その両親から生きるための豊富な知識と、実戦的な狩りの仕方などを教わり続け、 そこそこ優秀なゆっくりへと成長していくこととなる。 そして月日は流れ、やってくる親まりさの独り立ちの日。 親まりさは見送る両親たちの声援を背にして、自身満々で森へと飛び出していくのであった。 初めての独り立ちに対しても、親まりさの不安は皆無であった。 親まりさは思う。 自分は狩りも、おうち作りも、越冬の仕方だって完璧に両親から教わっているのだ。 よって生きる事に何も不安材料はない! 自分に今最も必要なもの、それはとってもゆっくりできるつがいなのだ。 まりさには夢があった。 それはたっくさんのおとびちゃんに囲まれながら、ずっとゆっくと暮らしていくことだ。 そのためにはまずつがいを見つけないことには話しにならない。 そういえば両親はつがいにするならちぇんかみょんにして、なるべくおちびちゃんは少ない方がいいって言っていた気がする。 しかし、は親まりさはいかに尊敬する両親の言葉とは言え、この意見には異を唱えざるを得なかった。 (おちびちゃんは絶対たっくさんいたほうがゆっくりできるよ! まりさはいつも一匹だけですごく寂しかったよ! まりさが親になったらおちびちゃんに寂しい思いをさせないためにも、おちびちゃんはたっくさんつくるよ!) 子供時代にゆっくりとしては珍しく姉妹がいない生活を送っていた親まりさは、 自分がおちびちゃんを作るときは、一度に沢山育てると心に決めていたのだ。 親まりさにはそれができる絶対の自信があった。 そしてさらに親まりさは思う。 (つがいも、みょん、ちぇんなんかよりも、れいむ、ありす、ぱちゅりーの中から選びたいね。 そりゃ、ちぇんもみょんも、群れの立派な仲間だよ。でもなんだかまりさとは、繋がりが薄い気がするよ。 両親の仲は凄くよかったけど、まりさはれいむやありす、ぱちゅりーたちとならもっと仲良くなれそうな気がするよ!) ゆっくりまりさとしての本能か、それともあまり付き合いがなかったゆっくりに対しての美化にも似た憧れか、 両親の忠告を無視し、親まりさはつがいにするなられいむ、ありす、ぱちゅりーのどれかから選ぶと決めていた。 親まりさとしてはやはりつがいの第一候補は『ぼせい』が強く、多産に適すといといわれるれいむかだろうか。 たっくさんのおちびちゃんたちとの、ゆっくりとしたゆん生を送るという構想はまりさの要望とピッタリとマッチしている。 一番無難な選択であると言える。 いやしかし、『とかいは』だというありすも捨てがたい。 自分にはない洗練された気品をもつゆっくりとのゆん生も、以外とオツなものだろう。 きっとおちびちゃんたちも、さぞかし立派に育つに違いない。 あるいは『けんじゃ』のぱちゅりーというのも意外にアリかもしれない。 体が弱いらしいから流石に多産は無理だろうが、いくらなんでも一匹だけしか産めないってことはないだろう。 賢く優しいが病弱なつがいを、強く勇敢な自分が一家の大黒柱として守っていく生活。 つがいのぱちゅりーやそのおちびちゃんたちは、そんな自分を尊敬して止まない。 うん、そいういうのも悪くないじゃないか。 (ゆふふふふ!どのゆっくりをつがいにするか、まよっちゃうね!) そんなゆっくりとした未来を想像しながらニヤニヤ顔で森をはねていく親まりさ。 しかし次の瞬間。 ドン! 「ゆぎゃ!」 「ゆべえぇ!」 妄想に夢中になって前方不注意だった親まりさは、前にいたゆっくりと激突してしまった。 「ゆうううん、いだいよおおお!いったいなにするのおおおお!あやばっでねええええ!」 「ご、ごめん!ちょっとかんがえごとしてたんだよ!あやまるからゆるしてね!」 「まったくきをつけてね!とってもかわいいかわいいれいむに、こんなことしていいとおもってるの!」 「……………」 「ゆっ?なにだまってるの!れいむがはなしかけてるんだよ!ちゃんとへんじしてね!」 不注意からぶつかってしまったゆっくりれいむを前に、突然黙り込む親まりさ。 それを訝しがるれいむ。 親まりさは、まじまじとぶつかったれいむを見つめたかと思うと、突然赤くなってプルプルと震えだした。 「ゆっ!ゆゆゆゆゆううううううう!!!」 (すごい!あのれいむ、とんでもなくゆっくりしてるよおおおおお! あんなゆっくりしているゆっくりは、みたことがないよおおおおお!) たまたま偶然から激突してしまったゆっくりれいむ。 しかしそのれいむは、今まで親まりさが見たどのゆっくりよりもゆっくりしていた。 れいむの身体にはほとんど汚れがなく、体型も栄養状態が良いことを示す適度な楕円形で申し分ない。 ゆっくり規準で美ゆっくりであったことはもちろん、極めつけはその全身からほとばしる自分はゆっくりしてますオーラだ。 ゆっくりにとって、ゆっくりしているということは全てにおいて規準の上位に位置する。 そしてこのれいむは傍目から見ても明らかにゆっくりしていた。 それはもう、きちんと野生で生活していれば不自然なほどにだ。 そんなわけで何も知らない親まりさが、一目で心奪われるのも無理はなかった。 親まりさは確信した。 これだけゆっくりしているこのれいむは、さぞかし優秀なことだろう。 そしてきっとこの出会いは運命に違いない。 二匹は結ばれ末永くゆっくりしていくに違いないんだ。 「ゆっ、あの、れいむ!とつぜんだけど、まりさをれいむのつがいにしてほしいよ! ふたりで、いっしょにおちびちゃんをつくってずっといっしょにゆっくりしようよ!」 ややどもりながられいむに告白する親まりさ。 「ゆーーーん?まりさがれいむのつがいにぃ? れいむはね、とおーーーーってもゆっくりしてるゆっくりなんだよおおおおお! まりさなんかででつりあうのぉ?」 そんなまりさに対して、眉を潜めながら値踏みをするようにまりさを見るれいむ。 「まっ、まりさはじしんがあるよ! まりさはかりだってじょうずだし、れいむとおちびちゃんたちをやしなっていくくらい、わけないよ!」 「ふーーーーん! まあ、せかいいちのびゆっくりであるれいむのつがいになりるんだから、それくらいはとうぜんだけどね! ゆふん!まあいいよ、つがいになってあげてもね!れいむはかんだいでけんきょだからね!」 「ほ、ほんと!ゆわああああああああ!うれしいよおおおおおおおおお!」 れいむから一応のOKをもらい、興奮した様子の親まりさ。 出会った瞬間に即告白、結婚というスピード展開だが別これはゆっくりの世界ではよくあることだ。 野生のゆっくりはそもそも生きるスパンが人間や飼いゆっくりとは違う。 死にやすいゆっくりが、はやめに子孫を残すためにさっさとつがいをつくるのは生存戦略上理にかなった行為でもある。 そんなわけで何も知らない親まりさは、愚かにも一目ぼれしたれいむとさっさとつがいになってしまった。 この浅はかな決断が地獄のはじまりになるとも知らずに……。 そして月日は流れ。 「ゆびい!ゆびい!」 森の中をボロボロになりながら、必死に帽子に詰め込んだ食料を運んでいるゆっくりがいる。 それは、あの親まりさだった。 親まりさは疲れ切った表情で、しかしそれでもフラフラと前へ進んでいく。 「ゆはぁ!ついたよぉ!」 そしてヘトヘトになりながらも、何とか無事狩りを終えておうちに到着する親まりさ。 しかしそんな様子の親まりさを待っていたのは、家族のねぎらいの言葉ではなく罵声の嵐だった。 「おそいよ!いったいなにしてたの!でいぶとおちびちゃんたちはおなかぺっこぺこだったんだよ! それだっていうのに、まったくつかねないくずまりさだねぇ!」 「「「くじゅ!く~じゅ!まさはくじゅううう!」」」 「ゆゆ!おとうしゃん……」 おうちの中に居たゆっくりはでいぶ、そしてその子どもと思われる子れいむと子まりさたちがそれぞれ三匹づつであった。 でいぶの姿はでっぷりと太り、見るも醜い姿である。また、子れいむも同様に歪に肥えた体型であるナスビ型をしており非常に見苦しい。 しかしそれとは対称的に、何故か子まりちゃはガリガリ痩せて頬がこけた状態である。 とは言えそうなった理由はいちいち語るまでもない、親れいむが子れいむと子まりちゃを明確に差別して育てているのが原因だ。 「ゆゆ、れいむ………」 いつものこととはいえ、必死に狩りをして帰ってきたところに暴言を吐かれるというのは精神的にキツイものがある。 必死で頑張っているにも関わらず自己を否定され続けると、いったい自分はなんだってこんなことをしているのか、 なんのために頑張っているのかわからなくなり、とんでなくゆっくりできない気分になってくる。 「ゆあああああん!なにぼっとしてるのおおおおお! ぐずぐずしてないで、さっさとしょくりょをだしてね! れいむとおちびちゃんが、おなかをすかしてるんだよ!それがわかってるのこのぐず!」 「……ゆう、わかったよれいむ」 ボーとしてる親まりさを見てヒステリックに叫ぶでいぶ。 それに対して諦めにも近い口調で返事をし、帽子を引っくり返して今日の収穫を広げる親まりさ。 「ゆふふふふ!これ、これぇ! さっ、おちびちゃんたち!ごはんのじかんだよ! れいむがたべさせてあげるからね!こっちにきてね!」 「「「ゆわぁああい!」」」 「「「ゆっ、ゆう」」」 目の前に広がった食料を前に、満足気に子ゆっくりたちを呼ぶでいぶ。 これまたいつものことだが、苦労してまりさが取ってきた食料をまるで自分の手柄のように振舞っている。 「ごはん!こはん~!」 「ゆっくりたべるよおおおおお!」 ナスビ型の身体をブルンブルンと気持ち悪く揺さぶりながら、でいぶに近寄っていく子れいむたち。 「ゆふふふ!あわてないでねおちびちゃんたち、まだまだ、たっくさんあるからね!」 上機嫌に食料を配るでいぶ。 と、そこへ。 「ゆゆ、おかあしゃん………」 子まりさたちが、おずおずといった様子ででいぶに近づいていく。 でいぶは子ゆっくりたちにごはんの時間だからこっちに来いと言った。 だから子まりさたちが食料を受け取るためにでいぶに近づくのは、何も間違ったことではない。 が、しかし 「はああああああああん!なにこっちにきてるのおおおおおお! まさか!まさか!おまえら、ごはんをたべたいわけえええええええ! まだれいむににたおちびちゃんが、ごはんをたべてるとちゅうなのにいいいいい! このげすがあああああああ!じゅんばんも、まもれないのおおおおお!」 「ゆひぃ!」 ちょっと近寄っただけにも関わらず、凄まじい剣幕で子まりさたちを怒鳴りつけるでいぶ。 まるで、汚物が自分たちに寄って来たと言わんばかりだ。 「いつもいってるでしょおおおおおお! ごはんさんをたべるじゅんばんは、まずはじめにおうちをまもるという、 じゅうだいなしごとをしている、れいむたちがはじめでしょおおおおお! ごはんをとってくるっていう、かんたんなしごとしかできないまりさは、れいむたちがたべおわるまで、 しょくりょうにてをつけちゃだめなんだよ!これがじょうっしきってものだよ! そんなさいていげんどの、るーるすらまもれないの!まったくれいむははずかしいよ! このくずゆどもがああああ!」 おびえる子まりさたちに、声を荒げながらまくし立てるでいぶ。 でいぶの理屈では、おうちに持ち帰られた食料は、最も重大かつ苛酷な仕事をしたゆっくりから食すべきであるというのだ。 つまりはおうちを守り、かつ子育てまで兼任している自分がまずはじめに食事をし、 次に自分と同じれいむ種であるおちびちゃんが食事をしたところで、狩りという誰にでもできる簡単な仕事をしている親まりさの番がきて、 最後にようやく子まりさたちの順番がやってくるというわけだ。 だというのに、この子まりさたちは、まだ子れいむたちが食事の途中に寄ってきたのだ。 「ゆう、れいむ、おちびちゃんだっておなかすいてるんだよ、 そんなこといっちゃかわいそうだよ!」 無駄としりつつも、いつものようにでいぶを注意する親まりさ。 「はあああああん!なに!くずのぶんざいで、でいぶにくちごたえするきなのおおおおおお! でいぶのきょうっいくほうしんに、むのうのまりさごときがくちをださないでねええええ! ごちゃごちゃいってないで、さっさともういちどかりにいってくるんだよ! でいぶもおちびちゃんも、こんなしょくりょうのりょうじゃぜんぜんたりないんだよ!」 「ゆう、でもまりさはいまかえってきたばっかりで……」 「ゆああああああん!いいかげんにしてね! こんなちょっとのりょうをとってきたぐらいで、もうやすむきなのおおおおお! いっぱしのくちをききたいなら、じぶんのしごとくらい、ちゃんとこなしてよねえええええ!」 「……わかったよ」 全てをあきらめきった親まりさはしぶしぶと頷き、おうちの外と出て行く。 だがしかし、いかにも消極的で仕方なくといった態度を取りつつも、 親まりさ自身この空間に居たくないという気持ちが少なからずあったことは否定できないだろう。 親まりさにとって、この場所は余りにもゆっくりできなさすぎる。 だったら外で一匹狩りでもしてたほうが、まだ気がまぎれるというものだ。 それはまるで家に自分の居場所がなく、ひたすら遅くまで会社に残り続ける中年サラリーマンの様ですらあった。 「ゆゆ!おとうしゃん!」 唯一自分たちを守護してくれる可能性のある親まりさが再び出て行ったことにより、子まりさたちの顔が暗く曇る。 そんな子まりさたちの声を聞き、親まりさの心がチクリと痛んだが、しかし親まりさは振り返ることなく、 おうちから遠ざかっていく。 後に残ったのは、でいぶと子れいむと子まりさだけ。 「さーて、くちだけのうるさいくずが、かりにいったよ! それじゃあきょうも、おうたのれんしゅうをしようね! おっと!でもそのまえに、るーるをまもれなかったげすどもに、きょうっいくをほどこさないとねぇ!」 「きょうっいく!きょうっいく!」 ニヤリとでいぶがサディスティックに顔を歪め、それに便乗してか子れいむたちが嬉しそうに騒ぎ出す。 「ゆぴぃ!やめてえええええええ!いたいことしないでええええええ!」 子まりさたちは、日常的に行われているでいぶからの虐待の気配を感じて震えだす。 「ゆーん!このげすちびたちは、なんにもわかってないねぇ! これは、でいぶのあいのむちなんだよおおおおおおお! それもこれも、おまえらが、いいこにしないのがわるいんだよ! まだそれがりかいできないみたいだから、きょうのせいっさいはねんいりにいくよ~!」 「ちぇいっさい!ちぇいっさい!はやくはやく~!」 ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながらゆっくりと子まりさたちに近づいていくでいぶ。 なんだかんだと制裁の理由にもならない理由をつけているが、結局のところ絶対的な弱者を自分が思うままに いたぶって優越を得ることにより、自分がゆっくりしたい。ただそれだけのことだ。 そして子れいむたちもそんな惨めに扱われる子まりさたちを見下すことで、思う存分ゆっくりできるというわけだ。 「ゆふふふふ!それじゃいっくよ~!れいむのすーぱーこそだてたいむだよおおおおおお!」 「ゆぎゃぴいいいいいいいいいいいい!!!やめちぇえええええええええええ!」 今日もでいぶのきょうっいくという名のせいっさいにより、おうち内に子まりさたちの悲鳴がこだました。 つづく
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3623.html
『まりさの楽園 中編 その3』 20KB いじめ 制裁 自業自得 引越し 群れ ゲス 希少種 自然界 独自設定 ナナシ作 「むっきゅっきゅーん♪」 「随分と上機嫌みたいだな」 話しが済み、愉快そうな様子で鼻歌まじりにまりさの群れから帰ってきた長ぱちゅりーに男が話しかける。 「む、むきゅ!そうかしら?」 「ああ、そう見えるね。 どうやらその分だと話し合いは上手くいったみたいだな」 「そうね!とりあえず、まりさたちがもどってくるまでいちにちゆうよをあげたわ! だからにんげんさんには、あしたもむれにきてほしいのだけれど!」 「ああ、まあそのくらいなら構わんよ」 男は頷く。 「むっきょっきょきょ!とうぜんよね! それじゃ、もうようはないから、きょうのところはかえっていいわよ! ああ、それといま、まりさたちは、いろいろとふあんていなじょうたいだから、くれぐれもぱちぇにむだんで、 にんげんさんだけでまりさのむれのにいくことのないようにね! にんげんさんも、これからまっすぐやまをおりるのよ、いいわね!」 「へいへい、わかったよ。今日これから『オレ』はまりさの群れにいかないよ」 「むきゅ!わかればいいのよ!それじゃぱちぇはもういくわ!」 それだけ言うと、もう人間は用済みだ言わんばかりに目もくれずに踵を返し、すごすごと群れへと帰っていく長ぱちゅりー。 「なんとうか、あの長ぱちゅりーどんどん態度があからさまになってないかしら。 ゲスっぽさが透けて見える感じよ」 去っていく長ぱちゅりーを見ながら、呆れたよな口調のちゅりー。 「大方自分の目論見どおりに事が進んで気が緩んだんだろうな。 何を企んでるか知らんが、そのほうがこっちにしてもやりやすいってものさ」 特に気にした風もなく男が言う。 この程度のことでいちいちキレてたらこの仕事はやってられないのだ。 「まあいつまでもここに突っ立てても仕方ない。 とりあえずオレたちも一旦引き上げようぜ」 それだけ言うと、チラリとまりさの群れの方を見やってから、男とぱちゅりーは山を後にした。 「ゆがあああああ!りーだーああぁあぁ!どうすのおおおおおぉぉぉ!」 「もうだめだー!おしまいだああああ!」 「ゆっぐちー!ゆっぐちできないいいいいいい!」 長ぱちゅりーが帰った後、まりさの群れは大混乱の極みにあった。 ゆっくりではなく、人間が事態に介入してくるという予想外の事態。 まさかあの長ぱちゅりーが人間を率いてくるなんて! どうしよう!どうすればいいんだ!ゆっくりできない! 「あのさあ!」 そんな最中、一匹のまりさが声を上げる。 「どうしてそんなに悩んでるわけ? 人間さんに勝てないのはわかってるんだよね? だったらもう要求に従って群れに戻るしか選択肢がないじゃん!」 何てこと無いように言い放つ一匹のまりさ。 そう、理屈の上では至極当然の話しだった。 戦って勝ち目が無い以上、生き残るためには長ぱちゅりーの要求を飲むほかない。 しかし、 「はあああああああん!なにいってるのおおおおおお!」 「また、あんなじごくのせいかつにもどりたいの!ばかなの!しぬの! 「ゆわあああああん!またおかあしゃんにいじめられるよおおおおお!」 「もう、ぱちゅりーたちのどれいはごめんだよおおおおお!うわああああああああ!」 過去の群れでの生活を思い出したのか、次々に悲鳴を上げるまりさたち。 理屈と感情の問題はまた別々の話しなのだ。 例えそれしか正解の道がないとわかっていても、未来に予想されるであろう圧倒的拒否感がその選択を選ばせない。 それだけは絶対に嫌だという感情が正常な判断を不可能にする。 となれば残った選択肢として死を覚悟で人間と戦うか? しかし、それも今のまりさたちにはできない相談だった。 たしかにまりさたちは一度は死すら覚悟して、群れを出てこの場所を見つけた。 群れを出た時点ではその覚悟は確かに本物であったし、事実この場所にたどり着けず死んでいった仲間達もいる。 過去にはそれだけの強い意志と気概がまりさたちにはあったのだ。 しかし今ではどうだ。 この群れに移住してからずっとゆっくりとした生活を送ってきたまりさたちは、すっかり腑抜け状態になってしまっていた。 なまじゆっくりを取り戻したことにより、死の覚悟が薄れてしまったのだ。 今まりさたちが考えられるのは、一度得たこのゆっくりを失ってしまわないかということばかりである。 要するに守りに入ってしまっているのだ。そこにかつて群れを出たときのようなハングリー精神はない。 少なくとも以前のまりさたちなら、迷うことなく長ぱちゅりーに歯向かっていただろう、その結果人間に逆うことになったとしてもだ。 あるいはそこから死を覚悟で人間と直接交渉を行い、長ぱちゅりーの不正を訴えることまで頭が働いたかもしれない。 しかし、今ではまるでダメだ。 今のまりさたちは、長ぱちゅりーの後ろにチラつく人間の影に怯え、何ら行動を起こすことができない。 とにかく制裁は嫌だ、死にたくない。かといって群れに戻るのも絶対にごめんだ、ゆっくりできない。 服従か死か。 群れのまりさたちは落ち着きなく動き回りばかりで、いつまでも答えを出せずにいた。 しかしそんな混乱の中、まったく慌てず冷静なままの一匹のまりさがいた。 「奴隷?フーン。 随分とあの長ぱちゅりーが言ってたのと、話しが違うみたいだねぇ。 まっ、どっちにしても、お兄さんのことをクソ人間と言ったり、利用していたりしてる時点であのゲロ袋はギルティ確定だけどね! お兄さんは何だか今回あんまり乗り気じゃないようだったし、いっそのこと私が直々に引導を渡してやるのも面白いかも。 ふふっ、そうと決まればもう少しこの場所に止まって情報を集めるとしようかね」 そのまりさはそんなことを呟くとニヤリと笑い、広場にて右往左往するまりさたちのなかに紛れていった。 そのころ別の場所では……。 「むっきゃきゃきゃきゃ!けんっじゃのぱちぇにかかれば、くそにんげんなんてざっとこんなもんよおおおおおおおお!どやあああぁぁぁ!」 ここは長ぱちゅりーの群れ内にある、いつも幹部会議をしているおうちの中。 そこで幹部れいむと幹部ありすにさっきのまりさの群れでの出来事を報告、もとい自慢している長ぱちゅりーの機嫌はまさに有頂天であった。 「くそにんげんが、みかたにいるといったときの、あのくずまりさのくやしそうなかおったらなかったわああああああ!むっひゃひゃひゃひゃ! ああ、ゆかいゆかい! ぱちぇがちょっと、ちびどもをころしてやろうかとおどしたら、あのまりさ、まぬけずらで、やめろおおおおおだなってどなっちゃって、 むっきゃきゃきゃきゃ!ばかみたい!くずゆなんかのいのちに、なにひっしになっちゃってるんだか!むっひょひょ!」 楽しくて仕方が無いといった様子でひたすらに喋り続ける長ぱちゅりー。 それはさながら団塊世代のおっさんが、居酒屋で己の過去の武勇伝を何回も若い社員に聞かせるがごとくの様子である。 つまり、要するに、物凄くうざかった。 「そうね、それはとってもとかいはね!」 そして、そんな長ぱちゅりーの話しに適当に相づちを打ちながら、幹部ありすはとある考えをめぐらしていた。 それは、 (ほんとうにこのままでいいのかしら?) ということであった。 幹部ありすはこの現状に疑問を抱いていたのだ。 とは言っても、別にこれはまりさたちに同情しているとか、急に正義の心に目覚めたとかそんなことではない。 幹部ありすが心配しているのは純粋に自分の身の振り方のことであった。 さっきから長ぱちゅりーは自慢気に自分の作戦が上手く行った主張しているが、はたして本当にそうだろうか? 確かに表面上、ことは上手く運んでいるように見える。 長ぱちゅりーは歪んだ情報で人間を巧みに誘導し、まりさのたちに対して、逆らえば人間が直接制裁を行うかのような印象を植え付けることに成功した。 バックに人間がいるとなれば、流石のまりさたちも屈服せざるを得ないだろう。 また群れの他のゆっくりたちも同様に、今回の一件で長ぱちゅりーは人間と個人的に強い繋がりがあると認識したようだ。 これにより長ぱちゅりーはますますこの群れでの権力を磐石なものにしたと言える。 まあ、それはいい。 だがしかしその代償として、長ぱちゅりーは人間に対して嘘をつくという莫大なリスクを犯しているのだ。 正直この事の危険性は、今回長ぱちゅりーが得た長の地位や権力の増強などということの比ではないように思える。 要するにリスクとリターンが釣り合ってないのだ。 長ぱちゅりーは自分の演技に絶対の自信があるようだが、しかしそんなものは人間が確認のためにまりさたちに対して話しでも聞けば一発でばれることでなかろうか。 そしてもし、長ぱちゅりーの嘘が人間に露顕しまった場合、長ぱちゅりーはもちろんのこと幹部である自分もただでは済むまい。 良くて追放制裁、悪ければ当然死が待っている。 つまり今の状態は何ら楽観視できるものではない、それこそ逆に巨大で危険な爆弾を抱えているのと同じようなものなのだ。 しかもその爆弾の導火線は極端に短いときている。一度疑いという名の火がつけば、あっという間に爆発してしまうことだろう。 それだけは絶対にゴメンだ。 そもそも今思えば、この長ぱちゅりーは群れの統治の仕方を過ったのではないだろうか? 自分たちと同じ種族を優遇するのはいいが、あまりにやり方が露骨すぎた。 その結果がこの有様である。 幹部ありすは、今なら何故まりさたちが群れを出て行ったのかわかる気がした。 要するに長ぱちゅりーはやりすぎたのだ。 だいたいあんなぼんくらが長になれたのは、親である前長の強烈なプッシュがあったからだ。 つまりは所詮あの長ぱちゅりーは親の七光、長の器ではない。 事実、群れは今だかつて無い危機に瀕しているではないか! もし仮に自分だったら……自分が長だったらどうだろうか? きっともっと上手くやれたはずだ。 うまい具合に他の種のゆっくりをこき使いながら、決定的な一線は決して越えさせない。 そんな統治をやってのけたはずだ。 まあ、とにかくだ! もうこの長ぱちゅりーは、人間に嘘をつくという取り返しのつかない領域に踏み込んでしまっている。 どう転んだところで、破滅は確定しているようなものだ。 なればこそ、その時に巻き添えをくわないように自身の安全を確保しておかなければならない。 となればどうするか? こんなもりけんはさっさと見捨てて、もっと他の勢力につくこと考えるべきだろう。 つまりはぱちぇりーが破滅したときに困らない様に、今の内に他の勢力に取り入っておくのだ。 そうなるとやはり第一候補はみょんたちの勢力であろうか。 彼女らは決して味方ではないものの、同時に敵というわけでもない。 群れを出て行ったまりさたちと違って、自分は別段大した恨みも買ってないはずだ。 今の内に、長ぱちゅりーが実は人間に嘘をついているという情報をリークしておき、 長ぱちゅりー破滅後に同じ幹部として群れの共同統治を持ちかければ、いい返事が期待できることだろう。 そして人間に対しては、長ぱちゅりーに強制されて無理やり嘘をつかされていたと主張すればいい。 これは半ば本当のことだし問題はないだろう。人間の怒りを買うのはもりけん一匹だけで十分なはずだ。 いや、それともいっそのこと自分が直接、人間に長ぱちゅりーが嘘をついていると告げ口するか? そうすればその功績を人間に認められ、かなり高い確率で自分が制裁されることはなくなるはずだ。 それどころか、逆に感謝され次の長に任命されることすらあり得る。 よしんばそうならなくとも、人間と個人的に強い繋がりが持てれば、これから同盟を組むつもりであるちぇんみょんたちへの発言力が増すことになる。 自分は身一つで彼女らの所へ行かなければならないのだ、対等な関係を築くためにはできるだけ強力な後ろ盾があったほうがいい。 うんそうだ!そうしよう!それがいい! 後は…そうだ。 事を起こす際に長ぱちゅりーの戦力をなるべく削いでおかなければ、そのためにはれいむを……。 「ゆふぅ!すっかりはなしこんじゃったわね!ぱちぇはつかれたわ! それじゃあ、きょうのかいぎはこれくらいにして、あすにそなえるとしましょうか! あすはきっといそがしくなるだろうからね!むっきょきょきょきょ! さあほら、いった!いった!ぱちぇはこれから、けんっじゃのすーぱーおひるねたいむなのよ!」 幹部ありすが思案をめぐらしていると、ひとしきり喋って満足したのか、 一方的に解散を宣言し、幹部れいむと幹部ありすにおうちを出るように促す長ぱちゅりー。 「そうね!それじゃあきょうのところは、これでしつれいするわ!」 「ゆう、わかったよ!」 好都合とばかりにそそくさとおうちを出て行く幹部ありすと、その後に続く幹部れいむ。 そして外に出た幹部ありすは、秘かに幹部れいむへと耳打ちする。 「ねえれいむ、ちょっとじゅうようなはなしがあるんだけど……」 「ゆ?」 「ここじゃまずいわね!どこかほかのゆっくりのいないところではなしましょ!」 幹部ありすは今、一世一代の大博打を打とうとしていた。 一方その頃、群れの外れにあるちぇんみょんのテリトリー内では、リーダーみょんとリーダーちぇんが深刻な様子で話し合っていた。 「たいへんだよー!どうやらおさぱちゅりーが、にんげんをつれて、まりさのむれにいってきたみたいだねー! なんでも、あすまでに、まりさたちに、むれにもどってくるよう、ようきゅうしたらしんだねー!」 「みょん!やはりにんげんさんは、おさぱちゅりーにみかたするきのようだみょん!」 残念そうな様子のリーダーみょん。 部下からの報告によると、長ぱちゅりーは人間と共にまりさたちの群れへ向かったのち、 上機嫌で帰還し、群れのれいむ、ありす、ぱちゅりーたちに明日までにまりさたちが戻ってくると高らかに宣言したらしい。 その様子からまりさたちの群れでの交渉は大成功だったようだ。 これらの一連の行動から鑑みて、どうやら人間は長ぱちゅりーを全面的に支援する裁定を下したのだろうと、リーダーみょんは判断した。 実際には人間は特に長ぱちゅりーの味方というわけでもないのだが、 長ぱちゅりーが人間に嘘をついているという事実をしらないリーダーみょんが、そう思い込んだとしても無理はなかった。 その辺はいかにも自分のバックに人間が控えていると、まりさたちや群れのゆっくりたちに思わせた長ぱちゅりーのやり方が上手かったということだろう。 「はがゆいけっかだけどしかたがないみょん! にんげんさんがぱちゅりーのがわについたいじょう、まりさたちにはかちめがないみょん! そしてこうなったいじょう、そんなまりさちの、みかたをするわけにはいかないみょん! みょんたちは、いままでどおりここでかたまって、ききをやりすごすことにするみょん!」 「わからないよー!ほんとうにそんなことでいいのー?」 「みょん?」 てっきり自分に同意してくれるかと思っていたリーダーちぇんの意外な反対に、不思議そうな顔をするリーダーみょん。 「ぱちゅりーはにんげんのうしろだてをえたことで、ますますちょうしにのるよー! これからは、いままでとは、じょうきょうがちがうってことなんだよー! それこそ、ここでこのままじっとしてたら、こんどこそまりさたちのにのまいだよー! だったらいっちかばっちか、みんなでちからをあわせて、にんげんとぱちゅりーをやっつけるんだよー!」 「な、な、なにいってるんだみょん!」 リーダーちぇんの過激な意見に思わず狼狽するリーダーみょん! 「だめみょん!ぜったいにだめだみょん!にんげんさんと、ことをかまえてぶじでいられるはずがないんだみょん! じょうだんでも、そんなばかなことをいうもんじゃないみょん! そんなことするくらいなら、まだおさぱちゅりーにしたがったほうがましだみょん!」 「…………ちっ、この……が…」 「みょ、みょん?なにかいったみょん?」 必死に人間と戦うことの危険性を主張するリーダーみょん。 そこへボソリとリーダーちぇんが何かを呟いたが、リーダーみょんにはよく聞こえなかった。 「なんでもないんだよー! わかったよー!みょんがどうしてもというなら、ちぇんももうすこしようすをみることにするよー!」 そしてリーダーちぇんは何事もなかったかのようにニッコリ笑顔で答えたのであった。 そして時は流れ時刻は夜。 ここは人間の村の宿屋の一室。 「むきゅ!ぬえ帰ってこないわね」 「多分どっかで遊んでんだろ、いつものことさ」 男とぱちゅりーは山から帰還後、宿にて途中でいなくなったぬえの帰りを待っていた。 しかし、彼女は一向にその姿を見せない。 「一体どうしたのかしら?まさか何かあったんじゃ……」 「心配しないでも大丈夫さ。 アイツの能力のことはわかってるだろ?」 男はことなげもなく言う。 事実、心配はしていないようであった。 それは決して男が薄情なのではく、大丈夫だという確信あってのことである。 さて、ここでぬえのことについて補足しておかなければならない。 一般に希少種と呼ばれるゆっくりには特殊な能力を保有しているものが多く、ぬえもまたその例にもれず特殊な能力を保有していたのだ。 そのうちの一つは飛行能力。 自在とはいかないが、文字通り空を飛ぶことができる能力だ。 これによって通常のゆっくりとは比べ物にならないほど広い行動範囲を得ることができる。 それゆえぬえは時折男と別行動をとっても問題なく帰還できるのだ。 そして二つ目。 こちらがぬえというゆっくりの最も特徴的な能力なのだが、 ゆっくりぬえは、他のゆっくりに擬態することができるのだ。 この能力により、ぬえは男と会う今まで群れから群れへと渡り歩いて来たのだ。 あえては言わなかったが、実はぱちゅりーの群れを訪ねた際もぬえはれいむに擬態していた。 無論希少種がいるこによる余計な混乱を避けるためである。 さて、ここで話しは長ぱちゅりーがまりさの群れへ向かった時のことへ遡る。 実はあのとき、ぬえは何度も振り返って人間の動向ばかり注目している長ぱちゅりーのスキを付いて、 上空から先にまりさの群れへ向かっていたのである。 この行動は、別に男に指示されていたとかそういうことではなく、その場でのぬえの独断行為だったが、 理由は恐らく長とまりさたちの会話を盗み聞きするためと、まりさの群れ内のでの情報を得るためだろう。 能力によりまりさに擬態できるぬえならば、こういった潜入行為はたやすい。 これにより、男が直接まりさちに問い質すよりも、より真実に近い情報を得ることができるというわけだ。 しかし、その肝心のぬえの姿はいまだ室内にはなかった。 「ふぅ、アイツからまりさの群れの様子を聞くつもりだったが、帰ってこないのなら仕方ないな。 まあ、つまり今回の件はゆっくりたちが人間の村を襲撃するような緊急性のある事態ではなかったってことだ。 もしそうなら流石にすぐに報告しに来るだろうしな」 「むきゅ!困った子ね」 ぱちゅりーは顔をしかめる。 「まあいいさ。本来はオレの仕事だしな。 とにかく今現在でわかっていることを整理してみるとしようか」 そう言うと、男は椅子に腰かけ、机に肘をついた。 「まず確定的なのが、長ぱちゅりーのグループとまりさたちのグループが何らかの理由で敵対しているということだな。 お前さんはあのとき、こいつらがグルになってるかもしれないと言ってたが、やっぱりその可能性は低いだろう。 奇襲が目的なら、はなっから人間に交友的な態度をすればそれで十分なカモフラージュになるしな。 それにぬえが帰ってこないことからも、人間に対して直接的な被害が出るような深刻な問題ではないと思う」 「むきゅう」 「だが同じ敵対しているにしても、幾つかのパターンが想定される。 まず一つ目は長ぱちゅりーたちの言っていたことが真実で、まりさたちがゲスだってパターン」 男は人差し指を立てながら言う。 「まあ、オレとしてはこの場合の対処が一番楽ではあるね。 そのゲスまりさたちのみ、処理すれば話しが済むわけだからな。 場合によっちゃ、長ぱちゅりーに全て任せてもいいとすら思える」 「むきゅ、でむその可能性は低いと思うわよ。 あの長ぱちゅりーは間違いなく私たちに何か隠し事をしているわ!」 ぱちゅりーが今日あったことを思い出しながら言う。 「そうだな。確かにまりさの群れへ行ったときの、長ぱちゅりーの様子は褒められたもんじゃなかった。 あれじゃ何か企んでると思われても文句は言えない。 ただ、あの長ぱちゅりーのオレたちに対する態度も、自分ひとりで問題を解決したいという見栄や虚栄心の現れと解釈すればギリギリ納得できないこともない。 見た感じプライドが高そうだったからな、悪意はなくともそれが悪い方向で表に出てしまっただけなのかもしれん。 一見不可解な出て行ったまりさを殺さず連れ戻す理由も、かわいそうだからで一応理由にはなってはいる」 「ちょっと強引すぎないかしら」 怪訝な表情で言うぱちゅりー。 「まあ、ね。 しかしそれ以上にこのケースで解せないのは、何故ゲスまりさたちが群れを出て行ったのかということだ」 男は椅子に寄りかかり腕を組む。 「仮に長ぱちゅりーの言った通り、まりさたちがゲスで今まで群れでやりたい放題やっていたとしよう。 では何故ゲスまりさたちは群れを出て行ったんだ? 好き勝手に振舞える群れはさぞ居心地が良かったはずだ。 長ぱちゅりーは勝手に出て行ったみたいに話していたが、そんなことをする理由はまりさたちには全くないんだ」 「そういえばそうね」 「これが一つ目の仮説の最大の矛盾点だ。 そして二つ目の仮説は、まりさたちはゲスだが、同時に長ぱちゅりーもゲスだったというパターン」 今度は人差し指と中指を立てながら言う。 「このケースを考えた場合、対立の原因は主に権力争い的なものが想定されるな。 理由は何でもいいだろう。群れの方針を巡ってか、あるいはどちらがよりゆっくりしているゆっくりだとかまあ色々考えられる。 そしてその抗争に敗れたまりさたちは、群れを出て行かざるを得なくなった。 これなら一つ目で説明できなかった、まりさたちが別の場所に群れを作っていた理由に説明がつく。 長ぱちゅりーが嘘をついたのも、自分たちにも多少非があったのを隠すためだとすれば納得できる」 「むきゅ!なるほどね!」 ぱちゅりーは関心したように頷く。 「だがこの説を採用した場合、一つ不自然な点がある。 それは、長ぱちゅりーがまりさたちを群れへ連れ戻そうとしている点だ」 「むきゅ!かわいそうだからなんじゃないの?」 「それはあくまでまりさたちが自主的に群れを出て行った際の話しだ。 このケースの場合は、お互いに争い、その結果としてまりさたちを弾き出したことになる。 ようやく追い出した邪魔者たちを、再び群れへ連れ帰る理由がわからん。 まりさたちによる再戦や報復を警戒するのならば、素直にオレには抹殺を依頼するのが道理のはず」 「むきゅ!言われてみれば……」 考え込むぱちゅりー。 「最後に三つ目、長ぱちゅりーがゲスで、まりさたちは別に何も悪いことしてない被害者だというパターン」 「むきゅ!そんなことありえるのかしら?」 「ああ、ありえるどころか下手すりゃこれが本命だ。 めんどくさいことにな」 男はフゥと溜息をつく。 「このケースの場合、長ぱちゅりーをはじめとする群れのゆっくりたちが、まりさたちに対してゲス行為を働いていたと考えられる。 要するに長ぱちゅりーが、オレたちにした説明とは真逆なわけだ。 そしてそれらの行為に嫌気がさしたまりさたちが群れを出て行ったと考えれば、別々の群れに分かれている理由は説明できる。 さらにこの仮説の場合、同時に長ぱちゅりーがまりさたちを連れ戻そうとしている理由も明らかになる」 「連れ戻したまりさたちに、また酷い事をするというわけね」 「そういうこと。 逃げ出したオモチャを取り戻すためにオレを利用したってわけだ。 これなら、長ぱちゅりーがあれだけオレを、まりさたちに接触させたくなかった理由も理解できる。 何せまりさたちは、ゲスなんかではなく、ましてや人間に村に攻め込む計画なんざ立てちゃいなんだからな。 その嘘がばれると非常にまずいってわけだ」 「むきゅ!そんなんの許せないわ!」 長ぱちゅりーの企みに対して憤りを隠せないようすのぱちゅりー。 「まあ今話したのは全てあくまで仮説だ。 そのどれもが真実の可能性があるし、そうでない可能性もあるということを忘れるなよ。 とにかく明日だ。 明日群れに行った際に、長ぱちゅりーからどんなに邪魔されてもまりさたちから話しを聞くことにしよう。 ぬえと合流できればさらに詳しい話が聞けるだろうし、群れに対しての対応はその時にでも決めるとするさ」 そう、全ては明日。 全ての決着は明日つくことになるのだ……。 つづく
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3543.html
『まりさの楽園 前編その2』 23KB いじめ 制裁 自業自得 引越し 群れ ゲス 希少種 独自設定 生存報告程度の話しです ……こんなはずじゃなかった。 森の中を感情の抜け落ちた無表情で移動しながら、親まりさはぼんやりと思考する。 何故こんなことになってしまったのか、一体何がいけなかったのか? 自分とて、こんな状態になるまで何もしなかったわけではない。何とかしようと様々な手を打ってきたつもりだ。 しかしその全ては徒労に終わってしまった。 いや、むしろ状況を悪化させる結果を招いたとすらいえるかもしれない。 つまり自分はずっと失敗をし続けてきたということだ。 ではその失敗の根源、つまりはじめの失敗とはなんだったのだろうか。 それは考えるまでもない。 あのでいぶとつがいになってしまったことだ。 あのでいぶは、とってもゆっくりできるゆっくりなんかじゃなかった。 ただのクズ、いや寄生虫と呼ぶべきだろうか。 親まりさは、はじめてあのでいぶを見たとき、なんてとんでもなくゆっくりしているゆっくりなんだと思った。 そして事実それは間違ってはいなかった。確かにでいぶはとんでもなくゆっくりしていたのだから。 ただしそれは、でいぶのゆっくとしての能力の高さから起因するものではなかった。 単にでいぶの親にあたるまりさに、今まで生きるための全ての行為をやらせていただけのことだったのだ。 そう、ちょうど今の親まりさのように、自身の親にひたすら寄生して生きてきたのだ。 自身は何の仕事もせずに、おうちでただひたすらゆっくりとして食料を貪る生活。 こんな生活を続けていれば、そりゃ見かけだけはとんでもなくゆっくりしてるのは当たり前だ。 さらにでいぶは独り立ちした直後だったので、身体も汚れておらず高いゆっくり純度を誇っていた。 その見かけに親まりさはコロっと騙されというわけだ。 今思えば、でいぶをの親だったまりさも、きっと親まりさと同じだったのだろう。 意気揚々と独り立ちした直後、とりあえず見た目だけはとんでもなくゆっくりしているでいぶの親れいむに一目ぼれしてつがいになり、 そして、悲惨なゆん生を歩むことになった。 風の噂で聞いた話では、そのまりさはでいぶをはじめとする子ゆっくりたちが独り立ちした後も、相変わらずこき使われているらしい。 悲惨なことだ。 そしてそれはそのまま親まりさの未来の姿でもある。 さらにそれはこの群れで今まで何度もくり返されてきた悲劇でもあるのだった。 親まりさは今まで何とかでいぶとの関係を改善しようと努力してきた。 共に狩りに行くように何度も説得した。 しかし自分はおうちを守る重大な役目がある!の一点張りでテコでも動くことはなかった。 ならば、おちびが生まれれば『ぼせい』に目覚めて働くようになるかもしれないと子作りをした。 しかしそれは逆効果だった。 おうちを守る役目に加えて子育ての仕事も加わったと主張し、ますます動かなくなった。 しかも自分は適当におちびとおうちで遊んでいるだけにも関わらず、重労働をしているとのたまい大量の食料を要求。 さらに親まりさの取ってくる食料が少ないとなじりはじめ、使えないクズと罵声を飛ばす始末。 おまけに、あからさまに子れいむと子まりさとで接し方に差別をしだし、肥え太ってとってもゆっくりしている子れいむに対し、 子まりさはいつもガリガリで栄養失調寸前の状態だった。 もちろん何度も注意した。しかしでいぶが親まりさのいうことに聞く耳を持つはずもなかった。 このままではいけない、しかしでいぶの説得はもう絶対に不可能であることは経験からわかっている。 それを悟った親まりさは、ついに最後の手段としてりっこんを決意したのであった。 「れいむ!いいかげんにしてね!これいじょうむちゃくちゃやるようなら、まりさはもうがまんできないよ! まりさはおちびちゃんをつれて、でていくよ!りっこんだよ! わかったらこれからはこころをいれかえて、きちんとはたらいてね!」 親まりさとしてはでいぶに最後通告を突きつけたつもりだった。 これできちんと働くようになれば、それでよし。 もし態度を改めないようならば、本当に離婚をする腹積もりである。 しかし、そんな親まりさの決意を嘲笑うかのように、でいぶはバカにしたように言い放つ。 「ゆあああん?りっこん?なにいってるの?まったくほんとばかなまりさだねぇ! そんなのできるならとっくにしてるよ! この、さいっこうにゆっくりしているでいぶが、つかえないまりさごときに、つりあってるとほんきでおもってたの! まったくおめでたいねぇ! わかれたいのはこっちなんだよ!でもねぇ!それはできないんだ! まりさはばかだからしらないだろうけど、むれのおきてで、いちどつがいになったゆっくりはりっこんすることができなくなったんだよ!」 「ゆへ?」 でいぶの予想外の切り替えしに、キョトンとする親まりさ。 何だって?でいぶも別れたいと思っていた?それじゃいったいまりさは何のために…。 いや待て、重要なのはそこじゃない、もっとでいぶは恐ろしいことを言っていたは。 群れの掟でりっこんが禁止だって!これはいったいどういうことだ? 自分が子まりさだったときには、そんな掟はなかったはずだ。 この群れの掟は、麓の村へ行ってはいけないことと、おちびを決められた数以上作ってはいけないことだったはずだ。 だというのに、一体いつの間にそんなバカげた掟ができたんだ? とにかくこうしてはいられない、これが本当かどうか長に会って確認しなくては! 親まりさは大慌てで、長のおうちを目指したのであった。 「おさー!いるのー!はなしがあるんだよー! ゆっくりしないででてきてねー!」 ここは群れの長である、ぱちゅりーのおうちの目の前。 急いでやってきた親まりさは息つく暇もなく、でいぶから聞いたことの真相を確かめようと大声で長ぱちゅりーを呼ぶ。 「むきゅ!いったいなにかしら、うるさいわねぇ…」 しばらく呼び続けると、おうちの中から長ぱちゅりーがのっそりと、いかにも面倒くさそうな様子で出てきた。 「いったいなんのようかしら? ぱちぇは、ばかでむのうなまりさたちとちがって、いろいろといそがしいのだけれど?」 あからさまに迷惑だという顔で、やや皮肉げに親まりさに話しかける長ぱちゅりー。 しかし、親まりさはそんな態度で怯んではいられない。 何しろ早急に確認しなければならない大事な用があるのだから。 「ぱちゅりー!ききたいことがあるんだよ! さいきん、いちどつがいになったら、もうりっこんできないというおきてをつくったのはほんとうなの!」 急き立てるように長ぱちゅりーに訊ねる親まりさ。 そんな親まりさの様子とは対称的に長ぱちゅりーは呆れたように深い溜息をついて、 「むぎゅ!いったいなにごとかとおもえば、あなたもそのはなしなの? まったく、ばかのあいてはつかれるわねぇ!」 と顔をしかめた。 「ほんとやれやれね!ここのところまいにちのように、あなたのようなまりさがくるわね! そういえば、このおきてをきめたしゅうかいのときには、ずいぶんとまりさのかずがすくなかったけど、 それがげんいんなのかしら?まったくむれのしゅうかいにまで、しゅっせきしないなんて、あなたたちはどこまでなまけものなのかしらね!」 憤慨する長ぱちゅりー。 長ぱちゅりーの話では、どうも最近群れ全体での集会があり、そこでこの離婚禁止の掟が決まったそうなのだ。 そんなこと言われても親まりさは、それこそ毎日必死に狩りに駆け回っていたために、 そのような集会があったこと自体知らないし、当然でいぶからもそんな話しは聞いてない。 そして、話しを聞いた限りでは同じような境遇のまりさが他にも沢山いるらしい。 つまりはこの掟は、まりさたちを置いてけぼりにして勝手に決められたものというわけだ。 「そもそもあなたたちがいけなのよ。 ここのところ、まりさたちが、かってにおうちをでていくというできごとが、ぞくしゅつしていたの! ようするに、そうほうのどういいがないまま、かってにりっこんするつがいがたくさんいたってわけ! そんなまりさたちのみがってなこうどうのけっか、のこされたつがいや、おちびちゃんのことをかんがえたことがあるの? このおきてはそんなふこうを、なくすためにつくられたのよ!」 続けて、さも貴様らが諸悪の根源だ、と言わんばかりに言い放つ長ぱちゅりー。 たしかに双方の同意もなく、一方的に離婚をするというのは問題のある行為ではある。 だがしかし親まりさにも言い分はある。 「そんなこといったって、でいぶはひどいんだよ! まりさはいっしょうけんめいやってるのに、げすだって! それにまりさににたおちびちゃんをいじめて、でいぶににたおちびちゃんをひいきしてるんだ! だいいち、りっこんしたいのは、まりさだけじゃないよ! でいぶだって、りっこんしたいっていってたんだよ! にひきともおなじことをかんがえてるだよ!だったらなんのもんだいもないでしょおおおおおおお!」 必死に訴える親まりさ。 確かにでいぶは、自分もこんな無能のまりさと別れられるものなら別れたいといっていたはずだ。 離婚禁止法の理由が双方の同意の問題だというのなら、親まりさたちのケースは何の問題もないはず。 「ふん!それだったらなおさらだめね! いい、つがいであるれいむは、あなたのむのうっぷりにもたえて、りっぱにやくめをはたしているのに、 そもそものげんいんであるあなたが、そんなわがままをいうなんて、とんでもないことだとおもわないの? まったくこんなげすで、むのうなつがいをもって、れいむはかわいそうよ! ほんとうはぱちぇも、れいむのために、りっこんをみとめてあげたいけれど、そんなことをしていたら、むれのちつじょがなりたたない! れいむは、むれぜんたいのことをかんがえて、いまのくぎょうにたえているのよ! じぶんのことしかかんがえてない、あなたたちまりさとちがってね! これだからまりさはつかえないのよ!ばかでろくにしごともできないくせに、もんくだけはいっちょまえでね! ちょっとははじをしりなさい!」 まりさの言い分に対して長ぱちゅりーは、群れの秩序のために認められないという。 一見それはもっともらしく聞こえる。 だがしかしそれは、何かが妙に感じた。 「とにかく、りっこんはみとめられないわ! もし、れいむとわかれるようなことがあれば、せいっさいのたいしょうになるからそのつもりでね! わかったらさっさとかりにでもいったら?どうせまりさはそれぐらいしかできないんだからね! むっきょきょきょきょ!」 優越感にひたり、嬉しそうに笑う長ぱちゅりー。 「……そんな!そんなことが!」 呆然とする親まりさ。 変だ、何かがおかしい。 今回の件の被害者は自分のはずなのだ。 確かに、はじめにでいぶをつがいに選んでしまった、という自分の浅はかな行動は責められてしかるべきかもしれないが、 その後のつがいとしての行動は、どう考えてもでいぶのほうに非があるはずだ。 少なくとも親まりさはそう思っている。 いや、恐らくそれは自分だけではない。他にも大勢いるという離婚を認められないまりさたちだって、きっと同じことを考えているはずだ。 だというのに群れの総意としては、まりさたちが加害者で、そのつがいたちが被害者という図式になっている。 これはいったいどういうことだ? こんなバカな話しがあっていいのだろうか? だが今の親まりさには、それがどんなにバカげた話であっても、群れの掟となればそれに従うほかに道はなかった。 無理やりでいぶと別れれば、制裁の対象になってしまうからだ。 「おかしい……こんなのぜったいおかしいよ…」 ブツブツとうわごとの様に呟きながら帰路に着く親まりさであった。 「ほらほらくそどれい!でいぶとおちびちゃんがおなかをすかしてるんだよ! さっさとかりへいったいった!」 「くそどりぇい!はやくちろー!」 「……ゆ」 虚ろな目で返事をする親まりさ。 あの日以降も、でいぶの増長っぷりは留まる事を知らず、今や親まりさは完全に奴隷のような扱いを受けていた。 とはいえこのままでいいはずがないと思っていた親まりさは、長ぱちゅりーからりっこんは認められないと裁断された後も、 現状の打開を模索し続けてはいた。 まず手始めに長ぱちゅりーがダメならと、ほかにもいる幹部のれいむやありすにも相談を持ちかけたのだ。 しかし答えはNOであった。 この二匹の幹部も長ぱちゅりーと答えは同じだった。 つまりは、全ては親まりさが悪い、でいぶはかわいそう、そして離婚は絶対に認められない、である。 他にも両親の所に相談に行ったり、この件には中立であるちぇんやみょんの集団にも話しを持ちかけたりした。 しかし両親はいつの間にか他界していた(ゆっくりの世界では珍しいことではない)し、ちぇんやみょんたちは、 同情はしてくれたが、特に力を貸してくれるようなことはなかった。 そりゃそうだ、だって自分たちには直接かかわりのない出来事の話しなのだから。 そんな親まりさの唯一の味方は、自分と同じようにつがいによってこき使われているまりさたちだった。 まりさたちは親近感から互いに連係し、狩りの途中などでぼそりぼそりと自身の境遇を話し合うになっていく。 そして、その現状はどれも悲惨なものであった。 あるまりさは、自分と同じようにでいぶによって食料を運ぶ道具のように扱われ、 またあるまりさは、ありすのすっきり奴隷として毎晩のようにれいぷされているらしい。 そしてまたあるまりさは、ぱちゅりーによって、身の回りのあらゆる雑用を全てやらされたり、 けっじゃの知恵と称して、無理難題を吹っかけられているらしい。 これらの境遇に対して、まりさたちは群れに対して必死に現状の是正と改善を要求したが、 それらの意見は全て長と幹部であるぱちゅりー、れいむ、ありすによって封殺されてしまっていた。 それどころか、ろくに話しも聞かずに一方的にまりさたちが悪いと決め付けられ、 みんなに迷惑をかけているくせに文句なんてとんでもないと罵られる始末。 何だかよくわからないけどとりあえずまりさが悪者、ということで今ではそれが群れの常識となってしまっているのであった。 最早打つ手なし。それが今までに散々思い知った親まりさの結論である。 そして今日も今日とて、機械のようにただひたすら狩場とおうちを往復するだけの生活をする親まりさ。 ゆっくり?過去にはそんなものもあったかもしれない。 だがその感覚はもう随分と遠い昔の話のように感じる。 あるいはこの群れに住むまりさたちは、みなこうして心をなくしていくのかもしれない。 そいういえば、狩りに勤しんでいる間に同じまりさの仲間から妙な噂を聞いた。 何でもこの状況に耐えかねた何匹かのまりさは、この群れを捨て外へと旅立っていったというのだ。 出て行ったまりさたちで新しい群れをつくっているらしい。 もうその具体的な場所まで噂で聞いてはいたが、しかしいくらなんでもそれは自殺行為というものだ。 群れというのは、ただゆっくりたちが集まってるだけの場所の事を示すのではない。 群れの条件とは、おうちに適した横穴や洞窟が沢山存在や、近場に安定した狩場が存在することなど、 そのほかにも様々な条件に恵まれた場所に、ゆっくりたちが集まってはじめて群れとなるのだ。 出て行ったまりさたちには悪いが、そんな場所をまた一から探し出すのは至難の技だろう。 途中でのたれ死ぬ可能性のほうがずっと高いだろう。 「………くくっ」 そこまで思考して、おもわず自虐的な笑みが漏れる親まりさ。 もう何日も死んだような生活をしているくせに、いざとなると死ぬのが怖い自分がおかしかった。 本当なら自分も他のまりさのように、この群れを脱出するべきなのかもしれない。 しかし今の自分にはそんな気力はどうしても湧いてこない。 何かきっかけがあれば……いや、そんなふうに思っている時点でダメなのだろう。 きっと自分はこうしてゆるやかに死んでいく、そんな静かな確信があった。 親まりさの虚ろな両目は、もういかなる光も宿してはいない。 そして、またいつものように帽子に食料を詰めてゆっくりできないおうちへと到着する。 「おそいよ!いったいなにやってたの!でいぶがおうちのみはりと、こそだてをしてはたらいてたっていうのに、 またまりさはさぼってええええええええ! ほんとまりさはゆっくりしてないくずだよ!」 「くじゅ!くじゅー!」 そしていつものように親まりさに浴びせられる、でいぶと子れいむたちの罵声。 「……………ゆう」 そしてさらにいつものように、端のほうで怯えている一匹の子まりさ。 それに寄り添うようにして無造作に置いてある二匹分の子まりさの死骸。 「………ゆえ!?」 その瞬間、親まりさの瞳が大きく見開いた。 ……………え? 何だアレは! 死骸だって! 死んだ! 誰が? まりさに似たおちびちゃんが!? 何で!どうして! 「ゆ、ゆああああああああああああああああああああああああああ!」 突如止まっていたはずの感情が爆発し、わけもわからずらず叫びだす親まりさ。 凄まじい慟哭がおうち内に響き渡る。 何だ!アレは何だ!一体どうしておちびちゃんの死骸がおうちの中に転がってるんだ! 「なんなの!うるさいよ!きゅうにおおごえあげないでね、みっともない!」 突然の親まりさの豹変に対し、不愉快そうに声を上げるでいぶ。 「どうじで!どうじで!おちびちゃんがしんでるのおおおおおお! でいぶが!ごろじだのおおおおおおおおお!」 必死の形相ででいぶに詰め寄る親まりさ。 「はあああああん!ひとぎぎのわるいこといわないでね! それじゃあまるで、でいぶがゆっくりごろしみたいにきこえるでしょおおおおおおお! このくそおちびはねぇ!あんまりにもいうこときかないから、ちょっときょうっいくしただけだよ! そしたらしんじゃったんだ!だからでいぶは、わるくないよ!わるいのはそのくそちびだよ!」 でいぶはいかにも面倒くさそうに答える。 ……なに言ってんだコイツは。 親まりさはでいぶの言っていることの意味がわからない。 いや、言葉としては理解している。 しかし、それがこの場面で発せられる趣旨の言葉とは到底思えない。 自分の子供を死なせてしまったという行為に対しての、後悔や謝罪というものが一切感じられないのだ。 「ゆふう!まったくまりさににたくそちびは、ほんとはこらえしょうがないくずゆだったよ! しんでせいっかいだったね! あっ、このごみがれいむのおうちにいると、ゆっくりできないからすらさっさとすててきてね!すぐでいいよ!」 ………ブチッ! その瞬間、親まりさの何かが切れた。 「ゆがあああああああ!このげすがあああああああああ!」 ドガッ! 「ゆげりょぺがああああああああ!」 怒りが頂点に達した親まりさはでいぶに対して渾身の体当たりをぶちかました。 でいぶは当然避けることなどできるはずもなく、親まりさの体当たりまともに喰らい吹っ飛ばされる。 「ゆゆ!おちびちゃん!まりさのおぼうしのなかにはいってね! ここからでていくよ!」 そして、親まりさは吹っ飛ばしたでいぶには目もくれず、一直線に子まりさの元へ駆けつけると、 自分の帽子の中に入るよう促した。 「ゆっくちりかいしたよ!」 そんな親まりさの意図を瞬時に理解した子まりさは、ためらうことなく親まりさの帽子の中に入っていく。 「ゆがあああああああ!いだいよおおおおおおおおお! まりさがでいぶにらんぼうするよおおおおおお! かていないぼうりょくだよおおおおおおおおお! こんなつがいで、でいぶはかわいそうだよおおおおおおおおお!」 後ろでクズが何やらわけのわからないことを大声で喚いている。 ふん!知ったことか、一生やってろ! ようやくわかった!この群れは狂ってるんだ。 群れぐるみでまりさたちを虐げ、れいむ、ありす、ぱちゅりーが異常に優遇されている。 そういった風土は前々からあったのだろうが、ここまで酷くはなかったはずだ。 だからこそ親まりさの両親もなるべくつがいになるならみょんかちぇんを選んだほうがいい程度の軽い注意で済ませていたのだ。 だがしかし、最近のれいむ、ありす、ぱちゅりーが群れの幹部に納まってからの増長は目に余るものがある。 昔はちょっとまりさの立場が弱い程度の扱いだったはずだが、今ではまるで奴隷が如く扱いが平然とまかり通っている。 こんな場所にはもう一秒だっていたくない。 第一親まりさは、でいぶに体当たりをし、おうちを出てきたのだ。 群れ内に留まっていたら見つかり次第制裁の対象になってしまうだろう。 だったら親まりさたちが取れる手段は一つしかない。 そう、群れを脱出するのだ。 群れの外の生活はきっと苛酷だろう。 だがそれでもこんな場所よりはマシなはずだ。 それに風の噂で聞いた、まりさたちが作った群れの話しもある。 今はもうそれにかけるほかない。 「さあいくよおちびちゃん! こんなばしょはきょうかぎりでおさらばだよ!」 「ゆっくちー!」 こうしてこの日、また一組のまりさが群れを脱出することとなった。 通常ゆっくりが群れから自分から出て行くことは自殺行為であり、ごく稀である。 しかし、今のこの群れでは毎日のようにゆっくりが群れから脱出し、その数を減らしてゆくのであった。 そして時は流れ、話しは現在へと巻き戻る。 さて、ここは群れの、長ぱちゅりーのおうち内である。 今この場所では、群れの現状を話し合うために、長ぱちゅりーと幹部であるれいむとありすの計三匹が集まっていた。 「むきゅう、まったくこまったものね!」 「まったくとんでもない、いなかもののこういだわ!」 「ゆふん!こんなの、ゆるされることじゃないよ!」 その場に集まった三匹は、みな一様に憤慨の表情を顔に貼り付けている。 三匹が今問題にしているのは、群れ内におけるゆっくりまりさ種の大量離脱の件だ。 ここ最近のところ、この群れではどういうわけかまりさ種が群れを出て行くという事態が相次いで起こっている。 しかもその出て行ったまりさのほとんどは、つがいや子持ちという有様だ。 まったく無責任なことこの上ない行為である。 群れの長や幹部であるぱちゅりー、ありす、れいむは、群れに残されたつがいの苦労というものを考えると、 抜け出したまりさたちの身勝手さには怒りと驚きを禁じ得なかった。 いったいどうしてまりさたちは、こんな不誠実なことができるのだろう? 長ぱちゅりーたちは、理解に苦しむばかりだ。 今までにも身勝手なまりさたちが、一方的につがいとりっこんをするという暴挙が頻繁に起こった時期があったが、 それはあくまで群れ内での話に留まっていたのだ。 さらにその問題は、けんっじゃぱちゅりーのりっこん禁止法により事態は沈静化したかに見えていた。 しかしその矢先にこの騒動である。 まったくわけがわからない。 そしてそんな幹部たちの困惑など、知ったこっちゃないと言わんばかりに離脱数は日に日に増える一方で、 今では群れ内の成体まりさはほとんど全くいなくなってしまったという状態だ。 こうなると群れ運営に明確な影響が出始めてくる。 いままで奴隷のようにこき使ってきたまりさたちが、こぞって居なくなったのだ。 当然そのしわ寄せは当人たちにはね返ってくることになった。 れいむ曰く食料を運んでくるものがいなくなった。 ありす曰くスッキリのストレスを解消するものがいなくなった。 ぱちゅりー曰く身の回りの雑用をやらせる相手がいなくなった。 そんなわけで群れにいるれいむ、ありす、ぱちゅりーのほとんどはゆっくりできなくなった。 それもこれも全部まりさのせいなのだ。 絶対に許せない! 「むきゅ!これはゆゆしきもんだいね!そうきゅうにてをうつひつようがあるわ!」 長ぱちゅりー他の二匹の幹部を見回しながら言う。 「ゆゆ!でもどうやって!もうほとんどのまりさはむれをでていっちゃたんだよ!」 「そうよね!こんなとかいてきなむれをほうりだして、わざわざいなかのそとにいくなんて、 くずのまりさたちのかんがえることはわからないわ!」 そう幹部れいむと幹部ありすが最もな意見を返す。 確かにもうほとんどのまりさはもう既に群れの外に出て行ってしまった後なのだ。 群れ内にいるのなら掟で縛ったり制裁したりと、どうとでもなるのだが、 その場にまりさたちがいない以上はどうしようもない。 「むっきょきょきょきょ!いったいふたりともなにをなやんでいるのかしら! こんなのは、けんっじゃにかかれば、かんたんなもんだいよ! でていったのなら、つれもどせばいいんだわ!」 「「ゆゆ!」」 「けんっじゃのぱちぇのじょうほうもうによると、どうやらまりさたちは、ここからややはなれたばしょにあるひろばをちゅうしんに、 むれをつくっているらしいわ! そこにこのけんじゃみずからのりこんでいくのよ!」 「ゆゆ!そういえばれいむも、うわさできいたよ! でていったまりさたちがあつまって、むれをつくってるって! ゆゆ~!まりさのくせにむれをつくるなんてなまいきだよ!」 鼻息を荒くして憤る幹部れいむ。 「でも、もどれといって、すなおにいうことをきくかしら?」 と、そこへ幹部ありすがぼそりと疑問を口にする。 幹部ありすは、まりさたちがいったい何が不満出て行ったのかさっぱりわからない。 が、しかしとにかくこの群れが気に入らないから出て行ったであろうことはかろうじて理解できている。 それを戻れといったところで、すんなり戻るかどうかは甚だ疑問ではある。 「むきゅ!だいっじょうぶよ!ぱちぇたちがそのむれにわざわざでむいていって、もどってきてもいいといえば、 あほなまりさたちは、ぜんいんよろこんでむれにかえってくるにちがいないわ!」 そう偉く楽観的な希望的観測を自信満々に述べる長ぱちゅりー。 「ゆゆ!どうして?」 幹部れいむが尋ねる。 「あら、それはとうぜんのことでしょ! あのあたまのわるいまりさたちが、ちゃんとしたむれなんてつくれるはずがないわ! いまごろはこうかいしているはずよ、このけっじゃがおさめるむれをはなれてしまったことね!」 長ぱちゅりーはフフンと鼻で笑うように言い放つ。 結局のところくずでぐどんなまりさたちは、自分たちのような優秀なゆっくりが側にいてあれこれ指示してやらないと何もできやしないのだ。 そんなまりさたちが、いくら集まったところで群れの運営などできるはずもあるまい。 さぞ毎日ゆっくりできない日々を送っていることだろう。 きっと今頃はうかつにこの群れを出て行ってしまったことを悔いているに違いないのだ。 しかし、一度出て行ってしまった手前、おめおめと戻って来るわけにもいかない。 だが、そこに颯爽とこのけっじゃのぱちぇが現れ、かんっだいな心で群れに戻ってきてもよいと慈悲を与える。 そこで改めて誓わせるのだ、すべてのまりさはこのぱちぇの奴隷になるのだと。 その言葉を聞いた瞬間、まりさたちはみな泣いて喜びながら、進んでぱちぇの奴隷になると言い出すことだろう。 「ゆゆ、そっかぁ!まりさたちは、れいむたちがいないと、なーんにもできないもんね!」 「ゆふふふふ!いなかものは、ありすたちのしじにしたがっていきるのが、もっともゆっくりできるというのに、 そんなこともわからないなんてね!」 納得したように頷く幹部れいむとありす。 「むっきょきょきょきょ!わたしたちがまりさたちのむれをたずねていったら、 きっとものすごいいきおいでかんげいされることでしょう!やっとたすけがきた、けんじゃがきてくれたってね! それじゃさっそくいきましょうか! あわれなまりさたちにすくいのてをさしのべにね!」 それだけ言うと、意気揚々とおうちを出る長ぱちゅりー一同であった。 つづく
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3622.html
『まりさの楽園 中編 その2』 22KB いじめ 制裁 自業自得 引越し 群れ ゲス 希少種 自然界 独自設定 ナナシ作 *前回までのあらすじ 長ぱちゅりーが人間を利用するとか言い出した。 「あー、今回の群れは特に何の問題もなさそうだな、うん」 椅子に深く腰かけながら、パラパラと資料に目を通し一人の男が呟いている。 「むきゅ!そんなこと言って、実際に行ってみるまで何があるかわからないわよ!」 「そうそう、油断大敵だよ!」 しかしそんな楽観的な口調の男をたしなめる二匹のゆっくりいる。 ゆっくりぱちゅりーとゆっくりぬえだった。 「いやいや、そんなことはわかってるよ。オレが言いたいのは表面上は問題なしってことさ。 この付近にあるゆっくりに群れは、別にドスがいるわけでもないし、前回の視察のときも人間に敵対するような言動や傾向は見られなかった。 村に近づく等の行為もなかったし、住人の方々からの苦情も一切なし。 まあ、人間にとって理想的なゆっくりの群れではあるね」 しみじみと、山にあるゆっくりの群れをそう評価する男。 突然だがここはとある村の宿屋の一室である。 今、そこに滞在しているこの男はゆっくりを専門とする国営機関の人間であった。 一般にある程度の規模の山などに生息しているゆっくりの群れは、人間とある協定を結ぶ事が義務付けられている。 その理由は詳しく語れば長くなるのだが、結論だけ言えば人間にとって野生のゆっくりが害にならないようにするには、 今のところこれが一番コストのかからない方法だったからだ。 そしてその協定の主な内容とは、ゆっくりの数が増えすぎないように定められた規定数をオーバーしないようにすっきり制限をすること、 麓にある人間の村に近づいていはならないことなどである。 これらの協定をゆっくりの群れは、人間と結ぶ事によりゆっくりたちは山での生存が許されているのだ。 そして男が所属しているこの国営機関は、その仕事の一つとしてこれらの協定がキチンと守られているか定期的にチェックする役割を追っている。 何を隠そう今男が宿屋に滞在しているのも、これからすぐ近くにある山のゆっくりたちの群れへ視察を行うためだった。 「でもそれはあくまで表面上の問題でしょ。 一見すると問題なさそうな群れでも、実はトラブルを抱えているなんてことはよくあることじゃない。 まさかそれがわからない人間さんじゃないでしょ」 男の連れのぱちゅりーが言う。こんなこと自分がいちいち言うまでもないだろうという口調だ。 そしてその隣ではぬえがうんうんと同意するように頷いている。 この二匹のゆっくりは男が連れているゆっくりだった。 二匹共々、別々のある群れの騒動がきっかけで知り合い、以来行動を共にしているゆっくりである。 「もちろんそんなことはわかってるさ。 あいつらは色んな意味で一筋縄じゃいかないからな」 二匹のゆっくりに対して面倒臭げに語る男。 人間でいうところの国がそうであるように、ゆっくりの群れの運営は非常に難しい。 些細な理由で滅びることはそれこそ茶飯事だし、ぱちゅりーの言うように群れ内で何かしらの問題を抱えているケースも珍しくない。 中には人間に対して反旗を翻す計画を練っている場合すらあり得る。 それらの事態に適切に対応するためにも、男のような専門の職員がわざわざ定期的に視察して回る必要があるのだ。 「いやね、やっと腕の怪我が治ったばっかなのに、すぐまた厄介な群れはゴメンだなーってちょっと思っただけだよ」 「あらら、お兄さんが愚痴とは珍しいね」 「愚痴ってほどのことでもないけでさ。 でもたまにはオレが何にもしなくても、勝手に事態が収束するようなことがあってもいいと思わないか?」 「むきゅ!そりゃぱちぇも何もないのが一番だと思うけど、そう上手く行くかしら」 「さあ、それは実際に行ってみてのお楽しみってだねー。 そんじゃいつまでもだべってないで、そろそろ今回の群れへと行くとしますかい」 そう言うなり、男は勢いよく椅子から立ち上がるのだった。 「むきゅ!ぱちぇのむれへようこそにんげんさん!かんげいするわよ!」 「「ゆっくりしていってね!」」 そんなわけで山にあるゆっくりの群れへと到着した男とぱちゅりー、ぬえ。 彼らが群れの中心部に着くや否や、その群れの長ぱちゅりーと幹部ありす幹部れいむの歓迎を受けたのだった。 にこやかな笑顔で男とたちを出迎えたところを見ると、少なくとも表面上は人間と敵対するような意志はないように見える。 これで後は、群れ内のゆっくりが規定数をオーバーしてないか確認し、あとは簡単な身辺調査を終えれば この群れは何の問題もないということになり、当初の望み通り男はさっさと帰ることができるというわけだ。 「はいはい、どうも、ゆっくりね。 それで長ぱちゅりー、早速群れのゆっくり数の調査をしたいんだが、群れの連中を集めてくれないかな?」 挨拶もそこそこにさっそく仕事にかかろうとする男。 「むきゅ!もちろんよ!このむれは、ちゃんとにんげんさんのきめたるーるをまもってるからね! ゆっくりのかずについては、なんのもんだいもないわ! むきゅ、でも、それとはべつに、いまちょっとこまったことになっていて……」 そう言葉を濁す長ぱちゅりー。 「んん?そりゃまた気になる物言いだな。 何か問題でもあるのかい? なんなら相談に乗るぜ。ことと次第によっちゃ力を貸してやってもいい」 うつむく長ぱちゅりーに気さくに話しかける男。 「むきゅ!そうね!これはもうぱちぇたちだけのもんだいじゃすまされないことかもしれないしね! ともすれば、むれのいちだいじかもしれない! できればじぶんたちのてでかいけつしたかったけど、おもいきって、にんげんさんにそうだんすることにするわ! じつは、もんだいというのは、まりさたちのことなのよ!」 覚悟を決めたという様子で淡々と話し始める長ぱちゅりー。 「もうきづいているかもしれないけれど、いまこのむれには、まりさがほとんどいないの!」 「あっ、ほんとだ!言われてみればまりさがぜんぜんいないじゃん!」 辺りを見回しながら、ぬえが相づちを打つ。 「ふむ、そりゃまたどうして?事故かなんかで死んだの?」 一気に大量のゆっくりが死亡してしまうという事態は、野生のゆっくりでは往々にしてあり得る事である。 この群れのまりさたちもそのくちだろうか? 「いいえちがうわ!まりさたちはみな、このむれを、かってにでていったのよ!」 「出て行った?」 「そう!おさであるこのぱちぇのめいれいにしたがわないでね!しねばいいのに!」 よほど腹に据えかねる事態だったのか、息巻く様子で話し続ける長ぱちゅりー。 長ぱちゅりーの話によると、この群れのまりさたちはそろいもそろってみなゲスであったらしい。 群れ内にいた頃は皆怠けてばかりで、自分たちの決められた仕事もせず、長である自分に毎日文句ばかり言いにくる。 さらに半ば無理やりつがいとなったれいむ、ありす、ぱちゅりーたちには迷惑ばかりかけ、 時には乱暴したり、おちびちゃんを残して勝手に離婚する、いわゆるにヤリ逃げ行為も日常茶飯事だったそうだ。 「あのげすまりさたちに、つがいになれとせまられ、なかばむりやりつがいにさせられたあげく、 すてられて、しんぐるまざーになったゆっくりがこのむれにはたくさんいるのよ!」 「とつぜんまりさがいなくなったせいで、しんじゃったゆっくりもいるんだよ!」 「でていくさいに、たいあたりされて、おちびちゃんをむりやりつれてかれたれいむいるらしいわ!」 口々にまりさたちの非道を訴える長と幹部たち。 「ふーん、そりゃひでえ話しだねえ。 しかし群れで乱暴している無法者のまりさたちは、もう群れを出て行ったんだろ? 自分たちで追い出すまでもなくゲスが勝手に出ていったんなら、お前たち的にはそれでよかったんじゃないか」 「むきゅ!それがそもういかないのよ!そのまりさたちは、このふきんのばしょで、じぶんたちだけのむれをつくっているらしいんだけど、 どうやらまりさたちは、こんどはにんげんさんのむらに、せめこむけいかくをたてているらしいの」 「なに!」 長ぱちゅりーの言葉に眉を寄せる男。 人間の村に攻め込む。 もし長ぱちゅりーが言うように、そのゲスまりさたちがそんな計画を立てているとしたらただことではない。 言うまでもなくこの行為は重大な協定違反にあたり、そんなことが現実に起きれば、攻め込んだゆっくりたちはもちろんのこと、 そのゆっくりが所属していた群れも同時に駆除されるか、あるいは重いペナルティを負うことになる。 同じ協定違反でも、ちょっと群れの規定数をオーバーしてしまったのとはわけが違う。 それくらいこの行為の罪は重いのだ。 故に群れのゆっくりたちは、間違っても群れからこのような違反者が出ないように相互監視をするのがほとんどだ。 「いままではむれのみんなで、まりさたちのぼうそうをおさえていたけれど、もうそれもげんかいみたい! とうとうまりさたちは、ぱちぇたちのてのとどかないむれのそとへとでていってしまったの! いちどぱちぇと、かんぶたちで、まりさのむれへもどってくるように、せっとくにいったけどだめだったわ! こちらのはなしはきくみみもたずで、そのうえひどいらんぼうをされたわ!」 「なるほどね。その話しが本当なら、たしかにそれは群れの一大事ではあるかもな。 つまりは、オレに頼みたいのはそのまりさどもの始末ってわけだ。 まあ、この程度の規模の山に、ゆっくりの群れがそういくつもあってもこっちは困るしな、ちょうどいいか」 「む、むきょ!ちっ、ちがう!そっ、そうじゃないのよにんげんさん!」 「ん?」 男がまりさたちを駆除すると言った途端、何故か焦ったようにそれを拒否する長ぱちゅりー。 「あのまりさにたちにしんでもらっちゃこま……じゃくて、 あっ、いや、そのさすがにくじょはかわいそうかなぁ~なんて……」 「?」 「とっ、とにかく!ぱちぇがにんげんさんにしてほしいのは、まりさたちのくじょなんかじゃないの! ぱちぇといっしょに、まりさたちのむれまできてほしいのよ、それだけでいいの! そうすれば、あとはぜんぶ、おさであるこのぱちぇがしまつをつけるわ!」 どうにも煮え切らない様子の長ぱちゅりー。 さっきまでは散々まりさたちをゲスと罵り、彼女らに対して明確な怒りや殺意にも似た感情を露にしていたのにも関わらず、 いざ駆除すると男が言い出すと、突然それはかわいそうだと言い出す。 なんともちぐはぐな話である。 一般的に野生のゆっくりは殺したいほど憎んでいるのに、それをゆっくり殺しはいけないことなどという薄っぺらな倫理観で我慢するなどということは少ない。 ちょっと気に入らなければ何かと理由をつけてすぐ殺す。それが野生のゆっくりの正しい姿だ。 ましてやその出て行ったまりさたちというのは、ゲスな上に掟を無視して人間の群れに攻めこもうなどと考えている輩ではないか。 群れからしてみれば、ある意味死んで当然のゆっくり。 普通の群れなら厳罰を持って事に当たるのに、いささかの躊躇いもないところである。 それをしないと言うのは、何か理由があるときだけなのだ。 「どうにも解せんね、なぜそれほどまでにまりさたちを生かそうとする?」 「それは、その……。だってそうでしょ! あんなまりさたちでも、むれのいちいんであることはかわりないの! それに、これはまりさたちと、わかれたつがいたちのねがいでもあるのよ! どんなにつかえないくずでも、おちびちゃんたちには、おやがひつようなの!」 「ふーん、しかしね、何でもかんでも可哀相じゃ、群れの長はやっていけないぜ。 つがいの連中にしても、一度は一緒になって子どもまでいる片割れを殺したくないって気持ちはわからんでもないが、 キチンとシメるとことはシメとかないと、それは将来的に群れを滅ぼすことに繋がりかねんよ」 男は静かに長ぱちゅりーに忠告する。 一般に一度ゲス化したゆっくりの改心はほぼ不可能といっていい。 そしてゲスゆは、必ずゆっくりの群れに不利益を及ぼすことだろう。 そうならないためにも、長はゲスゆを断固とした態度で追放か処分する必要がある。 いくら群れのゆっくりたちから、ゆっくりできないと罵られてもそれを実行するだけの決断力がなければ長の資格は無いのだ。 「む、むぎゅ!そんなことないわ! ぜったいに、にんげんさんたちにはめいわくをかけないからだいじょうよ! それにまりさのしょぐうについては、ゆっくりのむれないのもんだいなのよ! にんげんさんにあれこれくちをだされるすじあいはないわ! そこのところをしっかりにんしきしてちょうだい!」 自分の思ったように事が運ばず、急にイライラしたような口調になる長ぱちゅりー。 言うまでのない事だが、長ぱちゅりーの理屈はおかしい。 これはゆっくりの群れの問題だから、まりさのことについて口出し無用と主張するのならば、はじめから人間の手を借りず、 一から十まで全て自分たちの手でケリをつければいいだけの話である。 にも関わらず人間の力を借りて、しかし結果には口出しするなではまるで筋が通らない。随分と虫のいい話しである。 結局のところこのセリフは、長ぱちゅりーの自分に力を貸してくれるのが当然であり、当たり前だという彼女の傲慢な思考の表れなのだ。 そして当然のことながら、そんな長ぱちゅりーの考えを男は薄々感じ取っていた。 (これは何か裏があるか?少し様子をみてみるか……) そう思った男は、しかしそんな様子をおくびにも出さずに答える。 「まあいいさ、ルールさえ守ってくれれば取り合えずばこっちに文句はないからな。 そしてお前らは今までルールを守ってきたし、そのまりさたちもまだ決定的なことは何もしてない。 だから今回はとりあえずお前さんの方針に従うことにするよ。 どちらにせよ、まずはそのまりさたちの群れとやらに行ってみないと話しにならないしな」 「むきゅ!さっすがにんげんさんははなしがわかるわ! むっきょきょきょきょ!そうよ!このぱちぇのいうとおりにしていれば、なんのもんだいもないのよ! そうときまれば、さっそくまりさたちのむれにむかうとしましょう! こっちよ、ついてきなさい!」 とりあえず男がぱちゅりーの要求を了承したことで気をよくしたのか、 さっそくといった感じでまりさたちの群れがある方向へ軽快に跳ねて行く長ぱちゅりー。 「やれやれ」 「むきゅ!」 「おおっと、これは波乱の予感だね!」 そしてそのあとに続く男とぱちゅりー、ぬえ。 (むっきょっきょきょ!このけんっじゃのぱちぇにかかれば、にんげんなんてちょろいもんだわ!) 先頭を突き進む長ぱちゅりーは、誰にも見られないようニヤリと邪悪な笑みを浮かべたのだった。 「ゆっくり!ゆっくりー!」 「ゆっくちー!ゆっくちー!」 「ゆゆっ!みんなとってもゆっくりしてるね!」 所変わってここはまりさたちの群れ。 この群れにいるまりさたちはみな、相変わらずとってもゆっくりしていた。 先日の長ぱちゅりーたちを群れから追い返した一件により、みな潜在的な不安がなくなり、心の安息を得たことが大きいのだろう。 今まで散々こき使われてきた長ぱちゅりーへの勝利は、まりさちの自信へと繋がり、やがてそれは絶対の安心感へと昇華される。 今や、この群れのまりさたちのゆっくりを脅かすものは何もないと誰もが思っていた。 だがそんなゆっくりとした広場が突然喧騒に包まれる。 「ゆああああああああああ!たいへん!たいへんだよおおおおおおお! またぱちゅりーが、このむれにむかってきてるよおおおおおおお!」 凄まじい形相にて、外の見張りをしていたまりさが広場へ飛び込んできたのだ。 どうやらまた長ぱちゅりーがこの群れに向かってきているらしい。 が、しかし前回とは違って群れのまりさたちの反応は淡白なものだった。 「なんだ、またもりけんか!」 「こりないやつだね!いいかげんあきらめればいいのに!」 「ゆゆ!きょうというきょうはゆるさないんだよ! てっていてきに、せいっさいするよ!」 口々に囁き合うまりさち。 その様子は非常に落ち着いており、ある種の余裕すらあった。 どれだけぱちゅりーやれいむ、ありすがやってきたところで、自分らが奴らの言う事を聞く通りはないし、 力でくるというのなら、返り討ちにするまでである。あんな連中に自分たちが負けるはずがない。 そう、もう自分たちは奴らの言いなりにはならない、何故ならここはまりさの群れなのだから! 「ゆあああああああああ!ちっ、ちがうんだよおおおおおおおお!まずいんだよおおおおおおおおお」 冷静な広場のまりさたちとは対称的に、一匹で大騒ぎしている見張りまりさ。 その慌てぶりは前回ぱちゅりーたちがやってきたときの比ではない、まるで世界が終わってしまうかの様な狼狽ぶりだ。 「おちつくんだぜぇ!いったいなにをそんなにあわてているんだぜえ! しっかりほうこくするんだぜえ!」 そんな見張りまりさの狼狽した様子を見かねたリーダーまりさが喝を入れる。 「ゆああああ!いっ、いたんだよおおおおおお!おさぱちゅりーのとなりにいぃぃ………」 「なんなのぜ!はやくいうんだぜ!いったいなにがいたっていうんだぜ!」 一向に的を得ない報告に、やや苛立ち気味に問い詰めるリーダーまりさ。 「ぱっ、ぱぱぱ、ぱちゅりーといっしょに、ににに、にんげんさんが!にんげんさんがいたんだよおおおおお! にんげんさんが、このむれにむかってきてるんだよおおおおおおおおおお!」 「「「「「……………」」」」」 見張りまりさの報告を聞いた群れのまりさたたちはシーンと静まり返り、そして次の瞬間。 「「「「「ゆえええええええええええええええええ!!!」」」」」 広場を絶叫が支配し、まりさの群れはかつてないほどの大パニックに陥ったのであった。 「……で、本当にオレはここに突っ立ってるだけでいいわけ?」 「むきゅ!もちろんよ!にんげんさんのてをわずらわすわけにはいかないわ! にんげんさんは、まりさたちのむれから、すがたがみえるようにたっているだけでいいの! あとはぜんぶぱちぇがやるからしんぱいしないで!」 ここはまりさたちの群れの手前付近の場所で、ちょうど入り口が見えるか見えないかといったところ。 そこまでやって来たところで長ぱちゅりーは、男にこの場所で待っているよう要求した。 何でも交渉は全て自分が行うので、男はまりさたちから見える位置で控えているだけで十分だというのだ。 しかしそんなこと言われても、男としてはどうも釈然としない。 「ここまできたら、待ってるのも手を煩わすも一緒だと思うんだけどねえ。 オレが直接行って、まりさたちに話しをしたほうが、事が速くすむと思うんだけど。 実際にまりさたちの話も聞いてみたいしね」 「だめよ!」 男の提案に対して、長ぱちゅりーは声を張り上げて強く反発する。 「あぁん?」 「あっ、そっ、その!ほら、あんまりちかくににんげんさんがいると、まりさたちがおびえて、はなしができないかもしれないのよ! あまりおいつめて、やけくそにになって、あちらからてをだすようなことになったら、すべてがみずのあわよ! ぱ、ぱちぇはなるべく、へいわてきにかいけつしたいのよ!」 怪訝そうな男の様子に、慌てて取り繕う様に言う長ぱちゅりー。 「平和的ねえ。 確かに話し合いは悪い事じゃないけどさ……」 「むきゅ!そういうわけだから、ぱちぇはいってくるけど、いい! にんげんさんはそのまま!そのままそこにいるのよ! まちがってもこっちにちかづいてきちゃだめよ!これはおさとしてのめいれ……じゃなくて……、 その、おねがいよ……」 「ああ、わかった、わかったよ、近づかないからさっさと行ってこいって」 パタパタと面倒臭げに手首を振って、さっさと行けとジェスチャーする男。 「むぎゅ!」 ペッタンペッタンまりさの群れのへ向かって跳ねていく長ぱちゅりー。 しかし途中何度も振り返っては、男がその場に止まっているか確認しているので一向に前に進まない。 その様子はまさに小心者の小悪党を思わせる動きだった。 「ねえ、変じゃない?」 長ぱちゅりーがまりさたちの群れに向かい、声が聞こえないくらいの距離になったところで、 それまでじっと黙っていたぱちゅりーが口を開いた。 「変ってなにが?」 「そんなこと言って、本当はわかってるんでしょ。 あの長ぱちゅりーのことよ。 あれは何か隠してるわ!まりさたちを刺激しないようになんて言ってたけどそんなの嘘よ! きっとよほど何か、人間さんには聞かれたくないような話があるのよ」 「聞かれたくない話しねえ。 じゃあ、それは具体的にはなんだと思う?」 「それは……そうねぇ。 例えばあそこにいるまりさたちと、あの長ぱちゅりーは実はグルで、 本当は一緒になって人間の村に攻め込もうとしてるんじゃないかしら? それでこれからの作戦会議に行ったのよ!」 「ははっ!そりゃ面白い考えだな」 ぱちゅりーの仮説に思わず噴き出す男。 「しかし、もし仮にその通りだったとして、じゃあなぜわざわざまりさたちの群れと自分たちとの群れとで二つに分ける必要がある? 人間の村に攻め込むのが目的なら別にわざわざまりさたちだけ分けなくても、みんなで一緒に攻めればいいじゃないか。 それに、長ぱちゅりーがまりさたちが侵略を企んでいるとオレたちに教える理由はなんだ? 黙ってればいい話じゃないか」 「それは……多分あえて情報を流すことで私たちを油断させるためよ。 つまりあのまりさたちは囮。 私たちの意識をあのまりさたちに集中させておいて、本命はあのぱちゅりーの群れなのよ! そこから奇襲をかけるというわけ!」 「あぁ、なるほどなるほど。 ふふっ、その発想はなかったな、うん。 まあ100%ないとはいきれないかもね」 「何よ、それじゃ人間さんはどいういう考えなの!」 ぱちゅりーは口を尖らながら聞く。 「さてね、今のとこは何ともいえないな。 何しろ情報不足なもんでね。 まあ、しばらくはあの長ぱちゅりーを適当に泳がせてみて様子をみるさ」 「あら、結局人間さんもまだわからないんじゃない。 それなのにぱちぇの仮説を笑うなんて、失礼しちゃうわね。 そうでしょぬえ!って、あれ?ぬえは?」 きょろきょろと周り見回すぱちゅりー。 どうもさっきから静かだと思ったら、ついさっきまで隣にいたぬえの姿が見当たらないのだ。 「ああ、アイツなら……」 男は視線をまりさたちの群れへと向けながら言うのであった。 「むっきょきょきょ!ごきげんよう!げすのごみくずまりさのしょくん!」 そのころまりさの群れの入り口では二匹のゆっくりが対峙していた。 長ぱちゅりーとリーダーまりさだ。 長ぱちゅりーは品の無いニヤニヤ笑いを顔に張りつけながら、余裕の態度で挨拶している。 「いっ、いったいなんのようなんだぜええええええ! もうにどとここにはくるなと、ぜんかいちゅうこくしておいたはずだぜえええ! かっ、かくごはできてるのかぜぇ! で、でもこんかいはとくべつに、いますぐかえれば、み、みのがしてやるんだぜええええええええ!」 対してリーダーまりさは、若干腰が引けていた。 わざと大きな声で話し、強がりを言っているようにも聞こえる。 「むっきょきょきょ!いいのかしら?そんなたいどをとって! せっかく、かんだいなおさであるこのぱちぇが、もういちどだけちゃんすをあげようというのにね! いい、これがさいごのちゅうこくよ!ここにいるまりさたちは、ぜんいんそっこくむれにもどりなさい! そしていままでどおりのせいかつをおくるの!わかったわね!」 「ふっ、ふざけるんじゃないのぜ!だれがそんなようきゅうのむのかぜ!」 「あーら、そんなこといっていいのかしら? もうわかってるとおもうけど、ぱちぇのばっくには、くそにんげんがいるのよ! あそこにじゅうじゅんにひかえている、くそにんげんのすがたがみえないのかしら? ぱちぇにさからうということは、にんげんにさからうということ! わかるかしら?あなたたちが、このおさである、ぱちぇにきがいをくわえたり、めいれいにさからったりしたばあい、 ただちにくそにんげんたちが、おまえらげすに、せいっさいをくわることになるわ!」 「ゆっ、ぐぐぐぐ」 悔しそうに唸るリーダーまりさ。 リーダーまりさはこの群れをつくる際に、自分たちを脅かすあらゆるゆっくりから群れを全力を持って守ると心に決めていた。 そしてその気持ちは今も全く衰えてはいない。 衰えてはいないのだが、しかしそれはあくまで相手がゆっくりの場合の話しだ。 その相手が人間となれば当然話しが変わってくる。 自分がまともに戦って勝てる相手でない。 及び腰にもなろうというものだ。 「むっきょきょきょ!おもいしったかしら、これがおさであるぱちぇのちからというものよ! このぱちぇのめいれとなれば、くそにんげんですらかけつけ、したがう! おまえらげせんな、だゆっくりどもがいくらほえたところで、ぱちぇのきょうだいなけんっりょくのまえではむりょくなのよ! これが、えらばれた、こうきなゆっくりであるぱちぇと、しもじものだゆっくりとであるおまえらとの、ぜったいてきなさというものかしら! どれ、ためしに、このむれにいるちびどもを、むごたらしくぎゃくさつするように、くそにんげんにめいれいしてみようかしら!」 「やっ、やめるんだぜえええええええええ!」 長ぱちゅりーの陰湿な命令に吠えるリーダーまりさ。 「むっきょきょきょ!なに?おおごえだしちゃって、みっともない!じょうだんよ! ぱちぇはかんだいだからね!むれのいちいんにそんなまねするはずないでしょう?むっきょきょきょ! まあ、でもいくらかんだいなぱちぇでも、がまんにはげんどというものがあるわ!わかるわよね? そんなわけで、あなたたちには、いちにちだけゆうよをあげる! もしあすになっても、あなたたちがむれにもどってこないようなら………わかってるわね!」 「ゆううううううう!」 うつむき、怒りに震えるリーダーまりさ。 この目の前にいるゲロクズに体当たりを喰らわせ、メチャクチャに踏み潰してやりたい。 しかしそれができない悔しさ、惨めさ、どうしようもない手詰まり感。 どうしてこんなクズみたいなやつが、こんな力を持っているというのか! おかしい!世の中間違っている! 「むきゅ!ようやくおのれのたちばというものが、すこしはりかいできてきたようね!かんしんかんしん! それじゃぱちぇはもういくけど、みょうなことはかんがえないことね! おまえらみたいなくずは、しょせんぱちぇのどれいになるくらいしか、そんざいかちがないのだから! それをりかいし、うけいれることが、おまえらにとってのさいこうのゆっくりなのよ! ゆぷぷぷ!それじゃ、あすぱちぇのむれであいましょう!むっきょきょきょきょ!」 言いたい事だけ言い終えると長ぱちゅりーは、軽快に去っていく。 後に残ったのは今だ俯いたまま震えてるまりさのみだった。 つづく
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1881.html
ナナシのSS感想用掲示板はこちら anko4652 正義の行方 前編 anko4626 とある群れの越冬 anko4466 だいりしゅっさん 後編その3 anko4396 だいりしゅっさん 後編その2 anko4318 ぎゃくたいしゃ anko4276 だいりしゅっさん 後編その1 anko4246 だいりしゅっさん 中編 anko4176 だいりしゅっさん 前編 anko3978 こうっかん 後編 anko3977 こうっかん 中編 anko3976 こうっかん 前編 anko3883 都会の自然公園 終わりの始まり anko3882 都会の自然公園 子ありすの選択 後編 anko3881 都会の自然公園 子ありすの選択 中編 anko3880 都会の自然公園 子ありすの選択 前編 anko3633 無知の罪 後編 anko3632 無知の罪 前編 anko3568 まりさの楽園 中編 その3 anko3567 まりさの楽園 中編 その2 anko3515 まりさの楽園 中編 anko3489 まりさの楽園 前編その2 anko3488 まりさの楽園 前編その1 anko3292 おうち宣言の果てに 後編 anko3291 おうち宣言の果てに 前編 anko3237 無敵のゆっくり anko3170 境界線 後編その3 anko3083 境界線 後編その2 anko2997 境界線 後編その1 anko2869 境界線 中編 anko2757 境界線 前編 anko2526 私の名前は 後編 anko2525 私の名前は 前編 anko2372 金バッジの価値 後編 anko2371 金バッジの価値 前編 anko2312 野生の掟 後編 anko2311 野生の掟 前編 anko2267 長の資質 後編 anko2266 長の資質 前編 anko2135 ぱちゅりー銀行 後編 anko2134 ぱちゅりー銀行 前編 anko1919 とってもゆっくりできるはずの群れ anko1846 お飾り殺ゆ事件 後編 anko1845 お飾り殺ゆ事件 前編 anko1766 北のドスさま 後編その2 anko1765 北のドスさま 後編その1 anko1706 北のドスさま 前編その2 anko1705 北のドスさま 前編その1 anko1617 でいぶの子育て anko1502 平等なルールの群れ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4594.html
自分の作品の「赤ちゃんのゆっくり返し」のその後を、fuku6542にて書いてくださって嬉しい限りです。 このままもらいっぱなしでは悪いので、 こちらもfuku6552の「寄生」のその後を勝手に考えてみました。 ※元作者様に無許可で書いた作品なのでwikiに保管の際は投棄所にてお願いします。 ***************************************************************** まりさの誤算 ***************************************************************** 先日にんっしんっをうまく使ってとってもゆっくりできたまりさ。 「ゆぅ…最近どうもゆっくりしてないんだぜ…」 れいむをこき使ってのゆっくりとした日々があまりにも輝かしかったのか、 がんばって狩った芋虫を食べても全然しあわせーな気持ちになれません。 「こんなものなんかハチミツさんに比べたら全然ゆっくり出来ないんだぜ…」 しあわせーな気持ちになれないからいくら食べてもお腹が空いて力が出ない。 力が出なかったらしあわせーなご飯が食べれなく、 ご飯が食べれなかったら力が出なくて…のゆっくりできないスパイラル。 このままではずっとゆっくりしてしまう! 「どうすればいいんだぜ…ゆ!」 まりさの頭の上に電球マークが光りました。 「そうだぜ!またにんっしんっをしてゆっくりしてやるんだぜ!」 「ゆゆ?」 にんっしんっしてゆっくりしてやると考えていたところに、 ありすがゆっくり散歩しているのが見えました。 「れいみは十分たんのうしたから次はありすでゆっくりするんだぜ!」 ***** 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!!」 「あら、とかいはなまりさね!ありすになにかよう?」 「まりさとずっとゆっくりしてほしいのぜ!!」 「でんげきこくはくなんてとかいはねえ!ずっとゆっくりしましょう!」 と二つ返事でめでたくカップルとなったまりさとありす。 まりさはありすの巣にお邪魔して計画を実行に移します。 「ありす、赤ちゃんがいるともっとゆっくりできるんだぜ!」 「とかいはなかんがえね!さっそくすっきりしましょう!!」 これまた二つ返事ですっきりが開始。 この前までにんっしんっしていてすっきり出来ずにたまっていたまりさを、 ありすの愛がやさしく包みこみます。 「これがとかいはの実力なのかだぜえええええぇぇぇぇぇ?!」 「ぽっちゃりまりさのおはだすべすべできもちいいいぃぃぃ!!」 そして絶頂。 「「んほおおおおおぉぉぉぉぉ!!すっきりーーー!!」」 ***** 数日後。 当初の予定通りまりさはお腹に赤ちゃんを身ごもり、 お腹を揺らしながらありすと語り合っていました。 「まりさ様のおなかのおちびちゃんはすごいのぜ?」 「とかいはなおちびちゃんにそだつといいわね!!」 (ゆっへっへ…第一段階は成功なのぜ! これでまりさに似たおちびちゃんが産まれないようにすれば…) 「ふんっ!」 「まりさ?どうしたの?だいじょうぶ?」 「ゆ…心配ないのぜ!これはお腹のおちびちゃんが元気に育つおまじないなのだぜ!」 「そんなこともしってるなんてますますとかいはなまりさね!」 (これでもうまりさに似たおちびちゃんが産まれないのぜ! 産まれるまでゆっくりパラダイスして、産まれたら育てがいがないとか言って逃げて、 またにんっしんっして…ゆふふふふふふ!!) ***** 一方そんな黒い野望を秘めているまりさのお腹の中では、 先ほどのおまじないのおかげで、 誰からも忘れられている赤ちゃんれいむがゆっくりと目を覚ましました。 「ゆぅ………ゆぅ……ゆぅ………」 「ゆっくちちていってね!」 「あれ?おかーしゃんはどこ?」 きちんとごあいさつできたのにお母さんは何も言ってくれません。 「ゆ?おねぇーしゃんいもーとしゃんどこにいるの?」 周りを見回しても一緒にいるはずの姉妹が見えません。 ああそうか、れいむはゆっくりしすぎたから出遅れちゃったんだ。 「れいみゅゆっくちねぼしゅけしゃんだね」 お腹の中ではとってもゆっくりできますが、 一人ぼっちでは寂しくてあんまりゆっくりできません。 「れいみゅさびちいよ…」 「ゆゆ??」 赤れいむがお腹の中のあるものに気がつきました。 それは、「ゆぅ…ゆぅ…」と声のもれるまだ小さいゆっくりの赤ちゃん。 「これはゆっくちちているれいみゅにおかーしゃんからのぷれぜんとだね! ゆっくちむちゃむちゃするよ!」 まだお飾りが出来てないものですから、 赤れいむはおまんじゅうだと思ってしまいました。 「むーちゃ♪むーちゃ♪ちあわちぇ~♪」 しっとりとした皮をプチっと噛むと、 中からジュワっとやわらかいカスタードが飛び出して、 赤ちゃんれいむをやさしくなでます。 「とっちぇもゆっくちできたよ!おかーしゃん、ありがとう!」 よく見るとあまあまさんはたくさんありました。 「まだまだたくしゃんあるね!ゆっくちたべりゅよ!」 ***** そしてまりさがにんっしんっから…。 「はぁはぁ…まりさ…ごはん…とってきたよ…」 「遅いんだぜ!ありす!!」 「ごめんね…いっしょに…たべましょ「むっちゃマジうめぇ!!」…」 「ん?今のはおちびちゃんの声なんだぜ?」 「そうなの?おちびちゃんがしあわせーでよかった!」 (おちびちゃんって言えばすぐ元気になりやがるのぜ! ちょろいもんだぜ!) 「ゆゆ?またお腹が減ってきたんだぜ?きっとおちびちゃんはむしゃむしゃし足りないのぜ! ありすはもう一回狩りに行くのぜ!」 「うう…」 ありすの取ってくるご飯を貪り食う毎日。 まりさの思惑通り事が運んでいました。 (毎日同じものを食べてたら飽きてきたのぜ…。 そうだ!またハチミツさんを取ってきてもらえばいいんだぜ! おちびちゃんが食べたいって言えばイチコロなのだぜ!) 「ねぇありす、おちびちゃんがハチミツさんをたべたいってゆぐぐぐぐ??!」 「まりさ!どうしたの!!」 まりさのお腹の辺りに走るジンジンとした痛み。 それはもうすぐ赤ちゃんの産まれることの知らせ。 (おかしいんだぜ!おちびちゃんはもっとゆっくり産まれてくるものだぜ?) 「ゆく゛く゛く゛く゛く゛く゛く゛く゛く゛!!!」 「まりさがんばって!とかいはのおちびちゃんのために!!」 「ゆ゛!ゆ゛!ゆ゛!うばれるう゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!」 ポンッ! 「ゆっくりしていってね!!」 赤ちゃんにしては大きく、まるでまりさのお腹がそのまま赤ちゃんになったかのよう。 「まりさ…これって…」 「ど…ど…」 せっかく産まれたのに喜びもしないで曇った顔をする親たちに、 ゆぅ?と不思議に思う顔をする赤ちゃん。 その頭に、赤いリボンをつけて。 「どぼじでれいぶがうまれでぐるんだぜえええぇぇぇ??!」 「どういうことなの…ゆっくりおしえてね?」 「ようやくおかーさんとおとーさんにあえてれいむうれしいよ!」 「いなかものはだまってて…」 赤ちゃんはどちらかの親に似た姿で産まれてくるもの。 まりさとありすではれいむに似た赤ちゃんが産まれてくることはありえません。 つまり…。 「ありすのしらないあいだにれいむとすっきりしちゃったの…?」 「これには…深いわけが…」 「しりがるでとんだいなかもののまりさね!!」 まりさはれいむとの赤ちゃんを育てるためにありすを利用したのか!! こんなやつのために毎日ご飯をあげていたのか!! そんな強い怒りがありすを動かす。 狩りのせいでボロボロに擦り切れたあんよで、 毎日とてもゆっくりしてツヤツヤのまりさを踏みつけます。 ドスッ! ドスッ! ドスッ! 「いだい!いだい!ぶまないで!!まりさをぶまないでえええぇぇぇ!!」 「よくも!ありすを!もてあそんで!!」 出産で弱っているまりさに鍛え上げられたあんよが容赦なく襲いかかります。 ドスッ! ドスッ! ドスッ! 「これいじょうぶまれだらまりざじんぢゃうううぅぅぅ!!」 「あらそう、どうぞくごろしはゆっくりできないわ」 ありすがあんよをどけるとそこには辺りに餡子を撒き散らして平らにへこんでしまったまりさがいました。 「ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛っ…ゆ゛っ…」 「いなかもののまりさはそこでずっとゆっくりしてなさい!!」 ありすはそう言い残すと巣を出て行ってしまいました。 ***** そして巣に残されたまりさと産まれたばかりのれいむ。 「ぐ…る…ぢ…い…」 「ゆゆ?おかーさん!おとーさんはどこへいっちゃたの?」 「なんで…お前が産まれて来るんだぜ…?」 「ちょっとおなかのなかでゆっくりしすぎたよ!」 「ゆっくりしすぎでごめーんね♪」 「そんな…」 「ゆゆ?れいむゆっくりりかいしたよ! おとーさんはおかーさんとおうまさんごっこしておなかがへったからかりにいったんだね! おかーさん!こんどはれいむとおうまさんごっこしようね!!」 「まりさは…おまえなんて…うみたく」 ボイン! ボイン! ボイン! 「ぼいーん!ぼいーん!しあわせ~♪」 「ゆべっ!ゆべっ!ゆべっ!」 たとえ産まれたばかりでも十分ゆっくりしてきたので、 それなりのサイズを持つ赤れいむの与える衝撃。 それはありすに踏まれて満身創痍のまりさにとどめをさすのに十分でした。 「ゆ゛っ…………………ゆ゛っ…………………」 皮が黒ずんで、目から口から、まりさの持つ穴すべてから餡子がもれていきます。 「あそびつかれたかられいむゆっくりおなかがへってきたよ!」 ゆゆ?こんなところにあまあまさんがあるよ!おかーさんゆっくりしてるね!」 「ぞれは…まりざのあんござん…」 「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~♪」 「あ゛あ゛あ゛…もっど……ゆっぐぢ………―――」 赤ちゃんを利用してきたまりさは、 その赤ちゃんによってずっとゆっくりしてしまいました。 ***** 「おなかいっぱい♪ ゆゆ?れいむなんだかねむくなってきたよ! あしたもいっぱいゆっくりしようね!おかーさん!!」 ようやくお母さんに会えて幸せいっぱいの赤れいむ。 これからどんなことをしようか。 (おかーさんのなかでうまれたらたくさんゆっくりできることがあるってれいむしってるよ。 すりすり、ぺろぺろ、むしゃむしゃ、くんくん、ぱしゃぱしゃ、ころころ、そろーりそろーり、 ほわほわ、すぃー、おそらをとんでるみたいー………ゆっくりたのしみだね!) ここから始まる素晴らしいゆっくり生活に心躍らせる赤れいむは、 両親を失ったことにまだ気がついていませんでした。 終 ***************************************************************** これぞまさしくまりさの誤産。 ………。 このたびは本当にありがとうございました!
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/656.html
「まりさ!?まりさ~!?」 れいむの呼びかけに巣の横から出てきたまりさはあくびをしながら出てきた。 「ゆ~…なぁに、れいむ?」 「まりさ!かりにいかなくていいの!?ごはんをたべなくちゃゆっくりできないよ!!」 巣の中のまりさにれいむが話しかける。 「ゆふぁ~…なにをあわててるの?まりさはべつにおなかへってないからいらないよ!」 大きなあくびをして外にいるれいむに話しかける。 「ゆ~ん…じゃあれいむはいくね!みんなもうおそとにいるんだからまりさもきてゆっくりしようね!!」 そういってれいむはぽよんぽよんと跳ねていく。れいむがいなくなった後にまりさは這い出るように外に出てきた。 ここはゆっくりの群れだ。どすサイズのゆっくりはいないがみんなで決めたリーダーのもとでみんながゆっくりと暮らしていた。 「じめんさんがぬれてるよ…きょうはかりにいきたくなかったのに~」 まりさはため息を吐いて辺りを見回す。 底部に僅かに感じる水分。成体になりかけのまりさは平気だが昨日はそれなりの雨が降っていた。 森の中の開けた広場には子供たちが全然いない。ゆっくりにとって水気はとても危険なもので子供たちは安全な巣の中から出てきてはいないようだ。 「ゆゆ~ん♪きょうはだれもいないね!かりにいくにはいいひだったね!!」 うれしそうに体を捻らせてまりさは今の喜びを表した。 「それじゃあかりにいくよ!!ぼうしさん、きょうもがんばってね!!」 上を向いてまりさのトレードマークである黒い帽子に話しかける。 うれしそうに跳ねてまりさは森の中に繰り出していった。 「ゆーん!!おいしいきのみさん!!ゆっくりおちてきてね!!」 「むきゅ~、きのみはどうしておちてこないのかしら!?」 「れいむにくわれるためにゆっくりおちてきてね!!きのみさん!!」 森の中にある一本の木の下で様々なゆっくりが木の枝を見つめていた。 「ゆ!きのみさんがおちてきたよ!!」 「とかいはなわたしたちのために、ゆぎゃん!!」 そうしていると見つめていた木の枝に生えていた赤い木の実が落ちてきた。 成体のゆっくりの半分にもなるその木の実は少しそこがへこみながらもそこに堂々と紅く鎮座している。 ありすの頭部に直撃したがやわらかい木の実だからカスタードを吐くこともなかった。 森に自生している木の実を生やすこの木にはいつもゆっくりが群がる。 甘くて綺麗な木の実ではあるがその代りにとても高い所にあったためこうして落ちてくるのを待つしかなかったのだ。 「ゆゆ!!まりさのきのみなんだぜ!そいつをゆっくりよこすんだぜ!!」 「なにいってるの!!?これはみんなでゆうがにくおうとしたきのみなのよ!!!」 一匹のまりさがきのみを奪い取ろうとしたのを頭に木の実がぶつかったありすが必死に食い下がる。 ありすはみんなで食おうとしてた木の実を奪われるものかと頬を膨らませていたが、逆に動けなくなったありすから木の実を素早く盗んだ。 「かえしなさいよ!!このいなかものおおおおおおお!!!!」 「ゆっふぇっふぇ!ふぉろいふぉんだじぇ!!(ゆっへっへ!ちょろいもんだぜ!!)」 ゆっくりらしからぬ動きで茂みに逃げ込もうとするが、不意にその茂みがガサッと揺れた。 さっきれいむに怒られていたまりさがその茂みから姿を現していた。 「どくんだじぇ~!!」 「…ゆん!!」 「ゆぎゃ!!?」 そのまま突っ込もうとしたまりさは逆に鋭い体当たりで木の実ごと吹っ飛んでいた。 ごろごろと転がってまりさは後ろから追いかけていたほかのゆっくりに囲まれる。 「なんていなかもののまりさなの!!ゆっくりできないまりさにはきのみさんはにあわなわ!!」 「どうしてそんなこというのおおおおおおお!!」 「うるさいよ!!みんなでゆっくりしようとしたきのみをとるな「はい、もっていっていいよ!!」…ゆ?」 体当たりをしたまりさ木の実をまりさの前に転がす。 みんなが唖然とする中、まりさの行動は早かった。 「ありがたくもらっていくぜ!!」 「ちょっと!!まりさどういうことなの!!?」 まりさが逃げ出すのを引きとめることもなく、ゆっくりはまりさに詰め寄った。 「べつにひとつぐらいいいでしょ!いっぱいあるんだし!!」 「むきー!!わたしたちじゃあれはとれないんだよ!!せっかくおちてきたのにー!!」 他のゆっくりが騒ぎ立ててるがまりさは冷静だった。 木の実が生えてる気は人間でも梯子を使わなくてはいけないほどの高さを誇ってはいるが、隣の木からは離れていない。 ゆっくり二匹分の隙間しかない空間を見てまりさは自信満々に言った。 「ゆっくりきいてね!!いまからまりさがきのみをおとしてみせるよ!!」 「「「ゆゆ!!??」」」 騒いでいたゆっくり達が急に静かになった。 まりさは木のそばに移動すると帽子を地面に置いた。これからすることに帽子は邪魔でしかない。 まりさは体をひねらす。人間風にいえば準備体操のようなものなんだろう。 「…えい!!」 そういってまりさは木に体当たりをした。そして隣の木に向かって飛んだ。 「ま、まりさ!!?」 まりさは体を器用に動かしながら交互に木を登りながらどんどん木の実に近づいていく。 みんながハラハラと見守る中、まりさはついに木の実がなってる枝に上がることが出来た。 「ゆっくりしていってね!!」 登り切れた達成感からまりさはゆっくりとしての決め言葉で嬉しさを現す。 「すごーい!!」「とってもすごいわ!!」「すごいんだねーわかるよー!!」 下からはまりさに対しての賞賛の言葉が聞こえているがまりさはすぐに枝を自分の重さでゆすり始めた。 「みんな!!きのみをおとすからきをつけてね!!」 それをきいてゆっくりたちは木から離れて安全な場所に移る。 「ゆ、ゆ、ゆ!!」 一つ目の木の実が落ちてくる。ふたつ、三つ落ちたところでまりさは枝を揺らすのを止めた。 そしてまりさは上った時と同じように交互に木を飛びながら地面に無事に降り立った。 野生動物もこれでは顔負けだ。 「まりさはすごいね!!いつもねむそうにしているのにやるときはやるんだね!!」 今朝話しかけてきたれいむがうれしそうに笑う。 「みんな!!これでさっきのまりさのことはゆるしてあげてね!!」 「ゆん!わかったよ!!まりさにめんじておとがめなしにするよ!!」 一つだけのものが三つになったのだ。どのゆっくりも嬉しそうに飛び跳ねている。 そして一匹のありすがまりさの帽子を取ってあげようとして驚いた。 「ゆーん!!すごいわ!!なんてりょうなの!!まるでたからばこみたい!!」 まりさのぼうしには木の実やキノコ、そして芋虫などたくさんの餌で埋まっていた。 口に咥えて運んでみたがゆっくり一匹分にまでなりそうだ。 「ありがとうね、ありす!!」 まりさはお礼を言って帽子を受け取ると咥えたまま器用に前転をして帽子をかぶる。 深くかぶるとまりさは木の実に見向きもせず、そのまま走りだした。 「みんなでなかよくたべてねー!さよならー!」 「ありがとうね、まりさ!!ゆっくりありがとー!!」 重さも感じずに颯爽と走ったまりさを見送った後、残ったゆっくり達は木の実の分配に勤しんだ。 家族があるものには多めに、一人身だとしてもしっかりとした量をもらえていた。 一人で一個の木の実を貰ったさっきのまりさよりも彼女たちの顔は嬉しそうだった。 次の日、まりさはまだ日が出始めたころに起きた。 ご飯もそこそこに食べ、巣の中から出て地面を踏んでみて笑顔になる。 「きょうならだいじょうぶだね!!きょうこそ「「まりしゃおにぇーちゃーん!!」」……」 嬉しそうにしていた顔が一気に冷める。ゆっくりと声のする方を向いてみると何匹もの赤ゆっくりが嬉しそうに跳ねながらこちらを目指していた。 ぴょんぴょん。ぴょんぴょん。あ、一匹の赤まりさが転んだ。 「ゆえーん!!いちゃいよー!!!」 「おにぇーちゃん、だいじょうぶ!?ゆっくりなきやんぢぇね!!」 「ゆ…なきやんぢゃよ!!まりしゃはちゅよいもん!!」 土だらけの顔で起きあがる。 「だいじょうぶ?いたいところはある?」 まりさは転んだ赤まりさのところまで来てくれた。 顔は汚れていて、涙を流してはいるが帽子も傷ついていないし大したことは無い。 ほっとしたまりさは赤ゆっくりの顔を舐める。 「ゆ、ゆーん♪」 「いいにゃ、いいにゃぁ!!れいみゅも!れいみゅもー!!」 「だめぢゃよ!!こんぢょはまりしゃだよ!!でしょ、まりしゃおにぇーちゃん!?」 土を舐めとられている赤まりさの嬉しそうな顔を見てほかの赤ゆっくりが騒ぎ出す。 舐めとってあげたのに赤ちゃん達は騒がしい。 このまま逃げようかと思ってると赤ちゃんたちが来た方から大きな声が飛んできた。 「いいげんにしなさい!!まりさがこまってるでしょ!!」 「「「ゆ!!お、おかしゃーん…」」」 鶴の一声で途端に静かになった。 成体のれいむがゆっくりとまりさにちかづいてくる。どうやら赤ゆっくりたちの母親のようだ。 「おねーちゃん、たすかったよ」 「きにしないでね、まりさ!あかちゃんたち!!」 キッと赤ゆっくりを睨む。とは言っても目はかなり優しい。 「「「ご、ごめんにゃしゃい!!」」」 「あやまるあいてがちがうよ!!まりさにあやまりなさい!!」 「「「ごめんにゃしゃい、まりしゃおにぇーちゃん!!」」」 ぺこっと頭を下げる。聞き分けがよいのは教育の賜物だろう。 「こんどからきをつけてくれればいいよ!!ゆっくりしていってね!!」 「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!!」」」 満面の笑みで挨拶をする赤ゆっくり達。 「それにしてもどうしたのおねーちゃん。こんなはやくに?」 「どうしたもこうしたもないよ!!きのうまりさがきのみさんをとってきてくれたんでしょ!!そのおれいにきたんだよ!!」 これにまりさは驚いた。聞いたところによると昨日取った木の実を持って来てくれたれいむがいたという。そのれいむは母親のれいむがまりさと姉妹であることを知っており本人はもらわないというのが分かっているのでこっちにもってきたらしい。 ちなみに巣に迎えにきてくれたれいむである。 「れいむめ…よけいなことを…!!」 「ありがちょうにぇ、まりしゃおにぇーしゃん!」 「あまあまありがちょー!!」 「ゆう…」 まりさは困っていた。何もお礼が言われたいから木の実を取ってきたわけじゃない。 いい訓練になると思ったからのことなのにこれでは気恥ずかしい。 「きょうもいくの?」 「あたりまえだよ!!」 まりさはキッとした表情をする。その顔をみてれいむは口をもごもごとし始めた。 「ゆ!さあ、おたべなさい!!」 れいむは口から昨日の木の実を取り出した。とはいっても一口分だ。それでもまりさからしてみれば十分すぎる量だが。 「ゆ!?おねーちゃん、これって?」 「いったでしょ!おれいをしにきたって!!」 まりさは困惑してた。この木の実の上手さは群れのゆっくり全員が知ってた。 そのためにたまに落ちてくる木の実はみんなで分けあい、その日のうちには絶対なくなっていたものだ。それが目の前にある。 まさか食えるとは思っていなかった突然の事態にまりさは戸惑うが、覚悟を決めた。 「いただきます!!」 そういって口に木の実を放り込む。 甘い、口の中で溶けていくような舌ざわりはまりさの餡子に活力を与えてくれた。 「ありがとうね、みんな!!まりさはもういくね!!」 「きをつけてね!!」 「「「ゆっきゅりいっちぇらっしゃい!!」」」 見送りの言葉を背にまりさはある建物に向かって走り出した。 目指す先は紅魔館。 「すぴー、すぴー…」 「なんだってこんな奴があんなに強いんだろうねぇ?」 所変わって紅魔館の門。 一匹のゆっくりがシエスタをしているのを門番である紅美鈴が横目に見ていた。 ご丁寧に鼻ちょうちんまで膨らませている。 「すぴー、す…ん?」 「お、来たか?」 途端に厳しい表情に変わるゆっくり。近くにゆっくりがいる証拠だ。 美鈴が目を輝かせる。気を操れる美鈴ではあるがゆっくりの気配は読めない。 これから起こることはとても面白いものなのだ。 そしてがさがさと茂みが揺れ… 「きたよ!!めいりん!!」 「じゃお!!」 まりさが現れた。 以前にぱちゅりーに対する演説を書いたものです。 シリーズものです。断片的にしか次の作品は考えておりません!! うわぁ…もうどうしたらよいのやら…書いた以上なんとかさせたいとは思います。 分かりずらいとこや矛盾点、指摘してくだされば次の作品の良い土壌になります。 最後まで読んでくださった方がいればここでお礼を。 どうもありがとうございました。 あまあま、ねぇ・・・ -- 名無しさん (2012-06-13 03 48 31) ↑あまあまはいいんじゃないですかねぇ、子供の弁ですし -- 名無しさん (2012-06-27 09 17 01) 森ののどかさとゆっくりの一生懸命さが良く出ている作品だと思います -- 名無しさん (2012-06-27 09 31 26) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/touhougensounorakuen/pages/13.html
幻想の楽園とは、『人の出会いの場をつくり、住人(仲間)同士や色々な人と様々な話題で皆が楽しく会話できる場所にする』との目標の元に設立された、東方主体の雑談チャットである。実際の会話ではあまり東方の話題は出てこず、東方を知らない人でも気軽に入室できるオールラウンドなチャットとなっている。 このチャットの前身は、東方Project隊。当時は荒らしの撲滅が主な目的だったため、様々な面でチャットに問題が起こりやすかった。特に、二次元隊との対立時には東方隊自体が分裂するという大騒動にも至った。再び1つにまとまった後も問題が多く、遂には管理人が辞任。新しく管理人に就任した風神少女によって幻想の楽園へと生まれ変わった。 また、東方隊も東方蒼龍隊として復活し、ともに東方連盟の一角を担う存在となっている。
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/671.html
注意1原作キャラ出てきます。まあ前の最後でもちらっと出てましたが。 注意2その原作キャラはとても男らしいです。姐御! まりさは相手をじっと見つめる。あの赤い髪のゆっくりに何度負けたことか。 「…ゆ!」 掛け声と主にまりさは走り出す。そのスピードはあまりにも早い。 「じゃおおおお!!」 めいりんも咆哮を上げて身構える。 「ゆううう!!」 ひと際大きいまりさの飛躍。全体重をかけた体当たりだ。当たれば人間でもダメージがあるかもしれない。 「…じゃお!」 「ゆぐ!」 めいりんは最低限の動きで横に跳ね、まりさの体当たりをかわす。 対するまりさは下半身を地面に激突させるが大したことはないようだ。 すぐにめいりんを向いて飛びかかる。 「じゃお!」 今度は空気を体に溜めて防御の態勢をメイリンはとった。 「ゆが!!」 勢いをつけて体当たりをしたまりさが逆に吹っ飛んだ。 皮が厚く、中身がピザまんのめいりんだから出来ることだろう。チーズの力恐るべし。 「ゆぎゃ!ゆぎ!!」 二転三転ころがるも、まりさは足に力を入れてなんとか踏みとどまる。 「ゆぐう…」 「じゃおおん!?」 「まだあきらめないよ!!へんなこといわないでね!!」 まりさはあしに力を入れる。そしてジグザグにめいりんに突っ込んでいった。 「じゃお!?」 今まで見たことがない攻撃にめいりんが焦る。さっき使った防御法は真正面からでなくてはいけない。 それでないとバランスを崩されてしまう。 まりさがぐんぐんと迫ってくる。めいりんはばたついていたからだを低く構え、まりさを迎え撃つ。 低く、低く、足に力を思いっきり溜める。 まりさが考えた対めいりん攻撃法。跳ねる動作の一つ一つがかなりの力を持っている。 そしてあと一飛びというところでめいりんが動いた。 「じゃお!」 ほんの僅かなめいりんの前進。だが力を溜めに溜めていた前進は拳法の一つである正拳突きのように強い力を秘めていた。 そしてまりさの身体に当たるとまりさはさっきの何倍もの長さを転がることになった。 「ゆが!ゆぎぇ!!ゆぎょ!!!ゆうううう!!…ゆ!!」 ごろごろと転がっていたまりさは後ろの木に当たってようやく止まることが出来た。 餡子は全く吐いていない。よほど鍛えているのだろう。 「ゆ…ゆうう…!」 立ち上がろうとするが足に力が入らない。プルプルと震えるだけでとうとう顔から倒れこんだ。 「じゃおおん!?」 「…だいじょうぶだよ。まりさはきたえてるから…」 めいりんがそばに駆け寄ってきてまりさに言葉を掛ける。 まりさの言葉に安心していると後ろから紅美鈴がまりさの前で屈んだ。 「お前さんもよくやるねぇ。動けるかい?」 屈んで帽子を枝で突きながら美鈴は尋ねる。 「ゆう…だいじょうぶだよ、めいりん…」 「じゃお?」 「めいりんのことじゃないよ!!」 がばっと起き上がってぎゃあぎゃあとめいりんに突っかかる。 傷もあるうえに少し震えているが文句が言えるなら一安心だ。 「大丈夫そうだね。来な、体綺麗にしてあげるから」 まりさは土でかなり汚れていた。何度も転がっているのだからまあ当然だ。 立ち上がった美鈴はすたすたと詰所に向かって歩いていく。 まりさとめいりんもその後に続く。 めいりんはしきりにまりさのことを心配していたがその気遣いが今のまりさには気恥ずかしかった。 さほど歩くこともなく詰所に一人(妖怪だから一体?)と二匹は到着する。 そして美鈴が取っ手に手をかけた時二匹が騒ぎ出した。 「じゃ、じゃおお!」「だめだよ、いまあけたら…!」 「ん?」 二匹の方を振り向く形で美鈴はドアを開け、 「「「「「じゃおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」 「ゆあああああああああああああああ!!!!」 五匹のめいりんがまりさに飛びかかった。 「ゆ…!めいりん…!や、やめてぇええええええ!!」 さっきまで戦っていためいりんよりも一回り小さいめいりんたち。 飛びかかるというよりは感極まってすりすりをしているだけだが五匹に囲まれてはまりさは身動きが取れない。 「おお!人気者だね」 「そんなこといわないでね!!は、はやくめいりんたちを!!」 「じゃおお!」「じゃお!」「じゃおじゃお♪」「じゃおん!!」「じゃ、じゃおお!!」 「なにいってるかわかんないよお!!ひとりずつしゃべってぇええ!!」 同時にしゃべるめいりん達を払いのけることが出来ずにまりさはもみくちゃだ。 「やれやれ…ほらお前ら、いい加減にしな。まりさを綺麗にしてやるんだから」 元になった人間言うことなのだからか、ようやくめいりんたちはまりさの元から離れた。 中心部にはさらに汚れたまりさが一匹。ゼハーゼハー言ってるが元気そうだ。 「まあ災難だったな」 そういって美鈴は詰所の中に入る。そして桶と柄杓を持って来る。 「ほら、顔上に向けな」 桶に入った水をまりさにかける。 「ゆゆーん♪」 ちょろちょろとした水はまりさについた汚れを洗い流した。 そしてまりさは最後にブルブルっと身震いし、 「すっきりー!!」 これで終了。 「それにしてもお前は懲りないね?」 「まだまだだよ!かつまでなんどでもくるよ!!」 「じゃおおん!!」 「いったね!!?かちにげしないのをこうかいするよ!!」 めいりんの一鳴きにまりさは突っかかる。 微笑ましく見つめていた美鈴だったが空をみてはっとした。 「まりさ、そろそろ帰れ。日が暮れてしまう」 「ゆ!?」 空を見ると確かに日が傾き始めている。 「ありがとう、めいりん!じゃあまたね!!」 ぽよんと跳ねて来た道を戻ろうとする。 「まりさ、これ持って行きな」 小さな包みを美鈴は投げる。 「ゆ!」 それを難なく口にくわえるとこれまた器用に帽子の中に素早く入れた。 「じゃあね!…めいりん!!かならずかつからね!!」 「じゃお!!」 うれしそうに胸を張るめいりんを悔しそうに見てまりさは今度こそ帰ってゆく。 「「「「「じゃおおおおおお!!」」」」」 「またねー!!」 姿が見えなくなるまで見送り、全員が詰所の中に入ると不意に美鈴は戦っていためいりんに話しかけた。 「あれで元ゲスね…今となっちゃ信じられんな」 「じゃお!!」 「おお、やっぱりそう思うよな?」 談笑が詰所に響く。 「…これはどういうことかしらねぇ?」 所変わってここは紅魔館門前。 静かな門に一人、一人で立っている女性がいた。 青筋を浮かべながら、メイド長咲夜は呟いた。 「門の前には…門番がいるはずなのに…」 空気すら凍りそうな冷笑。その殺気に近いそれは触れたら人を簡単に殺せる。 そしてどこからともなくナイフを手に携えていた。 今日のお仕置きはかなり酷そうだ。 かなり時間が空きましたことをここでお詫びします。 ノリで書いた結果がこれだよ!! もう少しだけ続けさせてください。後生ですから。 あとこれは自分が考えているもう一つの物語のサイドストーリーです。 構想を練ってたらこれ単体でもいけるなと思い書いてみました。 最後まで読んでくれた方は出来れば感想をください。 分かりずらいとこや矛盾点、指摘してくだされば次の作品の良い土壌になります。 最後まで読んでくれてどうもありがとうございました! 名前 コメント