約 1,737,438 件
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/1309.html
514 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/09(木) 11 07 16 ありそうでなかったRedAlert3とのクロスです。 515 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/09(木) 11 07 54 20XX年、日・英・欧間の長年続いた緊張が緩和され、 新しい友好関係を築こうとしていた各勢力の平穏は、突如打ち破られた。 ロシア中部、通称モザイク・ロシアに出現したゲートから、 巨大戦車や重武装飛行船を軸とした謎の大軍が出現したのだ。彼らは自らを『ソビエト連邦軍』と名乗り、 中部に割拠する軍事政権を圧倒的戦力で次々と制圧。その勢力を東西へと拡大させていき、 ついにドイツを中心とした欧州連合の構成国、ロシア連邦(通称西ロシア)に迫った。 提督たちの憂鬱 クロスSS ~Red Alert!!!~ ロシア連邦の首都モスクワはクレムリン。 ソビエトが崩壊した今にあっても、この場所は権力者の居城である。 「プーチン首相!『ソ連軍』は………」 「予想はついている。国境線を突破されたのだろう?」 半ば恐慌状態にある将官達に対し、西ロシアの首相ウラジミール・プーチンは冷静そのものだ。 参謀らは急いでロシア連邦全土の地図を広げる。 「敵は南部、中部、北部の三箇所で一気に突破をかけてきました。 戦術級ミサイルによる徹底した準備攻撃の後巨大戦車で突撃、文字通りの力技です」 516 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/09(木) 11 08 37 その後も軍からもたらされる情報の分析が続くが、 そこで出された結論は絶望的なものだった。自称『ソ連軍』の使用する兵器は、 此方のそれを遥かに上回る技術力で作られているのだ。 「また、ドイツ軍はウクライナ救援を優先しています。それ以外の国は自国領に引篭もりました」 その上孤立無援と来た。会議室を沈黙が包む。 ………その沈黙を破ったのは、他ならぬプーチンだった。 「………ドイツに『V3』―――核ミサイル―――の使用を打診する」 「「「な……………!?」」」 プーチンの言葉に誰もが凍りついた。 『V3』とは、欧州連合が枢軸国と呼ばれていた時代、日本の弾道ミサイルに対抗して、 欧州連合構成諸国で共同開発された報復用核弾頭ミサイルの呼称だ。 その発射基地『アヴァロン』はかつてオーストリアだった地域の奥地に隠されており、 連合構成国のどれか一国でも核攻撃を受けたらこの基地の弾道ミサイルが放たれる。 核兵器に関しては先に実用化した日本側の方が高性能のものを保有しているが、 腐っても核兵器。欧州のそれとて絶大な破壊力を秘めた神の火である事に変わりは無い。 事実、この『V3』の存在はこれまで日本との間の相互破壊確証の立役者となってきた。 それを、今ロシアを、そしてすぐに世界をも脅かすだろう『ソビエト』に使おうというのだ。 517 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/09(木) 11 09 13 「……いくら何でも、それだけは!あの桁外れの技術力を鑑みるに、 あのソビエトを名乗る連中は、核兵器も実用化していると考えるのが当然です。 一旦核攻撃の箍を外してしまえば、今度は此方が核の炎に焼かれます!!」 「それに『V3』は連合を守る槍である以前に、ドイツを守る槍です。 彼らがそう簡単に手放すとは思えません!首相、どうか考え直して下さい!」 プーチンの考えに、軍幹部たちは口々に反対する。しかし彼の意志は固かった。 「参謀総長、これまで連中が核攻撃をした事は?」 「…………いえ、一度も」 「諸君らは連中の報復攻撃を恐れているようだが、私はそれは無いと思う。 奴らはあれだけの技術力を持っていながら、戦略核は愚か戦術核すら使用していないのだろう? これは研究リソースを核ではなく通常兵器に振り向けている事の証拠だ。 それに、陸軍の主力であるレオパルトⅡが易々と捻り潰されている現状、 我々が連中の侵攻を止めるには……核攻撃しか手段が無い……!」 かつてNKVDで辣腕を振るい、スペツナズナイフを手足のように使いこなした男、 彼の背後にはただならぬオーラ、強者にしか持ちえぬ威厳がざわ…ざわ…と渦巻いている。 その威圧感に気圧されて部下達が沈黙すると、彼はドイツ連邦首相とのホットラインを開いた。 ~to be continued…?~ 518 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/09(木) 11 09 44 投下終了です。 ソビエト軍……一体何者なんだ(棒)
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/1302.html
120 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/11(土) 15 56 29 『雪中の奇跡』として知られるフィンランドの冬戦争。 これを語る者の多くは決まって、フィンランド軍の勇戦、ソ連軍の無能、 一大義勇軍を派遣した日本と彼らの強力な兵器、武器を語る。 しかし、忘れてはならない。 冬戦争を戦ったのは、日芬ソの人々だけではない事を…… 提督たちの憂鬱 ~冬戦争こぼれ話~ フィンランド中部、コッラ。日本の支援は主要防衛線であるマンネルハイム線が主だったが、 この地にも少なくない梃入れが為されていた。そのためコッラの陣地は赤軍の準備砲撃によく耐え、 そして強襲をかけた敵兵に見事なまでの返り討ちを喰らわせた。 「なんて一方的な戦いだ……」 イギリスから来た義勇兵が、赤軍の血で染まった陣地を見渡して呟く。 実際、ここで行われた戦闘は彼の言葉通り一方的なものだった。 確かに赤軍の準備砲撃は猛烈だった。 しかし、その砲撃で破壊されたのは最前線の鉄条網や対戦車障害物ぐらいのもので、 フィンランドの狙撃兵達が隠れるベトン製陣地には傷1つ付けられなかったのだ。 そして最悪な事に、突撃が始まるまで赤軍の誰1人としてその事に気付けなかった。 巧妙な冬季迷彩が施されていたのは、何も軍服や戦車だけではない。 上空からエンジン音がする。イギリス人が空を見上げると、 頑丈そうな双発機が上を通過するのが見えた。DC-2。ダグラス社製の輸送機だ。 121 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/11(土) 15 57 24 「スウェーデン人の義勇兵だそうだ。確かローゼンとかいったかな。 日本人は彼の事をローゼン閣下(※1)と呼んでいるが」 DC-2の通過を見届ける彼の隣で、誰かの声がする。 フィンランド兵だ。日本式の冬季迷彩服を着て、日本製の自動小銃を持っていた。 「いやあ、すごい戦いだったな」 イギリス人はフィンランド兵の戦いを実際に見ていた訳ではないが、そう言わずにはいられなかった。 イギリス本国では、冬戦争の下馬評はソ連の圧勝であった。しかし、彼らフィンランド兵、フィンランド人は、 日本人の大きな助けがあるからとはいえ、それを完璧に覆してしまっている。その事実が彼に口を開かせた。 「ああ、いや、僕は特に大した事はしてないよ。ああも激しい攻撃を真正面から受けると、 この銃でもせいぜい100人ぐらいが関の山(※2)だったからね」 「ひ、100人!?」 イギリス人は思わず目を丸くした。一騎当千の英雄というのは物語の中で目にした事があるが、 彼は現実に、それも敵が総攻撃をかける中、お世辞にも命中精度の良くない自動小銃で"せいぜい"100人も倒したというのだ。 122 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/11(土) 15 57 56 「見事な勝利だと感心はするがどこもおかしくはない。あの程度の単純な動きしかできない相手なんか、 その辺の猟師でもワンショットキルできるぞ?むしろケワタガモ相手の方がずっと"やりにくい"だろうさ」 驚き呆れるイギリス人を見て、フィンランド兵は謙遜しきりだ。 イギリス人は彼の話を聞いている内に、自分がおとぎ話の世界に入り込んだのではないかと疑ってしまった。 それほど2人の話は現実離れしていたからだ。スコープを一切使わずに狙撃したとか、 150mの距離から1分間に16発の射的に成功しただとかいう話を聞けば、誰もがそう思うだろう。 (……一体、何人のソ連兵が奴に血を吸われてきたんだかな) 所々に赤い水溜りができた雪原を眺めながらそんな事を考えていたイギリス人はしかし、 気を取り直して人間離れした、いやむしろ怪物と呼ぶべきだろうフィンランド兵に尋ねた。 「ところで、ここで会ったのも何かの縁だ。よければ名前を教えて欲しいのだが」 イギリス人の質問に、フィンランド兵が答える。 「僕はハユハ。シモ・ハユハだ。君の名は?」 「私はクリストファー・リー。見ての通りイギリス人だ」 「そうかい。よろしくな、"戦友"リー」 2人は後に"殺戮の丘"と呼ばれる場所で、がっちりと握手をした。 ~ f i n ~ 123 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/11(土) 15 58 53 (※1) カール・グスタフ・フォン・ローゼン。スウェーデン貴族であり、"あの"ヘルマン・ゲーリングの親戚でもある。 冬戦争時はDC-2旅客機を購入、爆撃機として改造すると、フィンランド側義勇兵として参戦した。 制空権がフィンランド側に大きく傾いていたのを良い事にソ連軍の飛行場だけでなく補給基地、戦車部隊まで単独で爆撃。 敵戦闘機に追われた時はアクロバット飛行でこれを出し抜くなどして史実を遥かに上回る活躍をする。 彼の機体には日本人のアドバイスによる空色迷彩が施されており、「スカンジナビアの亡霊」として恐れられた。 また、日本義勇軍の1人が、彼が貴族だという事を知って何故だか知らないが「ローゼン閣下」という渾名を付け、 それが口コミによって色々な所に広まり、将官職を持たないにも関わらず「ローゼン閣下」と呼ばれるようにもなってしまった。 他にもパイロットという事で日本の航空会社にCM出演依頼を受けるなど、日本との関係が深いスウェーデン人の1人である。 (※2) 日本がフィンランドに高性能狙撃銃や自動小銃を持ち込み、フィンランド兵1人あたりの戦闘力が底上げされていたため。 身も蓋も無い言い方をすれば、「他人の戦果が上がった(あと日本人も来た)せいで獲物が少なくなった」ためでもある。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/1118.html
16 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/06/03(日) 14 10 16 氷山空母。 史実において、所謂『英国面』の象徴の1つとして奉られているこの兵器は、 夢幻会による改変を経た世界においてはそもそも検討すらされずに第二次大戦が終わってしまい、 知る人ぞ知る未完成珍兵器、どころか荒唐無稽な空想兵器となってしまった。 しかし………… 提督たちの憂鬱 支援SS ~氷山障壁~ 事の始まりは、大英帝国陸軍が欧州枢軸軍の英本土上陸を想定した兵棋演習での事だった。 まず兵力差が圧倒的(※1)、防衛すべき前線が広い(※2)、兵器の性能差もある(※3)、 という三拍子揃った理不尽な状況の中で、幕僚の1人が「こんな戦争あるかっ!」という主旨の事を叫び、 その左手で大ブリテン島の地図上にある兵棋全てを机の下へ払い落としてしまった。 その時これを見ていたもう1人の幕僚が、兵棋が呆気なく床に叩き付けられる様子を見て呟いたのだ。 「何も、まともに連中の相手をする必要は無いのではないか………?」 17 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/06/03(日) 14 11 29 いくら準備砲撃や航空攻撃が強力だとしても、敵地の制圧は歩兵の仕事である。これは上陸戦でも変わり無い。 そして歩兵がその仕事を果たせなければ、それまでに消費された何百万ポンドの砲弾、爆弾は無駄なものとなるだろう。 そう言ってから彼は仲間達に、こう提案した。 ――――我々には敵艦や敵機を撃滅する義務は無い。奴らの上陸用舟艇を『寄せ付けない』方法を考えるだけでいいのだ。 『プロジェクト・トラファルガー』の始まりであった。 当時の上陸用舟艇は、その他の艦艇に比べて極めて小型である。 史実を見ても、旧日本軍の大発動艇(通称大発)は全長14.8m、全幅3.3m。 戦車揚陸艦として活躍したアメリカ軍のLST-1でさえ全長100m、全幅15.3mと、 日本海軍の松型駆逐艦(全長100m、全幅9.35m)が横に太った程度でしかない。 だが、この『小さき者たち』の着岸を阻止するのは意外に難しい。 砂と石とでは砂の方がより隙間の少ない容器を要求されるのと同様、 上陸用舟艇の着岸を阻止するには、より軽量で複数配備できる火砲の方が都合が良い。 この種の艦艇は軽装甲な事が多く、砲一門当たりの攻撃力はさほど重要ではないのだ。 むしろ小型艇相手に問題となるのは砲の射数、散布界、装填速度であると言えよう(※4)。 しかしこれらを満たす軽量な火砲は戦艦などから一方的にアウトレンジ攻撃を受けてしまう。 これに対してイギリス軍が出した答えの1つがかの有名な『パンジャンドラム』だ。 だが、イギリス軍はパンジャンドラムだけでは満足する事ができなかった。 18 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/06/03(日) 14 12 13 イギリス軍がパンジャンドラムに対して投げつけた問題点は2つある。 1つは保管に必要とする体積があまりに大きい事。もう1つは一回発射したらそれっきりだという事だ。 前者はともかく後者はあまりにわがまますぎるのではないかと思われるが、 イギリス軍は後者を特に問題視していた。確かにパンジャンドラムは強力ではあるが、 その強力さとは数を投入して初めて発揮されるものだ。また、敵の上陸作戦が1回で済むなら良いが、 2回、3回と続くようであれば(※5)前者の問題と相まって攻撃効率の維持が難しくなる。 そこで考えられたのが『海上版阻塞気球』であった。 本来の阻塞気球は第二次大戦期に、敵機を高射砲の射界に追い込む目的で作られた物だが、 敵機がワイヤーカッターのような対策を取り出し、また爆撃の形がより大規模になるにつれ陳腐化。 現在では殆ど御守りにしかならないような状態だった。だが、空中という三次元空間では効果の低いこれも、 海上という(ある意味での)二次元空間ならば大きな効果を出せるのではないか、と考えられたのだ。 この案はすぐさま採用され、素材の検討が始まった。 まず候補として上がったのが木材、金属、コンクリート、氷の4つである。 しかし木材は強度が、金属は製造コストと浮力が、コンクリートは浮力が、 氷は低い融点と強度が障害となり、全候補のいずれも『海上版阻塞気球』の素材としては不適格とされてしまった。 『プロジェクト・トラファルガー』はあっという間に暗礁に乗り上げてしまったのだ。 だが、1人の科学者、ジェフリー・ナサニエル・パイクの登場によって全てがひっくり返った。 19 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/06/03(日) 14 14 13 彼が軍に対して持ってきた素材は、彼オリジナルの『パイクリート』という物だった。 このパイクリートは圧縮強度、引張強度、融点において氷に勝り、密度においてコンクリートに勝っていた。 さらには材料が水とパルプという、簡単に確保できる素材であるという多くの利点を持っており、 軍のお偉方は(製造が)早い、(コストが)安い、(強度が)強いという三拍子揃ったこの素材を喜んで採用した。 ジェフリー・パイクは採用の報を受けるとすぐさま軍と協力して、 横7ヤード(約6.4m)、奥行き5ヤード(約4.6m)、高さ3ヤード(約2.7m)の、 パイクリート製の直方体を20個用意(機密保持のためこれらは黒く塗装し、融解が早まるようにしていた)。 これをスカパフロー沖のある海域に流して、そこを上陸用舟艇に見立てた魚雷艇に航行させ、 このパイクリート製障害物がどの程度航行の障害となるかを実験した。 実験の後で魚雷艇歴10年以上のベテラン艇長から返ってきた答えは、 「あれ(障害物)は黒く塗ってあるせいで海上だと視認し辛く、非常に困った。素人なら尚更だろう。 しかも意外と固くて、ぶつかると船体が大揺れする。まるでクジラの群れの中にいるようだったよ」 というもので、海上障害物が効果的である事、しかも黒い塗装の意外な有効性まで明らかになったのだ。 実験結果に喜んだイギリス軍は、この『対小型艇用障害物』の正式採用を即決。 かくして、これには『氷山障壁』という2つ名が与えられ、欧州枢軸に対抗する盾の1つとなった。 史実では『氷山空母』の名を与えられながら世に出る機会を失った素材、パイクリート。 そのパイクリートが、この世界では『氷山障壁』と名を変えて世に出る事を許されたのは、何かの偶然だろうか。 それとも、史実の世界においてどこまでも不遇であったパイクリートの、その怨念の為せる技なのだろうか。 それは誰にも分からない………… ~ f i n ~ 20 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/06/03(日) 14 14 45 ★★★解説★★★ (※1) イギリス1国と、独仏伊西の4カ国を中心とする枢軸同盟では必然的に動員可能人数にも大きな差が出て来る。 さらにドイツに代表される全体主義政権はその気になれば奴隷を軍事目的に使う事や強制徴兵も可能であるが、 イギリスは日本との関係のため、また国民の反発を防ぐためそのような事はできない。 前途に暗雲が立ち込める大英帝国にとって、国民不満とは死兆星の輝きと同義である。 (※2) 英国の対枢軸前線といえばドーバー海峡沿岸がよく挙げられる。 勿論軍事的、経済的な観点から見れば枢軸軍にとってはドーバー海峡からの上陸が最も効率的だが、 グレートブリテン島にはそこ以外に上陸可能な地点が無い訳ではない。史実仁川上陸並みの奇策ではあるが、 枢軸国にとってはイギリス本土の1エーカーでも自国の占領下に置けば英国に対する勝利宣言が可能となる、 という政治的な問題からイギリス軍はドーバー以外への攻撃の可能性も考慮しなければならなかった。 (※3) イギリスはカナダ経由で多くの旧米国人技術者を招聘していたが、 兵器はこれ以外にも基礎工業力、各種資源、近代戦のノウハウなどを土台として成り立つものであり、 これらを各同盟国とある程度共有できる枢軸とは、開発速度に差がつくのは避けられない。 (※4) 射数は多方面から同時に押し寄せる舟艇を迎撃するために、 散布界は小さな船体に正確に弾を当てるために、装填速度は素早く次弾を発射することで、 上陸用舟艇が浜辺に入り込む隙を無くすためにそれぞれ必要である。 (※5) 枢軸国に複数回の大規模上陸作戦はできないのでは、と考える者もいたが、 本命の上陸の前の陽動作戦などは十分に有り得、また枢軸軍にも可能だったため、 万が一パンジャンドラムを『空撃ち』してしまった際の対策は必要とされた。 21 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/06/03(日) 14 15 17 ★★★ジェフリー・パイクとパイクリート、そしてプロジェクト・トラファルガーにまつわる余談★★★ 軍隊は金喰い虫である。であるからして、完全に防御用の、言わば消極的兵器である氷山障壁に、 できる事なら余り金を掛けたくない、というかタダで済ませたいというのはイギリス軍の偽らざる本音だった。 これを理解したジェフリー・パイクは、そこで驚くべき対策を行ってイギリス軍の度肝を抜いた。 まずジェフリーは北欧はスウェーデンに『パイク製氷会社』を立ち上げた。 業務用氷の製造がこの会社の主要業務だったが、同時にパイクリートも生産し(パイクの発明品なので誰も文句は言わない)、 保冷材という名目でイギリスへ輸出していたのだ。勿論真の目的は『氷山障壁』に使うためである。 これによりイギリス軍は、パイクリート製造施設等を作る手間から解放され、自力で作るより安価にパイクリートを得る事ができた。 そしてジェフリー・パイクは幸運でもあった。彼は各地で自身の製氷会社への投資を募ったが、 その際に『当社ではキャンペーン用に"氷で船を作る"計画も立てています』と投資家らへ紹介した。 本人はこれを、投資家の耳目を引くためのハッタリと考えていたが、一部の日本人投資家がこれに異様に食いついてきた。 さらにこれを見た他国の一部投資家も、「あの日本人が食いつくなら何かあるに違いない」と俄然興味を示し、 結果としてパイクが最初目標とした額よりも多くの投資が集まったのだ。 この事態に対してパイクは、信義を重視する日本人のために『パイクリートで船を作る』事を正式に決定。 色々な困難があったものの、パイクリート製足漕ぎボートから始まって、パイクリート製ヨット、 最終的にはパイクリート製のモーターボートまで到達した。パイクリート製モーターボートの進水式には、 倉崎重工の取締役の1人まで見に来るという騒ぎになり、パイクとパイクリート、 そしてパイク製氷会社の知名度はあっという間に高まっていった。 パイクリートはこのようにして人々によく知られる存在となったが、 欧州枢軸はついにこれを対小型艇用障害物として使うという発想が出てこなかった。 また、イギリス側もプロジェクト・トラファルガーを機密扱いにして枢軸側から情報を堅守していた。 この計画の全容を最初に知ったのは意外にもフランス諜報機関なのだが、 調査に関わった元スパイによると「当時の上司はプロジェクト・トラファルガーを新型艦開発計画だと思い込んでた」 という事だ。また、当人は「真相を知った時、我々は虚無感のような物を感じたよ。トラファルガー海戦といえば、 フランス人のプライドを相当に傷つける出来事だ。一体誰が、こんな言葉をただの製氷作業に付けると思うんだい? 上司は計画の真相を手に入れる事であの海戦の意趣返しをしたがってた。だが結局意趣返しされたのは―――我々だった」 とも語っている。何にせよフランス諜報機関が無駄な苦労をさせられた事には変わりない。 そして、パイクリートは今でもイギリスの一部で、保冷材として使われ続けている。 しかしフランスで、パイクリートを保冷材として使う者は1人も現れる事は無かった……… ~ 余談おわり ~
https://w.atwiki.jp/ipaq112/pages/11.html
ファイラ GSFinder テキストエディタ 〇号テキストエディタ (ZERO Go Text Editor) レジストリエディタ Tascal Regedit(TRE) PHM Regedit Fdcsoft TaskMgr レジストリ編集支援 PocketTweak レジストリエディタを使うことなしに、 ちょっとマニアックな設定を簡単に変更 するための小さなプログラム Pocketの手 Windows Mobile の使い勝手をさらに向上する設定を簡単に行う事が出来ます スケジュール管理 月見 Offisnail Date タスク管理 WkTASK GSPocketMagic++ Inclose メモ Offisnail Note TOMBO PIM さいすけ Pocket Informant インプットパネル Happy Tapping Keyboard ブラウザ Opera NetFront 2chブラウザ ぽけギコ q2chwm ニャー 2++ mixiブラウザ MZ3 メーラ nPOP Qmail3 メディアプレイヤー TCPMP CorePlayer Gsplayer メッセンジャー Windows Live Messenger for Mobile Skype 関数電卓 Eval 電卓 RealCal 辞書 EBPocket ストップウォッチ sinPocketStopWatch キャプチャ Ktcapt その他 FileDialogChanger 標準のファイル選択ダイアログ入れ替えを行うツール Googleマップ 端末でhttp //www.google.com/gmm/に直接アクセスしてインストール Pocket Mapple Digital 地図 GPSPanel GPSから得られる様々な情報を表示する dySchedule Today に PocketOutlook の「予定表」の一覧を表示するソフト rlCalender 文字サイズ・色を設定出来る時刻/日付/カレンダーがワンセットのTodayアイテム インストールや使い方は つまっちの用法用量は正しくお使いください。 ぜろさんのTodayに時計とカレンダーを設置! Locpost 位置情報ユーティリティ pordr インターネットに接続し最新の都道府県別の雨雲レーダー画像を表示 simpleHTTPntp ntpクライアントもどきです。(独)情報通信研究機構のntpのページにアクセスして時刻を取得し設定します。 未分類 byToDo consolex MenukeyHelper2 pproxy QuickMenu2.7 Spb Diary2 Spb PocketPlus TMEdit UKTvlist WKTask XnView xpdf YTaskMgr StopTime(時計)
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/2419.html
685 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2014/05/22(木) 22 44 08 (「あなたは何故砂漠に引きつけられるのですか?」と訊ねられて) ――清潔だからだ。 ――映画『アラビアのロレンス』より ネフド砂漠に夕陽が沈む。砂礫は陽の光を受けて、これから流れる血を想起させるような鈍い赤色を示していた。 1917年7月、アカバへの道半ばにキャンプを張っているのは老帝国オスマントルコに反旗を翻すアラブ人達の集団だ。 いや、アラブ人だけではない。そこにはアラブ人と共に、イギリス人、そして何十人かの黄色い肌の男達もいた。 提督たちの憂鬱 支援SS ~熱砂と熱意~ 「ホウェイタット族が加わってくれたのは良いが、元からいた部族との仲はまだまだ良いとは言えないな」 「アラブは昔からそういう所です。そう、最初の十字軍の頃からね」 小さな日の丸の旗が立てられたテントで、イギリス人と日本人が1対1で話し合う。 日本人の"最初の十字軍"という言葉に、イギリス人の方はやれやれといった表情で肩をすくめた。 「しかしアカバ攻撃を目前に控えた今、不安定要素はできるだけ排除しておきたい。 私も君もアラブの人々とは長い付き合いになるが……君の国でも"一寸先は闇"と言うだろう?」 「そうですね……確かに彼らの中には、沢山の諍いや争いが地層のように積み重なっている。 しかも個人や家族、一族のレベルで……となれば」 「その"地層"を持たない我々が、彼らに対し指導力を発揮せねばならない、か」 我が意を得たり、と膝を叩く日本人。イギリス人は半ば自嘲気味に微笑むと、彼をじっと見つめた。 「我々――いや、もしかすると君が一番適任かもしれないぞ。なにせ私はイギリス人だ。 アラブの"地層"には、イギリス人についての事もしっかり刻み込まれてるだろうから」 「ロレンスさん、ご謙遜を」 第一次世界大戦が始まると、イギリスはオスマントルコがスエズ運河へ侵攻するのを防ぐため、 トルコの支配下にあるアラブ人達が反乱を起こすように仕向けた。フサイン=マクマホン協定の締結を始めとして、 イギリスは(様々な問題を抱えながらも)これに成功し、2人の男をアラブへ向けて送り込む。 1人は軍人にして考古学者のトーマス・エドワード・ロレンス。そしてもう1人が、 日本人でロレンスの同期の友人だった。イギリスは他にも多くの支援をアラブへ送っていたが、 この2人はいずれもアラビアやアラブ人に関して深い知識を持ち、反乱の頭脳として機能する事を期待されていた。 日英同盟に従い参戦した日本も、この日本人を助けるため少人数の選抜部隊を派遣している。 686 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2014/05/22(木) 22 44 53 彼らはイギリスの期待に十二分に応え、アラビア各地で巧みな非正規戦を展開しトルコ軍を苦しめた。 特にヒジャーズ鉄道は集中的に破壊され、トルコは鉄道沿線へ彼らの十数倍の戦力を展開させる事を強いられる。 これは幾つかの戦略上の拠点を手薄にせざるを得ない事を意味し、ロレンス達もこの事をよく分かっていた。 その戦略上の拠点こそ、他ならぬアカバだったのだ。 「謙遜などしていないよ。私はただ、日本はアラブの良き友人になれるだろうと思って――」 ロレンスの言葉を銃声が遮る。 「外だ!」 テントから跳ね出る2人。2人が見たものは、胸から血を流して死んでいる1人のアラブ人と、 そしてライフルを手に立ちつくすもう1人の、別な部族のアラブ人だった。他のテントからも何事かと野次馬が集まる。 「いったい何があった!?」 「奴はハイサムの銃を盗んだ!それを咎められて逆上したんだ」 「違う!これは元から俺のものだった。因縁を付けられて奪われそうになったから」 撃たれた側――ハイサムと同じ部族であろう男と、銃撃した側の主張は真っ向から対立する。 「まあ待て、その銃はイギリスから配給されたものだな?ちょっと見せてみろ」 撃った男からライフルを受けとるロレンス。ロレンスと日本人達はこのような事態を予期して、 配給する武器には部族ごとに固有の印を付けていた。2人は印の一覧とライフルの印を照合する。 「…………盗品ですね」 「さて、どうする?」 「口で言っても無駄でしょう。となれば」 ロレンスとライフルが盗品である事を確認した日本人は、やおらアラブ男の前に歩み寄り、強い口調で言った。 「このライフルはお前自身のものだ、というのは本当かね?」 「そうだ」 「真実であると、何者にも誓えるか?」 「アッラーは偉大なり!」 ハイサムを撃った男はなお強い口調で返す。"アッラーは偉大なり"はアッラーへの帰依のみならず、 自らの真剣さ、本気度、また正当性を主張する際にしばしば枕詞として使われる言葉だ。 687 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2014/05/22(木) 22 45 35 これを聞いた日本人は意を決したように頷き、再び男へ向かって言う。 「ならば、お前の拳は私に尻餅をつかせられるはずだ。もしそうでなければ…… 逆にお前が尻餅をついたならば、お前はハイサムの銃を盗んだ嘘つきだという事になる」 そして男の"アッラーは偉大なり"と同じぐらいに強い語気で続けた。 「お前が盗人の嘘つきだと明かされれば、お前は今持っているものを何でも盗まれるだろう!」 野次馬達が一斉に息を呑んだ。ロレンスも固唾を呑む。 この日本人が言っている事を簡単に要約すれば、次のようになる。 『1対1、拳と拳で決闘をしよう。お前が勝てばお前は無実、つまり無罪放免。 逆に負ければ、他の者たちがお前の持ち物を好き勝手に奪ってよいものとする』 野次馬は息を呑んだ次の瞬間には、もう略奪の算段を立てていた。 「奴のラクダはどこそこに繋いである」「奴の財産はどこそこのテントにある」などといった情報が錯綜している。 一方挑戦状を投げつけられた男は、やる気満々でその両拳を構える。 「言っておくが俺はここらの部族の中じゃ一番腕っ節が強いんだ。後悔するなよ」 「そうかそうか、実は私も日本人の中ではそれなりに"出来る"方でね」 間合いを取りながら互いに1回ずつ口撃すると、アラブ男の方から日本人へ殴りかかっていった。 体格差から、まともに入れば日本人の敗北は免れない。しかし日本人はここでロレンス、また他のアラブ人を驚かせて見せた。 日本人は急速に間合いを詰めてきたアラブ人の腕を掴むと、その勢いのままに背中の上で半回転させ地面へ叩き付けたのだ。 「な……」 「意外と早くついたな?」 「いいや、これは"背中から"ついたから"尻餅"じゃあない!」 アラブ人は体勢を立て直すと、再び日本人目掛け突進した。今度は雄たけびのおまけ付きだ。 そして相手の攻撃を素早く学習したのか、腕は突き出さない。脇腹の所に付け、丁度のタイミングで突き出そうという算段だろう。 だがこの時も、日本人の方が1枚上手だった。 日本人はアラブ人が攻撃モーションに入ったその時、素早く身を屈めて彼のみぞおちに肘鉄を叩き込んだ。 助走による加速が乗って、その衝撃の前にアラブ男は今度こそ"尻餅"をついて倒れる。 そこから動かない所を見るに、どうも気絶してしまったようだ。 688 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2014/05/22(木) 22 46 37 決闘を見守っていた野次馬がわっと倒れた男、そしてその男の財産へ群がっていく。 それを尻目にかけながら、勝者となった日本人はハイサムの属していた部族の所へ行った。 「これでこの銃が盗まれた物だと証明された。ハイサムの事は残念だが、銃は彼の部族のもとへ」 「いや、素晴らしい技を見せてもらったよ」 銃をハイサムの部族へ返した日本人へロレンスが歩み寄り話しかける。 「君達の勇敢さは分かっているつもりだったが、これほどとは」 「ありがとうございます」 ロレンスの惜しみない賞賛に、日本人は少し照れながらも深々と頭を下げた。 そしてはっと何かを思い出した顔をする。 「そうだ!アカバを落とした後で、貴方に渡したいものが」 陽は既に沈みきり、キャンプの焚き火が2人の顔を照らしていた。 ――時は流れ、1936年。イギリスの片田舎。 小さな一軒家で、トーマス・エドワード・ロレンスは新聞記者の取材を受けていた。 「…………なるほど、かの日本人はあなたと、そしてアラブ人達の良き親友であった、と」 「ああ。私は片時も彼の事を忘れた事がない。昨年も彼の墓へ行ってきたよ」 「アカバの戦いで日本人部隊が見せた敢闘については、私もカイロで聞きました。 もし彼が戦死されていなければ、彼と共に何かしたいと思った事は?」 「彼が生きていたら?そうだな、学生の頃のように、十字軍の――あるいはまた別な時代の遺跡を巡りたかったな」 「きっと素晴らしい旅になっていた事でしょうね……ところでそのアクセサリーは?」 「……彼の形見だよ。"アカバ"の直前、戦いが終わったら私に渡したいと言っていたものだ」 ロレンスが大事そうに手にしているお守りには、漢字で『交通安全』の4文字が刺繍されていた。 ~ fin ~ 689 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2014/05/22(木) 22 47 33 これで投稿は終わりです。 念のため、この"日本人"は薩摩治郎八や土肥原賢二ではありませんのでご了承下さい。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/1077.html
961 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/05/19(土) 21 05 39 ソ連人民最大の敵、空の魔王、スツーカ大佐……… これらの呼称は、全て1人の男のために作られた物である。 ハンス・ウルリッヒ・ルーデル。独ソ戦においては戦車を含む1000両もの敵車両を破壊した、 地上攻撃における"エースパイロットとして知られている。 そして今、ルーデルはとても不機嫌だった。 (何故俺が、戦車の設計なんぞに呼ばれなければならんのだ?陸の兵器なら陸の連中と話をすればいいだろうに) 提督たちの憂鬱 支援SS ~陸に降りた魔王~ ルーデルの挙げる異常な戦果は、当然ながら航空産業界の目に留まっていた。 正式採用から5年以上経つ古い機体であれだけの戦果を挙げるのだから、最新鋭機を与えればどうなるか? というのは誰でも気になるものだ(※1)。それでなくても2000回も出撃しているのだから、 その間に蓄えられた運用側での感想やら発想やらには大きな価値があると見なされていたのだ(※2)。 だが、ルーデルを新型地上攻撃機の開発スタッフとして招く計画は突如遅延する。 Do-335という余りに高性能な戦闘爆撃機が登場した事で、新型機需要が減退してしまったのだ。 それだけでなく、サンタモニカ会談でジェット戦闘機『疾風』を目の当たりにしたヒトラーが、 「プファイルの後継となる機体はジェット機とせよ!ジェット以外は認めない!!」と強硬に主張したため(※3)、 航空機メーカーはまずエンジン開発から始めなくてはならず(※4)、ルーデルの存在は宙に浮いてしまったのだ。 962 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/05/19(土) 21 06 16 そこにつけこんだのがヘンシェル社であった。同社は航空機メーカーでもあるが、 同時に戦車など軍用車両の製造も担っていたのだ。ヒトラーは日本機の精強さを理解すると同時に、 陸海軍に対しては日本機への対抗策を練るように指示。ヘンシェル社はこの動きに対応するため、 ラインメタル・ボルヅィク社と共同でⅤ号戦車パンターの対空仕様を開発しようとしていた。 そして、この対空戦車開発のアドバイザーとして両社は誰もが予想していなかった人物を招いたのだ。 それが戦車破壊王、ハンス・ウルリッヒ・ルーデルだった。 ルーデルは戦車破壊王であるが、同時に30回も被撃墜を経験した、"被撃墜王"でもある。 しかも、その全ては地上からの攻撃によるものだった。ヘンシェル社は、彼が撃墜された時の、 敵の対空兵器と自機の位置関係、空から地上を見た時の敵対空兵器の印象等を聞くつもりだった。 「敵を倒すには、敵からの意見を聞くのが一番だ」 秘書に対し、ヘンシェル社の重役は一言こう語ったという。 だが意見を請われる側のルーデルは、ヘンシェル社のこの依頼をすんなりとは受け入れなかった。 敵空軍の地上攻撃を防ぐには、此方の空軍が制空権をしっかり確保するのが最善の道ではあるが、 いつもそれができるとは限らない事、その時のため陸軍が対空攻撃手段を持っておく事の重要性は彼も分かってはいた。 そしてヘンシェル社が、攻撃側から見た防御側についての見識が欲しいと考えている事も。 最終的にはヘンシェル、ラインメタル側の熱意にほだされて話をしに行く事にしたルーデルだが、 彼が最後まであまり乗り気でなかった理由は、彼らしいと言えばあまりにも彼らしいものであった。 「悪いが手早く済まさせてもらおう、ヒヨッコ共の面倒を見なければならんからな」 史実と違って、なまじ五体満足だったが故にルーデルは戦後も前線で現役を続ける気満々だった。 総統らは半分涙目で後方に下がるよう要請したが、本人は「例え片脚をもがれてもデスクワークをする気は無い」 などと言い放ったために、「じゃあ後輩の訓練飛行に付き合ってよ!これなら地上勤務じゃないでしょ!」(意訳) と懇願して、『有事の際は即座に前線へ行けるようにする』という条件付で(※5)パイロットの教官をしていたのだ。 963 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/05/19(土) 21 07 28 さて、紆余曲折がありながらも対空戦車のアドバイザーとして招かれたハンス・ルーデル、 ここでも彼の発言は、ルーデルであるとしか言いようの無い有様だった。一部を抜粋しただけでも、 「正直な話、車輪で動くような兵器は大概爆弾1発か50mm弾1~3発で片が付く。 無闇に装甲を厚くするよりは、早期に敵機を発見できるようにする努力をしろ」 「地上の敵を相手にするなら車高は重要だろうが、空から見ればそうでもない。 いくら素早いとしても装軌車両なら偏差射撃で何とかなる域は出ないな」 「航空機の、それも単発機程度の装甲を抜くなら50mmもいらん。30mmもあれば十分でないか? 火力がどうしても不安ならばロケット弾を何発か積めばいいだろう(※6)、機銃をでかくする事は無い」 など、重要ながらしかし彼らしい。勿論そのアイデアの幾つかは実際に採用される事になり、 1944年中期には早くもモックアップが完成してしまった。そして総統や軍需相らのお墨付も得て、 『ケーリアン』の名を与えられ、その後色々の改善を経て世に出る事になる。 この対空戦車はその開発経緯から『魔王が地上に産み落とした子供』と呼ばれ、 そのデザインには日本側も大いに参考にする所があったという………… ~ f i n ~ 964 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/05/19(土) 21 08 24 (※1) 一握りのエースパイロットのために新型機を設計するなど近代戦の観点からすれば非効率極まりないが、 派手な戦果というのは人目に付きやすい。航空産業界はルーデルの存在を宣伝代わりに使おうとしていた可能性もある。 (※2) 実際日本でも、日露戦争後には野木希助が火砲、小火器の将来的なスタイルについて陸軍内で提言した例が、 日米戦争後には野中五郎らが空対艦ミサイルの開発に運用側の観点から助言を行っている例がある。 (※3) 一部の技術者はロケットエンジン機を提案したが、予算を降ろして欲しいジェットエンジン技師が、 事前にヒトラーへロケットエンジン機の非効率性を入れ知恵していたため拒否される事になった。 (※4) 大戦前から色々と妨害があったとは言え、ドイツは独ソ戦終了時点でジェットエンジンの作成を成功させている。 だが、疾風に対抗できる戦闘機の心臓になれるような高度なエンジンはまだできていなかった。 (※5) この情報を手に入れた日本軍関係者は、「ルーデルの引退までドイツとの武力衝突は極力避ける」 という暗黙のルールを作る事を提案したという。ある海軍OBは「万が一フォークランド紛争なんぞ発生したら、 あの魔王は嬉々としてエグゾセミサイル抱えて飛んでくるかもしれない、いや飛んでくる」と語ったらしい。 (※6) ドイツは独ソ戦が終わるまでにネーベルヴェルファーやパンツァーファウストなど、 ロケット弾の兵器としての実用化を成功させている。 965 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/05/19(土) 21 09 33 今回は意外な人物が対空兵器開発に関わるお話でした。 最後に、本SSで登場したⅤ号対空戦車の解説です。 細かいスペックは詳しくないので……(逃) Ⅴ号対空戦車 ケーリアン(初期型) 全高 2.84m 車体長 6.87m 重量 37.0t 乗員 5名 武装 37mm対空機関砲Flak37×4(砲塔中央前面) 9連装50mm対空ロケット弾発射機『ルストファウスト』(砲塔左側面) 『空の魔王』ハンス・ルーデルの助言によって設計された対空戦車。 最も特徴的なのは、砲塔左側面の一部を削って対空ロケット弾発射機を横付けしている事だ。 これは敵機が37mmが通用しない程重装甲だった場合の切り札として搭載されている。 また、発射機は機銃同様上下方向に旋回可能なため、緊急時は対地攻撃にも使える。 戦闘中のロケット弾の給弾は考慮されていないため一回発射したら終わりだが、 9発発射されるロケット弾はそれぞれ進路がばらけるために命中率は比較的高い。 また、4連装の機銃により展開される弾幕は低空の敵機に対して高い攻撃力を発揮。 ヘリコプター黎明期には、対地攻撃ヘリの強力極まりない天敵として君臨した。 本車はその素晴らしい出来栄えから戦後のドイツ対空車両のエポックメーキングとなり、 ミサイル実用化後も『砲塔中央に機銃+砲塔左側に対空ミサイル発射機』がドイツ対空車両のスタンダードとなった。
https://w.atwiki.jp/bplib/pages/1044.html
一日〆 public businessprocess 作成日 2008/05/04 18 37 55 更新日 2008/05/04 18 38 03 プロジェクト 作者 bpml.org バージョン 1.0 フェーズ 1.0 状態 設計中 複雑度 簡単 追加情報 GUID {60CE2C4D-96BD-4053-B433-DB29F04F3FB9} ダイアグラム タグ付き値 追加プロパティ タグ 値 詳細 AdHoc false Values true,false Default false AdHocOrdering Parallel Values Sequential,Parallel Default Parallel EnableInstanceCompensation false Values true,false Default false ExpressionLanguage XPath 1.0 Default XPath 1.0 Language English Default English ProcessType None Values None,Private,Abstract,Collaboration Default None QueryLanguage XPath 1.0 Default XPath 1.0 Status None Values None,Active,Ready,Aborting,Cancelled,Aborted,Completing,Completed Default None SuppressJoinFailure false Values true,false Default false プロパティ 値 isReadOnly false 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/1062.html
949 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/05/11(金) 17 44 22 ロシア沿海州最大の港湾都市ウラジオストク。 『東方を支配する町』という意味の名を持つこの町は、今やその東方との架け橋の町となっていた。 大祖国戦争がそれを提唱した者の死によって終わると、極東最大の国家日本との貿易港となったのだ。 そして1944年末、前世紀の遺物の如き駆逐艦とは比較にならない大型船が町の港へ入港した。 提督たちの憂鬱 支援SS ~東西を繋ぐもの~ 「凄い船ですね、一体何トン積めるんでしょう?」 反スターリン派のクーデター―――俗に言う『八月蜂起』―――のゴタゴタの後、 ウラジオストク守備隊へと配属されたディミトリ・A・グラドゴフ少尉は、日の丸を掲げた大型商船を見て感嘆していた。 「さあな。だがこれだけは言える。白い物が黒になっても、我が祖国にあれだけの船は作れない」 少尉の隣で、最前線から生きて戻ってきた政治将校、ユーリ・I・ゴーキー中佐が歯に衣着せぬ発言をする。 しかしそれは紛れも無い事実であった。帝国時代に太平洋艦隊の母港として名を馳せたウラジオストクでは、 殆どの戦闘艦が解体されて資材と化し、そこにある造船施設も稼動が止まって久しかった。 やがて商船と港が幅の広いスロープで繋がると、貨物室から大きなトレーラーが顔を出した。 そしてそのトレーラーに載っている物を目にした時、それを遠巻きに眺めていた2人は驚いた。 「何だこれは……―――!!」 950 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/05/11(金) 17 45 06 黒光りする精悍な姿。今にも煙を吐き出してきそうな生命感のある煙突。 動き出すのが待ちきれないようにしている車輪、先端に付いた楔状の板は雪除けだろうか。 トレーラーの上にドカリと座ったそれ―――蒸気機関車―――は、 2人が今まで見てきたそれのどれよりも力強く、そして頑丈に見えた。 「あれも日本からの輸入品なのか……」 大学では工科に進みながら、親のお節介により政治将校にさせられたゴーキーには、 その機関車が機械的に洗練されている事がすぐに分かった。 (素材にしている鋼鉄の質も良い。それに手入れも……それに引き換え、今の祖国ときたら) 「これはシベリア鉄道で使われるのでしょうか?」 「それ以外には考えられんな。あの全長からして馬力は相当なものだ。 耐久力も、従来の車両から比べたら天と地だろう。あの過酷な環境にはうってつけだな」 グラドゴフ少尉の素朴な質問で我に返ったゴーキーは、 まじまじと運ばれていく機関車を見つめながら答える。その表情はどこか淋しげで、悔しげでもあった。 (今や祖国を支えているのは、祖国ではなく日本という訳か………くそっ!) 951 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/05/11(金) 17 45 51 所変わって、日本帝国はその首都、東京。 その某所に"大蔵省のベルゼブブ"辻政信と、その後継者候補の1人―――宮澤喜一―――はいた。 「"アレ"が目論み通りの効果を発揮してくれると良いのですが」 多少不安げに呟く宮澤に対し、彼の大先輩にして師匠たる辻は安心するよう諭す。 「十年単位で時間がかかるかもしれませんが、問題は無いでしょう。 それにしてもシベリア鉄道用に機関車を与える事でロシア本国による極東地域からの収奪を加速させ、 ソビエト構成諸国に楔を打ち込むとは考えましたね。私も思いつきませんでしたよ」 「この程度の小細工は評価されるような事ではありません、私などはまだまだ未熟です。 大臣の持ってらっしゃる鬼謀やノウハウの十分の一も私は持っておりません」 謙虚な弟子に対して苦笑を隠しつつも、辻は次にこう窘めた。 「その心意気は結構。ただし――――あまりやり過ぎないようにする事です。 打ち込んだ楔が大きすぎればソ連は間違いなく瓦解しますよ。そして瓦解の時は今ではありません。 何かが成功した時、盲目的にそれを続けるのは守株のする事です。分かりましたね?」 辻の言葉に、宮澤はただただ頭を下げるばかりであった。 当時、日本からソ連に対して輸出される品といえば、殆どが型落ちの中古であった。 しかし、宮澤喜一の意見で輸出品目に加えられた蒸気機関車は、その前例に反して比較的新しい物だったという。 そこに何の意図があるのか、宮澤も、辻も、ついに語る事が無かった……… ~ f i n ~
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/1355.html
154 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/09/22(土) 17 32 59 ―――――なんでこんなに人がいるんだ? ―――――一週間前に求人広告を出した町工場の工員 提督たちの憂鬱 支援SS ~工業狂想曲~ 今や多くの歴史家が、日本の勝利を自然災害と優れた兵器の賜物と信じて疑わない日米戦争。 この戦争の後、日本国内ではにわかに工業に対する関心が広がった。新聞やテレビには連日軍事や工業の専門家を名乗る者が出て、 いかに日本の工業精度が優れているかとか、いかに日本の兵器が洗練されているかなどといった事を解説していた。 これらの報道によって、軍需産業を中心とする工業への人気は燎原の火のように日本全土へ広がり、 三菱、倉崎を始めとする軍需担当企業では求人を出せば2倍、3倍の応募が集まるのは当たり前、 特に活躍の著しかった航空機関連などは競争率が5倍になる事も珍しくなかった。 ただ、求人側が嬉しい悲鳴を上げたかと言えばそうでもなく、採用試験の規模を拡大せねばならず、 また"製品"の性質上、国の情報局との連絡も加速度的に増し、結果、人事部は不夜城と化した。 騒動はこれだけに留まらない。 戦中から急激にメイド・イン・ジャパンの人気が高まっていた事で国内産業が活気付いた事で、 各地で人手不足が発生し、日本の雇用業界―――特に製造業の―――が売り手市場に大きく傾いたのだ。 さらにこの余波として、子供達を少しでも給料、待遇、何より世間の評判の良い仕事に就かせたいと思い、 自分の子供へ進路を工学系にするよう強い働きかけをする親がにわかに増え出した。 造船所や兵器・武器の工場で働くのが一番お国のためになって、しかもお金になる。 戦前の圧迫と戦後の躍進のギャップから、特別教育を受けていないにも関わらず愛国心を強めた人々は、 このような事を口にするまでもない常識として共有していたのだった。 155 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/09/22(土) 17 33 55 その反動が、大学工学部の倍率高騰と他の学部・学科への向かい風となって現れるのに時間はかからなかった。 物理学は、日本が世界で始めて使った"新型爆弾"がどうやらこの学問に由来しているらしいという、 正確さを著しく欠いたマスコミの報道のおかげで被害は少なかったものの、科学のもっと基礎的な分野、 特に数学や素粒子など、"とても難しそうで具体的な効能が分かり辛い"分野への逆風は酷いものとなっていた。 勿論元からその道に進もうと考えている者はいたが、研究のスポンサーが付きにくかった。 多くの企業が自分達の事業拡大に追われる中、株主達にその意義を伝えにくく、派手さもない基礎学問に、 あえて資金を出そうというパトロンは少数派だったのだ。 これに危機感を抱いていた政府や夢幻会も支援するには限界があり、国民の関心が高まったおかげで、 電子工学や重工業が彼らの強い意志が無くても発展する傍ら、それの支えとなる筈の基礎分野は停滞しつつあった。 この傾向に手を焼いていた夢幻会のある最高幹部などは、「クォーク発見の前にイージス艦が就役しそうだ」 などと冗談を交え嘆いていた(クォークは1968年に存在の証拠が見つかった。イージス艦初就役は1983年)。 この問題の最も厄介な所の1つは、将来熱意を持った優秀なエンジニアが多数社会に出る事が約束されたという所だ。 それ自体は非常に魅力的で、夢幻会、そして後に日本帝国そのものの戦略大綱として組み込まれた、 "他国に対する技術的優越の保持"の大きな助けとなるものだった。事実後に"工学世代"と呼ばれる彼らは、 多くの実用超音速機の開発や、回転翼機の急速な発達、コンピューターの高性能化などの原動力となって、 "技術の日本"の名を世界に高め、同じく技術大国であるドイツと激しくしのぎを削っている。 そのため過度の拡大主義や最終戦争論など危険思想の蔓延を抑える事ができた夢幻会も、 この"技術偏重志向"に対してはなかなか有効打を打つ事ができず、苦しい戦いとなったのだった……… ~ f i n ~
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/1205.html
44 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/07/06(金) 23 55 19 スイスは中立国である。 これはナポレオン時代の終わりを象徴し、その後のヨーロッパを決めた会議である、 『ウィーン会議』において国際的に認められた事であり、そしてそれは会議のあった1815年から、 第二次大戦が終わる1942年まで、およそ130年もの間固く守られ続けてきた。 しかし、その中立も終わりを迎えようとしていた。 提督たちの憂鬱 支援SS ~永世中立の終焉~ スイスに中立国という肩書きを与えたのが国際会議であるならば、 その肩書きを奪ったのもまた国際会議であった。その名を『サンタモニカ会談』と言う。 今や日本史、世界史の教科書でも一段落を割かれる程のこの会談は、 とかく日英枢軸で世界に線を引いた事ばかりが注目されがちだが、その裏で話し合われた問題には、 これまで永世中立国、欧州富豪の金蔵、諜報機関の戦場として機能していたスイスの扱いもあった。 事の発端は第二次世界大戦の休戦まで遡る。この時スイスが枢軸国に完全に囲まれる事が確定したため、 スイスに財産を預けていた非枢軸系の資産家達は潮が引くようにスイス銀行から資産を引き上げ始めたのだ。 これによりスイスの銀行は、政府の財政出動さえ焼け石に水なレベルの大損害を被った。 45 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/07/06(金) 23 55 50 そこにつけこんで来たのが、スイスを包囲する枢軸国である。 スイスが枢軸国にとっての安全地帯(他国に手出しされにくい)となったのに合わせて、 枢軸諸国の高官や資本家らが、非枢軸系資産家の撤退と入れ替わるようにして預金を始めた(※1)。 また、ドイツのヘンシェル社やフランスのルノー社など、枢軸系の企業がスイス国内への進出を進めた(※2)。 支社や工場の生み出す雇用は馬鹿にならず、スイス国内の失業者はこういった枢軸企業に流入していく。 こうしてスイスは、サンタモニカ会談前には既に経済において枢軸への依存を強めていたのだ。 そして枢軸国の代表として会談に出席したアドルフ・ヒトラーはこれを背景として、 これから進むであろうスイスを枢軸へ編入する動きを黙認するよう日英の代表へ強く迫った。 そして、これに対して日英が懸念を示したかと言えば、両者は眉1つ動かさなかった。 元々日英の間では、スイスが枢軸に膝を屈する事は織り込み済みであったし、エリコン社などの技術が枢軸に渡るのは惜しいが、 いち企業の技術を守るためにこれに反対できる程日英には余裕が無かった。そもそも、イギリスはともかく日本の場合、 夢幻会の努力によって国内の軍需企業が順調に成長していたため、エリコン社の価値は相対的に低下していたのだ(※3)。 それだけでなく、日英の資産家の資本はその殆どがスイスから引き上げられていた事、 枢軸に加入しない場合は陸の孤島と化す事、北欧はスウェーデンが国際協力機関の設置場所に内定している事から、 日英には最早体を張ってスイスを守る事のメリットが無くなっていた(国際連盟は消滅しているも同然である)。 かくして、あたかもミュンヘン会談におけるチェコスロバキアの如く、スイスは列強の庇護を失ってしまった。 46 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/07/06(金) 23 56 33 ドイツを除いては数少ない列強である日本とイギリスが、スイスの中立を支持するどころか、 まるで死体に群がるハイエナの如く専門家の引き抜きを始めている現状に多くのスイス人が憤慨していた。 スイスの武官の長であるアンリ・ギザンもその1人である。 彼はスイスの武装中立の強力な推進者であり、またリュトリでの熱烈な演説から国民の支持も大きかった。 彼の構築した国防戦略は、枢軸側も突破法とそのコストに見合うだけのリターンを見出せなくなる程完成度が高かった。 しかし、彼の国防戦略はあくまで枢軸側が武力に訴えた場合のみその真価を発揮するものであり、 枢軸側が新たに取り始めた、こういった『経済的な』侵略にはあまりにも無力だったのだ。 それでもギザンはスイスが枢軸に取り込まれないよう、官民様々な方面に強く働きかけを行った。 だが、結果から言えばこの働きかけは失敗に終わる。行政側は経済的な理由から枢軸へ接近せざるをえず、 民間企業も影響力を増す枢軸の資本と、技能者の流出によるダメージから枢軸系企業との協調姿勢へ動いていた。 さらにスイス国内のドイツ系住民が、あくまで武装中立を掲げるギザンに対し『時代遅れ』と大規模な批判を展開。 行政との摩擦も相まって、彼のスイス国内における地位も揺らいでいく。 そして1945年6月4日、アンリ・ギザンは全ての職務を退き、静かに引退生活に入った。 一説にはドイツ、イタリア等の働きかけを受けた政府が彼の肩を叩いたのではないかとも言われているが、その真相は定かではない。 ただ、ギザンは引退に当たって、次のような言葉を残している。それはごく簡潔なものだった。 「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」 ギザン引退後のスイスの運命も、またこの言葉を彷彿とさせるものだった。 枢軸国は、かつてのように中立を標榜する国を武力で踏みにじるような事はしなかった。 そのかわりに、相手を外交的に孤立させ、経済的にじわじわと国内を侵食していき、 そして中立という看板を、少しずつ、着実に削り取っていったのだ。 スイスの永世中立も、こうして終焉を迎えた。老兵の如く、中立も死なず、ただ消え去ったのである………… ~ f i n ~ 47 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/07/06(金) 23 57 27 (※1) また、スイスはドイツ国内で迫害を受けていた所謂『退廃芸術』作品の避難場所としても機能している。 ヘルマン・ゲーリングに代表される退廃芸術に一定の理解があった人々は、あの手この手でかき集めた芸術作品を、 スイスに作った私的な貸し金庫へせっせと運び込んでいたという。 ゲーリングは退廃芸術展のために押収された作品を引き取って私物化したり、 武装親衛隊がユダヤ人から押収した作品をヒムラーら親衛隊上層部に掛け合って私物化していた。 その熱心な様子を見たラインハルト・ハイドリヒは後に、「彼は自身の事をルネサンスの人間と呼んでいるが、 その実体は極めて世俗的な人間に過ぎない」と語っている。 そんなゲーリングのコレクションの中で特に有名なものが、 オランダ人ハン・ファン・メーヘレンから購入したフェルメールらによる17世紀絵画群である。 これらはゲーリング本人によって『如何なる鑑定にもかけるべからず』という奇妙な遺言が遺されているが、 その理由については都市伝説の域を出ないが、ゲーリングが何らかの手段で絵画群が贋作である事を知り、 自身の名誉を守るために贋作である事を闇に葬ろうとしたのではないかという見方が強い。 ゲーリングの死後、そして21世紀になっても、この絵画群は鑑定にかけられておらず、真贋は不明のままである。 (※2) この進出攻勢には勿論、スイス支配の第一歩として経済を依存させようとする枢軸諸国の思惑もあるが、 もう1つにはスイスを枢軸の『要塞化軍需工場』にするという計画があった。スイスはヨーロッパ諸国の中でも、 外界勢力から最も攻撃を受けにくいという地理的アドバンテージがあるため、万が一日本と全面戦争になり、 戦略爆撃機や弾道ミサイルによる猛撃を受けても被害が少ないであろうスイスに工場施設を整え、 本土が大損害を受けた時はスイスの工場を使う事で急場を凌げるようにしようと考えていた。 (※3) それでも日英は、全体主義を嫌うスイス人技術者らが自国へ脱出できるよう手を尽くしていた。 特にイギリスはその老獪さをいかんなく発揮し、エリコンFF20mm機関砲の開発チームのおよそ3割を引き抜いている。 日英によって専門家が引き抜かれた企業は、エリコン社の他にもSIG社(銃器)、サンド社(薬品)、 スイス国営製作所(航空機他)が挙げられる。これら人材流出はスイスの高い技術力に少なからぬ打撃を与えた。